約 1,207,250 件
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/618.html
せつなの言葉を聞いた時。 アタシは、良かった、って思った。 嬉しく、思った。 LOVE SOMEBODY 「ラブ」 長い、長い階段を駆け上がる。その行き着く先には、シフォンが待っている。 相変わらず体は重くて、飛び上がることも出来ないけれど、負けていられない。シフォンを助けて、全ての世界を 元通りにする為に、負けられない。 「ねぇ、ラブ」 思いながら駆けあがって行くアタシの隣に並んで来たのは、パッションだった。アタシの名前を小声で呼びながら、 こちらに視線を向けてきている。 「どうしたの? せつな」 アタシは、パッションではなく、せつなと彼女を呼んだ。せつなが今のアタシを、ラブと呼んだから。 つまりそれは、プリキュアとしてではなく、友達として話をするという意味。 「ん――――最後の戦いの前に、ラブにちゃんと言わなきゃいけないと思って」 走り続けながら、アタシを横目で見て、パッションは――――せつなは言う。怪訝そうなアタシの表情に気付いた のだろう、彼女は小さな笑みを顔に浮かべる。 「ホントは、こんな時に言うことじゃないんだけどね――――ありがとう、って、どうしても言いたかったから」 「え?」 「アタシに幸せを教えてくれたこと。アタシを守ってくれたこと。言葉にし尽せないぐらい、ラブには感謝してるわ」 驚くアタシ。けれど、駆ける脚を止めることはしない。走りながら、アタシは黙ってせつなの言葉を聞く。 「貴方がいてくれたから、私は自分の幸せを見つけることが出来た。誰もが、自分の想いを持っていいのだと、気付く ことが出来た――――この世界で管理されていたなら、絶対に気付くことが出来なかったことを、貴方が教えてくれた」 少しだけ、彼女がアタシの方に顔を向けた。その目は、とても暖かい笑みを湛えていた。そう、かつてイースとして、 アタシ達の前に立ちはだかった少女と同じとは思えない程に。 「もちろん、お母さんやお父さん、美希やブッキー、それに四ツ葉町の皆からも色んなことを教わったわ―――― けれど、一番はやっぱり、ラブだから」 だから、ありがとう。 そう言う彼女に、アタシも返す。想いを。 「じゃあ、アタシからもありがとう、かな」 「え? 私、ラブに何かした?」 「せつなから、たっくさん幸せ、もらったよ」 一緒にご飯を食べて、ダンスをして、学校に通って。 せつなと一緒に過ごした時間は、とっても楽しいものだった。 かけがえのないもの、絶対に守らなきゃいけないものと思える程に。 「だから、ありがとう、せつな」 「――――なんだか、照れ臭いわね。けれど――――あったかい」 ありがとう、って素敵な言葉ね。 せつなの言葉に、アタシも大きく頷く。 ありがとう。感謝の気持ち。それは言葉にすればたったの五文字だけれど、とても大きな意味を持つもの。 「それにね、アタシ、嬉しかったんだ。せつなが、メビウスに手を差し伸べたのを見て」 「……ラブ」 「メビウスに、手を差し伸べて、理解し合おうって言ってくれて――――うまく言えないけど、良かった、って思ったんだ」 かつて、せつなはメビウスに忠誠を誓っていた。それを裏切った相手にも、せつなが優しさを見せてくれて、幸せを 共にしようと言ってくれて。 すごく、ジーンとした。 「あれも貴方のおかげよ」 「そうなの?」 「ええ。だって貴方が、敵であった私に手を差し伸べてくれたから」 「――――そっか」 アタシは笑う。せつなも、笑う。 「メビウス様は、私の手を取ってくれなかったけれど――――私、これからも色んな人に手を差し伸べることをやめない。 それがたとえ、敵であっても」 誓うように言って、せつなは後ろを一瞬、振り向く。つられて見れば、彼女の視線の先にはウエスターとサウラーの 二人がいた。 そっか。あの二人も、せつなと美希タンが手を差し伸べたから。 「そうやっていつかは、全ての世界の人達が、皆、手を取り合っていけたら――――」 「うん。そしたら、皆で幸せを分かち合えるね」 繋いだ手から伝わったんだ。アタシの気持ち。想い。 それが、イースであったせつなを助けたのなら、きっと、彼女が助けた人にも、アタシの想いは伝わっていく。 そうすれば、きっとたくさんの人に、愛を届けられるだろう。 「だから――――だから私、精一杯、頑張るわ」 「うん。シフォンを連れ帰って、皆で幸せ、ゲットだよ!!」 笑いあってから、アタシは大きく叫ぶ。 「行くよ、皆!!」 『ええっ!!』 美希タン、ブッキー、せつな。皆の声が、アタシの背中を強く押してくれる。 プリキュアは――――ううん、アタシ達は負けない!! 皆のハートが、力になるんだから!! 思いながらアタシ達は。 シフォンへと続く階段を、駆け上がっていったのだった。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/988.html
アクアマリンの140文字SS【4】 1.[競作2015]ベストカップルの基本/アクアマリン 「ねえ、響。1つ聴いていい?」 「どうしたの、アコ?」 「何で奏といる時にいっつも恋人つなぎしてるの?」 「えー別にいいじゃん。わたしと奏の仲だし」 「そうよ。それに響と手をつなぐ時は10年くらい前からずっとこうしてるわ」 (じゅ、10年間も続けてるの!) 2.[競作2015]秘すれば花/アクアマリン 「ねえ舞」 「どうしたの?薫さん」 「夏なのにタートルネックの服着て暑くないの?」 ギクッ!! 「そ、そ、そんな事ないわ!トネリコの森って夏でも涼しいし、それに私ってちょっと寒がりだし」 「ふーん、ならいいけど」 (さすがにキスマークの跡を隠すためだなんて、いくら薫さんでも言えないわ) 3.[競作2015]甘くて暑い夜/アクアマリン 「おはようございます。マナちゃん、六花ちゃん」 「ふあー、おはよう」 「あら?お2人とも眠そうですわね」 「うん。昨日六花の家でお泊まりしたら夜更かししちゃって」 「まあ、昨夜はお楽しみでしたわね」 ギクッ!! 「ちょ、ちょっと!ありす、何言って……」 「ふふ、目は覚めましたか?」 4.ラビリンスからの電話/アクアマリン あのね、ラブ。 とても重要な話があるの、よく聞いて。 実は私、ラブの子供を妊娠したの。 これからは出産や子育ても精一杯頑張るわ! え…… お母さんやお父さんに報告! 初孫ができたら喜ぶ!? 今夜はお赤飯!! ちょ、ちょっと待ってラブ。 今日何の日か知ってる? エイプリルフールよ!!
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/531.html
いのり、いのり。 舌足らずな声が這った。 「なあに、シフォンちゃん」 寝そべっていたシフォンに手を伸ばし、胸の前で抱きながら祈里は優しい眼を向ける。シフォンはきゃっきゃと笑うだけだった。横にいた美希がシフォンの顔を軽くつつく。やはりシフォンはきゃっきゃと笑った。 「なんか、夫婦みたいだね。ブッキーと美希たん」 美希の長い髪が窓ガラス越しの陽に薄く輝いて見えた。 「ね、せつな」 念を押された気がして、「そうね」とせつなは言った。 「美希たんが、ブッキーの旦那さんだね」 「えー? アタシもウェディングドレス着たーい」 式は祈里の通う学校の講堂では挙げられないか。町の端に神社がある。和服も捨てがたい。等々と口々に話す中で、シフォンは笑っていた。 せつなはおよそシフォンの表情が泣くか笑うかしかないことに気付いていた。細かなものを除けば、それこそがシフォンだった。 「私たちの赤ちゃんみたいな存在だよ」とラブはそう説明したことがある。 子供、か。卵子と精子が合体し受精卵ができる。やがて発生を続けて胎児が形成されていく。数億の中で自分という個体が命を授かるというのは考えてみれば凄いことだ、と学校で教わった。確率的には確かにそうだと思ったが、他のクラスメイト同様に、せつなにはそういう実感がなかった。おまけにせつなは、誰と誰の配偶子が接合して自分が生まれたのかも知らない。家族がいないとはそういうことだった。しばしば胎内の音に似ていると言われているテレビの砂嵐で、赤子は安心し、泣き止むと言われている。ただし、せつなは違っただろう。科学は人間を希薄にする。技術の行き過ぎたラビリンスが、まさにそうなのだ。 「はい。せつなさん」 祈里の声に顔を上げると、白い腕がシフォンをこちらに差し出していた。 「せつなが花嫁さん役ね。あたしは、お婿さん」 最近、学校の授業でこういう学習をしたことを思い出した。六十センチほどで三千グラムぐらいの赤ん坊の人形を抱いた。白い布に包まれていたその人形は、単なる数字とは違って、ずっしりしていたのを覚えている。どう、と聞かれて、重たいわ、と答えた。赤ん坊の眼はシールでできていた。 せつな、せつな。 シフォンは軽かった。相変わらず声を上げて笑っている。授業でも、こんな風に抱いたわ。部屋が少し暗くなった。陽が雲に隠れたらしい。 急に風が吹くように、少し考えた。このまま落としたらどうなるのか。ぱっと、急に両腕を広げて、肩より上にあげる。シフォンは膝の上に落ちてその大きな頭を打つ。そうして、次は球体間接の人形が身を捩らせて階段を転げ落ちるのと同じ。シフォンは泣くだろうか。打ち所が悪ければそれもままならないかもしれない。こんな小さい姿のまま、痛い思いだけ残して逝くのか。……… シフォンを抱く腕を下げた。ほとんど膝の上であやしている恰好になる。 「せつな、せつな」 気がつかないうちに外の太陽がまた顔を出している。ああ、だから、そんなことを考えたのね。唐突にせつなは独りで諒解した。いつか自分の子どもができたときも、この気持ちは忘れてはいけない。 「さ、せつな。座って座って」 促されるままに回転椅子に腰掛けると、右肩に温かい感触が乗った。正面にはデジタルカメラを構えた美希と、その隣で微笑んでいる祈里がいる。 せつなは肩に置かれたラブの手にそっと首を傾けて、瞼を下ろした。 閉じた視界が電子音を合図に一瞬白く光って、また赤黒く戻った。 空は電球を飲み込んだ蛇の腹の色をしていた。足早に流れる雲で繰り返す明暗が、太陽の胎動のように思えた。 ポケットに入ったプラスチックの健康保険証を爪で撫でると、どこかで車のクラクションが鳴った。振り返ったりしてみたがどの車か分からなかった。交通量の多い道路の脇を歩くのは慣れていない。 「この辺は、まだ少ないほうだよ」都会のほうは、もっと凄いんだよ。とラブは笑う。 知らないこの道は、産婦人科の帰りだった。脇には絶えずビルディングがあり、それに陰る路地がある。じっと見るほどに針金虫が這い進むようにずんずんと路地が建物の隙間に入り込んでいく。光の届かない向こうを見ながら、せつなはラブに尋ねる。この道、先には何があるの。 「行き止まりだよ」 と、ラブは言った。 反対側に繋がっている、ということもあるらしいが、せつなはそれを聞いても何も言わなかった。 それきり、せつなは路地に眼を向けるのをやめた。雲がまた出しゃばるときにだけ、ちらと瞥見した。 「ねえラブ、これは何?」 やがてあるとき、古い店の軒先でせつなは足を止めて、膝あたりほどの信楽焼きの狸を屈んで見つめた。その狸の腹は白く大きく膨らんでいて、へそが贅沢すぎるほど出張っていた。 「あ、これはねえ」ラブが横に並ぶ。「商売繁盛のお守り」 「これを置くと、お店にたくさん人が来てくれるようになるんだよ」 そうなの、とか、へえ、といった相槌を打つ一方で、せつなの人差し指は、うっすらと筆跡のある狸の腹を触っていた。ざらりと小汚い感触があった。 またこのとき、指を返してその汚れを見るまでの間、せつなは少し以前のことを思い出していた。 「ここ二三日、ラブの様子が変なの」 いつもの公園、パラソルのない丸テーブルの上、小さく噛んだストローを指先で撫でながら美希と祈里に打ち明けた。その日はよく晴れていたが、夜は雲が厚かった。 「どんな風に?」という質問から、美希と祈里にラブの様子をこと細かに伝えた。せつなは随分と必死だったようだ。つまり幾日かラブの口数が少なかっただけで寂しいと感じたし、独力での解決よりも先に相談相手を必要としたのだった。 一通り質疑応答を交わした後で、美希は祈里に目を向けた。祈里は美希の隣に腰掛けていた。 そうなるとやっぱり、という美希に、あれだよね、と祈里は迷いもなく頷いた。なんとなく悪戯っぽいその二人の雰囲気に「あれって、なんのこと?」とせつなは業を煮やしたように見えたのかもしれない。せつなには『あれ』が何のことか皆目検討がつかなかった。 「あれよ。女の子の日」 ストローについた歯形が増えていたのを、指の腹が覚えている。 「女の子の日?」と首を傾げると祈里が美希に耳打つように言った。せつなはまだそういうことを知らないのでは、といった内容のことだった。こっちの世界にはまだまだ知らないことのほうが多い。 「ああ、ごめんね」と言ってから急に声を小さくして、今度は美希がせつなに囁いた。生理よ、きっと。彼女からは石鹸の匂いがした。 「セイリ?」 月経、というものも、学校で教わっていた。当時まさにタイムリーで、ちょうど保健の授業で学習し終えたところだった。あとそれに続く、妊娠や出産といった事項、避妊と中絶などを数回の授業を通して習い、実際の出産の映像を見たり実寸大の赤ん坊の人形を取り扱ったりする実習授業のようなものをする予定だったのだ。実際、その通りに授業は進んでいったのだが、とにかくこの時点で、せつなは月経現象についての知識と理解を持っていたのである。 「そうなの。ラブには、生理があるのね」 二次性徴とか排卵とかいった単語がせつなの頭の中を巡り、体内受精、着床、胎盤の形成、体内での発生、陣痛、出産と、アナログな生命誕生を一通り、せつなは思い起こした。教科書に載っていた、両腕を広げた母のような子宮の模式図が、体に宿る、母親になる、ということの暗示だと思った。爪が立てられたまま、せつなはそれを引きずっている。 「それは」 回想を終えて、せつなは黒ずんだ指先を同じ手の親指と擦り合わせて消した。 「幸せなこと?」結局両の指が汚くなっただけだった。 「そうだね。商売してるんだから、儲かったらそれはそれで嬉しいと思うよ」お金儲けだけ考えるのは良くないとも思うけどね、とラブは付け加える。 「帝王切開」 という言葉が急に脳裡に浮かんだが、狸の置物には大きな睾丸袋があった。 「本当は、こういう話は食べ物のあるところじゃしないんだけどね」 美希が苦笑いをしていたのを思い出す。立って、わけもなく首を上に向けると、赤い提灯が四つ見えた。左から二つ目の提灯、その真ん中より少し下のあたり、わずかに破れているところに透明なビニルテープが貼ってある。四つの提灯には、らあめん、とそれぞれ一文字ずつ書かれてある。全てまだ明かりを孕んでいなかった。全部、点くだろうか。あるいは中身が抜かれているのではないか。もう、じきに暗くなる。 またラブと他愛ない会話をしながら、家に帰ろう。ラブの横で、再び帰路についた。 空に広がる灰色の亀裂から陽が出ている。それでも、今に雲が陽の出口を縫合するだろう。いつかと同じ空模様だった。 「幸せってたくさんあるのね」 なら、代わりはいくらでもある。せつなは知っていることをわざわざ口に出すことはしなかった。 犬の小便でレントゲンの色に濡れた電柱が眼に入った。
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/1193.html
ラブ「今日は町内会の餅つき大会!みんなでお餅を丸めるお手伝いをするんだよっ。」 美希「とほほ・・・。誰よ、こんなときに晴れ着着て行こうなんて言いだしたのは・・・。」 祈里「美希ちゃんは、その姿もキリッとしててカッコいいと思う。」 美希「あ・・・りがと、ブッキー。」 せつな「これも、日本の伝統美なの?」 美希「そうね、伝統・・・は伝統かもしれないわね。」 カオルちゃん「いやぁ、晴れ着姿にたすき掛けか、イカすね、お嬢ちゃんたち!」 ラブ「ありがとう、カオルちゃん!」 美希「はぁ~。」 ――そして、餅つきが始まりました。 せつな「ラブ、大変よっ!四つ葉町にも魔人が現れたわ!」 美希「わぁぁっ、せつな、あれは違うのよ。リンクルン仕舞って!」 ラブ「見て見て、せつな。ああやってお餅をつくんだよっ。おじさんたち、手際よくてカッコいい! あ、カオルちゃんがつくんだ。カオルちゃぁん!カッコいいよぉ!」 カオルちゃん「サンキュー!言ったろ?おじさん、餅はついても嘘はつかないって。」 美希「それ・・・今言うことじゃないから。」 せつな「え?あれが、お雑煮に入ってたようなお餅になるの?」 祈里「そう。もち米を蒸かして、ああやって臼に入れて、杵でつくのが昔ながらのやり方なの。」 せつな「へぇ。二人一組で作るのね。」 祈里「そう。お餅が杵にくっつかないように手水をする人がいてね・・・え、ミユキさん!?ナナさん、レイカさんも!」 ミユキ「みんな見てて!餅つきもダンスと一緒、二人の呼吸を合わせるのが大事なのよ。それ、よいしょ!よいしょ!」 魚政の主人「トリニティが餅つきするたぁ、新年から縁起がいいや。いよっ!近頃の女の子はパワフルだね!」 タルト「ミユキはん・・・あんさんは、掛け声だけかいな。」 ――ひと臼つき上がりました。 魚政の主人「ほい、つき上がったよ。よろしくな~。」 駄菓子屋のおばあちゃん「あんたたち、餅を丸めるなんてしたことないだろ。ほら、こうやって水を手に付けて・・・」 ラブ「ふむふむ・・・あっついっ!!」 祈里「ラブちゃん、大丈夫?」 駄菓子屋のおばあちゃん「そりゃ熱いさ。ほら、素早く千切って餅取り粉の上に置いて行くんだよ。」 美希「何だか難しそう・・・。」 駄菓子屋のおばあちゃん「難しいことなんかあるかね。しょうがない、お手本見せてやるよ。・・・ほら、やってみな。」 ラブ「ダメだぁ。ねばねばしてるから、よけい熱いよぉ。」 せつな「しょうがないわね。貸して。」 祈里「・・・せつなちゃん、凄い!」 ラブ「うわぁ、見る見るうちにお餅の塊が並んでいくよ!」 美希「しかも、完璧に同じ大きさね。」 駄菓子屋のおばあちゃん「・・・・・・。ふん、こんなもんだね。」 魚政の主人「ばあさん、正月早々、相変わらず素直じゃねえなぁ。恐れ入りましたって、顔に書いてあるぜ?」 ――さあ、お餅を丸めましょう。 美希「こんなものかしら・・・。見て、きれいな丸い形。」 祈里「ふふっ、結構ハマるかも。楽しい。」 美希「なんかこの大きさと形って、何かを連想させるわね・・・。」 祈里「ヤダ、美希ちゃん、どこ見てるの?」 美希「ちっ、違うわよ!ラ、ラブは出来た?」 ラブ「うーん・・・出来た・・・かな?」 美希「・・・クローバーだからって、ハートマーク作ってどうするの。」 ラブ「違うよ、美希たん。うまく丸にならないんだよぉ。」 せつな「ねぇラブ、やっぱり桃園家では、元日に食べたみたいに、こういう四角いお餅にするの?」 美希「うわっ、せつな、これどうやって丸めたの?いや、これ、丸めたって言うか・・・」 魚政の主人「おうっ、もう伸し餅も作ったのかい?あれ?一切れだけ??」 ――出来上がり~。みんなで試食です。 ラブ「ん~、美味しい~!!」 せつな「ホント。それに、いろんな味付けがあって楽しいわ!」 祈里「つき立てって、こんなに柔らかいのね。」 美希「危ない危ない。食べ過ぎちゃいそうだから、気を付けないと。」 ラブ「今年もクローバーと、クローバータウンストリートのみんなで、幸せゲットだよ~!」 ~おわり~
https://w.atwiki.jp/love_plus/pages/130.html
新・彼女通信 現在分かっている情報 ラブプラスの彼女通信のように彼氏の傾向だけではなく、直前のイベントでどんな風だったかというようなことまで暴露される(イベントと連動する)。
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/193.html
せつなが消えてどれくらい経ったのか。 時間の止まった部屋に祈里もまた、足止めされている。 一人取り残された祈里は乱暴にベッドに身を投げ出した。 ふわり……、とせつなの香りが全身を包む。 (匂いだけなら………) 匂いだけなら、まだこんなにも愛しい気持ちになるのに。 辛い。そう思っていた頃がいかに幸せだったか思い知る。 ふと目が合う。不意に肩が触れ合う。笑顔であだ名を呼ばれる。 それだけが、自分に手に入るすべてだった頃が。 辛い、そう思ってた。自分を見てくれない。気持ちに気付いてくれない。 どんなに焦がれても、手が届かない。 眠れぬ夜を過ごし、ラブへの嫉妬で身を揉んだ。 けど、その思いは決して穢れたものではなかったはずだ。 よく、こんな事が出来たものだと思う。自分だったら死にたくなるだろう。 自分の行為を棚上げして、他人事のようにそう思う。 酷い、事をした。誰が聞いても眉をひそめ、自分を糾弾するだろう。 『許して』、その言葉を口にするのすらおこがましい。 「好きよ」 「本当に、不思議だけど」 せつなが自ら発した言葉だとしても、本心だと言う保証なんてどこにもない。 逃れるために、口にした保身のための台詞だとしてもおかしくはない。 心のない、虚ろな繰り事を飽くことなく強要してきたのは、 他ならぬ祈里自身なのだから。 「……『好きよ』だって。」 馬鹿にしてるの?わざと投げやりに聞こえるように声に出してみる。 上手く、いかない。 嬉しい、確かにそう感じている自分がいるから。 許してもらえるの? あり得ない事を考える。 どうしたって、言い訳すらするのは卑怯だろう。 確かに辛かった。どうしようもなく。 しかし、だから何だと言うのだ。 そんなこと、せつなには関係ないのに。 一度たりとも、せつなに直接思いを伝えた事なんてなかった。 それを、せつなが気付かないからと言って、彼女に何の責任があると言うのだ。 自分の狡さを直視すれば、自分が壊れてしまう。 本当は分かってた。せつなが自分を見てくれない。そんなのただの言い訳だって。 わたしは、自分のものにならないと分かってる物を壊してしまいたかっただけ。 だから、その責任を壊される本人に擦り付けようとした。 『せつなちゃんが悪いんだからね』 そう言いさえすれば、よかったのだ。 そうすれば、せつなに何をしても自分は悪くない。そう、 自分を騙す事が出来たから。 言い訳さえ手に入れれば、せつなにはいくらでも辛く当たれた。 体を弄ぶばかりでなく、心も苛んだ。 人として、こんな事は絶対に言われたくないだろう言葉を敢えて投げ付けてきた。 せつなは一度として反論なんてしなかった。 呼び出せば、いつでも応じる。 最初は震えていた。特に初めて呼び出し、わたしが本気でなぶる気だと 理解すると紙のように白く血の気を引かせていた。 始めの数回は、終わるといつも堪えきれないように泣き叫んだ。 許してくれと言う懇願を、わたしは子供の戯れ言程にも相手にしなかった。 せつなを完全に支配下に置いたかのような、歪んだ満足感。 わたしは、どうにでも出来る、と。 しかしその内、せつなは心を閉ざし、人形のように空の体を差し出す事で、 自分を守ろうとするようになった。 心の中から自分を消し去ったせつなに祈里は苛立ち、ただ、せつなをいたぶる。 いつの間にか、そんなふうになっていた。 壊れてしまえばいい……本気で、そう思いながら。 心は諦める。せめて体だけでも。………そう思っていたはずなのに。 せつなの体の甘美さは祈里を陶然とさせた。 夢中で貪り、すべてを忘れた。 しかし、せつなの心は祈里の一切を無視した。 拒絶ですらない。せつなは自分を弄ぶ祈里を、心に蓋をし、完全に閉め出した。 体は確かに愛撫に応える。でもそんなものは、ただの反射に過ぎない。 目にゴミが入れば涙が出る。食べ物を口にすれば唾液が涌く。 それと、同じ事。分かっていた。 だから、敢えてせつなの体の変化を事細かくせつなに聞かせた。 (気持ちよさそうね。ラブちゃんじゃなくても、感じちゃうんだ。) ラブの名を口にしたときだけ、せつなの瞳が揺らぐ。 愛撫を快感として受け入れる自分の体に罪悪感を覚えている。 そんなせつなの様子に祈里は暗い満足感を覚えていた。 「もう、ここには来ないわ。」 何がせつなにそう言わせたのかは分からない。 今のせつなに鎖を断ち切り、振りほどく力などないと思っていた。 でも目をそらさず、そう、確かにせつなは言い切った。 本気で、ラブに話す気なんだろう。 わたしが好き。わたしの気持ちが悲しい。 せつなは、真っ直ぐに目を見てそういった。 先に目をそらしたのは、わたしの方。 (わたし…勘違いしちゃうかもよ……) 謝れば…、許してもらえるのかも……って。 謝るなんて卑怯だろう。 傷付けた相手に、許しを強要するなんて。 後悔してる……なんて、口が裂けても言ってはいけない。 謝って楽になる。わたしに、そんな贅沢は許されないはずだ。 踏みつけにした相手にすがって、許しを乞う。 自分にそんな勇気があるとは思えなかった。 せつなは自分の部屋に戻るなり、へたり込んだ。 (アカルンって便利よね……) こんな姿、誰にも見られなくてすむもの。 立っていられない。平衡感覚がおかしい。ベッドまで這って行く気力もなかった。 蛇口が壊れてしまったかのように、涙が止まらない。 私は、おかしくなってしまったんだろうか。 祈里の言葉が頭を回る。 「わたしのこと、考えたことなんてないくせに。」 本当に、その通りだったな。と今さらながら感じる。 今まで愛情も、優しさも何一つ与えられた事はなかった。 その私が、生まれ変わって溢れんばかりの愛情に包まれた。 家族、友達、そして何より大切な人。 空っぽだった心身にそれらは惜しむことなく注ぎ込まれ、溢れて、こぼれていった。 そして私は、慣れない幸福に溺れてしまったのかもしれない。 こぼしてしまったものの中に、取り返しのつかない大事なものがあったかも知れないのに。 祈里は大好きだった友達。ラブを除いて、「東せつな」として 生まれ変わってから、初めて出来た友達。 ラブとは違う、私がイースだった過去を知った上で、 微笑んでくれた。 『気持ちよくなれれば、誰でもいいんじゃないの?』初めての夜、祈里に言われた。 深い意味はなく、ただなぶるために投げられたのだと言う事は分かる。 でも今になって、心に突き刺さる。 (本当に、そうだもの。) 半分当たっていた。今なら、そう思う。 ラブとはまた違った、控え目で柔らかい祈里の空気が好きだった。 祈里といるとホッとする。ゆったり時間が流れて、癒されるって こんな感じなのかと知った。 でも私は、本当に祈里が好きだったの? ただ、祈里がくれる心地よい空間が好きだっただけ。 自分を優しく包んでくれる空気。 そう、心地よい気分にさせてくれるなら誰でもよかったのかも知れない。 祈里でなくても……。 そして、ふと、心をよぎった思いがある。 どれほど、心身が悲鳴をあげても私はラブに抱かれたかった。 例えラブの目に探るような固いしこりが見えても。その手から優しさが消えても。 体だけでも繋がっている。そう思えるだけで、嬉しかった。 (祈里も……そうなの…?) 心が手に入らないなら、体だけでも。 無理矢理にでも体を重ねれば、何かしら相手の心に自分を刻めるかも知れない。 祈里を、自分に重ねてみた。 もし、ラブが…自分を見てくれなかったら。 ただの友達。それだけならいい。我慢できる。みんな同じなら。 誰も特別な人などいなく、みんなと同じ、ただの仲の良い友達。 でも、そのラブの目にはいつも他の誰かが映っていたら。 『あなただけが特別』、誰が見てもそう思う相手が、すぐ身近にいたら。 ラブが自分を他の誰かの代わりに抱く。 どれほど体を重ねても、ラブの心に自分の影すらない。 愛し気に愛撫を繰り返しながら、他の誰かの名前を呼ぶ。 考えただけで、心が凍り、ヒビが入る気がする。 たぶん、正気では、いられないだろう。 私が、祈里にしていたのは、そういう事。 (もう、止めなければいけない。) 祈里の心が壊れてしまう前に。 そう思った日、初めて祈里を思って涙が出た。 ラブは許してくれないかも知れない。 穢らわしい物を見るような目で見られるかも知れない。 けど、ラブにどう思われようと、側にいることは出来るはずだ。 ラブが、許してくれなくても私がラブを好きでいる事は出来るんだから。 私が心を閉ざし、踞っている間にどれだけラブも祈里も傷付いただろう。 自分が一番辛いと思い、目も耳も塞ぎ、過ぎるはずのない嵐をやり過ごそうと 意味の無い我慢を重ねていた。 私さえ、ちゃんと目を開いていれば、もっと早く終わらせる事が 出来たはずなのに。 (私って、本当に馬鹿……) 今日だって、祈里とちゃんと話そうと思って行ったのに。 いざ、祈里を前にすると体がすくんだ。きっぱり拒否する事も出来ず、 伸ばして来た手を押し留めるのが精一杯だった。 それに……、祈里と話すために行ったのに、口から出るのはラブの事ばかり。 あれではますます祈里を傷付けただけではなかったのか。 最後に、取って付けたように『祈里が好き』。 後は逃げるように帰ってきてしまった。 優しくしてくれるから、祈里が好きだったわけじゃない。 何を言われても、どんな事をされても嫌いになんてなれなかった。 だから、もうこんな事はやめにしたい。 そう、伝えたかったのに。 祈里は、私の言葉を信じてくれただろうか。 もう、元には戻れないのかも知れない。 来てしまった道を後戻りは出来ない。 けど、また違う道に進む事は出来るのではないか。 話せばすべてが壊れてしまうかも。 でも、このまま暗い穴の中へみんなで堕ちていくよりは、 ずっとマシだと信じたい。 まだ、間に合う。……そう、信じたかった。 (………お願いします。) 祈った事なんてなかった。でも、今は何かに祈らずにはいられなかった。 4-33へ続く
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/812.html
「せつ……な……」 また、せつなを呼ぶ自分の声で目覚める。 時々見る、まったく同じ夢。 せつながあたしから離れて、遠くへ行ってしまう夢。 それは夢なんかじゃなかった。まごうことのない、現実。 あたしは確かにそれを受け入れたんだ。 お互いがんばろうねって、笑いもした。 けどそれは、ふり。受け入れた、ふり。 頭では理解していても、心では納得ができないでいる。 あたしはせつなを想う。夏になった今も、なお。 「ラブ、おはよ」 「おはよ、由美」 「放課後、昨日言ってたケーキ屋さんにみんなで行くの。七夕スペシャルパフェ。ラブも行くでしょ?」 「そうだね」 「蒼乃さんや山吹さんも誘う?」 「どーかな、ふたりとも忙しそうだから」 「そっか、残念だね」 予鈴を合図に、あたし達は席に着く。 あたしは授業に没頭する。 この春、著しく成績が下がって、お母さんは学校から呼び出しを受けた。 けど、お母さんは何も言わなかった。それが、かえって辛くて、あたしはお母さんに八つ当たりをした。 そんなあたしに、お母さんは言った。 「ラブ、せっちゃんの所に行きたいなら、構わないのよ」 「えっ……」 あたしは言葉を失った。 「ラブの気持ちくらいわかるわ。これでもあなたの母親だもの。 けど、約束して。いつかせっちゃんとまた会える日のために、自分を磨いておいてほしいの。 あなた達が再会した時、せっちゃんがもっとラブを好きになるように」 お母さん、ありがと。あたし、ちゃんとするよ。 いつか、せつなと一緒に居られるようなあたしになるために。 それからだ。あたしの成績はぐんぐん伸び、気づけば勉強が面白くなっていた。 せつなと暮らしていた頃の特訓で、基礎は叩き込まれていたらしい。 両親や先生だけでなく、美希たんやブッキーにも誉められた。 それでも、相変わらず夢は見た。 離ればなれになったばかりの頃は、毎晩のように見ていた夢。 回数こそ減ってはいたが、時々思い出したように定期的に見てしまう。 まるで彼女の居ない現実を、目の当たりにさせるかのように。 せつなの夢を見た日は、なかなか寝付けない。 朝の夢の残滓を引きずるように、ベッドの中で悶々とする。 せつなの声を、指を、舌を、あたしの身体は痛いくらいに覚えてる。 今夜もそうだった。 あたしは、パジャマにそっと触れる。 せつなのとおそろいの、ピンクのパジャマの中に、優しく手を差し入れた。 これは、せつなの指。 胸の突起を転がす。物足りない。唾で指を湿らせ、もう一度つまびいた。 これは、せつなの舌。 「ふ……」 愛しい人を思い出し、声がもれる。 胸への刺激は続けながら、もう片方の手を下着の中に差し入れる。 熱い潤いを感じ、塗り広げていく。中心に息づいた芯を、中指で左右に押しながら揺さぶる。 快感が全身に伝わってゆく。 「せつなっ!せつなあっ!」 何度も腰が跳ね上がり、あたしは果てた。 せつなを感じ、せつなをなぞる行為に夢中になった。 だから、気づかなかった。一瞬、赤い光が部屋を満たしたことに。 「はあ……はあ……」 まだ息の荒いあたしの脚に遠慮がちに触れる、誰かの細い指。 余韻に震えるあたしに生まれる、驚きと戸惑い。 その指は、ぴんと突っ張るように伸ばしていたあたしの脚を開く。 暗闇であたしの中心を探り当て、忍び込む。 馴染みのある感覚。この感じ、あたしのここは覚えてる。 愛しい指は、ノックするように抜き差しを繰り返した。 「ううっ、あん!あん!」 声を押し殺し、啼く。叫ぶ。大きくなる確信。沸き上がる歓喜。こぼれ落ち、シーツに染み込む涙。暗かった世界は、真っ白になった。 ぐったりしたあたしに、せつなはキスの雨を降らせる。 「帰ってくるなら連絡してよ……」 「恥ずかしいラブの姿を見たかったから」 「もう!」 「ふふ、驚かせた?ごめんなさい。けど連絡はできなくて。何故かメールも電話も繋がらないの。今、原因を調査中」 「今日は休暇?初めてだね、会いに来てくれるの」 「ええ。今日だけは絶対帰るって、行く前から決めてたから。ウエスターやサウラーも呆れてたけど」 せつなは楽しそうに笑った。 たくさん話した。せつなの仕事、ラビリンスの様子。 復興を最優先にするために、リンクルンを鍵のかかる場所にしまいこみ、その鍵をサウラーに管理してもらっていたこと。 復興が一段落し、いざリンクルンを取り出してみると、電話もメールもできなくなっていた。 けど、せつなはがんばれた。 七夕には帰る。あたしに会いに。そう決めていたから。 そして……。一人寝の夜のこと。あたしを想い、せつなもひとりで苦しんでいたんだ。 あたし達って、似た者同士なのかな。 「これからもっと忙しくなるの。でも、必ずまた来るわ」 「あたし、せつなが」 「待って。わたしに言わせて。いつか、いつか大人になって、ラブが自由にどこにでも行けるようになったら……ラビリンスに来てほしいの!」 「……」 「返事は?」 「……ずるい」 「何が?」 「あたしが先に言うつもりだったのになー。いつかラビリンスに、せつなの側に行かせてほしいって」 「ラブ……約束よ?」 「もちろん!せつなの側がいい。せつなの側じゃなきゃ、いやなの」 抱きしめたせつなから、想いがあふれてる。たぶん、あたしからも。 たとえ住む場所は離れてても、心は離れない。 誓いの口づけ。七夕の夜に、将来を誓い合う恋人たちのシルエット。 織姫と彦星も、きっと天の川から見てる。 あたしはこの夜を、一生忘れない。
https://w.atwiki.jp/dangerousss4/pages/433.html
ベストSS このページではダンゲロスSS4ベストSSへの投票結果・コメント内容を公開します。 このページには表試合SS、裏試合SS、幕間SSの全てに関するネタバレが含まれる可能性があります。 ネタバレを回避したい方はご注意下さい。 コメント内容【最新試合までのネタバレ注意!】 第一回戦SS・寺院その1 ショッピングモールその1 第一回戦 湿地その2 第一回戦SS・教会その2:SS4の開幕に相応しい素晴らしいSSでした。ウィー!アー!チャンプ! 戦場跡その1 第一回戦SS・氷河その2。 相手の能力を書き、自分の設定を詰めながら能力攻略を主軸にガッツリという、緻密で濃密なる能力バトルの応酬で、「ダンゲロスSSではこういうものが見たかったんだ」という感じを一番受けたSSです。 寺院その1 瞬間的連続女陰交換というトラウマを読者に叩き込んだ一本 軍用列車その2ですね。アレがなければ色々と生まれていなかったので。 軍用列車その2 自薦だけど全部振り返ってみてもこれが一番好きだった。 2.崎々亭主人の悲恋(蒿雀ナキ) 軍用列車SSその2 幕間『外伝・山禅寺梟奇の受難』を推します!これは最高でした!素晴らしき探偵与太世界!梟奇さんとショウ子ちゃんの親子愛!三千字制約で自らが苦しんだ鬱憤が炸裂するように筆が乗っているのが読んでて伝わってきて痛快でした! 表一回戦第一試合「教会」その2 動物園その3。あれを出されたらどのSSがきても、これが好きって言って投票しちゃいそうなパワーがあった。 【過去】坑道その1 裏トーナメント決勝その2 表第一回戦第4試合その1 教会の長い方 第二回戦SS・駅その2 ★第二回戦SS・坑道その1 何一つ不満点なく手放しに大絶賛できるのはこのSSですかね。 もう本当ずるい。神父様あんなメタ的にバカスカ殴ってくるのに他の二人の描写めっちゃ素晴らしいんだもん。最高かよ。 第一回戦教会その2 SSキャンペーンが始まって間もなく俺にこのキャンペーンの参加者のレベルの高さを叩きこんでくれたSSです。一人の男の一生、能力の掛け合い、対戦者間のドラマなどいろいろな魅力がぎゅっと詰め込まれたSSだと思います。 幕間【カーテンコールは誰がために】 第一回戦SS・病院その1 優勝したキャラに敢えて言うのもおかしな気がするが、一回戦、病院でこの人と当たって勝てたキャラは今回いたんだろうか? 第一回戦SS・教会その2 第一回戦、長い長いキャンペーンの先陣を切ったのは英雄の姿と、一人の男の生涯でした。 得票数に圧倒されると共に、読者に刻まれたその思いは消えることはないでしょう。 準決勝戦SS・ショッピングモールその2 準決勝戦SS・ショッピングモールその2 飛び道具部門1位:【過去】駅その3 この3人の組み合わせでこんなSS書くとかずるいよ! インパクト部門1位:【古代】寺院その1 ジュブナイル相手に色々蹂躙し放題のビッチ力が凄まじかった…… ユーモア部門1位:【過去】劇場その1 ファントムタイガーはアツいけど笑った。 寺院その1 第一回戦SS・軍用列車その2 【現代】ショッピングモールその2。投票コメントにも書きましたが、幕間SSに仕込んだ札が一気に花開いく構成に、ヒャー!とテンション上がってそのまま即座に投票しました 第一回戦SS・大浴場その1
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/1026.html
中学生特有の病気(心の方の)/そらまめ 「ど、どうしたのっ? 怪我?! 怪我したのせつなちゃんっ!!?」 「お、落ち着いてブッキー! せつな怪我なんてしてないから!」 「じゃあなんで右目に眼帯を…もしかしてものもらいとか?」 「ううん…それも違うんだよ…」 「?」 休日、いつもの公園で待ち合わせのためみんなを待っていた祈里は、若干疲れた様子のラブと、思いつめたように険しい顔をしたせつなを見つけて思わず駆け寄った。 ものもらいの時などにする一般的な白色の眼帯に思わず手を伸ばす。怪我でも病気でもないならなぜこんなものを… 「っ! 触っては駄目よブッキー!!」 「えっ!? ご、ごめんねせつなちゃん…やっぱり怪我したの…? 大丈夫?」 「ごめんなさいブッキー…でも、この眼帯は取っては駄目なの…外してしまったら、私にも手が付けられないかもしれない…」 「え? え? どういうこと…」 「この右眼にはかつて世界を滅ぼしたと言われている伝説の獣神の力が封印されているの。もしこれが解放されたら私は私でいられなくなってしまう。この街だけじゃなく世界を滅ぼす存在となってしまうかもしれないの。だから、これはいくらブッキーのお願いでも外せないのよ」 「………ほんとにどうしたの」 「ブッキー真顔であたしの顔見るの止めて。あと眼が死んでるよ戻ってきて!」 眼帯をしたせつなはいつものようにドーナツとドリンクを目の前に、やはり険しい顔を崩さない。時折右眼を触りながら、「ぐっ鎮まれっ! お前はまだ出てきちゃいけないっ!」 とか「ふふふっ、私の意識を乗っ取ろうとしてるみたいだけどそうはいかないわよ…」などと小声でぶつぶつ言いながら、たまに左腕もさすっていた。 「ごめんみんなっ、今朝の仕事が押しちゃって遅れちゃった…ってどうしたのラブ、ブッキー、目が死んでるわよ」 「「……」」 「あとせつな、眼帯なんてしてどこか怪我したの? 病気?」 「怪我でも病気でもないんだよ美希たん…」 「ぐぁっ…! また、封印を解こうとやつらが攻撃をっ…! みんな私から離れてっ!!」 「…………病気じゃない。心の」 「ああっ…美希たんの目まで死んだ魚みたいに…」 「ラブ、アレ、説明、ハヤク」 「なんで若干片言な上に命令口調…」 「心を病んじゃってるんだよねきっと…ほら、せつなちゃんって抱え込んじゃう所があるから日頃溜まったストレスがここにきて消化不良をおこしちゃってるんだよ!」 「ブッキー、アタシ何かの雑誌で読んだけど、こういうのって無理やり理解してあげようとすると返ってダメージが大きいらしいわよ」 「せつながああなったの実はよくわからなくて…昨日の夜学校の宿題の調べもので一緒にパソコン使ってたんだけど、あたし途中で寝ちゃって…起きたらあんな感じに…」 「原因はパソコンね」 「そうだね。それしか考えられないよ」 「あ、やっぱりみんなもそう思う? だよねえせつなの口から獣神とか普通でてこないよね…」 三人揃ってせつなを見た。視線に気づかない当の本人は左腕を抑えながら「ぐ、勝手に私の体を操作しようっていうのっ? そうは、させないっ!!」とか言いながらドーナツを掴もうとする左手を反対の手で抑えるというひとり芝居をしていた。この光景を見る自分の目がなんだか濁ったような気がするが、現実から目を背けちゃだめだ!と心の中の葛藤の末、思い切ってせつなに話しかけてみる事にした。 「せつな、よく聞いて。あなたは今病気なの。とても深刻な」 「み、美希ちゃんっ! ストレートすぎるよっ」 「ブッキー、こういう輩には自身を客観的に見るってことが完治させるには必要なのよ」 「美希…わかってるわ自分が病気だってことくらい…でもね、この苦しみは分ける事はできないの。この宿命から逃れるなんて無理なのよ。だから向き合わなくちゃ。現実と」 「なんだろう。合っているようで合っていないっていうか、せつなの現実がよくわからないよあたし…」 「宿命とかって単語があれよね。せつな、あなたのその病気はね、一種の思い込みのようなものなのよ。わかる?」 「ええ。誰にも理解されないって事は分かるわ。だってみんなには、前世の記憶ってないでしょ?」 「ああぁあ…」 「美希たん諦めちゃだめだよっ」 「でも、イースを前世と考えればせつなちゃんには前世の記憶があるって言えるかも…」 「ブッキー真面目に考えちゃダメっ!」 「私の中の力が暴走してしまう前に何とかしないと…」 「せつな落ち着いて!! 今暴走してるのはせつなの妄想だよっ!!」 収拾がつかなくなりそうだったので一旦言い争いは止めました。 その後、どうやっても会話が噛み合わなかったので半ば諦めたように様子を見る事にした面々は解散した。 結局、それからせつながいつものせつなに戻ったのは一週間後の話。 競作2-28は、この事件の「裏」のお話。
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/438.html
『それでね、今日は一晩、飲み明かしちゃおうかなーって』 「はいはい。わかったわ、ママ。あんまり飲みすぎないようにね――――うん、ちゃんと戸締りもしっかりしとくから、心配 しないで――――それじゃ、おやすみなさい」 そう言って、美希は電話を切る。そして、ベッドの上に座っていたせつなを見て、 「久しぶりに会った友達と飲んでるから、ママ、今日は帰らないんだって」 「・・・・・・そう」 頷いて、軽く目を伏せるせつなに、彼女は言う。 「帰ってもいいのよ? 別に、あたしは――――」 「ううん、平気」 ゆっくりと頭を振って、せつなは立ち上がった。 「シャワー、借りるわね」 「ええ、どうぞ――――着替え、持っていくから」 ありがとう。美希の方を見ようとしないまま、彼女は部屋を出て行く。パタン、と音を立てて閉まるドア。せつながいなく なった途端、急に部屋が寒くなったような気がして、美希はわずかに体を震わせる。それは多分に、ほんの数分前まで、 彼女を抱きしめていたせいだろうけれど。 平気、か。 せつなの台詞を思い出して、美希は小さく唇を噛む。 平気って、何が? 彼女の台詞に、そう聞き返せなかった自分。その弱さに、彼女は苦悩する。 シトシトシト 聞こえてくる音に、カーテンをそっと開ければ、いつからだろう、雨が降り出していて。 シトシトシト 小さな雨音が、やけに大きく聞こえるのは、この部屋の静寂のせいだろうか。自分しか、いない、この部屋。 「せつな」 窓の側で、呟いてみる。ガラスが曇って、外の景色が白く濁る。一つ、溜息。また白くなる、風景。 やっぱり、寒い、な。ああ、せつなの着替え、浴室に持っていってあげないと。 思いながらも、美希は、動けぬまま。 そっと外を眺め続ける。 雨に煙る、街並みを、眺め続ける。 Eas of Evanescence X せつなと交代で、シャワーを浴びる。いつもは快適なこの時間が、今は例えようも無く苦しい。 肌を流れる雫。ぬくもりが、けれど、感じられない。心が冷たくなってしまっているからだろうか。 それでも、永遠にそうしているわけにもいかず。美希はノズルを回し、シャワーを止めた。 脱衣所で、体を拭こうとして、ふと、鏡に気付く。完璧なスタイルを保つために置いた、姿見に映るのは、いつものように 完璧な自分の体。 真っ白の肌は、ほのかに赤みを帯びている。プルンと張って、ツンと上がった胸。くびれのはっきりとわかる腰。スラリ と細く長い足。努力に努力を重ねて、築き上げた自慢の体だ。 けれど、それはもう一つの意味を持っている。 イースに――――せつなに、抱かれた体と云う意味。 この体に、たった一箇所以外、彼女に触れられていないところはない。それほどまでに、激しく求められた。思い出す だけで、頬が赤くなる。胸が、せつなくなる。 声を出さずにいることは、本当に辛かった。愛に気付いてからは、なおさらに。それでも、耐え切ったのは、愛する故か。 その彼女の言葉。 「美希のことも、好きなの」 思い出しながら、美希はそっと胸に手を当てる。硬くなった蕾の向こう、体の奥で、激しく脈打つ鼓動。歓喜に、震えて いるのだ、心臓が。 パジャマを着て部屋に戻ると、すでに電気は消えていた。廊下から差し込む光で、美希はせつなを探す。が、すぐに 気付く。ベッドの布団が、膨らんでいる。誰かがその中に、いる。 廊下の電気を消して、薄暗闇の中を、そっとベッドに近付く。 かけ布団をそっと上げて、ゆっくりと潜り込むと、暖かなぬくもりがあって。 シトシトシトシト 雨の音が響く。ただ、その音だけが、響いている。 「――――せつな」 小さく、美希は呼びかける。 横になっていた彼女が、こちらを見て。 「――――美希」 そう呼び返してくる。 それが、きっかけだった。 抱きしめる。抱きしめる。 狂おしい程の想いを込めて、彼女の体を抱きしめる。 絞るように、強く、強く。 一つにならんとせんばかりに、激しく強く。 きっと、せつなは痛いと感じている。その自覚が、美希にはある。けれど、彼女は何も言わない。ただされるがままに なっている。美希の背中に手を回し、自らも体を近付けようとする。 それが嬉しくて。 それが、悲しくて。 「せつな」 「美希」 ようやく彼女の体を解放した美希は、自分の下になったせつなの顔を見ながら、そっと呼びかける。やはり苦しかった のだろう、少しだけ息を荒げていた彼女は、それでもしっかりと応える。 ぶつかる視線。美希は、せつなの手に、自分の手を重ねて。強く握り締める。 まるで、逃げられないようにしているかのように。 そんな彼女の行為を、せつなはとがめようとはしなかった。黙って、同じように、握り締める。 まるで、逃げないよ、と言うかのように。 そのまま、見つめ合う、二人。美希の長い髪が、せつなの頬をくすぐる。サラサラと。 やがて近付く、少女達の距離。 美希は、せつなに――――イースに触れさせていなかった、たった一箇所で、彼女に触れる。 唇を、唇に。 最初は、ついばむように、ただ重ね合わせて。 やがて、美希の舌がせつなの唇に触れる。彼女の前歯を、ノックする。 そして絡み合う、二人の舌。まるで生き物のように、激しく互いを求め合う。 淫らな音が、部屋に響く。夢中になって、美希はせつなを味わう。 どれだけしても、足りないと感じてしまう。もっと、もっとと思う。 けれども―――― ゆっくりと、彼女は顔を離す。闇に慣れた目で見れば、せつなの顔は赤く染まっているのがわかる。多分それは、自分 もだろう。 「ファーストキスよ」 「え?」 「あたしの、初めてのキス――――せつなに、あげたから」 美希のことを何度も犯しながら、イースは、彼女にキスをしたことはなかった。だから、体の全てを触れられ、嬲られた けれど、唇だけは純潔を守っていたのだ。 その純潔も、今、失われたけれど。 「美希――――」 困ったように、目をそらすせつなに、美希は小さく笑う。 「わかってる。せつなは、違うんでしょ?」 無言は、肯定。多分、彼女のファーストキスは、ラブに捧げたのだろう。 「いいのよ。気にしないで」 もう一度、唇に軽くキスをして、すぐに離れる。 「けど、覚えておいて。あたしのファーストキスの相手は、あなただっていうことを」 「美希――――」 何故か泣きそうな顔をするせつなに、美希は小さく笑って。 彼女のパジャマのボタンに、手をかける。 一つ、二つとゆっくりと外していく。 せつなは、何も言わない。 雨の音に混じるのは、彼女の呼吸。 全てのボタンを外して、そっと前を広げる。 横になっていても形の崩れない胸に、美希は手を当てる。 ひんやりとした空気の中で、せつなの体は火傷しそうな程に熱くて。 「美希」 彼女の唇から零れる、自分の名前。 美希は、目を閉じて微笑む。声を出さずに、小さく微笑む。彼女の胸に置いた手は、動かない。触れたまま、ただ、 そのぬくもりを感じるだけ。 「美希」 もう一度、呼ばれる。 その声音の中に、覚悟を感じて。 美希はまた、微笑む。 そして、そっと彼女の胸に顔を埋めた。 「――――美希?」 何もしようとしない彼女に、またせつなは名前を呼ぶ。今度は、問いかけるように。 それに、美希は、顔を埋めたまま応える。 「ありがと、せつな――――ラブに話すの、辛かったでしょ?」 体から伝わってくる、動揺。彼女が息を呑むのが、わかった。 泊まってくると言ってある。そう、彼女は言った。 けれど、それだけじゃないと、美希にはわかった。 せつなはきっと、ラブに話した。 自分や祈里とのことを、全て話した。 だからこそ、せつなは、ここにいる。 あたしの部屋で、あたしに抱かれている。肌を、重ねている。 多分それは、せつなの優しさ。あるいは贖罪。 あたしにしたひどいこと、その埋め合わせをする為に、彼女はここにいる。 そして。 それを、ラブは知っているだろう。 知っていて、送り出したのだろう。 それが、ラブの優しさ。 きっと今頃、ラブは耐えている。 自分の隣に、せつながいないことの苦しさに、耐えている。 そのせつなが、あたしという幼馴染に抱かれていることの苦しさに、耐えている。 耐えながら、苦しんでいる。 泣いている、かもしれない。 せつなはそれを、知っている。 知っていて、ここにいる。 多分それは、全てを精算する為に。 もう一度、最初から、始める為に。 ラブとの、関係を。 愛を。 もう一度、最初から。 我侭よね、せつなって。 心の中で、美希は呟く。 これが贖罪になると思っているのだとすれば、これが優しさだと思っているのだとすれば、見当違いも甚だしい。 あたしは、同情なんかされたくない。 あたしは、こんなことを望まない。 あたしは、あたしは―――― けれど。 蒼乃美希という少女は、完璧で。 完璧すぎて。 目の前の少女の心も、幼馴染の少女の心もわかってしまって。 彼女達が、これを優しさだと言うつもりが無いことも。 彼女達が、苦しんで出した結論がこれだということも。 理解、出来てしまって。 だから。 怒れない。 ただ悲しいだけ。 我侭にも、自分勝手にも、なれなかった。 だからといって、全てを悟ったかのように、自分の欲望を抑えることも出来なかった。 結果として、半端なまま。 最後まで達して、親友を傷付けることも。 逆に、全く触れずに、我慢することも。 彼女は、出来なかった。 満たされずに傷付くのは、美希自身なのに。 キスは、素敵だった。とろけそうになった。 せつなの体は、とても暖かくて、柔らかくて、もっともっと触れていたいと思った。自分の素肌を、重ね合わせたいと 思った。 けれども、もう、おしまい。 これ以上は、出来ない。 ううん。耐えられない。 あたしが。 「――――っ」 ギュッ、とせつなのパジャマを握る。顔を、せつなの胸に押し当てる。 それでもボロボロと瞳から涙が零れる。 噛んだ唇から、嗚咽が漏れる。 「美希・・・・・・」 「――――ッ――――ック――――クッ、ヒック――――」 止まらない。止められない。 ただ、激しく。胸の奥から、形にならない想いがこみあげてきて。 「――――ッック、アアァァァァン――――」 とうとう、抑えきれずに、大声を上げてしまう。 まるで赤ん坊のように、せつなの胸にすがりついて、大粒の涙を流しながら、叫ぶように、泣く。 「ウァァァァァ――――アァァァァッ――――アァァァァッン」 ただ、泣き続ける。 「ウァァァァァン――――ック――――アァァァァァ」 ただ、ただ、泣き続ける。 「アァァァァァ、ウァ、ウァ、ウァァァァンッ」 泣き続ける。せつなの胸は、美希の零した涙でビショ濡れになっている。 「美希――――」 せつなの声は、微かに震えている。けれど、せつなは唇を噛む。 泣くな、私。ここで泣くのは――――許されない。 「アァァァァァッ」 「美希――――」 泣きじゃくる彼女の頭に手を置いて、せつなは。 自分の胸に引き寄せながら、そっと撫でる。 それが――――それだけが、彼女の為に出来ることだったから。 やがて、泣き疲れたのだろう。 美希は、寝息を立て始める。 それを聞いても、なお、せつなは美希の頭を撫で続ける。 逆の手で、彼女の手を強く、握り締めながら。 チュン チュン 鳥のさえずりが聞こえて、美希は目を覚ました。 だが、すぐには起き上がらない。聞こえてくるのは、衣擦れの音。 隣にあった筈の、ぬくもりがもう、ない。繋いでいた手も、今は外されて。 行ってしまうんだ。 思うと、胸が苦しい。けれど、それをねじ伏せる。 これでいいんだ。これで。 「美希」 着替えが終わったのだろう。彼女が、こちらを向く気配。 そして、遠慮がちに、小さな声で囁く。 「私、もう、行くわ」 ええ。ありがとう。昨日は、一緒にいてくれて。 「本当に、ごめんなさい――――それから、ありがとう。私の我侭を、受け入れてくれて」 いいのよ。その我侭も含めて、好きになっちゃったんだから。 惚れた弱み、っていうのかしら。 「我侭ついでに言うけれど――――もしも、許してもらえるなら」 許すも何もないわ。あなたはいつだって、あたしの大好きな人だから。 たとえあなたが、あたしを一番に想っていなくても。 「これからも、仲良くして欲しいの――――都合のいい、お願いだけれど」 本当にね。 けれど、いいわ。都合のいい女になってあげる。 だってあたし、あなたと一緒にいたいもの。せつなと一緒に、生きていたいもの。 一生忘れないから。 好きって言ってくれたこと。 絶対に――――絶対に、忘れない。 この気持ちは、もう、表に出さないけれど、一生、忘れない。 「それじゃ、行くわね――――さよなら」 ええ。また、会いましょう。 その時は、大切な親友として。 大事な、仲間として。 また会いましょう。 せつなの言葉に、美希は起き上がることも、声を返すこともしなかった。 ただ、心の中で返しただけ。 横になり、目を閉じたままの美希に、せつなは背を向けて。 やがて、パタン。 扉が閉まる。 それで、おしまい。 せつなは出て行った。 残された美希の、きつく閉じられた目から、一筋。 涙が流れて、それで美希の恋は、愛は。 おしまい、だった。 それでいいと、美希は思う。 これが、ハッピーエンドなんだ、と。 だから少しだけ、もう少しだけ、彼女は泣く。 これは嬉し泣きなのと、自分に言い聞かせながら。 涙を流したのだった。 ――――epilogue―――― 「おかえり、せつな」 「――――ラブ」 家に辿り着いたせつなを、門の前で迎えたのは、ラブだった。 まだ早朝と言える時間。今日は休みだとは言え、こんな時間に起きているとは思わなかった。 いや――――彼女の眼の下には、わずかに隈が出来ている。 眠れなかった、のだろう。そして、ここで待っていたのだろう。せつなが、帰ってくるのを。 「ラブ・・・・・・」 「なんか冷えるね。昨日の夜の雨のせいかな。ほら、せつな、早く入らないと、風邪ひいちゃうよ」 微笑みながら、せつなを迎え入れようとするラブの姿に、彼女は何も言えずに俯く。 私は――――こんなにも、たくさんの人を傷付けて――――そのくせ、エゴを押し通そうとして、一人、幸せになろうと して―――― そんな彼女の表情の変化に、気付いたのだろう。 不意に、ラブはせつなの手を掴む。 「せつな」 「――――ラブ」 驚く彼女に、ラブは、微笑む。 「せつな――――笑って? ううん、笑おう。一緒に、笑お?」 あ、とせつなは、息を呑む。 ラブの微笑みは、いつもと違う。どこか無理を感じさせるもの。 それはきっと、辛いから。心が痛いから。 誰かのことを、彼女は思っている。思って、心を痛めている。 けれど、それでも彼女は笑う。 せつなという少女を、その苦しみを、全て受け止める為に。 笑う。 「・・・・・・ラブ」 名を、呼んで。 せつなは、笑った。 笑うことが、正しいことだと。 それが、傷付けた全ての人に対する、贖罪になるのだと、そう思いながら。 彼女は、目をうるませたまま、笑った。 「せつな。おかえりなさい。アタシ達の家に」 「――――ただいま。ラブ」