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< 【back】 【next】 > 2/3日(土)「かみあわない話」先輩が話を勘違いする話 恋と鯉SS 「お、稔! ちょうど良かった聞いてくれよ!」 街で毒男と鉢合わせした。 「こないださあ。気になってたコに告白してOKもらってやっと彼女が出来たんだよ。ところが……」 俺が挨拶する間も無く勝手に話し始める。 「さっそくそのコを呼んで俺の部屋に上げたら、なぜか手の平返したように俺のこと変態呼ばわりして逃げてったんだよぉ! 頑張って引きとめようとしたんだけど結局パーで叩かれてそれっきり。なあ稔、どうしてか分かるか……?」 「告白されてすぐ男の部屋に来いって言われたら引くんじゃないか? 普通……」 「いや、上がるとこまでは向こうもOKしてくれたんだ。家にカーチャンもいたし。なのにだぜ? 女ってホント意味不明だよな」 「変態って言われたんだからセクハラしたとか? それかいきなりキスとか関係を迫ったとか」 「稔、お前なぁ。いくら俺でもそんなことするわけねえだろ。とにかく一度台所に行ってお茶いれて戻ってきたら一発ビンタかまされて出てったんだ」 「う~ん……」 それだけだと何がダメなのか判断出来ない。 「やっぱわかんねーか」 「すまん」 「いやわかんねーならいいんだ」 「わからないことと言えばだけど、毒男。何で制服なんだ?」 実際毒男の悩みより休日に制服姿でいることの方が気になってしまう。 「お前が休みの日に学校に用事があるとか今まで聞いたことないんだけど」 「稔、お前は今まで食べたパンの枚数じゃなくて……今まで俺の私服を見た回数を覚えているのか?」 もちろん覚えてない。 「いや覚えてない」 「じゃあ制服以外でいるところを一度でも見たことは?」 「それもないけど……あ!」 「そういうことだ。やっと気付いたか」 こいつは常日頃からどんなときでも制服だ。 長い付き合いなのになぜか今になってようやく気付いた。 「でもなんでだ?」 「そりゃもちろんこれしか持ってねえからに決まってんだろ。制服一張羅は男の基本にして最高のファッションだぜ」 「いやそれはおかしいだろ」 「全然おかしくねえよ。ジョルジュも制服しか持ってないぜ? 遠い親戚のアキラおにいさんも。お前みたいに学生で着替え分けてる男のほうが特殊なんだ」 「言われて見れば、子供の頃から学校の男子の私服だけはほとんど見たことがないような気が……」 それを否定しようと記憶を引っ張り出しているうちに、こことは常識が違う良く似た異世界に迷い込んでしまったような感じがして嫌な気持ちになる。 頭を振って考えないようにした。 きっと毒男の冗談だろう。 「それより稔、こないだ返してもらった本だけど。あんまり気に入らなかったか?」 「ん? あ……アレか。いや、そうじゃないけど。やっぱり俺にはいいや」 「そういうなよ。まだまだ俺の秘蔵のエロ本はたっぷりあるぞ! ちょうどカバンの中に新しいのが何冊かあるからぜひ持っていってくれ!」 「おいやめろ毒男! こんなところで見せびらかすな!」 エロ本を押し付けてくる毒男ともみ合いになる。 男として興味はあるけど人目を気にせずがっつくほどじゃない。 「まあまあそう遠慮するな。代わりなら家に帰れば部屋にいくらでもあるんだから。って、あそこに居るのは昨日逃げられた俺の彼女! おーい!」 毒男は少し遠くで歩いている後姿の女の子に駆け寄る。 振り返った途端、女の子は毒男に平手打ちを食らわした。 尻餅を着いて倒れた毒男の周りにエロ本が散らばる。 「しょうこりもなくまたこんな物見せびらかすなんて……! 変態! 変態! 変態! 変態! 変態!」 女の子は毒男を見下ろしながらひとしきり罵倒すると走り去った。 「いたたたた……なあ稔、俺ってそんなに変態か?」 「道を歩いてて突然そんな物見せられたらそう思われるよ」 「今のは確かにエロ本持ったままなの忘れてた俺の不注意だけど。でも昨日はそんなことしてないんだけどなぁ」 「毒男、もしかして本の隠し場所はベッドの下と引き出しか?」 「あ、ああ。他にも色々なとこに隠してあるけど」 「じゃあ多分それが見つかったのかな。それか直し忘れて目に付く場所に置いてあったか。“またこんな物見せびらかすなんて”って言ってたし」 「そうかぁ……」 と毒男はぶつぶつ言いながらカバンの中に拾い集めた本をしまう。 「こんにちは。お二人とも」 振り返ると先輩がいた。 「あ、先輩」 こんにちは。と挨拶を返す。 「うう……」 「どうしたの? 毒男くん?」 「あ、先輩。なんか逃げるものって追いかけたくなりますよね……」 「どうかな? ところで毒男くんは何に逃げられたの?」 「恋……」 「鯉ねぇ……。釣り上げるのに失敗したのね」 「釣り上げるというより囲い込んで(部屋に上げて)おくのに失敗しました……」 「……いけすにいたのがはねて逃げたの?」 「むしろ強行突破されました……」 「(鯉を飼うのも)大変ねぇ」 「(部屋に上げるのも)大変ですよぉ……」 会話が噛み合っていないが、それに気付いているのは俺だけだった。 「それじゃ稔、先輩。失礼します……」 「うん、またね」 「またな。そんなに落ち込んでないで元気出せよ」 よろよろと毒男は歩いていった。 「さてと、稔くんはこれからどうするの?」 「あ、俺ですか? とりあえずスーパーで買い物です」 「んー、じゃあせっかくだしあたしと一緒に行こっか。同じところで買い物みたいだし」 「いいですよ。それじゃ行きましょうか」 そして買い物を終えて別れるまで、先輩とたわいもない世間話をして過ごした。 < 【back】 【next】 >
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【鏡音リン】 刹那だなんて言えない (オリジナル) 【Act.2】 曲名:刹那だなんて言えない 作詞:サ骨 作曲:サ骨 編曲:サ骨 唄:鏡音リン 歌詞: 鳴いたカナリヤは籠の中 鈍く曇った空を見上げ 目の前の現実でさえも 夢か何かと疑っていた 翼を無くしきれない僕はまだ それに憧れてそして逃げていた 消したい過去には戻れず ただ思い出しては顔を赤らめて 刹那の時などと書いた 数学のノート数式の隅に 今はもう思い出の隅に 青い記憶として遺され 若いというエネルギーが そう ひどくもどかしく懐かしい 翼が折れなくなった僕はもう 窓の外の光が眩しすぎて 輝きながら手探りで やんちゃができたあの時代(とき)はもう何処 暗い過去を持つ設定を 自慢げに描いたわら半紙の裏 消したい過去には戻れず ただ思い出しては顔を赤らめて 刹那の時などと書いた 数学のノート数式の隅に
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憂「お姉ちゃん!会いに来たよ!」 唯「えっ?」 憂「えへへ。今日もね、どーしてもお姉ちゃんに会いたくなっちゃったの。突然来ちゃってごめんね?」 唯「わわっ! ダメだよういー!」 憂「へ? 何でダメなの? せっかく会いに来たのに」 唯「明日も学校あるんじゃないの!? 早く帰ってちゃんと朝に起きなきゃダメなのにー!」アワワッ! 憂「わ……分かったよ、お姉ちゃん」 唯「ばいばい、憂」 憂「うん。お姉ちゃん、またね」 … 憂「お姉ちゃん、会いに来たよ!」 唯「えー……また……?」 憂「ご、ごめんね。でも会いたかったから……」 唯「ねぇ、憂は三年生になってから軽音部に入ったんだよね?」 憂「うん」 唯「そろそろ、文化祭の時期じゃなかったっけ?」 憂「……」 憂「さぁ?」 唯「……むむむ。てごわい」 唯「こんな事してる場合じゃないよ、絶対にさ」 憂「『こんな事』って?」 唯「毎日毎日、用事もないのに私に会いに来ることっ」 憂「用事はあるよ?」 唯「へ? そなの? なにかあった?」 憂「お姉ちゃんとこうしてお話するのがね、私にとって何よりも大事な用事なの」 唯「何よりも?」 憂「うん」 唯「ほんとーに……?」ジトー… 憂「うんっ!」ニッコリ 唯「……うぅ、なんて明るい笑顔」クラリ 憂「お姉ちゃんに褒められると、やっぱりうれしいなっ」 唯「私も憂とお話出来るのはうれしーけど……でもね、やっぱりダメっ! こんな風に毎日毎日会うのなんておかしいよ。だって、私はもう……」 憂「……ダメ?」 唯「ダメだよっ」 憂「どうして?」 唯「ダメだから、ダメなのっ」 憂「……お姉ちゃん、怒ってる?」 唯「怒ってないよ。怒ってないけど、帰ってよー……ねっ?」 憂「うーん……。良く分からないけど、今日は帰るね」 唯「明日も来ちゃダメだよっ。ダメだからねっ!」 唯「だから、ばいばい、憂」 憂「……またね、お姉ちゃん」…ボソリ … 憂「だーれだ」めかくし! 唯「……うーいー?」 憂「正解だよ、お姉ちゃん!」 唯「来ちゃダメって言ったのにー。憂は私よりお利口さんだったはずでしょ?」 憂「『明日も来ちゃダメ』って言われたから1日置いたよ?」キョトン 唯「うひゃー……そう来ちゃったのかぁー……憂は頭が良いね!」 憂「そうかなー?」エヘヘ/// 唯「とんちが利いてて、いっきゅーさんみたい。今の憂は憂っきゅーさんだよ!」 憂「うふふ。ありがとー、お姉ちゃん!」 唯「でも、ちゃんと帰らなきゃダメだかねっ! あと、絶対また来たら『めっ!』だからねっ!」 憂「明日は?」 唯「明日もっ」 憂「明後日は?」 唯「ずーっとダメっ!」 憂「……うぅ」 唯「じゃあね。ばいばい、憂」 憂「分かったよぉ……」 憂(……またね、お姉ちゃん) … 憂「お姉ちゃん!会いに来たよ!」 唯「……」 憂「あれ? お姉ちゃん?」 唯「……今日はどんなとんち?」 憂「えーと……」 唯「……」 憂「うーんと……」 唯「……」 憂「……ごめんね。一旦帰って考えて来る」 唯「思い付くまで来ちゃダメだよ」 憂「うーん……」 唯「出来れば思い付かないでね?」 憂「ひどいよ、お姉ちゃん……」 唯「ひどくないよ。ばいばい、憂」 憂「うん。またね、お姉ちゃん」 … 憂「お姉ちゃん!会いに来たよ!」 唯「えーー……何か思い付いちゃったの?」 憂「ううん」 唯「え?」 憂「ん?」 唯「……うん?」 憂「うん」 唯「……」 憂「……?」ニコニコ 唯「ね、ねぇ……どーいうこと?」 憂「何にも思い付けなかったけど来ちゃった」 唯「憂のウソつき。約束を破るのは、すっごくすっごく悪いことなんだからねっ!」めっ! 憂「……お姉ちゃん、成長したね」 唯「へ? せーちょう? してないし、そんなの出来ないよぉ」 憂「出来てるよー。だって、まさかお姉ちゃんに注意される日が来るなんて思ってなかったもん!」ニコニコ 唯「むぅ。失礼な」 唯「とにかく帰ってよ、憂」 憂「はぁい……」 唯「ばいばい、憂」 憂「うん! またね、お姉ちゃん!」 … 憂「お姉ちゃん!会いに来たよ!」 唯「もうっ、憂! いい加減にしてよっ!」プンプン-3 憂「お、お姉ちゃん……?」 唯「さすがに私も怒るよ!?」プンスカ!-3 憂「おねーちゃん……」…ウルッ 唯「うぅ……な、泣いてもだめーっ!」 憂「お姉ちゃん、私のこと嫌いになっちゃったの……?」グスグス 唯「嫌いじゃないもんっ。……大好きだもん」ムゥ… 憂「じゃあ、どうして私が会いに来たら怒るの?」 唯「だって、憂には憂の生活があるでしょ?」 唯「毎日学校だってあるし、あずにゃんや純ちゃんと部活だって始めるんじゃないの?」 唯「だからさ、こっちに何度も何度も来ちゃダメなんだよ。分かってよ、うい……」 憂「……」 唯「……うい?」 憂「………ない……もん」 唯「うい……?」 憂「お姉ちゃんの居ない生活なんて、いらないもん」 憂「お姉ちゃんの為にお掃除してお洗濯して、美味しいご飯作りたいんだもん……」ポロポロ 唯「……私だって、憂のご飯食べたいよ」 憂「おねーちゃん……!」 唯「でも、無理。無理なんだよ? 分かるでしょ。こんなの、すっごく無駄だって」 憂「……お姉ちゃんのいじわる」 唯「……。……帰ってよ、憂」 憂「……」…コクリ 唯「ばいばい、憂」 憂「またね、お姉ちゃん」 … 憂「お姉ちゃん!会いに来たよ!」 唯「……」ジトー… 憂「へへへ……来ちゃった///」 唯「照れても許さないよっ」 憂「……うぅ」…ウルッ 唯「泣いても無駄だからねっ」 憂「むすー……っ」 唯「拗ねても効かないもんっ」 憂「お姉ちゃん、だいすきー」ニコニコ 唯「むむっ。良い笑顔」たじろぎ! 憂「……!」パァァッ! 唯「でもダメ」 憂「……」…ションボリ 唯「しょ、しょげたって、ダメだもん」 憂「お姉ちゃん、どうしちゃったの? 最近のお姉ちゃん……おかしいよ……」 唯「……」 唯「……憂も知ってるくせに」 憂「知らない。私、なんにも分かんないもん」 唯「憂、子供みたいなこと言わないでよー……」 憂「子供だもん。私、お姉ちゃんと一緒に居られるならずっとずっと子供で良い」 唯「そーゆーわけには行かないんだよ、憂」 憂「知らない、知らないっ! 知りたくないっ!」 唯「憂はもう知ってるよ。自分が本当はどうするべきかも」 憂「……わかんないよ、おねぇちゃん」 唯「そんなはずないよ。憂は賢い子だから。憂はね……憂は、私の自慢の妹だから」 憂「……」 唯「……憂、ばいばい」 憂「またね、おねぇちゃん」 唯「…………うい」 … 憂「お姉ちゃん!また来たよ!」 唯「~♪ ~♪」ジャカジャカジャッジャッ 憂(……あ) 憂(おねぇちゃん、ギー太弾いてる) 憂(あんなに夢中になって……ふふっ) 憂(ゴロゴロしてるお姉ちゃんは可愛いけど、ギー太弾いてるお姉ちゃんはね、すっごく格好良いよ) 唯「~♪ ~……むむっ。やっぱりここは難しいなぁ」ポリポリ 憂「おねーちゃんっ」 唯「わわわっ。……憂? いつから居たの?」 憂「さっきから、ずーっと居たよ」 憂(弾くのに一生懸命すぎて私の事も気づいてなかったんだ) 憂(そんなお姉ちゃんも……かわいいなぁ) 唯「ねぇ、憂。もうそろそろ……」 憂「弾いて」 唯「へっ?」 憂「お姉ちゃんの演奏してる姿。もっともっと見たいよ」 唯「で、でもね、憂……」 憂「…………見たかったのに、なぁ」 唯「んー……分かったよ。弾くよ。私も、弾きたかったから」 憂「ほんと!? やったぁ!」 唯「……」 唯「……」ジャン ジャン ジャンジャジャンッ 唯「……」…。…。 唯「……あぁ。ちょっと、つかれちゃった」 憂「すごいっ! お姉ちゃん、前よりもずっとずっと上手くなってる気がするよっ!」 唯「そ、そうかなぁ?」 憂「うんっ。私、びっくりしちゃったよ!」 唯「……そう、だと良いなぁ」 憂「……? ……変なお姉ちゃん」 憂「それにしても、大学生はいいなぁ。毎日楽しそうだもん」 唯「私、楽しそう……かな?」 憂「うんっ」ニコッ 唯「……あはは。そっか……うん……」 憂「そういえば、お姉ちゃん。他の皆さんは?」 唯「……」 憂「あれ? お姉ちゃん?」 憂「ほら、軽音部の皆。一緒の大学でまだバンドしてるんでしょ?」 唯「うーん……活動休止、してるみたい」 憂「みたいって……」 唯「色々あったからね。……でも、一旦休止してるだけだよ」 唯「またいつか、一緒に演奏できるよ。絶対に」 憂「いつか? いつかって?」 唯「明日かも知れないし、何年も何十年も……もしかしたら、百年も後かもね」 唯「私、神様じゃないから分かんないや」 憂「百年後って、さすがに皆死んでるよー」クスクス 唯「分かんないよ? ほらさ、最近は医学の進歩が凄いとか、なんとか」 憂「私も詳しく知らないけど、そうらしいね」 唯「……みんな、長生きできれば良いなぁ」ポツリ 憂「お姉ちゃんもねっ」 唯「……憂も、ね」 憂「だけど、こんな場所で一人でギター弾くの、さみしくないの?」 唯「……さみしい、よ」 憂「あはは。やっぱり」 憂「それならお姉ちゃん。無理矢理でも良いから、皆誘ってまた演奏すれば良いのに。……私、また聴きたいよ。放課後ティータイムの演奏」 唯「うーん……でもね、私は気長に待ちたいなぁ」 唯「みんなに会うまでに沢山練習して、すごく上手くなって、みんなをびっくりさせたいや」フンス! 憂「お姉ちゃんらしいね」 唯「そっかなぁ?」 憂「うん。そうだよ」 唯「……えへへ。良かった」…ヘラッ … …… ……… 憂「……でね、梓ちゃんったらおかしいの。『憂ったら、どうしたのー』って」 憂「そんなの、こっちのセリフだよね。ねぇ、お姉ちゃん」 唯「……そーだね」 憂「……? お姉ちゃん、元気ないよ?」 唯「……私、元気だよ。大丈夫、大丈夫」 唯「憂こそ、元気出してよ。……お願いだから」 憂「え?」 憂「私は元気だよ?」キョトン 憂「お姉ちゃんと一緒に居られたらね、私は、何があったって元気でいられるの」 唯「……憂。今日こそちゃんと帰ってね。必ずだからね」 唯「ばいばい、憂」 憂「……」 憂「……またね」エヘヘ 2
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最近、都内で噂になっている怪談話がある。 これは、被害者であるれいむさんの話を筆者が徹夜明けに酒に溺れながら書いたものである。 アルコール臭いので20歳以下の子供は見てはいけません。 「ゆっくりついたよ!」 夜もどっぷりとふけた頃。仕事帰りのれいむさんが自宅のあるマンションに帰ってきました。 れいむはペコペコのお腹を満たすために、急いで自宅へ戻ろうとしました。 「ゆっくりあけてね!」 マンションの入口にはゆっくりセンサーがあります。そのセンサーの前で数秒ほどゆっくりすると マンションの玄関が開きました。 「ゆっくりおりてきてね!」 ゆっくりではなくやたら早くエレベーターが下りてきました。 れいむは急いでエレベーターに乗り込むと、7階のボタンを押しました。 「ゆっゆっゆ~♪」 れいむは歌を歌いながらエレベーターでゆっくりしています。 今日の夕ごはんは何にしようか。面倒だから冷凍チャーハンにするか。 それとも桃にするか。どうせ明日は休みだからそのままゆっくり寝るか。 そんな事を考えていると、何かが横を通り過ぎたような気がした。 最初は気のせいだと思いましたが 「おお、おそいおそい。」 どうやら気のせいではないらしい。 「だれなの? ゆっくりしていってよー!」 姿の見せない相手に敵意を向けるれいむ。 しかし、相手は一向に姿を見せようとしない。 流石のれいむも堪忍袋の尾がキレた。3秒ぐらいで 「ぷくぅううううううう!!!」 れいむは怒りを表すために思いっきり膨らんだ。2mぐらい。 しかしそれでも声の主は現れない。 あまつさえ 「・・・ふぅ。」 などと余裕しゃくしゃくだ。 と、その時、 チーンという音とともに、エレベーターが止まった。 同時に目の前のドアが開く。 「ゆ! もうれいむはかえるよ! ついてこないでね!」 れいむはプンプンと口にしながらエレベーターを出ました。 れいむはエレベーターを出てから顔にみょんな違和感を感じました。 余りにゆっくりできない違和感だったために、思わず近くのガラスを見てみた。 そこに映っているのは 顔中に白い物が大量にかかったれいむの姿だった。 「ゆぎゃあああああああああああああああ!!!!!!!!」 「こんなのネタになるの?タイトルが『ケフィア丸』だぜ?」 「いやーでも編集長が書けって言ってましたし。」 「乗り気がしないんだが。そもそもなんでこいつはケフィアをぶっかけるんだ?」 「ぶっかけるなんて言わないでくださいよ。変態な。」 「いやこれ流石に唐突すぎるだろ……もうちょっと捻った文書けよ。」 「無理ですって先輩。」 「しかし……たかだがケフィアが顔中にかかったぐらいで大げさな。」 「匂いが染みついて三日間仕事に出られなかったそうですよ?ゆっくりできないとか。」 「俺も休みてー。」 貴方の傍にケフィア丸が居るかもしれない。 エレベーターには気をつけよう。 【あとがき】 何も言うまい。なんで書いたんだろう。よくわかんねえ。 シュマゴラス可愛いよシュマゴラスでしゅ ボックスまりさの人。略して箱マリの人 略して僕マリ……新しいな シュマゴラス可愛いのは同意です。ケフィアエロいよケフィア -- 名無しさん (2009-05-31 05 47 11) 精○?いいえケフィアです -- 名無しさん (2009-05-31 11 54 36) きめぇやつの亜種か? -- 名無しさん (2010-11-26 19 15 21) 名前 コメント
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ネコミミストの視るコ・ホンブックの悪夢に、全く別の記憶が流れ込む。 流れ込む風景は明らかに違う誰かの物だった。 「全く持って愚かな事よ。 あやつらは書き手として殺し合いを描く内に、己もその中に取り込まれていたというのか」 (幻夜の声……それにこれは……幻夜の思考? 記憶まで……) そしてこれまでに無かった記憶と、思考を伴う物だった。 シャリダムにはコ・ホンブックそのものが残されていなかった。 だが幻夜の死体には幻夜そのものも残されていたのだ。 (このバトルロワイアルへの憂い……それを感じているのに有効な手が無い悔しさ……) 幻夜はホテルに現れた神行太保のDIE/SOULと話す。 「そうだ。我達は貴様の……、いやここに来た全員の姿と振る舞いを見ていたのだ」 (多くを見ていたという傲慢……それに伴う強さと自信……落ち着き……)) 「それよりも気になるのは貴様の先程の発言だ。 『縁起が悪い』とはなんのことだ? そして何故、貴様はこの『縁起の悪い』と言う場所に来た?」 「……俺のいたロワ。それはアニロワ1stの事だが。 そこにあったホテルは跡形も無く破壊され、そこで13人の人間が死んだ……」 「よろこべ古強者よ。お前が当たりをつけた通りに事は運んでおる」 (興味……疑問……理解……祝福……) 死地に赴く激動のトウカリョウ。 「……解っている。 だが、俺は見せたいんだ。2nd最初の書き手が1st最強の書き手と戦えるということを! 俺……いや、俺達2ndの書き手の実力をあの時の、そして今のLX氏に見せたい。 それが、俺を『激動のカワラザキ』と言うポジションに据えてくれた紹介者への酬いになると思うし、 この会場の中で悪戦苦闘している同じロワの仲間達への励みになると思う……」 (別れ……仲間の残した意志……) 「仕方あらへんな……。幻夜さん、コレ持って行き」 そしてゲドー・ザ・マジシャンが言う。 「オレにつきあって一緒に死ぬ必要はあらへんやろ? コレ持って自分だけで行きぃや」 フラグを残せと言う言葉。 「……『書き手』という者は、本当に救いがたい業の持ち主ぞ。アイツも貴様も……そして我も」 書き手としての同胞達と自分を自覚する想い。 「最後に、言うとくわ。……恨むなよ。読み手を、な。 酷いこと言う時もあるかもしれん……し、こないな、けったいなことやらかすこともある……けど。 どんな時でも、……恨むな。あれは、あかん。……辛いのは、自分だけやで。いーこと無しの損しっぱなし、や。 それにな―― ――大事なもんも、いっぱいもらったやろ?」 ゲドー・ザ・マジシャンの言葉に噴き上がる想いと。 「……貴様は、……貴様という奴は!」 「なんや? ……めっちゃ、いい……書き手……か?」 固まった、意志。 「――どうしようもなく、どこまでも『書き手』だったよ」 (ああ、そうか) ネコミミストは知った。 自分達を護った幻夜・フォン・ボーツスレーの力の源を。 幻夜とて非力だった。多くを助けられず見殺してきた。 それでも多くの者達に多くの者を与えられた事。 (それが、弱い私達を前に進めてくれる……) 「わたしにはまだ……多くが残っている……」 それはネコミミストの言葉。 幻夜に教えられた真実だと思っていた。だけど幻夜の記憶は違う事を教えてくれる。 その時まで、幻夜の笑いは強がりだった。 死んでいく事が認められずに強がっていた。 ゲドー達、仲間のフラグが断ち切られる事を、成就できなかった事を悔やんでいた。 せめて仲間を生き残らせようという、妥協の末の成果があの勝利だった。 だけどネコミミストの言葉が、その強がりに実を与えていたのだ。 (はは、そうだ、我達にはまだ多くのものが残っている。 バトルロワイアルで多くを失い、だが同時に多くを託された。 ゲドーの首輪フラグも……きっとこやつが成就してくれよう……! はは、はははは! 感謝するぞネコミミスト! 貴様のおかげで我はこんなにも――――) 「そうだたわけめ……だから我らは、上を向いて笑えばいいのだ…………」 だからこそ幻夜はここに勝者有りと傲慢に。 「くはっ、はは……はははははは……ははは…………はは……は……」 高らかに笑いながら、逝けたのだ。 ――風景は戻る。 全ては痛みへと引き戻される。 激痛の檻に連れ戻される。 「が、あが、あぎぎぎあ、あ、あぁあぁあああああかっ、はあ…………!!」 戻った風景はシャリダムの軌跡。 コ・ホンブックが狂い行く地獄の最中。 だけど。 「いたい……いた……いた…………まけ……な……い…………!!」 一歩歩く毎に痛かった。 風が吹く毎に視界が真っ赤に染まって音が消えた。 かと思いきや次の瞬間には胸から腹から激痛が走りボロボロと涙が零れた。 「ぁ……あ…………あぁ…………」 それでも必死にこらえる。 理性を、正気のタガを手放すまいと掴み続ける。 (狂っちゃ……ダ……メ…………こわれ…………たら……!) 屈してはいけないのだ。 命のリレーはネコミミストへ繋がれたのだから……ネコミミストが壊れてはいけないのだ。 そんな事になれば幻夜の死も、ゲドーの死も。 体がスクライドで出来ている書き手の死も、666の負傷も、サプライズパーティーの殺害も。 「いた……いたい……イタイ…………いた……ぁ…………」 全ては無駄に。いや。 一人のマーダーに繋がる悲劇として片づけられてしまうのだから。 * * * 「少しは、持ち直したか」 666は呟く。ネコミミストの発狂は彼女にとっても避けたかった。 派手好き地獄紳士『666』は完全なる崩壊など望んでいないのだから。 「だが、これでも足りない。ネコミミストの決意と幻夜の遺志をもってしても、まだ」 666はネコミミストを見つめながら、考えていた。 * * * 「う……ぐ…………うぐっ……うぅ…………ひっく……ぅ…………」 一歩歩くだけで、痛かった。腕を振るうだけで、痛かった。 罪を犯していくのもたまらなく辛かった。 よく判らないスーツを来ている漆黒の、と呼ばれた書き手をエアで吹き飛ばした。 仮面ライダーカブトに変身した吉良吉影には戦いになるも漆黒を連れて逃げられた。 コ・ホンブックの体もバラバラに引き裂かれ、再生して歩き出した。 「イダイイダイイダイイダイイダアアイタッイタイダアアア…………」 次は前原圭一の姿をした書き手だった。激戦の末、ネコミミストは心臓を抉られた。 激痛に血の涙を流しながらエアを振るい、真名を解放するのではなく突き刺した。 だけど飛んできた何かに目を眩まされ、気が付くと相手の書き手は居なくなっていた。 「痛い……イタイ……いたい……イタイ、イタイ、イダイ、イダ……メェ…………」 四人組のチームに向けて威力を押さえたエアを解放した。 そしてばらけた一人、朝倉音夢の姿をした書き手の左目に、エアを突き刺した。 (いた……ダメ……イタイ……ヤダ……痛い……止めて……ダメ痛い痛いおねがいいたいやめ) 降り注いだ瓦礫に潰され、トドメを刺すことはなかった。 だけどその直後、通りすがりに居たディス・アストラナガンの姿をした書き手を、全く無造作に、 唐突に、何もさせる事無く、無数の紙の槍で貫き、引き裂いた。 「ァ……ま……た…………痛い、いたい、いたいイタイいたい痛痛痛痛痛いたいたいたたいいイイイ」 更なる罪と激痛に心が黒く染まる。 そこを救ったのは。 「――『痛い』んだね? その『痛み』、私なら治せるよ。『みんなを殺す』以外の方法もあるよ。 少し手間と時間はかかるけど、私は、私だけが、貴女を救うことができる」 (あなたは……ボマ………) 「あ…………」 ネコミミストが一度見た、LSロワの書き手。 彼女の言葉はブックの軌跡の中で、数少ない救いだった。 * * * 「しかしまさか、彼女が関わっているとは思わなかったな」 666は悲しげに。そして愛しげに悼みながら、想いを零した。 ボマー。第一回放送の時点で唯一残っていたLSロワの同胞。 第二回放送の時には既に死んでいた、仲間。 「私にだって仲間意識くらいは有る。ああ、愛とは別にね。 だけど何かを為そうとするならばそれは、コ・ホンブックに対してするべきだろうし」 666は手を握り締め、触手の電流に痺れていた握力が回復した事を確認すると。 ネコミミストを。その右掌に呑み込まれていくシャリダムを見つめた。 「この抜け殻は単なる怪物ロリと扱って構わないだろう」 * * * 「たすけて……くれるの…………?」 「うん。大丈夫だから……。絶対、助けてあげるから……」 その痛みの地獄に現れた一筋の救いすら。 「ご縁がありますね。コ・ホンブックさん」 現れたあの怪人、ドSの手によって。 「――その人は。――あなたを助けようとしたので。――私が。――殺しました」 断ち切られた。 「――死ねっ、化物! 死ねっ、人殺し! いなくなれっ、化物! 消えてなくなれっ、人殺し!」 ネコミミストはコ・ホンブックの絶望を知った。 コ・ホンブックの地獄を見た。 コ・ホンブックが……狂った理由を知った。 「あ……ああ…………あああぁああぁあああああぁああぁあぁああっああああああああぁぁぁぁああ」 それに対してネコミミストはただ、絶叫した。 吼えた。 嘆きを。世界への悲しみを、怒りを、喪失を叫んだ。 ただ咆哮した。 全身に浸透した地獄を感じながら、ネコミミストが思ったのはただ――――。 * * * 『私が思うに不幸とは、『途中』であることだと思います。 終わりでなく途中。途中を維持すること。中途半端なままになってしまうこと――それこそが不幸だと』 666は浄玻璃の鏡に映し出された、ブックが意識を失っていた時の言葉を反芻する。 (それにしてもドS氏、私と貴方は本当に似ていたよ。違うのは少しだけだ。 ただ一つ、やり方だけが貴方とは違う) 666はドラゴンころしを握り締めた。 そしてそれをゆっくりと、振り上げて――。 * * * 全てを塗り潰した物があった。 ネコミミストを支える想いさえも押し潰した物があった。 それは負の極地、ドS氏が積み上げたコ・ホンブックの地獄。 ――では、なかった。 「だから言え!!おまえの本当の願いを!!お前の味方はここにいる。俺は死なない、負けない、放っていかない。 ずっと、一緒にいてやるから!!」 それは希望の極地、承の放ったスパロボ展開。 ――それ自体でも、なかった。 そのどちらでもあり、どちらでもなかった。 ネコミミストは信じる。 (ようやく、救われる) コ・ホンブックの地獄の末で、思う。 (悪夢が終わる。痛みが終わる。悲しみも罪も終わる。もう痛くない、いたくなくなる……) 承のもたらした希望に手を伸ばして、感じた。 (この結末に……辿り着けたのなら…………) 救いは有ったのだと、そう考えて。 それでも痛みが収まらなかった瞬間。 自分ではない誰か、傷一つ無いブックの姿が自分以外の自分ではない場所に誕生した時。 ネコミミストの心は決壊した。 『どうして! どうして終わらないの!? どうして痛いの! どうして、いやだ痛い、いたい! いたいよ、イタイイタイ痛いいたいぃっ、あ、うっ、ヤダ、ヤダイヤダもうやめておねがっ、ああああ!? イヤだ助かったとおもったのにたすかってもうおねがいイヤだイヤイヤイヤイヤアアアアアアアアアァッ! たすかるとおもってがまんしたのに! 耐えられたのに! やだ、もうヤだあ、やあ! イタイイタイイタイタスケテオネガイイヤダタスケイタイイタイタイイィイィイィイイィイィ――――』 「ONIICHAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNN!!!!」 喉から出たのは悪魔的な咆哮だけだった。 種明かしを、しよう。 これはブックの軌跡であって、ブックの軌跡ではない。 ブックが味わった苦痛そのものの軌跡だ。 それが分離されてシャリダムが生まれた。 ネコミミストが喰らったのはシャリダムなのだから、まだ続きがあるのは当然だった。 ここに来てネコミミストの感情移入はブックからシャリダムに切り替わる。 シャリダムは思う。全ての生ある者が憎いのだと。 ネコミミストは思う。全ての生ある者が憎いのだと。 シャリダムは願う。全て死んでしまえばいいと。 ネコミミストは願う。全て死んでしまえばいいと。 シャリダムは殺意を向ける。全ての生ある者に。 ネコミミストは殺意を向ける。全ての生ある者に。 ネコミミストは目の前の敵に―――― 斬。 視界が、激変した。 痛みがあった。右腕が根本から切り落とされていた。 分厚い鉄板がその先とを遮断していた。 それをした者は目の前にいて、ネコミミストの残る左手には剣が握られていた。 ネコミミストは当然のように剣を突きだして――。 「………………………………あっ」 悪夢が終わっていた事と。 悪夢を始まった事を、知った。 「ネコ……ミミス…………ト……」 666の口から夥しい量の血が吐き出された。 茫然とそれを見つめる。 666の口から溢れた血は顎を垂れ、喉を伝い垂れていく。 溶解液により露わになった白い裸体を伝っていって。 胸の途中の、刃が突き立っている所の別の赤い流れと合流した。 その血はそのまま胸を伝い、腹を伝い、脚を伝い、地面に真っ赤な水たまりを作った。 「あ…………」 茫然と、一歩下がった。 ネコミミストの後退と共に胸に突き立っていた刃が引っ張られて、抜けた。 開いた穴から更なる血が噴き出した。 刃の先は赤い液体で濡れていた。666の、血。 誰がこんなひどい事を? 刃の根本はどこにある? 遡ったその先には震える左手が待っている。 だれの左手? 震えているのはだれ? それはネコミミストの左手。 どうして震えているのかは――。 「あ……ああ…………あ……あ……あああ…………ああああ………………」 壊れた機械のように母音だけが吐き出される。 何をした? 何をしてしまった? 殺意に任せて何をした? 悪夢に流されて何をしてしまった? 「わ、わたし、わた……ころ……し…………」 カラン。 滑稽なくらい小気味よい音を立てて、剣が落ちた。 「…………あ………………は…………」 心が軋んで、ヒビが入る。 表情が、壊れた。 「あは…………あ……はは…………あははっ、あははははははは……………」 (もう、おしまいだ……) 犯してしまった罪に潰されてネコミミストは乾いた笑いを―― パァンと、本当に綺麗な音がした。 「あ…………」 「う…………ぐ……っ」 666の呻く声。 血を撒き散らして苦痛に顔を歪めながらも振るった掌が、ネコミミストの顔を叩いていた。 「666…………」 動揺し戸惑いながらもネコミミストは666を見つめる。 666は苦しげに顔を歪めながら、ネコミミストを見つめる。 目が合う。 そして666はホッと、安堵の溜息を吐いた。 「良かった……君が、壊れなくて……」 「え…………痛っ」 麻痺していた右肩に一瞬だけ鋭い痛みが走る。 切り飛ばされた右腕が不死者の再生力によりずるずると引き戻されて、接合したのだ。 腕が飛んできた方を見るとそこには。 「ONII…………CHAAAAAA……………!!」 ドラゴンころしで右腕が断たれた為に食い残された、デビル・シャリダムが蠢いていた。 「え……な…………あ…………」 「君が壊れてしまわなくて……ほんとうによかった……」 ネコミミストは理解した。 シャリダムを喰らうネコミミストの様子を見て危険だと判断した666は、 ネコミミストが不死者であり死なない事を逆手に取り右腕を切り落とす事で、 不死者の捕食を強制的に中断させ、ネコミミストを救ったのだ。 「ふふ……それに奴もあそこまで弱れば、消し炭にすれば倒せるだろうしね……」 666はそう言うとデビル・シャリダムに歩み寄る。 地面を赤く染めあげながら歩いていく。 その背後の空間が揺らいだかと思うと、無数の爆薬がシャリダムと666の周囲に転げ出た。 「ろ……666……?」 まるで川の様に大地を染めた夥しい量の血の海。 確実な致命傷を負った666は、ネコミミストを振り返って微笑んだ。 「ああそうだ……そこに置いてある幻夜のデイパックには、デバイスも入っていた。 君の服はもう着れないし、あれでバリアジャケットを作ると良い……うぐっ」 「666!!」 「来るな」 駆け寄ろうとするネコミミストを手で制した。 「ふふ……そうだ、リクエストでもしておこう……。 リボンだ。 君には、きっとリボンがよく似合う。 色は、君の元の服と同じ白かな……うん、きっとよく似合うさ……」 「怪我を……666、あなたの傷の治療をっ」 ネコミミストも判っている。 666の傷は間違いなく致命傷で、助ける術など何も無いのだと。 それでも666は笑っていった。 「さっきは済まない……これは私のミスなのに君を叩いてしまったな……」 「ち、違う! わたしのせいだ! ぜんぶわたしの! わたしのせいで、わたしが、わたしがあなたをころ……」 「それは違うよ、ネコミミスト……私は殺されなん……ぐっ……」 666は導火線に火を点けた爆薬を一つ、爆薬で囲った中に放り出した。 ジジジジと音を立て、火が爆薬に近づいていく。 666とその足下で蠢くシャリダムを爆炎に包み込むために。 666はこみ上げた血の塊を呑み込んだ。 そしてまるでどこかに旅立つような軽やかな笑顔を浮かべて。 「生き続けたまえ、ネコミミスト。いつか、また会おう」 「666――――――――!」 閃光が全てを包み込んだ。 爆風がネコミミストに吹き寄せる。 思わず目を瞑り地面に伏せた。 そして煙が晴れた時、そこには。 666の居た痕跡も、シャリダムの居た痕跡も、綺麗さっぱり残っていなかった。 「あ……ああぁあああぁああぁあああぁああぁああああああぁあああああああああああああぁっ」 慟哭が天を衝いた。 * * * 学校より少し東のビル街。 そこに有る高層ビルを直上。詰まるところ屋上。 その更に少し上空。 「……おやー?」 緊張感の無い声が響いた。 リリカルなのはのヴィータの姿をしたその少女は、首を傾げた。 クマのプー太さん。 書き手ではない、パロロワの有名絵師。主催側からの監視者。 同行していた転が優勝狙いに転向した様に、殺し合いが極めて円滑に進むのを見てとった彼女は、 転移により主催の本拠地に帰還しようとした。 その直前にふと、上空からゲーム会場を一望していこうと思ったのだ。 ただそれだけの事。 何て事はない、どうでもいい気まぐれだ。そうまでしなくとも彼女は監視を実現できる。 だからそこで彼女に出会ったのは偶然に近かった。 「何してるんですかー?」 彼女は屋上に居た人影に訊ねた。 無数のリボンがはためいていた。 * * * 出しっぱなしのシャワー。虚ろな瞳。 傷一つ無い肌。肌を伝い流れ落ちていく水滴。 響き続ける水音。動く様子のない、少女。 あまり長くない黒髪は、だけども深みのある艶を取り戻していく。 瞳は依然、虚ろなままだった。 それでも少女は、唐突に動いた。 きゅぅっと、シャワーの蛇口を捻って止めた。 それからシャワー室の中でも身につけていた右手薬指の指輪を掲げて、呟く。 「クラールヴィント。バリアジャケットを」 ベルカ式のこのデバイスでは騎士甲冑というのが正しいのだが、 デバイスはそんな差異を咎める程に狭量ではなかった。 まるで蛹から蝶が生まれるように、デバイスからリボンが溢れ出る。 真っ白なリボン。純白という色の線。 (あの人が望んだカタチに――) 無数のリボンが絡みつく。 中指の付け根にリボンが絡み、そこから手の甲を覆って手首に結び、 編み上げるように二の腕までを包み込んでいく。 衝撃波を制御しやすくする為に、指と掌が露出したフィンガーレスグローブ。 ウェディンググローブにも使われる優美なデザイン。 (白い、リボンで――) 足指にもリボンが絡む。指先からまるで壊れやすい物を包むように繊細に、しっかりと。 まるでトゥシューズ。 足首に達したリボンはそこから絡み合うように溶け合って、足を薄く広く包み込む。 タイツかストッキングかソックスか。見る人により意見の異なる曖昧さ。 (タイトに、抱いて) 胸を、胴を、腹部を、股関節を。 強く深く抱き締める、貞節の白い帯。所により締め上げて、所により僅かなゆとりを残す。 「フッ…………」 吐息を漏らす。 震えていた小さな肢体を、もう震えないようにしっかりと締めくくるレオタード。 体にピッタリと吸い付く白い鎧。 その上でまたもリボンが踊り、白い上着が飾られる。 リボンが踊る。 汚されて捨てた白い鉢巻に代わって、新たなリボンが頭部を締める。 新たな鉢巻。前に進む決意を持てるように。 美しくも華奢なヘッドドレスではなく、 「わたしを……護って。わたしがみんなを……護れる…………ように………………」 それからまたもリボンが踊った。 手首で、足首で、首もと、胸元で白いリボンが舞い踊る。 それらは優しく結ばれた。 彼女を飾り、祝福する為に。 零れた水滴はシャワーの水滴の残り水か、決意と悲しみの涙か。 「わたしが……あの人の。 あの人とみんなの想いを無駄にしない為に」 それが残った願い。 体はスクライドで出来ている書き手は、牙無き者の剣として想いに殉じ果てた。 幻夜・フォン・ボーツスレーは死の連鎖の中でも何かを遺し繋がれる事を願った。 そして派手好き地獄紳士『666』は――ネコミミストが壊れず、正しく生き続ける事を望んだのだ。 「わたしがあなたに出来る事は、それだけだから……」 故にネコミミストが彼女達の為に彼女の想いを汲もうとするならば、 死ぬ事も、狂気に逃げる事も、何もせず鬱ぎ込む事さえ許されはしないのだ。 罪の意識はネコミミストを前に向けて引きずる。 悲しみは絆に応えなければいけないと急き立てる。 ネコミミストには未来への一方通行しか遺っていない。 「だから……」 シャワー室から出たネコミミストは、入り口に立て掛けておいた双剣を手に取った。 ゲドー・ザ・マジシャンの支給品から出てきた、マテリアルブレード。 テイルズシリーズ出展の炎と氷の属性を持ったこの二刀は、 例えばアニロワに登場するFateの干将莫耶のように、二本で一組の剣なのだ。 だが馴染み薄いアニロワの住人には別々の武器に思えたのだろう。 それは炎上するホテルにおいて、四次元デイパックの奥の奥に有った不死の酒が見落とされた一因だった。 ただでさえ支給品が三つ有るかは判らない。 だからグルメテーブルかけとこの双刀で三つだと思ってしまった。 ……ネコミミストには関係の薄い話だった。 ネコミミストがこの双剣を握るのは、666を刺してしまったあの刀を使いたくないからだ。 その双剣を、ジャケットの一部に形成した白亜の鞘へと滑り込ませる。 新たな武器と白いリボンに身を固めて、ネコミミストは歩き出した。 未来へ向けて。 「だからわたしを………………」 ――気高き白猫は歩き出した。 * * * 「何をしているか? そんなもの、あの子を愛しているに決まっているじゃないか」 黒いリボンがはためいている。 衝撃のネコミミストが纏ったバリアジャケットとそっくり同じデザインのリボンドレス。 ただ全ての色が、黒かった。 それ以外に違う所が有るとすれば、背中から黒い翼が無数に伸びている事ぐらいか。 その手にはメタルイーターMXから取り外された狙撃スコープ、つまり望遠鏡が握られている。 「愛して覗きですか? えへへ、変態さんですね」 「覗きとは人聞きが悪い。見守っていたのだよ。うん、辛うじて前向きなようで何より」 彼女はスコープをしまい込むと、プー太へと振り返った。 特に警戒する様子もなく、言う。 「丁度良い話し相手が出来たな。何かな、プー太くん」 プー太は彼女に聞き返す。 「そうじゃなくて、どうして生きているんですか? あの子には死んだって思われてるみたいですよ……ええっと、何て呼びましょう?」 「そうだな……君なら666で良いだろう。更に偽名を名乗ろうかと考えてはいるけれど、まだ良い」 派手好き地獄紳士『666』は、答えた。 「私がまだ生きている理由はそう、一言で言えば悔恨だ」 「悔恨ですか?」 ああと頷いて続ける。 「私は彼女に随分と色々な物を与え、教え、変えてきた。沢山の事を。 その結果、あの子は私の望む理想像を叶えてくれたと言えるだろう。 私を殺すのがあの子だとしたら、それ以上を望むべくもない位だ」 666はそう言うと、どこかしら愁いを感じる表情を浮かべた。 「だけど私は見落としていたんだ。 ならば私は、あの子に殺されるに足る存在だろうか? という事をね。 私はあの子に多くを求めながら、その実、ネコミミストに釣り合う存在ではなかったんだ。 まったくもってひどい話だ」 「えー……すごく悼まれてるみたいですよ?」 「ああ、それだけでしかない」 666は言う。 「私は心底からネコミミストの事を愛している。ネコミミストも私の事を大切に思ってくれていた。 あのまま死ぬのは本当に至福だった。 私はネコミミストの喪失した大切な物として、彼女の心にずっと居座り続ける事が出来ただろう。 愛し、愛してくれる者の心に永遠に残る事ほど幸せな事なんて無い。 ――だけど」 涙さえ零しながら話す。 「それではダメなんだ。そんな事ではダメなんだ!」 666は本当に心の底から、ネコミミストのために泣いていた。 「まだ先があるはずなんだ! あれより先が! もっと上があるはずなんだ! あれより高みが! 更に底があるはずなんだ! あれより深みが! だから私は、私が愛させてくれたネコミミストに続きを与えようと思う。 そう、その為に――」 それはほんとうに純粋な愛の涙で。 「――ネコミミストから私への愛がそっくり憎しみに変わるとしても」 寒気がするほどに真摯な、人から外れた感情だった。 「うーん、つまりあなたは何をするつもりなんですか?」 「やる事は簡単だ。私は、極悪人になる」 666は微笑みすら浮かべて言った。 「あれ、殺し合いに乗ってくれるんですか?」 「そういう事になるな。とにかく私は憎まれる事にした。悪のカリスマでも、下衆な鬼畜生でも良い。 このバトルロワイアルに参加する全ての者から悪鬼の如く憎まれるようになれたら尚良い。 最も望ましい事は、それを暴露した末にネコミミストの手によって――『喰われる』事だ」 「喰われる……」 「そう、私の想いの全てをネコミミストにぶつける。それが私の望む最高のクライマックスだ。 そしてネコミミストが、全ては自分への愛によるものだった事を知ってなお立ち上がろうと足掻く事を願っている。 そうでなければ――悼みも苦しみも悲しみも全て終わってしまうのだからね」 クマのプー太は気付いた。 「ところで666さん。あなた主にLSロワの書き手じゃないですか」 「ああ、そうだとも。絵板では何時も貴方に素晴らしい絵を描いてもらっている幸せなLSロワの書き手だ」 「でもその黒い羽ってもしかすると、アレを取り込みました?」 「ああ、そうだとも」 666は不敵に笑った。 「あれも私が出した支給品には変わりないからな、出せない理由なんて何も無い」 「やっぱり。えへへ、予想はしていたんですよ、その時が来るのは」 プー太も平然と笑って見せた。 「やっぱり使っちゃいましたか。――“闇の書”を」 「使ったとも。――“闇の書”を」 666はアニロワ1stでも、序盤に数話だけ執筆していた。 その時に出したアイテムは、やはり彼女の異名通り良くも悪くも強烈だ。 BLOOD+からディーヴァの剣とルルゥの斧。 ドラえもんからマイクロ補聴器。 魔法騎士レイアースから鳳凰寺風の弓と矢、それと剣。 ――そう、シャリダムの触手に向けて放たれた矢はこの矢に他ならない。 Fate/stay nightから凛の宝石十個 ――シャリダムに操られる幻夜の死体に放たれた石はこの宝石に他ならない。 そしてなにより、闇の書。 これで全てだ。 融合型デバイス闇の書。アニロワ1stにおいて重要な役回りを果たし大ボスの一つとなった危険物。 このアイテムは闇の書と融合する事で制御される。 666の髪は白髪に染まり、お下げは解かれて後ろに流されていた。 更にずっと付けていた丸眼鏡を外した事で、外見の印象は大きく様変わりしている。 「私があの状況で生き残れたのはこの闇の書のおかげだ。 シルバースキン・アナザーで爆風を防ぎ、闇の書とユニゾンして強大な魔力と高演算能力を獲得し、 強化した能力に加えて凛の宝石を一個使って懐中時計型航時機カシオペヤを瞬時に起動して疑似空間転移。 その後にもう一本だけ残っていたエリクシールで傷を癒す。いやはや危ないところだった」 「うわあ、チートですねえ」 「ラス1補正と言ってくれたまえ。なに、このロワではこれでようやく中堅だろうさ」 あながち間違いとは言えないのが怖ろしい。 「だけどそのバリアジャケットは“闇の書”で生成した物でもない」 「その通り。どっちで作っても同じなら、ネコミミストとお揃いにしたかったのでね」 その全身を包むのはネコミミストの白リボンバリアジャケットを丸々黒く染め変えたもの。 そして666の右手薬指には、“クラールヴィントがはめられていた”。 「クラールヴィントは情報戦に強い。 同じクラールヴィントでジャミングをかけておかないと、ネコミミストはすぐに私の生存に気付いてしまう。 物事にはタイミングという物が大事だ、今はまだ知られるわけにはいかない」 「じゃあ、そのクラールヴィントはどこから出てきたんでしょう? あなたのアイテムは全て、あなた自身がどこかのロワで登場させた支給品です。 アニロワ1stで出したのはあなたじゃありませんし、LSでは出てません。 では他のロワでしょうか?」 666の笑みに一瞬、狡猾な邪悪さが混じった。 「さあ、どこのロワだろうね。ふふふ」 「どこのロワでしょうねえ? えへへ」 顔を見合わせて笑い合う。そしてプー太は言った。 「その事実だけであなたは十分に鬼畜だと思いますよ?」 「ありがとう、素晴らしい誉め言葉だ。話し相手になってくれたお礼に、これをあげよう」 666はエリクシールの瓶を一本手渡した。 プー太は怪訝な様子で瓶を受け取る。 「エリクシールですかあ? いえ、でもこれは……」 「アレの分泌したイケナイ触手汁だ」 「ONIICHAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNN!!!!」 指差した先、隣のビルの屋上で咆哮が上がる。 そこに居たのは言うまでもない。ようやく再生を終えた、デビル・シャリダム。 殆ど崩壊したものを、666が連れ去っておいたのだ。 「正確にはそれを被ったネコミミストが脱ぎ捨てた服から搾り取ったものだ」 「うわ、なんともフェチズム溢れますねえ」 「何か変わった展開に使えるかなと思って、エリクシールの瓶2本に詰めておいた。 持って帰りたまえ」 「はい、ありがたく……ってどうするんですかこんなの! エロ展開以外の何に使えと!?」 「ハハハ、主催側の書き手に渡せば頭を絞ってシリアス展開にも使ってくれるさ。多分。 では、さらばだ!」 666はばさりと六枚の黒翼を広げて、舞い上がる。 凄惨で救われないのに前に足掻こうとしてしまう残酷極まりない美しき悲劇を、ネコミミストにプレゼントする為に。 ――禍々しき黒天使は飛び立った。 【午後/E-5/学校跡地】 【衝撃のネコミミスト@アニ2nd】 【装備】:マテリアルブレード@テイルズロワ、クラールヴィント@アニロワ1st、バリアジャケット 【所持品】:支給品一式、拡声器 【状態】:精神的に消耗。不死者化。 【外見】:バリアジャケットの白いリボンドレス。 【思考・行動】666…………… 基本:前に……進む………… 1:スクライドの遺志を継ぎ、牙なき人の剣になる。積極的にマーダーキラー路線。 2:熱血王子と再会したら、今度こそ彼を止める。 ※衝撃波を使えます。掌からだけでなく、足の裏からも出せるようになりました。 ※「大あばれ鉄槌」を幼女好きの変態と勘違いしています。 ※シャリダムを通じて幻夜の死体を喰い、その記憶と知識と経験を得ました。 また、ブックがロワに来てからシャリダムが生まれるまでの経緯を体験しました。 ※血塗られた、永遠神剣第六位『冥加』は学校跡に残されました。 【午後/E-6/ビル屋上】 【派手好き地獄紳士666@LSロワ】 【装備】:ゲート・オブ・バビロン@アニロワ2nd(※特殊仕様)、闇の書@アニロワ1st、 クラールヴィント@アニロワ1st(ネコミミストと同じ物)、バリアジャケット 【所持品】:支給品一式、エリクシール瓶に入ったシャリダムのイケナイ触手汁 【状態】:闇の書発動。不死者化? 【外見】:黒いリボンドレス、背中から黒い六翼。長い髪は白く染まり後ろに降ろしている。眼鏡外し。 【思考・行動】 基本:極悪外道になった後、ネコミミストの前に敵として再会。ネコミミスト心から愛してる。 1:マーダーとして悪行を積む。 2:ネコミミストの前に敵として現れ、最終的に喰われる。 ※ゲート・オブ・バビロンで出せるアイテムをどれも『一応は何とか使いこなせ』ます。 エリクシールと爆薬は使い切りました。 浄玻璃の鏡の回数制限は残二回。凛の宝石は残り八個。風の矢は残量不明。 ※「大あばれ鉄槌」を(ロリ的に)危険人物と断定しました。 ※ゲート・オブ・バビロンで出せる新たに判明した物及び追加された物。 アニロワ1stからディーヴァの剣、ルルゥの斧、マイクロ補聴器、 鳳凰寺風の弓と矢、鳳凰寺風の剣、凛の宝石×10、闇の書。 加えて――マテリアルブレード@テイルズロワ@XXX、クラールヴィント@アニロワ1st@XXX、 不死の酒@アニロワ2nd(既に使用済み?)@XXX。 ※闇の書と融合しているため、その内に言うまでもなく―― ※クマのプー太氏に【エリクシール瓶に入ったシャリダムのイケナイ触手汁】が渡されました。 エリクシールはバビロンのアイテムですが、中身が代わっている為、666以外でも使えるようです。 【午後/E-6/別のビル屋上】 【デビルシャリダム】 【状態】:酢飯細胞侵食、不死者分大幅減量、胸に12の傷(※)、腹に10の刺し傷(※) 【装備】:乖離剣・エア@Fate※ 【道具】:なし 【思考】: 基本:ONIICHAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNN!! 1:全てを飲み込む ※不死者化する前に出来た傷は治りません。ずっと、痛いままです。 ※エアは取り込まれていますが、過負荷により機能停止中です。 このままでは再起動しません ※シャリダムはこの後、204話『我輩は――……』に続きます。 220 さよならは言わないで。だって――(前編) 投下順に読む 221 したらば孔明の陰謀 220 さよならは言わないで。だって――(前編) 時系列順に読む 204 我輩は――…… 220 さよならは言わないで。だって――(前編) 衝撃のネコミミスト 232 傷だらけの天使たち 220 さよならは言わないで。だって――(前編) 派手好き地獄紳士666 223 エロス頂上決戦、決着……?! 220 さよならは言わないで。だって――(前編) デビルシャリダム 204 我輩は――……
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唯「いやーわかってるねぇムギちゃん」 唯「やっぱあずにゃんのこのレベルで胸があるなんていわれても」 唯「鼻で笑っちゃうよね~」 紬「フゴフゴ」 梓「そういうのじゃないです」 紬「私一緒になって梓ちゃんをいぢめるのが夢だったの~」 梓「いじめなんですか!?」 唯「ちがうよ~。なんていうか、可愛がりだよ可愛がり」 紬「イジリとも言うわ」 梓「度が過ぎると世間ではいじめっていいませんか?」 紬「先輩たちによってたかっていぢめられる後輩。なんて素敵なシチュエーションなの」 紬「そうだ! これで次の曲をつくろうかしら」 紬「題して『いぢめはオカズ』! どう?梓ちゃん」 梓「だめだこの人も」 唯「すごく個人的な曲だね」 梓「ほらもう出ましょう。ムギ先輩も仕事もどって下さい」 紬「は~い、それじゃあね~」 唯「次は誰のトコにする~?」 梓「じゃあ律先輩で」 梓(あの人ならきっと味方についてくれる) 梓(だって……同類だもんね) 唯「おっけー。じゃあムギちゃんまたね」 紬「ありがとうございました~またのご来店おまちしております~♪」 … 唯「はろーりっちゃん」 律「よ! どうした夫婦そろって」 梓「夫婦じゃないです!」 唯「それがね、きいてくださいよ奥さん。ウチの旦那毎日ごろごろごろごろ」 律「あらやだ、ウチもよ。毎日ガミガミガミガミ」 律「外で溜め込んできたものをウチで発散するのはやめてっていってるのに!」 唯「ほんと男って年とるにつれてどんどんダメになっていくわ」 梓「なんかはじまった……」 梓「ところでここどこですか?」 律「見てのとおりのファンシーショップだ」 唯「りっちゃんはこう見えても乙女なのです」 律「どっからどーみても乙女だいっ!」 律「そんで今日は遠路はるばる、ペンギンさんとシロクマさんのぬいぐるみを買いに来たんだ」 梓「はぁ……」 律「澪のメルヘンも実は私の影響だからなー」 梓「あぁそうなんですか……もうどうでもいいです」 律「それで、何のようなんだ」 唯「ぺたにゃんケートにご協力ください」 梓「それは無しっ!!」 律「ふむふむ。梓の胸はあるか無いか、か」 律「そうだなー」 梓「り、律先輩は私と同類ですし、もちろん有るって答」 律「うるせえよ壁」 梓「 」 唯「おや、無しに一票っと」 梓「……どうして」 律「あのなー梓よくきけよ?」 律「そもそも無いのと貧しいのでは果てしない差があるんだよ」 唯「そうだよあずにゃん。ほら掛け算してごらん?」 唯「女の魅力=愛嬌×顔×胸だとすると、ね?」 梓「……」 律「私が多少貧しかろうが」 唯「あずにゃんは0だもんね~」 唯「いまさら何を駆けても無駄なんだよ~」 律「つまりスタートラインにすらたてないってこと」 唯「あんだーすたん?」 梓「そんなことないです……」 梓「とあるアニメでも言ってました……」 梓「貧乳はステータスだ、稀少価値だ。って」ゴニョゴニョ 唯「うん。そうだね。でもあずにゃんは無だから」 律「そうそうお前はなんもないから」 唯「すごいよあずにゃん! 人間の永遠のテーマである『無』と生まれながらにして向き合ってるなんて」 律「将来は哲学者だな!」 梓「ひどいです……なにもそこまで」 梓「私なにか悪いことしましたでしょうか……」 律「認めろよな」 唯「生まれの不幸をね」 梓「……ッ! もう知りません! 先輩達の馬鹿!」 梓「おたんこナース!」 ダッ 律「あ、逃げた!」 唯「あの風を切りやすいボディは走ることに対してはうってつけだね」 唯「ぐんぐん加速して、ほらもう豆粒みたいに小さく見えるよ」 唯「夕闇染まる商店街を切り裂く哀れな少女のツインテール」 律「いーから追いかけてこーい」 律「梓、ちょっと泣いてたぞ」 律「ちょっとだけな」 唯「あれ、りっちゃんいまさら罪悪感がわいてきたの?」 唯「ドラムを叩く機械になっても、人間らしい心はうしなってないんだね!」 律「なんのこっちゃ!」 律「まぁ……なんていうか、同情ってやつかな」 唯「わかった気になった上から目線の同情ほどエグイものはないよね!」 律「……そうだな!」 唯「私おいかけてくるよ。そしてこのアンケート結果をまじまじと見せつけてくる」 律「それはやめてやれよ」 唯「だめだよ。だってこれは勝負なんだから」 唯「ちゃんと約束も守ってもらわないと」 律「約束?」 唯「うん約束。負けたほうが勝ったほうの言いなりなんだ」 律「ほーそりゃおもしろそうですなぁ」 唯「でしょ? 私どうしても命令したいことがあるんだ~」 唯「あずにゃんに言う事をきいてもらいたいの!」 律「お前の将来が楽しみだよ……」 …… 唯「さがしたよー」 唯「はろーあずにゃん」 唯「やっぱりこの河原にいたんだね」 梓「……」 唯「私たちの思い出の場所だもんね~」 梓「……そうですね」 唯「ふわっふわったぁ~いむ!」 唯「おばあちゃんのためにいっぱい練習したよね?」 梓「ふでぺんでしたけど……」 唯「あれ?怒ってる?」 梓「……当然でしょう?」 唯「はい。これアンケートの結果」 スッ 梓「うぅ……こんなのみせなくていいですよ」 梓「ひどいです……グス」 唯「あははーもっと惨めったらしく泣くがいいさ」 唯「先輩の胸を貸してあげよう!」 梓「……」 梓「……うっ」ブワ 梓「うぇぇえええええええん」 ガシッ 唯「わはは、こりゃまいったな」 唯「まさかホントに泣くとは」 唯「おー、よしよし」 唯「どう私の胸の中は気持ちいい? これが胸ってもんだよあずにゃん」 梓「びええええええぇぇぇ」 唯「おっと火に油を注いでしまったか」 唯「……」ナデナデ 唯「……小動物みたいだね」ナデナデ 梓「グス ヒグ」 唯「可愛い可愛い。つむじグリグリ」 梓「……唯先輩」 梓「……私やっぱりぺったんこなんですね」 梓「うすうす感じてましたよ……」 梓「一体どうしてこんな身体に生まれたんでしょうか」 梓「もっと……澪せ、秋山先輩みたいな身体がよかったのに」 唯「うんそうだね。み、秋山ちゃんみたいなボディは女の子としてはなかなかだと思うよ」 唯「あずにゃん前世でなにか悪いことしたんじゃない?」 唯「カエルふみつぶしてぺったんこにしたとか」 梓「してません! なんで今日はそんなひどいことばっかり言うんですか」 梓「唯先輩らしくありません! あ! さては変装した憂だな」 バッ 梓「偽物め!」ポカポカ 唯「痛い痛いちがうよ! 私だよ!」 梓「じゃあどうしてこんな意地悪するんですか!」 唯「それはねぇ……」 唯「あ、その前に約束まもってもらっていいかな」 梓「……」 唯「忘れたの? 勝った方のいうことを~」 梓「はい。わかってます」 梓「煮るなり焼くなりすきにしてください」 唯「じゃあ焼こうかな」 梓「絶対やめてください」 唯「冗談だよ。よし、ならば早速」 梓「……?」 唯「えいっ」 ギュ 梓「あっ……」 唯「んん~やっぱこれだねぇ」 唯「この無駄のない洗練されたフォルム。最高の抱き心地だよ」 唯「私専用だね~」 梓「ちょ、なにやってるんですかこんなところで」 唯「何っていつもどおり抱きついてるだけだよ?」 梓「それはわかりますけど、どうしてこの流れでいきなり」 唯「え~。だってそりゃあ可愛い物には抱きつかなくっちゃね」 唯「可愛い物に失礼だよ」 梓「可愛いって……どうせまたこの胸のこと言ってるんでしょ」 唯「違うよー。全くもうあずにゃんは!」 梓「じゃあなにをもって可愛いって言ってるんですか」 梓「さんざんいじめといて……」 唯「いじめてないよー可愛がりって言ったじゃん」 唯「それにほら、好きな子ほど……意地悪したくなるって言うじゃん」 唯「あれだよー」 梓「嘘ばっかり。心の底では……ほくそ笑んでるくせに……」 唯「わかんないかな~。よし」 唯「これでどうだっ」 ギュウウウウウ 梓「うっ、ちょっとあんまりきつくしないでください」 唯「ほら、わかるでしょ?」 梓「えっ?」 唯「私もあずにゃんのことよくわかるよ」 梓「えっ!? なんですか」 唯「……すっごく心臓、ドキドキいってる」 梓「あっ……」 唯「あずにゃんは胸がないからさ。その分よく伝わってくるよ?」 梓「う、ぁ……」 唯「ね?」 梓「はい……」 唯「あずにゃんの心臓、すっごくドキドキしてるよね?」 梓「はい……」 唯「私もすごくドキドキしてるでしょ? わかる?」 梓「そう、ですね……」 唯「あずにゃんさ、私が抱きつくたびにドキドキドキドキしてたから」 唯「もしかして私のこと好きなのかな~って勝手に思っちゃった」 唯「一度意識しだしたらなんだか私もね……」 唯「抱きつくたびにすごくドキドキしちゃう!」 梓「唯先輩……」 唯「これってやっぱ好きだからかな?」 梓「うっ、そ、それはたぶん体温が上昇して血流が良くなり鼓動が」 唯「ねぇあずにゃん。負けたほうへの罰ゲーム考えたよ」 梓「このタイミングで……ですか……」 唯「うん。ぺったんこのあずにゃんへの命令」 梓「……うぐ」 唯「ちゃんと約束まもってね?」 梓「……いいでしょう」 唯「あはは、何言われるか不安なんだね」 唯「またすごくドキドキいってるよ?」 梓「そ、そういうこと言うのやめてください」 唯「大丈夫だよあずにゃん。きっとそのドキドキは無駄にしないからね?」 梓「えっ?」 唯「さて本題ですが」 唯「ぺったんこのあずにゃんはきっとお嫁にいけません」 唯「なぜならぺったんこだからです」 梓「えぇっ!?」 唯「ぺったんこの女なんて、世の男性は全く相手にしてくれません」 梓「えっ、えっなんで!?」 梓「……そんな」ジワ 唯「……ふふ」 唯「だからね」 唯「……私が貰ってあげる」 梓「え……」 唯「拒否はできません。ぺったんこに拒否権などないのです!」 梓「え?」 唯「私のモノになるならぺったんこじゃないとだめだよ?」 唯「ぺったんこあずにゃんの抱き心地は天下一なんだからさ」 梓「……」 唯「こうやってドキドキが伝わってくる感じがすごく好き」 唯「あったかい……」 唯「ね。わかった? ほらこっち見て」 グイ 梓「うっ、グス」 唯「あぁ! ごめんごめんもうぺったんこなんて言わないから泣かないであずにゃん」 唯「私が大変悪うございました」 梓「……だめですよ、許しません」 唯「えぇ!? ごめんってばぁ」 梓「勝手に告白するなんてひどいです」 梓「唯先輩はデリカシーもムードもなさすぎます」 唯「う、あずにゃーんお願いだから嫌いにならないでー」 梓「私の勇気……どうしてくれるんですか」 唯「勇気?」 梓「実は、唯先輩たちの卒業の日に」 梓「私……思い切って唯先輩に告白するつもりだったんです……」 梓「その日のために毎日毎日、想いを募らせてきました」 梓「セリフとかシチュエーションとか、いろいろ考えてました……」 唯「あずにゃん……」 梓「だから……」 梓「命令には従います」 唯「ほあぁ!」 3
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唯「なあに?」 梓「先輩は…」 憂「お姉ちゃーん!」 梓「っ…」 唯「あ、憂!どしたの?」 憂「純ちゃんと出掛けてた帰りなの!…梓ちゃんこんにちわ!」 梓「う…うん、こんにちわ」 唯「あり?何か買ったの?」 憂「うん!これ!」 梓「それって…」 唯「ストラップ?私たちのと色違いだねえ」 憂「おそろいにしようと思ったんだけど…被っちゃったんだね…」 梓「……」 唯「どーしよっか…あ、そういえばあずにゃん、さっき何か言おうとしてなかった?」 梓「あ…もういいんです…ええと、私…先に帰ります!今日はありがとうございました!」 唯「あずにゃん?もう帰っちゃうの?」 憂「じゃあね梓ちゃん!また明日!」 唯「あずにゃん…?」 憂「お姉ちゃん、今日は楽しかったの?」 唯「うん…」 憂「今度私たちも二人で映画見に行こうか?」 唯「うん…」 憂「今日はご飯何にする?お姉ちゃんの好きなものでいいよ?」 唯「…ごめん憂、私あずにゃんにストラップ渡してくる!あとご飯はカレーね!」 憂「…お姉ちゃんのばか」 梓(私…なに舞い上がってたんだろ…バカみたい…) 唯「あーずにゃーん!」 梓「先輩…どうしたんですか?」 唯「これ!渡すの忘れてたよ!」 梓「…憂の付ければいいじゃないですか」 唯「だーめ!あずにゃんとおそろいって決めたんだから、これは二人で付けるの!」 梓「…先輩は」 唯「ふえ?」 梓「先輩は、私のこと、どう思ってるんですか?」 唯「どうって…もちろん大好きだよ?」 梓「分かりました…また明日」 唯「うん!またね!」 梓(大好きか…私…どうすればいいんだろ…) 月曜日 梓(はぁ…結局昨日は一睡もできなかったなあ…) 紬「それで昨日はどうだったの?」 梓「きゃああ!?だから急に出てこないでください!」 紬「いいからいいから♪ 唯ちゃんとは上手くいった?」 梓「まあ…楽しかったですけど…なんていうか…」 紬「梓ちゃん?しっかり言いたいことは言わないと後悔しちゃうわよ?」 梓「わかって…ますけど…」 ガチャ 律「今日のお菓子はなにかしら唯さん!」 唯「今日はシュークリームの予感がするわ律さん!」 澪「おまえらいい加減にしろよ…」 梓「唯先輩…」 紬「…澪ちゃんりっちゃん、私たち3人で職員室に呼ばれてたわよ?」 澪「え?そんな話聞いてないぞ?」 律「なんで唯と梓は呼ばれないんだよーぶーぶー」 紬「いいからいいから♪…梓ちゃん、頑張ってね?」 梓「え、あ、はい…」 唯「…また二人っきりになっちゃったねえ」 梓「あ、はい…」 梓(言わなきゃ…唯先輩にホントの気持ち…自分に正直にならなきゃ…) 唯「あ、そうだ!ストラップのことだけど」 梓「え…」 唯「じゃーん!憂のとあずにゃんの、両方つけたんだ!」 梓「プッ…それ、すごい持ちにくくありません?」 唯「うぅ…確かに…」 梓(やっぱり唯先輩は、いつでも唯先輩なんだな…そこがいいところなんだ) 梓「…あの、先輩に伝えたいことがあるんです」 唯「ん?なあに?」 梓「私、唯先輩のこと…大好きです」 梓(い、言っちゃった…) 唯「ありがと!私もあずにゃんのこと大好きだよ?」 梓「え?いや、そういうことじゃなくて…私が言ってる大好きっていうのはもっと…」 唯「大好きは大好きでしょ?」 梓「あー、ええと、ずっと一緒にいたいっていうか…もっと深い意味っていうか…その…」 唯「あずにゃん…そんなに私のことを…ありがとお!」ギュッ 梓「うぅ…」 梓(このままで…いいの…?ダメに決まってる!だったら…) 唯「あずにゃーん、かわゆいよう~」 梓「先輩!」 チュッ 唯「ん…!」 梓(キス…するしか…!) 唯「へ?あ、あずにゃん?な、な…?」 梓「これが私の気持ちです…本気なんです!」 唯「あずにゃん…」 梓「私、先輩と一緒にいると、すごく楽しいんです!ずっと一緒にいたいんです! だけど…その笑顔を他の人に向けられるのは、やっぱり耐えられなくて…だから、だから…」 唯「わかったよ、あずにゃん」 梓「え…」 唯「私、今まであずにゃんの気持ちに気づいてなかったよ…でもやっとわかった…」 梓「先輩…」 おい聞こえないぞ! ちょ、押すなバカ! もっと…もっと先に進まなきゃ梓ちゃん! お姉ちゃん… 梓ちゃん意外に大胆ねえ… 唯「ん?なんか廊下が騒がしいねえ」 梓「は!まさか…」 唯「みんななにしてんのー?」ガチャ 律「ゆ、唯!これはだな澪が」 澪「わ、私はただ歌詞の参考に」 紬「唯ちゃん構わないで続きを」 憂「……」 さわ子「若いっていいわねー」 唯「憂にさわちゃんまで!」 梓「な、なんで皆いるんですかあ…」 梓(せっかくいいところだったのに…台無し…) 律「しかし、キスまでするとは…」 澪「けっこう…いいかも」 律「は?」 紬「そ、それで唯ちゃん、なんて言おうとしてたの?」 憂「お姉ちゃん…まさか…」 唯「うん、皆にも聞いてもらいたいんだけどね?」 梓(唯先輩…?) 唯「あずにゃんは、私に求めてたんだよね…もっと構ってほしいって!」 梓「え?ま、まあ…」 唯「だから私、あずにゃんと今までよりさらに仲良くします! だから皆とはちょっとだけ距離が空いちゃうかも…」 律「…それは、ええと」 紬「お付き合いするってこと?」 唯「うーん、お付き合いっていうか…二人で一緒にお菓子食べたり遊びに行ったり…」 澪「それって付き合うっていうのか?」 梓(先輩…やっぱりわかってない…) さわ子「でも唯ちゃん、あんたたちはキスまでしちゃったのよ?それがどういうことか分かる?」 唯「えへへ~仲良しの証拠だよね~」 さわ子「ダメだわこの子…」 紬「でも唯ちゃん…」 梓「もういいんですムギ先輩、私、本当の気持ち伝えられたし」 紬「梓ちゃん…」 梓「それに私、多少意味は違うけど唯先輩にわかってもらえたし、それでいいんです」 紬「まあ、梓ちゃんがいいなら…」 梓「それにあきらめたわけじゃないですし!」 憂「なにを?」 梓「う、憂…」 憂「梓ちゃんてお姉ちゃんのこと…そんな風に思ってたんだ…」 梓「あ、ええと…」 憂「私より先にキスするなんて…負けないから」 梓「え?ど、どういうこと?」 紬「あらあらまあまあ♪」 唯「あずにゃーん!皆でケーキ食べ行こう!私がおごってあげるから!」 梓「あ…はい!」 梓(まあいいか…唯先輩と一緒にいられるなら) END 戻る
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「よっ」 まつりがカードを切る。 「ほれっ」 私もカードを一枚捨て、新たに一枚加える。 「これならどうよ?」 「さあ?どうだろうね、手札決まった?」 「フフン、じゃ勝負といきましょうか!どうよ!フラッシュ!!」 「はいフルハウス私の勝ち~~~」 「うきゃーーーーっ!!!姉さん強すぎ!!!!!」 今現在、私は自室でまつりを相手にポーカーをやっていた……ただ今まつりを8度目の敗北の海に沈めた所だった。 8連敗を喫したまつりは両手で顔を抱え込み天を仰いだ。 「な ん で一度も勝てないワケェ~~~~!?」 「まつり自分の手札も見ずにズバズバ捨てすぎなのよ、どっかでもったいない手札捨てたりしてるわよきっと」 「今回はいい仕上がりだったもん」 「まあ今回は運が悪かったわね」 「うぅう~~~~……姉さん、もっかい勝負よ!」 「はいはい……」 再びカードを戻して混ぜる、そして5枚のカードがお互いに行き渡った。 普段は仕事やお母さんへの想いにつまっている私にとって、この時間は息をつける一時だった。 カードを手に取る前に、ドアの音がノックされた。 「ちょっと~、まつりお姉ちゃん騒がし……って、何やってんの?」 「うわ~~、トランプだぁ」 かがみとつかさだった。 「見りゃーわかんでしょっ!姉さんと意地をかけた真剣勝負よっ!」 「意地も何も勝負になってるの?」 かがみのオブラートに包まぬ言葉にまつりが「うぉっ」とのけぞった。 「こ、これからなるのよっ」 「ねぇねぇ、私もいれてほしいなぁ」 まるで場の空気を読まぬつかさの発言に私は思わず笑いをこぼした。 「いいわよつかさ、入んな」 私が開いてる所に手招きする。 「ちょ、ちょっと姉さん、私たちの勝負はどーなんのよっ」 「別に一対一の勝負じゃなくても勝負にはなるでしょ?」 「う……そ、それもそうね、いいわ、なら一番を取るだけよっ」 「かがみも入りなさいよ」 入りたそうにしているものの、自分から上手く言えないでいるかがみに私はもう一つの席を空けて言った。 「そ、そうね、暇つぶしにいいかもね」 おずおずと私が手を叩いた所に腰を降ろすかがみ。 「じゃー始めましょうかぁ!!」 一番気合が入っているまつりが再びに全員にカードを配り直す。 「カード交換していいの?」 「2回までね」 「うーーーーむ……」 「……」 「皆OK?」 「うん」 「うあー……だめくさ」 「私もいいわよ」 まつりが手札を見せた、2と5が二枚ずつ、つまりツーペアだ。 「ねぇお姉ちゃん、これは何?」 と、つかさが自分の手札を見せた。 「ああそれはね、1スリーレオパレスっていってね、ノーペアの一つ上よ」 「あり得ない嘘教えんなっつーの、つかさのはスリーカードね、少なくともまつりお姉ちゃんよりは上よ」 「へー」 唯一勝てそうだったつかさにも敗れ、最下位がほぼ濃厚になったまつりはがっくりと項垂れた。 「じゃ私ね、はい」 かがみが出した手札はKが三枚、Jが二枚、フルハウスだ。 「うわーもう全然駄目じゃん私」 本日何度目になるかわからないまつりの嘆き。 「で、姉さんは?」 「ん」 私も自分のカードを披露する……スペード一色で揃えられた8,9,10、J,Q……。 「ストレートフラッシュ、惜しかったわねかがみ」 「……自信あったんだけどな」 頬をかきながらかがみが呟く。 「一回位負けてくんない姉さん」 「負かしてみなさいよ」 「お姉ちゃん達すごいねー」 つかさ、そう言ってるが果たしてわかっているのだろうか。 「もう一回、今度こそは……」 再び仕切り直して張り切るまつりを私は手で制した。 「まつり、ポーカーはまた後にしよう、今はつかさもいるんだからもっと簡単な奴にしましょうよ」 まつりは一瞬「えー」という顔をしたが、つかさ達の手前、普通の表情を取り繕い、 「うう……そーね」 「ごめん、私わかるゲーム少なくて」 つかさが申し訳なさそうに言う。 「気にする事じゃないわよ、それじゃ無難に七ならべでどう?」 「うん、それなら大丈夫」 「私も異論は無いわよ」 「OK,でも勝負は勝負だから手加減は無いわよ」 「それは手加減出来るだけの力量を持ってる人の台詞よ」 「い、いーのよ別にっ!」 こうして私達は夜ご飯まで時間を潰した。 「うううぅ、姉さんやかがみはともかく、つかさ相手にすら負け越すなんて……」 嘆きながらまつりが夕食の席に付く。 「後先考えなさすぎなのよ」 最もな発言をしながらかがみも自分の位置に座った。 「でもすごいよねお姉ちゃん達(もちろんまつりは除く)、一回も勝てなかったよ」 先ほどまでのトランプ勝負、7ならべ、神経衰弱、大貧民など……。 ババ抜きを除けば、ほぼ全試合私とかがみの首位決戦であった。 まつりとは違い、かがみは流石に頭を使った勝負に強く、私も久しぶりにトランプで熱くなった。 「でもまつりだって一位とったじゃない」 「一回だけでしょ……しかもババ抜きだし」 拗ねた様にまつりが呟く。 「あらあら……随分と楽しそうね」 お母さんが夕食を運んできた。 私が贈ったネックレスを肌身離さず付けてくれている。 結婚指輪代わりに贈ったのだから外されていたら流石にショックを受けたろうが、それでもやはり嬉しいものだ。 「そうかしら」 私はあえて流す様に答える。 そうじゃないと、思わず甘甘な声が出てしまいかねないからだ。 私たちの事を知っているまつりはそんな私を見て、含み笑いを漏らした。 その目はどう見ても「素直じゃないんだから」とでも言いたげだった。 だが考えても見るがいい、ここで私が素直になったらどうなる事やら……夕食どころじゃなくなるのは間違いない。 「ただいま~」 神主の恰好をしたお父さんがゆっくりと腰を降ろす。 「あなた、先に着替えてきてください」 「ああ、そうだったね、ごめんごめん」 お父さんは再び立ち上がり、お母さんと目線を合わせた。 お互いに微笑み合う二人。 ……そんなお父さんとお母さんのやり取りを見て、私は再び懺悔の心に駆られた。 お父さんとお母さんの間に割って入った私。 理由はどうあれ、私は間違いなく間男ならぬ間女だ、お父さんからお母さんをかすめ取ろうとしている。 先ほどまでの楽しい空気が一転して、私の中に暗い風を吹き込む。 真実を知れば、お父さんは私を許しはしないだろう、浮気うんぬんというよりは、道徳的にも許されはしない。 そして、それ以上に妻と娘に裏切られた……そう思うかもしれない。 実際に「私は」裏切っているのだから、私には返せる言葉などあるワケもない。 仕方がないじゃないか、と開き直るつもりもない、だけど、ならどうしろと言うのだろう。 諦められるのだったらとっくの昔に諦めている、わざわざ家族を崩壊の危機に晒してまで関係を繋ごうとは思わない。 それが出来ないから、こうまで苦しんでいるのではないか。 それに……お母さんの気持ちだってある。 私の思いを受け入れてくれたとはいえ、お父さんとお母さんはお互いに想い合って夫婦になった仲なのだ。 そうして、今でも今までもその関係が続いている、その「夫婦としての繋がり」はわざわざ確認するまでもなく固い。 それを考えた上でお母さんの心がお父さんより私に傾いていると、どうして断言出来ようか、お母さんが再びお父さんを選んだ所で何ら不思議は無い 思いたくは無いが、むしろその可能性の方が高いだろう。 どれだけ私が愛していても、どれだけ想っていても、結局私はお母さんの「娘」。 それを覆すことなど出来ない。 私への娘としての愛を省いても、それでもお母さんは「娘としての愛情とは別の愛」で私を選んでくれるのか……まるきり自信が無い。 もちろん母娘だって固い繋がりに違いは無いのだが、私が欲している繋がりは、それとは他にあるのだ。 それを得る為には……やはり、どの道を通ったとしても、犠牲が出る。 怖いものなど無くなった……そう唱えた筈の私の心が、再び不安と恐怖にジワジワと苛まれる。 何故私は皆と違ってこうも辛すぎる愛なのか……思わず愚痴が胸に広がる。 これは神が私に与えた罰なのか?私が何かをしてしまったのか? そこまで考えて、急に言いようもない怒りもが沸き立つ。 笑わせないでよ、神様が一体いつ私の味方をしてくれた?始めから敵だったじゃないか。 私だけは挑戦権すら与えられないの?そんなの認めない、認められない。 ここまで来て、自分からお母さんを手放す真似をする位ならば、 文字通り、死んだ方がマシだ。 私の中で中立を保っていた天秤が、家族からお母さんへと傾いた瞬間だった。 もう、神様も神事も何も知ったことじゃない。 やる事をやって後悔するか、やる事をやらずに後悔するか、二つに一つだ。 誰も傷付く事の無い愛なんぞ存在しない、だから、私は間女らしくお母さんを奪う、一切奇麗事を言うつもりも無い。 ……そうやって強硬な考えを保っていないと、今の私の心はすぐさま折れてしまいそうだった。 お母さんを放せず、家族も手放せない、そんな弱弱しい私の精一杯のあがきだった……。 「よいしょっ……と」 平服に着替えたお父さんが上座に座った。 今はまだ、このままでいいのよね、こうやって皆で夕食をかこむ、このままで……。 「……」 「姉さん?」 「お姉ちゃんどうしたの?」 「いのり?どうかしたのかい?」 ハッ、と気づけば、皆が私を不安げな表情で見つめていた。 「え?ううん、ちょっと考えこんじゃって、何でもないの」 すぐさま普通の仮面を取り繕う。 だが……。 「お姉ちゃん……泣いてるの?」 つかさにそう指摘され、私はその時初めて右頬が涙で濡れている事に気づいた。 「え……あ……」 こんな顔を全員の前で見せてしまった、言い訳が浮かばない。 『目にゴミが入った』嘘ですと言ってるようなものだ、『目薬さしたばっかりで……』嗚咽している理由が無い。 頭が上手く回らない、更に心配そうな顔つきになる皆。 「なぁ、いのり、一体……」 お父さんが第一声を発そうとした時だった。 「ちょっと姉さん、また泣いてんのぉ~~?」 急にまつりが呆れたような顔をして言った。 「「「え……?」」」 全員がまつりに素っ頓狂な顔を向けた、無論私も例外ではない。 「昨日一緒に「セカチュー」のDVD借りてきて二人で見てたのよ、そしたら姉さん隣でバカみたいにボロッボロ泣いてさぁ……」 ここに至って私はようやく、まつりが助け舟を出してくれている事に気付いた。 ―――――私は姉さんの味方でいるから。 あの時の台詞を思い出す。 本当に、この子は……。 「あ……ごめん、どうしても最後のシーン思い出しちゃって……」 何とか嗚咽をこらえ、まつりに返答を返す、心の中で何度もお礼を言いながら。 「いい加減一日経ったんだから泣くのやめなよ、姉さん涙腺脆くなっちゃったんじゃない?」 「ご、ごめん、気を付けるわ……」 皆の顔が安堵した表情に戻っていた。 「急に泣き出すからビックリしちゃったよぉ」 「何だ、お父さんもビックリしたよ」 「ごめんごめん……」 今度はまつりの心遣いに泣きそうになりながらも、そこは何とかこらえ笑顔を搾り出した。 「さ、じゃ冷めない内に食べようか」 皆で手を合わせて、ご飯に箸を付ける。 まつりのおかげで、この場を凌げた、感謝しないと。 そしてそのまつりに対して、恩を仇で返すような真似は……やはり避けたい。 先程の間女宣言はどこへやら、私は改めて一人では無いのだな、と実感した。 そうよ、例え神様が味方じゃなくても、この子は私の味方じゃないか―――――。 ……そんな安堵の中で私はご飯に夢中になっていた、だから、 その時のお母さんの思いつめたような、何かを決意したような表情に、気付く由も無かった……。 お母さんが食器を洗っている。 私は手伝おうか?と声をかけたものの断られ、テレビを一人で見ていた。 「いのり?明日は会社あるんでしょ?早めに寝なさいね」 相も変わらずニコニコと、やんわり言うお母さんに、私は照れくさそうに頷いてみせた。 確かに明日は早いしね……これ以上遅刻すればまたあの課長が黙ってないか。 「じゃ、今日は布団に潜るわ……お母さん、お休み」 「お休み、明日は起こさなくて平気?」 「ああ、大丈夫よ、携帯で起きれるから」 「そう、それじゃあお休み、いのり」 私の頬に軽くキスをすると、再び食器洗いに戻るお母さん。 背を向けたお母さんの頬にキスのお返しをして、私は部屋へと戻った。 携帯のアラームをセットする。 そのまま横になり、小説を読みながら眠気がやってくるのを待った。 ……そのまま三十分位読みふけり、ようやく睡魔が眠りへと誘う。 睡魔と共に、この先待ち受けるであろう事への不安も一時的に溶けていき……。 読みかけの小説を頭の上に置き、私は静かに眠りに落ちた……。 起きる。 アラームが元気よく私の耳元で騒いでいる。 うるさいな、もう少し静かに鳴れないのかしら。 自分でセットしておいて何をか言わんや、だが安眠を妨害された私の頭の中は不当な訴えを主張した。 まだ重い頭を軽くふって、アラームを止め、起き上がる。 服を着替え、鞄を持つと、リビングへと向かう。 「おはよう」 「あら、おはよう」 お母さんは台所で昨日と同じ様に食器を洗っていた。 今日はいつもより更に早く起きたというのに、既にお母さんは洗い物をしている、一体いつ寝ているのかと問いたくなる位に。 「ご飯、用意するわね」 お母さんが皿を出し、味噌汁を沸かそうとした瞬間、私は不意をついて後ろからお母さんに抱きついた。 「……」 一瞬体を硬直させただけで、お母さんは何の反応も起こさない。 昨日の言い知れない恐怖を味わったせいで……今まで以上に肌の温もりが恋しい。 「お母さんは、私のお母さんよね」 「いのり、どうしたの?」 「ごめん、もう少しこのままでお願い」 「……」 どれだけ、どれだけ気丈に心を打ち立たせても、すぐに後から湧いてくる恐怖。 この温もりを強制的に離されてしまう時が、来るかもしれないという、恐怖。 ああ、私って、まだこんな弱かったのか。 長女として、大人として、十分成長してきたように感じていたのは、まるで錯覚だったのだと、再び思い知らされた。 このまま二人で、お母さんを道連れに溶けてしまいたい、私の全てがそう叫んでいる。 そんな想いをぐっと抑え、私は静かにお母さんから離れた。 「ありがと」 「……」 一瞬、本当に一瞬、お母さんの顔に悲の感情がよぎったのを私の眼は捕らえてしまった。 気のせいだ、きっと、全然そう思えていなかったが、これ以上お母さんを心配させる訳にもいかず、無理やり笑顔でやり過ごした。 お母さんは、再び朝食の準備に取り掛かる。 時間はまだ6時過ぎたばかりだから、かがみ達が起きてくるのはもう少し後の話だろう。 「……はい」 コト、と私の前に置かれるご飯、沢庵、焼き魚に味噌汁。 食欲をそそられる匂いに私は少し、落ち着きを取り戻せた。 「今日は私も食べちゃう事にするわ」 そう言ってお母さんは自分の分も朝食も用意し、私の向かいに並べた。 お母さんと二人で朝食をとるのは久しぶりの事だ。 「「いただきます」」 二人で手を合わせ、私は焼き魚をつつく。 二人、何の言葉を交わすでもなく、唯黙々と箸を進める。 私と、お母さんだけの時間。 私と、お母さんだけの空気。 これ以上無い程に喜ぶべき状況では、ないのか? なのに、何で、こんなに……。 私の体は「痛い」って言ってるのかしら……。 「ご馳走様」 私達はほぼ同時に食べ終わり、食器を運ぶ。 そしてお母さんは後片付け、私はバッグから化粧道具を取り出し、薄く化粧を施す。 鏡を見て準備が整ったのを確認すると、後ろからお母さんに声をかけた。 「じゃあ、お母さん、行って来るわ」 お母さんは首だけをこちらに向け、 「いってらっしゃい」 いつもより静かな声が響いた。 「……」 私は玄関に向かう。 靴を履き、外へと出る。 風が、冷たい。 私にこれから起こる事を警告しているかのような、容赦ない冷風が私を冷やす。 何か、今までの冷たさとは根本的な違いがあるような。 それは、今までの私と違うからなのかもしれない。 切符を買う時も、小刻みに指が震えているのがわかる。 歩く、ただホームを目指して。 「あの」 後ろから、同じ位の年齢の女性に声をかけられる。 「切符、落としましたよ」 「あ……」 言われて初めて自分の手から切符が消えている事に気付いた。 「すみません、ありがとうございます……」 軽くお礼を言い、女性の手から切符を受け取って足早に駆ける。 「おはようございます」 「おう」 課長との軽い挨拶の後、私はサエの表情が暗く沈んでいる事に気がついた。 正直私も他人に気を回せる程余裕があった訳では無かったが、知らぬ顔をするのもどうかと考え直し、サエに向き合う。 「サエ、暗いわね」 「え……そう見える?」 「あからさまにそうとしか見えないわよ」 普段は明るい彼女なだけに、わかりやすい。 「どうしたの?何かあった?」 「うん……」 彼女は、少し間を置いて、 「フられちゃった」 そう告げた。 「……坂上君?」 「あれ、私、いのりに話したっけ……」 「聞いたわよ」 と、嘘をついた。 「そっか……」 何を言うでもない。 まだ、私の事が振り切れてないのかもしれない。 だとしても、今の私にとってはどうでもいいこと。 前の私であれば、こうも薄情では無かったと思う。 だが、もう私もいっぱいいっぱいなのだ。 そんな思いから、サエがつら憎くなった。 失恋できるだけでも恵まれてるじゃないか、私なんか――――。 ……。 もう、思うのが苦痛にしか感じない。 私は考え事から逃げる様に仕事に打ち込んだ。 「……」 私は屋上にいた。 普段は吸う事等無い煙草を加え、火をつける。 どう味わっても不快な苦味にしか思えない吸煙が私の肺を満たしていく。 だが今の私にとっては、この苦味すらもが心地よかった。 何で、こんな風になったのかしら。 「柊」 後ろから、声が聞こえた。 振り返らずとも判る、坂上君、か。 「屋上に来るなんて珍しいじゃない」 「そういう柊こそ、煙草吸ってる所なんて一度も見た事無かったぞ?」 「たま~に、ね……」 言葉だけ返し、相変わらず私の視線は屋上から下を見ている。 下は道路、ミニチュアみたいな車が暇なく動き、ごまつぶ程度にしか見えない人の群れがわらわら動く。 もう一度、煙を吐き出した。 高い所は苦手だった私が、屋上から身を投げ出しているような体勢であるにも関わらず、まるで恐怖を感じない。 隣で、坂上君もポケットから煙草を取り出し、火をつける。 しばし、二人の間に沈黙の時間が続く。 沈黙を破ったのは、私が先だった。 「フったんだってね」 「……え?」 「サエの事」 下を見続けていた顔を坂上君の方に向け、確認する。 「……本人から聞いたのか?」 「相手が誰かまでは聞かなかったけどね、あの子、坂上君好きだったみたいだし」 「そうか……」 本人は考え込んでいるような素振りを見せたが、私の興味をまるで惹く事は無い。 そもそも会話が見つからないが故の話題だ、話が途切れてしまえばそれまでだろう。 「もったいない事したわね、あの子、今時珍しい位いい子よ、親友の私が言うんだから間違い無いわ」 話を繋ぐ為に言わなくてもいい事を言う私の口。 だが、サエをいい子と言った私の言葉に嘘は無い。 あの子とは大学来からの付き合いになるが、他の人間より素直で、明るくて、初めて会った時から好感を持てた。 「そうだな、もったいない事したかもな……」 「そうよ」 坂上君が、何か言葉を繋ごうとしている、その表情は必死にすら見えた。 そして――――。 「……未練たらしく思われるだろうけど、まだ、お前の事吹っ切れてないからだろうな」 「……」 「こんな事言われたって迷惑なのは判ってる、でも、中々上手くいかないんだよな、吹っ切ろうとは思っても」 ……そう言われた私の心境を一言で語れば。 「迷惑」を通り越して「怒り」だったのかも知れない。 何を、何を言ってるのこの男は。 それを私に宣言してどうなる訳? 不安、苦しみ、恐怖……全てが私を怒りへと掻き立てる。 それをぶつける相手を見つけたと言わんばかりに、私は坂上君に対して、さも滑稽だと言うような顔を作ってみせた。 「本当に迷惑ね、アンタさ、それを私に話して何を望んでんの?」 「あ……俺は別に望んでるとか」 「ハッ、ずっと待ってればいつか私がアンタに傾くとでも思ってんの?バッカじゃない?」 私じゃない何かが、体を乗っ取ってしまったかの如く、攻撃の対象となった人物を容赦なく責め立てる。 「それでも僕は諦めないよ――、って?今時凄いわねアンタ、呆れを通り越して賞賛に値するわ」 「そんな事言ってねえだろっ!」 思わず声が荒くなる坂上君に対して私は逆に冷めた表情になる、顔に失笑すら貼り付けて。 「じゃあ何よ、同情でもしてほしい訳?いいわよ別に、女にフラれてそれを理由に別の女をフって申告しに来た可哀想な坂上君―――」 坂上君の手から煙草が落ちる。 「これで満足でしょ?良かったわねー好きな女に慰めて貰えて、……だからもういい加減諦めたら?想い一つ断ち切れませんだとか、女々しい事言ってんじゃないわよ……!!」 その言葉は、同時に私にも向けられていたが故に、私の心をも酷く抉った。 坂上君の手が、私の腕を掴みあげる。 抵抗しようと思えば出来ただろう、だが、私は動かなかった。 ……そのまま動かぬ事、一分経っただろうか。 暫く私を睨み付けていた目が、急に力を失った様に下を向き、掴んでいた手も、私から離れた。 「お前、変わったな……」 落胆したような、失望したような、そんな響きを含んだ声。 「ええ、変わったわよ」 軽蔑したければ、すればいい、そんな些事、今の私にとっては問題になり得ないんだから。 「変わるに決まってるじゃない……」 その呟きは、坂上君に向けたものと言うよりは、独り言に近かった。 「わかったら、もう放っておいて……私はアンタに回してやれる心なんてこれっぽっちも残ってないのよ」 「……」 俯いたまま、この場を去っていく坂上君。 これで一人、友達を失くしたわね……私の何処かが無責任にそう思った。 じく……と今更になって胸が痛み出す。 攻撃対象が消え、後に残った物は、喪失感と疼きだけだった。 坂上君でこの痛みだ、果たして、お母さんを失う時の痛みはどれ程のものだろうか。 考えただけで、気を失いそうだ。 「つ……」 強くなっていく疼きに思わず声を漏らす。 一歩踏み出すも、足がもたれる様に膝から崩れた。 「……」 ああ、ここまで参ってるなんて。 片方の膝に力を入れ、なんとかもう一度立ち上がると、振り返らずに屋上を後にした。 「いのり……何か食べてく?」 サエがやはり朝と同じ調子で私に声をかける。 恐らくサエは、本当はそんな気分では無いのだろうが、私への義理として声をかけたのだろう。 そして、その私は、その義理にすら答えられる元気も残っていなかった。 「遠慮しとくわ、食欲も無いし……」 「そっか」 お互い、それ以上言葉を交わす事も無く、私は足早にロッカールームへと足を運ぶ。 着替え、外に出てみると、朝以上に冷たい風が私の体を攻撃してきた。 「……」 これ以上、外の冷気に己の体を晒していたくない。 早く、家に帰ろう、私の足は風に逆らうようにして駅へと急いだ。 夢の世界へ連れていって (2)に続く コメントフォーム 名前 コメント
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・・・ 唯「皆落ち着いた?」 澪「うん・・・」 律「ごめんな、澪むぎ・・・」 紬「ううん、私が悪いの」 澪「いや、私こそごめん・・・」 澪「なあ、私ちょっと私梓の家いってくるよ」 唯「私も行くよ、ね?りっちゃんもむぎちゃんも行こう?りっちゃんもあずにゃんの事嫌いなわけじゃないんでしょ?」 律「ああ・・・」 紬「もちろん」 ・・・ ピンポーン 梓「はい」 唯「あずにゃん!さっきはごめん、みんなで謝りにきたんだ、出てきてくれないかなあ?」 梓「・・・ごめんなさい唯先輩、今は話したくありません、帰ってください」 唯「え?そんな事言わないで、あずにゃん!」 ブチッ 澪「梓・・・」 唯「・・・・・・」 紬「・・・・・・」 律「はぁ・・・じっとしてても変わらない、帰ろう、梓もああ言ってるんだ」 澪「ちょ、こうなったのは私達のせいなんだぞ、梓に謝って何とか分かってもらわないと」 律「私もさっきのはふざけすぎたしいいすぎたと思ってる、でも今は謝まれる時じゃないと言ってるんだ、時間が必要な時もあ るだろう?」 澪「・・・・・・」 唯「・・・・・・」 紬「・・・・・・」 唯「そうだね、そういう時もあるかもしれない、かえろっか」 紬「うん・・・」 澪「分かった・・・それが必要な事であるなら・・・」 ・・・ 唯「あ、横断歩道の信号変わっちゃう」 律「やば、急げ!」 プップー 澪「あ」 紬「信号変わっちゃったね」 唯「澪ちゃんとむぎちゃん渡れなかったみたいだねー」 律「しょうがないな、待ってよう、私と唯なら突っ走ってくるだろうけどあいつらはそれをしないだろうしな、危ないし」 澪「はぁ・・・」 さっきの私は、どうしたら良かったんだろう、むぎに聞いてみようかな、私じゃ判断がつかないよ 澪「なぁ、むg」 『お前がそれを言うのかよ、部長のくせにお前が頼りないからこうなったんじゃないか』 !!いやダメだ、弱い所は絶対に見せられない、部長は頼りになる強い存在でいなくちゃいけない、私一人で考えていか なくちゃいけないんだ、そうでないと強くないとみんなに愛想つかされちゃうよ・・・ 紬「どうしたの?澪ちゃん」 澪「あ、いや、じっとしてたら寒いから早く信号変わらないかなって」 紬「うん・・・そうね」 ・・・澪宅・・・ 澪「はぁ・・・難しいよな、見てる分には楽だけど実際の立場に立つとそうじゃないって身を持って思い知らされた、律が部長 の時は一体どうしていたんだろう、どんな気持ちだったんだろう」 澪「あいつはこんなに私みたいに気にしないのかな、私が気にしすぎなのかな」 澪「自惚れじゃないけどあいつに見えているものは私にも見えると思っていた、私に見えるものはあいつにも見えると思った、 でもそうじゃなかったんだ、今日それが分かった・・・」 澪「はあ・・・律私は部長としてどうすればいい?」 ・・・翌日学校・・・ 唯「おいっすー!」 律「おいっす!」 紬「おはよう」 澪「おはよう、みんな梓から何か連絡・・・え?」 梓の事を聞こうと皆を見渡す、だが一人だけいつもと違う言葉では説明できない違和感を纏った人物がそこにいた その原因を必死に探す、なんだ?どこが違う?そいつと眼があう、そして気付いた、その正体は突き刺すような射抜くような眼 、違和感の正体は・・・律のその眼だった 澪「り、律お前アイプチか何かしてるのか?」 律「アイプチ?いや別にしてないけどなんでそんな事いうんだよ?」 澪「いやなんか律の眼がこわいっていうか、おかしいっていうか」 律「おかしいのは澪ちゃんでございますですよ?」 澪「なんだとぉ」 律「唯私の眼なんかおかしいかな?」 唯「ううん、いつもと一緒だよ、澪ちゃんの気のせいじゃないかな」 澪「そうかな・・・」 ・・・部活時間・・・ 律「梓来ないな」 澪「むぎもこないな、先生に呼び出しでも受けてるのか?」 唯「むぎちゃんなら帰ったよ、さっき帰る所みたもん」 律「え、まじで?」 唯「まじまじ大マジだよ、なんか急いで帰ってたよ、あれ誰か連絡受けてないの?」 澪「受けてないけど・・・」 律「ええ、はやく言えよ!!でも連絡なしなんてむぎにしては珍しいな」 むぎこんな状態の軽音部が嫌で帰ったのか?いやただの用事だよな、多分・・・そうだよな 唯「むむ、なんかいきなり寂しくなっちゃったね軽音部・・・」 澪「ぁ・・・ごめん」 唯「なんで澪ちゃんが謝るのさ、変なの」 そうだ頭では分かっている、でも心が悪い方へと物事を考えてしまう、律が部長の時に上手くいっていた軽音部が私が部 長になった途端、ぎこちない方へと進路を向けた もしむぎが急な用事ではなくみんなに見つからないように足早に早く帰っ たんじゃないかとか、梓はもう完全に愛想を尽かしてこのまま疎遠になるんじゃないかとか。 律「今日はやる事ないしもう帰ろうか」 唯「そうだね、ね?一緒に帰ろう」 澪「ごめん、私はもうちょっと部室に残っていくよ、やりたい事があるんだ」 唯「そっかぁ・・・、じゃあ帰ろうかりっちゃん」 律「ああ、ちょっと帰り寄りたい所あるんだけどさ」 バタン 澪「・・・・・・」 澪「・・・・・・けっこう堪えるよ、むぎ、梓・・・」 澪「・・・うぅ」 ・・・翌日・・・ 唯「でさー」 紬「ええ」 はぁ・・・私からはむぎに昨日部活になんでこなかったか聞きにくい、誰か聞いてくれないかな 唯「そうだ、むぎちゃーん何で昨日部活こなかったの?何か特別な用事?」 おお、ないすだ唯、利用したみたいで気がひけるけど便乗させてもらおう 紬「あ、昨日はごめんなさい、ええ、急な用事が入ってしまって行けなかったの」 良かった、やっぱり急な用事だったんだ! 澪「そっか、なら仕方ないよ、じゃあ今日は」 紬「今日も・・・ごめんなさい」 澪「あ、そっか・・・今日も用事か、用事で来れないのは仕方ないよな、はは、いいんだ・・・」 紬「ごめんね、それじゃあ、授業の用意するから、またね」 澪「あ、ちょ」 そんな逃げるように行かなくても・・・それに理由も話してくれないなんて、むぎはやっぱり・・・ 澪「・・・ぐす」 ・・・部室・・・ 律「なんで澪以外だれもいないんだ?梓はともかくとして唯とむぎまでいないなんてな」 唯まで・・・ 澪「私が部長だからだよ・・・」 律「ん?何か言った?」 澪「何でもないよバカ律」 律「何でもないのにバカって何だよ、意味わからないし、ちょっとひどいぞ?」 意味が分からない?どうして気づいてくれないんだ、きっと唯とむぎは愛想つかしてこないんだ、梓ももう・・・私が部長だから 。 律「こんだけいないと練習もへったくれもないな、帰ろう、澪」 澪「帰らない」 律「何かお前おかしいな・・・大丈夫か?」 澪「・・・・・・」 律「はぁ・・・言ってくれないと分からないよ、もう私は帰るよ・・・じゃあな」 バタン 澪「・・・・・・」 澪「・・・辛い・・・」 澪「うぅ・・・泣きそうだよ」 澪「ぐす・・・ひっく・・・ひっく・・・りつぅ・・・」 憂「それは泣いてるっていうんですよ」 憂「泣いてるじゃないですか」 澪「!!う、憂ひゃ、ん!?」 憂「お姉ちゃん今日お休みするって伝えにきたんですけど澪さんがこうなっている事は存外でした、泣く事で気持ちが晴れる なら泣くべきだと思いますよ、その方が物事を冷静に見定めれる」 澪「え?ひっく、唯は私に愛想つかじてごないんじゃ・・・」 憂「何の話ですか?お姉ちゃんは今日あの人達が帰ってくるからお休みするだけですよ」 澪「あの人達?」 憂「お父さんとお母さんです」 ぁ・・・私の勘違い、思い違いだったんだ、そうだ、普通にしてたら部活を休む事くらいあるじゃないか、それを私は唯は部活 がこんな状態だから楽しめないから来ないと勘違いして・・・ 憂「あと梓ちゃんですけど先輩達にひどい態度とっちゃって部活に行きにくいちゃんと話し合いたいって相談うけましたよ、澪 先輩から手差し伸べてあげては?」 梓も・・・部活来てくれようとしてるんだ・・・ 憂「律先輩がなんかしてくれたからこういう気持ちになれたとかなんとか言ってましたけど」 澪「・・・・グス」 憂「聞いてない・・・」 澪「ぐすっ、よがっだ、ちょっとだげ胸かしてもらっでも・・・ひっく、いい”?」 憂「はぁ・・・どうぞ」 澪「うっうっうぇぇん、憂ぢゃぁあん、憂ぢゃぁぁぁん」 ダキッ 憂「あっ、んん・・・」 澪「ふぇぇぇん」 憂「す、すいません・・・もうちょっと顔を右に・・・」 ・・・ 憂「もういいですか?」 澪「うん・・・ごめんね、みっともない所見せて」 憂「構いませんよ、周りに人がいるだけで助かる事もあるっていいますから私がいることで澪さんの気が紛らうなら」 憂「さて話は変わりますけど原因は掴めましたよね?」 澪「原因?」 憂「そう、澪さんがこんな状態になっている原因、もうそんな状態だから気付いてると思って」 澪「え?」 憂「そんなやり取りは不毛です、部室を訪ねると泣いている澪さん、何もなかったなんて言わせない」 憂「ふむ・・・そうですね、ここ最近澪さんに起こった事、感じた事教えてくれますか?後この世界が改変する前の出来事も お願いします」 澪「う、うん」 私は数日前からここ数日の出来事、思った事を全て憂ちゃんに話した 律が部長を辞めると宣言した事、部長だから感じる大変さ、孤独感、不安感全てを打ち明けた、本当に色々な事を話した、ほんのちょっとの期間だったけどそれ程私は 様々な事を感じ取っていたのだと思う 憂「そうか、だから律さんは世界を」 澪「律?律がどうしたんだ?どういう事?」 憂「澪さんが部長として感じた事体現した事、それは律さんが部長の時に日頃から感じ恐れていた想像恐怖不信感、それが澪 さんへと降って来ている」 憂「つまり・・・恐怖に耐えられなくなり自分の苦しみを澪さんに押し付けた、律さんは部長としての責任から重圧から逃げ たんです」 澪「な、律はそんな事しない、それにあいつは私と違って弱くないし律にとってはそんなささいな事で」 憂「そんなささいな事・・・?律さんは澪さんがいうそんなささいな事を3年も感じていた、その辛さが澪さんに全て分かるんで すか?それに何か、律さんは弱くないからって責任から重圧から逃げちゃいけない理由でもあるんですか?」 憂「人をまとめる立場にある人は精神力が頑丈でないと潰れてしまう、自分から人が離れていく恐怖感、自分 の判断ミスで物事が上手くいかなくなる不安感・・・他にもある、それは思い入れが深い程、自分の首を絞める結果に繋がる」 澪「・・・確かに律は辛かったかもしれない、でもあいつは部長で私達を引き入んでそんな簡単に逃げていいもんじゃないだ ろう!」 憂「そう、律さんもそう思っていた、だからこそ逃げてはだめだと思った、でもそれが逆に律さんを苦しめ、皮肉にも逃げさせる 口実になった」 澪「ならなんでそんなになるまでなんで私達に相談しなかっ」 澪「あ・・・」 澪『!!いやダメだ、弱い所は絶対に見せられない、部長は頼りになる強い存在でいなくちゃいけない、私一人で考えていかなくちゃいけないんだ、そうでないと強くないとみんなに愛想つかされちゃうよ・・・』 憂「律さんは頼りたくても頼れなかった、自分は部長だから、強い存在でないとならないから、だけど気づいてほしかったとも 言える、唯一無二の親友だけには澪さんにだけには」 憂「それが澪さんがこの世界で部長になった理由、これは律さんの独りよがり、澪さんに自分の苦しみを気づいてほしくない が故に気づいてほしかった」 憂「心では重圧から部長を辞めたいと願っていた、だけど今まで感じていた楽しさから軽音部自体は続けたいと思っていた 」 憂「しかしあの人はそういう所では律儀な人格者だったという事ですかね、そんな虫のいい事は自分の中では通らない、だ からケジメをつける為にあの日部長を辞め軽音部にはもう来ないと言った、しかしそれは律さんにとっては耐えられるもので はなかった」 憂「だから願った、この世界を」 澪「そんな・・・じゃあ」 憂「つまりこの世界を改変し創りだしたのは・・・」 --律だった。 澪「・・・・・・」 憂「それで澪さんに落ち度はあったとはいえ突然軽音部に亀裂が入った、即ち必然、澪さんに気付いてもらう為に・・・でも だとしたら」 憂「この世界は澪さんに苦しみを気づいてほしいが故に律さんによって定義づけられ創られた世界、今回の軽音部の一件 も一例であってこれを回避したとしても又、何度でも律さんが感じてきた全ての想像恐怖不信感を感じさせる為に澪さ んに同じような事が降りかかる」 澪「そんな・・・じゃあ又軽音部がばらばらになる・・・」 憂「そう見て間違いないと思います」 澪「・・・・・・」 憂「落ち込んでるんですか?それともこの世界に自分を巻き込んだ律さんを卑下しているんですか?」 澪「分からないよ・・・」 これは私の素直な感情、混乱しているのだろうか、ただ胸の中を色々な感情がぐるぐると渦巻いていた 憂「そうですか、私は別に律さんがひどい事をしたとは思えない、なぜなら人は皆弱く自己中心的な生き物だし、皆同じような事をしてきたから、でもそれ故に長い歴史を携え世界を創ってきた、私言いましたよね?」 憂「"世界は割と頻繁に改変してる"って」 澪「うん・・・」 憂「数多の願いが交錯し、世界は変わってきた、いや、人が変えてきた、世界はそれについていくだけ、いつだって人は世 界を変えてきた、それは自然な事、摂理、だから私はこんな世界に不満はないし律さんに罪もない」 澪「じゃあ私はどうすれば・・・」 憂「この世界で生きてくか元の状態へ戻るかの二択です」 澪「元の状態に戻れる・・・?」 憂「律さんの願いを打ち消すっていった方が正しいですが・・・原因がはっきりしましたからね、まだやる事はありますが道は見 えていると言ってもいい」 憂「どちらを選ぶかは澪さん次第、全ては澪さんが決める事、でも敢て言うなら」 澪「?」 憂「澪さん何で律さんは澪さんをこの世界に順応させなかったんだと思います?」 澪「え?」 憂「それは、何も気付けなかった澪さんへの罰」 澪「罰・・・?」 あ、またこの違和感・・・ 4
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「嫌です。そこはかとなく身の危険を感じます」 「何もしないよ! 私のこと何だと思ってるの!」 「でも実際、もしあなたが変な気を起こしたとき、私じゃ何の抵抗もできませんから」 「それなら今だって変わらないじゃないか。ほら、こうやって私が迫ったらーー」 「きゃっ!」 「ベルもそんな可愛い声が出せるんだね、誘ってるのかな?」 「……何言ってるんですか? 早く離してください、怒りますよ」 「ふふっ、照れてるね。さっきの声がそんなに恥ずかしかったのかな? 大丈夫、とても可愛かったよ」 「……絶交ですね」 「え?」 「絶交だって言ったんです、今すぐ帰って、もう顔を見せないでください」 「あ、ご、ごめん! そんなつもりじゃ……」 「……」 「ごめんなさい! 調子に乗りました! もうしません!」 「早く消えてくださいよ、衛兵さん呼びましょうか?」 「待って! 何でもする! お金も時間も私自身も全部好きにしていいから! だから……だから嫌いにならないで! ねえ、お願いだから……!」 「うわ……必死すぎて引きますね」 「ほ、ほら、何でもいいんだよ? そうだ、まず忠誠の証に私の全財産を渡そう。ね、ね? これで信じてくれるかな? そしたら手は切っちゃおうか。これなら安心だろう?」 「必死すぎですって。それにさっきのは冗談ですから」 「え……本当?」 「本当です。だから泣いて縋りつくのやめてください。私がひどいことしているみたいじゃないですか」 「うっ、ぐすっ、ひどいことしてるじゃないかぁ! 私の気持ちを知りながら! 試すように弄んで!」 「嫌いになりました?」 「好き!!!」 「重症ですね……。ていうか“気持ちを知りながら弄んで“なんて言いましたけど、私はちゃんと断っていますよね? あなたが勝手にまとわりついてきているだけですよね?」 「うう、それは……そうかもしれないけど……」 「そういうのストーカーっていうんですよ。私が見逃しているだけで、それこそ衛兵さんに言ったら捕まりますからね? 自分の立場を弁えてください」 「……はい、ごめんなさい。私はベルの優しさで生かされているだけの存在です」 「別にそこまで卑屈になれとはいってませんけど……まあ、今回はちょっと私も悪ふざけが過ぎたかもしれないですね。すみませんでした」 「いいよ別に、たしかに私はベルに何かを要求できるような立場じゃないし? ベルが私の機嫌を気にする必要なんてないじゃん」 「はあ……。ほら、こっち来て、なでなでしてあげますから拗ねないでください」 「うん……」 「本当にこれ好きですよね、母の愛に飢えていたとかですか?」 「ううん。ベルだから、ベルが私を認めてくれたって感じるから好き」 「そうですか、ちょろくて助かります」 「またそうやって意地悪言う……」 「はいはい、ほらもう機嫌直して」 「……」 「……」 「…………んっ…………はあ、はあ」 「……あのー、頭撫でられただけで、息が荒くなるほど興奮するのはさすがにどうかと思いますよ」 「んっ! ち、違うよ? いくら私だってそんなーー」 「はあはあ言いながら顔真っ赤にして、耳も熱くなってますけど?」 「ち、ちが……わない、けど、ベルが、耳とか首筋とか、撫でるから……」 「やっぱりそうじゃないですか。それと人のせいにしないでください、まったく……もうやめますよ」 「ああっ、やめちゃうの? ほら、お腹も撫でていいんだよ?」 「犬側に寄りすぎですよ、なに寝転んでるんですか」 「服従のポーズ、もう何でもしてくださいの意思表示。あ、でも何もしてくれないなら私はこのまま駄々をこねるつもりだから」 「完全に駄犬ですね……出会った頃のニャングオウさんはどこへ……?」 「ベルが拾ったんだからね? ちゃんと責任持って飼ってくれないとダメだよ、ご主人様?」 「めんどくさ……」 「いまめんどくさいって言った!? 前にも言ったけど、あまりぞんざいに扱うなら泣くからね? 私はもう恥も外聞もなく大声で泣き叫ぶからね?」 「それこそ、私も前に言いましたけど、そんな情けない人はお断りですから」 「はうぅ……」 「弱すぎる……もっと減らず口でしたよね? しかも本当に涙目になってるじゃないですか」 「ぐすっ、だって、ベルに、嫌われたくないから……」 「そんなことで嫌いにはなりませんよ。あーもう、お腹でも何でも撫でてあげますから泣かないでくださいって」 「えへへ、ねえ、本当に泊まっちゃダメ?」 「え、いや、別にどうしてもダメってわけじゃないですけど……」 「ごはん作るし、掃除もするよ?」 「いつもしてるじゃないですか」 「1万G払うから」 「私神官ですよ? 違う人当たってください」 「私の身体もつける。一晩中好きにしていい」 「それはあなたの願望ですよね?」 「じゃあどうしたら泊めてくれるの! あー、お泊りしたいお泊りしたいお泊りしたいお泊りしたい!」 「うるさ……。もういいですよ、めんどくさい。泊まっていいですから静かにしてください」 「いいの!? やった!」 「また何かしたら追い出しますからね、次は本当に絶交ですよ?」 次回、お泊り編。 ベルの服を着たがるニャン、隙あらばベルと同じベッドで寝ようとするニャン、先に寝たベルを見て理性が効かなくなるニャンを予定。 僕はもっとニャン虐がしたかったんだ……! 本当に全財産と手足を捧げたり、撫でられながら延々とヴィスタリアの話をされたり、ワン以外の発言を禁止したりするはずだったんだ……。 全部ベルさんがヘタレなせいでできなかった。何が「たまには性格の悪いキャラをやりたい」だ、全然できていないじゃないか。口だけか? おん?