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「あ、あの…み、みなみちゃん!」 「…?どうしたのゆたか…」 バレンタイン当日の昼休み。 私は、昨日の夜にお姉ちゃんと一緒に作ったチョコをみなみちゃんに渡そうとしていた。 でも、 「え、ええと…。そ、そうだ!今日の田村さん達ってなんだかいつもと違うよね!?」 「そうだね…。ネタの宝庫だとか叫んでたみたいだけど…」 こういう風に、面と向かうと恥ずかしくなって、誤魔化していた。 うう、渡せないよぅ…。 「…ゆたか、次は移動教室だから早く行かないと…」 「あっ、そ、そうだね!」 渡そうとして、誤魔化して…、と繰り返しているうちに昼休みも終わってしまった。 ううう~、お姉ちゃんはかがみ先輩に渡せたのかなあ…? 『I LOVE Minami』 私のチョコには、ホワイトチョコを使ってそう描かれている。 もちろん書いたのはお姉ちゃんなんだけど。 これがなかったら普通に渡せるのにい…。 こ、これを渡しちゃったら、やっぱりこ、告白って思われちゃうかな? そんなことを考えていると、いつの間にか放課後になってしまった…。 「み、みなみちゃん!」 「あ、ゆたか…」 ここで逃してしまったらもう後がない。 が、頑張らなきゃ…! 「ええっと、その、あのね、うう…」 「そうだゆたか…。これ、もらって…」 「ふえっ?」 そう言ってみなみちゃんが取り出したのは、紛れもなくチョコレート。 「わ、私に…?私なんかがもらっていいの?」 少し不安になって尋ねてみる。 「わ、私は…」 するとみなみちゃんは、ほんのりと頬を赤く染め、すごく小さな声でこう言った。 「その…。ゆたかにしか、あげたくないから…」 「ぐすっ、うぇ~~ん。みなみちゃん、ぐすっ、ありがとう!」 「ゆ、ゆたか!?」 私は嬉しくて仕方がなくなって、少し泣きながらみなみちゃんに抱きついた。 みなみちゃんはしっかりと自分の想いを伝えてくれた。 私も勇気、出さなきゃ…! 「みなみちゃん、私もチョコ、作ってきたの…もらってくれる?」 「うん、もちろん…。ありがとう、ゆたか」 「えへへ…♪」 「食べてみていい…?」 「う、うん!私もみなみちゃんの食べるね♪」 こうして私とみなみちゃんは、お互いのチョコをゆっくりと味わった。 みなみちゃんのチョコ、すごくおいしかったな…♪ 「みなみちゃん、手、つないでいいかな?」 「う、うん…」 学校からの帰り道、私たちはしっかりと手をつないで歩いていた。 えへへ、みなみちゃんの手、あったかいな♪ 「ゆ、ゆたか」 「?どうしたのみなみちゃん。声が震えてるよ?」 「な、なんでもない…」 さっきからみなみちゃんが少しおかしい。 なんだか顔が真っ赤だし、私と目を合わせてくれてないような気がする。 どうしたんだろう…? 心配になった私は、みなみちゃんの顔を覗き込んで問いかけてみることにした。 「どうしたのみなみちゃん?さっきから少し変だよ?」 「!!!ゆ、ゆたか…!もう…!」 「ふええええっ!?」 目が合ったとたんに私は抱きしめられた。 え?え?な、なに!? 「ゆたか、可愛い…。家でたっぷり、可愛がってあげる…」 私を抱えたまま、ものすごいスピードで走り出すみなみちゃん。 な、なにが起こってるの~~~!? そして気がつくと、私はみなみちゃんのベッドの中にいた。 「ゆたか…んっ…」 「み、みなみちゃ…んんっ!?ふわあっ」 キスをされ、色々なところを触られる。 みなみちゃんの目がいつもよりギラギラしてて少し怖い。 「み、みなみちゃん、ああっ、一体、んっ、どうしたの…ひゃああっ!?」 「わからない…。ゆたかのチョコ食べたら、なんだか体が火照って…」 チョコ…? お、お姉ちゃ~ん!一体何を入れたの~~~!? 「ゆたか…そろそろ行くね」 「ふぇ?な、なに…?」 「いただきます」 「ふにゃあああああああああああああっ!?」 こうして私は、一晩中みなみちゃんに攻められ続けた。 うう、お姉ちゃん、恨むよぅ…? みなみちゃんに抱きしめられたまま目覚めた私はそんなことを考えた。 お姉ちゃんもほぼ同じような目にあっていることを知るのは、もう少し後の話…。 コメントフォーム 名前 コメント 期待通りの展開っス☆ ↓↓「こなたのチョコ」で確認してね! -- 名無しさん (2011-05-05 07 32 18) こなたと作者GJ!w -- 名無しさん (2010-04-11 16 50 29) かがみか!かがみなんだな!? -- かがこなかがはジャスティス氏 (2008-11-25 20 51 39) こなたGJww -- 名無しさん (2008-09-22 23 40 20)
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なんでもない日常。 そんなある日の朝、またもや妙な事件が起きた。 時間:朝、6時くらい 場所:泉家 こなた自室 原因:不明 証言: 泉こなた氏「「「またかぁああぁあぁぁあああぁぁぁああああ!!」」」 お昼休み。私はいつものようにB組に向かい、つかさの作ってくれたお弁当を広げる。 あ、今日は純和風だ。肉じゃがに豚の角煮、それに天ぷらか……つかさ、私のこと太らせようとしてない? 「ねぇお姉ちゃん」 天ぷらとにらめっこを開始していた私に、つかさが遠慮がちに話しかけてきた。 「またこなちゃんいないね」 またもやこなたは休み。 1週間前も似たような状況で欠席してたけど、まさかまたじゃないだろうな。 ちょっと電話してみるか。 食事を中断し、箸を置いて携帯を取り出す。自宅に直接かけることにしよう。 プルルプルルという呼び出し音の後、聞きなれたおじさんの声が聞こえた。 『はいもしもし泉ですが』 「あ、もしもしおはようございます。かがみです」 『あーかがみちゃんか、おはよう』 「あの、こなたは」 『……いやぁ、またちょっと困ったことになっちゃってね』 やっぱりか…… もしかして体質なのか?いやどんな体質だよ。 『それで、もしよかったら、帰りに寄ってってやってくれないかい?こなたも喜ぶから』 私が脳内で漫才を繰り広げていると、おじさんが少し遠慮がちに尋ねてきた。 「はい、もちろん。もとよりそのつもりでしたので」 『うん、ありがとう。それじゃあ』 携帯を閉じて前を向くと、2人が興味津々といった感じで、こちらに身を乗り出していた。 「お姉ちゃん、こなちゃんどうだって?」 「私も興味があります」 「どうっていわれても……ただ困ったことになったとしか」 2人は元の姿勢に戻り、ちょっと残念そうな顔をしている。 「そっかぁ~……今度は何歳くらいになってるんだろうね♪」 何歳って……また縮んでるとは限らないでしょ。 というか楽しんでないか? 「そうですね、心配ですね」 とても心配してるとは思えないほどに嬉しそうな顔で言う。 みゆき少しは隠せ。 「2人も行くわよね?こなたん家」 「当たり前だよ♪」 「もちろんです」 「いらっしゃいみんな」 泉家に到着すると、おじさんが笑顔で迎えてくれた。 先週バトルを繰り広げた(繰り広げてはいない)とは思えない待遇の違いだ。 昨日の敵は今日の友? 「こなた、2階で待ってるから」 「あ、はい。分かりました」 おじさんに挨拶を済ませ、2階へと向かう。 っとその前にトイレでも借りようかな。 こなたの部屋に行く途中のトイレ。そのドアノブに手を掛ける……が、開かない。 「あ、ごめーん。今使ってるからぁ」 こなたの声が聞こえた。 なんだ、トイレにいたのか。 「先部屋に行っててよ」 「うん。分かった」 それほど催しているわけじゃないし、後でいっか。 私たちはこなたの部屋へと向かった。 ところが、2階への階段を上っている途中。 「おー、かがみたち来てたんだ」 「え?」 なぜかこなたが降りてくるところに鉢合わせた。 「あ、あれ?こなたトイレに」 「飲み物持ってくるから、先に部屋行っててよ」 「う、うん」 わけも分からないまま、3人で部屋に向かうことにした。 「お姉ちゃん、こなちゃんって忍者なのかなぁ」 「なわけあるか」 何を言ってるんだこの妹は。 つかさに向かって忍者の歴史を語り始めたみゆきをスルーして、部屋のドアに手を掛けた。 「おーいらっしゃい、かがみにつかさ、みゆきさん♪」 「……」 こなたが自室のベッドに座っている。 足をぱたぱたさせながら、積み上げられた漫画を選んでいた。 見るだけなら可愛らしい光景なのだが。どうも引っかかる。 「こなた、あんたさっき下に下りていかなかった?」 素直に疑問を投げかけてみた。 「そしたらここにいないじゃん」 そりゃそうだ。そうなんだけど…… じゃあなにか?さっきのは幻覚とか幻聴だったのか? 隣の2人もなんだか不思議な表情をしていた。 「ただいま~、飲み物持ってきたよぉ~」 「ごめんごめん、お手洗い遅くなっちゃった」 「へ?」 後ろから、同じ声が聞こえた。 振り返るとそこには…… 「こ、こなた!?」 こなたがいた。 え、何?何なの?この2人のこなたは。 あれ?というか部屋の中にも既に1人いるはずなんだけど。 「みーんなこなただよ」 部屋中に、私とつかさの叫び声が響く。 みゆきの眼鏡が垂直に飛んだ。 みゆき何なんだ。 『こな☆フェチ ~こなたんず~』 トイレで用を足してから、部屋に戻る。 「で?また起きたらこうなってたとか言うんじゃないでしょうね」 少し落ち着いた私とつかさ、そしてたぶんみゆきだと思われる人は、こなたと向かい合うように座る。 そして目の前には、なぜかこなたが……1・2・3……3人もいる。 「もちろんそうだけど」 頭を抱えた。なんでこうこいつは…… いやまぁ仕方ないんだろうけど。 「でもでもかがみぃ♪3人ともちょっと違うんだよ」 「何が違うのよ?」 「私はいつものこなただけど、こっちの私は結構甘えん坊で、そっちの私はかなりのおとぼけさんなんだよ」 楽しそうにそう語るこなた。 つまり、それぞれ微妙に個性が違うのか。 それなら、全部『こなた』じゃ分かりにくいし、私の脳内の呼び方変えておくことにしよう。 取り敢えずここでは、オリジナルはいつものように『こなた』 甘えん坊を『こなたん』、おとぼけさんを『此方』ということにしておくか。 「泉さん、お体のほうは大丈夫ですか?」 心配そうな顔でこなたを見つめるみゆき。 カメラをしまえ。 「んむ、そっちの方は大丈夫なんだけど……でもねぇ」 こなたが困ったように頬を掻く。 「あのさ、ちょっとお願いがあるんだけど」 ちょっと言いずらそうに、視線を逸らしながらもじもじするこなた。 これが一人だったら『やっば、可愛い』で済んだのだろうけど、3人もいるせいで 威力は734倍だ。 ちなみに計算式はこれ。 『愛(こなた×こなた×こなた+(あほ毛×3+頬染め×3))』 「この家に私が3人もいるとちょっと狭いんだよね。だからさ、それぞれの家に1人づつ連れてってくれないかな」 ……こなたさん、それはまじっすか。 つまり、こなたをお持ち帰りしてもいいということなのか? ひゃっほ~い♪ おっと、柄にもなくはしゃいでしまったわ。 「だめ……かなぁ?」 ふぉーぅ!!そんな寂しそうにするな!!理性が!! 「私は構いませんよ」 私が悶絶する隣で、みゆきが平然と言ってのけた。 でもよくよく見てみると、無数のひびが眼鏡に走り、私の知らない世界だった。 みゆきそれ見えるのか? 「わーありがとーみゆきさん♪」 「だからみゆきさん好きだよぉ~♪」 「みゆきさんだーい好きぃ~♪」 こなたんず(今勝手に命名)が一斉にみゆきに抱きついた。その刹那。 ガラッ みゆきが窓ガラスを開けて、外に飛び出す。 ここ2階。 「あれぇ?みゆきさんどうしたんだろう」 不思議そうに首を傾げるこなたん。 あんたのせいよ、とは言えない。 「取り敢えず、誰が誰のところに行くのか決めようよ」 「うん、そうしよう」 「さんせ~ぃ♪」 こなたの提案に、こなたんと此方が相槌をうつ。 「私かがみがいい~」 「私だってかがみのとこがいいよぉ~、つかさもいるし」 「かがみのとこ行くのは私だもん!!」 3人が私に抱きついてきた。 気づいていないのかもしれないけど、3人ともかなり構いったがり屋になってるみたいだ。 あぁ~それにしても、暖かいなぁこの子達……てか気持ちい、気持ちよすぎる。 こりゃぁみゆきも窓から飛び出すはずだ。 つかさが『お姉ちゃんいいなぁ~』なんて言ってたけれど…… つかさ。ここは天国で地獄よ。今にも理性が吹き飛びそうだ。 「むぅ~……よし!!じゃんけんでしょーぶだ!!」 「「望むところだ!!」」 3人のこなたが火花を散らす。 「「「さーいしょーはぐー!!じゃんけんぽん!!」」」 同じ人物だったせいか、かなり時間がかかったけれど、どうやら勝敗は決まったみたいだ。 嬉しい顔・微妙な顔・悲しむ顔、3人の顔は様々。 最初に選べるのがこなたん。次が此方、こなたの順番だ。オリジナルが負けてどうする。 「いぇ~ぃ♪そんじゃあ私かがみ~♪」 甘えん坊のこなたんが、私の腕にしがみついてきた。 小さい胸がぐいぐい押し付けられて、今にも鼻血が出そうだ。 「すみません。取り乱しました」 ようやくみゆきが、さっき飛び出していった窓から戻ってきた。 そしてここ2階。 「いいも~ん。私みゆきさんといちゃいちゃするもん」 そう言ってみゆきの腕に抱きつく此方。 プシュッ みゆきの額から血が噴き出した。 みゆき忙しそうだな。 「くぅ……私だけ留守番なんて、むごいむごすぎる!!」 「あのね、こなちゃん」 涙を流すこなたにつかさが近づき言う。 「無理に一家に一人ってしなくても、一人につき一人づつとかでもいいんじゃないかなぁ?私余ってるし」 「……な、なるほどぉ!!つかさ頭いいね!!」 えへへ、と照れながら頭を掻くつかさ。 そのあとすぐに、こなたを後ろから抱きしめた。 「じゃ、じゃあ、こなちゃんは私のものだね♪」 「うむ♪」 喜ぶこなたと、悦ぶつかさ。 一瞬うらやましいなんて思ったけど、私だってこなたを所有してるわけだしね。 それにしても、おじさんが可愛そうだな……一人残らず連れてかれちゃって。 ってか今思ったけど、連れて行く理由が当初と違ってるような気が…… 「んじゃーにー、かがみとつかさと2人の私~」 泉家前で別れる前、此方が私たちに別れ際の挨拶をした。 「それでは、また明日。つかささん、かがみさん、2人の泉さん」 「ん、じゃーね。こなた、みゆき」 「ばいばい、こなちゃん、ゆきちゃん」 「また明日ぁ~、私とみゆきさん」 「じゃーにー、私とみゆきさん」 カオス。 もう何がなんだか分からない言葉が交わされる。 取り敢えず私とつかさとこなたとこなたんは、私達の家に向かうことにした。 「ただいまぁ~」 つかさが間の抜けた声を発しながら、玄関のドアを開ける。 靴は全員分ある……説明するのめんどくさいなぁ。 隣にいるこなたんの手を握る。すると嬉しそうににぎにぎしてきた。 この子はいちいち私の理性を削るから困る。 こなたんの手を引いて、リビングへと向かう。 そこには私とつかさを除いた家族全員が揃っていた。 「あ、お帰り2人とも……あれ?こなたちゃん、いらっしゃ……え?こなたちゃん?あれ?」 お母さんがちんぷんかんぷんといった様子で、2人のこなたを交互に指差す。 いのり姉さんは笑顔のままで固まり、お父さんはお茶菓子を用意し始めた。 まつり姉さんはテレビを見て爆笑している。こっちむけよ。 「あの、かがみ、つかさ……これはいったいどういう?」 「うん、実はね」 私は、今回のことを事細かに話した。 まつり姉さん話聞け。 「……というわけなの」 「「「……」」」 いのり姉さんとお母さん、お父さんは、信じられないといった状態で口がぽかんと開いていた。 まつり姉さんはこなたとこなたんをなでなでしている。 その手を離せ!!こなたんは私のだ!! 「信じられないけど、事実なんでしょうね。実際目の前でそうなってるわけだし」 いのり姉さんが、不思議なこともあるものね、と目を瞑る。 お父さんとお母さんはもう慣れたのか、2人にご飯は何がいい?とか聞いてる。 信じがたい順応力だ。 こらまつり姉さん!!こなたんに抱きつくな!! 「まぁ、そういうことなら仕方がないね。元に戻るまでここにいさせてあげようか」 お父さんは、こなたを実の娘を見ているような眼差しで見ながら言った。 よかった、もしだめとか言われたらどうしようかと思った。 「取り敢えず、ご飯できるまで結構時間かかりそうだから、自分達の部屋にでも行ってて?お母さん呼ぶから」 「あ、私手伝うよお母さん」 つかさがとことことお母さんの傍に駆けてゆく。 「あら、助かるわつかさ。量多くなりそうだし。じゃあかがみ、こなたちゃん達の相手しておいてくれる?」 「へ?あ、うん」 「かがみあそぼー」 「かがみ~」 そう言って私の手を引っ張るこなたとこなたん。 子供かあんたら。でもそこがいい!! 私はこなた達の手を引き、『がんばって』部屋へと連れて行った。 カチカチとコントローラーを叩く音が部屋に響く。 こなたは、私の部屋でいつものようにゲームを黙々と進める。 一方、甘えん坊なこなたんはというと…… 「かーがみぃ~♪何かして遊ぼうよぉ~♪」 「……」 さっきから私にべったりくっついて離れない。うれしいんだけど、まずい状況だ。 今私の脳内では、理性と欲望がそれこそ宇宙戦争にすら発展しかけない勢いで、戦いを繰り広げていた。 尚も、こなたのすりすり攻撃は続く。私、必死。 「むぅ~、なんで何も言わないのさぁ~」 言わないんじゃない言えないのよ。余裕ないのよ、ぎりぎりなのよ、切羽詰ってるのよ。 「……よ~し」 「え?」 突如、世界が回った。 こなたんに肩を押されベッドに倒されたみたいだ。 丁度こなたんの顔が目の前にある状態。 そして、愛しいものに触れるように、私の顔を両手で挟んだ。 「な!?ちょっとこな……んぅ!?」 「ん……」 唇を塞がれた。 いきなりだったので、私は目を開けたまま。 こなたんは目を瞑り、頬を仄かに染めている。 「……ふぅ」 目を閉じたまま、ゆっくりと顔を離していく。 私の唇には、まだ生暖かい感触が残ったまま。 こなたんは、にまにまとぬるい微笑を浮かべていた。 今の私は、さしずめ餌を求める鯉のようだろう。 「ぷっ……かがみなにそれ?ぱくぱくぱくぱく何してんのさ♪」 そんな私を見てケラケラと笑うこなたん。 このやろう。 「あー面白かった」 一頻り笑い終わると、疲れたように私の胸に顔を置いた。 そのまますりすりと顔を擦り付けてくる。 「かがみの胸……気持ちいね」 まるで母親の胸の中で眠る子供のように、大きく息を吐き出した。 目を瞑りながら、くすくすと声を震わせている。 しかし、少しすると勢いよく立ち上がり、ゲームをするこなたのところへ向かおうとした。 「さてと、もう一人の私とゲームでも」 「待ちなさいよ」 手の届くギリギリの距離で、こなたんの右手を捕まえることに成功した。 そのままこっちに引っ張りベッドに押し倒す。 今度は私がマウントポジション。 こなたんは状況が掴めていないらしく、目を白黒させている。 私は、耳元で囁くように言った。 「お返しくらい、覚悟してたわよね?」 「え?……んぅ!?」 一呼吸置かないうちに、こなたんの唇へと自分のそれを重ねた。 すぐに舌を差し入れる。一際大きく体が震えたが、今のこなたんにはどうすることもできないだろう。 私は、理性の糸が切れていたことに気づいていなかった。 「んふぁ……ふぁふぁ……ふぃ……んちゅ」 少し抵抗を試みていた手を自らの手で拘束して、先ほどよりも強く唇を押し付けた。 密着率は100%。人体において『唇』と称される部分は、見事なまでに重なっている。 この子格闘技経験者って言ってたけれど、いざっていうときは役に立たないみたいね。 そんな思考を巡らせつつ、さっきより深く舌を差し込んだ。 こなたんがくぐもった声をあげているけれど、まぁ危機管理ができていない自分を恨むのね。 口内のありとあらゆる部分を、舌でなぞる。 最初は抵抗していた可愛い舌も、今は私の舌をちろちろと追いかけている状態だ。 ……そろそろいいか。 私は名残惜しくも、唇を離す。 同時に、目の前の少女が大きく息を吸った。 「かがみも好きだねぇ~」 ……あれ? 目の前のこなたんは息が上がって、とても話せるような状態じゃないのに、なぜか声が…… あ、そうか……同じ声だから聞き間違えたんだ。 私は、本当の声の主がいる方へと顔を向けた。 いつの間にかこなたがゲームをやめて、ベッドのすぐ横で膝立ちしていた。 「それにしても……自分自身じゃないにしても、自分と全く同じ姿が襲われてると、結構くるね……」 そう言って、内股をもじもじと擦っている。 「よーし、私も参加する!!」 「え!?ちょ!!」 突然、こなたが私に抱きつき、首筋にキスをしてきた。 「ほらほらもう一人の私も!!」 「ん、うむ」 ゾンビのようにゆらりと起き上がったこなたんは、私の耳にかぶりつく。 2人とも、私の好きな人だということもあってか、スタンガンでも使われたような電気が全身に流れた。 あ……やばい……やばい…… 二次暴走が…… 「3人とも、ご飯できたよぉ……ってなにやってるの!?」 声の聞こえた方に目だけを向ける。 つかさが大きな目を限界まで見開いて、固まっていた。 やばいところを見られた…… 「お姉ちゃんずるい!!」 そっちかよ。 「まぁまぁ、ほらご飯食べにいこうよ皆。つかさも、キスくらいならあとでいくらでもしてあげるから」 「わーい」 わーいじゃねーよ。 ってか、あんたらのそのテンションはなんなんだ。 少し落ち着け。いや、私も落ち着け。 「そ、そうね。お腹もすいたし」 取り敢えず、こいつらと対等に付き合うには、このテンションに合わせないと。 そう、まるでなにごともなかったかのように。 そう、エレガントに。 などと考えながら、自分のテンションに疑問を抱きつつも、私たちはリビングへと降りていった。 「ねぇねぇかがみ」 家族全員変なテンション(たぶんこなた達のせい)で夕食を食べ終ると、長女のいのり姉さんが話しかけてきた。 「何?」 「こなたちゃん、今度増えたら私にも分けて?」 子犬かよ。いやハムスターか? どっちでもいいか。 「いや、たぶん増えないから」 「もしもってことがあるでしょ?」 「……増えたらね」 ありがとーと満面の笑みで答える姉さん。 そんなにほしいかな、こなた。 いや、ほしいか。可愛いし。 生返事をして、お風呂に入るために一旦、自室に戻ることにした。 お風呂からあがり、髪を拭きながら自室へ戻る途中 こなたんをどこに寝かすかについて考えた。 布団を持ってきて床に寝させるか、一緒にベッドに寝るか。 ん?何を悩んでるんだ私は? 後者に決まってるじゃん!! ――ちなみにこの間0.5秒 「取り敢えず一緒のベッド……ふぉおおぉぉおぉぉおおお!?」 私の部屋のドアを開け、我が目を疑う。 そろそろ換え時かな、とか思ったりした。 こなた2人が互い違いに重なり、お互いの大事なところを舐めあっていた。 もちろん裸で。 「「ちゅぷ……あ、かがみおかえりぃ~」」 焦れよ。 ってか、うわ……何これ、なんてエロすぎる情景だよ。 絶対私鼻血出てるって。 「ごめんごめ~ん、なんか2人きりになったら、急に自分の味のことが気になっちゃって……ってか、かがみ鼻血」 自分の味って何だよ。 何か?芸風とかそんなのか?んなわけない。 って何言ってんだ私。 「じ、自分の味って何よ?」 「ん?つかさが前にさ『こなちゃんのここ、甘いね』とか言ってたからさ。かがみ鼻血出てるって」 つかさが? つかさどこ舐めたんだ……この上なく気になる。 それにしても……ベッドがすごいことに。 「と、取り敢えずあんたらお風呂入ってきなさいよ」 「「はーい」」 鼻血拭きなよ?と言い残して、2人仲良く部屋を出て行く。 っておい、裸のまま出てったぞ!? 一階からなにやら叫び声と、食器の割れる音と、なぜか爆発音が聞こえた。 下で何してんだ。 そのあと、一応シーツの匂いを堪能してから、交換しておいた。 「ふぁ~いい湯だったぁ~♪」 頭の上から湯気と音符を立ち上らせながら、こなたんが帰って来た。 こなたの方は、つかさの部屋に向かったみたいだ。 用意しておいた枕を、私の枕の隣に並べてこなたを迎え入れた。 「こなた、今日は一緒に寝るわよ」 「おーかがみと一緒に寝れるの?わぁーい♪……かがみ、いいかげん鼻血拭けば?」 先にベッドに入ってて、とこなたんに言ってからトイレに向かった(ここでようやく鼻血を拭く)。 「……!!……!?……!!!!!」 「……♪……♪」 ん?なんかつかさの部屋から声が聞こえる。 こなたの悲痛な叫びと、つかさの楽しそうな声。 明らかにバランスがおかしい。ドアに耳を当ててみた。 「つ、つかさ?取り敢えず落ち着こう」 「こなちゃん」 「うん、分かってる。分かってるから、まずその手に持ってるものを床にだね」 「こなちゃん、こなちゃん」 「え?いやもう寝ようよ、わたし疲れたし。それにさっきキスしてあげたでしょ?」 「こなちゃん、こなちゃん、こなこなちゃ~ん♪」 「いや、だからね?つか……にょわぁああぁぁあああぁぁぁあ!!」 「……」 聞かなかったことにしよう。 扉の前で手を合わせてからトイレに向かう途中、いのり姉さんと出くわした。 「あ、かがみ、こなたちゃん増えた?」 開口一番がそれかよ。 「いや、増えてないから」 「なーんだ、残念。増えたら教えてね?」 そういい残して、一階に下りていってしまった。 もしかしてそれ聞くために上がってきたのだろうか。 私は、やりきれない気持ちを抱えながら、トイレに向かった。 こなたまだ起きてるかな。 思ったよりも戻るのが遅くなってしまった……トイレじゃないわよ? お父さんとかお母さんとか姉さん2人に足止めくらったりしたせいよ。 いのり姉さんとか下にいる間でも15回は『こなたちゃん増えてないの?』って聞いてくるし。 あれか?いじめか?いじめなのか? まつり姉さんとか、またテレビ見ながら爆笑してたし。 てか今日あの人笑ってるか撫でてるか、くらいしか行動してるの見てないんだけど…… 家族に不安を覚えつつ、自室のドアを開ける。 「かがみぃ♪」 ベッドで、顎までかけ布団を引き上げながら、私の名前を呼んだ。 あ、こなたか。天使かと思ったわ。 「なんだ、起きてたの。先に寝ちゃっててもよかったのに」 「折角一緒に寝られるんだよ?そんなのもったいなさすぎるって♪」 うれしいこと言ってくれるじゃない。 ふと机の上の携帯が光っているのが目についた。 ディスプレイを覗き込むと『みゆき』という字が目に入る。 なにかしら…… 『かがみさん、すごい発見をしました。 (=ω=.) この顔文字、泉さんに似てませんか?』 だからどうしたんだみゆき。 返信に困るメールはやめていただきたい。 まぁ、一応返信はしておかないと。 『落ち着け』 これでよしっと。 携帯の電源を『意図的』に切って、ベッドに潜り込んだ。 「いらっしゃいかがみぃ~♪」 嬉しそうにきゃいきゃい言いながら、私のパジャマの袖を引っ張ってくるこなたん。 私の体をぺたぺた触ってくるこなたん。 萌え死にそうだ。でもなぜか理性はなんともなかった。さっきの刺激物のおかげだろうか。 こなたんは、一頻り私を触り終わると大人しくなり、こっちを見たまま微笑んでいた。 「な、何よ」 「ん?かがみかわいいなぁって」 「な、何よいきなり」 「きゅふふ」 遊んでるな、こいつは全く…… 「2人で寝ると暖かいねぇ、かがみ♪」 「そう、ね」 一人で寝るときと比べると、身も心もずっと暖かい。 しかもどんな体勢でもこなたに触ってしまう。 理性が落ち着いてる分、いつもよりどきどきしてしまう。 だけど……ちょっと……その……もどかしいというか、なんというか…… 「かがみどうかした?」 「あ、いや……別に」 「ん?……むふふ♪」 不意に、こなたんが私の頭を抱いた。 「ちょ、こなた!?」 「いーこいーこ」 そのままの姿勢で、頭をなでなでしてくる。 「たまにはこんなのも……いいよね?」 「……」 うわぁ……不意打ちよ。嬉しい不意打ち。 恥ずかしかったけど、もっとこのままでいたいって気持ちの方が勝ってしまった。 こんなことされながら、そんなやさしい声で呟かれたら私…… 目の前にある細い胴に手を回して、優しく抱きしめてみた。 顔は薄い胸のところにくっつけて、すりすり擦る。 ちょっと擽ったそうに身を捩ったけれど、それよりも嬉しそうに、私の頭を抱える力を強くしていた。 この状況、別の意味でやばいかも…… あ、ちょっと眠いや…… 目が完全に閉じる間際、小さな声で『おやすみ』と聞こえた気がした。 【 fin 】 こな☆フェチ ~ こなたんず after 柊さん家のこなたんず~ に続く コメントフォーム 名前 コメント (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-04-19 00 30 13) 誰か暴走しないツッコミ求むwww ツッコミまで暴走するから手がつけられない… たまにはこんな壊れたらきすたもイイデスネ -- FOAF (2012-08-27 19 29 36) そうじろう「俺としちゃ3人とも家に居るほうが嬉しいんだがなあ…って …え?みんな行っちゃうの??ちょっと待ってえぇぇぇ~」ショボン -- 名無しさん (2011-04-28 23 53 19) みゆき、何なんだwwwww -- 名無しさん (2008-08-08 23 54 39) みゆき、なにがしたかったんだ? でも笑ったWWWW -- 名無しさん (2008-06-02 22 20 43) 新しいジャンル こなたざわ症候群 -- 名無しさん (2008-04-08 09 41 12) みゆき何なんだ。 に不覚にもwwwwwwwwwwwwwww -- 名無しさん (2008-03-29 15 24 17) クオリティ高いですね とても面白がったです -- 名無しさん (2008-02-10 04 58 29) やばすぎるwww面白すぎる的な意味でwww だめだ‥ 萌えすぎて氏にそ‥‥う‥‥‥だ‥‥ -- 名無しさん (2008-02-10 01 05 48) まさに国宝。クオリティの高さに脱毛です。 -- 名無しさん (2007-12-07 20 30 15) みゆきさん家に連れ帰られた此方がどうなったのか気になるw -- 名無しさん (2007-10-04 15 21 34) 天使かと思ったわwwwwどんだけー☆ -- 名無しさん (2007-10-04 14 40 45) GJです!!こなたがかがみのパジャマの裾を引っ張るところで萌え死にました。更にみゆきのメールのところで笑い転げましたwwwwwww -- 名無しさん (2007-10-01 23 55 48) このシリーズ1番大好きだwwwwwwwwwwwwwwwwwww微妙にエロを含み、更にしっかりと萌えさせてくれてしかも腹がぶっ壊れるくらい笑わせてくれるwwwwwwwwwwwwwwwwwwもう・・・思い残すことは・・・・・な・・い・・・・・・・・・・・は!死んじゃ駄目だ!続編が見れなくなる!!!!!!!!!! -- こなフェチ病患者 (2007-09-27 16 02 21)
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おかあさんのおくちのなか ある日私が買い物から帰ると、ゆっくりの一家が居間を占領していた。 私の姿に気が付いた一際大きいれいむ、恐らく母親であろうれいむが、ぽよーんぽよー んと跳ねながら近付いてくる。 「ゆっくりしていってね!」 どうやら、私が鍵をかけ忘れた台所の窓から侵入したらしい。 どうしたものかと眺めて居ると、その後から親れいむの子供と思しき小型のゆっくり達 が、あるものはぽいんぽいんと軽快に飛び跳ねながら、あるものは転がりながら母親の周 りに集まった。 「ゆゆ? おにいさんはゆっくりできるひと?」 「ここはれいむたちのゆっくりぷれいすだよ! ゆっくりできないおにいさんはゆっくり しないでさっさとでていってね!」 「ゆっくりできるおにいさんなられいむたちにあまあまさんをちょうだいね!」 「「「「「「ちょうりゃいね!」」」」」 「ゆっくりしないではやくあまあまさんをもってくるんだぜ! でないといたいめをみる んだぜ!」 「「「「みりゅんだぜ!」」」」 おお、出て来るは出て来るは、直径40センチ程の親れいむに、子れいむが5匹、子まりさ が2匹、赤れいむ8匹、赤まりさ6匹の大家族だ。これまでの巣穴が手狭になり、子連れで引っ 越して来たのだろう。 床が三分にゆっくりが七分と言う壮大な眺めにしばし圧倒されていた私は、ふと常々疑 問に思っていたゆっくりの或る生態に関する疑問を解明しようと思い立った。 「勿論さ、僕はゆっくり出来るお兄さんだよ。その証拠にほら、沢山のあまあまを持って 来たよ!」 私はそう言いながら、先ほど「おかしのまちおか」で買ったお徳用チョコレートの袋を 買い物袋から取り出して見せびらかす。 「ゆゆ! そのあまあまさんをゆっくりはやくちょうだいね!」 「さっさとそのあまあまをまりさにちょうだいね!」 「りぇいむにもちょうらいにぇ!」 「ゆゆーん あまあまさんれいむのおくちにゆっくりおちてきてね!」 「ぐずなじじいはさっさとそのあまあまをおいてどっかにいくんだぜ!」 「ゆー♪ あみゃあみゃしゃんはしゅごきゅゆっくちできりゅよ! むーちゃむーちゃ…… ちあわせー!」 「ゆぎぎぎ、やめてね、おちびちゃんおねえちゃんのほっぺたたべないでね!」 「おちびちゃんきがはやいよ! ゆっくりまってね! おにいさん、さっさとそのあまあ まをかわいいれいむとれいむのおちびちゃんにちょうだいね!」 「ゆげぇ、おきゃーしゃんまりしゃをふみゃにゃいでにぇ!」 お菓子の袋を前に大興奮の一家。早くも我を忘れて押し合いへしあいだ……おいおい、 中には半分潰れてる赤ちゃんもいるぞ。 こんなところで数を減らされては、実験に差し障りが有る。私はお菓子の袋をしまいな がら、親れいむに向って話しかけた。 「お菓子をあげる前に、少し教えて欲しいんだ。れいむは敵が来ると赤ちゃんや子供を口 の中に隠すよね? あれって、何人まで入るのかな?」 あまあまへの期待によだれで顔中をべたべたにしていた親れいむは、急な質問に戸惑う。 確かに口の中におちびちゃんを隠すのはゆっくりの習性だ。しかし、意識してやっている わけではないので、改めて何人入るのかと聞かれても困る。 「ゆう……そんなのやってみないとわからないよ……」 「そう、それだ! 是非ここで何人のおちびちゃんが入れるか、試して貰いたいんだ。そ うしたら、このあまあま一袋はみんなのものだ」 「ゆゆ! ゆっくりりかいしたよ!」 ついに夢にまで見た人間のあまあまが手の届く距離に。興奮したれいむは、自分の周囲 に居た赤ゆっくり達に声を掛ける。 「おちびちゃん、おかあさんのおくちのなかにゆっくりはいってね!」 「「「ゆゆ! わきゃったよ!」」」 ゆっくり特有の長い舌を伸ばし、赤ゆっくりを一匹一匹口の中に運ぶ親れいむ。赤ゆっ くり達も親とのスキンシップが楽しいのか、 「ゆゆーん、おしょりゃをちょんでるみちゃいー」 「おきゃーしゃんのおくちのなかはしゅごくゆっきゅりできりゅよ!」 「ここはまりしゃのゆっくちぷれいしゅなんだじぇ!」 等と舌に巻かれて運ばれたり、口の中に入るのを楽しんでいる。 こうして五匹のあかちゃんが口の中に入った時点で、親れいむは舌をしまい、私に向き 直る。 「おにいさん、れいむのおくちのなかにはいるおちびちゃんは……たくさんだよ!」 「ああ、ゆっくりは3以上数えられないんだっけ。えーと、五人か。結構入ったね」 「ゆっへん!」 「……本当に、もうこれ以上は入らないのかい?」 私の質問に少し怯む親れいむ。確かに、ゆっくりのバカでかい口の中にはまだ余裕があ る。しかし、これ以上おちびちゃん達を入れたら自分もあかちゃんもゆっくりできないし、 あまあまを前に我慢も限界だ。 「そうだよ! もうおにいさんのごようはすんだんでしょ! やくそくどおりあまあまを ちょうだいね!」 「さっさとよこすんだぜ!」 「ぐずなじじいだね! もうれいむはおこったよ! ぷくー!」 親子揃っての大合唱に、このままでは実験の続行は不可能と見た私はお菓子の袋を破り、 地面にバラ撒く。 「みんなありがとう、ゆっくりたべていってね!」 一斉にお菓子に群がるゆっくり一家。親れいむは流石に口の中に赤ゆっくりを仕舞い込 んでいるのでお菓子に駆け寄ったりせず、子供達を舌で運び出している。まぁ、目はお菓 子に釘付けで口からはよだれがだらだらと垂れており、心ここにあらずといった様子では あるが。 「あかちゃんたちはゆっくりおかあさんのくちからでていってね!」 「ゆゆ! あまあまさんゆっくりれいむにたべられてね!」 「むーしゃむーしゃ、しあわせー!」 「ゆががが、それはりぇいみゅのあまあまさんだよ! ゆっくりかえしてね!」 「へっへっへ、はやいものがちだぜ!」 ゆっくり達の注意がお菓子に集まったところで、ゆっくりの退路を断つべく部屋の戸じ まりを確認。すかさず別室に行き、こんな事もあろうかと用意して置いた新しいアイテム を持って来た。実験第二段階のスタートだ。 「うっうー! れみりゃだどー! たーべーちゃーうーぞー!」 私が持って来たのは、ゆっくりれみりゃの帽子である。これを被りながら、れみりゃの 真似をしてゆっくり達に声を掛けると…… 「「「「!!!? うわあああああああ! れみりゃだー!」」」」」 「ゆう、ゆぅ、やっちょたべれちゃよ……むーちゃむーちゃ、ち、ちあわせぇぇぇーー!」 私をれみりゃと誤認し、本能に従って硬直するゆっくり達……中にはお菓子に気を取られ るあまり気が付かないものもいるが、私が手近でむーしゃむーしゃしている赤れいむを踏み つぶし、そのままれみりゃのダンスの真似を始めると、慌てて逃げ出した。とはいえ、ここ は森の中ではなく私の家の居間であり、逃げ道はない。自然とゆっくり達は部屋の隅に集ま り、母親を中心に固まってしまった。追い詰められた事を悟ったのか、比較的大きめの子ゆっ くり達が膨らんで威嚇を始める。 「ぷくー! ゆっくりできないれみりゃはゆっくりしないでさっさときえてね!」 「ゆっゆっゆ、ままままままりささまはれれれれれみりゃなんかこわくないんだぜ!」 うーん、がんばるなぁ。私が親子愛に感心しているその隙に、親れいむは赤ゆっくりを舌 で巻き取り、口の中に入れてゆく。 「おちびちゃんたち! おかあさんのおくちのなかにかくれてね!」 「ゆゆ! おきゃーしゃんのおくちのなきゃならあんじぇんだにぇ!」 「れみりゃがきえるのをゆっくりまちゅよ!」 次々と親の口の中に隠れてゆく赤ゆっくり。遂に全部の赤ゆっくり─当初14匹、私が先ほ ど一匹踏み潰したので、現在は13匹─が口の中に隠れた。流石に親れいむは苦しそうで、脂 汗でぬとぬとになりながらも、表情だけは不敵に 「ゆゆーん、これでばかなれみりゃはあかちゃんたちにてがだせないよ! ゆっくりりかい してね! わかったらゆっくりしないでさっさとしんでね!」 と私に勝ち誇った態度で命令して来た。 「なんと……まだ喋る余裕が有るとは!」 私はれいむのぼせい(笑)に感動して思わずひとりごちてしまった。よし、これなら更に 実験を進める事が出来る。 「うっうー、おくちのなかににげたあまあまはたべれないんだどー! でも、ほかのあまあ まをたべればいいんだどー!」 親れいむの周囲で「ぷくー」と膨らみながら威嚇を続ける子ゆっくり達をオーバーアクショ ン気味に指差す。 「「「「どぼじでぞうなるのおおおおおおおおお」」」」 これまでは、狙われているのは赤ゆっくりだと若干高をくくって油断していた子ゆっくり 達は、自分を標的にされて恐慌状態に陥り、或るものは砂糖水の涙を流しながら立ち竦み、 或るものは震えながら母親に体を摺り寄せ、兎に角少しでも私から離れようと足掻く。 その内、子まりさの一匹が目を輝かせながら姉妹たちに提案する。 「ゆ! そうだ! まりさたちもおかあさんのおくちのなかにいれてもらうんだぜ!」 「ゆゆ!? それがいいね! おかあさんゆっくりいれてね!」 「ゆう……でもおかあさんのおくちのなかはもうおちびちゃんたちでいっぱいだよ……」 赤ゆっくり13匹を口に入れ、もう限界に近い親れいむ。しかし、危険におののく子供達を 前に、やめてね! とも言えずに困惑気味だ。そこで私はダメ押しとばかりに、れみりゃダ ンスを踊りながら近付く。 「うー、おくちのなかににげられたらこまるどー! はやくたべるどー!」 ついでに、先ほど口の中に入るのを躊躇っていた親孝行な子れいむを踏み潰す。これがきっ かけになり、子ゆっくり達もおかあさんの口の中に体を突っ込んで行く。 初めの内こそ「おちびちゃんたち、ゆっくりおくのほうにいどうしてね!」とか「おねえ ちゃんたちはそろーりそろーりはいってね! おちびちゃんたちをふまないでね!」等と子 ゆっくり達を受け入れて居た親れいむだったが、その内口を閉じて子ゆっくり達を阻み出し た。勿論それで諦める子ゆっくりではなく、 「ゆー、もうすこしではいれるんだぜ!」 「まりさ! ゆっくりしないでいそいではいってね!」 「ゆぎぎぎ…おねえじゃんおざないでぇぇぇ」 と言う具合に体というか頭をひねりながら、ぐいぐいと親れいむの唇をめくり上げ、歯を こじ開けて中に入って行く。当然、先客の赤ゆっくり達は奥に向けてぎゅうぎゅうと押し込 まれ…… 「ゆぎぎぎぎぎぎ……まりしゃおねえじゃんおざないでええええええ! でいぶのあんごが ぶべぇ」 「みゃみゃだじゅげぶべら」 「ゆげぇ……もっちょゆっきゅりじだがっだよ……」 親れいむの口の奥深くで、新たに三匹の赤ゆっくりがくぐもった悲鳴を上げながら潰され た。無残に飛び散った餡子は、その周辺で矢張り押しくらまんじゅうをしていた赤ゆっくり の口に飛び込む。突然の甘味に驚いた赤ゆっくり達は姉妹の亡骸を「ゆゆ!? あまあましゃ んがありゅよ」とばかりに食べ始めてしまった。普段ならそうした同族食いは親や姉によっ て止められるのだが、ここは真っ暗な親れいむの口の中、咎める者はいない。 「あまあましゃんすごくゆっくりできりゅよー!」 「むーしゃむーしゃ、ちあわしぇー!」 「ゆゆ、にゃんだかひろくなっちゃようにゃきがするんだじぇ!」 こうしてあまあまを食べれば自分のスペースも確保出来ると気付いた赤ゆっくり達は、遂 に目の前に広がる突き当りの壁、即ち親れいむの餡子を食べ始めた。 自分の体内で恐ろしい事が起こっていると気付いた親れいむだが、既に口の中には10匹の 赤ゆっくりに加え、5匹の子ゆっくりが入り込み、とても声を出す余裕はない。最早脂汗で表 面をてらてらぬらぬらと光らせながら、「ゆぎぎぎ」とか「ゆががが」とか意味の無い呻き 声を出すのみだ。 そして今、最後の子れいむがお尻だけを親れいむの口に突っ込んで顔だけを出しながら 「ゆっへん! これでれみりゃもこわくないね!」と得意顔を浮かべた。 ……そう、遂に全部の子供がれいむの口の中に入ったのだ! れいむのぼせい(笑)がこ れほどまでとは!! 知的好奇心をすっかり満足させた私は、この子供思いの優しい親れいむを賞賛すべく、れ みりゃの帽子を取ってこれまでの非礼を詫びた。残念ながら親れいむは気絶していて反応は 無かったが、口から顔だけ出した子れいむが 「ぷくー! れいむをだますなんてひどいね! おにいさんはおわびにあまあまをもってきてね!」 と言うので、手近にあった餡子を掬って嘗めさせてあげたら許してくれた。優しくて聞き 分けの良い子で助かった。 その後、私は子れいむの案内に従って親れいむを彼女たちの本来の巣穴の近く(近所の森 だった)に帰すと、新たに生じた疑問──果たして、まりさのすてきなおぼうしの中には、 何匹の「おちびちゃん」が隠れられるのだろうか──を解明すべく、今度は成体まりさを探 す事にした。 私の知的探求の旅は、まだ始まったばかりなのである。 おまけ 『ゆゆ!? ここはどこなの?』 親れいむが目を覚ますと、そこはあの暖かくて広い「ゆっくりぷれいす」ではなく、すっ かり日も暮れて真っ暗な森の中であった。一体何が有ったのか? れみりゃが急に襲って来 て、おちびちゃん達をお口の中に隠した所までは覚えているのだが……そうだ、おちびちゃ ん達を早くお口から出さなければ! おちびちゃん達、暗くて狭い場所に閉じ込めてごめんね! 「ゆげえっ! ゆげげげっ!」 親れいむが激しくえづくと、愛しい我が子達が飛び出して来た。どの子も唾液まみれだが、 幸い体がふやけて死んでしまいそうな子供はいなかった。 「ゆゆ! おかあさんゆっくりしていってね!」 「ゆぐぐ、ごわがっだよおおおお!」 「ゆげぇ……やっど……ひろいどごろにでられだよ……」 1、2、3……たくさん、とてもたくさん。全員の無事を確認した親れいむは、長く続い た悪夢のような一日がやっと終わったのだと思い、子供達にぺーろぺーろやすーりすーりを して落ち着かせる。 「でいぶのがわいいあがぢゃんだぢにごわいおぼいをざぜでごべんでえええええ!」 「みゃみゃー、ぺーろぺーろ」 「すーりすーり……それにしても、あのおうちはれみりゃがでてぜんぜんゆっくりできない おうちだったよ……」 「あんにゃおうちはまりしゃしゃまにふしゃわしくにゃいんだじぇ!」 「ゆわーん、もうおうちかえりゅ!」 どうやら今回のお引っ越しは失敗のようだ。仕方が無い、元のおうちに戻ろう。親れいむ はそう判断し、子供達を促して巣の方に移動しようとしたが、その瞬間黒い影が視界を横切っ た。 「うーっ! うーっ!」 「「「「「「「「れみりゃだああああああああ!」」」」」」」」 今度は人間の変装等では無い、本物の胴なしれみりゃだ。子供達は咄嗟に母親に近寄り、 母親がその頼もしく長い舌ですくい取って口の中に匿ってくれる事を期待したが、親れいむ は歯を食い縛って決して口を開けなかった。 「おきゃーしゃん、おくちにいれてえええええ」 「れみりゃごわいよおおおおお」 親れいむは口に向かって擦り寄ってくる赤ゆっくりを跳ね飛ばすと、 「ごめんね……おちびちゃんたちをおくちにいれると、ゆっくりできないよ! ゆっくりり かいして、がんばってついてきてね!」 と言い捨てて、巣穴の方に行ってしまった。どうやら実験のトラウマのせいで、赤ゆっく りを口に入れる事が出来なくなってしまったらしい。子ゆっくり達も慌てて親に従って去っ てゆく。赤ゆっくり達は一瞬呆然としたが、すぐにれみりゃの脅威が迫って居る事に気付き、 親を追って必死に飛び跳ねる。 こうして「おかああさんのおくちのなか」と言う最大のゆっくりぷれいすを失ってしまっ た彼女らに、安息の日は有るのか? 赤ゆっくり達の苦難のゆん生は、まだまだ始まったばかりだ。 このSSに感想を付ける
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12月 2003年 http //www.getchu.com/soft.phtml?id=12404 197 :名無したちの午後 [sage] :03/12/13 00 05 ID A2XJB3IJ カラフルBOXの綾音が気に入ってます ずっと昔から主人公のことが好き 甘えてもくるし、頼りにもなる。時々料理も作ってくれる 夜寝る前に主人公の部屋の前にある窓から顔を出して会話イベントもある メインルート以外では主人公のことが好きだけど、主人公の幸せを願って それぞれのヒロインとの仲を応援してくれる(実際に行動して応援してくれる) でもめちゃめちゃ悲しそう… メインルートで主人公の恋人になれるとこれ以上ないというくらい喜ぶ姿が見れる などと何気に俺のツボをほぼ完璧に抑えた幼馴染だった… 他にもあるんだけどネタばれすぎるから回避かな… 198 :名無したちの午後 [sage] :03/12/13 00 11 ID gITOy+Gd マジでか・・・買わないといけなくなったじゃないか。 明日は傷モノだけの予定だったのに。 199 :名無したちの午後 [sage] :03/12/13 00 13 ID ARjfYXks 逆にそこまで想ってくれる幼馴染だと、修羅場多発の予感。そのへんはどう? 200 :名無したちの午後 [sage] :03/12/13 00 20 ID kb2NL+ls 購入ケテーイ 201 :名無したちの午後 [sage] :03/12/13 00 22 ID r4dphYKq 俺もカラフルBOX購入決定だw 修羅場スレの住人なんで修羅場はあってくれたほうが嬉しい まあ、なくてもいいが 202 :名無したちの午後 [sage] :03/12/13 01 42 ID A2XJB3IJ 修羅場状態はこのゲーム自体に皆無だった… そうそう、この子は基本的に主人公の幸せ願って他のヒロインと接するのを 応援してくれるけど嫉妬もしてくれるんだよね。しかも萌えるレベルの嫉妬 決して見るのが嫌にならずむしろ好感度がアップする感じの… 203 :名無したちの午後 [sage] :03/12/13 01 49 ID gITOy+Gd ハアハア 畜生!絶対買う 204 :名無したちの午後 :03/12/13 06 57 ID 4A+rgcsz 理想的な幼なじみだ・・・ 220 :名無したちの午後 [sage] :03/12/15 03 49 ID twC8EicX カラフルBOXの綾音のけなげさはいい。 他キャラと仲良くする主人公を少し離れたところから見てる時の表情がやばい。 多分197見てなかったらまず買うことはなかったから197氏に感謝。 全くノーマークだったからなあ。 221 :名無したちの午後 [sage] :03/12/15 03 50 ID vLX2pKsU 220 俺も今日買ってくるよ。 222 :名無したちの午後 [sage] :03/12/15 04 06 ID S/GZwZpD こなかな、空箱ともにエロは薄いから期待すんなよ・・・>新規購入者 334 :名無したちの午後 [sage] :04/09/30 15 37 31 ID 2nlcxxYm カラフルBOXの綾音との窓越しの会話は……あれは反則だな 綾音ルート以外ではあの日が来るのが怖かった。まぁそれゆえにさらに綾音の魅力が増すんだがな…… 最初から最後まで全力で好き好き光線を発してくれるのもいい
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前 翌日、親れいむは家族の中で一番早くおきた。黒い布は取り払われている。 周りには家族がいつものように寝転がっている、ように見えた。 「ゆ!ゆ!ゆああああああああああああああ!!!」 ゆっくり家族が寝転がっている中心には茶色い染みと子まりさの亡がら。親れいむの予想は当たってしまった。 親れいむ以外のゆっくり家族全員はその悲鳴に目が覚め始めた。 「ゆ、なにおかーしゃ・・・・あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 「まりしゃがあああああああ!!!」「れいむのいもうとがああああああああ!!!!」 「だれなの!だれが食べたの!まりさの赤ちゃん誰が食べたのおお!!!」 子供達の叫びがまりさの一言でぴたりと止まり、そこから犯人探しが始まった。 「れいむじゃないよ!れいむがおねーちゃんを食べれるわけが無いよ!」 「ま、まりさは自分の妹を食べるなんて酷いことをしないよぉ!」 「れいむも!」「まりさも!」「ま、まりさだって!」「れいむもたべない!」 「おとーさん達じゃない!?おとーさん達なら体も大きいからまりさ達を食べることなんて・・・」 「やべでえええええええええええ!!!!」 親れいむが叫んだ。辺りがシンと静まり返る。 「みんなであんなにゆっくりしようって言ってたのにぃ!!なんでみんなそんなこと言うのぉ!! だれが犯人かなんて知りたくない!れいむの子供はみんな大事なれいむの子供だよ!!!」 「ゆうぅ・・ゆううぅ・・・!おがーしゃあん!!!」 「まりしゃがわるかったよぉぉぉ!!!」「ごめんねー!!ごめんねー!!!」 「いいんだよおおおお!!みんなゆっくりしようねええええええ!!!」 その日、男は食べ物を持ってこなかったがビデオも持ってこなかった。 みんなお腹は減っていた、だがゆっくり家族は久しぶりにみんなでゆっくりしたのだ。 夜、いつも通り黒い布が箱を覆っていく。 「おかーしゃん、いつになったらご飯食べれるんだろうね・・・」 「ゆっ!明日またおにーさんにお願いしてみるよ!今日はもうゆっくり寝ようね!」 子供を励ましたものの親れいむは内心不安だった。昨日同様、あのビデオを見せられるのではないだろうか。 例えそうだとしてもいつまでもこのままではいられない。子供達の為にも食べ物を得なければいけないのだ。 親れいむの決心はこの前のモノよりも強く硬いモノとなっていた。 翌朝 親れいむは嗅ぎ慣れた甘い匂いで目を覚ました。 横にいたはずの子れいむは目の前でゴミになって散乱していた。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 「!!!おかーしゃんだいじょう・・ひいいいいいいいいいいいい!!!!」 「おねえええええええええぢゃあああああああああああああん!!!」 「おおおおおねえぢゃんがしんだおねえぢゃんがしんだおねえちゃんがああああああああ」 「おかーさんどういうこどぉ!!なんでおねーだんがじんでるのぉ!!!」 その理由は親れいむの方が知りたい。昨夜自分が小さな希望を与えてたはずの子供はどこに消えたのか。 どこにどこにどこにどこにどこにどこ・・・ 子供達の口元が茶色い。まりさの口元も茶色い。そして自分の口元は 甘い。 「そそそそそそそそそそそんなああああああああああああああああああああああああ」 「ゆっ?なんかお口の周りが甘いよ?」「ほんとだ!あまいあまい!」 「お~いし~い!」「なんだろうこれ、わからないけどおいしいよ!」 「だめえええええええ!!!それなめちゃだめええええええええええええ!!!!」 自分達が無意識の内に子供を食べてしまったのか?いいや信じたくない。だがそれ以外に考えられない。 だが子供達に伝えるにはあまりにも酷だ、教えられるわけが無い。できるはずが無い。 「れいむうううううううう!!!まりさと子供達がその子を食べちゃったんだよきっとおおおおおお!!!」 今まで黙っていたまりさが叫んだ。なぜ、何故今ここでそれを言ったのか。 「・・なに?なにそれ?」 「え・・・どういうこと?どういうこどおおおおおおおおお!!!?」 「れいむたちがおねえぢゃんだべちゃっだのおおおおおお!!!?」 「この甘いのって・・・おげ!!?おげえええええええええええええ」 「いやあああああああああああ!!!!おねええええだあああああああああああああああああ」 あの日、同族食いビデオを見た日を思い出させる狂気がそこに広がっていた。 それはあの日同様押さえられない混沌、加えて今回は親れいむもその混沌に飲み込まれているのだ。 止められる物は誰もいなかった。 その日ゆっくり家族は誰一人ゆっくりしなかった。皆一様に互いから遠ざかり、叫び続け、ただ叫び続けて夜を迎えた。 黒い布が覆われ始める。 「ゆぅうう!!やめでえええ!まっくらにしないでえ!!!」 「おにーさんお願い!ゆっぐりさせでええええ!!」 「いやあああああくらいのいやああああああああ!!!!」 一点の光も無い完璧な暗闇。ゆっくり家族の誰もが眠るまで体を震わせていた。 それから一週間、夜が明けると家族の一員が一匹減るという状況が続いた。 その度に家族全員の口には餡子がこびりついていた。 そのため一日一日心がヤスリで削られる様に精神を疲労させられたが、体の調子は徐々に良くなっていった。 家族を食べるという行為は信じたくなかったが皮肉なことにその体調の回復が何よりの証拠だった。 残るゆっくりは四匹、ゆっくり両親と子ゆっくり二匹。 もう既に自分達が家族を食べているということを認めているのか、誰が誰を恐れるということは無かった。 部屋の中心でぼうっと天井を見上げてゆっくりする一家。 「おかーしゃあん」 「ゆっ?なぁに?」 「なんでれいむはこんなところにいるの?なんでお外でかけっこできないの?なんで虫さんをたべれないの? お友達のありすはどこ?ぱちゅりーは?みょんは?ちぇんは?お空をとんでるこわいこわいれみりゃはどこ?」 「ゆぅぅ・・・・・・」 「なんでゆっくりご飯食べれないの?なんでゆっくりおねんねできないの?なんでゆっくりお姉ちゃん達と遊べないの?」 「ゆぅ・・ゆぅう・・・・」 「なんで?なんで?なんで?なんで?な・・なんでぇぇぇ・・・!」 「うぐっ・・・!うぐぅっ・・・・・!!」 なんでだろうか。それは親れいむも知りたい。なぜゆっくりできずにここで家族を食べているのか。 だが分からなかった。男が自分達を捕まえ何もせずにいることを。 まりさはあの日からほとんど喋っていない。もう精神がすり切れてしまったのか。 いや、きっとまだ大丈夫なはずだ。そうだ、今日こそは家族の一匹も死なせはしない。 久しぶりの決意、今度こそ砕いてたまるものか。 「まりさ」 「ゆぅ?なぁにれいむ?」 「今日の夜二人で見張りをしようよ。れいむ達と子供達がお互いを食べない様に。」 その言葉の一言一言はゆっくりとは思えない程の意思が込められている。 「もう、家族でお腹いっぱいにはなりたくないよ!」 「ゆぅ、わかったよ!まりさといっしょに家族を救おうねぇ!」 久しぶりの夫婦の会話。親れいむはその言いようの無い懐かしさの様なものに涙が出そうになった。 夜がきた。黒い布が箱に覆いかぶされる。 親れいむの作戦はこうだ。二匹の片方が警備をし、片方がその間に眠るという単純なものだ。 この作戦を成功させる為に四匹は隅に固まって寝ることになった。 暗闇の中では視認できないため動きを敏感に感じ取るしかないからだ、と親れいむの提案。 かくしてゆっくり家族の家族生命を賭けた夜番が始まった。 「ゆっ!じゃあまずれいむが先だよ!まりさはゆっくりねててね!」 「わぁかったよれいむ!ゆっくりねてるよぉ!」 「おかーしゃんがんばってね!」「まりしゃたちもがんばるからね!」 暗闇の中で励まし合う一家。相変わらず周りはその声しか聞こえない。 「ゆぅう!今日はだれもたべないよ!」 家族に体をくっつけてひたすら暗闇に耐える親れいむ。正直暗闇で意識を保ち続けるのはきつい。 「ゆうぅ・・・ゆうぅ・・・」「ゆぅぅん・・・」 子供達の寝息が聞こえてくる。これがあるからこそ正常でいられるのだ。この声が無かったら・・・親れいむに怖気が走った。 一体何時間経っただろうか。もう三日も起きている様な気分だ。 親れいむはもうそろそろまりさと代わってもいいのではないかと思いまりさを起こそうとした。 「まりさ、交代の時間だよぉ。まりさ~どこ~」 暗闇でまりさを手探りで探す親れいむ。そこであることに気づいた。 そういえば何故自分達はこの暗闇の中で子供達を食べることができたのだろうか。 相手の位置が分からない真っ暗闇で互いの位置を把握できるわけが無い。 つまり家族の一員を食べる方法は一つ、黒い布が払われてからだ。 となるとこの夜番は全くの見当違いだったことになる。 「ま、まりさ!おきて!はなしがあるの!」 すぐに代替案を考えなくては。このままでは疲弊したまま朝を迎えてしまうかもしれない。 そんな焦る親れいむに落ち着いた声がかけられた。 「れいむ・・・そこなんだね」 「ゆっ?まり・・あがぁ!?」 親れいむの後頭部への衝撃、この衝撃には覚えがある。この衝撃はあの日・・・あの時・・・ 親れいむが目を覚ました時、辺りはもう黒い布が取り払われ明るくなっていた。 「まりさ!まりさはどこ!?れいむの子供は!?」 辺りを見回す親れいむの目に入ったまりさの後頭部。せわしなく動いているそれに親れいむは緊張した。 「ま、まりさ?なにをしてるの?」 まりさに近づく親れいむ。その足取りはとてもゆっくりしている。 「まりさ、ねえなにをしてるの?ねえ、まり・・まりさあああああああああああああああ」 予感は当たった。 まりさの口には子れいむと子まりさが目を白くして震えていた。 「お゛お゛お゛お゛お゛があ゛あ゛あ゛しゃしゃしゃしゃしゃしゃ」 「ゆゆゆゆゆゆっぐりでぎぎぎぎぎぎ」 子供をくわえているまりさの眼は既に親のものではない。 いつからこんな眼をしていたのだろうか。それは初めて自分の子供を食したあの日からなのだろう。 「まりざあああああああああ!!!なんでごどお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛」 「ゆふふふぅ。おなかすいてたのぉ。おなかがぁ。」 「れいむ達に子供達を食べさせていたのもまりさだったんだねえええ!!!」 「そうだよぉ!死んじゃったら食べれなくなっちゃうからねぇ!」 「まりざあああああ!!こどもをおおおお!!!こどもだぢをかえぜえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!」 親れいむはその命や魂、全てをかけてまりさに突っ込んでいく。だがまりさはそれを物ともせずにかわす。 あの日から毎日最も食事を楽しんでいたのはまりさだ。そのおこぼれをもらっていた親れいむが体力的に勝てるわけが無かった。 「ゆべぇっ!!!」 思い切り壁にぶつかった親れいむはその衝撃で方向感覚を失った。 まりさが向かってくる。それは分かったがどこから来るのか分からない。勘に頼って右へとはねる親れいむ。 「ゆぎぃいい!!?」 まりさの体当たりは見事にクリーンヒットした。それもそうだ、親れいむはまりさの突進方向へと自ら向かっていったのだから。 そこからは初日と同じ、一方的なストピングが始まった。 だが今日の攻撃と初日の攻撃は全く質が違っている。一つは一対一のタイマンであること。 そしてもう一つは殺し合っている相手が愛し合っていた物同士だということだ。 10分もすると箱の中の声はまりさの息づかい一つとなっていた。 13匹いたゆっくりは今ここでたった一匹となったのだ。 頃合いを見計らって男が入ってくる。 家族崩壊の元凶である人間だがまりさにとってはもうどうでもよかった。 今はただここから出てゆっくりしたい、それだけがまりさの望みだった。 「おにーさんおねがい!ここから出してゆっくりさせて!」 男はたんたんと箱の中を片付けていく。茶色い染みを拭き、ゆっくりの残骸集める。 男は箱の中をゆっくり家族が来る前の状態に戻そうとしているようだった。 「おにーさんお願い!まりさおそとにでたいの!」 まりさは必死に男に願い出たが未だに男はその声を聞こうともしてない。 彼は一体この箱の中に何を入れたと思っているのだろうか。 「おにーさん!むししないでぇ!!きいてよぉ!!!」 集めたゴミと一緒に男は無言で箱を出て行く。当然まりさは箱の中だ。 「おにーさんだしてぇ!!ここからだしてよぉ!!お家かえるぅ!!!!」 まりさを無視したまま男は何かを手に取った。それははっきりと見覚えのある物、黒い大きな布だ。 「まっておにーさん!くらいのはいやあ!!!ひとりでくらいのはいやあ!!だしでええええええ!!!!」 まりさは暗闇の中で男を憎んでいた。 自分の家族を食べさせられたからではない、自分をこんな暗闇の中に閉じ込めてゆっくりさせてくれないことに怒りを感じていた。 むしろ同族の味を教えてくれたことには感謝すらしていた。自分の子供があんなにおいしい物だったとは。 ここから出ることになったら森に行き腹いっぱいゆっくりを食ってやろう。 れいむだけではない、ありす、ぱちゅりー、れみりゃはどんな味なのだろうか。考えるだけでもよだれがでそうだ。 箱に閉じ込められている間、まりさは同族の味への想像だけで腹を満たしていた。 閉じ込められて一週間が経つ時、突如箱の中から声がした。 「ゆぅううぅぅぅう!!!」 「うぎゅ!うべべべべべべべ」 「ゆぅううう!!おもいよおおおお!!!」 どこかで聞いたことがある様な声。その声とほぼ同時に箱にかかっていた黒い布が取り払われる。 まりさの目の前にはゆっくり家族がずらっと並んでいた。 「ゆ・・・ぐぎいい・・・」 まりさは喜んでいた。久しぶりの食事が同族とはなんと豪勢な。 「ぎぎ・・・ゆっくりくわせろおおおおおお!!!」 勢いよく子供にかぶりつこうとするまりさの目の前にその家族の両親が立ちふさがった。 「子供達は食べさせないよ!」 「そんなまりさとはゆっくりできないよ!!」 まりさに渾身の体当たりをかます親まりさ。 一週間食事をとっていないまりさはその最初の一撃で地面にへたってしまった。 そこにすかさずストピングの嵐をかけるゆっくり家族。 「れいむ達を食べようとするからこんな目に遭うんだよ!ゆっくり理解してね!」 食欲はあれど体力は無い。まりさは力なくただその攻撃を受けるだけだった ゆっくり家族の攻撃が終わると外で様子を見ていた男がぼろぼろのまりさを連れ出した。 彼はまりさを抱え込んで初めて口を開き囁いた。 「あれがお前が捨てた家族の姿だ。」 まりさの脳裏を子供達とのれいむとの思い出が駆け巡りその光景が目の前の家族に重なった。 まりさは涙を流した。流すしかなかった。 思い出よりも食事をとったまりさにとっては、目の前の家族が自分達と同じ末路を辿らないことを泣きながら祈るしかなかったのだ。 だが男が考えていることはゆっくり家族の末路などでは無かった。 今回の家族は一体何本のビデオテープを見ることになるのか、ただそれだけを考えて今日も男はテープをセットする。 このSSに感想を付ける
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前編へ 「ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくりしていってね!」」」 真夏の太陽を天に抱いた森の中、ゆっくりたちの声が木霊する。 大人のゆっくりのものが一つと、赤ちゃんゆっくりのものがたくさん。 群生する草を掻き分けて、最近の幻想郷ではよく見かけられるようになった、ゆっくり家族の姿が現れた。 「ゆっゆっ、おひさまきもちいいね!」 「ゆっくりできるね!」 「あ、アリさんがいるよ!」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 生まれてまだ間もないであろう、ミニトマト程度の大きさしかない赤ちゃんゆっくりたちは、元気にはしゃぎまわっている。 種類は全てゆっくり霊夢種であり、小さなリボンをはためかせて元気いっぱい飛び回る姿は人間の子供たちと左程変わりない。 そしてそんな微笑ましい光景を、後ろから優しい顔つきで見つめるゆっくりが一匹。 「あまり遠くに行かないでね!」 ゆっくり魔理沙だった。 バレーボール程度もある身体を揺らして、四方八方に行こうとする自らの子供たちに注意を向けている。 「おかあさん、アリさんいっしょにたべよ!」 「お母さんはだいじょうぶだよ! みんなで食べるといいよ!」 「わーい♪」 「ゆっくりたべるね!」 「おかあさんだいすき!」 列を成して歩くアリの集団を見つけた赤ちゃんゆっくりたちは、小さな舌を伸ばしてアリを食べ始める。 近くに湖が存在し、生き物がたくさん生息しているこの場所は、ゆっくりたちが過ごすには快適すぎるほどのゆっくりスポットだった。 幸せそうにアリを頬張る赤ちゃんゆっくりたちの姿を慈愛の表情で見つめるゆっくり魔理沙。 その左頬は、他のゆっくり魔理沙と比べて、ほんの少しだけ歪な形をしていた。 二週間前、人間の手によって失われ、そして再生した結果だった。 そう――このゆっくり魔理沙は、あの無礼な態度のせいで『お仕置き』されたゆっくりだった。 あの後、怪我による衰弱で意識不明の重態に陥っていたゆっくり魔理沙は、偶然通りがかったゆっくり霊夢に助けられた。 一週間の看病の末、餡子の大半を失っていた身体は万全とはいかないまでも回復。 お礼を兼ねての親愛の表現として身体を寄せ合って揺すり合い、ついムラムラしてそのまま性交に発展してしまった。 助けてくれたゆっくり霊夢は黒ずんで朽ちてしまったが、代わりに可愛い赤ちゃんがなんと七匹も生まれたのだった。 それからゆっくり魔理沙は母として、赤ちゃんたちを育てている。 右も左も分からぬ森の中での生活だったが、暮らし始めてみれば今まで暮らしていた場所より遙かに快適で、既に安住の地と化している。 あの男が言っていた野良犬やゆっくりれみりゃ、ゆっくりアリスの姿も見かけない。 ……あの男。 顔を思い出す度に、ゆっくり魔理沙の左頬がじくじくと痛み出す。 あの男には酷いことをされた。 ――しかし、あの男を怒らせるようなことを、自分は仕出かしてしまったのだ。 そう考えるゆっくり魔理沙。別に知能が上がったわけではなく、単にトラウマが生じているだけなのだが、本人はそのことに気付いていない。 ――今でも怒っているのだろうか。 あれ以来、人里には近付いていない。場所が分からないということもあるが、近付いてあの時と同じような目に合いたいとは、二度と思わなかった。 「おかあさん!」 思考に没頭していたせいか、ゆっくり魔理沙は自分の子供が目の前に来ていたことに気付かなかった。 慌てて思考を中段し、微笑みを作る。 「ゆっ、どうしたの?」 「みてみて、アリさん!」 赤ちゃんゆっくり霊夢が舌をべっと伸ばす。その先には、踏まれてぺしゃんこになったアリの死骸がくっついていた。 「えらいね! ちゃんととれたんだね!」 「ゆゆっ♪」 褒められたことが嬉しいのだろう、赤ちゃんゆっくり霊夢はその場で踊るように飛び回る。 その愛らしい姿を見て、ふと電撃のような閃きがゆっくり魔理沙の脳裏に浮かんだ。 この可愛い赤ちゃんたちを見れば、きっとあの男も許してくれるに違いない! それは人間からすれば何とも愚かな考えだったが、今のゆっくり魔理沙にとって天啓ともいえる閃きだった。 早速赤ちゃんたちを全員呼び集め、高らかに宣言する。 「今からお兄さんのおうちへしゅっぱつするよ!」 「ゆ?」 「おにいさんってだれ?」 「ゆっくりできるの?」 「とてもゆっくりできるよ! おいしい食べ物があるし、れいむたちよりも大きなれいむもいるよ!」 「ゆゆっ!?」 「いきたい!」 大はしゃぎする赤ちゃんゆっくりたち。「ゆっ♪」「ゆっ♪」と楽しげにその場で飛び跳ねている。 それが静まるのを待ってから、ゆっくり魔理沙は記憶を頼りに道を歩み始めた。 「それじゃ、ゆっくり行こうね!」 「「「ゆっくりいこうね!!!」」」 時は少し遡り、早朝。 俺は知人の美鈴さんから習った太極拳を練習していた。 別に拳法に目覚めたわけではなく、ここのところ働き詰めだったので、健康のためにやっているだけだ。 ゆっくり魔理沙に『お仕置き』してから一週間くらい経ったころだろうか、俺の勤め先でちょっとしたトラブルが生じた。 それ自体は解決したのだが、それの尻拭いのために俺や同僚たちは朝から深夜までずっと駆り出され、今日まで一週間ずっと働きっぱなしだったのだ。 おかげでゆっくり霊夢には寂しい思いをさせてしまった。こういうとき、畑仕事をしている人が羨ましいと思ったりもする。 だけどまぁ、五年前に外の世界から迷い込んできた外来人である俺に土地なんてあるはずもなく、こうして家を持てただけでも大したものなのだろう。 「……ゆ?」 ゆっくり霊夢が眠りから目覚めたようだ。きょろきょろ周囲を見渡し、俺と目が合うや否や、 「ゆっくりしていってね!」 とお決まりの挨拶。 うぅん、相変わらずぷりちーなナマモノだ。 頬ずりしたくなる衝動をグッと堪えて、朝食の準備に取り掛かる。 その間ゆっくり霊夢はずりずりと腹ばいで俺の足元に近付き、ずっと身体を摺り寄せていた。 普段こいつが起きる前に家を出ていたので、久しぶりのスキンシップが取りたいのだろうか。 萌え死ぬ。 足の親指で頬のあたりをくすぐってやりながら、てきぱきと料理を作る。 外の世界のガスコンロと比べて竈は使い辛い(そもそも使ったことが無かった)が、今ではすっかり慣れたものだ。 今日は夕飯にも再利用出来るシチューを作る。 器に注ぎ、おひたしに鰹節を振りかけて醤油をかけた皿と丁度炊き上がったお米を並べて完成。 テーブルの上に乗せ、少量を別の皿によそうと、ゆっくり霊夢が食べやすいように床に置いた。 「いただきます」 「ゆっくりいただくね!」 ゆっくり霊夢は舌を器用に使い、零さず綺麗にご飯を平らげる。うーん、美しい。 おっと、感心してないで俺も早く食べなくてはな。 外の世界にいた頃と比べてずいぶん質素になった朝食を手早く食べ終え、皿を水の入った桶につけておく。帰ったら洗おう。 「じゃあ、行ってくる。今日は通常業務だからいつもの時間に帰れるよ」 「ゆっ、本当!?」 「ああ。それに明日はお休みも貰っている。一緒に遊ぼうな」 「ゆっくり待ってるね!」 ゆっくり霊夢に見送られながら、俺は家の扉を閉めようとして―― ごしゃん。 「……」 忙しくて修理する暇のなかった扉が、ついにご臨終なされたようだった。 なんか変な方向に曲がっており、動かそうとしてもビクともしない。 どうしよう、時間をかければ直せそうではあるが、そうすると仕事の開始時間に間に合わない。 扉は中途半端に開いたままだ。別に泥棒に盗られて困る貴重品はないが、野犬やゆっくりたちが入り込んでくる可能性もある。 仕方無いので、雨漏りの修理用に何本かストックしてある木の板を裏から持ってきて、扉の前に置いた。 あとは野犬の目の高さくらいの位置にいらなくなった新聞紙を米を糊代わりにしてくっつける。 突撃されたらすぐ剥がれてしまうが、多少の目眩ましにはなるだろう。 「いいか、知らない人が来ても追い返すんだぞ。お前のリボンにつけたペット証があれば、誰もお前を傷付けないからな」 「わかったよ!」 ちょっと心配だったが、仕事はしないといけない。 俺は何度も振り返りつつ、家を後にした。 時間は過ぎて、三時を過ぎたころ。 ゆっくり霊夢が主人の作ってくれた手製の滑り台で遊んでいると、何処からか自分を呼ぶ声が聞こえた。 どうやら玄関の方かららしい。この家に来客は滅多に来ないので、ゆっくり霊夢は多少警戒しながら扉に近付いた。 「ゆっ、誰かいるの?」 「れいむ! まりさだよ!」 「ゆゆっ、まりさ!?」 聞こえた声は、懐かしい知人のものだった。 二週間前、たった一日だけ遊んだ友達。主人から家に帰ったと聞かされて残念な思いをした記憶が蘇る。 板と新聞紙の隙間から外を覗くと、確かに見覚えのあるゆっくり魔理沙の姿があった。 「どうしてここに?」 「遊びに来たよ! ゆっくりさせてね!」 「ゆゆっ! ゆっくりしていっ……ん……」 「……? れいむ、どうかしたの?」 ゆっくりしていってね、とお決まりの台詞が聞けると思ったゆっくり魔理沙は、訝しげな視線をゆっくり霊夢に送る。 ゆっくり霊夢を引き止めたのは、主人が出かける前に言った言葉だった。 『知らない人が来ても追い返すんだぞ』 何者かがこの家に来たのなら、自分は追い返さなければならない。 しかし…… 「ゆっくり入れてよ! れいむに見せたいこどもたちもいるんだよ!」 「ゆっ、子供!?」 ゆっくりとしての本能を刺激する単語に、ゆっくり霊夢はぴくりと反応して顔を上げた。 「そうだよ! みんな、れいむにあいさつするんだよ!」 ゆっくり魔理沙の言葉に、板の向こうから赤ちゃん特有の甲高い声が幾重にも折り重なって唱和された。 「ゆっくりしていってね!」 「おねえちゃん、おかおがみえないよ!」 「はやくいれてね!」 「そこはゆっくりできるところなの?」 「ゆっくりさせてね!」 ゆー、ゆーと甘い鳴き声。ゆっくり霊夢は理性と本能のせめぎ合いでおろおろする。 主人は、ゆっくり魔理沙たちが部屋に入ることを是としないだろう。 しかし、赤ちゃんたちを見たい衝動が心の内よりどんどん溢れてくる。 主人への忠節を取るか、自身の抑えがたい興味を優先させるか。 悩みに悩んで、ゆっくり霊夢が取った行動は、 「今、この板をどけるよ! ゆっくり下がってね!」 ゆっくり魔理沙たちは知らないゆっくりじゃないから大丈夫だという、後先を考えない愚者の選択だった。 「おねえちゃん!」 「ゆっくりしていくね!」 「ゆっ、ゆっ♪」 赤ちゃんゆっくりたちに纏わり付かれながら、ゆっくり霊夢は幸せだった。 加工所で生まれ、この家に引き取られてからずっと、ゆっくり霊夢は赤ちゃんというものを見たことがなかった。 ペット用のゆっくりは英才教育を受けるために誕生してすぐ親元から引き離され、ゆっくりブリーダーと呼ばれる人間の下で厳しい訓練を受けることになる。 だが、生まれたばかりの蜂が教わらなくても狩りの仕方を熟知しているように、種族の本能的な部分は親と子の愛情関係を完全に理解していた。 赤ちゃんゆっくりたちを見てゆっくり霊夢の中に浮かんでくる感情は、間違いなく『愛』と呼ばれるものだった。 「うわー、すごいね! ゆっくりできるものがたくさんあるよ!」 「みんなでゆっくりしようね!」 ゆっくり赤ちゃんたちは大はしゃぎで、家の中を飛び回っている。 特に目を引いたのは、主人がゆっくり霊夢のために作ってあげた手製の玩具の類だった。 滑り台にブランコ、蛙人形やシーソーなど、さながら小さな遊園地といった風情である。 赤ちゃんゆっくりたちは玩具に駆け寄ると、思う存分ゆっくりし始めた。 列を作り、順番に滑り台を滑り。 ブランコに乗って、どちらがより高い場所まで行けるか競い合い。 蛙人形に群がって、ゆっくりれみりゃ退治ごっこをして。 シーソーを使って、自分の身体が沈んだり持ち上がったりする感覚を楽しんだ。 生まれて一週間、森の中でこんな遊びをしたことはなかったのだろう。赤ちゃんゆっくりたちは終始はしゃぎっぱなしだった。 ゆっくり霊夢もそんな赤ちゃんたちに付き添うように遊んでいたのだが、 「ゆ~……ふぁ……」 急に眠気を感じ、ふらふらと壁にもたれかかってしまった。 今日までの一週間、ずっと帰りの遅い主人を待ち続け、早く寝ないで夜遅くまで待っていた結果がこれだった。 眠ってはいけないと思いつつ、意識が闇の中へと沈んでいく。 やがてくぅくぅと寝息を立て始めたのを、離れて赤ちゃんゆっくりたちを見守っていたゆっくり魔理沙が発見した。 「れいむ、れいむ?」 「ゆっ……くぅ……」 揺すっても起きない。 赤ちゃんゆっくりたちが、心配したかのように駆け寄って来る。 「おかあさん、おねえちゃんどうしたの?」 「つかれて眠っちゃってるだけだよ! しんぱいしないでゆっくり遊んでてね!」 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢は起きないよう、小さな声で告げる。 だが赤ちゃんゆっくりたちは動かない。集まってきたのは、ゆっくり霊夢が心配だったからだけではないからだ。 「おかあさん、おなかすいたよ!」 「なにかたべさせてね!」 朝食の蟻を食べてから、この家に来るまでずっと移動中だったゆっくり魔理沙たちは、その間何も口に入れていなかった。 それに加えて、今激しい運動をしてきたばかりである。 空腹を訴えるのも当然の行動だった。 「ちょっと待ってね! お兄さんが帰ってこないと……ゆっ?」 言葉の途中で、ゆっくり魔理沙は鼻をひくつかせる。 漂ってくる、いい匂い。 食欲を促すその香りは、台所の竈の上に置いてある鍋のほうからしていた。 「あっちに、ご飯があるよ!」 ゆっくり魔理沙は竈のほうへと近付いた。 そこにはこの家の主人が今朝方作ったシチューの入った鍋がある。 だが、鍋はかなり高い位置に置かれており、普通は届く距離ではない。 ただ竈は角の部分が先に行くほど少しずつ丸みを帯びていく構造になっており、角の先端はゆっくりにとってただの坂と呼んでも差し支えない形状になっている。 あの部分まで飛ぶことが出来れば、鍋に届くかもしれなかった。 「いくよ!」 ゆっくり魔理沙は助走をつけ、竈の少し手前で思い切りジャンプした。 浮遊感。一瞬の空白の後、坂道の部分にギリギリ身体が届いた。 間髪入れず、もう一度ジャンプしようとする。 だが坂道での踏ん張りが効かずにバランスを崩し、そのまま床に落下してしまった。 「ゆぶっ!」 衝撃。口から餡子が少しはみ出る。 「おかあさーん!」 赤ちゃんゆっくりたちが心配して駆け寄ろうとするのを、ゆっくり魔理沙は静かに押し留めた。 「だ、大丈夫だよ! ゆっくりそこで見ててね!」 ゆっくり魔理沙は何事もなかったかのようにニッコリ笑うと、もう一度チャレンジするために距離を取る。 無論、痛くないわけではないが、それでも子供たちを心配させないために我慢しなくてはならない。 それは親になったゆっくりとしての本能だった。 「……ゆっ!」 気を落ち着かせ、もう一度トライ。タイミングを見計らって、竈の坂道へ一直線に跳躍する。 べしゃっ、と身体が押し付けられる感覚。その感覚を維持したまま、ゆっくり魔理沙はもう一度ジャンプした。 一瞬の緊張。果たして自分はどうなった? 答えは、身体に触れる床の感触で分かった。 ゆっくり魔理沙は、見事に竈の上に着地していたのだった。 「ゆっ! ゆっ!!」 「おかあさん、すごい!」 遙か下方で、赤ちゃんゆっくりたちがやんややんやの喝采を母親に送る。 その声に満足しながら、ゆっくり魔理沙は鍋に近付いた。 この鍋を持って床に降ろすのは、物理的に不可能だということくらいゆっくり魔理沙の知能でも分かった。 ならば、方法は一つしかない。 「ゆっくり落ちていってね!」 体当たり。がん、という衝撃と共に鍋の位置が少しずれる。 もう一度アタック。ずず、ずず……と少しずつ鍋がぐらつき、そして…… がしゃーーーん!!! 豪快な音を立てて、鍋が竈から転がり落ちた。 床にぶちまけられるシチュー。掃除するのにかなり苦労することになるだろうが、無論ゆっくりたちはそんなこと知ったことではない。 赤ちゃんゆっくりたちは歓声を上げてシチューに群がり、ぱくぱく食べ始める。 「ゆっゆっ、つめたいけどおいしいね!」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 「うっめ!!! メッチャうっめこれ!!!」 その様子を幸せそうに眺めていたゆっくり魔理沙は、床に水の入った桶が置いてあるのを発見した。 後で皿を洗うために浸けていたものだが、ゆっくり魔理沙にとってその桶は飲み水にしか見えなかった。 「みんな、お水もあるよ!」 地面に慎重に下りると、ゆっくり魔理沙は躊躇無く桶も引っくり返す。 水が一面に溢れ出し、勢いよく流れ出た皿は地面を擦って何筋もの傷を付けた。 「ゆゆっ、ちべたーい!」 「おみず、きもちいいね!」 「ごくごく、おいしーい♪」 赤ちゃんゆっくりたちは大はしゃぎ。風呂代わりに水浴びしたりするゆっくりまで現れる。 皆にとって、ここは最高にゆっくり出来る環境だった。 「……ゆっ!? みんな、何してるの!?」 と。 先程鍋を落とした音で目を覚ましたゆっくり霊夢は、台所の惨状を見て驚愕の声を上げた。 「あ、れいむ!」 ゆっくり魔理沙はぴょんぴょん飛び跳ね、フリーズしているゆっくり霊夢に近寄る。 そしていかにも自分は幸福です、というような顔で、 「おにいさんがまりさたちのために用意してくれたばんごはん、美味しいね!」 「……」 ゆっくり霊夢は口をぱくぱくさせるだけで反応しない。 「……? どうしたの、れいむ?」 不審そうな表情を浮かべるゆっくり魔理沙。気付いた赤ちゃんゆっくりたちも二匹の周囲に駆け寄った。 「おねえちゃん、どうしたの?」 「ゆっくりしていってね!」 「おねえちゃんのぶんもまだあるよ!」 悪意のない赤ちゃんゆっくりたちの言葉。 ゆっくり霊夢は何とか餡子の底から声を絞り出そうとして、 「ゆっくり霊夢っ!!!」 叫び声と、ぶち壊す勢いで開けられた扉の音にびくりと身体を硬直させた。 それは、ゆっくりが進入しないように置いておいた板が外れているのを発見し、慌てて帰宅した主人の声だった。 「ゆっ……ゆっ!?」 これはマズい、とゆっくり霊夢は思った。 何がマズいのかは分からなかったが、とにかく本能的な危険をゆっくり霊夢は感じていた。 どたどたという足音、そして、 「ゆっくりれいっ……む……」 惨状を見つけてしまう。 目を見開き、硬直する主人。 ゆっくり霊夢は固まったまま反応出来ない。 「……ゆっ!」 だが、大きな声に少し驚いたゆっくり魔理沙は、自分がここに来た目的を思い出した。 「みんな、来て!」 「ゆっ?」 「おかあさん、どうしたの?」 突然闖入してきた初めて見る人間の姿を興味津々に眺めていた赤ちゃんゆっくりたちは、母の言葉を受けてゆっくり魔理沙の周囲に集まる。 「みんな、お兄さんに『挨拶』するんだよ!」 「「「ゆっ!!!」」」 朝、ここに来る道中で母に教わった『挨拶』。 赤ちゃんゆっくりたちはぽかんと口を開けっぱなしの男に向かって、精一杯の愛らしい顔で、 「「「ゆっくりしていくね!」」」 言った。 ゆっくり魔理沙は順繰りに赤ちゃんたちを見渡し、 「お兄さん、この前はごめんね! 赤ちゃんたちをとくべつにかわいがっていいから許してね!」 そして、 「だから、みんなでここに住まわせてね!」 その日、ゆっくり霊夢はゆっくりれみりゃやゆっくりフランなど足元にも及ばない恐怖を味わった。 それはいつかの『お仕置き』すらも凌駕する、圧倒的なまでの修羅の形相だった。 「おにいさん、ここからだして!」 「おなかすいたよ!」 「ここじゃゆっくりできないよ、おうちかえる!」 赤ちゃんゆっくりたちの声。 俺はいらついた風を装い、ゆっくりたちを閉じ込めた透明の箱を蹴り上げる。 「五月蝿い、殺されないだけありがたく思え!!!」 「ゆゆっ!!?」 衝撃と振動。 赤ちゃんゆっくりたちは怯えて隅に固まり、震えながら泣き出してしまった。 「やめてね! 赤ちゃんたちに酷いことしないでね!!」 と、こっちはゆっくり魔理沙。 赤ちゃんゆっくりたちを入れた箱とは別の小さな透明の箱に詰められ、ずいぶんと苦しそうだ。 子供たちを庇おうとするその姿勢は、いつかの自分勝手な姿からは想像出来なくて少し吃驚する。 「お兄さん、まりさたちを許してあげて!」 更に別の箱、こちらは少し空間のゆとりがある透明の箱の中で、ゆっくりれいむは俺に温情を訴えかける。 ゆっくり魔理沙たちを家の中に入れてしまった罪で閉じ込められてなお、友達の安否を気遣うとは……流石我がペット。 ぶっちゃけた話、俺は別にそこまで怒り心頭というわけではなかったりする。 確かにあの惨状を目にした瞬間、ちょっと怒りの沸騰点が限界を超えかけた。 でもそこを鋼の精神でぐっと堪え、ゆっくりたちを閉じ込めるだけに留めている。 何故殺さなかったのか? 勿論『殺害』という直接的な攻撃を俺が嫌っているというのもある。 だがそれ以上に、 「ほーれほれ」 「ゆゆっ!? お、おかあさーん!」 「ゆっくりやめてね! 赤ちゃんを放してね!!!」 こいつらの泣き叫ぶ声と必死の表情が、最高に俺の心を満たしてくれる。 殺してしまったら、この愉悦は味わうことは出来ない。 自分の唇がすごい勢いでひん曲がっているのを感じる。 蓋を少し開き、赤ちゃんゆっくりの一匹を掴み上げた。 ああ、ゆっくり魔理沙の懸命な顔……そそる。 「しかしぷにぷにしてんなー、こいつ」 掌に乗せた赤ちゃんゆっくりの頬を突く。 最初は優しく、そして少しずつ力を込めて。 「ゆ、ゆゆっ、いたいよ! ゆっくりできないよ!!!」 最初はくすぐったそうにしていた赤ちゃんゆっくり霊夢だったが、力が入ると苦しそうな声を上げた。 その様子を見て、ゆっくり魔理沙が半狂乱で泣き叫ぶ。 「な゛ん゛でごん゛な゛ごどずる゛の゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!?」 「何故? 分からないのか?」 いつかのような質問。あの時の痛みを思い出したのか、ゆっくり魔理沙がびくりと震える。 「ここは、誰の家だ?」 「お……お兄さんのおうちです……」 おぉ、覚えていたか。感心感心。 「で、お前は何をしていた?」 「あそんでました……」 「それは別に構わん。その次だ」 「お兄さんが用意してくれたおゆうはんを」 「違う」 赤ちゃんゆっくり霊夢にデコピン。 結構本気で叩いたからか、「ゆ゛ーっ!!!」と泣き出してしまった赤ちゃんの姿を見て、慌ててゆっくり魔理沙が訂正する。 「まりさたちのじゃないおゆうはんを勝手に食べてしまいました!」 「そして?」 「お水も勝手に飲んでしまいました!」 「ふむ」 もう一度デコピン。赤ちゃんゆっくり霊夢の泣き声が激しさを増す。 ゆっくり魔理沙は俺の動きを止めようと必死に箱をガタガタ揺らした。 無駄な努力ご苦労さん。 「さっき言ったよな? ここは俺の家だって」 「そ、そうです、だから赤ちゃんをゆっくり放してね!」 「あ?」 「は、放してください!」 ゆっくりが敬語を使ってるのは面白いなぁ。 「で、お前は人の家で、俺が俺のために作ったシチューを床にぶちまけたわけだ? お前の都合のために?」 「あやまります! あやまりますからまりさの赤ちゃんにひどいことしないでぇぇぇ!!!」 ゆっくり魔理沙の顔はもう涙で皮がべちょべちょになっていた。 うはぁ、やべぇ。超快感。 だけど台所の掃除と扉の修理で時間を使いすぎた。 はっきり言って俺は眠い。 今日はゆっくり魔理沙に『絶望』を知ってもらうだけで終わらせてしまうか。 俺は泣きながら俺の手を逃れようとする赤ちゃんゆっくり霊夢を指で掴むと、 「あーん」 「ゆ゛ゆ゛っ!!?」 大きく口を開き、奥歯に挟んだ。 「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇ゛ぇ゛ぇ!!!」 そんなに騒がなくても食わないよ。 まだ。 俺は奥歯に挟んだ赤ちゃんゆっくりを見せ付けるように、ゆっくり魔理沙と他の赤ちゃんゆっくりたち、そしてゆっくり霊夢の箱を順繰りに回る。 「いいか、今からお前に問題を出す」 うっ、しゃべりづらい。 「お前が十秒以内に答えられたら子供は助けてやる。答えられなかったら子供は食われる。分かったな?」 「わ、わかったからいそいでもんだい出してね!」 歯と歯の間で母の名を呼びながら泣き叫ぶ(口の中に振動が起きて少し気持ち悪い……)赤ちゃんゆっくりを見つめて、ゆっくり魔理沙は俺を急かす。 おやおや、ゆっくりのくせにゆっくりしないでいいのかな? まぁいいや。 「問題。ゆっくり魔理沙には七匹の子供がいます。ある日ゆっくりれみりゃに襲われて二匹殺されてしまいました――」 逃げた先でゆっくりフランの群れに遭遇してしまい、また二匹無残に殺害されました。 更に発情期のゆっくりアリスと出会ってしまい、ゆっくり魔理沙は子供の一匹を犠牲にして逃れました。 しかし家に帰ると、そこはゆっくり霊夢の一家に占拠されていました。 ゆっくり霊夢たちに押し潰され、また一匹子供が死んでしまいました。 そうこうしてるうちにお腹が空いてしまったゆっくり魔理沙は、残った子供をぺろりと食べてしまいました。 さて、子供は現在何匹残っているでしょう――? 「ゆっ!? ゆ、ゆっくり……」 ゆっくり魔理沙は顔を顰めて考え出す。 くくく、所詮ゆっくりブレイン、答えられまい。 しかもゆっくりれみりゃなどの天敵の名前をわざわざ出している。本能的な恐怖で冷静な思考なで出来ようはずもない。 「なーな、ろーく」 「ま、まってね! ゆっくりかぞえてね!」 「ごー」 焦ってるゆっくり魔理沙も可愛いなぁ。 その頬を引っ張りたい。 「さーん、にー」 「ゆゆゆゆっくりしてね!!! ゆっくりして」 「いーち」 「ゆ……う゛わ゛あ゛あ"ああぁ゛ぁぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛!!!」 「ぜろー、残念でしたー」 やっぱり無理だったか。 ゆっくり魔理沙は何とかしようと、目に見えて暴れ出した。 だが狭い箱の中、己を苦しめるだけだ。 俺は口の中から聞こえる赤ちゃんゆっくり霊夢の泣き声を聞きながら、他の赤ちゃんゆっくりたちを閉じ込めた箱の前に移動した。 「おにいさん、なんでこんなひどいことするの!?」 「はなして! いもうとをはなしてね!」 「ゆっくりできないおにいさんはゆっくりしんでね!」 口々に喚きたてる赤ちゃんゆっくりたち。だけど俺が箱を蹴ると大人しくなる。 「非常に残念だが、こいつは死ぬ。あーあ、残念だなぁ。お前たちのお母さんがちゃんと問題に答えられてれば、こいつも助かったのになぁ」 まるでゆっくり魔理沙が全て悪いような言い方。 勿論、どう考えても悪いのは俺なのだが、ゆっくりの餡子脳ではそんなこと分かるはずもあるまい。 「お前たちのお母さんのせいでこいつは死ぬのかぁ。あーあ。酷い親だよなぁ」 「ゆっ!?」 「そんな、おかあさん!?」 赤ちゃんゆっくりたちが一斉に母親の方を振り向く。 ゆっくり魔理沙は違うと言いたげに身体を少しだけ揺らした。本当は首を振りたかったのだろうが、箱が狭くて身動きが取れないのだ。 「ち、ちがうよ! おかあさんは赤ちゃんをたすけようとしたよ!」 「それなら赤ちゃんは助かってるはずだよなぁ。もしかしたら、お前たちも見殺しにされるかもなぁ」 論理の破綻した言葉。 だが、それは赤ちゃんゆっくりたちを突き動かす原理になる。 「ひどいよ、おかあさん!」 「ここにつれてきたのもおかあさんだったよね!」 「れいむたちがひどいめにあってるのもおかあさんのせいなんだ!」 「おかあさんはゆっくりしね!」 「「「ゆっくりしね!!! ゆっくりしね!!!」」」 「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇ゛!!! ぞん゛な゛ごどい゛わ゛な゛い゛でぇ゛ぇ゛ぇぇ!!!」 子供を護ろうと必死だった母親が、護ろうとした子供たちに糾弾されて泣き叫ぶ。 人間ならば同情を誘う光景だが、こいつらはゆっくり。 快感しか生まん。 「さて」 俺は再びゆっくり魔理沙の前に戻り、口の中を見せた。 相変わらず、奥歯に挟まってがたがた震えている赤ちゃんゆっくり霊夢の姿がそこにある。 「こいつを助けたいか?」 「だずげであ゛げでぐだざい゛ぃ゛ぃ!!!」 「うん、でも駄目」 ぷちん。 俺は口を開けたまま、見せ付けるように奥歯で赤ちゃんゆっくり霊夢を押し潰した。 飛び散る餡子。意外と美味しいが、それよりも生命を奪った生理的な罪悪感を覚えてしまうのは俺がゆっくりを愛している所以か。 「う゛わ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ゛!!!」 ゆっくり魔理沙のこれ以上ないという悲鳴。 いいね、ゾクゾクする。 先程の罪悪感はそれで消し飛んだ。 さて、じゃあ眠るとするか。 明日は休みだ。 もっと遊ぼうな、ゆっくり魔理沙…… 続く。 このSSに感想を付ける
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前話【バードスイマー】 ついにやってきた大ゲート祭! ゲートをくぐればどの異世界の国にも行ける特別な一ヶ月! …六月が過ぎると最初にくぐったゲートに戻されるんだけどね ここ神戸のポートアイランド、異世界交流解放特区に設立された海と山の十津那学園は異種族亜人の多く通う特別な学園。 里帰りしたり行った事のない国へ行こうとする異世界出身者も多いけど、異世界に興味を持つ人間も多いんだ。 六月前から休学届けを出す生徒でごった返すのが毎年の恒例行事みたいになってるんだよね。 「…君達が一ヶ月も学業から遠ざかって大丈夫とでも?」 「大丈夫に決まってるじゃないすか!」 「…中間試験の結果を忘れてはいないだろうな?」 「が、学期末まで頑張ります」 「…」 「先生、七月の補修と補テストを受け、それをパスするというのはどうでしょうか?」 「坊ちゃんが試練を受けると言うのなら俺も!」 「分かった。 とりあえず休学届の件は少し待ってもらおう」 (うわー“あの”四人組も異世界に行くんだ) 既に勝利モードの人亜混ざる四人組と入れ違いで職員室に入ってきたのはとても小さな翼で羽毛がちょっと目立つ近人間見の鳥人。 「ふむ。川瀬はオルニトに行くのか。 親戚の方にでも会いにいくのか?」 「いえ、“なんとなく”鳥人として空の国ってのを見ておきたいんですよー」 かつて大陸狭しと支配を広げ、栄華を誇りそして衰退した鳥人の国、オルニト。 異世界旅行のパンフレットで見かける売りは、浮遊群島とそこからの絶景。 「オルニトか…治安は良くも悪くもないが、誰かと一緒に行かないのか?」 「水泳部の皆はラ・ムールの、えぇと砂漠のオアシスの町?パンフで異世界のラスベガスとか紹介されてるとこに行くらしいんですよー。オアシスで泳ぐ気なんかなぁ」 「ディセト・カリマ…か。 部員の皆に伝えておいてくれ、あそこのオアシスは遊泳禁止だと。鱗人にしょっぴかれるとな」 「えー?オアシスなのに遊泳禁止とかあり得ないっしょ?」 「きつく言っておくように」 所々龍鱗備える猫の手がポンと印を突く。 【川瀬翠の休学を認める】 「こっこがオルニトかー!」 ちくわを咥えた川瀬が素っ気のない石積みの枠から飛び出すと、これ見よがしに着地してみせた。 頭上斜め前方上空に巨大な岩の塊、浮遊する島が浮かぶ山頂がオルニトのゲート所在地である。 「ごっつい太い鎖! これ登ってあの島に行くんかなー」 「それは、時間がかかりすぎる。 鳥籠に、運んでもらうのがいい」 いつからそこにいたのか全く気にも触れなかった川瀬の隣。 透き通る羽とは対照的な夜の様な目と浮かぶ紅い瞳。ハーピー。 耳通りの良い微風の様な囁きの後、前方の粗末な小屋を鉤爪で指し示した。 「鳥人タクシーとかあるんだ。 ありがと…う?あれ?いない」 小屋を見た一瞬。ハーピーはまるでそこに何も無かったように消えていた。 「よっし。とりあえず島いこ島!」 「美味しいよー串だよー」 「串だよー美味しいよー」 小屋の他は何もないと思っていた矢先に飛び込む呼び掛け。 高山の山頂にはまるで似つかわしくない高架下にある様な屋台がそこに。 大葉で作られた暖簾には“絶品!オルニト串!”と色んな文字で書かれていた。 日本語もその中にある。 周囲まばらにいた観光客も、元気なそっくりな二人のハーピーの呼び声に誘われ屋台を覗いていた。 「お客さんだよー焼くよー」 「焼いたよーお客さんー」 「お?ジャージとか珍しいもの着てるね。 見たとこ鳥人さんだけど日本から里帰りか何かかい」 翼で火を起こしては駆け抜ける風精霊が器用に串をくるりと反転。 ぱたぱたと肉野菜見たことも無い“何か”を刺した串が香ばしい風を生み出す。 両脇に焼いては呼び掛けるハーピーを置いて、中央に陣取り接客と焼き、包装を器用にこなす日本人。 「故郷とかじゃないんですけど、旅行みたいなもんですよー。 あ、その“団子足虫串”下さいー」 川瀬が注文したのは、どう見ても初見では遠慮するであろうわさわさと足が生える丸い虫を野菜が交互に挟む串(醤油ダレ)だ。 「鳥人さんにはほんと虫串が人気だねぇ。はいよ!」 「えへへー。ありがとー」 川瀬が串をぱくり一口したその時 ─── とても美味!ではなく 「「 ソ ラ 」」 「っ!」 それまで串を楽しそうに焼き、歌うように呼び掛けをしていたハーピーの頭巾がはらりと落ちる。 二人して天を仰ぎ瞳は深海を思わせる黒い青に染まる。 二人が同時に同じ言葉、いや言葉“であろう”モノが綴る詩を唄う。 「お客さん方!何処でもいいからここから離れて下さい! “嵐”がきます!!」 男が即座に“閉店”の札を、まだ火の残る炭火焜炉に叩き置いた。 周囲の皆々がざわめき出す。 それもそのはず、空は快晴で積乱雲の一つも見当たらない。 「「 サ ラ ソ 」」 ズ ン ッ 突如空気は比重を増し頭を肩を押さえ落とす。 快晴だった空に雲の紐が幾重にも折り重なる。 渦を描く白と灰。 そしてその中央にゆっくりと開く ─── 「“風神嵐(ハピカトル・メル)”だーーっっ!!」 「…」 「…」 「う…ん?」 「焼くの?」 「焼くよ?」 「あれ?」 首を傾げるハーピー二人が屋台から転がり出て頭を抑えていた男をつんつんつつく。 周囲の人々もはっと我に返る。 空はまた快晴に戻っていた。 雲一つない。 「なんだこりゃー!?」 男が屋台の前にぽっかり開いた穴。人一人分がすっぽり収まる深い深い底の見えない穴を覗き込んで叫んだ。 「はいー?!」 轟々と耳と擦れ違う空気の抵抗音が無理矢理に川瀬を正気に戻した。 何故か川瀬は飛んでいる。飛び上がり続けている。 物凄い速さで。 足元には何もなく、何度も何度も雲を突き破りその上、その上へと。 「何何何何!」 いきなり巨大な雲に突入した川瀬は、その白で埋め尽くされた世界の中でとてつもなく巨大な光を見る、飛び越える。 ヴォァアアァァゴゥォォアァアアーーーーーッッ 爆音、激震、耳を劈く野獣の咆哮。 一瞬で白の世界が飛び散り霧散。 雲の晴れ行く最中、川瀬が上空へと通り過ぎたのは岩、壁、脈動する鱗、熱気、蒸気、雄雄しい灰色の角。 「ド…ラゴンっ!?」 超速度で数分を要して頭部を過ぎると巨大の範疇を越えた首の揺らぎ、運動が螺旋の荒風を巻き起こす。 川瀬はそれに巻き込まれ、天地も混濁のまま吹き飛ばされた。 「は、へ?」 重力。それは落下する我が身により認識を強める。 それまで上昇を続けていた川瀬の体が糸を切った様に下降を始めたのだ。 今度は何の力によるものでもない、慈悲も無い。 「ちょっ!ちょちょちょちょちょちょーーっっ!?」 思わず向いた眼下には山と森が待ち構えている。 そんなに時間をかけずに激突するであろう、何処かに。 思わず手足をバタつかせるが漫画やアニメの様に停止するわけもなく、ましてや川瀬の翼は空を飛べるものでもなく。 「ちょっと待つっしょ! お助けーーーーーっっ!!」 『助けて欲しいの? 助けたら“アリガトウ”ってしてくれる?』 胸から飛び出したのは光る“蒼”。 ミズハミシマの合宿からずっと身に着けていた“呼び水の珠”の首飾りだった。 次回【スカイパーティー】 所々に独自設定が入っています(ゲート立地など) 大ゲ祭でオルニトにやってきた川瀬にいきなりハプニング! ダイブ to ブルーからの地面にキッスかどうなるか!? 次回に続く! 嵐で一人だけ飛ばされた?巨大な竜の背中が山とか森なんかな -- (名無しさん) 2014-07-02 23 47 01 お、水の精霊さんが助けてくれるのかな。アリガトウ欲しがる精霊さんの喋り方可愛い -- (名無しさん) 2014-07-03 22 23 48 はっぴーセンサーの役割してる双子ハーピーのしぐさがkawii。審査みたいなことしているけど一ヶ月間の休みって夏休みと同じくらいだよね -- (名無しさん) 2014-07-03 22 57 49 異世界に行ったら地球の保険は適用外なんだろうなと実感した。風神嵐の影響が気になる -- (名無しさん) 2014-07-11 23 45 55 異世界と隣り合う地球の学生的日常がよく分かります。やはり鳥人とハーピーはオルニトに引き寄せられるものなのでしょうか。到着すぐに摩訶不思議に巻き込まれた川瀬の運命はどうなるのでしょうか -- (名無しさん) 2017-11-12 16 13 03 名前 コメント すべてのコメントを見る
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今晩の夕食は魚にしよう。 男はそう思い、釣竿と魚を入れるたもと網を持って川に来ていた。 まだ夏になったばかりだが気温は高く、また魚は人を見つけると隠れてしまうので、木陰に隠れて糸を垂らす。 いっぱい釣れたら里で売ってもいいなと気楽に釣りを始めた。 釣りを始めてしばらくが経った。太陽もだいぶ移動している。 釣果は0。まったくと言って釣れていなかった。 餌が悪いんだろうか、と男はいろいろな餌を試してみたがどれにも魚は食いついてこなかった。 もはやあきらめたように木陰に横になる。川を見ながら時間を潰していると近くの草むらがガサゴソと音をたて、ゆっくりが現れた。 ゆっくりはゆっくりまりさと呼ばれる種類で、大きいのが1匹、中くらいのが2匹、小さいのが1匹。 おそらく家族だろう。男はそう思い暇つぶしもかねて様子を見ていた。 やがて川に到着したゆっくりたちは思い思いに水を飲みだした。 「ゆ~、つめたくておいしいー!」 「ゆっくりのむよ!ゆっくりまってね!」 「ゆっ!ゆっ!」 「みずにおちないようにね!あとあまりのみすぎないでね!」 勢いよく水を飲む子供達に親ゆっくりはやさしく注意をしていく。 親ゆっくりは真っ先に水を飲み、その後は子供達の後ろに回っていた。 子供を置いて先に飲むとは酷い親だと思ったが、どうやら水が安全か確かめたらしい。 今も、後ろに回っているのは子供達が水に落ちないように掴んでいるためだった。 やはりゆっくりと言えども子供は守るんだな。 男は知り合いに平気で見捨てる親ゆっくりの話を聞いていたので親まりさの行動に若干驚いたが、 子供を守る親が普通だと思い直し、ゆっくりの話に耳を傾けた。 「みんなそろそろあつまってね!」 「ゆっくりあつまるよ!みんなおねーちゃんについてきてね!」 「おねーちゃんまってー!」「ゆー!」 親の声に真っ先に反応した一番早く生まれたであろう姉ゆっくりがまだ水を飲んでいる妹ゆっくりと、赤ちゃんゆっくりを連れて親の前に集まる。 「ゆ!おねーちゃんはさすがだね!おかーさんうれしいよ!」 「まりさはおねーちゃんだからね!いもうとたちをたすけるよ!」 「おねーちゃんかっこいー!」「ゆゆー!」 「じゃあかわをわたるほうほうをおしえるからゆっくりきいてね!」 「「ゆっくりきくよ!」」「ゆっ!」 今なんと言った。川を渡るだと!? ゆっくりは泳げない。だから潰す以外にも池や用水路に落として殺す。 水の中に入ったゆっくりは必死に出ようとするが泳げないのでどんどん沈んでいく。 やがて体力のなくなったゆっくりは苦しみながら死に、死体は溶けて飾りだけが浮いてくる。 里で捕まえたゆっくりを一匹一匹潰すのは面倒なので最近はゆっくり用に作った池に放り込んで殺すのが里の人の常識となっていた。 男も今まで捕まえたゆっくりを池に捨てたことがあるのでゆっくりが水に浮かないことも知っていた。 そのゆっくりが川を渡ると言うではないか。 釣りに来ていた川は流れがほとんどないような場所で流れに流されるようなことはないだろう。 しかし深さは1mはあるので一度落ちるとゆっくりでは助からないだろう、池のように沈む前に魚の餌になって消える運命が待っている。 男は親ゆっくりの話を詳しく聞くため、ゆっくり親子に近づいた。まりさ種は警戒心が強いと聞いていたので慎重に物陰に隠れて聞き耳をたてる。 「まずはおかーさんがやってみるからね!しっかりみているんだよ!」 「ゆっくりみてるよ!おかーさんがんばってね!」 親ゆっくりがまず手本を見せるようだ。子供たちは飛び跳ねながら応援している。 すると親ゆっくりは自分の帽子を外した。すると帽子の中から木の棒が出てくる。 「みんなすでつくったきはわすれてないよね?!」 「うん!わすれてないよ!ちゃんともってきたよ!」 そういって子供達も親に習い帽子を外し、中から木の棒を取り出す。 木の棒は片端は細く、葉型が付いているので細い方を咥えて使うのだろう。もう片方は平たくなっておりまるでボートのオールのようであった。 ゆっくりが道具を使うことに驚いたが里で見つけたゆっくりたちは石を投げつけたり穴を畑に張り巡らしたロープを引っ張ったり外したりしていた。 ゆっくりの中で頭のよい方のまりさなら使ってもおかしくないだろう。 男はそう納得し、観察を続ける。 「まずはぼうしをみずにうかべるよ!なかにみずがはいらなようにきをつけてね!」 そう言って帽子の天井部分が底になるように水にいれた。帽子は防水加工しているらしく、水がしみこまずにぷかぷかと浮く。 親は帽子が流れないように木の棒で抑えながら、 「ぼうしがながれちゃうとたいへんだからね!きでしっかりおさえてね!」 「ゆ!わかったよ!ぜったいぼうしをながさないよ!」 「ならみんなもやってみてね!あかちゃんはこっちにきてやってね!」 親ゆっくりの注意を聞いて子供達も帽子を浮かべ始める。赤ちゃんゆっくりはまだ不安と判断したのか親ゆっくりがいっしょに抑えてあげていた。 「うかんだらぼうしにゆっくりのってね!ぴったりとはいるようにのるんだよ!」 「ゆっくりがんばるよー!」「「ゆー!」」 「すきまがあるとみずがはいってあぶないしにおうからね!」 慎重に帽子に乗る親ゆっくり、すっぽり入るとゆっくりの重みで帽子の鍔の部分が浮き上がり、水が入らないようになる。 器用に浮いた親ゆっくりは浮いた生首のようで気持ち悪かった。 「ゆ!ゆゆっ!」 「みずこわいよおおお!」 「おかーさんがささえてあげるからがんばってね!」 「ゆー!できたよ!ゆっくりできた!」 「まりさもできたー!」 水がやはり怖いのかなかなか乗れなかった子供達だが、親ゆっくりの手助けで無事乗れたようだ。 一番手間取った赤ちゃんゆっくりは親が咥えて子供達が押さえる帽子に載せることで浮かぶことができた。 「すごいよ!みずのなかがみえるよ!」 「あ、おさかなさんだー!」 「ゆっゆっゆ~」 「きをつかえばゆっくりいどうできるからね!こうやるんだよ!」 「おかーさんすごーい!」 「まりさもやってみるよ!」 「ゆー!!」 親に教えてもらいながらやがて木のオールで起用に動くゆっくり達 水に浮かんだ状態はゆっくりにはゆっくりしやすい条件のようだった。 男ははしゃぎまわるゆっくりたちを見て、面白いおもちゃだと思った。これはしばらく退屈しないですむなぁと。 急いで寝ていた場所にもどり釣り糸と針を用意する。もどるとゆっくり家族は向こう岸に行っておいしいものを食べようということを話していた。 ゆっくり達が向こう岸に行こうと男に背中を向け漕ぎ出す。その速さは名に違わず非常にゆっくりで追いつくのは簡単だった。 男はゆっくりの後ろから帽子に針を引っ掛けていく。4匹すべてに引っ掛けるとまた岩陰に隠れた。 針には釣り糸が付いており、ゆっくりが向こう岸に進むごとに流れていく糸を男は注意深く持ってゆっくりと遊びだした。 「ゆっくりすすんでいこうね!」 「ゆっくりすすむよー!」「ゆー!」 「むこうにはなにがあるの?」 「おいしいものがいっぱいあるよ!れーむやぱちゅりーはわたれないからわたしたちのものだよ!」 「ありすは?ありすはいないの?」 「ありすもいないよ!だからこわがらなくてもだいじょうぶだよ!」 「ありすいないのならだいじょうぶだね!」「ゆっ!」 「もしありすにおそわれたらこうやってにげるといいよ!ありすはかわをわたれないからね!」 「きははだみはなさずもっていてね!なくしたらいってくれたらまたつくるよ!」 「おかーさんありがと!でもこんどはじぶんでつくりたいな!」 「まりさも、まりさもつくる!」「ゆゆゆ!」 「じゃあこんどはきのつくりかたおしえてあげるよ!」 「「おかーさんありがとー!」」「ゆぅ~!」 「おかーさんなにかへんだよ!むこうまでいけないよ!」 「もうちょっとだよ!がんばってね!」 「もうつかれたー!ゆっくりしたいよ!」「ゆぅぅぅぅ」 「がんばってこげばすぐにつくよ!がんばってね!」 「ぜんぜんすすまないよー!」 親まりさは子供達が口を使い上手く漕げているのでとてもうれしかった。赤ちゃんにはまだ早かったがおねーちゃんが助けてあげているので大丈夫だろう。 早く向こう岸についてみんなでおいしいものを食べよう。向こうにはありすもいないから子供達も元気に跳ね回ることが出来る。 木の棒の作り方も教えないといけない。向こう岸にはいい木がいっぱいあるからもって帰ろう。 親まりさの頭はもう向こう岸について楽しむことでいっぱいだった。しかし、漕げども漕げども向こう岸に着かない。 何回もわたったことがある親まりさはおかしいと思いながらも、子供達と一緒だからと思い、子供達を励ましながら懸命にこいだ。 ゆっくりは水に弱い。 帽子に乗っているうちは安全だけども、帽子から落ちたら助からない。もし波がきたら親も子供もまとめて沈んでしまうだろう。 早く向こう岸に渡りたいと思いながら懸命に漕ぐ。しかしがんばってもがんばっても向こうに着かない。 「どゔじでえ゙え゙え゙え゙え゙え゙!」 「お゙がーじゃあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ん゙!」 とうとう疲れたのか漕ぐのを止めて休憩をしだした。早く陸に上がりたいがもう体力がない。子供達も限界だ。 水の上は怖いが、今はありすもいないのでゆっくり出来るだろう。 ゆっくりたちは離れないように木の棒で支えあいながら眠った。 男はそんな様子を岩に座ってみていた。手には4匹につないだ糸がある。 ゆっくりたちがなかなか向こう岸に付けなかったのはこの男が糸を引っ張っていたせいだ。 男はゆっくりが進む力より少しだけ弱く糸を引いた。引きすぎては気づかれる可能性があるからだ。 男がゆっくりが進む力よりすこし弱い力で引くのでゆっくりは自分が上手く漕げてないから遅く見えるだろうという考えだった。 近すぎると戻られたり、気づかれるかもしれないと思ったので引き始めたのは川の真ん中。 男のおかげでゆっくりたちは川の真ん中の辺りで動きがゆっくりになった。 懸命に漕ぐゆっくりの姿や、なぜ向こう岸につかないのかと騒ぐ子供にそれをなだめる親、一つ一つの行動が面白く時間がたつのを忘れてしまった。 男はまだまだ物足りなく、動かなくなったゆっくりが動き出すのを待つ。 それからしばらく経ったがゆっくりが動き出す気配がない。 気になった男はゆっくりに近い岩に移動する。するとゆっくりたちは寝ているではないか。 これでは楽しめない。俺はまだまだ楽しみたいのに。 男は糸の一つを引き始めた。 「ゆっ?ゆゆゆっ!」 「うるさいよ、ゆっくりできないよ」 「ゆ゙ゔゔゔゔゔ!!」 疲れて寝ていると赤ちゃんゆっくりが騒ぎ出した。姉ゆっくりはまだ寝たりないのか赤ちゃんゆっくりに注意する。 親まりさはその悲鳴に何か危険なものを感じたのか目を覚まし、赤ちゃんを探す。そして、 「い゙や゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!ま゙り゙ざのあ゙がぢゃん゙ん゙ん゙ん゙!!」 赤ちゃんゆっくりは先ほどまで一番近くにいたのに今はだいぶ離れてしまっていた。いまだ少しずつ離れていく。 親まりさはすぐに理解した。赤ちゃんが流されている。 「まっててね!すぐおいつくからね!」 「「ゆっくりまっててね!」」 先ほどの悲鳴に気づいたのか子供達も後ろから追いかけてきていた。 しかし、つい先ほど覚えたばかりの子供と熟練した親のオール捌きには明確な差があり、子供達はどんどん放されていく。 親ゆっくりは置いていかれる子供達のことも心配だったが、待っていると赤ちゃんが流されてしまう。 赤ちゃんを優先するべきと判断した親まりさは先ほどまでの疲れを見せないオール捌きで赤ちゃんに追いついていった。 親まりさは赤ちゃんゆっくりを追いかけ上流に上っていった。 男は上流に向かって歩いていく。手には糸。赤ちゃんゆっくりが上流に流れていくのはもちろんこの男の仕業である。 赤ちゃんゆっくりの糸と親と子供達の糸を操りながら男は上流に向かっていった。 赤ちゃんゆっくりに親ゆっくりが追いつこうとすると引く力を強める。離れると親ゆっくりは追いつこうとがんばる。 まだ気づかないのか。いい加減上流に行っていることか赤ちゃんが引っ張られていることに気づかないのかと、親ゆっくりを見るがどうやら気づいていない。 子供達などもう口では助けるよなどと話しているが引っ張っているのは男である。 親ゆっくりに声援を送っているが自分達はのんびりと休んでいるのを見て、置いていこうかとも思ったが後々取りに帰るのが面倒なのでしょうがなく引っ張っていた。 子供達の声援によって一時的に早くなる親ゆっくりのこっけいな姿を見ながら、岩に糸を引っ掛けないように注意して山を登っていった。 「「おかーさん!!」」 子ゆっくりの叫び声でところどころにある岩に注意がいっていた男が親ゆっくりをみる。 親ゆっくりは餡子をはきながら息も絶え絶えに「ゆ、ゆっぐりしでいって、ね・・・」といいながら赤ちゃんを追いかけていた。 そんな状態で赤ちゃんを追いかけ続けるのは母親の愛か。とにかくもう潮時だろう。 男はそう思い赤ちゃんゆっくりを引くのを止めた。赤ちゃんゆっくりの動きが止まる。 「あ゙い゙だがっだよ゙お゙お゙お゙お゙お゜お゜!!」 「おがーじゃああん!」 「ゆっ!しゃべれるようになったんだね!おかーさんうれしいよおおお!」 どうやら追いかける親を見て喋れるようになったらしい、よたよたと姉と親ゆっくりに近づく赤ちゃん。 それを子供達と親は幸せそうな顔で見ていた。赤ちゃんが親に擦り寄ろうと少し身を乗り出した。 「よっと」 「ゆっ?」 ぽちゃん。 男が糸を思い切り引っ張ると帽子が親ゆっくりから離れるように動いた。 乗り出していた子供はバランスを取れず川に投げ出される。 その場にいた者には赤ちゃんゆっくりが水に落ちるさまがスローで写った。 「い゙や゜あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」 がこぼこと水の中で暴れる赤ちゃんゆっくり。しかしゆっくりは水に浮かない。暴れても沈んでいくのは避けれなかった。 そこに近づく小さな影。どうやら魚達が水に落ちた餌を食べに行ったのだろう。ここからじゃ見えないが親ゆっくりのすごい顔でどうなっているかは想像できる。 子供達も赤ちゃんを見ようと親と同じように乗り出したところで残りの三本の糸を引いた。 ざっぱーん! 三匹が川に落ちたことを確認すると、男は川岸に歩いていった。 「おじさん、だずげでえ゙え゙え゙え゙え゙!!」 親ゆっくりが自分の帽子に捕まりながら叫んでいた、掴んでいる場所から水が入ってすぐに沈むだろう。 自分の未来を想像して絶望していた矢先に男が長い棒を持ってやってきたのだ。まさに天の助けと思ったのだろう。 せめて自分だけでも助かる気なのか、男はそう思いながら釣竿を川に向けた。 男は魚で満たされた籠を持って里に戻った。 このSSに感想を付ける
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遭ゆっくり 9KB 虐待-普通 制裁 自業自得 差別・格差 飾り ツガイ 群れ 野良ゆ 赤子・子供 希少種 自然界 都会 現代 虐待人間 うんしー ぺにまむ 感想・批評・ツッコミを頂けると幸いです 遭ゆっくり 遭難 災難に出あうこと。特に山や海等において、自力での帰還が不可能になった状態。 「遭難した…」 男は倒木に腰掛、鬱蒼と生い茂る木々を見上げながら呟いた。 男が後悔と共にその呟きを口に出すことになったのは、軽い気持ちが原因だった。 軽い気持ちで連休に日帰り予定で、山に登った。 軽い気持ちで山頂に続く一本道の登山道を離れ、森に入った。 軽い気持ちで来た為に、地図も磁石も持っていない。今いる場所がどこか分からず、麓もどちらか分からない。 軽い気持ちでの行動の結果は、道に迷って戻れないという深刻な状態を生み出した。 山の中で夜を明かした男は、闇雲に歩を進めていた。 遭難した時には無闇に歩き回らず、体力の消耗を避け、救助を待つべきという知識は男も持っていたが、男には救助が間に合うとは思えなかった。 男が山に来たのは、日々の煩わしさから己を遠ざける為だった。故に携帯電話も持ってきていない。 周囲が男の異常に気付くのは、休みが明けた後だろう。水はまだ残っているが、食料はすでに食べ尽くしていた。 もともと小腹がすいた時の為に持ってきていたものだ。まともな食事は登山道沿いにある店でとる予定だった。 「た、す、け、て、く、れえぇーーーっ!!!」 男はすきっ腹に響く大声で、何度目かも分からぬ助けの求めを叫んだ。 返事は聞こえてこない。 すでに水も尽きた。男は何かの役に、と思い、小便を水筒に溜めてはいたが、飲む踏ん切りはついていない。 疲労も溜まり、体力気力も萎え始めていた。 そんな時、男の目に光が差し込んだ。森が途切れている。 何か見えるかもしれない。変わり映えのしない日々に変化を求める囚人のように、男はそこに飛び込んだ。 広場に出た。野球場とまではいかないが、テニス位なら楽に出来そうな大きさの広場だ。 地面はむき出しではなく、丈の短い草が生えている。向こうには土を堀り返した、畑のようなものが見える。 畑、畑だ。畑を作るような動物はいない。人の手が入ったものがあるのなら、人がいるかもしれない、と男は考えた。 しかし、期待に満ちる男の前に現れたのは、ゆっくりだった。その姿は男が普段、町で見かけるゆっくりとは違っていた。 畑に生えている花を見つめている、緑の髪に飾りを持たないゆっくり。 木の根元で昼寝をしている、赤い髪に飾りを持たないゆっくり。 跳ね回る、目玉のついた帽子をかぶったゆっくりと、それを追いかける、青い髪に尖った氷のような羽を持ったゆっくり。 笑いながらその光景を見ている、金色の髪に赤いリボンを着けたゆっくり。 「じゃお!」 そして、男に声をかけてきた、赤い髪に緑の帽子をかぶったゆっくり。 疲労と期待の反動で足の力が抜けた男は、その場に座り込んだ。 「じゃお?」 目の前のゆっくり-ゆっくりめーりんがどうかしたのか?と言わんばかりに男の顔を覗き込む。 男は力無くめーりんの頭を撫でる。口からは溜息が漏れた。 「どうしたの?」 花を見ていたゆっくり-ゆっくりゆうかがいつの間にか、こちらにやって来ていた。他のゆっくりも男の周りに集まってきている。 男は一縷の望みをかけて、ゆうかにこの近くに人がいないかを問うた。 「そーなんかー」 男の説明の後、ゆっくり達は互いに知らないか聞き合った。 「にんげんさんにあったのはあなたがはじめてよ。ここにひとはいないわ」 だが、男の期待した返事は返ってこなかった。がっくりした男の腹の虫が鳴く。 「おなかがすいているの?」 「ああ、情けないことにな」 「ゆうかたちがたべるようなものは、たべられないわよね?」 ゆうかが今手元にある食べ物を挙げていく。木の実、花、虫、草、木の皮…、料理すれば人でも食べられないことは無いだろうが、生のままで食べられる筈も無い。 「無理だ。腹を壊すのが関の山だな」 どうしたものか、と皆一様に黙り込む。 そんな中、男を励まそうと体を擦り付けていためーりんが、男の目の前に行き、男を見上げる。 「じゃおーん!」 男に向けてにっこりと微笑んだ後、大きくはっきりと声を上げた。 すると、めーりんは体の真ん中から左右に割れていき、真っ二つに分かれた。帽子だけは二つにならず地面に落ちた。 「これは…?」 男がその光景を見て、疑問の声を上げる。 「おたべなさい、よ。ゆうかたちはたべてほしいあいてにこうするの」 「俺に食べろと。なんで?」 「めーりんはやさしいゆっくりだから」 ゆうかの説明を聞き、男はしばしの間、呆然としていたが、やがて、ありがとうと礼を言うと、二つに割れためーりんを頬張った。 男の目から涙がこぼれた。 男は食べ終えた後、残った帽子を手に取る。 「これ、貰ってもいいかい?」 「めーりんはにんげんさんのためにえいえんにゆっくりしたのよ。もっていてあげて」 ゆうかから山と山との境目にある背の高い木の横から、何度も煙が上がるのを見たと聞いた男は、高い木を目印にして進み、登山道に戻ることが出来た。 無事に下山できた男が自分のアパートに戻ると、ドアの前でゆっくりがたむろしていた。 成ゆっくりが2匹、子ゆっくりが4匹、体は薄汚れ、バッチは無い。典型的な野良ゆっくりだ。 「いつまでたってもかえってこないんだぜ!」 ゆっくりまりさが番のれいむと子供達に何か話している。 「何してるんだ?」 死にそうだった時にゆっくりに助けられたのだ。困っているなら助けてやろう、と考えた男はゆっくりに声をかけた。 「ここをまりさたちのゆっくりぷれいすにするのぜ!」 まりさは男の問いに反射的に答えを返した。 山で遭難したかと思えば、町でこんなゆっくりに出会うとは、災難だな。これもまた遭難か、と男は思った。 「ゆゆ!ぐずのめーりんがいるのぜ!」「ゆ!ぐずはゆっくりできないよ!どっかいってね!」「「どっかいっちぇね!」」 ゆっくりは飾りで個体を識別する。飾りを身に着ければ人間でもゆっくりと認識される。 形見の帽子をかぶっていた男は、まりさ達にめーりんと認識されたのだ。 自分を助けてくれためーりんを馬鹿にされた、と感じた男は目の前のゆっくり達に怒りを覚えた。 美という字は羊と大を合成した文字だ。 羊は生贄、犠牲を表し、美は大いなる犠牲を表すことになる。大いなる犠牲、すなわち自己犠牲であり、めーりんの行いはまさに美しいものと言える。 めーりんの美しさに比べたならば、こいつらのなんと醜悪なことか。男はそんなことを考えながら、喚き散らす親を壁に向かって蹴り飛ばした後、ちびまりさを持ち上げた。 「ゆわーい!おしょらをとんでるみちゃい!」 暢気な声を上げているちびまりさ。 「かわいいれいむのおちびちゃんをかえしてね!」「なにするんだぜ!このぐず!」「「ぐじゅ!」」 「返して欲しけりゃ、俺が良いと言うまでむこうを向いて跳ねていろ。いやなら全員蹴り潰す」 男の威圧に負け、ゆっくり達は嫌々ながら、むこうを向いて跳ね始めた。 それを確認した男は、ちびまりさの帽子を奪う。 ちびまりさは声を上げようとするが、男はその前に上唇と下唇を指で挟んで押し潰し、捻る。口は閉じられた。 ちびまりさは目としーしーの穴から砂糖水を流し、痛みに身を振り回す。男を見つめるちびまりさの目は、許しを乞うように震えていた。 男は上瞼と下瞼を唇と同じように、指で挟んで押し潰し、捻る。目も閉じられた。 しーしーの穴も、まむまむも、あにゃるも同じように指で挟んで押し潰し、捻る。穴はすべて閉じられた。 垂れ流していた砂糖水は流れなくなり、震えていた目も見えなくなる。 続けて、男はちびまりさの髪を引きちぎり、あんよも捻り潰して動けないようにした。 見えず、喋れず、何も出来ない饅頭が完成した。 ただ、体はいまだに震えている。死には程遠く、生きることもあきらめていないようだ。 「お前は今から、あいつらに食べられる。死ぬまでゆっくりしていけよ」 そう、ちびまりさに囁いた後、男は跳ねていたゆっくり達に声をかけ、こちらを向かせた。 「疲れただろう、あまあまをやろう」 「「ゆ!あまあま!」」「「あみゃあみゃ!」」 ゆっくりの目には、饅頭にしか見えないちびまりさが地面に置かれる。 「あまあまはまりさのおくちにはいるんだぜ!」「あまあまさんはゆっくりれいむにたべられてね!」「「たべられちぇね!」」 ちびまりさはこの状態でも、ものを聞くことが出来る。親兄弟に食べられようとしていることが分かるようだ。 やめちぇえぇーっ!まりしゃをたべないぢぇえぇーっ!ちびまりさの餡子の中で響く絶叫も、他のゆっくり達には聞こえない。 「うっめ!めっちゃうめ!」「むーしゃむーしゃ!しあわせーっ!」「「しあわしぇーっ!」」 ちびまりさの願いむなしく、ちびまりさは親と姉妹の腹に収まった。 男はちびれいむを持ち上げ、同じように繰り返し、子ゆっくりを全部、親ゆっくりに食わせた。 「おちびちゃんをゆっくりしないでかえしてね!」「そうだぜ!かえすんだぜ!」 あまあまをすべて食べ終えた後、れいむとまりさは男に子供を返すよう詰め寄った。 「もう返したぞ」 「いないよ!どこにいるの!」「どこにいるんだぜ!」 「そこにいるじゃないか」 「どこ!」「じじいはばかなのぜ!いないことがわからないんだぜ!」 「そこだよ、お前らの腹の中だ」 男は子ゆっくりから奪った飾りを、親ゆっくりの目の前にばら撒いた。 呆然としたまりさの顔面をこそぎ落とすように、男の足が踏み下ろされる。 「ゆぎゃあああぁぁぁーーーっ!!!」 一瞬で顔が無くなったまりさは、絶叫を上げながら地面を転げまわる。 男は道に向かってまりさを蹴り飛ばした。 まりさの皮は破れ、口からは先程食べた餡子を吐き出している。程なく永遠にゆっくりするだろう。 番の悲鳴に我に返り、逃げ出そうとしていたれいむは、男に髪を掴まれ宙に浮いた。 これかられいむは、子ゆっくりと同じようにありとあらゆる穴と、あんよを指で押し潰され、捻り塞がれることになる。 まず、右まぶた。 「ゆぴぃ!」 次に、左まぶた。 「ゆぎゃあ!」 砂糖水を垂れ流すしーしー穴。 「やめてね!もどしてね!」 もう使われることの無いまむまむ。 「れいむのまむまむがあぁーっ!」 中身を吐き出したあにゃる。 「ゆぎぃ!」 何とか逃れようとグネグネと動くあんよ。 「れいむのびきゃくがあぁーっ!」 最後に喧しい口を塞がれる。 「お前らが馬鹿にしためーりんはな、立派な奴だったんだ。お前らみたいなのが馬鹿にして言い奴じゃないんだ」 なにいってるの!めーりんはぐずでしょ!じゃおしかしゃべれないんだよ!ゆっくりしてないんだよ!れいむたちはとってもゆっくりしてたのに! めーりんはゆっくりしてないのに!ゆっくりしてるゆっくりをいじめちゃいけないんだよ!ゆっくりさせなきゃいけないんだよ! 喋ることの出来ないれいむは、餡子の中でいかに自分がめーりんより上か、自分が大切にされるべきか、そして助けられるべきか延々と繰り返している。 だが、男にはそんなものは聞こえない。聞こえたとしても関係ない。男はれいむを蹴り飛ばした番に向かって投げた。 まりさにぶつかったれいむに死ぬ気配はない。あんよが動かないので、転がったまま震えている。 自分が食べた子供と同じように、餡子の中で助けを求めているのだろう。男はそのまま死ぬまで放って置くことにした。 溜飲を下げた男は、後で片付けないとな、と思った後、思考を切り替えた。 遭難した中であのゆっくり達に出会えたのは、本当に良かった。今みたいな連中ならあそこで死ぬところだった。 やっぱり、恩はゆっくりにじゃなくて、あのゆっくり達に返さないとな。 今度は遭難しないように入念に準備をして行こう。ゆっくり達への礼も迷惑にならず、且つ喜ばれるものを調べて持っていこう。 と、男はこれからすることを考えながら、家に入っていった。 書いたもの ・ふたば系ゆっくりいじめ 732 門番ゆっくり ・ふたば系ゆっくりいじめ 741 ゆっくりマンション ・ふたば系ゆっくりいじめ 751 門番ゆっくり めーりんの場合 ・ふたば系ゆっくりいじめ 782 ゆっくりのいるお庭 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る めーりん大好きかコンチクショー! 俺も大好きだコンチクショー!! ※原初の誓いか。最近見なくなったな、こういう本当の意味でゆっくりしたおたべなさい。 -- 2018-02-16 02 31 42 めーりんかっけー -- 2017-01-16 00 34 47 めーりんは優しいんだねー。わかるよー -- 2014-06-03 21 23 54 初対面なのに自分の命を差し出せるとか優しすぎるだろ。 -- 2012-10-06 00 55 29 ゆっくりできたのぜ! -- 2012-07-11 19 25 51 こんなめーりんなら嫁にする! -- 2011-09-28 00 15 58 真の意味でのおたべなさいを見た・・・これこそが原初の誓い -- 2011-08-27 01 03 29 めーりんは優しいゆっくり -- 2010-12-06 04 03 26 じゃお~ん -- 2010-11-28 06 30 55 めーりん最高だっ! ゆっくりできたよー -- 2010-11-11 11 50 49 うっうー! -- 2010-09-07 15 09 25 じゃおじゃお! -- 2010-08-27 21 52 41 むらむらしてるね! -- 2010-08-03 14 25 23 ゆっかりしているわ! -- 2010-06-30 01 54 49 むっきゅりしてるわ! -- 2010-06-29 23 14 30 ゆっくりできたよ! -- 2010-06-16 17 56 21 ゆっくりできるね -- 2010-04-18 21 36 04
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*警告* ゆっくりは何も悪いことをしていませんが、ゆっくりできません。 ↓以下本文 れいむはとてもゆっくりしていた。大好きなまりさと力を合わせれば、おなかいっぱい ゆっくりできるごはんが集まった。ゆっくり育てた十匹の可愛い子ゆっくりはみんな良い 子で、お姉ちゃんゆっくりはもう一緒にごはんを取りに行くこともできる。妹ゆっくりは おうちでゆっくりお留守番ができる。みんなゆっくり、けんかなんてすることはない。 雨の日も風の日もゆっくりできない日も、家族みんなでゆっくりしてきた。一匹も欠け ることなく育てあげた家族は、れいむの自慢だった。 「ゆ゙ぴぃ!」 その子れいむが弾け飛んだ。ゆっくり一匹分の枠のなかに、照り返しも艶やかなこしあ んの餡子が飛び散っている。ぷにぷにですりすりすればとってもゆっくりできた皮も、す てきなおりぼんも今はあんこにまみれた残骸でしかない。 「お゙ぢびぢゃんどぼじだの゙お゙お゙!?」 れいむは叫ぶ。寒天の目玉をひん剥いて叫ぶしかなかった。叶うならば、今すぐ子れい むの側に跳ね寄りたかった。しかし、どれほど動こうとしても、黒焦げになるまで焼かれ たあんよは言うことを聞かない。 「あ゙ん゙よ゙ざん゙! ゆっくりうごいてね! おぢびぢゃんがたいへんだよ!」 れいむは柔らかいおまんじゅうの身体を必死によじり、跳ねようと身をたわめる。しか しその場でもにもにするばかりで、あんよは決して動くことはない。 「お゙でえ゙ぢゃ゙あ゙あ゙あ゙ん゙!」 一番近くにいた一匹の子れいむが大声で泣き叫ぶ。その子れいむもまた、あんよが炭に なるまで焼かれており、決して近寄ることはできない。そして、子れいむは泣き顔のまま、 一瞬で中身をぶちまけた。跡にはあんこと破れた皮、ボロボロの飾りが残るばかり。 「ゔわ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!」 わけもわからず、あんよも動かない。一斉に泣き叫ぶ子れいむたち。ゆんゆん絶叫が響 くなか、少し離れた場所が爆発した。 「ゆっぐりでぎないよ゙ぉ゙! も゙お゙お゙うぢがえる゙!」 爆発をきっかけに、一番小さいれいむが大泣きに泣きはじめた。そして、爆発は次第に 子れいむに近づき、二回目の爆発のあと、子れいむは泣き顔の皮をあんこの中に撒き散ら し、生ゴミとなり果てた。親れいむはそれをゆっくり見ていることしかできなかった。 そして再び、少し離れた別の場所が爆発した。 「ゆっ……! みんな! ゆっくりきいてね!」 「ゆ゙ぁ゙……?」 「おがあぢゃあ゙あ゙……?」 「どっかーん、はゆっくりできないよ! でもゆっくりしずかにしてね! ゆっくりしてな いと、おちびちゃんみたいにどっかーんしちゃうよ! ちかくでどっかーんしても、ない たらゆっくりできなくなるよ!」 親れいむの考えは、こうだ。自分たちは白くて広いお部屋にいる。お部屋の床には四角 い模様が書かれていて、その枠はどれもゆっくりひとりぶん。地面の四角い枠からは出ら れない。時々、地面が爆発してゆっくりできない。もし爆発した枠のなかにいたら、永遠 にゆっくりしてしまう。お部屋には他に誰もいないから、爆発する模様はでたらめなのだ。 でも爆発の近くにいて大きな声を出した子には爆発が近づいてきて、最後には永遠にゆっ くりしてしまった。 「やだやだやだあああ! ゆっくりしたいよ!」 「ゆっくりしずかにしていれば、ちかくでどっかーんしてもだいじょうぶだよ! みんな おかあさんのいうとおりにしてね!」 「ゆっくりりかいしたよ!」 まりさと一緒にゆっくり育てた自慢の子ゆっくりでも、近くで爆発したら大声で泣き叫 び、爆発を呼び寄せてしまうかもしれない。それでもあんよを焼かれたれいむには、子 ゆっくりを信じるしかない。 部屋に残っているゆっくりは、親れいむと子れいむが三匹。二匹は既に永遠にゆっくり してしまっている。床の枠が火を噴く。轟音にどの子ゆっくりも恐怖の表情を張りつけて 身動きのとれない身体を震わせる。親れいむの言うとおりに、ゆっくりできないのを必死 に我慢してガタガタ震えていると、先ほどの一番小さいれいむの時とは違い、爆発は誰か に近づいてくることはなかった。でたらめな場所が爆発し、親れいむはゆふぅ、と大きく ためいきをついた。これで爆発しなくなるまでゆっくりできるかもしれない、と。 「おかーしゃんすごいね! どっかーんさんこっちにこないよ!」 それもその次に小さい子れいむがきゃいきゃいと幸せそうな顔で叫ぶまでのことだった。 子れいむの幸せそうな大声に、爆発は一枠一枠、確実に近づいてくる。 「い゙や゙ぢゃ゙あ゙あ゙あ゙! こっちこないでね! れいむ゙はここぢゃないよ゙!」 近づく爆発。動かないあんよ。ゆっくりできない恐怖に、親れいむの言葉も忘れ、子れ いむは涙を激しく流し、金切り声をあげる。そして、子れいむは盛大に爆ぜ飛んだ。周囲 の枠に、あんこが飛び散る。声もなく見つめる親れいむとれいむ姉妹。 怖くて泣かなくても、しゃべったら永遠にゆっくりさせられてしまうのだ。怖くても泣 けず、永遠にゆっくりしてしまった子れいむのためにゆっくりすることもできない。親れ いむは涙を静かにこぼし、声を絞り出した。 「こわくても、ゆっくりしずかにしていてね……おはなしするとゆっくりできないよ」 「ゆ、ゆっくりぃ」 残るは大きめの子れいむが二匹と、親れいむが一匹だけ。爆音と共に、近くの枠が火を 噴いた。恐怖の表情で固まり、ガタガタ震える子れいむ。どんなに怖くても、親れいむの 言いつけを守り、お口をぎゅっとつぐんでしずかにゆっくりしている子れいむを心配そう に見つめながら、れいむは唯一の希望をひたすら待っていた。れいむのすてきなまりさが 助けに来てくれることを。まりさは狩りも上手でかけっこもはやい。れいむたちが動けな くても、必ずゆっくりさせてくれるはずだった。 「ぴゃ゙ぎゅ゙!?」 遠くの爆発に目をぎゅっと瞑って悲鳴を押し殺していた一匹の子れいむが吹き飛んだ。 爆発は遠かったのに。親れいむは信じられない表情で子れいむだった残骸を見つめる。 そして、気付いた。一度爆発した場所は、黒く焦げていることを。そして、まだ焦げてい ない場所は、ほとんど残されていないことを。 「ゆっくりしたいよ! ゆっくりさせてね! ゆっくりしていってねー!」 姉妹が全て吹き飛んで、とうとう恐怖に耐えられなくなった最後の子れいむが泣き叫び はじめた。あんよは動かず、まりさは来ない。親れいむにできることは、もう一つしかな かった。 「でいぶはごごでず! ぢびぢゃんのかわりに! でい゙ぶをどっがーんぢでね゙!」 子れいむの金切り声よりも、もっと大きな声でありますように。声をかぎりに親れいむ は叫ぶ。二匹からだいぶ離れた場所が爆発した直後、子れいむは跡形もなく吹き飛んだ。 「ゆ゙あ゙あ゙あ゙……ゆっくりしたけっかがこれだよ……」 不意に、親れいむの正面の壁が開いた。壁の向こうはれいむのいる部屋と全く同じで、 床に格子の模様が描かれ、どれも黒く焦げている。そして、いくつかの格子にはボロクズ になっても見間違えるはずもない、黒い煤けたとんがり帽子の残骸と、つぶあんだったゴ ミが飛び散っていた。 「ば、ばでぃざあ゙あ゙あ゙?! ゆっくりしていってね!? ゆっくりしていってね?!」 答える者は誰もいない。朝まではみんな仲良くゆっくりしていたれいむの家族は、今や 一匹残らず物言わぬゴミ。あんよの動かないれいむが一匹、家族の残骸を見つめていた。 「おみずざんはゆっくりでぎないよ! がぼっ、やべでね゙! ゆっくりじでね!」 壁の穴から勢いよく流れこむ水が、床にこびりついたしあわせ家族を押し流し、排水口 に消えていく。奇麗に流れたあとは、爆煙とあんこで汚れた床も元通り。遊技場にゆっく り一家がいたことを示す物は、スコア表だけだった。 れいむ:1 まりさ:0 [1P WIN] 森に魚を求める とか書きました。 09/07/20 書き直し このSSに感想を付ける