約 1,207,358 件
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/736.html
わたしはラブちゃんが好き。 そう自覚したのは、何気ない日常の出来事だった。 ダンス練習の後、いつものようにカオルちゃんのドーナツカフェに寄って帰ろうということになった。 カオルちゃんからドーナツを受け取り、ラブちゃんとせつなちゃんがいるテーブルに置こうとした。 その時、胸の奥がチクって痛んだ。 笑いあっているラブちゃんとせつなちゃんを見ておきた胸の痛み。 最初は、ダンス練習の後だからと思っていた。 ダンスは簡単そうに見えて、とても難しくて体力も使う。 これまでほとんど運動をしていなかったわたしは、最初のうちはみんなの動きについていくので精一杯。 でもだんだんと、ダンスのせいじゃないって分かった。 ラブちゃんとせつなちゃんを見ておきた胸の奥の痛みは、 自分でも不思議なことに、ラブちゃんと美希ちゃんが一緒にいても、 或いはせつなちゃんと美希ちゃんが一緒にいても、痛みはおきない。 ラブちゃんとせつなちゃんが一緒にいるときだけおきる現象。 だけど、その痛みは、小さいけれど確実に存在して、時が経つごとに大きくなっていく。 今では、わたしのそばにせつなちゃん達がいなくても、胸が痛むようになった。 ラブちゃんを見て、胸の奥に広がる温かいもの。 ああ、これが人を愛おしく思う気持ちなんだって思った。 それに、せつなちゃんが嫌いなわけではない。 むしろ、慣れない環境で精一杯頑張っているせつなちゃんを見て、わたしの出来ることならなんでもしたいと思う。 ダンスをしようか迷っていたせつなちゃんに練習着を渡した時の気持ちは、今でも変わっていない筈なのに。 今はダンス大会を1か月後に控えた、大事な時期。 この大会は大きな大会で、優勝すればラブちゃんの夢に大きく近づく。 優勝しなくても、何カ月も前からみんなが目標にしていた、大切な大会。 でも、最近の練習は全員の動きがかみ合わず、不本意なものに終わっていた。 寒いから動きが鈍いのかなとかみんなは言っていたけど、多分、わたしが原因。 ダンスをしているとき、横にいるラブちゃんとその隣のせつなちゃんが気になって仕方ない。 ラブちゃんの夢の足手まといになりたくない。 そう思うけど、今のわたしは足を引っ張ることしかしてない。 思い悩んだわたしは、バレンタインにチョコを渡そうと決めた。 想いを口にすることはできないけれど、せめてバレンタインのチョコに想いを込めたい。 ラブちゃんが気づかなくてもいいと思うのは自己満足だとは思うけど、そうしたらダンスに専念できるかもって思った。 毎年、お父さんとかにはバレンタインにチョコを渡していたけれど、手作りなのは今年が初めて。 美希ちゃんとせつなちゃんには同じ生チョコを、ラブちゃんには違うものを。 数日前から、デパートへ行って道具や材料を揃えたり、料理の本を買ったりした。 わたしの気合の入れように、お母さんには、好きな男の子にあげるのと聞かれたけど、わたしは友チョコだって答えた。 確かに、友チョコ。だけど、違う。 ラブちゃんへの想いを自覚する前なら、みんなに感謝の気持ちを込めて作っただろうけど、 今ではもう、カムフラージュでしかない。ラブちゃんにチョコを渡す為の。 バレンタインデーの今日はダンス練習の日だから、みんなに会えるし、チョコを渡せる。 ラッピングは全部同じで、中身はラブちゃんのだけ違っている。 ラブちゃんのチョコがどれか分からなくならないように、見えないところに印をしたりして。 でも、チョコを渡す直前になって、ラブちゃんとせつなちゃんが一緒に箱を開けたらどうしようと思った。 ラブちゃんとせつなちゃんは同じ家に住んでいるから、一緒に開ける可能性がある。 ラブちゃんに一人の時に開けてねと言うことはできるけど、どうして?って聞かれたら、どう答えよう? そんなことを考えていてダンス練習が終わっても、結局ラブちゃんにもみんなにも渡せなかった。 帰宅し夕御飯の後、自分の部屋に戻っていたけど、焦燥感にも似た思いに駆られ、外へ出た。 やっぱりラブちゃんにチョコを渡したい、その思いで。 ラブちゃんの家はわたしの家とそんなに離れていないから、走ればそう時間がかからない。 部屋にいた時のままの服装で外に出たけど、走ったせいか、寒さは全然感じなかった。 ラブちゃんの部屋もせつなちゃんの部屋も灯りが点いている。 リンクルンで呼び出せば、ラブちゃんは外に出てきてくれるだろうけど、 慌てて家を出てきたから、ラブちゃんのチョコしか持ってきていない。 せつなちゃんのチョコがないことの説明がつかない。 それにチョコを渡すなら、今日はいつでもチャンスがあった。 わたしがダンス練習の集合場所の公園に行った時、先にいたのはラブちゃんとせつなちゃんの二人だったし、 練習の合間の休憩のときでも、帰りに寄ったドーナツカフェにいるときでも、いくらでも。 もう、渡せるわけないよね。 そう思い帰ろうと後ろを向いたわたしの目の前を、白いものが落ちてくる。 空を見上げると、暗闇のなかからタンポポの綿帽子のような雪が降りてくる。 雪はわたしの顔に落ちて溶け、幾筋もの流れとなって、頬を伝い下へと落ちてゆく。 その流れの中に、一筋の熱い雫。 わたしは声もなく涙を流しながら、ただ、はらはらと舞い降りる雪を眺めていた。 時間はどれくらい過ぎていたのだろう。 気がつけば、ラブちゃんの部屋もせつなちゃんの部屋も灯りが消えていた。 雪は絶え間なく降り続け、世界を、全てを、白く染めていく。 だけど、暖かくなれば儚く溶けてしまう雪。 わたしのこの思いも雪に埋もれ、消えてしまえばいいと、そう思った。 了
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/43.html
ラブ「せつな~、お菓子たーべよっ♪」 せつな「夜に食べたら太るってラブが教えてくれたじゃない。」 ラブ「う・・・ぅ。」 せつな「でもラブが食べさせてくれるなら私・・・///」 ラブ「せつな・・・///」
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/53.html
圭太郎「せつなちゃんはデートとかした事あるのかい?」 せつな「でぇと?」 あゆみ「好きな人と一緒に映画館や遊園地、公園や海へ行ったりね。」 せつな「あっ♪あります。昨日もおとついもその前の日も。」 あゆみ「えぇ~っ!?いつの間にそんな、、、」 啓太郎「じゃ、じゃ、じゃ、じゃ、じゃあその何だ!?キ、、、キ・・・」 あゆみ「お父さんっ!!!」 ポカッ せつな「うふふ。キスですよね?それは教えてもらいました♪ 毎日してます。」 父母「な、、、、、、、、、、(汗」 ラブ「たっだいまぁ~!ふえぇぇぇ~、あつぃ汗止まんないぃ~」 せつな「あ♪お帰りラブ。今日もでぇとするの???」 啓太郎「ラブが相手なのかっ!?」 あゆみ「ラブが恋人なの~!?」 ラブ「何でそれをっ!!!!!!!!」 せつな「言っちゃダメだったの?」 ラブ「出来れば内密に。。。せつなぁ~(涙目」
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/625.html
イエローハートの証明 ( 第4話:現れた男 ) 「あれぇ・・・ブッキーん家、留守かなぁ。」 ラブが首を傾げながら、電話を切る。その様子を見て、美希も怪訝そうな顔になった。 「リンクルンじゃなくて、家にかけたの?ラブ。」 「両方だよ。でも、ブッキーは出ないし、お家の電話は留守電になってる。」 「そう・・・。病院にでも行ってるのかしら。」 ぼそぼそと言い合う二人の親友の顔を、せつなも心配そうに見つめた。 三人は、四つ葉町公園のベンチに並んで腰掛けていた。ひとしきり再会を喜んだ後、まずは何をおいても祈里に連絡しなくてはと、ラブが電話をかけたのだ。 公園の若葉は、もう高いところまで上った日の光を受けて、キラキラと輝いている。今のラビリンスにはまだ無い、緑の美しい光景。もっとも今のせつなは、それに見とれている気分ではなかった。 ブッキーは・・・祈里は一体、どうしたのだろう。 だが、ラブの言葉を聞いて、ここへ帰って来た重要な目的を思い出し、せつなは背筋を伸ばした。 「誰も電話に出ないんじゃ、いきなり押しかけるわけにもいかないよね・・・。どうしよっか、せつな。」 「そうね。じゃあ、ブッキーには後で連絡するとして、まずはナケワメーケが現れた現場に連れて行ってもらってもいい?」 せつなの言葉に、ラブと美希の表情も引き締まる。 「わかった。こっちだよ!」 ラブが勢いよく立ち上がり、先に立って走り出す。せつなと美希も、すぐその後に続いた。 イエローハートの証明 ( 第4話:現れた男 ) 「ここだよ。この中で、ナケワメーケが暴れてたの。」 立ち止まったラブに続いて、せつなも囲いの破れ目から、その場所を覗き込む。 何かの建設予定地らしい空地。その隅には、これから組み立てられるのであろう機材が、整然と積み上がっている。しかし、一度きれいに均されたように見える地面には、何か重くて大きなものが落下したかのような凸凹が目立ち、あちらこちらで土がめくれ上がっている。 襲撃の跡が生々しい現場の片隅に、ぽつんと置かれている一台のショベルカー。それを見て、せつながわずかに顔を曇らせる。かつてショベルカーをナキサケーベにして、ラブたちを苦しめたときのことが頭をかすめた。 気を取り直して、ラブと美希に向き直る。 「それで、ナケワメーケの元になったものは、もうここには無いのね?」 「どうやら無いみたいね。このくらいの大きさの、紫色をしたガラスの瓶だったわ。香水を入れて使う物よ。」 美希が囲いの中に目を凝らしてから、親指と人差し指で香水瓶の大きさを示し、せつなのために簡単な説明を加えた。 「そう・・・。」 せつなが土埃の立つ空地を見つめながら、両手を合わせ、その人差し指を唇に当てる。何か考えを巡らせているときや、迷っているときの彼女の癖だ。そんなせつなを、ラブは真剣そのものといった顔つきで、美希は心配そうに眉根を寄せて、じっと見守る。 やがて意を決したように、せつなが顔を上げた。 「実は、二人に話しておかなきゃいけないことがあるの。本当は、ブッキーにも早く知らせなきゃいけないんだけど・・・。」 が、そう言いかけて、せつなはハッとしたように口をつぐんだ。不思議そうに首を傾げるラブと美希の後ろから、バラバラと複数の足音が近づいて来る。 揃いのグレーの制服を着た、十人ほどの大柄な男たち。その真ん中に立つ男が、いかめしい顔つきでじろりと三人を眺め、野太い声で言った。 「何だ?君たちは。ここは立ち入り禁止だよ。一体何をしてるんだ?」 「え、えーっと・・・それはですね・・・」 困った顔で言葉を探す美希。ところがその隣りから、ラブがパッと顔を輝かせて前に進み出た。 「おじさん!おじさんって、去年のトリニティのコンサートのときに、警備員だったおじさんだよね?」 「ん?君は・・・。」 怪訝そうな顔でラブを見つめてから、男がニヤリと笑う。 「思い出した!あの時のお嬢ちゃんか。確か、トリニティのボディガードだっけ?あれは傑作だったよなぁ。はっはっは・・・」 楽しそうに笑う男に、ラブも笑顔で頷く。美希は合点がいった顔で、やれやれ、とため息をつき、せつなはキョトンとして首を傾げた。 そう、あれは去年の七月の、トリニティのコンサートのとき。四人目のプリキュアと目されていたミユキがラビリンスに襲われたときのために、ラブたち三人がボディガードを買って出た。そこで、張り切り過ぎてスパイ顔負けの恰好をしていたラブを、不審者かと思って警備室に連行しそうになったのが、今目の前に居る彼だったのだ。 「それで、今日はどこで警備のお仕事なの?こんなに大勢で。」 「いや、実は昨日、そこの工事現場に化け物が出たって情報があってなぁ。ほら、あのコンサートを滅茶苦茶にしたヤツの、仲間みたいなヤツらしいんだが。」 せつなが辛そうに下を向いたのにも気付かず、男は至極軽い調子で話を続ける。 「あのときはプリキュアが助けてくれたけど、今はもう、この町にはプリキュアは居ないらしくてね。それで俺たちが呼ばれたのさ。」 「おじさんたちが?え・・・まさか、おじさんたちで倒すつもりなの?ナケ・・・ううん、あの化け物を!」 驚きと心配で、ラブが目を大きく見開いたとき。 「ちょっと待って下さい。困りますよ、町の人たちを不安がらせるようなことをおっしゃっては。」 大男たちの後ろから、新たな声が聞こえた。 「え?この声って・・・。」 美希が意外そうに呟くそばから、男たちが左右に分かれて、さっと道を開ける。 悠々とそこを歩いてきたのは、ひょろりとした長身に、黒縁の眼鏡をかけた色白の少年――。 「やあ、皆さん。あ、東さん!お久しぶりです。」 四つ葉中学校三年生、御子柴健人が、少し照れたような表情で、三人に向かってぴょこんと頭を下げた。 「健人君!どうしてここに?それに、このおじさんたちって・・・」 勢い込んで問いかけるラブを押しとどめて、健人が後ろに控えている男たちを下がらせる。そして、こちらの話し声が聞こえない距離まで彼らが離れたのを確認してから、もう一度三人の方に向き直った。 「皆さんも、あの化け物の話を聞いて、現場を見に来られたんですか。あれ?でも、今日は山吹さんはご一緒じゃないんですね。」 「ブッキーは、体調が悪いらしくって・・・。それよりさ、あのおじさんが言ってたことって本当なの?」 「ああ、あの方たちは、僕がお願いして来て頂いたんです。人々の安全を守るプロですし、武道の心得もある方たちですから。」 ラブの問いに、健人が事もなげに答える。 「じゃあ、やっぱりあのおじさんたちで、ナケワメーケを!?」 「無茶よっ!あの化け物は、普通の人間が太刀打ちできるような相手じゃないわ!」 色めき立つラブと美希。が、健人はそれにもまるで動じる風がない。 「お二人とも、落ち着いて下さい。まさかそんなこと、僕も考えてはいませんよ。 あの方たちの役目は、あの化け物の謎を解く手掛かりを探すこと。そして万が一、また化け物が現れたら、町の人たちを安全に避難させること。それだけです。」 「じゃあ、もしまた怪物が現れても、それを倒そうだなんて思ってはいないのね?」 今まで黙って三人のやり取りを聞いていたせつなが、静かに口を開く。健人は、三人の顔を順繰りに眺めてから、薄い胸を精一杯張って一言、こう答えた。 「いいえ。」 「ええ~っ!?」 「だからっ!さっきも言ったように・・・」 「桃園さん、蒼乃さん。御子柴グループを侮ってもらっては困ります。」 再び健人に詰め寄ろうとしたラブと美希は、珍しく自信たっぷりのその言葉に、思わず口を開けたままで健人の顔を見つめた。 「御子柴グループは、家電製品だけじゃない、実に様々なものを手掛けているんです。それは皆さんも、ご存知ですよね?」 「それは、怪物を倒せるような武器も手掛けているってこと?」 「いや、東さん、そんなことは・・・。でも、武器と名の付く物は無くても、科学の力であの化け物を退治する手段はあるはずです。今、うちの優秀な研究者たちが、検討を始めています。」 うっすらと笑みさえ浮かべながらそう言い切る健人に、せつなが厳しい目を向ける。 「もし、その怪物がナケワメーケだったとしたら・・・侮っているのはあなたの方よ。ナケワメーケは、ただ物理的に倒せばいいという相手じゃないの。危険過ぎるわ。」 「ならば、またプリキュアが戦ってくれるんですか?皆さんは、もうプリキュアにはなれないんですよね?」 健人の方も一歩も引かずに、そう言ってせつなを睨むように見つめる。もっとも、その眼光にあまり迫力は無かったが、せつなは一瞬、言葉に詰まった。それを見て、健人が勝ち誇ったように、さっきの薄ら笑いを浮かべる。 「だったら皆さんも、今はただの一般人です。ここは僕に任せて、もうこの場所には近付かないで下さい。」 「何言ってるのよ!」 美希が思わず苛立たしげに叫んだ、その時。 「ねぇ・・・どうしちゃったの?」 心配そうに震える声が、今にも衝突しそうな三人の間に割って入った。 ラブが、瞳をわななかせながら、健人に一歩近づく。 「今日の健人君、なんかヘンだよ。なんか・・・いつもと違って、凄く無理してるみたい。ねぇ、何があったの?」 「そ、それは・・・四つ葉町にまた怪物が現れた、非常事態だからですよ。」 今まで滑稽なくらいにぴんと伸ばしていた健人の背中から、その瞬間、ふっと力が抜けた。眼鏡の奥の小さな目が、落着きなく揺れる。 が、それも一瞬。 「ねぇ、大輔たちは?このこと、知ってるの?」 ラブのこの言葉に、健人は再び背筋を伸ばすと、ぐっと拳を握った。 「大輔君たちには、関係のないことです。」 「そんな、関係ないって・・・。」 ますます心配そうなラブの声に、耳を塞ぐようにかぶりを振ってから、健人は自分に言い聞かせるように呟く。 「僕は・・・御子柴グループの後継者です。大切なこの町の人たちは、僕が守ってみせます!」 「こんな風に一人で無理して、みんなを守ることなんて出来ないよっ!」 「皆さん!」 ラブの叫び声を無視して、健人が後ろに控えている男たちを振り返る。 「話は終わりました。調査の間、現場に一般の方が近付かないように、警備を厳重にして下さい。それから、ここに居る一般人の方々には、速やかにお帰り願って下さい。」 「健人君!」 「ちょっと!話はまだ終わってないわよ!」 「待って!話を聞いて。本当に危険なのよ!」 呼びかける三人に答えることなく背を向けると、健人は男たちの間の道を、今度は一目散に駆け去った。 追いかけようとするラブの肩を、さっきの警備員が素早く抑える。 「そういうことだ。御子柴の坊ちゃんの言う通り、ここは危ないから、早く帰りなさい。」 「おじさん、離して!健人君と話をしなきゃいけないんだから!」 「おお、分かった。じゃあ、もうここへは来ないと約束してくれるな?」 「それは・・・。」 ラブが困ったように俯いた、その途端。警備員が息を呑む気配がして、ラブの肩に置かれた手が離れた。 「おい。こいつに何をしているのだ?」 突然、すぐ隣りから聞こえてきた声に、今度はラブが驚いて顔を上げる。 いつの間に現れたのか、一人の男がラブの隣りに立ち、腕組みをして警備員たちを見回している。 くたびれたアイスブルーのジーンズに、黒い長袖シャツ。鮮やかなオレンジ色のダウンベストに、さらに明るい黄金色の髪――。 「ウエスタ・・・あ、あわわ、は、隼人さん!」 「よぉ。」 ラブの頭を、ぽん、と軽く叩いてニヤリと笑ってみせたのは、西隼人――元・ラビリンス幹部ウエスターの、この世界での姿だった。 「何だ、君は。」 さっきの警備員が、警戒心も露わに問いかける。 「こいつらの知り合いの者だ。警察・・・ではなさそうだが、こいつらが何かしたのか?」 「いや。お嬢ちゃんたちが危険な現場を覗いていたんで、注意しただけだ。」 「ああそうか。すまん。こいつらはどうも、危険を顧みないタチでな。俺からも、よく注意しておこう。」 「ちょっと!何言ってるのよ!」 せつなが小声で文句を言うのもどこ吹く風で、人懐っこい笑顔になった隼人に、警備員が警戒を解く。が、彼がくるりと踵を返し、当の現場に向かってスタスタと歩き始めたのを見て、慌てて声をかけた。 「おい、どこへ行く。」 「なるほど、現場っていうのはここか。ちょっと邪魔するぞ。」 「あ、こら待て。おい!」 隼人は大きな身体を器用に折り曲げて、囲いの破れ目から空地の中へと入っていく。そんな彼を、一度は猛然と追いかけようとした警備員が、急に足を止めた。 優秀な警備員で、武道においても相当な実力者。そんな彼だからこそ、隼人が空地に入った途端、その大きな背中がさらに大きくなったように見えたのだ。 鍛え上げられた筋肉をまとった長身から、殺気にも似た強烈な気が立ち上る。警備員はただ圧倒されて、必死で身構えながら、その背中を睨み付けることしか出来なかった。そんな彼の目の前で、隼人は空地の真ん中に立ち、しばらく辺りを見回した後に、またさっきの破れ目からひょいと通りに戻って来た。 「ここにはもう、何も残ってはいないようだ。邪魔したな。」 穏やかな声で警備員にそう言うと、隼人はラブたち三人に目配せして、先に立って歩き出した。 「あ、ちょっと・・・おじさん、さよなら!」 ラブが慌てて後を追い、美希とせつなもそれに続く。 やがて、警備員たちからその姿が見えなくなってから、隼人はくるりと振り返ると、いつもの能天気そのものの笑顔で、実に嬉しそうに言った。 「久しぶりだなぁ。キュアピーチ、キュアベリー、イース!」 「もうっ!その名前で呼ばないでよ!!!」 少女たちに声を揃えて非難され、彼は冷や汗を浮かべながら、あはは・・・と力なく頭を掻いた。 ☆ 「それで、念のために聞くけど、あれはあなたが生み出したものでは無いのね?」 鋭い眼差しを向けるせつなに、隼人が大いに不満そうな顔をする。 「俺のわけないだろう!大体、このところ地方を駆けずり回っていて、お前やサウラーにすら滅多に会わないじゃないか。こっちに来るヒマなど、あるものか。」 そう言ってドーナツを口に放り込んだ途端、隼人の厳めしい顔が、みるみる幸せそうに緩む。その様子を苦笑気味に眺めながら、どうやら嘘をついてはいないようだと、せつなは内心ホッとした。 ここは、カオルちゃんのドーナツ・カフェ。テーブルの上に置かれている山盛りドーナツは、既に二皿目だ。 そして今日のドーナツは、久しぶりに店にやって来た「クローバーの四人目のお嬢ちゃん」と「ラビリンスの兄弟」への、カオルちゃんの歓迎の気持ちだった。 「だとすると、あの黄色いダイヤは一体何なのかな。ねぇ隼人さん、何か心当たりは無いの?」 「サウラーにもそう言われて、ずっと考えているんだが・・・。残念ながら、何も思い浮かばないな。」 ラブの問いに、緩んでいた隼人の顔が、さすがに引き締まる。 「そっか・・・。まさか、誰かにダイヤを渡した、なんてこともないわよね?」 「渡したって、この世界の人間にか?何のために?俺が言うのもなんだが、そんなの危険過ぎるだろう。」 「え?どういうこと?」 美希の問いに事もなげに答えた隼人に、ラブと美希が不思議そうに問いかける。それを聞いて、隼人は驚いた顔をせつなに向けた。 せつなは、そちらをちらりと眺めてから、二人の親友を正面から見つめる。 「さっき話そうとしたのは、そのことなの。ナケワメーケを生み出す、ダイヤの力のことよ。」 せつなはそう言って少し考えてから、よどみのない口調で話し始めた。 「あのダイヤは、素材の持つ力を増幅させてナケワメーケを作り出すことで、不幸のエネルギーを集めるためのもの。そして実はダイヤ自身も、周囲に災いをまき散らして、不幸にする力を持っているの。」 「え・・・ナケワメーケに、ならなくても?」 「ええ。威力は小さいけれど、近くにいると不幸に見舞われるおそれがあるって聞いたわ。だから、使うときには直前に召喚するようにって言われていたの。まあもう一つの理由は、そんな危険なダイヤを持っているときに攻撃されるのが、一番危ないからだけどね。」 テーブルに目を落として、静かに語るせつなの言葉に、ラブと美希が真剣な表情で聞き入る。 「確かに危険ね。そういうことなら、隼人さんが言うことも分かるわ。」 美希がそう言うと、ポカンとしてせつなの顔を見ていた隼人が、夢から覚めたように頷いた。 「あ・・・ああ。それに、この町の人間たちの手に渡ったら、俺たちが扱うよりもっと危険だ。 あの頃、俺たちは不幸を集めていた癖に、不幸がどんなものだかよく知らなかった。そんな怖いもの知らずの人間より、幸せや不幸をよく知っているこの町の人たちの方が、より大きな不幸に見舞われてしまうかもしれないからな。」 隼人は淡々とそう言ってから、もう一度せつなの顔をじっと見つめた。 「それよりイース。お前・・・そのこと、ラブたちに話していなかったんだな。」 低い声で唸るように呟く隼人に、せつなは何も答えず、黙ってテーブルの上のオレンジジュースに手を伸ばす。 きっと、あまりの手ぬるさに呆れているんだろうな、とせつなは思った。この情報は、言わばナケワメーケで戦う場合の、ラビリンスの弱みとも言える情報だ。隼人は――いや、ウエスターはおそらく、プリキュアが当然この情報を知っているものだと思っていたのだろう。 ウエスターもサウラーも、イースがプリキュアになったとき、ラビリンスの手の内は全てプリキュアの手に渡ったと思ったはずだ。だが実際は、ラブも美希も祈里も、ラビリンスのことを何一つ、せつなに聞いてはこなかった。 理由は簡単。イースだった頃の行いを悔い、悩んでいるせつなに、これ以上辛い思いをさせたくはなかったからだ。 ラビリンスと戦う戦士としては、あまりにも甘い考えだったと思う。だが、三人の優しさに甘え、不幸のゲージの存在すら、ゲージが満タンになる寸前にしか明かせなかった自分が一番甘かったと、今振り返って、せつなはそう思う。 隼人は、それについてはもう何も言わず、黙って次のドーナツを口に運んだ。 「う~ん、それならあのナケワメーケって、一体何なんだろう・・・。」 ラブが、とてもこの世界を救った戦士とは思えないような、テーブルの上に顎をのせた行儀の悪い姿勢で、ぶぅっと頬を膨らませる。 「とにかく、早く真相を突き止める必要があるわよね。ダイヤがあれ一つだけじゃなくて、もしまだこの町に別のダイヤがあったりしたら・・・。」 「ええ。もしそうなら、あの警備員さんたちが見つける前に何とかしないと、厄介なことになるかもしれないわ。」 「そっか、そうだよね。今日の健人君の様子も気になるし・・・。この事件が解決したら、きっとゆっくり話も聞かせてもらえるよね。」 三人の少女の会話に、隼人も空になった皿を片付けながら加わる。 「明日、俺も町中をくまなく探してみることにしよう。もしもまだダイヤがあれば、俺ならば気配を感じ取れるはずだからな。」 隼人の話では、あの空地にはもうダイヤの気配は残っていなかったらしい。それどころか、この町に来てから、隼人はまだ何の気配も感じていないという。サウラーがこの町に何らかの反応を認めているというのに、それが少々、気味の悪い話でもあった。 四人は、それからしばらく明日の作戦会議を行ったものの、結局、町の人たちから情報を集めながら、丹念に手掛かりを探す、という以外の妙案は浮かばなかった。 事件の真相は、まだまだ深い闇の中にあって、光は見えない。そういうときは、今自分たちに出来ることをやるしかないだろう。 ドーナツ・ワゴンの中で、カオルちゃんが鼻歌を歌いながら、三皿目のドーナツを積み上げている。ワゴンの窓の向こうには、春には珍しいほどの美しい夕焼けが空一面に広がって、四人の横顔を照らしていた。 ~第4話・終~ 小さな手がかり(前編)へ
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/727.html
『冬のあったか祭り2014~閉幕~』/一六◆6/pMjwqUTk ラブ「はぁ~、お祭りもそろそろおしまいかぁ。楽しかったねっ、せつな!」 せつな「そうね。ぬくもりってどういうものなのか、最初はよくわからなかったけど、随分いろんなぬくもりに出会った気がするわ。」 美希「イベントが始まる前に、みんなでいろいろ言い合ったけど、結構いい線行ってたんじゃない?アタシたち。」 祈里「そうかな・・・。でも、あの時は考えもしなかったような、たくさんのぬくもりに出会えたよ?」 美希「そう言われれば・・・そうね。」 ラブ「うんうん。お鍋に~、ラーメンに~、肉まんに~、あと、ホットココアもいいよね~。」 せつな「ちょっと、ラブ!食べ物ばっかりじゃない。」 祈里「しかも、どれも登場してないんじゃ・・・」 ラブ「あれぇ?」 美希「・・・まぁどっちにしても、最初はアタシたちがぬくもりを持ち寄るつもりだったのが・・・」 祈里「いろんなぬくもりに、わたしたちが温めてもらったような・・・。」 せつな「私たち、もっとしっかりしなくちゃね。」 謎の声「「「「「「いいんじゃない?それでも。」」」」」」 ラ美祈せ「「「「えっ!?」」」」 ミラクルみんな来た♪少女たち「心や体があったかくなると、他の人もあたためてあげようって思うじゃない?」 永遠の友達♪な少女たち「そうやって誰かのために頑張ってる姿だって、見ている人にぬくもりをくれるんだって。」 未来の友達☆な少女たち「そうしてどんどん、いろ~んな形のぬくもりの輪が、広がっていくんだよねっ!」 ラブ「なるほど、そうだよねっ。みんな、いいこと言うっ!」 心の友達・・・な少女たち「じゃあ、また会おうねっ!誘ってくれてありがとう!」 ラブ「うんっ!またみんなで集まって、幸せゲットしようね~!」 美希「みんなからもらったぬくもり、完璧に周りの人たちに届けるわ。」 祈里「ぬくもりの輪が広がっていくって、わたし信じてる。」 せつな「誰か一人でもあたたまってもらえるように、精一杯がんばるわ!」 ラ美祈せ「「「「楽しんでくれて、ありがとう。またね~!!」」」」
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/711.html
ラブ「せつな、今頃どうしてるかな」 ブッキー「会いたい……ね」 美希「もうっ、しっかりしなさい! せつななんて子、初めから居なかったのよ」 ラブ 「……面白くないよ、美希たん」 ブッキー「美希ちゃん……ちょっとは空気読んだほうがいいと思うの」 美希「な、なによ、アタシはただ――ゴメン、外しちゃったか」 スパーン! せつな「外しすぎよ、美希」 一同 「「せつな」」「せつなちゃん」 美希「どうしてスリッパ持ってるのよ」 せつな「突っ込むところはそこなの? 美希」 美希「冗談よ、どうしてここに?」 せつな「ラビリンスに帰ったのは私の中のイース。 せつなとしての私は、この街に残ることにしたの」 美希「ないない、どこぞのクイーンじゃあるまいし、出来ないから、それ!」 せつな「その時、奇跡が起こったのよ」 美希「起きないからっ!」 せつな「休みの日はこちらで過ごすことにしたのよ。 ただいま、ラブ、ブッキー」 美希「アタシはっ?」 せつな「私なんて居なかったんでしょ。フン、だ。 ――そうね、アレ言ってくれたら許してあげるわ」 美希「せつな、あなたは一人じゃない、一人にはならない。アタシたちがついているから……」 せつな「微妙にやる気ないわね、まあ、いいわ。ただいま、美希。 美希が一人の時、私が居ないって泣いてたの見たから帰ってきたのよ」 美希「ちょっ、プライベート覗くなんて卑怯よ」 せつな「あてずっぽうよ、本当だったのね。ありがとう、美希」 美希「これからも弄られるわけね――アタシって一体……」 ラブ「まあ、ともかく、幸せゲットだよ」
https://w.atwiki.jp/lls_ss/pages/1467.html
元スレURL 短めSS1ダース 概要 3グループのコミカル有りしっとり成分有りの 12の短編集 タグ ^Aqours ^[[虹ヶ咲]] ^高咲侑 ^μ’s 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/1125.html
何度かリンクルンに着信があった。でもラブは出ようとはしなかった。 着信音からせつなからだと分かっているはずなのに。 しばらくすると、今度はメールが来た。そこでようやくラブはリンクルンを手に取る。 画面を見ながら動こうとしないラブ。 その表情からは心の内を窺い見るのは無理だった。 「ラブ…ちゃん…?」 おずおずと声を掛ける。 このタイミングで来たせつなからの連絡が、祈里に無関係だとは思えなかったから。 「ん、せつなからだよ…」 「…うん」 それは分かっている。 でも、内容をこちらから尋ねてみてもいいものなのか。 それが躊躇われた。 「せつな、今日は美希たんのとこに泊まるんだってさ」 美希が、誘ったんだろうか…。 祈里の心臓が僅かにきゅっと締め付けられた。 そして、そんな風に考える自分に少し狼狽えた。 「なに考えたか当ててみようか?」 「…え?」 美希ちゃん、せつなちゃんにわたしとラブちゃんの事話すのかな…? 「そう、考えた。違う?」 今度は傍目にも分かるほど、祈里の体はビクリと震え、顔は青ざめていった。 自分でもほとんど無意識の浅ましい心の動きを悟られてしまった事に対する、恐怖感にも似た気持ち。 また、軽蔑されてしまう。 震え出しそうな体を抑え、俯く。 美希とせつなに謝ろう。 そう決心した舌の根も乾かぬ内に。 反射的に保身に走ろうとしてしまう卑しい心の動き。目眩がしそうなくらい情けなかった。 「そんな死にそうな顔しなくてもいいよ」 ラブは苦笑い、と言うより自嘲するような声と口調でリンクルンをしまう。 どうやら今すぐ返信する気はないらしい。 「あたしも咄嗟にそう思っちゃったんだから…」 「ラブちゃん…」 「やんなっちゃうよね。謝ろうとか言っときながらさ」 あーあ…。 そう、溜め息をつきながらラブは祈里のベッドにごろりと転がる。 美希は秘密にするなら墓場まで持って行け、と言った。 これ以上せつなを傷付けたら許さない、とも。 それならば美希がせつなに不用意な事を言うはずがない。 それなのに、当の自分はどうだ。 電話一つに情けないくらいに狼狽えている。 メールにどんな返信をしたらいいのかすら分からない。 「ブッキー、嘘つくのって難しいね…」 「……ラブちゃん?」 「ちょっと、違うか。嘘は簡単につけちゃう。でも…嘘をつき通すのが難しいのかな」 どうして嘘をついてしまうんだろう。 どうして秘密を抱えてしまうんだろう。 苦しくなってくるのは分かってるのに。 嘘をつくのは簡単。嘘をついた事を謝るのも、そんなに難しい事じゃない。 謝ってしまえば、許してもらえるかも知れない。 もし許してもらえなくても、嘘を抱え続ける苦しさからは解放される。 でも、一度ついた嘘を貫き通すのは難しい。 そして、その嘘の存在その物を隠すのはもっと難しい。 特に、暴かれれば相手も自分も傷を負うような、後ろ暗い秘密なら尚更だ。 もし、さっきの電話に出たとしてもいつも通りに話すのは無理だと思った。 喋り方。声のトーン。会話の間。相づちのタイミング。 きっと、せつなはいつもと違う何かを感じ取ってしまう。 それが何かは分からなくても、せつなに言えない秘密がある事を。 せつななら、もし嘘の存在に気づいてもラブがそれを隠したがっているのなら、 無理に聞き出そうとはしない。 嘘の存在その物を気づかれたくないとラブが思っているのを察したのなら、 黙って茶番だと分かっていても素知らぬ顔で付き合ってくれるだろう。 そして、ラブが秘密を持て余してどうしようもなくなったら、きっとせつなは 自分の方から聞き出してくれる。 ラブを解放する為に。 たとえ、自分が苦しみ傷付く事になろうとも。 そして、それに甘えてしまうだろうラブ自身がありありと想像できた。 ベッドの上でラブは硬く身を縮め、心の中で自分を罵倒する。 自ら毒を煽ったのは自分だ。 こんなに苦しいなんて思わなかった、なんてどれだけ馬鹿げた言いぐさだろう。 苦痛に耐えかねて吐き出した所でいつまで経っても苦しさは残る。 だってその毒が産まれたのは自分の胸の中なのだから。 吐いた毒は喉を焼き、そして周りをも侵す。 それならせめて、吐き出さずに自分の内に留めておくしかないではないか。 たぶん、美希の言っていた、「秘密を墓場まで持って行く」と言うのはそう言う事なのだ。 せつなを守りたい。幸せにしたい。いつも笑顔でいて欲しい。 そして出来れば、いつもその隣にいたい。 望む事はそれだけなのに。 いつもいつも、自分の弱さが邪魔をする。 「ラブちゃんは、せつなちゃんを信じてるんだね…」 「ブッキー…?」 「いつだって、せつなちゃんはラブちゃんの笑顔を守ろうとする…」 「…?」 「ラブちゃんは、それを知ってる。だから…」 だから、ラブちゃんが苦しむ事がせつなちゃんを一番悲しませるって分かってるから… ラブちゃんは、そんなに自分を責めるんだよね。 祈里は小さな拳を握り締め、くしゃりと顔を歪める。 「ずっと、そうだったよ…。せつなちゃん、ずっと…」 「……ブッキー…?」 「わたしが、せつなちゃんを…どんなに苦しめようとしたって、メチャクチャにしようとしたって…」 「…………」 「考えてるのは、ラブちゃんの事だけ」 ああ、駄目だ。 やっぱり、無理なんだ。 たった一人の相手としてせつなに愛される。それは諦めていた。 だからせめて、ただの友達以外になりたくて。 傷つけても、憎まれても、どれくらいせつなを想っているか、それを分かって欲しくて。 でも結局、やった事は手に入らない玩具を欲しがって駄々を捏ねる子供と同じだった。 それよりもっとタチの悪い、取り返しのつかない愚かしさだった。 それなのに、まだこんな気持ちになる。 やっぱり、まだラブが羨ましい。 ラブは息をするようにせつなとの結び付きの深さを醸し出す。 決して自慢する訳でも、絆をひけらかす訳でもなく。 心の一番の特等席が埋まっている事を。 いつでも真っ先に考えるのがお互いの事なのだと。 「ごめん、ラブちゃん…分かってるよ。馬鹿な事言ってるの…」 「…ブッキー」 「こんな事しでかして、まだ諦められないとか…自分でも最低だと思うよ」 「…………」 「……ごめんなさい。ラブちゃんに言う事じゃないよね」 「ううん。いいよ」 「…ラブちゃん?」 「いいんだ。当たり前だと思うし…」 叶わないと分かっていたって、好きになった気持ちはどこかへ消えるはずはない。 謝ったって、諦めると決めたって、たとえ自分自身がどこかへ消えてしまったとしても。 きっと気持ちはどこかに残る。 諦めたって、好きなものは好き。 結ばれないと分かっていたって好きになってしまった。 相手を苦しめるだけだと知りながら、想いを抑えられなかった。 誰も幸せにはなれないのに、祈里がせつなを愛する事を止められなかった。 そして、せつなが祈里の想いに応えられないのも、せつなの所為ではないのだから。 犯した罪はどれほど悔いても償っても無くなりはしない。 しかし、人が誰かを愛する事は罪ではない。 その相手を愛せない事が罪ではないように。 諦めて想いが冷めるのなら、誰も泣かずに済むのに。 どうして、色も形も匂いも手触りも何も無い、目にも見えない心に体まで支配されてしまうんだろう。 「ねぇ、ラブちゃん。運命の赤い糸って、あるじゃない?」 「…うん…?」 「きっと、繋がってるのはラブちゃんとせつなちゃんみたいな人達なんだろうね」 産まれた世界も、育った環境も何もかも違うのに。女の子同士で、敵として出会ったのに。 どんな立場で、どんな出会い方をしても、必ず恋に落ちてお互いを求めずにはいられない。 何度生まれ変わっても、探し求めずにはいられない、たった一人の相手。 「わたしにも、繋がった人がいるのかな…」 「……どう、なんだろうね」 間の抜けた返答だ、と思いながらもラブは言葉を探しあぐねた。 少し前なら、こんな風に拗れてしまう前になら、迷いも無くこう答えられただろう。 (大丈夫だよ!ブッキーだって絶対に運命の人に会えるよ!) 祈里を励ますつもりで。 祈里にも幸せになって欲しい。 自分とせつなが出会えたように、きっと祈里にも愛し合える相手が現れる。 そう、心から信じて。 でも、今は違う。 祈里が運命の人なんて望んでいないのは分かっているから。 「赤い糸がみんなに結ばれてるのなら、どうして違う人に繋がってるって分かってる人を 好きになったりするんだろうね」 「こんなにたくさん人がいるんだもん。 きっとこんがらがったり、途中で切れたりする事もあるんじゃないかな…」 身も蓋もないラブの言い様に、祈里はクスリと笑う。 恋敵でもあり、裏切った相手でもあるラブが一番自分の気持ちを理解してくれている。 皮肉なようで、理にかなっているようで。 同じ相手を好きになってしまった者同士だからこそ、なんだろうか。 立てた膝に顔を埋めて、ラブに小指を立てて見せる。 「神様が結び忘れちゃった人も、いてもおかしくないよね」 「それは無いんじゃない?神様なんだし」 「でも、人を好きになった事が無いって人もいると思うの」 「……」 「もしそうなら、誰かを好きになれる人はラッキーなのかも」 「ラッキーなのかなぁ。辛い事も多いよね」 「うん。でもやっぱり、出会わなければ良かったとは絶対に思わないでしょ?」 「…そうだね」 どこかにいるかも知れない、祈里の運命の人。 その人に出会ったら、せつなに感じた以上の想いを持つようになるんだろうか。 その人も、自分を愛してくれるんだろうか。 もしそうなら、出会いたくない、と祈里は思った。 誰かを好きになる気持ちは止められない。それを身を持って知ってしまった。 出会えば必ず心惹かれ合い、求め合う。逆らう事の出来ない相手。 そんなのは嫌だ、と思った。 せつな以外に心を動かす自分なんて見たくない。 これ以上の想いがあるなんて受け入れたくなかった。 馬鹿馬鹿しくても、子供じみてても、単なる執着だと言われても、 せつなだけが特別なんだと思いたかった。 「ブッキーが……」 「……?」 「ブッキーが、自分にも、運命の人がいるんだって、思えるようになってくれたら…嬉しいな」 「………」 「せつなを忘れるんじゃなくて、無かった事にするんじゃなくてさ…それでも、誰かを好きになって欲しい」 「ラブちゃん、お人好し過ぎだよ…」 「違うよ。そんなんじゃないよ。分かってるでしょ?」 「………………」 「ごめんね。せつなだけは、駄目なんだ…」 祈里に幸せな恋をして欲しい。 誰かに心から愛されて、喜びを感じて欲しい。 祈里が望む事なら何でも叶えてあげたい。 自分に出来る事なら何でもするし、差し出せるものは何でも差し出す。 せつなへの想いを手放す、それ以外の事なら何でも。 それは本当。祈里が好きだから。 でも同じくらい、自分が楽になりたいから。 祈里に大切な人が出来れば、きっと心から祝福出来る。 この胸に巣食った苦しさから、開放される。 飲み込む事も吐き出す事も出来ない、苦く辛い毒の塊。 それでも祈里が幸せになってくれさえすれば、ただの過去の事に出来ると思うから。 ラブはせつなへの想いを断ち切る事なんて出来ない。 離れる事も、手を放す事も無理。 それを嫌と言うほど思い知らされたから。 自分がそうなら、きっと祈里も似たような思いを抱えている。 そんな祈里に違う幸せを探せなんて言うのは、酷なのだろう。 それでも、ラブは望まずにはいられない。 みんなが、傷をこれ以上広げずに癒していく道があるのではないかと。 そんなラブの気持ちを知ってか知らずか、膝に顔を埋めたまま、泣いているのか笑っているのか 分からない少し震えた声で祈里は囁く。 「やっぱり、お人好しだよ。ラブちゃんは。わたしには謝るなって言う癖に」 「…ごめん」 「だから、駄目だよ。ラブちゃんは謝っちゃ。わたし、知ってるから…」 「…何?」 「ラブちゃん、自分でも言ってたじゃない。わたしの事、好きって…」 「…………」 「ありがとう。嫌いにならないでくれて…。わたしも、ラブちゃんが大好き」 ラブは知っている。 ラブが何を言った所で、その言葉は祈里を切り裂く刃になる。 せつなとラブが並んでいる。 見つめ合い、肩を寄せ合い、同じ方向へ歩んでゆく。 その姿を目にする度、祈里はいつまでも胸を引き絞られる事になる。 四人でいる限りそれはずっと続くのだから。 そしてそれは、祈里自身が望んだ罰なのだから。 祈里の罪を分かっていながら、その裏切りに血を吐くような思いを味わっても、それでも… ラブは祈里の辛さに思いを馳せてしまうのだろう。 せつなの中に、たった一人しか入れない場所を独占してしまった。 祈里を蹴落としてその場所を手に入れた訳では無い。 きっと、最初から自分が収まるべき場所なんだ、とどれほど言い聞かせても 拭えない罪悪感。 そして、知りたくもなかったほんの少しの優越感。 せつなに出会うまで知らなかった、どんなにかけがえの無い親友でも分かち合えないものがあるのだと言う事。 それほど大切な相手を傷付け汚されたのに、まだ祈里も大切なままだと言う事。 せつなの側にいたい。 ラブと、祈里と親友のままでいたい。 それなら、ずっと痛みを抱えていくしかない。 「ねぇ、ブッキー。あたしも今日泊まっちゃダメ?」 「ここに…?」 「…うん」 「無理しなくてもいいよ」 「無理じゃないよ!…ダメ、かな?」 「うん、駄目」 「……どうして?」 祈里は顔を上げ、真っ直ぐにラブを見つめた。 自分からこんなにしっかりとラブに向き合うのは初めてだった。 真正面から見返してくるラブの真摯な瞳に、ぎゅっと胸が押し潰される。 もう一度、ちゃんと親友に戻りたい。その為に、側にいたい。 多分、ラブなりの決意を込めた言葉なのだろう。 でも、これだけは、はっきり言わなくてはいけないと思った。 ラブのいるべき場所はここではない、と。 「帰って。それで、せつなちゃんを『おかえり』って迎えてあげなきゃ」 「ブッキー……」 「せつなちゃんが帰るのは、ラブちゃんのところでしょう?」 ラブちゃんがいなくてどうするの。 祈里の瞳は涙に潤んでも、逸らされる事はなかった。 せつなが帰るのはラブのところ。 そう、初めてはっきりと言葉にした。 そう口に出す事でけじめを付けようと思った。 もう迷いは無い。 自分がせつなを愛している事は、ラブにもせつなにも何の関係も無い。 ただ、自分一人の想いなのだから。 その想いが幸せなものでも、辛く苦しいものでも、祈里だけが感じていればいい。 せつなはラブに愛され、ラブを愛して幸せになる。 それを近くで見ていればいいのだ。 やっと、前にせつなの言っていた言葉が胸の中にすとんと落ちて来た。 その上で、自分が幸せになれるのかはまだ分からない。 ただ一つ一つ、気付いた事をやっていこう。 こうして、もう一度自分を受け入れようとしてくれるラブに応えたい。 ずっと見返りも求めずに優しさを注いでくれた美希に、心から感謝したい。 身勝手な想いをぶつけて、身も心も傷付けながら、それでも許しと償いの機会を与えてくれたせつな。 彼女が望んでくれるのなら、全身全霊で応えなければならない。 せつなの側で、親友のまま、新たな道を見つける為に。 ラブは視線だけで頷き、立ち上がる。 「…そうだね。そうするよ」 祈里は自分とせつなを運命の赤い糸で結ばれた相手だと言ってくれた。 祈里の覚悟が決まったのなら、もう揺らぐ訳にはいかない。 せつなが帰ってくる。その場所に必ずいなければならない。 これからずっと共にある為に。 せつなだけではなく、祈里も、美希も、みんなが自分の居場所を確かめているのだから。 ラブは微笑んで、祈里の部屋を後にする。 赤い糸の先にいる、愛しい相手を手繰り寄せるために。 祈里がいつか、その小指の先に想いを馳せるようになれる日が来ることを願いながら。 続く
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/330.html
ラブ「えっと、借りてくる物は…」 せつな「あら?ラブがこっちに走ってくるわ」 由美「借り物を持ってる人がこっちにいるのかも」 ラブ「せつな!一緒に来て!」 せつな「え?私?」 ラブ「早く早く!一着逃しちゃうよー!」 ラブ「やったー!一着ゲットだよ!」 せつな「おめでとう、ラブ。そういえば借り物って何だったの?」 ラブ「え!?えーとね…せ、成績優秀で運動神経抜群な女の子!」 せつな「もう、私はそんなに凄くないわよ?でも、私を選んでくれてありがとう」 ラブ(う~、それ嘘なの…素直になれなくてごめんね。あたしの『大切な人』) しかし、ちゃんと借り物を持ってきたかどうかのチェックでバレてしまうのでした。 はぁ~スイーツスイーツ♪ 5-476も是非どうぞ!
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/1077.html
【11月11日】 『ただ、一瞬のために』 ミユキ「十二月のコンサートに向けて、毎日トリニティで特訓してるのよ」 タルト「ミユキはんらでも、そないに練習せんとあかんのやろうか?」 祈里 「プロだからこそ、練習は欠かせないのよ、タルトちゃん」 タルト「せやけど、同じ練習ばっかりで、退屈するんやないか?」 ミユキ「同じじゃないのよ。少しづつイメージに迫って、完成に近づいて行くの」 ラブ 「作り上げる喜び、練習だって楽しいんですよね!」 美希 「完璧は一日にして成らず」 せつな「精一杯頑張るのみよね」 【11月12日】 『ありのままに受けとめて』 サウラー 「イチョウ並木は、黄色いじゅうたんの上を歩いているみたいだね」 ウエスター「おう! これを見せたかったんだ。綺麗だろう」 サウラー 「夕日を浴びて、落ち葉もキラキラと光ってるよ」 ウエスター「それに積もってる上を歩くと、フワフワして気持ちいいぞ」 サウラー 「四季とはいいものだね」 ウエスター「なんだ? 今頃気が付いたのか? 俺はずっと前から知ってたぞ」 サウラー 「時々君が、実はとても聡明な人間なんじゃないかって、錯覚することがあるよ」 【11月13日】 『似ている二人』 タルト「うぅ~! だんだん寒なってきたけど、みんな風邪ひいてへん? 気ぃつけてな」 ラブ 「タルトこそ風邪なんじゃ? なんだか顔色悪いよ」 タルト「それが朝から寒気がしてなあ……、体が震えるんや。はくしょん!」 せつな「やっぱり風邪ね、横にならないと」 祈里 「大変! 家から薬持ってきてあげるね」 美希 「これで、ラブに続いて二人目の風邪ひきさんね」 せつな「ラブもタルトも、人一倍元気そうなのに……」 ラブ 「あ~、今、二人して、馬鹿は風邪ひかないんじゃなかった? とか思ったでしょ!?」 美・せ『思ってないわよ』 ラブ 「そっか、ゴメン」 美・せ(顔に出てたかしら……?) 【11月14日】 『タコ尽くし?』 せつな「秋祭りに行きましょ、美希!」 美希 「オーケー! でも、タコ焼きだけは勘弁して~」 せつな「そういえば、ラブたちには秘密なんでしょ? バレないように気をつけないと」 ラブ 「美希たん、たこ焼き食べようよ!」 美希 「ゴメン、アタシそれ苦手なのよ」 祈里 「美希ちゃん、タコせんとタコの軟骨食べよ♪ それと、ハイッ! タコのお面」 美希 「……………………」 せつな「本当にみんな知らないのかしら?」 【11月15日】 『健やかな成長を祝って』 ラブ 「今日は七五三のお祝いだね! あたしもお祝いしてもらったなぁ~」 せつな 「女の子は三歳と七歳の時よね。ラブは両方祝ってもらったの?」 ラブ 「うん、そうだよ。写真見る?」 シフォン「らぶ、かわいい」 ラブ 「ありがとう。シフォンはいくつなんだろう?」 シフォン「キュア~?」 タルト 「三歳くらいとちゃうかなあ……よう知らんけど」 あゆみ 「みんなで、シフォンちゃんのお祝いに行きましょうか?」 ラブ 「やったね! シフォン。美希たんに頼んで、晴れ着用意してもらおうか?」 せつな 「どうして、私まで着物を着るの?」 あゆみ 「せっちゃんもお祝いしたことないんでしょ? 一緒にして、みんなで記念写真を撮りましょう」 【11月16日】 『し・あ・わ・せ・の合言葉』 せつな「ダンスのステップが、どんどん難しくなってきたわ。精一杯頑張ろうっと!」 ラブ 「トリニティの振り付けと同じだもんね。そりゃあ難しいはずだよ」 美希 「同じじゃないみたいよ。ミユキさんが四人用に書き直してくれてるから、もっと……」 祈里 「わたし、できるかなあ……」 ミユキ「こーら、弱気にならない! できないと思ってたら教えないわよ」 ラブ 「こんな時は、いつもの口グセで元気出そうよ。みんな、いくよっ!」 ミユキ「ハイ、休憩時間お終い。時間ないんだから、さっさとレッスン再会するわよ」 四人 『はぁ~い!』 【11月17日】 『せつなとシフォンの観察日記』 シフォン「シフォン、公園でどんぐり、いっぱい、集める~」 美希 「はりきってるわね、シフォン。でも、どんぐりって使い道ないのよね……」 祈里 「アクセサリーにしたり、コマにしたり。一応食べる方法もあるらしいけど」 美希 「それはちょっと……」 ラブ 「いっぱい拾って、心の中の宝箱にしまっておけばいいんだよ」 祈里 「ラブちゃん、いいこと言う!」 ラブ 「えへへ~って、せつなまで夢中で拾ってる!?」 せつな「たくさん拾って、庭に植えてみようと思うの」 ラブ 「ドングリって、植えて、芽が出るものなの?」 祈里 「難しいけど、無理じゃないと思うよ」 せつな「精一杯、頑張って育てるつもりよ」 【11月18日】 『謎の質問のお葉書、その②』 美希 「アタシ、チーズケーキを作るのが得意なの! ママも大好きなのよ」 せつな「ここで質問のお葉書よ。『どうして美希には、取ってつけたような設定が多いのですか?』ですって」 美希 「だから、そんなお葉書はどこから来るのよ……」 せつな「他には、タコが恐いってことかしら。チーズケーキ、確かに美希がお菓子を焼くイメージはないわね」 美希 「アタシは何でも得意なのよ。二話で完璧な朝食作ってたでしょうがっ!」 せつな「私はその頃はイースだったし、映画でタマネギ刻んで泣いてた記憶しかないわ」 美希 「グッ、わかったわよ。明日、家に来て。とっておきのチーズケーキ焼いてあげるから」 せつな「楽しみにしてるわ。催促したみたいで悪いけど」 【11月19日】 『寒い夜は』 ラブ 「ホットココアで、寒いの寒いの飛んで行けぇ!」 せつな「良い香りね。立ち昇る湯気を見ているだけで、とっても幸せ」 ラブ 「でもちょっと冷めちゃったね」 せつな「そうね、温め直してくるわね」 ラブ 「まって、いいから動かないで。せっかくせつなの身体があったかいのに」 せつな「誤解されるようなこと言わないでったら! 同じ毛布被って、リビングでドラマ見てるだけよ」 ラブ 「誰に向って言い訳してるの? せつな」 【11月20日】 『ふわふわでもこもこ』 祈里 「最近、寒くなってきたわね。お気に入りのセーターを着ようかな」 祈里 「えへへ、似合うかな? 美希ちゃんたちに見せに行こうかな」 ネコ 「ニャー~」 祈里 「きゃっ! ちょっと、今はダメ、セーターが汚れちゃう」 イヌ 「ワン! ワン! ワン!」 祈里 「ダメだったら、お散歩は後で着替えてからね」 動物達「ガリガリ、スリスリ」 祈里 「もうっ! そんなにセーターが好きなら、みんなにも着せちゃうよ?」 動物達「シーン……」 祈里 「わたしので遊ぶのは好きだけど、自分で着るのは嫌なのね……」 新-597へ