約 3,257,930 件
https://w.atwiki.jp/moemoequn/pages/27.html
ジャジャ、ジャジャ、ジャーン♪ 唯「はあ~ 疲れたぁ」ドサッ 律「お疲れー」フウッ 紬「みんなお疲れ様~」ニコッ 梓「ピッタシ合ってましたしいい感じですね、最近!」ビシッ 澪「いい汗かいたなー」フキフキ 唯「それじゃあ帰ろっか~」 律「いよ~し、昇降口まで競争だっ!続け唯隊員!」ダッ 唯「ラジャー!」ビシッ 律「あ、一番最後のやつ、鞄持ちなー」ダッダッ 梓「あ、ズルいですよ先輩!やってやるです!」ダダッ 澪「あっ!おい!」 紬「澪ちゃん、ちょっといいかしら?」 澪「ん?なんだムギ」 紬「その… りっちゃんの事なんだけど」 澪「律がどうかしたのか?」 紬「その… 澪ちゃんはりっちゃんの事好きなのよね?」 澪「ばっ!何言ってるんだムギ!」カアッ 澪「別に好きって言うか、腐れ縁みたいなもんだよ!」アセッ 紬「…」 澪「どうして急にそんな事聞くんだ?」 紬「それは…」 澪「ムギらしくないな ビシっと言ってくれ」 紬「…」 紬「…ごめんなさい、何でもないわ」 澪「んー?そうか(どうしたんだ?)」 紬「あっ!最後の人は鞄持ちよね!急がなきゃ~」ダダッ 澪「あ、ちょっと待てって」ダッ 律「ううー おーもーいー」ズシッ 唯「あははっ りっちゃん、カッコつけて階段からジャンプするからだよ~」テクテク 律「まさか派手にすっ転ぶとはなー 不覚っ!」トボトボ 澪「遅れてきた私とムギより遅いってどういうことだよ」ハハッ 律「ちくしょー」 紬「…」テクテク 澪「ムギ、さっきからどうしたんだ?」 紬「え?あ…何でもないわ あら、じゃあ私はここで」アセッ 唯「むぎちゃんばいば~い」 律「ムギ、じゃーなっ!」 梓「さよならです」 紬「バイバ~イ」 澪「ああ… じゃっ」 澪「じゃあ私たちもここで また明日」 律「じゃーなー」 唯「じゃあね~」 梓「さよならー」 テクテク 澪「なあ、律」 律「んあー?」 澪「今日のムギ、なにかおかしくなかったか?」 律「そーかー?特に何も感じなかったけど」 澪「お前が鈍感なんじゃないか?」 律「ひどーい!まあとにかく私は知らないよ」 澪「そうか…」 テクテク 律「…澪、あのさっ」 澪「ん?何だ?」 律「いやあー… ごめん!やっぱなんでもない!」 澪「はあ?もったいぶらずに話せよ!」 律「ほんと何でもないんだって!そんじゃ家着いたから、また明日なっ」ダダッ 澪「おい、気になるじゃないか」 律「だから何でもないって じゃっ!」 澪「ん… じゃあな」 ガッチャン 澪(… ムギだけでなく律まで… 一体私に何隠してるんだよ…)テクテク 澪「はぁっ」ガチャッ 澪「ただいまー」 澪「何だかなー」ボフッ 澪「2人揃って何なんだよ…」ゴロゴロ 澪「律も隠し事しやがって… 私たち幼馴染じゃないのかよ!」ゴロゴロ 澪「隠し事とかせずに話し合える仲だと思ってたのに…」ゴロ タッタッタッタッタッタッタ コンコン 澪ママ「みおー 夕飯よ」 澪「ごめん 食欲無いからいらない」 澪ママ「そう 具合悪いなら早く寝なさいよ」 澪「うん、わかってるよ わかってる…」 タッタッタッタッタッタッタ 澪「…」ゴロゴロ 澪「…」ゴロ 澪「スースー」zzz zzz チュンッ チュンッ 澪「んぁ…」モゾ 澪(昨日あのまま寝ちゃったのか…) 澪「よいしょっと」ムクッ 澪(なんか寝起きの最悪だな… 昨日の事が気になってしょうがない) 澪(はぁ… まあ仕方ない、昨日入ってないしシャワー浴びてくるか) ガチャッ シャ─── 澪「おはよー、ママ」 澪ママ「あらおはよう 具合はもう大丈夫なの?」カチャカチャ 澪「うん、もう大丈夫」 澪ママ「なんて言ってるわりには顔色よくないわよ」 澪「ちょっと昨日変に寝ちゃっただけ 大丈夫」 澪ママ「そう… はい、朝食」コトッ 澪「いただきまーす」パクッ 澪「それじゃ、いってきます」 澪ママ「いってらっしゃい」 ガッチャン 澪(ちょっと気まずいけど律起こしに行くか…)テクテク ピンポーン ガチャッ 澪「おはようございます」 律ママ「あら?澪ちゃんおはよう」 澪「律は起きてますか?」 律ママ「それが『今日は朝練があるから早く行く』って… 律から聞いてないかしら?」 澪「いえ… 特に何も」 律ママ「あの子ったら澪ちゃんに無断で!帰ってきたら叱っとくわね」プンプン 澪「あ、もしかしたら私が聞き逃していただけかもしれませんし」 律ママ「そーお?」 澪「はい それじゃ」 律ママ「いってらっしゃーい」 澪「いってきます」 澪(何なんだよ律のやつ…)テクテク 澪(隠し事はするわ私に何も言わずに先言っちゃうわ)テクテク 澪(私何かしたか?そりゃいつも殴ってはいるけど…)テクテク 澪(そんな事で崩れるような私たちの関係じゃ無いよな、律?)テクテク 澪(一体どうしたんだよ律… 何で私を避けるんだよ…)テクテク 澪(…)テクテク ドガッ! 澪「あいてっ!」 澪「あ~!律はおかしいしムギも何か隠してるし電柱にはぶつかるしむしゃくしゃするーっ!」ヒリヒリ テクテク ガラガラッ 和「あら澪、おはよう」 澪「ああ、おはよう」 澪「…」キョロキョロ 澪「!」ハッ タッタッタ 澪「律!どういう事だ?」バンッ 律「っ!」ビクッ 2
https://w.atwiki.jp/kai_saki/pages/151.html
とある休日 淡「……」テクテク 淡(……あーあ。もうすぐ定期試験かぁ……)ハァ 淡(こうして散歩で気を紛らわせてみてるものの……) 淡(なんかもう暇すぎてどっかの学校に乗り込みたい。道場破りみたいな感じで) 淡(……) 淡(……なんかドカーンと燃えるよーなこと起きないかなー) 淡(―――あれ?)ピタッ 淡(……あの上下黒服、どっかで見たよーな……)オソルオソル 傀「……」 コツ…コツ… 淡(あ、この前の性悪メチャ強お兄さんじゃん!!) 淡(こんな所で……てゆーか休日に何やってんだろ?) 淡(……) 淡(……よし、尾けよう)ニヤッ ―――――――――――――――――――――――― 淡(……ここに入ってったみたいだね)チラッ 雀荘『Around Fourty』 淡(ここって確か最近できたノーレート雀荘だったっけ) 淡(……よーし) 淡(こんなに早く再戦のチャンスが来るとはね!待っててよー傀さん!)ダッ カランカラーン 店長「あ。いらっしゃーい」 淡(えーっと……あの性悪お兄さんは……)キョロキョロ 傀「……」カチリ… 淡(……いたいた。待ち席には私とお兄さんだけだし同卓できそうだね!) 淡(それにしてもノーレートの雀荘にも来るんだ。どこに住んでるのかな?) 店長「んー……お嬢ちゃんどっかで見た事あるような……」 淡「あ、いや、気のせいですよ!あはは!」 店長「そうかなぁ……? じゃ、待ち席のお二人様こちらにどうぞ」 淡「よろしくでーす」 傀「……」 おっさん「……おぉ、随分若ぇ二人だな」 リーマン「あれ? 金髪のお嬢ちゃんもしかして―――」 淡「き、気のせいです!」 リーマン「そ、そう……か?」 淡(……白糸台ってバレたら色々と面倒な事になりそうだし黙ってよっと) 東、おっさん 南、傀 西、リーマン 北、淡 淡(よーし!この前のリベンジしてやる!)ゴッ 東一局、ドラは5p。 ガラガラガラ… 傀「……」 店長(……そういやこの黒服兄さん、開店してからちょくちょく来るな) 店長(一着は殆ど取らないけどラスも引かない。いつも時間潰しに打ってる気すらするけど……) 傀「……」チャッ 1p2p4p9pニ六九37東南西西 店長(うわっ!初っ端からなんて配牌だよ……何向聴だこれ?) おっさん(げっ。親番でこの配牌か……) 發白白1269一四七1p赤5p7p 南 リーマン(なんつーつまらん配牌だよ……) 2p6p9pニ五七九147東北中 店長(他の二人もボロボロだな。ていうかそれよりも……)チラッ 淡(……)ニヤリ 店長(多分この娘、白糸台の大将だよなぁ……?) 九巡目 傀「……」チャッ 2p4pニ四六八357東東西西 6 店長(3索切りでやっとこニ向聴。間に合うか……?) 傀「……」トン… ――打、3索。 淡「……ツモ!」 六六七八八6p6p7p7p8p8p88 七 淡「2000,4000!」 店長(ラス七萬引きか。強いなこの娘……) おっさん「開幕から親っ被りだ。ツイてねーなぁ」チャラ おっさん・・・21000(-4000) 傀・・・23000(-2000) リーマン・・・23000(-2000) 淡・・・33000(+8000) 傀「……」 淡(微動だにせずかぁ。ま、まぁ別にこんなの準備運動にもならないもんね!) ガラガラガラ… 東ニ局、ドラは發。 傀「……」 3p8pニ九12679東南南西 赤五 店長(親番なのにこの配牌……しかも染められなさそうだし赤牌も使いにくそうな手だ) 傀「……」 ――打、ニ萬。 店長(それでも一応は索子の混一を狙いつつ……か。しかし配牌五向聴じゃ何もできないな) 淡「……」チラチラッ 傀「……」 淡(さっきからこっちを見もしないけど私のこと覚えてるよね? 忘れてないよね?) 八巡目。 傀「……」スッ 赤五七九124679東南南中 八 ――打、9索。 店長(やっぱり染め手は無理か。調子悪い時に限ってこういう嵌張が無駄に埋まっちゃうんだよな) リーマン(あーくそ、全然入んねぇぞ……)タンッ 淡「ロン。12000点」 1p2p3p4p赤5p6p7p8p9p白白中中 リーマン「マ、マジかよ!」 おっさん・・・21000 傀・・・23000 リーマン・・・11000(-12000) 淡・・・45000(+12000) 傀「……」 赤五七八九12467東南南中 パタ… 店長(この兄さんが中で振り込んでてもおかしくなかった。危なかったな……)チラッ 淡(ふふん!今日は最初から飛ばすもんね!) 店長(……ていうかやっぱりこの娘、間違いなく白糸台の大星淡だよな) 東三局、ドラは5索。 リーマン「……」タンッ 淡「♪」タンッ おっさん「……」タンッ 傀「……」タンッ 店長(うわっ……相変わらず大星さん以外の三人の配牌が異常に悪いな。これで三局連続か) 店長(ひいふうみい……えっと、また五向聴? 寧ろここまで悪いのは逆に珍しいぞ) 店長(これは本当に『運が悪い』ってだけなのか? もっと別の、何かの力が働いてるような気すらするけど……) 七巡目。 おっさん(さっきから全然入んねーなぁ)タンッ 淡「ロン。満貫です!」 2p3p4p6p7p三四五55678 おっさん「げっ」 リーマン「は、早ぇな嬢ちゃん!」 傀「……」 22344899中中白白8p ぱたっ… 店長(この兄さんはしっかり止めてる。いつもこうなんだよな、この人) 店長(放銃は殆ど無し、大勝ちも大崩れもしない。でも決して下手じゃあない) 店長(……一体なんの為に打ってるのかな?) おっさん「んじゃ東ラスだな」 リーマン「取り返さねーとな」 ガラガラガラ… 傀「……」 淡(いつまでその余裕が持つかな? 早く本気出した方が良いんじゃないのお兄さん!) ―――――――――――――――――――――――― 南四局オーラス。 淡「――ツモ!6000オール!」 おっさん「またお嬢ちゃんかよ!」 リーマン「強いなぁ君!」 淡(とーぜんでしょ!なんたって高校1000年生だもんね!)フフン おっさん・・・2000(-6000) 傀・・・11000(-6000) リーマン・・・4000(-6000) 淡・・・83000(+18000) 一回戦終了。 淡(……でも)チラッ 傀「……」チボッ… 淡(ツモ和了ばっかで結局このお兄さんからは直撃取れなかったんだよねー) 淡(ぜんっぜん表情変わらないし、睨んでも相変わらず無反応でこっち見もしないし) 淡(……ホントに無愛想だよね。まぁ分かってたけどさ!)フンッ 二回戦開始。 東、淡 南、リーマン 西、傀 北、おっさん 淡(前は負けたけど今回こそ絶対ぎゃふんと言わせてやるもんね!) 東一局、ドラはニ萬。 淡(起家だしどんどこアガリまくって東発で終わらせちゃお!)ゴッ 傀「……」 一四五五九2p5p8p29北白發 白 店長(二回戦に入っても相変わらず三人の配牌はボロボロだな……) 傀「……」ニヤリ 淡(むっ) 店長(わ、笑った……?) 傀「……」 すっ… ――打、四萬。 店長(えっ、四萬? 唯一の両面塔子を払うの!?) リーマン「ん?」 おっさん「けったいな切り出しだなぁ兄ちゃん」 淡(ようやくこっち見たと思ったらまたそうやって……)ムカッ 傀「……」 淡(……いいよ、受けて立つよ。まだまだ勝負はこれからだもんねっ!)
https://w.atwiki.jp/walkpedia/pages/68.html
茶柱が立つまでお茶をたて続ける耐久企画。 百人一首や大喜利、川柳当てなどのゲームを行い、ゲームの勝者がお茶を頂く(=茶柱を立てる挑戦権を獲得する) 急須でお茶を入れ、誰よりも早く、茶柱を立てることができた人が勝利となる個人戦であった。 当初の見込みより茶柱が立ったため、途中から多く茶柱をたてた人が勝利することとなった。 12時から5時間以上茶を立て続け、全部で10本以上の茶柱が立った。 耐久戦の中、3本の茶柱を立てた猛者が優勝した。 2013年1月に実施。
https://w.atwiki.jp/hattan/pages/112.html
いつか会う 信じるための 赤い糸 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kairakunoza/pages/2180.html
「あ…」 手が触れた。 それは真新しい布の箱だった。 押入の深くに、光もホコリもかぶる事なく、そこにあった。 その模様が目に飛び込んだ矢先、頬は自然と緩み、次には目が熱くなる予兆を感じた。 私は一呼吸おいて、それに手をかけた。 フタカタ ~ Lucky Star 休日の昼間。 折角の休日を有効活用する気はなく、学生時代のような付き合いもない私は、 24時間が退屈となったその日を、およそ3年ぶりの大掃除に費やす事にした。 家は途方もなく広い。 しかし、今となってはその半分が物置部屋みたいなものだ。 私が大学に進学してから、姉達は一年も経たずに家を離れた。 私の半身であるつかさも、大学進学と同時に家を出た。 今は私と両親しかここには住んでいない。 あれほど賑やかで、時折騒がしいと感じたこの家も、今では見違えるほどにおとなしくなった。 箱は、ずっしりとした重量感に満ちていた。 押入から出そうとすると、手が震えてしまうほどに、 それは私の心にもずっしりとのしかかっていた。 光の元に出すと、かぶっていたホコリが日光に照らし出されうっすらと宙を舞った。 蓋に手をかける。 それた指先から、胸に痛みが伝わり、それが全身にじわじわと広がっていくのがわかる。 また、泣きそうになる。 「ほおら、お姉ちゃん起きて」 「ん、え…」 「えへ、今日は私の方が早起きだね」 「ん……毎日そうだと私も楽なんだけどなぁ」 「それは無理だよぉ、明日はお姉ちゃんが起こしてね」 私達は何をするにも一緒だった。 特に小学校にあがってからは、私とつかさが別々に暮らした日は数える程しかない。 周りに性格は似てないと言われるけど、もっと本質的に、私達はちゃっかり双子なのだ。 一緒に遊んで、一緒に勉強して、一緒に寝て。 彩りのある小学校生活を終えて、思春期を抱えた中学校生活が過ぎて、 その中でも、私達は一度も離れようとはしなかった。 つかさが私を求めて、私もつかさの事を強く求めていて、 それに気付いたのは随分後の事だけど。 きっとこれから先も、私達はずっと双子で、ずっと同じ生活の中で暮らして行くのだと、そう信じていた。 「つかさー来たわよー」 「わーい、お姉ちゃんだ~」 「お?噂のお姉さまのご登場ですね?」 「ん、友達出来たんだ、私姉のかがみ、ってもう知ってるみたいね」 「私泉こなた、こなたでいいよーかがみん」 高校生になってから、私達の生活は大きく変わった。 恐らく生涯忘れる事のないであろう私の親友達のおかげだ。 そいつらは二人だけだった生活に、私がどれだけ虚勢を張っても、躊躇無く土足で上がり込んできた。 でも、それは感謝すべき事だ。 私達の高校生活は人生の中で最高に輝いていて、きっとこれから先何があっても、 その時の事を思い出せば乗り切れてしまうような。 私にとってかけがえのない思い出だった。 かけがえのない親友達だった。 どこまでも破天荒な泉こなたを中心に、色々と厄介ごとに巻き込まれる私達は、 そんな中でもやっぱり双子をしていて。 それでも、つかさが少しずつ姉離れをして行こうと努力をしていたのを、私は知っている。 私はそれがとても嬉しくもあり、とても悲しくもあった。 つかさが目標にしているのは私だったから、姉として、一人の人間として、何よりも誇れる事だと思った。 でも、心のどこかでは、やはりいつまでもつかさに甘えて欲しいと、そう願っている自分がいた。 今思えば、甘えていたのは私の方だったのだろう。 「えへへ、明日こなちゃんとプール行くんだ~」 「ふーん…怪我しないようにしなさいよ」 「うん~えへ、今夜寝れるかなぁ~えへへへ」 二人の会話には泉こなたの話題が増えていた。 つかさがこなたの事を気に入っているのは、誰から見てもすぐにわかるほどで、 姉の私は、それがただの友情でない事くらい、すぐにわかっていた。 つかさの部屋には、私ではなくこなたの思い出が飾られるようになった。 つかさの隣には、私ではなくこなたの居場所が用意されるようになった。 それでもやはり私達は双子で、もう片方の手には私の居場所があった。 それがとても嬉しくて、そして自分が情けなかった。 私は姉として、つかさの背を押してやろうと思った。 そしてそれを最後に、私も妹離れをしようと、そのケジメの為にも、そう誓った。 3年目の高校生活。 桜のつぼみはその桜前線の歩みを見せて、 吹き抜ける風にはほのかに春の香りが漂い始めた、そんな春の初めに。 つかさとこなたは交際を始めた。 あの時の事は今でも鮮明に思い出せる。 雪が降る夜、電車が止まった夜に、二人は何時間もかけて、やっと出会えたという。 どこまでも非現実で、漫画的な展開は、きっと二人に用意されたものなんだなと、そう思い。 そして私はもう、役目を終えたのだなと、どこまでも現実的な事実に、強く思い知らされた。 それからのつかさは見違える程に自立していった。 恋というものはここまで人を変えてしまうものなのか。 体験した事のない私には未知の領域だった。 つかさの生活から、私の居場所が消えていく。 とても自然な事なのに、喜ばしい事なのに、ただ悲しかった。 つかさが姉離れをする度に、私の生活は色彩を失ったように、 今までどこの高校生よりも充実した生活を送っていたと自信を持っていたそれが、 本当にありふれた、つまらない物に変わっていった。 せめてもの救いは、つかさの寝坊癖が治らなかった事だ。 朝、つかさを起こす時だけが、私の唯一の救いになっていた。 それからは、驚くくらいにあっという間で。 気付けば私達は大学生になっていた。 みゆきは東京の大学に、つかさとこなたもそれぞれ別の専門学校へ進学した。 私も無事大学生になれたけど、4人グループは見事にばらばらの学校で、 私達はたまに会う程度の付き合いになっていた。 つかさは、進学と共に家を出た。 一人暮らしではなく、こなたとの二人暮らしだ。 小さなアパートの一室で、アルバイトをしながら暮らすと言っていた。 物わかりの良すぎる両親は止める事もなく、むしろ二人なら安心だ、と。 あっさりと承諾し、つかさは晴れて愛する者の元へと巣立ったのだ。 つかさが家を出てから、私の生活に変化などなかった。 元々姉離れが進んでいて、双子らしい付き合いも減っていたから、今更という感想だった。 大学での勉学は充実していて、私はそこに何かを求めるように、意味を求めるように、 ひたすらに、がむしゃらに勉強をして。 資格を取る事に夢中になって。 そして目指していた職種の企業からの内定をもらう頃には、私は気の抜けた炭酸のように、 つまらない人間になっていた。 親友とのたまの交流も、忙しい日々の中で減っていき、 私はすっかり一人になっていた。 気付くのが、遅かったと思う。 私は、こんなにも、つかさを求めていたんだ。 真剣で、切実で、呆れるくらい女々しく。 私はつかさを求めていた。 聞き飽きた目覚まし時計。 たまに早起きした時のつかさが作った朝食。 通学路で後ろを付いてくる足音。 忘れ物をしたと教室に飛び込んでくる泣き顔。 お昼休みに私を迎えてくれる笑顔。 放課後に私を待っている時の仕草。 私を待たせまいと支度を急ぐ姿。 寄り道のコンビニでアイスを迷う真剣な顔。 勉強を教えて貰う時の申し訳なさそうな顔も。 全てが私には足りなくて、その全てを私は求めていて。 私の生活にはそれらが欠けていたと気付いた時には。 朝の家で。 通学路で。 バスから見える景色で。 車窓から見えるビルの窓で。 生活の至るところで、いるはずのないつかさの姿を探していた。 箱にかけた手を、そっと離す。 痛いくらい力を込めたら、こみ上げる涙は我慢出来そうな気がした。 今でもつかさの事は好きだ。姉として、家族として。 会いたくないなんて、嘘でも思いたくない。 それくらい私の想いは強い。 これは後かたづけなんだ。 そう言い返せる。 次は私が妹離れをする番。 あの高校生活で、つかさが何年も苦労してやっと出来た姉離れを。 今度は私が、妹離れをしなきゃいけないんだ。 それが、私達双子の最後の後かたづけ。 姉として、つかさにしてあげられる最後の愛情だ。 私は、その箱を、つかさが残していった思い出達を、押入深くにそっとしまった。 フタカタ ~ Lucky Star おわり コメントフォーム 名前 コメント 目から変な汁が… -- 名無しさん (2008-06-30 19 54 21) 涙が…… -- 名無しさん (2008-06-30 19 30 42)
https://w.atwiki.jp/83452/pages/6084.html
スタスタ ピタッ 澪(律の家の前まで来た ボタンを押せ、私) ピンポーン ガチャッ 律ママ「はいー」 澪「秋山です」 律ママ「あ、ちょっと待ってね 律ー!澪ちゃんが迎えに来たぞ!早くしろぃ」 ガチャッ 澪「はは」 澪(ううぅ)ドキドキ ダッダッダッダ ガッチャン 律「いってきまーす!」ドタバタ 律ママ「いってらっしゃい」ヤレヤレ 律「お!みーお!おはよーっす!」ビシッ 澪「あ、ああ… おはよう」 律「週のはじめだってのに元気ないぞー!」 律「って昨日また体調崩してたんだっけか、ごめんごめん」 澪「もう大丈夫だからさ…はは」 律「そうかー?まだちょっと辛そうに見えるけど?」 澪「っ!」ドキッ 澪(やっ、やっぱり態度に出ちゃってるのか!?) 律「まあ病み上がりにゃきついかもしれないけど急ごうぜ?このままじゃ遅刻しちまう」ダッ 澪「遅くなった原因はお前だろ」ダッ ダッダッ タッタッ ピタ 律「ほら、やっぱり元気ないじゃんかー」 澪「何言って… 私はこの通り元気だぞー」タッタッタ 律「やっぱりなんか変だよ澪 遅刻してもいいからゆっくり行こうぜ」 澪「だ、大丈夫だって 急ごう」タッ 律(おかしいよな、絶対 なんでそんな頑なに突っ張ってるんだよ澪)ダッダッ 澪(無理だ無理だ無理だ 私にはできないっ!)タッタッ 澪(律は私に比べて元気だな 彼氏と映画デート行ったんだもんな) 澪(そりゃ元気もみなぎるってもん…) 澪(ハッ!また私は… 何なんだよ私はぁっ!!!) ダッダッダッダッ ガラガラッ 律「セーッフ!!」ズザー 澪「間に合った」ハアハア 唯「まるで私みたいだね~」 律「なにぃっ!唯隊員に負けただとっ!」 唯「へっへ~ん!残念だったな、りっちゃん隊員!私は新・スーパーパワフル唯に生まれ変わったのだよ!」エッヘン 律「なんじゃそりゃ」 和「唯が今日早かったのは私が借りてたCD返すついでに一緒に来たからでしょ」 唯「えへへ~ まあそうとも言う~」 律「そのまんまだろっ!」ビシッ 唯「とにかく!今日は私の勝ちだよりっちゃん!」 律「勝ちって何の勝ち負けだっつの」 紬「私も遅刻してみたくなったわ~」 律「おいおい紬さん」 スタスタ 和「あら澪、おはよう」 澪「お、おはよう…」 紬「澪ちゃん、おはよ~」 澪「おはよぅ…」 紬「!(あれ?また元気ない?)」 紬「どうしたのかしら…」オロ カツカツカツカツ 紬「み…」 和「あら、そろそろ先生くる時間よ 澪、教室に戻りましょう」 澪「そうだな」 ガラガラッ タッタッタッタ カラカラッ 律「もうそんな時間か 今日はギリギリだったからなー」 ガラガラッ 起立!礼!着席! 紬(タイミング逃しちゃった~)ションボリ キーンコーンカーンコーン 律「飯だー!」 唯「ご飯だー!!」 紬「昼食だ~!!!」 律「お前直前まで寝てたのにお昼になった途端これかよー」 唯「ご飯は元気の源ですよ、りっちゃん!」フンス 紬「さあ、食べましょ~ そういえば澪ちゃんと和ちゃんは?」 律「さっきメールで、自分のクラスで食べるってさ」 紬「そう…」 紬(となると話せるのは放課後になっちゃうわね) キーンコーンカーンコーン 唯「授業終わったー!」ガバッ 律「うおっ チャイム鳴った途端に起きたな」 唯「へへ~、まあね~」テレテレ 律「褒めてねーよっ!よく放課後も寝っぱなしの時あるのにな」 唯「いやあ、土日挟んだからはやくみんなで合わせたくて」 律「おお~、言ってくれますなあ~」ホレホレ 律(やっぱこうやってた方が今の私には合ってるんだろうな!) 紬「…(澪ちゃんどうしたのかしら)」 律「ん?どしたのムギ 行かないのか?」 紬「待って!行く行くー」タッ タッタッタッタッタッタ ギイー ガッチャン 梓「あっ、先輩方」 唯「あずにゃ~ん」ピョーン ダキッ 梓「ちょ、唯先輩!話してください!」モゾモゾ 唯「えへへ~」スリスリ 律「唯は相変わらずだなー」 紬(澪ちゃんまだ来てない…)キョロキョロ ガチャッ 紬「!」バッ 澪「お、おっす」 紬「おっす!」ビシッ 律「おーっす!!」 唯「澪ちゃんきた~」 梓「澪先輩も来て全員揃ったわけですし、早く練習始めましょうよ!」 唯「その前にお茶だよ~」 律「オイオイ、みんなで合わせたいとか言ってたのはどこの誰ですかー?」 唯「ティータイムは元気の源ですよ、りっちゃん!」フンス 律「ハイハイ でも私もお茶にはさんせーい!ムギよろしくー」 紬「がってん!」 梓「もう先輩~!」チラ 澪「…」 梓「澪先輩?」 澪「えっ、なっ何だ?」アセッ 梓「何時もみたいに練習が先だーって言わないんですか?」 澪「あっ、いや、たまにはいいんじゃないかな」 梓「そんな~、澪先輩まで~」ダバー 紬(澪ちゃんやっぱり様子がおかしいわ) カチャカチャ 紬「は~い できました~」 コトッ コトッ コトッ コトッ コトッ 唯「ありがとうムギちゃん!」 律「サンキュー!」 梓「し、仕方無いですね!ありがとうございます!」パアッ 澪「ん、ありがとう」 律「なんだなんだ梓ー お前めちゃくちゃ嬉しそうじゃんかよー」 梓「そっそりゃっ ムギ先輩の淹れてくれたティーとお菓子はおいしいですから!」 唯「元気の源だよね~ 1日がんばろう!って思えるよ~」 律「もう今日もあとちょっとで終わりだけどな」 紬「えへへへ~ おいしいって言ってもらえてうれしいわ~」 澪(…)ボーッ 紬(澪ちゃん?)チラッ 唯「あ!そういえばさ~りっちゃんさ」 律「あー?何だー?」 唯「彼とはどうなったの~?」 律「ブーッ!」 澪「っ!!」ドキンッ 梓「そうですよ!気になります!!」グイグイッ 唯「あずにゃん、食いつきすぎだよ…」 唯「でさ、彼とはどうなったの~?」 梓「彼氏と何か進展はありましたか?」キラキラ 律「いやー、そのー はっ、早く練習始めようぜ!」アセッ 澪「…」プルプル 紬(彼氏の話が出てから澪ちゃんの様子が明らかにおかしいわ!) 紬(やっぱり澪ちゃん… まだ引きずって!?) 梓「あー!今律先輩誤魔化しましたね?何かあったんですか!?何かあったんですね!!」キラキラッ 唯「何?りっちゃんどうしたの~?もしかして私たちとは遠くかけ離れた所まで!?」 律「や、やめろってば」 澪「…」プルプルプル 紬(ゆ、唯ちゃん!梓ちゃん!)ハラハラ 唯「うわ~んあずにゃ~ん!りっちゃんが私たちを置いて何処か行っちゃうよお!!」ダキッ 梓「律先輩!どうなんですか!?」フンスッ 律「いい加減にしろって!」 バンッ!!! ※澪 唯「えっ?」ビクッ 梓「きゃっ!」ビクビクッ 律「ふぇっ!?」バッ 紬(澪ちゃん!!)アウアウ 澪「あ… あ…」 唯「み、澪ちゃん?」 梓「澪先輩どうかしたんですか?」 律「み、澪しゃん?」 紬「澪ちゃん(彼の話で爆発しちゃったの?)」オロオロ 澪「なっ、何だよさっきから彼氏彼氏って!」 律「だっ、だからそれは!(別れた、しかも私が振ったなんて言いづらいだろうが)」 澪「何がだよ!なんで隠したんだよ!そんなに私に知られるのが嫌なのかよ!!」グスッ 律「は!?何の事だよ?(何だ?澪は何を言ってるんだ)」 唯「あわわ」 梓「み、澪先輩?」 紬「み、澪ちゃん!!」 澪「私にはっ!野暮用だなんて言ってさ!私はふーん程度にしか思ってなかったのに!!」グスッ 澪(ダメだ!) 律「ななっ!」 澪「お前はそれなのにっ、彼氏と2人で映画館に映画観に行ってさ!」グジュッ 澪(止まれ、止まれ、止まれ、止まれ!!) 澪「また私に隠し事してっ!2人で仲良く楽しそうに!!」ググッ 澪(別に律が悪いわけじゃない デートなんて誰だって付き合ったらするしわざわざ人に自慢するもんでもない) 澪「私にそんなに知られたくなかったのかよ!秘密にしたいのかよ!!」グスウッ 澪(いってる事がおかしい!間違ってるのは私なんだよ!!) 律「み、澪 もしかしてあの途中で出て行ったのは── まさか──」 澪「そうだよっ!私もあの映画館に行ってたんだ!!そしたらお前が来たんだ、私に内緒で彼氏と!!」 律「ち、違うんだよ澪!あれは、お前に隠してたのは」 澪「知らないっ!馬鹿馬鹿!!馬鹿律!!!」ズダッ バタンッ ダッダッダッダッダッ 律「澪っ!!」 紬「澪ちゃんっ!!」ダッ 紬「…!」キッ 紬「りっちゃん、どういう事なの?説明して!」 唯「はわわ」 梓「 」ポカーン 紬「とにかく!すぐ澪ちゃんを追わなきゃいけないから手短に!」 律「あ、ああ 土曜日に澪から連絡があったんだよ、出掛けないかって」 唯「それ私も来たよ、両親が帰ってきたから行けなかったけど…」 梓「私も来ました!私も家族で予定があったので断りましたが…」 紬「私も来たわ…」 律「でさ、まさかこれから別れる予定の彼氏とデート行くなんて言えないだろ?」 律「だから野暮用って濁しちゃったんだよ それが結果的にこんな事になっちまうだなんて」 紬(つまり 私が澪ちゃんの誘いを断ってなければ!!一緒に行けてたならまだ違ったかもしれないのに!!)バンッ 唯「ム、ムギちゃんまで」ドキドキ 律「っ!ホントに悪かったと思ってるよ 私があんな事言わず素直に打ち明けてたら」 律「そうだよ、彼氏と別れるなんて重大な話、まず初めに澪に相談するべきだったんだ!」 梓「律先輩…」 紬「そうね、でも怒りを覚えてるのはりっちゃんにじゃないの 私自身よ」 紬「私が断らなければ、一緒に行けてたら!!」 唯「ムギちゃんのせいじゃないよ…」 紬「澪ちゃんを追うわ!」ダッ ダッダッ ピタ クル 紬「? りっちゃんもはやくっ!」 律「ムギ」 紬「何、りっちゃん!?」 律「私はさ、こんなだし、ガサツだし、大雑把で、適当でさ」 律「澪の事、何も気づいてやれなかった」 律「数日前からおかしいなとは気がついてたんだけどな…」 律「それが全部私のせいだったんだ ホント親友失格だよな」ハハハ 紬「りっちゃん…」 律「ムギ、今の私が行ってもダメだ 私なんかに追いかける資格なんて無い」ギリッ 律「だからさ…」 律「澪を頼む!!」 紬「っ!!がってん!!」スタッ バタンッ タッタッタッタッタッ 唯「わ、私たちも行こう、あずにゃん!」タッ 梓「は、はい!」タタッ バタンッ タッタッタッタッタッ 律「…」 タッタッタッタッ 唯「はあ、はあ ムギちゃん速いよ」ゼーハー 梓「みっ、見失っちゃいましたね」ハアッハアッ 唯「澪ちゃんっ 一体何処に行ったのぉ?」 梓「とにかく校内を手当たりしだい探してみましょう!」 唯「う、うん!」 タッタッタッタッ スタタタタタッ 紬(私は澪ちゃんの力になるって決めた) 紬(それなのにこんな事になってしまったわ!) 紬(これは私の責任でもある!!) 紬(澪ちゃん、何処へ行ったの!?) スタタタタタッ ガラガラッ 紬「澪ちゃんの教室、にはいない」 ガラッ ピシャッ タッタッタ ガラガラッ 紬「私たちの教室、にもいない」 ガラッ ピシャッ 紬(となるとやっぱり…)タタタッ スタタタタタッ 紬(あと残されてるのは!そう、私たちの思い出の1ページ!) 紬(講堂よっ!!)グッ バターン! 紬(はあ、はあ) コッ コッ コッ コッ 紬「澪ちゃん」 コッ コッ コッ コッ 紬「私よ 今回の件ね、りっちゃんに悪気があったわけじゃないの」 コッ コッ コッ コッ 紬「ねえ澪ちゃん、顔を上げて?」 コッ 澪「う゛っ うぐっ む、むぎいいぃぃ!」バッ ダキッ 8
https://w.atwiki.jp/bamboo-couple/pages/605.html
「はぁ」 何処の誰だろうか、始めに幸せが逃げるなんて言ったのは。大体、吐くと逃げるのではなく、逃げるから吐くのでは ないか。そう思わずにはいられなかった。 風が桜の花びらを運ぶ。木々はピンクの衣を脱ぎ、黄緑の羽衣を身に纏い始める。陽光は明るく地を照らし、道行く 人々の顔を煌びやかに映し出す。薄く澄んだ青空は、新たなる旅立ちの日に相応しい。 皆が希望に満ちた笑顔で家路を急いでる中でただ一人、川添珠姫だけが沈痛な面持ちでトボトボと歩いていた。 「……なんでなんだろう」 溜息と共に自然にぼやきが口を吐いて出る。それと共により深く、より暗く気分は沈んでしまう。 こんな筈ではなかった。今朝、学校に着くまでは他の人と同じ様にこの先の新しい生活に希望を抱いていた。 それが何故、今はこんなに沈んでしまっているのか。その原因は数時間前に遡る。 「あ、タマちゃん。おはよう」 登校途中、背後から話しかけられる。その声は彼女のよく知る人物のものであった。 「……おはよう、ユージくん」 振り返ると彼女が思い描いた通りの人物が此方に歩み寄って来る。彼が傍に来たのを見計らい、再び歩みを進めよう としたが、何故か彼は棒立ちしたまま動かなかった。 「どうしたの?」 呆気に取られた彼の眼は珠姫を見ている、もっと言うなら彼女の服だ。 なにか可笑しい所でもあるのかと珠姫は不安になってしまう。この服を外で着るのは初めてで、家で試しに着た時も 何処か違和感があった。 「……何か変かな?」 「全然そんな事ないよ」 つい口に出てしまった不安。だが、彼の言葉はそれを拭い去ってくれた。 「おかしくないし、むしろ似合っているよ」 そう言う彼の言葉には軽薄さは無く。真摯に、心の底からそう思っていると珠姫は感じ取った。それは彼女の心に染 み渡り、温かくさせる。 「……そう」 嬉しい。嬉しいのに発すべき言葉が見つからず、つい素っ気無い返事になってしまう。それが悔しくて悲しくて、俯 いてしまった。 「それに変って言うなら、俺の方だよ」 襟の止め具を弄り、自重気味に言う。それは珠姫が感じた違和感と同等のものであろう。はじめての事に対する奇妙 な感覚を彼もまた覚えたのだ。 「そんな事ない。ユージくんもすごく似合ってる」 だがそれも本人が感じるに過ぎず、他者もそう感じるとは限らない。 真っ直ぐに彼の目を見て、そう豪語する珠姫。その強い光を宿した瞳に圧倒された彼は軽く笑いながら頬を掻くばか りであった。 「……えっと……じゃあ行こうか。時間もないし」 「うん」 首肯し、彼と共に歩みを進める。新たな生活へ、新たな学校へと。 じっと見詰めるその先には巨大なパネルが何枚も設置されている。そのパネルには模造紙が貼られ、幾多の名前が羅 列している。所謂、クラス割り名簿である。珠姫はその羅列の中から目的の字列を探し出そうとするが、何度見返して もそれは見つからなかった。 「……クラス、別れちゃったね」 そう言った彼の言葉に若干の無念さを感じ取り、何処か満足する。彼も自分と同じ気持ちになっていると。 だが、それに満足してはいけない。クラスが別れると言う事は、それだけ一緒の時間が減るのだ。今年から会えない 事が多くなると言うのに喜んでいてはいけない。 ちらりと横にいる彼、幼馴染である中田勇次を見る。少しは残念そうな顔を見せたが、今は違う事に関心があるのか 此方を見ずに体育館をじっと見詰めていた。 彼、中田勇次とは幼稚園以来の付き合いである。何時、どのように知り合い、友達となったかは全く覚えていない。 気が付けばそこにいた、そんな感じである。珠姫の実家の道場にもいつの間にか入門していた。そこにいるのが当然で その存在を疑った事もなかった。この先もずっと自分の傍らに居てくれる、そう信じていた。誰が居なくなろうと、彼 だけは、ずっと。 だが、あの日そんな事は夢幻でしかない事を思い知らされた。 あの日、珍しく町が雪化粧に覆われたあの日。張り詰めた空気、全身を振るわせる寒気、足下を貫く痛み。それより も冷たく、痛かったのは彼の言葉であった。 『今月一杯で辞めます』 解らなかった、その意味が。勇次が何を意図してソレを発したのか、珠姫には理解出来なかった。 真っ新になる、虚無、虚脱そして喪失感に襲われる。それは以前襲われた時と同等かそれ以上に思われた。それくら いに彼の言葉は衝撃であり、且つ彼女にとっての彼の存在の大きさを物語る。 嫌だった。そんな事は一刀の元に斬り捨てたかった。 でも、出来なかった。言葉が喉に引っ掛かり出てこない。一番言いたい事が言えなかった。自分の口下手が恨めしく 思えたのは後にも先にも、この時ぐらいだろう。それほどに口惜しかった。 後から聞かされた話では、進学して更に高度になる授業に対応する為の勉強時間を確保しなければならないから、道 場を辞める、そうだ。 よくある話であるし、事実珠姫の道場でもそう言って辞めていく人は多い。万人が納得できる理由である。 だが、珠姫には納得出来なかった。それは彼女の我が儘や夢想の為ではない、彼女が勇次の剣道好きをよく知ってい るからである。そのくらいの理由では彼が道場を辞めるなんて、到底信じられなかった。 しかし、信じようが信じまいが、彼が辞めるのは事実である。足掻く事の出来ない珠姫はその不信と不満を籠めた視 線を彼に送る事しか出来なかった。それが功を奏したのかそうでないのか、彼は最後に、 「ごめんね……でも、剣道は続けていくから」 そう残して道場を去っていたのだ。 見渡すと見知った顔とそうでないのが半々くらいだった。教室の内装はそう変化したように思えないが、机と椅子は 前より一段大きくなった気がする。珠姫にとっては特にそう感じられた。 教室内ではまだ同じ出身校同士で固まっている。それぞれが互いに距離を取り合って牽制する。このぎこちなさはこ の時期特有のものと言える。その中でもあえて、果敢に他校出身者に突撃する勇者もいるが…… そんな光景を横目に珠姫は窓の外を見ていた。一人でいるのは彼女の社交性の無さが原因でもあるが、今はそれより も考えなくてはいけない事があるのだ。 それは勿論勇次の事である。道場でも逢えなくなるのに、クラスまで違ってしまっては一緒に居られるのは登下校の 時くらいしかない。いや、下手をすればそれすらなくなる可能性すらあった。 彼の、道場を去っても剣道を続けると言う言葉。それは剣道部に入部するという意味なのではないか。だとすれば、 下校時は当然の事、登校だって朝練があれば一緒になる事は無くなってしまう。そうなれば彼との接点は皆無になって しまう。 「……そんなのいやだ……」 どうすれば彼との接点を保つ事が出来るのか。その答えは実に簡単なものである。 「……剣道部に……入部する?」 実に解りやすく、これ以上もこれ以下もない手段だった。そうすれば万事解決の上、三年間は、例えクラスが違った として、接点を保ち続ける事が出来るのだ。 だが、彼女はそこで戸惑いを覚えてしまう。それは彼女にとって剣道がどういうものなのかに起因していた。 「でも……家でもやってるのに、学校でもするの……?」 彼女にとっての剣道は、食事、入浴、睡眠と同じ様に生活の一部である。わざわざ学校でもする意義が解らないのだ。 しかし、勇次と一緒に居るには剣道部に入るのが一番の上策である。ならば、やはり入るのが賢明ではないのか。 と、そこでふと気が付く。何故自分は勇次にここまで固執しているのだと。 小さい事からずっと一緒だから、一番親しい人だから、自分を理解してくれる人だから。理由は色々と思い浮かぶが それは正解であり、間違えである。確かにそうだが、そうではない。彼がいるのはそのさらに上だ。 「……よくわからない……けど」 珠姫にはそれがまだ解らない。今、解る事は、彼とずっと一緒にいたい、と言う事だけである。 結局、悩みは解決しないままに学校は終わり、下校の時刻となってしまった。 隣では勇次が自分のクラスの事を話していた。が、珠姫はそれを上の空で聞いていた。 こうして二人並んで歩くのも無くなってしまうかもしれない。それは非常に寂しいし、悲しかった。 それを防ぐ答えはある。だが、その決断が出来なかった。そして、何故そう思うのか、その理由が出ない。 「……タマちゃん、どうしたの?何か悩んでいるの」 僅かな機微でも、彼は見逃さない。此方の心情を汲み取り、答えてくれる。それは勇次が珠姫を理解してくれている と言う事である。そして、自身を理解してくれる者が居る事は最上の喜びである。水魚の交わりと言うが、珠姫にとっ て勇次はまさに水であった。 嬉しかった。でも、何となく彼には話してはいけない気がした。 「……別に、なんでもないから」 だから、素っ気無く返し話さなかった。胸にチクリと小さな痛みを感じる。 「……そっか」 彼の返事もどこか素っ気無く聞こえたのは自身の後ろめたさの所為なのだろうか。 気が付けば、もう勇次との別れ道であった。また明日、と言い自分の家に足を向ける。 「待って、タマちゃん!」 歩き始めたところで呼び止められた。振り返ると、何かを決意した目で勇次が立っていた。 一体なんだろうと、疑問に思いつつ彼に向き直る。 「あ、あのさ。いっ……。け、剣道部に入らないかな?タマちゃん」 虚を衝かれた。まさか、彼から言ってくるなんて思いも寄らなかった。正に青天の霹靂である。 だからだろうか、珠姫が咄嗟に出した言葉は、 「え、えっと……なんで?」 であった。 それは一種の期待であった。勇次もまた自分と同じ気持ちを抱いているのではないかという。 だが、変なところで鈍い彼にはその真意は届かず、別の答えを導き出してしまった。 「え!?い、いや、別に嫌ならいいんだよ。無理強いはしないから。じゃ、じゃあまた明日!!」 そう捲し立てて言うと砂埃を撒き散らし去ってしまった。 呆気に取られ、気が付けば珠姫一人が取り残されていた。よく解らない、よく解らないが、兎に角選択肢を間違えて しまったのは確かに違いなかった。 その後、勇次が勧誘してくる事はなく、結局珠姫は剣道部には入部しなかった。そして、珠姫は学校生活において剣 道のけの字も出す事はなかった。むろん選択授業のときもそれだけは選ばなかった。 後に彼女は語る、「ユージくん。あの時の分も含めて慰めてください」と。 彼女の望みが叶うのは、更に先の三年後。2人の進学先、室江高校剣道部においてである。
https://w.atwiki.jp/hrlm/pages/169.html
いつでも < 前の話 アーカンでのお出かけの話とか。 このページを編集
https://w.atwiki.jp/akatonbowiki/pages/9893.html
このページはこちらに移転しました いつかの日 作詞/391スレ143 傍らに眠る君の横顔を見ていた 空気に溶けてしまいそうな白い肌 平和を告げるように柔らかな吐息 僕は永遠を告げる鐘を何処かに探していた 窓の外から慰めてくる小鳥 柔らかに僕らを包み込む日光 安らかに眠る君の横で時の波が静まる いつの間にか 流され 溶け 消えてしまいそうな世界 僕は永遠を告げる鐘を何処かに探していた
https://w.atwiki.jp/gachmuch/pages/1139.html
おまえらには、どうでもいいだろう 何も与えられなかった、いまさら止めねえよ 永遠につかんでやるぜ (いつまでも、いつまでも) モール行っても、買い占める 電話かけずに、女の子みんな惚れさせて 永遠につかんでやるぜ (いつまでも、いつまでも) 名字はエヴァー(過去最大)、名はグレイテスト(偉大なる奴) お遊びじゃない、捻挫どころじゃすまないぜ はじまりはローカル、だが嫉妬連中のおかげで ジェット機のパイロットと友だちにまで成れた おまえの街まで飛んで“ハイ”、それは「ニーノ・ブラウン」 品(クラス)のある女、それ自慢してる、うん、わかってる お札の海で泳いで、オレをさがしに来い、それは『ニモ』 クラブへ行けばおなじみ、贅沢やってあばれてる ミックステープをドロップ、クオリティはアルバム級 だれが予想した?オレが全国ツアーするなんて どこのレーベルもオレをX(チェック)してる、「マルコム」のように 誰もがまずは「ディール」を結んだ、オレは「それ」無しで行った つまりオレは根っからのビジネスマン ほかのラッパーどもをぶちのめして、ヒット飛ばしつづけて オレのこと疑ってたやつら、みんな許しを乞うてるぜ オレのチームに居なくとも、眺めることなら、させてやる ビッチども おまえらには、どうでもいいだろう 何も与えられなかった、いまさら止めねえよ 永遠につかんでやるぜ (いつまでも、いつまでも) モール行っても、買い占める 電話かけずに、女の子みんな惚れさせて 永遠につかんでやるぜ (いつまでも、いつまでも) かつてフッドで夢みてた、でかい名声にでかいチェーン 「人生」という名の女に巨根をぶち込んで、イカせてやった NBAチームのように、秋のあいだはずっと、ハードに闘った そのおかげで春になれば、お札の雨が降ってきた オレのストーリー、オレの栄光、ヒップホップを若くして強姦 この世界で勝ち上がり、きっとオレの銅像建つだろう むかしから稼いできたカネ、名付けて『ベンジャミン・バトン』 なんだって?なんでもねえよ 最高にヤバい女たちが愛してくれる、「アイム・ラヴィニッ!」 世界中を走り回った、ある意味、“ミシェルの夫”のように みんながオレと知り合いになりたがってた、友だちでもないのに まるでオレのこと、フッドの頃から知ってるかの如く、ありえねえ なんて負け犬どもだよ オレはガッコーの授業なんてさぼってた、「ピューラーの仮病」 グラミーなんて要らねえから、グラニー(ばあちゃん)を返してくれ 思い出すぜ、ばあちゃんがギックリ腰で、ケツ突き出して歩いてた 「スターの地位」を求めてると、気がおかしくなっちまう ハリウッドまで行ってやった、演技なんてしないのに みんなカメラを出して、オレをパチパチ撮ってる かつて「この名声」を永遠に欲していた、今は、こんなのくれてやる おまえらには、どうでもいいだろう 何も与えられなかった、いまさら止めねえよ 永遠につかんでやるぜ (いつまでも、いつまでも) モール行っても、買い占める 電話かけずに、女の子みんな惚れさせて 永遠につかんでやるぜ (いつまでも、いつまでも) さてと、やあ、火星人のオレ、『スペース・ジャム』のジョーダン様だ オレは永遠にそれ欲しい、朝起きて、お庭のにおいを嗅いで 新米より新鮮(フレッシュ)に、こっちにおいで、ターゲットはキミ 1つ確かなことがあるとすれば、「オレ=ニューオリンズ」ってこと 足は止めねえ、ポリから逃げ回ってる気分で、とまらねえ クルマに飛び乗って、運転手に告げた、「行き先はトップまで」 人生なんてジェットコースター、ぐんぐん昇って、ぐいっと急降下 だけど叫ばなくていい、だってここは“オレ様の”テーマパーク たとえ頭のなかがダークでも、ハートはキラキラ光ってる 腰にピストルくっつけて、銃口が「しゃべれば」怖い目にあうよ しゃべるのはキングのオレ、カネをチェックして、注目しな 「リル・ウェイン」:口を衝(つ)いて出てくるその名 オレって、真夏のネバダの砂漠 先頭(リード)はオレ、枕とふとんに横たわって、くつろいでる でもね「シーッ」、両足はアクセル踏んだまま ブレーキなんて必要ねえ、ビリなんてありえねえ おまえらには、どうでもいいだろう 何も与えられなかった、いまさら止めねえよ 永遠につかんでやるぜ (いつまでも、いつまでも) モール行っても、買い占める 電話かけずに、女の子みんな惚れさせて 永遠につかんでやるぜ (いつまでも、いつまでも) ほらよ行くぜ、スタジアム満員、シェイディのスピット 観客は狂気(ナッツ)の渦、マカデミアのように、ハジケてる まわりの奴ら全員のろま、もっとスローにスピットしてやろうか? するわけねえ、全力邁進、グラスの水が溢れ出すまで、oh no こんだけオレが噂されたのは、もしかして「過剰摂取」以来か ピノキオがその鼻をぶち込みに来た、我慢して待ってたんだろ オレが戻って来た今、「ラップ界」はオレの手により変えられた 女々しいやつらの脳みそつぶして、この名をとどろかせる 情熱と炎がバチッと点火、二度と消えることはない まさにこのことを言ってんだ、暴動勃発 マジなワル4人、ブースに入って真実をスピット 本音をあらわにし、口のなかから歯がぶっ飛んじまうまで ラップ炸裂、さあ巻き戻して聴き直せ 当然の報いってもんだ、よくぞオレのことを疑ってくれた どうだ苦い味するか?苦虫をおまえの口にぶち込んで ベースを響かせ、爆音であたり一面を揺らす オレの名は「ハンニバル・レクター」、面食い魔だぜ その“面(ツラ)”喰って、のっぺらぼうにしてやるぜ オレがこの場から「オサラバ」するまでに あとはまかせた、ドレイクへ... おまえらには、どうでもいいだろう 何も与えられなかった、いまさら止めねえよ 永遠につかんでやるぜ (いつまでも、いつまでも) モール行っても、買い占める 電話かけずに、女の子みんな惚れさせて 永遠につかんでやるぜ (いつまでも、いつまでも)