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とある科学の超電磁砲 【とある かがくの れーるがん】 ジャンル 女子中学生奮闘アドベンチャー 対応機種 プレイステーション・ポータブル 販売元 角川ゲームス 発売元 アスキー・メディアワークス 開発元 シェード 発売日 2011年12月8日 定価(税込) 通常版 6,279円 / 限定版 9,429円 判定 なし ポイント 『禁書目録』とは大きく異なるシステムさてんさんファン向け? 電撃文庫シリーズリンク 概要 システム キャラクター 評価点 賛否両論点 問題点 総評 余談 概要 長編人気ライトノベルシリーズ『とある魔術の禁書目録』からのスピンオフ漫画作品『とある科学の超電磁砲』を基にしたゲーム。 同じくPSPでリリースされたゲーム版『とある魔術の禁書目録』は3D格闘アクションだったが、本作はアドベンチャーとなっている。 時間軸はアニメ終了後となっており、学園都市に広がる都市伝説を巡って原作者完全監修のオリジナルストーリーが繰り広げられる。 システム 会話パート 登場人物たちの会話を聞きながら、トピックを収集していくパート。入手したトピックによって次以降の展開が変わってくる。 特殊推理パート【ガールズトークモード】 「作戦会議」のイメージで、会話パートで集めたトピックを使用して会話の流れを変えることでストーリーが分岐していく。 トピックは投入するタイミングも重要であるため、適当にやっていると、ストーリーが思ったように分岐しなくなっている。 あまりにも的はずれなトピックを投入していくと、ガールズトークモードであってもバッドエンドに行ってしまうことも…。 特殊推理パート【ジャッジメントモード】 一般的な推理ゲームで言うところの「究明編」で、主に謎を解き明かすためのパート。トピックの投入や会話、推理を重ねていくことでジャッジメントゲージを上昇させて真相に迫る。 基本的にはガールズトークシステムと同じように進めていく。こちらも失敗するとバッドエンドに。 アクションパート ミルキィホームズのアクションパートに近い所謂「QTE」で、画面に表示されるアイコン通りにボタンを入力してアクションを繋いでいく。途中停止できないので、気を抜くと失敗してしまう。 失敗時にも専用のリアクションが用意されていたりする。レールガンを使用する場面で失敗すると、コインを取り落として焦る描写が入ったりする。 3Dモデルは「とある魔術の禁書目録」から一部流用。ビューモードでの鑑賞も可能。 以上のパートを経て、各シナリオを解決へと導いていく。 キャラクター 御坂美琴 学園都市に7人しかいない「超能力者(レベル5)」の1人で、序列三位。電気や磁場を自在に操り、その必殺技からとって「常盤台中の超電磁砲(レールガン)」と呼ばれている。本作ではプレイヤーの分身となる。実は意外と常識人なため、会話から取り残されることも…。 白井黒子 「大能力者(レベル4)」の「空間移動能力者(テレポーター)」で 学校内の治安を守る「風紀委員(ジャッジメント)」としても活躍。美琴に恋する暴走乙女。美琴が揉め事に首を突っ込むのを、内心では快く思っていない。そのため、早々に話を打ち切ろうとすることもある。 初春飾利 黒子とコンビを組む、風紀委員の一人。高い情報処理技能を持つ。頭から花が咲いているように見えるが、これは造花。本人が「これは飾りです」と言っていた。メインキャラの中では一番気が弱く、なかなか思ったことを伝えられない。発言数も一番少ない。 佐天涙子 初春のクラスメイトで、「無能力者(レベル0)」。天真爛漫を絵に描いたような性格だが、実は能力開発が進まないことを悩んでいる。うかつに話をふると、予想不能な方向に展開を持っていってしまうトラブルメーカー。かついろんな意味で強引。 そのほか、オリジナルキャラを含めて多数登場。ただし、例のツンツン頭の男子高校生は出ない。 ちなみに婚后光子ファンの方はプレイしてみる事をおススメする。ちょっと出番あればラッキー程度に考えておくと幸せな気分になれる。 評価点 原作人気に頼らず、ゲームとしてしっかり作られている。 全5章構成で、ボリューム・アドベンチャー要素ともに申し分ない。 話のクオリティやキャラ描写も、原作者完全監修というだけありクオリティが確保されている。 一部流用とはいえ、アクションパートの失敗部分なども細かい演出がされているのも嬉しいところだろう。 賛否両論点 さてんさん優遇? シナリオ中、やたらと佐天さんが好待遇になっている箇所がある。これに関しては、若干ファンの間で議論が交わされた。 陽気で能動的な人柄なので、シナリオライターにとっては扱いやすいキャラなのかもしれない。それが気になるかどうかは、プレイヤーの感性次第といったところだろうか。 問題点 ボリューム不足気味 全5シナリオというあっさりしたもので、分岐埋めやCG回収を含めてもそう長く遊べるタイトルではない。 2012年8月、無料DLCとしてEXシナリオの配信が行われた。内容は白井黒子による没シーン案内で、本編では使用しなかったCGとそれにまつわる再現イベントとなっている。 アクションパートで失敗すると、即最初に戻される これは「仕方ない」という声と「せめて直前からやりなおさせてほしい」という声が半々といったところ。 最終面の後半で失敗すると、やり直しがかなり億劫。 シナリオが終わると、毎回タイトルに戻る謎仕様 バッドエンドならともかく、ちゃんとシナリオを終えた場合でもタイトル直行。 そのまま続きのシナリオに進める方がテンポがいいと思うのだが…。 総評 キャラゲーではあるが、作品知識の無い人でも問題なく楽しめる一作。 劇中の会話も聞いていて楽しく、女の子のお喋りが好きな紳士の方にはとくにお勧め。 だがしかし、ボリュームがかなり不足気味。そこを何とかすれば、良作にもなりえたのだが…。 余談 本作のセーブデータを『とある魔術の禁書目録』で読み込むと、御坂美琴シナリオがアンロックされる。 過去作のデータではなく、かなり後発となるタイトルのデータをアンロック条件として用いるのは非常に珍しい。 ただし本作は、当初の予定から幾度も延期を繰り返しているタイトルである。
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役職希望制かー。何希望しようかな? 14D猫に慣れてない人は進行役になる可能性のある役職はできれば避けたいところ。 またCOで吊りを逃れられない素村もあまりオススメはできません。吊り余裕ゼロですので。 狼=背>信=狐>占>狩 こんな感じでしょうか。左から順にオススメですよ。 占いは重要役職である割に、他配役とやることは同じですので比較的オススメな方には入ります。(希望者が多いので弾かれるのが関の山ですが) ちなみに管理者・とあるPLは14D猫に登場する役職を14D猫村ではこう見ています。 【村陣営】 村人…ある意味レア。狼よりレア。最大2人しかいないし。唯二のCOできない人なので、色々見えるけど特攻されて涙出る 占い師…村の生命線。こいついないと勝てない。欠けたら引分に甘んじます。銃殺出せやオラァ 霊能者…ボロ雑巾or胃痛。対抗が出ればロラ、共有第一なら指定役。不憫 狩人…場合によってはイケメン。でも狐噛みとGJ見分けつかないからビクビクしながら占いのストーカーをしている 共有者…相方第一だと胃痛だけど視点がわかりやすい。最近共有騙りで胃痛増加。指定が滅茶苦茶だと終了後怒られる。村の生命線その2 猫又…噛まれたいけどなかなか噛まれない。場合によっては指定役になれる 【狼陣営】 人狼…占い騙るとすっごくグレコンが面倒臭い。猫噛みたくない。勝つとキモチイイ 狂信者…ご主人がわかるので、狂人より動きに幅がある。潜伏狂信も割と多い。が、狂アピが足りないと噛まれる 【狐陣営】 妖狐…占いは信用勝負しないでくださいお願いします。普段なら特攻とかやり放題だけど、背徳いるから迷惑はかけられないしなぁ 背徳者…特攻?やれやれ!共有騙り?やれやれ!一番何してもアリだと思う。潜伏背もアリだと思います
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『忍風Project』や『W.A.T.C.H~ウォッチ~』等、フリーゲームを数多く製作している亜乱田堂氏によるコンプゲー。 老若男女、国籍、職業、種族問わず多彩なオリジナルキャラクターが参戦している。 作中の時代設定については、自立型ロボットや巨大ロボットが登場している事から近未来以降ではないかと思われるが、 第2次世界大戦時に運用されていた戦闘機のパイロットが20歳という設定も見られるため曖昧な模様。 あるいはサザエさん時空か? ボイスや効果音はフリー素材。 ゲームオーバーになった時に、『ストリートファイターII』の負けた時のような顔グラも実装されている。 また、全員がミッドナイトブリスに対応しているという徹底ぶり。 ポートレイトにはドット絵を用いているため、I.K.E.M.E.Nではキャラプレビューがオリジナルカラーになる。 他にもWinMUGEN向けのサイズでI.K.E.M.E.Nではキャラサンプルとカラーリングが開発中のカラーになる「旧バージョン」と、 日本語版で使用されているハイレゾ向けで大き目の「ハイポトレ」が存在しており、公開先のロダでDLできる。 IX氏によるAIが公開されているキャラには、デフォルトで同AIが搭載されている。 公開先の「uploader.jp」の容量制限でリン・パントンが最後のキャラになる予定だったが、 容量無制限の「AK1 M.U.G.E.N. Community」において、ナタリー・フォン・ブリュンヒルデを皮切りに再び新キャラが追加されている。 また、本作に関する二次創作は自由との事。 キャラクター 順番は亜乱田堂氏のサイトにおける掲載順(中ボス、ラスボスを除く)。 また、キャラ単体で公開もされている。 ミスティ・ゲインズブール、シュミット・BF-400、ジェイソン・ケイジ、ラファエル・クリスティアーノ・ダ・シルヴァ、幸村隼人 アルバート・ディアス、尚龍、レニー・ルボン、エルコブラ、ブラディミル・パチェンコ、結蓮、カザーナ・サフロン ボギー・デ・クラウン、ロック・ストーン、チェリー・ミルク、エレン・ラ・サンタ・テレサ、ハン・スジョン ベルナルド・ウィーバー、デューク・ブライアント、リン・パントン、藤山、ゴルベダ・コアチャール、TP・アダムス 中ボス パメラ・アモンド、霧咲小梅、モハメッドIII世、ネビル・オドネル、ナタリー・フォン・ブリュンヒルデ、香桃美 ラスボス 闘神アストロセイバー
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前列係数ATx1.5にアップするのはLv25ですね。 -- 2013-05-11 06 38 01 後列30じゃないです -- 2013-05-17 06 56 56 レベル35で後列変化確認 -- 2013-05-30 15 20 38 ブリュンヒルデ -- 2014-01-24 08 56 33 アグニ+とつかうと2ターン目から前列行動できるね! アグニも使えるよ、やったね(白目 -- 2014-09-24 08 00 53
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「ふざけんじゃねえぞおおぉぉっ!!!!!」 「荒我君!?」 「あいつ・・・!!」 荒我の声が倉庫内に響き渡る。その怒声に刈野は驚き、金属操作は呻く。 「雅艶・・・」 「・・・あいつも一応俺達と同じ過激派だろう?ここへ必死に走って来たんでな。そこまでして制裁に加わりたいのかと淡い期待もしたが・・・期待は期待でしか無かったようだ」 麻鬼の問いに、倉庫外の監視をしていた雅艶は素っ気無く答える。 「何よ、またあなたなの?吠えてばっかりの負け犬ちゃん?」 「テメェ!!」 「ホント、威勢だけはいいのよね。あなたみたいな何の才能も無い負け犬が何の用?」 「そいつから・・・その女から離れやがれ!!!」 躯園の挑発に怒声で返す荒我。そんな荒我の態度に、躯園は嘲笑の色を濃くする。 「全く、何を言い出すかと思えば・・・。ハッ、あなた・・・もしかして『裏切り者』になりたいの?このクズと同じように?」 「テメェ・・・!!ぶっ潰す!!!」 躯園の言葉をまともに聞いていない荒我は、躯園に突っ込んで行く。身構える躯園。 ピュッ!! その瞬間、荒我の目と鼻の先を通過したのは・・・針。 「成程。お前の言い分はよくわかった、荒我。貴様は、俺達に牙を向く。そうだな?」 その針は、荒我にゆっくり近付いて来る男―麻鬼天牙―が放ったもの。麻鬼の能力『閃光小針』である。 「麻鬼・・・。テメェ!」 「よかろう。では、貴様を『裏切り者』として処分しよう」 「テメェはおかしいとは思わねぇのかよ!?幾ら風紀委員の奴が救済委員(おれたち)に紛れ込んでいたからって大勢でボゴるってことを!!」 「『裏切り者』への正当な制裁だ。それ以上でもそれ以下でも無い。ここに集った者達は、皆納得している」 「テメェ等・・・!!!」 麻鬼の言葉を受けて、荒我は他の救済委員を睨み付ける。雅艶、峠、七刀、刈野の4名は平然としていたが、金属操作と羽香奈は荒我の視線を避けるかのように目を逸らした。 「・・・『裏切り者』がボーっとするなよ?」 「!!」 瞬間、麻鬼が荒我の懐に飛び込み、能力で作り出した“小型ナイフ”を振り上げる。 荒我は咄嗟に仰け反るが、それによってバランスを崩す。 「足元がガラ空きだ!!」 「ガァッ!!」 その隙を麻鬼は見逃さない。すぐさま足払いを掛けて荒我を転倒させる。そして・・・ 「動くな」 「ッッ!!」 麻鬼の“小型ナイフ”が荒我の首元数ミリ前に突き付けられる。少しでも妙な動きをすれば突き刺す。躊躇無く。麻鬼天牙とはそういう男であった。 「どうする、荒我?今ならまだ引き返せるぞ?俺達と来るか?それとも・・・」 「・・・俺は“俺”を貫く!!何時だってな!!!」 何時だってその拳で“貫き通してきた”。だから、最後の最後まで自分を“貫き通す”。荒我拳とはそういう男であった。 「そうか・・・。残念だ」 荒我の言葉を受け、麻鬼は“小型ナイフ”を荒我の首元へ突き刺そうとする。その時!! 「そこまでよ!!!!」 「「「「「「「「「「!!?」」」」」」」」」」 倉庫内に響き渡る声。その声は、荒我にとっての“救い”の声。 それを放った少女―焔火緋花―は更に声を響かせる。 「私は焔火緋花!!風紀委員第176支部に所属する風紀委員よ!!大人しくしなさい!!」 「176支部・・・?まさか、神谷の・・・」 「(今だ)。オラアァッ!!!」 「グハッ!」 焔火の宣言に気を取られた麻鬼。その隙に荒我はお返しとばかりに足払いを掛けて、“小型ナイフ”の射程から逃れる。 思わぬ逆襲を受けた麻鬼が気を取り直して荒我に小針を飛ばそうとするが、焔火が放つ電撃がそれを阻む。 「くっ・・・」 「ゼェ、ゼェ。緋花・・・どうしてここに!?」 「あなたがこの辺りに突入していったのを見たからよ!」 「おい、雅艶。こりゃあ・・・」 「慌てるな、金属操作。風紀委員の1人や2人、どうということは無い。むしろ、1人で突っ込んで来たのは好都合だ。 周囲には、あの女以外の風紀委員の姿は見受けられない。こちらには峠の『暗室移動』もある。逃走手段も確保している。 強いて注意しなければならなのは、奴等をここから取り逃がすことだ。それだけは、何としても阻止しなければ」 雅艶は、荒我の時と同じように焔火がここへ突入して来るのを黙って見過ごした。雅艶自身、こんなにも早く風紀委員と接触するのはさすがに予想していなかったが、 それが、決定的な誤算と言うわけでも無い。むしろ、1人で突っ込んで来た少女の無謀さに呆れているくらいだ。 「貴様・・・176支部に所属していると言ったな・・・?」 「そうよ!それが何か!?」 「いや・・・。そうか、176支部に・・・な。ククッ。何と言う巡り合わせだ。ククッ」 「・・・!?」 「(何だ、コイツ?)」 一方、焔火は相対している麻鬼から妙な質問を受けていた。その返答を受けて、更に顔を歪に歪ませる麻鬼に対して怪訝な視線を向ける焔火と荒我。 「こっちは2人。向こうは9人か・・・。荒我、こいつ等もやっぱ能力者なの?(ボソッ)」 「あぁ。全員レベル3~4の高位能力者ばっかりだ。あの金髪のツインテールに関してはわかんねぇけど(ボソッ)」 「そう・・・。多勢に無勢か。でも・・・退くつもりなんか無いよね?(ボソッ)」 「もちろんだ。あのボロボロにされた女をこのまま放っとけるかよ(ボソッ)」 「・・・・・・!!!そうよね。だったら・・・覚悟決めて行くわよ、荒我(ボソッ)」 「言われなくてもわかってらぁ(ボソッ)」 荒我の言葉を受けて、初めて焔火は少女に気付く。その変わり果てた様を目に映し、驚愕した後に、それでも気丈に振舞う。ここは、戦場。一切の気の緩みが許されない。 荒我と焔火、そして麻鬼の戦闘が始まろうとした・・・その時 パン!! それは、何かがぶつかった音。音の発信源は・・・上。 パパパパパン!!! 音が重なる。それが、銃声だとわかったのは、もう少し後。 パパパパパパパパパパン・・・・・・!!!! 音の発生源・・・屋根が軋みをあげる。そして・・・屋根の半分が崩壊する。 ガラガラガラゴロンガシャンズガン!!!!! 「な、何だ!?」 「屋根が・・・危ねぇ、緋花!!」 「キャッ!!」 「麻鬼!!」 丁度屋根半分が落ちてきた場所は、荒我、焔火、麻鬼が相対していた場所であった。 荒我は焔火を庇い、麻鬼は峠の『暗室移動』で事なきを得る。 反対側にいた他の救済委員達も、屋根の崩落の衝撃を避けるために距離を置いた。 「・・・・・・」 丁度その中間に位置する場所にいたのは・・・少女。幸い、崩落の直撃こそ無かったものの、その残骸が少女の身を叩く。 「・・・・・・」 少女は反応しない。痛覚が麻痺しているのか。思考放棄しているのか。それすらも、ボロボロの少女にはわからない。 少女に理解できるのは、崩落の音が少女の耳に突き刺さったこと。そして、崩落により立ち上がった煙に身を覆われたこと。そして・・・ 『しっかしまあ、久し振りの完敗だったなぁ。ハハッ!』 誰かの完敗宣言が聞こえたことだ。笑い声と一緒に。今の自分のようにボロボロになった誰かの声が。少女には、その声の主が誰かはわからない。 『よ!イイ飲みっぷり!!惚れ惚れするねぇ!』 一度聞こえ出した声は止まらない。確か、誰かにそうやって驚かされたことがあった・・・気がする。誰かはわからないが。 『え~と、何々。「ブロッコリーコーラ」・・・何だかマズそうな音の響きなんだけど。何かこう、組み合わせちゃいけないような』 確か、誰かがそうやって自分の好みに対して嫌な顔をした・・・かもしれない。果たして、何処だったか・・・。少女は少しだけ・・・記憶の貯金箱から探す。 『君が馬鹿やって馬鹿な目を見るって言うんだから、それでいいんじゃない?馬鹿は死ななきゃ治らないってのはこういうことを指すんだな』 探していると、確か誰かにそうやって人を馬鹿にするかのような視線を向けられた・・・記憶が出てきた。誰かはわからないが、どこで言われたのかは・・・すぐに出て来た。 『君はさ、少し社会勉強をした方がいい。そして痛い目を見るといい。その代償が死であっても。今の君は・・・まるで蛙さ。井の中のね。人のことは言えないけど』 確か、誰かにそうやって忠告された。誰かはわからない。だが、その場所はわかった。その場所は・・・公園。“あの”公園。 「・・・・・・」 少女は『劣化転送』を発動する。まずは、左手の手錠。次に、右手に刺さっている日本刀。 日本刀を外した後の傷からは血が溢れ出した。 だが、少女は目もくれない。近くにある鉄柱にしがみ付いて、それでも“自分の足で立ち上がる”。体中の傷は、痛覚が麻痺しているせいか然程の苦痛にはならない。 「・・・・・・」 少女は歩き始める。近くにあった半分程焼け焦げたスーツ“だったもの”を衣服代わりに巻き、倉庫を後にする。向かう先は・・・“あの”公園。 きっと・・・きっと、そこに誰かが居る。自分の頭に響くこの声の主が。きっと。 屋根の崩壊から数分後。屋根を半壊させた張本人が倉庫に姿を現す。 「よぉ、拳。生きてっか?」 「・・・き、斬山さん!!危ないじゃないっすか!!危うく俺や緋花が巻き込まれる所じゃなかったっすか!!」 「いいじゃねぇか、そんな細かいコトは。それに、どうやら拳も役得みたいだし」 「はっ!?ど、どういう・・・」 「・・・荒我。咄嗟のことだったから、今回は許すから、早くあなたの右手を退けてくれないかな?」 「えっ!?・・・。うぉっ!!!」 屋根を半壊させた男―斬山千寿―の指摘と、下から聞こえて来た焔火の声に荒我はようやく気付く。 屋根の崩壊から咄嗟に焔火を庇った荒我の右手が・・・焔火の左胸を握っていたことを。 「す、すまねぇ!!ホントにすまねぇ、緋花!!」 「・・・もう、いいわ。そんなことより、今は・・・」 「!!あ、あぁ。そうだった!!」 未だ顔を赤くしている焔火の言葉を受け、すぐさま臨戦態勢に戻る荒我。自分達は、まだ敵中にいるのだ。 「斬山・・・。まさか、お前まで・・・」 「よぉ、雅艶。羽香奈からのメール、見たぜ。随分クソくだらねぇ真似をしてるようじゃねぇか。この手の込みよう・・・全部お前の考えたことだろ?」 声を掛けて来た雅艶に斬山は言葉を返す。その言葉に、多大な殺気を込めて。 「『軌道修正』で遠方から狙撃したと言った所か?俺の『多角透視』から逃れての仕業。お前の方も中々手が込んでいるじゃないか?」 「まぁな。つまるところ、お互い様って感じか」 交わす言葉は至って普通だ。だが、その会話からは剣呑とした空気が放出されていた。 「お前も・・・『裏切り者』になりたいのか?それとも、救済委員であることをを放棄したのか?」 「『裏切り者』?放棄?馬鹿言うなよ。俺は裏切ってなんかいねぇし、救済委員をやめたつもりもねぇよ」 「ならば、この仕業は・・・!!」 「俺は裏切らねぇ。友達(ダチ)をよぉ。あのメールが踏み絵ってのは、内容を見た瞬間に分かった。 だが、そんな読みを一切しねぇ馬鹿野郎がお前等に突っ込むのも瞬間的に分かった。だから、俺はここに来た。そんな馬鹿野郎で、でも俺が胸張って誇れる友達を助けになぁ!!!」 「斬山さん・・・!!」 そう、斬山は救済委員を裏切るつもりも、ましてや救済委員をやめるつもりも無い。ただ、友達を助けに来ただけ。その言葉が、荒我の心を熱くする。 「気ぃ抜くなよ、拳。それに・・・風紀委員の焔火!!こっからは、文字通りの死闘だぜ?」 「望む所っす!!」 「・・・!!えぇ!!」 斬山の声に荒我と焔火も気を引き締める。相手は雅艶だけでは無い。他の救済委員達も相手にしなければならない。文字通りの死闘。 そんな殺気漂う中、雅艶は手に持つ白杖で床を『2回』鳴らす。そして、叫ぶ。 「峠!!」 その瞬間、雅艶達救済委員は消え去った。峠の空間移動で。跡形も無く。 「(・・・まさか、“ヤツ”が出張っているのか!?)」 雅艶達救済委員が現在居るのは、第6学区のある路地裏。峠の『暗室移動』にて、ここへ空間移動して来たのである。 「(林檎め・・・!!よりにもよって、“ヤツ”が居る支部へ連絡していたのか!?)」 そこで、雅艶は1人今後のことについて頭を悩ませていた。それは、先程斬山達と相対していた時に、『多角透視』で見たある少女について。 「(“花盛の宙姫”・・・!!)」 あの時、『多角透視』の1つが、第6学区の空を高速飛行している少女達―閨秀美魁とその背中にくっ付いている抵部莢奈―の姿を捉えていた。 特に、“花盛の宙姫”と呼ばれている少女の実力は、救済委員である雅艶の耳にも届いていた。自分の力ではおそらく太刀打ちできない、“宙姫”の実力の高さも同様に理解していた。 故に、“宙姫”との戦闘を避けるために雅艶は事前に決めた段取り通り、白杖の合図を峠に送り逃走した。 春咲桜については、斬山の仕業と“宙姫”の発見という2つの事態に気を取られたために、春咲が何時の間にか倉庫から消え去っていたのに気が付けなかったのである。 過激派の中で指揮官的役割を背負う雅艶の・・・それは、確かな誤算。 「(だが、あの“宙姫”ならば春咲桜の件についてうやむやにすることは無い!!あの少女はその手のことを極度に嫌っているからな。 これは、『裏切り者』への制裁という意味ではむしろ都合がいい。制裁は滞り無く完了した!!)」 雅艶は、そんな誤算を逆手に取る。確かに“花盛の宙姫”は雅艶の予想通り、春咲桜のような人間を許しはしないだろう。雅艶の見立ては正しい。 「(とりあえず、今は穏健派の連中の出方と、第6学区を見回っている風紀委員に気を払わねばな)」 だが、誤算は誤算。この厳然たる事実を、“花盛の宙姫”を動かしてしまったという現実を・・・後に雅艶は思い知ることになる。 「荒我達って・・・救済委員だったんだ。もしかして、梯君や武佐君も?」 「いや、あいつらはただの俺の舎弟だ。救済委員とは全く関係無ぇ」 「そう・・・」 ここは、第6学区の一角にある工事現場跡。荒我、焔火、斬山は今ここで状況整理に努めていた。 「で、どうするよ。風紀委員の焔火は、救済委員の俺や拳を捕まえるのか?」 「斬山さん・・・」 斬山は容赦無く切り込む。それは、当然のこと。風紀委員にとって救済委員のやっていることは本来許してはいけないことだからだ。 本来であれば、そんな救済委員が目の前にいるのならば、風紀委員としてその者を捕まえなければならない。これも、当然のこと。 「・・・いえ、捕まえません」 「へぇ。どうして?」 「緋花・・・お前」 だが、そんな当然のことを焔火は拒否する。 「『己の信念に従い正しいと感じた行動をとるべし』。これが私達風紀委員の信念の1つです。それと同時に、これは私焔火緋花としての信念でもあります。 そして・・・荒我や斬山さんも自分の信念に従って行動しています。そんな人達を、私は捕まえることなんてできませんよ。 荒我。これは、いつかの屋台であなたには言っていたと思うけど、覚えてる?」 「あぁ。もちろん覚えている」 焔火の信念。それを、荒我は以前耳にしている。うまいラーメンを作る屋台で一緒になった時に。 「そうか・・・。なら、今は共同戦線を張ってくれるって解釈してもいいんだな」 「はい!ここまで来て、おめおめと引き下がれませんよ、私は!!」 「俺も居るぜ、斬山さん!!こうなったら、二度とあんな真似ができねぇようあいつ等の性根を叩き直してやる!!!」 「あぁ。その心意気だ!!」 そうして、荒我、焔火、斬山の3人は早速行動に出る。各々の信念に従って。 「そらひめ先輩―い。わたし、お腹がすきましたよー」 「チッ、仕方無ぇなあ。ほら、ビスケット。食うか?」 「わぁ。食べます、食べますー!!」 ここは、第6学区の空。“花盛の宙姫”こと閨秀と抵部は、風紀委員でありながら救済委員である春咲桜を捕まえるために、タレコミ情報にあった第6学区を飛んでいた。 「全く、お前がトイレがヤバいって言ってきかないから乗り遅れたじゃねぇか」 「だ、だって・・・あの時はほんとうにヤバかったんですもん」 「はぁ・・・。こんなことならあたし1人で来た方がよかったかな?」 「ひ、ひどいですー!!」 溜息を吐く閨秀。実は数十分前に、遠くから建物の屋根が崩壊する姿を目にした閨秀達は一目散に現場へ急行しようとしたが、 同行している抵部が「もれるー!!もれるー!!トイレに行かせてー!!」と叫んだため、急遽トイレを探す羽目になったのだ。 その後に、すぐに急行したもののそこ―屋根が半壊した倉庫―には既に誰も居なかったのである。 「まぁ、それでも手掛かりの1つ2つはあったからよしとするか」 「そうですねぇ。まさか、瓦礫の中からその・・・はるさき桜っていう人の鞄が見付かるとは思いませんでしたねー!」 「あぁ」 誰も居ない現場で、せめて手掛かりになるようなものが無いか『皆無重量』を用いて調べていた閨秀が見付けたものは・・・春咲桜の通学鞄であった。 つまり・・・あの場所に春咲桜が居た可能性が高いということ。同時に、渚に掛かって来たタレコミの信憑性が高まったということ。 「次は逃がさねぇ。必ず捕まえてやる!!」 「じゃっじめんとの信念にかけてー!!ですよね?」 「・・・あぁ。勿論!!」 『己の信念に従い正しいと感じた行動をとるべし』。閨秀はこの風紀委員の信念を気に入っていた。何故なら・・・誰の邪魔も受けずに己の信念を“貫き通せる”からだ。 だから、閨秀美魁は“貫き通す”。己が信念を。風紀委員や警備員でも無い人間が、治安活動に携わることを許さない、その信念を。 「ハァ、ハァ。くそっ!!」 ここは、第6学区のある歩道。そこに1人汗まみれになって走っている男がいた。その男の名は、鉄枷束縛。春咲桜と同じ159支部に所属する風紀委員である。 彼は、支部に掛かって来た真偽不明のタレコミ―春咲桜が救済委員である―が真実か嘘か見極めるために、情報にあった第6学区を彷徨っていた。 「ゴホッ、ゴホッ。・・・ハァ、ハァ。春咲先輩・・・!!俺は・・・俺は!!」 鉄枷は息苦しさから咳き込みながらも、走るのを止めない。でないと・・・考えてしまうから。己が尊敬する先輩が救済委員であるかもしれない・・・その可能性を。 『鉄枷君。大丈夫だって。また・・・戻ってくるから。それまで、私の分まで頑張って』 「春咲先輩・・・!春咲先輩・・・!!春咲先輩・・・!!!」 あの言葉は、あの微笑は、あの姿は果たして何処までが本当で、何処までが嘘だったのか。鉄枷は・・・考えたくも無かった。 continue!!
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「ぶっちゃけ最近暑くてたまんねぇ。もう夏真っ盛りって感じだな」 「そうっすね。さすがに支部内は冷房が入ってますからマシですけど」 ここは、昼間の風輪学園第159支部。ここに所属する風紀委員の面々は、比較的高レベルの能力者が揃っている。 「そりゃあもう夏なんだし、当たり前じゃない」 「それだけならまだ耐えられるんだが、最近はぶっちゃけストレス溜まりまくりだからなあ」 「ストレス?あなたが?」 「そうだよ。学内で騒動が起きるわ、破輩先輩から蹴りを喰らうわ、おまけにリンちゃんに首を絞められるわで散々だっつーの」 「あ、あれはあなたが悪いんでしょうが!!このエロ鉄枷!!」 「ブッ!!ば、馬鹿言ってんじゃねぇ。だれがお前のカラダなんかに興味があるかってんだ!!」 「な、何を~!」 「鉄枷先輩!リンリンさん!落ち着いて!!」 「・・・・・・っていうか、“リンちゃん”とか“リンリン”ってもう決まっちゃったの?私の愛称として」 「「もちろん!」」 「ぐうううぅぅ!!あんのバカ界刺!余計なことを。今度会ったら一発ブン殴らないと気が済まないわ」 彼等159支部の面々は、現在風輪学園内で起きているある騒動の対処に全力を注いでいた。 そのため、普通ならほとんどのメンバーが巡回に出ている筈なのだが、今日は巡回等で知り得た情報の精査のため、 何人かの風紀委員メンバーが事務作業に集中していたのである。この話の顛末はまた別に語られることであろう。 今支部内にいるのは4人。鉄枷、湖后腹、一厘、そして・・・ 「フア~ッ」 「あれ?春咲先輩、どうしたんすか?そんな大きい欠伸をして」 「あっ。・・・ごめんなさい」 「い、いや、別に謝る程のことじゃ無いっすよ。さ、最近は熱帯夜も続いていますし。なあ、湖后腹?」 「そうっすね。俺も時々寝苦しくて夜中に目が覚めることもありますし」 「・・・ありがとう、鉄枷君、湖后腹君。ちょっと寝不足で」 「や、やっぱり!ぶっちゃけ俺の観察眼も捨てたモンじゃ無いな。ハハハ!」 「(春咲先輩・・・)」 1人で勝手に上機嫌になる鉄枷を尻目に、一厘は春咲の体を心配していた。 「(やっぱり、風紀委員と救済委員の掛け持ちは体力的にキツそう・・・。目の下にクマができてるみたいだし。でも・・・)」 注意深く観察すればわかる。春咲の顔がやつれているのを。化粧で隠しているようだが、同じ女性の一厘の目は誤魔化されない。 「(表情は明るくなった。公園で見たあの切羽詰った顔に比べたら格段に。・・・やっぱりあの人のおかげなのかな・・・)」 鉄枷や湖后腹と会話する春咲の表情は、意外にも弾んでいた。普段は余り饒舌では無いあの春咲がである。 その変化に一厘は安堵すると同時に悔しさも滲ませていた。 「(・・・悔しいなあ。本っ当に悔しい・・・。こうなったら・・・)」 「ん?何ボーっとしてんだ、リンリン?」 「ゴメン。ちょっと巡回に行って来る。私の分まで事務作業頑張ってねぇ」 「はあ?何勝手なことを・・・」 「それじゃあ~」 「おい、こら!!」 鉄枷の制止も振り切り、一厘は支部を後にする。そんな一厘の行動を怪訝に思う3人であったが・・・ 「よお!事務作業頑張ってるか!!」 「破輩先輩!巡回終わったんすか!?」 そこに159支部のリーダーである破輩が巡回から戻って来た。破輩は帰って来て早々に、冷蔵庫から飲料水を取り出し、中身を喉へ送って行く。 「今日も暑い、暑い。こりゃあリンちゃん当りに巡回を代わってもらった方がよかったな」 「・・・リンリンさんなら今さっき巡回に出ましたよ。当番じゃ無いにも関わらず」 「何!?ったく巡回するつもりがあるなら、初めから言っとけっつーの。疲れがドーっと出てきたわ」 湖后腹の言葉を聞いて一気に脱力する破輩。思わず備え付けのベンチに腰を下ろす。 「佐野はまだ巡回中か・・・。リンちゃんはいないが・・・まあいい。お前等、ちょっと集まれ」 「えっ?」 「何すか?」 「ぶっちゃけいい話っすか?それとも悪い話っすか?」 破輩の号令を受けて集まる鉄枷、湖后腹、春咲の3人。破輩はポケットに入れていたあるチラシを取り出し、3人に見せる。 「実はな・・・。今回掛かり切りになっている件が終わったら、パーっと騒ぎたいと思ってな。この店に予約をしようと思うんだが」 「あ!俺、この店知っています。最近噂になっている焼肉屋『根焼』じゃないっすか!」 「おっ!さすがは湖后腹。よく知っているな。実は、この前のバイキングで一緒になった『シンボル』の不動に教えてもらってな」 そのチラシには『根焼』の名前と地図、そしてどこか怪しい風貌をしたサングラスの男がプリントされていた。・・・肝心の肉が写っていないが。 「おい、湖后腹。ぶっちゃけこの『根焼』ってトコの肉って旨いのかよ?」 「俺は食べに行ったことはないっすけど、巷じゃ旨いって評判になってますよ、ここ」 「へぇ・・・焼肉屋か。美味しそう・・・」 「そ、そうっすよね、春咲先輩!ぶっちゃけ俺も最近夏バテ気味だったし、ここいらでスタミナを付けないといけねぇよな!ハハハ!」 「まあ、そういうわけだ。一段落ついたら味見も兼ねて一度食べに行ってみようと思うんだが」 「マジっすか!?」 「但し、男連中はダメだ。金が幾らあっても足りんからな。女だけで行く」 「ガーン!!!」 「でだ。春咲。明後日の放課後に行ってみようかと思うんだが、どうだ?時間は空いているか?」 「あ、明後日ですか?・・・・・・すみません。その日は用事があって」 「・・・・・・そうか。なら記立やリンちゃんを誘ってみるか」 「本当にすみません」 「別にいいよ。春咲が断るのには『何か大事な用事がある』んだろうし。よしっ、それじゃあ解散。とっとと仕事に戻れ、お前等」 解散の号令を発し、鉄枷達を仕事に戻す破輩。今現在対処中の事案にはこうやって無駄口を叩いている余裕、つまり時間を浪費している余裕は無い。 なのに、あえて破輩は時間の浪費を選択した。それは、春咲桜という仲間のことが気に掛かっていたからである。 「(とりあえず、表情は柔らかくなったか・・・。疲れてはいるようだが)」 破輩もまた春咲が疲労を溜めていることに気が付いていた。 「(今対処中の事案で疲労が溜まっているとも考えられるが・・・あれはそれだけじゃ無いと考えるのが妥当だな。 一厘が最近春咲をしきりに気にしているのも気に掛かる。・・・あのバイキングの後からってことも)」 さらに破輩は一厘が春咲を必要以上に気にしていることにも気が付いていた。さすがは159支部を纏め上げるリーダーと言ったところか。 「(不動に尋ねても「知らない」の一点張り。だが、あの男・・・界刺と言ったか、奴が関わっている・・・そんな気がする)」 あの時、店を後にした春咲を追うかのように界刺と水楯、そして一厘が店を後にしたことが破輩にはどうしても引っ掛かっている。 「(だが、今はそっちに時間を割く余裕は無い。全く・・・部下の気持ち1つマトモに察してやれないとは・・・リーダー失格だな)」 自分の机に戻った破輩は短く嘆息する。今は揺らいでいる場合では無い。懸案事項が幾つもある。リーダーたる自分に迷っている時間は無い。許されない。 それでもなお、破輩は視線を春咲に向けてしまう。それも、リーダーたる故の性と言うべきか。 「フア~ッ」 「どうした、そんな大きい欠伸をして」 「いやあ・・・最近寝不足で」 ところ変わって、ここは昼間の成瀬台高校の屋上。夏休みも近くなってきたせいか、授業も短縮ver.になっている。 「例の・・・救済委員活動か?」 「そう。深夜の活動がザラだから、睡眠が足りないな。そのせいで、この前のテスト結果も芳しくなかったし」 「そのかわり、最近は『シンボル』の活動や朝の鍛錬もセーブしているが?」 「やっぱさ、人間たるもの夜にキチっと寝ないと駄目だね。今回のことでそれがよーくわかったよ」 屋上で会話をしているのは界刺と不動。界刺が昼寝をしたいと言ったのでここにいるのだ。 丁度この時間帯の成瀬台の屋上には影が大きくなって昼寝にはもってこいのスペースがある。 「ただでさえ最近は暑いしな。本音を言えば、救済委員なんてすぐにでもやめたいくらいさ」 「だが、そういうわけにもいかんのだろう?なら答えは1つ。やり遂げるのみだ」 「・・・・・・ハァ~」 2人揃って横になって昼寝に突入しようとする界刺と不動。だが、 ピロロロロロ~ 「ん?何だ?くそっ、せっかく人が昼寝をしようと横になってんのに・・・。一体誰だ?」 面倒臭そうに掛かって来た携帯電話に出る界刺。そこから聞こえて来たのは・・・ 「何だよ、リンリン?折角イイ気分で昼寝に突入しようとしてたのに。目覚まし時計気取りですかー!リンリンだけに。全くこれだからリンリンは・・・」 「な、何よ!電話に出て一言目がそれ!?」 「君さ~、支部内で言われない?『コイツ、空気が読めないなあ』ってさ」 「い、言われたこと無いわよ!!アンタと一緒にしないでくれる!!」 「・・・相変わらず口が悪いねぇ、君」 電話主は一厘であった。実は先日春咲を尾行していた最中に携帯電話の番号を交換していたのである。 「で、何?何の用件ですか?リンちゃんサマ?」 「ブハッ!文句の1つ2つぶつけてやるつもりだったけど・・・まぁ、いいわ。そんなことより!私の用件はね・・・」 「春咲桜のことだよね?」 「わ・・・わかってるんなら最初から言え、アホ界刺!!」 一厘の用件とは・・・もちろん春咲のことである。 「とりあえず、今の所は何とか過ごしているよ。というか同じ支部員なんだし、君の方があのお嬢さんと接する時間は多いんじゃないの?」 「そ・・・それは。最近は色々ゴタゴタがあって、余り春咲先輩とも話す機会無いし・・・。それに私は風輪の生徒じゃ無いし・・・」 「つまり、君はあのお嬢さんのためにな~んもしてやれていないってこと?違うかい、リンリン?」 「そ・・・そんなこと!!・・・いや、そう・・・です、はい」 界刺の容赦無い指摘に一厘の声は小さくなっていく。何せやっていることと言えば気に掛けているだけ。実質的には何もしていないのと同じだ。 「まあ、それでも少しは接する機会はあるんだろう?今日だってさ。どうだったの、お嬢さんの様子は」 「今日は・・・何て言うか明るかったです。あの公園で見た時の顔とは雲泥の差でした」 「・・・そうか」 「・・・あなたのおかげ・・・なんですよね?」 「いんや、俺は何もしていないよ。彼女が明るくなったんなら、それは彼女自身の中で何かが変わり始めたんじゃない?」 「変わり始めた?」 「うん。結局さ、人ってのは他人が何を言おうが中々変わらないんだよ。それが変わるんなら、それは本人の意思ってことだと俺は思う」 「・・・」 「いい傾向なんじゃない?今の所は。これが続いたら・・・彼女は立ち直れるかもね。いや、立ち直るじゃないな。ようやく自分の足で立つんだな、うん」 「そ、それじゃあ・・・」 「だけど、そう簡単に行く程現実は甘くないとも思ってたりするよ、俺は」 「・・・どういうことですか?」 「君に調べてもらっていた件・・・つまり、彼女の家庭事情だ。元々君が教えてくれたんじゃないか・・・。あのお嬢さんは中々家に帰らないってさ。 これは俺の予測だけど・・・彼女の家庭事情も今後無視できなくなると思う。ただでさえ風紀委員『だけ』の時も中々家に帰らなかったんだ。 今はそれに加えて救済委員の活動もしているんだし、益々家にいないってことだろう?この現状を家族が不審がると考えるのは妥当な予測じゃない?」 「・・・春咲先輩が家に帰りたがらないのは、支部員全員が知っています。理由が、家族内のレベルの差ということも」 「確かご両親が著名な科学者。んで、その子供達・・・春咲家には三姉妹がいて、その内長女と三女がレベル4だっけか?大層なエリート一家だね」 「・・・それは春咲先輩に対する皮肉ですか?」 「別に。俺は感想を言っただけだよ。・・・リンリン、俺が言っていた長女と三女の能力の詳細はわかったかい?」 「・・・三女・・・春咲林檎については判明しています。ただ、長女の春咲躯園に関しては長点上機学園に通っているので、 彼女に関する情報は『書庫』を利用しても掴めていません。さすがは学園都市の中でも5本指に入る名門校。セキュリティもすごいです」 「そうか・・・。なら仕方無い。その三女・・・春咲林檎について教えてよ」 「わかりました・・・。言っときますけど、これはオフレコですからね。本当はこんな真似はしちゃ駄目なんですから」 「わかってるよ、リンちゃん」 というやり取りの後、一厘から春咲林檎に関する情報を聞いた界刺は電話を切る。 「どうやら思った以上に複雑そうだな」 「ああ、複雑だな。珍しく頭も使ってるしさ。全くいやになっちゃうよ、ホント」 「私から見れば、面倒臭がりなお前があの少女にそこまで肩入れする方が不思議ではあるがな。如何に命が懸かっているとはいえ」 『銅と明星、女神に象徴されるは金星。意味するものは、愛、調和、芸術。混沌とした世界に存在する真理を見通す偉大なる輝星』 『全く、酷いもんだ・・・この世界って奴は。馬鹿が馬鹿やって馬鹿な目を見ないと、“こんなこと”にさえ気付かせてくれねぇんだもんな』 「・・・似てるんだよ(ボソッ)」 「ん?何か言ったのか?」 「いや・・・何でもねぇよ」 不動の言葉に相槌を打った後に眠りに入る界刺。結局2人は夕方近くまで昼寝に没頭していた。 continue!!
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ここは、第6学区にあるコンテナターミナル。第6学区を主な活動場所にしている過激派救済委員の溜まり場。 「それにしても、刺界・・・じゃ無かった、その界刺っていう『シンボル』の変人は結局来なかったわね、雅艶?」 「・・・あぁ。俺としても驚いているくらいだ。あの『シンボル』の一員ならば、必ず助けに来ると踏んでいたが・・・」 躯園や雅艶達過激派は、この溜まり場で今後の方針を話し合っていた。 直近では春咲桜へ制裁を与えたことに対する穏健派の出方、中長期的では第6学区をうろついている風紀委員への対策。この2点が主な主題である。 「しばらくは、ここに集らない方がいいのではないでしょうか?一時の間は風紀委員達も第6学区に絞った活動を行うでしょうし。 それに、先程の戦闘にて荒我拳は176支部の風紀委員と繋がりがあることが判明しています。これは、情報の漏洩という観点から見ると大きな問題です。 もっとも、荒我自身も救済委員で『あった』ため、彼等が親しい関係ならば他の風紀委員に私達の情報が漏れる可能性はそこまで高くは無いと思われますが・・・」 「私も七刀君の意見に同意するわ。それに、ここは穏健派にも知られている。もし、今回の制裁に対する報復を彼等が考えているとしたら・・・」 「報復!?・・・雅艶兄ちゃん・・・」 「心配するな、羽香奈。確かに刈野の言っている可能性も十分に考えられる。だが、俺達と全面衝突を果たして穏健派の連中が選択するかどうか・・・可能性は低いと思うがな」 「何弱気になってんのよ、雅艶、羽香奈、刈野。あのクズを助けに来ない時点で、奴等の本音なんて手に取るようにわかるわ。 要するに、私達を敵に回したくないのよ。もし、その覚悟があるなら、あの負け犬や『裏切り者』が来る前に助けに来てもおかしくないわ。 それなのに、連中は私達へ“制裁の中断”というすぐにでもやれる交渉・・・つまり連絡の1つすらよこさなかった。わざわざ、羽香奈からメールを送ったっていうのにね」 「さっすが、躯園姉ちゃん!頼っもしい!!」 「林檎。あなたは私が必ず守るから安心なさい。どう、麻鬼?私の推測は?」 「春咲の言い分はもっともだ。奴等穏健派は総じてレベルが低い、あるいは高くても戦闘に向いていない連中だ。 対して、俺達は皆レベルも高く、戦闘にも通じている。何を企んでいようとも、あんな弱腰の連中に遅れなど取らない。違うか、雅艶?」 「・・・あぁ、そうだな」 躯園や麻鬼の主張は的を射ている。穏健派は自分達過激派との衝突は望んでいないだろう。真実を言えば、自分達過激派も穏健派との衝突は望んではいないのだ。 仮にも、同じ土俵で共に戦う同士である。思考や方針の違いこそあれ、仲間であることには違いない。 今回の春咲桜への制裁は、あくまでも『裏切り者』への制裁と、今後は『裏切り者』を発生させないという強い意思を示したに過ぎない。 ちなみに、荒我と斬山の2人は過激派の中で既に『裏切り者』として扱われている。故に、議題にも上がらない。制裁が決定事項であるからだ。 「だからこそ、奴が・・・あの変人だけは春咲桜を助けに来ると予想していたんだが。どうやら、奴にとって春咲桜とは命を懸けるに値しない存在でしか無かったようだな」 「難しい言葉で言わなくてもいいじゃない、雅艶。つまり、あの出来損ないのクズは一緒に救済委員に入った仲間にも見捨てられたってことよ。ホント、傑作だわ」 躯園の高らかな嘲笑がターミナルに響く。雅艶は、界刺についてこれ以上考える思考を回すことをやめる。今は、それ以上に気を割かなければならない事案がある。 「そうだな。もう終わったことについて議論しても仕方無い。とりあえず、目下の懸案は荒我と斬山、この『裏切り者』達への制裁と穏健派の出方を注視すること。 そして、風紀委員への警戒。以上3点が・・・・・・」 「・・・・・・?どうしたの、雅艶?急に黙りこくって?」 急に黙り込んだ雅艶に怪訝な視線と言葉を発する峠。だが、雅艶は言葉を返さない。その顔には一筋の汗が流れていた。 「な、何だこれは・・・!!?」 雅艶が発した驚愕の声に異変を察知した過激派は、周囲へ気を張り巡らせる。 荒我達『裏切り者』が攻め込んで来たのか。風紀委員に見付かったのか。否、そのどちらでも無い。 「あ・・・あれ・・・。な、何・・・?」 最初“ソレ”に気付いたのは羽香奈。主に、立ち位置的な理由で。 彼女はある方向に向かって指を指す。その方向から聞こえて来たのは・・・轟音。 「あ、あれは・・・!?」 刈野が“ソレ”を見て顔を青ざめる。 “ソレ”は・・・“水”。 「何・・・だと・・・!?」 あの麻鬼すら焦りの色を隠せない。“水”は・・・自分達に向かってくる“水”はただの水じゃ無い。それは、まるで・・・“激流”。 海面に接していないこの場所で起こり得る筈の無い光景。大型のコンテナさえも押し流しながら突き進んで行くその頂上に・・・居る者達。 「峠!!何時でも『暗室移動』で転移できるように構えておけ!!」 「わ、わかった!!」 「おい、雅艶!これは、一体誰の仕業だ!?お前なら、『多角透視』ならその姿を捉えているんだろう!?」 峠に指示を出した雅艶に麻鬼が問い掛ける。そして、雅艶は重い口を開く。 一番可能性が低いと判断した現実が・・・雅艶達過激派に牙を向けるために出現した。 「あぁ・・・。奴等が来た」 「奴等!?それは、一体・・・?」 「穏健派の連中と・・・『シンボル』の変人だ!!」 「何だと!??」 麻鬼は、今度こそ驚愕の声を漏らす。 穏健派は・・・自分達過激派との全面衝突を覚悟してここに現れた。雅艶の言葉からそう察したがために。 「この“激流”を操っているのは、おそらくはあの変人の仲間・・・『シンボル』の一員だろう。それ以外にも・・・風紀委員の腕章を付けている女も居る」 「風紀委員?まさか、穏健派の連中・・・」 「いや、穏健派とて救済委員には変わりない。如何に風紀委員の中に救済委員を認める変わり者が居たとして、それは極一部だ。おそらく、あの変人の伝手か何かだろう」 「・・・確かに。他に俺達の知らない人間は居るのか!?」 「・・・!!いや、他は全員見知った連中だ。だが、これは・・・春咲!!」 「な、何よ!?」 雅艶は麻鬼との会話を中断して、躯園に声を掛ける。 “激流”が差し迫っている恐怖から足が竦んでいる林檎に身を寄せながらも、躯園は雅艶に反応する。 「あの“激流”の頂上に、お前がよく知っている女が居るぞ!!」 「私の知っている?そんな女・・・・・・!!ま、まさか・・・!!」 雅艶の言葉を受け、ある可能性に気付く躯園。 それは、彼女の頭の中から既に消えていた存在。 「あぁ、そのまさかだ!!あの頂上に・・・お前の妹、春咲桜が居る!!!」 顔が驚愕に染まる躯園。それは、林檎や雅艶以外の過激派の者達も同様に。 あれ程の地獄(せいさい)を味わいながら、それでも屈せずに自分達の前に姿を現した春咲桜の『凱旋』に。 「うおおおおおぉぉぉっっ!!!!」 「何を情けない声を挙げているのだ、農条!!だらしがないぞ!!!」 「師匠の言う通り!!これしきのことで・・・ズブズブッッ!!!」 「言ってる傍から沈んでじゃ無ぇよ、ゲコ太!!うおっ!!」 「で、でもこれは・・・。バランスが・・・!!」 「くっ・・・!!あ、あなたと言い、この“激流”と言い、“宙姫”対策で待機しているあの2人と言い、『シンボル』は化物の巣窟か何かですか!?」 「化物呼ばわりは酷いなぁ、リンちゃん。それに・・・君、あのバカ形製を忘れてるよ。そうだ、化物呼ばわりも含めて後でアホ形製にチクっとこう」 「!!そ、それはやめて下さい!!私が形製さんに潰されます!!!」 「にしても涙簾ちゃんの“コレ”・・・久し振りだなぁ。ハハッ、何だかサーフィンで波に乗ってるみたいだ」 「慣れているからって余裕ぶっこいてんじゃ無いですよー!!幾ら作戦だからって、過激過ぎじゃないですかー!?」 「物静かな娘程過激なんじゃないか?さっきのお嬢さんの行動でも思ったけど」 「!!!」 「過激・・・。ポッ!///」 「水楯さん!?別に褒めてなんかいませんからね!?」 「というか、あのことは早く忘れて下さい!!く、くそっ!な、何で私、あんなことを・・・」 「こりゃ、驚いた。お嬢さんの口から『くそっ!』なんて言葉が出るなんて。ってかあれを忘れろって言う方が無理と言うか・・・」 「も、もうー!!!不条理だー!!!!最悪だー!!!!この、バカ界刺ー!!!!」 「春咲先輩・・・逞しくなっちゃって。よーし、だったら私も!この、アホ界刺ー!!!!」 「・・・・・・何だか、形製の言葉が広まりつつある・・・。俺、悲しい」 “激流”の頂上でギャーギャー騒いでいるのは、界刺、春咲、水楯、一厘、農条、花多狩、啄、ゲコ太、仲場。 この“激流”は、水楯の能力『粘水操作』によって操作されている。1000tを軽く超える水量は、近辺にあった幾つかの屋外プールから引っこ抜いてきたもの。 水楯にとって、水とは粒(水滴)の集りという認識である。そう、それはまるで“涙”の如く時には冷たさを、時には激しさを伴って集う集合体。 故に、彼女が操る“激流”とは“激流”にあらず。その姿を見た界刺が思い付きで付けた渾名・・・“激涙の女王”を水楯は気に入っていた。 自分の名前の一部が渾名に入っていることが秘かなお気に入りポイント。但し、恥ずかしくて誰にも言ったことは無いが。 この“激涙”が響き渡らせる轟音こそが、過激派達に告げる反逆の咆哮であった。 「ぶはっ!!ハァ、ハァ。ったく余裕綽々だなぁ、界刺は。俺なんか、サーフィン代わりの小型コンテナの上に乗るのにも一苦労だってね!!」 「こんなもん慣れだ、慣れ。農条も経験を積めばこの乗り心地を楽しめると思うぜ?」 「いやっ、慣れたくなんかないってね!こんなの、今回限りで十分だ!!」 界刺達は“激涙”の上に乗るために、各々に小型コンテナの幾つかが割り当てられていた。 小型コンテナ間は『粘水操作』で固定されているのだが、さすがに水の流れは凄まじく、その上に安定して乗るというのは農条に限らず他のメンバーも四苦八苦していた。 “激涙”の支配者である水楯と、慣れているという界刺は平然と小型コンテナの上に座っている。 何故か啄だけは、農条達のように四苦八苦するどころか不安定な小型コンテナの上に仁王立ちしているが。 「さて、そろそろ向こうさんも気付いた頃合いかな・・・。花多狩姐さん!」 「!!」 界刺が花多狩に問う。 「やれるね?」 「・・・えぇ。やるわ。やり切ってみせる」 花多狩にとって凄まじい覚悟を迫られる“ソレ”を、しかし花多狩は受諾する。その目には、悲愴にも似た決意の光が宿っていた。 「ようし。それじゃあ、皆手筈通りに・・・」 「界刺さん!」 「ん?何だい、リンリン?」 作戦を開始しようとした界刺に一厘が声を掛ける。その手に握られた・・・界刺から預かった“モノ”を胸の前に置きながら。 「春咲先輩のこと・・・よろしくお願いします!!」 「一厘さん・・・」 「うん、お願いされた」 それは、一厘の心の底からの頼み。そこには、嫉妬も何も無い。ただ、純粋に目の前の男を信頼したからこその頼み。 界刺に春咲のことを頼む一厘の顔には、笑みさえ浮かんでいた。それは、彼女の確かな成長。 その一厘の変化に春咲は驚き、界刺は何時も通りの飄々とした態度で応える。 「では、皆さん・・・そして界刺さん。ご武運を・・・!!」 「ありがと、涙簾ちゃん。お前等、絶対にタイミングを外すんじゃねぇぞ!!“燃やされたスーツの敵討ち作戦”開始だぁぁ!!!!」 「「「「「「「「だからそっちいぃぃっっ!!!!????」」」」」」」」 界刺の作戦名に総出でツッコミを入れながらも、“激涙”は勢いを増して突き進んで行く。 「ど、どうするのよ!?私の『暗室移動』で、とっととここから脱出する!?」 「そ、そうだ。あたしの『音響砲弾』であの水を操っている奴に大音量をぶち込めば・・・」 「馬鹿言え!そんなことをすれば、いよいよあの“激流”は操作不能に陥って俺達を飲み込むぞ!?あの勢いだ。まず、逃げられない!!」 「そ、それじゃあ、やっぱり私の能力でさっさと移動するか、奴等の誰かをここへ転移させて・・・。 くそっ!“激流”が不規則に上下するせいで、うまく奴等の座標を計算できない・・・!!」 峠、林檎、麻鬼が怒声を交えながら話し合っているのを余所に、1人雅艶は考え込む。それは、『敵』の襲撃について。 「(あの後、春咲桜は奴等が保護していたのか・・・。そして、『シンボル』の1人であろうあの女の能力を借りてまで俺達に危害を加えようとしている。 つまり、穏健派の連中は俺達と全面衝突する覚悟で来たということ。あの少女に、あの『裏切り者』にそこまでの価値があるのか?理解できん!)」 穏健派の行動原理が読めない雅艶。だが、今はそんなことに時間を割いている余裕は無い。“激流”はいよいよ雅艶達の直近に差し迫って来た。 「峠!!ここは一先ずお前の『暗室移動』で退避する!!連中への対処はそれか・・・」 「キャッ!!?」 「うおっ!!?」 「むっ?どうした、峠!?麻鬼!?」 「空に幾つもの光源が浮かび上がった!!これは・・・」 「・・・駄目!!これだけ明るかったら『暗室移動』が発動できない!!」 「光源・・・!?くっ!!あの『シンボル』の変人の仕業か!!!」 麻鬼と峠の言葉から、光源の存在とそこに込められた意図を理解する雅艶。『敵』は暗闇では絶対的な移動能力を誇る峠の『暗室移動』を封じるつもりなのだ。 「界刺という男の仕業か!!確か光学系能力者だったか!?」 「おそらく。しかし、それ程の光源を生み出せるとは・・・。光学系と言っても既にある光を操るのでは無く、電子制御系能力者のように光を生み出すタイプなのかもしれん!!」 麻鬼の問いに己の推測を交えながら返答する雅艶。実の所、盲目の雅艶には能力で生み出された光源は全く影響が無い。『多角透視』自体も光学系能力は一切無効なのである。 無効・・・すなわち、雅艶には光学系能力で隠されている何かを見付けることができても、光学系能力自体を感知することはできないのだ。 これは、界刺が身を持って体験したことによる推測でもあり、そしてその推測は当っていた。今後この推測に基づくある作戦が行われる予定だが、今の雅艶には知る由も無い。 「ど、どうするのよ!!私の能力は発動できない!!“激流”はもう目の前!!このままじゃあ・・・」 「・・・関係無ぇよ」 「き、金属操作!?」 峠の焦り声に言葉を返したのは、今まで沈黙を守っていた金属操作。その表情には、苛立ちが如実に表れていた。 「あっちが“激流”なら・・・こっちも“激流”をぶつけてやりゃあいい!!!」 前髪で隠れている金属操作の目が見開かれる。その視界に収まる金属―大型コンテナ―が瞬く間に液状化される。高温を伴って。 自ら金属操作と名乗るこの名前は、彼の能力名でもある。厳密に言えば、人名の方は名前の通り金属操作、能力名としては『金属操作 メタルコマンド 』という風に区別しているが。 彼の視界に入る金属は、全て彼の支配化に置かれる。そして、支配下に置いた金属類を自由自在に鋳造する。これが、彼の能力『金属操作』の真髄である。 「ムシャクシャする・・・。イラつきが収まらねぇ・・・。こうなったら、あいつ等をぶっ潰して晴らしてやる!!」 液状化した大量の金属を壁状に集め、“激流”にぶつけようとする金属操作。 「待て、金属操作!!それなら、集めた金属を使って影を作ることで峠の『暗室移動』による脱・・・」 「うらああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」 雅艶の制止はイラついている金属操作には届かない。彼の意思により発射される金属の壁が“激流”と衝突する・・・瞬間!! ザアッ!!! 「!?」 金属操作は意表を突かれる。何故なら、金属の壁と衝突する瞬間、“激流”が中程から真っ二つに裂けたからだ。 まるで、初めからそうするよう構えていたように。でなければ、あれ程の水量を瞬間的に操作することはできない。 金属操作が放った金属の壁との衝突を避け、とてつもない勢いで左右に分かれる“激流”。 プシャアアアアァァァッッッ!!!! 2つに分かれた“激涙”が、更に変化する。それは、まるで水でできた蜘蛛の巣。網目状に張り巡らされた水の道には、等間隔で小型コンテナが設置されていた。 「一厘さん!!」 「わかってますって!!水楯さんもフォローをお願いします!!」 それは、水楯と一厘の能力によってできた、空中を走る水の道。 1個に割ける重量が15kg以下に限られる一厘の『物質操作』によって操作・維持される小型コンテナを、水楯の『粘水操作』にて補助する。 水楯の『粘水操作』では、小型コンテナの正確な設置を行うことができない。そのために、一厘の『物質操作』が設置の役割を負う。 その水の道を、界刺達が駆け抜けていく。各々が小型コンテナに乗った瞬間に『物質操作』は維持できなくなるが、『粘水操作』にて極短時間だけそれを支える。 「(このために、この場所の地図が必要だったんだ)」 一厘は、今更ながら界刺が自分へ依頼して来た件の真意を理解する。水の道を敷くに最適な場所は何処か。 その時に過激派の連中が居る位置次第で最適は変わる。だから、その予測パターンを幾通りも出すために、自分の懺悔すらまともに取り合わずにあくまで地図の伝達を急かしたのか。 『俺って光を操る関係上、周囲の位置取りとかって気にするんだよねぇ』 作戦概要を説明中に界刺が放った言葉を、一厘は身を持って体感していた。だから、この体感を絶対に無駄にはしない。そう、心の中で誓った。 そう思う間に、界刺達は無事コンテナに乗り移った。作戦第1段階がもうすぐ終わる。そして、自分と水楯に割り振られたもう1つの作戦を実行に移す。 それを発動するために少し離れた位置に居る水楯が、水の道を1本の水柱へ変化させる。 「・・・・・・圧縮!!」 突如水の道に敷き詰めた、数多の小型コンテナを取り込んだ水柱が圧縮された。小型コンテナが軋み、あちこちが凹む程に。 その直後、圧縮されて球とも四角とも取れる形になった水の1点に―あえて勢いを付加して―圧縮から開放した水流を集中させる。 「・・・・・・・・・っっ!!!」 「はあああああぁぁぁっっ!!!」 水楯でもコントロールし切れない勢いで、水ごと小型コンテナが放出される時が来た。方向、角度等の微調整は一厘が整える。そして・・・“ソレ等”は解き放たれた。 continue!!
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■遊☆戯☆王ZEXAL ゼアル 演出 133(茉) 作画監督 83 91 99 107 116 124 133 142 ■極黒のブリュンヒルデ 作画監督 11(P) ■オオカミ少女と黒王子 作画監督 12(藤・安・手・野・渡・萩・吉・大・S・P) ■牙狼〈GARO〉-炎の刻印- 作画監督 16(S・S・P) 22(S・林・菅・佐) ■戦国無双 作画監督 10(L・L・S) ■関連タイトル 遊☆戯☆王ZEXAL DVDシリーズ DUELBOX【1】
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今はゴールデンウィークが終わり、来月は祝日が無いのかと考えると憂鬱になりそうな5月の中ごろである。 新学期が始まってからというもの、世界が分裂しかけたとか、長門が雪山に引き続き倒れたとか、 先の事件で約束を果たした古泉が機関の反感を買い転校させられ掛けた等の非日常な出来事から、 鶴屋家での花見大会第2弾等の日常的な出来事までイベント目白押しだったわけだが、それらもひと段落して 俺はおそらく束の間であろう平穏な時間を満喫していた。 そんなある日の事である、 「おーい○○(俺の名前)。」 と仕事から帰ってきた親父は俺を呼んだ。 「どうした?親父。」 「上司にレストランの割引券を貰ったんだが、すっかり忘れててな、期限が明日までなんだ、 しかも俺は明日用事があって行けん。だからお前にやる。」 と言って優待券を俺に渡した。そのとき、それペアのやつだし、お前ももう高2なんだから気になる子ぐらいいるだろその子誘っていって来い。 とか言ってた気がするがスルーし、 「まあ、貰えるんなら貰っとくよ。」 とだけ言って部屋に戻った。 明日はちょうど休み、しかもSOS団の活動もない。さて誰を誘おうか、とけっこう高そうなレストランの優待券を眺めつつしばし考え、 ハルヒを誘おうという結論に達し、あいつの携帯に電話をかけた。 ハルヒを誘おうとしたのは別にあいつと二人で食事に行きたいというわけではなく、 朝比奈さんや長門誘って、それがハルヒにばれたらどんな罰ゲームを食らうかわからず かといって古泉と男二人で行く気のもなれないから仕方がなくである。まあそれに、明日は…。 「どうしたの、キョン。」 「いや、親父にレストランの優待券ペアのやつを貰ったんでな、せっかくだから偶には団長様に 奉仕しようと思って。明日いけるか?」 「明日!?えらくきゅうね。」 お前だけには言われたくないね。 「優待券の期限が明日までなんだよ。まあ無理なら別にいいが…。」 「別に無理じゃないわよ。ただあんたがらしくも無くいきなり言い出したから驚いただけ。」 「そうか、ならいいが。」 その後俺はそのレストランの場所のことや、そのレストランは結構お高い所だが 昼時は手ごろな値段な値段で若い人たちにも人気があること(階段を上がる前に親父が言ってた。)を説明した。 「それで集合時間と場所は?」 「このレストランの最寄の駅はいつもの駅から30分くらいだから、11時半にいつものところに集合でどうだ?」 「わかった。」 そう言ってハルヒは電話を切った。ここら辺は相変わらずだな、やれやれ。 そして翌日。 俺はいつものところに自転車を止めて例の場所に向かった。携帯を見ると時刻は10時25分。 こっちから誘っておいて相手を待たせるわけにもいかんからな。いくらハルヒと言えども1時間前に来れば大丈夫………。 俺の時間は一瞬止まった。 俺が駅前で見たものは、薄手のナイロンジャケットに、裾を黒いレースで飾ったオレンジ色のプリーツスカートを着て、 薄っすらと化粧をした顔に不安そうな表情を浮かべ時計を見ている我らがSOS団団長だった。 そのとき、俺は不覚にもハルヒをかわいいと思っちまった。 一瞬首を吊りたくなったが、ハルヒの表情を見ていると早く話し掛けたほうがいい気がしたので何とか気を取り直しあいつに声をかけた。 「よぉ、待ったか?」 ハルヒもやっとこっちに気づいたらしく、 「べっ、別に、あたしもついさっき来たところ。」 となぜかアヒル口で返事した。 「そうかい。」 「所で、遅れてきたから罰金ね。お昼代あんた持ちだから!」 気が付くといつもの笑顔に戻っていたハルヒは俺にそう言った。もちろんポーズもいつものやつでな。 まったくさっきの表情はなんだったんだろうね…。まあ、あいつは笑顔が一番だからよしとしようかねぇ。 「あのなぁ、遅れてきたって…。俺は約束の時間の1時間前にここに来たんだが。」 「何言ってんの。誘ったあんたが誘われたあたしより後に来たんだから、遅れてきたことになるに決まってんじゃない!」 ホント、なんでこんな嬉しそうな表情でこんな事言うんだろうね。 「ほら、そんなことよりさっさと行くわよ!」 「ちょっ、待て、そんなに急いだって早く着きすぎるだけだろ。てかっ、そんなに引っ張るな、転ぶだろうが。」 「なにぐだぐだ言ってんの!」 そして俺は改札口までそのまま引っ張られた。やれやれ。 その後これと言って語ることもなく俺たちの乗った電車は目的の駅に着いた。 「どうする?まだ11前だが。昼にするにはちょっと早いよな。」 「そうね。とりあえず1時間くらい町をぶらつかない?」 まあそんなところだろうな。 「OK。それじゃ、行きますか。」 「わー、綺麗。」 今俺たちがいるのはアクセサリーショップ。そんでもってハルヒが見ているのは携帯のアクセサリーである。 具体的に言うとイルカのアクセサリーで色は透明。確かに綺麗だがその分値も張る代物だ。 ハルヒ的にも懐に厳しいのか名残惜しそうにアクセサリーを戻していた。しょうがないな…。 「それ欲しいのか?」 「えっ?」 「だから、そのイルカのアクセサリーが欲しいのかと聞いているんだ。」 「そりゃ、欲しいけど。それ結構高いから止めといたの。」 「買ってやるよ、それ。」 「いっ、いいわよ別に…。」 あな珍し。あの唯我独尊な団長様が遠慮している。 「お前らしくない、遠慮するなって。今朝、臨時収入(今朝親父がニヤニヤしながらくれた)が入ってな、昼飯台を考慮に入れても金は大丈夫だからさ。」 そう言って俺はイルカのアクセサリーを取ってレジに向かった。 「ほらよっ。」 俺は買ってきたイルかのアクセサリーをハルヒに渡した。 「……あ、…ありがと。」 「んっ。なんだって?」 「聞いてなかったあんたが悪い!こっの、馬鹿キョン!!」 「おわっ。」 いてて、何でか判らんがハルヒは俺を吹っ飛ばして店から出て行っちまった。やれやれ。 「まてよ。」 何とかハルヒに追いついてハルヒの機嫌を直したころにはもう正午を回っていた。 「そろそろ昼飯食いに行くか。」 「そうね、いきましょ。」 とまあ歩くこと10分レストランに到着した。海に面しているので景色が良くランチタイムは手ごろな値段のメニューもあるので俺たちみたいに若い客も結構いた。 「お客様、2名様でよろしいでしょうか。」 「「はい。」」 被っちまった。恥ずかし。 「こちらへどうぞ。」 店員の女性は微笑ましそうに俺らを席に案内した。 「こちらになります。」 席に着くなりアヒル口になったハルヒは、 「あんたのせいで恥をかいたじゃない。」 俺のせいかよ。まあそんな事をこいつに言っても無駄なので溜息ついてメニューに目を通した。 「過ぎたことをとやかく言っても始まらん。俺は日替わりランチとモカにしようと思うがおまえは?」 ハルヒはアヒル口のまま、 「あたしは日替わりランチとミルクティー。あと、デザートに苺のパフェ。」 その後俺たちは注文したものが来るまで他愛もない会話をし、つつがなくランチを満喫した。 因みにハルヒの機嫌は飯が来るとすぐに直った。単純なやつ…。 「苺のパフェとミルクティーとモカになります。」 食後に頼んでおいたものが来た。 早速一口飲んでみたが美味かった。いつもの喫茶店のコーヒーもいいが、やっぱりこういう所のやつは格別だな。 ふとハルヒを見ると、あいつはこれでもかってくらい幸せそうな顔でパフェを食っていた。 いや本当に、こんな顔で食われたらパフェの方も本望だろうな。 「なによ。人の顔をじーっと見て。」 やべっ。俺そんなにハルヒの顔を見てたか。とりあえず何か言わないとまずいな。 「いや。お前があまりにも幸せそうにパフェを食うんでなおごりがいがあると思ってただけだ。」 「…ばか。」 ハルヒはいきなりそっぽ向いた。アー…、またやっちまった。 ここで今日、何度目かにハルヒの機嫌の直し方を考えたのがまずかったんだろうね。 「隙有り。うりゃー!」 「なっ!?」 ハルヒにまだ一口しか飲んでないモカ全部飲まれちまった。 「なーに恨めしそうな目してんの。さっさと飲まないで考え事してるあんたが悪いのよ。」 「あのなあ、熱い飲み物を一気飲みすんのは世界広しといえどもお前くらいのもんだ。それに…、」 それ以降の台詞は言えなかった。 「はいはい。あたしのパフェ揚げるからから機嫌直しなさい。」 と言ったハルヒにスプーンで口を塞がれちまったからだ。恥ずかしくて死にそう…。 「間抜け面。」 ハルヒは嬉しそうな顔と声でそう言った。 「所でこの後どーすんのよ。」 「考えてないな。」 「はぁ…。」 そんな露骨にため息つくなよ。それは俺の専売特許だ。 「そんなことだろうと思ったわ。」 と言って映画のチケットを2枚取り出した。 「昨日有希に貰ったの。『明日でSOS団は創設1周年。彼と二人で見てくることを推奨する…。オススメ。』だそうよ。」 よく見るとその映画のタイトルは春休み前に長門から借りた本のそれと同じだった。 「言っとくけど、有希に進められたから見に行くのよ。 別にあんたと映画見たいとかそういうのじゃ無いんだからね!」 「わかってるよ。それで、どこで見るんだ?」 「駅を挟んで反対側にシネマがあるからそこでよ。」 「それじゃあ支払い済ませて行こうか。」 俺はレシートをとってレジに向かった。優待券を使ったが二人分の代金は結構なものだった。 ファーストフードなら何食分になることか…、改めて親父に感謝すべきかもしれない。 そう思いながら支払いを済ませると、 「ほらほら、さっさと次いくわよ、キョン!」 と言ったハルヒに引っ張られるままに店から引きずり出された。 「そんなに慌てるなって。食後直ぐに動き回るのは体に悪いし、映画は逃げん。」 「早く行かないと映画が始まっちゃうかもしれないじゃない。あたしは待つのが嫌いなの。」 「もしかしたらもう始まってるかもしれんだろうが。その場合は早く行っても結局待つことになるんじゃないのか。」 「あーもお!ぐだぐだ言ってないでさっさと行くわよ!」 結局俺の反論も虚しく映画館に急ぎ足で行くことになっちまった。まあどうせ反論しても無駄だってわかってたけどな。やれやれ。 ハルヒがやたらと急かしたおかげで開演にギリギリ間に合った。 まあ開演と言ってもその後まだしばらく映画始まら無い訳で、俺は今二人分飲み物を買ってハルヒのいる席へ向かっている。 「ほら、飲みものだ。」 ハルヒに飲み物を渡しながら俺はハルヒの隣の席に腰を落とした。 「団長に場所取りさせるなんていい根性してるわね、まったく。」 因みに俺達が座っているのは、中央列の一番端だ。ハルヒが端で俺がその隣。 こいつの事だからてっきりど真ん中を取ると思ってたんだが意外だな。 「何か言いたそうね。」 と、ハルヒは訝しそうな表情で俺に問い詰めてきた。 「お前だったらど真ん中の席を取ると思ってたんでな、少し意外だと思ってただけさ。」 隠すことでもないので正直に言ってやった。 「べっ、別に深い意味は無いわ。何となくよ、何となく。」 何故かは知らんがハルヒは動揺してるようだった。まずい事を言ったつもりは無かったんだがな。 「あ、映画が始まった、ほらキョン、せっかく有希がくれたチケット何だからしっかり見る。」 と言って無理やり顔の向きを正面に向けさせられた。たくっ、首を違えたらどうするつもりだ。 映画の内容を簡単に説明すると、高校生から大学生に至るまでの男女が織りなす恋愛物ってやつだ。 俺は小説のほうを読んでたので、やはりと言うべきかあんまり映画を見る気になれなかった。だからハルヒの横顔でも見て暇を潰すことにした。 食い入るように見るの語源はこれだ、というくらいにハルヒは映画に見入っていた。なんせ俺がずっと見てても気づかないくらいだからな。 しかし恋愛感情を精神病の一種といっていたやつが恋愛ものを夢中で見るとはね。 まあそれだけハルヒも普通に馴染んできたってことなんだろうな。良いことだ。 映画を見終わった俺たちはシネマを後にしようとしていた。 しかしそこで、予想だにしなかった声によって俺達は呼び止められた。 「そこにいるのは、ハルにゃんとキョン君じゃないかっ!」 「「つ、鶴屋さんどうしてここに!?」」 また被っちまった! 「はっはっはっ。息がぴったりだねお二人さんっ!」 俺たちが恥ずかしくて悶えていると、 「それよりお姉さんは君たちがどうしてここにいるのかのほうが気になるなあ。もしかしてデートかいっ!?」 鶴屋さんはさらに爆弾発言で追い討ちしてきた。 ハルヒはまださっきのショックから立ち直れてなさそうなので俺が返答することにした。 「ええ…、まあ…そんなところです。」 よほど俺の返答が予想外だったらしく今度は鶴屋さんが驚いていた。 そうだろうな。言った本人も驚いている。 まあ、若い男女が一緒にウインドショッピングしたり、食事したり、映画見たりしたりしたんだから間違いではないと思うが…。 俺が自分の言ったことを後悔し始めていたそのとき、 「おやおや、これは。」 これまた予想外な声が乱入してきた。 見なくても誰だかわかるが一応振り返ってみると、頭からつま先までスタイリッシュなSOS団副団長、古泉一樹がそこにいた。 その後、何だかんだあって俺たち…、俺とハルヒと鶴屋さんと古泉は俺とハルヒが最初に行ったアクセサリーショップの近くの喫茶店に行くことになった。 ハルヒが、 「みくるちゃんがね、駅の近くにお茶が美味しい店があるって言ってたからそこに行きましょ。」 と言い出したからだ。 最初は二人ともせっかくのデートを邪魔するのは悪いといって断っていたが、 「あれはバカキョンが勝手に言っただけなんだから気にしなくていいの。」 とハルヒが言ったのを聞いて、何故か素直じゃない妹を見るような目をしながら喫茶店に行くことを承諾した。 目の前2m先くらいにハルヒと鶴屋さんの北高最強タッグが何やら楽しそうに話しながら歩いている。 そんでもって俺と古泉がそれを追いかける形になっている。せっかくなので隣の何故か両手に紙袋を持っているニヤケ面に聞いてみた。 「お前いつからいたんだ?お前のことだ、どうせ俺らに声をかける前からいたんだろ。」 「おや。ばれてましたか。」 やっぱりか。 「たしかに、『つ、鶴屋さんどうしてここに!?』というあたりからいました。」 最初っからじゃねえか。 俺は盛大に溜息をついてからついでとばかりにもう一つ質問した。 「お前と鶴屋さんはどうしてシネマにいたんだ?あとおまえのその荷物はどうしたんだ。」 「それは見てのとうりです。」 古泉は微笑みながら続けた、 「鶴屋さんと買い物に行ったあと映画をあそこで見ていたんですよ。これはそのとき鶴屋さんが買ったものです。」 まあそうだよな。見りゃわかる。 「鶴屋さんにこの前の御礼をしたいと言ったら、買い物につきって欲しいと言われましてね。映画はおまけです。」 「御礼って、この前の転校騒ぎのときのか。」 「ええ。彼女のおかげで今もこうしてここにいられる訳ですから、感謝してもしきれないですね。」 そう冒頭で述べた古泉の転校騒ぎは、実は鶴屋さんに協力してもらって何とかなったのである。 だから買い物の件は納得したが、古泉曰くおまけの映画の件は怪しい。ひょっとしてつけてたんじゃないだろうな。 そんな考えが顔に出てたのか、 「シネマで貴方達に会ったのは偶然です。安心してください。」 と俺を安心させるような笑顔で言った。ただ多少笑顔に苦笑が混じっていた気がするが。 その後、俺達は喫茶店で朝比奈さんが美味しいと言っていたお茶(朝比奈さんが美味しいといってるだけにかなり美味かった。 もっとも朝比奈さんが淹れるお茶に勝てるお茶なんてこの世に存在しないがな)を飲みながら他愛も無い会話を子一時間ほどしていたんだが、 ちょっと前にハルヒと鶴屋さんが席を立ったので、今席には男二人が隣り合って座っているだけである。 仕方が無いので古泉と二人で言葉のキャッチボールをしていると、鶴屋さんだけが帰ってきた、 「ハルにゃんはもうちょいかかるってっ。」 何故か楽しそうな顔をしながら。まあこのお方はいつも楽しそうにしていらっしゃるが何か違う。 「そうですか。」 とりあえず無難に返しておく。 「さてと。あたし達はそろそろ帰るねっ。お邪魔物はたいさーん!」 そう言うやいなや、鶴屋さんは古泉の手とレシートを取ってあっという間にいなくなってしまった。 手を取られて引っ張られていった古泉は苦笑していたが、まんざらでもないようだった。 何でわかるかって? 古泉が鶴屋さんの手を握り返していたからさ。 しかしハルヒのやつ遅いな。化粧直しでもしてるんだろうか。 「あれ。古泉君と鶴屋さんは?」 「用事が有るらしく先に帰っちまった。後、料金は鶴屋さん達が払って行った。」 「そう。それじゃああたし達も帰りましょうか。」 帰りの電車の中、ハルヒはよほど疲れたのか俺の肩に頭を乗せ寝てしまった。 周りの視線が少し痛いが20分ちょいの辛抱だ、まあいいか。 俺の方はハルヒの寝顔見ながら北高に入学してからの1年余りを振り返っていた。 「こいつが笑うようになってもう1年か…。」 あと二駅で到着だな。そろそろハルヒを起こすか。 「ハルヒ、起きろ。もうすぐ着くぞ。」 今は電車から降りて駅前である。 「これ…。」 と言いながらハルヒが俺に渡したのは、朝、俺がハルヒに買ってやったイルカのアクセサリーだ。 しかしこれは俺が買ったものではない。何故なら俺が買ってやったやつは昼飯のときにハルヒがさっさと自分の携帯につけちまったからな。おそらく、さっきトイレに行くフリをして買ってきたんだろう。道理で長かったわけだ。 「あたしは借りは返さないと気が済まないの!」 「だからって、同じ物もう一つ買わなくてもだな。それじゃあ意味が無いだろ。」 てか、高くて予算オーバーじゃなかったのか? 「いいの、こういうのは気持ちが大事なの。」 ハルヒは訳のわからないことを言い出した。だが何故か悪い気はしなかった。 「そうかい。それじゃあ遠慮なく貰うぞ。」 そう言ってイルカのアクセサリーを受け取ると、ハルヒは100万Wの笑みを浮かべ、 「よろしい。それじゃあ早速付けなさい。団長命令!」 と言った。もちろんいつものポーズで。 俺がイルカのアクセサリーを携帯に付けていると、 「キョン!あんた今日はあたしを家に送りなさい!」 と言う団長様のありがたい言葉をいただいた。やれやれ。 まあ、ここまで来たら最期まで着きやってやるか。 「わかったよ。」 「なあ、ハルヒ。」 「なによ」 「今日は楽しかったか?」 ハルヒは一瞬きょとんとしてから、 「まあまあね。あんたにしては良くやったんじゃない。」 笑顔でそう言った。 「そりゃ良かった。」 これは俺の本心だ。 今日の普通のデートをまあまあ楽しいと思ったなら、こいつも普通の楽しみ方が少しは身についてきたってことだからな。 それに、何故だか知らんが俺はこいつが楽しんでいると自分まで楽しくなるらしい。 その根本には俺にも良くわからない、心にもやが掛かったような気持ちがあるように思う。 しかし、その心にもやが掛かったような気持は、何故か悪いように感じない。 むしろ心地よくさえ思う。だから俺は………。 「ハルヒ。」 「今度は何。」 「また二人でどこかに行かないか?」 Fin 関連作品:買い物日和
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楽園の神武姫ブリュンヒルデ No.4716 レア度 7 レベル 1 最大Lv99 スキル ヴァルキリーストライク 進化素材 コスト 20 HP 1,334 3,101 ターン(最短) 20(15) タイプ 攻撃/神 攻撃力 1,087 2,283 Lスキル 生誕のルーン 主属性 木 回復力 24 50 進化元 なし 編集 副属性 光 EXP 500万 5,000,000 進化先 なし 覚醒 スキルブースト / スキルブースト / スキル封印耐性 / 2体攻撃 / 2体攻撃 / 2体攻撃 / 暗闇耐性 / お邪魔耐性 / 毒耐性