約 1,106,298 件
https://w.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/958.html
58話 奇妙なすれ違い 俺は放送を聞いた後、身を潜めていた民家の車庫に停めてあった、 ホワイトカラーの430型グロリアの中に乗り込み、キーの配線を細工していた。 どこを探しても、この車の物と思われるキーが見付からない。 昔パクッた自動車泥棒の奴からこっそり教えて貰った方法を頭の中で思い出しながら、 作業を進めていく。 そして遂にエンジンがかかった。 「よし」 荷物を助手席に置き、運転席に乗り込み、俺はハンドルを握ってギアを操作し、 アクセルを踏み込んだ。 放送によれば、14人が最初の6時間で死んだらしい。 あの学生風のガキと、銀髪の女はどうなったんだろうな、名前を聞くの忘れたから、 生きてるのか死んだのかも分かんねぇや。 禁止エリアはどれも遠く離れた場所だし、気にする事もないだろう。 そして今、グロリアを運転している俺はエリアG-8の病院へと向かっている。 人が集まり易そうな場所は他にもあるが、医療道具求めてやってくる奴もいるかもしれないしな。 まだ一人も仕留められてねぇ。最初の6時間で14人も死んだんだ。 獲物がいなくなるってのは勘弁願いたいね。 車を調達したのは移動面で便利になるから、だが、目立ち易いのが難点だろうな。 機関銃か何かで狙い撃ちにならないようにしねぇと。 よく勘違いしてる奴がいるが、自動車の装甲ってのは弾避けになんてなりゃしねぇ。 威力が弱い.22LRでも貫通する。だから映画やドラマでよく銃撃戦の時に自動車の陰に隠れる シーンがあるがあれは間違いだ。実際、俺の同僚で同じ事して大怪我した奴がいる。 エンジンブロックなら防げるかもしれないがお勧めはできない。 まあ、その気になりゃ、車で轢き殺すのもアリか。 市街地の通りを、中央線も無視して走行する俺の運転するグロリア。 対向車も歩行者もいねぇ。オールフリーだな。 路肩に停められた車がちと邪魔だけどよ。 ◆◆◆ 私は病院からそう離れていない所の民家の中に隠れていた。 二階のベッドが二つ並んだ寝室と思しき部屋で、第一回目の定時放送を聞いた。 死者として呼ばれた14人の名前の中で知っている名前はケトル、鈴木正一郎の二人。 後は知らない名前ばかりだった。 ケトル……確か、アニオタの猫族の男子、だったかしら。 ほとんど接点もないし、どうでもいいっちゃどうでもいいんだけど。 鈴木正一郎……これは知っている。私が殺したから。 こいつもねえ、ほとんど何も、関わりがなかったけど……。 禁止エリアはF-3、D-2、E-8の三つで、順に午前7時、8時、9時から禁止エリアとなる。 入ったら、この首にはめられた首輪が作動する、らしいけど、 それって入ったらすぐに爆発するって事? それともタイムラグがあるのかしら。 どっちにしろ、禁止エリアが出現したら近寄らない方が賢明ね。 さて、私の事を強姦してくれた、あの黒い狼……名前、聞くの忘れたけど、 黒い毛皮を持った雄の狼。あいつは、生きてるのかしら。 もしかしたら、さっきの放送で名前を呼ばれたかもしれないけど、 もし、今度会った時は……絶対に、殺す。それも、ただ単に殺すだけじゃ駄目だ。 先刻殺した、名も知らないオレンジ髪の女を殺して奪い取った拳銃サイズのサブマシンガン。 これで、あいつの大切な部分をぐちゃぐちゃにしてやろう。 「……」 ふと、私はスカートを捲り、太腿の内側と局部の辺りを手で触ってみる。 黒狼に流し込まれ、何度も念入りに拭き取った白い液。 僅かに残って太腿を伝ったものが、乾いて嫌な線を描いていた。 今まで気にしないようにしていたけど、もう、限界……。 「……シャワー、浴びようかな」 余り大きな音を出すのはまずいけど、それよりも私は、身体を洗いたかった。 獣に汚された身体を、外面だけでも良いから清めたかった。 私は自分の荷物を持って、一階の風呂場へと向かった。 シャワーから流れる、程良い温度に調節したお湯を浴び、 私は身体、特に局部付近の汚れを洗い落とす。 温かいお湯が全身を流れ、とても心地良い。 これで今度こそ、あの黒狼が私に無理矢理流し込んだものも、完全に洗い落とせたはず。 でも……もう少し、浴びよう。念のために。 ◆◆◆ 銀鏖院水晶がシャワーを浴びている時に、 彼女がいる民家の前の道路を、一台の白い車が通過した。 狼獣人の警官、須牙襲禅が病院に向け運転する430型グロリアである。 水晶はシャワーを浴びていたため、また通りとは反対方向に風呂場が位置していたため、 車の通過には気付く事はなかった。 また、襲禅の方も、窓を閉め切っていた上すぐに水晶のいる家の前を通り過ぎたため、 シャワーの音にも気付く事はなく、水晶にも気付く事はなかった。 【一日目朝方/G-8病院周辺】 【須牙襲禅@俺オリロワリピーター組】 [状態]:右脇腹に散弾二発被弾(処置済)、車を運転中、G-8病院へ移動中 [装備]:FNブローニングハイパワー(13/13) [持物]:基本支給品一式(食糧一食分消費)、FNブローニングハイパワーのリロードマガジン(13×4) [思考]: 0:殺し合いに乗る。人を撃ちたい。 1:G-8病院へ行く。 2:銃はあってあり過ぎる事はないのでもっと欲しい。 3:学生服の少年(鈴木正一郎)に注意。 4:銀髪の女(日宮まどか)は次に会ったら絶対に殺す。 ※俺オリロワ開始前からの参戦です。 ※鈴木正一郎、日宮まどか(どちらも名前は知らない)の容姿を記憶しました。 両名とも既に死亡していますがその事を知りません。 ※銀鏖院水晶には気付いていません。 【銀鏖院水晶@自作キャラでバトルロワイアル】 [状態]:健康、全裸、入浴中 [装備]:S W M19(6/6) [持物]:基本支給品一式、.357マグナム弾(21)、イングラムM10(0/30)、 イングラムM10のリロードマガジン(30×8)、マチェット、モルヒネアンプル(3)、 水と食糧(二人分) [思考]: 0:殺し合いに乗る。優勝を目指す。 1:身体を洗ってから行動を開始する。 2:みんな殺す。とにかく殺す。クラスメイトでも容赦しない。 3:あの黒狼(レックス)は今度会ったら絶対に殺す。 ※本編開始前からの参戦です。 ※須牙襲禅には気付いていません。 壊される汚される、そして失う 時系列順 あの日の思い出を薄めては 壊される汚される、そして失う 投下順 あの日の思い出を薄めては 食える時に食うべし 須牙襲禅 須牙巡査の病院探索 その思いは正義をも砕く 銀鏖院水晶 焼け付く想いは憂い募らせる
https://w.atwiki.jp/inazumaberryz/pages/28.html
編集の仕方:左上の@wikiメニューの隣にある[編集]をクリック→このページを編集 1.左上の@wikiメニューをクリックし[新規ページ作成] 2.追加したいユーザー名をページ名として入力し作成(アットウィキモードでOK) 3.雄たけびメニューのすれ違いリストのページを開く 4.すれ違いリストのページで[編集]→[このページを編集] 5.2で作ったページのアドレスとユーザー名、チーム名を入れる→ページ保存 6.このページを編集モードにして↓の全文をコピー(Ctrl+c)し、新しく作ったページにペースト(Ctrl+V)する。 7.必要事項を記入しページ保存で完成です。 ※下記に情報を入力します ニックネーム『』 チーム名 プレイタイム フォーメーション 称号 チームリーダー なかまにした選手 すれ違った場所 プロフィール ※あくまでテンプレですので、紹介できることはどんどん書き加えたほうがいいと思います。 チーム紹介 ○○な○○である『SSS』はXXXがチームリーダーを務める。 FWはA、B、CのX人。AのAAやBのBBで相手を抜き、AのADやCのCDで点を取りにいく。 MFはA、B、C、DのX人。AのAAやBのBBでボールを奪い、CのCDやAのADで相手をスルーしFWへと繋ぐ。 DFはA、B、C、DのX人。AのAAやBのBBで自陣を守る。 GKの○○は○○で、得意技のXXを駆使しゴールを守る。 控えにはEやFなどがいる。 ※選手がいない箇所のCENTER ~は消します 選手名はCENTER ~の後に入力。 ※フォーメーションによってポジションごとの人数が変わるので、人数に応じて ||||||||||||||||| (←コピペでOK)を入れて情報を入力していきます。 FW 名前 属性 Pos Lv GP TP キック ボディ コントロール ガード スピード スタミナ ガッツ 秘伝書1 秘伝書2 備考 MF 名前 属性 Pos Lv GP TP キック ボディ コントロール ガード スピード スタミナ ガッツ 秘伝書1 秘伝書2 備考 DF 名前 属性 Pos Lv GP TP キック ボディ コントロール ガード スピード スタミナ ガッツ 秘伝書1 秘伝書2 備考 GK 名前 属性 Pos Lv GP TP キック ボディ コントロール ガード スピード スタミナ ガッツ 秘伝書1 秘伝書2 備考 控え 名前 属性 Pos Lv GP TP キック ボディ コントロール ガード スピード スタミナ ガッツ 秘伝書1 秘伝書2 備考
https://w.atwiki.jp/student_rowa/pages/104.html
入れ違いとすれ違い ◆xXon72.MI. 千葉紀梨乃と坊屋春道の二人は、氷川村を目指して歩いていた。 「トイレって言ってたんで、またお腹痛くなったのかと思っちゃいましたよ~」 「ああ、腹はもう大丈夫だ。キリノちゃんのくれた薬のおかげだな」 口の端を「んっ」と持ち上げ、猫の口のような形にさせながらそう言う紀梨乃に対し、 春道は腹をポンポンと叩いて答え、「はっはっはっ」と笑う。 正午に行われた放送の内容は二人に大きな動揺を与えたが、 春道がトイレだと言って紀梨乃と離れていた間に二人とも持ち直したようで、 今では、そんな風に他愛の無いやり取りが出来るようになっていた。 「…………」 それでも、ふと会話が途切れると紀梨乃の頭には剣道部の仲間達のことが浮かんできて、 言いようの無い不安が心を支配する。 (サヤ、タマちゃん、ミヤミヤ、ダンくん) 今回のプログラム、室江高校からは明らかに剣道部のメンバーが選ばれている。 そして、今回室江高から選ばれた全員の入部届けを書いた、又は書かせたのは紀梨乃だった。 (……サヤ、あたし、どうすればいいのかな?) 中でも、サヤこと桑原鞘子と紀梨乃は小学校以来の親友だ。 紀梨乃は心の中で親友に語りかけ、彼女ならどう返すか想像してみた。 (当たって砕けろだって、やるっきゃないよ!キリノ) そんな抽象的な、勢い任せの一言が返ってくる気がした。 「お、村が見えてきたぜ」 春道が、いつの間にかうつむいて黙り込んでしまった紀梨乃の気を紛らわせようと、 努めて明るい口調で、村が近い事を告げた。 「あそこにキリノちゃんの友達がいるといーな」 「ん~、そうですねぇ。早くみんなに会いたいっす」 笑顔を作って春道に答える紀梨乃だったが、心の中では先ほどの続き。 鞘子に言われた(気がする)言葉への返答を考えていた。 (そうだよね、やるっきゃないよね!) 一つ決心をして、紀梨乃は顔を上げた。その目に迷いは無い。 紀梨乃は「すぅぅ」と大きく息を吸い込み、剣道のかけ声の要領で大声を出した。 「サヤー! タマちゃーん!」 「おお!?」 突然の大声に驚く春道をよそに、紀梨乃は声を出し続ける。 「ミヤミヤー! ダンくーん! 聞こえたら返事してー!」 ■ ■ ■ 川田章吾の眠りは、本当につかの間のものとなった。 周防美琴が出て行ってからそれほどしない内に、女の声によって起こされたのだ。 「うっ……何だ?」 頭の痛みを堪えて、川田は耳を澄ます。 「ミヤミヤー! ダンくーん! 聞こえたら返事してー!」 聞こえてきた声は、周防美琴のものではない。 そしてその声は、段々大きくなってきている。 どうやら、川田のいる診療所に近付いて来るようだ。 (くっ、どうする?) 川田は、つかの間の睡眠によってほんの少しだけ戻って来た冷静な部分をフルに使って考えた。 (今はプログラムの最中、こいつは間違いない) 記憶が混乱していて前後がハッキリとは思い出せないが、 ここがプログラムの会場、殺し合いの舞台であることには違いない。 (近づいて来ているのは、女か。誰かを探しているみたいだが……) 近づいて来ているのは女の声だ。 声の様子から誰かを探しているようだが、殺し合いに乗っているかどうかは不明。 (くっ、頭が……こんな状態では……もし女が殺し合いに乗っていたら) 頭の痛みが強まった気がした。 今の自分はおそらく脳震盪を起こしている。本来なら、数日は安静が必要な状態だろう。 もし、声の主が殺し合いに乗っていた場合、今の自分では大した抵抗も出来ずに殺されてしまう。 (せ、接触は……避けるべき、か) 川田は、痛む頭で何とかそう判断するとデイバッグ他、荷物をまとめて裏口から診療所を出た。 「ぐっ……」 しかし、川田は診療所を出たところですぐに尻餅をついてしまい、裏口のドア付近の壁に寄り掛かって動けなくなってしまった。 安全を期すならもっと離れなければと思うのだが、もう体が言う事を聞かない。 やはり、安静にしていなければ駄目のようだ。 「みんなー、いないのー?」 そうしている内に、声の女が診療所に入って来た。 川田は何とかやり過ごそうと、壁に寄り掛かった状態で息をひそめる。 「あれ~?誰もいないの?」 女の足音が診療所内を移動する。 それに続いてもう一つ、別の足音が診療所内に入って来た。 「誰もいねーのか?」 「う~ん、こんな風に地図に載ってる場所だし、誰かいると思ったんですけどねぇ」 どうやら、男女の二人組だったようだ。 その後しばらく、二つの足音が探し人を求めて診療所内を動いていたが、 やがて、誰もいない事が分かったのだろう。足音が出入り口の方へ移動し始めた。 「やっぱ、ここには誰もいねーみてーだな」 「ですねぇ」 (そうだ、このままどっかに行っちまえ) しかし、そのまま立ち去るかに思えた足音の一つが、川田の思いに反して診療所を出る前に止まった。 「あ~、でも一応、裏の方も確認しときますね」 「そーか」 (な、なに?) 例の男女がそんなやり取りをしたかと思うと、足音(多分、女の方だ)がどんどん川田のいる裏口へ迫って来た。 (くっ、くそ……) 運を天に任せるのは川田の趣味ではないが、こうなってしまうと川田には足音の主が殺し合いに乗っていない事を祈る他なかった。 女がドアノブに手をかけたのだろう、裏口のドアがカチャリと音を立てた。 「おーい、紀梨乃ちゃん」 その瞬間、川田とは反対側、診療所の出入り口付近から男の声がした。 「ん? はーい、なんですか~」 開きかけた裏口のドアが戻され、パタパタと足音が遠ざかっていく。 そして、バタンと出入り口のドアが閉まる音がしたのを最後に診療所内から人の気配が消えた。 (……行ったか) 川田は大きくため息をついた。 ■ ■ ■ 「なんすか~?」 「なーキリノちゃん。あれ、使えそうじゃねーか?」 紀梨乃が診療所から出てくると、春道がやや興奮気味に診療所の向かいにある民家を指していたが、しかし紀梨乃にはそれが普通の民家にしか見えなかった。 「ん~?」 「向こうから来た時は気がつかなかったぜ」 どう反応していいか分からない様子の紀梨乃をだったが、春道はそんな事を言って民家へ駆けて行った。 「ちょっ…………ああ」 春道はその民家の前へ駆け寄ると、家の前に停まっていた原付スクーターをいじり始めた。 どうやら、春道が指差していたのはこちらだったようだ。 (そっか、乗り物があれば……でも、やっぱりカギが無いと動かないよねぇ。 あ、春道くんが家のドアの方に……そっか、家の中ならバイクのカギあるかな? でもドアの鍵が閉まってるみたいだねぇ。って、ドアを蹴破った!?) 春道のそんな行動を見た紀梨乃が唖然としていると、春道はすぐに民家の中から出てきた。 どうやら原付のキーは、玄関を入ってすぐの所にあったようだ。 そして春道が原付に差し込んだキーを捻ると、ブロロロと原付のエンジンが回り始めた 「おし! キリノちゃん、これに乗っていこーぜ!」 「え~、でも……」 原付に跨り、紀梨乃にも後ろに乗るように勧める春道だったが、紀梨乃は躊躇していた。 人の原付、ノーヘル、二人乗りなどに関しては、灯台で色々と物色した物を持ってきている時点で今更だが……。 「荷物も多いし、二人乗りは危なくないですか?」 もう少し荷物が少なければ問題ないだろうが、紀梨乃の言う通り、今は荷物が多く二人乗りは危険そうだ。 「ムムッ、そーか」 紀梨乃との二人乗りを断られた春道は少し残念そうだったが、 すぐに顔を上げてキョロキョロと辺りを見渡すと、エンジンのかかった原付をそのままに、 他の家の方へ走り出した。 「あ、また……ん~、まさか」 その家の横にも原付が止まっているのが見えた時点で、春道が何を考えているのか察しのついた紀梨乃はその場で待つ事にした。 案の定、しばらく待っていると春道が原付をもう一台調達して紀梨乃の所へ戻って来た。 「紀梨乃ちゃんの分、持って来たぜ」 「は、はぁ」 意気揚々と戻って来た春道の気持ちはありがたい紀梨乃だったが、一つ問題がある。 「でも、あたしスクーターとか乗ったことないですよ~」 無免許などはこの際置いておくとして、紀梨乃は今まで原付を運転したことが無かった。 「大丈夫だって、チャリと全然変わらねーからよ。チャリには乗れるだろ?」 「まあ、いつも通学で乗ってますけど」 「ならへーきだって。ちょっと乗ってみよーぜ」 「ん~分かりました、乗ってみるっす!」 軽いノリで勧めて来る春道に、紀梨乃の方が折れた。 それに、紀梨乃の方もまんざら興味が無いわけではない。 「ブレーキはチャリと同じな。で、右のグリップが……」 簡単に原付の乗り方を春道から教えてもらい、いよいよ紀梨乃は原付に跨った。 「それじゃ、行きますよ~……っとと、お、おおぉぉぉ」 紀梨乃が原付のスロットルを捻るとエンジン音が高まり、紀梨乃を乗せた原付が走りだした。 走り出すときだけ少しふらついた紀梨乃だったが、スピードが上がってくるとバランスを取り戻し、そのまま50メートルほど走った後Uターンして春道の所へ戻って来た。 「ウマイウマイ。な、簡単だろー」 「あはは、これなら何とか乗れそうですね」 少し走っただけだが、紀梨乃は春道に笑顔でそう答えた。 「それじゃ、紀梨乃ちゃんの友達探しに行こーか。まずは村ん中探してみるんだろ?」 「そうですね~。あ、でも南側はもうすぐ禁止エリアになるんで、探すなら北側ですね」 「よし」 そうして、二人は原付に乗って村の中を探索するのだった。 (二人乗りは駄目だったが、女の子とツーリングってのも悪くねーな。ムフフ) などと春道が考えていたかどうかは、神のみぞ知る。 十数分後。 「結局、誰も見つかりませんでしたねぇ」 村の北側を一通り回った紀梨乃と春道だったが、収穫はゼロ。 紀梨乃の室江高メンバーはもちろん、春道の鈴蘭高校の生徒も、他の学校の参加者とも、 誰とも出会わなかった。 「この村には誰もいねーのかもな」 「むぅ、仕方ないですね。それじゃあ、次の村に行ってみましょうか」 そう言って紀梨乃が地図を広げ、春道もその地図を覗き込んだ。 「次っつーと、この平瀬村か」 「はい。あ、でもここ、H-3が禁止エリアになるんですね。時間はまだありますけど」 今、紀梨乃達がいる氷川村と平瀬村とを最短距離でつなぐ道は、これから約二時間後に禁止エリアになる。 時間的には余裕があるが、もしもその場で何かあって動けなくなったらと考えると、その道を通るのは危険かもしれない。 「……ちょっと怖いし、まずこっちの鷹野神社に行って、それから回り込みませんか?」 「フム、紀梨乃ちゃんがそう言うなら、オレは構わねーぞ」 こうして二人は、鷹野神社を目指して原付を走らせるのだった。 【I-5 道/1日目 午後】 【千葉紀梨乃 @BAMBOO BLADE】 [状態]: 健康 [装備]: 短刀 、原付スクーター [道具]:デイバッグ、支給品一式、チャッカマンなどの雑貨数点、常備薬 [思考] 基本:殺し合いはしない。 1:室江高校のみんなを探す 2:そのために島を一周する。次は鷹野神社経由で平瀬村へ 3:春道は、信用できそうだと思っている [備考] ※春道から、加東秀吉以外の鈴蘭高校出身者の特徴を聞きました。 【坊屋春道@クローズ】 [状態]:健康 [装備]: ワルサーPPK、改造ライター(燃料:90%)、原付スクーター [道具]:デイバッグ、支給品一式、救急箱、缶詰、私物のタバコ、ワルサーPPKのマガジン [思考] 基本:キリノと仲を深める 1:キリノを守る 2:電話番号をもらう 3:できれば、その先も…… [備考] ※紀梨乃から、室江高校出身者の特徴を聞きました。 ■ ■ ■ 原付に乗って走り去る二人を、物陰から見ている男がいた。 彼の名は花澤三郎。 鈴蘭高校一年生で、春道の後輩だ。 「坊屋さん……」 花澤は春道が他の学校の生徒と行動を共にしているのを見て、やっぱりなと思った。 そんな気はしていた。 春道の性格なら、こんな殺し合いに乗ったりはしないだろうと、分かっていた。 だから、出来れば殺し合いに乗っている自分を見られたくなかった。 そして花澤は、春道に話しかける事も出来ず物陰に隠れてしまったのだ。 (また、殺せなかった……) せっかく伊藤真司を禁止エリアに置き去りにして覚悟を決めた花澤だったが、 あこがれの先輩である春道の連れを殺すことは出来なかった。 (……坊屋さん、オレはあなたとは別の道を行きます) 春道達が見えなくなると、花澤は春道が走り去った道をあえて反対側へ歩き出した。 (次こそは、次こそは殺す!) 心の中で自らを叱咤し、花澤は歩き続けた。 【H-7 焼場付近/1日目 午後】 【花澤三郎@クローズ】 [状態]:喧嘩のダメージ(中度) 疲労 [装備]:ショットガン(SPAS12) アーミーナイフ [道具]: デイパック・支給品一式、単車のキー、ランダムアイテム1(武器ではない) 結束バンドの束 [思考] 基本:仲間を生かして帰す 1:次こそは殺す、殺せる、ころせる……! 2:最低の男になってでも、仲間と生き残る 3:坊屋さん…… ■ ■ ■ 「くぅ、取れない!」 氷川村、J-6エリア。 木の根元で、周防美琴は伊藤真司の指に巻き付いた拘束を何とか解こうと悪戦苦闘していた。 この場所が禁止エリアになるまで残り数分。 しかし、伊藤をこの場に拘束している結束バンドは一向に外れない。 焦りばかりが募っていく、そんな時だった。 「なあ周防、何か聞こえないか?」 「何かって?……あ!」 バイクのエンジン音のような音が聞こえた気がして、伊藤が発した言葉に美琴が顔を上げ、そして気がついた。 確かにエンジン音は美琴も聞こえたが、今はそれどころではない。 美琴が気付いたのは、すぐ近くに民家が一軒建っているということだった。 「ちょっと待ってろ!すぐ戻る!!」 「あ、ああ」 そう言い残し、その民家へダッシュする美琴。 そして民家にたどり着くと、すぐさま中を物色した。 「何か、何か無いか!?……あった!」 そして美琴はごく普通のハサミを見つけると、すぐにそれを持って伊藤のもとに戻った。 ハサミを入れると、素手ではあれだけ苦労しても外れなかった悪魔の拘束がパチンと音を立ててあっけなく外れた。 「よし、伊藤、走れ!」 「え?」 伊藤の拘束を解いた美琴は、伊藤に肩を貸して立ち上がらせると、 戸惑う伊藤に、今まであえて言わずにいた事実を告げた。 「いいから走れ!ここはもうすぐ禁止エリアになるんだよ!」 「なに!?」 そうして二人は全力で走った。 「はぁ、はぁ、はぁ……」 「ハァ、ハァ、ハァ……」 花澤三郎と殴り合った伊藤はもちろん、美琴も水を持って走ったりして疲れていたが、 二人とも、悲鳴を上げる体に鞭打って走った。 途中、美琴が一度見た口の開いたデイバッグが落ちていたが、 その場所がJ-6の外である保証は無かったため、それには構わず走った。 やがて、氷川村のもっとも南側にある道にたどり着くと、二人はそこに倒れ込んだ。 「はぁ、はぁ……、よし……ここまで来れば、大丈夫だ」 地図にあるエリアの境界には、実際に線が引いてあるわけではないので、 どこからが禁止エリアになるのか参加者には分からない。 しかし、美琴の記憶では道路にさえ出れば、そこはJ-6エリアではなかったはずだ。 「ハァ、ハァ、周防……俺を助けるために、危険を……」 禁止エリアの中に拘束されていた自分を、周防は命がけで助けてくれた。 伊藤はその事に感動し、尊敬の念を込めた視線を美琴に送っていた。 「そ、そんな、改まって言われると……照れるじゃねーか! ま、まあ気にすんな!!」 美琴は、照れ隠しに伊藤の背中をバンバンと叩いた。 「イテテテ」 それが花澤にやられた傷に触り、顔をしかめた伊藤を見て美琴は診療所へ伊藤を連れていくことにした。 残してきた川田の事も気がかりだ。 「悪い、大丈夫か?この先に診療所があるから、とにかくそこへ」 「ああ、分かった」 美琴は立ちあがると、再び伊藤に肩を貸して診療所へ向け歩き出した。 あのエンジン音はもう聞こえなくなっていた。 「ところで、さ。一体、誰にやられたんだ?」 少し歩いたところで、美琴がそれまで聞き辛かった話を切り出した。 美琴も遠目には犯人を見ている。伊藤を引きずっていたあの男。 伊藤とあの男は戦い、そして伊藤が敗れたのであろう事は、美琴にも想像がつく。 そのことで、伊藤のプライドは少なからず傷ついたはず。 しかし、今後の事も考えると聞かないわけにはいかない。 そして、聞くなら早い方がいい。 「……花澤とか言ったな」 「…そいつ、殺し合いに乗ってるんだよな」 「……だろうな。やり合ってた時には、そんな風に思えなかったんだが」 負けた喧嘩の事を女に話すのは気が引けた伊藤だが、美琴は命の恩人だし、 相手が殺し合いに乗っているとなれば、知っている情報は話しておくべきだろう。 そう考えた伊藤は、自分が分かる限りの事を美琴に話した。 「でも、なんで禁止エリアに置いて行くなんで方法を……」 「分からねーけど、大方、直接手を汚すのを嫌ったんじゃねーか?」 「くっそ……と、あそこだ、診療所」 花澤についての話が一通り終わったところで、二人は診療所にたどり着いた。 「あれ?川田?」 中に入ると、川田章吾の寝ていたはずのベッドが空だった。 「川田って?」 「ああ、話してなかったな。川田ってヤツをここに寝かせておいたんだ。 そいつ、怪我しててさ。動ける状態じゃなかったはずなんだけど……」 そう言って、美琴達が診療所の中を見渡していると、裏手の方から声がした。 「こ、こっちだ……」 「……川田?」 美琴が診療所の裏口を開けると、外に川田がデイバッグを抱えて座り込んでいた 「川田、どうして?」 「……他の、誰かが、来て……隠れた」 「そうか、分かった。とにかくベッドへ行こうな。これからはアタシが見張ってるから」 「ぐっ」 美琴は川田に肩を貸して元のベッドへ連れて行くと、まだ調子の悪そうな川田を寝かせた。 ベッドに横になると川田は目を閉じ、間もなく寝息をたて始めた。 やはり、まだ起きていられる状態ではなかったようだ。 「そいつが川田か」 「ああ、頭を強く打ってるみたいなんだ」 「そうか、可哀相に」 まさか、自分の投げたバットが命中したとは露ほどにも思わない伊藤がそんな事を言う。 「さてと、伊藤の方も手当てしないとな。ここなら包帯とかもあるし」 そんな伊藤に対し、診療所内にある薬などを確かめながら美琴が言った。 「それじゃあ伊藤、服脱いでくれ」 「え?」 【I-7 診療所/1日目 午後】 【川田章吾@バトル・ロワイアル】 【状態】後頭部に強い打撲 発熱 眠っている 【装備】金属バット 【道具】デイパック、支給品一式 タバコ コンドーム一箱 鍋のふた 【思考】 基本:自分の記憶の破綻に気づき、混乱している 1:頭が痛い痛い痛い 2:おれはだれなんだ 3:けいこ 補足: 川田は放送のため、自分の記憶の破綻に気づきました。そのため、自分が何者なのか、 ここがどこなのか、わからなくなっていますが、少なくともプログラムに参加している事は理解しています。 今は若干落ち着いて眠っていますが、次に目覚めたときに元の川田に戻れるかどうかは わかりません。 【周防美琴@スクールランブル】 【装備】: 【所持品】 支給品一式、ロープ 【状態】:拳に軽症、疲労 【思考・行動】 基本:仲間を探す。襲ってくるものに容赦はしないが殺しはしない 1:伊藤の手当てをする 2:川田の様子が気になる 3:同じ学校の仲間を全員探したい 【伊藤真司@今日から俺は!】 【装備】: 【所持品】 【状態】:全身打撲(右腕の打撲は特に重傷)、拳に軽傷 【思考・行動】 基本:全員助ける。手段等は人を探しつつ考える。 1:脱ぐの……? 2:人は絶対に殺さない 3:マーダーに会っても根性で説得 56:深く静かに 投下順で読む 58:盗聴!発射!回復! 54:それぞれの事情とそれぞれの結末 後編 時系列順で読む 58:盗聴!発射!回復! ▲
https://w.atwiki.jp/johnny361/pages/26.html
ドラクエモンスターズ テリー3Dすれ違い告知 小田原近郊で小生とすれ違いしたい方は足跡に書込み願います。 ↓の告知すれ違いは終了しました。お越し頂いた皆様ありがとうございました! 配布日:2012年07月22日(日)13 00~13 30目途 場所 :小田原駅中央通路 アークロード市民窓口横 出し物:1)エグチキ エリスSP配信データの再配信(前半20分位) 1stロムよりエッグラチキーラSP配信データを添付します。 2ndロムよりエリスグールSP配信データを添付します。 2)ローカル配信(予告より追加しました!!後半10分位) 配布モンス…配布可能数 わたぼう…3 ワルぼう…3 じげんりゅう…1 欲しい方は声かけ願います。こちらは特に欲しいモンスありませんので気軽に声かけ下さい。 ↓の告知すれ違いは終了しました。お越し頂いた皆様ありがとうございました! 配布日:2012年07月15日(日)13 00~13 30目途 場所 :小田原駅中央通路 アークロード市民窓口横 1)ローカル通信配布(先着です!!前半15分位を予定) 配布モンス…配布可能数 わたぼう…5 ワルぼう…5 スペクテット…2 キラースコップ…2 ヘルビースト…1 ルール ・基本は声かけでお願い致します(こちらは何が欲しいか分からない為)。先着で声かけ優先致します。 ・声をかける方がいらっしゃらなければ、こちらからローカル募集をします。 その際はわたぼう・ワルぼう(配布可能数が越えていれば片側だけ)を送ります。 2)すれ違い通信(後半15分位を予定) 1ロム目…エビルチャリオット・スペクテット・キラースコップ・ヘルビーストですれ違います。 2ロム目…スラ忍4色ですれ違います。 ↓の告知すれ違いは終了しました。お越し頂いた皆様ありがとうございました! 配布日:2012年06月11日(月)19 00~19 30 場所 :小田原駅中央通路 アークロード市民窓口横 すれ違いモンスター:地方配信スラ忍各種・Akiヨドマジンガー ・小生1ロムの為、下記の通りスラ忍をすれ違い致します。 1)06月09日秋葉原配信の他人様のすれ違いデータにて忍者 橙・緑・黒・桃を添付します。 2)その他の色(黄・赤・茶・青)は小生のデータより配布いたします。 ・上記1)・2)を15分位流した後、Akiヨドマジンガーに切り替えます。 なお基本はすれ違いの為、開始・終了告知は致しません。
https://w.atwiki.jp/fcubattle/pages/50.html
結果から言おう。 姉上は強い。 だがこのゲーム上で動く参加者達はその大半が力を制限されている。 その一例が武器と能力の没収だ。 没収されたそれらはランダムに支給されて、後は持ち前の知恵や腕っ節で何とかしていくしかない。 しかし姉上は――――蒼龍一号機エヴァは自分の武器を自分で引き当てた。 それは詰まり、このゲームにおける最大のハンデを完全に無視できる事に繋がる。 「あ……ぐっ」 自分が床に叩きつけられ、剣の切っ先を突きつけられている理由はまだある。 自分の知っている『彼女』はのらりくらりとしていて、その場をノリだけで生きているかのような適当な人だった。 少なくとも当時はそういう立場じゃなかった筈なのに何時の間にかツッコミ担当になっていたのだからきっとそうなのだろう。 しかし目の前にいるこの人は、 (強いし、冷たい……!) 鍛錬を怠ったつもりは無い。 騎士として守る物を見失わない為に。 そして暴走しがちな自分を押さえ込むという意味でも鍛錬には取り組んできた。 心も、身体も鍛え上げてきたつもりだった。 しかしそれでも覆らないのは、 (圧倒的な、力の差……!) その事実を確認したと同時、レイチェルは歯を噛み締めた。 死への恐怖から逃げるためじゃない。 何も出来ずに負ける自分への腹立たしさと、姉の『暴』に呆気なく屈してしまう事への怒り。 それを向けただけだ。 ○ 「レイチェル」 妹に呼びかける。 しかし当の本人はボロボロで、まともに立ち上がれそうにはなかった。 だが死んではいない。 「そのままでいいから聞きなさい。――――何故武器を使わないのです?」 「!!!!!!!!!!!!」 その言葉を聞いたその瞬間。 レイチェルの身体がびくり、と震えた。 まるで何かに怯えるようにして顔色が青くなる。 「そ、それは……まともな武器を引き当てれなかったからで――――」 「嘘ですね。それでも何かしらの抵抗をする事は出来るはずです」 センライによる説明は当然エヴァとレイチェルの姉妹も聞いていた。 各個人が持っている能力は何かしらの道具に付加される。 故に武器を引き当てることが出来なくても『使える』能力を手に入れることが出来るのを知っている。 「ですが、何故素手で立ち向かったのです?」 「それは……使い方を知らないからで」 それも嘘。 本当は『触れた』瞬間に使い方には気付いている。 だけどもしソレを使ってしまったら。 (それだけは、絶対に駄目だ!) 心の中で首をぶんぶんと横に振る。 しかも今の姉上に『アレ』の存在を知られたら、 (きっともっと酷いことになる! それだけは――――!) 騎士として最も許されるべきではない行為。 それは『やっちゃいけない事をやること』なのだと思う。 暴走する自分が言えたことではないが、姉上は明らかにそれを無視しようとしていた。 もしそんな奴が『アレ』を使ってしまえば、 (皆、死んじゃうよ……) 参加名簿に目を通す余裕は無かった。 しかしエヴァがこの場にいると言う事はエリシャ達他の姉妹や、アステリアのような知人も巻き込まれている可能性は十分に考えられた。 例えエヴァがどう扱うつもりでも、それをコントロールするのは自分だ。 少しでも『中てられたら』直ぐに暴走してしまう自分が、よりにもよって『アレ』を引き当ててしまった。 見境の無い殺戮が始まろうとしている。 それ故に、判断は迫られる。 その殺戮を本能の赴くままに行うか。 この場で姉上を倒すか。 (もし、私がここで負けたら……!) その場合の事は安易に想像できる。 否、既にその想像は現実の一歩手前にまで迫ってきている。 何故ならエヴァがこちらに装備を聞いてきているから。 支給品は必ず参加者に一つは渡される。 それ故に誤魔化すことはできない。 「何を黙ってるんですか、レイチェル?」 だが其処まで考えた直後。 自分の足に強烈な熱と痛みが走った。 「あ、――――?」 「まだ私のお仕置きは終わってないんですよ?」 痛みの発生源は見たら直ぐに判る。 エヴァが剣を振るい、自分の足を刻んだから。 リメイカーを殺した時のように深く切り裂かれた訳ではないが、それでも血が出るのは剣を突き刺された以上は必然な訳で。 自分の血は流れ出てくるって事はつまり、今まで以上に『衝撃』が襲い掛かってくる訳で。 「い、嫌だ……止めろよ姉上! 止めろよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 「どうしてです?」 平然とした顔で問われる。 本当にわからない、と言った顔で、だ。 「私のお仕置きはまだ終わってないと言った筈ですよ? 聞き分けの無い悪い妹はちゃんと教育しないと」 良くも悪くもエヴァは純粋に『姉』だった。 だからこそこの状況でレイチェルをどうすれば追い詰めることが出来るのかを熟知している。 肉体的にではなく、精神的にだが。 (駄目だ! 駄目だよ姉上! それ以上やられたら、やられちゃったら本当に中てられる!) 姉上を、コロシチャウヨ―――― その瞬間。 レイチェルの中で何かが弾けた。 「……い」 「?」 俯いた状態のまま、レイチェルが呟く。 だが上手く聞き取れない。 しかしエヴァのそんな疑問視に無理矢理答えるかのようにして、レイチェルは吼えた。 「こおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい! たいてえええええええええええええええええええええええい!!」 「なっ――――!?」 咆哮が轟いた後に聞こえてきたのは信じられない単語だった。 大帝。 参加者に支給されるにしては余りにも大きすぎる『巨大ロボ』の名前を、天に向かって呼んだのである。 「は、ははははははは!!」 自分の血に中てられたレイチェルが狂ったように笑い出す。 そしてその笑い声に受け答えするかのようにして、『ソイツ』は何も無かった筈の外に突然現れた。 ○ 「たい、てい――――!」 最初の脱落者、リレッドがゲームを無茶苦茶にしようとして呼び出そうとした巨大兵器。 彼女は頭が良い事はエヴァも知っている。 それ故に、彼女が呼び出そうとしたこのロボも(直接戦ったことが無いが)相当な破壊力を持っているであろうことは簡単に予想できた。 「潰れちまえよ、姉上」 「!」 その対処法を考えるよりも前に、目の前に倒れている妹が冷徹な言葉を投げかけてきた。 普段の彼女の暴走状態を一言で例えると『熱(ヒート)』。 しかし自分の血に中てられ、既に心身ともに満身創痍状態の彼女はとてもクールだった。 「レイチェル……自分の血に中てられ、おかしくなりましたか?」 大帝の拳がエヴァ目掛けて振り下ろされる。 展望台と言う場所に居る以上、この足場を破壊されたらその場でゲーム終了になるであろう事くらい目に見えている。 それならあの拳を受け止めるしかない。 そう判断すると彼女は剣を十字に構え、ガードの姿勢を取る。 その直後、 「――――っぐ!」 全身に未だ嘗て感じたことの無い凄まじい圧力が圧し掛かってきた。 その一撃を受けた瞬間、龍輝と龍詩の刃に亀裂が走る。 剣を持っていた腕から身体に目掛けて、何者も逆らうことの出来ない『力』が襲い掛かってくる。 「レイチェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエル!!」 この先、自分が『どうなるか』はエヴァには直ぐに理解できた。 だからその場に居る妹に伝えておく。 今更考え方や主張を変えるつもりは無い。 恐らく、今のレイチェルに自分の考えを理解しろといったら直ぐには無理だろう。 それが出来るくらいならこんな事にはなってない。 お仕置きなんてする必要も無かった。 それならせめて、蒼龍騎士団としての最大の役目を彼女には担って貰おう。 きっと自分とレイチェルがすれ違いつつも、『コレ』だけは同じ願いだと思うから。 ――――何時までもダダを捏ねないで、ちゃんと主の下に帰るんですよ? ○ 「う……ん?」 朝日が顔を覗かせつつある時刻。 夜風の肌寒さを感じたレイチェルは目を覚ました。 どうやら自分は気絶していたらしい。 (え? 何で寝てたんだ……?) それに、周囲を軽く見回してみるとあるのは瓦礫の山ばかり。 際ほどまで展望台に居たはずなのに、なんでこんなコンクリートの上で寝てるのだろう? (……いたっ!?) 取りあえず起き上がろうとしたら、背中にずきり、と痛みが走った。 どうやら思いっきり地面に叩きつけられたらしく、暫くマトモに走れそうにも無い。 それに足も何か刃物で刻まれたような痕が残っている。 其処から流れ出る血に『中てられそう』になりながらも、レイチェルは状況把握に努めていた。 「…………あ」 そこで思い出す。 ついさっきまでこの瓦礫の山となる前の展望台の上で何があったのかを。 自分が『姉上』に何をしたのかを。 「あね、うえ――――?」 しかしその後の事は覚えていない。 大帝の拳が展望台を砕いて、足場を無くした自分がそのまま大地に叩きつけられたのまでは理解できた。 でも姉上は? 大帝の拳を真正面から受け止めようとした姉上はどうなった? 「あ――――」 だが見た。 見つけてしまった。 「あ、ああああああああああああ……」 瀧上の双龍。 エヴァの引き当てた、彼女自身の武器。 しかし自分の真正面に転がっているソレには柄しかなくて、 「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 その柄には手首とその先しかついていなかった。 他の肉体は何処にもない。 エヴァの形成するべき他の部分は、何処にもなかった。 全部、押し潰されてしまった。 「あ、ああ……あああああああああ」 レイチェルの頭の中が沸騰する。 目の前に転がる姉の『成れの果て』の姿を見て中てられつつありながらも、胸の奥からこみ上げて来るどうしようもない何かは留まることを知らずに流れ出てくる。 「あねうええええええええええええええええええええええ!!」 それ以上は言葉に出来なかった。 どうしてあんなことしたんだよ、と恨み言を叫ぶことは出来ない。 ごめんなさい、と謝ることもできない。 言うべき対象はもう何処にも居ない。 何を言おうにも、届かない。 ただ、虚無の中に取り残されてしまうだけ。 【エヴァ@T.C UnionRiver 死亡】 【展望台跡 レイチェル@T.C UnionRiver】 [状態]:全身打撲、足に切り傷、精神的に錯乱状態(大) [装備]:大帝@リレッド(だれかや!) [道具]:展望台が破壊された際失う(自分の道具を使って名簿等を確認するのは不可能) [思考・状況] 基本:本能を抑えつつ、ゲームには乗りたくない 1、半ば不可抗力でエヴァを失い、混乱 2、身体のダメージは深く、激しい運動は制限される 3、他の姉妹と合流したいが、合わせる顔が無い 4、殺戮衝動を抑えきる自信を失う (備考) 大帝は普段は消えていて、レイチェルが呼び出すと何処からとも無く出現する。 レイチェルの意識がなくなると大帝は消えるので、ずっとその場で出続けているわけではない。 殺戮衝動が起きていると彼女の本能と比例するようにして暴れまわるが、コントロールしている張本人であるレイチェルに危害が加えられることはほぼ無い。 Back 情報収集、そして合流へ Next 哀しみの向こうへと辿り着けるのなら
https://w.atwiki.jp/toho_yandere/pages/1670.html
すれ違い タグ一覧 ほのぼのヤンデレ ハッピーエンド 結婚 霊夢 結婚は人生の墓場……などとはよく言ったもので。 一度結婚してしまえば、金も時間も家族のために使わなくてはいけなくなる。また貧乏な家では女房も子も苦労する。 一方独り身は独り身でまた大変なもので、とかく世間体が悪くなる。閉じた社会では世間からの評判というのは大変貴重なものであって、このためにとりあえず結婚するという手合いもそうそう少なくない。 さてこの男、〇〇というが、この男は未婚であった。 妻と子供とに囲まれて、穏やかな余生を過ごす……というのは彼の頭にちらつく理想の一つではあったが、いかんせん金が足りなかった。貧乏で後ろ盾も、これといった長所もない男と積極的に関係を結びたがるものもおらず、こうして彼は今日も独身を託っていた。 「で、まだ結婚相手は見つからないの?」 酒を注ぎながら霊夢が言う。 「ああ。今年も結局、ここで年を越しそうだ」 「そう。ならお蕎麦の準備をしなくちゃね。あーあ、出費が痛いわ」 ため息が徳利の中の水面を揺らす。その波が静まらないうちに、彼女は酒を呷ってしまった。 「おいおい、まだまだ潰れてもらっちゃ困る」 「ぷはっ…………あら、どうして?」 空になった徳利を畳の上に投げ捨てて、霊夢は男に倒れ込んできた。 いつものことだ。 男は身じろぎもせずに彼女を受け止める。 「一人が淋しいからここに来てんだぜ。お前がすぐに黙っちまったら、俺は虚しいだけだろう」 「いいじゃない。別に言葉なんていらないわよ……ほら、なんて言ったかしら。何とかっていう哲学者が、『本当の友人とは、気兼ねなく沈黙できる友人のことを指す』……だとか、こんなことを言ってたじゃない。そういうことよ、きっと」 そういうなり、霊夢は男の体に顔を埋めた。 そうして母に甘える赤子のようにもぞもぞとして抱きついていた。 「はぁ。まあ、一理あるがね」 男は霊夢の頭を撫でてやった。前に酔った勢いでついやってしまったのが始まりだったが、霊夢の反応がまんざらでもなかったため、こうしてたまに撫でてやるのだ。 ただ奇妙なことに、二人にそれ以上の関係はなかった。 ここまで来ればあとは本番をやるだけというのが、ほかに娯楽もないような辺鄙な土地の常道なのだが、一体全体どうしたことか、二人はここで足踏みしていた。 すぅ……すぅ……。 今にも消え入ってしまいそうなか細いが寝息が、まさに目と鼻の先と言う他のない懐から聴こえた。 「なんだ霊夢、寝ちまったのか」 声で呼びかける。無理して揺さぶろうとはしない。 「寝ちまったか…………」 しんとした冷たい夜の空気が、部屋の外から流れ込んでくる。扉は閉めているはずなのに、囲炉裏の炎は燃えているのに、寒くて凍えそうで仕方なかった。 男は霊夢の顔を見ようとした。 しかし男に顔を埋めて眠っていた霊夢は、その表情を男に見せてはくれなかった。 「はあ…………やっぱり、淋しいや」 ふわふわと浮ついた馴れ合いの関係。 楽園の巫女にふさわしい、一時の退屈しのぎ。 「違うんだねえ、やっぱり……俺たちは…………」 男と女との恋愛観が違うというのはよくあること。ただ力も地位も何もかもが一方的な関係では、愛情の天秤が傾いてしまう。人が獣を愛でる如きの愛情となる。 そこには確かに愛情はある。ある筈だ。しかし理解と共感はない。端から見れば実に収まりのいい二人に見えれど、当の片割れはけして満足を得られない。 霊夢をそっと身体から離して座布団の上に寝かせると、男は筆を手に取った。 翌朝霊夢が目を覚ますと、そこに男の姿はなかった。 代わりに一通の手紙が卓袱台の上に置かれていた。 『そろそろ身持ちを固めようと思う。これ以上霊夢にも迷惑をかけていられない。これまで世話になった』 とても短い書き置きだった。 しかし霊夢が事情を察するには充分過ぎる言葉だった。 力のなくなった手から手紙がはらりとこぼれ落ち、足は身体を支えきれずに崩れ落ちた。 倒れ込んだ拍子に、昨晩使った徳利を割ってしまった。破片が白い柔肌に食い込んで、赤く鮮やかな血が走ったが、それは彼女の関心を惹かなかった。 最後にあてどない視線が虚空に漂い、色を失った目が一筋の涙をつうと流した。 「ねえ……あたしの何が、いけなかったの…………?もっと綺麗な女がよかった?もっと優しい女がよかった?」 こんなあばら屋が気に食わなかった?美味しいご飯が食べたかった?ごめんね、贅沢させたげられなくて。 「もしあたしの手の届くことなら。……言ってくれれば、あなたの好みに合わせたのになあ…………」 もっとお洒落をすれば好かったのかしら。それとも、気軽な女の方が好かったのかしら。真面目に働く女の方が、好かったのかしら。 「ごめんね、〇〇」 巡らせど巡らせど、答えは一向に見つからず。 流した血と涙が乾くまで、霊夢はずっと、虚空に向かって許しを請うた。 神社を後にした男は、しばらく浮ついたような生活をしていた。 霊夢の元では寂しさを埋めることはできない。かといって、平凡な男をそう都合良く好いてくれる女がいる訳でもない。ましてや都合の良い縁談話が転がっている訳でもない。 思い切って飛び出してきたものの、結局孤独のままだった。 「はあ。……別に寂しさが紛れた訳でもねえなあ」 男は長屋の自室でごろりと寝っ転がった。 何も聞こえない部屋の中で、ふとこれまでのことを思い返す。 異性としての好意を自覚したのは、もうだいぶ前になる。 先の見えない恋だった。 いつ自分の中の強がりが崩れて、ただの何もできない自分を彼女の前に晒してしまうのか。そればかりが怖かった。 「…………そういえば、霊夢のやつは、どうしてこんな男と一緒にいてくれたんだろうなあ」 無条件の無償の愛、そんなものはあり得ないのだ。 愛には理由がある。 「そもそも、いつから……あいつと逢うようになったんだっけか」 どうにも思い出せない。平凡な過去があったと漫然と覚えているばかり。 これが戯曲なら壮絶な過去の一つ二つあって、とある事件で記憶をなくしていた……という展開にでもなるのだろうが。そんな都合の良い話はない。替えの利くような人生しか送ってこなかったはずだ。 特別なことなどなく、偶然の積み重ねが怠惰に続いてここまできただけ。そもそもああいう立場の人と親しくなれただけでも奇跡だ。 だからどうにもならない。せめて今なお好意を抱いてる女の幸福を祈り続けるばかり。 「幸せになれよ、霊夢。俺には……無理だ。お前といるたびに、勝手に思い詰めてふさぎ込んぢまうんだからよ」 ーーお前は俺を、同じ土俵に立って、同じものを見ている存在だと勘違いしていたんだろう。だけど本当の俺は、そういう風を装って、これまでやせ我慢を続けていただけ。 「これまで勘違いさせて、悪かったなあ」 陰気な天井を見つめる男の目は虚ろで、やがて怠状な疲れとともに閉じられていった。 「おーい、〇〇さん」 往来を歩いていた〇〇は、酒屋の店主に呼び止められた。 「どうも、ご無沙汰しとります」 「急な用事で悪いんだがよ、博麗神社に酒を届けてくれねえか」 博麗神社。 今更掘り返したくもないものであった。しかし、こんな簡単に噂の出回る閉じた世界で、下手な発言は出来やしない。 「ほら、お前さんは仲良いからよ。あの偏屈巫女様と」 「分かりました。ただ届けるだけで構わないんで?」 「ああ。頼むよ」 「焼酎の一本でも取っといて下さいよ」 そう捨て台詞を残し、男は仕事を引き受けた。一度引き受けてしまったからには、最後までやり遂げなければどうしようもない。ここでぶん投げるくらいなら、勘ぐられるのを覚悟で断った方がまだましだ。 「ああ……嫌だねえ」 道すがら、誰に言う訳でもなく呟いた。呟かざるを得なかった。何か気を紛らわしながらでないと、とても足は進まなかった。 ーー霊夢と俺とじゃ、俺が全面的に悪いんだ。どうしてひどい目に遭わせた奴の前に、のこのこと姿を見せにいけるんだか……。 それに。 一度捨てた未練を思い返してしまうかもしれない。 真綿で首を締め付けられるような寂しさを。あの愛しくも辛い感覚を。もう一度思い出してしまうかもしれない。 男は博麗神社に到着した。 「あれから……だいたい三日か。もう割り切ってくれてるといいが」 酒瓶を担いで鳥居をくぐり、荒れ果てた境内を進んで巫女が起居をする奥の間に向かう。 縁側に臨する襖はぴたりと閉じられている。 隙間がなくては、様子をうかがうこともできない。仕方がないので男は大声で呼ぶことにした。 「こんにちは、酒屋です」 返事がない。 しばらく待ったが、返事がない。 「霊夢さあん。いらっしゃいますかあ」 またしても返事はなかった。 まさか酒瓶を庭に置いて帰るという訳にもいかないだろう。風の一吹きで瓶が倒れて、土の肥やしになるだけだ。いくら霊夢が変わり者でも、そんな注文をする訳ではない。 「仕方ねえな。留守にするお前が悪いんだぜ」 男は襖を開けた。 そして幾日ぶりかに見る部屋の内装を見回していると、 「霊夢!」 仰向けになってぼうっとしている、生気のない霊夢の姿があった。 「どうしたんだ!」 「…………〇〇?」 「ああ、俺だよ。いったい何が……」 「〇〇なの?本当に?…………戻ってきてくれんだあ」 ーーよりを戻しにきた訳ではなく、単に酒の配達にきただけだ。 しかしとてもそんなことを言える訳がなかった。 傷つき今にも息絶えてしまいそうな霊夢を目の前にして、男は否応なしに腹を決めた。 「すっかり痩せこけちまって……食ってねえな。今、何か作ってやる」 男は厨房に立った。戸棚を探ると、そこには蕎麦が二人前あった。他の食材は痛んでいるか調理の難しそうなものばかりだったので、蕎麦を茹でることにした。 「出来たぞ。無理しないで食えよ」 「あ……大晦日のために取っておいた、お蕎麦……」 「また俺が買ってきてやる。食えるか?」 「…………うん」 そう言って、霊夢は上体を起こそうとした。 しかし弱り切った体は支えきれずに崩れ落ちた。 「あっ……ごめんなさい……」 「仕方ねえな」 男は霊夢を後ろから抱きかかえた。それから右手で箸を持って蕎麦を口元まで運んでやった。 「いただきます」 ぎこちない動きで少しずつ、霊夢は蕎麦を啜っていった。 ひびの入った瀬戸物をそっと扱うように、男は丁寧に箸を動かした。それに呼応したように、女も唇を動かす。 やがて二人の営みは終わった。 「ねえ……〇〇……」 「うん?」 「ごめんね……迷惑かけて……」 「まったく。霊夢がこんなに手のかかるやつだとは思わなかったよ」 「ごめんね……ごめんね…………」 霊夢はただただ謝り続ける。口の動く限り、言葉の届く限り。もうすれ違いなど起きて仕舞わぬようにと祈りながら。 力のないその哀願を前に、男のわだかまりはすっかり消えてしまっていた。 「いや、いいんだよ」 「えっ……?」 「俺が面倒を見てやらないといけないみたいだから」 「〇〇…………?」 霊夢はきょとんとして見返してくる。 「ああ、ちくしょう。はっきり言わねえと分からねえかな。お前が独り立ちできるようになるまで、俺はずっとここにいるとも」 「〇〇……嬉しい…………」 そのまま二人はしばらく黙ってじっとしていた。 霊夢は体を包み込まれて支えられているだけで十分だったし、男は霊夢を抱きしめて支えていることが何よりの喜びだった。 「これ、お礼ね。わかってるとは思うけど、他言無用よ」 「それはもう当然のことで。ありがとうごぜえやす」 場所は博麗神社から離れて、人里の酒屋。 その店奥の客間にて、酒屋の主人と八雲紫とが密談をしていた。 「しかし〇〇の奴に配達を任せるだけで、こんなに貰えるなんて……いったいどういう了見で?」 「詮索も不要よ。すべて忘れなさい、美味しい思いをしていたかったら」 「これは失礼いたしました」 それから間も置かずに単簡な挨拶を交わした後、女は闇の中へと消えていった。 闇の中で女が呟く。 「まったく、一時はどうなることかと思ったわ」 「あんまり純情なのも考えものね……まあ、それが長所なのかしら」 行動的でないヤンデレって難しいですね 自分はヤンデレと言えば猟奇性より情の深さが好きなのですが、それだと普通のイチャイチャと区別がつかなくなるかもしれない 感想 すれ違った二人だけど、最後に幸せになって良かった -- 名無しさん (2019-01-27 15 15 56) ヤンデレではないな、うん。 -- 名無しさん (2019-08-21 04 05 30) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/aspurand1106/pages/182.html
21話 生死を分かつすれ違い 窪川尚孝は駐在所に寄っていた。 大昔のヒラの警官だった時代に、ほんの一時期ではあるが尚孝は駐在所勤務だった事がある。 それを思い出し、ほんの少し思い出に浸る。 「……今更思い出も何も無いか」 自嘲気味に呟くと、尚孝はニューナンブM60を右手に、駐在所の奥へと進む。 奥は普通の平屋民家と言った感じで、ついさっきまで人がいたかのように生活感が残っていた。 居間、トイレ、台所、風呂場と一通りの部屋を見て回るが人の姿は無い。 「誰もいないか……?」 念のため押入れの中や、その上部の収納スペースも覗くがやはり何もいない。 「……」 誰もいないならここで休んで行こうかとも思ったが、 地図にも載っているこの駐在所を目指して訪れる者は自分の他にも出てくる可能性は高い。 休むならここより安全な場所があるだろうと、尚孝は駐在所を後にする事にした。 ◆◆◆ 「行った……?」 狐獣人の少年が、押入れ上部収納からゆっくりと出てくる。 畳の上に下り立ち、周囲を確認して訪問者が完全にいなくなった事を確かめ、安堵した。 「ふぅ……見付からなくて良かった」 彼――大嶋敏昌は、駐在所で一息ついていた時に訪問者の存在を察知し、 急いで押入れ上部収納から屋根裏へと隠れた。 訪問者は駐在所内を隅々まで確認し、押入れの上部収納の戸も開けた。 しかし結局、敏昌には気付かず立ち去っていったようだった。 「やっぱ、隠れるのは別の場所にした方が良いかな……」 地図に載っていたこの駐在所を見付けて身を潜めていた敏昌だったが、 やはり地図に載っている施設は訪れる人も多いのだろうか。 とは言ってもまだ一人しか来ていないがこれからも人が来る可能性はある。 それではおちおち休んでもいられない。 「移動しよ……」 敏昌は荷物を持って別の場所に隠れるために移動を始めた。 【黎明/B-6/駐在所】 【大嶋敏昌】 [状態]健康 [装備]??? [持物]基本支給品一式、???(1~2) [思考]1:生き残りたい。 2:別の隠れる場所を捜す。 [備考]※特に無し。 【黎明/B-6/駐在所付近】 【窪川尚孝】 [状態]健康 [装備]ニューナンブM60(2/5) [持物]基本支給品一式、.38スペシャル弾(10)、MkII手榴弾(3)、マッチ [思考]1:優勝し娘の元へ帰る。 [備考]※大嶋敏昌の存在には気付きませんでした。 《参加者紹介》 【名前】大嶋敏昌(おおしま としまさ) 【年齢】11歳 【性別】男 【職業】小学生 【性格】人当たりは良いが、基本的に自分本位 【身体的特徴】狐獣人 【服装】白いTシャツに青い半ズボン 【趣味】ビデオ・DVD鑑賞、ア*ニー 【特技】身軽、機転が利きやすい 【経歴】9歳の頃から*ナニーにハマり出す 【備考】五歳年上の兄からアナ*ーを教えて貰う。 すっかり尻の快感にハマった彼は、最近では兄との*ナル*ックスに耽るようになった。 ハッテン場で有名な近所の公園に通おうかと考えている 前:危険回避面舵一杯 目次順 次:道なき道をゆく月の光だけ… 前:疾走するキョウキ 窪川尚孝 次:闇に根を不規則な明日へと GAME START 大嶋敏昌 次:闇に根を不規則な明日へと
https://w.atwiki.jp/vocaloidchly/pages/5762.html
作詞:オセロP 作曲:オセロP 編曲:オセロP 歌:初音ミクAppend 翻譯:唐傘小僧(如有不正請指教) 所有的一切 若都是正確的 那大家 便會開心吧 擦肩而過的 行人們 都只是 低垂著頭 沒有人看得到 那希望的碎片 我要找到它們收集起來 去改變這個世界 少年 仰頭望向天空 邁出腳步 微笑著 冒險 就此宣告開始 世界因此震動著 路途中 有個倒在那裡的 充滿悲傷的 生命 「命運 是可以做出改變的、 讓我們在這世界中 齊步共進吧」 任何人的地圖上 都未曾記錄過的 目的地 將要抵達的或許是 這個世界的盡頭 少年 舉起右手 爽聲 笑起來 冒險 明天也將繼續 道路 逐漸向前開拓 少年 彈奏起吉他 將這條街道破壞掉 轟響 震撼著街道 他踏步奔跑開來 特立獨行 少年 舉起右手 衝破 層層霧靄 冒險 明天也將繼續 世界綻開了笑容
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/691.html
~キョン視点~ 本日は晴天なり。今は午後の市内探索だ。 俺はハルヒと二人きりで街を練り歩いている。 今日のハルヒはやけにご機嫌のようだ。草むらの中、河原、住宅街辺りをくまなく歩き回り俺の足を棒へと変えようとしている。 だが、俺はこいつといるそんな日常が大好きだ。 「キョン。少し休むわよ、そこに公園あるし!」 やれやれ、やっと休めるぜ……。 「あたしは先に休んでるからあんたは何か飲み物買って来なさいよ!」 ……こんな事を言ってくるが、俺はそんな傍若無人なハルヒが好きだった。 「おっそいわよ!あたしはこっちね!!」 と言って、俺の手にあるウーロン茶を奪った。 「おいおい、そりゃ俺のだ。お前のはこっち……」 言い終わる前に栓を開けて、口を付けていた。 「うんっ!冷たくておいしっ!……なんか言った?」 俺はしょうがなく、手に残ったオレンジジュースの栓を開けて、飲むことにした。 冷たいが、渇いた喉には少ししつこい100%オレンジだ。 「ねぇ、キョン。…少し交換しよっか?」 なんだ?いきなり。……まぁ、俺としてはそっちを飲みたかったわけで助かるのだが。 俺はハルヒからウーロン茶を受け取り、口を付けた。 「あんた……間接キスよ、それ。」 ブフッ!! 「あはははは!動揺して噴いちゃった?あんた気にしすぎよっ!!」 ハルヒはそう言うと、けらけらと笑いながらもオレンジジュースを口に含んだ。 「んっ!おいし!」 まったく……今日のこいつのテンションはやたらと高すぎるぞ。 ハルヒはベンチの上に立ち上がって、遠くを見始めた。 ちなみにこの公園は高台になっていて、上から街を見下ろせる良い風景になっている。 「ん~っ!風が気持ちいいわ!!……ねぇ、キョン。あたしね、こんななんでもないけど楽しい時間が続くことがうれしいかも。」 ハルヒは遠くを眺めながらそんなことを言いだした。いつも不思議な事、怪しい事とか言っているハルヒらしくない物言いだ。 「じゃあ、あれか?もう不思議やら宇宙人やらは用無しか?」 こっちを振り向き、俺に指を差してきた。 「それとこれとは別よっ!…だけどねあんた達とならこんなのも悪くないなって思ったの!」 そう言うとまたハルヒは遠くを見始めた。 その横顔は綺麗で、見ている俺は不思議と目を離せなかった。 「まぁ俺はどんな状態のお前でも好きだけどな。」 小声で呟く。 「え?今……なんてったの?」 ハルヒが顔を無駄に近付けて聞いてきた。こりゃ近すぎるぞ、唾が当たってる。 「な、なんでもねーよ。ほら、時間だ、戻るぞ。」 恥ずかしさに赤らむ顔を背けて、俺はベンチから立ち上がって歩きだした。 「こら、逃げるなっ!待ちなさいよ!!」 後ろから走って追いかけて来るハルヒの足音を聞きながら、俺は『こんな時間を続けれたら幸せだな…』とか思いつつ、喫茶店へと向かった。 次の日、授業中に窓からの素晴らしい陽射しを浴び俺はウトウトと言うより、熟睡に近い状態で3限から4限を消化していた。 「……痛っ!」 反射的に声をだしたが、授業中だったのでそのまま軽く寝たフリ。 しばらく経ったあと、原因の後ろの席を振り向いた。 「まったく…なんなんだよ、今度は。」 ハルヒは悪びれもせずに答えた。 「ちょっと用事があるからさ、昼ご飯食べたら屋上に来てくんない?……てゆーか来なさい、絶対だからね。」 ほんとになんなんだ?こいつが俺を呼び出して話なんて珍しすぎるにも程がある。 俺は4限の残りの授業を窓の外を眺めて過ごし、谷口と国木田と一緒に飯を食べ、屋上へと向かった。 屋上へ向かう前に、俺はウーロン茶とブラックのコーヒーを買った。 ……そういえば、昨日のあれ聞こえてたのか?聞こえてたらメチャクチャ恥ずいな。 まぁ、いいか。 なんなら今からでももう一度言ってやるさ。 俺は3階から屋上へ向かう階段を登った。 人の気配がする……ハルヒか、待たせたら死刑だよな。 俺が少し駆け足気味で階段を登ると……そこには顔を赤らめて古泉に抱かれているハルヒがいた。 ~ハルヒ視点~ もうキョンは来てるかな? 昨日あたしは公園でキョンが言った言葉を思い出して、ウキウキしていた。 『まぁ俺はどんな状態のお前でも好きだけどな。』って言ったはず、たぶん聞き間違いじゃない。 ほんとにキョンがあたしの事好きなら付き合ってくれるわよね? もう精神病にかかってもいいわ。……キョンと一緒ならそれで構わない。 そんなことを考えつつも、あたしは階段を登って行った。……誰か、いる?もうキョンが来たのかな……不覚を取ったわ。 そこに居たのは、我がSOS団、副団長の古泉くんだった。 「こ、古泉くん!?なんでこんな所に!?」 「おや、涼宮さん。奇遇ですね。」 あたしは階段を登り、古泉くんに近付いた。古泉くんはあくまでも笑顔で続けた。 「実はですね、此処の景色はとても良いのでたまにですが息抜きに来るんですよ。」 そうなんだ。 ……じゃあ、あたし達が邪魔しちゃ悪いわね。 「じゃあ、あたしは邪魔しちゃ悪いから行くわ。」 「それは残念ですね。それより、涼宮さんも何か此処に用事があったのでは?」 ま、マズい。キョンを呼び出したなんてバレたらなんかマズい気がする。 「な、なんでもないわ!そ、それじゃっ、古泉くんまた……キャッ!」 あたしは階段から足を踏み外した。ヤバい、落ちる! ……………って、あれ? 「危ない所でしたね、気をつけてくださいよ。」 古泉くんの声が耳のすぐそばから聞こえてきた。どうやら、古泉くんに抱き留められて助かったみたい。 「あ、ご、ごめんね?」 古泉くんはニッコリと微笑んで「良いですよ。」と答えた。 その顔は、とてもかっこよくてあたしの顔が赤くなるのがわかった。 カンッカンッ! ……なんの音かしら、何かが落ちた音? あたしが目を向けると、そこにはキョンがいつも飲んでいるコーヒーと、あたしが昨日飲んだウーロン茶が落ちていた。 嫌な予感がした。…まさか、キョンが来てた? 「ごめん!古泉くん、また放課後ねっ!!」 あたしはジュースを拾い上げ階段を駆け降りて行った。 しかし、何処にもキョンの姿を見つける事が出来なかった。 …別の人だったのかな。うん、たぶんそうだわ。 予鈴がなり、あたしが教室に戻るとキョンは自分の席に居た。 「あ、悪いな、ハルヒ。岡部に呼び出しくらって行けなかったんだ。」 よかった…やっぱり、キョンじゃなかったんだ。 「まったく…しょうがないわね!また、部活の後でいいわ!!」 心の中の心配を悟られないようにいつものあたしの声で答えた。 「……あぁ、わかったよ。ハルヒ、それ……?」 キョンが指をさした先には、コーヒーとウーロン茶を持っているあたしの手があった。 「あ、こ、これっ?これはね……「俺が来た時用に準備しててくれたのか。…まぁ飲まないのは勿体ないから貰っとくよ。」 と言って、あたしの手からコーヒーを取り机の端っこに置いた。 「……二倍がえしを期待してるわよ。」 そう言うと、自分の席に座って窓の外を見る事にした。 放課後、あたしは掃除当番だった。キョンは先に部室に行っている。 部活の後、キョンにどんな言葉で告白しようかな…。 そんなことを考えながらも素早く掃除を終わらせ、早足で部室へと向かった。 静かな旧校舎なある部室。 あたしは一目散にSOS団の部室に行き、ドアを勢いよく開けた。 「みんなっ!げん…き……」 あたしは目を疑った。 ドアを開けたあたしの見た物。それは、俯いて頭を抱えて座っているキョンと、後ろから何かを言いながらキョンを抱いていたみくるちゃんの姿だった。 「は、ハル…ヒ?」 「す、すす涼宮さん!?」 そんな二人の声を背中に受けながら、あたしは部室のドアを閉めて出ていった。 ~キョン視点2~ あ~、なんだってんだ畜生。ハルヒに呼び出し食らったと思ったら、あんなシーンを見せられるとはな。 正直、精神的に効いた。朝倉に刺された時より効いたかもしれん。 まぁ、俺が一人で舞い上がって勘違いしてたんだろうな。……恥ずい。 でも、あんなのを見せられた後でもまだハルヒの事を想っている俺がいた。 なんらかの拍子にあの状態になったとか……実は古泉が無理矢理抱いたとか……。 その辺はハルヒの態度を見れば分かるよな。 予鈴が鳴る。 ハルヒが俺が買ったコーヒーとウーロン茶を持って教室に入ってきた。 そういえば、あまりのショックに落としたのも気付かなかったのか。 「あ、悪いな、ハルヒ。岡部に呼び出し食らって行けなかったんだ。」 こんな感じなら不自然はないだろう。顔も引きつってない、たぶんいつもの顔が出来てるはず。 「まったく…しょうがないわね!また、部活の後でいいわ!!」 ハルヒは普段通りの顔で返事をしてきた。 見られた事に気付いてないのか?……それより、隠そうとしてるんじゃないか? 俺の頭の中に、不信感が渦巻いてくる。しかし、このまま普段通りの自分を演じなければいけない。 「……あぁ、わかったよ。ハルヒ、それ……?」 俺はハルヒの持っている飲み物に強引に話題を変えた。……そうでもしないと自分が保てそうになかった。 「あ、こ、これっ?これはね……「俺が来た時用に準備しててくれたのか。…まぁ飲まないのは勿体ないから貰っとくよ。」 ハルヒの口から出る言葉を遮り、コーヒーを取った。 何故なら、ハルヒが嘘をつくであろう事が何故かわかったからだ。 「……二倍がえしを期待してるわよ。」 もともと俺が買ってきたやつだ。やっぱり、こいつは古泉と抱き合ってたのを俺に見られてないと押し通そうとしてる。 何でだ、何でだよ。 やっぱり俺は一人で舞い上がってただけなのか? そこからは、午後の授業にまったく身も入らず、淡々と放課後になるのを待った。 部室の前、俺は一人で来ていた。いつもは横にいるハルヒは今日は掃除当番らしい。 ノックをする……返事は無い。どうやら長門だけか。 長門なら、話聞いてくれるよな……。 「うぃ~す。」 俺がドアを開けて中に入ると、長門は本を閉じた。 「おいおい、まさかもう帰るのか?」 俺が尋ねると、長門は少し頷いた後答えた。 「そう。あなたは、いま精神がとても昂っている。何かのいざこざを誰かに聞いてもらいたがっている。」 お見通しかよ。 「わたしが聞いてもろくに返事を出来ない、あなたを怒らせるだけ。」 俺は心の中を全て読まれたことに逆上したのか、少し声を荒げて言った。 「長門、今日は少し口数が多いな。俺を避けたいのか?」 「その態度、それがあなたらしくない。……わたしは帰る。」 そう言うと長門はドアに向かい歩き出した。 それを俺は壁に押しつけて止めた。 「何でだよ!話くらい聞いてくれたって……「……苦しい、離して。」 長門のあくまでも平坦で、冷静な表情と声。 瞬間、俺は正気を取り戻した。 「あ……、長門…悪い…。」 「……いい。また、明日。」 そのまま、長門は出て行った。俺は一人椅子に腰掛け頭を抱えた。 俺は最低だ。一人で勘違いして舞い上がって、八つ当たりまでしちまった。 誰かに殴られたいくらいの気持ちだ。 「キョンくん?どうしたんですか?」 気がつくと、朝比奈さんが目の前に居た。どうやら俺は入って来たのにも気付かなかったらしい。 「俺…ダメな人間ですよね。心は狭いし…長門にも八つ当たりなんてしちまったんです……。」 そこまで言うと、俺は再び顔を手で覆いうなだれた。 すると、暗闇の中で後ろから暖かい感触。 「大丈夫です。……何があったのかはわからないけど、きっとみんなわかってくれますから。」 バンッ!!! 「みんなっ!げん…き……」 「は、ハル…ヒ?」 「す、すす涼宮さん!?」 ハルヒは何も言わずにそのまま出て行った。 「ごめんなさい、朝比奈さんっ!!」 俺はすぐに追いかけて、ハルヒの肩を掴まえた。 「……何よ。」 俺は何て声をかければいい?勢いだけで飛び出したから言葉なんて考えてなかった。 「ち……違うんだ!」 こんな稚拙な言葉しか出ない自分の頭がうらめしい。 「何が違うのよ。あたしはあんた達が何してようと知らないわ。……昼休みだって、来てくれなかったし。」 「あ、あれはなっ!……」 先に言葉が続かない。しかし、このままハルヒを諦めたくない。 「あれは何よ。あんたなんか……あんたなんかみくるちゃんとベタベタひっついてデレデレしてればいいのよ、バカキョン!」 さすがにそこまで言われて黙っていれる程、俺はヘタレじゃなかったらしい。 思考を経由せずに口が勝手に動き出した。 「なんだよ…それ。お前だって……俺を呼び出しといて古泉と抱き合ってたじゃねーか!!」 「っ!!あんた……見てたの?」 ハルヒはかなり動揺した顔をしていた。しかし、俺はそのままの勢いで言葉を継いだ。 「その後も何もなかった様に振る舞いやがって……お前はあのシーンを俺に見せたかったが為に俺を呼び出したのか!?ふざけるな!!俺が……俺がどんだけお前の事を……。」 俺は言い終わらない内に、走って部室棟から出て行った。 ~ハルヒ視点2~ キョンには、全部バレていた。 あたしが古泉くんに抱き留められた事、その後のキョンに嘘をついて隠していたこと……。 それでも、キョンは我慢して昼休みまではあたしに変わらず接してくれていた。 みくるちゃんとキョンがイチャついていないのだってわかっていた。あれは多分落ち込んでたキョンをみくるちゃんが励ましてたんだと思う。 それを…キョンの優しさをあたしがほんの少しの嫉妬と苛立ちで台無しにした。 ……一番悪いのはあたしじゃない。キョンも、みくるちゃんも、古泉くんも何も悪くない。 全部あたしが悪いのに…。 部室から無言で去ったあたしをキョンは追いかけてくれた。あたしは……あたしはキョンを追いかけて良いのかな? そんな資格……ないかな。 部室棟の廊下の真ん中に立ち尽くしていると、みくるちゃんが目の前に来た。 「あ、あの…涼宮さん。話だけでも……聞いてくれませんか?」 頷いて、二人で並んで部室に入った。 団長席ではなく、さっきまでキョンがうなだれていた椅子に座っていると、みくるちゃんがお茶を持って来てくれた。 「ありがと…。」 声に元気が出ない、キョンにキツく言われて参ってるみたい。…自業自得だけどさ。 「涼宮さん、よかったら先に何があったかだけでも……聞かせてもらえませんか?」 あたしは、昨日の探索から、今日の昼休み、そして今の会話まで全てをみくるちゃんに打ち明けた。 「ごめんなさい……、わたしがあんな事しちゃったせいで……。」 「ううん、みくるちゃんは悪くないわ。あたしが勝手に勘違いして、イライラしてあんな態度取っちゃったんだもん。……でも、よかったらキョンに抱きついてた理由、教えてくれない?」 そこであたしが聞いた事は少なかった。 みくるちゃんが来た時にはキョンはあの状態で、有希に八つ当たりした事で凄く自己嫌悪をしていたという話だった。 「だから…ちょっとだけ、支えてあげようと思ったんです…。」 みくるちゃんはキョンの心配をしていた。もちろん、あたしが原因であんな風になったキョンを。 話を聞き、全てを頭で整理するとあたしの頭を渦巻く自己嫌悪。 何でこんな風になっちゃったんだろ。 あたしはキョンが好きで、キョンもあたしが好き。……いや、キョンはあたしを好き《だった》になったかもしれない。 まだ……取り戻せるかな?いや、取り戻したい。キョンとの楽しい時間を、あたしが最高の笑顔を見せることが出来る時間を。 「みくるちゃん、ありがと。……あたし、キョンと仲直りしてくる。たまにはあたしから謝るのもありよねっ?」 あたしの問い掛けにみくるちゃんは頭をブンブンと振って反応した。 「は、はいっ!素直が一番ですっ!」 そんなみくるちゃんに笑顔で別れを告げて、あたしは駅前公園に向かった。 キョンを呼ぶためにメールを打つ。 《よかったら、話を聞いて。駅前公園で待ってる。……ずっと、待ってるから。》 あたしは送信ボタンを押すと、携帯をポケットにしまい、早足で駅前公園に向かった。 午後22時、駅前公園。 あたしの座っているベンチは、一人あたしだけしかいない。 何で来てくれないの?もう、元には戻れないの? 目からは、涙が滲んできた。制服の袖でそれを拭い、あたしは呟いた。 「早く……来なさいよ、バカ。」 「…バカで悪かったな。」 後ろを振り向くと、そこにはコーヒーとウーロン茶を持ったキョンがいた。 ~キョン視点3~ 我ながらマヌケだ。 勢いに任せて走って行ったのはいいが、完全に鞄の存在を忘れていた。 夜19時半の旧校舎。 さすがに誰もいないし、野球部ですら片付けを始めていた。俺は誰もいない部室に入り鞄を取り、すぐに外へ出た。 校門を出て、ハイキングコースの様な道を歩いて下る。今日あった出来事が頭の中で反芻され、肉体的にも、精神的にも辛くなる。 ふと、大きめの石を見つけ蹴ってみた。坂道をコロコロと転がり、勢いを緩め、止まった。 だからと言って何かがあるわけでもないが、俺はそれを見て早歩きで下りだした。 ……腹が減ったからな。 歩きから、自転車へ。 脇目も振らずに俺は家へ向かった。 知り合いとすれ違ったかもしれん。だが、今は一刻も早く休みたい。 そんな思いが通じたか、信号待ちをすることもなく素早く家に着いた。 まず、食事。次に、走り過ぎてかいた汗を流すために風呂。そのようなプロセスを経て、俺はようやくベッドに寝転がった。 今日はいろいろあったな……。ハルヒに呼び出され、嫌なシーンを目撃して、長門に……長門!! 謝らなくちゃいかん、だいぶ落ち着いた今なら話してくれるはずだ。 そう思い携帯を開くと、新着メールが一件あった。 From《涼宮ハルヒ》 本文《よかったら、話を聞いて。駅前公園で待ってる。……ずっと、待ってるから。》 時間は……18時15分。 今は、21時40分……まさか、な。 俺はすぐさま着替えて外に出て、自転車を飛ばして行った。 午後22時。 駅前公園の近くに自転車を置き、公園の外から中を眺めた。いない…いない、よな。 俺の位置から一番遠いベンチに座っている、肩くらいまでの髪の女。 …間違いない、ハルヒだ。俺は一呼吸置き、自販機でコーヒーとウーロン茶を買った。 そして、ハルヒの後ろ側からゆっくりと近付いた。 肩を震わせて、袖で目を拭っているようだ。……まさか、泣いてるのか? 「早く……来なさいよ、バカ。」 ずっと…待ってたのか。 「…バカで悪かったな。」 驚いて振り向いた顔には、少しだけ泣いたあとが残っていた。 俺は手にもっていたウーロン茶をハルヒに渡して、横に腰掛けた。 「…そい…よ……。」 「ん?なんだって?」 「遅いのよ…バカァ…。」 ハルヒは俺の胸に顔を埋めて泣き出した。 「もう……来ないと思った。…話も、聞いてくれないと思ったんだからぁっ…!」 ハルヒの涙を見たのは、これが初めてじゃないだろうか。俺はなす術も無く、ハルヒの頭を抱き、しばらく泣きやむまでそのままでいた。 「落ち着いたか?」 頭を上げたハルヒに俺は問い掛けた。 「うん、もう大丈夫。」 そう言うと、ハルヒは立ち上がって、歩きだした。 俺もそれを追うように歩いた。 黙って歩き、ちょっとした階段を登った所でハルヒは止まった。 「いろいろ……ごめんね?キョン。勝手に誤解して…嘘ついて…あたしの事、許してとは言わない。ただ……嫌いにならないで…。」 そう言うと、ハルヒは体を後ろ向きに倒し始めた。 ……って、此処は階段だろうが! 「何やってやがる!!!」 俺はハルヒを抱き留めて、そのまま尻餅をつくように階段とは逆に倒れ込んだ。 「バカかお前は!!死ぬ気か!?」 俺達の呼吸は、早くなっていた。恐さで呼吸が荒くなったと言い換えた方が正しいか。 「……今の、今日の屋上であったこと。」 ハッとした。だが、それだけの為にこいつは自分の身を投げたのか。……真性のバカだ、こいつは。 「わかった、信じる!だからって実演することはないだろう!?」 「こうでもしなきゃ、信じてくれないじゃない。それに……キョンが助けてくれるって、信じてた。」 確かに、どんな言葉で説得されるより効果はあったな。昼休みの出来事が事故だと言うのがきっちりと把握出来た。 「まったく…お前の方がバカだよ。ほら、立てよ。ベンチに戻ろうぜ。」 俺はハルヒを引き起こして、ベンチへと歩いた。 《嫌いにならないで》か。 俺は嫌いになるどころか、まだずっと好きだった。あんなシーンを見せられても、怒鳴りあっても、それだけは変わらなかった。 俺が求めているのは好きになり合うこと、ハルヒが求めているのは嫌われないこと。 俺はあくまでも好きでも嫌いでもない存在か?友達止まりなのか? 考えながら、コーヒーを一口啜る。ブラックだから苦い、当たり前だ。 「みくるちゃんから、いろいろ聞いたわ。」 先に口を開いたのはハルヒだった。 「ごめんね?あたしのせいで嫌な思いさせて、有希にも迷惑かけちゃったのもあたしのせい。」俯きながら話していた。 「そんなことないさ。もともとはお前の話を聞く前に勝手に誤解したうえに、教室で嘘までついた俺が悪いんだ。」 さらに、沈黙。気まずい空気が流れだす。 次は俺から口を開いた。 「……二人とも、同じようなことやってんだ。おあいこにしようぜ。」 少し驚いた表情をこっちに向けてきた。 「ほんとに……許してくれるの?」 「だからおあいこだって言ってるだろ。」 驚きの表情が安堵に変わる。少し弱い感じだが、いつものハルヒに似た笑顔だ。 その顔を見た時、俺は感じた。やっぱり、今まで通りの関係なんて嫌だ。ハルヒと付き合いたい……と。 ~ハルヒ視点3~ キョンがおあいこって言ってくれた。あんなに勘違いして、一人で不機嫌になっていたあたしを許してくれた。 自然と笑みが出る。泣いた後だから上手く笑えない、でもうれしいから笑っちゃう。 キョンが優しい、この時間をずっと続けたい。 もう夜も遅いけどずっと一緒にいたい。離れたくない。 あたしは、やっぱりキョンが好きだ。 さっき階段であたしが身を投げた時、《嫌いにならないで》と言った。だけど、もうそれだけじゃ満足出来ない。 「ねぇ、キョン。」 キョンがこっちを向く、鼓動が早くなるのがわかる。 言葉が出ない、なんて言えばいいんだろ。 「ほ、星がきれいね。」 違う、違う。あたしはバカだ!こんな事が言いたいわけじゃない!いつものあたしならサラッと言えるのに、キョンに弱い所を見られて臆病になってる! 「あぁ、そうだな。」 キョンは笑顔で言葉を返してきた。そんな顔されたら、好きな気持ちが止まんないじゃない…。 あたしは、星を見るキョンの横顔に見とれていた。 「どうした?」 目が合った。うわ、今顔がメチャクチャ赤い。あたしは目を逸らしながら言った。 「な、なんでもないわよ。」 キョンは告白(未遂)を2回もしてくれた。あたしはキョンの気持ちを聞くだけ聞いて、返事はしてない。 じゃあ、答えは簡単。怖いけど……あたしの気持ちを伝えよう。 キョンにとって、あたしはもう恋愛対象に無いかもしれない。だけど、はっきりさせよう。 もう、あたしの精神病は止まらない。 「キョン。あたしにはこんな事を言う資格なんてない。あんたの気持ちも変わったかもしれない、だけど……聞いてくれる?」 キョンは黙って頷いた。 「あたしは、あんたが好きだった。それこそ、いつ好きになったかわからないくらい。……もし、あんたの気持ちが変わってないなら…付き合って…欲しい。」 あ~言っちゃったわ。後悔は無いけどドキドキする。 でも、もしダメでもキョンとは今まで通りに出来る気がする。ちゃんと本音を伝えることが出来たから……。 「俺で……いいのか?」 キョンが尋ねてきた。…どうやらキョンもまだ好きでいてくれたみたい。 「あんたじゃなきゃ……ダメなのよ。」 と答えると、キョンがあたしを抱き締めてきた。 ダメ、いきなり過ぎて心臓のドキドキが止まらない。しかも体がくっついてるからキョンにも聞こえちゃってる、恥ずかしい…。 ベンチに座り抱き合った状態で5分程経った時、キョンが口を開いた。 「あ~、すまん、ハルヒ。…ドキドキするから何か言ってくれ。」 ………ほんと、あんたって男は…。 「あんたね、雰囲気台無しじゃない。……せっかく幸せな気分に浸ってたのに。」 「はははっ、悪いな。」 いつもの会話が出来るようになった。あたしはこの雰囲気が一番好きだ。 「もう…しょうがないわね。お詫びに……キス、してよ。」 あたしはそっと目を閉じた。自分でもとんでもない事を言った気がするけど、関係ない。もう、やりたいようにするわ。 「き、キス……か。わかった…い、行くぞ。」 目を瞑ってるから何も見えない。だけど、キョンの存在が少しずつ近付いてくるのが分かる。……あんまりゆっくりしたら、あたし、ドキドキしすぎて倒れそう。 「お、お願いだから早くして?あたし、ずっとドキドキしてるんだけど……。」 「あぁ…悪い。」 そう言ったキョンはあたしにキスをしてきた。 瞬間的に唇を重ねただけのキス。現実でのあたしのファーストキス。 日付が変わった午前0時の駅前公園、あたしにとって、一番大事な時と場所になった。 「じゃあ……帰ろうぜ。お前の両親も心配してるだろ?」 優しいキョンの声、心が少しずつ落ち着いてくる。 「もちろん、あんたが送ってくれるのよね?」 キョンがあたしの手を引きながら答えた。 「何をいまさら、当たり前だろ?ほら、乗れよ。」 いつの間にかキョンの自転車がある場所まで来ていた。すでにキョンは自転車に跨がっている。 あたしはキョンの後ろに座り、強く、強くキョンの体を抱き締めた。 「キョン、……大好き。」 「俺もだよ、ハルヒ。」 そのまま、あたしは家へと続く道をキョンの温もりに幸せを感じながら帰って行った。 終わり
https://w.atwiki.jp/bamboo-couple/pages/392.html
874 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 14 31 17 ID kC4YPmfK 1話から久しぶりに見直すと、アニメも一応コジロー主役だな。 主役:やる気のない顧問が、タマに出会って少し変わっていく ヒロイン:そんな顧問に少しづつひかれていくキリノ タマは話の要ではあるけど、コジローとキリノがなんだかんだいって 物語では中心に描かれてるな 897 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 16 20 46 ID Ek/akFVa 874 アニメはコジロー視点で見ると、剣道に冷めていた自分が 素振りの楽しさ(=剣道の原点)に立ち返る話だったわけだけど。 でもそうさせたのって劇中で何度も何度も(バンクでw)素振りを繰り返して しつっこい位に剣道の楽しさを訴えて来たキリノじゃなく、”向き合おう”としたタマちゃんなんだよな… なんちゅうか、あんだけ通じ合ってるのに微妙に(本当に本当に微妙な所で) すれ違っちゃってるのがコジキリの「切なさ」の肝、だわな。インターハイとか見ても。 むしろ先生と生徒の立場の違いとかは副次的なもので、 こういう所にこそもどかしさを感じられるのが異色であり魅力だと思う。