約 4,494,272 件
https://w.atwiki.jp/hutaba_ranking/pages/33.html
anko1934 ゆっくり退化していってね!1 anko1964 ゆっくり退化していってね!2 anko2020 ゆっくり退化していってね!3 anko2346 ゆっくり退化していってね!4 anko2347 ゆっくり退化していってね!5 anko2450 ゆっくり退化していってね!6 anko2451 ゆっくり退化していってね!7
https://w.atwiki.jp/83452/pages/7200.html
憂「」ジー 和「・・・」モグモグ 憂「」ジー 和「・・・」モグモグ 憂「」ジー 和「・・・ねぇ、憂?」 憂「何?」 和「そんなに見られてると食べ辛いわ。それと何より、憂も食べなさい」 憂「だって、和ちゃんが美味しそうに食べてくれるのが嬉しくて」 和「憂も一緒に食事してくれたら、私はもっと美味しくいただけるわ」 憂「そうだね、じゃ私も・・・あ、和ちゃん」 和「何かしら?」 憂「あーん」 和「」 和「はい?もう憂ってば・・・」 憂「あーん!」 和「・・・はい、憂の作った特製唐揚げよ」 憂「んっ!美味しい!美味しいよ、和ちゃん!」モグモグ 和「作ったのは、憂だけどね」 憂「和ちゃんが食べさせてくれたからだよー」 和「はいはい」 憂「はい、じゃあ次は私ね。ほら、あーんして?」 和「・・・何言っても無駄よね。あ、あーん」 憂「はい!」 和「ありがと・・・」モグモグ 憂「美味しいー?」 和「・・・当然よ」 憂「美味しかったね」 和「公共の場所でこんなことやるなんて、途中から私は恥ずかしくて仕方なかったわ」 憂「でも道行く人も微笑ましそうに見てたよ?」 和「まぁ他にやってるカップルも居たけど・・・それにスキンシップと言えばそう見えなくもないとは思うわ」 憂「次はどこに行くの?」 和「私、服を見に行きたいんだけど」 憂「じゃあそうしよう!」 和「ここならいいかな」 憂「可愛い感じのが多いね」 和「さて、私もぬいぐるみを受け取ったし駄目とは言わせないわよ?」 憂「え?」 和「ここには、憂の服を買いに来たの」 憂「私!?」 和「そうよ、憂っていつもパンツルックじゃない?」 憂「あーうん、そうだね」 和「だから私は、憂のスカートとかワンピース姿が見たいのよ」 憂「わ、私はそういうのいいよ!」 和「良くない!私が見たいの!」 憂「えー・・・」 和「今日私が買ったの、次のデートに着てきてね」 憂「あっ!もう既に選び始めてる!?」 和「何だかんだ言って憂が私のお願いを断る訳が無いもの」 和「これ良いわね、きっと憂に似合うわ」 憂「えー、こういう如何にも可愛らしい感じのワンピースはお姉ちゃんとかが似合うのであって私は・・・」 和「貴方達、そっくりじゃない。ほら、つべこべ言わず試着しなさい」 憂「うぅー、和ちゃんが強引だよー・・・」 和「着替えたー?」 憂「うん、着替えたけど・・・」 和「じゃ、開けるわよ」シャー 憂「ど、どう?似合ってる、かな・・・?」 和「・・・」 憂「和ちゃん・・・?」 和「いい!すごく可愛いわ、憂!」 憂「本当?」 和「本当よ、次のデートはこれ着てきなさいね」 憂「・・・うん、和ちゃんに選んでもらえたのが嬉しいから、そうするよ」 和「納得してもらえて良かったわ、じゃあ会計しちゃいましょう。また着替えちゃって」 憂「はーい」 和「憂に似合うのが見つかって、良かったわ」 憂「ありがとう和ちゃん、結構高かったのに・・・」 和「お互い様よ、私も嬉しかったしね」 憂「・・・そうだね。お互い好きだから、いいんだよね」 和「そういうことよ。あとは、澪に美味しいケーキ屋さん教えてもらったからそこに行かない?」 憂「うん、じゃあそこに行こうよ」 憂「あ、本当に美味しい」 和「本当ね、流石澪達御用達だわ」 憂「達?」 和「律と一緒によく来るらしいわ」 憂「あ、そういうことなんだ・・・じゃあ、そのうちお二人に会うかもしれないね」 和「うん・・・そのことなんだけど」 憂「何?」 和「澪達には私達のこと、話してもいいかしら?」 憂「いいと思うよ、軽音部の皆さんは信用できるもん」 和「まぁ、本人達もそうだしね」 憂「それに、梓ちゃんと純ちゃんはもう知ってるの」 和「そうだったの?」 憂「うん、そもそも純ちゃんが私に行けって言ってくれてね・・・」 和「そうなのね・・・まぁ憂が信用してる子達なら大丈夫でしょう」 憂「うん」 和「・・・」 憂「・・・」 和「あっという間ね・・・」 憂「そうだね、もう夕方だもんね・・・」 和「憂と一緒だと、こんなに時間の流れって早いものなのね」 憂「私もびっくりだよ」 和「・・・ふふ、それじゃそろそろ帰りましょうか。今日は、遅くなるって言ってないしね」 憂「うん・・・そうしよっか」 憂「・・・何か」 和「・・・うん」 憂「名残おしいね」 和「そうね」 憂「でも、またすぐにでも逢えるもんね」 和「そうね、毎日だって逢えるわ。お互いがそれを望めば、いつだってね」 憂「うん!そうだね!」 和「あっという間に、平沢家ね」 憂「そうだね」 憂「ねぇ、和ちゃ・・・」 チュッ 和「さよならのキス・・・違ったかしら?」 憂「・・・うん、違うよ。『さよなら』じゃなくて、『またね』だもん」 和「そうね・・・その方がいいわね」 憂「でしょ?・・・じゃあね!和ちゃん!またね!」 和「うん、またね。唯によろしくね」 こうして、私達の初めてのデートは終わりました。 不思議だな。 私はこんなにも和ちゃんが好きで、これ以上好きになんてなれないと思ってたのに。 こうやって和ちゃんと逢う度に、もっともっと、どんどん和ちゃんのことが好きになっていっちゃうよ。 でも、それでいいんだよね?和ちゃんもきっと、同じ気持ちなんだから― ―翌月曜日 憂「でねー、和ちゃんったらねー」ニコニコ 純「あはは、もうすっかりラブラブなんだね。本当上手くいって良かったよ」 梓「すっかりバカップルだね、甘々すぎて砂吐くよ」ザー 憂「えへへ?そう?」ニコニコ 純「梓の砂にも、全く動じてないね」 梓「幸せすぎて気にならないんじゃない?羨ましいことだよね」ザー 憂「うん、私本当に幸せだよー・・・純ちゃんが背中を押してくれたおかげ、本当にありがとう」 純「いえいえ、どういたしまして。私も憂が笑ってる方が嬉しいもんね」 梓「・・・」ザー 憂「・・・ねぇ、梓ちゃん?」 梓「何?」ザー 憂「梓ちゃんも、純ちゃんに相談に乗ってもらったら?」 梓「!」ザ… 純「え?何なに?梓も好きな人居るの?」 梓「ちょ、ちょっと!憂!」 憂「ね?そうしなよ」 純「そうだそうだ、水臭いぞー私にも応援させろー」 憂「ほら、純ちゃんも乗り気だよ?」 梓「別にいい!はい、この話は終わり!」 純「えー・・・」 憂「ふふ・・・」 純「ねー梓ー」 梓「何?」 純「・・・私って、口軽そうで信用できない?」 梓「な、何で!?そんなこと言ってないじゃん!」 純「んー・・・憂には相談してる感じなのに、私には全然教えてくれないからさー」 純「ちょっとショックだよねー」 梓「・・・純」 純「あはは、いいよいいよ。無理矢理聞き出すのはよくないし、気にしないで。むしろ変なこと言ってごめんね」 梓「・・・私、好きな人が、居る」 純「あ、無理しなくていいってば」 梓「ううん、私意地張ってた。純に、相談に乗って欲しいんだ」 純「・・・わかった、純ちゃんに任せておきなさい!」 梓「うん、上手くいったらその人と水族館とか一緒に見に行きたいなー、なんて考えてるんだよね」 純「何か、梓らしいね」 梓「はは、そうかな?・・・その人ってさ、すごく自分勝手に見えるんだけどね」 梓「実は周りのこと誰より気にかけてて、友達思いですごく優しい人なんだよね」 純「・・・うん(まさか、律先輩?それは相手が悪すぎだよ梓ー)」 梓「最初は自分勝手な奴だと思って苦手だったんだけど、そういうところを見てるうちに、気付いたら好きになってたんだ」 純「そう、なんだ(うーん、この場合はどうしよう・・・)」 梓「だからさ、純」 純「何?(あんまり無茶はするなよ、梓ー・・・)」 梓「今度の土日にでも、私と一緒に水族館・・・行かない?」 純「・・・んん?えっ!?」 梓「・・・///」 純「(わ、私のことだったの!?あぁ頬を赤らめてる梓可愛いなー、ってそうじゃなくて・・・!)」 純「(私は梓のことどう思ってる!?梓って小さくて可愛くてその癖生意気だけど、そこがまた可愛かったり・・・)」 純「(・・・って、私も和先輩と同じじゃん!人の相談に乗るとか言っておいて自分のことすら見えてなかったよ!)」 梓「・・・駄目、かな?」 純「だ、駄目じゃないよ!いい!行こう、梓!」 梓「本当!?」 純「本当!絶対!」 梓「よ、良かった・・・私楽しみにしてるね、純!」ニコッ 純「・・・梓の笑顔、超可愛い」ダキッ 梓「わっ!?き、急に何するのよ!」 純「む、何だよー。憂のお姉さんは良くて私は駄目なのかよー」 梓「だ、だって・・・!唯先輩とはそういう感情は無くてあくまでスキンシップだけど、純は違うもん!」 純「やばい、梓超可愛いじゃすまないや。言葉では表現できない可愛さだね梓は」ギュッ 梓「じゅ、純・・・///」 純「お?大人しくなったな?」 梓「・・・本音を言えば、嬉しいに決まってるじゃん」 純「へへへ、そっかそっかー。・・・安心しなよ、今度からは私が一杯抱きしめてあげるよ」 梓「うん、ありがとう・・・純」 律「で?書類の書き忘れも無いのに、話がしたいからティータイムに混ぜてくれって、どういう風の吹き回しだ?」 澪「別に構わないけど、和からこういう誘いって珍しいよな」 紬「そうよね、何故か唯ちゃんもすごく乗り気だし。一体何を隠してるの?」 唯「へへへーさぁ和ちゃん、どうぞ!」 和「私と憂、付き合うことになったから。それだけ言っておきたかったのよ」 律「おぉ!マジで!?」 澪「ひょっとして、先週の憂ちゃんがどうって話って・・・」 和「そう、私絡みよ。貴女達にも気を使わせちゃったし、言っておいた方が今後何かと楽だしね」 紬「そうだったのね・・・!和ちゃん、おめでとう!」ボタボタボタ 和「ムギ、鼻血出てる」 紬「あら、ごめんなさい。でも気にしないでもいいわよ?」ボタボタボタ 和「それにしても、律と澪が付き合い出した時もそうだったけど、よく鼻血出すわね」 澪「ちょ、ちょっと和!」 律「別にいいじゃんか、私達が誰よりラブラブなのは周知の事実だろ~?」 澪「まぁ、そうだけど・・・///」 紬「あぁ・・・やっぱり王道ね。それはともかく・・・ だって、素晴らしいじゃない」ボタボタボタ 和「自分も唯と付き合ってるでしょうに・・・それでもそういうものなの?」 唯「えへへー」 紬「それとはまた別じゃない、私と唯ちゃんもそうだし、りっちゃんと澪ちゃんもそうだけど」ボタボタ 紬「皆それぞれ、出会いも違うし、お付き合いすることになったきっかけも違う、その後どうしていくかも違うと思うわ」ボタボタ 紬「けど、そこには一つだけ共通の事実があるの。『愛する二人の気持ちが通じ合った』っていう事実」ボタボタ 紬「それはきっと、二人にとってこの世のどんなことより素晴らしいことだと思う」ボタボタ 紬「だから私はそうやって誰かと誰かが結ばれたら、嬉しくて鼻血も出ちゃうのよ」ボタボタ 唯「ムギちゃんは優しいねー」 紬「ありがとう、唯ちゃん」ボタ… 和「鼻血さえ出さなきゃ、いいこと言ってると想うんだけどね・・・まぁとにかく、祝福ありがとう」 唯紬律澪「どういたしまして」 和「―という訳で、皆に祝福してもらえたわ」 憂「私も、嬉しいよ」 和「そうよね、私達は良い友人を持ったものだわ」 そして、何より― 憂が、私の隣に居てくれるんだもの。 和「ねぇ、憂?」 憂「何?和ちゃん」 和「改めて、言いたいことがあるの」 憂「うん、何かな?」 和「今まで待たせた分、今後は憂のこと大事にしていくわ」 和「私も、憂のことが大好きだからね」 fin 戻る
https://w.atwiki.jp/83452/pages/5278.html
「なぜ・・・何故そんなこというの!!」 いきなり豹変した私の態度に驚きを隠せない唯。 「唯の気持ちは分かってる!好きだなんて言わないで!余計・・・惨めになるじゃない・・・」 唯に向かって一気に私の気持ちを捲くし立てると抑えていた感情が爆発して涙が溢れた。 脅してるからって唯がそこまでする必要はないのに、嘘で言われるくらいなら嫌いだと言われた方がマシだわ・・・。 「のどかちゃん・・・」 「触らないで!」 唯の手を払いのける、自分でも支離滅裂なのは分かっているでも抑えきれない。 ぎゅっっ! 不意に唯が私を抱きしめた。 「さわらな・・・」 「嫌わないで!!」 えっ!? 嫌わないでって・・・。 嫌っているのは唯でしょ、ひどいことをしてる私に・・・。 「嫌わないで、許してくれるなら私なんでもするから。だから私のことを嫌わないで!!」 顔を上げると顔中をぐしゃぐしゃにして泣く唯の顔が目の前にあった。 どうして私が唯を嫌いになるの・・・そんなことありえないのに。 「ごめんね・・・私が突き飛ばしたから、だから・・・怒ったんだよね、私の事嫌いになっちゃったんだよね」 鼻をすすりながらたどたどしく唯が話す。 「びっ・・・びっくりして手が動いちゃったの、すごくうれしかったの・・・に・・・でもそれで私が和・・・ちゃんを傷つけたから・・・ それに私が好きって言ったからおこ・・・怒ったんだよね迷惑なのは分かってるけど・・・もう好きって言わないから、 私に出来ることなら何でもするから嫌わないで!・・・ううん、私の事は嫌ってもいいから死んじゃいやだ!お願い!のどかちゃん・・・」 私はやっと理解した、『勘違い』それもまるっきり逆の!! 唯が好きだと言ってくれたのは本当だったんだ、勝手に勘違いして思い込んで・・・。 そんな勘違いした私に言われた「嫌い」って言葉と「死ぬ」って言葉を唯は信じてしまっていたんだ・・・。 「唯・・・ごめんね、本当にごめんね!」 ぎゅっと唯を抱きしめる。 「・・・のどかちゃん?」 「嫌いになんてなってないよ全部私の勘違いだからごめんね唯!・・・嫌いって言ったのも死ぬって言ったのも全部嘘なの!」 「・・・嘘?」 「うん、私が勝手に唯に拒絶されたと思い込んでただけなの。それで、その・・・それが悔しくて嘘をついちゃったの・・・ごめんなさい」 ぽろぽろと涙が溢れる、そんな私の頭を唯が優しく撫でてくれた。 「ううん、私が悪いの。和ちゃんは何にも悪くないの!」 「唯・・・」 「私が和ちゃんを傷つけたから、だから私が悪いの!和ちゃんは悪くないの!」 「唯・・・ありがとう、ごめんね大好きだよ」 「私も、あっ・・・の、のどかちゃん・・・好きって言っても怒らない?」 「うん、唯から好きって聞きたい、いっぱいいっぱい聞きたい!」 「えへへ、私も和ちゃんが好き!だーいすき!」 ぎゅうっ。 私の勘違いで大きなまわり道をしてしまったが、今やっと唯と一つになれた事がうれしかった。 「唯、本当にごめんね、ひどいことして。痛かったでしょ?」 「ううん・・・私もごめんね、痛くてびっくりして泣いちゃったりして、でも和ちゃんだからうれしかったの、本当だよ。それに・・・んと・・・ちい・・・欲・・・」 「ん?なぁに、聞こえない?」 「その・・・和ちゃんに触られてるとすごく気持ちいいの・・・だからまたして欲しいの・・・」 顔を真っ赤にしながら私を恥ずかしそうに見つめてきた。 そのまま唇を重ね、その日はくたくたになるほど愛し合った。 3日目- 昨日の疲れはあったけれどいつもより早めの時間に学校に着く、昨日サボって帰った分の雑務があるからだ。 「和さん」 下駄箱で憂ちゃんに呼び止められ、真剣な表情で人気がないところへ促された・・・もしかして。 「和さん・・・」 まさか唯・・・。 「お姉ちゃんをよろしくお願いします!!」 ぺこりと頭を下げる憂ちゃん・・・えぇ!? 「あの・・・憂ちゃん・・・」 「お姉ちゃんから全部聞きました」 ゆいー!あーーーっ・・・。 「でも、和さんだから許すんですよ!それに次にお姉ちゃんを泣かしたら・・・絶対許さないですよ?」 目が怖い・・・この子絶対本気だ・・・。 「うん、これからは絶対唯を泣かせたりしません、約束します!」 憂ちゃんは、私の返事を聞いて納得してくれたのかクスッと笑った。 「でも、よかった。お姉ちゃんずっと和さんのこと好きだったから」 「えっ?」 「お姉ちゃんから聞かなかったんですか?幼稚園のころからずーっと好きだったって」 ええっー! 「私なんて、和さんのお嫁さんになる!って何度聞かされたことか・・・」 そんな事、私は言われた事ない・・・いや、そう言えば子供のころ何度かお嫁さんにしてねって言われた覚えが・・・。 「あれって本気だったんだ・・・」 「もぅ、和さんだってお姉ちゃんの性格十分知ってるでしょ?」 ちょっとふくれっつらで指摘された。 確かに、あの子は思った事をそのまま口にするから・・・。 「!」 「どうしました?」 唯にそっくりのキョトンとした仕草で聞いてくる。 「憂ちゃんがきてるってことは、唯ももうきてるの!?」 「ええ、今日は朝練だからって・・・」 憂ちゃんの返事もそこそこに音楽準備室を目指す。 バタン!! 息を切らせて軽音部の部室の扉をくぐると・・・。 「おっ、唯!だんな様のお迎えだぞ!」 ニヤニヤとからかうように(間違いなくからかってるけど)話しかける律・・・。 「和ちゃんおめでとう~」 満面の笑みを湛えて祝福する紬・・・。 「そっ、その・・・おめでとう・・・」 何故か真っ赤になっている澪・・・。 「えっと・・・そ・・・その、お幸せに!」 こちらも真っ赤な顔の梓ちゃん・・・。 「えへへ~」 唯がテレつつも私の腕にしがみついてきた。 「ゆ・・・唯・・・」 「なぁに?和ちゃん?」 「だっ、誰にどこまで話した!?」 「えっと、まだ憂と律ちゃん、澪ちゃん、紬ちゃん、あずにゃんだけだよ」 どうして?って顔をしながら答える唯。 「でっ、ど・・・どこまで?」 そう聞いておきながら、真っ赤な顔でテレテレしまくる唯と四人の顔を見て私はすべてを悟っていた。 「ゆいーーー!!もう他の人に絶対喋っちゃだめだからね!!」 「えーーーっ!クラスのみんなにお祝いして貰おうと思ってたのにぃ!」 「お願い!それだけはお願いだから勘弁して!!」 真っ赤な顔だらけの中で、一番真っ赤な顔をして叫ぶ私だった。 【エピローグ】 私が恐れていた最悪の事態はなんとか回避された。 唯は約束通り憂ちゃんと軽音部メンバー以外に私達の関係を話すことはなく、私もやっと日常の日々を取り戻していた。 ただ、日常といっても今までの空虚な日常ではなく私の横には唯が居てくれた。 それに心強い仲間も出来た。 「でっ、ど・・・どこまで?」 そう聞いておきながら、真っ赤な顔でテレテレしまくる唯と四人の顔を見て私はすべてを悟っていた。 「ゆいーーー!!もう他の人に絶対喋っちゃだめだからね!!」 「えーーーっ!クラスのみんなにお祝いして貰おうと思ってたのにぃ!」 「お願い!それだけはお願いだから勘弁して!!」 真っ赤な顔で懇願する私に渋々といった感じで唯は了承した。 「まぁ、なんにしても良かったよな」 「うん、良かったね唯、和!」 「先輩、良かったですね!」 「うふふ、おしあわせに!」 軽音部のメンバーが再度お祝いの言葉をくれた。 「えへへ、ありがと~」 「みんな、ありがとう」 唯と二人で感謝の言葉を返した。 本当に感謝していた、普通ならこんなに暖かい反応は返ってこないだろう。 軽音部のメンバーと憂ちゃんに、もう一度心の中で感謝した。 「そっかーでもこれから先は二人に見せ付けられることになるのか・・・」 別に見せ付けるつもりはないが・・・多分そうなってしまうのかな。 今でさえうれしそうに唯が私の腕に絡まっているし・・・。 「うふふ、うらやましい限りね」 そう言う紬だが羨ましそうに見ている風には見えず、どちらかと言うと鑑賞されてるような気がする・・・。 「悔しいからこっちも見せ付けてやろうぜ、澪」 そう言った瞬間、律は隣に座る澪を引き寄せて・・・。 「んんっ!?」 もがく澪を押さえ込んで長々と唇を重ねる律。 「あらあらまぁまぁ♪」 うれしそうにそれを眺める紬。 ゴクリ。 両手で顔を覆ってはいるが、ちゃっかり指の隙間からのぞいて興味津々といった感じで眺める梓ちゃん。 「ねぇーねぇー、和ちゃん。私もしたくなっちゃった・・・」 「だっ、だめ・・・ここじゃ」 「えーっ、したいの・・・」 頬を高揚させ上目遣いに見てくる唯に欲求を抑えられなくなりそうだったがかろうじて我慢した。 「だめだって。・・・その・・・あとでしてあげるから、ねっ?」 最後は唯にだけ聞こえるように耳元でささやく。 「んっ、ちゅくっ・・・んふっ・・・」 澪は次第に抵抗をやめてぐったりとしてきた。 「ぷはっ・・・ってことで私たちのほうが先輩だからな!」 唇を離し、一息ついて律が自慢げに言い放った。 唇が離れたあとも、心ここにあらずといった感じだった澪の顔が徐々に紅く染まっていく。 「りっ・・・律!みんなのまえでその・・・するなんて、それにあれほど言っちゃダメだって!!」 「いーじゃん、唯達だって言ったんだし、ずっと黙ってるのって嘘ついてるみたいで嫌だったしさぁ・・・」 「そっ、それはそうだけど・・・でもはずかしい・・・じゃないか・・・」 「それで、それで!二人はいつからお付き合いしてたの!」 フンッ!と鼻息まで聞こえそうな勢いで紬が二人に詰め寄った。 「いや~、実は中学のときから」 若干照れた感じだが自慢げに律が話す。 「そっ、それでもちろんキスだけの関係じゃないわよね!」 紬の好奇心は留まるところを知らないようだ。 「それはもちろ・・・ムグゥ!?」 「わぁっっ!それ以上しゃべるなーー!」 両手で律の口を塞ぐ澪、もう遅い気もするけれど・・・。 「うふふふっ」 どんな妄想をしているのか、一人微笑む紬を見てこの子にだけは恋愛相談をしてはいけないと思った。 その後は、ところかまわず抱きついてくる唯の行動に当初は周りにバレてしまうのではないかと危惧していたが、唯の今までの性格や行動のためか気にしているのは私だけのようだった。 つまり、私たちの関係はこの上なく良好であり幸せな日々を送っている。 これからも色々な事があるだろう、楽しい事も辛い事も。 ただ、信頼できる仲間達が居てくれるから大丈夫だ、何があってもこの先ずっと唯と二人で進んでいく事を改めて心に誓った。 END- 戻る おまけ
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/461.html
ゆっくり見ていってね 7KB ※選ばれしゆっくりの番外編です。新種ゆっくり誕生秘話の後の話でもあります。 ※ゆっくりちるのの生態(後編)はもうしばらくお待ちください。。 ※駄文、稚拙な表現注意。 ※俺設定注意 ※うすたネタ注意 ゆっくりみていってね 「くー。明日からどうやって暮らせばいいんだ。」 そうつぶやきながら田舎のあぜ道を歩く人影がひとつ。 俺の名前は・・・フリーターお兄さんとでも呼んでくれ。 と言っても今は失業者お兄さんなわけだが。 先ほど勤めていたラーメン屋をクビになってしまったからだ。 くっ、俺は悪くない。俺は悪くないんや。 ただ俺はストレスがたまるとラーメンを人の頭にぶちまけるくせがあるだけなんや。 むかつく客に「そぉい!!」と言いながらラーメンぶちまけただけなんや。 と意味も無く関西弁になりながらとぼとぼ歩く俺。ほんと明日からどうしよう。もう貯金もほとんどない。 道端に札束でも落ちてないかと見回すが当然そんなものはあるはずもない。 はー。とりあえず兄貴のところいってめしおごってもらうか。できれば金も貸してほしい。 「ゆっくりみていってね!!」 あー。ゆっくり。ゆっくり。悪いが今はゆっくりの相手をしている気分じゃないんだよ。 そう思いながら通り過ぎる。 「ゆっくりみていってね!!」 あーうるさいな。なにがゆっくりみていってね、だ。こちとら明日からの生活で頭がいっぱい・・・。 ん!?ゆっくりみていってね!?ゆっくりしていってねじゃなくて? 慌てて後ろを振り返る。そこに奴はいた。 生首のような体。銀髪の髪。銀縁の丸めがね。 なんだ!?こいつ!?こんなゆっくり見たこと無いぞ!? そう驚きふためく俺に 「こーりんのすてきなおどうぐたちゆっくりみていってね!!」 とのたまうなぞのゆっくり。 おどうぐ!? よく見るとなぞのゆっくりの前にはござが敷いてあり、そこにはガラクタが乱雑におかれている。 「こーりんどうにあるすてきなおどうぐたち、ゆっくりかっていってね。かわなきゃいっしょうのそんだよ。」 そう言い、きりっとするなぞのゆっくり。 うぜぇ。おもにありもしないイケメンオーラを出そうとしているところがうぜぇ。 そう思い立ち去ろうとしたが、ふと昔兄貴が言っていたことを思い出した。 ゆっくりには露天商売まがいのことをする品種がいる。 売ってある商品は大抵ガラクタだが、中にはどこから手に入れたのか驚くような高価な品がまざっていることがある。 確かに兄貴はそう言っていた。ゆとりのゆっくり研究員をやっていたこともある兄貴のいうことだ。間違いない。 貧乏を脱出するチャンスだ!! そう思うと今までガラクタにしか見えていなかったこいつらがお宝に見えてくるから不思議だ。 「おい。」 「ゆっ!?」 「この商品はいくらだ?」 「ゆっ、ぜんぶあまあまとこうかんだよ。さんじゅうねんにいちどのさーびすでーだよ。」 あまあま?つまり甘いものか。確か昨日サービスでもらった飴があったはず。あわててポケットを探る。 あった!! 「ゆっ!!あまあま!それとならどれでもひとつこうかんしていいよ。」 くっ、ひとつだけかよ。これは絶対にはずせない。 そう思いござにあるガラクタたちに目を通す。 せみの抜け殻、ビー球、ただの丸い石とおままごとレベルの物から、古めかしい小さな仏像や、青く光る石をあいらったブローチのような高価なにおいのする品までまさに玉石混合だ。 「ん!?なんだ。この八角形の鉄のかたまりは?」 「それは、みにはっけろだよ。」 「ミニハッケロ!?なんだそりゃ!?」 「もってるといろいろべんりだよ。げんそうきょうのまりさがもっているのとおなじやつだしね。」 ゲンソウキョウ?なんだそりゃ?まりさってあの黒いぼうしをかぶったゆっくりのことか? そんなものよりこっちだ。 俺は小さな仏像とブローチを前に考え込んだ。 どっちだ?どっちが高価な品なんだ? この仏像、まえになん○も鑑定団で似たようなの見たことあるきがする。たしかあれは数百万はしたよな・・・。 いやそれをいったらこのブローチも歴史を感じさせる。飾りも本物の宝石に見えてきたし。 くっ、わからん。 いっそのことどちらも買うか? あまあまはどこかから買ってくればいいんだし。 いや、だめだ。ここは田舎のあぜ道。近くにコンビニはおろか、ひとっこひとりいない。 ひとっ走り買いにいくにしても時間がかかる。それまでこの店がある保障は無い。 こうなれば最後の手段だ。 「うおおおおお!!!!」 俺はゆっくりのめがねをうばい、 「ゆっ!?かえしてね!こーりんのいんてりじぇんすなめがねさんかえしてね」 「そぉい」 月までとどけこーりんのめがねとばかりにぶん投げた。 「こーりんのだんでぃなめがねさんまってぇぇぇぇぇ!!」 ゆっくりにとって飾りは命の次に大切なもの。当然泣きながらめがねの飛んでいったほうへ探しにいく。 小動物をいじめてるようで気が引けるがしょうがない。 この隙にブローチと仏像をつかみ帰らせてもらうとしよう。 さすがにかわいそうなんでキャンディはここに置いていくとするか。どうせいらんし。 しかしこいつら換金したら何に使おうかな。とりあえず油苦理飯店の高級ゆっくり中華を食べに行こう。 前からいってみたかったんだよなぁ。 1時間後 森の中にこーりんはいた。レンズにひびが入り、フレームの曲がっためがねをかけて。 飛んでいっためがねは幸い見つかったものの、地面におちたショックでレンズにひびが入り、フレームも曲がってしまった。 「ゆう・・・。こーりん、いけめんじゃなくなっちゃったよ・・・」 がっくりするこーりんだが、ひとつだけいいこともあった。 あまあまが手にはいったことである。あのあとこーりんどーに戻ったところ、なぜか店先においてあったのである。 めがねさんが壊れたのは残念だが、せめてあまあまを食べて元気をだそう。 そう思い、あまあまをほうばろうとするこーりん。 しかし、ない。たしかにそこに置いたのに!? 「ゆゆっ!!?あまあまさん、ゆうだなかみかくしにあわないでてきてね!!」 そう言い、当たりを見回すこーりん。そして見つけた。 あまあまをくわえ逃げていくゆっくりまりさの姿を。 「まってね!!こーりんのあまあまさんかえじでねぇぇぇ!!」 「ゆっへっへ。しぬまでかりていくだけだぜ」 そういうとまりさはゆっくりらしからぬスピードではねていった。 後にはむせび泣くこーりんが残された。 どうやら幻想郷でも現代日本でもこーりんはまりさに搾取される運命らしい・・・。 所かわってここは郊外の安アパート。フリーターおにいさんの兄、店員おにいさん(元研究おにいさん)の住むアパートである。 「でっ、どちらも偽物だった、と」 「そのとおりだよ、ちくしょー!!ほんとなら油苦理飯で優雅なディナーのはずだったのに・・・」 そう言いながらカップめんをすするフリーターおにいさん。 あの後スキップしながら古道具屋へブローチと仏像を持ち込んだものの、どちらも安物であると判明。 怒りのあまり、途中で物乞いをしているリボンのちぎれたれいむを蹴飛ばしてしまった。 当然、油苦理飯など行けず、店員おにいさんの出してくれたカップめんが夕食となった。 「馬鹿だなぁ。僕なら確実に儲けることができたのに。」 「どうやってだよ!!あのなかにはガラクタしかなかったんだぞ!!」 「そうじゃなくてそのゆっくりをゆっくりショップに売ればよかったんだよ」 「えっ・・・」 「これを見て。」 そう言い、分厚いカタログを出す店員おにいさん。タイトルに「ゆっくり大全集 09年度版」と書いてある。 その中の1ページを開き、フリーターおにいさんへ見せる。 「これがいったいどうしたん・・・いぃっ!!?」 そのページには確かに昼に見たゆっくりの写真が載っていた。 名前はゆっくりこーりん。希少度S、そしてショップ買い取り価格・・・・100万以上!!!? 「希少度がSなら100万以上の買い取り価格がつくゆっくりは多いよ。なかにはいくら金を積んでも手にはいらない奴もいるしね。 僕の店に持ってきてくれればよかったのに・・・」 「そ・・」 「こーりんなら、婦人層に人気があるから200万以上でもいけたかもな。」 「そ・・・・」 「そ?なんだい?」 「そぉい!!!」 フリーターおにいさんが店員おにいさんの頭にラーメンをぶちまけ、兄弟げんかが始まるのはこれから10秒後のことであった・・・。 by長月 今日の希少種 ゆっくりこーりん 希少度 S 古道具屋のまねごとをするゆっくり。どこに店を出すかはわからない。 店のことをこーりんどうと呼び、古道具を並べてあまあまや食料などと交換する。 基本的にあるのはガラクタだが、中には貴重な品や幻想郷のマジックアイテムも売っている。 どこから貴少品を手に入れるかは不明で、一説によるとスキマ妖怪が関係しているらしい。 あとがき やはり希少種ネタはいいですね。もっと絵でもSSでも希少種ネタがふえればいいのに。 今まで書いた作品 ふたば系ゆっくりいじめ 176 ゆっくりちるのの生態(前編) ふたば系ゆっくりいじめ 185 選ばれしゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 196 新種ゆっくり誕生秘話 選ばれしゆっくり番外編 長月の作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る こーりん飼いたい( ^-^)ノ -- 2016-01-29 17 26 58 フリーターお兄さん馬鹿すぎる -- 2015-02-26 10 13 51 古道具屋さんごっこか……かわいいな -- 2015-01-31 13 59 34 希少種サイコー! -- 2014-11-10 16 22 51 ああ、なんで現実にゆっくりが存在しないんだろ -- 2014-11-09 14 32 37 こーりんは雄しかいないんだな -- 2014-07-31 13 43 38 さりげなくトンデモアイテムが混じっているのだが -- 2013-09-25 22 52 52 こーりんかわいいよこーりん(≧∇≦) -- 2013-07-21 11 42 31 ミニはっけろは危ないんじゃないか?汗 兄さん最悪な奴だな、ラーメンを人にかけるなんて、傷害罪に問われちゃうよ(*1))) -- 2012-12-19 11 27 02 現実にもゆっくりいたらいいのにな・・・w -- 2012-11-05 15 27 08 こーりん欲しいな -- 2012-02-19 20 46 10 実際にゆっくりがいたら、「こーまかん」とか「ちれーでん」とか作りたいよな。 基本種でもちぇん、ぱちゅり、みょんなんかはゲスでも可愛いし。 -- 2011-11-09 02 15 33 「そぉい!」お兄さん充分ワルだよww -- 2011-08-23 15 54 31 ミニはっけろ・・・幻想郷の魔理沙はどうしてるんだろうか -- 2010-12-10 17 00 50 飼いたくなるな -- 2010-09-29 21 45 11 ↓きもいこと言うな -- 2010-09-22 23 45 23 原作キャラの劣化コピーみたいな習性を持つゆっくりは楽しいね。 ところでこーりんにもまむまむはあるのだろうか? -- 2010-08-18 21 42 19
https://w.atwiki.jp/cozmixdatebase/pages/121.html
その日、由乃はテレビに釘づけだった。 「あははっ!」 大好きなお笑いタレントが出ている番組が多くて、テレビの前から離れられずにいたのだ。 そこにやってきたのは、最愛の相手、令。片手にクッキーを持っている。 「由乃、クッキー焼いたよ」 令の頭の中では、素敵な光景が展開されていた。 「わぁっ、ありがとう令ちゃん!」 「こらこら、そんなにがっつかなくても、まだあるってば」 「だって美味しいんだもん」 「あ、由乃。口の周りに、クッキーが付いちゃってるよ」 「えー、本当?」 「私が取ってあげるよ。……唇で……ね」 「うん……。お願い、令ちゃん……」 以上、令ちゃん脳内スプリングフェスティバルの模様でした。 しかし、現実は厳しくて。 「ん。そこ置いといて」 由乃は一瞥をくれることもなく、テレビを見たまま。令は小さくため息をつきつつ、テーブルにクッキーの入った容器を置き、自分も座った。 由乃は手探りでクッキーを掴むと、笑いながらボリボリを貪り食らう。 「……由乃。行儀が悪いよ」 「令ちゃん、うるさい」 再びため息。令は自分の焼き上げたクッキーを一枚、優しくかじる。 (今日は、久々に会心の出来なのになぁ……。由乃ってば、テレビに夢中だよ……) 三度目のため息。 (あと半分は、明日学校に持っていこう。祐巳ちゃんならきっと、笑顔で食べてくれるだろうし) ちら、と従妹の顔を見る。その横顔は笑顔だが、テレビの中のタレントに向けられた笑顔である。 (……うう、私は、由乃のために焼いたのに……) 四度目のため息は、心の中でついた。 (あー、なんか、泣きそう……) そう思った瞬間、令の目頭がかっと熱くなった。 慌てて立ち上がると、 「ちょっと急用思い出したから、帰るね」 「ん」 令は涙がこぼれないうちに部屋を出ようとしたのだが、それを呼び止めたのは、由乃の声だった。 「令ちゃん」 振り向けない。振り向いたらきっと、流れだした涙を由乃に見られてしまうから。 「……なに?」 「どこかに行くなら、気を付けてね」 「……うん」 「それと、クッキーありがとう。なんだか、いつもより美味しい気がする」 「き、今日は、いつもよりいい出来だったんだ」 「祐巳さんたちにも食べさせたいな」 「……ま、まだあるから! 明日、持っていくよ!」 「うん。……呼び止めてごめんね。いってらっしゃい、令ちゃん」 令は、少しだけ、顔だけで振り返った。 由乃の笑顔は、令に向けられていた。 「……うん、行ってきます」 島津家から自分の部屋に戻ってから、令は頭を抱えた。 「あー、小さい自分がだいっ嫌い!!」 令が部屋に戻った頃、由乃はテレビを見つめていた。画面には、反転した自分の顔。電源はとうに切ってある。 (令ちゃんは、自分で気付いてないのよね。あんなに声のトーンが変われば、たとえ祐巳さんだって気付くわよ) 天の邪鬼な由乃は、大好きな姉がいなくなってから、そんなことを思うのだった。 「後で、謝ろうっと」 令ちゃんが『どこかに出かけて帰ってくる』辺りに、お部屋に行こう。 由乃はそう思い、クッキーをかじった。細かい粉と一緒に、愛情が溢れた気がした。
https://w.atwiki.jp/83452/pages/7541.html
気がつくと、目が熱かった。 唯「あれ……?」 それに視界も霞むから、目を何度も何度も擦った。 唯「……なんで……」 憂とはもうこれでおしまい。 今まで一緒にいたのも、一緒に笑ってきたのも、今日で終わり。 これから憂は、わたしのところにはいられない。 わたしがいられなくしたんだ。 それがどんなに辛いのか、まだまだわかってないのに辛かった。 唯「……うい……」 泣いてなんかいなかったけれど、目を拭った服の袖は濡れていた。 ── ──── 部屋の戸を閉め、ベッドに沈む。 憂「……」 お姉ちゃんは、わたしの言葉を遮った。 たぶん、なにを言うのか分かってたんだ。 わたしはどんなにばかなことだったかも知れず、勢いのままに言おうとした。 お姉ちゃんに抱くこの気持ちは、ずっと胸に秘めていたものだったけど、ただあの状況がいやでつい口から漏れた。 憂「ばかだな、わたし」 だからお姉ちゃんはそんなばかな自分を止めてくれたんだ。 わたしのお姉ちゃんだもんね。わたしのことはお見通し。 こんな気持ちはだれにも言っちゃいけないんだ。 お姉ちゃんにだって。 憂「……」 明日、梓ちゃんからのお話。 聞きたくはなかったけれど、聞かなきゃいけないのは分かってた。 ──朝。 いつも通りにご飯を作って、いつも通りにお姉ちゃんを起こしにいく。 いつも通りにしなきゃ。 憂「お姉ちゃん、起きて」 でもやっぱりできなくて、お姉ちゃんの体に触れなかった。 唯「うん……」 いつもよりはやく帰ってきた返事は、わたしに出ていってと言っているようで、わたしはすぐに部屋を出る。 憂「じゃあ着替えてきてね」 唯「……」 返事はない。 毎朝のことだけれど、わたしにはそれがとても苦しかった。 憂「あ、おはよう……」 唯「おはよう……」 いつもなら待ってるのに、今日はもうご飯は済ませた。 なんだか、お姉ちゃんに合わせる顔がなかったんだ。 一足先に家を出た。 お姉ちゃんには、用事があると嘘をついて。 憂「……」 学校に行きたくなかった。 お姉ちゃんと笑って、いっしょにいられればよかった。 なのに昨日あんなことをしてしまった。 全部、わたしが悪いんだ。 憂「そうだよ……」 こうなったのは、わたしのせい。 自分を責めて責めて、もう心が限界だったけど、これ以上迷惑かけたくないからなんとかこらえた。 いつもふたりで通っていた道を、ひとりで歩く。 けれども体は、倍より重い。 足は、ただ意志もなく進んでいた。 「あっ憂おはよう」 教室へ入ると、声をかけられた。 憂「あ、梓ちゃん。おはよう」 梓「う、うん」 いつものように交わす返事だけれど、どこかぎこちない。 わたしはでも、なにも変わらず振る舞った。 梓「きょ、今日のこと……」 憂「うん、わかってるよ。放課後ね」 梓ちゃんが緊張しているのがわかった。 梓「ありがとう!じゃ、じゃあね」 そそくさとわたしから逃げるように梓ちゃんは去っていく。 一度も目は合わせなかった。 そのことに、なんだか罪悪感を感じ、後ろ姿を目で追った。 憂「……」 わたしだって、割りきらなきゃ。 授業は頭に入らなかった。 どうみても集中できていない梓ちゃんとか、なんだかよそよそしい純ちゃんも気になったけど、わたしの頭には何も入らない。 お姉ちゃんのことも考えた。 今頃どうしてるかなとか、課題わすれてないかなとか、今のわたしはそれだけの余裕しかない。 どうすればいいのか分からないんだ。 こういう時、いつも頼りにしてたのはお姉ちゃんだから。 だからどこにも頼れる当てがなくて、泣きそうにもなったけど、泣いたって誰も助けてはくれない。 それに、これは自分で作った状況だ。自分でなんとかしなきゃだめ。 心を奮い立たせて気を保とうとするけれど、辛くて辛くて折れそうになる。 お姉ちゃん。 どれだけ大切だったのか、分かってなかったのかな。わたし。 そんなことを考えているうちも、時間はあっという間に過ぎて、放課後のチャイムが鳴り響く。 次々と出ていくクラスメイトたちを横目に、空を見た。 憂「ちゃんと決めなきゃ」 もうあとは、自分で責任をとらなきゃいけないよ。 しばらくして、人気のなくなった教室に、ふたりだけ。 どこからともなく口を開いた。 憂「もう平気かな」 梓「う、うん」 声色が震えてる梓ちゃんを見ると、手も震えてた。 そんなにならなくても、平気だよ。 梓「う、憂」 憂「はい」 梓「わ、わたし……」 そうだよね、わたしがしっかりしなきゃ。 梓「えと……その」 だから大丈夫、大丈夫だよ。梓ちゃん。 梓「憂のこと、好きなの!」 そっか。 梓「だから、もしよかったら、つ、付き合って……ください」 梓ちゃん、わたしのこと好きなんだ。 梓「あ、あの……?」 うれしいな。そんなこと思われてるなんて。 憂「ありがとね、梓ちゃん」 梓「……い、いや」 憂「わたし……」 こんなに幸せなのは、すごく久しぶりな気がする。 梓「……」 ほら、梓ちゃんがわたしをの言葉を待ってる。 わたしだって、いつまでもお姉ちゃんなんて言ってられないよ。 憂「……」 今までありがとね、お姉ちゃん。 憂「わたしは……」 ……大好きだったよ。 ── ──── 唯「ただいま」 誰もいない部屋に呼びかける。 いつもなら、あの子が迎えてくれる。でも、もういつもじゃないんだ。 部屋のカーテンは閉めきって暗いまま、ベッドに倒れ枕に顔を突っ込んだ。 唯「憂……」 返事もあるはずのない名前を呼ぶ。 だめだよ、もうあずにゃんのところだもん。 唯「……うい……」 呼んだって、来てくれるわけじゃないんだよ。 唯「うい……いや、やだよ……」 ばかみたい。自分のせいでしょ。 唯「おねがい……もどって、きてよぉ……」 悲しくて悲しくて、涙が止まらなかった。 それでもわたしは、ずっとひとりのまま。 ── ──── 夕焼けがオレンジに照らす道を、ふたりで歩いてた。 憂「ね、梓ちゃん」 梓「は、はい?」 まるで機械のように動く梓ちゃんの横顔は、淡く染められてとってもきれい。 憂「手、繋いでいい?」 梓「えっ?え?」 そんな初々しいところもまた新鮮で、わたしから手を取った。 梓「あっ……」 憂「えへへ」 梓「あ、ありがと……」 憂「んーん」 梓「……憂、わたしね」 憂「なあに?」 梓「……憂のこと……」 そして、 夕焼けがかなわないくらい、顔を真っ赤にした梓ちゃん。 わたしの顔は、どうなってるかな。 今握ってる手は、いつもとは違うけど、 これからは、これがいつもの風景なんだ。 それをわたしは、その手に想いを込めるよう、 強く握って確かめた。 おしまい。 戻る
https://w.atwiki.jp/20161115/pages/102.html
風が吹き、草木が優しく囁く。 そんな緑溢れる大地をゆったりと散策する少女二人。 一人は、可憐な容姿と纏うバラがファンシーな色気を醸し出しており、もう一人は赤髪に長袖のパーカー、ホットパンツとどこかボーイッシュな雰囲気を醸し出している。 傍目からは、少女二人と自然の調和というひとつの絵でも描きたくなる衝動に駆られるほどに見栄えする光景に見えなくもない。 それに反して会話はひどく物騒なものではあるが。 「佐倉杏子。あなたは北で戦ったと言っていましたがなぜ中央を目指すのですか?」 「あいつもそれなりに怪我をしてたし、あんな派手な騒ぎがあったところに留まるとは思えない。なら、どうせなら他にも人が集まりそうな中央から潰していった方が得ってわけさ」 「なるほど。一理ありますね」 とまあ、こんな具合である。 それもそのはず。なんせ彼女たちはその可憐な容姿とは裏腹に、自分たちよりも非力であろう『人間』を狩りに行こうとしているのだから。 一人は新たなる戦いの為に。一人は生きる為に。少女二人はこれよりその道を朱に染めんと進む。 「ん」 ピクリ、とクラムベリーの耳が動く。 クラムベリーが捉えたのは、足音と話し声。 間違いない。参加者を捕捉したのだ。 「どうやら近くに参加者がいるようですね。こちらに向かっているようです」 「あんたの魔法でわかるんだっけか。このまま歩いてればいいか?」 「ええ。数分もあれば姿が見えると思います」 場所は森。まだ太陽が昇りきっておらず薄暗がりのため中までは認識できないが、距離もさほど遠くはないため来訪者の判明も時間の問題だ。 「何人だ」 「二人...いえ、足音はひとつ...話し声もしているのでこちらに気がついている様子もないのですが...」 足跡が聞こえないとなれば、片方は背負われているのか。 なんにせよ構わない。『人間』であれば狩るだけだ 二人は、速さを抑えることなく堂々と歩む。 片や来訪者に期待を寄せ、片や己の襲撃のパターンを脳裏に張り巡らせ。 ほどなくして、二人は来訪者に遭遇する。 来訪者は、二人の存在を認識したところでようやく止まり、杏子もまたそんな来訪者の正体に小さくため息をついた。 「さ、佐倉杏子...!」 「悪い、クラムベリー。いまは手をださないでくれ。一応あたしの知り合いだ」 来訪者は、杏子もよく知る魔法少女、美樹さやかだった。 ☆ 「さやか、あのハンペン顔はよかったのか?」 「...仕方ないよ。ああも炎を吐かれたら近づきようがないし」 アリスと別れたさやかは、まどか達の探索に時間を割いていた。 できれば、ワイアルドから助けてくれたモズグスの力になりたいとは思っていたが、炎の勢いが存外強力であり、近づくことすら敵わない状況であったため、断念せざるをえなかった。 それでも、炎の下手人が敵方であるワイアルドなら多少無茶をしてでも加勢したかもしれないが、撒いたのはモズグスその人。 さやか達を近づけまいとしているのか、それほど周りが見えない人なのか...少なくとも、遭遇時に抱いた好印象はかなり薄まっていた。 それも、さやかが加勢を諦めた理由のひとつである。 (とにかく、いまはまどかを探さなきゃ...) ほどなくして、さやかと隊長は二つの人影を確認。距離が近づくにつれ、その正体も認識する。 一人は知らない女性だったが、もう一人はさやかの知り合い、佐倉杏子だった。 「あんた、その恰好...!」 さやかは、土煙で汚れた杏子の服を見て警戒心を高める。 理由はわからないが、彼女も誰かと交戦したのだと。 「ナリはあんたが言えたことじゃないだろ。あんたこそその様はどうしたんだよ」 かくいうさやか自身も、いや、杏子と比べれば明らかにさやかの方が傷つき薄汚れている。 全身に刻まれた擦り傷、ところどころが破れた衣類、乾いてはいるもののこびり付いている血。 さやかの知り合いでなければ、警戒しない方がおかしいレベルの惨状である。 「待つんじゃ、ワシらは殺し合いには乗っておらん!」 ひょこ、とさやかの背から顔を出し、隊長が制止の声を挙げる。 しかし、さやかはともかく杏子は最初から戦闘の構えとってはいなかった。 「こんな状況だ。戦いのひとつがあってもおかしくないさ。...そんな弱そうな爺さんを連れてるあたり、本当にあんたは殺し合いには乗ってないみたいだな」 「誰が弱そうな爺じゃ!ワシはこう見えても雅様の誇り高きしんえ」 「...乗ってないよ。そういうあんたはどうなのさ」 「遮るな!」 「あたしか?あたしは―――」 『あー、ごきげんようおめーら』 杏子の声をかき消すように、天より声が鳴り響いた。 「な、なによこれ!?」 「おそらく、参加者に現状を報せるための定期的な連絡でしょう」 「なんじゃお前は」 「森の音楽家クラムベリーです。いまは佐倉杏子と行動を共にしています」 「ど、どうも...」 杏子とは対照的に割りと礼儀正しく挨拶をしてきたクラムベリーに思わずあっけにとられながらも、彼女の佇まいから、もしかしたら杏子は杏子で殺し合いを止めるためにクラムベリーと共に行動していたのかなと頭の片隅に思い浮かべる。 が、そんな想いもすぐに塗りつぶされる。 『最後に脱落者だ。これから放送毎に死んだ奴らを読み上げてく』 「――――!」 脱落者。即ち、この約6時間ほどで死んだものたち。 これから呼ばれる一人の親友の名に腹を括り、未だ行方の知れぬ親友たちが呼ばれるかもしれない緊張で、さやかと隊長はごくりと唾を飲み込んだ。 そんな緊張の面持ちの二人とは対照的に、クラムベリーも杏子もさして変わらない佇まいで放送に耳を傾けていた。 『今回の放送までに死んだのは』 ドクン、とさやかの心臓が跳ねる。 『薬師寺天膳、志筑仁美』 呼ばれた。覚悟していたぶんの痛みが、さやかの心臓を締め付けた。 『南京子。一方通行』 呼ばれない。呼ばれない。 『ありくん』 呼ばれない。 『巴マミ』 呼ばれ――― それ以降の情報は、さやかの耳から全て零れ落ちていった。 気がついたときには、もう放送は終わっていた。 「おい、さやか大丈夫か」 「マミ、さんが」 隊長の呼びかけも耳から通り抜けて行き、ようやく彼女の名前を口に出せたかと思えば、抑えきれない震えがさやかを襲う。 なんで死んだ。なんで死んだ。なんで死んだ。 頭の中はそればかりで、悲しみ悼むべき涙も出やしない。本当に生き返ったのかという疑問も遥か彼方に飛んでいってしまった。 なんで死んだ。誰が殺した。誰が殺した。誰が 「殺したのは『人間』ですよ」 まるでさやかの脳内を読み取ったかのようにポツリと呟いたのはクラムベリー。 今まで微笑を携えていた彼女の顔も、その一瞬だけは確かに険しいものとなっていた。 「あんた、マミさんのことを知ってるの?」 「はい。わずかではあるものの、実に充実した時間を過ごさせていただきました」 「なら、教えて...マミさんになにがあったの!?」 「構いませんよ。ですがその前に...」 クラムベリーはそこで言葉を切り、北―――下北沢近辺の方角に視線を向け静止する。 「また参加者か?」 「ええ。人数は二人、それもかなり無用心に、堂々とこちらに向かってきています」 「さっきの放送を聞いた上でそれなら、よほどの馬鹿か、腕に自信があるのか」 納得しているかのように話す二人にさやかと隊長は困惑する。 「え、えっと...」 「私の能力ですよ。詳しくは教えませんが、歩いてくる者くらいは判別できます」 「なら逃げんのか?お前たちもワシらと同じ赤首輪じゃろう」 「こっちに真っ直ぐ向かってくるならここで待ってればいいだろ。変に隠れる必要もない」 堂々と佇む杏子とクラムベリーに倣い、来訪者の現れるであろう方角に目を凝らすさやかと隊長。 ほどなくして、さやか達の耳にも微かな足音が届き、来訪者の輪郭もおぼろげながら浮かび上がってきた。 そして、その姿が明確になり、さやかの背に凍りつくような怖気が走る。 さやかがその肉眼で捉えたのは二人の異様な男。 一人は一糸纏わぬ、文字通り全裸にランドセルという冒涜的な格好でスキップをする筋肉質な青年。 もう一人は白髪にタキシードの、どこかヴィジュアルバンドのような服装の男。 一目で異物だとわかる前者はともかく、後者は服装だけなら若干時代錯誤を感じる程度のものだろう。 だが、白髪の男がなによりも異様だったのは、口元を覆う赤黒い血液。 なにより、その手に持つだれかの残骸が、男の異様さと異常さを際立たせていた。 白髪の男は、四人のもとへたどり着くなり、ニイと口角を吊り上げた。 「これはこれは大層なお出迎えではないか」 眼前の男の放つ醜悪な気と異様さに、さやかは思わず変身し剣を構える。 「み、雅様!」 そんな彼女の背から隊長の声が響き渡る。 雅。その名は、確かに隊長から聞いていたものだ。 「雅様、ご無事でなによりです」 「ハッ、お前か」 目の前の男の異様さに気がついていないはずがないだろうに、朗らかに話しかける隊長に、さやかは困惑してしまう。 「た、隊長...?」 「よかったなさやか。これでもう安泰だ。こんなに早い段階で雅様と合流できるなど、なんて運がいい」 「いや、それよりも、その...」 隊長が嫌々媚を売ってるとは思えない。 なのに、たとえ信頼のおける者だとしても、眼の前の惨状を見てなぜ平気でいられるのか。 なぜ、いまが彼にとって当然とでもいうかのように平然としていられるのか。 さやかの中では、そんな隊長への複雑な感情が滲み始めていた。 「...何者だ、あんた」 いまの雅の姿を見れば、流石に杏子も警戒心を露にし、いまにも槍を突きつけんばかりに睨みをきかせる。 「ぼくひで」 だが答えたのはひでだった。 「あんたじゃねえよ。いや、あんたもわけがわからねえけどさ。...で、改めて聞かせてもらうけど、あんた何者だ」 「私の名は雅。吸血鬼の王だ」 吸血鬼。その単語に、杏子は思わず鼻で笑ってしまう。 別に彼を馬鹿にしたわけではないのだが、教会の出であるため、吸血鬼のような怪物の創作話はそれなりに馴染みのあるものだった。 雅がそれを名乗ったものだからつい噴出してしまったのだ。 「それで、その吸血鬼様がなんのようだ?」 「なに。血の匂いがしたのでね。どんな輩がきたのか見に来ただけだ」 「そうかい」 パァッ、と光が身体を包み、杏子の服が魔法少女のものに変わる。 その光景に、突きつけられる槍と殺意に雅は一切の動揺もなく笑みを深める。 「早まるな。なにも今すぐ戦りあおうというわけではない。私は珍しいものには目がなくてな。この機会に赤首輪の人外とは話をしてみたいと思っている」 「話、ねえ。どうするクラムベリー」 「構いませんよ。興味があるのは私も同じですから」 「だ、そうだ。あたしも構わないよ」 雅に全く物怖じせずに言葉を交わす杏子とクラムベリー。 そんな二人を見てさやかは戸惑うも、話だけなら、と遅れて了承する。 「おっと、忘れるところだった」 雅はひょいと右手に持った腕の形をした残骸を掲げ、口が耳元まで裂けるほど開き。 ガブッ。 血を撒き散らしながらバリバリと豪快な音を立てて噛み砕いた。 一連の流れとその際のご満悦な表情を見て、ドン引きしつつさやかは思った。 こいつとは絶対に相容れない、と。 ☆ 数分後。 情報交換の場を設けた5人の赤首輪たちは身を隠すこともなく、その場で輪となって。 「ぽかぽかして気持ちいいのら」 その輪から外れて、ひではひとりご満悦な表情を浮かべつつ日向ぼっこを始め、気持ちよかったのかそのまま寝息を立てて昼寝を始めてしまった。 「雅様。あれは新しい邪鬼ですか?」 「いや、拾っただけだ。私にもよくわからん...さて、ひでのことはともかくだ」 雅はジロリと一同を見回し、笑みを浮かべる。 「揃いも揃って幼い女とは。まさか貴様たち、暁美ほむらと同じ魔法少女ではあるまいな」 "魔法少女"と"暁美ほむら"の単語に、杏子の目つきは鋭くなり、さやかの心臓がドキリと跳ね上がる。 「あんた、あいつと会ったのか」 「つい先ほどまでは共に行動していたのだがな。結局牙を剥いてきたので返り討ちにしてやったよ。その証拠に奴隷の印も刻んでやった。...仲間だったか?」 「別に仲間じゃないさ」 嫌らしく笑みを浮かべる雅に対し、杏子は依然変わらず。 しかし、彼女の醸し出す空気が変わっていたのは誰もが感じ取っていた。 「おっと、恐い恐い。あんまり恐いからつい手を出してしまいそうだ」 「下らない茶番は止めな。殺されたいなら別だけどさ」 「コラッ、雅様になんて大それた口を!さやか、友達ならなんとかいってやれ!」 「ごめん、隊長。あたしから見てもあいつを止める気にはならないよ」 さやかは決してほむらと仲が良いわけではないし、むしろ警戒しているほどだ。 しかし、だからといって痛めつけたことを嬉々として語る男に肩入れをしようとは思わないし、それに苛立つ杏子の方がまともだとも思っている。 だから、ここで杏子が雅を殴り飛ばしたとしても止める言葉は持てないだろう。 「佐倉杏子の言う通りですね。私たちは茶番を楽しむ為に留まっているわけではありません」 そんな空気の中、険悪な空気を醸す二人に割って入ったのはクラムベリーだった。 「私には目的があります。確かに赤首輪の人外には興味がありますが、だからといって無駄なお喋りに時間を費やしたくはありません」 「ほう。そこまで急ぐ目的とはなんだ?」 「この場における、『人間』の排除。その後に赤首輪の参加者だけで闘争を繰り広げ決着をつけることです」 クラムベリーの宣言に、さやかは息を呑む。 『人間』の撲滅。それだけでなく、赤首輪の参加者間で脱出するための協力ではなく、赤首輪同士での戦い。 今まで大人しかった彼女からそんな物騒な言葉を聞かされたのだ。予想外にもほどがあり、驚愕するばかりで怒ることすらできなかった。 「弱者がロクに戦いもせず、疲弊した強者を屠る...これほどつまらないことはないでしょう。あんな不愉快な想いは二度と味わいたくないのですよ」 「奇遇だな。私も人間は嫌いでね。無意味に恐れ、無意味に嫌う。そんな愚かな生き物たちには心底呆れ果ててしまったよ」 クラムベリーだけでなく、雅もまた人間の抹殺を宣言する。 (そんな...こいつらを放っておいたら、まどかが...!) さやかの背を冷や汗が伝う。 もしもこの二人を放っておき、まどかが遭遇してしまえば。 考えるまでもない。ただでさえ争いを嫌うまどかだ。為すすべもなく殺されてしまう。 (そんなの嫌だ...) さやかの手に自然と力が込められる。 この二人はここで止めなければまどかが被害を被るかもしれない。 クラムベリーも雅もその実力は未知数だ。おそらく一人で挑んでも勝てはしないだろう。 だが、二人なら。この場にいるもう一人の魔法少女、佐倉杏子と組めば勝機はあるかもしれない。 (杏子...!) もとは、皆の幸せを願っていた彼女なら。共に、目の前の悪鬼たちと戦ってくれるかもしれない。 さやかは期待と懇願を込めて視線を投げかけた。 その先には 「いいこと言うじゃん、あんた」 かつて戦った時に見せたものよりも邪悪な笑みがそこにあった。 「大した力も信念も無いくせに、自分と違えば足を引っ張ることしか考えない。あたしもそんな奴等は大嫌いさ」 「ハッ。ならば、お前たちの目的は私と同じということか」 「ああ。あんな奴等を護るなんざ死んでもゴメンだね。さっさと殺すなり結界に放り込んで魔女の餌にするなりした方が世のためさ」 言ってのけた。 杏子もまた、嘘偽りなく『人間を狩る』ことを宣言した。 「な、なに言ってるのさ杏子!」 さやかは思わず叫んでしまう。 彼女は確かに利己的な魔法少女だ。 けれど、それにはそう為らざるをえない過去があり、冷徹なだけでもなかった。 実際、彼女は傍にいたまどかを攻撃するような素振りも見せなかったし、直接人間を魔女の結界に放り込んでいたとも聞いていない。 それを杏子は『する』と言ったのだ。さやかが反射的に声をあげても仕方のないことだろう。 「なに言ってるもクソもない。前にも言ったはずだろ、あたしはあたしの為だけに魔法を使うって」 「でも、あんたは...!」 「知ったような口を利いてんじゃねえよ。あんたがあたしのなにを知ってるのさ」 さやかはグッ、と言葉を詰まらせる。 杏子の過去は確かに彼女の一面だが、それが彼女の全てであるはずがないし、この殺し合いが始まってからの彼女のこともまだ知らない。 果たして彼女は、過去の経験から人間を殺すほど嫌いだったのか、それともこの殺し合いで嫌いになってしまったのか。 もしも後者だとしたらそれは何故? ―――殺したのは『人間』ですよ ふとクラムベリーの言葉が脳裏を過ぎる。 巴マミを殺したのは『人間』だった。 それをクラムベリーが知るのは、マミが殺された場面を彼女が知っているからだ。 そんな彼女と杏子は共に行動していた。 となれば。 (まさか―――) 「青髪の娘。貴様は、『人間』を護るということでいいんだな?」 さやかが解に辿り着くのとほぼ同時、雅の問いかけが被せられ、思考の停止を余儀なくされる。 かつての魔法少女の真実を知る前なら、躊躇わず感情のままに肯定することが出来ただろう。 けれど、さやかもまた知っている。 この世には救いたくない人間なんていくらでもいる。 自分に尽くしてくれる女を消耗品の道具としてしか見ない男や、仁美を殺した少年、そしてあの巴マミを殺した者。 彼らの影が、さやかに躊躇いを喚起させる。 「あ、あたしは...」 言い淀む。 この四面楚歌から逃れるためなら、他の三人と同様に人間の撲滅を宣戦すればいい。 嘘でも真でもそう同意してしまえばそれだけで済む話だ。 けれども、いつも自分を気遣ってくれた親友が、こんな狂宴においても友情に殉じてくれた親友の影が、嘘をつくことすら押し止めてくれる。 「ハッ。まあいいがな」 さやかの返答を待たずして、雅は目を瞑り薄ら笑いを浮かべる。 「貴様が人間を護ろうが狩ろうが、私が楽しめるならば構わない。せっかくの機会だ。明以外にも楽しませてくれる者がいれば歓迎しよう」 雅の意外な言動に、さやかはキョトンとしてしまう。 てっきり、自分に反する者はすべからく排除するつもりだと思っていたが、彼の言動を要約すればそういうつもりでもないらしい。 であれば、最悪三対一の構図になりかねない現状、退くべきかもしれない。 「ただ」 その微かな気の緩みを突いたかのように。 「自衛できるほどの力も持たん輩であれば別だがな」 雅のブーメランはさやか目掛けて投擲された。 「なっ!?」 あまりにも唐突な襲撃に、さやかは反射的に構えていた剣を盾にする。 甲高く鳴り響く金属音。 その衝撃に、踏ん張る為の力すら込められていなかったさやかの足はたたらを踏み数歩の後退と共に勢いよく尻餅をついてしまう。 「くあっ」 「どうした?貴様はそんなものか?」 戻ってきたブーメランをパシ、と掴み、雅はゆったりと歩を進める。 「そうならば貴様は不合格といわざるをえんな。他の参加者に食われる前に私が糧にしてやろう」 「ッ...のぉっ!」 飛び退き体勢を立て直すさやか。 雅は、ブーメランを持つ腕を振り上げ再び投擲し、さやかへの追撃を―――しなかった。 放たれた方向は左。目標は―――クラムベリー。 顔を傾け躱されたブーメランは、空を旋回し再び雅の手元に戻る。 「なんのつもりですか?」 「なに、ただのテストだよ。果たして貴様らが私に従うに値する強さがあるかどうかのな。いまのをかわせたあたり、そこの娘よりは素質がありそうだ」 「わかりやすい解説に感謝します」 上から目線の物言いに対しても、クラムベリーは不快感を顔に出さない。 どころか、浮かべていた微笑は崩れ、凶悪さすら醸し出す笑みへと変わる。 「お返しに私も試させて頂きましょうか。あなたが、巴マミのように私の闘争に足る存在であるかを」 タンッ、と跳躍し、雅との距離を詰めると同時、腹部に放たれるクラムベリーの拳。 雅は躱す素振りすら見せず、防御すらとらず、迫る拳をまともに受け、後方に吹き飛ばされた。 「み、雅様ァァァァ!!」 響く隊長の叫びも空しく、パラパラと砂粒が舞い降りる。 「その程度ですか?あなたこそ、口の割には実力不足の言葉が似合いそうですが」 「これは手厳しい。ならば、貴様の不満を打ち消す程度には頑張らねばな」 立ち上がり、口元を伝う血を拭い、ブーメランで切り掛かる雅。 振り下ろされる凶器に対し、クラムベリーは素手で立ち向かう。 ブーメランと盾のように翳された左腕はカキン、と音を鈍く響かせる。 クラムベリーは、右の拳を固め、雅目掛けて振るおうとするも、その雅の姿は確認できず。 僅かにブーメランへと意識が向いた刹那で何処へ消えたのか。 その解を出す前に、クラムベリーの右拳は、背後にまわっていた雅へと振るわれた。 パァン、と小気味良い音と共に鮮血が舞い、雅の上体がよろめいた。 「ぐがっ」 堪らず呻く雅に放たれるは、クラムベリーの後ろ回し蹴り。 無防備な胸板に振るわれたソレは、再び雅を後方に吹き飛ばし地面を舐めさせる。 「ッ!」 同時、拳に走る痛み。 見れば、叩き込んだ拳の皮が千切られ、中の肉が露出し血が流れ出していた。 「フム。なかなか美味いじゃないか」 もごもごと口を動かす雅を見て、クラムベリーは理解する。 拳を叩き込んだあの瞬間、雅に皮を食い破られたのだと。 (面白い) クラムベリーの笑みは愉悦に染まる。 やはり戦いは同等の力で行われるのが最良だ。 眼前の男は自分の望む闘争に相応しい存在であるようだ。 もっと味わいたい。もっと拳を重ねあいたい。今すぐにでもあの男を蹂躙したい。 (けれど、私はひとつの闘争で満足はしたくない) 湧き上がる闘争の衝動を抑え、クラムベリーはフゥ、と一息をつく。 (す、すごい...) 「5秒」 眼前の攻防の激しさに呆気にとられていたさやかに、クラムベリーは囁くように語りかける。 「あなたが起き上がるまでにかかった時間です。巴マミは本気でない時でも3秒以内には立ち上がっていましたよ」 「あんた...?」 「巴マミは美しく、気高く、強い魔法少女でした。あなたはまだ未熟です。いま喰らったところで甲斐がない。その実が熟す時を心待ちにしています」 自分の言いたいことを告げるだけ告げると、クラムベリーは駆け出し、雅もまたそれを迎え撃つ。 互いの力量は既に測ったのだ。互いに、ここで仕留めるつもりもないのだが、クラムベリーは巴マミとの、雅はぬらりひょんとの戦いでの消化不良感を満たさずにいられなかった。 「まったく...勝手に盛り上がっちゃってさ」 闘争という名のじゃれあいを遠目で眺めつつ、呆れたようにため息をつく杏子。 杏子にとって闘争など合理的に進め、さっさと片付けるべきものである。 いまの段階で雅にもクラムベリーにも争う理由などないというのに、ああも徒に体力を消耗する気がしれない。 (まあ、あのぶんじゃ気が済んだら終わるだろ) あほくさ、と杏子は退屈そうに欠伸をする。 「...それで、あんたはどうするのさ」 ジロリ、と視線をさやかに移し、雅に代わり杏子が問いかけなおす。 「あんたの友達が人間で、ここに連れて来られてるのは知ってる。あいつらはどうかは知らないが、あたしはわざわざあいつまで狩るつもりはないよ」 「!」 「なに意外そうな顔してるのさ。あたしは自分のためだけに戦うって言っただろ。あんたの友達なんて殺すつもりも護るつもりもないさ。 それに、クラムベリーはともかく雅はあたしも気に入らない。ここで殺しはしないが、精精、同盟だけ結んで一緒に行動はしないだろうね」 杏子はまどかを殺すつもりがない。 それだけで、さやかの葛藤は薄らいでいく。 そもそもの話、葛藤の大半がまどかの存在なのだ。 彼女の安全が確保されていれば、この会場の『人間』を排除することに反論する意義も薄くなる。 同盟するにしても、雅とクラムベリーはともかく、杏子ならまだ信頼はおける。 ならば、杏子と同盟を組み、『人間』を排除しマミと仁美の仇をとることこそが最善の道なのではないだろうか。 (でも...) けれど、もしも他の『人間』がもっとまともな者が多かったら。そのまともな者がまどかと親しい関係になっていれば。 自分としてはその人も助けたい。この殺し合いが終わってもまどかと共に一緒にいてほしい。 だが、彼らは違う。たとえ同盟者の友人であっても躊躇いなく殺すだろう。 彼らは良し悪しに関わらず、『人間』が嫌いなのだから。 彼らに同行し、いざというときにだけ止めるという芸当も、実力に差がある自分にはできまい。 唯一自分の味方をしてくれそうな隊長も、雅がいればあちらについてしまうことも考えれば、この選択肢は茨の道となるのは想像に難くない。 (あたしは...どうしたい?あたしは...) 【G-6/一日目/朝】 【ひで@真夏の夜の淫夢派生シリーズ】 [状態] 疲労(大)、全身打撲(再生中)、出血(極大、再生中)、イカ臭い。お昼ね中。 [装備] ? [道具] 三叉槍 [思考・行動] 基本方針 虐待してくる相手は殺す 0:雅についていく 1:このおじさんおかしい...(小声)、でも好き 【雅@彼岸島】 [状態]:身体の至る箇所の欠損(再生中)、頭部出血(再生中)、疲労(大)、弾丸が幾つか身体の中に入っている。 [装備]:鉄製ブーメラン [道具]:不明支給品0~1 [思考・行動] 基本方針:この状況を愉しむ。 0:バトルロワイアルのスリルを愉しむ 1:主催者に興味はあるが、もしも会えたら奴等から主催の権利を奪い殺し合いに放り込んで楽しみたい。 2:明が自分の目の前に現れるまでは脱出(他の赤首輪の参加者の殺害も含む)しない 3:他の赤首輪の参加者に興味。だが、自分が一番上であることは証明しておきたい。 4:あのMURとかいう男はよくわからん。 5:丸太の剣士(ガッツ)、暁美ほむらに期待。楽しませて欲しい。 6:ひとまずクラムベリーとの『テスト』で欲求不満を解消する。 ※参戦時期は日本本土出発前です。 ※宮本明・空条承太郎の情報を共有しました。 ※魔法少女・キュゥべえの情報を共有しました ※首輪が爆発すれば死ぬことを認識しました。 ※ぬらりひょんの残骸を捕食しましたが、身体に変化はありません。 【森の音楽家クラムベリー@魔法少女育成計画】 [状態]疲労(中~大)、全身及び腹部にダメージ(中~大) 、出血(中)、両掌に水膨れ、静かな怒り、右拳損傷(戦いにあまり支障なし) [装備]なし [道具]基本支給品、ランダム支給品1~2 巴マミの赤首輪(使用済み) [行動方針] 基本方針:赤い首輪持ち以外を一人残らず殺す。 0 ひとまず雅との『テスト』で欲求不満を解消する。 1:杏子と組む。共に行動するかは状況によって考える。 2 一応赤い首輪持ちとの交戦は控える。が、状況によっては容赦なく交戦する。 3 ハードゴア・アリスは惜しかったか… 4 巴マミの顔を忘れない。 5 佐山流美は見つけ次第殺す。 【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】 [状態]:疲労(中)、雅への不快感 [装備]: [道具]:基本支給品、不明支給品0~1、鮫島精二のホッケーマスク@彼岸島 [思考・行動] 基本方針:どんな手段を使ってでも生き残る。そのためには殺人も厭わない。 0:さやかの返答を聞く。答えにいっては一緒に行動してやるかもしれない。 1:クラムベリーと協定し『人間』を狩る。共に行動するかは状況によって考える。 2:鹿目まどか、暁美ほむらを探すつもりはない。 ※TVアニメ7話近辺の参戦。魔法少女の魂がソウルジェムにあることは認識済み。 ※魔法少女の魔女化を知りましたが精神的には影響はありません。 【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】 [状態]:疲労(大)、全身にダメージ(大)、精神的疲労(絶大)、仁美を喪った悲しみ(絶大)、相場晄への殺意、モズグスへの警戒心(中) [装備]:ソウルジェム(9割浄化)、ボウガンの矢 [道具]:使用済みのグリーフシード×1@魔法少女まどか☆マギカ(仁美の支給品)、不明支給品1~2 [思考・行動] 基本方針:危険人物を排除する。 1:人間を狩るか、狩らないか... 2:仁美を殺した少年(相場晄)は見つけたら必ず殺す。 3:マミさん... ※参戦時期は本編8話でホスト達の会話を聞いた後。 ※スノーホワイトが自分とは別の種の魔法少女であることを聞きました。 ※朧・陽炎の名前を聞きました。 ※マミが死んだ理由をなんとなく察しました。 【隊長@彼岸島】 [状態]:疲労(大)、出血(小)、全身にダメージ(大)、全身打撲(大)、頭部に火傷 [装備]: [道具]:基本支給品、仁美の基本支給品、黒塗りの高級車(大破、運転使用不可)@真夏の夜の淫夢 [思考・行動] 基本方針:明か雅様を探す。 0:雅様と会えた! 1:明とも会えたら嬉しい。 2:さやかは悪い奴ではなさそうなので放っておけない。 ※参戦時期は最後の47日間14巻付近です。 ※朧・陽炎の名前を聞きました。 時系列順で読む Back 涙 Next I wanna be...(前編) 投下順で読む Back 涙 Next I wanna be...(前編) 誰の心にも秘められた想いがあって 美樹さやか アルピニスタ 隊長 TOP OF THE WORLD(前編) 雅 ひで Anima mala/Credens justitiam 森の音楽家クラムベリー 佐倉杏子
https://w.atwiki.jp/peropero/pages/35.html
カスミ/その他 カスミ/その他キャラ分析 勝利台詞(%は残り体力)レイヴン シルヴィス アヤ カミール カスミ セレス ハーディ クレスティス アローニア カケル マラク キャラ分析 この世界で唯一の普通人 カミール以外との関係としてハーディがあるが、いまだ詳細は不明 言動は特別戦闘狂というわけでもなさそう。常識人とも取れる 勝利台詞(%は残り体力) レイヴン 100-75% 「……で。『死蝕』とやらは、いつ見せてくれるワケ?」 「悪いけどさ……、遅すぎて止まって見えるよ、アンタ」 75-50% 「肩慣らしには丁度良いわね。で……これからが本番なんでしょ?」 「ん~……、こんな戦いじゃ、熱くなれないわね……」 50-25% 「確かに、腕は立つようだけど。でも、まだまだボディがお留守よ」 25-0% 「人を褒めるのはあんま得意じゃないケド、あんた強いわね……」 「なるほど?カミールがあんたにこだわるのも判る気がするわ」 シルヴィス 100-75% 「その歳で若白髪とはねぇ。手品師って、儲からないのね」 「あたしの正義から言わせて貰えば、アンタの白髪の方がよっぽど罪よ」 75-50% 「勝手に法の代行者気取るのは良いけど、鬱陶しいからあたしには関わらないで」 「遠くからちまちまと、うざったい!今度やったら、泣かすわよ!」 50-25% 「ねえ、アンタ……生きてて楽しい?」 「悪いんだけど、その目やめてくんない?不幸の値札見てるみたいで、吐き気がするわ」 25-0% 「強いのはよぉく判ったわ。けど、ちまちました戦いはお断りよ」 「信念に値段なんてないのよ。そこんとこ良く考えるのね……」 アヤ 100-75% 「……なんか、後味悪いわね……。もっと、さっぱり戦りたいんだけどな」 「弱いもの虐めは趣味じゃないんだけど……、これは、不可抗力よね?」 75-50% 「そのよく解らない力、何なの?弾けるわ、降ってくるわ、吹き出してくるわ……」 「……えーと。次、行くから」 50-25% 「実は、ちょっとだけ爽快だったり……、してなかった?」 「あんたが望まないなら、二度と戦わないに越したことはないわけ。……じゃあね」 25-0% 「本気で殺しにかかってこられてたら、かなりヤバかったのかもね……」 「止めたがってるように見えたけどさ……、本当に、止めようとしてたわけ?」 カミール 100-75% 「あんた、本気でバカ?どうにもなんない実力差も判んないとはね!」 「あんたのオツムでも解るように言うならば……、『あんた、弱すぎ』」 75-50% 「気合ばかり空回りして、全然技にキレがないわよ」 「あんた、人としてはダメダメだけど、サンドバッグとしては優秀ね」 50-25% 「あたしに寄るな、触るな、近づくな!」 「自慢の顔がザクロになる前に帰りなさい」 25-0% 「紙一重の差も、真剣勝負じゃ決定的な差よ。そこんトコ、理解した?」 「……あんた、手加減……ううん、なんでもないわ……」 カスミ 100-75% 「すごいすごーい、よくがんばったわねー。……ナメてんじゃないわよ、アンタ」 「せっかく真似するならさ、せめてもっと頑張ってよね。……つまんない」 75-50% 「な~んだ、張り合いのない……。期待して損した」 「……出直しておいで」 50-25% 「ん~、良い感じではあるんだけど……、もう一歩、ってところね」 「ふ~ん、なかなかやるわね。じゃあ、もう一頑張り、行ってみる?」 25-0% 「ここまで上手くコピーするなんて、やるわね。素直に感心したわ」 「あ、危ないわね……。同じ顔に負けるわけには行かないものね、さすがに……」 セレス 100-75% 「……まさか、今ので全力だった……、なんて言わないでしょうね?」 「どんな技も、当たらなければ意味が無いのよ。お解りかしら?」 75-50% 「もうちょっと、腕を磨いてから出直してくるんだね」 「アンタの負け。ま、やる前から、結果は見えてたけどね」 50-25% 「ふ~ん……なかなか面白かったわよ。また今度相手してね」 「歴史が違うのよ」 25-0% 「いい線行ってたけど……、ツメが甘かったみたいね」 「まあ、剣も魔導も無くても頑張れるってコトで。……こんなもんでどう?」 ハーディ 100-75% 「数撃っても当たらない下手な鉄砲じゃ、勝負にもならないってコト」 「そんな物に頼ってるから、動きが緩慢になるのよ」 75-50% 「これで……、少しはあたしも、母さんに近づけたのかな」 「あんたも人の親なら、フラフラしてないで彼女に会ってあげたら?」 50-25% 「一人で抱え込んでいれば、いつかは消えるとでも思ってるわけ? そんなの、欺瞞よ」 「今更、恨み言連ねたってどうしようもないって解ってるけど……、それでも……」 25-0% 「まったく、どいつもこいつも……。バッカみたい……」 「青河流の血は絶えてないわ。……その身に染みて、よく解ったでしょ」 クレスティス 100-75% 「……弱っ」 「……ふん、退屈させてくれるわね」 75-50% 「な~んか、戦ったって気分にならないわね……」 「法院のトップも大したことありませんでした、マル……と。……はあ、やってらんないわ」 50-25% 「魔導が強いのは判ったけどさ……、少しは自分で戦ったら?」 「……、こんなもんか。複雑……」 25-0% 「しつこい奴は嫌われるよ」 「火や雷を出せても、勝てないんじゃあね。じゃ、サヨナラ」 アローニア 100-75% 「ずいぶんとお上品だこと。ま、その結果がそのザマなわけね」 「法院に仕えるのがそんなに楽しいのかねぇ。あたしには理解できないな」 75-50% 「仕事熱心ねえ。法院って、何がそんなに魅力なの?お給金?職場環境?福利厚生?」 「キレイな顔に蹴り入れちゃって悪いけどさ、覚悟の上ってことで勘弁してよ」 50-25% 「ふ~ん、人並み以上には鍛えてるってワケね。……あ、一応皮肉だからね、コレ」 「あ~~~、苛つくな~、その宝石……!」 25-0% 「綺麗な顔して、やることがえげつないってぇの……。まったく、腹立つわ」 「火に雷に水に氷に……。ちょっと、やりすぎなんじゃない?」 カケル 100-75% 「なによ……やる気無いなら、そう言ってよね」 「これだけ弱いなら、せめて煙草吸うのはやめて、マジメにやって欲しいもんだけどね」 75-50% 「ゆとりが無いってゆーか、遊びが無いってゆーか。何か、悩みでもあるの?」 「はい、終了~。じゃっ」 50-25% 「間合いがつかみにくいなぁ……。変わった戦い方するのね」 「目ん玉ギラつかせちゃって、怖いなぁ。もっと、楽しくやりゃあ良いのに。ねえ?」 25-0% 「……ソレ、切り裂く武器に見えるんだけど。なんか、裂傷よりも打ち身の方が多いような……」 「結構、楽しかったわ。また戦ってよね?」 マラク 100-75% 「こんな程度でも、上位魔族って扱いなのね……。 もっと上には上がいるもんだと思ってたんだけどな」 75-50% 「んー。私の力、上級魔族にも通用するって思っていいのかね」 50-25% 「次から次へと、高いところから物投げてきて……! おちょくられてる気分だわ!」 25-0% 「え~、物を投げないでください。……ったく、鬱陶しいのよ!」
https://w.atwiki.jp/ranoberowa/pages/372.html
第313話:神様なんていないけどもし居たら 作:◆qEUaErayeY 【このレディと共に倒れていたので既に死亡したか気絶しているものと思っていたが──いやはや、無事でよかった! それにしても、ふむ、君は何者だね? 魂からして人間でも吸血鬼でもダンピールでも食鬼人でもないようだが……】 肺の痛みを堪えつつ目の前の相手との間合いを計る。警戒心は解かない。 こいつ、俺が普通の人間じゃないって気づいてる? なら近からず遠からず曖昧に答えるのが得策か。 後は話題転化。大丈夫、カードで鍛えたポーカーフェイスで切り抜ける。顔に出やすい少女は今は居ない。 「確かに“普通の”人間では無いけど一応人間。他のやつより治癒力が高いだけ。 俺から見たらあんたのが全然吸血鬼に見えないよ」 【我輩はゲルハルト・フォン・バルシュタイン! 子爵の位を賜り、グローワース島の】 …いや、繰り返せとは言ってないから。 【傷の具合はどうかね?】 「…まぁ、なんとか」 【いやはや、全く君の回復力には敬意を表するよ!】 「そりゃどうも」 とりあえずあの後、簡単な自己紹介(もちろん自分が不死人であることは伏せてあるが)と情報交換を 済ました結果、お互い殺意が無い事が分かり、それから他愛も、少なくとも自分にとって本当に他愛も無い 会話を続ける事、数十分。とっとと何処かに行くのかと思ったら(きっと自分がそう願ってただけだけど) どうやらこの長ったらしい名前の血液子爵はコミュニケーションを止める気は無いらしい。 文字通り何も言わないから分からないけど(もともと意思疎通は苦手だ)たぶん怪我をして動けない 自分を気遣って残っててくれているのだと思う。本当はもう動ける程度には回復してるんだけど。 まぁ、どっちにしろ今襲われたら対抗する術が無いから正直ありがたい。相手が素人ならともかく 先ほどのウルペンのような特殊な攻撃を仕掛けてくるようなやつが出てきたらひとたまりもない。 この島には変な奴ばかり集めらてるらしい。小さな溜め息を一つ、完治したばかりの肺から吐き出す。 …どうやら俺の周りに集まるやつは、お人好しか、明らかに敵意を露にしているやつの可能性が高いらしいな。 【服は着替えたほうが良いであろうな。そんな血みどろの格好ではレデイに対する第一印象は最悪の部類に属するだろう。 あぁ、いや他の紳士淑女に対してもだがね!】 「分かってるよ」 慣れないやりとりに、最初は戸惑いつつも、数分で違和感が無くなったのは自分の適応力のおかげと言うか、頼るのは視覚じゃなくて聴覚だけど似たような口うるさい旅連れがいるせいと言うか、 はたまた非日常が日常茶飯事故と言うか。そもそも自分自身が非日常の塊なのだから人(?)のこと言えないし。 そんな事を考えていると不死人として何十年も生きてきた自分に、大半の人間があたりまえに持ってる日常を少しづつ分け与えてくれたのが他ならぬ、霊感の強いネガティブ思考の少女だったのだと改めて思い知らされた。 ごろんとコンクリートの上に再び寝転がる。背中がひんやりと冷たい。真昼といってもそんなに気温は高くないようで降り注ぐ日差しも眩しくはあるが熱波というには程遠い。そもそもこの世界に季節なんてものが存在するのかは知らないが過ごし易い気候だ。全く、こんなとこを配慮するくらいなら、最初から俺たちを巻き込まないで、どこかもっと遠くの次元で殺し合いなり何なりしてもらいたかった。教会のやつらはこの状況を見てもまだ神様が存在すると思うだろうか? 透き通るような青空は依然変らない。流れる雲は白い。自分達が居た世界とは大違いだ。 …っと、そろそろ無駄な思考は中断。今は生き残る方法を最優先で考える。 とりあえず今後の方針は固まってる。時間的にもう始まるであろう放送を聞いて死亡者と禁止エリアを確認した後、武器を調達しつつ人気が集まりそうな場所へ移動。子爵とは此処で別れよう。 キーリに再会出来たら、また怪我してるとか言われるだろうけど、きっと何だかんだ言って人に負けないくらいあいつも擦り傷だらけでいるような気がする。早く見つけなきゃ。 ぐるぐるといろいろな考えが頭を占領する。するとネガティブ思考なのは自分も同じようで最悪の事態が頭の隅を掠めた。 今まで考えないようにしてた事。じわじわと範囲を広げていく。それはまるで大地震のP波のような災害直前の警鐘。 いや、直前と言っては語弊がある。P波が発せられる時点で災害はすでに確定事項であり、始まっているのだ。 今の自分にとっての最悪の災害、それは…。 もしキーリが死んでいたら…自分はどうするだろう。 自殺する? …それは絶対ありえない。そんな簡単に死ねないし。痛いのやだし。 ゲームに乗る? …昔のように兵士として淡々と人を殺す姿を思い浮かべるのは、そんなに難しいことでは無い。むしろ…。 協力者を集めて脱出する? もう、キーリは居ないのに? ………あぁ、興味ねぇ!! ガバッと勢いをつけて起き上がる。赤銅色の瞳にはもう青い空は映ってない。 脱水症状も治った。肺も完治した。あとは放送を待つのみ。 そっと目を閉じて心を静める。どんな結果が出ても冷静に対処できるように。 そして第二回目の放送が始まる。どうか杞憂でありますように…。 【No Life Brothers?】 【C-8/港町/1日目・12 00】 【ハーヴェイ】 [状態]:完治。動くのに支障無し [装備]:なし [道具]:支給品一式 [思考]:武器調達をしつつキーリを探す。ゲームに乗った奴を野放しに出来ない。特にウルペン。 [備考]:服が自分の血で汚れてます 【ゲルハルト・フォン・バルシュタイン(子爵)】 [状態]:健康状態 [装備]:なし [道具]:デイパック一式、 「教育シリーズ 日本の歴史DVD 全12巻セット」 アメリアのデイパック(支給品一式) [思考]:アメリアの仲間達に彼女の最後を伝え、形見の品を渡す/祐巳がどうなったか気にしている [補足]:祐巳がアメリアを殺したことに気づいていません この時点で子爵はアメリアの名前を知りません ※アメリアはD-4エリアに埋葬されました。(ただし、墓に名前はありません) ハーヴェイは不死人・核の事については話してません。 子爵も祐巳の食人鬼について話してません。 2005/05/11 修正スレ95-96 ←BACK 目次へ(詳細版) NEXT→ 第312話 第313話 第314話 第309話 時系列順 第334話 第286話 ハーヴェイ 第350話 第286話 子爵 第350話
https://w.atwiki.jp/83452/pages/10933.html
―――― それから毎週日曜日、和ちゃんとの勉強会を開いた。 ……開くことになっていた。 「最低でも、軽音部が終わるころには今の私ぐらいの偏差値になっておきなさい」 「それで間に合うの?」 「間に合わせるわ」 強い口調でぴしゃりと言う。 和ちゃんらしくなかった。和ちゃんならもっと真剣に考えてくれる。 たとえ結果として私に辛辣なことを言うことになっても、 私のためを思って助言してくれる。和ちゃんの好きなところのひとつ、なのに。 「ねえ、和ちゃん……」 不安が波のように、時折引きながら寄せてきて、だんだんと近付いてきた。 「わたしが和ちゃんの大学についていくの……いや?」 訊いてはいけないことだったかもしれない。 和ちゃんの顔が、ちょっぴり凍る。 でも、もう言葉に出してしまった。 告白もこんな風に言えたらいいのにな、と場違いなことを考える。 「……うれしかったわ。唯がついてきてくれて」 「……」 喜べない。 これは和ちゃんの話の、前置きにすぎないと分かるから。 「でも、なんていうか……決して、唯が嫌いって訳じゃないのよ?」 「ただ唯は……軽音部に入ってから、変わったと思うから」 和ちゃんは大きく息を吸う。 「私ね。今まで私は、唯のお母さんみたいな存在だって自分を思ってたの」 「……澪ちゃんも言ってたよ。お母さんみたいだって」 「だけど、軽音部に入った唯を見ていると、違ったかなって思うの」 「違う?」 「私は唯のお母さん……お母さん代わりにもなれないし」 「なる必要なんて、なかったかなって」 「和ちゃん……? よく意味がわかんないよ」 おかしい。 和ちゃんを全力で追いかけているはずなのに、 その姿は私のほうを向きながら、ぐんぐん遠くへ飛んでいってしまう。 「気持ちとしては、娘を嫁に送ったような感じだったの」 「ちょっとした寂しさと、よろしくお願いしますって気持ち」 和ちゃんは悲しげな目をしていたけれど、やっぱり笑った。 「唯はね……軽音部にもらわれたんだと思うから」 「律と、澪と、ムギと。同じ大学を目指すべきなのよ」 胸の奥から、強烈な衝撃がつきあげてくる。 心臓の鼓動に、肩まで揺らされた。 「……和ちゃん」 あぁ、だめだよ。 今言うことじゃないよ、言わなきゃって思っちゃったのはわかるけど。 頭のどこかから、私の声で警告が聞こえる。 「そんなの和ちゃんの勝手だよ。私はそんなのやだ」 「やだって……」 「やだったらやなの! 和ちゃんと離れるなんて絶対いやっ!」 「唯、どうしたの?」 ばか、和ちゃん。それを訊いちゃったら。 「……和ちゃんが好きなのっ!」 「ずっと昔から、ずっとだよ! 私は和ちゃんのこと、小学校のときから……」 和ちゃんの顔がみるみる固まっていく。 「ねぇ覚えてるでしょ、小学校の修学旅行の夜」 「わたし、和ちゃんが好きって言ったよね。あれがほんとの気持ち。天然ボケなんかじゃなかったよ」 わかってる。 こんな勢いに任せて言っちゃいけないことだって。 だけどもう、止まれない。 理由のわからない涙がぼろぼろあふれてくる。 「女の子同士だから、おかしいって思ったけどっ……好きなものは好きで、わたしっ」 「和ちゃん、好きっ、ずっと好きだったの、だから……」 「母親なんて言わないで……私を勝手に見はなさないで!」 にじんだ視界の中、和ちゃんを探して抱きついた。 春服の下の胸が、ぎゅうっと潰れる。 「ずっといっしょだって、約束したじゃん……」 和ちゃんの心臓の音が聞こえる。 私の鼻が鳴らす雑音が邪魔だった。 和ちゃんの胸に顔を押し付けたまま、時間が過ぎる。 言葉の氾濫はおさまったみたいだった。 「……ずっと」 やがて、和ちゃんは静かに言った。 「?」 「ずっと友達だって、言ったのよ」 「……」 「無理よ、唯……わたしは」 「唯をそういう風に見たことがないし、これからも見れないわ」 「……ごめんなさい」 わたしが最低でも6年いだいた想いは、 1分とたたず、うち砕かれた。 「そっか、そうだよね」 私はそっと和ちゃんをつかまえていた手を外して、座りなおす。 和ちゃんの服に広がった涙のしみを見て、きっと大した悲しみではないと思うことにした。 「ごめん、おかしなこと言って……」 「……ちょっと、一人にさせてくれない?」 「……」 「お願い」 「……じゃあ、勉強会は中止?」 「そうだね。ていうか、もういいかも」 「一緒の大学行ったって、いつか和ちゃんが離れちゃうなら、もういい」 「……」 「好きになんなきゃよかった……」 「……そんなこと、言ったらだめよ」 テキストを集めてかばんに入れて、和ちゃんはすっと立ち上がった。 「また明日ね、唯」 和ちゃんはそう言って、部屋を出ていった。 私は床に耳を付けて、離れていく和ちゃんの足音をわざわざ聴いた。 「……」 終わっちゃった。 のんびりしてたら思った以上に終わりが近づいてて。 それで焦ったら、あっという間に何もかも終わっちゃってた。 どうするのが、正解だったんだろう? この問題だけは、和ちゃんにも解けないな、って思った。 ―――― 「朝令暮改ですか!?」 翌日、月曜日の軽音部にて、あずにゃんが私の知らない言葉を叫んだ。 「3日もたなかったな……」 「まあ唯にマジメキャラは向いてなかったって事だ!」 「嬉しそうだな、律」 「でも、よかった……」 ムギちゃんが胸をなでおろす。 「ムギ先輩?」 「唯ちゃんが勉強しようとしたのは、和ちゃんと同じ大学行くためでしょ?」 「う、うん……無理だって言われて、諦めちゃったけどね」 「でも私や澪ちゃんは、和ちゃんのK大とは志望校違うし、目指すのも厳しいから……」 「これで唯ちゃんも、一緒の大学来れるわよね?」 ムギちゃんはにこっと笑った。 「あ……」 「おう、私も澪とムギと一緒の大学行くぞ!」 慌てたようにりっちゃんが割り込んできた。 「今きめたでしょ、りっちゃん?」 「だ、だってさぁ!」 「まったく……」 仕方ないな、という感じの笑い。 でも、心の奥では。 ……なんだか、和ちゃんの言ったことが、わかったような気がした。 「いいじゃん。りっちゃん、みんなで一緒の大学目指そうっ!」 「うんっ」 みんなで頷き合う。 そうだ。こうして、友達の中にいるのが、いちばん良いんだ。 もしかしたら和ちゃんは、はなから私の気持ちに気付いていて、 ああいう忠告をしたのかもしれない。 そもそも、本人の前で好きって言っちゃったことあるもんね。 「それじゃ……」 「ティータイムにするか」 「律先輩、このタイミングでそれ言えるの逆にすごいと思います」 「冗談だっつの」 そうだよね。 きっと、こんな時間が好きなだけだったんだ。 ―――― 「……」 「……」 「家まで送るわ、唯」 「うん、ありがとう。和ちゃん」 「……なんかあっけなかったね」 「卒業式? そうね、卒業証書もクラス代表が受け取るだけだものね」 「中学の時は泣いちゃったけど、今年はなんだか……」 「空っぽな感じが、ずっと続いてた」 「虚無感ね。寂しいのよ、唯は」 「んー、やっぱりか。わかってはいたんだ」 「寂しいのは、やっぱり……和ちゃんが遠くに行っちゃうからなのかな」 「……まだ、好きなの?」 「わかんない。そういう気持ちをなくそうとはしてる」 「……忘れられたらいいわね」 「うん。それがいいって思うよ」 「……」 「……あ、公園」 「昔、よく遊んだわね。砂場の砂、みんな外に出しちゃって怒られたかしら」 「あの時はほんとすみませんでした」 「いいのよ。子供の頃のことだし」 「……子供のしたことなら、許せる?」 「?」 「私が和ちゃんを好きになったの……子供の頃のことだけど、許せる?」 「……唯に好きになられて、怒る人なんていないと思うけど?」 「……和ちゃんって、ほんとにばか」 「ええっ?」 「そんなこと言わないでよぉ……またぶり返しちゃったじゃん」 「……熱か風邪みたいな言い方ね」 「はぁ、もう……」 「難儀な人を好きになったよ……いろんな意味で」 「はあーぁ……」 「……唯、歩くの遅くなってるわよ」 「……だって。もうそろそろ、家に着いちゃうし」 「……」 「……」 「ねぇ、和ちゃん」 「なに?」 「……すき、だよ」 「唯……」 「でも。私が和ちゃんをすきなのは、今日までにする」 「今日からあなたは、私の愛した和ちゃんではなく、ただの幼馴染の和ちゃんなのです」 「……」 「……ねえ、眼鏡はずして?」 「あのころの和ちゃんの顔になってくれないかな」 「和ちゃんが、私の親友だったころの……」 「……ええ、いいわよ」 「……」 「……うん、そう」 「なつかしいね。卒園式の日も、こうだった」 「隣にお父さんとお母さんがいたけれど、和ちゃんが送ってくれて……」 「純粋だった。恋を知らない子供だったんだよね」 「……」 「和ちゃん。送ってくれてありがとう」 「もういいの?」 「うん。あ、眼鏡はそのままで」 「……じゃあ、ここで見送ってるわ」 「ん。じゃーね」 「ええ。さよなら、唯」 ありがとう、和ちゃん。 私の気持ち、もういっかい幼稚園からやり直すから。 今度は間違わないようにするから。 そしたら――また、出逢おうね。 おしまい 戻る