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翼をもがれた鳥 第2話――飛べない鳥は大地を駆ける―― 四つ葉町の森の奥、占い館の一室。 巨大なモニターに映し出される、イースとキュアピーチの一騎打ち。 そうだ! そこだ! いけ! 届くはずのない声援を送るウエスターを、サウラーは鼻で笑う。 「何がおかしい、サウラー!」 「何もかもさ。こんな茶番は見ていられないよ」 「なんだと!」 「じゃれあいを茶番と言って何が悪いんだい。どちらも本気で相手を倒す気はないようじゃないか」 「俺には……イースは本気で戦っているように見える」 そう言ったウエスターの言葉には、しかし、勢いがなかった。彼も格闘の達人で、生粋の戦士だ。気が付いてはいたのだ。 これは戦闘ではなく喧嘩。意地と意地の、ぶつかり合いであることに。 「イース――お前は、一体どうしてしまったんだ?」 「さじ加減を覚えてしまったのさ。君もこの世界にはあまり深入りしないほうがいい」 「ええぃ! お前の言ってることはさっぱりわからん! 街に出て人の不幸を学べと言ったのもお前ではないか」 「だから、僕は本を読むのさ。不味いコーヒーを飲みながらね」 そう言いながら、サウラーはカップに入りきるだけの角砂糖を入れてコーヒーを注いだ。相変わらず、甘くて不味い。 だが、この砂糖とコーヒーの分量を、自分で思いのままに決められるとしたらどうだろうか? もっと、飲みやすくなるだろう。もっと、美味しくなるだろう。もっと――もっと。 その味を、知ってしまったら……。その工夫を、楽しいと感じてしまったら……。 きっと、もう、戻れなくなるだろう。 だから、不味いコーヒーを飲み続けるのだ。この世界はつまらなく、愚かで、不味いものでなくてはならない。 (それが、なぜわからない? イース!) 「待て! 暢気にコーヒーなど飲んでる場合じゃないぞ。他の二人のプリキュアが来たようだ」 「見ているよ、それで?」 「ふざけるな! イースはナケワメーケを呼び出せないんだぞ」 「それで僕たちが助けに駆けつけると? イースはそんなことは望まないよ」 「では、見殺しにすると言うのか!」 「そうだ。彼女たちに、イースが殺せるのならばね」 スクリーンの中では、二人の死闘が激しさを増していた。殺意があろうと無かろうと、死力を尽くした戦いであるのも事実だった。 もともとボロボロだったイースの身体。それがキュアピーチと接触するたびに傷つき、壊れていく。 仲間の二人はすぐには参戦しない様子だったが、それも戦況次第だろう。イースに勝ち目など全くないに等しかった。 「もういい!」 「どこに行くんだい?」 「トイレだ!」 苛立ちをぶつけるように、拳をスクリーンを叩きつけてウエスターが部屋を出る。 その衝撃でスクリーンにノイズが走り、すぐに全ての機能を失った。 しぶしぶ修理に取りかかるべく、サウラーは立ち上がり本を置いた。その本は上下が逆さまだった。 『翼をもがれた鳥――飛べない鳥は大地を駆ける――』 フラフラとよろめきながら、イースは館を目指して歩き続ける。 たった数百メートルの距離が、今の彼女には果てしなく遠い道のりに思えた。 その表情には苦悶の色を浮かべ、唇をきつくかみ締めて……。 その足取りは重く、膝は震え、時折、全身を戦慄かせて……。 (せつなっ! せつな! せつなさん) 一度も、イースとは呼ばれなかった。ラブだけでなく、その仲間にまで。 彼女たちは消えて欲しいのだろう。少女の本当の姿に――イースに。 当然だと思う。 イースは街を破壊してきた……彼女たちを傷付けてきた……憎むべき敵なのだから。 だけど、彼女が消したかったのは偽りの自分。 ラブが親友と信じる普通の女の子――東 せつな。 始めは任務のために近づいた。 いや……それも嘘だ。初めて会った日から、ラブの笑顔を見たあの瞬間から、ずっと気になっていた。 なぜ、気になるのかが知りたかった。 ラブに惹かれ、ラブに合わせてせつなを演じた日々。 楽しいと――感じるようになった。 苦しいと――感じるようになった。 徐々に彼女の中にせつなの部分が大きくなり、イースの心が押しやられていった。 だけど! それでも、せつななんて子は居ない。それは彼女自身が一番よくわかっていた。 せつなは――夢。 孤独な少女が描いた――悲しき妄想。 荒い息の合間に、苦しげに呟く。 「我が名はイース。ラビリンス総統メビウス様が下僕」 その言葉も……もう、少女を励ましてはくれなかった。 ラブたちは、イースをである自分を受け入れてはくれない。 そして、ラビリンスにも。 メビウス様の元にも。 もう――自分の居場所はなくなりつつあるのを感じていた。 腰に手を当てる。 何もない……。もう――何もなかった。 忠誠と信頼の証であったナキサケーベのカードは、全て無駄にしてしまった。 ナケワメーケの源であるダイヤも、支給が切られてしまった。 仕えるべき主から見放され、 倒すべき敵から情けをかけられ、 出し抜いたはずのウエスターとサウラーすら、 もう――手の届かない存在になってしまった。 こんなはずじゃなかった。 こんなはずじゃ……なかった。 どうして世界はこんなにも、自分に冷たいのだろうと思った。 小石に足を取られて、地面に叩きつけられる。 無様。 情けなさ。 そして、悔しさ。 浮かんできそうになる涙を懸命に堪える。 この上さらに泣くなんて、あまりにも自分が惨めだったから。 「痛っ……痛い……つっ……くっ……」 打ち付けた体が痛かった。 ピーチを殴った拳が痛かった。 彼女に殴られた身体が痛かった。 そして――何より心が痛かった。 言葉にして、気が付く。 痛いということ。それはまだ、生きているんだってこと。 残った力の全てを振り絞って立ち上がる。 違う……まだだ! まだ、完全に見放されたわけではない。 自分がこうして、生きていられることがその証し。 きっと、見ているんだ。メビウス様は――今、この時も! ならば、見せなくてはならない。イースの忠誠を――戦う姿を! たとえ――この身が砕け散ろうとも。身体一つで戦わなくてはならないのだとしても。 「我が名は……イース。ラビリンス総統メビウス様が……」 改めて誓いを口にする。その言葉を言い切らぬうちに視界が暗転する。 意識が闇に落ちる。身体が崩れ落ちる。 だが、そんなイースを受け止めたのは、固く冷たい地面ではなくて――太く、力強い腕だった。 キュアピーチは地面に転んだ後、そのまま一歩も動けずにいた。 クタクタに疲れていた。ボロボロに傷付いていた。だけど、それはイースも同じだったはず。 追いかければ、手が届いたはずだった。でも――できなかった。 (どうして……どうして……どうして……) ピーチの、ラブの胸にかつて経験したことのない感情が沸き上がる。 それは怒りでもなく、悲しみでもなく。悔しさでもなく、後悔ですらない。 強いていうなら虚無感。目の前で失ってしまったものを受け入れることができない。 できないのに――体が、心が、それ以上何かをすることを拒むかのようだった。 全てを賭けて戦った。全身全霊で想いを伝えた。だって、友達だから! 何物にも代えられない大切な人だから! 伝わったはず。伝えられたはずだった。 この身に刻まれたのと同じくらいに――イースの、せつなの身にも刻めたはずだった。 でも、返ってきたのは明確な拒絶。 怒りにまかせて言い放った言葉なら良かった。それは虚勢だと、意地でしかないと跳ね除けることもできた。 穏やかな表情。静かに伝えてきた意思。想いの全てを込めて伝えた――それをしっかりと受け止めた上での返事だった。 どうして……どうしてわかってもらえないのだろう。 自分の……何がいけなかったのだろう。 「ラブ……もう、帰りましょう」 「お疲れ様、ラブちゃん。力になれなくてごめんなさい」 「美希たん、ブッキー、せつなは居たよ。せつなはちゃんと……せつなだった。なのに……」 それは二人も十分に感じていた。ただ、見ていたわけではない。彼女たちも一緒に戦っていた。ラブと心を一つにして。 信じて見守るという、最も苦しい手段で一緒に戦っていた。そして、一緒に傷を受けていた。 変身を解除したラブを、二人は家に送り届けた。 ラブはその後、一言も話すことはなかった。美希も祈里もまた、何も話しかけることができなかった。 今、ラブの頭の中にあるのはせつなのことだけ。 今も語りかけているのだろう。そして、その度に拒絶されているのだろう。その度に、絶望しているのだろう。 心配して、部屋に上がろうと申し出た美希と祈里に、首を振って拒否の意思を伝える。しばらく、一人になりたいからと。 もう、美希も声をかけることができなかった。 美希もまた、見てしまったから。イースの、せつなの葛藤を。悩み、苦しみながら、精一杯に生きているんだってことを。 溢れんばかりの想いをぶつけあっていた。姑息な手段で騙していたんじゃない。せつなもまた、ラブと真剣に向かい合っていたんだ。 どうせ戦うなら、悪が良かった。テレビや漫画に出てくるような、邪悪で救いのない怪人が良かった。 同じくらいの女の子。友達として知り合ってしまった女の子。立場が違うだけの女の子。そんなのは……あんまりだ。 「……ちゃん、美希ちゃん。聞いてる?」 「あ……ごめんなさい、ブッキー」 気が付くと、祈里が心配そうに覗き込んでいた。彼女もまた、顔色が悪かった。きっと同じことを考えていたのだろう。 「せつなさんも、泣いてるみたいだったね」 「うん……」 直接、ラブのように涙を流していたわけではない。 でも、戦いの中であげた叫び声は悲痛だった。ラブに語りかけた声には、思いつめたような苦しみが感じられた。 脅えているように――見えた。 震えているように――見えた。 繰り出す攻撃は激しいのに――それすら、まるで子供が駄々をこねているように見えた。 「ラブ……大丈夫かな」 「わからない……」 「アタシたちは……戦えるのかな」 「わからない……」 「美希ちゃんがそんなこと言うなんて、わからない!」 「ごめん……」 祈里の我慢してた涙腺が一気に崩壊する。 美希は己の迂闊さを恥じた。もともとこの娘は、ナケワメーケと戦うことにすら躊躇するような大人しい子だったのに。 ごめん、ごめん、ごめん。何度も謝りながら祈里を抱きしめた。 出会えば、ラブはまた同じことをしようとするだろう。 でも、美希にも祈里にも、もうせつなの説得が無理なのはわかっていた。 きっとまた、自分たちの前にせつなが立ちはだかってくるのもわかっていた。 「アタシたちで止めよう、ブッキー。ラブのためにも、これ以上せつなに罪を重ねさせるわけにはいかない」 「うん、美希ちゃん。わたしも……がんばるから」 説得できないのなら――倒すこともできないのなら―― 力づくで止める! 無理やりにでも止めさせる! 無駄だと諦めさせる! 長い戦いにはならないだろう。せつなもまた、追い詰められているようだったから。 厳しい戦いにはなるだろう。でも、参加できるだけ今日よりはマシだと思えた。二人は、静かに勝利を誓い合った。 「ここは……」 大きな洋風の部屋。豪華だが、温かみの感じられない調度品の数々。 小さく調整された灯り。真っ白なカーテンから覗く暗い景色と、ゆるやかに吹き付けるひんやりした風。 豊富な空間にありながら、ほとんど何も置かれていない私物。まるで生活観の感じられないその部屋は、確かに彼女の私室だった。 イース。戦闘服を解かれてせつなと呼ばれる姿に戻った少女は、混乱した頭を整理していく。 ここは……ベッド――なぜ? 体中に巻かれた包帯。不器用で、下手糞な手当ての跡。 何気なく伸ばした手が、固いものに触れる。 黄色いダイヤ。ナケワメーケの召還アイテム。 やっと理解する。自分は、ウエスターに助けられたのだと。 恥ずかしさと共に、怒りが込み上げてくる。 余計なことを! 奴の手など借りなくても、少し休めば自力で帰還できた。 見ていたのか? あの無様な負けっぷりを! 自分が見ていろと言って出かけたことなど、すっかり記憶から抜け落ちていた。 またしても、惨めな気持ちが込み上げてくる。 プリキュアに――敵に破れ、情けをかけられてきたばかりなのに。 ウエスターなどに――蹴落とすべきライバルにまで施しを受ける体たらく。 枕元に置かれたダイヤを手に取る。 しびれが来るほどの強烈な力を感じる。 これが……ウエスターのダイヤ。彼の力で強化されたコントロールコア。 特殊能力ならサウラー。破壊力ならウエスター。それぞれの生み出すナケワメーケは強力だった。 彼女の力で生み出すナケワメーケでは、既にプリキュアには通用しなくなっていた。 だからこそ、せつなとして近づくしかなかったのだ。 命を削る覚悟で、ナキサケーベを召還するしかなかったのだ。 悔しさに目の前が真っ暗になる。 手にしたソレを床に叩きつけようとして、思いとどまった。 もう、自分には支給されなくなったもの。 これが……最後のチャンスかもしれないと。 “スイッチ・オーバー” イースに戻り、ウエスターのダイヤに念を送り込む。 徐々に黄色から赤色に染まっていき、やがて真紅の輝きを放つ。 イースを新しい主として受け入れた赤いダイヤ。その強烈な力に反応して、持つ手に震えが走る。 (今は貸しを作ったつもりでいるがいい。これほどの力を持ちながら、成果を得られなかった無能さを思い知らせてやる) 次が本当に最後のチャンスとなるはず。迫る戦いに必勝を誓う。 もう、イースに迷いはなかった。もともと選択肢などないのだ。無いものねだりしたところで、無から何かが生まれるはずもない。 出来ることを精一杯やるだけではないか。 忠実なる下僕として、己が使命を全うする。それでどのような結果になろうとも、それが自分の人生なのだろう。 心を決めたら疲労が押し寄せてきた。わずかに回復した力も、今ので使い果たしてしまった。今は、とにかく休息が必要だった。 お腹は空いていたが、食事を取る気力は湧いてこなかった。 イースは、ダイヤを握ったままベッドに倒れこんだ。そして、深い眠りについた。 第3話 翼をもがれた鳥――夢のまた夢――へ続く
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ラブ「ごちそうさまでした!」 祈里「とっても美味しかったね」 美希「あとはデザートね」 せつな「デザートって何があるの?」 ラブ「えーと、桃とパイナップルとブルーベリーだよ」 せつな「うーん、どれにしようかしら?」 ラブ「もちろんぷりっぷりの桃で幸せゲットだよね!?」 祈里「あまーいパインで癒されるって私信じてる!」 美希「ノンノン。甘酸っぱいブルーベリーでリフレッシュよ。うん完璧!」 三人「ねえ、どれにするの!?」 せつな「私選べないわ…。どれかなんて選べない。だから全部精一杯頑張るわ!」 ラブ「わはー。せつなってば頑張り屋さん!」 美希「クス、意外と食いしん坊ね」 祈里「私達も頑張らなきゃね」 せつな「さあみんな、行きましょう!」 行った先がベッドだなんて妄想は禁止
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かまくらの中で。 「はい、お餅焼けたよ!熱いから気をつけて」 「ブッキー、お醤油取って」 「はいどうぞ。海苔もあるわよ」 「七輪ってあったかいのね。知らなかった……」 「美希ちゃんかけすぎよ!」 「いいの。いただきまーす。熱っ!」 「んもー、だから言ったのに」 「美希ちゃん見せて!」 「らいろうぶ、らいろうぶ……」 「いいから早く見せて!」 「真っ赤なはんてんは幸せの証……」 「ぶつぶつ言ってないでせつなも食べよ?」 「大変!唇の端っこが赤くなってるわ!すぐに冷やさないと!」 「ホ・・・ホントに大丈夫だから・・・。」 「ちょっと待ってて!」 そう言うが早いか、壁の雪を削って集め、美希の火傷した箇所に押し当てるブッキー。 「ちょっ、そんな事したらブッキーの手が冷えちゃうじゃないの!」 「大丈夫・・・。美希ちゃんのためだったら私、どんな事でも・・・。」 「ブッキー・・・。」 「あ~あ、二人の世界に行っちゃったよ・・・。 仕方が無い、もう一個かまくら作ってそっちに移動しようか。せつな。」 「もぐもぐ・・・(そうね・・・。)」 ラブせつ二人、かまくら内でしばらくキャッキャウフフしまくり、疲れて少し会話が途切れた時に せつなから、ぽつりと。 「ねえ、ラブ」 「え?」 「思ったんだけど・・・ここなら、今、誰にも見られないわね・・・」 「・・・・・え?・・・え?・・・・・ぇええぇぇーーーー?!?!? せ、せせせ、せつなそれってどういう・・・・$*&%”@~~****!」 「こういう・・・」 「!!!!!!!」 「ラブ・・・。」 「(はっ、はわわわわ、せつなの手が、顔がこっちに、はわ、はわわ~・・・)」 「こういう・・・。」 「!!!!!~~っ、はわわ、はわはわはわ!」 「ほ~ら、こんなに変な顔~、うふふ、うふふふふ。」 「・・・はわっ!、せ、せつな酷いよ~、いきなり口に指突っ込んで変顔させるなんて~。」 「あははは、ゴメンなさい、ちょっと空気重かったから、うふふふ。 (あ、危ないとこだったわ。咄嗟にふざけて誤魔化したけど、一瞬本気でラブの唇を奪いそうに)」 「もーせつなったらー(笑) (なーんだ焦って損しちゃった。てっきりせつなからキスでも されるのかと・・・あたしったらヘンな期待し過ぎ~、せつなにバレなくて良かったよ!)」 ラブ「へっくちん!」 せつな「くしゅん」 美希「へくち」 祈里「くしゅっ」 タルト「そりゃそーやで。」 シフォン「きゅあ?」 アズキーナ「は、恥ずかしい…」 あゆみ「これ飲んであたたまりなさい、みんな」 せつな「甘い香りがする.....」 ラブ「ココア?ちょっと違うかなー」 祈里「うん。ちょっと違うかも」 美希「おばさま、完璧すぎですよ」 あゆみ「さっすが美希ちゃん!」 ラブ「ん?」 せつな「???」 祈里「あっ!なるほどね」 美希「ブッキーならわかると思ったケド」 ―――ホットチョコレート――― あゆみ(いつまでも仲良くねっ♪) 「もう食べれないや」 「私も…」 「ブッキー。それは来月の話でしょ!」 「ごめんなさい。でも次焼けちゃった…」 山盛りのクッキー。普段料理のしないブッキーはただひたすら焼まくるのでしたw 圭太郎「だったら僕が食べちゃうよ~」 ラブ「とぉ!」 せつな「おとうさん!!」 美希「おじさま…。見損ないました…」 祈里「あれれれれ???」 あゆみ「いいのよ。あとでたっぷり叱っておくから、ね♪」 那由他「だったら私が食べようかしら」 せつな「お、お前は!」 あゆみ「あらいらっしゃい」 ラ美ブ「えぇぇぇぇ!?」
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寝息が、重なっている。 美希たんの部屋。 お母さんが仕事関係の旅行に 行っているので、美希たんの家で お泊まり会になった。 せつなとブッキーは ぐっすり眠っている。 体を起こす。 もうひとつの、起きる影。 寝る前、美希たんとお互いのことを 話してるうちに、エッチな話になった。 美希たんの愛撫で、 悦ぶブッキーの姿。 あたしも、さわってみたい。 あたしと美希たんの心の中に、 悪だくみが生まれた。 とりかえっこ。 美希たんと、寝ている位置を 交代する。 ブッキーの寝顔が、 すぐそばにあった。 たわわな胸が、 パジャマを押し上げている。 裾がめくれ、かわいい おへそが見えている。 ペロッと、なめる。 ぴくんと、ブッキーの体がふるえた。 パジャマの裾から手を入れ、 ブッキーの胸を、わしづかみにする。 手に入りきらないほどの、 たっぷりとした胸。 揉んだり、揺らしたりしながら 感触を楽しむ。 たまんない。 あたしの内腿に、 しずくが垂れる感触があった。 ブッキーの目が、 ぱちりと開いた。 「ちょっ...!ラブちゃ...んん」 唇で塞ぐ。 「んん!...んーっ!」 「ブッキー、あたしとじゃイヤ?」 「ラブちゃん...どうして...」 「だって、あたしもブッキー食べたくなったんだもん」 「でも、私には美希ちゃんが...」 「ほら...」 あたしとブッキーが視線を移した先には 同じように、せつなの唇を塞いでいる 美希たんの姿があった。 「...どして...?」 せつなの声が聞こえる。 「でも、体は反応してるわよ、せつな」 美希たんの指が、せつなの乳首を 優しく弾いている。 パジャマを突き抜けそうなほど、 そこは硬く尖っていた。 あたしの心に、 チクリと痛む感覚があった。 かき消すように、ブッキーのパジャマを たくし上げ、胸に舌を這わせる。 ブッキーの乳首も、硬く立ち上がり、 あたしの舌の上で、ころころと転がる。 「やああん...やめて...ラブちゃん...!」 「でも、ブッキー気持ちよさそうだよ」 「違っ...あうっ!」 「ほらぁ...」 下着の中に滑り込んだあたしの右手は、 茂みの奥にある泉を感じていた。 「美希たん、見てるよ...」 「いや...!いや...!」 激しく首を振るブッキー。 それに反して、右手にはいっそうあふれる感覚。 中指を、入れる。 「ああああっ!」 「ブッキーの感じてる顔、かわいい...」 ちらっと、美希たんの方を見る。 歯を食いしばって、美希たんの愛撫に 耐えているせつな。 せつなの足の間でうごめく、美希たんの手。 蜜が跳ねる音が大きくなっている。 何よ。 誰でもいいの? ブッキーの中に入れた指を、 途中で上に曲げ、上の壁を擦る。 「あっ!あっ!ああん!」 ブッキーの腰が跳ねる。 もう片方の手で、胸を激しく揉みしだき、 唇を舌で舐る。 「イキそうなの?ブッキー...」 「いや...いや...!」 「くっ...あああん!」 聞こえてくるせつなの喘ぎ声が、 大きくなった。 えっ... せつな、イっちゃうの...? ブッキーの中が、 激しく収縮した。 「美希ちゃん!ごめんなさい!ごめんなさい!」 ブッキーが、顔を覆いながら 腰を激しくくねらせ、3回ほど大きく跳ねた。 せつなを見る。 乳首を吸われながら、中を激しく 美希にかき回されている。 「せつな...かわいいわ」 「いや...そんなにされると...もう...!」 「ほら、ラブも見てるわよ...」 「ああっ...!いや!ラブ!見ないで!見ないで!」 せつなの体が弓なりに反り、 大きく痙攣した。 あたしのほおを、 涙が流れている。 せつなが、あたし以外の人に。 あたしだけの、せつなじゃ なくなった。 とりかえっこ、って 軽く始めたけど、 あたしが、人のものを 取るだけじゃ、なかった。 あたしのものも、 人に、とられた。 後悔。 嫉妬。 興奮。 心の中が、めちゃくちゃだ。 ブッキーが、顔を覆って すすり泣いている。 美希たんが、ブッキーを見ながら 泣いている。 せつなが、あたしから目をそらして 泣いている。 4人のすすり泣きが 薄闇の中で響いている。 「...ごめんなさい!祈里!」 「...ごめん!せつな!」 美希たんとあたしは 同時に声をあげ、お互いの 隣に場所を移した。 「ひどいよ...美希ちゃん」 ブッキーの泣きじゃくる声が聞こえる。 「ラブ...こんなのないわ...」 「悪いのはあたしだよ!ホントにごめん!」 すすり泣くせつなを、 ぎゅっと抱きしめる。 「せつなは、あたしのだよ!」 美希たんも、ブッキーを 泣きながら抱きしめている。 「祈里は、アタシのだから!」 「せつな!」 「ラブ!」 「祈里!」 「美希ちゃん!」 泣きながら、夢中でお互いの唇を 吸い合った。 何もかも忘れるように、 夢中で、愛し合った。 声を抑えることもなく、ひたすら お互いの体をまさぐった。 いつもより、強く。 いつもより、深く。 お互いの中で、激しく指が かき回される。 猛烈な興奮の中、あたしは せつなの顔を見つめる。 せつなも目を開き、あたしを見つめる。 「いっしょに...ラブ...!」 「うん...いっしょだよ!」 あたしとせつなは、お互いの目を 見つめ合いながら、激しく跳ねて頂点に達した。 「祈里!アタシもう!」 「美希ちゃん!一緒に!」 美希たんとブッキーも、お互いのを 激しく擦り合わせながら達している。 お互いを寝取られた刺激からか、 興奮がおさまることはなかった。 あたし達は、汗だくになって もう何度目か忘れるほど、体を跳ねさせた。 外が見えないほど、ガラスが曇っている。 むせ返るような熱気と、匂い。 「...ちょっと、クセになるかも」 言った途端、あたしの頭に 3つのゲンコツが落ちた。 避-666へ
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未来への証(後編) 穏やかな日差しが、四つ葉町公園に降り注ぐ。ドーナツ・ワゴンの中では、カオルちゃんがお客さんが来るのを待ちわびて、くわぁっ、と大きな欠伸をした。それにつられそうになって、慌ててゴホンと咳払いをしてから、隼人はドーナツの仕込みの続きに取り掛かる。 瞬は、ドーナツ・カフェの椅子に座って、やはり眠そうな顔で紅茶を飲んでいた。実は、さっきから何度もカオルちゃんの目を盗んで角砂糖をゲットしようと試みているのだが、どうやらまだ成功していないらしい。 昨夜――というより今朝の話だが、彼らが御子柴邸を後にしたのは、もう東の空が白み始めた頃だった。 四体のピックルンはスウィーツ王国へと戻り、再びただの少女となったラブたちを家まで送り届けてから、ウエスターとサウラー――隼人と瞬は、さっきカオルちゃんがやって来るまで、ここで死んだように眠っていたのだ。 「しかし・・・元気だなぁ、あいつらは。」 隼人が、もう一度欠伸をかみ殺してから、向こうに見える石造りのステージに目をやる。そこにはお揃いのダンスの練習着に身を包んだ少女たちが、準備運動をしながら、師匠のミユキが来るのを待っていた。どうやら今日は、ダンスレッスンの約束の日だったらしい。 「ああ。仲間たちと過ごす時間となると、それだけエネルギーが湧いてくるということだろう。」 「・・・お前の台詞にしては、熱いな。」 いつものように淡々と発せられた、でも皮肉の匂いがカケラも感じられない瞬の台詞に、隼人が怪訝そうな顔になる。が、すぐに真面目な顔つきになると、カオルちゃんが近くに居ないのを見定めてから、もう一度瞬に呼びかけた。 「なぁ、瞬。今回のイースの希望は、ラビリンスにとっても良いことだよな?だったら、きっと許可は下りるよな?」 「もっともらしく言っているが・・・要は、君はせつなの希望が通ればそれでいいんだろう?」 今度は皮肉めいた調子でそう言ってから、瞬も真面目な顔つきになる。 「おそらく大丈夫だと思うよ。彼女には大きな実績があるしね。それに、すぐには無理だろうが、いずれきちんと異世界との交流が出来ないか検討して、政府に提言してみる価値はあると思っているんだ。 僕たちは、科学技術の面では進んでいるようだが、長い間メビウスに支配されていた分、遅れている分野が数多い。それに、異世界に興味を持っているラビリンスの人間も、ラビリンスの技術を生かそうと考えてくれる異世界の人間も、ちゃんと居るみたいだからね。 まあそのためには、難しい問題を色々とクリアしなければならないと思うが。」 瞬はそう言って、膝の上に置いたガラスの筒に――ノーザが博士に渡し、数多くの異世界製のナケワメーケを生み出し、そして最後はホホエミーナとなってスウィーツ王国へと飛んだ、あのダイヤが封入された容器に、そっと手を触れた。 博士の今後がどうなるのか、瞬にはわからない。この世界では、ラビリンスのように失敗したら寿命を断たれるようなことは無いが、やはり責任というものは存在する。 だが、別れ際の博士の表情は穏やかだった。 過ちを犯し、苦しみはしたが、北教授にあの“核”を託されたこと自体を後悔はしていない。いつになるかはわからないが、いつか必ず、この経験をこの世界の科学技術に活かしてみせる――そう言って握手を求めて来た博士の手を、瞬は――サウラーは、震える手で握り返すのが精一杯だった。 「まあ、お前がそこまで言うんだから、全力で実現させる気なんだろう?」 隼人があっけらかんとそう言って、ニヤリと笑う。その時、フライヤーの様子を見ていたカオルちゃんがやって来て、隼人の手元を覗き込んだ。 「うんうん。なかなかいい感じになって来たね。まだ売り物ってわけにはいかないけど、お嬢ちゃんたちに食べてもらったら?今日、パーティーがあるんだろ?」 「ホントかっ?師匠!」 途端にぱあっと明るくなる隼人の表情。それを横目で眺めながら、瞬は、実に楽しそうな顔で、ふん、と鼻で笑った。 イエローハートの証明 ( 第14話:未来への証(後編) ) 「この間の返事なら、急ぐことはないわよ。まだ時間はたっぷりあるんだし。」 「はい。でも、今のあたしたちの気持ちを聞いてもらいたいんです。ミユキさんに、相談したいこともあるし。」 お願いします、とラブが頭を下げるのとほぼ同時に、残りの三人も一斉に頭を下げる。それを見て、ミユキはふっと頬を緩めた。 ラブたち三人に大きな宿題を出してから、初めてのダンスレッスン。その場にせつなが現れたのには驚いたが、同時にミユキは、それが何だか嬉しくもあった。やっぱり四人のこれからについては、全員の口から聞く方がいいに決まっている。 「わかったわ。わたしはあなたたちのコーチなんだから、相談でも悩みでも、何でも言って。」 そう言って、ミユキがステージの石段に腰かける。その周りを囲むように、少女たちもその場に陣取った。 「みんなで話し合ったんですけど、やっぱりクローバーは、四人でクローバーなんです。誰か一人欠けても、クローバーじゃありません。」 「そう。よくわかるわ。」 ラブの言葉に、ミユキが小さく頷く。 「そして、あたしたちはやっぱりクローバーでダンスをやりたい。だから、これからも四人でダンスをやっていきたいと思います。」 「それは、具体的にどうやっていくつもりなの?」 ミユキが厳しい顔つきで、さらに畳みかける。言葉だけを聞けば、確かにそれは、プロデビューを断ってからラブたちがずっと言い続けてきた言葉と大差なかったからだ。 その問いに答えたのはラブではなく、せつなの静かな声だった。 「そのことで、ミユキさんにご相談したいことがあるんです。 普段は自主練習をして、月に一度・・・もしかしたら二カ月に一度の時もあるかもしれませんが、それくらいの頻度で、みんなと一緒に、レベルを落とさずにレッスンが受けられるような・・・そんな練習プランを組んで頂くのは、難しいでしょうか。」 「せつなちゃん、あなた・・・一カ月か二カ月に一度は、四つ葉町に帰って来られるの?」 ミユキが、少し驚いた様子で目をパチパチさせながら、せつなの顔を見つめる。 「はい。勿論、これから向こうに戻って、関係者と相談しなくちゃいけませんけど。でも、これからは時間の許す限り、なるべく四つ葉町に帰って来ようと思っています。」 口元に穏やかな笑みを浮かべ、静かに、しかしハッキリと、せつなは答えた。 四つ葉町の人たちのように、ラビリンスを笑顔でいっぱいにしたい――そう思って、ラビリンスに帰還した。でも、四つ葉町で学んだ「幸せ」という感情を、その素晴らしさを伝えたいと思っても、上手く伝えられないもどかしさを、ずっと感じていた。 (伝えられないはずよね。自分の幸せが何かもわからないのに、幸せを伝えられるはずがないもの。それに、幸せは教えられて学ぶものじゃない。それぞれが経験して、その気持ちを感じることによって、知っていくこと。だから、何をすれば幸せになれるだなんて、そんな模範解答は無いのよね。) どうしてこんな簡単なことに気付かなかったのだろう、と自分でも可笑しくなる。しかもそれを教えてくれたのが、四つ葉町の人たちだけでなく、ウエスターとサウラー、それに過去の呪縛の象徴のように現れたナケワメーケだったなんて・・・そう思うと、ほろ苦いような、何だかくすぐったいような気持ちがする。 せつなの答えを真剣な面持ちで聞いてから、ミユキは、オッケー!といつもの力強い調子で言った。 「そういうことなら、お安い御用よ。ブランクを取り戻すのが少し大変かもしれないけど、それも考えて練習プランを組んでみるわ。」 「ありがとうございます!」 パッと表情を明るくするせつなに、今度はミユキが少し心配そうな顔になる。 「でも、せつなちゃん忙しいんでしょう?まぁそれは、美希ちゃんや祈里ちゃんもそうだけど・・・。その点は、大丈夫なの?」 「あ、それについては、すっごくいいアイデアが見つかったんです。」 今度はラブが、何だか得意げな表情で、ミユキと向かい合う。 「せつながこっちで過ごす分、あたしが時々はラビリンスに行って、せつなの手伝いをしよう、って思ってるんです!」 「え、そんなことも出来るの?」 「あ、あの・・・一応、それも関係者と相談してから、なんですけど。」 明るく言い放ったラブの言葉を、慌てて補足するせつなの頬が、照れ臭そうに朱に染まっている。それを微笑みながら見つめてから、美希はラブに向かってふくれっ面をして見せた。 「こら、ラブ!あたしが、じゃなくて、あたしたちが、でしょう?アタシだって、たまにはせつなの手伝いがしたいわよ。」 「わたしも!」 祈里も美希の隣りから、笑顔を覗かせる。 美希は祈里と目を合わせてから、ますます顔を赤くしているせつなにちらりと微笑みかけ、その目をミユキの方に向けた。 「アタシも、確かに忙しくはなりましたけど、やっぱりずっとみんなと繋がっていたいんです。ただ仲のいい友達っていう関係だけじゃなくて、何かを一緒にやり遂げる、仲間でいたい。それに勿論、ダンスもずっと続けたいですから。」 「わたしも、美希ちゃんと同じです。」 祈里もミユキを見上げてから、こちらは少し、顔を俯かせた。 「ホントはわたし、ちょっと迷ってたんです。この一年で、ダンスが大好きになったけど、わたしの将来の夢は獣医になることで、プロになりたいわけじゃない。それなのに、プロのダンサーを目指しているラブちゃんたちと一緒に練習していていいのかなぁって。」 「確かに、最近の祈里ちゃんのダンスには、迷いがあったわね。」 ミユキにストレートに指摘されて、祈里が、ごめんなさい、と小さく頭を下げる。 「でも、わたしはやっぱり、ラブちゃんや美希ちゃんやせつなちゃんと一緒に、ダンスをする時間を大切にしたい。改めて、そう思ったんです。 慣れてしまうと、ついそこにあるのが当たり前だと思ってしまうけど、大切な人たちと過ごす時間や、紡がれた絆がどんなにかけがえのないものか、今回のことでよくわかったから。大切な仲間たちと、大好きなダンスをする時間って、なおさらそうだと思ったんです。」 ラブが、優しい光を宿した目で祈里を見つめてから、その目を美希とせつなに移す。そして仲間たちを代表するように、ぴんと背筋を伸ばした。 「これが、今のあたしたちの気持ちです。 クローバータウン・フェスティバルのお話は・・・ごめんなさい、せっかくですけど、まずはまた四人で息の合ったダンスが出来るようになることを、目標にしたいです。」 まっすぐに心の内を語る教え子たちの顔を、ミユキもまっすぐに見つめて、じっと耳を傾ける。そして全員の話が終わると、いつもの強い視線で一人一人の目を見つめてから、花がほころぶように、優しい笑顔になった。 「みんなの気持ち、よくわかったわ。真剣に考えてくれて、とても嬉しかった。 じゃあ、わたしも全力でクローバーの再開をバックアップしなくちゃね!」 「ありがとうございます!!!!」 緊張から解き放たれて、一斉に笑顔になる四人。だが、ミユキが不思議そうに発した次の言葉に、今度は一斉に、ギクリと首を縮めた。 「ところで、祈里ちゃんが言ってた『今回のこと』って何のこと?それに、せつなちゃんはともかく、隼人さんや瞬さんまで戻って来るなんて・・・。」 「ちょっ・・・ちょっとブッキー!」 「ごめ~ん。わたし、そんなこと言ったかなぁ。」 「そ、そうだっ!」 美希と祈里がぼそぼそと囁き合うのを隠すように、ラブが突然、せつなの腕を引っ張って、ガバッと立ち上がった。 「今日、うちでラザニア・パーティーやるんです。あたしとせつなが、お母さんに教えてもらうことになってて。ねっ、せつな。」 「え、ええ!もし良かったら、ミユキさんも来て頂けませんか?」 「へぇ、楽しそうねえ。オッケー!じゃあ、お邪魔させてもらおうかな。」 ミユキが、もうさっきの素朴な疑問など忘れたように、嬉しそうに頷いたのを見て、ラブとせつながほぉっと安堵のため息をつく。その時。 「姉ちゃん。ちょっと邪魔していいか?」 何故かステージ横の林の中という不自然な場所から現れたのは、大輔と裕喜だった。 「ほら!健人、来いよ!」 裕喜が物陰に隠れているらしい健人の手を引っ張って、大輔が、ドン、とその背中を押す。 「わ、わぁ~!」 四人の前に押し出される格好となった健人は、そこで覚悟を決めたように、勢いよく頭を下げた。 「皆さん、このたびは・・・本当にすみませんでしたっ!」 「健人君、もう体は大丈夫なの?」 祈里の問いに顔を上げた健人が、少々バツが悪そうに、黒縁の眼鏡を押し上げる。 「は、はい。僕も、それに・・・眼鏡も、お蔭様で元通りです。」 「良かった。」 祈里が嬉しそうに微笑んだとき、今度は横合いから大輔と裕喜が現れて、健人を四人の前から連れ去った。 「じゃあな。俺たち、これから行くところがあるんだ。健人がどうしてもラブたちに謝りたいって言うから、連れて来ただけだからさ。」 「大輔!健人君と、仲直り出来たんだねっ!」 そのまま立ち去ろうとした大輔が、ラブに満面の笑みを向けられて、照れ臭そうにあさっての方を向く。 「い、いやぁ、その・・・ちょっとこれから忙しくなるから、喧嘩なんかしてらんねえんだ。」 「忙しくなるって?」 「聞いて驚くなよ?俺たち三色団子が、クローバータウン・フェスティバルに出場することになったんだ!」 「すごーい!」 「まさか、ダンスで?」 「良かったじゃん!」 目を丸くする祈里。怪訝そうな美希。素直に祝福するラブ。そして黙って成り行きを見守るせつな。だが。 「ちょっとあんたたち。誰がクローバータウン・フェスティバルに出るですって?」 一段と低く、その分不気味な響きを持った声に、関係ない四人までもがビクリとして振り返った。 ミユキが、いつの間にかステージの中央に仁王立ちして、大輔たちを睨み付けている。 「え・・・だって姉ちゃん、商店街のお祭りに出てくれって・・・」 「あれは、来週から始まる商店街の福引で、着ぐるみを着て子供たちに風船を配って欲しいって、そういう話よっ!」 途端に三人が、え~っ、と不満そうな声を上げた。 「嘘だろ、着ぐるみかよ!」 「大輔君、話が違うじゃないですか!」 「えーっ!姉ちゃん、ダンスじゃないのかよ!」 「何言ってんの。あれからまともに練習すらしてないくせに、クローバータウン・フェスティバルが聞いて呆れるわ。いい?あんたたちには、百年早いわよ~っ!」 凄みを帯びた声でビシッと指をさされ、三人が、今更ながら浮足立つ。 「し、失礼しました!!」 「わっ、ま、待てよ!裕喜!健人!」 一目散に逃げ出す裕喜と健人を、大輔が慌てて追いかけた。 ラブが、プッと吹き出して、目を丸くして見ていたせつなの肩にもたれかかる。 「おかしいと思ったのよね。」 「美希ちゃん、ヒドい。」 呆れたように呟く美希も、冗談めかしてたしなめる祈里も、途中からクスクスと笑っている。 「もう!あんな勢いで逃げることないじゃないの。」 「え~!?だ、だって、ミユキさん!」 不満そうに口を尖らせるミユキの意外な言葉に、ラブが、アハハ・・・とお腹を抱えて笑い転げる。その笑いはすぐに仲間たちに伝染し、ついにはミユキも、可笑しそうに笑いだした。 「あ~あ、ダンシング・ボーイズ。今じゃすっかり、ランニング・ボーイズだね~。」 ニヤニヤしながら一部始終を見ていたカオルちゃんが、そう言って、グハッ!と天を仰いだ。 ☆ ひとしきり笑った後、四人の少女はステージの中央に立った。せっかくだから、まずは久しぶりに四人で一曲踊ってみたら?とミユキが提案したのだ。 曲は、四人が一番踊り慣れた曲。もう何百回、何千回と踊った、ダンス大会のあの曲だ。 立ち位置は、右から、美希、せつな、ラブ、そして祈里。この順番は、四つ葉のクローバーを結成した時から変わらない。 美希は、相変わらず優美な立ち姿で、誰も居ない客席を見渡している。 せつなは、ぐうっと伸びをして、今朝の体の調子を確認している。 ラブは、目をキラキラさせて、仲間たち一人一人を見回している。 そんな何気ない仕草が、あの頃とちっとも変っていない――そんな些細なことが、祈里には何だか嬉しかった。 (当たり前よね、まだ半年も経っていないんだもの。でも、これからみんな、それぞれの時間を過ごして、それぞれの経験をして・・・。落ち込んだり、傷付いたり、時には仲間同士、喧嘩することだってあるかもしれない。変わっていくところだって、あるかもしれない。) 祈里は、もう手袋も何もつけていない左手を目の前にかざして、中指の傷を眺めた。 今はもう塞がっている傷跡。もっと時間が経てば、傷跡も消えて、後には何も残らないだろう。 (でも、今回のこと、わたしは決して忘れない。わたしたちは遠い先の未来でも、いつもお互いを思いやって、きっと幸せな時間を過ごしてる。そんな幸せな未来を作っていけるって、わたし、信じてる。) ダンシング・ポットが、軽快な音楽を響かせ始める。 一心に耳を傾け、最初のステップへ向けてカウントを取る少女たちの頭上を、五月の風が爽やかに吹き抜けた。 ~完~
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「ねぇ、せつなぁ、ここなんだけど――」 あはは、そっか、もうせつなは居ないんだ。 「あ~わかんないよ、せ……」 だから――もう居ないんだってば! せつな、今ごろ何してるのかな? ラビリンスにも学校とか宿題とかあるのかな。 お友達とか居るのかな? 一人っきりで寂しい顔してなきゃいいけど……。 「ラブ~入るわよ。はい、お茶とドーナツよ。夏休みの宿題は進んでる?――って……」 「え?――あっ、きゃっ、違う、これは違うの! お母さん」 回答用紙の隙間を埋め尽くした〝せつな〟の文字。 ちっとも似てないせつなの似顔絵。 笑顔を描いているのに、なんだか泣いているようにも見えた。 「ラブ……あなた……」 「だから違うの! たまたま問題が難しくて、せつななら解けるかなって思い出しちゃっただけで」 今消すから――って、あれ? どうして止めるの? お母さん。 「消さなくていいわ。さあ、せっちゃんが見てるわよラブ。負けてられないわよね?」 「うん――そうだね」 そう、負けてられない。せつなはきっと、今も精一杯がんばってる。 宿題なんて問題にならないくらいに、難しいことに挑んでるはずなんだから。 でも……お母さんの手、震えていた。ほんとうに、それが言いたかったからなの? そっか――たとえ落書きでも、せつなが居なくなるのを見たくなかったんだね。ごめんなさい、お母さん。 でもね、あたし思うんだ。 寂しいって気持ち。悲しいって気持ち。 それはね、そう感じるくらいに、せつなと過ごした時間が素敵だった証拠なんだよ。 お母さん。せつな。あたし頑張るよ。 そして――必ずみんなで幸せ、ゲットしようね。
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背中に柔らかい感触と温もり。 そして素肌を滑る指先を感じて、美希は微睡みから引き戻された。 (……ん…?……な、に?) ビクッと震えが走り、乳首を刺激されている事に気が付いた。 もう片方の手は既に下着の中に潜り込み、やわやわと 薄い茂みをまさぐっている。 まだ半分夢の世界にいた美希は一気に覚醒する。 (やだ…!祈里ったら何考えてるのよ!) 上のベッドにはラブとせつながいるのに……! 何となく恒例となってきているパジャマパーティー。今夜は桃園家。 ラブの部屋でラブとせつなはベッドに、美希と祈里はその下に 布団を敷いて寝ていた。 今まで何度かこう言うお泊まり会はしているが、こんな事をしてくるのは 初めてだった。 「………ん………ふっ………ぅ…んっ……」 (……ーーっ!……せつな?) 上から漏れ聞こえる湿った息遣い。 耳を澄ますと微かに響く濡れた場所を掻き回す音と、 シーツを引っ掻くような衣擦れの音。 「……せつな、声出しちゃダメ…。」 宥めるようなラブの声は、抑え切れない興奮に甘く掠れている。 恐らく必死に声を噛み殺しているだろうせつなの様子を 楽しんでいるのが、ありありと感じ取れた。 (ーーっあん!やだぁ……。) 上の二人に気を取られている隙に、祈里の指は美希の奥まで 忍び込んでいた。 柔らかな秘肉をかき分け、指に蜜を絡め取る。 熱く疼く突起を探り出すと、押し潰すように圧迫しながら 指の腹を擦り付けてくる。 (あっ!あっ!そんなにされたら…!) 乳首と陰核を同じリズムで捏ね回され、快感が出口を求めて 美希の全身を這い回る。 せつなのように、僅かな吐息を漏らす事も許されない。 ほんの少しでも息を漏らせばバレてしまう。 美希は歯を喰い縛り、全身の筋肉に力を入れ、 愉悦に跳ね上がりそうになる体を押さえていた。 「……ほら、せつな、足閉じないの。だから逝けないんでしょ?」 「……っ!……ふぅ…っ!」 「…イカなきゃ、終わらないよ……?」 ラブの声と共に、美希の耳元に祈里の昂った吐息が漏れるのを感じた。 美希の乳首と秘所を弄ぶ指使いが激しくなる。 体の中で膨れ上がる快楽に美希は目を霞ませる。 やがて、キシッ…キシッと鳴っていたベッドの軋む音が止まり、 熱の籠った空気が揺れる。 せつなが、達してしまったのを感じた。 その気配を祈里も読み取ったのか、激しさを増していた 愛撫の手を一端止め、ラブ達の様子を息を殺して窺っている。 ドクドクと体中を駆け回っていた血液が足の間に集まってきた。 美希は疼く体を持て余しそうになりながら、じっと堪える。 しばらくすると、ラブはせつなを促し部屋を出て行った。 覚束ない足取りでラブに支えられながらせつなが付いて行く。 「……どうやら、続きはせつなちゃんの部屋でするみたいね……。」 祈里は美希をコロンと仰向けにして、髪を撫でる。 「美希ちゃん、えらかったねぇ。イイコイイコ…。」 「…祈里ぃ…。」 じっと、声を立てずに耐えた美希を労るように、額から 頬に唇を這わせる。 「頑張った子にはご褒美あげないと、ね?」 美希は自分から下着を脱ぎ、大きく足を開く。 体に燠火のように燻る情欲は、もうとうに限界を迎えている。 早く、滅茶苦茶にして欲しい。もう、我慢なんて出来ない。 「もう…美希ちゃんったら。お行儀悪いよ?」 少し意地悪い祈里の物言いに頬を染めながらも、美希は逆らわない。 僅かな羞恥は快楽へのスパイスにしかならない事を、もう身に染みて 教え込まれてしまったから。 「あんまり大きな声出しちゃダメだからね。」 「あっ!はぁああっ、ああんっ!」 美希の足の間に顔を埋める。 熱く滑らかな舌が、敏感な場所を余す事なく容赦なく責め立てる。 隣の部屋でも、多分同じ事が行われてる。 せつなも抑えていた恥じらいをかなぐり捨て、思う存分ラブに 泣かされているのだろう。 さっき、漏れ聞いた切な気な吐息が美希の耳に甦る。官能に咽び泣くせつなの姿を思い浮かべ、 美希はいつも以上に貪欲に昂るのを自覚した。 今夜は見も世もなく、祈里を求めて乱れてしまいたい。 祈里も、きっと同じ事を望んでるはず。 美希は、自ら祈里の頭を押さえ付けるように腰をくねらせた。 短い夜を、少しでも長く楽しむために。 11-23はラブせつsideとなりますが18禁につき閲覧注意
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Fresh|Delicious/makiray 「なごみ家へようこそ!」 フレッシュプリキュアの四人がデリシャスパーティプリキュアの三人に会いに来た。場所はゆいの家で、ゆい達が手料理をふるまうことになった。おいしいものが揃ったおいしーなタウンに来て、町には出ずに家庭料理を楽しむ、というのはある意味では最高の贅沢である。デザートにはもちろん、ラブたちが持ってきたカオルちゃんのドーナツ。 「まずは、サラダからどうぞ」 わくわくして待っている四人の前に目にも鮮やかなサラダのボウルが置かれた。美希は目を輝かせたが、隣で「ひっ」と息をのむ音が聞こえた。 ラブがスティックサラダのニンジンを凝視している。 せつなはサラダの上に乗っているスライスされたピーマンから目を背けている。 察した祈里が苦笑した。ふたりはまだニンジン嫌いとピーマン嫌いを完全に克服したわけではないようだった。 「ゆいちゃん…」 ラブがおそるおそる挙手する。 「なぁに?」 「このニンジンなんだけどさ」 「新鮮でおいしいよ」 「熱を加えたほうがいいと思うんだ」 ゆいとらんが顔を見合わせる。 「熱を加えると栄養分が壊れて――」 ここねの発言を遮るラブ。 「食事ってそういうものじゃないと思う」 「え?」 「目で楽しむとか、みんなで一緒に食べるからもっとおいしいとか、そういうものじゃないかな。 理屈をこねまわして計算づくで食べる、っていうのはどうかと思う」 「そう…かしら」 「このピーマンもそうよ」 せつなが突然、声を上げた。 「こういう、スライスして上に乗せただけ、っていう添え物みたいな扱いはピーマンに対して失礼だと思う」 「はにゃ?」 「しっかり味付けをして、たくさんの具材と一緒に加熱されて、それでもまぎれてしまったりせずに、少量でもしっかりと主張する。それがピーマンのすごいところ。それを活かすべきよ」 ゆいが、おぉ、とつぶやいた。 「ふたりの、ニンジンとピーマンに対する愛情がひしひしと伝わってくるわ」 ここねも感銘を受けているようだった。 「よっしゃぁっ!」 らんが立ち上がる。 「ラブちゃんのニンジン愛、せつなちゃんのピーマン愛、この華満らんらんがしかと受け止めた! ゆいぴょん、中華鍋あるよね?!」 「手伝うよ!」 「おぅ!」 台所に取って返す二人。ザクザクザク、と材料を切り、熱した中華鍋にジャッと油を注ぎ込み、ガランガランと鍋を振る。 「お待たせしました!」 大皿がドンと置かれる。 「ぱんだ軒特製酢豚、フレッシュデリシャススペシャル!」 「これ、酢豚…?」 「ふたりの大好きなニンジンとピーマン、大盛りマシマシだよっ!」 オレンジと緑が皿を覆っている。肉が見えない。 ラブが呆然とし、せつなが青ざめていた。 ごく少量を、加熱して苦味を飛ばし、濃い味付けで本来の風味を隠せば、食べられないことはない…だったのだろうが。美希が自分の眉間をマッサージする。 「いただきます…」 ラブとせつなはあきらめて箸を取った。 「ねぇ、らんちゃん」 祈里が大皿を視き込む。 「酢豚にパイン入れる派?」 第二ラウンドのゴングが鳴った。
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【船上のクリスマス】/れいん 「美希たんとブッキーは、クリスマスはどうするの?」 ドーナツカフェで買ってきたドーナツを頬張り、ラブはキラキラと輝く瞳で二人にそう尋ねる。 「去年はラブが受験だったし、せつなも忙しそうだったからね~」 「せつなちゃんも今年はゆっくりできそうなんでしょ?」 「そうなんだよ~! だからサ、今年こそは四人で楽しくすごしたいよね」 何にしようか? 三人、ラブの部屋で色々とプランを練る。 クリスマスを四人で過ごせるのも楽しいけれど、そのためにアレコレと考えているこの時間だって、すでに十分に楽しい。 結局、“クリスマスは四人で過ごす”と言うこと以外は何も決まらなかったのだけれど……。 祈里はウキウキと楽しい気分。 これから仕事に出かけると言う美希と共に、帰路についた。 駅に行く美希とは向かう方角が一緒。 二人で肩を並べて歩く。 (美希ちゃんって大きいなぁ……) 祈里がそんなことを考えていると、美希が急に顔を覗き込んできた。 「ブッキーはクリスマスプレゼント、何が欲しいの?」 「え? え~っと……」 頬が火照る。 (美希ちゃんって、相変わらず凄い美人) 質問に答えようと思考を巡らすのに、浮かんでくるのはそんな事ばかりだ。 「み、美希ちゃんと……ラブちゃんと、せつなちゃんと一緒に過ごせるなら、それだけで十分だよ」 祈里は面白みのない答えを返してしまったと反省するのに、美希は優しく微笑む。 「無欲ね~! まあソコが、ブッキーらしくて良いけど……あ、本当にもう急がなきゃ」 祈里の家の前に着き、美希は腕時計で時間を確認するや否や、「じゃあ、またね!」と駅に向かって走り出した。 祈里は右手を軽く振ってその姿を見送る。 (心臓に悪い……) 左手で胸の中心部分をギュッと握った。 コートの上からなのに鼓動の音がはっきりと分かる。 このドキドキの理由を、祈里は小さいころから理解していた。 ―――― 美希ちゃんが好き。 それは、仲良しの友達とは違う特別な感情。 きっかけなど、幼すぎて覚えてはいない。 けれど、ずっとずっと美希は祈里にとって特別な存在だった。 「ただいま~」 動物病院の裏手にある、自宅の玄関を開く。 「お帰りなさい。祈里、お友達から荷物が届いているわよ」 今日は患者が少なかったのか、母が祈里を出迎えた。 奥から夕食を作っているいい匂いが漂ってくる。 「荷物?」 リビングの扉を開け、鞄をソファに置き、身に着けていたマフラーとコートをハンガーにかけた。 ダイニングテーブルの上を見ると、見覚えのある包装紙に包まれた箱。 そして、クリーム色の封筒。 封を開けると、白いカードに金の縁取り。 いかにも“クリスマスカード”と言う招待状。 祈里はいささか、げんなりした顔つきでそれを開いた。 差出人は、言わずと知れた大財閥、御子柴グループの御曹司。 毎年クリスマスになると、御子柴家所有の船、プリンセス号で行われるクリスマスパーティに招待されてしまうのだ。 カードを受け取るのはこれで三回目。 最初に招待された時は、ラビリンスにシフォンを奪われたばかりで、クリスマスどころではなかった。 二度目の昨年は、友達のラブが受験シーズンを控えているのに、自分だけ浮かれていられないなどと理由をつけて断った。 (……今年は、どうやって断ろうかなぁ) 彼が自分に好意を持ってくれていることは、恋愛に疎い祈里でも分かる。 けれど、それには応えられない。 (だって、好きな人がいるんだもん。ハッキリと断った方が良いよね?) 祈里はカードと共に送られてきた、ドレスの入っている箱を送り返すため、手紙を書いた。 『クリスマスは大好きな人とすごしたいので、パーティには出席できません。ごめんなさい』 便箋にそうしたため、封筒に入れる。 箱の中に手紙をしまい、再びコートを身に着けた。 「お母さん、私ちょっとコンビニに行ってくるね」 コンビニは同じクローバータウンストリート内にあり、家からもそう遠くない。 外は暗くなりかけていたけれど、母は大して気にした様子もなかった。 「そう? じゃあ、ついでに牛乳を買ってきてくれるかしら?」 そう言われたので「はーい」と返事をし、祈里は再び外に出る。 手には健人に送り返すドレスの入った箱。 祈里はコンビニに着くと送り状を書いて、その箱の配送を頼んだ。 放課後。 白い色紙を手渡されて、祈里は首を傾げる。 「山吹さんの友達なんでしょう?」 そうニコニコと微笑みながら言った彼女は、多分となりのクラスの女の子だ。 名前は知らないけれど、顔には見覚えがある。 「えっと……」 何の事を言われているのか分からず、祈里は困惑の表情を浮かべ、彼女の顔を見た。 「だから、モデルの“蒼乃美希”よ! 学園祭の時一緒に歩いていたでしょう?」 やや強引に色紙を押し付けられる。 「ああ、ウン。幼馴染なの……」 「じゃあ、サインくらいもらえるわよね?」 祈里の返事を聞く前に「じゃあ、頼んだわよ!」と、彼女は教室を出て行った。 学園祭後、美希のサインを求められたのは、これが初めてではない。 クラスメートはもちろん、学年の違う生徒や、先生などからも色紙を預かった。 (凄い。美希ちゃんって有名人なんだ……) ラビリンスとの戦いの後、美希は本格的にモデルの仕事に打ち込んだ。 素質もあったのだろうけれど、努力の甲斐もあり、彼女はその年の夏頃には雑誌の専属の仕事を手に入れていた。 もちろん、祈里はその雑誌を欠かすことなく毎月購入している。 紙面を飾る美希は、祈里の知っている彼女そのまま。 いつもにこやかで美人。 完璧にスタイルが良くて、颯爽として格好いい。 だから、気にしていなかった。いつもの美希のままだから。 知らないうちに、知らない人たちから注目されていようとは考えもしていなかった。 (今まで気にしていなかったけど……) 美希が急に遠い存在になってしまった様で心細くなる。 (……いつまで“今のまま”でいられるかな?) そんな漠然とした不安が頭をもたげた。 自分の気持ちを知られて気まずい関係にはなりたくない。 そうならないために。 ずっと美希の傍にいるために……。 幼い頃から胸に秘めていた恋心を、ひたむきに隠し通してきたのだ。 けれど、今のままではいずれ立場的に離れ離れになってしまうかもしれない。 不安がもくもくと心の中を曇らせた。 「ブッキー! どぉしたの? 元気ないジャン」 放課後、悶々とした気持ちで図書館に向かう途中、ダンスレッスンに行く途中らしいラブに出くわした。 「あ……ラブちゃん。ううん、何でもないの。ラブちゃんは今からレッスン?」 そう聞くと、ラブは「うっふっふっ……」と何やら楽しげな様子。 「ウン、でもその前にブッキーにお知らせに来たんだよ~」 そう言って鞄の中をゴソゴソといじり始めた。 「お知らせ?」 「そう! ジャーン!! 見て見てぇ~」 「なぁに、これ?」 ラブが手に持ったチラシのようなものを覗き込む。 クリスマスの宣伝のようなチラシには、見覚えのある船の写真。 そしてそこには、先日送られてきた招待状と同じ日時が書きこまれている。 「健人君の豪華客船のクリスマスパーティでね、お父さんの会社が新商品のショーをやるんだよぉ」 それに便乗して立てられたラブ計画。 父のそのツテで、パーティ会場に入ることができる。だから、四人で豪華客船のクリスマスパーティに潜入して、セレブで華やかなクリスマスを楽しんでしまおうと言う事らしい。 「えー、大丈夫なの?」 「平気、へいきぃ~! 会社の人たちの家族もたくさん行くって言ってたし、お父さんが良いよって言ったんだモン! 大丈夫だよっ」 ラブは満面の笑みでピースサインをする。 健人には申し訳ない気もするけれど、大会場だし彼に出くわすことはないだろう。 しかも、ラブのこの笑顔を曇らせるのも嫌だった。 祈里はにっこりと笑顔を作る。 「楽しそうだね。私は賛成!」 そう言って、祈里はラブの提案した計画に同意をした。 パーティに出席するなら、それなりの格好をしなくてはならない。そう言い出したのは美希だった。 確かに以前出席した船上パーティでも、普通のワンピースなどを着ている人はおらず、誰もがきらびやかに着飾っていた。 言い出しっぺの美希には最初から解決策があった様で、彼女の母、レミの美容室提携の貸衣裳屋でドレスを借りられることになった。 「わぁ! スゴいせつな似合ってるよぅ」 ラブが試着室から出てきたせつなを見て、感嘆の声をあげる。 「ほんと? こう言うの初めてだから……何だか恥ずかしいわ」 赤のAラインのドレスを着たせつなが、長い裾を恥ずかしそうにつまんで、鏡の中の自分を確認した。 「凄い良いわよ! 色白だから、赤が映えるわね」 ウインクしながらせつなを誉める美希を見て、祈里は胸がチクチクと傷んだ。 (嫌な子だな私。せつなちゃんにまでヤキモチ焼くなんて……) 「ブッキーはそれ?」 美希が振り返って、祈里が持っているドレスを指差した。 「わ~! スカートがフンワリしてお姫様みたいだね。ブッキーに似合いそう」 ラブがドレスを見て、無邪気にはしゃぐ。 「そ……そうかな?」 「着てみなさいよ! 手伝ってあげる」 美希に手を引かれ、祈里は試着室に入った。 (やだ、恥ずかしい……) 狭い試着室に、美希と二人。 しかも、スタイルの良い彼女の目の前で下着姿になるのは、かなり勇気がいる。 「ブッキー、もしかして恥ずかしいの?」 なかなか着替え始めない祈里の気持ちを察したのか、美希が可笑しそうにクスクスと笑いだした。 「笑うなんて、美希ちゃんヒドイ! だって私、太ってるから恥ずかしいんだもんっ」 「どこが!?」 勇気を出して抗議すると、速攻言い返される。 「ぜんぜん太ってなんかいないわ。女の子は柔らかい方が良いに決まってるし……」 「そうなのかな……」 「そうよ! ブッキーは今のままが凄く可愛いと思う。アタシは大好きよ!」 美希の右手が、祈里をなだめるように頬を触れた。 その瞬間、体中にビリビリと電気が走る。 それに反応した心臓が、音を鳴らすようにドクドクと大きく揺れた。 (言いたい……) 自分の気持ちを美希に伝えてしまいたくなって、その感情が余計に鼓動を早くする。 「あのっ、美希ちゃ……」 そう口を開いた途端、美希の携帯が鳴り出した。 「ごめん! 事務所からだわ」 美希は祈里の言葉を遮って通話ボタンを押す。 何やら込み入った話の様で、美希は試着室の外へ出ていってしまった。 ペタン。 祈里は床へ座り込んだ。 (……言いそうになっちゃった) 我に返り、ホーっと息を吐く。 美希が離れていきそうで自分が焦っていたのは分かっていた。 だから、密室で頬に触れられて、一気に気持ちが沸騰してしまったのだろう。 コンコン。 扉がノックされ、祈里はゴクリとつばをのむ。 (雰囲気に流されないようにしなくちゃ) 祈里は身構えて、そっと扉を開く。すると美希は開口一番に、 「ゴメン!」 と言った。 「……え?」 いきなりの謝罪に首を傾げると、 「クリスマス、急な仕事が入っちゃったの。今から打合せに行かなくちゃいけなくて……」 美希は本当にすまなそうにうつ向く。 美希の仕事について、祈里は細かく知っているわけではなかった。 けれど、立場的にワガママを言えるほど、甘い世界ではないのだろうと言うことは分かる。 「そっか。残念だね……」 それだけ言って、祈里は美希を見送った。 試着室の外で、美希がラブ達に事情を説明している声が聞こえ、慌ただしく店から出ていくのが分かった。 再び試着室の扉がノックされ、顔を出すと、せつなが少し残念そうな顔で立っている。 「ブッキー、試着済んだ?」 「あ、ううん。まだ……」 そう答えると、せつなは試着室に入ってきた。 「着替え、手伝うわ。美希……残念ね」 祈里は言葉なく頷く。 突然の出来ごとに、気分がどこか上の空になってしまい、何の躊躇いもなく着ている服を脱いだ。 せつながドレスの背中についたチャックを閉めてくれる。 「ラブちゃんは?」 そう問いかけると、 「試着した格好のまま、そこで盛大に落ち込んでるわ」 そう言って、せつなはどこか寂しげに苦笑した。 夜の港。 冷たく空気の澄んだ街は、街灯がまるでオーナメントの様に輝き、それだけでクリスマスの雰囲気を味わえる。 祈里とラブ、せつなの三人はドレスアップして豪華客船に乗り込んだ。 「美希ちゃんは残念だったなぁ」 一緒に船に乗り込むラブの父圭太郎は、仕事で裏方に回るため、いつものスーツ姿。 ふくれっ面のラブの頭をポンポンと撫でながら会場まで一緒に歩く。 パーティが開かれるホールまでやってくると「じゃあお父さんは行くから、三人とも楽しいクリスマスを!」と言って、既に設営が終わっていたショーの舞台の裏へ消えて行った。 「ラブ、いつまでも拗ねていないの! 美希は仕事を頑張っているんだから応援しなくちゃ。ね? ブッキー」 せつなにそう振られ、祈里は一瞬自分がそう諭されている気分になる。 「え? ああ、ウン。そうだよラブちゃん! 美希ちゃんも言ってたよ“アタシの分まで楽しんできて”って……」 辛うじてそう答え、半ベソのラブの頭を撫でる。 「だって、せっかく今年はみんなで過ごせるとおもったのにぃ! こうなったら、美希たんの分までガッツリ食べなきゃ!!」 せっかくのドレス姿だと言うのに、ラブは無い袖を捲って豪華な料理の並ぶテーブルの方へ走り出した。 「まったく、もう!」 祈里はせつなと顔を見合わせて苦笑する。そして二人は、ラブの後についてテーブルへと向かった。 乗船して暫らくすると船は出港し、程なくしてパーティの主催者である健人の挨拶が始まる。 「意外と私たちくらいの歳の女の子が多いのね……」 パーティに参加している周りの人間を観察するようにせつなが言った。 「ああ、お父さんが言ってたけど有名企業の社長さんとか、その娘さんたちが玉の輿狙いで多く来てるんだって」 ラブは「まあ、あたし達にはカンケーないけどね!」と興味なさ気にデザートのケーキを頬張る。 「ああ、だから“カツラ”のショーとかやるのね!?」 理解したとばかりに大きな声でそう言うせつなの口を、祈里は慌てて塞いだ。 周囲を見ると、確かにカツラの需要がありそうな年代のオジサマ方も多く存在している。 「あ、でもじゃあコッチの“メンズファッションショー”ってやつは?」 せつなが舞台脇に書いてあるショーのタイムテーブルを指差す。 「ああ、それは女の子たち向けじゃない? だって男の子が健人君だけじゃつまらないジャン」 ラブが苦笑いしながら答えた。 出演者の中には有名なモデルや、アイドルの名前などもある。 (健人君も大変なんだな……) 他人ごとにそう思いながら舞台の方を見ると、いきなり照明が落ちた。 そして、予定通りにメンズファッションショーが始まった。 「わぁ~、何だか華やかなのね」 「そっか、せつなはこう言うの初めてなんだよね」 物珍しそうに言ったせつなに、ラブは再び腕まくり。 「せっかくだからサ、もっと前で見ようよ!!」 せつなと祈里の腕を掴むと、人ごみの中をズンズン前に進んで行った。 勢いで舞台の目の前までやってくると、音楽は大きいし、周りの熱気に気分が少し悪くなる。 「あ、あのコ和ちゃんに似てない?」 「和ちゃんって、美希の弟の? どんな顔だったかしら……」 ラブとせつながそんな話をしているので舞台上を見ると、確かに顔が和希に良く似た男の子が、祈里たちの方へ歩いてくる。 彼は何故か祈里に微笑みかけ、手を振り、そして再び舞台の裾へと消えて行った。 「ね! 今あのコ、あたしに手振ったよね!?」 ラブがそう言うと、せつなは首を傾げて半笑い。 「え? 私にはブッキーに手を振っていたように見えたけど……」 などと言う。 「とにかく、和ちゃんに似てたよね? ブッキー!!」 せつなの意見に口を尖らし、ラブは負け惜しみの様にそう祈里に尋ねる。 「え? ……あぁ、そうだね似ていたかも」 そう答えたけれど……。 (和ちゃんって言うより……) そう考えて祈里は頭を振った。 「ゴメン、ちょっと人に酔っちゃったかも。外の空気を吸ってくるね」 そう言って、心配する二人に「大丈夫だから」と言い残し、祈里は空気の冷たい甲板へ出た。 (和ちゃんって言うより、美希ちゃんに似てた) そう思うのは、美希の事ばかり考えていたからだろうか? 祈里は真っ暗な海の方を見つめる。 船は海の中にぽっかりと浮かび、対岸の灯りが遠くに見えた。 本物の美希は今頃、あの光の元で仕事を懸命にこなしているのだろう。 彼女からとてもとても遠くに来てしまった気持ちに陥り、 祈里はとても悲しくなった。 (……この先どうなっちゃうのかな。こういう風に、だんだん会えなくなったりするのかな?) 泣きそうになり、蹲る。 「山吹さん?」 声を掛けられ振り返ると、そこには今日の主人公であるはずの健人が立っていた。 「あ……、健人君」 少しイヤな予感がして後ずさる。 「やっぱり山吹さん! 来て下さってたんですか~!! とっても嬉しいです!!」 祈里はどう答えて良いのか分からずに、曖昧に微笑んだ。 「あの……、えっと……」 健人には、祈里が困っているのが全く伝わっていない様子で、ニコニコと笑いながら近寄ってくる。 「あ、分かりました! もしかしてお手紙にあった“大好きな人”って僕の事だったんですか?」 何やら盛大に勘違いをされてしまった様で、祈里は慌てて否定をする。 「ち、違うの! あれは別の人の事なの!」 後ずさりながら、けれども懸命に祈里はそう訴えた。 「また~。恥ずかしがらなくて良いですよ!」 何故か変に前向きな健人はどんどんと祈里の近くまでやってくる。 「違うもん! 私は……私は、美希ちゃんが好きなの!!」 その態度が腹立たしくて。 いや、もしかしたら、楽しみにしていた“美希と過ごせる”はずだったクリスマスが、キャンセルになってしまったことに対する悲しい気持ちから来る、八つ当たりだったのかも知れないのだけれども。 とにかく、気づいた時には祈里はそう叫んでいた。 「美希? ……って蒼乃さんのことですか?」 健人は「だって彼女は女の子でしょう?」と言う困惑の表情を浮かべる。 祈里もそのまま、次の言葉が見つからなくて固まった。 「こんなところに居たの?」 不意に肩にスーツのジャケットを掛けられた。 声の方を見上げると、さっきファッションショーで祈里に手を振ったモデルがそこに立っている。 「寒かっただろう? 待たせてごめんね」 そう言ってその人物は祈里の手を引き、固まったままの健人は置き去りにした。 連れられるがまま、祈里はカツラメーカーのショーが始まっている、照明の落とされたメインホールに戻った。 会場の隅の方まで行き、立ち止まる。 頼りがいのある手のぬくもり。 わざと低く、男の子のような声を出されたって分かる。 「あの、美希ちゃんだよ……ね?」 「あははぁ~。バレたか……」 眉毛を少し太めに描いて、短い髪のカツラをかぶってはいたけれど、近くで顔をちゃんと見れば美希だと分かる。 「実はさぁ、ファッションショーに出る予定だった男の子が盲腸で入院しちゃって、選ばれた代役がなぜかアタシだったのよ~」 どうやら入院した子はモデルにしては身長が低めで、同じ事務所に彼のサイズの服を着ることのできる男の子がいなかったらしい。 「この髪、まるで本物みたいでしょ? オジサンの会社のウイッグなのよ~」 あの長い髪をどのようにしまってあるのか分からない。 それほどナチュラルに本物の髪の毛にしか見えないウイッグだ。 おそらく一瞬しかこの姿を見ていない健人は、美希を本当の“男の子”だと思っただろう。 祈里はそう考えてから、ハッと気づく。 (……もしかして、美希ちゃんさっきの健人君との会話、聞いてた?) そうだったらどうしよう? そう思う間もなく抱きしめられた。 「え? あの……美希ちゃん?」 咄嗟の出来事に、心臓が止まりそうになる。 「……さっき、健人君に言ったこと、本当?」 急に心臓が勢いよく動きだし、耳元まで熱くなる。 (どうしよう……。なんて答えれば良いんだろう……) 祈里はパニック状態になり、目から涙が零れ出した。 「え? や、ちょっとブッキー、泣いてるの?」 美希は祈里の顔を覗き込み、指で涙を拭ってくれた。 「だって、どうしよう……? 困るよね? 私が美希ちゃんの事……、美希ちゃん困るよね?」 自分でも何を言っているのか分からない。 祈里は自分が情けなくて、更に、美希に申し訳なくて泣きじゃくるしかなかった。 「ブッキー……」 優しく名前を呼ばれ、美希の顔を見上げようとした瞬間、頬にこぼれた涙の滴が、彼女の唇にすくわれた。 「!」 目を見開いて美希の顔を見ると、何故かとっても嬉しそうに彼女は笑っている。 「困らないわよ。むしろ、嬉しくて困る」 「……ウソ」 「ウソじゃないわよ。ごめんね、先に告白させちゃって」 そう言うと美希は再び祈里をギュッと抱きしめた。 美希の胸に顔を埋めると、彼女もドキドキとしているのが伝わってくる。 (ウソじゃないんだ……) そうして二人は、暫らくそのまま会場の片隅で抱きしめ合っていた。 「もう、美希たんが男の子に変身してたなんて、本当にびっくりしたヨ!」 四人揃うことができて嬉しそうなラブが、料理を頬張る。 「ちょっとラブ、まだ食べるつもり? お腹壊すわよ」 大きく口をモゴモゴ動かすラブを、せつなが心配そうに窘める。 「ズルイ! ラブ、それアタシによこしなさいよ。今日はまだ夕飯食べていないんだから!!」 美希がラブのお皿からチキンを取り上げ口に入れた。 「え~、美希たんヒドイ! それ、最後の楽しみにとっておいたのにぃ~!」 その様子を祈里は微笑みながら見守る。 「ブッキー、具合は大丈夫?」 せつなにそう問われ、祈里は慌てて謝った。 「心配かけちゃってゴメンね。もう大丈夫」 「そ? 良かった。何か他にも良いことあったみたい?」 「え? あの……えっと」 意味ありげにそう問われ、祈里は真っ赤になって口ごもった。 (もしかして、せつなちゃん見てた?) 目の良いせつななら、ショーの最中、暗闇での出来事が見えていたかもしれなかった。 けれど、それを言いふらすような彼女ではない。 せつなは気に留めた様子もなく、微笑みながら美希とラブのやり取りを見ている。 (……まあ、いいや。何だかとっても幸せ) 楽しい夜は、まだこれから。 ―――― Have a happy holiday !!
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「ほらよっ、イース。焼き立てだ、美味いぞ」 「また四ツ葉町に行ってたのね。あの街はそっとしておいてと言ったはずよ!」 「遊びに行くくらいはいいだろう。おまえこそ会いに行かなくていいのか」 「ダメ……よ。私はもう十分過ぎるものをもらってきたわ。今、自分を甘やかすのは 誰のためにもならないと思う」 「……実はな、口止めされていたんだが。ラブって子な、大きな事故に遭ったんだ」 「なんですって!」 「かなりの重症らしい。心配かけるからお前には言わないでと頼まれた」 「……嘘……嘘よっ! くっ」 ホホエミーナ! 我に仕えよっ! 待っていて、ラブ。すぐに行くから! ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ラブっ、ラブっ、どこなの? 家に行けば手がかりくらいはあるはず。 ――バンッ 「おかあさん、おとうさん、誰かっ、誰か、ラブのところに連れて行って!」 「その声っ! せつな? せつななのっ?」 「え、ラブ? どうして、重体じゃないの? 大きな事故にあったって……」 「あたしは事故になんてあってないよ。それよりも……おかえり、せつな。夢じゃ……ないよね?」 「苦しいわ、ラブ、本当に無事なのね……良かった」 ――パタパタパタ、ドタドタドタ 「せっちゃん? 本当にせっちゃんなのね」 「せっちゃんが帰ってきたって本当か!」 「おとうさん、おかあさんーーーーただいま」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「そうだったの。きっとその隼人って方は、せっちゃんを家に帰してあげたかったのね」 「はい、多分そうだと思う。でも……あんな悪質な嘘をつくなんて」 「あのね、せつな。今日は四月一日、エイプリルフールって言ってね、嘘をついてもいい日なんだよ。 隼人さんは多分、そのことを知ってたんじゃないかな」 「そんな日があったなんて……でも……」 「ね、せつな。あたしも今から嘘をつくね」 せつなが居なくなって、毎日寂しいの。 ご飯が美味しくなくて、学校やダンスもつまらなく感じて。 楽しみで仕方なかった明日の訪れが、全然わくわくしなくなっちゃったの。 せつなが居ないだけで、こんなに世界から輝きが失われるなんて思わなかった。 こんな気持ちになるのならーーーー引き止めればよかった。 行かせるんじゃ……無かった。 「なんてね、嘘だよ。全然そんなこと思ってないから心配しなくていいよ。 あたしは平気だよ。もうすっかり慣れちゃったし、だから忘れてくれてもいいんだから……」 「ごめんなさい……ラブ。寂しいのは私だけだと思ってた。だから私が我慢すればいいんだって、そう思ってた。 これからはーーーーなるべく会いにくるようにするわ」 「ほんとっ? それは本当なの? せつなっ」 「なんてね、どうかしら。自分で考えなさい」 「ちょっと、それひどいよ、せつなぁ」 「ふふ、エイプリルフールって素敵な日ね、ラブ」 「そうだね、せつな。あたしも今年から好きになれそうだよ」