約 1,207,331 件
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/104.html
あの海から始まる物語(外伝):episode.0 クリスマスパーティーの夜。4人でラブの家にお泊まりして、楽しい夜を過ごす―――はずだった。 「なんだか…さっきからお腹が痛くて…」 パーティーも佳境に入った頃、急にブッキーが腹痛を訴え出した。 「ブッキー大丈夫?」 「すごく痛そう…」 「お母さんに何か薬もらってこようか?」 ブッキーを心配して、皆が口々に声をかける。 「平気…冬になったらよくあるの。おうちにある置き薬を飲んで、暖かくして寝てれば明日には治るから。タイミング悪くてごめんなさい…」 時折波のように襲い掛かる痛みを堪えながら、ブッキーが謝る。 そんな彼女を見るに見かねたのか、アカルンでブッキーを送って来ていい?とせつなが言い出した。 「それもそうね。外は寒くて暗いし、第一、お腹が痛いんじゃ、歩けないし」 アタシが賛成し、ラブも、うんうんそうしなよ、と続ける。 ブッキーは、せつなちゃんに悪いよ、と何度も断ったのだが、せつなは断固として聴き入れない。 ようやくブッキーが折れる形になり、家まで送ってもらうことになった。 「みんなごめんなさい、またね、ありがとう…」 ブッキーは弱々しく微笑い、せつなに抱えられるようにして、赤い光に包まれ帰っていった。 しばらくはタルトやシフォンを交えて、おしゃべりに花を咲かせながらせつなを待っていた。 けれど、眠くなったシフォンとタルトがせつなの部屋で就寝した後も、せつなは戻って来なかった。 「ちょっと遅すぎない?」 「そうだよね、せつなに電話してみる」 ラブがリンクルンを取り出した時、短いメロディーが鳴り、メールが来たことを告げた。 「せつなからだ。『ブッキーの御両親が明日まで不在で、一人にしておけないから泊まります』…だって。せつならしいや」 メールを見て安心したのだろう、ラブはアタシを見て笑顔になった。 ドキン ラブの笑顔を見て、急に胸が音を立てた。 アタシ…この笑顔に弱いのよね。 そういえば、ふたりっきりになっちゃったんだ。普段はせつなやブッキーがいるから、意識せずラブに自然に接することが出来るけれど、ふたりっきりって実はあんまり経験ないのよね…。 そう意識し始めると、さっきまでは普通に打っていたはずの心臓が、どんどん速度を速めてく。 「どうしたの美希たん、顔赤いよ?」 「だ、暖房効かせすぎかな~ハハ」 駄目だ。声が上擦ってしまう。美希のバカ!これじゃ、アタシがラブを意識していることがバレバレじゃないの! 「そうだ、お風呂入ろうよ」 突然のラブの爆弾発言。 「お風呂!?」 ……ゴクリ。やだ、生唾って本当に出るんだ。 「ら、ラブが先に入りなさいよ」 心にもないことを言うアタシに、ラブが唇を尖らせる。 「え~~!?折角お泊まりなんだし、一緒に入ろうよ~」 「し、仕方ないわね…」 うっしゃあっ!テーブルの下で小さくガッツポーズをしたのは言うまでもなく。 ラブの家の脱衣所、懐かしい。泥んこ遊びした後、よくあゆみさんに入れてもらったっけ…。 感慨にふけっているアタシをよそ目に、ラブはさっさと衣服を脱いでゆく。 「美希たん遅いぞ!先入っとくよ~」 ガラガラガラ。 引き戸を引き、ラブが浴室内へ。しまったー。感慨にふけってたばっかりに、ラブの裸体見逃した。じっくり拝む又とないチャンスだったのに…。 だけど、キュッと引き締まった桃尻だけは、確かにこの目に焼き付けたわ! 「♪♪♪~♪~美希ぃ、まだぁ~?」 鼻歌を歌いながら、ラブがアタシを呼び捨てる。 無意識なんだろうけど、あれにもアタシ、弱いのよね…。 「待ってて、今脱いでるから…」 きゃあ!何このセリフ!まるで恋人同士が一緒にお風呂する時みたいじゃないの! 「お…お邪魔します…」 身体の前に隠すようにタオルを垂らして浴室に入ってゆくと、ラブは湯舟に浸かり、前のめりになって浴槽にもたれていた。 !!! ち…ち…乳房が…浴槽に乗っかってる…?。 「どしたの?」 「ラブ…アンタ…胸、おっきくなってない?」 「あー、これ~?気づいた?最近なんか重いと思ったらさ~こんなになっちゃってた」 ラブが両手で胸を持ち上げ、ユサユサと揺らして見せた。ラブの胸の動きに合わせて、ぱしゃぱしゃと湯が波立った。 「にゃは~」 照れ臭そうに笑うラブ。か…可愛い。 ラブを見つめるアタシの鼻の下は自然と伸びて、なんだかタラーっと温かい液体の感触が…。 「美希たん!は…鼻血が」 ウッソー!やだアタシったら…。これじゃ、ただの変態じゃないの! 「大丈夫?」 「平気平気!ちょっと湯あたりしちゃっただけよ…」 「ヘンな美希たん!まだお湯には浸かってないじゃん」 「そ、そうとも言うわね」 アタシは知らんぷりして脱衣所に戻り、大急ぎでティッシュを鼻に詰めると、改めて浴室に入り、かけ湯をして湯舟に入る。 ザザ…ザザン お湯がこぼれ落ち、浴槽の中でアタシとラブは向かい合う。 「美希たんはあんまり成長してないね」 「うっさいわね!ほっといてよ」 どーせアタシはブッキーやラブに比べたらペッタンコですよ…。せつなもラブ以上にはありそう。クローバー貧乳コンテストがあったなら、間違いなくアタシが優勝するわね。 …だけど、ホントにおっきいわ、ラブのおっぱい。 見ないようにしていても、つい視線がそちらに向いてしまう。 ふっくらとハリのある丸みを帯びた部分。将来は赤ちゃんのためのお乳を出す器官。 授乳する母と子はとても神聖に見えるのに、ラブのおっぱいを見てると、どうしてこんなにいやらしい気持ちになるのかな…。 要するに、アタシがいやらしい目で見てるからなんだけど。 ちら。ちら。お湯に透けるラブのピンク色の乳首―――ちょっとだけさわってみたい。 そんなアタシの心をラブは読めるのだろうか。それともアタシの感情が顔に出てるんだろうか。ニマニマ笑ってラブが言った。 「さわりたい?」 「うんさわりたい…って、ええええっ!?」 「いいよ、美希たんなら」 アタシならいいって、どういう意味?ドキドキする…。アタシ、勘違いしちゃうよ。 「いいって言うけど、そんな簡単にさわらせていいの?」 「だってさわりたいんでしょ?……それに、あたしも…美希にさわって欲しいし」 上目使いで、恥ずかしそうにラブがこっちを見る。 アタシは小悪魔ラブの誘惑に…負けた。 「ラブのお願いなら、聞いてあげなきゃね。―――ここらへん?」 一番尖ってる先っちょをツンツン、と指でつつく。 「はあっ…」 悩ましげな声を出すラブ。もっと聞きたくて、アタシは親指と人差し指で摘んでみる。 ふにふに… 柔らかかった先っちょがだんだん硬くなってくる。喘ぎながら唇が半開きになり、陶酔したような顔のラブ。 やだ、何だろう。この気持ち。 もっともっと、ラブを喜ばせたい。もっともっと、ラブに触れたい。 アタシはラブの後ろに周り込み、後ろからラブを抱え込むように座り直した。 「もっとさわっても…いいでしょ?」 言いながら、すでにアタシの両手はラブの胸をさわさわと揉みはじめていた。 「あっ…んんっ…ふぁ…み、きぃ…」 ちょうどいい大きさに成長した乳房を掌で優しく揉みほぐしながら、指で突起を摘みこね回す。 アタシが刺激する度にラブが甘い声で応えるから、刺激はどんどんエスカレートする。 左手はそのままに、右手をそろそろと下ろす。ラブの薄い茂みの中は、お湯の中でもわかるくらい、熱いぬめりで満ちていた。 「ラブ…胸だけでこんなに濡らしちゃって…どうして?」 「だ…って…あっ…美希に…ふぅっ…ずっと前から、こう…されたかっ…たんだも…んっ」 息も絶え絶えに言いながら、ラブが振り向き口づけてきた。 ラブもアタシを想ってくれてた…!アタシは嬉しくてたまらなくなり、めちゃくちゃにキスをする。舌を入れて舐めまわし、ラブの舌を強く吸った。 口づけの間にも、指で茂みを探索する。敏感なトコを探り当て、くりくりと左右に揺すってみる。 「あああんっ」 びっくりするくらいの大声を出すラブに、アタシは思わず左手で口を塞ぐ。 「シッ、あゆみさん達に聞かれちゃうわよ。声出しちゃダメ」 ラブはうんうんと頷く。瞳には涙をたくさん溜めている。アタシの腕の中で乱れているラブが、とても愛しい。 静かになったラブの秘裂を、再び弄る。 指の腹を使い、淫核を優しく押し潰すと、ラブが声を出さずに吐息だけをもらした。 少しずつ吐息が早くなっていく。ラブが感じてるのを見ながらアタシも感じていく。硬くなった乳首が、ラブの背中に当たり、自然と擦りつける格好になっている。 きっとアタシの大事な部分も、ラブのように熱くなって今にも蕩けそうになっているだろう。 「――――っ!」 パシャッと湯が跳ねる。突然ラブが脚をピン!と伸ばしたのだ。そのまま脚が細かく震える。イッてしまったのだ。 ラブが果てた後も、彼女の脚の間からは愛液がとどまることなく溢れ出していく。 「はあっ…はあっ…」 ぐったりとアタシにしな垂れかかるラブの首すじや耳たぶに口づけながら、アタシは言った。 「すっごく可愛いかったわよラブ…」 「あたし…嬉しかった。美希とこうなれるなんて、夢みたい。けど…あたしだけ気持ち良くなってごめん。今度はあたしが美希に…してあげたいな」 振り向きながら恥ずかしそうに微笑むラブ。 「ありがとう…じゃ、続きはラブの部屋でじっくりと…ね?」 狭い湯舟の中での口づけ。最高。ああ…頭がぼーっとする。本当に湯あたりしそうだわ…。 「美希たん!反対側からも鼻血が!」 了 スピンオフ【良薬口に甘し】へ続く
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/484.html
【桃色天使は小悪魔だった~バスルームの誘惑~】/恵千果◆EeRc0idolE R18 クリスマスパーティーの夜。4人でラブの家にお泊まりして、楽しい夜を過ごす―――はずだった。 「なんだか…さっきからお腹が痛くて…」 パーティーも佳境に入った頃、急にブッキーが腹痛を訴え出した。 「ブッキー大丈夫?」 「すごく痛そう…」 「お母さんに何か薬もらってこようか?」 ブッキーを心配して、皆が口々に声をかける。 「平気…冬になったらよくあるの。おうちにある置き薬を飲んで、暖かくして寝てれば明日には治るから。タイミング悪くてごめんなさい…」 時折波のように襲い掛かる痛みを堪えながら、ブッキーが謝る。 そんな彼女を見るに見かねたのか、アカルンでブッキーを送って来ていい?とせつなが言い出した。 「それもそうね。外は寒くて暗いし、第一、お腹が痛いんじゃ、歩けないし」 アタシが賛成し、ラブも、うんうんそうしなよ、と続ける。 ブッキーは、せつなちゃんに悪いよ、と何度も断ったのだが、せつなは断固として聴き入れない。 ようやくブッキーが折れる形になり、家まで送ってもらうことになった。 「みんなごめんなさい、またね、ありがとう…」 ブッキーは弱々しく微笑い、せつなに抱えられるようにして、赤い光に包まれ帰っていった。 しばらくはタルトやシフォンを交えて、おしゃべりに花を咲かせながらせつなを待っていた。 けれど、眠くなったシフォンとタルトがせつなの部屋で就寝した後も、せつなは戻って来なかった。 「ちょっと遅すぎない?」 「そうだよね、せつなに電話してみる」 ラブがリンクルンを取り出した時、短いメロディーが鳴り、メールが来たことを告げた。 「せつなからだ。『ブッキーの御両親が明日まで不在で、一人にしておけないから泊まります』…だって。せつならしいや」 メールを見て安心したのだろう、ラブはアタシを見て笑顔になった。 ドキン ラブの笑顔を見て、急に胸が音を立てた。 アタシ…この笑顔に弱いのよね。 そういえば、ふたりっきりになっちゃったんだ。普段はせつなやブッキーがいるから、意識せずラブに自然に接することが出来るけれど、ふたりっきりって実はあんまり経験ないのよね…。 そう意識し始めると、さっきまでは普通に打っていたはずの心臓が、どんどん速度を速めてく。 「どうしたの美希たん、顔赤いよ?」 「だ、暖房効かせすぎかな~ハハ」 駄目だ。声が上擦ってしまう。美希のバカ!これじゃ、アタシがラブを意識していることがバレバレじゃないの! 「そうだ、お風呂入ろうよ」 突然のラブの爆弾発言。 「お風呂!?」 ……ゴクリ。やだ、生唾って本当に出るんだ。 「ら、ラブが先に入りなさいよ」 心にもないことを言うアタシに、ラブが唇を尖らせる。 「え~~!?折角お泊まりなんだし、一緒に入ろうよ~」 「し、仕方ないわね…」 うっしゃあっ!テーブルの下で小さくガッツポーズをしたのは言うまでもなく。 ラブの家の脱衣所、懐かしい。泥んこ遊びした後、よくあゆみさんに入れてもらったっけ…。 感慨にふけっているアタシをよそ目に、ラブはさっさと衣服を脱いでゆく。 「美希たん遅いぞ!先入っとくよ~」 ガラガラガラ。 引き戸を引き、ラブが浴室内へ。しまったー。感慨にふけってたばっかりに、ラブの裸体見逃した。じっくり拝む又とないチャンスだったのに…。 だけど、キュッと引き締まった桃尻だけは、確かにこの目に焼き付けたわ! 「♪♪♪~♪~美希ぃ、まだぁ~?」 鼻歌を歌いながら、ラブがアタシを呼び捨てる。 無意識なんだろうけど、あれにもアタシ、弱いのよね…。 「待ってて、今脱いでるから…」 きゃあ!何このセリフ!まるで恋人同士が一緒にお風呂する時みたいじゃないの! 「お…お邪魔します…」 身体の前に隠すようにタオルを垂らして浴室に入ってゆくと、ラブは湯舟に浸かり、前のめりになって浴槽にもたれていた。 !!! ち…ち…乳房が…浴槽に乗っかってる…?。 「どしたの?」 「ラブ…アンタ…胸、おっきくなってない?」 「あー、これ~?気づいた?最近なんか重いと思ったらさ~こんなになっちゃってた」 ラブが両手で胸を持ち上げ、ユサユサと揺らして見せた。ラブの胸の動きに合わせて、ぱしゃぱしゃと湯が波立った。 「にゃは~」 照れ臭そうに笑うラブ。か…可愛い。 ラブを見つめるアタシの鼻の下は自然と伸びて、なんだかタラーっと温かい液体の感触が…。 「美希たん!は…鼻血が」 ウッソー!やだアタシったら…。これじゃ、ただの変態じゃないの! 「大丈夫?」 「平気平気!ちょっと湯あたりしちゃっただけよ…」 「ヘンな美希たん!まだお湯には浸かってないじゃん」 「そ、そうとも言うわね」 アタシは知らんぷりして脱衣所に戻り、大急ぎでティッシュを鼻に詰めると、改めて浴室に入り、かけ湯をして湯舟に入る。 ザザ…ザザン お湯がこぼれ落ち、浴槽の中でアタシとラブは向かい合う。 「美希たんはあんまり成長してないね」 「うっさいわね!ほっといてよ」 どーせアタシはブッキーやラブに比べたらペッタンコですよ…。せつなもラブ以上にはありそう。クローバー貧乳コンテストがあったなら、間違いなくアタシが優勝するわね。 …だけど、ホントにおっきいわ、ラブのおっぱい。 見ないようにしていても、つい視線がそちらに向いてしまう。 ふっくらとハリのある丸みを帯びた部分。将来は赤ちゃんのためのお乳を出す器官。 授乳する母と子はとても神聖に見えるのに、ラブのおっぱいを見てると、どうしてこんなにいやらしい気持ちになるのかな…。 要するに、アタシがいやらしい目で見てるからなんだけど。 ちら。ちら。お湯に透けるラブのピンク色の乳首―――ちょっとだけさわってみたい。 そんなアタシの心をラブは読めるのだろうか。それともアタシの感情が顔に出てるんだろうか。ニマニマ笑ってラブが言った。 「さわりたい?」 「うんさわりたい…って、ええええっ!?」 「いいよ、美希たんなら」 アタシならいいって、どういう意味?ドキドキする…。アタシ、勘違いしちゃうよ。 「いいって言うけど、そんな簡単にさわらせていいの?」 「だってさわりたいんでしょ?……それに、あたしも…美希にさわって欲しいし」 上目使いで、恥ずかしそうにラブがこっちを見る。 アタシは小悪魔ラブの誘惑に…負けた。 「ラブのお願いなら、聞いてあげなきゃね。―――ここらへん?」 一番尖ってる先っちょをツンツン、と指でつつく。 「はあっ…」 悩ましげな声を出すラブ。もっと聞きたくて、アタシは親指と人差し指で摘んでみる。 ふにふに… 柔らかかった先っちょがだんだん硬くなってくる。喘ぎながら唇が半開きになり、陶酔したような顔のラブ。 やだ、何だろう。この気持ち。 もっともっと、ラブを喜ばせたい。もっともっと、ラブに触れたい。 アタシはラブの後ろに周り込み、後ろからラブを抱え込むように座り直した。 「もっとさわっても…いいでしょ?」 言いながら、すでにアタシの両手はラブの胸をさわさわと揉みはじめていた。 「あっ…んんっ…ふぁ…み、きぃ…」 ちょうどいい大きさに成長した乳房を掌で優しく揉みほぐしながら、指で突起を摘みこね回す。 アタシが刺激する度にラブが甘い声で応えるから、刺激はどんどんエスカレートする。 左手はそのままに、右手をそろそろと下ろす。ラブの薄い茂みの中は、お湯の中でもわかるくらい、熱いぬめりで満ちていた。 「ラブ…胸だけでこんなに濡らしちゃって…どうして?」 「だ…って…あっ…美希に…ふぅっ…ずっと前から、こう…されたかっ…たんだも…んっ」 息も絶え絶えに言いながら、ラブが振り向き口づけてきた。 ラブもアタシを想ってくれてた…!アタシは嬉しくてたまらなくなり、めちゃくちゃにキスをする。舌を入れて舐めまわし、ラブの舌を強く吸った。 口づけの間にも、指で茂みを探索する。敏感なトコを探り当て、くりくりと左右に揺すってみる。 「あああんっ」 びっくりするくらいの大声を出すラブに、アタシは思わず左手で口を塞ぐ。 「シッ、あゆみさん達に聞かれちゃうわよ。声出しちゃダメ」 ラブはうんうんと頷く。瞳には涙をたくさん溜めている。アタシの腕の中で乱れているラブが、とても愛しい。 静かになったラブの秘裂を、再び弄る。 指の腹を使い、淫核を優しく押し潰すと、ラブが声を出さずに吐息だけをもらした。 少しずつ吐息が早くなっていく。ラブが感じてるのを見ながらアタシも感じていく。硬くなった乳首が、ラブの背中に当たり、自然と擦りつける格好になっている。 きっとアタシの大事な部分も、ラブのように熱くなって今にも蕩けそうになっているだろう。 「――――っ!」 パシャッと湯が跳ねる。突然ラブが脚をピン!と伸ばしたのだ。そのまま脚が細かく震える。イッてしまったのだ。 ラブが果てた後も、彼女の脚の間からは愛液がとどまることなく溢れ出していく。 「はあっ…はあっ…」 ぐったりとアタシにしな垂れかかるラブの首すじや耳たぶに口づけながら、アタシは言った。 「すっごく可愛いかったわよラブ…」 「あたし…嬉しかった。美希とこうなれるなんて、夢みたい。けど…あたしだけ気持ち良くなってごめん。今度はあたしが美希に…してあげたいな」 振り向きながら恥ずかしそうに微笑むラブ。 「ありがとう…じゃ、続きはラブの部屋でじっくりと…ね?」 狭い湯舟の中での口づけ。最高。ああ…頭がぼーっとする。本当に湯あたりしそうだわ…。 「美希たん!反対側からも鼻血が!」 了
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/278.html
第21話『帰ってきたせっちゃん――ある日のせっちゃん。幸せの青い鳥――』 四つ葉中学校写生会。テーマは“街の景色”。午後の授業を全部使って、体操服に着替えた全学年の生徒たちは四つ葉公園に向う。 クローバータウンの象徴。広大な敷地を誇り、自然林に植樹を効果的に加え、四季折々の景観が楽しめる憩いの場所。 各クラスの先生は自由行動を許したが、生徒たちの足は自然と一箇所に向う。 通称――“もみじの道”。公園の一角にある、大きな湖に繋がる小道が真っ赤に染まる。 もみじの赤葉を中心に、銀杏とブナの樹の黄葉が連なり、色彩の調和を奏でる。 午後の陽を浴びて、赤と黄色の葉が輝きを増す。 足元にはそれぞれの落ち葉が積もり、柔らかなクッションとなって、道行く人々を優しく受け止める。 遠目にはオレンジ色の絨毯のようにも見える。皆一様に、自然が作り出した芸術作品を、感嘆の声をもらしながら眺めた。 「すっごく綺麗だね、せつな。創作意欲が湧き上がってきたよ」 「そうね。自信ないけど、精一杯描いてみるわ」 「ラブ! せつな! 一緒に描いていい? お邪魔なら遠慮するけど」 「もちろんだよ、由美」 「私は、始めからそのつもりだったわ」 クラスメイトの由美が、ラブとせつなに同行を申し出る。せつなと由美が視線を交わしてクスリと笑う。文化祭からの小さな変化だった。 仲の良い二人に、時々嫉妬するような態度を見せたり、積極的に割り込んだり。 ただ、どちらに嫉妬しているのかわからない。由美はラブとの友情に負けないくらい、せつなとも親しくなっていた。 湖のほとりに座り込んで、三人は背中を合わせるようにして写生を始める。 青く澄んだ湖に、紅葉がところどころ緋を落とす。メジロやヒヨドリ、多種の小鳥が気持ち良さそうに水浴びをする。 家族・友人・恋人連れを乗せた真っ白なスワンボートが、愛らしい鳥達と共に、静の景色に動きを与える。 せつなはその景色の美しさに心を奪われつつも、懸命に鉛筆を走らせる。 繊細に、正確に、緻密に、何より――忠実に。可能な限り、その美しさを損ねないように。 デッサンが終わると、絵の具で色を付けていく。何度も塗り直して、景色と照らし合わせて、自然美を再現していく。 「せつな……すごい、まるで写真みたい!」 「ホント、見惚れちゃう! 景色をそのままスケッチブックの中に閉じ込めたみたい」 「大げさよ。似せてはみたけど、写真には遠く及ばないわ」 「そりゃあ絵だもん。あたしなんて……」 「わたしだって……」 ラブの絵は、まさに自由奔放だった。そもそもどこの景色を描いてるのかすらわからない。 色彩もデタラメだった。赤や黄色はわかるとして、桃色の紅葉なんてどこの世界にあるのだろうか……。 由美の絵は、何を書いてるのかは一応理解できた。ただし、その絵はシンプルで曲線的にデフォルメされていた。 平たく言えば、丸っこくて単純なのだ。 複雑な地形の湖は、まるで円形のプールのようだ。枝や葉を再現しようとせず、木々はベタっと色だけで表現されている。 小鳥とボートは気に入ったのか、やけに大きく描写されていた。玩具のように可愛かったけど……。 スワンボートに至っては、湖の面積の一割を占めていた。 「由美の絵って子供の絵みたい! かわいくってあたし好きだよ」 「絶対! 馬鹿にしてるでしょ? ラブこそ、ピンクの紅葉はいいとして、どこに柿がなってるのよ?」 「生ってた方が楽しいかなと思って……」 「それじゃ空想画でしょ? 今は写生の時間よ」 目を丸くして二人の掛け合いを見ていたせつなが、「プッ」と吹き出した。つられてラブと由美も笑い出す。 ひとしきりみんなで笑ってから、せつなは自分の絵を見てため息を付いた。 「私は、ラブや由美の絵のほうがずっと魅力があると思うわ」 「ないない! ありえないって!」 「そうよ! せつなの絵なら美術部でも通用するんじゃないかな」 「でも、写真を撮らずに絵に描くのは、どう感じてるかを他人に伝えるためよね?」 「そっか、そんなこと考えてもみなかったよ」 「わたしはこの絵が好き。こんなに丁寧に描けるのは、この景色を大事にしてるからだと思うもの」 「それは、由美が私を知ってるからよ。友達が書いた絵って前提は、他人には通用しないわ」 ラブの絵はデタラメだけど、なぜか心に深く残る。いつまでも見ていたいような、あたたかい気持ちにさせてくれる。 由美の絵はいかにも女の子らしくて、可愛らしくて、やっぱり見ているだけで頬がゆるむ。 せつなの絵は緻密で、誰もが見た瞬間に驚くに違いない。でも、それだけ。“上手い”それ以上の感想を他人に与えることはないだろう。 記録媒体としてなら、写真や映像の方がずっと優れている。自由に感じて、自由に表現するのが絵。 知識としてわかっていても、理解して行動に移すことがどうしてもできない。 (やっぱり私には、ラブたちと比べて決定的な何かが欠けているのかもしれない……) 集合時間までまだ少しある。空き時間を利用して、ラブと由美と一緒に散策を楽しんだ。 その間中、せつなの表情は冴えなかった。 幸せになると決めたからこそ、前向きに生きると誓ったからこそ、小さな不安は棘となってせつなに刺さるのだった―― 『帰ってきたせっちゃん――ある日のせっちゃん。幸せの青い鳥――』 カツン カツン カツン 日曜日の朝、日が昇る前の薄暗い時間、せつなは小鳥に起こされる。 この世界に来て、安心して眠ることを学んだ。今のせつなは、ただ鳥が鳴くだけなら目を覚ましたりしない。 その日は特別だった。見たこともない小鳥が窓をつつく。まるで、せつなを呼んでいるかのように。 (青い鳥? 確か幸せを運ぶって、そんなお話があったはず) 目の覚めるような鮮やかな青い羽。クルクルと動く愛らしい瞳。近づくと、小首をかしげるような動作の後、パッと飛び立った。 せつなの視力は、常人の遥か先まで見渡すことができる。小鳥は公園の湖の辺りの樹に止まったようだった。 (追うつもりはないけど、名前くらいは知っておこうかしら) せつなは私服に着替えて、公園に出かける支度をする。この前の反省から、「散歩に行ってきます」と机の上に書き置きを残した。 また会えたなら、携帯で写真を撮ろうと思った。ふと、机の棚に立てかけてあったスケッチブックが目に入る。 (そうだ、写真に収められなかったら絵を描こう。正確に描くこと“だけ”は得意なのだから) 絵でもちゃんと特徴を捉えられたなら、祈里に聞けば名前くらいはわかるだろう。図鑑で調べてもいい。 結局、絵のセットを一式持って行くことにした。 (この辺りのはずなんだけど……) 四つ葉公園の“もみじの道”を通って、湖のほとりに着く。それは先日の写生会で、ラブと由美とスケッチをした場所でもあった。 奇しくも全く同じ場所で、一人の少女が腰を掛けてデッサンに耽っていた。 歳は自分とそんなに違わないような気がした。いきなり声をかけて驚かせないように、わざと足音を立てて近づく。 ガザガザと落ち葉や小枝を踏む音がしてるはずなのに、少女は気が付く様子がない。 悪いと思いつつも、せつなは声をかけた。 「あの、おはよう。邪魔してごめんなさい。青い小鳥を探しているのだけど、見かけなかった?」 意識して大きめの声を出したにもかかわらず、やっぱり少女は気が付かない。 意図的に無視をしている――というわけでもなさそうだった。 姿を見せたら反応してもらえるかも? と思って前に回りこんでも、やっぱり気が付かない。 一心不乱に鉛筆を走らせていて、それ以上前に出て視界を塞ぐのは躊躇われた。 せつなはため息を付いて、すぐ横に腰をかける。 とても美しい少女だった。“小柄で可憐”と言ったら失礼になるのだろうか? 身長もせつなと大差ないはずなのだから。 それでも、“小さい”という印象を与える顔立ちだった。 紫色の髪。白のブラウスの上に青いシャツ。紺色のジーンズ。一見して、青の印象を与える少女。 まるで――あの小鳥が、この少女に変身したかのようだった。 (どうかしてたわね。こんな大きな公園で、一匹の小鳥になんて気が付くはずないのに) いつの間にか、小鳥の行方が気にならなくなっていた。それよりも、今はこの少女とお話したいと思った。 どこを描いているのかしら? と、せつなは少女のスケッチブックに目を落とす。 思わず息を呑む。 それは数日前、せつなが選んだ景色とほとんど同じ場所の風景画だった。 それだけなら驚くには値しない。そこが最も美しいと感じたからこそ描いたのだ。目の前の少女が、同じ景色を選ぶのも不思議ではない。 しかし、出来栄えには、実力には、天と地ほどの開きがあった。 ラブや由美のように、抽象的というわけではない。せつなと同じ、写実的な絵だった。 繊細に、正確に、緻密に、何より――忠実に。可能な限り、その美しさを損ねないように。 それでいて、何か心に訴えてくるものがあった。まるで、絵に描かれた木々や葉や小鳥に、本物の命でも宿っているかのように。 やがてデッサンが完成する。「ふうっ」と、大きく息を吐いて、少女の全身から力が抜けていく。 せつなの視線に気が付いたのか、クルリと顔を向けて、チョコンと小首をかしげる。 その仕草は、まさに今朝、小鳥が見せた動作そのものだった。 状況が理解できたのか、「きゃっ」と小さく悲鳴を上げてから、慌ててペコリと頭を下げた。 「またやっちゃった」とか言ってる辺り、初めてのことでもないのだろう。 「驚かせてごめんなさい。私は東せつな、せつなと呼んで。取り込み中だったようだから、ここで待たせてもらったの」 「はじめまして。失礼なことしてごめんなさい。わたしは――」 見た目通りの、可憐な名前の子だった。あらためて少女をまじまじと見つめる。 穏やかな雰囲気、おっとりとした口調。ポニーテール風の髪に、少しツリ目気味の大きな瞳。 おとなしい子なのは間違いないだろうが、反面、どこか鋭さを感じさせる一面もあった。 例えるなら、美希と祈里を足して二で割ったような印象。それよりも、今朝見た小鳥を擬人化した方がわかりやすいだろう。 「驚いたわ、絵がとても上手なのね。まるで本物のようで、それでいて本物以上の魅力があるようで」 「そんなことないけど、絵は小さい頃から描いてたから」 せつなは続きを描くように促す。少女は小さく頷いて、今度は絵の具で色を塗り始めた。 やはり、せつなのように原色に忠実で、正確に色合いを表現しようとしている。 (でも、私の絵とは根本的なところで全く違うわ) デッサンからして腕前が全然違う。色が付けば、更にその差は広がるだろう。もっとも、せつなはちゃんと絵の勉強をしたことがない。 基本から練習を積み重ねれば、遠くない将来、同じくらいのものが描ける自信は十分にあった。 問題はそこではないのだ。少女の絵には、技術では説明しきれない“命”が宿っていた。 色を付ける作業にはそれほどの集中力を必要としないのか、単にさっきの反省のためか、今度は自分の世界に入ったりはしなかった。 楽しく談笑しながら絵を仕上げていく。せつなも当初の目的はすっかり忘れて、お話しながら絵の完成を見守った。 「同じくらいの歳だと思うのだけど、この辺りに住んでいるの?」 「ううん、お父さんのお仕事の手伝いで付いて来たの。昼間はすることがないから、絵でも書こうかなって」 土日を利用して、この街にやって来たらしい。昼間はすることがないと言っていたので、お父さんは夜に働く職業の方なのかもしれない。 お父さんがどんな方なのかはともかく、中学生の手を必要としているとは思えない。彼女なりの理由があるのだろう。 共通の話題の少ない少女とせつなは、互いの友達のことに話が及ぶ。そこで思った以上に話が弾んで、意気投合して、すっかり打ち解けてしまった。 「素敵な絵ね、完成おめでとう。実は私も同じ場所の絵を描いていたの――」 「綺麗ね……。せつなさんも絵が上手なのね」 「そう見える? あなたにはわかるはずよ、私の絵には魅力がないわ」 「そうは思わないけど……。せつなさんの絵は、自分の気持ちを込めるのを恐れてるみたいに感じる」 「私が、恐れている?」 「うん、上手く言えないけど――」 少女は、自分が絵を描く時に気を付けていることを慎重に話していく。 感動や驚き、感じたことや考えたことを絵の中に表現すること。 対象をじっくりと観察して、一つ一つの違いを描き分けること。 「それなら知ってるわ。写真を撮らずに絵に描くのは、どう感じてるかを他人に伝えるためよね」 「知ってはいても理解はしてない……ってことよね? こんな言葉があるの」 “全てのものに、命は宿る” 鳥や花のような生き物だけじゃない。この世界の全ての物に命は宿っている。宇宙にも、星にも、空にも、風にも、大地にも。 それは人の目には見えないもの。ファインダーには写らないもの。だから絵で表現するんだって。 対象を客観的に、忠実に再現することは間違っていない。ただ、その底に主観をにじませること。 目で見えるものの奥にある、命そのものを捉えて描くこと。 よく見て、観察する。それを繰り返していると、対象が自分の心の中に溶け込んできて心と一つになる。 そうなると心が自由になり、対象の中に入り込んで、自由に翼を広げて羽ばたけるのだと。その先で命を見つけるのだと。 少女の説明はたどたどしくて、要約して解釈するには時間がかかった。普段は感じているだけで、言葉にしたのは初めてなのだろう。 そして、その考え方は絵だけに留まらないような気がした。例えば、ダンスにだって通じるものがあるのかもしれない。 懸命に伝えようとしてくれる少女に感謝して、大切な教えとして胸に刻むことにした。 「大事なことなのはわかるわ。でも、理解したとは言えない。例えば、この鉛筆にも命は宿っているの?」 「そうよ。せつなさん、大切に使ってるのね。記念にわたしのと一本交換しない?」 「ダメッ! これは駄目よ!」 「冗談よ、ごめんなさい」 少女が自分の新品の鉛筆を持って、せつなの筆箱に手を伸ばす。せつなはとっさに体で覆いかぶさって隠した。 鉛筆も消しゴムも、絵の具や筆箱も、全部、あゆみと圭太郎が買ってくれたもの。 せつなの幸せを願って、贈られたものだった。 そんな様子を見て、少女は優しく微笑んだ。本来、あまり冗談を口にするようなタイプではないのだろう。 今度はちゃんと断ってせつなから借りて、自分の鉛筆と並べて携帯で写真に収める。 「特にこだわりのないわたしの鉛筆と、せつなさんの鉛筆。どちらが大切かなんて、他人には伝わらないわよね?」 「この写真だけじゃ、同じものにしか見えないわ。私にも見分けが付かない」 「でも、こうしたら――」 少女はスラスラと二本の鉛筆をデッサンしていく。形も長さもほとんど同じ。違うのはメーカーくらいのもの。 再び訪れる極限の集中力。下書きの線が一本増えるたびに本物の形に近づいていき、 やがて――本物すら超えた。 「これなら、せつなさんの鉛筆がどちらかわかるんじゃないかしら?」 「すごい……。全く同じ形に描いてるように見えるのに――私のは、こっちよ!」 まだ色も付いていない、形だけを捉えたデッサン。でも、よく見ると線の力強さが微妙に違う。 影の濃さにも僅かな違いがある。他にも何か違うのかもしれない。 一つ間違いなく言えるのは、“鉛筆という道具に込められたせつなの想い”を命として感じ取って、描かれたものであることだった。 「せつなさん、この景色が好きなんでしょ? それだけはちゃんと伝わってきたわ。手を加えるのが怖いって」 「そうね。私はこの景色を失うのが怖い。壊して、奪って、そんなことをずっと続けてきたから」 「せつなさん?」 「ごめんなさい、なんでもないわ。私は自分の気持ちを表現するのが苦手だったけど、おかげで何かつかめた気がするの」 そう言ってせつなは鉛筆を走らせる。 せつなの集中力が極限まで高まり、意識の全てが視界に収束されていく。 秋風が肌をくすぐる感覚も、木の葉が揺れる音も、横で少女が囁いている声すらも、 全てが視覚情報として処理されて、絵の中に封じ込められていく。 「ふうっ、やっぱり――みたいにはいかないけれど」 「そんなことないっ! これ、とても素敵な絵よ。せつなさんにはこう見えるのね」 「ええ、私、紅葉が好きよ。特に赤いモミジは大好き。葉が落ちていく前触れなのに、なんだか温かいイメージがあるでしょ」 「そう! それが絵を描くってことよ」 「私、なんだかわかった気がする。“全てのものに命は宿る”生きてないものに命を宿しているのは、それを愛している人の心なのね」 「うん。真っ白だったスケッチブックも、せつなさんの心で命が宿ったんだと思う」 話してる途中で、せつなのお腹がグーと鳴る。真っ赤になるせつなの前で、少女のお腹も同じように―― 「もうこんな時間。お昼には遅いけど、美味しいドーナツ屋さんを知ってるの」 「じゃあ、休憩して食べに行きましょう。この絵が完成するところ、わたしも見てみたいから」 ドーナツを買ってきて、二人で談笑しながら食べる。ラブ以外で、こうして二人きりでドーナツを食べるのは初めてかもしれない。 その後、再び絵を描く作業に取りかかる。景色を心に投影して、心の鏡に映った通りに忠実に色を塗っていく。 数時間後に完成する。それは単に景色を写し取ったものではなくて、絵が飛び出してくるような迫力を伴ったものだった。 「やっぱり素敵! せつなさんは絵を描くべきよ!」 「ありがとう。でも、私の夢は別にあるの」 「あっ……もう行かなきゃ。もっとお話したかったけど」 「これを持って行って。お礼にはならないけれど、せめてもの感謝の気持ちよ」 せつなはそう言って、描いたばかりの絵をスケッチブックから外して少女に手渡した。 多めに買っておいたドーナツの袋と一緒に。 「ありがとう、大切にする。代わりにわたしの絵を持っててほしいの」 「ありがとう。私も宝物にするわ」 「もう会えないのかしら?」 「今度は友達を連れて遊びに来るわ。その中の一人は、せつなさんが話してたラブさんに似てるかも」 「楽しみにしてるわ」 「じゃあ、またいつか、必ず会いましょう!」 少女はそう言って別れを告げると、元気よく走り出した。だいぶ離れてからもう一度振り向いて、大きく手を振りながら“さよなら”と伝える。 大人しいようで活発で。控えめなようでハッキリしていて。空に羽ばたく鳥のように自由で。 少女の姿が見えなくなった瞬間、せつなの前に青い小鳥が舞い降りる。小首をかしげてせつなを見てから、少女が去った方向に飛び立った。 もう名前は気にならなかった。その青い鳥は、確かに幸せを運んでくれたのだから。 その小鳥に、少女と同じ名前を付けて覚えておくことにした。 家に帰って、再びせつなはスケッチブックを開いた。 少女が最後に教えてくれたアドバイスを実行するためだ。 “本当に絵が好きになりたいのなら、一番好きなものを描くの。多ければ多いほどいいわ” せつなは一人の少女の絵を描いた。楽しそうな笑顔。嬉しそうな笑顔。元気いっぱいの笑顔。せつなが世界で一番好きなもの。 どれも、これも、全部同じ人。そっくりでありながら、一つとして同じ表情はない。 それは、スケッチブックいっぱいに描かれた―― 桃園ラブの笑顔だった。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/493.html
【怒った顔も好き】/恵千果◆EeRc0idolE 「美希ーー」 夕方の公園。ひとり、カオルちゃんのドーナツカフェでのんびりと紅茶を飲んでいた美希は、自分を呼ぶせつなの声を聞いて、そちらを振り向いた。 「――――せつな?」 走ってきたと見えて、少しだけせつなの息が弾んでいる。 「今日はひとり?めずらしいのね。ラブはどうしたの?」 「ブッキーとデートだって」 「デートぉ?」 こくん。頷いたせつなは、何故だか少しだけ、嬉しいような恥ずかしいような複雑な表情を浮かべた。 「何でも、ケーキバイキングにふたりで行くんですって」 「ああ、それね……。せつなは誘われなかったの?」 「誘われたんだけど…」 「けど?」 また複雑な表情で、少しだけ言いにくそうにせつなは続けた。 「――――やめておくわ、って言ったの」 「どうしてよ?」 単純に、美希には理由がわからなかった。せつなはケーキが好きだったはずなのだが。 そんな美希の問い掛けにせつなは、むきになって言い返す。 「美希だって、誘われたんでしょ?だけど断ったって、ラブに聞いた。どうして行かないの?」 「アタシはモデルだもん!ケーキは好きだけど、バイキングはさすがに……ね。完璧な体型を維持するためには、我慢が肝心ってこと」 美希は腕組みをし、エッヘン、と偉そうにせつなに向けて威張って見せる。 「……そうだと思った」 「え?」 「美希ならきっと、そう言って断るだろうなって思ってた」 「だから、せつなも行かなかったって言うの?呆れた。アタシに気を遣わなくたっていいのに」 「べ、べつに気なんか遣ってないわ!」 少し怒ったような声で、やや頬を赤らめたせつなが否定する。 「じゃ、どうして行かなかったのよ?理由を言ってみなさいよ」 「え、理由?えぇっと……、ケーキってそんなに好きじゃないってゆーか……、カオルちゃんのドーナツの方が美味しいってゆーか……読みたい本があったってゆーか……」 美希に突っ込まれ、仕方なく理由を並べるせつなだが、半分しどろもどろと化している。 「なーんだ、そんな理由か。ちょっとがっかり」 「え?がっかりって、どして?」 「てっきりアタシと居たかったのかと思ったのにな」 美希の言葉で、せつなは耳たぶまで赤くなる。 「ん?せつな、顔が赤いわよ」 「えっっ!?そ、そんなことないってば……これは、さっき走って来たから……」 慌てるせつなを目の当たりにし、その姿があんまり可愛くて、美希はくすくすと笑う。 「やっぱりアタシと居たかったんでしょ?」 「――――知らないっ」 すっかりむくれて、横を向いてしまったせつなだが、謝ってご機嫌をとろうとしながら美希が考えたことと言えば。 怒ったせつなの顔も可愛いな、むしろ、怒っている方が可愛いかも――――そんなこと。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/1813.html
『スーパーヒーロー美希』/ギルガメッシュ 『『『ええええぇぇええ!!! ヒーロー番組に出るって!!!』』』 アタシは、いつもの公園でカオルちゃんのドーナツを食べながら、ある事をみんなに話していた。すると途端にみんなは大きな言葉で驚いたのだ。 「ちょっと、みんな声が大きいわよ」 「いや、だってすごいよ美希タン、ヒーロー役でしょ!! すごいすごい」 「美希ちゃん、すごいわ!!」 「流石やで、ベリーはん!! なぁ、シフォン」 「プリプー!!!」 「ちょ、ちょっとただの単役よ」 アタシの周りにいるのはラブ、ブッキー、せつな、そしてタルトとシフォンだ。せつなは怪訝そうな様子だが、他のみんなは大はしゃぎしている。 アタシはついこの間、知り合いの、ある番組プロデューサーに『ヒーロー番組』に出てみないかと誘われたのだ。 しかし、アタシはあまり乗り気ではなかった。 「だってアタシ、撮影は慣れてるけど演技はそこまでないし、そもそも『ヒーロー像』ってのがあまりわからないのよね」 アタシはこの事についてかなり悩んでいた。だから今回、みんなに集まってもらって相談を持ち掛けたのである。 アタシが重い空気を出している中、タルトは持っていたドーナツをほおばってから再びアタシに話しかけて来る。 「何言ってるんや、ベリーはん。あんさんはすでにプリキュアとして活躍するヒーローなんやで。どう困るちゅうんや」 「そもそも人前では変身なんて出来ないでしょ? しかも役柄としてはそのままの姿らしいの。ありのままのアタシにヒーローのイメージってある?」 「そうかなぁ、あたしは美希タンはカッコイイと思うけどなぁ」 「そうよ、美希ちゃんなら問題ないわよ。私もかっこいいと思うし」 アタシの弱音に、ラブとブッキーは励ましてくれる。とはいえやはりなかなか気持ちのもやもやが晴れないのも事実。 「うぅむ、確かにベリーはんはクールビューティーな一面があるからなぁ。プリキュアとしての姿やったらまさしくヒーローってのはぴったりくるんやけどなぁ」 「そうなのよねぇ……」 アタシはそう言って大きくため息を吐いた。するとその直後に、いままで会話に入って来なかったせつなが、アタシに質問をしてきた。 「ねぇ、美希。話の腰を折って申し訳ないけど、『ヒーロー番組』ってなんなの?」 「え? あぁ、せつなは知らないのね。そっか、そっか」 あまりの根本的過ぎる質問にアタシは呆気を取られてしまう。せつなはラビリンス出身だから、その手の娯楽には疎い面があるのだ。 「ヒーロー番組ってのはね……」 アタシが説明しようとした瞬間、 「パッションはん、ヒーロー番組ってのはそら、ロマンあふれる素晴らしいもんなんや!!」 「え!?」 タルトが割り込むように、説明してきたのだ。 「基本的には、主人公は熱血系の熱い性格をしててな、世界征服をたくらむ悪の組織に猛然と立ち向かい、弱きを助けるまさに『憧れの存在』なんやで!! そんでもって……」 そしてタルトはさらに熱中して、せつなに熱弁を始める。ただ、せつなも面白そうに聞いている。 「タルトったら……」 その姿にアタシはちょっと呆れてしまった。 「まぁ、美希タンそんなに悩むことじゃないと思うよ。あたしはそのままの美希タンでもいいと思う」 「うんうん、期待してるね、美希ちゃん!!」 「う、うん、ありがとう」 アタシはそう言って励ましてくれたラブとブッキーに口ごもりながらお礼を述べた。そしてしばらくしてその場を解散したのであった。 「さらにはライバルの存在も欠かせへん。主人公とはまた違うベクトルで、敵を倒し、主人公と時には争い、時には協力し……」 ただタルトの熱弁は続き、流石のせつなも辟易していた。 ☆☆☆☆☆ 「はぁ……、なかなか感覚がつかめないわねぇ」 みんなに相談してから数日後、アタシはまだ『ヒーロー像』について悩んでいた。セリフや演技に関してもある程度リハーサルを行い、流れは掴めた。 「全然、完璧じゃない……」 しかし、プリキュアとしてではなく、ありのままの自分自身をヒーローに当てはめるのはやはりうまくはまらない。 アタシは悩み、そして俯きながら、お昼の『クローバーストリート』をとぼとぼと歩く。 「美希?」 「え?」 「どうしたの? そんなにしょぼくれて」 「せ、せつな」 すると偶然、せつなと出会ったのだ。 「き、奇遇ね。せつなはここで何してるの?」 「お買い物よ。今日はラブのお母さんが忙しいから、ラブが家の家事で、あたしが買い出しの分担をしてたの」 「そうだったの……」 「美希はどうしてここに? やっぱり前に言ってた事で悩んでる?」 「え!?」 せつなにそう言われて、思わず心臓がドキリとした。 「やっぱり……分かっちゃう?」 「そりゃそうよ。美希を見かけるたびに、ずっと俯いて暗かったもの。みんなの前では出してなかったけど」 「あはは……」 せつなはそう言う所が鋭い。少しは隠していたつもりだったけど、やっぱり悩んでるとどこかに出てしまうのだろう。 「ねぇ、よかったら少しだけお茶しないかしら?」 「え!?」 アタシが苦笑いで返している中、せつながそんな提案をしてきたのだ。ちょっとそれに驚いて声が漏れてしまう。 「みんなには話しにくいってこともあるじゃない? 時間は取らせないわ」 「あ、う、うん。わかったわ」 アタシはせつなに言われるがまま、近くの喫茶店に入るのであった。 ☆☆☆☆☆ 「あはは、やっぱりあの後もタルトの話が続いてたんだ」 「そうなの、疲れちゃった……」 数分後、アタシ達は頼んだお茶を飲みながら、みんなで集まった日の話をしていた。あの日、別れ際でずっとタルトがせつなにヒーロー番組の事を語っていたが、次の日以降も度々、勧められていたらしい。 「全くタルト……。何してるのよ」 「いいのよ、美希。実際に映像も見てすごく楽しかったし、ちょっとはまっちゃったかもしれないわ」 「だったらいいけどね」 せつなはそう言ってくすくすと笑いながら話してくれる。それを見てなんだか自分もほっこりとしてしまう。 「色々と作品は見たけど、基本的には悪の組織が出てきて、主人公が戦って、ライバルと共闘して、そして町のみんなを救う。そんなストーリーだったわ。なんだかいまのあたしたちみたいって共感もしちゃった」 「確かに、いまのアタシ達とまんま一緒ね」 「そしてその映像を見ながら、ヒーローって何だろうって考えるようになったわ。そしてこの世界に来てからの自分の出来事と重ねてみた」 「せつな……」 「この世界に来て、罪を犯して、ラブや美希、ブッキーみんなに救われて、そしてプリキュアになって、学校に行ってダンスして、色々と見えてきたの」 そう言ってせつなはカップを手に取り、注がれたお茶を飲んだ。そしてまたカップを戻した。 「ここで美希に質問。ヒーローとは何でしょうか?」 「ふえ!?」 しかし急にせつなからの質問が飛んできて、アタシは変な声が出てしまう。 「そ、それは、そうね……」 アタシは言葉に詰まってしまい、良い答えも思いつかなかったが、とりあえず答えることにする。 「みんなを守る、正義感の強い人物……かしら?」 当たり障りのない答えだ。それを聞くとせつなはふふっと微笑んだ。 「あたしも初めはそう思ったけどね」 「やっぱり不正解だった?」 「別に美希の答えが間違っているとは思わないわ。ただそれもヒーローのごく一部なだけ」 「ごく一部?」 「ヒーローっていうのは性格とか信念とかだけじゃないと思うの。ヒーローって言うのは『憧れ』の存在だと思うのよ」 「憧れの存在……」 「そもそもヒーローって自分で名乗るものじゃないなって思ったの。みんながその人をヒーローと呼ぶから自然とヒーローになっていくんだなって」 「な、なるほど確かに……」 言われてみればそうかもしれないと。ヒーローと言われるとやっぱり、アタシがさっき答えた『正義感の強い人物』ってのが真っ先にイメージとして来てしまうからだ。でもヒーローは別に自称するものでもない。 「だからわたしは思うんだけど、美希はもうヒーローだと思うわよ」 「え? そ、そうなの?」 しかし、次のせつなの結論にワタシは困惑してしまう。 「もちろん、ラブもブッキーもそしてあたしも友達として美希のことは大好きだし、憧れてる。けど美希はそれ以上に、既にモデルとして多くの人たちの憧れの対象になってると思うわ。オシャレしたい女の子からしたら、もうヒーローそのものだと思う。だから番組の出演も決まったのよ」 「せ、せつな……」 アタシはそれを聞いて、なんだか心が晴れていく気がした。 「ちょっとくさかったかしら。ヒーロー番組を見すぎて色々と移っちゃったかも」 「ううん、おかげで吹っ切れた」 そう言ってアタシはその場から立ち上がった。 「アタシは自分自身への自信が無くなっていたのかも。でもこれで頑張れるわ。ありがとうせつな」 「どういたしまして」 アタシはせつなとそう言葉を交わして、喫茶店を後にするのであった。 ☆☆☆☆☆ 「いやぁ!! 最高やったで、ベリーはん!! あの主人公を助けて、自分から特攻していくシーンは。シフォンもそう思うやろ?」 「プリプ~~!! 美希、かっこいいぃぃ」 「うんうん、あのアクションも流石だったわ」 「美希タンの出番はあれだけで終わりなの? もっと見たかった」 「もうこりごり、おかげで筋肉痛になっちゃった」 後日、アタシは撮影した映像を特別に分けてもらい、ラブの部屋で視聴会をしていた。でも自分で自分の映像を見るのは小恥ずかしいものだ。 「しっかし、ベリーはんあれだけ心配してたのに、嘘のようにノリノリでやってるやんか!」 「そうよね、美希ちゃん。何があったの?」 ただ、演技は自信も持って演じ切ることが出来た。みんなも前の悩んでいた時の顔つきと映像とのギャップで驚いている。当然ながら疑問だろう。 「ふふ、さあてね」 だけどアタシはそれには答えず、せつなの顔を見た。するとせつなも少しおかしそうに笑っていた。
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/850.html
エンジェルは本編でも見れて嬉しかった 美希たんの羽には、スタッフの美希たんいじりの余りの念の入れように、 笑いを通り越してもはや尊敬の念だったけど 美希 「ま、まあ、シャープな羽のフォルムは完璧なアタシに相応しいわ」 ラブ 「だ……大丈夫だよ、美希たん。尖ってるとか、心が鬼だからなんて思ってないよ!」 美希 「ラブはそういう風に思ってたのね!」 祈里 「美希ちゃん、後で泣いていいからね……」 美希 「泣かないわよ!」 せつな「一人だけ技がフランス語だったり、羽が違ったり、本当は違うプリキュアなのかも」 美希 「せつなにだけは言われたくないわよ!」 せつな「でも、美希のそんなところが好きよ」 美希 「どうしてもアタシをお笑いキャラにしたいわけね……」 「勝ち気で、自信家で、ちょっとドジで、 アロマとか女の子らしくて華やかなものが好きで、 独りよがりなとこもあって、 思ったことはハッキリ言わずにいられない、 強がりだけど本当は弱虫な、 そんな美希ちゃんが私は大好き」 「い……祈里~~~」 「あらまあ……泣き虫も追加だよ?」 美希の主役回って、 イケメンとデートしたけど弟だってオチの話と オーディションを途中で断念する話と 自分だけキュアスティックもらえない話と タコにおびえる話と クローバーボックス失くしちゃう話よね。 大丈夫よ、元気を出して!そんな役回りの人も必要よ。 ちょっとせつな。こっちに来なさい……。 ラブ(ほんとにドジなのはあたしなんだけどなー) せつな「ごめんなさい、美希。私……調子に乗りすぎたわ」 美希 「いいのよ、本気で怒ってたわけじゃないし」 せつな「私ね、憧れてたの」 美希 「せつな?」 せつな「あななたちの他愛ないやり取り。心許した者同士のふざけあいに」 美希 「アタシたちは――せつなにだって!」 せつな「でも――私にはふざけてこないじゃない!」 美希 「それは――」 祈里 「それはね、誤解されて本気で傷つけちゃうのが怖いからなの」 せつな「ブッキー! それにラブも」 ラブ 「焦ることないよ、せつな。あたしたちはずっと一緒なんだから」 祈里 「うん、気を使うのもふざけるのも、どっちも好きだからだよ」 美希 「でも、せつなったらずいぶん慣れてたじゃない? そっちが本性だったりして」 せつな「フンだ! 美希こそ弄られてる時が一番可愛いわよ」 ラブ 「あはは……また始まっちゃった」 祈里 「案外、この二人が一番早く馴染めるのかもね」 美希(なんかアタシ遊ばれてるかも…) せつな(ラビリンスに連れていきたいわ…) ラブ「せつなイキイキしてるよ」 ブッキー「ある意味美希ちゃんの勝ちかもね」 ~~縁日の夜店にて~~ 祈里 「見て見て美希ちゃん。プリキュアのお面がたくさん」 美希 「ほんと、しかもベリーのお面が一番たくさん。わかってるじゃない!」 祈里 「でも、付けている子供達はピーチとパッションが多いみたい」 ラブ 「あはは……たまたまじゃないかな?」 せつな「なんだか恥ずかしいわね」 祈里 「わたしのは並んでもいないし被ってる子も見ないね……」 美希 「あ、あっちに並んでるわよ、ブッキー」 通行人A「おっちゃん、パインのお面全部くれ」 店主さん「全部かい? 兄さん、毎度」 せつな「あれって大人買いっていうのよね。私、初めて見たわ」 祈里 「あはは――嬉しいような嬉しくないような……」 美希 「確かに……なんに使うのか聞くのが怖いわね」 店主さん「さあ、安いよ! 安いよ!」 美希 「おじさん……ベリーのだけ値引するのやめて……」
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/1084.html
【12月11日】 『ういんたーすぽーつ』 美希 「今日は、みんなでスキーに行くのよ。とっても楽しみ!」 祈里 「きゃああ! とめて~!!」 美希 「大丈夫? ブッキー」 祈里 「ありがとう、美希ちゃん。怖かった~」 ラブ 「スキーはね、勇気出して転んだら止まれるんだよ」 美希 「ちょっと、ラブ! ウソ教えないの!」 ラブ 「ええ~あたしはそうしてるのに」 美希 「って、せつなは初めてなのに、何でそんなに上手なのよ」 せつな「美希の真似よ。重心移動で進路とバランス。縦滑りで加速、横滑りで減速、それだけじゃない」 ラ美祈『ぽか~ん……』 【12月12日】 『幸せの花の名を抱く街』 ラブ 「今日はクイズです! あたしたちが住んでいる街は、なんていう名前でしょう? 答えは明日!」 せつな「ヒントはないの?」 ラブ 「そうだね。夕凪町とか、加音町って名前じゃないよ」 美希 「危ない発言はやめなさい!」 祈里 「超人気ダンスユニット“トリニティ”の出身地なのよ」 せつな「超人気って割には、いつも街にいるのね」 ミユキ「た・ま・た・ま! 街に居る時だけ登場してるのよ!」 ラブ 「どこから出てきたんですか、ミユキさん……」 美希 「タレントの集まる、私立鳥越学園の所在地でもあるわ」 せつな「美希は通ってるのに違うのね?」 美希 「どーせ、アタシはしがない読モですよ……」 ラブ 「たはは、収集が付かなくなりそうなので、今日はこの辺で!」 【12月13日】 『世界を救った幸せの街』 ラブ 「あたし達の町は四つ葉町っていうの。とってもステキな街なんだよ」 美希 「商店街のイメージが強いかもしれないけど、ビル街もあるし、オシャレな高級店も多いのよ」 祈里 「大きな公園を始めとして、たくさんの緑を残した美しい街なのよ」 ラブ 「まだまた、せつなだって知らない素敵な場所がいくらでもあるんだから」 せつな「知らない場所も多いけど、これだけは知ってる。四つ葉町は、世界で一番素敵な街よ」 ラ美祈(せつな……) せつな「笑顔と、優しさと、愛に溢れた街。私、ここに来れて、本当に良かったと思ってるの」 【12月14日】 『おしくらまんじゅう』 ウエスター「なあみんな、俺とおしくらまんじゅうやらないか? 温まるぞぉ」 サウラー 「悪いが、僕は遠慮しておくよ」 ウエスター「もしもし、イースか? 今から俺とおしくらまんじゅう、プツン、ツーツー」 ウエスター「いきなり切るか! 普通?」 ウエスター「なあ、俺とおしくらまんじゅう――――」 タルト 「無茶言うたらアカン! ワイとあんさんでやったら、いきなり潰されてお終いや」 ウエスター「なあ、カオルちゃん。俺とおしくらまんじゅう――――」 カオルちゃん「あ~悪いんだけど、うちはドーナツ専門なのよ。饅頭は置いてないな~なんてね、グハッ!」 ウエスター「温まるどころか、心まで冷え切っちゃったな。しょうがない、帰るか……」 カオルちゃん「兄ちゃん、これ持って行きな」 ウエスター「これは?」 カオルちゃん「押し付けドーナツ、なんちゃって、グハッ!」 ウエスター「恩に着る。帰ってサウラーと一緒に食べるとしよう」 【12月15日】 『あったかお鍋で夕ご飯』 せつな「今夜はお家でお鍋なの。みんなで食べると、温かくて美味しいのよね」 ラブ 「そうだね。味も温かさも変らないはずなのに、不思議に違って感じるよね」 圭太郎「家族で、一つのお鍋を一緒に食べられるのが魅力だよな」 シフォン「ラブ、おもち、たべる」 ラブ 「は~い。待っててね、ふー、ふー、あーん」 タルト「パッションはん、ワイにも!」 せつな「はいはい、お肉と野菜、一通り入れるわよ」 タルト「おおきに! ふー、ふーはないんでっか?」 せつな「馬鹿。よそって置いとけばすぐ冷めるわよ」 ラブ 「せつなも、あーん、する?」 せつな「しません! ラブもはしゃぎすぎよ」 あゆみ「ふふっ、みんな楽しそう。やっぱり、お鍋はいいわね~」 【12月16日】 『街から消えた雪だるま』 シフォン「シフォン雪みた~い! 雪らるま作る~」 タルト 「シフォン、無理言うたらアカン。こないだスキー場で遊んだばっかやないか」 シフォン「キュア~。シフォン、いま、みたい」 ラブ 「じゃあ、これからアカルンでスキー場に行ってみようか?」 せつな 「ダメよ! アカルンの力をそんなことに使うなんて」 タルト 「まあ確かに、他の人らに対して、フェアやないかもしれんなあ」 シフォン「キュアァ……」 せつな 「もう、わかったから泣きそうな顔しないで。今回だけよ?」 ラブ 「やっぱりせつなも、シフォンには弱いんだね」 【12月17日】 『タルトの里帰り』 タルト「アズキーナ、元気にしとるかなぁ。あっ、今度ドーナツ持ってったろ」 アズキーナ「タルトさま、いつになったら帰ってきてくださるの?」 タルト「あ~……スマンなあ、まだまだやることがようさんあってな」 アズキーナ「もう平和にならはったとお聞きしてますのに」 タルト「せやけどなあ。ピーチはんたち、ワイが付いとらんと危なっかしいしな、もうちょい辛抱したってな」 アズキーナ「あちらでも人気者なんどすな」 タルト「堪忍な、アズキーナはん。次は駅前のアイスクリームをお土産に買ってくるさかいな」 アズキーナ「ウチは物では釣られまへん。でも、まあ楽しみにしておきやす」 【12月18日】 『飛翔』 ラブ 「今日はトリニティのコンサート! ステージのミユキさん、カッコいい~」 祈里 「普段は、身近なお姉さんって感じだけど……」 美希 「こうして見ていると、ホントに雲の上の人なのよね」 ラブ 「だったら、あたしたちも行こうよ! ミユキさんのいるところまで」 せつな「そうね、みんなで一緒に、幸せになるために」 【12月19日】 『彼女が戦う理由』 キュアパッション「吹き荒れよ、幸せの嵐! プリキュア・ハピネス・ハリケーン!!」 タルト「幸せはええとして、なんで嵐なんかな?」 せつな「そんなこと、私に聞かれても……」 祈里 「せつなちゃん、大人しいイメージなのにね」 美希 「今まで辛かった分、まとめて幸せになりたかったから?」 ラブ 「違うよ。嵐は広範囲で吹き荒れるでしょ? みんなに幸せになってほしいからだよ」 【12月20日】 『クリスマスってなあに?』 サウラー 「みんな、クリスマスが近づいてなんだか嬉しそうだね」 ウエスター「俺も楽しみだぞ? もうじきケーキやご馳走がたらふく食べられるしな」 サウラー 「そんなもの、好きなときに食べればいいじゃないか」 ウエスター「クリスマスに食べるのがいいんだよ。一人より二人、二人より世界中のみんなと食べた方が美味いんだ」 祈里 「なんか色々誤解されてるけど、楽しそうだからいいよね……」 新-742へ
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/80.html
思い出? 私には、戻りたい思い出なんて、ない。 Memories of Love 「はぁぁぁぁっ」 力を溜め、一気に跳躍する。その鋭い視線の先には、一眼の怪物の姿。 「ハイ、チーズ!!」 クルクルと回る三脚の一本にしがみつき、鉄棒の要領で体を回転させて蹴りを 浴びせるが、 「くっ!!」 瞬間移動のように消えるナケワメーケに、空振りに終わってしまった。 タタッ、と着地するキュアパッション。その隣に、ベリーとパインも降り立って。 「強い......!!」 「――――でも」 「負けられない!!」 ボロボロに傷付きながらも、少女達は立ち上がる。ナケワメーケの攻撃によっ て思い出の世界に送られたピーチ。彼女の目覚めを信じて。 「愚かだな。もう目覚めることなど無い仲間を待ち続けるとは」 「いいえ!! ピーチは絶対に、帰ってくるわ!!」 「ええ!! わたし、信じてる!!」 サウラーの言葉に、肩で息をつきながらも、ベリーとパインは力強く返す。そ の様に、苛立たしげに眉を顰めた彼は、 「ふん、愚かな。やれ、ナケワメーケ」 「ハイチーズ!!」 再び突進してくる巨体に、三人は大地を蹴って飛び退った。ドン、と怪物の足 がアスファルトに大きな穴を開ける。 「――――!? ピーチ!!」 衝撃に崩れるビル、飛び散る瓦礫。その一つが一直線に向かう先を見て、パッ ションは凍りつく。 「あわわわわ」 「プ、プリプー!!」 タルトとシフォン、そして眠っているかのように目を閉じているピーチ。この まま行けば、あの瓦礫は彼女達を押し潰してしまう。 「――――くっ!!」 空中で強引に体を捻り、ビルの壁を蹴って、パッションは勢い良く飛んだ。 「も、もうあかん~」 迫り来る巨大な物体に、ガバッとタルトがうずくまってしまった瞬間、 「はぁぁぁぁ!!」 彼女はその瓦礫に体ごとぶつかっていった。ドン、と大きな音と共に、瓦礫は 方向を変える。そしてピーチ、タルト、シフォンの誰にも傷を付けず、地面に 落ちて大きな土ぼこりをあげた。 「パッション~」 危なかった。思いながら着地したパッションは、シフォンの可愛らしい声に微 笑を返そうとして、 「――――うっ」 脇腹を抑える。空中で急に体勢を変えたから、痛めてしまったらしい。無論、 耐えられないという程ではない。事実、彼女が顔を歪めていたのは、ほんの一瞬 のこと。 だがその一瞬の隙を、ナケワメーケは見逃さなかった。 「ハイ、チーズ!!」 「えっ!?」 動きが止まった瞬間を、狙われて。 目の前に閃光が走ったと思った瞬間、キュアパッションは意識を失ってしまっ たのだった。 「スイッチ・オーバー!!」 イースの姿から、彼女は東せつなへと変わる。 「――――え?」 それを見たピーチの顔に、驚愕の表情が浮かんで。 「せつな――――? どうして、せつなが......?」 「ピーチ!! 彼女は敵よ!! せつなは、ラビリンスだったのよ!!」 「そんな......」 駆けつけたベリーの言葉に、ピーチは体を震わせる。 「嘘......だって、せつなは、アタシの友達で......」 彼女の脳裏を過ぎる、数多の記憶。せつなと過ごした時間が、その光景が、心 に浮かび上がって。 「嘘......」 信じたくない。思いと共に溢れた言葉は、あまりにか弱く。 イースは、暗い目で、ピーチを見つめる。 「私の目的はただ一つ」 言いながら、彼女は首にかけていたペンダントを地面に落とす。 「お前達を倒すことだ」 そして四葉のクローバーをヒールで踏み割ろうとした瞬間。 「――――!?」 彼女の動きが止まった。呆然としたまま、自分の両の手を見つめるせつな。不 可思議な彼女の行動に、戸惑うプリキュア達。 「ピーチ、ベリー、パイン――――ここ、は?」 言いながら、せつなはあたりを見回す。目の前に広がるのは、破壊されたスタ ジアム。すでに主のいないステージは、がらんとしてどこか物悲しい。 そこでようやく気付く。そうだ。私はナケワメーケの攻撃を受けて、思い出の 世界に飛ばされたんだ。でもどうして―――― 「――――!!」 慌てて彼女は、足をどかしてかがみこんだ。 「良かった。壊れてない」 まだ体重をかける前だったからだろう。四葉のクローバーのペンダントは、少 し汚れてはいるものの、割れてはいなかった。 ホッとして、胸にそれを抱きしめるせつなの姿に、ピーチ達は呆然とする。つ い先程――――ほんの一瞬前までは、憎悪の黒いオーラを放っていた彼女が、 今は穏やかな顔をしている。あまつさえ、自分で踏み潰そうとしていたペンダ ントが壊れていなかったと、涙ぐんでさえいるのだから。 「せつ、な?」 変身を解き、ゆっくりと近付いてくるラブに、せつなはニッコリと微笑んで見せた。 「壊れてないよ。四葉の、クローバー」 そう言った瞬間。 ナキサケーベを操っていた体が限界を迎えて。彼女はふらり、と前のめりに倒 れ込む。 「せつな!? せつな!!」 心配そうに駆け寄ってくる、ラブの声を聞きながら、せつなは思う。 これが――――私の、戻りたい思い出? 心の中でそう呟きながら、ゆっくりと彼女は意識を失ってしまったのだった。 「――――!?」 かけられていたタオルケットを跳ね除けながら、せつなはガバッ、と体を起こす。 「あ。起きた? せつな」 タオルを絞っていたラブが、振り向いて笑いかけてくる。半分、朦朧とした意 識で辺りを見回す。ここは――――ラブの部屋だ。 「急に倒れこんじゃったから、ビックリしたよ。やっぱり、あの怪物を操るので、 消耗しちゃってたんだね。それで、うちにつれてきたんだけど、目が覚めて良かった」 言いながらラブは、机の上の皿を手に取り、せつなに差し出す。その上には、 皮をむかれて切られた、瑞々しい白桃。 「よく冷えてて、とってもジューシーだよ。食べて、元気を出してね」 「――――うん」 言われるがままに、彼女はフォークでそれを一つ、口に運ぶ。噛んだ瞬間に、 口の中に広がる果汁。その甘みに思わず、 「美味しい」 せつなはそう呟いた。その顔を見て、ラブはニコニコと笑う。 「良かった。せつな、元気になったみたいで」 「――――ありがと、ラブ」 言って、せつなは食べ終えた皿を机の上に戻そうとして、 「あ......」 そこに置かれたものに気付く。それは、彼女がいつも首からかけていた、四葉 のクローバーを模した、緑の綺麗なペンダント。 せつなはそれを手に取って、マジマジと見つめる。 壊れてない。綺麗なまま。私と、ラブとの間を結んでいた、絆。 「せつな――――?」 不思議そうに見つめてくるラブに、彼女は誤魔化すように笑いながら、ベッド から起き上がる。 「あ、せつな。まだ寝てなくちゃダメだよ」 「トイレに行きたいだけよ」 「なんだ、そっか。トイレならね」 「大丈夫、知ってるわ」 「え? なんで? せつな、うちに来たことあったっけ?」 怪訝そうな彼女に微笑を返してから、せつなは一人、廊下に出た。 トイレから戻ってくる時に、もう一つの部屋の扉が目に入った。現実の世界で は、せつなのものになった部屋だ。『せつな/SETSUNA』と書かれたプレートは、 しかしこのドアには、かかっていない。そっとノブを開いて中を覗くが、そこに は彼女の机も、彼女のベッドもない。だいたい、今、自分が着ているパジャマだ って、ラブのピンクのパジャマだ。 やっぱり、違うのね。 思いながら扉を閉めると、階段を上ってくる足音が二つ。 そちらを振り向くと、色々な荷物を抱えた美希と祈里、そしてタルトとシフォ ンの姿がそこにあった。 「せつな」 「せつなさん......」 体を強張らせる二人。そのどこかよそよそしい態度に、せつなは苦笑する。本 当に、違う。 「そんなに心配しないで、美希、ブッキー。私はもう、イースじゃないわ」 「へ?」 「せつなさん、今、ブッキーって呼んだ?」 驚きに目をパチクリとさせる美希と祈里に笑いかけながら、せつなはタルトの 背中からシフォンを抱え上げる。 「ああ、なにするんや!!」 慌てるタルトをよそに、彼女はシフォンを抱え上げた。不思議そうな顔をして いたシフォンだったが、せつなの見せた笑みに、キャッキャと喜びの声を上げ出して。 「どうなってんの?」 「さぁ......」 「ほんまに、イースやないんか?」 口々に戸惑いを現す彼女達に、シフォンを抱きかかえたまま、せつなは真剣な 表情になって言った。 「詳しいことは、これから話すわ。ひとまず、ラブの部屋に戻りましょう」 言って背中を向けるせつなに、美希達は結局、最後まで唖然として顔を見合わ せていたのだった。 「思い出の、世界......?」 「せつなが、四人目のプリキュア?」 「キュア、パッション?」 「ええ、そう。私はキュアパッションとして生まれ変わって、皆と一緒に戦ってる。 けれど、ナケワメーケの力によって、この思い出の世界に送られてきてしまった」 ベッドに腰掛けて話すせつなの言葉に、少女達三人は戸惑いを隠そうとはしな かった。無理もない、とせつなは思う。一体どういう原理でこの世界が成り立っ ているかはわからないが、彼女達の言動はいたって普通だ。普通だからこそ、言 われてもにわかに受け入れられるものではないだろう。 「アタシ、信じるよ!!」 そう思っていたせつなだったが、しばしの沈黙の後に、ラブは突然、勢い込ん で言った。 「せつなが言うことだもん。嘘じゃないって、アタシ、信じるよ」 「でもせつなは、自分がイースだってことを隠してたのよ?」 ラブの言葉に、美希は冷静な一言を浴びせた。思わず、せつなは目を伏せる。 向けられているのは、疑いの眼。仕方のないことだとわかっていても、辛い。 現実の美希を知っているから、なおさらに。 「けど、美希タン......」 「ラブ、貴方の信じたい気持ちはわかる。けれどね――――」 「プリプー!!」 ラブの言葉を遮り、言い募ろうとした美希。だが突然に、シフォンの額のマー クが光り、ラブの部屋の窓を照らし出す。 「な、なに?」 驚きの声を上げる少女達の前で、窓ガラスの向こうの空が消える。そこに映し 出されたのは、 『ピーチ!! パッション!!』 『お願い、目を覚まして!!』 ピーチとパッションの体にすがりつく、キュアベリーとキュアパインの姿だった。 「これで、後は二人」 ほくそえむサウラーを、ベリーとパインはキッと睨みつける。 「よくもピーチとパッションを!!」 「許さないんだから!!」 飛び掛る二人だったが、ナケワメーケが彼らの間に割り込んで襲い掛かってくる。 「ハイ、チーズ!!」 「!!」 咄嗟に二人は、互いの掌を押し合い、ナケワメーケの放つ光をかわした。その まま別々のビルの屋上に降り立ち、再び構えを取る。その体は、何度も跳ね飛ば されたせいか、すでにボロボロで埃まみれだ。 それでも、彼女達は立ち上がる。 「往生際が悪いね。もう諦めたらどうだい?」 「誰が諦めるもんですか!!」 「ピーチもパッションも、必ず戻ってくるって、わたし信じてる!!」 言葉と共に駆ける二人。三人でも厳しかったのに、二人になってしまっては勝 てる気がしなかった。 だがベリーもパインも、決して心が折れることはなかった。それは、仲間が帰 ってくることを信じているから。 「あれは......あたし達?」 「あそこにいる赤い人が、キュアパッション?」 美希と祈里の言葉に、せつなは頷く。シフォンの力が働いているのだろう。だ からこうして、現実の世界を垣間見ることが出来た。 「やっぱり、せつなが言ってることはホントだったんだ!! ね、美希タン」 「はいはい、どうやらそうみたいね」 顔を輝かせながら言うラブに、美希は苦笑しながら頷いた。そして彼女は、せ つなに目を向ける。 「せつな、一つだけ教えて?」 「なに?」 「どうしてせつなは、この時間にきたの?」 同じことを、ラブも祈里も思っていたのだろう。向けられる三人の視線に、せ つなは首からペンダントを外して手に持った。 「多分、これのせい」 「幸せの、四葉のクローバー?」 「ええ。ラブからもらった、私の宝物――――だけど、私はこれを壊してしまった」 東せつなにとって、思い出と呼べる程のものは多くない。何故なら、ラビリン スにいた頃の、イースであった自分に、戻りたいと思える記憶はなかったから。 生まれ変わってからのほんの一月ほどこそが、何よりも大切な時間だった。 だがそれは、思い出と呼ぶ程、色あせているわけではなくて。 だから、ナケワメーケの攻撃を受けても大丈夫だと思っていた。しかし実際には。 「戻りたい思い出の世界に送り込めば、そこから帰ってこれなくなる――――サ ウラーはそう言ってたわ。私には戻りたいと思える記憶はないと思ってたけれど、 一つだけ、あったみたい。多分それは、すごく、後悔してたから」 「ペンダントを、壊したことを?」 ラブの言葉に頷いたせつなは、穏やかな目で彼女を見つめた。 「でも、やっぱり違った。たとえペンダントを守れたとしても、私はこの世界に ずっとはいられない」 だってこの世界には、私の部屋はないから。私の机も、私のベッドも、私のパ ジャマもないから。 ラブと戦って、寿命が来て、生まれ変わって、桃園家の家族となって。 その全ての記憶は、確かに愛おしい。けれども、その過去よりも、これから先 の未来への希望の方が愛おしい。 ペンダントを壊したことは、これから先もずっと、後悔するだろう。けれどそ れよりももっと大切なものを、私は手に入れた。 「それに、私には待ってくれてる人がいる。だから――――私、帰るわ」 窓ガラスには、戦い続けるベリーとパインが写っている。彼女達の為にも、自 分は、戻らなくてはいけない。 せつなが強く決意すると共に、彼女の体が光に包まれていく。その手に持って いたペンダントは、ゆっくりと粉々に砕けていった。いつか、彼女が踏み潰した 時の姿に戻ったのだろう。 その様を見て、少しだけ彼女は寂しそうな顔をする。決めたこととはいえ、や っぱり。 「待って、せつな!!」 「え?」 ラブが声と共に、せつなの手を掴み、美希と祈里を見た。目で語り、頷きあう 三人の少女達。そして重なる、四人の手。 「ペンダントは、もうないかもしれないけれど」 「見えなくてもきっと、あたし達との絆があるから」 「わたし達四人で、四葉のクローバーだよ」 「みんな......」 彼女達の笑顔に、せつなは目をうるませる。 そうだ。これもまた。 手に入れた大切なものの一つ。 『きゃぁぁぁっ』 「あわわわわ、こらあかん!! ピーチはーん、パッションはーん、目ぇ覚まして ぇな」 吹き飛ばされるベリーとパインに慌てながら、タルトは必死に二人に声をかける。 「何度も言うようだけれど、無駄だよ。甘美な思い出の世界から、戻って来たい と思う人がいるかい? 時間の無駄だから、早く諦めてくれたまえ」 「そうはいかない」 「――――なに?」 言葉と同時に立ち上がるキュアパッションに、サウラーは驚きの声を上げる。 「パッションはん!!」 「キュアキュアー♪」 驚くタルトと嬉しそうなシフォンに笑いかけてから、パッションは再び宙を舞う。 「やっ!!」 サウラーの動揺が伝わったのか、動きの止まったナケワメーケに、パッション は蹴りを叩き込んだ。ずんっ、と地響きを立てて倒れる怪物の前に、パッション は立ちはだかる。 「パッション!!」 「良かった......本当に......」 「ベリー、パイン、お待たせ!!」 歓喜の声をあげて駆け寄ってくる二人に、パッションはもう大丈夫とばかりに 微笑む。 「これであとはピーチだけね」 「きっと、すぐに戻ってくるわ」 「うん!! わたし、信じてる!!」 漲る力で三人は。 「えぇい、やってしまえ、ナケワメーケ」 「ハイ、チーズ!!」 再び怪物へと飛び掛っていったのだった。 「そっかー。せつなはそんなことがあったんだ?」 「ええ。ラブはおじいちゃんに会えて、良かったわね」 「うん。そうだね。おじいちゃんのこと、思い出せて、本当に良かった」 写真館からの帰り道、ラブとせつなは互いに、思い出の世界のことを語り合ってい た。 祖父と出会えたという彼女の顔は、とても嬉しそうで、せつなの心も暖かくなる。 話を聞いただけでも、素敵な人だったんだろう、そう思えるのだから。 「いいわね、家族って」 「ホンマやなー」 何気なく呟いたせつなの一言に、彼女が抱えていたタルトも頷きながら答えた。 と、唐突に、シフォンを抱えたラブが立ち止まる。 「ラブ? どうかした?」 「二人とも、わかってないっ!!」 珍しく怒った顔を見せるラブに、シフォンもキュアキュアーと眉を上げてしかめ面 を見せた。せつなとタルトは、急な二人の態度に目を白黒させるしかなく。 「ど、どうしたのよ、ラブ」 「なんや、わいら悪いこと、言うたか?」 「あー。やっぱりわかってないんだ!!」 「キュアキュア、プリプー!!」 唇を尖らせて顔を近づけてくるラブに、せつなは思わず後ずさりをしながら問いか けた。 「わかってないって――――なにを?」 「あのねぇ。せつなもタルトも他人事みたいに言うけれど、二人だって家族の一員な んだよ?」 もちろんシフォンも。しっかりと名前を挙げられたことに、シフォンは満足そうに はしゃぐ。 「か、家族・・・・・・」 「わいらもか?」 「そう。桃園家の一員という自覚が、二人には足りなーい!!」 ビシッ、と指差されて、思わずせつなとタルトは、 「ご、ごめんなさい」 「堪忍したってや」 謝るが、ラブは不機嫌そうなまま腕を組み、何かを考え込んでいる。そして、 「やっぱりこれは、ちゃんと証拠を残しておかないとダメだよね。自覚を促すという 意味でも!!」 「え? 証拠?」 一体何を言い出すのか。首を傾げるせつなの手を取り、ラブは急に駆け出した。 「ちょ、ちょっと、ラブ」 「証拠といったら、やっぱり写真だよね!!」 「ええ? どういうこと?」 「お父さんにお願いしてみる!! 家族でまた写真を撮りに行こうって!! お父さん とお母さんと私、それらせつなとタルトとシフォン、皆で写真館で撮ってもらおう!!」 出来上がったらおじいちゃんの写真の下に飾ってもらうんだー。そう言いながら、 さっきまでの表情が嘘のように、晴れ晴れとした顔を見せるラブ。手を握られ、後を 追うせつなは、彼女の言葉に心を揺り動かされて。 「ピーチはん、ホンマ、 ええ子やなぁ」 「うん。ホントに」 振り落とされないようにしがみついてるタルトの言葉に、せつなは。 ニッコリと笑って頷いたのだった。 そして、数日後。 クローバータウンストリートの写真館に、また新しい一枚の写真が飾られた。 圭太郎とあゆみ、そしてシフォンを抱えたラブと、タルトを抱えたせつな。皆並ん で、微笑みながら映っている。もちろん、その上に飾られた写真は、ラブの祖父が写 されたもの。 少女達の、花を咲かす直前のつぼみのような美しさが切り取られたその写真は。 桃園家にとっても、いつまでもいつまでも、大切なものとなったのだった。
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/1025.html
【7月21日】 『そんな目で見ないで』 美希 「海に沈む夕日って、とってもロマンチックよね~」 祈里 「うん、海に映った夕日と一つに重なっていく瞬間とか」 せつな「神秘的ね。この世の光景とは思えないくらいに」 ラブ 「ユラユラ揺れて、プリンをお皿に落としたみたいだよね」 美祈せ『………………………………』 ラブ 「待って! 冗談だって、ここ笑うところ!」 【7月22日】 『海水浴の勲章』 タルト「あぃたたたぁ~。海で日焼けして体がヒリヒリするわ~」 祈里 「だから動物用の日焼け止め塗ってあげるって言ったのに」 せつな「ワイは動物ちゃうとか、変なところで意地張るから……」 ラブ 「健康的でいいじゃんか! あたしもこんがり焼けたよ~」 美希 「まあ、綺麗なキツネ色~って……女の子が焼いてるんじゃないわよ!」 【7月23日】 『パラソルの下で』 ウエスター「海で泳ぐとあっという間に時間が経つなぁ。帰ったら昼寝だぁ~」 タルト 「海も空もでっかいからなあ。景色が雄大やと心も大きなってまうんやろうな」 サウラー 「そして、時計だけが正確に針を進める。か、なんだか詩的だね」 ウエスター「お前はこんな時まで読書か、風情の無い奴だ」 タルト 「ワイはそれより、コップに積み上げられた角砂糖の山が気になるわ……」 【7月24日】 『やっほ~って感じかしら?』 せつな「今日はみんなで花火大会に行くの。雨が降らないといいなぁ~」 ラブ 「晴れてよかったね。た~まや~」 せつな「なあに、それ?」 ラブ 「なにって、花火を応援するかけ声だよ」 祈里 「その昔、玉屋と鍵屋の二大花火師が競い合ってた頃の名残なの」 美希 「そうなんだ。でも知ってて叫んでる人は少ないと思うわよ」 ラブ 「声出したほうが楽しいって!」 せつな「そうね」 ラ美祈せ『た~まや~』 【7月25日】 『デザートの人気なら』 ラブ 「夏のデザートはやっぱり桃に決まりだね」 祈里 「ラブちゃん、パインだって美味しいよ」 美希 「ブルーベリーだって!」 祈里 「味はともかく、そんなに食卓に並ばないと思う」 美希 「ぐっ……」 せつな「パッションフルーツはもっと……」 タルト「要するに、食えない二人ってことやな」 美・せ『タルトは美味しく料理して欲しそうね』 【7月26日】 『足りないもの』 ミユキ「今日は海辺でダンス合宿。みんな、終わったらバーベキューよ!」 せつな「なんだかワクワクするわね」 ラブ 「牛さん、豚さん、鳥さん、ウインナー。ホタテに、サザエに、エビさん、カニさん♪」 美希 「ちょっと、ラブ。凄いわね……」 ミユキ「食材の調達はラブちゃんに任せたんだけど、張り切ってるわね~」 ラブ 「ご飯に、サラダに、じゃがいも、シイタケ、ししとう、トウモロコシ♪」 せつな「美味しそうなものばかりね。こっちには果物もたくさん!」 美希 「買ってこないと思って、ちゃんとニンジンとピーマンも持ってきたわよ」 祈里 「バーベキューの定番ね」 ラ・せ『ガーン!!』 【7月27日】 『SOS』 ウエスター「ヤッホー! 夏は山に登るのも楽しいなぁ。あ~っ、おやつ忘れた~!」 サウラー 「山を登る幸せと、おやつを忘れた不幸。楽しむべきか悲しむべきか」 ウエスター「ええい、哲学なんぞ犬も食わんわ! 取りに戻るぞサウラー!」 サウラー 「無理だ、帰るだけで日が暮れるよ。今日は諦めよう」 ウエスター「うお~~~~!」 せつな 「はいはい、わかったわよ……。場所を正確に教えて」 【7月28日】 『可憐なクローバー』 美希 「新しい浴衣でお祭りに行くの。ん~、バッチリ。アタシ完璧!」 ラブ 「あたしたちはどうかな?」 美希 「ラブも、ブッキーも、せつなも完璧よ!」 祈里 「ありがとう、美希ちゃん」 せつな「美希の完璧って自慢じゃないのね。他の人も誉めるもの」 美希 「もちろん! オシャレは自信を持つことが大切なのよ!」 【7月29日】 『お祭りに潜む罠』 せつな「縁日で、タコ焼きとわた飴とカキ氷を食べたの。美味しかったわ」 美希 「わた飴は甘くて苦手ね。カキ氷は少しなら。タコ焼きは問題外!」 せつな「食わず嫌いはダメよ、美希。はい、あーん」 美希 「ちょっと、タコ焼きを近づけないで! 無理なの知ってるでしょ」 せつな「これはイカ焼きよ。タコは入ってないらしいの」 美希 「それなら……。うん、美味しいかも」 店主 「お嬢ちゃん、すまない! 間違ってタコ焼きを渡しちまった」 せつな「そんな、どうしよう……。はい、ハンカチ。出していいわ」 美希 「そんなことできるわけないでしょ……」 せつな「じゃあ、お水。飲んじゃって」 美希 「それもできるわけないでしょ」 せつな「美希が泣いちゃった……」 【7月30日】 『小さい頃の思い出』 祈里 「お庭の朝顔がきれいに咲いたの。絵日記に描こうかなぁ~」 せつな「これがブッキーの描いた絵日記ね。とっても綺麗」 祈里 「ありがとう。中学生にもなって子供っぽいかなって思ったけど」 ラブ 「なんで? いくつになっても朝顔はきれいだよ」 美希 「今だからこそ、描ける絵もあるんじゃない?」 せつな「比べてみても面白そうね。なんだかうらやましい」 【7月31日】 『海よりもでかい男』 サウラー 「ウエスターはまた海に行っているのか。僕も行ってみようかな?」 海水浴客 「キャーー! 瞬様~、こっち向いて~。隼人様素敵~」 サウラー 「ウエスター……。海は開放感の溢れる場所じゃなかったのか?」 ウエスター「溢れまくっているじゃないか、何が不満なんだ?」 サウラー 「むしろ束縛感がたっぷりなんだが……」 ウエスター「それは自意識過剰というものだ。小さいぞサウラー」 新-269へ
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/320.html
何だか…帰りたくない。夕暮れの公園。 ブランコに乗り、秋風に吹かれている少女、東せつながいた。 もうどのくらいこうしているのだろう。 明るかった空は夕闇に染まり、気づけばすっかり薄暗くなっている。 秋とは言えど、風は随分冷たくなっており、指先は冷え切って感覚がなくなっている。 帰らなきゃ…。 重い腰をようやく持ち上げ、せつなはのろのろと歩き出す。 しばらく歩いていたものの、急に何事か思い立った彼女は、桃園家へと続く帰路を横道にそれた。 辿り着いた先は、何度か訪れたことのある家。 寒さに震える指先で、せつなはインターホンを鳴らす。 『…ハーイ』 しばらく間を置いて、聞き慣れた声が迎える。 「あ、美希?…せつなです」 名乗ると同時に、インターホン越しに慌てて玄関に駆け付ける音がして、ガチャリとドアが開き、美希が姿を見せた。 「いらっしゃい、せつな」 彼女の笑顔を見て、せつなは安堵した。 さっきまでの不安が、ほんの少し和らいだようだった。 「急に来ちゃってごめんなさい。わたし…」 「ううん、いいのよ。来てくれて嬉しいわ。さ、上がって」 ふるふると顔を横に振り、自室へ上がるように促す美希の後について、せつなは靴を脱いだ。 美希の部屋に通されたせつなは、出された紅茶に口をつけ、ひとくち飲み込む。 温かい…。 柑橘系の香りが鼻孔をくすぐり、温かな液体が冷えた喉をすべり降りてゆく。 温度もちょうど飲みごろで、まさに美希の口癖どおりの「完璧」な飲みもの。 綺麗に整頓された部屋の中で温かい紅茶をいただき、今やカップを持つ指もすっかり温まっている。 その温かさは、彼女の心の中にまで染み渡ってゆくようだった。 「…美味しいわ」 「ありがと。それ、うちのオリジナルブレンドなの。香りだけじゃなくて味わいにもこだわってるのよ。お客様にも喜ばれてるのよね」 四角いローテーブルを挟んで、せつなとは対角に座りながら、美希は脚をくずす。 「お家には連絡したの?」 「さっき来る途中で、『美希の家に寄ります』って電話しておいたの。おばさまが出たので、少し遅くなるって言っておいたわ」 「…そう」 「…ねぇ美希、この前のこと怒ってるでしょ?」 「ああ、キスのこと?」 はっきりと言う美希に対し、せつなは少し恥ずかしそうに頷く。 あの丘でどちらからともなく口づけたあと、美希の腕の中から逃げるように立ち去ったあの日。 それはまるで燃え残った花火のように、せつなの心にモヤモヤと燻り続けていた。 「怒るわけないじゃない。…むしろ、嬉しかったの」 「嬉しい?どして?」 問いかけるせつなの眼を、美希は見つめ返しながら何時になく真剣に答えた。 「…アタシ、せつなが好き」 美希の瞳の力強さに、せつなはうろたえる。 美希が…わたしを…? あの日。 ラブが離れていくような気がして、すがるような気持ちでしてしまったキス。 それなのに、美希は嬉しかったと言ってくれる。 そして、そんな自分を好きだと言ってくれる。 真摯な思いに触れ、せつなにも嬉しさが溢れた。 だが、自分が好きなのは…。 たったひとりの人の面影に、苦しくなるほどの恋慕を覚えて、無意識に胸元をつかむ。 「ありがとう美希。だけど、わたしには…」 「わかってる。ラブだけ、でしょ?」 こくん。黙って頷くせつなの手を握り、美希が言葉を続ける。 「アタシはせつなが好き。せつなが誰を好きでも、その気持ちはおんなじなの。せつなはどう?」 せつなは考える。 美希は、相手の気持ちに関係なく、自分の気持ちに正直であろうとしているんだ。 じゃあわたしは…?。 「…わたしも美希とおんなじよ。わたしはラブが好き。ラブが誰を好きでも」 「それじゃ、早いとこ仕度仕度!」 「何?」 「こんなところで油売ってないで帰るのよ、自分の居場所にね」 「わたしの…居場所」 せつなにとって、帰るべき居場所は何時でもラブだった。 探していた答えは、こんな簡単なことだったのに。 ラブが離れてゆくなら、待ち続けていればいい。 いつか帰ってくることを信じて。 「そうね。帰らなきゃ、わたしの居場所に。本当にありがとう美希。美希にはいつも助けられてばかりね」 「いつでもまた来てね。慰めてア・ゲ・ル」 ふざけながら、小さくウインクする美希。 その仕草に、せつなの顔はみるみる朱に染まった。 「んもぅ美希ったら!からかわないで!」 「アハハ…ごめんごめん」 ふたりでひとしきり笑い合うと、せつなの瞳から小さな光がこぼれた。 涙って、嬉しい時にも流れるものなんだわ。 早くラブに会いたい。 せつなの新たな決意は、困難に立ち向かう勇気をもたらしていた。 7-22最終章へ