約 1,207,115 件
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/182.html
あ、まただ。また誰かが見てる。 せつなが学校に行き始めてから、誰かの探るような視線を感じるようになった。 …ラブ以外の。それも複数。 視線に気づいてからは、常にそれが纏わりつき、 絡めとろうとしてくる気がして不快だった。 どして?いったい私の何を知りたいの? けれど、視線の先にいるはずの誰かは、 せつなが姿を探し始めるとすぐに視線を外してしまう。 「せつなぁ、帰ろう!」 「うんラブ!」 ラブと話しながら廊下を歩いていると、 またあの視線に気づく。 あぁもう!何なの? 顔を歪めたせつなに、気遣うようにラブが訊ねる。 「せつな?どうかした?」 「実はね…最近いつも誰かが私を見ている気がして。何かヤなの」 「そっかぁ、せつな可愛いし、人気あってもてるからね」 「もてるって何?」 「ええと…そだね~、あ!あとで美希タンに説明してもらお!」 そういえば、体操着がない。 かばんの近くに置いてたはずなのに、気づかなかった。 「ラブ、体操着が見当たらないの。ちょっと教室に探しに行ってくるわね」 「一緒に行こうか?」 「平気よ、先にダンスレッスン行ってて」 せつなはもと来た廊下を戻り始めた。 シンと静まり返った教室には誰もいない。 机の中やロッカーを探してみるが、やはり見当たらない。 「どこに行ったのかしら…」 せっかく買ってもらった体操着なのに、 無くなったりしたらお父さんとお母さんに悪い。 そう考えていると、急に目の前が暗くなった。 気づいたら、せつなは真っ暗なところにいた。 目が慣れてくると、そこはどうやら使われてない古い教室。 両手首をひとつに縛られて、頭の上でどこかに固定されている。 「ん、んんー!」 声を上げて助けを、ラブを呼ぼうとしたが、猿ぐつわで叫べない。 「ようやく気づいたな」 そう話しかけるのは、何度も見た顔だった。名前は知らないけど確か上級生の男子。 いつも見ていたのは彼だったのか。 「これを探してたのか?」 男が目の前にちらつかせたのは、胸のところに『東』と書いたゼッケン。 確かにせつなの体操着だった。 「狙い通り戻ってきたな。しかもひとりで。 ラブってのも美味しそうだったけど、 ひとりの方が好都合ってもんだ。 俺さ、ずっと狙ってたんだ。アンタをね。 …東せつなサン」 視線の先にいつもいた人物が、今やせつなの目の前にいた。 男は、自由の利かないせつなのブラウスのボタンを、 ひとつひとつ外していく。 ブラウスがはだけ、白いブラジャーが顔を覗かせた。 男の手の動きで、せつなは自分が危機に陥っていることを実感した。 (やめて!それはラブだけにしかされたことがないの! ラブだけなの!) せつなの思いとは裏腹にブラジャーはずり上げられ… 〝ぷるん〟 せつなの白くて大きな胸があらわになった。 ひんやりした外気に晒されて、桃色の頂が形を変える。 「やっぱ女の子って、寒いと起つんだな。 それとも触って欲しくて、興奮して起っちゃったとか?」 男は人差し指と親指で突起を摘み、弾いた。 「んん!」 電流が身体を貫いた。 手のひらで揉みしだきながら指で刺激されていると、 どんどん身体が熱くなっていく。 男はせつなの胸に顔を埋めて、顔を動かし胸に押し付ける。 あごで乳首に触れると、わずかに伸びたひげが当たって擦れる。 男の唇がせつなの膨らみを捕らえた。口に含み、甘噛みする。 「ん…んん…」 こらえきれず声が漏れる。 「気持ちよさそうだな。初めてじゃないのか?下はどうなってるんだ?」 スカートをまくられ、下着の横から指を入れられる。 蜜があふれ、男の指に絡みついた。 「おい、もうこんなに濡らしてるぞ」 (イヤ!身体を許しているのはラブだけのはずなのに、 無理矢理されて 気持ちいいなんて…。感じているなんて…。 誰か助けて!助けて!ラブ!! ) 「悪いの悪いの飛んでいけ!ラブサンシャイーン、フレッーーーッシュ!」 ピンクの光が男を包み、一瞬にして部屋が桃色の光で満たされた。 「うわああああああ!…シュワシュワ~」 ラブの必殺技で、男は欲望を浄化され、気を失っているようだった。 「せつな!大丈夫?」 ようやく猿ぐつわがはずされ、せつなはラブの胸の中で搾り出すように泣いた。 「ラブ!ラブ!怖かった!わたし、わたし…ああああああ!」 「心配になって来てみたらこんなことに… 。 せつなゴメン、やっぱ一緒に来ればよかった」 大声で泣き叫び、せつなはようやく少し落ち着きを取り戻した。 けれど、やっと泣き止んでも、まだラブは手首の縄を外してくれない。 「…?ラブ、縄、ほどいてくれないの?」 「せつな、すっごい気持ちよさそうだったね」 「やめて!言わないで!私はラブだけが好き!信じて! あんなことされたいと想うのはラブだけなの!」 「わかってるよ。アタシね、ホントはもう少し前に来てたの。 せつなが胸を揉まれてる時ぐらい」 「え?じゃあどしてもっと早く助けてくれなかったの?」 「だって…、あんまりにも色っぽいせつなを見てたら…、身体が動かなくて。 それに、せつながアタシ以外の人にされて感じてるとこ初めて見て、 嫉妬しながら興奮してた…。ゴメンね…。 けど!コイツがせつなのアソコを触りだして、理性が戻った。 助けなきゃせつながヤられちゃう…。 流石にヤバいってそう思ったら、…変身してたの」 そう言いながら、ラブはせつなの胸に触れる。 ラブは変身したままの姿で、胸の部分が薄い布地を持ち上げるように屹立している。 「せつな…、このまましていい?アタシもう我慢できない」 「ラブ…、イヤよこんなところで。せめて縄だけでもほどいて…、ね?」 そう言うせつなの胸の突起は、ラブの愛撫で硬くなりみるみる尖っていく。 ラブはせつなの懇願を無視し、突起にくちづける。 「んぁっ!ラブぅ、こんなとこでダメ…いやぁ、ほどいてぇ!」 舌先で上下に優しく舐めると、せつなは甘い声を出した。 「はぁん!んん…っあ、ふぁ…」 「これは罰なんだよ」 「罰…?」 「そう。せつながアタシじゃない人に触られて感じちゃった罰」 「そんなぁっ…許して、ラブぅ…ああぁ」 せつなの潤いきった秘所に、ラブがそっと手を伸ばす。 せつなは両脚をひらき、ラブの愛撫を受け入れる。 「ね、せつな、ここは誰のモノ?」 わかってるはずなのに。せつなの言葉で確認しなければ、ラブは気がすまなかった。 「んぁ…、ラブのものよ…。んっん……、ソコもココも全部、 はぁっ… 、私はラブだけのもの…」 指をせつなの膣に出し入れしながら、ラブはもう片方の手でクリトリスを擦る。 「あ…ああっ…ラブぅ!ラブぅぅぅ!」 ラブの名前を呼びながら、せつなは頂点に達した。 弱々しくけいれんするせつなの縄をほどき、ラブは彼女をきつく抱きしめた。 「ごめんせつな…。アタシ、嫉妬でおかしくなっちゃってる。 でもこうするしかなかった。あの男のことは忘れて。 どこにも行かないで。ずっとアタシのせつなでいて…」 欲望のままに、嫌がるせつなを強引に蹂躙したことを悔やみながら、ラブは…泣いた…。 「…可愛いラブ。私はどこにも行かないわ。 ラブだけのせつなでいる。ずっとラブのそばにいるから」
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/262.html
第5話『帰ってきたせっちゃん――ある日のせっちゃん。クローバーで遊園地――』 たくさんの人が波を作る。 波は大きな流れとなって人々を誘う。 大勢の人が同じ目的で列を成して歩く。ラビリンスでは馴染んだ光景。 違うのは表情。そして、繋がり。 家族、友達、恋人同士。 笑顔と興奮と感動。 そこにある――幸せ。 「どうしたの、せつな。驚いちゃった? 休日の遊園地だもの、このくらい当然よ」 「もし、調子悪いなら言ってね。色々お薬もあるから」 「ごめんなさい、平気よ。みんな楽しそうね」 心配そうな美希とブッキーに笑顔を返す。せつなにとって初めての遊園地だった。 「お待たせ! チケット買ってきたよ。今日は一日フリーパスなんだから」 「そうこなくっちゃ!」 「うん、楽しみ!」 「私もたくさん乗ってみたいわ」 せつなは期待に胸を膨らませる。それは、幾度か経験のあるラブたちも同じ。 せつなと乗れる。せつなと遊べる。新鮮な喜びを分かち合える。それが何より楽しみだった。 入場門をくぐる。 一歩先はおとぎの国。人を楽しませるためだけに存在する空間。幸せの集う場所。 「さあ、行こう!」 ラブにつられるように、四人はいっせいに駆け出した。 『帰ってきたせっちゃん――ある日のせっちゃん。クローバーで遊園地――』 「私、あれに乗ってみたい!」 せつなが指さしたのはメリーゴーランド。 優しい光と、楽しい音楽。可愛い動物達に乗って回転に身をまかせる。誰に振ったかわからない手を見つけて、せつなは手を振り返した。 「とほほ、この歳で乗ることになるなんて」 「まあまあ、このポニー、家で預かってる子にお鼻が似てるし」 「知らないわよ、そんなの」 「恥ずかしくないよ、美希たん。あたしは今でも好きだよ」 次はコーヒーカップ。 緩やかな螺旋を描きつつ、高速で回転する。――いや、高速なのは一重にラブのせいだ。 せつなは平然と、美希と祈里は抱きあって悲鳴を上げていた。 「いっくよ~」 「ちょっと、ラブ、早すぎよ!」 「ラブちゃん目が回る」 「複雑な動きね。サイクロイド曲線になっているのね」 「だから……知らないわよ」 そして……観覧車で休憩。 コトコトコト、ゆっくりと上昇していく。室内は冷房が効いていて快適だ。 ラブは案内図を見ながらせつなとコースを確認する。美希と祈里は……。 「う~~気持ち悪い。酔った……」 「はい、美希ちゃん。乗り物酔いのお薬、先に飲んでおけばよかったね」 そう言う祈里も、青い顔をしながら薬を飲み込んだ。 そして、ジェットコースター! 最近リニューアルされた目玉アトラクションだ。 ゴンゴンゴン。ゆっくりした上昇から一気に急降下する。自由落下に迫る下降速度は、人体の感覚を狂わせ混乱に陥れる。 水平回転、宙返り、垂直ループ。バンク角度と高低差がついた急カーブ。次々に襲いかかる恐怖に乗客は絶叫する。 「「「きゃぁぁぁぁぁ!!!」」」 みんなも叫んだ。ラブは笑顔で、美希とブッキーは目を閉じて。 せつなはそんな様子を、不思議そうに見ていた。 「どうしたの、せつな? 楽しくなかった?」 「楽しくないわよ、アタシは死ぬかと思った」 「うん、怖かったよ~~」 「どうして……。――ううん、なんでもない」 乗り物は疲れたので、お化け屋敷に入ることにした。 このお化け屋敷は、本格派と評判も高い。 ラブはせつなと。美希は祈里とそれぞれペアを組んだ。 「きゃぁぁ! せつな、あれ! あれ!」 「落ち着いて、作り物よ。そっちはただの水蒸気よ」 「いゃぁぁぁぁぁ!」 「大丈夫よ、美希ちゃん。この子たちは可愛いよ」 なんとか出口にたどり着いた。 「なんか色々疲れた……」 「わたしは楽しかった!」 「あたしもすっごく楽しい。せつなは? あれ……せつな?」 「ねえ、ラブ。どうして……わざわざ恐怖を与えるような物を作るのかしら。ジェットコースターにしてもそう。スピード感を楽しみたいにしては、度が過ぎていたわ」 不満、と言うほどでもない。ただ、何か釈然としないとせつなは語った。 実際、出口から出てくる子供たちの中には、恐怖で泣いている子も少なくなかった。 そして、そんなものほど人気が高いのも納得がいかなかった。 「えっと、なんて言うんだろう? 怖いから楽しいというか」 「叫ぶのが気持ちいいのかな?」 「勇気を試すのよ……多分」 ラブたちの説明も、どれも満足のいくものではなかった。 (この世界で育っていない私には、理解できないのかもしれない) なんとなく寂しい気持ちになる。 「えーん、えーん。おにいちゃん。ぱぱ~、まま~」 小さな女の子が泣いていた。迷子らしい。ラブたちは駆け寄った。 「どうしたの?」 ラブはしゃがんで事情を尋ねる。祈里はハンカチを取り出して涙を拭う。 美希は係員を呼びに走った。 手際のよい行動に、せつなは目を丸くする。自分は何もできなかった。 少し考えて、アイスクリームを買うことにした。甘いものを食べれば、少しは気持ちが落ち着くかもしれない。 「はい、どうぞ」 お姉さんたちに囲まれ、優しくしてもらって安心したのだろう。お礼を言って女の子は食べ始めた。 そのまま、しばらく話し相手になった。両親とはぐれて兄妹だけになったこと。そのお兄さんともはぐれてしまったこと。 話していて恐怖を思い出したのか、また泣き出しそうになる。大丈夫よ、そう言ってせつなは抱きしめた。 遊びにきて、怖い思いをする。残念なことだと思う。 「あっ! ぱぱ~、まま~、おにいちゃん~」 女の子が、迎えに来た家族を見つけて駆け寄った。抱きついて号泣する。そして、すぐに満面の笑顔を取り戻した。 その子のご両親が丁寧にお礼を言う。 別れ際、その笑顔を見て思う。それは――今日見たどんな笑顔よりも輝いていると。 でも、どうして……。 そう考えて、思い至る。あの子の心を満たすもの。それは――安心。 はぐれるという不幸を体験したことで、普段感じていない、家族と一緒にいられる幸せを実感したんだ。 幸せと不幸は隣り合わせ。幸せを求めることは、ただ不幸を否定して遠ざけることではないのかもしれない。 だったら……。 ジェットコースターもお化け屋敷も、同じなのかもしれない。 安全に恐怖を体験することで、無事帰還する安心と喜びを得るためのアトラクション。 やっぱり……この世界の全ては優しさに満ちている。せつなは嬉しくなった。 「ラブ~美希~ブッキー~! 私、もう一度ジェットコースターに乗りたいわ。行きましょう!」 「うん、行こう。せつなっ」 「「えぇぇぇ――!!」」 せつなとラブは、それぞれ嫌がる美希と祈里の手を取って駆け出した。 「ねえ、ラブ。私はあまり恐怖は感じないの。だから、みんなほどさっきは楽しめなかった」 幼い頃からの訓練の繰り返し。その中にはGの耐性訓練も含まれていた。 「でも、今度は楽しんでみせる。精一杯、大声で叫んでやるんだから!」 そう言って笑うせつなの表情は――やっぱり今日一番に輝いていた。 たくさんの人が波を作る。 波は大きな流れとなって人々を導く。 大勢の人が同じ目的で列を成して歩く。繋がり、共感し、分かち合う喜び。 思いやりに満ちた施設と催し物。 家族、友達、恋人同士。 緊張と恐怖と安堵。 そして思い出す――幸せ。
https://w.atwiki.jp/dangerousew/pages/107.html
SS応援 イラスト 作者 元ネタリンク I look forward to your return. ??? 仙道ソウスケ 応援SS 最尤記 減乗算増 すーぱーブルマニアンさん十七歳 応援SS典礼 ??? 典礼 端間一画 補足 ??? 端間 一画 激闘!! 大体何でも屋レムナントVS色んな奴らスーパーダイジェスト編!! ダイヤちゃん☆ エーデルワイス デンジャラス!柳生注意報! 通りすがりの柳生 エーデルワイス 柳生・インフォメーション 柳煎餅 柳煎餅 山居ジャック 第二話・裏『俺の世界』 山居ジャック SS一覧 【第二試合第3戦場「飲食店」SS予告編】 空渡丈太郎 SS一覧
https://w.atwiki.jp/mankake/pages/800.html
imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 作者:Nekonosin 作品概要 後でここに記載 ジャンル 作品を読む
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/374.html
【願い星 叶え星】/恵千果◆EeRc0idolE R18 「せつ……な……」 また、せつなを呼ぶ自分の声で目覚める。 時々見る、まったく同じ夢。 せつながあたしから離れて、遠くへ行ってしまう夢。 それは夢なんかじゃなかった。まごうことのない、現実。 あたしは確かにそれを受け入れたんだ。 お互いがんばろうねって、笑いもした。 けどそれは、ふり。受け入れた、ふり。 頭では理解していても、心では納得ができないでいる。 あたしはせつなを想う。夏になった今も、なお。 「ラブ、おはよ」 「おはよ、由美」 「放課後、昨日言ってたケーキ屋さんにみんなで行くの。七夕スペシャルパフェ。ラブも行くでしょ?」 「そうだね」 「蒼乃さんや山吹さんも誘う?」 「どーかな、ふたりとも忙しそうだから」 「そっか、残念だね」 予鈴を合図に、あたし達は席に着く。 あたしは授業に没頭する。 この春、著しく成績が下がって、お母さんは学校から呼び出しを受けた。 けど、お母さんは何も言わなかった。それが、かえって辛くて、あたしはお母さんに八つ当たりをした。 そんなあたしに、お母さんは言った。 「ラブ、せっちゃんの所に行きたいなら、構わないのよ」 「えっ……」 あたしは言葉を失った。 「ラブの気持ちくらいわかるわ。これでもあなたの母親だもの。 けど、約束して。いつかせっちゃんとまた会える日のために、自分を磨いておいてほしいの。 あなた達が再会した時、せっちゃんがもっとラブを好きになるように」 お母さん、ありがと。あたし、ちゃんとするよ。 いつか、せつなと一緒に居られるようなあたしになるために。 それからだ。あたしの成績はぐんぐん伸び、気づけば勉強が面白くなっていた。 せつなと暮らしていた頃の特訓で、基礎は叩き込まれていたらしい。 両親や先生だけでなく、美希たんやブッキーにも誉められた。 それでも、相変わらず夢は見た。 離ればなれになったばかりの頃は、毎晩のように見ていた夢。 回数こそ減ってはいたが、時々思い出したように定期的に見てしまう。 まるで彼女の居ない現実を、目の当たりにさせるかのように。 せつなの夢を見た日は、なかなか寝付けない。 朝の夢の残滓を引きずるように、ベッドの中で悶々とする。 せつなの声を、指を、舌を、あたしの身体は痛いくらいに覚えてる。 今夜もそうだった。 あたしは、パジャマにそっと触れる。 せつなのとおそろいの、ピンクのパジャマの中に、優しく手を差し入れた。 これは、せつなの指。 胸の突起を転がす。物足りない。唾で指を湿らせ、もう一度つまびいた。 これは、せつなの舌。 「ふ……」 愛しい人を思い出し、声がもれる。 胸への刺激は続けながら、もう片方の手を下着の中に差し入れる。 熱い潤いを感じ、塗り広げていく。中心に息づいた芯を、中指で左右に押しながら揺さぶる。 快感が全身に伝わってゆく。 「せつなっ!せつなあっ!」 何度も腰が跳ね上がり、あたしは果てた。 せつなを感じ、せつなをなぞる行為に夢中になった。 だから、気づかなかった。一瞬、赤い光が部屋を満たしたことに。 「はあ……はあ……」 まだ息の荒いあたしの脚に遠慮がちに触れる、誰かの細い指。 余韻に震えるあたしに生まれる、驚きと戸惑い。 その指は、ぴんと突っ張るように伸ばしていたあたしの脚を開く。 暗闇であたしの中心を探り当て、忍び込む。 馴染みのある感覚。この感じ、あたしのここは覚えてる。 愛しい指は、ノックするように抜き差しを繰り返した。 「ううっ、あん!あん!」 声を押し殺し、啼く。叫ぶ。大きくなる確信。沸き上がる歓喜。こぼれ落ち、シーツに染み込む涙。暗かった世界は、真っ白になった。 ぐったりしたあたしに、せつなはキスの雨を降らせる。 「帰ってくるなら連絡してよ……」 「恥ずかしいラブの姿を見たかったから」 「もう!」 「ふふ、驚かせた?ごめんなさい。けど連絡はできなくて。何故かメールも電話も繋がらないの。今、原因を調査中」 「今日は休暇?初めてだね、会いに来てくれるの」 「ええ。今日だけは絶対帰るって、行く前から決めてたから。ウエスターやサウラーも呆れてたけど」 せつなは楽しそうに笑った。 たくさん話した。せつなの仕事、ラビリンスの様子。 復興を最優先にするために、リンクルンを鍵のかかる場所にしまいこみ、その鍵をサウラーに管理してもらっていたこと。 復興が一段落し、いざリンクルンを取り出してみると、電話もメールもできなくなっていた。 けど、せつなはがんばれた。 七夕には帰る。あたしに会いに。そう決めていたから。 そして……。一人寝の夜のこと。あたしを想い、せつなもひとりで苦しんでいたんだ。 あたし達って、似た者同士なのかな。 「これからもっと忙しくなるの。でも、必ずまた来るわ」 「あたし、せつなが」 「待って。わたしに言わせて。いつか、いつか大人になって、ラブが自由にどこにでも行けるようになったら……ラビリンスに来てほしいの!」 「……」 「返事は?」 「……ずるい」 「何が?」 「あたしが先に言うつもりだったのになー。いつかラビリンスに、せつなの側に行かせてほしいって」 「ラブ……約束よ?」 「もちろん!せつなの側がいい。せつなの側じゃなきゃ、いやなの」 抱きしめたせつなから、想いがあふれてる。たぶん、あたしからも。 たとえ住む場所は離れてても、心は離れない。 誓いの口づけ。七夕の夜に、将来を誓い合う恋人たちのシルエット。 織姫と彦星も、きっと天の川から見てる。 あたしはこの夜を、一生忘れない。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/1173.html
一六◆6/pMjwqUTkgの140文字SS【8】 1.Christmas Stage ~The Princess~<1st Member:トワ>/一六◆6/pMjwqUTk 会場の照明が突然落ちる。 生徒たちがざわめく中、こっそりとステージの上に、四人縦一列に並ぶ。 後ろから、みなみの密やかな咳払い。 今の深呼吸は、きっとはるかね。 目の前で、きららの髪がふわりと揺れた。 さあ、いよいよですわ。 知らなかった。 みんなと一緒なら、こんなにワクワクする闇もあるのね。 2.Christmas Stage ~The Princess~<2nd Member:はるか>/一六◆6/pMjwqUTk スポットライトが、最初にわたしの姿を照らす。 前はそれだけで足が震えたと思うけど、今はもう大丈夫だよ。 お互い目を合わさなくても、 透き通ったきららちゃんの声と、 柔らかなトワちゃんの声が支えてくれる。 ライトがこんなに眩しいのに、 客席のみんなの笑顔がキラキラ輝いて見えるの。 それが嬉しい。 3.Christmas Stage ~The Princess~<3rd Member:きらら>/一六◆6/pMjwqUTk 誰かとステージに立つことは、勿論ある。 何人で舞台に出ようが、 あたしは主役の服と、あたしを美しく見せるために頑張るだけ。 でも、今日は違う。 見て欲しいのはあたしじゃなくて、あたしたちみんな。 いや、強いて言うなら、新しい夢に向き合うって決めた、みなみんかな。 さぁみんな、主役の登場だよ! 4.Christmas Stage ~The Princess~<4th Member:みなみ>/一六◆6/pMjwqUTk 歌い踊る三人の後ろ姿を見つめる。 はるか、きらら、トワ。 いつの間にか、心の一番近くに寄り添ってくれている仲間。 もしかしたら、私以上に私の心配をしてくれる友達。 この子たちのためにも、ちゃんと夢へ踏み出さなきゃ。 まずは思いっ切り弾け……いえ、みんなに喜んでもらえる舞台を、ね。 頑張るわ。 5.『フォロー・ミー!』/一六◆6/pMjwqUTk 「めぐみ!フォローミー!」 「おおっ!意味わかんないけど、行ってみよ~」 「わたしもついてこ~っと」 カワルンルン! スーパーへ走る、ひめ、犬、ヒヨコ。 「あった!プリキュアチョコ、カード付き!」 「ひめ!無駄遣いしないの」 プリカードの代わりにクーポン券を携えた、大事なフォロワーがもう一人。 ※出張所(Twitter)のフォロワーが200人を超えた、感謝140文字SSです。(2016/5/5) 6.ラブせつで「ほんの一瞬、シフォンが羨ましいと思った……」/一六◆6/pMjwqUTk 「シフォンも食べる?カオルちゃんのドーナツ」 「キュア~!」 「ほらほら、口の周りに付いたでしょ、もう」 大喜びのシフォンに優しく微笑んで、 ラブがそのほっぺに付いたカケラを自分の口に運んだ。 「せつな?どうかした?」 「なっ、何でもないわ」 何だか顔が熱いのは、きっと五月の強い日差しのせい。 7.『変わらないもの』(まほプリ)/一六◆6/pMjwqUTk わたしが大きくなったんじゃなくて、何もかもが小さくなったみたい。 モフルンは抱っこできちゃうし、みらいとリコを抱きしめることだって出来る。 でも、小さかった頃と同じものも沢山ある。 高くて眩しいお日様。お花のいい匂い。頬ずりしたモフルンの柔らかさ。 あったかくてワクワクする、みんなの声。 8.『相合傘、お買い時』(まほプリ)/一六◆6/pMjwqUTk 「これ“ヒト”だよね。屋根の下で、四人一緒?」 「これはね」 広告の文字に、ことはが目を輝かせる。 「四人一緒、学校の帰りにやったね。あれ楽しかった~」 「さすがに今は、四人は無理よ」 「探してみよっか。みんなで使える、おっきいの!」 「そうね」 「モフ!」 「やった!」 梅雨明けまで、あと少し。 9.「伊達に何度も落ちてないし」(まほプリ23話より)/一六◆6/pMjwqUTk 「わ、わ~!」 はーちゃんの箒が迷走を始めた。リコは空中で静止し、じっと目で追う。 「滅茶苦茶に見えても、軌道の予測はある程度つくものよ。落下するのは、あっちだわ!」 言うが早いか、箒を急発進。 「リコ、凄~い!」 「ま、まあね」 みらいの素直な賞賛の声に、その後の言葉は、慌てて飲み込んだ。 10.「ついて来るもの」①/一六◆6/pMjwqUTk 久しぶりの夜の散歩。三本の箒が、滑るように空を行く。 「見て見て。お月様が、ずーっとわたしたちについて来るよ」 モフルンを抱いたことはが、笑顔で空の一角を指差した。 「いや、月はね……」 リコの説明を皆まで聞かず、よぉし、と箒に座り直す。 「お月様と競争するぞ~。はー!」 「はーちゃん!!」
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/483.html
一年の最後の月も間近に迫ったとある日の夕方。 せつなは、クローバータウンストリートに並ぶとある雑貨店の前にいた。 すっかり日の落ちるのも早まったこの時期は気温が下がるのも早い。 四つ葉中学校指定のコートに身をくるんでいるとはいえ、 じっと立っているだけの身に容赦なく寒さはまとわり付いて来る。 「冬って……こんなに寒いのね」 そう思い、身をぶるっと震わせる。 全てが管理されている管理国家ラビリンスでは、 国民が効率良く自らの役割を果たせるように、 天候や気温がメビウスや幹部達によってコントロールされているので 季節という概念は存在しなかった。 だからこれは、彼女にとっての初めての、冬。 すっかり体温が逃げ去った両の頬に手を当てながら、せつなはそれを充分に感じ取る。 (まだかしら……) ここで待ってて。 そう言って、雑貨屋の中に入っていったラブのことを思い、息を一つ吐き出す。 せつなの口元から離れたそれは、瞬く間に白く染まり、空気の中に散っていく。 初めて見た時こそ驚かされたが、自分からやってみると、 特に意味は無いのになんだか楽しい。 続けて二回。 今度はかじかんだ手のひらを暖めるように、口元で丸めた手の平の中に一回。 吐くたびに生まれる白の流れ。 それが作られては霧散していく様を眺めていると。 「せつな、お待たせ~」 雑貨店の扉が開き、紙袋を小脇に抱えたラブが、店の外に出てきた。 「用事、終わったの?」 「うん、バッチリ!」 問いかけに笑顔で答え、空いた手でVサインを作るラブ。 そして、小脇に抱えた紙袋を開く。 「じゃーん、これ見てよ、せつな!」 ラブが取り出して見せたのは一双の手袋。 「……ラブ、新しい鍋つかみを買ったの?」 首を傾げたせつなの言葉に、がっくりと肩を落とすラブ。 あー、そういえば形似てるっけ、と思い、気を取り直すと 改めてせつなに説明する事にする。 「いやいや。これはね、ミトンっていう手袋なんだ」 「ミトン?」 「うん、普通の手袋と違って指を入れるところが 親指とそれ以外の2つになってるでしょ?こういうのをミトンって言うの」 ほら、と言って両手にはめてみせる。 「こんな感じになるんだよ」 そのまま指を曲げたり、伸ばしたり。 その仕草が、何かそういう形の小さい生き物が動いてるようにせつなには見えて。 「ふうん……何だか可愛いのね」 「でしょ?こういうの、前から欲しかったんだ」 嬉しそうに話すラブを見て、せつなも笑みを浮かべる。 良かったわね、と素直な感想を述べると、ラブも、うん!とうなずく。 ごく普通のやり取りの筈なのに、それでとても嬉しい気持ちになれるのは (それがラブの事……だからよね) そう思うことで、胸の中がなんだかあったかくなる。 そのことがまた、なんだか嬉しい。 だから、この気持ちを持ち続けたいと、せつなはある提案をラブに持ちかけた。 「ねえラブ、それ、私も欲しくなっちゃったんだけど……。 同じの、まだあるかしら?」 その言葉に、待ってました!と言わんばかりの表情を浮かべるラブ。 「じゃじゃーーん!こんな事もあろうかと、買っておいたのだ!」 そう言いながらラブが取り出して見せたのは、 今彼女がはめているのと同じ形のミトン。 ただ、ラブが今はめているのがピンク色なのに対して、今取り出したのは赤色。 それはつまり。 「はい、こっちはせつなの分、あたしとお揃い!」 「え?」 きょとんとしたままで差し出されたミトンを見つめるせつな。 (……そりゃそうか、いきなりこんな事言われたらビックリするよね) 唐突な切り出しをした自分に反省しつつ、 ラブはせつなの手を取るとその上にミトンを乗せる。 「これはあたしからのプレゼント……一足早いクリスマスプレゼントかな? だから遠慮しないで、受け取って欲しいの」 「でもこれ、ラブのお小遣いで買ったんでしょ?」 「うん、向こう三週間はドーナツ我慢することが決定しててね…… と、いやいや、それは置いといて、ね、受け取って、せつな」 手で物を横に除けるジェスチャーをしたりしながらも 受け取る事を促すラブに、せつなは首を振る。 「やっぱり悪いわ……いくらプレゼントと言われても、 ラブの楽しみを奪ってまで、受け取るなんて出来ないわよ」 頑なに固辞するせつなに、ラブは苦笑。 (まったく、こういう時でも真面目なんだから……) それでも、この娘に受け取ってもらいたいから。 その想いを糧に、頭の中で一つ一つ言葉を作り、繋げ、紡ぎだす。 「あのね……これ買うときに、一緒にせつなのも買おうって決めてたんだ。 この冬は二人でおそろいの手袋をして、手を繋いで街を歩きたいって思ったから。 勿論これはあたしの一方的なわがまま。 でも聞いてくれたら、あたしは嬉しいかな」 「ラブ……」 「どうかな、せつな?」 「……もう、ズルいのね、そんな言い方されたら、私断れないわよ」 そう言いながらも、せつなの顔に浮かぶのは決して不快の表情ではなく。 「え、それじゃあ……」 「うん、喜んで受け取らせて貰うわ、ラブ」 言葉通り、嬉しさを表した満面の笑みで、せつなは赤いミトンを受け取った。 「どう、せつな?」 ミトンをはめたせつなに、感想を尋ねるラブ。 せつなは、両手のそれを動かしたり、ぽんぽんと重ねてみたり。 しばらく思いのままに感触を確かめていたが、 やがて胸元で抱きとめるように両手を重ね合わせた。 「……うん、暖かいし、手に伝わってくる感触が気持ちいいわ。 ありがとう、ラブ……すっごく素敵なプレゼントよ」 そしてまた、ラブに向けられる嬉しさの笑み。 ラブは頷くことで、それに答える。 「うん、せつなが喜んでくれるなら、あたしも嬉しいよ」 (……ってそう思い切ることが出来ないあたしがちょっと悲しいけど) この笑顔と引き換えなら、ドーナツ三週間の我慢、安い代償じゃないか。 さっきからそう言い聞かせているのだが、心の中の一部がまだ未練を残しているらしい。 「ねえラブ、明日から三週間、貴方のドーナツ代、私が出すわ」 そんなラブの気持ちはお見通しとばかりに、 クスリと笑ったせつながラブに提案を持ちかける。 「え?……いいの?」 「ええ、これだけのプレゼントを貰ったんだから、私にも何かお返しをさせてね」 「……」 「どうする?さっきまでの私みたいに遠慮する?」 イタズラっぽい笑みで尋ねてくるせつな。 「……せつな、さっきあたしに言った言葉、丸ごとお返しする。 ううん、せつなの方がずっとズルい」 「……どして?」 「だってあたしがドーナツ我慢出来ないのわかってて、そんな事言うんだもん!」 むー、と頬を膨らませて答えるラブ。 そんなラブの様子を見て、クスクスと笑うせつな。 「ごめんなさいね……じゃあ、ドーナツの件、OKってことでいいのね?」 「もっちろん!せつなのドーナツで幸せゲットだよ!」 そしてわはーっ、と歓声を上げながら、せつなに抱きつくラブ。 と、その視線がせつなの赤く染まった頬に向けられる。 「ねえ、せつな?」 「何?」 「さっき待ってる間、寒かったでしょ?こんなに頬っぺた真っ赤にしちゃって……。 ごめんね本当に。もっと早く決めるつもりだったんだけど、結構迷っちゃって」 申し訳なさそうに眉尻を下げながらそう言うと、 自分の両の手の平をせつなの顔にそっと添えて、そのまま両の頬を包み込む。 「きゃっ……ラブ、何?」 「んーと、こうすれば、ちょっとはあったかいかなって」 ミトンに包まれたラブの手、 そこからの温もりが、やんわりと頬っぺたに染み込んでくる。 それだけじゃない。 こうして自分の事を思ってくれているラブの気持ち、その暖かさが心に伝わってくる。 体の温もりと心の温もり。 まぶたを閉じて、二つの温もりに身を委ねながらラブに答える。 「……………………………………うん、とっても暖かい」 「……良かった」 その言葉に、ラブの顔が安堵の笑みを作る。 待たせてしまったことの埋め合わせがこれで出来た、とばかりに。 「それにしても……」 「?」 言いかけた言葉に、せつなは疑問の表情。 「せつなの頬っぺた、手袋の上からでもわかるくらいに熱いよね」 「なっ……」 続く言葉で、体温が一気に跳ね上がる。 「わわっ!また熱くなった!せつな、大丈夫?実は風邪引いてたりするんじゃない? それってあたしが外で待たせてたせい?ごめんね、ごめんねっ」 伝わる熱が増したことに慌てるラブをどうどう、と落ち着かせる。 「違うわ、ラブ、熱はないから。大丈夫、安心して」 「本当なの?でもこんなに顔熱いし……」 「えっと、それは……」 言葉に詰まるせつな。 (え……それを言わせる気なの?) 相手が心を許した人だとしても、それを面と向かって言うのは流石に恥ずかしい。 黙ったままのせつなの様子に、ラブの不安が増す。 「せつな、やっぱり調子悪いんじゃ……どれどれっと」 言いながら、自分のおでこをせつなのおでこにコツンとくっ付ける。 「ちょ……ちょっと、ラ、ラブっ!」 (顔、近い、近いってば!) 人間の体温に沸点があるなら正に今がそうなんじゃないか、 それくらいに顔が熱いのを自覚しながら、せつなは言葉と心で二重に抗議する。 しかし、 「……やっぱり、すごく熱があるみたいだよ、せつな」 彼女の体を気遣うことに意識を向けているラブに、それは届かなかった。 ラブの行為はどこまでも真摯にせつなのことを思うが故のもの。 それ自体は嬉しい事なのだが、その根本が間違っている。 (全く……なんでこういう時に限って鈍いのよ、ラブは!) 心の中で文句を言いながら、せつなは止むを得ずの解決策を採る。 「……から」 「え?」 囁くように出された言葉を聞き取れず、ラブが聞き返す。 「……ラブに……されてるから……」 「ごめんせつな、よく聞こえないよ……まさか、声も出ないくらい具合悪いの?」 「……」 「せつな?」 「もうっ!こんなに顔を近づけて、頬に触られたり、おでこ付けられたりとか…… ラブにそんなことされたら、体温だって上がるわよ!恥ずかしいし!嬉しいもの!」 感情に任せて一気にまくしたてる。そうでもしないととても言えないから。 そしてその言葉は、 ―火が出るんじゃないかと思うほど赤くなった顔と 言っちゃったという後悔の感情を代償にして― 確実にラブに届いていた。 「……あ……え、その、えーと、せつな、つまり風邪じゃないの?」 狼狽するラブ。 その問いかけに、コクンと頷くせつな。 「……つまり、全部あたしのせいですか……」 更なる問いかけにもせつなが頷いた。 「……」 沈黙。反芻。熟考。理解。 4つの工程を得たラブの心に、先程のせつなの言葉が入り込んでくる。 途端、効果音を付けるならボンッという音が相応しいくらいに瞬間的に、 ラブの顔が、せつなと同じかそれ以上に赤く染まる。 「……うわわわわわ。せつな、今更だけどあたし…… すごく恥ずかしくなってきたんだけど…… いくら両手に手袋はめてるからって、おでこでとか、ねえ?」 「私の方が恥ずかしいわよ!んもーっ!結局全部言わせるんだからーっ!! ラブの馬鹿馬鹿ばかばかーーーーっ!!!」 言葉と共に、両手をブンブンと振り回し、ラブをポカポカと叩くせつな。 「あいたたたたた、せつな、ごめん、ごめんなさーい!!」 ミトンのおかげでそんなに痛くはないのだが、 それでも頭を押さえる仕草をして、走り出すラブ。 「あ、ラブ、こら、待ちなさーーーい!」 それを追いかけるせつな。 そのまま始まる、家までの追いかけっこ。 必死で逃げながら、それを追いながら、それでも二人とも笑顔で、楽しそうで― それはきっと、走る二人の手の先で何度もひらひらと宙に舞う、 ピンクと赤の二つの色があるから。 この冬で最初に、二人がゲットした幸せの証だから。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/547.html
第31話 その、想いの名前 美希の家を出た時は、まだ星が瞬いていた。 深夜と早朝の間、生まれたての空気で肺を満たす。 夜明け前の空気は透明で、どこか硬い。 紺と言うほど濃くは無く、青と言うほど淡くは無い群青の空。 同じ太陽が隠れた空なのに、夕空は包み込む様な温かさと、一人で置き去りに された様な心細さを感じる。 なのに夜明け前の空は冷たく澄んだ硬い色なのに、胸の中に何かが芽吹く様な温かさを感じる。 何故だろう。空が赤いか青いかなんて、ただ大気中の塵の量の違いなのに夕空とは全く違う。 ふと、ラビリンスを出て独りさ迷っていた時の事を思い出した。 茜色に染まる街並みにはまだ人が溢れていた。 買い物帰りの親子連れ、遊びに行った帰りらしい若者、夕飯までの一時を 散歩でもしているらしい老人。 すべてが自分とは違う生き物だと思っていた。 皆それぞれ帰る場所があり、待っている人がいる。 どれほど多くの人とすれ違っても、気紛れに声を掛けてくる人がいても、 自分には関わり合いの欠片すら無い異世界の人々だった。 胸が押し潰されそうな寄る辺無さに、太陽が沈んだら夜空が落ちて来て 自分を飲み込んでしまっても不思議でない。そんな事を考えた。 それでもいい。そのまま暗闇に塗り込められてしまえばいい。 どうせ虫けらの様に誰にも気付かれる事無く朽ちていくだけなのだから、と。 沈みかけた赤と青が混じる空の下、自分を探していてくれた人がいるなんて知るはずも無かったから。 しんと静まりかえった商店街に、まだ動く人の影は無い。 それでも、大半が寝静まっているだろう、この時間にも、そこに息づく沢山の人の気配を感じる。 人っ子独りいないのに、微塵も孤独を感じない。 待っている人がいる。おかえり、と言って貰える。 おまけに、と、せつなは指で唇を撫で、ふわりと微笑む。 今は、またね、と見送ってくれる人までいるのだから。 美希の涙はとても綺麗で、小さな子供の様に泣きじゃくる美希もとても可愛い。 泣き濡れた顔で、ようやく笑ってくれた時は胸がいっぱいになった。 でも、美しいのはそこまで。 止めどなく涙の流れた頬は、あっと言う間に乾いてカサカサになり、 濡れた睫毛のキラキラした瞳は、瞬く間に容赦無く腫れ上がった瞼に塞がれてしまった。 思わず笑ってしまったせつなに恨みがましい視線を送り、こんなんじゃ 外にも出られないとブツブツ言っていた。 どうせもう眠れないだろうから、さっさとラブの所に帰れと家を追い出されてしまった。 きっと今頃は必死に顔を洗ったり瞼を冷やしたりしている事だろう。 美希の感触の残る唇。 疚しい気持ちが微塵も湧いて来ないのが不思議だった。 美希とキスしちゃった、と誰にでも、ラブにも笑いながら話せてしまいそうだ。 キスより先には進まなかった、と言うだけではない。 もっと何か、根本的なものが違う。 以前外国の映画で見た、親子や兄弟でするキスはこんな感じなんだろうか。 美希とのキスは素敵だった。 いつも良い香りのする美希の唇は柔らかくて、少し冷たくて。 涙でしょっぱいなんて言ったけど、本当は少し甘い気すらした。 一生懸命緊張を抑えているのが分かって、お陰でせつなも 微かに震えていたのは気付かれていなかっただろう。 同じ涙の味の口付けなのに、どうしてこんなにも違うのだろう。 唇に触れていた指を握り、拳を口許に押し当てる。 胸の中にじわりと苦味が広がる。 祈里との口付けがどんな味だったのか、今はほとんど思い出せない。 涙の味しかしなかった気もするし、血の様に鉄臭かった様な気もする。 ただ、苦しくて痛かった事は覚えている。 瞳を閉じ、記憶と心の奥を探る。 済んだ事だ、と思える。 憎しみも、嫌悪も無い。 あるのは後悔と、ほんの少しの後ろめたさ。それと、湿った様な冷たい哀しみ。 そして、自分が今抱いている様な気持ちは、祈里の欲しがっているものではないと言う事。 自分は傲慢なのだろうか。 傷つけられ、裏切られたのは自分だと言う自覚もあるのに。 祈里の望むものを自分は持っている、それを誰に与えるか、その権利はせつなにしかない。 そして、それは既にすべてラブの所にある。 結局どれほど祈里がせつなを支配しようとしても、常に優位にあったのはせつなの方だった。 決して手に入らない物を求めて足掻く祈里を見て、憐れんでいなかったとは言えるだろうか。 せつな自身すら自覚の無い内に、それが状況をエスカレートさせてしまったのかも知れない。 もし自分が二人いたなら、などと埒もない事を考えたりもした。 馬鹿馬鹿しいにも程がある。 仮にそんな奇跡が起きたとしても、全く同じ自分なら、その分身もまたラブを求めるに決まっているのに。 そして祈里も、ラブを心に住まわせていないせつなに想いを寄せるとは思えない。 だって、祈里が愛し、狂おしい程に求めたのは、ラブを愛し、ラブに愛されたせつなに他ならないのだから。 「…ラブ………」 ラブに会いたかった。 ラブに会いさえすれば、この胸の軋みも耐えられる。 これでいいのだと思える。 ラブへの想いだけが、この世でただ一つの、他の誰かを傷付けてでも手放せないものなのだから。 祈里に底の見えない深淵を覗く様な思いを味わわせても、美希を幼い子供の様に泣かせてしまっても。 それだけが、決して揺るがないと誓えるものだから。 (……え?………ラブ…?) 寝静まっているはずの商店街に、ふと人の気配を感じ、視線を巡らせた先にラブがいた。 一瞬ラブの事を考えすぎて幻でも見てしまったのかと思った。 まだ閉まっている店をウィンドウショッピングでもする様に行きつ戻りつしながら、 今はパン屋の店先に佇んでいる。 せつなの胸に、ふわりと暖かな空気が満ちる。 今ラブは何を考えているのだろう。 暖かく、微笑んでいる。幸せそうな表情。 見ているこちらまで幸せな空気に包まれる様な、せつなの大好きな顔だった。 そっと距離を詰めてゆく。ラブはまだ気が付かない。 せつなの姿を認めたら、どんな顔をするのだろう。 ラブの視線が動く。 一瞬、自分と同じく信じられないものを見たような、ハッとした表情。 唇が微かに動く。せつな、と動いた様に見えた。 少し、泣きそうな顔をしている。 気の所為だろうか。あの表情をどこかで見た覚えがある。 懐かしくて、胸の奥をぎゅっと掴まれたような甘い痛み。 どうして?たった一晩離れていただけなのに、何故こんなにも既視感を覚えるのだろう。 「……せつな…」 「…ラブ、こんな時間にどうしたの?」 ラブは何も言わずにただ見つめて来る。 何かあったのだろうか。 思わず、頬に触れる。 ラブが手を握って、自分の頬に押し当てくれた。 瞳が潤んでいる。 やっと見つけた探し物を確かめる様に、せつなの指をしっかりと握り締めてきた。 ああ、そうだ。あの時の表情に似ている。 夕暮れの中、せつなを探してくれていた。 せつなは行く宛も無くただふらりと訪れただけの商店街のゲートの下。 ラブと、美希と、祈里。三人が自分を迎えてくれた。 「せつな」と呼び掛けてくれたラブの声。 人は探していたものを見つけた時、泣きそうな顔で笑うのだと初めて知った。 あの時の自分は、どんな顔をしていたのだろう。 あの時、ラブの目には自分はどう映っていたのだろう。 「あの……お帰り、なさい」 胸の深い部分で、ぱちんと何かが弾けた。 そこから溢れ、身体中に満ちてゆく想いに何と名付ければいいのだろう。 冷たい涙の味も、苦い口付けの味も包み込んで溶かしてしまう様な想いに。 ラブ。あなたは、どうしていつも一番欲しい言葉をくれるのだろう。 「……ただいま、ラブ」 愛しい。 後悔も、懺悔もいらない。 この想い一つがあれば、どんな痛みもいつか思い出に変えられると信じられた。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/232.html
『氷解~again』/黒ブキ◆lg0Ts41PPY せつなとあたしはおでこをくっつけ合って、少し、笑った。 何て事しちゃったんだろう、と言う大きな後悔。大好きな人と 気持ちが通じあった、大きな喜び。 いろいろな思いが渦巻き、泣きたいような、笑いたいような不思議な気持ち。 「…ごめんね。」 もう一度、あたしは謝る。どんなに謝っても足りないのは分かってる。 でもそれしか言えないから。 「…うん。でも、もうこんな乱暴なのはやめてね。」 結構、辛かったんだから。と少し冗談めかして、せつなは含羞む。 「やだ、私…。」 「…わはー……。」 せつなは今更ながら自分のはしたない姿に気付いたように 服の前を掻き合わせ羞恥に耳まで真っ赤にしている。 パリッとしていたワンピースは見る影もなくくしゃくしゃで、 汗やその他諸々で汚れて、かなり悲惨な状態だ。 (わはー…、何かせつな、すんごいえっちぃんですけど。 いや、ひん剥いたのはあたしなんすけどね…。) 「どうしよう、これ。」 血の染みが付いたワンピースを摘まんで少し途方に暮れる。 買って貰ったばかりの服を汚してしまったのを気に病んでいるらしい。 「あー、だいじょぶだよ。これコットンだし。すぐに洗ってアイロン掛ければ!」 洗ったげるよ!貸して。と服を引っ張ろうとするラブに、 「あっ、やん!」 裾を押さえて抵抗する。 下、何も着てないんだから!と赤い顔で上目遣いに少し睨まれ ラブの顔も負けず劣らず赤くなる。 ついさっきまで、あーんな事やこーんな事をされてたのに 何を今更…と言う気がしなくもないが、どうやらそう言うものでもないらしい。 「…シャワー、浴びて来てもいいかな。」 そりゃそうだよね。恐らく身体中エライ事になってるんだから。 そりゃあ早くさっぱりしたいだろう。 「そだね!お湯、もう張ってあるから!ゆっくり入ってきなよ!」 そう言った途端、くしゅん!ラブがくしゃみをした。 考えなくてもラブも巻いていたバスタオルはとっくに落ちて、すっぽんぽんだ。 ある意味せつなより恥ずかしい。 クスリ、とせつなが笑い、 「じゃあ、一緒に入っちゃおうか?」 「!!ふぇ?!」 先に行くね。ぱさっ、とラブの頭に落ちてたバスタオルを掛けて、せつなは バスルームに向かった。 (一緒にって、一緒にって…?!) ラブは先ほどのせつなの言葉を反芻する。 『もう、こんな乱暴なのはやめてね。』 って事は、乱暴にしなきゃオッケー!って事すかね?! かぁっ!と全身が熱くなり、心臓が口から飛び出しそうにバックンバックン 脈打っている。 今こそ真の勝負の時!ラブの本能がそう告げていた。 大好きな人と(無理矢理ではあるが)体の関係を持ち、(順番が逆だが)気持ちを 確かめ合い、(普通はこれが最初だろうが)告白もした。 (これで二人は両想い!晴れてラブラブ恋人同士…!) のはず。 しかし、問題が一つ。 せつなは今回の事がラブが慣れない深刻な悩みに耽った挙げ句の暴走。 つまりは非日常、普通ならあり得ないイレギュラーな出来事と捉えて いないか、と言う事だ。 それは困る。大いに困る。トチ狂って暴挙に出てしまったが、 ラブとしては、ここまでやったからには付き合い始めの恋人らしく 日常的にあんなコトやこんなコト……できなきゃ意味がないのだ。 (それに、えっちは気持ち良くなきゃ! このままじゃ、えっちがトラウマになっちゃうかも!! そんなのせつなの為にも絶対良くない!!!) そのトラウマを植え付けたのは間違いなく自分なのだから 『責任取らなきゃ!』 ラブはいつものポジティブシンキングを取り戻しつつあった。 (ようし!!) ラブの体に闘志がみなぎる。 (待ってて!せつな!!女のヨロコビ、ゲットだよ!!!) 了
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/476.html
【逝く夏とともに】/恵千果◆EeRc0idolE 夏休み最後の日曜日、せつなとラブは、美希とともに祈里の家にお呼ばれしていた。 「ヤッホー、ブッキー」 「お邪魔しまーす」 「ブッキー、こんにちは」 「いらっしゃい!」 笑顔の祈里が、元気いっぱいに出迎えた。 身につけているのは、彼女をいちばん美しく見せる色。 爽やかなライムグリーンのブラウスに、レースをあしらったクリームイエローのミニスカートを合わせていた。 その装いはまるで、駆け抜けようとしている夏を惜しむ花の精のような、そんな儚さをたたえている。 彼女は今日、みんなを精一杯もてなそうと張り切っていた。 昨日から父や母を手伝い、余念なく準備をしていたのだ。 みんな、喜んでくれるかな?ふふっ。 みんなの驚いた顔を思い浮かべると、自然と浮足立ってくる。 今にもはしゃぎ出しそうな祈里を見て、お客の3人は口々に言う。 「ブッキー、今日の服とっても可愛いね!」 「ほんとね」 「おめかしして、スキップまでしちゃって、何かいいことでもあった?」 「いやだなー、何にもないよ。ただ皆と楽しく過ごしたいだけだってば」 話しながら4人が辿り着いたのは、山吹家の裏庭。 その真ん中に鎮座しているのは、若草色の装置だ。それを初めて見たせつなには、ミニサイズの滑り台に見える。 「キャー!やったー!」 「おじ様の手作り、久しぶりね!」 その装置を見たラブと美希は、喜びの悲鳴をあげている。 わけがわからずポカンとしているせつなの背中を、祈里がそっと押した。 「せつなちゃん、こっちこっち」 促されるままに装置に近づく。 縦に割った竹を幾つか組み合わせ、傾斜をつけている。 一番下にはザルの乗ったバケツが置かれていた。 「これは……なあに?」 尋ねるせつなに、祈里はウインクを返した。 「見てて。始まるよ!」 竹の滑り台の一番高いところから、祈里の母・尚子が何か白いものを置いた。 水が白い塊を押し流していく。 いつの間にか箸と器を持ったラブと美希が、争うように奪い合う。 「アタシの勝ちぃ!」 「ズルイよ美希たん!」 「まあまあラブちゃん、まだまだ沢山流すわよ」 尚子が笑う。美希も、ラブも笑う。それを見て、せつなも笑った。 そんなせつなに箸と器を渡しながら、祈里が教えてくれる。 「流し素麺、っていうんだよ。子供の頃、夏になるとよくここでしてたの」 「お素麺を流しているだけなのに、何だかすごく楽しいのね」 微笑むせつなの視線の先には、素麺バトルを繰り広げるラブと美希の姿。 「また美希たん!もおおっ!あたしも食べたいのにー!」 「悔しかったら取ってみなさい」 「むー!次こそ負けないよ!トリャー!」 ラブの箸先が素麺を捕らえようとした瞬間、真っ赤な塗り箸につかまれた素麺が宙を舞った。 「わたしの勝ちね」 口の端だけを引き上げて笑うせつなに、その場の者たちは気圧されたように静まり返る。 一瞬見せた婀娜っぽい微笑は、どことなく銀髪だった頃の面影にも似て。 「ず、ズルイよせつなー!!」 ラブの叫びなどものともせず、せつなは素麺をもぐもぐと頬張ると、ニッコリと微笑んだ。 「おいし!」 そこからは、皆で笑いながら沢山食べた。 ラブと美希は子供の頃と同じ笑顔で、せつなは心から楽しそうに。 祈里は感謝した。皆でこうして楽しい時を過ごせることに……このありふれた幸せに。 ――――ありがとう。