約 1,619,761 件
https://w.atwiki.jp/gunvoltz/pages/70.html
概要 キャッチコピー(公式HP/CD帯) ブックレット内容 収録内容 登場人物 私見 概要 「蒼き雷霆ガンヴォルト爪 楽園狂騒曲」は、インティ・クリエイツから発売されたCD。 2017年11月14日に一般販売開始。 多国籍能力者連合“エデン”、およびその構成員たちにスポットを当てた作品。 時系列上は「蒼き雷霆ガンヴォルト」よりも過去にあたるが、詳細な時期に関しては不明。 オリジナルキャラクターとして、能力者の少女「オルガ」が登場する。 キャッチコピー(公式HP/CD帯) かたく閉ざした少女の心。 開くは楽園(エデン)の精鋭(パーティー)たち。 ―さあ、もてなしの宴(パーティー)を始めよう。 ブックレット内容 「楽園狂騒曲」ストーリー 「空白書板(タブラ・ラサ)」歌詞カード 書き下ろしイラスト 開発者コメント(山田一法、ハコファクトリィ、田井利明) 声優コメント(名塚佳織、渡辺紘、ジェーニャ、太田一騎、榎吉麻弥) インタビュー(山田一法×Yamajet) 他、トラックリスト等 収録内容 トラック タイトル 解説 1 空白書板 ストライカーパック(Switch版)タイトルテーマ。 2 絶望に謡う少女 ドラマCD「楽園狂騒曲 Eden's Party」 3 巫女の切願 4 星の導きのままに 5 パティシエ、こだわりの逸品 6 鉄血乙女の受難 7 巫女の矜持 8 幻想祭 9 示された光明 10 空白書板(カラオケ版) 11 藍の運命(カラオケ版) モルフォソングス カラオケアーカイヴ 12 虚空の円環(カラオケ版) 13 多元的宇宙(カラオケ版) 14 並行世界(カラオケ版) 15 瑠璃色刹那(カラオケ版) 16 菫青石(カラオケ版) 17 輪廻新章(カラオケ版) 18 雪荒ぶ夜の贈り物 Steam版クリスマスモード2016 ステージ曲 登場人物 パンテーラ(声の出演・名塚 佳織) 多国籍能力者連合「エデン」の象徴たる巫女。 「愛のイチゲキ作戦」の総合指揮を担当。 テンジアン(声の出演・渡辺 紘) エデンの能力者。物語冒頭でオルガを保護した。 ニケー(声の出演・ジェーニャ) G7の一員。占星術のエキスパートとして作戦に参加する。 占いの的中率は高いが、一方で占いの結果を重視しすぎる一面もある。 アスロック(声の出演・太田 一騎) G7の一員。パティシエとしての能力を活かし作戦に参加する。 腕は確かだが、職人としての拘りが過ぎるのが難点。 ジブリール(声の出演・榎吉 麻弥) G7の一員。他のメンバーに比べると、あまり作戦に乗り気ではない。 作戦の最中、とある衣装に着替える羽目になる。ブックレットにはきっちりと着替えた後の姿が描かれている。 テセオ(*1) エデンの能力者。現在は任務で国外に潜伏している為 「愛のイチゲキ作戦」には未参加だが、作戦の立案には深く関わっている。 オルガ(声の出演・涼本 あきほ) とある集落に暮らしていた能力者の少女。 住んでいた集落を無能力者に襲われ、家と家族を失った。 私見 「狂騒」 パッケージやあらすじを見るといかにもシリアスそうですが その実「楽園狂騒曲」は半分以上がギャグパートと言ってしまって良い作品です。 それでいてシリアス要素もしっかりと含んでおり ゲーム本編やストライカーパック限定版ドラマCDともうまくリンクしている傑作。 「さぞかし平和になると‥思わないか!!」 本作はガンヴォルトでも珍しい「無能力者が登場しない」作品です。 (まず半分くらいの作品にはモニカかアキュラが出ていて、そうでない作品もゲストキャラに無能力者がいる) その割に、能力が使用される場面は割合少ないのが面白い。 なお「能力者が登場しない」作品は今の所作られていないと思われます (一応「蒼き雷霆ガンヴォルト サウンドトラック掲載エピローグ」には無能力者しか登場していない) 「愛のイチゲキ作戦」 あえて元ネタは解説しない。 「愛の切り札、ジブリール」 ニチアサ? 変身前・変身後の髪の色は割と似ている。でもジブリールちゃんは変身しても背が伸びない。 「ニムロドの不思議」 ニムロドのエデン参加は「ストライカーパック限定版ドラマCD」の物語よりも後(電撃Nintendoより) その「限定版ドラマCD」でパンテーラは日本国内に潜入した 「楽園狂想曲」の時点で、ニムロドはエデンから任務を言い渡される関係になっている 劇中の台詞から「楽園狂想曲」はパンテーラが日本に潜入する以前の物語であると思われる まとめると、ニムロドがエデンに参加したタイミングがよく分からなくなってきます。 楽園狂騒曲で言い渡されている「任務」を成功させる事が ニムロドが正式にエデンに加わるための条件、と考えれば丸く収まる? 「テセオさん」 実は「ストライカーパック限定版ドラマCD」よりも前に日本に来ていた事が明らかになったテセオ。 時系列上、この時点ではエデンはまだ侵攻作戦を計画していないのですが 日本は第七波動研究の最先端ですし、もともと調査対象としての優先順位は高かったのだと思われます。 「オルガ」 本作のゲストキャラ。パンテーラ(11歳・130cm)をお姉さんと呼んでいる事から見て相当幼い。 パンテーラが夢幻鏡で身長をごまかした可能性も考えられますが 劇中での振る舞いを見る限り、そうだったとしてもやっぱりオルガは幼い。 外伝作品のゲストの常として、その後の行く末は不明。 (身寄りのない女の子、かつ能力者なので「爪」の時点でエデンを離れているとは考えにくい) ただ、ガンヴォルトもアキュラもベラデンを爆破したりはしていないし エデン側も非戦闘員の少女を前線に置く事はないでしょうから、生きている可能性はあると思います。
https://w.atwiki.jp/hanrahan/
また買いすぎてしまった 今日はポイントカードを持ってるいつも行くスーパーではなく、近所のスーパーへ行ってきた。 だって、ロースカツが50円も安く売り出しているんだもの! 納豆も50円だっていうし、これはもう、行くしかないじゃない! でも、ポイントカードのポイントもためたいから、ロースカツと納豆以外はいつものスーパーで買おう。 そう思っていたのだけど、いざ買い物を始めるとダメね。 レジのお会計で、いつも通りの金額を支払ってしまった。 しかも、そこで買わなくてもいいモノがけっこうあって、なぜかワンタンの皮だけとか買ってるし。 いつ作るつもりなんだろう、私。 毎回反省するんだけど、毎回やっちゃうのよねぇ。 困るわぁ。 http //www.motorhomegasclearinghouse.com/
https://w.atwiki.jp/tbtwiki/pages/113.html
てぃびきら!?狂騒曲は、たばたとTBTのユニット曲。
https://w.atwiki.jp/gcmatome/pages/9310.html
ポパイシリーズリンク 機種 タイトル 概要 判定 AC/FC ポパイ 原作を活かした丁寧なつくりで海外では移植も多数存在。 良 FC ポパイの英語遊び 上記をベースに日本でのみ発売された教育ゲームソフトの先駆け。 なし PC(C64等) Popeye 日本未発売。 GB ポパイ シグマ商事が発売した日本専売ソフト。 ポパイ2 海外でも発売されたGB第2作目。上記と同じくシグマ商事が発売した。 PC(Amiga等) Popeye 2 日本未発売。 Popeye 3 WrestleCrazy 日本未発売。宇宙でエイリアン達とレスリング対決。 SFC ポパイ いじわる魔女シーハッグの巻 テクノスジャパンが発売した日本専売ソフト。 GG ポパイのビーチバレーボール PC(Win) Popeye and the Quest for the Woolly Mammoth 日本未発売。「Mutipath Movie」でポパイ達の行動を選択しよう。 Popeye the Sunken Treasure Popeye The Rescue 携帯アプリ Popeye Kart Racing DL専売。日本未発売。 GBA Popeye Rush for Spinach 日本未発売。横視点のレースゲーム。 携帯アプリ Popeye Pinball DL専売。日本未発売。 iOS iPopeye 基本プレイ無料。DL専売。日本未発売。2019年に配信終了。シンプルなスコアアタックだが、セーブには課金が必要。 Switch/PS4 Popeye DL専売。現在は配信停止。『Slots』以降9年ぶりの新作となったが、ボリュームの薄さでクソゲーに。 ク カップリング・オムニバス PC(Amiga等) Popeye The Collection 日本未発売。上記のPC版1~3のカップリング。 iOSで配信されていた『Popeye Slots』は本wikiで執筆禁止となるソーシャルゲームに該当するため掲載対象外。 ブラウザゲームも複数存在するが、執筆禁止のため省略。 Android向けに『Popeye Rush For Spinach Run』等が複数配信されていたが、情報がほとんど残っておらず公式ライセンスを取得していたか不明なためそれらも省略。(*1) 関連作品 機種 タイトル 概要 判定 AC/FC他(*2) ドンキーコング 開発当初はポパイの版権ゲームになるはずだったが断念。その後、任天堂オリジナルのドンキーコングやマリオのデビュー作に。 良 PC Slots from Bally Gaming 日本未発売。ポパイを含む複数のキャラスロットを収録。 101 Bally Slots Win/Android/iOS Angry Birds Friends 基本プレイ無料。DL専売。ポパイとのコラボイベントが期間限定で開催された。 Win/Mac World of Warships なし シリーズ概要 アメリカの漫画家「エルジー・クリスラー・シーガー」作によるカートゥーン作品『Popeye (ポパイ)』を原作とするゲーム群。 ポパイ自体は当初『Thimble Theatre (シンブル・シアター)』の連載10年目になって登場した脇役であった。 だが、「何をやっても死なない不死身の男」「ほうれん草を食べるとパワーアップする」といったキャラクター性が受けたことで人気が上昇。 1930年代頃から彼を主役としたスピンオフ短編アニメ映画が次々と作られるようになり、こちらが現在よく知られるポパイの設定の原型となった。 主人公である水兵服姿の小男ポパイとその恋人オリーブ・オイル(*3)、そしてポパイのライバルである大男ブルート(ブルータス)の3人が中心人物となっており、多くのゲーム作品がこの設定を主軸にしている。
https://w.atwiki.jp/yamamura2/pages/2987.html
【TOP】【←prev】【FAMILY COMPUTER】【next→】 ポパイの英語遊び タイトル ポパイの英語遊び 機種 ファミリーコンピュータ 型番 HVN-EN ジャンル 学習 発売元 任天堂 発売日 1983-11-22 価格 4500円 ポパイ 関連 Console Game FC ポパイ ポパイの英語遊び SFC POPEYE いじわる魔女シーハッグの巻 Handheld Game GB POPEYE POPEYE 2 GG POPEYE BEACH VOLLEY BALL 駿河屋で購入 ファミコン(箱説あり)
https://w.atwiki.jp/gcmatome/pages/7235.html
ポパイの英語遊び 【ぽぱいのえいごあそび】 ジャンル 教育ソフトアクション 対応機種 ファミリーコンピュータ メディア ROMカートリッジ 発売元 任天堂 発売日 1983年11月22日 定価 4,500 円 プレイ人数 1~2人(同時) 判定 なし ポイント 教育ゲームソフトの先駆け ポパイシリーズリンク 概要 システム 問題点 賛否両論点 評価点 総評 概要 先に発売されていた『ポパイ』をベースに、遊びながら英単語の学習が出来る教育ゲーム。 『ドンキーコングJR.の算数遊び』と同じく本体発売と同じ年に発売された。 システム モードは『WORD PUZZLE A』『WORD PUZZLE B』『WORD CATCHER』の3つ。 『WORD PUZZLE』はステージ1のマップが舞台。1人用でポパイを操作する。まず最初に『ANIMAL』『COUNTRY』『FOOD』『SPORTS』『SCIENCE』『OTHERS』の6つのジャンルから一つを選ぶ。選ぶと下二段にアルファベットが一つずつ表示される。(ポパイはこの二段しか移動できない。)更に最上段にいるオリーブがハートを一斉に投げてくる。このハートが下から三段目に並んで四角いマスになり、単語の文字数を現す。その後アルファベットを選び、英単語を完成させるのが目的。 モード『A』だと日本語訳がカタカナで表示されるが、モード『B』はノーヒント。ジャンルと文字数だけを頼りに当てないといけない。アルファベットはどんな順番で選んでも構わない。パーフェクトで当てれば100点、1回間違える毎にマイナス10点。ギブアップすると0点。 正解だとそのアルファベットはハートマークに、間違えるとドクロマークになり、その問題中は選べなくなる。同じアルファベットを複数使っている単語なら、一つ当てれば残りも全部埋まる。 最上段にはブルートとカゴに乗ったスウィーピーがいて、間にはパンチングボールがある。ポパイが間違えると何故かブルートがパンチングボールを殴ってスウィーピーの乗ったカゴを左方向へ押しやる。10回間違えるとカゴが落ち、それをポパイがキャッチしてゲーム終了となる。その際正解が表示される。 アルファベットのZの横に『?』があり、これを選ぶと正解が表示されてギブアップになる。 10問行うとポパイがオリーブの前に行ってハートマークに囲まれる。この時規定の得点以下だとブルートが暴れてハートマークが散ってしまう。更に低いとオリーブの前にブルートが立ってハートに囲まれる。 『WORD CATCHER』はステージ3の船が舞台。2人同時プレイ専用で、1Pがポパイ、2Pがブルートを操作する。 上空から降ってくるアルファベットから、画面左端に3つ表示されているカタカナに該当する英単語を順番に拾いながら完成させる。 正しく拾えていれば画面上部に拾った文字が表示されていくが、間違った文字を取るとリセットされてやり直しになる。ジャンル選択は無くランダムに出題される。 対戦相手と重なる事は出来ても攻撃することは出来ない。あくまで文字を拾うのみ。 英単語を一つ完成させると該当するカタカナは次の言葉に入れ替わる。カタカナは常に3つ表示されていることになる。こうして先に5つ言葉を完成させた方が勝ち。 問題点 ヒントがカタカナなので、複数の意味がある言葉だと判別しづらい。 例えば『SCIENCE』で『スイセイ』と出たら、『水星』、『彗星』、『水性』など複数の候補が上がる物もある。 『ジョウギ』と出たら詳しい人は『RULER』と『SCALE』のどちらか迷う事になる。 カタカナヒント一つにつき正解は一つしかないが分からなければ取り敢えず何か文字を選ぶしかない。 『WORD PUZZLE B』のシステム的難易度 上述した通り、カタカナのヒントが出ないのでジャンルと文字数のみで当てなければならない。英単語の知識が豊富であろうと関係なく、勘を頼りに言葉を選ぶというモードAとは別次元での難易度の高さ。 ハングマンと呼ばれる遊びをこのゲームのシステムに当て嵌めたものとも考えられ、そちらと同様正答を導き出しやすくなる定石が一応あるもの、いずれにせよ教育ゲームとして解答の厳しいモードであることは変わらない。 『WORD CATCHER』のシステム的難易度 大量に降ってくる不必要な文字をかわしながら必要な物だけを確実に取らなければいけない。いらない文字が寄って来たり、欲しい文字がなかなか出なかったり、他の文字と重なっていたりする事もある。 このため英単語の知識がいくらあっても、イライラさせられる場面が多く爽快感に欠けてしまうことが多い。 スウィーピーの扱いがひどい。 必ずポパイが下でキャッチするので海に落ちる事は無いとは言え、子供にボールをぶつけているので、今では児童虐待と非難されかねない。 賛否両論点 日本ではあまり聴き慣れない英単語もある。 『セミ(CICADA)』や『リス(SQUIRREL)』の他、外国の国名などは英語表記だと事前知識が無いとまず分からない言葉も多かったりする。 最初から高得点を狙うならある程度英語の知識がある事が前提となり、想定しているであろう年齢層を考えると、難易度的に少々ずれがあると言わざるを得ない。 ただしあくまで「教育ソフト」なので、知らない言葉を学習出来るからこそ意味があるとも言える。 ゲーム内で使用される英単語の総数自体は少ないため、ヒントの少ない『WORD PUZZLE B』で高得点を狙う場合は出題単語を文字数別にある程度事前に覚えておく(暗記)or単語リストを事前に用意しておく(カンニング)ことで対策出来たりする。 いわゆる「覚えゲー」となるわけだが、「教育ソフト」という観点で見れば本来の目的に適っているとは言える(さすがにカンニングは現実のテストでは駄目だが)。 評価点 学習での当たり前の作業「何度も繰り返して覚える」をゲームで気軽に楽しめる点は評価できる。 『WORD PUZZLE A』ならストレスも少なく本来の英単語の勉強に使える。 ただし知らない単語が出た場合はモードBと同じ状態になってしまうのが欠点。 総評 本作はファミコン本体発売の4か月後に発売されている。ただのゲーム機に終わらせず、可能性を模索して展開させていたのはさすが任天堂と言えるだろう。 ただし本作は既存のゲームのシステムを流用することで、元のゲームの感覚で楽しみながら勉強するという試みは斬新であるものの、どうしてもそれ以上の事が出来ない故の不便さ、不自由さが拭えない。日本ではあまり馴染のない英単語の多さや勘を頼りに答えなければならないなど難のある個所もある。 やはり実用性を十分に盛り込むには限界があったようで、この時代の教育ソフトらしく「ハード本体を親にねだるのに都合よいソフト」という意見がもっぱらであった。 先述のようにまずは点数は気にせずゲームを繰り返し遊んで英単語を覚え、次は高得点を目指してまた遊ぶという使い方をすれば、予習復習が一本で出来るのでファミコンでの教育ソフトとしては必要十分と言えるだろう。
https://w.atwiki.jp/src_review/pages/857.html
※ネタバレに注意 【たとえばこんな狂騒曲】 「等身大シナリオ初挑戦。 他にも、これまでやっていなかったようなことを色々と・・・。 ライトなノリのドタバタオリジナルシナリオですので、 お気軽にプレイしてみてください。 ジャンルとしては、ギャグシナリオかも(笑)。」 数々の作品を完結させ、評価も高いみさき氏の手がけた等身大シナリオ。 作成時期はわからないが大体2~4年前の代物かなと予想してみる。 日記によれば、少し前にメンテナンスがなされて、 気になる点や戦闘バランスなどが手直しされているらしいので、 「古い作品だから…」という補正は抜きで、いざ挑戦。 グラフィック&演出 画像は全て汎用素材。むすすだ式氏と雪村叶氏のヤツが主体になっている。 ジャイアントのだけ激しく浮いたパイロットアイコンだったと思うが、ザコ相手なら そこまで深刻なマイナス評価にはならないのでよしとする。 戦闘アニメーションとかは、効果音指定とか見る限りだとぼちぼち頑張っている模様。 ただ、会話パートの一部で「一面水色+上に題名」という殺風景な雰囲気の 場面でユニットアイコンが出てきて会話、というのは見てて大分微妙である。 次回作以降ではなくなっていると思うが(注:筆者はまだ翼の唄には触れてない)。 キャラクター 全体的に、キャラの方向性が一貫していない印象を受けた。ギャグだから、と 作者が肩の力とか頭のネジを緩めて作っていった結果なのだとは思いたいが、 ちょっとギャグシナリオ全体に対する視点に暗い影が落ちそうになった。 (続編を入れると更に酷くなってしまうが、分けることにする) その象徴たるキャラが主人公、中ノ瀬郁也ではないかと思う。 振り回される常識人ポジと、頭がハッピーな少年ポジという二足の草鞋を 履いているというのはやんわりと理解できたんだが、見せ方が直球すぎる+ その間の素面がコロリと抜け落ちているような感じがして、最終話付近での ちとシリアスとか、変態な敵役相手への突っ込みをかける場面とかに 説得力を感じさせなかったのが辛い。ここで、ギャグで思いっきり吹ければ 気にならなかったのだが、それがなかったせいで余計に気になってしまった。 若くてイタめ、それだけで終わってしまう系統のキャラだってことも一因かもしれない。 他のキャラクターについても、ボケ特化とか突っ込み特化とかそういう属性は 一応あるのだが、何故か一貫性が無いオーラを拭えていない。特にボケ特化(ヒロイン)は、 最後に無理にねじ込まれた気がするシリアスっぽい雰囲気の中心に立ってしまったせいで 残念である。あと、こういう砕けすぎたキャラばかりではなく、アクセントとしてであろう 真面目系なキャラもいるにはいた。一応対比的な雰囲気を出していることには 成功していたし、立場相応のキャラを演じていたが、実際のところは 「それだけ」だった気がする。もうちょい同情が得れる位、突っ込み役とかのポジは その彼、アルベルトに集約しても良かったんじゃないだろうか。昔の作品でこんなことも 野暮かもしれないが、一応。 あと、本作ではギャグシナリオだけに、変態性を強調した悪役が中盤以降に登場している。 シリアスではできないはっちゃけ方をしているが、なんかこういうタイプの狂気は 既に自分が通過した道っぽくて微妙だった。…一応表情変化が異様に激しいとか、 戦闘における攻撃手段にまでギャグが浸食していたほうが良かったかもしれない。 もっとも、マゾヒストというキャラは物語において どう取り扱えばいいか難しいのかもしれんが。 緩急の大事さを印象付けられたキャラ達であった。 (緩急といっても、ギャグ←→シリアスと静←→動と安らぎ←→激動の3つの次元) シナリオ この項目についてだが、かなり辛いモノがあった。物語の流れが薄かったり、 目新しいものがなくても笑いを提供できそうなギャグシナリオというジャンルにおいて、 どうも笑いどころが見つからなかったのは致命的だったと思う。 「寒い」という領域にまで…踏み込んでしまった「次回作」よりはマシなのだが、 ポンポンと「これは面白いんじゃないかな!」と思ったネタを、ただただ並べたり (地味目な演出面という条件下で)急に複数流し込んだりしている印象は否めない。 それだけに、表現方法でごく稀に勿体無いものも見つかったりする。 例えば文の最後に(キッパリ)なんて言っちゃう場面があるんだが、なんでわざわざそこで それまでの文章と「(キッパリ)」を、 で区切って表示してしまうのだろう、とか。 鋼響曲とかで改善されたかはわからないがこれに限らず「;」「 」の表現が多い (しかも面白さを引き出す…にまで至っていないイメージがしてしまう)ので、 気になる人は確実に気になるものと思われる。特に合わないとなかなか進まなくて ダメージが更に増してしまうかもしれない。 他にも主人公のクラスメイト二人はバカップル呼ばわりされているが、あんまり そんな感じがしなかったりとか(主人公とヒロインの存在で更に加速する一方)、 昔からの人には懐かしのネタとか、イヤンな教員に絡むネタ各種とかまぁいろいろ 作者曰く「ドタバタ」したノリで転がされまくっているのだが、どうもその多くは 滑っているというか、作者はギャグものが…いや、「も」苦手というイメージを、 勢い良く加速させているイメージがあった。(不要にというイメージで)見てて痛々しい。 あと、登場人物が緊張感の無さを自覚していそうな雰囲気の場面はあったが、 そいつをそのまま扱っていくには器としてのキャラに強さというか注目したい要素が 見つけられなかったので、なんだか凄く微妙な雰囲気に見えてしまうことも。 まぁとにかく、かなり滑ってた感じ。 笑いのセンスや沸点の問題もあるため、どんなネタや流れが受けたかとか引いたとか 他の人の意見も沢山聞いてみたいところなのだが、なんか不安だ。 (恐らく感想前に撃墜された人と、最後までいけてはっぴーな人の二択しかいなさそうで) なお、そんなノリだが最終話のあたりだけシリアスな雰囲気が強まったりする。 死んだはずの魔王の欠片が復活したりとか、現実から召喚されたヒロインは、なんか 独り身ということもあって現実世界に帰りたくないとか唐突に前の話あたりで出したりとか まさかの主人公命の危機とか(まあお約束で助かる+帰れる。でもハッピーエンドムードに 移行したときとのギャップが強く感じて、素直には受け入れられない…)、会話にも ちとシリアスモードが出てきたりするのだが、これがギャグに対して なんか水と油みたいな感じだった。ギャグに対してグサリと挿入する形で、気持ちの 切り替えを促すというより、照れ隠しで不自然に入れてしまった感が強い。これならば 全編ギャグのノリで、シリアスシーン全開の場面をネタにした方が良かった気はするが (ただこの期待は続編で粉砕された気がする。ぐふっ) やっぱ緩急の大事さを考えさせられる代物だった。 …メンテしてこれかと思うと、危ういです。 戦闘バランス 第二話からはまともになるが、第一話がイベント発生までの間大分退屈。 弱そうな武器でペチペチやるのも味、と仮に言われても、これについてはちょっと 納得はできない。せめてオークと3回交戦とかそのあたりからイベント発生に したほうがスピーディーだと思う。 後の戦闘バランスは氏の巨大基準作品に比べれば、ギャグシナリオというのもあってか やさしい仕上がりでサクサク進む。この作品で素直に受け止めれた箇所だと思う。 (ただ、ラスト前の面は敵の攻撃が高い+破壊対象の特殊能力が厄介めである) 地形が一部動きにくい箇所もあるが我慢できるレベルだったのでよしとする。 最後がヒロインとラスボスの一対一の実質イベントバトルになるのは予想できなかったが。 BGM選曲 よくある選曲。レアかどうかはともかく、 「フリー素材だけどこのシナリオにはこの曲しか考えられない!」に繋がるものはない。 まぁ場面や雰囲気に沿ってはいるんじゃないでしょーか(無責任)。 トータルバランス シナリオと一部被るが… 素材の雰囲気とかそういうのから、ゆるいシナリオという感じだったが ラスト付近の魔王云々とか命がかかってるんだよ的な事態は、ちょっと蛇足な気がする。 なんというか、ギャグが基本だけどシリアスなのも偶にあるよ! という感じを見せたかったのだろうと思うのだが、物語全体に貢献しているという 感じがあんまりしなかったのが残念。締めに向かう原動力にはなっていたんだが、 面白さの面では、ってことね。 つうわけでラスト以外は、まとまりのある作品だったかもしれない。 ただ、面白いかどうかは別という…自分でも始めてのケースに直撃した気がする。 総評 作者の等身大シナリオ処女作ということで甘めに見ることもできるのだが、 レスポンスや画像周りあたりはメンテナンスが入っているのなら、もうちょい 今より近い時期に手入れされたシナリオって感じが出せたかもしれない。 作者の言う「ライトなノリのドタバタオリジナルシナリオ」という体裁の形成には 成功しているのだと思われるが、それも何だか、勢いに任せて何かをくすぐるネタや ギャグを配置していっただけで、勢いとか狂気とか狙い撃ちとかそういう要素が欠けてて ギャグシナリオとしてはイマイチな印象を受けた。シナリオ薄めでもギャグに頼って 疾走できるギャグシナリオで、すべり気味なのは致命的かもしれない。 まぁ、深い総評やまとめは本来レビューする本命であったシナリオ、 「こんどはそんな狂双曲」のほうと同時にやっていくことにする。 短編+割合なにか似てる系統なんで。
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/10839.html
MM/W35-059 カード名:穏やかな毎日 カテゴリ:クライマックス 色:緑 トリガー:袋 【永】 あなたのキャラすべてに、パワーを+1000し、ソウルを+1。 (袋:このカードがトリガーした時、あなたは自分の山札の上から1枚を、ストック置場に置いてよい) レアリティ:CC 15/05/13 今日のカード ・対応キャラ カード名 レベル/コスト スペック 色 変わらない笑顔 まどか 2/1 8000/1/1 緑
https://w.atwiki.jp/gundamfamily/pages/510.html
ウッソ「芝生のグラウンドが何面もある……」 アムロ「試合は芝のピッチで行われるみたいだから、こいつはありがたいな」 ギンガナム加入の騒動の後、午後になって、兄弟たちは、ギンガナムの計らいによって用意された 練習場に来ていた。 ギム「ふふ、我がギンガナム家の力をもってすれば、これくらいのことはたやすいのだよぉ! 大会開始 までの一ヶ月間、この練習場のメイングラウンドは貸しきりである」 ロラン「さすが月の御三家のひとつ、ギンガナム家ですね。いやこんなことぐらいで感心するのもまだ 失礼なんでしょうけど」 感心する兄弟たちが多いなか、カミーユはジュドーにそっと耳打ちする。 カミーユ「どうせ、その栄光もこれまでだろうけどな。だって現当主があれじゃあさ」 それを聞いたジュドーは意地悪い笑いを浮かべた。二人はギンガナムの加入をこころよく思っていない。 ギムは、そんな意見があるのを知っているのであろうが、全く気にも留めない態度で、グラウンドに 併設されている建物のなかに兄弟を招きいれた。 ギム「ロッカールームにスパイクや練習用のユニフォームを用意させてあるから、適当に選ぶがいい!」 ガロード「偉そうにしちゃってさ……」 不満たらたらといった様子でロッカールームのドアを開いたガロードだったが、部屋に入ったとたんに 目に飛び込んできた新品のスパイクやユニフォームを見た瞬間、今までの不満が一気に消し飛んでしま った。 ガロード「す、すげえ、とにかく、なんかいっぱいある!」 コウ「なに変なこと言ってんだよ、ガロード」 そう言いながらコウはガロードに続いてロッカールームに入ったが、その瞬間、コウも驚きの声を上げた。 コウ「うお、こ、これは……アディ○スも、プー○も、ナ○キも、ディ○ドラも、アシッ○スや、ミズ○の まで、各種メーカーのスパイクがそろってる……ユニフォームも、たくさん……!」 ジュドー「レアル・マ○リード、ユベント○、マンチェ○ターU……有名なクラブや、代表チームのものも……」 ギム「サイズも色々とテキトーにそろえておいてある!好きなものを選ぶがいい!」 目の前に広がる宝の山-よほどのスポーツ嫌いでなければ、ロッカールームはまさに宝物庫そのものだった- は、さっきまで陰口を叩いていたカミーユたちも、シローのような年長の兄弟でさえ、狂喜乱舞するよう な素晴らしさだった。ましてやアルなど、である。 アル「ロラン兄ちゃん、ロラン兄ちゃん、ナイ○とア○ィダスのスパイク、どっちがいいと思う。ていうか、 両方いるよ、絶対いる! まちがいないよ!」 ロラン「僕はディア○ラのスパイクにします。……でも、ただより高いものはないっていいますけどね」 シロー「なに言ってんだよ、ロラン。みろよ、これレアル・マド○ードの5番だぞ、5番」 ウッソ「シロー兄さん、DFでしょ。まあいいんですけど。ぼくはバル○ロナの7番にしよっと」 ドモン「やっぱり俺は日○代表のキーパーシャツを選ぶべきだろうか、うむ、そうだよな」 シーブック「なんだかんだでア○ックスのスパイクが一番足に合うみたいだなあ」 思い思いにスパイクやユニフォームを選ぶ兄弟たち。アムロは、みんな少し浮かれすぎているように 思ったが、これからキツイ練習や、ポジション争いをせねばならないのだから、今ぐらいいい思いを させてやらなければ、と黙認した。 アムロ「ユニフォームやスパイクを選んだら外にでて、準備運動とストレッチをこなしておくんだ。それ からパスとシュートの簡単な練習をする。そのあとに二手に分かれてミニゲームだ」 32 名前:フットボール狂騒曲7投稿日:03/06/26 02 54 ID ??? 真新しいスパイクとユニフォームに身を包み、意気揚々と兄弟たちはピッチに立つ。風が、熱気に ほてった彼らの体を、心地よくひとなでした。 すでにパスとシュートの練習までを終え、兄弟たちはミニゲームに取り掛かかろうとしていた。と、 そのときギムが彼の部下、スエッソンのそのまた部下であるシッキネンを連れてきた。 ギム「キーパーの控えが必要だということなので、連れてきたのである。シッキネンだ。大会にも同行する」 シッキネン「ああ、よろしく頼むぜ」 アムロ「ありがたいが、ギンガナム艦隊の仕事はいいんですか?」 ギム「艦隊の長である小生が大会に出る以上、協力するのは部下の努め。問題ない、というより誉れである!」 ジュドー「……やっぱギンガナム家はつぶれるな」 ジュドーは小声で、誰にも聞こえないように呟いた。 ギンガナム家の未来はともかく、人数もそろったところで、ハーフコートの6対6でのミニゲームを することができるようになった。 アムロ「キラは審判、アルは見学だ。俺は監督としてみんなを見ている。いいな」 アル「あーあ、ぼくもみんなに混じってやりたいなぁ」 キラ「アルはすこし小さすぎるのさ、ウッソだって結構体格的にはきついからなぁ」 ゲーム開始前に、監督でもあるアムロが皆に叫んだ。 アムロ「これからピッチのなかでは、みんな呼び捨てで呼びあうんだ!いちいちさん付け したり、兄さん、なんていってたら、プレイがおそくなるからな!」 ロラン「わかりました、アムロ兄さん! あ、いや、ア、アムロ!」 ギム「小生のことは御大将と呼ぶがいい!!」 アムロ「例外は認めない! ギム、だ。わかったな!」 ギム「ギンガナム家の当主が、ソレル家以外のものに呼び捨てにされるとは。しかし、勝つためか。ふふ、 勝つ……いい響きだ」 ジュドー「ギム、ボーっとしてるな! もう始まってんだぞ!おい、ボール行くよ」 ジュドーから、ギンガナムの頭に合わせたパスが出される。そのボールをめぐって、競り合うギンガナムと 相手DFのコウ。 頭ひとつ、いやふたつぶんもギンガナムが競り勝つ。ギンガナムはゴールに向けて強烈なヘディング シュートを叩きつけた。が、しかしこれはゴールキーパーのドモンが何とか弾き出した。 アル「すごいや、今のヘッド! 打点がかなり高かったよ!」 アムロ「ああ、いいシュートだった。ドモンの好セーブに阻まれたけどな。やはりあの二人は使える……」 しかし、アムロがそう言った瞬間、ギンガナムはドモンに突っかかっていった。 ギム「小生の素晴らしきヘッドを止めるとは、無礼なやつめぇ! 決まっていたはずなのだ!」 ドモン「何言ってんだ、アンタ! 俺はキーパーなんだから止めて当然だろうが!」 ユニフォームの胸ぐらをつかみ合う二人を、キラが笛を吹いて止める。 アムロ「使える……と、思う。うん、そのはずだ」 33 名前:フットボール狂騒曲8投稿日:03/06/26 02 55 ID ??? カミーユがボールをキープしながら、パスの出しどころを探る。ロランが素早いフォローでボールを 受けた。攻守が変わり、今度はギンガナムたちが守る局面である。 シーブック「ディフェンスしろよ、ギム! おい!」 ギム「小生はディフェンスなどしない! 攻め、あるのみだ!わかったか、パンの小僧!」 シーブック「な、なんとぉー、ミニゲームだろ! 第一、今はFWでもある程度ディフェンス……」 ギム「小生は流行など追いかけん! わが道を行くのみである!」 シーブック「そういう問題じゃない!」 結局、ギムが守備しない数的不利が遠因となって、相手チームのカミーユにゴールを決められて しまった。 ギム「ええぃ、なにをやっているのだ、シッキネン!意地でも止めてみせるものだろうが!」 アムロ「使える……と、思ってるんだけどなぁ」 ウッソは、シローの助けもあって一瞬だけヒイロの激しいマークから逃れることができた。その瞬間を 逃さず、前にいるギンガナムへスルーパスを出す。ガロードが何とかカットしようとするが間に合わない。 絶好のチャンス。フリーで前を向いて、ギンガナムはペナルティエリア中央手前で、思いっきり右足を 振りぬいた。 ボールは物凄い勢いで、とんでもない方向、クロスバーのずっと上を超えていった。 ドモン「見事な宇宙開発だな。御大将」 ヒイロ「決められてもおかしくなかった……しかし、外した」 ガロード「ふぃー、あぶねぇ、あぶねぇ、助かったぁ」 ギム「……小生、少し足が滑ったのである。ひどいグラウンドだなぁ! おい!」 そう叫んでギンガナムは、見事に手入れされているグラウンドをけり散らかした。 アムロ「使えると、信じたい、な」 39 名前:フットボール狂騒曲9投稿日:03/06/27 02 03 ID ??? 30分行われたミニゲーム全体の結果は、3-1でカミーユ、ロラン、ヒイロ、コウ、ガロード、 ドモンのチームが勝った。カミーユとヒイロが一点ずつゴールを決め、もう一点は相手の オウン ゴールである。 いっぽうギンガナムは結局一点も決めることは出来なかった。しかし、ギンガナムのほうのチームの 得点は、競り合いに勝ったギンガナムが頭で落としたボールをジュドーが決めたものだから、一応、 注文どおりの形で点に絡んではいる。しかし、えらそうな口をきいていた手前、チームメイトである シローやシーブック、ジュドー、ウッソの対応は冷たいものだった。 少しの休憩の後、アムロはチームのメンバーを組み替えて、ミニゲームを再開させた。何度かミニ ゲームを繰り返して、今日の練習はそれで終わりだ。最後のゲームを終えたあと、アムロは兄弟たち にクーリングダウンの指示を出した。 アムロ「ちゃんと念入りにやっておけよ。筋肉が張ってしまうからな」 その後一週間、兄弟たちはアップ→基本練習→ミニゲーム→ダウンのメニューを繰り返した。アムロも 毎回ではないが、選手としてミニゲームに参加している。仕事や学校が終わった後に、練習するのは なかなか体力的に辛いもので、兄弟たちは学校で授業中に眠ったり、仕事中に集中力を欠いたりして いた。ロランは金曜日の練習のとき左ほおを軽くはらしていた。 ロラン「昨日、何度も話を無視したって、ソシエお嬢さんにやられたんですよ。今日になって少しはれ ちゃって……」 シーブック「俺もザビーネのやつにボーっとするなって怒鳴られたけど、それ、張られたのか?」 ロラン「グーです。右ストレート」 コウ「さすがソシエさんだな。でも可愛いじゃないか。俺なんて……はぁ……」 なにがあったのか、コウは深い溜め息をついた。ロランが、「どうしたんです?」と尋ねる。 コウ「シーマさんが、疲れているから差し入れだって、謎の精力増強ドリンクをくれたんだ……捨てたよ、 なにが入っているのかわからないからな」 シーブック「……へ、へぇ~、シーマサンも、か、可愛いとこあるじゃないか……コウ兄さんも、結構 冷たいなあ……な、ロラン」 ロラン「……そう、ですね」 カミーユ「シロー兄さんは今日は来られないんだろ?」 アル「そう言ってたよ。ねえ、僕もミニゲームに混ぜてもらえるよう、アムロ兄ちゃんに頼んでよ。 アムロ兄ちゃんが入る時に外される人と練習するだけなんだもん」 シローは警察官という職業柄、夕方から夜が必ず時間を空けられるわけではないので、練習への 参加が出来ない日もあった。 40 名前:フットボール狂騒曲10投稿日:03/06/27 02 06 ID ??? 金曜日の練習もいつもどおりに終わり、次の土曜日は軽い練習メニューをこなしただけで終わり だった。が、その日のメインイベントは、練習後のミーティングにあった。練習終了後、メンバー 全員がロッカールームに集まったときに、アムロは手をたたいて全員の注目を引き付けた。 アムロ「よし、今日はシローもいるし、ポジションを発表する。多分、これで決定だ」 アムロとコーチのキラは、昨夜、一週間のミニゲームを通して見てきた兄弟たち+2のプレイの 印象を話し合い、ポジションを決めていた。ちなみにロランは今回の選考には関与しない。 公平性を 保ち、アピールするためだ。 金曜の夜。 キラ「アムロ兄さん、一週間の感想はどういうものなんです。」 アムロ「ああ、兄弟の特徴もだいぶ把握できたし、有意義だったよ。発見も多かった」 キラ「例えばロラン兄さんですか? 練習前はどこで使うか、実は悩んでいたんでしょう」 アムロ「ああ。ロランは長短のパスの使い分けが上手いし、視野も広い。味方のプレイヤーへのフォロー も早くて的確だ。DFラインと前線を繋ぐ役目に向いているな。当たり負けもあまりないし」 キラ「ロラン兄さん、一時期は炭鉱で働いていましたしね。苦労かけちゃって……おっと、決定的なパス を何本も通したり、自分でゴールを決めたりするタイプじゃないですよね」 アムロ「そうだな。そういうのは、ジュドーやカミーユが適任だし、あいつらもやりたがっているな。 ジュドーは思ったより、当たりに強いし、あれでなかなか冷静で安定している。ディフェンス は下手だけど。」 キラ「カミーユ兄さんは反面いいときと悪いときのムラが大きいですよね。でも、プレイの一瞬の切れ味 なら一番ですよ、いいときなら。ディフェンスはあまり好きじゃなさそう。やればできますけど」 アムロ「ガロードはちょっと技術的に厳しい。攻撃的なポジションからは外したほうがいだろう。やる気 なら人一倍あるんだから、それを潰したくないんだが」 キラ「シーブック兄さんはだいたいのプレイをそつなくこなしていましたね」 アムロ「どのポジションでもやれそうだが、スピードを活かしたフェイントが得意だったな」 キラ「ウッソはやっぱりガツガツ当られると苦しいから、サイドのほうがいいでしょう。」 アムロ「機転が利くというか、相手の裏をかくのは上手いな。フル出場はまず無理だから、交代するのは 決定事項だ」 キラ「ヒイロは口癖どおり問題ないですね。シロー兄さんは、練習への参加が少なくなっちゃうのが 問題だけど、それは仕方ないですし」 アムロ「コウはこの頃はギンガナムさんにもそう負けなくなってきた。体の使い方はもともと上手い からな。さすがラグビー部。ドモンはセービングに問題はないが、DFとの連携やコーチングは 改善の余地ありだ」 41 名前:フットボール狂騒曲11投稿日:03/06/27 02 09 ID ??? FWギンガナム MFカミーユ MFジュドー MFウッソ MFヒイロ MFロラン DFガロード DFシーブック DFシロー DFコウ GKドモン リザーブ FWアル MFアムロ GKシッキネン アムロ「4-2-3-1だ。最初はディフェンスを重視していたが、もう少し攻撃に力を入れること にしようとおもっている。キャプテンはシローにやってもらう。だが、DFの中心はコウがやれ。 質問は受け付けるぞ」 ギム「ふはははははあ、わが世の春が来たぁーーー!! やはり小生がエースストライカーである!」 ロラン「ギンガナムさん、結構不安だったんでしょう。トイレの個室でブツブツ言ってましたもんね」 ギム「な、しょ、小生はそんな情けないことはしていないのである。人違いではないか、ローラ」 ジュドー「ははっ、まあいいじゃない。それぐらいのことばれても」 ジュドーはギンガナム反対派だったが、トップ下という花形のポジションを与えられた今は、もうどうでも 良くなった。ロランとギンガナムの話に陽気に加わる。 しかし、FWかトップ下をやりたかった他の兄弟は黙っていない。 カミーユ「……なんで、ギンガナムがFWで、ジュドーがトップ下で、俺が左サイドハーフなんです?」 アムロ「ギンガナムさんは体格を活かしてポストプレイをやってもらう。ターゲットにしやすいしな。 トップ下はカミーユかジュドーにしようと思っていたが、ジュドーのほうが視野が広いのと、 カミーユのほうが守備が上手いから、ジュドーをトップ下、お前をサイドにしたんだ。SH はトップ下より守備に走る場面が多くなるからな」 カミーユは、その説明で何とか納得することにした。不満はあるが、あの位置でのSHも結構な花形 なのだ。敵のサイドをえぐったり、中に切れ込んだりして、ヒーローになれる可能性は高い。 だがガロードはそうではない。希望実らずサイドバックなのだ。 ガロード「俺はFWかトップ下がやりたいって言ったじゃんか」 アムロ「はっきり言うが、お前の技術じゃ前線は任せられない。体格的に相手を上回ることもまず無い だろうしな。攻撃的にいくカミーユの後ろをフォローすることがお前の仕事だ」 ガロード「……そんな、カミーユ兄のフォローかよ」 カミーユはガロードに、「頼むな、ガロード」と声をかけた。ガロードは短く「ああ」とだけ答えてそっぽ を向いた。カミーユにとっては何気ない一言が、ガロードにとっては勝者と敗者を分かつ一言である ように思えたのだ。 42 名前:フットボール狂騒曲11投稿日:03/06/27 02 10 ID ??? 次に質問をしたのはヒイロだった。 ヒイロ「ロラン兄さんと俺の関係はどうなっている?」 アムロ「ロランはDFと前線の繋ぎ役、お前は最初に言ったように潰し屋だ。ロランにも攻守に走り回って もらうが、役割はロランのほうがオフェンシブになる」 ヒイロ「問題はない。任務了解」 が、もう一人のほうは納得ができなかった。というより、まごついていた。 ロラン「あ、あの僕が攻撃を繋ぐっていうことは、攻撃の土台をつくるわけですよね。僕にそんな力、 あるんでしょうか」 アムロはロランの目を見て、はっきりと言った。 アムロ「ロラン、お前にならできる。もっと自信を持て」 ロラン「は、はい。頑張ります」 ガロード「そうそう、ロラン兄は期待されてるんだから。俺と違ってさ」 ロラン「ガロード……」 ミーティングはさらに続いた。 コウ「何で俺がDFの中心なんです? シロー兄さんのほうがいいんじゃ……」 アムロ「シローは練習に参加できない日が何日かあるからな。ラインコントロールはまず使わない だろうが、念のためだ。しかし、シロー、キャプテンはお前しかいない。練習にいない日が あろうとかまわん。それと、副キャプテンはロランだ」 シロー「ああ、任せてくれ兄さん。練習も出られる日をなんとか増やすよ」 ロラン「副キャプテンまで……責任重大だ……」 ウッソ「あの、なんでアムロ兄さんは控えなんですか?」 アムロ「最初に言っておくが、ウッソ、お前にはフル出場は無理だ。だから交代で僕が入ろうと考えて いる。僕も会社勤めで体力が落ちているしな。シーブック、ウッソはフィジカル面で厳しい。 当たり負けする局面もあるだろうが、お前が後ろからフォローしてやってくれ。少し負担が 大きいが、頼む」 シーブック「ああ。大丈夫。なんとかこなせると思うよ」 大抵の話し合いが終わったところで、アムロは全員に向けて言った。 アムロ「みんなもわかっているだろうが、うちは勝つしかないんだ。決して参加賞をもらいにいくわけ じゃない。ここで発表したのは勝つためのチームだ。いいな、勝ちに行くぞ! あと来週には 大会に向けて練習試合の相手を用意してある。その相手にも、もちろん勝ちに行くぞ!」 54 名前:フットボール狂騒曲13投稿日:03/06/28 04 09 ID ??? 兄弟たちは賞金目当てでサッカー大会での優勝を目指している。あるグラウンドにも、多くのものが 兄弟と似たような動機によって集まった一団があった。 グエン「皆さんと練習するようになって、一週間ですね」 グエン・サード・ラインフォードはそう言うと、彼がスポンサードするチームのメンバーを見回した。 グエン「当初の約束どおり、私は賞金も何もいりません」 それが本当であることは、集まった一同はすでに確認している。しかし、確認したゆえになおさら、 なぜわざわざ街のサッカー大会などに出場するのかを疑う気持ちが強くなっていた。 シロッコ「私は賞金はいらない。副賞の全自動大型洗濯機が必要なのだ。経営している保育園で使う ものでね。グエン・ラインフォード、あなたこそなぜこんなことをするのですかな?」 グエン「なに、一人の政治や経済の中枢に携わろうとしているものとして、草の根のレベルから人々と 触れ合いたいのです。それだけですよ。できれば他の皆さんの参加の動機も聞きたいのですが」 どこか人を食った態度が、シロッコとグエンに共通している。そういう雰囲気が、ジェリドは大嫌いだ。 なめられ、嘲られているように感じるし、それが彼の一番嫌いなことだった。今回は協力するが、人間 して連中を好きになることはたぶん一生ないだろう。 ジェリド「ふん、俺はマウアーになにかアクセサリーでもプレゼントしたいだけだ。カクリコンも、女さ。 アメリアとか、そんな名前だったか?」 カクリコン「あ、ああ、まぁな」 カクリコンはジェリドにひそかに感謝した。あのことは秘密にしておいてくれたのだ。 マシュマー「私もハマーン様にお返しをせねばならん。この、バラの……」 そういってマシュマーは胸のバラの匂いをかいだ。コーティング済みらしい。クロノクルは、そんな マシュマーの姿に、女性に対する幻想を見て、へきえきした。そんなものは抱かないほうがよい、と いうのが、今の彼の考えだからだ。 クロノクル「私も彼女、というか、そんな女性にプレゼントをねだられて、というか、せっつかれて、 というか、でな」 はっきりしない優柔不断な性格がかいま見えるように、クロノクルは吐き出した。 グエン「女性のため。大いに結構な理由です」 ガトー「いや、女子のためだなどと、軟弱だな! 私、アナベル・ガトーは、今の政治を許しはしない! 賞金はジオンの掲げた理想の宣伝費に当てるのだ! 諸君からの寄付も待っているぞ!」 グエン「理想のためですか。私とは理想の中身が異なるようですが、お互いに頑張りましょう」 ガトー「ふん、白々しいな。中身が違う? 我らの掲げる理想こそが唯一、未来に光をもたらすのだ!」 ゼクス「まあ、ここは政治を語る場ではあるまい。私の動機は……妹の尊敬を取り戻したいのだ。笑う かも知れないが、そういうことだ」 グエン「笑うなどと、とんでもない。ライトニングカウント、それは立派な考えですよ」 皆に合わせるグエンを見て、食えない男だ、とシロッコは思った。あと、恥ずかしい通り名を持って いるやつもいるのだな、とも。 そのほかのメンバーにも、グエンは一言ずつ声を掛けていった。大会の組み合わせによっては、グエン の目的を達成するためには、決勝まで勝ち進まなければならない。何より、彼ら兄弟チームが自分たちと 戦ってくれねばならないが、心配しても始まらない。シナリオとしては、決勝で対決するのがベスト だろう。すこしでも不自然に見えなくなる。 グエンは、沈み行く太陽を手の中に収めるようにして拳を握り、言った。 グエン「私が欲しいのは、賞金などではない。世の中には、金では買えないものもあるのだ」 55 名前:フットボール狂騒曲14投稿日:03/06/28 04 11 ID ??? 翌週、アムロが連れてきた練習相手は、ブライトのつてを頼って来て貰った30歳過ぎたサッカー 愛好家たちのチームだった。なかには、お世辞にも走り回らねばならないスポーツ向きではない腹を 抱えているものも何名かいて、ジュドーやカミーユなどは、「今日は楽勝だな」とそれを見てささやき あい、笑った。 しかし、30分ハーフの試合を前後半おこなった結果、前半は2-0で折り返したものの、後半は1-2 と巻き返され、結果こそ3-2で勝利したが、その内容は、決してほめられたものではなかった。ミスを 相手に的確に決められていれば、よりひどい結果になっていたことも充分ありえたのだ。ちなみに、 ゴールを決めたのは、前半はギンガナムとジュドー、後半はアムロである。 アムロは、まず、「勝ててよかった」と全員をねぎらい、得点を決めたギムとジュドー、多くチャンス に絡んだカミーユとシーブックのプレイをほめた。しかし、ディフェンスに関して、2失点という数字 は受け入れがたかった。 アムロ「前半はドモンがキーパーをやり、後半はシッキネンさんに代わったが、失点の責任を、キーパー に求めるのは酷だ」 そう言って、アムロはロランを見据えた。一点目の失点は、ロランがセンターサークル付近で、簡単に ボールを失ってしまったことが原因だった。まだ周囲との連携がうまくいかないシーンが多く、ドモン の好セーブや相手のミスで失点は免れたものの、前半にも自陣でパスをカットされていた。即、失点に つながる、危険なプレイである。 アムロ「11人でプレイするときの連携の上達は、人数の都合上試合でするしかないし、ミスの全てが お前の責任だとは言わないが、お前のポジションはミスが即、失点につながるんだ。それを 肝に銘じておけ! だけど、相手のスピード不足を考えて、カミーユやシーブックにサイド からスピードを活かして攻めるように誘導したのは良かったぞ」 ロラン「はい。わかりました……」 ロランはうつむき、ぐっ、と体全体に力を込めた。悔しかった。アムロに対する反発ではなく、何度も 同じミスをした自分が情けなかった。 続いて、アムロは二失点目の元凶に視線を飛ばした。 アムロ「ガロード、2失点目の原因になったあのプレイ。左SBのシーブックがすでにオーバーラップ していたにもかかわらず、なぜお前まで上がったんだ。ヒイロが下がってきても、あれではカバー しきれないだろう」 ガロード「……いい感じにボール回してたしさ。俺もせめても大丈夫かな、って」 アムロ「でも、結局お前が上がった裏を突かれて、失点につながるクロスをあげられた」 ガロード「結果論だろ。たまたま、運が無かったんだよ」 アムロ「違う! 無理に上がる試合の流れじゃなかっただろうが! それにお前は何回も……」 ガロード「俺だって攻めたいんだよ!なんで今日はシーブック兄ばっかり……」 意見をぶつけ合うアムロとガロードのあいだに、ギムが割って入る。 ギム「そんなこと、失点のエクスキューズにはならんなあ。守りがそれでは困るのだが」 ガロード「なにぃ、点取ったからっていい気になるなよな!」 ギム「ゴールを決めていい気になって、なにが悪いのである!」 つかみ合い寸前の二人を周りの兄弟たちがなだめる。 アル「やめなよ、二人とも!」 シッキネン「御大将、抑えて下さい!」 後ろからヒイロとキラに左右の腕をおさえられているガロードに、アムロは言った。 アムロ「お前のポジションはDFだ! 守りをおろそかにするな、いいな!」 その後、アムロから二人以外の各ポジションにも何個かの指摘を受けてから、兄弟達はその日の帰途に ついた。 その途中、カミーユとウッソ、ジュドーはギンガナムがたくさん持ってきているイオン飲料を飲み ながら、今日のアムロの「叫びっぷり」について話しあった。 カミーユ「やっぱり、連鎖するんだろうか。子供の虐待とかも、そうらしいって言うしさ」 ジュドー「ああ、アムロ兄、むか~し、よくブライトさんに怒鳴られてたらしいしね」 ウッソ「それが受け継がれったってこと?」 カミーユ「俺やジュドーは何度か会ったことあるけど、ブライトさん、叫びやすいものな」 63 名前:フットボール狂騒曲15投稿日:03/06/29 06 50 ID ??? 今日も今日とて練習。昨日も練習なら、明日も練習だ。兄弟たちは友人や恋人と遊ぶひまもなかった。 そのため、兄弟たちもこんなことを言いたくなる。 ジュドー「今日も練習、明日も練習。あ~、遊びたい~。最近全然あいつらと遊んでないな~」 カミーユ「フォウ……ファ……お~まえに♪あいたい~よと~♪」 アル「なに歌ってんのさ、カミーユ兄ちゃん……」 ウッソ「なんていうか、こういう状況って、美人のマネージャーさんがいて、タオルとか渡してくれる んじゃないんですか。まったく女のひとが出てこないなんて、おかしいですよ……もう限界……」 ガロード「ティファ……今ごろなにしてんのかなぁ……練習なんて面倒だよ。どうせ俺は怒鳴られるだけ だしさ」 シロー「おい、みんなしっかりしろよ! 今だけなんだから! でも、俺もアイナに会いたいな……」 練習が始まって二週間、そろそろ兄弟たちも、最初は新鮮だったサッカーをわずらわしいと感じること もあった。何より、たんに恋人や友人との時間が欲しかった。 そんな状況の中、ある事件が起こった。 シロー「アイナに会いたい……アイナ……ああ~!アイナ様ああ!アイナ様あああ、垂れ目かーいいよーーー! かーいい~!」 キラ「シ、シロー兄さんが壊れちゃった!」 アムロ「お、おいシロー、いったいどうしたんだ」 シロー「いや、ちょっと叫んでみて不満を発散しただけさ。弟たちは学校や仕事先でちょっとは会う時間 があるだろうけど、俺はこの頃なかなか会えないからな」 アムロ「あ、ああ、そうか。そうだ、ドモンもレインさんに会いたいだろ」 ドモン「そ、そんな、俺は別にあいつのことなんか……お、そうだ、ガロード、ガロードがいないぞ」 シロー「別にいいじゃないか、認めても。ガロードは遅刻かな。もうすぐ来るとおもうけど」 ドモン「たるんでるぞ!だいたいあいつはこの頃やる気がないっていうかだなあ……」 ことの発端は、ドモンが照れ隠しにガロードへの文句を口にしたという、他愛のないものであった。 64 名前:フットボール狂騒曲16投稿日:03/06/29 06 51 ID ??? そのガロードは、友人のキッドなどと話しこんでいたため練習に遅刻してしまい、練習場への道を 急いでいるところだ。アップ代わりだといわんばかりに全速力でグラウンドに駆けつけたとき、ふと 兄弟たちとギンガナムの話が耳に入ってきた。ガロードはつい物陰で聞き耳を立てる。 アムロ「ガロード。練習試合で怒鳴って以来、あいつはやる気がない。言い過ぎたかな」 シーブック「でもロランは真面目にやってるからな。FWがやれない不満が大きいんだろう」 ギム「ふん、やる気がない奴などほおっておけばよい! 小生はあいつがそんなにチームに必要とは思えん がな。シッキネンが左SBをやっても何も問題ないように思うが」 ロラン「ギンガナムさん! ガロードだってチームメイトなんですよ! 必要ないなんて……」 コウ「だけど、大会までこのままのやる気がない状態だったら問題だよな」 ヒイロ「アムロ兄さん、その場合の対策は考えているのか?」 アムロ「……もし、ガロードが今のままだったら、シッキネンさんを左SBに入れることも考えている」 ウッソ「そんな、ガロード兄さんを外すの?」 ヒイロ「俺は賛成だ。中途半端なプレイをするやつは、必要ないどころか、マイナスになる。勝つためには」 ロラン「そんな、ヒイロ、冷たいですよ。兄弟じゃないですか」 ヒイロ「任務は仲良くすることじゃない。勝つことだ」 ドモン「ロラン、ヒイロやアムロ兄さんは、正しい。俺たちは勝つしかないんだからな」 アムロ「しかし、シッキネンさんを左SBにするとなると、控えのGKがいなくなっていしまう」 ギム「そのときは、小生がもう一人ぐらい新しくつれてくればすむことだ」 キラ「でもガロードさ、まだ来ないのかな」 ガロードは、その話を最後まで聞かなかった。自分の持ち物をまとめて、こっそり誰にも見つからない ようにその場を抜け出し、あてもなく街をさまよった。夜が遅くなってから、家に帰ろうか、という 思いが何度も浮かび上がってくるが、ガロードは、それをかたくなに無視し続ける。どこかに泊まる 金も無いガロードは、キッドのやっているジャンク屋を訪ねた。 キッド「あれ、ガロードか。サッカーの練習どうだった?」 ガロード「サボったよ。俺はチームに必要ないみたいだからさ。それと、今日泊めてもらっていいか?」 キッド「珍しいな。アンタは真面目なやつじゃないけど、家にはいつも帰るじゃん」 ガロード「別にいいだろ、そんなこと。泊めてもらうぞ」 キッド「おいおい、強引だな~」 翌朝。ガロードは昨日の夜と同じく、コンビニのおにぎりで寂しい朝食を取っていた。ロラン兄の作る ご飯が食べたい、という気持ちを、首を振ってごまかすと、ちょうどキッドがやってきた。 キッド「や、ガロード。俺は学校行くけどさ、アンタはどうすんの?」 ガロード「あー、俺? めんどくさいからサボるわ」 学校に行けば、他の兄弟に会わなければならない。だから、学校には行けない。 いっぽう兄弟の家では、一人足りない朝食の時間だった。 アムロ「ガロード、結局昨日は帰ってこなかったな。なにも連絡はなかったんだろう」 ロラン「練習をサボって、それっきりですけど、いったいどうしたんでしょう。心配ですね」 カミーユ「普通に友達のところにでも、泊まったんじゃないかな」 ジュドー「もしかしてティファちゃんのところだったりして……」 コウ「それって、つまり……ま、まさかな。早すぎるだろ……なぁ」 自分たちの昨日の話がガロード失踪の原因であることなど、もちろん兄弟たちは知らない。 65 名前:フットボール狂騒曲17投稿日:03/06/29 06 52 ID ??? その日の午後、ガロードはひまをもてあましたすえに、公園のベンチで昼寝をしていた。と、向こうから ティファが歩いてくる姿が見えた。ガロードはなにか合わせる顔がないように思って、隠れるところを 探したが、あいにく、というか当然、周囲には身を隠すところなど、何も無かった。それに、ティファ はもうガロードに気付いている。 ティファ「……ガロード……」 ガロード「や、やあ、ティファ、偶然だなあ」 妙なしゃべり方になってしまった、と自分でもガロードはわかった。 ティファ「偶然じゃない……」 ガロード「え?」 ティファ「ガロードが……寂しい思いをしているような……」 ガロード「捜してたのか、俺を?」 ティファは、可愛らしい顔をコクンと、縦にうごかした。それを見た瞬間、ガロードは、昨日のことを しゃべりたい衝動に駆られた。ガロードは、うつむき、ティファの顔をみて、もう一度 うつむいて から、口を動かした。もう我慢できなかったのだ。 ガロード「ティファ、俺は、その……」 ガロードはティファに、昨日の兄弟たちの話だけでなく、FWをやらせてもらえないことや、それに 対する不満、練習試合でアムロに怒鳴られたことまでも、全てを話した。ティファは、その話をただ 黙ってガロードの横で聞いていた。そして、ガロードの話が終わると、持っていた通学用のかばんから、 あるものをとりだした。手製のお守りのようだ。布を縫い合わせた袋に、首にかけるためのひもがとお してある。 ティファ「ガロードが……怪我をしないようにと思って……」 ガロード「ティファ……でも、俺はもうサッカーなんかやらないよ。どうせFWやらせてもらえないし さ。だから、もう怪我もしないし、もっとティファと一緒にいられるし……」 ティファ「……兄弟のひとたち……待っていると思う……ガロードを……」 ティファはガロードの手に自分の作ってきたお守りをのせると、そのままそっと握った そうして、ガロードの目をみつめて言った。 ティファ「あなたに、力を……」 ティファは立ち上がって、ガロードのもとから歩み去った。残されたガロードは、お守りを握りしめて、 地面をじっとみつめていた。 66 名前:フットボール狂騒曲18投稿日:03/06/29 06 52 ID ??? 夕方と夜がせめぎあう練習時間、ロランは、念入りに体をほぐしながら、アムロに話しかけた。 ロラン「ガロード、今日の学校にも来ていなかったそうです。今も来ていないし……」 アムロ「いったいなにやってるんだ、あいつは。これじゃ真剣にガロードを外すことを……」 その大声が響いたのは、アムロが言い終わらないうちだった。 ガロード「やっべぇー、遅れた、遅れた。一日以上遅刻しちまったぜ!」 ロラン「ガロード! いったい今までどこにいたんですか?」 ガロード「いや~、心配かけてゴメン、ロラン兄。ははは、まあ、ちょっとね」 アムロ「なにが、ちょっと、だ。昨日の練習もサボって、今日は遅刻か! 罰として練習が終わった後、 グラウンド50周だ!」 ガロード「そ、そんなあ……まあ、仕方ないかぁ。それより、アムロ兄、俺はやるぜ!やるっていったら やるんだ。もう止められないぜ、俺を」 ガロードは、まるでアムロに食いついていくような勢いだ。 アムロ「そ、そうか。わかった」 ロッカールームに向うガロードの後姿を見ながら、アムロとロランは顔を見合わせた。 アムロ「いきなりどうしたんだ、ガロードは。妙にやる気をアピールしたりして」 ロラン「昨日サボっちゃったから、っていう感じじゃなかったですよね。でも、よかった。やる気を取り 戻してくれて」 さらにガロードは、練習用のユニフォームに着替えてきてから、ヒイロとギンガナムに宣言した。 ガロード「ギンガナムに、ヒイロ! よくも必要とは思えないとか、マイナスだ、とか言ってくれたなぁ。 お前らが間違ってたってことを、これから証明してやるからな!」 しかし、ギンガナムとヒイロは、二人とも不思議そうにまゆを寄せると、こう言った。 ギム「小生がそんなこと言ったのか。うむ、いつだ?」 ヒイロ「俺も覚えていない。ガロード、勘違いではないのか?」 ガロード「お、お前ら、覚えてもいないのかよ! くっそぉ~、納得いかねぇ~~」 ガロードは拳を握り締めて、うなだれたが、ヒイロもギンガナムも、なおさら不思議がるだけだった。 67 名前:フットボール狂騒曲19投稿日:03/06/29 06 54 ID ??? ティファの励ましを受けてガロードもやる気を取り戻し、兄弟たち+2は、大会に向けて練習を重ねて いった。何度かの練習試合も経験。チームとしての連携も攻守にわたって上達し、結束も生まれつつ ある。さらに、ウッソ待望のマネージャーも入ることになった。 ロラン「お嬢さん、大丈夫ですか、本当に」 ソシエ「何回もうるさい! 私にだってレモンのシロップ漬けぐらいできるわよ!」 ロラン「でも、レモンをナイフで切るとき、指を怪我しちゃったじゃないですか、さっき」 ロランはソシエが心配で、練習を抜け出してきてしまっていた。 ドモン「おーい、ロラ~ン! あいつ、いったいどこにいったんだ?」 リリーナ「ヒイロやみなさんのため、わたくし、腕によりをかけて作りましたのよ」 ロッカールーム隣のキッチンルームのテーブルにならぶ、謎の物体Xたち。 アル「なに、なんなの、それ?」 リリーナ「ケーキです。みなさん、遠慮せずにどうぞ」 コウは思った。あの醜悪な塊の数々は、ケーキなんかじゃない、と。しかし、ヒイロは決して逆らえない 運命に果敢に挑んでいった。いや、挑むしかなかったのだ。 ヒイロ「……死ぬほど、うまいぞ……ゴフッ」 リリーナ「ヒイロ、おいしいからって口に詰め込みすぎですわ」 アムロ「あ、あのリリーナさん、お気持ちは嬉しいんですが、選手の体調管理もありますし……」 その後もヒイロのコンディション悪化の危機は続いたが、なんとか乗り切れているようだった。 ソシエもリリーナも、一度やってみたかったらしく、兄弟がサッカー大会に出場するのを聞きつけて、 マネージャーを買って出てくれたのだった。それが、兄弟たちの役に立っているかはともかく。 ロラン「そ、そんな、お嬢さんに汚れ物の洗濯だなんて、させられませんよ」 ソシエ「私たちはマネージャーなのよ。これぐらい当然よ。ね、リリーナさん」 リリーナ「はい。それに洗濯機に入れるだけのことですわ。えーと、洗剤ってこれぐらいでいいのかしら」 ヒイロ「……明らかに入れすぎだ、リリーナ」 ソシエ「そうかしら?」 ロラン「その二十分の一の量で結構です……」 ウッソは、空に叫んだ。 ウッソ「僕は、選手たちを温かく見守ってくれる、優しいお姉さんタイプを望んでいたんですよー!」 マネージャーも加わり、兄弟たち+4となったメンバー。そして、ついにサッカートーナメント大会 開始の日の太陽が昇った。 74 名前:フットボール狂騒曲20・フランの瞳にうつるもの投稿日:03/06/29 22 06 ID ??? フラン・ドールは、競技場に向うバスに乗っている。取材のためだ。フランはバッグのなかから 競技場の配布している紹介用のカラーパンフレットを取り出し、もう一度眺めてみた。 大会の会場になっている市営複合競技場には、サッカーに使える芝生のグラウンドが3面もある。 他にも陸上競技用の設備や体育館、野球場にテニスコートなど、多くのスポーツ大会に対応できる ように施設が充実しているが、その建設費も維持費も、ほとんどが市民の税金によってまかなわれ ていた。何らかのスポーツのプロチームと長期の使用契約を結んでいるわけでもなく、もちろん 毎年大幅な赤字を計上している。市民のあいだでは、立派過ぎる、というのが定評であり、 こんな 分不相応な競技場が建設されたのは、長らく市政を牛耳ってきた連邦党とアナハイム土建 との癒着 のせいである、という噂が、まことしやかに囁かれていた。もっとも、その類の噂はどの地域でも 聞くことができる。アナハイムグループと連邦党との結びつきの強さはこの市に限ったことでは なく、彼らは全地球圏の規模で固く手を結んでいるからだ。 しかし、今回記者フラン・ドールが行うべき取材は、前述の話のような、記者魂をくすぐって やまないものではなかった。街のサッカー大会を取り上げる、地域版のための取材だ。今回の仕事を 軽んじるつもりはないが、できれば大会の裏に隠れている裏の事情を探りたい、というのが、フラン の本音だった。正義感よりも、なにがうごめいているのかを単純に知りたい好奇心ゆえだ。 フラン「このサッカー大会だって、競技場が使われているってことをアピールしたい、市の思惑が 明らかよね」 そのセリフを口のなかで言って、フランはそちらにばかり考えを向けるのをやめなければ、と自省 した。今回の取材は、あくまで市民の活躍を中心にまとめろと、地域版の責任者からきつく言われて いたのを思い出したからだ。そして、それもまた大切な報道の仕事なのだ。華やかな政治記事ばかり でも、新聞ではない。気持ちを切り替え、サッカー大会の白黒のハンドアウトを取り出す。 フラン「でも、わかんないわね。なんで、ラインフォード家の御曹司がこんな大会に参加するのかしら。 わざわざメンバーを集めたっていうし。それに、ロランの兄弟はそんなにサッカー好きだったっけ」 とりあえず、ロランの兄弟に取材にいこう。せっかくつながりがあるわけだし、今日の試合では負けて ほしくないわね。フランは考えてきた取材の段取りを確認した。 77 名前:フットボール狂騒曲21・決勝までは何マイル?投稿日:03/06/30 02 34 ID ??? 競技場に到着した兄弟たちは大会の掲示板を見ていた。今日は日曜日であり、仕事も学校も休みで、 シローも今日を休みにしてもらっている。もちろんギンガナムとシッキネン、マネージャーのソシエ、 リリーナも一緒だ。 大会には全部で8チームがエントリーしており、4チームずつ、AとBのブロックに分けられている。 それぞれのブロックを勝ち上がったチームが決勝で戦うことになる仕組みだ。日程は、日曜である 今日の午後が一回戦、3日後の水曜の夜が準決勝、さらに3日後の土曜日の午後が決勝戦というもの である。 兄弟たちのチーム、<FCギム・ギンガナム>はAブロックだった。 コウ「Aブロックか。それにしても、あのBブロックのチーム、<ラインフォード・ユナイテッドFC> か……グエン卿が大会に出るって噂は本当だったんだな」 ロラン「さっきもらったハンドアウトに乗っていた登録メンバー、知り合いばかりでしたよ」 カミーユ「ジェリド、シロッコにカクリコン。あいつらがなんで大会に?」 ジュドー「俺たちと一緒でなんか事情があるんでしょうよ。マシュマーとか、ラカンもいる」 ドモン「ガトー? ああ、あのうるさいやつか。ん、GK:チボデー・クロケットだと……」 他にも、兄弟たちにとって知らない名前などほとんどなかった。たった一人を除いて。 シロー「この、エドワウ・マスっていう人だけは知らないよな。FWで登録されてる人」 アムロ「セイラさんと同じ名字だけど、エドワウなんて、聞いたことないな」 キラ「名字ぐらい同じ人がたくさんいるよ。赤の他人じゃないかな」 ウッソ「でも、なんだか知っているような気がするよ……聞いたことない名前なんだけど」 兄弟たちがエドワウ・マスという人物に興味を引かれていると、突如、笑い声が響いた。 ドレル「ふっふふふふ、はは、Bブロックのチームを気にして、君達は決勝までいけるつもりかい? ははははは」 ソシエ「何よアンタ! いきなり出てきて大笑いして……バッカじゃないの」 ドレル「君達の初戦の相手、<SCクロスボーン>のキャプテンのドレル・ロナさ。品のないお嬢さん」 最後の言葉に顔を真っ赤にして怒るソシエの前に、ロランが腕をだしてかばうようにする。 ロラン「お嬢さんは、口の悪いところはありますけど、品のない人じゃありません」 ドレル「これは失礼した。使用人かい、君?」 ドレルはキザったらしく前髪をなでる。ソシエは、舌を出してわざとなおさら下品に振舞ってみせた。 初戦の相手と名乗る者の登場に、兄弟たちの緊張感が急激に膨れ上がっていく。 78 名前:フットボール狂騒曲22・開幕のダストブロー投稿日:03/06/30 02 37 ID ??? 突然現れた男、ドレル・ロナは、<FCギム・ギンガナム>の初戦の相手である、<SCクロスボーン> のキャプテンだと名乗った。 シーブック「ドレル……聞いたことあるぞ。確かセシリーの従兄弟だか、異母兄じゃ……」 ドレル「ん、君はセシリーの知り合いか。そうか、君がシーブック君だね。セシリーやザビーネから 聞いているよ。確か、一緒に働いているんだろ、ザビーネ?」 ザビーネ「ああ。彼はカロッゾさんにも可愛がられている」 物陰からザビーネが姿をみせる。シーブックは、驚きを隠せず、口をぱっくりと開けてしまった。 シーブック「ザビーネ、さん……どうして、ここに?」 リリーナ「ザビーネ・シャル……<SCクロスボーン>のMFとして登録されています」 ハンドアウトを確認して、リリーナが言う。 ドレル「怪我をしてしまったチームメイトがいてね、急遽入ってもらったんだけど、今じゃうちの武器 はザビーネだよ」 ドモン「ほぉ、試合前にそんなことわざわざ言うなんざ、よっぽど自信があるんだな」 ドレル「ああ。先にすすむのは僕らだ。君らなど敵ではないな。兄弟中心のアットホームなチームだろう」 ギム「敵ではないだと? 今の言葉、聞き捨てならんなぁ」 ドレルの一言に、少なからぬ反感をかきたてられる兄弟たち。その気持ちを代表するように、ドモンと ギムはドレルとにらみ合う。ザビーネは、付き合いきれん、というように嘆息してから、言った。 ザビーネ「ドレル、私はもう行くぞ。……シーブック、フィールドでな……」 ザビーネの鋭い視線がシーブックを打ち抜く。シーブックは、その視線からつい逃げてしまった。 ドレルもザビーネの後に続いて去っていく。去り際に不敵な笑みを残して。 ソシエ「ドレル・ロナ、嫌なやつね。なんであんな自信満々なのかしら。あいつのチームってそんなに 強いの?」 フラン「<SCクロスボーン>は、ドレルの通っている大学のサッカーサークルよ。サークルでやって いるチームとしては、結構レベルが高いらしいって話だけど」 ドレルの次は、フランがいきなり登場した。どうも今日の兄弟たちは不意打ちを喰らってばかりで ある。 フラン「それにしても、試合前のぶつかり合いなんて、ドラマやってるわね」 ロラン「フラン、いったいどうしてここに?」 フラン「この大会を取材するためよ。さっそくだけど、チームの取材を許可してくれない?」 アムロ「そういう話は、一応僕がやることになってるんだ。監督でもあるからね。」 この大会は、プロはもちろん、アマチュアでも大学の正式なサッカー部や地域リーグに所属して いるようなチームは出られない。あくまで草サッカーを楽しんでいるレベルの愛好家たちのための 大会である。だから、フランの情報は、ドレルの自信にそれなりの根拠はあることを示していた。 96 名前:フットボール狂騒曲23・ロッカールームの中で投稿日:03/07/03 23 30 ID ??? 一回戦の<SCクロスボーン>戦を前にしたロッカールームでは、試合用のユニフォームが兄弟たちに 手渡されるところだった。 ユニフォームを前に兄弟たちの顔は引きつっている。試合への緊張のためではない。ユニフォームの デザインのせいだ。 上下とも白を基調にしたそのユニフォームはあのレアル・マド○ードを連想させたが、通常、企業の 広告などがあてられている前面に、ギンガナムが刀を構えるプリントがなされていたのだ。 ジュドー「ダサい、ダサいよ。こんなの着て試合するのかよ、俺たち」 ギム「当然だ。なんといっても<FCギム・ギンガナム>なのだからな。ダサいとは、センスがないなあ」 カミーユ「子供が着るヒーロープリントTシャツじゃないんだぞ……」 アムロ「とにかく、今から名前と番号を呼ぶからな。背番号1、ドモン。背番号2、シーブック……」 アムロは兄弟にユニフォームを手渡していった。3番がガロード、5,6がそれぞれコウとシローだ。 アムロ「背番号4、カミーユ。ほら、お前の希望通りにしておいたぞ」 カミーユ「ありがとう、アムロ兄さん。……フォウ、これで一緒に戦えるね」 カミーユは4と刻まれているユニフォームをそっと抱きしめた。 ウッソ「なんか、おかしいっていうか、不気味ですよ! カミーユ兄さん!」 アムロ「7番、ロラン。 8番、ウッソ。 9番、ギンガナム。 10番、ジュドー。 11番、ヒイロ」 ジュドー「へへ、やっぱり俺がエースだよね。あとはデザインさえ良ければなあ」 ギム「やはり、ストライカーの番号は9番であるな。デザインも最高であろうが」 希望通りのナンバーを与えられて、ジュドーとギンガナムは結構ご満悦だ。 アムロ「12番、シッキネン。僕は14番で、アルは18番だ」 アル「18番かあ……バッ○ョやクリンス○ンがつけていたけど、個人的にはマンチェ○ターUの スコ○ルズの印象が強いね。イングラ○ド代表では8番だけど」 シロー「相変わらず微妙なところをいくなあ……スコー○ズは有名といえば、有名かもしれんが」 選手にユニフォームがいきわたった所で、コーチであるキラやマネージャーのソシエとリリーナは、 一緒にユニフォームを着るのか、という選択を迫られた。 キラ「ギンガナムさんがこれでもか、っていうぐらいにでかでかとプリントされているけど……」 キラは着ることにした。兄弟一のギンガナム嫌いのキラだが、兄弟のなかで仲間はずれになるのは 嫌だったからだ。リリーナも着るという選択。 リリーナ「チームの皆さんが着られるのでしたら、わたくしも着なければならないでしょう」 そうなると残されたソシエだけが着ないというのも変だということで、ソシエも着ることになった。 ソシエ「こんなユニフォーム着るなんて、はぁ、お嫁に行けないわ」 ロラン「お嬢さんは、商売人やお役人のお嫁さんになるのはゴメンなんじゃないんですか」 ソシエ「……恥ずかしいってことよ。さすがにこれはね」 そう言ってソシエはギンガナムのプリントを広げてみせた。多くの兄弟たちがそれには同意見のよう でソシエと一緒に溜め息をつく。アムロは立ち上がってみんなに呼びかけた。 アムロ「みんな、ユニフォームのことは言っても仕方ないだろう! 僕たちはかっこつけにきたわけ じゃない。勝つためにきたんだ! わかってるんだろうな!」 アムロの一喝に一同が、オウ! と応える。試合に向けた熱気がよみがえり、ロッカールームを一段と 蒸し暑くした。 そのあと兄弟たちはみんな淡々として外で試合前の準備運動をしたり、軽い冗談を言い合ったりした。 誰の目にも緊張している者などひとりもいないように見える。だから、兄弟たちはみんな心の中で 思っていた。緊張しているのはもしかして自分ひとりだけなのか、と。 97 名前:フットボール狂騒曲24・兄弟たちピッチに立つ投稿日:03/07/03 23 33 ID ??? 試合開始前の練習のため、兄弟たちはスタジアム下のフィールドに続く地下道にやってきていた。 簡単な練習の後すぐ試合だから、これは実質上の選手入場だ。 シロー「このスタジアム、地下道まですごいリッパだな。テレビで見たプロみたいな気分だ」 アムロ「全部僕らの血税で作られたんだけどな」 ガロードはユニフォームの下からティファのお守りを取り出して、こっそりとキスした。 ガロード「ティファ、俺に力を貸してくれ……」 コウ「なにやってるんだよ、ガロード。かっこつけてるなあ、お前」 ガロード「な、コ、コウ兄、み、見てたのかよ……」 キラ「僕も見ていたけどね。ふふっ……あれ、コウ兄さんもなんかつけてるね?」 ニヤニヤ笑いながら首を突っ込んできたキラは、コウの首にもひもがかかっているのを発見したのだ。 コウがあわてながら、聞いてもいないことまで話し出す。 コウ「い、いや、これは違うんだ。ほ、ほら、シーマさんって変な物しかくれないだろ。だ、だから、 せっかくお守りなんてまともなものくれたからさあ、義理でつけてもいいかな、と思ってさあ」 いや、本当にそれだけなんだ、と付け加えたコウをからかうために、ジュドーも口を出す。 ジュドー「アストナージさんに聞いたんだけどさ、むか~しの日本ってところの風習で、戦場に行く 男に託したお守りのなかにはさあ、あれが入ってるんだってよ」 コウ「あれってなんだよ?」 ジュドーはコウに耳打ちして、くくくっと笑い続ける。 コウ「ま、まさか、そ、そんなもの入っているわけないだろ。シーマさん、風習に詳しくないだろうし 第一、そんな大げさな話じゃないだろ、戦場に行くのとは違うって」 ジュドー「確認してみなよ」 コウ「い、いいや、遠慮しておく。入っているわけないしな」 コウはお守りを急いでユニフォームの中にしまいこんだ。お守りをくれたのは正直嬉しかったところ もあるが、ジュドーの言ったものが入っているのはごめんだった。そして、本当に入っているかどうか を確認するのが怖かったから、そのことは忘れることにしようと心に決めた。 コウ「そんなわけない。そんなもの入っているわけがないんだ、うん」 カミーユ「いったい何の話?」 ジュドー「それがさあ……」 ジュドーは、目前にせまった試合の恐怖から逃れるために、浮かれたそぶりでカミーユにもお守り のことを話した。 整えられた芝は陽光に照らされて鮮やかに青く、空席がほとんどのスタンドは城壁のようにそびえて いる。<FCギム・ギンガナム>は今、暗い地下道から出て、緑に輝くフィールドに足を踏み入れる。 もうここまできたらどんな言い訳もできず、ピッチを後にするときは、勝ったか、負けたか、それだけ である。そして、兄弟たちは勝つしかない。 すでに相手の<SCクロスボーン>は練習を始めていた。その中には、眼帯をした金髪の男もいる。 シーブックは、ザビーネの姿をじっと見つめた。ザビーネはやわらかいタッチでボールを扱っている。 与えられていた練習の時間はあっというまに終わってしまい、審判が両チームのキャプテンを呼び 寄せた。いよいよ、試合開始のときが訪れたのだ。 続く 続く 98 名前:フットボール狂騒曲25・再会、兄弟子よ…投稿日:03/07/04 01 27 ID ??? コイントスの結果、前半のキックオフは<SCクロスボーン>が行うことになった。ピッチに両チーム のメンバーが散り、審判の笛が高らかに鳴り響く、試合開始だ。まずは<SCクロスボーン>のドレル が後ろにボールを回す。 キラ「敵は、4-4-2のフォーメーションだね」 <SCクロスボーン>・フォーメーション FW9 FW10・ドレル MF14・ザビーネ MF7 MF6 MF8 DF5 DF2 DF4 DF3 GK1 ソシエ「あのいけ好かないやつはFWで10番か。うちは4-2-3-1よね」 アル「シーブック兄ちゃんの先輩は、左サイドハーフで14番だね」 <FCギム・ギンガナム>・フォーメーション FW9・ギンガナム MF4・カミーユ MF10・ジュドー MF8・ウッソ MF11・ヒイロ MF7・ロラン DF3・ガロード DF2・シーブック DF6・シロー DF5・コウ GK1・ドモン シーブックとザビーネは、それぞれ右SBと左SHなのでちょうど真っ向からぶつかり合うことに なる。シーブックは、ボールがサイドラインを割ったすきに、ザビーネに話しかけた。 シーブック「ザビーネさん……どうしてこの大会に出場しているんです?」 ザビーネ「ドレルとはちょっとした知り合いでな。メンバーが怪我したから代わりに入ってくれないか、 と頼まれたのだ」 シーブックはザビーネの眼帯に目を向けていた。片方の目をふさがれて、満足にプレイできるもの だろうか。すると、シーブックの視線に気付いたのかザビーネが言い放つ。 ザビーネ「ふん、問題はない。私はずっとこれでやってきているからな。それより、敵の心配をする 余裕をもたれるとは、私もなめられたものだな」 そんなつもりじゃあ、と言おうとしたシーブックに背を向けて、ザビーネはボールを受けに動いた。 シーブックはあえてカットには行かず、ザビーネにボールを持たせた。一対一で抜いてみろ、という 姿勢をみせたのである。ザビーネもそれに答えるようにボールを自分の前に置いて、ドリブルで振り きってやろう、と表明した。シーブックには、ザビーネがかすかに笑った気がした。嘲笑か、それとも 別の感情を込めたか。 <SCクロスボーン>から見て、敵陣中ほどの左サイドライン際。ザビーネが、仕掛ける。 99 名前:フットボール狂騒曲26・迷える戦士たち投稿日:03/07/04 01 28 ID ??? ザビーネのドリブルは決して速いものではなかった。しかし、ボールタッチやスピードの緩急に 独特のリズムがあり、またボールを扱うテクニックは格別に上手かった。何度かのフェイントと切り 返しのすえ、シーブックは完全に抜かれた。ザビーネはすぐさま、中央に低いクロスを挙げる。 ザビーネ「ドレル!」 中央には二人のFW、10番のドレルと9番の選手、そして右SHの7番、CHの8番がすでに 待ち構えて、もしくは走りこもうとしていた。ザビーネがクロスをあげることを信じていたので ある。兄弟たちもぴったりと彼らについている。はずが、ドレルをマークするはずのコウはまったく 見当違いのところに突っ立っていた。 コウ「あ」 ザビーネのクロスは正確にドレルにあわされている。攻め手から見てペナルティエリアの左やや後ろ、 ドレルがボレーであわせた。決定的な得点チャンス。 シュートは枠をキッチリ捉えていた。決まる! とドレルは確信しただろう。しかし、ドモンが その身を投げ出して止めにいく。ドレルのシュートはドモンの体に当って跳ね返った。弾かれた ボールは運良くシローの前に転がり、シローはともかくも前に思いっきりボールを前にけりだす。 ボールはサイドラインを割り、<FCギム・ギンガナム>は致命的なピンチをなんとか乗り越える ことができた。 ドモン「コウ、なにやってるんだ! アホみたいに突っ立っているな! シーブックも簡単に抜かれる んじゃない!」 シロー「ドモン、ナイスセーブだ! 助かったぞ」 シローがドモンに声をかけて、頭をなでた。 しかし、その後も兄弟たちのミスは続いた。ロランはパスミスでピンチを招き、ジュドーはシュート を空振り、カミーユは簡単にボールを奪われてしまう。シローでさえ一度クリアミスをして、ドモンも ゴールキックを目の前の敵に渡してしまう始末だった。それでも何故か失点だけはしなかったのは、 ドモンが神がかったセービングをみせ続けたからである。 アムロ「まずいな、みんな初めての真剣勝負に戸惑っている。ドタドタとして落ちつきがない」 ベンチに座る選手兼監督のアムロはつめを噛んだ。そして立ち上がり、チームに声をかけた。 アムロ「みんな、落ち着け! 自信を持ってプレイしろ! いつもどおりやればいいんだ!」 もっともそれがいちばん難しいのだということは、アムロも痛いほど感じている。今の叫びも、 ピッチの中にいるメンバーに届いたものかどうか。皆、頭が真っ白になっているのではないだろうか。 アムロは自分でも知らぬあいだに、またつめを噛んでいた。 そしてシーブックは、いまだザビーネに振り回されるままだった。 121 名前:フットボール狂騒曲27・流れ、新たなり投稿日:03/07/10 02 56 ID ??? <SCクロスボーン>ボールでリスタートして何度かパスを回した後、再びザビーネにボールが わたる。今度はシーブックだけではなくウッソもザビーネにつき、一対二の状況だ。しかし、それでも 抜きにかかるザビーネ。二人のディフェンダーを振り回し、あいだに隙をつくってそこを突破する。 シーブック「クソッ」 ウッソ「このお」 ザビーネのこの試合何度目かのクロスを長身の9番が頭で折り返し、そこにドレルが走りこんで シュート。が、これはドモンが真正面でキャッチした。コウがドレルに何とか喰らいつき、シュート コースを限定したためだ。とはいえ、いまだに相手の思惑通りの形でシュートまで持っていかれて おり、 この前半15分まで<FCギム・ギンガナム>は圧倒的に相手にボールを支配されていた。 ドモン「ディフェンダー! 好きにやらせるな!」 シロー「前のやつらはもっとボールを大切にしろ! 簡単に取られるんじゃない!」 シッキネン「前、つまりFWやMFがボールをキープできないから、後ろのDFは体勢を立て直す 時間が無く、相手の攻撃に対して後手後手に回らねばならない。これでは辛いな」 シローの苦情にベンチのシッキネンも同意する。今は辛い時間帯だ。しかし、相手とてミスを犯して いるのだ。 シッキネン「敵は点を取れる機会を無駄にしている。試合の流れ、このままでは行かん」 アル「なんだか急にキャラが解説のひとっぽくなったね」 コースを限定されたことを悔しがりながらも、ドレルはザビーネに近づいてささやいた。 ドレル「この調子で行けば楽勝だね。連中、キーパーはそれなりにやるみたいだけど、他はたいした ことないよ。それにキーパーのまぐれ当たりだって、これ以上続くものじゃない」 ザビーネ「決められるときに決めなければ、まずいことになる。次のチャンス、逃さないでもらいたいな」 チャンスを逃し続ければ、相手に試合の流れが行ってしまうのがサッカーだ。もっとも、このことは サッカーだけでなくスポーツ全般に言えることだろう。 ドレル「それぐらいわかっている。今度こそ決めてみせる。流れはこっちにあるんだ」 しかし、ドレルの思惑とは逆に、そしてシッキネンの呟いた通り、このプレイをさかいに試合は 一進一退の攻防を繰り広げていく。 <SCクロスボーン>のコーナーキック。ザビーネが自分たちから見て左のコーナースポットに 行き、<SCクロスボーン>のCBも前線に上がってきた。ペナルティエリアの中で、両軍の選手 が体をぶつけ合ってポジションを確保しようとする。ザビーネは、ドレルに合わせようと、左足を 振りぬいた。あげられたボールに合わせるように跳ぼうとするドレル。しかし、マークについている コウが、上手く体を寄せてジャンプをさせなかった。だがピンチはまだ終わっていない。流れた ボールを拾った<SCクロスボーン>7番が、再度中央にボールを放り込んでくる。これは、ドモン が飛び出してキャッチ。 ドモン「カウンターだ! 行くぞ!」 ドモンは素早くボールを前線に蹴りだした。そのボールをギンガナムがジュドーに頭で落として、 ジュドーは左サイドを上がってきたカミーユにボールを託す。カミーユが相手の右サイドを破り、 クロスをあげた。 カミーユ「ギム!」 二人のディフェンスに阻まれながらも、ゴール前まで上がっていたギンガナムが、あげたれたボール を強引にヘディングシュート。キーパーの正面だったが、まともに枠に飛んだシュートは、これが<FC ギム・ギンガナム>で初めてだった。 ギム「いいぞ、どんどん小生にもってこい!」 122 名前:フットボール狂騒曲28・ローラの策略投稿日:03/07/10 02 57 ID ??? ザビーネは試合の流れが変わったのを感じた。中盤で相手のボールを奪うことが、少なくなって きている。<FCギム・ギンガナム>から今までのような凡ミスが消えて、変わりに選手同士で声 を掛け合うようにもなっている。 カミーユ「こっちによこせ! あいてるぞ!」 シロー「コウ、当たりにいけ! 後ろは大丈夫だ!」 ロラン「シーブック、ウッソのフォローにいって!」 ベンチのアムロたちも、試合の流れを押し戻したのを感じていた。 キラ「いいぞ、互角にやりあえるようになってきている……!」 ソシエ「でも、あんなに押されていたのに、急に動きがよくなってきたのはどうして?」 シッキネン「今までのピンチをずっとキーパーが頑張って切り抜けてきたからな。他のやつらにして みれば、ドモンのプレイに応えたいって気合が入ってくるもんだぜ」 アムロ「ああ。ドモンが試合に戸惑っている連中に、プレイで喝を入れてくれたのさ」 アル「それに、サッカーは決められるときに決めておかなければ、逆にやられる立場に立たされてしまう ものだからね。相手があんなにあったチャンスを決められないんじゃ、この流れも当然だよ」 ソシエ「小さいくせに偉そうね、あんた」 リリーナ「あ、ヒイロがボールを奪いましたわ! あ、でも相手も!」 何度かの中盤での潰しあいのすえにボールがザビーネのもとにこぼれる。その瞬間、一気に攻撃に 移る<SCクロスボーン>。ザビーネのサイドチェンジから右サイドの7番がセンタリングを入れる。 しかし入れられたボールは精度を欠き、シローがクリア。センターライン付近でサイドラインを割った。 相手ボールのスローインの前、ロランはシローとシーブックを呼び寄せた。現在、前半30分を 回ったところだ。 ロラン「試してみたいことがあるんだ」 シーブック「なんだ、ロラン」 ロラン「敵の攻撃はザビーネさんを起点にしている。ザビーネさんにボールが入ると、敵全体が前に 上がってくるんだ。だから、そこでザビーネさんからボールを奪えれば、絶好のカウンター のチャンスになる」 シロー「しかし、あのザビーネからそうそう簡単に奪えるものじゃないぜ」 シーブック「ああ。悔しいけど、ウッソと二人がかりでもやられている……」 ここまで、シーブックの守っている右サイドは完全にザビーネに圧倒されている。 ロラン「そう。あの人は本当に上手い。だけど、キープに徹せず、一対二の局面で抜きにくる人でも ある。そこに、この考えが成立するポイントが隠れている。いいかい、まず僕とシーブック が当たりに行き、そこで取れればよし……」 シロー「だが、それはおとり。本命は俺、残った俺がやつにタックルを仕掛ける……!」 うなづいて、ロランが話を進める。 ロラン「でもそれはギリギリのタイミングまで、そう本当に限界までそぶりを見せちゃだめだ。罠が 仕掛けてあるとわかれば、キープやパスに変え、抜きにはこないだろうから」 策略を語るロランと、乗ろうとしているシロー。しかしシーブックだけは乗り気でなかった。 シーブック「で、でもシローまで抜かれたらどうするんだよ」 呑まれちまったもんだな、とシローは内心苛立ちを覚えた。シーブックは精神的に負けている。 シロー「クリーンなタックルじゃあ抜かれるとなったら、迷いなく足を引っ掛けにいくさ。Pエリア内 には何をしてでもいれない。しかし、ロラン、一対二でも勝負にくるとは限らないぜ」 ロラン「くる、二人なら必ず……! 今までもそうだったように。あの人は正直なところ、中に待つ FWをそんなに認めてはいないと思うんだ。それも当然。最初にあれだけお膳立てしてきた チャンスをことごとく外されたんだからね」 シーブック「だから、自分が二人もかわすことによって、中のFWの負担を減らすなり、自分がその ままシュートしてしまおうと考えている、と」 ロラン「そう。この試合ザビーネさんは自分がドリブルで仕掛けられるときは、必ず仕掛けてきても いる」 シロー「……よし、ロランの策に乗るぞ。この作戦、二度目は無いぞ。一回やったら警戒されてしまう だろうからな」 シーブック「あ、ああ。よし、やろう、うん。ザビーネをはめるんだ」 頼りない口調で同意するシーブック。シローはその肩に手を置いて、ぴったりシーブックの横についた。 シロー「呑まれるな、シーブック。勝負はな、やられたらやり返すしかないんだよ」 123 名前:フットボール狂騒曲29・敵の中心選手を叩け!投稿日:03/07/10 02 58 ID ??? <SCクロスボーン>はスローインの後、いつものようにザビーネにボールを預ける。シーブックと ロランは不自然に見えないようにザビーネへのマークを甘くしておいた。もちろんザビーネにボールを 持ち、勝負に来てもらうためだ。ザビーネがドリブルで抜きにきてくれないと作戦は始まらない。 ザビーネはボールを持たされていることがわかった。<FCギム・ギンガナム>には何らかの企みが あるようで、当たりに来た二人だけでなく中央のCBの一人もこちらばかり気にしている。これはこちら のチャンスにもなり得る。そうザビーネは思った。3人自分がひきつけてから中にパスを送ることが できれば、決定的な得点のチャンスが生まれるだろう。ザビーネは、罠を承知で仕掛ける。<SCクロス ボーン>の選手たちはザビーネを信頼して上がり、チーム全体が大きく前がかりになる。 来る! そうシローは感じた。いや、感じさせられた。ザビーネは巧みなフェイントでシーブックと ロランを振り切ろうとしていた。自分がタイミングを間違えばファウルで止めるどころか、抜きさられて 最悪のピンチを迎えるはめになる。また、フリーキックを与えてしまうのはザビーネの技術を考えれば、 それも失点の危機だ。シローはザビーネの挙動を注視し、同時にパスのコースをも常に警戒し、その時 にそなえていた。そしてザビーネはついに二人のマーカーを振り切り、飛び出してきた。パスか抜きに くるか、シローは一瞬で見極めて判断しなければならず、瞬間的に決断していた。ドリブルでかわしに 来る! シローのタックルは自分をかわそうとしたザビーネを的確に捉えた。ファウルでもない。だが ボールは奪うことができなかった。ザビーネとシローのぶつかり合いでボールはこぼれて、誰もいない ところに流れ、サイドラインを割ろうとしている。作戦は失敗におわるのか、シローがそう思ったとき だった。 ロランがボールはサイドラインを割ってしまうと思った瞬間だった。シーブックが体を滑らせて ギリギリでボールに足を引っ掛け、ライン上でボールを生かして繋いだのは。 シーブック「なんとぉおお」 ボールはロランの方に転がってくる。ロランは素早くボールをトラップして、前を向く。そこには 前がかりになった敵チームの裏に広がる大きなスペースと、そこに走りこむウッソの姿があった。 ロランはそれを認めると同時に、ウッソに鋭くパスを放っていた。 ロラン「シーブック……ウッソ!」 ボールは確実にウッソに向っていく。ロランは速く、そして丁寧にウッソへと繋げた。ロランには そうしなければならない理由があった。絶好のチャンスだというだけではない。自分へと転がって きたボールにはシーブックの意地がこもっていたからだ。これまでザビーネに負けっぱなしでいた、 相手に飲まれてしまっていた、そんなシーブックの、このまま負けたくないという意地が。その気持ち がシーブックのボールへのスライディングを呼び、ロランへボールが繋がったのだ。ロランは自分も 前線へ向って走る。このチャンスを必ず得点に繋げるために。 124 名前:フットボール狂騒曲30・ウッソの戦い投稿日:03/07/10 03 01 ID ??? 右サイドを駆け上がるウッソがパスを受けようとした瞬間を狙って、残っていた少ない敵DFが迫る。 ウッソはトラップの後の隙を狙われていることを感じ、あえてボールを自分から離れたところへと蹴り 出した。あての外れた相手にできた隙を利用して、ウッソは中央を走るギンガナムやジュドーへクロス をあげようとする。何気ないプレイだが、相手の動きを冷静に読み、すぐ機転を利かせた好プレイだ。 カウンターのチャンスに立ち上がっているベンチのアムロたちもこれには舌を巻いた。 アムロ「いいぞ、ウッソ! しかし13歳が大学生を相手にやることか」 キラ「さすがスペシャルって言われることはあるよ。コーディネーターほどじゃないけどね」 アル「キラ兄ちゃん、ウッソ兄ちゃんの活躍にプライドをくすぐられたね」 しかしウッソのあげたセンタリングは精度を欠き、中央の誰にも触れられないまま反対のサイドまで 流れていってしまった。が、そのボールを左サイドを駆け上がっていたカミーユが拾い、再び中央へと 放り込む。そのボールもやや精度がないものだったが、ギンガナムが無理やり相手のDFを押しのけ、 後ろから走りこんできたロランへと頭で落とすポストプレーをみせる。 ギム「撃て! ローラァ!」 ペナルティエリアのやや手前からロランは迷いなくミドルシュートを放つ。正面から見てゴール左上 を襲うボールに飛びつく<SCクロスボーン>のキーパー。弾かれるロランのシュート。 さらにちょうど ボールが転がったところにいたジュドーがシュート。しかし、狙いすぎたシュートはゴール右のポスト に当たり、ゴールの外へ跳ね返った。 ウッソはそこに走りこんでいた。クロスをあげた後、右のペナルティエリアにきっちり入り込んで いたのだ。ボールがポストに跳ね返って自分へ向けて跳んできたとき、もはやウッソはなにも考えて いなかった。ただ、体が勝手に動いていた。ウッソの体は宙を舞い、少し大きめの頭は鋭く振りぬかれ た。そしてボールはゴールの内側へ飛びこんでゴールネットを揺らした。それは、見事なダイビング ヘッドだった。主審の笛が高らかに鳴り響く。前半31分<FCギム・ギンガナム>先制。 ウッソ「……やったの? やった、やった、決めたぁああ!」 ウッソは立ち上がり、そして疾走する。気付けば自軍のベンチの前だった。キラとアルが、両手を広げ て待ちかまえている。 キラ「ウッソ、すごいじゃないか、ダイビングヘッドなんて!」 アル「ウッソ兄ちゃん! カッコイイ!!」 ウッソもそれに満面の笑みで応える。だが、ウッソは彼らに抱きつかず、横を走りぬけた。 キラとアルがあてを外されて、走り去ったウッソを振り向くとウッソはソシエとリリーナに向けて 全速力で突進していった。自分たちと同じように得点を喜ぶソシエとリリーナに、ウッソはもみくちゃ にされている。 ソシエ「よくやったわ! 見なさいよ、あのドレルの顔! もっとくやしがらせてやるんだから」 リリーナ「見事なゴールでしたわ! あんなふうに決めるなんて、素晴らしいです」 二人のマネージャーの体に抱きつきながら、ウッソは最高の笑顔で歓喜を爆発させていた。 ウッソ「お二人の応援のおかげですよ! 僕、僕、やりましたよ!」 抱き合い、喜び合う3人。サッカーの醍醐味のひとつはゴールが決まったあとの一体感にある。そして キラとアルもひとつの一体感を抱えていた。なにかが納得いかない。そんな二人に後ろから声が掛かった。 シッキネン「苦しい時間を耐え抜き、せめぎ合いのなかで生まれたワンチャンスを生かした先制点だ。 こいつは大きいぞ」 キラ「シッキネンさん……ええ、そうですね。これでチームが波に乗ってくれれば」 アル「シッキネンさん、一緒にアップしようよ。出してくれってアピールするのさ」 ウッソのゴールに喜ぶ兄弟たち。その歓喜の輪の中では新たな友情が育まれているのかもしれなかった。 続く 毎度長くなってしまってますが、読んでくれる人ありがとうございます。 旧シャア間借りでも復活して一安心。 135 名前:フットボール狂騒曲31・追撃! と泣き虫キラ投稿日:03/07/12 23 03 ID ??? チームが的確に連動したカウンターからの波状攻撃が決まり、描いていた策略が現実に炸裂した ロラン、シーブック、シローの3人はハイタッチをして喜びあった。 ロラン「作戦成功だ! やったよ、二人とも!」 シーブック「ああ……これでザビーネに一泡吹かせてやった」 シロー「おい、まだ試合は前半なんだぞ。気を抜くな。それにシーブック、これで満足したわけ じゃないだろうな」 3人の会話をザビーネはすこし離れたところで聞いていた。小刻みに揺れる拳を握り締めながら。 しかし、反撃を自らに誓うザビーネの思惑とは逆に、前半31分の先制点をきっかけに試合の 流れは<FCギム・ギンガナム>に大きく傾く。格下と思っていた相手に鮮やかなカウンターを 喰らってしまった<SCクロスボーン>は動揺し、ミスからボールを失うことが多くなっていた。 さらに勢いに乗って攻め立てる<FCギム・ギンガナム>に対して守勢に入ってしまい、チーム 全体が下がっていた。ザビーネも当然守備に回らざるをえず、強く攻撃の姿勢を打ち出せない。 シーブックがオーバーラップしてウッソをフォローする。守備に来るのはザビーネと敵左SB の5番だが、攻撃時には無敵のザビーネも、守備に関しては普通の選手だった。ロランは右サイド のシーブックを上げることによりザビーネを守備に走り回らせ、相手の左サイドの攻撃力を封じ 込めようとしている。また得点を決めてソシエとリリーナの祝福を受けてからのウッソの動きは 特別よく、それを活かしたいとも思っていた。 そして押し気味に試合を進め続けた前半ロスタイム、ウッソ-シーブック-ウッソのワンツー からウッソがフリーでクロスを上げ、それを中央でDFに競り勝ったギンガナムが頭で合わせて 豪快なヘディングシュートを叩き込んだ。 ギム「ふははははは、庶民はぁ、小生に放り込めばいいのだ! こんなにゴールが好きだぁあ」 <FCギム・ギンガナム>は最高の形で追加点をあげ、ギンガナムもご満悦だ。しかしベンチの キラはすこし複雑な気分だった。チームの得点は嬉しくとも、ギンガナムが喜んでいる姿なんて あまり見たくない。 キラ「ゴールが嫌いなやつなんかいるものか」 リリーナ「得点をあげたのですから素直に祝福すべきですわ」 ソシエ「あんた、男としての器が小さいのよ」 ウッソ「そうですよ、キラ兄さん。まあどうでもいいですけどね。それより僕のアシストですよ、 ソシエさん、リリーナさん」 キラ「毎日朝食を奪われてみなよ……うあぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ」 ギム「泣くほど嬉しかったか、少年! 小生にかかる期待の大きさを実感するものだなあ」 ウッソ「あのクロスやさっきのゴールにはおふたりに対する日ごろの感謝を込めてですね……」 キラ「お前たち、さっさとピッチにもどれ゛ぇえ゛ぇ」 前半はそのまま終了し、<FCギム・ギンガナム>2-0<SCクロスボーン>のスコアで試合 はハーフタイムへ。両チームの選手は正反対の思いを抱えてロッカールームに引き上げることに なった。 ドレル「ばかな、最初はあんなに僕らが押していたんだぞ。それが、0-2だって、ばかな」 アムロ「ふう、一時はどうなることかと思ったが、前半が終わってみれば2-0か。いいぞ、終了 間際の得点で理想的なかたちで後半に突入できる」 続く 139 名前:フットボール狂騒曲33・後半の行方投稿日:03/07/13 01 27 ID ??? ハーフタイムのロッカールーム、<FCギム・ギンガナム>は沸いていた。一時はいつ失点しても おかしくない状況だったのが逆に二点差をつけて試合を折り返したのだから当然の気分だった。 ギム「小生のパワフルなヘディング、完璧だったなあ、あれは」 ウッソ「僕のおかげだってこと忘れないでくださいね。それに僕の先制点から一気に流れがこっちに きたんですから」 ジュドー「その先制点は俺のシュートが跳ね返ったのを押し込んだんだろ」 ドモン「ふん、前半のピンチを誰がすくってやったと思ってるんだよ」 シロー「ああ、ドモンのセービングのおかげだな。でも一人で守っていたわけじゃないだろ」 コウ「そうだよ。俺だってそれなりにさあ」 カミーユ「まあ、この試合は勝てるよ。このままいけるって」 ヒイロ「油断大敵だ」 ガロード「なに言ってんだよ、ヒイロ。楽勝、楽勝」 2-0でのリードということで早くも勝った気になったような発言も見受けられる。サッカーに おいて2-0が試合終了スコアならば完勝と見なされるものだから無理はない。しかし、アムロは そういう考えこそもっとも危険だと考えている。2点差は安全圏でもあり、充分に逆転される可能性 のある点差でもあるのだ。部屋のすみでひざを抱えてロランに慰められているキラを不思議に思い ながら、チームの油断を取り除くために、アムロは手を叩いて注目を集めた。 アムロ「お前たち、まさかもう勝った気になっているんじゃないだろうな! サッカーは2点差が一番 危険だっていうだろうが。なにかの間違いだろうが一点決められたら、すぐに2-1でいつでも 追いつかれてしまう点差になるんだぞ」 ドモン「一点だって決めさせるわけないだろう!」 アムロ「その意気だ。そのためにも油断するなよ」 シーブック「油断なんてするわけないさ。ザビーネが……二点の借りを返しにくるんだ」 シーブックが緊張した面持ちで言った。 ロラン「そうだね。向こうは後半の早い時間に一点差に追いつきたいはずだからとばしてくるね」 アムロ「ああ、後半始まって15分は思いっきり攻めてくる。逆にいえばそこを無失点でしのげれば 圧倒的にこっちが有利になる。試合を決める15分になるぞ。いいな、試合再会の笛が鳴った その瞬間から決して集中をとぎらせるなよ!」 「おう!!」 アムロの喝にチーム全員が大声で応え、各々が適度な緊張と共に後半への準備にとりかかった。 同じそのとき、<SCクロスボーン>のロッカールームでもキャプテンのドレルが叫んでいた。 ドレル「僕たちは優勝するためにこの大会に参加しているんだ! いいな、後半開始から猛攻をしかけ、 15分までに最低でも一点とる。もちろん2点取れればそれに越したことはない が、とにかく 一点だ。そうすれば相手に追いかけられている焦りが生まれる。そうすれば逆転まであっと いう間だ! 前半の2失点は油断が原因だ。それさえ気をつければ僕らが逆転勝利を飾ること は間違いないんだ! いくぞ!」 <SCクロスボーン>はまだ、戦うための気力を萎えさせてはいない。ザビーネも静かに、だが 強い意志で復讐を誓っていた。 続く 自分で話を広げておいてずうずうしいのですが種の話はもうやめましょう。134さんの突っ込みも 間違いじゃないです。あの頃の印象が強いのでどうしてもそれが文に 出たんだと思います。 167 名前:フットボール狂騒曲34・ザビーネ強襲投稿日:03/07/17 21 24 ID ??? 後半は両チームの激しい攻め合いで幕を開けた。まず<SCクロスボーン>がチャンスを迎える。 ドレルのパスを受けた9番がシローと競り合いながらも強引にシュート。しかしドモンが体を横に 倒してシュートを防ぎ、<FCギム・ギンガナム>は失点を免れた。 ドモン「どうだぁああああ」 ボールを外に弾き出し、空に叫ぶドモン。その後のコーナーキックはシローがクリアし、<FCギム・ ギンガナム>がカウンターアタック。ジュドーのスルーパスに反応して抜け出したギンガナムが最高 のチャンスとゴールを狙うが、ボールはクロスバーを遥か下に見つつ青空へと飛び去っていった。 ジュドー「あああ~~決めろよなぁ~~~!」 ギンガナム「パスがずれたのだ! 小生の責任ではない!」 ジュドー「ぴったりだったでしょうが! シュートを外したエクスキューズにならないよ!」 ギンガナム「エクスキューズは小生の台詞である! 勝手に使わんでもらおうか!」 その後も何度か両チームのあいだをチャンスの神様が走り回ったが、誰もその前髪をつかめない ままに後半開始から15分が過ぎ、20分を過ぎたあたりで<SCクロスボーン>に次第に焦りの 色が濃くなってきた。ザビーネも左サイドから何本もクロスを上げるが、前半同様ゴールが遠い。 しかし後半22分、ザビーネがもはや当たり前のように左サイドを突破にかかる。ウッソを簡単にかわし、 さらにシーブックを抜きさろうとする。振り切られそうになったシーブックが足をかけてザビーネを転倒 させた。左サイド深くで直接フリーキックが<SCクロスボーン に与えられる。チャンスに上がってくる <SCクロスボーン>の選手たち。ザビーネの隻眼が鋭く輝き、仲間たちにクロスを打ち出す。合わせ てきた。ドモンはそれを疑わなかった。この試合ずっとザビーネはクロスを中央のプレイヤーへ供給 してきた。今回もそうに違いない。ドモンの体は瞬時に決断し、ボールをパンチングで弾き出すために ゴールから飛び出す。そして、その次の瞬間にドモンの両目は驚愕によってこじ開けられていた。 ボールは鋭く急激に曲がり、ドモンを嘲笑うかのようにゴールへとその進路を変えた。他のDFのカバー も間に合わず、懸命に体勢を戻して手を伸ばしたドモンの指先のほんの少し前を、ボールはくるくると 踊りながら通りすぎてゴール左上すみに飛び込んでいった。後半22分、ザビーネのゴールによって 試合は2-1へとスコアを変えた。ウッソと交代するためにライン際へ来ていたアムロが呟く。 アムロ「ドモンは身体能力こそ高いがキーパーそのものとしては素人だ。そこを、突かれた……!」 ザビーネはチームメイトに祝福されながら、呆然とこちらを見やるシーブックを振り返った。 ザビーネ「さあ、どうする。感情を処理できん人間はゴミだと教えてきたはずだがな」 168 名前:フットボール狂騒曲35・互角の攻防戦投稿日:03/07/17 21 25 ID ??? 兄弟たちはゴールを決められてから何秒か立ち尽くしていた。対照的にザビーネを取り巻き、 反撃の歌を高らかに叫ぶドレルたち。そこに審判の許可がでてウッソとアムロがタッチをかわして 交代する。 ウッソ「アムロ兄さん。ぼくが簡単に抜かれなければ……」 アムロ「気にするな。先制点といい2点目といい、お前はよくやったよ。それに、まだ一点勝っている んだからな」 アムロがもっとも兄弟たちに伝えなくてはならないのはそのことだった。フィールドを回って声を 掛けていく。 アムロ「落ち込むな! こっちがまだリードしているんだぞ」 試合が再開し、<FCギム・ギンガナム>は失点のショックを無理やり振り切るかのように、攻撃に 出る。しかし気合が空回りし、ちぐはぐになってしまったコンビネーションのミスにつけこまれ、逆に カウンターのピンチを向かえてしまう。ザビーネにボールがわたり、シーブックが一人で対応しなけれ ばならない状況に陥った。当然仕掛けていくザビーネ。これまでどおりに抜きされられるかという瞬間、 シーブックは足をぐっと伸ばしてボールをラインの外へと押し出し、ピンチを食い止めた。 シーブック「もう、やらせませんよ。ファウルをとられようともあなたを止めにいきます」 ザビーネ「ふん、冗談にしては、センスがない。本気にしては、実力が足りないな」 やや呼吸を乱しながら、ザビーネは唇を笑いに歪めて言った。 そのプレイを境に試合は再び一進一退の状況へと入っていった。<FCギム・ギンガナム>は途中出場 のアムロにボールを集めてチャンスをつくるが、ゴールには結びつかず。対する<SCクロスボーン> はザビーネを中心に攻撃を組み立てようとするが、マーカーのシーブックが奮闘。さらに中盤の真ん中 で執拗に喰らいついてくるヒイロにザビーネへのパスを遮断されてしまう。 ドレル「くそ、ザビーネに回せないのか! それにザビーネのやつ、マーカーを振り切れない」 はき捨てた瞬間、ドレルはわかった。ザビーネは消耗が激しく、疲れが彼からキレを奪ってしまったの だと。無理もなかった。それほどザビーネには攻撃面において負担をかけてきた。 ドレル「それでも、ザビーネを下げるわけにはいかない……くそ」 後半40分、中盤での潰しあいに業を煮やしたドレルが強引にドリブルで突破しようとする。半ば やけになった行動であったが、これが効を奏してペナルティエリアにフリーで侵攻、飛び出してきた ドモンの体を超えるようにループシュートにいく。足の感覚に得点を確信し、顔をあげたドレルの 目に映ったのは奇跡的にカバーに入っていたガロードがヘディングでシュートをクリアする瞬間だ った。ドレルは、恨むように天を仰いだ。 ガロードは皆に頭をなでられたりしながら、そっとお守りをユニフォームの上から握りしめた。 169 名前:フットボール狂騒曲36・勝利と次の戦いへの軌跡投稿日:03/07/17 21 26 ID ??? 結局、それが<SCクロスボーン>にとっての最後のビッグチャンスとなった。<FCギム・ ギンガナム>は最後まで一点差を守りきり、2-1で逃げ切った。試合終了の笛が鳴り響いた瞬間、 ジュドーやガロードは飛びあがって喜び、アムロやロランはほっと胸をなでおろした。シローと コウがハイタッチをかわす。シーブックも小さくガッツポーズをつくったとき、ザビーネが目を下 に落とし、うなだれているのが視界に映った。シーブックの視線に気付いたザビーネが顔を上げる。 二人は何秒かお互いを見るともなしに見ていた。やがて、ザビーネが近寄って声をかけた。 ザビーネ「私の、負けか」 シーブック「あ、あの、でも一人の選手としてはそっちのほうがずっと……」 ザビーネ「勝ったやつだけが言えることだな、そういう言葉は。まあ、次の試合も勝つことだ」 背を向けて立ち去ろうとしたザビーネの後姿に、シーブックは何か言葉をかけようとしたが、何も 言うことができなかった。シーブックは思った。ザビーネも自分と同じように大会に向けて練習を していたであろうに、自分と違って決して疲れたそぶりをカロッゾパンでは見せなかった ことを。 それこそシーブックがザビーネにもっともかなわなかったと感じさせることだった。 ザビーネは呆然としているドレルにも声をかけた。ドレルは大きな溜め息をついた。 ドレル「ザビーネ。僕はこの試合、負けるはずがないと思っていたんだ。それがなぜこんな結果に なったんだろう……傲慢がほころびを生むというのか?」 ザビーネ「さあな。我々にも充分に勝つチャンスはあった。運が少し悪かった。相手も弱くはなかった」 ドレル「決めるところで決められなかったから、か。ところでザビーネ、これからも僕のチームに 参加しないか?」 ザビーネ「暇があればな。だが、私にはパンが第一だ。できればそちらに時間を使いたい」 ドレルは、そうか、とうなづいた。ザビーネは再びシーブックを見やった。できるならば勝ち進んで もらいたいものだ、とザビーネは静かに思った。 試合終了後のロッカールームは勝利を手にした<FCギム・ギンガナム>の選手達の喜びの声で 部屋が吹き飛んでしまいそうな状況だった。ハーフタイムのとき以上に、ほとんどの選手が自分の おかげだと言い合い、ふざけあって勝利を祝う。 リリーナ「ヒイロ、何か怪我はありませんの? 体力の消耗が激しすぎることは?」 ヒイロ「問題ない」 リリーナ「でも念のためにわたくしが作った特製ドリンクを飲んでおきなさい。皆さんには内緒です わよ。ヒイロのぶんしかないのですから」 ヒイロ「……了解した」 なかにはこっそり二人きりで話しているものもいた。ヒイロはドリンクを飲んだ後しゃべることが なかったが。そんななか、ロッカールームの扉を開けてフランが入ってきた。 フラン「みごと勝ったみたいね。皆さん、おめでとう。後半は見ていなかったけど、少し追い上げ られちゃったみたいね」 ロラン「ありがとう、フラン。後半は見ていなかったのかい?」 フラン「ええ。他の試合を見にいってたのよ。ロランたちの次の相手が決まる試合も見たわ」 カミーユ「へえ、どっちが次の相手なんです?」 フランはかばんからトーナメント表とメンバー表を取り出して言った。 フラン「こっちの<ASジャムル・フィン>が1-0で勝ったわ。得点者はオルバ・フロストよ」 ソシエ「<ASジャムル・フィン>? 変な名前ね。ねえ、フロストって二人いるけど兄弟かしら?」 187 名前:フットボール狂騒曲37・グエンの脅威投稿日:03/07/22 03 46 ID ??? 初戦を突破した兄弟たちにフランによってもたらされたのは、次なる対戦相手<ASジャムル・ フィン>の情報だった。 フラン「そうね。FWのオルバ・フロストとMFのシャギア・フロストの二人は兄弟よ」 ガロード「フロスト、フロスト兄弟……聞いたことがあるような、ないような……」 フラン「フロスト兄弟は草サッカーの傭兵みたいなもんよ。金を取るけど頼りになる助っ人として この近辺じゃそれなりに有名よ」 解説者顔でフランが続ける。 フラン「二人のコンビネーションはアイコンタクトすら必要としないほどすごいものらしいわ」 アル「ふーん、詳しいねフランさん。なんでそんなに知ってるわけ?」 フラン「記者だからよ。……ご都合主義なのよね、こういう場合の」 アルとフランの会話はともかく、勝利の興奮真っ只中の兄弟たちには、相手に対する警戒などは あまり生まれなかった。 ギム「ふん、どこのどいつが相手だろうと、小生が点を獲って勝つ。それだけであるよ」 ウッソ「そうですよ。優勝まで一直線に突き進んで、賞金もお姉さんがたの視線も独り占めです」 コウ「女の子の視線を独占かあ……そ、それってさあ、夢だよな、ファンタジーだよな」 キラ「僕は経験あるけど、そんなにいいものじゃないよ。あんなの面倒なだけだって」 コウ「……満足だろうな、キラ。だがな、それはそのセリフを言われた俺にとっては屈辱なんだ」 むさくるしいロッカールームの中でのこんな会話に、フランは肩をすくめて溜め息をついた。 フラン「そんな様子じゃ優勝なんて無理ね。Bブロックを勝ち上がってくるのは間違いなくグエン卿 のチームよ。今日の試合を7-0で完勝した<ラインフォード・ユナイテッドFC>」 それを聞いた瞬間、兄弟たちの笑い声が止まった。確認するように、皆がフランのほうを見る。 フランは視線で、本当よ、と答えた。 アムロ「7-0だって……あ、圧倒的じゃないか……」 シロー「で、でも相手が弱いだけだったんじゃないか?」 そんな希望を打ち砕くかのように、フランは厳しい表情のまま言葉を継ぐ。 フラン「私は試合を全部見たわけじゃありません。でも、彼らの相手の<ACサナリィ>はあなた たちが今日戦った<SCクロスボーン>と何度か試合をしていて、五分の戦績を残して いるわ」 シーブック「昔のクロスボーンにはザビーネがいなかったことを差し引いても……」 水を打ったようにしんとなってしまった部屋の空気。それを打ち砕こうと、ドモンが声を張り上げ た。 ドモン「おい! 俺たちは優勝するしかないんだろうが! 7-0だろうがなんだろうが関係ない。 直接やって勝てばいいんだよ!」 アムロ「そ、そうだ。ドモンの言うとおりだ! それにまずは次の相手、ジャムル・フィンのこと に集中しよう!」 やや慌ててアムロがドモンに同調する。本来ならば自分が真っ先に言わねばならないことだった からだ。 188 名前:フットボール狂騒曲38・封筒の中投稿日:03/07/22 03 49 ID ??? ドモン「それにしても、優勝なんて無理なんていいやがって。あんた、グエン卿の手先なんじゃない だろうな?」 ドモンはフランをにらみつけた。ひるまずに「そんなわけないでしょう」と強い語調で言い返した フランをかばうように、ロランがドモンの前に立つ。 ロラン「フランはそんなことしませんよ!」 フラン「あ、ありがと、ロラン。その、疑いを増すようだけど、私、皆さんにグエン卿から預かって 来たものがあるんです」 そう言うとフランは大きめのふくらんだ封筒を取り出した。LとFを組み合わせたラインフォード家 のエンブレムが入っている。ますます妖しい、とフランに詰め寄ろうとするドモンをロランが制止 する。ドモンは、フンと鼻を鳴らして部屋の外に出て行ってしまった。 アムロ「グエン卿からの贈り物か。……ロランは部屋の外に出ておけ。封筒を開けたと単にガスが 噴き出てくることもありうるからな」 ソシエとリリーナ、それにロランの護衛としてヒイロも部屋の外に出して、アムロは一応の対策を とることにした。 フラン「私はここに残ります。スパイ扱いされたままなんて、いやですから」 アムロ「わかりました。外にはドモンもいるし、これで大丈夫だろう」 アムロは思い切って封筒を開けた。幸い心配していたようなことは起こらなかった。中に入って いたのは、一本のビデオテープと何枚かの書類だった。書類の一枚に、「ASジャムル・フィン 対策」と書かれている。 アムロ「テープのほうも、ジャムル・フィンの試合を撮ったもののようだ。グエン卿はなぜこれを?」 アムロは傍らのフランにたずねたが、フランも首をふるだけだった。 フラン「私は中身についてはなにも聞かされていませんから」 アムロは頷くと、外にいる連中を呼び戻した。ふくれっつらのドモンも一緒だ。アムロは全員に ビデオテープと書類を見せた。 ジュドー「う~ん、結構くわしくしらべてあるんだ。怪しいところもないし」 リリーナ「これは『敵に塩をおくる』ということでしょうか?」 ソシエ「自分たちには必要なくなったから私たちにくれたのかしら。でもあの御曹司が自分の利益 抜きに行動するとは考えられないわ」 カミーユ「この資料のおかげで俺たちは次の試合に向けていい準備ができるのは確かだけどな」 アムロ「ああ。しかし、グエン卿はいったい何のために……」 その後、ロランの尽力のおかげでドモンとフランの関係も改善し、<FCギム・ギンガナム>の面々 はフランからの取材に応えた。残す今日の予定は、兄弟家での次の試合に向けたミーティングだけ だ。 214 名前:フットボール狂騒曲39・自宅への帰還投稿日:03/07/26 20 45 ID ??? 家に戻ってきた兄弟たちの多くは、自然とふっーと大きく安堵の一息を吐いていた。 コウ「なんか俺、玄関をくぐったとたん、ほっとしたっていうか、気が抜けちゃったな」 ガロード「ふわぁ、俺、眠いよ。帰ってきたとたんどーっと疲れた」 ロラン「安心したんで急に疲れが出てきたんでしょう。あ、お茶入れますね、皆さん」 いつものようにロランがキッチンでお茶の準備をしようとした。その後ろ姿にソシエが「手伝って あげるわ」と声をかけてロランの手伝いもしくは邪魔をしにいく。二人以外は食事に使っている 長いテーブルについたが、アル、ウッソ、ジュドーにガロードと比較的年齢の低いものは、椅子に 座ったとたん眠りはしないもののテーブルに突っ伏してしまった。 シロー「今日はずっと緊張しっぱなしだったからな。家に帰ってきて、気が緩んだんだろ」 ギム「うむ。やはり我が家は落ち着くものである。小生もそれをしみじみと実感して……」 キラ「あのさ、ウチはお前の『我が家』じゃないだろう」 キラが言い終わるかどうかの瞬間、キッチンからソシエとロランの会話が聞こえてきた。 ソシエ「わぁ~、さすが大家族だけあってたくさん湯のみ茶碗があるわね。こっちが来客用で、あれ、 兄弟の数より茶碗が一つ多いわよ」 ロラン「ああ、それはギンガナムさんのですよ」 ソシエ「ふつ~うに置いてあるのね」 ロラン「ええ、いつのまにか。もうすっかりなじんじゃって、無いとおかしく感じちゃうんですよ」 やや沈黙したのち、キラは言った。 キラ「そ、それでもお前の『我が家』じゃないからな。ギンガナム」 ウッソ「そんなことより、誰かひざまくらして……」 ソシエはロランと一緒にキッチン、リリーナは先ほどからずっとうつむいているヒイロの面倒を 見ていて、ウッソの願いをかなえてくれそうにない。 ウッソ「カテジナさん、シャクティ、マーベットさん、シュラクの皆さん……XX染色体ならもう 誰でもいいから、ひざまくら……」 シャクティ「誰でもいいの? そう、ウッソはそういう男の子だったのね」 突如現れたシャクティに、ウッソは口を半開きにして首をふるだけだった。 ウッソ「シャ、シャクティがなんでここに?」 シャクティ「さっき、入れていたただいたのよ。今日はおめでとう。……ひざまくら、してあげても いいけれど?」 ウッソ「シャクティ……ありがとう、いいんだ……」 シャクティのまだ細いふとももに甘え、安らぎを求めるウッソ。しかし、もはやウッソに安息は 許されなかった。 シャクティ「それにしても私はカテジナさんの次なのね。それにウッソはマーベットさんのことも……」 ウッソ「い、いや、それはなんていうか、その」 頭の上から降り続けるシャクティの小言。ウッソはその独り言のような非難が延々と続くのでは とうち震えながらも、シャクティの柔らかさを温かく感じてもいた。 コウ「結局は羨ましいやつ……」 215 名前:フットボール狂騒曲40・破られた休暇許可投稿日:03/07/26 20 46 ID ??? 兄弟たちが家に帰り心身をくつろげているそのとき、フランはグエン・サード・ラインフォードの インタビューを終えたところだった。グエンは最初から最後までそつのない受け答えを繰り返して、 フランの聞きたいような大会参加の本音などには一歩も近寄らせなかった。フランは軽くあしらわれ てしまったことを悔しく思いながらも、立ち去る前に<FCギム・ギンガナム>へのプレゼントに ついて聞いた。もちろん記事にする話としてではない。 グエン「ああ、あれか。私のチームに参加している選手のなかにはあの兄弟たちとの勝負を望むものが 多い。だから、彼らに勝ち進んできて欲しいと思ってね」 それだけだろうかと思いつつ、フランはグエンの言葉に応じる。 フラン「自分たちが決勝に進むことはまちがいないと確信しているんですね」 グエン「そういうチームを作ったつもりなんだ。これは油断ではないよ」 グエンはいつもの不敵な笑みを浮かべた。その笑顔が本心からのものでも嘘をつくためのものでも、 フランはグエン以上にそういう笑い方が魅力的にみえる男は知らない。 やがてロランとソシエによってお茶が並べられたところで、アムロが話をきりだした。 アムロ「今からグエン卿から送られてきたビデオを見て相手の研究をしようと思っていたが、どうも 疲れのたまっているものが多いようだからそれは明日にしようと思う」 アムロは、ジュドーやガロードなどもはや起きているのかどうかあやしい弟たちを見回しながら 言った。明日は疲れを獲るために軽いジョギングと柔軟体操だけのメニューだからその後に時間 がある。全員でビデオを見るのはそのときでもいいだろう。 アムロ「だが、今言っておかなきゃならないこともある。次の試合、シローは出場しない」 ジュドー「え? 休みとれたんじゃあないの?」 さすがに眠気も覚めて、突っ伏していたものを含めた全員がシローを振り返った。 シロー「ああ、昨日、署で怪我人が出てな。そいつが欠けるぶん、俺が水曜の夜勤に入らなきゃなら なくなった。今朝からわかってたんだが、今日の試合に影響を与えないためにアムロ兄さん と俺だけの秘密にしておいたんだ。次は準決勝なのに、すまん」 シーブック「……そう、か。そういうことなら仕方ないよ」 カミーユ「しかし、シロー兄さんが抜けたところをどう修正するんです?」 アムロ「僕が最初からCBに入る。ウッソは途中でシッキネンさんと交代してもらう。キャプテン は副キャプテンのロランが……」 ロラン「キャプテンなんて、む、むりですよ~」 アムロの話をさえぎって、ロランが身を乗り出した。手と首を激しく振って無理だと訴える。 アムロ「いや、さすがにロランには重荷だろうから、最初から出る僕がやると言おうとしたんだ」 ロラン「な、なんだ。ああ、よかった」 重い責任を背負わずにすんで、心底ほっとしたようにロランは溜め息を吐いた。隣に座っている ソシエが、「情けないわね~、あんたもうすこし自信持ちなさいよ」とロランをひじで小突く。アムロ は本当はロランに任せるつもりだったのだが、あまりに拒否するものだから任せることが できず、 急遽、自分がキャプテンをやると言ったのだった。 アムロ「よし、じゃあ今日はこれでおしまいだ。次の試合に向けた詳しいミーティングは明日行う。 最後にみんな、今日は本当にお疲れ様。これからもこの調子で頑張っていこう」 251 名前:フットボール狂騒曲41・ジェリドの嘲笑投稿日:03/07/28 04 16 ID ??? <SCクロスボーン>に勝利した翌日の月曜日、学校での兄弟たちはちょっとしたスターだった。 フランの記事によって大会への参加と昨日の活躍が新聞に載ったからだ。兄弟たちは自分 たちが新聞 に載っていることを特別自慢することはなかったが、こういう話はどこからか広まる物らしく、友人 やクラスメートはもちろんほとんどの生徒が兄弟たちが記事になったのを知っていた。 シーブック「悪い気分じゃないけど、戸惑うよな。俺なんていつもはあんまり話題にならないほうだし」 カミーユ「新聞の地域版に載ったぐらいで、みんなそんなに騒ぐこともないのにさ」 それこそややスター気取りでカミーユがシーブックと呟いたときだった。もう一方のスターである ジェリドが2人の会話に首を突っ込んできたのは。 ジェリド「ふん、気取ってないで今のうちによ~くスター扱いを味わっておけよ、カミーユ。俺たち に粉砕されて赤っ恥をかくまでのつかの間の栄誉なんだからな」 いつもは皆の失笑をかってばかりのジェリドだが、今回、グエン卿のチームで活躍したことが同じ記事 で新聞に載り、周囲からも見直されていた。ジェリドの友人で一緒にチームに参加しているカクリコン も後ろでにやにやと笑みを浮かべている。 ジュドー「7-0で勝ったからってちょっと調子に乗りすぎじゃないの。直接やって大恥かくのは そっちのくせにさ。いつものパターンでしょ」 すこし離れたところからジュドーがからかうように笑った。しかし、いつもならここで冷静さを失う ジェリドが今回ばかりは余裕の態度で笑みを返す。 ジェリド「まあ、貴様らでは決勝にでられるかどうかもわからんがな。特にカミーユとかいう女選手が 足を引っ張るだろうからよ」 カミーユ「ジェリド、貴様言わせておけば! 俺は男だよ!」 殴りかかっていこうとしたカミーユをシーブックが後ろから抑える。あれこれとなだめられながら カミーユは、絶対に試合でずたずたにしてやるとジェリドをにらみつけた。 252 名前:フットボール狂騒曲42・グエンズリポート(1)投稿日:03/07/28 04 18 ID ??? その日の午後、軽い練習メニューを終えた<FCギム・ギンガナム>はグエンから受け取った <ASジャムル・フィン>のビデオをミーティングの場で再生した。エンジとオレンジを基調と したASロ○マ風のユニフォームを着た準決勝の相手が画面に映し出される。昨日の試合を撮った もののようだ。 アムロ「ということは、わざわざ僕らに見せるためだけにこの試合を撮って、終了後すぐに届けに 来たのか。そこまでして……」 グエン卿は何のためにここまでするのか。アムロはまゆを寄せて、小さく唸った。 TVの中の試合は水色のユニフォームの敗退したチームのほうが押し気味に進めている。画面と、 ビデオと一緒に送られてきたリポートを見比べながらシローが言う。 シロー「押されているように見えるが、これが<ASジャムル・フィン>のいつものやり方らしい。 まあ、このビデオと書類でわかる連中のフォーメーションを見れば一目瞭然だけどな」 <ASジャムル・フィン>は俗に3-5-1-1と言われるフォーメーションを採用している。 3人のセンターバックに2人のウイングバック、トリプルボランチと言われることの多いセンター ハーフを3人並べた配置の前に、ワントップのFWとその後ろに位置するプレイヤーがいる布陣 である。2人のウイングバックは実質的にはサイドバックとなることが多く、極端に守備を重視 したフォーメーションだ。攻撃は堅守からの素早いカウンターが主になる。 補足:リポート内のFCジャムル・フィンのフォーメーションの図 FW18:オルバ・F MF17:シャギア・F WB11 CH8 CH10:デル CH6 WB7 CB3 CB4:ダニー CB2 GK1:デューン 253 名前:フットボール狂騒曲43・グエンズリポート(2)投稿日:03/07/28 04 19 ID ??? グエンから渡されたリポートは草サッカーの大会のためにしては不自然極まりないほどよく調べて あった。リポート自体は大会の前から書かれていただろうから、おそらくは自分たちについてのもの もあるのだろう。どこからか観察されているに違いない。そこまで考えてキラはある可能性にたどり ついた。 キラ「……ロラン兄さん、なにか視線を感じたり、洗濯物がなくなっていたりしてない?」 ロラン「洗濯物はなくなってないけど……グエン様だってそういうことまでしませんよ」 ソシエ「グエン様の盗撮行為は前に一度、匿名だけど雑誌にのったのよ。ロランも注意が足りないわ」 そんなことに話がずれながらも、兄弟たちは敵の情報を求めて画面のプレーとリポートの両方に 忙しく目を走らせる。 コウ「中央のラインを形成してるダニー、デル、デューンっていうのがチームの中心らしいね。3D として草サッカーではすこし知れた名前だとか。よくこんなのまで調べたなあ」 ドモン「ここ5試合の記録もあるんだが、これによると1-0、0-0、0-0、2-0、それと昨日 の1-0。おい、こいつらここ最近は失点がひとつもないぞ」 リリーナ「フロスト兄弟の二人が加入したのは、大会のひとつ前からですわね」 カミーユ「補強の意図は明確だな。得点を取ってくれるやつが必要なんだ。これをみなよ、あの二人の ことも調べてある」 ガロード「ふーん、なになに……FWのオルバはどちらかといえば軽量級のFWで、相手の裏をとる タイミングで飛び出すプレイを得意にしている。スピード、テクニックとも侮れないもの を持っており要注意。なお、PKとなるファウルを受ける回数が多いのを補足しておく、 か」 シーブック「MFで登録されているシャギアはオルバのすぐ後ろでプレイすることが多く、オルバへの ラストパスは多くはシャギアによるものだ。また自らもゴールを積極的に狙い、ミドル シュートの威力は特筆に価する。うーん」 アル「しかし、フロスト兄弟の恐ろしさは何よりもそのコンビネーションにある。彼らはお互いの 状態や考えていることを完全に把握しているかのようにプレイする。双子ということに関連がある のかどうかはわからないが、だって。ところでなんで僕たち続けてしゃべってんのさ」 ガロード「そりゃ、こういう場合のお約束だからだろ」 254 名前:フットボール狂騒曲44・接戦の予感投稿日:03/07/28 04 20 ID ??? ガロードが妙なことを言ったそのとき、テレビの中では<ASジャムル・フィン>が鮮やかな カウンターを炸裂させていた。ボランチのデルが前がかりになった相手から高い位置でボールを 奪い、シャギアへと繋ぐ。シャギアは絶妙なタイミングで抜け出した弟のオルバに精密なスルー パスを通し、オルバが落ち着いてそれを相手ゴールに流し込んだ。おそらくこれが<ASジャムル・ フィン>の理想の攻撃だろう。得点は前半の32分。その後は人数をかけた堅い守備で先制点を 守りきって勝利を収めた。 アムロ「堅い守備からカウンターで先制し、その一点をほぼ全員による守備で守りきる。狙い通り の試合運びだろうな、これは」 ギム「ふん、つまらんサッカーをするものであるな。いや、こんなものはサッカーではない」 一にも二にも攻撃、攻撃のギンガナムにとってはジャムル・フィンの戦いかたは我慢ならないもの らしい。実はアムロは当初これに非常に近いかたちで戦うつもりだったのだが、今は違う。ギンガナム のチーム入りに加えて、兄弟たちが守備中心のサッカーよりも攻撃的な戦いに向いていることが 分かったからだ。また、昨日の試合の失点でも明らかなようにセットプレーにおけるディフェンスが 不安定なものであることも、守りきって勝つにはマイナスの要素が強い。 アムロ「さて、僕らはあの守備を打ち破って勝たなきゃならないわけだが……」 アムロは兄弟を見渡した。その視線に、これまでジャムル・フィンの退屈な試合展開に少々眠気を 誘われていた兄弟の幾人かも、はっとして見返してくる。どの視線にもやる気が感じられるが、その 中でもとりわけカミーユが強いものを感じさせる。血走っているとも言えるが。 アムロ「試合を控えた明日にあまり強い練習はできない。明日は攻守ともセットプレーを中心に練習 する予定だ」 まちがいなく次の試合は一点をあらそうものになる。セットプレーの重要性はいつも以上に高い。 一日で特別よくなるわけでもないのはもちろんだが、せめて動きの確認だけでも十分にしておきたい とアムロは考えていた。 アムロ「相手は堅い守備を誇っているが、僕らにはそれを打ち砕く力がある。いつもどおりにやれば、 次の試合には勝てるぞ」 最後にそう言って、アムロはミーティングを締めくくった。 262 名前:フットボール狂騒曲45・戦士のつぶやき投稿日:03/07/29 05 02 ID ??? 空が橙と紫に混じりあう夕闇の中、準決勝を明日に控えた<FCギム・ギンガナム>は攻守に別れ セットプレーを中心とした練習を予定通り行っていた。照明の人工的な輝きの中、カミーユが蹴った コーナーキックが弧を描いてゴールに迫る。ギンガナムは強引にマークを振り切り、キーパーのドモン より先にスペースに飛び出して頭でボールをゴールへと流し込んだ。ドモンが悔しげに地面を蹴りあ げる。 キラ「アムロ兄さん、簡単にマークを外されてますよ! もっと集中してください!」 コーチとしてプレイを見ていたキラから、アムロに注意がとぶ。明日の試合、勤務で欠場するシロー に変わって急遽センターバックに入ることになったアムロだったが、代役をつとめるには不安の残る プレイを今日の練習では繰り返していた。 アムロ「わかった! キラ、練習や試合のときは兄さんなんて呼ばなくていい。呼び捨てにしろって 言っただろ!」 返すことばに苛立ちの色が混じってしまう。大人気ない自分の態度に、アムロは下を向いてつばを吐き 捨てた。 いっぽうマークを外してゴールを叩き込んだギンガナムは高笑いと共にそんなアムロの肩を叩く。 ギム「アムロ君、気に病むことはない。小生が少し上手すぎるだけであるよ。ふははははぁあ」 アムロは適当にあしらいながらも、長身で競り合いに強いギンガナムがセットプレーでもっとも期待 できるプレイヤーであることを考えた。ギンガナムはまちがいなくいい気分にさせておいたほうが 好プレイを望めるタイプだ。監督としての自分を思い返して、アムロはご機嫌をとっておくことに した。 アムロ「ああ、かなわないな。明日もその調子で頼むぞ、エース」 ギム「エース……いい響きであるな……うむ、よい歌ができたぞ。 この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば 銀河南無」 アムロ「その短歌、お前の名前を最後につけていいのか……?」 空には、半月が申し訳なさそうに浮かんでいた。 そんな一幕もありながら、全体の練習としては明日の戦いに向けた緊張感あるものにすることが できた。セットプレーに関しては、完璧にはもちろんほど遠いが、今の兄弟たちにできる限りのこと はしただろうとアムロは自負している。あとはアムロ自身の問題だろう。情けないが、自分がチーム のアキレス腱になるかもしれないのだ。 アムロ「僕に、いや俺にだって長兄のプライドがある。足手まといになどなってたまるか」 皆の目と耳から離れたところで、アムロはひとり月を背に呟いた。 263 名前:フットボール狂騒曲46・準決勝の日投稿日:03/07/29 05 05 ID ??? 水曜日。準決勝の試合当日の朝、アムロは朝食の前にリビングに集まった兄弟全員に訊いた。 アムロ「お前らの中で、皆勤賞を狙っているやつとか、今日どうしても出なければならない授業が あるやつはいるか?」 兄弟たちは要領を得ない質問と感じたのか誰も答えないままアムロのほうを見返してきた。 アムロ「試合は夜7時だからな。それまでお前らに無駄に体力を消耗してもらってはこまるわけだ。 だからなにか事情がないなら今日は学校を休んでくれ」 「いいの!?」 ジュドーとガロードが異口同音に聞き返す。苦笑を浮かべてアムロは頷いた。 アムロ「だいたいお前らは許可なしでもちょくちょくサボってるじゃないか」 やったーとばかりにジュドーとガロードはハイタッチを交わす。他の兄弟も二人ほどではないにしろ 嬉しそうだ。なんで学校を休むということはたいてい嬉しいものなのだろうかと、自分もそういう 気持ちだったことを思い出し、アムロは苦笑いを続けながらロランに呼びかけた。 アムロ「ロラン、じゃあそろそろ朝飯にするか」 ロランがはい、と返事して朝食を並べていくとちょうどギンガナムがやってきた。絶好のタイミング での登場は何かを感じ取っているとしか思えないものがある。キラが警戒せよ、というふうに鋭い 視線をロランに飛ばす。 ロラン「大丈夫ですよ。今日はギンガナムさんのぶんもきちんとありますし……」 そこまで言ってロランは途中で言いよどんでしまった。ギンガナムの後にシッキネンまでが続けて 入ってきたからだ。さすがにそこまでは考えていなかったロランは、彼のぶんまでは用意していない。 シッキネン「どうも、ごちそうになります」 ギンガナム「よいプレイはよい食事からであるからな。シッキネンも連れてきたのである」 いつもどおり他人の家の朝食に堂々とやってくるギンガナムに、住人であるロランがすまなそうに 耳打ちする。 ロラン「あ、あの、シッキネンさんのぶんまでは……」 ギンガナム「ああ、それなら小生のぶんをシッキネンにやってくれればよい。小生はいつものように 自力で調達するからな」 そういうやいなや、このときばかりはコーディネーターより遥かに素早くギンガナムはキラの朝食を かっさらい、止める間も与えず胃袋にながしこんでいく。 ギンガナム「うむ、やはりローラの作った朝食で小生の一日が始まるなあ」 うなだれるキラのことを、シッキネンは主君とは違ってさすがに気が引けるのか、いいんでしょうか というようにうかがったが、キラはひきつった笑いを顔に貼り付けて、「食べてください」 と力の抜けた 声で言うだけだった。 キラ「選手はきちんと食べなきゃいけませんし、いつものことですから」 最初の頃は泣き喚いたこともあったが、日常的に朝食を奪われることにもはやなれてしまったキラ だった。周囲の兄弟たちも同じようなもので、修正、修正とうるさいカミーユでさえ今はギンガナム を強く咎めようとしない。 カミーユ「なんていうか、もう俺たちの一日はキラが朝食を失うことによって始まるんだよな」 シーブック「少し気の毒だけどな。ああ、キラ、俺が昨日練習用に焼いたパンがあるから持ってきて やるよ」 ギンガナム「シーブック君、朝はご飯、ご飯あるのみである! パンなど邪道である。だからこそ小生 はあえてローラの家にまでやってきてなあ……」 ともかくも準決勝当日の太陽は昇った。この太陽が沈むかどうかというそのとき、決勝進出をかけた 戦いの始まりを告げる笛が鳴り響くのだ。 286 名前:フットボール狂騒曲47・託されたもの投稿日:03/08/06 05 34 ID ??? 試合を目前に控えた試合会場のロッカールームの中、アムロは<FCギム・ギンガナム>の メンバー全員に呼びかけた。 アムロ「みんな、最後にシローの言ったことを思い出してくれ」 チームの全員、特に兄弟たちは、今日の試合に勤務で出られないシローに託された言葉を強く 思い出した。 ――みんな、今日の試合、頼んだぞ。 それだけだ。シロー本人はなにかを託すつもりではなかったのだろう。そのあとに「今日は署で 時計を何度も見て、気をもむことになりそうだ」と言って、シローはすこしばつが悪そうに笑った。 しかし、兄弟たちはそんなシローの言葉を受けて、今日の試合への思いを託されたと感じていた。 ガロード「ここはひとつ、やりますか」 コウ「ああ、勝とうぜ。シロー兄さんのために」 頷きあう兄弟たちに、アムロは最後にもう一度はっぱをかける。 アムロ「そうだ。この試合に勝って、シローと一緒に決勝に出るぞ!」 一回戦以上の怒号がアムロの言葉に返され、ロッカールームの空気がビリッと震えた。アムロが ロッカールームのドアを勢いよくあけ、<FCギム・ギンガナム>はそれに続いてフィールドへ 向かう。覇気が彼らの足跡をやや荒いものにしていた。 フィールドに向かう地下道のなかほど、アムロは友人で同僚でもあるハヤトに呼び止められた。 アムロは昨日、ハヤトに同時刻に行われるもうひとつの準決勝をビデオに撮ってくれるように 頼んでおいたのだ。決して多くない社員が二人も5時退社では、社長のブライトも怒鳴り散らさず にはいられなかったようで、原因であるアムロはめいっぱい絞られてきた。それでも最終的には許可 をくれるのがブライトだったが。 アムロ「悪いな、ハヤト。こんなこと頼んでしまって」 ハヤト「なに、たまにはこういうのもいいさ。しかし、正直おまえにユニフォームは似合わんな」 アムロ「そんなことないだろう。ユニフォームのデザインが悪いからそう見えるだけさ」 あくまでひかないアムロにハヤトは小さく苦笑すると、「頑張れよ。お前達が勝たなけりゃ、ビデオ とっても無駄になるだけだからな」と言って去っていった。アムロは「勝つさ」と答えてピッチに 足を向ける。 287 名前:フットボール狂騒曲48・月下の決戦投稿日:03/08/06 05 36 ID ??? 午後7時キックオフということで、フィールドには当然照明が入っている。夜の涼しい空気が 芝をごく軽くなでていた。ロランが、自分の体がほてっているから涼しく感じるのだろうかと思い ながら、なんの気なしにスタンドに目をやると、見知った顔が何人か見受けられた。他の兄弟たち も同様らしく、 カミーユ「あ、ファだ。見にきてくれたのか。フォウは……来てないか。頭痛いって言ってたものな」 ジュドー「お、イーノたちだ。お~い、ビ~チャ~、モンド~」 アル「あ、バーニィとクリスだ。普通にデートすればいいのに、まだ僕をダシにつかってるのか」 ガロード「ティファ、来てくれたのか。ジャミルのおっさんも……ティファを一人にはできないからな」 などといった声が聞こえる。しかし、ロランにとってそれらの声は遠いものでしかなかった。 ロラン「キエルお嬢さんがいる……」 となりにはソシエの親友のメシェーもいるが、ロランの目は完全に美しいブロンドを縦に巻いた 少女に引き込まれていた。ボーっとみつめていると、キエルたちのほうから手をふってくれた。 こちらに気付いたらしい。ロランははしゃぐように手を振り返した。 ソシエ「お姉さまとメシェーに、試合のこと話したら応援に来るって」 いつのまにか隣にやってきたソシエが言う。ロランは、「へー、そうなんですか」とにこにこして ソシエに顔を向けたが、ソシエのほうは仇をみるような視線を向けてくる。 ロラン「あの、ソシエお嬢さん……?」 ソシエ「あのな、お姉さまなんてきょうび流行んねーんだよ。ボケが。 得意げな顔して何が、キエルお嬢さんがいる、だ。 あんたは本当にお姉さまに来てほしいのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。 あんた、ディアナ様の姿にとらわれてるだけちゃうんかと。 仲間内通のアタシから言わせてもらえば今、 アタシたちの間での最新流行はやっぱりメシェー、これだね。 メシェーってのはそばかすが多めに入ってる。そん代わり胸がかなり大きめ。これ。 で、それにサバサバした性格。これ最高。 しかしメシェーに惚れると次からムーンレィスの美青年と争わなきゃならないという危険も伴う、諸刃の剣。 略奪愛が無理そうなロランにはお薦め出来ない。 まああんた、ロランはもっと身近な人に気付きなさいってこった」 ロラン「ソ、ソシエお嬢さん、それは古いですよ。それに、身近な人って……?」 ソシエ「み、身近なことって言ったのよ。つまり目前の試合に集中しなさいよねってこと」 ロラン「あ、ああ。そうですか。うん、そうですよね。試合に集中しなきゃ。……ありがとうございます、 ソシエお嬢さん」 ロランはハーフラインの反対側で練習する<ASジャムル・フィン>に視線を移した。エンジと オレンジのピッタリしたユニフォームが、ロランに強い威圧感を与える。それでもロランは自分の うちにそのプレッシャーを跳ね除けられる気が宿っているように思えた。みんな、そうに違いない。 戦える。ロランは周囲のチームメイトを見回して確信した。 ソシエはいつのまにかベンチのほうへ下がっていた。アムロが、ロランに声をかける。 アムロ「ロラン、パス練習の相手をしてくれ。それとな……」 こちらに近寄ってきてアムロはロランに耳打ちした。 アムロ「まあお前、ロランは女の子の気持ちに鋭くなれってこった」 そんなことがありつつも、練習の時間は足早に過ぎ去り、試合の開始のために両チームが フィールドに散った。前半のキックオフはこちらだ。ロランは試合開始直前、月を見上げた。 そっと、「見守っててください、ディアナ様」と呟く。 301 名前:フットボール狂騒曲49・熱夜戦線投稿日:03/08/11 18 53 ID ??? キックオフ後の試合展開は<FCギム・ギンガナム>の攻勢、<ASジャムル・フィン>の守勢で 幕を開けた。どちらのチームにとっても計算どおりのスタートである。<FCギム・ギンガナム>は 両翼のカミーユ、ウッソに大きく開いて攻めにでるが、<ASジャムル・フィン>も激しくからだを ぶつけていく守りで相手にシュートを打つ余裕を与えない。 アルやキラたちベンチのものも、初戦をへた経験があってか、ある程度落ち着きを持って選手たちを 見守る。 シッキネン「まずは試合前に予想したとおりだな」 アル「今回の両チームのフォーメーションはこんな感じかな?」 <FCギム・ギンガナム>のフォーメーション FW9・ギンガナム MF4・カミーユ MF10・ジュドー MF8・ウッソ MF11・ヒイロ MF7・ロラン DF3・ガロード DF2・シーブック DF14・アムロ(C) DF5・コウ GK1・ドモン ソシエ「ウチのチームはフォーメーションに変更はないわね。アムロさんがキャプテン」 キラ「相手もビデオで見たのと同じ3-5-1-1だね。両サイドのウイングバックが下がっている から実質的には5バックになっているけど」 <ASジャムル・フィン>のフォーメーション FW18:オルバ・F MF17:シャギア・F WB11 CH8 CH10:デル CH6 WB7 ↓ ↓ (両ウイングバックがやや下がり気味) CB3 CB4:ダニー(C) CB2 GK1:デューン リリーナ「デル、ダニー、デューンの3Dの方たちがチームの中心選手ですね。そして要注意なのが 前のフロスト兄弟の二人」 302 名前:フットボール狂騒曲50・鉄壁ジャムル・フィン投稿日:03/08/11 18 54 ID ??? 試合開始から5分、10分と過ぎたが、ゲームに大きな動きはない。攻める兄弟たちと、それを受ける ジャムル・フィン。ジャムル・フィンはトップ下のシャギアまでが積極的に守りに参加している。FW のオルバがひとり、前線でボールを待つ。 攻勢の<FCギム・ギンガナム>は、ボールを支配し、サイドからラストパスを出すところまで はいけるのだが、その先の段階、シュートを打つには至らない。中央のディフェンスは3Dを中心 に堅く固められており、ペナルティエリアおよびその手前で仕事をしようとするギムやジュドーは 激しい抵抗にあい、シュートすることができないでいた。業を煮やしたような形でのミドルシュート は何本かあったものの、それらはゴールマウスの枠をそれるか、敵キーパーのデューンにがっちりと 受け止められていた。 ジュドー「ああ~~イライラする~~」 ギム「貴様らぁ、攻める気がないのであるか!」 ギムがそう怒鳴るのは、もちろんまとわりつかれて満足にプレイできない苛立ちからだが、ジャムル・ フィンの攻める姿勢がほとんどみられないからでもある。ジャムル・フィンの攻撃はボールを奪った 後すぐに前線にロングボールを放り込むだけで、全く芸のないと思えるようなものだった。オルバを ケアしているアムロやコウは何度かやや長い距離を走ってロングフィードをカットするか、2対1の 数的優位を活かしてオルバを止めるだけで相手の攻撃を防ぐことができている。 アムロ「ふう、やはり相手の攻撃はセットプレー頼みということか? カウンターにしてもこれなら あまり苦もなく止められる」 油断は禁物と言えど、アムロは相手の淡白な攻撃姿勢にほっと安心するところがある。付け焼刃の ディフェンスでどこまでやれるか、という不安を抱えてきたからだ。もっとも兄弟たちのサッカーは 基本的には全員が付け焼刃とも言えるが。 303 名前:フットボール狂騒曲51・得点の気配投稿日:03/08/11 18 55 ID ??? 前半20分を越えたあたり、得点の匂いの強く香るプレイがこの試合初めて姿をみせた。<FCギム・ ギンガナム>は敵ペナルティエリア周辺の混戦からギンガナムがやや強引にシュート。これをキーパー のデューンが弾き、コーナーキックを得る。カミーユのキックはまたもペナルティエリアでの混雑を 招き、こぼれ玉にちょうどよくいあわせたジュドーが右足を振りぬく。が、これはゴール左ポストに 阻まれ、得点そのものはならなかった。しかし、この一連のプレイは相手の執拗なディ幻すに苦しむ 兄弟たちに力を与えてくれた。 ジュドー「ああ~~、惜しい! くそ、もうすこし!」 シーブック「いいぞ、ナイスシュート、ジュドー!」 ロラン「この調子でいこう!」 ギム「ふははは、慣れてきたぞ、彼奴らのディフェンスにもなぁ!」 だが、ギムのセリフは相手にも言えることなのかもしれない。<ASジャムル・フィン>もこの 時間以後、鋭いカウンターを繰り出し、兄弟たちを脅かし始めたのだ。後半25分、ロランの放った ミドルシュートのこぼれ玉を拾ったCBのダニーが素早くシャギアへとパスをだす。受けたシャギア はマーカーのヒイロのディフェンスを上手く手を使って抑え、弟のオルバへとスルーパスを送った。 オルバはボールを受けると必死のタックルにきたコウをひらりと交わし、ペナルティエリアやや手前 でシュートの体勢に入った。 オルバの鋭いシュートがゴール右下すみを襲う。ドモンはこれに素早く反応してパンチングで防ぐ。 しかし、そのこぼれ玉にいち早く飛びついたのは後方から走りこんできたシャギアだった。ヒイロが懸命 に食い下がるが、先ほどと同様、体格差でシャギアが押さえ込んでいる。決定的なチャンスをものに すべく、シャギアがシュート。だがドモンは瞬時に体勢を立て直し、身を横に投げ出してシャギアの 一撃を止めてみせた。こぼれ玉を今度はアムロがクリア。ボールはハーフラインをこえたあたりで 向かって右のサイドラインを割った。 シャギア「やりますね。これまでそんなにボールに触れてこなかったのに、いきなりであのセービング とは。なあ、オルバよ」 オルバ「あの状況で決められなかったのはちょっと屈辱だね、兄さん」 この隙にフロスト兄弟はドモンに話しかけてきた。何か揺さぶりをかけにきたというよりも、たんに しゃべりたいだけのような、妙な雰囲気をドモンは二人から受けた。 ドモン「あんたらの攻撃があんまりあれなんで、俺は暇なんだ。ちょっとは忙しくしてほしいもんだぜ」 ドモンも軽口を返す。シャギアは特に気分を害した様子もなく、ドモンに近づいてきてささやいた。 シャギア「ふふ、一言助言をしてさしあげましょう。『私の右足は凶暴です』」 ドモン「なんだ、それは? そのわりには今のシュート、決めておかなかったな」 オルバ「試合はこれからですよ。そうだよね、兄さん」 シャギア「ああ、そうだな、オルバよ」 フロスト兄弟はそれを最後に去っていった。残されたドモンは、からかいにきただけか、と軽く首を ひねった。 304 名前:フットボール狂騒曲52・私の右足は凶暴です投稿日:03/08/11 18 56 ID ??? その後試合はやや加速した流れを見せていった。これまでと同じく、<FCギム・ギンガナム>が 攻め、<ASジャムル・フィン>が守る。違うのは両チームにチャンスといえるプレイが何度か見ら れるようになってきたことだ。セットプレーからジャムル・フィンのCHデルがヘディングを放ち、 それをドモンがワンハンドでキャッチする。ガロードが前線に放り込んだボールから、ウッソが混戦 を潜り抜けてシュートする。両者の攻防は、近い時間、どちらかに点が入ることを予感させた。 前半37分、カミーユのジャムル・フィンからみて右サイドからのクロスをカットしたダニーが 上がっていたシャギアへとロングフィード。シャギアは弟のオルバとのワンツーで抜け出そうとする。 リーチの差に苦しむヒイロが横から足をねらったタックルにいき、ファウルでシャギアを止める。 ゴール正面約20メートルの地点で<ASジャムル・フィン>に直接フリーキックが与えられた。 ヒイロにイエローカードが出されなかったのは、兄弟たちにとって不幸中の幸いだ。ジャムル・フィン のキャプテンであるダニーが主審に詰め寄るが、むろん判定はくつがえらない。首を振りつつ主審から 離れると、ダニーは足を押さえているシャギアに話しかけた。 ダニー「くそ、なんであれにカードが出ないんだ。おい、大丈夫か?」 シャギア「ええ。キッカーは私がやらせてもらいますよ」 ダニー「直接狙える距離ならあんたが蹴る約束だしな。よし、頼んだぞ」 シャギアは不敵な笑みを浮かべて頷く。 ボールをセットし、シュートを放つステップのためにシャギアはややあとずさる。ドモンはキックを 防ぐべく壁をつくっている兄弟たちに細かい指示を出しながら、シャギアの行動を見ていた。壁の上を 越えるようなシュートを打って、曲げて落としてくるつもりだろうか? 狙ってくるのはゴールの右か 左か? 様々な考えが頭に浮かぶなか、ドモンは先ほどのシャギアの言葉を思い出した。 ――私の右足は凶暴です 右足のキックには自信を持っているということだ。直接狙ってくるのは間違いない。となれば、壁に 入ってきているオルバはこぼれ玉に飛びつくためだろうか。そこまで考えたとき、ドモンのあたまに あるひらめきが下りてきた。 ドモン「まさか……いや、コウ! となりのオルバを楽にさせるんじゃない! 押しやれ!」 ドモンが叫んだのと、主審がキックの許可を与える笛を鳴らしたのが同時だった。シャギアが左足に 力強く芝をかませ、右足を鋭く振りぬく。ほぼ同時に完璧なタイミングでオルバが上に跳んだ。その ちょうど下をすべりぬけ、シャギアのシュートはほとんど回転せずに、地をえぐるような弾道でゴールへと走る。 ドモンがとっさにゴール中央へとポジショニングしたそのとき、ボールがオルバの下から急に飛び だしてきた。ゴールやや右へと低い軌道で一直線に迫るシュートに体をなげだした瞬間には、もう すでにボールはドモンの体の後ろへと消え去っていた。そして無様に横倒れになったドモンの後ろ で今、ボールは凄まじい勢いそのままにネットへ突き刺さっている。振り向いてそれを確認した ドモンは、ネットからこぼれてきたボールをにらみつけながら叫んだ。 ドモン「く、く、くっそぉおおおおおお」 その叫びを聞きながら、弟との完璧なサインプレーをやってのけたシャギアは、唇を緩めてひとり ごちた。心のうちでオルバと祝福のやりとりを行いながら。 シャギア「言ったはずですよ。私の右足は凶暴だと」 前半38分、<ASジャムル・フィン>先制。得点者、シャギア・フロスト。スコア、1-0。 305 名前:フットボール狂騒曲53・ジャムルの求めた展開だ投稿日:03/08/11 18 57 ID ??? 試合はその後、失点した<FCギム・ギンガナム>が以前にもまして攻め立てたが、先制して守り きるという理想の展開を手にした<ASジャムル・フィン>は強固な意志と接触プレーの強さを発揮 して、ことごとく兄弟たちの攻撃を跳ね返した。とくに一回戦の<SCクロスボーン>戦で活躍した ウッソは、相手とのパワーの違いに苦しんでいた。シーブックが後ろからフォローに行くものの、その 差を埋めることは不可能だった。また、ヒイロも当たりの強さではマークするシャギアに遅れをとらな かったが、身長差ゆえのリーチの差に苦しみ、手をうまく使って押さえ込んでくるシャギアの前に、 効果的なディフェンスができているとは言いがたい。 <FCギム・ギンガナム>はそれでも前半終了までにさらに何本かのシュートを放ち、敵ゴールを 落とそうという気迫を見せる。しかし、その全てが苦し紛れのシュートであり、相手のゴールネット を揺らすことのできるものではなかった。兄弟たちは、奮闘むなしく前半終了の笛を聞くことになっ た。あと少し時間があれば必ず一点とれるのに、と言わんばかりの悔しさを顔に刻み付けて主審を 振り返る。 そんな敵選手たちの表情を、<ASジャムル・フィン>のキャプテン、ダニーは、してやったりと 内心ほくそえみながら見回していた。 ダニー「1-0のリードを抱えて後半へ、か。理想の展開だな」 対して<FCギム・ギンガナム>のキャプテンであるアムロは、やられてしまったという思いが拭い されない。完全に相手のペースで試合を運ばれている。それに加えて、なによりも悔しさとふがいなさ を感じるのは、今の自分の状況に関してだ。アムロは荒い息を吐いている自分の体が恨めしかった。 コウ「アムロ兄さん、体力の消耗が激しいんじゃないか?」 そう訪ねるコウに、アムロは首を振って「大丈夫だ」と答える。嘘だ。本当はかなりの体力をアムロは 消費してしまっている。序盤から繰り返された相手のロングボールを多用する攻撃によって走り回らさ れたアムロは、 試合前に予想していたより遥かに疲れていた。どうやら自分に甘い点をつけていたようだ。 アムロ「今思えば、あのロングボールはこちらを走らせ、疲れさせるためか。見事にやられたな」 このまま負けるんじゃないか。ふと心に浮かんでしまったその思いを、アムロは必死に打ち消した。 アムロ「まだ後半がのこっているんだ。このまま終わってたまるか」 隣のコウは、アムロのその声がやけに弱いように思えた。 306 名前:フットボール狂騒曲54・重圧下の兄弟(1)投稿日:03/08/11 18 58 ID ??? 前半の<FCギム・ギンガナム>のシュート数は10本。<ASジャムル・フィン>のシュート数 は4本。兄弟たちは相手の倍以上のシュートを放っていた。そしてスコアは0-1。ロランはロッカー ルームにひきあげてきて、備え付けのいすに腰を下ろしたとたん、ふぅっと大きな息を吐いた。こんな にちがうものだろうか。一回戦<SCクロスボーン>戦のリードして向かえたハーフタイムとはまるで 体の重さが違う。ロランは頭を左右にブンブンと振って自分の弱気を振り払おうとした。気の持ちよう なんだ、気を強く持て、と自分に言い聞かせる。 ソシエ「ロラン、なにやってるの?」 ロランが首を振るのをやめると、心配そうにこちらを見ているソシエがいた。 ロラン「ああ、なんでもありません。大丈夫ですよ」 できるだけ何気なく答えると、ロランはソシエの手渡してくれたドリンクを飲みながら、周囲に目を やった。ジュドーやギンガナムを中心にしたグループが、 「いける! 俺たちのほうがずっと攻めてるんだからいけるって!」 と気勢を上げている。ウッソやガロードがはしゃぐようにして「やれる、やれるよ」とわめいている。 彼らの勢いが、ロランには熱に揺らめく蜃気楼に見える。外見はあっても、中身はない。虚勢。そんな 言葉が自然と浮かんだ。 ジュドーたちからはなれ、自分と同じように淡々としているのがヒイロ、シーブック、カミーユと いったところか。ロランは順々に視線を移していった。カミーユはしきりに何かぶつぶつと言っていて、 淡々と、と言う言葉にはあてはまらないかもしれない。コウは頭を抱えてうなだれている。 コウ「俺が、あのときオルバにもっと激しくあたっていれば、あのフリーキックは……」 コウが後悔の念を口から漏らしたそのすぐあとだった。それまで誰よりも冷静そうだったヒイロが突然 叫んだのは。 ヒイロ「フリーキックを与えたのは俺だ。俺の……俺のミスだぁあああ!」 いつものヒイロからは考えられない行動に、ロランだけでなく全員がヒイロを振り返った。みなの注目を 集めたヒイロは、リリーナに励まされても自分の殻に閉じこもってしまっているように、かたくなに下を 向きつづけている。 307 名前:フットボール狂騒曲55・重圧下の兄弟(2)投稿日:03/08/11 18 59 ID ??? ロランもドモンも、他の誰も、選手として試合に出場している者はコウやヒイロを励ますことが なかった。他の選手に力を分け与えている余裕などないのだ。ロランも自分の気持ちを繋ぎとめ ようとするだけで精一杯だった。不恰好な沈黙の中、リリーナがなんとかしてヒイロを元気付けよう とする声だけが、むなしく残っている。そんな状況のさなか、誰よりも荒い息を吐いていたアムロが 決定的な一言をぽそりと呟いた。 アムロ「このままじゃ、負けるな」 その言葉を聞いた次の瞬間、カミーユがアムロに殴りかかっていった。 カミーユ「今なんて言ったんです、アムロ兄さん! 負けるなんて……そんな大人、修正してやる!」 叫びとともに右の拳をカミーユがアムロに打ち込む。殴られたアムロは、 アムロ「これが若さか……」 と呟いたところで体のバランスを崩し、床に叩きつけられた。ロランはキラと一緒になおも殴りかか ろうとするカミーユに後ろからつかみかかって制止した。カミーユはそれでも強い力で前進しようと する。 カミーユ「試合が終わってないのに、負けるなんていうなんて、それは、それはひどいことなんだよ!」 ロラン「落ち着きなさい、カミーユ」 今度はロランがカミーユに平手打ちをする。バシっと乾いた音がして、ようやくカミーユもアムロに 向かっていくのをやめた。アムロは自分の一言でめちゃくちゃになってしまった空間を見渡しながら、 アムロ「すまん、みんな。今の一言は忘れてくれ。失言だった。」 と言い残して部屋のそとへ出て行ってしまう。 ロランはアムロの後姿をみながら、出て行かないでくれと願ったが、アムロの背中はその願いを聞き 届けることはなかった。ますます険悪で重い空気の立ち込める場所となったロッカールームに立ち尽くし、 ロランは試合前の思いが錯覚だったように思えた。あの心強さは、なんだったのだろう。今のロランの 瞳にうつる光景には、あのときの力のわいてくる感情は欠片も感じられない。 308 名前:フットボール狂騒曲56・女コーチリリーナ誕生投稿日:03/08/11 19 01 ID ??? アムロの出て行った後のロッカールームに残された者は、沈みきった空間だけだった。誰も、何も 言うことなく、お互いが励ましあうことなどもちろんなく、もはや試合に負けた後のロッカールーム のようにソシエには思えた。 ソシエ「ア、アムロさんはきっとトイレにでも行ったのよ。みんなも後半の準備に取り掛かったら」 言った瞬間に後悔するという状況がある。今のソシエがまさにそうだった。誰もが今のソシエの言葉 に無反応だ。アルやキラなどは同調してくれるが、出場選手でこちらに顔を向けてくれたのは唯一、 ロランだけだった。義理というやつだろう。笑えないのに笑おうとしているロランの顔はなんだか 無性に腹の立つものだ。おもわず、兄弟たち全員にたいする苛立ちも含めてぶちまけてしまおうか、 とソシエが思った瞬間、隣のリリーナが勢いよくテーブルを叩いて立ち上がった。 リリーナ「皆さんは一体なにをなさっているんです! なんでしょうか、この体たらくは!プレッシャー に耐えかねて虚勢を張って騒ぐ者、終わってしまったことを無駄に悔やみ続ける者、そして そんな仲間を支えてやろうともしない全員の余裕のなさ。 わたくしは皆さんが勝つためにプレイしているのだとずっと信じてきました。それがどうでしょう。 今の皆さんからは、そんな気迫が全く感じられません!」 さすがにそこまで言われて黙っていられるか、という態度の者が兄弟たちに何人かいたが、かまわず にリリーナは続ける。ソシエは、リリーナに見入ってしまっていた。 リリーナ「そんなに相手が怖いのですか? 相手の理想の展開になってしまったことが!わたくしは サッカーに詳しくありません。ですが、一点を守りきるということはそう簡単ではないはず でしょう。たった一回のミスや偶然のアクシデントで同点に追いつかれてしまうのですから。 相手だって精神的に苦しいのです。 今、<ASジャムル・フィン>の方々はこちらに攻めさせていると考えていると思います。 ならば攻められていると思わせてしまえばよいのです。そして、どうすれば相手に重圧を 感じさせられるか? それは、強い結束力を持って、決してあきらめないと言う姿勢を見せ つければよいのではないでしょうか。精神的に気圧されてしまえば、ミスをしやすくなる はずです。相手をその状況に押し込んでしまえばよいのです! 皆さん、もう一度自信と 覇気を取り戻してください。そうすれば、わたくしたちが勝てるのですから!」 リリーナは誰も口を挟めないような勢いで一息に言い切った。ソシエも選手たちも、そんなリリーナ に引き込まれている。しかし、それでもギンガナムは納得しないように吐き捨てた。 ギム「小娘が、よく言うものであるな。そんな当たり前のこと言われないでも……」 キラ「そんな当たり前のことすら忘れていたのが、今の僕たちなんだ」 キラがすかさずリリーナをフォローする。ギンガナムも他の全員も返す言葉がない。誰も口を開かない。 だがそれは先ほどまでの沈黙とは意味が180度違う。誰もが後半への闘う準備を心の中で始めたのだ。 ソシエにも、それがはっきりとわかるぐらい、ロッカールームの空気がたぎってきた。 ソシエはリリーナを振り返った。リリーナは少し照れたような、ほっとしたような微笑みをソシエに 返してくれた。ソシエはキラと顔を見合わせて頷くと、そっと小声でキラに囁いた。 ソシエ「けっこういいところあるじゃない。誤解してたわ。あたし、あんたのこと友達の彼女に手を だしたうえに、その友達の腕をひねりあげるんじゃないか、なんて考えたことすらあるのよ。 悪かったわ」 キラ「どういうイメージなんだよ、それ。僕はそんなことしないよ。まあ、誤解が解けたんならそれで かまわないけど」 309 名前:フットボール狂騒曲57・アムロ再び投稿日:03/08/11 19 02 ID ??? ロッカールームを出て、少し先の廊下のベンチにアムロは座り込んでいた。床をみつめて、なぜ あんなことを、負けるなどということを口にしてしまったのかと自分を責める。体力を消耗して しまったから弱気になっていたのだろうか。とにかくも、長兄にして監督という皆を引っ張って いかなければならない立場にありながら、絶対に言ってはいけないことを言ってしまったことは 間違いない。おまけにあわせる顔がないという、またもや自分の勝手で飛び出してきてしまった。 アムロは自らを悪いほう、悪いほうへと導いてしまったと、どうしようもなく落ち込んでいた。 そんなアムロに突然上から声が降ってきた。 ハヤト「おい、アムロ、アムロ」 アムロ「え、なんだ、ハヤトか」 ハヤト「なんだ、じゃない。さっきから呼びかけていたんだぞ。こんなところで何やってるんだ?」 アムロ「いや、ちょっとね」 ハヤト「まあ、俺としては好都合だけどな。実は、俺がビデオを撮っているほうの試合でおまえに 伝えておきたいことがあってな」 アムロ「なんだい?」 ハヤト「ああ、お前が言ってたグエン卿のチーム、ラインフォード・ユナイテッドな。あのチーム の一員に、エドワウ・マスってやつがいるんだが……」 エドワウ・マス。アムロたちがグエン卿のチームに参加しているメンバーのなかで、唯一聞いた ことのない名前である。アムロがそれがどうかしたのか、というふうにハヤトを見上げると、ハヤト はややもったいぶったようにつなげた。 ハヤト「聞いたことない名前だろう。でも、その正体は俺たちがよく知っているやつだったんだ」 アムロ「正体って、偽名でも使っているわけじゃあるまいし……」 ハヤト「いや、それだよ。エドワウ・マスはシャアだ。シャア・アズナブルなんだよ」 アムロ「……シャア? シャアってあのシャアか?」 わずかに沈黙した後アムロは聞き返した。ハヤトが他に誰がいるんだというように頷く。 ハヤト「途中出場するためのアップをしていたときに分かったんだ。背番号18、エドワウ・マスと パンフレットに載っていただろ。18番はシャアだった、間違えるわけがない」 アムロ「そんな、なぜシャアが偽名まで使って……いや、それよりもシャアが出ているのか、この 大会に……」 黙りこくってしまったアムロに、ハヤトは「試合途中に伝えるのもどうかとおもったんだが、お前 になら知らせておいたほうがいいような気がしたんだ」と付け加えた。だがアムロは、もはやハヤト の言葉を聞いてはいなかった。シャアが出ている。その事実が、アムロの中に眠っていた何かに火を つけていた。シャア・アズナブル。アムロにとってこれほど特別な響きを持った名前は他にない。 かろうじて匹敵するかもしれないのがブライト・ノアという名前だろうか。シャアが同じ大会に出場 していると知ったそのときから、負けん気のような力がアムロの中から強くわきあがってきている。 その様子を見ていたハヤトが、「おい、アムロ?」と再びアムロに呼びかけた。 アムロ「ああ、ハヤト。ありがとう、わざわざ知らせてくれて。そろそろチームにもどらなきゃ」 そういうとアムロは立ち上がった。ハヤトが頑張れよ、と手を握ってきた。アムロは強く、その手を 握り返す。背を向け、ロッカールームに向かうアムロの後姿に、ハヤトが呼びかけてきた。 ハヤト「正直、さっき座っていたお前を見たとき、こりゃだめかもなって思ったよ。でも、今のお前 なら絶対に勝てるはずだ。ビデオ、無駄にしてくれるなよ!」 アムロは右手を軽く上げてハヤトに答えた。アムロは自然とまっすぐに前をみつめていた。 417 名前:フットボール狂騒曲58・白い闇を抜けて投稿日:03/09/03 16 02 ID ??? ロッカールームの扉を、アムロは意を決して開いた。勝手に出て行ってしまった自分はいったい どう迎えられるのだろうか、と。部屋に足を踏み入れようとした瞬間に、思わず立ち止まってしまう。 それまで後半の準備をしていたのであろう全員の視線が、アムロ一人に向けられていた。 アムロ「みんな、その俺は……」 何を言えばいいのかアムロにもわかっていない。当然言いよどんでしまったところに、軽い何気ない 口調で弟たちが投げかけてきた。 ロラン「ああ、トイレに行ってきたんでしょう」 コウ「一言ことわってからにしてくれよなあ、まったく」 アムロ「え、ああ、いや……」 思わぬ言葉にアムロは面食らった。部屋の雰囲気も自分が出ていったときとは全く違って、断然良好だ。 いったい何がおきてくれたのか、と首をキョロキョロさせていたアムロに、アルがこっそりと親指を リリーナに向ける仕草をしてみせた。どうやら彼女のおかげらしい。アムロがリリーナに目を移すと、 リリーナは軽く頭を下げてアムロに微笑んだ。アムロも微笑み返したが、ややぎこちなくなってしま った。とにかく、自分がハヤトと会っていたときに、兄弟たちにも闘う準備をする機会があったらしい。 アムロはそう納得して周囲を改めて見回した。どの顔も力とやる気を感じさせる。やれる。アムロにも この試合に勝ちにいけるという意思がみなぎってきた。 アムロ「よし、みんな準備はできているようだな。後半の作戦を指示する。まず、ウッソはシッキネン と交代だ」 ウッソ「え、そうなの」 せっかくやる気になったところなのに、という表情でウッソはアムロを見返してきた。 アムロ「ウッソは相手との体格差が大きすぎる。<ASジャムル・フィン>は一回戦の相手と比べて 激しく体をぶつけてくることが多い。だから、体格的に劣らないシッキネンでいく」 シッキネン「あ、ああ。わかった」 ややぎこちなくシッキネンが頷いた。明らかに緊張の色が見える部下を励まそうとしたのか、ギンガナム が肩を乱暴に叩きながら言う。 ギム「シッキネン、この試合でいいプレイをしたなら、貴様の給料アップも考えてや欄でもないぞ」 シッキネン「ほ、本当ですか、御大将!」 ギム「うむ。武士に二言はない」 シッキネンにしてみればこれ以上やる気になる言葉もないだろう。明らかに目の色が強くなった。 それにしてもギンガナム艦隊というのは勝手がまかりとおる組織だ。アムロは内心で、ディアナが わざわざ市民軍であるディアナカウンターを創立したのは正しいと苦笑した。 アムロ「フォーメーションはシッキネンが右サイドバックに入り、シーブックが右サイドハーフに 上がる。いいな!」 シーブックとシッキネンが、了解と頷く。 その後アムロは、期せずしてリリーナと同じことを繰り返した。チーム一丸となって攻めたて、 相手にプレッシャーをかける。そうすれば逆転できる、と。 兄弟たちは内容が同じ二度目の説教を、奇妙なおかしさとともに聞いた。思わず笑みを漏らした ところで、笑っている場合じゃないんだぞ、というアムロの怒号がロッカールームに空回りする。 ドモン「とにかく、やるべきことははっきりした。いいかお前ら、気合入れていくぞ!」 「おう!」 ドモンがアムロの役を奪ってはっぱをかけ、皆がそれに返す。アムロは肩をすくめながらも、他の メンバーを頼もしく感じていた。 418 名前:フットボール狂騒曲59・それぞれのハーフタイム投稿日:03/09/03 16 06 ID ??? <ASジャムル・フィン>のロッカールーム。キャプテンのダニーは頼もしさと苦々しさの混ざった 視線をシャギアとオルバのフロスト兄弟に向けていた。 前半の得点はまさにフロスト兄弟だからできるゴールであり、フリーキックをもらうところから すべて、二人だけでやってしまった。二人が加入してからはチームの弱点であった得点力不足も解消 され、これまでは引き分けが順当だった試合にも勝てるようになってきている。 だが決してチームにプラスになったことばかりではない。フロスト兄弟の加入に関してはチーム内 でも賛否両論が激しくいきかった。ひとつには彼らが一試合出場するごとに二人で5万円を要求して いたこと。もうひとつは傭兵のような連中をわざわざ入れる必要があるのかということ。後者の方が より大きな問題だった。昔から一緒にやってきたFWを役立たずと言っているも同然だからだ。結局、 ダニーを初めとした3Dが、チームの中心選手であるということを活かして強引にフロスト兄弟の 加入を決めたが、そのことに不満を持っているものも少なくない。とくに、ポジションを奪われて しまった者は。 ともかくいまさら考えたところで仕方のないことだ。ダニーはふっと一息吐くと、他のメンバーに 呼びかけた。 ダニー「よし、後半の作戦を伝える。俺のまわりに集まってくれ」 さっと皆がダニー近くに素早く位置を移したが、フロスト兄弟だけは、我ら関せず、と言いたげに のんびりしている。こういう協調性のないところが彼らに対する不満を根強いものにしている。 ダニー「まあ、やることはいつもどおりだ。とにかく守れ。中盤からガンガンあたっていくぞ」 ダニーが話している最中にも、フロスト兄弟は二人で声も無く笑いあったりしている。あの二人特有 の超能力のようなあれだろう。ダニーは無視して続ける。 ダニー「隙を見つけたらカウンターだ。頼んだぞ、傭兵さん。おい、聞いているのか?」 シャギア「ああ、お構いなく。わかっていますよ」 オルバ「ぐだぐだ言ってないで任せてくれればいいんだよ。ねえ、兄さん」 シャギア「そうだな、オルバよ。まあ、そういうことです」 フロスト兄弟はチーム全員の反感の視線を集めても、なお傲然としている。ダニーはあてつけに 大きな音で舌打ちしてから、他のメンバーに向き直ってしゃべり続けた。他の選手と同じく、ダニー もこのオルバとシャギアが嫌いである。だが、勝つためにはこの二人に頼らざるを得ないというのが、 ダニーの考えだった。そして、フロスト兄弟もこれまでは結果を残している。 ダニー「よし、後半も前半と同じ調子で行くぞ! 連中に付け入る隙を与えるな!」 「おう!」とチームのほとんどが応える。フロスト兄弟を除いて。 午後8時、そろそろ試合は後半が始まる頃だろう。08署でデスクワークをしているシローは 勤務の合間に祈るように時計を見た。時計にそんな視線を投げかけても仕方ないと思いつつも、 そうせずにはいられないシローだった。自分が試合に出ているほうがよっぽど楽だと考えながら コーヒーを取ろうとすると、またこぼしてしまった。これで二度目だ。部下のサンダースが、落ち 着かないですね、と笑っている。 シロー「頼むぞ、みんな。勝ってくれよ」 新しいコーヒーの入った紙コップをサンダースから手渡してもらいながら、シローは口の中で 静かに呟いた。 続く 後半の試合部分は今日、明日のうちに完成させるつもりです。 419 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:03/09/03 20 39 ID ??? 続きやっとキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!! 職人さん乙~ 420 名前:フットボール狂騒曲60・始動! 準決勝後半戦投稿日:03/09/05 02 45 ID ??? 午後8時、<FCギム・ギンガナム>、<ASジャムル・フィン>の両チームの選手がピッチに 散り、後半開始の笛が鳴り響いた。 兄弟たちの応援に来た友人たちからもフィールドに向けて声が飛ぶ。 エル「ジュドー、ガンバレー」 ルー「なにやってんのよ、ジュドー! もっとちゃんと守りなさいよね!」 ビーチャ「けっ、エルもルーもジュドー、ジュドーってうるせえな。俺だって大会に出てればよ……」 モンド「まあまあビーチャ、その大会だってジュドーがメンバーに入らないってわかったとたんに みんなどんどん抜けちゃってさ、結局はエントリーもできなかったじゃないか」 イーノ「僕、けっこう頑張ってみようかなって思ってたんだけどなあ。ジュドーは兄弟で出るから 抜けちゃったのは仕方ないけどさ」 ビーチャ「どいつもこいつも……俺が試合にでたらジュドーの3倍は活躍できる。間違いなく!」 エル「はいはい。次の方どうぞ」 モンド「俺だってさあ、試合があったらロナ○ドみたいに大活躍だったって」 イーノ「モンドがロナウ○?」 エル「いいじゃない、イーノ。肌の色が似てるもん」 ルー「それだけ似てれば上等じゃない。リッパなロ○ウドよ。名前の最後もおんなじ『ド』だし」 モンド「(´・ω・`)ショボーン」 ビーチャ「とにかく、ジュドーなんて負けちまえばいいんだ。見ろよ、敵のディフェンスに止められ てばかりだぜ」 ビーチャの言うとおり、<FCギム・ギンガナム>は<ASジャムル・フィン>の堅いディフェンス に阻まれ、後半開始から5分、ゴールどころかシュートを放つことすらできていなかった。兄弟たちも なんとかシュートまでプレイを進めようとするのだが、3Dを中心にしたジャムル・フィンの中盤から の厳しいプレッシャーを跳ねのけられない。このプレイは<ASジャムル・フィン>が勝負に来ている ことを示している。前半は主にゴール前まで引いて守っていたのに対し、後半はセンターライン付近 から積極的にボールを奪いに来ている。相手に攻撃の形さえ作らせず、高い位置でボールを奪ってから の素早いカウンターを狙っているのだ。兄弟たちもその狙いはわかっている。好きにさせるかとボール を奪われたらすぐさま奪い返しにいく。 後半開始から10分、センターライン付近で両チームは激しくぶつかり合っていた。 421 名前:フットボール狂騒曲61・衝撃の判定投稿日:03/09/05 02 47 ID ??? 後半15分、幾度かのボールの奪い合いの末、<ASジャムル・フィン>のCHデルがスルーパスを オルバに通した。オルバは絶妙なトラップでボールを操って反転と同時に、あたってきたシッキネンを かわす。さらにシャギアとのワンツーを成功させ、コウを何もやらせずにパスし、敵ペナルティエリア の手前まで進出する。 素早くペナルティエリアに迫ってくるオルバに対して、<FCギム・ギンガナム>で残っているのは キーパーのドモンを除けばアムロだけのようだ。うかつに出て行けば簡単にかわされてしまう。一瞬、 迷ったアムロに後ろから声が掛かった。 ガロード「アムロ、突っ込め!」 ガロードがアムロの後ろに回りこんで、後方のケアをすると言ったのだ。その言葉を受けて、アムロは オルバの懐に飛びこむようにあたっていく。オルバはそのアムロのディフェンスをかろうじてかわして ペナルティエリアに侵入するが、それはアムロとガロードの予測どおりだ。ガロードが鋭いタックルで オルバからボールを奪う。オルバは勢いあまってバランスを崩し転倒。一気に反撃にでようとガロード がボールを前に蹴りだそうとしたそのとき、主審の笛が夜の空気を切り裂いた。 主審の指がまっすぐにペナルティエリアを指している。<ASジャムル・フィン>にペナルティキック 与えられたのだ。それを目にした瞬間、ガロードは主審につかみかからんとするような勢いで突進して いった。 ガロード「なんでファウルなんだよ! ちゃんとボールにいったろ!」 自分のタックルは反則じゃないとガロードは大声を上げて主張した。嘘ではない。足をかけようとは しなかったし、足を削った感覚もなかった。しかし、もちろん主審の判定は覆らず、ガロードには イエローカードが突き出された。思わず審判につかみかかりそうになった瞬間、ガロードは後ろから 両腕をつかまれて引きとめられた。 アムロ「落ち着け、ガロード! もう一枚もらったらどうするつもりだ!」 ガロード「アムロ兄も見てたろ! 俺はやってない! あいつが勝手に……」 アムロ「わかってる! でもとりあえずお前は離れていろ」 ガロードがアムロに連れられて渋々主審から離れていく際にも、他の兄弟たちが主審に詰め寄って いる。ベンチのキラも大声を出して叫んでいた。 キラ「僕は見ていた! そっちの18番が足をかけられてもいないのに飛んだんだ! シミュレーション だよ! カードならあいつに出してくれよ!」 シャギア「そんな遠いところからはっきりわかったのかな? いい加減なことを言わないでほしいものだ」 キラ「……ぼ、僕はコーディネーターだ! 彼がダイブしたところまではっきり見えた!」 シャギアに対してのキラの反論も結局は何の意味も持たない。すでに判定は下っているのだ。ガロード の胸は苦しさと悔しさでいっぱいになっていた。ピッチ全体にも失点もしくは得点したかのような 雰囲気が漂っている。それもそうだ。PKなんだからもうだめだ。そしてここで失点して試合だって 決まってしまうんだ。そう思ってガロードが顔を上げたそのとき、兄のアムロがガロードの背中を 叩いて言った。 アムロ「ガロード、なんだその泣きそうな顔は。うちのキーパーが誰だか忘れたのか?」 ガロード「アムロ兄、でもPKなんだぜ。いくらドモン兄でも……」 言いかけたガロードの隣をとうのドモンがゴールに向けて歩いていった。すれ違う瞬間、ドモンは無言 のままでガロードに親指を立ててみせた。ガロードが振り返ると、そこにはドモンの大きな背中があった。 その後姿は、見送るガロードが怖いと感じるほどの気迫と集中力に満ちていた。 422 名前:フットボール狂騒曲62・二人だけの戦い投稿日:03/09/05 02 49 ID ??? オルバ・フロストはPKのスポットにボールを置いて自ら蹴ることを宣言した。チーム内に止める 声はない。オルバがもらったPKだからだ。もちろんオルバは相手からPKをもらったのではない。 審判からいただいたのだ。わざとファウルを受けたように装うダイビングは、オルバの得意とする プレイだった。 〝うまくやったな、オルバ。さあ、試合を決めてこい。このPKで私たちの勝ちだ〟 〝そうだね、兄さん。まあ、簡単な仕事さ〟 兄のシャギアが伝えてきた声にオルバは微笑を浮かべて返した。ボールから少し離れ、主審の笛を 待つ。オルバは前を向いてどちらに蹴るか決めようとした。オルバはいつもそうしてPKを蹴って いる。相手の動きなど関係なく、事前に決めておくのだ。右か左か、上か下か。あえ真ん中という 選択肢もある。しかし、今回はいつものように行かなかった。 オルバは前を向いた瞬間、言い知れない精神的な圧迫を受けたのだ。PKを蹴るからあるその圧迫 ではない。そのプレッシャーならいつも感じていて今回だけ特別ということはない。キーパーか? オルバは自問する。目の前の相手のキーパーから受けているのか、この圧迫感は。どこに蹴っても 止められてしまうような気がする。ゴールが小さく、相手が大きく見える。錯覚だ。確かに相手の キーパーはよく集中しているし、気迫も強く感じる。でもそれだけだ。相手に飲まれず、いつもの 通りにやればそれで終わるはずなんだ。オルバは落ち着かず、集中力を欠いていた。 〝落ち着け、オルバ。お前なら大丈夫だ〟 オルバの精神状態を心配したか、双子の兄が励ましてきた。それが更に、オルバにあせりをもたらす。 二人の特性上隠せるわけもない動揺を覆い隠すため、オルバは強く言い返していた。 〝兄さん、僕は問題ない。決めるさ、僕らは特別なんだ。あんなただの人間に止められるわけがない!〟 主審の笛がなると、オルバはまるで背中を押されたようにボールに近づいた。整理しきれない感情 を抱えたままオルバは、ボールを蹴る直前、相手キーパーの目を見てしまった。動きを探るために 見たのではない。ただ見てしまったのだ。そして、オルバの体は相手から感じる力に戦意を失った。 オルバのシュートは力なくキーパーの真正面に飛んでいき、がっちりと受け止められた。 423 名前:フットボール狂騒曲63・反撃投稿日:03/09/05 02 51 ID ??? ドモンはオルバのシュートを胸で確実にキャッチすると、すぐさま前にいるロランを探し出した。 敵の<ASジャムル・フィン>はまさかのPK失敗に動揺し、隙ができている。 ドモン「今がチャンスだ! 走れ、お前ら!」 ドモンから放られたボールを受け、ロランは素早く右サイドを駆け上がっていたシーブックに繋いだ。 相手の守りはまだ整っていない。センターラインを越えたところでボールを受けたシーブックは、その まま敵陣深くまでドリブルで侵攻する。軽妙なステップでフェイントを入れ、残り少ない敵DFを誘い 出してタックルをかわすと、中央に鋭く低いクロスをあげる。 中央に走りこむのはニアサイドにCFのギンガナム、ファーサイドにトップ下のジュドーだ。クロス は敵DFを二人引き連れているギンガナムをおとりにする形でジュドーに合わされていた。ジュドーは 落ち着いてトラップしてから右足を振りぬきシュートを放った。強烈な一撃が<ASジャムル・フィン> のゴールを襲う。完全に同点かと思われたが、シュートはクロスバーに阻まれた。思わずジュドーが 頭を抱えたそのとき、ボールはギンガナムのほうへ跳ね返っていった。 二人のDFにまとわりつかれているギンガナムに突然ボールが跳ね返ってくる。ギンガナムは押し のけようとしてくるDFを弾き返して強引にボールに合わせようとするが、敵の圧力に体勢を崩されて しまう。それでもギンガナムはあきらめない。倒れこみながらも必死で右足を伸ばしてシュートを打ち にいく。しかし、ギンガナムの足はボールを豪快に叩きこむことはなかった。 ボールはギンガナムの膝に当ったのだ。その軌道はジャムル・フィンのキーパー、デューンの予測を 完全に無視したコースだった。ギンガナムの膝にあたったボールはギムのいるサイドの反対側のゴール ネットに向かってきゅーんと飛んで、ぱさりと飲み込まれていった。主審の笛がゴールと認めて響く。 シーブック「あ、ああ、入った……入った! なんとぉ~~!」 敵のDFにもみくちゃにされていたギンガナムもボールがゴールに入っているのを確認した。 ギム「は、入っている……? ふはははは、小生の完璧で素晴らしい同点ゴール、月も見たかぁああ」 高らかに叫ぶギンガナムの周りに次々と<FCギム・ギンガナム>のメンバーが祝福に集まってくる。 みな、それぞれに喜びを爆発させている。 ジュドー「完璧って、あれはあたりそこないじゃないか! でもそんなのどうだっていい! よくやった~!」 ロラン「よくあきらめないで、足を伸ばして……月もディアナ様も見てらっしゃいますよ、きっと!」 シーブック「いや~、ボールがゴールに飛び込んでいったときは、ホント、なんとぉ~って感じだったぜ」 ヒイロ「ゴールは認められた。どんな過程であろうと問題ない」 シッキネン「お、御大将、やりましたね! 給料アップに近づいてますよね!」 後半17分、試合は<FCギム・ギンガナム>の名付け親、ギム・ギンガナムのゴールによって 1-1の振り出しに戻った。 484 名前:フットボール狂騒曲64・熱夜の攻防戦投稿日:03/09/15 06 06 ID ??? 同点に追いつくギンガナムの得点を、後方のアムロたちも喜び合っていた。 アムロ「よし、このまま勢いに乗って逆転する。それにしても、ドモン、お前のおかげだよ。よく PKを止めてくれた」 ドモン「ああ。なんていうか、PKのほうが簡単なんだがな。キッカーひとりだけに集中できるし、 明鏡止水の心さえあれば問題ない。格闘なら相手が複数でも読みきれるんだが、サッカーは 経験が浅いからな。まだまだ何人もの動きに気を払わなきゃならない状況に対応しきれん」 アムロ「……お前だけの特性だな。なんにせよ、お前が後ろに控えているのは頼もしい限りだ」 ドモン「そういうのは、試合に勝ってからにしようぜ。まだ同点に追いついたばかりなんだ。気が 早いんじゃないのか、兄貴」 アムロ「あ、うん、そうだな」 ドモンのもとから離れながら、アムロは自分が少し勝ち急いでいることを自覚した。まだ試合は同点。 決して気の抜けない状況だ。格闘者として勝負の世界に身をおいてきたドモンは、アムロから油断や 焦りといったものを感じたのかもしれない。 アムロ「よし、お前たち! 同点になったからって一息ついている暇はないぞ! このまま一気に 押し切って逆転する! そのためにももう一点だってやれないんだからな!」 自分への戒めも兼ねて、アムロは周囲の選手たちに大声で呼びかけた。 同点ゴールを許したことで<ASジャムル・フィン>の状況は大きく変化した。守りきれば勝てる という状況から、得点しなければ勝てないという状況へと。チームの期待を背負うのは傭兵の兄弟、 シャギアとオルバだった。しかし、チーム全体が攻撃的な姿勢でゲームに臨むことはない。あくまで 守り主体のカウンターによる得点狙いだ。 対して<FCギム・ギンガナム>は得点した勢いそのままに攻め立てる。自然、攻める兄弟たちの ほうがより多くのチャンスを手にすることになる。 後半25分にゴール前での混戦からペナルティエリア左隅のカミーユの目の前にボールがこぼれた。 しかしカミーユのシュートはゴールポスト左に大きく外れ、絶好の勝ち越しチャンスは露ときえる。 ジュドー「今のは決めておいてくれないな~。なんのために真ん中でがんばってると思ってるんだよ」 カミーユ「偉そうに……おまえだってけっこうチャンスに外してきただろ!」 ギム「そんなことがエクスキューズになると思ってるのか! あれはゲットゴールして当たり前である!」 カミーユ「変に英語を使うなよ!」 ロラン「3人ともディフェンスして!」 ロランが声をかけたときにはすでに<ASジャムル・フィン>は前方にボールを蹴りだしていた。 シャギアがオルバに繋ぐ。しかし、ゴールに迫ろうとするオルバの前にはキッチリとコウとアムロが 立ちふさがる。ドリブルで突っ込んでくるオルバにコウが激しく体をあててボールを奪いにいく。と、 オルバはガロードの時と同じようにわざと倒れこんだ。しかし、今度は審判の笛は鳴らなかった。主審 は、ピッチに横になっているオルバにさっさと立ち上がれと促すだけだ。後ろで見ていたシャギアは 低く小さく唸る。上手くいかなくなるとすぐ倒れてファウルをもらおうとするのは、オルバの悪い癖 だった。 シャギア「それにしても、たった二人で攻めろというのか? 何のフォローもないとは」 失点してからというもの、<ASジャムル・フィン>の攻撃は完全にフロスト兄弟任せでシャギアと オルバは少しのフォローも受けずに苦しい状況での攻撃を余儀なくされていた。 485 名前:フットボール狂騒曲65・おさらばで御座います投稿日:03/09/15 06 07 ID ??? その後は、両チームともシュートまでいくようなプレイが見られなかった。兄弟たちは一丸となって 攻めにでていたが、前半のようにがっちりとゴール前を固めるようになった相手を崩せなかった。しかし 決してあきらめたり悲観したりしているものはいない。勝利を手にするためチーム一丸となって戦う。 ハーフタイムのリリーナの檄がそれぞれに利いていたのだ。素直に感心して頑張ろうと思った者もいれば、 あそこまで言われて黙っていられるかと屈辱を跳ね返そうとする者もいる。そしてアムロにはシャアと いう名前が負けられない理由となっていた。 もちろん<ASジャムル・フィン>も勝利を目指している。だが兄弟たちとは対照的にチームに 亀裂が入り始めていた。後方の選手たちは同点に追いつかれてからのフロスト兄弟の攻撃に不満を 持っていたのだ。オルバはファウルをもらうためにすぐに倒れ、シャギアも前半なら押さえ込んで いたマーカーに苦戦していた。そして同点に追いつかれた原因も、オルバのPK失敗なのだ。 逆にフロスト兄弟から言わせれば、チームの姿勢そのものが疑問だった。同点に追いつかれてから というもの、自陣ゴール前に張り付いているばかりで全く攻める気がない。ただロングボールを放り こみ二人でゴールを奪ってこいでは、取れる点も取れない。もっと攻撃に選手を投入して少しでも 数的不利を解消するべきだ。それをやらないとは勝つ気がないのか、というのがオルバ とシャギア の実感だった。 そしてついに後半35分、<ASジャムル・フィン>のフロスト兄弟とそれ以外の選手が決裂する 決定的な瞬間が訪れた。きっかけはそのまえから激しさを増した<FCギム・ギンガナム>の攻撃だ。 ギンガナム、シーブック、ジュドーが次々とシュートを放つ波状攻撃。結局、最後にカミーユがまたも ミスをしてゴールはならなかったが、<ASジャムル・フィン>はいつ失点してもおかしくない状況 と感じていた。ゴールキックで試合が途切れたと同時に、ダニーはシャギアに指示を出した。 ダニー「シャギア、お前ももっと下がって守ってくれ。このままではやられる」 シャギア「攻めないから、攻め込まれる。むしろ攻めに人数をまわして……」 デル「がっちり守ってカウンターがうちのスタイルだっていつも言ってるだろうが」 オルバ「それじゃ勝てないんだよ。スタイル? 失点を怖れて引きこもることにそんな逃げ口上が あったなんてね」 デル「なんだと? 誰かさんがきっちりPK決めてりゃこんなことにはならなかったんだよ」 カッとなったオルバが言い返そうとした瞬間に、シャギアは後ろから軽く押さえた。上手くいって ないことがここにいる全員の苛立ちを加速させている。 シャギア「落ち着け、オルバ。あなたがたもね。オルバと私が言いたいのは、攻撃こそ最大の防御 であるということだ。ただ守っていたって勝てない」 デル「カウンターで点を取ると言っているだろう!」 両者の言い分は完全にすれ違っていた。キャプテンのダニーがふっと息を吐く。 シャギア「それでは勝てないと何度言えば……」 ダニー「もういい」 シャギアが言いかけたところで、ダニーが強引に話をきった。そしてアップをさせていた控えのFW である9番と10番の二人に目をやる。それをみてシャギアは嗤った。 シャギア「念のため一応、ということだったが……そういうことか。我々を外して勝てるとでも?」 ダニー「このままもめ続けるよりはましだ。意見の合うやつらを入れる」 オルバ「ふふ、ふはは、ふはは、誰が点をとってきたと思っているんだか」 急に笑い出したオルバに、シャギア以外の人間はあっけにとられたような顔をした。 オルバ「いつもこうだ。僕たちはいつだって十分にやっているのに、誰もそれを評価しようとしない。 あのときも、いまもね」 シャギア「オルバ、余計なことはいい」 オルバ「ああ、そうだね、すまない兄さん。さっさと下がってこのチームが負けるところを高み の見物といこうか」 デル「この野郎!」 暴言のオルバにつかみかかろうとしたデルだったが、その腕をシャギアが止めて、軽くひねった。 シャギア「外される選手が負け惜しみを言っているだけですよ。お気にすることなく」 デル「く、くそっ」 外されるときさえも生意気にフロスト兄弟はピッチを去った。 502 名前:フットボール狂騒曲66・遅れて来るもの投稿日:03/09/24 18 45 ID ??? 敵の<ASジャムル・フィン>が選手交代を行ってフロスト兄弟を下げたとき、アムロやコウは 頭に浮かんだ疑問を隠せなかった。 コウ「なんで、あの二人が外れるんだ。スタミナ切れって感じじゃなかったけどな。オルバのほう は相変わらず元気にダイビングしてたのに。まるで道○堀に飛び込む阪○タイガースファン みたいにさ」 アムロ「さあな。だが、気を抜くなよ。交代で入ってきた連中だって甘くないはずだ」 体力に不安を持つアムロからすれば、フレッシュな選手が新しく入ってきたことはマイナスにも なりうる。そのアムロがまわりに注意を呼びかけているさなかに、スタンドを見上げてボーっと しているものがいた。カミーユだ。 アムロ「おい、カミーユ! ボーっとしてないで試合に集中しろ!」 カミーユ「あ、ああ……うん」 この試合のカミーユは集中力を欠き、前半から効果的なプレイができず、後半には決定的な チャンスを2度も逃していた。 カミーユ「スタンドにフォウがいた……見に来てくれたんだ……」 アムロ「おい、カミーユ、何ぶつぶつ言っているんだ」 大丈夫なのか、と聞いたアムロに、カミーユは「ああ、うん」と答えた。アムロが、今交代できる 選手がいたら間違いなく交代させてるな、と思うような気の抜けた答えだった。 いっぽう交代させられたフロスト兄弟はベンチに座ることもせず、そのままロッカールームへと 直行する。この試合がどうなろうともはや関係はないといったように。その後姿を<ASジャムル・ フィン>の面々は苦々しくみつめていた。が、いまはあの二人に気を取られている余裕は無い。 ダニー「敵は攻めにかかりきりだ。かならず隙が出来る。そこを狙うぞ!」 みなの意識を切り替えようと、キャプテンのダニーが呼びかけた。交代で入った9番と10番の プレイヤーに一層強い視線を向けながら。 再開された試合は残り10分。それまでに決着がつかない場合はPK戦で勝負をつけることに なっている。絶対の守護神であるドモンを抱える<FCギム・ギンガナム>にはPKで勝つと いう選択肢もあるが、それを望んでいる者はいない。90分以内での勝利をもぎとろうと必死だ。 対して<ASジャムル・フィン>は敵にドモンがいる限り、PKでの勝利は難しい。狙うは 得点して90分以内の勝利だが、無論まずは守りから入っているためチャンスは少ない。フロスト 兄弟の苛立ちもそこに原因があった。PKでは不利なのに攻め勝とうとしない。しかし、<AS ジャムル・フィン>というチームはカウンター以外の攻め方を知らないチームなのだ。辛い試合 になればなるほど、自分たちの得意分野に頼りたい気持ちは強くなる。 503 名前:フットボール狂騒曲67・カミーユの鼓動投稿日:03/09/24 18 46 ID ??? そんな両チームがもっとも激しくぶつかり合うのが中盤からジャムル・フィンのゴール前に かけてである。体のぶつけ合いなら当然、体力的にもとから強い<ASジャムル・フィン>の ほうが<FCギム・ギンガナム>より有利なっている。ギンガナムはともかく、ジュドーや シーブック、ロランなどは相当な消耗を強いられていた。だが今はまだ相手を脅かすプレイが できている。精神的に押しているからだ。裏を返すと、それは兄弟たちが内包している疲れを 意識させられてしまえば、集中力を切らしてしまえば一気に戦えない状況へと追い込まれると いうことだ。<ASジャムル・フィン>の狙いもそこにある。今、兄弟たちの敵は強烈なボディ ブローとなり得る一発のカウンターを打とうとしていた。 その一撃に出たのは後半40分、勝負を賭けた中盤での激しいプレッシャーを経て奪いとった ボールをCHのデルが前線にフィードした。それを受けて途中出場の9番と10番が<FCギム・ ギンガナム>のゴールに迫る。 しかし、兄弟たちは慌てずにヒイロとロランがまずボール保持者の10番にあたりにいき、 9番にもコウがきっちりマークについている。二人の敵に迫られながらもなんとかパスコース をさがそうとしたジャムルの10番だが、上がってきたサイドハーフにもそれぞれガロードと シッキネンがパスカットの狙える位置で対処している。結局は苦し紛れの9番へのパスをアムロ にカットされてしまった。罠としてあえて一本だけ残されていたパスコースである。<FCギム・ ギンガナム>がディフェンスにおいて見事な連携をみせ、逆にアムロがカウンター気味にボール を前線へとフィードした。 アムロから送られたボールを受けようとしたジュドーだったが、敵CBのダニーに押しのけら れ、ヘディングでボールを弾き返される。そのボールを後ろからロランがフォローしたものの、 既に<ASジャムル・フィン>はフォーメーションを固め、カウンターのチャンスは潰えた。 ロランがパスの出しどころを探ると、左サイドのカミーユがボールを要求している。ロランは 素早くカミーユへとはたいた。 カミーユはこの試合、ここまではあまり活躍しているとは言い難い。それはカミーユ自身にも わかっていた。敵を抜こうとすると体が妙に重く、逆に踏ん張ろうとすると力が入らずふわふわ と軽い体になってしまった。だが、いまは違ってきている。背中のナンバー4に心地よい重みを 感じる。自分の意思に反射して、思い通りに体を動かすことのできる適度な重み。軽すぎずまた 重すぎず、自在に四肢を躍動させることのできる重みだ。いける。スタンドに来てくれたフォウ のおかげか、その確信がカミーユに自然と宿っていた。 504 名前:フットボール狂騒曲68・得点へのシナリオ投稿日:03/09/24 18 47 ID ??? ロランからのボールをトラップしたカミーユに、敵のDFが素早く寄せてくる。相手は二人がかり だ。しかしこれまでのカミーユの印象が強いせいか、二人のプレッシャーはやや甘い。カミーユ はその隙を逃さなかった。急激なスピードアップで、迫る二人のディフェンスの間をぶち割る。 そのさなかでもボールはきっちりコントロールされている。スペースのない厳しい状況の中で 相手の右サイドをずさりとえぐったカミーユは、中央に鋭い視線を送った。 中にはペナルティエリア中央に二人のDFがマークしているギンガナム、そのやや後方には ジュドーがあえて前から下がってきていた。それを目にした瞬間、カミーユにこの先の攻撃を どう展開するかのヴィジョンがさっと降りてきた。中央の二人も同じことを考えているはずだ。 二人を信じ、カミーユは自分たちの左サイド、敵の右サイド深くから鋭いクロスを中央に放り こんだ。 カミーユのクロスは敵のDFラインとキーパーの間を抜ける絶妙なラインを通り、ペナルティ エリア中央を抜け、エリア右奥まで流れていく。その敵陣からみて左にはギンガナムがカミーユ の想像通りに流れてきていた。ダニーともう一人、二人の敵DFとの厳しい競り合いを制して、 ヘディングでエリア中央に折り返す。ギムは自分のマークについていた二人のDFを引き連れて エリア右に流れたのだ。当然、エリア中央はがら空き、無人のスペースになる。そこにジュドー が後方から飛び込んでくる。このタイミングのために、わざわざ一度後ろに下がっていたのだ。 ペナルティエリア真ん中、完全なフリー。カミーユはジュドーへと心の中で叫んでいた。 "落ち着いて決めろ。余裕がある。丁寧にやっていいんだ、ジュドー。頼むから、《ヤナギ○ワ》 だけはしないでくれよ! " カミーユの〝声〟がジュドーに届いたのかはわからない。だが、ジュドーは絶好のチャンスに 慌てることなく、落ち着いてギンガナムの折り返しを胸でトラップ。ボールが地面でワンバウンド したところで冷静にゴールへとボールを叩き込んだ。敵キーパーのデューンはコースを狭める ためジュドーに向かって飛びつこうとしたが、完全に遅かった。カミーユ、ギム、ジュドーの 完璧な連携は、それだけ余裕のある状況をジュドーに与えていたのだ。後半40分、<FCギム・ ギンガナム>はジュドーのゴールによってスコアを2-1とした。 505 名前:フットボール狂騒曲69・戦いの決着投稿日:03/09/24 18 48 ID ??? ジュドー「よっしゃぁ~~~! 三度目の正直ってやつだ! どうだ!」 シュートがゴールに突き刺さったと同時にジュドーは雄叫びをあげた。これまで2度、惜しい ところでゴールを決められなかったのを、ジュドーなりに気にしていたのだ。そこにまずギム が駆け寄ってきて、ジュドーの頭を軽く小突く。 ギム「まず小生への礼だろうが。誰がディフェンスをひきつけてゴールのお膳立てをしてやった と思っている。小生だろうが。つまり、このゴールは100%小生のゴールである!」 カミーユ「俺の突破とクロスがあってこそのゴールだったろう! そんな考え、修正してやる!」 自分の活躍を軽視されたらたまらないというように、カミーユも割り込んでくる。 ジュドー「ゴールを決めた奴が一番偉いんだよ! ま、それはともかく今の俺たちは最高だったね」 ギム「うむ。まさにgreat!なコンビネーションだったな!」 カミーユ「なんで英語なんだ……妙に発音がいいし」 ギム「バスターとは違うんだよぉおお!」 そんなふうにジュドーやギム、さらに駆け寄ってきたほかのチームメイトと喜び合いながらも、 カミーユはスタンドのフォウを探していた。最初に見つかったのは、自分達のゴールを喜んで くれているファの姿だった。カミーユの中でかすかに罪悪感がうずく。試合はこの一撃で決ま った。 後半40分のジュドーの得点によってスコアを1-2とされ、集中力が切れた<ASジャムル・ フィン>は終了間際のロスタイムにも、カミーユの突破を始まりとした<FCギム・ギンガナム> の波状攻撃により失点した。最後には敵CHのロランが打ったミドルシュートがDFにあたって コースが変わる不運もあって、駄目押しとなる三得点目を許してしまったのだ。 試合終了時のスコアは、<FCギム・ギンガナム>3-1<ASジャムル・フィン>。兄弟たちは 前半はリードを許したものの、後半は怒涛の巻き返しで逆転。決勝への切符を勝ち取った。 試合終了の笛は、08署でシローが三度目のコーヒーこぼしをやっていたときに響いた。 506 名前:フットボール狂騒曲70・兄弟たち大勝利!決勝の舞台へレディ・ゴー投稿日:03/09/25 01 17 ID ??? 試合終了後のロッカールームは、前半終了時と違って喜びと解放感に満ちていた。全員消耗して いるはずだが、勝利の歓喜のまえには体もすっかり忘れている。 ギム「今回も、小生のおかげであるなあ~。同点弾、逆転弾、駄目押しと全て小生あってこそ!」 シッキネン「いや~、今日の御大将は後ろから見ていてもしびれましたよ」 給料アップがギンガナムのさじ加減一つにかかっているシッキネンは試合におとらぬ必死さで ギムをヨイショする。 ドモン「ふん、おれがPKとめてなきゃあれで終わってたんだぞ」 ガロード「ドモン兄、その節はあんがとね。しかしオルバの野郎セコイまねしやがって」 カミーユ「ああいうプレイはイエローで修正してくれなきゃ。審判もよく見るべきなんだ。まったく 俺の活躍で勝ったからいいようなものを……」 ジュドー「カミーユ兄は最後のほうだけだろ。前半からそうとう足引っ張ってたくせに」 カミーユ「なにぃ!」 ジュドー「その点俺は前半から大活躍。全得点に絡んだもんね」 カミーユ「最後の得点は前の奴らはほとんど全員絡んでたじゃないか!」 ロラン「まあまあ、みんな頑張りましたよ。だから勝てたんじゃないですか」 やっぱりというべきか、ロランがなだめに入る。そのロランにシーブックが同調する。 シーブック「ロランも点決めたしな」 ロラン「いや、あれは相手に当たってなきゃ枠を外れてたんですけどね。単なるラッキーですよ」 ソシエ「なんであんたは点取ったのに謙遜するのよ。もっと堂々としなさいよ。恥ずかしそうに しちゃって。もっとこう、威張ったっていいのよ。わかる? あたしの言いたいこと」 ソシエがまるで得点したのは自分のようにロランに言う。それに答えて「いや、でも本当に入らない 弾道でしたし……」と、どこまでもそんな調子のロラン。周りに笑いが起こる。 いっぽうでリリーナとヒイロはロッカールームの隅に二人っきりの空間をつくっていた。 リリーナ「ヒイロ、勝ったのだから、もう気にしないで」 ヒイロ「そういうわけにはいかない。なぜあんなことをしてしまったのか、きちんと分析し、同じ ミスを繰り返さないようにしなくてはならない」 ハーフタイムにリリーナに一喝されたことを、ヒイロはまだ気にしていた。リリーナとしてはその ことにこだわらないでほしかったのだが、ヒイロとしてはこの失敗を次に活かさねば気が済まない ようだ。それでも勝利は嬉しいのだろう。ヒイロにしては珍しく、自分の心境をしゃべっている。 そんな二人や先ほどのロランとソシエを見ながら、ウッソは改めて実感していた。やっぱり サッカーというものは試合にでて活躍しなければ、と。出来のよくなかった前半だけで下げられた 今回、特別ウッソのことに触れるものはいない。次こそは活躍し、前回の栄光を取り戻そうと、 ウッソはひとり、リリーナやソシエを見つめながら強く心に誓っていた。 アルはシローに勝利を伝える役を買ってでて、電話の設置されている廊下に行っている。きっと シローもこれで安心するだろう。アムロは自分こそほっと一息はきながらそう思った。体力に不安 のあるアムロが最も恐れたのは相手が猛攻を仕掛けてくることだった。しかし、敵はあくまでも カウンターに固執し、アムロたちはそれほど不利な場面を作られなかったのだ。結果、スタミナを 消耗していたアムロを周りのコウやシッキネン、ガロードが助ける余裕が生まれ、アムロも最後 まで力尽きずにプレイすることができた。攻撃陣に比べて目立たなかったが、アムロは周囲のDF に強く感謝している。これで次は決勝戦。シャアは勝っただろうか。アムロはライバルへと考えを 移していった。 人それぞれに思いを爆発させ、またはかみ締めている勝利後のロッカールーム。しかし、緊張 という感情だけはなかった。みな、ようやくその気持ちから解放されて羽を伸ばしているのだ。 そして今、そこにあらたな風を吹き込もうとしているものが現れた。 ハヤト「お~い、アムロ。ビデオテープ持ってきたんだが……」 フラン「あの、取材のためにお邪魔させていただきたいんですけど……」 ハヤトとフランの二人が、同時にロッカールームの扉を開けて顔を見せる。 コウ「またこのパターン……ワンパターンだな、おい」 507 名前:フットボール狂騒曲71・巷に雨の降るごとく(旧世紀文学つながり)投稿日:03/09/25 01 22 ID ??? アムロはハヤトとフランの二人を招き入れると、まずはハヤトのテープを受け取って礼を言った。 アムロ「ありがとう、ハヤト。これで少しは決勝に向けて対策が立てられる……ってこれは『罪と罰・ 兄さんは殺人犯? 償いは妹が体で……』じゃないか!」 ハヤト「あ、あれ、おかしいな? なんでそんなものが……と、とにかくこっちが試合のビデオだ」 慌てるハヤトをよそに、ジュドーとガロードは素早くアムロの手から初めのテープをひったくった。 ジュドー「こ、これは凄そうだ。次の試合に勝つための要素が詰まっているぞ。ニュータイプの俺 にはわかる。早速ウッソかキラ兄のデッキを借りて……」 キラ「な、なんで僕の名前を出すんだよ。それにデッキは壊れてるよ」 リリーナやソシエ、フランだっているのだ。キラはキョロキョロと首を振って落ち着かない。だが もちろん、ティファさえいなければガロードはそんなことお構いなしである。 ガロード「直せばいいだろ、ちゃっちゃとさ。いや~これは凄そうだ。でも俺は妹ってのがなぁ~。 もうひとり、よく出てくる女の人いなかったっけ」 フラン「娼婦のソーニャのこと? 妹はドゥーニャね」 たいして気にするふうもなくフランも会話に加わる。考えてみれば彼女はもう結婚さえしている のだ。 ガロード「そう、それ。確かさ、やむにやまれぬ事情があるんだよ。いいよなあ。本そのものは 読んだことないけど」 ジュドー「いいや、妹のドゥーニャのほうがいい」 ガロード「絶対自己犠牲的な感じのソーニャだって」 ジュドー「何が何でもコロニー落としがあってもドゥーニャ!」 ガロード「天地がひっくり返っても核の冬が来てもソーニャ!」 読んだこともないのに論争を始める二人の影響もあってか、ソシエがロランに聞いた。 ソシエ「ロランはドゥーニャとソーニャどっちが好き? あたしはドゥーニャのほうが好きね」 ロラン「ぼ、ぼくにはわかりません。読んだことないですし。名前を聞いたことがあるだけで」 ソシエ「そう。私は読んだけどよくわからなかったわ。お姉さまが読んでたから挑戦してみたけど、 あたしにはまだ早すぎたのかしら」 ロランはそんなソシエの言葉に育ちの差とでもいうようなものを感じていた。キエルお嬢さんは ともかく、おてんばなソシエお嬢さんまで旧世紀の文学を嗜まれているなんて。さすがハイム家 はブルジョワジー、僕みたいなプロレタリアートとは違うんだ。でも僕は共産主義革命には賛成 できないな。と、ロランはそれこそ違っていることを考えていた。 リリーナ「わたくしはスヴィドリガイロフさんがドゥーニャさんに撃ちたいなら撃てと銃を渡すシーン が印象に残っていますわ。相手に選択をゆだねるものの行き着く先……興味深いもの です」 ヒイロ「何か責められているのか、俺は? なぜそんな気がするんだ……」 リリーナも加わり、すっかり『罪と罰』トークが繰り広げられているサッカーの試合後のロッカー ルーム。とっかかりは間違えて渡したAVで、読んだこともない二人は不毛な言い争い。謎の不思議 空間と成り果てたその中で、コウは理系だけどすこしは本読んだほうがいいのかなと悩み、ウッソ は文学キャラで攻めるのもありか、でも形だけそんな感じの人ってカッコ悪いしと頭をひねる。 ギンガナムは『カラマーゾフの兄弟』に話題が移ることもあろうかと昔の読書に思いをはせた。 武道のほうが好きであった。読書の時間は正直苦痛であったな。浮かんでは消えるギムの思い出 たち。シローへの報告を終えて帰って来たアルも、部屋の様変わりに戸惑いを隠せない。 アムロはみなの落ち着くのを待って言った。 アムロ「とりあえず部屋の隅っこで縮こまっているハヤトにビデオを返してやってくれ。後生だから……」 続く・・・ link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。このページにつけられたタグ ガンダム一家 ギム・ギンガナム フットボール狂騒曲 長編
https://w.atwiki.jp/mekameka/pages/888.html
ポパイの英語遊び / Popeye no Eigo Asobi 任天堂 1983年11月22日 FC アメコミ『ポパイ』を題材にした英語学習ソフト ゲームポパイのステージをモチーフに出題された英語の単語を完成させる