約 312,798 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3344.html
糸の切れた人形のように小悪魔はぐったりとイスに座り込んでいた。 目の前にはゆっくりありすがゆっくりまりさに頬ずりしている。 「下品な女・・・」 小悪魔は口だけを動かす。 「ゆ?おねーさん、こいびとのまりさのわるぐちはやめてよね」 「あなたですよ。この阿婆擦れ」 小悪魔はゆっくりぱちゅりーを少し強く抱きしめ、ゆっくりありすを睨みつける。 「この阿婆擦れ、絶対に殺してくださいって言わせてやる」 小悪魔は小声で呟く、それはゆっくりまりさとイチャイチャするゆっくりありすには届かなかった。 小悪魔が仕事の合間に見つけた暇つぶし、 それはゆっくりの世話だった。最近見つけたもう使われていない掃除用具入れを掃除し、 主のパチュリーから少しばかりの賃金と休日をねだり、改装したご自慢の飼育部屋だった。 丸っこい可愛い文字で「ゆっくりのお部屋」と彫られ、ゆっくりパチュリーとゆっくりまりさが描かれていた。 ファンシーなプレートまでドアに飾っていた。二週間前までは、 小悪魔が飼っていたのは、 屋敷の前で日向ぼっこをしていたゆっくりまりさ、 人里のゆっくり屋で売られていたゆっくりありす、 その帰りに拾ったボロボロのゆっくりぱちゅりー、 だった。 三匹は最初、平等にエサを与えられ、平等に相手をされていた。 しかし、小悪魔はボロボロのゆっくりぱちゅりーを不憫に思い、 傷を治療をしてやったり、帽子を縫ってやったりしてやったのがよくなかった。 「ぱちゅりーはズルい!!」 意地汚いゆっくりまりさはすぐにゆっくりぱちゅりーに嫉妬した。 「やめなさい、ぱちゅりーは傷ついてたから治療してあげたのよ」 小悪魔は何度も言って聞かせたが、このゆっくりまりさはそれまでかなり不条理な世界で育ってきたのだろう。 ゆっくりぱちゅりーを不満のはけ口にしていた。 ゆっくりありすはというとゆっくりまりさに気に入られたいがためにゆっくりまりさに味方していた。 小悪魔は仕方なくゆっくりありすとゆっくりまりさをゆっくりぱちゅりーから遠ざけるため部屋に透明の仕切りを作った。 それでも二匹はゆっくりぱちゅりーに汚い言葉を投げつけた。 小悪魔がゆっくりぱちゅりーを庇えば庇うほど、二匹の行動は激化していった。 ゆっくりまりさも自分に同調してくれるゆっくりありすが居る事で良心は停止してしまっていた。 小悪魔が仕事で忙しかった日、二匹は仕切りに向かって体当たりした。 仕切りはグラつき、もう一度体当たりを受け、仕切りは倒壊した。 小悪魔がニコニコとエサを持ってきた頃にはゆっくりぱちゅりーは酷く痛めつけられ震えていた。 すぐさま、小悪魔はゆっくりまりさを払いのけ、ゆっくりぱちゅりーを抱きかかえる。 「誰、こんな事した子は?まりさ?!」 「ゆ!まりさじゃないよ・・・」 ゆっくりまりさは余所見をして答える。 「じゃあ、誰なの!!」 「とかいはのありすだよ。だってまりさがそのこのこときらってるんだもん!!」 ゆっくりありすはゆっくりまりさに頬ずりをする。 小悪魔はその日、一生懸命作ったプレートをゴミ箱に捨てた。 代わりに小悪魔が用意いたのは一斗缶と握り拳ぐらいの小石だった。 ゆっくりまりさを一斗缶に縛り付ける。極簡単な魔法で小石を焼け石に変える。 ゆっくりまりさはやめろと喚くが、小悪魔には聞こえない様子だった。 コトン、熱せられた小石を一斗缶の中に落とす。 もう一つ、コトン 次第に一斗缶の温度が上がってくる、今でちょうど人肌程度、 無論、ここで辞めるつもりなど毛頭ない。 「おねえさん、はやくこのなわをほどいてね」 「・・・」 コトン、返事をするように真っ赤な小石が一斗缶の中に落とされた。 「ゆぎゅ!!!ゆぎぃぃ!!」 ゆっくりまりさが痛がる様を少しでもよく見たいのだろうか、 小悪魔の目は目玉が飛び出るほどに開けられている。 ギョロっとした目でゆっくりまりさが悲鳴を上げる様を見ている。 口元は緩み、今にもケラケラと笑い声が聞こえてきそうだ。 「やめなよ。おねえさん、まりさがいやがってるでしょ!!」 「ゆぎぃ!!そう・・・だよ。はやくやめて・・・ね」 二匹は抗議をする。しかし、ゆっくりありすは熱いのが嫌なのか一斗缶から随分離れた場所に居る。 「まだお喋りに余力が残っているのですか、売女が。でしたら、もう少々熱を上げさせてもらいましょう。恋で焦がれていたいでしょ」 それからゆっくりまりさは右の頬が壊死するまで高温の一斗缶に縛り付けられていた 最後は悲鳴を上げる事すらできず、ただ白目を向いているだけだったが 翌日、また一斗缶と小石が用意された。 ゆっくりまりさは逃げようと努力はしたが、あっさり捕まってしまう。 「お、おねえさん、まりさがだめなところがあったらおしえてね。まりさ、ゆっくりなおすよ」 引きつりながらも明るく笑ってみるまりさ、 右の頬は動かず、左右非対称の気持ち悪い笑みだが、まりさには精一杯の行動だった。 小悪魔は無言で一斗缶にゆっくりまりさを縛り付ける。今度は左の頬を一斗缶にあてがう。 「なおすから!!まりさのわるいところなおすから!!」 コトン、小悪魔の返事は焼けた小石を一斗缶に落とす事だった。 昨日の繰り返し、ゆっくりまりさが熱いと騒ぎ出し、ゆっくりありすが心配し小悪魔にやめる様に抗議し、 小悪魔が小石を落としそれに答える。 昨日のようにまたゆっくりまりさは白目を向き気絶する 「そんなに心配ならもっと寄って慰めてあげてくださいまし」 ゆっくりまりさを心配そうに、しかし離れた場所から見守るゆっくりありすに小悪魔は声をかける 「私が怖いですか?あなたの愛ではここまで来れないのですよ。所詮は年中欲情女の勘違いですよ」 それでもゆっくりありすは動かないでいた。 自分をまず守らなきゃ、ゆっくりありすは選択をし、自分の命を生きながらえさせた。 その選択が正しいかどうかは後で分かる事となる。 両頬が壊死してしまったゆっくりまりさから笑顔が消えた。 笑えなくなったのだ。顔が全く動かない。喋る事には不便は無いが、表情を作れなくなってしまった。 ブスッといつも不機嫌そうな顔をしているゆっくりまりさ。 「ブサイクな顔がよりブサイクになりまして、そんな事では誰も買ってくれません事よ。売女さん」 小悪魔がゆっくりまりさの帽子を奪い取るとヒステリックに何度も踏みつけた。 ボロボロになった帽子をゆっくりまりさの頭の上に載せる。 「まあまあ、前衛的なお帽子ですこと。ブサイクには勿体無いぐらいです」 だんだんと自分達の待遇が悪くなってくる。エサは減り、部屋の掃除もされなくなった。 かける言葉も刺々しくなり、ゆっくりまりさは毎日苛められる。 ゆっくりぱちゅりーはテーブルの上で二匹を見下ろすように飼われている。 クッキーや紅茶、美味しいものばかり毎日食べさせてもらえている。 すると、ゆっくりありすは態度を一変させる。ゆっくりパチュリーに媚を売り出したのだ。 「ぱちゅりー、ありすにもクッキーちょうだい」 ぷいとぱちゅりーは身体をありすとは別の方向に向ける。 「ねぇ、ぱちゅりー、あやまるからぁ。ごめんなさい、ゆっくりゆるしてね!」 それを見て気分がよくないのはまりさだ。 「ありす?」 不安そうにゆっくりありすを見つめる。仲違した、ぱちゅりーはそう思った。 しかし、共犯関係はそう簡単に崩れるものではなかった。 小悪魔が部屋に戻ってくると、ぱちゅりーが死んでいた。 テーブルの上から落ちたのだ。そして、その死体をありすとまりさは食べている。 小悪魔はすぐに死体に集る二匹を蹴り飛ばした。 仕掛けておいた監視用の魔法の鏡を起動させる。 この鏡は数時間前に映した様子をもう一度再生する事ができる。 「ねぇ、ぱちゅりー、ありすとすっきりしない?」 「むきゅ?すっきり?」 「そうよ。とってもきもちいいのよ」 ぱちゅりーは野生だったが、今まですっきりした経験は無かった。 所謂、処女だった。それは体力的な問題、不運な境遇が原因だった。 決してすっきりししたくないわけではなかった。 今は毎日食事が取れ、病弱とは言え体力はかなり付いた。そして境遇は。 形の良いゆっくりありす。ペットショップで売られていた美しいゆっくりありす。 今までは自分を苛めていた嫌な存在だったが、そんな関係も終わった。 目の前にいるのは自分とすっきりを望む綺麗なゆっくりありす。 「むきゅー、そこまでいけないわ」 「ちょっとまっててね」 かかった。ありすは急いで小悪魔が用意したクッションを持ち出す。 「ここにとびおりればいたくないよ!!」 「むきゅー、ありすってかしこいね!!」 そして、ぱちゅりーは飛んだ。 ありすはクッションを別の場所に投げ捨てる。 糸の切れた人形のように小悪魔はぐったりとイスに座り込んでいる。 目の前には先ほど蹴ったゆっくりありすがゆっくりまりさに頬ずりしている。 痛かったねなどと痛みを慰めあっている。 「下品な女・・・」 小悪魔は口だけを動かす。 「ゆ?おねーさん、こいびとのまりさのわるぐちはやめてよね」 「あなたですよ。この阿婆擦れ」 小悪魔はゆっくりぱちゅりーを少し強く抱きしめ、ゆっくりありすを睨みつける。 「この阿婆擦れ、絶対に殺してくださいって言わせてやる」 小悪魔は小声で呟く、それはゆっくりまりさとイチャイチャするゆっくりありすには届かなかった。 まりさは嬉しかった。ありすは裏切ったわけじゃない。 ありすはあの憎たらしいぱちゅりーをやっつけてくれた。 とても嬉しかった。まりさは目を覚ます。大好きなありすが傍にいると思って。 「お早い御起床で、この鈍間。お食事は何になさいますか?生ゴミ?泥?それとも肥溜めから糞尿でもすくって参りましょうか?」 目の前にいたのは小悪魔だった。逃げないとまた酷い事をされる。今まで忘れていた事が蘇る。 どうして、ゆっくりしていたんだろう。ぱちゅりーを殺して小悪魔が黙っているわけ無いじゃないか、 必死に身体を動かすが、どうにも動かない。いや、動こうとするととても痛い。 「いひゃい」 声がおかしい。大きい声が出せない。 「あひふ、ひゃふひぇて」 クスクスと小悪魔は笑った後、ギョロっとした目でまりさを見つめ、説明した。 「足はこの通り、切り取らさせていただきました」 目の前に置かれたのは今まで自分の底だった部分、ゆっくりでは足と呼ばれる部分だ。 円く切り取られている足、まりさは吐き気がする。 人間だって自分の足が切り取られて見せ付けられれば恐怖のあまり嘔吐するだろう。 「あと、口元を縫い付けさせていただきました。それと」 口元が縫い付けられていて思ったような声が出せない。 急に小悪魔が消える。よく考えれば視界が狭い。 「左の眼球を摘出させていただきました」 まりさは小悪魔の元から逃げ出し、ありすを探す。 「あひふ、あひふ、ほひへ」 「ゆー?まりさ?」 眠気まなこのありすにも分かる。まりさがおかしい。 小悪魔がありすのところまで来て説明する。 「あなたのパートナー、私が壊して差し上げました、如何でしょう?髪もイカしますでしょ?」 「あ・・・ああ」 ありすは目に一杯の涙を浮かべている。 髪は所々無残に切られ、目をなくし、口を縫われ、 「綺麗でしょ?パートナーの容姿を褒めてあげて下さいまし。都会派の阿婆擦れ、ほら、笑ってくださいまし、フフフ」 元々焼かれている頬とボロボロの帽子、ありすはまりさに何の好感も持てない。 「愛していると言ってあげてくださいまし、あなたが愛したせいでこうなったんですから」 ありすの頬にまりさの焼けてゴツゴツした頬を押し当てる。 次第にありすの顔が青ざめていく。そして、まりさがありすに呼びかける。 「あひふ、ひゃふへへ」 「し、しらない!!こんなかいぶつしらないよ!!こんなのありすのまりさじゃないよ。はやくでていってね!!」 せきを切りありすがまりさを拒絶する。 「あひふ、まひははほ。まひははほ」 「そうです。これはあなたが愛したゆっくりまりさですよ。しっかりしてくださいまし、壊れるにはいささか早うございますよ」 「じゃあ、まりさなんていらない。こんなのありす、いらない!!」 そう言うと、ありすは何度もまりさに体当たりを繰り返す。 「あひふ、ひゃへてへ!!」 「うるさいよ!!おまえなんてゆっくりできないよ!!はやくしんでね!!」 何十回、何百回と体当たりを繰り返し、ようやくまりさは動かなくなりました。 「それでは最後はあなたですよ。皆様あちらであなた様がお死にになるのをお待ちしていますよ」 ゆっくりありすは最期に。 「ころしてね」と力なく言ったが、それから三ヶ月も拷問は続いた。 by118
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3228.html
『隻眼のまりさ 第八話』 18KB 戦闘 群れ ゆっくりって可愛くかけば可愛いのだよなぁ…。 初めましての方は初めまして 他の作品を見てくださった方はありがとうございます。 投稿者の九郎です。 タイトルどおり前作の続編です。 ――――――――――――――――――――――――――――― ~第七話~ ドスの思い!その存在が生み出すものは… ――――同日、深夜―――― 自分の知識をもって皆のために働こうと そう決心したぱちゅりーにはもう迷いがなかった。 たとえ嫌われようとも自分の理論武装は完璧だ。 何を言われても言い返せる自信がある。 そう考えたぱちゅりーは隻眼のまりさとドスを呼び ここで話の決着をつけようと思った。 それに自分も含めて三匹をとも お互いを大事に思っているのだ。 話をして、わだかまりをなくせば この一件は収束に向かうであろうと そういう思いもあった。 「まりさ、とりあえずドスにも同じ話をしてあげて」 「うん…」 「……………」 だからぱちゅりーは、自分の口からではなく 隻眼のまりさに自分で言わせようとしたのだ。 「ドスは、きめぇ丸って知ってるかな?」 隻眼のまりさは言いにくそうに切り出した。 この二匹は自分より付き合いが長い。 何よりチームを組んでいたもの同士だ。 悪い言い方をすればその裏切り行為とも言える 考えを持っていたことに後ろめたさもあるのだろう。 だがそれも、直接思いを伝えれば理解し合えるはずだ。 その行動は違っても、その思いは同じなのだから。 少し長くなりそうなので、次にどうするかなどを 考えていた矢先 「ゆんやあああああああああああ!!! れみりゃがああああああああああああ!!!」 「!!!」 れみりゃだって、とぱちゅりーは思った。 なんて悪いタイミングで出てくるのだろう。 だが実際今のところはれみりゃの対応が先だろう。 「まりさ!ドス!」 「う、うん!!」 「いくよ!!」 やはり一番切り替えの早かったのは自分だ。 まあでも重い話をしていたのだからそいう言い方は酷かなどという どうでもいい思考をしながらぱちゅりーはドスの帽子に乗った。 「ドス!ドス!前見て!!」 「う、うん!!」 「何よ…これ…」 まさしく自分が危惧していた状況。 例の取引がすんだ直後の出来事。 タイミングから考えてこのれみりゃ達は 人為的に放たれたものと疑いようがない。 二年前のあのときでさえデタラメな数だと思っていたのに 見える範囲でもあの時のざっと倍近く捕食種がいるかもしれない。 「………!!ドス!ドススパークを!!」 「わ、わかったよ!!」 考えるのは後だ。 とにかく今は最低でも自分は冷静でいなければならない。 ドスはもうほとんど自分の指示があるまで動かない、というくらいに 自分の指示につき従っている。 逆に言えば自分が崩れたらこの集落は一気に 崩壊するおそれがあるという危惧もしなければならなくなっていた。 「ドス!かまわないわ!薙ぎ払って!!」 「ドス!一旦洞窟の中に下がって!!」 「ドス!!いいわ!!その位置から仰角10!真っ直ぐ発射!」 ぱちゅりーに言わせればれみりゃに限らず 一般的なゆっくりは動きが単純で至極読みやすい。 特に応用力のなさと行動前の発言がそれに拍車をかけていた。 『目の前にあるものに対してしか反応しない』 これは位置取りにさえ気を使えば全く同じ行動しかしないということ。 『何かをする際、ゆっくり~するよ!と言う』 こちらは実際に自分から何をするか教えてくれるので 指示さえ追いつけば簡単に対応が出来る。 ぱちゅりーの頭には同じような文章が多く並んでいる。 これは敵に限らず味方にも言えるので 指示を出す際にもうまく誘導してやれば こちらの意図を伝えなくても思い通りに動かすことが出来る。 頭の回転が或いは人間より早いぱちゅりーにとっては チェスや将棋をしているのと変わらない。 敵も味方もまさに盤上の駒だ。 「いいわ!!第一次攻撃は成功!!まりさ達は前進して! 私が合図するか危ないと思ったら左右の木の枝の中に避難して! 決して自分たちだけで戦おうとしないでね!!」 隻眼のまりさに指示を出してからしまった、と思う。 あの力を今この場で使ってしまったら ドスだけでなく集落の皆全員に見せることになってしまう。 そう思ってからまあいい、と思い直す。 隻眼のまりさは自らの責任で行動を起こしたのだ。 それに、あれは強力な力だ。 集落が受け入れれば戦力になる。 万が一受け入れられなくとも自分にはもう 理論武装もあるしドスの後ろ盾もある。 なんだ、自分はこんな単純なことに悩んでいたのかと可笑しくなった。 冷静に考えれば当然のことだ。 隻眼のまりさ自体がどうこうではなく 起こった事態に対して必要な対応をしていくだけのことだ。 自分は少々感情で考えすぎていた。 …が、どういうわけか隻眼のまりさは例の攻撃を使わないでいた。 少しはまりさも考えて行動しているのか、とぱちゅりーは感心。 まりさ三匹がれみりゃを倒した。 次にかかってくるふらんに対して回避運動をとっている。 練習どおりの型が出ている。 これなら心配ないなと、地上の戦闘を見ながらぱちゅりーは 既に次の考えに入っていた。 敵を散らして、集まってきたところをドススパークで粉砕。 これを繰り返せば大した危険もなく殲滅は可能。 だがその使用回数には制限がある。 とりあえず次を撃たせたら洞窟の中に引っ込もう。 地上のまりさ達の援護もあればさほど難しくはないはず。 れみりゃはなんだかんだと言っても夜間しか行動しない。 朝まで持ちこたえれば戦術的勝利は収められる。 「ドス!発射準備!!私の言うタイミングに合わせて!」 「ゆっくり分かったよ!!」 まりさ達が周囲のれみりゃに気付かれ包囲され始めたのを確認。 ドスにドススパークの発射体勢をとらせる。 「ドス!!カウントダウン!!3、2、1!!…発射!!」 「発射あああああああああああああ!!!!」 発射直前まりさ三匹はぱちゅりーから見て左に避けた。 上からではドススパークの光が激しくて見えないが きちんと回避できていることだろう。 「ドス!キノコは後いくつあるの!?」 「あと二つしかないよ!!」 あと二発か。 三発ならどうしようかと考えたが 二発分しかキノコが残っていないのであれば 隻眼のまりさ達を再突撃させるのは危険だ。 そう判断したぱちゅりーは後退の指示を出す。 「じゃあすぐに後退!!篭城戦に入るわ!! ドスはすぐに奥へ!!だけど外を見ながら後ずさるのよ!! まりさ達は私の部屋に入って!!」 「ゆっくり分かったよ!!」 ドスがずりずりと後退を始める。 あとは洞窟の中で最低限の迎撃をしながら朝を待てばいい。 ドスはなりが大きいためれみりゃ達の目に付いてしまい 集中攻撃を浴びる危険があるのだが 洞窟に入ってしまえば一、二匹程度が散発的に襲ってくるだけだ。 連携して同時に洞窟の中に突入されれば危険だが 捕食種は通常種よりも優れているという心の余裕からか 連携は勿論のこと戦闘中に他の個体の話を聞くことすらない。 仮に彼らがただ漠然と加工所で生きてきただけである連中ならばなおさらだ。 「まりさ!?」 「何処行くの!?ドスの洞窟の中が安全だよ!?」 隻眼のまりさだけが急に外へ飛び出していった。 まさか、自分の指示に従わない気なのか。 「ゆっくり追うよ!!」 「駄目!!言ったでしょう!?勝手に行動しないで!! ついていったら死ぬわよ!!」 そう考えて先ほどの答えをすぐに打ち消した。 そうだ、隻眼のまりさは単独で戦う練習をしていたのだ。 ならばあえて一匹にさせてみるのも手かもしれない。 このまま外で戦ってくれれば洞窟に入ってくる敵の数も減るだろうし なにより自分達にかまうことなく例の技を使うことが出来るはずだ。 「ぱちゅりー!!どうしてそんなこと言うの!?」 「まりさを助けに行かないと!!」 まりさとドスが的外れなことを言う。 むしろ助けが必要なのはこっちかもしれない。 ドスの大きさに対して護衛が二匹では心もとないし なにより地上戦の指揮を一番うまく執れるのが隻眼のまりさだ。 「あなたたちはもう忘れたの!? 助けることよりも、生き残ることを考えなさい!!」 自分には理論武装がある。 何よりこの状況は利用できるし 仲間が離脱した時の対処法に関しても既に伝えてある。 勝手な行動をした者は自らの力のみで責任を取る。 他者に迷惑をかけた場合はそれも含めてだ。 それに全員が予定外の行動をとればその一匹だけでなく チーム全体に危険が迫る。 「ドスは、村長なんだよ!?皆を守るドスなんだよ!?」 ドスの言葉に苛立ちを覚える。 今はそんなことを言っている場合ではないだろう。 何より、目の前のことにとらわれて何の考えもない行動は 危険であるということを理解していないのか。 「駄目!私にも状況がつかめていないのよ!」 この状況。まりさが一匹いないし 人間達の動向もわからない。 ただ、もしかしたら集落のゆっくりの増加に対する 対策のために捕食種を送り込んだという可能性もある。 本当に集落を壊滅させるつもりなら人間が直々に駆除に来るはずだ。 ならば、集落の肥大化という問題を これにかこつけて解決してしまってもいい。 「れみりゃが何匹いるか!まりさが何処へ行くのか!」 なによりれみりゃがどれくらいいるか 分かったものではない。 隻眼のまりさもこれからどうするかはっきり分かっているわけではない。 ただもしこのまま死んだら問題は自動的に解消されるかもしれない。 それもまたよし、とぱちゅりーは考える。 「この状況で動けば悪い方向にしか行かないわ!」 ただ漠然と戦ったら命を落とすだけだ。 二年前のドスも半死半生だったのだ。 この戦いに出て行けば危険であるだけ。 「自分のことだけ考えて!でないと全滅するわ!」 所詮はゆっくりの身だ。 自分を守ることすら怪しいのに 他者を戦闘中に守りながらなどというのは不可能だ。 「戦えるものだけでも生き残らないと!」 自分達が崩れてしまえば集落に戦えるものがいなくなる。 自分達が残っている限り集落は壊滅しない。 自分達が集落にとっての最後の砦なのだ。 「じゃあぱちゅりーは、ぱちゅりーが生き残ればそれでいいの?」 状況に全くそぐわないドスの冷たい声が聞こえた。 「何を言っているのドス!早く下がらないと危険よ!」 ぱちゅりーは相変わらず早口でまくし立てる。 先ほどの第三射でれみりゃが散っている間に引っ込まないと危険だ。 今は議論している暇などない。 「ぱちゅりー答えて。 ぱちゅりーの作戦は何をするためのものなの? 集落を守るために戦うためなんだよね?」 「今はそんなこと言っている場合じゃ」 「駄目。答えて。 答えてくれないとドスは下がれない」 何を言っているんだ。 死にたいのか。 これは戦いだ。 生か死しかない。 「ぱちゅりーの作戦は生き残るためのものよ! 死にたくなかったら早く下がりなさい!」 ぱちゅりーは焦っていた。 まさか、こんな状況でドスが自分に対して疑念を抱くなんて。 ぱちゅりーの存在意義は物事を考え物事を効率よく進めることだ。 だがそれは考えを実践する者がいるから成り立つのだ。 自分自身に出来ることは少ない。 だからこそ言葉を尽くさなければならなかった。 自分だけがいかに正しいことを考えていたとしても それを信じてついてきてくれる者達がいるからこそ意味を成す。 ドスの考えが及んでいないというのは 頭が悪いというわけではなかった。 ぱちゅりーの頭の回転が早すぎるのだ。 生かすところは生かし、捨てるところは捨てる。 普通に考えれば当たり前のことなのだが それが村長としてドスが決心した内容と食い違ってしまったのだ。 そして今は、この食い違いを議論して解決に導いていくだけの 言葉も時間もない。 ドスの帽子のつばに乗っているぱちゅりーには ドスの表情も考えも全くうかがい知れなかった。 せめて、もう少し早くこの疑問にぶつかっていれば。 せめて、もう少し遅くこの疑問にぶつかっていれば。 袋小路に入り込んだ思考は、そんな意味のないことを考えた。 そして、その疑問に答えられるものなど誰もいなかった。 ――――同日、同時刻―――― 「ドス!危ない!!」 「むきゅっ!!」 「うわあ!!」 危なかった。 出たとたんドスの鼻先にれみりゃが向かっていったので 思い切りジャンプして止めた。 これだけ高く跳べるならもうドスの帽子に自力で乗れるほどかもしれない。 「………!!ドス!ドススパークを!!」 ぱちゅりーの声がする。 隻眼のまりさの位置からではぱちゅりーの姿は見えない。 だが以前上から見ることであたり一体を 全て見渡すことが出来るのだ、と言っていた。 地上から見えない部分を上から見ているため 指示が出せるのだ、と。 自分も、あそこまで跳べるようになれば 指示を出す立場になることが出来るのだろうか。 「……っ!!!」 ドススパークが木々をなぎ倒す。 やっぱりすごい。 自分が使ったあの技の威力もすごかったが 流石にこれほどのことは出来ない。 が、もう自分はかつてのリーダーを、今ここにいるドスを 目指しているわけではないと自覚できているので特別な感慨はない。 ドススパークは撃てなくても 同じことが出来る何かを掴めばいいだけのこと。 そう思った。 「いいわ!!第一次攻撃は成功!!まりさ達は前進して! 私が合図するか危ないと思ったら左右の木の枝の中に避難して! 決して自分たちだけで戦おうとしないでね!!」 「分かったよ!」 「突撃するよ!!」 いつの間にかいた二匹のまりさを連れて 隻眼のまりさは飛び出していく。 もうれみりゃなど全く怖くなかった。 遅いし弱いしとどめも刺せる。 二匹のまりさが足手まといになるとすら考える。 「行くよ!!『あろーふぉーめーしょん』!!」 「「ゆっくり理解したよ!!」」 『ゆっくり理解した』という台詞に怖気を感じた。 何を言っているんだこいつらは。 だったら勝手にゆっくりしてれみりゃに討たれていろ。 自分についてこれるのはリーダーと同じように ついてこようとしている者だけだ。 帽子を少し傾けて木の棒を取り出す。 しかしこれはもう棒というよりは破片などという表現のほうが正しい。 口にくわえてみると鋭い先端が数センチでる程度だ。 まりさはそれを口の横のほうへ移動させる。 正面に突き出して突き刺すのではなく 横に構えて斬るための装備だ。 「あまあまがあったんだどー!」 こちらを目で捉えたれみりゃが嬉しそうな顔で向かってくる。 間抜けめ。 今すぐその表情、潰してやる。 「ふっ!!!」 手を伸ばしてきたれみりゃの左頬にカウンター。 同時にくわえた木の棒で目元に浅く斬り込む。 深く刺さってしまったのなら手放すことも視野に入れる必要があるが 手ごたえはゆるい。 隻眼のまりさはそのまま反動でれみりゃから離れた。 「うー!?いぎゃああああああああああ!!! でびでゃのおべべがああああああああああ!!」 ざまあみろ。 自分があの時どれだけの痛みを味わったか思い知ったか。 「とどめだよ!!」 「ゆっくり死ね!!」 「うー!?いだいいいい!!やべろおおおおおおお!!!」 そのまま顔を押さえてバターンと仰向けに転んだれみりゃに 二匹のまりさが襲い掛かった。 どちらにしてもそう簡単に戦闘復帰できる状態ではなかったが とどめを刺しておくにこした事はないか。 「立ち止まらないで!着いて来て!!」 「分かってるよ!!」 死んではいないが明らかに致命打を食らわせたれみりゃから なかなか離れようとしなかったまりさ二匹を叱咤する。 やはり完全に動かなくなるまで攻撃しないと不安なのだろうか。 それでも自分が走り出すと斜め後方から 二匹のまりさが何とかついてきた。 「右に避けるよ!」 「「ゆっくり理解したよ!」」 「よぐもおおおおおおおおおお!! じねえええええええええええええ!!!」 隻眼のまりさ一匹なら正面から迎え撃つことも出来ただろうが 厄介なのは突き出された『ればていん』とふらんが呼んでいる 木の枝を危惧して回避の指示を出した。 カウンターをとっても後方二匹のどちらかに ふらんの攻撃が当たるのはよろしくない。 胴付きふらんが向かってくる。 ふらんはれみりゃより強いと噂されていたが実際どうなのだろう。 「うー!?どこいったー!?」 「後ろを取ったよ!!回れ、右!!」 「「回れ、右!!」」 正面しか見ていないふらは目の前の目標が消えたことで そのまま前の方をキョロキョロと見回している。 そして方向転換の指示。 だが隻眼のまりさの中ではだんだんと二匹が足手まといだという 想いが強まってきていた。 はっきり言ってこの二匹は遅い。 せっかく修行で得た自分のスピードという特性が 殺されてしまっているのではないかと思い始めていたのだ。 「一点集中!!」 「「一点集中するよ!!」」 まず最初に無防備なふらんの後頭部に体当たりを当てる。 そのままうつぶせに倒れてしまったふらんに集中攻撃。 「ゆっくり死ね!!」 「とどめだよ!!」 「ゆぐびぃ!!」 ふらん撃破。 以前なら一匹倒すたびに嬉しさがあったものだが 今の隻眼のまりさには何の感慨も沸かなかった。 ただ冷静に次にとるべき行動を考える。 「よぐもおおおおおお!!!」 「おがーじゃんがあああああああ!!!」 「ばりざなんがゆっぐりじないでじねえええええええええ!!!」 頃合だ、とまりさは思う。 この数は流石の自分でも手に余る。 これだけの敵を全て避けきるのは大変だろう。 「――――!!??」 その時、自分の中に何かが宿るのを感じた。 そして隻眼のまりさの見えない左目に何かが映った。 それは、無数の『何か』。 それを遊びのように避ける自分。 何か、同じようで違う場面を自分は目にしたことがある。 それが何かは全く分からない。 だが、隻眼のまりさは間違いなく何かの『既視感』を感じた。 一瞬の思考だった。 「ドスのところに戻るよ!!」 「「ゆっくり理解したよ!!」」 すぐに思い直しドスのところへ引き上げるように指示をする。 このような状況、通常のゆっくりなら恐怖のあまり逃げ出していただろう。 だが、なまじ訓練や実戦をこなしてきていた二匹のまりさは 逆に指示があるまで逃げ出さないようになっていた。 故に逃げろ、と言わなければ逃げないのだ。 ドスのところまでは20m程度。 人間のスケールサイズに合わせて言うなら100m以上だ。 急がなければ戻れなくなる。 「ドス!発射準備!!私の言うタイミングに合わせて!」 「ゆっくり分かったよ!!」 ある程度近づいたところでぱちゅりーがドスに発射体勢をとらせた。 今度は間違いなく足元も含めて狙ってくる。 そう判断したまりさは徐々に右へとずれていく。 あまり横に大きく回避したらついてきているれみりゃ達を ドススパークの射線軸上から外してしまうことになる。 「まりさ!!れみりゃが来るよ!!」 「急いで!!頑張って走るんだよ!!」 「頑張ってるよ!!」 「ドス!!カウントダウン!!3、2、1!!」 カウントが始まると同時にさっと横に避けた。 それにならって後ろの二匹が回避行動をとる。 「発射!!」 「発射あああああああああああああ!!!!」 ドススパークが発射された。 そしてその瞬間、例の『既視感』がまたきた。 この技、何か感じるものがある。 いや、ドススパークは二年前リーダーがドスになったときから見ていた。 しかし、それとはまた違う何かを感じていたのだ。 「ドス!キノコは後いくつあるの!?」 「あと二つしかないよ!!」 「じゃあすぐに後退!!篭城戦に入るわ!! ドスはすぐに奥へ!!だけど外を見ながら後ずさるのよ!! まりさ達は私の部屋に入って!!」 「ゆっくり分かったよ!!」 そこで隻眼のまりさは『え?』と思った。 何で?まりさはまだ戦えるよ? 集落のゆっくり達はどうするの? ドススパークもあと二発残ってるんでしょう? こんな弱い奴らから逃げるの? なんで? なんで? 隻眼のまりさだけはそこで固まった。 そして、先ほどのフラッシュバックをもう一度思い浮かべた。 思考も停止していたので先ほどとは違い余裕を持って思い出せた。 あれは何だ? 赤や青の何かがたくさん飛んでくる感じ。 それを何の危機感もなく遊びのように避ける自分。 分からない。分からないけど。 自分はそれを知っている。 そんなまりさの思考に誰も気がつくことなく 洞窟へ下がっていっていた。 隻眼のまりさの頭の中で様々な物が渦巻いていた。 あれは何だ?分からない?でも知っている? 誰が?何故?いつ?何処で?どうして? それもまた一瞬の思考。 その一瞬の間に様々なものが駆け巡った。 以前から、あの時違和感が形になってからずっと考えていた。 ゆっくりって何だ? ゆっくりすることはいいことなのか? ゆっくりすることって何だ? 次の瞬間、隻眼のまりさは洞窟の外に飛び出していた。 「まりさ!?」 「何処行くの!?ドスの洞――――」 後ろから何かが聞こえた。 だが聞こえただけで理解してはいなかった。 恐らく、この戦いの中で何かを見出すことが出来る。 そういうある種の確信が隻眼のまりさの中にあった。 危険だって?無謀だって?悪いことだって? かまわない。 コイン一個じゃ命も買えやしない。 この辺は死臭で一杯だ。 狂うのには慣れている。 構わないさ。 こんなにも高揚したのは、初めてなんだから―――― 続く 次回予告 すれ違った思いはそれぞれの願いの元に動き始める。 もう何も譲れないから。 もう何も、失いたくないから。 次回 隻眼のまりさ ~第九話~ それぞれの孤独な戦い!そして時は動き出す… 乞うご期待! あとがき 結局こういう展開になってしまうのはご愛嬌。 やっぱり私は場面場面を切り抜いて書くより 物語を作ってそれに沿った中でキャラクターを動かす方がいいようです。 結末は既に決まっているのですが なかなか整合性をとるのが大変な気がします。 言い訳がましいですね。すみません。 今後も頑張っていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。 最後に、この作品を読んでくださった全ての方に無上の感謝を。 私がここに投稿させて頂いた作品一覧 anko3052 ゆっくり駆除業者のお仕事風景 以降そのシリーズ anko3061 隻眼のまりさ プロローグ 以降そのシリーズ anko3127 ゆっくり加工業者のお仕事風景
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/1155.html
「あ、お姉ちゃん! 帰ってたんだ、お帰り!」 「…ただいま、こいし」 町の下町方面の入り組んだ道に、さらに入り組んだ所にひっそりと建つボロアパート。外の音は愚か、隣の家の生活音まで聞こえてしまうくらいに、老朽化が進んでいる。 階段を登り、自分の家の鍵を開けようとすると、既に鍵が開いていた。 この家に、まともに盗まれるものなど無い。しかし、万が一を考えると怖い。恐る恐るドアノブを捻り、中の様子を伺うと、…そこには普段滅多に家に帰ってこない妹の姿があった。 「どうしたの、こいし」 「ん、お風呂に入りたくて。急いでるからすぐ行っちゃうけどね」 お風呂にあがりたてなのだろう、こいしの周りには湯気が立っている。髪の毛の湿気の無さから、ドライヤーの作業は終えているらしい。 姿も、こいしがいつもしているゴテゴテした服装では無く、軽くてどこか欲情を誘うようなピンクのキャミソール姿をしていた。…大丈夫、だろうか。万が一、取り返しのつかないことになったらどうするのだろうか。こいしはドレッサーに向かい、化粧を始める。 マスカラや、チーク。ファンデーションなどを顔に施して、一瞬にしてあどけなさが見えていた顔は、間違えた大人のケバケバしいそれへと変化する。 「…こいし。また、怖い人たちの所へ?」 「怖くないもん。外見は確かに怖いけど、とっても良い人たちなんだから! 今日はね、仲間内の人からハーレーに乗せて貰うんだ!」 こいしの耳たぶには、恐らく人差し指一つくらい入るのでは無いかと思う大きさの穴が空いている。その穴に、黒いトゲの様なピアスを挿し、さあっと髪に整髪料のスプレーをかける。 …いつから、こいしはこんなに変わってしまったのだろう。 「80kmはゆうに出るんだって。面白そうでしょ、いいでしょ!」 こいしが手を広げてバイクの事を私にアピールしてくるが、どうにも私にはその良さがいまいち理解できない。 バイクや車の法律はよくわからないが、一般の車両で60kmをオーバーしたらまず赤キップでは無いのだろうか。それを、80はゆうにでるだなんて。 実の姉としては、今すぐにでもこいしに危ない事をするのを止めて欲しい。…危険な人たちと関わるのを、止めて欲しい 「こいし」 「おねーちゃんも、来なよ。歓迎するよ、おねーちゃんなら可愛いしすぐに人気者だよ!」 言葉を遮られてしまった。こいしは、恐らく私の言わんとする言葉がわかっているのだろう。不自然な、遮り。 「私があいつらにお願いしよっか! ちょっと説得すれば服とか買って貰えるし、あいつらはバカだからいくらタカってもずっと財布になってくれるんだよ! 最初は、お姉ちゃんにはちょっと出来ないかもしれないけれど、私が頼めばイチコロだよ!」 こいしが話を続ける。悪気も無く、普段関わっている人への悪口を口にする。このアパートは隣の家の生活音すら聞こえてくる、外に会話が漏れて聞かれているかも知れないのに、怖くないのだろうか。 それよりも、確かに不良とは言え『仲間』では無いのだろうか。 「おねーちゃんが考えていること、わかるよ。確かに仲間ではあるけれど、所詮『仲間』。いつ裏切られるかわからないもの、信用はしないわ」 こいしは、いつからこんなに心がすさんでしまったのだろう。 「…やめて」 「おねーちゃんがね。わかるって言ったでしょ、別にいいじゃない! 私は私のやりたいことをしているのだから、おねーちゃんは口出ししないで!」 「…」 私はこいしの方に手を置いて静止しようとしたが、こいしが手を振り払って叫ぶ。 キッと睨んだ目付きで、こいしは言葉を続けた。 「確かに、私の立場は最低だよ! それでいてふてくされてずっとここに居るわけではない、元には戻れないけど、私次第では再び日の目に当たる場所に戻れる事もわかってる! …けれど! 『自分の意思で行動できない』、一人じゃあ指を咥えてばかりで『何にも出来ない』奴に指図されたくなんてないね!」 こいしが、どんと。私の体を突っぱねる様に押してきた。私は、畳に尻餅をぶつけて、こいしを見上げる体勢になってしまった。 「…ごめん。けれど、おねーちゃんが本当に私を止めたいのなら、今私を押し倒してでも行かせないべき。違う?」 私はただ、こいしによる冷酷な言葉を、聞く。 「冷酷とか、酷いだなんて思わないでね。おねーちゃんは、いつもそうやって動かないでばかりで。じっと止まって私が行動するのを待ってるんだ、違う? 『あわよくばこいしが自分で反省をしないかな、もし駄目なら諦めよう』。そう、思ってるんじゃないの?」 「…いわ、ないで」 『おねーちゃんは、動かない。臆病者だ』 私は、こいしに何も言えないまま、ただ背中を眺めている事しかできなかった。 自分が、歯がゆかった。 東風谷さなえのロックバンド! 「…、ふう。さとりちゃん、どのくらい上手くなったか、やって貰える?」 「ええ、いいわ」 私たちはスタジオに入り、さとりちゃんがすぐに鞄から黒を基盤に銀の線で彩られたスティックケースを取り出します。その中から、6本くらい入っているスティックの内2本とネジを取り出して、さとりちゃんがドラムセットの前に座りました。 さとりちゃんは何やらドラムにネジを巻いて、スネアの硬さを調節しているようです。シンバルも1、2回カンカンと軽く叩き、スティックを指先でつまむように持ち構えます。 タカタカタカタン、と始まりを告げる早く小刻み良いスネアの音。そのままバスドラムとスネア、シンバルがリズム良く叩かれて一つの8・ビートのテンポが形成されました。 「…へえ」 ぱちゅりーちゃんが眉をあげ、感心したかの様にさとりちゃんの演奏を見入ります。 「…」 ちょうど演奏を止めるポイントかなと思った所で、最後にさとりちゃんがスティックと体を、腕を器用に動かし『ダララン、ダララン、ダララン!』と漫画やドラマなどで御用達の横にある大きいスネアを順に叩いていく技術を披露しました。シャーンと鳴り響くシンバルをさとりちゃんが手を当てて止め、ぱちゅりーちゃんにこういいました。 「…練習している内に、こんなことも出来るようになったの。どう?」 「…上出来ね。他の皆もコードくらいは押さえられる様になったみたいだし、そろそろライブの事を考えてもいいわね。皆、集まって」 ぱちゅりーちゃんはドラムセットの場所からスタジオの奥に用意されているテーブルと椅子の方へ向かい、一つ椅子を引き腰掛けました。 私たちもそれぞれ6つ用意された椅子に座り、ぱちゅりーちゃんからの話を待ちます。 「別に、スタジオで話す必要は無いけれど。むしろお金の無駄だから練習した方が頭いいかもね、でもハンバーガーショップとかでは落ち着いて話を聞けないでしょう? 今から話すことは、ライブについて。基礎知識よ、恥をかきたくなかったら聞くことね」 ぱちゅりーちゃんが、構えて話を始めようとします。私たち他の4人は、聞き入る体勢に入りました。 …あれから、一週間が経過しました。私たちはそれぞれ、楽器をそこそこに演奏することが出来る様になりました。 最初の1、2日目こそはボロボロだったけれど、ぱちゅりーちゃんの言っていた通り3日を過ぎてから急にスイスイと手が動くようになりました。メジャーコードはもちろん、簡単なグリッサンドくらいは行えるようになりました。 両手でいっぺんに、ドラムのテンポに合わせながら弾くというのはまだ無理です。しかし、片腕でコードを弾くのみだけなら、何とかドラムのテンポに合わせられるくらいに上達しました。 れいむは元々少しギターをかじっていたみたいで、問題無く和音をジャカジャカ鳴らせています。ベースのまりさも、ピックを使ってルート弾きと呼ばれる『一小節同じ音を弾く』技術くらいは習得できたみたいです。 確かな、自信がありました。確かに私たちは他の人と比べるなんておごまかしいほどに下手っぴです。それでも、少しずつ上達している…! 「ライブ、これが活動のメインよね。ライブを行わなければやってられないわ、何のためにバンド組んでるの? まあ、やる気をあげるためにも説明は良い機会かもね。まず、基本的にライブは『4種類』あるのよ」 「4種類?」 「最終的な『演奏する』といった目的は同じなんだけれど。『ライブハウスを一日貸し切』ったり『レンタルスペース』を借りたり。ここでのレンタルスペースはそれこそ『小ホール』や私たちのいる『練習スタジオ』といった所のことね。 『ライブハウスを貸し切る』というのは、いわば『主催』よ。PA、PAとは『音関連のスタッフ』ね。照明設備にそのスタッフ、客席、ドリンクのカウンターなんか全部借りれる。ただこれだと『10万』はくだらないから現実味が無いけれど」 私たちはそれぞれうんうんと頷き、ぱちゅりーちゃんの話に耳を傾けます。 「残り2つは、これはあまり現実味が無いのだけれど。『オーディションライブ』や『野外』。『オーディション』は、デモテープ送って受かればだけど確かに多くの人目につくわ。でも、オーディションを受ける目的は『プロになりたい』からであって、…私たちの活動方針とは違うと思うわ。 野外は、そうね。警察と追いかけっこになるわね、音うるさいから。外でやるには電力が必要、だから『発電機』が必要なんだけど、これがまた臭くって。 半端なくオイルくさいのよ、演奏場所とちょっと離れた所に置かないときついわ。さらにレンタル料が半端ない、高けりゃ1万! んなかかるんだったら最初からレンタルでも『箱』を借りてるわよ。…こんな所。私たちは、『他の人が主催しているライブ』に参加するわ」 一旦、ぱちゅりーちゃんが話をくぎります。皆、誰も質問は特にないみたいで、そのまま話は続行しました。 「ライブの参加者は、シールの様なパスを貰えるの。それをどこか服やジーンズに貼っておけば、自由に箱を出入りできるわ。 『一度退室したら再入場不可能』って所が多いのよ、ライブハウスって。ライブハウス内、特にスタジオの上ではとてつもなく『喉が渇く』わ。万が一が飲み物が切れて、自分たちでドリンクを持ってきていない! って時に買出しにいくじゃない? それで再入場禁止とか言われたらたまんないからね。 ライブハウスのドリンクって、『一杯500円』とかで入る時絶対に頼まないといけないのよ、ようするにドリンクで利益を取ってるってことよね。出演者やスタッフ以外は大抵飲料持ち込み禁止だし、恐ろしい所よライブハウスは。 私たちが演奏するときは、今まで皆にスタジオで教えた様に『ミキサー』って機械に適当に『それぞれのポートにシールドを差し込』めばいいのよ。そうすれば、勝手にアンプから音がでる。 『直接アンプに挿す必要は無い』、むしろ音量調整しずらくなるからミキサー使用は絶対ね。他にも私たちで『物品販売』とかできるのだけれど、間違いなく誰にも見向きされないからこれはどうでもいいわね。 『貸切以外で初めてのライブハウスに出演する場合』は、それなりの手順を踏まないといけないの。まず演奏のデモテープを作って、『ブッキング担当』といわれる『予約などを管理する人』に聴いて貰うの。『オーディション』とかとは別に、上手いか下手かを聴いて貰って『出演しても大丈夫』か判断をしてもらうの。通った場合、電話とかで通知が来るわ。 ここで、2つ物事が分岐するの。一つは、『そのままライブに出演できる』。もう一つは、『オーディションライブを受ける』。とは言っても圧倒的後者が多いわね、『プロになる様に育てる、ずっと出演する』と考えているライブハウスが多いから。そこはなんというか、行き当たりばったりの面もあるけど『見極める』しかないわね。ああ、ここは何か『しっかりした』箱っぽいからきっとオーディションとかあるな、とか。詳しくは店員さんやスタッフの人に尋ねるのが早いわね」 「…」 「まあ、『ライブハウスに出演』するのだから厳しいのは当然よね、ある意味『商品』ですもの。プロへの憧れというか、やっぱり『プロを目指している人』が選ぶ道ね、私たちはもっとナーナーで出来る『知り合いや同じジャンルの人が主催したライブ』に参加する。ネットの掲示板とかで調べればゴロゴロ出てくるわ、そういうライブは大抵『参加したければ出来る』の。ただ、『チケット代』という名目で実質『参加料』を払わなければならないわ。 私たちみたいな『趣味の、完全アマチュア』の奴らの演奏なんか聴きにくると思う? こないでしょう、だからチケット代は参加料だと思って諦める事。万単位は越える事が多いけど、割り勘で目を瞑るしかないわね。これだと正直『他のバンドの友達』の奴らくらいしか観客にいないのだけれど、まあ、十分じゃない? それに『ジャンルで開催しているライブ』の方にいけばそこそこまともなライブが行えるからね、そんなに憂く事はない」 「…つー事は、ライブってすぐに参加できないのか?」 まりさがぱちゅりーちゃんに質問します。ぱちゅりーちゃんは、顎に置いていた手をテーブルに置いて、まりさの質問に答えました。 「当たり前よ。大体、1ヶ月が目安かしら。…盛り下げる様な事を言って申し訳ないけれど。まりさが運営を担当するとして、『2日1日前に参加したい!』って表明したバンドを参加させる? 出演順や、リハ順番などの調整を行わないといけないのよ? 地獄じゃない、大抵募集は『2週間前』には打ち切られるわ」 「…そう、か」 まりさが納得し、諦めた様に引き下がります。再び、ぱちゅりーちゃんによる説明が再開されました。 「補足で、持ち物について。切れた時の為の『代えの弦』や張替え作業の為の『ペンチ』、『電池(エレキ系の楽器だと電池があります)』に『シールド』や『ピック』は絶対ね。これがないと演奏できないし、何かあった時に対応できないわ。 他にも、『飲み物』や『タオル』は必須。演奏中はじゃんじゃん汗かくからね、これが無いとやっていけない。 そして、他の何より役に立って活躍する、アイテム『ガムテープ』。こいつ無しには、ライブを行って乗り越したとはいえないわね!」 「…ガム、テープ? そんな地味そうなアイテムが、活躍するのですか?」 ぱちゅりーちゃんが口にしたのはなんとも言いがたい、どこで使うのか使い場所がさっぱりわからないアイテムでした。 ネックを折った時に、応急処置でぐるぐる巻くのかな? でも、それだと音がまともに鳴らないような…。 「…そもそもネックが折れるだなんてレア中のレアな出来事じゃない、曲がるだったら整備していないとよくあるけど。 馬鹿にしている様だけど、ガムテープは本当に何でもできるのよ。折れたものの補強っていうのは当たり。『折れたスタンドや締りの悪いスタンド』を応急処置できるの。粘着を表に輪っかにしてギターやベースのボディに貼れば『ピックホルダー』にもできるしね。 アンプの置き場所をあらかじめ印しておくこともできる、これを『バミる』っていうの。ドラムではヘッドに貼って『チューニングを行える』らしいしね」 「…へえ、馬鹿に、してました」 ガムテープ1つで、こんなに出来るだなんて。確かに、これは実際に体験した人しかわからない情報です、うむむ…! 「ふふ。見直した? 他に必要なものは『紙とマジック』、曲順表を書くためにね。『軍手』、『SE用のCD(BGM、バンドの演奏が始まる前に使用)』なんかがあげられるかな。 …れいむは、『エフェクター』を使用するのでしたっけ?」 「…? いや、まだ特に用意はしてないけれど」 エフェクター、音色を変えるやつだっけ。 ぱちゅりーちゃんがれいむに尋ねます。ぱちゅりーちゃんはそう、と一息置いて一応と説明を始めました。 「エフェクターを使うんだったら『予備のシールド』も用意した方がいいわ。ライブでだとエフェクターとエフェクターを繋ぐ短いシールドって、破損しやすいのよ。自分で踏み折っちゃうこともあれば、チョコマカ動くボーカルのクソ野郎が近づいてぶっぱなす事もあるの、嫌になっちゃうわ! ともかく、れいむがエフェクターを使用する様になるんだったら念頭に入れて置くことね。当日は私のエフェクターを貸してあげるわ」 ぱちゅりーちゃんの話は、続きます。 「さとりちゃんも、『スティックホルダー』を用意しといて。ライブ中にスティックが折れたりすっ飛んだりするのは頻繁に起こるわ。そうなった時にすぐに対応できる用に、ドラム手前に『小さく細長いゴミ箱』の様なものでもいいからスティックを入れるホルダーを確保して置くの」 「…わかったわ。用意、しておく」 さとりちゃんは頷き、鞄から取り出しすでに用意していたノートにメモ書きを残します。 ぱちゅりーちゃんはふうと一息吐き、手を上にあげてけ伸びをします。 「…こんな、所かしらね。次に、『進行』よ。私たちのライブでの『進行』は、どうするか。演奏する曲や曲順、MCは誰が担当するかも決めなくちゃ」 「ちょっと、待ってくれ」 ぱちゅりーちゃんが次の説明に移ろうとしたとき、不意にれいむから質問が入りました。 ぱちゅりーちゃんは『何?』と答えてれいむの方向に体を向けます。 「…俺たち、ボーカルは誰が担当するんだ?」 …そういえば、そうでした。皆が皆淡々と楽器を練習していましたが、そもそもボーカルは誰がやるのだろう? ボーカルだけを決めると今まで練習してきた楽器の技術が無駄になるし、変わりばんこでやるのかな…? 「…ボーカル『だけ』だなんて、いらない」 ぱちゅりーちゃんは、吐き捨てるように呟きました。 「ボーカルだけだなんて豪言してる奴に限って態度がでかくて、歌も下手糞なのだわ。そもそもボーカルは歌だけじゃない、『パフォーマンス、MC、タンバリンなどの打楽器、雑用』全てこなせないと駄目な役割なの、履き違えている人が多すぎる」 「…そこまで、要求するか?」 まりさが戸惑ったように呟きます。 「するわよ、『バンドの顔』ですもの! 他にも『楽器できない奴が口だすんじゃねえ』とか嫉妬が生まれて、『バンド解散の原因』にもなるわ。…私の、独断だけれど。 『スケール』なんかの音楽的知識も、ボーカルだけのやつは理解していないやつが多い。したがって、そもそも楽器やっている奴の方が歌が上手いだなんてケースがザラにあるのよ。本人がやりたいだけじゃ、成り立たないポジション」 ぱちゅりーちゃんは席を立ち、手をテーブルに置きドラムセットの方向を向きながら喋ります。 「…無理でしょう? 私たちは、司会に身を投じている訳では無い。ボーカルは、私たちが交代で務めるわ」 …結果的には、私の考えた結果は当たっていました。 しかし、その意味合いは、全く別のものでした。悪いけれど、ネガティブ。『ぱちゅりーちゃんらしく無い』、なんだか悲鳴の様な説明です。 目付きも、スタジオに集合する前の柔和なものでは無く、鋭い物に変わっています。 大丈夫かなあ、ぱちゅりーちゃん。 「…私が頭の中で描いている進行は。最初に機材をそれぞれセッティングして、SEのBGMがどんどんフェードアウトしていく。最初に何も言わず1曲演奏して、演奏したらMCが『ありがとうございました。ただ今演奏した曲は○○の○○です』と告げる。 そして、『皆さんこんにちわ、バンド名です! 今日は精一杯盛り上げていくのでよろしくお願いします』と大声でMCが叫び、それぞれ楽器をジャカジャカ鳴らすの。ドラムは、こう、『タカタカタン』って繰り返すのあるじゃない? どんどん遅くなっていく技術。さとりちゃんにそれを要求するのは酷だけど、できるかな」 「出来るわ、案外簡単よ」 さとりちゃんは、即答します。 「…大層な自信ね、頼もしいわ。ともかく、それを行ったら次は『それではメンバー紹介です』と告げて、ドラムのさとりちゃんに8ビートの演奏をして貰う。そのテンポに乗って、MCがそれぞれの人を紹介して、紹介された人は軽いリフを奏でる。 なんていうかさ、大抵メンバー紹介の時は無音で行われるのだけど、寂しいじゃない? 『大抵ぐだる』のよ、そんなの嫌だからドラムによる演奏を入れる事によって、しっかりと棒を入れるの。ドラムの演奏の時は、8ビートだけじゃなくてもっとはっちゃけていいわ、シンバル多様したり早く激しく叩いたり。 これはできるかな、8ビートのリズムで叩いて、8小節目の最後の部分リピートだなって部分あるじゃない? あそこに『オカズ』でタカタカタカって音を入れて欲しいのだけれど、いや。それは後で出来たらやりましょう。 ともかく、メンバー紹介が終わる。そしたらすぐに次の曲に移る。…あとは、MCの話術に委ねるわ」 一通り進行を聞いて、私はなかなかどうして、と感想を持ちました。それもそうだ、もちろんこういうことは話し合わないと駄目だが、…世の中のバンドマンの人はこんなにも苦労や努力、試行錯誤を重ねているのだろうか? あんまり気にしない様なMCも、ここまで考えるのが普通なのだろうか? 正直、『こういうことを話したいね』くらいで終わりだと思っていた。いや、間違いなくここにぱちゅりーちゃんがいなかったら『頑張ろうね』程度で終わって居た事だろう。 …実践を経験したことがある人が居るというのは、こんなにも頼り強い! 「そうね、やってはいけないことを説明するわ。まず一つに、始める際に『初めまして!』とか初めてをアピールする事」 「…、なんででしょうか? むしろ、会話のタネになっていい気が…」 「私はそんなの聞いたってだから何なのよって思うわ。どうでもいい、むしろ初めてなら『失敗する』可能性が高いってことじゃない? 最悪よ、そいつらが勝手に滑って気まずくなって、無言で終わられるだなんて時間を返せって言いたくなるわ」 …それも、そうですね。よくよく考えると、『話し手が話題に出来る』事以外、メリットは無いことに気が付きました。 『お、初めてか。頑張れよ』と感想を持たれるのは演奏が上手かったらの話で、初めてのライブでそんなのは無理です。初めて『行く』ライブハウスにしても、同様です。そんなに上手だったらそもそも色んな所を渡り歩き回っていると思います。 「理解したみたいね。次に、仲間内で話してはいけない。なんとかして、お客さんというか見ている人たちも交えて会話する」 「身内で勝手に話されているほどイラツくものはありませんもんね」 「そういう事。わかって来たじゃない、…曲を、決めましょうか。私たちはそれぞれ好きな曲を練習してきたけれど、こればっかりは定めないと。皆、コードは弾けるのよね? 信じてるわよ、コードが弾けなかったらそもそも破綻するわ。逆に、コードさえ弾けていればどんな曲でも出来る」 「…ぱちゅりー、さんはどんな曲がやりたいんだ」 「別にさん付けしなくていいわよ、なんだかむず痒いし。そうね、… sum41の『noots』 とか? ありがちだけど、簡単でなおかつ盛り上がるからね」 「…ヌーツ、ね。別にいいけれど、まりさはちょっと子供っぽいかなと思うぜ」 ヌーツ、ぱちゅりーちゃんが挙げた曲。私にはさっぱりわからないけど、なんとなく『洋楽で激しい曲なんだな』という事は理解できました。 「…別に、私は曲に込められた想いとか、意味とかに感動して例にあげたわけじゃない。さっっっっぱり気にしてないのよ、むしろあるだけ無駄だと思うわ。 『格好良い』じゃない、『盛り上がる』! これだけ、理由はこれだけで十分なのよ。『中学生に人気』だとか、低い層に支持されているから避けるって必要も無いと思う。格好良いものは格好良いのですもの」 ぱちゅりーちゃんは、まりさに説得を呼び掛けます。まりさは最初は嫌嫌と拒否の態度を示していましたが、その内自分で気付いたのか。…小声で、ごめんと謝りました。 「謝る必要はないわ、まりさの意見だってもっとも。まさに『入門曲』よね、だからこそストレートに心に響くというか、私はお気に入りなんですけれど。誰か、やりたい曲はない?」 ぱちゅりーちゃんが呼び掛けます。しかし、私を含めだれからも提案があがりません。 …意外です、れいむやまりさからはバンバンやりたい曲があがると思ったのに。私は、今は特にやりたい曲が無いので皆にあわせる形にしようと考えているのですが。 困り果てたぱちゅりーちゃんに、まりさがまた別の言葉を呟きました。 「…そもそもさ。まりさたちに、できるのかな」 弱気な、言葉。しかし、その言葉は私たちの不安を的確に正面から捉えて、表わしていました。 その通りです。いくら曲や進行を話したからといって、実際にできるかどうかさっぱりわからない。確かに自信はついてきています。しかし、間に合うのか。 正直、2ヶ月も3ヶ月もライブを待たされるのには嫌気が差してしまいます。どうにかして、1ヶ月で行いたい! けれど、果たしてその時間があっても、間に合うのか…。 そもそもたかが1ヶ月くらいでライブを行おうなんて考えが、虫のいい話なのでしょうか? 「出来るわ。それも、今すぐにね。『有能な指揮官』が居ればいいのよ、的確に指示を出して、進行する。これだけでライブは成立するの。 きっと、皆が考えているライブは『互いに依存しあったライブ』。私はそんなの嫌よ、『誰か一人が引っ張って、それを支えるライブ』、『個人が独立したライブ』! …これが素晴らしいわね、こうでありたい」 ぱちゅりーちゃんは、話します。 「まりさたちも、さなえちゃんも。皆、とりあえず曲とかは関係無しに演奏できたらいいのでしょう? 『まず演奏すること』、そして『示す、見返す事』、それを目標に活動している、私はそう思っているわ。だから、私は『盛り上がる』『簡単に出来る』曲を例にあげたの。 私に任せて。責任を持って、進行を担当するわ。MCは、私が行う」 ぱちゅりーちゃんは手を胸に当て、私たちに決意を告げます。 …もちろん、反対意見なんてありません。ぱちゅりーちゃんが居れば、百人力ですから! …これは、依存なのでしょうけれど。 皆も、同じ意見なのでしょう。それぞれ何も言葉を発さず、無音のまま時間は過ぎていきます。 「…ぱちゅりーさんよお」 まりさが口を開きます、ぱちゅりーちゃんは立った状態のまま『何?』と聞き返しました 「さっき。ボーカルの話題の時、気が立っていたじゃねえか。どうしたんだよ、まりさはどうしても気になるぜ?」 まりさが無神経に、ズカズカと足跡をつける様にぱちゅりーちゃんに質問します。…けれど。私も、気になります。 時折、ぱちゅりーちゃんはこの時以外にも『何かを怨んでいる様な』。…憎み、睨みつける目をしていた時がありました。まりさの質問は、それらを解消できるかも知れない、質問でした。 できるなら、話して欲しい。私にはズカズカ聞く勇気が無いからできないけれど、まりさになら。 …ひょっとしたら、まりさなりの気遣いかも知れません。この一週間、嫌々付き合いましたが、…何箇所かまりさやれいむについて見直した部分があります。 それでも、苦手な事には変わりませんが。 「…別に」 ぱちゅりーちゃんは、そっぽを向いてテーブルから離れ、スタジオのミキサーへと近づきぱちゅりーちゃんの楽器を接続し始めました。 そっけない返事。まりさは、聞き返します。 「それは無いだろ、ぱちゅりーさん。確かに、まりさたちは正直煙たい存在さ! だけれど、気になるじゃねえか! 一緒に活動している仲間だろ、答えてくれよ! まりさは、聞かないのが優しさだなんて思わないからな」 …お宅のぱちゅりーちゃんは本当に天才ですな、しっかりと弦をミュート出来ている いやはや、これくらいの子でここまで演奏できる子は中々居ないですよ 『神童』 「…皆、クズよ。音楽に携わっているやつは皆クズ。死んでいい、死んだ方が絶対に世の中の為になる存在」 ぱちゅりーちゃんは背中をむきながら、悲しい言葉を口にします。…そこまで、言わなくても。 まりさの様子を伺います。…炎上。カッとした、許せないといった表情をして、体を震わせていました。 「…そこまで言わなくても、いいじゃんかよお。まりさはあんたがどんな経験をしたかは知らない、だけどその体験は音楽の一部だって発想は無いのか?」 「無いわ。真理だもの、クラシックとかそういうのはわからないけれど、この『ロック』というジャンルにおいては」 「…」 『どうした、ぱちゅりー? 早く演奏をお始めなさい』 「…おじさん、やだ。お父さんの所に返して」 『なんて事を言うんだっ!』 「痛い、きゅっ!」 「…その腐った根性を叩き直してやるよオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」 まりさが怒声を張り上げ、堪忍袋の緒が切れたと言わんばかりに衝動的に机を思い切りバシンと叩きぱちゅりーちゃんの方向へ向かいます! まずい、止めないと! 私はまりさの前に立ちはだかります、しかしすぐに体をドンと押されてしまい近くに居たさとりちゃんに支えられてしまいました。 ふがいない…、いや。それよりも、今の私の体を押した力。…強いものだった、このままではぱちゅりーちゃんが…! 「やめろ、まりさ!」 れいむが全力で駆け出し、まりさの腕を掴み取り押さえます! まりさは『離せオラアッ』と暴れながら叫び、興奮、激情した様子でれいむと揉み合います! ついにはれいむを押し倒しぱちゅりーちゃんの側へと近づいてしまいました! 危ない、ぱちゅりーちゃん! 『…おじさんとは、~~さん?』 『いやはや、お見苦しい場面を見せて申し訳無い。この子はひねくれていましてね、気に入らない事があるとこうして私を他人扱いするんですよ…』 『はっはっは。それは、大変ですなあ』 『ええ。所詮神童とは言え、ゆっくりですからね。我が子をけなす様ですが、種族の差は越えられませんよ』 「…何よ」 「まりさは気が短い、そして今キレている。自分を見失う直前だ、一つだけ質問するぜ。お前は、なんでそんなにロックを憎んでいるんだ?」 ゆっくり、だから? 私がゆっくりだから、いけないの? 「…何を、見出せと言うのよ」 俯いた、様子で。体を震わせて、シンと音が無いスタジオに微かに響き渡る声量で、ぱちゅりーちゃんは告げました。 そして、ぱちゅりーちゃんは勢いを付けて立ち上がり、まりさの胸ぐらを掴みはじめました! 「ゆっくりというだけでさけずまれる、そんな環境の中で必死に喰らい付いてきた私の気持ちがわかるの!? 技術なんて関係ない! 色眼鏡をかけられて、一定以上の評価をされない世界で、…何を見い出せと言うのよ!!!」 ドンッと地面を足で踏み鳴らし、甲高い声で。…ぱちゅりーちゃんが瞳をカッと開き、まりさに掴みかかりながら叫びます。 ぱちゅりーちゃんの瞳には、ボロボロと玉の様に、涙が溢れだしていました。 …まりさは、言葉を失っていました。 「…取り乱して、ごめん。気にしないでと言う方が難しいだろうけど、私の事を想ってくれるなら。気に、しないで」 腕で涙を拭きながら、私たちに、告げます。後ろから覗くぱちゅりーちゃんの背中は、心なしかいつもより一段小さく見えました。 私は何も言わず、ぱちゅりーちゃんに近づいてどこか弱弱しく見える手を、そっと握ってあげました。 「…卑怯よ、人間は。私たちゆっくりを、都合のいいだけ利用しかしないの。苦痛だったわ、実の親と満足に触れ合えず、知らない赤の他人と何ヶ月も一緒に過ごすだなんて」 「…ぱちゅりー、ちゃん」 「そして、皮肉よ。私がこうしてベースを触れているのは、…私が憎んでいる、そいつのお陰ってね!」 「もうやめてっ!」 聞いていられなくなり、耐えられなくなり、…私は、叫びました。 「…そんなこと、言わなくていいです! ぱちゅりーちゃんはぱちゅりーちゃん、それだけでいいじゃないですか…!」 私たちが知らない過去だなんて、どうでもいい! そんなものを聞いても、所詮同情しかできないじゃないか! 「…大丈夫よ」 ぱちゅりーちゃんが恬淡な、落ち着いた様子で、話します。 「私は、私。自分の意識以外に、乗っ取られたりしないわ」 その眼は先ほどの憎み憤ったものとは違い、まなじりを決した、瞳の奥が再燃したもの。 立ち振る舞いは冷静。けれど、今まで以上に、ぱちゅりーちゃんは奮い立っている…! 「…やろうぜ。まりさたちで、ライブを。このメンバーで、絶対に成功させるんだ。1ヶ月、それまでの間に、もっと練習を重ねて…!」 まりさが、拳をあげながら宣言、私たちに呼び掛けます。 もちろんです。私も、その呼び掛けに大声で答えます。皆も続々と続いて声をあげていきます、しかし! 「…あんたたち、そんな1ヶ月も待つつもり? そもそも、待てるの? 私は待てないわ」 まりさの言葉に、ぱちゅりーちゃんが尋ねます。その口ぶりはなんでそんなことをするのかといったもので、待てるのかと私たちに聞いてきました。 …そんなの、待てるはずがありません! 今すぐにでもやりたい、力が無いと言われても、私たちだってこの一週間練習を重ねたんだ…! 機会があるのなら、意地でも絶対に成功してみせる! けれど、…あるのか!? そんな都合のいい機会は、私たちに巡ってくるのか!? 「…ええ、月並みな言葉だけれど。神様は、努力する人を裏切らないみたいね。飛び入り、参加よ。明日、ここの楽器店のスタジオでライブがあるの。…飛び込むわよ、明日に掛けて!」 東風谷さなえのロックバンド! NEXT,To Be Continued! →東風谷さなえのロックバンド番外! さなえへ →東風谷さなえのロックバンド! 証明へ ←東風谷さなえのロックバンド! 結成へ 世界感も面白いし、いいスピード展開!いいぞもっとやれw -- 名無しさん (2009-05-07 00 12 46) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/melty_cmv/pages/281.html
【MBAACC】フルムーン赤主秋葉 基本コンボムービー CC YouTube https //www.youtube.com/watch?v=lBfMrJ7NOYs nico http //www.nicovideo.jp/watch/sm16791333 フルムーン赤主秋葉 コンボムービー「Hesitation Snow」 CC YouTube http //www.youtube.com/watch?v=oT0aNzFF3OU (xW7YeVt6C6k) nico http //www.nicovideo.jp/watch/sm17499000 【MBAACC】ゲストコンボムービー CC YouTube http //www.youtube.com/watch?v=tdbPAKC-6RY nico http //www.nicovideo.jp/watch/sm18410927 ゆきちさん達の合同ムビです。 【MBAACC】赫訳・誘凪解説動画【F赤主】 CC YouTube http //www.youtube.com/watch?v=2N5RHC2Metc nico http //www.nicovideo.jp/watch/sm18737023 【MBAACC】F赤主秋葉 2ndコンボムービー「last fortune」 CC nico http //www.nicovideo.jp/watch/sm19076908 F赤主秋葉 3rdコンボムービー「sister s noise」 CC imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 YouTube https //www.youtube.com/watch?v=yTstqNKvMfA nico http //www.nicovideo.jp/watch/sm21402563
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/277.html
「むきゅ、むきゅぅ」 ぱちゅりーが、唸っている。 「ぱちゅりー、おわったよ」 「ゆっくりしてないよ? どうしたの?」 れいむとまりさがやってきて、ぱちゅりーの様子を訝しげにしていた。 「むきゅぅ……ぱちゅは……すごいことを知ってしまったかもしれないわ」 「ゆゆ?」 「ゆ! それはにんげんさんのごほんだね!」 ぱちゅりーの前には一冊の週刊誌が広げて置いてあった。先ほどからそれを読んでぱち ゅりーは唸っていたのである。 「さすがぱちゅりーだね! にんげんさんのごほんが読めるなんて!」 「いんてりだね! ゆっくりしてるね!」 尊敬の念を余すことなく現して褒め称えるれいむとまりさに、ぱちゅりーはいい気分に なりつつも、すぐに険しい顔になった。 「むきゅ、とにかく、今日のおしごとは終わったのね」 「ゆん」 「ゆん」 「それじゃ、ゆっくりしてなさい。ぱちゅは……このごほんを読んでるから」 「「ゆん! ゆっくりするよ!」」 れいむとまりさがとてもゆっくりした顔でぽよんぽよんと跳ねていった。ぱちゅりーは その後姿からすぐに視線を雑誌に転じる。 「むきゅきゅきゅきゅ……これは……大変なことだわ」 「たっりいなあ、ゆっくり当番なんて」 翌日、一人の青年が公園に足を踏み入れた。 「……あんなの、さっさと駆除しちゃえばいいのに」 ぼそりと小声で呟いた。 その公園には、野良ゆっくりが集められていた。当初は駆除する予定だったのだが、色 んなところから物言いがついたりした挙句、公園の清掃や野菜栽培などの仕事をさせる代 わりに地域猫ならぬ地域ゆっくりとして生活する権利を与えることになった。 むろん、それをしなければ駆除されるのだ。 公園の清掃など、人間がその気になればそれほどの手間ではない。 野菜の栽培と言っても少量で、ゆっくりたちが食べればそれでお仕舞いだ。お世辞にも 形や味がいいとは言い難く、余剰があってもあまり人間は食べたがらないだろう。 仕事といっても、それで人間が得するわけではない。 自分たちで作った野菜だけでは足りないので、結局は人間が食べ物を与えることになる し、家を作る段ボール箱やらビニールシートやらも提供している。 トータルすれば、人間たちの持ち出しであり、人間たちにしてみれば野良ゆっくりたち に温情をかけてやっていると思っている。 青年は、そのゆっくりたちの仕事ぶりを監視する当番だった。 「ま、ここの連中優秀だから、てきとーでいいけどな」 この公園の野良ゆっくりは、一匹の賢いぱちゅりーに率いられて極めて効率的に仕事を していた。そのため、あまり細かく仕事を見ないでも大丈夫であった。 「あ、いたいた」 公園の一角に、ゆっくりたちが集まっている。 仕事をしている様子ではないのでもう終わったのかと青年は思った。 「じゃ、あとはこいつだな」 青年はポケットから一枚の紙を出した。そこには、ゆっくりたちは仕事をすることでこ の公園に住ませてもらい、食べ物も貰っていることを説き、ゆえに人間への感謝を忘れぬ ようにといったことが書かれている。 これを読み上げて、ゆっくりたちに復唱させるのだ。 「おーぅ」 「むきゅっ!」 「ゆゆ!」 「ゆぅぅぅ!」 「……ん?」 青年は何気なく声をかけたが、反応の剣呑さにやや戸惑った。まるで挑むような険しい 顔をどいつもこいつもしている。 「なんだよ。なんかあったんか」 さっさと終わると思っていたのに、なにやらトラブル発生かと青年はあからさまに億劫 そうな気だるい声で尋ねた。 「人間さん、ぱちゅたちは……もうだまされないわよ」 「んー?」 「むきゅ! その紙! いつものぱちゅたちは仕事をさせてもらってここに住ませてもら ってるんだから感謝しろとか書いてあるんでしょ!」 「あ? うん、そうだけど」 青年は答えつつ、確かにゆっくりたちから敵意を感じた。 「なんなんだよ、いったい」 「人間さん、ぱちゅたちは、待遇の改善を要求するわ!」 「……は?」 「ぱちゅはごほんを読んで知ったのよ! 人間さんたちは、ぱちゅたちをだましてタダ同 然に働かせて莫大な利益を上げているわ!」 「……いや、なに言ってんの、お前」 青年は呆然としつつ言った。 「ゆっくりかいぜんしてね!」 「うそつきのにんげんさんはゆっくりはんせいしてあまあまをたくさんちょうだいね!」 「ぷくぅぅぅぅ、れいむたち、怒ってるんだよ!」 「ぱちゅにぜんぶ聞いたよ! よくもいままでだましてくれたね!」 「このいなかもの! 人間さんを信じていっしょうけんめいおしごとしてたのよ!」 「かいじぇん! かいじぇん!」 「もっちょゆっくちさせりょお!」 「「「えいえい、ゆー!」」」 「「「たいぐうがかいっぜんされるまで、ゆっくりしないで戦うよ!」」」 「「「ゆっくちたたきゃうよ!」」」 ゆっくりたちが一斉に声を上げる。 「……」 何が何やらわからぬ空白状態からなんとか立ち直った青年であったが、さて、なにをど う言ったものかと困惑していた。 「むきゅ! 要求を伝えるわ!」 青年の沈黙を、なんか凄く都合よく解釈しているらしいぱちゅりーが堂々と言った。 要求の中身は、要するにもっとあまあまよこせを筆頭に、権利の拡大であった。 今は、この公園から出てはいけないことになっているが、それの撤廃も求めていた。 「あー、待ってろ。相談してくるから」 青年は、そう言って去って行った。 自分たちの勝利を疑っていないような、明るいゆっくりたちの声がその背中に浴びせら れた。 「……というわけなんす」 「……はあ、それはまた」 青年は、自分の次の当番であり、日頃から親しくしている男の所に来て一部始終を報告 した。 「ごほんを読んだ……ねえ。なんか捨ててあった雑誌でも読んだのかな、あのぱちゅりー、 少しだけ漢字読めるんだよ」 「へえ、それは賢いすね。……そんな賢いのがなんでまたあんな馬鹿なこと言い出したの やら」 「……所詮、ゆっくりだからねえ。自分のいいように考えちゃうんだろ」 「で、どうします?」 「まあ、他の連中にも相談しよう。その前に、俺も実際この目で見てみたいな」 男と青年は連れ立って公園に向かった。 「ああ!」 公園に近付いてくると、公園のそばに住んでいる老人がいて、男と青年に声をかけてき た。 「大変なことになってるんだ。公園のゆっくりたちが」 「「え?」」 とにかく、見ればわかると言われて二人は公園に向かった。その間に手短に青年が見た ことを話すと、老人は、 「ああ、そういうことか、確かにそんなようなことを言っていた」 と、言った。 「うわ! なんだこれ!」 「おいおいおい、なにやってんだ!」 「ごらんのとおりさ」 そこには、野良ゆっくりたちが歓声を上げながら公園を荒らす姿があった。 何匹ものゆっくりたちがゴミ箱を押し倒した。 いつもきれいに掃除されている地面にゴミがぶちまかれる。 花壇の花はめちゃくちゃに引き抜かれ踏み荒らされている。 野菜も収穫され、食い散らかされている。 「おいこら、何してんだ!」 「むきゅ! 人間さん! 遅いわよ!」 言われてみれば、男のところで話し込んでしまってけっこうな時間が経っていた。しか し、まさかこんなことになっているとは思いもしなかった。 「待遇が改善されるまで、もうお仕事はしないわ! そのゴミも片付けないし、お花のお 手入れもしないし、野菜も作らないわ!」 「そうだよ! わかったらはやくかいぜんしてね!」 「ゆっへっへ、まりさたちがお仕事しないとにんげんさんたちも困るのぜ?」 「れいむたちのろーどーにせーとーなほーしゅーをちょうだいね!」 「「「せーとーなほーしゅーを!」」」 「「「えいえい、ゆー!」」」 気勢を上げるゆっくりたちを、青年と男と老人は、これ以上はありえないというぐらい に冷めた目で見ていた。 三人が何も言わずに去った後も、ゆっくりたちのシュプレヒコールは続いた。 やがて、何人もの人間がやってきた。中には、先ほどの三人もいる。 「ゆふふ! にんげんさんたち、おおあわてだよ!」 「これならたいぐうがかいっぜんされるのもすぐなのぜ!」 「あまあまをむーしゃむーしゃできるね!」 「ゆわーい、あまあまはゆっくちできりゅよ!」 「ゆん、そうだね、ゆっくりできるね!」 「むきゅ! 確かあれは偉い人だわ」 ぱちゅりーが、一団の先頭に立っている男を見て言った。 「やあ……こりゃひどいな」 「むきゅ! にんげんさん! ぱちゅたちの要求については聞いてるわね?」 「ああ、聞いてるよ」 「それなら……」 「よーく聞いて欲しい」 男はそう言うと、説明を始めた。 ゆっくりたちの労働で、別段人間は得をしていないこと、この公園に住ませ食べ物を上 げるのは、人間の温情であることなど。 「むきゅ! もうだまされないって言ったはずよ!」 「そうだよ! ゆっくりできないうそをつかないでね!」 「いいかげんにするんだぜ! まりさたち、ほんとうに怒るのぜ!」 散々に罵声を浴びせられた男は、真剣な顔で言った。 「これで最後だよ」 と。 そして、さらに言った。 「すぐにゴミを片付けて、花壇にはお花の、畑にはお野菜の種をまくんだ」 「むきゅ! 断るわ!」 「「「ゆっくりおことわりだよ!」」」 ぱりゅりーたちは、断固として拒否した。 「こりゃ駄目だ」 男は後ろを振り返って言った。 「おし、じゃあ」 と、青年が前に出てきた。分厚いビニール袋を持っている。 「ゆっ! な、なにをするの!」 ぱちゅりーのすぐ隣にいたれいむの髪を掴んで持ち上げて袋に入れる。 「ゆ、ゆっくりできないよ! ここからだして!」 「ゆっくりできないって言ってるよ!」 「だしてあげてね! ぷくぅぅぅ!」 「おきゃあしゃんをかえちぇぇぇ!」 「むきゅ! 大丈夫よ!」 ぱちゅりーが自信満々に断言した。 「人間さんたちは、ぱちゅたちの労働力を失うわけにはいかないから、絶対に殺したりで きないわ」 それを聞いて、ゆっくりたちはほっと安堵する。 「むきゅ、人間さん、下手な脅しは止めなさい」 ぱちゅりーがそう言った次の瞬間、青年の足が袋に入っていたれいむを思い切り踏み潰 した。 れいむの中身の餡子が飛び散ってビニール袋の内側に貼り付く。 「む、きゅ?」 「ゆぅ?」 「ゆゆゆ?」 「ゆ、ゆわああああ、れいむぅぅぅぅぅ!」 「おきゃあしゃんぎゃあああああ!」 袋の中で完全に潰れてぴくりとも動かなくなったれいむを見て、ゆっくりたちはパニッ クに陥る。 「む……むきゅ! 人間さん! 一人殺せば言うことを聞くと思ってるのね! そうはい かないわ! みんな、正当な権利のために死を覚悟して戦うつもりよ!」 ぱちゅりーが気丈に言い放った。 「よし、やれ」 袋を持った人間たちが進み出て、無造作にゆっくりを袋に入れて、先ほどのれいむのよ うに袋越しに踏み潰し始めた。 一匹二匹三匹四匹。 死体の数が増えるたびに、ぱちゅりーの自信は揺らいでいく。 「や、やべでえええ! おしごとじます! おしごとするがら、ころざないでえええ!」 とうとう、一匹のまりさが言った。他の生き残りも一斉にそれに続く。 湧き上がった命乞いの声を聞きながら、ぱちゅりーは、むきゅ、むきゅ、ともはや半ば 精神を錯乱させて呟くだけだった。 「んー」 人間たちは顔を見合わせた。 「別に、こいつらに仕事してもらわないと困るわけじゃないし、またこんなことがあって もアレだから、やっちゃいましょうよ」 青年が、言った。 内心、これでゆっくり当番なんてくだらないことに時間をとられないで済むようになる ということしか考えていなかった。 人間たちは、それに背中を押されたのか、もう二度とゆっくりたちの懇願哀願に手を止 めることなく、淡々と作業を遂行した。 「むきゅ」 最後に残ったぱちゅりーも、仲間の死臭漂う袋の中で潰されて死んだ。 「ゆっくりただいま!」 「ゆっくりおかえりなさい、まりさ」 「「「ゆっくちおかえりなしゃい!」」」 「ごはんを貰ってきたからむーしゃむーしゃしようね!」 「ゆわぁい、むーちゃむーちゃすりゅよ!」 「ゆっくちできりゅね!」 「ゆっくちいただきま」 「ゆん! おちびちゃん、その前に、アレでしょ」 「ゆゆ!」 「ゆん! まりしゃちゃんとできりゅよ!」 「それじゃ、みんなでいっしょに言おうね!」 「「「にんげんしゃん、ゆっくちありがちょう!」」」 「ゆん! よく言えたね、それじゃむーしゃむーしゃしようね!」 「「「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇぇぇ!」」」 「ゆぅ、まりさぁ、ゆっくりしてるよぉ」 「ゆん、そうだね、それも人間さんのおかげだよ。おしごとをすればこの公園に住ませて くれてごはんもくれるんだから」 「ここはさいこうのゆっくりぷれいすだね!」 ここは、あのぱちゅりーたちの住んでいた公園から少し離れたところにある公園で、こ こでもまた、野良ゆっくりたちが清掃などのお仕事をする代わりに公園に住むことを許さ れていた。 ぱちゅりーのような賢い指導者がいるわけではないので、仕事は効率的に行われてると は言えず、皆苦労していた。 それでも、ゆっくりたちは現在の待遇に十分満足し、とてもゆっくりしていた。 終わり 書いたのは半端な知恵とか力が原因で滅びる系の話が好きなのるまあき。 そろそろボリュームのあるやつ書きたいのぜ。 過去作品 anko429 ゆっくりほいくえん anko490 つむりとおねえさん anko545 ドスハンター anko580 やさしいまち anko614 恐怖! ゆっくり怪人 anko810 おちびちゃん用のドア anko1266 のるま anko1328 しょうりしゃなのじぇ anko1347 外の世界でデビュー anko1370 飼いドス anko1415 えーき裁き
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/2200.html
ご立派さまとゆっくり 8KB ギャグ パロディ 小ネタ 自滅 自然界 人間なし ぺにまむ 第二作目となります、一部ぺに注意をば。 まずは最初に、感謝の言葉を述べさせていただきます。 前作、『ふたば系ゆっくりいじめ 872 横バンジー』におきまして、閲覧・コメント等を下さった皆様に対して、 この場を借りてお礼申し上げます。 今作において、皆様にご指摘いただいた箇所を活かせることが出来ていれば幸いです。 また、今作を書くにあたり、きっかけと先陣を切って下さいました、 ゆっくりメガテンSS作者様に、無上の感謝を。 一部、悪魔の台詞部分の括弧などを引用させていただいております。 それでは、暫し稚拙な文にお付き合いいただけましたら、之幸い。 ――― 「ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!!」 一匹のれいむが、懸命に跳ねている。 ゆっくりならば、ゆっくりとしていて当然であろうに、 何がそこまでれいむを急がせているのだろうか。 ふと、れいむが後ろを振り返ってみると、 「んほおおおおおお!!とかいはなれいむねええぇぇぇ!!! ありすがとかいはなあいをあげるわああぁぁぁ!!!」 れいぱーありすの集団に追われているではないか。 「ゆひぃー―!!れいぱーはゆっくりできないよおぉぉ!!!」 捕まればゆっくりできない目に遭わされる。 本能でそれを理解している以上、決して立ち止まるわけにはいかない。 「だれかれいむをたすけてよぉー!!……ゆっ?」 ふとれいむが前方を見ると、樹の下の陰に、小さく簡素なドアがあり、 中から微かにゆっくりの声が聞こえる。 「ゆゆっ!なかからゆっくりのこえがするよ!ゆっくりいそいで なかにひなんするよ!!」 れいむは持てる力を振り絞り、先程までの1.2倍のスピードで 樹の下のドアに向かって跳ねた。 やっとの思いでドアに飛び込んだれいむは、背後かられいぱーが 迫っていないか、耳(?)をすませてじっとしている。 しばらくそのままの体勢でいたが、れいぱーの声が聞こえないことに気付くと、 「ゆふぅー…れいぱーはいなくなったみたいだよ。 やっぱりれいむがとくべつだから、たすかったんだね! かわいくってごめんねっ☆ミ」 安心と同時に、誰も見ていないにもかかわらず、 媚びたポージングもしてみせた。 一通りの戯言を終えた後、れいむは現状確認をする。 「ゆぅん…それにしても、ここはどこなの?くらくてずいぶんゆっくり してないし、さっきこえがきこえたゆっくりはどこにいるの? れいむがせっかくきてあげたのに、気がきかないね!ぷんぷん!」 れいぱーに追われて逃げ込んだことなど、既に忘却の彼方だ。 今では、わざわざ遠方から来てやったことになっている、さすがは餡子脳。 「ゆっ……したのほうからゆっくりのこえがするね、ゆっくりいってみるよ!」 れいむはぽよんぽよんと、ドアを入った奥、地下に到る道を跳ねていった。 れいむが下に潜って少し経つと、開けた空間が目前に広がった。 地面には木の枝で描いたのであろう円のようなものがあり、 部屋の最奥には、葉っぱの上に芋虫が乗せられたものが4つ並んでいる。 その芋虫が置かれた前の位置、円の外周面に、1匹のゆっくりぱちゅりーがいる。 周りを見回してみると、ありすが2匹、ぱちゅりーから少し離れた位置に並んでいた。 ありすが先程のれいぱーの仲間かもしれないと思い、一瞬身体が強張ったが、 「ゆっくりしていってね!!」 口の動きだけは、れいむの意思に反して、勝手に言葉を紡いでいた。 「ゆん?ゆっくりしていってね!!」 「むっきゅっきゅ、ゆっくりしていくといいわ…。」 幸い、普通に返事をした所を見ると、どうやられいぱーではないらしい。 一安心して、れいむはこの3匹が何をしているのか尋ねる。 「れいむはれいむだよ!ありすやぱちゅりーはここでなにしてるの?」 「ありすはありすよ!ありすたちはぱちゅりーにおねがいして、 れいぱーをたおす『あくまさん』をしょうかんしてもらおうとしてるのよ!」 「ぱちゅはぱちゅよ……むっきゅっきゅ。」 肯定の意なのか、挨拶の後にぱちゅりーが含み笑いをする。 悪魔の意味は分からなかったが、れいぱーを倒すときいて、 れいむは自然とテンション高めで、目を輝かせながら話に飛びついた。 「ゆわあぁぁ…!れいぱーをたおすなんて、『あくまさん』は ゆっくりしてるんだね!」 「そうよれいむ!そこにきづくなんてなかなかとかいはね!! わかったら、れいむからもぱちゅりーにおねがいしてくれないかしら?」 このありす達、れいぱーと同じありす種という理由だけで群のゆっくりに迫害され、 ついには群を追放されてしまったのだ。 あてもなく森を彷徨っていると、通りすがりのちぇんから、 「すごいちからをもったゆっくりがいる」という噂を聞き、 こうしてぱちゅりーのもとを訪れたという訳だ。 「ゆん!れいむからもおねがいするよ!! ぱちゅりーははやく『あくまさん』をしょうかんしてね!! それとれいむにあまあまちょうだいね!たくさんでいいよ!!」 どさくさに紛れて自分の要求もしっかり言っているところが、 れいむらしいといえばらしいのであろう。ゲス素質が見え隠れしているが。 「そうよそうよ!はやく『ごりっぱなあくまさん』をしょうかんしてね!! ……ありがたやー。」 3匹に頼まれ、ぱちゅりーは少し目を閉じて考え込み、そして言った。 「………むっきゅっきゅ、さっきからいってるように、まだ 『あくまさん』をしょうかんするときじゃないのよ。 あの『あくまさん』は『ごりっぱなあくまさん』……かんっぺきっな ときにしょうかんしないと、おそろしいことになるのよ。」 ぱちゅりーのやんわりとした否定の言葉に、ありす達が怒り狂う。 「なにいってるのお゛お゛お゛!!! はやくしょうかんしなさいっていってるでしょお゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!! ありすとおなじれいぱーなんて、1びょうもいきてちゃ いけないことをりかいしなさい!!このいなかものお゛お゛ぉ゛ぉ゛!!!」 「ほら、れいむもはやくおねがいして!『ごりっぱなあくまさん』をしょうかんして、 れいぱーたちをえいえんにゆっくりさせてって!!」 れいむは少し考え込み、すぐにれいぱーに追い回されたことを思い出し、 ぱちゅりーに早くするよう催促する。 「ゆううう!ぱちゅりーはさっさと『ごりっぱなあくまさん』をしょうかんしてね!! ぐずはきらいだよ!!」 「ほら、れいむもこういってるわ!ぱちゅりーははやく 『ごりっぱなあくまさん』をしょうかんしてちょうだい!!」 れいむの発言に少しイラッとしたが、ぱちゅりーは不適に笑いながら告げる。 「……むっきゅっきゅ、どうなってもぱちぇはしらないわよ?」 そう言うと、ぱちゅりーは呪言の詠唱を始めた……。 「えるえろひむえろほえろひむさばおとへいおねいえちあぎえれえかあどないじゃあ しゃだいてとらぐらまとんしゃだいあぎおすおせおすいすくひろさたんとん… あぐら…あーめん…きえぇえぃ!」 ぱちゅりーの最後の叫び声と同時に、雷が円(魔方陣)の中央に落ち、 皆が待望の『ごりっぱなあくまさん』…マーラ(様)が召喚された。 …が、 【…ウジュル………ウジュルジュル……ググ……ギギ………】 予想していた『ごりっぱ』な姿ではなく、ふにゃふにゃの頼りない姿であった。 予想外のマーラ(様)の姿に、これにはありすも大激怒。 「ばぢゅりいい゛ぃ゛ぃ゛!!これはどういうごどなのお゛お゛ぉ゛ぉ゛!!!」 左右に振り回され、クリームを吐きつつパチュリーは答える。 「えれえれえれ……むきゅ、どうやらあわててしょうかんしちゃったから、 かんっぺきっじゃない『あくまさん』をしょうかんしちゃったみたいね……えれえれえれ。」 ありす達の希望の光とも言うべき悪魔、マーラ(様)が失敗作と聞いて、 自分達の悲願を達成できないと知ってしまって、 そして、目前の『ごりっぱ』ではない失敗作を恐れ、怯えた。 「「「ゆ、ゆわあああああああ!!! きもちわるいあくまさんはかえってねええぇぇぇ!!!」」」 勝手に召喚した挙句、今度は気持ち悪いから帰れとは、なんと自分勝手な。 その感情を口にするべく、マーラ(様)は口を開く。 【ググ………ギ………オマ…エラ……ヨク…モ……!】 そこまで言って、マーラ(様)は突如身体を伸ばし、 一時的に『ごりっぱ』な姿を取り戻した。 すると今度は身体を縦横無尽に振り回し、狭い空間にいるゆっくりたちを 押し潰すべく、暴れまわりだした。 「ゆんやあぁぁー――!!れいむはかわいいからゆるしぐべらっ!」 話の途中で、入り口付近にいたれいむは、上半身を吹き飛ばされた状態で即死した。 「「あああ、ありすはとかいはなのよ!きもちわるい『あくまさん』でも、 ありすにかかればとかいはなこーでぃねーとをぶぎゅっ!」」 マーラ(様)を再度挑発してしまったことで、ありす達はまとめて カスタード塊に変えられてしまった。 自分以外のゆっくりがすべて永遠にゆっくりさせられたことで、 召喚主たるぱちゅりーは、焦りながらもマーラ(様)を説得しようとする。 「む、むきゅー!ぱちゅは『あくまさん』をしょうかんしたしゅじんさんなのよ! わかったら『あくまさん』はぱちゅのいうことをえぶふぇっ!」 不完全な姿で召喚した者の言うことなど聞く必要はないとばかりに、 ぱちゅりーはマーラ(様)の突進をまともに受け、爆ぜた。 悪魔を召喚する以上、対価は必要になる。 供物として芋虫を用意したはいいが、その程度でかの魔王は満足しなかったようだ。 犠牲になったゆっくり4匹程度でその穴は埋められたのだろうか。 それは、彼以外誰にも分からないのであった…。 完 ――― 少しの後書き いかがだったでしょうか、少しでも楽しんでいただければこれ以上の喜びはありません。 とはいえ、ターゲット層を絞った作品ではありますが…。 最後に再度、ゆっくりメガテンSS作者様に感謝を。 もし迷惑でしたら、コメントに気付き次第削除させていただきます。 それでは、ありがとうございました。 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る ナニが御立派かって? カリにも魔王マーラ様だぞ? お釈迦様でもない限り誰にも勝てんよ。 -- 2018-01-05 18 32 15 カリにも魔王だぞ? 許すわけないだろう・・・ -- 2014-08-04 15 03 29 マーラ様は瞬殺派らしいな。 -- 2013-05-30 00 01 51 マーラさんは、ゲス野郎4っつと、芋虫4匹で許すって…心が広いな -- 2010-12-11 16 17 30
https://w.atwiki.jp/songsdata/pages/112.html
- 2012年8月7日「もっと ぎゅっと ハート」おはガールちゅ!ちゅ!ちゅ! 2012年11月20日「こいしょ!!!」おはガールちゅ!ちゅ!ちゅ! 2013年2月19日「こあくまるんです」おはガールちゅ!ちゅ!ちゅ! 2013年7月9日「夏サンキュ!!!」おはガールちゅ!ちゅ!ちゅ! 2013年11月5日「夢ふうせん」おはガールちゅ!ちゅ!ちゅ! おはガールちゅ!ちゅ!ちゅ!
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/1968.html
続々ゆっくり研究 20KB 虐待-普通 制裁 愛で 観察 考証 差別・格差 妊娠 飼いゆ 野良ゆ 姉妹物 透明な箱 独自設定 続々ゆっくっり~ *いやぁ~ちょっと趣向を変えてみたが不評でした。 *今回は一作目と同じ設定に独自のニュアンスを絡め、話が単調にならないように展開を多めに入れてみました。 *厳しい意見はとってもためになり次回作の意欲に繋がるので大変感謝です。 *でも、あんまり怒られると凹む乱筆乱文の作文野郎ですが生暖かい目で見てやってください。 *そんではどうぞ~♪ 十一目 本日は他のゆっくり研究員達数名と朝からディスカッションをしていた。私の研究成果の中途報告をしたところ様々な意見が出た。 ・研究の手法としては概ね問題は無いが、ゆっくりを追い詰める姿勢に問題がある。ゆっくりへの虐待はゆっくり研究では不可欠だが 少し感情移入が多く無いか?それに伴って研究視野が狭まってきてはいないか。 少々耳が痛い質問であったが反省すべき点に気づかされたので大変感謝した。 ・研究するには個体数が少なすぎではないか?蔓を採取した親ゆっくりごと捕獲したら良かったのではないか? これに対しては私が考える研究計画から大きく外れるのでそれに関してはコメントを控えると伝えた。 ・ゆっくり研究をするのなら是非一度食してみるべき。 可でもなく非でもないが苦笑いで応対した。 最後にこれからの私の研究のマイルストーンに少しだけ触れた。 ・現在の個体の中でブリーディングを成功させ、野良ゆっくりが野性の中でどれだけの種類の個体と交配を重ね、その遺伝子を 継ぐ遺伝子餡を保有してるかを検証する。 ・最終的にはクラスAを常時1~2匹、クラスBを常時3~4匹、クラスCを常時10匹前後、クラスDを10匹以上保有すること。 ・そして最後にクラスSSとなる一般放し飼いの個体に金バッジ認定以上の上位教育を施し知能の限界を試す 私はディスカッションで得た意見等を参考に新たな研究姿勢を模索しつつ夕方近くに研究室に赴いた。 クラスCの水槽を覗きこんでみると長女のれいむと次女のまりさがボーっとクラスCの水槽を見下ろしてた。その一方、三女のぱちゅりは 水槽の角で蹲っていた。 三女のぱちゅりにどうした?と尋ねたら、なんでもないと一言言うだけなので例の監視カメラの録画記録を確認してみた。 餌の事でかなり虐げられたようだ。 もう一度三女のぱちゅりに、他の二匹に餌の事で苛められたのか?と聞いたら、いきなり口からクリームを吐き出した。確かどこかの 論文で「ぱちゅり種は過度のストレスによって体内の内容物を吐き出して弱ってしまう。」と、書いてあったのを思い出した。 ちょうど良い機会なので三女のぱちゅりを隔離するべくクラスBにランクアップさせることにした。 クラスBの水槽に移動した三女のぱちゅりは、激しく動揺してさらにクリームを吐いた。私は焦りながら三女のぱちゅりを説得した。 ・ここにはおしおきのために入れたのではない。・優れた個体だから入れた イマイチ「優れた」という意味が伝わらなかったようだが、まぁ良しとして私は簡単に水槽の説明をした。そして新しい設備の 二倍に薄めたオレンジジュースが滴下される皿の事も。 とりあえず薄めたオレンジジュースを舐めさせてみたところ非常に喜んでいる。しきりに感謝の言葉を投げかけてくるので早速 クッキーを与えた。ちゃんとクッキーの前で制止して私の言葉を待っているので焦らさずあっさりと食べることを許可した。 折角の餌を残すほど嫌がってたクッキーをガツガツと食べながら、美味しいとか感謝の言葉とかを投げかけながら笑顔で食べている。 これは人間である私に媚へつらって言っているのか?もしくは本当にそう思って言っているのかは暫く様子を見て見極めねばならない。 そして最後の一欠けらに差し掛かったところで残りの餌を保存したいと願い出た。クラスCで見たボトルキャップに詰められた餌は 三女のぱちゅりの仕業だったのかとわかった。 私が快諾すると三女のぱちゅりは水槽に転がしておいたアイテムの中からまたボトルキャップを選び出してそこに残りの一欠けらを 入れ巣の中の奥にしまいこんだ。 指先で戯れてやってると食後の便意をもよおしたらしく排泄用の穴から便を下に落とした。落ちた便はまっすぐ下のクラスDの水槽に 落ちた。クラスDの水槽でぐったりしている四女のちびれいむと五女のありすはそれを餌だと思い、力なくその便に近づき食べようと したが、臭い臭いと言ってそれが便である事実に愕然としていた。三女のぱちゅりは排泄用の穴から悲しそうに下を覗き込んでいた。 次にクラスCの水槽に移ると相変わらず節操無く餌の要求を繰り返しているが、さすがにいつもよりは元気が無い。とりあえず クッキーを二枚置いて焦らしてみる。次女のまりさは固く強張りながら良し!の号令を待っている。長女のれいむは唸るような表情で 号令を待っているのでさらに焦らした。 1~2分焦らしたところで良し!と号令をかけた。二匹ともクッキーに飛びついてを必死に喰らっている、既に味の事なんか二の次で、 瞬く間に餌を喰らい尽くした二匹は、しつこく遊んでくれとねだってきたので遊んでやっていると。不意にこう質問してきた。 なぜ三女のぱちゅりは、あんなところに居るのだ?さっきからぱちゅりが舐めているあれは一体なんだ?と聞いてくるので二匹に こう説明した、三女のぱちゅりは言うことをちゃんと聞いて良い子にしているから。すると自分達もちゃんとゆっくりしていると 反論してきた。 個体達がしきりに使う「ゆっくり」の意味が少しだけわかったような気がした。次にあの舐めているものはなんだ?と言う問いに 実際に一滴づつ口の中に垂らしてやって理解させた。 飛び上がるほど喜んでさらに寄越せと騒ぐので菜箸の先で弾き転がしてから、お前達はまだまだダメだ!という旨を伝えた。 二匹は黙ってうらやましそうに自分達が居るクラスCの水槽の上の段にあるクラスBの水槽でで快適に過ごしてる三女のぱちゅりを じっと眺めていた。 最後にクラスDの水槽に移り観察していたら、ぐったりする四女のちびれいむと五女のありすがやってきて餌の催促を力なくする。 餌ならさっき落ちてきたアレがあるだろと言ったら、あれは食べ物じゃない!と猛烈に抗議してきたが、私はその抗議を遮り、 餌はアレだ!と冷静に伝えて続けて放たれる戯言を一切無視した。 二匹の前日の傷口をよく観察すると餡の流出こそは止まっていたが、皮の再生は思いのほか進んでいない。五女のありすに至っては 次女のまりさに噛まれた歯型の通り丸く皮が切り取られ、その切り取られた丸い皮は一部だけ体の皮と繋がって、まさに皮一枚で プラプラとぶら下がってた。 過酷な環境の元では再生能力も格段に下がると思われる。 十二日目 本日は少し遅めの午前10時に研究所に赴いた。 まずは手始めにクラスBの水槽に歩みを進め三女のぱちゅりの様子を観察。起床時間だったのかちょうど巣穴から出てきて 例の挨拶から始まった。挨拶を交わしてやると非常に喜んで跳ねて回った。本日も例のクッキーを与えたが相変わらず何の不満も 言わずニコニコしながら感謝の言葉を絶やさず食べ、昨日と同じく私の許可を貰ってクッキーの一欠けらを咥えて巣穴の奥に 消えていった。 巣穴の奥を覗き込んでみると、寝床にハンドタオル、食料庫にペットボトルの蓋、使い道は謎だが金属製の光った栓抜き、使い切った ボタン電池、どこかのメダルなどが綺麗に並べられていた。 滴下されたオレンジジュースを随時舐めずに溜めて置いたらしく受け皿いっぱいになったオレンジジュースを食後のデザートと 言わんばかりに一気に飲んで満面の笑みだ。 だが、少し気がかりなのは、笑みの向かう先は下のクラスCの水槽に居る二匹の兄弟に向けられていたことだ。 次はクラスCの水槽に近づき観察してみると、長女のれいむと次女のまりさは既に起きておりその視線はクラスBの水槽でであった。 二匹はなぜあっちのクラスBの水槽に行けないのか?みんな一緒に居ないと楽しく出来ないなどと訴えてくるがダメなものはダメと 言い聞かせた。二匹はいつも通りにガツガツとクッキーを噛み砕き水分も取らずに咳き込みながら食事を済ませた。 しばし長女のれいむと次女のまりさと指先で戯れていたが、しきりに次女のまりさがみんなと一緒に居たいと訴えてきた。 クラスDの水槽に居る二匹の傷の治りが遅いのは隔離してることが原因なのかもしれないと思った。 早速クラスDの水槽を覗きこんだ。四女のちびれいむと五女のまりさはお互いもたれ掛かるようにして虚ろな目で空を見ている。 二匹の傷口の具合は相変わらずだ。体内の餡の水分が減ったのか、餡自体が減ったのかは定かではないが少しやつれているようだ。 三女のぱちゅりが落とした便には口を付けていないらしく落ちてきた状態のままだった。 監視カメラの録画記録をチェックしてみるとそこにはなんとも笑ってしまう現実が写っていた。 お互い先に眠った方の傷口から餡を相手に舐め取られていたのだ。舐め取られた方はそれに気付いて相手を叱責している。 そんなことをお互い交互に繰り返しているものだから体内の餡は二匹とも減っていたのだ。 一見仲良さそうに見えた光景だが本当は至近距離で相手が眠るのを待っていただけだったのだ。 なんとも間抜けな事実を知って疲れたので本日は別室にて少し遊ぶことにした 水槽は無防備に蓋もされず置いてあったが中の野良れいむはしっかりと足を焼かれていたので脱走することも出来ずに水槽の中で 長細くなって横たわっていた。肛門付近には多量の便がありそれから身を遠ざけるための措置らしい。 眠ってるのか起きているのか解らないので顔面をライターで軽く炙ってみると絶叫を上げてビタンビタンと身をくねらせた。 なんで酷いことするの?とか便が臭くてゆっくりできないとか母親の所に帰してとか口やかましく言うので焼いた足の部分を カッターナイフで何度も執拗にに切り付けライターで炙った。もはや奇声のような声を上げてキューっと身を縮めて痛みと戦っている。 涙声でなんでこんな酷いことするの?と言うのでニッコリと笑ってから焦げて硬くなった足の部分を握り潰してやった。 余りにも強烈な痛みに絶叫も出ず喉の奥から餡を吐き出して痙攣し始めた。 この程度で死なれてもつまらないので普通濃度のオレンジジュースを注射器で100mlほど注入して水槽に蓋と重石を載せた。 そうだ今度空気や食塩水を注射器で注入してみようとアレコレ考えながら本日の活動を終えた。 十三日目 本日は午後から研究室に赴いた。 早速餌のクッキー片手にクラスBの水槽を覗きこんだ。三女のぱちゅりは寝床の巣穴にはおらずクラスCの水槽が見下ろせる壁に へばりついて下のクラスCの水槽を覗きこんでいた。どうしたのだ?と問いかけると、下の水槽が大変だというのでチラっと 目をやると長女のれいむの額から蔓が伸びてるではないか!私は良しの号令はいいからとクッキーを水槽に放り込んでクラスBの 水槽に移動した。 クラスBの水槽では長女のれいむとそれに寄り添うように次女のまりさが傍に居た。私を見た二匹は、赤ちゃんができたと喜んでおり 次女のまりさは嬉しそうにピョンピョンと跳ねて私に報告してきた。長女のれいむは私のあかちゃん、私の赤ちゃんと終始笑顔である。 さっそく餌のクッキーを広場に置き、良し!と号令をかけたら長女のれいむはクッキーを見るや否やこれじゃ足りないと怒鳴ってきた。 赤ちゃんが出来たのだからもっと美味しい餌を寄越せだの、量が足りないから二倍持って来いだのかなり酷く増長していた。 咄嗟に次女のまりさが自分の分もあげるのでとなだめているが長女のれいむの生意気な発言は次から次と連発して出てくる。 私は長女のれいむを鷲づかみで持ち上げ蔓を観察した。一番先頭の個体は今にも生まれ落ちそうなくらい成長してた。 先頭から種類を確認すると、れいむ種が続けて二つ、続けてまりさ種が二つ、最後にぱちゅり種が一つの合計5個体が生っている。 観察の間、延々と罵倒してきたので私はそのまま長女れいむをクラスDの水槽の真上に持ってきた。あまりわがままを言うとここだぞ! と脅したが長女れいむはさらに罵倒してきた。 私は黙って先頭の個体を毟った。 長女のれいむは悲しみの断末魔の叫びを上げ返してと叫び続けた。私は一旦、長女のれいむをクラスCの水槽に戻し、掌の上で 母を捜して泣いている生まれたばかりの個体を水槽のガラス越しに長女のれいむに見せた。 長女のれいむは泣き叫びながら返せと喚く。私は泣きながらガラス越しの母に助けを叫んでいる個体を手のひらの上で 真っ二つにカッターナイフで切り分けた。 長女のれいむは気が狂ったように叫びを上げた。まだ騒ぐのなら残りの赤ちゃんもやるぞ!と脅したらボロボロと涙を流して 口をつぐんだ。 私は手のひらで二つに切り分けられた個体をクラスDの水槽に放り込み。 それを食ったら戻してやるぞと四女のちびれいむと五女のありすに言った。一部始終見ていた二匹は目の前に置かれた真っ二つの 新しい兄弟を眺めながら硬直していた。 ほら食べたらみんなの所に帰れるぞ!と食うことを薦めた。二匹は空腹で視線が定まらない目で真っ二つになった兄弟を見つめ、 おもむろに食べ始めた。 すると二匹は凄く美味しいと貪るように食べて喜んでいるではないか。私は二匹に装飾品を返してやってクラスCの水槽に戻した。 長女のれいむは赤ちゃんを食べた二匹を叱責すると思いきや、どんよりと疲れた顔で巣穴の中に消えていった。次女のまりさは 長女のれいむの罵倒を詫びて、その事を許してやってくれと哀願してきた。発情を迎え、性別がオスに固定された次女のまりさは もう次女とは呼べなくなったようだ。 元次女のまりさは長女のれいむが食べなかったクッキーを渡してくると言ってクッキーを咥えて長女のれいむの後を追った。 長女のれいむは個室の奥でポケットティッシュで作った寝床を柔らかく盛りまとめて、その上に蔓が来るように座り込み 元次女のまりさにクッキーを食べさせろと口やかましく命令していた。 私は早速別室にて水飴処理の準備と小細工の準備をした。まず人間用の睡眠薬をすり潰して水に溶き、水溶液を作った。 それを角砂糖に染み込ませ、特製の角砂糖を作った。次に水飴を注射器に入れ、痛み止めのオレンジジュースを用意した。 深夜になってから私はそっと研究室に戻り全員眠ってるのを確認してから長女のれいむをそっと巣から掴み出した。 掴み出された長女のれいむは、どうしたの?離して!と騒ぎ出しそうになったので、お前は妊婦なんだから特別な餌を与えようと 誤魔化して机の上のタオルの上に移動した。 そこで先程作った睡眠薬が染み込んだ角砂糖を一つ食べさせた。凄く美味いとガツガツと一気に食ってしまった。もっと寄越せと 言いたそうであったが先刻の事があったので、おいしかったよと言ってきた。 長女のれいむに睡眠薬が効きだすまで、赤ちゃんを眺めてて良いか?と下手に出てお願いしたら、偉そうに少しならいいよと了承 してきた。真っ二つにされた個体の次の個体は既に生れ落ちそうな状態だったのでヤバイヤバイと焦ったが睡眠薬が効いたらしく 長女のれいむはやっと眠った。 角砂糖を与えたせいか成長が目に見えて早くなった。さっそく一匹目が生れ落ちた。予想通り落ちた瞬間から例の挨拶をしてきたの だが、それに答えると後々面倒になりそうなので無視を決め込んでたら泣き出した。 うるさいのでクルリと後ろ向きにして何が起きた?と動揺する個体の背後からブスリと注射器の針を刺した。いきなりの激痛に 白目を剥いて硬直してるので面白い。 水飴の注入を終えて針を抜くと火がついたように泣き出したので傷口にオレンジジュースを塗ってやる。前に読んだ論文の実験風景の ようにすぐに痛みが消えたらしく少しの間混乱してたがすぐに忘れてその辺を飛び回るのでティッシュを敷いたタッパーに入れた。 そのようなことを繰り返して全員水飴処理を終わらせ長女のれいむの方を見ると既に蔓は抜け落ちていた。 私は眠る長女のれいむを巣穴に戻し、あたかも今抜けたように目の前に蔓を置いた。それから生まれた子供達を巣穴に放り込み 眠る長女のれいむを揺り動かして起こそうとしたが一向に起きない。仕方が無いので額に針を突き刺してやったらギャーと叫んで やっと起きた。 ほら、赤ちゃんがもう生まれているぞ!と言ったら、怪訝そうな顔でまだ生まれないはずなのにと不思議そうにしてたが、自分の 子供達を見たらそんな考えも吹き飛んだらしく、大喜びで自分が母だと言って蔓を食べさせていた。 子供達はやっと母親を認識したらしく頬を摺り寄せて甘えている。そうこうしてたら父親のまりさが起きだして感動しながら自分が 父だと説明して子供達と挨拶を何度も繰り返していた。 本日は夜も遅いのでこの辺にして惰眠を貪ることにした。 十四日目 本日は新しい研究対象が出来たことなので朝から研究室に赴く。 まずはクラスBの水槽に向かい三女のぱちゅりの様子を見た。既に起床していたらしく、小皿に溜まったオレンジジュースを舐めていた。 この水槽に移動してからは毎日機嫌もよく、うるさい位に挨拶をして甘えてくる。指先を甘噛みさせたり、頬を撫でて可愛がってると 長女であり今は母親のれいむの子供達の一人が自分と同じだ。一人だけ両親と同じ姿じゃないので苛められてる。と寂しそうに 打ち明けてきた。 私は餌のクッキーを与えてから、下に行って子供達を見たいか?と尋ねると行きたいと猛烈に頼み込むので、餌が食い終わるのを 待って、下のクラスCの水槽に一時的に下ろしてやった。 三女のぱちゅりが巣の前に向かうと巣の前で中に入れてもらえない四女のちびれいむと五女のありすが居た。 なんでも子供達を食べた二匹を意地でも近づけさせないように長女のれいむが巣の奥で威嚇している。 あんまり兄弟に冷たくしてると子供達を全部取り上げるぞ!と脅したら、しびしぶ巣穴から出てきた。 私は母親のれいむに一枚、子供達に一枚、父親のまりさに一枚、四女のちびれいむに一枚、五女のありすに一枚と餌のクッキーを 与えた。父親のまりさは子供達に餌を食べる時のルールを教え子供たちは以外に素直に従った。当の母親である長女のれいむは 相変わらず餌の前で険しい表情で号令を待っている。 私は号令を焦らして子供たちの様子を伺ったがみんな父親のまりさのように黙って餌の前で並んでいた。そしてやっと良し!の号令を 出した。父親のまりさと子供たち以外はガツガツとみっともなく餌に噛り付いた。 食事を終えた全員は早速排便をもよおして排泄用の穴から排泄し始めた。そこでも父親のまりさは排泄のルールをしっかりと 子供たちに教え込んで排便の手助けをしていた。 発情期を終えすっかり真面目になった父親のまりさを見て、ここでやっと性格の固定が済んで自分の役割に目覚めるのだなと確信をした。 食事と排便を済ませた母親のれいむと父親のまりさ達は仲良く子供達と戯れ、子供達も両親に甘えている。発情を終え真の性格が 固定された長女のれいむは餌が足りないから父親のまりさに追加の餌を私から貰って来いと口汚く罵っている。 かなり我がままな性格に固定されたようだ。 父親のまりさは私に非常に気を使いながら餌の追加を頼んできたがダメと一言言って話を終えた。その結果を長女のれいむに報告 するや否や長女のれいむは酷く父親のまりさを罵り追い詰めていた。 落ち込んでいる父親のまりさを元気付けようと泣きながら頬擦りして例の挨拶を繰り返してるのは一番最後に生まれた、ぱちゅり種の 個体のだった。 母親の方で生まれた子供たちみんなで頬を摺り寄せる遊びみたいなのが流行って、ぱちゅり種の個体も乗り遅れてはならないと言わん ばかりに、てんてんっと跳ねて母親のれいむの傍に擦り寄った。 二~三度、頬擦りしたあたりでその子は他の子に弾き出された。母親のれいむはそれを見ても何の関心も示さない。それどころか 泣きじゃくるその子に泣いてばかりでうるさいと怒鳴りつける始末だ。私は一体どういうことなんだ?と責めたら、その子は父親にも 似てない母親である自分にも似てないダメな子。と決め付けそっぽを向いている。 私は、この母親になったれいむは頃合を見計らってさっさと隔離しないと研究の邪魔だと悟った。 そんな、ぱちゅり種の子を優しく呼んで可愛がるのは同種である三女のぱちゅりである。自分が姉だよと優しく頬を摺り寄せ 目に涙を浮かべながら可愛がっている。 その光景を見ていた母親のれいむはあんなの自分の子じゃないと二人に向かって罵声を放ってきた。子供の前だからと自制してたが いい加減その生意気な口調を直せと母親のれいむを掴み上げ子供たちに見えないよう背を向けて力いっぱい指で数十発弾いてやった。 ようやく涙目になりながら、もうしないと言ったので水槽に戻してやった。子供たちは不安そうに母親に擦り寄り、どうしたの? と心配して腫れてる部分を小さな舌で舐めている。 私は三女のぱちゅりをクラスBの水槽に戻す際、のけ者にされていた、ぱちゅり種の個体もクラスBの水槽に移した。父親のまりさが 何故?と聞いてきたが、ここで苛められるよりマシだろと言ったら素直に納得していた。 クラスBの水槽に来たぱちゅり種の個体は最初母親が居ないと激しく動揺して水槽の中を探し回っていたが三女のぱちゅりがちゃんと 下の水槽に居るよと教えて少し落ち着いた。 三女のぱちゅりがクラスBの水槽の設備を優しく説明して最後に滴下されるオレンジジュースを舐めさせた。喜んで舐めるぱちぇり種の 個体、子ぱちゅりを眺めて微笑んでいた。 十五日目 本日は昼過ぎに研究室に赴いた。 私は資料の整理をしてからゆっくりとクラスBの水槽に近づき三女のぱちゅりと母親のれいむのぱちゅり種の個体、子ぱちゅりの様子を 見た。二匹は既に起きてて、水槽に転がしておいたパチンコの玉で遊んでる子ぱちゅりとそれを優しく微笑みながら眺める三女の ぱちゅりが居た。 相変わらずの例の挨拶を投げかけてきたので挨拶を返し、三女のぱちゅりに昨夜はどうだった?と聞いたら少しだけ夜泣きは したものの問題無かったと返答があった。 餌のクッキー一枚と1/5のクッキーを並べて置いて、一枚の方に三女のぱちゅり、子ぱちゅりはこっちと1/5の方に並ばせた。 子ぱちゅりは何の文句も言わずにニコニコと1/5のクッキーの傍でちゃんと号令を待っていた。 相変わらずこの種の行動には感嘆させられる。たいして焦らしもせず良し!と号令をかけてクッキーを食べる子ぱちゅりを確認してから クラスCの水槽に移った。 水槽の前に移ったとたんに昨日あれだけ制裁した母親のれいむが早く餌を寄越せと口汚く罵っている。父親のまりさは一生懸命それを 制止していたがどうにもならない様子だ。しかも子供達まで幼い口調で早く餌を寄越せと言い出している。私は黙って水槽の広場前に 母親のれいむに一枚、父親のまりさに一枚、子供達に一枚、四女のちびれいむに一枚、五女のありすに一枚と並べて号令を焦らした。 すると母親のれいむがもう待ってられないと食べ始めてしまった。父親のまりさはあっと声を上げたが時すでに遅しで子供たちまで 母親の真似をして食べ始めてしまった。父親のまりさはしきりに謝罪をして母親れいむと子供達を許してやってくださいと哀願してきた。 四女のちびれいむも五女のありすまでも、どこで覚えたのか解らないが身を器用に折り曲げ頭を下げて自分達は餌抜きでいいから許して やってくださいと訴えている。 私はここで感情的にならずならず黙って水槽を離れた。 そしてその夜深夜、私は静かに研究室に向かった。 私はクラスCの水槽の巣穴の奥に眠る母親のれいむの口を手で塞ぎ、静かに巣穴から取り出した。 巣穴から取り出した母親のれいむを別室に連れて行き、お前はあの水槽よりこっちの水槽の方がお似合いだ!と例の水槽に放り込んだ。 その中で大量の便と共に倒れている自分の姉にあたる姉のれいむを見て、汚い臭いを連発していた。 姉のれいむは少し考えてから罵倒してくる同じれいむ種が自分の妹だとわかった。自分が実の姉だよと妹であり現在母親のれいむに 訴えたが、そんな臭くて汚いのは姉なんかじゃない!子供達はどうした?ここは何処だ!と罵詈雑言の応酬を浴びせてきた。 そんなに汚くて臭いのが嫌なら今からいっぱい餌をやるのでそれを食って排便をしてさらに汚くなれ!と伝えて、私はその水槽に 大量のクッキーを投入して元通りに蓋と重石を水槽に乗せた。 二匹は不意に与えられた大量の餌を後先考えずに貪り食べ続けてた。 つづく・・・ トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 観察系は結構好き。 投稿SSだから誤字脱字は気にしないけど、 三女ぱちゅりーと子ぱちゅりーは、叔母と姪の関係じゃない? 元次女まりさと四女れいむと五女ありすは調教が成功してきたw -- 2018-01-05 15 15 23 こういう研究の経過も面白いなぁ -- 2010-11-21 21 15 07 楽しいなぁ -- 2010-06-18 02 34 01
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/2466.html
『プレイス・ブレイク 前編』 19KB いじめ 不運 差別・格差 仲違い 日常模様 自然界 人間なし 創作亜種 独自設定 うんしー ドロドロな群れの争いはゆっくりできます 「プレイス・ブレイク」 前編 羽付きあき ・三本構成です ・幾つかの独自設定を使っていますご注意を ・ドロドロな派閥争いがメインですご注意を X月X日、とある山岳へゆっくりの「観察」に訪れた私は一体のゆっくりまりさを保護した。 私が見つけた頃にはかなり衰弱していたらしく、寒天の右目は喪失し、飾りである帽子も何かに「噛み千切られた」様にボロボロになっている。 砂糖細工の髪も何かに引っ張られて引き抜かれた様に一部が抜け落ちていた。 そして小麦粉の体の背部には多数の切り傷や刺し傷の数々・・・ 当初私はこのまりさがドスの群れの「おきて」を破ったことによる追放を受けたのではないかと推測した。 この山岳には「くいーんありす」が率いるありすを中心とした群れと、「ドスまりさ」が率いるれいむ、まりさを中心としたゆっくりの群れの二つがいたからだ。 大きくすり鉢状になった場所があり、そこに二つの「ドス」は共存していた。(その形状のため、すり鉢状の"ゆっくりプレイス"から出るには、段差が大きすぎる為ドスに運んでもらうしか方法が無い) 通常のゆっくりでは容易に出られない「ゆっくりプレイス」ドスまりさとくいーんありすが選んだ格好の場所なのだろうが、それはドスまりさとくいーんありすがいる事によってのみ成り立つのである。 秋から冬にかけての間か、それ以前かもしれない。(まりさの証言から秋の初め~中頃と推測される) ドスまりさとくいーんありすが越冬用の食料をため込むため、すり鉢状のゆっくりプレイスの外へ出たきり帰ってこなくなった。 すり鉢状のゆっくりプレイス内でも、ありす種とまりさ、れいむ種を合わせて有に400体を超えるゆっくり達の台所事情すらも賄えるほどの草や木の実、水場等がある。 だが、それも限りがあるし、貯蓄に回すには心細い。 その為、毎年ドスまりさとくいーんありすがゆっくりプレイスの外に出て食料を調達するのが通例となっていた。(後の調査によると、ドスまりさとくいーんありすは、ゆっくりにとっては薬にあたるあまあま・・・いわゆる"ハチミツ"をとるために、断崖絶壁に近づいた所、そろって落下したのではないかという結果が出ている。いずれにしろ、発見時には尖った岩に小麦粉の体をぶつけて大量の餡子ないしカスタードクリームを飛び散らせて突っ伏したまま潰れていた。即死と思われる。) 問題が残されたゆっくり達だ。 まりさの証言によると、そのゆっくりプレイスの中で凄惨なまでの争いが起きたと言う。 まりさの追憶と、それに伴う私の推測も合わせて、まりさが私の所に来るまでに何があったのかを紐解いていこうと思う。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ・・・ドスまりさとクイーンありすがいなくなって三日後、留守を預かっている「もりのけんじゃ」であるぱちゅりーがその異変に気付く。 「むきゅ・・・どすとくいーん・・・おそいわ・・・まさか・・・」 ぱちゅりーの胸中には嫌な予感がよぎっていた。通例とはいえ、三日も開ける事はなかった。 ドスとクイーンは、いくつかの食料を洞窟の「ちょぞうこ」に入れてゆっくりプレイスの外を出たり入ったりを繰り返しているのだ。 そのスパンは約半日。つまり半日を超えて戻る事はまずありえないと考えていいだろう。 「ちょぞうこ」に入っている食料は、せいぜい50体分程度のゆっくりが越冬できる量だ。350体近く分も不足している。 「もりのけんじゃ」であるぱちゅりーは、もしドスとクイーンに万が一の事態があった場合、群れの統率役を継承すると言う取り決めがなされていた。 しかしドス種ですら二体で分けてようやく統率できる程の巨大なゆっくりの群れを、ぱちゅりーのみが統率するなど不可能に等しい行為である。 ぱちゅりーは悩みに悩んだ末、ある一つの決断を下した。 それは「群れの細分化」である。 決断と言うよりは確実にそうなると見こしての一種の「予測」であろう。 ドスまりさの率いた群れのゆっくり達はぱちゅりーをリーダーにする事に異議はないのだろうが、クイーンありすの群れが率いたありす達の意見は違う。 当然ありす種からリーダーに立候補するゆっくりがいるだろう。 すり鉢状の「ゆっくりプレイス」の中にある限られた食料をいかに貯蓄に回すか、それを考えなければならない時にリーダー決めで無駄な時間を過ごしている訳にはいかない。 ・・・このぱちゅりーの決断が悲劇の始まりであると言う事を知っているゆっくりはいなかった。 ・・・・・・ ・・・ 「むきゅ!みんな!きいてちょうだい!」 ゆっくりプレイスの中央・・・大きく開けた場所にある岩の台の上に乗ったぱちゅりーが、集まったゆっくり達に声を上げた。 「どすとくいーんがもどってこないわ!きっとなにかあったのよ!」 それを聞いた途端にゆっくり達から声が上がった。 「れいむたちのえっとうようのごはんさんはどうなっちゃうの!」 「どすがしんぱいだよ!さがしにいってね!」 「そうだぜ!どすやくいーんをさがしにいくんだぜ!」 「くいーんやどすをみすてるなんてとかいはじゃないわ!」 ・・・大方予想はついた。しかしぱちゅりーは知っている。このすり鉢状のゆっくりプレイスから出られる術はもうない。と 「むきゅ!おちつくのよ!みんな!そこでぱちぇからていあんがあるわ!むれをいくつかにわけるのよ!」 「「「ゆゆ!?」」」 あれやこれやとぱちゅりーをそっちのけで議論をしていたゆっくり達が一斉にぱちゅりーの方へと向いた。 ぱちゅりーは間髪いれずに捲し立てる。 「いまはかぎられたごはんさんをいかにせつやくしてえっとうをするかということにあるわ!りーだーはくいーんのむれとどすのむれでべつべつにきめて、まずはえっとうにそなえるのよ!まずはぱちぇについてごはんさんをちょぞうこにためてえっとうにそなえたいというゆっくりはぱちぇのところにきて!」 「ゆゆ!れいむはついていくよ!」 「まりさもだぜ!」 「でもどすが・・・」 「なにいってるの!どすがいなくなったときにりーだーになるのはぱちゅりーってどすがきめてたんだよ!」 「ゆ!そうだぜ!いまはとにかくえっとうをどうするかをかんがえるんだぜ!」 ぱちゅりーに答えてついて来たゆっくりは約150体。その殆どがこのすり鉢状の「ゆっくりプレイス」に移る前からドスに従っていた古参のゆっくり達である。 ・・・残りの50体はどうか? 「でもやっぱりれいむはどすがしんぱいだよ!どすをさがしにいくよ!」 「れいむも!」 「まりさもだよ!」 「そうだよ!どすがいなかったらえっとうようのごはんさんのたくわえなんてできるわけがないよ!」 「まだふゆまでじかんがあるんだぜ!まりさたちはどすとくいーんをさがしにいくんだぜ!」 一体のれいむの呼びかけにより、ドスとクイーンを探しに行くと言ってきかないゆっくり達。 「ありすもだわ!」 「くいーんがいないなんてとかいはじゃないわ!」 「ありすたちもれいむについていくわ!」 そしてありす側から100体・・・つまりクイーンの群れの約半分が「れいむ派」に合流した。 ぱちゅりーにはある程度の算段があった。 少々予想より多いが、150体程度に「絞られた」 あと越冬用の食料は百体分だけで良い。 そう、ぱちゅりーは自分の意図に反する「ドスまりさ派」に属していたゆっくり達の一部を切り離したのである。 そしていわずもがな、クイーンありす派のありす達・・・ありす種全てもである ぱちゅりーが従っていたドスまりさは「ゆっくり達をゆっくりさせる」為に動いていた。 それは勿論ゆっくり達も承知だったが、ドスまりさは、自身がいなくなった時の事や、「狩り」で不在の間に群れを統率するためにぱちゅりーを置いた。 逆にクイーンありす達は、元々クイーンありすが「おおきくてとかいは」と言う理由で付き従っているにすぎない。 クイーンありすはクイーンになって日が浅かったためか、自身が全てのありす達を「とかいは」に日々を過ごさせる為にワンマンで頑張り続けていたのだ。 もしクイーンが居なくなった時は、ドスまりさの群れに合流する。そう言う取り決めではあった。 これはクイーンとドス、そしてぱちゅりーだけが知る事である。いわば「密約」だ。 ぱちゅりーはこの密約を反故にした。多少自身で「狩り」をする能力があるとはいえ、所詮はありす種。何の実にもならない「とかいはな何とか」と言ったゴミを量産されてもぱちゅりーとしては困るのだ。 また、ドスにおんぶに抱っこの一部の「ドスまりさ派」も越冬には必要ない。 ぱちゅりー・・・つまりドスまりさの意思に付き従うゆっくりだけで越冬をしようと言うのがぱちゅりーの考えであった。 独裁を考えている訳ではない。多少余裕が出れば切り捨てたゆっくり達の一部も収容しようとは考えている。 ・・・こうして「ぱちゅりー派」はドスまりさのいたゆっくりプレイス北側にある大きな洞窟と、その中にある「ちょぞうこ」と五十体分の食料を増やすために行動を開始した。 ・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ ドスまりさとクイーンありす捜索の為に離れた「れいむ派」 ドスまりさの意思を継いで越冬の為の準備を開始した「ぱちゅりー派」 残された百体のありすは一体どうなったのか? 「ありすたちはどうすればいいの・・・?」 「ゆゆ・・・えっとうようのごはんさんもたくわえなきゃいけないわ・・・」 「でもくいーんもしんぱいよ・・・」 ・・・この時点ではまだ何も決まっていない。 問題点を一つに絞らなければならないのにありす達は「くいーんとどすをさがす」「えっとうようのしょくりょうのちょうたつ」「りーだーぎめ」を出来ないでいた。 「みんな!きいてほしいの!」 悩みを抱えるありす達の群れの中で、一体のありすが声を上げた。 「いまはとにかくりーだーをきめるべきだとおもうわ!ありすからていあんがあるの!まずくいーんのおちびちゃんをひとまずりーだーにたてて、だいひょうのありすたちでほうしんをきめましょう!」 「ゆゆ!?くいーんのおちびちゃんを!?」 「で、でもくいーんのおちびちゃんはまだちいさいわ!りーだーになってもなにもきめられないとおもうわ!」 ・・・当然ありす達から疑問点と戸惑いの声が上がる。 声を上げたありすは最初に言った事をありす達に説明するために矢継ぎ早に話を始めた。 「だからありすたちがくいーんのおちびちゃんをささえるのよ!ありすたちできめたことをくいーんのおちびちゃんをとおしてそれをいけんとするのよ!」 「ゆゆ!それはとかいはなあいでぃあだわ!」 「くいーんのおちびちゃんをささえるのはとかいはだわ!」 ・・・こうして建てられた骨組みは、どんどんと肉づけされて行く。 まず百体のありす達から代表で3体のありすが選ばれた。 最初に提案を唱えた「はなかざりありす」とクイーンありすの次に美ゆっくりでとかいはな「とかいはありす」そしてクイーンありすの群れに最初に加わった「おけしょうありす」である。 この三体の話し合いの結果、ひとまずの目標は「越冬用の食料の調達」そして「クイーンとドスの捜索」だ。 後者に関しては、貴重なゆっくりを裂く訳にもいかないため、「はなかざりありす」の提案である「れいむ派」への支援と言う形で取り決まった。 クイーンありすの子ゆっくりは、まだ赤ゆっくりより一回り大きいと言うサイズである。これはクイーンありすがドス化する直前に生まれた子ありすであり、クイーンありすは群れのありす達と平等に「とかいはなあい」を注いでいた。 ひとまず団結と方針の決定に成功した「ありす派」はクイーンありすの元いた「南側の林」周辺を拠点に、「れいむ派」の支援と食料の調達を開始した。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「ゆ!ゆ!まりさがんばるよ!」 「ゆ!ゆ!れいむもがんばるよ!」 「ありすもがんばるわ!ゆ!ゆ!」 ほんの少し平たい形の木の枝を口にくわえて、「ゆっくりプレイス外郭部」の絶壁を、スコップの様に木の枝を使って必死に掘るゆっくり達。 「れいむ派」の代表であるれいむは、「おうちづくり」を参考としたゆっくりプレイスの壁を掘り抜いて外に出ると言う方法を考案した。 ・・・普通に考えれば下から上へと掘り進むため非常に困難である。崩れるのを防ぐために、緩やかな角度で徐々に斜め上に行くように掘らなければならない。 現在の角度から行くと、ゆっくりプレイスの外側へ出る為に掘り進まなければならない距離は約1000m れいむ派が総動員して掘ると、時速2cm程・・・(バスケットボールサイズよりやや大きめの穴を掘らなければならないためより遅くなる) 気が遠くなるような数値だ。 木の枝のスコップを一回地面に突き刺して取れる土の量は数十グラム程度。それを紐のついた葉っぱを使った「トロッコ」に載せて土を運ぶ。 「ゆ!ゆ!」 「おも・・・い・・わ・・・!ゆ!ゆ!」 「ゆひ!ゆひ!」 土はトンネルを掘っている少し離れた場所の外郭部の壁に運ばれた。 「ゆゆ!みんな!つちさんはここにあつめてね!とんねるさんをほったつちさんをここにあつめて"かいだん"をつくるよ!」 「れいむ派」のリーダーであるれいむが指示を出す。 並行して掻き出した土を土盛りすることにより「階段」を作ると言う試みもしている。 実はれいむにとってはこちらが本命であった。 「壁」の高さは4m程。2mサイズのドスまりさやクイーンありすが全力でようやく飛び越えられらる高さである。 だが1000mも掘り進むより、僅か4mの壁に階段を作る方が遥かに容易であった。 「れいむ!」 「ゆゆ!?ありす!どうしたの!」 「れいむたちのためによびのすこっぷさんやとろっこさんをもってきたわ!ごはんさんもあるからうけとってほしいの!」 「ゆゆ!ありすゆっくりありがとうね!」 早速「ありす派」からの支援物資が届く。 食料調達は現在は秋の為困らない。しかしれいむ派を悩ませていた問題は「掘削道具」の不足である。 例えば、木の枝は出来るだけ丈夫な物を選ばなければ固い土を掘る時にすぐ折れてしまう。実際、れいむ派の所有している木の枝スコップの半分以上が破損してしまっていた。 「とろっこ」も「すこっぷ」も制作に時間がかかるのだ。出来るだけ人手を裂いて生産はしているが、追いつくはずがなかった。 ありす派はその問題を補うべく、ありす派の半分を道具の製作の為に裂き、量産体制を整えてれいむ派の支援の為に赴いたのである。 「ありすたちはここまでのことしかできないわ・・・でもできるだけれいむたちをたすけるわ!」 「ゆっくりありがとうね!」 掘削は続く。だが、その間を縫って「ぱちゅりー派」が突出し始めていた。 ・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ 「むきゅ!みんな!いそぐのよ!」 「ゆっくりわかったよ!」 「ゆ!ゆ!」 ぱちゅりー派のリーダーとなったぱちゅりーは群れの子ゆっくり達までもを総動員して食料の調達にあたっていた。 「きのみさんややわらかいはなさんやくささん!きのこさんをゆうせんしてとるのよ!」 「ゆっくちわかっちゃよ!」 「ゆゆ!まりしゃがんばりゅよ!」 「れいみゅもがんばりゅよ!」 子ゆっくり達の群れの中に、まりさはいた。 当時はまだハンドボール程のサイズだったまりさは、何故こう言った事態になったのか、なぜぱちゅりーが焦っているのかを理解するには幼すぎた。 ただ周りの子ゆっくりに負けたくない・・・そういった「ゲーム」の様な感覚で狩りにいそしんでいたと後に回想している。 ぱちゅりー派のゆっくり達は、ありす派の拠点である南側の林にまで足を運んで食料の調達に精を出している。 栄養価の高い食料は、たくさんあると言っても限りがある。それらを出し抜いて全て取ってしまおうと言うぱちゅりーの考えであった。 唯一食料調達でライバル関係になると思われた「ありす派」も、その半分をれいむ派の支援に回して、50体ほどでしか「狩り」が出来ていない。 しかも、クイーンありすを中心にして狩りをおこなっていたため、「とかいはなたべもの」しか知らないのだ。 つまりぱちゅりーが狙っている草花や木の実、木の樹液が固まった物やキノコなどを主な食糧としているため、それらを取ってまわられると不都合が生じる。 それらは越冬のための保存がきく食料になりうる(虫等を重要視していないのは冬の直前までいるし、ありす種は食べ物としてそもそも認知していないからである) 南側の林は特に念入りに採取の対象となった。 ぱちゅりーの考えでは、食料調達に困れば、ありす派は確実にぱちゅりー派に支援を求める。その際に僅かな食糧をダシに越冬用のバリケードや「べっどさん」等を作らせようと言う腹だ。 「おうち」の整備に関してはありす種が一番得意としているため、それを利用しようと考えている。 その為に布石として、南側の林にある食料は念入りに調達された。 育ち切ってない小さな物もその対象である。とにかく全ての食料はぱちゅりー派によって採取されてしまった。 「ぱちゅりー・・・」 「むきゅ?どうしたの?」 「ありすたちはれいむたちをてつだってるよ!まりさたちもどすやくいーんをさがすれいむたちをたすけたほうがいいとおもうよ!」 「むきゃきゃ!しんぱいいらないわ!えっとうをじゅうようししていないれいむたちがあんなことをつづけられるのはふゆさんにはいってちょっとたったくらいまでよ!」 「ゆゆ?どういうこと?」 「れいむたちはえっとうにかくじつにしっぱいするわ!そのときははるになるのをまってぱちぇたちがそれをひきつげばいいのよ!それまでほっときましょう!」 「ゆゆぅ・・・わかったよ」 「あとまりさにおねがいがあるわ!」 「ゆ?」 「ありすたちがかわいそうだからそこにあるのとおなじくささんだけはのこしてるの。でもありすたちはそれをごはんさんだとしらないわ!しょくりょうちょうたつをしてる"とかいはありす"におしえてあげるのよ!」 「ゆゆ!ゆっくりわかったよ!」 日が沈む頃には南側の林には殆ど食料らしき食料は無くなっていた。 たった一日でありす派達は、重要な食糧調達地を失った訳である。 ・・・そしてぱちゅりー派が残した「プレゼント」はそれだけではなかった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「どぼじでどがいばなごばんざんがないのおおおおおおおおお!?」 「ゆ・・・!ゆ・・・!あ、あさまではあったのに・・・どうして・・・?どぼじでええええええ!?」 「はなさんがないわああああ!ありすたちがそだてたはなさんがああああああ!」 「ぎのござんもなぐなっでるわあああああああ!」 「ごんなのどがいばじゃないいいいいいいい!」 南側の林でありす達の叫びが響いた。 朝までは余るほどあった木の実や花等が綺麗さっぱり無くなっていたのだ。 それまで派閥に分かれる前まで共有の狩り場だった場所で狩りをしていたありす達は面喰った。 拠点近くの食糧地は最後に取っておこうと言う考えだったからだ。 「きっとぱちゅりーたちのしわざよ!」 「ゆるせないわ!」 「しかえしにいきましょう!」 いきり立つありす達の一部に対して、食料調達を任されていた「とかいはありす」が必死に宥める。 「ま、まつのよ!いまここでさわぎをおおきくしてもむだなじかんをすごすだけだわ!みんなおちつくのよ!」 「でもごはんさんがないわ!」 「そういえばぱちゅりーたちはごはんさんをいっぱいもってるわ!」 「それをうばいましょう!」 全く言う事を聞かないありす達に「とかいはありす」はある提案を始めた。 「このくささんはちょっとおいしくないけどたべられるのよ!これはいっぱいあるからきょうはひとまずこれをあつめてたべましょう!」 「ゆ!でも!」 「いまおこったところでなんにもならないのよ!まだあきもはじまったばかりだからはなさんやきのこさんはまたなるわ!」 「ゆゆぅ・・・」 「とにかくきょうはこれをたべましょう!」 ・・・何とか収める事に成功した「とかいはありす」。 渋々と「とかいはありす」の下についていたありすが言われた草を集め始め、食べ始めた。 「む~しゃむ~しゃ・・・あんまりとかいはじゃないわ・・・」 「でもないよりましね・・・む~しゃむ~しゃ・・・」 「とかいはありす」も草を食べるが、量は少ない。皆に申し訳ないと言う念からだろうか、今となっては定かではない。 その日は渋々と戻った食料調達隊であるが、悲劇はその夜おとずれた。 ・・・・・・ ・・・ 「ゆぐぅぅううう!」 「うんうんがどばらないわああああああ!」 「ずっぎりぃぃぃ!ゆぎぃぃ!ぐるじいわぁぁ!」 「ゆぐっ!ゆぐっ!ゆげぇぇぇええ!げぇえええええ!」 「みんなどぼじだのおおおおおおおおおおお!?」 「とかいはありす」がフラフラと調子が悪そうに小麦粉の皮を動かしながら叫んだ。 驚くのも無理はない。突然「草」を食べたありす達がカスタードクリームを吐き出し、草混じりのカスタードクリームの液状のゆるいうんうんをまき散らしながらもがき苦しんでいるからだ。 草を食べたのは「とかいはありす」と共に食料を調達していたありす達。その数は約30。(ありす派は百体のありすをそれぞれ三つに分けているため) 少しでも食料を節約するために、共有する狩り場で取った食料は、「とかいはありす派」以外に与え、貯蔵に回したため、他のありす達は何とか無事だ。 だが、草を食べたありす達は全く持って無事ではなかった。 クイーンありすが木の枝や葉っぱを使って組み上げた自身の「べっど」の中は、あっという間に吐瀉物と汚物にまみれ、苦しみのた打ち回りながら汚していく。 「げぇえええええ!ゆげぇぇぇえええ!ぐるじっ!ぐるじぃわおぼっ・・・!げぇええええええ!」 「ゆぎっ!ゆひっ!ゆひっ・・・!ゆ”・・・!ゆ”・・・!」 やがて30体のありすの殆どが寒天の白目をむいて痙攣を始めた。 カスタードクリームを出しつくしたためだ。 致死量を超えた吐餡のさらに限界を超え、痙攣しながらもなお口からカスタードクリームを吐き出し続けてあるありすは動かぬ饅頭となり果てた。 痙攣して突っ伏したあるありすは、蛇口を捻った水道の様にあにゃるからうんうんをだらだらと流しながら動かなくなっていった。 「みんなぁぁああ!どぼじでえええええええ!ごんなのどがいばじゃないいいいいいいいいいい!」 「とかいはありす」の声が辺りに響き渡る。 必死に「ぺーろぺーろ」等で看病していた他のありすや、大きな「べっど」に飛び散ったうんうんやゲロを掻き出していたありす達が茫然としてそれを見つめている。 ・・・こうしてありす派は、その三分の一を失う事となった。 クイーンありすが編んだ「巣」の片隅には、ゆっくりにとっては遅行性の毒草がポツンと積み上げられている。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ・「れいむ派」→ゆっくりプレイス脱出を図る一派。ありす種、れいむ種、まりさ種で構成される。ゆっくりプレイスの西側にある森が拠点。数は150体 ・「ぱちゅりー派」→ぱちゅりーを頭目として越冬を目標とする一派、ぱちゅりー種を除いて全てがれいむ種とまりさ種。ゆっくりプレイスの北側にある洞窟が拠点。数は150体 ・「ありす派」→残ったありす達がクイーンありすの子ありすをリーダーに据えて団結した一派。約30体づつを三つの派閥にわかれる。ゆっくりプレイスの南側にある林とその端にあるクイーンありすが編んだ巨大な巣が拠点。数は現在約70体
https://w.atwiki.jp/jukai_bao/pages/20.html
現在はUIが変更されており、スクショと違う部分もあります。 (以下2019/9/9のじゅりさんのツイート)元ツイート 🌱タオバオアプリ使い方虎の巻🌱 くっそ適当にまとめたから気が向いたら見て 試しにアプリ入れたけどわかんねぇ〜〜〜て人向け このページけっこう色々機能詰まってる とりあえず見て おわり