約 1,858,922 件
https://w.atwiki.jp/thesecretsociety/pages/95.html
●お菓子の詰め合わせ(希望リストに追加可能) アイテム 入手場所 組み合わせるためのアイテム コレクション/報酬 キャラメル ゴーストタウン(上級探索者) 銀のゼンマイのネジ×3バネ×3鋼鉄のバネ×1青銅の歯車×1 箱入りチョコレート探索者の目×25250コイン クッキー 楽しいカフェ(専門家) ソフトキャンディ 楽しいカフェ(上級探索者) チョコレート 南極基地(探偵) ハルヴァ 南極基地(探偵)
https://w.atwiki.jp/hidamari774/pages/82.html
「由花ちゃん、最初に比べたらだいぶ慣れてきたわよね」 「そうだね。最初はまともに話をすることもできなかったからね」 ひだまり荘の階段を登りながら、沙英とヒロはそう口にする。 由花がひだまり荘に来てから1ヶ月が経った。ひだまり荘での生活には慣れ、ゆの達との会話でガチガチになったりはしなくなった。 「あ、ゆのさん、宮ちゃん」 「やっほー、沙英さん、ヒロさん」 203号室の前、相変わらずの口調で宮子が二人に挨拶をする。 その隣には、そんな宮子に苦笑するゆのもいた。 「買い物でも行くの?」 「いえ、由花ちゃんの部屋に行くつもりでした」 「さっき『私の部屋に来てください』って言ってたから、遠慮なくお邪魔させてもらおーと」 「私達も用事があってね、由花ちゃんの部屋に行くつもりだったのよ」 203号室の扉を見て、ゆのは何か考え込むように口元に手を当てた。 「……よく考えたら私達、由花ちゃんの部屋に入るって初めてじゃないですか?」 「由花ちゃんに認められたってことなのかしらね」 そう会話をする二人をよそに、宮子が203号室のドアを乱暴に叩いた。 すぐに由花が出てきて、沙英とヒロが一緒にいることに気付き頭を下げる。 「ヒロ先輩に沙英先輩、今ちょうど呼びに行こうとしてたとこなんです。あ、立ち話もなんですから、皆さんどうぞあがってください。汚いところですが……」 ドアを開けたまま壁に張りつき、四人を中に招き入れる。最後にヒロが入ったところで、ようやく由花も自分の部屋に入った。 馬鹿丁寧な言動はクセらしく、ゆのや宮子に対しても敬語のままである。初対面の人及び先生にもタメ口な宮子の反対を行く性格だ。 「いや、メチャクチャ綺麗なんだけど……」 彼女の言葉とは裏腹に、部屋のなかに散らかっている様子は見受けられなかった。 さらに本棚の本は左から背の順で並んでいて、ナンバーもしっかり1から始まっている。 教科書も同じでしっかりしていた。教科ごとに分けられ、それぞれで背の順で並んでいる。 ゴミ箱は燃えるゴミ、燃えないゴミ、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶と区分けされていて、中身はほとんど空に近い状態だった。 「すごいわ……」 「私の家はそういうところには厳しかったので、すっかりクセになっちゃいました」 「あれ?」 そんな中、ゆのが部屋の片隅にある何かを発見した。 かつて動物の四コマ漫画を見たことがあるゆのはそれを知っていた。ケージと呼ばれる小動物用の家である。 「由花ちゃん、動物飼ってたの?」 「はい、ハムスターを。一人暮らしでも寂しくないようにって、こっちに来てから飼い始めたんです。今日皆さんを呼んだのは、この子を紹介しようと思ったからです」 「ハムスターか~……私ナマで見たことない」 一年生ズがいろいろ話してる傍で、沙英とヒロは眉をひそめた。 「由花ちゃん、ひだまり荘規約って知ってる?」 「いえ……知りませんが」 そこで何かに気付いたように口を手のひらで覆った。 「も、もしかしてひだまり荘ってペット禁止ですか!?」 「ええ。ちゃんとそう書いてあったじゃない」 「うう……見てなかったです……」 頭を抱えて縮こまる由花。しっかり見ていなかったことに対する自責の念が見て取れる。 そんな由花を慰めるように、沙英は由花の肩ポンと叩いた。 「多分、大丈夫だと思うよ。ハムスターだから吠えたりして迷惑をかけないだろうし」 「ほ……本当ですか……?」 半分涙目になった由花が顔をあげて沙英の方を見る。 「大丈夫だって。だから安心しなよ」 その言葉と微笑む沙英の顔に安心し、由花はホッと胸を撫で下ろした。 沙英は由花からケージに視線を移す。だがその中にハムスターの姿は見えない。 ハムスターの巣箱や床材のチップ、エサ入れや吸水器、回し車やトイレくらいしかない。 沙英は何かを考えるようにあごに手をやってから尋ねる。 「由花ちゃん。このハムスターってロボ?」 「あ、はい、その通りです。でもなんでわかったんですか?」 「ロボは基本臆病な性格だから、人が大勢だと巣箱に潜ったりしちゃうのさ」 「沙英先輩、博学です……」 「いや、ただ単に私も昔にロボを飼ってたことがあるってだけだよ」 二人の会話を聞くゆの、宮子、そしてヒロの三人は、それぞれおなじような想像を巡らせていた。 メタリックなハムスター。 ジェット噴射で空を飛ぶハムスター。 合体して巨大になるハムスター…… 「……あのさ、なんか変な想像してない?」 『え?』 三人の声がきれいに重なる。 「ロボっていうのは、『ロボロフスキーハムスター』の略称ですよ」 「そうなんだ……」 「なんだかロシア人みたいなハムスターね……」 「なぁんだ……合体しないんだ……」 それぞれ納得したり、がっかりしたりしながらケージを覗く。 しかし、今日は結局そのハムスターは現れなかった。 「そういえばヒロさん、最初『用事がある』って言ってませんでした?」 唇に人差し指を当てて記憶を掘り起こすゆの。 その言葉を聞いて、沙英とヒロは目を合わせた。 「すっかり忘れてたわね」 「そうだね。ゆのに言われなきゃ日が暮れちゃうところだったよ」 「……? 何の話ですか?」 二人の会話の内容が理解できなくて、由花が首を傾げる。 由花だけでなく、『用事』の内容を知らないゆのと宮子の頭にも大きなハテナマークが浮かんでいた。 「由花ちゃんもひだまり荘の生活に慣れたわけだし、歓迎会を開こうと思ってさ」 Scene.3 『4月27日 共に生活する家族』 「すみません、私なんかのために……」 ひだまり荘から少し歩いたところにあるコンビニ――ベリマート。 その買い物からの帰り道で、両手にレジ袋を持つ由花が申し訳なさそうに頭を下げた。 「いいんだってば。これはひだまり荘の伝統でもあるから」 「今年の一年は誰もひだまり荘に入らなかったからな~」 「今日は由花ちゃんが主役なんだから。荷物は私達が持つね」 「あ……ありがとうございます」 由花の方に手を差し出し、食材やお菓子、ジュースが詰まったレジ袋を受け取ろうとするゆの。 その善意を有り難く思いながら、由花は左手に持つ袋をゆのに渡した。 だが、由花の手が離れた瞬間、ゆのの手がガクッと下がる。 「こ、これ……相当な重さあるよ……!?」 「どれどれ?」 宮子が横から手をだし、それを受け取る。 一瞬だけよろめいたものの、なんとか態勢を整えた。 「う~ん……確かにちと重いな……」 「宮子でも重いの? じゃあ、相当な重さじゃん」 宮子は女の子でありながら結構な力持ち。そこら辺の男子にも腕相撲で勝るほどである。 その宮子が苦戦している袋を顔色一つ変えずに持っていた由花…… 「由花ちゃんって、宮子より力持ち?」 「みたい、ですね。運動はからきしダメなんですが……」 左手で自分の頬をポリポリと掻く。 表情が暗くなったところを見ると、どうやらコンプレックスのようだった。 「……あれ、ヒロ?」 先ほどまで沙英のすぐ後ろにヒロがいたはずだが、忽然と姿を消していた。 キョロキョロと辺りを見回し、やっと見つけたところはケーキ屋の前だった。 「ケーキ……」 「ん、由花ちゃん、食べたいの?」 「え、あ、いえ……」 指をくわえてケーキ屋を見つめていた由花。 両手を左右に振って取り繕っても、バレバレである。 「ゆっきゅんが欲しいなら買ったげるよ~」 「アンタは金欠でしょが。てゆーか、食べたいだけでしょ?」 「あはは、バレた? さっすが沙英さん」 最早おきまりと言ってもいいようなやり取りに、由花とゆのは目を合わせ、同時に笑った。 「では、お言葉に甘えて……」 由花がケーキ屋へと歩いていく。その後ろに三人がついていく。 ヒロの姿が見えないが、おそらく中に入っていったのだろう。 「うーん、いい匂い!」 「ケーキの匂いが漂ってるんだね」 自動ドアが開いた瞬間、甘い匂いが四人の鼻に届く。 なんだかんだ言って四人も女子高生、ケーキは大好物だったりするのだ。 「あら、みんなも来たの?」 「ヒロだけ置いて帰るわけにもいかないでしょ」 「由花ちゃんは何がいいの?」 指をくわえながら、ケーキが入ったガラスを眺める。 瞳がとてもキラキラしている。ヒロもそうだが、どうやら由花も甘いもの好きのようだ。 「すいません、レアチーズケーキ5個ください」 「はい、少々お待ちください」 店員はニコニコしながらレアチーズケーキを箱におさめていく。 営業スマイルだろうと、その笑顔は見ている人を幸せにさせるようだ。 「ゆっきゅん、まさか私達にも買ってくれたの!?」 店員から箱を受け取る由花に、宮子が目を輝かせながら尋ねる。 しかし、次に返ってきた言葉は衝撃的なものだった。 「え、皆さんも食べるんですか? じゃあ、更に20個追加します」 店員、他の客、そしてゆの達……その場にいた誰もが固まった。 ひだまり荘に帰ってきてから。沙英の部屋である102号室で歓迎会が開かれていた。 テーブルの上にはお菓子やジュースのゴミが散乱……していない。由花がしっかり片付けたのだ。 レースカーテンの向こうには、すでに宵闇が広がっている。 台所では、なにやら鍋が煮え立っている。由花が持ってきたものなのだが、中身はまだわからない。 「……それにしても、さっきは驚いたわ……」 「一人でケーキ5つだもん。宮子以上だよ……」 先ほど買ってきたケーキはすべて由花の腹の中に収まっている。 もちろん、25個も買ってはいない。最初に由花が買った5個のみだ。 ちなみに宮子は一つも食べられなかったことがよほどショックだったのか、テーブルに突っ伏している。 「アレってつまり、一人5個ずつ食べるって思ってたんだよね」 「すみません……私の家系がおかしいんだと思います……」 人差し指をツンツンとつつきながら、由花が真っ赤な顔で答える。 「私の家族は、みんな甘いものが大好きで……ケーキバイキングのケーキを私達家族だけで食べ尽くしたことが……」 「うっわ……筋金入りの甘党だよ……」 ゆのの頭には、自分の両親が巨大な皿に山のように盛られたケーキを持っている姿が浮かんでいた。 それを片っ端から食べていき、山のように盛られていたケーキが数十秒で消えていく……。 あり得ない光景に、ゆのはくすりと笑った。 「いいなぁ、それだけ食べてもその体型だもの……」 甘いもの好きなところは由花もヒロも同じなのだが、二人には決定的に違うところがある。 それは――体重。 そういう身体なのかもしれないが、ヒロはちょっと食べただけでもすぐに体重が増えてしまうのだ。 ヒロはそれをものすごく気にしており、度々ダイエットを重ねてきたのだが……結局すぐに体重が増えてしまう。 一方の由花はというと、『小さい頃から甘いものを食べまくってきた』のにも関わらず、まったく太っていないのだ。 ヒロからしたら、羨ましいことこのうえないのだが…… 「……ぐす……」 「え?」 「私だって……ひっく……好きでこんな体型してるんじゃないんですよ……? 背も高くなりたいし、太りたい……なのに……なのに……」 涙を流しながら由花が机に突っ伏す。いきなりの出来事に、宮子を除いた三人は驚いたのだが…… それより前に三人は同じ結論にたどり着いた。 『完全に地雷を踏んでしまった』。 由花が自分の身体にここまでのコンプレックスを抱いていたなんて……同じく低身長なゆのでさえ見抜けなかった。 「そんなに落ち込まなくてもいーじゃん、ゆっきゅん」 おもむろに立ち上がり、由花の隣まで歩いていって肩をポンとたたく宮子。 さっきまで自分自身が落ち込んでいたのだが、それはきれいさっぱり消え去ったようだ。 「だって小さくなきゃ、ゆっきゅんはゆっきゅんじゃなくなるじゃん」 「あ……」 確かにその通りである。もし少しでも何かが違っていれば、今の由花には育っていなかったかもしれない。 某CM風に言うなら『私の背がもう少しだけ高かったら、この世界ももう少しだけ、変わるかもしれない』のである。 「だからゆっきゅんはそのままでいいんだよー。ゆのっちも、沙英さんも、ヒロさんも、私もね」 いつもはハチャメチャな発言をする宮子だが、こういう時はとても的確なことを言う。 しかもその内容のほとんどが『名言』的な内容なのだ。宮子、GJ。 「でもさー、宮子はもうちょっと変わった方がいいと思うよ」 「へ、なんでー?」 口を大きく開けながら首を傾げるあたり、どうやら本当に言われた理由がわからないようだ。 沙英はヤレヤレと溜め息をついた。説明する気も失せたらしい。 「ところで由花ちゃん、さっきから何を茹でてるの?」 「う~んと……もうそろそろかな」 ゆのの問には答えずに立ち上がり、台所へと歩いていく。 気になった四人は立ち上がり、一緒に台所へと向かった。 『わあぁ……』 鍋の中を覗いた四人が一斉に歓喜の声をあげる。 その光景に、思わず由花も笑顔になった。 「由花ちゃん、これカニよね? どうしたの?」 「実家の隣の漁師さんから届いたんです。いつも型が悪かったりしてお店に出せない魚介類をもらったりしてるんですよ」 「いいなぁ、私も北海道に生まれたかった……」 宮子の口から流れ出ているヨダレを、ゆのがポケットティッシュで拭いてあげる。コンビネーションは抜群であった。 鍋のお湯を捨て、蟹の殻を切るためのハサミを出す。 「いっぱい送ってきたので、せっかくだから皆で頂こうと思いまして」 「やったー!! 今日は蟹パーティーだー!!!」 子供のようにはしゃぎながら宮子はリビングへと戻っていく。 窓の向こうはもう闇が広がっていた。五人での夜はまだまだ続きそうだ。 「改めて、これからよろしくね」 「はいっ」
https://w.atwiki.jp/hidamari774/pages/68.html
部屋の中を静寂が広がる。 ゆのは目の前にいる宮子の声をすべて捕まえようと意識を研ぎ澄ませ、じっと宮子の方を見ていた。 そして宮子も、そのゆのの表情を見て、ゆっくり呼吸を重ねて声に出した----。 「……ゆのには、好きな人いる?」 ----あまりに予想外だった宮子の一言にゆのは全身の力が抜けそうになったが、宮子の真剣な表情を見て同じように眼差しを向け、声に出した。 「……ううん、今は……いないよ。」 「そっか……あたしはね、居るんだ。小さな頃からずっとずっと好きな人。すごく優しくて、温かい人。でもその人はね……あたしとは血が繋がったお兄ちゃんだった……」 「えっ……?」 ずっと知らなかった意外な告白に、ゆのは驚きを隠せずに思わず声が出た。 宮子はそんなゆのを一瞬見たが、迷わず続ける。 「……小さい時からお兄ちゃんがずっと大好きだった。それは、小学校に入っても、中学に入っても変わらなくて……ううん、もっと好きになっていってた。」 静かに続ける宮子に、ゆのは驚きを通り越して吸い込まれるように見入っていた----。 「それでね、2年生になって、とうとう言っちゃったんだ……"好き"って。」 照れて頭を掻いた宮子に、ゆのも思わず胸が高鳴った後、頬が緩んだ。 ----こんな宮子を、ゆのは見た事が無かったから。 「そしたらね! にぃにぃ……あっ、兄ちゃんの事ね! にぃにぃも"僕も宮子が大好きだよ"って言ってくれたんだ……びっくりしたよ~、あたしは諦めるつもりで言ったからさ。へへ。でもめでたくあたし達は恋人同士になった。」 「えっ、でもそれって……」 「いけない事だって知ってたよ?、 でもせっかく両思いになれたのに今まで通り普通の兄妹に戻れるわけ無かったんだ……。 だからあたし達はお父さんとお母さんに見つからないように隠れてキスしたり、抱き合ったりして……ほら! 受験勉強教えてもらってる合間……とかにね、えへへ。」 ----いつの間にか相づちを打つ事も忘れていたゆのは、初めて聴く事実にただ聞き入っていた……。 兄妹の間で交わされる愛が禁忌であるという考えはもちろんあった。しかし、宮子の想いはその考えを動かすほど真っ直ぐで、美しいものだと思えた。 「でも、あたしがやまぶき高校に入ってからは、遠距離になったんだけど……それでもお盆やお正月に帰った時は、必ず二人だけの時間を作ってくれた----。 ほんと、今まで生きてきて一番幸せだったよ……。 ひだまり荘には大好きなゆのがいて、ひろさんと沙英さんがいたし、家にはにぃにぃがいたんだから……。」 そこまで言った後、宮子はひとつ息を吐き、すぐに続けた。 「でも終わりって来ちゃうんだよ……。にぃにぃには離れ離れになって……、もう二度と会えなくなっちゃった。」 その言葉を聞いたゆのは"ちくっ"と胸を刺すような痛みを覚えて思わず声が出た。 「えっ……ど、どうして……!?」 ----永遠のような、一瞬が二人の間に流れた……。 そして宮子はまたひとつ、息を吸って言葉を紡いだ。 「……にぃにぃね……。 ……死んじゃったんだ。」 東京スケッチ--第7話-- "私の好きな人" 生まれ育った町に広がる桜並木が満開の桃色に咲き誇っていた、春だった。 宮子はやまぶき高校を卒業し、夢である"世界一周放浪"の資金を貯める為、ひだまり荘を出た後、一旦実家に戻る事になっていた。 幼い頃に見た風景が残りつつも、新しいマンションがそこかしこに建ってたり、昔ながらの市場が24時間営業のスーパーになってたり、と、宮子が生まれ育ったこの町にも新しい景色が広がりつつあった。 (変わってくんだなぁ~、こんな町でも。) 桜が舞い散る中に見えた、"見知らぬ景色"----しかしさしてそれに感傷的になるわけでもなく、宮子はいつの間にか鞄からスケッチブックと鉛筆を取り出し、新しい風景を思うままに描いていった。 "こんなところで?"と、まばらな通行人誰もが宮子を横目に通り過ぎていく。 しかしそれを気にも止めずただひたすらに宮子は広がる白のキャンバスの上に鉛筆を走らせていた、その時だった。 「おーい……、おーい……! みぃちゃーん……!」 少し鼻にかかった低い声で優しく宮子を呼ぶ、男の人が走ってこちらにやって来る。 宮子はすぐに気付いて、鉛筆を走らせる手を止め、耳を"ぴくんっ"と踊らせて声のする方へ向いた。 「……ん? あっ、にぃにぃ!」 「……はっ、はぁっ……! みぃちゃん! おかえり!」 よっぽど急いだのか肩で息をしている"彼"は、久々に逢えた"彼女"にふれたい気持ちが隠しきれず、宮子の頭をポン、ポンッと撫でた。 「……っ、はぁ……みぃちゃん、遅いと思ったら……やっぱりここで絵を描いてたんだね。」 「え~あはは。やっぱ、分かってたんだね……へへ。ん~やっぱりここの桜が一番好きー、それに見たことない建物もあるから描いてて楽しいし。」 「ははっ。やっぱり、みぃちゃんは絵を描いてる時が一番楽しそうだね。」 「んーまぁねー。でも、楽しいのはそれだけだからじゃないよ?」 「えっ……じゃあ、い、一体……何?」 ----大きな瞳を真ん丸に開けて、宮子は背の高い"彼"の瞳を覗き込んで、優しく答えた。 「にぃにぃにね、逢えるからだよっ。」 "ぽんっ"と音を立てて赤面した"彼"を尻目に宮子は"彼"に抱きつき、顔を胸の中に埋めたまま続けた----。 「……ただいま、にぃにぃ。」 「おかえり……、みぃちゃん。」 ----久々に抱き合った体温と匂いが宮子の喉の奥を通り、桜の花びらが回した両手にかすめる。 そして、大好きな人に"ただいま"を言える喜びを宮子は大好きな"にぃにぃ"の中で感じていた……。 それは、そう……二人で過ごした最期の春の日の事だった。 東京スケッチ--第7話-- "私の好きな人" 完。
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/1322.html
登録日:2012/04/25 Wed 08 14 24 更新日:2024/09/07 Sat 18 46 25NEW! 所要時間:約 4 分で読めます ▽タグ一覧 イベント カタログ コミケ コミケット コミックマーケット マナーは守れ 即売会 参加者 同人 同人誌 同人誌即売会 戦争 戦場 滴る汗 漂う臭い 聖戦 ~午前3 00~ 今日は地元で戦争だ…… 回るサークルはまずこの3つと… 早く太陽が昇らないかな~w 同 人 誌 即 売 会 名前の通り同人誌の配布・頒布・販売をするイベントである。場所や規模によっては複数のイベントも同時開催される。 俺達からは戦争・イベント・即売会・コミケ等様々な呼び名で呼ばれている。 即売会には大きく分けて二種類のイベント内容がある。 オールジャンル系即売会 縛りが無く、様々なジャンルの同人誌を配布出来るタイプ。 更に即売会によってはPCゲーム・ソフトや同人音楽等、同人誌に限らず様々な二次創作作品を配布することが出来る。 コミックマーケットが代表的なオールジャンル系即売会。 オンリージャンル系即売会 即売会にテーマがあり、そのテーマに合わせて同人誌等を配布するタイプ。 よくあるタイプが『作品』に絞ったもの。 他にも特定の『キャラクター』や『萌え属性』に特化したものなど、そのジャンルは多岐に渡る。 更に二次創作では無く一次創作だけの即売会やイラスト・グッズ限定の即売会等、それぞれのテーマに合わせて即売会を開催する。 テーマがあるだけに好きな作品等がテーマだととても共感出来るし楽しめる。 あまりにニッチなジャンルだと参加サークル数が一桁ということもあったりするが、それらも含めた複数のイベントを一つの会場で合同で開催することも。 ※ここからどちらにも成人向け・一般向け等の設定が入る。 コミケなら成人向けも一般向けも混合だが、成人向けしかない・一般向けしかない即売会もある。 ~午前6 00~ あ~た~らし~い朝が!…ようやく来た… 後少し… ~開催場所~ 同人誌即売会は全国様々な所で開催される。 東京ビックサイトのような大規模な会場から田舎街の体育館、果ては会館の会議室のような所まで。 サブカルが充実している大都市からサブカルが終わっている田舎まで。 意外と知らないだけで地元で即売会が開催されている事もあるので、調べてみてはいかがだろうか? ~イベント~ 最近の即売会には様々なイベントが加わる様になった。同じ趣味をコスプレや痛車等で表して集まる様になり、規模が大きくなったのでイベントの一部になったのだ。 以下イベントの一部 コスプレ 痛車展示 ライブやダンス カラオケ 企業出店 食事系屋台の出店 一部の即売会にはこれらのイベントやコスプレ自体を禁止している所もあるのでHP等でよく確認しよう。 ~参加者~ 即売会はお客様・店員・一般人の概念は無い。最近は世界最大の即売会を中心に曖昧気味だが会場にいる人全員が『参加者』となる。 そう…同人誌即売会の本来の目的は サークルや愛好家達の交流 なのである。やっぱり曖昧ぎ(ry 主に一般参加者・サークル参加者・スタッフ参加者・企業参加者に分かれる。 今は曖昧になったが皆で盛り上げるイベントに変わりは無いのでマナーと思いやりは忘れずに。 ~カタログ~ 最近の即売会はカタログが無いと入場出来ない所が多い。 これはカタログに注意事項やサークル名簿等大切な事が書いてあるから。 また、入場料代わりという面もある。 なので参加したい即売会があったらカタログは買っておこう。参加する場合は買っておいて損は無いはずだから。 ~午前9 00~ 係員「ライジョウノジュンバンハ、シャッフルチュウセンニナリマース」 え…徹夜の意味無し… ~最後に~ 大抵のカタログには必ず書いてある注意事項を書いときます。 会場に来場する場合は公共交通機関を利用する事。 ※大体の即売会は駐車場が使えなかったり足りなかったりします。 土足禁止の会場では上履きと靴入れを持参する事。 コスプレは指定の場所で着替えて下さい。コスプレでの来場はしないで下さい。 写真撮影は指定の場所でレイヤーさんや持ち主に許可を取ってから撮影して下さい。 喫煙は指定の場所で行う事。 荷物を放置しない事。 ※スリ等の犯罪やテロ防止の為。 他人に迷惑をかけない事。 スタッフの指示に従う事。 会場付近で徹夜待機しないで下さい。 徹夜しないで下さい 徹 夜 し な い 事 ゴミは持ち帰りましょう。 そして何より イベントを 楽しみましょう あなたは今年 どの同人誌即売会に 参加しますか? 追記・修正は注意事項を守って楽しめる方がお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 俺....大学生になったら参加するんだ... -- 名無しさん (2021-09-22 21 51 51) ↑その頃にコロナが落ち着いてると良いな… -- 名無しさん (2021-09-22 22 09 29) 項目内にもあるが、みんな平等に参加者。お客さまはいないのだが、メジャーになるにつれてよく知らない人が「客にサービスが悪い」とばかりにトラブルを起こすことが問題になってたりする。「コミケの店長を呼べ!」が冗談じゃなくなってるわけだ。 -- 名無しさん (2022-08-21 23 49 40) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/setoyome/pages/136.html
同人誌情報 以前の[同人誌情報]ページは二次創作情報へ移動しました。 こちらでは現在、通販・ダウンロード販売などで購入可能な同人誌をまとめていく予定です。 ■とらのあな Web Site 『瀬戸の花嫁』の項目はありませんので探す場合は『同人誌』→『マンガ』→『その他』で調べてください。 以下、各商品情報へ直リンク 登録順に並べてあります。 ・月の使い魔 ※18禁 注文番号:040010130426 サークル:elfeel 作家:大津える さん imageプラグインエラー 画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 ・瀬戸の花婿 注文番号:040010131515 サークル:大熊猫兎娘 作家:ぐっさん。 imageプラグインエラー 画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 ・任侠姫 ※18禁 注文番号:040010131084 サークル:たまらんち 作家:Q-GAKU さん 下記のめろんぶっくす、メッセサンオーでも販売中です ・中坊フナムシ夏空の下、一夜限りのあばんちゅーる 18禁 注文番号:040010128271 サークル:フィギュアになりたい族(未塗装)、ペプチド、炭酸牛乳 作家:OS さん のいえ さん 後藤ふわり さん ■[MelonBooks] めろんぶっくす 上部のフリーワード検索で『瀬戸の花嫁』で検索可能です。 ・任侠姫 ※18禁 商品番号:212001008878 サークル:たまらんち 作家:Q-GAKU さん ・瀬戸内燦々注意報! ※18禁 商品番号:212001009517 サークル:PH 作家:TAM さん ■[MESSE SANOH] メッセサンオー 『同人誌&同人ソフト』から『同人誌』→『瀬戸の花嫁』で検索可能です。 ・仁侠姫 ※18禁 商品コード:b15325 サークル:たまらんち 作家:Q-GAKU さん ■ダウンロードショップ DLsite.com 作品名からの検索は出来ないので『瀬戸』などで検索してみてください。 ・タイヨウトツキノアイダ ※18禁 作品内容:RJ032659 サークル:ジョニーズ事務所 作家:人間モドキ さん imageプラグインエラー 画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 ・ガンガン犯ろうぜ ※18禁 作品内容:RJ033686 サークル:valssu 作家:茶琉 さん 下記のまんだらけ、valssu本サイトのほうでも通販中 imageプラグインエラー ご指定のURLまたはファイルはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLまたはファイルを指定してください。 ■まんだらけ 『瀬戸の花嫁』で検索可能です。 ・巡ゃんせ!! 商品番号:517311 サークル:ぱぉぱしっぷ 作家:あさま さん imageプラグインエラー 画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 ・ガンガン犯ろうぜ 商品番号:517330 サークル:valssu 作家:茶琉 さん imageプラグインエラー ご指定のURLまたはファイルはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLまたはファイルを指定してください。 →二次創作情報へ戻る 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/hidamari774/pages/67.html
──ゆのは、ただ走った。自分を信じて、深い傷跡に出来た生乾きのかさぶたを剥がす勇気をもった"ともだち"の為に。 ──人は、人を傷つける。 だけどその傷口を、ひとりぼっちで背負ったその深い深い傷口を、癒す事が出来るのも"人"だけだから。 それを信じきっているのか、何故自分がこんなに急いでいるのかも判らないまま、ゆのは何の迷いも無く新宿駅へ急いだ。 (早く、早く、早くっ──!) 人混みをかき分け、電車に飛び乗って、肩で息をしながら、その場所へ急いだ。 ──ともだちが待つ、"新宿"へ。 東京スケッチ─第6話─ "ピンクのケロイド" 週末の新宿──、時間も午後6時半となれば街じゅうが人混みで溢れ返る。 まだ都会に慣れないゆのにとって、普段は苦痛で仕方がないこんな風景も、宮子が待ってる事を考えればどうって事無かった。 「えっと……、この辺で……っと!」 昨日、宮子と出逢った交差点の前でゆのはポケットから携帯を取り出した。 (プルルルルル、プルル……ガチャ!) 「はい~」 「みっ、宮ちゃん!? 着いたよ……。今、昨日逢った、こ、交差点の前……。」 「速かったねぇ~、ありがとうっ。それじゃあ今から行くからね、そこで待ってて?」 「うっ、うん! わかった……。」 ──急いで来てくれたんだね。ありがとう、ゆの。 「ふう……。」 上がった息を落ち着かせて、ゆのは辺りを見回した。 制服姿の女子高生の群れ、ヘッドホンを付けて、ケータイを見ながら歩く人、何かを見定めるように街を歩くスーツ姿の若い男に、ヒールを鳴らして胸を張って風を切る若い女。 そしてここにいる、私──。 たくさんの人達がここで、精一杯呼吸をしている。そして"夢"や"希望"と引き換えに"自分"を殺して生きている。みんな目の前しか見えなくて、ここにある"景色"も、"美しさ"も見えなくなってしまうんだ……。 ──そう、ゆのは思った。 あんまり好きになれなかった"東京"でも、ここにしか無い"景色"が必ずある。 ここへ来て、初めて出逢った"東京"の"景色"をゆのはゆっくりとその目に映して、宮子を待った。 「……わっ!!」 突然後ろから肩を叩かれ、思わず驚いたゆのは振り返った先の姿を見て、ほっと肩を撫で下ろした。 「あっ! もう~宮ちゃんたらぁ……。」 「あははは、ゆの、待たせてごめんね? びっくりした?」 「う、うん……ほんと、すっごくびっくりしたよ~。」 「ごめんごめん! 悪かったね。それじゃあ、行こうか。」 「……うんっ!」 歩き出した二人は、新宿の街を歌舞伎町とは反対の方へと進んでいく。 ゆのは宮子の後ろで静かに深呼吸をして、頬を両手の手の平でひとつ、ふたつ叩く。 その姿を宮子に見られ、 「何してんの?」 と聞かれて何故か照れくさくなってしまったのだが、 「な、何でもないよ!」 と、あたふたしながら言葉を返す事しか出来なかった。 ──東京の街に、夜の灯が点る。 10分ほど歩いて、繁華街を少し外れたマンションにたどり着いた二人は、言葉も無いまま階段を登り、宮子の住む部屋の前までやって来た。 「さ、ここだよ~入って。」 「う、うん。お邪魔します。」 薄暗い部屋の中でゆのは違和感を覚えた。足の踏み場も無い事は、ひだまり荘にいた頃からあった事だから特別に意識はしなかったのだが、この部屋には筆も、キャンバスも、絵の具も、絵を書くものが何一つとして無かったのだ。 少し向こうで部屋の灯りを付けた宮子に、ゆのはその理由を聞こうとしたが、言葉に詰まった。そして言葉が喉の奥から出るより先に宮子が口を開いた──。 「ごめんね~ゆの。めっちゃくちゃ汚いけど適当に座って? あっ、そうだなんか飲む? 水しかないけど……」 「あっ……、うん、いただきます。」 ベッドの前に座ったゆのの向こうで、宮子は冷蔵庫から水のペットボトル取り出し、並べた二つのグラスに注いだ。ゆのはその後ろ姿を眺めて、部屋中を見渡した。 綺麗な服、たくさんの化粧品、煙草の吸殻──。どれもひだまり荘にいた頃の宮子からは想像できないものばかりだった。 「さっすがに東京の水道水は飲めなくってさぁ~、水なんて買うのもったい無いんだけどねぇ~。」 「あっ……うん! そうだよね。私なんてご飯炊く時でもミネラルウォーター使っちゃうよ。」 「ほんと、東京って人だらけだし、汚いし……それに……」 「……それに?」 「……辛いなぁって、はは」 そう言って小さく笑いながら、二つのグラスを持った宮子はベッドに腰掛けて、ゆのと並んで座る格好となった。 「はい、ゆの。」 「ありがとう。」 ──互いに一口ずつ水を飲んだ後、沈黙が二人を包んだ。ざわつく街の音だけが、耳に届く。そんな"ここにしかない音"をしばらく聞いた後だった……。 「……ゆの。何から話そう?」 沈黙を破った宮子は、隣にいるゆのの顔を見て、そう言った。 「……何からでも良いよ。宮ちゃんが話したいだけ、全部聴くよ。だから、どれだけ時間が掛かっても良い、話して?」 ゆのもこちらを向いた宮子に向かって、出来るだけ静かに、だけど街の音に書き消されないように、宮子の目を見て優しく微笑みながら応えた。 「……わかった。ありがとう、ゆの。」 ──そして宮子は、深呼吸をしてゆっくりと話し始めた。 ──この3年間に起こったこと、自分がここにいる理由、そして、自分が背負った生乾きの傷痕を。 東京スケッチ─第6話─ "ピンクのケロイド" 完。
https://w.atwiki.jp/hidamari774/pages/66.html
(そんな事無いよ) (えっ…) ーーあの時の顔、なんだったんだろう…宮ちゃんにいったい、この3年間で何があったんだろう…。 宮子との突然の再会の後、終電で帰ってきたワンルームのベッドの上で、ゆのは横になりながら、さっきの宮子の言葉と表情を繰り返し、繰り返し、思い出していた。 カチ、カチと鳴る目覚まし時計ーーやまぶき高校を卒業する時に宮子からもらった贈り物。アラーム音が女の声の断末魔なんて、宮子らしい贈り物だ。 (これがあれば!どんなにうるさい都会でも一発で起きれるよぉ~) (えっ、でもこれって…) (良いから良いから!お姉さんの言う事は聞かないとダメだよ~ゆのっち?) (お姉さんって…私たち同い年だよ、宮ちゃん) (あははは~ゆのっちは可愛いねぇ) ーーあの時の宮ちゃんと、今の宮ちゃんは明らかに変わってた。外見も、性格も…。 ーー私は、どうしたらいいんだろう…。 東京スケッチー第5話ー "太陽" ひだまり荘に似た外観を持つ小さなアパート。その201号室が今のゆのの居場所。 中の造りもひだまり荘とそっくりで、8畳間1つにキッチン、お風呂、トイレがあり、窓の外にはベランダがある。 しかしひだまり荘のゆのの部屋と決定的に違うのは、今の部屋には物も少なく、殺風景な程白さが際立つ事。 "眠る為だけに帰ってくる場所" まさしくそんな部屋だった。 そんな部屋のベッドに横たわるゆのは、"ーーごろん。"と寝返りを打った後、窓から差し込む雨の影をぼんやり眺めながら、考えを巡らせていた。 (そうだ…!明日、電話してみよう。いっぱい宮ちゃんとお話ししよう。きっと、宮ちゃんは話してくれるはずだから…) ようやくたどり着いた自分なりの結論に、とりあえず一安心して、早朝から酷使した体はゆのを眠りの渦の中へと導いていった。 ーー中学卒業したら、山梨の高校に行こうと思ってるんだ~。美術科がある高校に。 ーーそっか!みぃちゃんは絵が上手だもんね。僕は、応援してるよ。みぃちゃん才能あるし。 ーーそうかなぁ~わはは。だけどにぃにぃはあたしと離れ離れになって、寂しくないの? ーー寂しいよ?けど僕らは大丈夫。どんなに離れ離れでも逢えない訳じゃないし、気持ちは変わらない。それにみぃちゃんはやりたい事を一生懸命やってる時が一番かわいいよ。 ーーいや~てれますなぁ…でもね、にぃにぃ。あたしも同じ気持ちだよ。どんなに離れ離れでもにぃにぃが世界で一番大好き! …うん。僕も大好きだよ… …じゃあさ、キスしよう…? ーー目が覚めると、ひとりだった。 当たり前なんだけど、胸の奥が痛い。 結局、昨日はシャワーを浴びた後も涙は止まらなくて、ベッドの上でも泣いて、最後は泣き疲れていつの間にか眠ってしまった。 窓の向こうで、夕焼けが差している…しばらくボーッと天井を眺めた後、 「…顔洗おっと」 洗面所の鏡に映る宮子は、泣き疲れた真っ赤な瞳と涙を止めようとして擦った目元の赤い跡が痛々しかった。 「すっごい顔だなぁ」 顔を洗った後に見た鏡の中の自分に、宮子は素直に驚いてしまった。 ーーひと息ついて、ベッドの上に腰掛けて宮子は煙草に火を付けようとした…その時… (ヴーヴー) 聞こえたバイブ音に、宮子は"どうせ常連さんか誰かだろう"と思って仕事用のケータイを手繰りよせたが、 (あれ?鳴ってない…って事は) まさかと思ってのぞいた個人用のケータイの画面を確認すると… (着信 ゆのっち) ーー胸が高鳴って苦しくなった…怖くて一瞬迷ったけど、宮子は通話ボタンを押した。 「…もしもし?ゆの?」 「あっ宮ちゃん!良かった出てくれて…ごめん今大丈夫かな?」 「大丈夫だよ~突然だったからちょっとびっくりしただけ。どうしたの?」 「う、うん…ちょっとねっ、宮ちゃんと話したいなぁって思ったんだ」 「そうかそうか。お姉さんはうれしいよ。」 「宮ちゃん…私たち同い年だよ?」 「あはは、ゆのは可愛いねぇ」 ーーあれ?今の前にも話した事あるような… 二人が同じような事を考えた。 きっかけは、そんな小さな事…だけどそんな小さなきっかけが、ゆのと宮子の間にあの頃のリズムを取り戻す合図になる。 「ーーでさぁ!ゆのは昼休みにいっそいで宿題作りに帰ったんだよね!」 「あったあった!私が帰ってきた時宮ちゃんが窓から変な事言うから…恥ずかしかったんだよ?」 「そんな事あったかなぁ~ははは」 「もう宮ちゃんったらぁ…ふふっ」 思い出が今を繋ぎ止める薬になるーー。そして、二人は「東京」に来てから初めて本気で笑えたような気がして…心が暖かくなっていく。 「ゆのは、今の会社どうなの?」 「んーそうだね…学校でいっぱい勉強したし、大丈夫!って思ってたんだけどね…いざ入ったらやっぱり現場ってすごいんだ…頭で考える前に体が動くくらい経験して、技術を磨かないといけないし…毎日大変だよ」 「辞めたい、とは思わないの?」 「…思わないよ。だってやっと見つける事が出来た私の夢だから…辛いけど、叶えたいんだ」 「…やっぱり、ゆのは強いね」 「えっ、そ、そんな事無いよ…私ね、ひだまり荘に居た時ずっと憧れてたんだ。すごくしっかりして大人のひろさんと、自分の目標に確実に進んでいく沙英さん…そして、誰よりも自由で、誰よりも優しい宮ちゃんに」 ーーずきっ…。 「だから私もみんなに近づきたくて、みんなの力になりたくて」 あたしは…強くなんかない…。 嘘つきで、汚くて、もうどうしようもないんだ。 「いやいや、そんな事無… 「…宮ちゃん。宮ちゃんに聞きたい事があるんだ」 ーーえっ…? 「きゅ、急にどしたの!?なんか、ゆのらしくないよ…」 心臓が急に早くなる…。 あたしの傷口にゆのの手が触れそうになったから。 怖い…のかな… 「そんなことない…」 宮ちゃんは…この3年間でどこか変わってしまった…今、ひだまり荘にいた頃みたいに話してやっと解った…笑ってる宮ちゃんが…とても辛そうだから… …私は、力になりたい… 「ねぇ、宮ちゃん…私ね、東京に来てから辛い事があった時、いっつも宮ちゃんがいつか言ってくれた事を思い出すの」 ーーねぇ、宮ちゃん…"夢"が消されちゃう事ってあるのかな…? ーー無いと思うよ。 ーーえっ。 ーー"夢"はね、「やーめたっ」て言わない限りずっと、ここにあるんだよ。 ーー"夢"はどこにも逃げないのだっ、きっとゆのっちの"夢"は、どこかで見つけてもらうのをずっと待ってるよ~。 「その言葉を、思い出したら…っ!どんなに辛くても、苦しくても…っ!頑張れたんだよっ…?だから…だから今度は…ぐすっ…今度は私が宮ちゃんを助けてあげたいっ!」 泣きながら言うゆのの声が、心の奥まで響いて…宮子もいつの間にか涙が零れ落ちていた。 そして、本当の気持ちも声になって、堰をきったように溢れていくーー。 「ゆっ…ゆの…!あたし…あたし…!ずっと、ずっと辛かった…!東京に来てからずっとずっと苦しかったんだよぉ…!!うっ…ううっ…」 小さなきっかけは、閉じた心の鍵を開けて、心から溢れた涙はゆのと宮子を濡らしたーー。 ゆのはただ、あれだけいつも元気で優しくて笑っていた宮子の「辛かった」と言う言葉がすごく苦しくて、宮子の背負った悲しみの深さを思い知った…。 「宮ちゃん…話して?何があったか…話して…」 ーー宮子はもう迷わなかった。 ゆのが精一杯の勇気で差し出したその手を、あたしも精一杯勇気を出して掴もう…。 そう…思えたからだ。 「…わかった。全部話すよ、だから聴いてほしい…ゆのに、全部聴いてほしい…」 「ありがとう…宮ちゃん…全部、全部聴くよ…!」 「えっとさ、ゆのっち?今から時間あるかな?」 「えっ、う、うん!今日はお休みだし、大丈夫だよ!」 「じゃあ、今から新宿駅まで来てくれない?あたしの部屋で、直接、話すよ」 「わ、わかった!んじゃあ今から急いで用意するね!駅に着いたらまた連絡するから!」 「うん!待ってるよ!」 ーー涙を拭って、笑って返事をした。無理した訳じゃなくて、それが一番だと思えた。 電話を置いて、窓の外にはもう夜が近い事を知らせる深い蒼が広がり、"東京"にはまた、きらびやかなネオンが灯り、悲しみを背負う人々を深い闇へ誘うーー。 だけどもう、宮子にはその当たり前に繰り返される景色が怖くなかった。 永遠のように繰り返される"夜"が明けるーー。 ずっとずっとーー探し続けていた"太陽"を、見つけられたのだから。 東京スケッチー第5話ー "太陽" 完。
https://w.atwiki.jp/irosuma_doujinshi/pages/948.html
リスト このページは、イロスマ及びイロスマ同人誌の名言を載せるページです。 名言の定義は、その人が名言だと思うセリフを追加すればOKです。 名言でも迷言ですOKなので、どしどし追加してください。 イロスマ バート お前だけは…!お前だけは許さないぞ!!(イロスマEX Sm 第10章 絶望の螺旋 シーン5) スタックロボ サラバダ…我ガ仲間ヨ!(イロスマEX Sm 第10章 絶望の螺旋 シーン4) こまブラ オリスマ レッドザウルス よくも…よくも皆を…皆を…皆を…皆を返せぇぇぇぇぇぇぇ!!!(オリスマ 闇の支配者 シーン25) ドルバト シルベスター 俺今喋ってんだからカメラを違う方向に向けるのやめろよ、俺が喋ってるんだから俺を見てればいいんだよ、俺だけを見ろよお前(ドルバトX 一戦目) ガンスマ ウルクス …やっぱり、勝利の風はいつも俺の味方だなあ(ガンスマsm Quest9 (fin) 光の帰還 シーン3) ゼロスマ改 コメット 「コメットです。」 ファンガー 「しっぽもげるって……言ってるでしょうがぁぁぁ!!!!」 キミスマ 花火 ここから皆の横を歩いていく。皆の横に行きたい!(キミスマ プロローグ) メモスマ サンズ(Sans) さぁ…地獄を楽しみな!(メモスマ 第1戦 戦場) ライスマ ラグーノ 君の目……こんな時でも綺麗なんだなぁ(ライスマ 夏休みスペシャル 後編) ライム たとえ、辛いことが待っていたとしても、ボクは自分の力でライラさんを越えていきたいんだんだ!(ライスマ 第10戦 BOSSバトル) でも、もう負けない!自分自身の力で乗り越えていこう。その1つ1つがボクの経験になるから!(同上) アーロン うわぁ、浮いてるぅ!(ライスマ 第11戦 恵みの湖)
https://w.atwiki.jp/dojinshi/pages/15.html
【女性向同人誌を公の場で取り上げること】 少し前、とあるポータルサイトで、女性向の同人誌を取り上げた記事がありました。腐女子を取り上げた記事は、「腐女子ブーム」に伴って、ここ最近たくさん出てきましたが、その記事がとくに酷いとされたのは、特定のサークルさんの作品をサークル名つきで取り上げ、内容を嘲笑目的で詳しく解説していたからです。 先日、久しぶりに地元にコミックマーケットが開催されると聞き、足を運ぶことにしたのです。 足を運ぼうと思った理由は、私の好きな同人作家が所属しているお気に入りサークルの新刊の同人誌が発売されるからです。 同人誌と一口に言っても色々とあるのですが、今回私が買おうと思っているのは 、人気アニメキャラクーを使った女性向けの同人誌です。 それで、ウキウキしながら友達と一緒にコミックマーケットに行ったのです。 しかし残念なことに私がそのサークルのブースに買いに行った時には、すでにお目当ての同人誌は売り切れていたので買うことが出来なかったのです。 そのため、私がしょんぼりしていると、一緒に行った友達が通販でも買えるからと言って慰めてくれたのです。 それから2週間後にインターネットの通販でその同人誌を入手することが出来たのですが、 ついでにちょっと気になる女性向けの同人誌も買ったのです。 その内容は、予想していたよりも私好みの内容だったのでとても満足しています。 同人誌について「女性向け」と「男性向け」の違いは何ですか? 女性向けは女性を対象に書かれた作品、男性向けは男性を対象に書かれた作品 女性向けの売れっ子作家は、普通は漫画家か小説家 腐女子向けでも、酷い本があるし男性向けでも、酷い本があります。 逆に、男性向けでも腐女子向けでも、良い本があります 池袋が有名になりすぎてしまったので、ジャンルによっては中野は穴場のお店になります。 女性向け同人誌は通販だと取り寄せやすい 女性向け同人誌と聞くと、腐女子という言葉に代表されるように男性同士の恋愛を描いたものが多いと思うが、 一般に言うレディースコミックと分類される、女性向けの大人の恋愛も入っているものもある。 同人誌のよいところは、商業誌と違った趣きのジャンルやストーリー展開が楽しめるが、 中には表紙と冒頭のものだけがよく作られている、 中の方は鉛筆描きといったものまである。 ペン入れはしてあるけれど、フリー素材やフリーの商材を組み合わせたものや、 中には商業誌をトレースしたもので製作されているものがあるが、そこまでやれる情熱や根性に尊敬する。 商業とは違って規制が緩いからこそ、面白いものがあるものの、面白くないものも多い。 ただ、そういった当たり外れを手頃な値段で、手頃に頼むことができる通販は楽しい。 好きな漫画家が出した過去作品の同人誌などや、 デビュー前の漫画家のものなども面白い。宝探しに例える人も多いが、 通販の良いところは時間を節約でき、好きなものが手に入るところだ。 新刊は少ししか扱っていない。 ・買い取りあり。 横浜を含め、神奈川県には女性向け中古同人誌の専門店はありません。すべて都内です。 読まなくなった同人誌を売りたいと思っているのですが、ネットオークションは面倒なので、店舗に持ち込みたいと 女性向け同人誌を販売しているお店を探しています。通販ではなく直接買えるところです。
https://w.atwiki.jp/hidamari774/pages/79.html
「本当に大丈夫かな……」 「大丈夫よ、あなたならやれる」 「今日までずっと頑張ってきたじゃないか。自信を持て」 「……うん、わかった」 「辛かったら、いつでも帰ってきていいからね」 「うん。それじゃ……行ってきます」 引っ越し屋のトラックの助手席に乗り込むと、少女を乗せたトラックはすぐさま行ってしまった。 次第に小さくなっていくトラックを見送りながらも、少女の母親はいまだ不安を隠せないでいた。 ああは言ったものの、引っ込み思案な娘がしっかり生活できるのか、とても心配している。 「……本当に大丈夫かしら」 「俺は大丈夫だと思うよ。『あの事故』に遇ってからはや一年、アイツは『あの事実』を聞いた時以外、一度も泣いちゃいないんだ」 「けど、それは私達を心配させないために我慢してるんじゃ……」 「可能性はあるが……とにかく、アイツならやれるさ。信じてやろうよ、娘を……」 「そうね……」 遠い目をする二人を後ろに、トラックは少女が新しく暮らす世界へと加速していった。 「……じゃあ……帰るか、故郷へ。このアパートに、もう用はないからな」 「ええ……」 Act.1 新しい生活(4月) Scene.1 『3月28日 ようこそ、ひだまり荘へ』 「うぅん……今日、春休みだった……」 やまぶき高校の美術科に通う生徒達が暮らすアパート――ひだまり荘。 目覚まし時計のアラームを止めて、そのひだまり荘202号室の住人――ゆのはようやくその事実に気が付いた。 そういえば、去年も同じことをしたなと、ちょっと自己嫌悪。 604 名前:ひだまりの中で 1―1[sage] 投稿日:2008/04/07(月) 20 11 35 ID /hLEiic3 「……朝ごはん作らなくちゃ……」 もう一度寝るわけにもいかないので、休日にしては少し早いけれど朝ごはんを作ることにした。 いつも金欠で腹ペコな201号室の住人――宮子のためにも、ちょっと多めに作る。 そのうち、味噌汁のいい香りが部屋中に広がったところで―― 「ゆのっち、朝ごはーん!!」 と、自分のお茶碗と箸を持って宮子が突入してきた。 「おはよう、宮ちゃん。もうすぐ出来るから」 それに驚く素振りも見せず、ゆのは味噌汁の味見をする。 これが二人の日常で、ゆのはこの生活にとうの昔に慣れているのだ。 「ゆのっちー、早く早くー!」 いつのまにかテーブルまで移動していた宮子はマイ箸を左右の手で持ってお茶碗をカンカン叩いている。 ゆのはそのお茶碗を持ってご飯を盛る。宮子仕様にこんもりと。 それをテーブルの上に置くなり、宮子の目がキラキラと輝きだした。 「おおー、今日はいつになく大盛りだ!!」 「実は昨日お米の分量を間違えちゃって、ちょっと多くなっちゃったの。あ、まだ食べちゃ駄目だよ」 そう忠告をしながら、台所にあらかじめ準備しておいた宮子用の味噌汁と目玉焼きを持っていく。 宮子の口元からヨダレが出ているのを確認すると、ゆのは黙ってティッシュペーパーを差し出した。 宮子がヨダレを拭いているうちに自分用の食事をテーブルに置き、味噌汁が入った鍋を持ってきて、宮子の横にちょこんと座る。 「さ、食べよっか」 「うすっ。いただきまーす!」 その量は、宮子のものと比べるとかなり少ないが、ゆのの胃袋の方が正常であるということを忘れないでいただきたい。 「ぷはっ♪ やっぱりゆのっちの味噌汁は美味いなぁ♪」 「えへへ、ありがとう。まだまだあるから、たくさん食べてね」 「おかわりー!」 言うが早いか、味噌汁をぐびぐびと飲み干して茶碗をゆのに突き出す。 相変わらず早いなぁと苦笑しながらも、宮子の茶碗を受け取る。 「そういえば、いつ来るのかな?」 「ん? 何が?」 味噌汁をお玉ですくいながら、ゆのが宮子に確認しようとしたが、宮子は何のことを言ったいるかわからなかったようだ。 どう言えばいいのかわからないといったように少し口籠もり、そしてゆっくり話した。 「んと……転校生、って言っていいのかな。その人が来る日だよ」 「あ~、そんな話あったねぇ」 ゆのから味噌汁を受け取った宮子が思い出すように言った。 二日ほど前、ゆのが朝ごはんを作り終えるまで自室待機していた宮子は隣の203号室から物音がするのに気が付いた。 空き部屋であるはずの部屋から物音が……これに宮子は覚えがあった。 立ち上がった宮子は、無駄と隙がない動きで203号室に向かう。 ワクワクしながら扉を開けると、案の定そこには作業着姿の男女がいた。 去年、ゆのが201号室に入る前にも出会った、ハウスクリーニングの業者だった。 「おや、また君かい」 「お久しぶりでーす」 「残念だけど、おそばはないわよ?」 去年は『新しい子』が来たと勘違い、どんぶりを持って引っ越しそばをねだりに言ったためにすっかり顔を覚えられてしまったようだ。 前回の失敗を踏まえ、どんぶりは持ってきていない。なぜなら今、ゆのが作ってくれてるから。むしろ今回興味があるのは新しい住人の方だった。 「あれ? 宮ちゃん?」 「お、ゆのっちだ」 自分を呼ぶ声がして、あわてて部屋を出る。 ドアが開きっぱなしの202号室を覗き込むと、部屋の真ん中でゆのがキョロキョロ見回していた。 「ゆの、こっちこっち」 その声に反応し、ゆのは振り返ってこっちを見てきた。 そして安心したかのように宮子に駆け寄ってくる。 「も~、宮ちゃんてば、どこ行ってたの?」 「ゴメンゴメン、こっちにいたんだ」 ゆのにそう言うときびすを返し、203号室へと戻る。 その中を覗いて初めて、ゆのはハウスクリーニングの業者が来ていたことに気付いた。 「ハウスクリーニングか~、もうすぐここに新しい子が来るんだね」 「そういや、私達ももう先輩なんだねー」 宮子の言葉に、ゆのがはっとしたように目を見開いた。 「ゆのっち、どしたの?」 「そうだった……私達、もう先輩になるんだった……」 その場にしゃがみこんで頭を押さえるゆの。 その顔には、若干の焦りがあるようにも見える。 「私、先輩としてうまくやっていく自信ないよぉ……」 「大丈夫だって」 うずくまるゆのの背中を、宮子はいつもと同じ顔でポンポン叩いた。 「ゆのっち、今まで頑張ってきたじゃん。だから胸はって、次にここに来る後輩に『私が先輩だ』って言ってやろう」 「ううう……でも……」 「あ、ここに来る子は新入生じゃないよ」 『え?』 いきなり声をかけられて、二人はお互いに顔を見合せて203号室を覗き込んだ。 中で黙々と作業を続けていた業者の人がいきなり話してきたことにもそうだが、言っている内容にも驚いた。 新入生ではないということは転校生だろう。だが、この時期になぜ転校生が? 「私達も詳しいことはわからないんだけど、去年の受験には受かってたの」 「ただ、その後に交通事故に遇っちゃってね、一年間ずっと入院してきたらしいんだ」 「交通事故……ですか……」 その言葉を聞いたゆのが視線を下げる。 せっかくやまぶき高校に入れたのに、事故のせいで一年間も通えなかったなんて…… 「落ち込んだってしょうがないよ、ゆのっち。これからその人と一緒に頑張っていこっ」 「……うん……」 この後、一階に住む先輩――沙英とヒロとの会話もあるのだが、ここでは割愛させていただくとしよう。 「交通事故で一年も……さぞかし暇だったであろう」 「そっち!?」 相変わらず着眼点がどこかズレている宮子に驚きながら、ゆのは三杯目のご飯を盛る。 もちろん宮子用で、もちろん大盛りだ。 それを受け取った宮子の頭にハートマークが浮き出たのを確認し、話を続ける。 「どんな子かなぁ?」 「まあ、来てみないとわからないけどね」 ご飯をかきこむ宮子を見て、『今は食事に専念したい』と悟ったゆのはようやく食事を始める。 だが、宮子のおかわり攻撃に翻弄され、ゆのの食事が終わったのは宮子が六杯目のご飯を食べ終わった時とほぼ同時だった。 「けぷっ。喰った喰った……」 「宮ちゃん、オジサンみたい……」 つまようじで歯の隙間を掃除する宮子を見てゆのは苦笑した。 「いつもよりも食べる量が多かったね」 「うん。昨日は冷蔵庫が空っぽでなにも食べてなかったからね」 「えーっ!?」 そのあまりにも意外すぎる事実にゆのはつい大声を出してしまった。 宮子の家の冷蔵庫が空っぽの時は、朝昼夕とお構い無しにゆのの家にご飯をねだりに来るはずなのに。 「はっはっは、いつまでも他人に頼ってばかりではないのだよ。ただ今朝はついに限界が来ちゃってね……」 たった一食抜いただけで限界とは、いかにも宮子らしい。クスクス笑いながら、宮子の分のお茶碗も台所に持っていく。 「今お茶碗洗うから、くつろいでて」 「もーくつろいでるよーん」 手足を投げ出して背中をまるめてテーブルにもたれかかる宮子。 よくこの光景を目撃するのだが、猫背にならないのが凄いなとゆのは思っていた。 「……ん……?」 「あ……」 会話に夢中でまったく気付いてなかったが、二人の声が途切れた時にトラックのエンジン音と階段を上る靴音、そして二つ隣の部屋からであろう物音が聞こえてきた。 間違いない、ついに転校生が来たのだ。 「宮ちゃん!」 「うん!」 ――ガンっ。 テーブルに膝を強く打ち付け悶える宮子に苦笑しながらも、ゆのは食器をシンクの中に入れて部屋を出た。 ぴょんぴょんと片足ではねながら、宮子が後に続く。 203号室を覗き込むと段ボール箱が二、三個と作業着姿の男性だけ。 階段の方まで歩いていくとひだまり荘の玄関先に引っ越し業者のトラック、その後ろで転校生とおぼしき女の子が積み荷を降ろしていた。 長くて青空のような淡い水色の髪が、彼女の動きに合わせて揺れる。 白いカチューシャが水色の髪と相まって、後ろ姿はとても美しく感じる。 「ゆのっち、あの子かな?」 「たぶん……。だけど、なんで自分で荷物を降ろしてるんだろ?」 積み荷はすべて降ろしたのだろう、左の手の甲で額を拭ってひだまり荘を向く。 その顔にはどこか幼さが残っていて、先ほどまでの『美しい』が一転、『可愛い』に変化してしまった。 と、彼女もこちらに気が付いたようで、頬を赤くして二人にペコリとお辞儀をした。