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「なぜ・・・何故そんなこというの!!」 いきなり豹変した私の態度に驚きを隠せない唯。 「唯の気持ちは分かってる!好きだなんて言わないで!余計・・・惨めになるじゃない・・・」 唯に向かって一気に私の気持ちを捲くし立てると抑えていた感情が爆発して涙が溢れた。 脅してるからって唯がそこまでする必要はないのに、嘘で言われるくらいなら嫌いだと言われた方がマシだわ・・・。 「のどかちゃん・・・」 「触らないで!」 唯の手を払いのける、自分でも支離滅裂なのは分かっているでも抑えきれない。 ぎゅっっ! 不意に唯が私を抱きしめた。 「さわらな・・・」 「嫌わないで!!」 えっ!? 嫌わないでって・・・。 嫌っているのは唯でしょ、ひどいことをしてる私に・・・。 「嫌わないで、許してくれるなら私なんでもするから。だから私のことを嫌わないで!!」 顔を上げると顔中をぐしゃぐしゃにして泣く唯の顔が目の前にあった。 どうして私が唯を嫌いになるの・・・そんなことありえないのに。 「ごめんね・・・私が突き飛ばしたから、だから・・・怒ったんだよね、私の事嫌いになっちゃったんだよね」 鼻をすすりながらたどたどしく唯が話す。 「びっ・・・びっくりして手が動いちゃったの、すごくうれしかったの・・・に・・・でもそれで私が和・・・ちゃんを傷つけたから・・・ それに私が好きって言ったからおこ・・・怒ったんだよね迷惑なのは分かってるけど・・・もう好きって言わないから、 私に出来ることなら何でもするから嫌わないで!・・・ううん、私の事は嫌ってもいいから死んじゃいやだ!お願い!のどかちゃん・・・」 私はやっと理解した、『勘違い』それもまるっきり逆の!! 唯が好きだと言ってくれたのは本当だったんだ、勝手に勘違いして思い込んで・・・。 そんな勘違いした私に言われた「嫌い」って言葉と「死ぬ」って言葉を唯は信じてしまっていたんだ・・・。 「唯・・・ごめんね、本当にごめんね!」 ぎゅっと唯を抱きしめる。 「・・・のどかちゃん?」 「嫌いになんてなってないよ全部私の勘違いだからごめんね唯!・・・嫌いって言ったのも死ぬって言ったのも全部嘘なの!」 「・・・嘘?」 「うん、私が勝手に唯に拒絶されたと思い込んでただけなの。それで、その・・・それが悔しくて嘘をついちゃったの・・・ごめんなさい」 ぽろぽろと涙が溢れる、そんな私の頭を唯が優しく撫でてくれた。 「ううん、私が悪いの。和ちゃんは何にも悪くないの!」 「唯・・・」 「私が和ちゃんを傷つけたから、だから私が悪いの!和ちゃんは悪くないの!」 「唯・・・ありがとう、ごめんね大好きだよ」 「私も、あっ・・・の、のどかちゃん・・・好きって言っても怒らない?」 「うん、唯から好きって聞きたい、いっぱいいっぱい聞きたい!」 「えへへ、私も和ちゃんが好き!だーいすき!」 ぎゅうっ。 私の勘違いで大きなまわり道をしてしまったが、今やっと唯と一つになれた事がうれしかった。 「唯、本当にごめんね、ひどいことして。痛かったでしょ?」 「ううん・・・私もごめんね、痛くてびっくりして泣いちゃったりして、でも和ちゃんだからうれしかったの、本当だよ。それに・・・んと・・・ちい・・・欲・・・」 「ん?なぁに、聞こえない?」 「その・・・和ちゃんに触られてるとすごく気持ちいいの・・・だからまたして欲しいの・・・」 顔を真っ赤にしながら私を恥ずかしそうに見つめてきた。 そのまま唇を重ね、その日はくたくたになるほど愛し合った。 3日目- 昨日の疲れはあったけれどいつもより早めの時間に学校に着く、昨日サボって帰った分の雑務があるからだ。 「和さん」 下駄箱で憂ちゃんに呼び止められ、真剣な表情で人気がないところへ促された・・・もしかして。 「和さん・・・」 まさか唯・・・。 「お姉ちゃんをよろしくお願いします!!」 ぺこりと頭を下げる憂ちゃん・・・えぇ!? 「あの・・・憂ちゃん・・・」 「お姉ちゃんから全部聞きました」 ゆいー!あーーーっ・・・。 「でも、和さんだから許すんですよ!それに次にお姉ちゃんを泣かしたら・・・絶対許さないですよ?」 目が怖い・・・この子絶対本気だ・・・。 「うん、これからは絶対唯を泣かせたりしません、約束します!」 憂ちゃんは、私の返事を聞いて納得してくれたのかクスッと笑った。 「でも、よかった。お姉ちゃんずっと和さんのこと好きだったから」 「えっ?」 「お姉ちゃんから聞かなかったんですか?幼稚園のころからずーっと好きだったって」 ええっー! 「私なんて、和さんのお嫁さんになる!って何度聞かされたことか・・・」 そんな事、私は言われた事ない・・・いや、そう言えば子供のころ何度かお嫁さんにしてねって言われた覚えが・・・。 「あれって本気だったんだ・・・」 「もぅ、和さんだってお姉ちゃんの性格十分知ってるでしょ?」 ちょっとふくれっつらで指摘された。 確かに、あの子は思った事をそのまま口にするから・・・。 「!」 「どうしました?」 唯にそっくりのキョトンとした仕草で聞いてくる。 「憂ちゃんがきてるってことは、唯ももうきてるの!?」 「ええ、今日は朝練だからって・・・」 憂ちゃんの返事もそこそこに音楽準備室を目指す。 バタン!! 息を切らせて軽音部の部室の扉をくぐると・・・。 「おっ、唯!だんな様のお迎えだぞ!」 ニヤニヤとからかうように(間違いなくからかってるけど)話しかける律・・・。 「和ちゃんおめでとう~」 満面の笑みを湛えて祝福する紬・・・。 「そっ、その・・・おめでとう・・・」 何故か真っ赤になっている澪・・・。 「えっと・・・そ・・・その、お幸せに!」 こちらも真っ赤な顔の梓ちゃん・・・。 「えへへ~」 唯がテレつつも私の腕にしがみついてきた。 「ゆ・・・唯・・・」 「なぁに?和ちゃん?」 「だっ、誰にどこまで話した!?」 「えっと、まだ憂と律ちゃん、澪ちゃん、紬ちゃん、あずにゃんだけだよ」 どうして?って顔をしながら答える唯。 「でっ、ど・・・どこまで?」 そう聞いておきながら、真っ赤な顔でテレテレしまくる唯と四人の顔を見て私はすべてを悟っていた。 「ゆいーーー!!もう他の人に絶対喋っちゃだめだからね!!」 「えーーーっ!クラスのみんなにお祝いして貰おうと思ってたのにぃ!」 「お願い!それだけはお願いだから勘弁して!!」 真っ赤な顔だらけの中で、一番真っ赤な顔をして叫ぶ私だった。 【エピローグ】 私が恐れていた最悪の事態はなんとか回避された。 唯は約束通り憂ちゃんと軽音部メンバー以外に私達の関係を話すことはなく、私もやっと日常の日々を取り戻していた。 ただ、日常といっても今までの空虚な日常ではなく私の横には唯が居てくれた。 それに心強い仲間も出来た。 「でっ、ど・・・どこまで?」 そう聞いておきながら、真っ赤な顔でテレテレしまくる唯と四人の顔を見て私はすべてを悟っていた。 「ゆいーーー!!もう他の人に絶対喋っちゃだめだからね!!」 「えーーーっ!クラスのみんなにお祝いして貰おうと思ってたのにぃ!」 「お願い!それだけはお願いだから勘弁して!!」 真っ赤な顔で懇願する私に渋々といった感じで唯は了承した。 「まぁ、なんにしても良かったよな」 「うん、良かったね唯、和!」 「先輩、良かったですね!」 「うふふ、おしあわせに!」 軽音部のメンバーが再度お祝いの言葉をくれた。 「えへへ、ありがと~」 「みんな、ありがとう」 唯と二人で感謝の言葉を返した。 本当に感謝していた、普通ならこんなに暖かい反応は返ってこないだろう。 軽音部のメンバーと憂ちゃんに、もう一度心の中で感謝した。 「そっかーでもこれから先は二人に見せ付けられることになるのか・・・」 別に見せ付けるつもりはないが・・・多分そうなってしまうのかな。 今でさえうれしそうに唯が私の腕に絡まっているし・・・。 「うふふ、うらやましい限りね」 そう言う紬だが羨ましそうに見ている風には見えず、どちらかと言うと鑑賞されてるような気がする・・・。 「悔しいからこっちも見せ付けてやろうぜ、澪」 そう言った瞬間、律は隣に座る澪を引き寄せて・・・。 「んんっ!?」 もがく澪を押さえ込んで長々と唇を重ねる律。 「あらあらまぁまぁ♪」 うれしそうにそれを眺める紬。 ゴクリ。 両手で顔を覆ってはいるが、ちゃっかり指の隙間からのぞいて興味津々といった感じで眺める梓ちゃん。 「ねぇーねぇー、和ちゃん。私もしたくなっちゃった・・・」 「だっ、だめ・・・ここじゃ」 「えーっ、したいの・・・」 頬を高揚させ上目遣いに見てくる唯に欲求を抑えられなくなりそうだったがかろうじて我慢した。 「だめだって。・・・その・・・あとでしてあげるから、ねっ?」 最後は唯にだけ聞こえるように耳元でささやく。 「んっ、ちゅくっ・・・んふっ・・・」 澪は次第に抵抗をやめてぐったりとしてきた。 「ぷはっ・・・ってことで私たちのほうが先輩だからな!」 唇を離し、一息ついて律が自慢げに言い放った。 唇が離れたあとも、心ここにあらずといった感じだった澪の顔が徐々に紅く染まっていく。 「りっ・・・律!みんなのまえでその・・・するなんて、それにあれほど言っちゃダメだって!!」 「いーじゃん、唯達だって言ったんだし、ずっと黙ってるのって嘘ついてるみたいで嫌だったしさぁ・・・」 「そっ、それはそうだけど・・・でもはずかしい・・・じゃないか・・・」 「それで、それで!二人はいつからお付き合いしてたの!」 フンッ!と鼻息まで聞こえそうな勢いで紬が二人に詰め寄った。 「いや~、実は中学のときから」 若干照れた感じだが自慢げに律が話す。 「そっ、それでもちろんキスだけの関係じゃないわよね!」 紬の好奇心は留まるところを知らないようだ。 「それはもちろ・・・ムグゥ!?」 「わぁっっ!それ以上しゃべるなーー!」 両手で律の口を塞ぐ澪、もう遅い気もするけれど・・・。 「うふふふっ」 どんな妄想をしているのか、一人微笑む紬を見てこの子にだけは恋愛相談をしてはいけないと思った。 その後は、ところかまわず抱きついてくる唯の行動に当初は周りにバレてしまうのではないかと危惧していたが、唯の今までの性格や行動のためか気にしているのは私だけのようだった。 つまり、私たちの関係はこの上なく良好であり幸せな日々を送っている。 これからも色々な事があるだろう、楽しい事も辛い事も。 ただ、信頼できる仲間達が居てくれるから大丈夫だ、何があってもこの先ずっと唯と二人で進んでいく事を改めて心に誓った。 END- 戻る おまけ
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顔の半分を隠す髪は、人に顔を見られないように。 いつも下を向くようにしてるのは、人に顔を見せないようにするため。 女の子になれば、全部忘れられると思った。 女の子になれば……何も、なかったことにできると思っていたんだ。 帰りのHRが終わって、一気に騒がしくなった教室。 ガタガタと席を立つ音やこの後の予定を話し合う人の声が瞬く間に広がって、それに紛れるように僕も立ち上がろうとした時だった。 「なぁ、安岡ちょっといいか?」 「――――え……?」 クラスメイトの北村くんに急に話しかけられたんだ。 二年生に上がってからもうまるまる二ヶ月は経つ。その間ずっとクラスメイトということ以外、何も関わりがなかっただけに、急に話しかけられたことが少しだけ怖い。 「あの……な、に?」 僕よりもずっとずっと大きな体の北村くんからは、それだけで押さえつけられるようなものを感じてしまう。 僕の席は一番廊下側の真ん中。そのせいで席の左側――北村くんがいる所に立たれてしまうと身動きが取れないせいかもしれない。 「ああ、安岡、俺のカットモデルになってくれないか?」 「か……?」 「俺将来美容師になりたくてさ、これでもけっこう練習してんだぜ。でも前のカットモデル頼んでたヤツが事情があってやめちまったんだ。んで、どーすっかなーって思ってたらびっくり。すげー上質の髪を持ってる奴がクラスにいるじゃねーか!」 大きな体を大げさに動かしながら事情を説明する北村くん。だけど僕にはちっともわからないことがあった。 「それって、誰?」 北村くんが言い出したことが本当にわからなくて。 理解しようにも、他のクラスの皆から好奇の目を向けられているこの状況が辛くて、知らないうちに突き放すような言い方をしてしまった。 「あぁ? おまえだよ、お・ま・え! 話の流れで分かれってーの」 途端に不機嫌そうになった声に体が竦む。 「ま、いいか。それよりも頼む! 引き受けてくれ!」 けれどすぐさま真剣なものになった声が、僕の上のほうから降りてくる。 ――……カットモデルってことは……髪をいじられる? だったら、断らないと。 「な? 頼む、いいだろ?」 顔を合わせることなんかできずに下を向いていたから気づいた。北村くんの両手が僕の肩のほうに動いて……。 ――――パシンッ―――― 「あ――――」 ほとんど無意識のうちに、僕は肩へと伸びてきた北村くんの手を叩き落としていた。 叩いてしまった時に思いのほか鋭い音が響いて、北村くんが息を飲んだような気配が伝わってくる。 ――逃げないと……。 その思いに駆られて、机と北村くんの間に無理に体をねじ込ませる。 だけどその動きは北村くんのバランスを崩させてしまったみたいで。 一歩後ずさった北村くんは隣の席の椅子に引っかかって、背中のほうから盛大に倒れこんでしまった。 「っ…てぇ~」 「ぁ………ごめんなさい」 しん、となってしまった教室の中、僕のかすれた声が妙に響く。 そして僕はそれ以上の謝罪も、北村くんを助け起こすことも出来ず、教室から逃げ出してしまったんだ。 次の日の学校、恐る恐る教室を覗き込んだけど北村くんはまだ来てなかった。 そのことにほっとして……安堵の息を漏らしてしまったことに自己嫌悪しながら自分の席に着く。 昨日、かなり最低なことをしてしまったという自覚はある。 人を突き飛ばして転ばせて、しかもろくに謝りもしないまま逃げ出してしまったんだから。 でも……混乱してたんだ。 人を突き飛ばしてしまった経験なんて全くなかったし、ほとんど無関係に近かった人にいきなり話しかけられて…………。 ――ううん、違う。 自分への言い訳を断ち切るように首を振る。 たぶん僕は、認めたくないんだ。まだ、立ち直れてないだなんて認めたくなくて……だから逃げてしまった。 肩と首は違う場所。 そんなこと当たり前のこともわからなくなるほど、まだ人の手があんなに怖いなんて……。 不意に席の横を誰かが通って、思いっきり身体が跳ねる。北村くんが来たのかと身構えたけど違う人だった。 ――……ちゃんと謝らなきゃ。 謝って、そして断らないと。髪を切るつもりはないから、って。 決意してずっと入り口のほうを様子を伺い続ける。 だけど予鈴が鳴っても、一限目が始まっても、いつまでも北村くんは教室に現れないまま、とうとう放課後になってしまった。 どうしたんだろうという疑問と、顔を合わせなくて済んだという安堵と、けれど謝罪が先延ばしになったことへの憂鬱。 色んな感情の中、だけどやっぱり憂鬱を強く感じながら僕は帰り支度に取り掛かる。 「安岡さん、何帰ろうとしてるの?」 「え……?」 声をしたほうを見れば、スカートの端が視界に入る。 「今週、私たち教室の掃除当番でしょ? 昨日安岡さんったら先に帰っちゃうんだから」 はい、と僕の分の箒を差し出されて、今更ながらのことを思い出して、ざっと血の気が引いていく。 「ぁ……の、ごめん、なさい……」 「いーよ。でも今日のごみ捨てはお願いね」 それだけ言って、その子は机を後ろにどかす作業に入っていった。 こういう時に、ここは本当に良いクラスだと思う。 たったそれくらいのことで、昨日のことをまったく追及もせずに済ませてくれた。 皆、どうすれば人が嫌な気持ちになるのかわかってくれてるんだと思う。だから僕みたいなのでも、クラスから極端に浮かずにいられるんだ。 僕とその子と、あと男子三人で掃き掃除を手早く済ませて、四人は思い思いの場所に向かっていった。 残った僕もごみ箱の中身を、校舎裏のごみ置き場に持っていったらそれで仕事はおしまいだ。 あまり入ってない軽いごみ箱を抱えて校舎裏まで行って、でもこの時間はごみ置き場が混むから、思ったよりも時間がかかってしまった。 だけど、それは別にどうでもいいんだ。 ごみを捨てて、ゆっくりと歩いて教室の前まで戻ってきた僕は、教室の中から響いてきた会話に凍りつかされる。 「ね~、私のことカットモデルにしない?」 「その誘いはありがたいけど、もう決めちゃったからな~。ゴメン!」 隣のクラスの女の子の甘えるような声に答えたのは、今日はついに学校に来なかったはずの人。 ――どう…して……? ごみ捨てに行く前はいなかったのに。 「なーんだ、残念!」 言葉とは全然違う、あんまり残念がってない声で女の子は笑ってる。 「悪いな。もう俺あいつにするって決めちゃったから。な!」 な、の所で唐突に北村くんに視線を合わされて、廊下で僕は息を飲んだ。 ――気づかれてた。 そうわかった瞬間、このまま逃げようと身体が動きかけて、だけど足が固まってしまったみたいに動かなくて。 ゆっくりと北村くんが近づいてくるのを、僕はただその場で待ってしまうことになった。 「昨日はドーモ」 妙に優しげな声の北村くんが逆に怖い。 「あ、あのっ……」 「いや~、いきなりあんなこと言い出した俺も悪かったけどさ、まっさか安岡が人を突き飛ばすなんて思ってなかったんだよな~」 「それはっ……」 「でな、間抜けな話、俺さ油断してたせいで受身取り損なって腰痛めたんだわ」 北村くんのその言葉に僕は自分の顔が青くなるのがわかった。 「ま、そういうわけだから。お詫びにカットモデルくらいなってくれるよな?」 北村くんは普通に問いかける口調なのに、僕のほうにやましい所があるせいで脅されてるように感じてしまう。 「なってくれるよな?」 もう一度聞かれて思わず身体が竦んでしまう。自分より大きな人からはどうしても威圧感を感じてしまって、怖い。 耐え切れなくなった僕が頷くと、それまで北村くんから感じてた威圧感がふっと消える。 「サンキュ」 信じられないほど優しい、安心できる声が聞こえて、それに驚いて顔を上げる。だけどすでに北村くんは女の子たちの方を向いていてどんな顔をしてるのかわからなかった。 「じゃ、俺たち帰るから」 「じゃーねー」 「安岡さんのこと、あんまりいじめちゃだめだよ~?」 女の子たちの口々の声に見送られながら、僕は北村くんにつれられて教室を出た。 「あの……どこに…?」 「ん? ああ、俺んち」 学校から歩いて十分と自慢げに話す北村くん。 「北村くんの、家?」 「おう、道具とか全部家に置いてあるからな」 すぐに僕の質問に答えてくれて、だけどそれきり話すことがなくなってしまって、無言で北村くんの後をついていく。 「あの……ごめんなさい」 だけど校門に来たあたりで思い出してそう口にすると、北村くんは不審そうに僕の方を振り向いた。 「なんだ? あ、もしかして今日は他に予定でもあんのか?」 「そうじゃなくて……昨日北村くんのこと転ばせちゃって、しかも怪我までさせちゃって……」 もう一度ごめんなさいと小さくなってしまった声で言うと、なぜか北村くんが息を飲んだような気配が伝わってきた。 「……?」 「あ、いや、別に大したことないから。だからそんな気にすんなよ、なっ?」 焦ったように言う北村くんが不思議だったけど、すぐに許してもらえてほっとした僕だった。 そのやり取りが終わった後、さっきよりもゆっくりと歩く北村くんについて行って、本当に十分くらいで北村くんの家に着いた。 「ここ、って……」 「ああ、駅から近くて便利だろ」 そう、北村くんの家は僕がいつも登下校で使ってる駅の近くだったんだ。 美容師になりたいって北村くんが言ってたからてっきり家が美容院なのかなと思ってたんだけど、北村くんの家は普通の二階建て一軒家だった。 「どうした、上がれよ?」 「…おじゃまします」 一瞬躊躇ったけど、そんなことしてても何にもならないからおとなしく北村くんに従って中に入る。 玄関からまっすぐ入ったリビングに通されて、僕にソファに座るように言って北村くんは隣のキッチンに消えていった。 僕の家よりけっこう広くて、なんだか温かい感じがするリビング。だけどもちろんくつろげるわけなくて、じっと待っているとすぐに北村くんは何かを持って戻ってきた。 「あいよ、お待たせ」 麦茶の入ったグラスを手渡される。 「ありがとう……」 一口飲んで、自分がどれだけ緊張して喉が渇いてたのかやっと自覚した。 ――おいしい。 麦茶のおかげでそれも少し和らいだみたいだ。 「それでカットモデルのことなんだけど…」 本題を切り出されて、身体が硬くなったのが自分でもわかった。 だけど幸い北村くんは気づかなかったみたいで、そのまま言葉を続ける。 「まず髪触ってもいいか?」 「え…?」 「髪が今どんな状態なのか、触ればけっこうわかるもんなんだ。いいか?」 真剣な声。どれだけ北村くんが真面目に美容師を目指してるのか、それだけで伝わってきて、僕は嫌だなんて言えずに頷いた。 すると北村くんはソファに座ってる僕の正面に膝を着いて、向かい合う形になる。 「じゃ、触るぞ」 言葉とほぼ同時に北村くんの指が頭に触れて、大げさに身体が動いてしまった。 「っと、悪い。なんかしちゃったか?」 慌てて聞いてくる北村くんの声に、僕は首を横に振って否定した。 ――大丈夫……。ただ、髪を触られるだけ。 そう自分に言い聞かせる。 「触るぞ?」 さっきよりもゆっくりと僕の頭に指が触れて、今度は僕も拒絶しなかった。 「あー、やっぱ髪やわらかいな~」 横の髪を梳くようにしたり、髪の流れに逆らって撫でてみたり、たまにひと房持ち上げてみたり…。 ――なんか……。 すごく心地いい。 最初はあんなに嫌だと思ってたのに、昨日あんなに僕を怯えさせたこの大きな手が、今はすごく安心できる。 「でも思ってたよりわりと毛先以外は痛んでないな。なんかケアとかしてるのか?」 話してる間も北村くんは手を止めない。 「シャンプーと……リンスだけ」 ぼんやりと答えながら、いつの間にか僕は目を閉じてしまっていた。 「本当にそれだけで、この傷み方で済んでるのか?」 少し驚いたような北村くんの声に目を閉じたまま頷く。 髪のごく表面を触られてるだけなのに、まるで僕自身を撫でられてるように感じてしまって、すごく安心できる。 『この不思議な感じがずっと続いてほしい』 そうさえ思ってしまって、僕は自分のあまりの心境の変化に内心驚いた。 ――…でも、いいや。 今はこの心地の良い状況が続いてるんだから。 「まぁ~、でも……」 突然、北村くんの声が不自然に途切れる。しかも声だけじゃなく手の動きまでも。 不思議に思って目を開けると、目を見開いて僕を見ている北村くんの顔が映る。 ――え……? 景色がさっきまでより明るい? 「あ…ぁ……」 頭が理解するより、身体が勝手に反応してしまう。 『おまえさえ、いなければ…!』 やだ……思い出したくない…っ。 「安岡? おい、どうし…」 「いやだっ!!!」 目一杯の力で抵抗して、目の前にいる人を押しのけて僕は廊下の方に逃げ出す。 ――助けて、たすけて、タスケテ…! 「安岡っ!?」 後ろから誰かが追ってきて手首を掴まれる。どんなに振りほどこうとしても離れなくて、それが恐怖に拍車を掛ける。 「やめて、放してっ!」 息が苦しい。冷や汗が止まらない。 お願いだから、誰か僕を助けて…っ。 「いい加減にしろっ!!!」 とても近くからの怒鳴り声に僕は息を飲んだ。その拍子に抵抗することも忘れてしまう。 「ったく、なんなんだよ」 嫌われる。いらないって言われる。また、見捨てられる…! ぐるぐると頭の中にそれだけが回っていて他に何も考えられない。 ガタガタと身体が震えだして、まだ僕の手首を掴んでる人にもそれが伝わってしまった。 「安岡、おまえどうしたんだよ…?」 考えたくない、絶対に。もうあの事なんて…。 答えない僕に痺れを切らしたのか、目の前の人が忌々しげにため息を吐く。それにさえ身体がビクつく。 「大丈夫だ」 ふっと温かい何かに身体が包まれて、震えが収まっていく。 それが北村くんの腕の中だとわかってからもなぜかすごく安心できて。僕はそこでそのままじっとしていた。 「もう平気か?」 しばらくしてそう聞かれて、頷くと北村くんはゆっくりと僕から腕を外した。 いきなりあんなふうになってしまって居たたまれないのと恥ずかしいのでまともに北村くんを見れない。 「じゃ、続けても平気だな?」 驚いて顔を上げると、北村くんが意外そうに聞いてきた。 「どうした、もう嫌か?」 「…訊かないの?」 僕がこんなふうに錯乱してしまった理由を。 「聞いたら教えてくれるのか?」 ごく普通に聞き返されて、僕は返答に困ってしまった。 北村くんには迷惑を掛けてしまったけれど、出来ればその話をあまりしたくない。 黙ってしまった僕に北村くんは苦笑してこう言ってくれる。 「人には聞かれたくないことの一つや二つ誰にだってあるだろ? 安岡が話したいならいくらでも聞くけど、そうじゃないなら無理に聞くようなマネはしねーよ」 だからこの話は終わりだと言ってくれる北村くんの存在がすごく嬉しかった。 「ま、それに? カットモデルのこと断られてもあれだしな~」 けっこうひどい言い草だったけど、それがただの冗談だって今の僕ならわかる。 「いまさら断らないよ。だけど……」 「わかってる」 最低限の言葉だけで僕が言おうとしてたことを察してくれる北村くん。 『前髪にはあまり触らないで』 まだ吹っ切れてないから。 せめて、もう少し時間がほしいから……。 「で、安岡。いま自分で断らないって言ったよな?」 「? うん」 頷くと北村くんは口の中でごにょごにょ言って、やおら頭を下げてきた。 「え、えっ?」 「悪い、嘘ついてた! 俺、腰痛めてなんてない!」 突然大声でそう告白されて、だけど別にそれはもうどうでも良かった。 「どうしてだ?」 その北村くんの言葉にはわざと答えなかった。こんな答えを言うのは恥ずかしかったから。 北村くんといれば、僕は変われる気がするからだなんて。 安らぎを与えてくれる彼のそばに、ずっといたかったからだなんて。 ~~北村編~~ 本音を言えば、初めは変な奴だなとしか思ってなかった。 いつも下を向いていて、たまに何かを言いたげにしてても、すぐにそのまま口を閉ざす。 カットモデルを頼んだのだって、ただ髪が魅力的だったからでそれ以上の理由は全く無かった。 ……そのはずだった。 「結、今日も俺んち寄ってくか?」 帰りのHRが終わり、俺は二つ前の席の小さな頭に声を掛ける。 「うん」 コクンと頷きながら小さな声で返事をする結。 やべぇ、可愛い。 「……北村くん?」 「あ…っと、駅の方には今日は行かなくていいよな?」 動揺を隠すための俺の質問にもう一度首を縦に振って、異議がないことを伝えてくる結。 ――あーもーっ、ほんとにこいつは…っ。 思考がループしかけてるのに自分で気づいて、ゲフンと一つ奇妙な咳払いをする。 「うし。じゃあ行くか」 そうして先に歩き出してから、いつものように何気なさを装って後ろを振り返る。そして結が少し早足でついて来てるのを確認して、少し速いかと俺は歩調を緩める。 こうやって二人で、ゆっくりとした歩調で歩いていく時間は、俺の中でかなり居心地の良いものになっていた。 結――安岡結と個人的に付き合うようになって大体一ヵ月半。ああ、付き合うって言ってもただの友達付き合いだからな。 俺が結に話しかけたのは二年に進級して少し経ったころ、ゴールデンウィーク明け。 いつも猫背で下を向いていて、その上ぼさぼさの長い髪でよく顔が見えないクラスメイトを、周りは不気味がってるというか、とにかく敬遠してるかのように積極的に関わろうとする奴はいなかった。御多分に漏れず俺もそうだった。 だけど最初に話しかけたのは俺。 まったく話したこともなかったから、俺が声をかけると結はかなり驚いたふうだった。前髪で表情はわからなかったけど、雰囲気でわかった。 ……さて、なんで俺が急に結に話しかけたかといえば、もちろん理由がある。 俺はたまにチンピラに見られるような外見をしているけど、これでも美容師を目指している。なんでか……は、どうでもいいか。別に興味もないだろうし。 ともかく、目指してるだけあってちゃんと練習も積んでいる。 それでその練習台を最近まで彼女に頼んでいたんだが……。 『私の何処が好きなの?』 『髪だけ』 ……まあ、フられるのは当たり前だよな。 そんな理由があって、俺はそれまで大して気に留めてなかったクラスメイトに目を付けたわけだ。 無造作に伸ばしっぱなしっぽいぼさぼさの髪は、切るにしてもケアするのにも絶好の腕の見せ所という感じだったし、後で聞いたところ今まで一度も染めたこともなく真っ黒な髪は俺の好みというのもあったからな。 「な? 頼む、良いだろ?」 カットモデルの依頼とその理由を簡単に伝えてから、ふざけ半分もあって結の肩に手を置こうとしたところで、バシンという音とともに俺の手ははじかれていた。 ――……あ? 思わずはじかれた手を見て、動きが止まってしまった。自分よりもかなり小さい体の、その細い腕に思いっきり振り払われる。 自分で思うよりそのことに驚いていたらしい。気づけば俺は、結に押されて完璧に転ばされていた。 「っ…てぇ~」 周囲の椅子や机にぶつかりまくりながら、しかも背中から倒れこんだせいで、やたら派手な音とかなりの痛みが襲い掛かってくる。 「ぁ………ごめんなさい」 短い、聞き逃してしまいそうな謝罪の言葉だけを残して、結は静まり返ってしまった教室から走り去っていく。 こんな感じが結とのファーストコンタクトだった。 「北村くん……?」 結の顔を見ながらあの時のことを思い出していたら、怪訝そうに名前を呼ばれてハッとさせられた。なんでもない、とお茶を濁しながら、でもつい笑いが漏れてしまう。 ――そうそう、これだよ。 結にすっ転ばされた次の日。俺は寝坊して大遅刻をかました。つか、授業は一個も出れなかったんだからもう欠席だな。 いやもう、真面目にあんな寝坊やらかすなんて思ってもみなかったぜ。何でかと言えば、どうやったら結に承諾させられるかを考えてるうちに深夜になっていたというまるでアホな理由だ。 ま、そのおかげというか、『転ばされたせいで腰を痛めたから、そのお詫びとして引き受けろ』という半ば脅しのような要求の仕方を思いついたんだ。 …………ぶっちゃけ成功するとは思ってなかったけどな。 俺よりこんなに小さい結に転ばされたなんて誰も信じないし、一応目撃してたクラスメイトにさえ『安岡に何したんだ?』と非難の目を向けられたくらいだった。いや、それはともかく。 今の結の見上げてくる感じから、俺の脅しに怖々と頷いたあの時の結の様子を思い出しての笑いだったんだが、結はそう思わなかったらしい。 どうやら俺にからかわれたと取ったらしい結は。 「………………」 静かに拗ねているようだった。 「どうしたんだ?」 「……なんでもない」 「なんでもないのに、こんな膨れてるのか?」 言いつつ、気づかれないように結の顔に指を近づけ……。 「っ!」 しっかりガードされてしまった。ちっ。 結にカットモデルを頼んで一ヶ月ちょい。その間俺は髪のケアばかりしていて、カット自体はそれほどしていない。せいぜい毛先を整えるくらいだ。それだけで ボサボサだった髪はかなりマシなったが。 だけどその間、スキンシップは欠かさずにしてきたわけで。 そのおかげかクラスで唯一俺だけが結に懐かれている。(実際こうやって名前で呼ぶことを嫌がられてないし) 何より最近気づいたことだけど、いつの間にか結が俺に話しかけるときにどもることが無くなったんだ。 他のクラスメイト相手だとまだまだ怯えた感じを残している結がこうやって俺だけを信頼してくれるのは、誰にも懐かない動物が自分にだけ心を開いたようで優越感のような、どこか気分の良いものを感じている。 「やっぱり……」 「ん? どした、なんかあったか?」 不意に呟かれた聞き逃してしまいそうな声に質問をすると、結は「なんでもない」と首を振って言葉を引っ込めてしまう。 「そっか」 正直もどかしいと思わないわけではない。結以外の奴だったら言いたいことくらいちゃんと言えと怒鳴りつけてるかもしれん。 ……だけど気になってるからな。 『いやだっ!!!』 初めて結の髪を触った日の、あの悲痛なまでの叫び。 『やめて、放してっ!』 普通前髪を上げられただけで、人はあそこまで取り乱したり、怖がったりはしない。そう、以前に滅多なことがない限り。 何があった、なんて訊くことはしない。せっかく笑えるようになってる奴の傷を自分の好奇心でえぐるような最低な真似だけはやっちゃいけない。 ……ま、なんのかんの言って、結局は結が嫌がるようなことができないだけだけどな。 だからアレ以来、髪を触るとき勝手に前髪をいじることはしないし、触るときもちゃんと前置きをしてからにしてる。 「…………けどなぁ」 また結の素顔を見たいというのもこれまた本音だ。 ほんの短い間しか見れなかったけど、前髪に隠された結の顔は……めちゃくちゃ可愛かった。いやもう本当に自分の語彙の少なさを痛感するほどに。 そこらのアイドルとかがイモに見えるほどに、結の顔立ちは中性的で綺麗で……見ているうちに吸い寄せられるような錯覚すら受けて実は相当やばかった。あの時、叫ばれてセーフだと思うくらいには。 ――あの顔のせいか…? 顔を見られただけで結が恐慌状態に陥ってしまったのは……。 結が元男であることはどこかから聞こえてきた噂で知っていたが、中学のころに女体化したということはつい最近本人から聞いた。 もしかしたら結がこんなふうになってしまったのはそのころに何か…………。 そこまで考えて、今まで考えていたことを散らすように俺は頭を振る。 友達の過去を勝手に詮索するような真似をして、それでいったい何になるって言うんだ。 「おじゃまします」 「はい、いらっしゃい」 そうしていつものようにきちんと礼儀正しい結に答えて、俺たちはいっしょに部屋に入った。 だけどやっぱりもう一度くらいは顔を見てみたいなんて思いながら。 『放っておいて触れないで(2)』へ
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わぁ、すごいよ 通学路、私の少し前を歩いていた彼女が街頭のオレンジの灯りの下ではしゃぎながら言った 私の目の前でゆらゆらと揺れるマフラーも彼女に従うように空中で踊っている 「もう、唯先輩転んじゃいますよ」 なんて形だけは注意をしてみたりするが、嬉しいのは私も同じだ 雪なんて今年はもう見れるとは思っていなかったから なにより――彼女とこのときを一緒にいられたことが嬉しかった 「でも、珍しいですね。もう3月だって言うのに」 「ほんとだねー。でもこれが最後になるかもしれないね」 そうですね その言葉が喉まで出かかった時、ふと自然に引っ込んでしまった 彼女がまだなにかを伝えようとしていたから 「あずにゃんと今年最後の雪見かぁ……えへへなんだか照れるね」 でもそれは私の言いたかった言葉 彼女が自分の言った言葉に恥ずかしそうに、だが嬉しそうにはにかんだ 恥ずかしいのならば、言わなければいいのに とは言わない おそらく私の顔も赤くなっていて、もし言葉にしたときそれが上擦っていたらもっと赤くなってしまうから 「でも、案外また降ることがあるかもしれませんよ」 照れ隠しには違う言葉が出た きっと、親友の一人はわたしに「もっと素直になればいいのに」というだろう でも私にはまだしばらくそうはなれそうもない 「ふふ、じゃあ、あずにゃん」 彼女がその笑みを保ちながら、振り返る 「そのときも一緒に見ようか」 彼女は卑怯だ。 そんな不意打ちをくらってはどうしようもないではないか ――だから私はゆっくりと頷く 「そうですね」 頬が熱い 雪がさきほどから私の頬にも落ちてきているが、一向にこの熱はとれそうにもない すると目の前にいた彼女の腕が私の頬にのびた と私の頬をさっと撫でるように触れると 「あずにゃん、頬に水滴がついて泣いてるみたいになってるよ」 そのまま水滴を拭うと、彼女はふと思いついた顔をした そしてそのままもう片方の手も伸ばし 「あずにゃんの頬あったかいねー」 私の頬を両の手で挟む 彼女は手袋をしていなかったため、すごく冷たい手をしていた 「もう、やめてくださいよー。ところで唯先輩」 「あったかあったか~、なに?」 「手袋はどうしたんですか?」 「えっとね、憂が忘れてきたって言ってたから、貸しちゃった」 彼女の妹――憂は私の親友の一人だ 本当に仲のいい姉妹だ。 姉は妹を常に想い、妹も姉のことを常に想っている その姉妹の仲の良さに嫉妬を覚える私は、おそらくいけない子なんだろう それを自覚しながらもなお、私はそれがとても羨ましかった 「ねぇ、あずにゃん」 「はいなんですか?」 「知ってる? 手が冷たい人は心が温かいんだよ」 彼女が右手で私の手をとった。 そして私の手袋を器用に脱がせ、自分の手を絡ませる 「つまり、唯先輩は自分の心が温かいっていいたんですね」 少し意地悪な質問をしてみた 「さぁ?あずにゃんにはどう感じるのか教えてよ」 彼女は意地悪な笑みで返した まったく……この人にはかてないなぁ 「唯先輩の手は間違いなく冷たいです」 「その先の言葉もききたいな」 私の素直じゃない心があえて避けた言葉を、彼女は嬉しそうにほしがった 「……唯先輩の心は暖かいです」 今度は自分でも驚くほど素直な言葉がでた それは私が言いたかった言葉でもある 「えへへ、そうかな~」 「もう、自分で言わせておいて照れないでくださいよ!」 本当はもう一つ言いたいことがあった だが、それを言うわけにはいかない 今回彼女の手を握ったのは、たまたま私が一緒に帰り たまたま起こった出来事なだけだ だから――この言葉を言うわけにはいかない 言えば…… ――親友の悲しそうな顔が浮かんだ 「それじゃあね、あずにゃん」 いつの間にか私達はいつものお別れの場所にきていた。雪もすでに止んでしまっている 彼女との帰路ももうおしまいだ すでに卒業してしまった彼女とはもう2度と同じ立場で同じ意味で同じ距離を歩けない 彼女はいつも私の一歩先をいってしまう ……あぁ、そういえば憂もそんなことを言っていたっけ 思い出した親友の顔は、やはりどこか寂しそうだった きっと私も今そんな顔をしているのだろうか 「はい、さようならです。先輩」 本当は さようなら なんて言いたくはなかった だってまるでもう会えないみたいではないか だから、おもいっきり微笑みながら言ってやった たまには私の素直じゃない心も役に立つ 「違うよあずにゃん。またね だよ」 今の私は一体どんな顔をしているのだろうか いや、決まっている。 きっと鏡で見たら、あとから思い出して恥ずかしい思いをするような顔をしているんだ 「はいっ、またです!!」 そうして彼女はまたヒラヒラとマフラーを揺らしながら歩いていく 今度は私とは違う方向へ 梓「―――――――」 言えなかった言葉を彼女には聞こえないように今呟いた ▼ 彼女達にとってそのマフラーと手袋は特別なものだった そんな話を彼女からもそしてまた彼女からも聞いたことがあった 彼女だけは私の気持ちを知っていた。私がそのことを告げるよりも前に それは当然なのかもしれない なぜなら彼女は、私にも彼女にも近い位置にいたのだから 「たまにとても憂のことが羨ましくおもうよ」 ふと何気ない会話の途中、ついそんな言葉がこぼれてしまった 本当は秘めておくべき言葉だった なぜなら、私も本当は彼女の気持ちをしっていたから 「えー?そうかなぁ」 彼女はそれでも笑みを絶やすことはなかった だから、必死にごまかそうと考えていたのに 「でも、私も梓ちゃんがうらやましくおもうよ」 「え?」 予想外の答えに、自分でも驚くほどマヌケな声が響いた 「梓ちゃんって、お姉ちゃんのこと大好きでしょ?」 唐突にきた言葉に私は何もいえない 「私知ってるよ。きっとお姉ちゃんも梓ちゃんが好きだよ」 私はそのとき黙ったままだった いや、黙らざるを得なかった 頭が真っ白になっていたのだから 「私は梓ちゃんがうらやましいよ」 もう一度告げたその顔はやはり微笑んでいた だから、私は何か言わなければいけない気がした 「そんなっ!! 私は憂が羨ましいよっ!! だって唯先輩に一番近いのは憂だもん」 それが本心だった 彼女とこれからも笑うためには、これだけは言っておかないといけない そう思った。だから秘めた言葉を彼女に投げつけたのだ 「そうだね……でもそれは時間制限つきの一番だよ」 そのとき彼女は微笑まなかった 少し悲しそうな眼をして、伏せるようにうつむいていた 「ねぇ、梓ちゃん?」 沈黙のあと、彼女が静寂を破った 「梓ちゃんは私のどこが羨ましかったの?」 「私は……」 あらためて考えてみれば、それはたくさんあった それを自覚した時、自分のことが嫌になった ……あぁ、私はこんなにも憂が羨ましかったんだ そのなかでも一番大きい妬みを心の奥底から引っ張り出す 私が最もうらやましく思い そしてそれは絶対に私が手に入れられないものだ 「私は、二人で仲良くマフラーを巻きあって、手袋を貸し合って……そんな光景がうらやましかった」 それは私の一番汚い部分。 それでも私は吐き出さずにはいられない 「それはきっと唯先輩と憂にしか許されないものだから……」 「そっか……」 憂が珍しく言葉をつまらせた 「でも、あの場所もきっと時限付き。だから……」 それ以上彼女はなにも言わなかった 彼女は困った顔で笑いながら、泣いていた その顔は私の大好きな人が困った顔をしたときにする顔そっくりで 私は次の言葉を失ってしまった 「ねぇ、憂……憂は私のどこがうらやましかったの?」 沈黙を破ったのは、今度はこちらだった 「私はね………きっと梓ちゃんとお姉ちゃんの関係、それ自体が羨ましかったんだとおもう」 彼女の言葉が続く 今度は彼女の番だった 「さっき言ったよね。梓ちゃんはお姉ちゃんが好きで、お姉ちゃんも梓ちゃんが好きって……」 「でも、それは……憂だって……先輩は憂のことが好きだし、憂も先輩のことが」 「違うんだよ、梓ちゃん。だって意味が……」 彼女の声のボリュームが少し大きくなった後、また萎んでいく 「私はできることなら……うんうんなんでもない……」 それは彼女の奥に隠していた本当の気持ちだろう 同時に切実な、それでも叶わないと知っていたからこそ隠していた願いなのだろう そして今一度出かかったそれはもう一度隠れてしまった 「ねぇ……憂はさっき意味が全然違うって言ったよね」 今、私は残酷なことを告げようとしてるのかもしれない きっと私は後から後悔するだろう それでも彼女は優しいからきっと―― 「姉妹同士だからってことだよね。でも、それを言うのなら私だって女だよ。認められないのは私も……」 「……」 「それに憂の気持ちはたぶん私と同じものなんでしょう!? それなら……」 駄目だ。それ以上言葉が出てこない。彼女の顔を見てしまったのならばなおさらだ こんなものは死刑宣告と一緒だ。彼女の胸に刃物をつきたてているようなものだ そしてその刃もとうとう彼女の胸にくいこみはじめている ……私はいったいなにがいいたかったんだろう 彼女自身が理屈ではわかりながらもなお眼をそらしてきたもの、私がこれ以上踏み込むことなどできない いや、もう踏み込みすぎている 「それでもいいの。私とお姉ちゃんの関係は変わることはないから」 それははたして彼女の望んだことだったのだろうか。 それとも彼女のつよがりだろうか それとも彼女の私への気遣いだろうか それとも―― 私にわかるのは、ただ彼女が悲しそうに笑っている その顔が語る真実だけだった ▼ 気付けば、私はベッドに寝転がっていた すでに時計の短針も10の位置を指している ずっと感傷的な気持ちになっていたからだろうか 私は普段襲われることのない虚無感に襲われる その原因はわかっている ……明日も会える、なんてことはないよね 彼女が学校に来ていたのも偶然だ もう来る必要もないのだ。だから次会えるのはいつかはわからない ふと枕元に置いていた携帯を手に取った 操作してだすのはアドレス帳の「ひ」の欄だ そこには上下に並んで彼女達の名前がある 後ボタン一つで彼女に電話がかかる状態までもっていく そこには彼女の名前とメールアドレス、電話番号が記されている 私の指はボタンに向かい―― 「やめた……」 第一こんな時間に電話をかけてなにを話せばいいのだろうか それもさっき別れをつげたばかりの人物に どうしようもなくなった私はゆっくりと携帯を閉じ、瞼も意識も閉じてしまおうとする ~~♪ 同時にお気に入りのメロディが流れてきた 発生源は自分の手のひらの中 私はきっと期待している この電話が彼女からであることを 「はいもしもし」 液晶の画面も見ずに通話ボタンを押した そのほうが私の期待はほんの少し長く続くから 『あ、あずにゃん!! 大変大変』 呆れた…… なんという期待を裏切らない人だろう 私が電話をかけるか迷っていたのが馬鹿らしくなってくる 「なんなんですか、こんな時間に」 『まぁ、いいから外を見てみてよ』 私は言われたとおりにするために、自室の窓へと歩み寄った そしてカーテンに手をかけ、横に引く 「これは……」 『雪だよ!!雪』 「えぇ、そうですね」 もっと言葉したいことはたくさんあったが 今はそれで充分だ 『えぇーあずにゃん、それだけなの?』 彼女のいいたいことは分かっている なぜならば、私も真っ先にそれを思い出したからだ だが、やっぱり素直じゃない私はそれを率直に言う気はないらしい 「ええ、なにかありましたっけ」 『うぅー、あずにゃんの薄情者』 電話越しに彼女が落胆しているのが面白いほどたやすく想像できた ……まったくもうしかたないんですから 「それじゃぁ、唯先輩。どこかで待ち合わせしましょうか?」 『あっ、やっぱりあずにゃん分かってたんだねー』 私は肩と頬に電話を挟むと、ハンガーに掛けていたコートへと手を伸ばす そしてそのまま姿見の前に立ち、自分の小さな体に合わせる ……変じゃないよね 『あ、ちょっとあずにゃんきいてるー?』 「はいはい、聞いてます。 で、場所はどうしましょう」 髪の毛の確認をし、服装を確認し、持ち物を確認する あとはもうこの電話を切り、ポケットの中にしまうだけだろう 「――はい、わかりました。じゃぁ、そこで」 きっと数十分後には私はまた生意気なことをいっているのだろう その場所にはそれを笑いながら受け止めてくれる人もいるのだろう そして私は透明なビニール傘と共に飛び出した 「梓」 了 2
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梓「ここにもよく来ましたね」 唯「ムギちゃんがバイトしてたとこだね」 梓「去年の夏休みに何回かここでムギ先輩に会いましたよ」 唯「へー、お客さんとして?」 梓「いえ、働いてました」 唯「え? ムギちゃんは向こうでもバイトしてるんだけど」 梓「こっちに帰って来た時はたまにここの仕事もやるって言ってました。愛着があるんでしょうね」 唯「あずにゃん、そういうことはもっと早く教えてくれてもいいのに」 梓「先輩達はご存知なのかと思ってました」 唯「いくら親しくなっても、お互い知らないことってたくさんあるものなんだね」 梓「先輩達は比較的秘密の少ない間柄だと思いますよ」 唯「そうかなぁ」 梓「羨ましいですよ」 唯「うーん……まぁいいや。それより、ちょっと寄ってかない?」 梓「こんな時間にですか。お腹空いてないですよ」 唯「ドリンク一杯だけでもいいから。ね」 梓「しょうがないですね。お客さんも少なそうですしちょっとの間休憩させてもらいますか」 唯「よーし、いこー」 梓「びっくりしましたね」 唯「うん。まさかムギちゃんがいるとは」 梓「何だかんだ言ってセットを頼んじゃいましたし」 唯「ムギちゃんは商売上手だねー」 梓「従業員が揃いも揃って風邪を引いたそうですね。私達も気をつけましょう」 唯「うん、寝るときは身体を冷やさないようにね」 梓「でもこんな時間にフラフラしてたら明日は体調崩すかもしれないですね」 唯「それはダメだよ。明日はあずにゃんの旅立ちの日なんだから」 梓「もう帰りますか?」 唯「せめて桜高にはお別れを言わなきゃね」 梓「見えてきましたよ」 唯「校門は閉まってるかぁ」 梓「当然ですよ」 唯「じゃあ敷地の周りをぐるっと回ろうよ。この校舎と、ここで生まれた思い出を、じっくり胸に刻み込むんだよ、あずにゃん」 梓「そういうのは卒業式で済ませました」 唯「私もあずにゃんの泣き顔見たいからもう一回卒業式やろうよ。二人だけで」 梓「泣いてませんよ、今年は」 唯「はぁ~、意外と広いもんだねー」 梓「ですね。やっと半周ですよ」 唯「疲れちゃったからもう一度ムギちゃんの店に寄る?」 梓「帰ります。早く帰って寝たいです」 唯「しょうがないなー。ん?」 梓「どうしたんですか?」 唯「見て。校舎の壁の隅の方」 梓「落書き、ですね」 唯「相合傘、だね」 梓「名前見えますか」 唯「見えない」 梓「まぁ、詮索するのは野暮ですよね。あんな所に書いてるんですから秘密にしたいんでしょう」 唯「……やっぱり女の子同士、なのかな。女子高だし」 梓「もしかしたら先生と生徒、とか。……あまり考えたくないですけど」 唯「自分の名前と校外の彼氏の名前を書いた、っていうのもあるかもね」 梓「何にせよ、可愛いものですね。母校に自分がいた証をさりげなく残していくって」 唯「あずにゃんも何か残したりした?」 梓「物は残してませんよ。……ただ、先輩達が残してくれたものは、私も同じように残すことができたと思います」 唯「来年は廃部になったりしないかな」 梓「大丈夫です。軽音部はなくなりません」 唯「そう、よかった」 梓「唯先輩」 唯「なに?」 梓「私、もう放課後ティータイムに戻ってもいいんですよね」 唯「もちろんだよ。……がんばったね、あずにゃん」 梓「はぁ、もうすっかり身体があったまってしまいました」 唯「マフラーが暑苦しくなってきたね」 梓「風邪引くといけないので外さない方がいいですよ」 唯「そうだね。ん、どうしたの、あずにゃん」 梓「ここも思い出の場所、ですね」 唯「あぁ……。あの時のあずにゃんの顔が忘れられないよ」 梓「どの時ですか」 唯「『ゆいあずってどうですか?』」 梓「私そんなこと言いましたっけ」 唯「言ったよ~。ふわふわとぅああ~いむ」 梓「言ってません」 唯「あずにゃん、歌上手になったよね」 梓「そうですか? ありがとうございます」 唯「ここで一曲歌ってく?」 梓「草木も眠ってる時間なんですから止めましょうよ。またの機会に」 唯「マンションの部屋で歌うのは近所迷惑だしなぁ」 梓「どこかいい場所ないんですか」 唯「う~ん、あ、いつか一緒に行ったよね。大学構内の大きな木がある場所。あそこなんてどう?」 梓「いいですね。ここと雰囲気が似てますし」 唯「うん。じゃああそこで『ゆいあず』再結成だね」 梓「はい。暇があれば」 唯「早起きして時間作ればいいんじゃないかな?」 梓「唯先輩には厳しいんじゃないですか」 唯「頼りになる隣人が越して来るから大丈夫」 梓「しょうがない人ですね」 唯「あずにゃんの家だ」 梓「もう私の家じゃなくなりますけどね」 唯「そんなことないよ。ここがずっとあずにゃんの家であることに変わりないよ」 梓「そうであってほしいですね」 唯「時間があったらちゃんと帰って来て、お父さんとお母さんと笑顔で食事するんだよ」 梓「はい。たまには唯先輩も招待しようかと思います」 唯「う~ん、私は……」 梓「いやですか?」 唯「私、あずにゃんのご両親に嫌われてないかな?」 梓「どうしてですか?」 唯「娘をたぶらかした泥棒猫、みたいに思われてないかな?」 梓「ただの先輩としか思ってませんよ」 唯「ならいいけど」 梓「でも確かに私は唯先輩にたぶらかされてるのかもしれませんね」 唯「えー……」 梓「でも」 唯「ん?」 梓「自分で選んだ道ですから、しょうがないです。唯先輩を放っておくのはすっきりしないですから、もう少しだけ付いて行っても構いませんよね」 唯「ご両親は納得してるのかな?」 梓「納得させられるように頑張ります」 唯「そっか。私も出来る限り協力するよ」 梓「じゃあ夕食に招待した時はちゃんと来てくださいね」 唯「うーん……わかったよ」 梓「では、おやすみなさい、唯先輩」 唯「おやすみ、あずにゃん。また明日」 梓「えぇ…………唯先輩」 唯「んー?」 梓「これからも……よろしくお願いします」 唯「……こちらこそ」 ――――― 梓「私がN女子大に入学して二週間が過ぎた。 今夜は2,3年生の先輩(唯先輩達はいなかった)が催した新歓コンパだった。一次会は9時頃に終わり、先輩達に二次会に誘われた。 私は二次会にも参加することにした。女の子だけだしそんなに遅くまではかからないだろう、という軽い気持ちだった。 しかし、ついて行った店では他大学の男子学生が数人たむろしていた。聞けば先輩達の知り合いで、偶々居合わせたらしい。 せっかくだから一緒に飲もうという話になった。私は乗り気じゃなかったものの、適当に付き合って帰るつもりだった。 だが先輩達は男子学生と話しこんで中々帰る気配がない。私以外の数人の新入生も絡まれていた。 私は痺れを切らし、門限があると嘘を言ってお金を先輩に渡し、店を出た。 しばらく歩いていたら突然後ろから手首を掴まれた。振り向くとさっきの男子学生集団の一人だった。いかにも軽薄そうな人だった。 ひどく酒臭くてよくわからない言葉を発していたが、断片的に聞き取れた単語を繋げると、どうやらお誘いのようだ。 丁重にお断りをして帰ろうとしたが離してくれない。大声を出してみたが、助けは来ない。まずいと思う間もなく路地裏に……。 突然男の力が緩んだ。そして別の手が私を引っ張り走り出した」 唯「はぁはぁ、ここまで来れば大丈夫、かな?」 梓「……唯先輩」 唯「大丈夫だった? あずにゃん。何もされてない?」 梓「……はい。危なかったですけど」 唯「よかったー」 梓「……どうしてここに?」 唯「バイト帰りにあずにゃんの声が聞こえたから。あんな所で何してたの?」 梓「……新歓コンパの帰りです」 唯「こんな遅くまでやってたの?」 梓「……二次会です」 唯「どうして二次会に行ったの?」 梓「……行ってもいいじゃないですか」 唯「ごめん」 梓「……すみません。二次会に行かなければあんな目に合わなかったのに。調子に乗ってました」 唯「大学生になったばかりなんだから好奇心旺盛なのはわかるよ。しょうがないよ」 梓「……しょうがない、んですか」 唯「これからは気をつけようね。食べ過ぎない。飲み過ぎない。遅くまで飲まない。暗い道、狭い道は避ける。一人では歩かない。必ず年上の信用できる人と一緒に帰る」 梓「……気をつけます」 唯「ほら、元気出して。無事だったんだから」 梓「……唯先輩、格闘技できたんですか?」 唯「ん。えーと、ごしんじゅつ? バイトの先輩のお姉さんがね、ちょっとだけ教えてくれたんだ。一人暮らしの女の子は身につけておいた方がいいって」 梓「……今度私にも教えてください」 唯「いいよー。でも誰にだって通用するものじゃないから気をつけてね。さっきの人は細身だったし、一人だったし、酔っ払いだったし、ふいうちだったから何とかなったんだよ」 梓「……でも……かっこよかったです」 唯「え?」 梓「……何でもないです」 唯「憂たちとは一緒じゃなかったんだっけ?」 梓「……クラスの集まりでしたからね。純はクラスが違いますし、憂は学部が違いますから」 唯「新しい友達はできたかな?」 梓「……ええ。話してみると趣味が合う人が何人かいました」 唯「一緒に食事するとその人の意外な部分が見えたりするからね。飲み会はいいよ~」 梓「……よくないこともありますけどね」 唯「あー……忘れた方がいいよ。教訓にはした方がいいけど」 梓「……私が子供だったんですよ。みんなともっと仲良くなれると思ってホイホイついて行ったから」 唯「子供じゃないよ。仲良くなりたいって気持ちを持つのは悪いことじゃないよ」 梓「……唯先輩は大人ですよね」 唯「え?」 梓「……上手に友達を作って、もしもの時の対策もちゃんと立てて、他の人も守れて」 唯「私だって最初からできたんじゃなくて、この一年の経験があって」 梓「……だから、いやなんです」 唯「あずにゃん?」 梓「……ごめんなさい。唯先輩は今も私が見てなきゃ不安な人だと思ってたのに……。ごめんなさい。思い上がった考えですよね」 唯「あーずにゃんっ」 梓「にゃっ……」 唯「私にはまだまだあずにゃんが必要だよ~」 梓「……そんなこと」 唯「そんなこと、あるよ。ギター教えてもらいたいし、朝起こしてもらいたいし、それに」 梓「……何ですか」 唯「あずにゃん分が足りな~い」 梓「……もう、道の真ん中でひっつかないでくださいよ」 唯「あまりお酒臭くないね、あずにゃん」 梓「醜態をさらしたくありませんでしたから」 唯「醜態?」 梓「一昨年のお花見と二ヶ月前の合格祝い。ひどかったらしいですからね」 唯「可愛かったよー」 梓「そこまで親しくない人に見せられるような顔じゃないと思います」 唯「そういう顔を見せられる人が増えるといいね」 梓「私はそこまで増やしたいと思わないです」 唯「萎縮することはないよ」 梓「そういうわけじゃないです」 唯「視野を広げることも必要だよ」 梓「少しずつやっていくつもりです」 唯「うん、焦らずね」 梓「でもその前に」 唯「なあに?」 梓「そろそろサークル活動を始めたいです」 唯「んー……」 梓「今まで先輩達は私が来ることを拒んでましたよね」 唯「拒んでた、っていうかね」 梓「大体の理由はわかります。サークルを始めるのは今日みたいな集まりを通して同期の友達を作ってからでも遅くない、って考えだったんですよね」 唯「うん。まぁそういうことだよ。最初が肝心だからねー。あずにゃんがしっかり大学生活をスタートさせてから迎えようってみんなで決めてたんだよ」 梓「もう私はスタート地点に立ちましたよ」 唯「うーん、私だけで判断することはできないからねぇ。りっちゃん達に相談しないと」 梓「唯先輩の目から見た私はどうですか? まだ高校生のままですか」 唯「うーん……」 梓「正直に言ってください」 唯「正直に言うと……あずにゃんはまだ危なっかしい子かなぁ」 梓「そうですか」 唯「最初が肝心だからね。今の内に私達以外との交友関係も広げておかないときっと後悔すると思うんだ。もちろんあずにゃんが私達と一緒にいたいって気持ちもわかるし、私達だって同じ気持ちだよ。でも……」 梓「わかりました」 唯「あずにゃん」 梓「もう少しだけがんばってみます。先輩達が不安がらないくらいたくさん友達作って、たくさん遊びます」 唯「でもほどほどにね~。私達のこと忘れないでね~」 梓「忘れるわけないです。何のためにこの大学に入ったと思ってるんですか」 唯「うん。あずにゃんなら大丈夫だね。よーし」 梓「どうしたんですか」 唯「今夜は飲もう!」 梓「もう遅いですよ」 唯「お店で飲むわけじゃないよ。私の部屋においで」 梓「今日は飲みすぎましたからこのへんで」 唯「全然飲んでないでしょ。明日は休みだし、部屋には私と憂しかいないから遠慮することはないよ」 梓「唯先輩」 唯「部屋にお酒残ってたかなぁ。ちょっとコンビニで買ってこうか」 梓「まっすぐ帰った方がいいと思います」 唯「だねー。夜遅いし危ないもんね」 梓「全く危なっかしい人ですね」 唯「えへへ~、すみませんねぇ」 梓「しょうがないですね。ちょっとだけなら付き合います」 唯「やったー! じゃ、いそご。憂が待ってるよ」 梓「うわっと、引っ張らないでくださいよー」 11
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「……なあ、やっぱり止めないかキョン。ホントに痛いんだよ。色んな意味でだ」 「そう聞いちゃなおさらだ。観念しろ佐々木」 着替えが終わったよ、と俺が部屋に入ることを許しつつも、あいつはカーテンから顔だけを出していた。 佐々木よ、言っちゃなんだが白カーテンだから光でちょっと透けて見えてるぞ。 「え」 「まあ身体のラインくらいだが」 「うう……」 「まあ観念しろ。それにな、そもそも最初に話を飲んだ時点でお前の選択は既に終わっているんだ」 「……キミに言葉責めの趣味があったなんて知らなかったよ」 俺はいつもお前に言葉責めされている気がするがな。 「……笑わないでくれよ?」 「保障はしない」 「うう」 それでも姿を見せたのは、常に筋を通すあいつらしい頑固さの賜物か、或いはその頑固さを利用した俺の勝利か。 ピチピチに張った服を着た佐々木がカーテンから現れる。 中学時代の夏服を着込んだ佐々木が、恥ずかしそうにこちらを睨みつけていた。 「おお、ちゃんとまだ着れてるじゃないか」 「うう……どこがだい」 つんつるてんとはまさにこれだ。中学時代の制服を来た佐々木は、珍しくこちらをにらみつける。 だが顔が真っ赤じゃ迫力に欠けるぜ親友。 「しかし、意外に中学三年と高校三年じゃ体格が変わってるもんなんだな」 「そこは個人差があるだろうがね」 学生服なだけに、それなりに長いはずのスカートがこうしてみるとミニスカートみたいだ。 しかしお前ってあんまり変わってないイメージがあったんだが。 「くっくっく。言ったろ、僕だってそれなりに身体的数値は変動しているのだよ」 で、ふふん、とばかりに胸を張ったのがいけなかったのは言うまでも無い。 いつか雨に濡れたのと同じ制服の前が、今度は勢い良くボタンを弾け散らしてその下にある禁則事項が禁則事項したのは事故だ。事故なんだ! )終わり 「で、キョン。僕は責任を追及しても構わないのかな?」 「俺に出来る事なら何でも、とは言わんぞ」 「くく、言わないのか」 一体何を要求するつもりなんだ。 「そりゃ僕は意図せずキミに恥を晒してしまったわけだ。なら相応にキミにも、あー、そうだな、そうだ。……中学時代の制服でも着てもらおうかな?」 「男にそんなんやらせて楽しいのか?」 「僕は楽しい」 「そうかい」 「当たり前だろ? キミとの思い出が詰まった服装なのだからね」 )終わり
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前 人里の広場で。 今日も今日とてゆっくりちぇんの相手をする。 「わかる、わかるよー」 ちぇんも勝手がわかっているのか、俺の愛撫(性的な意味はない)に心地よい格好で応えていた。 と、そこに不吉な気配。 「……ぇぇぇん」 「何だ……?」 どこからともなく聞こえてくる重低音の響きは、まもなく音源を俺にさらした。 「げえっ、ゆっくりらんしゃまっ!」 俺は叫んだ。 だってそうだろう?あの忌むべき姿が涙を流しながら、尻尾をぶんぶんと回転させて、俺のいとしいちぇんに向かって一目散に突撃してくるのだから。 「ちぇんは渡さん!渡さんぞー!」 とっさに両腕でちぇんを抱きかかえる。 俺のちぇんに、あんな教育に悪いものを見せてたまるか。 「わ、わからないよー」 ちぇんが俺の腕の中でうめく。スマン。ちょっと抱きしめる力が強すぎたか。 いや、突如現れたゆっくりらんしゃまと、俺。どちらを優先すべきか迷っているらしい。 ものすごく不本意だ。 そういえば、と俺はちぇんを小脇に抱えたまま、ご都合主義空間からバズーカ砲のようなものを取り出した。 それは谷河童から大枚をはたいて買った弾幕マシーンで、俺はそれをらんしゃまに向けて撃つ。 キュー、キューカン、ババーァー マシンから放たれる無数の緑色ポロロッカ。 だが。 「ちぇええええええええん!」 ゆっくりらんしゃまは一向にひるまずこちらに向かってきている! それどころか、 「少女臭だって言ってるでしょぉぉ!」 ゆっくりゆかりんが突如スキマから身を乗り出してこちらに迫ってくるではないか! 「え、何で?!」 「わ、わからないよー」 おびえる一人と一匹(?)。 「こうなったら、豆符『アブリャーゲ』!」 適当に、目標に向けて腕を振り下ろす。もう自棄だ。 何故か放たれる肌色のスペルカード。人間、必死になればスペルカード程度はつかえるもんなんだね。 それは一直線にゆっくりらんしゃまの額に向かい、 ぱく。 「むーしゃ、むーしゃ。しあわせー」 食われた。 「ちぇええええええええええええん!!!」 「なにぃ! 効かないだとっ?」 「永遠のじゅうななさいって言ってるでしょぉぉぉ!!!」 ひい、二つのゆっくり生命体は必死の形相でこちらに向かってきている。 絶体絶命か、と思われたとき、 なんと、俺のちぇんが立ち上がったのだ! 足がないではないか、などと野暮な突っ込みは言ってはいけない。俺のちぇんは胸をはり、本物の橙様のようなかわいらしい気迫で、迫りくる二匹に向かっていったのだ。 「凛々しいちぇんも可愛いよ可愛いよちぇん……ハッ」 俺が一瞬の間恍惚のときを過ごしていた間に、ちぇんはらんしゃまに擦り寄られていた。 しかも、 「少女臭ぅぅぅ」 俺はゆっくりゆかりんにのしかかられていた。ゆかりんの放つなんともいえないにおいは、俺の筋力を硬直させるには十分であった。 「くっ、俺のことはかまうな!にげるんだちぇん!」 俺の言葉もむなしく、先ほどまでの気迫はどこへやら、ちぇんはらんしゃまにされるがままになってしまっている。 もうだめだ……と思われたそのとき、意外な救世主が現れた。 「こら~! らんしゃま、他人のちぇんに興奮しちゃだめなの~」 そういってこちらに駆けてくるのは、八雲の式の式、橙様だ。 どうも橙様はゆっくりらんしゃまの飼い主らしい。 橙様はゆっくりらんしゃまと、ついでにゆっくりゆかりんを引っぺがして持ち上げた。 「どうもありがとうございました、助かりました橙様」 「いえ。私こそ、うちのゆっくりらんしゃまとゆっくりゆかりんが迷惑かけちゃって、ごめんなさいです」 そういって俺にぺこりと挨拶する橙様はなんともかわいらしかった。さすがはゆっくりちぇんの本家本元のことはある。 それでは、俺のちぇんと一緒に帰ろうとしたとき、またもや呼び止められた。 「ゆっくりちぇんは、たまにゆっくりらんしゃまとあそばせたほうがいいですよぉ~」 大きなお世話だ。俺のちぇんは俺だけのものだ。ほかの誰にも嫁にはやらん! そういうことをオブラートに包んで橙様に伝えたら、クスリ、と笑われた。 「あなたは、まるで藍様を見てるみたいです」だって。 「そんなに愛されているなんて、あなたのゆっくりちぇんは幸せ者ですね」 「ありがとうございます」 「でもほかのゆっくり種とのコミュニケーションは大事ですよ?」 「そうですか」 「あっ、そうだ!こんど八雲のおうちにゆっくりちぇんをつれて来てもらえませんか?きっと藍様も喜びます」 八雲藍さまだと? ゆっくりちぇんのトップブリーダーのあの方に? それは光栄だ。俺とちぇんのさらなる家族愛を深められるいい機会かもしれない。 しかし…… 「少し考えさせてください」 連れ立って、家路にいぞぐ俺とちぇん。 「わかるよー」ちぇんは疲れてはいたようだが、上機嫌だ。 俺はというと、先ほどまでの会話を反芻していた。 俺はちぇんにたいして過保護すぎるのだろうか? 「ちぇんや」 なに?と振り返ったちぇんに向かって聞いてみた。 「ゆっくりのともだち、ほしいかい?」 ちぇんはすこし考えた後、 「わからないよー」とつぶやいた。 俺の周りを一周し、俺の頭にぴょんと飛び乗った。 そして、 「わかるよー」とだけいい、笑ったのだった。 そうか、お前は俺の気持ちをわかってくれたのか。お前は本当にいいゆっくりだな。 ならば、俺も決断を下さなければならない。 そうやって決まった八雲一家訪問。それには、また別のエピソードがあるのだが、今日語るのはこれくらいにしておこう。 ゆっくりちぇんを飼ってみた そのさん 完 ガチでちぇんと暮らしたいんだが。可愛すぎる。 -- 名無しさん (2009-03-28 03 11 21) 愛は弾幕を越えるのかー あとゆかりんが愉快すぎるw逆に可愛い -- 名無しさん (2009-05-18 21 23 25) お兄さん限界突破w -- 名無しさん (2009-05-18 22 05 53) 第1話やこの話みたいに「わ、わからないよー」とぷるぷるしてるちぇんを想像するといろいろたまりません。 ちぇんかわいいよちぇん…… -- 名無しさん (2009-05-19 14 48 42) 作者さんの話を読んで、ちぇんが好きになりました。可愛すぎる! -- 名無しさん (2010-04-06 18 40 14) 素晴らしい。 -- 名無しさん (2010-11-25 11 44 43) 可愛すぎるちぇん。 -- 名無しさん (2012-12-02 15 17 11) ちぇん可愛い -- ちゃんかわい?って思ったやつ、屋上な。 (2012-12-22 20 26 34) 少女臭ww -- 名無しさん (2014-07-19 22 33 14) 名前 コメント
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注意。 この作品には、無茶苦茶な設定が含まれます。 というか、ゆっくり主役じゃないです。 まごうことなきスイーツ(笑)です。何書いてるの、自分。恥ずかしくないの。 彼女なんていないのにさ。 「紅い血の女」 お前は、俺から逃げないでくれるか? 俺は、ひとりぼっちなんだ。誰からも見捨てられた。 孤独なんだ。 お前が家に来てくれてから、俺はとても幸せだ。 だから絶対、俺が死ぬまで側にいてくれ……。 ぴーんぽーん。 冬真っ直中の寒空の下、僕はとある家のチャイムを鳴らした。 いつの間にかズレていた眼鏡を、格好つけて中指で押し上げていると(単にやり易い方法だからだが)、 鍵を開ける音がして、玄関のドアが開いた。 「……大江か。」 玄関にいたのは、同級生の長沢だった。 「……元気みたいだね。おばさんは?」 「お袋ならまだ仕事だ。」 「そう……。」 長沢はくるりと踵を返した。 「ま、入れよ。」 そう言うと、さっさと二階の部屋に戻ってしまった。 「全く……。ピンピンしてるじゃないか。」 僕は長沢の後をついて二階の階段を昇っていった。 見慣れた長沢の部屋に入ると、僕は本題を切り出す。 「それにしても災難だったな。その……。」 「変質者に襲われて、か?」 ……相変わらず、歯に衣着せない奴だ。 「全くだぜ。お陰で折角の平日休みだってのに、部屋に引き籠もりっぱなしだ。」 「何があったんだ?」 僕がそう聞くと、長沢は押し黙ってしまった。 「学校じゃ、詳しいことは話して貰えなかった。普通だったら、手口だとか犯人の服装とか細かく言われるって 言うのに。」 「……。」 「何が、あったんだ。」 長沢はやはり、押し黙ったままだ……。 「ぅゅ……っ!ゆ、ゆっくりしていってね!!!」 突然、ベッドの上にいた、長沢の家のゆっくりまりさが声をあげた。 「ゆ!?おにいさん、おひさ!!!」 そしてぴょんぴょんと跳ねて、僕の足下にすり寄ってきた。 「みきちゃん、おにいさんだよ!!!」 そう言われたみきちゃん――長沢美紀は、少し苦笑いをして、まりさを抱えあげた。 「おう、嬉しいか?」 「うん!!!」 まりさの言葉に、僕も長沢の様に苦笑いを浮かべていた。 「何でこんなに好かれてるのかな、僕は。」 「頼りなさそうな所とか、まどろっこしい所とか、色々長所はあって、判断に困るな。」 「……全部短所じゃないか。」 僕が呆れていると、まりさは長沢の腕の中で頬をぷくりと膨らませた。 「ゆゆ!いくらみきちゃんだからっておにいさんのわるくちはゆるさないよ!!!おにいさんはとてもゆっくり してるからまりさはすきなんだよ!!!」 「へいへい。」 長沢がまりさをあしらっている所で、僕は話を本題に戻す。 「で、何があったんだ。学校じゃ、変な噂が立ってるし。例えば、その……」 まぁ、未成年とはいえ僕らはもうすぐ高校生だ。 その……そういうのは、ねぇ? 「暴行されたとかか?」 「なッ?!」 「おねえさん!!」 やっかいな所でまりさが話に割り込んできた。 「ぼうこうってなにー?」 「乱暴されることだな。ゆっくりだと、無理矢理すりすりー、すっきりさせられ るみたいな……」 こ、こんの……ッ! 「馬鹿!せめてぼかして言えよッ!!」 「これでもぼかしてるぜー?ま、回りくどいことはしないのがあたしの主義だからな。」 そう言ってけらけらと笑いだした。 「……その様子だと、本当に違うんだな。」 「ったり前だぜ。お前も下世話な噂が好きだなぁ。」 「僕が言ってるんじゃない。」 「ふーん、そうか。」 長沢はそう言って、ベッドにぼすんっ、と腰を下ろした 僕、大江健次と長沢は、小学生の頃からの友人だ。 特に何かあった訳じゃない。 何回かクラスが一緒になり、何故だか気が合ってしまったから、 いつの間にか親友と言うか、悪友と言うかの仲になっていた。 男勝りを越して親父臭い口調の長沢だが、見た目はいたって普通の女子だ。黒い長髪で、不良と言う訳ではない。 いや、昔は普通の女の子だった筈だ。それが最近じゃ、口調のせいでか周囲から浮いている。 「なんでだろうかな……。」 「ん?なんか言ったか?」 「いや、別に。」 「それにしても、今日は何でわざわざウチまで来たんだ?」 長沢にそう聞かれて、僕は飲んでいたジュースを噴き出しかけた。 「ゆゆ!?おにいさんどうしたの?」 「げほげほ……、いや、その……。」 「どうせクラスの連中に唆されたんだろ?『恋人の見舞いに行けー』なんてさ。」 僕は不貞腐れてそっぽを向いた。分かってるなら聞くなよ、まったく……。 クラスで僕が冷やかされるのは、今年のバレンタイン、僕が長沢からチョコをもらったからだ。 とはいっても、10円のチ□ルチョコ。……今では20円の物が殆どだというのに、コイツは10円をケチるた めにわざわざ駄菓子屋で買ってきたのだ。 しかも義理チョコで、クラスの男子全員に配る予定が、僕に渡した後はすっかり忘れていたお陰で、僕は長沢の 意中の人扱いされた。 冗談じゃない。 しかも長沢は恥ずかしがるどころか、悪びれた様子もなく、平気でその話をするからタチが悪い。 「機嫌を直せよ、わが恋人。」 「……もういいよ、それは。それより、本当に何があったんだ?」 僕が聞くと、長沢は少し間をおいてから、 「知らん。」 とだけ答えた。 「知らない、ことはないだろ。自分のことなんだから。」 僕が問い詰めても、長沢は難しい顔をして、 「いや、本当に知らん。覚えてないんだよな。」 と嘯く。 「覚えてんのは、昨日ちょっと出かけて帰りまでで、そこから先は無し。朝起きたら病院に居たんだよ。」 「……本当か?」 「本当。なんか変質者ってのも状況判断らしいし。」 「何だよそれ。」 「だって、そりゃ、なぁ。」 長沢は僕に背を向け、後ろ髪を掻き揚げた。 「こんな痕がありゃあな。」 長沢の首には、丸で牙で噛まれたような傷跡が2つ、残っていた。 「こんなの、どう説明しろってんだ?」 日がすっかり暮れた頃、僕は家の近くの公園に居た。 長沢の家で薄気味の悪い事を聞いた僕は、少しばかり暗くなった気分を晴らすため、そこに居る愉快な連中に会 いに来たのだ。 そいつらとは……。 「ゆゆ!!!さなえ、すわこ!!!おにいさんがきたわよ!!!」 「あうー!!!ほんと?かなこ!!!」 「おひさしぶりです!!!」 この公園の遊具に住み着いている、ゆっくりかなこ、すわこ、さなえの3頭だ。 こいつらと会ったのは、小学校五年生くらいの頃。 念願のマイホームとか言って、ここに引っ越してきた時のことだ。 マイホームといっても、実は海外で老後を送っているらしい、遠い親戚の家を改築したものだったりする。 その引越した当日に近くをうろついてたらこいつらを見つけたのだ。 「ゆ!!!おにいさん、きょうはおかしあるの?!」 かなこがさっそくねだり始めた。というのも、僕は度々こいつらにお菓子やら給食のパンやらを食べさせている。 パンに関しては、単に嫌いなものといっても捨てるのが勿体無いから食べてもらっている。 菓子に関しては、なんか、その……義理みたいなものだ。 件のチ□ルチョコを売っていた駄菓子屋で買ってきたやつだから、そんな大したものじゃないけど。 「残念だけど、今日は無い。」 「ゆぅ~。おにいさんたらケチね!!!」 かなこが口を尖らせていうと、 「かなこみたいだよ!!!」 すわこがすかさず、かなこをおちょくる。 「……すわこ、あんたなまいきだよ!!!」 かなこが頬を膨らませてそう言うと、 「かなこにはまけるね!!!」 売り言葉に買い言葉。すわこは胸を張るようなポーズをとる。 「ふん!!!なら、ここでけっちゃくつけるよ、すわこ!!!」 「のぞむところだよ、かなこ!!!」 2頭はそう言うと、互いに頬を押し付け合い、 『うりうりうりうりうりうりうりうりうりうりうりうりぃぃ~!!!』 とおしくら饅頭らしきものを始めた。 「……はぁ。」 途中から、なんだか楽しそうになってる2頭を見て、僕はため息をついた。 「どうされたんですか!?」 そんな僕に寄ってきたのは、3頭の中で一番まともな、さなえだった。 「いや、ちょっと物騒な話でさ……。」 僕が事の次第を話すと、さなえは少し考えているようだった。 『すっきりー!!!』 かなことすわこが喧嘩というかなにかを終えた頃、さなえはようやく口を開いた。 「おにいさん。きょうはもうかえったほうがいいです。」 「え?いや、確かに遅いけどさ、変質者が出た所とは離れてるし……。」 「いいから、かえってください。」 さなえはそういうと、住処の遊具へと跳ねていく。 「どしたの、さなえ。」 「なんでむずかしいかおしてるの?」 そんなさなえを見つけて、すわことかなこが声をかけた。 「……ごめんなさい、かなこさま、すわこさま。おにいさんにはかえってもらいます。」 さなえはそれだけ言って遊具の中に入っていってしまった。 「どうしたのかしら……?」 「ごめんね、おにいさん!!!」 2頭が謝ったが、別に僕は怒ってはいなかった。 ただ、いつものさなえらしくなくて、僕にはすこしばかり不思議に思えた。 どこだ。どこに行ったんだ? こんな時間に出歩くなんて、危ないじゃないか。 最近は冬にも関わらず変な奴が出るというのに。 公園を出た僕は、特に何をする訳でもなく、辺りをうろついていた。 時刻はまだ6時半。だというのに、すでに夜と言えるほど暗かった。 そして、寒い。 「変質者って春出るっていうけどなぁ……。」 そんなことを呟きながら歩いていると 「おい!」 と、声がした。いや、怒鳴られた。 ……驚きのあまり、思わず硬直する僕。 「聞こえてるのか!」 再度怒鳴られたので振り向くと、そこには怒りっぽいことで有名な竹下の爺さんがいた。 「は……はい……。」 ……今日はとことんついてない。 「こんな時間になに出歩いてる!」 「い、いえ、特になにも……」 「理由を聞いてるんじゃない!!」 一際大きい雷が落ちた。 正直、一言注意するだけでいいと思うんだけどな……。 それから、竹下の爺さんが嫌われている最大の原因である、長いお説教が始まった。 基本的には、怒った理由についてのお叱りから飛躍して、いつの時代も変わらない若者論、果ては現代社会の若 者の「心の闇」にまで話は及ぶ。 「兎に角、餓鬼はさっさと帰れ!帰って勉強でもしてろ!」 そう言ったあと、何だかグチグチ言いながら竹下の爺さんは帰っていった。 ふぅ、と僕はため息をつく。いつもなら長いお説教なのだが、今日はあれだけで済んだみたいだ。 早く帰れっていってるのに遅く帰らせる羽目になったら意味がない。 まぁ、もう7時を過ぎてしまったので、充分本末転倒だけれど。 兎に角今日は良いことが無かった。爺さんが言うとおり、早く帰ろう。 そう思って、僕は近道の裏路地を歩いていった。せまくて汚いが、今は一刻も早く帰りたい。 爺さんはそう悪い人では無い、と僕は思っている。基本的には間違ったことで注意はしないし、僕に限って言え ば、締めは真っ当なことを言うし。 「まぁ、話を飛躍させてまで長いお説教を聞かせるのはなぁ……。」 そんな独り言を言っていたときだ。 ふと、僕は足を止めた。 前に人影が見えた。はっきりとはわからないが、背格好からして10歳ぐらいの、金髪の少女のようだ。 何だか見覚えのある、変な帽子を被っている。 見かけない子だな……。 こんな子がいたなら、流石に近所でも話題になるとは思うのだけれど。 そう思って彼女を見ていると、彼女は、 「おねがい。」 そう言って笑った。 その途端、僕に走ったのは、どうしようもない程の 怖さ。 笑顔は屈託の無い、むしろ綺麗で可愛いものだったと思う。 だけどそれにこめられた意味は、大人でもない僕にすら分かるほど明瞭で、そしてただただ 恐ろしかった。 逃げなくてはいけない。直感的にそう思った僕は踵を返して来た道を走った。 声を上げる余裕もない。それほど恐ろしかった。 きっとライオンと対面した獲物、それも、まさに子供の気分だ。 もつれる足を気にも留めず、僕は必死に走って 「おいついたぁ。」 すぐそばに、大きく口を開けた少女の顔が見えた。 犬歯がひどく長くて尖っていたけれど、やっぱり綺麗で―― とても、恐ろしかった。 「うわぁぁぁぁぁ!!!!」 次の瞬間だった。そう、まさに一瞬。 眩い光が通りすぎ、少女は吹き飛ばされていた。 路地に置いてあるゴミ箱にぶつかる音が、派手にしていた。 助かっ……た……? そう思った途端、急に、僕は足に力が入らなくなり、 「うわぁっ?」 前のめりにすっ転んでしまった。 「いてて……。」 起き上がろうとして前を見ると、 「まったく、何をしてるんですか?」 見たことも無い女性がいた。 緑の長髪に、妙な髪飾りを付けて、 なによりも、何故かノースリーブを着た上で二の腕辺りに袖をくくりつけた妙な格好。 普通ならあまり関わりたくないと思わせる服装だというのに、なんだかとても優しい雰囲気のする人だ。 「だから早く帰るように言ったのに。」 ガタン、と音がした。 後ろを向くと、あの少女が起き上がり、こちらを睨み付けていた。 枝のような、翼のようななにかを広げて。 「さがっててください。」 女性にそう言われた僕は、這いずりながら慌てて後ろに下がった。 少女は軽く飛び上がり、 そのまま、滑空してきた。 女性はどこからとも無く、神主さんが持っているような、何かひらひらした紙のついた棒を取り出すと、 軽く振り上げた。 すると、さっきよりも眩い光が走り、あの少女に直撃した。 少女はさっきよりも強く地面に叩きつけられたようで、うめき声を上げている。 「帰りなさい。」 女性は毅然として言った。 「人に危害を加えるようなものに、容赦はしません。」 少女は忌々しげな顔をすると、翼を広げ、夜の空に消えていった。 しばらく訳が分からず、呆然としていると、 「駄目じゃないですか。早く帰って下さいって言ったのに。」 女性が声をかけてきた。 「え、ええと、その……、ど、どなたですか?!」 当然だが、僕はこんな奇抜で綺麗な人に見覚えが無い。 「……まぁ、仕方ないですね。この姿じゃあ。」 女性がそう言った次の瞬間、僕は信じられないものを見た。 不思議だとかいうのを通りこして、不自然だった。 目の前にいた女性が、まさに一瞬にして、 「ゆっくりりかいしてくださいね!!!」 ゆっくりさなえになったのだから。 「ええと、つまり、まとめると、……ゆっくりって人間になれるの?」 「人間ではないですね。」 ゆっくりの姿から、さっきの女性の姿に戻った……さなえでいいんだろうか? 「あくまでゆっくりです。それに、私以外の多くのゆっくりが、人間ではなくて、人間のような容姿の妖怪の姿 を取ります。『始祖返り』って言うんですよ。」 「はぁ……。」 「私達は、私達の生まれ故郷にいるすごい人や妖怪達が力を使った余波で生まれたんです。だから、普段の姿も、 この姿も、その人達の格好を真似してるんですよ。」 たしかに見直してみれば、変な髪飾りはゆっくりさなえがしているものと同じだった。 「あと、すべてのゆっくりがこんな風に姿を変えるわけじゃありません。年を経て、なおかつ自分のあるべき姿 に目覚めたゆっくりだけが、こんな姿になれることもある、ぐらいです。」 「じゃあ、かなこやすわこも?」 「いいえ。お二人はまだ私よりも若いですし……、なにより、ゆっくりがこうなれるというのは、幸せじゃああ りませんから、隠すゆっくりも多いんです。仮に出来るとしても、私には分かりかねます。」 ……というか、さなえってあの2頭より年上だったんだ。 僕の思考はかなり変な方向に飛びっぱなしだったが、ふと、ある大きな疑問が浮かんだ。 「……さっきの女の子はなんだったんだ……?」 さなえは答えなかった。 「あいつもゆっくりだったのか?長沢の奴を襲ったのも、あいつなのか?!」 「……おにいさん。このことは誰にも喋らないでくれますか?」 さなえは、真剣な顔で僕を見ていた。人間のときのさなえの顔は綺麗過ぎて――どこか恐くも感じた。 次の日。 長沢は何事もなかったかのように登校して来た。いつもの様に快濶に喋り、見事なまでに浮いていた。 本人はそれさえも楽しんでいる様な気もしたけれど。 「ちょっといいか、長沢。」 昼休み、僕は長沢を屋上に連れ出した。 周りはいよいよ告白だのなんだのと五月蠅かったが、僕はとにかく無視した。 「なんだよ、大江。」 屋上に着くと、長沢は不満気に尋ねた。 「……今日は、早く帰れよ。夜も出歩かない方がいい。」 長沢の顔が余計に機嫌悪く変わった。 「……お前はいつからあたしの親だか保護者になった?」 「大事な友達のつもりだけどね。」 僕が毅然と言い放つと、向こうも苦々しい顔をして、 「ああ、そうかい。じゃ、こっちの頼みも聞いてくれるか?」 と、言った。 「頼み?」 「あたしもお前も満足する、一挙両得なお願いさ。」 長沢がにやりと笑うのを見て、僕は無性に嫌な予感がした。 そして、下校の時間。 「……長沢。やっぱり勘弁してくれ。」 僕は本当に頭が痛い。というのも、 「勘弁も何も、な。」 「犯人捕まえるとか、無謀だとは思わないか?警察に任せればいいだろ?」 長沢が、犯人を自分で捕まえると意気込んでいたからだ。 「警察じゃ当てになんないんだよ、この場合。」 「いや、だったら余計僕らには無理だろ。」 「心配すんな。それこそびっくりするような助っ人がいるからさ。」 長沢は昼と同じくにやりと笑ったが、僕は凄まじい不安を抱えていた。 『先ほどの少女は、おそらく、ふらんが「始祖返り」したものでしょう。』 『ですが、いくら私達が本物に劣るとはいえ、「始祖返り」したのなら、先ほどのような「光の弾」を撃てない ものはまずいません。』 『と、なれば、不完全な形で「始祖返り」を果たしたゆっくりなのでしょう。故に、彼女の本物と同じく、吸血 することで、あの姿を保っているのです。』 『一体何のために……?』 『分かりません。ですが、放って置ける訳もありません。彼女がどうあれ、ゆっくりのこの性質が、このような 形で表沙汰になれば……あまりに不幸なことになります。』 『私や、私の知り合いのゆっくり達で何とかします。おにいさんは、このことを決して他言しないで下さい。』 「そんじゃま、今日の夜8時にな。」 「……。」 「おい、聞いてんのか、……大江!」 昨日さなえに言われたことを思い出していた僕は、長沢の言葉で我に返った。 「ご、ごめん……。」 「ったく。いいか、8時だぞ。……ってヤベ!、隠れろ!」 長沢はいきなりそう言うと、電柱の影に僕を引きずりこんで隠れた。 「な、何だよ!?」 「竹下のじーさんだ!見つかると厄介だぜ……。」 電柱からこっそり覗くと、確かに竹下の爺さんが歩いていた。何かを探しているようだった。 「別に僕らを探しているような雰囲気じゃなさそうだけど。」 「だから嫌なんだよ。あいつあたしを見つけたら難癖つけて説教するんだよ。」 長沢曰く、竹下の爺さんは、完全に男口調で話す長沢には大層ご立腹なようで、姿を見るたびガミガミ言ってく るらしい。 「女はもっとおしとやかにって……んな古臭いこと言うんじゃねぇっての。あたしの心は充分おしとやかぜ?」 僕としては、それは違うと思う。 「……どうやら行ったみたいだな。じゃ、頼んだぜ。」 「お、おい!」 長沢はさっさと帰ってしまった。 どこだ!どこに居るんだ?! 危ないじゃないか。お前はまだ子供なんだ。 昨日だって、夜遅くにボロボロになって帰ってきた。 何があったと言っても教えてくれない。 あいつと同じように、手遅れにはしたくないんだ。 だから、早く出てきてくれ……。 「塾で一般参加も出来る特別講習があるらしいから」という名目で家を抜け出してきた僕は、待ち合わせ場所で 長沢を待っていた。 長沢が襲われた通りから、少し離れた場所だ。 件の通りは、僕が近道に使う裏路地並みに人の気配の無い、寂れた通りだった。流石に不気味だから、夜ここを 通る人は、まずいない。 「あいつ……何でこんな所通っていったんだ……?」 僕がそんな独り言を呟いていると、 「お前にしちゃあ早いなぁ!!」 と、後ろから長沢の声がした。 「むしろいつも遅刻するのは長沢の方だろ。って、」 そう言いながら長沢の方を振り向くと、僕は言葉を失った。 「お、おにいさん……!!」 「うー?しりあいなのぉー?」 長沢と一緒に、あのさなえを抱えた体付きれみりゃが飛んでいたからだ。 「およ?知り合いなのか?」 長沢がさなえに尋ねる。 「うー。れみりゃはしらないんだどぉー!」 「そりゃお前も言ってたから知ってるって。聞いてんのはさなえの方。」 長沢はそう言うと、僕の方を向いた。 「で。知ってるのか?」 「あ、ああ。僕ん家の近くに住んでるゆっくりさなえだよ。……で、そのれみりゃは?」 僕が聞き返すと、長沢は大層うれしそうににやついて、 「驚くなよ。実はコイツがあたしを助けてくれたのさ。れみりゃ、見せてくれよ。」 「うー!らじゃー!!」 そう言ったれみりゃは一瞬にして、昨日のさなえと同じく、人の様な姿になった。もっとも、体付きのためか、 単により洗練された姿になった、という気もする。 「……あら。反応薄いわね。」 「変なこと言うからじゃないのか?」 「仕方ないじゃないの。にくまんのときはあんな調子なんだから。」 「……ちがいますよ。」 2人の掛け合いを遮って、さなえが言った。そして 「もう、見るのは二度目ですから、ね。」 人の姿になった。 「うわっ、お前もかよ!」 「あら、いいリアクション。」 僕と違って、長沢は大層驚いていた。 「じゃ、お前昨日襲われたのか?!」 長沢の言葉に、僕は頷く。 「それを、このさなえに助けてもらったんだよ。」 「へぇぇ。あたしの方は、襲われて直ぐにれみりゃに助けてもらったけど、血が足りなくて意識が朦朧としてた からな。れみりゃに『何も知らない、分からないと言いなさい』って言われたっきりだったんだよな。」 「仕方ないじゃない。」 「ま、助けてくれて連絡しに昨日来てくれただけでも良しとするぜ。」 そんな息の合った掛け合いをする2人を、さなえはじとりと睨んでいた。 「……何よ。」 「言ったじゃないですか、れみりゃさん。このことに人を巻き込むのはやめよう、って。」 「仕方ないじゃない。みきちゃん乗り気なんだし。異様な強引さがあるのよね、この人。」 「嬉しいぜ。」 照れる長沢。 「褒めてないと思うよ。」 突っ込む僕。 「ともかく、お2人を巻き込んでどうするつもりですか?いくら不完全な『始祖返り』だからって、単純な力だ けで見れば、人間にとっては脅威なんですよ?!」 「分かってるわよ。2人には囮として頑張ってもらうわ。」 まるで、当然のことのように言い放つれみりゃだったが、さなえは頭を抱えてしまった。 ……僕も、気持ちは分かるような気がした。 「ひとまず、2人にはあの路地を歩いてもらうわ。出来るだけゆっくりしていってね。私達の方は、ゆっくりに なって潜んでいるから。」 れみりゃはそう言って、 「うっうー!それじゃたのんだどぉー!」 と肉まんになった。 「……あまり賛成しかねますけど……お2人とも、もしふらんに出くわしたら……ぜんりょくでにげてください ね!!!」 さなえもゆっくりに戻った。 「そんじゃま、作戦開始ってところだな。ビビるなよ?」 長沢は酷く楽しそうだった。 「……はぁ。」 僕はため息しか出ない。何だか、さなえの苦労が分かる気がした。 僕と長沢は2人並んで歩いていた。囮を2人使う意味が良く分からないが、多分ノリだと思う。 あのれみりゃなら充分あり得る。 「なぁ、大江。高校、どうした?」 ふいに、長沢が声を掛けてきた。 「え?ああ、例の進学校。母さんや父さんも乗り気でさ。特に行きたい高校があるわけじゃないし、学力的にも 大丈夫らしいし、そこを第一志望にした。」 「……そうか。」 ……どうしたんだろうか。妙に元気が無い。 「すごいなー、お前。あたしじゃあそこは無理で、結局公立だしな。ホンット、頭いい奴って羨ましいぜ。」 「……褒めるなんて、どういう風の吹き回しだよ。」 「別に。あたしはあたし、お前はお前の道を行くだけだ。」 そう言って、長沢は黙りこくってしまう。 本当にどうしたんだ?さっきまでは犯人を捕まえてやろうって意気込んでたくせに。 今は、なんだか空回りをしてるようだった。 「それにしてもさー、お前、クリスマスはどうするよ。」 「え?ああ、普通に家で過ごすけど。」 「……ふーん。」 「長沢はどうするんだ?」 「あたしも暇だぜ。彼氏いないし、な。」 「まぁ、そうだろうね。色々難ありだし。」 「……大江もそうだろ。お前みたいな陰険な眼鏡に興味ある女なんてそうそう居ないし。おまけに、学力はいい けど馬鹿だし、頼りないし、友達少ないし……。」 「ちょ、ちょっと、いきなりどうしたんだよ。そんなに僕のこと嫌いか?」 長沢は、いきなり立ち止まった。 「お、おい、長沢!」 「だからさ!」 長沢は僕の方を見据えていた。 「あたしがクリスマスに、いや、ずっと一緒に居てやる。」 「え?」 僕の思考はしばらくの間、堂々巡りしていた。 こいつは一体何を言ってるんだ? こいつは自分が何を言ってるのか分かっているのか? そして、僕も。 そして、それを打ち破ったのは、最悪な予兆だった。 「……長沢。いいか。」 「な、なんだよ!?悪いかよ!」 「……顔赤らめてる場合じゃない。」 あのときの、気配だ。 前を見ると、あの時の少女が居た。 僕と長沢は、じりり、と後ずさる。 「走れ!!!」 そして、全力で逃げた。 「れみりゃ!!さなえ!!出番だぁ!!!」 長沢が大声を張り上げる。 だが。 来ない。 「ああ、もう、あいつら何してんだよ!!」 長沢が愚痴る。僕もまるで同じ気分だ。 必死になって逃げるが、相手は空を飛べるのだ。 直に追いつかれる。 「くそっ!死ぬほど恥ずかしい思いしたからって、まだ死にたくないってのに!!」 まったく、僕も同じ気分だ!! 翼の音が耳元まで迫る。なんであの2人、来ないんだ?! 「おいついた。こんどはにがさないよ。」 居ない。こんな時間まで何をしているんだ?! まさか、逃げ出したのか。 お前まで、俺の前から居なくなるのか。あいつと同じように。 頼む、俺が悪かった。もう叱ったりしない。プリンはいくつでも食べていい。 食べてすぐに寝てもいい。後片付けだってしなくていい。 ただ、俺の側で笑って居て欲しいんだ。 ……くそ、何だってこんな時にガタがくるんだ、この体は! 絶対、絶対に見つけるぞ。無くしてたまるか!手遅れになる前に、早く家に帰って、あの笑顔を―― 「倒れるような無理は、しない方がいいわ。」 ……誰だ、あんたは。 「さぁ。それより、お話があるんだけれど、聞いてくれる?」 うるさい。そんなことより、俺は―― 「ほらほら、無理しない。自分の体のことより、ふらんちゃんのことが大事?」 ……なんで、知ってる。 「お話があるって言ったでしょう?少しばかり、酷な話だけど。」 耳元で声が聞こえた途端、少女は光に弾き飛ばされ、影が少女を押さえつけていた。 長沢が急に止まったので、それにつられた僕はやっぱり前のめりに倒れた。 「ごめんなさいね。ちょっとばかり遅れて。」 少女を押さえつけながら、れみりゃは……あまり反省してなさそうな口ぶりでそう言った。 「その……少しお説教をくらってたんです。」 僕の前に降り立ったさなえはそう言うと、少女の前へと歩いていく。 「……じゃま、するな。」 「するに決まっているでしょう。貴方は自分が何をしているのか分かりますか?」 「おじいちゃんには、わたししかいないんだ!だから!!」 「だから、こんな体が欲しいのかしら?」 れみりゃがそう言うと同時に、少女の姿は消え、体の無いゆっくりふらんがいた。 れみりゃはため息をついた。 「まぁ、分からなくも無いわね。あんまんの、それも体付きじゃあないのなら、確かに世話なんて出来ないわね。 好きな人のために自分を高めたいと思うのは、悪いことじゃない。けど、そのために誰かを犠牲にするのは止め なさい。そんなことをして夜の姿を手に入れた所で、あなたのおじいさんは喜ぶと思う?」 「う、うう……。」 「そうよ。」 ふと、横の建物から声が聞こえた。 白い服を着た、紫の髪の女性がいた。 「あなたのおじいさんは、こんなにもあなたを大事にしてるのに。」 隣には、竹下の爺さんがいた。 「本当、だったのか。」 「ええ。」 爺さんはふらんの下に駆け寄った。 「ふらん!!お前は……!」 「う、うう……。ごめんなさい、おじいちゃん……。ふらんは、おじいちゃんをひとりぼっちにしたくなかった の……。ねたきりになっても、いっしょにいたかったの……。」 「ふらん……。」 竹下の爺さんは、ふらんを大切に抱きかかえると、僕らの方を見た。 「……お前ら、」 僕は、てっきり爺さんに因縁をつけられると思った。長沢も同じことを考えたらしく、舌戦の構えをみせたが― ― 「すまなかった!!!」 爺さんから出たのは、謝罪の言葉だった。 ……冷静に考えれば、自分の飼っているペットが人に危害を加えれば、普通は謝る。 まぁ、そうしない人の印象の方が強く感じる現代だけれど、――本来は、それが筋だ。 爺さんは僕たちに頭を下げると、長沢の方を向いた。 「特に、危険な状態になるまで血を吸われたお前には本当に申し訳なかったと思う。俺がいうのもおこがましい が、……許してくれないか。」 「いいさ。別に。」 長沢は、やけに素直だった。 「あたしは、あんたと違って根に持たないのさ。」 ……それが根に持ってるってことだと思うけど。 「すまん、ありがとう、ありがとう……!」 爺さんの方は感動してるから、いいのか。 「れみりゃ。」 先ほどの紫髪の女性がれみりゃに声を掛けた。 「なにかしら。お説教の続き?」 「ええ。勝手に人を巻き込むのはやめなさい。こういうのはえーきさまのお仕事なんだけど、まぁ、いいでしょう。ゆっくりなんだし。」 「これからはもう止めてくださいよ、れみりゃさん……。」 さなえは泣きそうな顔をしている。 「乗った私が言えることじゃないかも知れませんけど、酔狂なことはやめて下さい……。」 「……分かったわよ。」 れみりゃはそう言うと、翼を広げた。 「もうおじ……私のおにいさんが残業から帰ってくる時間だから、失礼するわね。」 「まぁ、言いたいことは無いし、えーきさまでもないからもういいわよ。さなえも、ね。」 「じゃ、そういうことで。」 れみりゃはそう言って夜空へ消えていった。 「私も、すわこさまやかなこさまが心配するといけないので、これで。」 さなえも、同じように飛んでいってしまった。 紫髪の女性は、僕と長沢の方を向くと、 「大変だったわね。あのふらん、どうしても体を持ちたかったらしくて、あんなことをしたみたいなのよ。」 そう言って、ふらんを抱いている竹下の爺さんを見た。 「あのおじいさん、ガンなんだそうよ。」 「え?」 意外だった。とてもそうは見えない。 「まだ初期の段階で、直る見込みはあるんだけどね。入院に必要な費用もあるそうだし。……けど、 ふらんを家に置いて入院したくはないそうよ。」 「……家族に預けりゃいいんじゃないか?でなきゃ親戚とか。」 長沢がそう言うと、紫髪の女性は首を横に振る。 「親戚からは断られたそうよ。それに、あの人……奥さんとお子さんを事故で亡くされたそうよ。だから、あの ふらんを大事にしている。」 紫髪の女性は長沢を見つめる。 「改めていうけど、だから、本当に許してくれるかしら?」 「そこまでいわれちゃあ、なぁ。一層文句つけようがないぜ?」 長沢はそう言って、僕を見た。 「女に怪我させられた彼氏としてはどう思うよ、大江。」 「か、彼氏!?」 「なんかもう、それでいいだろ。あんなこと言っちゃたし。で、どうなんだ?」 そう言われても……。 「いや……別に、長沢がいいなら、いいんじゃないか?」 そう言うしかない。 「じゃ、この話はお開きだ。もう9時だし、帰って風呂入って寝よう。」 長沢はそう言って、1人でさっさと帰っていってしまった。 「……勝手だなぁ、あいつ。」 僕がそう言うと、あの女性は 「ふふふ、恥ずかしいのよ。あの子、なんでこの道を通ってたか知ってる?」 と言って、僕を見た。 「え?……さぁ?」 「ここを抜けると、百円ショップがあるの。そこでマフラーの材料を買ってたんですって。」 ……あいつ、どこまでもケチだな……。 「でも、どうしてあなたはそんなことを……?」 大方、この人もゆっくりなんだろうが、どうしてそんなことまで知ってるのか。 「ふふふ……それはね。」 女性の姿が変わった。 「わたくし、れんあいそうだんにもうけたまわっております……ふふふ。」 例のチ□ルチョコがある、駄菓子屋のマスコット。白石さんがそこにいた。 数日語。僕はあの駄菓子屋を訪れていた。 冷蔵ケースをスライドさせると、そこに白石さんがいた。 「ゆっくりしていってね。……所で、べんちでゆっくりしたいんだけどいいかしら。」 「うん。」 「竹下のおじいさんは、」 ベンチに下ろすために抱えた僕の腕の中で、白石さんは言った。 「ろうじんほーむにはいるそうよ。」 「……そう。」 なんとなく、少し寂しい気もした。あの人のお説教をくらうことも、もうないのか。 「すこしさびしいわね。そうおもわない?あのひとには、もうふらんしかのこっていなかったのよ。」 子供さんが病気で亡くなってから、爺さんはだんだんと偏屈になり、子供が憎くなっていったらしい。 何故、自分の息子が、あそこで遊びまわっているクソガキどもと一緒に居られないのか、と。 そんな爺さんは、次第に親戚中から煙たがれていったらしい。 「けど、あのふらんも、おなじほーむに、ゆっくりせらぴーとしてつとめるそうよ。」 「ゆっくりセラピー?」 「びょうきのひとやおじいさんおばあさんを、なごませてげんきにさせるゆっくりのこと。」 「ふーん……。」 あの時の、無邪気で恐ろしい顔が浮かんだが、僕には、何だかしっくりくるような気もした。 「ねはわるいこじゃないわ。きっとうまくやってける。」 僕はベンチに白石さんを乗せると、隣りに座った。 それから何を話すわけでもなく、それこそゆっくりしていたのだけれど、ふいに白石さんが呟いた。 「『現代ほど、老人にとって孤独な時代は、なかったかもしれない』」 「……?なに、それ。」 「なんでもないわ。もうよんじゅうねんもまえのことばよ……。」 雪がちらつく。 「おいる、ってけっこうつらいものね。いろんなものをうしなっていく。だんだんと。」 「……けど、さ。」 僕は、訳もなく呟く。 「けどさ、爺さんには、ふらんが居る。ああまでして、一緒に居てくれようとしたふらんが。だから、爺さんは 辛くても、楽しい人生を送っていけると思う。」 「ふふ。そうね。」 白石さんはいつもの澄したような顔でそう言うと、体を付けた。 ……どういう原理なんだろうか、これ。 僕がそう思っていると、白石さんはいきなり、 「しょうねん。じんせいのはかばへのしょうたいじょう、うけとれるかしら。」 と言い出して、前を指差した。 その先には、 「……おう。」 やけに顔を赤くした、長沢がいた。 「ゆっくりしていってね!」 ……変な編み物をまとったまりさを抱きかかえて。 「すまん。マフラー無理だった。」 長沢は俯いた。 「だろうね。」 期待はしてなかった。この結果は予想出来たよ。 長沢は俯いたまま、僕の目の前まで歩いてきた。 ひどく緊張してるのが分かった。足と手を同時に出して歩いてたし。 そして、空を仰ぐと、まるで最後通告かのように、こう言った。 「だから、さ。プレゼントはあたしで我慢してくれ。」 「……よく、そんな恥ずかしいこと言えるな。」 「いいだろ。別に。」 「それに、あじはほしょうするよ!!!」 『なんのだ。』 僕と長沢は顔を見合わせた。 「きがあうわね。」 白石さんが茶化す。 「まさかえっちなことかんがえた?それはいけないとおもうよ!!!」 まりさは、小馬鹿にしたような顔で僕に言った。 「じゃあ、何なんだよ、まりさ。」 僕が聞くと、まりさは得意げに、 「けーきだよ!!!みきちゃんがつくったけーき!!!」 「うわっ、馬鹿!言うなって!!」 顔が赤いままの長沢はそう言うと、恥ずかしそうに僕を見た。 ……なんだ、この乙女全開の長沢は。UMAか何かだろうか。 そんな考えが顔に出ていたのか、長沢はぶすっとした口ぶりで、 「……悪いかよ。」 と呟く。 「……まぁ、仕方ないんじゃないかな。うん。」 「どういう意味だよ。」 だって今日は、クリスマスだから。 #もう、ごめんなさいしか言えない。 #タイトルの元ネタは円谷プロの傑作特撮テレビドラマ、「怪奇大作戦」第7話「青い血の女」より。 正直面影全然無いorz あまずっぱくていいですーー!!♪ なんかどきどきしてきちゃいましたよー?これってなんだろ?だろ!? 兎にも角にも良い作品です。ありがとうございます。 -- ゆっけの人 (2009-01-03 18 18 26) 名前 コメント
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7 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/04/29(火) 12 16 51.68 ID Xjcrb9Px0 [2/2] 新スレ開始のプチ報告しまっせ 某有名ファンタジーでPL募集をネットでかけてGMやった時の事 PLの一人が困った人だった 殺人鬼や人間の敵をやりたい、と最初に言い出して それはやめてくれと言ったら、不可ならば酒場のマスターをやる、と言い出した 冒険出れないしシナリオはどうするんですかと聞いたら、じゃあ舞台を街にして関係するのを酒場関連にすれば良いだけじゃないですかと それはできないと答えると、不可なら何が良いの?と聞かれたので、普通に冒険者やってくれと言ったんだ そしたら見下したように、なんだ結局GMの理想のパーティー像の押し付けですか、なんて言い出した さらに以下の主張をぺらぺらすらすらと言い出した GMの理想のパーティーの脳内当て(意訳ではなく本当に脳内当てと言った)なんて疲れるだけなのにねぇ じゃあ僕サンプルの経歴のキャラで良いですわ 何?サンプルのキャラも過去設定もできてない? 怠慢すぎるんじゃないの何やってるの?GMですよね? 脳内のりそうのぱーてぃーがあるんだったら当然準備してるんじゃないですかね? 普通のパーティーなら良かった?じゃあ普通って何ですか? 僕の周りの人だったら、普通に最初の要望満たせるし、そうでない場合は普通にキャラの過去設定用意してありますけどね? 僕の見立てだと君は吟遊だけど片手落ちの吟遊GMですね 僕の言う普通と君の言う普通がここまで乖離してるんだから君の感覚は当てにできませんね で、当然用意してるんでしょ?台本下さいよ台本 GMのりそうのぱーてぃーを演じてあげますからさ この辺で俺が切れてお開きにしたのでセッションやったらどうなってたかは知らない ただ何でこんな、初対面の人間にぺらぺらすらすらと攻撃的に言葉を浴びせられるんだろうと疑問はあった 8 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/04/29(火) 12 37 28.67 ID kaRD0/sl0 [1/2] どこがプチなんですかね・・・ まあ、それはともかくそいつをさっさと叩き出すべきだったな 他のPLには何の罪もないんだから、じゃあ参加しなくていいですってバッサリ切って残った人とやるべきだった 第三者から見れば、お前さんも困と争った上でキレて勝手にセッション流した奴に見られかねない 9 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/04/29(火) 13 06 35.20 ID dxhqYBTn0 いや、これは乙 開始早々の報告はプチじゃない、の法則が発動してしまったか・・・・ 8 それは言いすぎだろう これだけ煽られてGMをマトモにやれるのは凄いとは思うが やる気を無くしてもしょうがないと思うよ そこまでGMに責任求めてるお客様PLはちょっといただけないな 10 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/04/29(火) 13 06 48.81 ID o5yrwrRdI 最近の創作キーワードは「ネットで入ってきたPL」だな 11 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/04/29(火) 13 19 31.78 ID pwg8Zrxz0 困は困なんだけどこれ募集内容どうなってたの? オンセは妙に馴れ馴れしい奴や上から目線のが居るから遊んだこともない人には注意必須 12 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/04/29(火) 13 38 36.90 ID w0LF9NTg0 [1/2] またのっけから重いのきたなあw おつかれおつかれ。 まあ、岡目八目ですまないが、ひょっとしたら普通に殺人鬼でもなんでも通常のレギュレーションで作らせておいて、 開始直後に「ではPCの皆さんが、路地裏から絹を裂くような悲鳴を聞いた所からスタートです。駆け付けます? ・・・では路地裏に、負傷した衛兵が何人か、倒れてうめき声を上げています その中心には、美少女に武器を突きつけた困さんのPCがいますね。」 みたいな展開にして、さっさと開始5分で死んで貰えばよかったかもw 13 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/04/29(火) 13 50 43.52 ID v09S+rCN0 [1/2] 乙でした >酒場のマスターをやる、と言い出した 「じゃあ君たちは酒場を出て壇上に向かった。あ、キミ(困)の出番は終わったよお疲れ様」 って言われたらどうする気なんだろうなこいつ というか >じゃあ舞台を街にして関係するのを酒場関連にすれば良いだけじゃないですか 対応も何もなんで一人の我儘に全員をつきあわせなきゃならんのだ 他人を吟遊とののしる割には自分に合わせろっていう我儘気質と言うか、ぶっちゃけ言ってる本人が吟遊気質だよねこいつ なんか困な奴ほど気にくわない相手にすぐ「吟遊ダー」「あれあれ、困スレに報告しますよ^^」って言いだすのはなんでだろうな 先に相手にレッテル張っておけば自分は無罪放免とでも思ってるんだろうか 14 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/04/29(火) 13 56 00.67 ID v09S+rCN0 [2/2] 壇上ってなんだ壇上ってダンジョンだよ あと追記 困な奴ほど~の部分は ※ただし「根拠もなく」または「無理やりな屁理屈」を元にした場合に限る、他者から見ても駄目だわこれって場合は除く をつけてください… 15 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/04/29(火) 14 03 42.70 ID 8hEQBFB90 7 13 交渉のテクニックに「まず無茶な選択肢を出しておいて、もう少しマシな選択(本命)を相手に選ばせる」ってのがあるから それ狙って失敗した挙句に腹いせで因縁つけたんじゃないかなーって思うわ さっさと蹴りだして他の面子相手に続きを始めても良かったと思うけど もし残りもその困に同意orただ傍観するだけなら、セッション開催前にやめたのは正解だったかもしれんね 16 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/04/29(火) 14 20 25.31 ID tQoy3R740 7 報告乙。 まぁ、何だ。キニスンナ GMもPLも同じ参加者なんだし、素人が失敗するのを含めての コンベンションじゃないか。わがままはスルーでいいと思うよ。 13 7の困PLみたいなのだと、 GM「酒場のシーンは今後予定無いから」 困「俺が酒場のマスターだからってのけものにしようとしてるんだむぎゃおー」 って言い出すと思うぞ? 20 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/04/29(火) 15 24 18.13 ID kaRD0/sl0 [2/2] 9 すまん、どう考えても悪いのは困一人なんだが、そう見られるかもしれないから気を付けた方がいいなって言いたかった にしても、他のPLがどういう反応したのかは確かに気になるな 15の言うとおり、何も言わずに成り行きを見守ってただけなら解散したのは賢明か スレ381
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いいねがほしいっていうきょく【登録タグ Relu VOCALOID い 曲 鏡音レン】 作詞:Relu 作曲:Relu 編曲:Relu 唄:鏡音レン 曲紹介 Reluです。今回マクドは奢りません。 奢らんけどでもTwitterフォローもマイリスもして欲しい。 歌詞 (PIAPROより転載) いいねが欲しい!いいねが欲しい! なんでもいいからいいねくれ 唄歌ったらいいね欲しい はい! 顔面上げたらいいね欲しい はい! イラスト描いたらいいね欲しい でも全然いいね つかへんやんか… なんでなんでなんでなんでなん? そのいいねで僕救われるんやけど なんでなんでなんでなんでなん? 別に減らんからええやんけ! 数字なんか気にしてないよ はマジでウソ 正直気になるとかいうレベルじゃない それしか頭にないないないない 人命救助やと思っていいねください ほんまに頼むわ お願いや 出来るだけいいねして フォローして 拡散して! コメント 名前 コメント
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仕事終わって家に帰って玄関を開けたら 「ゆっ!」 って自分が帰宅したことに気づいたゆっくりが急いで玄関までやってきて 「ゆっくりしていってね!!」 なんて円満の笑みで言われてみたいです。 んで抱っこしてあげると、 「だっこ! ゆっくりだっこしていってね!!」 なんて言うからもう辛抱たまらん訳で。 ま、悲しい妄想なんです。 名前 コメント