約 4,264,314 件
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/695.html
虐と愛を知る自分にとっては鉄隗でぶん殴られたような衝撃です。もっと貴方の作品読ませてもらいたいです -- 名無しさん (2008-08-15 00 38 04) お疲れ様でした。元になった作品を相当読み込んでいただいたようで、うれしく思います。この作品に先立って、私が作った話ではまりさの未来には絶望しかありませんでした。私が書けるのはそのような作品のみだからです。けど、この作品はむの人さんだからこそたどり着いた結末があります。私には決して書けないであろう結末が。ですので、貴方の手によってこの作品は完成したのかもしれません。私のような人間がこのようなことを言うと笑われるかもしれませんが、素晴らしい完結編を書いていただいて恵まれた気持ちです。私は色々疲れてしまい、もうssを書くことをリタイアしてしまいましたが、貴方を応援しています。本当にありがとうございました。これからも頑張ってください -- 抹茶アイス (2008-08-15 02 02 35) 読んでくださり、誠にありがとうございます。抹茶アイスさんはSS書くのを辞めてしまわれたのですか……とても残念です。「ゆっくりまりさとおうち」こそ、私にとって衝撃的な出会いでした。あそこまでSSで心を揺さぶられることがあるなんて、ついにも思っていませんでした。あれを読まなければ、ゆっくり系のスレに留まる事は無かったでしょう。上辺だけの「ゆっくり」で終わっていたでしょう。私のほうこそお礼を言わせてください。この世界を教えてくださり、ありがとうございました。そしてこの先の人生に“ゆっくりしていってね!!!” -- むの人 (2008-08-15 03 17 57) すばらしい…もうそれ以外なんと言っていいのやら。元ネタの抹茶アイス氏のゆっくりまりさとおうちは私の中での名作の一つです。どちらかといえば虐待スレ派の自分でしたがかわいくて良い子のゆっくり達だけが殺される話は悲しくて虐待スレを見てる癖に複雑な気分になりました。その名作をむの人氏がうまく続編として引き継いでくださったので感無量です。抹茶アイス氏は今までお疲れ様でした。それとむの人氏にはこれからのご活躍に期待します。がんばってね!!! -- 名無しさん (2008-08-15 08 56 40) ゆっくりssの新しい可能性が見えました。作者の方々はお疲れ様でした。すごくよかったです。 -- 名無しさん (2008-08-15 19 45 14) 毎日虐待スレを見ている私がマジ泣きし、本気で救いを求めたほど私の中で言い様のない傑作でした。ゆっくりまりさとおうちを書かれた抹茶アイス氏と、求めてやまなかった物語の続きを書いてくれたむの人氏。こんなに素晴らしい作品を書かれた両氏に心の底から感謝です。 -- 名無しさん (2008-08-16 12 45 31) すげえ…もうなんて言っていいのかわからない。モチロンいい意味で。抹茶アイス氏のゆっくりまりさとおうちは投稿された時から自分のお気に入りです。そのお気に入りに続編が出来ただけでもうれしいのに出来が良すぎて眼からケフィアが出てしまいましたぜチクショウ。むの人もこれからめっちゃがんばれ。超ゆっくりがんばれ -- 名無しさん (2008-08-18 19 19 18) 神!!!!!!!乙!!!!!!! -- 名無しさん (2008-08-26 04 49 47) 神とか気安く言うんじゃありません!!!間違いなくこの作品は神です。本当にありがとうございました。 -- 名無しさん (2008-08-26 08 37 33) ゆっくり抜きにしても名作ってくらいにストーリと構成がよかったです! -- 名無しさん (2008-08-27 13 00 50) 射命丸のメモのくだりで、胸を打たれました。絶賛したいのに言葉に出来ない自分の語彙が憎いです -- 名無しさん (2008-08-27 16 03 24) 沢山のコメントありがとうございます。気になっていた所を何点か修正しました。 -- むの人 (2008-09-06 19 34 55) あー、いい話だなあ。俺もいろいろ虐や愛を書いたけど、こういう豊かで強い話って書いてないなー。書けるかなあ。 -- 名無しさん (2008-09-15 01 15 33) 面白かったです。本当にGJって言葉以外褒め称える言葉が出ないw -- 名無しさん (2008-09-28 12 39 31) 履歴残ってるから直せた -- 名無しさん (2008-10-19 21 14 35) パーフェクトだウォルター -- 名無しさん (2008-10-19 22 28 50) ブルーワーカーの広告くらいリアリティーのある展開でした。 -- (2008-10-29 16 34 01) おいおい、2chなんかのSSで泣くか、普通?泣く訳ない、はずなのにな‥。 「生き残るのは、強い者ではなく、皆が護りたいと思う優しい者」。自分の人生で大切にしたい言葉がまた一つ増えました。 -- 名無しさん (2008-11-18 16 47 11) 目から汁が止まりません -- 名無しさん (2008-12-14 05 07 50) こんなSSを待っていた -- 名無しさん (2008-12-15 22 22 19) ずっと涙をこらえてみてたけど最後のほうで我慢できなくなった。ええ話や~!! -- 名無しさん (2008-12-17 19 54 53) 褒め殺しってやつですね。わかります。 -- 名無しさん (2008-12-18 01 45 53) ようするに、他人の作品の結末が気に入らないからって、勝手に続編を作ったのか。 -- 名無しさん (2008-12-26 13 37 44) それって、荒らしとどう違うのかな -- 名無しさん (2008-12-26 13 38 04) 悲しい話があったら、いい話に変えたいって思うじゃないか。フランダースだってネロやパトラッシュ死んだけどどうにか生き残らせたい。そんな気持ち -- 名無しさん (2008-12-26 23 06 53) なるほど。まあ、本家を超えたとのたまわなければそれもよし!荒らしを呼ぶ前にクールに去るぜ -- 名無しさん (2008-12-27 00 19 33) このSSを読むたび、心が暖かくなる。初めて読んだときなんか本当に泣けた。 -- 名無しさん (2008-12-27 10 13 29) 虐められっ子の理想だね。他人の手で敵を葬る。自身の手を汚さず復讐を遂げるか。賞賛の声が多いから読んでみたけど、ぶっちゃけ何が書きたいのかわからなかった。 -- 名無しさん (2009-01-13 22 23 09) まりさは復讐したかったわけでも、復讐してもいないだろ。自分から見たらこの話の肝は『守ること』。まりさは『そのほか全てのゆっくりを救ったのだ』 ってな。作者GJ -- 名無しさん (2009-01-23 01 17 36) 都合の良い勧善懲悪だよなこの話。悪い人間像を作り上げて、東方キャラを使って制裁を加えるって。やってる事が虐待スレと変わらんじゃないか -- 名無しさん (2009-01-29 14 54 40) そうなのかなぁ?そんなに人間は高尚な生き物なのか?それに、君たち住民は必要以上に拷問したりしてるじゃないか。これのどこが変わらないというのかい? -- 名無しさん (2009-01-29 17 01 06) きっと彼は悪役をかわいそうに思うような優しい心の持ち主なんだよ。ゆっくりしていってね。 -- 名無しさん (2009-01-29 18 02 48) 人間の中にも異能者はたくさんいて(妖怪退治屋)、仙人とか、獣人とか人間に好意を持ってる(ていうか元人間か半分人間)強力な種族もいる。河童もか。妖怪がゆっくりに肩入れするのは、まずありえないのでは。それ以前に、幻想郷は、人間と妖怪のバランスでなりったているのだが・・・。ゆっくりなんて異物は、むしろ八雲家が率先して排除しそうだが。まあ、この場合森に火をつけたのが悪いがね。なんでんなことしたのか、あるいは作者がさせたのかはわからんが。 -- 名無しさん (2009-02-02 13 48 49) 饅頭が喋ったり跳ねたりしてるのはどう考えても妖怪だろ。 肩入れしても不思議じゃないような。 -- 名無しさん (2009-02-02 17 46 51) 妖怪なら、人間はゆっくりを退治せんといかんし、他の妖怪はそれを邪魔しちゃいかんな。 -- 名無しさん (2009-02-02 18 40 12) しかし待ってほしい。ウイルスも、ゆっくりごと燃やすという処分のやり方も、抹茶アイス氏が考え、むの人がそれを発展させたのだから、むしろ作品の小道具として利用されているのは人間のほうではないか。某新聞風 -- 名無しさん (2009-02-03 08 26 44) 虐め系SSは3000近くあるが、ゆっくりのために山に火を放つなんて例はない!こんなこと思いつくのは、この作者さんだけである。いや、ムカつく悪役をだすのは当然だが、作者自身がムカついているふしがあって、かなり見苦しい。自分で考えついて、何を怒っていらっしゃるのやら。 -- 名無しさん (2009-02-03 21 56 58) こめんとてすとん -- (Jiyu) 2009-02-11 02 44 11 >妖怪なら、人間はゆっくりを退治せんといかんし、他の妖怪はそれを邪魔しちゃいかんな よくわかりません。 -- (名無しさん) 2009-03-25 22 25 54 人間と妖怪のバランスでなりったているのだが・・・。ゆっくりなんて異物は、むしろ八雲家が率先して排除しそうだが。 「ゆえに、幻想郷は全てを受け入れる。……それはそれは残酷なことですわ」 八雲家っつーか紫は後者を選んだって事だね。っつーかこっちこそ紫らしい。 -- (名無しさん) 2009-03-25 22 40 40 虐め系SSは3000近くあるが、ゆっくりのために山に火を放つなんて例はない! お前、いじめSSほとんど読んでないだろw -- (名無しさん) 2009-04-01 13 26 10 八雲家っつーか紫は後者を選んだって事だね。っつーかこっちこそ紫らしい。 これは書きかたがまずかったか、すまん。ゆっくり自体のことではなく、無差別に人を殺傷しうるウイルスを持っている場合は放置せんだろと書きたかった -- (名無しさん) 2009-04-03 17 09 29 ゆっくりまりさとおうちは名作だったというのに続編ときたら・・・ -- (名無しさん) 2009-10-25 16 03 03 これは十分名作だけどね -- (名無しさん) 2009-10-27 10 29 18 いやクズだな -- (名無しさん) 2009-11-24 16 00 46 そうじゃない人がたくさんいるのさ -- (名無しさん) 2009-11-24 22 53 52 東方キャラの蛇足感が異常 -- (名無しさん) 2009-11-25 22 42 41 あれ・・・目から汗が・・・ -- (名無しさん) 2009-11-26 23 50 49 そもそも完結した作品を勝手に続編作るってのが気にくわない まあいいかこんな奴に何言ってもわからないだろうし 俺のコメントみたら皆気悪くするだろうからこれ以上はやめる -- (名無しさん) 2009-12-10 01 34 58 完結した作品の続編見んの嫌とかいったら二次創作なんざなんも読めんだろ。 なに言ってんだか。 -- (名無しさん) 2009-12-16 18 14 58 ↑正論すぎふいたw ここはゆっくりするところですよー -- (名無しさん) 2010-01-07 00 23 12 完結した作品の続編アウトなら↑×2が正論な上に 虐待スレでも愛ででも勝手に作っちゃいました~はごろごろあるだろ 気に入らん作品にだけ続編気に喰わないとか言われてもなぁ この作品はいい作品だったよ 東方キャラもエッセンス程度にでてて クズだのなんだの言うやつは、せめて理由くらい書いたら? 理由も書かずにクズやつまんないとかあっても作者困るだろー 自分の気に入った作品にクズやつまんないとだけ書かれてたら「は?」て思わないの? -- (名無しさん) 2010-06-03 15 09 36 低学歴なら楽しめそうな内容www -- (名無しさん) 2010-06-04 20 10 09 山の妖怪さんたちは、アホが火をつける前に、あるいは火が広がる前に止めろよ。 全焼してから出てきて「制裁だ!!」ってあーた。 手を汚さず嫌いな奴を始末したがるのが善人の悪い癖だ。 -- (名無しさん) 2010-07-14 00 30 21 面白かった 懸命に生き、大切なものを必死に守るゆっくり達の姿に感動した 人間でもゆっくりでも惻隠や共感の情は大切なんだな -- (名無しさん) 2010-11-27 18 55 12 >完結した作品の続編 同人にはよくあることですね。批判するようなものでもない。 >山の妖怪さんたちは、アホが火をつける前に、あるいは火が広がる前に止めろよ。 そこまで妖怪も万能ではないだろう? 24時間体制でたくさんの人間や妖怪を監視はできまい。 それに万能過ぎるとキャラクター的に魅力を感じないね、自分は。 >•低学歴なら楽しめそうな内容www 学歴は高く(自称)ても知能は低そうなコメントwww >SS がんばる姿というのは見ても読んでも気分はいいですね。 好きですよ、こういうのは。 -- (名無しさん) 2011-01-06 02 17 32 この話は弱くても僕らは生きているということをまるで叫んでいるかのような生きること・幸せになりたい・身勝手かもしれないけど意思を持った生物は必ず愛されたいと思うものですね -- (名無しさん) 2011-04-29 15 51 27
https://w.atwiki.jp/sakura-color/pages/146.html
こちらの作品はグロテスク+死ネタです。 読んでから、 おいおいアレやべぇじゃん! なんて言わないで下さい。 興味本位でも覗かないで下さいね~ それでも読みたい方は、こちらからドウゾ。 志花久遠 novelへ戻る
https://w.atwiki.jp/83452/pages/8989.html
先輩2「それじゃあ今度は私たちから…」 先輩「……」 先輩2「ほら」 先輩「あ…うん」 先輩「……今まで辛いことや苦しいことがいっぱいあったけど、私もみんなと一緒にやれてよかったと思ってます」 先輩「…………その」 先輩「――こんな私についてきてくれてありがとうございました!」 先輩2「私からも…ありがとうございました」 一同「……」 先輩「ジャズ研究部、みんなで盛り上げてね」 先輩「じゃあ…さようなら」 ――――― ――― ―― 同級生「終わっちゃったね…」 純「……」 先輩C「…あんまり長居するといけないから、私たちも下校するぞ」 純「はい」 同級生「帰ろっか、純」 先輩B「あっ、私はやることあるから残ってるね~」 先輩A「やること?」 先輩B「ちょっとね…先に帰ってなよ」 先輩A「?…いいけど」 純「お疲れ様でした」 先輩B「はいよ~」 ――三年 教室 先輩「……」 先輩2「……」 先輩「……」 先輩2「……泣きたかったら泣けばいいのに」 先輩「泣かないもん…」 先輩2「そう…」 先輩「……」 先輩2「……」 先輩「……私」 先輩2「なに?」 先輩「部室行ってくる」 先輩2「……」 ――ジャズ研 部室前 先輩「……」 先輩(なんで来ちゃったんだろう…思い残したことなんてないのに) 先輩「……」 先輩(けど最後にもう一度、部室に…) 先輩「……」 先輩(鍵…開いてるかな) ―――…~♪ 先輩「!?」 先輩(ギターの音…部室から!?) ガチャッ――― 先輩「あ――…」 先輩B「先輩か」 先輩「あんた…なんでここに…」 先輩B「ギター弾いてるだけですよ~」 先輩B「弾きたい時に弾くのが私の主義ですから。そのために毎日ギター持ってきてるんだし」 先輩「……」 先輩B「……」 先輩「…はぁ、なんで最後の最後にあんたと顔合わせなきゃいけないんだろう」 先輩B「なんですかその言いぐさは~」 先輩「私は…一人になりたかったの」 先輩B「一人で泣きたかったんですか?」 先輩「そ、そんなわけ…」 先輩B「そういえば先輩、大学受かったんでしたっけ?」 先輩「え?そうだけど…」 先輩B「そっか…じゃあ先輩は春から大学生だ」 先輩B「寂しくなりますね…」 先輩「……」 先輩B「明日から先輩…高校の制服着ると、ただのコスプレになっちゃうんですよ」 先輩「うるさい!そんな心配誰もしてないわよ!!」 先輩「ていうか…私をおちょくるために残ってたわけ?」 先輩B「まさか。…さっきも言ったとおりギター弾いてるだけですヨ」 先輩「はぁ……」 先輩B「……」 先輩「……」 先輩B「…私に気にせず泣いてもいいんですよ~。私、先輩が泣き虫だって知ってますから」 先輩「泣くわけないでしょ。泣き虫じゃないし」 先輩B「さいですか」 先輩「……」 先輩B「…大学行っても気を緩めちゃダメだぞ~。変な男に騙されないように」 先輩「心配されなくても、男なんかに興味ないわよ」 先輩B「え…そっち系!?」 先輩「は?……あっ!」 先輩「ち、違う!!そういう意味じゃない!!」 先輩B「まさか…私のこともそんな目で見てたんですか!?」 先輩「見てないし!ていうかどんな目よ!!」 先輩B「いや~~!!」 先輩「ああもう!違うって言ってるでしょ!!」 先輩「私は…大学行っても音楽に集中したいから恋愛なんてしないってこと!」 先輩B「あ、ベース続けるんだ~」 先輩「…当然でしょ」 先輩B「ふ~ん…」 先輩「……なによ」 先輩B「まぁ、頑張ってください。やりたいことやるなら今のうちですよ」 先輩B「大人になると夢を追うどころか見る余裕すらない…らしいですから」 先輩「年下にそんなこと言われたくないんだけど」 先輩B「おっと失敬」 先輩B「お詫びに一曲…そうだ、先輩も一緒に弾きませんか?」 先輩「私はいいわよ、ベース持ってきてないし」 先輩B「な~んだ…」 先輩「……」 先輩B「……」 先輩「…ねぇ」 先輩B「うん?」 先輩「あんたのギター…聴かせて」 先輩B「お安い御用で」 ジャッジャジャジ♪ 先輩「……」 先輩B「……」 ジャーン♪ ――帰り道 同級生「なんか…意外とあっさり終わったよね」 同級生「もっとしめやかなものだと思ってたのに」 純「あれでいいんじゃない?先輩たちもあまり大げさにしてほしくなかったみたいだし」 同級生「さっぱりしてるなー、純」 純「でも卒業しちゃったもんはしょうがないし……」 純「あっ!?」 同級生「どったの?」 純「靴…履き替えてないままだった」 同級生「えぇ~」 純「ごめん先に帰ってて!」 純「私学校に戻ってるから」 同級生「もう…しょうがないな~」 ――ジャズ研 部室 先輩B「てゆ~かぁ~…なんで私が部長?」 先輩「え?」 先輩B「私よりも他にいるでしょ…部長候補」 先輩「なにか不満でもあるの?」 先輩B「大ありだっての」 先輩「いいじゃない…あなたならできるわよ」 先輩B「勝手なことばっか言って」 先輩「勝手なのはいつものあんたでしょう。人の苦労も知らないで」 先輩B「…先輩の苦労ぐらい知ってますよ」 先輩B「苦労しなきゃ…ジャズ研はここまで大きくならなかっただろうし」 先輩「……」 先輩B「でも大きすぎて、私じゃまとめきれないかな~…」 先輩「…たかが高校の部活なのに、ずいぶんと弱気ね」 先輩B「弱気じゃないし、別に」 先輩「そう…それならいいけど」 先輩B「……」 先輩「みんなのこと、よろしくね」 先輩B「…もう行っちゃうの?」 先輩「あんたも早く帰りなさい。遅いと怒られるから」 先輩B「……」 先輩「…できるわよ、部長」 先輩「二年間…一緒に部活してずっとあんたを見てた私が言うんだから間違いない」 先輩B「…どんな目で見てた?」 先輩「普通の目」 先輩B「あっそ」 先輩「それじゃ、私は先に帰るから。ちゃんと鍵閉めて出るのよ」 先輩B「はいはい」 先輩「…またね、生意気バカ」 先輩B「はいよ、バーカ」 ガチャッ…… 先輩「……」 先輩B「……」 ―――バタン 先輩B「……」 先輩B「さてと…もう少し練習しようかナ」 先輩B「……」 先輩B「……」 ジャッジャジャ♪ 先輩B「春からどうしようかなぁー…」 先輩B「……」 ジャッジャー… 先輩B「あっ…間違えた」 ――三年 教室 先輩「…ただいま」 先輩2「グズッ…おかえり」 先輩「?……ひょっとして泣いてた?」 先輩2「そ、そんなわけないでしょ」 先輩「ふうん…」 先輩2「…そういうあんたは、目を真っ赤にして戻ってくると思ってたけど」 先輩「あの子と喋ってたら…なんだか泣く気も起きなくなっちゃった」 先輩2「…そっか」 先輩「……」 先輩2「……」 先輩「……帰ろっか。もうここにいたらいけない気がするし」 先輩2「……そうね」 ――校門前 純「はぁ、ようやく学校着いた」 純「靴履き替え忘れるなんて…かっこわるいなぁ…」 純「―――あっ」 先輩「あ、純」 純「先輩!」 先輩2「なにやってるの?」 純「いやっ…ちょっと忘れ物を」 先輩「まったく…しっかりしなさい。もう二年生でしょ?」 純「すみません…」 先輩「用事が済んだら早く下校するのよ?」 純「はい…」 先輩「じゃあね」 純「…」 純「先輩、あのっ…」 先輩「ん?」 純(なんか言わなきゃ…これで最後になるかもしれないんだし) 先輩「純?」 純「私――先輩みたいなかっこいい先輩になります!」 先輩「……」 純「……」 純(なに言ってんの私ーーー!!もうちょっと別れの挨拶的なものを…) 先輩「…クスッ」 純「へ?」 先輩「純は純のままでいいんじゃない?」 純「私のまま…?」 先輩「髪、普段どおりの方が似合ってるわよ」 純「え、あれっ…」 先輩「ふふっ…じゃあね。今度会うときは、上手くなったベース聴かせてね」 純「先輩…」 先輩「……早く忘れ物取りに行きなさい。学校閉まっちゃうわよ?」 純「あ、はい!」タタタッ 先輩「……」 先輩2「かっこいい先輩だって、あんたが」 先輩「…おかしい?」 先輩2「すっごく」 先輩「私もそう思う」 先輩2「……ぷっ」 先輩「あはははっ」 先輩2「そうだ、帰る途中にあそこ行かない?ほら、雑誌に載ってたお店の…」 先輩「あーあれかぁ…」 先輩2「行こっ」 先輩「その前にお昼ご飯食べようよー」 先輩2「いいけど、どこで?」 先輩「なら、最近できたパスタの」 先輩2「だめだめ、あそこは不味いから」 先輩「ま、不味くない!!」 先輩2「あんたは…昔から舌がおかしいんだから」 先輩「おかしくないし!!」 先輩2「…ふっ」 先輩「ふふっ」 先輩2「私たち…あんまり変わってないよね」 先輩「うん…―――」 ――校内 玄関 純「えっと…下駄箱下駄箱…」 純「あった、私の靴」 純「さっさと履き替えて――…」 純「……」 純「静か…もう誰もいないのかな?」 純「……」 純「部室にまだ誰かいたりして…」 純「ちょっと行ってみようかな」 ――ジャズ研 部室前 純「……」 純(なーんて…いるわけないのになんで来ちゃったんだろう) ガチャッ 純「!」 先輩B「あれ?なにしてんの?」 純「先輩…こそ」 先輩B「私はちょっと用があるって言ったろ~」 純「あ、そうでした。…私は忘れ物取り来たついでに」 純「そうだ!さっき校門で先輩に会ったんですよ!」 先輩B「ん?そっか」 純「今度会ったら、ベース聴かせてほしいって」 先輩B「ふ~ん…それまでに練習たくさんしておかないとな~」 純「……」 先輩B「どうした?」 純「先輩たちがいない部室って…なんだか想像つかないですよね」 純「春からは新しい部員が入って、私が指導したりして…」 純「すごい違和感があるような」 先輩B「…二日ぐらいで慣れるよ」 純「だけどやっぱ想像できないなぁ…」 先輩B「ほれ、そんなことより早く出るぞ~。遅くなると先生に怒られるから」 純「あ、はい」 純「そういえば先輩は部室でなにしてたんですか?」 先輩B「秘密~」 純「えー教えてくださいよ」 先輩B「たいした事じゃないさ。気にしないでくれたまえ」 純「はあ…?」 先輩B「純、お昼食べた?」 純「いえ、まだです」 先輩B「じゃあどっか食べに行くかい~?」 先輩B「特別にご馳走してあげるよ」 純「本当ですか!?」 先輩B「バイト代入ったからね」 純「やったー!」 先輩B「あ……ちょっと待って」 純「え?」 先輩B「ギター…部室に忘れてた」 #16 おわり 26
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/852.html
かわいいゆっくりゲットだぜ!!3-上(こんにちわ、れみぃ) ゆっくりれみりあ(れみりゃ)の捕食種設定ありです。 3ープロローグかわいいゆっくりゲットだぜ!!3-プロローグ(さよなら、れみぃ)の次の日のぱちぇ達から続いてます。 大量のゆっくりの死体が出てきます。 『』は動物やしゃべらない物の言葉です 大工の林は俺設定です。信じないでください。 幻想卿にありそうな地名や設定が登場しますが、自信が無いので信じないでください それでもよければどうぞよんでください では、駄文開始です… 冬も真っ盛りのある小さな林の木の大木の下にウサギの巣にそっくりな巣穴があった。 だがその中にはウサギではなくまんじゅうの生き物であるゆっくりが住んでいた。 その中では1匹の胴体付きゆっくりが「うー! うー! まんまぁー!」と声をあげて泣いていた。 その姿を見た瞬間にその物体に近づこうとするのだが相手に近づけなかった。 仕方なく彼女の名前を大声で呼んだ。 「むきゅ…れみぃ…れみぃ…」 …1週間前に保護したゆっくりぱちゅりーの親が悪夢にうなされているようだがどうしたのだろうか… 昨日、話してくれたゆっくりれみりあ…れみぃという名のれみりゃが原因なのだろうか… とりあえず、ゆっくり達の昼寝の邪魔をしてはいけないと思い部屋から抜け出した 休みの日ぐらい外にいる老犬と遊ぶかと庭に出た。 おお寒い寒い。さすがに2月にになると1時ぐらいでも凍りつくように体が痛い 自分のような寒がりな者には、寒さがつらくてしかたない。 付き合いの長い年をとった愛犬が、私の横で尻尾を振りながら近づいてきた。 『散歩の時間ですかい?ご主人』 「ああ、いつもより少し速いが暖かいうちに散歩に行くか?」 『そうですね。この年になると寒さがつらいから暖かいうちに行きましょうやご主人』 犬と会話をしたつもりになった私は、散歩用の犬の紐を取りに家の中に戻った。 一応、書置きが必要かと思い「いぬのさんぽにいく」と書いた紙を置いて玄関のドアに手をかけた時に背後に気配を感じた 誰だろうと振り返ってみると赤髪のロングヘアーに悪魔の羽をはやしたゆっくり…ゆっくりこぁが話しかけてきた 「こぁ、わたしもゆっくりつれていってください!!」 「ああ、構わないけど…君がぱちぇと離れるなんて珍しいことがあるもんだな…」 「ゆっくりはなしたいことがあるのです! つれていってください!」 「だったら外は寒いから家の中で話そうか?」 「いいえ、できればぱちゅりーさまのいないところではなしたいのです!」 「…わかった。それじゃあいつをつれてくるからここで待っていなさい」 ぱちぇに聞かれたくないといっていたがなんだろうか… そういえば彼女もれみりゃとは知り合いだということと関係あるのだろうか 私は、犬の首輪に紐をつなげるとこぁを片手で抱えて歩き始めた。 散歩コースの川の土手に到着するとこぁがしゃべりはじめた。 「わたしとぱちゅりーさまが、れみぃさまとあったのはこのばしょでした」 「昨日の夜にぱちぇから聞いた川の土手というのはここだったのかい」 「はい、わたしとぱちゅりーさまとなかまたちがむれをでてすむことをきめたばしょです」 「それで君とぱちぇは川沿いに歩いていって柿の木から林に向かったのだったかな」 「はい、そのとおりにあるいてください」 「待て、君達は湖に向かって歩いたのかその逆かを教えてくれ」 「ええーとあちらにむかってあるきました」 どうやら湖とは反対に向かって歩いていけばいいことがわかった。 そういえば、ここに住んでいたゆっくりまりさとゆっくりれいむの夫婦はどうなったのかと考えながら川沿いを歩いていった それとれみりゃとの出会いや別れの話こぁ視点からはなしてもらった。 それに対しての意見を言うと「あくまで小悪魔ですから」といいかえされた。 うまいことを言うもんだと感心した。 歩き始めて1時間もすると遠くに里外れの林があるのが見えた 「あそこがれみぃというゆっくりがすんでる林なのかい?」 「ええ、あそこにれみぃさまがすんでいるはずです」 「何で君は私を連れてきたんだい?」 「もちろん、ぱちゅりーさまのためにです。れみぃさまのことを心配してうなされていることがよくあるので…あなたにたすけてもらおうとかんがえてるのです」 「あの林ならば私もいったことがある。里の有力者が木材を妖怪に襲われず安全に確保するのに里近くに作った林だな。この時期は使われていないはずの小屋があったはずだが…」 ゆっくりたちが勝手にはいった小屋ってまさか… とりあえず、一度家に帰ろうと思ったときに道の真ん中で若い男性が小刻みに震えているのが見えた。 確か大工で修業している若者だったはずだ。気分が優れないのか顔色が悪い。 「大丈夫ですか? 気分が悪いのですか?」 「ああ、あんたは…たまにウチの仕事を手伝ってくれる人だよな」 「ええ、そうですけどなにがあったのですか?」 「あそこの林に小屋があるのはあんたも知っているだろう。」 「ええ、去年の春先に手伝いに行ったので知っていますが」 「棟梁に頼まれてあの小屋にある大工道具を取りにいったんだけどよ…」 彼は一瞬ためらうような顔をしたが意を決したように一気に話し始めた 「それで取りに行くものがあって、小屋に入ったら甘い臭いがしたんだよ。 それと気味の悪い黒い生首のような物体と芽の生えた黒い丸い物体が床を埋め尽くす様に落ちてたんだ。 それに『ゆー、ゆー』とお化けの声が聞こえてきたんだよ 怖くなって小屋を飛び出したんだけど間違えて里の入り口とは逆に走ったんだが 今度は、『うー、うー』っていううめき声が聞こえてきてよ。 そこから少しでも離れようとして走り続けたらここにいたんだよ」 というと彼は横に流れている川に顔を突っ込みいきおいよく洗いはじめた。 とある異変以降、何故か幽霊が幻想郷に多く現れる異変が継続している。 空を見ると白いオタマジャクシを大きくしたような幽霊が飛んでいる。冥界か三途の川にでも向かっているんだろうか… この幻想卿では妖怪がいるのだからお化けがいても変ではない気がした… 待てよ。これはあの土地に入るチャンスではないだろうか? 『ご主人があの目をしている時は悪巧みを考えている時だ…』 「幽霊や妖怪がいるんだから、お化けくらいいてもおかしくないのでは?」 「あんた…そういうが怖いものは怖いんだよ。あれをみればあんただって…」 「だったら、私が見に行って来ましょうか?取りに行くものを教えてください」 「あ、ああ、いってくれるのか…あんたなら棟梁も文句言わねえだろうな。 取ってくるものは小屋の畳の下の隙間の大工箱に入ってるから箱ごと持ってきてくれ」 「条件があります。私が夜までに戻ってこなかったら寺小屋の先生に相談する事」 「それぐらいはかまわないから、よろしく頼むぜ。あと鍵を貸した事は内緒にしてくれよ」 「ばれなければ問題ないから心配しないですよ。それじゃいきますかね。なにかあったときはよろしく頼みます」 『それじゃさっさといきましょうーや。ご主人』 「ああ、それじゃ気をつけてな…またあとであおうな」 「ええ、こぁ、林の中に行くから案内してくれ」 「こぁ、ゆっくりあんないいたします」 そして、わたしとこぁはお化けがいるという林の中の小屋を目指していった。 林に入って10分も歩くと例の小屋が見えてきた。 なんとなくお化けの正体はわかっているのだが扉の鍵をカチッと言う音がするまでまわした。 ゆっくりとドアを開けていった。その先にある恐ろしいものとは… 「こぁああああーー!!」 「はぁー、やっぱりな…」 そこにあったものはソフトボールぐらいからバスケットボールぐらいの大小様々なゆっくりの死体が落ちていた。 冬の寒さのおかげが腐ったりはしていないしハエもたかっていなかったが気分のいいものではない。 空腹のあまり死んだのだろうかげっそりと頬がやせて死んでいるゆっくり。 頭から蔦を出したまま黒くなって死んでいるゆっくり。 体が真ん中から分かれているゆっくり。 「そんな、しょくりょうがあんなにあったのにぜんめつするなんて」 「この様子から見ると子供を増やしすぎて餓死したんだろうな。共食いをしないだけまともなのかもしれないが」 「こぁ、でも…こんな…おそろしいことになるなんて」 「君たちが巣を出たときに寄ったときはどんな状況だったんだい」 「はい、いりぐちがきでとじられてはいれなかったんです。 それでこえをかけたのですがへんじがなかったので、とうみんしているんだろうとおもいさりました。 あのきのおおきなはこのうらあたりにいりぐちがあったのですが・・・」 私がそちらを見てみると大きな本棚がおいてあった。 何らかの理由で出入り口を閉めたのだろうか・・・ 生きているゆっくりが残っているだろうかと思いこえをかけてみた。 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりしていってください!!」 「…っ…っ…」 …何故かこぁが返事をしただけで他の返事はない様だった。 私は小屋の外の物置の中に穴を掘るものが無いか探し始めた。 鉄製のスコップを見つけたので小屋から少し離れた場所の土を掘り始めた 犬も手伝ってくれているようだがあまり役にはたっていない。 土を掘り始めて30分もすると直径1メートル深さも1メートルぐらいの穴ができた。 少し離れた場所でこぁが10センチ、犬が30センチぐらいの穴を掘っていたので誉めてあげた 私は「ゆっくりしていってね!!!」と声をかけながら生きているかを確かめながらゆっくりを1匹ずつ穴に入れていった 10分ほどして穴を埋めようとした時にミニトマトぐらいのゆっくり達が40匹ぐらい出てきた 死んだ親達と違ってあまりやせてはいないがどうしてなのだろうか… 代表なのだろう黒い帽子をかぶったまりさ種の赤ん坊が話しかけてきた 「ゆうぇーん、おとーしゃんちゃちをにひぢょいこをしにゃいで」 「生きているゆっくりが残っていたのかどこに隠れていたんだ」 「…こぁ、たぶんベッドさんのしたやたたみさんのしたのすきまですね」 …こぁの奴気付いていたのに教えなかったのかよと思いながら子供たちに事情を説明することした 「君たちのお父さんやお母さんは死んでいるんだ。だからお墓に埋めてあげるんだよ」 「死んでいるってにゃに?おはかって?」 「それは…二度とゆっくりできなくなってしまうことなんだ。君たちのお父さんは動かないししゃべる事は2度と無いんだ」 「ゆゆっゆっゆ?」 「でも…お墓にはいらないと天国でゆっくりできないからお墓をつっくてあげたんだよ」 「おきゃーしゃんいにゃいちょ。まりしゃちゃちは…ぎょひゃんちゃべれにゃいよ!!」 母親がいなければご飯を持ってこないと言いたいのか…出費がかさむが仕方ないか 「ゆっくりこれをたべていってね!!」 そういうと犬のおやつに持ってきた犬用ののビスケットを粉々にして赤ゆっくり達の上にまいた 「むちゃ、むちゃ、ちぃあわせ!!」 などといってる赤ゆっくりを捕まえると本棚に入れてふたを閉めた。 その様子をみてかソフトボール代の子ゆっくりも10何匹か出てきた だしてとかちぃあわせとねむねむかいっている赤ゆっくりたちを無視して私はゆっくりの死体を穴の中に埋めていった。 穴を土で埋め終えた頃には赤ゆっくり達は泣き疲れて眠っていた…こいつらはどうするかな… 今はれみぃと言う名のれみりゃを優先しなければと思ってこぁにれみりゃの巣の場所を聞いた。 こぁの後に歩い15分も歩くと木の下にウサギの巣にそっくりな巣穴があった。 「こぁ、ゆっくりまっていてくださいね!!」 そいうとこぁは巣の中に潜っていったさすがに私の大きさではこの巣には入ることができない 『あっしが中に入って様子をみてきましょうか?ご主人』 隣に座っている老犬が穴掘りの用意をしていたが 「いや、ここはこぁに任せよう」 『来る途中の話から考えるとあの女はやばいですぜ。ご主人』 断って気持ちだけを受け取った 5分ぐらい犬と遊んでいたのだがこくぁがでてこないので心配になり穴の中をのぞきこもうとした瞬間 「こぁああああーー!! れみぃさまがいなくなりました!!」 とこぁが勢いよく飛び出してきて空を飛びまわっている…飛びまわっている? こぁってとべたの? 「とりあえずおちつけ! れみぃが住んでいたのはこの場所だけなのか?」 「いいえちがいます! ちかくのたおれたきのなかでとうみんをしようとしていました!」 「だったらとりあえずそこにいってみよう。この巣から移動しているかもしれないから?」 「こぁ、ゆっくりりかいしました!! ゆっくりしないでついてきてください!!」 「なぁ、こぁはそらをとべたの?」 「背中の羽は伊達じゃありませんから!!」 何故か、誇らしげにかえされた こぁのあとをは早歩きで5分も歩いただろうか落雷でも落ちたのか中に空洞のできた大木が倒れていた。 入り口には大きな板に草や布が立てかけてあったのでそれをどかすとそれなりに暖かい空間が広がっていた。 中には枯葉やどこからか持ってきたのかぼろぼろの布切れが引かれている。 その上ですやすや寝息をたてている胴体付きのゆっくりがいる。 ずんぐりむっくりした幼女のような姿に、ふくよかな手足。 大きな下ぶくれ顔と、ピンクのスカートと洋服、背中には黒い悪魔のような羽… ゆっくりれみりゃに違いないと思った 「れみぃさま!! こぁがまいりました。ゆっくりしないでおきてくださいね!!」 「う~? まんまぁー、もうはるがきたどぉー?もうおきてもいいどぉー?」 「ゆっくりしないでおきてくださいね!!」 「う~? まんまぁー、もうおこっていないんだどぉー?」 「こぁ! はんせいしてくれればいいのです。れみりゃさますばらしいゆっくりぷれいすをみつけました。ぱちゅりーさまとこどもたちといっしょにすみましょう」 「う~? れみぃ…まんまぁーたちといっしょにてもいいのかどぉ?」 「もちろんです♪ ゆっくりしていってくださいーー!!」 「ゆっくりしていってねだどぉーー!!」 …ちょっと待て!! こぁのいったゆっくりプレイスというのはどこの事だ。 今、彼女が住んでいるのは私の家の一部屋だ。そこにゆっくり6匹で住んでいるという事は… 「うっう~☆うぁうぁ~♪ れみ☆りゃ☆う~~♪」 喜んでいるのだろうか、ダンスを踊り出すれみりゃをみてあきらめ気分になった。 仕方ない、俺が面倒を見てやるかな。そんな気分になったのだった。 こぁーり(ニヤーリ)と後のほうでこぁが子悪魔のような笑いをしているのを犬だけが見ていた 「こんにちわ、れみぃ」 「おじさん、だれだどぉー!!」 「今日から君の家族になるものだがいえにかえろうか?」 「すごいんだどぉ! れみぃのかわいさにめしつかいができたんだどぉー!!」 「いや、私はぱちぇと一緒に住んでいる者で…」 「さすが! れみりゃはこーまかんのおぜうさま☆なんだどー!!!」 」 「…」 なんかわけのわからないことをほざいているが、家に帰ってからぱちぇとらんにしつけをさせれば直るだろうと聞かないことにした 年齢的に、本当にお兄さんなんだよ、俺は…20台後半だけど30まではおじさんと呼ばれたくはないんだよ。 「それじゃ、さっさと用事を終わらせて家に帰ろうかな。いくぞ3匹とも」 『了解ですぜ。ご主人』 「こぁ、ゆっくりりかいしました」 「うー☆わかったどぅー!おじさん!!」 そして、私たちは家に向けての帰路についた。 れみりゃが空を飛んでることに内心では驚いていたが顔には出さなかった。 そして、私たちは家に向けての帰路についた。何かを忘れているような気がするのは気のせいだろうか? とりあえず『れみりゃ、ゲットだぜ!!』 中編かわいいゆっくりゲットだぜ!!3-中へ続く 【あとがき】 作者名無しです。 とりあえず、れみりゃと私との出会いを書きました 3話目のプロローグを外伝にすればよかったと後悔しています 次もかわいいゆっくりゲットだぜ!! 書いたもの かわいいゆっくりゲットだぜ!! 1・2・3 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/umire/pages/13.html
Ep.1 Ep.2 Ep.3 Ep.4 Ep.5 Ep.6 Ep.7 Ep.8 Ep.F Ep.1 社名 社長 初期相場 初期収支 初期所有社 参加グループ 縁寿 右代宮縁寿 10万円 100万円 縁寿(本社) 兄弟姉妹 ※オプションで他にも追加 戦人 右代宮戦人 360万円 50万円 戦人(本社) 従兄弟、兄弟姉妹 真理亞 右代宮真理亞 150万円 20万円 真理亞(本社) 従兄弟、マリアージュ・ソルシエール 譲治 右代宮譲治 220万円 30万円 譲治(本社) 従兄弟 朱志香 右代宮朱志香 100万円 180万円 朱志香(本社) 従兄弟 ベアトリーチェ ベアトリーチェ 1700万円 400万円 ベアトリーチェ(本社) マリアージュ・ソルシエール Ep.2 社名 社長 初期相場 初期収支 初期所有社 参加グループ 南条医院 南條雅行 1000万円 600万円 新島組合 新島組合 サバ 熊沢鯖吉 38万円 38万円 新島組合 うみねこのいぶくろ 川畑漁船 川畑船長 470万円 60万円 新島組合 新島組合 マルフク寝具店 さくらたろう 400万円 40万円 新島組合 新島組合 新島組合 新島村長 1400万円 40万円 新島組合(本社) 新島組合 Ep.3 社名 社長 初期相場 初期収支 初期所有社 参加グループ 煉獄の七姉妹 ルシファー 1400万円 30万円 マリアージュ・ソルシエール マリアージュ・ソルシエール シエスタ姉妹近衛隊 シエスタ00 9億9999万円 99万円 マリアージュ・ソルシエール マリアージュ・ソルシエール ロノウェ ロノウェ 6660万円 30万円 マリアージュ・ソルシエール マリアージュ・ソルシエール ガァプ ガァプ 6億6099万円 880万円 マリアージュ・ソルシエール マリアージュ・ソルシエール さくたろう さくたろう 3939万円 39万円 マリアージュ・ソルシエール マリアージュ・ソルシエール マリアージュ・ソルシエール マリア・ベアトリーチェ 1億5000万円 1万円 マリアージュ・ソルシエール(本社) マリアージュ・ソルシエール Ep.4 社名 社長 初期相場 初期収支 初期所有社 参加グループ 元同級生の働くパン屋 赤子 5000万円 760万円 元同級生の働くパン屋(本社) うみねこのいぶくろ 元同級生の働くそば屋 青子 4000万円 350万円 元同級生の働くそば屋(本社) うみねこのいぶくろ 元同級生の働くラーメン屋 緑子 4500万円 710万円 元同級生の働くラーメン屋(本社) うみねこのいぶくろ 元同級生の働くメイド喫茶 銀子 6000万円 660万円 元同級生の働くメイド喫茶(本社) うみねこのいぶくろ 元同級生の働くケーキ屋 白子 1億円 410万円 元同級生の働くケーキ屋(本社) うみねこのいぶくろ 元同級生の働く建築会社 金子 300億円 1200万円 元同級生の働く建築会社(本社) Ep.5 社名 社長 初期相場 初期収支 初期所有社 参加グループ 蔵臼 右代宮蔵臼 4億円 50万円 蔵臼(本社) 兄弟姉妹 夏妃 右代宮夏妃 2億円 30万円 夏妃(本社) 苦労人 絵羽 右代宮絵羽 1億2000万円 90万円 絵羽(本社) 兄弟姉妹 秀吉 右代宮秀吉 3億2000万円 70万円 秀吉(本社) 苦労人 留弗夫 右代宮留弗夫 7000万円 80万円 留弗夫(本社) 兄弟姉妹 霧江 右代宮霧江 1000万円 60万円 霧江(本社) 苦労人 楼座 右代宮楼座 8000万円 40万円 楼座(本社) 兄弟姉妹 Ep.6 社名 社長 初期相場 初期収支 初期所有社 参加グループ 大月スーパー 大月ポスドク 20億円 300万円 大月大学院大学 大月家 大月ゲームセンター 大月助教 10億円 600万円 大月大学院大学 大月家 大月コンビニ 大月准教授 13億円 1700万円 大月大学院大学 大月家 大月アパート 大月@管直人 10億円 800万円 大月大学院大学 大月家 大月大学院大学 大月教授 100億円 1200万円 大月大学院大学(本社) 大月家 Ep.7 社名 社長 初期相場 初期収支 初期所有社 参加グループ ドラノール ドラノール・A・ノックス 1111億1111万円 1111万円 ヱリカ 真実の追究者、天界大法院 コーネリア コーネリア 10億0009万円 1009万円 ヱリカ 真実の追究者、天界大法院 ガートルード ガートルード 10億0007万円 1007万円 ヱリカ 真実の追究者、天界大法院 ヱリカ 古戸ヱリカ 280億円 28万円 ヱリカ(本社) 真実の追究者 Ep.8 社名 社長 初期相場 初期収支 初期所有社 参加グループ 小此木食品 小此木鉄郎 100億円 1020万円 右代宮財閥 うみねこのいぶくろ、右代宮財閥 マルソー 円宗 100億円 998万円 右代宮財閥 右代宮財閥 右代宮運輸 竜宮 100億円 1200万円 右代宮財閥 右代宮財閥 右代宮電機 北条 100億円 1600万円 右代宮財閥 右代宮財閥 右代宮製薬 古手 100億円 3200万円 右代宮財閥 右代宮財閥 右代宮財閥 右代宮絵羽 200億円 1600万円 右代宮財閥(本社) 右代宮財閥 Ep.F 社名 社長 初期相場 初期収支 初期所有社 参加グループ 源次 呂ノ上源次 400億円 50万円 八城十八 家具なんて言わないで 紗音 紗音 700億円 50万円 八城十八 家具なんて言わないで 嘉音 嘉音 100億円 50万円 八城十八 家具なんて言わないで 郷田 郷田俊朗 90億円 60万円 郷田(本社) うみねこのいぶくろ、家具なんて言わないで 熊沢 熊沢チヨ 300億円 50万円 八城十八 家具なんて言わないで 金蔵 右代宮金蔵 777億7777万円 7777万円 八城十八 右代宮財閥 ベルンカステル ベルンカステル 969億6969万円 1万円 ベルンカステル(本社) 真実の追究者 ウィラード ウィラード・H・ライト 10億円 22万円 八城十八 天界大法院 六軒島 東京都港湾局長 400億円 1万円 東京都 新島組合 八城十八 八城十八 1101億9960万円 570万円 八城十八(本社) 東京都 東京都知事 1000億円 1万円 東京都(本社)
https://w.atwiki.jp/83452/pages/12898.html
――― 唯「……あー、ひまだー」 梓「本でも持って来ればよかったですね」 唯「はぁ~~」 梓「帰りに向かいのペットショップに寄っていいですか。トンちゃんの餌を買うので」 唯「うん……。コインランドリーにいると、なんだか他の人の服を着せられてる気分になるね」 梓「実際私達他の人の服着てますからね、今」 唯「あ……あのお店最近できたのかな」 梓「……ウェディングドレス?」 唯「あ、そういえば」 梓「なんですか」 唯「今日りっちゃんの弟君の結婚式なんだって」 梓「そうなんですか。ああ、だから今日練習休みだったんですね」 唯「りっちゃん、今頃おいしい料理を食べてるんだろうなぁ。羨ましい……」 梓「そっちに憧れを抱くのは、唯先輩らしいです」 唯「他に何があるの?」 梓「花嫁、とか」 唯「花嫁、かぁ……」 梓「唯先輩?」 唯「あのドレス、かわいい……」 梓「やっぱり唯先輩は唯先輩です」 唯「ねぇ、あのお店見に行かない?」 梓「洗濯物、盗まれちゃいますよ」 唯「防犯カメラがあるよ」 梓「油断はできません。行くなら唯先輩一人で行ってください。私は残ります」 唯「え~。う~ん、しょうがないなぁ。ちょっと待っててね」 梓(唯先輩、まだかなぁ) 唯(あずにゃん! あずにゃん!) 梓(……。声は聞こえないけど呼ばれたような……。あ、唯先輩が手を振ってる) 唯(あずにゃ~ん、このドレスどう? かわいいでしょ!) 梓(……なんで着てるんですか) 唯(ねぇ、かわいい?) 梓(綺麗ですね。そのドレス) 唯(お姫様のドレスみたいだよね、これ) 梓(馬子にも衣装というか) 唯(ほらほら見て~) 梓(クルクル回らないでください、見苦しい。……意外と露出多いんだなぁ) 唯(でも歩きにくいなぁ) 梓(大人しく立っていられないのかな) 唯(あ、ポーズをとってみようかな) 梓(ブーケなんて持って来て何を) 唯(えへへ~) 梓(ブーケを胸の前に抱えてもそんな顔じゃ格好がつきませんよ) 唯(ふんすっ!) 梓(それもなんか違います) 唯(…………あずにゃん) 梓(……唯先輩) 唯(どう?) 梓「…………かわいいですよ」 ――― 唯「ただいまーっ」 梓「おかえりなさい」 唯「あ、こんにちはー!」 梓「え、あ、こんにちは」 唯「どしたの、あずにゃん」 梓(男の人……。いつからいたんだろう。全然気付かなかった) 唯「あずにゃ~ん?」 梓「あ、すみません。というか唯先輩、何やってるんですか」 唯「ほぇ?」 梓「ウェディングドレスです」 唯「ああ。私、あのお店のお客さん第一号なんだよ! だから特別に、自由に試着させてもらえたの」 梓「いいんですか。唯先輩、結婚の予定があるわけでもないのに」 唯「わからないよ? 一週間後、電撃結婚するかもしれないよ?」 梓「……誰とですか」 唯「さぁ?」 梓「唯先輩に限ってそんなことありえないです」 唯「え~?」 梓「はぁ。乾燥、まだ時間かかるみたいですね」 唯「そうだねー。というわけであずにゃん」 梓「はい?」 唯「あずにゃんもウェディングドレス着てきなさい。 今度は私が留守番するから」 梓「え……いえ、いいです」 唯「でも私、店員さんにもう一人来るって言っちゃったし……」 梓「また人の都合も聞かずに……」 唯「さあさ、いってらっしゃーい」 ――― 梓(来てしまった……。そして着てしまった) 唯(やっほー、あーずにゃんっ!) 梓(恥ずかしい) 唯(ほら、笑って。ポーズとって。クルッと回って) 梓(髪型までセットしてもらわなくてもよかったのに) 唯(アップのあずにゃんも新鮮だね。かわいいっ!) 梓(ドレスのふくらみが邪魔で足元が見えない) 唯(ちょこちょこ歩いちゃって。かわいいっ!) 梓(ん? これってよく見たら) 唯(あれ? あのドレスもしかして) 梓(唯先輩が着てたのと同じ?) 唯(私が着てたやつ?) 梓(店員さんに聞いてみよう) 唯(私がさっきまで着てたのをあずにゃんが……) 梓(あ……やっぱりそうなんですか) 唯(あずにゃんの方がかわいいね! 私より) 梓(なんだか変な気分) 唯(かわいいからいいんだよ、あずにゃん) 梓(唯先輩、さっきから「かわいい」としか言ってないような。気のせいかな) 唯(でも、顔がよく見えないなぁ。ベールがジャマで) 梓(喜べばいいのかな? でも違うことも言ってもらいたい。……違うことって何よ) 唯(ん? あずにゃんがベールを?) 梓(自分でベールを上げるのはおかしいかもしれないけど……) 唯「…………綺麗だよ、あずにゃん」 梓「……なにやってるんだろ、私」 ――― 唯「おかえりー」 梓「戻りました」 唯「かわいかったよー……ってあれ?」 梓「……おみやげ、だそうです」 唯「……ドレスって高いんじゃないの?」 梓「お客さん一号二号だし、二人に良く似合ってたからあげる、だそうです」 唯「気前がいいですな~」 梓「元々売り物ではなかったそうです。店長さんが試着者にプレゼントするために用意してたとか」 唯「そうなんだー」 梓「さ、乾燥も終わったみたいですし帰りましょう」 唯「うん」 唯「お、晴れてきたねー」 梓「はい。明日も晴れてほしいです」 唯「でも雨だったらまたランドリーに行って、それからあのドレス屋さんに行く口実ができるよ」 梓「デパートの試食品じゃないんですから。そんな気軽に試着しに行ったら迷惑ですよ」 唯「じゃあ次はいつ行こっか」 梓「それこそ結婚が近くなってからでいいんじゃないですか」 唯「いつになるんだろう」 梓「当分はないでしょうね」 唯「え~、あの店員さんにまた会いたいよ~」 梓「じゃあ迷惑がかからない程度に会いに行けばいいんじゃないですか」 唯「そうだねー。あずにゃんも一緒にね」 梓「……貰いものがありますからね。お礼は言いに行かないと駄目ですよね」 唯「今日は楽しかったね」 梓「はい。パーカーにスウェットで入るようなお店じゃありませんでしたけど」 唯「おままごとみたいだったけどさ」 梓「そうですね」 唯「でも、綺麗な花嫁を見れたよ!」 梓「私もかわいい花嫁を見れました」 唯「あはは」 梓「ふふ」 唯「ランドリーにいた男の人には奇異のまなざしを向けられてたけど気にすることないね!」 梓「……そこは気にします」 ※終わり 戻る あとがき 今まで読んでくださった皆さん、申し訳ありません 1の力不足のため、これ以上続けることができません 中途半端ですが、このスレはここで終わりたいと思います 本当にすみません。そしてありがとうございました
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/907.html
微エロです。 東方キャラが多めに出演しています。苦手な方は、注意してください。 いつもの様に、巨大な館の渡り廊下を掃除していく。 歩けど歩けど廊下は続いていって、果たして前に進んでいるのだろうかといった錯覚に捕われるが、壁に掛けてある壁画が変わっている事からちゃんと進んでいるのだな、と安心する。 普段だったら既に終わっているはずの作業なのだろうが、今日は何故かはかどらない。 …一人の、少女が頭から離れない。 加えて、例え掃除が終わったとしても、洗濯やら料理やらと次の仕事の事が頭にかすめ、おっくうに感じるのだ。 そのおっくうに感じる理由も『次の休みはいつなのだろう』といった煩悩から来るもので、―所詮言い訳だが、今の私は使い物にならないだろう。そう判断して仮眠部屋にへと向かう。 仮眠部屋に設置された簡易コーヒーメイカーを起動させ、トレイに逆になって何個か置かれているカップを一つとり、コーヒーを入れていく。 カップからコポコポと小気味良い音が聞こえる。コーヒーメイカーが停止し、私はコーヒーの入ったカップを持って近くのテーブルの椅子に座りこみ、ほうっと溜め息をつく。 …今日で、何回目だろうか。しかし、本音を言うと溜め息をつく度に私の脳裏に緑色の髪の少女の存在が浮かんでくるから、満更でも無いのかも知れない。 私は、最近引っ越してきた山の神社の巫女が好きだ。しかし、私には勇気がなく、きっかけが掴めないままでいる。 接点も、何もない。たまたま町にふらと立ち寄った時、恐らくそうだろうと思われる白と青の巫女服を纏い緑色の髪をした、凛とした表情の、なおかつどこかあどけないような…。 その少女を見掛けたのだ。失礼な話だが、全く場に合っていなかった。 どこかなく、神秘というか、何か庶民とは違う様な雰囲気が出ていたのだ。 「…ほう」 思わず、溜め息が漏れてしまう。 …一目惚れだった。 ずっと、彼女を見ていた。そうしたら、彼女は私に振り向いて、ニコリと笑いかけてくれた。 その時の私には、それだけで十分だった。しかし、所詮それも一時しのぎというか、また欲求が生まれてくる。 彼女と、話したい。…せめて、一目だけでも! 名前だけでも知りたい! 私は新しく天狗の山に神社が引っ越してきたということ位しか知らなく、そこにいる神の名前すら知らないのだ! …そもそも、彼女は山の神社に住む巫女ですら無いのかも知れないけれど。 ふと、カップに入ったコーヒーが目に入る。 先程まで湯気をあげていたコーヒーはすっかり冷めてしまった様で、一口舌に転がす様に含むと、妙に生温い感触が口内を伝わった。 駄目だな、もう一度滝れ直そうか。いや、それすらもおっくうだな。 時間を止める事のできる私が、時間を忘れるくらいに考え込むなんて。 これが、恋なのだろうか。 「恋は下心、愛はまごころ…、っと」 呟きながら、壁に掛った時計を見るとすでに30分も経過していた。 流石に、休みすぎか。しかし、気持ちの切り替えに踏ん切りがつかないままでいる。 …休もう。休むために仮眠部屋に入ったのに、思考を巡らせてばかりで休んでいないではないか。 テーブルから少し離れた所にある、真っ白のシーツに包まれたベッドの上にどすんと横になる。 どうやら私は自分の把握している体調以上に疲れていたらしく、すぐにうとうとと眠気が襲ってきた。 まどろんでいく視界の中、私は考える。 彼女は、何をしているのだろうか。 ☆ 身勝手な話だが、私は彼女と話したいと思う同時に、話したく無いと考えている。 話すということは、相手を知る。 私が思い憧れている彼女が、私の想像するような清楚な性格じゃなくて、下衆な性格をしていたら幻滅してしまうからだ。 自分から勝手に一目惚れして置いて、本当になんと身勝手なのだろう! しかし、自在に時を操れる私が何故能力を使わずに彼女を探しに行かないのか、そもそも何故周りから噂を聞かないかはといった理由の根本は、ここにある。 つまるところ、私には勇気が無いのだ。 勇気が無いから、このままでいいやと妥協してしまう。 妥協すると、今度は忘れる。 忘れると、彼女を思い出せないのだ。 …怖い。 彼女を、忘れたくない。 忘れたくないなら、行動しなければならない。しかし、それも怖い! …無いものねだりの結末は、何も無い。 私は、何がしたいのだろう。 『だったら、ゆっくりしていけばいいですよっ!』 「!?」 「ゆっくりしていってください!!!」 どこかから大音量の声が聞こえ、思わずベッドからむくりと起き上がってしまった。 すると、自信ありげな体たらくでシーツ越しに私の体に乗りながら、緑色の長髪をしていて頭にはカエルのブローチをつけた、 ――まるで、彼女を連想するこの子がそこにいた。 「おねーさん、今日から私がついていますよ! 元気だして!」 「…夢か」 もしくは寝惚けているのだろう。もう一度、枕にバフリと頭を埋める。 「ゆうっ! おねーさん、二度寝しないでください! せめて自己紹介してからにしましょうよっ!」 この子は大変慌てた様子で私のお腹から顔の近くへとぽふぽふベッドの上を跳ねながら向かってくる。 しかし、ベッドは慣れていないのか途中あらぬ方向に飛んでしまったり、ベッドからコロコロ落ちてしまいまた登ってきたりなどとても可愛らしい様子が伺えた。 これが、巷で噂になっているゆっくりとやらか。確かにとても愛らしい体たらくだが、ゆっくりを飼うとなると食費がかなりかさむという。 この子に対して私のカワイイものセンサーがビンビンに反応しているから是非とも一緒に暮らしたい所だが、いかんせんこの前まりもっこり買ったばかりでお小遣い無いんだよなあ…。 ああ、嗚呼、後生な…! 「ゆう~、おねーさん、無言ですりすりしないください、あ。…やっぱして」 気が付いたら私はこの子を頬にまで抱えてすりすりしていたらしく、この子は嫌がりつつも嬉しそうに顔を綻ばせている。案の定手を止めたら淋しそうな表情をして、もっとやってと懇願してきた。寝起き早々、鼻の奥から何か鉄の味が口内に広がった。 初々しいやつめ、この、この! 「あ、らめ、ほっぺを指でつつかないで…!」 この子があまりにも可愛らしい反応をしてくるから忘れていたが、そもそも今は勤務中だった。 時計で時間を確認してみると、仮眠室に入ってから既に6時間も経過していた。 事実を確認するためベッドの壁に付いている小さな窓から見える外の景色を覗きこむと、暗く太陽は沈みかえっていた。 「…あっちゃ~、やっちゃった」 本来なら仮眠などする時間は無いが、夕飯までに間に合えばいいかと2時間くらい寝ているつもりだったが、残念ながらゆうに食事の時間は過ぎてしまっている。 これはお嬢様たちがおかんむりだぞとうろたえている時に、不意にこの子がベッドに横になりつつ座っている私の膝に乗ってきて、胸に顔を埋めてすりすりしてきた。 私はそれを受け入れて頬を撫でてあげると気持ちよさそうに手に体を預けてきて目を細めるも、すぐにキッと目を開き私の目を見てきた。 ふむ、この子を撫でた感想だがもっちりとして手が弾むような感触を軸にさらさらとした髪がまた私の母性本能をくすぐって…! 「ゆうっ! 折角目を合わせた事に気が付いたのですから、聞いてくださいっ! おねーさん、ゆっくりしていないですよ! そんな働きずくめの生活じゃあいつか倒れちゃいます! 私と一緒に、ゆっくりしようではありませんか!」 この子がやや頬を膨らませながらキリッとした眉と目付きをして私にいってきた。 頬を人指し指でぷにりと押してみると、案の定小さな口を丸にして空気を吐き出した。可愛い。 「うーん。ゆっくりしたいのは山々だけど、私は勤めている身分だからね。十分ゆっくり出来たわ、ありがとう。あなたの名前、良かったら教えて貰える?」 「ゆっ! さなえはさなえですよ! ゆっくりしていってください!!!」 「さなえ、かあ」 あの子もそんな名前なのかな、と考えつつ無意識にさなえを抱き締めようとするも、今まさに業務を寝過ごした事を思い出す。 そうだった、今は急いでお嬢様に弁解しなければ! 「ゆうっ! おねーさん、またゆっくりしてないですよ! それに、おねーさんはしばらく働く必要が無いのですよ?」 さなえがぷりぷりと怒った様子で私に言いかけてくる。頬を膨らませているもやはりどこかなく可愛げがあり、思わず抱き締めてしまいそうに…、いかんいかん。 それにしても、働かなくても良いとはどういったことだろう? しかし、考えていても時間が過ぎてゆくだけなのでとりあえず部屋を出るためにドア前へと向かう。 すると、さなえがドア前までゆっくりとの名前が付いているとは思えないスピードで先回りをされ、通せんぼをしてきた。 頬の筋肉が柔らかくなる感触を抱いたが、このままでも仕方ないのでさなえを胸にだっこしてお嬢様の所へ向かう事にした。 当のさなえは『あ、あうう…』と不本意そうに、なおかつ恥ずかし嬉しそうに頬を赤らめて照れている。可愛い。 …が、現実逃避もここまで。私は半ばさなえの頬を弄んでいた手を止め、お嬢様への言い訳を考える。 どう言い訳しようか。いや、寝過ごした私が悪いのだから言い訳などせず素直に謝るということが筋というもの! いや、でも、怒られるのは恐いし…。 下手な考えを巡らせている内に、とうとうお嬢様の部屋前まで来てしまった。言い訳は何も考えていない。ああ、チクショウ! 恐らくお嬢様は夕食の時間になっても姿を現さない私を探したのだろう。 しかし、途中で叩き起こされる事無くぐっすりと眠っていたということは、見付けられなかったかもしくは仮眠室で寝ている私を見付けたもののかたくなに眠っていたという事だろう。 後者だとしたら、さっぱり記憶に無いだけに尚恐ろしい。どちらにしろお嬢様はすねられて不手寝されていることだろう。気まずいなあ! しかし、躊躇していても仕方ない。緊張した手付きで豪勢な造りのドアを開けて部屋に入る。 そこには、『う゛ー゛!゛ 待゛ち゛く゛た゛ひ゛れ゛た゛と゛お゛お゛お゛!゛』と地べたに座り込み泣き叫んでいる可愛らしいお嬢ちゃんの姿が…、あれ? 「さ゛く゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛ れ゛み゛ぃ゛、゛さ゛み゛し゛か゛っ゛た゛ん゛た゛と゛お゛お゛お゛!゛!゛!゛」 お嬢ちゃんが床に手を付きながら立ち上がり、そのまま私の方へおぼつかない足取りで向かって来て愛らしい顔を私のお腹にぽふりと埋めて抱きついて来た。 このお嬢ちゃん、あーと、お嬢様? お嬢様ではない、いやいやお嬢様である事は確かなんだけれど! 目の前にいるお嬢様に似たお嬢ちゃんは、お嬢様と比べて引き締まっているお顔が丸っこく、手足も赤ちゃんのようにぷにぷにしていてどこかなく肉まんの良い匂いが漂うお方になっていた。 「…うー? さくや、どうしたんだどぉ?」 さっぱり動かない私に疑問を持ったのか、お嬢ちゃんがお腹に埋めていた顔をあげて私の顔を覗き込んできた。 『うー?』と、汚いものを知らない様な無垢で純真な瞳で覗いてくる。 鼻の奥がふたたびチリチリと熱くなる感触を感じた。 「うー、しゃくや! いくられみぃが絶世の美女だからって、いきなりすりすりするのは良く無いんだどお!」 どうやら私はまた無意識の内に頬と頬をすりすりしていたらしく、お嬢ちゃんに怒られてしまった。さなえからはジト目の目線が飛んでいる。 しかし、お嬢ちゃんは自身で『れみぃ』と名前を言っている。この館のお嬢様は『レミリアお嬢様』だから、そこそこ被っていると言えば被っている。 ここは聞いてみるべきか。このまますりすりしだきたい気持ちを抑えつつ、お嬢ちゃんに聞いてみた。 「えっと、お嬢ちゃんはこの館の主人なの?」 「うー、そうだどぉ♪ れみぃはこーまかんのおぜうさまなんだどぉ!」 うわあああああああやっぱりそうだったよおおおおおおお嬢様変わってるんだよチクショウうわあああああ …可愛らしいしいっか。お嬢ちゃん、おほん。お嬢様は手を頭の上に挙げ、腰を軽く振りながら笑顔で何やらダンスを踊っている。 しかし、そのダンスはとりわけ上手なものではなく、所々もたついていてそのつど顔を曇らせている。 可愛い。 「…ふんっ!」 「あいた!」 不意に、床にいたさなえが私の足に向かっていきなり跳ねてきた。 当たってもぷにんと気に障らない程度の感触しかしないけれど、さなえの表情を見てみると何やら怒っている様に見える。 はて、何か忘れている事でも…、あ! 「ありがとうさなえ、忘れてたわ! …ごほん。お嬢様、遅れましたが只今夕食の準備を致しますので、何かご希望があられればなんなりと申し付けください」 「うー? …れみぃ、難しい言葉、…わ゛か゛ん゛な゛い゛ど゛ぉ゛ー゛!゛!゛」 「あ、あれ?」 お嬢様は言葉が理解できないご自身に腹が立って癇癪を起こしたのか、今にも泣き出してしまった。 ほーら、大丈夫ですよーと柄にも無い高い声を出しながらそっと抱き締めてお嬢様をあやすと、どうやらすぐに機嫌を直してくれたみたいで泣き止んでくれた。一安心。 背中には何やら張りの良い感触がボヨンボヨンと止まず受けているが、まあ些細なことだ。 「お嬢様。今日のご飯は何にしますか?」 「うー? れみぃ、ご飯は食べたんだどっ!」 「ゆっ、ほらあ! まーた、おねーさんはゆっくりしていないでは無いですか! 駄目ですよ、そんな事では! おねーさんは働く必要が無いんですっ!」 背中からさなえが顔を現して、私にお前はニートでいいと関白宣言をしてきた。 確かにありがたい申し出だが、働かなければいけないし…。 これが会社の同僚にプロポーズを受けた女性の方の心情なのだろうか。 「もうっ! 行きますよ、おねーさん! もっと手っ取り早くおねーさんが働かなくていい証拠を見せてあげます!」 「え? あ、ちょっと! さなえっ!?」 私はさなえに引っ張られ連れて行かれるがまま、いや、厳密にはさなえはゆっくりなので手足が付いていないので私が付いて行っているだけだけど。 無言の圧力というか、ゆっくりにあるまじき威圧感というか、その他もろもろの恐怖を感じてここで付いて行かなければやられる! と脳裏に焼き付いたので、素直に付いて行かざるを得なかった。 お嬢様への挨拶も十分ではないのに、さなえはそんなに一体何を怒っているのだろう。 お嬢様に軽い会釈を送ろうと、ドアを出る直前に後ろを振り向くと、お嬢様は『あら、お年頃ねぇ~ん』と言わんばかりに体をもじらせて手を頬と目に、しかし視界は見える様にかバッチリ人指し指と中指の間を開けて当てている。 お嬢様に失礼しますと一言残し、私は連れられるがままにお嬢様の部屋を後にした。パタン、と廊下にドアが閉まる音が響く。 「…さなえ。どうして無理に私を外に出したの?」 「…ぷんっ! おねーさんも、そんなニブチンな様ではまだまだ瀟洒とは言えませんね!」 さなえはツンと顔を上げ、ぴょんぴょん跳ねながらすぐに先に行ってしまった。慌てて追い掛けると、そこは調理場だった。 「ゆうっ、ここです! 覗いてみてください!」 異様に大きいさなえの声に圧されて思わずはいっと返事をしながらそっと調理場を覗いてみる。 そこには、せっせと材料を用意しているたくさんのゆっくりの姿があるではないか! 「…え、ええ? あり? 可愛い」 思わず混乱してしまい変な言葉と本音を出してしまったが、些細な事だ。問題は、何故紅魔館の調理をゆっくりが担当しているかだ! 「誰がこんな仕事の押し付けを…、はっ、まさか美鈴!? あの子ったら、自分がサボりたいがためにこんなに酷い事を…!」 「もうっ! おねーさんはどれだけ勘違いをすれば済むのですか! 付いて来てください!」 さなえはプリプリと怒りながら次なる場所へ向かっていったらしく、少々唖然としていた私は気が付いたらさなえがそこそこ先へ行っていて小走りで追い掛けなければならなかった。 さなえが向かった場所は、玄関前のロビーだった。異様に広いため普段は雇っている妖精のメイド達がせっせと掃除に励んでいるはずだが、目に映った光景は妖精メイドではなくゆっくり達の姿だった。 「…ウチの館って、こんなにゆっくりいたんだっけ?」 「…ゆう。おねーさん、本当は気が付いているのでしょう? 私が言ってあげますよ。 私たちがおねーさんの仕事を全部引き受けたから、おねーさんは働かなくていいんですっ!」 ☆ 「ゆぅ~、ちゅりちゅりぃ…♪」 先程、ゆっくりたちが皆で私の仕事をしているといった事実を目の当たりにしたため、またと無い機会だしゆっくりする事を決め、仮眠室へと戻ってきたのだ。 仮眠室とは言え、ほとんど名目上でお嬢様が私に与えてくださった様なもので事実上私の部屋にあたる。 殺風景な事は否めないが、紅魔館で唯一ほっと一息つける空間なのだ。 それにしても、先程からさなえが異様なまでに甘えて来る。とても嬉しいのだが、何やらさなえから焦りというか、対抗心の様なものが見える様な…。 「ゆっ、おねーさん! さなえ、お腹が減って来ちゃった…」 さなえが私のお腹ですりすりをしていた顔を上げ、上目遣いで私に投げ掛けてくる。うおお、そんな目で見られては何か用意しない訳には行かないではないか! 私ももう半日は何も食べていない事に気が付き、意識すると急にお腹が減ってきた。 「そうね、私もお腹がペコペコだわ。あなたたちが私の仕事を引き受けているということは、夕食が出来るまで待っていてということだもんね。軽い、おやつにしよっか」 私はお腹にいるさなえを座っているベッドに降ろして立ち上がり、部屋の隅に置いてある冷蔵庫を開け、…恥ずかしい話、日々生き甲斐にしているプリンを二つほど取り出してテーブルの上に置く。 さなえは『たまらん!』と言わんばかりに目を光らせて今にも食べたそうに私の足元へ近付いて来て体を左右に動かしている。 わかってるじゃない、さなえ! 女の子たるもの甘いものには目が無いものよね! 「じゃあ、さなえは向こうの椅子に座って。スプーンを用意するから、待っていてね」 「…ゆう。さなえ、おねーさんに食べさせて貰いたい、かな」 気が付いたら時が飛んでいた。今わかる事は、口内が鉄の味でいっぱいな事と、さなえをベッドに押し倒していてキュートなほっぺにキスをしていたという事だ。 「ゆっ、ゆっ、おねーさん、そんな、いきなりなんて…」 さなえは頬を真っ赤に染め上げ、息を上げてベッドにうつ伏せになっている私の頬にキスを返して来る。 この上無い幸せを感じたが、今はプリン。女の子たるもの、犠牲を出してでも甘いものを前には進まなければならないのだ! 「…ふう。さあ、おいでさなえ。プリンを食べさせてあげる」 体を起こし、ベッドに座りこみ膝を軽く叩いてさなえが膝に来る様に誘導する。さなえはボーっとしていたのか枕付近からしばらく動かなかったが、ハッと我に戻ったのかすぐに膝の上に乗ってくれた。 私の手には既にプリンとスプーンが握られている。甘いもの好きな私に隙は無い、さあ! どこからでもかかって来なさい! 「ゆぅーん…」 さなえは目を閉じて可愛らしい小さなお口を少し開けて今か今かと待ち構えている。 予想はしていたが、あまりの破壊力に大分動揺を喰らったッ! しかし、これしきの事でくじける私ではない! スプーンでプリンを掬い、さなえの口に近付けたその時だった! (さなえにいたずらすれば可愛らしい反応をしてくれるんじゃ無いかな…) 悪魔が私の脳裏に囁いてくる。や、やめろ! そんな事をして万が一さなえに愛想をつかれたらどうする! 私は冒険しない、今の幸せを噛み締めているだけでいいんだ! (本当にぃ? これっぽっちも、さなえの反応が見たいと思って無いの?) …、くっ! (やっちゃいなよ、ほら。あまりに遅いからさなえが薄目を開けて私の事を見てるわよ?) …私はお前に自分を売った訳でも、誘惑された訳ではない。これは自分自身が考えて決めた行動だ! (あら、そう? まあ私はどっちでもいいわ。頑張ってねぇ~) 悪魔は去った。私は様子を伺っているさなえの髪を撫でながらはい、あーんと告げる。 さなえは私を信用していのだろう、無防備に目を閉じて可愛らしいお口を開けている。 私は先程プリンを救ったスプーンを持つ! スプーンをゆっくりとさなえの口元に近付けていって…、さなえの唇とプリンが当たった瞬間! 私は急いでプリンをさなえの口元から引き離し、私の口に持っていった! さなえはパクリと軽く体を動かして噛みつくも、感触がしなく空を切った事に疑問を感じたのかキョロキョロと辺りを見回す。 さなえが私をみたのは背後から私のおいしいと言った声が部屋に響き渡ってからだった。 「…あ。ああ、あ、…さ゛な゛え゛の゛プ゛リ゛ン゛が゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛」 さなえが体を震わせて玉の様な涙を流す。私がしまった、と後悔したのはその直後だった。 「ご、ごめんね! てっきり怒りはするものの、まさかそこまで無くとは思って無かったんだ!」 「ひ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!゛!゛!゛」 「ほら、まだまだプリンは残ってるし、はい! あーん!」 「ん゛っ゛…゛、あ゛ー゛ん゛!゛」 私はもう一回スプーンでプリンを掬い、さなえの口元にまで持っていく。さなえは用心しているのか今度は目を瞑らず、じっとプリンに注目している。 プリンと唇が触れるかどうかと言った瞬間、私は急いで腕を私の口にまで引き付け、そのままもう一度私の口に入れた。 案の定膝元から『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛!゛!゛!゛ プ゛リ゛ン゛!゛!゛!゛』と悲痛な叫びが聞こえる。 ぞくぞくしてきたが、流石にやりすぎたか。私はさなえにきちんと謝る事にした。 「ごめんね、さなえ。今、新しいスプーン持って来るから待っててね」 「ゆ゛ー゛…、さなえ、そのスプーンがいいですっ」 さなえはジト目で私を警戒しつつ、そう言ってきた。 「はて、なんでですか?」 「だ、だって…! 不本意ながらも、お、お、おねーさんと間接キスじゃあ、ないですかっ!」 もじもじしながら頬を赤らめるさなえ。私は薄れゆく視界の中、至福とは何かを見い出せた気がした。 「…なんて、ごめんなさい。調子乗りました…、ゆっ? おねーさん、おねーさん!? あわわ、おねーさーん!!!」 ☆ 「うーん、…ハッ!」 「ゆっ! おはよう、おねーさん!」 気が付くとベッドの上に横になっていた。頭には氷嚢とタオルが敷かれていて、意識した途端に額が冷たくなる。 一体、どういう事か? 「ゆっ! おねーさんがいきなり倒れちゃうからびっくりしましたよ! おねーさんをベッドに運んでいたら他のゆっくりにプリンとられちゃったし、ゆっくり出来ませんでした…」 横になる私に、さなえが喋りかけてくる。話を聞く限り、どうやら私は急に倒れ込んだそうだ。自分ではちゃんと意識があるつもりだけれど、今も尚あたふたしているさなえの様子からして確かなものらしい。 それにしても、私の看病をしてくれている時にプリンを捕られてしまうなんて…。必死だったがために、気が付かなかったのだろう。なんだか、嬉しいかな。 「もうっ、日頃から無茶ばっかするから急に倒れたりするんですっ! おねーさんの体はおねーさんだけのものでは無いんですから、もっと気を付けてくださいね」 さなえが私に忠告しながらテキパキと代えのタオルと氷嚢を頭に乗せてくれた。入れたてと思える氷嚢の冷たさが少々ほてった体に気持ちいい。 手伝おうと起き上がろうとする私に『大丈夫ですよ』と一言言われ、何もする事が無い私は黙ってさなえの様子を観察する事にした。 あらかじめ用意されていたのだろう、テーブルの上にあるスープの乗ったおぼんをどういう原理か器用に頭の上に乗せ、ベッドまで運んでくれた。 運ぶ時にさなえの口から『ゆーしょ、ゆーしょ』と掛け声が出ていて、なんとも可愛らしい。 「ありがとう、さなえ。いただきます」 「ゆうっ、おねーさんは上半身だけ起こしてくれればいいですよ! さなえがあーんしてあげます!」 さなえがそう言うのでとりあえず上半身だけ起こして待ってみるが、果たしてどうやって食べさせてくれるのだろう。 まさかスプーンが浮くのだろうか? 「はい、ゆぅ…ん」 さなえは口で器用にスプーンをくわえてスープを掬うと、そのままスプーンを私の口へ入れてくれた。 ゆっくりには中々重く辛い作業なのだろう、さなえは鼻の上を赤くして息切れをしている。同時に私の中で何か大切な理性が消し飛んだような感触もしたが、まあ些細な事だろう。 「ゆうっ! おねーさん、胸をっ、そんなに押し付けないで!」 またもや無意識の内におもむろにさなえを抱き締めてバインバインしていたみたいだ。今日は、無意識が多いなあ。 「…んもう、おねーさんったらっ! 今は食事の時間ですよ!」 さなえはもの惜しそうな表情を浮かべつつ抱き締める私の腕から逃れ、もう一度スプーンの端を口にくわえる。 なんだ、さなえだって満更では無かったんじゃないか。可愛らしいやつめ。 さなえがスプーンでスープを掬い、もう一口私の口内にスープの味が広がる。正直に言うと、朝から何も食べていない私のお腹は悲鳴をあげていて、さなえの掬ってくれるペースのままだととてもでは無いがお腹が満たされる事はないだろう。 しかし、これでいいのだ。一口食べさせてくれるだけであごを痛そうにさせるさなえ。目は潤んでいて、高さの問題からしてどうしても上目遣いになってしまうため、私の母性本能が縦横無尽に刺激される。 …何より、さなえが初対面のはずの私にここまでしてくれる事がたまらなく嬉しいからだ! 何か裏があるのかもしれない。それでも、とても嬉しい。出来ることならいつまでもこうして居たいくらいだが、さなえのあごが限界を迎えたらしく八口から先は自分の手でスプーンを掬う事になった。 「ありがとうね、さなえ」 「ゆうっ、おねーさんがゆっくり出来ればそれでいいんですっ!」 さなえが笑顔を浮かべながら言ってくれる。 …――その時の表情が、町で見掛けたあの彼女のものと被った様に見えた。 あの少女も、こんな風に尽してくれるのだろうか。 あの少女は、私と話してくれるだろうか。 「…さなえ。あなたにとっては面白く無いだろう、相談なんだけど」 「ゆっ? どうしたの、おねーさん。改まらなくても、別に構わないですよ」 「…ふふ。あなたはどうしてそこまで私に尽してくれるのか少しばかり疑問に思うけど…、まあ、それはいいか。 私ね、好きな人が居るんだ」 「…」 「一目惚れでね、町に行った時にたまたま見掛けたんだ。認識すら無いわ、ただ噂は聞いていた。 山に新しく神社が引っ越してきて、そこの巫女の髪の毛の色は緑色だって」 さなえが私のお腹にゆっくりと飛び乗り体を預けて来たので、それを受け入れてさなえの綺麗な長髪を撫でてあげる。 さなえは複雑な表情を浮かべながらも、『ゆぅ…』と気持ち良さそうに目を細めた。 「私、彼女と仲良くなりたい。話だけでもいい! 一言、声を聞きたいだけ。 でも、それが出来ないの。拒否された時や、私の想像している性格の人だったら、幻滅してしまうだろうから。 幻滅してしまうことが、たまらなく、恐いの」 「…でも、そのままじゃあ進展もしないよ?」 「もちろん。それも伴って、恐いんだ。 どうしたらいいのか、このまま逃げていていいのか、素直に諦めるか、いろんな考えがよぎっちゃって、もう…」 「…ゆっ!」 うとうとと甘えていたさなえがカッと目を開き、ポヨンと私の膝から大きく飛びベッドの枕付近に乗ると、私の目を見て喋り始めた。 「おねーさん、見ず知らずの人に好きだって言われたら、どう思う?」 「えっ? そ、そりゃあ戸惑うけど…」 「うーん、それでも嬉しいとか、嫌な気分かで言ったらどっち?」 「…ええと。嬉しい、かな」 「なら、そういう事だよっ!」 さなえが笑顔でぽよんぽよん跳ねながらそう言った。 同時に、さなえは私の肩に飛び乗って『頑張れ』と唇に軽くキスをしてくれた。 唇にキスをした後のさなえの淋しそうな表情が、妙に頭の片隅に引っ掛かった。 ☆ 私は今、町の甘味屋前にいる。 茶葉が足りなくなったので町に買い物へ出かけに行った…、というのは口実で、本当の理由はまさに今甘味屋で絶賛味わい中の『彼女』に話し掛けるためだ。 別に、無理に探し当てた訳ではない。元々自分から山の神社に出向いて挨拶しようと考えていた。それで、手ぶらで挨拶に行くのも淋しいし、何か甘いものが恋しく感じたのでふらと甘味屋に立ち寄ったらたまたま彼女が甘味を楽しんでいたというわけだ。 …しかし、いざとなると中々勇気が湧かないもので、館の中で何回も練習した話の掴み方もどんどんとおぼろげに霞んでゆく。 ええい、何を躊躇している私! どうせ幻滅したとしても、それは私の都合ではないか! だったら、私は話し掛ける! 甘味屋ののれんをくぐり、一目散に彼女の座る席へと向かい、彼女に話し掛けた! 「あ、あのっ、あのッ!」 言えた、言えた、言えた、言えた、言えた! 「…、? はい、何でしょう」 緑髪の彼女はきょとんとしながら返事をしてくれた。団子の串を持っている両手が固まっているものの、肝心の甘味を味わう口はもごもごと動いていて可愛らしい。 「え、えっと! その、ううん、うぅ!」 あああ、頭の中が、真っ白というか、ああ! 頑張れ、私! 「す、す、す、好きですっ!」 私は薄れ行く視界の中、ああ、終わったなと考えました。 いくらテンパっているからって、いきなり好きですは、ねえ…。 もし彼女が私の思っているような、それこそさなえの様な性格の持ち主だとしてもこれはフォロー不可能で距離を置かれる事だろう。 ああ、ああ、なんて無情な! まあ、話し掛けられずに眺めるだけで満足していた臆病な私にとっては十分頑張ったか。 お疲れ、私! 「…はい。私も、好きですよ」 「…へっ?」 瞬間、元々世界に色は付いていたが、それらが色鮮やかに彩られる様な感触に包まれた。 「さ、さ、さ、さ、さなえ~! やったよ、話し掛ける事が出来た! それに、仲良くなっちゃったんだ! 来週、一緒に峠に行く予定! えへへ、いいでしょ! …さなえ? さなえ、どこ~?」 『おねーさんへ きちんとしたあいさつもせず、つくえのうえにてがみだけをのこしてさるわたしをおゆるしください。 わたしは、ゆっくりできないひとのまえにあらわれてゆっくりさせるためにつくられたそしきのいちいんです。 こんかいわたしにあたえられたぎょうむは、こーまかんのおえらいさんからいらいされたにんむで、おねーさんをゆっくりさせるというものでした。 このてがみをかいているときはまだはなしかけられたかはわかりませんが、おねーさんならきっとはなしかけられたのだとしんじて、おねーさんがかえってくるまえにてがみをのこしました。 おねーさんがかえってくるころにはこーまかんのみんなはゆっくりからふつうのめいどさんにかわっているはずです。 おめでとう、おねーさん。また、あいたいです。』 『ps.かんじがかけなくてすみません。わたしのふぁーすときすをうけとったのだから、せきにんとってくださいね』 ☆ 「どうも、お邪魔します~」 「あ、いらっしゃい。今は諏訪子様も神奈子様もいないから、のびのび出来ますよ」 「…それは助かるわ。早苗ちゃんには悪いけど、あの二人がいるとぎこちないのですもの」 「あはは、そう言わないでください。お二人方はお二人方なりに私たちを応援してくれているんですよ」 「うーん、そうかなあ…」 「ゆっくりしていってね!!!」 「お、出たな。私と早苗ちゃんが玄関で会った時にはいなかったのに、どっから沸いて来たんだお前。さあこい、ふにふにしてやるぞっ!」 「ゆうぅ~ん、おねーさんのお腹はおねーさんと違ってぶにぶにじゃなくて、ちょうど良いねぇ~♪」 「咲夜さん、ちょっと貸して貰えませんか…。ほらァ!」 「ゆぶッ!!!」 「ちょ、ちょっと早苗ちゃん! この子地面にのぺーって垂れて広がってるわよ!?」 「いいんです、れーむにはこの位がちょうどいいんです! …さなえちゃん、まだ戻らないのですか?」 「…ええ、戻らないわね。まあ、手紙にも書いてあったし。ひらがなばっかりだったから、もう一度別の紙に漢字で直さないと読みにくくて、手間がかかったわ。 その手間すらも、なんだかいとおしく感じたんだけどね」 「甘味屋で、私たちが会って、その時にはもう居なかったのでしょうか」 「わからないけど、多分そうなんじゃあ無いかしら。ただ、残念かな。せめて、報告だけでも聞いて欲しかった。 初めて話し掛けた時、早苗ちゃんに言った通り私が今早苗ちゃんと仲良く出来るのはさなえのお陰だからね。 『あなたが好きだって言われたら嬉しいでしょう? なら、そういう事ですっ!』って。この一言で何もかも吹っ切れて、早苗ちゃんに話し掛けようと考えたんだ」 「うーん、別にそのまま話し掛けてくれれば良かったのに。咲夜さん、かわいいじゃあ無いですか。それも、綺麗だとか、上品な意味で」 「まあ、謙遜はしないわ。でも、早苗ちゃんの好みに合わないかどうかや、そもそも彼氏とかいたらどうしようって考えるとおっくうになってきて…」 「…咲夜さんは、チキンですね」 「うっ! …否定は、しないけど」 「否定『しない』んじゃなくて、『出来ない』のではないですか? …そのゆーピットの名前と私の名前、同じなんですよね。ちょっと、妬いちゃうなあ」 「…早苗ちゃん?」 「その子とは一日限りの出会いだったのでしょうが、私と咲夜さんは会ってからそこそこ時間が経っています。それに、私と咲夜さんは何回も会って遊んだ仲じゃないですか! …なれるかどうかわかりませんが、私が咲夜さんにとってのその子に、その子以上の存在に立候補、いや! なってみせます! 時間がかかっても、必ず! だから、…一緒に、いてくださいっ!」 「…、! …―早苗ちゃ」 「ゆぅ~、何でれーむが下駄箱に隠れて無いといけないのー? やだ、もうやや! おうちかえゆもん!!!」 「ば、ばかっ! おばかやろうれーむ! 今一番いい所じゃねえか! ああああ、お前って奴は!」 「…二人とも、下駄箱から出て来なさい」 「ぷはっ、やっと下駄箱から出れたよ! れーむをこんな所に閉じ込めるなんて、何様なの!?」 「ち、違うんだぜおねーさん! まりさたちは決しておねーさんの話を盗み聞きしていた訳じゃなくて、あれだ! …そう、見守ってあげてたんだ! むしろ感謝して欲しいくらいだぜ!」 「…問答無用ッ!!!」 「「ゆべええええッッッ!!!」」 おねーさんへ きちんとした挨拶もせず、机の上に手紙だけを残して去る私をお許しください。 私は、ゆっくり出来ない人の前に現れてゆっくりさせるために創られた組織の一員です。 今回私に与えられた業務は、紅魔館のお偉いさんから依頼された任務で、おねーさんをゆっくりさせるというものでした。 この手紙を書いているときはまだ話し掛けられたかはわかりませんが、おねーさんならきっと話しかけられたのだと信じて、おねーさんが帰ってくる前に手紙を残しました。 おねーさんが帰って来る頃には紅魔館の皆はゆっくりから普通のメイドさんに替わっているはずです。 おめでとう、おねーさん。また、会いたいです。 咲夜さんの微熱っ! 珍しい組み合わせが見れた上にキュンときた、これが恋…。 -- 名無しさん (2009-03-12 21 57 33) 咲夜さんと早苗さんとは本当に珍しい スゴク良かったッス! しかしこの咲夜さんなんかアネゴ肌(←うにゅ?)を微妙に感じるんだが・・・気のせい? -- 偽ゆっくりれいむ (2009-04-10 03 10 31) さなえ…いいこやなあ… -- 名無しさん (2010-11-20 21 30 57) さくさなとか新鮮すぎる -- 名無しさん (2010-11-25 12 06 27) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/83452/pages/11594.html
ある日のこと…… 唯「うい~、帰ったよ~」 憂「お帰りなさい、お姉ちゃん」 紬「こんにちは、憂ちゃん」 憂「あ、紬さんこんにちは……て、え?」 唯「へへへ~」ムギュー 憂「お姉ちゃん、何で紬さんに抱きついてるの?」 唯「だって、ムギちゃん暖かいんだもん。一家に一台欲しいくらい!」 紬「あのー、もう室内なんだし……離してくれないかな?」 唯「えー、もうちょっと~」 憂「お姉ちゃん、紬さん困ってるよ。あまり迷惑かけちゃダメだよ?」 紬 (もはや、どっちがお姉さんかわからないわね……) 憂「ほら、お姉ちゃんっ」ギュー 唯「わわ、わかったから引っ張らないで憂」 憂「もーう。ごめんなさい紬さん、お姉ちゃんが迷惑かけて」 紬「ううん、気にしないで」 唯「ふぅ……それじゃ改めて。たっだいま~、憂」ダキッ 憂「きゃっ、も、もうお姉ちゃんったら~」 紬「ふふ、それじゃ私はこれで」 憂「あれ、紬さん上がっていかないんですか?」 紬「ええ、それじゃあね唯ちゃん」 唯「うん、ムギちゃんまたね~」 憂「……」 憂(一家に一台かあ……) 憂(……抱きついてみたい、かも) …… 憂「て、こんなことがあってね」 純「いや、真顔でそんな話されても困るんだけど」 梓「憂って意外と人にスキンシップ好きだよね」 憂「うん! それに、お姉ちゃんイチオシなんだよ? 興味わくよー、やっぱり」 純「そーお?」 梓「ああ、でもわかるかも。ムギ先輩って体温高くて暖かいらしいし」 憂「梓ちゃんはムギ先輩に抱きついたことととかないの?」 梓「あ、いや、ないかな。抱きつかれたことなら……いや、というか似たようなことなら」 純「へ、へえー……進んでるんだね、梓って」 梓「そ、そんなんじゃないよ。ただ、寂しかったらしくていきなり構ってって……」 憂「で、どうだったの梓ちゃん?」キラキラ 純(憂の目がこれ以上ないくらい輝いている……!) 梓「あー、どうなんだろう……やわらかかかった、かな?」 純「や、やわらかかったって……」 憂「あー、確かに紬さんフワフワしてるもんね」 梓「うん、そうなんだよねー」 純(……あれ? なんかやらしい響きに聞こえてまったの私だけ?) 憂「あー、いいなあ! 私もやっぱり紬さんをムギューってやってみたいなあ!」 「ナニアレー?」ヒソヒソ 「ヒラサワサンガアブナイハツゲンシテルー」 純「ちょ、ちったあ声のトーン抑えなよ。周りから変な目で見られてるよ!?」 憂「ね、梓ちゃん。何かいい方法ないかな?」 純「聞いてないしっ」 梓「そうだなあ……あ、でもムギ先輩も結構スキンシップ好きだし 真正面からお願いしたら普通に抱きしめてくれるかも知れないよ」 憂「ま、真正面からなんて……は、恥ずかしくて無理だよー///」 純「私は今まさに周りの視線が恥ずかしいんですが」 梓「大丈夫だって、ムギ先輩そっちのケがあるみたいだし」 純「さりげにとんでも無いこと言ってるよこの娘! どんなケだよ!?」 憂「う、うー……それなら、大丈夫かも」 純「いや、逆にヤバイでしょ! 食われちゃうよ!?」 梓「もーう、純さっきからウルサイよー」 憂「ねえ純ちゃん? 食われちゃうってどういうこと?」(真顔) 純「……はい?」 梓「あー、私もちょっと気になるかも」(真顔) 憂「ね、純ちゃん?」(真剣) 純(な、何この娘たち~……これじゃ私が変人みたいじゃん!) 憂「じ、じゃあ真正面からお願いしてみることにするね」 梓「うん、頑張ってね憂。大丈夫、多分ムギ先輩はあっさり落ちるよ!」 純(……もう私はツッコまないぞ) 憂「あー、でもいざお願いするとなると緊張するなあ」 紬「あら、みんな」 憂「つ、つむぎしゃんっ!」 梓(噛んだ! ドジっ娘!?) 紬「あらあら、どうしたの憂ちゃん。可愛い声を出して」 憂「あ、え、あの、その……」チラッ 梓(頑張れ、憂!)キリッ 純(テキトーにがんばれー)チラッ 憂(う、うん! 私、頑張る……!) 憂「あ、あの。紬さんっ!」 紬「なあに?」 憂「あ、あー、その、だ、だ……」 紬「?」 梓(もう一息だ、憂!) 憂「だ、だ……」 憂「第2回三頭政治のメンバーは誰でしょうかっ!?」 紬「オクタヴィアヌスとアントニウスとレピドゥスね」 梓(な、何で世界史の問題出してんのよーー!?) 純(しかもムギ先輩、間髪入れずに答えた……この人、只者じゃない!) 紬「ふふ、急に問題出すなんて。面白いことするのね憂ちゃん~」ナデナデ 憂「! え、あ、ははは……///」 紬「それじゃ、私教室に戻るわね。それじゃあ、梓ちゃんと鈴木さんも」 梓「あ、はい」 純「お元気で~」 紬「ふふ、じゃあね~」トタタタ… 梓「……憂?」 憂「///」プシュー 純「あ、湯気出てる」 梓「緊張しすぎだよー。絶対大丈夫だから、次はちゃんと言いなよ」 憂「う、うんがんばるー///」プシュー 純「……なんで私はこの子らに付き合ってるんだろう」 梓「というわけで、本日二度目のチャンスだよ、憂」 憂「うん、同じ失敗はしないよ」 純「ねえ、なんで私まで付き合わないとダメなのー?」 梓「なんとなく」 純「あっそ」 憂「来た……!」 紬「♪~」 憂「あ、あのっ! 紬さん!」 紬「あら、憂ちゃん。今日はよく会うわね~」 憂「え、ええそうですね。あ、あの紬さん……」 紬「何かしら?」 憂「えーっと、あの……今日はいい天気ですね?」 紬「盛大に雪が降っているけれど……?」 憂「あ、いえそうじゃなくて……あの、寒いですよね、最近」 紬「そうね~、もう冬真っ盛りだものね~」 憂「それで、あの……寒いですし、その、だ、だき……」 紬「?」 憂「だ、だき……ダキアを平定した古代ローマの皇帝はっ!?」 紬「トラヤヌスね」 純(て、また世界史かい! しかも、またローマ時代!) 梓(どんだけローマが好きなのよ。憂!) 紬「もしかして、私の学力チェックか何か? ふふ、大丈夫よ。ちゃんと受験勉強してるから」 憂「あ、いえ、そうじゃなくて……」 紬「?」 憂「……あ、いえ。古代ローマって素敵ですよねー」アハハー 純(憂が壊れた……) 梓(そのローマにかける情熱は何……) 紬「ふふ、変な憂ちゃん」 純(……急な問題に間髪入れずに解答できるあなたも大概変です) 憂「はあ……」ドーン 梓「さて、同じ失敗を二度しちゃったわけだけど」 純「もう諦めたら?」 憂「う……でも、私だってお姉ちゃんと同じことを共有したい。 お姉ちゃんが紬さんを暖かいって言ったのなら、私だってその暖かさを味わいたいの」 梓「憂……」 純(やっぱり、さり気に危ない発言してるような気が……) 憂「私、最後にもう1回やってみる! 梓ちゃん純ちゃん、力を貸して!」 梓「憂……勿論だよ!」 純「ちょ、ちょっと、待ってよ。なんで私まで付き合わないといけないの?」 憂「お願い、純ちゃん! 純ちゃんの力が頼りなの!」ウルウル 純「う、憂……もーう、わかったよ。こうなったら、どうとでもなれだよ。最後まで付き合うよ」 憂「ありがとう純ちゃん! 私、純ちゃんのこと好きだよ!」 純「(ドキ) す、好きって……もうっ、何冗談言ってるんのよ、うーい」 憂「冗談じゃないよっ」 梓「ねえ憂、純のことどれくらい好き?」 憂「ローマの次くらいに」 純「またローマかよ! しかも私負けてるし! せめて人と比べてよ!」 放課後、部室前…… 梓「いい、憂。まずはちゃんと頑張って言ってみてね」 純「それで無理そうだったら、私たちが助け舟だすからさ」 憂「うん、ありがとう二人とも! それじゃ……」 ガラッ 憂「あ、あのっ。失礼しますっ!」 唯「あれー、憂。どーしたのー?」 澪「梓と、あと鈴木さんも」 憂「えっと、あの。紬さんにお話がありまして」 紬「まあ、私に?」 律「一体何なんだー?」 憂「あの、紬さんにお願いがありまして……」 紬「お願い、何かしら~?」 唯「憂がムギちゃんにお願いなんて珍しいねー」 澪(興味津々) 律(聞き耳) 梓「ほら、頑張って。憂」 純「しっかりしなよ」 憂「う、うん……あの、紬さん、私、その私を……」 紬「?」 憂「わ、私……私とプロレスごっこしませんかっ!?」 純「ぷ、プロレスごっこって……」 梓「むう、憂。考えたわね…… 真っ向から抱きしめてというのはやはり恥ずかしい。 でも、プレロスごっこという名目があれば無理矢理でも 相手に組み付くことができる…… まさに、パーフェクトプラン……恐れいったわ、憂……」 純「いやいや、明らかにおかしいでしょ! つーか、ムギ先輩がそんなこと了承するはずが」 紬「いいわよ~」 純「あっさり了承しちゃったよこの人!!」 紬「私、お友達とプロレスごっこするのが夢だったの~」 唯「良かったねムギちゃん、夢がかなって♪」 律「二人とも、がんばれよ」 澪「おめでとう、応援してるよ」 純「あ、あれ? なんでこの人たち普通に受け入れてるの?」 紬「それじゃ、憂ちゃん。始めましょうか♪」 憂「は、はい!」 梓「頑張ってね、憂!」 律「ムギも負けるなよー!」 紬「どんとこいです!」フンス 純(帰りたい……) 憂「そ、それでは……お願いしますっ!」 憂は思考する。 どうすれば、効率よく紬に抱きつくことが出来るか。 もしくは、紬に抱きついてもらうことが出来るか。 紬はパワーに優れており、力比べしても勝ち目はない。 それならば、自らが勝るスピードをもって一気に今の距離を詰めるのが吉。 そして、まずは相手の腰に絡みつきバックを取る。 そうなってしまえば、相手の足をとって速やかにサブミッションに移行できる そして、後はやりたい放題…… ――よし! 作戦を決めて、憂は一気にダッシュをかける。 2
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/41863.html
こいするびーむ【登録タグ 2020年 cillia こ 曲 鏡音リン】 作詞:cillia 作曲:cillia 編曲:cillia 唄:鏡音リン 曲紹介 cillia氏のVOCALOIDオリジナル曲2作目。 イラストも氏が手掛ける。 動画:riguruma マスタリング:LNDRaudio 今年3月ぐらいから作っていて、やっと投稿できるのが本当に嬉しい!前に投稿した曲「Scattered Glass」と結構違うな雰囲気だけど、作るのがすごく楽しかった!今回はキャラデザインも結構頑張ったので(正直下手な所)その挑戦も楽しかった!(作者コメント転載) 歌詞 (作者サイト内本曲ページより転載) アイラインとピンクなリップで ドレスのフリル可愛くて いつもちょっと不器用で 時々忘れっぽくて そんな君に恋に落ちたの! 誰だって気づかない力があって 瞳に映る君のハート 見せるよ本当のマジックは ここからだ! 遠くから来るキラキラリビームが ミラーボールみたいに目を惑わすの 届かないなんて言わないで! さあ手を繋いで行こう きらめく星へ 少しだけの魔法をかけちゃって その甘い唇で歌聴かせて! ずっと一緒に踊り続けたいの このままで Yeah ね! 君と一緒にいると時々 言葉がぐちゃぐちゃになるし 別に嫌いじゃないけど ドキドキ止まらないの だって君の事が好きだもん! 時間が止まりそうな距離で 本音を君に伝えたいの! 見せるよ本当のラブストーリーは ここからだ! 遠くから来るキラキラリビームが ミラーボールみたいに目を惑わすの 顔隠さないでほら見せて! その君らしく 光る微笑み 少しだけの魔法をかけちゃって その甘い唇で狂わせて! ずっと一緒に踊り続けたいの このままで Yeah… 辛い時も君がいた 指先の温もりはあたし受け止めてもいいのかな? まだちょっと不安だけど そのパーフェクトな君をねぇ あたしにくれるなら 何があってもきっと守るよ 大切な君を! 遠くから来るキラキラリビームが ミラーボールみたいに目を惑わすの 二人だけの恋風で全部吹き飛ばして Yeah! 遠くから来るキラキラリビームが ミラーボールみたいに目を惑わすの 届かないなんて言わないで! さあ手を繋いで行こう きらめく星へ 少しだけの魔法をかけちゃって その甘い唇で歌聴かせて! ずっと一緒に踊り続けたいの そう二人で 一緒にね? このままで Yeah ね! コメント かわいくてきれいな曲! -- 名無しさん (2021-05-30 02 53 33) 曲調も大好きだしリンちゃんの声もとても可愛い!cilliaさんの調声凄すぎますw -- 名無しさん (2022-04-04 10 44 30) これほんとに好きな歌 -- 名無しさん (2024-02-26 12 05 01) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/schwarze-katze/pages/370.html
泣かないで、泣かないで、笑って! 第2話 照りつける暖かい日差しと、それに反したひんやりとした冷たい風。 夏季に入り、連日猛暑が続いているのだが妙に涼しい。 時折吹き抜ける風が周囲の気温を下げているのか、あるいは丘の下に広がる透き通った湖が熱を気化しているのか、おそらくはその両方であろう。 小高い丘には草原とゴツゴツした岩と所々に生えた針葉木しかない。 そんな自然の芸術で形成された風景に、につかわしくない人物が紛れ込んでいた。 「ふぐぅ…」 男が仰向けに倒れている。 赤いタンクトップに黒いジーンズ、黒く長い髪は適当にはねており、前髪だけ癖になっているのか目元で分かれている。 筋肉質では無いが、身体は引き締まっていて、顔立ちは悪くは無いが、特別良いと言えるほどでもなくこれといった特徴が無いのが特徴であった。 男の周囲には投げ出されたままの状態のギターケースが転がっている。 いつからそこにいたのか、男自身にもわからない。 男は太陽の眩しさから目をそらすように体を横に転がした。 「……」 冷えた風が吹き抜ける。 無意識に身体を丸め、男は体温を保持しようとする。 しかし二度三度と襲い来る寒波に、男は耐え切れず、薄く目を開いた。 最初に男の目に入ったのは一面の若草の緑。 続いて、ヒノキだかスギだかよくわからないところどころに生えた針葉樹とこぶし大から男の背丈ほどもある岩。 立ち上がってみると、高台になっていたらしくそれほど離れていないところに針葉樹の森と、反対側の丘下に大きな湖があった。 「……ふぁ」 未だに寝ぼけているのか、男は現実感の無い風景をあっさりとうけとめた。 そよそよと頬を撫でてくる風が気持ちいい。 男のまどろんだ脳が冴え始めてくる。 それと同時に生じてくる違和感。 なぜここにいるのか、と男の頭に浮かび、家に帰った事も覚えてない、と男は考え、むしろ帰ってたっけ、と男に疑問が生じ、これは夢だなと男は結論付けた。 思考は一瞬。 そして男は両足を投げ出して地面にへたりこんだ。 「……んなわけねーじゃん」 太陽は変わらず眩しかった。 どーしよっかなーっとふざけた様に呟き、およそ真剣に見えない顔で白痴の様に呆けていた男は、ふと気づく。 「っ、携帯!」 男は慌ててジーンズのポケットに手を突っ込んだ。 心情では相当焦っていたのかその行動は素早い。 労せず触れる硬質の感触。 ジーンズから携帯電話を引っこ抜き、液晶画面を確認する。 暫く携帯を凝視していた男は視線を外し、仰向けになり空を見上げた。 「……お約束だよな」 携帯の電波は圏外を示していた。 携帯を仕舞い、男はふて腐れた。 「どこなんだろ、ここ……」 寝そべりながら呟く。 頬に触れる若草がこそばゆかった。 どれ程の時間が経ったのかわからない。 男は体を起こした。 景色は相変わらず森と山と湖。 携帯電話の画面で時間を確認すると、先ほど確認した時間から二時間ほど経過していた。 こんな見ず知らずの安全っと決まったわけでもない場所で無駄に時間を使ってしまった自分の神経の図太さに、男は頭を抱えた。 ひとしきり己の馬鹿さ加減についての後悔を終えた男は、投げ出されていたギターケースを手に取る。 おもむろにケースを開き、アコースティックギターを取り出す。 「げっ……弦が切れてやがる」 五弦目の弦が千切れ飛んでおり、羊司は相棒の無残な様子に軽く凹んだ。 ギターケースにしまっていた替えの弦やピン抜き、ニッパーなどを取り出し弦交換に移る。 何度も弦を交換してきたのか、その手順は鮮やかである。 程なくしてギターが元通りになる。 「調律は、と……」 何度か弦を弾き、音がずれていないか確かめる。 チューナーが無いのが痛いが、高校時代から愛用していた楽器だ。 完璧とは言えなくてもある程度はわかる。 調整は終わり、何度となく練習した得意のフレーズを引いてみる。 慣らしていないので少し五弦が強いが、仕方が無い。 次第に気分が高揚し、抑え目に弾いていたギターを鳴らす音量も大きくなっていく。 明るい曲、悲しい曲、楽しい曲、寂しい曲。 手馴れた様子でギターを操り次々と曲を変え、男は気付かないうちに声を出し、歌いだした。 歌うことが好きだった男は高校一年の時からプロのミュージシャンを目指している。 親には大学に進学して就職しろと反対され、友人には無謀だやめておけと止められた。 周囲の人間の態度に嫌気が指した男は、卒業して家を飛び出した。 幸い高校時代に無駄遣いせずに貯めた貯金で安いアパートを借りることができ、男はバイトとギターの練習で日々をめまぐるしく過ごしている。 日々研磨し努力した賜物か、男の声は周囲によく響いた。 そして、その歌声に惹かれるものが一人。 灰色の外套姿で、フードを目深に被っている為、男か女か区別がつかない。 周囲の木と岩影に隠れながら少しずつ近づいてくるが、あまりにも隠れ方がお粗末過ぎる。 とはいえ、見ているとなかなか面白いので男は気づかない振りをしながらギターを弾いた。 男はそろそろいいかなと思い、楽器を鳴らす手を止める。 木陰から飛び出そうとしていた矢先、音楽を止められ、間抜けな姿で静止する。 その距離およそ10メートル。 外套を着た者と男の視線が重なる。 「あ、あぁ……」 少女特有の高い声。 男の心の中で前面の外套の中は年若い女の子と結論を下した。 「あの……」 黙っていても仕方ないと思い、声をかけようと一歩踏み出す。 その瞬間少女は脱兎のごとく逃げ出した。 「わっ、待ってくれ!」 ギターを置き、起伏にとんだ丘に足を取られながら、男は慌てて追いかける。 「っ! 来ないでっ!」 少女は振り返り、男が追いかけてくるのを見て涙声で叫んだ。 「来ないでっ、追いかけて来ないでっ!!」 「頼む、何もしないから逃げないでくれ!」 静止する声を無視し、少女は逃げる。 「なあっ、ここは何処なんだ!?日本だろ!?」 「違いますっ、来ないでっ!!」 少女の答えに納得できず、男はさらに声を荒げた。 「そんな訳ないだろっ! あれかっ!? 北朝鮮か!? 拉致かっ!?」 「知らない、知らないっ!」 必死で男も追いかけるが、一向に距離は縮まらない。 凹凸の激しい丘を、少女は全く速度を落とさずに駆け下りる。 自分より華奢で小柄な少女を、声を上げ追いかける自分の姿はどう見ても変質者だと思い、男は泣きたくなった。 少女はマントを大きくはためかせ、もう二度と振り返らずに走っていった。 「待ってくれよ……頼むから」 丘を抜け、鬱蒼と茂った森の中で、男は息も絶え絶えに呟いた。 既に、全力疾走ではない。 落ちていた長い木の枝を杖代わりに歩いていた。 気温は低めだが、先ほどの鬼ごっこのせいでかなりの汗を掻いている。 べたついたシャツを鬱陶しく感じながら、時折つま先で土を削る。 道しるべ、のつもりだ。 「なんで……歌聴くときは寄ってくんのに……話し掛けたときは、逃げんだよ……」 苦しげに男は言う。 それにしても、と男は思う。 全力で走っている自分は、別段運動部に所属していたわけでも、特別に体力に自信があるというわけでもない。 学生時代と違い、確かに運動不足はいなめない。軽い筋トレぐらいはしているが、それも軟弱に見せない為の見せ筋を維持する為だ。 しかし、いくらなんでも15、6の少女に、足の速さで負けるほど身体も鈍っちゃいないだろう。 しかし、追いつけなかった。 少女の姿はとうに見失った。 別段勝利に固執する性格でもないが、やはり年下の少女に走り負けると言うのは悔しく感じる。 それでも少女の姿を追い求めるのは、流石に少女も追いつけなかったとはいえ自分と同じ様に体力も落ちて歩いているだろうから、もしかしたら追いつけるかも、と考えたから。 また、走っていった方向に少女はいなくとも、街か何かがあったら誰か住んでいるだろう、とも思ったからだ 「待ってくれてもいいだろうよ、あそこまで怖がられたら流石に俺も傷ついたぞ…」 沸々と理不尽に逃げた少女に対する怒りが募ってくる。 「逃げるぐらいなら近づくなっての。 声かけただけじゃんよ」 男も自分の言葉が理不尽と言う事はわかっている。 しかし言わずにはいられない。 「自分だって変な外套を着て、おかしいだろ……それな――」 突然男は愚痴を止め、身体を木に隠し息を潜める。 慎重に首だけを伸ばし、目標を確認する。 そして心の中で歓声をあげた。 見つけた、さっきの少女だ。 少女はブナの様な木の傍で、両足の膝を地面につけ何かを熱心に覗き込んでいる。 左手には外套に半分隠れているが、円形のザルの様な物を持っている。 男は声を殺して、回り込みながら静かに少女に忍び寄る。 少女は気付いていないのか、暫く木の根元を観察していると、思い出したかのように右手で土を掻き分け始める。 興味をそそられたのか、男が身体を横にそらし少女の手元を見ると、毒々しいイボ付きの赤いきのこがそびえ立つ様に生えていた。 少女はそれを嬉しそうに籠に入れる。 男の顔が引きつる。 少なくとも、こんな毒々しいきのこは自分なら絶対に食べない。 頭が錯乱するか、腹筋がねじれるほど笑い転げるか、下手をすれば死んでしまう。 声をかけるか、否か。 声をかけなかった場合、殺人補助になるのだろうかと男は悩む。 流石に人道的に問題があるだろうと思い、男は少女の肩に手を伸ばす。 声をかけて、逃げられるのはもうこりごりだった。 しかし、肩に触れる前に少女の顔を見て、息を呑んだ。 男が驚くほど少女の顔は整っていた。 ふっくらとした唇、現役のアイドルも羨む様なすっと長い鼻立ち、見るもの全てを慈しむ様な穏和そうな目。折れてしまいそうな細い指を一生懸命動かし、土を掻き、キノコを引き抜く姿は、非常に微笑ましい。 ボロボロの外套に隠れてはいるが、時折除く髪は白髪と呼ぶにはおこがましいほどに美しく、ふわふわと波打っている。 「うわっ……超かわいい」 先ほどの少女に対しての批難する様な愚痴や危なそうなきのこの存在すら忘れ、男は知らず呟いていた。 「!?」 その瞬間、少女が小さな肩を竦ませ、男の方を向いた。その顔には明らかに恐怖の色に染まっている。 少女の震える指から籠が滑り落ちる。 底の浅い円状の籠から、男が見た事もない野草やまだら模様のきのこが零れ落ちた。 「あ、あぁ……」 迂闊だったとしか言いようが無い。 テントの方へ真っ直ぐ逃げてしまった。 男から完全に逃げ切ったと思い込んだ。 貴重な食料に気を取られ、男の接近を許してしまった。 少女は膝を地面につけた状態で外套を握り、身震いしながら自身の行動を悔やんだ。 少女が肩を震わせ、大きな目に涙を溢れさせる姿に、男は酷く動揺した。 「な、泣かないで! ちょっと道を知りたいだけなんだ! 教えてくれたらすぐに消えるからさ! 大声出して追いかけてごめん! 黙ってこっそり後ろから近づいてごめん! 謝るから泣かないで! あと、そのきのこは食べない方がいいと思うよ、うん!」 男は自分でも何を言ってるのかよくわからないが、ひたすら謝ってみる。 少女は何も答えない。 「本当にごめん! 怖いならもう少し離れるからさ、せめて逃げないで」 そう言って男は伸ばしたままになっていた腕を引っ込め、前を向きながら器用に後ずさった。 宥めて卑屈になって。 男はなぜこんなに必死になっているんだろうと思う。 ただ言えるのは、罪も無い女の子を泣かせるのはどうしてもごめんだった。 「本当に……何もしませんか?」 男の願いが通じたのか少女が顔をあげ、初めて自ら声を出した。 「しないしない、絶対に危害を加えないってば」 少女は男に対する警戒心が抜けていないのか、未だに顔を伏せている。 初めて会話への糸口が見つかった男は、必死で自身の無害さをアピールする。「ええと……さ、変な事を聞くようだけど、ここって日本だよね?」 男が少女の顔色を窺いながら、尋ねる。 脅かさないように、泣かせないように。 少女は幾分か迷いながら、答えた。 「……いえ、ここはフィルノーヴ。 ニホン、という国ではありません」 「いや、でも俺さっきまで日本に……っつーか東京にいたんだけど」 「はぁ……」 少女はよく意味を理解しきれていないのか、首を傾げ曖昧に相槌を打つ。 「こっちに来て目を覚まして、日付見ても一日やそこらしか経ってないから……あれ? 日本からブラジルまで24時間で行けたっけ?」 「よく、わかりません……あなたが何を言ってるのか……」 「まあ、どうみてもブラジルじゃなさそうだし、どうでもいいんだけど。 あー、つまり……ここってどこかな?」 「で、ですからフィルノーヴです」 「そんな国聞いたこと! ……いや、大声出してごめん。 泣き顔で怯えないで……」 「グスッ……本当です。 この土地はネーモアと自然に囲まれた大きな国です。 本当に……知らないんですか?」 男は頬を頭を掻きながら少女の言った単語を思い出そうとする。 フィルノーヴ、ネーモア、全く思い出せない単語に男は恥ずかしそうに質問した。 「あの……無知でごめん。 フィルノーヴ、とかネーモアってさ、本当に、何、かな?」 その言葉に今度は逆に少女が驚いた。 大きな目を見開いて、男の顔や服装、一挙一足を観察する。 少女の慌てた様子に、男は少女に呆れられていると勘違いし、自身の常識の無さを恥じた。 「えっ……まさか」 「ごめん、今度からちゃんと現代社会についても勉強するから……」 少女が被りを振る。 そして初めて申し訳なさそうに言った。 「あ、いえ……すみません。 ヒト……だったんですね」 少女の言葉に男は呆然とする。 そして次第に怒りも沸いてくる。 人だったのか、だと? どこからどう見たら人間ではないと思えるのだ。 人が下手に出ていればいい気になりやがって。 どうしてここまでコケにされないといけないのか。 馬鹿にするのもたいがいにしろ! そろそろ少しぐらい叱るべきなのかもしれない。 男は激憤に駆られた表情を隠そうともせずに少女を睨んだ。 男の憤怒の表情に気付いた少女は、恐怖の満ちた顔を涙で濡らした。 両手で胸元の外套を握り締め、まるで親に叱られる子供のようにきつく涙で溢れた目を閉じ、震えながら頭を垂れる。 その姿を見ると、男も怒る気力を無くしてしまう。 「はぁ……俺が悪かったから、そんなに怯えないでくれ。 あと、俺を人間扱いしてくれると嬉しい」 少女は上目づかいに男の表情を確認すると、首を小さく振った。 縦に、そして横に。 「……それで、フィル……なんたらとネルモアって?」 男にもう反論する気は無かった。 早く話しを済ませてしまおうとばかりに質問する。 「……フィルノーブは北寄りのオオカミやクマ、他にも多数の部族が多く住む土地で、森と山に囲まれた国です。 独自の集落の多いこの国は、その土地特有の果実や珍しいイキモノが数多く生息しています。 ネーモアはこの土地一番の大きな湖で毎年この時期になると珍しい赤い顔の白い鳥が群れを成して集まり、数多くの見物客で賑わ――」 「それで、この辺りで一番近い街は何処だ?」 少女の説明を遮り、男は最も知りたい事を確認する。 「なんでこんな国に居るのか、理由は後で考える。 とりあえず電話さえあったら日本の実家に連絡できるから」 「デンワって何ですか?」 「電話は電話だ。 んで、銀行に振り込んでもらって下ろして、飛行機で日本に帰る。ビサなら使えるだろ」 「ギンコウ? ヒコーキ? ビサ?」 少女は本気でわからないのか、首をかしげている。 男は次第に苛つき始めるが、表情を押し殺しながら尋ねる。 「すまん、遊んでいる暇は無いんだ。 とりあえず街はどこだ?」 「はぁ……ここから700ケート程南に行ったところにオオカミの集落がありますからそこに」 「舐めてる?」 「いえ、そう言われましても」 少女は困ったように頬を人差し指で掻きながら答える。 不機嫌そうな男に言うべきか言わぬべきか迷っていた。 意を決し、少女は口を開いた。 男の目から若干視線を逸らせながら。 「ええと、怒らないでくださいね。 あなたは帰ることが出来ないと思います」 「何だって?」 「ここは、いえ、この世界には貴方の言うニホンという国は何処にもありません」 森に静寂が宿る。 男は怒鳴り散らしたくなるのを堪え、少女に尋ねる。 「……冗談にしては面白くないぞ」 「本当です。私自身、始めて外界から来たヒトを目にしたのですから」 「よくわからない。 君は人間だろ?」 男は当然の疑問を口にする。 「ええ、私はニンゲンです」 ただしと口にし、少女は被っていた外套のフードに手をかける。 そして、フードを脱ぎ、隠れていた後ろ髪に手を入れ、サッと後ろに流す。 男は白というより銀に近いウエーブの髪をなびかせる少女に目を奪われた。 否、正確には少女の顔の横についているものに目を奪われた。 それは横に長く伸びた大きな耳。 「私はコリン・ルーメリー・ユイーフア。 普通の、ヒツジの女の子です」 男は声を失った。 頭が理解に追いつかない。 この世界に日本が無くて、そして自分はヒツジの女の子? 頭を掻きながら男は考える。 少女、コリン・ルーメリー・ユイーフアは佇みながら男の反応を待っている。 「ええっと……その耳、よく聞こえそうだね?」 結局、男には無難な話題を出すしかなかった。 「え、はい。 ヒツジですから」 「そっか。 羊か」 「はい、ヒツジです」 あははーっと声を上げ、お互い笑いあう。 そして男が笑顔でコリンに問う。 「ところでさぁ、どこからどこまでが本当?」 「全部ですよ」 コリンの答えに男はブチギレた。 「あーっ、マジですまんかった。 むしゃくしゃしてやった。 今は反省している」 男が髪を掻きながら、あまり反省してそうに見えない顔で謝る。 ビクビク怯えながらコリンは両手で頭を抱えてしゃがみこんで、本当ですかぁと涙声で言う。 その姿に怒鳴ってしまって悪いことをしたと思いつつも、心の片隅でもっと苛めてみたいと不謹慎にも思ってしまう。 「えーとだな。 とりあえず俺自身、正直半信半疑で君から聞いたことを纏める。 ここは狼の集落の近くで、羊が人で、この世界には日本は無いとかそんな風に聞こえたんだが、もう一度聞くぞ。 本当か?」 「は、はい。 正確に言えばウサギとオオカミの、若干オオカミの国側の大陸です。 ニホンという国は……ごめんなさい、本当に無いんです。」 男の嘘は許さんといった威圧する目にコリンは怯えながらも何とか言葉を紡ぐ。 腕を組む男の沈黙を続けろと受け取ったコリンは話を続ける。 「私はヒツジですが、この世界には様々な種族がいます。 先ほどから何度か言いましたオオカミやウサギ、クマなど多数の種族がいますがみんな人間です」 「ちょっ、ちょっと待ってくれ」 話を遮り、男は慌てた様子でコリンに問う。 「どうみても君、えーっと……コリンさんは人間だろ? 変わった耳飾りみたいな物をつけているだけだろう? 日本語を話しているし、その姿はどうみても人にしか見えない」 「いいえ、私はヒツジです。 この耳は飾りではないですし、私以外にもそれぞれの種族の特徴を持つ人間はいます。 それと私たちが話している言葉はこの世界の共通語で昔から使ってきました。 むしろ、なぜ貴方の言葉が私に通じるのか、それが全然わからないんです」 「……人って人間って事だろ?」 「うまく説明できませんが、ヒトは貴方です。 そして、人間は私たちなんです。」 男は自分の額を手で覆う。 理解しかけているが、理解できない。 そんな態度が現れている。 「今から貴方にとって非常に心苦しいことを言います。 その、怒らないでくださいね?」 コリンが言いづらそうに男に確認を取る。 慌てて男が顔を引き締める。 「落ちる、この世界に強制的にやってくる、という意味なんですが、この世界に貴方は落ちてきました。 外界から落ちてきた人間を私たちはヒトと言います。 ヒトがこの世界にやって来ることは稀で、落ちてきたヒトには一切の人権はありません。 つまり……ヒトと言うのは奴隷や家畜の別称なんです」 「はぁっ!?」 素っ頓狂な声を出し、男は少女を間の抜けた顔で見た。 「ヒトは奴隷という所有物ですから、傷つけ、苦しめ、壊しても罪には問われることはありません。 それと、私自身ヒトを見るのは初めてなのですが、ヒト奴隷はとても高価なものだと聞いた事があります。 人里に入れば確実に、貴方は捕まり売られるでしょう」 男の中で何かが崩れていく音が聞こえた。 何処にも行く当ては無い。 頼れる縁者もいない。 街を歩くことも出来ない。 住む当ても無い。 食べる事すらままならないだろう。 たった一人でこの世界をどう生きていけばいいのか。 「嘘だろ? なぁ……これって嘘だよな?」 男がコリンに詰め寄る。 コリンの両肩が強く揺さぶられる。 「いいえ……すみませんが……」 「帰る方法は……」 「聞いたことが……ありません」 コリンは首を横に振り、男の望みを絶つ。 男はこの世界に絶望し、いたずらな神を呪う。 悲観にくれる男の涙が少女の外套を濡らした。 「私と、一緒に来ますか?」 彼女は言った。 男は涙でくしゃくしゃになった顔を隠そうともせず、少女の顔を窺った。 「私は、一つの町へ定住することはせず、リャマのクトと一緒にいろんな国を旅して回っています。 いろんな国を調べたら、もしかしたら元の世界へ帰る手がかりが見つかるかもしれません。 もし宜しければ、一緒に、行きませんか?」 少女は震える身体を優しさで押し殺し、笑みを浮かべ男に言った。 不安なのだろうと男は思った。 この少女は怖がりだ。 おどおど辺りを窺って、何かに怯えて生きている。 この少女は泣き虫だ。 今日、初めて会ったのに何度泣かせたかわからない。 そしてこの少女は―――とても優しい。 少女の性格からして、ヒト、しかも男と話をするのは怖いだろう。 安全面からも、非力で高価なヒトと旅をするなんて危険極まりないだろう。 金銭面、生活面でも迷惑をかけるだろう。 少女の事を思うなら、一緒に行かないほうが良いに決まっている。 しかし、 しかし、それでも―― 「浅草羊司です。 よろしく、お願いします。 コリン様」 「こちらこそよろしく、おねがいします――ヨウジさん」 一人は、嫌だ。 私の住処へ案内します、とコリンは言った。 落ちた籠に山菜を詰めなおした後、落とさない様にしっかりと両手で持ち、フードを被り直した後、先導する様に歩き出した。 そして少女の数歩後を羊司がついていく。 辺りはかなり日が落ちており、夕焼けが世界を柔らかく包む。 「えーっと……コリン様」 足早に歩くコリンに羊司は、先ほどから懸念していたことを伝えようと声をかける。 「あのっ、ヨウジさん、私に敬語なんて使わなくても……」 表情は伺えないが、声質は困ったという感じが滲み出ている。 「あ、いや。 そう言わないとまずいと思うし」 「一応は主人ですけど、強制はしませんから……ただ、人前で気をつけてくだされば」 コリンが言うには基本的に自分、浅草羊司はコリン・ルーメリー・ユイーフアの所有物になるそうだ。 本人は酷い扱いをしない、敬語は使わなくていいと言っているが、人前だとどうしても建て前というものがあるので、その時だけ、奴隷としての行動を取ってほしいと言う事らしい。 どうも俺は過剰に意識していたらしい。 「あー、わかった。 人前では敬語で様付け。 でも今は敬語も様もいらないんだな?」「はい。 私は普通の、ヒツジですから」 なぜか普通を強調するコリン。 「よく意味がわからんが、わかった。 改めてよろしく。コリン」 「はい。 ヨウジさん」 微かに笑みを浮かべるコリンの姿に、羊司の頬がわずか朱に染まる。 「そ、そうだ、コリン。 ギターを丘に忘れたんだ。 取りにいかないとまずい」 表情の色を悟られたくない羊司は、慌てた様子でコリンに言う。 「ギターって、あのヨウジさんが弾いていた綺麗な音色の楽器ですか?」 「そう、それ。 雨なんて降ったらお釈迦だし、朝露にでも濡れただけでも相当やばいんだ」 頭を少し下げ、考え込むコリン。 しかしすぐに顔を上げ、わかりましたと了承し、先程の道に踵を返す。 「おおっと、その必要はないぜ」 「え!?」 「!?」 突如、羊司でもコリンでもない野太い声が周囲に響き渡り、一本の木の陰から二歩足で立つ、全身毛むくじゃらの狼が姿を見せた。 狼は上半身を黒い鎧を着て、麻の様な素材で出来たズボンに一振りの長い剣を刺している。 「ちょーっとばかし席を外している間におもしれぇ事になってやがるな」 「誰だ、あんた?」 羊司が身構え、警戒心を顕にする。 コリンは極度の人見知りと恐怖で震え、せっかく拾いなおした山菜の籠を取り落としている。 「んー、んー、んーー? 口の利き方がなってないガキだな。 せっかくお前の楽器を拾ってやったのによお?」 よく見ると羊司のギターケースが、巨漢の狼男の肩にかかっている。 羊司は驚き、礼を言おうと一歩前に出る。 「あ、すみませ――」 「まあ、俺が拾った落ち物だから俺のもんだがよぉ。 あと、目的ついでに目の前の落ち物も拾っておくか」 目の前の狼男が何を言っているのか羊司には理解できなかった。 目を瞬かせ、伸ばしかけた腕を止める。 「理解できねぇか? つまり、お前の物は俺の物。 さらに言うならお前は俺の物だって事だ」 羊司の背筋が凍る。 女に告白された事すらないのに、毛むくじゃらの身長がゆうに2メートルを超す狼男に告白されるとは。 どうすれば相手が傷つかず、なおかつ穏便に断れるか、羊司は必死で頭を巡らせる。 羊司の後ろではコリンが頬を染め、はっと何かに気付き、必死で頭を振っている。 「怖いか? 心配すんな、大人しくしていれば危害はくわえねぇ」 獰猛そうな顔に笑みを浮かべ、狼男は羊司に向かってにじり寄る。 「ええと、貴方の気持ちは大変嬉しく思いますが、俺は男でありヘテロなので、貴方の気持ちに応えられないというか近寄んなガチホモがとか思っちゃったりなんかして――」 「はぁ? 何をわけのわからん事を……」 脂汗を流す羊司にコリンはタンクトップを少し摘み、数度引っ張る。 「ヨウジさん、想像してる事はなんとなく理解していますが、多分羊司さんの考えている事とあの人の言っている事は違いますよ」 狼男に聞こえない様にコリンは言った。 「いや、でもさ……お前は俺の物ってどう考えても」 「ヨウジさん、貴方は物です。 つまりあの人は、貴方を手に入れて奴隷商人にでも売るつもりなんですよ。 あとギターも返す気も全然無いです」 羊司にもようやく合点がいった。 そしてゆっくり近づいてくる狼男を睨みつける。 「お前、俺を売り飛ばす気だったのか」 吼えるように羊司が狼男に言う。 狼男はニヤニヤと笑う。 「悪く思うなよ。 最近懐が寂しいもんでね。 あと、さっきも言ったように、おまえはついでだ。」 「ふざけんな! 誰がお前なんかに……」 言い切る前に狼男の膝が、羊司の腹にめり込む。 「ぐ、あ……ぅ……」 「少し黙ってな。 ボウズ」 5メートルの距離から一瞬で距離を詰められ、ろくに受身すら取れず膝をいれられる羊司。膝をつき激しく咳き込む羊司を無視し、狼男はコリンに近づく。 「い、いや……」 コリンは足がすくみ、悲鳴を上げることすら出来ない。 狼男がコリンににじり寄っている姿を羊司は苦悶に満ちた顔で睨む。 背中から突き刺さる弱々しい視線を軽く流し、狼男はコリンの前に立ちはだかる。 「さて、こいつはまあ思わぬ副産物だとして、本題はあんただ」 ヒターケースを放り出し、巨体の狼男の視線が鋭くなる。 「んな外套と人目につかねぇ道通るだけで誤魔化せると思ったか? オオカミの鼻舐めてんじゃねぇぞコラ」 狼男はコリンのフードを掴み、力任せに下ろした。 抵抗する暇もなく、少女の端正な涙に濡れた顔が顕わになる。 「ひっ……」 「自己紹介が遅れたな。 俺はゴズマ・ガンクォ。 誇り高きオオカミの国の戦士だ……とはいえ、城に仕えても乱暴すぎるって理由でたった二月で解雇されたがな」 オオカミの国の人間は基本的に粗暴だとコリンは聞いている。 しかし二月で城勤めを止めさせられるなど、いったいどれ程の事をしたのだろうか。 ブルブルと震えきつく目を閉じるコリンを笑いながら眺め、狼男、ゴズマ・ガンクォは話を続ける。 「傭兵になった俺はある日、妙な手配書を見た。 内容は、前年滅んだ自然公国ルブレーの美姫、コリン・ルーメリー・ユイーフアの身柄についての件だ」 そう言って、ゴズマは腰につけた小型の鞄から、巻物状に曲げられた紙を取り出した。 「ルブレーは滅び、王と后、その娘と息子の殆どが殺された。 だが、臣下に命がけで助けられ、崩壊する城から逃げおおせた姫もいた……わかるよなぁ?」 コリンの顔は既に蒼白になっている。 「コリン・ルーメリー・ユイーフア、生死を問わずワーグイシュー国、大臣、ハンムギーの下へ連れてきた場合……」 スルスルと紙を開く。 「40万セパタだってよぉ!」 そこにはコリンの顔が映っていた。 「全く俺はついてるぜぇ。 たまたま、その手配書を見た日に王女様の姿を見かけて、自分から人気の無い森に入ってくれて、さあ殺ろうと思った矢先、落ち物が現れた。 これも俺の日頃の行いの賜物だな」 下品に笑い声を上げるが、目は笑っていない。 「あ、あぁ……」 「どうした? 姫さん。 さっきからまともに喋ってねぇじゃねぇか」 ゴズマはコリンの肩に手をおき、顔を覗き込む。 「わ、わ、私は……」 「私は? 続きはどうした? 早く言えよ」 「私は……私自身、姫かどうか、覚えていない……」 「はぁ!?」 コリンの言葉にゴズマは素っ頓狂な声を出す。 これはコリンの苦し紛れの嘘だった。 人違いだったらもしかしたら見逃してもらえるかもしれない。 あまり要領が良いとは言えない頭でその場で考えた出まかせ。 しかしあまりにも稚拙な出まかせ。 「お姫さまじゃねぇのか?」 ゴズマはコリンの首袖を掴んで、詰め寄る。 コリンより圧倒的に背の高いゴズマが、少女の身体を軽々と掴み上げる。 「うぐっ……わからないんです……記憶が、無いから」 「何時からだ!!」 「は、半年前……」 「なんで手配書の人相書きと似てやがる!?」 「知ら、ない……」 「っちぃ!」 周囲の木に背中から叩きつけられ、コリンは苦しそうに言った。 喉を鳴らし、威嚇するゴズマの様子に、コリンの瞳から大粒の涙が流れる。 その涙を見て、ゴズマは動きを止める。 そして何を思ったか、しばらくの間涙を流すコリンを眺めていた。 「……はぁ、わかったよ」 急にゴズマが、疲れたようにコリンの首元から手を離す。 ズルズルと木に背中を擦りながら、コリンの身体が大地に触れる。 「けほっけほっ……えっ、あ……?」 突然離された手に、コリンは騙せたのかと思った。 「いや、本物か偽物かどうでもいい事を思い出しただけだ」 ゴズマの言葉にコリンの血の気が引く。 「死体に口無しってな。 姫さんじゃなかっても、そんだけ似てたらばれやしねぇだろ」 「そんな……」 「運が悪かったな、知らねぇ誰かさん……さあ、おしゃべりは終わりだ。 苦しまず殺してやる」 ゴズマは腰の飾り気の無い長剣を抜き、上段に構える。 「た、助け……」 「残念ながらそれは無理だな。 逃げられても困る……諦めて死ね」 コリンは涙を流し命乞いするが、無常にもゴズマの長剣が振り下ろされる。 コリンは死を覚悟して目を閉じた。 森に鈍い音が響き渡る。 「う……ぐ……」 コリンは迫り来る死の顎がなかなか訪れず、おそるおそる目を開く。 「この……ガキィ!」 「コリンに……手を出すな!」 コリンの瞳に羊司が荒い息を吐きながら、太い木の枝を持ってゴズマを睨みつける姿が見えた。 横合いから頭を強烈に殴られ、頭を抑えているゴズマの長剣は、コリンのすぐ隣を通り過ぎ大地に刺さっていた。 「奴隷の分際で舐めた真似しやがって……」 「うるせぇっ!」 羊司はもう一撃入れようと木の枝を振るう。 「舐めんな糞ガキ!」 ゴズマは利き手ではない方の腕で木の枝を防ぎ、長剣を離して空いた手で羊司を殴りつける。 「うがっ!」 ゴズマに派手に吹き飛ばされ、羊司は何度も地面を転がる。 転がるたびに地面に血の跡が残った。 樹木に背中から激突し、羊司は一瞬息が出来なかった。 「ヨウジさんっ!?」 コリンが巨体のゴズマの脇を掻い潜り、羊司の元へと走る。 「ゴホッ、痛ぅ……」 「大丈夫ですか、ヨウジさん!」 仰向けに倒れる羊司。 何とか起き上がろうとする羊司を気遣い、悲鳴に似た声を上げるコリン。 羊司はふらつく足で立ち上がりゴズマを睨み、殴られても放さなかった木の枝を構え直す。 「手癖の悪ぃ奴隷には、躾が必要だな」 痛みの残る首を何度か回し、ゴズマは地面に刺さった長剣を引き抜き、真っ直ぐと羊司とコリンの方へ歩いてくる。 逃げ出したい気持ちを抑え、羊司はコリンを庇うように立つ。 コリンは顔を上げ目を開き、驚いた表情で羊司の顔を見ようとするが、背中からでは羊司の顔を窺う事は出来ない。 「コリン……今から俺の言うことをちゃんと聞いてくれ……」 羊司はゴズマから視線を外さず、背中越しに小さな声で言った。 「考えてみれば意外だな。 なんでお前がそこの姫さんを庇う必要があるんだ? 奴隷になる事には変わりないし、もしかしてヒトごときが惚れたか?」 コリンを庇う羊司に興味が惹かれたのか、ゴズマはからかいを交え羊司に尋ねる。 羊司は枝を強く握り、言った。 「お前に言う、必要はねぇよ……」 「まぁ、それもそうだな。 大方姫さんに優しい優しい言葉を掛けられたってとこか」 羊司は黙ってゴズマの言葉を聞いていた。 「しかし、お前も運が悪ぃな。 あの姫さんに出会っちまったせいでお前も俺に見つかっちまった。 全部あの姫さんのせいだぜ?」 「コリンは悪くない」 羊司が声を押し殺して言う。 「他の誰よりもコリンに会えて良かったと思ってる。俺はコリンのことが――」 途端、コリンは一目散に森の中を走り出した。 羊司をその場に置きざりにして。 その後姿を見て、立ち尽くす羊司。 「はっはっは。 そうか、お姫さんは悪くないか。 お前のお姫さん、奴隷を放っぽって逃げちまったぞぉ?」 足音が遠ざかるが、ゴズマには自慢の鼻がある。 追うのは容易い。 「コ、コリン……」 「哀れだなぁ、おい。 信じた瞬間に裏切られてやがる」 「コリンは裏切ったりしない!」 「俺は間違いなくこうなると思ってたがね」 ゴズマはコリンの行動を半ば予想していたのか、笑いながら長剣を構える。 「さて、いい加減暗くなってきたな。 闇市が始まる頃だ。 お前を売った金で酒も飲みたいし、姫さんを追わんといけねぇから、さっさと終わらせるぜ」 羊司は距離を取りながら身構える。 「抵抗するだけ無駄だと思うがなぁ」 その距離15メートル弱。 先程羊司が不意打ちを食らったときよりも10メートル程長く離れているがゴズマなら一瞬で詰められるだろう。 「うっせぇ、駄犬!」 「あん?」 実力に完全に差が開いている今、抵抗しないことが羊司にとって最も良い選択肢であろうが、羊司は声を張り上げゴズマを挑発する。 「さっきから、マジでやかましいぞ、駄犬……首輪つけられて頭撫でられたく、なかったら、かかってこいよ!」 その言葉にゴズマの顔が引き攣る。 「俺はな、誇り高きオオカミの戦士だと言ったぜ……もう一遍言ってみろ糞ガキ!!」 羊司はしゃがみこみ、左手で足元の腐敗土を握り立ち上がる。 「狂犬病か……末期だな、頭どころか耳までおかしくなってやがる……」 オオカミである自分より力も体も圧倒的に劣っているヒトに馬鹿にされ、ゴズマは激怒した。 「……売っ払うのは止めだ、ぶっ殺す……死んで詫びろガキィィ!!!」 ゴズマは怒りの咆哮をあげ、羊司を袈裟懸けにしようと長剣を構え走り出した。 木の枝をゴズマに投げつけ、羊死は背中を向け逃げ出す。 「おおおぉぉぉ!!」 顔を目掛け飛んできた枝を難なく叩き落とす。 そして返す刃で羊司を切り上げようとする。 即座に左手の土をゴズマにぶつける。 「ぶっ、糞がっ! 目潰しか!!」 まともに顔面から湿った土を受け、普段感じることの無い目の痛みにゴズマの動きが鈍る。 殺してやる、とゴズマが叫びながら目を擦っている間に、羊司は全力で森の奥へと逃げる。 「ちぃっ、この。 待ちやがれ!」 ゴズマも追いかけるが、思うように視覚が安定しない。 また、羊司はあえて狭い道を通り、巨躯のゴズマは樹木に道を遮られ、思うように走る事が出来ない。 自慢の鼻も立ち聳える樹木には無力の様だった。 ゴズマは目に入った砂を取ることに専念し、立ち止まった。 足音が遠くなる。 土を涙で洗い流し、何とか視力は戻った。 「うおおおおおぉぉぉぉぉぉん!!!」 咆哮を上げゴズマは二匹の逃げまわる獲物に死を知らしめる 追う。 強靭で俊敏な脚力を持つゴズマは、瞬く間に羊司との距離を詰めていく。 「っつ、マジで速いぞ、あいつ!」 羊司は背中から感じたことの無い恐怖を受け、冷や汗を掻く。 日本では日常でほとんど馴染みの無い殺人を、この世界の住人は当たり前のように行う。 付き纏う死の影に脅え、羊司の目から涙が溢れる。 「しっ、死にたくねぇ!」 涙で視界が滲み、慌てて腕で拭う。 「痛っ」 擦り傷だらけになった腕が涙で染みる。 なぜこんな事になってしまったのだろう。 羊司は戻れるなら昨日に戻りたいと思った。 「うおおおおおぉぉぉぉぉぉん!!!」 それ程離れていない場所でゴズマの叫喚が震える体を貫く。 「畜生っ、生きてやる! 絶対に!」 羊司は疲労でふらつく足に力をこめた。 ゴズマが羊司の姿を視覚に捕らえる。 「追いかけっこは終わりだぜ、糞ガキ!」 ゴズマの速度が上がる。 森を踏み荒らす音が聞こえ羊司が振り向くと、すぐ傍にゴズマの姿が見えた。 「やばい!」 速度を上げようとするが羊司の身体が悲鳴を上げるだけで、うまく走ることができない。 羊司の体はとっくに限界を超えていた。 意識は急げ、逃げろと伝えるが、身体が全く追いついてこない。 羊司は先程と同じ様に牽制に砂を浴びせようとするが、ゴズマは両腕で顔を守り、大して効果を得られない。 「ヨウジさん、こっちです!」 万事休すかと思ったその時、コリンの声が聞こえた。 「コリン!」 「そこにいたか、小娘!」 コリンは樹陰から顔を出し、羊司に手を振った。 羊司は頷き、コリンに向かって気力を振り絞り駆ける。 「おおおおぉおおぉぉぉ!」 「ガキイイイィイィィィ!」 ゴズマの姿が羊司の背後に迫る。 「コリンッ!」 「ヨウジさんっ!」 羊司は体勢を低くし、コリンの元へ飛び込む様に駆け込んだ。 身体を屈め、動かないでいるコリンの手を取る。 引っ張られるコリンだが、速度の乗っていないそれは致命的な失敗だった。 コリンのもつれた足がバランスを崩す。 姿勢が崩れ、コリンと羊司は前にうつ伏せに倒れこんだ。 その逸機を見逃すゴズマではない。 二人は振り返り、もうゴズマから逃げ切れないことを悟った。 「終わりだ、糞ガキ!」 ゴズマは速度を落とさず抜剣し、羊司を刺し殺そうと腰だめに構えた。 羊司は考えた。 力では歯が立たない。 逃げ切れるとは思わない。 奴隷になれば生き残れるが、コリンの命は奪われてしまう。 なら二人一緒に生き残るにはどうすれば良いか? 必死で知恵を振り絞る。 19年の人生の中で、最も頭をめぐらせた。 そして思いついた決死の策。 一人が罠をはり、もう一人が囮になる無謀な策とは言えない様な愚策。 出会ったのが数時間前で、まともに話を出来たのがたった一時間前だ。 信頼関係と言えるものも碌にできておらず、片方が裏切れば簡単に瓦解する策だ。 しかし、羊司は信じた。 「げこぉっ!?」 それしか方法は無いからと言う理由からではなく、怖がりで泣き虫な少女だが自分を救ってくれた優しさを信じた。 「げぇーーっ、ご、ごふっ、げぇーっ、げほっげほっげほっ……」 突然ゴズマの身体が上半身だけ急停止し、下半身を前方に放り出した。 剣を取り落とし仰向けになって必死で首を抑えもがく。 「ざまあみろ……駄犬」 羊司とコリンはゴズマの苦悶の表情を見ながら、ゆっくりと痛みと疲労と恐怖に震える身体を起こした。 話は少し遡る。 「コリン……今から俺の言うことをちゃんと聞いてくれ……」 コリンを庇い背中に隠した時、羊司は小さく呟いた。 「は、はい……」 「俺の後ろのズボンのポケットの中に、さっき切れた弦と予備の弦が入ってる。 それを取ってくれ」 コリンは羊司のズボンから、丸めて収められていた弦を取り出す。 「ありました」 「それを持ってこの森を真っ直ぐ走れ」 「えっ?」 羊司の言葉に戸惑う。 このヒトを置いて自分だけ逃げてよいのかと思う。 しかし、 「できません……」 結局、ゴズマの足の速さに逃げ切れるはずと諦念し、また羊司を置き去りにするという良心の呵責に耐え切れず、コリンは俯いてしまった。 ゴズマが何か言っているようだが、コリンの耳には届かない。 「コリン、君のする事は逃げる事じゃない」 コリンの心情を察し、羊司は優しく言い聞かせる。 「君は走って、この弦で森に罠を張るんだ。 出来るだけ狭い樹木に精一杯足を伸ばして弦を結ぶんだ。 俺が、怒り狂っているあいつをおびき寄せる。 出来るな?」 コリンは羊司の意図をよく理解した。 「でも……絶対無理です」 それでもコリンは頭を左右に振り、否定する。 ゴズマのあの足の速さにヒトである羊司が逃げ切れるわけが無い。 「コリン、一度でいいから俺を信じて欲しい」 その言葉にコリンは顔を上げる。 表情は窺えないが真剣な表情をしているのはわかった。 「頼む。 絶対に君のところまで、どんな手を使ってでも逃げ切って見せるから」 その力強い言葉に、コリンは決意した。 「わかりました……信じます」 コリンは一分一秒でも早く罠を仕掛けることで羊司を信じる証とする。 羊司の信頼に報いるためにも。 「しかし、お前も運が悪ぃな。 あの姫さんに出会っちまったせいでお前も俺に見つかっちまった。 全部あの姫さんのせいだぜ?」 「コリンは悪くない」 行けっ、と羊司は呟いた。 コリンは頷き、恐れを勇気でねじ伏せ走る。 「他の誰よりもコリンに会えて良かったと思ってる。俺は――」 全部聞けないのが少し残念だった。 「どうだ、ヘヴィゲージの弦の味は?」 「ぎ、ざま……」 苦しみ悶えているゴズマに羊司は嘲りを含め言い放つ。 「お前は激昂しやすい性格だったからな。 簡単に挑発にのってくれた」 「何、を、しやがっ、た……」 「ギターの弦をお前の身長に合わせて張っただけだ。 こんな森の中じゃ視界も悪いし、早々ばれない。 しかも樹木と樹木の間が狭いし、枝があるから首を突き出す格好になる突きしかできねぇだろ。 この辺りはコリンが機転を利かせてくれたおかげだな。 あとはお前が勝手に幹に張った弦に全力で突っ込んで自滅したんだ」 「舐めた、真似……じやがって……」 ゴズマは血走った目で羊司を見、這いながら落ちた剣に手を伸ばす。 しかし、その手が長剣に届くことは無かった。 「俺が引導を下してやる」 長剣を拾い、羊司はゴズマに死刑宣告をする。 後ろでコリンが息を呑む。 手を伸ばし羊司の服を指ではさみ、これから行われるであろう人殺しを止めようとする。 「ぎざま……」 「俺はコリンの為、そして自分の為にお前を殺す。 これから何度も誰かに襲われるだろうけど、その度にそいつらを殺す」 「一生、やってな……」 大きく咳き込み、ゴズマは血を吐いた。 呼吸器系の損傷が相当酷いようだ。 「ヨウジさん……」 「コリン、手を離してくれ」 止められないとわかったのだろう。 コリンは伸ばした手を離した。 そして俯き、ゴズマから顔を背ける。 「コリン、しっかり覚えておいてくれ。 俺はこれからも人を殺すって事を」 それだけ言うと、羊司は重い長剣を振り上げ、ゴズマの首を目掛け振り下ろした。 「……行こう、コリン」 「……はい」 ゴズマの遺体をその場に放置し、二人は歩き出した。 コリンはすぐに立ち止まり振り返ってゴズマを見る。 悲しそうな表情で死んだゴズマを眺め、何かを振り切るように目を背け、先を行く羊司を追いかける。 そして二度と振り返らなかった。 置き去りにしたギターや籠を取り、薄暗い森を二人は歩く。 先ほど初めて人殺しをしたのが心に重くのしかかっているのか、二人に会話は無い。 普段あまり饒舌ではないコリンも、何かを言わなければならないと口を開こうとするが、なぜか言葉が出てこない。 コリンが沈黙を気まずく思いながら羊司の背中を眺めていると、突然羊司がコリンの法を向き、口を開いた。 「コリン」 「は、はい。 なんでしょうか!」 羊司の真剣な表情に、コリンは気押されたかのように身を硬くする。 「コリン、その……さっきも言ったかと思うんだけど」 さっき? さっきとは何の事だろう、と思い始めたところで、心当たりがあったのかコリンの頬が赤く染まる。 「しかし、お前も運が悪ぃな。 あの姫さんに出会っちまったせいでお前も俺に見つかっちまった。 全部あの姫さんのせいだぜ?」 「コリンは悪くない」 「他の誰よりもコリンに会えて良かったと思ってる。俺はコリンのことが――」 コリンは耳まで顔を赤くしながら、羊司の言葉を待つ。 「ええとだな、その、きのこは捨てた方がいいと思うんだ」 「はい?」 コリンは耳を疑った。 「いやさ、なんか見るからに怪しさ全開のきのこ取ってただろ? あれって幾らなんでも食べると身体に悪そうって言うか……」 羊司は如何にも言いにくそうに話し、コリンの籠に手を伸ばす。 突然伸ばされた手にコリンは身をすくめる。 そんなコリンを早く俺に慣れて欲しいと思いながら羊司は、さきほどコリンが拾った赤いいぼ付ききのこを手に取る。 コリンは恐る恐る目を開き、羊司の手を見た。 「えーと、ヨウジさん」 「他の食材ならまあ何とか料理できなくも無いけど、これはちと無理――」 「食べませんよ。 これは」 羊司はぴたりと静止する。 「これは食用じゃなくて薬用です。 疲労回復や滋養強壮など様々な効用がある北のこの地方にしか生えない珍しいきのこなんです」 「あ、そうなの……」 それを聞いて羊司は胸をなでおろす。 「心配、して下さったんですね。 ありがとうございます、ヨウジさん」 コリンは微笑み、頭を下げる。 一瞬期待してしまった事とは違うが、羊司は自分を気遣ってくれたことに素直に感謝を述べる。 「ああ、いや、そんな、頭下げないでくれ。 なんだか照れる」 羊司も先程のコリンと同じように顔を耳まで染め上げる。 顔を上げたコリンの顔を直視できずに必死で手を振り、別の話題を探す。 「あ、なんか変な動物がいるぞ! 見てみろって、コリン」 焦る羊司の指差した方角にコリンが目を向けると、全身が薄い茶色に覆われ顔面だけ白い動物がいた。 「あ、クト」 羊司が何かを言う前に、コリンはクトと呼ばれたラクダの様な動物に駆け寄る。 クトは嬉しそうに首をコリンに擦り付け親愛の情を示す。 「くすぐったいよ、クト」 「随分馴れているんだな」 危険はないと判断したのか羊司はクトに近づく。 コリンは微笑みながら頷く。 「ずっと一緒に旅してたの。 クトはリャマっていう動物の種類で、荷物の運搬とか随分お世話になってるんです」 コリンはクトの頭を撫でながら答える。 「へぇ、これからよろしくな。クト」 羊司が頭を撫でようとすると、その手から逃げる様にすぃっと顔をそらした。 「あ、こら」 「ふふっ、嫌われちゃいましたね」 人好きな性格だからすぐ仲良くなれますよとコリンは笑いながら、クトの首にかかった手綱をとる。 歩き出したコリンに逆らわずクトは歩き出した。 「こっちです。 羊司さん」 「あぁ、わかった」 一人じゃなかったんだなと考えながら羊司は、コリンとクトの良好な関係に笑みを浮かべた。 「ここです。 羊司さん」 案内されたテントは思っていたよりも大きかった。 モンゴルのゲルを一回り小さくした円形状のテントは、骨盤がしっかりしているのか、ちょっとやそっとでは倒れる心配は無さそうだ。 周囲には炊き出しに使った鍋や、簡単な岩を並べたコンロがあった。 「初めてヒトを入れるんですけど、ドキドキしますね」 コリンが照れくさそうに言った。 羊司は異性の部屋に入った事が数回あったが、それほど興奮したりはしなかった。 しかし今は心臓の音がコリンに伝わるのではないかと思うほど緊張していた。 コリンは蚊帳を開き先に入り、羊司を中へと促す。 「汚いところですけど、笑わないで下さいね?」 「あはは……」 羊司が苦笑しながらテントに足を踏み入れようとし、ふとその場で動きを止める。 首をかしげコリンは羊司の動きを観察する 「ヨウジさん?」 「あ、えーと……これから俺が何時までかかるかわからないけど、元の世界に帰るまでお世話になるだろ? その度にお客さんとして扱われるのはどうかなーと思うわけなんだ。 あー、だから、つまり……その――」 コリンの目を見れないのか、しきりに目を泳がせる。 「ええとだな……これからよろしく、ただいま……かな?」 「はい……私こそ、よろしくお願いします。 お帰りなさい、ヨウジさん」 コリンと羊司はお互い微笑みあう。 暗く寒い森の中の小さなテント、異世界から迷い込んだヒトの男は孤独で泣き虫なヒツジの少女と共に暮らし始めた。 男は自分の世界に帰るために、少女は未だ自分が何をすればいいのかわからず旅を続ける。 これは歴史に刻まれるヒトと人間の寄り添いあった生涯を描いた物語である。 「コリン、ギター弾いてやろっか?」 「わぁ、聞きたいです。 ヨウジさん」 「よし、じゃあ外にでよう」 「はいっ!」 二人の未来に幸多からん事を。