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【作品名】魔法先生ネギま! 【ジャンル】漫画 【名前】フェイト・アーウェルンクス 【属性】人造人間 【大きさ】9歳の少年程度 【攻撃力】 石化の邪眼:対象を石化させる光線を指先から放つ魔法。無詠唱発動可能 射程は10mくらい 石の息吹:触れると石化する煙を発生させる。無詠唱発動可能 範囲は20mくらい 石の槍:最大で30~40mほどの、岩を呼びだして攻撃する。無詠唱発動可能 冥府の石柱:長さ100mほど、幅20mほどの石柱を複数召喚して降らせる。詠唱に2、3秒ほどかかる 【防御力】先鋒以上と思われる魔法障壁を常時展開状態で戦闘可能 魔法障壁により「獄炎煉我」状態の先鋒の「雷の投擲」が効かない 【素早さ】戦闘速度はマッハ500で、その速度で近接格闘可能な反応 水を使った転移によってかなりの遠距離を一瞬で移動可能 浮遊術や縮地を駆使する 【長所】石化魔法 【短所】描写不足 【戦法】初手石の息吹 効かなければあきらめて石の槍などで攻撃 【先鋒】 【名前】ネギ・スプリングフィールド 【攻撃力】 雷の投擲:帯電した長さ8mの魔法の投げ槍を放って攻撃する呪文 直径20mほどの石柱を容易く真っ二つにする(「獄炎煉我」状態) 全長40mほどの砂蟲を串刺しにする(「疾風迅雷」状態) 【防御力】全力で障壁(任意発動)を展開すれば1.2km程度の爆発を起こす「燃える天空」を防御可能 61スレ目 850 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2009/05/13(水) 23 14 26 フェイト・アーウェルンクス ○>ルージュ>和泉紫音>マリコ>更木剣八:石化勝ち ×>神野亜零 :認識断絶負け ×>黒セイバー:分子焼き尽くすビーム負け ×>うちはイタチ:精神攻撃負け フェイト>ルージュ>和泉紫音 9スレ目 539 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2008/03/03(月) 01 25 24 フェイト ×バズ=ガイガン 相手速い、ギロチン負け ×勇次郎 相手速い、接近殴られ負け ×カラミティ 相手速い、紅炎竜霊撃されて負け ○ジオダンテ>緑=天堂地獄 石化させて勝ち カラミティ>フェイト>ジオダンテ
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キャラクター別SS追跡表 シグナム No. タイトル 作者 登場人物 022 烈火の爪(れっかのそう) ◆G/G2J7hV9Y シグナム、アナゴ 036 パラレルワールドって怖くね? ◆OGtDqHizUM スバル・ナカジマ、アルフォンス・エルリック、シグナム、アナゴ、でっていう 057 Double-Action Rascal formDouble-Action Rascal form(後編) ◆nkOrxPVn9c スバル・ナカジマ、アルフォンス・エルリック、シグナム、アナゴ、でっていう 100 MURDER×MURDER(前編)MURDER×MURDER(後編) ◆OGtDqHizUM スバル・ナカジマ、アルフォンス・エルリック、シグナム、アナゴ、衝撃のアルベルト 115 Survivor Series ◆EKhCqq9jsg シグナム、衝撃のアルベルト、アルフォンス・エルリック、スバル・ナカジマ 127 不都合なものは見えない ◆X5fSBupbmM 結城奈緒、ラッド・ルッソ、シグナム スバル・ナカジマ No. タイトル 作者 登場人物 036 パラレルワールドって怖くね? ◆OGtDqHizUM スバル・ナカジマ、アルフォンス・エルリック、シグナム、アナゴ、でっていう 057 Double-Action Rascal formDouble-Action Rascal form(後編) ◆nkOrxPVn9c スバル・ナカジマ、アルフォンス・エルリック、シグナム、アナゴ、でっていう 100 MURDER×MURDER(前編)MURDER×MURDER(後編) ◆OGtDqHizUM スバル・ナカジマ、アルフォンス・エルリック、シグナム、アナゴ、衝撃のアルベルト 115 Survivor Series ◆EKhCqq9jsg シグナム、衝撃のアルベルト、アルフォンス・エルリック、スバル・ナカジマ 128 私にできること/一緒にできること ◆X5fSBupbmM 赤木しげる(19歳)、南春香、スバル・ナカジマ、涼宮ハルヒ、園崎魅音 セフィロス No. タイトル 作者 登場人物 030 夜天の天使、飛び立つ ◆0O6axtEvXI セフィロス 040 Advent:One-Winged AngelAdvent:One-Winged Angel(後編) ◆9L.gxDzakI 柊かがみ、高町なのは(StS)、セフィロス 048 小早川ゆたかの遺言 ◆vUo//O.X1M 小早川ゆたか、セフィロス 高町なのは(StS) No. タイトル 作者 登場人物 011 めぐりあう双星 ◆DiyZPZG5M6 柊かがみ、高町なのは(StS) 040 Advent:One-Winged AngelAdvent:One-Winged Angel(後編) ◆9L.gxDzakI 柊かがみ、高町なのは(StS)、セフィロス 055 K-パックス ◆BOMB.pP2l. 柊かがみ、高町なのは、前原圭一(やる夫) 096 悲しみは絶望じゃなくて明日のマニフェスト ◆EKhCqq9jsg 柊かがみ、高町なのは、前原圭一(やる夫) 099 涙の誓い(前編)涙の誓い(後編) ◆DiyZPZG5M6 小早川ゆたか、6/氏、泉こなた、柊かがみ、高町なのは(StS)、前原圭一 フェイト・T・ハラオウン(StS) No. タイトル 作者 登場人物 027 救いを求めるその相手 ◆0O6axtEvXI フェイト・T・ハラオウン(StS)、熱血王子 067 彼女のフラグ取捨選択 ◆UcWYlNNFZY 素晴らしきフラグビルド、フェイト・T・ハラオウン 074 Welcome to this crazy Time ◆EKhCqq9jsg 赤木しげる(19歳)、南春香、素晴らしきフラグビルド、フェイト・T・ハラオウン 076 夢のかけら ◆nkOrxPVn9c 赤木しげる(19歳)、南春香、素晴らしきフラグビルド、フェイト・T・ハラオウン 082 ……も死んだし、そろそろ本気出す ◆LcLEW3UbhI 赤木しげる(19歳)、南春香、素晴らしきフラグビルド、フェイト・T・ハラオウン 098 飢え「無我夢中」の無礼講 ◆EKhCqq9jsg 赤木しげる(19歳)、南春香、フェイト・T・ハラオウン、赤木しげる(13歳)、南千秋、素晴らしきフラグビルド 103 Ego-Eyes Glazing OverEgo-Eyes Glazing Over 後編 ◆nkOrxPVn9c 武藤遊戯、熱血王子、赤木しげる(19歳)、南春香、フェイト・T・ハラオウン 遊城十代 No. タイトル 作者 登場人物 005 忘却の決闘者 ◆0O6axtEvXI 遊城十代、忘却のウッカリデス 053 毒をもって毒を制す ◆KuKioJYHKM 遊城十代、忘却のウッカリデス、小早川ゆたか 085 大都会交響楽大都会交響楽(中編)大都会交響楽(後編) ◆BOMB.pP2l. 地球破壊爆弾No.V-7、泉こなた、6/氏結城奈緒、忘却のウッカリデス、遊城十代阿部高和、ラッド・ルッソ、桂言葉、真・長門有希
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フェイトの2人の母 「生みの親」であるプレシア・テスタロッサ。「育ての親」であるリンディ・ハラオウン。 右側の写真にプレシアとともに写っているのはフェイトではなく、姉のアリシア。こちらは両者とも故人。 左側に映ったハラオウン家の家族写真に映っているのは、兄のクロノと義姉のエイミィ。 2人の子供(フェイトにとっては甥と姪に当たる双子)カレルとリエラ。フェイトの使い魔であり、ハラオウン家家事手伝いのアルフ。 公開意見陳述会 主要世界において1~2年に一度行われる会議。 発表された地上本部の運用方針に対しての議論が行われ、その様子は当該世界の地上のみならず、各世界に公開される。 限定解除 犯罪や隠遁活動を行う魔導師は、通常活動の際に自身にリミッターを施すことが少なくない。 大きすぎる魔力は探査にかかりやすく、さらに維持活動のためのエネルギー(食料等)の補給がより多く必要となる事もあるため。 そのため、通常時は限定下で活動、必要に応じてリミッターを開放・本来の魔力を発揮する。 IS シルバーカーテン シルバーカーテンによるクラッキングで、地上本部の管制システムに侵入。センサー・サーチャー類の情報を幻惑。司令部を混乱させている。 いかに優秀な電子戦技能の所有者といえど、管理局の使用する管制システムは「鍵」を持たない外部の者からの侵入を許すことはない。 内部にすでに侵入していたセインとチンクらによる内部からの「鍵」の入手や、適切かつ正確な「事前情報」の保有が、 この潜入を容易なものとしている。 IS ディープダイバー 無機物を透過して移動する、No.VI・セインのIS(先天固有技能)。バリアやフィールドで遮られやすいという欠点を持つが、 「事前情報」による内部把握によってその網目を潜り、中枢司令部まで到達している IS ランブルデトネイター No.V・チンクのIS。自身が一定時間接触した金属片を爆発物に変化、チンクの意志によって任意のタイミングで爆破することが可能。 通常は愛用のスローイングナイフ「スティンガー」に付与して使用する。 IS ヘヴィバレル NO.X・ディエチのIS。「自身の内包エネルギーを砲撃状に撃ち出す」という一点のみに絞られたこのISは、単純故に威力・精度と応用性に富む。 今回使用された砲弾は麻痺性の気体兵器で、着弾後に空気と反応、ガスとなって広範囲に広がってゆく。 IS スローターアームズ NO.VII・セッテのIS。固有武装・ブーメランブレードを制御する技能で、空戦技能はトーレと並んで12姉妹屈指の性能を誇る。 バリアジャケット防御データ 魔導師たちが纏うバリアジャケットは、通常その魔導師が遭遇しうる状況をある程度セレクトして対応するフィールドやバリアを設定している。 六課メンバーのジャケットは衝撃・熱変化や魔力攻撃に対して高い防御性能を誇るが、気体兵器についてはごく一般的な一時遮断機能しか持ち合わせないため、 術者自身やデバイスに頼った防御が必要となる。今回のように対応すべき状況が特定された場合は、解析した情報に合わせてデータを更新することで、 より万全な防御を行うことが可能となる。 ユニゾン 古代ベルカ式特有の、騎士と融合騎(ユニゾンデバイス)の「融合(ユニゾン)」による強化。 通常は騎士の体をベースに融合騎が融合する(逆の場合も、稀ながら存在する)融合により、騎士は融合騎の、 融合騎は騎士の魔力を自由に使用することができる他、騎士と融合騎がそれぞれ独立して魔法を使用することも可能。 また、両者が同一の魔法や魔力運用行動を行うことで、威力や精度を倍加することができる。なお、瞳と髪の変色は、ユニゾン時特有の変化。 魔力運用 魔力を体外で結合できないAMF状況下において、 AMFの影響を受けづらい「体内」で練り上げた魔力を体から離さずに運用することで魔力使用を可能としている。 今回はエレベーターワイヤーを使用したラベリングの際、防御魔法を掌に集中、掌を保護している。 ギガントハンマー グラーフアイゼン・ギガントフォルムによる打撃。 ヴィータとリインフォースIIの魔力を乗せた打撃は、物理・魔力量面で高い破壊力を誇る。 武装・ジェットエッジ No.IX・ノーヴェの固有武装。足首部分にスバルのリボルバーナックルにおけるスピナーと同様の機構を持つ「ブレイクギア」を持ち、 踵部分に噴射推進による加速機構を持つ「蹴り」のための武装。 フローターマイン No.XI・ウェンディによる射撃応用。「射撃型」であるウェンディは、ミッド式魔法と極めて近い運用でエネルギーを使用する。 空間に漂う反応弾は、衣服が触れる程度の反応でも爆裂する、殺傷力の高い弾丸。 設置までにかかる時間は、前衛として突撃したノーヴェとのコンビネーションで稼いでいる。 騎士と融合騎 騎士と融合騎の間には、「相性」が存在し、融合相性の良い騎士と融合騎であれば、1+1が3にも4にもなる可能性を秘めている。 反面、相性が良くない場合、1+1が2にすらならず、1.5や1.2で終わってしまう事もある。 「融合した騎士の力を高めてやれない」事は、融合騎にとっては何よりもやるせなく、悲しい事実である。 烈火刃 アギトの魔力変換による武器強化魔法。刃に炎を灯して熱による付加効果を与える。 術者との相性や融合練度によっては、長く伸ばした炎を武器の延長のように使用する事も可能となるのだが、 ゼストとアギトには、そこまでの精度を得るための相性も時間も与えられていなかった。 エリアルショット ウェンディの射撃。ライディングボード前部に集中したエネルギーを弾丸状に射出する。 弾速やターゲッティングも速く、正確な射撃ではあるが、エリオの回避能力がそれを上回っている。 IS ブレイクライナー No.IXノーヴェのIS。ウイングロードと類似した、 空中に道を造り出すエネルギー運用「エアライナー」と武装「ガンナックル」「ジェットエッジ」による突撃と破壊。 最前衛として戦うための武器のみを十分すぎるほど与えられた、ノーヴェの誇る固有技能。 フェイク・シルエット 戦闘機人の知覚も騙す、ティアナの幻影。 ウェンディが察した通り、ティアナはある事情から「戦闘機人の持ちうる知覚情報」についてのデータを保有している。 コンビネーション ブーステッドイリュージョン ティアナとキャロ、後衛コンビによるコンビネーション。 キャロのブーストによってティアナの幻術を強化・増幅、圧倒的な数の幻影を作り出している。 ガンシューター ノーヴェの射撃。ガンナックルからエネルギー弾を射出する。牽制や範囲制圧を行う際に使用する。 ウンヴェッターフォルム ストラーダのフォルムIII(ドライ)。エリオが保有する「電気変換」の資質を最大限に強化するための形態。 ガジェットをはじめとする機械兵器に対して、特に高い効果を発揮する他、 フォワード4人の中では貴重な「範囲攻撃」を獲得・強化することを目的としている。 サンダーレイジ ストラーダ尖端からの電撃放出による範囲攻撃。 接触した対象を中心に、周辺に弾ける電撃によって対象をスタン・あるいは破壊する。 IS レイストーム No.VIII・オットーのIS。ミッドチルダ式魔法と酷似したエネルギー運用により、後方からの広域支援を旨とする。 攻撃のみならず、防壁・結界展開といった能力も保有している。 風の護盾 シャマルの防御魔法。広い範囲に防壁を展開し、対象の攻撃を防ぐ。 指定空域に発生する攻撃に対して自動的に防壁が展開され、その正確さと強度から、堅固な防御性能を誇るのだが…。 ブラックアウトダメージ 強力な純粋魔力ダメージを受けたり過剰な魔力使用などによって、術者の魔力が完全に底をつくと、術者は意識を失う。 これは「ブラックアウト」と呼ばれ、魔法の練習や訓練などでも起こりうる状態。 だが、限界を遥かに超えた大魔力使用など、術者自らが瞬間的に強大な過負荷をかけた場合、 魔力のみならず身体にもダメージが及ぶことがある。これをブラックアウトダメージと呼び、 リンカーコアを中心に全身への負荷が体組織の損傷を引き起こすことから、時に深刻な事態になることもある。 リインフォースIIはゼストの攻撃からヴィータとグラーフアイゼンを護るための防御魔法使用で、この状況となった。 IS ツインブレイズ No.XII・ディードのIS。 双剣を使用した空戦技能の総称で、使用する双剣の刀身も、ディード自身のエネルギーによって生成、実体化して固定される。 射撃魔法 魔導師としての経験を持つヴァイス。生来の魔力に恵まれなかった彼だが、高度な制御能力による精密狙撃を得意としていた。 未調整の汎用デバイスでAMFを貫通する多重弾殻を連射できている事からも、その技術が伺えるのだが…。 ザンバーフォーム バルディッシュのザンバーフォーム。巨大な魔力刃を持つ大剣で、切断・破壊といった攻撃能力において高い性能を誇る。 10年前の時点では体格との比率などから小回りが利きづらい面もあったが、体格・魔力制御能力ともに成長した現在では、 狭所や高速戦への対応も十分に可能となっており、伸長する刀身による遠い間合いや、重く鋭い一撃など、 「強敵」を相手にする状況において、フェイトはこの形態に深い信頼を置いている。 轟炎 アギトの火炎魔法。極大の火炎球を発生させ、それを対象に叩きつける。着弾時には高温高圧の燃焼爆発を発生させる危険な魔法。 本来はユニゾンアタック用途の魔法であり、騎士の魔力も使用して発動、発射するためのもの。 アギトが単体で使用するにあたっては、大幅な魔力消費や発射制御時の高い負荷など、アギト自身の危険度も高い。 フルドライブ 魔導師や騎士は、通常、自身が保有する「潜在魔力」の6割程度までしか使用できないと言われている。 それ以上の魔力使用による負荷は身体にダメージを与える事から、体が本能によって過剰使用を拒否する。 デバイスも同様で、耐えうる負荷強度にはある程度余裕を持って使用しないと本体破損の危険がある。 その本能や安全機構を、あえて無視して限界に近い出力を出すのが「フルドライブ」である。 過剰負荷によるダメージは身体に残り、傷や体調不良を持っている術者であれば、それらを悪化させる要因にもなる。 戦闘機人・タイプゼロ 人の体をベースに機械式の動作機構を持つ戦闘兵器「戦闘機人」。スカリエッティ一味が「タイプゼロ」と呼ぶ「2体」は、 同じ戦闘機人であるナンバーズらとは異なる製作者の手で、異なる製作コンセプトで製作された機体。 スカリエッティは貴重な研究対象として、この2機を捕獲しようとしていた。 振動破砕 スバルの固有技能。四肢端末部からの振動波発生により、対象に共振現象を発生させ、粉砕することを旨とした破壊技術。 接触によって伝達される振動は、対象の外装・装甲のみならず、内部で護られた骨格・機械部品といった「脆く固い」部位にも瞬時に到達、 共振によって破砕する。絶対的な威力を持つ反面、使用者であるスバル自身やその装備品へのダメージも甚大。 IS エリアルレイヴ No.XI・ウェンディのIS。固有武装ライディングボードに騎乗、飛行する能力。 飛行移動は勿論、貨物運搬にも有効であり、小型貨物機に匹敵する高重量を運搬することも可能。 ハードシェル No.V・チンクの防御技能。防御武装・シェルコートの補助を得て発生させる球状の防壁は、衝撃や爆発からチンクを護る。 施設規模の大爆発にも耐える、高い強度を誇るが…。 オーバーデトネイション チンクの攻撃技能。空中に放った多量のスティンガーを対象に向けて集中発射、爆破する。 プロテクション スバルの危機に、マッハキャリバーが独自の判断で発動させた防御魔法。スバルが発生させる振動破砕の余波や、 限界超過で放たれる踏み込みや蹴りの衝撃で破損しながらも、スバルを護るべく、最大強度で発動させている。 リアクティブパージ スバルらのバリアジャケットに搭載された最終防御機構。防御で防ぎきれない衝撃に対して、 バリアジャケット自身が構成魔力を爆破することで衝撃を緩和、術者の身体ダメージを抑え、生命を護る。 爆散するのは「装甲」を担うジャケット外装部のみだが、爆散衝撃の緩和の際、アンダージャケットも破損・消耗するため、 リアクティブパージ発動後は、術者はほぼ無防備な状態となる。 記憶転写型クローン ミッドチルダをはじめ主要世界では、「人間」をクローニングする技術は、特定医療分野における一部の特例を除いて厳重に禁じられている。 だが、さまざまな目的のために生み出される「違法クローン」は後を絶たない。 中でも10数年前から台頭しはじめた「プロジェクトF」という名で呼ばれるクローニング技術は極めて優秀で、 元となった人物の特徴や記憶を鮮明に受け継ぐクローンを作成することが可能。このため、 「亡くなった者の復活」という目的でこの技術を求める人物は決して少なくない。だがこの技術で生まれたクローンも、 オリジナルとは異なる個性や性格、資質を発揮することも多く、完全なものではありえない。 デューゼンフォルム ストラーダのフォルムII。ヘッド部に6機、柄の末端に1機、計7機の推進機構を保有する、「ロケット推進槍」とでも言うべき形態。 ヴィータの愛機グラーフアイゼンのフォルムII、ラケーテンフォルムを参考に生み出された。 推進加速による斬撃・刺突の強化のみならず、推進制御によって空中で姿勢をコントロール、限定的な飛行活動を行うことも可能となっている。 竜騎召喚・ヴォルテール 大型召喚獣の召喚は、通常は長い詠唱制御によってのみ達成されるが、「キャロの危機」に際しては、 ヴォルテールはキャロの意志と呼び声のみ(状況によってはそれすらなくとも)現れる。 キャロの巫女としての資質であり、「真竜」ヴォルテールの意志でもある。 ギオ・エルガ ルシエの古い言葉で「咆吼する炎」の意。周辺大地の魔力を吸収し、炎熱を伴う巨大な魔力砲として撃ち放つ、ヴォルテールの殲滅砲撃。 クイント・ナカジマ ゲンヤの妻で、スバル・ギンガの「母親」。陸戦魔導師で、かつての階級は准陸尉・魔導師ランクはAA。魔法術式は近代ベルカ式。 学生時代から研鑽を積んでいたシューティングアーツを駆使して、地上本部の陸士隊配属後は捜査官として活動していた。 戦闘機人 人の体と機械を融合させ、戦闘兵器としての能力を高める研究と、その成果。スカリエッティ製の戦闘機人は、 基礎フレームと呼ばれる駆動骨格、機械強化された知覚器官(ズームレンズを内蔵した瞳等)を持ち、 全身の生体部品も技術の粋を尽くして強化されている。 闇の書の罪 長きに渡って管理局を悩ませてきた、無限に転生し、破滅と悲劇を生み出していったロストロギア「闇の書」。 たまたまその主に選ばれ、自身も生命の危機に晒された八神はやてにとって、闇の書の罪は無関係と言って良いものであるのだが、 はやては自身とともに過ごした守護騎士たちと「闇の書の意志」…初代リインフォースとの絆をもって、 その罪をともに贖ってゆく決意を決めている。 人造魔導師 人工的な手段によって「強力な魔導師」を生み出す研究。スカリエッティが完成させた「人造魔導師」は、 人口のエネルギー結晶を魔導師のリンカーコアと融合させ、エネルギー結晶が内包する力を自在に引き出すというもの。 人造魔導師研究の中でも、使用する結晶体に、膨大な力を持つ「レリック」を使用することで生まれるものが「レリックウェポン」。 古代ベルカで行われていた研究をスカリエッティが解析・復活させ、 独自の改良を加えて完成させた(ルーテシア・ゼストの両名は、このレリックウェポンの実験体でもある)。 アースラ 時空管理局が保有するL級艦船で、かつてリンディ・ハラオウンが次元航行部隊の艦長職についていた際に乗っていた艦。 なのは・フェイト・はやてらが管理局に入局したばかりの頃、その活動のほとんどはこの船を拠点として行われていたため、 3人にとっては思い出深い艦でもある。 聖王の器・王の印 「聖王の器」ヴィヴィオと、「王の印」レリック。 両者の結合によって生まれるもの。それこそがスカリエッティが求めてきたものの「鍵」となる。
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「ただいま、アルフ」 「ただいま」 「二人ともお帰り~」 アルフがフェイトに抱きつく。 「大丈夫だったかい?」 「うん。ほらこの通り」 ポワッと宙に浮かぶジュエルシード。 「さっすがアタシのご主人様!で、アスランも大丈夫かい?」 首だけをアスランの方へ向ける。 「そんなとってつけたみたいに言われてもな・・・」 「ま、いいじゃないか。あんたも無傷みたいだし」 頭の先から足の先まで見て、これといった外傷のない事を指摘する。 「まあな」 「それに・・・昨日の子もいた」 「昨日のって・・・フェイトの邪魔をしたっていう子かい?」 「うん。後・・・」 チラッとアスランに視線を向けて 「アスランの知り合いの人もいた」 「・・・戦ったのかい?」 アルフがアスランを見据える。 「・・・ああ」 一息置いて答えるアスラン。 「・・・ま、何にせよ無事ならいいじゃないか」 「・・・そうだね」 アルフの言葉にフェイトも同意する。 「とりあえず俺は部屋で休むよ。あ、フェイト」 「はい」 「後でまた特訓に付き合ってくれないか?」 「わかった」 それだけ言葉を交わし、アスランは自室へと戻る。 部屋に戻ったアスランはベッドで横になり、天井を見上げながら先程の戦闘を思い出していた。 今日のキラの動きを見る限りではまだ魔法を使い始めて何日も経っていないようだった。 いや、昨日の時点で結界内でバリアジェケットを装着していないことから察するに、 力に目覚めたのは昨日の夜か、今朝のジュエルシードの封印の時かもしれない。 それにキラ自身ジュエルシードの事をよくわかってないみたいだったし。 だが、目覚めた以上はこれからこっちの世界にも深く関わることになるだろう。 そうすれば、次に会った時には今日よりずっと強くなっているかもしれない。 今日の戦闘では自分自身もほぼ無傷で勝てたが、この次はこうはいかないだろう。 だが、俺は負けるわけにはいかない。 プレシアとの約束を、フェイトの邪魔は誰にもさせない。 その為にも、俺はもっと強くならないといけない。 「・・・・・・お、れ・・・は」 戦闘の疲れが出たのか、昨日一睡もしていないことも重なり、 段々と意識が遠のき、アスランは目を瞑る。 そして意識は深い闇へと落ちていく。 翌朝。 「それじゃ、結界を張るね」 「お願い」 ユーノの足元に魔方陣が展開する。 そして広がる空間。目に見えない空間だが、魔力の素質を持つ者は感じることの出来る空間。 その空間はある程度の広さまで広がると、膨張を停止する。 「レイジングハート」 『Yes、My Master』 「ストライク」 『OK、Mastar』 「「セッート、アーップ!!」」 言葉と共に輝く赤き宝玉と白き結晶。 その輝きがそれぞれの主を包み込み、光がはじけると、それぞれのバリアジャケットが装着される。 「それじゃ今日からキラさんも特訓に参加するんだけど、その前にストライクの事を教えてもらいたいんだ」 「ストライクの事を?」 「はい。僕は多少魔法の知識はあってもそのデバイス、『ストライク』を良く知らないので・・・」 「あ、私も知りたい!」 なのはがユーノの言葉に便乗する。 「ストライクに関しての知識は契約の時に全て頭に流れ込んできたから説明くらいなら出来るけど・・・」 「昨日、赤いジャケットと緑のジャケットがありましたよね。それの説明をお願いしてもらっていいですか?」 「そうだね。それじゃ、ストライク、エールジャケット!」 『OK、Change、エールジャケット』 上半身が輝き、白い服の上から赤いジャケットのような服が発現する。 「えと、これが『エールジャケット』。主に高速移動や空での戦いに向いている、かな」 「一番最初に着てた服だよね」 「うん」 「装備はこのライフルと、盾と、」 右手のライフルを腰にマウントし、肩の白い筒を引き抜き、筒の先から桜色の魔力がサーベル状に発現する。 「このサーベルが二本かな」 同じ筒が左肩にも装着しているのを指で指摘する。 「次は・・・ストライク、ランチャージャケット!」 『OK、Change、ランチャージャケット』 赤いジャケットが光り、緑色のジャケットへと変化する。 そして左の肩から見える大きな大砲のようなものはキラの足元近くまで伸びていた。 「武器は二つ、一つは」 カシャッと右肩のショルダーガードの部分の正面パネルが開き、 バシュッ!!といくつかの魔力弾が発射される。 何もない空へと向かっていく弾は、結界内でかき消されてしまう。 「この拡散型のタイプと、」 左手を上げ、左背面にある大砲を正面へと向け、両手で支える。 「この長距離型バスター『アグニ』の二つだね」 「これも昨日着てた服だよね」 「うん、地面に落とされた時、何とか封印を阻止しようとしてこのジャケットに換装したんだ」 昨日の回想:キラ視点 アスランの蹴りが腹部に入る。 みぞおちを狙ってくるあたり、さすがはアスランといった所だろう。 言葉にならないくらい痛い。 だけど痛いよりも食らった反動で地面に落ちていって激突したら、不味いことになりかねない。 何とか体勢を立て直そうとするが、落下するスピードの方が早い。 直撃は避けたい。そう思ってシールドを掲げようとしたら 「キラさんっ!!」 誰かが僕の名前を呼ぶ。 そして地面と激突すると思ったその瞬間。 僕と地面の間に魔法の壁のようなものが発生し、それが衝撃を和らげてくれた。 それのおかげで地面に安全に着地できた。 「ありがと・・・」 助けてくれた誰かにお礼を言おうとし、先程名前を呼んだ発生元へと首を向け言葉を発しようとしたが、 途中で止まってしまった。 普通なら、視線の先には誰かがいる。 そう思ったのだが、そこには誰もいなかった。 否。正確には、人間の"カタチ"をした者はいなかった。 代わりにそこにいたのは一匹の小動物。 巡る思考、そして一つの結論が弾き出される。 「大丈夫ですか!?」 脳内で弾き出した答えを否定しようとした瞬間に、目の前の小動物は堂々と言葉を発した。 そう、キラの答えは間違ってはいなかった。 助けてくれたのは目の前のフェレット、『ユーノ』であるという事。 自分に今話しかけているのは、高町家のペットの、『ユーノ』であるという事実。 「キラさん?」 再び話しかけれてようやく目の前の現実を理解し、受け止める。 「えと・・・君が助けてくれたの?」 自分的に何をフェレットに話しかけているのかと思うのだが、実際目の前のフェレットは自分に話しかけているのだ。 「あ、はい。衝撃を和らげる為に、浮遊の魔法陣を使ったんです」 そしてその言葉で追加される項目。 自分を助けてくれた『ユーノ』が魔法を使えるという真実。 普通だったらあまりの事についていけないんだろうが、 実際自分自身が今魔法を使っているのだから何ともいえない現状である。 「えと・・・助けてくれて、ありがとう」 「あ、いえ。僕にはコレぐらいしか出来ませんから・・・」 上空に響く、魔力のぶつかる音。 それに反応して見上げる二人。 見るとアスランの銃撃をバリアで防御し、防戦一方のなのは。 そして首を少し動かして見ると、金髪の女の子がジュエルシードの前にいた。 女の子は持っている黒い斧を掲げる。 「まさか、封印を!」 ユーノが驚きながら声を出す。 封印とは先程なのはちゃんがしようとしていたことだろう。(アスランに邪魔されたけど) 「封印されたら、もう手が出せない!」 「えっ!?」 なら何とか封印を阻止しないと。 だが、ここからじゃ距離が遠すぎてライフルが届かない。 もっと遠くまで飛ばせる長距離砲か何か・・・ 『マスター』 不意に響く機械的な声。 『ランチャージャケットを使用してください』 ランチャージャケット・・・・・・そうか!! 「うん、そうだね!ストライク!ランチャージャケット!!」 『OK、Change、ランチャージャケット』 それまで着ていた赤いジャケットが緑色へと変化する。 「これなら・・・っ」 左手に背後の大型のバスター『アグニ』を上空に構える。 「あそこまでいける?」 視線の先には、金髪の女の子。 『No Problem』 「よし・・・」 狙いを定め・・・威嚇するように・・・・・・。 「ストライク!」 『アグニ、バースト』 そして、一発の閃光が空へと駆け上る。 「でも結局ジュエルシードは奪われちゃったね・・・」 昨日の失敗を悔やむキラ。 「でも、今度はそうならないように頑張ろう!」 それを励ますなのは。 「それで、ストライクの換装はその二つですか?」 「いや、もう一つあるんだ」 「もう一つ?」 なのはの記憶にあるのは赤いエールと緑のランチャーのみなのだが、まだあるという。 「うん、ストライク!ソードジャケット!!」 『OK、Change、ソードジャケット』 先程と同じようにジャケットが輝き、変化していく。 そして光が消えて、現れたのは水色に近い、青のジャケットだった。 左手には小型のシールドと左肩に角のようなものがあり、 先程と違って今度は右肩にジャケットと同じ色の大剣が背負われていた。 「このソードジャケットは接近戦用かな。武装は」 左手を上げて、肩の角を持ち、引き抜く。 引き抜かれた角の先から短めの魔力刃が形成される。 「このブーメラン『マイダスメッサー』と」 左手を前に出し、空へと固定する。 バシュッ!!という音と共にシールドから灰色のクローのようなものが発射される。 「ロケットアンカー『パンツァーアイゼン』」 そしてある程度の長さまで行くと、左手のシールドへと収納される。 「そして・・・」 右手を上げ、肩の背面に装着してある大剣を持ち、前に振り下ろす。 振り下ろされた剣の刃の部分に赤い魔力刃が発現する。 「これが、『シュベルトゲベール』この三つかな」 「『エール』、『ソード』、『ランチャー』・・・・・・」 ユーノは驚きの色を隠せないでいた。 レイジングハートも通常のデバイスと違ってハイスペックなデバイスであることには変わりないのだが、 それでもやはり中・長距離型のデバイスで、接近戦には不向きである。 だが、このデバイス『ストライク』はそれぞれのジャケットでそれぞれの状況下での対応を可能にした、 まさしくオールレンジタイプのオールラウンダー型デバイスなのだ。 「とりあえずこの三つ、かな」 「ふぇ~」 なのはもストライクの詳細を知って驚きの表情を浮かべていた。 「・・・ストライクの事はわかりました。とりあえずそれぞれのジャケットの長所を伸ばすようにしていきましょう」 こうして、キラの特訓が始まった。 それからの日々は、 朝はなのはとユーノとの魔法の特訓。 昼は翠屋での仕事。 夜はなのはとユーノとジュエルシード探し&特訓。 というハードな生活を送っていた。 だが、それでもキラは挫けることなく全てをこなしていた。 そして一週間後。 「温泉・・・ですか?」 翠屋の閉店作業をしていたキラは、いきなり士郎から告げられる。 「ああ、明日は他のみんなにまかせてみんなで温泉に行こうかと思っているんだが・・・キラ君はどうする?」 「僕ですか?」 「ああ、キラ君も一緒にどうかと思ってね」 「いや、でもそんな・・・これ以上迷惑をかける訳には・・・」 ただでさえ、どこの誰かも知れない自分を助けてくれて、食事や寝床、仕事までくれている。 それだけでキラは十分に恩義を感じていた。 それに温泉というのは行った事は無いが、そこそこのお金がかかるはずだ。 「金銭面に関しては気にしないでくれ。第一、君にはうちで働いてもらっているんだ」 「・・・それでも、僕はやっぱり遠慮しておきます」 「・・・そうか、わかった。君がそこまで言うなら強制はしないよ」 「すみません・・・」 士郎の気持ちは、嬉しかった。 こんな自分を家族のように接してくれる高町家の人たちの思いは、とても嬉しかった。 だから、これ以上迷惑をかけたくはなかった。 いつか恩返しをする為にも、自分がここで甘えるわけにはいかない。 そう思い、キラは行く事を遠慮した。 「それじゃ、キラ君」 「はい」 「留守の間、翠屋をお願いするよ」 「・・・わかりました」 翌日、高町家+αのみんなを見送るキラ。 「キラ君、本当に一緒に行かないの?」 「うん・・・ごめんね。その代わりなのはちゃん達はゆっくりと楽しんできて」 「でも・・・」 (こっちでジュエルシードが出たら僕がどうにかするから) 念話で伝えるキラ。 (うん、わかった・・・でも無理しないでね) (何かあったらすぐに連絡下さい) ユーノも念話に加わってくる。 (うん、大丈夫。だからゆっくり楽しんできておいで) ニコッと微笑むキラ。 「いってらっしゃい」 「行って来ます!」 「キュッ」 全員が車に乗り込み、それが見えなくなるまで見送る。 「・・・よし、今日も頑張ろう」 そしてキラは高町家を後にして翠屋へと向かう。 「温泉?」 「そう。あんたも一緒にどうだい?」 「・・・いや、遠慮しておくよ。行くなら二人で行って来るといい」 「どうしてですか?」 フェイトが疑問をぶつける。 「もしこっちでジュエルシードが出現したら、みんな温泉に行ってるとすぐに対処できなくなるだろう。 この間だってうまくあの子の封印を邪魔できたからよかったものの・・・」 そういい、アスランは椅子から立ち上がる。 「だから、こっちでジュエルシードが出現したら俺が封印しておくから。二人はゆっくりしてくるといい。」 ポンとフェイトの頭に手を置き、なでなでする。 「な?」 「・・・はい」 「ありがとうございました~」 本日最後の客が帰っていく。 なんとか大きな失敗もなく、一日を過ごせた事に心をほっとさせるキラ。 「それじゃキラ君、後はお願いしていいかな?」 「あ、はい。お疲れ様でした~」 士郎から翠屋の鍵を預かっているキラは自動的に最後まで残ることになる。 とはいっても、ほとんど残務処理とかは他の店員さん達がやってくれるので、 自分がすることと言えば、清掃と戸締りと金庫の確認ぐらいである。 そして従業員が全て帰り、自分のみになる。 「これで掃除完了っと・・・後は売り上げを金庫に閉まって・・・」 コンコン。 「ん?」 不意にノックされるドア。 もうすでに閉店時間は過ぎているというのに、一体誰が・・・? おそるおそるドアに近づくと、そこに一人の人影が見えた。 とりあえずもう閉店なので、しかたないから今日はお引取り願うとしようと思い、ドアを開けた。 そしてドアを開けると、そこにいたのは一人の少年。 年は自分と同じかちょっと低いくらいの青年だろうか。 「すみません、もう閉店時間なので明日また来店して頂けないでしょうか?」 「そう、ですか・・・ああ、すみません。最後にここのケーキをもう一度食べたかったんですが・・・」 「最後?」 少年のその一言が気になって聞き返すキラ。 「ああいや、実は僕、明日にはこの国から離れることになったんです。それで次に帰ってくるのがいつかもわからないので、 離れる前にもう一度食べたかったなと思ったんですが・・・無理言ってすみませんでした」 少年の気持ちを感じ取ったキラは、「ちょっと待っててください」と言って中へと入っていく。 そして厨房の冷蔵庫の中を確認し、戻ってくる。 「ここじゃなんですから、どうぞ中へ」 突然のキラの申し出に驚く少年。 「えっ?でも・・・」 「大丈夫です、もう僕しかいないので」 「いいんですか?」 「はい」 キラはきっと高町家の人たちならこうするだろうなと思い、青年を中へと招き入れる。 アスランは夜の街を歩いていた。 その理由は、夕食を作ろうとして冷蔵庫に何かないものかと思って空けてみるとほとんど何もなかったので、 食料を買いに行く事にした。幸い、お金に関してはいくつかの手持ちはあるんで困る事はない。 歩いて5分程進むと、コンビニエンスストアが見えてくる。 「ここでいいか」 ドアの前に立つと自動でドアが開き、中へと入っていく。 即座に目に付いたのは、ポツンとおいてある最後の鮭おにぎり。 それを手に取ろうと手を伸ばしたら、 コツン。 横から出てきた見知らぬもう一つの手に当たった。 視線は自動的にその手の主の顔へと行く。見ると、自分と同じくらいの少年であった。 「あ、ごめん」 「あ、いやこっちこそ」 パッと手を離す両者。そしてその場に残る一つの鮭おにぎり。 「・・・やっぱりあんたもそれを?」 「・・・そういう君もか?」 訪れる沈黙。 気まずい空気が辺りを支配する。 「「ど、どうぞ」」 二人の声が見事にハモった。そしてさらに深まる沈黙。 すると、ウィーンと自動ドアが開き入ってくる人物。 カツカツと二人の前に立ち、おにぎりを手に取る。 「「あ」」 そしてレジへと行き、会計を済ませてスタスタと出て行った。 「「・・・・・・・・・」」 唖然としたまま二人はそこに立ち尽くしていた。 「どうぞ」 コトとテーブルの上に置かれるケーキと紅茶。 「ありがとうございます」 中へ少年を招いたキラはカウンターへと案内し、ご注文のケーキを出してくる。 「えと、この紅茶は・・・?」 頼んでいないはずの紅茶が出てきて、聞き返す青年。 「その紅茶とセットが一番人気なんですよ、あ、お代は気にしないで下さい」 「すみません・・・ありがとうございます」 カチャと紅茶の入ったティーカップを持ち、口をつける少年。 「おいしい・・・!」 「本当だったらもっとうまく淹れられたらいいんですけど・・・」 「いや、これでも十分おいしいですよ」 「そういってもらえてありがとうございます」 紅茶の淹れ方とかは一通り教えてもらってはいた。 そして少年はケーキへと手を伸ばし、小さく分けて口へと運ぶ。 「・・・やっぱり、ここのケーキはおいしい」 とても穏やかな顔でとても嬉しそうに食する少年を見て、キラはよかったと思った。 「あの、一つ聞いてもいいですか?」 「はい?」 「いつここのケーキを?」 「えと・・・つい半年ほど前だったんですけど、実は僕、記憶喪失なんです」 「え?」 「半年程前に、僕この町の公園で倒れてたらしいんです。しかもボロボロの状態で」 キラは思わず言葉に詰まった。 まるで自分がついこの間置かれていた状況と瓜二つなのだから。 「その時僕を助けてくれたのが孤児院の院長さんで、僕を拾ってくれたんです。 そして半年程お世話になって、そしてひょんなことから僕がピアノを弾くと、 「君には才能がある」といって僕を知り合いのピアノの先生の所へ留学して頂けることになったんです」 「・・・・・・」 「拾ってもらった後、怪我が治ったお祝いにと、ここに連れて来て貰ったんです。 ここのケーキがとてもおいしいんだ。といって僕にケーキを食べさせてくれたんです」 「そうだったんですか・・・」 「はい。それで、留学が明日に出発なので、最後にここのケーキをもう一度だけ食べたいと思ってきたのですが、 あなたに会えてよかったです。本当にありがとうございます」 少年はそういって深々と頭を下げる。 「あ、いや、そんな・・・」 「そういえば、あなたはここの店長さんですか?」 「あ、いや僕は違うんです。ここの店長さん達が家族で旅行に行ってて、代理で任されたんです。」 「そうだったんですか」 「はい。あの・・・ちなみに記憶の方はまだ・・・?」 「・・・はい」 少年が頷き、俯く。 「何も覚えていないんですか?」 「はっきりと覚えているのは、自分の名前だけで、後は・・・うっすらとですが、ある人の事なら」 「ある人?」 「はい」 アスランは結局食料を買い損ねてしまい、仕方なくコンビニを立ち去ろうとしたら、 先程手がぶつかった少年が話しかけてきた。 「さっきは悪かったな。俺のせいであんたのおにぎりが持ってかれちまってさ」 「気にするな。それにあれは俺のと決まっていないしな。そっちこそすまなかったな。俺のせいで」 「あ、それもそうか。・・・まぁ、お互い様ってことで。それはそうと、あんたこれからどうするんだ?」 食料を買いそびれ、また違う店を探すしかないと思っていたので、それを口にする。 「だったらさっきの侘びもかねて飲み物くらいは奢るぜ」 断る理由も特にないので、ご馳走になるアスラン。 公園のベンチに二人で腰を落ち着け、飲み物を啜っている。 「しかし、よかったのか?」 「何が?」 「コレを奢ってくれたことだ」 そういって手に握っている缶を揺らす。 「ああ、それくらい気にするな」 そういって屈託のない笑顔で返す青年。 「そうか、わかった」 せっかくの少年の好意を無駄にはできないと思い、素直に受け取っておくアスラン。 「・・・・・・似てる」 ふと少年が漏らした言葉に?な表情で見るアスラン。 「ああ、いや気にしないでくれ。俺の知り合いだと思う奴に似てるって思っただけだから」 「だと、思う?」 その部分がとても文章的におかしかったことが気になり、聞き返す。 「・・・実は俺、記憶喪失なんだ」 「えっ?」 「数ヶ月前、この街で俺ひどい怪我してた所を助けられたんだけど・・・それ以前の記憶が全然無いんだ」 「・・・・・・」 「今は孤児院に世話になってるんだけどさ、あんまし迷惑かけたくなくて・・・どっかに働こうかと思ってるんだ。 でも、俺まだ16歳だからさ、ほとんどどこも雇ってくれなくて・・・」 自分と同じ年の人間なのに、その少年の気持ちがよくわかったアスラン。 自分も同じように、誰かを護りたくてザフトに入ったから。 「・・・えらいな、君は」 自分の事を言っているわけではないのだが、素直な感想を口にした。 「んなことねーって・・・それで覚えてるのが、自分の名前と・・・友達・・・だと思う奴の事。 記憶が曖昧だからよく覚えてないんだけどさ、そいつは・・・いつも笑ってて、人から頼まれた事を断れない、断らない奴で、 誰かの為に、いつも頑張ってる奴でさ・・・俺、そいつと一緒に遊んだり、勉強したりした記憶が断片的に残っているんだ」 「・・・・・・」 少年の話を聞いて、アスランは思い出していた。 そういえば、あいつもそうだったな・・・と、今この夜空のどこかにいるはずの元親友の事を・・・。 「変だよな、でも俺、そいつの名前すら思い出せないんだぜ・・・」 「・・・いつか思い出すさ」 「えっ?」 「それは君の大事な思い出で、その人は君にとって大事な友達なんだと俺は思う。だから、消えないんだ。 断片的でも残っているなら、そこから何かを思い出す可能性はゼロじゃない」 「・・・・・・」 「だから、諦めるな」 少年はアスランの言葉を受けて、何かを考えるように目を瞑る。そして目を空けて、夜空を見上げる。 「・・・そうだな」 「すまない・・・確証もないのに、曖昧なことばかり言って」 「おいおい、そこであんたが謝ったらダメだろ~」 バシバシと笑いながらアスランの背中を叩く少年。 ちょうど飲み物を飲んでいる時に食らったので、ゴホゴホと咳き込むアスラン。 「あ、悪い、ちょい力入れすぎたか?」 「・・・気にするな。痛くはないから」 「そっか」 「真面目なんですけど、どこか抜けていて、しっかりしているようで、実は優柔不断な所もあって、でも優しい人でした」 「・・・・・・」 「僕、いつも迷惑ばかりかけていた記憶があるんです」 少年の言葉に思い出すのは、自分の親友、アスラン・ザラの事。 キラも幼少の頃はよくアスランに助けてもらったことを思い出す。 「でも僕、その人の名前も覚えてないんです・・・」 そういって俯く少年。 「でも、その人の事を覚えてるってことはその人に会えたらもしかしたら記憶が戻るかもしれませんよ?」 「・・・そうですね・・・でも、それは少し・・・怖いんです」 「怖い?」 少年の言葉に疑問を浮かべるキラ。 「記憶が無くなる前の自分がどんな人だったのか・・・どこで何をしていたのか・・・ それを思い出すと、今の僕が消えてしまうんじゃないかって・・・そう思ってしまうんです」 見ると、少年の手がかすかにだが震えていた。 記憶の無い不安。それを抱えたことのないキラには少年の痛みがわからない。だけど、 「・・・その人と一緒にいる時の君はどんな風なんですか?」 「え?・・・それは・・・・・・」 考え、記憶を探る少年。 「僕は・・・その人と・・・」 そして導き出される答え。 「笑っています・・・」 少年の瞳から自然と涙がこぼれていた。 「・・・だったら、記憶が戻っても」 「きっと、笑い会えることができると思います」 「・・・・・・そう、ですね」 ポケットからハンカチを出して涙をぬぐう少年。 見ると、少年の手の震えはいつの間にか止まっていた。 「さてと、それじゃ俺はそろそろ帰るとするわ」 少年がベンチから立ち上がり、ん~。と背筋を伸ばす。 「あんたはどうする?」 「・・・俺も今日は帰るとするよ」 食料を買う事はできなかったが、この少年と過ごせた時間は悪くなかった。 「そうかい」 「すまなかったな、それとごちそうさま」 「どういたしまして」 ヒュッと空き缶をカゴへと投げるアスラン。それは弧を描くように真っ直ぐカゴの中心へと入っていく。 「うまいな」 「偶然だ」 「・・・あんたにも、大事な友達っているのかい?」 「・・・ああ」 「だったら、大切にしろよ」 「・・・そう、だな」 今はこの世界でも敵どおしな親友。 「何だよ、歯切れが悪いな。ケンカでもしてんのか?」 「・・・まあ、そんなところだ」 「ふぅん、ま、いいんじゃないの?『ケンカするほど仲がいい』って言うし」 「・・・それとはまた少し違う気もするが」 「ケンカできるってことは、そいつと本音で、本気でぶつかれるってことだろ?お互い譲れないものもあるだろうしさ。でも」 「?」 「あんたが友達の事を大事だって思ってんなら、仲直りだって簡単だと思う」 「・・・・・・」 「仲直りするキッカケがあれば、意外と簡単だと思うぜ」 「・・・・・・」 「だから、あんたも頑張れ」 ポンと肩を叩く少年。 「あ、そうだ」 「?」 「最後に、あんたの名前、教えてくれない?」 「・・・俺はアスラン、アスラン・ザラだ」 「俺はトール、トール・ケーニヒ」 「そっか、覚えたぜアスラン。じゃ、またな」 「ああ、またな。トール」 そしてトールは明かりの無い道の向こうへと消えていった。 (・・・仲直りか・・・) アスランの心は、揺れていた。 (・・・そうだ、俺は別にキラを殺したいわけじゃない・・・) ベンチから立ち上がるアスラン。上を見上げる。 (だが、お前が俺の邪魔をするのなら・・・俺はお前を止めてみせる・・・) そして本日最後のお客の食事が済むと、お会計を済まし、キラも翠屋を後にした。 途中までの道を一緒に歩く二人。 「・・・僕、この国に必ず戻ってきます。そしたら、また翠屋に来ようと思います」 「今度はマスター達もきっと喜んでくれると思います」 「はい・・・今日は本当にありがとうございました」 深くお礼する少年。 「僕にも・・・君の記憶の中の人とよく似ている人がいるんです」 「そうなんですか?」 「はい、でも・・・今ちょっと仲違いしちゃってて・・・なんとか話をしたいと思っているんですけど・・・」 「諦めなければ、いつか必ず伝わりますよ」 「え?」 「だって、あなたがその人の事を大事な友達だと思っているのであれば、その人に伝わるまで、 何度でもぶつかり合うぐらい本気じゃないと、相手には伝わらない」 「・・・・・・」 「中途半端な気持ちじゃなくて、全力で向き合える。それが友達だと思います」 「・・・うん、そうだね。僕もそう思う」 「だから、本気でぶつかってください」 中途半端ではなく、全力で自分の気持ちをぶつける・・・。 今までの自分に足りなかったのは、アスランと本気でぶつかり合うっていう覚悟と気持ちだったのだろうか? (・・・今度は、全力でぶつかろう。僕の本気で) そして別れの時。 「あ、僕こっちなんで・・・」 「そうなんですか・・・」 「最後に」 「?」 「名前を、教えて頂けますか?」 「・・・僕の、ですか?」 「はい」 それは、この世界でキラのたった一つの、唯一の意味を持つ言葉。 「僕はキラ、キラ・ヤマトです」 そして、記憶のない少年のたった一つの、唯一覚えている記憶。 「僕はニコル、ニコル・アマルフィです」 そしてどちらからかともなく、手を握り合い、握手する。 「また、どこかで」 「お会い、できるといいですね」 そしてお互いの手を離し、 「それじゃ、さよなら」 「さよなら」 お互い振り返ることもなく、それぞれの道を歩いていく。 いつか、二人の道が交差することを、願って・・・・・・。
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マクロスなのは 第24話『教導』←この前の話 『マクロスなのは』第25話「先遣隊」 SMSはアクティブ・ソナー作戦が行われたその日の内に、フォールド空間の座標に向けて無人戦闘機(AIF-7F『ゴースト』)部隊を派遣した。 しかしその結果は残念なものだった。 そこには土台から外れたフォールドブースターが浮いていただけだったのだ。 その事実は関係者を大いに失望させたが、ゴーストの持ち帰ったフォールドブースターは驚くべきことを記録していた。 ブースターが外れる寸前に記録したのであろう、アルト達の緊急デフォールドした座標だ。 その知らせに一番狂喜したのはルカだった。 「やった!これでランカさん達を迎えに行けますよ!」 単体でフォールド空間に取り残された場合、生存は絶望的だった。なぜならそんなことをすれば最後、三次元の物体は時空エネルギーの圧力に耐えられず機体が即座に圧壊、自爆するからだ。 しかしデフォールドしているなら話は別だ。 大気圏の離脱及び突入。そして星間航行能力のあるVF-25の生存性(サバイバビリティ)があれば大抵何とかなるはずだった。 しかしその座標はフォールド断層内のサブ・スペースと呼ばれる使わない・・・・・・いや、使ってはいけないゲート位置だった。 この空間に開いたゲートは普段使うゲートとは違って、通常空間との相対位置に必ずしも一致しない。 つまり入って10秒でデフォールドしても隣の銀河だった。という事が起こり得る。そのため救助はフォールド空間を経由せねばならなそうだった。 ―――――しかし救助の準備に取り掛かったSMSに横やりが入った。 『ここから先は我々が行おう。ご苦労』 突然の通達。差出人は新・統合軍だった。 最近風当たりの悪い新・統合軍としては、目に見える成果が欲しかったのだろう。 〝救出〟という美味しいところだけ持っていく理不尽で一方的な申し出だったが、悔しいことにSMSは民間企業であり新・統合軍は大切なスポンサーだった。 そうして今度はその座標に救援の先遣隊として統合軍のゴーストが一機送られることになった。 そのゴーストはフォールドクォーツを応用した通信機が装備されており、これを中継器として向こう側とのリンクが確立できるはずだった。 (*) 新・統合軍 ステルスクルーザー艦内 統合指揮管制所 そこでは一人のオペレーターがフォールド空間に突入したゴーストのオペレートを行っていた。 (なんてことはない。いつもの飛行をすればいいんだ) そう彼は自分に言い聞かせるもののふと手元を見ると、いつも扱うタッチパネル式のコンソールパネルの上に額から垂れたのであろう汗が一滴滴っていた。 この空調の利く艦内で汗を滴らせていたとなると、よほど緊張しているらしいことを再認識せざるを得なかった。今自分のやっていることは全銀河に名を轟かす超時空シンデレラ、ランカ・リーの救出作戦に他ならないのだ。 この作戦を見事成功させた日には、昇進させてもらえるかもしれない。それに何よりの名誉だ。そうすればフロンティアで役立たずの烙印を押されている統合軍軍人の妻や子供として肩身の狭い思いをしてるだろう家族に大手を振って歩いてもらえる。 はっきり言って何度も軍には失望させられた。 (だがフロンティアを守るのも、そこに生きる人を救うのも我らが新統合軍だ!目先の金が目当ての民間軍事プロバイダなんかに任せておけるか!) ハイスクール時代の新・統合軍のパレードを見て、この道を自信を持って進んだあの頃の自分に間違いはないはずだ。 そうでなくとも変えて見せる。そのための力は今手許にある。世界最高峰の技術の粋を結集した「ゴースト」という力が。彼は今それを何不自由なく操作できる自分に感謝した。 事実、その技量は客観的に見ても称賛に値すべきものであった。彼のゴーストはフォールド空間の磁気嵐の中を有線で航行しているが、ある時は自身がスティックを握って誘導し、またある時は巧みな判断で磁気嵐を先読みしてゴーストの自律航法装置に指示を出した。 そうして長い航路の末、目的の座標へとたどり着いた。 ちらりとのぞいたステータス表はオールグリーン。ゴーストは無傷で辿りつけたようだ。 しかし安堵のため息など吐いている暇はない。まだ彼も、そして相棒(ゴースト)も仕事を終えていないのだ。 手元のパネルからゴーストに積んだスーパーフォールドブースターを活性化。フォールドゲートが開いた。 フォールド中継器作動確認。周囲にレーダー反応・・・・・・なし。エンジンリスタート。スーパーフォールドブースター最大出力。 「まもなくデフォールドします。3、2、1」 画面いっぱいにゲートが近づいて――――― 「どうした?」 突然砂嵐になった画面に何が起こったかわからない上官が詰め寄ってきた。 何が起こったのか分からないのは彼も同じだった。予定ではゲートをそのまま突破。後に中継器を介してあちら側とコンタクトするはずだったのだ。 ゴーストのステータス表はリンク途絶を表示し、緊急ビーコンの応答もなかった。 (ウソだろ?全部うまくいってたはずだろ!?) 操作ミス・・・・・・いや、無かったはずだ。 整備不良は・・・・・・三日前オーバーホールしたのにそれはないよな。 磁気嵐にやられた・・・・・・記録を見る限りそんな様子はない。 可能性は潰れていき、ついにはなくなってしまった。つまり、何もわからないのだ。だから彼にはありのままを伝えるしかなかった。 「それが・・・・・・リンクが切れました。原因不明です」 「なに!?」 その上官はともかく状況を確認するとゴーストの回収を最優先して、ゴーストまで伸びているはずのフォールドクォーツの粒子入りのワイヤーを手繰り寄せる。 しかしその先には何もなくて・・・・・・ 彼は改めて自分が失敗したのだということを思い知らされた。 (*) その頃マクロス・クォーターのバーでは一番美味しいところを持っていかれたため、調査隊の隊員達がクサっていた。 特に悔しいのはルカだ。 「酷すぎますよ統合軍は!後少しってところで良いだけところだけ持っていって─────!」 「まぁまぁ、ナナセちゃんには私が伝えるわ。『あなたの彼がランカちゃんを見つけた』って」 シェリルがグロッキーな彼をなだめる。ハタチ前なのに周囲に合わせてお酒を頼んだ彼だが、あれから三時間。まだ一度も口を着けていなかった。 (まったく、まだ子供なんだから) 口には出さなかった。 そこにオズマ少佐が血相変えてバーに飛び込んできた。 「隊長? どうしました?」 「統合軍の先遣隊のゴーストが消息を断ったらしい」 「「え!?」」 その場の一同が唖然とした。 (*) 先のバジュラとの闘争においてあまり目立たなかったゴーストだが、そのサバイバビリティと戦闘力は世界最高峰だ。 そう簡単に落とされぬよう戦略・戦術システムと対ハッキングプログラムは毎週のように更新され、各種探知機から武装まで毎年アップデートされている。 それが消息不明となると事態は深刻だった。 即座に合同捜査という運びとなり、再びSMSが表舞台に立つことになった。 (*) フォールド空間 そこには精密な調査をするためSMSから派遣されたルカ率いる調査隊と護衛のピクシー小隊が展開を始めようとしていた。 母艦となっているのは新・統合軍のノーザンプトン級ステルスフリゲートだ。 今回ゴーストの行方不明の理由もわからず、まだ表向き新・統合軍の管轄として扱われているため船だけ回したらしい。 (僕達の命の重さはこの船一隻分ってことか) ルカは艦長席に座って指揮を取るコンピューター頼りのお飾りペーパーエリートに視線を投げると、ため息をつく。 しかし彼は容姿はともかく大人だった。すぐに (僕達だけで行かせなかったことを評価すべきか) と思いなおすと、自らが座る艦のセンサー類が統合制御監視できる部所である科学・調査ステーションのコンソールパネルを弾いた。 艦に搭載された各種長距離センサーではゴーストが入ろうとしたフォールドゲートの座標に異常は見られない。また、レーダーにも反応はないようだった。 しかしゴーストが行方不明になったことは厳然とした事実であり、宙域に吹き荒れる磁気嵐がセンサーを妨害し、敵機が隠れている可能性も否定できない。 ルカは最新の観測データをこの船の格納庫で翼を休める己が愛機『RVF-25』に転送。その席を統合軍ではない、SMSから連れてきた調査隊の一人に任せると、格納庫に向かった。 (*) ノーザンプトン級ステルスフリゲートは〝フリゲート〟の名に違わず配備数が多く、基本設計は30年以上変わっていない。しかし高速性とステルス性に長け、現在もマイナーチェンジしながら継続して量産が続けられて、各移民船団の主力護衛艦艇として活躍する優秀な艦種である。 それを証明する例としては、過去にバロータ戦役において第37次超長距離移民船団(マクロス7船団)が行なった突入作戦『オペレーション・スターゲイザー』の際、この重要な作戦に母艦『スターゲイザー』として同型艦が使用されていることなどが挙げられる。 さて、この艦はひし形の艦体構造と直線的なフォルムによってパッシブ・ステルス性を向上させている。また、フリゲートと言えど全長は252.5メートルと第二次世界大戦の大和型(全長263メートル、基準排水量64000トン)に匹敵し、兵装は粒子加速(ビーム)砲や反応弾を含めた各種ミサイルなので火力では比較にならない。 しかし運用重量約1200トン(質量)とまさに駆逐艦クラスであり、その差から生み出される内部空間はバルキリー隊などの機動部隊を運用するに十分な広さを提供していた。 SMSのピクシー小隊を率いるクラン・クラン大尉も愛機クァドラン・レアと一緒に格納庫にいた。 彼女の傍らにはバジュラとの抗争時からピクシーの二番機を務めるネネ・ローラが同じようにクアドラン内で出撃待機に入っている。 クランはその首に掛かるペンダントを愛しい物のように〝ギュッ〟とその手に握った。 そのペンダントの先には彼女の愛した人の遺品がある。 その彼が〝見えすぎる目〟の矯正のために掛けていたそれはアルトにとってのVF-25Fというように、今となっては彼女に掛かった呪い(カース)だった。 彼は無防備だった自分を守るために何のためらいもなくその身を盾にして死んだ。 愛のため殉じる。 『そんな陳腐な言葉』と鼻で笑われるかもしれない。しかし彼は自らや大切な友人達を守りきれたことに安堵して散った。 そのためクランはこのペンダントから彼の分まで〝生きる〟という呪いにも似た使命を背負っていた。 (ミシェル、お前は私が戦うことを望んでいないかもしれない。だが、私はゼントランなんだ。お前の守った人達は私が守り続けてみせる!) クランは決意を新たにしながらRVF-25に搭乗を始めたルカを見やった。 (*) 『クラン大尉、僕の『アルゲス』の探知範囲から出ないでくださいよ』 「わかっている」 クランは応えると、ノイズの激しい自機搭載のレーダーから目を離した。 彼女らは今、例のデフォールド座標に向かっている。 SMSのクァドランに搭載された各種レーダーシステムは、新・統合軍より高性能のものを装備しているが、この磁気嵐の中では役に立たなかった。 一方ルカの搭乗するRVF-25の装備するイージスパックはレーダードーム『アルゲス』に代表される強力なレーダーシステムと大容量・超高速コンピューターを搭載。その索敵能力と管制能力はルカの技量も相まって本式のレーダー特化型護衛艦一隻分に匹敵し、航空隊の〝目〟として機能する。 現在ルカはその強力なレーダーシステムとコンピューターを駆使して磁気嵐を寸分の隙なく解析、ノイズを補正し、三機の中で唯一正確なレーダー情報を入手していた。 しかしデータリンク電波も撹乱されてしまうので、ルカから届く音声通信と自身の目だけが頼りだった。 『まもなくデフォールド座標です。ローラ少尉、ワープバブルの位相範囲を最大にしてください』 『・・・・・・はい』 ルカの指示に編隊の最後尾に位置するネネのスーパーフォールドブースターが全力稼働。時空エネルギーの圧力に対抗するために展開されるワープバブル徐々に大きくなり、デフォールド座標までをバブルで包んだ。 ネネはそのまま定点となり、ルカとクランは周囲を警戒しつつ前進。デフォールド座標の調査を開始する。 『─────走査完了。付近に機影なし。フォールドゲートを開きます』 ルカの声が届き、RVF-25の主翼にくくりつけられたフォールドブースターが光を発する。 目前の空間に亀裂が入り、フォールドゲートを形成した。 クランは油断なくゲートに向かってクァドランのガトリング砲を照準するが、ゲートは我関せずとばかりにそこにあるだけだ。 『・・・・・・大丈夫みたいですね』 「ああ」 どうやら取り越し苦労だったようだ。おそらくゴーストも統合軍のバカが操作を間違えて故障させてしまったのだろう。 (これだからデブラン(ちっこいの)の作る機械は─────) と自らの搭乗するゼネラル・ギャラクシー社再設計のクァドラン・レアを棚に置いてため息を着いた。 『それじゃこのままデフォールドします。クラン大尉は先導願います』 「わかった」 彼女は応え機体を前進させようとするが、寸前で左端の方で視界を遮る〝もの〟の存在に気づいた。 胸元に入れていたペンダントが飛び出し、漂っていたようだ。 クランは危ない、危ない。とペンダントトップについた眼鏡の入った容器を掴み胸元に戻す。だがその先にあった左舷を映すディスプレイに光を捉える。 クランの手は即座に動き、ルカのRVF-25を突き飛ばした。 『うわっ!』 ルカの悲鳴と共に、さっきまでバルキリーがいた場所を5メートルほどの光弾が貫いていった。 「ルカ!今のはなんだ!?」 通信を送りながらその物体に腕部のガトリング砲をぶち込む。しかしそれらの弾幕は空しく空を切った。 『現在走査中!─────ダメだ!レーダー反応なし!目標はステルス、もしくは何らかのエネルギー体です!引き続き解析します!』 「チィ!」 クランは機体を横滑りさせて迫る黄色い光球を回避する。ルカもバトロイドに可変してガンポッドを照準、掃射するが、レーダーに映らないので普段コンピューター補正頼りの彼には荷が重い。 そうしているうちに蛇行していた光球は突然180度速度ベクトルを変えると、ルカに突入を始めた。 「おのれ!ミシェル、私に力を!」 クランはその胸に鎮座するペンダントに願掛けすると、機体の出力リミッターと『キメリコラ特殊イナーシャ・ベクトルコントロールシステム』のリミッターをオーバーライド。 機体の主機が瞬間的な200%の稼働によって悲鳴のような高周波の唸りをあげ、まるでゴーストのように設計の限界性能を引き出して加速する。 華奢な彼女の体に人間には到底耐えられない数十Gという莫大な力が働くが、メルトランディである彼女は遺伝的にハイGに耐えられる。それに"守る"と決め、そのための翼を与えられている彼女にとってそれは些末な問題にすぎなかった。 その速度そのままにルカと光球の間に割って入った。設計限界からの瞬間停止によって限界を迎えた慣性制御システムが煙をあげて吹き飛ぶが、クランの瞳はまっすぐに迫ってくる光球から離れなかった。 「ハァァァ!」 腕部にフルドライブのPPBを展開、雄叫びと共にその光球に正拳の一撃を放った。 激突した両者から発生した莫大な時空エネルギーの余波が電流として発現。クァドランの巨体を流れる。 その過電流によって機載の電子機器が次々システムダウンを起こし、沈黙していく。 しかしクァドランはいい意味でシンプルな機体だった。 その基本設計は何千何万周期もこの広い宇宙で戦い続けた『クァドラン・ロー』という機体だ。 『クァドラン・レア』はそれをゼネラル・ギャラクシー社が再設計、現代戦に対応するため多数の電子機器を装備し、武装を改装したものだ。 ゼントラーディの兵器群はプロトカルチャー設計のもので、その耐久年数は人間製のものとは比較にならない。 さる筋の調べによるとピコメートル単位の誤差すらないらしい品質の高さも挙げられるが、その設計のシンプルさが物を言っていたのだ。 その基本設計を受け継いだクァドラン・レアは元々各種電子機器などなくても操縦者さえいれば戦闘稼働が可能なほどのタフな機体だった。 『お姉様!』 遠方でワープバブルを維持するネネの悲鳴が耳を打つが、通信機はそれを最後に沈黙する。 絶縁破壊を起こした電気配線がスパークして目の前にあった前部モニターを吹き飛ばす。 腕部のガトリング砲に異常事態。それを警告するモニターがなかったが、彼女の髪の光ファイバーを利用したインターフェースによってそれを知り得たクランは緊急システムでそれをパージする。直後電子機器のスパークで弾薬に引火したそれは大爆発した。 次々機能が死んでいくクァドランの中でクランは必死に機体を操り、光球を押し留める。 おそらくVF-25やVF-27ではすでに機体は操縦者を見捨てて機能停止していただろう。 しかし各部分ごとに独立したブロック(ユニット)型という名の構造。そして正副二重(つまり四重)に確保された操縦用回線はこの状態でも操縦者を見捨てまいとなけなしの力を振り絞る。それはもはや奇跡に近い稼働だった。 その甲斐あってようやく光球は転進、左舷方向に流れていく。 「嘗めるなぁ!」 気合い一発。クランは機体前部を相手に向けると、前部を向いたまま旋回能力が死んでいた『対艦用インパクト・キャノン』をカンで照準。引き金を引いた。 元のビーム砲から対バジュラ用のMDE重量子ビーム砲に換装されたこの火器はあやまたず光球を貫き、爆散させた。 「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」 荒い息づかいがヘルメットの中を反響する。 クランは機体を動かそうと操作するが、ピクリとも動かなかった。気づけば主機である背後の『キメリコラ/ゼネラル・ギャラクシー熱核コンバータFC-2055µ』も停止している。 どうやら愛機は本当におシャカになってしまったようだった。 (お疲れ様だ。良く頑張ってくれた) クランは敵を倒すという役目を果たして息絶えた愛機に告げると、非常用の爆裂ボルトに点火。コックピットハッチである前部装甲をパージすると、手を差し出すネネのクァドランに掴まってルカ共々母艦に帰還した。 (*) 「有人調査で判明したのは以下の通りです」 集めた調査隊員を前に、ルカは調査結果をスクリーンに投影しながら説明する。 調査隊を襲撃した光球は莫大な時空エネルギーの塊で、調査隊が磁気特性を持ち、レーダー波を発していたため自然と寄ってきたものであること。 レーダー波を吸収、結果アクティブ・レーダーで探知できないことからゴーストもおそらくこれに撃墜されたと思われることなどだ。 「─────しかし問題はこれだけではありません」 ルカはそう告げると、スクリーンに違う画像を展開する。 「これは・・・・・・次元断層シールド?」 調査隊の1人が驚愕に目を見開く。これは現代ではバジュラクイーンしか発生させたことがなく、次元断層によって位相空間内を外部の次元と隔てることで物理的な攻撃を完全に防ぐ現状では最強のシールドだ。 「はい。あの光球のエネルギー源を様々な調査結果をつき合わせて検討した結果〝フォールドゲートを自然発生の強力な次元断層シールド〟が塞いでいるという結論に達しました」 彼の説明によれば、光球がフォールドゲートを開いた時に初めて出現したことから関連性を調べてみると、開いたフォールドゲートの数値異常に気づいたという。 最初はサブスペースのゲートだからと気にしなかったが、どう考えてもエネルギーが莫大過ぎる。 そこでゲートを解析すると、どうやらアルト達が無理やりデフォールドした結果、次元連続体が寸断され莫大なエネルギーが流出。そこに溜まり、シールドを形成したらしい。 「またこれにより時空までも捻じ曲げられているらしく、波動的に変動して時間の進行速度が変化しているようです。計算上では現時点で、あちら側ではゆうに3カ月以上が経っているものと考えられます」 「それじゃランカはもう―――――!」 部下であるアルトはともかく、溺愛する妹の安否を第一に置いているらしいスカル小隊隊長は顔面を蒼白にして拳を握る。 20日やそこらならVF-25は問題なく稼働して星間航行できる程度の移動手段になるだろう。コールドスリープを使えば酸素も食料も何とかなる。しかしそれ以上となると機体はパイロットの整備だけでは維持できない。三カ月ともなれば宇宙はまず飛べまい。そうなると搭乗者達の生存率は飛躍的に低くなる。なぜなら全くわからない未開の場所で、人間にあった生存可能惑星が見つかる可能性は限りなくゼロに近い。 その事実は宇宙開拓者であった自分達がよく知っていた。 「いえ、オズマ隊長、その点は大丈夫です。あちら側には一定以上の生存可能惑星があるみたいなんです。時間の変動の正確な係数も接近した時収集したデータからランカさんのフォールドウェーブを解析してわかったものですし・・・・・・彼らはまだ、僕たちが迎えにくるのを待ってくれています」 自分達にとっては一週間も経っていない事柄だが、あちらにとっては三カ月以上。これだけ長いと捜索は打ち切られたと判断するはずだが、まだ生きて待っていてくれているという事実はオズマを含め調査隊隊員達を今まで以上に奮い立せた。 しかし――――― 「しかし現時点で二つの障害があります。ゲートを開くと溜まったエネルギーがフォールド空間に溢れ出して光球という形に発現、これが今回のように第一の障害となります。もっともこちらに関してはクラン大尉のようにバルキリーレベルの重量子ビームの直撃か金属性実体弾で消滅させたり反らすことができるでしょう。しかし第二の障害である断層シールドは現用の戦術反応弾頭、DE(ディメンション・イーター)弾頭を含めても突破は不可能です」 「ちょっと待て、それじゃアイツらを助けに行けないってのか!?」 希望が出てきたと思った矢先、絶望に落とされたことで調査隊の一人が感情も露に机を叩く。 「安心してくだい。手はあります」 「なん・・・・・・だと?」 ルカは不敵な笑みを浮かべるとそれを告げた。 「僕らには断層シールドを〝素〟で突破できるバジュラ達がいるじゃないですか」 調査隊員達は 「「その手があったか!」」 と喜ぶと、上げたり下げたりしてもったいぶったルカにオズマを筆頭とした者共からスリーパーホールドなどの〝手厚い歓迎〟が施された。 「・・・・・・バカどもが」 「そうですよね。これだから殿方は―――――ってお姉様!?」 「私も混ぜろぉ~!」 楽しそうに両腕を振り回しながら闘争の渦の中に突貫して行った大学の先輩で小隊長である青髪の少女にネネは (これはこれでありかも・・・・・・) と思ったそうな。 (*) 新・統合軍とバジュラクイーンを交えた協議の結果、先遣隊として個体番号1024号。通称「アイくん」、そしてブレラ中尉搭乗のVF-27『ルシファー』が選定された。 アイくんが選ばれた主な理由としては第一に赤色をした大きなバジュラ、つまり成虫バジュラであること。 そして第二に幼生の時にランカに育てられたため、個体としての知能が高く、クイーンからの誘導を切られても完全な自立行動が可能だったことなどが挙げられる。 またVF-27が行けるカラクリについては、これもまたルカの隠し球である。 実は例の断層シールドには通常兵器の単体による攻撃は通用しないが、強力な歌エネルギーのサウンドウェーブと強力な重量子ビームか、重量子反応砲の相乗効果で突破可能という結論が出ていたのだ。 そこで特定のサブスペースを探し出せる高性能センサーと重量子反応砲によって唯一あちらから能動的に帰還できるマクロス・クォーターを送り込むことを考えたのだが、ここで問題となったのは向こうとこちら側との時差であった。 最も近い時の時差でも10倍強。つまり仮にマクロス・クォーターが突入までに10秒かかってしまうと、先に突入した先端部分と後部との時差は100秒となって船体自体が引き裂かれる。 そこでSMS技術班は、フォールド空間内で外界と次元的位相を持って断絶させるフォールドのワープバブルをヒントに時差から内部空間を守る時空シールド(ディストーション・シールド)を考案した。 しかしそのための改修は数時間かかることが予想され、あちら側の時間軸で三~四カ月ほど掛かってしまう。 かと言って先遣隊であるアイくんには行った先での生活支援などできないことが多い。また、何かを随伴させようにも彼の突入方法はクォーターのようなシールドに守られた物でなく、重量子ビームで空いた穴に爪を掛けて無理やり広げ、飛び込むという荒い方法だ。 そこでその荒業時に耐え、かつアルト達の支援に対応できるであろうVF-27に白羽の矢が立ったのだった。 そして先のブリーフィングの六時間後には先遣隊の突入が真近に迫っていた。 (*) 惑星『フロンティア』の宙域ではアイくんを見送る艦艇が集っていた。 みなアイくんの所属部隊である民間軍事プロバイダ「惑星フロンティア防衛隊」の異種属混成艦隊だ。 嫌気から統合軍を飛び出した人間とゼントラーディの艦艇に加え、バジュラの空母級が実験的に一隻配備されている。規模は小さいが、半年前にさらに広域を担当する新・統合軍艦隊を突破したはぐれゼントラーディの五個艦隊を水際で一日以上足止めするという輝かしい戦歴を誇っており、その有用性を高く知らしめた現在SMS最大のライバル会社だ。 なお余談であるが、この事件は統合軍艦隊到着前にシェリルとランカを数万光年先からスーパーフォールドして輸送したSMSの介入で収束しており、新・統合軍の威厳をさらに貶め、彼らのいいとこなしの代名詞のような事件となっていた。 防衛隊主力バルキリーであるVF-171の編隊がアイくんをフォールドゲート前で待つSMSのマクロスクォーターまで送り届けると、その深緑の翼を翻しながら惑星軌道上の母艦へと戻っていく。 『帰ってこいよ!戦友!』 フォールド通信波に乗ってやってきたそのうちの一機のバルキリーパイロットの声に、最近覚えた片腕の指を一本だけ立てるという行為を返した。人間流に言うとサムズアップと言うそうで、パイロット達がやっていたのを真似てみたのだ。初めてこれをやった時にはフォールド翻訳機以外の意思疎通ができたと喜んでくれた。 それ以来険悪だった自分達と仲良くしてくれたように思う。おかげで人間とは自分の真似をされると嬉しいらしいことは〝我々全体で〟学習済みだ。 彼は今回の見送りなど破格の待遇は努力が認められて自分達、バジュラという生物もまた、人間やゼントラーディ逹にとっても戦友であり友人であると認められたからだと思っていた。 『これより未知の空間に旅立つ、アイ君に敬礼!』 アイくんにはまだ階級というものがよくわからなかったが〝この部隊のバジュラ・クイーン〟と認識する声がフォールド通信波で放たれる。 元フロンティア新・統合軍防衛艦隊司令、今の防衛隊の艦隊司令であるバックフライトの声だったそれは光を凌駕するスピードで各艦に波及して、一斉に敬礼を放たせた。もちろんバジュラ空母級の仲間達も学習を生かして敬礼の真似事をしていた。 アイくんは一度礼を言うように宙返りしてフォールドゲートへと突入していき、シェリル座乗のクォーターも続いていった。 (*) フォールド空間内サブスペース 予定座標 今も補強などの改装作業の進むクォーターのブリッジのステージでは、シェリルがステージ衣装に身を包み、たたずんでいた。 また飛行甲板には出現するだろう光球に対して射撃を行うマイクローン化したクラン大尉の搭乗するVF-25Gや多数の人型陸戦兵器(デストロイド)がずらりと配置され、壮観な光景を出現させていた。 そして───── 「全艦、準備完了」 ディスプレイに浮かび上がった合図にキャシーの声が花を添える。その知らせに艦の長たるワイルダーは凛と号令を発した。 「野郎ども!我らの姫君に必ず〝希望〟を送り届けるぞ!作戦開始!!」 ワイルダーの号令一下アイくんの体内フォールド機関を活性化。予定座標にフォールドゲートを開いた。 同時に飛行甲板の部隊が一斉に射撃を開始し、出現した光球の撹乱を開始した。 それに呼応するようにシェリルはマイクを握りしめると歌い始めた。 〈ここからは『射手座午後9時Don t be late』をBGMにすることを推奨します〉 吹き荒れる磁気嵐に対抗するため重力制御装置が全力稼働でクォーターの姿勢を制御する。 その人工重力によって重力が歪められるが、撃ち出される弾体は距離に反比例して直進していく。 そして甲板が一瞬火山みたいに光ったかと思えば、巨大な砲弾とミサイルが飛翔して行った。 VB-6『ケーニッヒ・モンスター』の32センチレールカノンから撃ち出されたDE(ディメンション・イーター)弾四発と、両腕に装備された六門の重対艦ミサイルだ。 四発の砲弾はフォールドゲートに熱いキス。真っ黒な異空間を作り出して、シールドを削った。 一方ミサイルに釣られた腹ペコ光球は反応弾頭に匹敵する爆発に呑まれ霧消した。 「第2ステージ開始!」 キャシーの指令にアイくんは背中に背負う甲羅から伸びた巨大な針にエネルギーを集束し始め、無防備になった彼に迫る光球をVF-27自慢の高機動で動き回り、展開した弾幕がその行く手を阻む。しかしそれのみではとても間に合わない。 「持ってけぇぇぇ!」 クランは叫びと共にVF-25Gの装備するSSL-9B ドラグノフ・アンチ・マテリアル・ライフルから55ミリ超高初速MDE弾を撃ち出し、流星のようにアイくんに迫った光球のことごとくを散らし、撃墜する。 また同時に砲弾とサウンドウエーブによって不安定になった次元断層シールドにアイくんの、ゼントラーディの2000メートル級戦艦をも一撃で沈める重量子ビームが放たれた。 着弾、そして大爆発。 だがそれを持ってしても穿たれた穴は1メートルに満たなかった。 しかもそれすら徐々に閉じていく。 「飛んでけぇ!」 クランの叫びが聞こえたのかアイくんは尾を振って突進。その穴に自らの針と手を突き入れ、力任せにこじ開けようとする。 シェリルは渾身の歌で、クラン達は弾幕でアイくんを援護する。 全員思いが届いたのかシールドのヒビが広がっていく。そしてガラスの割れるような音と共にシールドを無力化。VFー27がその間隙を縫ってゲートに突入。アイくんは一度こちらを返り見るようにして突入していった。 「ゲート消失!ブレラ中尉からの通信リンク待機中・・・・・・」 クォーターのブリッジにて通信・火器管制を務めるラム・ホアが耳にインカムを押し当てながら待つ。 VF-27に積んだ特殊なフォールド通信機ですぐさま通信リンクを確立、向こうの状況を送ってもらう手筈になっていたのだ。しかしその視線の先の時差修正タイムラインが一時間、ついには一日を超えても通信リンクが確立されることはなかった・・・・・・ to be continue ・・・・・・ ―――――――――― 次回予告 新人たちに与えられた久しぶりの休日 しかしそれは嵐の前触れに過ぎなかった・・・・・・ そして動き出す敵の正体とは? 次回マクロスなのは第26話「メディカル・プライム」 偉大なるベルカに、栄光あれ! ―――――――――― シレンヤ氏
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魔法少女リリカルなのはVividキャラクターファイル「StrikerS X」編 リリカルなのは最新作である「Vivid」にはシリーズを通しての設定やキャラクターが多く存在する。ここではその一部を説明しよう。 元「機動六課」 第3期「StrikerS」の中心人物たち 部隊解散後はそれぞれの道を歩んでいる スバル・ナカジマ 年齢:19 能力:陸戦魔導師/格闘家 デバイス:リボルバーナックル マッハキャリバー 元機動六課のフロントアタッカー。明るく人当たりのいい性格。部隊解散後は特別救助隊に転属し人命救助の最前線で活躍している。 ティアナ・ランスター 年齢:20 能力:陸戦魔導師/射撃手 デバイス:クロス・ミラージュ 訓練校時代からのスバルの親友。機動六課時代は同じチームでともに活躍した。現在は時空管理局の執務官として、忙しい日々を送っている。 エリオ・モンディアル 年齢:14 能力:陸戦魔導師/竜騎士 デバイス:ストラーダ 騎士を目指す少年。かつて非人道的な実験に利用され心を閉ざしていたが、フェイトに保護され育てられた。現在は自然保護隊に所属している。 キャロ・ル・ルシエ 年齢:14 能力:召喚魔導師/竜召喚 竜とともに暮らす少数民族の出身。白銀の竜フリードリヒと黒竜ヴォルテールを使役できる。現在は辺境自然保護隊の隊員として活躍中。 ギンガ・ナカジマ 年齢:21 能力:陸戦魔導師/格闘家 デバイス:リボルバーナックル ブリッツキャリバー ナカジマ家の長女。現在は陸士108部隊の捜査官として働き、妹たちやその友達の世話を焼く優しい姉。 Culaume1 機動六課とは? 正式名称は「古代遺物管理部・機動六課」。 時空管理局本局・聖王教会の支援を得たはやてが設立した新設部隊だ。表の目的は強大な魔力を秘めた古代遺産「レリック」事件対応のためだが、 その真の目的は、カリムの「いずれ起こりうるであろう陸士部隊の全滅と管理局システムの崩壊」という予言結果への対策だった。 「JS事件」解決後、その役割を終えた機動六課は解散となり、隊員たちはそれぞれの進路へ進んだ。 元ナンバーズ(ナカジマ家) スカリエッティに利用されていた戦闘機人たち 現在はナカジマ家で家族として暮らしている チンク・ナカジマ 元ナンバーズ「No.5」 能力:ランブルデトネイター 固有装備:シェルコート スティンガー 触れたものを爆発物に変える能力をもつ。外見は幼いが、落ち着いた面倒見の良い性格で、ノーヴェたちに慕われている。 ノーヴェ・ナカジマ 元ナンバーズ「No.9」 能力:ブレイクライナー 固有装備:ガンナックル ジェットエッジ 口は悪いが根は優しい性格。スバルの母クイントの遺伝子を受け継いでいるため、スバル・ギンガとは実質的にも姉妹。 ごく短い時間だが、イクスと話もしている。 ディエチ・ナカジマ 元ナンバーズ「No.10」 能力:ヘヴィバレル 固有装備:「狙撃砲」イノーメスカノン ナンバーズ時代は狙撃手として活躍。かつては無口で感情をあまり表に出さなかったが、今ではなのはを始め周囲に心を開いている。 ウェンディ・ナカジマ 元ナンバーズ「No.9」 能力:エリアルレイヴ 固有装備:ライディングボード 盾にも乗機にもなるライディングボードによる機動力と防御力が売り。語尾に「~ッス」とつく明るい性格で、保護者のゲンヤを「パパりん」と呼んでいる。 Culaume2 「ナンバーズ」とは? 次元犯罪者ジェイル・スカリエッティによって生み出された12人の姉妹たち。 いずれも人の体に機械を融合させた「戦闘機人」で、それぞれ「インヒューレントスキル」と呼ばれる先天固有技能をもっている 「JS事件」の後、管理局に確保された彼女たちは、セインやノーヴェなど自らの罪を認め更生する者もいたが、 ウーノ、トーレ、クアットロ、セッテは非協力的な態度を貫き、スカリエッティとともに軌道拘置所に収容されている。 聖王教会 古代ベルカの「聖王」を敬愛する宗教組織 元ナンバーズのメンバーも保護している カリム・グラシア 能力:預言者の著書「プロフェーティン・シュリフテン」 デバイス:なし 聖王教会・教会騎士団所属の騎士。はやてが機動六課を設立した際、その後見人となった。詩文形式の予言能力というレア能力のもち主。 シャッハ・ヌエラ 能力:修道騎士/格闘家 デバイス:ヴィンデルシャフト 聖王教会所属のシスターで、カリムの秘書。自身も双剣型のデバイスを操る凄腕の修道騎士。今は更正したセインの保護役も務めている。 セイン 元ナンバーズ「No.6」 能力:「無機物潜行」ディープダイバー 固有装備 ヘリスコープ・アイ 無機物を自在に通り抜ける能力をもつ。明るい性格でナンバーズたちのムードーメーカ的存在だった。現在は、修道騎士見習いとして修行中。 オットー 元ナンバーズ「No.8」 能力:レイストーム 固有装備 ステルスジャケット 攻撃・拘束に使う光線を放つ能力をもつ。中性的な外見で、一人称は「僕」。更正後はカリムの秘書として彼女に仕えている。 ディード 元ナンバーズ「No.12」 能力&固有装備:「双剣」ツインブレイズ 優れた戦闘技術をもつナンバーズの末妹。オットーとは双子のような関係で、更正後もともに聖王教会の一員となり活躍している。 Culaume3 「聖王教会」とは? ベルカ自治領域内に本部をもつ、次元世界で最大規模の宗教組織。 数々の偉業を成し遂げたといわれる古代ベルカの「聖王」およびその血族や周辺の騎士たちを崇めている。 他の宗教に比べ禁忌や制約が少ないため信徒数も多く、各方面への影響力も大きい。 古代魔法文明の遺産「ロストロギア」の管理を使命としており、時空管理局との関係も深い。 「教会騎士団」という独自の戦力をもっており、カリムやシャッハはこれに属している。 その他の関係者 「JS事件」「マリアージュ事件」の関係者たち 今は時空管理局の保護下で生きている ルーテシア・アルピーノ 年齢:14 能力:召喚魔導師/獣召喚 デバイス:アスクレピオス 召喚魔法を操る少女。かつてスカリエッティに利用され協力していたが、現在は無人世界「カルナージ」で穏やかに暮らしている。 メガーヌ・アルピーノ 能力:??? デバイス:なし ルーテシアの母。人造魔導師の素体として適合度が高かったためスカリエッティに利用されていた。現在は娘とともに暮らしている。 ガリュー 能力:変形による生体武装の開放 デバイス:なし ルーテシアに従う人型召喚獣。言葉は話せないが、声を判別し理解できる知性をもつ。腕から伸びる巨大な爪が主武器。 イクスヴェリア 能力:「マリアージュ」の無限生成 デバイス:なし 古代ベルカ・ガレア王国の王。スバルに助けられて以来、彼女とは友人どうし。現在は、いつ目覚めるか分からない眠りについている。 Culaume4 「マリアージュ事件」とは? 遺跡研究者たちの殺害から端を発した連続殺人事件の総称。 その真実はトレディア・グラーゼという活動家によってよみがえった古代ベルカの生体兵器「マリアージュ」が、 自らを生み出した王「イクスヴェリア」を捜し暴走したものだった。 事件の中で約1000年の眠りから覚めたイクスは、逃走中のところをスバルに保護される。 マリアージュの分隊長を倒し事件は終息したが、機能不全状態にあったイクスは長い眠りにつくことになった。
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ここは数多ある次元世界の一つ。 その世界の中の、分割ホンコンと呼ばれる場所。そこでは現在、AS(アーム・スレイブ)という人型ロボットが戦闘を行っていた。 赤色で一つ眼のAS、「コダール」が、手足を破壊された黒いAS、「ファルケ」に拳銃を突き付けている。 が、一見優勢に見えるコダールのパイロットから余裕は感じられない。 「近付くな!パイロットを殺すぞ!?」 コダールのパイロットは前方20メートルの所にいる白いASに向けて怒鳴る。 彼が狼狽するのも無理はない。配下として共にやって来たコダールタイプのAS四機が、突如現れた一機だけの白いASによって瞬く間に叩き潰されたのだから。 「どういう事だ…“ミスリル”のラムダ・ドライバ搭載機は未完成ではなかったのか!?…貴様、一体何者なんだぁ!!」 コダールのパイロットの叫び声に、白いAS、「アーバレスト」は通信機越しに返答する。 「俺が誰なのか教えてやろうか」 そういった後、アーバレストは右拳を前に突き出し、そこに機体に搭載された特殊な力場発生装置「ラムダ・ドライバ」から発生したエネルギーを充填する。 「俺は陣代高校2年4組、出席番号41番、二学期もゴミ係の…」 言いながら、アーバレストは足を一歩踏み出し、徐徐にスピードを上げてコダールに近付く。そして遂には走り出し、右拳をコダールの盾になっていたファルケに叩き付けると同時に叫んだ。 「相良 宗介だ!!!」 アーバレストは溜めていたエネルギーを前方に向けて解放するが、その圧倒的な力の奔流はファルケを透過し、背後のコダールのみを飲み込んだ。 『全ターゲットを撃破しました。』 アーバレストのAI』アルがそう報告し、宗介は安堵の溜め息をついた。 だが、異常はこの後起こった。 「ウルズ7より各位へ、本機はこれより…」 『警告。前方の空間に異常を感知。』 「!?」 周りの仲間に報告しようとした宗介は、アルの発した警告に耳を疑う。 (敵は全て撃破した筈…!?) そして確認の為にモニターに目を向け、そこで固まった。 「何なのよ、あれ…」 「どうしたんだよ、こりゃあよ…。」 後方にいたメリッサ・マオ、ビルの上にいたクルツ・ウェーバーはそう呟き、モニターから飛込んで来る映像を凝視する。 その映像とは、空間が歪み光を発しているという、常識的な人間ならば信じられないものであった。 「ウルズ1、ウルズ7、早くそこから離れて!!何だか知らないけど計器類がとんでもない数値を出してるわ、そこにいるのは危険よ!!」 いち早く冷静に戻ったマオが宗介とファルケのパイロット、クルーゾーのコールサインを呼ぶ。 その声に我に返った宗介が機体を反転させようとするが、そこである事実に気付く。ファルケの足の損傷は、とても素早く動く事は出来ないほど酷かったのだ。 このままではこの奇妙な空間につかまってしまう。 「軍曹、俺の事はいい、早く離脱しろ!」クルーゾーが叫ぶが、宗介は『自分の力で仲間を守る』と誓ってここに戻って来たのだ。見捨てる事など出来はしない。 「くっ!」宗介はクルーゾーの所まで急いで駆け寄り、機体の腕と胴体を掴んだ。 「マオ、頼む!」叫ぶと同時に宗介はアーバレストの腰を捻り、その勢いでファルケを後方へと投げ飛ばし、それをマオ機がキャッチした。 これによってファルケは危険域から脱したが。残ったアーバレストが空間に囚われてしまった。 「ソースケ!」ビルの屋上から降りてきたクルツが近寄る。 「よせ、来るな!」宗介は拒絶するが、クルツは構わずにアーバレストを引き寄せようとする。 その時、空間の光が一層強くなり、二機を飲み込んだ。 「くぅっ…!」 「うおっ…!」 そして光は急速に弱まっていき、後には何も残らなかった。 そう、そこにいたはずの宗介、クルツの両機さえも… 「ちょっと、二人ともどこに隠れたのよ…ソースケ!クルツ!」 マオの悲痛な叫びが響くが、それもすぐにビル風の中に消えていった。 目次へ 次へ
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魔法少女リリカルなのは The Elder Scrolls クロス元:オブリビオン 最終更新:08/05/13 第一話 第二話 第三話 拍手感想 TOPページへ このページの先頭へ
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第九章『意思の証』 そうありたい、と私は望む そうしたい、と私は望む そうする、のはその為の手段という事で ● 夜間の山中に菫色の光が生じた。閃光は闇に沈んだブレンヒルトを、そして片手に握られたインテリジェントデバイス、光の発生源たるレークイヴェムゼンゼを照らし出す。 「ご苦労様」 『いえ、また御用の際はお申し付けを』 レークイヴェムゼンゼは返答、待機形態であるチョーカーへと変貌した。それが首に巻き付いた後、ブレンヒルトはこの闇夜において唯一の照明、天上の月を仰ぎ見る。 ……私達のGには、無かったもの…… その中で最も頻繁に見るものだ。毎晩の月を見る度に、ここが自分の世界ではないと思い知る。 「どうかしたの? ブレンヒルト」 見上げていると黒猫の声がした。こちらを窺うような声に、何でもないわ、とブレンヒルトは返そうとして、 「……あんた、どこにいるのよ?」 見つけられなかった。全身を黒の毛で覆う獣は闇夜に紛れており、杳としてその位置を見出せない。 「え? ここだよ、ここ」 「ここじゃあ解んないわよ。私はアンタと違って夜目が効かないんだから」 「人間って不便だねぇ」 漠然とした納得を黒猫は呟く。どこにいるか解らない相手との会話に、ブレンヒルトは妙な居心地の悪さを味わう。と、唐突に黒猫がはっと声をあげた。 「という事はつまり、今ならブレンヒルトに何をしても報復されないってこと!? うわっ、日頃の鬱憤を晴らす良いチャンスじゃん!?」 意気揚々とした声と跳躍音が何度も聞こえる。こちらへ飛びかかる準備をしているようだ。 「……ふぅん。貴方、そう言う事言うんだ?」 「ふふふ、今さら後悔しても無駄無駄! 今という機会を逃す手は無し、覚悟するがいい!!」 演技がかった物言いにブレンヒルトは失笑。 「――ねえ、人間って順応する生き物だって知ってる?」 「へ? あーうん、忘れたりとか現状に馴染んだりとか、そう言う感じ?」 「そうそう。……でね、人の目も猫程じゃないけど闇に慣れるものなのよ? 相応の時間があれば、それなりに見えるようになるの」 静寂。 ブレンヒルトも黒猫も押し黙り、風にそよぐ草木の音がやけに大きく感じる。 「……えーとつまりそれは、ブレンヒルトさんはもう慣れておいでで?」 「いいえ、残念ながら。でも……そうね、ちょっとずつ見える様になってきたわね」 再び静寂。幾許かの間が過ぎ、 「で? 私に何をするんだっけ?」 「御免なさい申し訳ありません二度と言いませんていうか今言った事は取り消させて下さいお願いします!!」 よろしい、とブレンヒルトは頷く。と、そんな問答を行っている内に目が闇に慣れていた。微弱な月明かりを捉え、ブレンヒルトの双眸は周囲の環境を見取る。 「何時見ても人がいないわね」 「廃村、ってやつでしょ? ま、こんな山間部じゃ住み難いよ」 ブレンヒルト達の周りにあったものは、無数の家屋だった。長期に渡って放置されたのだろう、どの家屋も泥や埃にまみれ、細部には風化も見られる。 「このGの中で滅べるなんて、贅沢の極みね」 「どうせここに住んでた人等は他のGが滅びた事なんて……ううん、ある事だって知らないよ、きっと」 知ってたら少しは反省したかもね、と続ける黒猫にブレンヒルトは、 「でもどうして管理局は、概念戦争を人々に知らせなかったのかしらね?」 「英雄気取りたかったんでしょ? 世界を混乱させるよりも自分達だけで密かにケリをつけよう、ってさ。1stーGの王様とは反対だね?」 「ええ、王は1stーGを絶対に護ろうとしていたわ。防衛用に機竜を配置して、概念核も二分して。……そこをグレアムに付け入られたのだけれど」 語るブレンヒルトは黒猫と共に廃村を歩き始めた。 「あの男によって王城は破壊され、指揮系統は麻痺。レオーネ先生はファブニールと同化し、概念核の半分を出力炉に収めて護ろうとしたけど、グレアムに奪われたデュランダルで……」 一息つく。それから自嘲するような表情で、 「レオーネ先生のファブニールが、ラルゴ翁のと同じ改型だったら話は違ったかもね」 「……改型は何が違うの?」 「改型はね、稼働用と武装用に出力炉を二つ積んでるの。レオーネ先生の旧型は一つしかなかったから、それをデュランダルで貫かれた時、死ぬしかなかった」 「それを教訓にして追加した、って事?」 ええ、とブレンヒルトは答える。 「改型は武装用出力炉に残り半分の概念核を封じているの。もしそれが破壊されても、残った稼働用出力炉で敵を潰せる」 そう答えて、ブレンヒルトと黒猫は開けた場所に出た。家屋の群を抜けた先にあるそれは校庭、暗がりで見辛いが、ブレンヒルトの行く先には体育館があり、奥には校舎もある。 「もうちょっと近寄りなさい。でないと、レークイヴェムゼンゼの効果範囲に入らないでしょう?」 「あ、うん」 体育館の正面玄関に近付いた所で立ち止まり、ブレンヒルトは黒猫を呼び寄せた。足下に来た所で踏み潰し、完全に密着した所で指先をチョーカーにあてる。 「お願い」 『畏まりました。“門”を、開きます』 そう答えてレークイヴェムゼンゼは三日月型の飾りを光らせる。直後、 ―――文字には力を与える能がある。 それは1stーG概念より成る概念空間の展開。自らの声に似たそれが響き、体育館は要塞に変貌した。 諸処に見られる窓は板で塞がれ、かと思えばあちらこちらに大きな鉄の扉が増設されている。共通するのは一様に記された、“頑丈”や“鋼鉄”という1stーGの文字だ。 「久しぶりに来るけど……見つかったりしてない?」 正面扉の前に立つ大型人種の門番と会話、問題ないよ、という返答を得てブレンヒルトは頷く。ブレンヒルトは扉に手を伸ばした。だが手を添えた所でそれは停止、扉の向こうに騒音を聞きつけたからだ。 「……ファーフナーだ」 「元気ね。和平派飛び出して転がり込んできた時は死にそうだったのに」 聞きつけたのは黒猫も同じだったようで、心底と嫌そうな顔をする。ブレンヒルトはその様子を見て、 「――彼と一緒に、貴方もここにきたのよね」 からかうような口調に黒猫が、やめてよ、と答えた。 「利害が一致しただけだよ。和平派から市街派に移りたい、っていうね」 「通常空間でも行動出来る貴方がついてなかったら、多分途中でのたれ死んでたでしょうね、彼」 全くだよ、と頬を膨らませる黒猫にブレンヒルトは笑み、扉に触れる手へ力を込めた。軋むような音を立てて扉は開き、体育館の内部をブレンヒルトに晒す。 直後、強い語気からなる宣言が響いた。 「――俺達に必要なものとは何か!?」 ● 体育館の中に数限りない異形達が、1stーGを故郷とする市街派の者達が犇めいていた。 一見すると何の区別も無く見えるが、実は市街派の方針をめぐって論争する、急進派と穏健派の二種である事をファーフナーは知っている。 「俺達に必要なのは失われた故郷を取り戻す事だろう!?」 急進派の最前線に立ち、ファーフナーは猛烈な語気を穏健派に叩き付けた。 「デュランダルを取り戻して概念核を我等の物とする。それを解放してマイナス概念に対抗した後この世界を1stーGと化せばいい!!」 対して穏健派の若者が、違う、と声を大にして応じた。 「我々に必要なのはLowーGでの権利だろう? デュランダルを取り戻した後は、それを持って和平派と合流すべきだ! その後は概念解放を管理しつつ、我々に有利となる交渉を行う!」 若者は続ける。 「我々は戦うために集まった訳じゃない。目的は飽くまで、デュランダルの奪還とLowーGでの権利を得る事だ。ファーフナー、お前の主張は単なる逆侵略だぞ!!」 「逆侵略? 違うな失地回復といえ」 若者の主張に頷いた穏健派の面々、しかしファーフナーは反論した。 「俺達の祖先が護り続けた大地を滅ぼされたのだぞ? その代わりを求めて戦うのは当然の事だ」 「LowーGがそれを認める筈が無い!」 だからこそ戦うのだ、とファーフナーは論じる。そして、それが解らないのだろうか、とも思う。 「このLowーGでは概念戦争など無かった事になっている。全ての情報は秘匿され報復活動や情報公開は全て管理局に潰される。……ならば俺達はこのGの何処にいるのだ?」 言ってファーフナーは足下を指した。 「今俺達がいるのはこのGの影の部分だぞ!? 管理局の居留地にいた時もそうだ。押し込められた狭い土地は空も川も閉じられ、森は外界との交流を断つ為の壁となっていた!!」 「だからこそ我々はこのGで自由となる権利を得るのだろう?」 「自由? 閉ざされた世界で縮こまる事がか? ……俺や一部の種族は生きていくのに1stーGの概念が必要だ。お前らの言う自由とは俺達も含んでいるのか?」 「それは……」 「解るまいな。お前はLowーGにおける人間に近い種族だ。一日の半分を水に触れていれば一般社会に紛れられる、木霊よ。――お前には俺達の痛みが解るまいよ。常に前線で戦う苦痛もな」 若者は何か言おうとした。しかしそれは言葉を為さずに喉で消え、代わってファーフナーが弁舌する。 「俺達全員がお前達の様にこのGで生活出来る訳ではない。俺達にとっての自由とは……この世界を1stーGと同様にする事でしか有り得ない!! 箱庭の優遇がお前達の言う本当の権利か!?」 その言葉に若者は歯を噛んで俯き、そこで彼の肩に手が添えられた。若者の背後、穏健派の一群から進み出た老人だ。 「良い演説だな、ファーフナー。だがお前は一つ忘れている」 何をだ、と問い返したファーフナーに老人は頷く。 「1stーGが滅びた時、お前は生まれていなかった。滅びたのはお前の世界ではない、我々の世界だ。お前は……」 「ならば俺がLowーGの人間だとでも言うつもりか?」 老人の言葉をファーフナーは遮った。 「LowーGの人間は翼を持つのか?」 ファーフナーは背の両翼を思う。 「LowーGの人間は鱗を持つのか?」 ファーフナーは巨躯を包む鱗を思う。 「LowーGの人間は角が長いのか?」 ファーフナーは側頭から伸びた角を思う。 「俺の姿を見ろ。この姿をした生き物がLowーGに存在するのか? 否! 俺は1stーGにしか存在しない半竜という種族だ!!」 人型の竜、それがファーフナーの容貌だった。 「だが俺は何も知らない。数多くの祖先を、王のいた国を、限りある大地を、月の無い夜空を、自由に生きられる天地を。……そして! 敗北の日も護るべきものも知らない!!」 故に、 「――だから俺は誇りとは何なのかを知らない!!」 思いを吐露し、抜け切った息を補給。 「だが老人共よお前達はそれを知っている。だから狭い所に押し込められてもそれに頼れる。……しかし俺達には何もない。なのに俺達はどうしようもなく1stーGの者であり、そうでありたいと思っている」 背後に立つ急進派の同意をファーフナーは感じる。 「どうすれば良い? ……どうすればそれだけの誇りが持てる!?」 老人が、そして穏健派が沈黙する。 論争転じての静寂、そこでファーフナーは自分達を迂回する人影を見た。黒猫を連れた魔女装束の少女だ。 「奥に行くのか? ラルゴ様は眠っておられるぞ」 ファーフナーの向けた声に少女は足を止めた。急進派も穏健派も注目する中で少女は振り向き、怜悧な双眸でこちらを見据える。 「……貴方の声で起きてるでしょうよ、きっと」 「は、そうであれば良いが! ……それよりも首尾はどうなのだ? ナイン」 呼びかけたその名に、少女の双眸が細められた。放たれる眼光は怒りさえ含んでいる。 「その名で呼んでいいのはラルゴ翁だけよ。翁の権利を侵害する気?」 「これは失礼した、ブレンヒルト。お前はその名を取り戻す為に戦ってると思っていたのだが」 ファーフナーは言い改め、しかし言葉を止めない。 「グレアムとやらの監視に赴き、隙あらば暗殺する、という話だったのでは? それがもう三年目になるのに来るのは定時連絡だけ。……まさか言い包められたか? 何しろお前はそのグレアムと幼い頃……」 「止めろ!!」 叫んだのはブレンヒルトではなく、足下の黒猫だった。怒気に毛を逆立て、 「ブレンヒルトはちゃんと仕事をしてる! アンタ達が話し合ってる間も、王城派の戦闘や管理局の動向を見てたんだ!! アンタ達が今も話し合ってる情報もそうして集まったものだろ!?」 断言、だがそれを終えたところで黒猫は笑みを交えた。 「頑張れって言いたいなら、もっと素直になったらどう?」 対するファーフナーもまた小さく笑み、 「最近はそれを言うと鬱になる事が多くてな。遠回りで失敬した」 ファーフナーは黒猫と笑みの口調を交わして見合う。それから視線をブレンヒルトに移し、 「早く行け長寿の娘よ。後で俺も話を聞きに行く」 そう言うとブレンヒルトは顔を背けて歩き出した。遅れて黒猫も追随し、見えなくなった所でファーフナーは穏健派を見やった。 そして議論の場を締めくくる為、最早穏健派ではなく、館内全体に声を響かせる。 「――俺が望むのは1stーGが未だ共にあるという事実だ! この世を1stーGとせずにすむ方法があるならば言ってみるがいい!!」 ● ファーフナーの声を背にブレンヒルトは地下へと続く階段を下りていった。館内奥を丸々使った大型リフト、今は隔壁を閉じた縦穴に沿って伸びる通用口だ。 「…………」 “灯火”と記された釣り鐘の照る階段は傾斜が深く、ブレンヒルトは壁に手を当てて下りていく。冷ややかで固い感触を手に、やがてブレンヒルトは階段の終着点に辿り着いた。 そこは縦穴の底辺部、大型リフトの定着も相まって広大な空間となっている。 「……ラルゴ翁」 リフトの上には巨大な鉄塊があった。否、長胴に頭部と尾を備え、四肢の先に爪を備えたそれは竜の模倣。機竜と呼ばれる兵器が、ファブニール改と称される市街派の最強武器がそこにある。 そして市街派を率いる長の意思もまた、そこにあった。 「ブレンヒルト・シルト、ここに戻りました」 『ああ、お帰り』 現れたのは一人の老人だった。禿頭の長い白ひげ、褐色の肌をしたその人物が竜の背に立っている。しかしよく見れば老人の姿が半透明で、声が老人からではなく足下の機竜より響いている事が解った。 『どうだったかい?』 「私の使い魔が詳細を」 促されたブレンヒルトは黒猫を見やる。応じて黒猫は前に出て、 「王城派は三日後に降伏するって。これで自分達の活動を終えるって、使いが伝えてきた」 そこで溜め息。 「だからファーフナー達アッパー入ってんだよねぇ。ラルゴ翁、シメちゃってよ」 「こらっ、何言ってるのよっ」 ブレンヒルトが黒猫を踏みしめ、それを見るラルゴと呼ばれた老人は苦笑した。 『まあ報告は後で聞こう。他に、何か情報は?』 問うラルゴにブレンヒルトは、ええ、と首肯した。 「管理局は全竜交渉の専用部隊を、編成中で実戦投入しています。それから明日、和平派のファーゾルトと交渉役が暫定交渉をするそうです」 『……成る程、それでファーフナーは躍起になっているのか。彼はファーゾルトの息子だからねぇ』 「父親を負け犬と呼ぶ彼ですからね。さっきも上で、稚拙な論を重ねて正義としているようで」 『稚拙なのはしょうがない。行動に理由が必要な大人を、子供が説得しようとしているんだ』 だがね、とラルゴは言葉を挟む。 『適当な理由で動く事に慣れた大人じゃあ、子供が本当に稚拙な正義を唱えた時、最後には折れるんだよ。論じゃなくて、もっと厄介なものにね』 ラルゴは腕を組み、天井の隔壁を見上げる。その向こうにいるであろうファーフナーを見るように。 『ファーゾルトの息子は、まっすぐに育ったものだねぇ』 「本人は相当苦労してたけどね。あの1stーG居留地で」 かつてその居留地にいた黒猫は、僅かに遠い目をして答える。 「あの人は上手くやってると思うよ。概念の管理を管理局に一任して、狭い居留地の安全確保を願う。皆はその程度かって言うけど……概念を管理された居留地じゃ、住人全員が人質みたいなもんだよ」 「概念空間を解除されたら、大半は半月と持たないでしょうね」 『ファーゾルト達が生活出来ているのは、彼等の持ってきた持ち物や技術という交渉材料と、後は……それこそ管理局の温情というものだろうねぇ』 「……その言葉、皆に言ってはいけませんよ」 眼を細めたブレンヒルトにラルゴは、解っておるよ、と返す。 『ワシは皆を連れてここに辿り着き、持ってきた概念核の片割で概念空間を造った。元指導者のはしくれとして、現保護者として、皆を率いる必要がある』 面倒な事だがね、とラルゴは溜め息。それからブレンヒルトを見やって、 『交換しないかね? ワシのファブニール改とお前さんのレークイヴェムゼンゼを。ワシは冥界の住人と茶ぁ飲んでる方が気楽で良い』 「無理ですよ、機竜は同化したらそのままでしょう? それにLowーGは冥界の概念が弱過ぎて、レークイヴェムゼンゼを使っても住人とは僅かな間しか話せません」 『……もし彼等としっかり言葉が交わせれば、皆の遺恨も幾らかは減るだろうに』 ラルゴは浅く眼を伏せた。 『世界の崩壊を恐れねば、我々ももっと多くを救えたかもしれぬ。――君の鳥も、惜しい事をした』 「あれは……見捨てた彼が悪いのです」 『見捨てたのは彼かもしれん。だが、救えなかったのはワシ等だよ』 そこでラルゴは眼を開けた。それから暗闇の一角に向けて一つの名を呼ぶ。 『ファーフナー』 その名にブレンヒルトと黒猫は振り返り、そこで闇に佇む半竜の姿を見た。 「……何時から!?」 険を含んだブレンヒルトの問いに、ついさっきだ、とファーフナーは返答。 「そう構えるな。俺の属性は闇、闇渡りの半竜だぞ? それが闇ならば心の届く範囲においてどこでも移動出来る」 「それで盗み聞きって訳? 趣味悪」 黒猫の言葉を、言ってろ、と鼻で笑い、ファーフナーはラルゴを見る。 「話し合いが終わりました。俺達の意見が通った上で、ラルゴ様に判断を委ねるという形で」 ファーフナーの報告に、うーむ、とラルゴは唸り、 『明日のファーゾルトの動き次第で結論、という事でどうかね? ブレンヒルトの話では……明日、事前交渉があるのだろう?』 「ええ、和平派の情報なので確かでしょう」 ブレンヒルトの答えにラルゴは頷き、だがファーフナーは不満げな表情を作った。 「……ラルゴ様、何故いつも結論を先延ばしにされる? 俺達は貴方の下に集い、引っ張られてここまで来たんですよ?」 『いや、そんな自主性の無い事を言われてもなぁ』 「責任者の勤めでしょう」 『あー、それはそうなんじゃが……すまんなぁ』 その答えにファーフナーは項垂れた。全身で脱力を表し、金のたてがみを生やした頭を掻く。 「友であられたレオーネ様、それにミゼット様をグレアムとやらに殺され、王を護る事が出来なかった。……その恨みはラルゴ翁のどこにあるのですか?」 『あるのは確かだろうが何処かまでは解らんぞ? お前さんとしては、ワシの武装用出力炉にあって欲しいんだろうが』 ラルゴは頷き、今度は揺るぎなくファーフナーを見据えた。 『失われたのはワシの友だけではない。故にワシは私意で動かん事にしとる。動くのは機が満ちた時だけさ。そして今、機は満ちつつあるよ』 続けてラルゴは問う。 『その時お前さんは、何の為に戦うよ? ファーフナー』 対するファーフナーもまたラルゴを見定め、返答を放つ。 「――我等が持っている筈のものを取り戻す為に」 その答えにラルゴは、ふむ、と応じ、 『ならば絶対に、その言葉は覚えておこうかね』 ● ファーフナーも交えた報告を終え、ブレンヒルトは体育館の外に出ていた。といっても、一人で出てきた訳ではない。 「ラルゴ翁、外に出るのは久しぶりですか?」 問いが向くのは背後に立つ巨影、ファブニール改だ。体育館裏手の壁を改造した隔壁より前半身を出し、白と緑に塗装された機竜が夜空を眺めている。 『最近は会議ばかりでねぇ。ワシ無しだと概念空間が数時間で消えてしまうから、段々厳しくなっているんだよ』 今もお前さんの見送りと言って出てきてな、とラルゴは付け加えた。そこに笑みが含まれていた事に安堵し、 「ブレンヒルト」 そこで名を呼ばれる。呼び声の主は黒猫、ブレンヒルトが見ると黒い影がこちらに向かって飛来していた。それに対してブレンヒルトは、 「えい」 落下軌道上に手刀を伸ばした。ブレンヒルトの予想は的中、五指の先に黒猫の小さな身体が突き刺さる。一撃を受けた黒猫は、げふ、と気まずい呻きを漏らし、それから妙に晴れやかな笑顔で落下した。 「……何でさ」 「不意打ちなんて良い度胸じゃない。私でも夜目に慣れるって言ったでしょう? それとも猫の脳みそじゃ覚えてられなかったのかしら?」 「ブレンヒルトの下に合流しようとしただけでしょ!? 何、ブレンヒルトとの絆ってそんなに薄弱!?」 倒れた黒猫が喚くがブレンヒルトは無視、ファブニール改の頭部を見上げた。そこに一切の変化は見られない。しかし、ブレンヒルトは確かな気配の変化を感じたからだ。 「……本意じゃありませんからね、こういうやり取り」 『いやいや、昔よりずっと良く見えるよ? 元気そうで何よりだ』 答えるラルゴの声は笑みを多分に含んだもの。やっぱり、とブレンヒルトは溜め息をつき、 「真面目になれる時間が少ないだけです。ラルゴ翁はその逆なのでは?」 『そうさねぇ』 答えは曖昧な返事。だがラルゴはファブニール改の頭部を動かし、こちらを見た。 『――ブレンヒルト。君はこれから“行く”のかな? それとも……“帰る”のかな?』 「――――――――――」 思わず、息を飲んだ。 「ラルゴ翁……、貴方は、私が1stーGを忘れたと?」 『そうは言っていないよ。ただ君は、今の市街派の状況をよく思っていないようだからねぇ』 「……長寿族の性です。ああいう論争を嫌うのは」 だろうねぇ、とラルゴは一言。 『誰か、君と同じ長寿の誰かが、ずっと共にいるのが一番良いんだろうがねぇ。君から見れば誰も彼もが、私ですらも生き急いでいるようにしか見えないだろう』 「……年寄り臭いよ、ラルゴ翁」 「こらっ!」 仰向けでファブニール改を見ていた黒猫が一言、ブレンヒルトは注意の踏みつけを放った。 『は、そうなんだろうねぇ。――皆も気付いておるだろうが、ワシももう長くは持たん。機械としての寿命ではなく、ワシ自身の寿命が尽きようとしておる』 「………1stーGの機竜が持つ、欠点ですか」 『否、欠陥と言って良いだろうねぇ』 ラルゴは自身に架せられた致死の宿命を語る。 『かつて5thーGの機竜を元にどうにか建造したこの機竜。搭乗者は同化して操る訳だが……この時の拒絶反応が強過ぎる。それこそ、大半の者がそこで死んでしまう程に』 ブレンヒルトは思う。幼い頃にグレアムと出会ったあの機竜の暴走を。 『よしんばそれを抜けても、もう二度と降りる事は出来ない。そして……いつかは有機体である搭乗者と無機体である機竜の誤差が大きくなり、自壊する』 「……………っ」 語られるブレンヒルトは沈黙。そこまで言って、ラルゴも会話を仕切り直した。 『…そろそろ戻らなくて良いのかい? 来た時は何やら急いでいたようだが』 「そ、そうだよ!」 反応したのは黒猫だった。 「ほら、小鳥! ブレンヒルト、胸薄いからって忘れちゃあたたたたた待った待った踏み込んだら中身が!?」 ブレンヒルトは黒猫を再度踏みにじり、しているとラルゴから疑問の声があがった。 『小鳥?』 「……ええ、落ちていた小鳥を、性懲りも無く」 答えたブレンヒルトにラルゴは、ほほう、と喜色を交えた。 『……それで良いのだろうよ、ブレンヒルト。いや、ナインと呼ぼうかね』 「その呼び名は、とうに捨てました」 『だが、ワシにとってはそれがお前さんの名だ。かつてミゼットに拾われ、レオーネの研究所に住み着いた少女よ。あの頃は、グレアムも含めた四人で……』 「お止めください」 言い続けようとしたラルゴを、しかしブレンヒルトは遮った。 「――お互いに知る人の名を告げるのは、独り言よりも酷いものですよ」 ● ファブニール改の視覚素子が、夜空に飛び立ったブレンヒルト達を捉えていた。 『……さて』 少女達が無事に帰ったのを確認し、ラルゴは視覚素子を別の場所に集中させる。向けられた先は周囲に広がる森林、その一角だ。 『次は貴様等と話すとしようかね。やや不本意ではあるが』 ラルゴはファブニール改の音量を上げ、林間にも声を届ける。と、木々の闇から三つの人影が進み出た。 先頭は褐色の肌をした巨躯の初老。ターバンと眼帯で頭部を飾る中東風の男だ。続くのは青年と少女、闇にも映える緑と金の長髪をした二人組。青年は白のスーツ、少女は黒い修道服を着ている。 『また前触れも無く現れたものだね。…情報屋を気取る、聖王教会よ』 ラルゴは憎々しく呟き、だが三人組が近付いてきた所で一つの旋律を聞いた。それは金髪の少女が囁く一つの歌だ。 Silent night Holy night/静かな夜よ 清し夜よ All s asleep, one sole light,/全てが澄み 安らかなる中 Just the faithful and holy pair,/誠実なる二人の聖者が Lovely boy-child with curly hair,/巻き髪を頂く美しき男の子を見守る Sleep in heavenly peace/眠り給う ゆめ安く Sleep in heavenly peace/眠り給う ゆめ安く――― ラルゴはそれの歌を知っている。 『昔、一人になるとブレンヒルトがよく口ずさんでいた歌だね。LowーGの歌で、確か題名は……』 「清しこの夜、だよ。その子の歌も良かったんだろうけど……姉の歌声も中々だろう?」 言いかけた言葉は青年に奪われる。端整な顔に薄い笑みを浮かべた男は、口を挟んじゃいけません、という少女に注意された。その様子を見てからラルゴは初老を見据え、 『その二人は何者だ、ハジよ。何故連れてきた?』 「わしの養子みたいなものだよ、ラルゴ。男の方がヴェロッサ、女の方がカリムだ。どうだい、見目麗しいだろう? だが気をつけたまえ、これでも一騎当千の魔人だ」 二人にもそろそろ仕事を覚えてもらおうと思ってね、とハジは二人の若者を紹介、言い終えると共に二人は会釈する。その様子に、うんうん、とハジは頷き、 「今夜も一つ、貴殿等の為に情報を持ってきたぞ」 『恩着せがましいな。そしてまた言うのか? 自分達の下に入れ、と』 「下、とは心外だ。うん、本当に心外だ。対等の仲間として、全竜交渉を停めようと言うのだ。我等の目的は同じ筈だが、違うかね? どうだろうかね、ん?」 確かに、とも思うがラルゴは同意しない。 『前にも言った通りだ。我々は、自分の問題は自分で解決する。素性も知れぬ者と共闘する気はないね』 「同意してくれるならば、素性も目的も話すのだがね」 『それを信じられるかどうかは、その嘘くさい笑みに訊いてみるんだね。……駄目なもんは駄目さ』 にべもない否定、それを受けてハジは口元を手で覆う。そして、 「――成る程」 呟きが終えると同時、ファブニール改に搭載された機銃が銃弾を吐いた。連発される弾丸は地に穴を空け、背後の樹木を幾らか砕き、濃厚な粉塵を噴かせる。 ……恐ろしい話だね…… ハジがいい終えた瞬間、笑みも絶えた。その時感じた気配がラルゴに威嚇射撃を決行させた。といっても、当たっても構わない相手だったので幾らかは当たったかもしれないが。そうして粉塵が晴れ、 『……何?』 そこで見えたものは、ハジの前に立つカリムと名乗る少女だった。彼女は剣型のデバイスを構えており、刀身は歪んで薄く煙を昇らせ、そして足下には細々とした鉄塊が散っている。 ……まさか、弾丸を迎撃したのか!? 刀身の歪みや煙はその代償か。だとすれば、あの少女はどれ程の反射速度を持つというのだろう。威嚇射撃とはいえ、当たろうとしていた弾丸全てを防ぐ等、 ……それこそ、予言じみているねぇ…… 『成る程、一騎当千か』 ハジの紹介は間違っていなかったという事か、とラルゴはごちる。 「もう……義父さん、あんまり挑発しないで下さい! 防ぎ切れなかったらどうするんですか!?」 「はっはっは、わしは娘の腕を疑ったりはしないという事だよ。それとも自信が無かったのかね? ん?」 「じ、自信の有る無しじゃなくてぇ……っ!」 一息の後に憤慨するカリム、それを笑っていなすハジはファブニール改を見やり、 「まあいいだろう、今日は特別サービスだ。本題の前に我々の目的を教えようじゃないか、うん」 『全竜交渉の阻止。その為の、各G残党を集めた反乱軍の組織化か? 見た所ハジ、お前は9th―Gの者だろう? 後ろの二人はLowーGの者に見えるが……』 ラルゴの推測、しかしハジは、いやいやいやいや、と両手を上げて首を振る。 「惜しいが……違う、違うんだな。我々の目的は――全G概念の消滅だ」 『……何!?』 ハジの告白にラルゴは驚愕を得た。 「ラルゴ、我ら聖王教会は、現状我々が保つ以上の概念を消滅させる事を望んでいるのさ」 『何故だ!? それは自身の故郷をも捨てるという事だぞ!』 あるのさ、とハジは答える。 「そうする理由も意味も価値も、我々は持っているという事さ。うん、持っているんだ」 ハジは独白するように解答。言い終えて熱が引いたのか、語気の調子を整え、 「明日の朝、西の管理局からデュランダルが奥多摩の管理局に輸送される。輸送機が通過するのは、丁度この辺りだろうな」 『……何故それを教える? 我々は1stーGの概念を取り戻すが、貴様等の様に消滅を望まぬ。我々は敵になるぞ』 「解っている、うん、解っているとも。だからこれはサービス、精一杯のサ―――ヴィスだ」 忍び笑いする様にハジは言う。 「今の所は貴殿等がどうあろうとも構わない。構うのは、管理局に概念がある事だけだからね。もし貴殿等がデュランダルを取り戻したならば、その時に交渉しようじゃないか。うん」 『何を、交渉すると?』 「LowーGを視野に入れず、まずは真実を伝えて要求するよ。このLowーGを本当に本当のものとする為に」 『……本当に本当のもの?』 そうとも、と言ってハジは腕を掲げ、指を鳴らした。それが撤退の合図だったのか、カリムはハジの背後に戻り、またハジ達も出てきた林間の闇に戻っていく。 「お別れだラルゴ。次に会う時は……うん。お互いの立ち場は変わっているだろうね」 『待て、答えろハジ! それはどういう意味だ!?』 制止を呼びかけるラルゴ、しかしその頃には、ハジ達は林間の闇に沈んでいた。ただ、声だけが返される。 「簡単な事だよ。私達の全てを受け継ぐべき者に、真の意味で、全てを受け継がせよういうだけだ!!」 ―CHARACTER― NEME:ラルゴ・キール CLASS:市街派の長 FEITH:機竜を駆る者 戻る 目次へ 次へ
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魔法少女リリカルなのは外伝・ラクロアの勇者 第14話 ・本局内一室 本局内に幾つかある応接室。 部屋の明かりは消えており、唯一スタンドの小さな光だけが、この部屋を照らしている。 備え付けられているソファーには、一人の初老の男性がいた。 彼の手にあるのは『八神はやて』に関する事が細かく書かれた報告書。 だが、彼はそれを手に持つだけで目を通そうとはせず、机に置いてある写真立ての中にある写真を見つめていた。 若い男女と幼い男の子。誰が見ても家族の写真。この部屋に彼の事を知らない人物がいたならば、 息子夫婦と孫の写真を見ている老人と見てしまうだろう。 だが違う。写真に写っている男女は部下だった男とその妻、幼い子供は自分の生徒であり、今では立派な執務官。 初老の男性はその写真を見据えながら11年前の出来事、自分の部下を、彼女の夫を、少年の父を失った事件を思い出す。 だがロクな記憶が無い、あの事件で手に入れたのは名声でも手柄でもなかった・・・・後悔、それだけ。 それなのに周囲の皆は無論、夫を失った妻も、父を失った子供も、自分を責めたりはしなかった。 『仕方が無かった』『しょうがなかった』皆口に出すのはそんな言葉ばかり。 いっそ部下殺し、夫を返せ、お父さんを返せと罵ってくれた方がどんなに楽だったか。だが、自分の周りの人間は物分りが良すぎた。 むしろ英雄扱いをされた。プロパガンダとしての意味合いもあったのだろう。 だが、彼には辛かった・・・・辛すぎた。 『何が英雄だ?部下を殺した自分が何が英雄か!!』 「・・・・そろそろか・・・・」 我に返ると同時に時計を見る。おそらく自分の使い魔達が上手くやってくれているだろう。 長きに渡る闇の書を巡る忌まわしい事件ももうすぐ終る。彼女『八神はやて』の永久封印という形で。 幼い、未来のある少女を永遠に封じ込めるという事に、心が痛む事もあった。 だからこそ、悲劇を繰り替えさせてはいけないという薄っぺらい使命感を盾にする事で正当化させ、自らを突き動かしている。 「・・・・それでも・・・・心は痛むな。結局、私はこの痛みを死ぬまで背負わなければならないのか・・・・・」 10年前は悲劇を起こさせないために部下を蒸発させた。そして今回は悲劇を永久に起こさせないため、自分を慕う幼い少女を 氷漬けにしようとしている。 「何も変わらんな・・・・・・後悔だけを残したあの時と」 男は手に持っていただけの報告書に初めて目を通した。まるで、眩しい物を見るかのように目を細め、八神はやての写真を見据える。 ギル・グレアム、闇の書事件に裏から暗躍していた男は、ケジメをつけるかのように、ただじっと、はやての写真を見据えていた。 ・地球 海鳴大学病院から1キロほど離れた高層ビル、二人の仮面の男は事を終えた後、そこで最後の準備を行っていた。 「・・・よし、結界は張れた」 足元に展開していた魔法陣を消し、目視で結界が晴れたことを再確認する。 「デュランダルの用意は?」 「出来ている・・・・問題ない」 待機モードであるカード状態のデュランダルを見せつけ、抜かりがないことを証明する。その直後、 此処からでも聞こえる爆音と共に強力な魔力が、海鳴大学病院屋上を中心に爆発を起こした。 「・・・・空間攻撃魔法か・・・・・持つかな?あの二人?」 「・・・・・暴走開始の瞬間までは持って欲しいな」 今だ空間攻撃『デアボニック・エミッション』の攻撃が続く上空を見つめながら二人は呟く。 今頃、あの空間内ではあの二人の少女が必至になって攻撃に耐えていることだろう。 その調子で攻撃に耐え、時間を稼いでくれれば良い。いくら彼女達でも、今の実力では奴に勝つ事などできないだろうから。 否、勝って貰っては困る。奴には生きたまま、永遠に眠ってもらわなけらばならないのだから。 「まぁ、精々かんばってくれ・・・・未来を担う魔道師達・・・・・っ!?」 そんな、軽い激励の言葉を呟いた直後、彼らの周囲に、突如蒼い光の粒子が囲むように出現する。 その粒子の正体にすぐに気付いた仮面の男達は、即座にその場を離れようとするが、その行動より早く、 彼らの足元にミッド式の魔法陣が出現、其処から生えるように伸びた魔力の戒めが、彼らを拘束した。 「バインドだと・・・・だが、この程度」 「待て!これはただのバインドでは(そう、その通り」 上空から聞こえた声に、二人は揃えて顔を向ける。 「ストラグルバインド・・・・相手を拘束すると同時に、拘束者にかけられた強化魔法を無効化する」 愛杖のS2Uを構えたクロノ・ハラオウンは淡々と効力を説明しながらゆっくりと彼らの前へと降りる。 仮面の男達は脱出しようともがくが、クロノは特に慌てもせずにその光景を見据えた後、S2Uをステッキの様に回転させる。 「あまり使い所の無い魔法だけど、こういう時には役に立つ。変身魔法も強制的に解除するからね」 その言葉が合図だったかのように、二人の仮面の男は、声をあげて苦しみだす。徐々に体が光に包まれ、 体系が男性から女性へと、白い服が黒い服へと変わってゆく。 そして顔を覆っていた仮面が弾ける様に取れ、その素顔をさらす事となった。 足元まで転がってきた仮面に目を向けた後、クロノは変身魔法が解けた二人を再び見据える。 「・・・クロノ・・・・このぉ・・・・」 変身魔法が解けたリーゼロッテは、悔しそうにクロノをにらみつけ 「こんな魔法・・・教えてなかったんだがな・・・・」 同じく変身魔法が解けたリーゼアリアも、内から出る悔しさを抑えるかのように、声を低くし呟いた。 そんな二人の避難を正面から受け止めたクロノは、こみ上げてくる悲しさを拳を握る事で抑え、ゆっくりと答える。 「・・・一人でも精進しろと言ったのは・・・君達だろ?・・アリア・・・ロッテ・・・」 「・・・・全く・・・余計な事を言わなければ良かったよ」 観念したかの様にアリアは溜息をつき、ロッテもまた、軽く首を左右に振る。 「アタシらの負けさクロ助、さぁ、何処へでも連れて行くが良いさ・・・勿論、クロ助がさ」 「私達・・・・元が猫で自由奔放だからね、クロノ並みに強い相手がエスコートしてくれないと、逃げちゃうかもね?」 クロノに正体がバレ、捕縛された事は計算外だった。だが、まだ全てが台無しになったわけではない。 戦闘は未だ続いている。使い魔らしい二人が合流したが、それでも彼女達では奴を止める事は出来ないだろう。 もしクロノが戦闘に参加したのなら勝敗は分からない。だが、彼には自分達を護送する仕事が残っている、不可能だ。 奴が暴走すればこちらのもの。有効手段を用いてる自分達を拘束するほど、クロノも馬鹿ではない筈。 「確かに・・・・僕は君達をグレアム提督の所まで連れて行かなければいけない・・・・・だから答えてくれ。 騎士ガンダムを何処へ連れて行った」 「っ!!父様は関係(ジュ!!」 ロッテは主であるグレアムは無関係だと叫ぼうとした。だが、何かが顔の横を掠めたため、言葉を詰まらせる。 頬に感じる痛み。滴り落ちる血、パラパラと落ちる髪の毛、テニスボール大の丸さにくり貫かれた落下防止のフェンス、 そして、見た事もない冷たい瞳で自分達を見据え、S2Uを構えるクロノ。 「・・・・・悪いけど、無駄口は叩かないでくれ・・・・・管理外世界人への暴行、脅迫、君らは十分罪といえる行為を行っている。 大人しくこちらの質問に答えるのなら、多少考慮してもいいけど・・・・だんまりを通すのなら、君らの主である提督に全てを被ってもらう」 今まで見た事もない表情で自分達を見据えるクロノに、リーゼ姉妹は悔しそうに歯を食いしばり睨みつける。そして 数秒の沈黙の後、リーゼアリアが吐き捨てるように、ナイトガンダムがいる次元世界の座標を言い放った。 「・・・分かったわ・・・・ガンダム君はこちらに任せて」 クロノからの報告を聞いたリンディは通信を切り、一度溜息を吐いた後、背もたれに背を預ける。 今回の事件、裏で行動していたのは『やはり』グレアム提督だった。 予感はしていた。グレアム提督が闇の書事件に悔いを残していた事は以前から知っていた。だからこそ、今回の事件で何かしらの行動を起こすとは思っていた。 案の定、裏でリーゼ姉妹が動いていた・・・・・グレアム提督の差し金で間違いはないだろう。 身内である彼女達なら、エイミィが不審がっていたシステムのクラッキングなども納得できる。 だが、気付くのが遅すぎた。闇の書は完成してしまい、今はなのは達が迎撃を行っている。 彼女達の強さは十分理解してるが今回は相手が悪すぎる。その証拠に映し出されている映像からでも苦戦を強いられているのは目に見えている。 「(このままじゃ暴走して・・・今までの繰り返し・・・・)」 このままではいずれ暴走し、手が付けられなくなる。そうなってしまうと方法は一つ。 周囲の被害を気にせずにアルカンシェルで吹き飛ばすしかない。だが、方法はもう一つ残されている。 唯一の望みは主である八神はやての意識があること、もし呼びかけに応じればまだチャンスはある。 「エイミィ!!ガンダム君の居場所、特定できた!?」 「はい!ですが・・・・思ったより距離があります。それに、戦闘が行われいるようです!!」 キーボードを素早くたたき、なのは達の戦闘が映し出されているメインスクリーンの横に、映像を出現させる。 音声を拾う事はできなかったが、映像は思ったよりの鮮明に映し出されていた。 一面の砂漠に、巨大生物の死骸が多数。中にはリーゼ姉妹が用意したのか傀儡兵と思われる残骸も確認できる。 それらの屍から少しはなれたところにナイトガンダムはいた。 外傷は無さそうだが、鎧は巨大生物の血液で汚れており、傷も幾つか確認でいる。 どれほど戦い続けていたのだろうか?息は荒く、立っている事も辛いのか、時より膝をつき動きを止めている。 それでも、襲い掛かって来る傀儡兵を横一文字に切り裂き、砂の中からでて来た赤竜を電磁スピアで黒焦げにし、どうにか餌食になる事を防いでいた。 このままでは不味いことは誰が見ても分かった。だが、今の自分達に・・・・・助けに向かわせる戦力は無かった。 なのは達は論外、クロノはリーゼ姉妹やクレアム提督の尋問、アースラ所属の武装局員も結界の維持や周囲の災害で手一杯。 それ以前に、あの場所へ行けば必然的に戦いとなる。相手は赤竜や傀儡兵、仮にどうにか局員を割けても、下手したらナイトガンダムの足を引っ張る可能性もある。 「せめて・・・・・クロノやなのはさん達ほどの実力者・・・・・ランクA以上の魔道師がいれば」 そんな虫の良い話があるはずがない。そう思っていた。だが、頭に浮かんだある人物の姿が、その思いを打ち壊した。 「アレックス!!」 自然と椅子から立ち上がり、武装局員に指示を出しているアレックス目掛け、大声で叫ぶ。 「至急連絡を!地上本部へ!!」 「はぁ!!」 もう何十体目かになる傀儡兵を真横に斬り倒す。切り口からスパークが発生しその直後、大爆発。 本来なら盾で爆風をやり過ごすか、斬った瞬間に退避するなど避け方はあるのだが、疲れがピークに達したナイトガンダムには もうそんな余裕すらなかった。爆風に煽られ吹き飛び、砂の大地に叩きつけられる。 「・・・・・・まだ・・・だ・・・・・」 正直、このまま眠りたい。砂の冷たさが眠気を更に誘う。だが、此処で眠る事は死を意味する。あの機械や獣は待ってはくれない。 電磁スピアを杖にし、どうにか立ち上がるが体は正直に反応してしまう。 「・・・・・・う・・・・ぁ・・・・・」 足が自然ともつれ、尻餅をついてしまう。その隙を見逃す敵ではなかった。 一体の傀儡兵が手に持っている巨大な斧を構え突撃、それに対しナイトガンダムは迎撃態勢を取る所か、満足に立ち上がる事も出ない。 「・・・く・・そっ・・・・」 どうにか電磁スピアを杖にし立ち上がる。だが出来たのは其処まで。 先行していた傀儡兵は既にナイトガンダムの脳天目掛けて巨大な斧を振り下ろそうしていた。その時 『Knuckle Duster』 デバイス特有の電子音が突如響き渡る。その直後、ナイトガンダムに攻撃を加えようとした傀儡兵は凄まじい速さの何かと激突。 装甲を凹ませ、大地に自分の一部をばら撒きながら豪快に吹き飛んだ。 「・・・何が・・・一体?」 突然の事態にナイトガンダムは唖然としながらも、傀儡兵にぶつかって来た『者』に目を向ける。 ボディースーツの様な服装、おそらくバリアジャケットだろう。足には以前本で見たローラーブレードという履物の様な物を履いており、 腕には手甲と呼ぶには可笑しい無骨な物を装着している。 魔力で作った道の様なものの上に立っているその人物はゆっくりと顔を向け、間に合った事に安堵していた。 「間に合ったようね」 「ク・・・・クイント殿!?どうして此処へ?」 ナイトガンダムのピンチを救った人物、クイント・ナカジマは何も言わずに、自身が作った光の道『ウィングロード』から降り、駆け寄る。 そして、今すぐにでも倒れそうなナイトガンダムの体を抱え、負傷がないか調べ始めた。 「・・・・・怪我はないみたいね・・・でも、これだけの数をよくもまぁ・・・・」 赤竜と傀儡兵、戦闘能力だけならAランク魔道師とも渡り合える存在。そんな相手が辺りを見渡せば残骸や死骸となって埋め尽くされている。 これを全て一人でやったとなると、彼の実力を凄いと思うと同時に、彼が敵でなくて本当によったと思う。 「・・・・リンディ提督に頼まれてね・・・・・君がピンチだから助けて欲しいって。だから私が所属する陸士部隊が応援と救助にきたってわけ。 今、提督が担当している事件・・・かなり不味いことになってるそうよ」 「・・・・・っ!まさか!(動かないで!」 闇の書になにか動きがあったに違いない、居ても立っても居られなくなる。 咄嗟に起き上がろうとするが、その行動をクイントは無理矢理抑えた。 「落ち着いて、君の強さは十分嫌ってほど分かったけど、こんな満身創痍な状態じゃどうにもならないでしょ?メガーヌ!こっち!!」 クイントより少し遅れてきた陸士部隊っが即座に戦闘を開始する。隊長を思われる槍を持った男性が次々と蹴散らし、 残りは後ろから攻撃で援護する。その中から、クイントの声に反応した紫色の髪の女性が駆け足でこちらへと近づいてくる。 「回復と転送は彼女に任せるわ。私なんかよりエキスパートだからすぐに良くなるわよ。回復が終ったら彼女に現場まで転送してもらって、 此処は私達『ゼスト隊』が抑えるわ!」 到着したメガーヌに、二言三言言葉を交わした後、ガンダムに笑顔でガッツポーズを決めたクイントは、 ウィングロードを展開、戦場へと突き進む。 「さて、騎士ガンダム君ね?事情はクイントから聞いているわ、じっとしてて直ぐに終るから。っとその前に」 思い出し方の様に、メガーヌは不意に右手を肩の高さまで上げる。するとグローブに埋め込まれている水晶が光り、黒い塊を出現させた。 その塊は徐々に大きくなり人の形を形成、成人男性程度の大きさになった直後、爆発。 中から、人の形をしたモンスターが現われた。 「・・・これは・・・モンスター?」 「違うわ。私の自慢の使い魔、ガリューって言うの。見た目は怖いけど優しくて紳士よ。クイントの援護、お願いね」 承知したと言わんばかりに深々と頭を下げた後、踵を返し、砂の大地を蹴る。 ものすごいスピードでクイントの後を追うガリューの姿を確認したメガーヌは、ナイトガンダムの胸に優しく手を載せ、詠唱を唱える。 疲弊していた体がみるみる軽くなる感覚に心地よさを感じながらも、ナイトガンダムは向こうで起こっている出来事に不安を隠せないでいた。 ・海鳴市上空 ユーノとアルフも加わり、実質4対1となった戦い。それぞれがスピード戦、砲撃、拘束など得意分野で一気に攻める。 だが、闇の書の意思は顔色一つ変えず、無言でそれらの攻撃を裁ききり、攻撃を仕掛けてくる。 拘束のため巻きつけたバインドは瞬時に破壊され、左右同時に放った砲撃は完全に防がれる。 そしてカウンターといわんばかりに、自動誘導型高速射撃魔法『ブラッディダガー』がなのは達目掛けて放たれた。 その攻撃を皆が咄嗟にガードし耐え切る。 「ううっ・・・どうにか・・・」 自身を包み混む爆煙から咄嗟に抜け出すなのは。自分は防御が間に合ったため、着弾時に舞い上がった煙にむせただけで済んだ。だが、皆はどうなのだろう? なのはは咄嗟にフェイトやユーノの姿を確認、自分と同じく無傷でいる事に安堵する。 だが、フェイトの顔を見た瞬間、彼女が何か叫んでいた。それが『なのは!上!!』だと理解したその直後、 先ほどの攻撃が再びなのはに襲い掛かった。 レイジングハートが咄嗟にシールドを展開するも間に合わず、数本の赤い鋼の短剣がなのはに突き刺さる。 バリアジャケットの強度のおかげで致命傷は免れたが、彼方此方が裂け、露出した肌からは血がにじみでていた。 「(・・・・・油断・・・した・・・・)」 あの時、自分は仲間の無事だけを気にかけてしまい、敵である相手の行動を見忘れていた。 依然アリサにも言われた事がある『なのははすずかと同じで、私達のことを気にかけすぎて、自分の事をおろそかにしている』と 「はは・・・アリサちゃんの言うとおりだ・・・・・」 それがこの結果、正に自業自得だ。痛みを堪えながも必至に瞑っていた瞳を開ける。 先ず見えたのは無表情の闇の書の意思の顔。何度も言葉を投げかけても、答えるどころか表情一つ変える事がなかった。 その彼女が魔力を纏わせた拳を振り上げ、自分に叩きつけようとしている。 フェイト達が咄嗟に助けに入ろうとするが、再びブラッディダガーの洗礼を受け足止めをされてしまう。 未だにこちらに無表情の顔を向けているとなると、目的は間違いなく自分、あの拳が思い切りたたきつけられる事を考えると嫌な気持ちになる。 「防御を」 咄嗟に右手を翳し、障壁を展開しようとする。だが闇の書の意思は翳されたなのはの腕を掴み、無理矢理横に払う。 握りつぶすかのような力で掴まれる腕に、なのはは苦悶も表情を浮かべるが、 迫り来る拳を見た瞬間、それはすぐに恐怖手と変わる。 「・・・いや・・・・・」 防御の仕様が無い。もし冷静だったら何か考えが浮かんだかもしれないが、そんな余裕は無い。 バリアジャケットも先ほどの攻撃でダメージを負っている、当たればほぼダイレクトに自分にダメージが来るだろう。 体をこわばらせ目を瞑る。この瞬間に出来ることといえば、この位だった。そして 「ムービー・サーベ!!」 上空から放たれた斬撃波が、なのはを殴ろうとした闇の書の意思に直撃、爆煙に包まれながら落下してゆく。 自分を助けてくれた攻撃に、なのはは呆気にとられながらも斬撃波が放たれたほうへと首を向ける。 否、分かっていた。聞き覚えがある声、そして特有の魔法。それでも確認したかった。 「ガンダムさん!!」 「すまない、遅くなった」 ゆっくりと自分の元へと降りてくるナイトガンダムをなのはは笑顔で迎える。だが、彼の姿を見てその表情は変わってしまった。 こちらへ向かってくるフェイト達もまた彼の姿に言葉を失う。鎧は傷だらけ、マントは何かの染みで汚く汚れている。 誰が見ても無事とはいえない状態だった。 「一体どうしたんだい!?ズタボロじゃないか!?」 「色々とあってね。鎧はこの様だけど、戦闘には支障は無いから大丈夫。優秀な方に回復魔法を施してもらった。 悪いが詳しい話は後にしてくれ。こちらの事情もリンディ殿から聞いている。先ずは」 ゆっくりと顔を下へと向ける。 直に目が合った。無表情に自分を見つめる彼女に。全くダメージを受けていないのだろう。 直撃した肩には外傷はおろか、バリアジャケットに綻びすらない。ただ、自分・・・否、自分達に向けての強い殺気を感じる事は出来た。 「・・・・・アルフとユーノは動きを止めることに専念してくれ。あと、いざという時の回復を頼む」 「うん!」 「あいよ!」 「その隙に私とフェイトが接近戦を仕掛ける。なのはは後方で援護を頼む」 「わかった!」 「はい!」 なのはは後方に下がり、ユーノとアルフは挟み込む様に左右に展開、そしてナイトガンダムとフェイトは武器を構え突撃しようとする。 その光景を見た闇の書の意思はゆっくりと右手を掲げ魔法陣を展開。だが、その色は黒くは無く、なのはと同じ桃色。 そして大気中に漂う魔力が魔法陣の中心へと集まってゆき、徐々に大きな球体へと変わってゆく。 「なっ・・・まさか・・・」 「あれは・・・・」 ナイトガンダム以外の全員が、これから何が起こるのか嫌でも理解した。 なのはの必殺技ともいえる集束砲撃魔法。その威力を身を持って知ってるフェイトは、叫ぶようにアルフにユーノをつれて逃げるように指示、 その後、有無を言わさずナイトガンダムの手を掴み、全速力で退避、途中なのはの腰を抱え、スピードを上げる。 「フェイト!一体どうしたんだ!?」 「あれはなのはの必殺魔法・・・此処にいると危険!」 「でも、こんなに離れなくても」 「至近で直撃を受けたら、どんなに防御しても確実に落とされる、回避距離を取らなきゃ!」 既に肉眼では闇の書の意思は確認出来ず、桃色の球体が微かに見えるだけ、それでもフェイトはスピードを落とさすに距離をあける。 『左方向300ヤード、一般市民がいます』 普段は自分から喋る事がないバルディッシュが無視できない報告をしたのは、距離にして数キロはなれた時だった。 「・・・・・」 普段なら車が行きかう道路、だが結界が張られている今では、車は愚か、人すらない筈の空間。だが、二人の人物が取り残されていた。 月村すずかは両手で通学カバンを抱え、ただ呆然と周りの風景を見ていた。 アリサと町を歩いていた時に起こった出来事。突然、人や車、町の喧騒が一気に無くなりゴーストタウンと化してしまった。 「やっぱり誰もいないよ!急にひとがいなくなっちゃった・・・・辺りは暗くなるし、何か光ってるし一体何が起こってるの!?」 様子を見に行っていたアリサが息を切らせながら近づいてくる。普段は強気な彼女も、この非常識な現状では同様を隠しきれないでいた。 それでも、不安がるすずかを・・・大切な友達を、少しでも安心させようと気を強く持つ。 「(・・・何、あの誘拐に比べたらまだマシよ!!)とりあえず逃げよう!なるべく遠くへ!」 「う・・・うん」 自らに活を入れたアリサは、すずかの手を引き、その場から離れようとする。 口では言ったものの、何処へ逃げて言いのか分からない。不安だけが残る。 だが、彼女は諦めていなかった。ある騎士の存在が彼女の心を折れなくしている。 「それに・・・・・私達にはいるじゃない。強くてカッコいいナイトがさ。きっと助けに来てくれるわ」 それはすずかも同じだった。今自分は言いようの無い不安に支配されている。だが、絶望はしてない。 むしろ彼の事を考えると不安が嘘の様に消えてゆく。きっと助けに来てくれると信じているから・・・・・・自分の家族が。 「うん!ガンダムさんがきっと来てくれる!!信じよ!!アリサちゃん!」 「OK!とにかく先ずは此処から離れましょ!じっとしてても何も始まらないわ!!」 不安が消えたすずかの表情にアリサは笑顔で親指を立てる。そして再びすずかの手を取りその場を後にしようとした時、 近くで何かが降り立ち、砂煙を巻き上げた。 『Distance・・・・70・・・・・60・・・・・50・・・・』 結果内に取り残された一般市民との距離をカウントするバルディッシュ。 そして距離が40を切ったった所で、フェイトはなのはとナイトガンダムを下ろす。 二人とも、アスファルトの道路を豪快に土煙をあげなら滑り降りる。 即座に3人は辺りを見回し、取り残された人物を探す。 結界が張られているため、自分達以外の人間はいない筈。だが、バルディッシュの報告が間違いの筈がない。 「だれか!!いるのなら返事をしてください!!!」 おそらく隠れている可能性もある。だからこそナイトガンダムは呼びかけた。 なのはとフェイトもまた、真似するかのように声を出そうとしたその時、 「・・・その声・・・・・」 「ガンダム・・・さん?」 その声に反応したのか、建物の間の道からアリサとすずかが一度顔を覗かせた後、ゆっくりと出て来た。 「すずか!アリサ!どうして君達が!?」 閉じ込められた人物がアリサとすずかだった事に驚きを隠せない。なのは達もただ唖然としている。 とにかく事情を聞くため、二人の下へ歩み寄ろうとするが、 それより早く二人は泣きそうな顔でナイトガンダムの元まで駆け足で近づき抱きついた。突然ぶつかる様に抱きついてくる二人に倒れそうになるが 咄嗟に踏ん張り、二人を抱きとめた。 怖かったに違いない。突然人が消え、自分達だけが取り残されたのだから。 この位の年頃の少女なら泣き崩れていても可笑しくはない。それなのに、彼女達はこの場所から逃げようと行動をしていた。 それでも怖かった事には違いない。すずかは無論、普段は強気なアリサも、自分にしがみ付き震えていた。 だからこそ、少しでも安心させるために二人の頭を優しく撫でた。 「怖かったんだね・・・・もう大丈夫だ・・・・大丈夫だから」 自然と絶望感が抜けてゆく。ナイトガンダムと出会っただけで不安が一気に吹き飛ぶのを感じる。 「良かった・・・ガンダムさんに会えて・・・・・私達・・どうしたら・・・・・えっ?」 「・・・・・なのは・・・・・フェイト・・・・・」 落ち着いたため、回りを確認する余裕が出来たすずかとアリサは、初めて後ろで自分達を見守るように見つめているなのは達に気付く。 なのはとフェイトもまた、何を言って良いのか言葉を詰まらせる。 沈黙が続く中、最初に啖呵を切ったのは仲良しグループのリーダーだった。 「なのはもフェイトも・・・・・一体どうしたの!?制服なんか来て・・・杖みたいの持って!?フェイトにいたってはコスプレまでして!! 町の人はどうしちゃったの!?あのピンク色の光は何!?知ってるなら教えなさいよ!!」 不安が完全に拭いきれていないのだろう、自然と頭に置かれているナイトガンダムの腕を掴みながら一気に巻くしたてる。 本来だったらそんなアリサの行動を抑える役割をしてるすずかも今回ばかりはとめる様子はなく、答えを聞くためなのは達を見据える。 もう隠し切る事も不可能だと思った二人は、手短に事情だけでも話そうとした・・・・その時。 今まで上空にあったピンク色の球体が近くの地面に落下、それはスターライトブレイカーが発射された事を意味していた。 地面に着弾したスターライトブレイカーは、着弾点を中心に広がり、なのは達目掛けて迫り来る。あまりの巨大な魔力波のため、 立ち並ぶビルは丸ごと桃色の光に飲まれる。それは正に衝撃波ではなく数百メートルの巨大な壁。広域拡散しながらも、威力を落とさずに迫り来る。 その光景にアリサとすずかは再び怯え、ナイトガンダムにしがみ付く。 「フェイトちゃん!アリサちゃん達を!!」 フェイトは即座にカートリッジをロード、ナイトガンダムは一度二人に笑顔を向けると、静かに手を話しゆっくりと後ろに下がる。 その直後、二人を包み込むようにドーム型の障壁が形成される。 それを確認した後、なのはとフェイトも直撃に備え防御魔法を展開、だが、ナイトガンダムは防御をしないどころか、 前へと進み、なのはが張った防御空間から抜け出してしまう。 「ガンダムさん!!どうしたの!?早く中に入って!!」 「・・・・この魔力量からして、完全には防御しきれる可能性は低い。わたしが攻撃魔法で相殺を試みる、 相殺が無理でも、威力を抑える事は出来る筈。その後の防御は二人に任せる!!」 目を閉じ詠唱を開始する。メガーヌという魔術師のおかげで体力は回復できたが、使用した魔力はそうも行かない。 それでもどうにか撃つ事が出来る。自分が習得している中で一番強力な魔法を。 闇の書の意思が放ったスターライトブレイカーは、町を飲み込みながらそれなりのスピードで迫り来る。 桃色の光はあまりに巨大すぎて、目を開いてる事すら難しい。アリサとすずかは抱き合いながら蹲り、 なんはとフェイトは目を細めながらも衝撃に備える。 だが、発射される前に逃げた距離が長かったのが幸いしたのか、 スターライトブレイカーの光が前線にいるナイトガンダムに直撃するまでの距離、約100メートル・・・・・・どうにか詠唱が完了した。 『ソーラ・レイ!!!』 スターライトブレイカーの光をかき消すほど光が、ナイトガンダムから放出される。それは激しい光と激しい熱を発し前面に扇状に広がる。 道路のアスファルトは剥げ落ち、止めてあった車は熱で爆発し燃え盛り、ショウウィンドウのガラスは一斉に割れ、飾ってあった服やマネキンは消し炭となる。 進行方向にある全ての障害物を焦がし、燃やし、吹き飛ばしながら桃色の壁に迫り激突。 衝撃波が町全体を包み込む。広範囲に渡りガラスは砕け、車は吹き飛び、鼓膜が破れるほどの爆音がなのは達を襲った。 「・・・・・やった・・・の・・・・・」 爆音と光が晴れたため、なのははゆっくりと瞳をあける。其処には、膝をつき息を荒くしているナイトガンダム、 焼け焦げた街並み、そして『ソーラ・レイ』の直撃を受けて尚、迫り来るスターライトブレイカーの桃色の光。 「でも・・・以前の様な勢いはなくなってる。威力を抑える事は出来たんだ!ガンダムさん!後は任せて!!」 息を落ち着かせながらも、律義に頷いたナイトガンダムは、バックステップでなのはの後ろに下がり、シールドを構える。その直後、衝撃が皆を襲った。 全員が目を閉じ、歯を食いしばり衝撃に耐える。威力を減少させてもこの衝撃、もし『ソーラ・レイ』での中和がなかったら、 自分達はどうなっていたのだろう・・・・・・・自然とそんな事を考えながら、なのはは衝撃に耐える。後ろにいる皆を守るために。 「・・・・・駄目です!!映像・・・来ません!!!ああもう!!」 悔しさから力の限りコンソールを叩きつけるエイミィ。これほど歯がゆいと思った事は無かった。 皆は現場で頑張っているのに、自分は暢気に座って様子をうかがう事しかできない。 だが、自分が出来ることは嫌でも理解している。だからこそ、今は唯一出来ることをする。 「・・・はやく・・・・・晴れてよ・・・お願いだから・・・」 なぜか取り残されたなのはの友達、彼女達を安全な場所まで転移させ、戦闘での気がかりを無くす事が今自分が出来る唯一の援護。 エイミィは祈った。早く映像が回復する事を、皆の無事を。 時間にして数分、徐々に衝撃がなくなり、眩しさも消えてゆく。 「・・・・・終った・・・・・?」 恐る恐る瞳をゆっくりと開ける。見えたのは結界のせいで不気味に変色した街並み。見る物を圧倒していた桃色の壁は完全に消えていた。 正直ホットした。カートリッジを2発使用して張った『ワイドエリアプロテクション』もあと少しという所で破られそうだったからだ。 「(とにかく、次の攻撃が来る前にアリサちゃん達を安全な場所まで)」 安全を確認するため、張っていたワイドエリアプロテクションを解き、後ろを振り向こうと 「上だ!!!!」 なのは達の真上で浮遊していた多数の鋼の短剣『ブラッディダガー』が雨の様に落下したのは、 なのはが振り向き、ナイトガンダムが叫び、フェイトが咄嗟にアリサ達に再びフィールドを張ったのと、ほぼ同時だった。 防御をする暇などなかった。バリアジャケットは裂け、デバイスや鎧は傷つき、肌から血を滲ませる。 フェイトが咄嗟に張った『ディフェンサープラス』により、アリサとすずかはその洗礼を受けることはなかった。だが、 見ている事しか出来なかった。大切な人が傷ついてゆく姿を。 「なのは!!!フェイト!!!」 「ガンダムさん!!!!」 落下音が聞こえなくなったため、攻撃は止んだのだろう。舞い上がった土ぼこりで前が全く見えない。 皆は無事なのだろうか不安になる。だが、自然と想像してしまう。血だるまとなって倒れているなのは達の姿を。 想像した瞬間、アリサはこみ上げてくる物を抑えるため手で口をふさぐ。背中を摩ってくれるすずかの気遣いがありがたい。 無理矢理深呼吸をし、気を落ち着かせる。未だにフェイトが張ってくれたバリアの様な物のせいで外に出ることはできない。 だからこそ立ち上がり、大声で叫んだ。皆の無事を確認するために。 だが、帰ってくるのは沈黙だけ。それでも呼ぶことをやめない。すると、彼女達の呼びかけに答えたのか、 未だ立ち込める砂煙から人影がうっすらと現われた。それはこちらへと近づき形をはっきりしてゆく。 「なのは!!・・・・えっ、フェイト?」 最初はなのはかフェイトだと思った二人は、顔を合わせて喜んだ。だが、近づく影が徐々に大きくなってゆく事に、喜びから不安に変わる。 そして二人の前に現われたのは、なのはでも、フェイとでも、ナイトガンダムでもなかった。 歳は忍と同じ位だろう、モデルも裸足で逃げ出すほどのスタイルに同姓でも見惚れるほどの容姿、 だが、コスプレとも取れる格好、背中に生えてる黒い羽、そして、人形の様な感情の篭ってない表情。 二人を怯えさせるには十分だった。 「な・・・・なによ!あんた!?」 自然とすずかを庇うように前へと出たアリサは、震える体を無理矢理動かし自分達を見つめている美少女『闇の書の意思』を睨みつける。 だが、闇の書の意思はアリサの問いに答える事無く、ゆっくりと右手を上げ、掌を彼女達に突き出す。 甲高い音を立ててディフェンサープラスが砕けたのはその直後だった。 「あっ・・・・・あっ・・・・」 恐怖に負けてしまったすずかはへたり込んでしまう。アリサはせめてもの抵抗と言わんばかりに通学カバンを投げるが、 闇の書の意思に当たる前に、見えない壁の様なものに当たり、一瞬で墨になってしまう。 情けないが動けない、恐怖で足がガタツク、少しでも気を緩めたら大泣きしてしまう。 だが許す事はできない・・・・おそらくなのは達をあんな目に合わせたのはこの人だろう、せめてもの抵抗と、アリサは睨みつける事をやめない。 そんな彼女の目線を光の無い瞳で受け止めた闇の書の意思は、掌に魔力を溜める。砲撃を撃つ為に。 相手が魔力を持たないただの人間と判断したのだろう、直ぐに収束を止め、何の警告もせずに放った。 容赦の無い殺傷設定、並みの武装局員でも防御無しで喰らえば大怪我、防御魔法所か、 バリアジャケットすら着ていないアリサ達が喰らえば、待っているのは間違いない死。 二人は自然と抱き合い目を瞑る。その直後、直撃し爆発。新たな爆煙が吹き荒れた。 抱き合い、恐怖に震える二人。だが、痛みは一向に訪れなかった。不思議に思い、恐る恐る瞳を開ける。 目にしたのは、ボロボロだが見覚えがあるマント、直ぐに理解した、彼が庇ってくれたと。 嬉しかった、生きててくれて、そして助けてくれて。 「ガンダム!!」 「ガンダムさん!!」 ブラッティダガーの雨を潜り抜けたナイトガンダムが先ず目にしたのは、闇の書の意思が怯えるアリサ達に向かって収束砲を放つ瞬間だった。 咄嗟に、高速移動魔法『ホバー』を使い、すずか達の前へと出だナイトガンダムはシールドでその攻撃を防ぐ。 「彼女達は・・・やらせん!!!!」 そして、間髪いれずに電磁スピアを構え地面を蹴る。雷を纏ったその切っ先は真っ直ぐに闇の書の意思の肩目掛けて突き進む。 だが、肩に触れる寸前に闇の書の意思は電磁スピアを掴み、進行を阻止、 電流が流れているにも関わらず、表情を変えること無くカウンターともいえる攻撃を防ぐ。そして握る手に力を込め、あっさりと電磁スピアを握り砕いた。 だが、チャンスは出来た。自分の愛槍を犠牲にしたこの隙を見逃す事はできない。 砕けた電磁スピアの残骸を無造作に投げる。あまりにも幼稚な攻撃に、闇の書の意思は防御魔法を発動させず、手で払う事で防ぐ。 ナイトガンダムはこの瞬間を狙っていた。彼女の右手は今だ砕けた電磁スピアの切っ先を握っており、左腕はその残骸を払ったため、横に伸びている。 時間にしてわすか数秒、だが、至近距離で体を攻撃できる唯一のチャンス。 「破廉恥だが、気にはしてられない!!!」 右手を伸ばし、掌を闇の書の意思の胸に押し付ける、やわらかい感触が手に伝わるが、今はそんなことどうでも良い。 闇の書の意思は、電磁スピアの破片を持ったまま殴りかかろうとするが、攻撃はわずかばかりナイトガンダムの方が早かった。 「ムービ・ガン!!」 零距離から光の弾丸を放つ魔法「ムービ・ガン」を放った。零距離から放ったため、反動でナイトガンダムは吹き飛ぶ。だが、 防ぎようの無い零距離での直撃を受けた闇の書の意思はその数十倍の勢いで吹き飛び、ビルに激突、 ソーラ・レイの光により、脆くなっていたビルはその衝撃で崩落、激しい音を立てながら倒壊し、彼女を生埋めにした。 だが、零距離からの攻撃は使用したナイトガンダムにもダメージを与えた。痛みに顔を顰め、腕を押さえながら蹲る、だが、そんな事をする暇は無い。 「ぐあぁぁ・・・・エ・・・・エイミィ殿!!今です!!転送を!!!」 煙が立ち込める腕を振りながら、様子を伺っているであろうエイミィに大声で伝える。 その言葉が伝わったのか、アリサとすずかの足元に転送魔法陣が展開、驚く間も無く、二人はその場から姿を消した。 「・・・よかった・・・・これで・・・」 二人が無事転送した事に心からほっとする。だがその直後、生埋めになっていた闇の書の意思がビルの瓦礫を吹き飛ばしながら表れ、 即座にナイトガンダム目掛けて砲撃を放った。 二人の転送を確認してたため、背を向けていたナイトガンダムは気付くのが遅れ、振り向いた時には盾を構える暇など無いほど迫っていた。 後悔する暇も、目を瞑る暇もない。だが、その攻撃があたる事は無かった。 『Sonic Move』 聞きなれた電子音と共に、体が引っ張られる感覚、気づいた時には自分に向かった放たれた収束砲はビルに直撃しており、 その直撃を受けるはずだった自分は手を取られ、空中に浮いていた 「良かった・・・間に合った・・・・ごめん、少し、気絶していた」 普段のバリアジャケットよりさらに薄い格好。『ソニックフォーム』に身を包んだフェイトは、間に合った事に心から安堵する。そして 『Restrict Lock』 リアクターパージにより、バリアジャケットの上着をなくしたなのはが、近くのビルの屋上から、闇の書の意思目掛けて拘束魔法レストリクトロックを施した。 本来なら一度で済む拘束を3重に賭けて施す。それに続けてフェイトもライトニングバインドを施し、動きを封じた。 「・・・・・これで・・・・・お話しできるね・・・・」 拘束された闇の書の意思に言葉を投げかけるなのは、だが、闇の書の意思は何も答えず、バインドの解除に取り掛かる。 「御願い!止まって!!ヴィータちゃん達を傷つけたのは私達じゃないんです!!!」 彼女は答えない、ただバインドを黙々と解除して行く。 「君は・・・・はやての言葉に耳をかたむけたのか!!はやてがこんな事を本気で望んでいると思っているのか!!」 彼女は答えない、残りのバインドを解除し、自由を手にする。 それでもなのは達は言葉を投げかけた、思いを込めて必至に。だが、その返答は言葉ではなく、 なのは達を囲むブラッティダガーという攻撃だった。 フェイトは咄嗟になのはとナイトガンダムの手を掴み上空へと退避、そして バルディッシュを構え、両手足のソニックセイルを羽ばたかせる。一撃を見舞うために 「こ・・・の・・・・・・駄々っ子!!!・・・・・言う事を・・・・・聞けぇ!!!!」 猛スピードで一直線に闇の書の意思へと迫り、バルデッシュを振り下ろす。続くようにナイトガンダムも突撃、少し遅れて剣を振り下ろした。 だが、二人の同時攻撃も、彼女が張ったシールドに阻まれ、甲高い音を立てるだけでおわってしまう。その直後 「えっ・・・・?」 「なん・・・だ・・?」 とてつもない無力感が二人を襲う。体は光に包まれ、徐々に薄くなってゆく。 「フェイトちゃん!!ガンダムさん!!!」 なのはの叫び声も二人には殆ど聞こえない、そして 『ABSORPTION』 デバイス特有の電子音の後、二人は完全に消えてしまった。 ・???? 「・・・・・ん・・・・・・」 今までに感じた事もない眠気がはやてを襲う、此処は何処なのか、自分はどうしたのか、そんな事どうでもよくなる程の心地よい眠気。 だが、うっすらと明けた瞳から見える人影がその眠気を無理矢理抑えた。 黒い服を着た同姓が見ても見ほれるほどの銀髪の美人、誰もが一度見れば忘れる事は無いだろう。 「(・・・・・だれやったっけ・・・・・・会った事ある様な・・・・・無い様な・・・・)」 眠いがやはり気になってしまう。声をかけようとしてみるが、体を眠気が支配しているため、口が重くて喋る事もできない。 だが、彼女の言葉を聞く事は出来た。優しい、澄んだ声 「・・・わが主・・・・・貴方の夢は・・・・私が全てかなえます・・・・・」 「私の・・・・・・夢・・・・・」 闇の書の意思はゆっくりと近づき、はやての頬を両手で優しく触る。 人とは思えない冷たい手、だがそれでもはやての眠気は覚める事は無かった。ただ、身を任せるだけ。 そんなはやての態度に何を感じたのか、闇の書の意思は一度微笑んだあと、頬から手を離し 「ですから・・・・主・・・・・」 その手をはやての首へと持っていき 「死んでください」 微笑みながら、ゆっくりと首を絞め始めた。