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コスチューム 男服(ヒューマン・ニューマン・ビースト) 名前 ブランド 備考 フォニュームジャケット ? ? アーミーボトムセット ? ? ノーブルズボトム ? ? ウェスタイルボトムM ? ? ロア・ロアボトム ? ? SPFボトム ? ? レイマーボトムセット ? ? メンズスイムウェア ? ? ビキニスイムウェア ? ? ラッピー着ぐるみ ? ? セレブコート ? ? ブレイブスカスタム ? ? イルミナス・コート ? ? ミヤビカタ ? ? フォーマセット ? ? ガーディアンズ儀礼服 ? ? 470オッソリアスーツ ? ? 480オッソリアスーツ ? ? 490オッソリアスーツ ? ? 女服(ヒューマン・ニューマン・ビースト) 名前 ブランド 備考 メイディスーツ ? ? アモロッソトップ ? ? スマーティアボトム ? ? アーミーボトムセット ? ? ウェスタイルボトムM ? ? ア・ロアボトム ? ? ハナウラボトム ? ? レイマールボトムセット ? ? レギュラースイムウェア ? ? ビキニスイムウェア ? ? ワンピーススイムウェア ? ? セレブドレス ? ? ラッピー着ぐるみ ? ? ミヤビカタ ? ? ミクナスセット クパラ 【入手】ニューデイズ「狂信者の社B↑」 フォマールセット ? ? ミクミコセット ? ? ボルワイヤルセット クパラ 【入手】モトゥブ「蛇獣覚醒S」 410オッソリアドレス ? ? 420オッソリアドレス ? ? 430オッソリアドレス ? ? 440オッソリアドレス ? ? 450オッソリアドレス ? ? 男パーツ(キャスト) 名前 ブランド 備考 メンズスイムウェア ? ? ビキニスイムウェア ? ? ラッピー着ぐるみ ? ? セレブコート ? ? キャスユカタ ? ? 470オッソリアセット ? ? 480オッソリアセット ? ? 490オッソリアセット ? ? 女パーツ(キャスト) 名前 ブランド 備考 ビキニスイムウェア クパラ レギュラースイムウェア クパラ ワンピーススイムウェア クパラ ラッピー着ぐるみ クパラ セレブドレス ? ? キャスユカタ クパラ ミクナスセット クパラ 【入手】ニューデイズ「狂信者の社B↑」 キャスミコセット ? ? キャスワイヤルセット クパラ 【入手】モトゥブ「蛇獣覚醒S」 410オッソリアセット ? ? 420オッソリアセット ? ? 430オッソリアセット ? ? 440オッソリアセット ? ? 450オッソリアセット ? ?
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覚悟君が戻ってきた。 新暦0074年10月。 あの日の約束を、ぎりぎり果たしたその日に、や。 そうは言うても、わたしだけの力とちゃうねんけどな。 わたしかて、ヘタな謙遜をする程度の日々を送ってきたつもりはないねんけど、一人じゃ単なる小娘やんか。 聖王教会の…カリムの強力な後押しがあって、ほんっとに辛うじてこぎつけた結果やな。 完成した隊舎の執務室にやってきた覚悟君と向かい合ったら、 おっきくなった背に、いろいろ言うてやりたくなったわ。 けどな、うち、覚悟君の言葉、しっかり覚えてるねん。 せやからな…戦士に、敬礼や。 覚悟君も、わたしに敬礼してくれた。 「…………」 「…………」 結局、それだけやった。 そのまんま、三十秒くらいして。 「じゃあ、みんな…呼ぶな?」 「頼みます、八神二等陸佐殿」 魔法少女リリカルなのはStrikerS 因果 第八話『対超鋼・機動六課』 「みんなそろったところで、状況を整理してみよか」 「うん、そうだね」 「行き違いがあったりしたら、困るもんね」 「了解した」 今、いるのは、わたしとなのはちゃん、フェイトちゃん。 うちの子らはガジェット退治の応援その他に駆り出されてて、来週までは戻ってこられへん。 リィンも今は、そっちについていってる。 覚悟君とすぐに会わせられないのが残念やけど… あ、ちなみに、他人行儀は即刻禁止したで。 覚悟君だけそんなことやったら、なのはちゃんやフェイトちゃんにも、遠回しにそれ、押しつけることになるねんな? …それにな。 『勘違いしたらあかんて。 わたしらを結びつけるのは上下関係やない。 おんなじ、願いや。 戦う理由や…違うか? そう思うから、戻ってきてくれたんやろ、覚悟君』 『…相違なし。 謝罪する』 まあ、三年前は嘱託魔導師待遇(魔法使えないのにヘンな話やけど)で、わたしらの仕事、手伝ってもらってたから、 管理局の組織に正式に組み込まれることを自分で選んだ手前、組織の仕組み、ないがしろにできん思うたんやろな。 でもそれは、中身をしっかり守ってくれれば、形なんかどうでもええねん。 なのはちゃんにフェイトちゃん、シグナムたちもそうしとるみたいにな。 「…まず、どうしてカリムの、聖王教会の後押しが強まったのか? これは覚悟君が詳しいはずやな」 「強化外骨格、雹(ひょう)の発見ゆえに!」 なのはちゃんも、フェイトちゃんも、息を呑んだ。 わたしだって、カリムから聞いたときは、同じやった。 あんなことが、あった直後やったから… 「野生の火竜が丸呑みにしていたものを、おれが回収した」 「それってつまり、この世界に飛ばされてきたのは、覚悟くんだけじゃなくて…」 「呼ばれたのは、強化外骨格そのものであるかもしれぬ」 なのはちゃんに応える覚悟君の目つきは、鋭かった。 「強化外骨格に宿るは、理不尽に蹂躙されし魂なれば。 カリムの予言の一節に符合せし部分あり」 古い結晶と 無限の欲望が 集い交わる地 死せる王の元 聖地より彼の翼が蘇る 死者達が踊り 中つ大地の法の塔は空しく焼け落ち それを先駆けに 数多の海を守る法の船は砕け落ちる 「踊る死者達、これ強化外骨格の瞬殺無音を意味するならば… ミッドチルダに吹き荒れるは、大殺戮の嵐!」 「地上本部への…」 「強化外骨格を使った…」 「毒ガス攻撃!」 真っ昼間の晴天なのに、雷が轟音を立てて落ちてくるのを、わたしらは確かに聞いた。 本部からの事情聴取では知らぬ存ぜぬで突っ張り通したけど、 わたしは確かに知ってる。 瞬殺無音がなんなのか、零(ぜろ)から聞いて、知ってる。 十秒足らずで都市ひとつ根こそぎ鏖(みなごろ)す。 姿無く、音も無く、匂いもせず、ただ瞬間的にやってきて、あとは原型をとどめない…化学兵器、戦術神風(せんじゅつ かみかぜ)。 「強化外骨格は…零(ぜろ)は、悪用されるの?」 「断じて否。 下郎にその身を許す零(ぜろ)ではない! 雹(ひょう)もまた我が父、朧(おぼろ)の超鋼なれば、不仁を為すこと、決してありえぬ」 「お父さんの?」 重々しく頷いて、覚悟君は続ける。 「零(ぜろ)、雹(ひょう)がこちらに存在する以上…現人鬼(あらひとおに)の纏(まと)いたる霞(かすみ)もまた在ると考えるべき! 外道に堕ちくさった散(はらら)ならば、強化外骨格の力、罪なき人の抹殺にふるったとて、何ら不思議なし」 フェイトちゃんが、ちょっと痛々しそうに目をそらしとる。 お兄ちゃんのことを「鬼」って呼んで、討つべき悪としてにらみ続ける覚悟君や。 たとえ冷たくされたって、虐待されたって、 それでもお母さんのこと信じ続けたフェイトちゃんには、やりきれないものがあるかもしれへん。 「でも、それをやるのが散(はらら)さんて決まったわけやない」 「だが、そう考えねばならぬのだ、はやて」 「これ見いや」 ウインドウを起こして、映像を再生する。 百聞は一見にしかずやて。 「これは、玩具(ガジェット)」 「三週間前の、ヴィータの戦闘記録や」 その日、現れたガジェットは、たった五体。 せやけど、その分、特別製やった。 数でタカをくくった地上部隊三十人が、あっさり片付けられてもうた理由は、 ヴィータがグラーフアイゼンで殴りかかった瞬間に、すぐわかった。 「…これは、まさか!」 さすがの覚悟君の顔色も、これには変わって当然やな。 あれの意味を知らなかった、なのはちゃんとフェイトちゃんだって、同じ顔したんやもん。 「わかるか、展性チタンや。 展性チタンの装甲を持った、ガジェットや」 ブースターで噴射しながら正面からぶち砕く、ラケーテンハンマー。 あれをくらって、吹っ飛ばされておきながら、ガジェットは表面が一瞬へこんだだけで。 装甲表面全体をぷるんと震わせた思うたら、元通りの形になって、元気ハツラツでミサイルを撃ってきた。 AMF(アンチ・マギリング・フィールド)で魔力が消されてまう上に、 通った威力、衝撃もこんな風に散らされるんじゃ、苦戦するのも当たり前や。 最終的に、ひとつ破壊している間に、残り全部に逃げられて。 「…わかるか、これがどういう意味か、わかるか?」 「展性チタンは、強化外骨格の装甲にのみ用いられし素材」 「せや。 強化外骨格の技術を解析してる、何者かがいるっちゅうことや。 もっと、聞くで? これ、放っておいたら、この先どうなるか」 「瞬殺無音の暴露…」 「わたしは、もっとおそろしいこと考えとるねん」 正直、口に出すのもイヤな可能性やけど、 目をそむけるのは、絶対にあかんねや。 だから、言う。 「強化外骨格の、量産や」 覚悟君の息が、数秒間も止まったのを感じた。 なのはちゃんとフェイトちゃんには、あらかじめ伝えておいた、一番悪い予想。 もしも…もしも、色々とタガの外れた人が、それを使って何かやらかすのなら。 そこから描かれる未来図は、この世の、破滅や。 「覚悟君だけの問題とちゃうねんて。 もう、とっくの昔に。 せやからな、探そう? 一緒に…止めなきゃいけない人達を」 「…了解。 おれの拳ひとつでは、因果は届かぬと認識した」 「うん、ええ子や」 一人で背負い込もうとするんは、覚悟君の一番心配なところ。 何も、覚悟君は、人類最後の戦士やあらへん。 支え合って、わたしらは、もっと強うなれるんや。 「…で、次は、一体、どこでそんな技術を解析しとるのか、って話になるんやけど」 「言いにくいけど、一番最初に思いつくのは…」 「零(ぜろ)だね」 なのはちゃんの後を、フェイトちゃんが引き継いで、はっきり言うた。 「ロストロギアに匹敵するものなら、管理局で解析するのは当然だから…問題は、その後」 「管理局から悪漢どもへ情報の漏洩ありと?」 「そうだとしか思えない。 そうでなければ、別の強化外骨格を… 覚悟の言っていた、霞(かすみ)を持っていると考えるしかなくなる」 「であれば…散(はらら)か」 覚悟君の拳が、きりりと握られた。 考えるな、ちうても無理なんや。 それは多分、覚悟君にしか背負えないものやから。 外野から、とやかく言えることと違う。 違うんやけど、でも、一人で背負い込むのは反対やし。 もし、対決に立ち会うようなことがあったら、わたし…何をしてあげられるんかなあ? …あかん、あかん。 今考えることとちゃうで。 「散(はらら)さんより現実的な危険は、獅子心中の虫やで、覚悟君。 姿も形もない霞(かすみ)より、現にある零(ぜろ)や」 直接的な表現を避けつつ、覚悟君流にむずかしい言葉をまぜてみる。 我ながら上出来やな。 「覚悟君、言うてくれたやんか。 零(ぜろ)は征くべき場所に打って出たのだ、って」 「…うむ」 「じゃあ、管理局外部に漏れてる展性チタンの技術。 これは、零(ぜろ)が撒いたエサとちゃうか?」 「!!」 ふふん、目つき、変わったやんか。 せやせや、男の子はくさってちゃダメやて。 「そろそろわたしらが、零(ぜろ)の声に応える番やて」 「敵の技術、零(ぜろ)ではなく、霞(かすみ)に由来していた場合は?」 「もし、そうなら…零(ぜろ)を取り戻す、立派な大義名分やんか。 そのときは、零(ぜろ)と覚悟君の、全力全開であたる時や!」 一人で行かせるとは限らへんねんけどな。 わたし、策士やねん。 覚悟君、それに気づいてるのかいないのか、わからへんけど… 「はやて」 「ん?」 「命令を! 機動六課が葉隠覚悟に!」 こういうツボ、しっかり心得てるとこ、ホンットにニクイわ。 覚悟君の場合、完っ璧、これが天然やから、なおさらや。 あのシグナムでさえ、なんと古風な…とか言うて笑うんやで? でも、闘志がわく。 「違うで、覚悟君」 「違う?」 「古代遺物管理部、機動六課が正式の名前や。 せやけどもうひとつ、わたしらにだけ見える三文字がある。 わたしらの背負う役目と同じように」 思い切りもったいぶって、気を引いて、 そして、力いっぱいに、名乗る。 「『対超鋼』! 『対超鋼』機動六課(『たいちょうこう』 きどうろっか)や!」 「対超鋼、機動六課!」 「たとえ相手がロストロギアだろうと、強化外骨格だろうと、 わたしらは一番最初に立ち向かって、一番最後まで立っている。 機動六課は、そういう部隊や」 居住まいを正す。 八神はやて、上官モードや! 「葉隠覚悟陸曹」 「はっ」 「貴官は本日より機動六課中枢司令部、ロングアーチに所属。 わたし、八神二等陸佐の直属として、対超鋼戦術顧問を命じる!」 「対超鋼戦術顧問、拝命いたします!」 「うむっ」 覚悟君の敬礼に、わたしも敬礼。 なのはちゃんも、フェイトちゃんも、敬礼。 一人前の仕事をするには、まだまだ時間がかかるねんけど、 生まれたばかりの機動六課は、今、確かに歩き出してる。 (グレアムおじさん…見てて、な) 空の彼方に、そっと、祈った。 「是非もなし」 なのはが指揮する『スターズ』分隊の配属候補、二人の話になってすぐ、 覚悟はそう言って、なのはの選択を全肯定した。 スバル・ナカジマとティアナ・ランスター。 私となのはみたいに、ずっと、二人でやってきたっていうコンビらしいけど。 「両名すでに、恐怖超えたる器なり。 錬磨おこたらねば一廉(いちれん)の戦士たるも夢ではなし」 「さすが…直接見てきた覚悟君はひと味違うね。 でも、びっくりしなかった?」 「何が」 「スバルちゃんのこと」 覚悟にとっては、この世界での全ての始まりだったはずの女の子。 火事の中、生命を賭けて助けたこの子が今、機動六課に名前を連ねようとしている。 少しだけ、黙ってから…覚悟は、うなずいた。 「できることなら、平和の中に生きてほしかった」 それを聞けて安心したよ、覚悟。 戦いだけで頭が埋まっているような男の子じゃないって、三年前から知ってはいるけどね。 覚悟のあの強さは、聞けば五歳のときから仕込まれてきたものだっていうから。 …私も、境遇としては似たようなものだった。 だから、三年前、聞いたんだ。 辛くなかったか、って。 そうしたら。 『おれを宝と呼んでくれた父上の顔は、辛き日々を乗り越えし成果。 あの顔を見たくて、おれは頑張り続けていたのだと、あの時に知ったのだ。 おれほどの果報者、そうはおるまい』 私がついに手に入れられなかったものを、覚悟は手にいれることができて。 でも、一緒に辛いことを乗り越えてきたはずのお兄ちゃんに、そのお父さんが殺されて。 忘れろだなんて、言えるわけがない。 でも…それでも、私は、思うんだ。 大好きだったお兄ちゃんのこと、悪とか、殺すとか、そんな風に思い続けるなんて、哀しすぎる。 散(はらら)さんがどういう人か、まだ私は知らないけれど、戦いになるようなことは、できれば止めたい。 だけど、ね。 「だが、戦場にて勝てぬ大敵を前に一歩も引かなかった事実。 決意を身をもって示す者を前にして、おれに何が否定できよう」 小さく笑うなのはみたいに、私の意見も、覚悟と同じ。 『覚悟』に余計な口ははさめないんだ。 今は、何も言ってあげられそうにない。 「…採用、決定だね」 「二人の教練、くれぐれも抜かりなきよう!」 「何を言ってるのかな? 覚悟くんも教官になるんだけどなあ」 「む…」 「覚悟くんぬきじゃ、意味ないよ? 対超鋼戦術顧問さん?」 「…了解、未熟ながら死力をつくそう」 「うん、いいお返事。 じゃあ、まずはわたしに教えてね」 なのはが席を立って、覚悟もそれに続く。 三年ぶりの、話仕合(はなしあい)に行くんだね。 最後のあれは、確か… 『後の先を狙い続けて膠着状態に陥った場合、いかに敵を崩すか?』でもめたときだったっけ。 「零(ぜろ)は無くても、大丈夫?」 「あなどるなよ! 当方にカリムより賜(たまわ)りし爆芯『富嶽(ふがく)』あり!」 「そうこなくっちゃ! …フェイトちゃん、どうする?」 いきなり話をふられて、今までずっとぼんやりしてた私はちょっと反応が遅れたけど。 「うん、行くよ」 バルディッシュを握り締めて、私も立つ。 私の率いる『ライトニング』分隊、二人の資料をファイルにしまって。 エリオ・モンディアル。 キャロ・ル・ルシエ。 私の養子、二人。 『真に我が子を思っての決断なれば良し』 覚悟は、そうとしか言わなかった。 …言われるまでも、ないよ! レリック関係だけじゃなくて、私達が追うのは今や、強化外骨格に、謎の生物兵器人間… 死の危険が飛躍的に高まってきたのは、肌で感じる今日この頃だから。 そのために、私がいる。 なのはがいる。 むざむざ死ににいかせるような教練なんか、絶対にしない。 私も、エリオとキャロには、もっと安全に生きてほしかったけど、 二人の選んだ道には、きっとゆずれないものがあるはずだから。 だから、道半ばで倒れたりしないように、最後まで戦える力を、しっかりあげるんだ。 ―――『対超鋼』機動六課、動き出す日は、すぐ近く。 前へ 目次へ 次へ
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●共通-コスチューム系 ←戻る名前 効果 SP 修得・派生条件 戦士 『戦士』のコスチュームを獲得する 3 - 剣士 『剣士』のコスチュームを獲得する 3 - 格闘家 『格闘家』のコスチュームを獲得する 3 - シーフ 『シーフ』のコスチュームを獲得する 3 - アーチャー 『アーチャー』のコスチュームを獲得する 3 - メイジ 『メイジ』のコスチュームを獲得する 3 - 風水士 『風水士』のコスチュームを獲得する 3 - 僧侶 『僧侶』のコスチュームを獲得する 3 - 治療士 『治療士』のコスチュームを獲得する 3 - 魂改士 『魂改士』のコスチュームを獲得する 3 - アイテム士 『アイテム士』のコスチュームを獲得する 3 - 楽士 『楽士』のコスチュームを獲得する 3 - 商売人 『商売人』のコスチュームを獲得する 3 アイテム購入10回 ガンナー 『ガンナー』のコスチュームを獲得する 3 拳銃Lv5 or 小銃Lv5 スペルトリガー 『スペルトリガー』のコスチュームを獲得する 3 魔銃Lv5 けもの憑き 『けもの憑き』のコスチュームを獲得する 3 爪Lv5 調教士 『調教士』のコスチュームを獲得する 3 鞭Lv5 山伏 『山伏』のコスチュームを獲得する 3 錫杖Lv5 道化 『道化』のコスチュームを獲得する 3 鎌Lv5 フェンサー 『フェンサー』のコスチュームを獲得する 3 細剣Lv5 グレネーダー 『グレネーダー』のコスチュームを獲得する 3 爆弾Lv5 砲術士 『砲術士』のコスチュームを獲得する 3 大砲Lv5 魔剣士 『魔剣士』のコスチュームを獲得する 3 魔法剣Lv5 - - - - - - - - - - - -
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南イタリア ネアポリス空港 両替所にて、クロノはある程度まとまった金を両替した。 「すまない、市内までタクシー代はどれくらいかかるだろうか?」 「4000~5000ってとこかね」 「そうか、ありがとう」 金を財布に入れ、もう一人の同行人の元に戻ると、札束の半分辺りを手渡す。 「おおよそ、10、20万あるはずだ、ある程度雑貨品も買い込む必要があるし足りなくなれば言ってくれ」 「お金の管理はちょっと苦手かも…ユーノ君お願い出来るかな?」 「いいけど、持つときは複数の場所に分けてね、スられた場合の保険に」 肩にフェレット、ユーノを乗せた高町なのは。いつもの制服ではなく私服なので、多少は周りに溶け込めていた。 「こういう服はあまり着た事無いから…ちょっと慣れないな」 「似合ってるよクロノ君、普通の人みたい」 「いや、普通の人だが」 対してクロノはいつもの執務官服ではなく、黒の上下に藍色のジャケットを羽織っていた。 二人とも少々大きめのスーツケースを引いている。ぱっと見は単なる旅行者以外の何物でもない。 「普段は普通に見られていなかったのか…」 「さて、タクシーで拠点に向かおうか、なのは」 がっつりと落ち込むクロノはあえて無視する。 「そ…そうだね…」 「ねえ、タクシー探してる?」 二人(と一匹)に声をかける者がいた。 「アルバイトでこれから帰る所だから安くしておきますよ…8000でどう?」 服は胸元がハートの様な形に開いた、暗い配色の…制服…だろうか? 輝く様な金髪の前髪を3つ丸めて束ねている、年の瀬はクロノより少し年上なのだろうか。 「厚意はありがたいが、ちゃんとタクシー乗り場で乗る事にするよ…流石にそこまで暴利ではね」 「く…クロノ君…」 なのはは物言いを多少咎めるのと同時にタクシー乗り場に目をやった。 乗り場にはかなりの長蛇の列、タクシーが来る時間の割合を考えると1、2時間で済むだろうか…? 「…あっちの客には声をかけないのか?」 「君達が断るなら…これから…、じゃあ、2000円ならどうかな?」 「…いきなり安くなったな」 「チップは無しなんだから、荷物は自分で助手席に積んでくれ、そっちのレディは別だけどね…」 「…わかった、それでいい…なのはは後部に荷物と一緒だ、僕は荷物を前に載せて後ろに」 「うん」 かなり大きめの荷物を前に乗せるクロノ。 「ちゃんと指定の場所まで送ってくれよ?僕らはただの観光客じゃないんだからな…」 「正直に送り届けますよ」 そして、なのはとクロノが後ろに乗り込もうとした時 「ただし、空のバッグだけを、ですがね」 車が急発進した。 「…ふぇぇ!?ま、まだ乗ってないよ!」 「早速か…やれやれ…誰も手をつけたがらないのも納得だ…」 「止めるよ!」 少年はバックミラーで二人の表情を確認した。呆気にとられて慌てる少女と頭に手をあてやれやれと首を振る少年。 だが、追ってくる様子すらない、奇妙に思ったが振り切ってしまえば此方の物だ。 「チャオ」 だが空港を抜けようとしたその時、車がガクン!!と前につんのめり、止まった。 タコメーターはエンジンの不調を訴えてはいない、ガソリンも十分。だがタイヤは地面を空回りするばかりで前に進まない。 「ユーノ君……凄い…」 「一瞬でこれだけのバインドを編んだのか…」 一般人には見えないが、二人には見えていた。周囲にあるガードレールや電柱に縦横無尽に絡まり車を二重三重に捕縛したチェーン・バインドが。 「僕だって一応修行してるんだよ、ま、奴への引導は二人にお願いするけど」 クロノは焦る事無くゆっくりと車に近づく。運転している少年はまだ車を弄っていた。 「言っただろう?ただの観光客じゃないって…」 声をかけ、助手席の扉に手をかけると、流石に感づいた様で少年は運転席から飛び出した。 「荷物だけ置いていけばいい、追う必要もない…」 当然、クロノはこの少年が計画が失敗した事でパニックと罪悪と敗北の表情をするだろうと思った。 しかし…彼はそのどの表情もしなかった…少年は微笑んでいるのだ…… ただ平然ともの静かに微笑んでクロノを見ていた……… その表情には『光り輝くさわやかさ』さえある様にクロノには感じられた………。 少年はそのまま、さっと踵を返し何処へと消えた。 「クロノ君、大丈夫?」 「ああ…だがちょっと奇妙な奴だった…しかし、」 「二人とも…後ろの二人がちょっと面白い事を話してる…」 クロノの話を遮ってユーノが割り込んできた。二人はそのまま聞き耳を立てるが旨く聞こえない。 「念話で聞こえる様にするよ…」 「案外万能なんだな…」 「ユーノ君の一族遺跡発掘のプロだからね、言語、念話関連は凄く得意みたいだよ」 話の内容を漏らさぬ様に、急いだユーノのお陰ですぐに声が聞こえてきた。 「…ョルノの奴エンストして失敗したみたいだぞ」 「あいつ、半分日本人のくせして日本の旅行者をだまそうとするからバチが当たったんだ」 「もっとも、あの髪の色じゃあジョルノ・ジョバーナを日本人とわかる奴はいないがな…」 「いや…染めたんじゃないらしいぜ、黒い髪だったのがここ最近、急に金色になったらしいんだ、妙な体質だな…」 「本人はエジプトで死んだ父親の遺伝と言っている…」 「ジョバーナ…?」 クロノは胸元から写真を取りだした、黒髪の少年で、此方の組織と取引している条件…体組織の採取するべき少年だ。 「ジョルノ・ジョバーナ…汐華初流乃………初ルノ…シォハナ…」 「それ…さっきの人なのかな?」 なのはに言われて、先程の男の顔と当てはめてみる、確かに似てはいるが、まだクロノには今ひとつ確信が持てない。 「わからん…組織とコンタクトをとってより情報が手に入れば良いんだが…」 「クロノ、ところで君の荷物は…?」 言われて助手席に目をやるが、先程確かに自分で助手席に積んだ筈のスーツケースだが、それが今は影も形も無い。 「無い…だがさっきの奴は何も持っては……?」 よく見ると、助手席のところに何かへばりついている。粘性のボールの様な『それ』は更に内部に何かが入っている。 「これは…僕の荷物…なのか!?」 先程のクロノのスーツケースについていた名札『黒野』と言う文字が中に見える。 しかしそれは何度か鼓動を脈打ちながら別の物に変化…いや成長してゆく。 『それ』は呆気にとられているクロノの目の前で生物に変わってしまった。 『カエル』に 「魔法なのか…聞いた事もないぞこんな魔法はッ!!」 カエルはぴょいっとクロノの手にのっかる、ペトリとした粘性の手足の感触、重量、それは蛙に他ならない。 「生き物だ…変化魔法の類や幻術でもない…本物のカエルだ…」 「で、でも…最初はスーツケースみたいだったし、生き物だとしたらクロノ君の荷物は…?」 狼狽える二人を尻目に、カエルはクロノの手を飛び降り、そのまま排水溝から下水へと消えた…。 「…なのは、すまないが別行動だ僕はあいつを捜してみる、拠点の住所は覚えているだろう?そこに向かっていてくれ…なのはを頼むぞユーノ」 「はいはい」 「あまり無理しないでね…」 クロノはそのまま、市街へ向かって駆けだしていった。 「で、どうしようか、なのは」 「地図で見ると…少し歩くけどケーブルカーがあるみたい…そっちの方が良いかな」 二人は流石にこれからタクシーに乗る気は起きなかった。 ジョルノ・ジョバーナを探しに市街方面に向かったクロノだったが、その本人はまだ空港敷地内にいた。 滑走路の外れ、離陸する飛行機を眺めているジョルノ、待ち合わせしている様にもみえる。 相手はすぐに現れたようだ。先程のカエルが側の排水溝から、ジョルノの手の上に飛び乗った。 「よし…」 そのカエルは見る間に膨れあがり、先程のクロノのスーツケースへと戻った。 その場で中身を改めるジョルノ、だが容量の割に中身は少なく金になる物はせいぜい衣類か宿泊セット、目的のパスポートや財布は鞄の中ではなかったようだ。 「……やれやれ…無駄骨か…これだから無駄な事は嫌いなんだ、無駄無駄…」 前へ 目次へ 次へ
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炎と煙、そして構造物の破片を周囲に撒き散らしながら、魔神はビル内を破壊しつつ突き進んで行く。 進路上にあるものはことごとく薙ぎ倒され、凄まじい破壊から逃げようと右往左往する人間たち。 ビルの外壁を突き破ると、魔神はゆりかごから人型に変形しつつ、オフィス街へ着陸…というよりは 墜落する。 路上にある車・街路樹・街灯が、前転姿勢でゴロゴロ転がる魔神に潰され、弾き飛ばされ、人々が パニックに陥って逃げ惑う。 魔神はそのまま突き当たりにあるアール・ヌーヴォー様式のオフィスビルに激突し、瓦礫が上から 降りかかって来た。 石材や金属材の破片を振り払いながら立ち上がると、メガトロンは右手あるなのはの身体を顔の前に 持って来る。 意識不明の重体に陥っているのは、生命反応を確認するまでもない。 「ふん、やはり儂の相手はあいつにしか務まらんか」 そう呟くと、興味を失ったメガトロンは、なのはを無造作に放り捨てた。「なのはーっ!!」 なのはの身体が路面に叩き付けられる寸前、駆け付けたヴィータが抱き留めた。 ヴィータ自身もスタースクリームにやられたダメージで身体のあちこちは傷だらけだっだが、それには 構わずなのはに必死になって呼び掛ける。 「なのは! おい、しっかりしろ!」 いくら呼び掛けても何の反応も返って来ない状態に、ヴィータの呼びかけが途絶える。 力なくもたれるなのはを呆然と見つめるヴィータの脳裏に、ある光景が浮かび上がっていた。 純白の雪を染める夥しい量の鮮血。 背後から胸を貫かれるという、命に関わる重傷を負いながらも、なおもヴィータを気遣うなのは。 だが、あの時はなのはにもヴィータの呼び掛けに応えられる程度の意識がまだあった。 今は意識不明で身体が何箇所も複雑骨折や粉砕骨折している事、そのどれもが致命傷になりかねない 重大なダメージである事が、こうして抱えているだけでも判る。 胸が微かに上下しているのが分からなければ、死んでいると思っても不思議ではない。 ヴィータの眼に、深く青い怒りの炎が浮かび上がった。 なのはの身体を優しく横たえると、ヴィータは立ち去ろうとするメガトロンに振り向く。 「てめぇ…待ちやがれ!」 ヴィータには眼もくれず、メガトロンは悠然と歩を進める。 「待てっつってんだろ!」 そう叫んで鉄球を一個撃ち込むと、ようやくメガトロンは止まって振り向いた。 「何か用か? 人間」 メガトロンは面倒臭そうに言うが、それが余計ヴィータの怒りを煽る。 「許さねぇぞ! よくも…よくもなのはを…!」 怒りに燃えてグラーフアイゼンを構えるヴィータを、メガトロンは無関心に見遣るだけだった。 「止めておけ、貴様では儂には勝てん」 「うるせぇ!」 「無駄死にしたくなくばその人間を連れて立ち去れ。今ならまだ助かるかも知れんぞ」 そう言って背を向けたメガトロンに、激昂したヴィータが跳び上がってアイゼンを振りかぶる。 メガトロンはそれを軽く避けると、右腕のチェーンメイスを出して逆にヴィータを殴り飛ばす。 直撃を受けたヴィータは墜落しかかるが、何とか体勢を立て直して落ちるのを防ぐ。 なおも怒りを燃やしてメガトロンを睨み付けるヴィータに、メガトロンは凍り付くような冷たい 視線を浴びせながら言った。 「来い、試してやる」 グラーフアイゼンにカートリッジが立て続けに装填されるとギガントフォルムへと変形し、ヴィータ の足元にベルカ式魔方陣が展開される。 次いでアイゼンの槌部分の前にドリルが、尾部にはジェットエンジンの噴射口が現れる、ヴィータ の切り札“ツェアシュテールングスハンマー”だ。 噴射口から炎が噴き出ると、ヴィータの身体は独楽のように回転を始めた。 ヴィータは高速回転で勢いを付けて再度メガトロンへアイゼンを振りかぶる。 メガトロンが右腕を上げて防ぐと、腕を突き破らんとドリルが高速回転を始めて盛大に火花を巻き上げる。 「ぶち抜けぇーっ!」 必死の形相で叫ぶヴィータとは逆に、メガトロンは辟易したように首を振ると左腕をヴィータに向ける。 すると腕の中から砲が現れ、ヴィータ目掛けて立て続けに砲弾が発射される。 なのはが受けたフュージョンカノン程の威力ではないが、強力な砲弾の直撃を何発も受けたヴィータ は吹き飛ばされ、なのはのすぐ横に叩き付けられた。 「ぐっ…!」 ヴィータはうめき声をあげながら起き上がると、手元のアイゼンに眼を向ける。 すると、まるでそれを合図としたかのように、グラーフアイゼンの槌の部分全体にひびが走り、粉々に 砕け散ってしまう。 「ア…アイゼン!?」 ヴィータはそう一言口にしたきり絶句する。 グラーフアイゼンがあまりにも呆気なく壊れた事が切っ掛けで、ヴィータの中で荒れ狂っていた激情の 波が静まって行く。 ヴィータは呆然とした表情で、アイゼンを握っていた手から、生死の境をさまようなのはへ眼を向ける。 結果的に自分のデバイスに無理を強いてしまった事、なのはの救護を後回しにしてしまった事…これら の事実を否応なく自覚させられる。 それらに対する自責の念、メガトロンに対する憎悪、様々な感情がヴィータの中でまぜこぜになり、 自然と涙が溢れ出した。 「この儂に刃向かう事の恐ろしさを思い知ったか。だが、もう遅いぞ!」 その声に顔を上げると、メガトロンが二人を蟻の如く踏み潰そうと足を上げるのが見える。 「この愚か者めが、思い知れ!!」 ヴィータが反射的になのはに覆いかぶさった次の瞬間、轟音と共に巻き上がった土埃が辺り一面を包んだ。 目を開けると、ヴィータはなのはと自分が未だに潰されていない事に驚く。 何故自分たちが生き永らえているのか、疑問に思いながら周囲を見渡すと、メガトロンとは 全く別の、青みがかった銀色に四本の指が付いた機械の足の間に自分たちが居る事に気づく。 反射的に見上げると、メガトロンよりやや小柄ながら、それでも巨大な人型機械がそびえ立っている。 一瞬、新手の敵かとヴィータは警戒したが、それなら自分たちをかばう形で立つはずがないし、 メガトロンを見上げる青い光の目には邪悪さが感じられないのが分かった。 スチールブルーの装甲に包まれた機械の巨人。 ヴィータにはそれが、はやてから聞いたギリシア神話に登場する、天空を支える神アトラスを連想させた。 “アトラス”は、しばらくメガトロンと相対した後、天から響く雷鳴の如き重く響く、しかし父のような深い 威厳に満ちた静かな声で言う。 「メガトロン」 それに大してメガトロンも相手の名を呼んで返した。 「“コンボイ”か」 前へ 目次へ
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着古したパーカーを羽織った少女が走っている。 唐突に視界に飛び込んできたその光景にティアナは一瞬自分が夢を見ているのでは? と訝しがり、何処かで見たことのある少女の後姿と周囲の建物を見回してからようやく納得した。 ああ、夢だ。 フワフワと奇妙な浮遊感を感じる今のティアナの視点は、本当に浮いているかのように見下ろす位置にあった。 眼下を走る少女の背中を追うように、何もしないのに移動していく。 もう一度周囲を見回せば、視界を流れていく建物のどれもに見覚えがある。そしてそれらははっきりと確認出来るのに、空の天気や路地裏の奥に続く道はぼやけたように分からない。 当たり前だ、自分はそこまで細かい部分を『覚えていない』のだから。 ティアナはこれが『自分の過去の夢』だと理解し始めていた。 目の前を走る少女の背中。自分の背中を見たことはあまりないが、髪の色と二つに縛った髪型はよく覚えがある。 それは、丁度13歳ぐらいのティアナ自身の姿だった。 その<ティアナ>は一心不乱に走っていた。ただ、焦るのではなく、呼吸を一定のリズムに保って汗を搾り出すように。 魔導師になる為の基礎体力作りだ。朝と夜のランニングは訓練校に入る前の自分の日課だった。 やがて、走る先に古ぼけたアパートが見えてくる。 廃棄都市街に隣接するこの近辺は、都心からも離れて治安も悪い。 首都と比べれば信じられないほど汚い場所だが、決して裕福ではない家族の遺産だけで少女が暮らせる程度に安い家賃は数少ない魅力だった。 ―――本当は、寮制の魔法学校に入ることも考えていた。 死んだ兄が管理局員ということもあり、費用も多少は管理局の方が負担してくれる。そこで魔法を学ぶのも一つの道のはずだった。 だが、ティアナは此処を選んだ。 あの男が事務所を構える廃棄都市区に程近い、この場所に住むことを。 「……あっ」 走りながら、<ティアナ>が何かに気付いたように声を上げた。 過去の自分の視線を手繰りながら、そこに佇む人影を見て、ようやく思い当たる。 これは、きっとあの日の記憶だ―――。 「よお、精が出るな」 「―――ダンテ」 今の自分と過去の自分の呟きが重なった。 アパートの玄関の段差に腰掛けていたのは、ティアナの一番新しい記憶よりも幾分若いダンテだった。 今とは違う、特注品ではない市販の赤いコートを着て、片手にはワインボトルをぶら下げて過去の自分に笑いかけている。 その笑みを自分以外の者へ向けることに少しだけ苛立ちを覚える。これは記憶であり夢だというのに。 「ランニング始めたの、何年前からだっけ? 世間のダイエットにいそしむ奥様に見せたい姿だな。努力ってのはこうあるべきだ」 「体力つける為の運動なんだから、痩せたら逆に困るわよ」 「女版ロッキーって感じだな」 「ロッキーってなに?」 言葉を交わすどころか気付かれもしない自分を尻目に、過去の二人は気心の知れた者同士、軽口を交し合う。 汗だくで呼吸も乱れたままの<ティアナ>は、それでも言葉とは裏腹に嬉しそうに笑っている。 確かに、事務所でなかなか来ない仕事待っているか、物騒な場所を好んで出歩いているダンテが自分に会いに来るのは珍しい。 しかしはて、自分はこの時ここまで分かりやすい顔をしていたのか? 自分で自分を見ることなど出来ないが、無意識に自覚していたということだろうか。ティアナは一人、顔を赤くした。 「何か用?」 呼吸を整えながら、過去の自分は素っ気無く尋ねた。 そうだ、それくらいでいい。クールな調子がベストだ。主に過去を振り返る時の為に。 「まあ、座れよ」 愛想の無い反応に慣れきった様子で、ダンテは椅子代わりの段差をポンポンと叩いた。 「なんで? まだ外は冷えるわよ。汗もかいてるし……」 「なら、部屋に上げてくれるか? 散らかった部屋でお前がシャワーから上がるまで待っててもいいぜ」 「ち、散らかってない!」 ダンテの言葉に色々な種類の恥ずかしさを感じながら、怒りに任せて彼の隣へ腰を降ろす。 ああ、そうだ。今も昔も、こうやって自分は彼に敵わなかった。 「……で?」 「訓練校に入る為の試験が近いらしいな」 「世間話しに来たんなら帰って。その通り、最近いろいろ忙しくてあたしも暇じゃないから」 軽口の度を過ぎた剣呑な返事に、ティアナは過去の自分に対して舌打ちした。 自分自身の醜態とは、思い返すとこんなにも苛立つものなのか? ダンテが知らずナーバスになっている自分を気遣っているのだと、今の自分ならよく分かるというのに。 しかし、ティアナの記憶どおり、あの日のダンテはそんな自分の焦りを全部理解しているように穏やかだった。 「やれやれ、自分が背負い込んだもののことなると焦りが前に出るのはお前の悪いクセだぜ」 「別に、焦ってなんかないわ」 「そうかい? なら、クールにな。人生には余裕が必要だ」 「余裕なんて……」 「楽しめってことさ、人生をな」 そう言って笑う彼は、一体何度愚かな一歩を踏み込もうとした自分を押し留めてくれただろうか。 兄の死と、その魂に受けた屈辱を胸に刻んでから幾度も焦りは襲ってきた。 この胸に抱いた誓いを果たす為に必要なものはたくさんあるのに、凡人の自分ではどれも遠く手が届かない。 少しずつ積み重ねてきて、だけど不安はいつも燻っていて―――それが爆発しそうになった時、新しい考え方を教えてくれたのはいつもダンテだった。 一人で学んでいたらきっと知らなかった大切なことを、彼は自分に教えてくれていた。 「ティア、お前今日が自分の誕生日だって覚えてるか?」 「え……あっ!?」 「やっぱり忘れてたな。それが余裕が無いって言うんだよ」 ダンテが呆れたように肩を竦める。 あの時は驚いた。確かに自分の誕生日さえ忘れるほど日々に余裕の無い自分に代わって、そういうのには無頓着そうな彼が言い出したのだ。 過去の自分が困惑する様が、その心情も交えてよく理解出来る。 「で、でも……ダンテにあたしの誕生日なんて教えてないし……」 「戸籍関係の書類を管理してるレナードが偶然話振らなかったら、俺も今日の今日まで知らなかったぜ。お前な、スリーサイズじゃないんだからそれくらい教えろよ」 「でも、教えたところで誕生日パーティー開いてくれるようなガラじゃないでしょ?」 「確かに、ガラじゃないな。だが、無視するほど他人でもないだろ? 俺とお前は」 「あ……ぅ。ごめん……」 ダンテはストレートな好意の表現を嫌っていた。自分と同じで、恥ずかしいのだ。 だがそれでも、親しい人間への配慮を怠るようなことはしなかった。 彼も、子供の頃に家族を亡くしている。 だから気持ちはなんとなく分かる。 だから、彼が自分に親愛を向けてくれる時はいつも恥ずかしさと胸に迫る熱い感情で苦しくなるのだ。今の目の前の自分のように。 「まったく、本当にギリギリ今日知ったばかりだからな、プレゼントの一つも用意してないぜ?」 「……いいわよ、リボンつけた箱片手に来られた方がビックリするわ」 「確かに、そいつも俺のガラじゃないな」 そう言って笑い合う二人に、今度こそわだかまりはない。 試験を前にした焦りも消えていた。 「ねえ、ところでさっきから気になってたんだけど、その瓶は何?」 「これか? さすがに手ぶらで来るのもなんだったからな、レナードからくすねて来た。それなりの高級品らしぜ」 笑いながらダンテはワインのコルクを抉じ開けた。 それから、コートの裏から魔法のようにコップを取り出し、そこへ中身を注ぐ。 「飲むか、ティア。ケーキじゃないが、お前特別甘い物が好きってわけでもなかったろ?」 「未成年者……って言っても、聞かないわよね?」 「背伸びしたがるお嬢さんに大人の味を、さ。体も少しは暖まる」 差し出された安物だが頑丈で無骨なコップを、宝物のようにそっと受け取った。 琥珀のように美しい中身とそれが放つ芳醇な香り―――だが、それよりもずっと素晴らしくて暖かいものが手の中に在るような気がした。 「乾杯は、何にするの?」 「ティアナ=ランスターの誕生に」 「むず痒いからやめて」 「なら、試験の合格に……栄えある執務官への第一歩に」 「それならいいわ」 瓶とコップが小さくぶつかる音が聞こえる。 これは夢だ。でも、そんな小さな音まで鮮明に覚えている。 あの時二人で飲んだ、ほろ苦い味と喉を通っていった冷たい熱の感触も―――。 そして数ヵ月後、独学というハンデを乗り越え、自分は訓練校の試験に問題なく合格した。 背負ったものは今も変わっていない。その重みも。 だけど進んできた道、刻んできた時間の中、今の自分となるまでの間で手にしたものは幾つもあって―――。 自分は確かに、成長している。 その実感もある。 だが―――。 あの時、自分を鍛えることに苦痛などなかった。 あの時、誓いを果たすことに焦りなどなかった。 ―――今は、どうなのだろうか? 魔法少女リリカルなのはStylish 第十一話『Omen』 「おはようございます、ボス。頼まれたもの買って来ま……うわ」 我らが機動六課の偉大なる部隊長のオフィスへと足を踏み入れたグリフィスは目の前の光景に驚愕した。 むしろ呆気に取られたといった方が正しいかもしれない。一言で表すならまさに『うわ』であった。 「ん~、おはよーさん。ちょぉ、見苦しいけど堪忍してなー」 死人が出せる声があるとしたらきっとそれだろう覇気の無いはやての返事が返ってくる。 はやてはリクライニングチェアーに深々と背を預け、白タイツに包まれた美脚をデスクに乗せて惜しげもなく晒していた。 スーツは上着を脱ぎ捨て、シャツの胸元を僅かに開いている。 半分瞼の下りた眼でグリフィスを流し見る仕草も相まって、それは饒舌し難い色気のある姿―――。 ただ一つ、その眼が完全に死んでいるということを除いて。 「ひょっとして、寝てないんですか?」 「あー、分かる?」 「すごい隈です。っていうか、むしろ濁ってます」 その原因がただの寝不足だけなく、眼を酷使したせいであるとグリフィスは察することが出来た。 デスクに幾つも表示されたディスプレイと、そこに羅列される文字の山がその証拠だ。 「ちょっと調べ物しててなぁ」 手元の情報記録用ボードをデスクに投げ出し、デカイ欠伸をしながら足をボリボリと掻く。 世界の美術品をタワシで磨くかの如き蛮行。色気など欠片も存在しない。 今のはやては女としても死んでいた。 「……お願いしますから、他の職員の前でそういうことするのやめてくださいね」 グリフィスは割と切実にお願いした。 出来れば自分の前でもやめてもらいたい。幻滅とかイメージ崩壊とか以前に、何か本気で泣きたくなるから。 彼があまりに悲壮な表情をしていたからか、はやては眼を擦りながら足を下ろして苦笑した。 「いやー、ごめんごめん。グリフィス君にはちょぉ刺激的な格好やったね」 「別の意味で、ですね。 部隊長が過労で倒れたら洒落になりませんよ。無理しないで下さい。資料が必要なら、言ってくだされば整理して提出します」 「うん、でもこればかりは具体的に命令できんことやからな」 椅子から立ち、グッと背伸びをしてポキポキ骨を鳴らしながらはやてが言った。 グリフィスはデスクの方へ回り込み、表示されているディスプレイの文章に視線を落とす。 「……これは、例の襲撃事件のファイルですか?」 複数の画面に表示されていたものは、数年前から発生し始め、奇妙な関連性から<謎の襲撃事件>として一纏めにされている事件の報告書や情報だった。 管理局内でも不穏な噂となり、そして機動六課にとってはもはや他人事ではない。 先日のリニアレールの暴走事故で遭遇したアンノウンとその戦闘―――これらも謎の襲撃事件と関連付けられたのだった。 「やはり、襲撃者に共通点が?」 「車両を乗っ取った蟲の方は初めて確認されたタイプみたいやけどね、上空に出現した<死神>の方は複数の目撃例があるみたいや」 「目撃例って……ひょっとして、これまでの事件のファイル全部に眼を通そうとしてたんですか!?」 「流し読みやけどなー。約7年分やけど、遡るほど事件の頻度は下がっとるし……」 「だから! 無意味な無理はやめて下さい、そんなこと個人でやるものじゃないですよ! 命令してくれれば……!」 「それが、そうもいかんのよ」 はやては言葉を交わしながらオフィス備え付けの洗面所に向かい、蛇口を捻った。 冷水を叩きつけるようにして顔を洗えば、朦朧としていた意識も多少戻ってくる。 「……私らも体験した襲撃事件。感想はどうや?」 「感想、とは?」 「現実感が無い―――そうは思わんか?」 タオルで顔を拭いた後、再び交えたはやての視線は鋭く、そこには時折グリフィスを緊張させる上司としての迫力が混じっていた。 「六課の全員が襲撃の状況をリアルタイムで把握しとるし、細部は無理でもシャマルの観測魔法が捉えた記録は残っとる。交戦したフォワードの報告もある」 「……はい」 「記録も記憶もある―――なのに物的な形跡だけが何も残っていない。それがこの事件全体を虚ろにしてる原因やと、私は思う」 グリフィスは、内心の懸念を指摘されたような気分だった。 事件の現場となった車両内に残っていたのは破壊の跡のみ。 敵の痕跡は肉片や血痕一つ無く、あの時シャマルによって直接モニターされていなければ、司令室の人間は全員が疑っていただろう。 ―――本当に敵は存在し、襲って来たのか? はっきりとその姿を確認した後でも確信を保っていられない。 怪物。悪魔。そんな比喩しか当て嵌まらないような常識を超えた存在との遭遇はあまりに非現実的だった。 あの時感じた恐怖は確かに覚えているのに、それが夜中に背後で感じた気配や誰もいない暗闇の中に潜む者を幻視した時のように、錯覚だと自分を納得させてしまいそうになる。 得体の知れない恐怖を、『在り得ないものなのだ』と自分に思い込ませる。 「陳腐な話やと思わんか? まるで心霊事件や。 今回の事件を含む全ての襲撃事件を調べてて感じた共通点やが、どれもこれも未解決で、中では被害者も出てるのにその事件性すら疑っとるものもある。 『何も分からない』という共通点―――いや、誰も分かろうとせん。状況報告や映像記録だけで、読んでる私にも具体的なイメージや現実感が全く感じられへんのや」 「具体的な命令が出来ないというのは、そういうことでしたか」 「怪しいと言えば、どの事件も怪しい内容ばっかりなんやけどなぁ……。 霞を掴むみたいに、どれもこれも要領を得ん。直接目を通せば現場の直感で何か閃くと思うたけど、駄目、さっぱり。答えどころか問題さえハッキリせんクイズや」 事務処理だけの局員には無い、実戦や事件を体験した者だけが持つ勘の働きを期待したはやてだったが、夜通しの努力も無駄に終わったらしかった。 再び椅子に腰を下ろし、もう一度大あくびをするはやてを労うように、グリフィスは手に持っていた栄養ドリンクを差し出した。 はやてに頼まれた物で、彼女の地元世界ならば『ユン○ル』とか『リポ○タン』に相当する市販のドリンクだ。 「レリックとは別に、今回の襲撃事件の報告は全て上に回しているはずですが。痕跡が無いとはいえ、数年も続いている事件ですし」 「ん……んぐっ。一応、担当してる執務官がいるみたいやけどな、成果は見ての通り上がっとらん。 今回の事件も、記録を見る限り一番大規模なものみたいやけど得られた情報はやっぱりどれも不十分や。進展は期待できそうにないなぁ……げふ」 「事態は思った以上に深刻なのかもしれませんね。ゲップしないでください」 「このドリンク、ウマー」 栄養ドリンクを美味そうに飲み干すはやてに、もはや彼女の女としての醜態に慣れたグリフィスが冷静に突っ込んだ。 「まあ、何にせよ私らの手が伸ばせる範囲はここまでや。<悪魔>の正体を探るのは機動六課のお仕事やあらへん」 「そうですね。とりあえず、今回は無事に乗り切れた事です」 「次があった場合、無事に乗り切れる確信はないけどな」 そう言って笑うはやての表情は、自分自身を戒めるような厳しさを含んでいた。 思わず、グリフィスは口を噤む。 「何も改善出来とらん。結局、次があっても現場の人間が対処するしかないわけや。……上の無能やな」 それが、顔も知らない事件担当の執務官に対するものではなく、部隊長である自分自身に向けている嘲りであることは明白だった。 「<ここ>が今の私の戦場やというのに、何の戦果も上げられんわけや」 「……実戦のように、結果がすぐに出る戦いではありませんよ」 「それまでは、この焦りと無力感とも戦わなあかん。上司いうんは、キツイもんやな……」 実戦で、無力の代償は分かりやすく現れる。敗北や痛み。だが、上司の無力は何の罪も無い部下達に降りかかる。 八神はやてにとって自分を犠牲にすることは単なる苦しみでしかないが、他人の犠牲を背負うことは耐え難い罪悪感を伴うものだった。 はやてには、すでに背負った罪がある。 この仕事を選んだ理由に、それを償うことが含まれているのは否定出来ない。 自ら戦火に飛び込み、戦えばどれだけ楽だろう。 痛みは罪悪感を紛らせてくれる。傷は償いを証明してくれる。 人の上に立ち、誰かに命ずる度に後ろめたさが、その結果に犠牲が出れば耐え難い後悔が襲ってくるのだ。 「―――でも、これも自分で選んだ戦い方か。ごめんな、グリフィス君。愚痴ってしもうて」 「いえ。貴女の負担を軽くすることが、自分の任務です」 「あ、それカッコええ台詞やな。女やったらコロッといってしまうで」 「本心ですよ?」 「わかっとるよ。だから、グリフィス君はいい男や」 控え目に笑い合うはやてとグリフィスと間には、先ほどとは違い穏やかな空気が漂っている。 男女を越えた奇妙な信頼関係が二人にはあった。 「さあて、ひとっ風呂浴びてスッキリしてこうかな!」 胸に燻っていたネガティブな思考と、頭に残る懸念を振り払うようにはやては立ち上がる。 「今日は外回りがありますからね。陸上警備隊のナカジマ三佐との会合の予定です」 「ああ、あの人気前いいからなぁ。上手くすれば、お昼ゴチになれるな!」 「六課設立でもいろいろお世話になってるんですから、くれぐれも浅ましい真似はしないでくださいね」 「何言うとんねん。いい女は男に貢がせるもんやで?」 「分かりましたから、せめてちゃんとした格好していってくださいよ」 「訂正。グリフィス君は『いいお母さん』やね」 全く悪びれずに、未だ開いたままだったシャツの胸元を閉める。 指摘したグリフィスの方が頬を赤らめていた。どれだけズボラでもはやては若い女性、しかも美しい。 気まずげに視線を彷徨わせていたグリフィスは、デスクに表示されていたままだったモニターをもう一度見る。 改めて事件のファイルを眺め、グリフィスは一つのことに気付いた。 「この事件、首謀者が……」 「ん? ―――ああ、それな。決定的な共通点でもないけど、目に付いたからな」 謎の襲撃事件―――それらは大半、管理局の部隊が何らかの事件の捜査や戦闘中に遭遇するケースものだった。 そしてモニターに表示されていた事件は、いずれも容疑者や確定した首謀者が共通するものだった。 もちろん、それらは全ての襲撃事件の中の一部分に過ぎず、襲撃事件との関連性は全く証明できない。 しかし、共通点であることに間違いはなく、何よりもそれらの条件を抜きにしても目に付く大物の犯罪者だった。 「<ジェイル=スカリエッティ>―――ロストロギア関連を含む数多くの事件で広域指名手配されている次元犯罪者や」 後日、機動六課の初任務となった事件にもその人物が関わっていることを、はやてはフェイトから知らされる。 その時彼女は、確証も無く、ただ運命的な予感を感じずにはいられなかった。 数年の歳月をかけて時空管理局を静かに蝕んでいた謎の襲撃事件―――。 その渦中に機動六課が巻き込まれていくことを、この時は誰もが予想すらしていなかったのだった。 「はーい! じゃあ、夜の訓練オシマイ!」 教導官の言葉と共に、半日以上続いた訓練はようやく終了した。 すでに日は完全に落ちている。 なのはの終了宣言で許しを得たスバル達はへたり込む。訓練漬けの日々が続いているが、その日の終わりには皆例外なく体力を使い果たしていた。 ティアナも自分がリーダー役でなければ腰を降ろしたい気分だった。 しかし、堪える。人を動かす立場にある者が下の者に弱みを見せるべきではない。そう信じていた。 「疲れてるだろうが風呂には絶対入れ。しっかり疲れを取って、明日に備えろ。熟睡するのも訓練だと思えよ」 個別教導に入ってから訓練に合流するようになったヴィータの言葉に全員が若干覇気の抜けた返事をする。 口調こそ厳しいが、ヴィータの忠告には新人達を案じる気持ちが多分に含まれていた。 「それじゃあ、今日は解散。―――あ、ティアナはちょっと残ってね」 「え……?」 「ティア?」 「ティアナさん?」 いつも通り自室へ帰ろうとしたスバル達三人は、その言葉に思わず緊張を走らせた。 なのはの声は怒気など含んでいない気軽なものだったが、訓練の後に一人居残らせることに根拠の無い不安を感じる。 個別教導に移って以来、訓練の最中で他の仲間の様子が分からなくなることはどうしてもある。 知らない所で、ティアナが何か失敗をしてしまったのだろうか? 全員がそんな嫌な予感を漠然と感じていた。特に、相棒のスバルの心配は殊更強い。 「―――分かりました。皆、先行ってて」 しかし、当人だけは普段通り、憎らしいくらい冷静に頷くだけだった。 最初の出撃以来、ティアナの様子が少しおかしいという懸念を頭の片隅に残しているスバルが、縋るように手を掴む。 「ティア、大丈夫?」 「何が?」 「だってさ……」 「いや、なんでそんなに不安そうなのよ? あたしが怒られるのは決定なわけ?」 心底不思議で、むしろスバルの勝手な思い込みに不機嫌な表情を浮かべるティアナの言葉に、なのはの方が苦笑を浮かべた。 「そんなに深刻は話じゃないよ。ティアナにちょっと意見を聞きたかっただけだから」 「だそうよ。っていうか、エリオもキャロも釣られて不安そうな顔するんじゃない」 「ご、ごめんなさい!」 「すみません……」 恐縮するキャロとエリオの背を押し、まだ不安そうな顔をするスバルを連れて行くように促すと、ようやくティアナはなのはに向かい合うことが出来た。 三人の姿が遠のき、傍らのヴィータが黙っていることを確認して、なのはが口を開く。 「―――ティアナは、今回残された理由が分かってるかな?」 「はい」 責める口調ではない。ただ純粋に尋ねるなのはに対して、ティアナは淀みなく答えた。 「今回の訓練の主旨に背いていたからです」 「今回、メインに行った訓練の主旨は?」 「足を止めての精密射撃による迎撃と制圧です。敵の攻撃に対して回避を控え、予測と先攻によって無駄の無い反撃を行うことです」 「うん、正解。完璧だね」 なのはは生徒の解答を褒めるように満面の笑みで頷き、その朗らかな雰囲気を保ったまま尋ねた。 「それじゃあ、そこまで理解しながら訓練の主旨を実行しなかった理由は?」 「意味が無いからです」 「おいっ!」 簡潔なティアナの返答に、なのはよりもヴィータの方が怒りを露わにした。 表情にこそ表れていないが、ティアナの上官に対する応答は不遜そのものだ。オブラートに包まない率直なティアナの言動が完全にマイナスに出ていた。 しかし、身を乗り出すヴィータを優しげな表情のままのなのはが制する。 「その結論に至った理由、聞かせてもらえる?」 普段通りの敬意を失っていないティアナの真剣な眼差しと、苛立ちや怒りなど欠片も見えないなのはの穏やかな視線。 傍で見ているヴィータには、二人の心境がいずれも全く分からなかった。 「高町教導官の想定する訓練の主旨と、自分の戦闘スタイルが異なっていたからです。 自分は射撃型の魔導師ですが、立ち位置を固めての精密射撃型ではありません。移動、回避を行いながら射撃を行うスキルを持った変則的な機動射撃型です」 客観的に自身の能力を解析したティアナの言葉は普段以上に公私の壁を感じさせる。 もちろん、管理局員として必要な分別ではあるが、なのははそこに拒絶にも近い強さを感じずにはいられなかった。 「静止状態での射撃能力の向上は理解できますが、この場合運動性を殺すデメリットの方が大きいと判断しました。 自分は、動いて撃つタイプです。それが長所であると理解しています。よって、今回の訓練には意味を感じられません」 「……うん、なるほど。いいね、自分の戦い方を正確に把握してる。凄いことだよ」 はっきりと断言するティアナの強硬な姿勢に、しかしなのはは反発することもなくあっさりと受け入れた。 「でも、どんな訓練にだって意味はあるんだから、今度からはしっかり従ってね。試しにやってみて損は無いと思うよ?」 「……」 「それじゃあ、わたしからの話はここまで。もう行って良いよ。ゆっくり休んで、明日も頑張ろうね」 「…………高町教導官」 初めて、ティアナの声に感情が滲み出た。 それは苛立ちだった。 自分の態度に叱りもせず、ニコニコと笑顔のまま話を終わらせようとするなのはに、ティアナはその時初めて苛立ちと不満を感じていた。 「それだけ、ですか?」 なのはの考えがティアナには理解できなかった。 傍らでこちらを睨んでいるヴィータの方が、よほど分かりやすい。 教導に逆らっているのだから、叱られても仕方ないと思っていた。 自分の戦闘スタイルを正確に理解して、それでもなおこの訓練を行うのなら、その理由を教えて欲しかった。 新人の身で生意気にも意見する自分に怒りを感じ、訓練で叩いて欲しかった。 しかし、なのはの返した反応はあまりにも緩い。 「あたしの戦い方を理解しているなら、訓練を改善してください」 「うん、長所は伸ばしていこうと思ってるよ。でも、とりあえず今は回り道してみよう?」 「意味が、分かりません……っ」 「説明すれば頭では理解できるかもしれないけど、心はなかなか変えられないからね。今は黙って従ってみて」 「理由を説明してください!」 暖簾に腕押しななのはの態度に、ティアナはとうとう声を荒げていた。 苛立ちは募っているが、頭は回っている。自分は冷静だ。 なのに、自分の理屈に理屈で答えてくれない。こんなの無駄だ。無駄は嫌いだ。嫌いだ。 「―――ティアナ、焦ってるから」 冷水を頭からかぶせるような言葉を、なのはは告げていた。 「……何、を」 「ティアナは今、焦ってる。何故かは分からないけど、強くなることに急いでる」 「……先日の出撃で痛感したからです。いつ実戦に参加するか分かりません。強くなることを急ぐのはいけないことですか?」 「ううん、貪欲になることはいいことだよ。でも、強くなることは自分を追い詰めることじゃないと思うから」 「分かりません」 ティアナにはなのはの言っていることが本当に理解出来なかった。 彼女の言っていることに矛盾さえ感じていた。 力を求めること。強くなること。複雑なことなどない、シンプルな欲求だ。 そこに疑問を挟む余地など無いはずだった。 故に、ティアナにはなのはの言葉の意味が理解出来ない。 「分かり、ません……」 いつの間にか苛立ちは消え、奇妙な虚しさが胸を支配していた。 なのはに対するわずかな失望感もそれに含まれている。 「うん、だから結果でティアナに教えてあげる。今は、わたしを信じて」 「……はい」 その返答が、納得や理解などではなく、諦めによるものだと半ば理解していたが、なのはがそれ以上言及することはなかった。 言葉だけで全てを伝えることは難しい。 また余計な懸念をティアナが感じないよう、表情にこそ出さなかったが、なのはの心は歯痒さで満ちていた。 「それじゃあ、また明日。訓練で」 「はい」 「ティアナ。信じてね、わたしを」 「……はい」 心なし、肩を落としたティアナの背を見送りながら、なのはは自分の拳を知らず握り締めていた。 彼女が自分を信じているかどうか―――そんなこと、これまでの付き合いで分かっていることなのに。 どうすれば分かってもらえるのか。どうすれば心を通わせることが出来るのか。いや、そもそも自分はいつからこうして考えながら人と付き合うようになったのか。 子供の頃、他人を向き合う時はいつも心でぶつかっていた。 アリサやフェイト、それにヴィータ。最初は壁のあった人達と、いつだってぶつかり合うことで分かり合ってきた。 そこに迷いなど無く、恐れなど無く―――ただ信じていた。 なのに今は、ティアナに対して正しいとか間違ってるとか、自分の判断を選んで迷っている。 それが大人になった証で、短絡的だった自分の成長で、そして失くしてしまった子供の頃の力だった。 人は変わらずにはいられない。根本はそのままでも、それらを囲う世界や心は変化していく。 あの激動の子供時代から10年、なのはは自分の重ねた歳月を噛み締めていた。 「……のは。おい、なのは!」 「え!? な……何、ヴィータちゃん?」 思考に没頭していたなのはは、ヴィータの怒鳴り声にようやく我に返った。 すでにティアナの姿が見えなくなった方向へ彷徨わせていた視線を、傍らの彼女へ移す。 「ボーっとしてんじゃねーよ。気にしてんのか? ティアナの言ったこと」 「ああ、うん。もっと上手く説明してあげればよかったかな、って」 「何言ってんだ、あんなクソ生意気な口利かれたんだから一発かましてやれよ。っつか、もっと厳しくいってもいいと思うぞ」 感情的なヴィータの物言いに、なのはは苦笑した。 ティアナの言い分が正しいことはヴィータも理解している。ただ、それを抜きにして態度に純粋な怒りを感じていた。 ヴィータの考え方はいつだってシンプルだ。 思慮が浅いわけではなく、ただ自分の感じたことを隠そうとしない。 その率直さが欠点であり、同時に余りあるくらいの美点であることをなのは知っている。 「……ヴィータちゃんがティアナを教えた方がいいのかも」 「おいおい、オメー何弱気になってんだ? しっかりしろよ」 冗談とも取れないなのはの発言に、ヴィータが本気で顔を顰める。 「らしくねーぞ。まさか、本当にティアナのこと持て余してんのか?」 「ううん、ティアナのことはよく分かってるよ。 ティアナは確かに戦闘力は高いけど、自分でも言ってる通り『動く戦い方』だからね、どうしても周りへの視野が狭くなってるんだ。 あの娘は自分で戦って勝つことを第一に考えてる。フォワードとしては間違った考えじゃないんだけど、指示を出す現場リーダーとしては、一歩下がった視点も持って欲しい」 「だったら、今言った内容そのまま話してやれよ。アイツ、頭いいから理解できると思うぜ?」 ヴィータは断言する。ティアナへの苛立ちを露わにしながらも、彼女を認めていることは確かだった。 しかし、なのはは首を振った。 「さっきも言った通り、ティアナは自分で戦うやり方に納得してる。それが今の強さに繋がってるんだ。 説明をしても理解するのは頭だけ、あくまで『わたしが頼んだやり方』として受け入れるだけだよ。きっと、戦う上での優先順位は下のままだ」 今回の訓練データを整理する片手間で、独白するようになのはは自分の考えを吐露した。 「今のままじゃ、ティアナは自分から突っ込んでいく戦い方をやめられない」 「昔のなのはみてぇに、か……」 「わたしと違う点は、ティアナはその無茶がもたらす結果を分かってるってことかな。それを納得した上で、やめない」 「性質わりーな。頭の良さが裏目に出てやがる」 「ティアナが命を賭けることを、その覚悟を、止める方法は思いつかない……。ただ、気付くのを待つしかないよ」 ―――生きることは、一人で始まり、一人で終わるものではないということを。 自分の命を蔑ろにすることが、どれほど親しい者達に悲しみを与えるのかを。 理解して欲しい。強制は出来ないが、強く願う。 ティアナを想う人間の一人として、自分も含めて。 「……正直、迷ってもいるんだ。 ティアナは強くなりたい。究極的に、あの娘が求めるものはそれだけなんだから、別におかしなことじゃないかなって」 「鍛えるだけが、教導官じゃねえだろ。正しく導いてやるのが仕事だ」 「でも、ティアナはわたしが思うよりずっと冷静だし、頭が良いよ。間違ってるのは、わたしなのかも」 「……」 「ティアナに会って、自分の未熟さを改めて実感したよ。わたしは、自分に好意を持たれた関係に、慣れすぎてたんだね」 「なのは……」 「難しい、ね」 悲しげに笑うなのはの顔を、ヴィータは久しぶりに見た。 エース・オブ・エースと讃えられ、エリートと持ち上げられる少女が、強者の仮面を外して自分に見せることを許した弱みがこれだ。 それを僅かに嬉しく思い、気の利いた言葉も掛けてやれない情けなさを強く思う。 (スバル、エリオ、キャロ……それにティアナ。お前ら、自分がどれだけ幸せか、早く分かれよ) 夜空の下、ヴィータは切に願った。 (自分達が好き勝手に戦っている時にも、なのはに守られてるっていう幸せを―――) それぞれに戦う理由があると思う。たった一つの命、賭ける時はそれぞれの自由だ。 その上で、行く末を案じることは押し着せがましいのかもしれない。 でも、理解して欲しい。 家族でも友人でもなく、赤の他人として出会い、部下として扱う者を相手に、心底親身になろうとするこのお人好しの想いを。 ただそれだけは、汚れない本気の想いを―――。 (迷わず進めよ、なのは。お前のことは、あたしが守ってやる) いつの間にか見上げるようになった、それでも芯はきっと変わっていない背中を見つめ、鉄槌の騎士は自らの尊い誓いをたった一人の少女へ捧げた。 その日の夜、ティアナは寝付くことが出来なかった。 なのはの言葉が、いつまでも頭に残って離れない。 かつて、強くなることに苦痛は無く、焦りは無く―――でも今は? 「……スバル、起きてる?」 「うん、何?」 囁くような小声だったが、二段ベッドの上からはすぐに返事が返ってきた。 暗くなった部屋の闇にも目が慣れ始めるくらいの時間は経っていた。 普段のスバルならとっくに爆睡している時間だ。寝惚けた声でもない。 ティアナは少しだけ驚いていた。 「あのさ、あたし……変かな?」 普段なら、きっとこんな弱みは見せない。こんな縋るような声は出さない。 だから、やはり今の自分は変なのだと、ティアナは奇妙な実感をしていた。 「あたし、焦ってるかな……?」 ティアナの漠然とした問いに、スバルはしばらく沈黙を保っていた。 その沈黙の間に、途端に後悔と恥ずかしさが込み上げてくる。普段あれだけ偉そうなことを言っている自分が、一体何を弱気になってるんだ? 少なくとも、このヘッポコな相棒に見せるべき弱さではなかった。 ティアナはスバルが何かを答える前に慌てて前言撤回しようと口を開き―――。 「うん、最近のティアはちょっと変かな」 はっきりと告げられたスバルの言葉に、思わず口を噤んだ。 「ティアが<悪魔>って呼んでた敵。アイツらと戦ってる時から、何かおかしいって感じてたよ。 焦ってる、とかは気付かなかったけど、様子がおかしいのは思ってた。何に焦ってるのかは分からないけど、でも……アイツらが原因なんだよね?」 「……まあね」 「聞かないよ。なんか、教えてくれないと思うし」 「…………そうね」 ティアナがそう答えてから、少しだけ間が空いた。 予想していたとはいえ、ティアナの返答に少しだけショックを受けたのか。それとも。 スバルが何を考えているかは分からない。 「……わたしよりずっと頭が良いティアの悩みなんて、きっとわたしには解決できない」 普段と比べて驚くほど感情の抜けた、静かな声だった。 「だから、待ってる」 何を? 尋ねる代わりに、ティアナは視線だけを上に向けた。 「ティアが心配してること。それが上手くいっても、失敗しても、全部終わるまで、わたしは待ってるから」 「……スバル」 「何か間違って、失敗しても、いいじゃん。全部終わったらさ、あとはもう一回始めるだけなんだから。やり直せるよ、幾らでも」 ティアナは疑問に思わずにはいられなかった。 いつもあれだけガキっぽい奴なのに、なんでこんなに泣きそうなくらい穏やかで優しい声を出すんだろう? 「わたしがいっぱい失敗した時、いつもティアが助けてくれたからさ。だから、一度くらいわたしの方が助ける」 「……」 「ティアは、迷わず進めばいいよ。わたしが支える。二人でなら、大丈夫」 「……うん、ありがとう」 「いえいえ」 ティアナはかろうじて声を絞り出すことが出来た。 スバルの気遣いに、胸から込み上げてくる熱い感情が頭まで昇って溢れそうだった。 それが眼から涙になって流れそうになるのを必死に堪える。代わりに、口元に浮かぶ笑みは消せない。 スバルには見えないのにそれが恥ずかしくて、枕に顔を埋めた。 かつて、強くなることに苦痛は無く、焦りは無く―――今は? 大丈夫。 二人なら、きっと大丈夫。 その夜。 街灯と走り抜ける車のヘッドライトが照らす街の暗闇を、歩く影が二つ。 ―――いや、三つ。 いずれもフードの付いた外套を深く被り、この夜の闇の中へ更に紛れて人目を避けるよう密やかに歩く。 人のあまり出歩かない深夜。道路を駆け抜けてく車のドライバー達も、三つの影とすれ違い、そして誰も気付かない。 気付いた傍から、頭に留めず、忘れていく。 在り得ないはずのものを、錯覚だと思い込むことが普通であるように。 死人が歩くことなど在り得ない。 親を失った子供など忘れてしまう。 そして、<悪魔>の存在など信じない。 大柄な<男>一人。 幼い<少女>一人。 美しい<女>一人。 影が三つ、夜の街を彷徨うように歩き、消える。 三人の歩みが、一つの事態の前兆であることは確かだった。 クラシックな屋敷の片隅に置くだけで結構なアンティークになる骨董品のジュークボックスからは、現役を主張するようにメランコリックな歌声が流れていた。 それはこの<Devil May Cry>―――悪魔も泣き出す男ダンテの事務所に相応しくない静かな歌だった。 「女々しい歌だぜ……」 お気に入りのデスクが崩壊してしまったので、中古品に買い換えたソファーで寝転がっているダンテもぼやかずにはいられない。 <ドクター>の襲撃を受けて半壊した事務所の中で、奇跡的に息を吹き返したジュークボックスは、しかしアレ以降何故か静かで物悲しげな曲しか流れなくなったのだ。 中のディスクを交換する機構がイカレたのか、どれだけいじっても似たような曲しか流れない。 かくして、ロックをこよなく愛する悪魔狩人の住処は中高年が足げなく通うジャズバーのような穏やかさへと変貌してしまったのだった。 「クソッ、いい加減自殺しちまいそうな歌声だ。何言ってるかも分からねえ」 「死んだ恋人を惜しむ悲しい女の歌さ。知らねぇのか? 古いが、レア物の歌だぜ」 唐突に返ってきた答えに、ダンテは顔にかぶせていた雑誌を除けた。 玄関には見慣れたビア樽腹が立っている。 「あいにく<こっちの世界>の流行には疎くてね。ノックしろよ、レナード」 「ドアがあればな」 ダァム、と悪態を吐くと、ダンテはもう一度雑誌を顔に被せて不貞寝を決め込もうと躍起になった。 ここ一週間程、この店はいつになくオープンだ。そのままの意味で。 爆風で吹き飛んだ全ての窓は、応急処置として透明なビニールで塞いであるが、両開きのドアがあった玄関だけは手のつけようがなかった。 おまけに、ほとんど全滅した家具と板切れで塞いだ床の穴のせいで、さながら廃屋のような様相と化している。 ジュークボックスとソファー、それに床に転がした電話だけが生活臭を放っていた。 「いつまでこのボロ屋に住むつもりだ?」 「オイ、俺の店をボロ屋扱いするんじゃねえ」 「『元』だな。あるいは『店の跡』だ。直す目処は立っちゃいないんだろ?」 「寝室とシャワーと電話を直したら金が底を着いたんだよ」 「その後で骨董品の修理代とコートのスペア買ってちゃあな、自業自得だ」 「うるせえ」 バカにした笑みを隠そうともしないレナードの顔を、不愉快そうに本で遮り、ダンテは唸った。 結局直らなかった上に、予想以上の料金が掛かったジュークボックスの音楽が憐れむように流れる。 なんとも惨めな事態に陥ってしまったが、先立つものが無くてはどうしようもない。 この状況を作り出した犯人に対する怒りを沸々と沸き立たせながら、同時に何とも虚しい気持ちになって、ダンテはここ数日電話が鳴るのをただ待つ時間を過ごしていた。 「そんな憐れな貧乏人に、このレナード様が金になる仕事を持って来てやったぜ。ケツにキスしな!」 高揚を隠さず、嬉々として告げるレナードの言葉に、普段なら無視しているはずのダンテは渋々体を起こした。 自他共に認める小悪党であるこの男が持ってくる仕事は、どれもこれも胡散臭いものばかりだ。 大金をチラつかせて、割に合わないリスクを背負わせる。 それがレナード自身の姦計であったり、本当に不運なトラブルであったりする点がどうにも救えない。早い話が金を持ってくる疫病神だ。 しかし悲しいかな、今のダンテにとって必要なのはその金であり、真の危機はこの店が本格的に潰れることだった。 「……どんな依頼だ?」 ダンテは不本意を分かりやすい形にした表情で尋ねた。 いつになく素直なビジネスパートナーの態度に、いたく上機嫌でレナードは饒舌に答える。 「数日後にクラナガンのホテルで行われるオークションの警護さ」 「オイ、即日じゃないのかよ?」 「そこまで贅沢言うんじゃねえ。 だがな、金持ちが集まって無駄金叩き合うオークションだ。払いもいいぜ、前金でも結構な額が貰える」 「もう貰ってるんだろ? 俺の取り分で玄関のドア、直しといてくれ」 「へへ、受けるんだな?」 「……詳しい内容を話せよ」 「そうこなくっちゃな!」 ダンテの好みではない退屈そうな依頼だったが、背に腹は代えられない。 差し出された依頼内容のコピーを、渋々受け取る。 「依頼主は―――<ウロボロス社>?」 そこに書かれた見慣れない名前に、ダンテは僅かに眉を顰めた。 会社ぐるみでの依頼とは、なんとも大げさな話になってきたものだ。 「オイオイ、その会社を知らねぇのか? ミッドチルダでも有数の企業だぜ」 レナードは無教養な人間を嘆くように肩を竦めた。 「島一つ分の街を丸ごと支配しちまうような大企業だ。今回のオークション参加者でも一番の大物だな」 「料金を奮発してくれるのは嬉しいが、それ以外は興味ないぜ。それで、俺はその参加者のケツを守れば良いのか?」 「さすがにそいつは専属のボディガードがやるよ。お前さんは、少し離れた所で襲撃に備える」 「用心深いことだな」 言いながらも、ダンテはシークレットサービスの真似事をやらずに済んでホッとしていた。 金持ちの護衛など、一番苦手な仕事だ。 もちろん、それが見た目麗しい令嬢の相手なら喜んでするのだが、あいにくと護衛対象の写真は男だった。 「最近、謎の襲撃事件も頻発して物騒だからな。 オークションには時空管理局も護衛に来るらしいが、私的にガードを雇う金持ちも多いのさ」 「時空管理局だって?」 一瞬、ダンテの脳裏に久しく連絡を取っていない妹分の顔が思い浮かんだ。 しかし、すぐにその懸念を打ち消す。二人の仕事が重なる可能性などほとんど無い。 ダンテはこの時、自らが持つ因縁の強さをまだ知りもしないのだった。 「仮にもお偉いさんの集まる場所へ行くんだ、そんな派手な格好してくんじゃねえぞ? 特別に仕事着を用意してやるから、いつもの店へ来な。この部屋は仕事の話をするには向かねえ、俺の高級な鼻が腐っちまうわ」 もうすでに仕事を達成したかのような浮かれ具合で、レナードは笑いながら事務所を出て行った。 過ぎ去った後にも快晴など無い嫌な嵐が過ぎると、ダンテは遠ざかっていく笑い声を見送ってため息を吐いた。 まったく、世知辛い世の中だ。 「泣けるぜ」 どんなに情けなくても、クールさだけは失くさない声で呟き、ダンテはもう一度依頼のメモに目を落とした。 オークションに参加する護衛対象の情報が載っている。 といっても、それは詳細な個人情報などではなく、新聞の切り抜きを付けた大雑把な物だったが。 しかし、廃棄都市街の何でも屋程度には情報を気安く渡せない程に、その人物は会社でも高位の人間だった。 大企業ウロボロス社のCEO(最高経営責任者)―――。 「名前は<アリウス>か……」 死人のような顔色と野獣のような瞳を同居させた、異様な男だった。 to be continued…> <ダンテの悪魔解説コーナー> シン・サイズ(DMC1に登場) <罪>の名を持つこの悪魔は、やはり物質の媒介なしにはこの世に具現化できない低級な奴らだが、その半実体化した希薄さのせいで体への攻撃は擦り抜けちまう。 それだけじゃなく、壁や床まで透過できるってのはちょいと厄介な特性だぜ。 唯一実体化している大鎌は、魔力を集中することで攻防一体の強力な武器だ。 動き自体は決して速い方じゃないが、近接攻撃に対する反応速度は相当なもので、対剣士の戦法を熟知した古強者ってワケだ。 <死神>と称される見た目も相まって、歴史を感じさせるオーソドックスな悪魔の代表だな。 しかし、古い物は良いなんて懐古主義じゃあ現代では生き残れないぜ。 コイツらの媒介が<仮面>である以上、弱点なんて言うまでもないよな? 時代遅れの<死神>には近代兵器で『時代の新しさ』ってヤツを味わってもらうとしようぜ。 前へ 目次へ 次へ
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「管理局が追ってくるー!」 なおも絶叫しながら、グレンは裏通りを爆走していた。 その勢いに、道端でうたたねしていた牙の生えた口だけの生物たちが警戒の唸り声を 上げて物陰に逃げ込み、進路上にいた通行人が突き倒されたり飛び退いたりする。 追跡していた三人の隊員のうち、身長121cm程の小さな人間型の魔導師がグレンを 引き倒そうとタックルをかけるが、グレンとの体格差は如何ともし難く、そのまま 引きずられていく。 “フー・マンチューの萬屋”と書かれた看板が下がる、精力増強をウリにした“ゾンビ の干し首”という人間型生物の頭の干物や“第256管理世界産、効果抜群の媚薬”と 書かれた青色のドロドロした薬の入った小瓶など、如何にも胡散臭い品々が陳列された 屋台のあるT字路で、グレンは見事な直角カーブを描いて右に曲がる。 飛び付いた魔導師は振り落とされて屋台に突っ込み、満州族の絢爛な衣装を着た、 ドジョウ髭に営業スマイルを貼り付ける胡散臭い店主とまともにぶつかる羽目となった。 必死に走るグレンと、それを追う魔導師二名の追跡劇は、裏通りから43区内を流れる 神田川程度の小川の上に架かる橋の上へと舞台が移る。 ここで振り切られたら見失う。背中が甲羅のように盛り上がった魔導師が、傍らで一緒に 走る、二本の角と背中に蝙蝠のような翼を生やした同僚に言う。 「ホールディングネットで止めろ!」 二人は足を止めると、橋を駆けるグレンの方にデバイスの狙いを定める。 グレンが山ほど荷物を積んだ荷車の横を駆け抜けようとした時、突然前方にゴール ネットの様な光り輝く網が表れた。 グレンが止まる間もなくその中に突っ込むと、光る網はゴムのように伸びてグレン を絡め取り、パチンコのように荷車の荷物の山の中へと放り出す。 荷物に埋もれたグレンを取り押さえようと、魔導師たちは荷車へと駆け寄った。 「な、何じゃお前ら!?」 顔を覆える程大きい耳と、白い肌にオカマメイクを思わせるアイシャドウが特徴の、 出っ歯な某有名芸能人を思わせる馬丁が、引っ張っていたサイと同じ大きさの生物 を放り出して荷車の所へ走って来る。 「こら、やめい! 荷物を目茶苦茶にすんな!」 暴れるグレンを取り押さえようと荷車上で悪戦苦闘する二人の所へ、馬丁が抗議 しながら飛び乗った時、高く積まれた荷物の山が崩れて荷車が馬もろとも横倒しと なり、その上に居たグレンたちは橋の上から道頓堀のように緑色に濁った汚い小川へと 転落してしまう。 欄干へと駆け寄った野次馬たちの目の前に、派手な水音と盛大な水しぶきが上がる。 魚類の体に人間みたいな足が付いた水中生物が腹を見せて浮かんでいる横で、グレンが 両手両足をバタつかせて叫ぶ。 「助けてくれ! 俺は泳げないんだ!!」 その後ろ横では、馬丁が水面に浮かぶ荷物を目の前に頭を抱えて歎いていた。 「何つうこっちゃ、荷物が総てパアや!」 1158管理外世界。 未だ火災の収まらないセギノール基地では、消火作業と遺体の収容作業が急ピッチ で行われ、ヘリやドロップシップが頻繁に出入りしている。 そこから南へ約25キロ、基地と真向かいの位置にある砂丘の窪地に、ヘリに偽装した ブラックアウトが鎮座していた。 自身が持つ優れた視覚装置で基地の状況をつぶさに観察していると、突然左隣りで 砂煙が上がった。 ブラックアウトは特に気にかけなかった。相手がメガザラックである事は、識別 信号で分かっていたからだ。 砂の中からよろよろと這い出て来たメガザラックは、フレンジーとサウンドウェーブ が使っていたのと同じノイズ信号で首尾を報告する。 報告を聞き終えたブラックアウトから、突然大出力の信号がメガザラックに浴び せられ、センサー類が危うく吹き飛びそうになる。 例えるなら、ヘマをやった部下に短気な上司が“この役立たずが!!”と怒鳴り 付ける感じだろうか。 怒声を浴びて畏縮するメガザラックを尻目に、ブラックアウトは機体後部の ドアを開く。 メガザラックがすごすごと乗り込んだのを確認すると、最初の攻撃時に得たデータ からデッチ上げた偽の識別信号を発信しながら、ブラックアウトは離陸した。 「なのはちゃん、もう起きて大丈夫よ」 制服の上に白衣を着込んだ、金髪に白い肌の三十代前半に見える女性医務官が、 心電図や人体の断面図が表示された空間モニターを操作しながら、Yシャツと スカートでベッドの上に横たわるなのはに言った。 「どうですか、シャマル先生?」 陸上部局医務官のシャマル一等陸尉は、モニター上の数値をチェックしながら 難しい表情で言う。 「芳しくないわね。JS事件でのダメージが慢性化しているし、リンカーコアの 回復率は依然として1%を切ってる」 シャマルはそこで言葉を切ると、モニターからベッドの端に座って靴を取ろう としているなのはに目を向けた 「一度、治療プログラムを見直す必要があるかも知れないわね…」 なのはは靴を履き終えると、上着が架けてある壁際のコートハンガーへと歩く。 「シャマル先生、体の痛みは段々良くなって来てます」 そこで一旦言葉を切り、上着を手に取って着始めてから、なのはは話を再び始める。 「…確実に効果は出てますから、自信を持っていいと思いますよ。 見直すにしても、その方が良い方法を見つけられると思いますし…」 微笑みながら言うなのはに、シャマルは表情を和らげた。 「ありがとう、なのはちゃん」 シャマルはモニターを切ると、苦笑して肩を竦める。 「どうしたんですか?」 「担当医が患者に励まされるなんて…、私もまだまだだな…って思ったの」 「私も一緒ですよ、これからもよろしくお願いします」 なのははそう言って、シャマルに頭を下げた。 前へ 目次へ 次へ
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マクロスなのは 第9話『失踪』←この前の話 『マクロスなのは』第10話「預言」 アルトとなのはが技研から帰還した翌日。 2人は報告書を読んだはやてに呼び出されていた。その理由はバルキリー配備計画についてだ。 「─────つまり、レジアス中将がこの計画を立案したんか?」 2日前からよく寝たのか、はやての顔色はよく、しっかりしていた。しかし彼女の顔は今、苦悩に歪んでいる。 「うん、そうだよ。はやてちゃんも聞いてなかったの?」 「そうや、ウチは聞いとらん。管理局の殉職者が12人って報告は受けとったけど・・・・・・」 重たい沈黙 その時2人の背後のドアが開き、小人(こびと)が飛んできた。 「はやてちゃんそろそろ行く時間ですよぅ~」 リインは頭上をしばらく旋回飛行していたが、返り見ると、なのはの肩にどこかの〝竹を取る〟物語に出てくる小人のようにとても可愛らしい様子で座っていた。 「ああ、もうそんな時間か・・・・・・いきなりで悪いけど、これから2人ともちょっと付き合ってな」 はやてはイスに掛けられた上着に袖を通しながら告げる。2人は事態か読めず、顔を見合わせた。 そこに新たに部屋に入ってきた者がいた。 「はやて、車は用意したからいつでも行けるよ」 と、フェイト。どうやら彼女もこの件に1枚噛んでいるようだ。 「フェイトちゃん、どこ行くの?」 「あれ?まだはやてから聞いてなかった?昨日、聖王教会から連絡があってね。新しい預言が出て、ついでに『はやての友達に会いたい』って言われたんだって」 「ああ、なるほど。えっと・・・・・・カリムさんだっけ?」 「そうや、前々から会わせたいと思っとったんやけど、機会がなくてな。ほな行こか」 はやて達が部屋から出て行く中、アルトは話についていけず、ずっと頭を捻っていた。 (*) フェイトの私用車に乗ったフェイト、はやて、なのは、アルトの4人は一路、高速道路を北上する。 窓の外の景色が近代的な街並みから山と森へとシフトしていく。 しかし目的地にはまだ1時間ほど掛かるようだった。 そのためその間、3人から聖王教会に関する説明を受けることができた。 まず聖王教会とは、聖王を主神とする宗教団体で数多くの次元世界に影響力をもつ大規模な組織であること。 教会はミッドチルダ国の領内にありながら独立しており、税金などの面においても名実共に聖域であること。 財源は基本的には寄付で成り立っており、その額はミッドチルダの国家予算の半分程度という莫大な規模になっている。そのため教会自らが当時のミッドチルダ政府に設立を要請した時空管理局の、現在ですら予算の半分近くを握る最大のスポンサーであること。 このような歴史的事情から必然的に時空管理局と繋がりが強く、ロストロギアの管理、保管はそこが担当しているらしい。 しかし今は教会自体は関係なく、そこに所属しているはやての友人であるカリム・グラシアという人に用があるらしい。 なんでも彼女は『プロフィーテン・シュリフテン』という未来を予知する古代ベルカのレアスキルを持っているという。 「なんだそれ?未来がわかるなら最強じゃないか」 アルトはそう言ったが、そうでもないそうだ。 はやて曰く、カリムの預言はこの惑星を回る月の魔力の関係上、1年に1度しか使えず、表記も古代ベルカ語の、さらに解釈の難しいことで有名な詩文形式で書かれている。 また、期間も半年から数年後のことがランダムに書いてあるため、実質的な信頼性は『よく当たる占い程度』だという。 本局と教会はその内容を参考程度に確認するが、地上部隊は当たらないとして無視するらしい。 「そんな胡散臭いもの信用できるのかよ」 アルトも疑うが、はやては1歩も引かない。なのはやフェイトも『はやてが信用しているなら』と、まったく疑いはないようだ。 そうこうしているうちに、100キロ近い距離を走破した車はそこに到着した。 教会はその名に恥じぬ壮大な造りで一瞬アルトに中世の城をイメージさせたが、最新の科学技術と見事に調和したそれはよほど近代的だった。 車を駐車スペースに停めた4人に玄関から近づいてくる人影がある。 「お待ちしておりました」 彼女は一礼すると品よく笑顔を作った。 「おおきに、シスターシャッハ」 「はい。みなさんもお元気そうで・・・・・・あら?そちらの方は?」 「彼は次元漂流者の早乙女アルト君。今は六課の隊員をやってもらっとる」 はやての紹介にシャッハはプライスレスのスマイルを作り、 「聖王教会にようこそ」 と告げた。 (*) その後シャッハに連れられて教会に入り、いくつもの装飾品の並ぶ玄関を横切り、廊下を歩いていく。 (なんか鳥ばっかだな・・・・・・) 玄関に入ってすぐにあった床の塗装も鳥が大きく翼を伸ばした姿が描かれていたし、各種置物も翼を伸ばした鳥という案配(あんばい)だ。 後でわかったことだが、聖王教会では鳥がモチーフになったシンボルマークが使われており、よほど好きらしい。 (ん?・・・あいつら、なにやってんだ?) 続いてアルトが見たのは1組の男女。しかし男の方は前時代的な切断器具である〝ノコギリのように削られた1メートル程の木の棒〟を女性に突きつけていた。 それで女性が恐怖に怯えているなら話は簡単であり、アルトも助け出すことを躊躇しなかっただろう。 しかし女性の方は喜んでいたようだった。 そのことから特に危険なわけでもないようなので、別段考えもせずどんどん歩を進めるシャッハ達を追った。 (*) しばらく歩くとシャッハは1つのドアの前に立ち止まった。 こん、こん 広い廊下にノックの音が反響する。 『どうぞ』 内から聞こえる女性の声。シャッハはドアを開けると直立する。 「時空管理局の八神はやて様ご一行がいらっしゃいました」 『ありがとう』 シャッハは一礼すると、はやて達を部屋に招き入れ、自分は出ていった。 部屋はなかなか広くカリムという人の重要さを物語る。 しかし物見遊山している暇などなかった。なのはとフェイトは部屋に入ると突然直立不動となり敬礼する。アルトも慌てて続いた。 「便宜上やけどカリムは管理局の少将ぐらいの階級を持ってる〝お偉いさん〟なんよ」 と、先ほど何気も無くはやてが言っていたことを遅まきながら思い出す。 「失礼いたします。高町なのは一等空尉であります」 「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン一等海尉です」 「早乙女アルト准尉です」 すると奥から、長いストレートな金髪に紫のカチューシャを着けた25歳ほどの女性が現れた。 彼女は 「いらっしゃい」 と告げると、名乗った。 「初めまして。聖王教会、教会騎士団騎士、カリム・グラシアと申します。どうぞ、こちらへ」 カリムに周囲がガラス張りになったテラスへと誘導され、彼女とはやてはイスに腰を掛ける。 なのは以下3人は 「失礼します」 と一礼してイスに腰を掛けた。 するとカリムはこれまた品よく笑う。 「3人とも、そんなに固くならないで。私たちは個人的にも友人だから、いつも通りで平気ですよ」 「・・・・・・と、カリムが言うてるし、いつもと同じで平気やで」 カリムとはやての許可に、なのはとフェイトは即座に友人モードにスイッチングし、普段通りの口調に戻った。 「改めてこんにちは、私のことは〝なのは〟って呼んでください」 「はい、なのはさんですね。ハラオウンさんと早乙女さんはなんとお呼びすれば?」 「私はみんなからフェイトと呼ばれています」 「俺は、アルト─────」 「〝姫〟やろ?」 「ど、どうしてお前がそれを知って─────!」 「なのはちゃんの報告書に書いてあったで」 なのはに向き直る。すると彼女は少し面白そうに両手を合わせ 「ごめ~ん!あんまりにもぴったりな表現だったから・・・・・・」 と謝罪した。 続いて 「こんないいセンス持ったお友達ならウチともいい友達になれそうやわ~」 とはやて。 (いかん・・・・・・遊ばれるモードに入っている・・・・・・) しかしアルトは怒って否定するまねはしなかった。彼は〝大人〟になろうと努力していたし、彼の望む大人像には短気は入っていなかった。 「・・・・・・なるほどな。確かにチビダヌキって愛称を持つお前ならアイツともいい友達になれそうだな」 反撃に転じたつもりだったが彼のマニューバ(空戦機動)は稚拙すぎ、老獪なはやてには無力だった。 「やろ~タヌキってキツネよりもユーモラスやし、チビってのが愛嬌あるみたいで結構気に入っとるんよ~」 (しまった、上手くかわされた・・・・・・!) 青年は己の経験不足を嘆くしかなかった。 「えっと・・・・・・とりあえず、なのはさんにフェイトさん、それにアルトひめ―――――」 ジロリ アルトの敗者の哀愁を漂わせる視線にカリムは空気を読んだ。 「―――――コホン、アルトさん。これからもよろしくお願いしますね。・・・・・・それから私のことはどうぞカリムと呼んでください」 全員の自己紹介が終わったところで、はやてが仕切り直す。 「それじゃあいい機会だから改めて話そうか。機動六課の設立目的の裏表。そして、今後の事をや」 極めて真面目な顔をして言い放った。 (*) 周囲のカーテンが閉め切られ、先ほどとはうってかわって密会の雰囲気が出たテラスではやては説明を始める。 「六課設立の表向きの目的は、対応が遅く、練度の低くなった地上部隊の支援と治安維持。そして時代の変遷によって不具合が出てきた管理局の非効率なシステムの刷新や」 はやてが端末を操作し、ホロディスプレイを立ち上げていく。 「知っての通り、設立の後見人は騎士カリムとフェイトのお母さんのリンディ・ハラオウン総務統括官。そして、お兄さんのクロノ・ハラオウン提督や」 アルトは隣のフェイトに念話で耳打ちする。 『(この前本部ビルにいたクロノって、お前の兄さんだったのか)』 『(うん)』 『(へぇ・・・・・・、あんまり似てないんだな)』 そこで少しフェイトに陰が落ちる。 『(・・・・・・リンディ統括官もクロノ提督も義理のお母さんとお兄ちゃんなんだ)』 『(え、あぁ・・・・・・すまない・・・・・・)』 ただならぬ雰囲気を感じたアルトはそれ以上詮索しなかった。 「―――――あと非公式にレジアス中将も初期の頃から設立に賛成して、協力を約束してくれとる」 (はぁ?中将は地上部隊の指揮官じゃなかったか?なんでまた本局所属の六課なんかに?) 同じ疑問が浮かんだらしく、なのはとフェイトの顔にも〝?〟マークが浮かんでいた。 今でこそガジェットの度重なる出現で六課の重要度は増すばかりだが、それより前から賛成していたというのは理解できなかった。 普通なら地上のことなのだから、身内(地上部隊)で解決しようとするはずだ。 こちらの疑問に察しがついたのだろう、カリムがはやての説明を継ぐ。 「レジアス中将が設立に賛成したのには理由があります。それは私の能力と関係あるんです」 カリムの説明によると、彼は優秀な部下として可愛がっているはやての勧めで、地上部隊最高司令官として預言に耳を傾けているらしい。 しかしそれだけではまだ六課の味方をする理由がわからない。 そこで立ち上がり儀式魔法を展開。準備を始めるカリムに、はやてが補足する。 「実は最近のカリムの預言に、1つの事件の事が徐々に書き出されとるんや」 どうやら準備ができたらしい。カリムが浮いていた紙の内1枚を手に取り読み始める。 『赤い結晶と無限の欲求が集い、かの翼が蘇る 閃光と共に戦乙女達の翼は折れ、中つ大地の法の塔は虚しく焼け落ちる それを先駆けに善なる心を持つ者、聖地より鳥を呼び覚まし、数多(あまた)の海を守る法の船も砕き落とすだろう』 その預言が聞く限り悪いことのオンパレードであることに、初めて聞いた3人が絶句する中、はやてが更に補足する。 「ウチらはこれをロストロギア『レリック』によって始まる時空管理局地上部隊の壊滅と、管理局システムの崩壊だと解釈しとる。レジアス中将もそれを鑑みて、比較的自由度と拡張性の高い、六課の設立に賛成してくれたんや」 その説明に3人は納得した。しかしはやての顔が優れない。 ここは喜ぶところではないとは思うが、失望したような表情をするところでもないはずだ。 そんなカリムを含めた4人の心配が伝わったのだろう。はやてが訥々と、理由を口に出し始める。 「・・・・・・レジアス中将には、わかってもらえたと思ったんやけど・・・・・・なぁアルト君、なのはちゃん、あの配備計画は本当なん?」 突然話をふられた2人は (ここでこの話が来る?) と驚きつつも頷く。 「すみません、あの配備計画ってなんでしょうか?」 カリムとフェイトが話についていけないので、なのはが速成で説明する。 「昨日レジアス中将が話してくれた計画で、『バルキリーを量産、低ランク空戦魔導士に配備して被撃墜率を下げよう』って計画です」 その話を聞いていなかった2人は 「レジアス中将ならやりそうなちょっと強引な計画だ」 と納得した。 「確かにちょっとギリギリな計画だとは思う。・・・・・・んだが撃墜率は減るだろうし、悪い計画じゃないんじゃないか。どうしてお前はそんなに嫌がるんだ?」 そう言うアルトをはやては見つめると、1つの事を聞いた。 「アルト君、あなたの飛行機の通称は?」 「?なに言ってるんだ。バルキリーに決まって・・・・・・あっ!」 言いながらアルトは気づいた。 〝バルキリー〟この読み方は英語式の〝ヴァルキリー〟に端を発し、日本語では〝ワルキューレ〟と呼ばれる。 意味は昔の地球の北欧神話に出てくる半神の名で、戦乙女という意味だ。 確かアルトの調べた限りこの世界にも偶然か、はたまた必然なのか、その呼び名を持つ同じような神話があった。 それではやての悩みは理解できた。預言の戦乙女の記述が、心配なのだろう。しかし――――― 「バルキリーは戦乙女という意味だ」 アルトの言にカリム、フェイトが驚愕する。しかしなのははわかった風に静かだ。どうやら彼女も自分と同じ考えに行き着いたらしい。 「どうして2人は冷静でいられるん!?レジアス中将は戦乙女=バルキリーなんてわかってるはずやのに!?」 はやてが珍しく語気を荒げる。 「はやて、」 「はやてちゃん、」 2人の声が見事にハモる。なのははジェスチャーで『お先にどうぞ』と送りだした。 「お前はどうして六課があるか忘れてるんじゃないか?・・・・・・いや、俺たちの報告書がマズかったかもしれないな。〝つまらん例外〟以外あれは客観的事実しか書いてなかったはずだ」 その〝つまらん例外〟を書いた本人であるなのはは、投げられたアルトの視線に『テヘへ』と頭を掻いた。 アルトは続ける。 「だがあの時中将は俺達に、『ミッドチルダをよろしく頼む』って言ったんだ。今ならわかる。あの重さが!」 アルトに変わり、なのはがその先を継ぐ。 「レジアス中将は私達に期待してくれてるんだよ。『きっと六課が、預言を阻止してくれる!』って。・・・・・・それにね、戦乙女って六課とも取れるんだよ」 そう、どちらかと言えばそちらの方が可能性としては高い。 昨日見た設計段階のバルキリーは、反応エンジン、航法システムなど武器以外は魔法や魔力結合に頼らぬほぼ純正のものを踏襲していた。 そのためバルキリーはランカレベルの超AMF下でも十分飛行と戦闘が可能だった。 またその他の要因にしても、魔導士にあってバルキリーにない機構などほとんどない。逆に優秀なものならいくらでもある。 大規模センサーなど電子機器しかり、魔力の回復の早い小型魔力炉しかり、圧倒的な馬力や装甲しかり・・・・・・ はっきり言って脆弱ななのは達魔導士方が簡単に、預言の文句と同じく〝翼は折れ〟た状況になるだろう。 「・・・・・・その時、誰が私達を助けに来てくれるのかな?」 なのはの決め台詞はこれだった。 とりあえず現状の魔導士部隊には不可能だ。しかし、バルキリー隊なら?またこれは逆に、バルキリー隊が危険なら六課は?とも言える。 両方無力化されるとは考えにくい。しかし、どちらかが機能すれば預言を阻止できる可能性は失われず、助け合える。 レジアスの言っていた『君達1部隊に地上の命運を任せる訳にはいかない』とはこの意味があったのだ。 「じゃあ、レジアス中将はウチらの心配もしてくれてたんか・・・・・・」 自らを犠牲にしてでも預言を阻止しようと決意していたはやては、感極まった様子で俯き、声に出さず呟く。 『ありがとうございますレジアスおじさん。言ってくれないだけで、ずっとウチらの事も心配してくれとったんだね・・・』 はやてが再び顔を上げた時、一同は暖かい笑顔を彼女に向けていた。 (*) 「さて、実は新しい預言が出た話だけど─────」 カリムの一言に、彼女を除く全員が 「「「あっ!」」」 と声を上げた。 「・・・・・・そういえばそのために来たんだったね」 「にゃはは~完全に忘れてたのですぅ~」 フェイトとなのはの会話が驚いた人達の気持ちを最も端的に表しているだろう。 「でもカリム、預言は1年に1回じゃなかったんか?」 はやての質問にカリムも困った顔をする。 「それが月とは関係ない、別の力が作用したみたいなの」 彼女は言いつつ預言書を出し、読み上げる。 『月と大地の交わる所運命(さだめ)の矢が放たれる』 顔を上げたカリムが、どういう意味がわかる?と一同を見渡す。 「運命の矢ってのは攻撃かな?」 と、なのは。 「月と大地ってことは、宇宙か空だよね。・・・・・・まさか衛星軌道兵器なんてことは─────」 と、フェイト。 「どうやろう・・・・・・戦時中の軍事衛星は耐久年度を超えてるか叩き落とされとる。それに軌道付近なら管理局のパトロール艇が監視しとるはずや。この場合、まず悪いことなんかがわからんな・・・・・・」 腕組みしながらはやてが言う。 「なんかどこかで聞いたような文句だな・・・・・・」 とアルト。 その後議論を1時間近く続けたが結論は出ず、カリムの用事のためそのままお開きになった。 (*) 聖王教会から帰るとすでに日は落ち、ヴィータ教官率いるフォワード4人組も既に訓練を終え、宿舎に引っ込んでいた。 「ほんならなのはちゃん、フェイトちゃん、それにアルト君、わかってもらえたかな?」 自らの声が広い空間を波紋する。 ここは六課の隊舎の玄関前にあるロビーだ。ここからは私室のある部隊長室と、なのは達の宿舎とは反対方向となるのでお別れとなる。 「うん」 「情報は十分。大丈夫だよ」 2人は 「じゃあ」 と言って一時の別れを告げると、宿舎へと続く渡り廊下を歩いていく。 しかし、ラフに壁にもたれたアルトは動かなかった。 「・・・・・・どうしたん?」 「いや、『何か言いたそうだなぁ~』って思ったから待ってるのさ。なのは達行っちまうぜ、いいのか?」 はやては去っていく2人の後ろ姿を見て少し逡巡したが、すぐ首を 「うん」 と力強く縦に振る。 「・・・・・・いや、ありがとうな。本当は言おうと思ったんやけど、よく考えてみれば2人には言わなくてもわかってくれとると思う。」 2人を見送るその横顔は確信に満ちていた。 「そうか」 「でも、アルト君には確認しておきたい」 「なんだ?」 アルトはもたれた壁から離れると、腰に手をあてがい聞き耳をたてる。 「六課が、これからどんな展開と結末を迎えるかわかれへん。だけどこのまま六課で戦ってほしいんやけど、ダメ・・・・・・かな?」 「・・・・・・そうだなぁ、六課設立の目的が最初聞いた時と圧倒的に違うからな。実は『壊滅するかもしれない?』『単なるテスト部隊でなく管理局の切り札だった?』と来たもんだ。おまえの覚悟は立派だし、その気持ちには同情する・・・・・・だが、こんな〝危険〟なとこに俺らを引き込んだのか?」 アルトの口から出る痛烈な言葉にはやてはシュンとなる。 「・・・・・・やっぱり、いやなんか?」 「ああ、嫌だね」 アルトはにのべなく切り捨てた。 「危険なのは俺だけじゃないんだ。ランカだって関わってる。もしアイツに何かあったら、アイツの〝兄さんズ〟に反応弾(物質・反物質対消滅弾頭)か重量子ビームでスペースデブリ(宇宙の塵)にされちまうんだ。本当のことを知らされないで、そのことへ覚悟がないのに危ないのは御免被る。」 アルトの言葉にはやてはどんどん肩落とし、泣き出さんとまでになってきた。 「ごめん・・・・・・アルト君がそんなに嫌がってるなんて知らへんかった。気づけなくてごめんな。なんなら今すぐランカちゃんと一緒に─────」 部隊長室へ歩き出そうとしたはやてだったが、アルトの手が肩に触れて立ち止まり、彼を振り返った。 (*) アルトは「やりすぎたか・・・」と胸の内で呟いた。こちらを見上げる小さな少女の目には大粒の涙が溜まっていたからだ。 「あぁ・・・・・・俺はそういう事を言ってるんじゃないんだ・・・・・・。つまりだな、危険な事でも下手(したて)に出て「ダメか?」とか頼むようじゃ人は着いてこない。たとえ俺たちのような〝友達〟でもな。そう言ってるんだ」 ここではやてはアルトの真意に初めて気づいたようだった。 「いじわるやね、アルト君・・・・・・」 アルトは破顔一笑。 「ほんとにな。よく言われるよ」 するとはやては涙をさっと拭うと、大仰に決めていい放つ。 「じゃあ、アルト〝くん〟とランカちゃんに〝どうしても〟手伝ってもらいたいんや!いいんやろ?」 「仕方ない、付き合ってやるか。・・・・・・お前もいいんだろ?」 アルトは壁に話しかける。そこはロビーに隣接するように作られている自販機コーナーの入り口のドアだ。 気づけば、さっきアルトがもたれるのをやめた時、彼は何気なくそのドアを少し開けていた。 はやてがその行為にタヌキ・・・いやキツネに摘ままれたような顔をしていると、緑の髪した少女が「てへへ」と笑いながら出てきた。どうやら偶然最初からいたようだった。 「うん。もちろん。私、このみんなのいる街を守りたいの!」 彼女の赤い瞳には強力な意志の力がみなぎっている。 「こんな2人だが、これからもよろしくな。」 アルトとランカが手を出す。 はやては2人の手を掴み「ウチこそ!」と、100万W(ワット)の笑顔で応えた。 シレンヤ氏 第10話 その2へ
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第3話「決意の変身」 「……」 結界に覆われ、力を持たぬ者を拒む死都と化した海鳴市。 その一角に、漆黒の帽子とコートにその身を包む、一人の男がいた。 男はビルの一室より、全てを見つめていた。 なのはとヴィータの戦闘を、フェイトやユーノ達の介入を。 そして……この世界の住人に在らざる、光の一族の姿を。 「……ヒビノミライ。 いや……ウルトラマンメビウス……」 「民間人への魔法攻撃……軽犯罪ではすまない罪だ……!!」 バルディッシュの矛先をヴィータへと向け、フェイトは彼女に問う。 何が目的で、こんな真似をしでかしたのか。 どうして、なのはが狙われなくてはならないのか。 様々な思いが、彼女の中で交錯していたが……断言できる事は一つ。 なのはは、深い闇の中から自分を救い出してくれた……彼女がなければ、今の自分はない。 だから……今度は自分の番。 絶対に、なのはをこの手で守ってみせる。 「あんだ、テメェ等は……管理局の魔道師か?」 「時空管理局嘱託魔道師……フェイト=テスタロッサ……!!」 フェイトが構えを取る。 いつでもヴィータに斬りかかれる様に、完全な攻撃態勢。 それに合わせ、ミライもメビウスブレスに右手を添える。 二人とも、ヴィータが下手な動きを見せたならば、即座に攻撃を加えるつもりであった。 瞬時に攻撃を放てる状態を保ち、フェイトはヴィータに交渉を持ちかける。 「抵抗しなければ、弁護の機会が君にはある。 同意するなら、武装を解除して……」 「誰がするかよ!!」 ヴィータは強く床を蹴り、勢いよくビルの外へと飛び出していった。 交渉に応じる気は、彼女には全くない。 そんな強い意思表示をするかの如き行動であった。 こういう反応が返ってくるのは、フェイト達には十分読めてはいた。 ならば、こちらもそれ相応の行動を取らせてもらうまでである。 「ユーノ、なのはをお願い……!!」 「うん、分かった。」 「フェイトちゃん、僕も行くよ。」 「お願いします、ミライさん。」 フェイトはユーノになのはを託し、ヴィータを追った。 ミライも彼女を援護すべく、階段へと走りビルの屋上に駆け上る。 ここでようやく、なのははミライの方へと目を向けた。 フェイトやユーノと違い、見知らぬ始めて出会う人。 あの人は一体、誰なんだろうか。 まだぼんやりとしている意識の中で、なのははその背中を見つめていた。 そんな彼女へと、ユーノはすぐに回復呪文を発動させる。 「ユーノ君……」 「うん……フェイトの裁判が終わって、皆でなのはに連絡しようとしたんだ。 そうしたら、通信は繋がらないし、確認してみたら広域結界が出来てるし…… だから、慌てて僕達が来たんだよ。」 「そっか……ごめんね……ありがとう。」 「あれは誰? なんでなのはを……」 「分からない……急に襲ってきたから……」 「そう……でも、もう大丈夫。 フェイトもアルフもいるし、それにミライさんだって……」 「ミライさん……ミライさんって、さっきの人……?」 「うん、僕達もさっき知り合ったばかりだけど……僕達の味方だよ。」 「バルディッシュ!!」 『Arc Saber』 海鳴市上空。 外へと出たフェイトは、ヴィータ目掛けてバルディッシュを大きく振り下ろした。 それに伴い光り輝く刃が放たれ、ヴィータに襲い掛かる。 だが、ヴィータもそれに合わせて攻撃を仕掛けてきた。 「グラーフアイゼン!!」 『Schwalbefliegen』 四つの小さな鉄球を出現させ、グラーフアイゼンで打ち放つ。 鉄球と刃が交差し、互いの敵目掛けて迫る。 ヴィータはとっさに障壁を発動させることにより、アークセイバーを防ぐ。 一方のフェイトは、持ち前のスピードで鉄球を交わそうとする。 しかし……鉄球は、フェイトの後ろからピッタリと着けてきていた。 何とかホーミングから逃れようと、フェイトは更にスピードを上げる。 すると、その時……突如として数発の光弾が飛来し、鉄球を全て打ち落とした。 ビルの屋上から、ミライが援護を仕掛けてきたのだ。 それを見て、ヴィータは軽く舌打ちをするが……この直後。 凄まじい勢いで、下から何かが迫ってきている事に、彼女は気づいた。 「バリアァァァ……ブレイクゥゥゥゥッ!!」 「!?」 下から迫ってきた、犬の耳と尻尾を持つ女性――アルフの拳が、ヴィータの防壁に叩きつけられる。 防壁が、音を立てて崩れ落ちる。 すぐさまヴィータは、アルフへと反撃に移った。 すかさず防壁を展開した彼女へと、グラーフアイゼンを勢いよく振り下ろす。 防壁越しにも伝わってくる、強烈な衝撃。 アルフは踏ん張りきれず、地上へと落下していった。 「きゃああぁぁっ!!?」 「……っ!!」 『Pferde』 アルフに鉄槌を下して間も無く、ヴィータはすぐに術を発動させる。 彼女の両足に光が集い、その機動性を増加させる。 フェイトが、既にかなりの至近距離まで迫ってきていたのだ。 間一髪、ヴィータは素早い動きでフェイトの一撃を回避する。 だが……それで終わりではなかった。 「今だ!!」 「何!?」 ヴィータ目掛けて、一発の光弾が放たれた。 ミライが先を読み、仕掛けてきたのだ。 ヴィータの肩に、まともに光弾が直撃する。 威力は然程ではないが、それでも耐え切るには少々無理のある一撃であった。 体勢を崩し、よろけるヴィータ。 すぐに体勢を立て直そうとするも……それよりも早く、アルフのバインドが発動した。 ヴィータは空中で拘束され、身動きを取れなくなってしまう。 「しまった……!!」 「終わりだね……名前と出身世界。 目的を教えてもらうよ。」 「くぅっ……!!」 バルディッシュの矛先を向け、フェイトはヴィータに問う。 アルフのバインドは、そう簡単に打ち消せる代物ではない。 後は、ヴィータが素直に話してくれれはそれで良し。 話してくれなくとも、その時は管理局まで連行するだけの話である。 勝利はほぼ確定したようなものであった。 しかし……アルフがここで、異変に気づいた。 直感的に、強い力がこの場に近づきつつあると、そう感じたのだ。 「っ!! 何か……やばいよ、フェイト!!」 「危ない!!」 「!?」 ミライが二人に向かい叫んだのと、ほぼ同時だった。 フェイトとアルフの前に、長剣を携えた一人の女性が現れた。 騎士をイメージさせるバリアジャケットに身を包む、ピンク色の髪の女性――シグナムは、いきなり仕掛けてきた。 その手の長剣――レヴァンティンを、フェイトへと向けて振り下ろしてきたのだ。 とっさにフェイトは、バルディッシュでその一撃を受け止めるが……相手の力の方が強かった。 「くぅっ!?」 押し負け、フェイトは数メートル後方に下がらせられる。 アルフはとっさに彼女を助けようとするが、その瞬間であった。 大柄な、アルフ同様の耳と尻尾を持つ男――ザフィーラが、アルフへと飛び蹴りを叩き込んできた。 アルフはその一撃を、とっさにガードするも……力が半端ではなく強い。 彼女もまたフェイト同様に、大きく吹っ飛ばされるハメになってしまった。 「フェイトちゃん、アルフさん!!」 「シグナム、ザフィーラ……」 「レヴァンティン、カートリッジロード……!!」 『Explosion』 レヴァンティンの刀身がスライドされ、薬莢が排出される。 それと同時に、レヴァンティン全体を爆発的な魔力が包み込んだ。 繰り出されるは、シグナムの奥義。 敵対する全てのものを切り裂く、必殺の剣撃……!! 「紫電……一閃っ!!」 剣は、フェイトへと真っ直ぐに振り下ろされた。 とっさにフェイトは、バルディッシュで防御をしようとする……が。 その威力は、あまりに強すぎた。 バルディッシュが……真っ二つに切り裂かれたのだ。 そしてシグナムは、二撃目に移る。 再びレヴァンティンを振り上げ……そして、振り下ろした。 『Defensor』 とっさにバルディッシュが、防壁を展開させた。 だが……それでも、その威力は絶大。 フェイトは凄まじい勢いで落下し、地上のビルへと叩きつけられた。 そのまま、床を突き破り下の階にまで到達する。 「フェイトォッ!!」 アルフはすぐにフェイトを助けに行こうとする。 だが、対するザフィーラがそれを許さない。 彼女の前に立ち塞がり、行く手を遮る。 何とかして、助け出さなければならない。 アルフが動けない今、それが出来るのはただ一人……ミライだけであった。 傷ついているなのはは勿論、その治療に当たっているユーノにも、彼女の救出は難しい。 すぐにミライは、フェイトが落下したビルに向かおうとする。 「アルフさん、僕が行きます!!」 「ミライ……ごめん、フェイトの事お願い!!」 「どうした、ヴィータ……油断でもしたか?」 「うっせーよ、こっから逆転するところだったんだ。」 「そうか……それはすまん。」 シグナムは、拘束されたヴィータの救出を行っていた。 ヴィータ一人の力ではバインドを解けないとみるや、己の術で解除にかかる。 結果、バインドはあっけなく消滅した。 拘束が解かれ、ヴィータが自由の身となる。 「だが、あまり無茶はするな。 お前が傷つけば、我等が主が心配する。」 「わかってるよ……もう。」 「それから……落し物だ。」 「あ……」 「破損は、直しておいたぞ。」 ヴィータの頭に、赤色の帽子をかぶせた。 先程、なのはとの戦いで彼女が落としたものであった。 シグナムが破損を修復した御蔭で、傷一つなく新品同然。 ヴィータは素直に感謝の意を、彼女に伝える。 「ありがと……シグナム。」 「ふっ……状況は四対三。 数の上では此方が劣ってはいるが……」 「一人は、大した戦闘能力はねぇ。 実質三対三だ……そいつは、あたしが引き受ける。 色々と邪魔してくれやがったからな……!!」 「分かった、そいつは任せよう。 一対一なら、我々ベルカの騎士に……!!」 「負けはねぇ!!」 ヴィータとシグナムが、勢いよく飛び出す。 シグナムは、フェイトが落ちたビルへと。 そしてヴィータは、フェイトの救出に向かおうとしていたミライの元へと。 なのはと共に様子を見ていたユーノは、それにいち早く気づいた。 このままじゃ、皆が危ない。 ミライがヴィータに抑えられるであろう今、フェイトを助けにいけるのは自分だけである。 彼は傍らに立つなのはへと、術を発動させた。 彼女の身が、エメラルド色に輝く結界に包まれる。 「これは……」 「回復と、防御の結界魔法。 なのはは絶対に、ここから出ないでね……!!」 ユーノは飛び立ち、フェイトが落ちたビルへと向かう。 なのははそんな彼の姿を、ただ見ているしかなかった…… 「ぶっ潰れろぉぉっ!!」 「っ!?」 ヴィータは大きく振り被り、グラーフアイゼンを振り下ろしてきた。 ミライはとっさに反応し、両手を前に突き出す。 ∞の形をした、防護壁――メビウスディフェンサークルが展開される。 グラーフアイゼンの一撃は、それによって受け止められた。 しかし、ヴィータにとってこの程度は予想の範囲内だった。 「防壁は流石に使えるか……けど!!」 ならばと、ヴィータは空へと飛び上がる。 ここまで様子を見てきて、分かった事が一つある。 それは、ミライの戦闘力がこの中で最も低いであろうという事だった。 彼はここまで、光弾以外の攻撃を一度も使っていない。 そしてその光弾の威力は、弱くはないが高くもない。 ここから推測できるのは、ミライには必殺の一撃が無いという事。 攻撃を受けても、そう怖くはない相手であるということだった。 更に……攻撃面以外にも、もう一つミライには致命的な欠点が見つかった。 彼は自分達とは違い……空を飛べない。 こうして空から仕掛けていけば、圧倒的有利である。 ヴィータは無数の鉄球を出現させ、その全てを一斉に撃ちはなった。 『Schwalbefliegen』 「こいつで……蜂の巣にしてやる!!」 空から降り注いでくる、魔力弾の嵐。 ミライはすぐさま防壁を展開するも、防ぎきれるレベルの攻撃じゃない。 数発程受け止めた後……防壁に、亀裂が走った。 「駄目だ……このままじゃ……!!」 「うおおおおぉぉぉっ!!」 追い討ちを仕掛けるべく、ヴィータが再び迫った。 グラーフアイゼンを大きく振り上げ、全力で打ち下ろしにかかる。 このままじゃ、確実にやられる。 ミライは、己が敗北するかもしれないと薄々感じ取っていた。 少なくとも……今のまま戦っていたのでは、彼女には絶対に勝てないと。 (やるしかないか……!!) この状況を打開するには、打つ手は一つしかなかった。 人間としての――ヒビノミライとしての姿から、ウルトラマンの姿に変身することである。 しかしそれをすれば、自分の正体を皆に知られてしまう。 メビウスブレスに関しては、時空管理局がウルトラマンメビウスの事を知らないから使う事が出来た。 自分の武器であると、辛うじて隠し通す事が出来るからだ。 だが……変身してしまえば、そうもいかなくなるだろう。 自分がウルトラマンである事を知られたくないのには、ある大きな理由があった。 それは、皆を危険な目に合わせたくないから。 これまで自分の兄達がそうだったように、ウルトラマンは侵略者から狙われやすい立場にある。 そうなると、周囲のものにも危険が及んでしまう。 それ故に、全てのウルトラマン達は己の正体を隠して戦い続けてきた。 そしてその正体がばれた時には、地球を去っていったのだが…… 唯一、メビウスだけは例外だった。 彼は己の正体を明かした上で、尚も地上にとどまった唯一のウルトラマン。 地上に留まる事が出来たのは、自分を信じてくれる大切な仲間がいたから。 彼等と一緒に戦い続ける事を望み、そして彼等もそれを望んでくれたからだった。 しかし、この世界には来たばかり。 正体を明かして、果たして良いものか……そう、考えてしまった。 だが……すぐにミライは、一番大切なことに気づく。 (ここでやらなきゃ……皆が危険な目に合うんだ!! 僕の事を助けてくれた人達を……今度は、僕が助けるんだ!!) 己の使命は、人々を守り抜くこと。 それこそがウルトラマンの役目。 自分を救ってくれた者達を、見捨てる事なんか出来ない。 ミライは意を決し……メビウスブレスのクリスタルに、右手を添えた。 「っ!?」 ヴィータは、直感的に動きを止めた。 何かは分からないが……嫌な予感がする。 ミライの一連の動作から、そう感じ取る事が出来た。 そして、その予感は見事に的中する。 ミライは右手を勢いよくクリスタルから離し、メビウスブレスの力を解放する。 そのまま、左手を大きく天空へと突き上げ……雄叫びを上げた。 「メビウゥゥゥゥスッ!!」 ミライの身が、眩い光に包まれる。 ヴィータはその眩しさから逃れようと、とっさに顔を背ける。 そして、光が晴れた時……そこにミライの姿は無かった。 その代わり……そこには、銀と赤のカラーをした一人の戦士が立っていた。 変身を遂げたミライ――ウルトラマンメビウスが。 その大きさは本来のそれとは違い、ヴィータに合わせた人間サイズだった。 流石に、本来の大きさで挑んではヴィータを殺しかねないと判断した結果である。 「ミライさん……!? バリアジャケットを装着した……いや、これは何かが違う……!!」 「ザフィーラみたいに、別の姿に変身したってのか? けど、守護獣とは感じが全然違うし……何者なんだよ、お前は!?」 「……ウルトラマン。 ウルトラマンメビウスだ!!」 戻る 目次へ 次へ
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~ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは 小ネタ集~ ○戦闘機人 ミライ「戦闘機人って、身体に機械を入れてパワーアップした、サイボーグみたいな人の事だよね?」 なのは「はい、そうみたいですけど……」 ミライ「じゃあ……」 『恐竜戦車』 ミライ「まさか、あれも戦闘機人の一種……」 なのは「ミライさん、それ何か違いますから」 ユーノ「そもそも元が人じゃないですって」 ~その頃のスカリエッティ家~ スカ「よし、新しいナンバーズの完成だ」 ウェンディ「ドクター、それ絶対戦闘機人と違うっすから」 ノーヴェ「てか、こんな妹嫌です」 【スカリエッティ 改造パンドン作成確認】 ○変身ポーズ エイミィ「ミライ君の変身するところって、何か結構カッコイイよね」 アルフ「うん、こう見事に決まってるけど……変身ポーズの練習をしてるとか? 」 ミライ「まあ……一応、タロウ教官にちょっとだけね。 それに、他の兄さん達だって……」 なのは「へぇ~……他のウルトラマンさん達がどんな変身するか、ちょっとみてみたいかも」 ミライ「うん、皆カッコイ……」 スカイドン戦 ハヤタ「……?」(ベータカプセルと間違えて、カレーライスのスプーンを掲げる) モットクレロン戦 光太郎「タロウー!!」(大根片手に変身) ミライ「……」 なのは「……ミライさん?」 ○変身ポーズ その2 ヴィータ「そういえばアスカって、変身する時に掛け声とかないよな。 ただ、リーフラッシャーを掲げるだけで……何っつうか、迫力にかけるって言うか……」 アスカ「掛け声かぁ……時々、ダイナーって叫びながら変身したりはしてたんだけどね。 よし……いい機会だし、何か考えるか」 ~数日後~ シグナム「アスカ、敵だ!! ダイナに変身してくれ!!」 アスカ「よっしゃあ!! 新しく考えた、変身の奴を試すチャンスだ!!」(リーフラッシャーを掲げる) ザフィーラ「ふむ……どんなの考えたんだ?」 アスカ「ヘキサゴン!!」(変身) 全員「「それは色んな意味でアウトだ、つるのぉ!!」」 ○特訓のお約束 ~14話のヴィータの特訓が、レオのアレだったら~ ゲン「その顔は何だ!!その目は何だ!!その涙は何だ!!」 ヴィータ「んなもんで追いかけられたら、誰だって泣くわぁぁぁぁぁ!!」 ダン(……ゲン、お前にとっての特訓はやっぱりそれなのか) 【ゲン 轢き殺さない程度のスピードで、ヴィータをジープで追い回す】 ○管理局の白い悪魔 ミライ「管理局の白い悪魔?」 フェイト「ええ、まあ……一部じゃ、なのははそう呼ばれちゃってて……」 クロノ「誰かが冗談で言ったことが、そのまま広まってしまったんだよな」 ミライ「白い悪魔……」 なのは『仏様を大切にしろ!! 大切にしない奴は、死ぬべきなんだ!!』 ミライ「ま、まさかなのはちゃんの正体って……!!」 ユーノ「いや、そっちの悪魔じゃないですから!?」 ○最初に見た時、茶を噴いた(作者談) ~11話、バードン戦終了後~ リンディ「じゃあこれからは、ウルトラ兄弟の皆さんも協力してくれるんですね?」 ミライ「はい、確かにそう言ってくれました」 アルフ「いやぁ~、頼りになる味方が増えて助かるよ」 なのは「きっと今も、怪獣や超獣と、一生懸命戦ってるんですよね……」 ミライ「うん。 この世界の為に、きっと今も兄さん達は……!!」 その頃、噂されてるウルトラ兄弟の一人はと言うと。 セブン「あ、舘さん。 それロンです」 欽ちゃん「お前、喋れんの!?」 セブン「メンタンピン、ドラ3。 12000です」 元気に、ジョージアのCMで麻雀やってました。 セブン「ちなみに今は、登山にも挑戦中だ」 ゾフィー「それより地球を守れや、オイ」 目次へ