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【種別】 人名 【初出】 とある魔術の禁書目録-エンデュミオンの奇蹟- ただし、とある魔術と科学の群奏活劇の方が作品のリリースは早い。 新約九巻で名前のみ登場 【CV】 三澤紗千香 【解説】 宇宙エレベーター『エンデュミオン』開通に賑わう学園都市で、 上条当麻とインデックスが出会った『無能力者(レベル0)』の少女。高校一年生で、自身の発言よりおそらく所属は霧ヶ丘女学院と思われる。 毛先を結んだ鴇色の長髪と、鳥のエンブレムがついた水色の鳥打帽子が特徴。劇中で歌姫として活躍する際は、様々なアイドル衣装に変遷する。 本編開始の3年より前の記憶を失っており、今の名前は施設で与えられたもの。 性格は明朗快活だが、インデックスへの突っ込みに咄嗟にアイアンクローを繰り出したり、 食事中に「歌を歌って」とねだられてデスメタ調の曲を口ずさむ等、若干ズレた部分も。 また、その食欲はインデックスが認め、意気投合するほどに旺盛。 歌うことが好きで、路上ライブを行いながらメジャーデビューを目指しているほか、 ライブでは自主制作CDを配布したり、インターネット上でも彼女の楽曲がダウンロードできる。 既に一部では人気が出始めており、 噂好きの佐天涙子も歌手「ARISA」の情報をキャッチしていた。 その正体はオリオン号事件の際、シャットアウラ=セクウェンツィアの『大事な物を失ってもいいからみんなを助けて』という祈りが奇蹟という形で具現化した存在。 彼女の『音楽の才能』を宿した少女の肉体を持ってこの世に現出し、その能力でオリオン号の乗客乗員87名の命を救ったと言われている。 その代償としてシャットアウラは『音楽を認識する脳機能』と『父親』を失った。 またアレイスターによると、レディリーがオリオン号に施した術式も、彼女が生まれた原因のひとつであるらしい。 魔術側からは聖人あるいはそれと同等の何かを持っているとされており、イギリス清教が監視していた。 このように超常的な存在でありながらも、上条当麻の幻想殺しで触れられても消滅しなかったところから、 魔術でも超能力でも説明のつかない存在となっている。 ゲームでは神裂に監視され、聖人かどうか見定められている。聖人判定というものらしい。 九月十一日ではストリートライブをしていたとき、スキルアウトに絡まれていたところを御坂美琴に助けられる。 その時彼女の電話番号をもらっている。 劇場版のストーリーでは、奇蹟を起こすその体をレディリー=タングルロードにかけられた不死の呪いを解く魔術の核に利用されそうになる。 終盤に真実の記憶を思い出した彼女とシャットアウラが再び一つに戻り、その歪曲が奇蹟を起こし崩壊寸前だったエンデュミオンから観客や学園都市を救った。 その後どうなったかははっきりと説明されていない。 少なくともシャットアウラの中に解けて彼女の好きなものを思い出させたのは事実である。 その生まれ方の性質上異能の分類に入るにもかかわらず、幻想殺しに触れても消えなかった。 それを置いても上条は彼女を「幻想なんかじゃない」、「歌の好きな普通の少女」として以前と変わらない目で見ている。 【口調】 特徴的な部分はないが、上条の事を「当麻くん」と呼ぶ貴重な存在。 例)「インデックスちゃんと当麻くんて、どういう関係?」 【余談】 彼女が起こしたとされる奇蹟には必ず傷つく人が現れる。 オリオン号事件のときにはディダロス=セクウェンツィアが死亡し、 ライブの爆破事件では上条当麻が頭をけがしている。 また、漫画版のおまけ漫画で日課として歌いながら散歩をしている。 歌っていると周りが見えなくなるとしているが、「3巻の上条と一方通行の決戦」と「8巻の残骸を巡る黒子と結標の決戦」の作中の初期で高レベルの戦いに「戦ってる場面の近くにいるのに戦闘に巻き込まれていないどころか、その戦いの当事者にさえいることを気づかれていない」というあり得ない体験を無意識のうちにしている。 更に言えば3巻の戦いでは二人の台詞から上条が駆けつけた時から一方通行がプラズマを作ったときまで近くにいた可能性もある。 鳴護アリサは「願いの集積体」であるという点で、上条当麻の『幻想殺し』や、上里翔流の『理想送り』と非常によく似ている。
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【種別】 タイトル 【初出】 とある魔術の禁書目録 PLEASURE DISC(DVD1巻初回特典) 【解説】 『しゃくがんのシャナたん』の公式パロディ作品。 原作の出版社・アニメの制作会社が同じであるため、 ちびキャラ化したインデックスこと「いんでっくすたん」をはじめ、各登場キャラクターたちがパロディを繰り広げる。 基本的には本編のパロディだが、 『しゃくがんのシャナたん』のものまねや出演声優に関するネタ、さらには出演声優による地の会話などが加えられている。 この他、テレビアニメのプロモーションでコラボレートした『とらドラ!』や外伝作品『とある科学の超電磁砲』の宣伝などもネタにしている。 なお、いんでっくすたんは後に『しゃくがんのシャナたん』への出演も果たしている。 禁書Ⅱでは「いんでっくすたん3」が作られ、釘宮繋がりで「アニェーゼたん」も登場。 同作では『侵略!イカ娘』や『ミルキィホームズ』などのパロディも行われたが『侵略!イカ娘』のパロディに至ってはどうやらスタッフが原作者にパロディ元の許可を取っていなかったらしく後日twitterで不快感を露わにされた上一部のファンからも何とか動画という表現をしたせいで「悪乗りしすぎ」「ネットユーザーに媚びるとかお前らそれでもプロかよ」とお叱りの声を受けた。 ちなみに1と2の脚本は声優としても知られる浅沼晋太郎。 アニメ『にゃんこい!』では高坂潤平を演じている時に、高坂潤平が上条さんの似てるという評判からパロディを演出した。
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とある喫茶店の一日 ?Mad_Tea_Party? 君はこんな噂を耳にしたことはないかな? その喫茶店には、普通にはありえない出会いが待っている。 現在過去未来の全てにおいて接点のないはずの人とも、“偶然”巡り会えてしまう不思議なカフェ。 アーネンエルベ。 もしも街を歩いている時、そんな名前の看板を見かけたなら。急ぎの用事がないなら、足を踏み入れてみるといい。 とても貴重な経験が出来るはずだ。 まあ身の安全の保証は出来かねるが……いやいや、何事も自己責任ということだよ。 店自体の質もとてもいい。マスターオリジナルのブレンドコーヒーに、軽めのツナのサンドウィッチ。あとはモンブランでもあれば言うことなしだ。 そうそう、座るならテーブル席を選ぶべきだ。向かいに座る人がいたなら、その人はきっと、君が絶対に出会えない相手だろうからね。 キィッ、と擦れる音を立てて木製の扉が開く。カランコロンという鈴の音が、少し遅れて続いた。 視界に入ってきたのは、電灯を極力排した薄暗いカフェテリア。まあ雰囲気づくりは悪くない。さびれていると言い換えることも出来そうだが、どうせ“この街”では平日の昼間に繁盛している店はないから気にすることもないだろう。 案の定、並べられたテーブルはどれも空席だった。たった一つ、奥まった場所に置かれたテーブルに赤っぽい制服の少女と白っぽい修道服の少女が陣取っている。白昼堂々サボリとはたいした度胸だ。修道服ということは、第十二学区の学生かもしれない。わざわざこんな所まで足を運んだのは、教員の見回りを回避するためだろうか。 (…………ン?) 不意に、自分の思考に疑問が浮かぶ。 “こんな所”って、一体どこだ? この店に入る前に、街のどのあたりを歩いていたのか思い出せない。 しかし、疑問が違和感に変わる前に、カウンターから声がかかった。 「――いらっしゃいませ。お一人ですか?」 男にも女にも、大人にも子供にも、聖人にも囚人にも見える人物。ついでに言えば店長とも店員ともとれる態度だった。長すぎる髪を大きな三つ編みに束ね、花柄のエプロンをつけてコーヒーカップを持ち上げている姿に、彼はなぜだか対軍兵器級のツッコミを入れたくなったが、ギリギリで自制する。 「……あァ」 「テーブル席とカウンター席がございますが、どちらに?」 「テーブル」 「かしこまりました。左手奥のCテーブルをお使いください。注文がお決まりになりましたら、卓上のベルを鳴らすか、カウンターに直接声をかけてくだされば承ります」 手振りで了解したことを伝えると、彼は支持されたCテーブルとやらに向かう。静電気で髪の毛を持ち上げられているような奇妙な感覚があったが、不思議と店を出ようという気にはならなかった。 ――その喫茶店には、普通にはありえない出会いが待っている。 いつ聞いたのかも思い出せない、うさんくさい噂話を真に受けた訳でもないのだが。 こうして学園都市最強の超能力者、一方通行(アクセラレータ)は、今日という取り戻せない日をアーネンエルベで過ごすことになった。 時刻は午後一時。少し遅めのランチタイム。 ◇ ◇ 一方通行が座ったテーブルの二つ隣り、Aテーブルには、赤と白の対照的な少女達が座っている。 クリームソーダのアイスに刺さってしまったストローと格闘している修道服の少女がインデックス。注文した紅茶に自前のブランデーをボタボタ足らしている冬用制服の少女がサーシャ=クロイツェフ。 彼女達は、一方通行が想像したように学校をサボってこの店に来ていた訳ではなかった。二人はもともと学園都市のどの学校にも所属していない、いわゆるモグリの住人なのである。 しかし、それも実は今日までの話。 「明日から、かぁ。いいなぁサーシャは。ロシア成教公認で転入出来るなんてー」 「そうは言うけど、あくまで諜報活動の一環としてであるし。むしろ周りの人たちを騙しているようで気が引けるというか」 インデックスのぼやきに、サーシャが控えめに答える。 ここ最近の彼女たちの話題は、「サーシャの学園都市への転入」に集中していた。 一端覧祭と『灰姫症候(シンデレラシンドローム)』の事件が無事終わり、さあ別れを惜しもうとした所へやって来た国際郵便。開けてみれば近所の中学校への転入手続き書類とサーシャに当分の間学園都市への駐留を命じる指令書だったのだから驚いた。 えらいこっちゃえらいこっちゃと騒ぎながらも準備しているうちに、いよいよ明日が初登校の日。 今は学生向けのデパートで注文しておいた冬服教科書その他の必要雑貨をまとめて引き取ってきた帰りなのである。テーブルの下にはパンパンに膨れた紙袋がいくつも置かれていた。大分冷え込んできたこともあって、冬服だけは受け取ってすぐに着替えたが。 ちなみに、サーシャは転入先である夕凪中学校の女子学生寮に既に部屋を与えられていたが、そちらではほとんど寝泊りしていない。これまで通りとある少年の部屋に押しかけ居候のような形で暮らしている。 「でも、さあ」 インデックスの愚痴は止まらない。ここ数日ずっとだ。 上条さん家の白シスターは、決して赤シスターを妬んでいる訳でも、ましてや恨んでる訳ではない。それだけは絶対だ。 けれども、 『サーシャが学校に行くようになると、また私は昼間一人ぼっちになっちゃうもん』 口に出した訳ではないが、サーシャは友人のそんな隠された本音を察してしまっていた。 自分が属している魔術サイドとは敵対していると言って差し支えない科学サイドの街で、朝から放課後までという長い時間をたった一人で過ごす寂しさはどれだけのものだろう。サーシャはようやく出会えた、さの寂しさを分かち合える友達なのだ。 その彼女までが、学校に通うようになれば。 (……問一。どうすればいいのでしょう?) 落ち込み続ける友にかける言葉も浮かばず、天にまします我らの父とかに祈ってみる赤シスター。だがそう簡単にありがたいお告げを下さるほどこの作品(せかい)の神様は親切じゃない。 その代わりと言ってはなんだが、感覚的には右斜め後方から幻聴じみてか細い女の子の声が聞こえてきた。 (えっと。……とりあえず、何でもいいから褒めて、褒めて、褒めまくってみるのはどうですか……?) なるほど。ありがとう私の天使(スタンド)。 (え、そんな、私オラオラとかアリアリとかだが断るとか出来な――あれ、もしかして今後私ってそういう扱いなんですか?) それこそ神のみぞ知る、だ。 サーシャ=クロイツェフは意を決し、怒涛の褒め殺し作戦を敢行する。 「そう、だ。インデックス、注文した時と今日と、デパートまでの道案内をしてくれてありがとう。やはりこの辺りの地理には、まだ慣れていないから」 「大した事じゃないよ。私が案内できたのは、昼間暇な時にぶらぶらするコースだったからだもん。――うん、昼間、暇だから」 一層暗くなる声に、サーシャは第一撃が裏目に出てしまった事を悟る。 「うう……ん、荷物も、半分持ってくれて、感謝している。これはとても一人で持てる量ではない」 「……でもさりげなく教科書とかの重い袋を自分で持って、服とか靴なんかの軽い方を私に回してるよね」 続く第二撃が(両者の)ボディをえぐるように打つ。 「ああああああ。そ、そのクリームソーダ、おいしい?」 「うん。サーシャのおごりだけどね。とうまは私にお金持たせてくれないから」 第三撃が急所に当たった! 効果は抜群だ! 「…………大丈夫?」 「うん。うん。大丈夫だから……今は貴女のために祈らせてください……」 挙句の果てに慰められてしまう。十行足らずで精神的にフルボッコされたサーシャの明日はどっちだ。学校か。 その頃、彼女達の二つ隣のテーブルで白く、白く、白い超能力者が四肢を震わせてツッコミ衝動に耐えていたことを知る者はいない。 誰にだって出会いを選ぶ権利はある。
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11/29 SONYの公式FWのアップデートです。 3.73の変更点は UMD読み込み中に起こるバグの修正 です。 マイナーアップデートですのでDark_Alexさんは恐らく3.73のCFWは出さないですね・・・ 一応、ダウンロードしておきましょう。 公式FW3.73はこちらから
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【種別】 人名 【元ネタ】 Last Order=「最終指令」 【初出】 五巻 【CV】 日高里菜 【解説】 妹達の上位個体で、通称「ラストオーダー」。 上位個体としてミサカネットワークに直接命令を下す事ができ、 反乱防止用の安全装置として、肉体的に未完成のまま培養機で保管されていた。 外見年齢は10歳前後で、肩まである茶色の髪と同色の瞳、立派なアホ毛を持つ。 未完成のためか他の個体より感情表現が豊か? 上位個体ということに目を付けた天井亜雄が、 学園都市破壊の為ウィルスコードを仕込むが、彼の手を離れて逃亡。 紆余曲折を経て、最終的には一方通行が命を賭けて助ける事となる。 その際ウィルス感染前の人格データを脳に上書きされ、 彼と過ごした記憶を一度失うも、後にミサカネットワークから補完している。 こうして自分の記憶をミサカネットワークに共有させバックアップを取るのは、本人の癖らしい。 この癖が、後に一方通行らがインデックスが使った『歌』のデータを得るのに役立った。 一方通行ともに黄泉川に預けられ療養するはずだったが、 退院直後の事件で猟犬部隊に拉致され、 学習装置によって上位命令を強制的に発動、ヒューズ=カザキリを出現させた。 美琴の知識を借りたインデックスの詠唱によりウイルスを停止した後、 冥土帰しの元へ送られたと思われる。 因みに天井や木原等のように、 ミサカネットワーク上での役割を特に意識して呼ぶ場合は「最終信号」と、 それ以外の人は「打ち止め」とルビは同じで別の呼び方をしている。 十二巻では(一方通行の推測ではあるが五巻でも)マンションのオートロックに能力を使用しており、 他の妹達と同じく発電系能力者の力を有していることが確認できる。 レベルは一三巻での自己申告によると強能力者(レベル3)。 妹達はレベル2~3相当らしいので、打ち止めが特別なのか、それとも振れ幅の範囲内なのかは不明。 【口調】 一人称は「ミサカ」。ただし妹達全体の総意を表す場合もあるので若干解りにくい。 基本的に通常会話文の後、「ってミサカはミサカは~(して)みたり(みる)」、 または「~ってミサカはミサカは~する(してみるんだ)けど」が付く。 例)「うわ、何か本当に大変な事になってる、ってミサカはミサカは絶句してみたり」 ただし、登場初期には人格の未完成故か「~(して)みたり(みる)」がつかなくても、 文中最後の「ミサカ」の語句を繰り返していたことも。 例)「―――にんまりしてみたりしてーっておわあー!?ミサカのミサカの声が大っきくなったぁ!?」
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PSP/か行 か行 PSP/か行/ガンダムアサルトサヴァイブ
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PSPタイトル別 あ行 か行 さ行 た行 な行 は行 ま行 や行 ら行 わ行
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とある都市(まち)の超能力者(レベルファイブ) 「はーい。補習の授業を始めるですー。今日は先生がプリントを作ってきたのですー」 そう言いながら生徒にプリントを配っていくのは、短いピンクの髪をした身長百三十五センチの教師、月詠小萌だ。 十二歳、つまり小学六年生の子供にしか見えないのだが、列記とした大人である。 巷では生きる学園七不思議、等と言われているらしい。 七不思議になった理由は単純で、どうみてもロリコンさんが好みそうな外見にしか見えないから、だ。 「なあなあ」 「何だにゃー?土御門さんに何か話でもあるのかにゃー?」 小萌先生がプリントを配り始めた直後、話し始めたものがいた。 片方は青髪ピアス。外見はその名の通りで、三大テノールもびっくりの野太い男ヴォイスを出す。 片方は金髪にグラサンと、如何にも『不良』といった感じの青年だった。 名前を、土御門元春という。 にゃーにゃー言っているが、彼の身長は百八十センチだという事を言っておく。男の娘ではない。 「はいそこー?補習ぐらいはちゃんと受けるのですよー?」 小萌先生が二人に軽く注意をする。 だが二人は気にせず、 「どうよ最近?彼女とか、出来たん?」 「何度も言わせるんじゃないにゃー。オレは舞夏一直線なんだにゃー」 「相変わらずお前は義妹一直線なんやなー……。ああ、小萌センセー最高や」 物騒な会話をしていた。 「…………うっ」 誰かの嗚咽が聞こえた。しかも少女の。 クラスの全員が驚いて小萌先生のほうをみる。 そこには、 「あらー?小萌先生がお泣きに……」 クラス全員の頭の中で、『小萌先生が泣いた→犯人は誰だ→そういえばさっき小萌先生が誰かを注意していた→青髪ピアスと土御門だった気がする→ならばそいつらが犯人だ』という式が三秒で出来上がった。 クラス全員が(二人除く)鈍器を握る。どうしてそんなものを持っているのかが不思議だ。 「……逃げますか、土御門?」 「望む所だぜい」 そうは言ったものの、ここは割かし高い場所に位置する教室で、しかも脱出口は教室前方と後方にある扉のみ。 脱出口は怒ったクラスメイトに封鎖されていた。 当然、怒り狂ったクラスメイトから逃げられる筈も無く、教室内に愉快な悲鳴が響いた。 「ったく……」 土御門達がどうなったかはさておき。 一部の馬鹿共を除き、今日は休日だ。 二百三十万いるうちの八割以上が学生のこの学園都市では、休日は殆どの人が休みになる。 常盤台中学に通う御坂美琴は、自動販売機の前にいた。常盤台中学といえば、学園都市でも五本の指に入るといわれている御嬢様学校だ。 灰色のプリーツスカートに半袖のブラウスにサマーセーター。何の変哲も無い中学校生徒の格好をしている。まあ、彼女の通っている中学校は何の変哲もないことはないのだが。 御嬢様学校に通っているので頭も良く、更に彼女は能力者で溢れるこの学園都市でも七人しかいない『超能力者(レベルファイブ)』なので、補習等とは無縁だ。 御嬢様御嬢様といっても、彼女を見たら御淑やかなイメージが崩れるだろう。 「ここの自販機って何時来ても壊れてるわね……、っと!」 そういいながら、回し蹴りを自販機に決める美琴。 パンツが見えるかもとか言うやからもいるかもしれないが、美琴はスカートの下に短パンを装着しているので何ら問題は無い。 御嬢様なら、普通に硬貨を入れて買うべきだが、美琴はそういったことを全く気にしない。 と、そこに、 「お姉さま~っ!」 突如として、其処まで何も無かった空間に人が現れた。 その人物は少女の形をしており、また美琴とはサイズ違いの同じ服を着ていた。その人物は美琴に抱きつこうと手を広げていたのだが、美琴が数歩横に移動した事により地面に打ち付けられてしまった。 「く、黒子っ!?どうしてここにっ!?」 「うふふ。わたくしは、お姉さまの行く所なら何処へでもぐべはっ!?」 黒子、といわれたその少女は、起き上がりながら言葉を言っている最中に美琴から回し蹴りを貰い、また地面に打ち付けられた。 茶髪のツインテールに、AAという小さい胸いやすいません嘘です許してくださいってば。 これからの成長に期待できる胸をしている。 本名は白井黒子。白黒と呼んではいけない。 黒子は『風紀委員(ジャッジメント)』という学生組織に入っている。 おもな仕事は基本的の校内の治安維持だが、校外の治安維持活動もしている。黒子はおもに後者を仕事にしている。 ここまで聞くと割りといい子に思える。 だが、黒子は顔面の汚れを手で払いながらこう言い放った。 「さあ、お姉さま~?今日は休日なんだから黒子と水入らずどぶはっ!?」 本日二回目の美琴による回し蹴り直撃である。 この黒子という少女、美琴の事を『お姉さま』と呼び、慕っているのだ。 慕っているだけならまだいい。 黒子の場合、既に『百合』という領域にまで足を踏み入れてしまっているのだ。 それ故、たまに行き過ぎる。いや、常時行き過ぎてる。 「はあ……。ま、いいわ。しょうがないから今日一日あんたと付き合ってあげる」 ここの『今日一日』というのがミソで、これをはずすと告白したことになるから要注意だ。 「本当ですの!?じゃあ、早速買い物に行くんですの!」 この返事に対し、思わず間の抜けた表情をする美琴。御嬢様とは思えない。 「……今日は変な要求をしないのね。珍しい」 「失敬なっ!わたくしだって淑女ですのよ?買い物だって嗜みますわっ!」 少し意味が分からないが、美琴は適当に頷いた。 ともあれ、ショッピングだ。 (ゲコ太の服とかあるかな……?) ゲコ太というのは、とあるカエルの隣に住んでいるおじさんカエルだ。乗り物に弱く、ゲコゲコしてしまうというキャラ設定らしい。 所謂少女趣味という奴だ。 「お姉さま~?またゲコ太の事とかを考えているんですの?」 「なっ……!?そ、そそそそんな事無いわよ!?わ、私だって普通の服を着るわよ!?」 明らかに上擦った声で答える美琴。嘘だということがバレバレだ。 「んふふふふ……」 「な、何よ気色悪い……」 黒子が変な笑みを浮かべる。御嬢様とは思えない。 「ま、いいですわ。ささ、行きましょうお姉さま」 「は?あ、うん……」 黒子は美琴の手を握る。 その瞬間、二人の姿が消えた。 黒子の能力は大能力(レベルフォー)の『空間移動(テレポート)』。 三次元的空間を無視して物質を転移出来る能力だが、三次元から十一次元への特殊変換時に計算をするため、脳に多大な負担が掛かってしまうのだが、そこは常盤台に通っているだけはある、ということだろう。 ともかく、黒子と美琴は『空間移動』により、早々とこの場から消え去った。 二人が消えたので、この空間は蹴られた哀れな自販機がぽつんとおいてある侘しい場所になってしまった。 と、そこに、 「ここが今日の実験場か……?」 白い髪に紅い眼、そして柄の悪い目つきをした男がやってきた。 彼の名は『一方通行(アクセラレータ)』。学園都市に七人しかいない『超能力者(レベルファイブ)』の中でも頂点に立つ第一位だ。 能力名も『一方通行(アクセラレーラ)』といい、力のベクトルを自由自在に操る能力を持つ。 「お待たせしました、とミサカは謝罪の言葉を述べます」 一方通行とほぼ同時に、『御坂美琴』が現れた。 容姿、身につけているものは先程ここにいた御坂美琴と殆ど同じだ。違うことといえば、頭につけているゴーグルとスカートの下に短パンを履いていないということだろう。 「待たせンなよ、クソが。で?今回で何回目になるンだ?」 といっても、一方通行は大して待っていないのだが。 一方通行の挑発的な言葉に対し、 「はい。今回で五千六百十八回目です、とミサカは冷静に答えます」 感情のこもっていない声で答える『御坂美琴』。 彼らが言っているのは、『絶対能力進化(レベル6シフト)』という計画のことだ。 そして、御坂美琴に良く似た少女の正体は、 「欠陥電気(レディオノイズ)、ねェ?『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』とかいう機械野郎に自分の命運を弄ばされて満足かい?」 「構いません、とミサカは言います。元々要らなくなった私達を再利用する為の計画ですから、とミサカは事実を述べます」 元々は『量産能力者(レディオノイズ)計画』にて開発された彼女達。 偶発的に生まれる超能力者(レベルファイブ)を確実に生み出す、という趣旨の実験だったのだが、生み出された御坂美琴の『妹達(シスターズ)』は御坂美琴(オリジナル)の一%にも及ばない欠陥品だった為、実験は失敗。 生み出してしまった二万体にも及ぶ『妹達(シスターズ)』をどうしようかというところに飛び込んできたのが、この『絶対能力進化(レベル6シフト)という計画である。 『二万のシチュエーションで、二万のレディオノイズを殺害する』といった内容で、目的は一方通行を『絶対能力者(レベルシックス)』という超能力者(レベルファイブ)の上へと進化させることだ。 今回が、五千六百十八回目の実験。シチュエーションは、『人が使う場所での戦闘』、だ。 「さァて、今回は何をして楽しませてくれるのかな? 哀れな子羊ちゃンよォ!」 この言葉を合図に、戦闘の火蓋は落とされた。 また、とある場所では。 「痛っ!……落ちちゃった……。でも、魔術師から逃げないと……!」 あるマンションの物干し竿に、白い修道服に身を包んだ少女が落ちた。 だが、気にするものは誰一人としていない。 その物干し竿が付属している部屋には、誰も住んでいないからだ。 「大丈夫。『歩く教会』の強度は絶対なんだから」 少女はその身を奮い起こし、屋根の上へと飛ぶ。 「さて、準備は終わったな」 窓のないビルの一室に存在している、『人間』アレイスター。学園都市における最高権力者だ。そして彼は、男にも女にも聖人にも囚人にも子供にも老人にも見えた。簡単に言えば、見るものによって数十、いや数百、数千もの姿に見えることになる。 尤も、彼が最高権力者であるということを知っている人間は少ないのだが。そして、この普通の手段では進入不可能なこのビルに入ることを許可された人間は、殆どいないのだが。 その四角いスペースの真ん中にある、円筒形の生命維持装置の中に彼はいた。 『人間』アレイスターは、赤い液体で満たされたその装置の中に、逆さまに浮かんでいた。その赤い液体は、彼の体の細胞の一つ一つに干渉していく。 その装置と彼の周囲は、眩い光で埋め尽くされていた。 だが、この部屋には『照明機器』と呼ばれるものが存在しない。 しかし、この部屋は光で溢れている。 原因は、四方の壁に隙間なく取り付けられているモニターにあった。そのモニターの映像を鮮明にするため、モニター自身が光っているのだ。 そして、その映像には学園都市の様子が捉えられていた。 「それにしても、我ながら狂った事をしたものだ」 『人間』アレイスターは、一日前にとある魔術を行使した。 勿論彼が行使したのではない。彼は『考え出した』だけだ。その魔術を行使したものは、今はここにはいない。 エイワスというのが、その者の名だ。 彼はある事情により封印されている。 『人間』アレイスターがとある魔術を行使した事を知っているものは、この世界の中でアレイスターとエイワスのみだ。 狂った事、というのはとある魔術を行使した事だろう。 あるモニターでは、白い髪に紅い瞳を持った少年と、茶色の短髪で常盤台中学の制服を着た少女が激突していた。分は明らかに少年の方にあった。 あるモニターでは、白い修道服を着た少女が二人の追っ手から逃げ惑っていた。打ち落とされるのは時間の問題だろう。 あるモニターでは、黒いツンツン頭の少年がアレイスターと全く同じ形の生命維持装置の中に入れられていた。中を満たす液体はアレイスターのものより濃い。そして逆さまではなく、頭の部分が機械で覆われていた。 「さ、私は私の仕事をするか」 『人間』アレイスターは、何かを操作した。そして、何かが動く音がする。 『なんでしょうか』 部屋に、女のものと思われる声が響く。 「『座標移動(ムーブポイント)』か?頼みたいことがある」 『どうせろくなものじゃないんでしょ?』 『座標移動』、と呼ばれた彼女は溜め息を漏らした。 結標淡希というのが彼女の名前だった。 彼女の能力は、ある座標にあるものを任意の座標に移動させる事ができる。アレイスターがいる場所には扉や窓といわれるものがないので、彼女の能力は大変重宝している。 本当は彼女自身がこちら側に来てくれれば手っ取り早いのだが、今はこのモニターの映像を見られるわけにも行かないし、彼女は現在は自分自身にはその能力を行使できない。 昔能力が暴発したせいだ。彼女は現在それがトラウマになっている。 尤も、彼女はトラウマを乗り越えるのだが、今の彼女はまだ苦しめられている。 「これから私が指定する座標にあるものを、ある人物に届けていただきたい」 『分かりました。ある人物とは?』 『座標移動』は殆ど無機質な声で言う。 彼女は近々反乱を起こす。仕方ないと言えば仕方ないか、と『人間』アレイスターは考える。 「学園都市第一位だ」 『……ッ!?』 『座標移動』の、驚愕と恐怖を交えた声が聞こえた。無理もないだろう。今第一位といえば、全盛期のころの『一方通行』だ。恐怖の念を抱かないものが異常だ。 「そう臆するな。君には『モノ』を届けてもらうだけ。第一位の手元にいきなり『モノ』が現れるように仕向けてくれればいい」 『……分かりました。では早く座標を』 無駄話をするのもいいのだが、そうすると都合が悪い。 よって、アレイスターは座標を暗号すら使わずに伝えた。 「変な気は起こさないで頂きたい。君は一刻も早く第一位のもとへ『モノ』を届けてくれ」 『座標移動』からの、返事はなかった。 「さて、これが終わったら後は観察だけだ」 『人間』アレイスターは、ポツリと、そう呟いた。 彼の口元に浮かんでいるのは、笑みだった。喜怒哀楽全ての感情に当てはまらない、説明不能の笑み。 その笑みが絶える事は、なかった。
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『希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)』 10 52 AM 天候は曇り。 今にも雨の降りそうな天気にほとんどの人が傘を持って歩いていた。 (……俺も傘持ってくればよかった) 肩で息をしながら上条は美琴と約束した、あの自販機のある公園にたどり着いた。 この天候のためかいつも見る子供たちや学生の姿がない。 そんな天候を見て、上条は憂鬱な気分になった。 息を整えながらポケットから携帯を取りだし、時刻を確認する。 「………………10 52?マジかよ…」 遅刻だ。 約束の時刻は10 00。 現在時刻は10 52。 完全なる遅刻。 怒られるのを覚悟しなければならない。 「やっぱ…おごらされたりすんのかな…」 小さな財布を取りだし中身を確認してみると、雀の涙ほどの金額しかないことに上条は泣きそうになった。 今日一日だけ遊ぶ金すらも危ないのに、おごらされたりしたらそれこそ終わりである。 もし、そんなことになったなら、 『インデックス~今日から次の支給日までご飯はお茶漬けだよ~』 『ホント~?毎日毎日お茶漬けなんて私は幸せなんだよ~』 『あはは~噛みつくなよインデックス~』 なんてことになりかねない。 (あ、マズイ…想像しただけで頭が痛くなってきた…) 古傷が痛むぜ…と上条は左手で自分の頭をさする。そう簡単に朝の一撃は忘れられないようだ。 そんなことをしている内に自販機の前に着いた。 約束の場に怒り狂った電撃姫が君臨していると予想していた上条だが、 「あれ?」 そんな予想に反して、自販機の近くに美琴はいなかった。 (集合場所って…ここで良かったよな?) 携帯のメールボックスを開き、美琴とのメールを確認する。 「集合時間は10 00、集合場所はこの前の自販機の前…っと。間違ってねえよな」 もしかして帰っちまったかな、と上条は嘆息しながら、携帯の電話帳を開き『御坂美琴』にカーソルを合わせた。 上条としても今日という日を楽しみにはしていたのだ。 それを自分の不手際で潰すなんてことを上条はしたくなかった。 (謝って許してくれるかわからねえけど…やらないよりはマシだろ) そして、上条は電話の『発信ボタン』を押そうとした時だった。 ドン!と上条は誰かが抱き着いてきたような感触を右腕に感じた。 「へ!?」 抱き着いてきた人物は、 「アンタ、デートに遅れるなんてヒドイじゃない?」 上条の右腕を強く抱き締めて、頬を膨らませている少女だった。 「う、おぉぉい!お前、御坂か?それにデートって…」 右腕に女の子のあらぬ部分が当たっているため、上条は顔を真っ赤にして言葉を紡ぐ。 そんな上条を見て、 「私以外の誰に見えるってのよ?それに女の子と遊びに行くなんてデート以外のなにものでもないでしょう」 意地悪そうな表情を浮かべ少女、御坂美琴はそう言った。 「み、御坂!腕を離してくれ!む、胸が当たってる、胸が!」 「ダメよ。それじゃあ罰にならないもん」 美琴は上条の腕を引っ張りながら笑う。 「遅刻しておいてなんの罰もないわけないじゃない」 その笑みに上条は思わずドキン…とする。 (こいつ…いつもとキャラ違いすぎるだろ……ッ!?) さあ、行くわよ!!と美琴は上条の腕をさらに強く引っ張った。 「待て!どこに行くんだ!?連れていく場所ぐらい教えてくれ!」 「秘密よ。着いてからのお楽しみってやつ」 ギャアギャア、と騒ぎながら二人は公園から立ち去った。 公園に人の気配はなく、妙な雰囲気が辺りを支配していた。 11 07 AM 「な……ンだとォ…」 一方通行(アクセラレータ)は目の前の少女、御坂妹が話した内容にかろうじて言葉を紡いだ。 「ってこたァ、ヤツラの目的ってのは…」 「おそらく貴方の考えていることで間違いはないでしょう、とミサカは相手の心理を読み取ります」 クソッ!と吐き捨てるように一方通行は呟く。 御坂妹から聞いた話は一方通行にとって、耳を疑うようなものだった。 敵対勢力名〔パンドラ〕 作戦名〔希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)〕 そして、その目的と手段。 予想外だった。 一方通行が予想していたことの数倍上をいくような内容ではない。 予想はできるがありえない、と思ってしまうようなことを〔パンドラ〕は実行しようとしている。 「なら…いま超電磁砲(レールガン)は〔パンドラ〕の作戦どォりに…」 「はい、おそらくお姉様は何も知らずに街を歩いているはず、とミサカは確信に近い予想を伝えます」 「打ち止め(ラストオーダー)はァ?」 「心配は必要ありません、とミサカはロリコンを冷たい目で見つめながら自分の予想を述べてイタイイタイ!無言チョップを止めなさい、とミサカはあなたにお願いします」 「…………………………………」 一方通行は無言チョップを止め、空を仰ぐ。 かろうじて見える空は雲しかない殺風景なものだった。 「あなたは他の妹達を助けに行くのでしょう?ならばミサカも協力します、とミサカは提案して………」 「まずは病院だァ…その手じゃ、軽いものでも持てやしねェ」 「な………ッ!?」 一方通行の言葉の意味を数秒をかけて理解し、その言葉に御坂妹は怒りを覚えた。 思わず身を乗り出しながら、 「そんなことをしている暇はありません!とミサカは…」 「足手まといだってのがわかンねェかなァ?」 仕方なく、といった表情でため息混じりに一方通行は言った。 御坂妹はその言葉に口をつぐむ。 おそらく、一方通行は御坂妹に傷ついて欲しくないのだろう。あの冷たい表情の裏にそんな気遣いがあるのだろう。 そして、実際に足手まといだということを御坂妹は自覚していた。 御坂妹は悔しさに唇を噛む。 護りたい世界を自分で護れないと言われたことが御坂妹には悔しくて仕方がなかった。 ふざけるな、と噛んだ唇から血が流れる。 キッ、とにらみつけるように御坂妹は一方通行に視線を向けた。 「ミサカにも、やれることはあります…」 「あァ?」 「ミサカにだってやれることが、やりたいことがあるんです!それをあなたに止められる理由はありません!!」 感情が乏しいはずの顔に『怒り』という明確な表情が浮ぶ。 そんな御坂妹を見て、一方通行は唇の端をつり上げながら思う。 自分は間違っていなかった。 一万の妹達(シスターズ)を殺した自分が残り一万を護ろうとしたことに間違いはなかった。 一万の妹達を殺したことをよかったとは言わない。 しかし、残り一万の妹達を救ったことに間違いはなかったと一方通行は自信を持って言える。 そう言えるほどに目の前にいる少女は『善人』だった。 そんな『善人』が『悪党』についていく必要はない。 「何もねェよ…」 心の中で考えていることをおくびに出さずに、一方通行は御坂妹を見る。 「お前にできることなンて、何一つ」 胸がチクリと痛む。 「ありはしねェンだ」 「…………………………………」 御坂妹はその言葉を聞いても一方通行を真っ直ぐ見続けた。 一方通行の瞳に御坂妹が映る。 その表情は意志の強い姉を思い出させ、一方通行は心の中で舌打ちをした。 (妙なとこばっか似やがってェ……) そして、御坂妹が口を開こうとして、 「やることならさ。君にはたくさんあるよ」 そんな声が路地裏に響いた。 一方通行はゆっくりと振り返り、やってきた『敵』を見据えて、 「予想より早かったな…〔パンドラ〕」 そう呟いた。 二人の少年少女が道を歩いてくるのが見えた。 少年のほうは見たことのないブレザーを着ており染めでもいるのかボサボサの髪は緑。 極め付きには無表情。 あったばかりの妹達を思い出させる、感情のない顔だった。 対する少女はスポーツ少女のような短い髪。 ある程度デフォルトで整った綺麗な顔。 明らかに日本人ではない、青色の目をしていた。 そこまではまだいい。 問題はその服装だ。 まるで劇のような。 世代の違う時代にいるような服装だった。 「………あれが一方通行だよ」 無表情な顔の少年が唇だけを動かして呟いた。 その言葉に少女はニヤリと笑う。 「君が学園都市最強の能力者?弱そうだね~そんな細い体してさ」 一方通行は少女の言葉に対して、小さく笑って答えた。 「お前がローマ正教が開発した能力者?可愛い可愛い女の子がこンな暗いとこに来たらだめだろォ」 「能力者?何を言ってるのかな?ボクら魔術師と、無粋な脳開発なんかを一緒にされるなんて侵害だな」 そりゃとンだ失礼を、と一方通行は耳をほじりながら答えた。 そんな一方通行の仕草に少女はピクリと眉を動かす。 「………………ミーナ」 「うん…わかってる」 何かを確認するようにして二人は言葉を交わした。 「キミは面白いね…殺すのが惜しいくらいだよ」 「なァに言ってンのかわからねェなァ…テメェみたいな三下にオレが殺れるわきゃァねェだろ」 少女はポケットに手を入れながら、 「それはやってみないと…」 その言葉は最後まで続かなかった。 一方通行が懐から出した拳銃で発砲したからだ。 バァン!という銃声と共に少女の頭が弾けたように後ろにのけぞり、よろよろと数歩だけ足を後退させる。 「………あァ!?」 しかしそれだけだった 一方通行は銃口を少女に向けたまま目を見開く。 少女が倒れない。 銃弾で頭を撃ち抜いたはずの少女は傷一つない顔で薄い笑みを浮かべた。 「人が話してる途中に撃つなんて、悪だね~。障壁を作ってなかったら死んでたよ?」 そして、少女は手をいれたポケットから手を出した。 その手の中にはテニスボールくらいのガラス玉が一つ握られている。 「仕返し♪」 少女はそのガラス玉を下投げで一方通行の方に放った。 綺麗なガラス玉は周りのものを写しながら放物線を描くようにして宙を舞う。 「大いなる五大元素の一つ『水』」 少女は笑いながら独り言のように呟く。 「その役は罪を洗い流すことっていうのが有名だけどね。洗い流すことのできないほどの大罪を犯したときには…」 少女はここで言葉を区切り、一方通行に満面の笑みを向けた。 「『水』そのものが断罪を与えるんだよ」 瞬間―――――― ゴキュッ!とガラス玉が破裂した。 破裂したガラス玉の中から信じられないほどの質量の水が溢れだし、大きな津波を形成する。 「この汚れた世界に生きて、ローマ正教の信徒にならないことがすでに神への裏切り」 少女は何かを掴むように頭上に手を伸ばす。 「異教徒のクズに洗い流せる罪なんてないさ!」 それに呼応するように水の流れが渦を巻く。 周りのものを巻き込みながら水の壁が天を突くかのように舞い上がる。 「最初で最期の交渉。そこにいるクローンを渡してくれないかな?」 人間すら軽く飲み込む水流の壁が一方通行と少女の間で待機した。まるで見えない壁に阻まれて通れないような。 水流は一方通行と御坂妹を飲み込みそうに渦を巻いている。交渉を無下にすれば少女はすぐに壁を消すだろう。 おそらく、こんな水などを喰らっても一方通行は傷一つつかない。 しかし、今は御坂妹がいる。一方通行の能力は自分を守る最強の盾だが、他人を守るどころか傷つけてしまうものだ。 そんなもので御坂妹を守れるのか、と少女は聞いているのだ。 これ以上御坂妹を傷つけたくなかったらおとなしく渡せ、と。 しかし、見えない壁を間に挟みながら一方通行は少女にこう言った。 「寝ぼけたこと言ってンじゃねェよ」 死んじゃえ!!と笑いながら少女は叫ぶ。 見えない壁から解放された、コンクリートを簡単に粉砕する高さ5メートルの水の壁は獲物を見つけ、歓喜の声を上げながら一方通行と御坂妹のほうに雪崩れ込んだ。 11 12 AM 上条は美琴に連れられ一つの建物の地下駐車場にたどり着いた。 「御坂…ここに何かあるのか?」 面倒くさそうに声を出しながら、上条は美琴に尋ねた。 上条は疲れきっていた。 その理由は単純。美琴が上条の右腕に抱きつくようにくっついてきたからだ。 普通高校生、上条当麻には精神的ダメージが大きすぎる。 第一に周りの目が痛い。美琴が有名な常盤台の制服を着てるからか周りから好奇の目でみられ、後ろ指を刺され上条は『もういやぁ~!』と叫びそうになった。 そんな上条のことなんて知らない美琴は少し目を伏せながら問に答える。 「アンタに…ううん…上条当麻に聞いて欲しいことがあるの」 「やっと、自分の日ごろの行いの悪さを自覚したのか。よしこい!誠意ある謝罪をきっちり受け止めて----------」 言い終わる前に美琴は上条の顔をグーパンチした。 グフォ…、と上条の口から声が漏れる。 「………空気読みなさいよ、このバカ」 「すいませんでした」 上条は頬を左手でさすりながら謝罪の言葉を口にする。 美琴はそんな上条を見て、もうと呟いていた。 「あんたのせいで雰囲気台無しじゃない、どうすんのよこれ?」 「そんなこと言われても……、」 雰囲気ってなんのだよ、と上条はうめき、 「そもそもなんでこんなとこまで来たんだ?駐車場なんてなんの楽しみもないだろ?」 まさか人気のない場所で上条さんをやる気ですか、と一人戦々恐々する。 そんな上条を見て、美琴はわざとらしいため息を吐く。 「なんでデートに来てまでケンカしないといけないのよ?」 「そうだ、それを聞きたかったんだ」 上条は先ほどから思っていたことを口にする。 「いつお前と俺が恋人同士になったんだ?意味がわから------」 口を塞ぐように再びグーパンチが飛んできた。心なしかさっきより痛い。 「どうなったらそんな結論になんのよ…、」 「いや、だってデートって言えば恋人同士がやるもんだろ?」 上条は知識の中にある『デート』という単語の意味を引きずり出す。 「お前がデートって言うからおかしいと思ってよ」 「別に恋人同士じゃなくてもデートで言うじゃない」 美琴が空いた手で髪の毛をいじる。 「そんなことも知らないの、常識じゃない?」 ぐぅ、と上条は言葉を詰まらせた。 日ごろから電撃飛ばしてくるお嬢様に常識がどうこう言われたくない。 「ともかく、私は当麻に言いたいことがあるの!!」 そう言うと美琴は上条の右腕から手を離して正面に立ち、上条を見据える。 「誰にも聞かれたくないから……上条当麻だけに聞いて欲しいから」 顔を赤らめながら言う美琴に上条は再びドキンとした。 (御坂が……御坂が可愛く見えるッ!?) 「目を閉じて」 「へ?」 「はやくッ!!」 うええい!とうろたえながら上条は目を閉じた。視界が暗闇に覆われる。 「ねえ…アンタは私の言うことを聞いてくれる?」 「で、できる範囲でなら」 そう…と美琴は呟いた。 (なんだこれ?なんだこの雰囲気?なんなんですかこの状況はああああああああああ!?) 手から汗がにじみ出てきた。 視界がゼロなため一層焦りを加速させる。 「なら…一つだけ聞いてくれないかしら……ホントに大事なことを一つだけ」 震えるような声で美琴は話す。 目を閉じた上条には美琴の姿が見えないが、たぶん震えているのだろう。 見えない美琴は拳を握り、まっすぐと上条を見ているのだと予想できた。 ここまで来て、やっと上条は美琴が何をしたいのかを理解した。 (雰囲気って……そういうことかよ) 「ああ。聞いてやる。悩みがあるなら俺が聞いてやるから」 「ホントに?」 美琴は今にも泣きそうな声を絞り出す。 上条は見えない美琴に笑いかけた。 「ホントだ。約束する」 手探りで美琴の肩に右手を置くと、右手から伝わる感触は思った通り震えだった。 「じゃあ…言うよ?」 美琴が肩に置かれた上条の右手を握る感触がした。 「私、御坂美琴は…」 上条は胸の高鳴りが大きくなっているのを自覚する。 (俺が緊張してんのかな…?) 心の中で苦笑する上条。 そんな上条を尻目に美琴は言葉を続ける。 「あなた、上条当麻のことが…」 その続きを予想し、上条は息を呑む。 そして、美琴が震える口を開いた。 「殺したくて殺したくて仕方がありません」 は?と呟き目を開けると目の前の『御坂美琴』が後ろに手を回しているのが見えた。 『御坂美琴』は今まで見たことのないほどの凶悪な笑みを浮かべ、背中に隠していた銃を手にとり上条に突きつける 「み、みさ…か?」 目の前の出来事に体がついていかない。 その前に目の前の出来事を受け入れられない。 さっきまで楽しく話していた『御坂美琴』が上条当麻に銃を突きつけて、上条当麻が『御坂美琴』に殺されかけていることが理解できない。 なぜ、美琴が銃を持っているのだろう。 なぜ、美琴が上条に銃を突きつけているのであろう。 なぜ、上条は美琴に殺されそうになっているのだろう。 そのすべてが上条には理解できない。 完全に思考が停止した。 「アハハハハァハハハハァハハハ!!ずっと…ずっとこの時を待ってたよ、当麻ぁ」 銃を片手に美琴は笑う。 「ねぇ初めて出会ったときのこと覚えてる?」 「………………、」 「覚えてないよね。だって当麻は記憶喪失だもんねえ!!」 「え………ッ!?なんでそれを………」 上条の背筋に冷たい何かが走った。 目の前の『御坂美琴』を彼女を知るものが見たら『偽物だ』と言うだろう。 目の前の『御坂美琴』は見るものを凍らせるような笑みを浮かべる。 「お前は……お前は御坂……『御坂美琴』なのか?」 「それ以外の誰に見えるの?私は正真正銘、皆大好き美琴ちゃんよ」 肩まで伸びる髪に、勝ち気な瞳。 上条より少し背の短い身長。 常盤台中学の制服を着た目の前の少女はどこからどう見ても、上条のよく知る『御坂美琴』だった。 極めつけは右手だ。 上条の右手には超能力であろうが魔術であろうが問答無用で打ち消す『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が宿っている。 その右手で今この瞬間、『御坂美琴』に触れているのだ。 (変装じゃない?魔術でも超能力でも……ならこいつは誰なんだ!?) 「お前はいったい…誰なんだ!?」 思わず叫ぶ上条。 それに対し『御坂美琴』は、 「だからね当麻…」 悪意のある視線で上条を貫いた。 「私の名前は御坂美琴って言ってんでしょ?いい加減覚えなさいよクソバカ」 そして『御坂美琴』は一瞬のためらいもなく引き金を引いた。 誰もいない地下駐車場に一発の銃声が響き、血が辺りに撒き散らされる。
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Ⅶ 突然、目の前に炎が現れた。 「はぁぃっ!?」 とっさに…というか、慣れというか、自分の右手を突き出す。 すると、すの右手にぶち当たった瞬間、変な音を立てながら消える炎。 「チッ。今ので炭になれば良いものを。…変なところで運が良い奴だな」 「いや意味分かりませんよステイルッ!?いきなり炎たぁどういう了見だ!」 「どうもこうも。君が目を覚まさないから、もういっそ一生目覚めないようにしてやろうかと」 「意味わかんねえよ。テメェは人が寝てるところを―――――って、あ?」 と、そこで上条は馬鹿との会話を打ち切り、周りを見回す。 そこは、見慣れた病室。 上条が何かのトラブルに巻き込まれたりして、(最近は上条を中心としてトラブルが起こったりもするのだが、とりあえず)怪我を負ったときになぜか毎回あてがわれる病室。 そこは、さっきまで自分がいた空間とは違うはずだ。 そして、上条にはあの『会議室』とやらからここまで来た覚えはない。 「…何がおきた?」 「さあ。魔術の類ではないね」 不機嫌そうに言うステイル。 とそこで、一方通行(アクセラレータ)が上条に近づいてきた。 「お前も、理解できてねェか」 「…『も』かよ」 はぁ、とため息をつく上条だが、 「無能力者(レベル0)の落ちこぼれと一緒にすンじゃねェぞ。大体は把握できている」 「…その落ちこぼれにぶっ飛ばされたおま…冗談です冗談!だから口元を吊り上げながらこっちに手を差し伸べないで!?」 近づいてくる一方通行(アクセラレータ)の華奢な手を右手で振り払いながら後ずさりする上条。 「…まァ、とにかく。お前が起きたンならとっとと説明でもしますかァ」 「…って、えー…?まさか一番俺が寝てたとか?」 「それだけ疲れがたまってるんでしょ。少しは休んどきなさいよ、体持たないわよ?」 と、少しショックを受けた上条のフォローに回ってくれたのは、なんと『あの』美琴だった。 「…不幸な予感がする」 「凄く偏見と差別に満ちた視線を感じるんだけど。…だけど、本気で言ってるんだからね?少しは自分の事も考えてよ…」 上条は、そんな事を言えば超電磁砲(レールガン)の一つや二つでもぶっ飛ばされるかと思っていたのだが、返ってきた言葉はものすごく意外な言葉だった。 …ということでやっぱり、 「不幸な予感がする」 誰にも聞こえない程度の声で、上条は言った。 「おいそこ、何やってんだよ」 と、上条がとてつもなく不幸な予感を感じている最中に、浜面がなんか言ってきた。 「何って…こっちが聞きたいところなんですけど」 「意味わかんねえ。勝手にラヴコメして勝手にとぼけやがって」 「いや、こっちのほうが意味わかんねえから。何がラヴコメだ。俺は命を懸けてまでそういうことには興味ないんだよ」 「黙れカミやん。無自覚なのはもう承知のうえだから、とりあえず黙ってくれ。そうじゃなきゃ、今の土御門さんはお前のことを瞬殺しそうだにゃー」 「だから意味が――――分かんないけどはいとりあえず分かりました黙りますッ!!!だから折り紙を取り出すなッ!?」 土御門が勝手に話に混じってきて、そのうえ無表情な顔でポケットから赤色の折り紙を取り出したのを見てしまった上条は、やはり右手をつきだしながら言った。 と、とりあえずは土御門の危機は去ったのだが。 今度は、上条の幻想殺し(イマジンブレイカー)では対応できない事態が起こってしまった。 つまり、 「…と―――――――――う―――――――――ま――――――――っ!!!!」 「もう噛み付きモード突入ですかインデックスさんっ!!さっきまでの空腹と混合しちゃってる怒りをどうか不幸なわたくしめに向けないでぇぇぇ――――――――ッ!!!」 とか何とか言いながら逃げる上条だが、聖人を越すのではないだろうか、という速さで迫ってきたインデックスに頭を結局噛み付かれる上条。 そんな馬鹿馬鹿しい光景を見ずに、一方通行(アクセラレータ)は言った。 「…あの馬鹿どもは、こんな説明聞く必要もねェか。ンじゃ、今回起きた事象について話し合うぞ」 そういった一方通行(アクセラレータ)の目の前には、結構な人数の人間がいた。 まぁ、別に全員体育座りしているようなわけではないが、基本的に一方通行(アクセラレータ)が説明する役回りだろう。 「まず、俺たちがさっきまでいた空間について。あれはおそらく、上層部が保管している、簡単に情報が漏れちゃ困る部屋、だろォな」 「それの理由は思い当たりませんが。どう説明する気ですか?」 早くも神裂に問題を提示される一方通行(アクセラレータ)。 「おそらくは、あのウザったらしい『機械』だ。上が秘密裏に開発したシロモノなンだろ」 「…」 一方通行(アクセラレータ)の話を聞いている者全てが黙り込んだ。 一方通行(アクセラレータ)の発言には証拠がない。しかし、それでも一同は一方通行(アクセラレータ)の言葉を信じた。あの『機械』が、どこかおかしいのは全員が気づいていたからだ。 「そもそも、俺らはあの機械の姿を見ていない。多分、天井にでも設置されてたンだろォが、そンなもンは、この学園都市でもかなり希少な物だ。下手に情報が漏れても困ンだろ」 そう言われると、証拠はないが一方通行(アクセラレータ)の言葉を全て信じそうになる。 「ってなわけで、上層部はあの部屋を公開するわけにはいかなかった。だが、緊急事態が起こる。『反乱因子』どもだ」 周囲を見回しながら言う一方通行(アクセラレータ)。何かを確認しているようだが、おそらくは監視カメラなどの類だろう。聞かれては困るはずだ、一方通行(アクセラレータ)の話が正しいのなら。 「反乱因子どもが暴れやがったおかげで、上はあの『機械』を使わなければならなくなっちまった。即急に事を解決しなきゃだからな。 だが、やはりあの機械のことを外に漏らすわけにはいかない。しかし、あの機械のことを少しはさらさなければならない。…まぁ、板ばさみって奴か?」 一方通行(アクセラレータ)はそこで、なぜか美琴にも電撃を飛ばされている、頭にインデックスをつけた上条のことを見ながらいった。 「…情報は、証拠がなければ重要度は上がらない。一大事なことならある程度マスコミも取り上げるだろォが、別にこの機械はそこまでって事でもねェ。だが、証拠があってマスコミに取り上げられても厄介。 こォいう状況なら、奴らならこう考えるはずだ。 『あいつらにある程度情報を漏らすことになるが、証拠を隠してしまえば問題ない』ってなァ」 「つまり、私たちは証拠をうやむやにするための細工を受けていた、ということですか?」 上条のほうを見てそわそわしている五和が、一方通行(アクセラレータ)の方も見ずに言った。 「そォいうことだ。だが、どンな手を使われたのかは…」 そんな五和を気にすることなく一方通行(アクセラレータ)は言うが、最後の方で口ごもってしまった。 「…分からないんですか。所詮学園都市最強も科学サイドですね」 アニェーゼが言うが、正直何を言いたいのか、一同には伝わらなかった。 「…『あの』上条にもそいつは有効だった。そこが引っかかる…」 「つーか、あいつ…本当に、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』なんて無茶苦茶な能力持ってんのか?一応説明は受けたがよ、信じらんねぇ」 「かなり真実味はあるわよ。…私の心理掌握(メンタルアウト)も効かなかったことだし」 「学園都市第5位の能力が効かない、か…その能力、まんざら嘘でもなさそうだな」 超能力者(レベル5)が口々に言う。まぁ、誰も取り合ってくれないのだが。 「この能力、嘘じゃないんですっ!!嘘であって欲しいんだけどね、不幸になっちゃうからほら今みたいにッ!」 「とうまの不幸はとうま自身が悪いかもっ!!」 「つーか、まずどこが不幸なのか説明して欲しいわねっ!!」 ぎゃーとりあえずやめてくださいうるさいかもがりがりびりびりどがーん!! …そんな、コメディに聞こえる効果音だが、実際にその光景を目にしたら瞬間的に顔を背けるであろう状況を、上条は不幸だーっ!!と叫びながら疾走して行く。 「…チッ。もう、どうだって良いか…?」 一方通行(アクセラレータ)がそう呟きながら、その場を立ち去ろうとする。 「あ、ちょっと待ってどこ行くの!ってミサカはミサカはあなたについていこうとしてみる」 「うっとォしィ。ガキはさっさと寝てろ」 「流石に早すぎるかも、そしてミサカはガキじゃないっ!ってミサカはミサカは当然の反論をしてみたりッ!」 「…オイ、そこの妹達(シスターズ)。こいつを引き取れ」 まとわりついてくる打ち止め(ラストオーダー)を睨みながら、一方通行(アクセラレータ)は御坂妹に命令口調で物事を頼む。 「…ミサカには、それを実行しなければならない正当な理由は―――――」 と、そこまで言った御坂妹は、一方通行(アクセラレータ)の目を見て言葉をとめた。 「―――――さあ、あなたは通常のミサカたちよりも上位なのですから、これくらいのことは出来てもらわないと困るんですよ、とミサカは強引に上位固体を引き剥がします」 「ちょ、痛たたたたたた!?ま、待つんだ10032!司令官であるこのミサカを強引に引き剥がすとはどういう了見だっ!ってミサカはミサカは上位固体の特権を行使してみる!」 「…ハァ、とミサカはできそこないの上司を直視したOLのようなため息をついてしまいます」 「ミサカはできそこないじゃないっ!ってミサカはミサカはちょっとイラっとしながら言ってみる!ミサカができそこないだったら、それより下位個体のミサカたちはどうなるのッ!?ってミサカはミサカは心配もしていない部下たちの事を話題に出してみたり!」 「あなたに心配される筋合いはありません、とミサカは――――」 …なんか不毛でミサカばっかりが出てくる会話の途中で、一方通行(アクセラレータ)は少し御坂妹の方を見てから、 少し、本当に少しだけだが、 頭を下げた。 ―――――何があったんでしょうか――――― と、御坂妹がそんなことを考えてる間もなく、一方通行(アクセラレータ)はベクトル変換を実行してその場をありえないほどのスピードで去ってしまった。 「あああああああああっ!!逃げられたっ!ってミサカはミサカはとりあえずあの人を追いかけ――――」 「―――――ようとしている上位個体の肩を、ミサカは力を込めて掴みます」 「だから痛いっ!?あ、あなたそれでも女!?握力が…ギュギャッ!?」 一方通行(アクセラレータ)は、そんな光景を背後に上条を掴みかかりに行った。 …のだが、 「…あ、頭からの出血多量で上条当麻はあと30分で亡き人になるでしょう…」 「なーにー馬鹿なこと言ってるのかなとうまはッ!?こんなんで死ぬんだったら、当麻はもう100回は死んでるよっ!!」 「だ、だからといって噛み付き度合いを高めるなインデックス!そしてなぜかイライラしているような顔で超電磁砲(レールガン)を連発するな美琴!!普通にお前の超電磁砲(レールガン)のほうが危険だから!?」 「うるっさいわよっ!どうせその右手で無効化されるんだったら、危険も何もないじゃない!?」 「いや、超電磁砲(レールガン)が少しでもそれたら多分俺死にますよ御坂さん!そこら辺ご理解してるんでせうかッ!?」 「狙って右手に当てれば良いだけの話だけよ!」 「それだったら無効化されるんだから打つ必要性ないだろ美琴ッ!?そして何故お前の噛み付きも増しているインデックスッ!?」 … こいつはもう、俺が殺した方が良いんじゃないか? 真面目に一方通行(アクセラレータ)はそう思った。 「ねーちん」 「…分かってます、土御門。ですが、動くタイミングも計らなければ」 「それくらい、聖人と陰陽博士が気にすることじゃないにゃー。さっさといくぜぃ」 と、土御門はそんなことを言いながらポケットから白い折り紙を取り出し、 「人ガ行ク道ヲ指シ示シ(おまえらのミライをおしえてやるから)、ソノ道ノ先ヲ我ハ行ク(すこしのチカラをおれのためにつかえ)!」 そう唱え、折り紙を中へと放った。 すると、キュイン、という音を立て―――― ――――何も起こらない。 「…何をしているんですか、土御門?何も起こらないのですが」 「何も起こんなくて正解だぜぃねーちん。あんな声を出したのに、誰も俺の事を見ないなんて普通じゃない」 言われてみれば、結構な声を出した土御門のほうを見ている人間は一人もいない。 「白ノ式は、使用者に対する意識を操る術式ぜよ。少し高度なのを使えば、これくらい難しくないぜぃ。ねーちんの分もやってあるから、ほら行く行く」 そう言いながら、土御門はさっさと行ってしまった。女性とはいえ、聖人の神裂に対して気配りはいらない、と考えているのだろう。 (…やはり、あの者も相当の使い手ですね…) 今この場でその術式を受けているのは、軽く10人を超すだろう。 そして、10人以上の人間の意識を特定の二人に全く向けさせない、なんていう魔術は相当レベルが高い。 それをあっさりと発動させてしまった彼は、 「…侮れませんね、土御門元春」 そう呟きながら、神裂はその場を、一方通行(アクセラレータ)と同じようにありえない速度で去っていった。 「お、落ち着け一方通行(アクセラレータ)っ!!もうあんな昔のことなんて捨てて、未来のことを考えようッ!?」 「昔のこと、ねェ…フィアンマの時の『あれ』は、もう昔のことなのかァ?」 「ぐっ!?ってか、だからっていきなり殺そうとしてんじゃねぇ!!」 「…いちいち説明すンの面倒だからよォ…抵抗してんじゃねェ」 かなり面倒くさそうな状況に置かれている上条を、いやいやながらも連れ出そうとした一方通行(アクセラレータ)だったのだが…やはり面倒くさかった、まとわりついている奴らも含めて。 「なっ!?何やろうとしてんのよ一方通行(アクセラレータ)っ!!」 「何って…こいつを連れて行こうとしているだけなンだけどよォ」 「連れてって何するつもりかしら!?今のアンタとなら、私が勝つって事ぐらい理解できないの!!??」 「…面倒くせェ…」 やっぱりこいつもこいつで面倒だから、もういっそこいつらにも説明するか?…とか思っていた一方通行(アクセラレータ)なのだが、 「………………………………………………………………………………………………………………………」 とんでもない視線を受けていることに気づいた。 振り返ってみると、ただの暴食シスターだと思っていたけど実は結構重要キャラであることが対フィアンマ戦のときに発覚した、インデックスが凄い視線を送ってきていた。 「…なンのつもりだ」 「とうまの毒牙が、もしかして男の人にも向いたのか、と思って」 「何だよ俺の毒牙って!?蛇扱いですか俺は!!」 「…」 やっぱり、上条だけを無理矢理引っ張っていこう、こいつらに説明してもなンか理由をつけて反論してくるだけだろォし、と一方通行(アクセラレータ)が強引に上条を連れ出そうとしたとき、 「…こいつに関わんのは結構大変だろ、一方通行(アクセラレータ)」 後ろから、野太い男の声が聞こえた。 「…ンだよ、来ンのかよ…だったら、今までのは無駄ってわけかァ…?」 「まっ、カミやんの日常を勉強できた、って事で良いだろう?」 良いわけあるか、そもそもこんな奴の日常なンて知ったこっちゃねェ、と一方通行(アクセラレータ)は思ったのだが、また面倒くさいことになったら能力を使用してしまうかもしれないのでとりあえず黙っておく。 「ってことで、全員そろったんだから、はじめようぜぃ」 瞬間的に土御門の横に現れた(としか表現できない)神裂のことを横目で確認し、土御門は言った。 「って、はじめるって、何をよ?」 第一声が、これだった。 やっぱりこいつはいらないンじゃねェのか、と一方通行(アクセラレータ)は思っていることだろう。 「…カミやン。面倒だしイライラしてくるからとりあえずインデックスたちをどっかにやって、お前の口から説明してくれ」 珍しく口調が普通になっている土御門の言葉から何かを感じ取ってしまった上条は、土御門の言うとおりにしようとインデックスたちを元の場所に戻そうとしたのだが、 「どうせとうまたちは、これからの相談をするんでしょ?だったら私たちがいても良いと思うんだよ?魔術的なことも少しは含まれるはずだから、役に立つと思う」 「私だって、一応副リーダーとか無理矢理任された身だし。聞く権利くらいはあるわよね?」 「…って言っているんですが。どうすればいいんでせう?」 「何をやろうとしていたのか分かってたくせしやがって俺の邪魔をしやがってたのかテメェら後で覚えてやがれ」 なんか一方通行(アクセラレータ)からのラヴコール(殺すぜ宣言)を受けてしまったインデックスと美琴。 しかし、当の本人たちは全くといって良いほど気にしていない。通常の人間なら聞いただけでショック死しそうな言葉を聞いても、だ。 「だって、本気で殺そうなんて思ってるんなら、今ここで私たちのことを殺しているはずだよ」 「どっちにしろ、今の一方通行(アクセラレータ)に負けるはずないから私には関係ないんだけどね」 「…お前ら、頭のネジ全部ぶっ飛んでるだろ…インデックスの言い分はある程度通るとして、美琴の場合はちょっと無理があるぞ」 え?何で?と美琴が聞いてくるのだが、本格的にほかの人間(主に学園都市最強な人と妹最高な人と世界で20人未満な聖人な人)がイラつき始めているので、後でな、と適当に話を切って一方通行(アクセラレータ)たちのほうを向く上条。 「…で、何始めるんだ?」 瞬間。 ズガァゴシャアキュインザシュシュシュシュチュドーンバガッドガドガドゴドゴグシャッズドォォォォッ!!!!!! という愉快な破壊音が響き、 不幸だぁぁぁぁぁぁぁ、という叫びを上げる暇もなくブチギレた3人にぶっ飛ばされた上条が意識を失った。 「…とは言うものの、相手は絶対能力者(レベル6)だろ?どう考えたって勝てないんだからさ、もはやそのときの運任せじゃね?」 「テメェはマゾですかァもう一回あの破壊音を聞いて快楽に浸りたいっつゥンならお手伝いしてやるぜェ」 「…すみませんでした…」 ブチギレた事にはブチギレたが、まだ不快感が残る一方通行(アクセラレータ)がまたキレかけるのを防ぐために、一応謝っておく上条。 あの惨劇(なんて生易しいものではない出来事)を、なぜか意識を失うだけでやり過ごしてしまったトンデモ上条さんは、あの惨劇を生み出してもまだイライラが募る一同にたたき起こされ、今回のことを話されたわけである。 まぁ、今回のこととは、 「でも、何もしないよりはマシでしょう」 「そうだぜぃカミやん。今後の動きの予想、戦闘について、個人の役割、グループの使命…これくらい話し合わなきゃ、本気絶対能力者(レベル6)なんて相手できない」 そういうことだそうだ。 「そんなことを言うってことは、お前は絶対能力者(レベル6)と本気で殴りあうつもりなのね…」 土御門の脳思考回路はもはや妹(バグ)で埋め尽くされているのではないか、と不安がる上条。 その上条を横目に、土御門は言う。 「ってことなんで…やっぱり出来るだけ、インデックスたちには席をはずしてもらいたいのだが」 「だから、何でいちゃいけないの?少しは魔術の話もするでしょ、それだったら私がいたほうがいいに決まってるんだよ?」 「私だって、単体でも戦力になるし、いざとなったら…ミサかネットワークを動かす事だって、出来るかもしれない、のよ?」 インデックスの方は特に考え無しにいったらしいが、美琴のほうは…少し口ごもった。 「……仕方ないにゃー。ねーちん、一方通行(アクセラレータ)、それでいいか?」 「本人たちは譲る気がないそうですからね…やはり、仕方ないでしょう」 「かわりに、ウザいことになったら容赦なく叩きのめす」 神裂は快く…でもないが引き受けてくれたが、一方通行(アクセラレータ)のほうはなにやら物騒なことを言ってる。 「んじゃ、さっさと話し合ってもらうぜぃ」 やっとか、という感じで土御門が言った。 「まずは、今回グループに所属していない人員についてだ」 この話し合いの進行役みたいなのは、土御門が勤めるらしい。 「あ…そういえば、そんなのがいたな」 思い出したように言う上条。 「そいつらを全員今から言っていく。聞き漏らすなよ」 土御門は、そういってから一つ間を空ける。 「白井黒子、妹達(シスターズ)、打ち止め(ラストオーダー)、浜面仕上、滝壺理后、インデックス、だ」 「オイオイ、結構多いンじゃねェのかァ?上層部(うえ)は何考えてやがる」 一方通行(アクセラレータ)が呆れたように言った。上条も概ね賛成である。 「ですが、全員が全員真正面からぶつかったところで、それは単なる『喧嘩』としか言いようがありません。本当の『戦い』とは、裏で様々な駆け引きや情報操作が行われているんですよ」 「ねーちんの言うとおりぜよ。おそらく学園都市もそういったことはしているはずだ、しかし、今回の戦闘に関する情報は学園都市側は把握できていない。始まってないから当たり前だが」 神裂と土御門は、しかしそれを否定した。 上条と一方通行(アクセラレータ)は黙る。神裂たちのほうが、そういう経験は数倍豊富だ。 「だから、最新の戦闘情報や、欠けた人員補充などは、俺たちで行う。そのための役割配分を、さっき言った奴らでやる。いいか?」 土御門が聞いてくる。誰も反対しなかった。 「まず白井黒子だが…一番重要なポジションをやってもらう。情報伝達だ。あいつに空間移動(テレポート)を使ってもらい、役割をこなしてもらう」 土御門が言うと、意味もなく美琴が驚いたような表情を造る。 「伝達する情報については、後で説明する。白井には情報伝達以外に、臨時の戦闘要員、応援の移動を平行して行ってもらうつもりだ。かなり能力の使用回数が高いだろうから、後々の能力使用については、ただでさえ人がうようよいるところに空間移動(テレポート)してもらうんだから気をつけるように俺から言っておく。間違って味方の体内に空間移動(テレポート)しちゃいましたー、なんてことになったら笑い事で済まされないからな」 そこまで一気に言う土御門。 「おい、相手だって間抜けじゃねェだろ。白井がそんなことをやっていることに気づけば、相手だってさっさと妨害してくるはずだ。その時はどォする?」 一方通行(アクセラレータ)が、もっともなことを言う。 「そんときは白井の能力で逃げ切ってもらうしかない。白井はその役割上、戦況を常時把握してもらっているから、相手とばったり遭遇するようなへまは早々しないだろうし、その状況に立っても一瞬あれば逃げれるだろう」 「実際には、そんなに使い勝手がいい能力じゃないわよ。ちょっとした精神の揺れで使えなくなることだって普通にあるくらいだし、絶対能力者(レベル6)と遭遇したら能力使えなくなってもおかしくないわ」 美琴が冷静に言うが、 「その時は、どこかの超能力者(レベル5)第3位が駆けつけてくれるんじゃないか?」 「…超能力者(レベル5)に易々と喧嘩売る奴は、始めてみたわね…当麻を除いて」 最後にボソッと言い、美琴は土御門を睨みつけながら続ける。 「あんたら魔術師のことはよく分からない。でも、超能力者(レベル5)をなめてもらっちゃ困るわよ」 「その、なめてもらっちゃ困る超能力者(レベル5)を圧倒する奴らを倒す計画を練ってるんだけどなぁ…」 土御門が苦笑まじりに言い、やはり続けた。 「…こっちだって、なめてもらっちゃ困る。そこらの超能力者(レベル5)に負けをさらす気なんて早々ないぞ?」 「超電磁砲(レールガン)って、あんたらでも分かるかしら?それを何発ぐらい打てば、あんたは死ぬと思う?」 「数千発打ってもらわなきゃ、まず話にならんな」 その言葉が、完全に引き金になった。 美琴がスカートのポケットからメダルゲームのコインを取り出し、構える。 対し土御門はもう魔術名は名乗っているので、折り紙を取り出した。 そして、 バギィィッンッ!! それだけの音が響いた。 その直後、 「だから!何でお前らはそう簡単に喧嘩始めちゃうわけ!?しかも両者とも本気でやりあえば人地区くらいぶっ飛ばせる力持ってるっつーのに!!」 上条が、美琴と土御門の間に右手を突っ込んでいた。 「まぁ、当たり前か(よね)」 土御門と美琴の声が重なった。 「…意味わかんねぇから。妙なとこで共感しあってんじゃねぇ。そして土御門と神裂!テメェらには聞きたいことがあるんだよッ!!」 「あん?なんなんだカミやん、聞きたいことって?」 「それは土御門、あれのことでしょう?あの不可解な魔術を吹っ飛ばすために使った魔術について」 「あれ?とうま、あれのことに気づいてたのッ!?」 「当たり前だろ!?流石の俺でも気づくわ、あんなことやられちゃッ!」 「で、カミやんはその魔術行使について、説明を求めている、と?そういうことかにゃー??」 「だから、あ・た・り・ま・え・だっ!!!!」 今度は上条がキレる番らしかった。 上条が程よくキレた後、土御門がダメージを感じさせない口調でこう言った。 「いやー、実は俺たちにもよく分からんぜよww」 「…お前は、これ以上俺に無駄な力を使わせるつもりか…?」 お説教が足りないようだな、と指の関節を鳴らす上条。 「違いますよ少年、土御門が言っているのは、私たちが魔術を駆使しなければならなくなった原因の発生についてです」 「…ちゃんと説明してから、そういう分かってる人にしか伝わんない言葉は使おうぜ」 げんなりしながら、神裂に力なく言葉を返す上条。 「まぁ、説明といっても…」 「じゃあ、俺が簡単に説明するにゃー」 そういうことに慣れていないであろう神裂に変わり、土御門が進み出た。 「①、よく分からないが、とりあえずよくはなさそうな魔術が俺たちを対象に発動されていた。 ②、それにいち早く気づいたインデックスが、天草式の連中にそれを伝え、魔術師たちにその事実を伝えるように頼んだ。 ③、天草式が何気ない素振りで魔術を発動し、俺たちにそれを伝えてくれた。 ④、じゃあ、それをどうにかして無効化しよう、という話になった。 ⑤、しかし、堂々と魔術を使うわけにはいかないから、どうにかして気づかれないように工作する必要があった。 ⑥、それで、俺とねーちんが喧嘩を装ってでかい魔術を使うことにした。 ⑦、ねーちんの攻撃と俺の魔術が衝突した瞬間、ほかの魔術師たちも魔術を発動させて、そのよく分からない魔術を無効化させることに成功した。 …とまぁ、こんなもんだにゃー」 とりあえず、説明が終わるまで突っ込みを我慢していた上条だが、ようやく突っ込めるタイミングが来たらしいのでそれを実行した。 「待て。まず、インデックスはどうやって天草式の連中に『それ』を伝えたんだよ?」 「まずだな、伝えようとしている連中は、『あの』天草式ぜよ、カミやん。日常的に行われる行為に魔術的意味を見出し、誰にも気づかせずに魔術を発動させる連中…そんな連中に『魔術が試用されている』なんて伝えるのは、そう造作もないにゃー?それに、伝えているのは、やっぱり、『あの』インデックスだぜぃ?素人に感づかれずに情報を交換することくらい簡単だにゃー」 結構キツい突込みだと上条は思っていたのだが、あっさり土御門に返されてしまった。 「ぐ…じゃ、じゃあ、どうやってその魔術を無効化させたんだよ?あの瞬間に魔術を発動させるなんて出来んのか?」 「あんな、周りの人間の脳が全然回ってない状況で、素人に気づかれずに魔術を発動させられないはずがないぜよ。あくまで俺たちは『プロ』なんだぜぃ?カミやんはそれを今まで倒してきたが、それはカミやんがイレギュラーすぎるからだ。あんまり俺たち(魔術師)を甘く見るんじゃないぜよ」 やはり、この突っ込みもあっさりと返されてしまった。 「…分かった、じゃあ、最後に聞くけどさ…」 そういった上条には、少しだがまだ消化されていない謎があった。 「その魔術は、いったい何なんだ?」 「…」 今度は、流石にすぐには応えられなかったらしい。 土御門に代わり、インデックスと神裂が応えた。 「とりあえず、普通の魔術じゃないね…少なくとも、私の10万3000冊にも載ってなかったし、似ているような魔術も一つもなかったんだよ」 「らしいです。彼女が言うから間違いはあるはずないでしょうし、それにその魔術は、厳密には『無効』にしたのではなく、『吹き飛ばした』わけですので…無効化する魔術が見つからなかったんです、彼女がいる状況でも」 「…」 上条は、その言葉を聞き、黙る。 …前にも、あの時、そんなことが… 上条はそんなことを考えていたのだが、それを確証付けるようにインデックスが言った。 「あれは…フィアンマの魔術と似ていた、様な気がする…」 「へー…気づけるんだな、今のインデックスにも、私の魔術が」 「っておいおい、何あっさり言ってくれちゃってんのよ。逆探とかされたらどうする気だ?」 「流石に、今のあの娘にはそこまでされる気はないですよ」 そう言った人間は、隣にいる人間に微笑みかける。 隣にいるのは、日本人にしてはなかなかの身長と、それなりに整った顔立ちをした、明らかに裏通りが似合う身なりの良い30代半ば辺りに見える男性。 御坂旅掛。 御坂美琴嬢の父親で、御坂美鈴嬢の夫に当たる存在。 そして、自分にとっては…本来ならば、敵対関係にあり、正反対の位置に立ち、互いを潰しあっている筈の存在。 だが、二人にとってそんな『世界』の事情など知ったことではないらしい。 互いに共通する目的を持ち、共通する敵を持ち、そして共通する『チカラ』を持つならば、もう一緒に戦っていいと思う、その『目的』のために。 御坂旅掛の目的、それは娘である御坂美琴を、『世界』から守ること。 そのために、この男は娘を、あの学園都市第三位にまで押し上げてしまったのだ。本人が望んでいるのかも聞かずに。 そのせいで美琴は、自分のDNAマップを採取されてクローンを造られたりしたりするのだが、結果的に上条当麻という存在に出会えることが出来たから良いだろう。 …と旅掛が思っていたのもつかの間、その上条当麻を旅掛が調べてみたところ、なんと『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を内包していることが分かってしまった。同じく、自分が御坂美琴のことを調べてみると、『現実殺し(リアルブレイカー)』であることが発覚してしまった。 これは大問題である。 『現実殺し(リアルブレイカー)』と『幻想殺し(イマジンブレイカー)』。本来ならば、やはり敵対関係にある二つの存在が、目の前にいるのに無視するどころか、片方はもう片方に好意を抱き、片方はもう片方の命を救ったりするのだ。これで異変が起こらないほうがおかしい。 まぁ、その『異変』は、学園都市統括理事長、『人間』アレイスター=クロウリーには予想の範囲だったらしく、『プラン』にはさほどの影響を与えていないらしいのだが。 その事実を考えると、やはり自分たちの『敵』が化け物じみているのを改めて実感させられる。自分たちも十分化け物であるのにもかかわらず。 と、そこまで考えていた私に、旅掛さんが話しかけてきた。 「…それに、あんたの息子さんも気づいているようだぜ、あんたの魔術に」 「…息子の成長を、素直に喜べない父親というのも…哀しいものですね」 「…」 旅掛さんの言葉を、何気なく返したつもりだったのだが、そちらは思い言葉として受け止めてしまったらしい。何か重々しい雰囲気が私たちを包んだ。 …いや、この成長は… と、息子のことを考えていた私の脳裏を、とある予感が駆け巡る。 …まさかと思うが、もう神浄の討魔が…?または、幻想殺し(イマジンブレイカー)がなりふりかまわなくなってきたか… ふぅ、と思わずため息をついてしまう。 何で、自分の息子に限ってここまで不幸なんだ。 以前、その『不幸』を誰かに押し付けて息子を幸せにするために、大規模魔術を発動させたこともあったが… そのとき、息子はこう言っていた。 『こんなにも幸せな不幸を、俺から奪わないでくれ』 …実のことを言うと、その時のことはよく覚えていないので、そっくりそのまんまこれを息子が発したのかは自信がない。 だが、同じような意味を持つ言葉を、息子が発したのは間違いない。自分は、その言葉に影響されて土御門君に抵抗しなかったのだから。 しかし、やはり今考えてみると、我ながら何を考えていたんだ、と思う。 「…お前は、自分が背負っているものの重さが、まだ分かっていないんだよ」 ?と旅掛さんがこちらを見てくるが、私は気にせずに続けた。 「神浄の討魔、幻想殺し(イマジンブレイカー)、竜王滅相(ドラゴンキラー)…」 おそらく、旅掛さんはこのワードで私が何を考えているのかを察したらしい。さすが世界を相手にする企業戦士、といったところか…いや、企業戦士でもない気もするが。