約 769,921 件
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4173.html
『でいぶvs芸術鬼威惨』 19KB 制裁 現代 虐待人間 2作目です ぽかぽかとした初夏の陽光がが森に降り注いでいた。 天気は快晴。 だが天気とは裏腹に道をずーりずーり歩く1匹のゆっくりまりさの表情はどんよりとした影に覆われていた。 「ゆひい・・ゆひい・・こ、このままじゃ『かろうし』してしまうんだぜ・・」 まりさはつがいのでいぶに奴隷のようにこき使われていた。 今年の春、旅のれいむが現れ言葉巧みにまりさを誘惑しまんまとつがいになったのだ。 最初の内はれいむもかりに協力するなどしおらしい態度を見せていた。 だが、おちびちゃん(笑)が生まれてかられいむの態度は一変した。 れいむはおちびちゃん(笑)を理由に全ての義務を放棄しでいぶと化し、まりさの屈辱と絶望の日々が始まった。 醜く肥太ったでいぶとれいみゅ2匹(まりちゃも生まれたが無論でいぶ達が殺した)は何もせずおうちで惰眠を貪り日増しに体積を増加させ大量の餌を要求した。 まりさは日中は常に餌探し、家に帰れば泥のように眠るだけという生活を強いられていた。 そして少しでも不満を漏らそうものなら容赦なく罵詈雑言と暴力が浴びせられる。 そう、例えばこんなふうに・・・・。 「きょ、きょうはやすませてほしいのぜ・・。もうげんかいなんだぜ」 「・・はああああああああああああああああああああ!!!!!!!?ふざけたことをいわないでね!!!!!!これっぽっちのごはんさんででいぶたちがまんぞくできるとおもってるの? ばかなの?しぬの?はたらくものくうべからず(!?)だよ!!!!!ねごとをいわないでね!!!!!」 「しょーだ!!しょーだ!!」 「おとうしゃんはほんとうにゆっきゅりしちぇないね!!!!しゃっしゃとしょうきにもどっちぇね!!!!!しょしたらしんじぇいいよ!!!!!!しょれにしちぇも ほんちょうにまじゅいごはんしゃんだにぇ!!!したがくちゃってるの?」 「しょーだ!!しょーだ!!」 「おちびちゃんがおなかをすかせてるよ!!!!!!いますぐごはんさんをさがしにいってね!!!!!!」 「か、からだがうごかないのぜ。すーやすーやさせてほ・・」 「ゆらあああああああああああああ!!!!!!!!」 ドゴオッッ!!! 「ゆべらあああっっっ!!!?」 「ごちゃごちゃいわずにさっさとあまあまをさがしにいけえええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!なんどもおなじことをいわせるなああああああああああああ!!!!!!!」 「しょーだ!!しょーだ!!ゆわ~い♪おかあしゃんのしぇいしゃいだああああ♪ざまあみりょおおおお♪」 「おとうしゃんはほんとうにゆっきゅりしちぇないね!!!!ばーきゃ!!!ばーきゃ!!!」 というふうに一事が万事この調子であり、このままではまりさが過労死するのは時間の問題だった。 だがそんなでいぶたちにもようやく天誅の下る日がきた。 そう、虐待鬼威惨が襲来したのだ。 「この森に来るのも久しぶりだな~♪待ってろよ~糞饅頭ども~♪お、何だか貧相な糞まりさ発見~♪」 「ゆ!?・・ゆおわっ!!」 (あ、あくむだよ!!こ、このおにいさんはどうかんがえてもぎゃくたいおにいさんだよ!!) が、しかしどうやらゆっくりの神様はまりさを見捨てていなかったようだ。 この時かってない生命の危機を感じたまりさの餡子脳はゆっくりの限界を越えてフル回転しどうにか打開策を思いついた。 「さーて景気づけにいっちょあにゃるに爆竹をつっこんでドカン・・」 「こ、このみちのさきにとんでもないゲスゆっくりがいるよ!!まりさをいじめるよりそいつらをいじめたほうがぜったいたのしいとおもうよ!!」 「・・・ほう?まあいいや。 詳しく聞かせてもらおうじゃねえか。」 「は、はい!そ、そのゲスゆっくりはじつはまりさのおくさんで・・」 まりさが前述したようなことを話し終えた。 「・・おいまりさ。」 「は、はいいいいいっっ!!」 「俺にでいぶどもをどうしてほしいんだ?」 「・・・・ぶ、ぶっころしてほしいのぜ!!あんなやつらもうかぞくじゃないんだぜ!!まりさはどうなってもいいからとにかくぶっころしてほしいのぜ!!!!」 まりさは思わず本音を口走っていた。 「・・・・・・・・。」 「お、おぼうしのなかのたべものをぜんぶあげるのぜ!!くつさんもぺーろぺーろさせてもらうのぜ!!」 まりさはもう必死だった。まりさがでいぶたちを倒すにはもうおにいさんに依頼する以外に方法はない。 ゆっくりの強さはほぼ体重に正比例すると言っていい。ゆえに過剰労働でやせ細ったまりさが醜く肥え太ったでいぶに勝てるわけがないのだ。 そしてでいぶたちを倒せなければまりさに残された道は過労死のみである。 おにいさんはどちらかと言えば制裁派だったのでニカッと笑って快諾した。 なによりまりさの話を聞いてでいぶ達をぶち殺したくてぶち殺したくてもういてもたってもいられなくなってしまった。 貧相なまりさと会話などしている場合ではない。 ぶっ殺してやるぜ、生ゴミがあ~ まりさの勝利とでいぶの命日が決まった瞬間だった。 「・・・・いいよ~ん♪ただでぶっ殺してあげちゃうよ~ん♪」 「あ、ありがとうございます!!おにいさん!!」 「くっくっくっ・・おれはただの鬼威惨じゃない。俺は・・『芸術鬼威惨』だ。」 ニカッと笑ってそう言い捨てるとおにいさんはまりさのおうちの方に足早に去っていった。 何故、彼が芸術鬼威惨なのかは後述する。 おにいさんが数分森を歩いていると早速木のうろを利用したゆっくりの巣を発見した。 入り口を覆っている枯葉や小枝等をどかすと中では醜く肥え太った母れいむと子れいむ二匹が惰眠を貪っている。 子れいむは茄子に似た形状と大きさで、でいぶは瓢箪のような形をしており、バランスボール大だ。 「うん♪死んでいいよ。マジで♪」 そうつぶやくとおにいさんはれいみゅを一匹つまみ上げた。 当然残りの馬鹿饅頭どもは気付いていない。 おにいさんは素早く口をふさぐと片目をアマギってやる。 するとれいみゅはかっともう片方の目を開きぶるぶる震えると勢い良くしーしーを噴射した。 慌てずおにいさんはすかさず○きの種でしーしー穴をふさいだ。 すると今度はもみあげを激しくピコピコしだした。 意に介さずおにいさんは素早くリボンを引きちぎる。 するとピコピコがさらに激しくなった。 「おっとさらにピコピコが激しくなってしまったぞ。」 おにいさんはまるで他人事といった風情でそうつぶやくともみあげを片方力任せに引きちぎった。 おにいさんはそろそろ悲鳴が聞きたくなってきたのか口を塞いでいた手を離す。 「ゆびゃあああああああああああああああああ!!!!!!!!ゆっきゅりできないくちょじじいはし・・ゆべしっ!! ゆぴゃああああああああああ!!れいみゅのかがやくはがああああ!!!! ゆぴゃああ!!!れいみゅのつぶらなおめめがあああああああ!!!ゆぴゃああ!!にゃんにもみえないいいいいいいいいいいい!!! ゆぶぶぶ、ちゅ、ちゅぶれりゅうううううう・・っっ!!!・・ゆひい・・ゆひい・・ゆ!?ちゅ、ちゅぶれりゅうううううう・・っっ!!! ・・ゆひい・・ゆひい・・おにょれえ・・ちゅ、ちゅぶれびゃば!!!」 まずダブルれいみゅの片割れが死んだ。 ここでおにいさんは背中のリュックサックから透明な箱を取り出すと、かってれいみゅだったものとでいぶ及びもう一匹のれいみゅを収納した。 虐待の続きは自宅で行うようだ。 でいぶとれいみゅは相変わらず緊張感の欠片も無い表情で惰眠をむさぼっている。 透明な箱の中で惰眠を貪るでいぶは夢を見ていた。 黄金色に輝く巨大な宮殿の中でこの世のものとは思えない極上のあまあまを貪り食う夢だ。 「むーしゃむーしゃ・・しししししあわせえええええええええええええええええええ!!!!!」 だがでいぶの馬鹿げた夢はすぐに現実世界からの浸食によって水が差された。 「・・・ゆうううう!?なんだかくさいよ?」 目を覚ましたでいぶは宮殿ではなく、真っ暗な牢獄の中にいた。しかも悪臭発生装置(かってれいみゅだったもの)のおまけ付きだ。 「・・ゆはっ!?なんなのごれえええええ!!!!!?く、くさいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!」 「・・ゆみゅみゅ!?きょきょは!!?く、くちゃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!」 一方おにいさんは電車内で寝たふりをしながら虐待計画を立案していた。 そうこうするうちにおにいさんは自宅に到着した。 おにいさんは透明な箱を持って完全防音の地下室に向かう。 そこには処狭しとゆっくりの死体を加工したオブジェが並べられていた。 そう、彼が芸術鬼威惨と呼ばれる所以である。 他にも、ノコギリ、ロープ、カッターナイフ、つまようじ、すりこぎ、ミキサー、ゆで卵切り器、金網、バーナー等のおびただしい数の虐待に転用可能な道具が並べられている。 なお、彼は虐待した全てのゆっくりをオブジェにするわけではないが、今回でいぶは見事オブジェの素材として選ばれてしまったようだ。 さっそくおにいさんは下準備としてホットプレートを二台温め、油を敷いた。 さらに冷蔵庫からオレンジジュースと調理酒とタバスコとワサビを取り出し、ワサビは水で溶いて注射器で吸い込んだ。 そしてホットプレートの一つに約5cmの長さの釘を大量にばらまいた。全部で200本はあるだろう。 最後に○ッカマン、ペンチ、金槌をホットプレートの横に置くと全ての準備が完了した。 れいみゅの死臭に散々悩まされた上、凄まじい苦悶の表情を浮かべてこと切れているオブジェの数々、上記の作業を淡々と行うおにいさんを見てさすがに恐怖を感じたのか でいぶ達は「はやくだせ!!!!!!!!くそじじいいいいいいいいいいいい!!!!!!」だの「ゆっくりざぜろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」だの 「ゆっきゅりしてないぶきみなくちょじじいはいましゅぐちねええええええええええええええ!!!!!!!」だの罵詈雑言を投げつけたが透明な箱は完全防音なので当然おにいさんには何も聞こえない。 おにいさんは透明な箱からでいぶ達を取り出し、再びまりさの餡子脳を震撼させたマジキチスマイルを浮かべると人目が無いからなのかテンションMAXで虐待を開始した。 「やあ!!僕は芸術鬼威惨!!」 「スーパーゆっくりバーベキュータイムはっじまるよ~♪まずはれいみゅをホットプレートにのせちゃうよ~♪」 「ゆゆ・・っ!?さっさとはなしちぇね!!にゃんだかゆっきゅりできないよかんがしゅるよ!!きもちわるいくちょじじいはいましゅぐちんでね!!!」 「やべろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!きたないてでおちびちゃんにざわるなあああああああああああああああああ!!!!」 「ゆわーい♪おしょらをとんでるみたーい♪ゆ!?にゃんだかぽかぽかしちぇきちゃよ!?あちち!!?」 じゅ~♪(れいみゅのあんよがバーベキューされる音) 「ゆぴゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!あぢゅいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」 ピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコ!!!!!!!!(もみあげをピコピコする音) 「お、おちびちゃああああああああああああんっっ!!!?」 「おやおや~♪もみあげをめちゃくちゃピコピコしちゃってまあ・・ずいぶん喜んじゃってるね~♪」 「く、くそじじいいいい!!!!いますぐやべろおおおおおおおおおおおおお!!!」 「何言ってんの!ぴょんぴょんして喜んでんじゃん!!」 「ぴょーん!!あぢゅい!!ぴょーん!!あぢゅいいいい!!!ぴょーん!!あぢゅいいいいいいい!!ぴょーん!?どぼじであんよしゃんうごきゃにゃいのおおおおおおおお!?」 「うーん。何だか香ばしい匂いが漂ってきたなあ~♪」 「ゆぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!!あぢゅいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」 ピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコ!!!!!!!!(もみあげをピコピコする音) 「ゆっきゅりでぎないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!! ゆぎがっっ!?・・ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!・・もっちょ・・ゆっきゅり・・ぢたかったっっ!!」 いくら醜く肥え太っているとはいえ所詮はれいみゅ。すぐに中枢餡まで加熱され痙攣して死んでしまった。 かくしてでいぶの忌まわしき毒餡を引いたダブルれいみゅがこの世から退場した。 子ゆっくりは芸術鬼威惨の中では小さすぎて見栄えがせずあまりオブジェには適さない素材なのであまり興味が湧かないのか虐待もあっさりめである。 「ゆぎゃあああああああああああああああああああ!!!れいむのかわいすぎるおちびちゃんがあああああああああああああああああ!!!」 「さあ!お待ちかね!!次はでいぶの番だよ!!」 「ふ、ふざけおそらをとんでるみたーい!!ゆえっ!?あちち!!!?」 じゅ~♪(でいぶのあんよがバーベキューされる音) 「ゆぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!あづいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」 「ハイハイでいぶくん動かないでね~♪」 おにいさんはホットプレートを落ち着いて堪能してもらうためしっかり押さえつけウェルダンで丹念に足焼きしてやる。 「ぴょーん!?ぴょーん!?」 「く、くそじじい・・っっ!!ゆぎぎぎぎ・・っっ!!!!!ば、ばなぜええええええええええええ・・っっ!!!!!あづいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」 当然でいぶはジャンプして逃げようとするがおにいさんがしっかりと押えつけているため1ミクロンたりとも浮き上がることはできない。 「ぴょーん!!ぴょーん!!~~~~~~~~~~~っっっっっ!!!!!!!!! ・・い、いいかげんにじろおおおおおおおおおおお!!!!!ばなぜええええええええええええええ・・っっ!!!!!あづいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」 さらにおにいさんはでいぶの楽しいホットプレート生活に軽いスパイスを加えてあげる。 「楽しんでるね!!でももうちょっと刺激が必要かな?はい!タバスコ!!」 「ゆえっ!?」 ポトッポトッポトッ(タバスコがでいぶのおくちの中に落ちる音) 「ゆぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 「ホットプレートさんはゆっくりできるなあ・・」 「ぜんぜんゆっぐりでぎないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」 「だからさあ~ホットプレートの上でさあ~思う存分さあ~」 「あぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢっぢぢっぢぢぢいぢぢぢ!!!!!!」 「何もせずにさあ~だらだらとさあ~いつものようにさあ~」 「でをばなぜええええええええええええええええええ!!!!!!」 「ゆっくりすればいいんじゃないかとさあ~僕はさあ~思うんだけどさあ~。」 「あぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃ!!!!!!いいからばなぜええええええええええええええええ!!!!!!」 おにいさんがニコニコしながらまるで他人事といった風情でわざとゆっくりした口調ででいぶを挑発する。 さらに 「ジャンプが・し・た・い・の・か♪」 と言いつつおにいさんは右手ででいぶを押えつけ、左手の人差し指ででいぶのほっぺをツンツンしてやる。 「ふざけるなくそじじあづいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!ゆぎゃが・・っっ!!!!? じ、じぬうう・・っっ!!!!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!」 ついにでいぶが痙攣し始めた。これでは楽しい虐待タイムが終わってしまう・・っ!! だが、おにいさんは慌てず騒がず虐待鬼威惨の必携アイテム、オレンジジュースを景気良くぶっかけてあげる。 ドボドボドボドボドボ(オレンジジュースを注ぐ音) 「・・ゆぴぴっっ!?あまあま!?ごーくごーくしあわせー!?あ、あづいいいいいいいいいいいい!!!!!!」 「ここで耳よりじょーほー♪何と今でいぶ君がこんな目に遭わされてるのはまりさってやつのせいなんだ♪」 「な!?なにいいいいいいいいいいいいい!!!!!ふ、ふざけるなあああああああああああああああああああ!!!!!でいぶさまにごはんさんをはこぶきかいのぶんざいで・・」 チョロチョロ(でいぶの頭に酒を注ぐ音) 「ゆえっ!?」 「ふざけてるのはてめーだろ」 カチッ(火をつける音) 「ゆぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」 チョロチョロ(でいぶの頭に酒を注ぐ音) 「や、やべろおおおおおおおおおおおおお・・っっ!!!!」 「焦熱地獄に落ちろや。穀潰しが」 カチッ(火をつける音) 「ゆんぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!ゆ・・ぎが・・お、おのれえええええええええええええっっ!!」 「お注射の時間ですよ~♪」 ここでおにいさんは水に溶いたワサビを注射。 その数瞬後でいぶの全身の餡子が毒物に拒否反応を示し超蠕動を起こした。 そして、上方に移動したいというでいぶの強い意志により、蠕動餡子のベクトルが上を向きあんよを黒焦げにしているにもかかわらずでいぶがジャンプした。 しかし無理がたたったのか、炭化し完全にホットプレートに焦げ付いているあんよとでいぶの身体の残りの部分が分離し、でいぶの底部が崩壊した。 一瞬だけでいぶは宙を舞った。 このままなら元通りでいぶはお焦げの上に着地するだけである。 しかし、その瞬間を逃さず、おにいさんがでいぶに肘鉄をぶちかました。 「ゆべらああああああっっ!!!!!?」 これによりでいぶはぴったり1ゆっくり分横に移動した。 これにより剥き出しのあんこさんの真下にちょうど何も置かれていないまっさらでアツアツのホットプレートがあるという でいぶにとって最低最悪の位置関係になってしまった。 でいぶはすぐに重力に引かれて垂直に落ち始める。 そしてゆっくりの内臓であり筋肉であり神経であるあんこさんが直接ホットプレートに接触してしまった・・。 じゅ~♪(でいぶの新鮮なあんこさんがバーベキューされる音) その瞬間今までにない大激痛を感じたでいぶのおめめが極限まで飛び出した。 「~~~~~~っっっっ!!!?」 でいぶは大きく息を吸い込むと、 「すうううう・・っっ!!!」 今日一番の大絶叫で地下室の淀んだ空気を揺らした。 「ゆぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ!!!!!!!!」 ちなみにここまで全ておにいさんのシナリオ通り。 でいぶは自分の意思で行動しているように見えてその実おにいさんの手のひらの上で○タゴラスイッチのように踊らされているだけだったのだ。 「ハイハイオレンジジュースオレンジジュース。ハイハイかいふくやくかいふくやく」 ドボドボドボドボドボ(オレンジジュースを注ぐ音) 「ごーきゅごーきゅしあわ・・せじゃないいいいいいいいいいいいい・・っっ!!!!」 ここでおにいさんはおめめに○ッカマンを使用。 「あぢっ!!」 さらにおにいさんは緩急自在に責めまくってやる。 「あぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢ!!あぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃ!!!!!!あぢゃっ!!あぢっ!! ・・・・ゆ?あぢいっ!!あぢっ!あぢぢぢぢぢぢ!!!」 チョロチョロ(でいぶの頭に酒を注ぐ音) 「や、やべろおおおおお!!!」 「ごべんねえええええ♪ワンパターンでごべんねええええ♪」 カチッ(火をつける音) 「ゆぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ・・・・っっ!!!!」 3回にも及ぶフランベ攻撃によりでいぶの頭頂部はすっかり焼け焦げ、禿げあがり、落ち武者か河童を連想させる間抜けな姿になっていた。 ここでおにいさんはホットプレートで加熱された釘をペンチでつまむとでいぶの焼け焦げた頭皮に突き刺した。 「ゆびっ!?」 そして金槌で一気に叩きこんだ。 カン!!ブスッ!! 「ゆぎょあっ!!」 続けて2本目。 カン!!ブスッ!! 「ゆぎゃっ!!」 続けて3本目。 カン!!ブスッ!! 「くそじぎゃっ!!」 続けて4本目。 カン!!ブスッ!! 「やべろぎえっ!!」 続けて5本目。 カン!!ブスッ!! 「ばなじをぎょっ!!」 続けて6本目 カン!!ブスッ!! 「ぎげええぐぎゃっ!!」 (中略) 続けて50本目 カン!!ブスッ!! 「ごべんなぎゃっ!!」 続けて51本目 カン!!ブスッ!! 「ざいいいぎぎゃっ!!」 (中略) 続けて100本目。 カン!!ブスッ!! 「でいぶのかんぎょわっ!!」 続けて101本目。 カン!!ブスッ!! 「ぜんはいぼくでぎゃっ!!」 続けて102本目。 カン!!ブスッ!! 「すううううゆぎゃっ!!」 どうやらでいぶが完全敗北を認めたようだが、おにいさんは一心不乱に釘を打ちつけるだけで全く聞いていない。 どうやらオブジェを完成させるのに夢中のようだ。 さすがに芸術鬼威惨を名乗るだけのことはある。 段々、オブジェの完成型が見えてきた。 どうやら、でいぶの頭髪の内、フランベによって禿げあがった部分を釘で埋め尽くすつもりのようだ。 芸術家であるおにいさんはゆっくりが絶命する瞬間とオブジェが完成する瞬間を一致させることに強いこだわりをもっている。 また、今回のオブジェで一番重要なことは可能な限り大量の釘をでいぶの頭皮にぶち込むことだとおにいさんは確信している。 でいぶのHPが残りわずかであることを悟ったおにいさんは少しでも大量の釘をでいぶの頭皮にぶち込むためさっきから一心不乱に釘を打ち込み続けているのだ。 (中略) 続けて150本目。 カン!!ブスッ!! 「どれいになりまぎぎゃっ!!」 続けて151本目。 カン!!ブスッ!! 「ずうううううううぎょえ!!」 続けて152本目。 カン!!ブスッ!! 「あじのうらをなべぎゃっ!!」 続けて153本目 カン!!ブスッ!! 「ざぜでいだだぎばぐぎゃっ!!」 (中略) 続けて250本目。 カン!!ブスッ!! 「ぎゃっ!!・・ぼっど・・ゆっぐり・・じたかった・・っっ!!」 地獄の業火に焼き尽くされているかのような凄まじい苦悶の表情を浮かべでいぶが絶命した。 この時ちょうどおにいさんがあらかじめ用意していた釘が全て消費された。 最後の釘ででいぶが絶命するのもおにいさんのシナリオ通り。 やはりでいぶはおにいさんの手のひらの上で○タゴラスイッチのように踊らされていただけのようだ。 「・・ふぅ」 おにいさんは袖で額の汗をぬぐうとでいぶを透明な箱に入れた。 そして、最期の仕上げとして透明な箱に付箋をはり、作品ナンバーと作品名を筆ペンで書き入れた。 「No.0053 シルバーあんかけでいぶ」 これはこのオブジェが遠目から見ると頭に銀色の溶岩をかけられたでいぶが悶絶死しているように見えることから名づけられた。 はっきり言って意味不明である。 かくして数か月の間まりさに心身ともに筆舌に尽くしがたい苦痛を与え過労死寸前まで追い込んだでいぶが天の裁きを受けついにこの世から消滅した。 一方まりさの方はといえば、しばらくの間はでいぶ達がいつ帰ってくるか気が気でなく、その影におびえていた。 しかし、3日が経過しまりさはもう絶対にでいぶ達は帰ってこないという確信を得た。 今とても広くなったおうちの中でまりさはかってない「しあわせ~」を感じていた。 この日の天気もでいぶが死んだ3日前と同じく快晴だった。 ただ3日前と違うのはまりさが天気に相応しい晴れ晴れとした表情を浮かべていることだ。 「むーしゃむーしゃしあわせ~♪・・・・・・ゆぷぷっ、ゆぷぷぷぷっ、ぶはっ!!、ゆはははははっ!!!! ゆはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!」 (でいぶたちはしんだのぜ!!!!そしてまりさはいきてるのぜえええええええええええええええええええええええ!!!!!!) そして、ひとしきり爆笑するとまりさは雲一つない青空を見上げ、ふとあのおにいさんのことを思うのだった・・。 (ありがとう・・げーじゅつおにいさん。) 過去作 anko4119 『ゆっくりと香辛料』
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/2962.html
『でいぶの常識』 7KB 制裁 自業自得 野良ゆ 現代 ゆ虐分は少なめです ※駄文、稚拙な表現注意 ※俺設定注意 ※作、長月です 今まで書いた作品 anko259 ゆっくりちるのの生態(前編) anko268 選ばれしゆっくり anko279 新種ゆっくり誕生秘話 選ばれしゆっくり番外編 anko292 ゆっくり見ていってね anko304 またにてゐ う詐欺師てゐの日々 anko313 VS最強のゆっくり 史上最低の戦い anko333 夢と現実のはざまで anko350 あるまりさの一生 anko385 ゆっくりを拾ってきた anko425 ゆっくり Change the World(出題編) anko448 ゆっくり Change the World(出題編2) anko484 ゆっくり Change the World(解答編) anko497 あるゆっくりできない2匹の一生 anko542 てんこがゆっくりするSSさん anko558 あるドスまりさの一生 とてもゆっくりした群れ anko577「餡子ンペ09」ゆっくりを愛でてみた anko613「餡子ンペ09」れいむと幸せを呼ぶ金バッジ anko633「餡子ンペ09」としあき博士のれいぱーありす矯正計画 anko735「餡子ンペ09」あるてんこの一生 メスブタの群れ anko764「餡子ンペ09」あるさなえの一生 ゆっくりは皆それぞれ(前編) anko791「餡子ンペ09」あるさなえの一生 ゆっくりは皆それぞれ(後編) anko932 誰も救われない話 anko1022 あるババ・・お姉さんの結婚 anko1057 もらうぞ anko1127 めすぶた祭り anko1224 あるちるのの一生 ずっと続いていく物語 anko1500 ある愛でお兄さんの午後 anko1530 「餡子ンぺ10春」どうして・・・ anko1629 「餡子ンぺ10春」ゆっくりというのは anko1638 とてもかわいそうなでいぶ anko1672 奇跡のドス anko1713 まりさときゃっしゅさん anko1775 ゆっくりしたおちびちゃん anko1836 希少種になる薬 anko1877 幸せまりさ一家 anko1898 となりにいるのは anko2000 最高のゆっくちプレイス anko2104 「餡子ンぺ10夏」代償 anko2116 「餡子ンぺ10夏」あるおりんの一生 わんわんおじいさんと一緒 anko2262 野良まりさと野良おじさん anko2308 どこへいったんだ anko2452 夕暮れと三日月 anko2687 夕暮れと信じる者の幸福 anko2747 ゆっくりまりしゃと聖夜のシンデレラガール anko2760 夕暮れと戻れないあの頃 anko2792 マスタードを少しだけ anko2830 しあわせーなてんこ anko2860 マスタードを少しだけ2 でいぶの常識 その日俺は大学の講義が休講になり近くの公園のベンチで一服していた。 この公園は平日の昼間は人気が全くなくのんびり時間を潰すにはちょうどいい。最近全面禁煙な場所も多い中、タバコも吸い放題なので愛煙家の俺のお気に入りの場所だ。 「ん・・・あれって。」 前方から野良ゆっくりの家族がやってきた。 母と思われる成体サイズのれいむと手のひらサイズのれいむとまりさの3匹。 「ゆゆっあんなところにじじいがいるよ!!」 「じじいはあまあまちょーらいね!!」 「きゃわいいまりしゃにあまあまよこすんらじぇ!!」 俺を見つけた途端あまあまを要求し始めた。冗談は存在だけにして欲しいものだが。 「ゆゆ?むししないでね!!!しつれいでしょぉおおおお!!!」 無視している俺が気に食わないのか親れいむはさらにまくし立てる。 「れいむはしんぐるまざーなんだよ!!かわいそうなんだよ!!そんなれいむにはあまあまをけんじょーするのがじょーしきでしょ!!」 「しょうなんらじぇ!!じょーしきなんだからあみゃあみゃよこすんらじぇ!!」 「じじいはじょーしきもわからないにょ!!ばきゃなの!?しぬにょ!?」 子ゆっくり達も同調して喚きたててきた。本当に鬱陶しい。 というかこいつら常識の意味分かっていっているのか。常識というのはお前ら汚饅頭に都合のいい妄想って意味じゃないんだぞ。 「じょーしきっのないじじいはせいっさいっだよ!!」 一向に何の反応も示さない俺の態度に業を煮やしたのか親れいむが体当たりしてきた。 ぽすん ぽすん ぽすん 別に痛くもなんともないが腹立たしいことこのうえない。 「いいかげんしろ。ズボンが汚れるだろ。」 「ゆげっ!!」 カウンターで蹴りを入れてやったら面白いように決まった。こいつら本当に弱すぎる。 「どぼじでこんなことするのぉおおおお!!!いきなりぼうりょくをふるうなんてじじいにはじょーしきってもんがないのぉおおおお!!」 「うるせぇよ!!」 「ゆべっ!!!」 さっきまでの勢いはどこへやら。涙目で喚くれいむに俺は更に一発蹴りをお見舞いする。 大体先に手を出してきたのはそっちだろ。こいつら健忘症か何かなのか? それにしても常識常識とうるさい奴らだ。 そんなに常識が好きならたっぷり教えてやろう。餡子の髄までな。 俺はニヤリと笑う。ちょうど暇してたところだ。 「ゆんやぁあああああ!!!あじゅいいいいいい!!!!」 「れいむのゆっくりしたぴこぴこさんがぁああああ!!!」 「もうおうちかえりゅうううううううう!!!!」 人気のない公園にゆっくりの悲鳴が鳴り響いた。 30分後、俺の前には3匹のはげ饅頭が並んでいた。きれいな丸坊主ではなく中途半端にあちこち毛が残っているのが逆にみすぼらしい。 3匹とも傷だらけで目からは帯のような涙を流している。 「よーし。憶えたな。そしたら俺に続いて復唱しろよ。」 「は・・はい・・・」 そんなれいむ達を俺はタバコを吸いながら復唱させる。俺が先程おぼえさせた世間の常識って奴を。 「れいむたちはうんうん以下のくそ饅頭です!!」 「「「れ・・れいむたちはうんうんいかのくそまんじゅうですぅ!!」」」 「人間さんに迷惑ばかりかける生ゴミで生きてる価値などありません!!」 「「「にんげんさんにめいわくばかりかけるなまごみでいきてるかちなどありませんんん!!!」」」 「今日も人間さんのゆっくりタイムを邪魔してしまい真に申し訳ございませんでした!!もう二度とこのようなまねはいたしません!!」 「「「きょうもにんげんさんのゆっくりたいむをじゃましてしまいまことにもうしわけございませんでした!!もうにどとこんなまねはしません!!」」」 悔しいのだろう。れいむ達の声は震えている。 まぁ髪の毛引きちぎったり、タバコで根性焼きして無理やり言わせているわけだから当たり前か。 ちなみにリボンと帽子は没収しておいた。でないとこいつらすぐ「もうおうちかえるぅううう!!!」とか言って逃げ出すからだ。 それにしても気持ち悪いなこいつら。はげてるのとタバコの焦げ後が相まってなんか悪い病気にでもかかってるみたいだ。 「なにひとごとみたいにいってるのぉおおお!!!ぜんぶじじいのせいでしょおおおおおお!!!」 「うるせーよくそ饅頭!!!誰がジジイだ!!」 ジュウウウウウウ 俺はれいむの額にタバコを押し付ける。 「あじゅいいいいいいいいいいい!!!!!」 ゴロゴロと転げまわりながら熱がるれいむ。本当に学習能力のない奴だ。 というかモノローグに突っ込んでんじゃねーよ。こいつらSSの常識も知らないのかよ、まったく。 「あーそろそろお前らの相手すんのも飽きてきたな・・・」 「えっ・・・だったらもう・・・」 やっとお飾りを返して開放される。そうほっとするれいむ達。しかし俺は 「んじゃ死ね。」 グチャリと俺は子れいむを踏み潰し 「ゆんゃあああああれいみゅがぁあああああああ!!!・・・ゆべ!!」 すぐさま姉妹の死でパニック状態の子まりさも踏み潰す。残ったのは何のゆっくりかわからないはげ饅頭の親れいむだけだ。 「どぼじでぇえええええ!!!でいぶたちおにいさんのいうとおりにしたでしょぉおおおお!!!」 「は?別に俺は言うとおりにすれば許すなんて一言も言ってないぞ。ただ死ぬ前に世間の常識って奴を教えてやっただけだ。」 「そんなぁあああああどぼじでそんなこというのぉおおお!!!!」 「良く考えてみろ。お前みたいな害獣、生かしておくわけないだろ。常識で考えろ。常識で。」 そう言って俺はれいむにむかって足を振り上げる。 「ゆんやぁああああああああああああ!!!!」 れいむはこの上なく絶望に満ちた声を上げ グチョリ 動く汚物からただの生ゴミに進化した。 「おお、もうこんな時間か。そろそろ戻らないと。」 俺は腕時計を見て次の講義の時間が迫っていることに気づく。そろそろ大学に戻らないと。 「と、その前に・・・」 俺はゴミ箱を探しれいむ達の死骸を入れる。没収していた飾りも一緒にだ。 「ゴミはゴミ箱へ。これも常識だな。」 後書き 常識に囚われなくてもいいのは幻想郷だけ。現実世界じゃ非常識な奴扱いされるだけだよ!!そんな話。 面白かった、ゆっくりできた、と言う方は下のゆっくりできたよ!!ボタンを押していただければ幸いです。 ご意見、ご感想、ご要望は感想用掲示板(長月用スレ)でおねがいします。URLは下にある通りです。 ふたば系ゆっくりSS感想用掲示板(長月用スレ) http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1274852907/
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/522.html
『でいぶお姉さんと』 「ここはれいむのおうちだよ!ゆっくりしていってね!!」 ここは、森にほど近い、ログハウス調の一軒家。 つまり、人間さんのおうちだった。 れいむは実のところ、このおうちに人間さんが出入りしているのを見たことがあり、 当然ながら、ここが今でも人間さんのおうちであると言うことも理解している。 だが、れいむはそれでもなお、この木の香りが芳しい、キレイで大きなおうちを、 自分のものにしようと企んだのであった。 「ゆふふ。れいむはしんぐるまざーなんだよ!かわいそうなんだよ!だからここはれいむのおうちなんだよ!」 そう、れいむの額に生える茎には5匹の可愛らしいおちびちゃん達がぶら下がっていた。 赤まりさが2匹と赤れいむが3匹、みんなれいむそっくりの、食べちゃいたいほど可愛いおちびちゃん達。 「ゆぴぃ・・・ゆぴぃ・・・むーちゃ、むーちゃ・・・」 「しゅーや、しゅーや・・・きゃわい・・くっちぇ・・・ごめんにぇ・・・」 ちなみにすっきりーのお相手はおそらくまりさ。 なぜおそらくかと言うと、ある朝目を覚ましてみたら、なぜか頭上におちびちゃん達ができていたからだ。 おうち入り口のバリケード、いわゆる『けっかい』が壊れていたので、 多分何者かが侵入、寝てる間にレイパーして、そのまま去っていったと思われる。 この地域ではよくあることだ。 「ゆふーん。れいむはかわいそうなんだよ!!はやくごはんをもってきてね!あるだけぜんぶでいいよ!!」 そして、いわゆる『でいぶ』であるれいむの目の前には、この家の本当の主人、 小柄で癖っ毛のあるショートカットの、コロコロとした子犬のように可愛らしいお姉さんが立っていた。 ************************************************* 「ここは私のおうちだよ。れいむもゆっくりしていってね。」 「ゆゆっ!?ちがうよ!ここはれいむのおうちだよ! ゆっくりしないでごはんをもってきてね!もってきたらさっさとしんでね!」 普通のお兄さんあたりに言っていたら、 親子まとめて、部屋の壁中に餡子を飛び散らせるであろう、完全な死亡フラグである。 だが、お姉さんは温和そうな顔に浮かべていた笑みを、さらに明るいモノにして、れいむに話しかけた。 「うふふ。れいむちゃん、頭が悪いのね。かわいそう~。」 「ゆゆっ!!?」 「あ、驚かせちゃった?ごめんね。ホントのこといっちゃって。」 。 「ゆぎぃいいい!!なにいってるの!?ここはれいむのおうちなんだよ!!」 「うん、それじゃ、今から私のおうちにするね。キレイなおうちだから、可愛い私が使ってあげるね。」 「ゆ、ゆがぁぁあああ!?」 れいむは、いきなりとんでもない事を言われた。 れいむの中ではすでに、ここはずっと昔かられいむのおうちという事になっていたのだが、 そのゆっくりしたおうちを、使ってあげるからよこせと言うのである。 なんて横暴なお姉さん!! 「それじゃ、れいむちゃんは、これから私の召使いね。可愛い私の召使いになれるなんて、幸せーだね(笑)」 「ゆ、ゆぇぇえええ!!?」 お姉さんのターンはまだまだ続く。 人間でないれいむの視点か云々は問わず、確かにお姉さんは『可愛い』という表現がぴったりな人間さんだった。 栗色でわずかにクセのあるショートヘアーは、すーりすーりしたいほどなめらかで、 スベスベの白い肌に包まれた、子犬のように愛らしい顔は、れいむ視点でもゆっくり出来た。 小柄ではあっても肉付きは適度にある体は、れいむも胸元に飛び込んで、両手で包まれたいと思うほどだったし、 着ている服もほわほわとしていて清潔で、全身からほのかにお花のような、お菓子のような、とてもいい香りが漂う。 彼女は、この木目も美しい暖かなおうちと、森に囲まれた色とりどりの花が咲き誇る庭の中にいて、 完全に調和がとれる、ホントに、本当にとても可愛らしいお姉さんだった。 なのに、そのお姉さんのほんわりとした声で奏でられる言葉だけが、 なんだかとんでもなくゆっくりしていないのである。 「それじゃ、れいむちゃん。私、これからご飯だから、お皿運んでね。」 「ゆゆっ!?なんでれいむがそんなことするの!?ばかなの?しぬの?」 「うーん、あ、そうか。れいむちゃん、汚いからお皿は触れないよね。私ったら、可愛くってごめんね。」 「ゆひぃいいいいぎぎぎぎ!!?」 なんで、どうしてこんなに癇に障るのだろう。 れいむはこの日、一日中ゆっくり出来ない気分を味わい続けた。 ともあれ、渋々ながられいむは、このおうちでお姉さんと一緒に暮らす事になったのであった。 少なくとも、おうちは頑丈で安全だったし、お姉さんは野菜クズなりダシを取ったニボシなりをくれたりしたから。 おちびちゃんのためにも、このおうちを捨てることはできない。 それが、大きな判断ミスであった事に、れいむは後になって気づく事になる・・・ ************************************************* それから2日後の朝。 れいむは、お姉さんがお布団としてくれた、 お姉さんが自分で縫ったのであろうふわふわのクッションの上で、 おちびちゃんが育っていくのを眺めながらゆっくりしていた。 「ゆゆ~ん。れいむのおちびちゃん、ゆっくりしてね~。」 「・・・くち・・・にぇ・・・」 「ゆゆ~ん。もうおへんじができるんだね~。さすが、れいむのおちびちゃんだよ~。」 おちびちゃん達の発育は良好。 れいむは産まれてこれまで味わった中でも一番のゆっくりを満喫していた。 「ああ~、困っちゃったわ。」 そこにお姉さんが、困った困ったと言った表情で、空っぽのビンと焼き立ての食パンを手に持って飛び出してきた。 「ハチミツ切らしちゃってたの忘れてた・・・金曜日の朝はハチミツって決めてるのに。」 「ゆ?ゆっくりどっかいってね!れいむは、おちびちゃんとゆっくりしてるんだよ!」 ぷちっ! その次の瞬間、お姉さんの手には、れいむのおちびちゃんの内一匹、 コロコロと可愛らしい赤まりさが握られていた。 「ゆ・・・ゆぅぅぁぁあああ!?なにじでるのぉおおお!?おぢびぢゃんは、もっどゆっぐ」 「しょうがないから、餡子パンでいっか。」 サクッ!・・・ぬりぬり。 「ぴぇ・・・・」 れいむは目を疑った。 お姉さんは、赤まりさの腹にバターナイフを刺して餡子を取り出し、パンにぬっていたのである。 ムシャムシャ・・・ 「うん、うん!食パンにも合うのね、餡子って!失敗してもただでは起きない私、さっすがー。」 「ゆぁぁあああ!?どうぢでおぢびちゃんたべちゃうのぉおおお!?ゆっぐぢぢでだのにぃいいい!!」 だが、それに対する返答は、またしてもれいむの予想の斜め上をいくものであった。 「お姉さんはハチミツが無くってかわいそうなんだよ。ゆっくりおちびちゃんくらい食べさせてね。」 「そ、そんなのゆるすわけないでしょぉおお!?」 「許すとか別にどうでもいいよ。れいむは私の召使いなんだから、私をゆっくりさせてくれればいいの。」 「ゆぇぇぇえええ!?」 れいむにとって一つだけ幸いだったことは、お姉さんが小食だったため、 食パン一枚で満足してくれた事だった。 ************************************************* その後、とりあえず大過なく過ごすことができ、 ついにれいむのおちびちゃん達4匹が、ゆっくりした誕生の時を迎えた。 ぷるぷるぷる・・・ぷちっ!・・・・ぺしょん! 「きゃわいくっちぇごめんにぇ!」(キュピーン!)×4 末っ子赤まりさの方もそうだが、長女から3女までの赤れいむについては特にれいむそっくりで、 (少なくとも母視点では)これまで会ったどんなゆっくりよりもゆっくりしたおちびちゃん達であった。 「ゆっくりしていってね!ゆぅーん、ゆっくりしたおちびちゃんだよぉ!」 だが、残念な事にその場にはお姉さんもいた。 「んー、やっぱり可愛くないよ。これまで見た中で、下から2番目くらい。」 「へ、へんなごどいうなぁぁあああ!!れいむのおちびぢゃんは、せかいいちなんだよぉおお!!」 「ゆぁーん、にばんめってなんにゃのー!!」 「ん?聞きたいの?」 当然この後、れいむも、赤ゆっくり達も、お姉さんなど無視してれば良かったと後悔することになる。 「昨日ね、道歩いてたら、うっかりありすの赤ちゃん踏んづけちゃったのよ~。 あの、潰れた赤ちゃんよりはゆっくりしてるよ。よかったね!」 あんまりの返答に、一家全員5分ばかり放心状態になった後、 赤ゆっくり達は全員一斉に叫び声をあげたのであった。 「ゆ、ゆっぴゃぁぁああん!どうしちぇぇぇえ!?」 「おにぇーしゃん、ゆっくちできにゃいー。」 「どうぢで、どうぢでぞんなごどいうのぉおおお!? でいぶのおぢびぢゃんは、ゆっぐぢさせなきゃだめなんだよぉおお!!」 「・・・うーん。でもれいむばっかり。どうしよっか?」 れいむの抗議はいつも通り空振りした。 お姉さんは全然聞いてくれない。 「れいむがこんなに増えちゃったら、呼びにくいよね。・・・れいむ!ゆっくりしていってね!」 「「「「ゆっくり(ち)していってね!!」」」」 一斉に返事を返すれいむ親子。 お姉さんは大変不満そうだ。 全員同じ名前と言うのはゆっくりを飼う人全てが感じるややこしさだが、お姉さんも例外ではなかったらしい。 そして、 「だめか。それじゃ、こうしましょう。」 お姉さんはそう言うと、 ぶちっ! 「ゆぴぃ!?れ、れいみゅのもみあげしゃんがぁぁあ!!」 無造作に長女れいむの右もみあげを引きちぎり、 びちりっ! 「ゆぴゃぁぁあ!?どうしちぇこんなことしゅるのぉ!?」 次女れいむの左もみあげを引きちぎり、 びりっ!! 「ぴゃぁ!?れいみゅの、しるくみちゃいになめらかな、おりぼんしゃんがー!?」 3女れいむのリボンを引きちぎった。 そしてさらに、 「それじゃ、あなたが1番、あなたが2番、あなたが3番、まりさは4番って呼ぶね。」 「れいみゅはれいみゅなのにぃいいい!!」 「れいみゅはれいみゅだよ!ゆっくちできにゃいよぉ。」 「どうしちぇしょんなこというにょー。」 姉妹にムリヤリ、適当な名前を与えると宣言してしまった。 れいむ3姉妹は訳がわからないうちにゆっくり出来なくなって、 それでも気力は削がれていないのか、必死で反論する。 一方4女まりさの方は、少し反応が違った。 「4ってにゃに?まりしゃ、わからにゃいよぉ。」 そう、自分が与えられた『4』という数字が理解できなかったのだ。 ゆっくりに3を越える数の概念は『たくさん』しかないのだから。 そんなわけで4女まりさだけは、もはや数で呼ばれる認識すらなく、 何だか訳わからない名前で呼ばれようとしていることに困惑していた。 「あ、3までしかわからないのね。しょうがないっか。」 ひょいっ!じゃばじゃば・・・ すると、何を思ったかお姉さん、4女まりさを拾い上げて水道で洗い始める。 「ゆぴゃーん。まりしゃ、おみじゅしゃんはゆっくちできにゃいよぉ。」 ひょいっ、ぱくっ!むしゃむしゃむしゃ・・・ごくん。 「コレでよし。」 お姉さんは、4女まりさをひょいっと摘みあげ、洗って、自分の口に放り込んでしまった。 「なにやっでるのぉぉおお!!」 お姉さんは、相変わらず無視。 どうやら赤ゆっくり達の対応に関心が行ってしまっているらしい。 「で、えーと、あなた1番だったっけ?」 「2、2ばんでしゅぅぅうう!!」 「え、そうだっけ?・・・うーん、判りにくいなぁ・・・あ、そうだ!」 ぶちぃぃっ!! 「ゆぴゃぁぁああああ!!」 れいむが必死で抗議している目の前で、すでにお飾りがボロボロにされていたおちびちゃんが、 髪の毛も、残りのお飾りも、根こそぎむしり取られていった。 「ゆっくちできにゃいよぉ。」 「かみのけしゃん・・・ぺーりょ、ぺーりょ・・・もどってきちぇ・・・」 「どうしちぇ・・・」 キュッ!キュキュッ! お姉さんは、丸坊主にした赤れいむ達の頭部に、油性マジックで『1』『2』『3』と書いていく。 れいむが我に返った時、先ほどまでゆっくりしたおちびちゃん達だったモノは、 気を落としてちょっと形が扁平になった、ビリヤードの玉のようなおちびちゃん達になっていた。 「うん、バッチリ!」 「ど、・・・どうぢでぇ・・・」 もはや、怒鳴りつける気力もむしり取られたれいむがお姉さんに問いかけると、 お姉さんは機嫌の良い満面の笑みで、それでも不思議そうな顔をして、れいむに答えたのであった。 「れいむちゃんは、私の召使いなんだから、そのおちびちゃんも召使いでしょ? 私をゆっくりさせてくれるのは、当然でしょ?」 お姉さんは、れいむが見る限り本気で不思議そうに首をかしげていた・・・。 「うーん。何か間違ったかなぁ?」 「な・・・なに、いってるの・・・」 赤れいむ達の顔を覗き込むように屈みこみ、目をつぶって、 本気でれいむが泣いている理由がわからないと言う態度を取るお姉さん。 その態度にれいむはようやく、お姉さんに自分の理解を越えた何かを感じ取ったのであった。 れいむは、その瞬間、自分とおちびちゃんの命の危機を確信する。 そして、頭で考えるよりも速く、衝動的な行動に出た。 「ゆぎぃいいいっ、じねぇええええ!!」 「?」 ぽよんっ!! 渾身の体当たりを、お姉さんの無防備な背中に、思い切りぶちかましたのである・・・ 「痛ーい(笑)」 それは、お姉さんに致命的なダメージを与える事ができたと、れいむに確信させるには十分な手ごたえだった。 「おちびちゃん、はやくこんなところからにげるよ!!おくちのなかにはいってね!!」 「ゆぁーん、ゆっくちできにゃいー。」 倒した以上お姉さんの事など眼中にはない。 大きくお口を開けて、おちびちゃん達に口内に入るように促す。 そうだ、最初からこうしていればよかったのだ。 「ゆぁーん。おきゃーしゃーん。しゅーりしゅーりしちぇー。」 「れいみゅ、うんうんしちゃいよー。」 「そんなのあとだよ!はや『ドゴッ!!』ゆびぇぇええ!?」 グズるおちびちゃん達を必死に説得していたれいむ。 だが、ようやくお口の中におちびちゃんが入ろうとしたその瞬間、れいむの後頭部に強烈な衝撃が走った。 「ゆびゃぁぁあ!?ど、どうぢでぇぇええ!?」 そこには、確かに致命傷を与えたはずの、 だが、相変わらず暖かな笑顔を絶やさない、いつものお姉さんが立っていた。 れいむは自分の受けた衝撃が、お姉さんのあんよによる一撃であることを悟り、 そして、ついにお姉さんと自分の力の差、 それ以上に、自分達に生命の危険が迫っている状況を悟った。 「ゆ・・ぎ・・・お、おねえさん、やめてね・・・ゆっぐぢさせてね・・・」 「ゆぁーん、おきゃーしゃんゆっくちさせちぇー。」 だが、お姉さんの口から軽やかに奏でられた言葉は、またもれいむの予測の上をいくものであった。 「うふふ。私ったら強ーい。」 「ゆぇぇえ!?」 蹴りの一撃からも、れいむですら理解した力の差。 その力の差がある上に、さらに油断させて背後から襲うと言う卑劣極まる方法でれいむを倒しておきながら。 「思い知った?ねえ、私の強さ、思い知った?うふふ。」 「ゆ、な、なにいっで・・・」 「強い強いお姉さんに逆らった、れいむちゃんが悪いんだよ。これは制裁だからね。うふふ。怒っちゃだめだよ。」 「ゆ、ゆぇぇええ!?」 お姉さんは、どこまでも、どこまでもいつも通りの笑顔だった。 そこには一切の裏が無く、れいむですらわかるほど正直な、楽しげな笑顔だった。 それは・・・れいむをして、薄ら寒さを感じさせるほどに・・・何の悪意も感じられないほどの・・・ 「ゆぴぃ、ゆぁーん、おにぇーしゃん、ゆっくちやめちぇー。」 「きょわいよぉ。どうしちぇかわいいれいみゅがー。」 「きゃわいくってごめんにゃしゃいー。」 結論から言うと、お姉さんはこの時も、その後もずっと機嫌は良く、 れいむを蹴った以外は特に危害を加えもしなかった。 「れいむちゃーん。お皿持っていってー。」 「ゆ、ゆっぐぢやりまずぅぅ!」 「一番と二番はお醤油、三番はお箸を運んでね。」 「ゆぁーん。れいみゅ、さんばんじゃにゃいー。」 「どうでもいいでしょ?元から大して可愛くない名前なんだし。」 「どうしちぇそんなこというにょぉおお!?」 そして、扱いも変わる事は無かった。 ************************************************* れいむはお姉さんと会って数日、ずっと悩みを抱えていた。 それは最初、『お姉さんがゆっくりさせてくれない』であったが、 徐々に『お姉さんがゆっくりしてくれない』となり、 最近は、『お姉さんはどうしてゆっくりしてくれないのか?』という疑問へとつながっていった。 そのような疑問は、本来でいぶと呼ばれるような低脳ゆっくりなら、 『おねえさんはゆっくりしてないね!じゃまだから、さっさとしんでね!』となる所だ。 だが、あのお姉さんが、 笑顔を絶やさず、 暖かく、 ふわふわしていて、 いい香りがして、 れいむの曇りきった感覚でもなお、 れいむが知る限り全ての人間さん、全てゆっくりの中でも、 飛びぬけてゆっくりしていたがために、『なぜ?』と言うところまで思考がその先に進んだのである。 お姉さんは、とてもゆっくりしている。 そう、そのゆっくりっぷりたるや尋常なものではない。 お姉さんは、れいむの次、いや、れいむと同じくらいゆっくりしている。 なのに、なんでお姉さんは、れいむにあんなゆっくり出来ないことをするのだろう・・・ それに何となく、お姉さんから受けた言葉、受けた仕打ちに、 初めて見聞きしたものではないような感覚があったのである。 そしてこの日、れいむの全ての疑問が氷解した。 「ねー、れいむちゃーん。」 「ゆ、ゆっくりしてね!ゆっくりさせてね!」 「お話するだけよぉ。ね、れいむちゃん。」 「ゆ・・・」 「私ね、最近『でいぶっぽい』って言われるの。不思議よね。」 「ゆ、ゆぅ・・・?」 れいむも、『でいぶ』と言われるものについて聞いたことがあった。 曰く、 でいぶとは、ゆっくりしてないゆっくりである。 でいぶとは、自分がゆっくりするため、他ゆっくりの迷惑など無視するゆっくりである。 でいぶとは、自分がゆっくりするためには、他の全ての生き物が奉仕してくれて当然だというゆっくりである。 「・・・・・・。」 外で、お姉さんが同じ人間さん相手にどう振舞っているかなんて、れいむは知らない。 だが、れいむの知る限り、お姉さんは確かに『でいぶ』そのものであった・・・。 「ねー、れいむちゃーん。聞いてるの?」 「ゆ、ゆゆっ?きいてるよ!」 「私とれいむちゃんがそっくり、だなんて、見る目ないよねー。」 「ゆ・・・な、なにいってるのぉおおお!?」 「何って、・・・れいむちゃんって、『でいぶ』でしょ?」 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆぅぅぅううう!?」 れいむは、しかし、・・・・・・否定できなかった。 そうだった。 れいむがこれまで、このお姉さんと出会うまでやってきた事、言ってきた事は・・・ お姉さんが、れいむにやった事、言った事と、そっくり瓜二つだったのである。 「失礼な話よねー。ね、れい・・・聞いてる?」 ************************************************* その日の夜、おちびちゃん達がゆっくり出来ない寝顔で、 涙を目尻に浮かべたまま寝息を立て始めた頃、れいむはひとり、想いをめぐらす。 れいむは、全てを悔いていた。 そうだ、全ては、自分が招いたことだったのだ。 これまですっかり忘れていたが、このおうちは、れいむより先にお姉さんが住んでいた。 それを、横取りしようとしたのが、全ての始まりだったのだ。 れいむは、お姉さんが何を考えて、今まで自分に辛く当っていたのか、 想像をめぐらし続ける。 きっと、お姉さんはれいむがでいぶであることが許せなかったのだろう。 だから、あんなにゆっくりしているのに、わざわざでいぶのように振る舞い、 自分と、おちびちゃん達の心を傷つけてきた。 そうだ。 本当の虐待お姉さん等とよばれる人間さんに会っていたとしたら、 自分は一撃で殺されていたに違いない。 他のゆっくりの群れに同じ振る舞いをして、 それが手練れぞろいの強力な群れだったりしたら、 やはり自分はただでは済まなかったに違いないのだ。 それを、お姉さんは、五体満足で(おちびちゃんは酷い事になったが)助けてくれている。 ご飯もお姉さんと同じものではないが、腹が膨れる程度にくれている。 この寝床のクッションも、ちゃんと洗濯してくれていて、いつもフカフカだ。 この夜・・・ れいむは、図らずもお姉さんによって、でいぶであることから抜け出せたのであった。 そしてれいむは、このおうちから出る事を決心した。 明日、お姉さんにちゃんと謝って・・・ ************************************************* 「・・・ということだよ。れいむは、ゆっくりはんせいしたよ。」 「ふーん。」 「だから、このおうちは、おねえさんのものだよ。れいむはでていくよ。」 「ふーん。」 「おちびちゃん。おかーさんといっしょに、ゆっくりしたおうちをさがそうね。」 「ゆぅ、ゆっくちりかいしちゃよ・・・」 れいむは、もはやここに来た時のでいぶではなかった。 その表情は憑き物がおちたかのようにすっきりと晴れやかで、 自立した、母としての決意と誇りに満ちた、本当にゆっくりしたゆっくりのものであった。 「じゃあ、れいむはでていくから、このとびらさんをあけてね。」 れいむはおちびちゃんたちをお口に入れ、玄関の扉の前に立つ。 まるで生まれ変わった自分、その新たなゆん生への扉の前に立っているかのように。 「ん?どうして?」 お姉さんは、扉を開けてはくれなかった。 「ゆ・・・?だって、れいむはでていくんだよ?」 「だめよ。れいむちゃんは、私の召使いなんだから。」 「ゆ、・・・・・・ゆぅ?」 「れいむちゃんみたいな、可愛くなくって賢くないゆっくりは、可愛い私の言うことを聞いてればいいのよ(笑)」 「ゆ、ゆ、ゆぅ?」 「光栄でしょ!それじゃ、これからもゆっくりさせてね!」 「ゆ・・・ゆぁああああ!?」 お姉さんは、今日もいつもどおりのゆっくりとした笑顔だった。 「でね。今日もハチミツ買い忘れてたから、おちびちゃんの餡子ちょうだい。」 「な・・・な、なにいって・・・」 「私はハチミツが無くってとってもかわいそうなんだから、当然おちびちゃんくらいくれるよね。」 「お、ねえさ・・・?」 「可愛くってごめんね!」 こうして、れいむはその日、 生まれて初めて、 でいぶに出会うことの本当の恐怖を思い知らされたのであった。 お姉さんはその日以降も、いつも笑顔で、暖かく、いい香りで、とてもゆっくりしていた。 そして、れいむはこれまでと同様、末永く、幸せー(お姉さん談)に暮らしたのである。 挿絵:おまんじゅうあき
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/511.html
『でいぶは死ななきゃ治らない』 「こんなすこしで、たりるわけないでしょぉおお!!ばかなの!?しぬの!?」 「ま・・まりさも、がんばってるんだよぉぉ・・・」 「むーちゃむーちゃ、それなりー。ゆぅ、れいみゅもっとたべちゃいよ!」 「むーしゃむーしゃ!!ほら、もうなくなっちゃたよ!やくたたずなまりさは、はやくかりにいってね!」 「ゆ、ゆぅぅ・・・もっと、ゆっくり・・・した、かった・・・」 こうして妻であるでいぶと、母でいぶそっくりな赤でいぶ3匹に大量の食料を集めさせられ続けた父まりさは、 過労と飢えによって馬鹿馬鹿しい死を迎えようとしていた。 と、よくある喜劇が行われているのは我が家の庭だ。 あの母でいぶと父まりさは、俺の家の飼いゆっくり。 まあ、『飼い』とは言っても別に飯をやっている訳ではなく、 雑草処理と害虫駆除のために庭に放し飼いにしているだけだが。 「おちびちゃん、きょうはゆっくりおひるねしようね。」 「ゆっくちしゅーやしゅーやしゅるよ!!」×3 だから、当然ガキを作るのも自由だ。 増えすぎたら庭の雑草や虫がいなくなって、自然とガキどもも飢え死にする。 個体調整は自然にまかせりゃいいのだ。 ・・・と、思ってたのだが、成体まりさの方が先に死んでしまうのは計算外だった。 「おい、クソでいぶ。てめぇ、まりさが死んだら狩りできんのか?」 「ゆふぅ~ん。なにいってるの?れいむがそんなことするわけないでしょ! ごはんはおにーさんがもってくればいいんだよ!そんなこともわかんないの?ばかなの?しぬの?」 「ゆっくちしにゃいで、とっととあみゃあみゃもってこい!くしょじじい!!」×3 やっぱり予想通り、まりさがここで死んでしまうと庭の管理は任せられなくなりそうだ。 「・・・ちっ、ゴミ共め。手間かけさせやがって。」 そんなわけで、俺はでっぷりひょうたん型に太った母でいぶと、なすび型に太った赤でいぶ3匹、 そしてゲッソリ痩せて瀕死の父まりさを両手に抱えると、台所へと向かった。 「ゆふーん。ようやくごはんをもってくるきになったの?ゆっくりしないではやくしてね!」 そう言っている母でいぶが仰向けに寝ているのは、台所のまな板の上。 そして俺は、 すとんっ! 「ゆ・・・・・・ゆ、ゆぎゃぁぁああああああ!!」 でいぶのひょうたん型に膨らんだ下膨れを、下唇の下辺りから包丁でバッサリ切り落としてやった。 「ど、どうぢでごんなごどずるのぉぉおお!?」 くるり。 泣き叫ぶでいぶを、傷口から餡子がこぼれないように、頭頂部を下にして立たせてやる。 丁度逆立ちしたような感じだ。 んで次は赤でいぶ達。 「おきゃーしゃんになにしちぇるの?ゆっくちできにゃいじじいはちね!!」 「「ゆっくちしんでにぇ!!」」 正直言って赤でいぶ達など、殺す労力ももったいないのだが、まあしょうがないか。 「最期に母親の役に立って死ね。」 びりっ!ぼと。 「ぴぃ・・・」 ぶちっ!ぼと。 「ぴぇ・・・」 びちっ!ぼと。 「ぴぅ・・・」 でっぷり肥った赤でいぶ達から、卵を割る要領で中身の餡子を取り除いてやる。 苦しまずに死なせてやったんだからありがたく思え。 そんで、出来あがった赤でいぶのデスマスク3つを、母でいぶの、下膨れを切り落とした傷口に敷き詰める。 ぺたぺた。 んで、まだ餡子がところどころ見えている母でいぶのあんよに、オレンジジュースを気前よくぶっかける。 じゃばじゃばじゃばじゃば・・・ 「ゆ?あんよがゆっくりいたくなくなってきたよ!」 はい、出来上がり。 我が子のデスマスクはよく馴染むようで、母でいぶの傷口はあっという間にふさがり、健康的なあんよに回復した。 これで、ひょうたん型にだらしなく肥えたくそでいぶが、あっという間にバスケットボール型のれいむに早変わり。 残ったオレンジジュースを息絶え絶えの父まりさに飲ませてやれば、 夫婦ともに我が家に来た頃の新婚時代に若返りである。 10分後、見事全快したれいむには、とりあえず説教だ。 「おい。お前まーたでいぶになりやがって。」 げしっ!げしっ! れいむはすでに罪を自覚しており、俺の蹴りを甘んじて受けながら泣いて謝っている。 「ゆぴぃぃっ!?ごめんなざいぃぃ、れいむ、そんなつもりないのに、いつのまにかでいぶになっちゃうんでずぅぅ!!」 げしっ! 「お前の可愛いおちびちゃんとやらが死んだのも、お前のせいだぞ。このクソでいぶが!!」 「ゆぁぁぁん!!ごべんなざいぃぃ!!おぢびぢゃぁん!まりさぁぁあ!ごべんなざいぃぃいい!!」 ・・・つい先ほどまででいぶであったれいむだが、こいつは基本的には温厚で話もわかる、そこそこ賢いれいむだったりする。 だが、どういうわけかすっきりーして子供を作ると、いつの間にかでいぶ化してしまうのだ。 子供が出来たら駄目なのか、子育てのためおうちにこもるのが駄目なのか、運動不足でブクブク太ると駄目なのかは不明だ。 とにかくひょうたん型にでっぷりと肥えると、とたんに性格が悪くなるらしい。 あの下膨れに、れいむをでいぶ化させる毒のようなものが溜まっているのだろうか・・・ 「これに懲りたら子作りはやめろ。お前は母親に向いてない。」 「ゆっくりりかいしたよ・・・」 「れいむ!まりさはすっきりーなんてしなくても、れいむがだいっすきだよ!ゆっくりしてね!」 「ゆぅ・・・ゆぇーん、まりさぁぁ・・・」 ホント、余計な手間だから、これに懲りたら子作りはやめて欲しいモノだ。 まあ、今回で17回目だし、たぶん明日の朝にはれいむの頭上に赤ゆっくりがぶら下がっているのは確実だろうが。
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/536.html
平和な群れだった。豊かな自然、優しい住ゆん、賢い長。人里からも遠く離れた理想的なプレイス。 季節は秋。約束された恵みにゆっくり達も満面の笑みを実らせている。 しかし、ひとつだけ平和とは程遠いものがあった、それは。 「きんぐでいぶだぁああ!!!」 その一声で、思い思いにゆっくりしていたゆっくり達に緊張が走る。 「ゆゆ! おちびちゃんたちは、ゆっくりしないでひなんしてね!」 「でいびゅ、きょわぃいい!」 成れいむが、赤ゆ子ゆを舌で押しながら誘導を始める。 冷静さを保っているのは避難を促すもの達だけで、他は恐慌に陥り右往左往している始末。 「くるよ、くるよ、でいぶがくるよぉおお!」 「きたぁあ!」 「だるまおとしだぁああ!!!」 群れの外、向こう正面には丘がある。ゆっくりにしてみれば、山に等しい高さだ。そこから、何やら肌色のずんぐりむっくりが、ゴロゴロと転がり落ちてくる。 確かにその姿は彩色ミスのだるまのようだ。だるま落としとは、よく付けたものである。微妙に間違ってはいるが。 「なにをしてるの!」 「ああ、おさー!」 長は、ありすだった。 種としては珍しいが、本ゆんの凛々しい顔付きと周囲の眼差しが、長であることを証明していた。 「そんなところにいたら、つぶれてずっとゆっくりするわよ。はやく、こっちまできなさい!」 「ずっとゆっくりしたくなぃぃいい!」 まりさだのれいむだのちぇんだのが、一目散にありすの元に駆け寄る。ぱちゅりー種だけが、子供達と一緒に避難済みであった。 丘から群れとは、ある程度の距離が保たれていた。鈍重な饅頭どもでも、でいぶを視認した後でゆっくり避難できる余裕はある。 いよいよ、きんぐでいぶが転がりながら群れの入口へ迫っていた。慌てて逃げ出したために散乱している餌だのお花だのが、無残に踏み潰されていく。 「ゆああ、ばりざのゆっぐりじたごはんざん……」 「じっとしてなさい!」 肌だるまの勢いは止まらない。その行く手には大木が迫り、まともにぶつかればいくら頑丈な個体でも木っ端微塵になれそうであった。 しかし、きんぐでいぶにその期待は通らない。突然跳ね上がったかと思うと、小生意気にも空中一回転を決めつつ、見事に着地した。 来襲者は大きく大きく息を吸い込むと、木々が揺れるほどの大声で一喝する。 「きょうも、でいぶのかわいいおちびちゃんのために、えさをさしだしてね! たくさんでいいよ!」 大音声で、群れのゆっくりどもは完全に怯んでいた。その隙を狙うかのように、きんぐでいぶが大木の根元に突進する。そこは、群れの貯蔵庫だ。 長ありすだけは正気を保っていた。でいぶの前方にある倉の扉に向かって、叫ぶ。 「いまよ、めーりん!」 「じゃぉぉぉおおおん!!!」 貯蔵庫の中から、1匹のめーりんが飛び出してきた。その頑丈なあんよが、でいぶの顔面を的確に捉える。 衝撃で侵略者は2・3歩後ずさりした。ダウンを奪うまでには至らない。 「でたね、もんばん。たべられもしないくせに、でいぶのじゃまするなんて、なまいきだよ!」 「じゃおっ! じゃぉおおお!」 「でいぶのこそだてをじゃまするめーりんは、ゆっくりしね!!!」 でいぶが跳躍する。めーりんもほぼ同時に跳ねた。両者はあんよを伸ばし、飛び蹴りの体勢で交差する。 「じゃおおん!」 「でいぶごくとけん!」 着地と同時に、でいぶとめーりんの頬が切れた。めーりんは赤い中身が滲んだが、でいぶの面の皮は厚く、中身まで到達しない。 「じゃじゃあっ」 「ふん、これからがほんばんってかおだね。でも、でいぶはつかれたからかえるよ!」 言うが早いが、巨体に見合わない速度で間合いを離すきんぐでいぶ。ついでに、手近な巣に頭を突っ込んで、中にあった餌をくわえる抜け目の無さだ。 「あああ、ばりざのゆーごはんざんがぁぁあ!」 先ほど採れたての餌を踏み潰されたまりさが、またしても慟哭した。厄日のようだ。 そんなことなどお構いなしに、でいぶは、ばいんばいんと跳ね回りながら駆け去っていく。群れのゆっくりではとても登れない急斜面の丘を、略奪者は難なく踏破して消えていった。 朝起きて、ゆっくりして、でいぶに襲われて、泣きながら眠る。それが、この群れの日常である。 ――でいぶ・オン・ザ・ヒル―― 「ゆぇぇぇええん! ゆぇぇぇぇぇええん!」 「どうぢで、でいびゅがぐるのぉぉぉおお?」 避難先、といっても数メートルも離れていない草むらから、子供達が帰って来る。 もうでいぶがいないことを確認して連れ立ってくるのだが、それでも子饅頭どもは鳴いたり喚いたりしてうるさいことこの上ない。 「ばりざの、あさひるばんさんがぁぁああ!」 いつのまにか、厄まりさもそれに混じって号泣していた。 涙の輪の中に、成体のれいむがいた。それは息を吸い込むと、おうたを歌い始める。 「ゆーゆー、ゆっくりしていってねー。きーんぐでーいぶは、こわいけどー。いつでも、まーまがついてるよー」 別に、歌い手れいむが実際の母親なわけではない。群れに古くから伝わるおうたなのだった。 このおうたを聞くと、赤ゆも子ゆも、ついでに不幸まりさも泣き止んで、たちまち明るくゆっくりしてくる。 「ゆゆーん、おねーしゃんのおうたは、ゆっくりできるね」 「しょうだね、みんにゃで、ゆっくりおうちにかえりょーね」 「ゆっくり、ありがとー。さよーならー」 もみあげやおさげをピコピコ振りながら、子供達は思い思いの方向へと散っていく。 残ったのは、歌れいむと駄目まりさ。 「ありがとう、れいむ。ついでに、おねがいがあるんだけど」 「ごはんさんなら、あげられないよ」 「ゆがーん!」 「でも、おさにたのめば、なんとかしてくれるかもしれないよ!」 「ゆわーい!」 単純なまりさは、意気揚々と長の巣へと飛んでいく。あの調子では、また近いうちに餌をどうにかされることだろう。 れいむは、木陰で休んでいるめーりんを見付けると、そっと近付いて話しかける。 「めーりん、だいじょーぶ?」 「じゃおー、じゃおー」 「そう、しっぷさんがきいてるんだね」 めーりんの切れた頬には、葉っぱがあてがってあった。どうやら、絆創膏か何かのつもりらしい。 そして、れいむはめーりんと会話ができた。れいむだけではない。この群れは皆、めーりんと普通にコミュニケーションが取れる。 ゆっくりの会話は主観的だ。相手がゆっくりしていると認めれば、話が通じ合う。そうではない時には心も閉ざしてしまうのか、まるで会話が噛み合わなくなる。人間との対話が失敗するのも、そのせいであろう。 淫語オンリーのみょんとは話せても、めーりんとは言葉が通じないのも、めーりんはゆっくりできないという思い込みによるものだ。そんな差別がこの群れには、ない。 「めーりんのおかげで、みんなゆっくりできるよ。めーりんは、ゆっくりしてるね」 「じゃぉぉぉ……」 「あのまりさのことは、しかたがないよ。めーりんのあんよは、ひとつしかないもんね」 「じゃぉおお」 群れの門番は涙ぐむ。よくできたれいむであった。 辛い饅頭の方も、他のゆっくりから慕われている。元々は流れものであったが、今では長の副官のような存在だ。 ふと、めーりんが視線を外し、どこかを眺める。その目の先をれいむも追うと、向こうから長ありすが近づいてきた。 「めーりん、れいむ、いつもありがとう」 「じゃおん!」 「れいむは、なにもしてないよ」 「いつも、おちびちゃんたちに、おうたをうたってあげてるじゃない。 おかげで、ゆっくりしたおかおで、おとーさんおかーさんのところにかえすことができるわ」 「ゆぅ」 「それに、せわやきさんね。あんなばかまりさに、ありすのところにいけっていって」 「ご、ごめんなさい」 長は、穏かに笑む。めーりんは気を使ったのか、席を外していなくなっていた。 「いいわよ。げすやでいぶじゃないかぎり、たすけあわないとね。 でもあのまりさ、いっぴきじゃあぶなっかしいわね。どう、れいむ、つがいになってみない?」 「ゆっくりえんりょします」 「そうよね、あんなだめていしゅじゃ」 「そうじゃないよ。いや、それもあるけど……」 「れいむ、もしかしてまだ、おかーさんのこと」 「わすれられないよ。わすれられるわけないよ!」 油の中に氷を入れると、気が触れたように油が噴き上がる。れいむの激高は、それに近かった。 流石の長ありすも、たじろいたような顔でれいむを見つめる。紅饅頭は我に帰ると、すぐさま額を地にぶつけた。 「ごごご、ごめんなさい! おさにむかって、ゆっくりしてませんでした!」 「……あやまるのはありすのほうよ。ありすったら、いなかものね」 「そんな」 「れいむ、ついてきなさい」 言われるまま、れいむはありすの後を付いていった。あんよの向かう先は、長の巣の方角だ。 「れいむ、あなたは、ゆっくりしてる?」 「あまり、ゆっくりしてません」 「どうすれば、ゆっくりできるの?」 「それは、でいぶを、きんぐでいぶを……」 それっきり、会話は止まった。 行き着いた先は、長が巣とする土穴の裏手であった。そこには大振りの枝やら、ツタやらが所狭しと並べられている。 「おさ、これって」 「あのきんぐでいぶを、とーばつっするために、つくっているのよ」 見れば、先端の尖った2本の枝が、ツタを用いてクロス状に縛られていた。地味だが、ゆっくりが作るものとしては難度が高い。 れいぱー化ばかりが取沙汰されがちだが、ありす種は器用なゆっくりだ。れいぱーにならないだけの精神力があり、なおかつ持てる技術を実用に向ける知性があるならば、ゆっくりのリーダーになれる素質は十分に備えている。 「このひみつへーきが、かんせいっすれば、あのでいぶをたおせるわ。そうすれば……」 「れいむのおかーさんのかたきも、とれるね」 れいむの瞳に炎が宿る。さっきまでおうたを披露していた時とは大違いの、険しい表情だ。 「れいむ、ありすといっしょに、きんぐでいぶをたおしましょう。 そうしなければ、いつまでたっても、れいむはゆっくりできないわ」 「でいぶをつぶすいがいのゆっくりなんて、かんがえられないよ。 おさ、なんでもいってね。なんだったら、つぶされたっていいよ!」 長ありすが紅饅頭に頬を寄せた。れいむの怒りの赤が、照れのそれに変わる。 「おちつきなさい、れいむ。ありすはれいむに、ゆっくりしてほしいの。 そんなおかおじゃ、おちびちゃんも、ぶーるぶーるしちゃうわよ」 「ゆ、ゆ、ゆぅ……」 「きょうは、いっしょに、ろーぷさんをあつめましょう。ゆっくり、おはなししながら、ね」 作業場からさらに数十歩歩くと、ツタが生い茂った土壁があった。秋になってもまだ生長を続けているそれが、枝を縛るろーぷさんなんだという。 緑の縄を、噛み、引き、抜きながら。様々なことを語り合った。 ありすは、前の長のことを話す。 今の群れは、ほとんど前の長が作り上げたこと。幾度となく丘の上にでいぶが現れては、群れを襲ったこと。その度に長が討伐したこと。秘密兵器は、その前の長の設計によること。 れいむは、母のことを話す。 とても優しくて強い母だったこと。父は早死だったこと。おうたは母に教わったこと。 そして2匹は、でいぶのことを話す。 前の長は、でいぶと相打ちしてずっとゆっくりしたこと。れいむの母もまたでいぶに襲われ、群れの外で食い殺されるという最悪の死に方をしたこと。 「だから、れいむのおかーさんのおはかのなかには、おかざりさんしかないんだよ……」 「そうだったわね。とてもゆーかんで、ゆっくりしたおかーさんだったわね。 でいぶがあらわれたことを、まっさきにおしえてくれたのも、おかーさんだった」 「れいむは、でいぶをゆるせないよ」 「ありすも、そうよ。あんなゆっくりしたおさを……」 引っ張る噛力が思わず強まったのだろう。それぞれに引っ張っていたツタが勢いよく抜けて、根っこにたまった土を2匹はしこたま被ってしまった。 饅頭とカスタード饅は、思い切り咳き込み、そして笑った。 れいむが長の仕事を手伝うようになって、2日がたった。その間、でいぶの襲撃はなく、そろそろ今日あたりやってくるのではないかと饅頭達は噂し合っている。 そんな状況の中、だぜまりさとみょんが喚きながら集落を闊歩していた。 「まりささまが、いまから、きんぐでいぶをやっつけてやるのぜ! きょうが、きんぐのめーにちなんだぜ!」 「ぼーっきっ!」 勇ましい言動に惹かれたのか、住民は2匹の後をぞろぞろと付いていく。れいむも、何となく野次馬に混ざる。 一団が群れの入口に達すると、まりさが帽子の中から1本のツタを出し、地面に置いた。紅饅頭には見覚えのあるものであった。 「ゆ、あれは」 「どうやら、いつもつかっている、ろーぷさんみたいね。いつおとしたのかしら」 振り返ると、長ありすがそこにいた。 まりさとみょんは他のゆっくり達から少し離れると、互いに緑のロープの両端をくわえ、ピンと張り出す。 「まりさ、なにやってるの?」 「ゆっへっへ。おさ、まりさとみょんは、このぐれーとなわいやーさんで、きんぐでいぶをずたずたにするのぜ!」 「てーんが!」 「くわしく、おしえてもらえる?」 口から縄を伸ばしただぜ饅頭が、顎を反らした。みょんもそれを真似しようとしているのか、何故かのーびのーびをしている。 「この、まりさのおうちのまえにおちていたわいやーさんを、ぴーんとはって、きんぐのだるまおとしをおむかえするのぜ。 わいやーさんに、きんぐがふれたらさいご。みごとにすらいすされただるまが、そこにのこるのぜ!」 「てーんが、えーっぐっ!」 「なるほどね」 野次馬の半分は歓声を上げ、もう半分は心配そうに体を傾けた。れいむは後者だったので、長の横髪を引っ張って訴えかける。 「だいじょうぶよ、たいしたことにはならないわ。いざとなったら……」 星のマークも凛々しい帽子が、長の背後にちらついている。めーりんがいることで、紅饅頭もようやく安心した。 場のゆっくり達が、ざわつく。丘の上に土煙が立ち昇り始めたのだ。 「さあみんな、ここはまりさたちにまかせて、そっちにいどうするわよ」 「まりさー、がんばるんだよー」 路傍の石を越えつつ、ちぇんが尻尾を振って応援する。憎らしくも、だぜまりさはウィンクなどをしてみせた。 「ゆっくり、ほれなおすんだぜ!」 「みょーん、がんばりぇー!」 「ふるぼっき、いんさーとっ!」 子ゆっくりの声援に、みょんはとびっきりの笑顔を見せつつ応える。 轟音が響き渡り、肌だるまの姿がどんどん近くなった。勇敢な2匹は、もうよそ見などしていない。 「いよいよくるのぜ。みょん、しっかりくわえるのぜ!」 「あなにー! さいにー! ぺぺろーしょん!」 「いわれなくても、わかってるのぜ!」 だるま落としの風圧が、野次馬の前まで迫ってくるようだった。まりさとみょんは、身じろぎもせず迎え撃つ。 上手い具合に、きんぐの軌道はワイヤーが張られた方角とピッタリ合っていた。直撃は既に約束されている。 触れた。まりさとみょんの口元に、皺が寄る。込められた渾身の力。緑のツタがしなやかに伸び、簡単に裂け、切れた。 2本になったロープの間を、勢いよく駆け抜けるでいぶ。その様はまるで、ゴールテープを切ることのできた、栄光ある走者のようだった。 「どーして、わいやーさんきれちゃうのぜぇぇえええ!?」 「いーでぃー!?」 「めーりん、とめて!」 「じゃっじゃおおおん!」 門番饅頭が高く舞い上がり、だるまを上から押し潰した。でいぶの体がゴムマリのように凹む。強烈な一撃とは裏腹な、ぼよんという間抜けな音が鳴った。 だるま落としは止まったものの、きんぐでいぶは何事もなかったかのように立ち上がっていた。飛び蹴りから着地しためーりんも、気を漲らせている。 その間を縫うように、まりさとみょんはコソコソと群衆の中に消えていった。 「ゆふふ。だるまおとしをとめるとは、あんよをあげたみたいだね。 でいぶとおちびちゃんの、めしつかいにしてあげてもいいよ」 「じゃーじゃー!」 「いやなら、ずっとゆっくりしてもらうだけだよ。 めーりんがいなくなれば、あのちょぞーこのえさは、みーんなおちびちゃんのものなんだからね」 不敵な笑みを浮かべて、一歩一歩でいぶがにじり寄る。その度に辛饅が後ずさりする。じり、じりという間合いの攻防は、群れの中に到るまで続いた。 人間でいえば腰を落とす仕草を、きんぐでいぶが見せる。だいぶ離れてはいるものの、めーりんの背後には貯蔵庫が控えていた。門番も、片方のあんよを前に出した。 本ゆん達にとっては雷光の如き速度で、2匹が動く。このままぶつかれば両者粉砕は免れない真正面勝負であった。 不意にでいぶがUターンし、めーりんとの激突を避ける。肌だるまが新たに示した目標は、木の下にある小さな巣穴だった。 「やっぱり、こっちにするよ!」 「あれは、ぱちゅりーのおうちだわ!」 誰かが叫んだ。門番饅はとっさのことに体勢を崩し、その隙にでいぶは上半身を穴に突っ込んで、手早く漁り始める。 あっというまに略奪者が頭を抜き、まるでぷくーをしたかのように頬を膨らませ、嘲笑した。 「きょうはこれくらいでがまんしてやるよ! でいぶのおちびちゃんのために、もっとおいしいごはんをよういしてね! たくさんでいいよ!」 野兎のように高く跳躍し、たちまちでいぶは群れから出て行ってしまった。 めーりんが追いかけようとするが、長が止める。あの見た目不相応の逃げ足には誰も追いつけない。 「むーきゃっきゃっきゃ!」 耳障りな笑い声を発したのは、たったいま盗難被害を受けたぱちゅりーであった。それは遠巻きに見ていた一団の中から姿を現し、悠々と自分の巣へと戻っていく。 「きんぐでいぶにあんなことされたのに、ずいぶんごきげんさんね」 「むきゃきゃっ、おさ。 こんなこともあろーかと、てんじょーさんに、かくしべやをつくって、ごはんさんをためてたのよ!」 ゆおー、という感嘆が野次馬から漏れる。それを聞いて、明らかにぱちゅりーは調子に乗り出したようだった。 「したのおへやには、ちょっとしかごはんさんをおいてないわ。まあ、みてなさい」 高らかな哄笑と共に、ぱちぇが自宅に入る。 「むきゃー! ぱちぇのゆっくりしたかくしとびらさんがぁぁぁああ!」 どうやら、部屋ごと壊されて根こそぎ持ってかれたらしい。このぱちゅりーは、残念ながら(笑)の賢者であった。 「えれえれえれえれ」 こもった吐瀉音を聞き付け、慌ててご近所さんが吐きぱちぇを運び出す。辺りには嫌な感じに甘い匂いが立ち込めた。 そんな顛末を尻目に、あのれいむは今日も子供をあやしていた。なにせ間近できんぐでいぶを見てしまったものだから、殊更にやかましくなっている。 「ゆぇぇぇぇぇん!」 「ゆんやぁぁぁぁあ!」 「ゆーゆー、ゆっくりしていってねー」 「ゆぇっ、ゆえっ」 「ゆびっ、ゆびぃ」 「きーんぐでーいぶは、こわいけどー。いつでも、まーまがついてるよー」 「ゆぅ」 「ゆゆーん」 流石おうただけあり、おちびちゃんは簡単に泣き止んだ。それまでただオロオロしているだけだった親連中もゆっくりした顔付きになる。 饅頭家族どもが帰っていくのを確認すると、れいむは一目散に作業場へと向かった。 長ありすは既に到着していて、枝を縛り上げている最中だった。 「ちょうどよかったわ、れいむ。そっちを、かんでてちょうだい」 「ゆっくりりかいしたよ!」 小気味良い音を立てながら、枝と枝がしっかりと密着していく。それから長は絶妙な舌技で縄を固く結び、木製の十字架を完成させた。 れいむが来てから、クロスの数は順調に増えていっている。 「しかし、まりさとみょんは、だめだめさんだったね」 「めのつけどころは、いいわ。いまつくっているひみつへーきも、じつはにたようなものよ」 「ゆ? だから、こんなにがんじょうっにつくってるんだね」 「まあ、よけられちゃいみがないから、そのくふうも、いろいろかんがえてるわ」 組みあがった木は、2匹でずーりずーりと押しながら近くの土壁に立て掛ける。 これが完成したら、どんな形になるのだろう。ゆっくりらしい好奇心が、れいむにも具わっていた。 「きょうも、いっぱいえささん、とられちゃったね。 でいぶのおちびちゃん、どれだけ、むーしゃむーしゃしてるんだろーね」 「もし、きんぐでいぶのおちびちゃんをなんとかできれば、いいのかもしれないけど」 「みつけたら、せいさいっしちゃうの?」 「……そもそも、でいぶのいるおかには、いけないわ。あんなにきゅーなおかをのぼれるのは、でいぶだけなの」 確かにそうだった。あの重量級な体のおかげなのか、きんぐでいぶの足腰は、群れのどんなゆっくりよりも遥かに強靭だった。 すぃーでさえ登れない斜面を、肌だるまは軽快に登ることができる。 「ろーぷさんが、たりなくなったわね」 「じゃあ、ろーぷさんをかりにいこーね!」 れいむは闊達に見える。しかしそれは、仇討ちという目標に確かに近付いているという手応えからである。一歩間違えれば陰惨なものになりかねない。 それをどこまで見抜いているのか。長はれいむといる時間が長くなっていた。 ツタが生い茂る土壁。以前に思い切り砂を浴びた場所である。 「ゆゆ! きょうも、ゆっくりはえてるね!」 「ほらほら、あわてないで、ゆっくりしなさい」 「ゆっくりせずに、ゆーしょゆーしょするよ! ゆーーーっしょっ! ゆーーーしょっ!」 ツタをくわえて、力の限り引き抜こうとする紅饅頭。あまり反省というものは、なさそうだ。 ゆっくりしてないバチでも当たったのだろうか。緑のロープはあらぬところで切れ、ついでにれいむもあらぬ方向へ転がっていく。 「ゆーーーーーっ!!!」 「れいむ!」 幾度となく石にぶつかり、その度ピンボールゆっくりの向きが変わる。ハイスコアとばかりに、れいむは口から餡子を出した。 そうやってたどり着いた先は、野放図に伸びた茂みの前。 すぐさま長ありすも追い付き、仰向けになって目を回しているお饅頭の側にへたり込んだ。 「れいむ、ゆっくりしなさい! ああ、あんこをはいちゃって」 「こ、これは、おくちのなかがきれただけだよ。だいじょうぶだよ、おさ」 「すこしは、ないたり、いたがったりしなさい。……きょうはもう、かえりましょう」 「まだれいむは」 「おさのゆーことが、きけないの?」 「ゆっ…」 長ありすに睨まれると、れいむは身を起こして、とぼとぼと群れの方へと歩き出した。 口の中が、痛んだ。それを紛らわせるために、道すがら、ちょっと気になったことなどを尋ねてみる。 「ねえ、おさ。れいむがたおれちゃったばしょに、あながあったよ」 「あな?」 「そうだよ。くさむらのなかに、ぽっかり、ゆっくりのすみたいなあながあいてたんだよ」 人間の言葉でいえば、トンネルということだろう。その単語は群れに伝わっていない。 確かに、弄ばれいむが行き着いた先には、妖精でも行き来してそうな草のトンネルがぽっかりと開いていた。 「ああ、あれは、へびさんがゆっくりしてるあなよ」 「ゆゆ!」 「あそこにはいれば、たべられちゃうかも」 「ゆぅ。……へびさんと、きんぐでいぶは、どっちがつよい?」 「おおきさにもよるけど、たぶん、でいぶでしょうね」 れいむは、口をへの字口に結ぶ。敵わないものが多すぎる。そんなことを考えていた。 群れに戻り、長に挨拶をし、自分の巣に帰り、葉の布団に横たわる。 分解できない感情が込み上げて、いつまでもれいむは眠れなかった。 朝日が感じられる。遂に一睡もできなかった。 巣を出ると、まだ誰の姿もなかった。ゆっくりは基本、寝坊助だ。 れいむは思い詰めている。地面に当り散らすかのように跳ね歩き、いつしか群れの外れまで来ていた。 蛇の穴が見えた。長の言葉を思い出す。でいぶは、へびさんより、つよい。 れいむは足元に落ちていた小枝をくわえ、トンネルに入った。蛇に出会うなら出会えという捨て鉢な思い。もしそれでずっとゆっくりする程度なら、仇討ちなんてできない。 道は緩やかな坂だった。狭いので、まるで匍匐前進するかのように這って進む。なにものかに遭遇したならば、逃げ場はないだろう。 枝と目線を、たえず前へ。聴覚は周囲全てに研ぎ澄ませていた。まりさやみょんならともかく、れいむ種とは思えない臨戦態勢だった。 一本道は時折大きく曲がり、しばらくすると行く手の方角さえ分からなくなっていた。 どれくらい這いずり回っていたのだろう。唐突に前が開けて、広場のような場所に出た。 風。嵐のような、強く冷たいそれが頬を叩いた。2・3歩歩くと、見たこともない景色がれいむを捕らえた。 「ここは、おそら?」 眼下に、一切があった。見上げるばかりだった樹木さえ、まるで目の前にあるように見える。草花の絨毯がどこまでも続いていて、その中にゆっくりの群れらしいものもあった。 流石にゆっくりの顔形までは分からない。ただ塵芥のようなものが、微かに動いているのが認められるだけだ。 そして、ようやく気付く。群れを正面から見下ろせる場所、それは。 「きんぐでいぶの、おか……」 景色に見惚れていた顔が、またも引き締まる。枝にはもう、歯形が感じられた。 れいむは暗い感謝を捧げた。まさか丘を登ってくるゆっくりがいるとは思うまい。つまりこれは、絶好のチャンスなのだ。 「あんさつっだよ」 呟いた。物騒な独り言。いったいどこで覚えたのだろう。しかし、それはでいぶに対する怨念を的確に表す一言。 ゆっくりなりに、静かに進んだ。そろーりそろーりなんて喋ったりしない。殺気を隠す方法までは、流石に知らなかった。 洞窟のようなものが見えてくる。長の住処よりも、何倍も大きい巣穴だ。群れのゆっくり全て収容しても余裕がありそうだった。 瞳を右に。坂が見えた。そこからでいぶは転がり落ちるのだろうが、その姿は見えない。 両目を左に。テーブルのようなものがあり、得体の知れないものが陳列されている。そこにもでいぶはいなかった。 まだ寝ているのだろうかと、れいむは推し量る。洞窟の奥へ、一歩二歩とにじり寄った。 洞窟の中は、意外なほど明るかった。ゆっくりには知るよしもないことだが、岩に自生するコケの細胞が、僅かな光を反射させているためだ。ヒカリゴケほど上等なものではないが、内部は薄暗い程度の視界が保たれている。 れいむは見渡してみたが、またしてもでいぶの姿はなかった。洞窟の突き当たりには奇妙な穴がいくつも開いていて、なにかがびっしりと差し込まれている。 暗殺者は、仕方なく外へ向かった。陽の光がしだいに瞳を支配し、完全に外気に身を晒すと、一瞬何も見えなくなった。 突き飛ばされた。いつかのように激しく転がり、起き上がると口の得物もなくなっていた。 目の前に、巨体。圧倒される程の肌色の山。裂けるような唇。感情の無い目元。多分元々れいむ種だったんだろうと思われる髪の毛。お飾りは古ぼけていた。 紛れも無いきんぐでいぶ。殺される、まずはそう思った。せめて一撃を、次にそう決意して、体当たりした。 「ゆゆゆーっ!」 簡単に跳ね返されて、またもピンゆっくりを演じた。2個の石と1本の木を経て、ようやく立ち上がるが意識が覚束ない。 でいぶが接近した。恐怖を誤魔化すために、れいむは眼差しで、刺す。 母の仇。その口がぱっくりと開いた。唾液が糸を引き、上下に伸びる。 ああ、こうやっておかーさんもたべられたんだね。ようやくれいむは観念し、目を閉じた。 「なにやってるの? さぼってるひまはないよ!」 捕食される代わりにもたらされたのは、そんな言葉だった。 れいむが閉じた視界を開くと、攻撃ではなく口撃が襲ってくる。 「おきたばかりなのに、またねむろーとするなんて、とんだゆっくりだね! かわいいかわいいでいぶのおちびちゃんのために、きりきりはたらいてね!」 きんぐでいぶはれいむの後ろ髪をくわえると、そのまま暗殺者をどこかへ運び始めた。 拉致された饅頭に事態は飲み込めない。ただひとつ分かったのは、自分の下半身が濡れていること。気付かずに、おそろしーしーを垂れていたのであった。 「ここだよっ!」 実に乱暴に口から放たれるれいむ。尻餅をつきつつ辺りを見渡すと、ここに来た時に見た、謎のテーブル席であった。 普通、テーブルには椅子などがあってそこに座るものなのだろうが、無作法にも2匹のゆっくりはテーブルの上に立っている。 机は朽木でも再利用したのか、四方が自由に尖っていた。きんぐとれいむの間が凹んでいて、その中には粘土のようなものが入っている。 どこから取り出したのか、きんぐは2本の棒を口でつかんでいて、そのうちひとつをれいむの方へ放り投げた。 「さあ、すーぱーすーりこーぎたいむのじかんだよ!」 きんぐは、頬の中から木の実や草葉を粘土っぽいものの上に吐き出し、それらを口の棒で掻き混ぜ始めた。 何をやってるのか見当も付かず、れいむがぼんやりと見ていると、きんぐの棒が脳天目掛けて降ってきた。 「ゆべっ!」 「めじゃなくて、くちをうごかしてね。でいぶと、おんなじようにやらないと、ひどいよ!」 ここで突き刺してやろうとも思ったが、棒の先端は丸くなっていて武器にはなりそうもない。 しぶしぶ、れいむも見よう見まねで混ぜ始める。 「なぁに、これ」 「たまには、こうやって、きのみさんをつぶしてね。ぐーりぐーりするよ! ゆっくりしないでね!」 眼中にはないようだが、指示は絶え間なく出される。 生来の生真面目さが祟って、ついつい暗殺志望者も作業に没頭してしまった。 それから半刻近く、でいぶとれいむの奇妙な捏ね回しは続いた。 「きゅうけいっだよ!」 「ゆふぇ、おくちがごーわごーわする」 「きゅうけいっおわりっ!」 「ゆゆゆーっ!?」 「ほらほらほらほら、ぺったんぺったんしてね! ぐずはきらいだよ!」 棒の先で草粘土を掬い、その塊をぺったんと机の端に叩き付けるきんぐ。指図しながらも率先して行うところは、見上げたでいぶであった。 厚めの煎餅のようにも見える何かが、次々に机の先端を埋めていく。れいむも乗りかかった船とばかりに、きんぐと一緒に草粘土を掬い上げては、並べていた。 気付けば、凹みの中にあったものはすっかりなくなり、机の上は草粘土の煎餅で埋め尽くされていた。 「ゆーっ、いいあせかいたよ。やっぱり、はたらくってゆっくりしてるね!」 労働の後の一息を満喫するれいむ。始めは苛むように感じられた強風も、今は心地良い。 ゆーっ、ゆーっと鼻歌など歌い始め、ゆーらゆーら穏かに揺れていると、気付く。 「こんなことしてるばあいじゃないでしょぉぉおお!」 ようやく自分の使命を思い出した生饅頭であったが、それからどんなに探しても、何故かでいぶは見付からなかった。 疲労は深く、自分が情けない。最早楕円の形を保てないほどゆっくりできなくなったれいむは、もみあげを落として帰路に付いた。 蛇の穴を転がりながら戻り、ずーりずーりと家にたどり付き、お布団に潜り込んだ。 昨日とは違い、すぐさま睡魔がやってくる。意識が落ちる前に、ふと、最後まで蛇に出会わなかったことを思い出したりした。 長ありすが、心配してやって来た。翌朝のことである。 「きのうは、どうしたの?」 「ちょっと、あたまがいたかったんだよ」 「あれだけ、ころがったものね…」 どうやら、おとといの引っ張り損ない事件のせいで、昨日は動けなかったと思われているようだった。 実際は無謀にも蛇の穴に入り、偶然きんぐでいぶの元にたどり着いたものの、何故か散々こき使われた挙句、勝手にいなくなられて、落胆しつつ爆睡した1日だったのだ。 こうやって振り返ってみると、れいむは自分の馬鹿さ加減に呆れ果ててしまう。穴でも掘って埋まりたいくらいだ。長に打ち明けることなど、できるはずもない。 「でもね、おうちにじっとしてちゃだめよ。もしきんぐでいぶがきたら、ずっとゆっくりさせられちゃうわ」 「ゆ、ゆぅ。ごめんなさい」 「そればっかりね、れいむは。きょうは、しっぷさんをもってきたの」 ありすがブロンドヘアーを振ると、中から何枚かの葉っぱが舞い落ちる。1枚1枚を舌で拾うと、長はれいむの頬やあんよ周りに貼り付けていった。 「まえのおさじきでんのしっぷさんよ。すぐによくなるわ」 「なんだか、くすぐったいよ」 「いいから、じっとしてなさい」 しっぷさんとやらが何でできているか、れいむは知らない。紅い饅頭には、知らないことが多過ぎた。 しかしそれでも、現状を正しく把握することはできる。今は、長の好意を黙って受け入れることだ。 「はい、おしまい」 葉っぱに包まれた、見事な桜餅れいむがそこにはあった。 「ゆっくりありがとう、おさ」 「しばらく、ひみつへーきは、ありすだけでつくることにするわ」 「ゆがん! おさ、れいむも」 「あなたは、むりをしすぎるわ。しばらく、ゆっくりしてなさい」 それも、受け入れるしかなかった。れいむが頭を下げると、長は笑みでそれに応えた。 「でも、おちびちゃんをおうたでゆっくりさせるのは、おねがいね。おうたは、れいむがいちばんっだから」 「ゆっくり、りかいしたよ」 外が騒がしくなった。どうやら、きんぐでいぶのだるま落としが始まったらしい。 「さあ、行きましょう」 長と共に巣から這い出る。だるまが地を圧する音が、そこまで近づいていた。 れいむは、赤ゆ子ゆと一緒にでいぶから遠く離れたところに向かった。 「ゆわー。おねーしゃん、おしゃれだよー」 「れいむおねーちゃんは、ふぁっしょんりーだーだね!」 葉をまとったれいむを見て、子供達が無邪気な感想を述べ立てる。 この分なら、きんぐとうっかり出会ってしまっても、あの時のれいむだとは分からないだろう。保護者は苦く笑った。 偵察、という大義名分を思い付く。だかられいむは、再び蛇の穴を通り抜けることにした。 長の作業場が近いので、見付からないようにこっそりと。トンネルに入ってしまえば、こっちのものだった。 何故きんぐの元にあんよを向ける気になっているのか。実際、自分でも理解できてはいない。ただれいむは、衝動に突き動かされている。ある意味、ゆっくりらしい行動であった。 穴を過ぎ、洞窟の側に到ると、きんぐでいぶはテーブルの上に鎮座していた。 近付くと、一瞥された。そして、まるでそこに初めからいたかのように、口を開く。 「それじゃ、つづきだよ! ぺったんぺったんしたものが、かーちかーちになったから、このぺーらぺーらしたはっぱさんに、くーるくーるつつんでね!」 ゆっくり語は幼児語が多くうっとおしい限りだが、要は乾燥した草煎餅を葉っぱで包装しろということである。 以前練って並べた煎餅風の何かは吹く風に晒され、確かに水分が飛びきって日持ちしそうな状態になっていた。 きんぐの側にうず高く積まれた葉っぱ。それを略奪時とは大違いの繊細さでくわえ込んでは、舌で丸めて包み上げる。 「はっぱのさきっちょを、ちょっとだけぺーろぺーろしてね。ちょっとだけだよ!」 微かに反抗したくなった。どうせ甘いから味を覚えさせたくないのだろう。れいむは葉をべろっと大きく舐め上げ、ついでに噛んでみせた。 「え゛ん゛っ!!!」 「なにやってるの。ばかなの? しぬよ?」 葉は辛さと渋さが絶妙のハーモニーを奏でる、地獄の味だ。馬鹿饅頭が悶絶しつつ、今日もよく転がる。 でいぶはゆふぅと溜め息を付くと、御丁寧にも講釈を垂れてくれた。 「これは、うらのもりにはえている、むしよけのはっぱさんだよ。これにくーるくーるすると、なんでもながもちっするんだよ。 たべたらむしさんもゆっくりも、ゆっくりできなくなるよ!」 「ゆっひゅり、りひゃいしちゃよ……」 だったら初めから言って欲しいとも思ったが、刺激で滑舌がおかしくなった饅頭に意思を伝える余裕はない。 身を持って色々なことを知ったれいむは、大人しく作業に入った。 ゆっくりできない木の葉の上に草煎餅を乗せて、葉を丸める。緑の包みが重なり合う部分をちょっと舐めると、面白いように接着した。 黙々と大小のれいむ種が、包みを増やしていく。野生種どころか飼いゆっくりでもお目にかかれない、シュールな勤労風景だ。 かくして梱包が一通り終わると、きんぐが一際顎を反らして、言い放った。 「それじゃ、さいごだよ。ここにあるものを、ぜーんぶおうちにはこんでね! おうちのおくの、あなぼこさんにだよ!」 「きんぐといっしょなら、すぐにおわるね」 「なにいってるの。ばかなの? まじきちなの? れいむだけでやってね!」 「ゆゆゆ?」 「なにが、ゆゆゆなの。でいぶには、だいじなおしごとがあるからね!」 言うだけ言うと、でいぶは洞窟を挟んで反対の方へと姿を消した。 これもていさつっだよ! と自分を慰めつつ、れいむは頭に包みを載せて洞窟へと入る。 一番奥の壁に無数の穴。3以上は数えられないゆっくりだが、そこにある穿孔の数は人間であっても膨大に感じるだろう。いちいち数え上げたとすれば、150はある。 穴と穴の間には、これまたたくさんの段差がある。縦横微塵に穿たれた小穴へと、ゆっくりでも跳ねて行き来できる工夫であった。 随分と手の込んだ仕掛けの中を、れいむが渡る。穴ぼこのほとんどには、既に自分の頭の上にあるものと同じものが詰められていて、まず空きを探す苦労から始めなければならなかった。 半分ほど終えたところで、力饅頭はたまらず机の側に横たわった。視界には、まだまだ残る大荷物。 「れいむ、なにやってんだろう」 そんな愚痴も思わずこぼれる。さらに追い討ちを掛けるように、胃袋もないのにれいむの腹が鳴った。 包みの中身が、木の実や草でできていることに思い至る。ゆっくりとは、イコール食欲のような存在だ。無意識に包みのひとつが解かれ、ごく自然に草煎餅がれいむの口に入った。 ゆげぇじゃないけど、おいしくない。初めこそそう感じられた。しかし、噛めやしない硬さなので口の中で転がしていると、奥深い味わいがしっとりと広がっていく。 舌を肥えさせるほど甘くもなく、なすび型になるほど量が多いわけでもないのに、異様な満足感があった。しかも、いつまでたってもなくならない。 「ゆっくりしてるよ…」 何故か、母を思い出した。懐かしさを覚える味。ゆっくりにもそんな高尚な感慨があるのだろうか。 削り取るような力強い物音が、れいむを現実に引き戻した。きんぐでいぶが向かった方角から聞こえてくる。口をもぐもぐさせながら、サボリ饅頭は音の主を探した。 洞窟の入口は凸状になっており、テーブルがある場所の真反対にも空き地がある。そのまだ見ぬ一角に、きんぐでいぶはいた。 肌色のだるまは土を噛み締めていた。一帯はまたぞろ穴が開いていたが、今度は広く浅い竪穴である。だから目撃饅頭は、てっきり土木工事の真っ最中だと考えた。 それはすぐさま否定される。きんぐでいぶは土に噛みついた後、さらによく咀嚼し、喉を鳴らして飲み込んでいた。 「ゆふ? でいぶは、すーぱーむーしゃむーしゃたいむなんだよ。じゃましないでね」 でいぶの発言が決定打であった。れいむは驚きの余り、口内の草煎餅を飲み込んでしまう。 「ゆげぷっ! けほ、けほ。……なんで、つちさんなんかたべてるの?」 「でいぶは、すなをかんでいきるんだよ! そしてつちさんは、おとなのあじだよ! おちびちゃんのれいむには、ゆーねんはやいね!」 「ゆーねんって、なんなの?」 「おちびちゃんべろさんのれいむは、ひょーろーさんを、いっこだけたべていいよ!」 「ひょーろーさん?」 「れいむがはこんでいた、はっぱのなかみさんだよ」 もうたべちゃったよ、とは言えず。れいむは恥ずかしくなって、もじもじしながらその場を立ち去った。 景気の良い掘削音と、若干バツが悪そうな若饅頭の作業が再開される。 鈍い仕事も、続ければいつしか終わる。れいむもまた、ようやく最後の1つを穴に差し込むと、よたよたと太陽の下に出向いた。 出口の先に、きんぐでいぶの後姿。流石に食事は終わったらしい。しかし、土を食らうとはどういうことだろう。 坂の上に肌だるまはいて、じっと群れを眺めている。 「きんぐ!」 思わず呼びかけた。もし、侵略の計画でも立てているのら、邪魔してやろうという算段である。 しかし、きんぐでいぶは振り向かない。 「きんぐ!!」 ビクともしなかった。 「でいぶ!!!」 ようやく、それが身をひねってこちらを向く。 「なに、れいむ?」 「ゆ、ゆーと、ゆーとね」 話しかけて思考を乱すことまでは考えていたが、いざ何を語りかけるのかはまでは思いついていなかった。 だから苦し紛れに、ふとした疑問をぶつけてみる。 「あんなにひょーろーさんをためて、どーするの? たべるの?」 「でいぶはでいぶだから、すなやつちしかたべないよ。ひょーろーさんは、おちびちゃんのためだよ」 「おちびちゃん? そういえば、どこにいるの?」 「そのおめめは、かざりなの? ぽっかりしてるの? おちびちゃんなら、ほら、めのまえにいるでしょ」 でいぶの視線が、再び群れへと向いた。 表情がいつものそれとは違うことに、れいむは気付く。 「あのむれにいるのが、でいぶのおちびちゃんなんだよ」 「ゆ?」 「むれのおちびちゃんが、ふゆさんになってもゆっくりできるよーに、ひょーろーさんをためてるんだよ」 「ゆゆゆゆゆ?」 「ゆーゆー、うるさいね」 「でもでいぶは、あのむれから、ごはんさんをりゃくだつっしているでしょ?」 「ちょっと、かりてるだけだよ。 どうせぜんぶ、ひょーろーにかこーするんだから、いいよね! はたらきものでごめんね!」 もう一度、れいむはきんぐでいぶの顔を覗き込んだ。相変わらずおっかないが、どこか優しい目。 嘘を付いているようには、どうしても思えない。 「こんなこと、れいむにいっても、しかたないね」 「ゆゆん。れいむも、あのむれのゆっくりなんだよ」 「れいむが、おちびちゃん? そんなわけないでしょ。むれにいるから、おちびちゃんなんだよ」 ゆふゆふと、でいぶが笑い出す。 「ねえ、でいぶ。もうひとつ、きいていい?」 「しかたない、みみどしまだね」 「れいむのおかーさんのこと、しってる?」 「しらないよ。ここでれいむにあったのは、れいむがはじめてだよ」 「れいむを、たべたことある?」 「おぼえてないよ」 にべもない返事だった。普段なら逆上するところだが、いかんせんれいむは混乱している。 「ゆっくり、かえります」 「またひょーろーさんをつくるときは、ゆっくりしないでくるんだよ!」 それから、どうやって帰ったのかよく覚えていない。気付けば布団にも入らずに、巣の床に転がって呆然としていた。 きんぐでいぶは、略奪者だ。しかし、餌を掠めるのは群れの冬ごもりのためだという。 きんぐでいぶは、母の仇のはずだ。しかし、れいむに会ったのは自分が初めてだという。或いは、ただ覚えていないだけなのか。 運動餡の疲れが眠気となってれいむを包む。長ありすに、もう一度詳しく聞いてみよう。夢の間際で、それだけは決めることができた。 「ゆんとこしょー、ゆっこいしょ! ゆんとこしょー、ゆっこいしょ!」 素っ頓狂な掛け声でれいむは目を覚ます。眠い目を瞬かせながら、外の様子をうかがった。 まりさやみょんを中心にした群れの力自慢が、仲良く一列になっていた。ゆっくり隊の先頭には大きな石がある。 石をまりさが押し込んで、まりさをみょんが押し込んで、みょんがまりさを押し込んで、そんな風に皆の力を合わせて石を押し続けているのであった。 「ゆんとこしょー、ゆっこいしょ!」 「まだまだいしさん、うごかない!」 「ゆんとこしょー、ゆっこいしょ!」 「それでもいしさん、うごかない!」 「ゆんとこしょー、ゆっこいしょ!」 「でかまら、ちーんぽ、おおふぐり!」 群れの外の草原に目を向けると、こちらはちぇんやだぜまりさ連中がすぃーに乗って走り回っていた。 「だぜっ! のぜっ! ぜーっ!!」 「ちぇんのまえは、はしらせないよー!」 「そうじゃないでしょ、ちゃんといきを、あわせなさい!」 すぃー部隊に、長ありすが指示を出していた。長自身はすぃーには乗っておらず、めーりんと共にすぃー競争を観戦している格好だ。 れいむが近付くと、長は気付き、いつものように微笑みで出迎える。 「ゆっくりおはよう、れいむ」 「ゆっくりおはよう、おさ。きょうはみんな、どうしたの」 「ああ、れいむにはつたえてなかったわね。いよいよあした、でいぶとーばつっをすることになったの」 「ゆ!」 「ついに、ひみつへーきがかんせいっしたのよ。 きょうは、とーばつっのための、すーぱーくんれんたいむよ」 「ゆゆぅ、そんなこと」 「れいむにはまっさきに、おしえたかったんだけどね。あなた、きのうはどこにいってたの?」 まさか討伐対象の元で家事手伝いしてました、なんて言えるわけもなく。れいむはただうつむくだけだった。 「おさ、ゆっくりしつもんさせて?」 「ええ、いいわよ。めーりん、わるいんだけど」 「じゃーおー」 長の隣りにいためーりんが、じゃおじゃお言いながらすぃー部隊の元へ駆け去った。自らもすぃーのひとつに飛び乗って、操っている。 屋外ではあるが、長とれいむは2匹きりとなり、紅饅頭は緊張で唾を飲み込んだ。そして、意を決する。 「れいむのおかーさん、ほんとうにしんじゃったの?」 「そう、そんなことかんがえていたの」 「だって、おかざりだけしかのこっていなかったんでしょ? きんぐでいぶにたべられたっていってるけど、だれかみたの?」 「じっさいに、たべているところを、みたものはいないわ」 「だったら」 「でも、そのあとをみたゆっくりなら、いるわ」 鳥が鳴き、そよ風が2匹の髪を揺らした。柔らかいが、どこか冷たさを感じさせる風。 ほんの少し間を置いて、再び長の昔語りが続いた。 「それは、だれなの?」 「れいむがまえにたすけた、あのだめまりさ。まりさが、かりにいったかえりだったそうよ。 れいむのおかーさんのおかざりのまえで、でいぶがおくちをあんこだらけにして、わらっていたのをみていたの。 まりさは、よほどしょっくだったんでしょうね。あれいらいすっかり、おびえるようになってしまったわ」 「ゆぅ……」 「ごめんなさい。つらくなるだろうとおもって、ちゃんとはなしてなかった」 「ゆーゆーん、おさ、ありがとう。ちょっと、おさんぽするね」 静かな表情を顔に貼り付け、れいむはぴょんぴょんと跳ねる。長達のいる草原、ゆっくりが押し合う群れの中、作業場、駆け続けた。 長とれいむが仲良く過ごしていた作業場には、名状しがたいものが置かれていて、彷徨えるゆっくりは思わず身震いした。 たくさんの木の十字架が、一本の棒で繋がっていて自立していた。まるで大きな毛虫のようなそれは、鋭い先端をこちらに突きつけている。これが、秘密兵器なのだろうか。 れいむが、蛇の穴を潜り抜ける。もう一度だけ、もう一度だけでいぶと話をしよう。それで見えてくるものはあるはずだと、ゆっくりは信じていた。 初めて出会った日。意味も知らず、共に草粘土を練ったあのテーブル。そこに、きんぐでいぶはいた。 「ゆふっ。やっときたね! きょうも、すーぱーすーりこーぎたいむはじまるよ!」 一瞥もくれずに、きんぐはれいむに命令する。 「ねぇ、でいぶ。まだひょーろーさんを、つくるの?」 「そーだよ。おちびちゃんが、ゆっくりふゆごもりするためにね」 「じゅうぶん、どーくつさんのなかにはいってるよ。ゆっくりしてると、ふゆさんがきちゃうよ」 「ゆふっ、ゆふふふふふ」 その時までれいむは、笑い声というものは無条件でゆっくりできるものと思い込んでいた。 しかし、でいぶのそれはまるで逆だ。背皮が凍り付くような気味の悪さしか覚えない。 「れいむ、いいことをおしえてあげるよ。でいぶが、ひょーろーさんをつくってるかぎり、ふゆはこないんだよ」 テーブルから、きんぐが降り立つ。 「そそそ、そんなわけないよ」 「でいぶがあきっていったら、あきなんだよ。ゆっくりりかいしてね」 にじり寄る様が、まるで蛇のように思えた。距離を詰めるごとに、肌だるまの表情が詳しく分かる。 「もう、むれにはあんまり、えささんがないんだよ。ふゆさんがちかいから、かりをしても、ゆっくりできないんだよ」 「かんけいないよ。でいぶは、むれのおちびちゃんのためにやってるんだよ」 「そのおちびちゃんが、おなかすかせちゃうのよ」 「しらないよ、そんなこと」 れいむを見下ろす目が痙攣している。心持ち白目が多くなったようにさえ思えた。 きんぐでいぶ。昨日よりも、その前よりも、ずっとゆっくりしてない顔。 「また、むれにくるつもりなの? こんどは、ただじゃすまないんだよ」 「いいかげん、うるさいよ! だまってでいぶのいうことだけ、きいてればいいんだよ! じゃまするやつは、つぶすよ!」 「つぶす? れいむを、つぶすの!?」 今度は、れいむの眼差しが吊り上がった。まるで捕食種同士の睨み合い。そこにいるのは、れいむ種だけのはずなのに。 「でいぶは、かわいいかわいいおちびちゃんのためにやってるんだよ。しんぐるまざーなんだよ。 おちびちゃんをゆっくりさせないげすは、ゆっくりしねばいいんだよ」 「そうやって、いままでも、ゆっくりをころしてきたの? やっぱり、おかーさんをころしたのも、でいぶなの?」 「しらないよ、れいむのおかーさんなんて」 「ころして、おかざりをすてて、たべた、でいぶが!」 「れいむなんて、たべたことないよ。でも、れいむ、おいしそうだね……」 生臭い息が相手にかかるほど、きんぐでいぶは大口を開けた。欠けて所々鋭利になった歯。野太い舌。止めどなく湧き上がる唾液。 完全に、モンスターだった。れいむは咄嗟に転がると、テーブルの上にあるすりこぎ棒を口にした。何もないよりマシだろう。 若い饅頭は、でいぶの喉の奥を凝視する。何もないような暗黒。餡子というより、その心を表しているような色。棒をぶち込むなら、そこだろう。 大小のれいむ種が身構える。小さい方が前傾姿勢を取り、大きいほうが体を伸ばして口腔を広げる。お互いのあんよに力が入り、今にも致命の一歩を踏み出そうとしていた。 「そこまでよ!」 聞き覚えのある声が割って入った。れいむが視線だけをずらすと、そこには長ありすの姿があった。 でいぶもまた口をすぼめて、カスタード饅の方へ向き直る。 「ありすは、ありすよ」 「ありすは、ありすだね」 「そうよ、ありすはありす。そこのれいむ、つれていっていいかしら」 「かってにすればいいよ」 れいむがくわえていた棒を落とす。突然、ありすにもみあげを噛まれたからだ。そのまま長は群れのゆっくりを引きずっていく。 未だ紅饅頭の視線は、でいぶを追っていた。敵は既に背中を見せて、夕暮れの群れなどを眺めている。 「おさ、はなしてね! いまが、ちゃんすなんだよ!」 「いっぴきでは、かえりうちにあうだけよ」 「もうすこしだったのに、どうして、ここにいるの?」 「ありすもむかし、れいむとおなじことをかんがえたからよ」 蛇の穴まで来ると、ありすはれいむを先に押入れた。でいぶへの道を完全に塞がれて、仇持ちは諦める他ないことをようやく悟った。 「このみちは、むかし、ありすがつくったのよ。でいぶを、あんさつっするためにね。 でも、いっぴきではなにもできなかったわ」 「れいむなら……」 「よくても、あいうちよ。おさとして、そんなことさせられないわ。 だからこのあなは、へびさんのってうそまでついたのに。ほんとうに、むちゃばかりするこね」 「ゆぅ」 「あしたをまちなさい。みんなで、れいむのかたきをうつのよ」 「おさ、やっぱり、でいぶがおかーさんをころしたんだよ。やっと、りかいできたよ」 「そう」 穴の中で、れいむは立ち止まった。うつむきながら、口を開く。 「でもね、おさ。でいぶは、やさしいところもあったんだよ。えさをとるのは、むれのおちびちゃんのためだって。 でいぶは、すなをかんでいきてるって。あんなにおいしいひょーろーさんを、たべないで」 「でいぶと、はなしたのね。よくききなさい、れいむ。でいぶとは、おはなしなんてできないの」 「ゆゆ? でも、れいむとでいぶは」 「おはなししているように、きこえただけ。ゆっくりのことばを、まねしているだけなのよ」 れいむは首を傾げる。 一瞬、頭上で鳥の鳴き声が響き渡った。まだトンネルを抜けきれていない2匹は、草の天井に目を向ける。 「ありすのいったことばを、でいぶはそのままくりかえしたわ。 まえのおさが、いってたの。とりさんには、おうむさんっていうのがいるって。 おうむさんは、にんげんさんのしゃべったことばを、そっくりまねするそうよ」 「それと、いっしょなの?」 「でなければ、いきなりれいむをたべようとしたり、しないわ。 れいむは、ゆっくりおはなししていたおともだちを、たべる?」 「そんなわけ、ないよ。おさ、ゆっくりできないけど、れいむは」 「なにも、いわなくていいわ。にひきでしずかに、かえりましょう」 あの時見せた、穏かなでいぶの顔、声。そんなものは、餡子の奥にしまい込むことにした。 れいむは、間近で垣間見たきんぐでいぶの魔性だけを信じ、明日を待つ。 あっという間に薄暗くなった空が、やけに赤黒く染まっていた。 快晴。空は残酷なまでに清々しく澄みきっている。 群れのゆっくりが集められ、長ありすの声に聴覚を寄せていた。 「みんな、よくあつまってくれたわね。きょうが、なんのひかわかる?」 「とーばつっのひ、なのぜ!」 「あのきんぐでいぶを、ずっとゆっくりさせるんだよー!」 血気さかんな成ゆっくりが、長の問いかけに真っ先に応えた。 それを合図に、群れ中の饅頭達がシュプレヒコールに近い何かを叫び出す。 「とーばつっ!」 「とーばつっ!」 「とーびゃつっ!」 「ありがとう、みんな。きょうだけは、おちびちゃんもぱちゅりーも、さくせんにゆっくりきょうりょくしてね」 「まかしぇてね! まりしゃは、むれいちばんのゆーしゃだよ!」 「ごはんさんのうらみ、むきゃっとかえしてやるわ」 決戦にも関わらず、戦力にならなそうな子供や虚弱まで輪に入っていた。 長がめーりんに目配せすると、辛饅頭が素早くどこかへと走っていく。 「みんなが、なかよくたたかってくれないと、きんぐでいぶをとーばつっできないわ。 きのういったとおり、それぞれのりーだーさんのゆーことを、ゆっくりしないでまもってね!」 普段なら私語を隠さなかったり昼寝をかましたりするゆっくりがいそうなものだが、場にいるもの達にそんなゆとりは見られない。 皆、一様に目をギラ付かせて、指導者の言葉を受け入れている。その中で一際険しい顔をしているのは、無論、あの仇持ちれいむであった。 何か引きずるような音が響き、集団が思わず振り返る。 めーりんを中心にしたすぃー部隊が、巨大な木片を牽引している。すぃーの後方とツタで繋がれたそれは、ありすとれいむが作っていた秘密兵器であった。 「ゆえーん、きょわいぃぃいい」 「なんなの、これぇぇぇ」 巨大毛虫を思わせるそれに、子ゆや臆病まりさなどが脅えを示す。 その胴体は幹のように太い枝。足のように見えるのは小さな枝をクロス状に結わえたものだ。その先端はことごとく尖っていて、近付いただけでどうにかなりそうな迫力を秘めていた。 「まえのおさじきでんの、ひみつへーき。そのなも、あんぜんだいいちよ!」 「あんぜん、だいいち?」 「きんぐでいぶが、だるまおとしをしてきたら、これをきんぐのまえにおいておくのよ。 そうすると、あんぜんだいいちのまんなかに、だるまさんがげきとつっして、ぐっさぐっさにしてくれるのよ!」 前の長というのは、半端な伝承をしていたらしい。工事現場の『安全第一』と書かれたバリケードを模したつもりなのだろうが、もちろんこんな鋭利なものが道端に置かれるはずもない。 むしろ、中国の戦記物などに出てくる騎馬止め・馬抗柵に近い形をしていた。確かに突進に対しては効果的だ。 「めーりん・すぃーぶたいは、あんぜんだいいちをはこんでね! ほかはいちれつになって、だいいどうよ!」 「じゃあおおおおん!!!」 「ゆっくりりかいしたよ!!!」 「のぜ!!!」 「だよー!!!」 「むきゅ!!!」 「ちぃぃぃぃんっっ」 「きんぐでいぶだぁぁあああ!!!」 まとまりのない鬨の声が止んだ。土煙を上げて、丘の上からきんぐでいぶが転がってくる。今回ばかりは、だるま落としに算を乱すものはいない。 群れの全てのゆっくりが、秩序を守りながら移動する。れいむも流れに沿って動いていたが、長に呼び止められた。 「れいむは、ありすといっしょにきなさい」 「ゆ?」 「いい? ぜったいに、かってなこうどうはしないこと!」 長は、すぃーに自分とれいむを乗せると、めーりん達と一緒に駆け出した。他のすぃーは安全第一を引っ張っているので、長すぃーだけが軽い。 群れから少し離れると、途端に丘とでいぶが大きく見える。遮るもののない草原まで出ると、長はすぃー部隊を止めさせた。 「おさ、あぶないのぜ! あんぜんだいいちは、まりさたちがおくから、もっとうしろでゆっくりしてるのぜ!」 「ありすが、あいずをだすわ。ちゃんすさんは、いっかいきりなのよ。ゆっくりかつしっかりと、ありすはでいぶをみるわ」 「わからないよー、おさ!」 「じゃあああっ!」 「わかったよー……」 めーりんの喝で、ちぇんが萎んだ。長ありすは丘を凝視している。だるま落としは、麓近くにまで達していた。 「まだ、まだよ」 でいぶが、完全に坂を下りる。 「ゆっくり、もうちょっと」 勢いが止むこともなく肌だるまは平地を蹂躙し、真っ直ぐに長達の方へ突っ込む気配だった。 距離が詰まり、ほんの少しだけ速度が落ちた。 「いまよ!」 すぃーが動いた。土をえぐりながら、安全第一が運ばれていく。 「そこ!」 めーりん達は機敏に止まり、すぃーの後ろにあるツタを歯で噛み切った。 「てっしゅうっ!!!」 牽引物の縛りがなくなったすぃー部隊が、草を蹴散らしながら兵器から離れていく。安全第一を囲むように部隊は散開し、長すぃーはめーりんの元へ走った。 きんぐでいぶの真正面には、杭の塊が待ち構えている。だるまの軌道は変えられないだろう。れいむは長の側で息を呑んだ。 秘密兵器が弾け飛ぶ。激突の衝撃で木片が舞い上がり、降り注ぐ。だぜまりさ目掛けて大きめの枝が落ちてきたので、叫びながらもすぃーを駆って回避していた。 だるまは無数の傷を追い、さらに尻尾が生えていた。1本の杭がきんぐでいぶの尻を貫き、腹まで突き抜けたのだ。 それでも、きんぐでいぶは立ち上がった。荒い息を吐き、目も虚ろになってなお、軽蔑するような笑みを浮かべている。 「れいむとめーりんだけ、のこりなさい。あとは、みんなをてつだって」 「おさは?」 「でいぶのさいごをみとどけてから、いくわ」 「わから」 「じゃあああっ」 すぃー部隊が駆け去っていく。怒られちぇんだけ泣きべそをかきながら。 この場にいるのは、長とめーりん、れいむ、そしてきんぐでいぶだけである。 「でいぶ、そろそろゆっくりしたら?」 「なにか、いってるの? きこえないよ」 「おさ、ここはれいむにまかせてね!」 れいむが前へ飛び出す。長は止めるような表情をしたが、すぐにめーりんへ視線を送った。 「とめても、むだでしょうね。あぶなくなったら、めーりん」 「じゃおっ」 めーりんの帽子が縦に揺れた。 死ぬほど甘い匂いが草原に広がる。でいぶの中身が流出し始めたのだ。 丘の上のゆっくりは、土や砂を食って生きていた。完全に餡子へと変換しきれていなかったのだろう。黒い生命が、さらさらと流れ落ちていた。 「でいぶ、おかーさんのかたき、とらせてもらうよ!」 「ゆふふぅ。きのうのぉ、おいしそうなぁれいむだねぇ」 「きをつけなさい。もうかんぜんに、きがふれているわ!」 「ゆっくりしてないことは、わかるよ、おさ」 ミチミチと悲鳴を上げながら、きんぐでいぶの唇が裂けていく。それほどまでに口を開くと、まるで喉の奥でれいむを見ているようだった。 獣のようなでいぶの咆哮が草原を揺らした。今にも襲い掛かってきそうな気迫だが、肌だるまのあんよは、ピクリとも動かない。 だるまの歯だけが盛んに打ち鳴らされる。跳躍も移動も叶わなくなってなお、歯牙によって戦いを挑んでいる。最早ゆっくりというより、顔だけの獣であった。 「でいぶのおぢびぢゃん。おぢびぢゃんを、ゆっぐりざぜるんだあああ!!」 「おちびちゃんって、れいむたちのことでしょ」 「おぢびぢゃんは、むれにいるんだよ。むれにいないゆっくりが、どうしておぢびぢゃんなのおおお?」 でいぶの上半身だけが伸び、れいむの頭上に無数の千歳飴が襲い掛かった。 仇持ちのゆっくりは、よく転がった。こーろこーろとは言い難い素早さで、でいぶの背後に回り込む。 尻尾のように尻から突き出る杭。それに、頭から突進した。 木材はでいぶを貫通している。後の木が左に動くと、腹から突き出た先端が右に傾き、広がった裂傷から餡が噴出した。 「ゆぎゃぁああ!!」 長とめーりんに餡子が降り注ぐ。辛饅は顔をしかめたが、ありすは表情を変えず2匹のれいむ種を見据えていた。 きんぐでいぶが、震える。そして頭を激しく傾けると、貫いている杭も同時に振られて、れいむは尻の棒によって吹っ飛ばされた。 れいむが餡を滲ませながら立ち上がると、でいぶは体をひねって視線を合わせた。ねじれの線が肌だるまの体中に浮き上がり、異形に拍車をかけている。 「じねぇ! おぢびぢゃんのために、じねぇ!」 「でいぶこそ、しんでね。おかーさんのぶんまで、ゆっくりつぶれていってね!」 「れいむ。すこし、でいぶとおはなしさせて」 長の言葉に、れいむは聴覚を疑った。視覚を向けると、真顔のありすがそこにいる。 「なにいってるの、ありす。でいぶとは、おはなしできないんじゃなかったの?」 「ねえ、でいぶ。でいぶは、おちびちゃんがゆっくりするために、いきてるのよね?」 「あだりまえでしょ。でいぶの、がわいいがわいい、おぢびぢゃんなんだよぉ」 「じゃ、おかのうえをみなさい」 でいぶが、さらに体をねじり上げて、見た。無視されているれいむも同じように見上げた。 丘の上。きんぐでいぶの住処。そこに、でいぶじゃないゆっくりが、飛んだり跳ねたりしていた。 小さい小さいゆっくり達。多様な種のミニ饅頭は、長達のいる場所にまでも届くほどに、はしゃいだ歓声を上げていた。 「ゆーっ! たきゃいのじぇー!」 「おしょらを、とんじぇるみちゃぁぁい!」 「おきゃのうえは、ゆっくりできりゅね!」 きんぐでいぶの顔付きに、明らかな激高の色が見て取れた。ねじれ棒のようなゆっくりが、自分の住居に向かって一喝する。 「ごのぐそぢびどもぉぉぉ! でいぶの、おぢびぢゃんのすぃーとほーむでぇぇぇ、なにゆっぐりじでるんだぁぁああ!!!」 ゆびゃあ、という悲鳴が滝のように落ちてくる。 続く長の声だけが、相も変わらず冷静だった。 「いいえ。あれは、でいぶのおちびちゃんよ」 「なぁにいっでるの、むれにいないのにぃ、どぉぉじで、ぐそぢびがおぢびぢゃんなのぉぉぉ?」 長ありすが、目ででいぶを促した。あっちを見ろ、ということらしい。 れいむもでいぶもありすもめーりんも、その列を見つめた。丘の上から群れの入口まで一直線に伸びる、ゆっくりの長い長い行列。 「ゆんとこしょー、ゆっこいしょ!」 掛け声を合わせながら、後のゆっくりが、前のゆっくりを押し上げる。押し上げられたド饅頭が、そのまた前にいるド饅頭を押し上げる。 そんな流れが、群れの中から丘の上まで延々と続いていた。 「ゆんとこしょー、ゆっこいしょ!」 上の方に行くほど、軽いゆっくり弱いゆっくりが縦隊を作っていた。赤ゆを子ゆが押し、子ゆをぱちゅりー種が押し動かす。 下にいけばいくほど、力自慢の成体ゆっくりが並んでいる。安全第一を置いて離脱したすぃー部隊は、群れに引き返してしていて、最後尾で必死に列を押し込んでいるだぜまりさとみょんを、すぃーでさらに圧迫していた。 「ちゅ、ちゅぶれるのぜ……」 「まだまだ大丈夫なんだよー。がんばれよー」 「えびおす、えーびおーす!」 「のぜぜ、まけないのぜ! ゆんとこしょー、ゆっこいしょ!」 全貌を、草原に立ち尽くす4匹は確認できた。長ありすときんぐでいぶが、再び目を合わせる。でいぶの表情から、険しさが取れつつあった。 「むれのおちびちゃんたちが、いっぱいあつまって、でいぶのおかまで、のーびのーびしてる?」 「ええ。ああやっておしあわないと、おかのうえにはのぼれないのよ」 「じゃあ、おかのうえのぐそぢび、いや、おちびちゃんは……」 「そうよ、むれのちいさなおちびちゃん。でいぶのだいじなだいじな、ね。 ほら、ごらんなさい。でいぶがあんなにおこるから、おちびちゃんたち、あんなにぶーるぶーるしているわ」 れいむも、高い高い場所にいるおちびちゃんを見上げた。確かに、おそろしーしーを漏らしたり、毒でも盛られたように震えたりして、一様にゆっくりしていなかった。 「そう。ごめんね、おぢびぢゃん、ごめんね」 「それだけじゃないわ。でいぶは、あんなにゆっくりできるおうちを、ひとりじめしていたわね。 そしてなにより、でいぶがむれにくるたび、おちびちゃんはゆっくりできなくて、ゆんやーしていたわ。ねえ、れいむ」 「ゆ、ゆぅ。そうだよ」 「でいぶ。あなたがいちばん、おちびちゃんをゆっくりさせなかったのよ」 でいぶは醜い生き物だ。しかしそんな存在であっても、涙は透き通っていた。瞳から止めどなく水は湧き出て、裂けた口からは悲しい泣き声が吐き出される。 寿命を悟ったかのように、きんぐのお飾りが落葉のように剥がれ落ちた。 「ごめんね、おちびちゃん。ごめんね、みんな。ごめんね……」 れいむには、丘が崩れ落ちたように見えた。きんぐでいぶが回りながら倒れ、仰向けになる。それを仇とするゆっくりは、思わず駆け寄った。 尻の杭が地に押され、でいぶの腹から鋭利な木が伸びる。乾いた餡子が噴出して、れいむの顔を黒く染めた。 「ごめんね、おちびちゃん……」 「ねえ、こたえてね! でいぶは、おかーさんを、しってるの? ころしたの?」 「……なんだか、おちびちゃんのなきごえがするよ」 太ったゆっくりの眼球が左右に動く。光が薄かった。きっともう、何も見えていない。 「まだ、ずっとゆっくりしちゃだめだよ、でいぶ! ねえ、ねえ!」 「おちびちゃん、なかないで。ゆっくりしてね。でいぶが、おうたを……」 「おうたなんかいい! でいぶの、おうたなんか」 「ゆー…ゆー…、ゆっくり…していってねー…」 れいむは同種の中でも賢かった。 ゆっくりの賢さを計る目安として、お飾りの有無に対する判断が挙げられる。愚かなゆっくりは、たとえ我が子であろうと、お飾りなしを許さない。 酷いのになると、お飾りが風で飛ばされた途端に子供を殺害してしまうものもいる。 これがある程度賢いものになると、たとえお飾りがなくても肉親であるかどうかくらいは、分かるものだ。 れいむは不幸にも、賢かった。 「…きーんぐ…でーいぶは…、こわい…けど…」 頭を振り回す。れいむは、認めたくなかった。 きんぐでいぶの傷口が餡子を吐き出す度に、でいぶの豊満な体は痩せ衰えていく。憎たらしい頬の張りが萎み、常に蔑んでいるような目付きが変えられていく。 生命がこぼれるだけこぼれきると、そこに残ったのはでいぶではなく、単なるれいむの顔であった。 「いつでも、まーまがついてる……」 ずっとゆっくりする。ゆっくりにとって死を意味する言葉ではあったが、きんぐでいぶの死顔はまさしく、それを体現していた。 穏かだった。散々泣きはらして眠った子供のような。愛しいものに抱かれているかのような。 そして生きているれいむにとってのそれは、まさしく殺されたはずの母の顔であった。 「おかーさん? どーして、おかーさんが、ここにいるの? おかーさんは、でいぶなの? でいぶが、おかーさんなの? ねえ、ゆっくりしないで、おしえて! ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりぃぃぃいいい!!!」 れいむは薄墨色の涙を流す。仇だったはずのでいぶ、実は母だったものの返り餡が落涙に交じって、黒い流れとなって落ちていく。 めーりんの中身は、赤い。しかしその表情は青ざめ、呆然と立ち尽くしていた。 長ありすだけが、変わらぬ視線を2匹のれいむに送っている。 ありすは、でいぶの死骸を自分のすぃーに載せ、丘の上に運んだ。他のものに見付かると厄介なので、夕暮れが押し迫った時に、めーりんのすぃーで牽引する。 群れのものは、みんな丘の洞窟の中でゆっくりしていた。とーばつっきねんのぱーてぃーするよ! などと浮かれ騒いでいるようだ。 長としては、もうこのまま冬ごもりに入ろうと考えていた。近頃は夜になると、カスタードが凍るような気分に悩まされる。 洞窟の入口から少し離れたところに、広くて浅い窪みがあり、そこにれいむが佇んでいた。れいむによると、そこはでいぶが土を食べていた跡だという。 凹みに動かない肌だるまを降ろし、上から土を山盛りに被せる。でいぶはここで食事をしただけではなく、文字通りの墓穴を掘っていたのだ。 無銘の墓ができあがる。元より饅頭生物に戒名も墓標もありはしないが、長を含め3匹しか知らないこの土山は、まさに無銘と呼ぶに相応しいものだった。 れいむは、もう泣いてはいなかった。その髪の中には、でいぶが付けていたお飾りが入っている。死ぬ前に落としたので死臭は付いていない。れいむの母が元々付けていたお飾りは、既に群れの墓に入っていた。 「ねえ、おさ」 「なあに、れいむ」 「おかーさんは、むれのみんなをゆっくりさせるために、がんばっていたんだね。 なんで、れいむにおしえてくれなかったのかな。びっくりさせようと、したのかな」 長に、かける言葉はなかった。めーりんも、じゃ、と言いかけて口ごもる。 母を失ったれいむは、土の山から目を離さない。黒髪の中の形見が、冷たい風に揺れていた。 「ゆっくりは、いっぴきだけじゃゆっくりできないんだよ。ゆっくりできなくなると、おかしくなるんだよ。 おかーさんは、ゆっくりできなくなったから、でいぶになったんだね。 でもね、れいむもゆっくりしてないよ。だってれいむは、おかーさんをころしちゃったから」 「れいむ。でいぶを、おかーさんをころしたのは、あんぜんだいいちよ。つみは、ありすにあるわ」 「さいごに、ぐいってやったのは、れいむだよ。おかーさんは、たくさんあんこをだしたんだよ」 「れいむ。おかしなこと、かんがえてないでしょうね」 れいむは振り返ると、長に向かって、にっこりと微笑んだ。 あまりにも屈託のない表情。ありすは何故かぞっとした。 「れいむは、みんなをゆっくりさせるために、いきていくよ。れいむはね、すなをかんでいきるんだよ!」 形見のお飾りを完全に髪の中に隠し、れいむは元気よく跳ねて洞窟の中に消えていった。 墓の前には、もう、ありすとめーりんしか残っていない。 「れいむ、つらいでしょうね」 「じゃおぉぉ……」 「きっとれいむは、はるになったら、じぶんのおかざりを、でいぶのものとつけかえるわ。 ほんとうにつらいのよ、おかざりをつけかえるのって。れいむも、あんこをはいちゃうかもね」 「じゃ!?」 長は口元に笑みを浮かべている。普段見せる慈愛に満ちたものではない。冷徹の輝きを帯びた、ゆっくりらしからぬものだ。 「めーりん。あなたにだけは、おしえてあげるわ。 このむれでは、まいとし、だれかがでいぶになるのよ。ゆっくりしたふゆごもりをするためにね」 「じゃお?」 「えらばれたれいむが、むれからはなれ、つちをたべておおきくなって、でいぶになるの。 そして、ふゆにたべるひょーろーさんをつくるのよ。むれをおそうのは、おそうふりして、えさをあつめるため」 「じゃじゃじゃっ」 「そうね。でもね、あのれいむがいったとおりなの。ゆっくりはいっぴきだけでいると、おかしくなる。 おそうふり、でいぶのふりをしてるのが、ほんとうにでいぶになっておそうようになるの」 めーりんが前傾姿勢を取る。まるで、でいぶを前にした時のようだ。 「じゃお、じゃじゃお!」 「だって、しかたがないじゃない。ふゆごもりのために、ごはんさんをだせっていっても、だれもだしたりしないわ。 でいぶいがいに、ひょーろーさんをつくらせたら、きっととちゅうでむーしゃむーしゃしちゃうわよ」 「じゃお、じゃじゃー!」 「ちがうわよ。ありすは、まえのおさのゆーとおりにしただけ。 でいぶも、ひょーろーさんも、ひみつへーきやどーくつだって、まえのおさがつくって、おしえてくれたのよ。 まえのおさは、こういったわ。れいむいっぴきがでいぶになれば、みんな、ゆっくりしたふゆさんをすごせるって」 辛饅頭が飛び掛った。ありすは突き飛ばされ、土山に混ざっていた石で額を打つ。 仰向けになった長の上に、めーりんのあんよが押し付けられた。ありすの眉間に甘いカスタードが滲んでいる。 「じゃお、じゃおぉぉぉん!」 「ぜったいに、ゆるさないですって? ありすも、まったくおなじことを、まえのおさにいったわ。そして、めーりんとおなじことを、した」 「じ、じゃー?」 「……そうよ。まえのおさをずっとゆっくりさせたのは、でいぶじゃない。ありすよ」 「じゃ……」 「そうすればなにかが、かわるとおもったわ。でも、なにもかわらなかった」 あんよがありすの顔から離された。星付きの帽子がうなだれる。 カチューシャの方は起き上がらない。そのまま、言葉を続けた。 「めーりん、いまは、でいぶがいなければ、ふゆさんはこせないわ」 「じゃお……」 「でもね。もし、でいぶなしでふゆさんをこせるほーほーがみつかったら、そのときは、ありすをすきにしなさい。 それまでありすが、いなかものの、おさよ」 「……じゃおん」 「よくかんがえなさい、めーりん。なぜありすが、よそもののあなたを、そばにおいてるのかを」 めーりんもまた、洞窟へと消えていく。 長はまだ動かない。墓にもたれかかるようにして寝そべり、土山に頬を寄せた。 ありすは思い出す。幼い頃、ゆっくりしているれいむにおうたを歌ってもらったことを。あれは、この土の中にいるでいぶだったのだろうか。 それとも、自分の母親だったのか。 「ゆーゆー、ゆっくりしていってねー。おーさのありすは、げすだけどー。でーいぶは、ゆっくりしているよー」 懐かしい旋律を口ずさむ。歌詞だけが、違っていた。 鰯雲が夕陽に照らされている。空を漂うものが、どうしようもなくゆっくりしているように、ありすには思えてならなかった。 やがて冬ごもりが始まる。 皆で仲良くゆっくりし、おいしいひょーろーさんをいつまでも頬張れる夢のような日々。 それは、でいぶという悪夢を忘れさせるには、十分過ぎる時間だ。 ただ、片隅にいる長とめーりん、そしてでいぶの形見を隠し持つれいむだけは、記憶を保ち続けることだろう。 それもいつしか終わりを迎える。 暖かくなると、ゆっくり達は洞窟から出て、群れへと帰っていく。 ほぼ同時に、あるれいむが群れからいなくなり、代わりにでいぶというものが現れることだろう。 それは、冬のゆっくりした記憶を忘れさせるには、十分過ぎる恐怖。辛く苦しい春の始まり。 (了)
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3860.html
ふたばネタ注意 うんしー注意 おまえはでいぶだ 作:慈絶院 「ゆ~」 「ゆゆ~」 「ゆっくり~」 大きな自然公園にて、たくさんのゆっくりたちが日向ぼっこをしていた。 公園のゆっくりは、普通の野良ゆっくりとは少し違った立ち位置にあった。 公園のゆっくりは基本的に人間を恐れない。 公園は憩いの場であり、人目も多いため、ゆっくり嫌いの人間もここでは大っぴらには虐待しないのだ。 それどころか、食べ物をくれたり可愛がってくれる人間も多かった。 なので公園のゆっくりたちは逃げ隠れせず、積極的に人間と関わろうとした。 といっても、露骨にお菓子を要求したりはしない。あくまで歌ったり踊ったりゆっくりしたりして可愛さをアピールするだけだ。 人間に迷惑をかけたら駆除されてしまう可能性があったからだ。 ゆん口にも気をつけなければならない。あまり増えすぎると間引かれてしまうからだ。 まったく危険がないわけではなかったが、都会の路地裏に比べれば格別に環境のいい棲家だった。 お行儀良くさえしていれば、人間に可愛がってもらえるし、もっとも運の良いゆっくりは拾ってもらえることすらある。 もちろん、すべてのゆっくりが公園に住めるわけではない。公園のゆっくりたちは小規模な群を作り、互いに掟を守らせた。 また、他所から来たゆっくりを受け入れるか否かも自分たちで審査した。 いわゆる“ゲス”を公園に住まわせたなら、公園のゆっくり全体に害が及びうるからだった。 公園のゆっくりはゲスな同族に神経質だった。 「ゆぅ?」 「ゆゆ?」 一人の人間がゆっくりたちの群に近づいてきた。 「ゆっくりしていってね!」 「にんげんさんゆっくりしていってね!」 「ゆっくりこんにちわ!」 「きょうはゆっくりしたおてんきですね!」 人間はゆっくりたちに側に屈みこんだ。にこやかに笑っている。 「ゆっくりしたきみたちにこれをあげよう」 そういって人間はお菓子をゆっくりたちに配った。 「ゆゆ! あまあまさんだよ!」 「にんげんさんありがとう!」 「ゆっくりたべるね!」 「むーしゃ! むーしゃ! しあわせー!」 「すごくゆっくりできるよ!」 ゆっくりたちは人間に感謝しつつ、美味しいお菓子を頬張った。 そんなゆっくりたちを、お菓子を与えた人間は微笑ましそうな表情で見回している。 ふと、人間の視線が一匹のゆっくりれいむの上で止まった。 そのれいむはお菓子を食べ終えて、幸せそうな表情で自分の口の周りを舐め回していた。 人間はそのれいむに腕を伸ばし、抱き上げた。 「おそらをとんでるみた~い!」 「れいむいいな~!」 他のゆっくりたちがうらやましがる。抱っこしてなでなでして可愛がってもらえるのだ。 もしかすると、拾ってもらえるのかもしれない。 人間はにこやかな表情で抱きかかえたれいむの目を見つめ、こう言った。 「おまえはでいぶだ」 「ゆ?」 少しの間、れいむは言われた言葉の意味がわからなかった。 うらやましがっていた他のゆっくりたちの表情は凍り付いている。 「おまえはでいぶだ!」 「ゆゆー!」 “でいぶ”、それはれいむの変異体とされ、低い知能と劣悪なゆん格を持つといわれる。 都会のゆっくりは人間の強さをよく知っていたため、普通はあまり無礼な態度をとらないように気をつけている。 だが、でいぶはまったくおかまいなしに、人間に対して傍若無人な態度を取り、迷惑をかけるという。 人間相手に“おうち宣言”すらするのだという。 しかし、れいむとでいぶを分ける明確な基準はない。ときにはゆっくり駆除、虐待のための方便に使われることもあった。 殺したゆっくりを「こいつはでいぶだった」と言い、なんらかの証拠を提出すれば、大抵はそれ以上追求されることなくでいぶ認定されたのだ。 いずれにせよ、れいむがでいぶと呼ばれたことは破滅を意味する。 「おまえはでいぶだ! ゲスゆっくりだ! 生きる価値のない腐れ饅頭だ! おまえはでいぶだ! おまえはでいぶだ!」 人間はさっきまでの優しげな様子とはうってかわって、厳しく激しい口調でれいむを罵倒する。 「れいむはれいむだよ! でいぶじゃ──ゆぎっ! ゆぎぎ……」 突然、れいむはすさまじい激痛に襲われた。餡の芯から響き渡るような猛烈な痛さだ。 あまりの痛さに叫び声も出せない。 「おまえはでいぶじゃないのか? おまえはれいむなのか? 言ってみろ! おまえはれいむなのか!?」 「でいぶだよ゛! でいぶだよ゛! でいぶばでいぶだよ゛!」 れいむは切羽詰って連呼したが、痺れるような痛みのせいでうまく呂律が回らなかった。 「ほらやっぱりでいぶじゃないか!」 「でいぶだよ゛! でいぶだよ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛! でいぶばでいぶじゃな゛い゛よ゛! でいぶな゛んだよ゛!」 仲間のゆっくりたちは急な事態の変化に、何もできずにおろおろと目配せしあっている。 ゆっくりたちからは、人間の指の間に仕込まれた針が見えなかった。──それには唐辛子エキスといくつかの薬を混ぜ合わせたものが塗られていた。 そのため、唐突に人間に詰問されたれいむがでいぶであることをカミングアウトしたとしか見えなかった。 「これだけゆっくりがいれば一匹ぐらいは腐った奴が紛れ込んでもおかしくないもんな! どれ、他の人やゆっくりに迷惑がかからないようにちゃんと“印”をつけておこうか」 人間はなにかを指先につけてれいむの額をなぞった。そして、れいむを腕から解放して仲間たちの元に返した。 仲間たちは戻ってきたれいむを見て、慌てふためきれいむから後ずさった。 「どうしたのみんな! れいむはれいむだよ! れいむのおかおになにかついているの!」 「ふん、見せてやろう。おまえに刻まれた烙印をな」 人間は手鏡を取り出し、れいむに見せた。 ゆっくりは社会性の強い動物なので、大抵は鏡に映ったのが自分であることを認識できる。 特に鏡のありふれた都会ではそうだ。 「ゆゆー!」 れいむの額には“ゲス”と書かれていた。(都会のゆっくりの識字率は高い。ひらがなカタカナの単純な単語に限られるが) 「その烙印は決して消えないぞ。なぜならおまえはゲスだからだ! ゲスでいぶだからだ!」 「ぞんな……ぞんな……どぼじで……どぼじで……」 人間は立ち去って行った。 れいむはでいぶ認定されてしまったが、幸いにして制裁されることはなかった。 だが、仲間の態度は冷たかった。 明らかに距離をとり、ひそひそと囁き合い、れいむの方をちらちらと盗み見て、視線が合うと慌てて逸らした。 「みんな! れいむはれいむだよ! でいぶじゃないよ! ゲスじゃないよ! みんなのしってるれいむだよ!」 そのはずだった。そのことは仲間たちも知っている。 このれいむはゆっくりしたゆっくりだったはずだ。人間に迷惑をかけたことはなかったはずだ。 だが、実際に自分ででいぶだといい、しかも額にはゲスと書かれている。 れいむは必死になって額にかかれた文字を消そうとした。水で塗らして消そうとしたが、文字は消えない。にじみもしない。 このれいむはゲスであるとはっきり主張し続けていた。仲間たちもその様を見て、いよいよれいむから離れていった。 れいむは意を決して、額を石にこすり付けて傷つけようとした。皮ごと烙印を剥がそうというのだ。 「ゆぐっ! ゆぐぅ! ゆぎぎぃ! ぎえでぇ! ゆっぐりぎえでね!」 それはとても苦痛に満ちた行程だった。仲間たちも思わず目を逸らす。 それで、とりあえずは烙印を消すことが出来た。 仲間たちはれいむにある程度の距離をとり、ぎこちない態度を取り続けたが、あからさまに排除することはしなかった。 だが、数日もたたない内に剥がした皮は再生し、消えたはずの烙印も復活した。 「どぼじでぇぇぇぇぇぇぇ!!」 その不気味な様を見た他のゆっくりたちは、ここに至って完全にれいむを村八分にした。 これはれいむがでいぶである、ゲスであるという神様からのお告げとしか思えなかったのだ。 れいむは半狂乱になった。するとどういうことか、やたらと涎が垂れてくるようになった。 止めようと思っても止まらないのだ。れいむは不安に押しつぶされ、考えが他所に回らず、汚らしい格好のまま過ごすようになった。 ついに、公園のゆっくりたちはそんなれいむを見るに見かねて、公園から追放することを決定せざるを得なかった。 かつての仲間たちは暗に明に、「ゆっくりしないでさっさとこうえんをでていってね!」とれいむに迫った。 れいむは皆の非難の視線と言葉に耐えられなくなり、ある夜、ひっそりと公園を出て行った。 ゲスの烙印を背負って……。 「やあ、ゆっくりたち。きょうもゆっくりしているね」 「にんげんさんだ! ゆっくりしていってね!」 あのあまあまをくれた人間が再び、公園のゆっくりの群を訪れた。 多くのゆっくりは明るい声で人間を歓迎したが、一部のゆっくりはこの人間が仲間のれいむを追い出すきっかけになったことを思い出し、不安げな表情だ。 「ところであのでいぶはどうなったのかな?」 「ゆっ!」 人間が言ったのは、あの追い出されたれいむ、いやでいぶであることは明白だ。 「あいつはとんでもないゲスだったよな。なにか酷いことをされていないか? 大丈夫か?」 「……でいぶにはゆっくりおひっこししてもらったよ」 一匹のぱちゅりーが呟いた。 他のゆっくりたちも目を伏せ暗い表情をしている。 「そうか。ゲスを公園に住まわせておくわけにはいかないからな。おまえたちは正しいことをしたよ」 「ゆぅ……でも……」 「えらい。とてもえらい。とてもゆっくりしたゆっくりたちだ。きみたちにご褒美をあげよう」 「ゆゆー!」 人間はお菓子をばら撒いた。 それはとても甘い香りのする美味しいそうなお菓子だった。 お菓子を見ると塞ぎ込んだゆっくりたちの心も晴れた。人間が「正しいことをした」と褒めてくれたことも大きい。 「にんげんさんありがとう!」 「むーしゃ! むーしゃ! ……すごくしあわせー!」 「おいしいよ! このおかしすごくゆっくりしてるよ!」 「ゆぅぅん! ゆぅぅん! らめぇ! おいしすぎておかしくなっちゃう!」 「すごくっ! すごくぅ! あまあまだよ! あまあまのくいーんだよ!」 それはとても美味しいお菓子だった。 今までこんなに美味しいものを食べたことはなかった。 ゆっくりたちはお菓子に夢中になった。嫌なこともすべて忘れてしまった。 「気に入ってくれて良かった良かった。僕も嬉しいよ。それじゃあ今日はこのへんで」 「にんげんさんありがとう! ゆっくりまたきてね!」 「にんげんさんのおかげですごくゆっくりできるよ!」 「にんげんさんだいすき!」 ゆっくりたちは遠ざかる人間の背に向かって、いつまでも声をかけたり跳ねたりし続けた。 しばらくして、また人間が公園のゆっくりの元にやってきた。 「やさしいにんげんさんゆっくりしていってね!」 ゆっくりたちはこの人間の顔を完全に覚えた。 この人間はとても美味しいあまあまをくれるのだ。 「さあ、今日もあまあまをあげよう。一匹ずつあげよう」 そういって、人間はゆっくりを一匹ずつ抱き上げ、頭を優しく撫でて、手ずからお菓子を食べさせてくれた。 「ゆゆ~ん! なでなでくすぐったいよ!」 「あまあましあわせ~!」 「いいないいな~! ゆっくりはやくれいむのばんになってね!」 だが、お菓子を貰えたゆっくりたちの表情はそれほど幸せそうではなかった。 お菓子があまり美味しくなかったのだ。 不味いわけではない。だが、前にもらったあの特別なお菓子に比べればゴミと言わざるをえなかった。 「にんげんさん、まえのおかしはないのぜ?」 お菓子を貰った一匹のまりさが人間に尋ねた。 「まえのって? あああれか……あるけど」 「よかったらそっちをもらいたいんだぜ?」 「いいよ」 そういって人間は再びまりさを抱き上げた。 「ええ~! まりさずるいよ~!」 「とかいはなありすにもあのおかしをくださいね!」 ゆっくりたちから不満の声が上がる。とはいえ、あの美味しい方のお菓子もくれるというのだ。 ゆっくりたちは期待に心が弾んだ。 だが人間は、まりさを抱き上げるだけで一向にお菓子を与えようとはしない。 「にんげんさん、どうしたんだぜ?」 痺れを切らしたまりさが訪ねる。 だが、人間は動かない。お菓子もくれず、黙りこくったままだ。 「はやくおかしがほしんだぜ! ゆっくりしないでまりさにおかしをくれなのだぜ! ……はっ!」 まりさはつい催促をしてしまった。 これは人間と付き合う上で禁忌とされる行為のひとつだった。 美味しい方のお菓子を要求するのも(ゆっくりたちの偽らざる本音であったが)、本来は避けるべき行為であったが、 人間を急かすのは完全なダウトだった。 途端に人間の表情が険しくなった。まりさを握った指に力が込められるのがわかった。 「ゆ……ゆわ! ゆわわ! にんげんさんごめんなのだぜ! もうまりさはおかしはいらないのぜ! ゆっくりはなしてほしいんだぜ!」 ゆっくりはよく空気の読めない生き物と言われる。 このまりさはそれに関しては多少はましな部類と言えただろう。食べ物を辞退するというのはゆっくりにはなかなかできないことである。 人間は、まりさの謝罪を聞き入れたのか、険しい表情を緩めた。 だが、まりさを離すことはなかった。 そしてこう言った。 「おまえはばりざだ」 「ゆへ?」 まりさは間抜けな声を漏らした。 だが、その意味するところは完全に理解していた。 “ばりざ”はれいむにおけるでいぶとほとんど同じ意味だと思っていい。 まりさはあの追い出されたでいぶと同じ境遇に陥ったのだ! 「おまえはばりざだ! クソ生意気なばりざだ! 人間を舐めて無礼な態度を取るゲスゆっくりだ!」 人間は矢継ぎ早にまりさを糾弾する。 「ま、まってほしいんだぜ! ゆっくりあやまるんだぜ! まりさは! まりさは! まり──ゆぎぃ!」 すさまじい激痛がまりさの全身を貫き、まりさは二の句が告げなくなった。 さらに、そのショックでしーしーを漏らしてしまった。 「ゆあ、ゆああ……ああ……」 まりさのしーしーは人間の膝にもろにかかってしまった。 これをやってしまって無事で済んだゆっくりはほとんどいない。 しーしーとは砂糖水であり、たいして汚いものではない、ということはこの場合無関係だ。 “しーしーかけ”がゆっくりが行う究極の侮辱行為であることは人間にもよく知られている。 「ふん、わざわざ問うまでもないな! これが明白な証拠だ!」 人間はゆっくりの群の中にまりさを放り出した。 だが人間はまりさになにもしなかった。制裁するわけでもなく、あの烙印を刻むこともしなかった。 かといって立ち去るわけでもなかった。 怒りに満ちた表情でまりさを中心にゆっくりたちを睨みまわしていた。 「あ、あの……にんげんさん?」 ぱちゅりーが不安の滲んだ声で問いかける。 「あの……あの……どうすればゆるしてもらえますか?」 人間の怒りを解かなければ、まりさだけでなく他のゆっくりも制裁されてしまうかもしれない。 それにあのお菓子ももうもらえなくなるだろう。あの美味しいお菓子。素晴らしいあまあま……。 「もちろん制裁に決まっている!」 「ゆひぃ!」 まりさは悲鳴を上げた。他のゆっくりたちもつられて痛々しい声を漏らした。 「だが、俺がやるつもりはない」 「え……?」 「おまえたちだ。おまえたちが制裁するんだ!」 「そ、そんな!」 ゆっくりたちはただならぬ成り行きにあわあわと唸ることしか出来ない。 「仲間の不始末は仲間内で片付けろ。いいか、ゲスを見逃すことはゲスなんだ。 わかるか? ゲスを制裁しないゆっくりもまたゲスなんだぞ!」 「ゆひぃぃぃぃ!」 まりさを、いやばりざを制裁しなければ群全体がゲスと見なされる! 人間はそういう意味の言葉を放った。 ゆっくりたちは恐慌状態に陥った。 「とかいはぁぁぁぁぁ!!」 一匹のありすが、わめきながらばりざに体当たりを食らわせた。 「ゆげぇっ! ありず、なにずるんだぜ!」 「ゲスなまりさ……いえばりざがわるいのよ! ばりざがわるいのよ! ばりざはとかいはじゃないわ!」 ありすが口火を切ると、他のゆっくりたちも次々にまりさを攻撃し始めた。 「そうだよ! まりさはばりざだよ! ゲスなんだよ! にんげんさんにめいわくをかけたんだよ! だから……だから! ゆっくりしんでね!」 「ゆぎ! ゆがっ! ゆぶっ!」 まりさは右に、左に跳ね飛ばされる。裂けた皮の下から餡を撒き散らしながら。 「ばりざはばりざなんだぜぇぇぇ! ばりざばゲズゆっぐりなんだぜぇぇぇ! ばりざばごうえんでいぢばんづよいんだぜ…… ごごばばりざのおうぢなんだぜ、ばがなじじいはざっざどででいぐんだぜ…… ざっざど……あ゛ま゛あ゛ま゛を……よごずんだぜ……」 まりさは跳ね飛ばされながら、一般的なゲスが言うとされる台詞を喚き続けた。 まりさは痛みの中で錯乱したのか、自分をゲスだと認めれば助かると思い込んだのかもしれない。 あるいはゲスそのものになりきったのかもしれない。 「もういいだろう」 「ゆふぅ……ゆふぅ……」 「ゆ゛……ゆ゛……ゆ゛……」 ゆっくりたちは皆荒い息をついていた。 蹂躙されたまりさは虫の息だ。まだ死んでいないがもう助かるまい。 「えらいぞゆっくりたち!」 人間は元の穏やかな表情に戻っていた。 そして、ゆっくりたちの労をねぎらい、褒め称えた。 「ゲスを制裁しなければゲスとなる。だが、ちゃんと制裁するならきみたちは善良なんだ! わかるよな? きみたちはとても善良なゆっくりだ! ゆっくりの鏡だ!」 「ゆふぅ……ゆふぅ……」 「大変な仕事をして、お腹がすいただろう! 素晴らしいゆっくりたちにご褒美をあげよう!」 人間はお菓子をばら撒いた。 ゆっくりたちは匂いだけで、そのお菓子があの特別なやつだと気がついた。 身も心も疲れ果てていたゆっくりたちは我先にとお菓子に飛びついた。癒しを求めて。 「うめぇ! これめっちゃうめぇ!」 「むーしゃ! むーしゃ! しあわせー!」 「ありすたちはとかいなのね! とかいはだからこんなおいしいあまあまさんをもらえるのね!」 「ばりざざまぁ! ゆっくりじごくでゆっくりはんせいしていってね! ゲスがうつっちゃうよ!」 人間のくれたお菓子は美味しかった。 とても美味しかった。 これに比べればどんな食べ物も色あせてしまう。 ゆっくりたちは自分たちが泣いていることに気がついた。 涙が出るのはお菓子があまりにも美味しすぎるからだろうと思った。 「やさしいやさしいにんげんさんがきてくれたよ!」 「ゆっくりしていってね!」 「いっぱいゆっくりしていってね!」 あの人間がまたしてもやってきたとき、ゆっくりたちは大歓迎した。 あれからゆっくりたちはなんとなく不満を感じていた。 何を食べてもあんまり美味しくないのだ。 公園を訪れる人々から珍しい食べ物を貰うこともあったが、それらもいまひとつ美味しく感じられなかった。 ゆっくりたちは、特別なお菓子をくれる人間が来るのを今か今かと心待ちにするようになっていた。 だが、人間はお菓子をくれなかった。 にこにことゆっくりたちに微笑みかけてくれたが、それ以外には何もしなかった。 ゆっくりたちは、前回のまりさの失敗を覚えていたので催促することはなかった。 ただ待ち続けていた。 瞳を輝かせながら待ち続けていた。 涎を垂らしながら待ち続けていた。 だが、人間はお菓子をくれなかった。 群の中に一匹のぱちゅりーがいた。 ぱちゅりーは賢かった。 だから、このままではいつまでたっても人間はお菓子をくれないだろうと気がついた。 ぱちゅりーはお菓子が欲しかった。他のゆっくりもそうだろう。 ぱちゅりーは考えた。考えに考えた。 ゆっくりとしては賢い脳餡を最大限に働かせて考えた。 なぜ特別なお菓子がもらえないのかを。 どうすればお菓子が貰えるのかを。 (おもいだすのよ! ゆっくりおもいだすのよ! にんげんさんがおかしをくれたじょうきょう……) 一番最初に貰ったお菓子は、普通のお菓子だった。 次にもらったお菓子は、特別なお菓子だった。欲しいのはこのお菓子だ。 あのとき……あのとき……そうだ! あのときはでいぶを公園から追放した翌日だった! 三番目にもらったお菓子は不味いお菓子、すなわち普通のお菓子だった。 だが、その後すぐさま美味しい方のお菓子をもらえた。 その間になにがあったか? ばりざの制裁だ! ぱちゅりーは理解した。ゆっくり理解した。 なぜ特別なお菓子がもらえないのかを。 どうすればお菓子が貰えるのかを。 「むきゅう! みんなゆっくりきいて! みんなのなかにゲスがいるわ!」 「ゆえええええ!!」 ぱちゅりーは意を決して言い放った。 他のゆっくりたちは、ぱちゅりーの突然の告発に驚いたが、すぐさまもっともだと思い直した。 ──お菓子がもらえないのは、群の中にゲスがいるから。 簡単なことだった。簡単だったのでゆっくりたちにも理解可能だった。 「だれ! だれ! だれなの! ゲスなゆっくりはゆっくりしないでさっさとでてきてね!」 「ぱちゅにはだれだかわかってるわ!」 「ぱちゅりーゆっくりしないでおしえてね! わるいゲスゆっくりがだれだかおしえてね!」 ぱちゅりーの、群の中にゲスがいるという言葉を疑うゆっくりたちはいなかった。 「それは……そこのありすよ!」 皆の視線が一斉に一匹のありすに注がれた。 「え? え? ええっ!?」 ありすは突然非難の矢面に立たされてうろたえた。 「そのありすはれいぱーよ!」 レイパーありす……これはもはや説明不要だろう。 ゆっくりたちはレイパーを恐れることこの上なかった。 「れいぱー? れいぱー! ありすはれいぱー!」 「ちがうわ! ありすはれいぱーなんかじゃないわ! とかいはよ! とかいはなのよ! みんなしってるでしょ! れいぱーなんかとしでんせつよ!」 レイパーは都市伝説。──ありすの言葉はたしかに一理あった。 レイパーを恐れるのはゆっくりだけではない。ゆっくりを飼う人間も同じだった。 無闇にゆっくりの数を増やすというのも、普通の人間にとって頭痛の種だった。 あるとき、市は巨額を投じてレイパーの一斉駆除を行った。 ゆっくりの駆除は、世論がうるさいのでなかなかできないのだが、対象がレイパー限定となれば、 愛護派も反対するどころかむしろ積極的に支持した。 レイパーありすは都会の人間にとってあまりに不都合な存在だったのだ。 根絶とまではいかなかったが、今や生まれついてのレイパーは激減していた。 「うそよ! ぱちゅはみたもの! ちゃんとみたもの! むりやりすっきりさせられて、 たくさんのくきをはやしてしんだまりさをみたもの!」 「ゆゆーっ!」 たしかにレイパーは減ったが、それでも以前ゆっくりにとって恐怖の対象である。 むしろ、減ったがために半ば伝説めいた存在となり、ますます恐ろしく思われるようになったのかもしれない。 「ゆぐ……ゆぐぐ……そうだわ! ちびちゃんよ! ちびちゃんがいるはずだわ! すっきりしたならちびちゃんがうまれたはず! でもあたらしいちびちゃんはいないわ! ほらね! ありすはレイパーなんかじゃないわ!」 「ゆ……」 さすがのぱちゅりーも押し黙る。 すっきりをすれば赤ゆっくりが生まれる。たとえレイパーであってもそれは変わらない。自然の摂理だ。 「きっと、ちびちゃんともすっきりしたんだぜ!」 一匹のまりさが唐突に叫んだ。 まりさ種はレイパーありすに狙われやすいため、ゆっくりの中で一番レイパーを恐れていた。 レイパーの噂には尾ひれ背びれをつけたのは主にまりさ種だった。 「ゆゆー! ありす、ちびちゃんとすっきりしたの!」 「してない! してないわ!」 「むきゅ、ちびちゃんがすっきりさせられたらしんでしまうわ。そしてちびちゃんから、ちびちゃんはうまれない……」 「だからちびちゃんがいないんだね!」 「ひどいよ! ひどいよありす! とかいはじゃない! ゆっくりじゃないよ!」 その猟奇的な発想にゆっくりたちは戦慄した。あまり性欲の強すぎるレイパーは生まれた子供まですっきりさせてしまうことで知られていた。 ゆっくりたちは恐怖と怒りの虜になった。 ありすは、うまく切り返したつもりだったが、逆に墓穴を掘ってしまったのだ。 こうなると後は、自然と私刑が始まるのを待つばかりだった。 誰が最初にありすを攻撃したのかは定かではない。複数匹が同時に動いたのかもしれない。 「ちょっ! やべ! やべで! ありずば! どがい! どがいばぁぁぁぁぁぁ!!」 「しね! しね! ゆっくりしね! れいぱーありすはゆっくりしね!」 「ちびちゃんごろしのれいぱーはせいさいだよ!」 ありすは、先日のまりさのように、圧倒的な数の暴力に翻弄された。 「むほお! んほおお! んほおおおおおおおおお!!」 それはレイパーの嬌声として知られるものだった。 恐怖の中で自分をレイパーだと思い込んだのか、それとも本当にレイパー化したのか……。 「ゆゆ! ほんしょうをあらわしたよ!」 「みんなでこのばけものをやっつけるんだぜ!」 「ゆー!」 たとえ本当のレイパーとなって、膂力が増大したとしても、この頭数にはかなうはずもない。 やがて、ありすは物言わぬつぶれた饅頭と化した。 「えらいぞ! えらいぞゆっくりたち! ついに恐ろしいレイパーを倒したな!」 「ゆゆーん!」 人間はゆっくりたちを称える。ゆっくりたちも誇らしげだ。まりさ制裁のときは後ろめたい気持ちがあったが、 紛れもないレイパーとなればこれはどこからどう見ても正当な制裁だ。 「さあ、お菓子をあげよう! もちろん美味しい方のお菓子だ! 善良なゆっくりだけが食べられるお菓子だぞ!」 「にんげさんありがとう!」 「きょうもみんなでゆっくり~!」 それからも、ときおり人間はゆっくりたちを訪れた。 人間がやってくると、ゆっくりたちは仲間の内からゲスを見つけ出し、制裁した。 それらは自然に行われるようになっていった。 ゲスは殺しても殺しても、次から次へと現れた。 ゆっくりたちは仲間の腐敗を嘆き、隠れたゲスを見つけ出そうと目を光らせた。 やがて、お菓子の人間はやってこなくなったが、それでもゲス制裁は続けられた。 ゲス制裁は善良なゆっくりの義務だからだ。 ゆっくりたちはお互いを告発しあった。 餌探しをサボった。仲間の持ち物を盗んだ。所定の場所以外でうんうんをした。人間さんに迷惑をかけた。 人間さんに舐めた態度を取った。人間さんを睨んだ。人間さんの前を横切った。……告発の種はいくらでもあった。 告発することは身を守ることにもつながった。一度告発されると、それを覆すのはほとんど無理だったからだ。 自分を告発しそうなゆっくりを先に告発するのが最善の手だった。 ゆっくりたちはお菓子をくれる優しい人間を待ち続けた。 あの特別なお菓子はいつまでたってもゆっくりたちを魅了し続けたのだ。 ゆっくりたちはゲス制裁を、公園を訪れる人々に見せ付けるように行った。 ゲス制裁は善良なゆっくりであることの証だからだ。自分たちが善良であることを知らしめたかった。 最初、人々はゆっくりたちが遊んでいるのだと思った。やがて様子がおかしいことに気がついた。 ようやく、仲間をいじめ殺していることに気がつくと、人々はゆっくりを無視するようになった。 人間に迷惑をかけてはいない。態度も生意気ではない。むしろ、卑屈なほどに腰が低いくらいだ。 だから、ゆっくりを駆除することはしなかった。ただ、そこにいないものとして扱った。 たまに、食べ物を与える人間もいたが、食べ物をもらってもちっとも幸せそうにしないゆっくりたちを見ると、 もう二度とゆっくりには関わらないようになった。 ゆっくりたちも、自分たちが人間に無視されてることに気がついた。 それはゲスの仕業にされた。ゲスゆっくりが群の中に潜んでいるから人間さんは冷たくなったのだと思った。 ゲス制裁はさらに苛烈になっていった。 お菓子を与えた人間──れいむ、まりさ、ありすをゲス認定した人間は、その様の一部始終を見ていた。 怒りに満ちた表情で。 この人間はあるとき、“ゆっくりの間でいじめが流行っている”という情報を得た。 特に公園のゆっくりの間でだ。 いわゆる“でいぶごっこ”と呼ばれるそれは、ある日突然、群の中の一匹をゲス呼ばわりし、苛め抜き、 最後には追放するか殺してまうというものだった。 群の掟を守らせるためのみせしめなのか。 人間同士のいじめを目撃して影響されたのか。 増えすぎたゆん口を自前で調節するためのものなのか。 理由は諸説あった。 だが、この人間にとってはどうでもいいことだった。 重要なのは、ゆっくりがゲス行為を働いているということだけだった。 この人間はゲスゆっくりが嫌いだった。憎んでいるといってもいい。 公園のゆっくりはすべて潜在的なゲスと見なすようになった。 一連の出来事も、制裁対象か否かの最終確認だった。 ついでに、制裁しやすい状況になったことは思わぬ幸運であったが。 ──そう、もはや公園はゆっくりたちにとってのゆっくりプレイスではない。 人々はゆっくりに愛想を尽かしている。 今なら、白昼堂々大っぴらにゆっくり虐待しても、誰も咎めるものはいないだろう。 むしろ、誰かが駆除してもらうことを密かに望みすらしていることだろう。 もう、この事実は虐待派たちに宣伝してある。 あとは実行に移すのみ。 「醜い生首饅頭ども! ゲスゆっくりども! おまえらに本当の制裁を教えてやる! おまえらの拙い模倣ではない、 真の制裁、真のゆっくり地獄をな! 餡の一粒に至るまで苦痛で満たしてやる!」
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/299.html
「はぁ…」 私はため息をつく。 今日は、地元の高校の時の同級生が泊まりに来るのだ。 友達なんかじゃない。グループのボス猿みたいな奴で、私はパシリみたいに扱われていた。 男と翌日に遊ぶので、ついでに泊めてくれという事なのだ。図々しいにも程がある。 ピンポーン チャイムが鳴り、玄関へ向かう。 「あきこ~、ひさしぶり~」 「としこ、いらっしゃい」 としこは、靴を乱雑に脱ぐと、「おじゃまします」も言わずにとっととアパートの部屋の中へ。 「結構、片付いてんじゃん」 「うん…」 としこは、ベットに勝手に腰かける。 私は、としこの持つ変な鞄が気になっていた。 (なんだろう、あれ?) 嫌な予感がした。だいたい、こういう時の嫌な予感は当たるもんだ。 「あ、そうだ」 何かを思い出したかのように、その鞄を開けるとしこ。 「ゆゆ!せまかったよ!ゆっくりあやまってね!」 鞄の中から、1匹のゆっくりれいむが出てきたのだった…。 「れいむはれいむだよ!かわいくってごめんね!」 「いやーん、マジ可愛い~」 寝言をほざく、バスケットボール大の饅頭と、嬌声をあげる、としこ。 「どう?私の飼ってるれいむだけど、すっごく可愛いでしょ?」 「う、うん…」 可愛くねーよと心の声で否定する。 そもそも、人の家に急に泊まりに来るだけでも非常識なのに、なまもの連れとは何考えてんだ? それ以前に 「ね、ねえ、としこ…」 「何?」 「ここ、ペット禁止なんで、困るんだけど…」 そうなのだ。喋る饅頭なんか飼ってるなんて大家さんに勘違いされたら、追い出されちゃう。 「はあ?一晩泊まるだけでしょ?それとも、れいむだけ外へ出せって言うの?あんた、虐待派?」 まあ、としこのやつに常識云々を言うのは時間の無駄か…。 「う、うん、だから、できるだけ、ゆっくりを大人しくさせてね…」 「れいむは、大人しくてしっかりした子だから大丈夫だって!ねー、れいむ」 「ゆゆ?れいむは、とってもゆっくりしてるんだよ!ゆっくりりかいしてね!」 意味わかんねーよ。つうか、言ってるそばから、声がデカいんだよ。 「おねえさん、あのへんなにんげんさんは、なんだかゆっくりしてないよ?」 「大丈夫よー、れいむは気にしなくて」 やりとりがウザいにも程がある。早く、寝てしまおう…。 「もう、私は寝るね」 「えー、もう少し折角だから話そうよ?お酒とかないのー?」 お前と話したくないから寝るんだよ。酒までたかるつもりかよ…。 「ゆゆ!れいむは、おなかがすいたよ!あまあまちょうだいね!」 でかい声で急に自己主張する饅頭野郎。 だから、夜中なのに声がデカいんだよ! 「ごめんねえ、お腹すいちゃったんだー。今持ってくるね」 「ゆっくりはやくしてね!れいむは、おなかさんがぺーこぺーこなんだよ!」 何だよ、ゆっくり早くって。ほんと、意味分からん…。 ビタン!ビタン!と跳ねて喚くれいむ。としこは、注意しようともしない。 隣りのおじさんが怒鳴りこんできたら、どうすんだよ! 「ねえ、あきこ。なんか甘い物無いの?」 持って来て、無いんかい!欲深饅頭の飼い主なら、甘味くらい常備しとけ。 「えーと…、冷蔵庫にヨーグルトならあったと思うけど…」 「じゃあ、それ早く持って来て!」 「はやくもってきてね!さっさとしてね!にんげんさんは、おねえさんのどれいなんでしょ?だから、れいむのどれいだよ!」 はぁぁぁ???何言ってんの?何で私、こんな奴にヨーグルトあげないといけないの? 「ぷっ、ウケる。れいむは、賢いね~」 「もちろんだよ!れいむ、かしこくってごめんね!」 冷蔵庫の前にいる私に、不愉快な会話が聞こえてくる。 そして、ヨーグルトを持って来て、としこに渡す。 「もう、寝るから…。としこも早く寝た方がいいよ…」 「オッケー、おやすみー」 はぁ…、やっと解放される。 はずだった…。 「ゆああああああ!!!!!すっぱいよおおおお!!!!!これ、どくはいってるううううう!!!!!」 急に泣き喚く、迷惑饅頭。 こっちが泣きたいわ! プレーンヨーグルトでも、ゆっくりには充分ご馳走のはずなんだが…。 「うるせえぞ!!!!!!!!!!!!!!」 隣りから、おじさんの怒声が…。 もう…、勘弁してよ…。あの、おじさん、頑固者で超怖いんだからね…。 としこに文句の一つでも言おうとした私に、あろうことか、としこが文句を言ってくる。 「ちょっと!甘い物って言ったでしょ!なんで、すっぱいヨーグルトなんかあげんのよ!れいむを殺す気!?」 「ああ、ごめん…」 お前も、確認しただろうが! てか、生ゴミや雑草を食うゆっくりが、ヨーグルトで死んでたまるか。 ゆっくりの方が食いもんだろうが。 多分、としこの奴が甘やかすだけ甘やかして、本当の甘味以外受け付けなくなっているんだろう。 迷惑極まりない。 「ゆあああ!!あのばばあが、かわいいれいむにどくを、たべさせたよ!れいむが、かわいいからいじめるんだね!」 だ・か・ら、騒ぐなよ…。また、注意されたらどうすんだよ…。 「れいむにあまあまをくれない、みにくいどれいばばあは、ゆっくりしんでね!」 さすがに限界だ…。 これが、リアルでいぶって奴か…。 甘やかされきって、自分がゆっくりする事が、この世の全ての正義だと勘違いしてやがる…。 私は鞄からラムネを取り出すと、れいむ…いや、でいぶの口に放り込む。 少し経つと、「ゆぴぴぴぴ…」と間抜けな寝息を立てて大人しくなった。 「ちょっと!れいむに何すんのよ!」 「としこ、落ち着いて。ゆっくりは、ラムネで眠るでしょ。眠らしただけよ」 「こんな、無理やり眠らせるなんて可哀そうでしょ!れいむに何かあったらどうすんの?」 面倒くさいにも程がある。 「あのね、あれ以上騒いだら、隣りのさっき怒鳴ったおじさんが乗り込んでくるよ?としこは、それでもいいの?」 としこは、不満いっぱいの表情だが、しぶしぶ引き下がる。 とにかくこうして、最低の一夜が過ぎていった。 翌日、としこはさっさとデートとやらに行ってしまった。 それ自体は、ありがたいことなのだが、最低最悪の問題が一つある。 でいぶ野郎が、まだ家に居るということだ。 としこのやつ、厚かましくも預けていきやがった。 とりあえず、今は寝ている。このまま永遠に目覚めなければいいのだが…。 「ゆ!ゆっくりおきるよ!」 起きやがった。 「おねえさん、ゆっくりおはよう!ゆっくりしていってね…ゆゆゆ??」 としこがいない事に気づき、キョロキョロするでいぶ。 「おねえさん?どこ?ゆっくりはやくでてきてね!れいむ、いまはかくれんぼさんはしたくないよ!」 そして、ようやく私を発見したようだ。 「ゆゆ!いじわるばばあは、おねえさんをはやくだしてね!」 「いま、お姉さんとやらは、いないわよ」 その私の返事に、涙目でぷくーをしながら抗議してくる。 「うそつかないでね!おねえさんは、あさいちで、れいむにあまあまをくれるしごとがあるんだよ!そんなことも、しらないばばあは、ゆっくりだまっててね!」 あーあ、としこの奴、しっかりこいつに”あまあま”を産む機械みたいに思われてるねえ。 甘やかした結果がこれだよ!ってね。 …。 「むしないでね!ばばあは、おくちがきけないの!?」 お前がゆっくり黙ってろって言ったのに。これが、餡子脳か…。 イラつくから、もっとラムネで眠らせるか…。 「ん?」 ボヨン!ボヨン! 足に体当たりをしてくる、腐れでいぶ。 「おまえでいいから、さっさとかわいいれいむに、あまあまちょうだいね!たくさんでいいよ!あまあまをくれないと、せいっさいするよ!」 蹴っ飛ばしたくなる気持ちを懸命に堪える。 「分かったから、その体当たりやめてちょうだい」 「ゆふふ!わかればいいんだよ!れいむ、つよくってごめんね!ついでに、かわいくってごめんね!」 勝ち誇る、でいぶ。 今まで、ゆっくりと関わりを持つことはほとんど無く、対した感情も持ち合わせていなかったが、こんなにムカつく物だったのか…。 ピンポーン ん?来客か。これからでいぶに、ラムネを食わせてやろうと思ったのに。 「はぁ~い!れいむいる?」 としこかよ…。丁度いい、そこに転がってる汚物を連れて一緒に消えてくれ。 「どうしたの?」 「ちょうど、この辺寄ったからさ、れいむを彼に会わせてあげようと思ってさ」 会わせて…か。言葉が間違ってるな。見せるで充分だろ、なまものなんだから。 「ゆゆ!おねえさん!ゆっくりしていってね!どこにいたの?れいむは、あまあまがほしいよ!ゆっくりはやくよういしてね!」 「ちょっと、あきこ。まだ、れいむにご飯あげてなかったの?」 「このいじわるばばあは、ぜんぜんつかえないよ!ばばあは、ゆっくりしんでね!」 はいはいゆっくりゆっくり。とっとと私の目の前から消えてくれ。 「ねえ、あきこ。何も無いの?」 「無いよ。そこら辺のコンビニで買えば?私は、もう出かけるからそいつも連れて行ってね」 私の怒りは限界に近い。言葉も荒くなる。 としこには、いつも言いなりだが、でいぶの言いなりにまでは堕ちたくない。 「はやく、あまあまたべたいよ!れいむ、もうがまんできないよ!ぱしたさんや、べーこんごはんさんでもいいよ!」 醜く顔を歪めて、ウネウネ気持悪く動いて、駄々をこねる。生理的に受け付けない。 「わかったから、れいむ、すぐに用意するからね。我慢してね。いつもあげてるでしょ?」 「ゆうう…。おねえさん、やくそくだよ!あまあまをはやくくれるなら、ゆっくりがまんしてもいいよ!ききわけよくって、ごめんね!」 「れいむは、いい子ね~」 茶番もいいところだ。 「あの、どうしたの?」 男がこちらへやってくる。この男が、としこの彼氏なのだろう。 離れた所で待っていたようだが、揉めているように見えたのか、不安そうな表情だ。 「ねえ、私が見せたいものがあるって言ったよね」 としこが、私が聞いたことも無いような媚びた声で男に話しかける。 「うん…」 不安そうに男が、私とでいぶに交互に視線を向ける。 「見せたい物って、このゆっくりかい?」 男が困惑したような、冷ややかな視線をでいぶに向ける。 「ゆゆ!ゆっくりできないかんじの、じじいだね!このばばあと、おなじかんじがするよ!」 でいぶが、としこの彼氏に暴言を吐く。 としこの奴、困ってやがる。ざまーみろ。 「ち、ちょっと…。何言ってんの…」 「ゆぷぷ!こんなやつ、どーでもいいから、やくそくのあまあま、はやくちょうだいね!れいむ、もうがまんのげんかいだよ!」 甘やかしに甘やかして、他人もないがしろにしてきたのだろう。 だから、人を見下すのが当たり前になっているようだ。 としこ、あんたは躾を間違えたんだよ。あんた自身も、アレだけどさ。 「俺は、ゆっくりって生理的に受け付けないんだ。しかも、こいつはすごいゲスだね…。これ、君のかい?」 としこに向き直る、彼氏。 目が泳ぐ、としこ。そして… 「ち、違う違う!見せたい物ってのは、そう、このキーホルダーのことなの!これは、この子の飼いゆだからさ!」 そう言って、私を指さすとしこ。 「そうなの?」 彼氏が私に聞いてくる。 「うん、私のだよ」 私は、そう即答する。 としこが、ホッとした表情になる。 「そうなんだ」 人間三人に静寂と一瞬の間が訪れる。 でいぶは、腹減ったと相変わらず醜く喚き散らしているが。 「お邪魔してごめんね。としこ、行こう」 「え、う、うん」 彼氏が静寂を破り、としこと共に去ろうとする。 「ねえ、としこ」 「な、何よ…?」 「こいつは、私の飼いゆだよね?」 「え、そ、そうに決まってるじゃない!」 私は、としこに最後にそれだけ聞くと、でいぶのりぼんに飼いゆ登録のバッチが無い事を確認する。 二人は去った。 「おねえさんはうそつきだよ!あまあまくれないなんて、おねえさんもくずだね!ばばあでいいから、ゆっくりはやくもってきてね!」 そう、この糞でいぶは私の飼いゆだ。 ドカッ! 私の蹴りが、でいぶの顔面にヒットする。 顔面がくぼみ、饅頭皮の表皮が少し抉れる。 「ゆぎゃあああああああ!!!!!いたいよ!れいむのおかおさんが、いたいいたいだよぉぉぉ!!!うああああんん!!!」 まるで、地獄の釜で茹でられてるかのように悲痛な声をあげる、でいぶ。 まあ、地獄を見るのはこれからが本番なんだけどな。 「ゆぐ…ゆぐ…ひっく…なんで、かわいいれいむにこんないじわるするの?れいむが、かわいいから、ばばあはしっとしてるの?ばかなの?しぬの?」 まだ、こんなくだらねえ事が言えるなら、元気そのものだな。 「ゆゆ?」 でいぶの目の前に、チョコを落とす。 「ゆゆ!あまあまだよ!ちょこさんは、ゆっくりできるよ!」 チョコに突進しようとする、でいぶの頭を踏みつけて動きを封じる。 「ばばあは、いじわるしないでね!れいむは、ちょこさんをたべるんだよ!」 そのチョコは元々、私の物だとかそういうことは一切考えないのか。 まあ、でいぶだしな。あまあまは、どれいが生やす物…なんだろ? 「私がいいと言うまで我慢したら、食わせてやる」 そう言って、頭から足をどかすと、でいぶはチョコに直ぐに飛びついた。 「ばかなこといわないでね!あまあまは、れいむのだよ!れいむは、ゆっくりすぐにたべたいんだよ!そんなこともわからないの?ゆっくりりかいしてね!」 でいぶが、チョコを一気に食べる。 「ゆぶぶぶぶぶぶ…ゆげぇ!!ゆげぇ!!これ、どくはいっでる”う”う”!!!!!」 バーカ。それは、としこが昨日残した煙草の吸殻にチョコを適当にコーティングしただけのもんだよ。 よほど気分が悪いのか、断続的に痙攣しながら餡子を吐いている。 私は、口を抑えて抱えあげる。 「まだ、死なせねーよ」 口をガムテープで塞ぐと、アイスピックを刺していく。力いっぱい顔面の方に。 ビタンビタンと痛みで、のたうち回るので、左手で抑えつけながら、右手で刺す。 今日は、隣りのおじさんも、別の隣人もいないらしいことを確認すると、ガムテープを剥がす。 「いだいいい!!!いだいいよおおお!!!れいむ、なにもわるいごどじでないのに!!!」 今は、このイライラも心地よい。なぜなら、発散できる事が分かっているからだ。 「ゆっぐりじね!ゆっぐりじね!ばばあは、そくざにじね!」 喚くでいぶの右目に、アイスピックを刺す。 ぐりぐりとねじり、一気に引く。すると、でいぶの右目は簡単に取れた。 「れいむのおべべざんがああああ!!!いだいよおおお!!!」 もう片方の目も、同じように抜き取る。 「なにもみえないよ!くらいよ!こわいよ!おひさまさんもみられないし、びゆっくりと、びゆっくりどうしで、みつめあうとこもできないいいい!!!ゆああああああんん!!!」 何が、美ゆっくりだ。寝言は寝てから言え。 次は、でいぶをコンロへと持っていき、あんよを火に押し付ける。 「あじゅいいいいいいい!!!!!もうやだおうぢがえるうううううう!!!!!」 こんがりと、あんよが焼け、甘く香ばしい匂いが漂う。 炭化したあんよはもう、跳ねることも這うことも出来ない。 「れいむのあんよさん…ぺーろぺーろするから、なおってね…。でないと、れいむはあるけないよ!ゆっくりりかいしてね!」 あんよに話しかけてんのか?ゆっくりの餡子脳は訳分からん。 最後は、まむまむ破壊だ。 れいむ種のぼせい(笑)は強く、おちびちゃんこそ最高のゆっくりというれいむも多いと聞く。 それだけに、それを奪われるのは凄まじい絶望感を味わうはずだ。 ナイフで執拗に、まむまむを切り刻む。 「ゆぎゃあああああ!!!やべでね!やべでぐだざいい!!!おぢびちゃんがうめなくなるよお”お”お”!!!」 でいぶが、これまで以上の悲鳴をあげる。 しかし、私はでいぶのまむまむを、ザックザックと容赦なく切り刻む。 しばらくすると、グズグズになって使い物にならないまむまむを晒したでいぶが完成した。 痛みで失神と痙攣を繰り返すでいぶ。 うわ言のように「れいむのばーじんさんが…」とほざいていた。 饅頭がバージンとか、きめえんだよ! 虐待が一通り終わり、放心状態のでいぶに声をかける。 「あんた、もう死ぬから」 それを聞いて、でいぶは目線をこちらに向ける。身体はもう動かせない。 「なんで、こんなひどいことするの?」 「分からない?」 「わからないよ…。れいむは、ゆっくりしてただけなのに…。れいむ、なにもわるいことしてないのに…」 「あなたは、悪い事をしたの」 「ゆゆ?!してないよ!へんなこと、いわないでね!」 「知りたい?」 私は、でいぶの傍へ寄る。 「あなた、ご飯はどうやって用意するか知ってる?」 「ごはんさんは、おねえさんがもってくるんだよ」 「じゃあ、お姉さんはどこから持ってくるの?」 「ゆゆ?」 でいぶは言葉に詰まる。質問の意味さえ理解してないようだ。 でいぶに一つ一つ分からせるなんて不可能だ。 何せ、自分は全て正しいと思っているんだから。 「これだけ分かってくれればいいわ。まずは、ゆっくりより人間は強いの。これは、良くわかったでしょ?」 でいぶにアイスピックを刺す。 「ゆぎゃぁぁ!わかります!にんげんさんは、つよいです!ちくちくさんは、もうやめてね!ゆっくりできないいい…」 「でね、私はあなたが不快なの。嫌いなの。強い人間さんに嫌われるような事をすることが悪いことなの、理解できた?」 れいむは固まっている。そして、 「ごべんなざい!れいむは、にんげんざんに、ゆっぐりでぎないばばあっていいまじだ!ゆるじでぐだざい!」 でいぶに罪を認めさせるなら、これくらい噛み砕いてあげないと。 まあ、罵倒された状態で殺してもスッキリ出来ないしね。 私は、でいぶにとどめを刺そうとする。 その時… ガチャリ… 家の扉が開く。 としこと彼氏が、そこに立っていた。 「あ、あんた…何やってんの…」 としこが、絶句する。かなり、ひいている。そりゃあまあ、そうだろう。 固まるとしこに変わり、彼氏が口を開く。 「実は、俺ととしこは別れたんだ」 どうやら、二人は別れることになったようだ。 彼氏の方から、一方的に別れを通告したらしい。 しかし、なぜ二人はここにいるのだろう? 「れ、れいむ…」 としこは、でいぶを迎えに来たようだ。 「これは、私の飼いゆだよ?」 私は、そう言い放つ。 「俺も、そう聞いたけど。録音もしてあるよ」 彼氏は、そう言って携帯の動画を見せる。あの場面だ。 「もう、あきことは絶交だから!」 としこは、半狂乱になりながら去っていった。 としこと絶交、なんて素晴らしい響きなのだろう。 「詰めが甘いよ。口約束じゃ、ごねられるよ」 彼氏がそう言ってくる。 「う、うん」 「楽しかった?」 彼氏は、眩しい笑顔でそう聞いてきた。 「楽しかった…」 「俺は、君に会いに来たんだ。君とは趣味が合いそうだから」 私は恋に落ちた。 二人の初めての共同作業は、でいぶを踏み潰すことだった。 グシャッ!!! はっぴーえんどだよ!
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4281.html
『でいぶでいず』 63KB 虐待 制裁 自業自得 差別・格差 仲違い 嫉妬 妬み 家族崩壊 同族殺し 番い 赤ゆ ゲス 希少種 都会 虐待人間 うんしー お久しぶりです、今回は長めです、では、どうぞ ※ゲス注意 『でいぶでいず』 ある晴れた日のことである。 広い公園があった、緑も多いがあまり手入れは行われていないのか特に人が訪れない場所は林の様になっていた。 ただ、その広い公園は残念なことに室内で遊ぶことに夢中の子供たちは公園を訪れることは少なくなってきている、代わりに居着いたのはゆっくりたちだ。 この公園では、子供たちよりもゆっくりを多く見るようになった。 そんな公園のダンボールの中で一つのゆっくりの家族がいた。 「もっちょむーちゃむーちゃしちゃいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ごはんしゃんぎゃじぇんじぇんちゃりにゃいよ! ゆっくりできにゃいよ!」 「おにゃきゃちゅいちゃぁぁぁぁぁぁ!! ゆっくちできにゃいぃぃぃぃぃ!!!!」 そうわめいているのは3匹の赤れいむ。 その在り方はゲスという存在を赤ゆっくりにして極めている。 3匹の周りには口から飛び散らかった食べカスが付着していた。 今しがた、むーしゃむーしゃしあわせー! と叫びながら食べたために出たものでもある。 そんなに腹が減っているなら土でも食ってろと言いたいところだ。 しかしお腹がすいていると叫んでいる割に血色は妙に良く身体も丸々と太っている。 餌は足りているのだろう、腹がいっぱいではないというだけの単なるわがままだ。 「ゆぅ~、ぺーろぺーろ、おちびちゃんたち、もうちょっとまってね、いままりさがかえってくるからね」 その三匹の前には成体のゆっくりれいむが三匹の赤れいむを宥める。 その表情はイライラとしたものだが、赤れいむ達は気付く気配はない。 「ゆぅぅぅぅ~~、れいみゅはもっちょいっぴゃいむ~ちゃむ~ちゃしてゆっくりしちゃいだけにゃんだよぉぉぉ! どうしてそんにゃこというにょぉぉぉぉ!」 「しょうだ! しょうだ! れいみゅをゆっくちしゃせにゃいおやはしんでにぇ! ゆっくちちにゃいでしんでにぇ!」 「れいみゅをゆっくちしゃしぇにゃいくじゅおやはれいみゅおこりゅよ! ぷきゅーーー!!」 あまりの暴論、自分のことしか考えていない赤れいむ達はただゆっくりしたいがために叫ぶ。 赤ゆっくりとは、自分がゆっくりしたいと泣き喚くものだが、これはひどい。 ただただ限度を弁えさせずに甘やかすと、赤ゆっくりは際限なくゆっくりを求め、このような醜態をさらすのである。 その赤ゆっくり達の姿にれいむは目を見開き、無い青筋をビキビキと浮き上がらせて、その口元は歯茎が剥き出しになるほど食い縛られている。 その表情と雰囲気は殺気に満ち溢れるものだが、赤れいむ達は全く気付かない。 「どうしてそんなこというのっ! ……ちょっとれいむはおそとにいくからね! まりさ! ついてきてね!!」 表情も雰囲気も変わらず、れいむは怒鳴るように言った。 だがれいむが言った言葉にも赤れいむたちはまるで耳を貸さない、おそらく今の状態では自分の都合のいい音しか拾わないだろう。 赤ゆっくりのゲスとはそういうものだ。 そして、よく見るとダンボールの隅で2匹の赤まりさが身を縮めこませていた。 名前を呼ばれ、一匹がビクリと身をすくませる。 餌が足りていないのだろう、赤れいむに比べると体は一回り小さく、あまり血色がいいとは言えない。 その中の一匹の赤まりさが恐る恐る言葉を発する。 「ゆ、ゆっくちりきゃいしたよ……」 その表情は絶望そのもの。 諦めきっているモノの顔をしていた。 呼ばれた赤まりさが残った赤まりさに言う。 「まりちゃ、ゆっくちしていってね」 「おねーしゃん……」 「ぐずぐずしないでね! まったくぐずのまりさだね!」 今にも飛びかかりそうなほど怒気を放つれいむ。 呼ばれた赤まりさは残される赤まりさにそう言うと、れいむの後をついて行った。 その後ろ姿を残されたまりさは心配そうに見つめる。 以前もこんなことがあった。 怒ったれいむが姉の赤まりさを一匹外に連れて行き。 れいむだけが帰ってきて、姉の赤まりさは遂には帰ってこなかった。 どうかこの予感が当たらないようにと、そう願った。 そして姉の赤まりさが戻ってくることはなかった。 「ゆっゆっ! きょうもごはんさんをとってきたんだぜ!」 赤まりさを連れて行ったれいむが一匹で帰ってきて、ほどなく、赤れいむたちは泣き疲れ寝てしまい、そして起きた頃。 成体のゆっくりまりさが、先ほどのれいむのダンボールに入ってきた。 れいむの番のだろう、労働を終えようやく我が家に帰ってこれたことにやりきった表情をしている。 「おそいよ! れいむもおちびちゃんたちもまちくたびれちゃったよ! ゆっくりしないでさっさとしてね!」 そんなまりさへの第一声は怒声。 怒鳴られたまりさは先ほどの表情は何処へやら、悲しい顔をしながら言葉を紡ぐ。 「ゆぅ、ごめんなんだぜ、でもきょうもたくっさんたべものさんとってきたんだぜ!」 そう言うまりさの帽子はそれなりに重そうになっている。 「きょうもたくっさん! じゃないでしょぉぉぉっぉっぉぉぉ!! あんなんじゃぜんぜんたりなかったかったんだよぉぉぉぉぉ!」 「ゆっ、ゆゆ!! ごめんなんだぜ! ごめんなんだぜ!!」 れいむは唾を飛ばしたながらまりさに不満を叩きつけた。 まりさは地面に顔が付きそうなくらいな勢いで頭を下げる。 もはやこの家ではありふれた光景となってしまった、この圧倒的な上下関係。 とても番の関係と呼べるモノの姿ではなく、在りて言えば奴隷と主人といった風である。 れいむ種の赤ゆっくり達はその姿をニヤニヤと見て、まりさ種は奴隷で良いんだという認識を深めた。 「ゆぅ! まったくまりさはむのうだね、さっさとたべものさんだしてね!」 「……わかったんだぜ」 そう言うと、まりさは帽子から食べ物を取り出した。 と同時にれいむと赤れいむ達は一斉に食べ物に飛び込む。 「ゆっくちたべむーしゃむーしぁわしぇぇぇぇぇぇ!!!!」 「はふ! はふ! むーしゃむーしゃ! げぇっぷ! はふ! むーしゃ!!」 「ばーくばーく、しあわしぇ! しあわしぇ!」 「がーつがーつむーしゃむーしゃくっちゃくっちゃ、しーはー、それなり―!」 地獄の餓鬼もびっくりの浅ましさでれいむと赤れいむ達はゴミの様な餌にありつく。 一番多く喰い散らかしているのは親というのはどういうことだろうか。 そんな様子をしり目にまりさは赤まりさに近づく。 「どうしたんだぜ、おちびちゃん? たべないんだぜ?」 「ゆぅ…… だ、だいじょうぶだじぇ! まりしゃはすこしでだいじょうびゅにゃんだじぇ!」 「ゆ~、それならいいんだぜ、ゆ? まりさのもうひとりのおちびちゃんはどこだぜ?」 「ゆぅぅぅ~~」 「どこかにあそびにいってるんだぜ、しょうがないんだぜ」 まりさは赤まりさの伝えたいことは全くわからなかったが、とりあえず自己完結したようだ。 毎日の狩りとれいむの対応に疲れているまりさは子供たちに意識をあまり裂かなくなっていた。 現に最初に消えた赤まりさのついてももう日々の疲れの忘却しつつあった。 そして疲れた体を休める為、休憩する、いやなことなど思い出さないように。 まりさが休み始めると、赤まりさはダンボールの外へ出た。 その顔は暗い。 「ゆぅ~」 赤まりさはどうすればいいか分からなかった。 赤まりさはれいむに連れていかれて戻っていないと言ってしまったられいむに制裁されるのではないだろうか。 しかし本当に遊びに行ってるだけもしれない。 赤まりさはそう自分に言い訳する。 ゆっくりにしては無駄に後ろ向きの赤まりさは不安な未来ばかりを考え、結局切り出せなった。 そして当たり前のようにお腹がすいたため、まりさの目を盗み不味い雑草を食べる。 それは親であるまりさを心配させないため。 「む~ちゃむ~ちゃ、ぎぇろまじゅ……」 遂に一匹で食べることになった赤まりさはいつも以上に不味く、どこまでも不幸せに感じる食事をとるのであった。 「ふちあわちぇ…… ふちあわちぇぇぇ ゆっぐゆっぐ…… どぼぢでぇ……」 「げぇふっ!」 れいむは一つ汚らしいゲップを出し、今日の餌のことについて思う。 今日も満足に食べられなかったと。 ゆっくりというのはいい加減ななまもので、食べる気になればかなりの量が入る。 お腹を一杯にしてゆっくりしようと思うと、野良では集められるモノではない。 一家すべてを賄おうとすれば、不可能と言っていいだろう。 そして、食べれば出る。 一丁前にゆっくりもその行為をする。 「ゆゆ! ごはんしゃんをたべちゃきゃら、うんうんしゃんぎゃでりゅよ!」 「ゆー、あにゃるしゃんがむじゅむじゅしゅるよ! にゃんだきゃとってみょむじゅむじゅしゅるよ!」 「うんうんしゃんがでりゅりょ! ゆっくちでりゅよ!」 「「「しゅっきりー!!!」」」 長い前置きとくだらない宣言しながら、赤れいむの三匹は汚らしい穴からうんうんと呼ばれる餡子をひり出す。 普通の量を食べたゆっくりでもうんうんはそれなりの量が出る、無駄にたくさん食べたゆっくりは、その分無駄に多くうんうんを出す。 そして、うんうんはゆっくりにとって臭いものに感じる。 ゆっくり以外から見れば、それはただの餡の塊なのだが、ゆっくりは何故かそれから異臭を感じ取るのだ。 3匹は排泄物を出した余韻を味わい、その余韻が終わると騒ぎだした。 「ゆゆ~ん、ゆゆ!? うんうんしゃんはくしゃいよ! どっかいっちぇね!」 「くしゃいのはゆっくちできにゃいよ! ゆっくちちにゃいでしゃっしゃといにゃくにゃってね!」 「しょうだよ! れいみゅぷきゅーしゅるよ!」 意志も何もない、自分からひり出されたうんうんに向かって赤れいむたちは退くように言い、威嚇する。 もちろんそんなことで動くことはない。 その光景は滑稽である。 「ゆー、まってねおちびちゃんたち、まりさ! ゆっくりしないでさっさとかたづけてね!」 ゆっくりにとってうんうんは臭い、よって処理する身も大変である。 ましてや手足の無いゆっくり、必然臭いの元であるうんうんに顔を近づけなければならない。 もちろん、そんなゆっくりできない行為を、この親のれいむがしようと思うわけがない。 一応親のまりさがトイレとして置いてある葉っぱの上にうんうんはするように言っているのだが、赤れいむたちがした試しはない。 「ゆぅ、ゆっくりりかいしたんだぜ……」 まりさは臭い物の処理のことで顔をしかめながら、うんうんを処理し始める。 その様を見て赤れいむたちはまりさを貶し始めた。 「ゆぷぷ、きちゃにゃいうんうんしゃんをきゃたづけてるよ」 「おおくちゃいくちゃい」 「くしゃいきゃらしゃっしゃとどっきゃやっちぇね! すぎゅでいいよ!」 自分が出した物を、せっかく片付けてくれるまりさ向かっての尊大な物言い。 いつものことながら、まりさはゆっくりできなかった。 「ゆぅ、そんなこといわないでほしいんだぜ、おちびちゃんたち」 そうまりさが言うが、さっさと片付けろコールが響く。 可愛い自分の子供の為。 そう自分に言い聞かせながら、まりさはゆっくりできない気分で片付け始めた。 うんうんを片付ける番をしり目にれいむは全くゆっくりしていないゆっくりを番にしてしまったモノだと後悔する。 理想はこうだった。 常に餌に満たされ、住処は他のゆっくりを見降ろせる高いところ、人間やゆっくりなんて寄せ付けず、他のゆっくりや人間が全て平伏する。 子供は自分の言う事を何でも聞いて、自分にそっくりで可愛らしくそれでいて美しく、何もかも完璧なとってもゆっくりした子供が生まれるはずだったのに。 蓋を開けてみれば、どうだろうか。 餌は常に空で、住処は臭いダンボール、隠れるように日当たりの悪い場所で、たまに他のゆっくりが勝手に巣の目の前を横行している。 子供は口応えはする、うんうんは臭い、うるさい、食っちゃ寝食っちゃ寝ばかり。 そんなところ誰似たのかとれいむは嘆く。 子供である赤れいむ達の唯一の美点はと言えば、あまりに可愛くないが、自分の姿に似ている子供であるということ。 れいむの劣化しきった餡を十二分に受け継いでいると思うのだが、そこを理解するにはれいむの餡子脳では不可能の様だった。 姿が少し似ていること、それ以外は駄目だ。 れいむは溜息を吐く。 きっと、あの脳なしの番のせいだと思う。 自分の餡子が少しでも流れていなくて姿も少しも似ていなかったら、潰していたろう。 そう、あの赤まりさ達のように。 れいむは潰した赤まりさ達を思い出しニタニタ笑いと暗い悦に浸る。 チラリとまりさの方を見る。 狩りが上手くて、カッコいいと評判だった公園一番のまりさを番にすれば一生ゆっくりできると思ったのに全く、と。 実際には狩りで疲れて帰ってきたところを無理やりすっきりをして、子供を作り逃げ場をなくしただけだ。 殆ど強姦のようなものである、さらには図々しくも番になった、これはもうれいぱーよりも性質が悪い。 そうこうしている内に、まりさはうんうんを片付けたようだ。 「ゆっ! きれいきれいにしたんだぜ!」 「くちゃいきゃらこにゃいでね!」 「ほんちょうだよ! おおくちゃいくちゃい」 「うんうんくちゃいおとーしゃんはゆっくちちにゃいでしゃっしゃとどっきゃいってにぇ!」 「ゆぅ……」 そんな情けない番の姿を見てもう一つ、れいむは溜息をつく。 まったくゆっくりしていないまりさだと見下しきった目でその光景を見ていた。 日も傾き、ゆっくり達の就寝の時間になってきた。 あの後も、番のまりさを姑もびっくりのねちっこさでいびり倒し、一息ついているとれいむは隣の一家を見た。 この一家の少し離れたダンボールにはもう一つのゆっくりの一家がいるのだ。 この広い公園を根城にしているゆっくりは多く、広く分布している。 あまりれいむの家の周辺に住んでいるゆっくりはあまりおらず、必然れいむの目には隣のゆっくり一家がよく目に入った。 その一家は、このれいむから見れば、認めがたいことに非常にゆっくりしていた。 れいむの言い方からすると、自分よりも一つ下くらいにゆっくりしている、だ。 自身以上にゆっくりしているゆっくりは存在していない、そう思っているこのれいむから見れば、非常に高い評価であろう。 というか何というか、とてもゆっくりした家庭を持っているように見えると言うべきか。 とても利発的そうで、うるさくもない赤れいむや赤まりさがいる。 その一家の母親役であろう、れいむの言うことはよく聞いていて、まるで、このゆっくりしていない家族のれいむの妄想がある程度形になったかのような赤ゆっくりである。 外で遊んでいても、一声かければ、すぐに遊ぶのもやめて親の言う事を聞くところも見た。 自分の命令を全く聞かない子供たちとは全く別物だとも思った。 そこまで教育するには赤ゆっくり性格の良さも手伝いながら子育ての才能があったのだろう、隣の親れいむ。 それでもゆっくりだ、大変なこともあっただろう、それでもやってこれたのは子のかわいさか、番との愛情か。 しかしそんな大変な部分を見ていないれいむはひどく羨ましく理不尽に思えた。 そして今、れいむの餡子脳にキラリと一つの考えが生まれる。 あの子たちは、自分の子ではないか! と きっとそうに違いない。 れいむは何の根拠のないそのことを、確信を持って事実と断ずる。 自分の家に住みつくあんな汚らしく馬鹿で何も考えてなさそうなゆっくりが自分の子であるはずがないと。 そう思うと、れいむは腹が立ってきた。 そうだれいむ常々思っていたのだ。 今まで疑問に思っていたはずだ。 あんな小汚く我が儘な子供を育てさせられたのだ、餡子脳が煮立つような怒りを感じる。 そうと決まったら自分のかわいい子供を取り返しに行くべきだろう。 れいむは決断する。 バッとダンボールの家から飛び出ると、丁度そのれいむが一匹外に出ているではないか。 怒りに身を任せ、れいむは叫ぶ。 「でいぶぅぅぅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 「ゆゆゆゆ!?」 叫ばれた隣のれいむは、怒りの形相で詰め寄るれいむに驚く。 「おまえよぐもぉぉぉぉぉぉ!!!」 「なんなのれびゅぅ!!!」 困惑する隣のれいむに、怒りのままれいむは体当たりをかます。 そのまま、二匹そろってダンボールから離れる形になった。 「ごのげず! よぐもでいぶのおぢびぢゃんをざらっだぁぁぁぁあっぁ!!!!」 「やめでね! いだいよ! やべべぇ!!!」 全く身に覚えのない事を言われながら、というかそんな事を聞きとる余裕もなく隣のれいむは一方的に攻撃されていた。 最初に体当たりをもらったせいだ。 成すすべもなく攻撃される。 「どぼじでごんなごどずるのぉぉぉぉぉぉ!!!」 「おまえのぜいだぁぁぁぁあ!!!」 「なんでぇぇぇっぇぇ!!!!」 隣のれいむは攻撃をされながら酷い理不尽だと感じた。 当たり前だ、訳も分からずお前のせいだと攻撃されたいるのだ。 ちらほら言葉の端に子供という単語を聞き取れるが、全く心当たりがない。 それでも続く理不尽。 遂に隣のれいむは上に乗られる。 マウントポジションだ。 「ゆっ…… ゆっ、ゆっゆっ」 理不尽な暴力に涙しながら、口からは吐きたくもない餡子が出てこようとしている。 「あやまれぇぇぇぇ!!」 「ど、どぼじで……」 「ゆがぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 謝らない隣のれいむにれいむの怒りのボルテージはウナギ登りだ。 その怒りをぶつけるように隣のれいむの上を跳びはねる。 「ゆ、ゆびゅびゅっ!」 れいむが隣のれいむの上を跳びはねるごとに口から出る餡子の量が増える。 それを必死に止めようと口を結ぶが、全く意味をなしていない、れいむが跳ねるたびに口の端から行き場を失った餡子が勢いよく飛び出てきている。 訳の分からないまま、これ以上は命の危機を感じ隣のれいむは謝った。 「ご、ごめんなざいぃぃぃぃい!! れいぶがわるがっだでずぅぅぅぅぅ!!!」 中身の無い謝罪。 ただ必死の命だけを助けてもらいたいと言うだけだ。 まあ、謝罪を要求する方の言い分も中身もなく主張も意味不明である、それでもいいかもしれない。 そして、こんな謝罪にもれいむは満足する。 「ゆふー、ゆふー、ようやくつみをみとめたね! まったくとんだげすだよ!」 「ゆ、ゆぐっ、ゆっゆっゆっ」 隣のれいむは全く身に覚えのない罪を突き付けられ、その罪を認め、涙を流すしかなった。 あまりの理不尽だ、ゆっくりできない、だがここさえ乗り切ればきっともう何もしてこないだろうと。 そう隣のれいむは自分に言い聞かせる。 たった一つの希望を見出し、それに縋る。 だが 「だから、そんなげすはれいむがせいっさいっするよ!」 「ゆ゛え゛ぇぇえ゛え゛ぇぇぇ!!!!!!!」 そんな事はありえない。 相手はゲスでゆっくりだ。 「ぞ、ぞんなのっでないよぉぉぉぉ!! どぼじで、どぼじでぇぇぇぇぇぇ!!!!」 「ゆふん! げすのことばにみみをかすれいむじゃないよ! きよくただしくてごめんねー!」 「ま゛、ま゛り゛」 最後に呟いたのは隣のれいむの番のまりさのことか。 ブチュッと、潰れる音と共に、隣のれいむはモノ言わぬ潰れ饅頭と化した。 「ゆー、いいことをしたあとはきぶんがすがすがしいね!」 隣のれいむの死骸をしり目に、れいむは自分の行ったおぞましい行動に何一つ疑問に思わない。 自身が正義であることを疑わないのだ。 「ゆふふ、まっててね、おちびちゃんたち、かわいくてかんっぺきにゆっくりしてるれいむがむかえにいくよ!」 そう言いながら、その場から立ち去った。 隣のれいむを殺害したところからすぐそこ。 れいむは隣のれいむの家までやってきた。 「ゆっ! れいむのかわいいおちびちゃんたち! むかえにきたよ!」 馬鹿面を引っ提げて、やってきたれいむ。 それを見る隣のゆっくり一家のまなざしは、一様に不思議なものを見る様だった。 「ゆ? なんなんだぜ、れいむ、むかえにきたってどういうことだぜ」 「ゆっ! そうだよ! あのげすをせいっさいしてほんもののおかあさんがかえってきたんだよ! これからおちびちゃんたちはれいむがそだてるよ!」 「げすって、せいっさいって…… なんなんだぜ?」 「ゆぅにゃんにゃの? ゆっくちできにゃいよ……」 最後に言った赤ゆっくりの言葉が赤ゆっくりの総意でもあった。 いきなり隣の家のれいむが乗り込んできて、ゲスだの制裁だのゆっくりできないことを言うとともに、実の親は自分だという。 「ゆふん、じゃあいくよおちびちゃんたち」 隣の一家の言うことなんて耳に貸さずれいむは赤ゆっくり達に来るように促す。 しかし、赤ゆっくり達の言葉はれいむの想像だにしないことであった。 「にゃんでしりゃにゃいおばしゃんのとこりょにいきゃないといけにゃいの?」 「しょうにゃんだじぇ! しりゃにゃいゆっくちについていっちゃだめにゃんだじぇ!」 「おきゃーしゃんがいってたんだよ!」 あったのは拒絶の言葉、箸にも棒にも引っかからない。 それどころか隣に住んでいるにもかかわらず、知らないゆっくり扱いだ、家でグータラとしていて、たまにしか外に出なかったれいむの顔を覚えてすらいない。 「ゆ? どうしてそんなこというの? れいむはれいむだよ、おちびちゃんたちのおかあさんなんだよ」 れいむは困惑した顔だ、想像と違う赤ゆっくり達に戸惑う。 れいむの頭の中ではこんなことはありえない。 れいむが欲する子供は、自分の命令に口答えなんてしないですぐに実行する子供だ。 「しりゃにゃいっていってりゅんだじぇぇぇぇぇぇ!! おきゃーしゃーん! どきょにゃんだじぇぇぇぇぇl!!」 「ぎっ、おがあざんはでいぶだっでいっでるでじょぉぉおおおお!!! ぞんなごどもわがらないげずはでいぶのおぢびぢゃんじゃないよ!!!」 れいむの意の沿わぬ事を叫んだ赤ゆっくりの一匹。 あにゃるより緩いれいむの堪忍袋の緒はいとも簡単に解け、噴出する。 その感情のままに、れいむは飛び出す。 ブジュリとれいむの着地と共に、音が聞こえる。 とっさの出来事に反応できず、隣のゆっくり一家は一匹の赤ゆっくりを失った。 「……ゆ、ゆわぁぁぁぁぁぁ!! ばりざのおぢびぢゃんがぁぁぁぁぁぁ!!!!」 「……お、おにぇーぢゃぁぁぁぁぁぁあ!!!」 「……まりちゃのいみょうとぎゃぁぁぁぁ!!!」 「だまれぇぇぇぇぇぇぇ!!!! ごんなのでいぶのおぢびぢゃんじゃないよ!! よぐもだまじだなぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 爆発した感情は未だ収まらず、れいむは叫ぶ。 おまけに隣の赤ゆっくり達が自分の子供ではないことを騙したとさえ思っているようだ。 その怒声に隣のまりさ一家は、口を閉ざしてしまった。 れいむは勢いそのまま、涙を流しながら体をビタンビタンと跳ねさせ不満を叫ぶ。 「どぼじでぜんぶでいぶのおもいどおりにいがないのぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉ!! ごんなにゆっぐりじでるでいぶがどうぼじでごんなにゆっぐりでぎないごどばっがりおごるのぉぉぉっぉぉぉ!!!! みんながわいいでいぶにじっどじでるんでじょぉおおお!! ごんなのぶごうべいだよぉぉぉぉぉ!!! あんまりだよぉぉぉぉぉ!!! ぼがなんでどうでもいいでじょぉぉぉぉぉ!! でいぶがもっどゆっぐりでぎればごうべいでじょぉぉぉぉっぉ!!! でいぶをもっど、もっどゆっぐりざぜろぉぉおぉお!!! ぜんぜんゆっぐりでぎないんだよぉおぉおぉおぉおお!!!」 世間一般の公平とれいむの中の公平とは、よほどの隔たりがあるようだ。 叫んだれいむの荒い息だけが、しんと静まった辺りに響いた。 そんな突然叫び出したれいむ、隣のまりさは呆然としながら思わず自分の思いを口にする。 「そ、そんなことは…… ぜんぜん、ゆっくりしてないんだぜ……」 「ゆがぁぁぁぁぁ!!」 「ゆぶぇ!!」 自分への悪口には異常に敏感なゲスのれいむである、今の状態では見境はない。 機敏にその言葉を聞き取り、激昂したまま隣のまりさに体当たりをかます。 「ゆっゆっゆっ……」 当たり所が悪かったのか、その一撃で隣のまりさは白目をむき出しに気を失ってしまった。 冷静に対処できれば、いつも狩りに行っているまりさだ、返り討ちにもできただろう。 しかし唐突なことの連続に、隣のまりさの餡子脳は殆ど動いていないも同然であった。 「ごのぐぞゆっぐりがぁぁぁ!!」 「ゆあああああああああああああ!!!」 れいむの隣のまりさへの攻撃は続く。 「だれがゆっぐりじでないんだぁぁぁぁ!!」 「ぼう、やべっ」 ゆっくりがゆっくりしていないと言われたのだ、それはもう、お前は何で生きているの? と本気で聞かれている様なものであり。 れいむの存在そのものの否定に他ならなかった。 通常のゆっくりでさえ怒り狂い、途方もない悲しみにくれるその言葉。 このれいむがただその言葉を聞いて感情を荒立てるだけにとどまらない。 怒り狂った感情をただ振り回す。 「ごのぐず! まりざだぢはほんどうにずぐえないんだよっぉぉおぉお!」 「ゆっ…… っぐ……」 先ほどよりも強く荒々しくれいむは隣のまりさに体当たりを繰り返す。 最初は体当たりの痛みに叫んでいた隣のまりさも徐々にその呻くだけになり、最後にはモノ言わぬただの平べったい饅頭と化した。 「ゆふぅぅぅぅ、ゆふぅぅぅぅ」 未だ怒りを発散しきれないれいむは歯茎をむき出しにもはやゆっくりとも思えない醜い悪鬼の様な表情で荒く息をつく。 「ゆわぁぁぁぁ!!! おどーじゃぁぁぁん!!!!」 「おどーじゃんぎゃぁぁぁぁぁ!!!」 その叫びが二匹の赤ゆっくりにとって致命的な叫び声だった。 もはやれいむは溜まった怒りを晴らすことしか考えていない。 「でいぶのいうことをきかないゆっくりしてないゆっくりはぁぁぁぁ! ゆっくりしないでぇぇぇ! しねぇぇえぇぇぇぇ!!!!」 「ぶびゅぅ!!」 れいむは怒りをそのままに体当たりを放ち、一匹の赤まりさを潰した。 赤まりさの口からあにゃるから餡子が吹き出すように飛び出て、ダンボールの壁を汚した。 「れいみゅのおにぇーちゃんぎゃぁぁぁぁあ!! ゆんやぁぁあっぁぁぁ!!!」 無残につぶされた姉妹に、赤れいむは何度目かの悲鳴を上げる。 「どびょちてきょんなきょとしゅりゅにょぉぉぉっぉお!!」 あまりに理不尽な出来事の連続に、赤れいむは訴える。 誰に言うのではない、ゆっくりは理解不能なことが起こると、思わず口走ることが多々あるのだ。 しかし、その言葉は現状を好転させるはずがない。 「おまえたちがわるいんだよ!」 相手は理屈も理性もない、ゲスのれいむであることもあるが。 その言葉には特に意味もないのだから。 「……にゃ、にゃんでにゃんだじぇ、れいみゅがきゃわいいきゃら……?」 赤れいむは悪いと言われ、理由が思いつかない。 もう現状を理解したくないのか、餡子脳が狂ったのか。 律儀に悪いと思った部分を答えた。 「でいぶのほうがかわいいよっ!」 そう言うと、れいむは赤れいむを潰した。 ただ自分の感情を発散させるために。 「ゆふーーーー、まったくゆっくりしてないゆっくりがおおいね! でもれいむまけないよ!」 そうぬけぬけと言い放つと、壁に飛び散った餡子がこびりつく、ゆっくりから見たら凄惨なダンボールの家から抜け出した。 結局あの赤ゆっくり達は自分の子供ではなかったのだろうと、全てが終わりそう結論づけるれいむ。 親を親と認めないのはれいむの中では許せることではない。 相手もそう言っているのだから、こっちからも願い下げだ。 そう思いながら自分の家のダンボールに帰り、れいむは寝た。 日はほぼ完ぺきに登り切ったその日。 「ゆゆ~ん、あさっだよ!」 ゆっくりにしても遅すぎる目覚めである。 赤れいむも起こされていないため、未だにグースカと寝続け、赤まりさは隅の方で俯いている。 親まりさは既に狩りに出かけてのだろう、姿は見えない。 よくある日常だ。 「さあ、おきてねおちびちゃんたち!」 れいむは赤ゆっくり達を起こした始めた。 「ゆ~んまじゃやじゃ~……」 「あちょたきゅしゃん~……」 「あみゃあみゃしゃん~」 そう寝ぼけながら起きようとしない3匹。 「ほら、はやくおきないとあさごはんさんたべちゃうよ!」 ダンボールの中には既にまりさがとってきた餌であろう、餌の山がある。 まりさは朝昼と、ほぼ一日を狩りに費やす、この餌の山も朝の狩りの成果である。 だがれいむにとっては、それはあって当然のモノであり、まりさへの感謝の念は全く無かった。 あさごはんの単語に、3匹は何とか体を起こし始めた。 「ゆぅ~、ごはんしゃんごはんしゃん……」 「ゆっくちゆっくち……」 「ゆっ! れいみゅのあみゃあみゃしゃんは? あみゃあみゃしゃんどきょ!?」 1匹は未だに夢の中の出来事を引きずっているようだ。 その寝言に2匹は反応する、なんせ自分の家族よりも大切な甘いモノの話だ。 すぐに意識を覚醒させ、存在しない甘いモノを探す。 「ゆゆ! あみゃあみゃしゃん!?」 「あみゃあみゃしゃん! ほんちょ!」 「れいみゅのあみゃあみゃじゃんんんん、どぎょぉぉぉぉおぉ! ゆんやぁっぁぁぁぁぁぁ!!!」 3匹は幻の甘いモノをは何処だと騒ぐ。 寝ぼけていた最後の一匹も完璧に覚醒するが、その場の状況に自分もすぐに参戦し始めた。 「おきゃーしゃん、あみゃあみゃしゃんどきょなにょ! いわにゃいとれいみゅおこりゅよ! ぷきゅー!」 「しょうだよ! れいみゅにないしょであみゃあみゃしゃんたべたんだにぇ! このげしゅ!」 「にゃんであみゃあみゃしゃんたべちゃうにょぉぉぉぉぉ!!!」 すでに幻の甘いモノはれいむが食べたことになり、自分に甘いモノを食べさせないなんて、なんてゲスだと3匹は親であるれいむに敵意をむき出しだ。 それをやられているれいむはもう、目を見開き今にも零れ落ちそうである。 額にはビキビキと青筋がメロンのように張り巡らされ、今にも飛び出しかねないほどその姿勢は前傾だ。 残った理性を総動員し、なんとか止まっている。 そして怒りを発散させるためには何と言っても、一匹の赤まりさだ。 「まりざぁぁっぁぁぁぁぁ!! ぞどにごい!! いまずぐだ!!!」 「ゆ、ゆぴ!」 いつも以上の迫力に赤まりさはしーしーを漏らしてしまったほどだ。 れいむは今すぐここで殺しかねない勢いで外に出る。 赤まりさはただ恐怖に身を任せて着いてった。 「ゆぴゅぴゅ! げしゅにきゃったよ! れいみゅのぷきゅーはさいきょうだにぇ!」 「まっちゃくだよ! げしゅはゆっくちしてにゃいにぇ!」 「そうだにぇ! ゆゆ! にゃんだきゃおにゃかしゅいたよ! ごはんしゃんたべりゅよ!」 そして3匹は当初の目的を忘れてれいむを追い出したことにゆっくりする。 それもすぐに忘れ、まだ朝ご飯を食べていなかったための空腹を思い出したようだ。 「れいみゅがたべりゅよ! ゆっくちたべりゅよ!」 「むーちゃむーちゃちあわしぇー!」 「くっちゃくっちゃちあわちぇぇぇぇぇ!!」 「ぐぞぉぉぉぉっぉっぉ!!! なんでっ! でいぶがっ! あまあまざんだべだごどになっでるのぉおおおぉお!!!」 「ゆびぃ!」 れいむは振り上げたもみあげを赤まりさに叩きつける。 脆弱なれいむの一撃だが、赤まりさにとっては驚異の痛みを感じる一撃だ。 「ゆひぃ…… ゆひぃ……」 涙を流しながらそれを耐える赤まりさ。 れいむは木の棒を銜え、赤まりさに突き刺した。 「ゆべっ、ゆびぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」 今回で3匹目の赤まりさ虐めである。 れいむは、一撃で潰すと気分は一時的すっきりできるが、その潰した少しの時間ということに気付いた。 何匹も潰すととてもすっきりするが、今はこの赤まりさ一匹だ。 なら、この赤まりさをじっくりと甚振るしかない。 自分のもみあげで叩いたり、そこらへんで拾った木の棒でぶすぶすと赤まりさを突く、その時の泣き声を聞くことで実にゆっくりできる。 そのことに気付いた、れいむのいじめは陰湿になっていく。 しばらくの間、赤まりさはいじめられ続けた。 「ゆふぅゆふぅ、そうだよ、れいむはとってもゆっくりしたゆっくりだよ……」 「ゆひぃ、ゆひぃぃぃ、ゆぎぃぃぃぃぃぃぃ!! だじゅげ、だじゅげじぇぇぇぇ、おねぇじゃぁぁっぁぁあん!!!! にゃんでだじゅげでぐれにゃにょぉおおおぉ!!」 赤まりさはボロボロと涙を流した、気にせずれいむは木の棒を赤まりさの頭に突き刺す。 赤まりさは痛みか、頭に棒を突っ込まれていて少し壊れたか、幻覚でも見ているようにいるはずの無い姉に助けを求める。 そしてれいむが今やっていることは、ゆっくりしていないゆっくりへの制裁だ。 まず帽子を外して、ゆっくりしていないゆっくりという大義名分を得てからの制裁だ。 だからこの行為は正当性があり、自分は全く潔白。 負け犬の様に泣く赤まりさの様子は実にゆっくりできる。 ゆっくりできる、ゆっくりしている。 そう、れいむはゆっくりしている実感が沸くのだ。 親まりさをねちねちといびっている時もそう思っていた。 底部の下でブチッと最初に潰した時に心の底からゆっくりできた。 鳴き声聞いても実にゆっくりできる。 赤れいむたちへの怒りが少しずつ消化されていくようだ。 最近はいつにもまして生意気になったとれいむが思いながら、赤まりさに突き刺した棒をそのままグリグリと動かしていると。 「だじゅげでよぉぉぉ、おねぇぇぇぇじゃぁぁぁぁ、あっ、あ゛っ、ゆ゛っ!」 「ゆ?」 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ……」 中枢餡を傷つけてしまったようだ。 しかし、れいむは全く悪びれない、最初からそうするつもりだったからだ。 「ゆゆ~ん、まったくゆっくりしてないゆっくりだったね!」 そう、先ほどまでの怒りに染まった表情はどこへやられいむはすっかりすっきりとした顔をしていた。 と、そこに拍手が一つなる。 「ゆ?」 「いや~、お帽子をとってからの虐待、もとい制裁、なかなか頭の回るゆっくりだね~」 拍手のした先には人間がいた。 「ゆっ! そうだよ! ゆっくりしてないゆっくりをせいっさいしてあげたんだよ!」 しかしれいむは物怖じせずその人間に返事をした。 何処からかわいてくる自信がれいむをまったく怯えさせないのだ。 「ゆっ! れいむがかわいいからってかいゆっくりにするつもりだね! あまあまさんをたくさんくれたらかんがえてあげてもいいよ!」 遂にこの時が来たかと、れいむは自分を飼うようにアピールすることにした。 もちろん図々しい要求も忘れない。 「はっはっは、いやいや、可愛いれいむにはもっといい飼い主に巡り合えると思うよ ……多分」 「……そうだね! びんぼうくさいじじいになんてやっぱりかいゆっくりになんてなってあげないよ!」 人間の言葉に反応してれいむは思いとどまる。 そうだ、世界一ゆっくりしているゆっくりである自分は安売りなんてしないのだ。 「君はおちびちゃんを持っているかな?」 「ゆっ、もってるよ! れいむのおちびちゃんがたくさんいるよ!」 「そうかい、良ければ僕に見せてくれないかな?」 れいむは考える、相手は人間であり、見せるのは自分の子供だ。 そして、ピンと考えつく。 「いいよっ! れいむのおちびちゃんたちをみせてあげるよ!」 「ああ、ありがとう」 人間はそんなれいむを見ながら薄く笑った。 「ゆっ! れいむのかわいいおちびちゃんたちだよ!」 れいむはそう言って、子供たちを見せる。 「ゆゆっ! くしょじじいがれいみゅをみてりゅよ! きゃわいくてぎょめんねぇ~!」 「ゆぷぷ、ゆっくちちてにゃいくしょじじいだにぇ! れいみゅのこうきにゃあにゃるしゃんをにゃめたらゆっくちしゃせてあげるよ!」 「あみゃあみゃしゃんちょうだいにぇ! たくしゃんでいいよ! とってみょたくしゃんでいいよ!」 相変わらずの屑っぷりを人間に見せつけるれいむの子供達。 「はっはっは、いやはや、これはまた随分と」 流石に苦笑いをせざるおえない人間。 ここまでふてぶてしくなれるかと聞かれたら、野良では中々なれないだろう。 「ゆふん、れいむのかわいいおちびちゃんをみせてあげたんだから、あまあまさんちょうだいね! たくさんでいいよ!」 れいむはここぞとばかりに人間に甘いものをねだった。 とってもゆっくりしている自分、そして、自分に少し似た子供。 これを掛け合わせれば、なんとゆっくりしているだろうか! 人間も甘いものを献上せざるおえない! とれいむは先ほど考えたことを実行しているのだ。 しかしながら生ゴミに生ゴミを足してもゴミの量が増えるだけである。 「ははは、いやー、ははは」 そんなれいむの思考が手に取るようにわかるのか、人間は笑うしかない。 と、その時。 「ゆっゆっ! きょうもゆっくりかりにいってきたんだぜ!」 まりさが帰ってきた。 今回も狩りは順調に言ったのか、帽子はパンパンである。 「ゆ?」 そして、自分の家の前に立つ人間に気付いたのか、硬直する。 そのままわなわなと震えだし。 「に、にんげんさんだぁぁっぁぁぁ!!!」 そう叫んだ。 狩りに行っているまりさにとって、人間は見つかったらもう大変な存在だ。 今まで影で何とか人目をかいくぐってきたまりさにとって、死が家の前に突っ立っている様な物で。 「いや、そう警戒しないでくれ」 しかし思った以上に人間は穏やかな態度をしてきた。 「ぁぁぁぁぁぁ……!! ゆ?」 その対応に、まりさは困惑した。 有無も言わさず潰されると思ったが違うのである。 そして、その反応にれいむ達は嘲笑った。 「ぷっ、ゆぷぷ、こんなくそじじいなんかにあんなにおびえて、まったくまりさはぐずのだめだめだね!」 「げらげらげら、まっちゃくゆっくちちてにゃいおとーしゃんだにぇ!」 「ぐずでよわよわだにぇ!」 「おにゃかしゅいたよ! しゃっしゃとたべものしゃんちょうだいね!」 この親にして、この子ありだろう。 まったくのマイペースである。 「ゆ、ゆぅ、そんなこといわないでほしいんだぜ……」 まりさはそんなれいむ達にゆっくりできない気分を味わいながら、たしなめる。 れいむ達も無事だし、どうにかなるのではないかと思い始める。 「に、にんげんさん、いったいなんなんだぜ?」 何もしてこない人間にまりさは少しばかり警戒を緩めながら聞いてみることにした。 「ん、いやー、れいむが面白いことをしてたから、どんな家族なのかなーと思ってね」 人間は面白いことが何かとは言わない、興味が出たと言うのは本当なのだ。 そして、やはりれいむの番であるまりさも人間の予想通りのゆっくりであった。 度合いの差があると言え、中々のテンプレ一家だ。 「おもしろいこと、だぜ?」 「ああ、まあ、気にしなくていい」 人間は、穏やかな口調なままである。 「ところで、れいむ達はゆっくりしているな」 「ゆっ、そうだよ! そんなあたりまえのこといわないでね! あまあまさんちょうだいね!」 「しょうだよ! だきゃらあみゃあみゃしゃんちょうだいね!」 「あみゃあみゃしゃん! あみゃあみゃしゃん!!」 そんなお世辞にれいむ達は喜ぶ。 「そうだな、じゃあ、ゆっくりしてるならもっとゆっくりをアピールすればたくさん甘いモノがもらえるんじゃないか?」 と、人間は提案する。 「ゆっ……」 れいむは無い頭をフル回転させ考える。 自分のゆっくりをアピールすれば、ゆっくりはおろか人間だってメロメロにさせてあまあまやお家を献上しはじめるに違いない。 と、成功しないアイディアを思いつく。 「そ、そんなむりなん」 「いいよ!」 今まで狩りをしてきて、人間になにかを要求して潰されたゆっくりを何度も見てきた。 慌ててまりさは無理だと言おうとしたが、遮られる。 しかしまりさは流石に絶対に無理だとわかっているので食いつく。 「れいむ、むりだぜ! だれもなにもくれないんだぜ!」 「ゆぷぷ、まりさはゆっくりしてないからだね! れいむがたくっさんあまあまさんをとってめのまえでたべてあげるからだいじょうぶだよ!!」 「ゆっくちちてにゃいおとーしゃんきゃわいしょうだにぇ、れいみゅのあにゃるしゃんにゃめたらきゃんぎゃえてあぎぇりゅよ!」 「おお、きゃわいしょうきゃわいしょう、あみゃあみゃしゃんたべりゃれにゃいにゃんてにゃんてきゃわいしょうだにぇ」 「れいみゅたちぎゃあみゃあみゃしゃんむーちゃむーちゃしゅるときょろをみちぇちぇいいよ!」 それでも自信過剰な4匹は全く持って取り合わない。 まりさが無理だと言っているのは、ゆっくりしてないから相手にされないと思っているからだ。 「そ、そんな……」 まりさは言葉が全く聞きいられないことに呆然とする。 「さあ、話がまとまったのなら、今から行ってみようじゃないか」 「ゆっ、そうだね!」 「「「ゆっくちいくよ!」」」 れいむ達が行くと決まった。 まりさはそんなれいむ達のあとを沈んだ表情で付いて行くのだった。 「ところでれいむ達、ここは一斉に行かないで、一匹ずつ行かないか?」 「ゆゆ? どうして?」 「そりゃ、みんなで行ったら分け前が減るだろ、ここはもらったモノはキチンと本ゆんだけのモノにするんだ」 「……そうだね! みんなわかったね!」 「「「ゆっくちりきゃいしちゃよ!」」」 分け前が減る。 れいむ達にとって、甘いモノは家族を殺してでも食べたいものだ。 それが分けられるなんて知ったらとても了承できない。 自分が一番ゆっくりしていると、思い込んでいるとれいむ達は、自分のおかげで甘いモノを得られると思っているためだ。 そんなとらぬ狸の皮算用をしているうちに、一匹のゆっくりが見つかった。 ゆっくりまりさだ。 狩りの帰りなのか、その顔には疲れがにじんでいる。 「ゆゆっ、れいみゅがいきゅよ!」 と、赤れいむが名乗りを上げた。 奴隷であるまりさにたかれば簡単に手に入るという、浅い考えからだ。 そもそもまりさが甘いモノを持っていないという考えがないのが不思議である。 「ゆゆっ、しょこのまりちゃ!」 「ゆっ、なんなんだぜ?」 狩りの途中にいきなり現れた赤れいむにまりさは何だと思う。 「ゆっくちちてりゅれいみゅをみていいきゃら、あみゃあみゃしゃんちょうだいにぇ!」 そういきなり言ってきた。 「……ゆ?」 そんな発言にまりさは体を横に傾ける。 同じゆっくりにすら、理解しがたい言葉だったようだ。 「ゆゆっ、あみゃりにゆっくちちてりゅれいみゅをみちぇおどりょいてりゅんだにぇ! ゆっ! れいみゅのしぇくしーだんしゅをみてたくしゃんあみゃあみゃしゃんをよういしてにぇ!」 そう言うと、赤れいむはダンスと称して、気色の悪い動きをし始めた。 ウゴウゴというべきか、ブリブリというか。 とにかく人間としては生理的嫌悪感を与える動作である。 「ゆぅ、べつにそんなものをみてもまりさはゆっくりできないんだぜ」 まりさはようやく正気に戻ったようで、れいむの不気味な踊りについての感想を言った。 「はぁぁぁっぁ!! にゃいいってりゅにょぉぉおぉ!!! こにょとってみょゆっくちちたれいみゅのしぇくしーだんしゅだよ!」 一応ゆっくりということか、踊りに関しては気持ち悪いでも何でもなく特に感想は無いようだ。 「しょんにゃこというゆっくちはげしゅだにぇ! おお、おろきゃおろきゃ」 「……ゆ?」 いきなり会った赤れいむに、ゲス扱いされる。 適当にあしらおうと思っていたまりさだが、ゲス扱いはゆっくりに対してはかなりの侮蔑の言葉なのだ、黙ってはいられない。 「おちびだから、むししてあげようとおもったけど、げすあつかいされたらはなしはべつなんだぜ、おやもいないみたいだからまりさがきょうっいくをしてあげるんだぜ!」 そう言って、まりさは帽子から木の棒を取り出した。 それを見ても、赤れいむはそれを鼻で笑う。 「ゆふん、どりぇいのまりちゃがいくりゃぶきしゃんをもってもこわくにゃいよ! ゆぷぷ~、どりぇいはどりぇいりゃしく、しゃっしゃとあみゃあみゃしゃんをもっちぇきてにぇ!」 「きょうっいくてきしどう!」 まりさは叫びながら、赤れいむをおさげでぶったたいた。 ぶったたくと言っても、所詮はゆっくりの力、赤れいむを転がす程度である。 しかし、痛みに敏感な赤ゆの時期と、今まで痛みとは全く無縁だった赤れいむにとって、その衝撃は計り知れないものであった。 更には今の今まで奴隷扱いしていたまりさ種による反撃は、赤れいむに絶大な精神的なショックを与えた。 「ゆ、ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁl!!! いじゃいぃぃぃぃい!!! どぼぢでごんにゃぎょどじゅるにょぉぉおおぉl!!!!」 あまりの痛みと精神的ショックで赤れいむはその場でゴロゴロと転がりまわる。 自分が殴られて痛い、更に奴隷であるはずのまりさ種が逆らってきた。 赤れいむの中のあり得ないことが幾つも起り、赤れいむは大混乱だ。 「ゆあ~ん、おさげでたたかれたこともないみたいなんだぜ、おちびってのはなんどもたたかれてりかいしていくんだぜ、ゆっくりりかいするんだぜ」 それがまりさの一家の教育方法だったのだろう、ゆっくりにしては中々過激だ。 それにしてもと、まりさは思う、銜えた棒はあくまで威嚇のためだったが、本当になんとも思わないことにまりさは驚く。 「こにょくしょどりぇいぃぃぃぃ!! おみゃえにゃんてしんじゃえぇぇぇ!!!」 ボロボロと涙を流し、涎を垂れ流し不細工な面を更に気味悪く不細工にしながら赤れいむは未だに自分が上位者だと思っているようだ。 だがその姿はあまりの痛みで漏らしたしーしーで水溜りができている。 その有様は、そこらへんの虫の方がまだ威厳がある。 その様子を見て、まりさは決意を固めた。 「これはほんっかくてきなきょうっいくがひつようみたいだぜ」 まりさは棒を帽子の中に戻し、おさげを素振りしながら赤れいむに近づく。 ブンブンとうなりを上げながら、まりさのおさげは勢いを増していく。 「ゆ、ゆええええ、どうぼぢでぇぇえ!! れいみゅがしにぇっていっちゃらしにゅにょがじょうっしきでちょぉおぉぉ!!!」 先ほど叩かれた恐怖が蘇ってきたのか、赤れいむはガタガタと震えだす。 赤れいむの足元にあった、しーしーの水溜りの範囲が広がっている。 「しねっていわれてしぬやつはいないんだぜっ!」 まりさのおさげが赤れいむの右頬を打つ。 「ゆびゅ!」 「とりあえずあやまるんだぜ、わるいことをしたらあやまる、じょうっしきなんだぜ」 「ど、どびょじででいびゅがあやみゃらにゃいどいげにゃいにょぉぉおぉお!!」 「まだいうのかだぜ!」 赤れいむの左頬におさげが当たる。 「ゆびゃぁぁぁぁ!! だじゅげでぇぇえ!! おぎゃぁぁじゃあぁぁっぁあん!!」 「うるさいんだぜ!」 更にもう一度、まりさのおさげが唸りを上げる。 何度も何度も、赤れいむが口答えをするたびに、そのおさげは振るわれた。 ゆっくりでは数え切れないほど叩かれ、地面にはいつくばることになった赤れいむ。 「……ずびばぜん、でぢだ、でいびゅぎゃ、わるぎゃっだ、でじゅ……」 殴られて抜けた歯が数本散らばり、片目の瞼は殴られて腫れている、そして自分のしーしーの水溜りに何度も顔をうちつけ。 リボンを奪われ、ついに赤れいむは謝った。 自分は正しいはずなのに、謝る理由も思い浮かばずただ謝った。 何でこんなゆっくりしていないまりさなんかにと思いながら。 一片の誠意もなく、ただこの痛みが無くなればいいと思って口にする。 「ゆふー、ゆふー、そうだぜ! あやまればいいんだぜ! えーっと、まあ、いいんだぜ、これでゆるしてやるんだぜ! かえしてやるんだぜ」 まりさ自身、途中から赤れいむを叩くことに熱中してしまったため何故こんなことをしていたかすら忘れてしまったようだ。 赤れいむのリボンを投げ捨てるように赤れいむに返した。 「ゆっ、そうだぜ、まりさはこれからおうちにかえるんだぜ!」 そして、自分の行動を思い出したのか、今まで引っ叩いていた赤れいむには目もくれず、まりさは何処かへ行ってしまった。 残されたのはボロボロの赤れいむ。 「ゆっぐゆっぐ……」 赤れいむは泣きながら、自分のしーしーにぬれたリボンをつけ直し、ゆっくりできないまま親達がいるはずの茂みに向かった。 そして、そこで待っていた親に姉妹に叫ぶ。 「……どぼぢで ……どびょじでだじゅげでぐれにゃがっだにょぉぉぉ!!!」 そんな悲痛の中の赤れいむに迎えられたのは、労わりや謝罪でもなく嘲りと侮蔑だった。 「ゆぴゅぴゅ、くじゅのまりちゃにあやみゃるにゃんてゆっくちちてにゃいれいみゅだにぇ!」 「まっちゃくあんにゃにゆっくちちてにゃいまりちゃにゃんかにまけりゅなにゃんてばきゃにゃにょ? しにゅにょ?」 「……まりさなんかにまけちゃうれいむなんて、れいむのおちびちゃんじゃないよ、よそのこだよ」 この一家の共通認識、まりさは奴隷。 その奴隷に負けてしまい、あまつさえ謝罪なんてしてまった赤れいむはもはや、まりさ以下であり。 そんなものを家族と思っている親れいむではなかった。 「そ、そんな! れいむ、いくらなんでもひどいんだぜ!」 だが、この一家の最後の良心とも言えるまりさが叫ぶ。 「お、おとうしゃ……」 この時初めて、赤れいむは親まりさを見直そうとした。 「うるさいよ!」 「だみゃれー!」 「おくちくちゃいよ!」 「ゆっ……」 が、すぐに口を閉じてしまった。 やはりまりさなんて、と都合よく見直そうとしたがやめた赤れいむだった。 「にゃんで…… どぼぢで…… れいみゅ、くじゅのまりちゃにいじめりゃれたんじゃよ……」 ボロボロになった体と、ズタズタにされたプライドを癒してくれるはずの家族はいなかった。 呆然とする赤れいむ、その隙に親れいむは赤れいむのリボンを奪った。 「ゆっ!! かえしてにぇ!! かえしてにぇ!! れいみゅのおりぼんしゃんとりゃないでにぇ!! ゆっくちできにゃいよ!!」 呆然としていたのも束の間、自分の命に等しいリボンを奪われた赤れいむは火が付いたように騒ぎ始めた。 そして、親れいむは赤れいむのリボンを目の前でビリビリと引き裂いた。 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、でい゛びゅの゛ゆ゛っぐぢぢだお゛り゛ぼん゛じゃん゛がぁぁぁぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「れ、れいむ!」 たまらず、まりさが止めようとする。 「うるさいよ! ぐずのまりさなんかにあやまったゆっくりは、ぐずいかのゆっくりなんだよ!」 やはり、一睨みでまりさは沈黙してしまう。 「ゆゆっ! こんにゃとこりょにおきゃざりしゃんがにゃいゆっくちちてにゃいゆっくちがいりゅよ!」 「ゆっくちちてにゃいゆっくちはせいっしゃいしゅるよ!」 そして、赤れいむ達がいいおもちゃを見つけたと言わんばかりにリボンを失った赤れいむににじり寄る。 やはりこの赤れいむ達、親れいむの腐りきった餡子をしっかりと受け継いでいる。 「そうだね、おかざりのないゆっくりなんてゆっくりできないよ! だからせいっさいしようね!」 大本の親れいむはもうノリノリだ。 適当な場所から木の棒を拾い口に銜えた。 「にゃんでぇぇぇぇ!! やめちぇよぉっぉぉぉ!! れいみゅはれいみゅにゃんだよぉぉおぉぉ!! ゆっくちちてりゅんだよぉおぉぉぉ!!!」 そんな家族にリボンを失った赤れいむは必死に止めてくれと叫ぶ。 「うるさいよ!」 親れいむは口に銜えた木の棒で、リボンを失った赤れいむの口の中を突き刺した。 「じゃぎぇびぇえぇぇぇええ!!」 舌ごと突き刺したため、もはやまともな発音もできない。 「ゆぁ~ん、にゃにいってりゅかわきゃらにゃいよ! そんにゃゆっくちはきょうだよ!」 親れいむに習って、木の棒を銜えた赤れいむは続くように木の棒をリボンを失った赤れいむにつきたてる。 「あぎゃぁぁぁぁあああああああ!!!」 「ぷーすぷーす、ゆぷぷ、ゆっくちちてにゃいおきょえだにぇ!」 「こうきにゃれいみゅにせいっしゃいされりゅことにきゃんしゃしてにぇ!」 何度も何度も、頬に、尻に木の棒を突きたてる赤れいむ達。 涙が、涎が、しーしーがあまりの痛みに垂れ流し、刺された場所からはゆっくりの命である餡子がこぼれている。 先ほどの打撃の痛みではない、刺されると言う体に異物が入ってきて体の中の痛覚を端から引き出していくような激痛。 親れいむは突き刺していた木の棒を引き抜く。 それもまた、ひどい痛みが伴った。 「ゆぎゃあぁぁぁぁあ!!」 「ゆふん、まったくゆっくりしてないゆっくりだね! おやのかおがみてみたいよ!」 見事に自分のことなのだが、もはや親れいむはリボンを失った赤れいむの親ではないという認識である。 餡子の繋がりは断たれないのだが。 木の棒を抜かれ、それでも執拗に赤れいむに木の棒を突きたてられるリボンを失った赤れいむ。 ついに、自分の命が危ういと悟った。 「ご、ごひぇんひゃひゃぃぃぃぃ!! でいひゅぎゃわひゅひゃったでひゅぅぅぅぅ!!」 木の棒で貫かれまともに動かない舌で必死に命乞いをした。 今しがた、まりさに教育されたことがいかされたのだ。 「ゆぷぷ、なにいってるのかわからないよ!」 だが無意味だ。 「ひ、ひゃんで…… どひょひて……」 家族に家族であることを否定され。 奴隷以下だと蔑まれ、貶められ。 全ては、まりさ達やってきた様な事だ、それが返ってきただけである。 「ゆっ! じゃあゆっくりしてないゆっくりはゆっくりしないで、さっさとしんでね!」 「ひゅびゃぁぁあぁぁぁぁあああ!!!」 れいむはリボンを失った赤れいむの上に乗り力を込めるとブチュリと汚らしい音をたてて、リボンを失ったれいむは潰れた。 「ゆふん、まったくゆっくりできないゆっくりだったよ!」 「しょうだね!」 「ゆっくちちてにゃいゆっくちをしぇいっしゃいしてあげちゃよ!」 れいむ達は同じれいむ種が、奴隷であるまりさに負けてしまったと言うゆっくりできない事実を負けたリボンを失った赤れいむを殺すことによって無かったことにし、苛め殺してゆっくりするのであった。 「れいむっ! どうしてこんなことするんだぜ!」 「ゆっ? れいむはゆっくりできないゆっくりをせいっさいしただけだよ?」 まるで何も悪いことはしたことがないと言わんばかりの表情である。 リボンを失った赤れいむを潰したことによって、ある程度ゆっくりしているため親れいむである。 「おちびをころしちゃったんだぜ!」 「ゆゆっ! あんなのれいむのおちびちゃんじゃないよ、ばかなこといわないでね」 しかし、口答えをする親まりさに徐々にその表情はイライラしたモノになっていく。 と、そこで人間が声をかける。 「さあ、そろそろ次に行かないか? 甘いモノを貰いにさ」 「ゆっ! そうだね! あまあまさんがれいむのことをまってるよ!!」 「「あみゃあみゃしゃん! あみゃあみゃしゃん!!」」 もうリボンを失った赤れいむのことなぞ忘却の彼方においやり、れいむ達はまだ見ぬ甘いモノに思いをはせる。 親まりさは危害を与えてこないとはいえ、恐ろしい人間に言いたいことを遮られこれ以上何も言えない。 そんなれいむ達が次に見つけたのはゆっくりゆうかと男だった。 飼いゆっくりとその飼い主の関係なのだろう、日当たりの良い場所で、一匹と一人が日向ぼっこをしている、その様子はとてもゆっくりしている。 そんな一匹と一人に目をつけたのはまた赤れいむだ。 「ゆゆっ! れいみゅがいきゅよ!」 そう勢いよく飛び出た。 勢いそのままピョンピョンと跳びはね、ゆうかと男に近づく赤れいむ。 「おいくしょにんぎぇんとくしょゆうきゃ、れいみゅにあみゃあみゃをよこしぇ!!」 といきなり赤れいむはそう言った。 「……あら?」 ゆうかは目を開け、やってきた闖入者に目を向ける。 「なにかようかしら?」 飼い主である男も赤れいむには気付いていたが、対応は全てゆうかに任せきるつもりなのか口を出す様子はなかった。 「ゆぴゅぴゅ、こうきなにゃれいみゅのおこえぎゃききょえにゃきゃったの? ばきゃにゃの? しにゅの?」 そう、ゆうかに言う赤れいむ。 ゆうかを馬鹿にしたように、見下した態度と言葉である。 「……あら、そう」 スッとゆうかの紅い目が細まった。 と、次の瞬間赤れいむには知覚出来ない速さで赤れいむの背後に回り込み、体当たりをした。 「……ゆ? ゆ、ゆぎゃぁぁぁぁぁ!! いじゃいぃぃぃぃ!!」 突然の痛みに赤れいむは、泣き叫ぶ。 「ふふ、野良ゆっくりのようだし、今日はあなたでいいわ」 「ゆぴっ……!」 嗜虐心に満ちた紅い瞳は爛々と輝き、赤れいむは不思議と泣き叫ぶのも忘れ、奇妙な寒気を覚えた。 赤れいむも無意識の中ではゆっくりゆうかというモノは強いという意識はあった。 だが、それは醜いほどに肥大化した自分は上位者という意識が、簡単に蹴り飛ばしてしまった。 自分がゆうかよりも強いと思うほどに。 ゆっくりゆうかとは、捕食種に位置される場合もあるゆっくりである。 ゆっくりを食べることに禁忌感を持たず、ゆっくりを殺すことに躊躇しない。 そういった側面もあるが、基本的に通常種のゆっくりとは違い高い知性を持つため、高い基礎能力はむやみに使われない。 しかしそれらは、希少種と呼ばれる種類にはあまり珍しくないものである。 ゆっくりゆうかの特徴の一つして嗜虐心が高いと言う事がある。 つまり、Sだ。 痛みで泣き叫ぶ様が好きだし。 無様に謝る姿を嘲笑ってやるのが大好きだ。 そう、このゆうかは赤れいむを標的にしたのだ。 「いつまではいつくばっているの? まさか一回であやまったりしないわよね」 「ゆ、ゆぎゅ、せきゃいいちゆっくちちてりゅれいみゅがそんにゃことしゅるわけにゃいでしょぉぉぉおぉ!! ぷきゅーーー!!!」 一世一代のぷくーに、赤れいむは決まったと、会心の表情をふくれっ面で浮かべる。 「ふふ、それでいいのよ」 ゆうかは残虐に笑みを歪ませる。 赤れいむはその笑みにゆっくりできないモノを感じる。 だが今更ぷくーをやめることはできない。 「それにしても、それ、うっとうしいわね……」 そうして、ゆうかが目をつけたのは、ピコピコと赤れいむの感情に反応するように動く赤れいむのもみあげだ。 今は、ぷくーという、ゆっくりの威嚇の様なモノをしながら、力を込めているようでピンと張っている。 「先にそれ取っちゃいましょう」 そう言って、ゆうかは赤れいむのもみあげを銜えた。 「ゆ?」 赤れいむは不思議そうな顔でそれを見つめる。 が、徐々に力が加えられていき、もみあげの付け根に痛みを感じた。 流石にそこまで来れば、何をされるのか気付いたのだろう、赤れいむが騒ぎ始めた。 「ぷひゅるる~、や、やめちぇにぇ! れいみゅのしゅてきなぴこぴこしゃんをとりゃにゃいでにぇ!!」 ゆうかは赤れいむの必死の懇願に笑みを深める。 暴れもするが、所詮は赤ゆっくりと成体ゆっくり、おまけに通常種と希少種という能力の差が赤れいむの抵抗を全く意味を成さない。 じりじりと力を込められ、遂にブチブチと髪が引き千切れる音が聞こえ始めた。 「やめじぇぇぇぇぇぇえ!! れいみゅのびごびごじゃんにゅがにゃいじぇぇぇぇぇぇ!! いぎぃぃいぃぃいぃぃ!!!」 ブチッと言う音と共に、赤れいむのもみあげが取れた、わざとゆっくり抜いたため、根元から抜けたのである。 先ほどまで勢いよく動いていたのが嘘のように、そのもみあげはピクリとも動かない。 「あら、気色が悪いのが取れちゃったわ」 ワザとらしく言いながら、ゆうかは口の中のもみあげを見せつける。 「れ、れいみゅのびごびごじゃんはぎじょぐわりゅぎゃぁぁぁぁぁ!!! ゆびゅ!」 うるさい赤れいむを軽くごつき黙らせると、赤れいむのもみあげを地面に吐き捨て、すかさず赤れいむの残ったもみあげを引きちぎった。 「いぎぃぃぃぃぃ!!!」 赤れいむの残ったもみあげからブチリと音が鳴る。 ゆうかはそのもみあげも最初に吐き捨てたもみあげの場所に吐き捨てた。 痛みでしばらく騒いでいた赤れいむだが、ようやく痛みが無くなったのか涙をためた目を吐き捨てられたもみあげに向ける。 大切なもみあげが両方とも失ったと言う事実を、改めて見てしまった赤れいむの目からボロボロと涙がこぼれる。 赤れいむは、その吐き捨てられたもみあげに近づいた。 「ゆっ、ゆっ…… れ、れいみゅのしゅてきできゃわいいぴこぴこしゃん…… ぺーりょぺーりょ、もどっちぇねもどっちぇね……」 赤れいむは必死にぺろぺろともみあげを舐める。 ゆっくりにとって、舐めるという行動は治療行為でもあるが民間療法ほどの効果しかない、重症には意味がないのだ。 地面に吐き捨てられたそれを無意味に舐め続けると言う行為はひどく惨めであるが、本ゆんがそのことに気付かないことにはあまり面白いことではない。 ゆうかは舐め続ける赤れいむを痛みを感じない程度にぶつかる。 「ゆっ、こーろこーろ!」 コロコロと転がる程度に力を押さえた体当たりで、ゆっくりの餡子脳に刻まれた間抜けな条件反射により思わず口走る。 先ほど、自分の大切なもみあげをちぎられた直後だと言うのに嬉しそうに声を上げて。 と、転がるのが止まり、自分がいたところに視線を向ける赤れいむ。 「れいみゅのぴこぴこしゃん……」 やはりそこにあるのは、二つの髪の束。 さっきまでの喜色円満の顔はすぐになりを潜め、悲しげな表情になる。 のろのろと近づいていくと、急にそのもみあげが視界から消えた。 「ゆっ!」 視界から消えた原因はゆうかがもみあげの上に乗ったからだ。 ゆうかは、ニコリととてもゆっくりしていそうに微笑む。 今とてもゆっくりしていない赤れいむは、そのゆっくりした表情が酷く癇に障った。 「くしょゆうきゃぁぁぁぁあ!! きちゃにゃいあんよをれいみゅのしゅてきにゃぴこぴこしゃんからはにゃしぇぇえぇぇええ!!」 そう叫びながら、赤れいむはゆうかに体当たりをする。 「こにょ! こにょ! いちゃかっちゃらしゃっしゃとどいちぇにぇ! ゆっ! ゆっ!」 ポスポスと気の抜けた音がゆうかと赤れいむの体当たりした場所から鳴る。 何度もその音は鳴るが、ゆうかは微動だにしないし、赤れいむは懲りずに何度も体当たりをした。 「ゆひぃー、ゆひぃー、しゃあどいちぇね!」 疲れたのかゆうかに体当たりを止め、荒い息を吐きながら赤れいむは言う。 とてもゆっくりとした微笑みがニィと三日月のように変わる。 そして、その場でグリグリと足元のもみあげを目茶苦茶にするように動いた。 劣化した餡子脳でも足元のもみあげがどうなってるか想像できたのだろう、赤れいむは騒ぐ。 「ゆゆゆゆゆゆ!! やめちぇにぇ! やめちぇにぇ!」 それでもゆうかはやめない。 やめないゆうかに、赤れいむは体当たりを更に敢行するが全く効果が見られない。 しばらくしてゆうかが満足したのか、その場を退くと。 「ゆ、あ、あああ、れいみゅの…… れいみゅのぴこぴこしゃんぎゃ……」 そこにあったのは目茶苦茶になった、赤れいむのもみあげだったもの。 元々千切れていたものだ、二度と戻らないものであった。 ゆっくりというのは、舐めれば怪我関連は何でも元通りになると思っている節がある。 しかしそのことに気付かない赤れいむは無意味に、このぐちゃぐちゃになったおさげにも再び舌を伸ばそうとした。 その様子にゆうかの笑みは深くなる。 いつの間にか銜えた木の棒で赤れいむの舌を串刺しにした。 「??! !!!!」 地面に縫いつけられた赤れいむの舌。 ゆうかは、別な木の棒を改めて用意する。 「!!!」 その木の棒で自分が突き刺されると思ったのだろう。 赤れいむは逃げよう様とするが舌から伝わる激痛が辛くて、これ以上身動きができない。 「はへへ……、はへへぇぇぇっぇ!!」 不明瞭な発音で必死に言うが、ゆうかは止まる気配がない。 ゆうかは木の棒を赤れいむの頬に斜めから刺し込む。 「あぎゃぁあぁぁぁあ!!!」 そのまま刺し込み、地面に到達する事を感じると、ゆうかは木の棒から口を放した。 その具合を見て満足そうにゆうかは頷き、また木の棒を持ってきた。 「ひ、ひ、ひ……」 再び何をされるのかわかったのだろう、赤れいむは震える。 言葉は出ない。 ゆうかの笑みは深く、深くなる。 「あと何本ささるかしら…… 一本? 二本? 三本? 四…… なんて言われてもわからないわよね、たくさんね、うん、たーくさんさしてあげるわ」 花でも咲きそうなほどゆっくりしたその笑みは、赤れいむにとって恐怖以外の何物でもなく。 半狂乱になって赤れいむは叫ぶ。 「ひぎゃぁぁあぁっぁああ!! やへへえぇぇぇぇええ!!!」 これ以上の痛みが、これ以上の辛さがまだあるのかと。 赤れいむは叫ぶ。 だが、その叫びは正しく誰にも伝わらない。 その叫びを主に聞くゆうかの聴覚にはとてもいい音にしか聞こえない。 それから。 赤れいむは生きていた、全身木の棒だらけになって。 最終的に木の棒が無くなり、ゆうかも満足したのか、そのままゆうかと男は帰ってしまった。 そんな奇怪な現代オブジェの様な赤れいむが一匹残ったその場の近くで笑い声が聞こえる。 「ゆぴゅぴゅ、あにょれいみゅはれいみゅたちのにゃかでいちびゃんゆっくちちてにゃいゆっくち……」 「げらげらげら! しょせんれいむたちのつらよごしだよ!」 今度は、一応まりさにはやられなかったため同じれいむカテゴリーだ。 しかし目の前で、自身の家族が虐待されている様を見ても、なんとも思わない。 所詮このれいむ達から見れば、何事も他ゆん事である。 自分が一番ゆっくりしていればいい、それだけだ。 「お、おちびをたすけにいくんだぜ!」 親まりさが助けに行こうと飛び出そうとする。 「待つんだ、まりさ」 「ゆ゛っ にんげんさん!」 「あの怪我じゃ助からない、諦めるんだ ……直すの面倒くさいし」 「どぼぢでぞんなごどいうのぉおぉぉお!!!」 実際、あの怪我を直すのは骨である。 傷をアレ以上広げないように慎重に木の棒を外し、ある程度形を整形してからオレンジジュースをかけなければ元には戻らないだろう。 ただオレンジジュースをかけても、痛覚が強くなり発狂するであろう。 「うるさいなぁ、ほら、もうれいむ達は次行ってるぞ」 「でも! おぢびが、おぢびがぁぁぁぁぁ!!!」 未練がましく、現代オブジェと化した赤れいむを見るまりさ。 両目は涙でぬれていて、口は歯ぎしりを起こさんばかりに食い縛られている。 しかし、人間が止めているせいか動かない、自分の意志と奴隷根性がせめぎ合っているのだ。 人間は溜息をつく、面倒くさくなったのだ。 「まあ、そこまで言うなら仕方がない、れいむ達は見ているから、そこのれいむはお前がどうにかしろ」 「ゆっ?」 てっきりこのまま、また目の前で死にゆく子供を見捨てなければならいと思ったまりさだったが、今回はどうにかなりそうだった。 まあ、結果はまりさ以外にはわかりきっているのだが。 「わ、わかったんだぜ! まりさがおちびちゃんをぜったいになおすんだぜ!」 とにかく、まりさは駆け出した。 自分のかわいい子供を治す為に。 「まあ、無理だと思うがね」 ゆっくりがどんなに出鱈目な饅頭だからといっても、それはある程度無茶がきくというだけだ。 餡子が大量に流失するほどの怪我を負わせれば死ぬし。 酷く辛い思いをさせれば簡単に狂う。 どうせまりさのやることは舐める程度だろう。。 木の棒でハリネズミの赤れいむを舐める場所と行ったら、よほど舌を伸ばさなければ傷にすら到達しない。 寧ろ激痛を走らせるだけだろう。 そんなまりさの背中を見送り、人間はれいむ達の方へ足を向けた。 れいむ達は跳ねていた。 なんせ、甘いモノがもうすぐ自分の口に入るのだ、甘いものに家族以上のゆっくりを見出すれいむ達は探す。 しかし慌てはしない、何処からか溢れだす自信が自分には必ず甘いモノが手に入ると思ってはばからないからだ。 だが、焦れていはいる。 もうすぐもうすぐと思っていても中々手に入らない。 それにしても襲う相手、全てが甘いモノを持っているとそしてそれを食べられると都合よく思っている辺り流石ゆっくりである。 いくら探しても見つからない、実際は数分程しか探していないのだが麻薬中毒者よろしくのれいむたちには十分すぎる時間であった。 「うがああああああ! くそじじい! おまえがでいぶにあまあまさんをけんじょうしろぉぉっぉぉっぉおおお!! たくさんでいいよぉぉぉおおお!!」 「しょうだ! しょうだ!」 そして、その場にいる他者は後をつけていた人間だけだった。 「はぁ」 人間は、呆れたように溜息をつくと辺りを見渡す。 そして何かを確認するとれいむ達に条件を提示した。 「そうだな、れいむその赤れいむを潰したら考えてやらないこともないな」 「ゆぴゅゆぴゅ、にゃにいってりゅの? おきゃーしゃんがきゃわいいれいみゅをつぶしゅわけにゃいでちょ! にぇ! おきゃーしゃん!」 赤れいむはへらへらと笑い、自分の身に起こらないと思っているのだろう。 しかし、親れいむの目は真剣そのものであった。 まあ、赤れいむも同じ条件を出されたら、一も二もなく甘いモノを選択するはずだ。 「おちびちゃん……」 親れいむは笑みを浮かべながら、赤れいむににじり寄る。 「ゆ? ど、どうしたにょ? おかーしゃん……」 そんな親れいむに、流石に身の危険を感じ取ったのか、声が震える。 「おちびちゃん、れいむのあまあまさんのために…… しんでね!」 「ゆぇ」 赤れいむは、親の言葉を理解することなく、潰された。 「ゆっ! おちびちゃんをつぶしたよ! ゆっくりしないであまあまさんちょうだね!」 少しの後悔の念もなく、親れいむは甘いモノを要求した。 家族のことは二の次三の次、甘いモノは家族よりも貴重なのだ。 「ああ、見事に潰してくれたな」 「ゆっへん!」 なにが誇れることなのだろうか、れいむは胸を張る。 人間はついでにと聞いてきた。 「他のまりさの子供達はどうしたんだ?」 「まりさににたおちびちゃんたちもぜんぶつぶしてせいっさいしてあげたよ! ゆっくりしてなかったんだからしょうがないね! でもれいむがじきじきせいっさいしてあげたんだから、かんしゃしてほしいよ!」 ベラベラとまるで自慢でもするかのように、れいむは赤まりさ達を潰したことを語る。 「ほー、どう思うよ、まりさ」 「あ、あ、あ、あ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 甘いものよりも家族を重きに置くゆっくりもいる。 通常種では珍しいことにこのまりさがそうであったようだ。 まりさは今ここで全てを聞いていた。 目の前で救えなかった家族がいた、そして目の前に家族をゴミの様に潰したモノがいた。 たとえどれだけ虐げられていても、大切な家族であったのだ。 そして、自分に似た子供たちを制裁したと言う。 あまつさえ感謝しろと。 まりさの頭の中には怒りしかない。 自分の欲望の為に大切な家族を殺す、そんなことは許せなかった。 「でいぶぅぅぅぅうううう!!」 今までにない鬼気迫る表情でまりさはれいむに近づく。 その形相は普通のゆっくりならしーしーでも漏らして、怯え立ちすくむも程のモノだろう。 「ゆっ、なんなの? いまかられいむはあまあまさんをもらうんだよ!」 しかし、れいむにとってまりさは奴隷以下だ。 そんなものがいくら怖い顔をしても、れいむにとって、何の障害もない。 はずだった。 「ゆっぐりじないでじねぇぇぇぇぇぇ!!」 まりさは近づいてきた勢いそのままにれいむに体当たりをしてきた。 「ゆぶぇぇええええ!!」 全くの想定外の出来事。 れいむは踏ん張りも利かず、まりさの体当たりの勢いをそのまま受け取り吹っ飛び、地面を転がってようやく止まった。 「……ゆ、ゆ、ゆぎゃぁあぁぁああああああ!!! いじゃいぃぃいいいいい!!」 れいむにとってありえない光景だった。 あの、まりさに、攻撃されたのだ。 今まで奴隷以下だと、道具だと見下し、嘲笑っていたのだ。 だと言うのに、なんということが起こっているのだ。 れいむはビタンビタンと体中を跳ねさせ、痛みを散らす。 しかしそんな事を悠長にやっているほどの時間もなかった。 「でいぶぅうううううう!!!」 「ゆひぃぃいいいい!!!」 まりさはまた体当たり、ゆっくりにしては尋常ではない速さでれいむに迫ってきた。 流石に今度は恐怖が身の内から沸き上がる。 そしてまた、れいむは碌に体勢を整えることもできず体当たりを食らった。 「ゆげぇぇぇえええ!! がっ!」 今度は木に当たり、そこまで吹き飛ばずに済んだ。 いや、済んでしまった。 木に当たったことで痛みが増大した。 おまけに次のまりさの体当たりがもうすぐなのだ。 「ゆひぃぃ、いだぃいだ、がっ!」 痛みにくれる暇もなく、まりさの体当たりがまた決まった。 「や、やべっ」 「じねぇぇぇえぇえええ!!」 そしてまた次も、次の次も、次の次の次のも。 まりさの体当たりは終わらなかった。 木がつっかえとなり、れいむは動くこともできず、最後にはお互い何の声も発さず、ただベチャベチャと何か水っぽいモノがぶつかる音が続いた。 「……ゆっ」 目を覚ました。 「おはよう、まりさ」 人間の声がした、先ほどまでれいむと一緒にいた人間の声だ。 まりさは視線を声が聞こえた方へ向ける。 「いいモノ見せてもらったよ」 人間は片手にオレンジジュースを持っていた。 おそらく、それでまりさを回復させたのだろう。 「れぃ……むゎ?」 「死んだよ」 先ほどまでまりさが気を失うまで体当たりをしていた場所には、まりさのかれいむのか判別が付かないほど餡子が飛び散っていた。 ゆっくりから見れば凄惨な光景だろう。 今まりさは人間の手で回復させられた。 れいむが中身がすべてなくなるほど潰れ、それでもまりさは止まらず歯が砕けて、舌が裂けて、目が潰れて、皮が破れても体当たりを続けた。 「れいむが死んで、どうだ今の気持ちは」 まりさの心の中には何も無かった。 れいむへの怒りも、子供への悲しみも。 「どうせ何も無いだろ、お前はよく頑張ったよ」 慰められた。 そうだ、まりさは頑張ったのだ、今の今まで、赤まりさのために、赤れいむのために、……れいむのために……。 まりさの心の中に今までの努力が、ゆん生の記憶が蘇る。 楽しいことがたくさんあった、辛いことももっとたくさんあった。 「そう、毎日辛い餌探しをして、どうせ子供の世話もして、れいむになんか言われて…… そして……」 一端、間が開く。 「……そして、何も無いな」 言われて気付く。 今のまりさには何も無いことを。 今までの努力はもう何も無く、楽しい事さえ、辛い事さえ、何も無い。 「しかし、大丈夫だ、次がまだある、また番を見つけよう、また子供をこさえよう、まだまだ、頑張れるだろう? 生きていれば」 まりさの目に希望が宿った。 そうだ、次があるのだ、生きてさえいれば、まだ。 「そうだ、まりさ」 そうだ、まりさは生き抜く希望を持つ。 まだ自分は死んでいないんだ、まだ次があるんだ。 徐々に生きる気力を取り戻すまりさ。 「だから、俺がお前を潰してやるよ」 「ゅぇ……?」 まだ治りきっていない、口から声が漏れた。 「お前のこれからは、今から無駄になる、努力も希望も夢もな」 「ぃゃ……」 ガタガタと体が震えだす。 まりさはこれからなのだ、また新たな一歩がこれから始まるのだ。 スッとまりさの頭の上に足が乗り、冷たい靴底の感触がまりさの頭に感じる。 ゆっくりと、治りきっていない皮を押す感触がまりさに伝わる。 「ゅ」 治る途中の突っ張った皮がブチリブチリと音をたてて切れて行く。 裂けた薄皮からは痛々しいほど黒く、甘そうな餡子が流れ出始めた。 まりさの両目から砂糖水の涙が溢れだす。 溢れる涙が増えるほど、まりさは過去を思い出す、ただ楽しかったあのころを。 「ゅ……!」 痛みがまりさを襲う、それ以上の絶望がまりさを蹂躙する。 これからなのに、これからなのに。 これから、まりさは新しいゆっくりを番にして、可愛い子供達を産んで、みんなで楽しくむーしゃむーしゃとご飯を食べて、みんなで仲良くすーやすーや寝て、皆で元気におはようの挨拶をして、それでたくさんのご飯を狩ってきて、皆に褒められて。 たくさんのゆっくりがこれから待っているはずなのに。 やっと、希望が信じられるようになったのに。 「ゅぁ! こ、ごろざなぃでぇぇえぇぇぇぇぇええええ!!!!」 まりさの治りきっていない喉が裂けるように、最後の断末魔が辺りに響き渡る。 そして、潰れる音が響くことなく、人間の足元で鳴った。 残ったのものは、夢も希望も未来もない、ただでいぶに使い潰された饅頭だけだった。 過去作品 ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー 大きく振りかぶったあき http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/2248.html 個人感想掲示板 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1283009109/l50 27作目です。 では、最後まで見ていただけたら幸いです。 大きく振りかぶったあき 挿絵:
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/106.html
こんにちは、ムシゴロウです。今回はコンペという事で、 でいぶの生態について学んで生きたいと思います。いやーたのしみですねー! 「むきゅ!そんなにちょっきゅうでいいのかしら?」 こちらは、知ってる人はお馴染みの「王国の拳者」まっちょりーです。 知らない人は知りませんよー、それにしても、たくましいですねーかわいいですねー 「むきゅ…あいからず、まるなげね!ほんとうにこれでいいのかしら?」 そんな訳で、今日は王国内のでいぶ達の暮らしを見ていきましょう。 いやー朝早いと流石に眠いですね、ここはですね、王国のゆっくり宿舎なんですねー ここにはですね、たくさんのでいぶが居るんですねー 元々ですね、「でいぶ」と言うのは、東北地方でのれいむの呼び方の「けいぶ」が訛ったのが始まりなんですね。 ですから、「れいむ」も「でいぶ」も一緒の物なんですねー 「むきゅ!また、いいかげんなことをいっているわ…」 それでは宿舎の中に入って行きましょう。音を出さないように静かにしていきましょうね。 まっちょりー気をつけて下さいねー 「ムシゴロウさんが、いちばんちゅういしてほしいわ………」 ゆぴー………ゆぴー……… ゆっくり達の寝息が聞こえてきますね、かわいいですねーかわいいですねー ポチッ 『ジリリリリリリ!!パンパンパンパンッ!!!』 「ゆっひぃ!」 「ゆがっ!なんなのぜぇぇぇぇ?!」 「ゆぐっ!えれえれえれえれ…」 おや?どうやら起床用のブザーを鳴らしてしまったようですねー ゆっくり達は清々しくお目覚めのようです。 「いまのでおどろいて、はんぶんくらいひんしよ…」 おや?どうやらここには、でいぶは居ないようですねー残念ですねー 仕方ないので他へ行ってみましょう。 「むきゅ…ふんだりけったりね…でもかわいそうだけど、このくらいでまいっていたら、おうこくではいきていけないわ…」 「ゆるさなえ!ゆるさなえ!」 「ゆっがぁぁぁ!どぼじでかわいいれいむをいじめるのぉぉぉぉぉ?!」 おや?あそこで朝早くから追いかけっこをしていますね。 あれはゆるさなえと、でいぶのようですね。いやー仲が良いですねー 「むきゅ…どうしたらそんなふうにみえるのかしら?」 今回はでいぶに用があるのでゆるさなえには悪いですが、でいぶを捕獲しますね。 「ゆん?!おそらをとんでるみたーい!」 見て下さい、大きなでいぶですねー! このでいぶはですね、リボンが通常の物より大きいですね。 これはですね、「ヤマトアカハネレイム」という種類なんですね。このリボンを羽に見立てているんですねー 「ゆん?!このじじいはれいむをたすけてくれたんだね!しかたないね、でいぶのどれいにしてあげるよ!」 「?!ゆるさなえ!」ガブ! ゆるさなえが僕に噛み付いていますね、これはですね、ヤキモチを焼いているんですねー かわいいですねーかわいいですねー 「むきゅ…れいむがりをじゃまされて、おこっているのよ…」 それにしても、見て下さい。大きなリボンですねー かわいいですねーかわいいですねー 「ゆゆ?!どれいにくせに、きやすくれいむのおりぼんさんにさわらないで… 『ビリッ!ブチッ!』ゆん? ………ゆっがぁぁぁぁぁぁ?!れいむのおりぼんさんがぁぁぁぁぁ?!」 リボンが簡単に取れてしまいましたね、これはですね冬用のリボンから、夏用にするための準備なんですねー 「むきゅ…ムシゴロウさんのちからに、たえられなかっただけよ」 このでいぶはこの辺で放してあげましょう、さあ、またゆるさなえと追いかけっこを楽しんでいてください。 シュッ!ビッターン!! 「ゆっげべぇ?!ゆ…ぎ……ぎ…くそじじ…なに…して……」 「ゆるさなえ!!」ガブッ! 「ゆっぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」 早速じゃれ合っていますね、いやーとっても仲が良いですね。 「むきゅ…ムシゴロウさんも、ゆるさなえも、どちらもようしゃないわ…」 「ゆぎぎぎ…うごけないよ!なんなのこのいとはぁぁぁぁ?!」 「にんしゅうしゃをつかまえるゆっくり、スパイヤーマ!」 でいぶがくもの巣に引っ掛かっていますね、あのくもの巣はやまめというゆっくりの物なんですね。 やまめはスパイなんとかマンに似ているので、外国で人気があるゆっくりなんですねー 「むきゅ…しんにゅうしゃといっても、あのやまめも、おうこくにかってにすみついているだけよ」 「やいじじい!れいむをさっさとたすけろー!はやくしないと、せいっさいするよ!」 「しんにゅうしゃはゆるさないゆっくり、スパイヤーマ!」 今回はやまめには用はないので向うにいっててもらいましょう。 ガシッ!シュッ! 「むしごろうさんになげられるゆっくり、スパイヤーマ!」 シュルルルルッ! 「ゆわわわわ!なんなのこのいとはぁぁぁぁ?!」 「どすーどすーしっかりしてぇぇぇ!!」 「どすにいとをからめて、じめんにたたきつけられるのをふせいだわ…むきゅ…あれならおうくでもやっていけるわ…」 見て下さい、やまめの巣に引っ掛かっていたでいぶは、先ほどの物より髪が長いですねー これはですね、クロゴキじゃなかった、「クロワモンレイム」という種類のでいぶなんですね。 かわいいですねーかわいいですねー 「まったく、くそどれいは、れいむをたすけるのがおそいよ!」 「むきゅ、いっしゅんいいかけたのは、なんなのかしら?」 このでいぶはですね、寒い地方に生息しているために、髪が長いんですね。 この髪は防寒用という訳なんですね、でいぶも考えて進化しているんですねー 「ただのこたいさじゃないのかしら?」 こうやって髪の毛を触っていると大分暖かいですね、昔はこの髪の毛目当てに乱獲された時代もあったそうなんですねー 「ゆゆ?れいむのきれいなかみのけさんに、みとれているんだね!もっとよくみていいよ!そのかわりあまあまちょうだいね!」 ブチブチブチッ……… 「ゆ?……………ゆっがぁぁぁぁ?!れいむのかみのけさんがぁぁぁぁ!!」 おや?でいぶの髪の毛が全部抜けてしまいましたね。 これはですね、毎日毛を生え変わらせることによって、清潔さをたもっているんですね。 でいぶは綺麗好きなんですねー 「むきゅ…どうしたら、なでるだけでかみのけが、むしりとられるのかしら?」 このでいぶはもう放してあげましょうね。 シュッ!グチャ! 「ゆぎょばっ!!」 「むきゅ…きにあたってはじけとんだわ…」 いやー、かわいかったですねー 「こぼね!こぼね!」 「ゆわぁぁぁ!どぼじで、れいむのあかちゃんたべちゃうのぉぉぉぉ?!」 向こうの方で、ゆゆことでいぶが遊んでいますね。 流石にでいぶは数が多いだけに、王国のあちこちで見かけますねー 「むきゅ…かずがおおいことだけは、どういしておくわ」 おや?このでいぶはめずらしいですねー! 見て下さい、ここに耳のような物が付いていますね。 「はなせ!くそじじいぃぃぃぃ!れいむのおちびちゃんをたすけろぉぉぉぉぉ!!」 いやー、元気が良いですね、このれいむはですね、「モリエホウレイム」と言うんですね。 この耳のような物が特徴で、これは幸福の象徴なんですね。 耳は恵方の象徴なんですねー 「むきゅ…さくしゃさんにおこられないかしら…」 この耳は、幸福のお守りになるんですね、せっかくだから貰っておきましょうねー ブチブチブチブチ… 「ゆぎゃぁぁぁぁ!れいむのかわいいおみみさんがぁぁぁぁぁ!!どぼじでこんなごどするのぉぉぉぉ?!」 さあ、ゆゆこのところに返してあげましょうね。 シュッ! 「こーぼね!」 「ゆがぁぁぁ!れいむをたべないでぇぇぇぇ!!いだいぃぃぃぃ!!」 「こぼね!こぼね!」 それではこの耳はまっちょリーにあげましょうね。 いやーそれにしても珍しいでいぶが見れましたねー 「むきゅ!ぱちゅもこんなものはいらないわ…きもちわるいわ…」 「さあ、おちびちゃん!おかーさんといっしょに 『ワサワサ』 やってみようね!」 「れーみゅ、がんばりゅよ!」 『わーさ、わーさ!』 あそこにでいぶの親子が見えますね、必死に揉み上げをワサワサしてますね。 あのでいぶは、『オオケダマレイム』という種類で、揉み上げをワサワサするのが得意なんですねー それにしても、ウザ………かわいいですねーかわいいですねー 「むきゅ…たしかにあのもみあげは、なんとかしたいわね…」 せっかくので、一緒に遊んでみましょうねー 「ゆゆ?ムシゴロウさんだよ!ムシゴロウさんはゆっくりできないよ!」 「ゆっぴぃ!ムシゴローしゃんはゆっくちできにゃいー!」 それじゃあ、揉み上げをワサワサするのを手伝ってあげましょうねー ブチブチブチ… 「ゆっぎゃぁぁぁぁ!れいむのすてきなもみあげさんがぁぁぁぁぁ!!」 「ゆびゃぁぁん!いちゃいよ!もみあげしゃんひっぱらにゃいでぇぇぇぇ!!」 揉み上げが取れてしまいましたね。 でも大丈夫なんですよ、これはね、また来年になると生えてくるんですね。 すごいですねーすごいですねー 「むきゅ、はえてこないとおもうわ…むしろはえなくてもいいわ」 今回は王国内で幾つかのでいぶを見て行きましたが、日本にはまだまだ数種類のでいぶがいるんですねー みなさんも、でいぶを見かけたらじっくり観察してみると良いかもしれませんよー 何か新しい発見があるかもしれませんよー 「かんさつしすぎて、イライラしても、ぱちゅはせきにんをとらわいわ…」 それでは、また何処かで会いましょうー 完 コンペと言う事ででいぶネタです。 ムシゴロウさんは久しぶりですね。 徒然あき
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/311.html
・こんなでいぶもありだろうか?まあいいや ・胴つきゆっくり登場 ・ハイスペックなゆっくりが登場します ・前半・後半がくっついています。 ・勢いで書いたので所々おかしい そのれいむは本ゆん基準でとてもゆっくりしていた。 れいむにとってはとてもゆっくりしているゆっくりは誰よりも強い… だかられいむがこの世でとっても強いんだ!!一番ゆっくりしていいんだ!! そう考えたれいむは森で暴れたい放題していた。 今までドスと対峙した事もなければドスに関する知識もない。 ドスという存在を知らなかったからこそこのような結論に至ったかもしれない。 『れいむがいちばんゆっくりしているんだ!!』と言って飛びかかってきたでいぶはれいむの こん棒(実際は贅肉が垂れまくった腕)のような腕で殴り殺した。 最後の断末魔すら認めない…何故なられいむが一番強い。だからそれ以外にゆっくりする義務なんてない!! 『ぞんなのみどめないんだぜ!!』と言って棒を咥えて襲いかかってきたゲスまりさは れいむの大木(実際は贅肉がたっぷりついた)のような足で踏み抜いた。 最後の断末魔を上げる暇さえ認めなかった…何故なられいむが一番ゆっくりする資格がある程 強いからだ。 『ゆうかのおはなさんをもっていかないでぇぇぇ!!』と言ってれいむのごはんを横取りしようといした ゆうかを全身を使って弾き飛ばした。これで少しは従順になるだろう。 なぜそんな事が認められるのか?…それがれいむがこの世で一番強いからだ。 だからもっともゆっくりする資格があるのだ。 かくしてれいむは頭と胴体を駆使して森の主に君臨していた。 森のあらゆる生き物(といってもゆっくりしかいない)を従え、だれよりもゆっくりする。 正義の味方!!でいぶ!? れいむはその日もゆっくりしていた。その朝の日はまずゆっくりと起き、 それから腹を空かしたもっともゆっくりする資格のないゆっくり達の目の前で 美味しそうに、ゆっくりとごちそうを食らっていった。 はら一杯食べるとお遊戯と称して体の弱いゆっくり、未熟児を遊び台にしていたぶった。 「ゆらゆらぁ!!れいむのせかいさいきょうのらっしゅはどう?くるしい?ゆひゃひゃひゃひゃ!!」 「もっど…ゆ…」 「ゆぅ?もうおわり?さいきんのどれいどもはほんとうにゆっくりするしかくなしだね!! れいむがいんどうをわざわざわたしてあげたからあのよではすこしはゆっくりできる… わけないよね!!どれいはどこまでいってもどれいだもんね!!ゆひゃひゃひゃひゃひゃ!!」 そういいながられいむは高笑いをした。 そして最後に残った子ぱちゅりーを拳で粉砕しようとしたその時だった。 「れいむざまぁぁっぁ!!だいべんでずぅぅぅうぅぅぅ!!」 森の随所に立たせた監視ゆっくりの内の一匹が飛び込んできた。 そのまりさは全身がまるでゆっくり出来ない目に合ったかのような体をしていた。 「ゆん?どうしたのどれい?」 「ゆっくりできないやつが…」 ドゴォ!!「ゆべぇ!!」 「よわくてゆっくりするしかくもないげずがなれなれしくゆっくりできないなんてつかわないでね!! またいったらこんどはえいえんにゆっくりさせるよ!!」 「ゆ、ごめんなさいなんだぜぇぇぇ!!だがらえいえんにゆっぐりだげはぁぁぁ!!」 ギロリ!!「ゆひぃ!!」 れいむの鋭い眼光に睨まれ怖気付くまりさ。 れいむはそんな事を気にしようとはせずに続けた。 「そんなのどうでもいいからちゃんとほうこくしてね!!」 「ゆ…ゆ…、おっきなきさんのほうから…ゆんと…ゆん!!へんなやつがきたんだぜ!!」 「へんなやつ?」 「そうなんだぜ!!そのへんなやつがまりさたちをゆっくりできなくさせて…」 「ゆっぐりしねぇ!!」「ゆぼぉぉぉぉ!!」 まりさはれいむの蹴りによって即死した。 「ゆん!!これだからあんこのうなげすは…。ゆっくりするしかくがあるのはれいむだけなの!! おまえたちはゆっくりするしかくもないよ!!」 れいむはそう一瞥すると、側に控えさせていたゆっくりにゴミ始末を命じた。 側近が掃除をしている最中、れいむは考えていた。 あのゲス共でも他のゆっくりする価値もないゆっくり共と違って 多少はゆっくりする価値があるはず。それをあそこまでボロボロにできるということは… それなりに奴隷として使い道があるとゆうことだね!! ゆん!!決めた!! 「おいどれい!!」 「ゆひぃ!!な…なんでしょうか…」 「れいむはこれからへんなやつをせいっさいしにいくからるすばんしててね!!」 「ゆ…ゆひぃ!!わ…わかりました!!」 奴隷のゆっくりにとりにそう命じるとれいむはその足でおっきな木がある方角へ向かって歩き出した。 歩く事30分… れいむは目的地に着いた 「ゆぅん…なかなかつかえそうなどれいだね!!」 そこにはゆっくりの中身が大量に散乱しており、そこを中心にするように監視に付けていた ゲスゆっくりの皮が散乱していた。 れいむはこれから奴隷にするやつがこいつらよりは使えそうな事を確認すると思わず笑みを浮かべた。 これだけつかえそうならいろんな使い道がありそうだ…いまから楽しみだ… そう考えながらていると奥の方から何かが動いている音が聞こえた 「ゆん?あそこか!!」 れいむは長年この一帯のボスとして君臨してきたその感でターゲットの所在地を把握するとかけだした!! その速さ、ゆっくりの二倍にして人間の二分の一!! 怪しい影を見つけるとれいむはそいつの目の前に踊り出た!! ザザッ!! いきなり現れたれいむにその変な奴は驚いたようだ。 だがそんな事れいむの知った事ではない!!先手必勝だ!! れいむは飛びだしたその勢いを殺すことなくそのまま変な奴の顔面に膝を繰り出した。 ドゴォ!! クリーンヒット!! れいむの膝は変な奴の顔面に直撃した!!今まで多くのゆっくりの戦意を奪ってきた強力な この飛び膝蹴りの直撃を受けて生き延びたゆっくりなどこの世に… 「いきなり何をするこの悪の手先め!!」 だがその変な奴はひるんだ様子もなく、れいむの腹に拳を打ち込んだ!! ドン!!「ゆぼぉ!!」 変な奴の拳を碌にガードも出来ずにモロに食らったれいむはそのまま3メートル程飛ばされた。 「ゆぐぅ…」 赤く、そして熱く焼けるような痛みがれいむを襲い、れいむは少し餡子を吐いてしまった。 そして未だに痛む腹を押さえながられいむはゆっくり立ちあがった。 視界が痛みのあまりに歪んで見えるが、れいむをここまで吹き飛ばした変な奴の 姿が見えた。れいむは痛みに耐えるように声を上げる 「おばえは…だれだ…」 れいむは腹を押さえながら声を上げた。 もう一人の方はヘンなポーズを取りながら名乗り出した。 「私は、正義の味方!!仮面お兄さん!!罪のないゆっくりの救いの声を聞き、今ここに登場!! 貴様だな!!悪の親玉ゆっくり胴つきでいぶは!!何の罪もないゆっくりの代わって!!制裁だ!!」 まるでどこかの戦隊物のヒーローのようなポーズを取る仮面お兄さん。 まあ格好からして明らかにどこかの戦隊物のコスプレをしているお兄さんだったが。 れいみは腹の痛みが少しマシになったのか仮面お兄さんの顔を睨みながら言い放った 「ふざけるな!!もっともゆっくりするにたるでいぶがもっどもゆっぐりじでなにがわるい!! れいむはもっともゆっくりしているからもっともつよい!!だからおばえなんてがんだんに せいっさいできるんだぞぉぉぉ!!いばないてでいぶにあやまっでどれいになるとちかうなら はんっごろしでかんべんしてあげるよ!!」 れいむの頭の中ではもうすでに不意打ちに失敗したことなど完全に消え失せていた。 今頭にあるのはなかなか使えそうな奴隷が目の前にいることだ。 「やれるものならやってみろ!!正義は我にあり!!とう!!」 「ゆぅぅぅぅ!!でいぶさまがてかげんなしでちょうっきょうしてやるぅぅぅ!! かくごしろぉぉぉぉ!!」 二人の戦いは始まり… 「ふん!!」「ゆべぇぇぇ!!!」 一瞬で終わった…。 仮面お兄さんの蹴りは完全にれいむの胴体に直撃し、れいむの体を10メートル程吹き飛ばした。 その蹴りは、バイクが大好きなヒーローの決めわざと酷似していた…。 「どうした悪の親玉め!!これでおわりか!!」 仮面お兄さんの頭にアドレナリンが駆け巡りすぎておかしくなっているのか、 完全にヒーローになりきってノリノリになっていた。 れいむは10メートル程離れた大きな木にもたれかかるようにぐったりしていた。 普通のゆっくりなか今の蹴りで死んでいただろう…だが!! 「ゆ…ゆっぐ…」 れいむは体がフラフラになりながらも立ちあがった。 だがその体は見るも痛々しいような状態だった。 腹の一部は仮面お兄さんの蹴りに耐えきれなかったのか餡子が少量出ており、 口からも餡子を吐いていた。 普通の胴付きならこんな大けが負ったら死にはしなくても身動きが取れなくなる程の大けがだ。 「れいむは…とってもつよい…だがら…だがら…いっばいゆっぐりじで…いいんだ… ぜっだいに…どれいなんがに…ならないよ…」 れいむはブルブルと震える足をこらえながらも立ちあがった。 その様は今にも倒れそうなマッチ棒のような姿だった。 その姿に仮面お兄さんは感激したかの様な声で高らかに叫んだ。 このれいむに何かを感じたのか、仮面お兄さんはれいむに追撃をかけようとはしなかった。 だが、正義のヒーローとしては引く訳にはいかない。 「良かろう!!来い!!」 …一時間後… れいむは仮面お兄さんの足元で倒れていた。 「ゆはぁ…ゆはぁ…ゆはぁ…ゆはぁ…」 息はしているがその体はほっておいたら確実に死ぬであろう程の大けがだった。 腹の傷がさらに広がり、体の至るところから餡子が漏れ出している。 あの後れいむは震えながらも一歩ずつ仮面お兄さんに歩み寄って行きお兄さんに攻撃を仕掛けた だがれいむの攻撃はまるで小さな饅頭が体に当たったかの様な程度にしかならず、 仮面お兄さんは何かに取りつかれたかのように殴り続けるれいむはずっと見続けた。 そして一時間が経過する頃に、れいむは力尽き倒れた。 一発一発拳を打ち込んでいく度に仮面お兄さんのアーマーの棘がれいむの体に切り傷を付けていき 動けば動くほど腹の傷が広がっていった。 「どうだれいむ、これが正義の力だ。ゆっくり理解したなら今後は他のゆっくりを奴隷にしないで」 「ぞんなごど…ぎげるか…」 れいむが仮面お兄さんの話に割り込むように語りだした 「れいむは…あかちゃん…のごろがら…どれいあづがい…ざれで…ぱぱ…やままからも…はなされて… おねえじゃんも…げずどぼの…ぼーるざんに…ざれだ。 でぼ…どうさんが…はえでがら…どでもゆっぐり…でぎるように…なっだ。 どんなげずがら…も…ばがにざれない…。 ぼがの…あがぢゃんがらも…どれいだがらっで…ばがに…ざれない…。づよぐ…なっだがら…だぁぁ…。 づよぐ…なっだら…みんな…ぺこぺこ…して…ごはんを…けんっじょう…じだよ… みんな…れいむの…おねがいを…きいてくれる…ようになっだ…よ… だがら…づよい…ゆっぐりが…ゆっぐりじでいいんだぁぁぁぁぁぁ!!… でいぶはづよいんだぁぁ!!づよいがらごごまでゆっぐりずるげんりがあるんだぁぁ!! よわいやづはみんなごみなんだぁぁぁ!!だのにおばえはどうじでぞんなにづよいんだぁぁ!! ぞんなにづよがっだらもっどゆっぐりでぎるのになんでじないんだぁぁ!! なぜだぁぁぁぁぁぁぁ!!」 れいむは慟哭した。おそらく自分の絶対的信条だった物を完全に打ち崩されたからだろう。 もっともゆっくりできるものはもっとも強い…このお兄さんはこんなにゆっくりしていないのに なんでこんなに強いの?なんで!!なんでぇぇぇぇ!! じゃあれいむはゆっくりする資格なんてないのぉぉぉぉ!! 大粒の涙を流しながら仮面お兄さんに向い叫ぶ。 仮面お兄さんは仮面を外すと、ただ無言でれいむをおぶった そしてれいむの顔をじっと見てこう答えた 「それはなぜか?その答えは俺がゆっくりじっくり教えてやろう」 れいむはここで意識を失った。痛みに耐えきれなくなったからだろう。 お兄さんはれいむを担いだままそのままどこかへと消えて行った。 それから数日が立つ頃には奴隷のようにこき使われていたゆっくり達は 急にいなくなったれいむに対して言いたい放題言うと思い思いに散らばって行った。 奴隷として扱っていたゆっくりのほとんどがゲスやでいぶばかりだったためかれいむがお家と していた所を中心に民家や他のゆっくり等に多大な被害が発生した。 留守番を承ったあのにとりは何処かにいなくなり、れいむのお家だった所は完全に廃墟となった。 今ここに、れいむの王国は完全にこの地上から消え去った…。 それから3カ月の月日が流れた… 「ゆんゆん!!さあおちびちゃんおとうさんがかえってきたよ!!」 「ゆわ~い!!おとうさんがかえってきたよ!!」 どこにでもあるゆっくりのお家にどこにでもいるゆっくり一家がいた。 構成は父親まりさに子まりさ、母親れいむは不慮の事故で永遠にゆっくりしていた。 朝は一緒にお歌を歌い、昼には父親まりさは狩り行くという生活を送っていたが家族仲は 非常に良く、まさに理想のゆっくり家族だった。 帰ってきた親まりさは今日の獲物を食卓に並べ、早速おちびちゃんと一緒に食べようとした。 「おちびちゃん、ゆっくりごはんをたべようね!!」 「わ~い!!いちゃだきまちゅ!!「まってね!!」ゆ?」 まりさ一家がご飯を食べようと大きな口明けたその時を待っていたとばかりに横から声が聞こえてきた。 一家が声の方を向くとそこには一匹のゆっくりがいた。 茄子型の体、ふてぶてしい顔をさらにふてぶてしくした顔、やたらとうるさい声、 それは間違いなくでいぶだった。 「でいぶのごはんさんをかってにたべないでね!!」 この言葉にまりさ親子は言葉を失った。 このごはんはさっき親まりさが狩りに行って取って、帽子の中に入れ、家に帰ってから帽子の中身を広げたばかりだ。 まちがいなく親まりさがとってきた食糧だ。 「なにいっているの!!これはまりさが「うるさいよ!!」」 「でいぶのごはんどいっだらでいぶのごばんざんなのぉぉぉぉぉ!! ぞんなごどもばがらないのぉぉぉぉぉ!!ばがなのぉぉぉ!!じぬのぉぉぉぉ!!」 でいぶは怒り狂った顔でぷくーをした。 でいぶ自体はゲスゆっくり以上に性質が悪く、殺ゆっくりも「自分が間違いなく正しい」 という意味不明の理論から一切ためらいもせずゆっくりを殺す。 親まりさはその非常に大きく、そして禍々しいしいぷくーに恐怖を覚え、 しーしーをもらしてしまっていた。 恐怖に怯えきったまりさは命だけでもと思い、必死に言葉を紡いだ。 「ゆっぅぅぅ…ずみまぜん!!でいぶざまのごじょぐじをうばっでずみまぜんでじだぁぁぁ!!」 「おとうさん!?」 ここまできたら親まりさは止まらない。 「ばりざはでいぶざばのぼじょぐじをどっだげずでずぅぅぅ!! でぼ、ぜんぶおちびちゃんのだめにやっでぎだんでずぅぅぅ!! だがら、いのちだけは!!いのちだけはぁぁぁぁぁ!!」 親まりさは内心せっかくとってきた食糧をこんなでいぶに奪われる事に憤りを感じていた。 だが、でいぶは普通のゆっくりよりいくらか大きい体格を有しており、 単純な戦いでは普通のゆっくりが勝てる要因など一切ない事を知っていた。 こんなところで死にたくない!!親まりさにとっては苦渋の選択であっただろう… 「ゆん!!そこまでいうならせいっさいはかんべんしてあげるね!!でもまたやったらゆるさないからね!!」 「ばいぃぃぃぃぃ!!ありがどうございばずぅぅぅぅ!!」 親まりさは命が助かった事に安堵し、涙を流した。 子ゆっくりにとっては到底認められないことであったろうが、 親まりさは必死に自分の可愛い娘を宥めることしかできなかった。 「さーてとさっそくむーしゃむーしゃす「そこまでよ!!」ゆぅ?」 でいぶはお家の外から声がしたのを聞いた。 なんだ今の声は?と考えながら外の様子を確認しようとしたその時であった。 ガシ!!「ゆぅぅぅぅ!!」 お家の外から細長い腕のような物がれいむの頭を掴んだ。 頭を掴まれたでいぶはそのまま細長い腕によって外に放り投げられた 「ゆわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」 れいむはお家から3メートル程投げ飛ばされた。 飛ばされたれいむは顔から着地したれいむはいそいそと体を器用に使って起き、 声のする方を向いた。 「ゆっくりのご飯を横取りし、拒否するゆっくりは制裁という名の処刑。 ゆっくりはそれを…『でいぶ』という」 「ゆぅぅぅ!!だれだおばえは!!」 れいむはそう言いながら声の主を見た。それは…もっとも会いたくないあのゆっくりだった 「貴様に名乗る名前はない!!」 名乗りを上げると同時にそのゆっくりは駆け出した。 そしてそのまま勢いを殺さずにれいむのアナル辺りから蹴りを入れた 「ゆぼぉぉぉぉぉ…」 吹き飛ばされるれいむ…だが攻撃が終わった訳ではない。 そのゆっくりはれいむが墜落する辺りに一気に回り込み、そのままれいむのあんよ目掛けて さらに蹴りをいれる 「シュート!!」 「ゆぶごぉぉぉぉぉぉぉ…」 そして真上に飛ばされるれいむ。 れいむが空高く吹き飛ばされたのを確認すると、そのゆっくりは手を手刀の形にし 落ちるタイミングを測って気合を溜め始めた。 「ゆおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 気がますます高まっていく…。 そしてれいむがそのゆっくりの前を通過するかしないかというタイミングでそれは繰り出された 「必殺!!ゆっくりフィンガー!!」 同時に手刀がれいむのまむまむに無理やり突っ込まれた。 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁ!!…ばむばむがぁぁぁぁぁ!!」 そのゆっくりの腕ごとはいったれいむのまむまむはもう二度と使いようがないぐらい拡張されてしまった。 広がりに広がりきったまむまむから餡子がこぼれ出る。 「ゆぎぎぎぎぎ…どっどどまむまむがらぞのぎだないのをどれぇぇぇぇぇ!!」 そのゆっくりは聞く耳持たずと言わんばかりの態度を取った後、 れいむを高く上げた 「ゆっくりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」 腕をグルグル回し始めた!!れいむは目を回し始め、こぼれ出るうめき声も嘔吐に近い物になってきた。 「エンド!!」 れいむは近くにあった木に思い切り叩きつけられた。 れいむは遠心力とその力に耐えきれずに全身から餡子を吹き出して死んだ。 目玉が飛び出て、歯が辺り一面に飛び散り、断末魔すら上げる暇すら与えなかった。 そのゆっくりは敵が死んだことを確認すると、森の奥へと姿を消していった… 「おとうしゃん…あのれいむは?」 「おちびちゃん…とってもつよくて…とってもゆっくりしているゆっくりだったね」 「…ゆん!!そうだね!!」 「でもあのれいむは…ゆ!!こ、これはいちだいじだよ!!」 命が助かった父まりさは大急ぎで近所のゆっくりにふれまわった。 あのとてもゆっくりしていないれいむが帰ってきたと… 「ゆん!!今戻ったよ!!」 「おう、お帰り」 「おかえりなさいませ」 れいむは元れいむのお家だった廃墟で待っていた二人にそう答えた。 あの仮面お兄さんと、今では胴つきとなったあのゆっくりにとりだった。 「初陣はどうだった?うまく家族を救いだせたか?」 「ゆん!!れいむはうまくあの家族を助けたよ!!」 「よしよし、どうだ?ゆっくりできるか?」 「ゆん…まだゆっくりできるか実感がわかないよ…」 少し戸惑うような顔でそう答えたれいむに、仮面お兄さんは頭を撫でてやった。 「まあお前の場合前科がかなりあるからな。しばらくゆっくりは出来ないが 必ずとてもゆっくりできるようになる」 仮面お兄さんはそう優しそうにいった。 れいむはそれを聞いて満足そうにうなずいた。 仮面お兄さんは自分の好きなヒーロー物のコスプレをして悪いゆっくりを退治するのが大好きな いわゆる虐待お兄さんだった。 このれいむと会ったのも、元をただせば比較的善良だったゆっくりから聞いた噂話からだった。 とてもゆっくりしていないゲスなでいぶがいると… お兄さんはそのでいぶをたっぷり虐待してたくさんすっきりしようと森に足を入れ そこに件のれいむが奇襲を仕掛けてきた。 明らかに体型はでいぶそのものだったがまさか胴つきだったと思わず、少し躊躇った。 だがその目をみた瞬間お兄さんはただのれいむではない事に気がついた。 そう判断したお兄さんはれいむの様子をただ見ることにした。 仮面お兄さんがれいむを下した後、仮面お兄さんはれいむを家に連れて帰り治療をしたのだ。 最初は「もうどれいになるしかないでいぶをどっどどごろぜぇぇぇ!!」と叫んでいたが 治療が進む頃にはおとなしくなっていった。 治療が済んでしばらくはおとなしくしていたが、時間が傷が塞がって行くにつれて 「でいぶはぼうどれいになんがなりだぐないぃぃぃ!!ごろぜぇぇぇぇぇ!!」 と叫ぶようになり何度も自殺しようとした。 だが仮面お兄さんは自殺しようとするれいむを何度も止めた。 「れいむ?お前はなんでそんなに自殺したがるんだ?」 「でいぶは…でいぶはもっどゆっぐりじでいるばずのおにいさんにまげだぁぁぁ!! だがらおにいざんよりゆっぐりずるがぢがないんでずぅぅぅ!!うずぎだないどれいでずぅぅぅ!! でぼ!!でいぶはぼうあんなゆっぐりでぎないひびをずごじだぐないぃぃぃ!! だっだらじぬぅぅぅぅ!!えいえんにゆっぐりざぜでぇぇぇぇぇぇ!!」 パシン!! 仮面お兄さんは無言でれいむの顔をはたいた。 「れいむ、確かにこの世、特にお前のような野良の世界は弱肉強食の世界だ。 だがな、だからといって強い奴が好き勝手して良い訳がないんだ。 弱い奴は弱い奴なりに身を寄せ合って互いを守ったりするんだ。 確かに俺はお前より強い。だがな、だからといって俺はお前を蹂躙しても良いという訳ではないんだ。 いいか、もっともゆっくりする価値があるやつはそんな暴れん坊な奴じゃないんだ。 みんなと一緒にゆっくりできるように皆を守ろうとするんだ」 「うぞづぐなぁぁぁぁ!!ぞんなやづいながっだぁぁぁぁ!!びんなよわいゆっぐりを ゆっぐりいじめでいだぁぁぁ!!やめでどいっでもぎいでぐれながっだぁぁぁぁ!! どんなにないてもやべでぐれながっだぁぁぁぁ!!おどうざんもおがあざんもどりあげたぁぁ!! ごはんざんもどりあげだぁぁぁ!!」 「だったら!!」 仮面お兄さんはれいむの顔をじっとみた 「お前が皆をゆっくりできるよう守ってみろ。そうしたらみんな奴隷になることなく ゆっくりできるようになる。俺も、お前も」 れいむは涙を流しながら答えた 「ほんと…れいむ…どうさんがなかったときみたいに…どれいにならならくても… ゆっくりできる…ようになるの?」 「ああ、みんなゆっくりできるようになる」 「ほんとのほんと!?れいむ、いじめられなくなるの!?」 「ああ、そうとも」 「ゆ…ゆわぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁん」 れいむはお兄さんの胸に飛び込み、泣き叫んだ。 このれいむは元々言うほどゲスではなかったのだろう。だが、周りのゆっくり達がゲスやでいぶ だらけだったのだろうか、ゆっくりする資格があるゆっくり=強いゆっくりという図式が 出来てしまったのだろう。 その結果がこの考え方だろう。少しでも弱いそぶりでも見せたらその場で襲われる。 胴つきになったおかげで並みのゆっくりより数段強くなった事がこのれいむの 救いだったのだろう。 その後仮面お兄さんはヒーローなりの戦い方を教え、本当のゆっくりを教えこみ、れいむは生まれ変わった。 生まれ変わるためには大変な手間と時間がかかり、協力者としてしてあのにとりを呼び 一緒にゆっくりすることを学んでもらった。 今までジャイアンみたいな生活を送っていたせいかれいむはにとりを良く怒鳴りつけたり 殴ったりしたが時間が経つにつれ回数が減っていき、ついにはにとりを思いやる 事ができるようにまでなっていった。 完全になくなったのを確認すると今度は正義のヒーローの在り方、減量、戦闘訓練を 学んでいってもらった。 それに前後してあのにとりも胴つきに進化し、途中から戦闘訓練のバックアップに努めてもらい 今ではれいむの後方支援や武器の放出までできるようになった。 もちろん、新兵器の開発もできるぞ!! 「さてと、今日からお前はヒーローとして多くの罪のないゆっくりを救っていく。」 「ゆ!!」 「これからは俺の助けや援助なくにとりと一緒にやっていってもらう、いけるな?」 「ゆん!!れいむはこれからにとりと一緒にやっていくね!!」 「よし、にとり、れいむを影で支えてやってくれ」 「ゆっくり理解しました!!」 「「今までお世話になりました!!」」 こうして仮面お兄さんは二人から去って行った。 これから森の平和は二人の手によって守られるだろう…。 と簡単に認める訳にはいかなかった。 仮面おにいさんが育てたかったのはあくまで皆からヒーローとあがめられるようなゆっくりだ。 それがゲスだったでは話にならない。 あくまでこれは仮定だが、お兄さんからすれば我慢ならない事だった。 仮面お兄さんはあるていど二人のアジトから離れたのを確認すると、懐から携帯電話を取り出し 電話をした。 「ああもしもし、おれだけどさぁ」 「うん、そうそう。だからあいつをれいむにぶつけてやってみてくれ」 「シチュエーションは任せる。うんうん、OK。じゃあ頼んだ」 最終試験…開始!! 仮面お兄さんが二人の元から去ってから数日が経った。 基本れいむは何があっても良いように森中を見回り、にとりはアシトで最新兵器の開発に 勤しんでいた。そして何かが起こったら連絡を取り合い、事態の解決に勤めた。 後方支援担当のにとりの支援もあってか最新の情報がすぐにれいむの元に届き、 すぐに対応していった。 にとりがお兄さんの家にいた時に作った無線のお陰だ 徐々に悪いゆっくりを退治していくれいむだったが、れいむ自身はゆっくり出来ていなかった。 助けたゆっくりに感謝してもらう事がほとんどなく、酷い時は石を投げられた。 ただ近くを通っただけでもこの有様だった 「ゆっくりできないれいむはあっちいってね!!」 「ゆっくりできないれいむはまりささまがたいじするよ!!ひっさつ!!まりさすぱーく!!」ポイ!! ヒーローとしての仕事をこなす度にれいむは精神的にこたえていき、アジトに戻っては にとりに不満をぶちまける日々を過ごしていった。 このままゆっくりできない日々がつづくのかなぁ… このままじゃあゆっくりできないよ…本当にこれでゆっくり出来るようになるの?お兄さん? れいむはそう考えていたその時だった。 「ゆぎゃぁぁぁぁっぁあ!!だずげでぇぇぇぇぇぇぇ!!」 悲鳴が聞こえた。れいむは声のする方向へ急行した。 れいむは必死に内の中にあいつを入れないように奮戦していた 「ゆっくりこないでね!!ゆっくりこないでね!!」 今こいつが中に入ったら…れいむのおちびちゃんが殺されてしまう!! れいむは危機感を募らせながら必死に木の棒を咥えて絶対的強者に相対していた。 そいつは…胴があった。そいつは…緑色の髪をもっていた。そいつは… 「ゆるさなえ!!」 ゆるさなえだ…。 ゆるさなえ…希少種と呼ばれるゆっくりさなえの突然変異体である。 普通のゆっくりさなえがゆっくりできない目、とくにれいむ種に死ぬほど酷い目に合うと このゆるさなえになる。 ゆるさなえはれいむ種をいたぶり殺す…簡単に殺してはくれない、死んだ方がましと言われる程 酷い目に合うのだ。 そのためれいむ種にとっては即刻逃げなければ殺されても仕方がないゆっくりなのだ。 れいむはゆるさなえの腕が近づいて来ようとすると口に咥えた棒で刺し、後ずさりする戦法で 必死に洞窟の中にいるおちびちゃんを守っていた。 「おじびじゃんだげはぜっだいばぼるぅぅぅぅぅぅぅ!!」 れいむは涙目になりながら必死に戦う…。 だが、胴があると無しとでは戦闘力が圧倒的に違うのだ。 「ゆぅ…ゆるさなえ」 ゆるさなえは仕方ないといわんばかりの顔をすると近くにあった比較的大きな石を掴んだ。 手ごろそうでちゃんと投げられそうだという事を確認するとゆるさなえは腕を振り回し始めた 「ゆ~る~…さなえ!!」 ゆるさなえが石をれいむ目掛けて放り投げた。大きさはれいむの半分程の大きさだ。 ただぶつかっただけならさほど脅威ではない… だが遠心力を利用してそこそこ速さがついたその投石は直撃したらひとたまりもない!! 「ゆぅぅぅぅぅ!!…ゆん!!」 れいむはこれはまずいと考え石を避けるように右に動いた。 だが、これは罠だった ガシ!!「ゆぎゃぁぁぁぁっぁあ!!だずげでぇぇぇっぇぇぇぇ!!」 れいむはゆるさなえに掴まってしまった。 そう、ゆるさなえは別に当てるために石を投げたのではない。隙を作るために投げたのだ。 れいむは髪の毛を捕まえられた。 「はなじでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「ゆるさなえ!!」 ゆるさなえはまずれいむが咥えていた厄介な棒を奪った。 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁっぁぁ!!れいむのぼうさんとらないでぇぇぇぇぇっぇ!!」 ゆるさなえは奪った棒を後ろに適当に放り投げ、空いた手をやたらワキワキさせ始めた。 そしてれいむの右目に手を向け始めた。 「な…なにずるのぉ?…いやぁぁぁっぁぁぁ!!やべでぇぇぇぇぇ!!おべべはごようじゃあぁぁぁ!!」 「ゆるさなえ!!」 ゆるさなえがれいむの右目を引き抜こうとした… まさにその時!! シュ!!「ゆる!!」 ゆるさなえは後ろから飛んできた棒を弾き飛ばした。 棒を弾き飛ばしたゆるさなえは棒が飛んできた方を向いた。 そこには一人の胴つきれいむがいた。 「罪のないれいむを見つけては即刻始末する悪逆非道のゆっくり… ゆっくりはそれを…『ゆるさなえ』という!!」 「ゆるさなえ!!」 ゆるさなえは持っていたれいむを後ろに放り投げ、ファイティングポーズを取った そしておそらく「だれだお前は!!」と言ったのだろう。 だがれいむは通じる通じないお構いなしに言った 「貴様に名乗る名前はない!!」 ゆるさなえはれいむの姿を確認すると口元を一回舌でなめて顔を歪めた。 それは最高の獲物を見つけたハンターのような顔だった。 戦いが始まった。 まずれいむがゆるさなえの前に飛び出すとゆるさなえの顔目掛けて拳を打ち込んだ。 「くらえぇぇぇぇぇ!!」 だがゆるさなえはそれを紙一重でかわすとれいむの足に蹴りを入れた 「ゆるさなえ!!」「ゆぐぅ!!」 れいむはバランスを崩し、その場で転んでしまった 「ゆわぁぁ!!」バタン!! だがゆるさなえの攻撃はまだ終わっていない。こけて立ち上がろうとするれいむの頭目掛けて 肘を入れてきた。 よくプロレスで見られる肘技だ。 「ゆるさなえぇぇぇぇぇ!!」 れいむはこれはまずいと見るや否や体をすぐに起こすことを諦め、転がってこの攻撃をかわした 「ゆわぁっと!!あぶなかったよ…」「ゆる!!」 今度は肘うちを食らわせようとしたゆるさなえが地べたに寝転がっている図になった。ゆるさなえより 早く起き上ったれいむはゆるさなえの腹目掛けて踏みつけよとした 「こんどはぁぁぁ!!」「ゆる!!…さなえぇぇぇぇぇぇ!!」 だが攻撃は直撃しなかった。ゆるさなえがれいむの踏みつけを両手で止めとめ、そのまま れいむの足を掴むとれいむをこかせた。 「ゆぐぅ!!」「ゆるさなえ!!」 こかしたのを確認するとゆるさなえはれいむの足を掴み直した後れいむの腰に乗り れいむの太ももをもち体の関節とは逆の方向に曲げ始めた。 いわゆる逆エビ固めだ 「ゆぎぎxぎいgxぎぃぃいぃぃ!!」「ゆるさなえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 このままではいけないと思ったれいむはとっさに砂を掴むとゆるさなえの顔目掛けて投げた 運が良いのかちょうどゆるさなえはれいむの苦しむ顔でも見ようとしていたのか れいむの顔の方を向いていた。 砂がゆるさなえの眼にかかった 「ゆる!!ゆるざなえぇぇ!!ゆるざなえぇぇ!!」「ゆ!!いまだよ!!」 とっさに力が緩んだのを確認したれいむは隙をみてわずかに出来た隙間から逃げ 距離を取った。 一方のゆるさなえは目玉を擦ってようやく砂が取れたらしく、れいむと同じく距離を取り ファイティングポーズを取りなおした。 「ゆぅゆぅ…このゆっくり…とっても強いよ!!」 「ゆる!!…ゆる!!…」 二人はそのまましばらく距離を取ったまま隙を窺いあった。 一方その頃…無線でれいむのピンチを悟ったにとりは大急ぎで現場に急行しようとしていた 「ゆぅ…ゆぅ…れいむが大ピンチだよぉぉぉぉ!!はやくこれを完成させてもって行って」 「ずびばぜぇぇぇぇん!!」ゆ?…気のせいだね!!」 アジトの入口で誰かが声を出した。だがにとりはこのアジトではないだろうと考えた。 このアジトはあの凶悪でゆっくりしていないゆっくりれいむの元居城と事もあってか 今までれいむによって葬られたゆっくりの死臭が至る所にこびり付いており、 胴つきならいざ知らず胴なしのゆっくりには到底耐えきれない臭いであった。 そのこともあってかこの付近のゆっくり達はこの付近には近付こうとはせずここを避けるようになった。 だれも近寄りがたいという事は変にゆっくりに荒らされる事がないという事でもあるため アジトにするにはもってこいな場所だった。 多分空耳だろうと思ってにとりが作業を再開しようとしたが 「ずみまぜぇぇぇん!!おでがいじまずぅぅぅぅ!!だずげでぐだざいぃぃぃぃ!!」 また入口から声が聞こえた。 これは気のせいではなく、ここに用があるに違いないとにとりは判断した 今はれいむのピンチもあるのでここで待ってもらった方が良いだろうと考えたにとりは とりあえずここで待ってもらおうと決め、表にでた。 「ゆ!!いま取りこんでいるの「おでがいじまずぅぅぅ!!ばりさのあがぢゃんをだずげで ぐだざいぃぃぃ!!」ゆ?」 にとりは表にいたまりさに擦り寄られた。 「ゆええ!?ちょっとまってね!!」 「おでがいじまずぅぅぅ!!ばりざのあがじゃんをだずげでぐだざいぃぃぃ!!」 何を言ってもこの調子だった。 こうなっては仕方ないとにとりはまりさの話を聞くことにした。 まりさの方も話を聞くといったら涙目になりながら少しづつゆっくりと落ち着いてくれた 「それじゃあまりさ、詳しく教えてくれない?」 「グスン…まりさのあかちゃんがね…でいぶにさらわれちゃったのぉぉぉぉぉ!!」 「でいぶに!?」 「ゆん…あのでいぶはね…」 まりさはそのでいぶの特徴を語りだした。 そのでいぶは自分の赤ちゃんを目の前でゲスまりさに食べられ、まむまむももう二度と機能 できない程にまで破壊されてしまった。 この時のショックが原因で性格がでいぶ化したのだ。 なにかというとそれは自分の子だと言い張り、ついには自分の子供を誘拐し、それを妨害 しようとする親を殺してしまうのだ。 いままで何度も誘拐された子供を取り合えそうと親達が手を取り合って挑んだが でいぶの持つ圧倒的脂肪の壁と体重になすすべもなく殺されて行ってしまった。 そしてこのまりさはここ最近になってあのゆっくりしていなかったれいむがゆっくりできる ゆっくりになったかもしれないという話を聞き、殺される覚悟でここにやってきたという訳だ。 「…話は良く分かったよ。そのれいむはどこにいるの」 「そのれいむは…『ゆぎぎxぎいgxぎぃぃいぃぃ!!』ゆ!?あのこえのするところだよ!!」 「ということは…あのれいむ!?」 にとりは大急ぎで試作品の新兵器を片手に持った。 「まりさ、お願いちょっと待ってて!!」「ゆっくりりかいしたよ!!」 にとりは大慌てで無線機を手にした。 「急ぐよ!!まりさ!!」「ゆん!!」 一人と一匹は声のした方を大急ぎで駆け出した。 れいむは二人の戦いを横から見ていた。 急に襲いかかってきたゆっくりできないゆっくりとそれと対峙しているれいむ… れいむにとってはどっちが勝っても負けても良いと考えていた。 出来れば共倒れしてくれれば良い…そうすればれいむがゆっくりできるからだ。 勝敗がどちらにせよここにいてはおちびちゃんに被害が出るかもしれない 今の内におひっこししよう… 「ゆ!!さあおちびちゃん!!おひっこししようね!!」 「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!ぴゃぴゃぁぁぁ!!みゃみゃぁぁぁぁ!!たちゅけてぇぇぇぇ!!」 「ごんなのどがいはじゃないぃぃぃぃぃぃぃ!!」 「むきゅぅぅぅぅぅ!!おねがいでずぅぅぅ!!みゃみゃのとこりょにかえちてぇぇぇぇ!!」 ゆ?おちびちゃんが何か変な事を言っているよ… あの二人がとてもゆっくりしていないからだね!!でも大丈夫だよ!! すぐにゆっくりできる所にお引っ越しするからね!! 「だいじょうぶだよ!!おひっこししたらゆっくりできるからね!!」 「いやぁぁぁぁ!!ぴゃぴゃのところからはにゃれたきゅないぃぃぃぃぃ!!」 「ちょきゃいはのみゃみゃにあいたいわぁぁぁぁぁ!!」 「むきゅぅぅぅぅ!!みゃみゃぁぁぁぁぁぁ!!」 ゆ?なに言っているのおちびちゃん?みゃみゃはれいむでしょ!! ママに向かってなに言っているの!! ゆ?…れいむの2番目のダーリン(妄想)の子供のぱちゅりー? 「おねがいしますぅぅぅ!!ぱちゅたちをぴゃぴゃとみゃみゃのところにかえらせて ぐだざいぃぃぃぃ!!ごんなどころじゃぁゆっくりでぎないんでずぅぅぅぅ!!」 ゆっくりできない?…ゆっくりできないってどうゆうごどぉぉぉぉぉ!! こんな優しいママと一緒に暮らしているんだからゆっくりできるでしょうがぁぁっぁあ!! ゆ!!…れいむわかっちゃったよ…このぱちゅはゲスなんだね!! ゲスだから他のゆっくりに悪い事をしようと企んでいるんだね!! そんなゆっくりできない事認めさせないよ!!れいむのぼっせーで説得するよ!! 「おちびちゃん…おかあさんといっしょにすごせたらとてもゆっくりできるでしょ? とってもとってもあったかで、とってもとってもゆっくりできるでしょ? だからおかあさんからはなれるなんていわないでね!!」 ここまで言ったんだよ…れいむのおちびちゃんへの愛をたっくさん言ったんだよ!! だから思い直して…「むきゅきゅきゅきゅきゅ!!」ゆ? 「ちがうぅぅぅぅぅ!!ぱちぇのおきゃあしゃまはけんじゃなのよぉぉぉぉ!! あなたのようなでいぶじゃないわぁぁぁぁぁ!!おねがいだがらぱちぇたちをおうちにかえしてぇぇぇ!!」 ゆ?…ごめんねおちびちゃん…れいむの教育が足らなかったんだね… 躾が足らんかったね…たっくさんスーりすーりしてあげなかったらからだね… 何時の間にこんなゲスになっちゃって…お母さん悲しいよ… …お母さんは最後のお役目を果たすね…ふがいないお母さんを許してね… 「ゲズなおちびちゃんはゆっくりしねぇぇっぇぇぇ!!」 「どぼじでぇぇぇぇぇ!!!…むぎゅ!!」 れいむがぱちゅりーの上にのしかかった。 ぱちゅりーはれいむの体重に耐えきれずにそのま中身のクリームを辺り一面に撒き散らし その場で永遠にゆっくりしてしまった。 ぱちゅりーから放たれたクリームがれいむの顔に付着し、残った子供達の顔にも返り血のように ついた。 まだ幼い子供だったぱちゅりーを殺したれいむはゆっくりと残った子供達の方を向いた。 その顔はとてもゆっくりした笑顔に見えるだろうが、その返りクリームが 逆に残虐さをもの語っていた。 子ありすも子まりさも恐怖のあまりその場で泣くことすらできず、ただ固まっていた 「さあおちびちゃん!!いっしょにおひっこししようね!!おひっこししたら ゆっくりできるからね!!わかったらおへんじしてね!! …なかなかおへんじじないね…もしかしておちびちゃんもげ「とがいばのみゃみゃぁぁぁぁぁ!! ゆっぐちりがいじまじだぁぁぁぁ!!」「まりざはやざじいびゃびゃとおびっごじじまずぅぅぅ!! だいずぎでずびゃびゃぁぁぁ!!」 ゆん!!とってもいいこだね!!さあおかあさんについてきてね!!だいじょうぶ!! はなればなれにならないようにこうしてあげるからね!!」 そういうとれいむは先端がとがったフックのような物を保管庫から取り出してきた。 フックから後ろには糸のような物がくくりつけられていた。 おそらく最初からこのようにくくりつけられていたのだろう。 「…しょれをどうしゅるにょ!!」「いちゃいこちょはやめてぇね!!」 「だいじょうぶだよ!!ちょっといたいかもしれないけどゆっくりするためにはどうしても ひつようなんだよ!!ゆっくりりかいしたらちょっとがまんしてね!!」 れいむはフックの先端を子供に突き刺さるように思いっきり刺した。 まずは子アりスだ。 「いやぁぁぁぁぁ!!…ゆびぃぃぃぃ!!っちょちょちょtyちょtきゃいはちょきゃいひゃ!! ゆひゃひゃひゃはyひゃ!!ちょきゃいはちょきゃいはぁぁぁぁぁぁぁ!!」 刺し所が思いっきり悪かったようだ。おそらくどこかちゅうすいをやられたのかもしれない。 アリスは意味不明な言葉を叫びながらあっちこっちを飛び跳ね始めた。 さしたれいむはというとどうやら都合の良い解釈をしていた。 「ゆっゆ~ん、そんなにままからはなれたくなかったんだね!! こんなによろこんじゃって…おかあさんうれしいよ!!」 「ゆっぴぐあぁぁぁ!!とぎゃおばぁぁぁ!!とぎゃおばぁぁぁぁ!! ゆっぐじぃぃぃぃぃのびぃぃぃぃぃ!!ずっぎぃぃぃぃぃぃ!!」 まりさはこのアリスの変貌ぶりに恐怖を覚え、もらしーしーをしてしまった。 そして悟った…つぎは自分の番だと!! 「ゆゆ~ん、さあおつぎはさんばんめのだーりん(妄想)のおちびちゃんのばんだよ!! だいじょうぶ!!ちっともいたくないからね!!」 そういうとれいむはフックを咥え、まりさにつき刺そうと構えた。 このままではあのアリスみたいになってしまう!!そう判断したまりさはとっさにれいむに 向かって一歩跳ねた 「ゆわぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「ゆ!!おちびちゃん!!」 グサ!! 「いちゃいぃぃぃぃぃぃ!!」 れいむに向かって跳ねた事が幸いした。まりさは頬の部分に浅くフックが刺さった。 なんとか頬に刺さって大事に至る危険性を避けられたまりさだったが 親れいむは不服のようだ 「おちびちゃん!!うごいたらだめでしょぉぉぉ!!ゆあぁぁ…こんなにあさく ささっちゃって…これはさしなおししない」 「だいじょうぶぢゃよおぎゃあじゃん!!ぼら!!ごんなにぶがぐはいっでいるがら!! ほら!!ほら!!ほらぁぁぁぁぁ!!」 れいむは浅く入った事に不服でフックを抜いて刺し直そうとしたが咄嗟に身の危険を感じたまりさは 必死になって思ったより深く刺さっている事をれいむにアピールした。 れいむはしばらくささっているフックをまじまじと見ていたが、まあ問題ないと判断したのだろう。 れいむはそのままにっこりと笑顔をまりさに向けた 「なんかおもったよりふかくささっているみたいだね!!じゃあそろそろいくよ!!」 「とぎゃいびゃぁぁぁぁぁ!!とぎゃいばぁぁぁぁぁぁ!!とびゃいばぁぁぁぁぁぁ!!」 そうまりさに言うとれいむは糸を口に咥えるとゆっくりと家の裏口からこそりこそりと出た。 途中子アリスが変な方向に行こうとするのを何度も止めたりし、 あんまりに大きな声を上げて叫ぶものだから止めようとしたが碌に言うことを聞かずで苦労したが なんとか脱出する事に成功した。 後は安全な所へ移っておちびちゃんとゆっくりするだけだ!! れいむの狂った思考はすでに明るい未来を構築していた…。 「ゆうぅ…ゆぅ…ゆぅ…」「ゆる…ゆる…ゆる…」 二人は互いに息をしながら今もなお相対していた。 れいむが一歩踏みだし拳を入れようとしたらゆるさなえはそれをかわして逆に隙ができた腹に蹴りを入れ ゆるさなえが蹴りを入れてこようとしたられいむはそれをかわし、受け身が取れないであろう所に 拳を入れる…まさに一進一退!! 「ゆぅ…このゆっくりとってもつよいよ!!」 「ゆるさなえぇぇ…」 どうしたものかと考えたその時、無線から声が聞こえた 「れいむ!!大丈夫!!」 にとりの声だ!!れいむはなかなか連絡が来ない相棒の声を聞いて少し落ち着いた そして隙を見せないようにゆるさなえと向いあいつつ耳に神経を向けた 「にとり!!れいむは今大ピンチだよ!!だからあれを!!」 「わかっているよ!!それは良いとしてまだそこにれいむはいる?」 そう聞かれてれいむは神経を研ぎ澄ませ、他のゆっくりの気配を感じ始めた。 今この近くにいるゆっくりは…自分とゆるさなえ ここに近づくゆっくりが二体…内一体はにとりだ、でももう一匹は分からない ここからゆっくりと遠ざかるゆっくりがいる…三体だ。おそらくこれだ!! 「にとり!!あのれいむはここか…」 「ゆるさなえ!!」 れいむは一瞬顔をしかめてしまった。 ゆるさなえに感づかれたのだ。自分が今他の事に少し気を使った事を。 眼前にまで接近して、歪んだ笑顔のままとびこんできたゆるさなえ… れいむは大急ぎで腕を構えようとした…だが遅かった 「ゆるさなえ!!」 「ゆぐぅ!!」 ゆるさなえはれいむの腹目掛けて蹴りを入れた。 碌に受け身も防御も出来なかったれいむは数メートル程吹き飛ばされてしまった。 「ゆぶぅ!!」 地面に転がるれいむ。痛みがれいむの腹を中心にれいむを襲う。 反射的に腹を押さえているが、頭の中ではここままではいけない!!早く立ち上がらねばと考えてはいるが ここでもれいむは行動が遅かった 「ゆるさなえ!!」ドン!! 「ゆぼぉ!!」 ゆるさなえがれいむの腹目掛けて飛び乗ってきたのだ。 れいむは何の抵抗らしい抵抗も出来ないままゆるさなえに身動きを封じられた。 痛む腹にゆるさなえの体重がかかり、痛みがさらに増幅される いけない!!このままではまずい!! 「ゆぐぅおぉぉぉぉぉ!!ゆぐおぉぉぉぉぉ!!」「ゆるさなえ♪ゆるさなえ♪」 れいむは必死になってゆるさなえを振りほどこうとするがゆるさなえが思いの他重く この全く振りほどけない。 無駄無駄と言わんばかりの笑顔でゆるさなえは背中から何かを取り出してきた アレは…お祓い棒だ!! そのお祓い棒は警棒とほぼ同じ程度の長さではあったが、先端がとがっていた おそらく自分で先端をとがらせたのだろう。 「ゆわぁぁぁっぁあ!!ゆぐぅぅぅぅぅ!!ゆぐぅぅぅぅぅ!!」 「ゆ~る~さ~な~え♪」 れいむはゆるさなえの武器に恐怖を感じ、必死になるがやはり無駄だった ゆるさなえはさあて楽しみましょうかと言わんばかりにお祓い棒の先端を舌で舐め、両手で お祓い棒を持つと尖った先端をれいむに向けて大きく構えた 「ゆるさなえ♪」 そしてある意味狂気に歪んだ笑顔を浮かべると武器を思いっきり振り下ろ… 「だめぇぇぇぇぇぇぇ!!」ドン!! 一瞬だった。 おそらく二人とも相対している敵に集中しすぎていたからだろう。 ようやくたどり着いたにとりが手にもっているれいむ用の新兵器でゆるさなえの頭を 思いっきり殴ったのだ。 「ゆ…るさ…な…」 ゆるさなえはあまりの一瞬の出来事に何も対応できず、手に持った武器を落としその場で意識を失った。 「れいむ!!大丈夫!!」 にとりはれいむに近づいてきた。倒れこんでいたれいむをにとりは手を差し出して起こさせた。 れいむは腹の痛みがまだ厳しいものの立てぬ程ではなく、どうにかフラフラになりながら立った 「ゆぅん…ありがとうにとり…助かったよ…」 「こっちこそ遅れてごめん!!とりあえずあのれいむは今どこ!!」 「そうだよ!!まりさのおちびちゃんはどこ!!」 少し遅れてやってきたまりさが言う 「にとり、このまりさは?」 「ゆん、えっとね…」 にとりはれいむにかいつまんで今までのいきさつを説明をし始めた。 れいむは驚いた顔をしながら話を聞いていた 「そんな…れいむは知らぬこと事とはいえでいぶを助けていたなんて…」 「しょうがないわ、ゆるさなえみたいなゆっくりに遭遇したらどんなゆっくりだって ゆるさなえに襲われているって判断して襲われているゆっくりを助けるよ!!」 「…今からでも遅くないよ!!あのれいむを追って子供たちを助けるよ!!」 「ゆっぐりおでがいじまずぅぅぅ!!ばりざのあじびじゃんをだずげでぐだざいぃぃぃ!!」 れいむは大急ぎであのれいむの後を追おうとした だがにとりが制止をかけた 「ちょっと待って!!」 「ゆ?何にとり!!れいむは急がないと…」 「これを持って行って、さっき完成したれいむ専用の武器よ!!」 「…ありがとうにとり、れいむが戻ってくるまであのゆるさなえを見張ってて!!」 「ゆっくり理解したよ!!」 「まりさもいくよ!!」 今度はだれにも邪魔されることなく、れいむはあのれいむの後を追い始めた まりさは少し後ろを跳ねるようについていこうとするが、 やはり身体能力でどうしても差が出るらしく段々差がついてきた 「まっでぇぇぇぇ!!ばりざをおいでいがないでぇぇぇぇ!!」 「ごめん!!今そんな余裕ないよ!!」 「追いつければ良いけど…」 一人と一匹が段々小さくなっていくのを見送ったにとりはあのゆるさなえはまだ倒れているかなと 考えながら後ろを振り向いた 「ゆぅぅうぅぅ!!」 だがそこにはゆるさなえの姿がなかった。 「ゆぅぅ!!どこ!!どこにいったの!?」 にとりは作業に使っている工具品を両手に持ちながら辺りを見回した。 だがどこにもいない…。 「ゆぅぅぅ…こわいよ…お兄さん…れいむぅ…」 ここにはいない二人に助けを求めるように声を上げるにとり。 だが、恐怖心を抱いている事をどこに潜んでいるかも分からないのにゆるさなえに見せつけたのがまずかった 「ゆるさなえ!!」 「いやぁぁぁぁぁ!!来たぁぁぁぁぁ!!」 突如ゆるさなえが茂みから飛び出してきた。 にとりは驚き戸惑い、必死になりながら手のもった武器を必死に振り回し始めた。 「いやぁぁぁぁぁ!!来ないでぇぇぇぇ!!」 だがその言葉はゆるさなえからすれば来てくださいといっているようなものだ。 ゆるさなえはにやりと顔を歪めると勢いをさらに増し、にとりに詰め寄ってきた そしてにとりの攻撃を全て避けるとにとりの首元に手刀を打ちつけた 「ゆる!!」「うっ…」 にとりは意識を失った。 「さてと…あのれいむをどう料理するか…お手並み拝見させていただきますね、正義のヒーローさん?」 「ゆ!!さっきのれいむをやっと見つけたよ!!」 先行していたれいむがようやくでいぶに追いついた。 でいぶはフックに巻きつけられた糸を口に咥え、フックの先にいる子ゆっくりがどこにも逃げないように していた。 子ゆっくりは子まりさと子アリスの二体であった。 子アリスは時々体をビクンビクンと震わせているだけで自分から動こうとは一切しなかった おそらく、死後に起こる痙攣を起こしているのだろう。実際に、ありすは死んだ魚の ような目を浮かべていた。 一方の子まりさはフックがついた傷口から幾ばくかの出餡を起こしていた。 通常の成体ゆっくりなら少しめまいがする程度であったがまだまだ体が小さい子ゆっくりには 厳しい量だっただろう、子まりさは意識が朦朧としている状態でただただでいぶに 引きずられているような状態だった。 れいむはでいぶの前に躍り出た。これ以上先に行かせないためだ。 「でいぶ!!おとなしくその子供達を解放しなさい!!」 「なにいっでるのぉぉぉぉ!!ごれはでいぶのおじびぢゃんなんだよぉぉぉぉぉ!! れいむは大きくプクーをして威嚇をした。 今まで見てきたゆっくりの中でも非常に大きいプクーっだった。 だがこんな事でひるむ程れいむは弱くない!! 「こうなったら実力行使だよ!!」 「でいぶはおちびちゃんをまもるよ!!れいむのぼせいのちからをくらえぇぇぇぇ!!」 そういうとでいぶは地面に転がっていた石を口に咥えるとれいむ目掛けて撃った。 その射撃の正確さは恐ろしいぐらい正確で、確実にでいぶの顔を狙っていた。 一発撃てばそれで溜め直す…その隙を!!そう考えたれいむだったがそう甘くはなかった。 「むだむだぁぁぁ!!」 「ゆぶぅ!!」 れいむは一回弾を補給する度に多くの石を素早く補給し、それによって弾を立て続けに撃つことができるのだ。 一回うったら二秒後には弾がきている状況に、れいむは顔を腕でガードするしかなかった。 この技はでいぶが身につけた必殺技の中でも最強の物だ。 これで何十ものゆっくりを永遠にゆっくりさせたものだ。 そのためでいぶはこの技に絶対の自信も持っていた 「ゆぐぐぐぐぐぐ」 一方のれいむは腕でこの投石の嵐を耐えるしか策がなかった。 石は正確にれいむの眼や口を狙っていた。そのため突っ込むに突っ込む事が出来ず、 手をこまねくしかなかった。 「ゆぅぅぅ!!なにか手を…ゆ?」 この時れいむの頭の中にあるものが浮かんだ それは、にとりが持ってきてくれたれいむ専用の武器だ 「そうだよ!!れいむには武器さんがあったよ!!」 そう思いだすや否や左手で眼を守りつつ、右手で腰にさしておいた武器を手にした それは太くて、れいむの腕の長さと同じぐらいある木の棒だった。 ひとつ特徴があるとすれば、完全な円柱の形をしており、はたから見たらバットにしか見えなかった。 れいむはでいぶが口の中に貯めてあった石が尽きたであろうと予測を付けるとバットを両手に 持ち直した。 でいぶは弾が尽き、辺りに転がっている弾を補充している真っ最中だった。 れいむが構え直した頃には弾の補充は終わっていた 「ゆっふふふふふ!!でいぶのじゃまをずるげすはさっさとしねぇぇぇぇ!!」 でいぶはれいむが持ち方を変えて顔を隠そうとしなくなったのを見て もう死ぬ気になったのかと判断し、とどめといわんばかりに一発はなった。 石は一直線にれいむの眼に向かっていった。 れいむは待っていたといわんばかりにバットを構え、もう避けられないだろう という距離まで石が迫った時、れいむは武器を振った かーん!! 武器が石に当たった。石はそのまま一直線にでいぶの頬に直撃した 「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!でいぶのおはだぎゃぁぁぁぁぁ!!いじゃいぃぃぃぃぃぃ!!」 でいぶは痛みのあまりに口に貯めていた石を全部吐き出してしまった 「今だ!!」 れいむはでいぶが石を落した事を確認するとそのまま一気に駆け出し、距離をつめた。 そしてその間武器を大きく振りかぶり、でいぶの前で大きく上にジャンプした 「必殺!!」 落下する勢いも味方につけ、武器を振り下ろした 「ゆっくり落としぃぃぃぃぃぃ!!」 ブン!!「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁ!!」 れいむの必殺技はでいぶの頭に直撃した。 れいむは痛みのあまりに餡子を撒き散らし、その場で倒れた。 「ゆ…ゆ…どぼじで…ごんなごどずるの…」 明らかに重傷を負ったでいぶは恨めしそうにれいむを睨めつけた。 一方のれいむは餡子を垂れ流している子まりさの介抱をしていた。 まだ体が丈夫なら助かるかもしれないからだ でいぶの悲痛な声にこたえるように、れいむはでいぶの顔を見つめ、言った 「なんでかって?みんながゆっくりできるようにするためよ」 この答えに、でいぶは半ばあきれたような顔をしながら答えた。 「なに…いっでるの…でいぶは…おちびちゃんとゆっぐり…じで…いだだげだよ…」 はっきりと答えるでいぶ。だがれいむの質問は終わらない 「ねえれいむ、その子達は本当にれいむの子供?」 「とうぜん…だよ…れいむそっくりなおかざり…だーりんとそっくりな…おかざり… これの…どごがいげないんだぁぁぁぁぁぁ!! ゆっぐりはんぜいじだらざっざとでいぶをだずげろぉぉぉぉぉ!!…ゆはぁ…ゆはぁ…」 でいぶは咆えた。だがれいむは顔色一つ変えずに、子まりさの治療をしながら言った 「それじゃあ聞くね。なんでれいむのお家の裏口にゆっくりのお飾りがたくさんあったの?」 「ぞれば…あのげずどもが…でいぶのおじびじゃんを…うばおうと」 「そう?本当に?…じゃあこのお飾りとこのまりさのお飾りをよく見比べてごらんよ」 そういうとれいむは懐からいつの間に手に入れたか分からないおりぼんと 介抱していた子まりさのお飾りをでいぶに見せた。 「うずぎだない…げずの…おがざりざんで…なにを」 「よく見てみなさいな。特に中央の印」 実はあまり知られていない事なのだが、ゆっくりのお飾りのおよそ中央部分に傷があるのだ。 この傷なのだが、良く調べると同じ餡子でつながった姉妹や親子で必ず似たような傷がつくのだ。 「なんか似ていない?」 「…なんかにているね…でも…ぞれはでいぶの5ばんめの」 「だったら普通生まれるのはれいむじゃないの?」 「ゆえぇ!…」 でいぶは思わぬ指摘に驚いた。 だがれいむの言葉は更に続く。 「えっとれいむのおりぼんの印さんは…おやぁ、全然似てないよ」 「ゆえぇ!!」 「まあなかなか自分で見ることなんて出来ないからね」 「うぞだ…うぞだうぞだうぞだうぞだ!! ぞのおじびじゃんはばじがいなぐでいぶのおじびじゃんなんだぁぁぁぁぁ!! まじがいないぃぃぃいぃぃぃ!!まじがいないんだぁぁぁぁぁぁ!!」 傷がさらに開くことなんて一切気にしないかのように叫ぶでいぶ。 そこへようやく子まりさの父まりさがやってきた 「お、おじびじゃぁぁぁぁぁん!!だいじょうぶ!!おどうざんがゆっぐじでぎるようにじで あげるよぉぉぉぉぉ!!」 父まりさは叫びながら自分のこの所へ跳ねていった。 「うん大丈夫だよ、この子まりさはとてもゆっくりできるゆっくりだったから助かるよ」 「ゆ…ゆわぁぁぁぁぁぁ!!ありがどうございまずぅぅぅぅ!!ありがどうございまずぅぅぅぅ!!」 親まりさは子の前だというのもお構いなしに泣きだしてしまった。 だがでいぶにしてみればたまったものではない 「ごのげずがぁぁ…でいぶのおじびじゃんをづれでぐなぁぁぁ…」 今にも消えそうな声で叫ぶでいぶ 親まりさは最初はポカンとした顔で呆然としていたがゆっくり怒りの顔へと変貌していった 「なにがでいぶのおじびじゃんだごので」 「はいはい、抑えて抑えて」 「でぼぉぉぉ!!ごのでいぶぅぅぅぅぅ!!」 「だと思うんなら家族の証を見せつけてあげなさい」 「ゆ!?…ゆっぐりりがいじだよ!!でいぶぅぅぅ!!ごれがあがじだぁぁぁぁぁ!!」 そういうとれいむは手にもった子まりさをれいむが見える位置にまで下げ、それと並ぶように お帽子のおりぼんの印を見せた その傷は…ほぼ一緒だった。 「ゆ…ゆゆ…ゆゆゆっゆっゆゆゆゆゆゆ」 この時でいぶは理解した。 自分が子供だと思っていたおちびちゃん達はみんなれいむのおちびちゃんではない。 そして自分は子を想って救いに来た親達を皆殺しにした そしてそこまでして手に入れたおちびちゃん達が自分に懐かない、逆らったりしたら 制裁という名の元に殺してきた。 あれ…ちょっとまって…これじゃあれいむは…みにくいみにくいでいぶだ… みんながゆっくりできないといって避けてきたあのでいぶじゃないか… お母さんもお父さんもいってたよ…でいぶはゆっくりすることが永遠にできないゆっくりだって… じゃあなに…れいむは…にどと…ゆっくりするかちが…ないってこと? いやだ…いやだいやだいやだいやだおやだいやだおやだいやだいやだいやだ いやだいやだいやだいやだおやだいやだおやだいやだいやだいやだ いやだいやだいやだいやだおやだいやだおやだいやだいやだいやだ いやだいやだいやだいやだおやだいやだおやだいやだいやだいやだ 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ごべんなざいぃぃぃぃ!!おじびじゃんをざらっでごべんなざいぃぃぃぃぃぃ!! ぱぱやままをころしてごべんなざいぃぃぃぃ!!おちびちゃんをきずずげでごべんなざいぃぃぃ!! だがらでいぶをゆっぐりざぜでぐだざいぃぃぃぃぃぃ!! ぼがのゆっぐりがらゆっぐりどじであづかっでもらえないなんでやだぁぁぁぁぁぁ!!」 ゆっくりにとって、他のゆっくりとゆっくりする、他のゆっくりにゆっくりしていると 言われる事はある意味生きる糧だったのかもしれない どちらにせよ、このれいむは子供の頃の親の教育によって染みついた ゆっくりにとっての「いきがい」をじぶんがでいぶであるとみなした事で 永遠に満たされなくなるという結論にいたり、自らの罪を悔い始めたのだ。 「ごべんなざい…ごべんなざい…」 「ゆうぅ、もう謝罪の言葉しか言わなくなってきたよ!!どうするまりさ?このれいむを許す?」 れいむはまりさの方を向き、そう言った。 まりさはとりあえず一命を取り留めた子まりさを帽子のつばの上に載せ、少し考えた末にこう 結論を下した。 「…まりさはね…ぜったいにこのれいむをゆるせないよ…まりさのれいむや… まりさのおともだちもみんなみんなえいえんにゆっくりさせたよ… でもね…だからといってまりさもやったら…まりさもでいぶになっちゃうよ… それにね…このれいむはもうわるいことをしそうにないとおもうんだよ…」 まりさは言葉を選びながらそう言いきった。 れいむは思いがけない答えが来て少し変な顔をしたがすぐにいつもの顔に戻った。 「…本当にいいの?」 「ゆん!!」 今度は強く言い切った。 「うん、分かった。まりさはすごいね、れいむなら多分お構いなしにつぶして…ゆ?」 この時、れいむの頭にヒーローとして最もふさわしいあり方が浮かんできた。 今まではゆっくりをゆっくりさせず自分だけ我儘な理由で他のゆっくりのゆっくりを奪ったゆっくりを 問答無用で退治してきたよ。 だけどどのでいぶも、ゲスも、このでいぶのように苦しんだ末にこうなったのかもしれない。 れいむも昔そうだったから分かるよ…お兄さん、そうゆうことなの? 「れいむもありがとう!!れいむがいなかったらおちびちゃんはえいえんにゆっくり していたかもしれなかったよ!! ほんとうにありがとう!!さすがはみんなのヒーローだよ!!」 …そうだよね、みんなでこんな笑顔ができるのが、本当のゆっくりだよね!! 「うんありがとうまりさ!!れいむはにとりが心配だから戻るね!! 一緒に戻る?」 「ゆん!!」 こうしてれいむとまりさは元来た道を戻って行った。 「でもよくまりさのれいむのおかざりさんがわかったね!!すごいよ!!」 「ゆーん、実は適当に掴んだのをそっくりと言い張ったのよ。でもあのでいぶの眼が おかしくなっていてよかったよ!!」 「ぢょっどぉぉぉぉぉぉ!!ちがうっでばれだらどうじだのぉぉぉぉぉぉ!!」 「まあ、その時はその時で」「ヒーローがぞんなごどいっだただべでじょぉぉぉぉぉ!!」 れいむとまりさの顔は、大変朗らかな顔だった。 ピ!ピ!ピ!ピ! プルルルルルルル!! 「ああお兄さん、早苗です。はい、ええ、ちゃんと監視しておりましたよ。 結果?そうですね…ギリギリ合格っといた所です」 「理由ですか?…まず第一に戦い方がいまいち正義の味方っぽくありませんでした。 第二に、明らかに体型があきらかにでいぶなれいむをいち早くでいぶと見抜けなかった。 そしてこれが最大の理由ですが…」 ブン!!ゆぶぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ… 「悪いゆっくりは即消毒すべきなのにあえてしませんでした。これが主な理由になります。 まあ今私が代わりに始末しておきましたが…」 「はい、何故そんな採点ですかって?…そうですね、依頼人の仮面お兄さんからの依頼が入ってから 今このでいぶを始末するまで一連の行動を見てきましたがでいぶ特有の行動、発言がほぼありませんでした。 また自分が全くゆっくり出来ない状況下でもゲス行為が一切見られませんでした 以上を踏まえての及第点です。これで仮面お兄さんもお喜びになりますね」 「はい、途中でにとりを気絶させてしまいましたがまあ私のお友達に れいむがにとりを発見するまで身辺の警護をやっていただきましたので大丈夫です。」 「はい、では今からお家に帰ります。帰ったら目一杯可愛がって下さいね、では」 ピ! 「うふふ、れいむさん。またでいぶになったらこんどは早苗が始末することになります。 ああ…できたらまたでいぶに戻って下さいね。あなたは…早苗にとって最高のごちそうですから…」 おお、終わり終わり 行き当たりばっかりな感じで書いたので少し展開がおかしくなっちまったよ…