約 4,455,880 件
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3323.html
マクロスなのは 第7話『計画』←この前の話 『マクロスなのは』第8話「新たな翼たち」 「ここが校舎だ」 食堂から出てミシェルに案内された場所は所内にある比較的古いコンクリート打ち付けの建物だった。 表札もおそらく昔の名前、『技術開発研究所 化学部門』となっている。 「案外古い建物を使ってるんだな」 アルトの呟きに、玄関の階段に足をかけたミシェルが答える。 「ここにはまだ予算があまり割かれてないんだ。まだ訓練を始めて2週間だからな」 「そんなものか」 アルトは階段に足を掛けながら後ろを歩く生徒達を流し見る。 昼食の時に話を聞いた所、大多数がリンカーコア出力がクラスBの空戦魔導士だった者達で、一様に理系―――――特に工学を学んだ者で構成されていた。(そのためか女子生徒は1人のようだ) やはりバルキリーに乗るためには自分の乗っている物がなぜ飛ぶのか、そういう事がわからなければ緊急時に対応できない。そのことを管理局も理解しているらしかった。 玄関をくぐると、ミッドチルダには珍しい褐色の肌をした男と鉢合わせした。 「よう、ミシェル。・・・・・・ん?そちらの2人は?」 「ああ。さっきのリニアレールの事件で手伝ってもらった、機動六課の高町なのは一等空尉に、〝アルト姫〟だ」 アルトは聞くと同時にこの金髪のクソ野郎をぶん殴ってやろうかと思ったが、彼にはそれでわかったらしい。 「ああ、あなたが。噂は聞いています。私は第51次超長距離移民船団『マクロス・ギャラクシー』所属、新・統合軍のミラード・ウィラン大尉です」 教官をしていて今の階級は三等空佐ですが。とつけ加える。 「こんにちは、高町なのはです」 笑顔で応対するなのは。一方、『マクロス〝ギャラクシー〟』と聞いたアルトは一瞬身構えたが、彼の友好的な顔からは敵意はまったく感じられなかったためそのまま会釈だけで簡単に流した。 「こんにちは。・・・・・・しかし噂通りお2人とも美しい女(ひと)だ。・・・・・・ああ、そういえばアルトさんは報道でお見受けした時もそうでしたが、普段から〝男装〟をされているんですね。それでも内に秘めた美しさが垣間見えるようでよく似合っておいでですよ」 まったく悪意のないウィランの自然な言葉に、後ろから生徒達のクスクス笑いが聞こえる。 「だ、誰が男装だ!!誰が!?」 アルトは全力で否定した。舞台以外で性別を間違えられるなど、自身のアイデンティティーに関わる。 ウィランもこの美青年の声にようやく気づいたようだ。 「え?・・・・・・あ、いや失礼。ミシェルの話から早乙女アルトは女性だとばかり―――――」 どうやらさっきのスパイス、そしてこれはミシェルの差し金だったらしい。 「ミ・ハ・エ・ル、貴様ぁ!!」 激昂するアルトに 「俺に勝ったら男の子って認めてやるよ。〝姫〟」 と涼しい顔。 突然険悪になった2人を生徒やウィランはハラハラと、なのはは苦笑しながら見ていた。 (*) 「それでは当初の予定通り、午後はシュミレーターによる実習だ」 ミシェルが生徒を前に宣言する。 彼の後ろには縦2メートル、横5メートル、奥行き3メートル程の箱がある。どうやらあれがシュミレーターらしい。中にはバルキリーの操縦席がある。 「内容は会敵、戦闘となっている。だが、これで5分も持たないような奴は―――――」 ウィランが鋭い視線で生徒達を威嚇した。 ミシェルが時たま見せる眼光にもスナイパーであるためか見られたものを竦み上げさせる力があったが、所詮まだ高校生。40以上で、下っ端からの叩き上げという彼とは場数が違った。 そうして生徒の1人がデバイスを起動してバリアジャケットに換裝する。それは紛れもなく軍用EXギアだった。どうやら『メサイア』とは腹違いの兄弟らしい。 着なれているらしく、シュミレーターに乗り込む彼の動きに無駄はなかった。どうやら訓練を始めてから2週間というのは本当らしい。 シュミレーターが稼動すると他の生徒達はディスプレイの前に集まる。どうやらシュミレーターとこの画面とはリンクしており、観戦ができるようだった。 画面に浮かぶ自機、VF-0はクラナガン上空を飛ぶ。そこに現れたのは50機を優に越えるであろうガジェットⅡ型の大編隊。 本来の生身の戦闘ではとても勝てないであろう彼らに向かってVF-0は獰猛果敢に突入する。 アルトはこの戦いを見てこの訓練は始まったばかりだと感じた。可変の使い方を心得ていない。 可変という特殊機構をもつVFシリーズは戦場を選ばぬ全領域の汎用性がある。そのためこの機構を使いこなしているかで即、技量がわかる。 可変の使い方の基本としては、ファイターは高速度と高機動を生かして敵中突破または距離をとるために。ガウォークは戦闘ヘリのような小回りを生かしての戦い。バトロイドは腕という名の旋回砲塔による全方位攻撃や近接戦闘に。 しかし元空戦魔導士だった彼らはファイター又はバトロイド形態に固まってしまい、ガウォークを中間とする流れるような運用ができていなかった。しかしそれでも頑張っていられるのは魔導士時代の実戦経験と、戦闘のノウハウがあることが大きいだろう。 これがある者は例えバルキリーの操縦カリキュラムをすべて履修したが、実戦経験がないという者に比べても差は歴然である。 これのない者は戦場では空気だけで押しつぶされてしまい、実力の半分も出せない。対してある者は冷静に事態を見つめることができ、なおかつ経験を元に独創的な戦法を思いつくことができる。 さらにここの1期生達は元は優秀な魔導士だったらしい。ただ、ガジェットを相手にするにはリンカーコアの出力が低かったため戦力外通知され、ここに引っこ抜かれたという。 そのため1期生は戦闘技術なら実戦レベルであり、バルキリーに慣れさえすれば、『バジュラ本星突入作戦』に投入された緊急徴用の新人パイロットより十二分に戦力になりそうだった。 生徒の最後の1人が敵の猛追を受けて撃墜で終わり、さてどうするのだろう?と遠巻きに観察していると、ミシェルがこちらに来て言う。 「なのはちゃんもやってみる?」 「へ? わたし?」 ミシェルの突然の誘いに、彼女を尊敬しているという女子生徒にアドバイスをしていたなのははキョトンとする。 「そう。滅多にやれないと思うよ」 この誘いにしばし迷っていた彼女だが、周囲の期待のこもった空気にのせられ、承諾した。 「あ、でもわたしEXギアがないから出来ないんじゃ―――――」 「大丈夫。こっちで用意するよ。なのはちゃんのデバイス・・・・・・そう、レイジングハートをちょっと貸して」 言われたなのはは胸元にある赤い水晶のような石、レイジングハートをミシェルに手渡す。 彼はそれを端末に置くと、パネルを操作していく。 「・・・・・・ああ、『三重(トリ)フラクタル式圧縮法』か。ずいぶん洒落たの使ってるね。・・・・・・それに最終形態時の常時魔力消費(バリアジャケットや各種装備を維持するのに必要な魔力)率が15%って結構無茶するね・・・・・・」 なのははミシェルの一連のセリフに驚いたようだった。 「そんなにすごいことなのか?」 なのははアルトの問いに頷くと、理由を説明した。 『三重フラクタル式圧縮法』を使えば、普通のデバイス用プログラム言語の約3分の1の容量で同じことができる。しかし通常のデバイスマスターでは扱えないし、それであることすら看破できない代物であった。 しかしミシェルはそれを斜め読みしただけで解読しているようだったからだ。 「ミシェル君にはわかるの?」 「まぁね。姫にもわかるはずだぞ」 「はぁ?ミシェル、俺はガッコ(学校)で習ったプログラム言語しか知らん―――――」 「じゃあ見てみろよ。ほれ」 ミシェルは開いていたホロディスプレイの端をこちらに向かって〝ツン〟と指で突き放す。 (仕方ないな・・・・・・) 俺はスライドしてきたホロディスプレイを手で掴んで止め、投げやりに黙読を始めた。 もし現代のプログラマーがパッと見ることがあれば、見た目数字とアルファベットがランダムに配置されていて、なにか特殊な機械語だと思うかもしれない。 しかしアルトにはすぐに見当がついた。中学生時代、人類が生み出したC言語などを全て極めた後でようやく習ったプログラム言語――――― アルトは猛然とミシェルに駆け寄ると、画面を指差して叫んだ。 「おい!こいつは紛れも無く〝OTM(オーバー・テクノロジー・オブ・マクロス)〟じゃねぇか!?」 そう、これはOT(オーバー・テクノロジー)を有機的に運用するのに最適化されたSDF-01マクロス由来のプログラム言語だった。 「ああ。そうだな。わかるっていったろ?」 「だが何で―――――!」 こいつらがこれを知っている?というセリフを直前で飲み込むアルトだが、ミシェルは 「さぁな」 と肩をすくめて見せただけだった。 そして彼は顔にハテナを浮かべる生徒やなのはを見て当初の目的を思い出したのか端末に操作を加え始めた。 「えーと・・・・・・ここを繋いで・・・・・・これをペーストして・・・・・・第125項を第39項で繰り返す・・・・・・よし、これでIFS(最初にバリアジャケットのイメージデータを作成するシステム)に繋がるはずだ。これからバリアジャケットのイメージデータを送るから、待機してもらってて」 ミシェルは自身の端末を操作しながら、なのはに指示を出す。 「わかった。レイジングハート、お願い」 『Yes,My master. IFS(Image・Feedback・System) connecting ・・・・・・complete. All the time.(はい、マスター。IFSに接続中・・・・・・完了。いつでもどうぞ)』 「じゃあ、始めるよ」 ミシェルは言うが、変化はほとんどない。レイジングハートが数度瞬いたぐらいだ。そして不意に端末を畳むと、レイジングハートをなのはに返した。 「終わったよ。着替えてみて」 なのはは頷くと、その手に握る宝石に願った。 アルトは手で隠すように眩い桜色の光を避ける。するとそこから光臨してきたのは、いつもの白いバリアジャケットではなく、EXギアを着たなのはの姿であった。 しかし――――― 「これが・・・・・・うわっ」 予想以上の動きに大きくふらふらする。そしてバランスをとろうとして動かすとさらにバランスを崩し―――――と事態をどんどん悪化させていく。 「動かないで」 ミシェルが落ち着いた声でそう彼女に釘を刺すと、応援に来たアルトと共にそれを制していった。人間焦った時動かす場所など決まっているものだ。アルトやミシェルのような熟練者であればEXギアを生身でも制止することは可能だった。 「ふぅ・・・・・・トレース(真似)する動きは最低の1.2倍になってるけど、動く時には気をつけて。もし危ないと思ったら体は動かさず、いっぺん止まること。バランサーのおかげでどんな姿勢でも転倒することはないし、なのはちゃんが動かなきゃコイツは動けないから。OK?」 「う、うん・・・・・・」 彼女は素直に従い、ミシェルにエスコートされながらゆっくりシュミレーターに乗り込む。そして簡単な操縦機器の説明を受けるとシュミレーターを稼動させた。 『わぁーすごい!』 なのはの邪気のない声がスピーカーから届く。 たとえその身1つで飛べるとしても、やはり飛行機のパイロットの席に座る感触はまた格別である。 アルトもEXギアで飛ぶのと同じかそれ以上にバルキリーで飛ぶことを楽しんでいるので、なのはの気持ちはよくわかった。 「それじゃなのはちゃん、操縦の説明は―――――いらないみたいだね」 ミシェルはそう言うと、曲芸飛行をはじめたVF-0を見やった。 縦宙返りをして頂点に来るや360度ロール。再びループを継続すると、元いた場所に戻る。 そしてそこで鋭くターンすると、先ほどループした中心を貫いた。 その航跡が〝ハートを貫く矢〟に見えたのはアルトだけではあるまい。 なのははこの短時間でVF-0を乗りこなしたようだ。 その後も捻り込み、コブラなど曲芸を披露していった。 『うん、いい機体!』 なのはは水平飛行しながら足のペダルに直結された可変ノズルを操作して機体を揺すった。 「なのはちゃん、十分出来そうだね」 『うん。戦闘機の空戦機動ならみっちり〝練習〟したから』 それを聞いたミシェルがニヤリと微笑む。 「それじゃうちの生徒と同じ難度でやってみる?」 『うん!お願い!でも邪魔だからコンピューター補助全部切ってマニュアルにして』 「え?でもそれじゃ機体制御が難しくなるし、限界性能が出ちゃうからG(重力加速度)で気絶しちゃうかもしれないよ?」 しかしなのははカメラ目線になると、ウィンク。 『お願い』 と繰り返した。 「・・・・・・わかったよ。それじゃ、お手並み拝見」 ミシェルは肩をすくめて言うと機体の設定をいじり、訓練プログラムを作動させた。 出現するガジェットの大編隊。 なのはの操縦するVF-0はファイターで単身敵に向かっていく。その間チャフ(レーダー撹乱幕)とフレアを連続発射してあらかじめロックをかわす。 そしてすれ違った時には敵のうち数機が破片になっていた。 『〝LOMAC(LOCK ON MODERN AIR COMBAT。第97管理外世界に存在するフライトシュミレーション)〟で培った私の技術、今ここに見参!』 神技であった。 突然ピッチアップしたかと思えばそのまま後転。機首を元来た方に向けると、敵をマルチロック。続いてマイクロミサイルを斉射し、まったく回避動作に入っていなかったガジェット数機を葬った。 続いて追ってきたガジェットになのはは機首を上にしてスラストレバー(エンジン出力調整レバー)を絞る。すると機体は失速するが、なのははそこから可変ノズルを不規則に振ってハチャメチャにキリモミ落下を始めた。 これに似た機動は第97管理外世界ではフランカーシリーズの最新鋭戦闘機だけができる曲芸だが、VF-0でも潜在能力として出来た。 また可変ノズルなどの機構やOTM、そして操縦の完全マニュアル化によってそれら戦闘機より鋭く、速く行え、この機動中も制御が利くので、複雑な軌道なため狙いがつけられず棒立ちのガジェットを次々ほふっていった。 開始1分でガジェットを10機以上葬ったなのはのVF-0はその後もファイターしか使わない。いや、EXギアシステムが満足に使えないため、それをトレースするバトロイド、ガウォークなど使えない。 そのため遂にはミサイル、弾薬が尽き、戦闘空域から離脱する前に無限に出てくる敵の損害覚悟の包囲攻撃にさらされた。 「まだまだ!」 なのはは機体を180度ロール。続いて主観的な上昇をかけて急降下。いわゆる『スプリットS』を実行し、下界のビル群に突入した。 ガジェットも彼女を追わんとそこへの突入を敢行する。 「さぁ、どこまで着いてこられるかな!」 彼女は乱立するビルの間を音速で飛翔する。 本当にやったらビルのガラスが割れてその中の人や道路を歩いている人が大変なことになるが、なのははまったく気にしていないようだ。 秒速数百メートル単位で迫るビルという名の障害物を絶妙な機動で縫っていくなのは。 そんな魔のチキンレースにガジェットは更に10機ほどがビルにぶつかって散った。 しかし目前のビル群がとうせんぼ。正に袋のネズミになってしまったなのはに上空待機していたガジェットが大量に急降下を仕掛けてきた。 万策尽きたらしい彼女はスラストレバー全開で敵に特攻。数機を相討ちにするが、自らは激突寸前にイジェクト(脱出)して生き延びるという狡猾さを見せた。 「ふぇ~、やっぱり難しいよ~ぅ」 などと〝可愛く〟言いながらシュミレーターから出てくる。しかしこの20分で築き上げた撃墜数は1期生を余裕で上回る62機を叩き出していた。ちなみにこれには、ビルに激突して散った機は含まれていない。 おそらく実戦なら脱出後、生身でさらに80機近くを落とすだろう。 (さすがは管理局の白い悪魔・・・・・・) この時全ての人が同じ思いを共有していたという。 (*) 「さて、アルト姫。ここで生徒達にお手本を見せてくれるかな?」 なのはの奮戦を見て血のたぎっていたアルトはすぐさま応じ、メサイアを着込む。そしてシュミレーターから降りたなのはの、 「頑張って!」 と言うエールを背中に受けながらシュミレーターに乗り込んだ。 ハッチが閉じ、コックピットの機器に光が灯っていく。 操縦系統はEX(エクステンダー)ギアシステムを採用したためかVF-25と相違ない。アルトは自らの技量を過信するわけではないが、いくら旧式VF-0のスペックでも、ガジェットごときに落とされるとは思えなかった。 (*) シュミレーター外 なのははミシェルがシュミレーターのコントロールパネルに操作を加えるのを見逃さなかった。 「ミシェル君、なにをしたの?」 なのははそう言いつつミシェルが操作していたコントロールパネルの『難易度調整』と書かれたダイヤルを見た。ダイヤルのメーターはMAX(最大)を示している。 「普通の難易度じゃ、あいつにゃすぐクリアされちまうからな。あの高慢チキな鼻っ柱をへし折るにはこれぐらいで丁度いいんだよ」 その難易度はなのはや生徒達よりも8段階以上、上の設定だ。なのははシュミレーターの前で静かに合掌した。 (*) 「おいおい、ミシェル!これはなんなんだぁぁぁ!?」 アルトは迫るHMM(ハイ・マニューバ・ミサイル)をチャフ、フレアに機動を織り交ぜて必死に回避し、EXギア『メサイア』とシュミレーターの発生する擬似的なGに喘ぎながら通信機に怒鳴る。 後方にはライトブルーの機体が3機。機種はアルト達の世界でも最新鋭の無人戦闘機QF4000/AIF-7F「ゴースト」だ。 このゴーストは現在、新・統合軍の主力無人戦闘機だ。 有人機と対決した場合、高コスト機体であるAVF型(VF-19やVF-22)であっても1対5のキルレシオ(つまり、ゴーストが1機落とされる間に5機のAVFが撃墜されているということ)を誇り、VF-25で初めてタメが張れるという恐ろしい機体だった。 『あれ?生徒達の前で恥をかくのかな?』 それだけ言って通信は切られた。 「くっそ!覚えてろよミシェル!うおぉぉーーー!!」 アルトは持てる技術を総動員し、旧式VF-0で現役ゴーストに挑んだ。 (*) ゴーストは宇宙空間や大気圏でのいわゆる〝空中戦〟に特化しているため、このまま敵のフィールドである空中にいたらタコ殴りになると急降下。 1機を市街地のビル群に誘い込み、バルキリーの最大の特徴であり、得意であるバトロイドやガウォークなどで市街地機動戦を展開。罠にはめてガンポッドで見事撃墜した。 しかし残る2機にミサイルを雨あられと降らされ、袋叩きに会うこととなった。 「なめんなぁ!」 アルトはアフターバーナーも全開に急上昇を掛ける。 それによって空間制圧的に放たれていたミサイル達は飢えた狂犬のように従来の軌道を捨て、そこに集中する。 それを見越していたアルトはその瞬間ガンポッド、ミサイルランチャーなど全装備をパージしてデコイ(囮)とし、その弾幕をなんとかくぐり抜けた。そして間髪入れずにバトロイドへと可変すると、目前にいたゴーストに殴りかかった。 PPBの輝きも無い無骨な拳は見事主翼を捕らえてそれを吹き飛ばし、軌道が不安定になったゴーストを残った腕で掴むと、主機(エンジン)と武器を殴って全て停止させ、ミサイルランチャーからミサイルを1発拝借した。 もはや翼を文字通りもがれて鉄くずとなったゴーストだが、まだ利用価値がある。 バトロイドとなったことで急速に遅くなったVF-0に、残った最後のゴーストが接近掛けつつミサイルを放ってくる。その数、10以上。 そこでアルトは鉄くず同然のゴーストをミサイルに向かって投げつける。そして腕のみを展開したファイターに可変したVF-0は最加速して投げたゴーストに追いつくと、手に握っていたミサイルをそのゴーストに投げつけた。 直後に襲う衝撃。 ミサイルとゴーストの誘爆で大量の熱量と破片、そして衝撃波が放たれる。そして向かってきていたミサイル達はその目的を果たす前に、VF-0に重なるように出現した熱源に誘われて破片にぶつかったり、爆風の乱流で他のミサイルにぶつかったりとそれぞれの理由で自爆した。 その代償はVF-0にも降りかかる。VF-25であればファイターでも転換装甲が使えるため何とかなったはずの破片だが、スペックが完全に古いままらしいVF-0には多数の破片が弾丸となって機体を襲う。 主翼を半分ほど持って行かれ、腕は両方とも寸断され、可変機構にも深刻なダメージを与えられ、エンジンはガタが来ていた。 しかしVF-0はまだ飛んでいた。そしてアルトの瞳も最後のゴーストを捉えて離さなかった。 数々の損害を代償にミサイルの回避と莫大な推力を貰ったVF-0は一瞬にしてゴーストの前に躍り出た。 発砲されるレーザーの嵐。 通常なら回避する攻撃だ。しかしこのエンジンの様子だともはや攻撃はラストチャンスであり、残された攻撃方法も特攻以外に残されていなかった。 コックピットへと飛び込んできた無数のレーザーに全身が焼けるように熱くなって感覚が失せる。だがアルトの突入への気迫が勝った。 「終わりだぁーーーーー!!」 VF-0は迷わず特攻を敢行。その1機を相打ちにした。 「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」 アルトはブラックアウトしたシュミレーターの全天画面の下、しばし休憩する。 全身がジンジン痛むが、体はなんとも無いし、徐々に収まる。どうやら被弾の痛みはEXギアの仕業のようだ。脳に直接信号を送り込んで激痛を走らせているらしかった。 それにメサイアの生み出す擬似的な重力加速度やシュミレーターのハイレベルな完成度からまさに真剣にやったため、たった5分の戦闘での疲労はフルマラソンに3~4回連続出場したレベルにまでアルトを追い詰めていた。 そうして満身創痍でシュミレーターを降りた彼を迎えたのは『ミンチ・キロ100円』や『I m dead』等と書かれたプラカードを持ったミシェルではなく、生徒やなのは達の満場の拍手だった。 「さすが〝アルト〟だ。俺でも2機しか落とせなかったのに」 ミシェルが正確に名を呼んだこと。それがアルトに対する最大級の賛辞を表していた。 (*) その後場所を普通の部屋に移し、講義が行われた。教壇で筆をとっているのはあのウィランだ。 内容としては比較的普通のことを教えている。バルキリーで使われるOT・OTMの基礎理論を普通と呼ぶことができればだが。 「―――――従来型の翼で空力制御し、上向きの力を得るやり方と、OTによって力を得る方法がある。工藤、主に何の力があるか言ってみろ」 ウィランの指名にただ1人の女子生徒、工藤さくらが立ち上がって答える。 「は、はい!〝摩擦〟〝圧力〟〝誘導〟の3種類です」 「では従来の揚力方程式にOT加えるとどう置き換えればいいか?」 続くヴィランの詰問にさくらは 「抗力係数をClから・・・・・・」 と従来の式の係数はスラスラ出たが、それを加えるとどうなるかを忘れたのか、大慌てでプリントをペラペラめくる。 「えぇーと・・・・・・Cdに置き換えればいいはずです」 ウィランはよろしいといって彼女を席に着かせ、講義を再開した。 アルトには自明のことだが、なのははためすすがめつしながら複雑な計算式の書かれたプリントとホワイトボードに書かれた計算式を見比べ、しきりに顔を捻る。 なのはは見たところ理系に近いが、1期生達のような工学系大学出身でも手間取るのに、彼女のような中卒でOTやOTMを理解しろというのも無理な話だろう。 ちなみに第1管理世界の教育は短期集中で、大学でも15歳で卒業できた。 (*) 90分の講義が終わり、アルトが時計を見るとすでに16時を回っていた。 ロングアーチに技研に行く旨は伝えてあるが、報告書の提出など帰ればやることはたくさんある。 「なのは、そろそろ―――――」 「そうだね」 なのはが頷く。 現在教室は休憩時間に入っており、生徒のほとんどが机に突っ伏して静かに寝息を立てている。 「それじゃさくらちゃん、頑張ってね」 「はい。ありがとうございます」 唯一の女子生徒、工藤さくらが笑顔でなのは達に手を振ると、机に吸い寄せられるように横になり、数瞬後には 「くー・・・」 とイノセントな寝息をたて始めた。 生徒達はいつもハードスケジュールらしい。 アルトとなのはは顔を見合わせて笑うと、静かに教室を抜け出し、教員室に向かった。 (*) 「もう、お帰りに?」 ウィランが惜しそうに言う。 「はい。今日はお世話になりました」 「いえ、こちらこそ。また来てやってください。あいつらのいい刺激になるので」 「はい♪」 なのはが満面の笑み。間違いない、コイツはまた来る気だ。 アルトは頭を抱えたが、同時に彼に問おうと思っていたことを思い出した。 「ところでウィラン三佐、ギャラクシー所属だったそうですけど、どうやってここへ?」 アルトの問いに、机に向き合っていたウィランがコンピューターにワイヤード(接合)していたコネクターを外し、コードとともに〝耳の後ろ〟辺りに巻き戻した。それがあまりにも自然な動作だったためアルトですら一瞬気がつかなかった。 「え? アンドロイド?」 ミッドチルダではインプラント技術が進んでない(フロンティア同様、医療目的以外禁止されている)ため、なのはが目を白黒させる。 そんな彼女のセリフにウィランは一笑すると 「残念ながら全身義体じゃないよ。これはただの後付けの情報端末で、あとはナチュラルだ」 と簡単に説明した。そしてイスを引くと、アルト達に向き直る。 「・・・・・・それで本題だな。実はギャラクシーの急をフロンティアに伝えようと急ぎすぎたんだ。おかげで機体のフォールド機関が暴走してこの有り様だよ」 彼は肩を竦める。どうやらウィランも同じくフォールド事故で来ていたらしい。 「機体はどうなりました?」 「俺の乗っていた高速連絡挺は技研に差し押さえられてしまったよ。だが糞虫どもにやられてボロボロだし、連中の手には余る代物だからな。ほとんど解析出来なかったみたいだ。フロンティアの脱出挺が来てからは、OTの流出を最小限にして管理局を手伝おうと思ったんだが・・・・・・バレちゃったみたいだな。昨日、連中がいきなりフェニックスの変換装甲を作動させた時は驚いたぞ」 「いや、その、すいません・・・・・・」 どうやら技術の漏洩を黙認していたのはアルト達だけらしかった。 「まぁ起きてしまったことはもう仕方ない。おかげで量産のメドが立ったし、幸いここの連中はいいやつだ。OTを人殺しに使うようなことはないだろう」 ヴィランはそう言ってアルトの肩を叩いた。 その後フェニックスの整備に行っているというミシェルによろしくと言い残し、アルトとなのははフェニックスと一緒に陸路で搬入されたVF-25の待つ格納庫に向かった。 (*) 格納庫に着くと、知らせを受けたのか田所が待っていた。 「田所所長、お見送りですか。ありがとうございます」 なのはが一礼。 「いや、しっかり謝りたかったのだ。・・・・・・アルト君すまなかった、あの事を隠していて」 アルトはかぶりを振る。 「必死だった。どうしてもここの人々を守りたかった。そういうことなんだろ?」 田所が頷く。 「なら、恨みっこなしだ」 アルトは踵を返すとVF-25に向かう。しかし立ち止まり、背を向けたまま一言呟いた。 「俺も言い忘れてたけど、VF-25を―――――俺の恩人の形見を直してくれてサンキューな」 「うむ。いつでも来い。今度来たときにはその機体のかわいいエンジンをギンギンにチューンしてやる」 アルトは振り返り 「ああ」 と破顔一笑。そしてなのはを伴ってVF-25のコックピットに収まると、すっかり暗くなった夜空に飛翔していった。 ―――――――――― 次回予告 シェリルの元に届く知らせ。 それはアルト達の居場所を導く手がかりとなるものだった! そして決行される乾坤一擲の大作戦。その成否はいかに! 次回マクロスなのは、第9話『失踪』 「あたしの歌を、聞けぇぇー!」 ―――――――――― シレンヤ氏 第9話へ
https://w.atwiki.jp/kata-niho/pages/807.html
原語 costume 和訳 名詞 衣裳、装束、着物 漢字一字 衣、服、装 やまとことば きもの(着物) 備考欄 辞書 説明 廣辭林新訂版 (名) 衣裳。服裝。 新訂大言海 (無記載) 角川国語辞典新版 名 ①服装。衣装。②特定の時代や地方を表す服装。 大英和辭典 〔名〕[一]衣服,外〔ソト〕ニ着ル着物.[二]アル種類ノ衣裳(時・所・階級・職業ナドニ特有ナ),ナリ,身ナリ.[三]假裝.[四]地方色(藝術・文學ニ於ケル). 直訳音写語は「衣装」か。 同義等式 原語単位 costume=衣裳 カタカナ語単位 コスチューム=衣裳 附箋:C コ 英語
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1025.html
第11話「兄弟の思い」 「ギャオオオォォォォォッ!!」 「くぅっ……なんて馬鹿力なんだい!!」 ドラゴリーの強力なパワーを前に、アルフが毒づいた。 先程、ムルチを惨殺した時点で薄々感じてはいたが、ドラゴリーの怪力は尋常じゃない。 チェーンバインドによる拘束を力ずくで破り、防壁による防御も強引に打ち砕く。 恐らくは、なのはが対峙していたレッドキングと互角以上。 しかもドラゴリーは、遠距離用の破壊光線も持ち合わせている。 一方それが乏しいアルフにとっては、こういったパワータイプの相手はかなり相性が悪い。 不幸中の幸いは、小回り面で完全に上回っている事だった。 アルフはヒットアンドウェイを基本に、真正面からはなるべく挑まずにいる。 「はああああぁぁぁぁぁぁっ!!」 拳に魔力を集中させ、後頭部へ全力で叩きつけた。 その衝撃で、ドラゴリーがよろける……ダメージは確実に通っている。 少し時間はかかるが、このままいけば何とか倒せそうである。 尤も、それには攻撃を回避し続けなければならないという問題はある。 相手の攻撃は、一発一発が大きい……一撃見舞われるだけで、形勢が一気に変わってしまうからだ。 「ギャオオオォォンッ!!」 ドラゴリーは大きく咆哮し、アルフ目掛けて拳を振り下ろしてきた。 アルフは即座にスピードを上げ、その一撃を回避。 拳は地へと打ち付けられ、莫大な量の砂塵が立ち上った。 アルフはその影に隠れ、ドラゴリーへと一気に接近。 この距離ならば、破壊光線はこない。 その腹部目掛けて、飛び蹴りを叩き込もうとする……が。 「ギャオォォ!!」 「なっ!?」 ドラゴリーが口を開き、火炎を放射してきた。 まさか、まだこちらに見せていない攻撃手段があったとは。 とっさにアルフは防壁を展開し、火炎放射を耐え切ろうとする。 しかし……防御の為に動きを止めてしまうのは、あまりに危険だった。 ドラゴリーは、この隙を狙い……全力の拳を叩きつけてきた。 ガシャン。 「キャアアァァァァァァァッ!?」 防壁が、音を立てて砕け散った。 アルフは後方へと大きくふっ飛ばされ、派手に地面に激突する。 そのまま、その身は砂の中に埋もれこんでしまった。 焼けた砂が肌を焼く。 早く脱出しなくてはと、アルフは上空へと飛翔。 砂の中から、何とか抜け出す……が。 「えっ……嘘!?」 脱出した彼女の目の前には、ドラゴリーの拳があった。 出てくる瞬間を、完全に狙われてしまっていた。 距離が近すぎる……防壁の展開が間に合わない。 アルフはとっさに腕を十字に組んでガードを取るが、これでどうにかできる筈も無い。 ここまでか……そう思い、彼女はたまらず目を閉じてしまう。 しかし……その瞬間だった。 ドゴォンッ!! 「ギィャアァァァァァァァァァァァァッ!!??」 「えっ……!?」 アルフに激突寸前だったドラゴリーの拳が、突然止まった。 よく見るとその肩からは、煙が生じている。 アルフもドラゴリーも、何が起こったのかまるで分からない。 しかし直後に、事態の意味を理解する。 ドラゴリーの背後に立つ……拳を突き出した、青い巨人の姿を見て。 アルフはすぐさまドラゴリーから離れ、その巨人の傍らへと近寄る。 「青い巨人……あんた、もしかしてメビウスが言ってた……ヒカリって奴?」 「ああ……メビウスの仲間だな。 何とか、助けられてよかった。」 ウルトラマンヒカリ。 かつてメビウスと共に地球を守り抜いた、青き光の巨人。 ゾフィーがメビウスの元に現れたのと同様に、彼もまたアルフを助けに現れたのだった。 アルフは彼の話を、メビウスから既に聞いていた。 メビウスすらも上回るかもしれない、強力な力を持ったウルトラマンと。 ドラゴリーはすぐに二人へと振り返り、破壊光線を両の瞳から放つ。 しかし、とっさにアルフが前に出て防壁を展開。 その攻撃を塞ぎ切ったのを見て、ヒカリは首を縦に振り彼女に礼を言う。 「ありがとう、助かったよ。」 「いいってこと、さっき助けられちゃったしね。 じゃあ、二人でとっととこいつをやっつけちゃおうじゃないの。」 「ああ……頼むぞ!!」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「キュオオオォォォンッ!!」 「くっ……!!」 バードンが大きく羽ばたき、突風を巻き起こす。 メビウスとゾフィーはしっかりと地面に足を突き、踏ん張ろうとする。 その二人の体が盾代わりとなって、なのはを羽ばたきの猛威から守っていた。 彼女は二人の御蔭で、受ける被害が少なくてすんでいる。 この隙にと、なのははカートリッジをロード。 迎撃に出るべく、周囲に魔力弾を発生させ始める……が。 なのはがそれを放つよりも早く、バードンが動いた。 強く地を蹴り、三人目掛けて真っ直ぐに滑空してきたのだ。 その嘴の狙う先は、ゾフィー。 まずは彼から始末するつもりらしい。 「ジュアアッ!!」 「ギュゥゥッ!?」 しかし、ゾフィーとてここであっさり敗北するほど愚かではない。 嘴が胸に突き刺さろうとしたその直前に、嘴を両手で掴みとったのだ。 突撃を阻止されたバードンは、ならばと大きく翼を羽ばたかせる。 ゾフィーをそのまま、上空へと持ち上げていったのだ。 「ジュアッ!?」 「ゾフィーさん!!」 『Accel Shooter』 この状況では、両手を離した瞬間に嘴で刺されてしまうだろう。 すぐになのはは、魔力弾を一斉に放った。 ここで注意しなければいけないのは、ゾフィーに命中させてはならないということ。 彼に当ててしまっては、元も子もない。 精神を集中させ、魔力弾を操作する……狙いは、飛行の要である翼。 「いっけぇぇぇぇっ!!」 「ギュオオォォッ!?」 攻撃は、見事に全弾命中した。 翼を撃たれたとあっては、バードンも現状を維持することは不可能……体勢を崩さざるをえない。 その瞬間を狙って、ゾフィーは嘴から両手を離した。 失速したバードンの嘴は、空しく空を切る。 契機……ゾフィーは、バードンの顎に蹴りを打ち込んだ。 バードンは空中へと打ち上げられ、そしてそのまま脳天から地面に激突する。 数秒遅れてゾフィーが着地……バードンが起き上がるのとほぼ同時に、右手を突き出し、その指先から蒼白い光を発射した。 Z光線―――かつてゾフィーがバードンと対峙した際に使った、必殺光線の一つである。 バゴォン!! 「キュオオオォォンッ!!」 爆発が起こり、羽根が飛び散った。 バードンは皮膚から黒煙を上げながら、悲鳴を上げる。 仕留め切ることこそ叶わなかったものの、確かなダメージは与えられている。 ならばと、メビウスが追撃にかかった。 まっすぐに飛び出し、その胴体に拳を打ち込む。 バードンはその攻撃に怯むも、すぐにメビウスへと翼で打ちかかった。 「ミライさん、伏せて!!」 「!!」 「キュオオォォ!!」 なのはの言葉を聞き、とっさにメビウスはその場に伏せた。 直後、バードンの翼が彼の頭上を掠める。 その次の瞬間……レイジングハートから、莫大な魔力光―――ディバインバスターが放たれた。 今度は先程までとは違い、本来の威力を取り戻している。 バードンは翼へともろにその直撃を喰らい、大きく吹っ飛ばされた。 「今だ!!」 なのはは、間髪いれずにバインド魔法を発動させた。 彼女は以前、ミライからウルトラマンが使う武器についての話をしてもらったことがあった。 そしてその時、彼は確かにいった。 その武器の内の一つ―――ウルトラマンタロウのキングブレスレットは、バードンを相手に絶大な効果を発揮したと。 タロウはかつてのバードン戦において、ブレスレットでバードンの嘴を縛るという奇策を取った。 それにより、バードンが放つ強力な火炎を封じ込んだのだ。 なのはが放ったバインドは、まさしくそれと同じ。 バードンの嘴を縛り上げ、しっかりと閉じさせたのである……これでは、もう火炎は使えない。 「よし……メビウス、離れろ!!」 「はい!!」 これで間合いを離せば、残る遠距離攻撃は羽ばたきだけ。 そしてその羽ばたきも……恐らく、先程までに比べて大幅に威力は落ちているに違いない。 アクセルシューター、Z光線、ディバインバスター。 ここまで使ってきた技の全ては、バードンの翼に集中して放ってきたのだ。 その翼は、今やかなり傷ついている……飛行して間合いを詰めてくるのも、容易では無いだろう。 「キュオオオォォン!!」 バードンは大きく翼を羽ばたかせ、突風を巻き起こそうとする。 だが……やはり、その勢いは衰えていた。 なのはでも、十分に耐え切る事が可能なレベル。 バードンは確実に弱っている……今こそが、撃破する最大のチャンスである。 三人は互いの顔を見て頷きあうと、トドメの一撃を放つべく行動に移った。 「ジュアアァッ!!」 勢いよく、ゾフィーが飛び出した。 風の勢いが無い今、バードンに近寄る事は容易い。 彼は上空へと飛び上がり、突風に逆らいながらバードンへと接近。 そのまま急降下し、その脳天へと蹴りの一撃を叩き込んだ。 バードンはその場に倒れこみ、脳天を押さえ悶えている。 それを合図に、なのはとメビウスが動く。 「ハァァァァァァァッ……!!」 「レイジングハート、カートリッジロード!!」 『Divine buster Extension』 メビウスがメビウスブレスのエネルギーを開放し、なのはがカートリッジをロードする。 それから僅かに遅れて、ゾフィーが両手の指先を己の胸元で合わせた。 その右手が、眩い光に包まれる。 直後……メビウスとなのはが、必殺の攻撃を打ちはなった。 「ディバイン……バスタアァァァァァァァァッ!!」 「セヤアアァァァァァァァッ!!」 メビュームシュートとディバインバスターが、バードンに直撃する。 バードンは呻き声を上げ、もがき苦しむ。 後もう一押しで、バードンを倒す事ができる。 そして、ゾフィーがそのもう一押しを打ち込むべく、動いた。 光り輝く右手を、バードン目掛けて真っ直ぐに突き出す……その右手から、轟音を上げて光が放出される。 ウルトラ兄弟最強の光線―――M87光線が、今放たれたのだ。 「ジュアアアァァッ!!」 メビウスとなのはが放った光線を、更に上回る破壊力。 その一撃を見て、なのはは驚きを隠せなかった。 もしかすると、スターライトブレイカー以上の破壊力があるかもしれない。 これが、ウルトラ兄弟長男の実力。 その直撃を受け、とうとうバードンは限界を迎えた。 大きく唸りを上げた後……爆発四散。 バードンは、ついに倒されたのだ。 なのはとメビウスが、喜び声を上げる。 そして、その後……二人は、ゾフィーと向き合った。 「ゾフィー兄さん……」 「メビウス……」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「ハァァァッ!!」 「そこぉっ!!」 アルフとヒカリの拳が、ドラゴリーへと同時に叩き込まれた。 ドラゴリーは後ずさり、叫び声を上げる。 だが、ドラゴリーもそう簡単には倒されてくれない。 両腕を二人へと向け、そこからミサイルを放って反撃する。 アルフはとっさに、障壁を展開してそれを何とか防ぐ。 そしてヒカリは、右手のナイトブレスから、光り輝く剣―――ナイトビームブレードを出現させ、ミサイルを切り払った。 そのまま間合いを詰め、ブレードを真っ直ぐに振り下ろす。 メビウスのメビュームブレードを上回る、ヒカリ必殺の剣。 その一撃を受けて、ドラゴリーの右腕が見事に切り落とされた。 「ギャオォォォォンッ!!」 「今だっ!!」 「ああ!!」 ドラゴリーが片腕を失った今こそが、攻めに出る最大の契機。 アルフはチェーンバインドを発動させ、その身を縛りにかかった。 怪力を誇るドラゴリーならば、チェーンバインドから抜け出すのは本来容易。 しかし、それはあくまで両腕があればの話……片腕の力だけでは、難しかった。 ヒカリは剣を収め、そしてナイトブレスに手を添える。 ナイトブレスの力を解き放ち、敵へと浴びせる必殺の光線―――ナイトシュート。 ヒカリは腕を十字に組み、その一撃を放った。 メビウスのメビュームシュートとは対照的な、蒼い光。 そしてその威力は……メビュームシュート以上。 「ギャオオォォォンッ!!??」 直撃を受け、ドラゴリーが背中から倒れこむ。 そして直後……爆発し、消滅した。 その様子を見て、アルフはガッツポーズをとった。 ヒカリもそんな彼女を見て、頷く。 お互いの協力の御蔭で、この強敵に無事打ち勝つ事ができた。 二人はその事を、相手に感謝していた。 「ありがとう、ヒカリ……えっとさ。 あんたがこうしてここにいるって事は、ミライの事……?」 「ああ、メビウスが出したウルトラサインの御蔭で、見つけ出す事ができた。 メビウスの元にも、もう仲間は向かっている。」 「そうかい……あっと、こうしちゃいられなかったね。 悪い、ヒカリ……折角助けてもらったのにさ。」 「分かっている、待っている人がいるんだろう? 俺の事は気にせず、行ってやれ。」 「うん……ありがとうね!!」 アルフはフェイトの元へと駆けつけるべく、転移魔法を発動。 この世界から姿を消し、元の世界へと戻った。 ヒカリはそれを見届けると、その場にしゃがみこむ。 そして……バラバラにされたムルチの死骸を手に取った。 「水生生物のムルチが、こんな所にいるわけが無い。 やはりこれは、何かしらの改造を受けているに違いない。 ならば、ドラゴリーが現れたのを考えれば……全ての元凶は、あの悪魔か……!!」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『そうか……分かった。』 「ゾフィー兄さん……ヒカリは、何て言っていましたか?」 「やはり、異世界に現れた怪獣はヤプールが解き放ったものである可能性は高いそうだ。 ……予想していた以上に、事態は進んでいるようだな。」 ヒカリからのテレパシーを受け取り、ゾフィーは重い顔をする。 今、メビウスとなのはは、ゾフィーから全ての事情を聞かされていた。 先日、ゾフィーとヒカリの二人は、メビウスの捜索に当たっていた。 ヤプールとの決戦に臨んだ異次元世界。 その入り口だった地点を、重点的に二人は探していた。 しかし、メビウスの足跡は全く見当たらなかった。 捜索を開始してから、それなりの日にちが経つというのに、全くの進展が得られない。 最早、メビウスを見つけ出すのは不可能なのではなかろうか。 光の国には、そう思う者も中にはいたが……決して、ウルトラ兄弟達は諦めなかった。 最後まで諦めず、不可能を可能にする。 それこそが、ウルトラマンだからだ。 そして、その末……ついに彼等は、メビウスを見つけ出した。 崩壊した異次元世界の入り口から、かすかな光―――ウルトラサインが見えたのだ。 メビウスが、毎日欠かさずにウルトラサインを送り続けてくれた御蔭だった。 すぐさまゾフィーは、ヒカリを連れてその向こうへと飛んだ。 ゾフィーは、異世界へと渡る力を持つ数少ないウルトラマンの一人。 かつて、エースがヤプールとの決戦に望んだ際も、彼の御蔭で異世界へと渡ることが出来たのだ。 その為、彼等はメビウスの元へと駆けつけられ……そして話は、今に至る。 ちなみにゾフィーは、ウルトラサインの御蔭で全ての事情は把握しているので、話はスムーズに進めることが出来た。 「はい……ゾフィー兄さん、僕は……」 「分かっている……共に戦いたいというのだろう。」 「はい。 僕は、時空管理局の皆さんにとてもお世話になりました。 皆がいなきゃ、僕はこうしていられませんでした。 だから……一緒に、戦いたいんです。 闇の書の事も、ダイナの事も、ヤプールの事も……皆と協力して、解決したいんです!!」 メビウスの強い決意の言葉を聞き、ゾフィーは首を縦に振った。 助けられた恩は、返さなければならない。 きっと、自分も同じ立場ならそうするだろう。 それに……ダイナとヤプールという要素が出てきた今、これは自分達の問題でもあるのだ。 ゾフィーはなのはへと視線を向け、自分の意思を彼女へと告げた。 「メビウスの事を……よろしく頼む。」 「ゾフィーさん……はい!! こちらこそ、よろしくお願いします!! あ、自己紹介がまだでしたね……私はなのは、高町なのはです。」 「ありがとう、なのは。 メビウス、この世界での地球に関しては、このままお前と時空管理局に頼もう。 我々兄弟は、近辺の異世界の捜索に当たるつもりだ。」 「分かりました。」 闇の書を初めとする地球での問題は、メビウスと時空管理局が変わらず引き受ける。 そして、近辺世界の捜索はウルトラ兄弟達が当たる事となった。 レッドキングやバードンといった自分達の世界の怪獣が、異世界に現れるようになってしまった。 このまま、怪獣達を野放しには出来ない……被害が及ぶ前に、自分達ウルトラ兄弟が怪獣を撃破する必要がある。 それに、恐らくヤプールは近辺世界のどこかに潜んでいるに違いない。 ヤプールの撃破の為にも、自分達がやらなければならないのだ。 「リンディさん達に、帰ったら伝えませんとね。」 「うん……じゃあ、ゾフィー兄さん。 ヒカリや兄さん達に、よろしくお願いします。」 「ああ……気をつけるんだぞ。」 その後、なのはが術を発動させ、この異世界から離脱した。 それを見届けると、ゾフィーも空高く飛び上がっていった。 宇宙警備隊と、時空管理局。 今この時……二つの組織は、手を組んだのだ。 平和の為、共に戦い合う仲間として…… ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「よかったですね、ミライさん。」 「はい、ありがとうございます。」 数時間後、時空管理局本局。 帰還したなのは・ミライ・アルフの三人は、リンディ達と共に会議室にいた。 彼等はあの後、皆に異世界で起こった事の全てを説明した。 ヤプールが改造したと思われる怪獣が、異世界に解き放たれている事。 無事、ミライがゾフィーと再会できた事。 そして、ゾフィー達は今後異世界の捜索に当たってくれるという事。 話を聞き、リンディ達は大いに驚かされこそしたものの、全て承知した。 今回の事件は、かつてのPT事件とは比べ物にならない規模になっている。 宇宙警備隊の者達が協力してくれるというのは、願っても無いことであった。 直接会って話を出来なかったのが唯一残念ではあったが、目的は同じもの同士、いずれ再会は出来るだろう。 その後、リンディはフェイトの容態について説明を始めた。 「フェイトさんは、リンカーコアに大きな損傷を受けたけど……命に別状はないそうよ。」 「そうですか……よかったぁ。」 「そうですね……私と同じように、闇の書にリンカーコアを蒐集されちゃったんですね。」 「アースラが起動中でよかった。 御蔭で、なのはの時以上に素早く対処に回る事が出来たから。」 「だね……」 「……あの後、駐屯地中のシステムが全部、クラッキングでダウンしちゃって。 ごめんね……あたしの責任だ……!!」 エイミィは、今回の事件に対して深い責任を感じていた。 フェイトの救援を要請した後、何者かがハラオウン家中のシステムに侵入を仕掛けてきていたのだ。 その所為で、全てのシステムがダウン……一時的に、誰とも連絡が取れない状態になったのだ。 ミライ達が連絡を取る事が出来なかったのは、これが原因だった。 その後、エイミィは急いでシステムを復帰させ、本局への連絡を繋いだ。 丁度その時本局では、アースラの試運転の為にスタッフが大勢集まっていた為、迅速な対応を取る事が出来た。 「そんな、エイミィさんの責任じゃないですよ。」 「そうだよ……エイミィがすぐシステムを復帰させてくれた御蔭で、何とかなったんだしさ。 それに、仮面の男の映像だって何とか残せたわけだし……」 「けど……おかしいわね。 あのシステムは全部、本局で使われてるのと同じ物なのに……あんな頑丈なのに、外部から侵入できるのかしら?」 「そうなんですよ。 防壁も警報も素通りで、いきなりシステムをダウンさせるなんて……!!」 このクラッキングには、一つだけ腑に落ちないことがあった。 一体、どうやってあの厳重な防御を潜り抜け、システムを落としたのだろうか。 それも……一切の防御プログラムを、全く反応させずにという離れ業でである。 現在、防御システムはより強力なものへの組み換えを行っている。 再度の侵入だけは、どうあっても防がなくてはならない。 「それだけ、強力な技術者がいるってことですか?」 「組織立ってやってるのかもしれないね。 闇の書の守護騎士達か、仮面の男か、それともヤプールなのかは分からないけど……」 「タイミング的に、ヤプールの可能性が一番高いが……ミライさん、心当たりは?」 「あるにはあるんだ。 マケット怪獣っていって、怪獣のデータを実体化させて戦わせる技術なんだけど…… このマケット怪獣をネット上に出現させれば、ネットワークを侵略する事も可能なんだ。」 「怪獣のデータって……まあ、滅茶苦茶やばいウィルスってとこ?」 「そういうことになっちゃうね。 でも……これはGUYSのメテオールだから、ヤプールが持ってるとは思えないんだ。 もしかすると、僕みたいに体をデータ化させて、ネットワーク内に侵入できる超獣がいるのかもしれないけど……」 「体のデータ化……ミライ君って、そんなのまで出来るわけ?」 「はい、出来ますけど。」 さりげなく、かなり凄い能力について言ってのけた。 本当にウルトラマンというのは、人知を超えた力の持ち主である。 しかし、この話の御蔭で可能性は出てきた。 ヤプールによるクラッキングと考えるのが、現状では妥当な判断だろう。 「アレックス、アースラにはもう問題はないわよね?」 「はい、すぐに動かせます。」 「分かりました……予定より少し早いですけど、これよりアースラを司令部に戻します。 なのはさんは、御家の方も心配しているでしょうから、そろそろ帰らないとね。」 「あ、でも……」 「フェイトさんの事なら、大丈夫。 私達が見ているから……何かあったら、連絡するわ。」 「リンディさん……はい。」 駐屯地のシステムがクラッキングされるというアクシデントがあった以上、司令部はアースラに戻すのが妥当な判断である。 無論、それでフェイトの折角の学校生活を潰すという真似をするつもりはない。 出動待ちという形で、今まで通りの生活を送ってもらう予定である。 ミライも、彼女と同様の状態でいてもらおうと思う。 フェイトが回復するまでは少々時間もかかるだろうし、現状では彼が一番の戦力である。 「それじゃあ、私はこれで……」 『なのは、ちょっと待って。 少しだけ、話させてくれないかな?』 「あ……ユーノ君?」 なのはが帰還しようとした、その時だった。 無限書庫から回線を開き、ユーノが通信を入れてきたのだ。 彼がこうして連絡を入れてきたということは、闇の書についてなにかが判明したという事だろう。 なのはは足を止め、彼の話を聞くことにする。 「ユーノ、何か分かったんだな?」 『うん……ただ、分かったのは闇の書の事だけじゃないんだけどね。』 「え……ユーノ君、それってどういうことなの?」 『……ウルトラマンダイナの正体が、分かったんだ。 ミライさんの予想は当たってた……ダイナはやっぱり、異世界のウルトラマンだったんだ。』 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「助けてもらったって事で……いいのよね……?」 「少なくとも、奴が闇の書の完成を望んでいる事は確かだ……」 同時刻、八神家。 ヴォルケンリッター達とアスカは、今日の事に関して話をしていた。 突如として戦いの場に乱入し、そして自分達を助けていった仮面の男。 彼に関しては、あまりに謎が多すぎる……一体、何が目的であんな真似をしているのだろうか。 唯一分かっているのは、闇の書の完成を望んでいるという事実だけなのだが…… 「完成した闇の書を、利用しようとしているのかもしれんな。」 「ありえねぇ!! だって、完成した闇の書を奪ったって、主以外じゃ使えないんじゃん!!」 「完成した時点で、主は絶対的な力を得る。 脅迫や洗脳に、効果があるはずも無いしな……」 完成後の闇の書を扱えるのは、唯一主であるはやてのみ。 他のものがそれを利用するというのは、どう考えても不可能なのだ。 ならば、何故仮面の男が自分達の手助けをするのか……それが、全く分からない。 皆が考え込むが……その時だった。 アスカが、ある可能性に気付いて口を開いた。 「……もしかしてさ。 あの仮面の男……俺達と同じように、はやてちゃんを助けたいって思ってるんじゃないのか?」 「あいつ等が?」 「まあ、それだったらどうしてはやてちゃんの事を知ってるんだって話にはなっちゃうけど…… あ、あくまでこれは、もしもそうだったらいいなって願望だから。 結局のところ、どんなつもりなのかは分からないし……やっぱ、警戒は必要だよな。」 「……一応、この家の周囲には厳重に魔力結界は張ってあるから、はやてちゃんに危害が及ぶ事はないと思うけど……」 「念の為、シャマルは主の側からなるべく離れないようにしておいた方が良いだろうな。」 「うん……」 兎に角、厳重注意する以外に今は手が無い。 はやての身に何も起こらないよう、自分達で精一杯守り抜かなければならない。 皆はこれまで以上に、一層気を引き締めて事態に当たろうと決意する。 しかし、そんな中……ヴィータが不意に、口を開いた。 「あのさ……闇の書が完成して、はやてが強力な力を得て…… それで、はやては幸せになれるんだよな?」 「どうした?」 「闇の書の主は、絶対的な力を得る。 私達守護騎士が、それは一番よく分かっているでしょう?」 「そうなんだけどさ……私はなんか、なんか大事な事を忘れてる気がするんだ。」 「大事な事って……ヴィータちゃん、どうしたのさ。 急にそんなこと言い出しちゃって……」 「……実を言うと、急にってわけでもないんだ。 ちょっと前から、こんな風に考えちゃってて……」 「ちょっと前から……いつ頃からだ?」 「あの、変な怪獣が現れた時から。 あの辺から、何か嫌な感じがしてさ……」 「怪獣……確かメビウスは、あれをヤプールだとか呼んでたけど……」 以前、結界を打ち破って現れた怪獣―――ミサイル超獣ベロクロン。 あの謎の生物の御蔭で、自分達は無事逃げ延びられた。 だが……あれが出現した頃から、ヴィータは何か違和感を感じていたのだ。 そう、ヤプールという名前を聞いた……あの時から。 自分達は、もしかしたら何か大切な事を忘れているんじゃないかと。 (ヤプール……何なんだろう。 前にも、どこかで聞いた事があったような……) 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1068.html
「じゃ~ん!」 もったいぶった動作でアリサが披露したのは、ゼネラルモーターズ社製の車、シボレーカマロの最新型モデル。 ブライトイエローに黒のレーシングストライプの真新しい塗装が、夏の陽射しを反射してきらきらと輝いている。 「アリサちゃん、車買ったの!?」 なのはは驚きの声をあげ、ヴィヴィオも興味津々で車を見つめる。 「ふふ~ん、驚いた?」 なのはの反応に、アリサは満足そうに笑みを浮かべて腕を組む。 「うん、前に会った時免許を取ったのは知ってたけど、その時はお父さんの車だったんだよね」 アリサは、なのはの言葉に頷きながら、しみじみと語る。 「誕生日の時に、一学期の学科でオールAの成績を取れれば、車を買ってやるって父さんが言ったの。それを 聞いてもう必死で勉強したのよ」 続けて、すずかが当時のアリサの猛勉強ぶりを、 「その時のアリサちゃん、本当に凄かった。分からない所があったら、どんな些細な部分でも先生に色々と 聞いたり、ノートを書き切れなかったら私や他の友達から借りて、内容が一致しているかどうかも徹底的に確認 取ったりして。だから、私も一緒に色々手伝ったの」 アリサはすずかの方を振り向いて、彼女に笑いかけながらその後を続ける。 「すずかには色々と助けられたわね。テスト前の勉強を夜遅くまで付き合ってくれたり、レポート作成の時には 色々とアドバイスをくれたり…」 「でも、前日の深夜にいきなり電話してきて“もうダメ!”って叫んだ時は、流石に参ったけどね」 次の瞬間、アリサの顔がこれ以上ない程赤く染まり、すずかの肩をポカポカと両手で叩く。 「しょ…しょうがないじゃない! 出題範囲内の問題で分からないのが多過ぎて、どうなるか分からなかったんだから!!」 「ごめん、ごめん! だってその時のアリサちゃん、とっても面白かったんだもん!!」 「もう、すずかっ!!」 すずかは、笑いながらアリサの攻撃から逃げ、アリサは頬を赤く染めながら追いかける。 そんな二人の様子に、なのはに抱かれたヴィヴィオが笑い出す。 「面白いね、ヴィヴィオ」 なのはが微笑みながら言うと、ヴィヴィオも笑いながら頷く。 「うん、ママ」 なのはとヴィヴィオが、笑いながら様子を見ているのに気付いて我に返ったアリサは、相変わらず赤い顔のまま、 両手を拍手するように叩きつつカマロのところへ戻って来る。 「はいはい、悪ふざけはここまで! そろそろ街へ行くわよ!!」 澄ました表情と冷静な口調を装っているが、真っ赤な顔は取り繕いようがない。 アリサのその様子に、なのは・ヴィヴィオとすずかの三人は、互いに顔を見合わせて笑う。 「もう! 置いてくわよ!!」 アリサがドアを開けながら不貞腐れたように怒鳴ると、三人は笑顔のまま「はぁーい」と答えた。 海鳴市の目抜き通りを、カマロは軽快に走り抜けていた。 ヴィヴィオは、眼前を流れる街並みや人、追い抜いたり抜かれたりする車やバイクを夢中になって見つめている。 「速いね、ヴィヴィオ」 なのはが言うと、ヴィヴィオは窓に手を当てて外を見つめながら答えた。 「うん、ママ。すごく速いね」 「ふふ…ヴィヴィオちゃん、すっかり夢中になってるね」 なのはとヴィヴィオのやり取りを、すずかは微笑みながら見つめている。 赤信号で停車したとき、アリサが言う。 「ラジオでも入れる?」 なのはとすずかが頷くと、アリサはカーラジオのスイッチを入れる。と、いきなりDisturbebの「This moment」が超重低音で車内に響き渡った。 「ちょ、ちょっと! 何これ!?」 アリサは慌ててチューニングダイヤルを回し、NHKのクラシック音楽に切り替える。 「い、今のは一体…?」 アリサはチューニングダイヤルから手を離して呟き、驚きの余りすずかは目を白黒させている。 「ふえ…」 突然の大音響にびっくりしたヴィヴィオが、涙目でなのはを見つめる。 「びっくりしちゃった?」 なのはは慌ててヴィヴィオを抱きしめると、あやしながらアリサに尋ねた。 「アリサちゃん、最近音楽の趣味変わった?」 なのはの問いかけに、左手をハンドルから離し、首と一緒に横に振りながら否定した。 「そんな訳ないじゃない。あんなハードロック、聞くだけで頭が痛くなるわ」 信号が青に変わり、前方で停まっていた車が次々と発進する。 アリサも、アクセルペダルを踏んで車を発車させると、ハンドルを握って前を見ながら話を続ける。 「多分、ラジオを切る時にチャンネル回っちゃったんだと思う」 「そうだね」 落ち着きを取り戻し、再び外に顔を向けたヴィヴィオの頭を撫でながら、なのはは答えた。 黄昏時、夏の陽が水平線に沈み、空が美しい茜色に染まる頃、カマロは海鳴市商店街の有料駐車場に入った。 なのは達四人は車から降りると、買い物客で賑わう商店街を少し歩いて「翠屋」という看板の掲げられた、 喫茶店兼洋菓子店へと向かう。 チャイムつきのドアを開けて中に入ると、店内は観光客や買い物帰りの主婦・カップル等で大変な賑わいを見せていた。 「うわぁ、すご~い」 「はぁ…相変わらず大盛況ねぇ」 店内の様子にヴィヴィオは目を丸くし、アリサは溜息と共に呟く。 「以前より、人が増えてる気がするんだけど…」 なのはが店内を見回しながら言うと、その疑問に対してすずかが答えた。 「最近“ぴあ”で紹介されたんで、県外からのお客さんが増えたんだって」 「へぇ、凄いね」 なのは達が話し合ってると、MLBの半袖Tシャツとストレートジーンズを着てスポーツシューズを履き、翠屋のエプロンを付けた男性店員が、少々ぎこちない営業スマイルでやって来た。 「いらっしゃ…おお、なのはか」 なのはの兄、高町恭也が心からの笑顔で話しかけると、なのはも笑顔を返す。 「あ、お兄ちゃん久しぶり。ドイツから帰ってたんだ」 「ああ、1週間程休みをもらってな」 「今日はお店のお手伝い?」 なのはの問いに、恭也は店内を見回しながら答える。 「そうだ。雑誌に紹介されてからお客さんが大変増えたから、帰国した時は、出来るだけ手伝うようにしてるんだ」 「うん、すずかちゃんから聞いた。お父さんたちも大変だね」 「でも、来てくれたお客さんの多くが、リピーターとなってくれてるから有難いよ」 恭也はそう言って微笑むと、カウンターの方に振り向いて大きな声で言った。 「悪い、ちょっと席を外すよ」 カウンターからは、「速く戻って来いよ」と、男の声が返ってきた。 「ここじゃ何だし、ちょっと外へ出よう」 そう言って恭也となのは達は、店外に出る。 「恭也お兄ちゃん、今晩は」 ヴィヴィオが挨拶すると、恭也は笑ってヴィヴィオの前に座る。 「今晩は。ヴィヴィオはいい子にしてるかい?」 「うん」 ヴィヴィオが返事すると、恭也は優しく頭を撫でる。ヴィヴィオが笑顔で恭也に抱きつくと、恭也も笑って抱きしめた。 なのはも恭也の横に座って、その様子を見つめる。 「お兄ちゃん、ずいぶん表情が柔らかくなったね」 「そうか?」 「うん、私が子供の頃は結構怖い感じだったけど、いい笑顔をするようになったと思うよ」 なのはへ飛びつくヴィヴィオの背中を軽く押してあげながら、恭也は答えた。 「そうか、自分じゃあまり解らないけど、なのはが言うから間違いないな」 「恭也さん、凄く素敵になったと思います」 「そうだよね~、忍さんと結婚したからかな?」 すずかとアリサが、笑いながらからかう様に言うと、恭也の顔が赤くなった。 「お・おい」 狼狽した恭也がアリサたちの方を振り向いたとき、二人組の女性が、こちらへと歩きながらなのはへと声をかけてきた。 「なのはさーん」 やって来たのは、マジョリカブルーのスラッシュネックTシャツに青のバギージーンズという服装が、紫色のショートカットな髪型と相俟ってボーイッシュな雰囲気を漂わせる女性。 「スバルと…ティアナ?」 「えへへ…お久しぶりです」 紫髪の女性は、にこやかに頭を下げる。 「ご無沙汰しております」 オレンジ髪の女性は、緊張気味に敬礼を返した。 「ティアナ、別に部隊に居る訳じゃないんだから、そんなに畏まる必要はないよ」 「あ、はい。どうも」 なのはに指摘されたティアナという名の女性は、顔を赤くしながら頭を下げる。 「なのは、その人たちは?」 恭也が尋ねると、なのはは笑顔で。 「紹介するね。二人とも機動六課時代、私の教え子だったの」 「スバル・ナカジマです」 紫髪の女性がそう言って、笑顔で頭を下げる。 「ティアナ・ランスターと申します」 オレンジ髪の女性は、凛とした表情で軍人調に頭を下げる。 「で、こちらは私のお兄ちゃん」 「高町恭也と言います」 恭也は、店の手伝いで培った丁重な仕草で頭を下げた。 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3480.html
~Prologue~「壊れた日常」 FF8inなのは~Prologue~「壊れた日常」 アルティミシアとの戦いから2ヵ月後。 スコールはSEEDとしての任務を全うしていた。 (これも、愛すべき日常か…) そう思い、現れた敵をG.F.(ガーディアンフォース)で蹴散らす。 「エデン!!!」 そう言って彼はG.F.を召喚し、エデンの技、「エターナルブレス」で敵を消し去る。 ここまではよかった。 だが次の瞬間、彼の日常は、突然変わる。 (…ん?) エデンが彼の中に帰った後、突然エデンのもといた場所に光の渦が出来ている。 そして、彼を、吸い込んでいく―――――― 「なにっ!?」 突然加わった力に逆らえず、吸い込まれていくスコール。 そして意識は、闇の中へ―――――――― そしてそのころ、なのはたちの世界では… 「なんでこう、一度にたくさん出てくるかなあ…」 時空管理局のフェイト・T・ハラオウンは一人つぶやいた。 今回の任務は、突然現れたガジェットの一掃であった。 まずは、目的地に急ごう。そう思って、スピードを上げて目的地にたどり着いた。 でも、彼女は知らなかった。 もう、そこにいたガジェットの3分の2は「彼」によって倒されていたことを―――――― さて、ところ変わってスコールの側。 彼が目覚めたとき、廃棄されたような居住区にいた。 起き上がり、手の中にあるガンブレードを見る。 リボルバー。彼のガンブレードの名前だ。 (それにしても、ここは……どこだ?) 彼がそう思った瞬間、無数のガジェットが襲ってきた。 「!?」 戦いの本能が目覚めたのか、ガンブレードを強く握る。 (味方でもなさそうだ) そう判断した彼は、ガンブレードを握り、ガジェットの群れに突っ込んでいく。 その瞬間から、彼の戦いは始まった。 第一話「start」
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2278.html
メビウス×なのは氏の手がけた作品 No. タイトル 005 反逆の探偵 TOPページへ バトロワまとめへ このページの先頭へ
https://w.atwiki.jp/sneedle/pages/38.html
リンカーン娘コスチュームアンケート ご希望の服装を教えてください。 選択肢 投票 ワンピース (0) Tシャツ (2) オーバーオール (0) ブラウス (0) ジーンズ (1) 短パン (4) スカート (0) 下着 (6) 水着 (3) ビキニ -- プリ (2008-08-13 11 35 45) ビキニ了解しました!身体の細さを出しやすい型なので、これからも多用させていただきます! -- すぺにー(レス遅れまして申訳ございません) (2008-10-03 21 36 48) 名前 コメント ご希望の職業コスを教えてください。 選択肢 投票 アイドル (2) 女子アナ (1) ガテン系 (1) OL (0) 婦警 (2) 教師 (0) 軍人 (3) 巫女 (0) シスター (1) ファミレス (0) コンビニ (0) その他 (1) 名前 コメント ご希望の学生コスを教えてください。 選択肢 投票 セーラー服 (2) ブレザー (3) 体操着 (2) スク水 (4) 名前 コメント ご希望の球技スポーツコスを教えてください。 選択肢 投票 サッカー (1) バレーボール (0) テニス (1) 野球 (3) ソフトボール (0) バスケ (3) 卓球 (0) その他 (2) 名前 コメント ご希望の格闘技スポーツコスを教えてください。 選択肢 投票 ボクシング (3) キックボクシング (0) 柔道 (2) 空手 (2) テコンドー (0) 拳法 (1) 相撲(まげなし) (0) レスリング (2) プロレス (3) 寝技系 (1) その他 (0) 名前 コメント ご希望のその他のスポーツコスを教えてください。 選択肢 投票 陸上 (3) 水泳 (1) 弓道 (3) バレエ (1) エアロビ (1) ボディビル (1) その他 (0) 名前 コメント ご希望の西洋ファンタジーコスを教えてください。 選択肢 投票 騎士 (2) 戦士 (1) 魔法使い (0) 僧侶 (1) 盗賊 (2) 格闘家 (2) 商人 (0) 王女 (1) その他 (0) 名前 コメント ご希望の和風中華ファンタジーコスを教えてください。 選択肢 投票 侍 (1) 忍者 (0) 盗賊 (0) 着物 (1) 拳法 (0) チャイナドレス (2) その他 (2) 名前 コメント ご希望の亜人を教えてください。 選択肢 投票 アンドロイド (1) ネコミミ (2) 悪魔 (0) 天使 (3) 人魚 (0) エルフ (0) ダークエルフ (1) 皮膚色変化 (0) その他 (0) 名前 コメント ファンタジーシチュエーション時のご希望のお相手を教えてください。 選択肢 投票 人間 (6) 触手 (2) 亜人系 (6) 動物 (0) 名前 コメント ご協力ありがとうございました。
https://w.atwiki.jp/eroipso2/pages/26.html
ひゅまにゅま限定 キャスト装備可能 一覧 コスチューム 乳 尻 パンツ パンツ詳細 その他 エクエスティオー ★★★ ネイバークォーツ ★★★ ガードウイング へそ サウザンドリム ★★★ NPC:ラヴェール フィーリングローブ ★★ ★★ ★ 黒 NPC:マールー ウィオラマギカ ★★★★★ 白/服カラーの横縞 バリスティックコート ★★ NPC:エコー タイガーピアス NPC:アキ キャンディークラウン ★ ★★★★ 白 NPC:メルフォンシーナ リトルプリム ★★ NPC:ティア ハニージャケット NPC:パティ エレティックレーヌ ★★★★ イーリスカッツェ ★★★ アドヴェントニア NPC:ゼノ ファニートレイター シリングオーダー ハートブレイカー ★★★★ 白 NPC:サラ ヘイズソーサレス クラテルファドル セレニアコート アルフライラ ★★★★ ローゼントライム ★ ★ PSPo2:ヒューマン初期服 ツキノユズリハ ★★ PSPo2:ニューマン初期服貧乳のみ透け乳首あり リフラ・ビスカナ ★★★★ ★★★★ PSPo2:ビースト初期服 ヘレティッククイーン NPC:ゲッテムハルト ウェディングドレス ★★ レース ユカタヴィア ★★ ビキニスイムウェア ★★★★ ★★★★ ナビゲータードレス 黒/菱柄のパンスト カナギマイヒメ ★★★ 白 ナースドレス ★★ 服カラータイツ ワンダートリート ★★★ コウモリ柄 アークス研修生女制服 ★★★★ ボディースーツ?レオタード? サンタドレス ★★★ 白/服カラーの水玉 ミコトクラスタ ★★★ ★★ NPC:マトイ ハフリマイヒメ ★★★ 黒 パティシエプロン ★ NPC:ナウラ三姉妹 オールブリンク ★★ スライトクロス エミリア・レプカ ★★★★ 白/ピンクの横縞、左前にリボン PSPo2:エミリア ガーディアンズFレプカ ★ PSPo2:ルミア マリーウィンド ★★ 黒のローライズ PSU:Project CUTE第1弾 ロマンバカマ ケンランバカマ 和風茶屋制服 ★ ★★ 黒のハイレグレオタード?下帯? PSU:Project CUTE第2弾 バスタオルF ★★ ★★ 埋め立て ぬれバスタオルF ★★★★ ★★★★ 埋め立て 初音ミク・レプカ ヴァルギリス ★★★ ★★★★★ 白のハイレグレオタード?Tバック ピュアメイドドレス レディバトラーコート ゼルシウス パニス・レプカ サクヤmodeN・レプカ ファントムQ・レプカ 裏雪姫・レプカ カテドラルクロース ウルスラ・レプカ ブライダルドレス セルベリア・レプカ スチューデントS・レプカ フィオナ・レプカ アルル・レプカ ミラセリア ヨシノテフラ ユカタウル メディカルドレス セクシービキニウェア ワンピーススイムウェア パッションビキニ パッションサーフパンツ レディサーフパンツ チャイナドレス エミリアスイムウェア ルミアスイムウェア バニースーツ GH410オッソリア ヴェルトラム ヒメナギセイカイ エクササイズブルマ アークスジャージーF まどかの服 ほむらの服 クインティリーゼス トリックワンダラー
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3298.html
マクロスなのは 第3話『設立、機動六課』←この前の話 『マクロスなのは』第4話「模擬戦」 設立から1ヶ月。 スターズ分隊の3(スバル)、4(ティアナ)。そしてライトニング分隊の3(エリオ)、4(キャロ)。この4人の新人達、通称『フォワード4人組』に対する訓練は熾烈を極めていた。設立式の次の日から始まった訓練は、朝から日の暮れるまで続いた。 簡易ストレージデバイス(別名「手作りデバイス」)であったスバルとティアナのデバイスは、過酷な訓練によって3日でおシャカになってしまってしまい、ヴィータを初めとする教官達に 「そんなデバイスで戦場を生き残れると思っているのか!」 ときつくなじられた。 しかしそれは教官達には「装備は常に万全でなければならない」ということを体に教えるための予定だったようだ。なぜなら宿舎にトボトボ帰ってきた4人を出迎えたのはシャーリーと、新しいデバイスだったからだ。 ティアナには拳銃型のインテリジェントデバイスである『クロスミラージュ』。 スバルには、ローラースケート型のアームドデバイス(ミッドチルダ式に多い杖のようなものではなく、剣やハンマーなどその名の通り武器の延長のようなベルカ式のデバイス。ベルカ式カートリッジシステムがほとんどの場合で搭載される)『マッハキャリバー』。 ちなみに右腕の籠手(こて)型ストレージデバイス「リボルバーナックル」は、彼女の母の形見で、十分実戦に耐えるため共用となった。 一方フェイトの与えたデバイスを使っていたエリオとキャロも、それぞれ槍型のアームドデバイス『ストラーダ』と、グローブ型のインテリジェントデバイス『ケリュケイオン』をアップデートして継続使用することになった。 そしてそれらのデバイスには新機軸としてPPBS(ピン・ポイント・バリア・システム)が装備されたことは言うまでもない。 次の日の訓練は、ガジェットⅠ型のホログラムを相手に行われた。 スバルとエリオは近接戦闘を。ティアナは指揮と援護射撃を。キャロは3人の魔法の出力を上げるブーストの訓練だ。 しかし、教官側に誤算があった。 PPBSの存在である。 本来この訓練は、AMFを展開する敵機の恐ろしさを体感する目的で行われた。 魔力素を空中で結合して実体化させる物理的なシールドである魔力障壁は、AMFの影響を諸(もろ)に受けてしまう。しかしPPBSは、術者体内のリンカーコアで魔力素を結合して魔力エネルギーに変換、そのままデバイスに流し込んでさらにバリア用に時空エネルギーへ再変換する。そうした過程をたどるため、空気中での魔力素の結合に頼らないエネルギーシールドであるPPBSの効果は並のAMF中では全く揺らがない。 また、ベルカ式カートリッジ1発で数度の展開に耐えられ、強度も通常時展開の魔力障壁に匹敵するため、防御力も抜群であった。 特にスバルは打撃系のため、PPBパンチというおまけ以上の攻撃力を与えた。 なのは達が気づいた時には4人は完全にPPBSを使いこなし、ガジェット相手に無双を演じていた。残念ながらすぐさま禁止令が出て、本来の地獄を味わうことになったが・・・・・・ その後PPBSの存在の重要性は格段に上がり、遂には六課の実戦部隊全てのデバイスに標準装備されることになってしまった。 また、どんどんOTM(オーバー・テクノロジー・オブ・マクロス。主に初代マクロスから入手した技術)や、OT(オーバー・テクノロジー。人類がプロトカルチャーの遺跡やゼントラーディの艦などを研究して開発した後発的な技術)を解析してしまうシャーリーは、その後も慣性を抑制するOT『イナーシャ・ベクトルキャンセラー』など次々開発、採用していった。 つい1週間前には近接戦闘の多いスバルやエリオ。そして出力が大きい隊長や副隊長のデバイスのフレームに、VF-25でも使われる『アドバンスド・エネルギー転換装甲(ASWAG)』が採用されていた。 六課に少しずつオーバーテクノロジー系列の技術が採用されていく中、アルトとランカはそれら技術の漏洩については沈黙を守った。 アルトはこの1ヶ月、4人と一緒に訓練などをして過ごしていた。そのためEXギアを模したインテリジェントデバイス『メサイア』の扱いにも慣れ、なのはに習った魔力誘導弾『アクセル・シューター』を改良した『ハイマニューバ誘導弾』(バルキリーのミサイル同様、打ちっぱなし式。誘導はメサイアが担当。誘導中メサイアの処理容量の大半を持っていかれるが、デバイスとしての付与機能が封印されるのみであり、EXギアとしての機能に支障はない。)、そしてリニアライフルを自在に使いこなし、生身でも並みの空戦魔導士を優に越える技能を手に入れていた。 またランカも、隊長、新人問わずSAMF(スーパー・アンチ・マギリンク・フィールド。効果範囲内の全ての場所で魔力素の結合を、空気中では完全に、リンカーコア内でも99%不能にさせるAMF)下の訓練へ協力や広報で働き、金食い虫であったVF-25の改修をして余る程の資金を獲得するなどそれなりに成果を納めていた。そして――――― (*) 「みんな。今日の午前は、模擬戦を行います」 早朝のウォーミングアップと軽い基礎演習が終わった4人に、なのはは本日の訓練内容を告げた。フォワード4人組はいままでずっと基本練習だったため、自らの腕がうずくのを感じた。が、それは次の言葉で脆くも打ち砕かれた。 「相手は私とフェイト隊長、そしてアルト君の〝バルキリー〟で~す」 瞬間4人から笑みが消え、可哀想なほど全員の顔が青ざめる。 しかし隊長陣は不敵な笑みを浮かべていた。どうやらマジらしい。 バルキリーは前日改修が終了し、テストとしてヴィータ副隊長との模擬戦が行われていた。結果はバルキリーに軍配が上がっている。つまり、バルキリーはヴィータ副隊長より強い敵なのだ。 「私達の内、誰か1人に一撃を与えればあなた達の勝ち」 微笑を浮かべながら言うなのは。しかし4人には今、それは死神の笑顔だ。 だがアルトには事前に話されていなかったようだ。なのはに反論する。 「おい、なのは。さすがにそれは厳し過ぎるんじゃないか?」 「うん? じゃあ、アルト君1人でやる?」 「え!?」 「あぁ、やっぱり負けるのが怖いんだ?」 「怖かないさ!条件はなんだ!?」 「バルキリーの出力の8割カットと、MHMM(マイクロ・ハイ・マニューバ・ミサイル)の使用禁止。」 なのははさらっと言ったが、それはバルキリーの可変機構が使えず、PPBSもエネルギー転換装甲すら起動できない。かろうじてバトロイド形態で通常の戦闘機動をするのがやっとというレベルだろう。 ちなみにここで言うMHMMとは、純正のMHMMの改良型だ。これは特殊化学燃料ロケットモーターではなく、新開発した魔力推進ロケットモーターを装備している。 また、爆薬やMDE弾頭の代わりにベルカ式カートリッジシステムの大容量カートリッジ弾(直径15mm全長45mm。大出力を要するなのはなどが使用する)が8発封入されており、それを強制撃発させた魔力爆発となっている。さらに噴射ノズルに通常、魔力砲撃を行う時展開される偏向・集束バインド(環状魔法陣)を掛け、それをまた推力偏向ノズルとするので、機動性能も純正以上の優れ物だ。 このミサイルは現在六課の隊舎に整備される自動迎撃システムの一端を担うことになっている。また、六課隊舎を守るシールドを展開するために本格的な大型反応炉の敷設が計画されている。これが実現したとき、六課は完璧な要塞となるだろう。 ちなみに六課解体後は、時空管理局本部ビルから地上部隊司令部が独立して六課隊舎に移転することが予定されており、上層部もこの要塞化に乗り気だったようだ。 ここで話は戻るが、この魔力推進のマイクロミサイルは、はやての要請でミサイルランチャーと共に潤沢な予算を注ぎ込んで急遽開発、生産されたもので未だ先行試作量産型。配備数がまだ少ない。だから実戦用に取っておくつもりなのだろう。 どうやらなのははフォアード4人組と同時に、アルト自身の実力をも計るつもりのようだった。 「面白い・・・・・・その条件乗った!」 アルトは言い放つと、バルキリーの待つ格納庫へ飛翔していった。 これまでの話を見ていたティアナは内心歓喜していた。 (あんな大きな的にどうやって外すのよ) 大きくてのろくさい質量兵器1機の撃墜。それは容易いことに思えた。しかし、それが間違っている事が分かるのはすぐのことだった。 (*) 訓練場 そこは海上を埋め立てて作られた台地にあり、普段はまっさらな300メートル×300メートルの見た目コンクリート打ち付けの島だ。しかし、そこはホログラムによって市街地から森まで自由に再現できる訓練所だった。 ホログラムとは光子によって物質を擬似的に構成させるもので、設定の変更によってそれを触ったりできるようになる。 これはアルト達の世界(管理局では『第25未確認世界』と呼称されている)ではOTMによって初めて触ることが成し遂げられたが、この世界では独自で開発していた。これはミッドチルダの技術力が魔法だけでなく科学でも進んでいる事を示していた。 すでになのはのレイジングハートからデータを受け取ったコンクリート島は市街地となっている。なのはによると、そこは比較的開けた市街地で、撃墜されたら逃げ込む避難所以外は破壊可能な設定らしかった。 すでにアルトの操るバルキリーは、4人とは建物を挟んだところで準備はOKだと言う。 「みんな、相手はアルト先輩とはいえ、とろい大きな的よ。相手がこっちに来たら、まずわたしが先制の砲撃をかける。そしたらスバルとエリオは挟み撃ちで一気に白兵戦に持ち込んで。キャロは、私のところで全体の魔力ブーストをお願い」 「「了解!」」 3人の声が唱和した。 現在ティアナ達は公園のようなところに陣取っていて、ずいぶん開けており、彼女らの作戦のフィールドには最適だった。 「はーい、それではこれより模擬戦を開始します。アルト君の勝利条件は制限時間の10分が経つか、4人の撃破。フォワードの4人の勝利条件は指定した的5個の全撃破とします」 今回VF-25には胴体、両腕、両足にそれぞれ1個ずつ直径1メートルぐらいの的がついている。それらすべてにティアナなら魔力弾を。スバル、エリオなら直接攻撃を。キャロならば持ち竜『フリードリヒ』のファイヤーボールを当てることが撃破条件であった。 「・・・・・・それではよーい、始め!」 開始と同時に4人が動く。スバルとエリオは左右に、自分とキャロは後方の一軒家に。 典型的な待ち伏せ陣形だが、アルトに・・・・・・いや、ヒトに対して使うのは初めてだ。 果たしてアルトは来た。 丁度ティアナ達がいる一軒家とは公園を挟んで対面となるため遮蔽物がなく狙いやすい。 現在クロスミラージュからは赤外線など各種センサーを騙すためにジャミングが行われている。本来ならば全域にバルキリーの高性能な電子機器を騙すほどのジャミングなど無理な相談だが、キャロの魔力ブーストがそれを可能にしていた。 『(みんな、準備はいい?)』 全体に念話で呼び掛ける。 『(いつでも)』 右側のアルトから死角になった建物からスバルの声。 『(どこでも)』 今度は左側のこちらも死角になった草むらからエリオの声。 「どこへでも」 すぐ後ろからキャロの声。そして目の前には砲撃用の魔法陣。 「『(いくわよ!)』ファントム・・・・・・ブレイザー!」 放たれるオレンジ色をした砲撃。必中の思いを込めたそれは的のあるバルキリーの胴体にに吸い・・・・・・込まれなかった。 当たる直前にバルキリーが射軸から消えたのだ。よくみると、バルキリーは前のめりになっている。 (転倒?) 彼女はそれを見てそう思った。確かにその挙動から転倒にも思えるが、実は違う。 バトロイド形態のバルキリーは、ただ立っているだけで大きな位置エネルギーを持っている。そのためティアナの砲撃を普通の機動では避けられない。と判断したアルトは重力の加速を使ったのだ。 バルキリーはそのまま前転を繰り返し、前、つまりティアナ達のいる一軒家に急速に近づいていった。 最初の挙動を転倒と捉えたティアナ達の対応は遅れに遅れる。 気づくとそれは目の前にいた。 壁が破壊され、巨大な頭が現れる。そして顔に着いた緑のバイザーがこちらを向き、2対の頭部対空レーザー砲がこちらに向け───── とっさにキャロを巻き込んで左に跳ぶ。 すると、先ほどまで自分達の居た場所をレーザーが赤く染めた。 即座に次なる回避場所を探すが、残念ながら部屋に隠れられる場所はなかった。 (万事休す・・・・・・!) しかしバルキリーは次の攻撃をせず、横っ飛びに退避する。 「え?」 キャロがその行動に疑問の声を上げる。直後に聞こえる相棒の突撃する叫び声。どうやら足の速いスバルが間に合ったようだ。だがそれはすぐに悲鳴に変わった。 「わぁーーー!ティア援護ぉ~!!」 キャロと共にすぐに一軒家から出てスバルを探す。すると彼女はウイングロードを展開してバルキリーから必死に離脱をかけていた。後ろには魔力誘導弾(そのくせ青白い尾を引いている)が、親についていく子供のように大量についている。 どうやら誘導性を優先したため弾速の遅いその玉は、必死に離脱するスバルを嘲笑うようにつきまとう。 「キャロ、エリオとこの戦線の維持をお願い。私はスバルの援護に行くから!」 「はい!」 ティアナはスバルの援護に走った。しかし、それがアルトの狡猾な罠とは見抜けなかった。 (*) 3区画離れた場所(最初の場所から500メートル以上走った事になるが、訓練場から足を踏み外す事はない。理由は後述する)でスバルを捕まえ、迎撃を始める。 「遅い遅い・・・・・」 20秒ぐらいだろうか、その全てを簡単に叩き落とした。 礼を言う相棒を尻目に、エリオ達と合流するために念話を送る。しかし耳障りなノイズ音しかしなかった。 (しまった、ジャミングか!) つい最近まで念話を阻むものがなかったことが仇となる。 VF-25に装備されていたそれは、元々バジュラ達のフォールド通信を妨害するためのものだったが、フォールド波の応用である念話にも使う事ができた。 3区画離れた場所にバルキリーが現れた。それと同時に雑音が消える。 『(すみません・・・・・・)』 エリオの申し訳なさそうな声。そして報告を続ける。 ティアナとスバルの戦線離脱直後 「僕がアルト先輩の動きを封じるから、キャロはフリードで隙のある時に攻撃して!」 「うん!」 キャロが返事をするのを確認すると、自身は迷いなく突入する。なんてことはない。これまで彼女と重ねた訓練が信頼と、魔力ブースト以外の強力な力を与えていた。 彼はフェイト直伝の高速移動魔法とOT『イナーシャ・ベクトル・キャンセラー』の慣性制御を使って、まさにイナズマのような強烈な戦闘機動でハイマニューバ誘導弾の雨の中を突破。バルキリーへと肉薄する。 「ハァ!!」 踏み込みによって最終加速されたエリオはストラーダを突き出してバルキリーへ。しかしその渾身の一撃は紙一重で回避された。 「フリード!」 そこにキャロの命令が放たれる。バルキリーの死角で待機していたフリードリヒは鳴き声とともに火球を放つ。それは見事バルキリーの右肩に付けられていた的に着弾。真っ赤なペイントがそこを装飾した。 攻撃はそれにとどまらない。バルキリーの関心がフリードリヒに向いたと見るやエリオが再び突撃して左足の的をその槍で貫いた。 しかしバルキリーは脚部の推進エンジンを吹かして猛烈なバックステップを行い、同時にガンポッドが火を噴く。おかげで右足まで彼の攻撃は通らず、エリオ自身も緊急離脱を余儀なくされた。 しかしエリオもキャロもこの接敵で味を占めてしまっていた。 「自分たちだけでもアルト先輩に勝てる」と。 不意打ち、大いに結構だが、そのような戦術が何度も通じるわけがなかった。 もしもここにティアナがいたなら2人の増長を必ず防げただろう。 だがいなかった。 エリオは今度も一撃離脱を狙って高速で接近。ストラーダを突き出す。 フリードリヒも同様に死角へと隠れる・・・・・・つまり多少の機動の違いはあれど、まったく同じ作戦だった。 エリオはバルキリーが自身の攻撃を回避してくれることを疑っていなかった。だからそれが突然黒い煙を散布し始めたときには焦ってしまった。 どうやらスモークディスチャージャー(煙幕発生機)で文字通りこちらを煙に巻くつもりのようだ。 (煙に隠れられたら厄介だ・・・・・・!) 瞬時に判断を下すと、今までしていたジグザグの回避機動を捨ててバルキリーへと直線的に向かう。しかしバルキリーは突然こちらに向き直ると神業とも取れる精妙な動きでストラーダのみを掴み、こちらの攻撃を完全に止めた。 (は、嵌められた!) アルトは最初からこちらを煙に巻くつもりはなかったのだ。 (こっちが回避機動をやめて、機動が直線的になるのを待ってたんだ・・・・・・!) 煙幕のせいでフリードの支援も絶たれ、武装を封じられたエリオは手も足も出ず、即座にバルキリーのアサルトナイフで無力化された。 その後移動能力の低いキャロが撃墜されるのには時間はかからなかった。 その報告でようやくティアナは自分がアルトに嵌められたことに気づいた。 スバルをすぐに撃破しなかったのは、自分が彼女を助けるのを見抜いたため。確かに非常時には念話があると思って行動したが、それもお見通しだったのだ。 結果としてそれは戦力の分断と指揮系統の混乱という、戦いを統べる者なら誰もが学ぶ基本原則を成功させてしまった。しかもアルトはそれを数の劣位と出力ダウンという大きなハンデを背負った上で行ったのだ。なんというしたたかさ。そして計算高さだろうか。 ―――――読み飛ばし可――――― さて、少し話はそれるがここで問題となるのが発生する戦闘音であり、同時に訓練場の広さの問題だ。 前述した通り300メートル×300メートルの広さしか持たないこのコンクリート島からなぜ彼らは足を踏み外さないのだろうか。 それは結論を言ってしまえば〝ほとんどその場を動いていない〟からだ。 読者の皆さんはルームランナーをご存知だろうか? 幅のあるベルトの回るグラインダーのような台の上を、人間が走る機械の事だ。 これを使えば我々は無限に走ることができる。 だが無論そんなものがここに敷き詰められているわけではない。だが、もしあなたがこの訓練場に顕微鏡を持ち込んだのなら謎はすぐに解けるだろう。 そこに広がるは、外見から予想されるコンクリートの平面ではなく、たくさんのパチンコ玉が整然と並べられたような光景が広がっているはずだ。 本当はこれだけでは正常な走りは再現はできないのだが、このホログラム機構を語ることは本稿の主旨に合わないのでまたの機会に譲る。 つまるところ彼らはお互いに100メートル程しか離れていないのだ。 そしてティアナが実質100メートル先で行われていたエリオ達の戦闘に、気づかないほどの音の問題だが、そこは逆位相の音波の照射による相殺や遮音シールドなどで補っている。 ちなみにそれほどの広さを必要としない場合は、実測の建物等を普通にそのまま具現化する。 ―――――ここまで――――― ティアナはアルトの老獪な作戦に舌打ちした。しかし、まだ諦めるつもりはなかった。 「スバル、私が援護するからアイツに特攻かけて!」 「OK!」 ティアナの不屈の精神を感じ取ったスバルは親指を立ててウィンク。 「制限時間はあと3分。一気にカタをつけるわよ!」 「了解!」 スバルはアスファルトの地面を駆ける。その進攻を援護するためクロスミラージュを1挺にし、機関銃顔負けの連射でバルキリーの動きを抑える。 順調に突撃は進行していた。しかし、突撃開始からずっと小さな違和感に苛まれていた。 (なぜ攻撃してこない!?) いくら頭を抑えたといっても、近づくスバルに牽制ぐらいの反撃は出来るはずだ。しかし目の前のバルキリーは巨大なミッド式魔力障壁を展開したまま動かなかった。 『エネルギーコンデンサのチャージだろうか?』とも思ったが、反撃しなければジリ貧であるこの状況。それでも沈黙を守る理由・・・・・・そこでようやく気づいた。しかし、それはまたしても遅すぎた。 (*) 肉薄していたスバルは、バルキリーまであと5メートルほどのところで信じられない物を見ることになった。 突然バルキリーの姿が、バラバラになってかき消えたかと思えば、そこに浮かぶは先ほどと同じハイマニューバ誘導弾。 「ちょ!幻影!?」 実際はVF-25に装備されていたイベント用のホログラム投影機からの映像だったが、魔法のそれと同じ効果を発揮した。 数瞬後、容赦なく音速で突入してきたハイマニューバ誘導弾はあやまたずスバルに命中。ド派手な爆発が彼女を包んだ。 「ああ・・・・・・」 煙が晴れると、模擬弾が命中したことを示すホログラム製白ペイントが彼女のあちこちに付着していた。・・・・・・そのある意味扇情的な光景のなか、スバルはトボトボと近くの避難所に歩いていった。 (*) ティアナはスバルの撃墜直後にアルトからの奇襲を受けていた。 最初の攻撃はガンポッドの一斉射だったが、その攻撃を回避できたのは奇跡だった。目の前の青くペイントされたアスファルトを見て、背筋に悪寒が襲う。 しかしバルキリーはすぐに街頭から飛び出すと、間断なくホログラム弾による砲撃を浴びせかけてくる。 その砲撃は鉄筋コンクリートの壁をまるでベニアのように易々と貫通していった。 (これが質量兵器の力・・・・・・か!) 破壊によって吹き上がった粉塵の中滑り込んで瓦礫に隠れると、幻術を展開した。 対するバルキリーは、確認できる全ての敵へのマルチロックによる全力射撃で広域掃討。 その隙をついたティアナの狙撃に右肩の的が吹き飛ぶ。 応射としてガンポッドの砲弾が雨あられと降るが、ティアナはすでにその場から退避していた。 (*) 「予想以上だな・・・・・」 アルトは下界で孤軍奮闘する少女をそう評した。 まず基本がよくわかっている。射撃に関わる者の基本である「撃ったら逃げろ」というものだ。 ティアナはずっとヒット・アンド・アウェー(一撃離脱)戦法に徹している。 これはわかっていてもなかなかできるものではない。急ぎすぎるとまともに照準できない。しかし遅いと命取りになる。この場ではそうゆう繊細な戦術だった。 「さすがアイツが教導してるだけのことがあるな・・・・・・」 彼女を教導した栗色の長い髪した教導官に改めて感心した。 「う!?」 突然の揺れ。どうやら左足もやられたようだ。 「あと1枚か・・・・・・そろそろ本気にならないとダメだな・・・・・・」 アルトは機体のパワー配分をセンサーと機動につぎ込むと、ハイマニューバ誘導弾を生成した。 (*) 「あと1枚!」 ティアナは自身の魔力弾が命中するのを確認すると、すぐにガンポッド、頭部対空レーザー、そしてハイマニューバ誘導弾の応射が来た。 「やっば!」 どうやら眠れる獅子を起してしまったようだ。これまでとは比較にならない攻撃が一挙に集中した。 クロスミラージュを含め六課の戦闘員全てのデバイスにはエリオと同じ重力制御で慣性を抑制するシステム、OT『イナーシャ・ベクトルキャンセラー』が装備されている。しかし機動が限界に達し、それで拾いきれない慣性が発生すれば、術者は制動を失う事になる。 ティアナがまさにそうだった。 この状況から脱しようと建物から建物への迅速な移動をしようと思い立ったティアナは、デバイスに内臓されたビームアンカーを対面のビルに固定、一気に乗り移った。 しかしそこで連続使用に耐えかねた搭載バッテリーが干上がり、来ないと思っていた横への慣性ベクトルが足元をすくいあげ、転倒させてしまった。 「しまっ―――――!」 アルトにはその一瞬で十分だった。ガンポッドの一斉射が彼女を襲う。咄嗟に展開したシールド型PPBと魔力障壁はその嵐のような猛攻によく耐えたが、続くハイマニューバ誘導弾を止めるには足りなかった。 (*) 5分後 そこには青(ガンポッド)、赤(頭部対空レーザー)、黄(アサルトナイフ)、そして白(ハイマニューバ誘導弾)に芸術的にペイントされた4人。そしてバルキリーから降りたアルトがなのはの前に集合していた。 ちなみに、フェイトとヴィータは模擬戦終了と同時に 「「アルト(君)に負けられるか(られない)!」」 と言って今は海上で演習中だ。 「今日は初めての対人模擬戦なのによく頑張りました。今日の訓練はここまで。4人は午後に今日の模擬戦についてのレポートを書き、提出してください。以上。では解散」 皆一様に疲れた様子でトボトボ歩き出す。 アルトは所々跳弾でペイントされた純白の愛機に向かうところをなのはに呼び止められた。 「ちょっと来て。」 手招きされるままにホログラム製の木の影に入る。 「・・・・・・どうだった、うちの新人は?」 「そうだな・・・・・・基本はよく訓練されている。指揮もしっかりしていれば、分隊として十分機能するだろうよ。」 なのはの問いにアルトは実感で答える。でなければ指揮系統の混乱など思いつかない。最初からそれほどにはティアナの実力を評価していた。 「わかった。でもあともう1つ。アルト君、最後まで手加減してたね?」 表面上は疑問形だが、その有無を言わさぬ迫力に少したじろいだ。 「〝FASTパック〟の使用許可は出したはずだよ。」 「いや、それは・・・・・・」 しかしアルトはすぐに持ち前の役者精神が復活。 「ただ、新装備で魔力消費を心配しただけだ」 と、強がった。 そんな2人を遠くから隠れて見る真っ白な1人の少女がいた。ティアナだ。 彼女には〝ふぁすとぱっく〟がなんのことかわからなかったが、手加減されたということへの悔しさたるや壮絶なものだった。そしてその事が、彼女に1つの決意の炎を灯した。 (次は絶対アルト先輩に勝ってみせる!) ティアナはそう心の中で誓うと、2人に見つからぬように宿舎に戻って行った。 (*) 模擬戦2週間前 クラナガン郊外の地下に作られた秘密基地では、ある科学者が狂気の笑みを浮かべていた。 「なにがそんなに面白いのかしら?」 そこに現れたのはグレイスだった。 「アぁ、君か。まったく君の世界の技術は素晴らしい。魔法に頼らず、ここまでできるとは、ハッハッハッ・・・」 狂気の天才科学者ジェイル・スカリエッティは額を押さえて笑う。彼の目の前には、ある機体の設計図があった。それはグレイスと手を組む時に渡されたものだった。 「そう・・・・・・とりあえずレリックのほう、お願いするわよ。」 「あぁ、わかっている。あれはこちらでも必要なものなのでね。」 彼はそう返すと、図面に向かい格闘を再開した。 OTやOTMに初めて触れて4ヶ月。もう適応してしまった彼はさすが天才であった。 彼の格闘する図面には前進翼と1基の三次元推力偏向ノズルを備えた機体が描かれている。しかしそこには戦闘機最大の弱点とよばれるシステム〝パイロット〟の乗るスペースがなかった。 今1つの世界を震撼させた幽霊の名を冠された先祖が、ここに復活しようとしていた。 次回予告 ひょんなことからVF-25を壊してしまうアルト。 それを修理するため地上部隊傘下の技術開発研究所に向かうことになるが――――― 次回マクロスなのは、第5話『よみがえる翼』 不死鳥は、紺碧の翼をもって再び空へ! シレンヤ氏 第5話へ(現在修正中)
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1205.html
魔法少女フルメタなのは 第二話「流れ着いた兵士達」 ミッドチルダの首都クラナガン。その一角にある時空管理局機動六課隊舎。 先程まで静寂で包まれていたこの場所だが、今ではエマージェンシーコールが鳴り響く騒がしい場所となっている。 「何が起こったん?」 作戦室に入ってきたのは六課の部隊長にしてオーバーSランク魔道士、八神はやてである。「強大な次元振反応を確認、その同地区に大型の熱源が出現するのを感知しました。」 「場所は?」 都市部の外れ、廃棄都市区画です。」 はやての問いに、六課メンバーのシャーリーとグリフィスが答える。 「スターズ分隊を目的地に調査に向かわせてや。ライトニング分隊は出動準備のまま待機や。」 「了解。」 六課フォワードメンバー・スターズ分隊は輸送ヘリ「ストームレイダー」で廃棄都市区画へと向かう。 「ねぇティア、次元振はともかくさ、大型の熱源て何だろうね?」 スターズメンバーの一人、スバル・ナカジマが言う。 「アンタね、それの調査があたし達の仕事でしょ!?」 同じくスターズメンバー、ティアナ・ランスターが呆れ気味に答える。」「あ、そっか。」 「ハァ…アンタは本当にいつもいつも…」 あっけらかんと言うスバルに対し、ティアナは嘆息する。 「にゃはは…まぁガジェットの反応もないし、それ程危険な事にはならないよ。」 スターズ分隊長、高町なのははそんな二人を見て、苦笑しながら言う。 「でも何があるのかは分からねぇんだ。あんまし気を抜くなよ。」 スターズ副隊長、ウ゛ィータが忠告する。 「「はい!!」 「ったく、返事だけは一人前だな…」 「にゃははは…」 とても任務中とは思えない空気のまま、ヘリは目的地に到着した。 「データだとこの辺りの筈だよ。」 「あっ、あれじゃねぇか?」 ヘリから降り、バリアジャケットを装着した四人は、少し広い場所に倒れていた“それ”を発見した。 「これって…ロボットっていうやつ?」 そこにあったのは、8メートル程の大きさの白と灰色の二体の鉄の巨人だった。 「うん…一般的にそう言われる物だろうね。」 ティアナとなのはは静かにそう呟く。 が、スバルはというと… 「すっごーい!!!ねぇねぇティア、ロボットだよロボット、くぅ~かっこいいー!!」 子供のようなはしゃぎっぷりであった。 「うっさいバカスバル!!」 「あう!」 お気楽な事を普通に言うスバルに、ティアナは脳天チョップを利かす。 「はしゃいでんじゃないわよ!危険なモンだったらどうすんのよ!ですよね、ウ゛ィータ副隊長?」 ティアナはウ゛ィータに同意を求めるが、当の副隊長は、 「ああ…そうだな…」 上の空で聞き流し、目をキラキラさせながらロボットを見ていた。 「………」 完全に沈黙するティアナ。 「あ、あははは…まぁとにかく調査しないとね。」 気を取り直してロボットに近付なのは。 しかし、彼女が軽く表面に触れた瞬間、二機のロボットが光を発した。 「な、何!?」 光は機体全体を覆い尽くし、それが収まった時、そこにロボットの姿は無かった。 「あ~っ、かっこいいロボットが~!?」 「なのは、テメェ!!!」 非難と怒号を同時にぶつけるお子様コンビ。 「え、えぇ~!?」 悲しみと怒りを宿す瞳に詰め寄られ、後退るなのは。 それを呆れながら見ていたティアナだが、ふとある物を発見した。 「皆あれ見て、人が倒れてるわ!」 その言葉に騒ぐのを止める三人。そして前方を見るとロボットのあった場所に二人の男が倒れていた。一人は金髪の青年、もう一人は黒髪の少年だった。 「大丈夫ですか!?」 急いで駆け寄るなのは達。 「…大丈夫、生きてるよ。ロングアーチに連絡、至急医療班を!」 生命反応を確認し、指示を飛ばすなのは。 「ふぅ、あとは…ん?」 連絡を終え、倒れている二人を運び終えたスバルが、何かを見つけて拾った。 「これって…デバイス?」 「う…」 意識を回復させた宗介は、まず自分がベッドに寝かされている事に疑問を抱く。 (どういう事だ…俺はたしかアーバレストのコックピットにいて、あの光に…) そこまで思い出して、宗介は飛び起きた。 「クルツ!!」 自分を救う為に巻き添えになった仲間の名を呼び、周りを見渡す。 「すぅ…すぅ…」 隣のベッドでまだ眠っている相棒を見つけて安堵する宗介。 「クル…」 そして手を伸ばして起こそうとした時、部屋の扉が開いた。 「あ、目ぇ覚めたん?良かった~、ケガとかないのに丸一日も眠ってたから心配したんよ?」 入ってきたのはなのは、はやての二人であった。 しかし、二人の姿を確認した途端、宗介の表情に警戒の色が浮かんだ。 「君達が俺達を助けてくれたのなら、まずはその事について礼を言う。だが、ここはどこだ?君達は誰だ?」 長年の軍隊生活で身に着いた口調と癖がここでも発揮された。 それを聞いたはやて達は表情を少し曇らせる。 「ご挨拶やなぁ~、こんな美少女が目の前におるのに、他に言うことないん?」 そう言って冗談めかしてセクシーポーズをとるはやてだが、彼を知る者なら誰もが認めるミスター朴念仁の宗介に、それは通用しなかった。 「美しくてもそうでなくても、見ず知らずの人間を簡単には信用できん。第一、君は少女という年齢には見えん。」 言った瞬間、部屋の空気が凍り付いた。はやては先程のポーズのまま固まっていた。 「はやてちゃん…」友人を心配するも、掛ける言葉が見つからないなのはだった。 その後、何とか復活したはやては宗介に自己紹介と幾つか質問をし、彼が管理外世界の人間である事を確信した。 そしてここが魔法世界であるという事実は、起動したデバイスや簡単な魔法を見せることで理解させた。 「何と…だが、しかし…」 今一つ納得しきれない宗介に、背後から声がかかる。 「オメーはいい加減、その石頭を軟らかくしろよなソースケ。」 「クルツ、起きていたのか。」 クルツはむくりとベッドから起き上がり、三人の方に向き直る。 「あぁ、今さっきだがな。それより魔法の世界とはな~、ぶったまげたぜ。」 「まぁそうだろうね。私も初めて知った時は驚いたよ。」 そう語るなのはにクルツは目を向け、 「あんたも俺らと同じなのか?」と聞く。 「近いところはあるかな。ここへは私の意思で来たんだけどね。」 「ふーん。あ、それより助けてくれた事の礼をしてないな。」 「ええよ、そんなお礼なんて~。」 「何ではやてちゃんが照れるの…」 「まぁ二人とも関係してるからな、お礼は両方にしなくちゃな。では、まずはやてちゃんから…」 そう言うとクルツははやての手を取り、ゆっくりと顔を近付けて行く。 「ちょっ、クルツさん!?」 突然近寄ってきたクルツの甘いマスクに、はやては顔を真っ赤にする。「大したことはできねぇけど、せめて俺の熱いベーゼを…」 だが、彼の唇がはやてのそれと重なる事は無かった。なぜなら… 「はやてから離れろおおお!!」 遅れてやって来たヴィータが状況を瞬間的に判断、起動したグラーフアイゼンをクルツに叩き付けたからだ。 「ぐふぅ!!!」 クルツは勢いのままに吹き飛び、壁面とキスすることとなった。 そんな中、宗介は一言、 「良い動きだ。」とだけ言った。 物事に動じない男であった。 騒ぎが収まった後、はやては二人に話しかけた。 「ほんでな、今日うちらが来たのは見舞いだけやのうて、二人に話があったからなんよ。」 宗介、クルツの両名は顔を見合わせる。 「話とは、一体何だ?」 「うん。二人とも、一般人やのうて、何処かの組織と関わりのある人やろ?」 それを聞き、二人は表情を硬くする。 「何故そう思う?」 「宗介君のしゃべり方、クルツさんの着てた戦闘服、何より二人の持ってた認識票と拳銃。一般人と信じろっちゅー方が無理や。…本当の事、話してくれへん?」 何も言い返せない二人。宗介は少し考えた後どうしようもないと判断し、事情を話し始めた。 「俺達は、ミスリルという紛争根絶を目的とした組織の兵士だ…」 機密には触れない程度の情報、そしてここに来たおおよその経緯を話す。 「その光に飲み込まれた後、気付いたらここにいた。間の事は何も覚えていない。」 「…成程な。大体の事情は分かったわ。」 話を聞き終えたはやてはそう言った。 「まぁ今の話聞いたんは局員としての仕事の一環や。必要な所以外では話さんから安心してや。」 「助かるぜ、はやてちゃん。」 口元を綻ばせてクルツが言った。 「で、もう一つだけ聞きたい事があるんや。こっちは私の要望が主なんやけどな。」 「何だ?言ってみろ。」 「うん。君達二人、魔道士になる気はあらへん…?」 続く 戻る 目次へ 次へ