約 1,188,080 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1826.html
「盲導ゆっくり」(前編) 「ゆ!!まりさはこっちだよ!!ゆっくりついてきてね!!」 「あぁ、そっちだね。わかったよ」 目を瞑ったままのお兄さんが、黒い帽子をかぶった金髪のゆっくり―――ゆっくりまりさについていく。 その足取りはスムーズではあるが、どこか普通とは違う。そんな違和感を感じさせるものだった。 草原に近い道を抜け、小さな門をくぐり、庭の中央を抜けて、まりさとお兄さんは立ち止まる。 「おうちについたよ!!ゆっくりかぎをあけてね!!」 「ちょっと待ってくれな」 まりさが家の玄関にたどり着いたことを告げると、お兄さんは既に手の中に握っていた鍵で解錠し、扉を開いた。 その後も、まりさの先導に従って家の中にあがりこむ。 ここまでくればもうまりさの案内は必要ない。かれこれ10年も暮らしている家だから。 「おつかれさま!!ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりするよ。あ、ちょっと待ってな。お前に食べ物をもってくるからね」 「ゆ!!おにーさんありがとう!!ゆっくりまってるね!!」 まりさに繋がった紐を手放すと、お兄さんはゆっくりと台所へ向かう。 お兄さんの目線と同じ高さにある戸棚の扉を開けると、手探りで何かを探し始めた。 目当てのものを探り当てると、それをもってまりさのいる部屋へと戻り、手馴れた動作で袋を破ってその中身をまりさに与えた。 「ほら、お食べ」 「ゆっ!!くっきーだね!!ゆっくりいただきます!!」 はふはふと、獣のようにクッキーを貪り食うまりさ。 とてもゆっくりした、とても幸せそうな表情だが――― 「むーしゃむーしゃ♪しあわせー♪」 ―――その表情は、お兄さんには見えていない。 お兄さんは、いつも真っ暗な世界の中にいた。 朝目覚めてから、夜眠るまで。一日中、何をする時も、彼は暗黒の世界の中にいた。 目の前に誰がいて、誰がいなくて、何があって、何がないのか。彼は視覚以外の情報でそれを探るしかない。 いつからこうなったのかは、良く覚えている。 その日までは、普通に全てが見えていたのだから。 しかし、ある日突然……彼は、光の届かない世界で生活することになった。 そんな彼の補助をするのが、盲導ゆっくりであるゆっくりまりさだ。 盲導ゆっくりは、盲導犬と同じように視覚障害者を安全に快適に誘導するものである。 利点や欠点はいろいろあるのだが、一番の利点は言葉が通じること。 犬以上に意思疎通が容易であり、訓練次第では盲導犬以上のレベルの高い補助が期待できる。 その分訓練には時間を要するのだが、それは今後の研究で改善されるだろう。 「ゆーん♪ゆっくりおいしいよ!!」 「美味しいか。それはよかった」 お兄さんはクッキーを頬張るまりさの帽子を脱がし、頭を撫でてやる。 まりさは嫌がる素振りは見せず、お兄さんに撫でられながらクッキーを食べ続けた。 「おにいさん!!まりさはおにーさんのおかげでとてもゆっくりできるよ!! これからもゆっくりしていってね!!まりさがゆっくりさせてあげるからね!!」 「あぁ、ありがとう。ゆっくりさせてもらうよ」 盲導ゆっくりと付き合っていくコツは、とにかくゆっくりさせてやることだ。 家に帰ったら食べ物を与え、ゆっくりさせる。夜には風呂に入れてやり、清潔にしてやることも必要だ。 面倒に思えることだが、こうした毎日の積み重ねによって更に忠実な盲導ゆっくりとなる。 盲導ゆっくりは、自分をゆっくりさせてくれる人を全力でゆっくりさせようとするのだ。 そんなお兄さんとまりさの微笑ましいやり取りを、2匹のゆっくりが丘の上から眺めている。 盲導ゆっくりとは別のゆっくりまりさと、ゆっくりぱちゅりーだ。 窓ガラス越しに見る家の中の様子は、とても見づらい。 だが、家の中のまりさがとてもゆっくりしていることだけはわかったようで、まりさは地団太を踏みながら叫んだ。 美味しい食べ物を与えられ、頭を撫でられ、快適な室内でゆっくりしているのが羨ましいのだろう。 「ゆっ!!あいつだけずるいよ!!まりさもゆっくりしたいのに!!にんげんのたべものがたべたいよ!!」 まりさは、人間の食べ物が普段食べている雑草とは比べ物にならないくらい美味しいということを知っていた。 一度だけ道端に落ちていた煎餅を食べた事があり、そのときの衝撃は今でも餡子脳に焼きついたままだ。 「むきゅ!!でもにんげんのいえにはいるのはきけんよ!!ゆっくりできないわ!!」 ぱちゅりーの忠告はもっともなものだ。 事実、まりさの仲間も人間の家を襲撃した事があったが、一家根絶やしにされ二度と帰ってこなかった。 だからまりさは慎重になる。策なしに飛び込むのは、人間に殺されるために行くようなものだから。 「でもいいほうほうがあるわ!!むきゅん!!」 「ゆっ!?ほんとう!?ゆっくりおしえてね!!」 胸を張るぱちゅりーに、まりさは詰め寄る。 ぱちゅりーはにやっと微笑みながら、自慢げに説明を続けた。 「むこうのまりさといっしょにいるニンゲンは、じつはめがみえないのよ!!まちがいないわ!!」 「ゆっ!!そうなの!?」 ぱちゅりーは、先ほどまでのお兄さんとまりさの様子から、お兄さんの視力が殆どないことを察知していたのだ。 それに気づいていなかったまりさは、意外な事実に驚きの声を上げる。 「だからむこうのまりさといれかわっても、ニンゲンはきづかないわ!!」 「ゆっ!!すごいよ!!さすがぱちゅりーだね!!」 「むきゅきゅん!!むきゅん!!」 まりさは、これ以上ない名案だと思った。 あの人間の目が見えないのであれば、向こうのまりさと入れ替わっても気づくわけがない。 見たところ、向こうのまりさは弱そうだ。ひとりで外に出てきたときにやっつけて、そのまりさになりすませば…… 人間にまったく気づかれることなく入れ替わり、毎日思う存分ゆっくりする事が出来る。 今、幸せそうにゆっくりしている“あの”まりさが、自分になるのだ! 「ゆっへっへ!!それならゆっくりできるね!!あいつだけゆっくりするなんてずるいもんね!!」 まりさは、その家へと跳びはねていく。早速、例のまりさを待ち伏せするのだろう。 そんなまりさを、ぱちゅりーは無言で見送った。 植木の陰に隠れて、まりさは盲導まりさが家から出てくるのを待っている。 葉と葉の隙間からじっと玄関の扉を凝視し始めてから、かれこれ30分が経過した。 「ゆっ!!はやくでてきてね!!ゆっくりしすぎだよ!!ぷんぷん!!」 すぐに姿を現すだろうと思い込んでいたまりさにとって、この待ち時間は苦痛でしかなかった。 その苦痛の原因を、家から出てこない盲導まりさに押し付ける自己中心的な思考は、ゆっくりの典型である。 「もうおこったよ!!さっさとでてきてね!!」 お兄さんの家に怒鳴り込もうと、草の陰から飛び出した……その時。 玄関の扉の下。そこのゆっくり用出入り口から、盲導まりさが出てきた。 「ゆっくりいってきます!!」 どうやらお兄さんに買い物を頼まれたらしく、単独での外出のようだ。 頭に紐がつながれておらず、その代わりに飼いゆっくり最高ランクであるゴールドバッジと、盲導ゆっくりであることを示すプレートが帽子に固定してある。 プレートが斜めにくっついているのは、お兄さんの目が見えていない証拠だろうか。 盲導まりさはゆっゆっ♪と歌いながら、里の市場へと向かい始めた。 が、そんなビッグチャンスをまりさが逃すわけがない。 「ゆっ!!ゆっくりとまってね!!」 「ゆゆ?ゆっくりしていってね!!まりさはゆっくりできるひと?」 突然の呼びかけに、盲導まりさは立ち止まってゆっくり流の挨拶をする。 まりさは挨拶を返すことなく、大きな口を開けて盲導まりさに飛び掛った。 「おまえはいままでゆっくりしすぎたよ!!こんどはまりさがゆっくりするばんだよ!!」 「ゆゆっ!?なにをするの!?ゆっくりやめてね!!」 まりさは、盲導まりさの帽子をすばやく取り去ると、それを咥えたまま丘の上へと駆けていく。 「ゆっ!!まりさのぼうしをかえしてね!!ぼうしがないとゆっくりできないよ!!」 いくら訓練を受けた盲導ゆっくりとはいえ、帽子を失うことは怖い。その恐怖は克服できないのだ。 必死の形相で、盲導まりさは帽子を奪ったまりさを追いかける。 「ゆっへっへ!!まりさにおいつくわけないでしょ!!ばかなの!?」 「ゆっくりまってね!!まりさのぼうしをかえしてね!!ゆっくりとまってよおおおおお!!!」 下品に笑いながら丘を登るまりさ。それを追う盲導まりさの目には、大粒の涙が浮かんでいる。 両者とも体格がほぼ同じなので、一度開いた差を縮めるのは困難だ。 それでも盲導まりさは必死に追い縋り、少しずつ2匹の距離は狭まってきている。 盲導まりさの目に、一層力がこもった。 「ゆっ!!ゆっくりおこったよ!!まりさはぼうしをはなしてゆっくりしんでね!!」 あと一歩というところまで迫ったとき、盲導まりさは大きく飛び上がった。渾身の力を振り絞った体当たりである。 しかし、その体当たりはあっさり回避されてしまい、ぶるんと身体を震わせながら何もないところに着地した。 その隙を、このまりさは見逃さなかった。 「ゆっくりしつこいよ!!ゆっくりしね!!」 丘の上から、丘の下へと。盲導まりさを突き飛ばす。 上から下へ。ファンタジーの塊であるゆっくりも、物理の原則には逆らえない。 重力に引っ張られるまま、盲導まりさは坂をごろごろ下り始めた。 「ゆびあああああああああ!!!どまっでええぇええぇぇええええ!!!」 「ゆひゃひゃ!!ゆっくりしんでね!!まりさがゆっくりするからね!!」 ゆっくりは総じて転がりやすい体型なので、一度勢いがついたら止まらない。 盲導まりさが丘のふもとまで転がっていく様を、まりさはゲラゲラ笑いながら眺めている。 そして…… 「いびゃっ!?」 運が悪いことに、盲導まりさは大木に正面衝突し……餡子を吐き出して、動かなくなった。 「ゆっへっへ!!まりさをゆっくりさせないのがいけないんだよ!!あのよでゆっくりこうかいしてね!!」 丘の上から本物が死ぬ様を見ていたまりさは、器用に舌を使って本物から奪った帽子を被った。 まりさは、玄関の前にやってきた。 扉の下にあるゆっくり専用の出入り口から、勢い良く家の中に飛び込む。 「ゆっくりかえってきたよ!!」 「あぁ、おかえり。かなり早かったね」 お兄さんは、奥の部屋のベッドに腰掛けていた。 まりさは彼の顔を見上げるが、お兄さんは目を閉じたまま開こうとしない。 どうやら、ぱちゅりーが言っていた事は本当らしい。これなら、自分は存分にゆっくり出来る。 そう確信したまりさに、お兄さんは問いかけた。 「さぁ、買ってきたものを出してくれるかな?」 「ゆ!?かってきたもの?なにそれ!!ゆっくりできるの!?」 浅はかな発言だった。ここは無理やりにでも、お兄さんの会話に合わせるべきだった。 それを思いつかないあたり、まりさの餡子脳はある意味とてもゆっくりしていた。 「ん?何言ってるんだ?さっき買い物を頼んだだろう?帰ってきたってことは、もう買い物を済ませたんじゃないのか?」 「ゆっ!?ゆゆゆ?………ゆっくりわすれちゃったよ!!」 このまりさ、別にお兄さんの話に合わせたわけではない。本当に忘れたと思っているのだ。 買い物を頼んだ?頼まれた覚えはない。でもお兄さんは頼んだといっている。 あれ?そうだっけ……そういえば頼まれような気もする―――という具合である。 本当は買い物など一度も頼まれてないのに、まりさの頭の中では頼まれた買い物を忘れてしまったということになっているのだ。 「おいおい、君らしくないなぁ。いつもならしっかり買い物してきてくれるのに」 「ゆゆゆ…ゆっくりごめんね!!それよりまりさをゆっくりさせてね!!」 「……え?」 お兄さんは、まりさの言葉を聞いて固まってしまった。 何かまずい事を言ってしまったのだろうか?と、まりさはちょっとだけ不安になった。 だが、偽者だと気づかれてしまったのではないか、という考えはそこにはない。 だって、この人間は目が見えないのだから。一生偽者だと気づかないまま、自分をゆっくりさせてくれる存在なのだから。 その思い込みが、まりさの思考を停止させていた。 「ゆゆ?どうしたの?ゆっくりさせてね!!まりさはゆっくりしたいよ!!」 「……しょうがないな。で、お前は何がしたいんだい?」 呆れたような声で、お兄さんはまりさに問いかける。 まりさはぱあっと嬉しそうな顔をして、明るい声で答えた。 「おかしがたべたいよ!!おかしをよういしてね!!」 「そうかそうか、でもお兄さんは何も見えないからお菓子を用意できないんだ。自分で取りに行ってくれるかな?」 「ゆっ!?し、しょうがないね!!ゆっくりじぶんでとりにいくよ!!」 お兄さんに指差された方向―――台所へ、まりさは跳ねていく。 台所が、人間の食料が保管されている場所だということは知っているが、自分の目的のものがどこにあるかはわからなかった。 来た道を引き返して、不機嫌そうにお兄さんを見上げるまりさ。 「おかしはどこなの?ゆっくりわからないよ!!」 「え?わからない?おいおい……今日の昼に教えたばかりだろう?」 「ゆ?ゆゆゆゆゆ……?」 どうやら、本物の盲導ゆっくりはお菓子の場所を教わっていたらしい。 「うーん、ここまでダメになるなんて……別の盲導ゆっくりに変えてもらおうかな」 「ゆ!?ゆっくりやめてね!!おかしのばしょをおもいだしたよ!!だからまりさをおいださないでね!?」 さすがの低脳饅頭も、お兄さんの言葉に込められた不穏な雰囲気は読み取れたようだ。 せっかくゆっくりできる環境を手に入れたのに、追い出されてしまっては全てが水の泡になってしまう。 まりさは咄嗟に取り繕って、再び台所へと向かった。 お兄さんにはああ言ったが、結局のところまりさはお菓子の場所が分からない。 自分の視界に入る小さな扉などは全て開き、中に潜り込んで漁り放題漁ったが…… 見つかるのは缶詰やインスタント食品など、お菓子でないばかりか自力で封を開けることもできないものばかり。 結果として、まりさは頭上の戸棚に収まったお菓子を見つけることは出来なかった。 そこに戸棚があることすら、気づかなかった。 「まりさ?どうだ?お菓子は美味しいかい?」 「ゆ!?ゆ…ゆゆゆゆ、ゆっくりおいしいよ!!しあわせー♪」 「あぁ、それはよかった。あとで出かけるから、そのときまでゆっくりしてなさい」 隣の部屋からのお兄さんの呼びかけに、まりさは慌てて答えを返す。 もし、ここでお菓子が見つからなかったことを言えば、ここを追い出されてしまうかもしれない。 それだけは避けたかったまりさは、お菓子を見つけたフリをすることにした。 「ゆっくりするね!!………ゆぅん…」 そのあと、しらみつぶしに台所の中を探して回るが、結局お菓子は見つからなかった。 お兄さんに連れられて―――ではなく、お兄さんを連れて里の市場へと向かうまりさ。 まりさの頭には盲導ゆっくり用の紐が固定されており、その紐の端はお兄さんの左手が握っている。 最初、頭に巻きついた紐が窮屈で嫌がったまりさだったが、 「別のゆっくりに変えてもらおうかな……」 の一言であっさり受け入れることにした。 里の市場に到着する頃には、まりさは自らの頭を締め付ける紐の存在をすっかり忘れてしまっていた。 「えーと、まずは……八百屋だな。まりさ、いつもの八百屋に連れていってくれるかな?」 「ゆ?やおや?それってゆっくりできるの?」 「ん?忘れたのか?またかよ……今日はどうしちゃったんだ?」 本物の盲導ゆっくりなら、八百屋の場所を覚えているはず。 だが、当然ながらこのまりさは覚えていない。八百屋なんて言葉自体、初めて耳にしたものだ。 「ふぅ、しょうがないな。どこでもいいから、お野菜が売られてるお店に連れてってくれ」 「ゆっ!おやさいがあるところにいくんだね!!ゆっくりりかいしたよ!!」 まりさは視界を上のほうに保ったまま、大通りをぴょんぴょん跳ねて進み始めた。 紐を握った手を引かれて、お兄さんもそのあとをついていく。 「ゆっ!ゆっ!おやさい!おやさい!」 まりさは気づいていなかった。自分が野菜がどんなものなのかを知らない、という事に。 今まで人間の畑など襲った事がないまりさは、野生に存在する質素な雑草は知っていても、人間が作った野菜は見た事がないのだ。 当然ながら、八百屋は見つからない。あっても気づかない。3メートル離れたところにある八百屋の前を、躊躇いなく素通りする。 それどころか、まりさは市場の外へ……まったく見当違いの方向へ向かっていた。 「ゆっ!!ゆっくりみつからないよ!!」 「そんなはずはないさ。お野菜を売ってる店なんて、沢山あるよ」 そう、一般人向けに開かれた市場なのだから、野菜を売ってる店が目に入らないほうがおかしいのだ。 でも見つからない。まりさは、見つけられない。八百屋が分からない。野菜が分からない。 そしてとうとう人里から抜けてしまい、周りには建物も人も何もない……大きな木々に取り囲まれた場所まで来てしまった。 「ゆああぁぁぁぁぁああぁん!!!どおじでえぇええっぇえぇぇ!!!おやさいがみづがならいいいいいぃぃぃいぃ!!!」 「………はぁ」 お兄さんは大きなため息をつくと、まりさの頭に繋がった紐をくいっと引っ張った。 「もういい。帰ろう」 「ゆっ?おうちでゆっくりするの!?」 まりさの泣き顔が、一瞬で笑顔に変わった。 変なところを連れまわされたが、やっとおうちでゆっくりできる―――大方そんな風に考えているのだろう。 「そうだね。まりさも今日は調子が悪いみたいだし」 「ゆっ!?ゆ、ゆゆっゆゆ、ゆっくりごめんね!!まりさちょうしがわるいんだよ!!あしたはゆっくりできるから――― 「いいからいいから。気にしないで、今日はもう帰って休もう」 まりさは自分が捨てられてしまうのではないかと思い、大慌てで弁解するがお兄さんはそれを制した。 ここまでの道中ずっとしかめっ面だったお兄さんは、やさしい言葉と共にまりさに微笑みかける。 それを見て、まりさは確信した。 このバカな人間は、ずっと自分をゆっくりさせてくれる。 目が見えない。それだけじゃない。この人間はバカだ! これだけ失敗を重ねても、自分が偽者だということに気づかない。 ゆっくりでも気づくのに、この人間は気づかない。バカなの?死ぬの? (ゆっへっへ!!このにんげんはばかだね!!まりさはとてもゆっくりできるよ!!) まりさは、これから未来永劫自分をゆっくりさせてくれるであろうお兄さんを連れて、来た道を戻っていった。 (続く) 作:避妊ありすの人
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3272.html
「ん〜、どうしたもんかね」 突然だが俺は困っていた。 今朝友人に呼び出されて彼の家に行くと赤ゆっくりが入ったケージを渡された。 何事かと問い詰めてみると友人の飼いゆっくりが出産したらしい。 しかし彼の家はすでに親であるぱちゅりーとれいむの他れみりゃなども飼っており、その上仕事も忙しくなってきたためこれ以上は飼えないというのだ。 まったくあれほど去勢しておけと言ったのに。 そこで里親を探そうということになったのがなかなか見つからない。 そこでゆっくりにもそこそこ詳しく、これから飼おうと思っており、なおかつ今は飼っていないというこのために用意されたかのような状況の俺に白羽の矢が立ったというわけだ。 とはいえさすがにそう何匹も飼えないと主張するとせめて二匹だけでもと拝み倒された。 結局赤ぱちゅりーと赤れいむを一匹ずつ、二匹で手を打つこととなった。 そして今に至り俺は二つのケージを持って帰路についていた。 「おきゃーしゃん!れいみゅをここきゃらだしちぇね!せみゃいよ!」 「静かにしろ、それと俺のことはお母さんじゃなくてせめてお兄さんと呼べ。」 二匹はそれぞれのケージの中で騒がしく騒いでいる。 さっきから何度も注意しているのにこの有様だ。 「むきゅ?みゃみゃはおにーしゃんにゃの?」 「えーと、まあいいやそれで。」 こいつらは俺のことを母親だと認識しているらしい。 いきなりケージを手渡されたときにそう刷り込まれたようだ。 あの野郎はめやがって、どうやっても俺に飼わせるつもりだったんじゃねえか。 そんな感じで俺が友人に対して心の中で愚痴っていると突然目の前にゆっくりの集団がやってきた。 小奇麗さから見て元飼いゆっくりの集団だろう。 「おにいさん!ゆっくりしていってね!」 「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」」」」」」 無視して通り過ぎる俺。 「おにいさん!むししないでね!それとそのこたちをまりさたちにかえしてね!」 「「「「「「「「かえしてね!」」」」」」」」」 素通りしてもよかったのだが聞き捨てならない言葉を聞いた。 かえしてとはどういう意味だろうか。 元の家の親元に「帰せ」というならわかる。 が、まりさに「かえせ」とはどういうことなのだろうか? 「え〜と、どういう意味かな?こいつらは俺の友達の飼いゆっくりの子なんだが…。」 「ゆっくりのこはゆっくりがそだてるよ!」 「にんげんさんのいえにいるよりまりさたちとそだったほうがゆっくりできるよ!」 「かいゆっくりたちがひどいめにあっているのはしっているよ!だかられいむたちはたちあがったんだよ!」 つまりこいつらはこれから飼いゆっくりとして育てられる運命にあるこの赤ゆっくり達を自分たちの下で野良として育てようというのだ。 虐待派の人間に飼われているゆっくりがどんな目にあうかは俺自身よく知っている。 そんな危険がある人間の下で育てさせるよりも自分たちが育てようとそういうことのようだ。 そういえば最近捨てゆっくり達が不幸な飼いゆっくり達の救済活動を行っているなんて話を聞いたことがある。 ガセネタだと思っていたのだがこいつらがそうだろう。 礼儀もただの野良に比べれば正しいし、こっちの話もちゃんと聞くし間違いない。 何せ不遜な態度だったらとっくに保健所か加工所送りだろうからな。 なるほど、一理ある。 仮に人間よりもはるかに高等な生物がいたとしてそいつらにペットとして命の選択権を握られ飼われるか。 あるいは人間として人間達と生きていくか。 どちらも一長一短だが確かにゆっくりはゆっくりと一緒に育ち住んだほうが幸せかも知れない。 「ん〜でもこいつらはあいつにもらった物なんだよなあ…。好きにしていいとは言われたが。」 「ちびちゃんたち!まりさたちといっしょのほうがゆっくりできるよ!」 「ゆ!?おきゃーしゃんよりゆっきゅりさちぇてきゅれるの?」 「そうだよ!ほらぱちゅりーもおにいさんにおわかれいおうね!」 「むきゅー、でもみゃみゃ…じゃにゃくておにーしゃんもいっしょのほうがいいわ。」 「ありすがそのおにいさんよりゆっくりさせてあげるわ!」 俺を無視して勝手に話が進んでいく。 だがどうすればいいのだろうか? こいつらも今のうちになら野生に帰ることも可能だろう。 ひょっとしたらその方がこいつらのためになるのかもしれない。 「しょれでもれいみゅはおきゃーしゃんといっしょがいいよ!」 「むきゅ!ぱちゅりーもよ!」 おお、ちょっとぐっときた、いまだにお母さんなのは気になるが。 「ゆぐぐ…、そうだ!それならたまにおにいさんにあいにこればいいよ!」 「れいむがつれていってあげるよ!」 「ゆ!それじゃあみだいじょうぶだにぇ!」 「むきゅ〜。」 ガクっと肩が落ちる。 こいつら…。 赤ゆっくりならこんなもんだろうが飼うとしたら相当躾が必要だな。 そのとき俺の脳内にあるひらめきが走った。 「お前たち、子育てに相当自身がありそうだが自信を持って自分たちが育てた子供がゆっくりしているといえるのか?」 「ゆ!もちろんだよ!」 「まりさのこどもはとってもゆっくりしてるよ!」 「ありすのそだてたこはれいぎただしいってにんげんさんにほめられたのよ!」 「れいむのこどもはとってもげんきだよ!」 「ふむ、それじゃあ人間がどんなゆっくりと一緒ならゆっくりできるか知ってるか?」 「もちろんだよ!やさしくてげんきなこだよ!」 「いいつけをよくまもるこね!」 「うそをいわないこだよ!」 さすがは元飼いゆっくり、少しは博識で狡猾じゃないか、なかなか好感が持てる。 そこで俺はある提案をする。 「それじゃあ勝負しないか?この子達を一匹ずつ育ててよりゆっくりした子を育てたほうがこの子達を育てるんだ。」 「ゆ?」 「期日は半月後…って言ってもわかんねえな。まん丸なお月様が出た次の日までだ。それまでにこの子達をよりゆっくりした子に育てられた方の勝ちだ。飼ったほうが相手のゆっくりを育てる。それでどうだ?」 「ゆ!のったよ!まりさのかちにきまってるけどね!」 「さいこうにとかいはなこどもにそだてるのよ!」 「おにいさんをびっくさせてあげようね!」 「「「「「「「「「「えい!えい!ゆーーーーー!」」」」」」」」」」 さて話は決まった。 俺は少し考えてぱちゅりーの方をゆっくり達に渡しれいむの方をつれて帰る。 「ぱちゅりー!きょうからまりさがままだよ!ゆっくりしていってね!」 「むきゅー…ゆっくりしちぇいっちぇね。」 赤ぱちゅりーはまだこちらの様子を窺っている。 すぐにまた会えると言うと少し寂しそうにしながらもゆっくり達に付いていった。 「おきゃーしゃん!ゆっきゅりしちぇいっちぇね!あのまりしゃしゃんたちよりゆっきゅりさせちぇね!」 「ああ、ゆっくりさせてあげるよ。」 元気な赤れいむに不敵な笑みで俺は答えた。 「ゆ!ぱちゅりー!ごはんだよ〜!」 「むきゅ〜♪」 さてゆっくり達に住処までつれてこられたぱちゅりーは早速ご飯の時間だ。 メニューは芋虫や草などの一般的な野生のゆっくりが食べるものだ。 「むーちゃ、むーちゃ、ちあわちぇー!」 「ゆ!だめだよ!むーしゃむーしゃはゆっくりできないよ!」 本能から食事への幸せを口にしたぱちゅりーはご飯係りのまりさに叱責される。 「むーしゃむーしゃっていうのはゆっくりできないゆっくりなんだよ!ゆっくりしたこになりたかったらりかいしてね!」 「む、むきゅ…。」 まりさは元飼いゆっくりなので食事中にむやみに喋るのはよくないことだと教えられている。 しかしこれではせっかく美味しい物を食べているのにこれではおいしさ半減だ。 また何度もむーちゃむーちゃと言ってしまいその度に赤ぱちゅりーは叱責された。 「さあ、れいむ。ごはんだぞー。」 「ゆ!ごはんごはん!」 一方青年の家。 青年の家のメニューは歓迎の意味もこめて豪勢にも甘いシュークリームだ。 「むーちゃ、むーちゃ!ちあわちぇえええええ!!!」 「はっはっは、そうかそうか、よかったな!」 青年はご飯にがつつく赤れいむの邪魔を一切することなくその幸せそうな姿を見ていた。 「さあぱちゅりー!べんきょうのじかんよ!」 「む、むきゅ…。」 勉強係のありすが食後眠りかけていた赤ぱちゅりーをたたき起こす。 普通ならば生まれたての赤ゆっくりには勉強を教えることはないのだが何しろ期日はわずか半月だ。 一時たりとも無駄にできない。 「さあ、ぱちゅりー!ありすがとかいはなれいぎさほうをおしえてあげるわ!むちなぱちゅりーもすぐにとかいはになれるわよ!」 「むきゅ…ありしゅおねーしゃん…ぱちゅりーはねみゅいわ…。」 「なにをいってるの!とかいはになるためにはちゃんとべんきょうしなければならないのよ!むちなぱちゅりーはねむっているひまなんてないわ!」 その後夜が更けるまでありすによる勉強は続いた。 一方そのころお青年の家では。 「ゆぴー。ゆぴー。」 赤れいむがいびきを立てながら眠っていた。 そうして半月が経過し、ついにお互いの子供のお披露目の日となる。 初めこそ勉強を嫌がっていた赤ぱちゅりーもぱちゅりー種特有の知識欲でやがて自分から先生を叩き起こすほどにまで成長した。 青年との勝負に向けて先生達が集中的に鍛えた甲斐もあり子ゆっくりになったころには成体と変わらぬほどの知識を身につけていた。 「むきゅ、ま…おにいさん、ひさしぶり!ゆっくりしていってね!」 「ああ、ゆっくりしていってね!」 「さあおにいさん!まりさたちのじまんのぱちゅりーだよ!おにいさんのれいむをみせてね!」 促され青年は持ってきたケージかられいむを出す 「ああ、ほらでろ、れいむ。」 「おかあさん!こんなせまいところにいれないでね!れいむおこるよ!」 もはやどちらがよりゆっくりしたゆっくりなのかは一目瞭然だろう。 「俺の負けだな、まりさ。今日かられいむは君たちの仲間だ。ほられいむ。」 「ぷんぷん!おかあさんはぜんぜんゆっくりさせてくれなかったよ!まりさおねーさん!きょうからよろしくね!」 「れいむ、よろしく!ゆっくりしていってね!」 れいむを連れて帰ろうとするまりさ。 そこへ青年が懇願する。 「待ってくれまりさ!ぱちゅりーに最後のお別れに歓迎がしたいんだ。一週間、いや三日でいい、お月様が少し欠けるまでぱちゅりーをうちで預からせてくれないか?」 「むきゅ…、ぱちゅりーもおにいさんにおわかれがしたいわ。」 まりさは考える。 ぱちゅりーにとって青年は母親だった。 まりさが何度言って聞かせてもぱちゅりーは頑なにそのことだけは譲らなかった。 たとえ一度顔を合わせただけの相手でも刷り込みによって親と認識している以上子ぱちゅりーにとって「おにいさん」はお母さんなのだ。 別れのとき何時でも会いに来れるとは言ったが実際にはめったに会えない、あるいはもう二度と会えないことをまりさは知っている。 「わかったよ!おつきさまがはんぶんになるまでぱちゅりーはあずけるよ!」 結局まりさは青年の願いを聞き入れれいむとともに群れに帰っていった。 「ほら、ぱちゅりーいっぱい食えよ。」 「むきゅ、…お、おいしいわ!!!」 青年の家に来たぱちゅりーは早速ご飯の時間だった。 たくさんの今まで食べたこともないようなおいしいご飯に舌鼓を打つ。 与えられているのは普通のゆっくり向けのペットフードだがそこそこのものを選んでいるため野生のゆっくりのご飯よりは遥かに味が上回る。 「ごめんな、まさか負けるとは思わなかったから、粗末なものしかなくて。せめてたくさん食べてくれ」 「む、むきゅ!?」 これが粗末な食事? それでは今まで自分が食べてきたあれはいったい何なのか。 そんなことを考えながらも目の前のご馳走に口は止まらない。 そのぱちゅりーを見て青年口を開く。 「おいしくないかい?れいむはおいしかったら必ずしあわせー!って言うのだけれど。」 「むきゅ、むーしゃ、むーしゃはゆっくりできないのよ。ありすせんせいからおそわったの。」 なるほどと呟く青年の口元に微笑が浮かんでいるのをぱちゅりーは気づかなかった。 一方まりさの群れ。 今日はれいむの歓迎会だ。 大人たちががんばって大量のご馳走を用意した。 「さ、れいむ!いっぱいたべてね!」 しかし促されたれいむは一切反応しない。 「ゆ?どうしたのれいむ?」 「なにこれ?こんなごみよりはやくあまあまなごはんをよういしてね!しゅーくりーむでいいよ!」 事実そこにあるのは虫や生ごみなのだ。 しかしそれは野生のゆっくりにとってはご馳走である。 このれいむは青年によって甘やかされて育った。 最初の一週間ほどは贅沢な生活に満足していた。 しかしご飯も毎日同じものですぐに飽きたて美味しくなくなったし青年もまるで遊んでくれない。 こんな家よりもまりさおねえさんの家のほうがゆっくりできる。 子れいむの頭ではこうなっていた。 「なにいってるの!?これがごはんだよ!ほら。」 ぱくぱくとご飯を平らげていくまりさ。 「…みててきぶんがわるくなったよ。ねむりたいからべっどをよういしてね!」 「ゆ…。」 そんなれいむの反応にめげず根気強く寝床へ連れて行く。 「こんなところじゃねむれないよ!ちゃんとふかふかなべっどをよういしてね!」 「むしさんのこえがうるさくてねむれないよ!ゆっくりしないではやくなんとかしてね!」 「れいむたいくつだよ!おもちゃもってきてね!おもちゃもないの?ばかなの?しぬの?」 そんな台詞をこれから毎日聞かされるとも知らずに。 計画通り! さっきぱちゅりーに聞いたところ、 「おにいさんのいえのほうがゆっくりできるからこっちにすみたいわ。」 と言ってくれた。 こうして俺はたいした苦労もせず躾の行き届いたゆっくりを手に入れることが出来た。 あのれいむはメシの時間以外は殆ど無視していただけなので実に楽だった。 監禁…もとい住まわせていた部屋は防音が行き届いていたので安眠妨害も無い。 適当にエサをやっていただけなので俺の家がゆっくりできなかったのは事実だろう、野性よりはましだろうがな。 ぱちゅりーはもともとの頭がよかったのかかなり素直で人間好みの飼いゆっくりにそだっていた。 なぜか物事を説明する時だけ無知だの何だの言いやがるがこれは後で躾ればいい、身の程を思い知らせてな。 所詮ゆっくりの知識だ、生涯かけて身につける知識の量など人間の三日分にも及びはしない。 さてそのぱちゅりーは何をしているかなっと…、チラシ読んでる? 「ぱちゅりー、何してんだ?」 「むきゅ、じゃましないでおにいさん。ごほんでおべんきょうちゅうよ。」 ご、ご本? ご本といったか? やべえ笑いが漏れちまう、これはカメラに収めざるを得ない。 俺は隣の部屋へビデオカメラを取りに走った。 翌日ぱちゅりーが文字と本物の本を教えられて赤っ恥をかくのは別のお話。 また、数日後子れいむを中心とした野良の子ゆっくりの集団が人里へ降りてきて加工所送りになるのもまた別のお話である。 最近ようやく一度書いた文章をアップロード前に見直すことを覚えました。 過去書いたもの 奇跡のゆっくりプレイス 醜い男 生きるための選択 体つきゆっくり愛好家 ありすの戦い 黒歴史 ぱちゅりーの教育 byデストラクション小杉
https://w.atwiki.jp/kyoronosuke/pages/226.html
ヴィィィィィィィ、 ヴィィィィィィィ、 ヴィィィィィィィ、 「んあ……誰だよ?こんな夜中に?……」 ゴールデンウィーク初日の夜。 特に何もせずダラダラと過ごした俺が一日を終えようとベッドに入った後だった。 ヴィィィィィィィ、 ヴィィィィィィィ、 携帯を手に取る。 AM 01 35の表示。 こなたからの着信だった。 「……こなた?なんだよ、明日は朝からみゆきとデートなのに……」 ピ! 「ふぁい……もしもし?こなた?どした?こんな夜中に。あ、言っとくけどCLANNADは進んでねーぞ」 「男……」 「ん?何かテンション低いな?どうしたんだよ?」 「かがみんが……かがみんが……(ブツブツ)」 「ん?よく聞こえないんだけど?すまん、俺、明日の朝早いから用件は手短に……」 「かがみんが自殺しちゃうかもしれない!どうしよう!?」 泣き叫ぶような声だった。 「んなッ!!?」 言葉が出ない。 心臓を鷲掴みにされたみたいだった。 血が逆流する感覚。 「お……おい……落ち着けよ?何があったんだ?」 自分の声が震えているのが分った。 だって、かがみが自殺する理由で真っ先に思いつくのは…… 俺がフッたから……? いやいやいや、いくらなんでもそれは俺の自意識過剰ってもんか?いや、でも…… 「つかさから電話があったんだ……今日の夜。かがみん、ハサミを握って、じーっとそれ見つめてて……自殺がどうとかって言ってたらしいの……」 「……!!」 「それだけじゃないんだよ?かがみんに口止めされてたんだけど……かがみん一昨日の帰り、急にボーっとしてっていうか、フラフラしてっていうか、とにかく、突然おかしくなって……線路に落ちそうになったんだよ!なんていうか、『線路に飛び込む』っっていうのに近い感じで……」 一昨日……0時回ってるから正確には3日前か。 確かこなたとかがみとつかさちゃんでゲマズに行くって言ってた日だな…… 「そ、そう……か……もうちょっと……く、詳しく頼む」 俺は、こなたがつかさちゃんから聞いたって言う話を全部聞き出した。 「かがみ本人は、なんて言ってるんだ?」 「『何でもない』の一点張りらしい……」 「そうか……」 「でね……男……男はかがみんがおかしくなっちゃったことについて何か心当たりない?」 「!!!」 思わず携帯を落としそうになった…… 眠気なんかとうに吹き飛んでいるはずなのに、頭がくらくらしていた。 「い、いや……ごめん、ちょっと……わからない……」 「そう……」 「な、何か心当たりを思い出したら……また連絡するよ……」 「そっか、ありがと。ごめんね、遅くにさ。まあ、私にとっちゃバリバリの活動時間なんだけど」 「あ、ああ……」 こなたの冗談にツッコむ余裕もなかった。 「じゃ」 「おう……」 ピ! ……違う、よな? 俺のせいじゃない。 俺のせいじゃない。 俺のせいじゃない。 その日、俺は一睡もできなかった……
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/20.html
ゆっくり井戸 2KB アマギンさんのイラスト「そして憎しみだけが残った」をリスペクトして書きました。 「みんなのかたきだよ……!」 村の外れの井戸の前、ゆっくりまりさがいた。 その口にくわえているのはスズラン。人間にもゆっくりにも毒となる花だ。そのまりさ は、親ゆっくりから教えられてその毒性を知っていた。 スズランを教えてくれた親ゆっくりはもういない。 先日、大規模なゆっくり狩りがあった。留守の家に侵入して荒らし、畑の作物を食い散 らかしゆっくりは、人間にとって紛れもなく害だ。その結果は必然であり、自業自得に他 ならない。。 だが、当のゆっくりたちにはその理屈がわからない。 自分たちは素敵なおうちを見つけてゆっくりぷれいすにしただけなのに。 自分たちは勝手に生えてくるお野菜を食べただけなのに。 自分たちは、ただ、ゆっくりしたかっただけなのに。 人間達は、無惨に無慈悲にゆっくりたちを殲滅した。 このまりさは幸運にもゆっくり狩りから生き残っていた。その命を繋いだのは囮になっ てくれた親ゆっくりのおかげだ。 とても優しい親だった。おうたが上手だった。やさしくすーりすりしてくれた。いつも 食べ物を取ってきてくれたし、いっしょにむーしゃむしゃすれば最高に幸せだった。 いつもゆっくりしていて、いつもいつもまりさをゆっくりさせてくれる最高のゆっくり だった。 それが、もう、いない。 おとなりのれいむも、ものしりぱちゅりーも、みんなみんな人間に潰されてしまった。 仲間はみんないなくなってしまった。 だからまりさは決意した。 みんなをゆっくりさせなかった人間を、ゆっくりできなくさせてやる、と。 親から「ゆっくりできなくなるからぜったいむーしゃむしゃしちゃだめだよ!」と聞い ていたスズランを用意した。人間に見つからないように井戸の前まで来ることができた。 だが、ここでまりさに躊躇いが生まれた。 自分がしようとしていることは、正しいのか、と。 親ゆっくりはいつもみんなをゆっくりさせてくれた。自分もそうなりたいと思っていた。 だが、自分は今、人間をゆっくりさせなくしようとしている。 それでも、 「まりさはゆるせないよ……!」 まりさはスズランをくわえたまま井戸に飛び込んだ。 まりさは人間がゆるせなかった。しかし、人間をゆっくりさせなくしようとしている自 分もまた許せなかった。 だから死ぬつもりだった。生き残ったのはいいが、もう他のゆっくりはいない。いっぴ きじゃゆっくりできない。 人間を道連れにして、死ぬ。 それがこの親ゆっくりの教えを正しく受け継いだ善良なまりさの導き出した結論だった。 井戸の底へと落ちていくまりさの顔は、どこか安堵したような、どこか皮肉げな笑み― ―本来のゆっくりの笑みを浮かべていた。 そしてまりさは水の中に落ち、スズランと共にゆっくりと溶けていった。 まりさは満足だった。 なぜならまりさは知らなかった。 村には既に水道が通っており、この井戸など使われていないことを。 たまに子供が井戸で遊んでいるのを見て、ゆっくり達が人間の飲み水はこの井戸だと誤 解していたことを。 だからまりさは満足し、最後にはとてもゆっくりし、無意味に死んだ。 触発あきの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る まりさに死ぬ間際に教えてあげたい -- 2016-01-31 13 11 43 ざまあww -- 2014-05-26 18 37 04 俺もこのゆっくりの誤りは無知から来てると思う。 元ネタがある以上仕方ないかもだが、もっとこう、ゆっくりの独り善がりな描写が足りなかったと思うことは思うかな -- 2013-01-13 06 27 38 ↓×4 そもそもゆっくりの習性の元ネタになった民族が“同じ知識レベル”で、かつ日本(人間)に対して同じ状況を作ってるじゃないか もっとも、現実世界の人間(日本人)にもゆっくりんピースと同じメンタリティの人間がいたり、ゆっくりには反映させ辛かった買収やシンパの醸成行為という厄介な方法も駆使しては来るが -- 2012-08-22 18 28 58 知らずに幸福に死ねたんだしいいんじゃねww -- 2012-08-16 23 30 30 このページ消えろよ -- 2012-04-03 08 04 49 ゆっくりくるしみをあじわってしんでね!(金バッジ付飼いゆっくりの言葉) -- 2012-03-22 18 09 31 ここで出てくる復讐って価値観の違いよりも無知から来てるよね。 自分は勝手に生えてこないのに野菜はそうだと思ってる。自分は家を空けることがあるのに留守にしているだけの他人の家って発想は出てこない。 もし人間が同じ知識レベルで同じ状況になったら、このまりさみたいな気持ちになってこんな独り善がりなことするんだろうか。 -- 2012-01-29 14 55 40 ↓なんだって?習ってなかったぞ!?中学か?高校か?それとも大学か? いつ出るんd(ry -- 2012-01-28 19 12 52 「ゆっくりと人間はエゴの塊」 ここ、テストに出ますよー -- 2011-09-18 21 17 33 なんで投げ込ま無かったの -- 2011-03-04 08 24 56 ゆっくりが死ぬと心が躍る!!(某大隊長の少佐の証言) -- 2010-12-03 23 00 43 犬死に!無様!!hahahahahahahah!!! -- 2010-11-27 12 17 13 アマギンさんは美鈴書いてる時が好きです -- 2010-10-16 23 08 06 ↓差別が嫌いと言うわりには猛烈に差別的発言をしてるじゃないか。 -- 2010-10-07 07 51 34 >こういうのを見ると人間とゆっくりって本質的にはほんと大差ないよなあと思う 自分に非があるか考えないで全部正当化する人間なんて中国人と朝鮮人もどきくらいだよ 私は差別とゆっくりと朝鮮人が嫌いです -- 2010-10-03 15 39 35 ゆっくりと人間の戦いは続く… -- 2010-08-07 00 16 46 このまりさに聞いてみたい「お前らのゆっくりの為に人間のゆっくりを踏みにじっていいのか?」と -- 2010-08-06 22 38 17 こういうのを見ると人間とゆっくりって本質的にはほんと大差ないよなあと思う 無意味だったけど最後の最後に穏やかに死ねたのは意味のある死に方だと思うわ ただ、このまりさは親に救ってもらった命を無駄にしたのは馬鹿だと思う -- 2010-07-23 14 23 05 でも、子供が遊んでるときに井戸の水をのでくれたら・・・ -- 2010-07-23 14 11 03
https://w.atwiki.jp/kairakunoza/pages/260.html
好きなSS投票 好きなSS投票できます。何を読めばいいのか分からない人はここを見てみると良いかもしれません。 シリーズものの場合、タイトルは一つに統一されています。 五十音順です。 下に検索フォームついてます。興味を持ったらタイトル入れて作品にGO! 選択肢 投票 『俺』×あやの (9) 『か』と『み』の間 (5) An affair ~何かが違う日~ (0) Babysit (2) CROSSING (1) Follow me Follow you (1) HOME (3) MEGANE (4) Industious Otaku (3) K・O・N・A・T・A (5) Princesses (4) RAvish Romance inみゆき視点 (4) Sweet Trap (2) MINORU HAZARD 4 (0) 1レスSS・こなた自慰 (6) あきら&白石 (13) あきら様絶不調 (0) あきらの虚勢、白石の心情 (4) あの日出逢った星空に (41) あふ☆いや ~らき☆すたAfter Years シリーズ (19) 雨が降っている (1) 歩み (2) アンジャベル (1) いっしょにあるこう (2) いのり&まつり (3) うさかが (2) えすこな (5) おーさまげぇむ (1) おかあさん (5) お泊りかがこな (5) おひさ! (2) お勉強 (1) かがこな (5) かがみ×こなた流~エロスのみ~ (5) かがみのクリスマス (6) 楽屋にて (0) 玩具 (0) 看病フラグ (0) キスまでの距離 (2) きみにとどけ (7) 逆転☆裁判 (16) きゃんでぃ・がーる (4) 究極の選択Ⅱ 哀・戦士編 (9) 崩れ落ちる日々 (5) 月下美人 (1) 牽引 (0) 喧嘩をやめて (5) 賢者の贈り物 (1) こなかが+つかゆきつか (10) こなた×つかさローターもの (4) こなたと不良 (1) こなたの手紙 (3) こなたのメール (2) こなたよりかなたまで (16) こなたルート シリーズ (37) 粉雪 (9) 視線の先にはみゆきさん (2) シスター・プリンス (1) シューティングスター (1) ショックのでかい話 (3) 白石のお見舞い (0) ズームイン!! (1) 全ては遠い理想 (0) スピード (3) すれ違う想い~繋がる想い (1) 聖夜の約束 (0) そしてふたりは、ここでであった。 (6) そばにいるよ (4) 太陽の下、星空の下 (14) 体温 (11) たまには日記じゃない形式で (1) 小さなてのひら (4) ツン切れあきら (0) てけてけかなたさん シリーズ (15) デリヘル「Lucky☆Star」 (1) 糖分100% (2) 年の差FRIEND (2) なかよしプリンセス (2) ねこなた (2) 猫耳こなた (4) 背徳のイマジネーション (2) 白銀の夢から覚める頃 (1) パラダイス・カフェ (6) 反逆のかがみ (16) ハンドメイド (1) ひなた×ひかげ (1) 微熱SOS (1) ファンからのプレゼント (0) 二人の一周年記念 (2) 二人のキオク (1) 二人の足跡-アキハバラ1988- (26) ふたりのレッスン、ひるとよる (5) プリンセス・ブレイブ! (10) 他のお客様のご迷惑と (2) ホットカルピス (0) ホントのお気に入り、ホントの気持ち (8) ほんとのきもち (8) ほんとのこころ (5) みゆき×こうルート (2) もう、そうくんってば! (0) らき☆すたクエスト (2) らき☆すたどうでしょう (1) ラジオ収録にて (3) ラフメイカー (0) 私だけの。 (1) 私だけの”せんせー” (5) わたしの幼馴染 (3) ■検索フォームについて 入力した単語を含むページの検索を行えます。 タイトルや文中の表現などを入力することにより、特定の作品を絞り出すことが可能です。 例 こなたにネコミミが生える話ってどれだっけ→検索「こなた ネコミミ」→ウマー 検索から表示したページだと指定単語がハイライトされた状態になっていますので、 最上段の文中リンクから正規のページに移るとハイライトが消え、読みやすくなります。 リンクが間違っていて繋がらず、読めない時も利用すると良いと思われます。 検索 検索
https://w.atwiki.jp/oyatu1/pages/1002.html
なぜ……?なぜなの……? 私はある一つのことを思いつつ、キーボードを打ち続ける。 大学のレポートの為に買ったノートパソコン。その画面には来週提出予定のレポートが表示されている。 だけど、その文章量はまだ10行にも満たない。もうかれこれ1時間は作業しているというのに… キーを打ち間違える。文が考えられない。思いつくのはたった一つの疑問ばかり。 「駄目だ。全然進まない。」 今日はもう駄目だろう。どうせ提出日は来週だし、無理をしなくてもいい。 私はそう自分を納得させ、ファイルを保存した。 「はぁ……」 ファイルを閉じると、思わずため息が出た。きっと頭に浮かんでいるこの疑問…悩みを解決しない限り、ため息が止まる事はない。 それは分かっている。分かっているけれど…こればっかりは、そう簡単に解決できる話ではないのだ。 いや、そもそも解決できるかどうか…… 私はパソコンを操作して、新規にテキストファイルを開いた。 そして、ゆっくりとキーを打ち始める。 K...O... N...A... T...A... 打ち終えたと同時に現れる、私の恋人の名前。 「はぁ……」 またため息。 私の悩み、それは…… 最近…… 最近、こなたがうちにこない。 『ちょっと長い待ち時間』 私がこなたと出会ってから、こんなに会わない日々続くなんてあっただろうか?いいえ、絶対にないわ!! もしあったとしても、そんなことはきれいさっぱり忘れちゃってる。 忘れちゃってることはきっとそんなことはなかったのだ。うんそうだ、そういうことにしてしまえ。 だって…こなたと恋人同士になった高校時代。学校に行けば、そこには必ずこなたがいた。 大学生になってからは、一週間に一度は必ず会いにきてくれた。 『かがみが寂しくしてないか心配なんだよ。』 それがうちに来るときのこなたの言い訳。こなただって寂しいくせに、そうやってすぐ私の所為にするんだから困ったものね。 まあ……こなたが言うことも概ね事実だから、言い返さないけど。 そんなこなたが、最近うちにこない…… なんで?どうして急に来なくなったの!? 「もしかして……私に飽きた?私のこと、嫌いになった?!」 最悪の想像が私の頭の中をよぎった。頭の中が真っ白になる。『もし』の話なのに、血の気が引いていくのが自分でも分かった。 もしそうだとしたら、私はどうしたらいい? こなたのいない日々なんて、今の私には考えられなのに!! こなたがこの関係を望まないのなら、すぐにでもやめよう。諦めよう。 そんな殊勝なことを考えていたこともあった。 でも、今は駄目。こなただけは離したくない。こなただけは傍にいて欲しかった。 「いや、そんなことない!こなたが私を嫌いになるなんてありえない!」 私は頭をブンブンと振って、必死に考えを否定した。 その効果もあってか、だんたんと冷静になってくる。 そうよ。そんなことはありえない。だって…… 『かがみのせいだよ…もう、かがみがいない生活なんて耐えられないんだから。』 と、あの夜、ベットの中で涙ながらにこなたは言ったのだから。 あのときのこなたといったら、もう反則的に可愛かったなぁ…… 「………えへ。」 い、いけない。思わず顔がニヤけてしまった。 今度はそのニヤけ顔を振りほどくようにブンブンと顔を振った。 …まあそんなわけで、こなたが急に私のことを嫌いになったりするわけがないわ。 それにこなただったら、そうなっても絶対に理由を話してくれるはずだ。 馬鹿な考えだった。ごめんね、こなた。変なこと考えちゃって。 私は心の中でこなたに謝った。 「となると、なにか他に理由が……」 こなたが私を差し置く理由? 思いつく限りの事を、私は順に考えていく。 新作のアニメをゲームにハマッてたり? それだったら、私の家でやるはずだ。 最近のこなたは、こういったオタク的なものですら私の家でするようになったのだから。 そしてわざと遅くまで残って、こういうのだ。 『遅くなっちゃったから、今日はかがみの家に泊まるね。』 ……いい。 よって、この考えは間違えだ。 だとすると、こなたも大学の課題が出てたりとか? う~ん?それもなんだかんだで、私の家でするわよね。 高校の時みたいに私に質問してきたりして。だから、私も学科が全然違うからよく分からないんだけど、一緒に考えて…… で、結局いつものパターン。 『なんだかよく分からないから、今日はかがみの家に泊まるよ。だから、一緒に考えてね。』 ……うん。 それじゃあ、ゆたかちゃんやおじさんが風邪で寝込んじゃってるとか? 前にもそんなことがあったし。 ん?だけど、確かその時って…… 『ゆーちゃんもお父さんも風邪で寝込んじゃってさ~。なんか色々大変だからヘルプに来てよ、かがみ~!』 とか言われたから、それもう喜び勇んでこなたの家にいったんだけ。 確かに、私の家には来てないけど……これも違うか。 しかし、考え付く事考え付く事、全部こなたと一緒にいる口実になってるわね。 べ、別に惚気てる訳じゃないからね……と取り敢えず何処かの誰かに言い訳しておく。 「だけど、他に何が………あっ!」 思いついてしまった。先ほどとは別の最悪の想定を……… 「まさか……まさか間女!」 なぜ、間男と浮かぶべき言葉が間女なのか? そこらへんの細かい理由なんか詮索している場合じゃない。 確かに、こなたは反則的なまで可愛い。 そしてその真の可愛さを知っているのは、世界広しと言えど私だけだという自信はある。 とはいえ、あの可愛さ。その一端を垣間見ただけで、心奪われる人は少なくないはずだ。 さらに厄介な事に、当の本人にはその自覚がまったくない。 ああ見えてこなたは押しに弱いから、必要以上に迫られたら断れないのかも。 「やっぱりこなたと同じ大学にすればよかったわ!」 今更ながらの後悔が私を襲う。ああっ!ずっと一緒だった陵桜の頃が懐かしい! でも今は、そんな後悔に襲われている場合じゃない。 誰?相手は誰なの? 今度は思いつく限りの人を順に考えていく。 みゆき……はありえない。高校時代、さんざんこなたとの私の仲を見てきたはずだ。 そんなみゆきが、こなたをどうにかしようなど考えもしないだろう。 つかさも同様。むしろみゆきよりも私達の仲を見てきている。 ゆたかちゃん……にはみなみちゃんがいるし。逆もまたしかり。 田村さん……私達を漫画のネタにこそすれ、実際にやってみようとは思わないだろう。 漫画のネタにもして欲しくないけれど。 パトリシアさん……も田村さんと同じね。私達のことを騒ぎ立てておしまいよ。 となると、私が知ってる限りでは精々峰岸と日下部か…。 峰岸はないとして、日下部は…… 日下部…… ………… …… あいつかぁぁぁぁぁ!! そうか、あいつか! 同じ大学の同じ学部って聞いたときはまさかとは思ったけど、やっぱりそうだったか! そういえば、こなたを紹介してくれって言い出したのも、あいつだった気がするわ…… 『柊はうちのだ』とか言ってたのも、こなたと話すための口実だったか! そんなことを考えていると、思いたくもない妄想が頭の中に広がった。 『なあ、ちびっこ?いいだろ?』 『駄目だよ。私にはかがみが……』 こなたは必死に逃げようとするけれど、あいつはこなたを追い詰める。 『そんなこと分かってるってヴぁ。だから今だけ……な?』 『今だけでも駄目だよ。』 こなたの意思は固い。当然、さすが私のこなただ。 『私のこと、嫌いか?』 『そんなことない。そんなことないけど……』 心優しいこなたにたいして、あいつはそう言ってつけこんでいく。 『だよな~。だったら、友達同士のスキンシップだと思ってばいいじゃん。』 あいつはこなたの両腕を押さえると、そのまま顔を近づけ…… そして…… 「絶対駄目!こなたにそういう事をしていいのは、私だけなんだから!」 高まる感情に身を任せ、私は思いっきり机をたたいた。ドンッという音が私の部屋に響く。 「そういうことって、どういうこと?」 隣にいるこなたが、からかうように聞いてきた。 「そりゃあ、抱きしめたり、キスしたり、頭を撫でたり、髪を梳いたり、頬ずりしたり…他にもたくさんあるけど、そんなの全部よ!!」 感情的になってしまった私は、こなたの問いに対してついこんなことを口走ってしまった。 ああ…何時もの私なら絶対にこんな事は言わない。こんな本当の事なんて絶対に言わないのに… 「そうだね。私もかがみ以外にはそんなことされたくないよ。」 ほら、さっきのは馬鹿な考えだ。愚かな私の妄想だ。うんうん、やっぱりこなたには私しかいない。 ……はて? そう言えば……なんか、微妙におかしくない? 「でしょ?!そうに決まってるわよね、こな……た?」 うん、思い出した。なんであんたが当たり前のように隣にいるのかな? さっきまで、あんたがうちに来ないことで悩んでたって言うのに。 「やふー、かがみん!」 何事もないかのように、こなたが手をあげてそう言った。 「……なんでいるのよ?」 「なんでって、かがみが寂しくしてるんじゃないかって、心配だったから。」 こなたの最近の言い訳。いつも通りのはずなのに、まだ私の頭はうまく働いてくれない。 「勝手に家に入ってきたら、不法侵入よ。」 「将来の伴侶なんだから、別にいいじゃん。かがみもうちに来るときは勝手に入ってもいいからさ。合鍵渡す?」 そんな話をしていたら、だんだんと醒めてきた。ええ、冷静になって来ましたとも。 そんな私が、今こなたに聞くべきことは…… 「合鍵は遠慮なくもらうとして……ねえ、こなた?」 「なに?」 「えっ……と、何時からいた?」 「かがみが『もしかして……私に飽きた?私のこと、嫌いになった?!』って言ってたあたりから。」 私の声色と話し方を真似しながら、こなたは言った。 つまり、最初からいたと…… その言葉を聞いて、あの時とは別の意味で顔が青ざめる。 「『いや、そんなことない!こなたが私を嫌いになるなんてありえない!』」 「うっ……」 一旦は青くなった顔が、今度は段々と赤くなるのがはっきりと分かった。 「『………えへ。』」 「―――――――!!!」 私は声に鳴らない悲鳴をあげると、逃げ出すようにこなたの隣から離れた。 そしてそのままベットに直行し、頭から布団を被る。 穴があったら入りたいとは、きっと今みたいな事を指すんだろう。 「ああ、からかいすぎたよ。ごめんね、かがみ。謝るから、布団から出てきてよ。」 私はその言葉に応じて、頭だけ顔を出す。私はこなたと違って非常に素直なのだ。 「なんでずっとうちに来なかったのよ?」 こなたを見ずに拗ねたように言ってみる。 「ずっとって、たった二週間だよ?」 「それでもよ。」 「かがみからの電話も毎日ちゃんと出たし、メールも毎日返したよ?」 「それでもって言ってるでしょ!」 今回ばっかりはこなたの言い分が正しいと思う。 でも、好きな人の姿を見たいと思うのはいけないこと?好きな人がちゃんと傍にいて欲しいを願う事は駄目なことだろうか? 「分かったよ。ちゃんというからさ、布団から出てきてよ。」 それじゃあと、私は布団から抜け出した。こなたはそれを見ると、ベットに近づいてきて私の隣に座った。 「かがみさ、前に会ったとき手袋欲しいって言ってたよね?」 「そういえば、言ったような気がするわね。」 この時期、手袋やマフラーは必須アイテムっていってもいい。 そして私はつい最近、その必須アイテム、手袋をどこかに片方だけなくしてしまったのだ。 まったく、手袋といい靴下といい、二つあるものはどうして片方だけなくなっちゃうのだろう? 「もう代わりのやつ買っちゃった?」 「まだよ。先週は課題が忙しかったから。」 そういえば、課題が忙しかったから、少しだけ来るなとこなたに言っておいた気がする。 なんだ。こなたがうちに来なかったのは、その為でもあったのか。 「よかった。……はい、これ。」 こなたは鞄から手袋を取り出すと、私にポンと渡した。 菫色をした毛糸の手袋だった。そしてなにより……手編みだった。一目で分かった。 手にはめてみるとぴったりで、そしてなにより暖かかった。 「これって、こなたが編んだの?」 「そうだよ。ほら、見てよこれ!」 こなたはもう一つ鞄から手袋を取り出した。今度取り出したほうは蒼色をしていた。 「すごいでしょ!お揃いだよ!」 こなたも私と同じように手袋をはめると、私に見せびらかした。 「でもさ、編み物とか始めてで、しかも二週間でこれだけ出来るたんだからすごいよね。私編み物の才能あるよ!」 顔を赤らめながら、胸を張ってそう言うこなた。きっと照れてるんだろう。 ああ、本当に可愛い…… 私は隣にいるこなたを思いっきり抱きしめた。二週間ぶりのこなたの温もりを感じる。 「ありがとう。本当に大事にするわ。」 「うん、大事に使ってよ。今度これ着けて、どっか遊びにいこうね。」 「そうね。そうしよう。」 しかし、本当にこなたにはかなわない。会いに来てくれるだけで、こんなにも私を幸せにしてくれる。 先ほどまでの焦燥も、まるでちょっと長い待ち時間のようだ。 「ねえ、かがみ?」 私の腕の中で声がした。 「なに?」 「私さ、これ作るのすっごい頑張ったんだよ?」 こなたは編み物は始めてだといっていた。それなのに手袋を二つ。才能があったとしても、並大抵の努力じゃできないだろう。 「そう。」 「普段見ない編み物のサイトとか見てさ。毛糸を買いに手芸店にまで行ったんだよ。」 手芸店に買い物に行くこなたを想像する。子供が買い物に行くみたいで、ちょっとおかしかった。 「そっか。」 「そうだよ。ネトゲーも我慢したし、漫画もアニメも見ないで頑張ったんだよ?」 あのこなたが、ゲームも漫画もアニメも見ない。これだけでもこなたの意気込みを感じられる。 「うん。」 「さっきはああ言ったけど、私だってかがみにだって会いたかったんだ。だけどこれが出来るまではと思って、必死に我慢したんだよ?」 これは嬉しい。結局私達は同じ気持ちだったのだ。 「こんなに頑張ったのにさ……」 「―――?」 「そのご褒美が『抱きしめてくれてありがとうの言葉』くらいじゃ、割に合わないと思わない?」 こなたは上目使いに私を見ると、ゆっくりをその目を閉じて唇を突き出した。 普段の私だったら、『調子にのるな』とでも言って一蹴していただろう。 だけど、ずっとこなたに会わなかった所為かな?非常にうれしい事に、今の私はどうかしているみたい。 「馬鹿……」 私はたった一言呟いた。 そしてこなたと同じように目を瞑ると、ゆっくりとこなたに顔を近づけた。 もう一つの待ち時間へ コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-07-14 18 33 16) かわいい・・・えへwww -- 名無しさん (2010-11-13 19 00 24) 溶ける -- 名無しさん (2010-11-05 20 51 16) こな×かがはジャスティス です! いいこな×かが次も期待 してます! -- 無垢無垢 (2009-01-29 23 18 52) いいなぁ~ホント毎回同じ感想でスイマセンが、この様なこな×かがは大好きでたまりません。G.J -- kk (2009-01-29 21 53 43) 良いこなかがをよんだw その後はもちろん……えへww -- 名無しさん (2009-01-29 13 34 46) 読んでてこっちまで………えへwwとなったのは言うまでもないですwwGJ! -- 名無しさん (2009-01-29 13 08 14) ちょっとアホっぽいかがみんが……えへww -- 名無しさん (2009-01-29 12 45 08) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/529.html
ゆっくりわさび 家に帰宅するなり、自分を迎えてくれたのは無残にも散らかされた部屋と 開けっ放しの冷蔵庫、そして水道の水がジャーと音を立てたまま流れ続けている。 そして部屋の奥で笑顔の紅白の饅頭だった。 「ゆ? ここはれいむのおうちだよ、ゆっくりしていってね!」 と言い出す、お饅頭。 これは、ゆっくりという生物らしく、見た目は人の顔だをした生き物だ。 このゆっくりは、ゆっくりれいむという種族で、赤いリボンをしているのが特徴。 それからゆっくり達の顔は、みんな女の子の顔をしており髪の毛もしっかりついている ゆっくりの赤ちゃん達も生まれながらに髪の毛と、種族がれいむならリボンも付いているらしい。 「おじさんはだれ? ここはれいむのおうちだからかってにはいらないでね」 人の家に無断で侵入しておいて、よくもまあそんな事が口から出てくるものだ これが動物ならば家の主が帰ってくれば一目散に逃げ出すのだろうが このゆっくりという種族は知能をもち、人語を話す、動物と違い会話ができる知能がある。 しかしその中途半端な知能は人間にも動物にも圧倒的に劣る。そのアホな知能のお陰で大抵のゆっくり達は長生きができないのだ なぜかって? どんなに悪事を重ねても(ゆっくり達に善悪はわからない)満面の笑顔で。 「ゆっくりしていってね!」などとほざく。 善悪が分からないということは可哀想といえば可哀想だ。 とりあえず俺は、ゆっくりれいむを無視して部屋の片付けに取り掛かった。 まずは出っぱなしの水道を止める。けっこうキツめにひねっておく。 次は部屋の片づけだ。 本棚からあふれ出された本を片付ける、いくつかはページやカバーをやぶり捨てられている 多分、食物と思いページを食べたのだろう。 食べられないと分かると、はき捨てたページと思われる、ゆっくりが吐き出した胃液でぐちゃぐちゃになっている塊が そこら中に散らばっている。 それらを一つ一つ、手に取り、ゴミ箱に捨てる。 もちろんゴミ箱もご丁寧に倒されてあり、中のゴミが散らばっている。 そのゴミも一緒に、さっきのページの塊と一緒にいれていく。 ゆっくりのよだれと見られる白い液も雑巾で拭いていく。 その様子にゆっくりれいむは、この男が部屋の片付けに来てくれたのだと思いこう言う 「おじさん、れいむのおうちをきれいにしてくれてるんだね、ありがとう」 ほう、勘違いしているとはいえ、ゆっくりもお礼を言うことくらいはできるのか 「でもきれいにしたらでていってね、ここはれいむのおうちだから れいむがひとりでゆっくりするよ」 やれやれ、前言撤回だ。 このゆっくりという生き物は、自己中心的で自分の事しか考えられないらしい この性格が災いして、黙っていればそこそこ可愛いかもしれないのに、人の怒りに触れてしまう その結果、殺されてしまう。 こういえば怒るとか喜ぶとかがよく分かっていないらしい 完全に自分のルールの中だけで生きているのだ、子供のうちは仕方ないかもしれないが、大人になっても こうであるのだからどうしようもない。まあ、ゆっくりだしね。でもやっぱり喋るのがいくない。 この喋る機能のせいで、大抵の人の神経を逆撫でしてしまうのだ。 そして最後に開けっ放しの冷蔵庫を見る。 中に入っていたものは食い散らかされ、見るも無残な姿になっている。 倒れて、ぼたぼたと中身が流れている紙パックのオレンジジュース、牛乳 潰れた卵パック、袋を破り捨てて食ったと思われる、ハムやウィンナー 野菜も全滅。 どの野菜も不味い茎や根っこの部分だけご丁寧に残っている。 はぁ… と冷蔵庫を閉めようと思った俺は冷蔵庫の奥に残っているものを発見した。 「こ、これは… わさびじゃねーか!」 前に刺身用に勝ってきた新品のわさびである。 なぜ新品かというと、大抵の刺身にはわさびも一緒にくっついてくるものなのだ。 だから使わずに新品だった、それだけ事なのだ。 そのわさびを見つめ、俺は面白い事を考えた。 このゆっくりに天国と地獄を見せてやろうと。 後ろを振り向きゆっくりれいむの方を向く。 「おうちがきれいになったよ ありがとう おじさんはもうでていってね」 まだそんな事を言ってやがる、まぁいいや、俺はゆっくりにある提案を持ちかけた。 「ごめんな、ここはれいむのお家だったんだよな、でもおじさんも帰るおうちがないからここに住まわしてほしいんだよ」 ぷぅーと顔を膨らませこう言い返す。 「だめだよ、ここはれいむだけのおうちだもん ゆっくりするのはれいむだけだよ」 なんという自己中饅頭だ。 仕方ないので条件を出すことにした。 「じゃあおじさんがいまから美味しい食べ物を持ってきてあげる だから一日だけでいいから泊めて、お願い」 その条件を聞き、ゆっくりれいむの顔つきが変わった。 「おいしいものくれるの、じゃあいいよ でもあしたになったらでていってね」 ちゃっかり明日には出て行けといい忘れない所にゆっくりの自己中心な性格を感じる。 そして俺は、ゆっくりに占領された我が家を出て、夜のコンビニに向かった。 「いらっしゃいませー」 コンビニに着いた俺は、早足で目的の商品を買う。 目的の商品は、わさび二つと、抹茶アイス二つだった。 「ありがとうございましたー」 商品を店員から受け取ると急いで家へと向かう。 家のドアを空けるなり、ゆっくりれいむが近寄ってきた。 「おじさんおかえり! はやくおいしいものたべたいよ!」 ぽよんぽよんとゴムボールのように跳ねまわり、よだれを垂らしながら俺の持っているコンビニの袋に飛びつこうとする。 「まだ駄目だよ、この食べ物はよーく冷やさないとおいしくないんだ、今食べたらおいしくないぞ」 そう俺に諭されゆっくりは残念そうに袋をみる 「ゆぅ… わかったよ がまんするね」 とりあえず買ってきたわさびとアイスを冷蔵庫に入れる。アイスだけは溶けないように冷蔵庫の一番上の冷凍庫に入れる。 ちなみにこの段は何も入っていなかったのでゆっくりに襲われずにすんだ場所である。 それ以前にゆっくりの跳躍では一番上まで届かないということでもあるが。 とりあえずよく冷えるまで一時間程度置いてみる事にした。 その間また何かされては困るので、監視もかねて、ゆっくりれいむと遊んであげる事にした。 そして一時間後 買った時よりもよく冷えた、わさびとアイス。 これを別々に同じ容器に入れる。透明なガラスの容器なの冷たさを一層引き立たせる。 遠目で見ると一見同じ、抹茶アイスだが片方はわさびの塊である。 チューブのわさびを二本まるまる使ってできた一品である。 「これでよし… と」 思わず口元がにやける、これから始める悪戯に対して、いい歳しつつもワクワクしてしまうのだ。 最初に抹茶アイスの方だけをゆっくりれいむの方へ持っていく。 「これが美味しいアイスっていう食べ物だよ」 ゆっくりれいむの目には、コンビニの抹茶アイスが輝いて見える。 冷たそうで美味しそう。透明な器に入れてあるのでより一層そう感じる。 初めて見る食べ物に、ゆっくりれいむの口元からはよだれがだらだら溢れてきていた。 「まずは俺が一口」 ぱくっとスプーンでアイスを口に運ぶ俺。 感想は、まぁ抹茶アイスですね… くらいか それを見たゆっくりれいむは自分にも早く早くとばかりに、ぴょんぴょんとアイスに食いつこうと跳ねる跳ねる。 「おじさん! はやくれいむにもそれちょうだい ゆっくりはやくたべたいよ」 ゆっくりはやくという言葉の意味はわからなかったが、スプーンで一口すくい、ゆっくりれいむの口に入れてやる。 ゆっくりれいむの口の中に広がる、極上の冷たく甘い刺激! 一口のアイスを何度も下で転がし味わいまくる。 「しあわせー!!!」 たった一口のアイスを思い切り味わったゆっくりれいむの表情はご満悦といった感じだった。 「おじさん! もっとちょうだい! もっとゆっくりたべたいよ!」 きらきらした目と表情で、もっとよこせと訴えてくるゆっくりれいむ 「いいよ、全部食べなよ」 俺はそう言って残りのアイスを全部あげることにした。 「ゆっくりいただきまーす!!!」 物凄い勢いで、器の中に頭を突っ込みむしゃむしゃとアイスを頬張るゆっくりれいむ。 こんな汚い食べ方は動物でもしないだろう。見ていて哀れにしか見えない。 あっという間にアイスを感触し、満足そうなゆっくりれいむ。 ゆっくりゆっくり言ってる癖にゆっくり食べるという頭はないのだろうか。 ゆっくりれいむは俺の方を向きこう言う。 「おじさん! もっとないの! もっとたべたいよ! いますぐもってきてね!」 そう来ると思った。俺はすぐに準備してあったわさびアイスを持ってくる。 「はいはい、ちゃあんと準備してあるよ」 ゆっくりれいむの傍に、わさびアイスを置く。 「いただきまーす!!!」 おかわりのアイスを目の前にゆっくりれいむは、抹茶アイスではないわさびアイスに飛びつく。 思い切り大きな口を開け、わさびのアイスを丸呑みだ 「やった!」 思わず口から喜びの声が漏れる。ついにこの馬鹿饅頭にわさびの塊を食わせる事ができた。 これからどうなるのか? 考えただけでぞくぞくしてくる。 「ん…? なんだかこれへんなあじがするよ さっきのとはちがうよおいしくないよ」 バカタレめ、食い意地はって一口で丸呑みにするからだ。 全部食ってからようやく気付きやがった。しかしもう遅い! 数秒後、ゆっくりの表情がみるみるうちに変わっていく 「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! ぐぢのなががからいよ! めがいたいよ!」 ついにわさびの効果がきき始めてきたか。 ゆっくりれいむは目から顔から大量の涙と汗をたれ流し、のたうち回りはじめた。 「うげえええ!!! ぶぅうぅおえええええええええええええええええええ!!!」 口を大きく広げ、なんとか食べたわさびを吐き出そうとする、ゆっくりれいむだが、既にわさびは消化済みらしい 「いだい!いだい!いだいよ おくちがいだいおおおおおおお!!!」 目からは涙は止まらない、いや顔全体から液という液が垂れ流しになっている状態だ。 このままでは自分は死ぬと悟ったゆっくりれいむは、のたうちまわるのをやめ、ある場所へと突撃した。 その場所とは水道である。この危機を打破する為には水を飲むしかないと判断したのだろう。 「みずぅ!! おびずうううううう!!!」 物凄い形相で水道の方へ飛び跳ねていくゆっくりれいむ。 だが、そんな簡単にいかせるわけにはいかない。 「そうはいくか!」 俺はすかさず、後ろからゆっくりれいむを掴み、壁に叩きつけた。 「うぶぇ!!!」 壁に投げられずりずりとすり落ちていくゆっくりれいむだが、口の辛さと、目の痛さがそれを許さなかった。 すぐさま起き上がり、水道へと網突進を開始する。 「びず!!! びずぅううううう!!!」 「オラァ!」 またまたすかさず、飛び上がった隙を狙う。 「ぶふぅ!!」 飛び上がったゆっくりれいむを殴りつける俺。もちろん全力ではない。 それでもゆっくりに対してはかなりの威力があったらしく、殴られた勢いでぼよんぼよんと床を何回もバウンドし叩きつけられた。 「ゆ… ゆぅ…」 今ので結構なダメージらしくなかなか起き上がってこない。相当に顔にもダメージを受けている。 だが、目の痛さと口の辛さは休むのを許してくれなかった。 「ゆぅぅぅ!! ゆっぐりどいてねぇえええ!!!」 修羅のような顔で、三度目の突撃を開始する、ゆっくりれいむ。 もはや、ゆっくりれいむには水道しか見えていない。 そして俺は、水道を守護する門番な気分になっていた。 飛んできては、殴り、投げ、殴り、投げの繰り返し。 それでも、ゆっくりれいむは水道に行くのをあきらめなかった。 「ゆっぐり!どいてよぉおおおおお!!!」 「おみず! のませでぇええええええ!!!」 「ほんどに ほんどにじんじゃうううう!!!」 根気負けという奴だろうか、俺はついに水道への道を開けてやる事にした。 「しょうがない、俺の負けだ 早く行けよ」 「おびずぅぅぅ!!!」 真っ赤な顔をして一目散に水道へと向かう、ゆっくりれいむ。 もはや、ゆっくりれいむの顔は限界に来ていた。 口の中の感触がまるでない、焼け爛れたようにジンジン痛みが襲ってくる。 眼球が飛び出そうだ、涙も枯れ果てている。 一歩、一歩、水道が近づいてくる。 そして、水道の真下までたどり着いた。後はこの上まで飛び上がるだけだ。 ゆっくりれいむは最後の力を振り絞り、大きな跳躍を見せ、見事水道の蛇口まで飛び上がった。 そして、蛇口をひねれば水が出るという事を知っていた、ゆっくりれいむは蛇口に口を挟み、ひねり始めた。 「む゛ー!!! む゛ー!!!」 必死に蛇口を回そうとするが、一向に回る様子がない蛇口。 どうして? どうして回らないの? と涙は出ずとも、悲しい表情のまま蛇口を必死にひねり続ける。 なぜ回らないのかというと、別に特別な仕掛けを仕掛けたわけでもなく、きつめに捻っておいただけだ。 しかしゆっくり程度の口の力ではまわすことも適わない。 「む゛ー!!! む゛ー!!!」 ぷはっと口を離してしまい、そのまま水道の流し台にすっぽりはまる、ゆっくりれいむ。 なんともお似合いの格好だ。これが便器だったらさぞや面白い光景だったろう。 「どうじで… どうじでまわらないの!!」 すっぽり水道にはまった、ゆっくりれいむを上から見下ろす俺。 「どうしたんだよ? 早く水を飲まないと本当に死ぬぞ」 にやにやした顔つきで、ゆっくりれいむに状況を聞いてみる。 「おじざん… だめだよ じゃぐちがあかないよ… おねがいだよ じゃぐぢをひねってね!」」 ここに来て、俺を頼ってきたか。仕方ない俺は鬼でも天狗でもない、助けてやろう。 もちろん条件つきでな。 「とりあえず、ゆっくりれいむよ、ここは俺の家だ、それだけはまず最初に認めてもらう」 「ゆぅ… わかったよ ここはおじさんのいえだよ… だからはやくじゃぐちを」 もはや反抗する気力もないのか条件を認める、ゆっくりれいむ、なんがか張り合いがないな。 「次に、散々人の家を散らかした罰だとして、しばらく働いてもらうからな」 「わかった わかったよぅ だからはやくおみずを… おびずをください!!」 条件に承諾したのを確認したので、俺は蛇口を思い切りひねった。 ジャアアアアーーー! 勢いよく冷たい水が噴出してくる。 その真下にいた、ゆっくりれいむに水がどばっと落ちてくる。 「おびずぅぅぅ!!!」 大きな口を限界まで広げ、冷たい水がわさびで腫れた口を癒してくれる。 もちろん顔中に水はかかるので、目にも潤いがすこしづつではあるが戻ってくる。 しばらくそれを見ていると、真っ赤に腫れていたゆっくりれいむの顔が普通の肌色に戻っていく。 顔色が良くなったのを確認すると蛇口の口を逆にひねり水を止める。 「ゆぅー」 命が助かったのを顔全体で安心しているのか、ゆっくりれいむの表情は非常に穏やかだった。 「良かったな、お水が飲めて、飲ませてやったんだから、明日かたは俺の言うことに従ってもらうぞ」 「ゆ? おじさんなにいってるの? ここはれいむのおうちだよ、おじさんはでていってね」 なんという事だ。この饅頭は、つい数分前の約束すら覚えていない。 それも自分に都合の悪いことは全て忘れる、どうしようもない脳みそを持ってやがる。 「ゆっくりでていってね おじさんはきらいだよ」」 … やれやれだ、俺は冷蔵庫に向かい、最後のわさびチューブを取り出す。 そして、水道にすっぽりはまっている、馬鹿饅頭の元へと戻っていく。 「おじさん はやくでていってね まずいものをたべさせる おじさんはだいきらいだよ」 身動きが取れないその状態でよくもそんなセリフが吐けるものだ。 つくづくこの馬鹿饅頭に感心させられる。 「口を開けろ」 そう俺はゆっくりれいむに命じた。 「ゆ? またおみずをくれるんだね! ゆっくりあけるよ」 馬鹿でかい口を、あーんとばかりに大きく開ける。 「今度はゆっくり味わってね」 わさびチューブをゆっくりれいむの舌や口の中に塗りつける。そりゃあもうべっとりと。 「じゃあな、俺は出て行くよ さよなら」 水道にはまったゆっくりれいむを後にし、俺は家を一旦出た。 何かを自分の舌や口の中に塗られた気がしたが、男が居なくなって、ご満悦のゆっくりれいむ。 「ようやくゆっくりできるね… ゆっ!」 再び先程の悪夢が蘇る。 口の中が大火事だ、眼球が燃えそうに熱い、汗が止まらない。 「ゆびゅおあああああああ!!!」 すぐに真上にある、蛇口をひねろうとするが、なんと自分ははまって動けない。 んーんー! と精一杯の力で脱出を図ろうとするが全然取れない。 その間にも、顔の中から地獄の業火のような痛みが続く。 「おぼぇえええええええええ!!! おじざん!!おじざん! じゃぐちをひねってぇえええ!!!」 しかしそこにはもう男の姿はない。それに自分が今さっきでていってねと催促したのではないか、今更遅い。 「うぶぉああああああああああああ!!! だずけでぇええええええええええええええええええ!!!」 その声を俺は玄関の外から聞いていた、もう少し、ゆっくり慎重に言葉を選ぶ餡子があればこうはならなかった のになと心の中で不遇に思った。 ゆっくりれいむは絶命する直前に幻覚を見た。 他のゆっくり達が綺麗な水のあるオアシスでゆっくりしているのに、自分だけは終わりのない灼熱の砂漠でさ迷っている。 どんなに足掻いても、オアシスには辿り着けずに永遠に砂漠をさ迷う自分。 その幻覚はそのまま今の現実に直結していた。 ほんのすぐ真上にある蛇口、しかし自分ははまっていて身動きがとれない。 水のあるオアシスの入り口は目の前だというのに。 「ゆぅー ゆぅー ゆぅ… ゆぅ」 息もたえたえになって意識が薄れてきた、それでも顔の中からの激痛はやまない。 もうこのまま死にたいが、激痛がまだ、死につれていってはくれなかった。 目はもはや眼球が飛び出そうだ、ぶちゅぶちゅと眼球の間から、中の餡子がちょっとずつ出てきている。 「いだいよぉおおお!! いだいよぉおおお!!」 ひたすら叫ぶのを繰り返す、ゆっくりれいむ、でも助けは誰も来ない。 「だれかだずげでぇえええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」 そして三時間後、俺は、ゆっくりれいむの悲鳴だけを聞くのも飽きたので友達の家へ遊びに行っていた。 帰宅して早速、洗面所を見にいく。 すると、燃え尽きたような黒い饅頭がすっぽり水道の流しにはまっているではないか、やはりこのまま絶命したか。 本当に心から哀れな生き物だと思い、その黒い饅頭の残骸を生ゴミ袋に捨てた。 自分の事ばかり考えて生きてきた結果がこれだよ! ゆっくりわさび 終 ゆっくりにわさびを食わせたらどうなるんだろうと、考えたSSです。 もちろん自分は、大量のわさびなんぞ食った事ないので、大量のわさびを食べた生物がどうなるのかなんぞ 知りません。 すべて自分の想像です。 でも多分、死ぬんだろうな・・・ このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/83452/pages/2227.html
唯「ムギちゃんのお菓子は今日もおいしいね~」 くっちゃくっちゃくっちゃぴっちゃくちゃくっちゃぺちゃぴちゃくっちゃくっちゃ 紬「そ、そうかしら。ありがと……」 唯「うん、最高だよ~」 くっちゃぴっちゃくっちゃくっちゃくちゃくっちゃぺちゃぺっちゃぴっちゃくちゃくちゃ 澪「……」 律「……」 唯「紅茶もおいしいし」 ず~じゅるじゅるじゅるじゅるず~ずずじゅるじゅるずずずず 唯「げええぇ~っぷ……あー、おいしかった。 ムギちゃん、爪楊枝とって」 紬「はい、どうぞ……」 唯「ありがとう」 チィッチィッ シーシー 澪「……さ、じゃあ、そろそろ練習しようか……」 律「そうだな……」 唯「あれ? でも澪ちゃんたち、まだお菓子食べてないじゃん」 澪「私は……後で食べるよ」 律「私も」 唯「ふうん……げえええぇっぷ」 ―― ――― ――――― 澪「ふう、じゃあそろそろ休憩するか」 律「そうだな」 唯「私、今日はもう帰るよ~」 紬「え、なにか用事?」 唯「うん、今日は久しぶりに両親が帰ってくるんだ~。 それで、レストランでお食事するの~」 澪「そうか、それはよかったな……」 唯「うん、そういうことだから。じゃね~」 律「ああ、またな」 紬「……」 澪「帰っちゃったな」 律「おい、澪」 澪「なんだよ」 律「唯に言えよ」 澪「何をだよ」 律「わかってるくせに」 澪「……いやでも、そんなの言えるわけないだろ」 律「それはまあ、そうだけど」 澪「唯のせいで、お菓子食べる気なくなっちゃうよなあ……」 紬「ごめんね、もう持ってこない方がいいかしら……」 律「ムギが謝ることないって……」 澪「それにしても、レストランで食事か」 律「家族の人は、唯についてどう思ってんだろな」 澪「一家揃ってあんな感じなんじゃないか?」 律「だろうな……まともな家族なら注意するはずだし」 澪「まあいいや、唯のことは置いといて、お菓子食べよう」 律「あ、そのお菓子、さっき唯の唾が飛んでたぞ」 澪「……」 紬「……」 翌日、昼休み。 唯「一緒にお弁当食べよ~」 律(げっ、なんでこっちの教室に……) 澪(自分の教室で真鍋さんと食べてりゃいいのに) 紬(お昼ごはんタイムまで唯ちゃんに冒されるなんて……) 唯「おなかぺこぺこだよ~」 澪(こっちは唯の顔見ただけで食欲失せたよ……) 律(いやだなあ……) 唯「でさー、昨日レストランに行ってきたんだ~」 くっちゃくっちゃくっちゃにっちゃねっちゃぴっちゃくっちゃくちゃくちゃにちゃ 澪(モノを口に入れたまま喋るな……) 唯「こーんなにおっきいステーキ食べたんだよ~」 くちゃくっちゃねっちゃぴっちゃぴっちゃくっちゃくちゃくっちゃぴゅっ 律(うわっ! なんか飛んできたっ) 唯「憂もすっごく喜んでてさ~」がつがつ 紬(犬食い……) 唯「お父さんやお母さんとも久しぶりにお話できたし」ぐさっ ぶすっ 澪(刺し箸……) 唯「すっごく楽しかったよ」ちゅぱちゅぱ 律(舐り箸……) 唯「あとスープも美味しかったな~」 くちゃくっちゃくっちゃにちゃねっちゃくっちゃぴちゃくっちゃ 澪(肘ついて食うな……) 唯「なんかよくわかんない野菜が入ってたんだ……げえええええっぷ」 紬(さっきから周りに白い目で見られてるわ……) 唯「ふう、ごちそうさま」 律(やっと終わったか) 唯「そうだ、果物あったんだ」 そう言って唯はタッパーを取り出した。 中には大粒のブドウが入っていた。 唯「わーい、ブドウだー。憂ったら気が効いてるなあ」ぱくり 澪(皮ごと食べた!?) 唯「んぐんぐ……んべええぇぇっ」 律(皮だけ吐いた……) 紬(きたない……) 紬「そ、そういえば……いつもは真鍋さんと食べてるみたいだけど、 今日はどうしてこっちに来たの?」 唯「ああ、和ちゃんは生徒会の活動で昼休みにいなくってさ~」 澪「へえ、そういや学園祭が近いもんなあ」 唯「うん、だから学園祭までずっと生徒会の活動あるんだって」 律「と、いうことは……」 唯「学園祭終わるまで、毎日こっちに来るね!」 澪「……」 律「……」 紬「……」 きーんこーんかーんこーん 唯「あっ、5時間目始まっちゃう! じゃあね~」 澪「おう……」 澪「あれが毎日来るなんて、嫌すぎるよ……」 律「ここは覚悟を決めて、唯にがつんと注意するしかない」 紬「誰が注意するの?」 澪「……じゃんけんしよう」 律「そうだな、それが一番公平だな」 紬「ええ、じゃあ恨みっこなしの一発勝負で」 澪「よし、最初はグー! じゃんけん……ちょき!」 律「ぐー!」 紬「ぐー」 澪「……」 律「……頑張れ、澪」 紬「澪ちゃんならきっと出来るわ!」 放課後、音楽室。 唯「今日のお菓子もおいしいね~」 くっちゃくっちゃくっちゃにっちゃぴっちゃぺっちゃぴっちゃくちゃくちゃくっちゃ 律(さあ、いけ、澪!) 紬(今よ、澪ちゃん!) 澪「………………あのさ」 唯「ん?」 澪「学園祭ライブ用の歌詞を書いてきたんだ」 律(おい、澪……!) 紬(今は歌詞は関係ないでしょう!) 澪「まず唯に見てほしいんだ」 唯「うん、どれどれ」 くちゃくちゃ時間 お菓子食べると いつもお口くちゃくちゃ ご飯の時も 咀嚼するたびくちゃくちゃ いつも鳴ってる キミのくちゃくちゃ 食べる本人 気づかないよね 夢の中なら くちゃくちゃ音 注意できるのにな ああ カミサマお願い お上品なお食事タイム下さい☆ 刺し箸も 犬食いも ゲップも マナー違反なのよ♪ くちゃくちゃ時間 くちゃくちゃ時間 くちゃくちゃ時間 唯「……」 律(なんという巧妙な作戦……) 紬(ただ面と向かって言えないだけでは……?) 澪「ど、どうかな、唯……」 唯「うん、良いと思うよ! やっぱり澪ちゃんのセンスは独特で斬新だよね~」 澪「そ、そうか。ありがとう……」 律(おい、伝わってないぞ) 紬(澪ちゃん、やっぱりガツンと言わなきゃダメよ) 澪(えー……) 唯「ねえ、歌ってみてよ~」 澪「えっ、ああ」 澪「お菓子食べると いつもお口くちゃくちゃ」 唯「くっちゃくちゃくちゃくっちゃぴっちゃぴちゃぺちゃくちゃにっちゃにっちゃ」 澪「ご飯の時も 咀嚼するたびくちゃくちゃ」 唯「にっちゃくっちゃぺっちゃくっちゃにちゃにちゃくちゃくちゃくっちゃくっちゃ」 澪「いつも鳴ってる キミのくちゃくちゃ……」 唯「くちゃくっちゃくっちゃくっちゃぺっちゃぴちゃくちゃくっちゃくちゃくちゃくっちゃ」 澪「食べる本人……気づかないよね……」 唯「にちゃにちゃくっちゃくちゃくちゃくっちゃくっちゃくっちゃくちゃくちゃにっちゃぺちゃ」 澪「夢の中なら……くちゃくちゃ音……注意できるのにな……」ぷるぷる 唯「くちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃ」 澪「あ……ああああ……うがあああああああああああああ!!!!!!!」 律「うわっ、ついにキレた!」 澪「唯っ!! お前いつもくちゃくちゃくちゃくちゃ耳障りなんだよっ!!」 唯「へ?」 澪「この歌詞はお前のことを書いたもんなんだよ!! くちゃくちゃ音も! 箸の使い方も! ゲップも! 犬食いも! 箸やフォークを握って持つのも! 弁当箱の蓋の裏を舐め回すのも! プリンをぐちゃぐちゃにかき混ぜてストローで吸うのも! 私たちはずっとずっと不愉快に思ってきたんだよおおおおおお!!!!」 唯「そ、そんな……私、普通に食べてただけだよ!!」 澪「全然普通じゃないっ!! ほらっ、これ読め! 食事のマナーの本だ!!」 唯「……」 澪「今日はもう部活中止!! 唯は家に帰ってその本を読むこと!! あとこの歌を20回歌え!! 分かったな!!」 唯「……うん」 澪「よし、じゃあ今日は解散!!」 律(澪、言うときは言うんだな~) 紬(見直したわ) 翌日の昼休み。 唯は澪たちの教室には現れなかった。 しかし、その代わりに和がやってきた。 和「秋山さんたち、いる?」 澪「あれ、真鍋さん? 生徒会なんじゃ……」 和「ちょっと隙を見て抜けてきたの。 あなたたち、唯に食事のマナーを注意したんだって?」 律「ああ、澪がな」 和「そう……まあ、確かにあれは、見ててすごく不愉快だけど…… 失敗したわね」 澪「え?」 和「すぐ来ると思うわ」 紬「くるって、誰が?」 和「モンスターシスターが」 澪「モンスターシスター?」 和「平沢姉妹のことを知る者の間ではそう呼ばれているの。 唯の妹、憂のことよ」 律「怖いやつなのか?」 2
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/102.html
「ぎゃおー♪たべちゃうぞー♪」「う゛~♪う゛~♪」 「ゆっくりゃ様、こっち、こっち」「ゆフラン様、そっちは行き止まりですよ」 ゆっくり達が来て3週間が経過した。 ゆっくり達は更に館の中の皆と仲良くなった。今ではゆっくりゃとゆフランはいつも誰かと遊んでいる。 今もフランとメイド達と共に遊んでいる最中だ。 この3週間、レミリアもゆっくり達がじゃれてくることは何度もあった。しかしレミリアはそのたびに逃げてきた。 今では自らのカリスマ性の低下の事は特に問題にしていなかったが、 そのかわり自らの心に深い罪悪感と激しい嫉妬をを覚えるのであった。 あの二匹はいつも一緒にいた。ゆっくりゃがおねぇさんぶって行動し、それにゆフランがついていった。 二匹ともお互いの事をまるで姉妹のように寄り添いあっていた。 自分はどうだったか。フランが生まれてこれまでの間、あの二匹がお互いにするように接してあげたことはあったのだろうか。 もっと優しくすることが出来たのではないだろうか。あの子達のように接することができたら。苦悩する日々が続いていた。 「ふらん!こっち♪こっち♪」「ゆっくりしね♪」 そんなある日の夕方、二匹と廊下でばったり出くわすことになった。 ゆっくりゃがゆフランを連れて飛んでいる。 めずらしくフランが見当たらない。周りには誰もいない。 面倒なことになったと思っているこちらの気も知らず、無邪気に飛んでくる。 「ゆぅ~♪」「う゛~♪」 「今少し気分が悪いの。あっちにいってなさい・・・」 「ゆ・・・?ゆっくりできる?だいじょうぶ?だいじょうぶ?」「う゛~?」 そんなレミリアを見て、二匹は元気付けるのようにおどけてみせた。 しかしまったく悪気のないその仕草がかえってレミリアを苛立たせることになった。 「いないいない、うー♪」「ゆっくりー♪」 「いいから向こうに行けって・・・」 だんだん心の中の黒い部分がふつふつと沸きあがってくるのを感じる。 自分の居場所を奪ったこいつらが憎かった。 「うっとおしぃ・・・」 「うー?」「ゆっ?」 こいつらは何も苦労せずに、何も犠牲にせず、フランと一緒にいる。 とたん、ダムが決壊するように今まで抑えていた感情が溢れてきた。 「うっとおしいっていってんのよ!あんた達なんでそんなにフランと仲良くしていられるのよッ! あの子に何もしていないくせに!饅頭の癖にぃッッ!」 明らかに八つ当たりだとわかっていてももう止まらない。 レミリアは二匹のほほに手をかけ、それが千切れるのではないかというほどの強さでつねった。 二匹は泣き喚きながらバタバタともがいている。 「いだいっ、いだい~!」「ゆっ・・・、う゛う゛ぅ」 「あんた達はもうフランに近づくんじゃないわよ・・・。もし今度近づいたら引きちぎって犬の餌にしてやるッッッ。」 「う゛わ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁん」「う゛ぇ゛ぇ゛ぇぇっ」 二匹はあっという間にレミリアの前から飛び去って逃げてしまった。二匹は窓から外に向かって飛んで行った。 二匹の後姿を見て、レミリアはようやく我に返り、自分がどれだけひどいことをしてしまったのか知った。 最悪だった。嫉妬のあまり小動物に八つ当たりをして、あまつさえ二匹を可愛がっているフランに対して近づくなと脅してしまった。 その結果、二匹はろくに出たこともない紅魔館の外に出て行ってしまった。 フランは二匹を溺愛していた。あの子達になにかあったらフランはどうなってしまうのだろう。 呆然としていると、外から美鈴が駆け寄ってきた。 「お嬢様、ゆっくりゃ様とゆフラン様が外に飛び出してしまったのですが、なにかご存じないですか。」 「し、知らないわよ・・・。私は何も・・・」 とたんに美鈴は険しい目をしてきた。 「・・・お嬢様、気の流れが乱れていますよ。本当のことを言ってください。」 美鈴の剣幕に気圧され、レミリアはぽつり、ぽつりと先ほどあったことを喋った。思い出しながら口に出すと、 自分がどれだけ大人気なかったのか再確認することになった。 それを聞いて、うろたえるレミリアに変わって美鈴は素早く対策を立てる。二匹の安否とフランドールの事が心配だ。 「わかりました。とりあえずフランドール様とメイド達には事情を伏せて、 ゆっくりゃ様達が外に遊びに行って危ないということにして伝えることにいたします。 そのときに咲夜さんとパチュリー様は事情を知っていたほうがいいでしょうから、 おふたりにはあらかじめ事情をお伝えいたします。」 主に意見をするということは、かなり精神をすり減らす行動だ。しかし今はそのようなことを言っている場合ではない。 「勝手なことだとは思いますが、許してくださいますか。」 部下に任せるなんて主失格だとレミリアは自嘲した。 一方で気を使ってくれた美鈴に感謝しながら、事態が動いていくことに流されることとなった。 結局、レミリア、咲夜、小悪魔、メイド達、そしてフランがゆっくり達の捜索のために出発することになった。 美鈴は門番であり、館の警護のために残らざるをえず、パチュリーは捜索に向いていないためである。 レミリアはフランがついてくることを拒んだが、フランは 「私も行く。駄目って言われてもついていく。あの子が何も食べられなかったり、寝るところがなくて困っていると思うと、 すっごくやだ。」 と、フランは頑として自らがついていくことを譲らなかった。 その様子を見てレミリアは胸が痛んだ。 捜索を始めて、すでに5時間が経過していた。あたりは完全に闇に覆われ、人外の蠕く時間となっている。 しかし、ゆっくりゃとゆフランの姿は見当たらない。途中でいくつかのグループに別れ、レミリアは咲夜とフランと共に行動していた。 「おふたりはいったいどこに・・・」 咲夜は懸命に探していた。全身が汗だくになり、息も絶え絶えである。瀟洒な彼女にはあるまじき余裕のなさであった。 「はやくみつけないと・・・。ゆっくりゃとゆフラン、おなかすいてないかな・・・」 フランは泣きそうであった。地下に閉じ込められていた頃には決してなかった、幸せな時間が明日からは失われるのではないかと思った。 あの子達は自分が毎日一緒にご飯をあげていた。自分で餌をとったことは一度もない。 あの子達はあれで意外とグルメだ。おなかをすかしていないだろうか。 一緒のベッドで寝ているときに、寝ぼけて食べそうになってしまったことがある。悪い人や妖怪に食べられてはいないだろうか。 そんな辛そうなフランの姿を見て、レミリアは声をかけずにいられなかった。事情を隠していることに罪悪感を感じた。 せめて、心配させないために、冗談でも言おう。 「ねぇ、フラン」 「なに、お姉様」 「もし、もしもよ。もしあの子達が戻ってこなかったらどうするの。ほら、ひょっとしてただ外に出て遊びたかっただけかもしれないし 、紅魔館の中に飽きたんじゃ・・・」 その言葉を聞いて、フランはとうとう我慢できずに泣き崩れてしまった。その能力ゆえに隔離された彼女には、 友達から捨てられるということに耐えることができないのであろう。 失言であったが、もう遅い。 「お嬢様、失礼いたしますが聞かなかったことにさせてください。」 事情を知っている咲夜が横槍を入れる。泥沼であった。 途方にくれていると、遠くから飛んでくる影があった。小悪魔である。二匹の姿が見つかったようだった。しかしその顔は青ざめていた。 小悪魔が息を切らせながら報告する 「ゆっくりゃ様と・・、ゆフラン様が、その、太陽の畑にいたって、風見幽香と一緒に・・・」 少し時は遡る。 幽香は太陽の畑の中で夜の散歩をしていた。彼女は妖怪にしては珍しく、向日葵と共に日中に行動している。 そのため、こんな夜更けまで行動するのは滅多にないことであった。 「あら、ゆっくりじゃないの」 目の前の二匹のゆっくりに目が留まる。涙で目を腫らしていて、弱弱しい。ここに来るまで相当の距離をさまよったのであろう。 「おねぇさんはゆっくりできるひと?」「ゆ?」 ゆっくり達は怯えながら聞いてくる。ところどころに傷があることから、動物にでも襲われたのだろうか。 ゆっくりは基本的に食べられることを恐れないふてぶてしい生き物なので、ここまで何かに怯えるのは珍しかった。 たぶん相当な箱入りか、あるいは誰かにとても可愛がられて生きることに執着してしまったから、 現世でゆっくりすることを望んでいるためであろう。 「ゆっくりできるひとよ。それよりどうかしたの。こんな時間に」 聞くところによると二匹は紅魔舘の主人の妹のペットで、主人の怒りに触れて逃げてきたらしい。 幽香は、おもしろいことになりそうだと興味を持った。 幽香は基本的にゆっくりに興味がない。彼女のように長い時間を生きた妖怪は同じく強力な力を持った妖怪か人間しか相手にしない。 このところ強敵との戦いがなかったのでつまらなかった。妖怪が幻想郷に来てから、段々決闘にルールがつくようになった。 それはそれで手軽に戦えるため悪くないが、やはりお互いの全力を持って命を奪い合う戦いが恋しかった。 けれども、こいつらを餌にすれば紅魔館の悪魔の妹が食いついてくるかもしれなかった。 噂に聞く全てを破壊する程度の能力とはどのようなものだろうか。 「二人ともゆっくりしていってね。歓迎するわ」 それはまさに人外が浮かべる妖しい微笑だった。 風見幽香。危険度極高。人間友好度最悪。以前は大量虐殺を趣味としていたといわれる。幻想郷最悪の妖怪。 「風見幽香は危険よ。私達に任せてフランは帰りなさい。」 「そうです。ここはフランドール様には危険です。」 レミリアと咲夜は必死だった。冷静さを失っているフランと好戦的で有名な幽香を会わせたら、まずただではすまないであろう。 「嫌よ。あの子達が危ないって言うんなら、絶対に私は行く。あの子達を助けるの。」 フランは言うことを聞かなかった。レミリアがなんと言おうと、決して譲らない。 また、あの黒い感情がわいてくる。 なんであの子たちばかり。 私だってフランのことを守ろうって、ずっと頑張ってきたのに。 「フラン、お姉様の言うことが何できけないの。」 レミリアはフランの頬を叩く。フランは信じられない顔をした。 「あの子達がそんなに大事、あの饅頭が、あんなのただの食べ物じゃない。」 叩く、 叩く、 段々強く。 何度も 「お嬢様、いったい何を・・・」 あわてて咲夜がレミリアを抑える。しかしレミリアはもう止まらない。 気がついたらなぜゆっくりゃ達が逃げたのか、言ってしまった。 その時、どれだけ二匹が憎かったかレミリアは自らの嫉妬を抑えることができなかった。 そして全てを語り終えたとき、フランはゆっくりとレミリアに近づいてきた。 そして 殴った。こぶしを握って。 その衝撃波で人間である咲夜は吹き飛ばされ、近くの大木に頭を打ちつけられてしまった。咲夜が時を止める暇もない。 信じられないスピードと破壊力だった。 「お姉様、今までありがとう。そしてさよなら。」 信頼していた姉に裏切られた彼女は、もはや周りが見えていなかった。そしてあっという間に飛び去ってしまった。 またやってしまった。 レミリアは呆然としていた。 この数百年間、私があの子にしてきたことは何だったのだろう。 結局、あの子を閉じ込めて、孤独にして、そして傷つけただけだった。 せっかくできた友達まで奪ってしまった。 レミリアはどうすればいいのかわからなかった。泣き出せるものなら泣きたかった。 咲夜が声をかけてくる。 何もわからない。 もうどうでもいい。 もうどうでも・・・。 また殴られた。今度は平手で、相手は咲夜だった。 咲夜はレミリアをまっすぐ見ていた。 「あの子達はお嬢様とフランドール様より生まれました。」 咲夜は頭から血を流していた。足元もふらついている。 レミリアは咲夜の気迫に押され、一言も発することができない。 「けれども決して本人とは似てもにつきません。ですが、ですが・・・」 もはや立っているのも辛いだろう。それでも咲夜は凛として言い放った。 「あの子達はとても仲が良かったです。まるで本当の姉妹のように。ですから、その元になったお嬢様なら、 フランドール様を愛しているお嬢様なら、きっとうまくいくはずです。今からでも、遅くはな・・・」 最後まで言い切ることなく、咲夜は倒れてしまった。 小悪魔に咲夜の治療を任せ、レミリアはフランを追うことにした。 咲夜の言葉が頭に響いていた。 レミリアが太陽の畑についた頃にはすでにフランと幽香が戦っていた。いつもの弾幕ごっこではなく、肉弾戦も含めた決闘であった。 フランが幽香に駆け寄って、有無を言わさずに戦いになったと考えられる。 ゆっくりゃとゆフランは畑の中のぽっかり空いた空洞に位置していた。恐怖で逃げられないのだろう。 幽香が畑に被害を出さないためか、空中でぶつかり合っているのが幸いだった。 なにしろ幻想郷最悪の妖怪と最凶の悪魔の激突である。レミリアでさえも下手に近づいたらただではすまないだろう。 飽きたな。 幽香はフランの圧倒的な破壊力を持った弾幕と吸血鬼の身体能力に一時は感嘆したものの、 一合、二合と組み合っていくうちに、早くも興が削がれつつあった。 この二人の戦いは戦闘ではなく、闘牛と呼べるものであった。 フランは明らかに冷静さが失われていた。そのため、いつものような豊富な弾幕を用いた様々な攻撃をせず、 一直線に相手を狙った大振りの一撃と大雑把な弾幕のみ打ち続けていた。 幽香はいくら破壊力がある弾幕であろうと、軌道が単純なら楽にかわせる。 フランが身体能力に頼って接近戦に持ち込んでも、幽香も身体能力には全く引けをとっていない。 それどころかフェイントも駆け引きもせずただ直線的な動きで追ってくるフランの攻撃は、 戦闘経験が豊富な幽香にはかすることさえしなかった。 「もっと頭を使いなさいな。吸血鬼に脳がないってほんとうなの?」 「逃げるなぁっ!正面からきなさいよ!」 期待はずれだわ・・・ もっと面白くなると思ったのに、このふがいなさは何だ。せっかくの決闘だ。もっと楽しませて欲しい。 フランの弾幕を最小限の動きでかわす。幽香はかわした際に軽く一撃を打ち込む。難なく当たり、フランは吹き飛ぶ。 そこに幽香は追い討ちをかける。フランは必死に反撃する。そのあまりのスピードのため、レミリアが近づくことさえできなかった。 「本当に下手ねぇ。あなた、自分より強い相手と戦ったことないでしょう。」 「だまれだまれだまれぇっ!!!」 さぁ、どうするかと幽香は考えた。そうだ。相手が怒りによって突っ込んでくるなら、下手に頭を冷やさせるよりも、 もっと挑発して、より相手の力を引き出せばいい。ああいったタイプは逆上させてそのリミッターをはずしたほうがいい抵抗を見せる。 「そんなにあの子達がだいじなの?あんなへんてこな生き物が。悪魔にしてはいい趣味しているわね。」 「あの子たちを悪くいうなぁっっ!」 逆上したフランの剣を幽香が鼻歌交じりにかわす。それは踊っているようにも見えた。 幽香は邪悪に微笑む。 「そこでもっとあなたが本気になれるいいことを思いついたの・・・。」 何かを守ろうとする者には それを目の前で打ち砕こうとする。 「あなたが負けたらあの子達をぐちゃぐちゃに引き裂いて向日葵の肥料にしようと思うの。たっぷり生きたまま時間をかけてちぎって、 ちぎって、ちぎって、畑中に埋めるの。それとも日干しにして虫達の巣にしてあげようかしら。 生きたまま体中に穴を空けさせてさ。いい声で鳴きそうね。素敵でしょう。どっちがいいと思う?」 両者の動きが止まり、フランの周りの空気が一変する。 その表情はゆっくり達とじゃれあった無邪気な少女のものではなかった。 それはかつて地下に閉じ込められていた頃のような、仮面のように無機質な顔であった。 「うるさいよおまえ・・・」 あふれ出す狂気のなか発現する、あらゆるものを破壊する程度の能力 彼女を孤独にした元凶 望まれなかった力 それが彼女の心を憎しみが侵したとき、本来の力を発揮する 空が赤く染まり 空気ですら焼けていく 全てが終わったときには何も残らない 「さぁ、ぼやぼやしていると一匹ずつ始末していくわよ。どっちからにしようかなぁ。」 幽香の試みは成功した。 これだ、これこそがフランの力の本質。圧倒的な暴力。 自分に対して恐怖を与えてくる者こそ戦うに値する。 かつてない強敵との邂逅に幽香は血がたぎった。 フランの右手に魔力が集中する。当たらないのなら辺り一面を吹き飛ばしてしまえばいい。当たればどうってことはない。 だれも立ち上がれない。あの子達を守るんだ・・・。 「う゛わ゛ぁ゛ぁ゛ぁ、ごぁいよぉぉぉ」「う゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇっ」 しかしそれがゆっくりゃ達さえも巻き込んでしまうほどの力であることをフランは知らなかった。 ただ守ることだけを考えて、それゆえに自らの手で愛するものを壊してしまうであろうことを。 そのために、レミリアはフランを地下に閉じ込めたことを。 フランは全力で幽香に向かって突進した。迎え撃つ幽香、そしてその後にいるゆっくりゃとゆフラン。射線が重なっていた。 その戦いを見ていたレミリアの頭をよぎったのは、近い未来大切な友達を壊して、周りにだれもいなくなったフランの運命。 「ふら゛ぁ゛ぁ゛ぁん!!!」「ゆ!?」 そして目の前に映るは、今妹庇おうと身体を前に差し出すゆっくりゃの姿。 頭の中で何かが弾けた。 レミリア・スカーレットの能力 運命を操る程度の能力 対象の運命それを打ち破ることができる能力。 しかし土の中に種も植えずに芽が出ないように、運命を変えるには何かの行動が必要となる。 この場合は、全力のフランの一撃をその身に受けること いくら吸血鬼とはいえ、ただではすまないだろう しかし自分にとって願うはフランの幸せ この場に導いてくれたのは自分を信頼してくれる従者 教えてくれたのは餡子とひき肉によってできた身体を持つ、自らとその妹の分身。 今度は自分が頑張る番だった。 風よりも速く、音よりも速く、光よりも速く、レミリアはフランの前に立ちふさがり、その一撃を受け止める。 風圧で皮がむける。熱で肉が焼けつくされる。衝撃で骨が砕ける。 この一撃を受け止める数秒が、永遠にも感じられた。 けれども大丈夫、耐えられる、私はあの子のおねぇさんなのだから・・・ フランの一撃を耐え切ったとき、レミリアの左腕は吹き飛んでいた。右足はぷらぷらと皮一枚でつながり、羽は共に歪な形に曲がっていた。 そして胸には大きな穴が。 「そんな・・お姉様・・なんで・・・・」 正気に戻ったフランが信じられないものを見る目をレミリアに向ける。レミリアの後には、唖然とした幽香がいた。 その更に後にはゆフランとそれをかばうゆっくりゃの姿が見えた。二匹ともとても怯えている。 レミリアの後以外は、草一本の残っていなかった。レミリアがいなかったらどうなっていたのか、フランは気がついた。 「あ・・ぁ・・ぁ・・」 フランが力なく後ずさった。目には光が灯っていなかった。 「ごめんね・・・。フラン・・・・」 レミリアはフランに懺悔を、ゆっくりゃとゆフランに感謝をしながら、意識が途切れた。 最後に目に映ったのは、叫び声を上げる妹と、泣き喚きながら飛んでくる饅頭たちであった。 後篇へ 吸血鬼は実年齢に精神年齢が伴わないのだろうか? -- 名無しさん (2010-11-28 11 48 36) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2562.html
113 名前:ふたり第4話 ◆Unk9Ig/2Aw[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 17 54 55 ID jjDJLj0E [1/2] 第4話 俺は、米沢と共に本屋を出た。 絵里ちゃんはまだバイトがあるらしく、また今度、としばしの別れの挨拶をしてきた。 米沢は・・・なぜか機嫌が悪そうだ。 「あ・・・あのさぁ、米沢・・・。」 「え、何?」 え、何?じゃないだろ! いきなり笑顔になる。さっきまでの不機嫌オーラはどこへやら。 俺は少し拍子抜けしてしまった。 彼女はまるで憑きものが落ちたかのような屈託のない笑顔を浮かべてゴキゲンだ。 俺はそんな米沢を見て少しドキッと来てしまった。他人の彼女なのに・・・。 「この後暇なら、買い物の荷物持ちやってよ。」 出た!米沢のわがまま! でも、ここまですがすがしく頼まれると断りづらいなあ・・・。 しかし、何で原先輩に頼まないんだろ。俺よりも彼氏と買い物したほうが楽しいだろうし、それとなく原先輩の浮気について聞けるだろうし・・・。 まあ、でも今は気まずいということなんだろうなと結論付けておこう。 断る理由もないし引き受けることにしよう。 「いいよ。どうせやることも無いし。」 「え?本当?ありがとう!」 「どこで買い物するんだ?」 「隣町のショッピングモールに行こう!」 114 名前:ふたり第4話 ◆Unk9Ig/2Aw[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 17 55 40 ID jjDJLj0E [2/2] 明るくほほ笑む米沢は本当に無邪気で可愛い。こんなかわいい子ほっといて浮気するとは、原先輩って改めて贅沢ものだなと思う。 米沢が指定したのは最寄駅から電車で10分ほどの所にあるこの辺で一番大きなショッピングモールだ。 雑貨から洋服、家具家電やおもちゃなど様々な店が混在している。 米沢とここへ買い物に来るのは久しぶりである。 俺たち二人はその後、特にあてもなくショッピングモール内をぶらぶらしながらウィンドウショッピングを楽しんだ。 米沢は俺に荷物持ちを頼んだんだけど、何かを買おうという素振りは見せない。 俺に気を使ってくれているんだろうか・・・。 女のする買い物だから俺の興味を引くようなものは見なかったけど、米沢と喋りながらの買い物だったから退屈はしなかった。 「ふーウィンドウショッピングを堪能した!」 「結局何も買わなかったな。」 「うん、私もそんなにお金持ってるわけじゃないからね~。それに、池上の電車賃も私が出したし。」 「うっ!」 そう。漫画を買う金も持ち合わせていなかった俺はここへ来るために必要な、往復の電車賃すら持っていなかったのである。 仕方なく恥をしのんで米沢に貸してもらったのだ。 今日一日とことん情けないな・・・。 「まあまあ。楽しかったから別にいいよ。電車賃くらいどうってことないって。」 「どうってことないような金額すら払えない俺って一体・・・。」 「あっ、はは・・・。あっ、クレープ屋がある!おごってあげるから一緒に食べようよ。」 米沢が指さした先にはなんだかオシャレな雰囲気のクレープ屋が。なんだか男女のカップルが目立つ店だな。 金額は500円!高い! 「いいよ、米沢に悪いよ。米沢だけ食べればいいって。」 「何言ってるの。私だけクレープ食べて池上だけ手持無沙汰ってわけにもいかないでしょ!」 115 名前:ふたり第4話 ◆Unk9Ig/2Aw[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 17 56 36 ID TzcMM4fg 「え、別にそれでも気にしないけど。」 「私が気にするのよ!それに、今日お昼に喫茶店でおごってくれたでしょ?そのお礼よ。それならいいでしょう?」 「う、うん分かったよ。」 米沢に押し切られる形でクレープをおごってもらうことになった。 米沢もすごく友情に厚い女の子なんだな。と妙に感心してしまった。 「池上、あんたはどれ食べたい?」 「じゃあチョコバナナクレープで」 やっぱりなんだか米沢に悪くて一番安い奴を選んだ。 米沢はデラックスストロベリークレープとかいうのを頼んでいた。 写真で見たけどかなりでかかった。 こんな小さな体の女の子がこんなにたくさん食べられるのか?ってさっきも同じ疑問を抱いた気がする。 注文してからしばらく経つとチョコバナナクレープとデラックスストロベリークレープが同時に手渡された。 ふんわりとした生地にバナナとクリームがサンドされており、その上からチョコレートがたっぷりとかかっていた。 一口食べると口の中に甘ったるい香りが充満した。味はとてもよかった。 「おいしいな、このクレープ。バナナとチョコレートの相性抜群だ」 「私のもおいしいよ、いちごのクリームが甘くて。」 米沢はクレープの味に満足しているのかやたら上機嫌な様子だった。 俺はというとそんな米沢に少し見とれていた。米沢の笑顔はやはり可愛い・・・。 米沢の顔をボーっと見つめていたら突然俺の鼻先に食いかけのクレープが差し出された。 「ね、クレープの取り換えっこしようよ。私のクレープ食べていいからさ、池上のクレープも食べさせてよ。」 「えっ、でもそれは」 間接キスじゃないか!いや、嬉しいんだけどやっぱ原先輩がいるのにこういうのはまずいだろ。 116 名前:ふたり第4話 ◆Unk9Ig/2Aw[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 17 57 16 ID IF7Pd7wo 「なに赤くなってんの!いまどき関節キスくらいで恥ずかしがるなんて初心よ初心!」 「う、初心で悪かったな!」 今日び女子高生は間接キスなんて何とも思っちゃいないのだろうか。 う~ん、小学校中学校の時なんか女子は間接キスでキャーキャー騒いでいるモノだったが。 やはり男と付き合い始めた女の子からすれば間接キスで動揺するのはおこちゃまなのだろうか・・・。 「じゃ、じゃあ米沢がそう言うんなら食べ比べしてみるか。」 「ん、じゃあ口あけて?」 「・・・えっ!?あーんすんの?」 さすがにあーんは彼氏でもない男にするのはおかしいんじゃない!? 「当然じゃない!ス、スキンシップだよ!スキンシップ!」 「わ、分かったよ」 観念して俺は餌を待つ金魚のようにパクパクと口をあける。 きっとはたから見れば俺の顔は間抜け面だっただろう。 大きく開かれた口に米沢の食べかけのクレープが押し込まれる。 ふんわりとしたいちごの味が広がって、まさに「舌が幸せ」だ。 「そ、それじゃあ今度は私が食べさせてもらおうかな!」 「え、米沢もやるの?」 「当然!池上も食べさせてもらったんだからちゃんと私にも食べさせなくちゃダメ。」 米沢はそう言うと、顔を上げて、目をつぶり、口を上に突き出した。 米沢のその様子が誰かとキスをする体勢みたいでドキドキしてしまう。 俺は早く終わらせてしまおうとクレープを米沢の口先に持って行った。 すると米沢は俺のクレープをぱくりぱくりとちょっとずつかじっていくように食べ始めた。 思い切って一口で食べるのかと思っていたから驚いてしまった。 まるでリスが木の実をかじっているような、そんな感じだった。 なんというか可愛さの権化だね。それを今この瞬間とくと見た。 117 名前:ふたり第4話 ◆Unk9Ig/2Aw[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 17 57 54 ID g3kMIPa6 クレープを食べ終わった後俺たちはショッピングモールを出た。 「まだ3時半だよ。池上、もう少し遊ぼうよ。」 「そうだな。でも次に行きたいところあるのか?」 「じゃあ次は池上の行きたい所に行こうよ。」 「え、そうだな・・・行きたい所か・・・。」 「この町のお勧めスポットとか知らないの?」 お勧めスポットって言われてもなあ・・・。近くにこの町の名所のでっかい神社があるが正直つまんないだろうし・・・。 その時ピーンとひらめいた。 「お勧めスポットが思いついた、俺についてこい!」 「え、どこ?どこ?」 「それは着いてからのお楽しみだ!」 俺は冴えてる。あそこなら誰でもウケがいいはずだ。 ショッピングモールから東にいくと閑静な住宅街に出る。 その小さな住宅街の坂道を10分ほど上がっていった所がそれだ。 港が見える展望台というそのものズバリなネーミングの展望台である。 ここからなら俺達が住む街も全部見渡せる上、名前の通り港に船が出入りするのも見ることができる。本当は夜景がきれいなんだけど、夕焼けに染まる景色もなかなかオツなものだ。 「どうだ、きれいだろ!」 自信たっぷりに米沢のほうを振り返ると、なぜか米沢は俯いて立っていた。 俺は、さっきまで機嫌がよかったのに突如暗くなった米沢に戸惑ってしまった。 「よ、米沢?どうしたんだ・・・。」 俺はその時、確かに見た。米沢は泣いていた。 ポロリと涙が頬を伝っているのがはっきり見えた。 「え、泣いてるじゃないか・・・いったいどうしたんだよ。」 「ご・・ごめん。心配させちゃって。ここではあんまりいい思い出がないから・・・。」 118 名前:ふたり第4話 ◆Unk9Ig/2Aw[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 17 58 31 ID yFIPINRA もしかして、俺はまた地雷を踏んでしまったのか? 原先輩がここで浮気していたとかなのか、それともまた別の理由なんだろうか・・・。 いずれにしても俺は米沢に嫌なことを思い出させてしまったことに変わりはない。 俺は「なんとかしなくちゃ」という一心で泣きそうになっている米沢を元気づけようとした。しかしなんで泣いているのかすら分からないから慰めの言葉が見つからない 「お、おい米沢!俺、新しい隠し芸を身につけたんだ!よかったら見てくれないか!」 だからといって、苦し紛れに口から出まかせを言うのはやはり間違っていると思う。 そんなもん身につけてねーよ! 「え?」 米沢は驚いたように俺を見ている。 今更、隠し芸なんてなかった。だなんて言えない・・・。 腹を据えるしかない。なんでもいいからやらなければ。 「え、えーエアギターやります!」 隠し芸なぞ持ち合わせていなかった俺はまたも苦し紛れにエアギターを披露することにした。昔すこしだけギターをやっていた杵柄だ。 でも米沢はクスリとも笑ってくれない。場の空気が凍りついてるのだが、このまま中途半端なまま終わらせると余計に恥ずかしい。 やばい、羞恥心で死んでしまいそうだ・・・。 エアギターをたっぷり3分もやると、俺は恥ずかしさのあまりその場にうずくまってしまった。死にたいような気持さえしてくる。 「く・・・くくっ・・・!あははははははは!」 突然の笑い声に俺はびっくりした。 米沢は腹を抱えて笑っていた。エアギターじゃなくて、エアギターを終えた後の俺の行動が笑えてしまったのだろうか? 少し悲しいけど米沢が泣きやんでくれて助かったと胸をなでおろした。 「もしかして、今の私を励ましてくれたの?」 119 名前:ふたり第4話 ◆Unk9Ig/2Aw[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 17 59 16 ID /3RBQZQg 笑いをこらえながら米沢は聞く。 その顔にはもう涙は流れていない。 「お・・おう。そうともよ。なんか、ここに着いた途端泣きそうになってたからさ。米沢を励ますためなら喜んでピエロになってやろうと思ったのよ!」 そう。米沢には泣き顔なんて似合わない。女の子には笑顔が一番似合う。 その証拠に、今米沢はすごくいい顔をしている。 「ありがとうね。うん。中学生の時、ここでちょっと嫌なことがあったから。だから今までここに来るのを避けてたんだ。でも、池上のおかげでここってこんなにきれいな景色が見えたんだってこと思い出せたよ。」 「どういたしまして。俺、ここの景色が子供のころから大好きでさ。米沢にも見てほしかったんだよ。でも、米沢は知ってたんだな。ここの景色。」 「・・・うん。」 小さくうなずくと米沢は夕日が沈む水平線に目を向ける。 俺も米沢にならって同じ方向に目を向ける。 港に大きな船が入ってくる。高速道路にせわしなく行き来する車が豆粒みたいに見える。遥か向こうに摩天楼も見える。そして何より美しい夕陽がそれらをすべて幻想的な茜色に染めていた。 人工物と自然が融合した見事な景色だって雑誌には書いてあった。対照的なものが融和した時、こんなにも美しくなるものだ。 俺も米沢もこの景色に見入った。