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午前11時34分27秒。火蓋は切って落とされた。 一厘が宙に浮かせていた、最大250万ボルトもの電圧を発生させられる小型スタンガン『DSKA―004』の群れを界刺へ向けて射出する。 同時に、真珠院が触れた木を念動力で地面から引っこ抜いた。宙に浮遊したそれから、慌てて蝉が飛び去って行く。 『物質操作』による精密な軌道を描き、『DSKA―004』が界刺に突き刺さ・・・らない。 それは、『光学装飾』によって作り出された光のコピー。すり抜けていくスタンガンを確認した少女2人は、 不可視状態の界刺が何処に居るのかに神経を尖らせる。主に使うは聴覚。 下は芝生が敷かれており、近くに来ればその足音で多少なりとも位置を捕捉できる。 そう思った少女達を邪魔するのは、周囲から絶え間無く聞こえて来る蝉の鳴き声。その耳につく音が、少女の聴覚を妨げる。 シャン!! 聞こえた。芝生を踏む音が確かに。それにいち早く気付いた一厘が、音の聞こえた方に思わず顔を、視線を向けた・・・その時!! ピカッ!! 閃光が煌く。だが、思いの外眩しくない。やはり、口ではああ言っておきながら少しは加減をしてくれるのか。そんな“甘い”考えが一厘の脳裏を掠める。 付近に『DSKA―004』を滞空させて、閃光を腕で遮る一厘の視線の先にある閃光が消える。 それに伴い光を遮っていた腕を少し下げ、聴覚に集中しながら閃光のあった場所を見ようとした一厘の顔面に・・・ ドスッ!! 界刺が投射した警棒が突き刺さる。鼻っ柱にクリーンヒットした警棒、そして顔面へのダメージに気を取られた一厘の腹目掛けて・・・ ボコッ!! 不可視状態を解いた界刺の拳が叩き込まれる。吹っ飛ぶ一厘。急に姿を現した界刺に驚きながら、真珠院は宙に浮かせた木による迎撃行動を行おうとする。 一厘程では無いにしろ、高い精度を誇る自身の念動力で界刺を吹っ飛ばそうと操作し・・・ ビュン!! 突如として、瞳に映るのが界刺から建物―後方にある常盤台学生寮―に移り変わる。その突然の事態に硬直してしまった真珠院の顎に・・・ ガッ!! 警棒が振り上げられる。木では無く自分自身が宙に浮き、呆気無く地面に仰向けになって倒れる真珠院。 所要時間18秒。まずは、界刺の圧勝。そして、一厘・真珠院の完敗である。 「ガハッ!!ゴホッ!!」 「ッッッ!!」 一厘は、腹部へのダメージに何度も咳き込む。鼻からは血も流していた。 真珠院も、顎へのダメージと地面に頭から倒れてしまったダメージに苦しむ。何処かを切ったのか、口から血が流していた。 「ま、こんなモンか。・・・戦闘開始から20秒も経ってないんじゃねぇの?“講習”でよかったな、一厘!珊瑚! これが本当の殺し合いってヤツなら、お前等はもう死んでるぜ?」 界刺が突き付ける現実。それは、自分達が弱いという厳然たる事実。 「もしかしたら、こう思ってるのかな?『半径30m内なら接触する必要無く』15kg以下の物体なら支配下における自分に、何で一切の躊躇も無く警棒を投射できるのか? 『接触さえすれば』重量級の物体を支配下における自分に、何で一切の躊躇も無く警棒を叩き込めるのか?どうかな?」 「「!!?」」 内心を読まれる。物の見事に。この男は、それすらも戦術に組み込んでいるのか。 「それなら、話は簡単だ。俺達能力者は、全て演算によって能力を行使している。つまり、何らかの手段で演算を阻害すれば能力は行使できない。 例えば、『然程眩しくない閃光に油断させ、閃光が消えた瞬間に対象者へ無意識に思考空白を発生させる』とか、 『目の焦点を狂わし対象者に思考硬直を起こさせ、攻撃する時に接触する物体に念動力を行使させないようにする』とか・・・ね」 警棒を宙に投げ、取り、投げ、取りを繰り返しながら語る様は、今の戦闘がお遊び程度であることを意味するのか。 「どうする、一厘?珊瑚?もうやめとくか?お嬢様の矜持(プライド)を損ねるのは、俺の本意じゃ無いしな。んふっ!」 心にも無い声が、表情が、態度が自分達の心を不愉快にさせる。その理由が、他の誰でも無い自分自身にあるからこそ余計に。 「まだ・・・まだ行けます!!」 「この程度のこと・・・試練と呼ぶには軽すぎますわ!!」 少女達は立ち上がる。自分達がこうなるのは、心の何処かでわかっていたこと。みっともない姿を晒す羽目になるのも、承知の上。 それでも尚、掴みたい物があるが故に、一厘鈴音と真珠院珊瑚は挑む。 「あっそ。そんじゃ来い。次は、もうちっとマシな姿を見せてくれよ」 そう言って、再び戦闘が始まる。学生寮の庭を賑わす狂騒は、まだ始まったばかりである。 「苧環様・・・!!」 「・・・見ていなさい、月ノ宮。一厘や真珠院が、あの男に挑む姿を」 「界刺・・・!!」 戦闘場所からは少し離れて見学している常盤台生達。彼女達の目に飛び込んでくるのは、自分達と同じ生徒が何度も倒れる姿。それでも立ち上がり、男へ挑んで行く様。 必死。この空間には場違いな空気が、夏の日差しによって湧き上がる熱気と共に色濃くなっていく。 「一厘先輩と珊瑚が・・・圧倒されてる?」 「晴ちゃん・・・」 「なんば圧倒されちょんの、晴天!?今は、あん男の能力ば見極めるチャンスったい!!」 「た、確かに銅街さんの言う通りです。わ、私もしっかりこの目に焼き付けますです!」 今現在はというと、真珠院が念動力で操作していた木を4つに折って挑み、隙あらば界刺に接触しようと果敢に攻めていた。 一厘は、真珠院をサポートするために『DSKA―004』の他にも操れる物体を動員して界刺の行動を阻害しようとする。 「これで、あの殿方も!!」 「いえ、何だか作為的な雰囲気を感じる・・・。これは・・・」 「罠・・・か!?」 「すごい・・・」 だが、それはまたしても光のコピー。少女達の攻撃は、虚しく空を切る。土煙が、盛大に舞い上がる。 「クッ!!」 「界刺さんは何処・・・!?」 少女達は不可視状態に身を置く界刺を探すために聴覚に集中するが、それは自分達の攻撃が起こした音のせいで無意味も同然だった。 一厘は、界刺と1人で相対する“恐怖”に無意識の内に急かされ、真珠院に駆け寄って行く。 「真珠院!ここじゃ、周囲の音が聞き取り難いわ。早くここから・・・」 「そうは問屋が卸さない」 「グハッ!?」 真珠院へ駆け寄る途中に、界刺は待ち構えていた。またしても姿を現した界刺の拳が鳩尾に決まり、一厘は束の間呼吸困難に陥る。 「ガハッ・・・!!」 「一厘先輩!?」 「そして・・・」 「なっ!?」 ダメージによって身動きが取れない一厘を担ぎ上げ、真珠院へ突進する界刺。真珠院は、一厘が居るために攻撃することができない。 「仲良くご一緒に!!」 「クッ!!」 突進を喰らう直前に、真珠院は念動力を己に掛けて宙へ逃れる。自分を浮遊させるそれは、高速的な移動こそできないものの、ある程度は自在に操作できた。 「へぇ。さすがは『念動使い』。自分を浮遊させたか。自力で空を飛べるってのは、気持ちいいんだろうな」 「さぁ、これであなた様の打撃系の攻撃は私には届きません!これで・・・」 「んじゃこうする」 「ガアアァァッ!!!」 「い、一厘先輩!?」 真珠院の視線の先に、界刺の右腕で首を極められ左腕と両足まで使ったホールド技により身動きが取れなくなった一厘の姿があった。 「い、一厘先輩!『物質操作』でスタンガンを・・・!!」 「そんな暇を俺が与えると思う?もし向けて来たら、速攻で一厘を“落とすよ”?真刺の首絞めはこんなモンじゃ無ぇけど、俺もアイツからそれなりに習ったしな」 「ぐううぅぅ!!!」 「なので・・・さっさと降りて来い。お前は、一厘が俺から学ぶ機会を奪うつもりなのか?自分のために先輩を犠牲にする。大した後輩だねぇ」 「・・・!!」 真珠院は、界刺の卑劣な行為に憤怒する。あれは、人質を使った脅しだ。あんな人間の言うことに等、この自分が従うわけには・・・ 「・・・成程。お前の考えはよ~くわかった。んじゃ、後輩の犠牲になってね、一厘?それっ!」 「カハッ・・・ガアァ・・・アァ・・・・・・」 「ま、待って!!!・・・わかりました」 いよいよ、一厘は意識が飛びそうになる。その姿を見て・・・真珠院は決断する。それを示すかのように、界刺の前に降りて来た。 「これで・・・よろしいですか?」 「し・・・真珠、院・・・!!」 「あぁ、いいよ。いい後輩を持って、一厘も幸せモンだ。なのによぅ・・・」 真珠院の行動に、顔を歪ませる一厘。その行動に界刺は・・・気を振り向けない。何故なら、自分に迫る危機の存在に気付いていたから。 バオッ!! スッ!! 土煙から現れたのは、長手袋に包まれた手。その手が自分へ及ぶ前に、界刺は一厘へのホールドを解き、その場から離れる。 「・・・後輩の健気な行動を無駄にするのか?」 「あらあら、あんなものは健気とは言いませんわよ?卑劣極まる貴方の脅迫によって、止む無く取った行動ですわ」 「全く。私が電撃を飛ばしていた方が、あの男が怯む可能性は高かったのに。自分がやるって聞かないんだから」 「津久井浜先輩・・・!!苧環先輩・・・!!」 真珠院と一厘の前に立つは、サングラスを掛けた津久井浜憐憫と苧環華憐。2人からは、界刺への敵意に満ち溢れていた。 「あらあら、こんなことなら朝食の際に『発熱爆弾』による制裁を断行するべきでしたわね」 「界刺得世。あなたが言う『いわれなき暴力を振るわない強者』とは、まさかこんな卑怯な真似を平気で行う人間のことを指しているわけ? だとしたら・・・私はあなたのことを思い違いしていたようね。見損なったわ!!」 津久井浜からは熱気が浮かび上がり、苧環からは電流が迸る。その様を見て、界刺はある提案をする。 「あっ!そういえば、1つ言うのを忘れてた。お前等が参戦してもいいって言ったけど、少し条件を付けさせて貰うから」 「はぁ?条件!?」 「そう。苧環!お前は、電磁波による物体感知ってできる?」 「そ、そりゃあできるけ・・・!!まさか・・・!!」 「そう。そのまさか。お前、その能力は使用禁止な」 電磁波による物体感知。これを禁止させられると、苧環は不可視状態の界刺を見付けることが困難になる。 「あなた・・・!!そんな都合のいいことをこの私が受け入れるとでも!?」 「苧環!お前は、こんな卑劣な真似をした俺を・・・まだ信じられるか?」 「えっ・・・?」 界刺が苧環に向ける視線には、一切の曇りも嘲りも無かった。その瞳が、その視線が苧環の瞳を射抜く。 「何で俺がお前にそういう条件を付けるのか・・・。その意味は、今の時点じゃわからないだろうけど。俺も言うつもりは無いしね。 苧環。お前が知る俺っていう人間は・・・自分に都合のいいだけのことをするような人間なのか?」 「・・・!!」 『意味』。界刺が自分の能力の一部を制限する『意味』。 この言葉から連想するのは・・・界刺がただ単に、自分達へ力の差を見せ付けるために動いているわけでは無いということ。 人質を使った脅しという卑劣な真似をしてでも一厘や真珠院を追い込んでいるのには、界刺なりの理由があるということ。 これは・・・『いわれある暴力』。少なくとも、苧環はそう受け取った。故に、苧環は数秒後に決断を下す。 「・・・ふぅ。仕方無いわね。わかったわよ。あなたの言う通り、電磁波による物体感知はしないでいてあげる。但し、それ以外の能力はふんだんに使わせて貰うわよ?」 「どうぞ。お好きなように」 苧環の了承を聞いた界刺は、その場から離れる。仕切り直しというわけだ。 「あらあら、良かったの、苧環さん?あんな卑劣漢の言うことなんか聞き入れてしまって」 「・・・あの男なりの考えがあるみたいだし、卑劣漢かどうかはそれを見極めてからでも遅く無いと思っただけよ」 津久井浜と苧環が会話する中、真珠院は座り込んでいるボロボロな一厘に駆け寄る。 「一厘先輩!大丈夫ですか?」 「な、何とか・・・。やっぱ、界刺さんは容赦無いね。・・・私のことを、女として見ていないのかも(ボソッ)」 「あら、何か仰られましたか?」 「え?ううん、何でも無い。それにしても、あの不可視状態って本当に厄介よね。私達の攻撃が、悉く空振りに終わっちゃう」 「えぇ。苧環先輩の感知能力も禁止されましたし・・・。どうやって得世様の位置を見破るかが最重要課題ですね」 一厘と真珠院は、束の間の休憩時間に頭を働かせる。自分達が大々的に攻撃すれば、その音で不可視状態に居る界刺の足音を消してしまう。これでは、話にならない。 「一厘先輩の能力で、得世様を操作することは・・・ハッ!!」 「・・・私の『物質操作』は15kg以下の物体しか操作できないからさ、人間で操作できるのは赤ちゃんくらいなんだよね」 「そ、そうでしたね・・・。余計な質問をして申し訳ありませんでした」 真珠院は、自分の口から出た“できもしない願望”に歯噛みする。自分は、一厘の能力について事前に説明を受けていた。 なのに、聞いておきながらも出てしまった自分の言葉に、感情に愕然とする。これでは、あの男の言った通りではないか。 「そ、そんなこと無いって!こういう自己分析は大事なん・・・・・・」 「・・・一厘先輩?如何されましたか?」 真珠院は、自分へ向けた言葉を中断させた一厘を疑問に思う。何故なら、一厘の表情が驚愕に満ちていたからだ。 『リンちゃん。君は涙簾ちゃんと組んだこともあったでしょ?あの時、君はどう思ったの?』 「(私は・・・私は、とんでもないことに今まで気付いていなかったんじゃあ!!?)」 一厘は、高速で思考を纏め上げて行く。自分の能力、自分の経験、自分への言葉etc。それ等全てを纏めた後に・・・“試す”。 「ッッ!!!」 それは、確かな手応え。それは、今まで自分が思いもしなかった事実、否、気付いていたのに無意識の内に無視していた事実。しかし、それは紛れも無い現実である。 「一厘先輩・・・?」 「真珠院・・・。不可視状態に居る界刺さんを見破る方法を思い付いたよ」 「ほ、本当ですか!!?」 「うん。これなら・・・きっとイケる。ううん、絶対にイケる!!それに・・・真珠院の能力を活かす方法も思い付いた!!」 「ッッ!!そ、それは・・・?」 「え~とね・・・」 一厘と真珠院は、戦闘再開前まで作戦を練り続けた。何時の間にか、一厘の瞳に輝きが戻っている。彼女は、心の中で固く決意する。 散々自分を痛め付けてくれた借りを、ここで返す。自分を駄目出ししまくった男に、目に物を見せ付けてやる。 そんな一厘の自分へ向けて来る視線に気付いた界刺は・・・口の中だけで笑った。 「そんじゃ、仕切り直しと行こうか?1対4か。中々にしんどくなって来たかな?」 「あらあら、さっきまでの威勢のいい態度は何処へ行ってしまわれたのですか?そして・・・そんなことを言った所で貴方への制裁は止まることはありませんことよ?」 「こんな機会は滅多に無いし。今日は、存分に暴れさせて貰うわよ!!」 「真珠院・・・。段取り通りに。私達は後方でタイミングを探るよ?」 「わかりました」 そう各々が言葉を交わした直後に、戦闘が再開される。初手は、苧環。 「ハッ!!」 苧環の放った高圧電流が界刺を貫くが、これもまた光のコピー。そして、それは苧環の予想通り。 「津久井浜!!」 「あらあら、そんな大声を出して・・・はしたないですわよ?」 そう無駄口を叩きながらも、津久井浜は地面に手を置く。己が能力『発熱爆弾』を発動させるために。 ドゴオオーン!! 急激な発熱による体積の膨張を利用した爆発。角度や温度上昇等を調節して引き起こされた爆発は、方向性を持って広範囲に渡って地面を吹き飛ばす。 しかし、完全には制御できないらしく自分達にも巻き上げられた土が降って来る。 「ちょ、ちょっと!!あなた、何味方も巻き込んでいるのよ!?」 「あらあら、爆発自体には巻き込んでいないのですから、このくらいは大目に見て下さいな。あの卑劣漢への制裁には、このくらいが丁度いいのですよ?」 苧環の文句にも、平然と受け答えする津久井浜。彼女も彼女なりに、界刺に対して警戒している表れか。 「ひっでぇな。後でバカ形製に怒られちゃうじゃないか」 「「!!」」 とそこへ、土を体の所々に被った界刺が姿を現して近付いて来た。遠距離では『発熱爆弾』にいいようにしてやられると判断したからか、界刺は接近戦を仕掛ける。 「接近戦で、私をどうとでもできるなんて思わないでよ!!」 「うおっ!?」 危うく界刺が交わしたそれは、苧環が作り出した砂鉄の剣。生身に喰らえば唯ではすまない切れ味に、鳥肌が立つ界刺。 「あらあら、余所見はいけませんわ?」 「ぬおっ!?」 砂鉄剣に気を取られた界刺に後方から、手を伸ばして来る津久井浜。彼女に触れられれば一巻の終わり。 それがわかっている界刺は、すぐさま横っ飛びによって津久井浜の魔手をかわす。 「そして・・・気を抜いても駄目ですわ」 「!!」 界刺の目に映るのは、津久井浜が地面に手を置いている姿。数秒後にあの爆発が自分を襲う。そう判断したが故に、『光学装飾』による演算の阻害を敢行する。 グルグルグル 「なっ!?」 廻る周る世界が回る。それは、まるで万華鏡。様々な色や形を成す光が像が、反射に次ぐ反射を、屈折に次ぐ屈折を重ねて束ねてグルグル回る。 津久井浜のサングラス越しに―加えて顔とサングラスの隙間から―瞳へ入る可視光線を操作し、界刺は津久井浜の平衡感覚を狂わせる。 「!!・・・ウッ!!」 「津久井浜!?」 平衡感覚を狂わされ急激に気分が悪化した津久井浜は、口に手をやりその場に蹲る。その姿に驚く苧環を狙い、界刺が疾走する。 「このっ!!」 苧環は、界刺に向けて即座に電撃を飛ばそうとするが、その直線上には蹲る津久井浜が居るため躊躇する。もし界刺にかわされれば・・・ 「『津久井浜に当たる』ってか?」 「!!」 自分の躊躇を看破された。苧環は焦りのままに砂鉄剣を振るうが、 スカッ!! 「なっ!?残像!?」 砂鉄剣が当ったと思った―そして、空を切った―それは、光の残像。 界刺は、苧環へ突っ込むと見せ掛けて、疾走の途中から光のコピーを走らせていた。自分を不可視状態にして。 残像と入れ替わったタイミングは、苧環にもわからなかった。それ程までに見事な交代劇。これは、穏健派救済委員の1人である啄鴉から習った光の幻惑術(体重移動編)。 コピーを出すタイミングや場所、そこに界刺流のオリジナルを加えた残像を“素通り”して、不可視状態を解いた界刺が今度こそ苧環に突っ込んで行く。 「甘ぇ!!」 「ガハッ!!」 砂鉄剣を避けた界刺が手に持つ、絶縁性付き警棒による突きが苧環の胸の中心へ放たれた。今の界刺の基準は、昨夜戦ったあの殺人鬼の速度である。 それに届かない者に対処することは、今の彼にとっては容易であった。砂鉄剣が、唯の砂鉄に戻る。 吹っ飛び地面に倒れ込みながらも、苧環は電撃を放とうとする。しかし・・・ 「きっとだけど、今の状態じゃあそれって当らないぜ?」 「はっ!?」 それは、界刺が看破したもう1つの事実。 「お前等『電撃使い』は、日常的に電撃を放つ訓練をしているわけだろ?ってことはだ・・・電撃を放つ時にどうしても出るんだよなぁ。体に染み付いた癖ってのが」 「癖・・・!?」 「そう。例えば眉間に皺を寄せたりとか、思わず拳を握り込むとか、そんな癖。つまり、体のどこかに力が入るんだよ。そして、それによる僅かな体温変化を俺は見逃さない」 「・・・!!」 サーモグラフィを行使して、対象者の体温変化を見極めることで行動予測を立てる。界刺自身、この方法は今まで余り使って来なかった。理由は疲れるから。 それを日常的に使えるよう訓練するようになったのは、救済委員の1人である雅艶総迩に完敗したあの日の出来事が切欠である。 「逆に、俺はそんな前兆を感じさせる真似は一切見せねぇ。これでも、『光学装飾』で少しは操作してるんだぜ? お前等に俺の挙動を察知されないように。最低限レベルだけど」 「(!!・・・ということは、さっきの焦ったような顔は・・・)」 自分の砂鉄剣を危うくかわした界刺の焦った顔。あれは、『光学装飾』で作っていたとでもいうのか? 「姿を消していないからって油断するなよ?もし、お前が電磁波による物体感知をしていたとしても、俺は次のペテンを仕掛けるぜ? それに、幾ら雷の速度っつっても放つのは人間だ。その人間が放つタイミングさえわかれば、避けることもできなくは無いんじゃないか? ちなみに、俺が光を放つタイミングはわかんねぇだろうけどな。理由はさっき述べた通り。 その上、サングラスをしていても俺の『光学装飾』は防ぎ切れない。ってことで・・・苧環。お前は俺に勝ち目無ぇよ・・・!!」 「(!!ま、まさか・・・本当に・・・?私が初撃で電撃を放った際に、界刺は私の癖や電撃を放つタイミングを看破したって言うの!?)」 界刺のカミングアウトに、苧環は息を飲む。何時の間にか、暑さによる汗では無い何かが背中を流れる。 「(さ~て、苧環さん。さっさと降参してくれ!!確かに癖っつーか体温変化はわかるけど、俺だって実際に電撃をよけたことなんて無ぇし!! 頼むから早く引き下がってくれ!!)」 対する界刺も冷や汗ダラダラ状態である。『光学装飾』を使うことで、そんな素振りは一切見せていないが。 つまり、界刺お得意のペテン―リンリンが言う所の『詐欺話術』―である。 「それにさ、早く津久井浜を看病しなくていいの?あの娘、今もグルグル状態だし」 「くっ・・・。・・・わかったわ。この勝負、私と津久井浜の負けよ」 「そうかい。んふっ、それが賢明だ。(ふぅ~、よかった!!助かった!!!)」 苧環の言葉に、安堵する界刺。俯く苧環が、津久井浜の下へ行くために界刺の脇を横切ろうとする。それが・・・この男にできた唯一の隙。 ガッ!! 「ぐっ!?」 「でも、あの娘達の戦いはまだ終わっていないわよ!!」 苧環からの手助け。界刺が持っていた2つの警棒の内、左手にあった警棒を宙へ飛ばすため、苧環は界刺の左手に右アッパーを繰り出す。 「苧環!!」 「隙を見せたあなたが悪い!それに、電撃や砂鉄みたいに目に見えやすい攻撃に気を取られていたんじゃないの!?」 苧環の一撃を喰らい、警棒が宙に浮く。それを、少女は見逃さない。 「苧環!!ありがとう!!」 一厘鈴音。15kg以下の物体なら接触せずに操作できる念動力系能力者。その彼女が、界刺の持っていた警棒に己の念動力を掛ける。 「くっ!!」 「一厘先輩!!」 「苧環の助けを無駄にしないわよ、真珠院!!さぁ、行くわよ!!」 「はい!!」 界刺に奪い返されないように、即座に自分達の方へ警棒を引き寄せる一厘。真珠院と一緒に考えた作戦が・・・いよいよ敢行される!! continue!!
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とある英雄たちの物語 とある英雄たちの物語 アーティスト イルミネーションスターズ 発売日 2023年5月10日 レーベル ランティス CDデイリー最高順位 2位(2023年5月10日) 週間最高順位 7位(2023年5月16日) 月間最高順位 23位(2023年5月) 初動総合売上 7052 累計総合売上 8928 収録内容 曲名 タイアップ 視聴 1 とある英雄たちの物語 THE IDOLM@STER シャイニーカラーズ キャラソン 2 Unsung Heroes 3 有彩色ユリイカ CD/総合ランキング 週 月日 CDシングル 総合シングル 順位 週/月間枚数 累計枚数 順位 週/月間枚数 累計枚数 1 5/9 432 432 1 5/16 4 5427 5427 7 7052 7483 2 5/23 593 6020 593 8076 3 5/30 292 6312 292 8368 4 6/6 169 6481 169 8537 2023年5月 12 6481 6481 23 8537 8537 5 6/13 101 6582 101 8638 6 6/20 144 6726 144 8782 7 6/27 146 6872 146 8928 配信ランキング とある英雄たちの物語 週 月日 デジタルシングル 順位 週/月間DL数 累計DL数 1 5/9 1078 1078 2 5/16 1209 2287 Unsung Heroes 週 月日 デジタルシングル 総合シングル 順位 週/月間DL数 累計DL数 順位 週/月間枚数 累計枚数 1 5/16 20 1422 1422 30 569 569 有彩色ユリイカ 月日 デジタルシングル 総合シングル 順位 週/月間DL数 累計DL数 順位 週/月間枚数 累計枚数 1 5/16 19 1429 1429 29 572 572 関連CD 浮動性イノセンス
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こののページを編集するには、 左上の[編集]タブの[このページを編集]をクリック 要望、修正、質問をしっかり考えて分けてもらえると幸いです。 ブリュンヒルデと、アスプリカは要らない子? 追加するつもりです Gvはまだあってないんですかね? 実装しました 宝石箱って誰が落とすんですか? MVPが落とします 宝石箱から神器材料でなくなりましたか? 設定は特に変えておりません
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◆このページのタグ◆ アイテム エツァリ グループ グロ シリアス スクール バトル フレンダ レベル5 垣根帝督 御坂美琴 暗部SS 暗部落ち 海原光貴 白井黒子 砂皿緻密 長編SS 鬱展開 麦野沈利 元スレ御坂「――行くわよ、幻想殺し」 御坂「名前を呼んで 御坂「幸福も不幸も、いらない」 御坂「もう、いいや」 ◆CAUTION◆この物語には残酷な描写、グロテスクな描写、性的な描写が含まれています。『とある魔術の禁書目録』15巻まで、ならびに19巻、SS1・2巻、『とある科学の超電磁砲』5巻までを読んだ上での閲覧をお勧めします。その上で、独自解釈、独自設定、原作と明確な矛盾がある事をご了承ください。なお、原作22巻以降の内容に関しては考慮されません。また閲覧する際は、アスキーアート系の表記を含むため、専用ブラウザ「Jane Style」の使用を強くお勧めします。 序幕 『さがしもの』 第一幕 『ゆめ』 第二幕 『せかい』間狂言 『とある少女の最終楽章(オラトリオ)』 幕間 『ともだち』 幕前 『えにし』 終幕 『みさかみこと』and more... 序幕 『さがしもの』 1 2 3 4 5 6 7 8 第一幕 『ゆめ』 1 2 3 4 5 6 7 8 第二幕 『せかい』 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 間狂言 『とある少女の最終楽章(オラトリオ)』 幕間 『ともだち』 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 幕前 『えにし』 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 終幕 『みさかみこと』 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 エンドロール つづくせかい and more...
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出典:ワールドエンドクルセイダーズ、biki、講談社、2017年11月17日発売 【作品名】ワールドエンドクルセイダーズ 【ジャンル】デスゲーム漫画 【名前】ラララ・リラ 【属性】神の五本指の「薬指」 【大きさ】成人女性並み 【攻撃力】念力……重力を自在に操る能力を有する。腕を振ったら発動。 射程は最低でも1.5km以上。そこまで瞬時に届く 威力・範囲は自身を中心に最低1.5kmを地盤ごとえぐり飛ばして更地にするほど 【防御力】自身の念力よりも威力の高いイモリの部下の念力による瓦礫押し潰しで叩き潰されるも無傷 それ以外は成人女性並み 【素早さ】5m位の距離から発射されたアサルトライフルの一斉掃射に発射後反応して念力で止められるため、それ相応の反応速度と戦闘速度 移動速度および飛行速度は達人並みか。 【特殊能力】空を飛べる。高度は最低でも数百m以上 【長所】最終的に結婚してメインヒロインになった 【短所】この漫画が1年未満で打ち切りになった 【戦法】念力でぶっとばす 【備考】人類を守ろうとする主人公と戦う、人類を絶滅させようとする神の五本指の一人。 なお人類絶滅を目論んではいるがラララ・リラは人間である 参戦:vol.105 261~262 修正:vol.105 280 画像:vol.105 261 105スレ目 323格無しさん2020/05/14(木) 20 10 46.19ID crbThMnr 324 329 ラララ・リラ考察 ザ・最強スレ的テンプレ。実に分かりやすい強さ描写なので、ガンダム軍団あたりから見る ~〇伝説巨神 念力勝ち 〇怒号のレイチェル 相手は更に速いが攻防でゴリ押しできる ×ブリュンヒルデ 滅雷の槍負け ×ヘンゼル 魔法連発負け ×ミカガミ 結界には浮いてるので当たらないが、地蟲毒召喚負け ×ブルックリン BH負け ブリュンヒルデ>ラララ・リラ>怒号のレイチェル 女性が多いなこのへん 324格無しさん2020/05/14(木) 21 42 35.84ID gbnXVbqR 323 熱耐性無いからヤッサバの火炎放射で負けそうだけど他のガンダム軍団には攻防で連勝できるか、考察乙 329格無しさん2020/05/15(金) 02 53 46.82ID SjAE4POc 330 323 ラララ・リラって、範囲に多少劣る以外はローズ・バルバロッサの完全上位互換では というかローズが高すぎるのかも、あいつ攻撃範囲人並みしかないのにあの位置だし 3303232020/05/16(土) 11 28 42.36ID 0TYdFPNR 329 すまんソイツ考察したの私なんだ 共通設定欄に「少し力を解放しただけで~」とあったので、「じゃあ少し力を解放しただけで周囲5㎞(ツバル)は吹き飛ぶんだな」と範囲攻撃持ちと解釈した 原作読んだこと無いけど
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ブリュンヒルデのあれと並べたい。使うかはともかく。 - 名無しさん (2018-07-19 14 11 50) >ぼやけていたものが鮮明になる。 お前ひそかに目ぇ悪いんじゃねえのとか思ってしまう。 - 名無しさん (2018-08-02 21 07 46) ※たべられません - 名無しさん (2018-08-02 21 12 49) チェンジ・氷の叡智 - 名無しさん (2018-12-20 09 40 54)
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「う・・・う~ん」 カーテンの隙間から、日光が垣間見える。そんな中、界刺は目を覚ました。 「ス~。ス~」 隣には、一糸纏わぬ姿で眠っている水楯が居た。時計を見ると、午前9時を回った所だった。どうやら、2人共にぐっすり寝入っていたようだ。 「ふあ~。・・・喉が渇いたな。何か飲むか。よいしょ・・・・・・」 喉の渇きを覚えたので、水を飲むために布団から出ようとした界刺。だが・・・ 「(・・・涙簾ちゃんが抱き付いているせいで、布団から出られない・・・!!)」 界刺の体を固くホールドしている水楯のせいで、ベッドから降りることができない。 「・・・困ったな。さすがに、起こすわけにも行かないし。こんなに気持ち良さそうに眠ってるしな。 こうやって近くで見てみると、涙簾ちゃんって美人さんなんだよな」 そう言って、水楯の長い髪を撫でる。かつては、自分が水楯の髪をセットしてあげたこともある。そのことで、形製と喧嘩になったこともあったが。 「うっ。・・・あっ」 それが切欠になったのか、水楯が目を覚ます。 「・・・起こしちゃったか?ごめん」 「い、いえ・・・。おはようございます」 「うん。おはよう」 互いに朝の挨拶を交わす。水楯は、自分の髪を界刺が撫でていたことに気付き、上目遣いでこう頼む。 「も、もう少し私の髪を撫でてくれませんか?」 「・・・・・・チッ(ボソッ)」 「・・・・・・(ギュ~!!)」 「ぐふっ!?な、何でホールドしている腕に力を入れてんの!?というか、涙簾ちゃんって力強いね!?」 「鍛えていますから。さぁ、界刺さん。早く早く!」 「こ、この娘は・・・!!素っ裸状態の胸を押し付けてる羞恥は無いのか!?」 「もちろん、ありますよ」 「あんのかよ!?」 等と言うやり取りの末に根負けした界刺が、渋々水楯の髪を撫でる。 「・・・ポッ!!」 「何が『ポッ!!』だよ・・・。あぁ、喉が渇いた。少しだけだからな?」 「はい」 水楯が、気持ち良さそうに界刺の手を受け入れている。その笑みに嘆息する界刺。 コンコン! 「「!!!」」 そんな時に聞こえて来たのは、部屋の扉をノックする音。聞き耳を立ててみると、何やら騒がしい声が幾つも聞こえて来た。 「ま、まさかバカ界刺に限ってそんなことは有り得ないとは思うけど・・・」 「わ、わからないわよ!!何せ、涙簾って人は界刺さんにとって“特別”なんでしょ!?」 「確かに、苧環先輩の言う懸念は考えられますね・・・!失念していました!!・・・一厘先輩、そこを退いて下さい。私の『念動使い』で、すぐにでもドアを開けます!!」 「ちょ、ちょっと待って!さ、さすがにそれは駄目なんじゃあ・・・!!」 「し、真珠院さんの目が血走っている・・・!!サ、サニー先輩・・・!!」 「な、何だかドキドキしますね!!胸の鼓動が、バックバク言ってます!!遠藤さんも感じませんか!?」 「サ、サニー様・・・え、遠藤も同じ気持ちです!!それに、男子校の寮に足を踏み入れるのは初めてなので、余計に心臓がバックバクです!!」 「お、おい!!お前達は、ここへ何しにきたんだ!?一昨日の件で界刺の体が気になると朝練の最中に騒ぐから、こうして私の付き添いの下ここへ案内したんだぞ!?」 「うおっ!?な、何でこんな所に常盤台のお嬢様連中が来てんだ!?」 「あれっ!?あの娘達・・・以前成瀬台に来た娘達じゃないでやんすか?」 「梯君の言う通りだね。俺も、あの娘達は覚えているよ」 「な、何故こんな所に常盤台の・・・女子校の人間が居るんだ!?もう、女子校の生徒はこりごりだ!!ここ最近、俺がどれだけ要に苛められていると・・・ブツブツ」 「おおぉ!!誰かと思えば、何時ぞやの常盤台の娘達ではないか!!むぅ?確かあの部屋は・・・『シンボル』の界刺の部屋だったな!!」 「界刺さん!?リ、リーダー・・・。あっ、荒我だ」 「・・・そういえば、あの『シンボル』のリーダーはここの生徒・・・そうよね、稜?」 「何で俺に聞くんだ?加賀美先輩の方が、よく知っている筈だよな?」 「そらひめ先輩―い!!あのかいじって人が、あの部屋に居るみたいですよー!!」 「へぇ・・・。うん?その界刺の部屋の前に常盤台の女共が集ってるのは、何でなんだ?」 「リンリン!?あいつ、ぶっちゃけ何してんだ!?界刺って・・・あの“変人”のことか!?」 「リンリンの奴・・・。メールを見た直後に慌てて同行すると言って来たのは、そういうわけか」 「固地先輩・・・」 「ほぅ。あの部屋に、『シンボル』の“変人”が住んでいるのか。 フッ、ならば成瀬台に足を踏み入れている者として、挨拶くらいはしておいた方がよさそうだ。行くぞ、真面」 聞き慣れた声。昨日及び一昨日に聞いた声。聞き慣れない声も聞こえて来る。その主達に見当を付けたり付けなかったりの界刺と水楯は、共に溜息を吐く。 「あいつ等・・・。真刺を使って、わざわざここまで来たのか?昨日、あんだけ綺麗サッパリ的な別れ方をしたっていうのに!女の執念って恐ぇ・・・。 というか、俺の部屋の近くに何で20人以上もの人間が集まってんの!?」 「・・・どうします?このままだと、すぐに強行突破されそうな雰囲気ですよ?」 「・・・・・・仕方無ぇ。ここは・・・」 『光学装飾』で確認した人数は22人。しかも、一部を除いてどいつもこいつも見たことがある奴ばかり。中には見過ごせない人間も・・・。 こんだけの人数が集れば、否が応にも大騒動になる。しかも、自分達の格好が限りなくヤバイのだ。主に、素っ裸の水楯が。 もう、扉が無理矢理開けられるのは時間の問題だった(主に、血走った目をした真珠院のせいで)。故に、界刺は“2つ”のことを決断する。 「そのドアを開けるんじゃ無ぇぞ!!今、俺と涙簾ちゃんのお着替えタイムだ!!!もし入ってきたら、男と女の裸を覗き見した罪で警備員に訴えるからな!!!」 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「!!!???」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」 「界刺さん・・・」 「ほらっ、今の内に着替えるんだ!それと・・・・・・」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 水楯の不服そうな顔を無視して、着替えを促す界刺。それは、着替えが終わるまでの時間稼ぎ。そして・・・。 だが、外に居る人間にはそんなことがわかる筈も無く・・・ 「ま、まさか・・・!!!ほ、本当に・・・!!?」 「だ、だから言ったじゃ無い!!あの人は“特別”なんだって!!」 「・・・・・・(クラッ)」 「し、真珠院!?し、しっかりして!!」 「界刺様・・・!!わ、私は・・・信じませんから!!!」 「こ、これは・・・大スクープ物ですね!!!」 「こ、これが・・・男性と女性の営みという物なんですか・・・!?・・・(カアアァッ!!)」 「得世・・・水楯・・・。お前達・・・一体何をしているのだ!!?」 「利壱・・・紫郎・・・。よ、よく理解できないんだけどよ・・・つまりどういうこった!?」 「・・・そ、それは・・・。オイラ達の口からは・・・」 「・・・う、うん・・・。純情な荒我兄貴には耐えられないかも・・・」 「あ、あ、あの“成瀬台の変人”!!学生寮で、何とんでもねぇことをしてやがる!!!うおおおおぉぉぉっっ!!!」 「ま、待たんか、椎倉!!・・・(ガシッ!!)・・・お、落ち着くのだ!!」 「・・・リーダー?事の詳細を理解できますか?」 「・・・稜ならわかる筈だ、うん」 「だから、何で俺に聞くんだ!!?」 「うん?そらひめ先輩。あの人達は、何であんなに騒いでいるんですか?男と女の人が着替えているだけですよね?何かおかしいんですか?」 「抵部・・・。お前が知るには、まだ早ぇよ(・・・抵部って高1だよな?)」 「あ、あの“変人”!!春咲先輩の好意を受けておきながら、何やってんだよ!!?」 「・・・ハァ。あの男の行動は、つくづく予測が付かないな」 「・・・!!!」 「・・・真面。何故顔を紅潮させているんだ?さては、お前。今まで女性と付き合ったことが無いな?」 各々が、勝手に騒ぐ有様である。その隙に着替え等を済ませる界刺と水楯。そして・・・ ガチャ! 「え~と・・・。団体様ご到着って流れかな?俺等、今から朝飯なんだけど・・・」 そんな流れで、団体様ご一行を自室に迎え入れる羽目になってしまったのである。 「・・・・・・界刺さん。ご希望のスクランブルエッグと焼き立てのパンです」 「ありがと、涙簾ちゃん。そういや、涙簾ちゃんの作る食事は久し振りだなぁ」 「確かに、こういう機会は久し振りですね。まぁ、ここに来る時くらいしか界刺さんに食べて頂くことが無いですからね。私も、腕によりをかけて作りました」 「んふっ、そんじゃあ、いただきます!」 「いただきます」 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「・・・」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」 何処ぞのフランケンシュタインもどきの顔にナイフとフォークが突き刺さり、 それが笑顔でサムズアップしている絵柄がプリントされた紫色のシャツを着ている界刺と、花盛の制服を着ている水楯が朝食を取り始める。 そんな光景を、唯見せられている団体様ご一行。完全アウェイ、完全に蚊帳の外状態である。 「(な、何この部屋!?何処もかしこも、常人には理解し難いプリントがされた衣服とか小物とかあるんだけど!?)」 「(さ、さすがは“変人”と呼ばれるだけのことはあるぜ。ぶっちゃけ、サッパリ理解できねぇセンスだ!!)」 「(・・・何だ、あのプードルを邪悪に染めたようなプリントが為されているカーテンは?悪趣味にも程があるぞ?)」 こちらは、159支部の一厘・鉄枷・破輩の3名。彼女達は、界刺の部屋にある様々な衣服や小物に目を向ける。どれも、普通の人間には理解し難い物ばかりだ。 「(かいじさんの着ているシャツ・・・カワイイー!!)」 「(・・・駄目だ。普段は和服のあたしからしたら、あのプリントを目にするだけで頭がクラクラして来やがる!!一体全体、どういうセンスをしてやがんだ!?)」 こちらは、花盛支部の抵部・閨秀。彼女達は、界刺が着用しているシャツに目を奪われていた。抱いた感想は正反対だが。 「・・・・・・あっ。界刺さん。口元に卵が・・・(フキフキ)」 「おっ。あんがと、涙簾ちゃん」 「いえ。どういたしまして」 「(な、何てモン見せ付けやがるんだ!!お、俺なんて要と付き合っていた頃なんか、そんな気遣いを見せてくれたことなんか、一切皆無状態だったんだぞ!!)」 「(まるで、夫婦であるな。こういう穏やかな雰囲気の中で食事をするというのは、さぞ気持ちの良いものであろうな)」 界刺の口元に付いていた卵焼きを、水楯がティッシュで拭き取る。その光景を見て、成瀬台支部の椎倉は心の中で血の涙を流し、寒村は好印象を持つ。 「ごちそうさまでした」 「・・・・・・おそまつさまでした」 「ふぅ。さすがは涙簾ちゃんお手製の食事だ。旨かったよ」 「そう言って頂けると、私も作った甲斐があります」 「んふっ」 「フフッ」 「(2人は・・・恋人なのかな?それにしても、学生寮でね・・・。大胆だわ)」 「(くぅ~!!な、何かこういうのを見てると無性に腹が立って来てしゃーないわ!!ブン!!)」 「(痛っ!や、八つ当たりまで・・・!!・・・俺って、何でここに居るんだ?)」 朝食も終わり、2人揃って笑い合う界刺と水楯の姿を見る176支部の焔火は推測及び感嘆を、加賀美は苛立ちを、神谷は疑問をそれぞれ抱く。 「さぁて、腹も膨れたことだし。昨日お願いしていた件でも始めようか、涙簾ちゃん?」 「・・・・・・そうですね。あっ、でもその前に食器を洗ってしまいましょう」 「あっ、そうだね。それじゃあ、一緒に持って行こう」 「はい」 「(・・・!!!)」 「(あぁ・・・。荒我君には、恋人の姿ってヤツは早過ぎたでやんすかねぇ・・・)」 「(荒我兄貴・・・。さっきから、ずっと目をパチクリさせてるねぇ)」 食器を片付けるために、界刺と水楯が立ち上がる様を目の当たりにする荒我は瞠目するしか無く、舎弟の梯と武佐は荒我の心中を慮る。そして、約10分後・・・ 「ふぅ。これで、洗い物も終わり・・・・・・だね」 「はい」 「(これが・・・恋人ってヤツなのか?な、何ていう素敵空間なんだ・・・!!)」 「・・・・・・」 食器洗いを終えて、元居た場所まで戻って来た界刺と水楯。その姿に178支部の真面はいたく衝撃を受ける。そして・・・ 「その前に・・・。“『シンボル』の詐欺師”界刺得世。お前に聞きたいことが・・・」 「そんなことは後にして下さい!!!」 「グハッ!!」 「固地先輩!?」 「債鬼君!?」 界刺に対して質問をしようとした固地を、後方に居た真珠院が吹っ飛ばす。 “風紀委員の『悪鬼』”と呼ばれる男に対する暴挙を成し遂げた真珠院に、皆の注目が集まる。 「お、お前・・・!!グッ!?こ、これは・・・念動力か!?」 「・・・少し黙っていて下さいませんか?フフッ、お口にチャックですわ」 「ッッ!!ッッ!!!」 「(・・・固地先輩のあんな姿、初めて見た)」 「(・・・!!さすがは、常盤台のお嬢様だな。恐いもの知らずと言うか何と言うか)」 真珠院の『念動使い』によって宙に浮かばされ、その口さえ閉ざされることとなった固地。焔火は唯々驚愕し、椎倉はその恐いもの知らずさにある種の尊敬の念を抱く。 「・・・何かな、珊瑚ちゃん?」 「・・・単刀直入に聞きます!!あ、ああ、あなた様と・・・涙簾様は・・・先程まで一体何を・・・」 「何をって・・・・・・なぁ?」 「そうですね・・・」 「「寝て(まし)た」」 「なっ!!?・・・(クラ~)」 「し、真珠院さん!?」 寝ていた発言を聞いた真珠院は、まともや倒れ掛ける。そんな彼女を、近くに居た遠藤が支える。 ドン!! 「痛っ・・・!!くそっ、あの女め。下らない真似を・・・!!」 「債鬼君!?だ、大丈夫!?」 「あぁ。この程度、何の問題無い」 真珠院が倒れ掛けたため、固地を縛っていた念動力が解除される。加賀美が心配そうな声を掛けるが、固地は軽く受け流し、再度界刺へ向けて問いを投げ掛ける。 「さっきは邪魔が入ったな、“成瀬台の変人”界刺得世。お前に質問したいことが・・・」 「邪魔よ」 「ガハッ!!」 「固地!?」 「あっき先輩―い!?」 気を取り直して界刺に対して質問をしようとした固地を、これまた後方に居た苧環が吹っ飛ばす。 “風紀委員の『悪鬼』”と呼ばれる男に対する再びの暴挙を成し遂げた苧環に、皆の注目が集まる。 「お、お前・・・!!グッ!?体が痺れて・・・!?」 「・・・少し黙っなさい?フフッ、電気ショックでしばらくは動けないわよ?」 「く、くそっ!!!」 「(・・・固地先輩のあんな姿、余り見たこと無い・・・!!)」 「(・・・!!さすがは、常盤台のお嬢様だな。恐いもの知らずと言うか何と言うか)」 苧環による電気ショックで、身動きが取れなくなった固地。焔火は驚愕し、椎倉はその恐いもの知らずさにある種の尊敬の念を抱く。 「何かな、華憐?」 「界刺さん・・・。単刀直入に聞くわ。そ、その・・・寝ていたっていうのは・・・どういう・・・」 「どうって・・・・・・ねぇ?」 「そうですね・・・」 「「一緒に寝て(まし)た」」 「なっ!!?・・・(クラッ)」 「お、苧環様!?」 一緒に寝ていた発言を聞いた苧環は、真珠院と同じように倒れ掛ける。そんな彼女を、近くに居た月ノ宮が支える。 ドン!! 「こ、これしきのことで・・・俺が負けるわけが・・・無いだろうが・・・!!」 「債鬼君!?だ、大丈夫!?」 「あぁ。この程度、心配いらん!!」 電気ショックを受けて痺れていた体に活を入れ、無理矢理起き上がる固地。 加賀美が心配そうな声を掛けるが、固地は軽く受け流し、三度界刺へ向けて問いを投げ掛ける。 「今度こそ俺の問いに答えて貰うぞ、“変人”界刺得世。俺は、お前に・・・」 「消えて」 「ッッ!!・・・(スクッ。ダダダッッ!!)」 「固地先輩!?ど、何処へ行くんですか!?」 「寒村!!固地を捕まえてくれ!!」 「了解した!!」 今度こそという意気込みの下、界刺に対して質問をしようとした固地を横に居た形製が『分身人形』で洗脳し、部屋から追い出す。 その直後、椎倉の指示を受け寒村が固地の後を追う。“風紀委員の『悪鬼』”と呼ばれる男に対する三度の暴挙を成し遂げた形製に、皆の注目が集まる。 「(・・・固地先輩のあんな姿、何だか見慣れて来たわ・・・)」 「(・・・!!さすがは、常盤台のお嬢様だな。恐いもの知らずと言うか何と言うか)」 形製に洗脳され、部屋から追い出された固地。焔火は次第に慣れ始め、椎倉はその恐いもの知らずさにある種の尊敬の念を抱く。 「何かな、バカ形製?」 「バカ界刺・・・。単刀直入に聞くよ。そ、その・・・一緒に寝ていたっていうのは・・・どんな風に・・・」 「どんな風にって・・・・・・言っちゃう?」 「・・・仕方無いですね。この際、告白しましょうか」 「俺は、シャツ一枚と半ズボンで」 「私は一糸纏わぬ姿で」 「「一緒に寝て(まし)た」」 「なっ!!?・・・(クラァ)」 「け、形製さん!?」 水楯が全裸になって界刺と一緒に寝ていた発言を聞いた形製は、真珠院や苧環と同じように倒れ掛ける。そんな彼女を、近くに居た一厘が支える。 ドン!! 「ハァ・・・ハァ・・・!!な、何故こうも邪魔が入るんだ・・・!!くそっ!!」 「債鬼君!?あ、あなたが『シンボル』のリーダーに何を聞こうとしているかは知らないけど、もう止めた方がいいんじゃあ・・・?」 「馬鹿を言え!!ここまで恥をかかされて、おめおめと引き下がれるか!!」 「債鬼君!?」 『分身人形』の洗脳が解けた固地。寒村に押さえ込まれたせいか、息も絶え絶えな彼に加賀美が心配そうな声を掛ける。 だが、固地は彼女の助言を聞き入れず、泣きの1回的に界刺へ向けて言葉を発する。 「界刺得世ぉ・・・!!俺は・・・!!!」 「界刺様!!」 「ッッ!!・・・(クルッ!スタスタ)」 「あっ・・・。しまった・・・。『発情促進』をあの恐い人に・・・!!」 「固地先輩!?な、何をするつもりですか!?」 「アアアアアアァァァッッ!!!!!」 「キャアアアアァァァッッ!!!!!」 凄まじい執念を見せながら界刺に対して質問をしようとした固地に対して、離れた場所に居た鬼ヶ原が『発情促進』を掛けてしまった。 鬼のような形相で界刺に近付く固地に対して、思わず危機感を抱いたが故の暴発。その被害を被った固地は、鬼ヶ原へ向けて脇目も振らずに突進する。 ピカー!!! 「グッ!?・・・ガハッ!!ゴホッ!!ヘギッ!!」 「・・・ナイス、真刺」 「何のこれしき。か弱き少女に襲い掛かるとは、何と言う非道な行い。貴様、それでも風紀委員か!?」 鬼ヶ原へ発情したがために襲い掛かった固地を、界刺が発生させた閃光によって怯ませ、 掛けているだて眼鏡を“サングラスモード”にした不動が『拳闘空力』を用いて制裁を与える。 「か、界刺様~!!こ、恐かったです!!」 「おぉ、よしよし。もう大丈夫だよ、嬌看。後は、真刺に任せとけばいいから」 「ちょ、ちょっとタンマ!!」 「む?何だ?まさか・・・貴様はこの男を庇うつもりか!?」 固地に制裁を与えている不動に、加賀美がストップを掛ける。 「こ、これは何かの間違いというか・・・。債鬼君に限ってそんなことは有り得ない!!彼が、女性に乱暴を働こうとする筈が無いよ!!」 加賀美は、ボロボロになりつつある固地を必死に庇う。風紀委員になった当初からの付き合いである。 故に、彼女にはわかる。固地債鬼という男は、女性に対して乱暴を働くような畜生では無いことを。 「・・・でも、この人の頭の中・・・そこに居るか弱い少女に対するイヤらしい思考しか無いですよ?口に出すのも憚られるような想像ばっかり・・・」 「えっ!?武佐君・・・それって本当でやんすか!?」 「うん」 「な、何て野郎だ!!この前あった時は気色悪いオカマ口調だったが、実はとんでもない卑劣漢だったのか!! よし、俺達も行くぜ!!普段はステゴロ一本だが、こんな卑劣漢には勿体無ぇよ!!」 「了解でやんす!!オオオオオォォォッッ!!!!」 「了解。少女を襲った罪・・・ここで償ってもらおうか!!」 「ちょ、ちょっと!!!」 ドカッ!!ベキッ!!バキッ!!グキッ!! 不動、荒我、梯、武佐の4名により、ボロボロになる固地。本当ならば、風紀委員である以上止めなければならないのだが、 自分達の目の前で固地が鬼ヶ原を襲いかけ、『思考回廊』を持つ武佐に(『発情促進』による)イヤらしい思考をバラされたために、 誰も制止を掛けることができなかった。 「お~い。その辺にしとけよ。もう、そいつも十分に罰を喰らっただろうし。それ以上は、周りに居る風紀委員も黙っちゃいないと思うよ?」 その制止を掛けたのは、(『発情促進』の効果が切れる頃を見計らっていた)界刺。彼の制止により、ようやく制裁が終了する。 「ふぅ。これ以上は・・・と言うヤツだな」 「ハァ・・・。まぁ、この辺で許してやろうか」 「荒我君、優しいでやんす!!」 「荒我兄貴が言うのなら・・・。今度やったら、こんなモンじゃ済まないよ?」 不動達が拳を止め、散会して行く。その後に、加賀美が固地へ駆け寄って行く。 「・・・・・・」 「債鬼君・・・。ボロボロになっちゃったね。でも、何でそんなことを・・・?」 ボロボロになって気絶している固地を見て、加賀美はどうしても疑問を抱いてしまう。 自分が知っている固地という男は、決してそのような真似や思考をする人間じゃ無い。 なのに・・・。疑念渦巻く加賀美に回答を示したのはもちろん・・・ 「あぁ。それなら簡単なことだよ。この娘・・・鬼ヶ原嬌看の能力『発情促進』が暴発したからさ。 彼女の能力は、自分に対して異性・同姓問わずに発情させてしまう能力なんだよね。んふっ!」 「そ、それを早く言えええええぇぇぇっっ!!!!!」 界刺のネタ晴らしに、加賀美が大声でツッコミを入れる。 「だって、言った所でどうなるモンでも無いし。一度発情したら、5分くらいはずっと発情してるし」 「あ、あなたねぇ・・・!!!」 「そいつ・・・債鬼って言ったか?そいつが俺に恐い顔で迫って来るもんだから、嬌看が咄嗟に能力を発動しちゃったんだよ。俺を守るために。ねぇ、嬌看?」 「は、はい・・・。界刺様に危害が及ぶかもと思って・・・反射的に・・・。グスッ、すみません」 「ううぅっ!!!」 鬼ヶ原が少し泣き始める。その姿に怯む加賀美に、界刺が追い討ちを掛けていく。 「大丈夫さ、嬌看。風紀委員の皆さんは、心の広い人達ばかりだ。全ては、俺を守るためだったんだろ?なら、この人達はちゃんと理解してくれるさ」 「ほ、本当ですか・・・?」 「あぁ、本当だとも。何せ、過激で有名なあの“花盛の宙姫”でさえ、俺がちゃんと話したら理解を示してくれたしなぁ。そうだったよね、美魁?」 「ううぅっ!!!」 矛先を閨秀に向ける界刺。案の定、心当たりがある閨秀は怯む。 「抵部君・・・いや、抵部準エース殿!お仕事、ご苦労様です!!」 「えっ・・・!!は、はい!!かいじさんも元気そうで何よりです!!」 「これからも、学園都市の皆さんを守る活動、懸命に努めて下さい。陰ながら、応援しております!!」 「わ、わかりましたー!!がんばりますー!!」 「そんな風紀委員花盛支部の抵部準エース殿なら、今回の嬌看の失敗をその広いお心で許して下さいますよね!?」 「も、もちろんですともー!!わたしだって、いつも失敗ばかりしてますからー!!」 「・・・(ニヤァ)」 「な、何ちゅーしてやったりの顔・・・!!あの野郎の口は、ぶっちゃけデマカセ発行機かよ!?」 「“『シンボル』の詐欺師”・・・か。絶対に敵に回したくないわね、ああいうタイプは」 抵部を自らの手の上で自在に転がし、見事風紀委員としての言質を取った界刺の手腕に鉄枷は呆れ、破輩は戦慄する。 「よしっ。そんじゃ、そういうこと・・・」 ブン!!! 「・・・・・・」 一閃。それは、界刺に向けられた光の“剣”。『閃光真剣』と呼ばれるそれを向けたのは、176支部最強のエース・・・“剣神”神谷稜!! continue…?
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「ハァ、ハァ・・・。何だ、あの光は・・・?」 夜の第6学区をひたすら駆け回っていた鉄枷の目に映るのは、空に浮かび上がる幾つもの光源。 何の前触れも無しに突如浮かび上がったそれ等に、鉄枷は疑問を抱く。 「(ライト・・・じゃ無ぇよな。ぶっちゃけ空中を飛ぶライトって何だ?そんなもん、学園都市に住む俺だって聞いたこと・・・!!!)」 思案に耽っていた鉄枷を現実に引き戻したのは、轟音。何か固いもの同士がぶつかったような大きな音。それは、あの光源の方向から聞こえて来た。 「・・・!!ウオオオオオォォォッッ!!!!」 鉄枷は再び走り始める。風紀委員を務めている鉄枷の、それは勘。あの衝突音は、能力によって発生したもの。そう、鉄枷の勘が言っている。 もしかしたら、あの光源も能力者の仕業なのかもしれない。であれば合点がいく。今の状況において、第6学区という場所で発生した光と音。それが意味するものは・・・ 「ハァ、ハァ・・・!!」 救済委員。この第6学区で活動していると思われる者達。そして・・・春咲桜を救済委員として見掛けたという情報がある。能力者である彼女を。 能力者・・・すなわち異能の力を持つ者達。そして、救済委員にも多くの能力者が居ると言われている。もし、遠くに見て、聞いた光や音も異能の力によるものだとしたら。 「春咲先輩・・・!!」 鉄枷は、ある願いを胸に持てる力を振り絞って駆ける。それは、矛盾した願い。己が慕う先輩が、これから向かう場所に居ないことを願いながら。 “ソレ等”、すなわち数多の小型コンテナがまるで砲弾染みた速度で放出される。狙いは、過激派救済委員。 その放出前にいち早く己が危険を感じ取った金属操作は、即座に周囲にあるコンテナ群を液状化し、自分達を守る壁に鋳造する。鋳造が完了したと同時に・・・“ソレ等”が来た。 ガガガガガガガガガガガガガガッッッッッッ!!!!!! 砲弾並みの速度で放たれた小型コンテナや水の弾丸が、金属の壁を襲う。凄まじい衝突音。その威力に戦慄しながらも、壁の維持に集中する金属操作。 小型コンテナ自体の数は限られている。この攻勢も一時のこと。そう看破している金属操作にはその時、少しばかり余裕があった。それは、己の能力に対する絶対の自信。 真っ向からぶつかり合うのならば、負けることは無いと自負する己が能力への・・・それは驕り。 ドゴッ!!! 壁の一部分が小型コンテナとの衝突で砕け飛ぶ。それは、慣れない足場のために予定地点へ到達するのが遅れていた“彼女”にとって千載一遇のチャンスであった。 そして、“彼女”はそのチャンスを逃さない。 パアァァンッッ!!! 音が鳴り響く。それは、銃声。遠距離からの狙撃。狙いは・・・ 「グアアアッッ!!!」 「峠っ!?」 峠上下。過激派において、空間移動という重要な役割を負う彼女を本気で潰すために“彼女”は狙撃した。 峠は左腕から血を流し、その場にうずくまる。麻鬼が、狙撃された峠の傷を診るために駆け寄った。 「・・・銃弾が通過していない。まだ、肉体に残っている。峠、まずは、銃弾を肉体から・・・『残っている』・・・?」 麻鬼は銃弾が峠の肉体に残っていることから、狙撃手の当てを付ける。確か、“彼女”が持っている銃は設定次第で豆腐の中にすら弾頭を残す芸当が可能だった筈。つまり・・・ 「・・・菊・・・!!」 麻鬼は驚愕する。何故なら、峠の目が怒りで血走っていたからだ。それは、誰に対する怒りなのか。それは、峠にしかわからない。 「菊・・・!!!」 峠は、凄まじい怒りに囚われていた。自分を撃ったであろう“彼女”―花多狩菊―は、峠が信用する数少ない仲間である。 穏健派、過激派という思考も方針も違うグループに属しながらも、時には一緒に行動を共にし、時には力を合わせて敵に立ち向かう。 偶に性格の違いから喧嘩することもあるが、最後には―大概は峠が謝って―仲直りする。花多狩の穏やかな性格を、峠は気に入っていた。 峠が相手を下の名前で呼ぶのは、峠自身がその相手を信用していることに他ならない。 だから、『今回も』峠は花多狩が自分を本気で攻撃するなんて夢にも思わなかった。そんなことは、今まで一度も無かったから。 「菊ゥゥゥッッ!!!!」 「!?ま、待て、峠!!!」 銃声と着弾から、花多狩が居る方角はおよそわかる。峠は、麻鬼の制止を無視して、金属操作が作り出した金属の壁でできた影に入り込み・・・『暗室移動』を発動する。 対象者は、自分1人のみ。転移先は、花多狩が居るであろう方角の何処か。峠の頭には、今や友への怒りしか存在しなかった。 「上下ちゃん・・・?えっ・・・ど、何処に、行っちゃったの・・・?は、花多狩姐さんが・・・撃った?本気、で・・・?う・・・嘘・・・」 そんな峠の行動を目の当たりにして、酷く動揺する羽香奈。自分達に危険が差し迫っても、峠の『暗室移動』で楽々と退避する。だから、峠と居る時は何が起きても安心だった。 それが、今までの現実。少なくとも、峠と行動を共にしている時の羽香奈琉魅という少女にとって当たり前だったこと。その当たり前が・・・崩壊した。 「こ、この、このままじゃあ・・・。あ、あたし、も上下ちゃんみたいに、撃たれたり・・・?そ、そんなの・・・嫌・・・絶対に、嫌・・・!!」 元々、羽香奈は直接的な戦闘力を持たない能力者である。救済委員に入ったのも、そこまで深い理由があるわけでも無い。 お遊び感覚とまでは行かないが、どこかでナメていた節はあった。救済委員という存在が、時には命を懸ける程のものだったことを、彼女は自覚していなかった。 「嫌・・・嫌・・・嫌アァァァッッ!!!!!」 「羽香奈!?何処へ行く!?」 故に、羽香奈はパニックに陥る。命を懸けるという現実を自覚してしまったから。今の彼女には雅艶の制止も届かない。ただ、逃げる。それだけが、今の彼女に存在する選択肢だった。 「峠っ!?羽香奈!?あいつ等・・・」 金属操作は、峠や羽香奈の身勝手な行動に苦虫を噛むと同時に妙な親近感を抱いていた。彼女等も自分と同じように、抑えきれない衝動に突き動かされて行動を起こした。 本来であれば非難されて然るべき峠や羽香奈の行動を、金属操作は非難する気にはなれなかった。 「(・・・どうやら終わったみたいだな)」 今まで轟音をこの空間の響き渡らせていた衝突音が止んだ。つまり、弾切れということである。 「(とりあえず、壁の修復が最優先だな。あいつ等がまた攻撃してこないとも限らないし・・・)」 『シンボル』や穏健派から新たな攻撃が来ることを警戒する金属操作は、小型コンテナによって大きく傷んだ、しかし耐え切って見せた己が成果を見やって、それでも気を引き締める。 峠に一撃を浴びせられたのは、間違いなく金属操作の油断であったからだ。 「(・・・二度とあんな失態は演じねぇ!!今度こ・・・そ・・・?)」 壁の修復のために、周囲のコンテナ群を見る金属操作の目に映ったのは・・・漆黒のコートを羽織る男。 「・・・!!!」 その男を、金属操作はよく知っている。その姿が、その態度が、その言葉が、一々癪に障る男。その男が、金属操作に向かってある動きを見せる。 「!!!」 小型コンテナのよって砕かれた壁の一部を指差した後に、自分の左腕を押さえるその姿は・・・まるで、先程の峠の姿を思い出させるかのようだった。自分が犯した失態も一緒に。 そして、その姿は・・・まるで、自分の失態を嘲笑っているかのように金属操作には見えた。見えてしまった。 「こ・・・こんの・・・この馬鹿鴉があああぁぁぁっっ!!!!!」 だから、金属操作は止まらない。自分で自分を止められない。峠や羽香奈と同じように。よりにもよって、自分が一番嫌う男に自分の失態を見られたから。嘲笑われたから。 その際限無い怒りは、“激流”に対して放った怒りとは比べ物にならない程凄まじかった。 「おいっ!!金属操作!?くっ、馬鹿鴉とは啄のことか!?雅艶!この近くに奴が居るのか!?」 「いや、少なくとも俺の『多角透視』では近くに啄の姿は見当たらない!!幾ら奴が『分裂光源』で自分の姿を生み出せたとしても、 この近辺にいない奴がコピーの光をうまく操作できるとは思えない。金属操作の見間違いか何かじゃ無いのか!?」 「くっ・・・。どいつもこいつも勝手に動き回って・・・!!奴等の思う壺だぞ、これでは!!」 麻鬼と雅艶は、自分達が不利な現状に置かれていることを自覚する。 この場に居るのは、雅艶、麻鬼、躯園、林檎、七刀、刈野の6名。峠、羽香奈、金属操作の3名はこの場から離れてしまっている。 特に、防御に秀でている金属操作と移動能力を有する峠がこの場を勝手に離れてしまったのは痛かった。 「林檎?あなたの念話能力で峠達と回線を繋げることはできない?あなたの念話範囲は相当広いんでしょう?」 「躯園姉ちゃん・・・ゴメン。あたしの能力は念話を繋げる相手の場所がわからないと回線を繋げられないんだ。相手に大音量をぶち込むのも一緒の理由で、今は無理なんだ」 「雅艶君。あなたの『多角透視』で林檎さんに峠さん達の居場所を伝えて連絡を取るか、『敵』の居場所を伝えて動きを封じるか・・・というのはできないの?」 「・・・『敵』も峠達も今は常に動いている。『多角透視』からの『音響砲弾』では、どうしてもタイムラグが発生する。林檎の言う条件では無理だろう」 「で、でも!位置さえわかれば、待ち伏せみたいなことはできるよ!?念話でも攻撃でも!別に対象を見ないといけないっていう能力じゃないし!」 「・・・それも無理だな。お前はこの辺りの地理に詳しくない。それどころか、今日初めて訪れた場所だ。 この辺りはコンテナが数多く並んでいて、見通しがすこぶる悪い。幾らお前の演算能力が優れていようが、演算に必要な地理情報がお前に備わっていない以上、有効性は低い」 「・・・ごめんなさい」 雅艶の冷静な指摘を受けて、林檎はしょんぼりしてしまう。林檎の『音響砲弾』は念話能力の発展形であるため、普通に念話能力としても機能する。 その有効範囲も半径1キロ、一度に回線を繋げられる人数は数十人にも及ぶ。『音響砲弾』も同様に。 但し、その回線接続には対象の位置を林檎が認識する必要がある。それは、視覚で無くてもいい。林檎が対象者の居る場所を何らかの方法で認識できれば繋げることができる。 言い換えれば、その場所を具体的に認識できなければ回線を繋げることはできない。例えば・・・初めて訪れた場所とか。 「となると、これからどうする、雅艶?おそらく、奴等はこうしている間にも俺達を狙って来るぞ? 俺としては、峠や金属操作がいない以上こうやって一箇所に固まっているのは得策では無いと考える。包囲戦を仕掛けられる危険性もあるしな」 「確かに、麻鬼さんの言う通りです。今は徹底抗戦よりも、何組かに分けて穏健派の攻勢を掻い潜り、このターミナルから脱出を図った方がいいかと思います。 状況はこちらに不利ですが、雅艶さんや林檎さんの助力があれば、峠さんの移動能力が無くてもここを脱出するくらいは可能でしょう」 「峠さんや金属操作君は自力で何とかできるだけの力はある。羽香奈さんは・・・もし穏健派と衝突することになっても殺されるということは無いと思うわ。 一応穏健派だし、彼女。希望的観測なのはわかってるけど」 「ということだ。いいな、春咲。お前は不服だろうが、今は何よりここからの脱出が最優先だ。もし、この方針に逆らうと言うのなら・・・お前も『裏切り者』として・・・」 「・・・わかったわよ。林檎を危険な目に合わせたくはないし。あのクズと穏健派の連中には、後で目に物を見せてくれるわ!!」 一番反発するであろう躯園を脅しでもって承諾させた雅艶は、早急にここからの脱出方法を企てる。 「よし。まずは、林檎!お前は俺達全員と念話回線を繋げろ。俺が『多角透視』から得た情報をお前に送るから、それを皆に周知する。いいな?」 「わ、わかった!!」 「組み合わせは、俺と麻鬼、七刀と刈野、春咲と林檎という3組。それぞれ、脱出する方向は別だ。異論はあるか?」 「林檎と一緒なら私には異論は無いわ。林檎、お姉ちゃんが必ず守るからね」 「う、うん!」 「私は刈野さんとですね。了解しました」 「私も異論は無いですよ」 「俺もだ」 「よし。それでは・・・行動開始!!」 そうして、雅艶達は早急にターミナルからの脱出を図る。そんな彼等を・・・『敵』は黙って見過ごすわけが無い。 ここは、戦場。何が起きるのかを完全に予測し得る者など存在しない、それは世界の一部たる混沌が支配する掟無き渦の如し。 continue!!
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「うおおおおおおおおお!!!」 「はあああああああああ!!!」 荒我と焔火が眼前のステーキに文字通り食って掛かる。 荒我はナイフやフォークを使わない。箸を使って1キロのステーキの端から丸齧りを敢行する。 一方焔火はというと、 「緋花ちゃん、こういうのはペース配分が大事だから気を付けて!」 「ありがと、ゆかりっち!」 「・・・中々に汚いでやんすね」 「梯君・・・そこはチームワークって言おうよ」 葉原が焔火のステーキを片っ端から切り分け、焔火がフォークを突き刺して食うというコンビネーションで挑んでいた。 「それにしてもこのステーキ美味しいー!!ここの常連になりそう」 「旨い、旨いぜ!!こんな旨い肉は滅多に食えねえし、今回は思う存分食らい尽くすぜ!!」 ペース配分を考えて食べる焔火と最初から飛ばす荒我。どんどん消えていくステーキ。そして、まずは荒我が食い尽くす。 「「おかわり!!」」 荒我が2キロ目のステーキを注文するために挙げた声に重なる声。 「ヘッ、テメェには負けねぇぜ」 「・・・上等だ。後で吠え面かくんじゃねぇぞ!!」 それは、荒我達の隣の席に座る菅内。彼も荒我と同じく最初から飛ばしているようだ。互いの視線が交錯するのも束の間、次のステーキが運ばれる。 「うおおおお!!!」 「がああああ!!!」 またもやペースを上げる荒我と菅内。この男達の胃袋は鉄でできているのか!?いや、そんなことはなく・・・ 「ぐ、ぐっ・・・」 「むぐっ・・・」 突如ペースが落ちる2人。何を隠そう、今回のステーキは脂がたんまり乗った肉である。つまり、胃にクルのは至極当然のことなのである。 「荒我君!大丈夫でやんすか?」 「み、水を・・・」 「はい、荒我兄貴!」 何とか水で肉を胃袋へ送る荒我。それを尻目に・・・ 「私もおかわり~!」 「緋花!?」 焔火が1枚目のステーキを食べ終えたのである。彼女の顔を見る限り、まだ余裕綽々といったところか。 「ふふ~ん。どうしたの荒我~?もしかしてもうヘバちゃった?」 「だ、誰がこんなことでヘバるかっての!!俺の根性をナメるんじゃねぇ!!」 焔火の挑発に対抗心が刺激されたのか、少しだけ調子を取り戻す荒我。無我身中でステーキに齧り付く。 すぐさま2枚目のステーキが到着した焔火もせっせと肉を口に入れていく。果たして誰が懸賞金を手に入れるのか?とその時!! 「ステーキ・・・・・・ご馳走様でした・・・。ゲプ~」 「ひ、1人目の完食者が早くも現れたあああ!!タ、タイムは・・・何と4分57秒!!信じられないタイムだああ!!!」 「「な、何ぃぃ!!!」」 何と5分も経たずにステーキ3キロを完食した猛者が現れたのである。しかも、見る限りどこにでもいそうな小さな女の子がである。 その小さな体の一体どこにあれ程の量が入るのか。筆者も疑問が尽きない。 「ば、馬鹿な!!あんな小さいガキんちょに俺が・・・」 「し、しっかりするでやんす、荒我君!!」 「わ、私より小さい・・・あんな子に私が負けた・・・?」 「緋花ちゃん!まだ勝負は終わってないよ!!」 呆然とする荒我と焔火を立ち直らせようと声を掛ける梯と葉原。すると・・・ 「あ~、美味しかった。ご馳走様!!」 「・・・まさか、お前より早い奴がいたとはな。しかも、あんな小さい子が。世界は広いな、うん」 「ふ、2人目の完食者だあああ!!タイムは5分23秒!!これまた何という驚異的なタイム!!」 1人目から30秒も経たずに2人目の完食者が現れた。その男は先程荒我と菅内を仲裁した男であった。 「ハッ!!は、箸を止めてる場合じゃねぇ!!こ、こうなったら何が何でも10分以内で完食してやる!!」 「ヒョッ!!そ、そうだわ。貴重な時間をロスしちゃった!!落ち着け~。落ち着け、私!!」 不覚にも30秒程呆然としてしまった荒我と焔火は、遅れた分を取り戻すべくペースを上げる。 しかし、5分前後で完食者が2人(ちなみに賞金獲得後、既に店を後にしている)も現れたことは、他の参加者達にも様々な影響を与えていた。 「う・・・苦しい。吐き気が・・・。でも、でも・・・」 「あ、あんな小さな子が・・・私と同じくらいの子が1番?し、信じられない・・・。私なんて、まだ2キロも残っているのにー!!」 「だから言ったじゃない、莢奈!最初から無理があるって!!」 「け、健康的な女子になるのがこんなにも辛いことだったなんて・・・。これも、仮初の姿を演じてきたツケってことかしら。ゴホッ、ゴホッ」 「吾味・・・1位にはなれなかったが・・・完食だけは必ず成し遂げてみせる!!もちろん、お前より先にな!!・・・オプッ!」 「萬代・・・悪いがそうはいかない。俺が先にゴールさせてもらうぜ!!・・・ウエッ!」 「も、もう食えねぇ・・・。くそっ、こんなのに参加するんじゃ無かった。こうなったら適当に・・・」 「あらあら、蜂峰さんには『発狂開始』というエネルギーを活性化させる能力がおありでしょう? ステーキ摂取によるエネルギーを消費するには持って来いじゃありませんか?」 「えっ?で、でも私の能力って脳に負担が・・・」 「あらあら、それは大変ですねぇ。でも、それが食事を残していい理由にはなりませんよねぇ。ホホホ・・・・・・やれ」 とまあこんな具合にである。一部で何やら恐ろしい発言が聞こえた気もしたが、気のせいであろう、うん。 「ゼェ、ゼェ。よ、よし。2枚目完食だぜ・・・。最後の肉を持って来いやあああ!!!」 「えっ?も、もう終わったの!?」 そうこうしている内に、荒我がその根性で2枚目のステーキを完食した。驚きの声を挙げる焔火に気を向ける余裕も無い荒我は荒い息を吐く。 「(く、苦しい。もう限界に近いな、こりゃ。だが、男が一度やると決めたことは何が何でも果たしてみせるぜ!!)」 そして、到着する3枚目のステーキ。最初に感じていたステーキの味は今となっては感じない。香りも旨さも何も。 ただ、眼前の肉の塊を己の胃袋に入れる。それだけが今の荒我の頭を占めているのだ。 「グッ!!お、俺もおかわりだ!!」 「わ、私も最後行きま~す!!」 少し遅れて菅内と焔火も2枚目を完食した。が、2人共にかなり苦しそうにしている。誰もが限界に近いのだ。 「(チッ!!もう追い付いて来やがったか!)」 「(あ、あんなリーゼント野郎に負けてたまるかってんだ!!)」 「(ヤバッ!マジで吐きそう・・・。でも、負けるのだけはゴメンよ!!)」 3者3様の思いを胸に、最後のステーキ1キロに挑む勇者達(※早食い大会です)。 もう見てくれなどに誰も気を使わない。無様でも何でもいい。誰よりも早く完食できるのなら。 その凄まじい食いっぷりは鬼気迫る程の迫力を伴っており、周囲の客(梯達)が思わず戦慄したとさえ言われている。 「ガハッ!!後、後少し・・・」 「オプッ!!もうちょっとなのに・・・」 「グフッ!!手が、手が動かねぇ・・・」 残り1分を切った頃、荒我、焔火、菅内の3人に残されたステーキは丁度2切れ程の大きさであった。 通常の状態ならば何の苦労もせずに平らげることができたであろうその肉が、最後の関門として彼等に立ちはだかった。 「(根性・・・!根性・・・!!根性!!!)」 「(私は絶対に負けない。誰にも!!自分にも!!だから、だから・・・!!)」 「(う、動けよ!動いてくれ!!俺の手!!こんなことで・・・こんなことで無様に垂れ下がってんじゃねぇよ!!)」 心の中で己の信念を再び問い直し、それを最後の力とし、振り絞る勇者達(※もう一度言いますが早食い大会です)。 箸を、フォークを、眼前に立ち塞がる壁の如く聳え立つ肉に突き刺し、己が口に運んで行く。 「(最後だ・・・!!)」 「(あ、後・・・!!)」 「(一口・・・!!)」 3人共、残るは1切れ分の肉のみ。もう胃袋は限界を超えている。何時リバースしてもおかしくはない。だが・・・それでも・・・!! 「「「ガブッ!!!」」」 「カンカンカン!!タイムアップで~す!!!」 勇者達は前人未到の難題に挑み切った(※くれぐれも確認しますが早食い大会です)。口の中に肉を入れたと同時にタイムアップの鐘が鳴る。 荒我、焔火、菅内の3人は見事10分以内でステーキ3キロを完食したのである。 「(や、やったぜ・・・!!)」 「(勝った・・・自分に勝った!!)」 「(何とか・・・なったか・・・)」 まだ肉が口の中に入っているために喋れない3人であったが、その心中では制限時間内に完食まで至ったことに安堵していた。 「あ、言い忘れ~てま・し・た!!!完食ってのは胃袋にステーキが全部入ったことで~す!! つ・ま・り!!今現在口の中に肉が残ってる人は・・・OUTだずぅええぇぇぇ!!!!」 「「「オボロロロロロロ!!!!!」」」 安堵し切っていたがために、店長のド忘れ発言に対応できなかった。つまり・・・荒我、焔火、菅内は・・・失敗したのである。 「ウエッ。な、何とか・・・ウエッ。賞金・・・ウエッ。ゲットです・・・ウエエェェッ!!」 「か、刈谷様・・・。私は、卜部はやり抜きましたよ!!これで刈谷様もきっと私を・・・ゴホッ、ゴホッ・・・ウエエェェッ!!」 「ガハッ、ガハッ!!な、何とか食い切ったぜ」 「あらあら。さすがは私の目に狂いはなかったということかしら。ホホホ」 「お、鬼め・・・」 もちろん、見事完食まで至り懸賞金を獲得した者もいれば、 「オボロロロロ!!!」 「莢奈!!こんなところでリバースしないでよ!!」 「だ、だって・・・。あ、お金ない。月理ちゃん・・・」 「私は止めたんだから責任無いし。よって、お金は貸しませ~ん」 「そ、そんな~。じゃあ、どうすれば」 「お金が無いのなら、体で払うしかないんじゃない?」 「えっ?か、体!?わ、わたしはそんなに発育は・・・」 「あれ~。莢奈は立派なレディーなんでしょ?大丈夫だって!」 「そ、そんなせっしょうな・・・」 「お金が無いというのなら仕方ありません。その体~で稼いで頂っっきましょう」 「て、店長さん!?」 「つまりで~す!!私と怪しい親交を深めることでこの『根焼』に利益を齎すのでグヘッ!!」 「つまり、アルバイトとして雇いたいということよ」 「は、はあ・・・」 「私もこの店の臨時アルバイトなの。ここの店長は変人だけど、給料は結構いいから稼げるわよ?」 「へ、変人とは・・・さすがはウチのツッコミ団長で~す。先程の蹴りもナイスで~すね」 「ほ、ホントですか!!じゃあ・・・私頑張ります!!」 「莢奈!風紀委員の仕事はどうするの?」 「あ・・・」 「あれ?風紀委員だったの?でもご心配なく。暇な時に臨時で入るくらいでいいからさ。そこそこ人手はいるしね」 「そ、そうなの。じゃあ大丈夫かな」 「よ~し!頑張ってお金かせぐぞ!!!オボロロロ!!!」 「吾味・・・今回はゴールできなかったが・・・次は負けなぇぜ・・・ガクッ」 「萬代・・・それは俺の台詞だ・・・その時を楽しみにしているぜ・・・ガクッ」 残念ながら完食できずに自腹をはたいた者もいる。 そうして、“ステーキ3キロ10分以内に完食したらボーナスGET!!大会”は終わりを迎えたのであった。 「大丈夫か、拳?やっぱり無茶だったか?」 「い、いや、斬山さんのせいじゃないっすよ。俺の根性が足らなかっただけっす。とんだ醜態晒しちまったっすわ」 「大丈夫、緋花ちゃん?気分はどう?」 「・・・まだ微妙。ゴメン、ゆかりっち」 「何言っているのよ。友達でしょ?」 結果として完食できず、懸賞金も獲得できず、自腹をはたき、最後にはリバースしてしまった荒我と焔火は店の外で休憩していた。 「しかし、あの店長・・・ちゃんと最初からルールを全部説明しとけってんだ」 「斬山さんの言う通りでやんす。ド忘れなんてひどいでやんすよ」 「まあ、口の中に入れて完食ってのも微妙と言えば微妙ではあったけどね」 「もう終わったことを愚痴っていても仕方ないですよ。スパっと気分を切り替えましょう」 「それもそうか・・・。斬山さん、ゲーセンでいっちょ派手に勝負しましょうよ!」 「そうだな・・・。いいぜ、拳。俺も随分ゲーセンに行ってなかったからな。偶にはとことんやってみるか!」 「いいでやんすね!」 「緋花ちゃんとゆかりちゃんはどうする?一緒に来る?」 「ゴメン、武佐君。私はまだ気分が微妙だからパスするわ」 「・・・らしいので、私も今回は遠慮します。緋花ちゃんが心配ですし」 「わかったよ。余り無理しちゃあダメだよ」 残念ながら、ここで別れることになった荒我達と焔火達。短い時間であったが、以前より親交を深めることができた。それは互いに感じている。 「・・・おい、そこのリーゼント野郎」 「!お前・・・まだいたのか。何だ?やっぱステゴロで勝負したくなったのか?あん?」 とそこに、菅内が近付いてきた。どうやら荒我に話があるようである。 「さすがに今はそんな気分じゃねぇ。だが、テメェはムカつく」 「そりゃこっちの台詞だ」 「いつかテメェとは落とし前をつける。だから・・・テメェの名前を聞きたくてな」 「名前?ハン。人に名前を聞く時は自分から名乗るってのが筋なんじゃねぇか?」 「いいから答えろってんだ」 「ったく筋も通せねぇ野郎だな。いいぜ、答えてやるよ。俺は荒我拳だ!よーく覚えときやがれ!!」 「荒我・・・?テメェ・・・まさか重徳の(ボソッ)」 「あぁ?」 「いや、何でもねぇよ。・・・俺は菅内破堂だ。いずれケリはつける。その時を楽しみに待ってやがれ」 「ハッ!返り討ちにしてやるぜ!」 菅内は言うだけ言うと、足早に去って行った。怪訝に思う荒我達であったが、何時までもあんなムカつく奴のことを考えていても仕方無いと判断した。 喧嘩を売ってくるのなら買うまで。それが荒我のポリシーである。 そんなこんなで荒我達はゲーセンへ、焔火と葉原は近くの喫茶店へ向かうため別れる。 それは一時の出来事。それは偶然の出来事。偶々荒我達と焔火達が出会い、偶々菅内という男と出会った。ただそれだけのことである。 そんな出来事の一部始終を、離れた場所にいた亜麻色の髪をツインテールにした少女は偶々見逃さなかった。これもまた、それだけのことである。 continue…?
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前列係数ATx1.5にアップするのはLv25ですね。 -- 2013-05-11 06 38 01 後列30じゃないです -- 2013-05-17 06 56 56 レベル35で後列変化確認 -- 2013-05-30 15 20 38 ブリュンヒルデ -- 2014-01-24 08 56 33 アグニ+とつかうと2ターン目から前列行動できるね! アグニも使えるよ、やったね(白目 -- 2014-09-24 08 00 53