約 1,237,001 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2699.html
ゆっくり実験02 ~ありす掘削~ 作:アイアンマン やあ。僕は人里に住む普通のお兄さん。 以前、ゆっくりまりさの底をぐるっと切って、皮を持ち上げたりした者だ。 あれ以来、ゆっくり実験には手を出していなかったんだけど、今日たいへんなことが判明した。 「えへっ……実は私も……好きなんだ。ゆっくりいじめ」 可愛らしく笑ってぺろっと舌を出したのは僕の妹。 「おまえもか」 「うんっ♪ だからお兄ちゃんといっしょに、虐待したいしたい、した~い♪」 そう言って僕の手に取り付き、ぴょんぴょんと跳ねる。 セミロングの髪とミニスカートがはためき、健康的な太腿がちらちらと見える。 僕は普通のお兄さんだが、妹が好きだ。 妹が好きでも別に異常ではないことは、多くの人に賛成してもらえると思う。 賛成してもらえるよね。 可愛い妹のためとあれば、やらないわけにはいかないだろう。 「で、こいつか」 「うん、あたしはこれが好み」 そういって僕たち二人はテーブルの上に目を注いだ。 そこにいるのは金髪に赤いカチューシャを差したゆっくりだ。 「ゆふん、ゆっくりしていってね!」 ゆっくりありす。 まあ説明の必要もないと思うが、マスクメロンぐらいの大きさで、健康そうだ。 「冷蔵の赤ちゃん状態で買ってきて、手塩に掛けて育てたのよ。 この四ヵ月、ず~っと仲良く暮らしてたんだから。ねー、ありす」 「ゆっ! まちがえないでちょうだいね、ありすがなかよくしてあげたのよ! とかいはなわたしとくらせて、おねえさんもゆっくりできたでしょ?」 ありすはそう言って、自慢げにふんぞり返った。 僕の胸の底で、メラッと何かの炎が燃える。 ――すると妹が、しっとりした華奢な指で僕の手をキュッと握った。 「ね、可愛いでしょ?」 天真爛漫な笑顔の奥に、異質な気配が見える。 うんうん、さすが僕の妹だ。ただ単に美少女なだけじゃなく、ミステリアスで素敵だなあ。 「それで、この仲良しありすを、やっちゃうの?」 「そう、やっちゃうの♪」 嬉しそうにうなずくと、妹はいそいそと準備を始めた。 ありすは、いくら都会派を自称していても、しょせんは空気の読めないゆっくりなので、間の抜けた質問をする。 「ゆっ? ゆっ? なにかたのしいことをするの? ありすもさんかしてほしいんじゃなくて?」 「ああ、ありすも一緒に遊ぼうなー」 僕は平和そうな雰囲気を装って、ありすの髪をなでてやった。 「き、きやすくさわらないでほしいわね! ぷんぷん!」などと頬を赤らめながらも、身を任せるありす。 ああ、こういうところは可愛いな。 もちろん、可愛いからって手を緩める気はない、というか可愛いからこそやっちゃうんだけど。 そうこうしているうちに妹が準備を整え、ありすの前に何かを差し出した。 「はい、まずはこれを召し上がれっ」 「ゆ、なにかしら?」 皿に盛ったクッキーだ。あら、これはほんとにとかいはなおかしね! とありすはよだれを垂らして平らげる。 「むーしゃ♪ むーしゃ♪ しあわせえええ……っと、こほんこほん! まあまあね」 などと気取った態度を取ってはいたが、五分も立たないうちに目がトロンとしてきた。 クッキーを口から落として、すやすや……と眠り込んでしまう。 僕は妹を見る。 「眠り薬入りなんだ?」 「そう。でも普通のとはちょっと違うの」 「どんな風に?」 「強い鎮痛作用があるんだって。眠り薬って言うより麻酔薬だね」 「そんなもの、よく手に入ったね」 「ショップで普通に売ってたよ?」 さすがゆっくりショップ。多様なニーズに対応しているらしい。 「さぁて、ここからがいよいよイジメです……あふん、ドキドキする」 言いながら妹が取り出したのは、奇妙で武骨な器具だった。 垂直に立つ枠のようなもの。さながら刃のないギロチンとでも言うべきか。 「ここに、ありすちゃんをハメまーす……」 メロン大のありすを枠の中央に収め、上の横木を下ろして挟み込んだ。ありすは固定され、動けなくなる。 作業しながら、妹がささやく。 「ごめんね、ありす。仲良くしてきたのにね。ショッピングにいったし、サイクリングもしたね」 言いながら電気バリカンを持ってありすの後ろに回り、綺麗な金髪をガーッと剃り始めた。 「大好きだよ、ありす。かわいいよ、ありす……」 なんか膝をもぞもぞこすりあわせ始めた。ほっぺたがほんのり赤く染まっている。 僕は思わずごくりと唾を飲んで、妹の肩に手をかけた。 「ひゃん!」 ビクッ、と震えて妹が振り向く。僕は何度もうなずいた。 「うんうん、わかるよ、今のおまえの気持ち」 「やだ……」 とうつむいた妹が、ふと何かに気付いたように顔を上げた。 「そっか、お兄ちゃんも、なんだ……?」 「そうさ。僕だって、まりさをいじめたときには……」 「ああ……お兄ちゃん! やっぱりあたしのお兄ちゃんだぁ……♪」 花が咲くようにふんわり微笑んだ妹に、僕は愛情をこめて頬ずりしてやった。 「さあ、何はともあれ、これを続けなきゃ」 「うんっ、そうだね! 薬の効き目が切れちゃう。そうそう、お兄ちゃんにも役柄があるの。手伝ってね!」 明るく元気にうなずくと、妹は残りの準備をてきぱきと進める。 ビデオとディスプレイの設置、配線、そして術具の配置など。 すべてが終わると、僕たちはありすの前の椅子に腰掛けた。 「さあ、ありす、目を覚まして……」 すでにパンツの中が大変なことになっちゃってるらしい。 スカートの上から股間を直したりしつつ、妹がありすの顔の前に気付け薬をかざした。 「ん……ゆ……くちゅんっ!」とくしゃみをする。人間でいえばアンモニアを嗅がされたようなものか。 うっすらと目を開けたありすが、しぱしぱと瞬きして状況を把握しようとする。 右手に僕、左手に妹。 そして正面には大画面の液晶モニター。 「「ゆっくりしていってね!!!」」 僕と妹のかけた声に、ありすはびくっと驚いた。 「ゆ、ゆっくりしていってね……?」 そして落ち着きなく、辺りを見回そうとした。 動かない。 いや、動けない。 ゆっくりありすは体を動かせない。顔を押さえる枠のせいだ。 そして、そちらまで視界が届かないので、なぜ動かないのかも分からない。 おまけに薬で思考が鈍っている。 「ゆ? ゆ? なんなの? ゆっくりうごけないわ?」 きょときょとと左右を見るありすの前に、いきなり妹が、ずいっと身を乗り出した。 「ねえ、ありす!」 「ゆっ?」 僕の横に小ぶりなお尻をツンと突き上げた姿勢で、テーブルに手をついて妹はありすに詰め寄る。 「今日はあなたに見てもらいたいものがあるの」 「ゆ、そんなことより、ありすはゆっくりうごきたい――」 「いいから、ね、見て! きっとゆっくりできるわよ?」 押しかぶせるように言うと、妹は身を引いてリモコンの電源ボタンを押した。 ぱちっ、と映像が映し出される。 板の上に乗っている、白いものの映像だ。もっちりとして柔らかそうな楕円状の物体。 かなりアップにしてあり、その白いものと、台になっている板以外は映っていない。 「ありす、これがなにかわかる?」 妹が聞く。ありすは眉をひそめ、ふるふると首を振――ろうとしたが、枠に阻まれて失敗し、目だけを横に動かした。 「わからないわ。ねえ、ありすはゆっくり――」 「いい、見ててね? ありす」 ありすを無視して言った妹が、目顔で僕に合図した。 僕はうなずき、席を立って離れる。ありすがとまどったように言う。 「あら? おにいさんはどこへいくのかしら?」 「さあね?」 妹がしらばっくれたその時、画面に変化が起こった。 刃物を持った人間の手が現れたのだ。 その手は、ためらいなく刃物を白いものに突き立てた。ぷつり、と弾力のある生地に刃が食い込む。 手はそこでいったん止まった。妹がありすに目を移す。 「ありす、これをどう思う?」 「ゆぅ……? いみがわからないわ」 「そう? じゃあもう少し見てて」 手が再び動き出し、白いものに切れ目をつけていった。 さくり……さくり……と刃が生地を切る。そのたびに妹がせわしなく瞬きする。 足を組み替えて、ぎゅっと力を入れたのが分かる。両手で自分の胸を抱きしめた。 僕はにやにや笑う。妹の気持ちがわかる。 声をかけたかったが、そうするわけにはいかない。声を出したら僕の居場所がありすにばれてしまう。 さくっ……と生地を四角く切ると、画面の中の手は、生地をめくりあげた。 もちもちとした生地がぐにゃりと持ち上がる。 と、その中で形を保っていた黄色いねっとりしたものが、とろぉり、とゆっくり垂れてきた。 妹が身を乗り出し、唇を震わせて尋ねる。 「ね、ねえ、ありす。ほ、ほんとになんとも思わない?」 「ゆゆぅ……?」 ありすは眉をひそめて映像に目を凝らしているらしい。クイズか何かだと思ったのかもしれない。 「これは……なにかしら。やわらかくて、もちもちしているわ」 「うん、そうね」 「なかから、とろとろしたものがたれてるわ。なんだかゆっくりしたものにみえるわ」 「そう、そうよ」 「でも……なにか、なにか、ゆっくりできないかんじが、す、る……」 「うんうん……うんうん!」 期待を込めてありすの顔を覗きこんでいた妹が、しばらくしてから、僕に目配せした。 僕は静かに歩き、妹のそばに戻った。考えこんでいるありすの前に、コトリと皿を置く。 「ゆっ?」 目を上げたありすが、皿に気付いた。その顔を、ふわりと甘い香りが撫でる。 皿には、スプーンで盛りつけた黄色いカスタードクリームが乗っている。 「あら……あまあまだわ! とかいはなにおいのするあまあまだわ!」 口の端によだれを浮かべて、ありすが僕を見上げた。 「これをありすにくれるのね? ありすがたべていいのね?」 「いいけど、あたしもほしいなあ……」 「ゆっ! いいわ、おねえさんたちにもあげるわ! ありすはやさしいのよ!」 気取った調子でありすが言ったので、僕と妹は顔を見合わせ、一緒に食べ始めた。 「あーん……おいし」 「ありすにも! ありすにもあげなきゃいけないでしょ!」 「わかってるって。はい、ありす。あーん……」 「あーん……ぱく! ぺーろ、ぺーろ♪ しあわせええぇ♪」 口を開けて目に涙を浮かべ、ふるふると感動するありす。 ゆっくりの性質だとはいえ、こんなときでも感動してしまうなんて、業だなあ。 「おいしいよね、クリーム」 もうひと口、自分で味わった妹は、次にすくったクリームを僕に差し出した。 「はい、お兄ちゃん♪」 「いいの?」 「んふ、あたしが大事にしてきた……クリーム、食べてね」 中ほどのところは言葉を濁して言い、妹がスプーンを向けた。僕は口を開ける。 「はい……」 妹の唾液のまだ残るスプーンを、僕はぱくりとくわえた。 じっくり舐め取って、と言わんばかりに、妹はじわじわとスプーンを引き抜いた。 そして、僕の唾液の残るスプーンでクリームをすくい、僕に見せ付けるように桜色の唇にくわえて、ねっとりと舐め取った。 上気したような上目遣いでささやく。 「ごめん、あたしのスプーン、使わせちゃって……」 「いや、いいよ。僕は平気」 「そうなんだぁ……♪ うれし」 小悪魔みたいに色っぽい笑みを浮かべると、妹はわざとクリームを残すような舐め方をして、僕にも使わせた。 僕もお返しに、口に入れたクリームをかき混ぜてからスプーンに載せて差し出し、妹に舐めさせてやった。 そんな甘甘プレイを兄妹でやっていると、ありすが「ぷくぅぅ!」とふくれてしまった。 「おねえさん、おにいさん! ありすにももっとくりーむをよこしなさいな! ありすはもっとほしいわ!」 仲間はずれにされた悔しさからだろうが、それを聞いた妹が、また目を輝かせて身を乗り出した。 「もっと? ありす、もっとほしいの?」 「ゆん、そうよ! ゆっくりもってきてね!」 「ほんとうにいいの?」 「いいっていってるでしょおおお!」 うわ、青筋立てた。ヒスを起こしたみたいだ。 ありすは他のゆっくりより怒りやすいのかもしれない。 ともあれありすのご用命なので、僕は席を立ち、クリームのお代わりを持ってきた。 そしてありすにひと口か二口やり、あとはまた兄妹で舐めたり舐めさせたりする。 クリームがなくなると、また持ってくる。 それを繰り返しているうちに、どうも違う気がしてきたので、いつの間にか抱きついていた妹を押し戻して、僕は言い聞かせた。 「ちょっと待ちなよ、これ、ありすとの遊びだったろう」 「そ……そうだね」 妹はスイッチが変なほうに入ったらしく、汗ばんだ顔を僕の胸に埋めて、はふはふ息をしていた。 僕に押し戻されて、ようやく正気を取り戻す。 「こんなことしてちゃ、いけないよね……」 「そうだよ」 「でもなんか、これはこれでいいから、お兄ちゃん、あとで……ね?」 おねだりするような目をしてきたので、僕はそのおでこにキスをして、頭をなでてやった。 それから二人でありすに向き直った。 「ねえありす、まだまだクリーム、ほしい?」 「ほしいわ! もっとありすにもあまあまがほしいの!」 かなりイライラしているようだ。まあ無理もないか。仲良しの飼い主である妹を、僕に取られちゃったんだから。 妹がありすの頬に触れて、やさしく言い聞かせた。 「ごめんね、つい夢中になっちゃった。でもありすのことも好きだよ」 「すっ……すき、なの?」 好きだと言われたとたん、ぽっ、とありすは頬を赤らめた。 じつに単純だと思うけれど、ありすが一番弱いキルワードが、「好き」のひとことだと聞いたことがある。 仕方がないんだろう。 「す、すきっていえばゆるされるなんて、おもわないでね!」 「わかってる。だから態度で示すね。ありす……」 顔を寄せた妹が、ありすの頬にキスした。 それも、つついて離すような軽いキスじゃなくて、唇を塗り当てるような濃厚なキスだ。 「ゆ、ゆうぅぅ、おねえさん、そんなぁ……ちゅっちゅ、すごいわぁぁ♪」 たちまちありすが身をくねらせる。うーん、可愛いかどうか微妙なところだ。 キスを終えると、妹は僕に目配せした。僕はクリームを取りに行く。 妹はありすの顔のそばで、睦言のようにささやく。 「ね、画面見て、ありす」 「ゆぅ?」 そこには、例の白いもちもちに刻まれた、拳が入るほどの穴が映っている。 今またそこに現れた手が、空洞と化しつつある穴の奥にスプーンを差し込んで、クリームをかき出していた。 「もうずいぶんクリームを取っちゃったから、スプーンが届かないの」 「ゆぅぅ? それはこまったわね……」 「だから、しぼり出してもいいかな?」 「あら、しぼればでるの? じゃあしぼればいいとおもうわ」 「そう? ありがとう」 妹は微笑むと、ありすの両方の頬を、手のひらで挟んだ。 「ゆぅ……?」 そして、少し力をこめて、ぎゅっと押した。 画面に映る空洞の奥から、ねろねろとカスタードクリームが出てきた。 スプーンがそれをすくい、持ち去った。 妹が、またありすに顔を寄せてささやく。 「まだまだ出てくるわね、ありす」 「ゆ、そうね……」 うなずこうとしたありすが、ふと、言葉を切った。考えこむような顔をしている。 その間に僕は戻ってきて、ありすの前に皿を差し出した。 そして次の皿を手にして、また立ち去った。 「あら? おにいさん? たべないの?」 「全部食べていいのよ、ありす」 妹が頬杖をついて、うっすらと微笑む。 「ううん、全部食べなきゃダメよ、ありす」 「……おねえさん……?」 ありすが不安を感じたように尋ねたとき、画面に再び人間の手が現れた。 それと同時に、妹がありすの頬に手を伸ばした。 「ゆううっ!?」 妹がありすをおしつぶす。 画面に映る穴から、ムリムリとクリームが出てくる。 人間の手がその大部分をかきとった。 ややあって、僕がありすの視界に現れ、一枚目の皿の隣に二枚目の皿を置いた。 そして妹と二人で並んで、にこにことありすを見つめた。 妹がとびきりのプレゼントをするような声で言った。 「さあ。わかったかしら? ありす」 「ゆ……?」 ありすの、ゆっくりにしては端正な顔に、疑問のさざなみが走った。 次第にそれが、黒く深くグロテスクな恐れの色へと変わっていった。 「ゆ……え……? これ……だれのあまあま……え?」 混乱している。無理もない。常識的に考えればありえない。 だってその想像が本当なら、ありすは激痛で悶え苦しんでいるはずだから。 それなのに現実は、大好きな飼い主とごく普通に会話できている。 でも。 「ありす、一緒にお買い物にいったよね」 おねえさんの、 「ショーウィンドウのウェディングドレス、見とれてたよね」 いうことが、 「ゆっくり用のドレスなんてなかったけれど、帰ってからレースのハンカチでヴェールを作ってあげた。すっごく喜んでくれたね」 なつかしい、うれしい、とてもうれしかったのに、 「覚えてる?」 おもいだせない。 確かに見たはず聞いたはずのことが、思い出せない。 あるべき記憶がない。ごっそりと失われている。 まるで誰かに食べられてしまったかのように。 僕には、ありすのそんな恐怖が手に取るようにわかった。 僕が三枚目の皿を手に取って席を立つと、ありすが脂汗を流しながら叫んだ。 「ど、ど、どうな゛っでるのぉぉぉ゛!?」 「食べな。ね?」 返事の代わりに、妹が皿をありすの前に押し出す。 「食べるのよ、ありす」 ありすは本能的に悟ったようだ。食べなければまずい、と。 ものすごく、とてつもなくまずい、と。 「はっふはっふ! がっぷ、あぶあぶ、べーろべーろ!」 つんのめるようにしてクリームに舌を伸ばし、ありすは必死でクリームを舐め始めた。 そんなありすの頭を押さえ、妹が哀れむような顔でささやく。 「がんば・れっ」 ぎゅうううう! 容赦ない圧迫。潰れるありす。画面に映る穴からねろねろっとほとばしるクリーム。 そして、間をおかず自分の前に置かれる、三皿目のクリーム。 「べーろべーろべろべろ! ぬっちょねっちょ、あっぶあっぶ!」 ありすは舐める。必死で舐める。 口の周りはあっというまにべたべたになった。もはや都会派もへったくれもない。 舌の届く限り、飲み込める限りのクリームを飲もうとしている。 さあ、もう全貌を話してもいいだろう。残るのはもう競争だけだから。 要するにありすを麻酔し、前しか見られないようにしてから、後ろ頭に穴を開け、それを撮影してありす自身に見せているわけだ。 自分の頭に大穴が開き、中身を掻き出されているさまを見せつけ、感想を聞く。 あくまでも本人に確たることは教えず、ただ不安だけをじわじわと煽っていく。 自分の妹ながら、よくこんなねちっこいいじめを思いつくものだ。 ……とても素敵な妹だと思う。 僕と妹は、機械的なほど無造作に、しぼってはかき出す作業を続けた。 静かな共同作業の中心で、ありす一匹が必死で自分の中身を食らい、カスタードクリームをぐるぐると輪廻させていた。 だが、いくら頑張ったって、舌一枚で僕ら二人の作業に追いつくには、無理がある。 五枚、六枚、七枚……ありすの前の皿の枚数は、次第に増えていった。 それにつれて、空洞はありすの奥のほうへと広がっていった。 皿が九枚になった時、ありすの頭は、後ろ五分の三がぺらぺらの皮だけになっていた。 空洞から奥を覗くと、まだ生きて動いている顔面のほうから、ぬぽっ、ぬぽっ、と嚥下したクリームが押し込まれているのが見えた。 後ろへ回ってきた妹が、僕の隣からそれを覗き込んで、はふー、と吐息を漏らした。 悲嘆とも感動ともつかない声を漏らす。 「ありす、ありす。あなたもう、ほとんど空っぽじゃない……!」 「ゆぎいぃぃぃいぃ!! んべっ、べよっ、あぼっ」 泣き出しそうに悲痛な声をあげて、ありすがしゃにむにクリームを舐める音がした。 僕と妹は肩を寄せ合って、テーブルの前に回った。 ありすはまだ咀嚼していた。だがその顔は、内側からの圧力が減ったために、歪んだお面のようにぐにょぐにょになっていた。 涙とクリームでべちょべちょに汚れ、いつの間にか、生きようとする意志も薄れ始めているように見えた。 顔が歪んだので両目のピントがうまく合わなくなったようだが、右目でふっと妹を捉えて、ありすはゴボゴボというような声で言った。 「おべえ ざん どうじべ こん こと」 「好きだったから」 妹はありすの頬に手を伸ばし、慈愛のこもった目でささやきかけた。 「ゆっくりの仕組みに、とても興味があったから。あなた、どうしてまだ生きてられるの? ほんとにすごい……」 「あでぃ ず じんじゃう もお じんじゃうじゃ わ゛」 「こわい? ゆっくりでも、死ぬのはこわい?」 「ごわい゛ わ゛よっ しぬ゛の い゛やっ い゛やい゛や いばゃ」 だらだらと滝のように涙を流しながら、ありすがうめいた。と、その左目が、内側にごぽりと沈んだ。 あとに残った眼窩には、あふれ出してくるクリームすらなく、後頭部につながる暗いトンネルができた。 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛、あり゛ずっ、ゆっぶりじだいのぉ゛お゛お゛!!」 絶叫しながら、ありすは残り少ない生命力をふりしぼって、クリームをごぶごぶと飲もうとした。 最後のあがきをゆっくり見てやりたくて、僕たちはありすを固定する枠を外してやり、皿のクリームを口元に次々と差し出してやった。 だが、やはり、減った分を食わせて補わせるという方法では、無理があったのだろう。 息を詰めて見守る僕たちの前で、ありすの動きが急に鈍った。 妹が肩を縮め、僕の手をぎゅっと握る。 「お兄ちゃん……!」 「うむ。ほら、耳を澄まして」 ぬぢゃっ、ぬぢゃっ、と咀嚼していた口が、ふっと動きを止め、かすれた声を漏らした。 「もっど……ゆっぐ」 すべてのゆっくりの魂に刻まれた、臨終の言葉。 それを口にしたとたん、ありすの命は尽きた。 次の瞬間、ありすの口から、どぽぽぽぽぽぉーっ、とすべてのクリームが流れ出してきた。 ありすの存在を支え、ありすによって支えられていたそれが、ただの食材に戻った一瞬だった。 机いっぱいのクリームと、べっこりと潰れた金髪混じりの皮と化したありすを見つめて、妹が感極まったように叫ぶ。 「ありす……死んじゃった……!」 妹はきゅううっ、と身を縮めてびくびくと肩を振るわせた。 僕はその体を抱いてやった。細い妹の体が、とても熱くなっていた。 こぼれたカスタードクリームをすくい集め、冷蔵庫から出した新しいクリームを加える作業をしながら、さっぱりした顔で妹が言った。 「あー、すっごくよかったな、ありすの死にざま♪」 「そうだね。ありすなんてツンデレなだけでたいしたゆっくりじゃないと思っていたけど、どうしてどうして」 「えーっ、そんなこという?」 僕の前にきた妹が、ふふっ、と悪戯っぽく笑った。 「だったら、今度のいじめは一人でやっちゃおうかなあ……」 「あれ、一人でやっていいの? 僕と一緒のほうがいいくせに」 僕はわざと冷たく聞き返す。むっ、と眉を吊り上げて、妹が言い返した。 「一人でできるもん」 「ほんとに?」 「……うそ! やっぱりお兄ちゃんとしたい!」 ふにゃ、と顔を崩して、僕に抱きついた。 うん、やっぱりこの妹は可愛い。 「そうだね、いっしょにいじめようね」 「うん! ねえ、ゆっくりれいむにする? それともぱちゅりー?」 「まあゆっくり考えよう。うちには僕の壊れまりさもいるし、まだこいつもいるし」 僕たちはありすの口を洗濯バサミで閉じておいてから、後頭部にカスタードを注いでいった。 満タンにしてから、取り除いてあった皮を戻し、耐水の絆創膏を貼る。 ここらあたりは、まりさで一度やったことだから、もう慣れている。 そして声をかけてやった。 「ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね、ありす!」 しばらく待ったが、動き出す様子がない。 首をひねった時、妹がポンと手を打った。 「そうだ。乙女ちっくなありすのことだから……」 妹はありすを持ち上げると、その唇にキスをした! たちまちのうちに、青白かったありすの頬に紅が差し、金髪がふっさりとしたつやを取り戻した。 何度か瞬きをして、目を開ける。 「ゆぅ……ん」 「おお、目覚めた」 「王子様のキスのほうがよかったかなあ」 「起きたんだから別にいいじゃないか。さあ、ありす。ゆっくりしていってね!」 僕が声をかけると、ぱちくりと瞬きしたありすが、ぱあっと光が散るような笑顔で答えた。 「ゆっくりしていってね!!!」 あっさり生き返った。本当に単純な生き物だ。 まだ記憶が戻らないのか、それとも単にぼんやりしているのか、僕たちを見る目に嫌悪や恐れはない。 生まれたばかりの赤ちゃんゆっくりのように、わくわくした顔で二人を見比べている。 妹がちょっと寂しそうに言った。 「あれぇ、あたしたちのこと忘れちゃったのかな、ありす……」 「いやそんなことはない、ちゃんと覚えてるよ」 僕が言ったとたん。 「ゆ・が・あ・あ・あ・ああ……!」 ありすがガッと口を開けて、がくがく震え始めた。 以前、解体したまりさと同じように、思い出したのだ。 僕は妹の頭に手をあて、優しくなでながら言ってやる。 「な、大丈夫だったろう。よかったな」 妹は嬉しさに顔を輝かせて、うなずく。 「うん、たっぷり怖がってもらえそうだね!」 僕と妹の虐待道は、まだ始まったばかりだ。 これまでに書いた話 ゆっくりいじめ系1084 ゆっくり実験01 ゆっくりいじめ系1093 ゆっくりエレエレしてね! ゆっくりいじめ系1098 アストロン対策 ゆっくりいじめ系1235 少年 ゆっくりいじめ系1246 二人のお兄さんと干しゆっくり ゆっくりいじめ系1279 れいむよ永久に安らかに ゆっくりいじめ系1386 ゆっくりボール続き このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/510.html
「う~う~♪」 俺が散歩にと道端を歩いているとそんな声が聞こえた。 「ゆっ、やめてね、まりさは食べないでね!」 見ると、ゆっくりれみりゃがゆっくりまりさを食べようとしているところだった。 周りを見るとゆっくりれいむの髪飾りやそれよりも小さい飾りや帽子が落ちていた。 なるほど、ゆっくり一家を食べつくしたか、れみりゃにしては大戦果だ。 「ゆっ、ゆっ! あ、お兄さん、ゆっくり助けてね!」 まりさがこちらに気がついた。なんだかうざい声でぴーちくと助けを求めてくる。 なんでれみりゃはさっさと食べないんだ。 「う~おながいっばい~♪」 なるほどな。 もう少しお腹に余裕ができるまでまりさをキープしてるのか、 それともまりさをいたぶっているのか、ゆっくりゃのくせに生意気だ。 そこである考えが思いつく、れみりゃがいたぶっているのを見ていたら俺もしたくなった。 「やぁ、れみりゃ、そんな食べ飽きたものは捨ててぷっでぃ~ん食べたくないかい?」 「う~♪ れみりゃぷっでぃ~んも食べる、もっでぎでー♪」 最初は甘言で連れて行こうとしたが早くも面倒くさくなった。 何故俺がゆっくりゃなどにない頭を割いてまで考えねばならないのか。 と、言うわけで優しくれみりゃに近づき、羽をもぐ。 「うっっがっぎゃゃー! ざ、ざくやー!!」 とたんにすさまじく泣きだし、暴れる、うるさいので殴る。 「うぎゃー!」 「お兄さんありがとう! ゆっくりれみりゃはゆっくりしんでねっ!」 その隙にまりさが逃げようとする、それも捕まえる。 「ゆっ、なにするのお兄さん、ゆっくりれみりゃと同じ場所ではゆっくりできないよ! ゆっくりはなしてねっ!」 そう言って媚びた笑いを向けてくる、こいつは俺を味方と思っているんだろう、うざいので殴る。 「どぉじでごんなごどずるのー! だべるなられいむからだべでー!」 食べないし。それにお前が身代わりにしようとした家族はもういないよ。 俺は泣き叫ぶれみりゃとまりさを両脇に抱えて家へと帰った。 家に帰ってきた俺はさっそくれみりゃをゆっくりれみりゃ用透明ケースに詰め、まりさは適当に籠に閉じ込めた。 (まずは腹を空かせてもらわないとな) れみりゃは今、満腹なはずなので少し時間を置くことにする。 次の日、再び様子を見に来た。 「ざくやー! れみりゃおながずいだー!」 れみりゃを見る、よし、再生してるな。 しかしなんという燃費の悪さ、昨日はあんなに満腹だったのに。 「ゆ、ここじゃゆっくりできないよ、ゆっくりだしてね!」 まりさは昨日のことは覚えてないようだ、とりあえず籠から出してやる。 一瞬れみりゃに怯えるが、動けなそうなところを見ると揚々とこちらに近づいてきた。 「ゆっくりおなかへったよ! ゆっくりごはんだしてね! 出さないのならはやく出て行ってね!」 ぴょんぴょんと俺の目の前で跳ねる、うざい。 「あぁ、まりさ、ご飯だけどな」 「ゆっくりはやくだしてね!」 「まりさには餓死してもらうから、ないんだ」 軽く言う、実際どうでもいい。 「ゆっ?」 意味がわかってないんだろうか、まりさは少し考え。 「どおじでぞんなごどいうのー!」 泣き出した、うざいので殴った。 まあ、まりさいじめは今回は置いておこう、今回の主役はれみりゃなのだから。 早速れみりゃをケースから取り出してまりさを渡してあげる。 「う~♪ う~♪ れみりゃの御飯だぞー♪」 お腹がすいていたのか、今度はすぐにまりさを食べようとするれみりゃ。 まりさは痛みとショックで固まってる。 もちろん、俺もれみりゃにご飯を食べさせる気はない。 まりさがれみりゃの口に入るその直前、れみりゃをぶん殴り、まりさを救出する。 「うあっー、ざくやー! どおじでー!」 そう、俺の考えとはれみりゃのゆっくりを食べるをやめさせることだった。 もちろん、いやがらせの意味で。 とりあえず、同じことを朝昼晩三回繰り返す。 次の日、部屋に入ると 「「おながずいたのー!」」 ゆっくり二重奏だ、これは耳障りな音楽だ。 しかしこいつらには昨日のことは忘れてしまったのか、取り合えずまりさを取り出す。 「おにいざん、ばやぐごばんもっでぎでー!」 「駄目だよ、もう二度とまりさはご飯を口に入れられないんだよ」 「どぼじでぞっ!?」 話の途中で面倒なのでまりさの口をホッチキスで止める、伝統的ゆっくり口封じである。 「うっーうっー」 はは、なんだかまりさ、れみりゃみたいだぞ。 さて、つぎはれみりゃだ、っと。 「うぎゃー!」 れみりゃの髪を引っ張ってケースから出す、こいつ重くて出すのも面倒になってきた。 でも、出しとかないとまりさ奪還失敗するかもしれないしなぁ。 もうちょい広いケース買えばよかったか。 「ほーら、れみりゃ、ご飯だぞー」 「う~♪ う~♪ れみりゃのごはん~♪」 こいつ昨日と同じセリフはいてやがる、もちろん、食べる前に殴る。 「なんで~なんでれみりゃにごばんだべざぜてぐれないのー!」 「それはね、れみりゃがゆっくりを食べるからだよ」 「れみりゃのごはんー!」 「ちがうよ、れみりゃのごはんはゆっくりじゃないんだよ」 「う~?」 じゃあ、何を食べるんだろう、俺も問答の答えは用意してなかった。 ぷりんか、いやいや、そういえば雑食じゃないか、なんでも食うのか。 ならばべつにゆっくりにこだわる必要ないのか、まりさいらなかったな… まりさを踏む。うーうー唸っている。 これはこれでいいか。折角だ、続けてみよう。 一週間後、今日も同じようにれみりゃを取り出す。 髪をつかみ続けたせいで10円禿ができてしまった。 まりさのほうはもう、ほとんど動かない、死の目の前だ。 「ざくやー、ざくやー」 「はいはい、ごはんですよー」 まりさを渡す、れみりゃは少し考える、空腹で目の前のゆっくりを食べたい、でも絶対阻止される。 でも食べたい、でも絶対殴られる、食べられない上に殴られる? れみりゃは気がついた、もうこれは食べられない。 「いや゙ぁぁぁぁ! もうゆっくりだべだぐないのぉぉ!」 そう言ってまりさを投げ捨てる。 ここにきてようやくわかってくれたか、うんうん。 ピクピクしてるまりさ、気分がいいので口を破って(癒着してた)あげる。 「ゆ……ゆ…」 「まりさ、よろこべ、ご飯をやるぞー」 「ゆ…?」 そう言って一週間前のれみりゃの羽をあげる。 「ゆ…ゆ…」 はじめはゆっくりと食べていたまりさだったが、徐々にスピードを上げて羽にがっつく。 「むしゃむしゃむしゃむしゃ!」 そしてフィニッシュにゆっくり味わうまりさ。 「むーしゃむーしゃ、しあわせー♪」 「それはよかった」 うん、どうやら体力も大体回復したみたいだな。 「おにいさんもっとごはぴぐ!?」 そしてまたホチキスで止める。 「最後の晩餐、楽しんでもらえてよかった」 そう言ってまりさをかごに押し込む、必要もないので、もう二度と出さないだろう。 「れみりゃにもご褒美上げないとなー、はい、ピーマン」 「う~ざぐやー!」 お気に召さないようだ、一週間も食べてないのにすごい根性だ。 「あ、そ、じゃあ、いらないね」 「う~だべる~」 「あげない」 目標は達成したし面倒になってきた。 れみりゃは割と好きだし、ひと思いに殺してあげよう。 「う~! ざくやー! このおじさんごろじでー!」 やっぱりれみりゃはなぶるように殴る蹴る。 「やっぱり死なないなぁ」 れみりゃは再生能力が高いのだ、面倒なので、ケースに詰めておくことにした。 「だ、だずげ…」 「れみりゃ、やっぱり君もそのまま餓死ね」 そのまま俺は部屋を出て行く。 「だずけでーざくやー! い゙や゙ぁぁぁ!!」 れみりゃは次の日に死んでいた。 まりさの方も三日と持たなかった、やはり体力が落ちていたか。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/84.html
長い間手入れを怠っていたため、畑はすっかり雑草で覆われていた。 倉庫から背負い式の散布機を取り出し、除草剤を散布する。 ひとしきり散布を終えたところへ、草の中から小さな影が飛び出した。 「ゆっゆっゆっ!!なんだかむずむずするよ!」 影の正体は、紅白のゆっくりだった。 農薬によって泡を吹いて朽ちている個体はよく見かけたが、生きているものは珍しかった。 爆発的な繁殖力を持つゆっくりは田畑を群れで襲撃することが多い。 時には花壇さえ食い散らかしていくのだから、害虫より余程たちが悪い。 「おじさんたすけて!むずむずするよ!」 「これじゃゆっくりできないよ!」 散々、人の畑に入り浸っておきながらゆっくりしたいとは図々しい奴だ。 良い機会なので直々に懲らしめることにする。 「どれ、おじさんが診てあげよう。口を開けてごらん」 そう言いながら、散布機のエンジンをかけ直す。 「あ~~ん、ゆぐっ!?ぐぃ!?ぐぃぃぃ!!」 大きな口を開けたゆっくりの中に、むずむずの原因をたっぷり吹き付けてやる。 じたばたと暴れるゆっくりを押さえ付け、最後の一滴まで注ぎ込んでやった。 「さあ、おくすりを飲ませてあげたからもう大丈夫だよ」 「ゆ゛っ……ゆ゛っ……?」 弱い除草剤では農薬ほどの毒性がないのは分かっているが むずむずするらしいので何か面白い効き目はあるに違いない。 「ゆっ!?あたまがもっとむずむずするよ!?」 ゆっくりに変化が現れ始めた。 じたばたと飛び跳ねる毎に、はらり、はらりと「頭髪」が抜け落ちていく。 「なにかおちてきたよ!」 自分の髪が抜けていることにも気付かないのか、ゆっくりは地面に落ちた髪を見て不思議そうな顔をする。 しばらくして、ついに赤い髪飾りが黒い尾を引いてぼとりと落ちた。 もはやゆっくりの頭部は色白の表皮が光沢を放つのみとなっていた。 「すっきりー!さっぱりー!」 「そうかい、それはよかったよ。気を付けてお帰り」 「おじさんいいひと!ゆっくりかえるよ!」 すっかり元気になったゆっくりは仲間の所へ帰って行った。 予想外に奇妙で興味深い結果が得られて満足したため、食後の農薬は勘弁してやった。 …… … 禿ゆっくりが森の木々の間を飛び跳ねながら進む。 妙に軽くなった体を嬉しく思いつつ、いつもの調子で大きな声で叫ぶ。 「ゆっくりかえったよ!」 するとどこに隠れていたのだろうか、たちまち10体の紅白や白黒のゆっくり達が現れ、声の主を探し始める。 「まりさー!こっちにいるよ!!」 しかし禿ゆっくりがいくら叫んでも、他のゆっくり達は戸惑うばかりだった。 「おーい!みあたらないよ!」 「れいむー!どこにいるの!」 禿ゆっくりには事態が飲み込めるはずもなかった。 「ゆっ!?れ、れいむだよ?!ここだよ!ゆっくりしようよ!」 「なんだこれ!へんなまんじゅう!」 「ほんとだ!おいしそう!」 髪を失ったゆっくりは――同属の目から見ても饅頭でしかなかった。 「ゆ、ゆっ!?ひどいよ!どうして!」 たちまち他のゆっくりの目の色が変わる。 「おーなかすいた♪」 「おーなかへった♪」 「たーべちゃーうぞー♪」 禿ゆっくりを包囲するように10体のゆっくり達が詰め寄って来た。 「ゆっ!?みんなやめてね!たべものじゃないよ!?」 どんなに叫んでも禿ゆっくりの声は届かなかった。 白黒のゆっくりが木の上からジャンプし、禿ゆっくりの真上に落ちる。 ブチュリ。 「ゆ゛っぐり゛い゛い゛い゛ーー!!?」 「ゆっくり しね!!」 下敷きになった禿ゆっくりから勢いよく飛び出した餡子が地面にぶち撒けられる。 「みんなでたべようね!」 「あまあま♪」「うまうま♪」 薄れていく意識の中で、禿ゆっくりはかつて仲間と一緒に食べたまんじゅうの味を思い出した。 しかし、まんじゅうの形だけはどうしても思い出すことが出来なかった。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1240.html
第二章 脱出口である光の元に辿りつくため、様々なルートを試行錯誤しながら、機械室の上部へ向かうゆっくりれいむ、ゆっ くりまりさ、ゆっくりみょん。 あっちこっち行くたびに、3匹の体力は確実に奪われていった。それでも、互いに励まし 合い希望を忘れない。 「ゆっくりいこうね!」 「ゆっくりがんばって!」 「ちーんぽっ!」 3匹は助け合いながら、ゆっくりだが、確実に外への穴に近づく。途中、ゆっくりが足場にするにはやや細いパイプの 上を進むことになった。やや危険だが、ここを通れば、出口へとぐっと近づく。 「ゆっくりすすんでね!」 「ゆっくりしていってね!」 ゆっくりれいむ、ゆっくりまりさは細いパイプの上を何とか、這うように前方へ向かう。 しかし、ゆっくりみょんの様子がおかしい。 「ゆっくりゆっくりちーんぽっ!ゆっくりゆっくりちーんぽっ!」 独特の鳴き声を、オマジナイのようにして発しながら歩くが、今にも落ちそうなほど、左右に大きく体をゆらしながら 進んでいる。理由は、カチューシャの飾りだろう。そのせいで、ゆっくりみょんは重心がややズレているのだ。 また、今のゆっくりみょんは、ここまで来るのに体力を消耗していることも原因だ。 「ゆっくりとぶよ!」 ゆっくりれいむとゆっくりまりさが、パイプから、安定した人間の作業員用の足場へ跳び移る。 「すこしゆっくりできるね!」 安堵するゆっくりれいむ、ゆっくりまりさ。 しかし、その後ろで、 つるんっ 「ちんぽーーーっ!!」 とうとうゆっくりみょんが落下した。パイプの上の水滴に体を滑らせてしまったのだ。 べしゃ そのまま床へと落下するゆっくりみょん 「ゆっくりだいじょうぶ!?」 心配するゆっくりれいむとまりさ。 「ゆっ…ゆっ…。」 よろよろと体を立てるゆっくりみょん。なんとか大丈夫そうだ。 元々ゆっくりはある程度の弾力があることもあり、今回程度の高さからの落下なら、傷は負っても死ぬことはないだろ う。 「すこしやすんでね!!」 「ゆっくりのぼってきてね!!」 落ちてしまったゆっくりみょんに気をつかう2匹。 「ゆっくりしてからいくよ!」 二匹の呼びかけに応じるゆっくりみょん。どうやら大きなダメージは負っていない。 しかし… チュウ……チュウ…。 ゆっくりみょんの耳に、機械室の機械音以外の“何か”が聞こえてきた。 チュウ!チュウ!チュウ!チュウ! その何かとは、…鼠だ。 本来、食品加工工場であるゆっくり加工所は、清潔さが保たれているはずだが、この機械室は掃除も難しいこともあり、 非常に不衛生な状態になっている。そのため、床下にはゆっくり加工所内のゆっくりを狙った鼠が住み着いてしまったの だ。 今になって鼠が集まってきたのには理由がある。無機質な鉄のニオイしかしない機械室のなかで、ゆっくりちぇん が破裂したため、甘い匂いが広がってしまったのだ。 鼠達がゆっくりみょんに雪崩のように襲いかかる。 「ゆゆゆゆゆっ!?」 体力を消耗したゆっくりみょんは逃げることもままならない。 チュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウ チュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウ チュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウッ! あっというまにゆっくりみょんの表面を埋めつくす鼠の群れ。その数は、ゆっくりみょんに直接ひっついていないもの も含めるとざっと200はいるだろうか?そして、鼠達はゆっくりみょんにいっせいにカジりつく。 「ち、ちんぽーっ!!」 グチュグチュグチュグチュグチュグチュ 全身を襲う痛みに、ゆっくりみょんが声をあげる。 しかし、それが更なる地獄をゆっくりみょんに味あわせる。 なんと鼠達は、同時に食すことができる面積が広がったと言わんばかりにゆっくりみょんの口の中へと雪崩れ込む。 「ゆぐぎぎぎがばばば…っ!!」 痛い、苦しい。ゆっくりみょんはもはや、息をするのもままならない。 「ゆぐりぎがおごごげげがっ!!!」 外から、中から皮と餡子を食い破られていくゆっくりみょん。 体外、体内から激痛が襲う。 「はやくやめてね!!!」 「ゆっくりさせてね!!!」 上から、その地獄絵図を目の当たりにする二匹のゆっくり。 しかし、助けに行くことはできない。行けば自分達も同じ目に会うことは明らかだからだ。 ゆっくりみょんを中身とした、表面がうごめく球状の鼠の集合体がゴロン!ゴロン!とあちこちへ転がる。 「ぢんんんぼおおおおっ!!!」 ゆっくりみょんが、必死の抵抗をしているのだ。 「ゆっくりがんばってね!!!」 ゆっくり達のエール。 しかし、その鼠の集合体は少しずつ……少しずつ……小さくなっていく。 「ゆっぐりいいいいっ!!!」 泣き叫ぶゆっくりれいむとゆっくりまりさ。 それが小さくなっていくことが何を意味するのか、知能の低いゆっくりでもわかるようだ。 やがて、その集合体は動くことすらなくなった。表面のみが、激しくうごめいたまま。 第三章 数分がたった。 あれほど激しく床でうごめいていた鼠の群れの鳴き声はもうなく。また機械の音だけが部屋に響く。 床には、そう、何も無くなっていた。 ねずみも、ゆっくりみょんも。 「ゆっぐ…」 そのはるか上の足場を、涙を流しながら進むゆっくりれいむとゆっくりまりさ。 あと少しで出口だ。しかし、どこか足取りは重い。この短時間で、二匹も“おともだち”を失ったのだから。 しかし、悲しみで立ち止まっているわけにはいかない。また鼠の大群が現れ、今度は上まで登ってくるかもしれない。 それに、モタモタしていれば人間達がこの機械室に入ってくるだろう。 「あとすこしでゆっくりできるよ!」 「はやくゆっくりしたいよ!」 そして、ゆっくりれいむとゆっくりまりさは、ここから跳べば、光が差し込む穴まで直接続く足場へと行けるところま で来ていた。 最後の足場までの距離…それは今のゆっくりれいむとゆっくりまりさの跳躍力で何とか届くかもしれない距離だ。ちょ うど、ゆっくりちぇんが死んだパイプまでの距離とほぼ同じだろう。 「こんどはゆっくりとべるかな?」 不安そうな顔をするゆっくりれいむ。もし落ちれば、もう一度ここまで登る気力は二匹には無い。 「ゆっくりとぶよ!」 後ろから強い口調で言葉を発するゆっくりまりさ。まるで、あの時のゆっくりちぇんのようだ。 「ゆっくりがんばって!」 応援するゆっくりれいむ、そしてゆっくりまりさが助走をつけるために後ろへ下がる。 かつてのゆっくりまりさなら、怖じけついていたかもしれない。しかし、今は違う。ゆっくりちぇんが前へ進む勇気を くれたのだ。 駆け出すゆっくりまりさ、そして。 ぴょん! ぷにん、と着地するゆっくりまりさ。見事、ゆっくりまりさは最後の足場へ到着した。 「ゆっくりーっ!」 歓喜の雄叫びをあげるゆっくりまりさ。 次はゆっくりれいむの番だ。意を決して助走するゆっくりれいむ。 ぴょん! 届く…かに見えた。 「ゆーーっ!!」 ほんの少し、届かない。無情にも、落下するゆっくりれいむ。 しかし、 ガクンっ! ゆっくりまりさがギリギリのところで、ゆっくりれいむの髪の毛を口で掴んだのだ。 「ゆっくりはなさないでね!!!」 叫ぶゆっくりれいむ。 重い…。疲れきったゆっくりまりさには、今のゆっくりれいむの体重は重すぎる。 「ゆゆゆゆっ…!」 しかし諦めない、鼠の群れに襲われながら、食われながらも抵抗したゆっくりみょんの姿が、ゆっくりまりさに諦めな い心を与えたのだ。 「ゆっく…りーーーーっ!!!」 まりさは渾身の力で、ゆっくりれいむを引き上げた。勢いで、後方に転がるゆっくりまりさとゆっくりれいむ。 ごろんごろん…。 「ゆっゆっゆ……ゆっくりーっ!!!」 二匹は、跳びはねて喜びを分かち合う。そう、2匹はついに光の下へ辿り着いたのだ。 「ゆっくりできるね!!!」 「おそとにでれるね!!!」 あとは、穴から外に出るだけだ。その穴の入口はゆっくりが入るには十分の直径だった。 まずは、ゆっくりれいむか ら光の穴へと入っていく、続いて、ゆっくりまりさが後へ続く。 二匹は、懐かしい外の景色を思い浮かべていた。これからの幸せに心を膨らませながら…。 しかし、ある程度進んだところで、2匹は異変に気づく。風が強い、それも、追い風だ。 「ゆっ?」 しかも、それは前に進むたびに強くなっていく。 そして、 「ゆうううううーーーーっ!!!」 急激に前へと引き寄せられる、ゆっくりれいむ。 そう、その穴は機械室の換気口だったのだ。追い風は、換気扇により中から外へ換気される空気によるものだった。換 気扇が高速で回転していたことと、太陽の光のまぶしさで、ゆっくりには非常に見づらかったのだ。 「ゆっくりとまってね!!!ゆっくりしていってね!!!」 前へと飛ばされるゆっくりれいむの後ろから、叫ぶゆっくりまりさ。 「ゆっ、ゆっ、ゆーーーー!!!」 絶叫するゆっくりれいむ、その瞳には、高速で回転する換気扇がはっきりと映っていた。 それはどんどん近づいてく る、いや、正確にはゆっくりれいむが近づいているのだが。 破滅は一瞬だった。 高速回転により換気扇のプロペラは、ゆっくりれいむの顔の部分の表面を皮と餡子ごと切り裂く。 「ゆっぐ!!!ゆっぐりだずげでええええ!!!」 顔の無いゆっくりれいむが泣き叫ぶ。 そのまま換気扇に巻き込まれ、あっというまにゆっくりれいむは餡子のミンチとなり、外へ吐き出された。 「れ゛い゛む゛う゛う゛う゛うううう!!!」 その光景を目の当たりにしたゆっくりまりさ。光の穴は、天国ではなく、地獄への扉だったのだ。 急いで、その穴か ら出るゆっくりまりさ。ゆっくりまりさのいる地点はまだゆっくりを引き寄せるだけの吸引力無かったのが不幸中の幸い だったか。 「ひっぐ!えっぐ!…ゆっぐり…でぎないよ!」 むせび泣くゆっくりまりさ。これからどうすればいいのか、もうわからない。 下に戻り、機械室から出て別の脱出ルートを探すのか?いや、それはあまりにも非現実的だ。機械室の外にはそれこそ、 作業員や警備員が徘徊している。 いや、それ以前に下へ戻る気力も起きない。 その時、換気口から音がした。 ブルン、ブルルン…プスプス……。 何事かと、ゆっくりまりさは穴を覗く。すると、何やら様子がおかしい、意を決し、再び中へ入る。今度は急に引き寄 せられることのないように慎重に、慎重に奥へ進む。しかし、わずかに追い風があるくらいで、一向に引き寄せられる気 配がない。ゆっくりまりさは更に進む、すると、換気扇が壊れて止まっているではないか、そのうえ、プロペラ部分は大 半がバラバラになり、残った部分もヒビ割れている。 「ゆっくり?」 換気扇へ近づくゆっくりまりさ。恐る恐る、換気扇にふれると、音を立てて崩れ落ちた。 そう、換気扇は、ゆっくりれいむを巻き込んだことで、故障し破損したのだ。 結果的にゆっくりれいむは、ゆっくりまりさのために道を開いたのである。 ゆっくりまりさは、呆然としながら、換気扇の向こうへ進む、光はすぐそこだ。 ついにゆっくりまりさは換気口の出口に立つ。空はすっかりと夕焼けに赤く染まっていた。 突然…ゆっくりまりさの頬を涙が伝う。それは止まることなく、流れ続ける。 その涙は、これまでの悲しみによる涙ではない。ゆっくりまりさが生まれて初めて流した、喜びの涙であった。 ゆっくり加工所の最上部に近いとこから望む草原と森の、かつてない光景を目にしゆっくりまりさは感激の涙を流した のである。 「……………。」 言葉にはならなかった、ゆっくりまりさは、かつてないほど、深く、深くゆっくりしたのである。 それは、時間にして30分くらいだろうか。 野生のゆっくりのごく一部には、高い所から飛び降りる術を知っている。正確には、壁を転がるのだ。 ゆっくりまりさは、目から歓喜の涙が枯れた後、換気口の出口から垂直の壁を転がった。そして、地面が近づくと、壁 を体の底で蹴り、衝撃を逃しながら今度は地面を転がった。 ゆっくりの球状に近い体型と、弾力性を利用した技である。猫は、7階の高さから飛び降りても無傷の場合があるとい う。が、このゆっくりの技はそれ以上のものだろう。 「ゆっくりしていってね!!!」 ぴょん!と体を起こしたそのゆっくりまりさは、住み慣れた森へと帰っていった。 終章 それから三日が経った。森の中に、主を無くした、ゆっくりまりさの帽子が落ちていた。 ほんの三日程前の夜、ゆっくりフランに襲われ、残虐の限りを尽くされ死んだゆっくりまりさの帽子だ。 そう、そのゆっくりまりさとは、あのゆっくり加工所から脱出したゆっくりまりさだ。 もし加工所から抜け出さず。檻の中にいたままなら、もう少し長生きできたかもしれない。 しかし、あのまま檻の中にいることは、ゆっくりまりさにとって、生きていることにはならなかった。 なぜなら、ゆっくりできなかったのだから。 あの、夕焼けの草原と森の光景の前に佇み、草原を駆け抜けてゆっくりしたゆっくりまりさは、最後の生を受けたので ある。最後に足掻くことで、ゆっくりまりさは生きることができたのである。 今日も、捕らえられた野生のゆっくり達がゆっくり加工所へ連れて行かれる。 おわり
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2778.html
ゆっくりと紐 体内受精をしたゆっくりれいむと、それを見守るゆっくりまりさ。 とうとうここまで来たのだなあ、と、感慨深く思い起こす。初めてこいつらと 出あったのは、春の桜が散り切る前のことだったろうか。ゆっくりの家宣言をさ れた俺は、その唐突な内容よりも愛らしい彼女達の仕草に心を奪われてしまった のだ。 だって可愛いのだもの。 毎日のようにご飯を食べさせ、ワガママを聞き、ゆっくりとさせてやる毎日。 頼っているという自覚すらないのだろうが、それでも俺は幸せで、ゆっくりと できた。 冬も間近、二匹の初めての子が生まれた。枝にまるまると実った彼女達は、本 当に幸せそうに笑っていた。俺自身家族が増えたことに大層喜び――その頃には 『おにいちゃん』ではなく、『おとーさん』と呼ばれ始めていた――、さらにゆ っくりとした暮らしを深めていた。 だが俺の稼ぎはそれほど多くはなく、多数の家族を養えるほどではなかった。 ゆっくりの姉達は一様に、父母と新しい子供を養うことを選択し、次の子供が生 まれると、なごり惜しげに皆旅立って行くのだった。 悲しい出来事もあった。 どこからか入り込んだゆっくりぱちぇりーに、生まれたての子ゆっくりが連れ 去られ、多数が行方不明になったこともあった。他のゆっくりが入り込み、子供 たちの何人かが犠牲になったこともあった。それは不幸ではあったが、家族の絆 をより深め、こうして新たな幸せを迎える原動力ともなったのだ。 世の中には、ゆっくりを食べたり、虐待したりする人がいるらしい。見つけ次 第に殺してしまうのも居る。だがどうだ、ゆっくりはこうしてゆっくりしている だけで、果てしなくゆっくりをもたらしてくれると言うのに……。 ・ ・ ・ 「うまでるよ! もうずぐばぢざとでいぶのあがじゃんがうばでるよ!」 顔を真っ赤にして、それでも幸せそうに叫ぶ母れいむ。父まりさと子供たちに 囲まれた彼女に近づいて、出産の手助けをしてやる。 「れいむは出産初めてだよな?」 「う゛? 子供だぢならだぐざん産んだよ?」 違う違うと手を振り、俺は簡単な説明をする。 「枝から生まれる子供と、おなかから生まれる子供は違うんだ。今回みたいにお なかから生まれる場合、何の準備もしないと、危険が危ないからゆっくりできな いんだよ!」 そう告げられた一同は、「ゆっくりしたいよぼおお!」「あかじゃん! まぢ ざのあがぢゃんが!」「ゆっくりなんどがぢでえええ!」などと騒然とし始める。 「でも、これさえあれば大丈夫だよ!」 出産のために用意してきた道具を取り出す。泣き叫ぶ声が歓声に変り、俺はそ の道具を母れいむに巻き付けた。 「おとーさん、これなに? ゆっくりできるもの?」 「ああそうだよ、ゆっくりできるよ……とさて、聞いてくれ」 「何なに?」「ゆっくりする?」 「これはね、『紐』というんだ。出産をするときに、赤ちゃんが勢い良く飛び出 すからね! 怪我をしないように巻きつけてあげるんだよ! みんなも怪我した らいけないから、つけてあげるね」 信頼している『おとーさん』のセリフに、誰一匹疑うことすらなく、『紐』を 体に巻きつけるゆっくり達。 「あ、まりさはこっちに来なさい。ゆっくりと出産を見れるようにしてあげるか らね!」 「わ、わかった! ゆっくり赤ちゃん見たいよ!」 俺は父ゆっくりまりさを、母れいむの目の前に固定した。俺は出産補助装置の 概要を、皆に説明する。 装置に固定された母れいむは、ゆっくりしながら出産することが出来る。そし て出産された赤ゆっくりは、赤ゆっくりゆっくり装置によってゆっくりさせられ る。子ゆっくりゆっくり装置は、母れいむの目前、固定された父まりさのすぐ体 下に設置されている。 「さあそろそろだな。みんな、動くと危ないから動いちゃだめだよ!」 「「「ゆっくりじっとしているね!」」」 「ゆ゛っ! ゆ゛っ! ゆ゛ぐりいいいいい!」 息も絶え絶え、頬を真っ赤にしながら、母れいむの出産が開始された。母れい むに巻きつけた『紐』には多少ゆとりがあるため、この程度で怪我をすることは ない。 「赤ちゃんだ! れいむの妹だよ!」 「違うよ、まりさの妹だよ!」 「ゆっくり! ゆっくり生まれていってね!!」 皆の応援のなか、生まれながら声を上げる赤ゆっくり。 「ゆ、くり、……う?」 違和感に気付いたのだろう、慌て始める。 「ゆ、おかあしゃんゆっくり出来ないよ! お顔がひたい、ひたいよぅ!」 「ば、ばだじのあがじゃん! どぼじだぼおおお!?」 「ゆ、ゆっくりがんばってね!」 だがもう出産は止まらない。勢い良く子供を産み出す母れいむ。 「い゛っ! ゆ゛っ! ぐりじでぶううううううううううう!」 母れいむに巻きつけられた鋼鉄の紐に輪切りにされ、絶命したまま勢い良く飛 び出した赤ゆっくりは、そのまま赤ゆっくりゆっくり装置にその亡骸を晒した。 「う゛あああ! でいぶどぶりぢいいいいいなあがじゃんがああああ!! あが じゃん! あがじゃっ!?」 そのショックが次の出産を早めたのだろう、下腹部が膨張し、新たな赤まりさ が顔を覗かせる。 「うっう……。お、おかあさんがんばって!」 娘達の応援に、今失ったばかりの命を思うゆとりも与えられず、出産を開始す る母れいむ。だがすでに赤まりさの顔には行く筋もの切れ込みが入っており、 「ゆっぐうううああああぶっ!!!」 生を得るのと同時に死に誘われた。 「うばああああああああああああ! あが! でいぶのあがああああ!!」 「あがじゃあああんんんんんんんん!!!」 装置に横たわり、ぴくぴくと震える、赤まりさだったもの。 ゆっくりと生まれ、ゆっくりと育ち、ゆっくりと旅立つはずだった、幸せなゆ っくりとなるはずであった餡の塊は、何を言うこともない。 絶望に染め上げる家族に向けて、僕は慰めの言葉を紡ぐ。 「もしかしたら、産むのが速すぎたのかもしれないな。可哀想に……ゆっくりし たかったんだろうにね」 その言葉にびくりと体を震わせる反応する母れいむ。目の前の我が子の亡骸に、 絶望の表情を浮かべる父まりさ。声すら立てずに涙を流すゆっくり一家。 そんな彼女達の心を癒すために、ビデオを見せてやる。 「おや、あれは何かな……?」 母れいむの、昔生んだ娘達の姿が、そこには映し出されていた。ビデオの概念 を知らない一家は、まるでその中に生活しているように見えることだろう。昔、 唐突に現れたゆっくりぱちぇりーにさらわれたはずの、生まれたての我が子。彼 女達の元気な姿を見せられた母れいむは、彼女達が生きていることに――今の状 況を忘れているわけではないだろうが――歓喜した。 喜びもつかの間、ゆっくりぱちぇりーによっていたぶられ、無残な姿を晒す赤 ゆっくり。その衝撃は、またも出産を早めたようで、何とか赤ゆっくりが生まれ ないように暴れだす母れいむと父まりさ。 「だめ! ゆっぐり! もっどゆっぐりじでえええええ! うばでだいで! う ばれないでぼおおお! ゆっぐりじでよぼおおお!」 「がばんじででいぶ! がばんじだいどまでぃだどでいぶのごどぼがああああ!」 ゆっくり達は気付かないが、装置は時間とともに母れいむを締め付け、出産を 強要する作りになっている。装置に固定されており、そもそも出産をコントロー ルする術も知らないであろう母れいむは、またも生まれながら死に絶える赤ゆっ くりを目の当たりにせざるを得なかった。 ビデオからは延々と、巣立ったはずの子ゆっくり達の断末魔が流れつづけ、生 まれては死んでゆく赤ゆっくりの残骸は増えていった。 ・ ・ ・ 時間を掛ければこんなにも「ゆっくり」させてくれる存在になるのだ。 次回の出産のためにも、信頼を損ねることは出来ないのだが、彼女達の信頼を 踏みにじる時のことを考えると、とてもゆっくりとした気分になれるのである。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/156.html
ゆっくり魔理沙はご満悦だった。 今までお友達のゆっくり霊夢たちと思う存分ゆっくりしていたからだ。 日があるうちはぽかぽかとしたお日様の下で草原を走り回り、蝶々を追いかけばったと一緒に飛び跳ねる。 お腹が空いたら蝶々やばったを食べたり花の蜜を吸ったりした。 夜はゆっくり霊夢たちの巣で、夜通しゆっくりとおしゃべりに興じたり、星を眺めて眠ったりした。 この数日間は、ゆっくり魔理沙にとって本当に幸せな日々だった。 もっとゆっくりできるといいなと思いながら、ゆっくり魔理沙は自分の巣に戻ることにした。 お友達のゆっくり霊夢たちは、もっとゆっくりしてほしそうだったが、たまには別のゆっくりをしたくなるのだ。 「ゆっくりしていってね!」 おおよそ四日ぶりに巣に戻るゆっくり魔理沙。 その巣は落雷で死んだ木の洞だ。 ゆっくり魔理沙一匹には広すぎるが、自分が気に入ったものを並べたりできるから、そこはまさに楽園だった。 巣の周りには緑鮮やかな木々が立ち並んでおり、草も豊富で色とりどりの花々が思い思いに咲き誇っている。 そばには川も流れていて、そこで暮らしている限りゆっくり出来ないことなどないと思える。 大勢でゆっくりするのもいいが、一人でゆっくりするのもまたいい。 ゆっくり魔理沙は久しぶりにするそれに、期待で目をぎらぎらさせながら飛び跳ねていた。 鼻息も荒く、興奮で頬ははちきれんばかりにふくらみ、いつも以上に赤らんでいる。 焼け焦げが目立つ折れた木が見えてきた。 そこには四匹のゆっくり魔理沙たちがいた。群れのようだ。みな微笑みながらゆっくりしている。じつに楽しそうだ。 同種のゆっくり同士には、基本的に縄張りの意識はない。 だから帰ってきたゆっくり魔理沙は元気よくその群れに飛び込み一声あげた。いつもどおりの鳴き声だ。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 次々と聞こえるそれはやまびこのようだった。 帰ってきたゆっくり魔理沙は手近なところにいた中くらいの、と言っても帰ってきたゆっくり魔理沙と同じくらいのゆっくり魔理沙にほお擦りをした。 「ゆぅ~」 「ゆゆゆ」 気持ちよさそうな声をあげて親愛の情を返す中ゆっくり魔理沙。 その様子を微笑ましそうに見ている群れの長だろう大ゆっくり魔理沙。これは帰ってきたゆっくり魔理沙よりも一回り大きい。 明らかに繁殖経験ゆっくりだ。きっと群れの仲間はこれの子供たちなのだろう。 しばらく五匹でゆっくりしていたが、小さな声が聞こえてきた。 「おかーさーん、ゆっくりしようね!」 「しよーしよー!」 「ゆーゆー!」 大きな木の洞から小さなゆっくり魔理沙が三匹でてきた。中ゆっくり魔理沙よりも一回り小さいそれらは、今まで眠っていたのか大きなあくびをしている。 「ゆゆっ!?」 帰ってきたゆっくり魔理沙は戸惑いの声をあげた。 今、小ゆっくり魔理沙たちが出てきた見覚えのある洞は、自分の巣ではないか? そんな疑問を抱いたゆっくり魔理沙をよそに、小ゆっくり魔理沙たちは大ゆっくり魔理沙に頬をこすられて気持ちよさそうにしている。 「ゆゆゆゆっ!?」 いぶかしげな顔をしながら、ゆっくりと巣に近づいて、中の様子を探るゆっくり魔理沙。 「ゆ゛っ!?」 中は酷い有様だった。ゆっくり魔理沙が集めた宝物の鳥の頭蓋骨は粉々に砕かれていてもはや白い残骸だ。 布団代わりに敷き詰めた草は半分以上がむさぼられていたし、後で食べようととっておいた桃はどこにもなく、代わりに食べかけのカボチャがでんと置かれていた。 なかでも一番嫌だったのが、巣の中から自分の臭いがまったくしないのに、それとは違うゆっくりの臭いがしていることだった。 急にゆっくり魔理沙の頭に餡子が上る。 その視線の先には飛び跳ねている小ゆっくり魔理沙の姿があった。 「ゆぅううーーーっ!」 跳躍し、小ゆっくり魔理沙の一匹に体当たりする。 「ゆぎゃっ!!」 吹っ飛ばされ転がる小ゆっくり魔理沙。 続いて他の小ゆっくり魔理沙を弾き飛ばそうとするが、それは出来なかった。中ゆっくり魔理沙が思い切り体当たりしてきたのだ。 「なにするのー!」 「ゆぐっ!」 家族を攻撃されて、こちらも頭に餡子が上った中ゆっくり魔理沙。威嚇なのか「ぷんぷん!」といいながら帽子のリボンをひときわ大きく広げている。 他の中ゆっくり魔理沙も無言でにじりよってくる。 弾かれた小ゆっくり魔理沙は、ほかの小ゆっくり魔理沙たちと一緒に、大ゆっくり魔理沙にすりよって慰められていた。 体勢を立て直したゆっくり魔理沙は、その場で勢いよく飛び跳ねて声高に訴える。 「ゆっゆっ!わるいのはそいつらだよっ!」 「わるくないよっ!まりさたちはいいものだよっ!!」 すぐさま言い返す中ゆっくり魔理沙。リボンはまだ大きい。 言い合いは続く。他の中ゆっくり魔理沙もそれに混じる。 「ゆぅ~、ここはまりさのおうちなのっ!ゆっくりしないでね!」 「なにいってるの?ここはまりさたちのおうちだよ!!!」 「ちーがーうーの~!まりさのおうちなの~~!いいからさっさとでてってね!!」 「いやだよ!ここはまりさたちがゆっくりするおうちだよ!!」 「ちがうもん!ちがうもん!!はやくでてけっ!」 地団太を踏むように小刻みに跳ね続け、顔を真っ赤に染めてゆっくりしないで叫ぶゆっくり魔理沙。 中ゆっくり魔理沙たちは、そんな様子を餡子が腐ったようなものを見る目でみつめている。 「ここはまりさたちがみつけたんだよ!」 「まりさたちのおうちだもん!ゆっくりしないでさっさとどっかいってね!!」 「はやくきえてね!まりさたちはゆっくりするから!」 「「「ばーかばーか!うそつきー!どっかいけ!!かえれー!!!」」」 ゆっくり魔理沙は三匹に立て続けに言われてとうとう怒ったのか思い切り飛び掛った。 「いいからさっさとでてくのーーー!」 体当たりされて転がる中ゆっくり魔理沙。それを見て勝ち誇るように鼻で笑うゆっくり魔理沙。 「なにするのーッ!!!」 「ゆ゛ッ」 同時に重い音とともに潰されるゆっくり魔理沙。大ゆっくり魔理沙が飛び乗ったのだ。 すぐさま中ゆっくり魔理沙のもとへと跳ねよる大ゆっくり魔理沙。だが中ゆっくり魔理沙は大丈夫だと言うように跳ねている。 そのままゆっくり魔理沙へと向かう。 「ゆ~~」 体を起こすと、ゆっくり魔理沙は中ゆっくり魔理沙に囲まれていた。いや中ゆっくり魔理沙だけではない、六匹の群れが全員でゆっくり魔理沙を取り囲んでいるのだ。 ゆっくり見渡したところ、逃げられるような余裕はなかった。とたんにきょろきょろと慌てるゆっくり魔理沙。 「ゆっゆっゆっ?」 なぜ囲まれているのかゆっくり魔理沙には理解できない。自分はただ、自分の巣でゆっくりしたかっただけなのだ。 「ゆー!」 べよん。 小ゆっくり魔理沙が体当たりする。少し痛かったが、すぐにしかえそうとするゆっくり魔理沙。 しかし逆側からも体当たりされる。 「ゆぅっ!!」 そちらを向く。 すると背中に衝撃が。 「ゆぐっ!?」 ほどなくゆっくりリンチが始まった。 大ゆっくり魔理沙がのっかり攻撃し思い切り飛び跳ねる。 まわりで中ゆっくり魔理沙は三方向から勢いよく体当たりをする。 その隙間からは小ゆっくり魔理沙が噛み付いているのが見える。 みんな思い思いの方法で、ゆっくり魔理沙に暴行を加えている。 ゆっくり魔理沙は最初こそ反抗的だったが、ものの数秒もしないうちに号泣し、命乞いの声をあげていた。 しかし群れの攻撃はやむどころか弱まる気配すらない。ぼこぼこぼこぼこといい音がしている。 それに混じる悲鳴や泣き声。なにかが飛び出る音。 「ゆっゆ゛っゆっゆ゛っゆっゆ゛っ!!!」 「いや゛っ!いや゛っ!よじでっ!びゅっ!」 「ぐるぢいよ!だぢでっ!やべでぇっ!!だぢでよおおお!!!」 「どお゛じでごん゛な゛ごどずる゛の゛ぉ゛お゛ぉ゛!?」 「い゛や゛ぁあ゛ぁぁぁ゛ぁ゛ぁあ゛ぁ゛ぁぁぁ」 「も゛う゛や゛め゛て゛ね゛っ゛!」 「い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛」 「ゆ゛っぐり゛じだい゛よ゛ぅ」 「ゆ゛……っぐり゛……ざぜ……でぇ……ぜっぜっ」 「……ッ!……ぅっ!!…………っ」 ぴくぴくと動くゆっくり魔理沙のようなもの。 それは涙と鼻水、よだれや泥で汚れきっており、餡子まみれで帽子もこれ以上ないほどによれて、ところどころに噛み跡が見える。 もはや虫の息でゆっくりとしているゆっくり魔理沙。 「ゆっ!」 仕上げとばかりに大ゆっくり魔理沙はそれに思い切り体当たりをする。 餡子を撒き散らしながら声もなく転げていくそれを追いかける三匹の中ゆっくり魔理沙たち。 それは近くの川岸でゆっくりと止まった。 その様子に明らかに不満顔で膨れていく三匹。顔を見合わせると、何かを決めたように頷く。 「「「ゆぅ~う~うぅ~っ!!!」」」 声を合わせて、三匹は汚れたゆっくり魔理沙を川に投げ入れてやった。 「「「ゆっくりしんでね!」」」 汚れたゆっくり魔理沙が川をゆっくりと流れていく様子を、げらげらげらげらという笑い声が見送っていた。 ぶくぶくと泡をだしながらゆっくりと薄れていく意識の中でゆっくり魔理沙は思った。 こんなことならゆっくり霊夢たちの巣でもっとゆっくりしてればよかった……と。 おわり。 著:Hey!胡乱
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/807.html
森でまもなく子供が生まれるゆっくりれいむとそれを見守るゆっくりまりさをみつけた。 「どうしたんだい?」 「ゆっ!?まりさ、にんげんだよ!」 「おにーさんどうしたの!ゆっくりしていってね!」 俺の声かけに気づいたゆっくりまりさがれいむを守るように俺の前に立ちはだかる。 すこし膨れているのでだいぶ警戒しているのだろう。 れいむはまりさに隠れながら自分の頭の上の実を気にしている。 その後ろは土が崩れている用に見える。 「もしかしてここに巣があったのかな?」 「ゆぅ・・・おにーさんにはかんけいないよ!はやくかえってね!」 「そうだよ!れいむはふたりでゆっくりしたいよ!」 「まぁまぁ。この様子だと巣を掘りなおすにはしばらく掛かるんだろう?」 「ゆぅ・・・」 「その間うちに来ないかい?」 俺の質問にまりさとれいむは俺を気にしながら相談を始める。 ゆっくりにとって人間は捕食者の一つである。 昔は人間を気にせず人の畑や家に入り込んで食料を漁っていたが、人間によってゆっくりが殺されだすとゆっくりは森の奥に逃げ出した。 森の中で人間にあってもすぐに逃げるようになったので一部を除く人間は無視するようになった。 これにより人間とゆっくりは上手く生活できるようになった。 しかし、一部の人間がゆっくりを捕まえに森に入っていたので、このように人間を警戒するのである。 「おにーさんのていあんはうれしいけどまりさたちはもりでくらすよ!」 「でも近くに身を隠せる場所は無さそうだけど。」 「でもにんげんはしんようできないよ!」 「子供達がどうなってもいいのかい?」 「ゆゆゆゆ・・・」 人間は怖い。しかし、このまま森でいるとやがて夜になり、捕食者が目を光らす時間になる。 まりさは何とかなるかもしれないが、実を生やしたれいむは明日にはいなくなるだろう。 まりさは決断を迫られた。 「ゆっ!おにーさんすこしゆっくりさせてね!」 「まりさ!?」 「だいじょうぶだよれいむはまりさがまもるよ!」 「じゃあ俺の後についてきてね。」 まりさは子供とれいむを見捨てれなかった。心配するれいむをなだめるまりさの目にはれいむを護るという決意の火が見えた。 もうすぐ日が暮れる。このままでは俺も危ないので崩した巣穴を離れた。 俺は後ろからついてくるまりさとれいむを気にしながらゆっくりと家に帰った。 帰る間俺は一度もれいむに近づけなかった。 近づこうとするたびにまりさが間に入るのだ。これなら夜も過ごせたかもしれない。 家につくと庭の一角にある小さな小屋に連れて行く。 「ゆゆっ!これはほかのゆっくりのすだよ!」 「そうだよ!かえってきたらゆっくりできないよ!」 「あぁ前にも使ってたゆっくりがいるだけだよ。」 「ゆぅ?」 「ここは巣をなくしたゆっくりに使わせるために作ったんだ。 今までに何匹ものゆっくりがここで巣が見つかるまで暮らしてたんだよ。」 「じゃあいまはいないの?」 「そうだよ。今は誰も使ってないからそこでゆっくりしていってね。」 「ゆっくりしていくね!」 「おにーさんありがとう!」 ちゃんと俺にお礼を言うゆっくり。 家に来るまではだいぶ警戒していたが、先ほどの話とこの巣に残っていたのだろうゆっくりの気配から俺を少しは信用したようだ。 しかしまだ完全に信じきってはいないようで巣箱の入り口は俺の手が入らないように枝や木の葉で隠せるようにしていた。 「ずいぶん厳重だね。」 「しらないばしょだからね!なにがくるかわからないもん!」 「まりさ!ごはんはどうしよう?」 「ゆぅ・・・」 「こんな時間だしね。何か食べれるものを持ってこよう。」 「ゆ!おにいさんいわるいよ!」 「まりさ!ここはおにーさんにたすけてもらおうよ!れいむはおなかがぺこぺこだよ!」 「ゆゆゆゆ・・・」 「料理に使わなかった野菜屑だから平気だよ。俺は捨てるものがなくなってうれしい。君達は食べれるものがもらえてうれしい。」 「ゆっ、じゃあへいきだね!おにーさんごはんください!」 「じゃあこっちにきて一緒に食べようか。」 そういってまりさとれいむを家の中に招待する。 れいむは縁側を登るのに苦労しそうだったので俺が持ち上げることにした。 まりさはいやがってたがお腹がすいたれいむはすぐに持ち上げてと言って来た。 まりさも言葉では嫌がっているがよだれがすこし見える。 朝早くに巣を壊したのでほとんど一日何も食べてないのだからしょうがないのかも知れない。 「うっめぇ、これめっちゃうめぇ!」 「むーしゃむーしゃしあわせー!」 野菜屑を一心不乱に食べるゆっくり達。それを見て俺も夕食を食べだした。 夕食を食べ終わるとこれからのことを話し合う。 「ゆっ!あさになったらでていくよ!」 「おにーさんありがと!」 「でも巣の当てはあるのかい?」 「ゆっ・・・でもなんとかするよ!」 「まぁまぁもうすぐ雨が良く降るのは知ってるだろう?」 「うん!もうすぐゆっくりできなくなるよ!」 「巣ができる前に雨が降っちゃうと溶けちゃうよ?それでもいいのかい?」 「ゆぅぅぅぅぅ・・・」 「だからさ、巣が出来るまであそこを使ってほしいんだ。餌は俺がやっても良いし自分でとってきてもいい。」 「おにーさんいいの?」 「ああ、もちろんその代わり話し相手になってくれないかな?ひとりだと退屈でね。」 「いいよ!ゆっくりしていってね!」 餌は雨の日以外は自分でとって来るそうだ。俺としては毎日上げてもよかったがまりさが嫌がった。 「かりのしかたわすれちゃうとだめだからね!」 「まりさはとってもじょうずだもんね!」 「れいむもすごいじょうずなんだよ!」 「はいはい。」 次の日からまりさとれいむの新しい生活が始まった。 朝のうちからまりさは巣のあった場所に出かけて穴を掘りに、れいむは新しい巣で子供達が落ちないようにじっとしている。 俺はまりさについていき一緒に森で食べ物を集めた。 森のことはゆっくりの方が詳しいのだ。まりさに連れられてかごをいっぱいにして家に帰る。 まりさは帰るとすぐに巣にいきれいむにご飯をあげる。そして次の日までれいむやおれとゆっくりして過ごす。 物覚えもよく、人の畑の餌をとらないなど俺が教えたことはすぐに覚えた。 どうやらゆっくりしているときに教えてもらったことはちゃんと覚えるらしい。 昔はゆっくりに厳しく教えていたそうだから逆効果だったのだ。 そんな生活も1週間続くと終わりが見える。 れいむの実がだいぶ育ち、赤ちゃんゆっくりの形が分かるようになった。 ゆっくりれいむが6匹、ゆっくりまりさが同じく6匹。 まりさの巣ももうすぐ完成だという。 「おにーさんいままでありがとう!」 「れいむたちはあしたにはでていくよ!」 「急だね。赤ちゃんが生まれてからでもいいんじゃないか?」 「にんげんになれちゃうよだめだからね!」 赤ちゃんが俺になれてしまうと、親ゆっくりがいない間に人里に近づくことを心配しているのだ。 「うーん、明日は止めた方がいいかな。」 「ゆ?」 「明日の天気予報は雨なんだ。」 「だいじょうぶだよ!あさはふらないよ!」 「しかし、もうすぐ赤ちゃんが生まれるれいむが昼までに巣までいけるのかな?」 「ゆぐぅ・・・」 俺はまりさたちがここに一日留まるように雨のことをはなす。 実際に雨が降るのでまりさも困っているのだろう。 「まりさ!まりさ!」 「れいむどうしたの!」 「あかちゃんみてみて!もううごいてるでしょ!」 「ほんとだもうすぐゆっくりだね!」 「うん!あしたにはうまれるよ!」 「ゆゆっ!?じゃああしたはここでゆっくりしようね!」 「うん!あそこならゆっくりうめるよ!」 実を宿したれいむが言うのだから本当なのだろう。明日には赤ん坊が生まれるのだ。 「じゃああとすこしだけここにいさせてね!」 「分かったよ。そのかわり後で赤ちゃんを見に行っていいかな?」 「ゆっ!うまれたあとならいいよ!」 「あといえにはあげれないよ!」 「うん。本当はおいしいものをあげたいんだけどそれもだめだよね?」 「だめだよ!もりでくらせなくなるよ!」 「じゃあ明日はすこし多く野菜屑をあげよう。れいむはゆっくりがんばってね。」 「ゆっくりがんばるよ!」 胸?をはるゆっくりれいむ。赤ちゃんが生まれる姿を見れないのは残念だがしょうがない。 俺はゆっくりをおいて部屋の奥で作業を始めた。 その夜、ゆっくり達が寝静まったのを確認してゆっくりの巣箱に向かう。 餌に睡眠薬を入れていたので朝までぐっすりだろう。始めのうちは警戒していたが今は無警戒だったので楽だった。 巣箱につくと屋根の上の鍵を外して屋根を持ち上げる。 巣の入り口は枝や石で入れないようになっていたが、そんなものは意味がない。 屋根を外すとゆっくり寝ているまりさとれいむが見えた。 朝まで時間がない。急ごう。 俺はれいむを持ち上げ外にだす。 次に実の大きさを測り、2番目に大きいれいむを手に取る。 そして用意していたライターで赤ちゃんゆっくりの底部を焼く。 焼きすぎると動けなくなるので、跳ねれない程度にライターであぶる。 これまで何度もやってきたので感覚でライターをうごかす。 一番大きいれいむ以外を焼くと、まりさのほうも同じように焼く。 これで、一番大きい赤ちゃんまりさとれいむ以外は生まれて来ても跳ねることができないだろう。 焼けた後が見えないように小麦粉で隠し、れいむを元の場所にもどして屋根を置く。 明日が楽しみだ。 赤ちゃんが生まれる日。妙にげんきなまりさとれいむに赤ちゃんが生まれたら教えてほしいと言い、家の中で待つ。 しばらくすると、巣が騒がしい。どうやら全部生まれたようだ。 まりさはまだやってきてないが俺は巣箱に近づく。 巣箱の前まで行くと外にまりさとれいむのこれが漏れていた。 「ゆっくりしていってね!」 「「「「「ゆっくちちていっちぇね!」」」」」 親ゆっくりの声に元気に答える赤ちゃん達。 俺はまりさに呼びかける。 「あかちゃん、生まれたみたいだね。出て来て見せてほしいな。」 「ゆっ!!ちょっとまってね!」 「ん?どうしたんだい?」 「なんでもないよ!ゆっくりまっててね!」 どうやら子供達のことで焦っているようだ。 俺はゆっくり出てこいとまりさを説得する。やがてあきらめたのか、れいむとまりさが出てきた。 「みんなでてきてね!」 「ゆっ!ゆっ!」 れいむのこえに赤ちゃんまりさが一匹と赤ちゃんれいむが一匹巣から出てきた。 元気に親まりさのまわりを跳ねる。 しかし、親まりさとれいむはうかない顔だ。 その原因が巣から出てきた。 「ゆっ!ゆっ!」 小さいまりさと小さいれいむが五匹ずつ、巣から這いずって出てきた。 「おかーしゃんまっちぇ~!」 「ゆっ!ゆっくりはねてね!」 「ゆうううう!できないいいいい!」 5匹は上手く焼けたのかずるずるすべるしかできないようだった。 親まりさとれいむは必死に飛び跳ねさせようと口に咥えて目の位置ぐらいから落とす。 元気な赤ちゃんれいむとまりさはぽよんと地面で跳ね返った。 しかし残りの十匹はべちょっと地面に引っ付く。 「どうしてええええええ!」 「これはいったい!?」 「まりさにもわからないよおおおおおお!」 我慢していたのだろう。泣き出すまりさとれいむ。 この赤ちゃん達は外敵から逃げることも餌を取ることも出来ない。 親ゆっくりもそんな赤ちゃんを養い続けれないので赤ちゃんゆっくりはやがて餓死する。 そんな未来を思い描いてないているのだろう。 「ゆぅ・・・おにーさんありがと。まりさたちはここをでていくね・・・」 「子供達はどうするんだい?」 「がんばってそだてるよ!できるだけがんばるよ・・・」 最後まで元気が続かないれいむ。まりさも子供達を捨てることを考えているのがうかない顔だ。 そこで俺が提案する。 「もしよければ、その10匹預からせてくれないかな?」 「ゆ!でもこの子達は・・・」 「俺なら十分な量の食事を与えれるから。だめかな?」 「ゆぅぅぅぅ・・・」 捨てることを考えてた親ゆっくりにとっては願ってもないことだろう。 ゆっくり理解するのを待ってると 「まりさ、おにーさんにおねがいしようよ!」 「ゆっ!そうだね!おにーさんならだいじょうぶだね!」 信用してくれて何より。 ところで今までの話を子ゆっくりも聞いていたんだけど大丈夫なのだろうか。 「「「おかーちゃんおなかしゅいた~」」」 ・・・どうやら自分のことを話していたとは考えてないようだった。 元気な子ゆっくりはともかく、飛べないゆっくりはもう少し危機感を持つべきだろうに。 まぁその方が話が楽だ。飛べないゆっくりを手にとって手元に集める。 「じゃあ確かに預かったよ。」 「おにーさんまりさとれいむのあかちゃんをおねがいします!」 「あぁ、ちゃんと育てるよ!」 親ゆっくりは安心したのか子供達に餌をやり始める。元気なゆっくりにはもちろん、飛べないゆっくりにも餌を渡そうとする。 「おにーちゃんはやさしいからね!げんきにそだってね!」 「とべるようになったらもどってきてね!」 親ゆっくりはまだ子供達が跳ねれるようになると思ってるのだろう。 もう無理なんだけどね。 まぁ最後になるだろう子ゆっくりとの時間を潰すのはかわいそうなのでそのままにしてあげることにした。 次の日の朝親ゆっくりと元気な子ゆっくりは親ゆっくりの作った巣へと旅立っていった。 俺は残った赤ちゃんゆっくりを用意してあった箱に落とす。 「ゆべっ!」 「ゆぐっ!」 べちゃべちゃと床に引っ付く赤ちゃんゆっくり。 始めはこちらに文句を言ってきたが、しばらく無視しているとこちらを気にせず集まってゆっくりをしだす。 全部がゆっくりしだしたところで話を切り出した。 「それじゃこれから君達を鍛えるよ。最後までついてきたら親ゆっくりの元に帰れるかもね。」 「ゆっ!ゆっくちがんばりゅよ!」 元気よく返事した赤ちゃんゆっくりを確認すると赤ちゃんゆっくりから離れた場所に旗を立てた。 「じゃあ今からこの砂時計が終わるまでにあそこについてね。たどりつけたらおいしいご飯をあげるよ。」 「ごはんごはん!」 「おなかしゅいたー!」 「ご飯はたどり着いてからだよ。それじゃスタート。」 スタートと同時に砂時計をひっくり返す。赤ちゃんゆっくりも同時に旗を目指して動き出した。 跳ねると楽に間に合う距離だったが跳ねれない赤ちゃんゆっくりには遠い距離だ。 必死に這っていく赤ちゃんゆっくり。俺はそれを横から眺める。 「ゆ~!砂しゃんゆっくちちてね!」 「ゆっくちちていっちぇね!」 「ゆっくち!ゆっくち!」 砂にお願いするもの、無言で這う物、声をあげながらがんばってるもの。 赤ちゃんゆっくりはそれぞれ思いつく方法で旗を目指す。 やがて一匹、二匹と旗にたどり着く。差が出るのは途中で休む休まないの違いだ。 今回は最後まで見るためにかなり距離を短くしていたので全匹たどり着くことが出来た。 それでも予想していた時間よりはだいぶ掛かっていたが。 「つかれちゃ~」 「ゆっくちきゅうけいだよ!」 「ゆっくちちていっちぇね!」 さて約束どおりおいしいものを上げよう。 「よくがんばったね!じゃあおいしいものをあげよう。」 「やっちゃね!」 「これれゆっくちできるよ!」 「はやくちてね!」 うれしそうな赤ちゃんゆっくりの下にお菓子を置いていく。 「さぁお食べ。」 「むーしゃ!むーしゃ!・・・しあわちぇええええええ!」 「うっめ!これめっちゃうめ!」 「ゆっくちたべるよ!」 さっきまでの疲れはどこへやら、夢中にお菓子を食べるゆっくり。 やがて食べ終わった赤ちゃんゆっくりは思い思いにゆっくりしだす。 と、言っても跳ねれないので壁に寄り添ってたり、赤ちゃん同士で話すぐらいなのだが。 ゆっくりしだしたのでもう一つルールを教えることにする。 「さてじゃあ次からは食事にも砂時計を使うよ。」 「ゆゆ?」 「この砂時計の砂が落ちる間だけご飯の時間だからね。」 「それじゃゆっくちできないよおおおおー!」 「ご飯を取り上げるだけだからゆっくりはできるよ。それに砂時計ゆっくりしてたでしょ?」 「ゆっくちちてたよ!ごはんだけならゆっくちできるね!」 「でも次の旗も同時に置くからね余りゆっくりしてるとたどり着けなくなるから気をつけてね。」 「わかっちゃよ!」 「じゃあ次を始めるよ!」 そういって今度は先ほどよりすこし遠い距離になるよう旗を置く。 今回は最初と違って赤ちゃんゆっくりは二つに別れた。 旗に向かうものとゆっくりしてるものだ。 先ほどは旗についてからもだいぶ時間があったからゆっくりしてるのだろう。 しかし砂時計はそんな赤ちゃんゆっくりを待たずに砂を落とす。 やがて全部の赤ちゃんゆっくりが旗を目指すが、砂が全部落ちたとき辿りつけていたのは半分だった。 たどりつけてなのはまりさ種の方が多い。這うだけでも身体能力の高さが出るようだ。 それに加えて最初にゆっくりしてたのはれいむ種が多かったのもあるだろう。 「今回は半分になったね。じゃあご飯の時間だよ。」 そういってたどり着いた方には前と同じようにお菓子を、たどり着けなかったほうには野菜屑や近くで取った虫を与える。 「「「むーしゃ!むーしゃ!しあわせ~!」」」 おいしそうにお菓子を貪る赤ちゃんゆっくり。対照的に、 「むーしゃ・・・むーしゃ・・・」 「ゆゆっ!むししゃんうごかないでね!」 「れいみゅもおかしがいいよ!」 こちらは野菜屑や虫の赤ちゃんゆっくり。 親ゆっくりが取ったのを食べたことがあるので食べないことはないが、食べやすいように口渡しだったので動く虫は食べずらそうだ。野菜屑も食べやすい大きさに切ってないのでうまく食べれない。 お菓子を食べてるゆっくりの方に向かおうとしたが透明な壁によって旨そうに食べる赤ちゃんゆっくりを見て涎をたらすしか出来なかった。 そうして食べている頃に砂時計の砂が落ちる。 「はい、時間切れー。次の旗はあそこだよ。」 「ゆ~!まだたべおわっちぇないよ!」 「もっとゆっくちちゃちぇてね!」 「だめだめ。砂はもう全部落ちたよ十分ゆっくりできたよ。」 「おにーしゃん!れいむちゃちにもおかしちょうだい!」 「旗まで辿りつけたらね。辿り着けなかったらさっきみたいな野菜屑と虫だよ!」 「「「ゆ゙ゔううううううううううう!!!」」」 砂時計は砂の量を少なくしていたので短いと感じるのは当然だったが、赤ちゃんゆっくりには砂の量の違いは分からない。 野菜屑はもう嫌なのか先ほど辿り着けなかったゆっくりは我先にと旗へと向かう。 お菓子だった赤ちゃんゆっくりも野菜屑を食べないように旗に向かうが野菜屑だったゆっくりよりはゆっくりしていた。 「ゆっくち!ゆっくち!」 今回の旗はさっきよりはかなり遠くにおいているからしばらく掛かるだろう。 砂の量は増やしたので全匹辿り着けないことはないはず。砂が落ちる頃に見にこよう。 赤ちゃんゆっくりの必死な声を聞きながら俺は部屋を後にした。 「じゃあご飯の時間だよ!」 「むしゃむしゃむしゃ・・・」 旗に向かうってご飯と言うことを3日間繰り返した赤ちゃんゆっくりはもはや喋ることもせずに黙々とご飯を食べる。 一口でも口に含もうと必死なのだ。それは野菜屑と虫の方も変わらない。 この三日間で野菜屑にならなかった赤ちゃんゆっくりはいなくなった。 まだ野菜屑と虫を食べにくそうにしている赤ちゃんゆっくりもいるが、慣れて普通に食べる赤ちゃんゆっくりも出始める。 「はい時間切れ~。次はあそこだよ。」 「ゆ・・・ゆっくちがんばりゅよ・・・」 次の場所を教えると赤ちゃんゆっくりはゆっくりせずに旗に向かう。 お菓子のほうはだいぶ食べられているが野菜屑はまだ残っている。 タイムアップと同時にご飯の時間が始まり、食べる場所は旗の近くなので遅れたゆっくりは食べ始める時間もそれだけ短いのだ。 この3日間で距離と時間はだいぶ延びた。 今では俺と同じ時間に食事をするように砂時計と距離を合わせている。 赤ちゃんゆっくりは朝昼夜と制限時間内に旗に辿り着けるように一度もゆっくりせずに旗を目指し。 夜と朝の長い時間の間にだけ眠ることが出来た。 それもゆっくりしすぎると旗までたどりつけないのでゆっくり眠れない。 野菜屑をあげるのは朝の時間が多く、昼夜は余り野菜屑が必要なくなっていたが、野菜屑なんてそんなに多くでないので好都合だった。 お菓子を食べてる間は幸せそうに思えるだろうが、忙しなく食べていてはおいしさも分からないだろう。 現に今は小麦粉をこねてお菓子に見せたものなのだ。 遅れてご飯を食べれずに衰弱していく赤ちゃんゆっくりも出始めるが、寝ている間に果実の汁をかけてやれば元気になる。 死んでゆっくりさせないようにゆっくりの体調管理には気をつけねば。 赤ちゃんゆっくりを鍛えるようになって1週間、うれしい誤算があった。 赤ちゃんゆっくりが心配になった親ゆっくりが現れて、旗に向かって懸命に這う赤ちゃんゆっくりをみてマツタケを置いていったのだ。 どうやら、ちゃんと育ててくれていると勘違いしたようだ。 もっとも勘違いするように音は届かないようにしているし、近づくと気が散るからと言って遠くから見せたから当然だが。 赤ちゃんゆっくりも必死なので周りに目がいかず、親ゆっくりが来ても気づかなかった。 「どうだい。がんばってるだろう?」 「ゆっ!あかちゃんたちがんばってるよ!」 「そうだろう。みんな君たちに会うためにがんばってるんだ。」 「あかちゃんたちにももってきたものたべさせたいよ!」 「あとで俺がちゃんと食べさせるよ。」 「ゆ~、まりさがちょくせつわたしたいよ!」 「それはだめだね。今は君達に会うためにがんばってるから今あっちゃうと今までの苦労が無駄になっちゃうんだ。」 「ゆゆゆ・・・」 「まだ野生に耐えれないから我慢してね。」 「ゆっくりりかいしたよ!」 「よし、じゃあこの野菜屑をやろう。こんなものしかないがよければもっていってくれ。」 「おにーさんありがとう!」 それからも親ゆっくりは俺にいろいろなものを持ってきた。 どれも山で取れる珍しいもので、赤ちゃんゆっくりのためにがんばって取ってきたのだろう。 ありがたく全部いただくとする。 赤ちゃんゆっくりは一度もゆっくりさせずに這い回っている。 今は平地だけじゃなく、砂利道や坂など様々な障害を加えている。 今は綱渡りだ。 旗は立方体の箱の上にある。跳ねれればいいのだが跳ねれないゆっくりは崖で止まってしまう。 そこで坂がついた箱を用意し、そこから旗の箱まで綱を引いてやるのだ。 旗に辿り着くには綱を渡らなければならず、綱から落ちたら最初からだ。 これだと辿り着けない赤ちゃんゆっくりは一度も食事を出来ずに衰弱してしまい、果実汁に頼りっぱなしになるが、 親ゆっくりが持ってきているものの中に果物が含まれているので余り負担は増えなかった。 それに赤ちゃんはまったく育ってない。 実は親ゆっくりに遠くから見せていたのは育っていない赤ちゃんを気づかせないためでもあった。 こいつらはゆっくり出来ないと成長も出来ないらしい。 おかげで餌代も増えず、場所もずっと同じでいいので楽だ。ご都合設定バンザイ。 「もっとゆっくちちたいよおおおお!」 「ゆぅ、れいみゅがんばっちぇね!」 「ゆっくちがんばりゅよ!まりしゃもがんびゃろうね!」 相変わらず食事中は声もなく急いで食べるが、ほとんど旗に辿り着けるようになって赤ちゃん達はお互いに助け合うようになった。 協力しないと辿り着けないようなギミックを増やしたせいもあるだろう。 これはどんどん無口になっていく赤ちゃんゆっくり対策だ。 綱を渡るゆっくりをもう渡りきったゆっくりが応援する様子を見ながら、 まだまだ退屈させない赤ちゃんゆっくりのために次はどんなギミックにしようか考えるのはもう日課になっていた。 「おにーさんまりさたちはしばらくこれないよ!」 「ん、そうかもう冬篭りか。」 「そうだよ!あしたにはあなをふさぐんだよ!だからはるまであえないけどあかちゃんをよろしくね!」 「それなら餌が必要だろう。よければもってけ。」 「ゆゆっ!おにーさんありがとう!」 そうかもう冬篭りか、ゆっくりが言うのだからそろそろ雪が降るだろう。 ゆっくりは天候に敏感だ。身の危険と直結してるから当然だろう。 そろそろ虐待の手段に欠いてきたのでここらで赤ちゃんゆっくりをかえしてやるか。 最後の旗とりをさせた次の日、俺は赤ちゃんゆっくりを外に出してやる。 「ゆー!おしょとだー!」 「しゃ、しゃぶいよおおおお!」 「ゆっくちできないいいいいい!」 「あぁ悪い悪い、これを着ればゆっくりできるよ。」 そういってゆっくりを綿で包んで外れないように止めてやる。 「どうだ?まだ寒いか?」 「ゆゆ~!あっちゃかぃ~」 「これなりゃゆっくちできるよ!」 「よし、じゃあゆっくり親の元へお帰り。これまでがんばってきたから野生でもゆっくりできるよ。」 「おにーしゃんありがちょー!」 「巣の場所は教えたとおりだからね。がんばって帰るんだよ。春にはまたおいで。」 「おにーしゃんまちゃね~!」 そういって綿に包まれた赤ちゃんゆっくりは森に入っていった。 今日巣を閉じると言っていたから間に合うだろう。 今までの訓練から野生でゆっくりと生きる赤ちゃんゆっくりを想像しながら俺は雪の降る道を帰っていった。 「おかしいな。あいつらがゆっくりしてる姿が想像できないぜ。」 続く このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1280.html
紅魔館 幻想郷と呼ばれる、非常識のモノが集う土地に存在する悪魔の館である。 人間は恐れて近付かず、妖怪は畏れて近付かず、その他の者は色々あって近付かないその館には悪魔に忠誠を誓った人間が一人居た。 時を操れるという人間を逸脱した能力を持つ彼女は、その能力故に同胞である人間から疎まれ、○年前にここの悪魔に拾われ側近となった。 十六夜咲夜。それが悪魔が彼女に与えた名前である。 そんな彼女は、日々完全で瀟洒なメイド長として主に奉仕するのである。 「そろそろ対処しないとマズいかしらね」 瀟洒にそしてアンニュイに呟く咲夜(脳内CV田中理恵)。視線の先には中庭で踊る複数の生物。 ゆっくりれみりゃというそれらは、最近突如として紅魔館周辺に現れた謎の生物だ。何でも中は肉まんだとか。 そんな馬鹿げた生物を、紅魔館雇われのメイド妖精達は大層可愛がった。 多少我侭ではあるが見た目は可愛いらしい童女で、その仕草にも愛嬌があり、遊んでやるとよく懐いた。 ただそれらの生物には問題がある。そのゆっくりれみりゃは紅魔館の主である吸血鬼、レミリア・スカーレットと同じような容姿なのだ。 勿論同じような、と言っても彼女達の主を相当デフォルメしたような顔形でしかないのだが。 容姿が多少似ているだけならまだ良かった。だがゆっくりれみりゃ達はここが快適な場所だと学習したのか、 どんどん仲間を呼び寄せ今や紅魔館周辺には常時数十匹のゆっくりれみりゃが確認でき、中庭どころか館内にまで侵入するものもいる。 門番はと言えば、そんなゆっくり達をあっさり見過ごしていた。主と同じような服装のせいもあるだろう。 とにかくそのような状況は、面子を重んじる吸血鬼たる主に仕える者として見過ごせないものだった。 「こんな事でお嬢様のお休みの邪魔をしてまでお伺いを立てる必要は無いわね。夜までに全て始末してしまえばいいか」 決定した。この日、紅魔館敷地内のゆっくりれみりゃは悉くこの世から消えてなくなると。 できれば後腐れ無く処分したい。メイド達に菓子で館の外にいるゆっくりれみりゃを中庭におびき寄せるよう指示を出す咲夜。 サボりがち門番には中に入るゆっくりは全て通し、中からは一匹たりとも逃がさないようにナイフと共に命令を下す。 そして主の友人である魔法使い、パチュリー・ノーレッジにゆっくり達の焼却処分を頼む。 図書館を度々荒らしに来るのに迷惑していたらしく二つ返事で引き受けてくれた。 後で掃除が大変そうだ、とぼやきながら咲夜も行動を開始する。既に館内に入り込んでいるゆっくりを中庭に移送するのだ。 こういう時咲夜の能力は非常に便利だ。チョロチョロと動き回る複数の目標を、この広い館の中探し回るのは普通なら大変だ。 だが彼女はザ・ワールd…時を操る能力を持つ。時間を止めてしまえば文字通り時間をかけずに目標を見つけ出す事が可能だ。 じっくりと探せば居るわ居るわ。図書館と主の部屋、それと地下室には一匹も居なかったが、他はブリブリ入り込んでいる。 正直彼女の予想を大きく越えていた。大方メイド達が裏口等からこっそり中に入れて可愛がっていたのだろう。 キッチンには13匹。主とその妹専用の食料はメイド長である咲夜しか入れない部屋に保管してあるので無事だった。 だが妖精メイド用の食事は酷い有様だった。ここまで食い散らかされてよく可愛がれるものだ。そこは妖精、という事なのだろうか。 ちなみに咲夜はきっちり自分の分の食料を別に保管してあるのでこれまた無事だった。瀟洒瀟洒瀟洒瀟酒瀟洒! とりあえず逃げられないように全員をナイフで床に縫いとめる。 「ううぅー!はなちてくれないと、たべちゃうぞー!!」 「それは怖いわね。怖いから、とりあえず羽を奪わせてもらうわ」 抗議するゆっくり達にそう答えつつ、淡々と背中に生えた羽をもぎ取って回る咲夜。もいだ羽は適当なゆっくりの口の中へ。 「むぐっ!んぎゅー!んぐー!!」 首を振っていやいやと言う様に暴れるゆっくり。吐き出されると床が汚れてしまうので飲み込むまで口を押さえる咲夜。 散々えづきながら全て飲み込むゆっくり。口の中に何も入っていないのを確認すると咲夜はそのゆっくりを抱え上げた。 びりびりと服が破れるが気にしない。これ位なら後で掃除しても構わない。 「うぅー!!やべてー!!おべべがやぶれちゃーうー!!」 大声を出しながら暴れるゆっくり。どんなに暴れても所詮は饅頭に胴体が生えただけの代物。 瀟洒な彼女のすらりとした腕から逃げる事は叶わない。 そんな、この『おうち』の『ごしゅじんさま』である筈の自分達をまるで『物』のように扱う咲夜に怒りを抱いた他のゆっくりも、 咲夜に向かって抗議しまくる。が、駄目っ……!瀟洒な上に完全な咲夜はそんな雑音等気にも留めず、次々とゆっくりを中庭に運び出す。 ちなみにその間ナイフを抜いて逃げようとするようなゆっくりは居なかった。 羽をもがれてもまだ自分達の身に危険が迫っていると思えないのかもしれない。 その後も順調に館内のゆっくりを回収して回る咲夜。結局館内には合計45匹のゆっくりが入り込んでいた。これはひどい。 全て回収する頃には日も傾きかけ、周辺に生息するゆっくりや森の中のゆっくりも粗方中庭に連れて来られていた。 外に出ようとして歩いていく者は門番に蹴り飛ばされ、飛んで出ようとする者は叩き落されていた。楽しそうだ。 いつもあれ位ハッスルしてくれればいいのに。 準備が整ったので、図書館にいるパチュリーを呼びに行く咲夜。 どうやら図書館に居ながらにして状況を把握したらしい。パチュリーは扉を開ける前に出てきた。 「じゃあ行きましょう。中庭に集めてあるのよね?」 「はいパチュリー様」 ゆっくり達の死刑執行人が中庭に現れた。 相変わらず門番に蹴られたり殴られたり投げられたりしているゆっくり達。 泣き声やら怒鳴る声やら気合いの掛け声やらで酷い喧騒だ。さっさと処分してもらおう。 「ではパチュリー様、宜しくお願いします」 「ええ」 パチュリーがゆっくり達の方を睨むと、あちこちへ散ろうとしていたゆっくり達が一斉に空中に浮かび上がった。 そして空中のある一点へとどんどん集まっていく。その中にチャイナ服を来た女性も混じっていたが誰も気にしない。 「うー♪うー♪おそらおそら♪ぶーん♪」「たかいたかーい♪うっうー♪」「ひええええええパチュリー様、下ろしてくださ~い!」 「もっちゃらへっぴ~もけもけさ~」 パチュリーが早口で何事か呟き始める。すると空中の一点に集められたゆっくり達(+門番)の周囲に模様のようなものが浮かび上がる。 「もっちゃらほげほげっもっちゃらほげほげ!」 呪文を唱え終わると同時に、ゆっくり達(+中国)が激しく燃え上がる。 「う゛う゛う゛う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 「あ゛づい゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 「ざぐや゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!だずげでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「きゃあああ!!熱い!熱いですパチュリー様!たーすーけーてーくーだーさーい!!」 凄まじい悲鳴が上がる。ゆっくり達にとっての地獄がそこにあった。妖精達は怯えている。 しばらくすると悲鳴も約1名分を除いて段々聞こえてこなくなり、ジューシーな香りがあたりに漂い始めた。 完全にゆっくり達を焼却し終えると、パチュリーはさっさと図書館に戻っていった。 真っ黒に焦げた人影がドサリと地面に落ちる。 「……えーと、大丈夫かしら美鈴?」 「うぅ……ひどいですパチュリー様ぁ……がくっ」 どうやら無事の様なので構わず館内に戻る咲夜。どうやらこのような光景は日常らしく、他のメイド達も動じない。 数分後、まだ伸びている美鈴の前に咲夜が再びやってきた。手には救急箱を持っている。 「ほら、手当てしてあげるから起きなさい。今度のは貴女に落ち度は無いからね」 「うわあ!咲夜さんにも人並みの優しさがあったんですね!!血も涙も無い訳ではなかったんですね!!私感動しました!!」 そう叫んで咲夜に抱きつく美鈴。次の瞬間には額からナイフを生やして撃沈。 「どうやら手当ては必要無いみたいね。じゃあ、私はそろそろお嬢様を起こしに行かないといけないから」 「そ、それでこそ私の咲夜さんです……がくり」 大掃除が終わって幾分晴れ晴れとした表情で、主の眠る部屋へ瀟洒に歩いていく咲夜であった。 PERFECT END!! 作:完全にして瀟洒に踏まれたい妖精紳士ことミコスリ=ハン
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3277.html
※○ちゃん「ぱられるぱられる、もうどうにでもなれ〜」 ※「僕はこうして〜」シリーズの無断クロスです。レイパーさん、ごべんなさい ※いじめは、うん・・・すまない、特にないんだ。正直作者の自己満足の境地です ※登場人物紹介とかはあとがきの後に記載しています 「おねーさん!すいか、ゆっくりにんげんさんにあいたいよ!」 きっかけは我が家で飼っている珍種ゆっくり、ゆっくりすいかのそんな一言。 ゆっくり人間とはすいか曰く、人間とゆっくりの間に生まれたナマモノで外見は人間と変わらないらしい。 が、身体の成分が一部ゆっくりのそれに類似しており、またゆっくりにエライ勢いで好かれるそうだ。 すいかはこんな馬鹿げた都市伝説をどこからか、恐らくテレビ辺りで仕入れ、なおかつその実在を見事に信じきっているらしい。 そんな生物学者がまた何人か発狂しそうなナマモノがいるはずも無いと言うのに、連日連夜会いたい会いたいと喚き続けるすいか。 私はずっと「居ないものとは会えない」の一点張りで押し通してきたのだが、結局彼女の執念に負けしてしまった。 「そんないきさつでれいむたちはゆっくりにんげんさんをさがしにおでかけをしているんだよ!」 「きょうはどんなゆっくりしたことがおきるのかな?!」 「ゆっくりにんげんさん・・・ゆっくりにんげんさん・・・ゆっくりしていってね!」 「アンタら、誰にナレーションしてる?」 左右の肩にれいむとまりさ、頭上にすいかという傍目には私こそゆっくり人間だろうと言わざる得ないような出で立ち。 それ以外はジーンズ、Tシャツ、白のコート、メガネと至ってシンプルなのだが人の顔の周りで騒ぐこいつらのせいで道行く人々の注目を意味も無く集めていた。 これが私の美貌のなせる業・・・であればどれだけ優越感に浸れただろうか。 しかし、現実というのは残酷なもの。 他の女性を圧倒しているものは胸くらいの私にそこまでの魅力はなく、行き交う人々の視線は私の顔の周りでゆんゆん歌っているゆっくり達に向けられている。 地元ならまだしも、見ず知らずの土地へ向かう電車の中では「何、あのゆっくり馬鹿」と言わんばかりの好奇の眼差しが少し痛かった。 「ということで、れいむたちはゆっくりにんげんさんのまちについたよ!」 「ゆっくりにんげんさんはみつかるかな?!」 「ゆっくりにんげんさん・・・すいかといっしょにゆっくりしようね〜〜〜〜〜!!!」 目的の駅に到着した時、また誰かに向けてナレーションをし始める我が家のゆっくりども。 近くに座っていた中学生のグループがクスクスと笑うのを一瞥し、電車を降りると、階段を駆け下りて、改札を後にする。 余談だが、すいかのおかげで無料で乗車できた。理由は言わずもがな。 この無意味にピンポイントなサービスは一体誰が得をするんだろうか・・・心の中でそう突っ込んだ直後に、自分が得をしていることに気付いた。 ゆっくり人間を探して訪れた街は一見すると何の変哲もない普通の街だった。 強いて特徴を挙げるとすればゆっくりが比較的浸透していて、飼いゆっくりや野良ゆっくりが平然と人々の隙間を縫うようにして通りを行き来しているくらい。 そのあまりの平凡さを訝しく思ったれいむは「ほんとうにここにいるの?」と首をかしげていたが、私がこの街を訪れたのには理由があった。 「ねえ、おねーさん?」 「んあ?」 「ほんとうにゆっくりにんげんさんはここにいるの?ゆっくりしたふつうのまちだよ?」 「ああ、多分ね」 この街にゆっくり人間がいると思った理由は至って単純。 私が勤めているゆっくりショップのバイト仲間にゆっくり人間について尋ねてみたところ、この街の名前が挙がったからである。 彼が適当なことを言っていたり、間違っている可能性もあるのだが、話を聞いた後に調べてみたらこの街には“ミスターゆんちぇいん”がいることが判明した。 「みすたーゆんちぇんってなあに?」 そう言って首をかしげたのはまりさ。 すいかもれいむも言葉の意味が理解できずに首をかしげている。 そんな訳で、私は彼女らに、私自身最近知ったその言葉の意味を説明してやった。 「ミスターゆんちぇいんって言うのは・・・ゆっくり関係で凄すぎる記録を残したせいでゆっくりカンパニーの人工衛星で常時監視されている人のことだよ」 もっとも、一介のアルバイトに過ぎない私では流石にその監視衛星の映像を見ることは出来ないし、眉唾もいいところではあるが。 「ゆゆっ!じゃあ、ゆんちぇいんさんはすごくゆっくりしてるんだね!れいむゆんちぇいんさんにあいたいよ!」 「まりさも!まりさも!」 ついでに彼らが時速5km以上で移動するとバッジに取り付けられた迷子防止用のGPSの座標が70mずれることも付け加えておいた。 すると、まだ何が凄いのかは一言も言っていないのにれいむ達は何か凄そうな人がいると聞いて大はしゃぎ。 そんな3匹の様子を見て、何が凄いのかを教えてあげた。 「ちなみにここのゆんちぇいんはゆっくりレイプギネス記録保持者ね」 「「「ゆげぇ!」」」 それじゃゆっくり出来ないよと言わんばかりの表情になった3匹は「かえろうよー!」などと言い出した。 が、「ゆっくり人間を探すんだろう?」の一言ですいかが立ち直り、れいむとまりさも巻き添えを食う格好ゆっくり人間捜索に参加させられる。 「にんげんさんのすっきりごわいよおおおお!」と泣き喚くれいむとまりさはなかなかに可愛かった。 そんなつまらないやり取りから数時間後。 何故か観光スポット巡りに興じてしまった私たちはゆっくり人間のことをすっかり失念していた。 気がつけば陽が沈み、弁当を買って立ち寄った公園には殆ど人影が見当たらない。 そんな静寂の中、ようやく見つけた私以外の人間は・・・ 「・・・・・・うへぇ」 「おねーさん!ここはゆっくりできないよ!」 「ゆっくりしないでにげようね!」 長身の、ガタイの良い黒人の男性だった。 勿論、それだけならば驚くほどのことでもない。 問題は彼の、一糸纏わぬ生まれたままの姿にあった。 変態?危険人物?・・・普通に考えたら貞操の危機を感じるべきところなのだろう。 が・・・・・・ 「オー、ヤッパリタマニハゲンテンニカエッテオーソドックモイイモノデス」 「やべでえええええ!でいぶずっぎぢぢだぐないいいいいい!?」 「HAHAHAHAHA!」 その黒人男性はどうやらHENTAIお兄さん、もしくはゆっくりレイパーらしい。 HENTAIお兄さん・・・ゆっくりを性の捌け口にする異常性癖の持ち主の総称である。 流石に飼いゆっくりに手を出すようなことは稀だが、野良ゆっくりにとっては虐待愛好家に次ぐ脅威。 勿論、現物を、そして現場を目撃するのは私も初めてのことだった。 「・・・・・・そういえば」 流石にこの光景を平然と直視することは出来ないが、相手がゆっくりならとやかく言う事もないだろう。 そう思った私は、店の先輩から聞いた「レイパー同士は惹かれあう」という言葉を信じて彼にギネス記録保持者の居場所を聞くことにした。 彼がゆっくりれいむを犯している茂みから少し離れたベンチに腰掛け、そこにれいむとまりさとすいかを下ろす。 「ゆゆっ、にんげんさんまたきたの!まりさのはにーをいじめないでね!?」 「「「やめちぇね!ゆっくちできにゃいよ!」」」 「ワオ、マリサニコドモタチモヤッテキマシタ」 「ゆぎぃ!?やめてね!にんげんさんのすっきりはこわいよ!ゆっくりできないよ!」 どうやらつがいを助けに来たまりさやその子ども達を相手に第2ラウンドに突入したらしい。 流石にあれだけの数を相手するとなると長くなりそうなので、彼らの嬌声や悲鳴をBGMにして弁当を広げる。 我が家のれいむ達が「ゆっくりできないいいい!」と喚くのをでこピンで黙らせ、昼ごはんを食べ忘れたため8時間ぶりになる食事にありついた。 「むーしゃむーしゃ・・・幸せ〜」 「ず、ずっぎぢー!」 「もっちょ・・・ゆっくちちたかっちゃよ・・・」 「フゥ・・・スッキリー」 私が鮭弁当のチープな美味さを満喫し終えた時、ちょうど男性もゆっくりを満喫し終えた。 傍らでは我が家のゆっくり達が同胞を助けてあげられなかったことを悔やんで「ごべんねぇ!」と謝り続けていた。 いや、あの手つきと技術を見る限り殺さないように加減してるよ・・・そうフォローしようとした時、レイパーの男性が、ちゃんと服を着て茂みから姿を現した。 「イヤァ、オミグルシイモノヲ」 「ん、ああ・・・お構いなく。こちらこそ、お楽しみの邪魔をして申し訳ない」 ファミレスの椅子に腰掛けたままの私とドリンクバーの安物のコーヒー越しに視線が合った男性は頭をかきながら照れ笑いを浮かべている。 レイパーとは言え性癖以外は他の人と変わらないわけで、黒い肌とは対照的な白い歯を輝かせている彼はなかなかの好青年のように思えた。 彼に会釈しながら、れいむとまりさとすいかを抱きかかえて立ち上がり、必要も無いのに軽く自己紹介を済ませた。 「ボブさん、だったっけ?」 「ハイ、ナンデショウ?」 「あれ、趣味なの?」 「イエス、ワタシユックリダイスキデス!」 「ゆゆっ!だったらひどいことしないでね!ゆっくりできないよ!」 「そうだよ!ゆっくりさせてあげてね!」 満面の笑みを浮かべてサムズアップするボブに対して怒り心頭のれいむ達。 しかし、ファミレスで騒ぐと迷惑になるし、それに大声で話すようなことでもないので頭をはたいて黙らせた。 その後も3匹は頬を膨らませて抗議していたが、大声で叫ぶようなことはなかった。 「シツケガジョウズデスネ」 「特別なことをしているつもりはないんだけどね」 「ソレニシンライサレテイマス」 「全く嬉しくないけどね」 「ナニヨリスゴクカワイイ」 「1回50ドルで貸してあげても良いけどね」 そんな具合で、すぐにボブと打ち解けた私は早速彼にゆっくり人間について尋ねてみる。 しかし、帰って来た言葉は「ウワサクライハシッテイル」という非常に曖昧なものだった。 その回答に目に見えて落胆するすいかの頭を撫でながら、私はもう一つの質問をぶつけてみた。 「じゃあ、ここら辺で一番実力のあるゆっくりレイパーって知ってる?」 「レイパーハプライバシーヲマモリマス」 「・・・そりゃそうか」 多少親しくなったとは言え所詮は見ず知らずの相手。 もしかしたらレイパー撲滅を狙う組織の人間かもしれないし、そうでなくても金目当てで情報を売る可能性だってある。 最近もどこかでゆっくりレイパーの会合をアンチレイプの組織が襲撃しようとしたなんて話を聞いた気がする。 いや、そもそも世間に公表できるような性癖でないのだから、容易に口外できるものではないのだ。 「仕方ないか・・・今日は安いカプセルホテルにでも泊まって、明日また探そう」 本日の捜索を諦め、ボブに適当なホテルの場所を教えてもらった私は、会計の全てを彼に託してそそくさとファミレスを後にした。 『地球がゆっくりする日』や『Yull E』の話題で盛り上がった手前、少し気が引けたがホテル代を捻出するためだから仕方ない。 結局ゆっくり人間は見つからなかったが、ボブに遭遇したことで色んな情報を得ることが出来た。 彼の日本語の習得状況を鑑みるに、来日して何年も経っているようには思えない。 にもかかわらず、近くのファミレスやカプセルホテルの場所を知っていた。 それにあの公園でレイプされていたまりさは「にんげんさんまたきたの!まりさのはにーをいじめないでね!?」と言っていた。 つまり、あそこの公園のゆっくりは頻繁に人間からの干渉を受けていると考えられる。 確証はないが、明日はあの公園に張り込むのが最善策だろう。 翌朝、まだ陽も出ていない時間から私とれいむ、まりさ、すいかは例の公園での張り込みを開始。 懐中電灯片手に公園の中を散策すると、いとも簡単に野良ゆっくりの巣をいくつも見つけることが出来た。 まだ人間の姿は見当たらないが、そこには朝ごはんと称して人間の捨てたごみを集めて回るゆっくり達の姿があった。 余談ではあるが、その中に昨日レイプされたれいむ一家の姿もあった。予想通り、全員健在のまま。 「もうすぐにんげんさんのくるじかんだよ!」 「ゆっくりおうちにかえるよ!」 「「そろーり、そろーり・・・!」」 散らかしたゴミが巣まで一列に並んでいるのだが、どうやら彼女達はそのことに気付いていなかった。 あるものは子ども達を引率してゴミ置き場で拾った生ゴミを溜めて帰り、またある赤まりさはお菓子の袋を持って帰っていった。 そんな光景を尻目に私たちも彼女達と同じように適当な茂みに身を隠して、人間が来るのをじっと待つことにした。 「ぱちゅりーは本当に馬鹿ね」 「んぶぅ〜!」 「むきゅ〜、も言えないなんて伝説的だわ」 「ん〜、んん〜!?」 数分後、割りと珍しい胴付きぱちゅりぃを連れた少女が公園に姿を現した。 一見すると勝気そうで、なおかつ真面目そうな少女とお馬鹿で有名なぱちゅりぃというのは違和感を覚える組み合わせである。 しかし、よくよく見てみるとぱちゅりぃは猿轡と首輪を装備済み。 ああ、あの子もそっちの世界の住人なのか・・・と納得しながら、彼女を観察し続ける。 「さあ、ぱちゅりぃ。ゆっくりを連れてきなさい」 「んぶぅ〜・・・」 ぱちゅりぃはきょろきょろと辺りを見回し、においを嗅ぐような仕草をしながらふらふらと歩き始めた。 一方、少女は首輪のリードを握ったままぱちゅりぃの後を追いかける。 そして、必死の形相でゆっくりを探し回っていたぱちゅりぃがようやく見つけたゆっくりは・・・ 「んぶぅぅぅぅぅぅううぅぅぅ!!」 「ぱちゅりぃをゆっくりさせてあげてね!」 「ぱちゅりぃをゆっくりさせてくれないおねえさんがきらいだよ!ぷんぷん!」 「すいかおこるよ!ぷくぅぅぅうううう!」 「う゛・・・」 私と一緒に茂みに隠れていた我が家のゆっくりども。 目が合ったときの彼女のばつの悪そうな表情はなんとなく可愛らしかった。 「ふぅん・・・で、たまにここに来てゆっくりを虐待しているわけね」 「・・・はい」 ベンチに腰掛け、ホットコーヒーで暖を取る私と少女。 彼女はまるでポエムを書き溜めたノートを拾ってくれたが、不可抗力で中身を見てしまった親切な人を前にしたときのような表情を浮かべている。 これが知人であればしこたまからかってやるところなのだが、流石に見ず知らずの少女相手にそんなことはしない・・・はず。 せいぜい必死に弁明する彼女の表情をにやにやと笑いながら眺めつつ、私の膝の上でいまだに膨れているれいむ達の頭を撫でる程度。 「ゆっくりできないいいわけはやめてね!」 「そうだよ!ぱちゅりぃをゆっくりさせてあげてね!」 「そうだよ!ぷんぷん!」 我が家のゆっくりどもは同族の虐待風景なんか目の当たりにして黙っていられるような連中ではない。 こっぱずかしそうにしている彼女に向かってもっともな文句を口にする。 が、流石に早朝のまだ辺りも暗い時間に大声で喚かれては近所迷惑もいいところ。 「だからアンタら五月蝿いよ。頭を少しかじってやろうか?」 「「「ゆっ・・・!」」」 「・・・・・・愛でお姉さん、じゃないんですか?」 「じゃないんです、断じて」 できるだけ柔和に微笑みながら、言われたとおりに膝の上で黙っているれいむの額にでこピンをお見舞いする。 「なんだぁ・・・だったら、必死になって言い訳する必要なんてなかったのね・・・」 「Exactly」 ついでにもう一発、今度はまりさにでこピンをお見舞いするのを見た彼女は盛大にため息を吐いた。 「そもそも・・・仮に私が愛でお姉さんでも首輪や猿轡くらいは飼い主としての責任の範囲内だから責める理由がないし」 「・・・え?」 「それにまだ虐待らしい虐待の現場は目撃していなかったわけよ」 「それじゃ・・・」 ようやく状況を把握したらしく、赤くなった顔を両手で隠す少女。 そして、にんまりと意地の悪い笑みを浮かべつつ、彼女の肩を優しく叩く私。 「そ、完全に、一部の隙もなく、貴女の自滅」 耳まで真っ赤になるのが手に取るように把握できた。 「と、まあ、そんなことは置いといて・・・」 「・・・・・・・・・・・・」 指の隙間から見えるジト目に篭った殺気を感じた私は意地の悪い笑顔はそのままに話題を強引に切り替えた。 すると、彼女も顔を覆っていた手を膝の上に戻し、いつの間にか温くなってしまった缶コーヒーのプルトップに指をかける。 ようやく陽が昇り始め、徐々に明るくなってきた公園にぱちんっ!という軽快な音が響き渡った。 「一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」 「なんですか?」 「ゆっくり人間って知ってる?」 その言葉を聞くや否や露骨に怪訝な表情になる少女。 私だってそんな質問されたら同じような顔をしただろうからその気持ちはよく分かる。 というか、私だってすいかの与太話でその存在を知っただけだから半信半疑だ。 「そんなの訳の分からないもの知りません」 「だよねぇ・・・」 私は彼女の言葉に首肯した。 続いてレイパーに関する質問もしようかと考えたが、流石にカタギにする質問じゃないのでやめた。 立ち上がり、リードを握られたままのぱちゅりぃを指差す。 「こんなの人目にさらすのも体裁が悪いから、そろそろお開きしようか?」 そんなこんなで、挨拶もそこそこに彼女と別れた。 「いや、そんな都市伝説聞いたこともないよ」 「ゆっくりにんげんさん?れみりゃのことなのぜ?」 「強いて言うなら君が一番そんな感じだよ」 「ち〜んっぽ!びっくまらぺにすっ!」 「JAOOOOO!JAO!JAO!JAOOOOOOOON!」 「そんなことよりれいむのおうたをきいていってね!」 少女と別れた私たちは、公園に住むゆっくりや散歩中の人達にしらみつぶしに話しかけてみるが全く成果が得られない。 ゆっくり人間の事を訊けば怪訝な顔をされるし、ギネスレイパーのことを訊いても人間なら顔をしかめ、ゆっくりなら怯えるばかり。 代わりに得た情報と言えば以前この公園のゆっくり達を二分していた対立と、両勢力の共通の敵となることでその対立を鎮めたレイパーのこと。 そして、人間に虐められているのを助けてくれたゆっくりふらんを連れたとてもゆっくり出来るゆっくりのこと。 もしくは時々この公園に出没するゆっくりふらんを連れた少年のこと。 「う〜ん・・・やっぱり情報が集まらないな・・・」 「れいむ、もうつかれたよぉ〜」 「まりさもだよ〜・・・」 「ゆゆっ!でも、ゆっくりにんげんさんはこのまちにいるんだよ!」 元々半信半疑だった私とどうしてもゆっくり人間に会いたいわけではないれいむとまりさは半ば諦めモード。 対して、どうしてもゆっくり人間に会いたいすいかは私の頭の上から檄を飛ばす。 が、疲れていることもあって私やれいむ達の反応は鈍い。 「きっとアンタの妄想だよ・・・」 「れいむ、なんだかねむいよ・・・」 「まりさも・・・」 朝から歩き詰めでいい加減飽きてきた私はれいむ達と一緒にうつらうつらと舟を漕ぎ始める。 そんな私を起こすためにすいかは膝の上に飛び降り、お腹に何度も体当たりを仕掛けてくるが、何故か余計に眠くなってきた。 そうして、れいむとまりさが本格的に眠ってしまったその時・・・ 「どうも・・・清く正しく、きめぇ丸です」 「んあ?」 風と共に、どこからともなく姿を現したのはスレンダーなボディの上に乗っかった下膨れの顔をニヒルに歪めた鬱陶しい饅獣。 きめぇ丸・・・かなり貴重なゆっくりの一種で、胴無しのものは知人が飼っているので何度か見たことがあるが、胴体付きを見るのはこれが初めて。 睡魔と戦っていたこともあって、私は彼女がゆっくりであることを理解するのに3秒程度の時間を要した。 「あなた達ですか、ゆっくり人間を探していると言うのは?」 「ん、まあ・・・一応」 「ゆっくり人間は見つかりましたか?」 きめぇ丸はニヒルな笑顔を一層ニヒルに歪める。 「いや、ヒントすらもつかめない状況」 「そうですか」 私の返答と、今までの聞き込みで得た情報を聞いた彼女はブンブンと高速で首を振った。 そのあまりのゆっくり出来なさ加減にすいかがすっごい表情で怯えているが、まあ気にすることでもないだろう。 「で、アンタは何のために話しかけてきたの?」 「みょんやめーりんと話せる人間が居ると聞いたので、少し興味が湧きまして。本当なのですか?」 「あー・・・本当だよ。なんか知らんけど言葉が分かる」 「おお、すごいすごい」 またしても高速シェイクするきめぇ丸。 少々鬱陶しいが、何らかの悪意があって話しかけてきたわけでもなさそうなので我慢する。 「ところで・・・」 「んあ?」 「ヒントすら掴めていないと言いましたが多分それは間違いです」 そう言って彼女は自信満々に微笑んでみせる。 パッと見、先ほどと変わらぬニヒルスマイルだがその笑顔に宿る感情が微妙に違うのに気付いた。 「あなたがいくら特殊なゆっくりと話せたところで人間以外の何者でもありません」 「そりゃそうだ」 「だから私の目にも人間の目にもあなたがゆっくりとして映ることはないでしょう」 「当たり前・・・あれ?」 ここまで言われてようやく、私は彼女の言葉の意図を理解した。 みょんやめーりんと会話できたところで私は人間だから誰の目にも人間としてしか映らない。 どんなに知能が高くてもきめぇ丸はよほど寝ぼけていない限りは人間と見間違えることはない。 なら、ゆっくりと人間のハーフなるものが居たらそれはどのように映るのだろうか? 「ああ、そうか・・・」 相変わらずニヒルな下膨れ顔を左右に振るきめぇ丸から視線を外し、俯いて考える。 もし、ゆっくり人間が人間の目には人間として、ゆっくりの目にはゆっくりとして映るのであれば、私たちは既に大きなヒントを得ている。 勿論、どちらの目にも同じように映る可能性はあるが、そうなってしまうと肉眼に頼る手段では判別不可能だから私たちにはお手上げだ。 「ふらんを連れたゆっくり・・・か」 もし、ふらんを連れたゆっくりがれいむ、まりさ、ぱちゅりー、ありすなどのメジャーな種族であれば彼女達は必ず種族名も教えてくれるはず。 ましてや、ふらんを連れているのにゆっくりしているというのはどこかおかしいように思えた。 その上、ゆっくりふらん自体が既に貴重な種族で、めったにお目にかかれるようなゆっくりではないのだ。 「なのに、この公園にはふらんを伴う人(orゆっくり)が二人もいる・・・」 きめぇ丸のもったいぶった言葉に意味があるならば、この両者は同一人物なのではないだろうか? からかわれている可能性もあるが、他に頼りに出来る情報がない以上、信じるしかあるまい。 なら、私たちがすべきことは一つ。 「ふらんと飼い主を、それも私の目には人間に見えて、すいか達の目にはゆっくりに見える人を探せばい・・・あれ?」 すべきことを理解した私が顔を上げた時、きめぇ丸もとい敬意を表してきめ子さんと呼ばせていただこう、の姿はなくなっていた。 それからはとんとん拍子で事態が進んでいった。 ふらんの飼い主が地元の中学生だか高校生だかの少年であることが判明し、すぐにその少年の学校も割り出すことが出来た。 「むにゃ・・・そんなわけで、れいむたちはぎわくのゆっくりゆっくりふらんがおさんぽしているのをみつけたよ!」 「ふにゃ・・・これでゆっくりにんげんさんにあえるかな?」 「ゆっくりにんげんさん・・・すいかといっしょにゆっくりしようね!」 と、れいむ達の説明の通り、現在私たちは通りで見かけたゆっくりふらんを尾行していた。 念のため買っておいたサングラスを装着し(もちろんれいむ達も)、電柱の影から彼女を見守る。 「・・・・・・あのー?」 「ゆゆっ!いまとりこみちゅうだよ!」 「ゆっくりあとにしてね!」 若い男の声を聞き流しつつ、私たちはふらん監視を続行する。 「・・・いや、取り込み中じゃないだろ」 「もう、おにーさん、れいむたちとりこみ・・・ゆゆっ!!?」 「どうしたのれい・・・ゆゆゆゆっ!!!」 「んあ?どうした?」 振り返ると、そこにいたのは地元の学生と思しき少年。 一見するとこれと言って変わったところはないのだが、彼の姿を見たれいむ達は目をハートマークにして見惚れている。 確かにパッと見はごく普通の少年なのだが、どこか違和感を覚える。そして・・・ 「「すごくゆっくりしたおにーさんだよ!」」 れいむ達の発したその一言で、彼こそ探していたゆっくり人間であることを理解した。 同時に、彼の訝しげな視線を見て、自分がかなり不審であることを把握した。 もしかしたら「ゆっくりフェロモンで一儲けしようとした企業が、彼を拉致って精液を搾り取ろうと送り込んできた刺客」だなんて誤解をされているかも知れない。 何故か知らないがそんな懸念を抱いた私は彼の警戒心を解く為に、出来るだけにこやかな笑みを浮かべて挨拶をした。 「こ・・・こんばんは、ゆっくりしていってね」 ‐‐‐あとがき‐‐‐ 確かな文章力と優れた構成力に裏打ちされたレイパー氏の作品の中でもこの作品は特に魅力的だと思うんですよ その理由を考えてみると、この世界の人たちって日常を何となく想像できてしまうくらい存在感があるからじゃないかと 猫被って?瀟洒に振舞っている委員長とか、HENTAI要素を隠しきれていないボブとか もっとも、想像は出来たところで、真偽を知る術はレイパー氏に聞くしかないわけだし、あらゆる面で氏にかなわない以上、レイプになってしまうのは否めないわけですが ほんと、レイパーさん、ごべんなさい byゆっくりボールマン 【登場人物紹介】 お姉さん 初登場は『ゆっくりいじめ系749 現代ゆっくり』 ノリと勢いでゆっくりを10匹も飼う事になってしまった一人暮らしの女子大生 恐るべき酒豪で、お胸がドス級。ゆっくりに対してはかなりハイスペック みょん語等を解し、天性の飼育上手で、好かれ易いが生物学的には平凡な人間 口も性格もあまり良くないし、わりと容赦しないタイプなのに何故か懐かれる れいむ&まりさ 初登場は『ゆっくりいじめ系749 現代ゆっくり』 今作ではいらない子。若干頭が良い程度の平凡なゆっくりで六児の親 ただし、れいむはゆっくりながらもインターネッツを使いこなせたりする すいか 初登場は『ゆっくりすいか系いじめ1 ゆっくりすいか』 角にお酒が詰まっている。空気を吸い込むと半端なく膨らむ(曰くみっしんぐぱわー) かなりのテレビっ子で、ワイドショーやくだらない都市伝説が大好き みすたーゆんちぇいん 初登場は『その他 僕はこうして生まれました』 会社員。課長クラス。ゆめぇ丸を妊娠させた経験がある ゆっくりレイプに関しては右に出るものがいないが、世間的には真人間で通っている ボブ 初登場は『ゆっくりいじめ系1632 ボブはこうして出会いました』 スラム育ちの巨漢の黒人男性。ゆっくりが大好物(二つの意味で)の変態 注:日本において単独でレイプを行うかどうかは微妙なところです 少女 初登場は『ゆっくりいじめ系1682 僕はこうして出会いました』 学校では成績はトップ、真面目で明るく、誰の相談にも乗る優しい素敵な委員長 しかし、優等生にも色々あるらしく、ゆっくりに八つ当たりすることがあるとかないとか 注:ぱちゅりぃに対する虐待?は『僕はこうして出会いました』の記述と矛盾します ぱちゅりぃ 初登場は『その他 僕はこうして生まれました』 胴体付きのゆっくりぱちゅりー。この種族の例に漏れずお馬鹿である 一時はみすたーゆんちぇいんの愛人だったこともあるが、現在は少女のペット きめぇ丸 初登場は『その他 僕はこうして生まれました』 人間との間に子どもをもうけた前代未聞のゆっくり。彼女もまたド変態 注:考えてみりゃ彼女がお姉さんに助言する動機は微塵もありません ゆっくりふらん 初登場は『その他 僕はこうして生まれました』 ゆっくり人間のペットと誤解されているが、実際にはゆっくり人間の恋ゆっくり 注:レイパー氏の作品世界においてゆっくりが単独で散歩するかどうかはわかりません ゆっくり人間 初登場は『その他 僕はこうして生まれました』 学生。思春期まっさかりの少年。実はゆっくりと人間のハーフだったりする ゆっくりに対してはかなりハイスペックな性能を有する
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/400.html
ある国同士では、長い間戦争が行われていた。後先考えずに弾薬を使った結果、どちらの物資も底を尽きかけていた。 A国の湯栗虐太郎参謀は、必死になって作戦を考えていた。 「…あと少し…あと少しでもいいから物資があれば勝てるのに…ダメだ…!」 どちらの物資も底を尽きかけている。戦意ももはや喪失気味だ。どちらの国も、あと一押しすれば倒れてしまう。しかしその一押しができないのだ。 「くそっ…!」 他の国からの支援は期待できない。湯栗参謀は、悔しさのあまり枕代わりにしていたゆっくりのぬいぐるみ(妻から「ストレス解消に」として贈られたプレゼントである)を殴り飛ばしていた。 「っがぁ!このクソ饅頭がぁ!お前ら相手に戦争させろ!殲滅してやるからよぉ!」 「参謀!」 「何事だ」 加口丈。研究員として大尉の位置まで上り詰めた、若き天才肌のバイオテクノロジー学者である。 「報告いたします。ゆっくりの餡の解析が終わりました。結果、ゆっくり爆弾が理論的に可能だということが明らかになりました。 ゆっくり爆弾は安価で作れます。資金難の問題はこれで解決したと言っても過言ではありません」 「来た!武器供給来た!メイン武器来た!これで勝つる!」 湯栗参謀は大喜びで加口の肩を掴んで前後に揺らす。 「しかし問題があります。飛行機から投下する場合、投下時の興奮で爆発する可能性があるのです。大砲発射は言わずもがな。手榴弾にしようにも、ゆっくり自身が無駄に音を立てるのでこれでは役に立ちません」 「なぁに…問題はない。ゆっくりは自分で動くことができる。ゆっくり爆弾を陽動させ、敵軍に突っ込ませればいい。敵兵もゆっくりごときに貴重な弾薬を使おうとは考えまいさ」 湯栗参謀はそう言いながら、殴っていたゆっくりのぬいぐるみを放り投げる。 実際、どちらの国もゆっくりのような脆弱な野生生物に貴重な弾薬を使おうとはまったく考えていない。湯栗参謀はそういう意味では非常に優秀な洞察力を持っていた。 しかし窮地に立たされた将というのは、得てして奇策に走りやすい。 「我々にはゆっくり調教のスペシャリスト、鬼意がいる。奴にやらせよう」 「はっ!」 鬼意山、という名の伍長がいる。彼はゆっくり虐待のスペシャリストであり、この地方に多く住むゆっくり種を虐待することでストレス解消を図っていた。 鬼意という名前でありながら万人に優しく、戦場で傷ついて死に掛けている鳥を連れて帰って手当てをしたという逸話も残るほど温かみのある男である。 捕虜や部下、衛生兵、果ては上司にまでゆっくり虐待によるストレス解消を教え、その結果兵士たちの戦意喪失率は大幅に減った。 しかし鬼意は、ゆっくりを動物どころか生ゴミとしてすら扱わなかった。尊厳など与えず、ただ虐めて虐めて虐め殺す。それだけである。 そんな彼が受けた任務は次の通りだ。 「ゆっくり爆弾が完成した。ゆっくりを自主的に敵陣に向かわせるように調教しろ」 鬼意は気合を入れて、このクソ饅頭どもを調教した。死ぬ寸前までいたぶり、人工オレンジジュース(バイオテクノロジー研究班が作り上げた甘味料。生ゴミから安価で生産できるが、ゆっくりの治療程度にしか使えない)をぶっかける。その繰り返しだ。 歴戦の虐待兵士である彼は、総勢1000匹ものゆっくりを、わずか1日半で「逃げ出したい」という衝動に駆り立てさせた。 そして早朝、リーダー格のまりさが目を覚ましたことを確認すると、鬼意は気づかない振りをして、わざとらしく言った。 「ああ、この先の茶色の陣地にはとっても美味しいご飯や、綺麗なお花が咲いており、美しいゆっくりたちがいる『理想郷』があるらしい… 俺はこのクソゆっくりどもがそこに行ったら、追いかけることはできないだろうなぁ…」 「ゆゆっ!?」 リーダー格まりさは驚く。他の起きていたゆっくりも、ひそひそ声(笑)で「ゆっくりぷれいすがちゃいろいばしょにあるよ!」「ばかなじじいだね!れいむたちはゆっくりにげるよ!」などと言って話し始める。 リーダーまりさは考えた。 「(ゆゆっ!こんなゆっくりできないじじいからにげて『りそうきょう』にいって、にんげんをやっつけてそこをゆっくりぷれいすにするんだぜ!ばかなじじいだぜ! みんなをあのじんちにつれていって、まりさはそこのおうさまになるんだぜ!ゆっへっへ!)」 鬼意はにんまりと下品な笑顔を浮かべる饅頭どもを見て、作戦の成功を確信した。 「参謀。調教が終わりました」 「ご苦労。加口、ゆっくり爆弾への加工は?」 「この餌を食わせるだけです。鬼意さん、任せましたよ」 「餌を与える際に注意するべきことは?」 「その餌には火薬が含まれております。ぞんざいに扱うとすべてふいになりますので…まぁ爆発はネズミ花火程度ですがね。 餌を食べさせてから30分ほどで、ゆっくりは『ゆっくり爆弾』になります。餡子がすべて、衝撃に反応する爆薬になるのです。 その威力は手榴弾の2倍程度。ゆっくりが大人しい生物なら投擲武器として使えたのですが…」 「なるほど、あのクズ饅頭が騒ぐからまるで使い物にならないと」 「まぁ野生生物の大移動と見せかければ何とかなるだろう。餌を与えてたら即座に報告しろ。その30分後に出撃させる」 鬼意はゆっくりたちにひとつずつ、『あまあま』と偽った苦い粉をくれてやる。ゆっくりは辛味こそ猛毒になるが、適度に苦いものは「ゆっくりできない」だけで毒にはならないのだ。お茶のほのかな苦味が饅頭の餡子の甘味とよく合うのと同じである。 「ゆべぇぇぇ!ゆっぐりでぎないよおおおお!!!」 「うげぇぇ!!」 「あばあばじゃないよおおおお!!!」 「おがあじゃああああんん!!!にがいいいいい!!!」 阿鼻叫喚を見つめながら、鬼意は立ち去った。 そして30分後。鬼意はゆっくり監禁室にやってきて、わざと陣地の方向への扉と窓を開放し、陣地を見せ付けるようにしてからこう言った。 「ああ、この先の茶色の陣地にはとっても美味しいご飯や、綺麗なお花が咲いており、美しいゆっくりたちがいる『理想郷』があるらしい… 俺はこのクソゆっくりどもがそこに行ったら、追いかけることはできないだろうなぁ… うわぁ!すべってころんじゃった!足を折っちゃったみたいだ!」 そして鬼意は、誰が見ても分かるような演技ですっ転ぶ。それを見るや否やゆっくりたちは、一目散に茶色い敵陣へ向かって跳ね始めた。 「ゆっくり逃げるんだぜぇー!」 「ゆーっ!」 総勢千匹のゆっくりは、鬼意に見向きもせずに陣地へと向かっていった。 「さて、ひとまずこの作戦は成功した。参謀に報告せねば…その後は野生ゆっくりの捕獲と交流虐待パーティだ」 鬼意はそう言いながら、敵陣に向かってぼよんぼよんと跳ねるゆっくりを見つめた。 敵は弾薬を使わない。何らかの殺傷は絶対に与えるはずだ。鬼意も、湯栗も、加口も、それ以外のA国の関係者も皆そう思っていた。 しかし彼らは知らなかった。否、甘く見すぎていた。 どれだけ調教しても、ゆっくりは所詮ゆっくりでしかないということを。 ゆっくりは、人間どころか、犬猫や昆虫ですら想像を絶するほど愚かしいナマモノであるということを。 変わってこちらはB国の最前線。4人の兵士がお茶を飲みながら、偵察任務に当たっている。 物資が末期的に乏しくなった今、無闇に戦闘を仕掛けることはない。ゆえにお茶を飲んで安らぎながら偵察をしていても、動きがあればすぐにわかるのだ。 「…ん?せ、先輩!生首が、生首がこっちに向かって!」 「あんだと!?」 兵の一人が焦燥を見せる。もう一人が双眼鏡を奪って敵陣を見ると、確かに生首らしいものが猛烈な勢い(時速5キロくらい)でこちらに突撃してきていた。どれもこれも生にしがみついた醜い顔をしている。 「ああ、ありゃゆっくりだよ」 「ゆっくり!?」 「そういう名前の動物さね」 朴訥とした顔の兵士が、茶をずずっと啜ってから応じる。 「ゆっくりしていってね!!!って言うからそんな名がついたんだ。オラの村じゃあ、ゆっくりは畑荒らすわ家荒らすわでな。 しかも頭は悪いし生意気だし、人間様のことをからかってくるんだべ」 「弱い。脆い。遅い。三拍子揃った史上最低最悪な生物だ。よく増える、よく食べる、よく荒らす…人間にとって最大の害獣だ。 いいかげんな生物だからな、ずっと東の方の町なんかだとこいつらを愛玩動物としてかわいがったりしているらしい。 なんでもこのわけのわからなさがかわいらしいんだとか…やっぱ奴らは違うねェ、俺ら貧乏人には理解できないよ」 嫌味っぽい男がそのあとを受けて言う。 「オラの村じゃあ、このゆっくりをな。じっくり煮るんだ。すると甘い汁がたっぷりでてな、これがほんにうまいんだ!」 「俺の村じゃあ、妊娠中のこいつらを捕まえて、中の子供をひりださせて戦わせるのが流行ってたな…あっちの捕虜は、噂なんだがゆっくり虐待でA国の連中と交流しているらしいぞ」 「そ、そうですか…」 新兵らしき最初の偵察兵は、3人の平然とした表情に驚いていた。生首を見ても個々まで平然とできるとは。 「だがこのまま茶を飲んでいるわけにはいかんな」 「そうだか?ゆっくりの大移動なんてよくある話だべさ。あいつら馬鹿だから飯を後先考えずに食い荒らしちまう」 「あのな。ここはつい最近まで、鉄の雨が降っていたんだぞ?いたるところにゆっくりのぼろぼろになった帽子があるだろう。 そんなところを忌避せぬほど、ゆっくりも愚かじゃないさ。それに高低差で言えばこちらの方が少し高い。 じゃあ何故こちらに移動してきているか?あんなに必死な表情で、何故ゆっくりにしては速いスピードで動いているか?」 「向こう側で何かされたんだろうね」 「その通り。奴らの見え透いた作戦だろう。大方ゆっくりに毒薬でも仕込んであるんだろう。末期の上層部はこういう頓珍漢作戦をよく考えるものだ」 男はそう言いながら大きくあくびをする。人が歩くような速度でこちらに向かってきている。奴らがここまで到達するのに、あと軽く1時間はかかるだろう。 「おいイヤミ、お前のラジコンを使うぞ」 「合点承知」 「イナカとビビリは穴を掘れ。俺は退却準備をする。ここは捨てる」 「え!?この陣地捨てちゃうんですか!?」 「多少の犠牲は仕方がないさ」 男はそう言いながら、ティーセットを片付け始めた。 十分に掘った穴の中に、ビビリとイヤミがよく食べているチョコレートを3枚ほど入れる。貴重な食料だが、これが作戦に重要になる。 そして男は、そこにゆっくりの形をしたラジコンを置く。ゆっくり釣りというエンターテイメントをする際に使うものだ。 そして男たちはそそくさと退散し、遠くに行って様子を見る。 「ゆっ、ゆっ…もうすぐだよ!もうすぐまりさのゆっくりぷれいすにつくよぉ!」 リーダーまりさは息も絶え絶えに言った。もう少しだ。もう少しで理想郷にたどりつく。 「ユックリシテイッテネ!」 すると、隣から聞きなれない声が聞こえてきた。 「ゆゆっ、ゆっくりしていってね!!!ゆゆーっ!?」 まりさは驚く。こんな艶やかな顔をしたゆっくりは見たことがない。 「ユックリシテイッテネ!ココニオカシガタクサンアルヨ!アマイニオイモスルヨ!」 そのゆっくりは少し変てこな声を出す。確かにあの美しいゆっくりの近くからは、甘い匂いがする。 「ここがあのじじいのいっていた『りそうきょう』だね!まりさがいちばんのりだよ!」 まりさはそう言いながらぴょんぴょんと跳ね、 「ゆっくりして…ゆーっ!!!」 穴へと落ちていった。 「まりさがはいったよ!ここがきっとゆっくりぷれいすだよ!」 「ユックリシテイッテネ!ココニオカシガタクサンアルヨ!アマイニオイモスルヨ!」 「ゆゆゆーっ!と、とってもゆっくりしたゆっくりだね!れいむはれいむっていうんだよ!いっしょにすりすり…」 「オカシタベナイノ?」 「おかし!れいむたべるよー!」 「ま、まりさもたべるんだぜ!」 穴へ次々とダイブしていくゆっくり。そして穴の中で何度も繰り返される爆発。 そのたびに餡子の甘い匂いがたちこめ、ゆっくりはその匂いにつられて穴へと落ちていく。 「…アホですね」 「予想以上にアホだな」 「この世で一番のバカだべ」 「ありえんな、こりゃ。上に連絡してくるわ」 4人の偵察兵はその様子を見ながら、笑いを通り越して呆れた。まさかここまでバカな動物だとは思わなかったのだろう。 食欲に任せて、後先を考えずにみんながみんな同じ行動をする。そして爆発。命の無駄遣いとはまさにこのことだ。 たった3枚のチョコレートと、ちょっとした舞台装置。たったこれだけで、何百というゆっくりが死んでいく。愚かしい。実に愚かしい。 「ま、毒ガスじゃなかっただけよかったと思うか…」 男はそう言って、双眼鏡をビビリから奪った。 「ホントアホだな」 「そうですねぇ…俺もこの戦争が終わったら、ゆっくりってのに接してみようと思います」 一方、A国。 「あんのバカどもがぁぁぁぁぁ!」 鬼意は憤怒の表情を見せていた。ゆっくりが穴に飛び込んで自殺していくのである。 レミングだってこんなことはしない。鬼意は手に持っていた赤まりさを床に叩きつけた。 「ゆびゅっ」 ただの餡片に化けた赤まりさを軍靴で散々踏みつけたあと、鬼意は叫んだ。 「ヒャッハァ!敗北主義者どもを虐待だァァァァァァ!」 このままでは確実に1000匹全員が自殺する。それだけは避けなければならない。さらに鬼意の虐待精神が、「奴らを殺せ」ととどろき叫んでいる。 鬼意は人間をはるかに凌駕する速度で走り始めた。しかし… 「ゆびぇぇぇん!おねーじゃああああんん!!!れいむをおいでいがないでよおおおお!!!」 その途中に、石を踏んづけて底面から餡子が漏れ出し、死に掛けているゆっくり爆弾に会ってしまった。 「ゆっくりでぎないよおおおおお!!!」 「邪魔だどけぇぇぇぇ!」 「ゆべっ(カチッ)」 鬼意は勢い余ってれいむを蹴り殺す。しかし「カチッ」という音を聞いた瞬間、はっとした。 そうだ。こいつら…手榴弾化しているじゃん。 そう思った瞬間、子れいむは爆発した。 鬼意の肉片は四散し、魂はこの世から消えた。 戦争とは、得てしてむなしいものである。 その後、戦争は終結した。兵士たちは喜び、ゆっくりを手土産に交流を開始。 ゆっくり虐待により、国境を越えた深い友情を育むことになった。 奇策の犠牲となった鬼意は、最初こそ世界一のマヌケとして扱われていたが、その後大量の虐待ノートを残していたことが判明。両国から崇められることになる。 彼の一見乱暴に見えて繊細な虐待術は「鬼意山流虐待術」として広まり、ゆっくりを生かさず殺さずというそのスタンスは国の垣根を越え、C国、D国と広まることになる。 かつての4人組も、いまや虐待にしのぎを削るライバルだ。 「ほらほら、見てくんろ。オラのまりさはぼうしが100個あるんだべ。全部偽物だけど」 「どれがほんもののおぼうしさんなのおおおおおおおお!!!」 「目玉をえぐって、自分の子供と饅頭をランダムに食わせるゲームをしているんだ。なかなか面白いぜ」 「おきゃーしゃんやめちぇにぇ…ゆびゃっ!ゆべぇ…」 「あがじゃんがああああああ!!!」 「底面を半分焼いて…ほら、びっこゆっくりだ。虐待しちゃうぞー!」 「れいむはゆっくりにげるよ!…ゆゆっ!?どぼじでまっずぐどべないどおおおおお!!!」 「ほらほら、見てください!ゆっくりマトリョーシカです!こうやって殴ると…」 「ゆびゃあ!」 「中の子供にも振動が伝わって、母れいむ、子れいむ、赤れいむって感じで口の中のれいむが見えるって仕組みです!」 「おおー!すごいぞビビリ!」 そして鬼意の魂は、地獄に行った。 「じぶんでばくだんにさせたれいむをふんづけてしぬなんて、おにいさんばかなの!?しぬの!?しんでたね!!!ゲラゲラ…ぐばべびゅ!!」 「血の池、針山、凍結地獄…虐待道具には事欠かねぇな」 鬼意は生前の優しさが功を奏したのか、鬼意にとっての天国へいけることになった。 ゆっくり地獄でゆっくりの監視をする。それが閻魔の言い渡した、彼に対する罰だったのだ。そこには虐待しがいのあるドスまりさやはくれいむ、アストロンれいむのようなレア個体がたっぷりいる。 閻魔は鬼意のスタンスを見て、これこそ最も理想的な人間だと判断したらしい。毎日自滅しては死んでいき、説教すらまともに聞かないゆっくりを地獄に落とすのも大変なのだろう。いわゆる一種の温情であり、閻魔なりのゆっくり虐待方法でもあった。 「わらわのこうけつなたましいにさわるでない…ゆびゃあああああああ!!!やべでええええええ!!!」 「アストロ…ぶぐぶぐ…ぢはいやだああああああ!!!ぢのいげはやだあああああ!!!」 「だずげでどずううううう!!!」 「ゆっ?たすけないよ!ゆっくりくるしんでね!おにいさん、ありがとう!どすにとってゆっくりできないゆっくりがくるしんでるよ!…ゆびゃあああああ!!!どずのぶりぢぃなおがおがああああ!!!」 「心が落ち着くなぁ…」 針山がゆ山に化けるのに、そう時間はかからなかった。 このSSに感想を付ける