約 438,471 件
https://w.atwiki.jp/maoyu/pages/364.html
近衛隊とは、第二次聖鍵遠征軍の魔界開門都市都市内部の治安維持部隊である。王族や貴族が中心。素行が悪く都市内部で乱暴狼藉を働いていた。 初出 2-3 2スレ677レス 2009/09/07(月) 17 51 00.73 東の砦将「そんなこと云ったって、 魔族娘のぼいんぼいーん☆にきゃっきゃうふふで 街中に居座ったのはあんたら近衛隊じゃねぇですか」 組織 軍隊
https://w.atwiki.jp/orekura/pages/23.html
地名(A~Z) 名前 備考 暁の黄金こがね平原 メルティアにある迷宮の第六層 雨竜大瀑布 メルティアにある迷宮の第四層 栄光への奈落 メルティアにある迷宮の第五層 餓鬼焚火長屋 アリスマリスの迷宮第一層にあるカオスな町 カエル広場 メルティアの迷宮三層で一番大きい広場 地面にはびっしりと石畳が敷かれている カエルの顔が向いている方向に歩いて行けば出口 ここで戦闘をしたり休憩したりする探索者も多い 拠点にもなり、なにかあった時は助けてもらうこともできる 霧惑い大庭園 メルティアにある迷宮の第三層 深い霧に覆われていて目視出来るのは100m程度 噴水から飲用可能な水が出ていて、そこで休憩している探索者がいたりして、二層よりもまったりしたムード 一説によると、この霧が探索者同士をお互いに違う方向へと無意識に誘っているらしい グラン・アリスマリス 世界最大の迷宮都市 アリスマリスの迷宮は数百年続いているらしい すごい シルティオン リフレイアの本拠地 もともと光の大精霊がいた場所に神殿と街を作った場所 自然神殿がある リングピル大陸 ヒカルが降り立った大陸 リングピル大陸ラフィード区北の草原 東の魔境と東の砦の間に位置する 幅は大体15km程 小高い丘があり登ると広大な東の魔境を望むことが出来る 風が気持ちいい リングピル大陸・東の魔境 ヒカルが降り立った地。周囲の人口密度は10段階中0。危険度は6段階評価中4点。一番近くの人間がいる場所は「東の砦」で、直線距離で373キロメートル。深い、深い森の真ん中。東京から京都までが368kmなのでそれ以上に遠い。 飢獣地下監獄 メルティアにある迷宮の第二層 黄昏冥府街 メルティアにある迷宮の第一層 ポッカリと空いた野球場より広い空間で、天井部分はまるで黄昏時の空のように赤く煙っている 地面には石で出来た廃屋が建ち並び、その奥には城のようなものが見えている 大小様々なスケルトンが徘徊している ボーレタリア 某悪魔魂ゲーのお城 ジャンヌ様も遊んでる ミリエスタス 闇の大聖堂がある場所 神官は躍起になって闇の大精霊を探している ルーマニア出身の例の双子(邪悪)もいる メルティア 主人公が最初に訪れた街 人が多く、雑多で、変な臭いがして、大声の飛び交う街 街の中心に螺旋状に捻れた円錐状の高さにして80メートルほどのクリスタルの建造物がそびえ立っている 銭湯もある メルティアの迷宮 四種類の大精霊を集めて作られたためかなり大きい 火と水と風と土の大精霊様がいらっしゃいますにゃ
https://w.atwiki.jp/maoyu/pages/388.html
連絡議会とは、魔界開門都市の連絡議会である。 3年目晩夏に開かれた。議題は病院の設置。 魔王の名代として黒騎士(勇者)が出席。議員は火竜公女など。 また、東の砦将の提案で、魔族と人族の交流のため、同日開門都市で、東方風の祭である縁日が開かれた。 初出 2-4 2スレ968レス 2009/09/08(火) 15 02 11.70 勇者「ああ、開門都市の連絡議会だ」 政治 組織
https://w.atwiki.jp/maoyu/pages/136.html
魔界とは、魔族が住む世界である。人界とは極大陸のゲートにより隔てられている。緑の太陽による斥力に支えられた球の内側にある世界。人界とは表裏の関係にある。 人界と比べると温暖で気候に恵まれている。 魔界の地名 黒狼砦 魔王城 鬼面都市 開門都市 貴族たちの豪華な寝室 紅玉神殿 略奪された神殿 東の砦 大通り 外なる図書館 四方砦 北の砦 冥界温泉 冥府宮 作戦会議室 中央砦 下級娼館 くすんだ酒場 初出 1-1 1スレ49レス2009/09/03(木) 18 18 08.19 魔王「私の一族は変わり者が多くて、魔界の端っこで 長年研究をしていてね。私の専門は経済なんだ」 地名
https://w.atwiki.jp/bokumaka/pages/694.html
ここを編集 魔王の攻略推奨レベル:Lv.??以上(ユニット??体/アイテム?個) 平均攻略時間:?h 全てに先制可能な素早さ:DEX994程度 南西の砦と同じく、ステータス低下、進軍速度低下は発生しないが、ドーピングアイテムが効果を発揮しなくなる。 基本的にユニットの地力とパーティ編成が要になってくるMAPなので、奪還の際にはユニットの育成を怠らず、しっかり戦略を立ててから行こう。 道中 最大18体程度。 ボス戦用に調節すれば特に困らない。 ボス戦 ※DEX順 高機動型ラクダ兵x3 DEX971~994(最速) HP207以下 STR200程度(AC500程度で被ダメ1) 強襲型ラクダ兵x3 DEX836~850 HP207以下 STR400程度で最大4回攻撃 高機動型ゾウ兵x3 DEX836~850 STR280程度(AC600程度で被ダメ1) 近衛ラクダ兵x3 DEX691~710 STR270程度 魔法・ブレス耐性75 強襲型ゾウ兵x3 カウント・セイリュウx1 DEX698~700 HP1827~1973 魔法・ブレス耐性25 推定STR650程度の5回攻撃or特殊攻撃 近衛ゾウ兵x3 DEX554~560 STR480程度 魔法・ブレス耐性99 機動型ラクダ兵x3 バロン・スザクx1 魔法・ブレス耐性25 機動型ゾウ兵x3 マークィス・セイントx7 魔法耐性10 武装ラクダ兵x3 魔法・ブレス耐性50 武装ゾウ兵x3 魔法・ブレス耐性75 重武装ラクダ兵x3 魔法・ブレス耐性75 重武装ゾウ兵x3 魔法・ブレス耐性90 HP550~607 STR380程度 南西の砦よりも敵は強め。 最低でも南西の砦を全く苦にしないレベルのパーティーで挑戦すること。 しかしハードルはやや上がったものの、あちらと同じ手順で攻略できる。 ゴブ僧やルキフゲによる全体攻撃で低HPのザコを払い、物理攻撃で残りの耐性持ちを狩る形は変わらない。 光や殴りの威力は必要DEXを満たしていればおよそ十分なので、殴りの手数に注意したい。 奪還方針 (a) ゴブ僧を連れて行く場合 高機動・強襲型を終末で落とし、カウント・セイリュウ(DEX700)に先制するよう調整。 (b) 幸運・長者のみで行く場合 出来れば強襲型ラクダには行動されたくないので、全体攻撃を持つルキフゲをDEX850程度に調整したい。
https://w.atwiki.jp/maoyu/pages/160.html
東方とは、人界の一地方の名称である。 鎧も兜も真っ二つにする技が使える東方の戦士サムラーイがいるらしい。 勇者の先祖にサムラーイがいる。 また縁日という祭りがある。この祭りを提案した東の砦将も東方人の子孫ではないかと思われる。 初出 1-2 1スレ153レス 2009/09/04(金) 15 50 45.68 勇者「東方の戦士だよ。鎧も兜も真っ二つにする技が 使えたんだとさ」 人界の地名 地名
https://w.atwiki.jp/maoyu/pages/47.html
<前7-3へ|次7-5へ> 魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」7-4 577 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 20 32 00.41 ID jeE4iYgP 職人の長「はっ。恐縮でございます」 王弟元帥「で、どうなのだ」 技術者「その……」ちらちら 王弟元帥「構わない。余は能力ある者に敬意を感じる。 直答を許すから、詳しく聞かせよ」 技術者「では、その」 熟練技師「まずは、この『The genius s Manuscript』は 素晴らしいですね。まさに精霊様の下された天恵の書! 詳しい仕組みは判らずとも、残されたスケッチを見るだけで どんどんと新しいアイデアがわいて参ります!」 技術者「はい。このマスケットを中心に実に様々な考察が 描かれています」 熟練技師「たとえば、この石炭なるものは、 大地から掘れる石でありながら、燃えまする」 王弟元帥「ふむ、北の地で取れるというものか」 技術者「『The genius s Manuscript』には、この石炭を 蒸し焼きにして純度を高め、コウクスなるさらなる燃料を 作る方法が記されています。このコウクスをつかえば、 より強力な鉄を作ることが出来ます」 熟練技師「また『The genius s Manuscript』にはこのような スケッチがあり……これはわたしが大きく描き写し、 整理したものでございますが」 王弟元帥「これは……撃鉄周辺の構造か?」 熟練技師「殿下におかれましては、銃のことが判りますので!?」 578 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 20 34 49.79 ID jeE4iYgP 王弟元帥「おのれの指揮する軍の武器ぞ。判らぬでどうする」 熟練技師「はっ! 恐れ入ります。 では説明させて頂きますと、これはおそらく マスケットの改良と申しますか、 いわば後継にあたるものかと考えられます」 王弟元帥「ふむ」 熟練技師「撃鉄によって打ち付けられたこの部分には、 火打ち石がはめ込まれていまして、 これがそのすぐ下に作られた小さな部屋の蓋を破り、 打ち付けられます」 王弟元帥「この部屋はどれくらいのサイズなのだ?」 熟練技師「図では大きく描かれていますが、 実際には指先でつまめるほどのものです。 しかし、打ち破った蓋は開閉式に作られ、 直後にバネ仕掛けにより閉まります。 これにより、火うち石の火花が部屋に 閉じ込められることになるのです。 この仕掛けにより、火縄のないマスケットが開発できるわけです」 王弟元帥「ふむ」 熟練技師「えー……。お解りになられましたでしょうか?」 王弟元帥「理解した。運用と生産の問題点は?」 熟練技師「運用においては、私どもには今ひとつ 理解しかねますが、まず火口、火縄の必要がなくなり 発射の際の姿勢が自由になります。 さらには雨などの悪天候に強く、火縄がないせいで、 狭い場所での射撃が可能です」 王弟元帥「狭い場所……。密集隊形か」 579 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 20 38 03.39 ID jeE4iYgP 熟練技師「命中精度は多少下がると予想されます。というのも」 王弟元帥「時間差で引火するからだろう?」 熟練技師「その通りでございます。 生産においてはマスケットに比べてやはり精密な作業が 必要とされるために、一部の高度な技術を持つ職人を 導入する必要があり」 王弟元帥「つまりは、数多くは作れぬ、と」 熟練技師「はい」 王弟元帥「長」 職人の長「はいっ」 王弟元帥「量産する方法を考えよ」 職人の長「ええっ!?」 技術者「……」 王弟元帥「それが長の役割であろう」 職人の長「は、はぁ」 技術者「恐れながら、陛下」 王弟元帥「申すが良い」 技術者「これらの武器は様々な部品で作られております。 新しいアイデアの武器もそうですが、 全ての部品が全て高度な技術を要するわけではございませぬ」 王弟元帥「ふむ」 580 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 20 40 46.40 ID jeE4iYgP 技術者「そこで、現在のように職人が一丁一丁仕上げるのではなく、 たとえばある部品だけを作り続ける職人、別の部品を作る職人 と云うように仕事を分けるのはいかがでしょう?」 王弟元帥「おお!」 技術者「そうすれば、一人の職人が覚える仕事の量は 少なくても構わないと云うことになります。 中級程度の技術は必要ですが、 彼らも部品一個だけであるのならば、 腕利きの職人に比肩する速度で 仕事をこなせるようになるわけです。 また新しい職人の育成も早くなります」 職人の長「しかし、それではギルドの立場はどうなるっ! 長い間、技術の保全に努めてきた我らの立場は。 職人を育成して親方として束ねてきたギルドの利益を 害する考えだっ!」 技術者「はぁ……」 王弟元帥「ふっ。長殿。その件についてはわたしから 提案しようではないか。 この件で技術が仮に漏洩したとしても 聖王国の影響範囲内であれば、 全てのマスケット、およびその関連技術を取り扱うためには、 銅の国の鉄工ギルドの許可、もしくは親方証が必要だという 法律を作れば良かろう? 勅書でもよい」 職人の長「ほ、本当でございますかっ!?」 王弟元帥「ああ、この『The genius s Manuscript』は 鉄の国からもたらされたもの。 このままでは銅の国の技術は鉄の国に置いて行かれよう? ……それを考えれば、悪い話ではあるまい」 582 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 20 43 35.58 ID jeE4iYgP 王弟元帥「よし、では話は決まったな。 熟練技師、技術者、だったな?」 技術者「はいっ!」 熟練技師「はっ!」 王弟元帥「余は汝らの若い力に期待しておる。 これからも長を助け、改革し、作業にいそしんでくれよ」 技術者「こ、光栄でありますっ!」 熟練技師「身命にかえましてっ!」 王弟元帥「うむ。では、余は忙しい。残る話は次の機会としよう」 職人の長「お送りいたします、殿下っ!」 バタバタッ 王弟元帥「よい。作業があるであろう? 余は期待しているのだ」 聖王国将官「長どの、ここでよいですよ。 あとは技師達や作業者達と話をお詰め下さい」 ガチャン。 ――ザッザッザ、ザッザッザ 王弟元帥「将官」 聖王国将官「はっ」 王弟元帥「時期を見て、あの長は切れ。 若手に権力を握らせて工房の運転速度を最大化するのだ」 聖王国将官「心得ました」 587 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 21 01 50.88 ID jeE4iYgP ――冬越しの村、魔王の屋敷、夜の執務室 さらさらさら…… メイド姉「……」 さらさらさら…… とさっ。 メイド姉(これで、二年分の整理はお仕舞い。 ……後は、今月の財務諸表の写しを) さらさらさら…… 魔王「……」 さらさらさら…… 魔王「メイド姉」 メイド姉 びくっ 「あっ。当主様!」 魔王「根を詰めすぎだ」 メイド長「ええ、身体をこわしてしまいますよ?」 メイド姉「それにメイド長様も……。すみません。えっと 何かご用でしたでしょうか?」 魔王「何を焦っておるのだ?」 メイド姉「……」 589 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 21 04 47.72 ID jeE4iYgP メイド姉「いえ……」 魔王「ん?」 メイド姉「焦っているわけではありません。――当主様」 魔王「……?」 メイド長 こくり メイド姉「当主様にお願いがございます」 魔王「どうした?」 メイド姉「お暇を頂きたく思います」 魔王「……」 メイド長「――」 魔王「どこへゆくのだ?」 メイド姉「わかりません。けれど ――ここではないどこかへ」 魔王「妹には?」 メイド姉「話してあります。 あの娘には、ここでかなえる夢がありますから。 ……すみません、こんな我が儘を。 当主様やメイド長様に救って頂いた身でありながら。 本当に申し訳ありません」 魔王「そう……か……」 メイド長「まおー様」 590 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 21 07 27.61 ID jeE4iYgP 魔王「判っている」 メイド長 こくり 魔王「……」ふわり メイド姉「あ……」 魔王「何を見るのだろうな、その二つの瞳で。 ……これがお別れではあるまい?」 メイド姉「はい、きっと……きっと戻って参ります」 魔王「では行くが良い。そなたには翼にはその力があるのだ。 おのれの運命と巡り会いに行くのであろう?」 メイド姉 こくり 魔王「ここを嫌って出て行くのでは、無かろうな?」 メイド姉「いいえっ。 この家は、わたしの生きてきた全部のっ 全ての中で、一番暖かくて、一番優しくて…… い、ちばんっ。……大事な、場所ですっ。 本当は出て行きたくなんて無かった、ですっ。 でも、そうしないと。 きっと、わたしは許せなくなります。 わたしは沢山の人に。……沢山の責を負っているから。 わたしが。――わたしが自分で歩くのを止めるのは、 ひどく不実なことに思えるんです……。 あの日、あの広場で叫んだから。 わたしには“叫んだもの”として、 やらなければならないことがあるように思うんです」 591 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 21 09 06.84 ID jeE4iYgP 魔王「そなたが負うべき事などなにもない」 メイド姉「では、わたしが選びたいんです」 魔王「……」 メイド長「お行きなさい」 メイド姉「はいっ」 魔王「わたし達の教えを受けたものとして旅立ってくれるな?」 メイド姉「はい。ご厚情も、ご恩も忘れません。 きっと何かを見つけて帰ってきます」 魔王「何を」 メイド姉「たぶん――戦いの意味を見つけに」 魔王「……っ」 メイド長「――」 メイド姉「他の誰でもなく わたし自身が見いださないといけないのだと思います」 魔王「……止める言葉を持たないな」 メイド長「はい……」 メイド姉「大丈夫ですっ。 わたしは結局メイドにはなれなかったのかもしれませんが、 メイド長の授けて下さったものはメイドを超えると信じます。 当主様、勇者様、女騎士様、子弟の皆さん方……。 授かった数多の教えは、どんな黄金より勝る宝ですから」 592 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 21 10 48.81 ID jeE4iYgP 魔王「……判った」 メイド姉「当主様、ここにある二年分全ての帳簿の整理は 終わっております。目録は全てこちらの小棚へと まとめておきました。諸表はこちらの引き出しです」 魔王「うむ」 メイド姉「えっと、僭越なお節介なのですが、 もし、他の方が作業されることも考えて、 仕事を引き継げるように覚え書きの帳がこちらにあります」 魔王「……ん」 メイド長「よくぞ、ここまでものにしましたね」 メイド姉「先生が優秀でした」 魔王「何時、発つのだ?」 メイド姉「夜明けと共に」 魔王「少しでも眠ると良い」 メイド姉「はい。失礼します。あの……」 メイド長「――」 メイド姉「お二人が、大好きです」 かちゃん。とっとっとっと 魔王「止められなかった」 メイド長「それが正しいのです」 魔王「メイド長……。手放させてしまったな」 メイド長「――いえ。何の問題があるでしょう。 どこにいても、何をしていても 彼女はわたしの自慢であることに何の代わりもないのですから」 610 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 21 49 39.53 ID jeE4iYgP ――――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、仮設会議場 ギィッ 銀虎公「遅れたか? すまぬな」 火竜大公「いやいや、気にすることはない。 まだ時間ではないのだ。我らは妖精女王土産の茶を 飲んでおったのみだ」 妖精女王「はい」 巨人伯「……うま……い」 勇者「なかなかいけるぞ-?」 銀虎公「ではわしも一杯貰おうかな」 ギィッ 碧鋼大将「失礼いたす」 東の砦長「待たせて申し訳ねぇ」 紋様の長「おお、お二人も」 鬼呼族の姫巫女「これで揃ったようだな」 火竜大公「では、おほんっ。第二回の会議を始めるとするか」 妖精女王「今日のお話は?」 巨人伯「……まずは、前回の、続き」 紋様の長「そうだな、蒼魔族の件からとしよう」 東の砦長「どんな案配なんだ?」 鬼呼族の姫巫女「妖精族から報告して貰おうか」 611 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 21 50 46.72 ID jeE4iYgP 妖精女王「はい。……まず、大きな動きはありません。 蒼魔族の少なくとも50名を越える規模での部隊は その領土から一回も出ておりません」 紋様の長「ふぅむ」 妖精女王「あの後、蒼魔の新王が都にたどり着いてから しばらくの間、蒼魔の領土には高い緊張感がありました。 蒼魔の新王の軍は蒼魔の領土全体を巡回していましたが、 現在は多少落ち着きを取り戻したようです。 もちろん各所にはかなり大人数の警邏が行われていますが」 東の砦長「つまり、戦時下って云う雰囲気かい?」 妖精女王「ええ、そうです。 少なくとも蒼魔一族は現在を交戦状態、つまり何時 奇襲をかけられてもおかしくない状態だと認識していることは 確かなことです」 巨人伯「おれたち、奇襲なんて……しないのに」 銀虎公「戦の準備とか軍備増強の様子はないのか?」 妖精女王「それは判りません。 いえ、偵察の妖精が訓練の様子などは見ていますし、 武装もしているようですが……なんといいますか。 蒼魔族ではそれが“日常”である可能性も否定できなくて」 鬼呼族の姫巫女「ふふっ。まさにそうだな」 妖精女王「今でも警戒は続けておりますが そのほかに特別な報告はないのです。申し訳ありませんが」 東の砦長「いやいや、動きがないのも重要な情報だろう」 612 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 21 51 40.66 ID jeE4iYgP 紋様の長「と、なると、前回の続き。蒼魔族の処遇の問題か」 勇者「……」 銀虎公「俺から口火を切って良いか?」 火竜大公「うむ」 紋様の長「よろしく頼む」 銀虎公「我ら獣牙の一族は戦に生きる一族。 とはいえ、この世界の内側で暮らしていて、 事の理非程度は弁えているつもりだ。 戦で打ち破るならばともかく、 “蒼魔族を皆殺し”と云うのがいくら何でも 行き過ぎで無法な行いであると云うことは、判る」 火竜大公「しかり」 妖精女王「その通りです」 銀虎公「あー。我らは、上手ではないが、手紙を出すのだ。 どうだろう、手紙を出すというのは?」 妖精女王「手紙?」 巨人伯「……だれに?」 東の砦長「ああ、降伏勧告のことか?」 銀虎公「そうだ! そのカンコクだ。それが言いたかったのだ」 613 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 21 53 00.20 ID jeE4iYgP 碧鋼大将「ふぅむ、それは考えてみなかった」 火竜大公「なるほど……」 銀虎公「その手紙には書くつもりだ。 お主達は、卑怯者だぞ、とな。 敵を討ちたければ戦場で堂々とすればよい。 文句があるのならはっきりと言えばよい。 それを影からこそこそと、それは武人のやる事ではない。 そのようなひねくれた態度では、もはやどこの一族からも 蒼魔族は、威厳のある一流の氏族とは認められぬだろう。 申し開きがあらば、即座にするが良い。 もしそれが望みであれば 戦場でお相手いたす。 ――そんな具合だ」 東の砦長「ふぅむ。考えたな。全面降伏しろって云う話 じゃないわけだ」 鬼呼族の姫巫女「ほほぅ」 銀虎公「全面降伏しろって云う話にするならば、 前回云っていた“蒼魔族全てが意固地になる” ってやつがあるのだろう? 領地を押し包んで総攻撃する! とか云うと、 蒼魔族は“自暴自棄”になるかもしれぬ」 碧鋼大将「うむ」 銀虎公「そこで、申し開きをさせてやろうというのだ。 ただ、申し開きは、ここでやらせる」 火竜大公「ほほぉ!」 614 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 21 53 55.26 ID jeE4iYgP 銀虎公「そうしたら、奴らももう一度会議に 出てこざるを得ないだろう? この会議は忽鄰塔に似ているが、そのものではない。 奴らの奇妙な前例を用いた策略は通用しない」 碧鋼大将「それはそうだな」 火竜大公「そして会議に出てきたら、奴らにはっきりと告げる。 お前達のやり方は無法で不愉快だ、とな。 もし詫びる気があるのならば、証明させる」 妖精女王「証明とは?」 銀虎公「まずは、親王と将軍クラスの首全てだろうな」 妖精女王「殺す……のですか?」 東の砦長「いや、それは仕方ないだろう。 ここは銀虎公殿が正しいと俺は思う」 鬼呼族の姫巫女「そうじゃな」 銀虎公「その上で、しばらくの間は、蒼魔族の領地に 我らのどの氏族か、混成でも良いが軍団を置いて様子を 見させるべきだろう。賠償金も取るべきかも知れないが 金の細かいことは俺には判らぬ」 碧鋼大将「悪くない案のように思えるな」 火竜大公「そうだな」 妖精女王「……ええ」 巨人伯「……のってくる……かな」 鬼呼族の姫巫女「そこが一番の問題であろうな」 623 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 22 26 49.01 ID jeE4iYgP 銀虎公「いやいや、そこはそれで考えてあるのだ!」 碧鋼大将「とは?」 銀虎公「前回、衛門族の長が言っておられただろう? 事が終わった後に理非の大事さが聞いてくると。 一回の警告もせずに攻撃をしたらそれは不意打ち。 ある意味、蒼魔族と同じだ。 この手紙を出すことにより、いわば“申し開きのチャンス”を あたえてやるのだ。その上で無視をするなり、 ご託を述べるようならば、 それは、奴らが戦争をしたいと云っているも同じだ。 その時はまさに合戦にて決着をつけるしかない。 もしかりに、蒼魔族の軍勢を戦場で滅ぼした後でも 蒼魔の都に戻り、その民に云うことが出来るだろう? お前達の長と軍は、斯く如くこのように無法を行った。 ゆえに氏族会議はこれを処断したが、 これはけして私心からではない。とな」 東の砦長(随分よく考えてきたじゃないか。虎の旦那。 俺はあんたをちっとは見直したよ) 鬼呼族の姫巫女「よく考えられた案であるな! 銀虎公どの」 銀虎公「はははっ! なんてことはない。 俺は考え事は苦手だしな。 そこで獣牙の長老会に知恵を求めたのだ。 久しぶりに頼られた爺どもは鼻血を流して喜んでな! 三日三晩議論をして考えてくれたのだ。 あやつらは腰抜けではあるのだが、こういう時には役に立つ」 625 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 22 28 18.80 ID jeE4iYgP 碧鋼大将「ははははっ! そうでありましたか」 銀虎公「やはり、いまひとつか? 爺の考えた手だからなぁ。 俺としてはもっとはっきりした策も好みなのだが 今回はこのような手段が良いとも思ったのだ」 火竜大公「いえいえ、立派な作戦でしょう」 妖精女王「はい」 紋様の長「よい部の民を抱えるのも、長の資質、器量です」 東の砦長(まったくだ) 鬼呼族の姫巫女「いかがだろう。ご老公どの、皆の衆。 このような対応がもっとも当面は妥当だと考えるが」 勇者 こくり 碧鋼大将「異議はない」 紋様の長「まったくもって」 火竜大公「では、そのような手紙を届けるとしよう。 書面については、そうだな……。 人魔の族長、紋様殿に頼むとしよう」 紋様の長「心得た」 東の砦長(それもよく考えた対応だ) 鬼呼族の姫巫女「鬼呼族からの書状だといらぬ感情を かきたててしまうでしょうしな」 碧鋼大将「さて、他にもあるかな」 626 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 22 29 11.27 ID jeE4iYgP 東の砦長「今回は、申し訳ないが衛門一族から 願いたいことがある」 鬼呼族の姫巫女「ほほぉ、どのようなことだ?」 東の砦長「その前に、我が街で重要な仕事を 行なっている担当者を一人を呼んでもかまわぬか? 今回の願いに関係があるのだ」 鬼呼族の姫巫女「かまわぬだろう?」 銀虎公「うむ」 火竜大公「よろしい認めよう」 東の砦長「よし、入ってくれ」 がちゃり 鬼呼族の姫巫女「ほほう」にやり 勇者「あー」 火竜大公「……このような場所にっ」 火竜公女「お召し頂き感謝しまする。 衛門一族の長よりのお招きに頂き参上いたしました。 我、火竜一族を出身とする火竜公女と申すもの。 いごおみしりおきくださいますよう」ふかぶか 勇者「うー」 銀虎公「これはこれは。……子煩悩で誰にも見せないって云う 話だったのではなかったのか」 火竜大公「うぉっほん!!」 ぼうっ 628 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 22 31 06.00 ID jeE4iYgP 妖精女王「して、お話とは」 東の砦長「まずは、わが衛門一族の本拠地、 開門都市の現状から述べさせて貰う。 まず我が街は……人間どもに荒らされてな。 俺もその軍の中にいたから、 このような言い方は好きではないし本来は出来ないのだが、 街はともかく周囲の農地や街道は めちゃくちゃになってしまった」 鬼呼族の姫巫女「うむ」 銀虎公「あのあたりは大規模な攻防戦が何ヶ月持つづいたからな」 碧鋼大将「さもありなん」 東の砦長「もっとも今では人の行き来も復活して、 もとより沼地やら山奥にあるわけでもない、 平野の都市だから、随分復興もしてきた。 そこは心配には及ばない。皆、明るく働いてくれている。 しかし、ここまで復興してくると、 今度は交易が盛んになってきてな。 元々交易の要衝であった街だ、無理もないのだが そうなると、踏み固めた程度の街道では馬車の旅に不足がある」 鬼呼族の姫巫女「ふむ」 火竜大公「で、あろうな」 東の砦長「もちろん我が氏族の領地のことであれば 我が氏族が総力を持って整えればよいのだが 事が交易となるとそうも行かない」 631 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 22 35 13.35 ID jeE4iYgP 鬼呼族の姫巫女「衛門一族の領地は確か……」 火竜大公「魔王どの直轄宣言だから、開門都市および その周辺馬で2日、くらいであろうな」 妖精女王「そのくらいでしょうね」 東の砦長「で、調べてみたところ、長い戦乱でこの世界の 街道という街道は荒れ果てて、 橋はあちこちで焼け落ちているそうじゃないか。 それを修理したり、何とかしたいという話だ」 鬼呼族の姫巫女「ふむ」 碧鋼大将「それは我が一族の願いでもあった、しかし」 妖精女王「そう、莫大な労力が掛かりますよ」 東の砦長「その辺は、専門家を連れてきたので聞いてくれ」 鬼呼族の姫巫女「ほほう」 火竜公女「はい。 今回開門都市自治委員会の依頼を受けて調査をしました。 この街道敷設は十分に利益をあげる、と思われまする」 碧鋼大将「は?」 銀虎公「おいおい、道を造るだけで何で利益が上がる」 火竜大公「話してみよ」 645 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/24(木) 23 14 48.53 ID jeE4iYgP 火竜公女「まず、我らは長い長い戦乱を過ごして参りました。 前魔王殿はそう言った戦乱を傍観したばかりか 奨励すらなさいましたゆえ。 また今魔王どのはご病気が続きました」 妖精女王「そう……ですね……」 火竜公女「第一に示すべき事は、 戦をする人手があって、道を造る人手がない などと云うことはあり得ぬ、と云うことです」 鬼呼族の姫巫女「それはそれで、道理よな」 火竜公女「新しい街道を造れば、人も物も流れまする。 物の流れは、豊かさへの第一歩。 何か足りない物があれば隣国から買えばよいのです。 あまりたる物があれば、隣国へ売ればよいのです。 そして、売り買いを行えば、税が入りまする」 紋様の長「税か」 勇者「……ふむ」 火竜公女「こたびの計画では、こちらの地図に示したとおり」 ばさりっ! 火竜公女「9本の本街道を考えまする。 これらは現在の旧街道を利用しますゆえ、 その長大さと比較して短期間で作れる見通し。 これを九族大路と称しまする。 さらには、今後の展開として、この九街道を補佐する 18の街道も視野にいれまする」 碧鋼大将「なんと壮大な!」 646 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 23 16 03.98 ID jeE4iYgP 火竜公女「これら街道は、必要があれば土を盛り上げ 谷を削り、可能な限り石畳で作りまする」 銀虎公「何故か?」 火竜公女「この世界を悩ませてきた、 大規模な河川の氾濫に対する備えとしてゆえです。 道の左右には一定の間隔で槐の木を植え、 この根を持って大地を抱き、土の流れを防ぎまする。 また、この九族大路の要所には水路を平行して作り 水利をはかりまする」 紋様の長「水利とは?」 火竜公女「これは受け売りでございまするが、 この地下世界、我らが故郷には、 水のある場所と無い場所の差が激しすぎまする。 ある場所は大河の氾濫に怯え、 無い場所では実りのない赤茶けた大地。 これでは豊かな場所を奪い合い、戦乱が生じるも必定。 水のある地域からは水を抜き安全を確保し、 無い地域へと水を少しでも運ぶ方策を練るべきかと」 火竜大公「……これだけの計画をどれだけの期間で 行おうというのだ」 火竜公女「九族大路を9年。 その後18枝道をもって18年」 鬼呼族の姫巫女「それだけの人手、金をどうする?」 火竜公女「今回のお願いはそれでございまする」 648 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 23 17 23.16 ID jeE4iYgP 銀虎公「とは?」 火竜公女「債符を興しまする」 碧鋼大将「債符?」 火竜公女「はい。債符は木の札のような物で、 番号が振ってあり登録が必要でありまする。 これを大量に作りますゆえ、買って頂きたい。 債符を持った商人は、債符ひとつにつき一台の馬車を あたらしく作った九族大路において税を払うことなく 通行させる、とすればいかがでしょう」 鬼呼族の姫巫女「ふぅむ、つまりは事前に税を集める訳か」 火竜公女「御意」 紋様の長「その債符は高いのか? 普通の商人では買えなくなってしまうのではないか」 火竜公女「あまりにも高い、つまり後で税を払った方が 安くつくというのであれば本末転倒。 ですがその場合、その判断も商人の才覚ゆえ あとから税を払おうと考える方は、それで宜しいでしょう。 しかし、税なり債なるものは その重さ軽さよりも、 不公平であることにがもっとも民の反感を買うと思いまする。 説明をし、街路の有用性を説き、上位に当たる者から 積極的に債符を買えば必ずや上手く行くと考えまする」 649 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 23 18 53.73 ID jeE4iYgP 火竜公女「また、これらの道が通るところは交通の要と なりましょう。 氏族の長がたならばお解りかと思いまするが、 小さき街は大きくなり、今はなにも無き村であっても 新しく街になる可能性もありまする。 水路が引かれた地にため池を作れば、新しい畑も作れましょう。 この計画は、必ずや子々孫々にわたる益をもたらしまする」 妖精女王「……」 巨人伯「……俺たち、お金は、少ない」 火竜公女「心得ておりまする。 巨人が一族の方には、逆にこちらから債符をお送りしたいほど。 資金の代わりに、その強き腕を街道敷設にお貸し下さい」 勇者「……魔王なのか? 誰が鍛えたんだこれ」 銀虎公「我が領土にも水が来るのか」 火竜公女「必ずや」 火竜大公「……」 紋様の長「わたしたち人魔一族は、通例を破ってでも、 この案には真っ先に賛成させて頂きましょう。 我ら人魔は雑多な族のあつまり。 あちこちの街に散らばって生きています。 これだけの街道があれば、我らが受ける恩恵は計り知れない」 東の砦長「かたじけない」 鬼呼族の姫巫女「面白い。即答は出来ぬが、国元へと帰り 急ぎその裏付けを検討させよう。前向きな答えを 期待してくれても良い」 火竜大公「娘よ」 火竜公女「火竜大公におかれましては、いかがでしょう?」 651 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/24(木) 23 20 43.76 ID jeE4iYgP 火竜大公「良かろう。支持しよう」 妖精女王「わたし達は、どのようなことが出来るか 検討してみるとします」 巨人伯「おれたちは……支持する」 碧鋼大将「我らは保留だ。鉄が来るのは有り難いが 我らがどれほどに受け入れてもらえるのかは 部の民に相談することなく、軽々に返事は出来ぬ」 鬼呼族の姫巫女「意見が割れた時は過半数、と云う話だったが この話は明確な反対があるわけでもない。 今しばらく時間を取っていただき、 氏族の中での意見も聞いてみたいが、よろしいか?」 火竜大公「うむ、それが適当であろう」 妖精女王「判りました」 巨人伯「おう……」 東の砦長「かたじけないな。長の方々」 鬼呼族の姫巫女「なんの。火竜老公の美しい娘御を みれて眼福であったぞ」 火竜公女「次回までには、今少し詳しい計画図をお持ちしまする」 東の砦長「助かったぜ。やつにも礼を言っておいてくれ」 火竜公女「承りました」にこっ 699 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 13 09 31.80 ID W1zfwn6P ――――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、仮設会議場の表 パタタタッ 火竜公女「黒騎士殿」 勇者「はい」ビクッ 火竜公女「会議の際は知らぬふりをして申し訳ありませぬ。 あのような席ゆえ、馴れ馴れしくも出来なかったゆえ」 勇者「ああ。それは、うん。当たり前だよ。 すごく格好良かった。たいした計画だったよ?」 火竜公女「そのように云ってもらえて、妾も嬉しく思いまする」 勇者「おう」 火竜公女「ついでに、一つお願いしてもよいかや勇者殿」 勇者「出来ることならなんでも……ゆうしゃ!?」 こそこそ 東の砦将(アイコンタクト) ごめん、全部、ゲロった 副官(アイコンタクト) まことに、ごめん、なさい 火竜公女 にこにこ 勇者「……はい」 火竜公女「魔王殿に会いたいのです。連れて行ってください」 701 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 13 11 05.13 ID W1zfwn6P ――冬越しの村、魔王の屋敷、廊下 勇者「……」 勇者「なんかさ。俺すげー虐められてね?」 勇者「火竜公女と魔王が話すのを廊下で 待たされてるって、どんだけサドなんだよ。 泣いて良いよね? 俺泣いて良いよね?」 勇者「……良いよね?」 しーん 勇者「勇者の自信なくなってきたぞ、こんちきしょうめ」 ぽつーん 勇者「……?」 「――。――――」 「――――――」 勇者「いやいや。それは駄目でしょ? 盗み聞きとか。 それは勇者じゃなくて、一人の男として終わってますことよ?」 「――――! ――!」 「――――――」 勇者「……えーっと」 702 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 13 12 06.76 ID W1zfwn6P 勇者「うわぁぁぁ! だ、だめだぁ。 盗み聞きなんて良く無いのだぁぁ! 変態紳士の爺じゃあるまいしぃぃぃ!」 勇者「……」 「――。――――」 「――――――」 勇者「……」そろー メイド長「どうしたんですか? 勇者様」 勇者 ビクゥッ!! 「ナンデモナイヨ」 メイド長「そうなんですか?」 勇者 こくこくっ メイド長「あらあら、まぁまぁ」くすっ コンコンッ メイド長「まおー様。お茶のお代わりはいかがですか?」 ガチャ 勇者「あ」 魔王「いや、もう良い。それより勇者。 公女殿が帰られる。送って差し上げてくれ」 705 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 13 27 25.32 ID W1zfwn6P ――魔界、開門都市、郊外の虹降りしきる丘 しゅわんっ! 勇者「よっと。……ついたよ」 火竜公女「ありがとうございまする、黒騎士殿」 勇者「いえいえ」 火竜公女「……」 さくっ、さくっ、さくっ 勇者「えっと、街まで送る」 火竜公女「いえ」 勇者「……」 火竜公女「黒騎士殿?」 勇者「はい」 びくっ 火竜公女「はっきりさせて頂くことがありまする。 妾はふられたのですよね?」 勇者「えっと……」 火竜公女「黒騎士殿の、一番大切な方はいらっしゃるのですよね」 勇者「うん……」 火竜公女「……」 勇者「大切って云うか、みんな大切なんだけど」 火竜公女「どれくらい大切ですか?」 勇者「すごく」 709 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 13 30 13.23 ID W1zfwn6P 火竜公女「妾のことはどれくらい大切ですか?」 勇者「……」 火竜公女「答えてください」 勇者「危険があったら……身体を張って護れるくらい」 火竜公女「……ふふふっ」 勇者「?」 火竜公女「黒騎士殿は、その言葉で随分損をしていますゆえ」 勇者「そう、なのか?」 火竜公女「普通の殿方は、黒騎士殿ほど強くありませぬ。 故に、護れる女子は一人がよいところ。だからその言葉も、 護るという行為も、告白と同じ意味を持つのでありまする」 勇者「……」 火竜公女「努々、軽率にそのようなことを云ってはなりませぬ。 ……“餌は与えても野良は飼わない”。 そう言うことをしてはなりませんよ」 勇者「……」 火竜公女「黒騎士殿は妾を護ってはくれても、 妾と添い遂げてはくれないのでしょう?」 勇者「えっと……。個人的には、その」 火竜公女「父上が何と言おうと、 妾は一番でないといやでありまする。 また、並の女子相手では押さえられぬとも 思ってはいませんでした」 710 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 13 33 02.19 ID W1zfwn6P 火竜公女「勇者殿」 勇者「……」 火竜公女「妾を振るにあたっては、傷心は無用にございまする。 妾もまた裏切りの徒。情けをかけられる一理もありませぬゆえ。 ただただお願いしたき義が」 勇者「うん」 火竜公女「大事な人がいるのなら、大事と仰いなさいませ。 勇者殿のお力があれば、幾百、幾千の女子の 命と安全を守ることが出来まする。 しかし、それでは、あなた様に限っては、 真心の証とはなりませぬ。 そのことはお解りになったでありましょう? なにも妾が、そこまで難しいことを 申しておるわけでもありますまい? 魔王殿は口を濁されておられましたが、 やはり不安でありましょう」 勇者「……」 火竜公女「妾が理不尽を云っておるかや?」 勇者「いや、そんなことはない……と思う」 火竜公女「では、云うべきです」 勇者「……」 火竜公女「……」 711 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 13 35 12.85 ID W1zfwn6P 勇者「あー」 火竜公女「……」 勇者「……やっぱ、おれ、ダメダメだから。 人と魔族を殺すこと。田畑を焼くこと。 大地を砕いて、街を灰燼にかえすこと。 そのくらいじゃん、俺が出来るのって。 そういうやつって、なんかさ。 まぶしいっていうか。ダメっていうかさ。 よく分かんないけど。 ……幸せになっちゃいけない気がする。 うまく言えないけど」 火竜公女「臆病者」 勇者「……」 火竜公女「そんな気持ちで剣を取るのなら、 あなたはいつかきっと敗れまする。 そんなに強いことがいやですかや。 血に濡れた両手が厭わしいですかや。 好いた女子が由とするなら、それを持って由となさりませ。 自らの能力を押さえてなんとしますか」 勇者「……」 火竜公女「護るというのは敵を倒せば終わりですか。 勇者という名前は、そのように軽きものですかや」 712 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/25(金) 13 37 05.02 ID W1zfwn6P パシンッ! 勇者「っ!」 火竜公女「これは道違えたる妾からの最後の餞別」 勇者「……うん」 火竜公女「妾は幸せになりまする。妾は美しくなりまする。 あとで……我が君と最初に呼んだあなた様が振り向くたびに 後悔と妬心ではち切れそうになるほどに。 よろしいですかや? これは貸しでござりまする。 勇者殿は妾に大きな借りがございまする。 その返済は、貴方が幸せになることでしか返せぬ事 それをお忘れ無きように」 勇者「……」 火竜公女「……帰りまする」 さくっ 勇者「……」 さくっ、さくっ 勇者「……」 さくっ、さくっ、さくっ ページトップへ <前7-3へ|次7-5へ>
https://w.atwiki.jp/maoyu/pages/390.html
縁日とは、東方風の祭りで、色々無料で、安いけれど珍しい食い物をだしたり、夜に明かりをとも灯したり、囃子とか言う音楽を流する祭り。 3年目晩夏、東の砦将の提案で、連絡議会開催中の開門都市の大通りで開かれた。人族と魔族の交流が目的。売上金の半分は開門都市の自治委員会から拠出されたため、全品半額であった。 初出 2-4 2スレ968レス 2009/09/08(火) 15 02 11.70 勇者「いや、今回は街の大通りで縁日をやるっていうから」 行事
https://w.atwiki.jp/urapan/pages/39.html
砦 〜人は城。人は石垣。〜 彼女が全くできない、できそうにない、又は彼女をつくる気がない状態の人のことを、「あいつ、固い砦を築いてるよ。」などのようにして表現すること。 かつての、25期・砦四人衆(え、今も?)↓ 北の砦(君主・R−ダー in石神井公園) 西の砦(君主・Kうた in吉祥寺) 東の砦(君主・FっC in阿佐ヶ谷) 南の砦(君主・Sゆうさん in戸塚) .....で、当時、繰り広げられた会話の一例↓ ・「おい!南が陥落したらしいぜ!」 「マジかよ!?」 ・「北はいつでも落ちそうな気がするんだけどな〜」 ・「東と西は強固だよなww」 以上の会話で、意味がすっきり伝わってくる方は、25期の素質があります。
https://w.atwiki.jp/maoyu/pages/44.html
<前6-7へ|次7-2へ> 魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」7-1 182 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 14 11 37.45 ID OGIpmW2P ――魔王城、深部、魔王の居住空間 魔王「けふっ。けふっ。わたしを病人扱いするな」 メイド長「そんなこといたって、まおー様」 勇者「そうだぞ。お前病人だろうが」 魔王「これは怪我だ。病気ではない」 メイド長「はいはい。それは怪我ですけれどね」 女騎士「少しは大人しく、治癒の法術をうけろ」 勇者「そうだそうだ魔王。反省しろ!」 女騎士「お前もだ、勇者!」 勇者「痛っ。ったったった!?」 メイド長「あらあら、まぁまぁ」 女騎士「勇者だから死ななかったようなものを。 お前だって魔王に負けず劣らずの重傷だ」 魔王「ふっふっふ。のたうち回るが良い」 勇者「ったく。こんなの舐めておけば平気なんだよ。」 女騎士「治癒の通りが悪いな……」 勇者「密度の高い魔術だからな。このクラスになると ダメージと呪いとを一緒に撃ち込まれたようなもんだ。 回復能力や免疫系まで狂わされる」 女騎士「毎回思うが、勇者の身体は人間離れしているぞ」 183 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 14 13 52.31 ID OGIpmW2P 魔王「そう……なのか?」 勇者「元気だからな、俺」 女騎士「風邪を引かない種類の元気さだ」 ペシンッ! 勇者「~っ!」 女騎士「毎回心配で寿命をすり減らす身にもなれ」 魔王「ふふっ。勇者も包帯でぐるぐるまきだ」 勇者「何で嬉しそうなんだよ」 メイド長「おそろいだからでしょう? 単純ですこと」 魔王「ちがうぞっ! わたしはただ単純に、勇者と境遇が似通うことにより、 しばらく親交を深めることが出来るという現在の状況に 密やかな愉悦を感じているだけだ」 メイド長「同じ事でしょうに」 女騎士「何か忘れているようだが、二人を救ったのも わたしの祈祷のお陰だぞ?」 魔王「感謝しておる。女騎士」 勇者「おお。さんきゅな」 女騎士「二人の治療のために、わたしもしばらくは 魔王城へとやっかいになる」 勇者「え?」 女騎士「仕方あるまい。まだまだ予後が不安定だ」 184 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 14 15 07.78 ID OGIpmW2P メイド長「そうですよ。まおー様。 いくらなんでも今回は無茶が過ぎましたよ。 死んだふりするために治癒術を一時的にせよ止めるなんて!」 魔王「すまん……」 勇者「まぁ、今度からそう言う無茶は俺に任せておけ」 メイド長「勇者様もですっ」 女騎士「そうだぞっ!!」 魔王「あやつは……強かったのか?」 勇者「うん。まぁまぁかな」 女騎士(勇者……手加減していたのか? 体調でも悪かったか。 確かにすさまじい強さだったが、 勇者の本気ってあんなものだったか?) 魔王「こまったな」 勇者「どうした?」 魔王「これでは、勇者をもふもふ出来ないぞ」 勇者「そうな。まぁしかたないだろ」 女騎士「わたしは出来る」もふもふもふ 魔王「なんだと!?」 メイド長「あらあら。そんな事わたしだって出来ますよ」 もふもぷぱにょぱにょ 魔王「メイド長までっ! なんていうことをっ!」じたじた 勇者「ちょっ! えっと、すんませんすんませんっ。 うう、なんか良い匂いするしっ!?」 魔王「は、はなれろーっ!!」 メイド長「ふふふふっ。多少煽った方が 魔王様は早く完治しそうですからね」もふもふ 193 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 14 44 25.10 ID OGIpmW2P ――聖王国南部の開拓地、光の子の村 ざわざわ……。 開拓民「何が始まるんだ?」 痩せた農奴「しらねぇ」 小柄な平民「俺たちは、村の司祭様にここにいけって」 少年農民「ここに行けば、とりあえず一日二回は パンを食べさせてもらえるって聞いたのです」 開拓民「それは俺も聞いた」 痩せた農奴「ああ。俺はもう、 パンさえ食えるなら、なんでも良いよ」 小柄な平民「おれもだ。何で麦を育てている俺たちが、 パンの一つさえ食えないんだ……」 少年農民「ぼくも。僕が家にいたら、小さな二人の妹が、 飢えて死んでしまうんです」 開拓民「……」 痩せた農奴「……今年の春は、麦はよく実ったけれど、 値段はちっとも下がる気配がない」 小柄な平民「俺たちは、あれを食べていたよ」 少年農民「……あれ?」 開拓民「ああ……」 痩せた農奴「“悪魔の林檎”だよ」 小柄な平民 こくり 少年農民「だってあれは!」 194 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 14 46 05.98 ID OGIpmW2P 開拓民「……仕方ないじゃないか」 痩せた農奴「いくら異端の食べ物だって、 俺たちはこのままじゃ死んでしまうって云うところまで 追い詰められていたんだ。 俺の村、いや俺の国で、一度もあれを食べていない農民なんて 居ないのじゃないかと思うよ」 小柄な平民「そうだよな……」 少年農民「だ、大丈夫なんですか?」 開拓民「なにが?」 少年農民「だって、異端なんですよ? 身体に悪魔の印が浮かび出るとか、 手が山羊の蹄に変わるとか、狂い死にするとか」 痩せた農奴「俺の村ではそんなことはなかった」 小柄な平民「こっちでもだ……」 少年農民 ごきゅり 開拓民「馬鈴薯、美味かったよな……」 痩せた農奴「ああ、たっぷりの湯で茹でて、バターをかけてな」 小柄な平民「薄っぺらい土壁の中で食ったけれど、甘かった」 少年農民「そんな……」 ぐぅぅぅっ 開拓民「仕方ないさ。俺たちは結局」 痩せた農奴「ああ、上の云うことに従うしかないんだ」 小柄な平民「そうでなきゃ、なけなしの財産も 仕事も食い物も、根こそぎ取られちまう」 195 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 14 47 14.12 ID OGIpmW2P ざわざわ……。 開拓民「あ」 司教「……静まりなさい」 痩せた農奴「司教様だ……」 小柄な平民「初めてみた」 司教「この地に集った聖なる光の精霊の信徒に祝福を」 がばっ、がばっ、がばっ 少年農民「し、司教様だっ! 司教様に祝福して頂いたっ!」 開拓民「なんてことだ。俺たちみたいな農民に司教さまがっ」 痩せた農奴「ありがてぇ、ありがてぇ」ぼろぼろ しーん 司教「汝ら光の子がこの地に集められたのは、 来るべき邪悪との戦いに備えるため。 この村には畑があり、汝らを養うだけの 食糧が備えられておる。 また、汝ら悪魔との戦いを指導する教え手もある。 汝らはこれから半年の間、この新しい村で生活し 光の精霊の子としての奉仕をせねばならぬ」 開拓民「え……戦い?」 痩せた農奴「俺たちには、そんなことは無理だ」 小柄な平民「でも司教さまの言葉なんだし……」 がやがやがや……。 196 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 14 48 46.76 ID OGIpmW2P 司教「安心するがいい! 光の精霊の子らよ!」 しーん 司教「光の精霊は、汝ら光の子を嘉したもうっ。 慈悲深き彼の精霊は、決して我が子を見捨てることはない。 汝らには、汝らを脅かす魔族を倒す武器をお与えになった」 開拓民「……?」 痩せた農奴「武器?」 ガチャ、ガチャリ 司教「その鉄の杖を持つがよい。 この鉄の杖こそ光の精霊が魔を討つためにお与えになった マスケットなる武器。 この鉄の杖さえあれば、 汝らであっても歴戦の古強者がごとく、 戦場をかけることが出来るのだ。――みせよっ!」 精鋭銃兵「はっ!」 ちゃきっ! ジリジリっ! ダンッ!! バキンッ!! 小柄な平民「何だ、あれはっ!?」 少年農民「離れた鎧が!」 司教「この武器は50歩離れた鉄の鎧さえ打ち抜く力がある。 この武器を使えば、相手の爪も牙も、剣も槍も届かない 距離から敵を打ち倒すことが出来るのだ! 汝らはこの武器に習熟することにより、この大陸随一の 精兵となるであろうっ!!」 197 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 14 50 58.11 ID OGIpmW2P 司教「そして聞くが良い、精霊の子らよ! 祝福の使徒よ。 大主教殿が今回、汝らに助けを求められたわけを」 痩せた農奴「だっ、大主教様っ!?」 小柄な平民「た、助けってどういうことだ?」 ざわざわ……。 司教「汝らも知るであろう、 南の果て世界の凍える凍土に作られた監獄を! 魔界と呼ばれる地は精霊に定められた幽閉の檻でもあるのだ。 知るが良い。そこは教会の言葉に逆らう背教者が送られる 凍てつく極寒の流刑地。 魔族とはかつて精霊に逆らった罪人の裔なのだ」 開拓民「教会で何度も教えてもらってる話だ……」 少年農民「魔族はそれゆえ残虐な心しか持っていないのです」 司教「しかし、事もあろうにその背教者達は われらが光の子の宝を盗み、 今の今まで謀り続けてきたのだっ!」 小柄な平民「へ?」 司教「それは、光の精霊様の聖なる遺骸。つまりは聖骸である! やつら教えに背いた者どもめらは、光の信徒の希望、復活の象徴 聖骸を貶め辱めんがために、我らからそれを奪い、 押し隠してきたのだっ!」 開拓民たち「っ!?」「せ、精霊様をっ!?」「まさかっ」 司教「大主教様は御自ら仰られた! このような過ちを 我らは見過ごすわけには行かない。 たとえ自らの命を掛けてであろうと聖骸を奪還すると! これは聖なる任務であるっ! 光の子らよ! マスケットを持ち立ち上がれっ!! 光の信徒の力を今こそ結集させるのだっ!!!」 204 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 15 21 24.70 ID OGIpmW2P ――――鉄の国、新興の開拓村 巡回軍曹「さ、ここだ」 難民一家の父「ここですか!」 難民一家の母「寒いですね……」ぶるぶるっ 難民一家の娘「でも、ひろいよぉ! 向こうの丘までずーっと道がまっすぐだよ!」 巡回軍曹「寒いのは仕方ない。南の国だからな。 がんばって働けば汗も噴き出すさ! さぁさ、畑の方にいこう。誰かいるはずだ」 難民一家の父「はい!」 ぎぃっ、ぎぃっ ざっざっざっざ 難民一家の父「さぁ、馬よ。ボロ馬車だが頑張っておくれ。 もう少しでたどり着くからね」 ぎぃっ、ぎぃっ 開拓民兵娘「おーうい! 軍曹さんじゃないかぁ」 巡回軍曹「おーうい! 調子はどうだい?」 開拓民兵「ぼちぼちですよ。 今週中にも、この丘の根っこは全部掘り返せる」 開拓民兵娘「そうすれば、一面の馬鈴薯畑にできるよ」 巡回軍曹「そうかそうか! 今日はまた新しい家族を案内してきたんだよ」 難民一家の父「川蝉の領地から来ました、よろしくお願いします 難民一家の母 ぺこり 難民一家の娘「よろしくなの!」 205 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 15 22 54.75 ID OGIpmW2P 開拓民兵「へぇ! 川蝉! あんな遠くからよくぞ」 開拓民兵娘「ねぇねぇ、奥さんかしら? 顔が真っ青だよ」 難民一家の母「いえ、ちょっと寒くて……」 巡回軍曹「ああ。調子が悪そうだから わたしが付き添って、ここまで送り届けに来たんだよ」 難民一家の父「出来れば、妻を休ませてやりたいんです。 わたしが二人分働きますから、どうかお願いしますっ」 難民一家の母「そんな、あなた……」 開拓民兵「そうだなぁ、まずは集会所にでも」 開拓民兵娘「ったく! なに云ってるのよ! 見なさいよ。 ねぇ、奥さん。もしかして……お子様が生まれるの?」 巡回軍曹「え?」 難民一家の父「そっ、そうなのかおまえ!?」 難民一家の母「ええ……。はっきりとはしないけれど、 先月あたりからずっと。そんな気もするの、あなた……」 難民一家の娘「えー!? お母さん、ほんとっ!?」 開拓民兵娘「ほら見なさい! そんな時にこんな寒いところに 立たせておくなんてとんでもない! ましてや集会所だなんて」 開拓民兵「そ、そういうもんなのか?」 開拓民兵娘「だからあんたはいつまでたっても 嫁の一人も来ないのよっ!」 巡回軍曹「ど、どうすればいいんだ!?」おろおろ 開拓民兵「そうだよ大変じゃないかっ」おろおろ 206 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 15 24 54.93 ID OGIpmW2P 開拓民兵娘「これだから男なんてのは!」 開拓民兵「お前だって子供なんて産んだこともないくせにっ!」 開拓民兵娘「女には女の口伝、ってもんがあるのっ! ほら、奥様。まずこの上っ張りを羽織ってくださいな」 難民一家の母「そんな。……こんなにちゃんとしたものを お借りするわけにはいきませんっ」 開拓民兵娘「これだって、軍の支給品なんだよ。 大丈夫、ちょっと貸すだけ。羊の毛だから暖かいよ?」 難民一家の父「ありがとうございます……」 開拓民兵娘「ね。村長の所までひとっ走りしてきてよ。 このご家族は、わたしの家の隣を使わせて貰おう。 薪と泥炭を運んでおくんだ」 開拓民兵「そ、そうだな! 俺はひとっ走り行ってくるよ」 開拓民兵娘「頼んだからね! それから、着るものと 食べる物もね! 村長の奥さんにも来てもらうんだよっ」 巡回軍曹「任せても大丈夫かな」 開拓民兵娘「もちろん! さぁ、行きましょう。 あんまり立派じゃないし小さいけれど、家があるんですよ。 まとめて建てたばっかりだから、 どれも同じ形で迷ってしまうけれど、 何だったら後で何か植えて目印にすればいいです」 難民一家の父「い、いいんですか? こんなに良くして頂いて」 難民一家の母 こくこく 開拓民兵娘「何言ってるんですか。これから沢山沢山、 この国の人も南の人もみんながおなかいっぱいになるまで ここで馬鈴薯を作ってもらう仲間じゃないですか」にこっ 巡回軍曹「鉄の国へようこそ! 開拓兵の一家の皆さん。 我が国も、我が軍も、あなたたちを歓迎しますよっ!」 211 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 15 47 59.24 ID OGIpmW2P ――――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、仮設会議場 銀虎公「さて」 巨人伯「……集まった」 火竜大公「お集まりの族長方、ご足労に感謝する。 さて魔王どのから一時でもその全権を預かった以上、 その信頼に応えるためにも、一つの失敗もなく やり遂げなければならん。そうですな、黒騎士殿」 勇者「その件についてだが、 俺は少数氏族の権利について以外はなるべく 他の族長達の判断を優先し尊重するように釘を刺されている。 いってみれば外様だしな」 妖精女王「そのようなことはありませぬが」 紋様の長「魔界の、いや地下世界のことは我らで面倒を見よ、 と云う魔王殿の意志であろうな」 鬼呼族の姫巫女「うむ」 銀虎公「頼られて撥ね除けるは武人の名折れぞ」 碧鋼大将「今日は、何の話を?」 東の砦将「ふむ」 火竜大公「まず、各々の氏族の中のことは 今までどおり氏族の中で決めてゆけばよいと思う。 この会議の目的はあくまで今まで魔王殿が一人でやられて いたことの代行。つまり、我らが魔族および地下世界全てに 関わる問題の解決や、氏族間の利害、意見調整。 そして一つの氏族では解決できないような問題での協力の あり方についてであろう」 212 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 15 49 33.84 ID OGIpmW2P 妖精女王「ええ、賛成です」 紋様の長「異議はない」 鬼呼族の姫巫女「妥当であろうな」 銀虎公「と、なると」 東の砦将「目下の問題は、蒼魔族についてですな」 巨人伯「……そうだ」 火竜大公「そのとおりだ。蒼魔族はすでにこの会議からも離れ、 独自行動に移ったようだ。 物見の報せに寄れば、蒼魔族の領地へと軍を返すために、 すさまじい速度で進んでいるらしい」 妖精女王「もし仮に蒼魔族が魔族全体を敵に回し 暴れ回るようなことがあれば、 我ら妖精族などはひとたまりもありません」 鬼呼族の姫巫女「われら鬼呼族は抗し得るだろうが それでも甚大な被害は免れ得ぬであろう」 銀虎公「それは獣人族も同じ事」 勇者「いや、まってくれ」 巨人伯「……なぜ? ……黒騎士?」 火竜大公「何かご意見でも?」 勇者「俺は蒼魔の新王と戦った。あいつの力は半端じゃぁ、無い。 いまの蒼魔族は強いぞ。おそらく想像以上に、だ」 紋様の長「ふむ……。先の乱世よりも その力は上がったと見るべき、ということでしょうな」 213 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 15 50 33.26 ID OGIpmW2P 鬼呼族の姫巫女「黒騎士殿が云われるのならば、そうなのだろう」 火竜大公「で、あれば、蒼魔族については 一層この会議で取り扱わなければならぬ問題と云えよう」 銀虎公「そうだな」 碧鋼大将「他にも問題はあるでしょうが、 目下もっとも急を要するのはこの蒼魔族の問題でしょう」 巨人伯 こくり 紋様の長「ふむ、まずは問題を整理してみます、か」 鬼呼族の姫巫女「それはよい」 紋様の長「ひとつ。蒼魔族は新しい王を迎えた。 ひとつ、その新王、および彼に率いられた軍は 魔王に向かって弓を引き、忽鄰塔を離脱した。 ひとつ、その新王、および彼に率いられた軍は 現在、彼らが領土に向かっている。 ひとつ、その数は約1万数千。 ひとつ、蒼魔族の新王は魔王候補者の刻印を持ち その戦闘能力は極めて高い」 鬼呼族の姫巫女「そのような所じゃな」 碧鋼大将「きわめて的確な要約だ」 火竜大公「と、なると問題は」 妖精女王「蒼魔族全体の意志、ですね」 銀虎公「は? 蒼魔族は裏切り者だろうが?」 214 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 15 52 21.41 ID OGIpmW2P 妖精女王「とはかぎりません。特に蒼魔族新王の即位は この忽鄰塔中に行われたきわめて異例かつ、急いだものでした。 今考えると、何らかの陰謀がなかったとも云えないでしょう?」 紋様の長「うむ」 鬼呼族の姫巫女「ことによると、蒼魔族の本国は、 新王が魔王を裏切ったことをまったく知らぬ可能性もある」 銀虎公「じゃぁ、いっそ蒼魔族の軍が、 奴らの都に着く前に攻撃しちまえばどうだ? そうすれば、もし蒼魔族の都が白でも黒でも問題はない。 白なら敵が減るし、黒でも敵軍の合流を避けられる」 碧鋼大将「それは名案だが、蒼魔族の行軍速度が速すぎる。 今から追いかけてはとても間に合わぬ」 巨人伯「……白か……黒、か……」 火竜大公「それは、わしには明らかなように思われるな」 紋様の長「どういうことです? ご老公」 火竜大公「この行軍速度が語ってくれているであろう。 つまり、蒼魔の軍は我らには是が非でも 追いつかれたくはないのだ。 戦闘になれば自らの領土から援軍が来るということならば ここまでがむしゃらに自らの都に急ぐ必要はあるまい。 つまり、きゃつらも己の都を掌握は出来ていないのだ」 妖精女王「一理ありますね」 215 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 15 54 04.24 ID OGIpmW2P 鬼呼族の姫巫女「と、なると我らが魔族全軍をもって 蒼魔族の都を包囲するのも逆効果と云えるでしょうね」 銀虎公「なんでぇ。だめなのか?」 鬼呼族の姫巫女「我らが魔族全軍を率いるとなると、 その数は5万を超えるだろう。 そこまでの数をそろえてしまうと、蒼魔の一族には絶望が広がる。 魔王に反逆をしたのが新王だろうと何だろうと、 すでに自分たちは魔界を裏切ってしまったのだ、とな。 となると、これは自暴自棄というか、 もはや新王に協力するしかないであろう。 蒼魔族は、全て袋の中に猛り狂った狼となり、血を見ずには済まぬ」 銀虎公「面倒くさいことになって来やがったな……」 碧鋼大将「そもそも蒼魔族は厳格な身分制度を持つ 軍政を引く一族だ。このような事態もあり得る展開だった」 巨人伯「ふぅ……む……」 東の砦将(また一方、最悪の場合、 蒼魔の新王が軍人以外の自らの氏族の命さえ人質に取る、 などという展開もありえるってこったな。 通常でならばとうてい想像さえ出来ぬような卑劣な手段も、 毒殺、暗殺さえも決意した連中だ。 追い詰めたならばあり得るかも知れねぇ。 こいつはショックすぎて魔族の皆様には言えねぇが……) 火竜大公「まず、蒼魔の軍が自らの領地に帰り着くのは 避けられまい。これはすでに過ぎたこととしよう」 妖精女王「はい」 紋様の長「そうですね」 221 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 16 17 02.35 ID OGIpmW2P 火竜大公「そのうえで。で、あればこそ、 蒼魔の軍から目を離してはならぬ。今もっとも恐ろしく こちらがして欲しくないことは、蒼魔の軍が蛇のように、 この魔界の中を動き回り、哀れな犠牲者に噛みつくことだ」 鬼呼族の姫巫女「そうだな」 火竜大公「蒼魔一族の領域の外には偵察を張り巡らせ、 蒼魔の軍の動きをいち早く監視する必要があるだろう」 妖精女王「では、その役目は我ら妖精の一族が受けましょう。 我らは小さく力も弱いですが、夜の闇をも見通し、 小さな音も聞き逃しません」 紋様の長「もし妖精の一族が何かを見つけたのなら、 我ら人魔が一族がその情報をここまでとどけましょう。 人魔一族は氏族の中でもっとも数が多い。 古来よりこの魔界の中に伝令の“駅”をつくり 換え馬による情報のやりとりをしてきました」 火竜大公「各々がた宜しいか?」 東の砦長 こくり 紋様の長 こくり 火竜大公「では、この件は妖精の一族と、 人魔の一族に頼むとしよう。 手助けできることあれば遠慮無く申し出て欲しい」 妖精女王「承りました」 紋様の長「お任せを」 222 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 16 18 27.41 ID OGIpmW2P 火竜大公「さて、一方蒼魔族が軍を発してきた場合」 銀虎公「それも決めておかなければ始まらねぇな」 碧鋼大将「どうする?」 銀虎公「先鋒は俺たち獣牙だ」 巨人伯「……むぅ」 銀虎公「俺たちは今回の件では大きな不名誉をおった。 是非先陣を務めさせて頂きたい」 火竜大公「よろしいか? 姫巫女どの」 鬼呼族の姫巫女「ふっ。……お見通しだな。 よかろう、先陣はゆずるとしよう。 しかし、蒼魔と一番長い国境を接しているのは、 我らが鬼呼族の地。ゆえに我らが第二陣だ。 また、蒼魔族が我らの地に突っかけてきたら 先陣を保証することは出来ぬ。その時は諦めてくれ」 銀虎公「承知した」 火竜大公「獣人、鬼呼の二氏族ならばおさおさひけは取るまいが 蒼魔族はなにやら得体が知れぬ。十分に気を引き締めて かかって欲しく思う」 紋様の長「心得た」 銀虎公「任せるが良い」 火竜大公「さて、我ら竜族も相応の義務を果たさねばなるまい。 お役目をお願いした四氏族には、我ら竜族から食料や 必需品を運ばせよう」 銀虎公「かたじけないなっ!」 224 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 16 19 59.10 ID OGIpmW2P 紋様の長「そのようなところ、ですか」 東の砦長「もう2点お願いしたいことがある」 火竜大公「なんだ? 衛門の族長よ」 東の砦長「そいつは流民のことだ。 いっくら蒼魔族が他と交わらない、 内部統制で上意下達の氏族だと云ったところで例外はあるだろう。 あちこちの街に少数暮らしている連中がいるはずだ。 そいつらの保護をお願いしたい」 銀虎公「何故そのような細々としたことを。 たいした人数でもないではないか。 形勢に影響を与えるとも思わん」 東の砦長「戦に関しちゃその通り。 だが、こいつは戦が終わった後のためだ。 俺たちの方が蒼魔族をよってたかって滅ぼしたのでは“無い” ってことを、誰かに証人になって貰わなきゃ困る」 巨人伯「……ふむ」 東の砦長「今回の戦にしたってそうだ。 この世界から蒼魔族を一人残らず、女子供も皆殺しにするっ ていうのならそんな気を遣わないでも済むが、そうはいくまい? 俺たちは皆殺しとは行かないが、そんな無法は通らないからな。 だが残された蒼魔族は恨むぜ? 事と次第によっちゃぁ、 “何もしていない蒼魔族を恐れた他の氏族が よってたかって蒼魔族を攻撃した”って子々孫々まで語り継ぐ」 鬼呼族の姫巫女「そのようなことも、無いとはいえんな」 225 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 16 22 35.33 ID OGIpmW2P 勇者(……こいつの統治センスってのは、切れ味あるな) 東の砦長「だから、そうではないってあたりを 今から意識しておかなきゃまずい。 蒼魔の一族だけなら、全面戦争になれば勝てない 相手じゃないのだろう? だったらなおさらだ。 なーに、面倒なことになりそうだったらまとめて開門都市に 送ってくれてもよい。 あそこは氏族も人種もごちゃごちゃだから、 迫害も大きくはないさ」 碧鋼大将 こくり 火竜大公「して、もう一点は?」 東の砦長「こちらの方が、ある意味重要でな。領民の安堵だ」 妖精女王「ふむ」 東の砦長「これも今云った話と関係あるのだろうが、 いったい今起きていることは何なんだ? 仲間内の利権沙汰のごたごたなのか、 それとも戦争なのか、小競り合いなのか。 どうすればこの状況は解決するんだ? ってな話だよ」 銀虎公「そもそも蒼魔族が不意の裏切りで 我らを攻撃してきたことから端を発したのだ。 この戦はその間違いを糾弾するのが目的であり、 そのようなことは自明であろうがっ」 碧鋼大将「そのとおり、そのような問い自体、 我らに向けられるべきではない」 鬼呼族の姫巫女「しかし、それでは領民の不安はどうする。 蒼魔族の責任を問う。それはそれで正論なれど、 我らが領民のその疑問に、蒼魔族が答えてくれるはずもない」 226 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 16 24 43.40 ID OGIpmW2P 東の砦長「そう言うことだ」 銀虎公「……っ」 巨人伯「領民に……大きな声で……おしえる」 火竜大公「ふむ」 東の砦長「俺もそれが必要だと思うぜ。 今回の戦は、忽鄰塔中に乱心した蒼魔族の新王が父親を殺害し 一族の軍を率いて他の氏族を攻撃した、ってな」 銀虎公「父を殺害!? それは本当なのかっ!?」 東の砦長「いや、事実は知らないが。そのほうがいいだろう?」 火竜大公「……そうだな」 妖精女王「結果的に間違った推測では無いと思います」 紋様の長「それを領民に語って聞かせる、と云うのか」 鬼呼族の姫巫女「面白い考えだ」 東の砦長「俺たちの街は今必死で畑も作っているが、 度重なる戦で神殿も農地も壊されて、 すっかり疲れ果てちまっていたんだ。 戦も辛いが、民にとって一番辛いのは 何をやっているか判らないことだというな。 自分たちの国や軍が何をやっているか判らないと、 自分たち民では何の手も打てない気分がして、 自分が無力で取るに足りないちっぽけば存在に過ぎないと いう気分で、だんだんと腐ってゆく。 こいつは町も人も産業も腐らせるぜ? 何せ心の根っこが腐ってゆくんだからな。 そうなったら、街は酷い有様になる」 227 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 16 27 01.55 ID OGIpmW2P 鬼呼族の姫巫女「……」 勇者「……」 東の砦長「そいつをどうにかするには、 何が起きたからこうなって、この状況はどれくらい酷くて、 またどれくらい希望があって、どういう風になれば 解決するんだってことを、教えてやらなけりゃならない。 まぁ、事が戦だ、全部教えるってわけにも 全部真実って訳にもいくまいが……」 銀虎公「ふむ、つまりはこういう事だろう? 全ての民も戦場に出ないだけの戦士だと。 将軍ならば士気を鼓舞するのもその手腕である、と」 東の砦長「そうそう、そういうことだよ。虎の旦那」 銀虎公「だが、ふぅむ」 銀虎公「そうとなると、いよいよ、我らが蒼魔族との一戦に どのような決着を望んでいるのかが重要になるだろう」 妖精女王「……決着」 紋様の長「そうだな。蒼魔族が自分の領地から 出てきたところを叩く。 それだけでは、永遠に決着などつかぬ。 何も攻め込んで征服しようと誘うわけではないが、 最終的にはどのようになればいいのか、と云う話にも通じる」 鬼呼族の姫巫女「そうだな」 (あるいは魔王殿は、我らが望む未来の我らを 我ら自身に考えさせたかったのであろうか……) 228 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 16 29 01.42 ID OGIpmW2P 東の砦長「……それは俺には難しいな。 新参者の俺には、蒼魔族との戦が、 様々な氏族にどのような利害関係があるのか 感情的にはどのようなもつれがあるのかは判らねぇ」 鬼呼族の姫巫女「我ら鬼呼族は先の乱世において 蒼魔族と長い長い戦闘を続けてきた。 我ら氏族には蒼魔族とに対する恨み辛みが根付いている。 だがそれは領土や支配権に関わる問題で、 当時の魔界では日常的に起きていた抗争なのだ」 銀虎公「俺たちも人魔族との争いが絶えなかった」 紋様の長「当時は大小様々な氏族が入り乱れ、 この会議の席には来ていない、中氏族や戦闘氏族を 如何に取り入れるかと云う謀略も日常でした」 勇者「そうだったのか……」 火竜大公「ふむぅ」 巨人伯「まずは、知らせる……」 火竜大公「そうだのぅ。まずは、先のこと。 “蒼魔族の新王が裏切り、忽鄰塔を襲った”と云う事実を 領民に告げるとしよう。そして戦に怯える領民のために 蒼魔族は領地へと戻ったために、当面みんなが住まう場所は 安全であると云うことを伝えるのだな。 念のために警備兵の増強なども進めてゆくという、 いわば根回しを領民にするにはよい機会だろう」 紋様の長「妥当な対応でしょうな」 鬼呼族の姫巫女「戦の決着については、それぞれの氏族が よく考えて、その考えを持ち寄る必要がありますね」 230 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 16 30 28.63 ID OGIpmW2P 銀虎公「では、当面の蒼魔族への対応はそのようで」 東の砦長「おう」 銀虎公「さっそく領地へと戻るとするか」 碧鋼大将「ふむ……。衛門の長どの、後で時間を。 商取引に関する話がある」 東の砦長「判った」 巨人伯「……かえって、声の大きいモノに、噂を広めさせる」 火竜大公「それで宜しいか? 黒騎士殿」 勇者「おお。見事にまとまったな。 大公殿、これからもよろしくお願いする」 火竜大公「なんのなんの! はぁっはっはっは」 紋様の長「そういえば、魔王殿の様子は?」 勇者「ベッドからでる事は出来ないが、 口先だけは元気になってきているよ」 東の砦長「そいつぁ、良かった」 勇者「今日の会議の結果も、早速伝えよう」 銀虎公「お願いいたす、黒騎士殿」 火竜大公「では、今回の会議はこれで終了とする。 何もなければ次の会議は40日の後、ということに。 蒼魔の動きは途切れず報告を入れ合うとしよう」 一同「心得ました」 233 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 16 54 09.68 ID OGIpmW2P ――魔王城、深部、魔王の居住空間 女騎士「ほら。口を開けて」 魔王「……」 女騎士「何で嫌そうな顔?」 魔王「このシーンは、わたしと勇者が行うのが常識だろうに……」 女騎士「勇者は会議に出たり忙しいの」 魔王「だからといって……」 女騎士「あーん」 魔王「くっ」 女騎士「……あーん」 魔王「ううう。……」ぱくっ 女騎士「それでよし」 魔王「……なんだか屈辱的だ」 女騎士「友達だろうに。気にする方がおかしい」 魔王「そうか? そういうものなのか?」 女騎士「うん、そうだ」 魔王「女騎士は……。わたしやメイド姉妹と話す時は 言葉が少しだけ優しいな」 女騎士「……そうかな?」 魔王「うん、そうだ」 234 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 16 55 15.98 ID OGIpmW2P 女騎士「これでも一応軍を率いていたりするからな。 男に舐められないようにしようとすると、 やっぱり言葉遣いもそうなってしまうんだろうな」 魔王「そういうことか」 女騎士「……やはり女らしくないと好かれないよな」 魔王「そんなことはない。女騎士は女らしいと思うぞ」 女騎士「……」ちらっ 魔王「?」 女騎士「魔王が言っても説得力がない」 魔王「む。そう言うことではない。わたしは……その。 確かにここのサイズは大きいが、包容力とか、母性とか、 細やかな気遣いとか……色気とかにかけていると よく指摘されるのだ。女らしさでは、女騎士に大きく劣る」 女騎士「そんなことはないと思うけれど」 魔王「そもそも、女らしさとはどういうモノなのかよく判らぬ」 女騎士「うん」 魔王「書物にあるらしい耳かきや添い寝なども試してみたが 勇者に大きな感銘を与えたようにも思えぬ。 ……そもそもちょっと隙を見せると、すぐに襲いかかってきて 場面は暗転、結ばれるのが男女ではなかったのか」 女騎士「わたしも相当に偏っている自覚があるけど 魔王はその比じゃないな」 魔王「ふむぅ……」 235 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 16 57 33.41 ID OGIpmW2P 女騎士「……よく判らないけど」 魔王「うん」 女騎士「わたし達は、ある側面では勇者に避けられてるんだ」 魔王「……」 女騎士「……」 魔王「この話は、止めよう」 女騎士「うん」 魔王「ああ。メイド妹の料理が懐かしいな」 女騎士「そうだな。もちろんこの城の料理だって最高だが」 魔王「そうだが、メイド妹の料理には、 最高の料理にも無いような、特別な味わいを感じるのだ」 女騎士「ああ。その気分は判るぞ」 魔王「パイが食べたいな」 女騎士「あははははっ。気持ちはわかる。 けど、いまはこれだ。ほら、あーん」魔王「むぅ……」 女騎士「ふふふっ」 魔王「やはり屈辱的だ」 女騎士「健康になってから復讐すればいいさ」 魔王「もちろんだ。このお礼は勇者にする」 女騎士「え?」 魔王「女騎士にはそれが一番よく効くって判っているからな!」 242 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/23(水) 17 14 13.25 ID OGIpmW2P ――聖王国、国境沿いの貿易の街 小麦の卸人「小麦! 小麦~! 大麦もあるよ、今朝入荷! 早いもん勝ちだ! ふっくらパンにも、オートミールにもぴったりだ! 一袋、新金貨7枚だ」 太った市民「旧金貨じゃ駄目なのかい?」 小麦の卸人「だめだめ。そんな金貨は聖王国じゃもう使えないよ。 そんなものが使えるのは、南の蛮族の国だけだ」 旅の商人「まだまだ市中には旧金貨が残っているというのに」 小麦の卸人「市の宿舎に行くんだね。そこで旧金貨と 新金貨を取り替えてくれるよ」 太った市民「だが、取り替えると行ったって旧金貨を350枚 持っていっても新金貨を100枚だけじゃないか……」 旅の商人「タイミングを逃したからさ」 小麦の卸人「さぁさ、おろしたての小麦! 小麦はどうだい?」 太った市民「……くそっ。そんな小麦、金持ち以外 食えるわけが無いじゃないかっ」 旅の商人「まったくだ」 がやがや……がやがや…… 酒場の店員「そう言えば聞いたことがあるかい? あの噂を」 太った市民「噂?」 243 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 17 15 58.88 ID OGIpmW2P 旅の商人「ああ、光の子の村の噂かい?」 酒場の店員「ああ、それだ」 太った市民「なんだい、それは?」 酒場の店員「なんでも、この聖王国を中心に、 大陸のあちこちに新しい村が作られているらしいのさ。 多くは森の中や山中や古く滅びた村があったような 戦場らしいんだが。 それらの村には沢山の小麦が集められていて、 食うには困らないらしいんだ」 太った市民「なんだいそりゃ、すごい話じゃないか!」 旅の商人「ああ、どうやらその噂は噂じゃないらしい。 教会が特別な任務のために、農民や開拓民を集めて 訓練を行っているそうなんだ」 酒場の店員「そいつが最新の話さ。 どうやら、その話のおおもとの所は『聖骸』にあるらしい」 太った市民「『聖骸』……?」 酒場の店員「そうさ。聞いて驚け。 なんと、光の精霊様のご遺体だ!」 太った市民「ええっ!?」 旅の商人「なんだって!? そんなものが本当にあるというのか?」 酒場の店員「さぁなぁ。噂だから俺にも本当のところは判らない」 太った市民「俺は精霊様って云うのは、もっとなんか、 風とか光みたいなものだと思っていたよ」 旅の商人「うーん」 244 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 17 18 19.64 ID OGIpmW2P 酒場の店員「だが、教会はその『聖骸』は 魔族に奪われたと云っているんだ。 魔族から『聖骸』を奪い返すために今までにない 精鋭兵が沢山必要とされる。 そのための『光の子の村』で訓練するんだって話だぜ」 太った市民「ふぅむ……。でも、飢えなくて済むんだろう?」 旅の商人「ああ、それはそうらしい。別の街でも聞いた話だ」 酒場の店員「光の精霊の恵みなんだとさ。 その村では、一日二回のパンの食事と、昼にはこってりした にんじんのシチューが出るらしい。しかも夜のパンは 真っ白いふかふかのパンだって云うじゃないか」 太った市民「白いパンが出るのか!?」 旅の商人「何とも豪勢な話じゃないか」 酒場の店員「ああ」こくり 「この話からつまり教会は どうやら随分本気なのじゃないかって云われているな」 旅の商人「本気……?」 酒場の店員「ああ、ここだけの話だが、こんなにも小麦が 値上がりしているのは、教会が買い占めを行って、 その『光の子の村』へと送っているせいじゃないかと。 そんな話があるんだ」 太った市民「!!」 旅の商人「そうか、そう言うこともあり得るよな」 酒場の店員「だろう?」 太った市民「でも、だとすれば、本気で戦争をするんだな」 旅の商人「そうだなぁ、だが、光の精霊のためなのだろう? ならば、それはそれで仕方がない」 245 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/23(水) 17 19 31.43 ID OGIpmW2P 酒場の店員「ああ、まったくだ。精霊の恵みあれ」 太った市民「恵みあれ! 我が暮らしにもせめて黒いパンを」 旅の商人「だがそう言うことになると、見てみたいな。その村を」 太った市民「俺は見るよりも住んでみたいよ。 だってそうだろう? 光の精霊様のご遺体を取り返す、 つまり正義の戦いをするだけで、食事がもらえる。 飢えなくて済むなら俺だってそんな村に行きたいよ」 教会職員「無理な話ではありませんよ」 旅の商人「へ?」 教会職員「すみませんね、耳に入ってしまいました。 ……その『光の子の村』は増えているんです。 何せ卑劣な魔族との戦いの時が迫っていますからね。 教会へ毎晩の懺悔にやっていらっしゃい。 近いうちにまた『光の子の村』へと送られる優秀な人々への 祝福が始まると思いますよ。 最近教会は、この特別の祝福を求める方で ごった返しているのです」 酒場の店員「本当ですかい? 司祭様!」 太った市民「本当なんですか!?」 教会職員「わたしはまだ司祭などという身分ではありませんが 云っていることは嘘偽りはありませんよ。 今晩にでもまた新しい隊が荷物をまとめてこの街を発つでしょう」 太った市民「俺も行ってみたいぞっ」がたっ 旅の商人「それを言うなら俺だって!」 教会職員「では是非教会へといらっしゃい。 司祭さまが、あなたたちの献身を待っていらっしゃいますよ」 ページトップへ <前6-7へ|次7-2へ>