約 1,207,076 件
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/154.html
『声』/黒ブキ◆lg0Ts41PPY 彼女の髪は夜の色。顔を埋めるととても優しい匂いがする。 「ラブの髪はお日様みたいね。」 ラブの波打つ様な癖のある明るい色の髪を、せつなは愛し気に撫でる。 「ラブは太陽みたい。」 もう一度、せつなは言う。ラブはくすぐったそうに身をすくめ、 ぴったりと、どんな小さな隙間も無いくらいに肌を寄せる。 柔らかな少女の肌はひとつに蕩けあってしまわないのが不思議なくらいだ。 そして、溶け合えないもどかしさを埋めるように飽きること無くお互いを貪り合う。 「ねぇ、せつな…。名前…呼んでよ……。」 「…ラブ。」 「…もう一度…。」 「ラブ……?」 「もう一度……。」 「ラブ…。………もう、何なの?」 少し苦笑いしながらもせつなは何度も繰り返し呼んでくれる。 「…せつなの声、大好き。」 せつなの声は、少し低くて、柔らかい。その声で甘く名前を呼ばれると、 幸せで全身が蕩けそうになる。 「ねぇ、好きって言って…。」 「…好きよ。…ラブ。」 「ホントに…?」 「大好き。」 「えへへへ…。あたしも…」 大好き、大好き、大好き…。 ラブは少し身を起こし、せつなの唇をついばむ。 軽く、浅く、だんだん深く。 吐息までひとつになるように。 太陽が安らぐのは、たったひとつの闇の中。 また明日も周りを照らせるよう、太陽は自分だけの夜に包まれて眠りにつく。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/707.html
「チョコレート・ダウン」1 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 絆というモノは一本の太い縄ではなく、自分と相手の心にあるたくさんの小さな歯車が組み合わさって出来ているんだろう。ノートを開いて勉強しているつもりが、いつのまにかそんな事を延々と考えてしまっていて、チカラの抜けた溜め息を机の上にこぼした。 時計を見る。午後11時まであと少し。 桃園ラブがあきらめてノートを閉じ、また溜め息をついた。 「もうすぐ今日が終わっちゃうよ・・・」 彼女の中学生活もあとわずか。冬の寒さの向こうに、あたたかな春の日差しを思い浮かべる時節。そこに訪れるバレンタインデーという大きなイベント。 美希や祈里を含む親しい友だちや、いつも世話になっている人たちにはチョコレートを配り終えたけれど、まだ一人だけ渡せていない相手がいる。 同じ家に、すぐ隣の部屋に住んでいる家族同然の少女 ――― 東せつな。 ケンカしているわけではない。数日前に、意見が食い違って軽く諍(いさか)うような口振りになったことはあるが、その程度だ。しかも直後に「ごめんね、せつな」「ううん、私のほうこそごめんなさい」と互いに謝っている。なのに、それから何かがうまく噛み合わない。美希や祈里たちの前では普段通りなのに、二人だけになると、感情的に小さな齟齬(そご)を覚えてしまう。 無論、ラブとせつなも、どうにかしようと努力は続けていた。しかし、このぎくしゃくした感じは完全には治らない。こちらの歯車がきちんと噛み合ったと思えば、今度はこっちの歯車同士がぎこちなくなっているといったような・・・・・・。 結局、この日の二人の会話はほとんど無く、その気まずさのせいでチョコレートを渡せていない。手の平に乗る程度の小さなプレゼントボックスは、箱の色と同じ赤いリボンで可愛らしくラッピングされて、そのまま机の隅に置かれていた。 毎年たくさんの人に配るから、どうしても一人当たりの量は少なくなってしまう。けれど、いろんなチョコレート型を使ったバリエーション豊かな手作り。チョコのひとつひとつに、ちゃんと心が込められてある。 ラブがそっと赤い小箱に手をやった。箱の中にあるのはチョコレートだけではない。せつなに渡したい気持ち、伝えたい気持ち。箱に触れる手の平に、ぬくもりを感じた気がした。 ――― ううん、気のせいじゃない。 赤い小箱を手に立ち上がる。もう一方の手で頬をパシッと叩いて気合を入れ、せつなの部屋へと向かう。ドアを優しくノックしようとした手が一瞬弱気を見せたが、ラブは逃げなかった。 「せつな、まだ起きてる?」 せつなの返事を待ってから、ドアを開ける。 寝る前に軽く読書していたらしい。ベッドに腰かけていた彼女が、本を閉じてラブに微笑みを向けてきた。今日一日の事を思い出したラブが、二人の雰囲気がぎこちなくならないよう意識しつつ、なるべく自然にベッドへ腰を下ろす。せつなのすぐ隣、肩と肩がくっつきそうな距離。 「今日バレンタインデーだから・・・・・・、こんな時間になっちゃったけど」 「ありがとう。ホワイトデーには、ちゃんとお返しする」 チョコレートの入った小箱をせつなに手渡したと同時に、ラブの口から気の抜けた溜め息が洩れそうになり、あわててこらえる。相当、気が張り詰めていたらしい。 (バ、バレてないよね、今の・・・?) チラリ、とせつなの顔をうかがうと、彼女は自分のひざの上に置いた小箱を見つめながら、赤いフタの表面をいとしげに指でなぞっていた。 そのほっそりした白い指先の動き。 ラブのまなざしが吸い寄せられた。とても綺麗だと思って見入ってしまう。 ふと、ラブの視線に気付いたせつなが顔を上げた。 「どうしたの、ラブ?」 「えっ」 不意のせつなの声にたじろいだラブが、とっさに笑ってごまかそうとした。 「あ、あははっ・・・、ごめーん、ちょっとぼんやりしてただけ」 「そうなの?」 くすっ。 あたふたしているラブの内心を見透かして、せつなは口もとに笑みをこぼした。 ・・・・・・なんだかいつもどおりだ。 ラブは声をひそめて、「実はね ――― 」と切り出した。 「今日配ったチョコレートの中に、たった一つだけ、金色の招待券が入っているものがあるの」 せつなが、つい先日ラブと一緒にテレビで見た映画を思い出してうなずいた。 「ふふっ、ラブの部屋は、私が憧れたチョコレート工場だったのね」 「ドアを開けた途端、総勢100名のウエスター・ルンパが唄とダンスで愉快にお出迎え」 「やめてそれ怖いっ!」 脊椎反射で叫んだ直後、脳裏にそのイメージが飛び込んできて、ガマンできずに噴き出してしまう。たぶん今ごろ、新生ラビリンスでウエスターが盛大にくしゃみをしているだろう。 「きっとこのフタの裏に、そのチケットが張り付いているわ」 「そうかもね」 来年は本当に用意しようと、ラブは思った。ウエスター・ルンパは無理として。 ひとしきり笑ったせつなが両目を閉じて、ラブと肩同士をくっつけた。ほんの少しだけ体重を預けてみる。うまく出てこない言葉の代わりに、こうやって自分の気持ちを伝える。 ラブもまた静かにまぶたを下ろして、その柔らかな体を感じた。 せつなの体温 ――― 幸せなぬくもり。 言葉に乗せると微かにズレてしまう気持ちが、今は素直に、ゆっくりと二人の体にしみこんでゆく。バラバラの無数の歯車が、彼女たちの心の中で、ひとつひとつ優しく噛み合わさっていくような充足感。お互いが、相手をどれだけ大切に想っているかを再認識する。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 部屋に戻ってベッドに入っても、全く眠れなかった。赤い小箱をなぞるせつなの指や、彼女の身体のぬくもりを思い出しては、閉じていたまぶたを開いて小さく溜め息をついた。 (あーあ、まだ一緒にいたかったなぁ) もう一度溜め息をついて、今度はクスクスと楽しそうに笑い出す。 少しの時間だけだったけれど、チョコレートを渡したあとは、以前と変わらない気兼ねなさでせつなに接するコトが出来た。胸の曇り空が、何日かぶりにさっぱりと晴れた感じ。 (よしっ、明日はもっともっとたくさん話をして、いっぱいせつなの笑顔を見よう!) ラブが掛け布団の下でギュウウウッと強くコブシを握りしめ、寝返りを打った。 ――― その瞬間を見合わせたみたいに、ドアの開けられる音が控えめに響いた。軽くでも寝入っていたら、まず目を覚まさないだろうという程度の音に、びくっ、と大きく心臓を跳ねさせたラブは、思わず寝ているふりをしてしまう。 (きゅ・・・急すぎるよ、せつな) 走り出そうと強く一歩を踏み出した瞬間、相手にぶつかりそうになったみたいなタイミングの悪さ。心の準備がうまく出来ない。 ラブを起こさないようにと気を使っているらしく、そっと近づいてくる。いつも違う雰囲気に、少し胸がざわめく。 (フタの裏に、誰にも見えない金色の招待券を見つけたのかな?) 掛け布団が静かにめくられ、眠ったふりを続けるラブの隣に、やわらかな肢体がすべり込んできた。さっきラブが寝返りを打ったせいで、二人の体が向き合うカタチでベッドに横たわる。 「・・・・・・・・・・・・」 眠っているふりを続行。 だが、顔が熱くなるのをとめられない。触れ合うほど近くにあるせつなの身体 ――― 少女特有のやわらかな曲線をまとった綺麗な肢体を、どうしても意識してしまう。 同じ家で暮らす、家族同然の間柄だ。今までにも一緒のベッドで仲良く眠ったことはあるが、今日は何かが違った。さっき大きく跳ねた心臓が、全然おさまろうとしない。 (こんな調子だと・・・またせつなと・・・・・・どうしよう?) せつなの部屋できれいに噛み合わさったばかりの歯車が再びずれてしまうのではないか、という予感が胸を苦しくさせる。 「ラブ、だいじょうぶ?」 きゅっ・・・。 パジャマの袖が遠慮がちに掴まれた。もしラブが軽くでも腕を動かしたら、簡単に離れてしまいそうなほど弱々しいチカラ・・・・・・。だけど、まるで母親に手を握ってもらったみたいな安心感を覚える。 不安にざわめきかけていた胸が落ち着きを取り戻し ――― 途端に、二人の歯車の調子を狂わせようとしているモノの正体がはっきりと見えてしまった。気付いてしまえば、ものすごく単純な感情。おかしくて、笑いそうになってしまう。 もう眠っているふりをする必要はないだろうと思い、ラブが両目を開け、せつなに眼差しを重ねた。せつなは微かにうなずき、ラブの瞳を見つめる。 掛け布団の下で、二人の手が自然に繋がれた。 「ダンスのあとにね、汗で湿った後ろ髪をせつなの細い指がカッコよくかきあげるの。その時にうなじがチラッて見えて、それが・・・・・・すごく好き」 まずは一つ目。 好きと言える部分は、まだまだたくさんある。 「目を閉じて・・・」 せつなの耳もとでそうささやいたあと、ひとつひとつを大切に思いだしながら、彼女に告げていく。ラブにとって全部、以前は当たり前だったコトだ。でも、今は違う。全てが宝石。 例えるなら、小さい頃から兄妹のように育った幼なじみ同士が第二次性徴を迎えて、突然お互いを異性として意識し始めるように・・・・・・。ラブたちの場合は同性ではあるし、何がきっかけだったのかは詳しく分からない。自分でも知らない間に急成長してしまった、ある感情。無意識の戸惑いを生んでいたそれに対して、ようやく正面から向かい合う事が出来た。 何度も耳もとで「ここが好き」「これも好き」と告白されて、せつなは非常にくすぐったい気分だった。放っておいたら一晩中続きそうなので、嬉しさに緩む唇でラブに呼びかける。 「ねえ、一個一個丁寧に並べているけど、それって一つの言葉にまとめられるんじゃない?」 「えっ」 ラブが怯(ひる)んだように言葉をとめた。恋愛に慣れていない少女にとって、その単語はちょっと恥ずかしいし、照れくさい。モジモジとためらう表情にほんのりと朱が差してくる。そんな彼女に、至近距離からの物静かな視線で圧力をかけるせつな。どうあっても言わせるつもりらしい。 こら、恥ずかしがってないで言いなさい。 そんなせつなの心の声が聞こえてくる気がした。 こうもじっくり見られながらでは、余計に萎縮して言えなくなってしまう。 ――― だが、せつなの視線による静かな圧力は続く。真綿で首を絞められていような気分に耐え切れない。 「だ、大好き。せつなが大好き」 「フーン・・・、私を部屋に帰らせたいの? ラブは」 「わあぁっ、待って。愛してるっ、せつなを愛してますっ」 本気でベッドから出て行こうとしたせつなに、あわててラブがしがみつく。一応満足したせつながベッドに戻り、掛け布団の下で再び仲睦まじくラブと身体を寄せ合う。 「ふふっ、ほら、一つの言葉におさまったでしょ」 「もーっ!」 顔を真っ赤にしたラブが、いきなりバッと背を向けた。いじわるされた猫が拗ねているみたいでカワイイ ――― せつながクスクスと笑う。 そして、その背中を優しく抱きしめた。 「ラブを愛してる」 心からの言葉を背中越しに届ける。ラブのすらりとした肩の丸みを撫で、そこへ、コツっ・・・、とおでこを乗せる。 「お詫びなら何でもするから・・・・・・許して」 せつなの手が掛け布団を掴んで、二人の頭部がすっぽり隠れるまで引き上げた。「・・・っ!」とラブが驚く後ろから、チョコレートよりも甘い声音で尋ねる。 「おしえて。ラブは、どんなお詫びがほしいの?」 「チョコレート・ダウン」2へ
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/71.html
美希はぐすっと鼻をすすり上げる。 あれから美希も祈里も無言になり、どちらからともなく公園を後にした。 何か、言うべきだったのかも知れない。 でも、何て? 美希は自分を過信していた、と思った。 ラブは、美希と話してから瞳に光を戻してくれた。少しは役に立てたのかも。 だから、祈里の役にも立てるかも。いい方向に導けるかも知れない。 そう思った。とんだ、思い上がりに過ぎなかったけど。 「………っう…、うっく………」 喉の奥から嗚咽が漏れる。ダメだ、堪えられない。 美希はしゃがみ込み、ひとしきり泣いた。 (なんでよぉ………。なんで、こんなになっちゃったの?) それでも腹筋に力を入れて泣き声を飲み込む。 えいっ、と立ち上がり少し回りを気にする。 こんなところでしゃがみ込んで泣いてしまったのが、少し恥ずかしい。 幸い、誰もいないみたいだ。 (……あんまり、ヒドイ事にはなってないな。) 鏡で顔をチェックする。少し瞼が腫れぼったくなって、目が赤い。 これくらいなら、家に帰って軽く冷やせば直ぐに引くだろう。 これから、せつなを見舞いにラブの家に行く予定だ。 祈里との話し合いの結果によっては、そのまま祈里も連れて行き、 謝らせる事が出来たら……。 そんな空恐ろしい事を考えていた自分に呆れかえる。 まったく、知らないって幸せだ。 家に帰って身支度を整える。泣いた跡はほとんどわからない。 けど、念のため目元に軽く色を入れてカムフラージュする。 ラブやせつなに余計な心配をかけたくない。 約束の時間までまだ少しある。 ぼんやりしてると祈里とのやり取りが頭に浮かび、口の中に飲み下せない 嫌な苦味が広がる。 祈里はラブとせつながレッスンに来ない事は知らなかった。 (よく……、来られたわよね。) 皮肉ではなく、真剣にそう思う。 美希はラブとのやり取り以来、せつなと顔を合わせるのは今日が初めてだ。 正直、まともに顔が見られるだろうか。 直接は関わっていない自分ですら、逃げ出したい。 祈里は、気まずいなんて言葉では言い表せないだろう。 それでも来た。 せつなだけではなく、ラブや美希もいるであろう場所に。 どんな気持ちだったのだろう。 何を言われても構わない、と覚悟を決めていたのか。 ただ単に開き直ってたのか。それとも……… (会いたかったのかな………。) せつなに。 多分、そうだ。根拠はないけど。 美希は少し不思議だった。 自分が、今回の事でまったくせつなにマイナスの感情を抱いていない事に。 少し前の自分なら、こう思っていたかも知れない。 (せつなさえ、現れなければ。) せつなが自分達の前に現れなければ。四人目でなければ。 祈里のした事を酷いと思い、せつながされた事に胸を痛めても、 ほんの少し、そんな風に思ったであろう自分が容易に想像出来る。 そのくらい、三人の絆は完璧!そう思っていたから。 自分も祈里と一緒だ。 ラブと祈里がいれば、他に友達なんて出来なくても平気。 だから、三人バラバラの中学に進んでも不安はなかった。 もし、何か上手く行かない事があってもラブと祈里がいる。 自分を丸ごと受け入れてくれる親友がいる。 だから、新しい環境にも思い切って飛び込んで行けた。 学校にも友達はいる。 でも芸能人を目指す子が多い中、周りは少ない椅子を取り合うライバル。 そう言う意識が根底に流れてる。 いくら表面上仲良くしてても、相手を蹴落さなくてはならない場面も 出てくるだろう。 同じオーディションを受けて、クラスメイトの一人が受かり、 もう一人は落ちる。今でもそんな話しはザラに聞く。 美希はまだ読者モデルだけとは言え、途切れずに仕事がある。 これから着実にステップアップしていける手応えも感じている。 まだ中二とは言え、鳴かず飛ばずの子達との間には何とも言えない ギスギスした空気があることを、嫌でも日々感じる。 小学生の頃からの友達だって、美希の容姿が類い稀に恵まれたものであり、 自分達との差を意識し出した途端に態度が変わったものだった。 よそよそしくなる子。逆に馴れ馴れしく媚びて来る子。 美希の整った顔や、スラリと長い手足に向けられる視線。 今でこそ軽くいなせるようになってきたが、少し前までは煩わしくて 仕方がなかった。 そんな中、ラブと祈里だけが変わらなかった。 美希が芸能科に進学しても、モデルとして雑誌に頻繁に載るようになっても。 ラブと祈里にとっては、いつまでも『美希たん』で『美希ちゃん』だった。 それが美希にとってどれだけ支えになっているか。 帰る場所がある、それだけで頑張れる。 そして、美希はふと気が付いた。そう言えばせつなもラブ達と同じだな、と。 せつなは人の見た目にまったく頓着しない。 初めて美希に会った時も、驚くでもなくお世辞に誉める事すらしなかった。 正直、容姿を誉められ慣れてる美希にとってはその方が意外だった。 せつな自身も相当に綺麗な子だったから、最初は自分なんて大した 事ないと思われてるのでは?と、少し穿った見方をしてしまったものだ。 まあ、少し見てればせつなが自分が容姿に恵まれてるなんて事に まったく気付いていない事は分かったけど。 そもそも見た目を誉める、と言う発想そのものがなかったのだろう。 かと言って美醜の感覚がずれているか、と言うとそうでもないのが また不思議だ。 (……って、こんな事考えてたってしょうがないわよね。しかも全然関係ないし……。) 家を出て、また公園に向かう。手土産にドーナツを買った。 何の気なしにラブもせつなも好物だから、と思ったからだが ラブの家に近づくにつれ、止めとけばよかったかな…… と思いが過る。 ダンスレッスンの後に、放課後に、四人で集まる時はドーナツカフェで お喋りするのが恒例だった。 そう言えば、初めて会った時のせつなはドーナツも知らなかったんだけ。 また少し感傷的になってしまった。 ラブの家に着く。鍵が閉まっていたのでインターホンを鳴らして名乗る。 (あれ?……今の声…。) 「いらっしゃい。」と言う声と供にせつなが顔を覗かせる。 パジャマの上にカーディガンを羽織っただけの病人ファッションだ。 「ごめんなさい、こんな格好で。」 「別にいいけど、起きてていいの?ラブは?」 「ラブは……」 今日はおじさんは休日出勤、おばさんはパート。家には二人だけって聞いてた。 だから、話しもしやすいかと今日訪ねてきたんだが、ラブもいないとは どう言う事だろう。 その時、タイミング良く美希のリンクルンが鳴った。ラブからだ。 「あぁ、もしもし美希たん?あのねぇ……」 前フリもなくラブは喋り出す。 ラブは圭太郎の忘れ物を届けに行く事になってしまったらしい。 「だからさぁ、あたしが帰るまでせつなに付いててくれないかなぁ。 まったくせつなってば、ちょっと良くなってきたと思ったら すーぐウロウロしようとするんだから!」 もう着いてるわよ。そう言うと、またラブがまくし立てる。 「そーなんだ!あっ!せつな、ちゃんと上に羽織ってる? 裸足じゃない?お茶入れるとか言っても聞かないでよ! すぐにベッドにもどしてね!それから………」 チラリとせつなを見ると、赤くなって俯いている。 ラブの大きな声はせつなにも丸聞こえだろう。過保護にされてるのが バレバレになって恥ずかしいらしい。 「……せつなに代わろうか?」 そーして!と言うのでせつなにリンクルンを渡す。 「もしもし……、うん、分かってるわ。…………分かってるってば。 ………うん、………うん、…………だから、分かってる。………」 電話の向こうで、ラブはまたひとしきり心配してるのだろう。 せつなは照れ臭いのか、美希をチラチラと窺いながら素っ気ない 言葉を繰り返している。 だけどその頬は、ほんのり染まったままだ。 大事にされている。そう実感するのが嬉しくないはずないから。 せつなが視線で、代わる?と聞いてくる。美希は首を降って、いい、と答える。 「うん、じゃあね。………もう!だから、分かってるから! ……うん…ありがと……」 せつなは電話を切って美希にリンクルンを返す。 「何よ……?」 ニヤニヤしながら見ている美希に、せつなが拗ねたような声を出す。 頬を染め、少し下唇を付き出してる様子が可愛らしくて、 ついからかいたくなってしまう。 「べっつにぃ~。ラブラブだなぁって思って。」 「………ラブったら、最近過保護なのよ。もう平気なのに。」 「まあまあ。早く部屋に戻りましょうか。アタシがダーリンに叱られちゃう。」 「……もう!美希!」 「愛されてるわねぇ。」 「だから!………もう!」 部屋に戻ってベッドに入っても、せつなはまだ拗ねた顔をしている。 「でも良かった。思ったより元気そうね。」 ベッドに身を起こす様に座っているせつなに改めて話し掛ける。 本当はそんな風には見えないけど。 明らかに痩せた。カーディガンの上からでも肩が薄くなったのが見て取れる。 元々白かった肌がますます透き通るように白くなっている。 (儚げ…って、正にこんな感じなのかしらね。) 実際の元気な頃のせつなは見た目と裏腹にハキハキした面も持っているのだが。 割りとハッキリものを言うし、結構頑固で融通が聞かない。 ラビリンスでも相当な訓練を積んでいたらしく、基礎体力や 運動神経はプロのダンサーのミユキさんでも舌をまいている。 そのせつながここまでやつれるんだから………。 「あのね………。美希は、知ってるの……?」 目的語のないせつなの問い掛け。何を?とは聞けない。 差すのは一つの事しかないから。 「うん……。ラブから聞いたし………今朝、ブッキーにも会った。」 そう……、とせつな俯いて、膝の上で拳を握り締める。 美希と、目を合わせられないらしい。 「祈……ブッキーはどうしてた…?」 祈里、そう言いかけてせつなは言い直した。 それだけで、何となく祈里とせつなの関係の一端が見えてしまったようで、 美希は居たたまれない気分になる。 「………私、全然気付いてなかったの。」 祈里の気持ちに。美希の返事も聞かないままに、せつなはそれが 途方もない罪悪のように口にする。 「知らないうちに、無神経な態度取ってたかも……。」 「……あるかもね。」 「無意識に、ブッキーを傷付けてた……。」 「……そーかも。」 「………ごめんなさい。」 「……………。」 「馬鹿じゃないの?」 「……え?」 「馬鹿、って言ったの!何でせつなが謝るの!せつなは何も悪くないでしょーが!」 「……でも……」 「でもじゃない!!」 気持ちに気付かなかった。だから何?それがどうしたの? 無神経だったかも?仕方無いじゃない!告白もされてないのに 分かれって方がムリでしょ! 傷付けたかも?好きになった人にもう相手がいる。そんなの珍しくも何ともないの! どう考えてたってブッキーが悪いでしょ! 裏から見ても表から見ても、上下左右タテヨコナナメどっから見たって 1%も同情の余地なんてないわよ! 「…………美希……………。」 頬を紅潮させて、一気に言い切った美希を見て、 せつなはポカンとして言葉を失う。 「………って、割りきれたらいいんだけどね…。」 無意識に探している。祈里を庇うための言い訳を。 酷い、そうとしか言い様のない祈里の告白。 祈里自身も、自分なら耐えられない、と言い切った。 もし、せつなをそんな目に合わせたのが他の誰かなら殺しても飽き足らない。 そう思っただろう。 目の前の力無く憔悴仕切ったせつな。 そうさせたのが、美希が知る誰よりも優しくて思い遣りがある、 そう思ってた祈里だと言う事実に胸が掻き毟しられる。 せつなは祈里が好き。そう言ったらしい。 好きだから、もう止めたい、と。 せつなも同じ気持ちなのだろうか。 これほど心身供に疲弊仕切るほどの目に合わされても。 まだ、祈里を庇いたいと思っているのだろうか。 だから、だからラブに祈里に脅され無理矢理に関係を続けさせられた事を 話せないのかも知れない。 (都合よく考え過ぎね……。アタシってば。) 美希はせつなのベッドに腰掛け、せつなの頭を撫でる。 どうして、この子ばかりこんな目に合わなくては行けないのだろう。 せつなの手の中にあるもの。その少なさを思う。 過去のすべてを、命さえ奪われたせつな。 その手が今持っているのは、 ラブへの愛情。 仲間への信頼。 その二つだけだろう。そして、少ない分だけ大きく、驚くほど深い。 一点の曇りも無い、無垢な全幅の信頼。 せつなは全身全霊で仲間を信頼してくれていた。 「………辛かったわね。」 せつなを抱き締める。 「……美希…。」 これ以上ないくらい、シンプルな慰め。 祈里はせつなの信頼を利用し、罠にかけた。 どれほどせつなが絶望するか分かっていながら。 胸が痛い。 それなのに、自分は更にせつなに辛い事を強いようとしている。 「………祈里を、助けて……。」 せつなを抱き締めたのは、せつなの辛さを少しでも分け合いたかったから。 それともう一つ。目を見てしまったら言えなかっただろうから。 闇に向き合うしかない、暗く冷たい水底を己の場所にしてしまった祈里。 ラブが、せつなが許しても、他ならなぬ祈里自身が自分を許す事を拒むだろう。 欲望の代償に、すべての許しも救いも拒絶している。 神の手に掬い上げられる事を、自ら拒む罪人が望む事とはなんだろう。 美希には分からない。でも、恐らくそれが与えられるのは せつなだけだ。 せつなだけが、祈里の目を闇から背けさせる事が出来る。 どれほど理不尽な願いなのか。 『辛かったね』そう抱き締めながら、更に傷口に塩を塗る。 自分の身勝手さに潰されそうになりながら、美希はせつなに乞い願う。 誰一人、失いたくないのだ……と。 「ね、………美希。」 耳元で吐息と供に感じる、せつなの囁き。 「ドーナツ………、食べたいわね。」 「………?…せつな……?」 「………また、四人で。」 美希は柔らかく体を預けてきたせつなを、全身で受け止める。 切ないくらい優しい声が胸に痛い。 美希は黙って抱き締めた腕に力を込める。 声は出せない。口を開けば、大声で泣いてしまうに決まってるから。 せつなにばかり、辛い役目を押し付けている。 なのに、なぜせつなは、怒りも詰りもしないのだろう。 「きっと……、ラブも同じ気持ちよね……」 美希はまだ口がきけない。 『ありがとう』も『ごめんなさい』も違う気がする。 ただ、美希は思った。せつなになら、この先のすべての自分の幸せを あげても構わない、と。 その手にあるもの。 それは――― 黒ブキ22へ
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/100.html
あの海から始まる物語:episode.2 クリスマスが終わり、久々に皆で集まったドーナツカフェ。 時折、美希とラブは視線を絡め、見つめ合い、頬を赤らめる。 微笑み合い、じゃれあい、肩を寄せ合う。 当然のように隣り合わせに座ったテーブルの下では、お互い膝小僧をくっつけ、こっそり手を繋いでいた。 「せつなちゃん……美希ちゃんとラブちゃんって、何だか……」 「ブッキーも気づいた?」 「だって、あまりにも……」 「……そうよねえ?」 せつなと祈里には、どう見ても美希とラブの2人が恋人同士に思えてしまう。 公然といちゃついているのだから、当然と言えば当然の結果だった。 いつの間に、そうなったんだろう。全然知らなかった。祈里は考える。 最近になって、2人が想い合っていることに、祈里は密かに気づいていた。 しかし、2人がこんなにも早く幼なじみという壁を乗り越えていたなんて。 2人がそこまでの関係に致っていることは、祈里の予想を遥かに越えたことだったのだ。 少し前までの祈里なら、幼い頃からの気心の知れる3人の中で、1人だけおいてきぼりにされたような気持ちになり、寂しさや悲しさを覚えたことだろう。 しかし、今の祈里は違う。クリスマスの出来事をきっかけに気づいた、せつなへの特別な感情が、祈里を変えていた。 祈里は今、美希とラブの関係を、悲しむのではなく、羨んでいた。 いいなー、美希ちゃんとラブちゃん……。 それにしても、いつの間に?あっ!もしかして、クリスマスの晩に……?きっとそうだったんだ。 わたしもいつか、せつなちゃんとあんな風に……。 だけど、せつなちゃんはどう思ってるんだろう。ラブちゃんが取られたような気持ちになって、寂しがっていないかしら。 あっ!わたしったら、一番大事なこと忘れてた。 せつなちゃんには好きな人がいるかどうかってこと。もしもいるなら、それは誰なのかっていうこと。 やっぱりラブちゃんかな。それとも……美希ちゃん? どっちにしろ、せつなちゃんが、美希ちゃんかラブちゃんを想ってるのなら、この状況はかなりツライはずよね……。 「あの……せつなちゃんはどう思う?」 「ん?何を?」 「何って……美希ちゃんとラブちゃんのことよ」 「ああ。まったく、よくやるわよ。見てられないわ。ブッキーもそう思うでしょ?」 「う、うん……そうだね」 せつなの呆気ない返事に、祈里は次の言葉が出せないでいた。 せつなが好きなのは、ラブでも美希でもないようだ。 もしかしたら、他に好きな人がいるのかも知れない。 祈里は何の気無しに、せつなが知らない誰かと肩を並べて歩いているシーンを想像してみる。 だが、ただそれだけのことなのに、軽い眩暈に襲われそうになる。 知らなかった。わたしって、こんなに嫉妬深いコだったんだ……。 けど、それだけわたしは、せつなちゃんが好きっていうことなのかな。 今度は、せつなの隣を歩く人物を、自分に置き換えて想像してみる。 ラブと美希がしているように、見つめ合い、視線を絡めるせつなと自分を思い描き、祈里は頬を赤らめた。 「なあにブッキー、顔が赤いわよ?」 「な!何でもないよ!」 「ヘンなブッキー」 せつなは笑う。祈里を見て笑ってくれる。 今はまだ、これでいい。この関係が心地いい。 たわいもないことで笑い合えるポジション。 友達同士であることに、物足りなくなる時もあるけれど、今はこれでいいのだ。 真冬とはいえ、昼下がりの優しい陽射しの中で、祈里は確かに幸せに包まれていた。 せつなはまだ、誰のものでもない。 【夕涼み】へ続く
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/806.html
『桃園家の一日Ⅱ』/Mitchell Carroll いつもより強引なラブの接吻と抱擁。 そしていつもより感じてしまう自分。 初めてじゃないのに、まるで初めてのように感じる。 怒涛のように注がれるラブの愛で、体も心も、時間までも溶ける。 昼間お預けした反動からか、せつなのやわらかい二つの山は何度も噴火を繰り返した。 下流にある泉からは、欲望が溢れている。 「いけないんだ、せつな」 その欲望の糸がどこまで伸びるか、確かめるラブ。 「見て、せつな」 「やっ……」 ラブの指は天を差している。 せつなが決して逃げられないように、ラブはせつなの上に覆いかぶさり、 太ももを抱え込んで、突起と穴への侵入を繰り返す。 指先が、せつなのいちばん奥に当たる。愛おしい指を咥え込んで、離さない。 全身がそれそのものと化したせつな。 もう、どう呼吸すればいいのか知っている。どんな言葉を言えばいいのかも。 それは道具を使った占いではなく、本能が教えてくれる予言。 「一緒にいく、一緒にいく、ラブ!」 「せつなぁぁっ!!」 「ラブぅぅっ!!」 ――いつから、こんなふうになったんだろう? お風呂の時から? 夕方から?今朝から? 想いを告白した、あの時から?……違う。 ふたりが出会った、その時から―― 今まで知らなかった自分を教え合った。 涙も唾液も何もかも、シーツのあちこちに染みとなって残っている。 「大事なものは、どうするんだっけ?せつな」 大事なものは、抱きしめる。それも出来るだけ体に多く触れるように。 初めて自分を強く抱きしめてくれた人が教えてくれたこと。 白いせつなの肌は、もうすっかり桃色に染まっていた。 終
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/300.html
翼をもがれた鳥 第12話――帰るべき場所―― 「さっ、帰ろう。せつなっ!」 せつなはラブに手を引かれる。そして、圭太郎とあゆみに挟まれるようにして歩き出した。 全員と、おそるおそる顔を合わせる。その全てから返ってくる優しい微笑み。 せつなは安心してついていく。 これは夢なんじゃないかって疑いながら。 もしも夢なら、もう少しだけ覚めないでほしいと願いながら。 やがて一件の家の前に着く。優しい肌色の壁に、ピンクの屋根。赤い色のひさし。 手入れの行き届いた広めの庭。二階には植物を這わせてあるバルコニー。 決して大きくは無いけれど、温かみを感じさせる家だった。 「ここがあたしの家だよ、せつな」 「そして、今日から君の家でもある」 「ようこそ桃園家へ、せつなちゃん。ううん、せっちゃんね」 「えっ?」 それまで後ろを歩いていた圭太郎とあゆみが前に出る。 家の扉を開けて、せつなを迎え入れる。 そして、あゆみが満面の笑みでせっちゃんと呼んだ。せつなは意味がわからずキョトンとする。 「いいでしょ? だって、今日から家族になるんですもの」 「そうだな、家族だ。僕もせっちゃんと呼ぼう」 「だめかしら?」 不安そうな顔で、あゆみがせつなの様子をうかがう。 びっくりして、声が出せなかった。 せつなは住まいを与えてもらったつもりでいた。一緒に住むことを許してもらえる。そう思っていた。 家族として迎える? 自分に、家族ができる? 素性も知れないのに、どうして……。 たった一言が、せつなの心を激しく揺さぶる。大きすぎる愛情が、せつなの小さな体には収まりきらない。 笑顔すら作ることができなくて―― ただ、大きく首を振った。 これじゃ駄目、これじゃ肯定か否定かすらわからない。ううん――自分でもよくわかっていない。 何か言わなくちゃ。せつなは懸命に言葉を探すが、何も出てこない。 心は喜びに震える。理性は玄関から先に進むのを拒否する。ここは駄目だ。ここは温かすぎるって。 そんなせつなの手をラブが引いた。早く上がろうって。 つんのめるように、バランスを崩してせつなが家の中に上がりこむ。 転びそうになったせつなをあゆみが支えた。自然と抱き寄せるような格好になる。 上がってしまったことで、温もりを感じてしまったことで、せつなの最後の自制心が砕けてしまった。 必死に涙をこらえながら、たった一言だけ、やっとの思いで紡いだ。 「よろしくお願いします」 あゆみの――腕の中で。 『翼をもがれた鳥――帰るべき場所――』 夜も遅い時間、もう起きている家庭は少ない。そんな中、居間とキッチンに煌々と照明が灯る。 決して大きくは無い部屋。木材をふんだんに使い、温かみのある色合いで整えられた生活空間。 ところどころに配置された観葉植物。 絨毯、カーテン、座布団、いくつもの装飾品。果ては食器に至るまで、工夫と遊び心に溢れていた。 各々が好きな形、好きな色合いで揃えてきたのだろう。 生活観のある温かい部屋。それは、せつなにとって初めて目にする世界だった。 決して美しくはない。なのに、どうしてだろう。 こんなにも――心が惹かれるなんて。 こんなにも温かくて――心が安らぐなんて。 「せっちゃん、もしかしてずっと食べてないの?」 「あ、はい……」 「そう、じゃあ急にしっかりした物を食べるのも良くないわね」 あゆみは冷蔵庫の中を思い出しながら思案する。 せつなは、その様子を不思議そうに見つめる。 あゆみ……おばさま。ラブの母親。病室で一回会ったらしい、それだけの関係。 怪我をしているはずだった。それなのに、当たり前のように、せつなのお腹の具合を最優先に考えている。 ラブも当然と受け止めている様子だった。救急箱を取り出して、テキパキとあゆみの手当てをしていった。 「何か作っておくから、もう少し我慢して先にお風呂を済ませていらっしゃい」 「それより、お怪我は大丈夫ですか?」 「大したこと無いわ。ラブ、ここはいいからせっちゃんを案内してあげて」 「うん。こっちだよ、せつな」 お風呂場に案内される。シャンプー、リンス、ソープ。お湯の出し方なんかを教えてもらう。 心細そうな表情をしていたのだろうか、ラブが一緒に入ろうかと申し出る。せつなはびっくりして断った。 「タオルはあたしのを使ってね。パジャマもサイズ一緒だと思うんだ」 「ありがとう」 何日ぶりかのお湯の感覚に身をゆだねる。緊張がほぐれ、現実感が増してくる。 これは夢じゃない。夢に見ることすら、許されないと思うのに。 せつなはふと気が付く。やっと一人になれたことに。押し寄せる愛情に流されるようにここに来てしまった。 ラブだけじゃない。ほとんど面識の無いご両親までもが自分を愛そうとしている。 この世界に来て、人々の暮らしを学んで、ずいぶんわかったつもりになっていた。 ほんとうは、何もわかってなかったんだと気が付く。 信頼とは、一つ一つの積み重ねで築いていくものなんじゃないのか。 愛情とは、一日一日の積み重ねで育てていくものなんじゃないのか。 この家の人たちは、信じることから始めようとしている。愛することから始めようとしている。 何のために? それだけはわかる。東 せつなという少女の――幸せのためにだ。 だけど――どうして。 それだけは、いくら考えてもわからなかった。 お風呂から上がり、ラブのピンク色のパジャマに袖を通す。髪を梳いて鏡を見る。 嬉しそうな、でも、不安そうな顔をしていた。笑っているのか、泣いているのかわからないような表情だった。 何度か、笑顔の練習をする。今度は任務じゃなくて、自分自身のために。 自分を受け入れようとしてくれている、やさしい人を安心させるために。 「まあっ! すごく可愛いわ。見違えたわよ、せっちゃん。ラブのパジャマも似合ってるわね」 「でしょ~。せつなってすごく素敵なんだよ」 「私はそんなんじゃ……」 ラブはまるで自分が誉められたかのように、エッヘンと胸を張りながら自慢する。 あゆみが最初にせつなと出会ったのは病室だった。そして、次は暗い公園だった。 この家に来てからも、乱れた服装と髪ではさすがの美貌も大きく損ねられていた。 柔らかな黒髪が艶を帯びて輝く。透き通るような真っ白な肌が、お湯に温められてほんのり赤く染まる。 緊張していた硬い表情が、お風呂でリラックスすることによって柔らかく解ける。 今、目の前にいるせつなは、滅多に見かけないほどに美しく可愛らしい子だった。 せつなは容姿を誉められて赤くなる。自分は美しい。それを意識するようになったのはラブと出会ってからだった。 ラビリンスで容姿を誉められることはない。美しくて当然だから。個人差はあっても、全員がそうだから。 目立ちすぎるのは好ましくない。そう気がついてからは、わざと地味な服装を好んだ。 でも、美しく見せるのもその逆も、全ては任務のため。自分の容姿に関心を持ったことなんてなかった。 自分の胸に湧き上がる感覚に動揺する。 誉められて、嬉しい。そして、恥ずかしい。 相手に好かれたい。より好感を持ってもらいたい。そんな気持ちが働いているのだろうか? それだけではないような気がした。相手が喜んでくれているのが嬉しい。自分の姿が相手に笑顔を与えているのが嬉しい。 相手の反応が嬉しい。これも、初めての体験だった。 「はい、できたわ。雑炊を作ってみたの。これなら消化もいいから」 「ありがとう。いただきます」 レンゲを持つ手が震える。手を付けるのが恐れ多くて―― それは、これまで口にしてきた食事とは、全く違ったものだと思った。 栄養を補給し、命を繋ぐための配給品ではない。 せつなの空腹を満たすために、せつなを笑顔にするために、心を込めて作られたもの。 生まれて初めて口にする、せつなのためだけに作られた食事だった。 動かないせつなの手に、あゆみの手が添えられる。 見上げると、優しい微笑があった。 湯気の立ち昇る雑炊を、せつなは上品に口に運ぶ。 食べるのは初めてだが、作法は心得ている。潜入を得意とするせつなは、そういった術に長けていた。 しかし、それも始めの数口のこと。やがて急くように、夢中になって食べ始めた。 柔らかな味と香りが口の中で広がる。温かなスープが、疲労と空腹で弱った体に染み渡る。 「おいしい。すごく――おいしいです」 「そう、よかった」 「あのっ!」 「お話は明日にしましょう。今夜は食べたら休みなさい」 食事を終えて、あゆみと圭太郎に挨拶をする。 ラブにつられるように、せつなもたどたどしく口にして、深々と頭を下げる。 「おやすみなさい」 知識はあった。ラビリンスにだってその習慣はあった。でも、それを実際に口にするのは初めてだった。 嬉しくて、恥ずかしくて、くすぐったくて、あたたかな気持ちになる。 家族ができた。そんな実感があらためて胸に湧き上がる。 そんな日が来るなんて、思ってもいなかった。 「せつなの部屋は明日みんなで作ろうね。今夜はあたしの部屋でいいよね」 「うん、ありがとう」 「あ、タル! じゃなくて、ちょっと待ってて。少し部屋片付けてくるから」 「うん、わかった」 「おまたせ、入って!」 「お邪魔します」 ラブの部屋に入れてもらう。ミユキという女性のポスターが貼ってあることに気がつく。 ダンスユニット、トリニティのリーダー。ラブの憧れの人で、ダンスのコーチ。 そして、四人目のプリキュアとおぼしき人物。 せつなが何度も襲い――傷付けた人。 ラブとの仲を裂こうと企んだこともあった。 ズキン! と胸が痛む。 自分はどうしてここにいるんだろう? そんな資格なんてあるはずがないのに。 手に持った幸せの素の欠片を握りしめる。それを砕いたのも自分なのに。 ラブにすがる資格なんて、あるはずがないのに。 言わなくちゃ! 苦しくても、辛くても、これ以上ラブを欺くなんて許されない。 自分が――許さない! 「ラブ、聞いて。ミユキ……さんとの占いは嘘だったの。あなたたちを別れさせるために、私は!」 「もう……いいよ。もう、いいから泣かないで。あたしまで悲しくなっちゃうよ」 「よくないわっ! 私は他にも――」 「守るからっ! せつなは、あたしが守るから。どんなことからも守るから……」 だから、もう悲しいお話はやめようよ。ラブはそう言ってせつなに抱きついた。 その体が、ラブの体が震えていることに気がついた。 ラブも傷付いていたんだって、今さらながらにやっと気がついた。明るく振舞っていたからわからなかった。 ラブだってこの二日間、不休で自分を探し続けていたんだって。 いつだってそう。自分はラブを傷付けてばかりいる。自分と出会ってから、ラブは悲しい顔ばかりするようになった。 私は泣いてなんかいないわ。せつなはそう言おうとして、本当に涙が出てきた。 懺悔するように、きつく欠片を握りしめる。それに、ラブが気がついて尋ねた。 「せつな、何を持っているの?」 「これは――」 とっさに隠そうとして、思いとどまる。これも、自分の罪。 何より、ここまで尽くしてくれているラブに、隠し事なんて許されるはずが無かった。 そっと、手を開いて差し出す。 「ごめんなさい。これしか――見つからなかったの」 「探してくれたんだ……。ありがとう、せつな」 両手に乗せて、差し出そうとした。その手の上からラブは自分の手を被せて握らせる。 「きっと、見つかるよ。見つけようよ、せつなの幸せ」 「私は、私には――」 ラブは幸せの素の欠片を一緒に握ったまま、優しく語りかける。 きっと、砕け散った欠片の、その残った一つがせつなの分だったんだと。 だから、大丈夫だって。砕けた部分は、自分と美希と祈里で埋めるからって。 その夜は、ラブのベッドで一緒に眠ることになった。 布団は他にもあるけど、バタバタしてて干すのも忘れてたからって。 ラブは嬉しそうに体を寄せてくる。これからは、毎日一緒だねって。 いくらもしないうちに寝息を立てはじめる。 あまりにも無防備で、信頼しきっていて、それだけに愛しかった。 ラブの鼓動を聞きながら、その温かな体温を感じながら、せつなは想いにふける。 ラブにも、ご両親にも言えなかった。違う、口に出してはいけない気持ち。 幸せはとっくに見つかっている。そして、浸っている。 でも、自分にはそれを手に入れる資格はないんだって。 この素敵な家も、優しい家族も、美味しい食事や暖かいお布団も、自分には過ぎたもの。 だから、こうしている間も自分は罪を重ねているんだって。 それでも、今はこの優しさに甘えよう。このぬくもりに、身をゆだねよう。 自分には、やらなければならないことがあるのだから。 その時がきたら、きっと全てを清算しよう。 その時がきたら、この命を正しく使おう。 そして――必ず守ってみせるから。 ラブの幸せそうな笑みを浮かべた寝顔に、せつなはそっと、そう誓うのだった。 第13話 翼をもがれた鳥――相反する想い――へ続く
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/368.html
【ただいま】/恵千果◆EeRc0idolE 「ただいまー」 「お帰りなさいラブ!」 あゆみに頼まれて、お使いに行っていたラブが帰宅した。帰って来るなり、こたつに潜り込む。 「外スッゴク寒かったー!ああ~ぬくぬくする~。やっぱりおこたって最高!幸せゲットだよ!」 こたつに肩まで潜ったラブの頬に、少しずつ赤みがさしてきた。外は相当寒かったのだろう。 あゆみを手伝い夕食を作っていたせつなは、そんなラブの様子に気が気でない。 「お母さん、ラブったらあんなに寒がって…風邪引かないかしら?何か温かい飲み物でも飲ませた方がいい?」 「ふふふっ」 堪えきれずにあゆみが笑い出す。 「お、お母さん!何で笑うの?私何か変なこと言った?」 「ごめんごめん、だってね…ラブを心配し過ぎて、焦ってるせっちゃんがあんまり可愛いんですもの」 「もう、お母さんったら!」 頬をプウッと膨らませて、せつなは怒る。否、正確には怒った“フリ”をする。 本当は怒ってなどいないのだから。今ではじゃれ合ったり出来るくらい、本当の親子のように接することが自然になったふたり。 こたつに潜りながら、そんなふたりを微笑ましく思い、ラブは思わず嬉し笑いを漏らす。 「くふふっ」 「ああっ!ラブまで笑ったわね!」 「しまったー、ごめんせつな!」 慌ててこたつの中に潜り込むラブ。 しかし、せつながそれを見逃す訳もなく。 「コラ!逃げるなんて卑怯よ!出て来なさい!」 「いやー許してー!お母さん助けてー!」 こたつから這い出したラブを羽交い締めにするせつな。何を思いついたのかニヤリと笑い、ラブの脇腹に手を伸ばし、おもむろにくすぐり始めた。 「ごめんって!せつな!許してってば、ぶっは!わはは!やめ!くすぐったい!ギブ!ギブ!」 「はい、せっちゃんの勝ち。ふたりとも御飯よ。ラブは手洗った?うがいもまだでしょ。はい、くすぐったせっちゃんも一緒に、洗面所へレッツゴー!急いでね」 「はーい」 あゆみに言われた通りに素直に洗面所に行き、手洗い、うがいをするふたり。 「さ、出来た。行きましょラブ」 せつながラブの手を握り、ダイニングキッチンへと誘うが、ラブはそんな彼女の手を強く引っ張り返して抱きしめる。 「ラブ?」 「まだしてもらってないよ…お帰りなさいのキス」 耳元で甘い声で囁かれ、みるみる顔が赤くなるせつな。 「だって…お母さんの前じゃ出来ないでしょ?」 「だったら…今してよ」 「んもぅ…ラブったらしょうがないんだから」 ちゅっ。軽く口づける。 「さ、お母さんが待って…んん!」 身体が熱くなる。奥から奥から熱が溢れ出し、頭の芯が痺れ、何も考えられなくなり、そして…唇が離された。 「さ、お母さんが待ってるから行こうね、せつな!」 「……そんなキスするなんてズルい!」 「……欲しくなっちゃった?」 意地悪な質問だが、せつなは頷くことしかできない。 そんなせつなを、ラブもまた欲しがっている。 「わかってる。今夜行くから……開けといてね、ベランダの鍵」 「きっとよ……」 答えるかわりに、ラブはもう一度強く口づける。 「ふたりともーお味噌汁冷めちゃうわよー」 「はーーーい。―――行こ」 「うん」 恋人にしか見せない表情を脱ぎ捨てると、ふたりは甘い空気が漂ったままの洗面所を後にした。 真夜中の逢瀬に、心を躍らせながら。 会話9は、その後の美希とせつなの会話です
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/451.html
【ある日のお風呂】/恵千果◆EeRc0idolE ラブ 「せつな、あたしも入ってもいい?」 せつな「っっ!!まだいいって言ってないでしょ!」 ラブ 「隠さなくてもいいじゃん。せつな結構オッパイおっきいんだね~」 せつな「ちょっ!触らな…あん…や…め…」 ラブ 「あれ-何かせつなの先っぽとがってきたよ?固くてコリコリしてる」 せつな「…ふぁ…駄目…」 ラブ 「せつな…すんごく可愛い。続きはあたしの部屋でしよっか」
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/342.html
第11話 水底の罪人 (もう、そろそろ出なきゃ……。) 祈里はチラリと時計に目をやる。さっきから何回こんな事を繰り返してるだろう。 意味もなくバッグの中身を入れ換え、リンクルンをいじくる。 (本当にもう、行かなきゃ……。) 今日は久しぶりのダンスレッスン。 忙しいミユキさんは来られないけど、四人揃っての自主練はずっと続けてきた。 最近は色々あってずっとご無沙汰だったけど、今日の練習は前々から決まってた。 仮病を使って休もうか、とも何度も思った。 けど、せつなも来るかも知れない。 それとも、あんな事があったんだから、祈里のいる場には現れないだろうか。 祈里も、実際に顔を合わせてもどうしたらいいかなんて分からない。 ラブにも、どんな目で見られるか。 せつなは恐らくすべて話したんだろう。 ひょっとしたら、美希にも話は行ってるかも。 三人の自分を見る目を想像する。 自分のした事を棚に上げて、足がすくみそうになる。 それでも、またせつなの顔が見られる。声が聞けるかも知れない。 どんな冷たい視線でも、罵る言葉でもいい。 せつなに会いたい……その欲求には勝てなかった。 狂おしいほど、せつなに会いたい。 いつもの公園に少し時間より遅れて着いた。来ているのは、美希だけ。 他の二人の姿は見えない。 そう言えば、美希とも随分会っていなかった。 おはよう、そう声を掛ける前に美希が祈里に気が付いた。 「ラブとせつなは来ないわよ。」 挨拶もなしにいきなり美希が切り出す。 「せつな、この間熱出して倒れたの。もう微熱みたいだけど、 まだ家からは出してもらえないみたい。」 ラブはせつなについていたいから、と美希に連絡があったらしい。 硬い声と表情から、美希も知ってるんだ。と理解する。 不思議なほど、動揺してない自分に祈里は少し驚いていた。 自分にはメールも電話も、何の連絡もなかった。当たり前だろうけど。 「ふうん、そうなんだ。」 まるで他人事のような口調。美希が微かに整った眉をしかめる。 (誰のせいよ?) その目がそう言ってる。 美希はどこまで知ってるんだろう。誰から聞いたんだろう。 ラブか、せつなか。たぶんラブだろう。 だとしたら、せつなはラブに全部話したんだろうか。 「ねぇ、どう言う事なの?なんで、こんな事になったの?」 「……いったい何の事…?」 「はぐらかさないでよ、ブッキー!」 「美希ちゃんには関係ないじゃない。」 驚くほど、冷たく硬い声が出た。美希が少し青ざめ、言葉を無くしている。 それもそうだろう。今まで、祈里は美希にこんな態度を取った事はなかった。 自分が美希を動揺させてる。そう考えると祈里は少し可笑しくなった。 一人っ子の祈里やラブにとって、美希は同い年でも頼れる姉のような存在だった。 今までずっと、何か困った時は美希に相談。解決なんか出来なくても、 美希に話すだけでなんだか心が軽くなる。 きっと美希は、今回もそのつもりだったんだろう。 祈里が話せないなら自分から聞こう。話してくれれば、何か変わるかも。 自分になら、話してくれるはず。 「……関係なくなんか、ないわよ。」 美希は奥歯を噛み締め、動揺を飲み込む。 ラブの話から今までの祈里のようにはいかないのは分かってたはず。 怯んだら、負けだ。 確かに自分には関係ないかも知れない。 でもこのまま仲間がバラバラになるのを黙って見ているなんて出来ない。 「アタシ達、仲間じゃない。心配しちゃいけないの? 何があったか知りたいって思うの、当たり前じゃない。」 「……知って、どうなるの?美希ちゃん、どうにか出来るって思ってるの?」 それに、もう知ってるんでしょう? 取り付く島もない祈里の言葉。 美希は、今の今まで半信半疑だった。事前にラブの話を聞いても。 あの時のラブの壊れかけた様子。実際に倒れてしまったせつな。 最初に祈里がせつなを脅してたのでは?と言ったのも自分だ。 それでも、まさか祈里が……。 そう思う気持ちが確かにあった。 「ラブちゃんに聞いたんでしょ?だったら、今さら私に聞かなくたって。」 祈里は伏し目がちに目をそらし、少し唇を尖らせている。 ベンチに座り足をブラブラさせてる様子は不貞腐れた子供みたいな仕草だ。 「……ブッキーの口から聞きたいの。」 何を考えてるのか。どう思ってるのか。祈里自身の気持ちが聞きたい。 「じゃあ、………」 祈里は俯いて肩を震わせる。 「じゃあ、…せつなちゃんが、本当に好きなのはわたし。って言ったら、 美希ちゃん、信じてくれる?」 わたしとせつなちゃんは愛し合ってるの。 でも、せつなちゃんはラブちゃんの家にお世話になってるでしょ? ラブちゃんを無下には出来ないの。 だから、こっそり会ってたの………。 「……嘘、でしょ…?」 美希は自分の顔色が変わるのを感じていた。 (だって……ラブは……。) でも祈里の言う事が本当なら……。頭が混乱する。 せつながこちらの世界で生きて行くのに全面的にラブが力になったのは本当だし…。 それに、ラブがせつなを愛してるのは間違いないだろうけど、 せつなはどうなの?アタシ、せつなの気持ちは聞いてないし……… 「うん、嘘。」 「……え?」 「だから、嘘。そんなわけないじゃない。本気にしたの、美希ちゃん?」 祈里はさっきとはうって変わって、からかうような目で美希を覗き込んでいる。 今にも吹き出しそうな、イタズラに成功した子供のような……。 カァっと美希の体温が上がる。 真剣に、話を聞こうと思ってたのに。今日までどれだけ神経を磨り減らしたか。 「フザケないでよっ!」 涙が出そうになる。目の前にいる、この子はなんなの? アタシの知ってるブッキーじゃない。ラブも、せつなも、こんなふうに感じたの? ブッキーは、こんなふうに人の真剣な気持ちをはぐらかす子じゃない。 大人しくて、引っ込み思案で、でも人の気持に敏感で思い遣りのある…… 「騙して呼び出してね、無理やりヤッちゃったの。 せつなちゃんが抵抗出来ないようにして。」 崩れ落ちそうになってる美希に構わず、祈里は喋り続ける。 「その後はお約束?この事バラされたくなかったら、言う事聞けって。」 せつなちゃん、今の美希ちゃんみたいな顔してたわよ? これはいったい誰なの?って感じの。 「簡単過ぎて拍子抜けしちゃった。せつなちゃん、一旦気を許した相手だと あり得ないくらい無防備になっちゃうみたいね。」 一度ヤッちゃえばね、まるでお人形さんみたいになっちゃったの。 ラブちゃんの名前出すとね、何でも言う事聞くの。 呼び出せばいつでも来るし、服を脱げって言ったら泣きながら脱ぐの。 ベッドに寝かせて、足を開けって……… 「やめて!やめてよ!!!」 「何よ、美希ちゃんが話せって言ったんじゃない。」 つまり、そう言う事したの。酷いでしょ?せつなちゃん、倒れても仕方ないわ。 むしろ、よく今までもったって思うわよ。 熱に浮かされたように喋り続ける祈里を、美希はただ呆然と見ているしか なかった。 「ほんっと、酷いわよね。わたしだったら死にたくなっちゃうかも。」 「……ブッキー………。」 言葉を無くし、魂の抜けたような顔をしてる美希を、いっそ憐れむように 祈里は見つめる。聞きたくなかったろうな。こんな話。 「……どうしてよ。せつなが、……好きだったんじゃないの?」 「美希ちゃん、わたしってね、小さい頃から結構いい子だったと思わない?」 突然、関係ない事を話し出す。 「お友達とケンカするくらいなら自分が我慢したし、我が儘だって言わないし。」 でも分かっちゃった。わたし、全然いい子でもないし、我慢なんてした事なかった。 臆病なのは、人とぶつかって傷付くのが面倒だっただけ。 引っ込み思案の人見知りでいれば、何も言わなくても、ラブや美希が庇ってくれた。 誰かと争ってまで欲しいものなんてなかったし、傷付け合うほど 本気で分かり合いたい人もいなかった。 ラブと美希がいれば、他に親友なんて必要なかったし。 だから、初めて本気で欲しいと思ったものに出会った時、 どうしていいか分からなかった。 ただ遠くから眺める事しか出来なくて、気が付いたら、 それはとっくに人のものになっていた。 欲しいもののために戦った事なんてなかった。 だから我慢の仕方なんて分からない。 手に入らないものの諦め方、そんなの誰も教えてくれなかった。 ほんの一時でも、盗んででも手に入れられれば、気が済むかと思ったのに。 「ダメだったの。どんどん欲張りになっていっちゃったの。」 体だけでいい。ほんの一時わたしのものになってくれればいい。 傷付けたって、痛め付けるつもりなんてなかったのに。 せつなを当たり前のように独り占めしているラブに腹が立った。 どれだけ体を重ねても祈里を無視し続けるせつなに苛立った。 ラブに返すくらいなら壊してしまおうか。 ボロボロに汚されたせつなでも、まだラブは抱き締めるのだろうか。 違うな、と思う。 ラブはせつなが汚れたなんて思わないだろう。 祈里だって自分が一番よく分かってる。せつなを汚す事なんて出来なかった。 せつなを汚そうとした分だけ、自分が汚れただけだ。 「せつなちゃんね、あんな事されたのに、まだわたしが好きって言ったの。」 好きだから、もうやめるって。わたしの事、悪く思えないんだってさ。 自分を嘲るかのような祈里の口調。 胸が痛まないはずない。好きな人を自分で傷付けて。苦しめて。 平気でいられる人なんていないだろう。 「………後悔、してるんでしょ?」 美希はやっとの事で声を絞り出す。 よく知る幼馴染みの口から出る。生々しい罪の告白。 予想以上のダメージを受けてる自分がいる。 話を聞いただけでこれだ。ラブやせつながどれほどの傷を受けたのか、 想像も付かない。 「ずっとね、考えてたの。謝らなきゃいけないって。」 許してもらえなくても。自分がした事は理解してるつもりだから。 「だったら………!」 「でもね。わたし、後悔なんてしてないのよ。」 ずっと考えてた。この胸の苦しさは後悔なのか。 せつなを傷付け、ラブを裏切った事を悔いているのか。 答えは否だ。 後悔なんてしてない。あのまま想いを押し殺していれば、 せつなは今も微笑んで隣にいてくれた事だろう。 ラブとふざけ合い、美希に甘え、それはそれは幸せな時間。 それと引き換えにしても、せつなに触れたかった。 初めてその唇に触れ、柔らかな肌を抱き締めた時の歓喜を思い出す。 吐息を感じ、熱を共有した。 心には最後まで触れる事は出来なかった。 それでも、せつなの体に刻み込まれた祈里の記憶はこれからも消えない。 ラブだけのものではなくなった。 その事に、確かに喜びを感じている自分がいる。 例え時間を巻き戻せたとしても同じ事をするだろう。 「後悔……、出来たらよかったのに……。」 祈里は天を仰ぐ。涙がこぼれないように。自分には涙を見せる権利などない。 心底から悔い、本心から謝ればラブもせつなも許してくれるだろう。 例えすぐには元に戻れなくても、許すため、距離を埋めるために 努力し、祈里を受け入れてくれただろう。そう言う子だ。 だけど、今も祈里の中には邪な欲望が渦巻いている。 ラブとせつなを見ている限り、それが消える事など想像出来ない。 そんな謝罪に何の意味がある。 また、同じ事を繰り返すだけだ。 「後悔して、反省して、謝りたかったよ。泣いて、すがって、 それでお仕舞いにしたかった。」 でも、無理なの。 せつなは祈里の呪縛を振り切った。 ラブの元へ戻り、ラブも受け入れたのだろう。 もう、あの二人を引き離す事など出来ない。 未だ大人には遠い自分には逃げ出す事も出来ない。 この町にいるかぎり、見続けなければいけない光景。 せつなも、ラブも、もしかしたら目の前の美希も、二度と祈里に 微笑んでくれないかも知れない。 自分には相応しい罰だ。 深く暗い、水底に沈んでいくような祈里の姿。 美希はただ呆然と立ち竦む事しか出来なかった。 掛ける言葉など見付からない。 祈里は自分のした事を充分過ぎるほど理解している。 理解していながら、後悔していないと言う。 せつなの傷。ラブの悲しみ。祈里の闇。 どれも美希にはどうしようもないものに感じた。 罪を分かっていながら、救いを拒む罪人。 美希は唇を噛み締める。自分の無力さが、悔しい。 なんとか出来るかも知れない、そんな自分の思い上がりに臍を噛む。 美希もまた、力無い子供でしかないと言うのに。 第12話 動き出した時間へ続く
https://w.atwiki.jp/lls_ss/pages/23.html
その他 Aqours以外のキャラがメインとなるSSや 群像劇といった特定の主人公が存在しないSSはこちら 詳細にはネタバレを含む概要が書かれている場合があります スレタイ キャラクター 詳細 備考 日付 【SS】うちっちー「キミがボクを着るんだよ」曜「え?」 うちっちー・曜 詳細 20160527 千歌「悔しいよ…絶対見返してやる!」 Saint Snow・Aqours 詳細 コメディ 20160822 【SS】顔のない少女 ???・Aqours 詳細 シリアス 20160830 理亞「雪かきで勝負!」 ようちかりこ・善子・Saint Snow 詳細 コメディ 20160925 梨子「寝取られた!!」 善子・千歌・梨子 詳細 短編 20160929 梨子「ねぇヨハネ」 喜子「だから私はヨハ……、えっ?」 梨子・喜子・善子 詳細 短編 20161003 梨子「よっちゃんに淫紋を描くわ!」曜「私は千歌ちゃんに!」 曜・梨子・鞠莉 詳細 コメディ 20161011 曜「天使にレズソングを!」梨子「は?」 曜・梨子・鞠莉 詳細 コメディ 20161012 花丸「うぅん…最近朝うんちがでなくて心配ずら」 花丸・善子・ダイヤ・千歌 他 詳細 コメディ 20161014 理亞「姉さまがAqoursをオカズにしてた……」 Saint Snow 詳細 エロ・コメディ 20161102 ダイヤ「学校の紙パック自販機が、缶コーヒー自販機になってますわ!」 ダイヤ・鞠莉 他 詳細 短編・コメディ 20161103 ダイヤ「勝てると思ってますの?」聖良「負ける要素はありませんから」 ダイヤ・ルビィ・Saint Snow 詳細 短編・コメディ 20161121 【SS】フェェエエエエエエェェエエエエ アルパカ・しいたけ 詳細 カオス 20161201 |c||^.- ^|| μ'sのイラストを描きたいですわ!!【手描きGIF作成SS】 梨子・ダイヤ・曜 他 詳細 画像有 20170416 ダイヤ「第1回チキチキ!ダイヤ先生と学ぶラブライブ講座、開講ですわ!!」 ダイヤ 他 詳細 20170506 聖良「降りやんだ雪。氷原に射す陽の光」 Saint Snow・ダイヤ 他 詳細 シリアス 20170606 千歌「あ、梨子ちゃんからラインだ…」 千歌・梨子・ルビィ 詳細 短編・安価・コメディ 20170622 【お絵描きSS】善子「我らの手で生み出そうぞ! 闇に蠢く奇怪な絵画を!!」 善子・千歌・曜 他 詳細 画像有 20171020 酒井監督「二期三話の打ち合わせをしましょう」花田「はい」 酒井・花田 詳細 短編・コメディ 20171022 果南「ダイヤの家泊まるの久々だな~」ルビィ「……」 ダイかなまり 他 詳細 コメディ 20171023 千歌「果南ちゃんのお尻でケツ太鼓してたら、鞠莉さんに怒られた」 果南・千歌・鞠莉・曜 詳細 短編・カオス・コメディ 20170602 理亞「私の姉様の方がすごい!姉様はお尻の穴にキュウリが入るのよ!!」ルビィ「!!」 ルビィ・理亞 詳細 短編・コメディ 20171130 聖良「迎えに来ましたよ。善子さん」 ダイヤ「!?」 Saint Snow・善子・ダイヤ 他 詳細 短編・よしハー・コメディ 20171203 花丸「一緒に絞めるずら」善子「え、遠慮しときます……」千歌「あ゛?」 花丸・千歌 詳細 短編・コメディ 20180101 花丸「ファンからのプレゼント?あんな気持ち悪いもんメルカリで売ったったずら」千歌「かしこーい!」 花丸・千歌 他 詳細 短編・コメディ 20180104 善子「私ね、堕天使辞めようと思うの」曜「ええっ!?」鞠莉「オゥ……」 善子・鞠莉・曜 詳細 短編・コメディ 20170627 ノξソ>ω<ハ6「はい、こんにちはー」 千歌・鞠莉・花丸 詳細 コメディ・ちかまり 20180125 理亞「冬の夜更けに?」聖良「はい。怪談話、です」 Saint Snow 詳細 ホラー 20180122 『ダンシンダンシン…ノンストップマイダンシン…』聖良「やっぱりA-RISEのような素晴らしい曲を作りたいですね」 Saint Snow 詳細 短編・コメディ 20180127 花丸「タバスコぜーんぶ入れたずら~♪」千歌「よしこーい!」 千歌・花丸・善子 詳細 コメディ 20180110 聖良「内浦に伝わる妖怪、うみはぐ?」理亞「ひっ」 Saint Snow・Aqours 詳細 短編 20180418 理亞「スクールアイドル・鹿角聖良」 Saint Snow 他 詳細 20180504 果南「大学も楽しそうだよね」ダイヤ「……は?」 ダイかなまり・よしまるびぃ・曜 詳細 コメディ・カオス 20180618 理亞「SELF CONTROLするんだ私…」 理亞 他 詳細 コメディ 20180709 【ラブライブ!ss】梨子「出来たわ!千歌ちゃんがレズビッ千歌ちゃんになるボタンよ!」曜「ポチッ!」 ようちかりこ 他 詳細 短編・コメディ 20180815 ヨハネ「捏造よ! 偽造表示だわ!」 理亞「うっ……」 善子・理亞・梨子・ルビィ 詳細 短編・コメディ 20180818 聖良「疲れました……ルビィさんごっこをしましょう」 Saint Snow 他 詳細 コメディ 20180817 俺君「イタタタタ……」梨子「ちょっと、俺君?!」 Aqours 詳細 20180901 ルビィ「あれ?こんなところに日記が落ちてる、誰のかなぁ」 ルビィ・梨子 他 詳細 ホラー 20180216 押井「ラブライブ?」 押井 他 詳細 コメディ 20180912 押井「ラブライブ? 2」 押井 他 詳細 20180915 聖良「ぅおはよ~っす……クぁアっ……!(アクビ)もう12時……?」ボリボリ Saint Snow・Aqours 詳細 短編・コメディ 20181023 果南「おーい千歌ー!ドンキいくぞー」ドゥンドゥンドゥンドゥン!!!!! 果南・千歌 他 詳細 短編・コメディ 20181031 |c||^.- ^||「紅白⌒°( ^ω^)°⌒合戦」¶cリ˘ヮ˚)| ルビィ・ダイヤ・善子・梨子・曜 詳細 短編・顔文字・ほのぼの 20181115 理亞(お腹すいた……けど、ひとりでお店入るの怖いな……) 理亞 他 詳細 短編・コメディ 20181124 ルビィ「今度北海道旅行するの!函館・札幌・旭川・釧路・稚内を2泊3日で回るんだ!」理亞「姉様、この子バカァ?」 よしまるびぃ・Saint Snow 詳細 ほのぼの 20181123 聖良「理亞、そろそろ寝たら?」理亞「いや!サンタさん待つの!」 Saint Snow・よしまるびぃ 詳細 短編・コメディ 20181214 聖良「スクールアイドル・鹿角理亞」 Saint Snow・Aqours 詳細 20181212 理亞「リア充になりたい!」 理亞・曜・千歌・ルビィ 詳細 コメディ・ほのぼの 20181219 理亞「仮面ライダーごっこがしたい……」 理亞 他 詳細 ほのぼの 20181221 理亜「もう1人で大丈夫」 聖良「理亜…」 理亞 ・聖良 詳細 短編・ほのぼの 20181224 千歌「『さわやか』を食べに行こう!」 二年生・一年生 詳細 ほのぼの 20170108 ロリ果南「私、ここに住むー!」鞠莉ママ「帰りなさい!」 ダイかなまり・鞠莉ママ 詳細 短編・コメディ 20190107 聖良(30)「わぁ、懐かしい。これBelieve againの衣装……!」 Saint Snow 詳細 短編・コメディ 20190107 志満「身に覚えのある子」 志満・善子 詳細 短編・コメディ・しまよし 20190109 記者A「なんで辞めるんですか!」吉田沙保里「松浦果南との決着をつけたいからです。」 吉田沙保里・果南 他 詳細 バトル・コメディ 20190112 聖良「あー、この曲もうちょいメタルでもいいんじゃないですか?」果南(この人それしか言わないな……) Saint Snow・ダイかなまり 詳細 短編・コメディ 20190113 理亞「月が綺麗」 理亞・月 他 詳細 つきりあ・コメディ 20190114 むつ「…お集まり頂きありがとうございます」Saint Snow「…」月「…」 よいつむ・Saint Snow 他 詳細 短編・コメディ 20190115 千歌ママ「ママ会」 Aqoursママ 詳細 短編・コメディ 20190117 【クイズSS】善子「リリーVSずら丸! 最上級リトルデーモン決定戦!!」 善子・花丸・梨子 他 詳細 ほのぼの・画像有 20190118 月「それでその時私がさー」千歌「私?」月「……僕がさー」 ようちかりこ・月 詳細 短編・コメディ 20190119 千歌「>>3ちゃん、正直嫌いなんだよね」 千歌 他 詳細 短編・安価 20190122 聖良「リア充になりたいです!」 聖良・曜・月 他 詳細 ほのぼの・コメディ 20190126 千歌「お母さんのアルバムがヤバイ」 千歌・美渡・志満・千歌ママ 詳細 短編・コメディ 20190127 千歌「聖良さんってエロいよね」 Aqours・聖良 詳細 短編・コメディ 20190126 鞠莉「野球拳……ねえ」曜「(来た!)」チラッ 善子「……」コクッ 曜・善子・鞠莉 詳細 コメディ 20190129 理亞「月は綺麗」 月・理亞 詳細 つきりあ・恋愛 20190130 モブ1「津島さんと桜内先輩がやばい」 善子・梨子 他 詳細 よしりこ 20190131 ダイヤ「温厚な妹の怒らせ方」 ダイヤ・ルビィ・Saint Snow 詳細 短編・コメディ 20190205 聖良「私と理亞のブロッコリー戦争」 Saint Snow 詳細 短編・コメディ 20190206 聖良(うわっ...ブロッコリー入ってる...) Saint Snow・Aqours 詳細 短編・コメディ 20190208 理亞「チョコあげる」ルビィ「わぁっ、もしかして手作り!?」 よしまるびぃ・理亞 詳細 短編・コメディ 20190214 鞠莉ママ「ハグゥとデスワがバレンタインの邪魔をしてきマース……」 ダイかなまり・鞠莉ママ 詳細 短編・コメディ 20190215 理亞「今日もビラ配りがんばらなきゃ」??「それ。1枚いただけますか?」 Saint Snow・ダイかなまり 詳細 短編・コメディ 20190215 理亞(今日はルビィと初デート…絶対に失敗できない…!) 理亞・ルビィ・果南・鞠莉 詳細 短編・コメディ・りあルビ・かなまり 20190219 梨子「美渡さんって休日はいつも家にいますよね」美渡「えっ」 美渡・Aqours 詳細 短編・コメディ 20190225 月「その輝きに近づきたくて」 月・千歌 詳細 短編・ちかつき 20190302 理亞「新しいユニットを組んだからさっそく姉様に見てもらおう!」 Saint Snow 他 詳細 コメディ 20190303 理亞「サイゼ理亞!」 Saint Snow 他 詳細 短編・コメディ 20190308 理亞「姉さま達はもう……いないの!!」聖良「え、私大学落ちたから普通にいますよ」 Saint Snow 他 詳細 短編・コメディ 20190316 月「僕、スクールアイドルの良さ分かった!!」 月 他 詳細 短編・コメディ 20190318 美渡「ねえ」千歌ママ「んー?」美渡「千歌ってさあ、本当可愛くなったよね」 美渡・千歌ママ 詳細 短編・ほのぼの 20190318 鞠莉「良いわよ、結婚すれば良いんでしょ!」 鞠莉ママ・ダイかなまり 詳細 コメディ 20190401 理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter1 Saint Snow・渡辺月 他 詳細 ホラー・バトル 20190411 千歌ママ「……道に迷っちゃった」キョロキョロ ルビィ(あれっ、迷子かな?) 千歌ママ・ルビィ 他 詳細 短編・コメディ 20190414 聖良「Aqoursに入る気はありませんか?」 Saint Snow 詳細 短編・コメディ 20190420 ルビィ「うゆぅ…バイトしたいなぁ……」 ルビィ・美渡 他 詳細 ほのぼの・コメディ 20190429 聖良『もしもし?』ダイヤ「もしもし」 聖良・ダイヤ 詳細 短編・コメディ・ダイせい 20190504 果南「早起きは三問の徳かなん?」 千歌・善子・果南 詳細 短編・コメディ 20190505 クラスメイト「ねえラッキーピエロ寄ってこうよ」理亞「えっ、でも……」 Saint Snow 他 詳細 短編・ほのぼの 20190511 聖良「『君の名は。』ごっこをしましょう」 Saint Snow 詳細 短編・コメディ 20190514 【安価ss】鞠莉「>>3をマリーの妹にするわ!」 鞠莉・梨子 他 詳細 短編・安価・コメディ 20190524 聖良「暑い……死ぬ……」 Saint Snow 詳細 短編・コメディ 20190531 ダイヤ「沼津へ帰省ですわ」 ダイヤ・鞠莉ママ 他 詳細 短編・ほのぼの 20190604 理亞「姉さまが玄関で話している…… Saint Snow・鞠莉 詳細 短編・せいまり 20190614 月「僕の才能と千歌ちゃんの曜ちゃんからの好感度、交換しない?」 月・千歌・曜 詳細 短編・シリアス 20190620 美渡 (そろそろ買い替え時かぁ… ) 千歌・美渡・志満 他 詳細 短編・ほのぼの 20190629 聖良「感度3000倍でハンバーグ作りですか?」 聖良 詳細 短編・コメディ 20190701 千歌「赤ちゃんプレイ中に眠ってしまった曜ちゃんを戦車で起こすのだ」 ようちかなん・鞠莉 詳細 コメディ 20190708 千歌「チカが雑誌で36ページも特集されるのだ!」 千歌・美渡 他 詳細 コメディ 20190714 千歌「麻雀しよう!」 千歌・ダイヤ・鞠莉・梨子 他 詳細 バトル 20190718 善子「月ってさぁ」 曜「うん」 曜・善子・月 詳細 ふたなり・エロ 20190803 花丸「もし絶海の孤島で殺人事件が起きたら」 花丸・善子・梨子 詳細 短編・ほのぼの 20190805 果南「……」 ようちかなん 詳細 短編・コメディ 20190811 理亞「姉様がお尻にバブを挟んでお風呂に入るのを見ちゃった……」 Saint Snow 詳細 コメディ 20190813 理亞「イカの誇りにかけて、包丁人なんかに絶対負けない!」 ルビィ・理亞 詳細 短編・りあルビ・カオス 20190907 聖良「東京のイベントに行きましょう」 Saint Snow 詳細 ほのぼの 20190911 (q|`˘ ᴗ˘)ʅʅ 「お姉ちゃあ!んぴゅんぴゅ!」理亞「姉様?」ガチャ 聖良 他 詳細 短編・カオス 20191112 千歌「お腹すいた~」曜「なにか作ろうか?」 ようちかなん 詳細 短編・ほのぼの 20191115 聖良「夜も更けて」 ダイヤ「姉会ですわ」 聖良・ダイヤ 詳細 短編・ほのぼの・ダイせい 20191118 ルビィ「私のお姉ちゃんが」理亞「一番」千歌「すごい」 ルビィ・理亞・千歌 他 詳細 ほのぼの・コメディ 20191122 渡辺月「スクスタに不満あり」 月・曜 詳細 短編・コメディ 20191207 ルビィ「理亞ちゃんがカーテンにくるまったまま出てこない?」聖良「はい……」 Saint Snow・よしまるびぃ 詳細 短編・コメディ 20191212 美渡「今日も今日とて」 美渡・ちかようりこ・果南 詳細 短編・コメディ・ちかみと 20191229 聖良「私達の」 ダイヤ「日常」 ダイヤ・聖良 詳細 短編・ダイせい 20200102 理亞「姉様、その赤ちゃんは……?」聖良「ふふ、かわいいでしょう」 Saint Snow 詳細 短編・ほのぼの 20200122 千歌「曜ちゃんにお手紙を」 ようちかなん 詳細 シリアス・しんみり 20200213 鞠莉「我が小原家の先祖が暮らしたイタリア!」月(お、イタリア?僕が昔住んでたこと曜ちゃん話題に挙げるだろうなぁ……) 月・Aqours 詳細 短編・コメディ 20200307 志満「制定、我が家の記念日」 高海一家 詳細 短編・ほのぼの 20200310 `¶cリ˘ヮ˚)| リトルデーモンを紹介するわよ♪ 善子・梨子・Saint Snow 詳細 顔文字・カオス 20180921 聖良「おなかが減りましたね……」 聖良 詳細 短編・コメディ・画像有 20200420 千歌「聖良さんってカリフラワーは食べれるんですか?」聖良「!?」 Saint Snow・千歌 詳細 短編・コメディ 20200503 理亞「今日は誕生日なんだから、姉様はゆっくり休んでて」聖良「え、休む?」 Saint Snow 詳細 短編・ほのぼの 20200504 聖良「誕生日ですか…はぁ…」理亞「うわ…また姉様めんどくさいこと考えてる…」 Saint Snow 他 詳細 ほのぼの 20200504 理亞「姉様?」 Saint Snow 詳細 短編・ホラー 20200504 ルビィ「うわぁ!!聖良さんまた沼津まで来たの?!」聖良「ちょ…なんか冷たくないですか?」 聖良・よしまるびぃ 他 詳細 コメディ 20200517 幼少かなん「蜂の子食べるからスズメバチ捕まえるよ!」ようちか「よし!」 千歌・曜・果南 他 詳細 短編・コメディ 202005225 美渡「襖越の背中合わせ」 美渡・志満・千歌 他 詳細 短編・しんみり 20200529 酒○「安価でサンシャインのアニメを作り直します」 酒〇 他 詳細 短編・安価 20200530 千歌 「欠けた四つ葉」 美渡 「褪せた三つ葉」 美渡・千歌 詳細 ほのぼの・しんみり 20200601 鞠莉ママ「ハグゥ!!デスワ!!!あんたたちはまた鞠莉に…変な遊び吹き込みましたわね…!!💢💢」 鞠莉ママ・ダイかなまり 詳細 短編・コメディ 20200602 千歌「風になった日」 志満・千歌・美渡 詳細 短編・ほのぼの 20200606 ようちか「果南ちゃんが構ってくれないのだ」 千歌・曜・果南 他 詳細 短編・コメディ・友情 20200609 黒澤ダイヤなんて死ねば良いのに ダイヤ 他 詳細 短編・シリアス 20200624 善子「部室を"大好き"で満たすわよ!」 善子・梨子・ダイヤ 詳細 短編・コメディ 20200724 千歌「肝試しで涼しくなろうよ!」 曜・善子・花丸 他 詳細 短編・ほのぼの・コメディ 20200730 果南「かなりこマルと」花丸「テスト勉強ずら」 果南・花丸・梨子 詳細 短編・ほのぼの 202010013 千歌「どうしよ!!部室の鍵失くしちゃったよ!!?」 ようちかなん 他 詳細 短編・ほのぼの 20201117 理亞「もういいっ!!姉様なんて知らない!!」 理亞・Aqours 他 詳細 短編・ほのぼの・コメディ 20201124 美渡「くっそ~風邪引いた……」 美渡・志満 詳細 短編・ほのぼの 20201212 聖良「おねえちゃあ!今日ね!すっごくいいことがあったの!」 聖良 他 詳細 短編 20210212 渡辺月(ラブライブ初心者)「ボクもオリジナルのスクールアイドルを考えてみたんだ!」曜「へぇー、どんな?」 月・曜・Aqours 詳細 ほのぼの 20210210 聖良「いらっしゃいませ。ご注文をどうぞ」客「今日限定の、聖良のおおきなふわふわ大福(ホワイトミルクチョコ)をください」 Saint Snow 詳細 短編・コメディ 20210214 千歌「ダイヤちゃん勝負だよ!」ダイヤ「また?」 千歌・ダイヤ・梨子・善子 詳細 ほのぼの・コメディ 20210228 从c*•ヮ•§へいらっしゃい!! 千歌・ダイかなまり・花丸・ルビィ 詳細 短編・コメディ・カオス 20190609 善子「あんた就活やってたりする?」 理亞「え?」 善子・理亞 他 詳細 20210721 梨子「ちょ、ちょっとお手洗いに……」千歌「あ、じゃあ私も行く!」 クール組 他 詳細 短編・コメディ 20210727 【教えて】梨子「はわわぁぁ!!」(鞠莉ちゃんがドヤ顔でコ○ドームを見せびらかしてくるぅ…)【アゼリア】 梨子・鞠莉・AZALEA 詳細 短編・コメディ 20210806 【構想30分系SS】理亞「なんやかんやあって、ルビィとポッキーゲームする事になった」 理亞・ルビィ 他 詳細 短編・コメディ 20211111 破戒僧「よう、花丸。エッチしようぜ」拙僧「なッッッッ!!!」 花丸 他 詳細 短編・コメディ 20220404 鞠莉「第45回しんちょくほーこくかいを始めます」 鞠莉・曜・善子 他 詳細 コメディ・恋愛 20220504 ダイヤ「理亞さんを私の妹にしますわ!」理亞「はぁ?」 ダイヤ・理亞 他 詳細 短編・コメディ・ダイりあ 20230104 煬帝「ようダイはいいぞ」 煬帝 他 詳細 コメディ・ダイよう 20230223 しいたけ「それだけの犬」 しいたけ 他 詳細 20230604 ライラプス「私もみんなと一緒に歌いたいなぁ」ヨハネ「えっ」 ライラプス・ヨハネ 詳細 短編・ほのぼの・コメディ 20240111 ライラプス「ヨハネ…またシコったの?」 ヨハネ・コハク 他 詳細 コメディ・カオス 20240228 ヨハネママ「ヌマヅでミスコンですって!?」 ヨハネママ・ヨハネ・コハク 他 詳細 コメディ・バトル・カオス 20240309 聖良「Aqours CLUB?」 聖良 他 詳細 短編・コメディ・せらちか 20240316 聖良「私とブロッコリーの100日戦争」 Saint Snow 詳細 短編・コメディ 20240407 鞠莉「曜クイズ~」 曜・善子・鞠莉 他 詳細 コメディ・ようよし・ちかりこ 20240602 R-18G スレタイ キャラクター 詳細 備考 日付 曜「今夜は千歌鍋だよ~♪」 梨子・曜・花丸・ルビィ 詳細 短編・カオス・R-18 20170707