約 1,236,995 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2591.html
「「ゆっくりしていってね!」」 あるわりと晴れた日のこと、山道を歩いていると2匹のゆっくりに出会った。 1匹は黒髪と赤いリボンが特徴のゆっくりれいむで、もう一匹は金髪と黒い帽子が特徴的なゆっくりまりさ。 いわゆるオーソドックスコンビであるが、どちらも通常より大きく、不自然に下膨れていた。 「ゆゆっ! おにーさんはゆっくりできるひと?」 「れいむたちとゆっくりしていってね!」 ここら辺では珍しく、恐らく2匹とも胎生型、いわゆるにんっしんっで子どもを身に宿しているのだろう。 非常に食料の豊富な地域では1か月分くらいの餌を溜めてから2匹同時ににんっしんっすることもある。 が、この山では胎生型の出産すら稀なことであり、2匹同時にんっしんっなんてもってのほか。 「おにーさん、まりさたちにゆっくりできるおかしをちょうだい!」 「れいむたちといっしょにゆっくりしようね!」 つまり、この山の常識に反する子作りを行った2匹はこの山の出身のゆっくりではないということになる。 また、ゆっくりにしては珍しく、お菓子を求めるついでに「一緒にゆっくりしよう」と言っている。 どうやらこの2匹にはギブアンドテイクの観念があると言うことだ。 更に人間という大型の、しかも野生のゆっくりにとってわりと有害な動物にそれを持ちかけている。 以上の点から、彼女達は相当甘やかされて育ったが、ダブルにんっしんっが原因で捨てられたゆっくりなのだろう。 「おにーさん、おねがいだよ! まりさたちにゆっくりしたおかしをちょうだい!」 「れいむたちおなかすいたよ!」 その証拠に、周囲を注意深く見渡してみると数匹のゆっくりが息を潜めて私達のやり取りを見守っていた。 彼女らはこの山に住んでいる野生のゆっくりだと見て間違いないだろう。 恐らく、よそ者の2匹を捨石にして私がゆっくり出来る人間か否かを確かめているのだ。 「おにーさん、むししないでね! れいむおこるよ、ぷんぷん!」 「まりさたちのゆっくりしたあかちゃんみせてあげるから、ゆっくりしていってね!」 ゆっくりの中には下種な個体もおり、なまじ人間が安全だと分かるとそいつらの増徴を招く。 大抵は何の脅威にもならないが小さな子どもやお年寄りが何かの拍子に転んで怪我することがたまにある。 また、野生のゆっくりと人間が関わることで生じる問題と言うのは決して少なくない。 ここは責任を持ってゆっくり達に人間に関わるべきでないことを警告すべきだろう。 「ああ、悪い悪い。 ゆっくりしていってね!」 「「ゆっくりしていってね!」」 という訳で、適当に自分本位な大義名分をでっち上げた私は2匹の傍へ座り込み、「ゆっくりできるね!」と喜ぶ彼女らを押さえつける。 足でまりさを挟み込むと、れいむを抱き上げて彼女の背中に指をねじ込み、産道のある場所までじっくりと突き進んでいった。 「ゆ゛っ!? いぢゃい!いぢゃいよ! ゆっぐぢやべでね゛っ!」 「ゆゆっ! れいむ、どうしたの! おにーさん、やめてあげてね! いたがってるよ!」 2匹の抗議を無視してどんどん掘りすすでいくと、餡子とは違う感触を指に感じた。 一旦掘り進むのをやめて、2度3度その感触のもとを突くと、中からくぐもった声で「ゆぅ?」という返事が返ってくる。 どうやら、これがれいむの胎内の子どもらしい。 「やめ゛でね! あがぢゃんにいだいごどぢないでね!?」 「もうやだ! おうちかえる!?」 幸いにも子どもはれいむの胎内でしっかりと育っているらしい。 この2匹に餌を集める能力があったとは思い難いので、恐らく元飼い主がしばらくの間の食糧を渡していたのだろう。 それはさて置き、一層激しく抵抗する彼女達を抑える力を強めると、今度はあけた穴を拡げるべく、穴を穿り回す。 人も獣もいない、ゆっくりばかりの山道にぬちゃぬちゃと餡子をかき回す音がこだました。 「ゆ゛っ!? いぢゃい! ぢぬうううううう! ぢんぢゃううううううう!?」 「で、でいむーっ! おに゛ーざん、やべでよ! どほぢでごんなごどずるのーーーっ!?」 そうして、指が2本通る程度の大きさの穴が完成したところで、中にいる赤ちゃんの髪の毛を引っ張り出した。 金髪だった。どうやら彼女の胎内にいる子どもはまりさ種らしい。 それを確認した私は、髪の毛を外に出した状態でれいむとまりさを持ち替えると、彼女に対してもれいむと同じ処置を施した。 その間、れいむはずっと痛みに悶え苦しみ、脂汗や涎や涙を撒き散らしながら泣きじゃくっていた。 「ゆびぃ・・・いぢゃい・・・ぢぬぅ・・・・・・!?」 「どほぢで、ごんなごどずるのぉ・・・!?」 まりさの胎内の子どもがれいむ種だったことを確認すると、私は少し衰弱した2匹を背中合わせに地面に置いた。 それから、背中もしくは後頭部に空いた穴からはみ出している子どもの髪の毛をひっぱり、解けないようにしっかりと結ぶ。 以上の作業を済ませたところで私は胎生ゆっくりに出産を促すといわれる頭頂部付近のツボを刺激してやった。 「「ゆ゛っ・・・ゆっくりうばれりゅよっ!」」 効果テキメンにもほどがある。頭頂部を刺激された2匹はあっという間に産気づいた。 産気づいた2匹は痛みを忘れ、至福の笑みを浮かべていた。やはり、2週間も胎内にいた我が子と対面できることが嬉しいのだろう。 が、5分経っても、10分経っても赤ちゃんはいつまで経っても生まれてこない。 至福の笑みは不安に曇り、やがて言葉にならない恐怖に支配されて、2匹は泣き顔になってしまった。 「あがぢゃん! ゆっぐぢぢないでうばれでね!」 「はやぐうばれで、おがーぢゃんとぢゅりぢゅりぢようね!」 胎内の我が子に向かって必死に声援を送るが、やっぱり子どもが出てくる気配が無い。 死んでしまったのではないかという不安も去来するが、声をかけると中で動く気配がするので生きているのは間違いない。 耳を澄ませば小さく「ゆっ!」と赤ゆっくりが踏ん張る声が聞こえてくる。 しかし、20分経っても2匹の赤ちゃんは産まれてこなかった。 「あがぢゃん! ゆっぐぢがんばっでね゛ぇ!!」 「どほぢでうばれでごないのおおおおおおおおお!?」 2匹はそれでも必死になって我が子を励まし続けるが、30分ほど経った時、まりさの胎内のれいむの反応が無くなった。 残念ながら、30分もの長時間にわたる髪の毛の引っ張り合いで体力を消耗し、胎内で力尽きてしまったようだ。 「ば、ばりざのあ゛がぢゃんがあああああああああああああああああああああああああああ!!?」 ひときわ大きな、そしてあまりにも悲痛な叫び声が消した高くは無い山に響き渡る。 が、他のゆっくり達は人間はゆっくり出来ないことを確信した時点で逃げ出しており、誰もやって来ない。 そして、悲嘆にくれる彼女に更なる追い討ちがかけられた。 「いぢゃい! せなががいぢゃいよ!?」 「で、でいうのあがぢゃん!? ゆっぐぢがんばっでね!!」 胎内のれいむが死んだことで、れいむの胎内の赤まりさに対する抵抗が無くなった。 そうなれば、赤まりさは外に出る為に髪の毛で結ばれた赤れいむの死体を引っ張ることになる。 死産に嘆き悲しむ暇も無く、背中にあけられた穴を押し広げられる痛みが彼女を苦しめる。 「いぢゃい!? ぢぬぅ! ぢんぢゃうううううううううう!?」 指に本文の穴から子ゆっくりとさほど変わらない大きさの我が子が引きずり出される際の苦痛は想像を絶するものだろう。 その異常なまでの痛みにまりさは悶え苦しんで暴れ回るが、結果的にそれがまりさの死期を早めてしまった。 まりさの力と赤まりさの力が合わさったことで、赤れいむの亡骸はとうとうまりさの背中を引き裂いて太陽の下へと飛び出した。 「―――――――――――っ!!?」 「ゆ゛ゆ゛っ! ばりざぁ、どほぢだの! へんぢぢでね! ゆっぐぢへんぢぢでね!?」 もはや悲鳴にすらもならない音と餡子をもらしながら振り返ったまりさは大分形の崩れた我が子を視界に収めた。 そして、最後の最後まで涙を流しながら「もっど・・・ゆっぐぢ、ぢだがっだよ・・・」という断末魔を残して我が子の元へと旅立っていった。 小さな山にパートナーを失ったれいむの悲痛な叫び声が響き渡ったが、慰めてくれるものさえ1匹としていなかった。 「い゛・・・い゛ぢゃ、い゛よ゛ぉ・・・」 れいむの最期はあっけなかった。 背中の穴と下あごの産道を同時に開かれる苦痛に耐えかねて気を失い、2度と目を覚ますことはなかった。 そして、1時間以上もの時間をかけて産まれた髪の毛の先で姉妹の亡骸とつながった赤まりさは予想通りに虫の息。 「ゆ・・・ゆっくり、して・・・」 赤まりさはたった一言の短い産声も上げることなく、家族の下に旅立っていった。 ‐‐‐あとがき‐‐‐ れいむと赤まりさがあっさりし過ぎかも? しかし、同じようなことの繰り返しにしからないないしなぁ・・・ 髪の毛って焼く、引っ張る、剃る以外の使い方もあって便利だわ byゆっくりボールマン このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/cvssyourimessage/pages/866.html
ガッツマン 《出典作:ロックマンシリーズ》 VS. 対ガッツタンク【ロックマン2:CAPCOM】 「なんじゃい!?このワシと似ても似つかんデカブツは!!」 ※投稿・K131 対ガッツマンG【ロックマン7:CAPCOM】 「ロボット博物館のワシのレプリカよ、なんちゅう変わり果てた姿に……」 ※投稿・K131 対ストーンマン【ロックマン5: CAPCOM】 「今回はワシの勝ちじゃい!約束通りオイルをおごってもらうぞ!」 ※投稿・K131 対Dr.ライト【ロックボード:CAPCOM】 「のうおやっさん!その飛び上がってゲンコツぶちかます技、ワシにも教えてくれんかのう?」 ※投稿・K131 対バイオレン【ロックマン:CAPCOM】 「なんで勝てたかワシにもようわからん…。みんなを守りたいと思ったら、何倍もの力が湧いてきたんじゃい」 ※投稿・K131 対フォルテ【ロックマンシリーズ:CAPCOM】 「井の中の蛙では、ロックマンどころかお前さん自身にも勝てんぞ‼︎ワシの工場で心を鍛えてみんか?」 ※投稿・pond5 対マイケル・マックス【餓狼伝説:SNK】 「ボクシングとやらも侮れんな。油断しとったら粉々になるところだったわい」 ※投稿・pond5 対無界【KOF2003:SNK】 「岩投げるっちゅうんは……こうやるんじゃーい!!」 ※投稿・K131 対ロール【ロックマンシリーズ:CAPCOM】 「ガハハハ!ロールにゃちょいと荷が重いのう!おとなしく家で待っとれ!」 ※投稿・K131 対ロックマン【ロックマンシリーズ:CAPCOM】 「お前さんとは、何度戦っても気持ちがいい。初志を忘れず、信じる道を進むのだぞ!!」 ※投稿・pond5 &. &ライトット【ロックマンシリーズ:CAPCOM】 「おまえさん、顔の割には力がないから困るわい」 『オイラはライト博士の助手だからいいんダス。あと顔は関係ないダス…』 ※投稿・K131
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1966.html
「「ゆっくりしていってね!」」 「「「「「ゆっきゅりちちぇっちぇね!」」」」」 もはや幻想郷の名物と化したその言葉を聞いた刹那、俺は目の前に居た“それら”のうち小さい奴を一つだけ乱暴に掴み、 力任せに玄関の戸を開けると、勢いよく外へと飛び出してとっぷりと日も暮れて闇の色に染まってゆく秋の空を仰いだ。 「いちゃいよ!やめちぇ!ゆっきゅりやめちぇね!?」 「ゆーっ!おにーさん、れいむのかわいいあかちゃんになにするの!?」 「やめるんだぜ!あかちゃんがいたがってるんだぜ!」 「「「「ゆっきゅりやめちぇね!」」」」 俺の手の中で喚いているのは先ほど掴んだもの・・・俗に“ゆっくり”と呼ばれる生首型餡子生命体の赤ちゃんだ。 そして、俺を追いかけて外に飛び出してきたその赤ちゃんの親や姉妹もまた空気を口内に溜めてぷくぅっと膨らんだ姿で足元で喚き散らしている。 が、俺はそいつらの言葉に耳を貸すことなくおもむろに振りかぶると、手の中の赤れいむを家の屋根めがけて放り投げた。 「そぉい!!」 「わーい、おしょらをとんでりゅみちゃーい!」 放物線を描く軌道で放り投げられた赤れいむは満面の笑みを浮かべて浮遊感を楽しんでいる。 その表情からは落下時のことを考えているとは到底思えず、ただ今現在の浮遊感と疾走感に酔いしれるばかり。 しかも本人どころか足元の両親でさえも「れいむも!れいむもおそらをゆっくりとばせてね!」などと言っている。 どうやらこいつらには屋根に激突した赤れいむが「ゆぇーん!ゆえーん!」と泣いているのは全く聞こえていないらしい。 「よし、じゃあ・・・まずは赤ちゃん達からだ」 「わぁい!おにーしゃん、れいみゅからなげちぇね!」 「ゆゆっ!まりちゃがしゃきだよ!」 「じゅるいよ!れいみゅもはやきゅおしょらをとびちゃいよ!」 俺の言葉をきっかけに赤ゆっくり達は我先にと元気いっぱいに自己主張し、やがて順番をめぐって喧嘩を始めてしまった。 喧嘩から真っ先に脱落したのはれいむ種の2匹で、勝ち残ったまりさ種の2匹は一番最初にお空を飛ぶ権利をめぐってまだ争っている。 が、いちいち順番が決まるのを待つのも億劫なので、俺はさっさと喧嘩の疲れを癒すために頬を寄せ合っている赤れいむの片割れを掴むと、 さっきと同じように振りかぶり、きっちりと屋根に乗るように加減して赤れいむを放り投げた。 「れいみゅおしょらをとんでりゅよ~!」 「「ゆゆっ!れいみゅ、じゅるいよ!」」 「ちゅぎはれいみゅだよ!」 さっき投げた赤れいむが屋根に着地する前に、足元に居たもう一匹の赤れいむを掴むと再び勢い良く放り投げる。 すると、後に放り投げられた赤れいむは不運にも前の赤れいむが着地する際に顔面から落下して痛い目に遭うのを空中で目の当たりにしてしまった。 「ゆえーん!いぢゃいよおおおお!」 「ゆゆっ!いちゃいのはやだよ!?」 しかし、れみりゃのように空を飛べるわけでもない赤れいむが空中で方向転換することなんて当然ながら不可能。 先に飛んだ2匹の赤れいむが「ゆっぐ・・・ゆぐぅ・・・」などと泣きじゃくるのを見ながら、自分の身に起きることを想像して恐怖におののくことしか出来ない。 僅かな時間だが赤れいむ自身にとっては永遠とも思えるような長い時間引きつった表情のまま宙を舞った後、地球の物理法則に従って眼下に広がる屋根へと落下し、 目玉や餡子がはじけ飛びそうなほどの衝撃がありもしない鼻から後頭部へと突き抜け、じんじんと餡子内に響くような痛みを残していった。 「ゆぎゅん!!?」 想像を絶する痛みに赤れいむはしばし動くことはおろか、呻くことも出来ずにぴくぴくと小さな体を痙攣させる。 その傍らでは先に飛んだ赤れいむ2匹が痙攣している彼女を気遣う素振りも見せず、ただ口々に自分自身がどれだけ痛い目に遭ったのかを泣き声によって語っていた。 一方、最初の赤ゆっくりと違ってこちらから見える場所に落ちたためにそんなものを見せ付けられ、あるいは聞かされてしまってはたまったものじゃないのはまだ下にいる両親と2匹の赤まりさ。 特にさっきの喧嘩に勝って先に飛ぶことになってしまった赤まりさは既に俺の手の中にいて、何とか抜け出そうと必死にもがきながら何やら叫んでいる。 うざいので足元で我が子を助けるべき必死に体当たりを敢行している親ともども、その叫びを無視してさっさと放り投げる。 「ゆきゃああああああ!?おきゃーしゃん、たしゅけでええええええええ!!」 「でいぶのあがぢゃんがあああああああ!?」 「まりさああああああああ!?」 赤まりさは近所迷惑な助けを求める叫び声を撒き散らしながら弧を描いて屋根へと飛んでいくが、両親にそれを止める手立てはない。 それでも両親は天高く舞う我がからぽかん子を目で追いかけているが、そんなものは気休めにさえならないわけで。 やがて、べちゃ!っという若干汚らしい音を立てて赤まりさも屋根に激突した。 さっきの赤れいむ同様にしばらくは静かだったがやがて泣き始め、先に屋根に放り投げられた3匹と一緒に泣き声の四重奏を奏で始めた。 「あかぢゃんだちがあああああ!まりぢゃあああ!どほぢよ・・・・・・どほぢでにげるのおおおおおお!?」 「そろーり・・・そろーり・・・ゆっ!?」 「しょろーり・・・しょろーり・・・ゆゆっ!?」 どうやら人間相手に何も出来ないことを悟った親まりさと赤まりさは尻尾を巻いて逃げるつもりだったらしい。 その事実を目の当たりにした親れいむは「どうしてそんなことするのっ!」だの、「れいむのあかちゃんかわいくないのっ!」などと憤りを露わにしているが、 自力で助けることは不可能な上に、家屋侵入したゆっくりは愛でお兄さんも修繕費などを請求されたくないため助けてくれないので実際のところはまりさの判断が正しい。 とは言え、俺は人間であり、ゆっくりが生き延びるための手助けをする理由もないので・・・ 「そうか、まりさはゲスまりさなんだな。仲間を平気で見捨てるゲスはこの村では加工所に提供することになっているんだが、どうしようか?」 「ゆゆっ!かこうじょいやだよっ!!」 「まりちゃゆっくちちちゃいよ!!」 「だったらあかちゃんをゆっくりたすけてね!!」 う~ん、自分は何もせずにつがいに赤ちゃんを助けろと要求するれいむの方がよっぽどゲスのような気がする。 もっとも、そんなことを懇切丁寧に指摘する必要も義理も無いので、俺はさっさと親まりさを両手で掴むと、屋根めがけて放り投げた。 まりさは俺の手の中で「おにーさん、やめてね!ゆっくりやめてね!」と涙ながらに懇願し、赤まりさは「やめちぇね!おきゃーしゃんをなげにゃいでね!」と泣いていたが、 その傍らでれいむは「おにーさん、ゆっくりしないでさっさとなげてね!」とどこか嫌らしい笑みを浮かべながらふんぞり返っていた。 「ゆぎゅううううううううう!?」 「おきゃああああしゃああああん!?」 「おお、ぶさいくぶさいく・・・・・・ゆぅ?」 もちろん、言われるまでもなく放り投げてやると親まりさは赤ゆっくり達以上に必死の形相を作って絶叫しながら宙を舞う。 その様子をのん気に眺める間もなく俺は親れいむを両手で掴むと、続けざまにまりさと同じ投法で屋根めがけて思いっきり放り投げた。 どうやら自分は大丈夫だと思っていたらしい親れいむはぽかんと口を開いたどこか間抜けな表情を浮かべて首をかしげていたが、宙を舞う瞬間には親まりさと同じ表情になっていた。 「ゆうううううううううううう!?」 「おきゃああああしゃああああん!?」 その間にも親まりさは屋根へと落下し、そして激突すると体を(ゆっくりなりに)ピンっと伸ばしたような妙な姿勢で硬直し、その状態から身じろき一つしない。 気を失っているらしく、後頭部からは少量ながらも餡子が漏れ出している。彼女が意識を取り戻して「ゆぎぃいいい!いぢゃいいい!」などと泣き出したのは親れいむが屋根に激突した直後。 その上、健気にも自分が投げられたときには笑っていた親れいむをつがいとして気遣い、傍に寄り添って頬ずりをしながら「で、でいぶ・・・だいじょうぶ?」などと言っている。 見てみればそうやって寄り添う夫婦の周りに屋根に放り投げられた赤ゆっくり達が集まってその比較的大きな体に顔をうずめて泣いていた。 「ゆえーん、ゆえーん・・・」 ゆっくり一家の様子を眺めていた俺が足元を見るとその泣き声の主のまだ一匹だけ放り投げていないゆっくりまりさの赤ちゃんが、逃げようともせずに泣きじゃくっていた。 どこか哀れみを誘う光景ではあるが、ここは無慈悲に徹してさっさと赤まりさを掴むと、屋根の上のゆっくり家族の傍へと放り投げた。 宙を舞いながら「ゆきゃあああああああああ!」などと叫びつつ恐怖に満ちた表情を浮かべる赤まりさは、やがて親れいむの隣に落下した。 こうして、屋根の上のゆっくり一家のゆっくり出来ない日々が始まった。 1日目 「「「「おきゃーしゃん、おなかしゅいたよ!」」」」 昨日、男性の手によって屋根の上に放り投げられてから15時間以上が経過しており、この台詞も既に4回は口にしていた。 当然のことながら何度その言葉を口にしたところで食べ物は出てこないどころか、両親は食べ物を取りに行こうとする気配すら見せない。 「ゆっ!まりさ、れいむもおなかすいたよ!ゆっくりたべものをとってきてね!」 「ゆゆっ!?そんなのできないよ!」 親れいむも食べ物を取りに行こうとしない親まりさに抗議するが、彼女は一向に動こうとはしなかった。 「「「「ゆえーん、おなきゃしゅいたよおおおお!!」」」」 「あかちゃんたちがおなかすかせてるんだよ!どうしてたべものをとりにいかないの!?」 「こんなたかいとこからおちたらしんじゃうよ!」 今度は赤ちゃんを引き合いに出して親まりさに詰め寄る親れいむは目を少し吊り上げ、ぷくぅっと頬を膨らませている。 だが、どんな風に詰め寄られようと、どんなに泣きつかれようとゆうに4m以上の高さのある屋根の上から飛び降りればただではすまないし、 よしんば着地できても屋根の上に戻ることが出来ないため、結局何をどうやっても八方塞りにしかならないのだ。 しかし、お腹の空いた赤ちゃん達にはそんな事は理解出来ず、またパートナーのれいむは母性の強いれいむ種ゆえに泣きじゃくる我が子を前に冷静さを失っている。 そんな訳で傾斜のせいで非常に危険な屋根の上の、数少なく、なおかつ狭い平らな場所で親まりさは四面楚歌の状況にただひたすら耐えていた。 「「「「おかーしゃん、おにゃかしゅいたよー!」」」」 「ごめんね、あかちゃんたち。まりさがのろまなせいでたべものがないんだよ!」 「「ゆええええん、おにゃかしゅいたよおおおおお!」」 「「ゆっくちできにゃいよおおおおおお!」」 「ゆゆっ!そんなにいうなられいむがとりにいけばいいでしょ!なんでまりさだけのせいなの!?」 「れいむはあかちゃんといっしょにいなくちゃいけないんだよ!ゆっくりりかいしてね!」 まりさの抗議に母れいむは悪びれる様子もなくそう言い返すと、赤ちゃん達に頬ずりをし始める。 「あかちゃんのせわならまりさもできるよ!」と反論するが、赤ちゃん達に一斉に「ゆっくちさしぇてくれにゃいおかーしゃんなんてきりゃいだよ!」と罵られ、 更に親れいむが「ほらね!まりさはごはんをあつめるしかできないんだよ!」と何か非常に不愉快な笑みを浮かべつつ赤ちゃんの言葉に便乗した。 もっとも、まりさが「ゆっくりさせてくれないもの」と認識されているのはれいむが上手いこと餌集めの役目を全てまりさに押し付けたからなのだが。 「どほぢでそんなごどいうのおおおおおお!?」 「いわれたくなかったらごはんをもってきてね!」 「だがらだがぐでむりなんだよおおおおおお!?」 「「「「おきゃーしゃんのばきゃあああああああああ!」」」」 もう何度目になるかもわからない集中砲火を前に、親まりさは涙目になるがどうしようもないのでさっきと同じように怒りが収まるまでただ耐え続ける。 が、さっきまでと違って赤ちゃんの空腹が限界近くに達していたらしく、容赦ない言葉の集中砲火は一向に止む気配を見せない。 「おきゃーしゃんのばきゃ!」 「きゅじゅ!」 「にょろま!」 「やきゅたたじょ!」 「ゆっくちできにゃいおきゃーしゃんにゃんてだいきりゃいだよ!」 「はやきゅおはんしゃがしにいっちぇね!」 「おはんをしゃがしゃないおきゃーしゃんなんておきゃーしゃんじゃないよ!」 「ゆっくちできにゃいよ!」 「「「「ゆっくちちたいよー!!」」」」 本来、赤ちゃんゆっくりにこんな語彙はないのだが、若干ゲス資質の高い母れいむが散々まりさを罵り倒した結果、こんな言葉を吐くようになってしまったのだ。 当の親れいむは体力の消耗を抑えるためにまりさを罵るのを赤ちゃん達に任せているらしく、「そうだよ!もっといってね!」などと言葉少なに赤ちゃん達をあおり続けている。 赤ちゃん達が疲れても、どれだけ涙ながらに「やめてい!」と言っても止むことのない罵詈雑言がどうしようもないほどに親まりさを傷つける。 やがて、その家族からの無慈悲な仕打ちに耐えかねた親まりさは・・・ 「もうやだ!おうちかえる!・・・・・・・・・ゆぎゅううううううう、ゆげえ!!?」 泣き叫びながら屋根の傾斜を滑り落ちるように飛び跳ね、4m以上も下にある地面へと落ちていった。 2日目 「「「「おきゃーしゃん・・・おにゃかしゅいたよおー・・・」」」」 泣きじゃくる体力もなくなった赤ちゃん達はそう呟き、親れいむにご飯を催促するが、屋根の上にいる以上餌を探しに行くことは不可能。 今まで屋根から落ちたっきり、恐らく潰れてしまったであろうまりさを悪役に仕立て上げて赤ちゃん達の気を紛らわせていたがそれももはや限界に来ていた。 何度か道を通りかかる人間に「れいむたちをゆっくりたすけてね!」と言ってみたものの、信じられないことに人間はこんなに可愛いれいむを平気で見捨てて行く。 そんな調子で何の打開策も見出せないまま、赤ちゃん達の体力はもはや相当危険なところまで来ていた。 「ゆゆっ!ゆっくりだまってね!れいむもおなかすてるんだよ!」 「ゆぅ~・・・おこらないでね、ゆっくちできにゃいよ・・・」 「ゆっくちちたいよ~・・・」 「おきゃーしゃん、ゆっくちしゃせてよ・・・」 「ゆぅ・・・もうひちょりにおきゃーしゃんのほうがゆっくちできちゃよ・・・」 口々に文句をたれる赤ゆっくり達の最後の一言で怒りが頂天に達したれいむはその場でどんどんと跳躍を繰り返す。 心の中は自分よりずっとグズで、のろまで、せっかく自分が見つけてきたおうちを人間に乗っ取られたあのまりさ以下と言われたことで煮えくり返っていた。 実際にはこのおうちは本来人間のものだし、れいむだって人間に敵わなかったのだがそんなことを冷静に内省するつもりは微塵もなく、その怒りを我が子にぶつけた。 「ごちゃごちゃうるさいよ!なにもかもまりさがわるいんだよ!」 「「「「ゆ、ゆっ!?」」」」 「なんなの!どうしてもんくばっかりいうの!?ここはたかいんだよ!おちたらしぬんだよ!ゆっくりできないんだよ!」 「おきゃーしゃん、きょうわいよ・・・」 「ゆっくちちてよ~・・・」 「ゆっくりできるわけないでしょ!おまえたちがいなければおおきなおうちをさがさなくてもよかったんだよ!」 「ゆぅ~・・・」 「おまえたちがうまれたからおおきなおうちをさがさなくちゃならなくなったんだよ!おまえたちのせいなんだよ!ゆっくりりかいしてね!」 「これじゃゆっくちできにゃいよ~・・・」 「あたりまえでしょ!あんなのろまのこどもにゆっくりするしかくなんてないよ!」 「どほぢでそんなこというのぉー!」 「おまえたちがぐずでのろまでゆっくりできないからだよ!」 「「「「ゆえーん・・・ゆえーん・・・」」」」 「なくのはやめてね!れいむがゆっくりできないよ!!」 怒りに我を忘れた母親に罵り倒らせ、悲しみのあまりに力なく泣く赤ゆっくり達。 しかし、今の親れいむには「あかちゃん、なかないでね!す~りす~り」などとやるような精神的余裕はない。 それどころか、何も出来ないくせに自分勝手なことを喚き散らす赤ゆっくり達が自分のゆっくりを妨げる害悪のようにさえ思える。 そして、親れいむは昨日はまりさに散々子どもを云々と言っていたことも忘れて、近くにいた赤まりさを踏み潰した。 「ゆきゅう!?・・・もっと、ゆっくちちちゃかっちゃよ・・・」 蚊の泣くような踏み潰された赤まりさの断末魔。 しかし、愛する母親に目の前で姉妹をつぶされた他の赤ちゃん達には耳元でダイナマイトを発破されたかのような轟音にも等しく、 あっという間に踏み潰された赤まりさの恐怖と絶望が他の赤ちゃん達にも伝染した。 「おきゃーしゃん、なにしてりゅるのおおおおお!!」 「れいみゅのいもうちょがあああああああああああ!!」 「ゆっくちできにゃいよおおおおおお!」 赤ちゃん達は目の前の死の脅威に空腹も忘れて泣きじゃくるが、親れいむはそんな彼女たちをぎろりと睨みつけ、こう一喝した。 「うるさいよ!ゆっくりできないあかちゃんはゆっくりしんでね!」 「きょわいよおおおおおおお!?」 「ま、まりしゃ、あぶにゃ・・・!?」 「まりしゃあああああああああ!!」 母親への恐怖が我慢の限界に達したのは目の前で同じ姿の姉妹を潰された赤まりさ。 ただ、目の前のゆっくり出来ないものから逃げ出したい一心で彼女は平坦場所から飛び出し、躓いて転倒すると、 饅頭ゆえの丸い体で屋根の傾斜をごろんごろんとゆっくり転げ落ちていき、昨日親まりさが消えていった屋根の下へと落ちていった。 「ゆゆっ?!ま、まりさがおちちゃったよ!?」 どうやらその光景を目の当たりにしたことと、赤ちゃん達が文句をたれるのを止めたおかげで我に返った親れいむは何故か飛び降りた我が子の安否を気遣う。 勿論、自分が赤まりさを潰したから恐怖に駆られたという発想は無いらしく、そもそも赤まりさを潰したことを覚えているかどうかさえ怪しい。 そんな親れいむはふと足元を見て、潰れた我が子を視界に収めると・・・ 「あかちゃんたち、きょうがこれをたべるよ!」 と、全く悪びれる様子も、同族食いへの嫌悪感を示すことも無く、いけしゃあしゃあとそんなことを言ってのけた。 確かに死んだ同族を食べることは割とよくある事なのだが、自分で殺した我が子を平然と食べようと提案するのはやはり異常としか言いようが無かった。 3日目 「「おきゃーしゃん、おなきゃがしゅいたよ!」」 昨日の一件でまりさ種の赤ちゃんは全滅しているので、昨日食べた姉妹の亡骸から得た栄養を使って元気良くその言葉を口にするのは赤れいむ2匹。 とは言え、先日の母親の恐ろしい姿をしっかり記憶しているので、あの時のようにあまりしつこく催促したり、無意味に罵倒したりはせず、 どうしても我慢できないほどの空腹感が襲ってきたときだけ、ただ本能に従ってその言葉を口にしていた。 もっとも、親れいむにだって屋根の上に放置されたこの状況を打開するすべはないのだから、回数が減ったところで不愉快なことに変わりは無いのだが。 「ゆぅ・・・おなかがすいたよ・・・これじゃゆっくりできないよ!」 それに、何よりも一番空腹を感じているのは体格が3匹の中ではずば抜けて大きく、その分だけ大食いな親れいむ自身だ。 今までずっと我慢してきたがいい加減我慢の限界も近づいてきていて、あと少しでゆっくり出来なくなりそうな状態。 そういうわけで彼女は頭の中で自分がゆっくりするために我が子を食べることを画策していた。 「おなかがすいたんならゆっくりねむってね!」 「ゆぅ・・・ゆっくちりかいちたよ・・・」 「おきゃーしゃん、こもりうちゃうちゃって!」 「そんなのつかれるだけだよ!ゆっくりおねんねしてね!」 そんな親れいむの腹のうちを知る由も無い赤れいむ達は親れいむに促されるがままに空腹を紛らわせるために眠りにつく。 一方、親れいむは我が子がちゃんと眠りにつくまでじっくりとその様子を観察し続け、ゆっくりとチャンスの到来を伺っている。 そうして機を伺うこと27分、赤れいむが2匹ともゆぅゆぅという寝息が、千載一遇のチャンスの到来をれいむに告げた。 「そろーり・・・そろーり・・・」 何の必要も無い擬音をわざわざ口にしながらおもむろに子ども達に近づく親れいむ。 昨日食べた赤まりさのとろけるように繊細で柔らかい皮の舌触りと、やや控えめな甘さの餡子の風味を思い出すその表情は緩みきっていて、 ゆひひ・・・と品の無い笑みを浮かべる口元からはぽたぽたと涎が滴り落ちている。 そうして、1匹の赤れいむに皮と皮が触れそうな距離まで近づき、正面から食べるのは気が引けたのか背後に回りこんだところで・・・ 「ゆっくりいただきま~す!」 と、またしても何の必要も無いのに元気良く叫ぶと、思いきり良く赤れいむの後頭部を食いちぎった。 「ゆきぃいいいいいいいいいいいいい!?」 「む~しゃ、む~しゃ・・・しあわせ~!」 「ゆぅ・・・?ゆっ!おきゃーしゃん、なにちてりゅの!?」 突然の出来事に目を覚ました赤れいむは後頭部をかじられたことには気づかないものの、餡子を駆け巡る強烈な痛みと喪失感で金切り声を上げ、 つられて目を覚ましてしまったもう一匹の赤れいむは自分と同じ姿の親れいむが、自分と同じ姿をした姉妹を捕食する凄惨な光景を目の当たりにして泣き叫ぶ。 しかし、親れいむは2匹の様子などお構い無しに、昨日の姉妹を食べる光景を見せ付けられた恐怖と、その怖いものとずっと一緒にいる恐怖からか、 赤れいむの赤まりさより濃厚な甘みを堪能し、空腹が満たされる喜びと、今まで食べたことの無い美味しさに感動して涙を流していた。 「む~しゃむ~しゃ、すごくゆっくりできたよ!」 「ゆきゅぅ・・・お、おにぇーちゃんが・・・」 「ゆふぅ・・・すごくゆっくりできるよ!」 「れ、れいみゅ、おきゃーしゃんとはゆっくちできにゃいよ!!」 まりさが食べられて、れいむも食べられて、最後に残ったのは自分だけになった赤れいむは「次は自分だ」と言うことを本能的に理解し、屋根の上で唯一平らな場所から飛び出した。 そして、親まりさや子れいむと同じようにゆっくりにとっては奈落の底にも等しい遥か(と言っても4m程度)下の地面へと真っ逆さまに落ちていった。 「ゆゆっ!?れいむのあかちゃ~~~~~~~~~ん!!!」 その自殺行為にも等しい我が子の常軌を逸した突然の行動を眺めながら叫ぶ親れいむ。 こうして、最後の一匹になってしまった親れいむはほぼ全て自分の責任であることにも気づかずに、ただ静かにすすり泣いて夜を明かした。 4日目 「ゆぅ~・・・でいぶのあがぢゃん・・・どほぢであんなごど・・・」 親れいむは昨日の最後のゆっくり出来ない生活に耐えられなかった(と言う理由にれいむの中ではなっている)我が子の自殺の後からずっと悲しんでいた。 一体、どうしてこんなゆっくり出来ない状況になってしまったんだろうか? ほんの3日、4日前までは凄くゆっくり出来ていたはずなのに・・・気がつけば餌もない場所で孤独に耐える生活を強いられている。 「ゆぅ・・・おなかがすいたよ!」 一体、誰のせいでこんなにゆっくり出来ない生活をする羽目になったのだろうか? そうだ、あの人間のせいだ。れいむのおうちに勝手に上がりこんできてこんなところにれいむ達を放り投げた人間が悪いんだ。 それから、まりさのせいだ。れいむがおうちを見つけてあげたのに人間にも勝てないで、あまつさえれいむを見捨てようとしたあの愚図が悪いんだ。 ああ、美味しいご飯が食べたい。 「ゆうぅ・・・さぶいよ!ここじゃゆっくりできないよ!」 それだけじゃない、赤ちゃん達のせいでもある。どうして自分を置いてあんな自殺行為に走ったんだろうか。 ゆっくり出来なくて辛いのはわかるけれど、こんなにゆっくり出来るお母さんがいるのに・・・あまりにも堪え性がなさ過ぎる。 それに、そもそも赤ちゃん達が生まれなければ人里に下りてくる必要も無かったんだ。 ぽんぽんがペコペコだよ! 「ゆぅ・・・どほぢででいぶがゆっぐぢでぎないのぉおおおおお・・・・!」 どうして何も悪いことをしていない自分がこんな酷い目に遭うんだろうか? どうしてこんなに可愛いれいむがこんな酷い目に遭うんだろうか? どうしてこんなにお腹が空いているのに美味しいものを食べてゆっくり出来ないのだろうか? 気がつけばれいむの悲しみは我が子を失ったことから自分が理不尽な仕打ちを受けていることにすり変わっていた。 5日目 「ゆぅ・・・おなかがすいたよ・・・」 もう台詞の最後に「!」をつける余裕も無いれいむは虚ろな眼差しで曇り空を見上げ、きょろきょろと何かを探していた。 彼女の探しているもの、それはうーぱっくと呼ばれるゆっくりに対して好意的な飛行能力を有するゆっくりれみりゃの亜種だ。 そいつの力さえ借りることが出来れば何とかここから脱出して森に帰ることが出来るはず。 「ゆぅ・・・うーぱっくさん、ゆっくりしすぎだよ・・・」 どうしてこんなに可愛い自分がずっとゆっくりれいむのところに来てねとお願いしているのに平気で待たせられるのだろうか? 本当に皆してゆっくりし過ぎだよ。可愛いれいむはこんなにもゆっくり出来ない思いをしているのに。 自分のあまりの不遇を考えると思わず涙がこぼれる。 「・・・どほぢでみんなれいぶをいじべるのぉ・・・・」 美味しいご飯をゆっくり食べたい。 暖かい藁や葉っぱの上でゆっくり眠りたい。 風も雨もしのげるおうちの中でゆっくりしたい。 森の中でゆっくりかくれんぼがしたい。 広い原っぱでゆっくりかけっこがしたい。 ああ、何でもいいからゆっくりしたい。 「ゆっくりしたいよ・・・」 酷い空腹感のせいか、昨日のように誰かに不満をぶつけることも無い。 仕方なく眠りにつこうとするが、お腹が空きすぎて全く眠ることができなかった。 「ゆえーん・・・だれがぁ、たしゅげでよぉ・・・」 6日目 「ゆぎぃいいいいいいい!?あめさんなんでふってくるのおおおおおおお!?」 不運にも普段なら日が昇りはじめる頃にゆっくりにとって最も恐ろしいものの一つと言える雨が降って来た。 ゆっくり達が雨を苦手とする理由・・・それは小麦粉で出来た皮が一定量以上の水分を吸うとふやけて、やがては溶けてしまうから。 だから、ゆっくりは雨の日には基本的に外に出ずに巣の中ですごすのだが、屋根の上には雨から体を守るものがどこにもない。 まさに“詰んだ”に等しいほどの窮地に陥っていると言っても過言ではないのだ。 「ゆぅぅぅうう・・・あめさん、ゆっくりやんでね!おねがいだからゆっくりやんでね!」 そう言いながら必死にぴょこぴょこと跳ねるが雨は一向に止む気配を見せない。 それどころか、徐々に雨足が強くなっていき、ポタポタとまばらに降っていた雨がやがて地面や屋根を激しく打ち付ける大雨になってゆく。 れいむが何度「おねがいだよ、ゆっくりやんでね!」とか「あめさん、いじわるしないでよ!」と言ったところで何の意味も無い。 気がついたときにはザァーザァーという雨音が家屋の中にいても聞こえてくるほどの大雨になっていた。 「どほぢであべさんいぢわるずるのおおおおおお!?」 徐々に溶けてゆく皮と雨水のせいで良く見えないが、何処にも逃げ道の無いれいむはぼろぼろと大粒の涙を零しながら天に向かってほえる。 しかし、何を叫んでも返事が返ってくることなどありえず、その声は雨音にかき消されて誰の耳にも届かなかった。 しばらくそうやっていると、自分の体がかなり不自由になってしまっていることに気づく。 足元に出来た水溜りには黒い何かがにじんでいて、れいむにはそれが自分の中に詰まっていたものだとすぐに理解できた。 「ゆうううううう!れいむのあんこさん、でていかないでね!」 雨に流されて屋根から滑り落ちていく黒いそれを拾うために、れいむはぬれて普段よりずっと滑りやすくなっている屋根の傾斜へ思いっきり良く跳躍し、 足を滑らせるとそのまま今まで地面へ落ちて行ったゆっくり達と同様にごろんごろんと屋根を転がり、やがて4m以上も下の地面へと叩きつけられた。 雨でふやけた体で地に落ちたれいむは、それでもなお雨宿りできる場所を求めて、本当なら自分のものだったはずの人間の家の軒下へと這いずっていく。 しかし、彼女の歩みは唐突に止まった。体力が尽きたわけではなく視線の先に、人間の家の中にあったものを見て衝撃を受けたからだ。 「れいみゅ!おにーしゃんがおもちゃをくれちゃよ!」 「ゆゆっ!まりしゃいいな~!れいみゅもおもちゃほちいよ!」 「ふたりとも、なかよくいっしょにゆっくりあそぶんだよ!」 「「ゆっくちりかいちたよ!」」 視線の先にあったもの・・・それは地面に落ちて死んだはずの2匹の赤ちゃんがタンバリンを取り合い、それを人間の膝の上でまりさが見守っている光景だった。 人間の、あの日、自分達を屋根の上に放り投げた男の膝の上に座っているまりさの足に当たる部分には包帯が巻かれているがそれ以外は健康そのものだ。 満面の笑みを浮かべて男性に話しかけてはテーブルの上のクッキーを食べさせてもらい、向かいの人間の女性の膝の上にいるゆっくりありすと楽しそうに談笑していた。 「ど、どういうことなのおおおおおお・・・!?」 訳がわからない。本当に訳がわからない。 どうしてまりさが生きているの? どうして赤ちゃん達が生きているの? どうしてその人間と一緒にいるの? どうしてそんなありすと楽しそうにしているの? どうして美味しそうなお菓子を食べているの? どうして人間からおもちゃを貰っているの? どうして・・・・・・・・・ どうして・・・・・・ どうして・・・ ・・・どうしてれいむはそこにいないの? まりさはれいむが屋根の上でお腹を空かせている時に美味しそうなものをたくさん食べていたの? まりさはれいむが屋根の上で寒い思いをしている時にあったかいおうちの中でゆっくりしていたの? まりさはれいむが赤ちゃんを食べていた時に赤ちゃんと一緒に人間のご飯を食べていたの? まりさはれいむがひとりで寂しい思いをしている時にそこにいるありすとすっきりしていたの? まりさはれいむが雨に打たれて死にそうな時にどうしてそんなにゆっくりしているの? そこまで考えたところでれいむの意識は唐突に現実へと引き戻された。 相変わらず降りしきる雨。その雨足はあいかわらず激しく、強くれいむの皮を容赦なく打ち付けていた。 しばらく一人で変な問答をしている間に大分雨にやられてしまったれいむはもはや動くこともままならない。 ただじっと、近くて遠い家の中のゆっくりした光景を眺めながら、体から餡子が漏れ出す感触に怯えながら、れいむは立った一言・・・ 「もっと、ゆっくり・・・したかったよ・・・」 と雨音にかき消されて誰の耳にも届かないような小さな声で呟いた。 ‐‐‐後書きというか能書き‐‐‐ 殺したりせず虐待の労力を最小限度に済ませる方法を考えていた最中に浮かんだネタです。 「ゆっくりプレイス」宣言すらさせずに制裁へと移行するお兄さんマジ外道? ゲス 嫌われがちだけど、こいつらも必要あって存在してるんじゃないかと思う。 考えてみれば、人間に群れが襲われたときゲスがいなければ群れはほぼ100%壊滅するけど、ゲスがいればゲスが生き残る分で98%くらいになるかもしれないわけで。 作中でのれいむの子どもを食ってでもうーぱっくが来るまで生き延びるって判断は屋根の上だけの状況を見ればわりと真っ当な判断じゃないかと。 まりさと赤ちゃん達 作中の男性は虐待お兄さんではありあせん。したがって彼がれいむ達を屋根に放り投げたのは制裁のため。 何の被害も無ければ山に捨て置くだけなのですが、家の中でれいむ達を見かけた時点で窓を破られたと判断し制裁。 しかし、後で家の中を見てみると特に荒らされた形跡も無く、玄関から入ったことが判明したので「やりすぎたな」と後悔。 その後、庭で屋根から落ちて大怪我をして、気を失っていたまりさを発見し、保護する。 彼女の治療をお願いした近くのゆっくり愛好家の女性が美人だったので、下心むんむんにまりさを飼うことに。 さらに、まりさが目を覚ます前に赤まりさが落ちて(体重の軽さのおかげで軽傷)きて母れいむの凶行を知らされる。 近所の大工にでも一家を助けてもらおうかと考えていたが、更に赤れいむが落ちてきて母れいむが子どもを全滅させたことを知る。 そして、同族殺しを犯した以上れいむを助けるわけには行かないというまりさの主張を採用して放置決定。 そんな経緯で最後の場面に至ったんじゃないかと思います。 byゆっくりボールマン このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/kazu392h/pages/1339.html
autolinkTOP>【い】>イッパツマン イッパツマン (いっぱつまん) 分類5【題名】 ジャンル5【その他・作品・番組】 タツノコプロホームページ http //www.tatsunoko.co.jp/ 【逆転イッパツマン】 1982年2月から83年3月までフジテレビ系で全58話放送。 タイムボカンシリーズの第6作。 前作のヤットデタマンまでとはガラッと変わり主人公が少年じゃなくなった。 途中にシリーズ初の悪が勝つ話もあってまさに逆転の展開。 オープニング曲のイントロが、元阪神のオリックス・北川博敏選手のテーマ曲になっている。 「パッパッパパパパパパパパッイッパ~ツマ~ン」のフレーズはインパクト大。 エンディングの『シビビーン・ラプソディ』も面白くて好き。 登録日 2008/11/16 【い】一覧 威圧感 いい人 イエローシート イエローメッシュジャージ 伊賀野カバ丸 井川慶 石ノ森章太郎 イタダキマン 1990 一条薫 1・2・3と4・5・ロク 一年の計は元旦にあり 一文字隼人 一身上の都合 一反もめん イッパツマン 一般論 一服 偽りのウエディング イデオンガン 伊藤かずえ 愛しの刑事 イナズマ イナズマン 乾巧 井上敏樹 井の中の蛙、大海を知らず イブキ 今岡誠 意味無し勃起 イメクラ 癒し系 イヤリング型携帯電話 岩田稔 インターポール インパルス インフェルシアの花嫁 インベーダーゲーム ■ トップページへ移動 ▲ このページ上段に移動
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1436.html
流れを読まずゆっくり阿求。 途中まで見たら、大体オチがわかる仕様になっております。 ここは永遠亭。机をはさみ、向かい合う永琳と阿求。心なしか、永琳の目には疲れが見える。 「私は考えた。どうすればAQN症候群を治せるのか・・・・。 ゆっちゅりーを育てさせれば、AQN症候群ゆっちゅりーを生み出すし、 東風谷早苗に相談したら、トラウマを植えつけられて神様が怒鳴り込んで来るし、 上白沢慧音に至っては、廃人になりかけて入院中。 そこで永遠亭の総力を結集して作ったのがこれ!」 机の上におかれたのは、1匹のゆっくり。 「あきゅー!」 「これを育てることが、今の貴方にできる善行y」 フォン、グシャ。 皆まで聞かず、阿求はゆっくり阿求にげんのうを振り下ろしていた。 「別に、自分のゆっくりだからといって、いいえ、自分のゆっくりだからこそ、殺し甲斐があると思いませんか?」 断じる阿求。 対するは笑みを浮かべる永琳。 「ふふふ・・・かかったわね」 げんのうの下で、むくむくと蠢く、ゆっくり阿求だった餡子の塊。 それが見る見るうちに、形作り、元のゆっくり阿求となった。 「あやー!」 「これは・・・!」 フォン、ボヨン。 再度げんのうを振り下ろす阿求・・・しかし、げんのうに伝わるのは、先ほどとは全く違う感触だった。 「これぞ、ゆっくり阿求の特性・・『⑨の試練』 ゆっくり阿求は9回殺さなければならない上に、一度食らった攻撃は二度と通じないのよ! ふふ、確認されている限り、鈍器による撲殺、針による刺殺、素手による殴殺・・・それぐらいかしら? 特殊な戦闘能力を持たない貴方には、これ以上ゆっくり阿求を殺し切ることは出来ないわ!!」 勝ち誇る永琳。 それを聞き、阿求は一言だけ呟いた。 「稗田家なめんな」 打潰す饅頭『ナインライブズゲンノウワークス』 背中を見せる程引き絞った特異な構え・・・それより繰り出される一閃九打の絶技によって、ゆっくり阿求はあっさり9回殺された。オーバーキルである。 あまりのショックに永琳は9日間寝込んだ。 月廚?ふぁて?なんのことです? このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/893.html
※虐待というよりギャグ……? ※オリ設定多し。 『ゆっくり大学虐待学部』 教室の扉が開くと、ゆったりとした歩調で老教授とその助手が入室した。 老教授の姿を見るや、室内の学生は途端におしゃべりをやめて、教室前方へと視線を集める。 老教授が教壇に立つのと、講義開始のチャイムが鳴るのはほぼ同時であった。 ここはゆっくり大学。 ゆっくりを愛でる者、ゆっくりを研究対象と見る者、そしてゆっくりを虐待したい者。 志の違いはあれど、ゆっくりに対する並々ならぬ感情を抱く者達が、知識と技術を身につけるべく、日々研鑽する学び舎である。 老教授が本日のレジュメを配布する。そのプリントには、「ゆっくり虐待概論Ⅰ ②四種類の虐待」と題名が書かれていた。 「えー、本日は主だった虐待の説明を行ないます。虐待は、おおまかに四種類に類型化され……」 しわがれた声で説明しながら、黒板に板書していく老教授。 筆圧が弱いのか、書かれる文字は薄く不鮮明で、どこか頼りない。 「虐待の類型としては、身体的虐待、心理的虐待、ネグレクト、そして性的虐待があります。ではまず身体的虐待から……」 傍らに控えていた助手がさっと動いた。台車に乗せられた1m四方の透明な箱に手を入れる。 中には十数匹のゆっくりが入れられており、助手が掴み出したのは、バレーボールサイズのゆっくりれいむであった。 助手がれいむと鉈を教授に手渡す。 「身体的虐待とは、文字通り身体的に虐待を行うことです。シンプルである分、そのバリエーションは豊富です」 なにやら騒ぐれいむを教卓に押し付け、無理矢理黙らせながら、教授は説明を続けた。 「身体的虐待を行なう上で、最も注意しなければならないのが、殺してはならないということです。 みなさんが行うべきは虐待であり、虐殺ではありません。 もちろん、虐待の果てに殺すことは一向に構いませんが、即死……即座に死なせるようなことがあってはいけません。 日本には古来より寸止めの美学というものがあります。 全裸より半裸、ポロリよりもチラリ。無論、私も着衣エロの信奉者であり、特に裸Yシャツにニーソックスの組み合わせが……と、失礼。話が脱線しました。 ともあれ、ミニスカートとニーソックスの間の絶対領域に萌えを見出すもののあはれの心は、虐待魂にも脈々と受け継がれております」 老教授の説明を説明に耳を傾けながら学生達は真剣にノートやレジュメにメモを取っていく。 「身体的虐待の詳しい説明は、レジュメに書いておいた参考文献を元に各自学習しておいて下さい」 レジュメ末部の参考文献一覧には、「八意永琳、『絶対やりたい、ゆっくり虐待』、幻想書房、2008」と書かれている。 「虐待の過程では、そう簡単に殺してはいけません。生かさず殺さず、じっくりと徹底的に嬲り尽くし、体の芯まで虐待できるような方法を選びましょう。例えば……」 鉈を持つ老教授の手が一瞬、かき消えると共に、「トン」という小さな音が教室内に響いた。 教室内の全ての学生は、一体何が起きたのか分からなかっただろう。 ただ一人、一部始終を目に焼きつくさんと目をこらしていた助手だけが、戦慄と共に理解していた。 老教授は、何事もなかったように、教卓上の霊夢を左右に開いて見せた。 教室にどよめきが広がる。ここでようやく学生は理解した。 老教授が、鉈を使い、恐るべき速さで一刀両断したのだ。あの小さな音は、鉈が教卓に接触した時の音だったのだろう。 「ゆっくりは、このように切断してしまいますと、即死してしまいます。切る時は場所を考えて切りましょう」 助手が、二匹目のゆっくりれいむを取り出して、教授に手渡した。 「頬や頭の一部を狙うのがセオリーです。基本は、餡子が一度に大量に失われないようにすることです」 学生に向かって説明しながら、手元のれいむを全く見ずに、次々と鉈で頬や頭を切断していく。 薄皮とわずかな餡子のみをかすりとっていくその洗練された鉈使いに、教室中の学生が息を飲んだ。 室内の誰もが、「ゆ、ゆ、ゆっ!」と叫ぶれいむのことは気にもとめていなかった。 「しかし、こうしたところでゆっくりにはさほど苦痛を味わせることはできません。真の虐待はこの後です」 ここでようやく教授はれいむに目を向けた。 手元のれいむは苦痛に顔を歪め、涙ながらに抗議をしている。 「い゛だい゛よお゛っっっっ!!! れ゛い゛む゛になんてこ゛と゛ずるのお゛お゛っっ!?」 教授の口元が釣り上がった。 「うっせぇ! 腐れ饅頭がっ!!!」 咆哮と共に、教授の五指が露になったれいむの餡子に深く突き刺さる。 「い゛ぎい゛いいっっっっっ!!??」 激痛に目は血走り、全身が小刻みに痙攣を繰り返す。 れいむのその様子に教授の心が昂ぶる。 「ここか~~? ここがいいのか~? んんっっ!?」 「ひぐっ、あぎゃ、げっ、ごっ……!」 突き刺した指で、れいむの餡子を内部からぐちゃぐちゃにかき回す。 まるで指揮者のタクトに従う楽団のように、教授の指の動きに合わせてれいむが絶叫を上げ続けた。 そして一際大きくぶるっと体を震わせると、苦悶の表情を顔にはりつけたまま、れいむは絶命した。 「……と、このように、餡子に直接刺激を与えることが、ゆっくりに苦痛を与える最も効果的な方法であります。 今回は時間もないのであっさり殺しましたが、その気になれば何時間でもいたぶることが可能です」 助手から渡された手ぬぐいで手を拭きながら、落ち着いた様子で教授が説明を行なう。 「続いて針や釘などを用いた虐待の例を紹介しましょう」 助手が、三匹目のれいむ、束になった針、はさみを手渡した。 「ゆっくりは、内部の餡子を大量に失うことで死に至りますが、度を過ぎる激痛によるショック死も可能です。さきほどのように」 ここで一人の学生が手を挙げた。 「質問です」 「どうぞ」 「度を過ぎる激痛とおっしゃいましたが、具体的にはどの程度の苦痛を与えれば死ぬのですか?」 「痛みを数値化して定量的に比較することは不可能ですが、大まかな目安として、内部中枢の餡子を傷つけなければ、 まずショック死はしないと考えてよいでしょう」 「中枢の餡子なんてものがあるのですか?」 「そうです。それが、他の動物における脳の機能を担っているのかはまだ分かっておりません。 しかし、苦痛に対するある種の急所となっており、その部位に対する刺激には非常に弱いことは明らかになっています」 「……なるほど。ありがとうございました」 「ちなみに、餡子を大量に失う、中枢の餡子が傷つく以外に、温度上昇による死もあります。 恐らく、餡子の組成が変化することが死につながるのでしょう」 教授は他に質問がないか確認すると、講義の続きに入った。 「針や釘を刺すことで苦痛を与えるのも、身体的虐待の中では比較的ポピュラーな部類に入るでしょう。 餡子を外に漏らさず、中枢の餡子を傷つけなければ、手軽に半永久的な苦痛をゆっくりに与えることができますから」 と言って、れいむの頭に針を刺した。 「いたいっ! なにするのおじさん! これじゃゆっくりできないよ!」 れいむの文句を無視してさらに説明を続ける。 「実は、ただ針一本を刺すだけでは、それほど苦痛を与えることはできません。そこで一工夫」 教授の目配せに従い、助手がれいむの頬を両手で圧迫し、固定した。 れいむが動けなくなったことを確認すると、教授はれいむの右のまぶたをつかむと、はさみで切り取っていった。 本来ならばここでれいむの絶叫が聞こえるのだが、助手のせいで口は動かせない。 しかし、教授の目に映るれいむの瞳は、確かに激痛と、教授に対する怒りと憎しみを訴えていた。 もちろん、そんなそよ風のような悪意では、百戦錬磨の教授を動じさせることなどできない。 れいむの訴えなどには意も介さず、左のまぶたも切り取った。 「ゆっくりにとっても目は急所です。そこで、刺すなら目を刺しましょう。 もちろん、刺しやすくするために、事前にまぶたを切るのは忘れずに。では早速……」 助手が、れいむへの圧迫を加減した。もちろん、れいむの叫び声を聞こえるようにするためである。 「おじ……「バルス」いぎゃあああっっ!! め゛がっ、れいむ゛のめ゛がぁぁぁっっ!!」 教授がれいむの右目にぷすりと針を刺した。 「目を攻撃するときは、『バルス』の掛け声は必須です」 そう言うと、教授は次々とれいむの眼球に針を突き刺していった。 「バルス」 「ひぎゃっ……!!」 「バルス」 「い゛っっ!!」 「バルス」 「み゛ゃっぁ……!」 「バルス、バルス、バルス、バルスバルスバルスバルスバルスバルスバルスバルスバルスゥゥゥ!!」 興が乗ってきた教授の両手が、常人では不可視の速度で動き続ける。 途切れることなく次々と針が突き刺される激痛に、れいむが心からの絶叫を上げた。 「いじゃい、いじゃい、いじゃぁぁーいっ!! れいむ゛のめ゛、れいむ゛のめ゛ぇぇっっ!!! ……ふぐっ」 頃合を見て、助手がれいむの口に詰め物を入れて黙らせた。 そして、学生達によく見えるよう、れいむを頭上に掲げる。 すでにれいむの両目には、おびただしいほど無数の針がびっしりと突き刺さっており、まるで眼球からビームが発射されているようであった。 その状態でぷるぷると体を震わせるれいむに、思わず何人かの学生が失笑の声を漏らした。 「当然この程度ではゆっくりは死にません。この状態で放置しておけば、永続的な苦痛を味わせることができるでしょう。 が、いつかはこの痛みにも慣れてしまうかもしれません。その時は……」 教授の手が、れいむの眼球に突き刺さっている針の束へと伸びる。 針の束を掴むと、眼球ごとそれをぐっと内部に押し込んだ。さらにぐりぐりと回し、内部の餡子をかき混ぜる。 「……………………っっっっ!!!!!」 悲鳴を上げられないれいむは、全身を震わせる不恰好なダンスで、苦痛を表現する。 「こうした一連の方法は、八意名誉教授の著作に書かれております。各自参考にしつつ、独創的な虐待方法を考案・実践していって下さい。 では続いて、心理的虐待について」 瀕死のれいむを助手へと手渡し、次の講義内容へと入った。 「みなさんもご存知のように、ゆっくりは基本的に⑨です。 ですが、生意気にも身分不相応なプライドや大切なものを持っており、そうしたウィークポイントを木っ端微塵に打ち砕いてやることが、心理的虐待の醍醐味です。 心理的虐待を行なう上でのポイントは、ゆっくりが、どのようなウィークポイントを持っているのかを見極めることです。例えば……」 助手が、透明な箱から一匹のゆっくりを取り出した。今度はれいむ種ではなくまりさ種である。 透明な箱から取り出されたゆっくりまりさは、すぐさま教授に怒りの声をぶちまけた。 「どうしてまりさたちにこんなひどいことするの?! ゆっくりあやまって、まりさたちをおそとにだしてよね!」 即座に助手がまりさの口を塞ぐと、教授が説明を始めた。 「透明な箱に入っているゆっくり達は、全て同じ群れにいたゆっくりです。そしてこのまりさは、その群れのリーダーです。 ゆっくりまりさといえば、ずる賢く傲慢な上、平気で仲間を見捨てるという邪悪極まりないゆっくりですが、 稀に、このまりさのように、正義感溢れる個体も存在します。 仲間を助けるためには自分の命も危険にさらす、強く勇敢なゆっくり。だからこそ……」 教授の瞳に、まるで肉食獣のように剣呑で獰猛な光が薄っすらと灯る。 「いたぶりがいがある、というものです」 ここで助手がまりさの口から手を離すと、再びまりさが猛抗議する。 「おじさん! なにいってるかわからないけど、まりさはこのむれのりーだーなんだからね! まりさたちをおそとにださないと、まりさがおじさんをひどいめにあわせるよ!」 「みんなを外に出してほしいのかい?」 「あたりまえだよ!」 「じゃあ、おじさんと一つ賭けをしないかい? その賭けに勝ったら、みんな外に出してあげよう」 「ふふん! まりさはつよいんだからね! どんなかけでもぜったいかつよ!」 教室中の学生は全員思った。こいつ⑨だ、と。賭けの内容を知らずに承諾するなど、普通はありえない。 しかし、学生達は、皆同じ結論に達して納得する。 (まぁ、ゆっくりだし) 学生達がそんなことを考えている傍ら、助手が賭けに使うであろう、道具を取り出した。 透明な箱と同じ材質でできていると思われる、といのような物体。長さは約1mほどであり、成体のゆっくりが通れる程度の広さがある。 特徴的なのは、その床面であった。 両端の床面は平らになっているのに対し、その途中、平らな面と平らな面の間は、びっしりと棘で覆われているのだ。 その奇怪な道具を怪訝な目で見るまりさに対し、教授が賭けの説明をする。 「君には、この床の端から端まで歩いて、自分の帽子を取り返してもらおう。端から端まで歩いて、だ」 そう言うと、まりさの帽子――ゆっくりが自分の命よりも大切にしているという帽子――を奪った。 「あ゛あ゛あ゛ーーーー?! まりさのおぼうしーーーーー!! かえじでーーー!」 怒りと悲しみに満ちた声を出すまりさ。 ゆっくりからしてみれば、これだけでも十分心理的虐待になるのだが、当然、それだけで虐待が終わるはずもない。 まりさの悲痛な声をBGMに、教授はまりさから奪った帽子をといの一端においた。 そして、帽子の頭に火をつける。 「じゃあ、まりさ。この床を歩いて帽子を取り返すんだ。制限時間は……帽子が焼けるまでだ」 「あ゛ーーーー! ぼうじ、ぼうじがぁーーーー!」 わめき散らすまりさを掴み上げると、といの端に置いた。 まりさは、メラメラと燃えながら煙を上げる帽子に向かって一直線に向かっていった。 今から渡ろうとする床が、どのような構造をしているのかも忘れて。 「い゛だっっ!!」 体の下部から伝わる痛みに驚き、慌ててといの壁面を飛び越えるまりさ。 その様子に穏やかな笑みを浮かべた教授が、まりさの耳元でささやく。 「駄目じゃないか。ちゃんと向こうまで渡らないと。ああ、それと、もし帽子を取り返せなかったら罰として……」 透明な箱の中から、一番体の小さな赤ちゃんまりさを取り出す。 そして、まりさの目の前であっけなく握りつぶした。 「あ゛ーーーー! ま゛り゛ざのあか゛じゃんーーーーー!!!」 「こうして、群れの全員を殺してしまうからね」 「あ゛あ゛あ゛っっ!?」 透明な箱に入っている全てのゆっくりが声を上げた。 「ひどいよっ!」 「なんでぇっ!?」 もちろんまりさも黙ってはいない。 自分の帽子と、群れの仲間。 2つの大切なものを人質に取られ、まりさが涙を流しながら叫んだ。 「どうじでごんなごとするのぉぉっっ!? ひどいおじざんはいますぐじねぇっ! ゆっぐりじねぇぇっっ!!」 「そんなこと言ってる間に、ほら、帽子が焼けてしまうよ?」 「あ゛あ゛あ゛ーーーー!!」 急いでまりさは、といを渡ろうとした。が、何度挑戦しても、棘の痛みに耐え切れずにといから逃げ出してしまう。 透明の箱からまりさを心配そうに見ながら応援していたゆっくり達だが、しだいに、その声はまりさを罵倒するものへと代わって言った。 「どうしてそんなところもわたれないの!?」 「わたれなかったられいむたちはゆっくりできなくなるんだよ!?」 「なさけないまりさはゆっくりしねっ!!」 懸命に頑張る自分に対し、なぜこんな言葉が投げかけられのか。 理不尽極まりない仕打ちに涙しながら、それでも帽子と仲間を守るために、何度も棘の床にまりさは挑み続けた。 すでにまりさの体はズタズタに引き裂かれており、餡子が徐々に漏れ出している。 だが、それが幸いとなった。餡子が棘にまとわりついているため、しだいに棘の痛みがやわらいできたのだ。 そして、何度目かの挑戦の果てに、ついにまりさは帽子にまでたどり着いた。 「ゆ゛ぅぅぅ……」 しかし、ここでまた難問が待ち構えていた。燃え盛る帽子の火をどうすれば消せるのか。 必死に餡子脳を働かせても、名案が浮かばない。 口で咥えて何度も床に叩きつければ消せるかもしれないが、燃える帽子を咥えることなどできはしない。 ゆっくりお得意のボディプレスも、体が傷ついたこの状態でやれば自分の命が危うい。 「ほら、どうするんだい? もうほとんど燃え尽きているよ?」 「ゆ゛ぐぅぅぅ…………」 苦悩するまりさ。しかし悩む時間はもうない。 「はやくぼうしをとりかえしてね!」 「はやくはやくぅ!!」 「まりさのばかぁ! ゆっくりしてたられいむたちはゆっくりできなくなるんだよ!?」 透明な箱から聞こえてくるのは、まりさの苦悩など構いもしない言葉ばかり。 身勝手な言葉に急かされ、ついにまりさは乾坤一擲の賭けに出た。飛び上がって、帽子の上にのしかかる。 だが、 「あ゛あ゛づいぃぃぃっっっ!!」 まりさの予想以上に火は熱かった。それになにより、餡子が直接火で炙られるのである。 ゆっくりにとってそれは一瞬でも我慢できるものではなかった。 あまりの熱さと痛みに、まりさはゴロゴロと床を転がる。棘のついた床の上を。 「いぎゃあああっっっ!!」 痛みから逃れるために転がったのに、そこで待ち受けていたのはさらなる苦痛であった。 もはやまりさに許されるのは、全身を棘によって傷つけられながら、わけもわからず転がるばかり。 苦笑を浮かべた教授が、まりさをといの外へと出してやる。 「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ……」 もうまりさは限界であった。全身は切り傷だらけ。一部は火傷も負っている。 だが、それでも立ち上がらなければならない。 帽子のため。 仲間のため。 それはつまりは自身の誇りのためであった。 傷ついた体を無理矢理起こす。 そして見た。 「……ゆっ……?」 あるべきはずの物がない。 自分が必死に守ろうとした、命よりも大切な物が。 それが何を意味しているのか。まりさの餡子脳が理解する前に、教授がささやく。 「残念。帽子、燃えちゃったね」 「――――ゆ゛ぅぅぅぅぅっっっっっーーーーーーーー!!!!」 まりさの絶叫がこだました。 響く絶望の慟哭は、もちろんこの場の人間にとっては心地よい調べでしかない。 絶望のどん底に落ちたまりさを、さらなる絶望へと誘うべく、教授が小さな声でつぶやいた。 「それじゃ、約束通り、群れのみんなには死んでもらおうか」 「……っ!」 その言葉にまりさの体が反応した。 そうだ、まだ自分には仲間がいる。例え帽子は守れなくても、仲間だけは守り通さなければならない。 まりさは恥も外聞もなく、教授に懇願した。 「……お、おねがいです……。まりさはどうなってもいいから、みんなはたすけてあげて……」 ここで自分は殺される。だが、それで仲間を守れる。そして自身の誇りを守れる。 まりさは、ゆっくりにしては非常にめずらしい、誇り高きゆっくりであった。 「そうか。そんなに群れのみんなが大切かい?」 だから、 「……たいせつです……」 そんなまりさだからこそ、 「でも、群れのみんなはまりさのことをどう思っているかな?」 虐待のしがいがあるのだ。 「…………ゆ?…………」 教授の言葉に、ゆっくりと仲間が待つ透明な箱へと視線を向けた。 まりさの目が大きく見開かれた。 そしてこぼれる大粒の涙。 まりさの目に映ったのは、慰めるでもなく、同情するでもなく、奮闘に敬意をはらうでもなく、憤怒と憎悪に満ちた目で自分を睨み付ける仲間の姿であった。 「まりさのばかぁっ!」 「もうまりさとはゆっくりできないよ!」 「じねぇっ! じねぇぇっっ!!」 「なさけないまりさなんていらないよ!」 「れいむのかわりにまりさがしねぇっ!!」 罵詈雑言の嵐がまりさの耳に届いた。 だが、もうまりさはその言葉の意味を理解することはできないだろう。 まりさは仲間を失った。それも最悪の形で。 帽子と仲間。その二つを同時に失ったまりさの瞳には、すでに光は灯っていない。 絶望のさらなる底の絶望に心を蝕まれ、まりさは生きながらに死を迎えた。 教授はその様子に満足げな笑みを浮かべると、学生へと体を向けた。 「このように、心理的虐待を行うときは、まず相手の心理的な弱点を探し、そこを徹底的にえぐるのです。 そのためには、事前の入念な調査が必要になるでしょう。 なお、大雑把に言えば、ゆっくりが持ちやすいプライドといえば、今回のような仲間意識の他に、自分自身の強さや容姿などの自惚れなどがあります。 もちろん、ゆっくり全般の弱点である飾りを攻めるのはセオリー中のセオリーです」 そう説明する間に、助手が生ける屍と化したまりさを片付けていく。 もちろん、殺したりなどはしない。後できちんと元の巣へと返すのだ。 「さて、続いてはネグレクトです。 ネグレクトとは、育児放棄のことであり、人間に対しては、食事を与えない、風呂に入れない、などが挙げられます。 ゆっくりに対しては……、みなさん、お分かりですね?」 そこで助手が用意するのは、おなじみ、透明な箱である。サイズは、ちょうど成体ゆっくり一匹が入るほど。 「ゆっくりを箱の中に入れ、放置する。これが基本でしょう」 そう言って教授は、さきほどまりさを罵倒していたゆっくりの一匹を箱の中に入れた。 「……ゆゆっ!? なにするのおじさん! おじさんとはゆっくりできないよ! はやくここからだしてぶぎゅっ!?」 騒ぐゆっくりれいむの頭上に、無言で拳を落として黙らせる教授。 「ただし、ただ箱の中に入れているだけでは、あまり面白みがありません。 様々な工夫を施し、よりゆっくりがゆっくりできない環境にして苦しめてあげましょう。 なお、ゆっくりできない透明な箱の例を、各自考えてきて下さい。次週までの課題とします」 「えー?」と学生達から声が漏れるのは、いつもの光景だ。 「参考までに、私の最近のお気に入りの方法を教えましょう。夏の暑い時期にぴったりの方法です」 助手が、教授にスプレー缶を手渡した。 箱の中のゆっくりを見つめる教授の瞳がギラリと光る。 「暖符「温暖化フェノメノン―Lunatic―」!!」 教授はそう叫びながら、箱の中にスプレーの中身を放出した。 「ゆゆゆっっっ!?」 突如として箱の中に得体の知れない気体を注入され、れいむが驚きの声を上げた。 だが、差し当たっては害がないことが分かると、すぐさま教授への罵倒を続けた。 もちろん教授はそんな罵倒には耳を貸さない。わめくれいむを無視して説明をする。 「さて、今注入した気体は水蒸気、温室効果が最も高いといわれる気体です。 この暑い夏、水蒸気がたっぷりと入ったこの箱の中は、相当な暑さになるでしょう。 今日から明日まで、この箱は放置します。明日、中のゆっくりがどうなっているか観察して下さい。 なお、Hardでは一酸化二窒素、Normalではメタン、Easyでは二酸化炭素を使います。 ま、ゆっくり相手にLunatic以外を使うことはないのですが」 「実験中 手を触れないで下さい」と書いた紙を貼って、助手が箱を窓際へと移した。 「最後に、性的虐待です。発情したゆっくりありすをけしかける方法が一般的ですが、すっきり寸前に行為を中断させるという方法もあります。 さらには、ゆっくりに対し自ら直接HENTAI行為に及ぶ剛の者も存在します。 みなさんが目指すのは虐待であり、決してHENTAIではありません……が、昔から虐待とHENTAIは紙一重と言われます。 虐待の一環としてHENTAI行為に及ぶのも悪くはないでしょう」 そう言うと、教授はおもむろにズボンのチャックを開けると、その隙間から、いきり立った剛直を取り出した。 老体には似つかわしくない精気漲る逸物に、教室中が息を飲む中、 「やりませんか?」 教授のその問いに、全学生が一斉に首を横に振った。 「そうですか。では、ゆっくりに相手してもらいましょう。私はゆっくりでも構わず食ってしまう男なので。もちろん、性的な意味でです」 助手が、一匹のゆっくりありすを箱から取り出すと、激しい振動を加え始めた。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ……!」 たちまち情欲に溺れ、だらしなく表情を緩めるありす。 その様子を確認した助手が、箱の中から一匹のまりさを取り出した。 「ま゛ぁり゛ざぁーーー!!」 まりさの姿を見るや否や、ありすはよだれをたらしながら襲い掛かった。 「やあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっ!! やめて、やめてねっ!」 「んほほほぉぉぉぉっっっっっ!!!! いやがるま゛り゛ざもがばい゛い゛い゛い゛ぃぃぃ!!!」 ありすはまりさにのしかかり、激しく体をこすりつけると、絶頂への階段を駆け足で昇り始めた。 まりさの都合などは一切構わない。 ただ、己の欲望を満たすために、まりさを仮借なく攻め上げる。 そして一分と経たずにすっきりする、その寸前に、 「……すっぎりぃぃ!???」 助手の手によってありすの体は持ち上げられた。 「なにずるのぉぉ!? ありずのすっきりのじゃまをしないでねぇぇぇ!!」 興奮状態で怒鳴り散らすありすに、教授が近づいた。 「すっきりしたいですか?」 「あ゛だりまえ゛でしょぉぉぉ!! い゛い゛がらはやくまりさとすっぎりさせでぇぇぇぇぇ!!!!」 「いいでしょう。すっきりさせてあげましょう。ただし……、相手はまりさではなく私ですがねっ!!!!!」 「……ふぐっっ!?」 ありすの口を教授の怒張が貫くと同時に、殺人的なピストン運動が始まった。 「ふんっ、ふんっ、ふんっ、ふふふんっ、ふふふんっ、ふふふんっ!!!!」 「びゅ゛゛゛ーーーーーーーーーーーーっっっっっっっっ!!!???」 上げるべきは悲鳴か抗議の声か。 しかし、許容量以上のものをねじこまれたありすは、まともに声を発することもできない。 無論、がっしりと教授に掴まれている以上、逃げ出すのは絶望的である。 「ふふふふふふふふふふふふふふふんんんんんんっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!! ……うっ!!」 暴虐の限りをつくしていた教授の先端が、ついにありすの口内にカスタードとは似て非なるものをぶちまけた。 口内に収まりきれないほどの大量の粘液。口の端から少量こぼれた他は、ありすの体内へと侵入する。 津波のように押し寄せる白濁液に、ありす体内のカスタードは奥へ奥へと押しやられ、そしてついに行き場を失ったカスタードが、 「ゆ゛ぶっっっっっっっっっっっっっっ!!!」 ありすの眼球を吹き飛ばし、眼孔から勢いよく噴出した。 目から涙のようにカスタードをボトボトとこぼしながら、ありすは小刻みに痙攣を繰り返す。 口から教授の分身が引き抜かれると、妙に流動性の高いカスタードをこぼした。 「……と、これが性的虐待の一例です。ここで一つ注意を。HENTAIに没頭するあまり、虐待を疎かにしてはいけません。 単に陵辱するのではなく、心身ともに傷つけることを忘れないように。射精するにしても、後頭部を打ち抜くくらいの気概で望みましょう」 その言葉を待っていたかのように、教室内に、チャイムが鳴り響いた。 「では、これで今日の講義を終わりにします。各自、課題を忘れないようにして下さい。それではまた次週に」 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4374.html
※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。 ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※虐待パート小休止中。もはや虐待メインではない。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』13 「ゆっくりこっちだよ!どすはこっちだよ!!」 施設を抜け出すのは簡単だった。 博士として信頼、優待されている娘のおかげで、警備の目はたやすく抜けることができた。 いったん家に帰って身辺を整理し、計画に集中したい、という名目を奴らは信じ、 車さえ提供してくれた。 車で森の中を走る。 助手席には娘の春奈、その膝に私のれいむ。 後部座席では十三匹のゆっくりががなっていた。 「まりささまはまちくたびれたんだぜ!!しーしーするんだぜ!!」 「くそどれいはゆっくりしないでさっさとしてね!!ついたらしんでね!!ごみくず!!」 「とかいはなゆっくりぷれいす!!いなかものはとうぜんゆっくりさせないわよ!!くやしいかしら?ばーか!!」 その声は、人間の感性では聞くに堪えない。 生まれてから一切の躾を受けず、その上人間に迫害を受け続けた。 人間への侮蔑と憎悪が、このゆっくり達から拭い去られることは永久にないだろう。 心の中で、私はこのゆっくり達に詫び続けていた。 「ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 私たちに罵声が飛ぶたびに、私のれいむがゆっくり達を必死になだめようとする。 しかし無益とわかると、やがて残念そうにあきらめ、道案内のみに集中するようになった。 あの呪われた施設から、すでに数十キロほども離れている。 向こうではすでに感づかれているだろう。 本来、提供されたのは車だけでなく、運転手もついていた。 送り迎えと言えば聞こえはいいが、ただの監視役だ。 私が変な気を起こさないように監視するためである。 施設から充分に離れたところで、私は後部座席から武器をつきつけた。 数万ボルトを流せる強力なスタンガンは、施設から持ち出したものだ。 ゆっくりを苦しめるための道具だった。 首筋にスタンガンをつきつけられた運転手の男は、 私に促されるまま車を降り、私たちが走り去っていくのを見送った。 街に近いところで下ろしたし、どうせ携帯電話かなにかですぐに連絡するだろう。 男を降ろしてからしばらく後に、 後部トランクに隠していたゆっくり達を引っ張り出した。 大きく成長したゆっくり達は、袋の中にぎゅうぎゅう詰めにせざるをえず、 どうしても騒ぐので、口をテープでふさぐしかなかった。 今、後部座席のゆっくり達が罵詈雑言を叫んでいるのはこのためも大きい。 何日もの準備期間で、春奈がじっくりと根回しをして連中の注意をそらしていたので、 ゆっくり達が監禁されていた部屋の警備は甘かった。 隙をついてゆっくり達を逃がし、車のトランクに詰めるのは造作もなかった。 今、車は人里離れた森の中を走っている。 助手席のれいむの道案内で、目的地ははっきりしていた。 これだけ遠ければ問題ないだろう。 「ゆっくりできるよ!!ゆっくりできるよ!!どすはもうすぐだよ!!」 ドス。 私が探しているのはそれだった。 突然変異で異常に大きくなったゆっくりは(ほとんどがまりさ種である)、 リーダーシップを発揮するようになって、多くのゆっくりを従え、群れのボスとなる。 ドスの統制する群れは行き届いた統制のもと安定した食糧確保が保障されており、 ゆっくりにとっては最上級のゆっくりプレイスとなる。 道案内はれいむがしてくれた。 ドスの発する「ゆっくりオーラ」は、ある程度離れたゆっくりにも影響を及ぼし、 ゆっくりできると感じたゆっくり達はドスのもとに自然と集まる。 なるべく人里離れた道を走っていたが、思ったよりは早く見つかった。 「ゆゆゆっ!!ゆっくり!!ゆっくり!!」 「くそどれい!!かわいいれいむをおろしてどすのところへつれていってね!!」 「はやくしなさいよ!!ぐず!!のろま!!」 後部座席のゆっくり達が騒ぎ始めた。 彼女たちもドスの存在を察知しているようだ。 私たちは車の中で夜明けを待つことにした。 ゆっくりの住むところには、時として捕食種のれみりゃ種やふらん種が住んでいることがあり、 それらは夜行性で、非捕食種のれいむ種やまりさ種を襲ってしまう。 ドスのところに連れていくにせよ、少なくとも夜のうちは動くわけにはいかない。 「なにとろとろしてるんだぜええ!!まりささまのありがたいめいれいがきけないのかぜえ!?」 「おろしてね!!おろしてね!!ごみくず!!あんこのう!!ゆっくりしね!!」 自分からは一切動こうともせず、後部座席で騒ぎつづけるゆっくり達には正直辟易させられた。 「この子たち、森で生きていけるかな」 春奈がつぶやいた。 人間のもとで、ずっと甘やかされ、その後虐げられつづけてきたこのゆっくり達。 どちらにせよ、自分では何もせず、なにもさせてもらえず、ただされるがままの生活だった。 今、この子たちに自分たちで生きていく力があるだろうか。 それは賭けではあった。 ドスの率いる群れの統率力、指導力に期待するほかない。 群れのルールに従ってさえいれば、ドスの群れは野生にとっては一番の良環境だ。 どちらにせよ、もう人間の元においておけないのは確かだ。 人間への憎悪を溜め込んだこのゆっくり達の世話を人間がしようとしても、互いにいら立つだけだろう。 このゆっくり達の侮蔑と憎悪が、同じゆっくりに向けられないことを祈るばかりだ。 ドスが強者、指導者として上に立ってくれれば大丈夫だとは思うが。 「信じましょう」 私はそう言うしかなかった。 何時間が経っただろうか。 うとうととしはじめていた時、突然強い光が視界に広がった。 車の前方に光るそれは、バイクのヘッドライトだった。 目が慣れるまでに時間がかかったが、 バイクに乗っているその男は知った顔だった。 「長浜圭一……」 長浜圭一はバイクから降りると、車のほうへ歩いてきた。 ぐずぐずしてはいられない。 私もすぐに車から降りると、スタンガンを構えた。 「近づかないで!」 スタンガンを突き付けられ、長浜圭一は両手を上げた。 どうやら丸腰のようだった。他に人がいる気配もない。 「一人で来たの?」 「そうだ」 「どうやってここがわかったの」 「車に発信機がついている。その車でどこへ行こうとすぐに足がつく」 周到な話だ。 心の中で舌打ちをしながら私は言った。 「ゆっくり達を取り返しにきたのね?」 「そうだ。そして須藤春奈博士もね」 「娘は渡さない。娘も、もうあなたたちに協力はしないわ」 長浜圭一が車の中の娘に目をやる。 娘はうなずいてみせた。 「逃げられると思うか?」 「逃げてみせるわよ」 「そのゆっくり達を逃がしたところで、別のゆっくりを使うまでだよ」 「すべてを公表するわ。世間にね。 一般市民たちが、あなたのしていることを聞いてなんと言うかしら? 人を殺したわけでもないゆっくりを使って世論は納得する?」 「さあね」 「あなたがしようとしていることは、人類の歴史上最悪の迫害よ。 あなたたちは平気らしいけど、普通の人間がその罪悪感に耐えられるものじゃないわ!」 「ゆっくりを苦しめるのが、そんなに嫌かい」 愚問だ。 「人の言葉を使う、人間以外では唯一の生き物よ。 価値観は多少違っても、共存の道があるはず、共に生きるべきよ!」 「あんたは、ゆっくりが友達だとでも言う気か?」 「そうよ。人間は、初めて対話できる別の生物と出会ったのよ。 その奇跡を、あなたたちの悪意と私欲で汚させはしないわ。世間に判断してもらいます」 「同じ言葉を使う、ただそれだけでそこまで感情移入できるとはね」 「それだけじゃない。私はずっとゆっくりと向き合ってきました。 子供のころからゆっくりは友達だった。 ゆっくりブリーダーとして、何千匹のゆっくりと対話したこともある。 あらゆる個性のゆっくりと、考えうるかぎりの接し方を経験して、仲良くする方法を学んできたわ。 あなたに何がわかるの? あなたたちなんかよりもずっと、私はゆっくりをよく知ってるのよ!!」 両手を上げたまま、長浜圭一は肩をすくめた。 「それはご立派なことで」 「本当に何も持たないで来たの?」 「そうだよ」 「私を説得できると思っていたわけ?」 「どうかな。正直わからない。 もしかしたらあんたの話が聞きたかったのかもしれない」 「話すことなんかないわ。後ろを向きなさい」 長浜圭一に背中を向けさせ、その背中にスイッチを切ったスタンガンを押し付けた。 「少しでも妙な動きをしたらスイッチを入れるわよ」 「わかった」 「春奈、出てきて」 車から出てきた春奈に指示する。 「れいむも一緒に連れてきて。 それから、あのゆっくり達をまた袋に入れてちょうだい」 「入れるの?」 「あの子たちにこの男を見せたら刺激させてしまうわ」 「わかった」 「ゆゆっ!!だすんだぜ!!だすんだぜえええ!!」 「ぐぞどれいいい!!ごみぐずうううう!!だぜえええええーーーーっ」 「とかいはなありすになんてことするのよおおおお!!!しね!!しね!!いなかものおおおお!!」 大きな袋に再びつめられ、文句を言うゆっくり達。 「ごめんなさい。後で出してあげるわ」 袋の口を縛ると、長浜圭一に持たせた。 これだけ成長したゆっくりが十三匹というのは相当重い。 一人だけでは辛いようなので、結局は私と春奈が加わり、三人で運ぶことになった。 中で暴れているのでさらに大変だ。 長浜圭一に先を歩かせ、森の中に入りこむ。 夜中の行軍になったが、人間がついていれば捕食種のゆっくりを撃退するのはわけない。 「ママ、森に行くの?」 「そうよ。あの車に乗っているかぎり足がつくわ。 この子たちを森の中に離して、そのあとあの車でなるべく遠くに逃げましょう」 「この人が群れの場所をバラしちゃわない?」 「そうね」 私は手荷物の中からハンカチを出し、長浜圭一に目隠しをした。 「あなたはこのままで歩きなさい」 長浜圭一は抵抗しなかった。 結局、これが間違いのもとだった。 「こっちだよ!!こっちだよ!!ゆっくりできるよ!!」 朝が近づいてきたころ、れいむがさらに声をはりあげた。 いよいよドスが近いようだ。 「あなたたちでも歩いていける?」 「ゆゆっ!れいむでもすぐにつくよ!!ゆっへん!!」 「そう。なら、ここで放しましょう」 袋から出されたゆっくり達は、堰を切ったように叫んだ。 「よくもまりささまをとじこめたなあぁ!!しね!!いますぐあんこはいてしねぇ!!」 「ぐずぐずしないでとっととどすのところにつれていってね!!それからしんでね!!」 「ゆっくりぷれいすがすぐそこよ!!いなかもののどれいはさっさとえすこーとしなさいよ!!ぐず!!」 口々に罵り、私に体当たりをしてくる。 幸い、薄暗い中で長浜圭一には気づいていないようだ。 目隠しをしているのも識別を妨げているのだろう。 「自分たちで歩いていくのよ」 私が言うと、ゆっくり達は文句を言った。 「はあぁぁああ!?ありすが!?ありすたちにあるかせるのおぉぉ!? ばかなの!?ほんもののばかなの!?ぶっさいくなかおよね!!」 「まりささまがめいれいしてあげてるんだぜぇ!!ありがたいとおもわないのかだぜぇ!?」 「ばかはかんがえなくていいよ!!れいむのいうことをきくんだよぉ!!」 やはり、ずっと閉じ込められたせいで積極的に動かなくなっているようだ。 それでもこれだけ元気なら、すぐ側のドスのところには行けるだろう。 私は背を向け、歩き出した。 「まつんだぜぇ!!どれいのしごとをほうきするのかだぜぇ!?」 「かわいいかわいいれいむがめいれいしてるんだよぉ!?たちばかんがえてねぇ!!」 ドスのところに、私が行くわけにはいかない。 人間の姿を見せると警戒させてしまう。 善良なドスほど、ゆっくりオーラは強くなる。 あれだけ遠くかられいむが察知できたなら、よほどよくできたドスだろう。 このゆっくり達はすでに野生の食べ物に慣らしてあるし、問題なくやっていけると信じるしかない。 「帰りましょう」 長浜圭一にそう声をかけ、二人で空き袋を持った。 そうして帰ろうと振り向いたところで、突然の衝撃が襲った。 全身を襲う痛みで、しばらくは動けなかった。 呻きながら、苦労して周囲を見渡す。 辺りは真っ暗だったが、頭上を見ると、2メートル以上はあろうか、 高みに穴が開いていて、そこから白みはじめている空が見えた。 状況を理解するのに少しかかった。 どうやら地面に穴が開いていたらしい。 目隠しをしたままの長浜圭一が足を踏み外し、 一緒に袋を掴んでいた私も、それに引っ張られて穴の中にずり落ちたのだ。 それなりに広い穴で、深さは3メートル近く、広さも3メートルはありそうだった。 自然にできたものにしては、入口の穴が内部に対して狭い。 どうやら誰かが掘った穴のようだ。 恐らく、ゆっくりが掘ったものだろう。 穴の内壁は壺状になっており、上方にかけてすぼまっている。 これではとてもよじ登れそうにはない。 全身を打ちつけ、声を出すのにも苦労したが、 なんとか長浜圭一を見つけ、声をかけた。 「大丈夫?」 長浜圭一はうずくまって呻いている。 その足に触れると、びくりと震えて悲鳴を上げた。 「触るな!」 見ると、長浜圭一の左足が微妙におかしな方向に曲がっていた。 着地の衝撃で折れたらしい。 「大変……ごめんなさい」 「………目隠しを取ってもいいんだろ」 「あ、ええ」 自分で目隠しのハンカチをはぎ取り、長浜圭一は穴を見渡してから穴の内壁にもたれて溜息をついた。 「あんたが俺をここに落としたのか?」 「いいえ、違うわ。足を踏み外して落ちてきたみたい」 「お母さん!」 「おねえさん!!どこ!?ゆっくりしていってね!!」 上から声がする。 見上げると、春奈がれいむを抱えてこちらを見下ろしていた。 「お母さん、大丈夫?」 「私はなんとか大丈夫よ。でも、この人の足が折れたようなの」 「大変じゃない。どうしよう……電話で助けを呼ぶよ」 「駄目よ、春奈」 「なんで!?」 「誰に助けを呼ぶの?住所もわからないのに。 捜索を待ってたら、あの連中に捕まっちゃうわよ」 「でも、あたしじゃ助け上げられないよ」 「どすならたすけてくれるよ!!」 れいむが叫んだ。 「どすはゆっくりしてるよ!!れいむがたのめば、きっとおねえさんをたすけてくれるよ!!」 果たしてそうだろうか。 ドスの群れに関わりたくはなかったが、今となっては命と、ゆっくり達の未来がかかっていた。 一刻を争う状況でさえなければ、人間の助けを待つのだが。 それでも、どのみちここにいればゆっくりに見つかるかもしれない。 この穴はゆっくりが掘った公算が高かった。 「くそどれいはなにしてるんだぜ!?さっさとあがってまりささまをはこぶんだぜぇ!!」 「いいきみだね!!ばぁ~か!!ばぁぁ~~か!!べろべろばぁ~♪」 「とってもとかいはなあなね!!にげだしたいなかものにはおにあいよ!!」 あのゆっくり達が穴の淵から見下ろして叫んでいた。 あの連中に捕まれば、このゆっくり達は地獄に叩き落とされ、人間は拭えない罪を背負うことになる。 選択の余地はなかった。 「春奈。ドスを探してくれる?」 「お母さん」 「ゆっ!どすはすぐそこだよ!!あんないするよ!!」 「ドス達にお願いしてみて。なにか太いロープか蔦をを下ろしてもらえればいいわ。 ここから抜け出せれば、あとはその子達を預けて、車で町へ行ける」 「わかった。待っててね」 春奈はそう言うと、れいむを抱えたまま姿を消した。 他のゆっくり達も、しばらく私たちを罵っていたが、 やがてドスまりさのオーラに惹かれたのだろう、春奈に呼ばれて穴の淵から退いていった。 ドスは助けてくれるだろうか。 私も、ドスゆっくりに会ったことはない。 ドスにも善良なドス、悪いドスがいて、 田舎のほうだと、悪いドスが人里に下りてきてドススパークをたてに「きょうてい」を結ぶことを要求することもあるという。 人里から離れたこのあたりのドスが、人間に対してどういう認識を持っているか未知数だった。 「足は大丈夫?」 「……痛い。叫び出したいぐらいだ」 長浜圭一は辛そうだった。 「接ぎ木ができればいいんだけど。何もないし、暗くて」 「俺のことは気にするな。あんたとは敵同士なんだ」 「たとえ敵でも、怪我人を放っておくほど冷酷にはなれないわ。あなたと一緒にしないで」 「…………」 「痛む?」 長浜圭一は笑った。 「面白いな」 「何が面白いのよ?」 「俺があのゆっくり共にやろうとしていることを考えれば、この程度で痛がってちゃお笑いだよ」 「別に痛がっていいわよ。絶対にやらせないもの」 「いい人だな、あんたは」 「皮肉?」 「いや。本心から言ってる。あんたはいい人だ。好きにはなれないが」 意外に素直なことを言うかと思えば、やはりねじくれた男だ。 上から声が降ってきたのは、完全に朝になったころだった。 恐らくは朝になり、夜行性の捕食種が巣に帰るのを待っていたのだろう。 「ゆゆっ!!ほんとににんげんさんがいるよ!!」 「わかるよー、おちちゃったんだねー」 「ちーんぽ!!」 大小さまざま、数十匹、あるいは百匹以上のゆっくり達が穴の淵を取り囲んでいるようだった。 れいむ種、まりさ種、ありす種、そしてちぇん種やみょん種といった希少種もちらほら見受けられる。 「お母さん!大丈夫?」 「おねえさん!!ゆっくりしていってね!!どすがくるからゆっくりできるよ!!」 春奈と私のれいむが姿を現した。 「ありがとう。呼んで来てくれたのね」 「ドスまりさに事情を話したの。来てから考えるって。いま来るわ」 果たして、大きな足音が聞こえてきた。 巨大なものが、ゆっくりと地面を這いずってくる音。 「ゆゆっ!!」 重低音の声とともに、巨大なドスまりさがぬっと顔を見せた。 この穴の底からでは目測しにくいが、身長3メートル以上はあろうか。 「ゆっ、ほんとだね!にんげんさんがおちてるよ!! ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりしていってね!」 私は笑顔で挨拶を返した。 さん付けで呼んでくれ、最初に挨拶をしてくれた。期待していいかもしれない。 「初めまして、ドスさん。とってもゆっくりした群れね」 「ゆっ?ゆっへん!!ドスのむれはゆっくりしてるよ!! おねえさんはみるめがあるね!!とくべつにみていってもいいよ!!」 素直なドスらしく、胸を反らしていい気分のようだ。 春奈がドスまりさに対して訴える。 「ドス、お母さんを助けて!」 「ゆっ?どうすればいいの?」 「ロープとか、なにか丈夫な蔦とかない?」 「ゆゆ?う~ん、あったようなきもするよ。みんな、つたさんをさがしてみてね!!」 「ゆっゆ~!!」 群れのゆっくり達が声を上げる。 どうやら助けてもらえそうだ。 そう安心しかけたところに、制止する声が響いてきた。 「むきゅ!どす、ちょっとまつのよ!」 特徴のある鳴き声は、ぱちゅりー種のものだった。 声量は小さかったが、鋭いその声に群れが一斉に注目した。 「むきゅ、にんげんさんはゆっくりできないわ!!」 「ゆゆっ?どういうこと?」 「ぱちゅりー、ゆっくりせつめいしてね!!」 ドスまりさの傍に寄り添うようにしているぱちゅりーが、群れに向かって講義をはじめた。 尊敬されている個体らしく、ドスを含めた群れはその声に耳を傾けている。 善良ではあるがどこか緊迫感のないドスを、知識に優れるぱちゅりーが参謀として補佐している。 恐らくはそんなところだろう。 これはよく見られるケースで、ドスが一人で何もかも取り仕切る群れよりも、 むしろこうした形式の群れのほうが成功しやすいようだ。 「もりのけんじゃであるぱちゅりーのことばをよくききなさい、むきゅ! にんげんさんはゆっくりできないの。 このむれはにんげんさんのむれからはなれているから、 にんげんさんをしらないゆっくりのほうがおおいとおもうけど、 ほかのところからうつってきたゆっくりのなかには、にんげんをみたことがあるゆっくりもいるはずよ」 「ゆっ!!まりさはみたことがあるよ!!」 「ちぇんもみたことがあるんだねー、わかるよー」 「れいむもにんげんさんをみたよ!!ゆっくりできなかったよ!!」 数は少なかったが、何匹かのゆっくりがぱちゅりーに同意していた。 「にんげんさんは、まったくゆっくりできていない、きけんでかとうなせいぶつよ。 おやさいさんをひとりじめしたり、 おなかをすかせているゆっくりにあまあまをあげないでむししたり、 ゆっくりのおうたをきいたのにおれいをしなかったり、 あとからやってきたくせに、ゆっくりぷれいすをよこどりしたりするわ、むきゅ! にんげんさんは、めにうつるものはなにもかもじぶんのものだとおもっているやばんないきものなのよ!」 ぱちゅりーの演説に、移住組らしきゆっくり達が声をあげる。 「そうなんだぜ!!まりさはおやさいさんをよこどりされてつまをころされたんだぜ!!」 「れいむはおうたをうたってあげたのにあかちゃんをつぶされたよ!!」 「ありすはにんげんをかってたわ!! ゆっくりぷれいすでにんげんのめんどうをみてあげてたのに、 ありすがとかいはなおよめさんをつれてきたとたんにうらぎって、 ゆっくりぷれいすをのっとってありすをおいだしたわ!!」 人間と接したことのある移住組のゆっくり達の話を聞いて、 群れのゆっくり達は口ぐちに悲鳴をあげた。 「ひどすぎるわぁぁ!!にんげんはぜんっぜんとかいはじゃないわああぁぁ!!」 「わからないよ!!にんげんさんはわからないよー!!」 「どぼじでぞんなびどいごどがでぎるのおおぉぉぉ!!?」 「ゆゆっ!!にんげんさんはゆっくりできないんだね!!」 群れを見渡してドスまりさが叫んだ。 「どすすぱーくをうつよ!!ゆっくりできないにんげんさんはしね!!」 「ま、待って!!」 なんて事だ。 こんなところで殺されてしまうのか。 やはりドスのいる群れに不用意に近づくべきじゃなかった。 「ゆっくりまってね!!」 その時、さらに制止の声が響いた。 ドスまりさの前で飛び跳ねているのは、見間違えようもない、私のれいむだ。 「ゆゆっ!!よそもののれいむはだまっててね!!」 「ゆっくりきいてね!!おねえさんはとってもゆっくりできるんだよ!! おねえさんはずっとれいむにゆっくりさせてくれたよ!!ころさないでね!!」 「ゆぅぅ!?」 「みんなもきいてね!!にんげんさんはゆっくりできないにんげんさんばかりじゃないよ!! おねえさんみたいに、ゆっくりをゆっくりさせてくれるにんげんさんもいるよ!!」 群れは静まり返った。 余所者のれいむの言葉だったが、たしかに効果があったようだ。 それはおそらく、れいむが丁寧な手入れをされている美ゆっくりだったからだろう。 美人に弱いのは人間もゆっくりも同じようだ。 「むきゅ!どす!まようことはないわ、どすすぱーくを!」 「ゆゆっ!?でも、このれいむはすごくゆっくりできるよ!!」 「む、むきゅう……!」 会話になってないように聞こえるが、ぱちゅりーは返答に詰まっている。 ゆっくりできている、ということはすなわち説得力につながるらしい。 「ゆっへっへ!!どす!!どすならはやくまりささまをゆっくりさせるんだぜ!!」 「ゆふぅ、ゆふぅ……ありすはつかれてるのよおお!!なんであるかせるのおお!!」 また新しい声が加わった。 聞きおぼえのあるその声は、施設から連れてきたあのゆっくり達のものだった。 遅れてやってきたのは、自分で跳ねるのは久しぶりで思うようにいかないからだろうか。 「ゆゆっ!ようやくついたよ!!どす、はやくにんげんさんをころしてね!!」 施設のゆっくり達の声が聞こえる。 やはり、この子達は私たちが助かることは望んでいないようだ。 「むきゅ!あなたたち、ぱちゅりーのしつもんにこたえなさい!」 「ゆ!?なんでもきいてね!!」 「このにんげんさんたちはゆっくりできる!?」 「ゆゆっ!!もちろんゆっくりできな――」 改めて穴をのぞき込み、私たちの顔を見た十三匹のゆっくり達は眼をむいた。 「ゆぅあああああああぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!?」 「むっきゅうぅ!?どうしたの!?きゅうにさけばないでね!」 「なんでおまえがここにいるんだぜえええええぇ!!?」 その子達が見ているのは、明らかに長浜圭一のほうだった。 昨晩は目を隠していたのと、宵闇であること、穴の底の暗がりだったために判別できなかったが、 太陽の下、いまや長浜圭一の正体は文字通り白日のもとにさらされていた。 自分たちをさんざん苦しめた長浜圭一を前にして、ゆっくり達はいきり立った。 「しね!!しね!!しね!!しね!!ひきょうなにんげんはいますぐくるしんでしねぇぇ!!!」 「かえせ!!かえせ!!れいむのあかちゃんかえせぇぇぇ!!!ゆっくりするなぁぁぁぁ!!!」 「よくもよくもよくもありすのとかいはなぺにぺにをいじめたなああぁぁーーーーーーっ」 悪罵を投げつけられながら、長浜圭一はどこか疲れた無表情で上を見上げていた。 「どういうことなの……」 十三匹の恐ろしい剣幕に、群れのゆっくり達はたじろいでいた。 「む、むきゅ!ぱちゅりーにせつめいしてね!」 「ゆっ!!このくそにんげんをいますぐころしてね!!」 「きゅうにいわれてもわからないわよ!このにんげんがなにをしたの!?」 「ゆっくりせつめいするよ!!れいむたちはとってもかわいそうなひがいしゃなんだよ!!」 十三匹のゆっくり達は群れに向かって、 自分たちがあの施設で長浜圭一にされていたことをすべて話した。 ゆっくりの、しかも感情的な説明なのでなかなか要領を得なかったが、 長浜圭一が恐ろしい人間である、という認識自体はたやすく群れに浸透した。 群れのゆっくり達は悲鳴をあげ、憎悪の声をあげはじめた。 「ゆうううぅぅぅ!!ゆっくりできないいいいいいぃぃ!!!」 「わからないよー!!わからないよー!!」 「ころせぇぇ!!ゆっくりしないでころせえええーーっ!!」 最悪の事態になりつつあるようだった。 私はなんとか弁解したかったが、火に油を注ぐだけだろう。 本来、野生のゆっくりが人間の論理に耳を傾けることはまずない。 どうすべきか迷っているうちに、ドスまりさが再び口を開いた。 「こんどこそどすすぱーくをうつよ!!むれのみんなはゆっくりはなれてね!!」 「やめてね!!やめてねぇぇ!!」 私のれいむが必死に止めようとして、ドスまりさの髪飾りに捕まっていた。 「ゆゆっ!れいむははなれてね!!」 「はなれないよ!!れいむのおねえさんをころさないでね!! おねえさんはこのまりさたちにはなにもしてないよ!! おねえさんがまりさたちをたすけだしてここにつれてきてくれたんだよ!!」 「そうなの?ゆっくりこたえてね!」 ドスまりさに問われて、施設のゆっくり達は飛び跳ねながら答えた。 「ゆっ!あのおねえさんはどれいなんだぜ!!」 「れいむたちがめいれいしてここまでつれてこさせたんだよ!!」 「でもにげだそうとしたわ!!やくにたたないいなかもののかちくだからころしてもいいわよ!!」 「ちがうでしょおおぉぉ!?おねえさんがいなかったらにげられなかったでしょおおぉ!!」 私のれいむが訂正しようとするが、施設のゆっくり達は悪びれる様子もない。 「にんげんさんがかわいいれいむをたすけるのはあたりまえでしょおおぉ!?」 「まりささまのみりょくにめろめろになったからたすけたんだぜ!! だからこれはまりささまのちからなんだぜぇ!!」 しばらく言い争っていたが、やがてドスまりさが言った。 「どすはゆっくりわかったよ!! あのおにいさんにどすすぱーくをうって、あのおねえさんをたすけるよ!!」 「ゆゆっ!!すごいめいあんだよぉ!!」 「かんどうてきなおおおかさばきだよ!!さすがどすだね!!」 迷っていた群れは、解決策を打ち出したドスまりさを称賛して飛び跳ねた。 しかし、またも制止の声が上がった。 「むきゅう、おまちなさい!」 「ゆゆっ!?どすのめいあんだよ!どこもおかしいところはないよ!」 「あのおねえさんをたすけたあとはどうするのかしら、むきゅ?」 「ゆっ?おうちにかえらせてあげるよ!」 「だめよ、どす!おねえさんをにがしたら、ほかのにんげんさんたちにこのむれのことをいうわ! おそろしいにんげんさんたちがこのゆっくりぷれいすのことをしったら、よこどりしようとするにちがいないわ!」 「言わないわ!絶対に秘密にしておくわ」 私はそこで口を挟んだが、黙殺されてしまった。 「それに、にんげんさんはゆっくりできないけど、ちからだけはあるわ。 にがすよりも、このむれでかってあげたようがいろいろとやくにたつわ、むきゅ!」 「ゆゆっ!ぱちゅりーはかしこいね!そういえばそうだよ!!」 「ゆゆっ!!すごいめいあんだよぉ!!」 「てんさいてきなゆっくりできるひらめきだよ!!さすがぱちゅりーだね!!」 ドスまりさ以下の群れのゆっくり達は、ぱちゅりーの提案に満足して飛び跳ねていた。 「じゃあ、おねえさんはここでかってあげるよ!おにいさんにはどすすぱーくをうつよ!」 「むきゅ、まって!つがいがいないのはかわいそうだわ。 せっかくおにいさんとおねえさんがそろっているんだから、つがいでかってあげましょう! かわいいあかちゃんがうめないと、すとれすでにんげんさんがしんでしまうわ!」 「ゆゆぅ~!!ほんとにそのとおりだよぉ!!」 「さすがぱちゅりーだね!どすはそこまできがまわらなかったよ!!」 「あかちゃんがうめなかったらゆっくりできないもんね!!」 「すっきりができなかったらすとれすでしんじゃうところだったわ!あぶないところだったわね!!」 ドスまりさが穴の口からこちらを覗き込み、満面の笑みを浮かべて猫なで声をかけてきた。 「ゆゆぅ~♪よかったね、にんげんさん! にんげんさんたちはこのむれでかってあげるよ!! こわいあめさんやれみりゃからまもってあげるからね!!もうあんしんだよ!!」 「ゆっゆっ♪ゆっくりしていってね!!」 「にんげんさんも、こうしてみるとかわいいかもしれないのぜ!!」 「がんばっておせわするんだねー、わかるよー」 ペットを手に入れたゆっくり達は浮き立っていた。 冗談ではない。ここから出られなければなにも解決しないのだ。 あの車の発信機をたどって、この群れはすぐに発見されるだろう。 あの十三匹のゆっくりが再び施設に連れ戻されてしまう。 「みんな、お願い、聞いて!私たちはここに住めないの。 お願いだから家に帰らせて!」 「ゆっ、れいむのおねえさんをかえらせてほしいよ!」 私のれいむがドスまりさに要求するが、ドスまりさ達は答えた。 「ゆゆっ!だいじょうぶだよ!ちゃんとゆっくりできるごはんをあげるよ! おねえさんをいじめるゆっくりはどすがゆるさないよ!だからあんしんしてね!」 「ゆっ、がんばってかわいがってあげるよ!」 「でも、れいむのおねえさんにはおうちがあるよ!かえりたがってるよ!」 「しらないところでふあんなんだねー、わかるよー」 「むきゅ、れいむ、よくきいて。 じこちゅうしんてきでみがってでらんぼうでちせいのないにんげんさんたちにかこまれて、 おねえさんはほんとうにゆっくりできていたかしら?」 「ゆゆっ?」 「もちろん、にんげんさんは、さいしょはにんげんさんのなかにいたいとおもうでしょう。 でも、それではにんげんさんはずっとやばんなかとうせいぶつのままだわ。 ゆっくりのなかでそだてて、にんげんのしらないしんじつのゆっくりをおしえてあげれば、 いままでよりもずっとずっとゆっくりすることができるのよ。 ながいめでみれば、それがにんげんさんのためなのよ!むきゅ!」 「………ゆっくりわかったよ!」 私は耳を疑った。 何を言った? 私のれいむは、今、何を言ったのだ? 「このむれはすごくゆっくりできてるよ!おねえさんもゆっくりさせてあげてね!!」 「だいじょうぶだよ!!どすたちにまかせてね!!」 「ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 穴の淵を取り囲み、「ゆっくりしていってね」を連呼する群れのゆっくり達。 その表情には心底からの善意と愛情が浮かんでおり………私はぞっとした。 「れいむ!!聞いて、れいむ!! 私はここにはいられないのよ!!帰らなくちゃいけないのよ、れいむ!お願い!!」 「だいじょうぶだよ!!このむれはほんとうにゆっくりできるむれだよ!! おねえさんがすんでいたおうちよりもずっとずっとゆっくりできるんだよ!! れいむもここにすむことにしたよ! れいむがずっといっしょだよ!だからあんしんしてね!!」 私のれいむ。 お祖母ちゃんのれいむも、お母さんのまりさも、そしてこのれいむも、 生まれてからずっと私が面倒を見てきた。 ずっとれいむは私になついていた。 私もれいむも互いに愛し合い、人間とゆっくりではあっても、家族だった。 家族だった、そう信じていたのに。 「駄目なのよ、れいむ!お願いだから私の話を聞いて!本当に時間がないの!」 「ほんとうにだいじょうぶだよ!!むれのみんながおねえさんのめんどうをみてくれるよ!! とっても、とってもゆっくりできるんだよ!!れいむのいうことをしんじてね! あんまりわがままをいうとどすにしかられちゃうよ!!」 信じていたのに。 それなのに今、私のれいむは、私を裏切って―― 裏切って? なにを裏切った? なにが変わった? 「もりのなかでくらすのはふあんだとおもうけど、 むれのみんながなんでもおしえてくれるからね! これからはゆっくりみんなのいうことをきいてね!!だいじょうぶだからね!!」 いや、れいむは裏切ってはいない。 れいむは依然として家族だった。 家族として、私を愛し、私の幸福を第一に考えていた。 変わったのは立場だけだ。 今ここでは、ゆっくりが人間よりも強い。 そしてこの場では、あらゆる幸福と正誤は、ゆっくりの基準で定められることになる。 今、恐ろしい実感が背中を這い回り、私は震えていた。 完全な善意に対しては、一切の反論が無力だ。 逃げ場はなかった。 続く
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1408.html
※レミリアによる、ゆっくりふらん虐待。やや温め。軽い性的虐待含む。 ※18禁には、たぶんならない程度の性的描写が含まれています。 ※また、虐待していない場面も、いつものようにやたらございます。 ※fuku1514.txtの続きです。前中後編の中編になります。 ※ある意味ではレミリア虐めかも知れません。キャラ性格の俺解釈ひどすぎるので。 ※「美鈴と森のゆっくり」の後日談的な感じとなっておりますが、これ単独でも普通に読 めるようにしたつもりです……一応。 ※ゆっくりがゆっくりでは無い生き物に変化させられ、その後も虐められます。性的に。 ※当然のように俺設定満載な感じです。 ※原作キャラもゆっくりも俺設定要素多大ですので、イメージと大きく違う場合もござい ます。ご注意ください。 「レミリアと森のゆっくり 中編」 今宵の散歩は、お嬢様のトラウマとなりそうであった。 「ぐすっ……すんっ、ぐしゅっ……ひっく……」 受け入れたくない現実に直面し泣きながら逃げたレミリアは、倒木の上で膝を抱え泣い ている。 戦いに於いていかなる敵も恐れない夜の王といえども、レミリアはまだまだ幼い500歳 児。 あまりに特殊かつ変態的な性癖を目の当たりとしまっては、怯え拒絶し泣くのもやむを 得ないであろう。 「……ぐすん、ぐしゅっ…………!」 ひっくひっくとしゃくり上げる声と、肩の震えが唐突に止まる。 乱暴に手の甲で涙を拭き、レミリアは顔を上げた。 「……誰だ?」 変わり身早く、ピンと神経を張り詰めさせ、彼女は周囲の様子をうかがった。 自分へと向けられた、強い殺気に気付いたのである。 おそらくは"敵"はレミリアの泣き声で、その存在と状況を知り、襲撃を決めたのであろ う。 どのような相手かは知らないが、短慮な事だとレミリアは思った。 心に強い衝撃を受け、童女の如くに泣いていたとしても、彼女は吸血鬼。 夜の闇に生き、人妖問わず恐れ畏怖する強大な魔であるのだから、このような敵意を向 けられては、即座に意識を入れ替えられる。 「……ふんっ、私はもう貴様に気付いている。隠れてもムダだと言っているんだぞ」 先ほどまでの醜態を全く感じさせない、威厳にあふれた調子でレミリアは姿を見せない 敵に語りかけた。 異変を解決しに向かって来た巫女に対してや、弾幕ごっこのルール内での争いの時とは 全く違う、真剣な命のやりとりを行うときの口調であった。 そこに居るのは、もうカリスマ底値な500歳児ではなく、その首を狙い挑んできた愚か 者を悉く打ち倒してきた魔王である。 外に比べると平穏な幻想郷に入ってからは珍しい、いわゆるカリスマ超全開モードであ った。 「どうした? 来ないのなら、私から行くぞ」 レミリアは倒木の上に立ち上がった。 すでに相手の位置をわかっているように言っているが、それはブラフである。 非常に強い殺気で、疑いようもない敵性の存在は察知していても、その位置はまだ把握 しかねていた。 月が雲に覆われ、出ていないため、あらゆる力が本調子ではないのである。 ふと、レミリアは思った。 月が出ていない夜に襲撃を企てるとは、相手は妖怪では無いのか? しかし、人間が果たしてレミリアの命を狙うであろうか……自分に挑んできそうな人間 の心当たりはいくつかあるが、彼女たちなら普通に弾幕ごっこを挑んでくるであろう。 それ以前に、誰が何のためにレミリアの命を狙うのか? 心にわき上がった疑問が、レミリアを鈍らせ、焦らせる。 正体がわからない相手に狙われているというのは、普通に気分が悪い。 「ふんっ、今さら怖けづいたか? さぁ、どうした、私が怖いのか?」 レミリアは相手を挑発した。闇雲に動くよりも、敵に先に行動を起こさせ、後の先を取 る肚積りである。 己の回避能力に、彼女は絶大な自信を持っている。 しかし、敵は挑発に乗ってこない。 強い殺気を維持したまま、こちらの出方をうかがっているのか、何もリアクションが無 い。 「……ちっ……!?」 次に何を喋るか考えながら、焦れったさにレミリアは舌打ちした。 それとほぼ同時に、やっと敵が動き出す── 上空から弾が飛んできた。 上を見て軌道を読み、レミリアは敵弾をかわす。 敵はレミリアの上空で左右に飛びながら、自身を中心とした全方位に弾を放っているよ うだ。 弾の速度はそれほど速くもなく、威力も高くは無さそうである。 「ふんっ、無粋なやつだな。弾幕ごっこを挑みたいのなら、こそこそせず堂々と来ればい いものを!」 敵弾をかわしながら、レミリアは馬鹿にしたように言った。 弾の速度と威力から、彼女は敵の力量をだいたい推し量っていた。 推測通りならば、どう考えても相手は弱い。弱すぎる。 見なくても余裕で避けられる速度。 仮に当たったとしても、石礫をぶつけられた、いやテニスボールを当てられた程度に しか感じなさそうな威力。 殺し合いでも弾幕ごっこでも、どちらにしろ負ける事は有り得ない程度のレベルだ。 無論それが油断を誘うための擬態である可能性も、レミリアは一応考慮しているが。 「……ん……気の所為……いや、これは……」 飛んでくる弾を適当にかわし続けるうちに、レミリアは既視感を覚えた。 パターンに見覚えがあったのである。 今現在かわしているのに比べれば、それはもっと速く弾の間隔も狭いのだが、全方位発 射の二連弾をばんばん撃つ人物が身近にいる。 気になったのでじっくり敵の姿を確認しようと思ったが、飛んでくる弾が視界を遮り、 よく見えない。 一度、掃除しよう──なかなか敵が別の攻撃パターンに移らない上に、そろそろどんな 姿かも見てみたくなったので、レミリアは自ら行動を起こす事に決めた。 別に当たっても全く問題無さそうな弾を避けながら、これから行う攻撃が、ぎりぎり敵 に届かない位置へと移動する。 そして──周囲に紅い十字架状のオーラを巻き上げる大技、紅符「不夜城レッド」の威 力を抑えた簡易版を繰り出し、敵の放つ弾幕を消し飛ばした。 視界を遮る弾幕を掃除した事で、漸く相手の姿が見えてくる。 さらにタイミングが良い事に、分厚く空を覆う雲に切れ目が出来、月が顔を覗かせてき た。 「えっ……うっ、うそ……」 月を背に上空に浮かぶは、歪な形をした七色に光る翼を持った、まぶしい金髪に帽子、 紅い服に黄色のネクタイスカーフをした少女の姿。 「ふ……フ、フラン!?」 そう、自らの妹である──フランドール・スカーレットの姿がそこにはあった。 ──ように見えたが、顔と体型が微妙に違う。 身長は同じぐらいだが頭身が1つか2つほど下がったように見え、頭がやけに大きく、 顔全体がなんか丸い。 「……ゆ、ゆっくり……フラン、の……ゆっくり?」 いくらここ数日会っておらず、同じ館にずっと住んでいながら顔をあわせない日もある とは言え、自分の妹の顔ぐらいは覚えている。 と言うか、むしろ本人だったら、あまりに変わりすぎで嫌だ。 思わぬ事態に硬直するレミリアに向かって、彼女は口を開いた。 「……ゆっくりしね!」 言うと同時に、上空から真っ直ぐレミリア目がけて、急降下突撃を仕掛けてくる。 手を前方に突き出し回転しながら──そう、ソビエト連邦出身の残虐ロボ超人が得意と する、あの技に似た攻撃を試みようとしていた。 「ちょっ、え……なに、これ? ど、どどどういうことなのよっ!」 レミリアは混乱している。 物凄い殺気を放つ敵が、やけに弱い攻撃を仕掛けてきたと思ったら、そいつは妹を漫画 的にデフォルメしたような姿をしていて、死ねとか言いながら突っ込んできたのだから、 あまりにも事態が想定外過ぎた。 少し前まであったカリスマを、またも完全に雲散霧消させ、あたふたするレミリア目が けて、ゆっくりふらんは自身が放った弾より速く飛んで来て── 「わっ! ちょっ、い、いやっ! う、うそぉぉぉっ……きぁっ!」 「ゆっくりしね! ゆっくりしね! ゆっくりしね! ゆっぐべっ!」 レミリアの額に自らのおでこをぶつけた。 ともに目に仲良く星を散らしながら、もつれ合うように二人は倒れた。 「うっ……うぅっ……痛ぁ……な、なんてこと……」 目尻に涙を浮かばせて、レミリアはぼやいた。 気分が戦闘モードな時は、腕を吹き飛ばされたり首を刎ねられたとしても、痛みはほと んど感じず眉根を寄せる程度な彼女だが、そうでない普通の時は痛みにあまり強くない。 「んっ……ってか、こ、この体勢って……」 おでこを激しくぶつけた痛みで半べそをかきながら、身を起こそうとして、自分が相手 にのし掛かられているのに気付いた。 「……うぎ……うぐぅぅぅぅ……」 手を前に伸ばしていたくせに、額からぶつかってきた相手は、レミリアを抱きしめるよ うな体勢で目を回している。 「ちょ、ちょっとぉ! はっ、離れなさいよぉっ!」 言いながら覆い被さるふらんの肩に手を当て、はね除ける。 「う……うが……うぎゅぅっ!」 そんなに力を入れたわけではないのだが、ふらんはそのまま仰向けに倒れ、今度は後頭 部を地面にぶつけ、悲鳴を上げた。 「……もうっ! なんなのよぉ、こいつ……」 上半身を起こし、ずきずきと痛む額を摩りながら、レミリアは忌々しげに呟いた。 「ほんとに、さっきと言い、今日は散々ね……こんなんだったら、散歩なんかするんじゃ なかった……」 ぶつぶつと文句を言いつつ立ち上がった。 お気に入りの普段着も、ところどころ土で汚れてしまっている。 「あー、もうっ! こんな汚しちゃったら、また咲夜に怒られるじゃないの!」 別に咲夜は怒らない、ただ何故汚したのかを問い詰めるだけなのだが、レミリアからす ると叱責されているような気分になるのである。 無駄と知りつつ、手で服の汚れを叩く。 繊維になすり付けられた汚れは、その程度では落ちない。 付着した土ぼこりが多少薄くなったとしても、完全にきれいにするには洗濯が必要だ。 「いやだわ、服だけじゃなくて……髪や身体まで……あーっ! もうっ!」 森の土は湿り気がやや多い。 そんな上に転んでしまったら、色々と汚れてしまうのもやむを得ないとは言え、そもそ も地面の上に倒れるなどと言う事態を経験してしまったのが、非常に不愉快である。 「あぁ~っ、腹立つっ! ぶち殺しちゃおうかしら、こいつ……」 自分をこんな目に遭わせた犯人へと視線を動かす。 「……うぎゅぅぅぅぅ……うぐぅぅぅぅ……」 そいつはまだ目を回して、地面の上に大の字になってのびていた。 だらしなく開かれた口元からは、噛まれたら痛そうな牙が覗いている。 じっくりとレミリアは、ふらんの姿を見てみた。 頭身は違うが身長はほぼ同じぐらい、手足は本物よりも短く、頭は大きいが、それほど 異常な体型でもない。 顔については、全体的に丸い。口が大きく目も大きい、どことなくユーモラスな雰囲気 のある顔だ。 「…………な、なによ、こいつ……よ、良く見ると……」 かわいい、とレミリアは思った。 綺麗でも美人でも無いが、この顔は可愛い。そう、言うなればブサ可愛い。 犬で言うならパグとかのように、美しくはないが愛嬌があって可愛い、そう言う系統の 可愛さである。 「……い、いやだわ……わ、私ったらなに考えてんのよ……」 可愛いと思ってしまったことを、必死で否定しようとする。 だが、いきなり攻撃してきた上に、捨て身に近い特攻を行ってきた凶暴性がありながら、 このように無防備に倒れている様を見ると、なんとなく本物を連想してしまう。 レミリアの妹──フランドールは、情緒不安定というか、少し気が触れている。 総合的な戦闘能力は姉に劣るものの、純粋なパワー・破壊力は姉を凌ぎ、全てを破壊す る能力まで持っているが、気が触れているのである。 だから館の地下に幽閉しているのだが、本人は別に不満をほとんどこぼさない。 時々、外へ出たがったり、暴れ出したりすることもあるが、だいたいは温和しくしてい る。 「……違う……そう、こいつはフランじゃないのよ、フランじゃ……」 一度、似ている、可愛い、と思ってしまうと、必要以上に強く意識してしまう。 そもそも本物の妹に対する彼女の感情も、非常に複雑なのである。 自分では大事にしているつもりだし、姉として愛しているつもりでいる。 しかし、フランが姉をどう思っているのか、レミリアにはあまり良くわからない。 おそらく嫌われてはいない、むしろ好意は持たれている、とは思う。 会話をしたり、たまに遊んだり、時々ケンカをしたり、希に同衾したり、ごく希に大人 の遊びをしたりする際の、反応などから考えれば、愛されているかはわからないが、一定 以上の好意を持たれているのは間違いない。 「そ、そうよ! ふっ、フランじゃないから……」 なにやっても良い──そう、レミリアは思った。 普段は妹には絶対出来ないことも、こいつには出来る。 妹にしたいと思っていたことも、こいつにはしてもいいんだ。 やりすぎて殺しちゃっても、こいつなら何の問題にもならない。 美鈴だって、ゆっくりをゴミのように殺して、奴隷のように扱っていたんだから、きっ とみんなゆっくりに対しては、そうしているんだ。 みんながやっているのなら、私がやってはいけない事もないだろう。 むしろ、みんなの気持ちを知るためにも、私もした方がいい。 いや、しなければならない! これは、私の義務だ! 支配者としての義務! ──レミリアは、自分に言い聞かせ、思いついた考えを強引に肯定した。 「……い、いつまで寝てるのよ、お……起きなさい!」 決断した以上は行動あるのみとばかり、未だ倒れているふらんの脇腹を爪先でこづき、 起こしにかかる。 別にそんな事をしなくとも、腕の一本も引き千切れば痛みで目覚めるだろうが、それで は興が無さ過ぎると判断したのであった。 「……う……!? うがぁっ! うーっ!」 目を覚ますと、ふらんは素早く立ち上がり、後方に飛び退って戦闘態勢を整えた。 レミリアの目からすると遅い動作だが、普通の人間並みには素早い速度である。 「あら、思ったよりやれそうね……ふふっ、この私に刃向かったのを、後悔させてあげる わ」 無造作に彼女は一歩前に進んだ。 弾幕が全てかわされ、上空からの急降下突撃も失敗したのならば、接近戦で勝負を決め るしかないと判断し、 「うがっ! ゆっくりしね!」 レミリアの胸元目がけて、ふらんは手刀を繰り出す。 拳で打撃を与えるのではなく、伸ばした手で刺し貫く気である。 今まで数多のゆっくりを仕留めてきた必殺の攻撃だ。 だが、レミリアの身体に攻撃は届かなかった。 「遅い」 小さく短く呟くと、彼女はふらんの手首を掴んだ。 「うっ!? うがぁぁぁぁっ! ゆっくりしね!」 右手での攻撃が失敗したので、頭に血が上ったふらんは、左手を同じように繰り出した。 掴まれた手を振り解こうともせず、攻撃に重点を置く闘争心は、さすがと言うより無謀 であるが。 「だめね」 しかし、またも相手の身体に届くことなく、手首を掴まれた。 「うーっ! うがっ! はっ、はなせぇっ!」 焦りながら、ふらんは叫ぶ。 腕を引こうとしたが、全く動かない。 「あら、離しちゃったら逃げるでしょ? フランの攻撃はいつも単調なのよ」 そう言ってレミリアは悪戯っぽく微笑んだ。 「ぐっ! うーっ! ば、ばかにするなぁーっ!」 ふらんは怒りに顔を真っ赤に染め、右足で足払いを試みる。 「甘いわね」 ふわりと空中へ浮揚し、かわす。 「ほらほら、こうされちゃったら、あんたの短い足じゃ届かないでしょ? どうすんのよ?」 くすくすと楽しそうにレミリアは笑う。 「うがっ! うぅーっ! ゆっくりしね! ゆっくりしね!」 激高したふらんは届きもしない蹴りを放ち続ける。 「ふふふっ、本当にフランそっくり……わけわかんない理由で暴れ出して、私にかなうは ずもないのに刃向かってきて……」 言いながらレミリアは、ふらんの手首を掴む手に少しずつ力を込める。 「がぁっ! はなせっ! ゆっくりしね! うがーっ!」 馬鹿にされている怒りと、じわじわと手首を締め付けられる痛みで、ふらんは目を見開 き叫ぶ。 「そして、こうやって……痛めつけられる」 ぐちゃりと言う音ともに、ふらんの手首はレミリアに握りつぶされた。 手首を失った手は、腕から強制的にお別れとなり、ぽとりと地面に落ちる。 「ぐがっ! う゛ぁぁぁぁぁぁっ! て、てがぁぃぃぃぃぃっ!」 「ふふふっ、離せって、両腕を自由にして欲しいって事でしょ? ご希望通りじゃない」 確かにレミリアの言う通り、ふらんの両腕は自由になっている──手首から先を失った が。 「ぐがぁぁぁっ! てぇぇぇっ! ふらんのてぇぇぇぇっ! うぎゃぁぁぁっ!」 ぼたぼたと手首の先から中身を溢しつつ、ふらんは激痛に喘ぎ、両腕をめったやたらに 振り回し、地団駄を踏む。 「倒れなかったのは褒めてあげるわ。えらいわね、フラン」 そう言ってレミリアはにっこりと笑った。 「ぐぅぅっ! ごっころすっ! じねっ! ゆ゛っぐりしねっ!」 見事な闘争心と言うべきであろうか、痛みと怒りに目を血走らせ、ふらんはレミリアの 顔目がけて飛びかかる。 蹴りはかわされ、手を失ったのだから、頭突きと言う事である。 しかし、そんな単調な攻撃が当たるはずもなく、 「あらあら」 レミリアは軽く避けると、ふらんの後ろに回り込んだ。 背中から生えている双翼の根本を、両手で掴む。 「同じ攻撃を食らってあげるほど、私は優しくないわよ」 先ほど手首に対してしたのと同じように、じわじわと握る力を強めながら囁いた。 「ごぁっ! ぐぅぅぅぅっ! しねっ! ゆ゛っぐり゛じね゛ぇっ!」 ふらんは翼の根本を拘束され、じたばたともがく。 もがいたところで翼を拘束する力が弱まるわけもなく、逆にどんどん力は強められ、 新たな痛みを与えられてゆく。 「フランもねぇ、すぐ私に後ろを取られるのよ……ふふっ、ほんとそっくり」 翼は手首と比べると硬く頑丈なようだが、それでもレミリアにとっては充分に脆い。 「私ねぇ、フランの翼……この歪な七色の翼って好きなの、ちょうだい」 手首と同じように、レミリアはふらんの翼の根元を握りつぶした。 「あ゛ぎっ! ごがぁぁぁぁっ! う゛ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」 さすがに今度は立っている事が出来ず、俯せに倒れ、ふらんは激痛にのたうち回る。 「あら、無様ね。この程度で地面に這いつくばるなんて……ああ、やっぱこんな翼いらな いわ」 軽蔑したように言うと、握り千切った翼を無造作に投げ捨てた。 「ぐぎゅぅぅぅっ! はっはねっ! ふらんのはねぇぇぇぇっ!」 痛みよりも怒りが強いのか、ふらんは立ち上がり、レミリアを物凄い形相で睨む。 「へぇ、頑張るじゃないの。あんた本物のフランより根性ありそうね」 レミリアは素直に感心した。 ここまでこっぴどく痛めつけた事はないが、戦闘も弾幕ごっこも経験が少ない本物の妹 は、痛みに対しての耐性があまり強くない。 「ごっ、ころすっ! ころすころすころす! ごろじでやるぅぅぅっ!」 「殺すですって? おお、怖い怖い」 血の涙──中身の餡を溶け出させた涙を流し、激怒の叫びを上げるふらんに向かって、 レミリアは馬鹿にしたように言った。 実際、馬鹿にしている。 闘争心だけ旺盛で、あらゆる力が足りていないこの生き物を、レミリアは馬鹿にしてい る。 「うぎゅぅぅぅっ! うがぁぁぁっ! ば、ばかにするなぁぁぁぁっ!」 ふらん種は、ゆっくりの中でもプライドが高く、知能も高い。 語彙が少なく攻撃的で、感情表現も怒ばかりが目立つため、頭の悪い蛮族のように思わ れがちだが、非常に高い知能を持っている。 自分が馬鹿にされている事ぐらいは、ちゃんとわかる。 身体を痛めつけられるよりも、ふらんにとってはプライドを傷つけられるのが何よりも 耐え難い。 基本的にこの種は闘争本能と高いプライドからか、ゆっくりが本来備えている生への執 着がとても薄い。瓦全よりも玉砕を好むのである。 高い知能で相手との力量差、敵が複数ならば戦力差も理解する。だが、ふらん種は敵か らは絶対に退かない。 撃滅するかされるか、または敵に逃げられるまで戦う。 逃げた敵をどうするかは気分次第である。追撃するときもあれば、諦めて新しい獲物を 探すときもある。 ふらん種が戦いを避けるのは、敵と認識しない個体と種に対してである。 敵と認識しない個体に関しては、ふらん種各個体の個性で基準は一概に定まっていない が、種については、めーりん種さくや種が敵と認識しない種だ。 逆に敵と認識している対象は、全ての生物である。ゆっくりや普通の動物、昆虫にとど まらず、妖精や人間、妖怪であっても例外は無い。 もちろん、強いと言ってもゆっくりと言う枠の中での話であるから、野生動物や人間な どに挑んだ場合は、ほぼ確実に相手を倒せず終わる。 だからこそ、まだ強くない幼体の頃から無謀な狩りに挑み、返り討ちに遭う個体も多い ため、希少種となっているのであった。 そして、生き延び続けた個体は、どんどん強くなる──今レミリアに圧倒されている個 体のように、弾幕を放てるほど強くなり、さらにそれ以上の戦闘能力も備え得る。 「フランったら怒りっぱなしね……敵わないってわかってるんでしょ?」 怒らせているのは自分自身なのだが、ここまで痛めつけて馬鹿にしても、闘争心を全く 衰えさせないのが、少し面倒くさく思えてきた。 普通の生き物なら、圧倒的な力の差を目の当たりにしたら、戦意を喪失するのだから。 「うるさいっ! うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい! ころすころすころす!」 そんな事は襲いかかる前から、ふらんにはわかっていた。 わかっていても見つけた獲物から、敵からは逃げられないのである。 生への執着が薄いとは言え、死への恐怖はもちろんあるし、痛いのは嫌いだ。 だが、会敵必戦し最後まで戦うのが種の本能なのである。 「あーっ、もうっ! なんなのよ、あんたは! 勝ち目なんて無いのよ? 怯えなさいよ! 恐れなさいよ! 媚びなさいよ! 命乞いぐらいしなさいよ!」 思い通りにならないため、彼女は癇癪を起こす。 痛めつければ、この妹に似た生き物は、怯え恐れ媚び屈服すると思っていた。 そう、本物の妹は、レミリアの強さに怯えることはあっても決して恐れず、姉に甘える ことはあっても絶対に媚びはしない。 恐れない媚びない妹の代わりに、この生き物を恐れさせ、媚びさせ屈服させたかった。 殺すのは容易いが、それはあまり気分が晴れない。 屈服させて可愛がるのが目的なのだから。 妹の代わりに、妹には出来ない、あらゆる方法で可愛がりたいのである。 逃げもせず、恐れもせず、怯えもせず、媚びもせず、ひたすらに敵意を剥き出しにして くる相手を前にして、レミリアは余裕を失い不満を募らせる。 「うるさいうるさいうるさい! ゆっくりしね! ゆっくりしね! ころすころす!」 目の前の敵──レミリアが、有利なのにもかかわらず精神的余裕を失いつつある事に、 ふらんは気付いている。 密かに再生能力を総動員して傷は塞いだ。 塞いでしまうと後で再生するときに時間がかかるが、これで痛みはある程度まで治まっ た。 敵の余裕を失わせてから、乾坤一擲の反撃に出ようと考えている。 しかし、そんな目論見は、脆くも打ち砕かれる。 「黙れっ!」 短く一喝すると、レミリアは両手を上にあげ、前に振り下ろす。 手刀ではなく衝撃波で、ふらんの両腕は肩から斬り落とされた。 「ごっ!? がぁぁぁぁっ! う、うでぇぇぇぇぇぇぇっ?」 痛みよりも驚きと焦りで、ふらんは絶叫した。 一瞬の出来事で、ふらんには何が起きたのか良くわからない。 だが、相手の攻撃で自分の腕が切り落とされた、と言う事だけはわかった。 ふらんは読みを大きく誤った。 目の前の敵は、ふらんの予想より遙かに早く余裕を失い、不満を爆発させたのである。 こんなにキレやすい、わがままな敵だとは、全く予想していなかった。 「腕がどうしたってのよ? うるさいわよっ!」 今度は片手を横に薙ぎ、ふらんの両脚を太腿のあたりで斬り捨てた。 「あ゛っ? な゛、な゛ん゛でっ? ぐぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」 翼を失い、両腕に続き今また両脚も失ったダルマと化し、ふらんは地面に転がった。 ──なんなの、こいつ……きちがい……。 ふらんからすれば、いきなり不満を爆発させたレミリアはそのように思える。 「あははははははっ! 無様っ! ぶざまねっ! フランったらまるでダルマさんね…… あはっ、翼も腕も脚も無い方が可愛いわよ! あはははははははっ!」 ふらんの思いを裏付けるように、レミリアは狂気じみた哄笑を上げる。 本当は、こんな事をしたくはなかった。 恐れて媚びてくれれば、もう少し優雅に可愛がってあげようと考えていた。 その結果、やりすぎて殺してしまうかも知れないが、目的は愛玩であったのだ。 だから、悪いのはこいつだと思うことにした。 「う゛がぁぁぁぁっ! ころすころすころすころすころすぅぅぅぅっ! ゆっくりしね! ゆっくりしね! ゆっくりしねぇぇぇぇっ!」 はっきりと己が恐怖していることに、ふらんは気付いた。 殺されるのは間違いない、それもこんな狂った相手なのだから、物凄く残忍に嬲り殺さ れるだろう──さすがに、それは怖い。 だからと言って、ふらんは恐怖を表現する術を知らない。 そんな感情表現は備わっていないのである。 知っている、出来る感情表現は、怒りか笑いだけなのだから。 「なによっ、そんな姿になって、どうやって私を──このレミリア・スカーレットを殺す のよ? 馬鹿じゃないの? いや、馬鹿だお前は。身の程知らずめ!」 腹が立ったので脇腹を蹴り飛ばした。 「ごぶっ! がはっ……ゆ、ゆ……ゆっぐり、じね……ゆ、っぐり……し、ね……!」 黒っぽい何かを吐き出しながら、ふらんは敵意と憎悪が籠もった視線をレミリアに向け る。 「うるさい! 私を殺す? 死ね? やれるもんなら、やってみなさいよっ!」 再び脇腹を蹴るが、気が晴れない。 「……ああ、嫌な目ね。潰すわ」 ずぶり、と左目に指を入れ、眼球を抉り出す。 「ぎゅぶっ……ぐぐぐっ、ゆ、ゆっぐり、しね……ゆっぐ、り……し……ね!」 眼球を失った眼窩より、涙なのか中身なのか判然としない黒い粘液を滴らせながらも、 未だふらんの闘志は衰えていないように、レミリアには見えた。 「……くそっ!」 ──なんだ、これ? こんなにしても、まだ刃向かう気か? ふざけてる! 右目も抉り出そうかと思ったが、見えていた方が恐怖を与えられると思い直し、彼女は ふらんの襟首を左手で掴んだ。 自分の目の高さに、ふらんの顔を持って来て、 「命乞いぐらいしたら? そうしたら楽にしてやるわよ……どう?」 このまま顔を殴り潰したくなる衝動を堪えつつ、提案してみた。 「ぺっ!」 ふらんはレミリアの顔にツバを吐きかけた。 もう死にたいが、敵の慈悲にすがって殺して貰うよりは、怒りを買って殺されたいと思 ったのである。 「……! こ……こ、ここまで……私を虚仮にするか……ふざけんなっ!」 怒りに身を震わせながらも、レミリアは冷静に考えた。 ──殺したら、負けだ。恐れず死を望む相手を、怒りに任せ殺したら、私の負け。 生死の勝負ではなく、最早意地の張り合いである。 殺すか殺されるかであるならば、圧倒的にレミリアの優位は動かない。動かしようがな い。 だが、彼女は屈服を望んでいる。 最終的に殺すにしても、望む結果が得られずに殺してしまったら、それは敗北に他なら ない。 「ぶへっ、へ……へへっ……ゆ゛、ゆ……っぐり、じ……ね……」 ──おこってる、おこってる……いたいのに、まけてるのに、たのしい……あはっ……。 ふらんは笑った。 さらに相手を怒らせるためではなく、純粋におかしかったから、笑った。 目の前の敵は、自分と同じぐらいの大きさなのに、とても強い。 なのに、自分が負けを認めないと言うだけで、余裕を失い狂ったみたいに暴れている。 ──それが楽しくて仕方がない。 「……!……」 レミリアは空いている右手でふらんの右頬を叩き、次に左頬を叩き、また右頬を、と繰 り返す。 潰してしまわない程度に加減して、無言で彼女は往復ビンタを続ける。 「ぶべっ! ぼぶっ! がぼっ! う゛ばっ!」 休み無く両頬を叩かれ続けていては、ふらんと言えども喋ることが出来ない。 口から唾液などを飛ばしつつ、濁音だらけの短い叫びを上げるのみである。 ぱしん、ぴしん、ぱたん、ぴたん、と言う打擲音が夜の森に響く。 音が響くごとに、ふらんの顔は赤く腫れ、皮肌もところどころ傷つき、ぶさ可愛いから 醜いに変化してゆく。 「……はぁ、ふぅ……どう? 少しは立場わかった?」 さすがに手首が疲れてきたので、ビンタを中断して聞いた。 どうせ、答えは同じであろうと思いつつも。 「……ごふっ……かはぁ……ぺっ!」 ビンタで抜けた歯とともに、ふらんは再びレミリアの顔面にツバを吐き飛ばす。 狙ったわけでもないのに、中身の餡が混ざり黒く濁った唾液のつぶては、見事レミリア の口の中に入った。 「……え!? ……あ、甘い……あはっ……」 この場に似つかわしくない間抜けな声を出し、レミリアは顔を綻ばせた。 甘い──そう、ふらんの中身は、とても上品な甘さのこしあんである。 それも、ただのこしあんではなく、ラードや胡麻油で風味の付いた、あんまんの餡子だ。 粒あんが嫌いな人間は居たとしても、こしあんが嫌いという人間は少ない。 熱烈な支持者は粒あんに多いが、こしあんは嫌う者が少ないと言う強みがあった。 レミリアは──こしあんが好きである。ジャムもプレザーブよりジェリーを好む。 粒あんやプレザーブスタイルジャムの異物感を、あまり好まないのであった。 プレザーブだと、紅茶に入れた際に溶け残るのが許せない。 好物の味は気持ちを落ち着かせる。 そして、美味いものは──楽しい、笑いたい気分にさせる効果がある。 「あははははっ! あんた……気に入ったわ……んっ」 声を上げて笑ってから、おもむろにレミリアはふらんにキスをした。 甘い、とても甘い味が口内に広がる。 「うう゛っ!? むっ? んーっ……?」 何が起きてるのか、ふらんにはわからない。 今さっきまで怒り狂っていた相手が、突然接吻をしてきたのだから、もう何がなにやら。 レミリアは混乱するふらんに構うことなく、その口腔内を自らの舌で蹂躙する。 傷つき漏れ出した餡だけではなく、ふらんの唾液も甘く美味しい。 まるで何かに取り憑かれたかのように、レミリアはふらんの唾液を啜り飲み、餡が漏れ ている口内の傷を舌で舐めほじる。 「う゛っ! む゛う゛っ……!」 舌で傷を刺激され、新たな痛みを覚えたが、その痛みにより混乱から引き戻された。 一矢報いる好機であることに、気付いたのである。 敵の意図は全くわからない。 ふらんの理解の範疇を超える行動ばかりで、絶対に気が触れてるとしか思えない。 だが、これは紛れもなく、こちらから攻撃できる最後の機会だ。 ふらんは、口内に侵入し蠢く、レミリアの舌に噛みついた── 「んっ!? ……んーっ……」 痛みに、ちょっとだけ彼女は眉をしかめた。 相手が何をしたのかはわかっている。 だが、どうせ噛み切ることは出来ないだろうし、噛み切られたとしてもすぐ回復する程 度の軽傷であるから、放置することにした。 顎に力を入れ、ふらんはレミリアの舌を噛みちぎろうと試みている。 舌というものは、表面は柔らかい粘膜に覆われているが、その中は筋肉の塊である。 元気なときならばともかく、ボロボロにされたふらんの力では、粘膜を噛んで出血させ るのが精一杯であった。 ふらんの口内に鉄錆の味──レミリアの血の味がひろがる。 噛みちぎれないならば、せめて生き血を啜ってやれとばかりに、ふらんはレミリアの血 を飲んだ。 飲み込んだ瞬間、ふらんはびくんと身体を硬直させ、仰け反った。 合わさっていた唇が離れる。 「う゛っ! ……がっ、あ゛がぁっ……あ゛ぁっ!?」 かっと目を見開き、ふらんは苦悶の形相を浮かべる。 何が自分の身体に起きたのか、起きようとしているのか、ふらんにはわからない。 わからないが、身体の奥が熱く、苦しい。 「あちゃー……うっかりしてたわ、飲んじゃったのね、こいつ……私の血を」 苦しみのたうつふらんを地面に置き、レミリアは己の失策に頭を抱える。 吸血鬼の血は劇薬である。決して毒薬ではないが、恐ろしい劇薬だ。 「んー……でも、ゆっくりが飲んじゃった場合は、どうなるのかしら?」 彼女は首をかしげて考えた。 そんな事例は聞いたことがないため、考えたところで答えが出てくるはずがない。 「ま、いいか。どうなるのかは、見てればわかるしね……ふふっ、こんなの予想外だけど 楽しみだわ」 わくわくと期待に目を輝かせ、レミリアは事態の推移を見守ることにした。 続く このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/865.html
(研究者の日記) ―○月1日 やっと念願の研究施設を手に入れた。エンジニアの河童は、私のリクエストに完璧に応えてくれた。 今までは研究室のケージで飼っていたゆっくりに刺激を与え、反応を観察するだけだった。 だが河童が造ってくれた、あらゆる環境を再現できるゆっくり飼育用ドームのお陰で より自然状態に近いゆっくりにあらゆる気象条件を体験させる事ができる様になった。 ゆっくりは自然環境の変化に適応できるのだろうか? どの様な手段を以て変化に対応するのだろうか?知力の向上?身体的な変化? ゆっくりに種としての進化があるとすれば、それはどんなものになるのだろうか? 人語を理解し、人に似た思考をする事もあるゆっくり。 ゆっくりの進化を研究することによって、万物の霊長を自称する人類の進化の軌跡に迫る。 私の永遠の研究テーマである人類の進化。このドームによって研究成果は飛躍的に向上するだろう。 とは言うものの、まず最初にしなければいけないのは気象再現装置の操作法の習熟だ。 かなり大規模な物でもあり、そもそもこのドームを利用した観察方法もまだ確立されていない。 これからの数日はドーム内に色々な天候を再現してみることに専念するつもりだ。 ―○月2日 今日は『晴れ』を試してみる。照りつける太陽の光と熱は、ゆっくりに何をもたらすのだろうか。 以下その記録。 穏やかな春の日差し。長い冬を越えたゆっくりに生の喜びを実感させる。 彼女たちがもっとも好むものだろう。 「ゆ~~~~~~~。」 「あたたかいね!とてもゆっくりできるよ!」 「ぽかぽかー!」 日差しを強めてみる。灼熱の真夏の太陽。 「あああ~!あじゅい~~~~!これじゃゆっくりできないよ!」 「たいようさん!まりさはあついのはきらいだよ!もっとゆっくりしてね!!!」 「ゆ?なんだかおかしいよ。れいむのかわがちゃいろくなってきた!」 「もきゅ!ぱちゅりーはしってるよ!それは『ひやけ』っていうんだよ!」 「こんがりー!」 「ゆ!かゆいよ!だれかれいむのせなかをかいてね!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!れ゛いむのかわがむけて゛る゛う゛う゛う゛!!!」 「あ゛あ゛あ゛!!!れ゛い゛む゛の゛な゛か゛み゛か゛て゛ち゛ゃう゛う゛う゛!!!!」 更に出力を上げる。 「あづいっ!あづいっ!!あしが、あしがやけち゛ゃう゛よ゛お゛お゛お゛お゛!!!」 「いそいで!あかちゃんたちははやくおかあさんのくちのなかにはいってね!!!」 「からだが・・・あついよ・・・だれか・・・だれかたすk・・・」 更にアップ。 「あかちゃんたち・・・ごめんね・・・おかあさん・・・もうだm・・・」 「あ゛あ゛あ゛!!!!おがあざあああん!!!だして!だして!あづいよおおおおお!!!!!」 「あづいっ!!!だれかっ!!!だすげでっ!!!ここからだしてえ゛え゛え゛え゛え゛!!!!!」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」 ゆっくりがすべて死んだので今日はここまで。環境を元に戻し、新しいゆっくりを入れ明日に備える。 ―○月3日 今日は『雨』を試してみる。自分達の天敵である水に対し、ゆっくりはどんな反応を示すのか。 以下その記録。 音もたてず降り続く霧雨。人間と違いゆっくりは雨に対し風情を感じない。 彼女たちのもっとも嫌うものだろう。 「ゆ~。ぜんぜんやまないね。みんなこかげにかくれてね。」 「ゆっくりできないよ!」 「じめじめー!」 雨脚を強めてみる。やむ気配の無い長雨。 「あああ~!もういやだあ~~~~!これじゃゆっくりできないよ!」 「いいかげんにしてよね!まりさはあめがきらいだよ!もっとゆっくりさせてね!!!」 「ゆ?なんだかおかしいよ。れいむのかわがみどりになってきた!」 「もきゅ!ぱちゅりーはしってるよ!それは『かび』っていうんだよ!」 「かびかびー!」 「わあ!きもちわるい!きもちわるいれいむはあっちいってね!」 「どうじでそんな゛ごどい゛う゛の゛お゛お゛お゛お゛!!!!!」 「きもちわるいれいむはあめにうたれてしね!!!」 更に出力を上げる。 「あ゛あ゛あ゛!みずたまりがっ!!あしが、あしがとけち゛ゃう゛う゛う゛う゛!!!」 「いそいで!あかちゃんたちははやくおかあさんのくちのなかにはいってね!!!」 「からだが・・・とけるよ・・・だれか・・・だれかたすk・・・」 更にアップ。 「あかちゃんたち・・・ごめんね・・・おかあさん・・・もうだm・・・」 「あ゛あ゛あ゛!!!!おがあざあああん!!!いやだ!いやだ!しんじゃやだあああああ!!!!!」 「みずがっ!!!だれかっ!!!だすげでっ!!!とけちゃうよ゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」 ゆっくりがすべて溶けたので今日はここまで。雨を止め排水し、新しいゆっくりを入れ明日に備える。 ―○月4日 今日は『雪』『霰』『雹』を試してみる。普段見る事の無い天候に、ゆっくりは何ができるのか。 以下その記録。 しんしんと降り積もる雪。越冬の失敗はゆっくりの絶対なる死を意味する。 巣に逃げる事ができない彼女たちを待つものは死だけだろう。 「ゆぅぅぅぅぅ・・・さ、さむいぃぃぃぃ。」 「さむいよ!ぜんぜんゆっくりできないよ!」 「ひえひえー!」 降雪量を増やし風も強くしてみる。すべてを飲み込む真冬の吹雪。 「あああ・・・さむい・・・ねむくなってきたよ・・・」 「いいかげんにしてよね!まりさはゆきがきらいだよ!もっとゆっくりさせてね!!!」 「ゆ?なんだかおかしいよ。れいむのからだがかたくなってきた!」 「もきゅ!ぱちゅりーはしってるよ!それは『こおり』っていうんだよ!」 「かちかちー!」 「あああ!れいむがうごかなくなっちゃった!へんじをして!へんじをしてれいむ!!!」 「あ。あったかそうなおふとんがある。きょうはここでねるよ・・・おやすみ・・・」 「からだが・・・うごかないよ・・・だれか・・・だれかたすk・・・」 吹雪を止め霰を降らす。 「いだいっ!いだいっ!!かわが、かわがやぶけち゛ゃう゛よ゛お゛お゛お゛お゛!!!」 「いそいで!あかちゃんたちははやくおかあさんのくちのなかにはいってね!!!」 「あ゛あ゛あ゛!!!も゛っと゛ゆ゛っく゛り゛し゛た゛い゛い゛い゛い゛!!!!!」 次は雹。 「あかちゃんたち。だいじょうぶだよ!おかあさんがかならずまもrゆぶぎゃあああ!!!!」 「あ゛あ゛あ゛!!!!おがあざあああん!!!だして!だして!つぶれちゃうよおおおおお!!!!!」 「つぶれるっ!!!だれかっ!!!だすげでっ!!!ここからだしてえ゛え゛え゛え゛え゛!!!!!」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛!!!し゛に゛た゛く゛nゆぶべっ!!!!!!」 ゆっくりがすべて潰れたので今日はここまで。雹を止め雪を溶かし、新しいゆっくりを入れ明日に備える。 (研究者の独白) ようやく操作にも慣れてきた。これからはもっとゆっくり観察を進めよう。 別にゆっくりを殺すのが目的な訳では無い。徐々に変化していく生活環境、 ゆっくりがそれにどう順応していくか調べるのが目的だ。 焦る必要は無い。進化とは元々ゆっくりと進んでいくものだ。 数十年、数百年の時を超え、何十代、何百代と続くうちゆっくりにも変化が現れる筈だ。 それをじっくりと待てばいい。なにせ私の寿命は私の研究対象よりも遥かに長いのだから。 end このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/152.html
こんにちは、真実を常に追い求める孤高の記者、射命丸文です。 今回の取材にいきますのは、人間たちの畑。 最近、話題になったある作物に関する畑です。 おっと、「文々。新聞」は別に農業の業界紙ではないですよ。 私が出向くのは、そこに読者の興味を引く異変があるがゆえ! これから赴きますのは、家屋内にある大農園。それも、場所はあの知る人ぞ知る加工所です。 どうです、少しは興味がわいてきたでしょう。 では、興味がわきましたら、この「文々。新聞、購読申込書」へサインをどうぞ。まずは六ヶ月間購読でいかがでしょうか。 大丈夫、内容は保障します。どこぞの賽銭箱に投げ捨てるより、よほどいいお金の使い道になるでしょう。 それに、今なら毎月うちの犬走椛を集金に向かわせますよ。毎月、上目遣いで「お、お願いします、怒られちゃいます……」と涙目であなたの袖にすがりつくんですよ! ……はい、まいどありー。 『射命丸の突撃リポート、ゆっくり農園の謎』 「量産化の成功が、業績悪化のきっかけとなってしまいまして」 ため息混じりにそう語ったのは、今回、我々を案内してくださるゆっくり加工所の主任さん。 その指し示すグラフを見ればわかるとおり、ゆっくりの繁殖と効率のいい餡子の収穫方法で潤沢な在庫を抱えることになりましたが、そのために単価が暴落。気候で収穫量が激変することから、かつては赤いダイヤモンドとまで呼ばれた小豆市場も見る影もなしという有様で、バランスシートを見るまでもなく採算割れがうかがえます。 「甘味だけでは需要の限界があるのですよ」 在庫の山を見た記憶が蘇ったのか、主任さんは若干青ざめた顔色。 確かに甘味というのは嗜好品。その上、ゆっくりの案は腐敗します。需要を上回るだけ生産しても、消費されずに損が増えて単価を押し下げるだけ。 生産調整をするのが一般的だとは思うのですが…… 「ゆっくりは繁殖が簡単ですから、うち以外にも生産者がたくさんおりまして……正直、把握しきてれいないために音頭をとって調整とはいかないのです」 なるほど、中々利害関係の絡みそうな話で大変面白そうですね。 その辺のこと、詳しく。 ……あ、今日の取材とは関係ないですか。 「もちろん、うちもただ手をこまねいているわけではなく、いろいろと新商品の開発で需要の掘り起こしを狙っているのですが」 あ、今年はゆとり線香に大変お世話になりました。 ゆっくり羊羹、大変おいしゅうございました。水羊羹、この時期には堪りません。インスタントゆっくり汁、椛の哨戒の必需品です。 はい、ヒモ付き取材なのですいません。でも私、嘘は申しません。真実の報道記者、射命丸ですから。 そんなことを考えながら、文花帖にペンを走らせていますと、主任さんのため息が聞こえてきました。 「とはいえ、焼け石に水といった有様で、ついに資金繰りに窮してゆっくりの買取も中止したこともあります」 覚えています。加工所のゆっくり買取の中止は、野良ゆっくりの放置と生息数の拡大、人間社会への被害をもたらしました。 完全にゆっくりを駆除する選択肢も検討されましたが、結局は補助金がついて、かろうじて存続できた制度。 それがこのところ、急にゆっくり需要が高まってきました。 益獣から害獣となって絶滅すら視野に入ってゆっくりを救う、突然の需要増。当然、裏には加工所の存在がありました。 それこそが、私が今回こちらに取材に参りました最大の理由です。 さて、おとなしく吐いて下さいね。 「それは、発想の転換でした。私たちは餡から野菜に生産をシフトすることで、苦境を乗り越えたのです」 野菜? ゆっくり加工場から野菜とは面妖な話です。 「まあ、百聞は一見に如かず。ちょうどこれから作業が始まるところですから、行ってみましょう。農園へ」 頭をかきながら立ち上がる主任さん。 私はその後姿を追いかけて、加工所の最深部へと向かいます。 「ここが、ゆっくり農園です」 主任さんの肩越しに見える室内。 まず、驚いたのはその広さです。 私の速さをもってしても向こう側の壁まで、分単位を要するでしょう。紅魔館の図書館を移設できそうなほど。 次に目を引いたのは床の構造ですね。その床には向こう側の端まで続く長方形の四角い窪み。それが何列か並んでいます。 四角い溝が何本もの入った床とだだっ広い空間。この部屋を端的に言い表すと、そうなります。 思わず写真を一枚。 薄暗い室内に輝くフラッシュの光。 そういえば、この暗さで植物が育つのでしょうか? 「射命丸さん。あちらの区画で今から栽培を始めます」 主任が指し示した一角は、不思議な光景となっていました。 前述の四角の窪み。 ですが、よく目をこらすとその溝はぎっしりと肌色の何かで覆い尽くされています。 あれこそが、この加工所の秘密なのでしょう。 私は主任さんに案内されるのを待つことすらもどかしく、その傍らに降り立ちました。 その窪みに詰め込まれた肌色を覗き込もうとして、私は気づきます。 いえ、正確にはそいつら自身から答えが聞こえてきました。 「ゆっぐり……ざぜでええ……」 「ゆゆゆ……」 「おねーさん、ここからだして……おうち、かえる……」 それらは、なんと巷で話題のゆっくりたちでした。 れいむ種、まりさ種などの雑多な種類のゆっくりたちが、天井を向けられた体勢で隙間無く四角の窪みに敷き詰められ、気色の悪いゆっくりプールができあがっています。 上を向いて身動きもとれず、お気に入りの帽子もリボンもひしゃげたまま、ただ流れる涙。 その珍妙な姿に、私の部下カラスの文々丸も興味を引かれたのでしょう。 いつの間にか、ゆっくりの絨毯をきょろきょろと動き回っていました。 こらこら、商品を傷つけたらだめじゃないですか。 「ゆぐっ!」 「づめが、いだひいいい!」 ……まあ、いいような気がしてきたのはなぜでしょう。 ともかく、私たちがいるこの空間は、果たして何なのでしょうか。敷き詰めたゆっくりの意図は一体? 「それは、苗床です」 疑問に応えてくれたのは、私に追いついてきた主任さん。 苗床という言葉の意味を確認しようとしたその時でした。 「あ」 短い主任さんの声。その視線は私の後方、『苗床』の位置で固まっています。 なんでしょうか。 振り向く私。そして、その視線も固まります。 「カラスさん、まりさをゆっくりもちあげてね!」 「ずるいよ! れいむも連れてってね!」 苗床のまりさの口に足でも突っ込んだのか、噛み付かれている文々丸。 ばたばたと翼をはためかせて逃げようとする文々丸を離すものかと、真っ赤な顔でしつこく食い下がっている。 あの腐れ饅頭野郎、私の可愛い文々丸になんてことを! 「ガア!」 無論、文々丸はゆっくりごときにどうにかできるようなカラスじゃない。だって、私の部下なんだから。 「まりざのおめめがあああああああ!!」 一際高いまりさの悲鳴。 文々丸のくちばしには、たった今えぐりとったばかりのまりさの眼球らしきものが。 「まりさのきれいなおめめがあああ!?」 「からすさん、か゛え゛し゛て゛ええええ!」 ひたすら泣き叫ぶまりさに代わり、隣のれいむの絶叫。夫婦なのだろうか。 まあ、そんなことは文々丸には興味がないことだろう。 「ゆぐううう! 今なら許すから、かえじでぐだざいいいい!」 そんなこと言われても、文々丸はもう目玉をのみこんでますよ、ごくんと 「どうじでぞんなごどするのおおおおっ! まりさを怒らせたら、からすさんもただじゃおかないよおおお!!」 えらい剣幕ですが、毛づくろいにふける文々丸に耳に届いたかどうか。 代わりに私が怖がってあげましょう。 おお、こわいこわい。 ……て、我に返ってみると、これはまずいですね。 取材対象の財産を損壊したことになります。 ちらりと主任さんの顔を見てみます。 私に向けられていたのは請求書ではなく、なぜか笑顔でした。 「いや、別にゆっくりは生存していればどんな状態でもいいんですよ……おや、準備ができたようです。さ、作業開始ですよ」 言いながら、部屋の隅に向かって手を振る主任さん。 気がつけば、そこに作業服姿の従業員さんが数人。それぞれ、その両手に抱えるのは柵。手馴れた動作で、ゆっくりの苗床を囲むように 柵を立てていきます。 ただし、完全には囲みません。 一方に出入り口をつくって、そのまま部屋の片隅へと柵で通路をつくっていきます。その通路の先は、壁面に小さく張り出した扉へと。 こうして出来上がったのは、扉から苗床までをぐるりと囲む柵の通路。 主任さんは準備が整ったのか、こほんと咳払い。 「まずは、種まきからです」 種まき。 主任さんの言葉に、私は籠に種籾を入れた農家の姿を思い浮かべますが、それから始まった光景は、まったくそれとは似ても似つかぬものでした。 主任さんの合図に合わせて開放される通路に接した扉。 同時に、加工所を揺るがした凄まじい振動でした。 「まっまっまっ、まりさああああ!!!」 「まりさはどこおおおおお!!!」 「れいありもいいよねええええ!!!」 「ぱちゅありも、じゃすてぃいいいいっす!」 扉の向こうには、地鳴りを響かせてゆっくりありすの、顔、顔、顔。 何十匹いるのでしょう。 魔法の森のアリスさんとは似ても似つかぬゆっくりアリスの群れが、性欲にテカテカと輝くアリスの瞳が、次から次と扉の向こうから姿をあらわします。 共通するのは発情しきって上気した赤みと、血走ってまりさを求めるその眼。 すごいです。 そういえば、先日うっかり毒きのこを食って寝込んでしまった魔理沙さんを、文句を言いながらも看病を続けたアリスさん。 深夜二時頃、熱にうなされ、胸元をはだけて荒い寝息を吐き出す魔理沙さんをじっと見下ろすアリスさんの相貌を、なぜか不意に思い出しました。 もちろん、それは本件とはまったく関係ございません。上海人形に八つ裂きにされたネガも戻ってきませんし。 さて、ゆっくりありすの集団は後続に押し出されるように、通路を前に前に進んでいきます。 向かう先は、ゆっくりの苗床。 その待ち受けるゆっくりたちは怒涛のように押し寄せるアリスの足音には気づいていますが、なにせ天井しか見えない体勢のため、何が起こっているのかわかりません。 歯を食いしばり、流れる涙を増やすばかりです。 ですが、足音が止んで見えるのは、覗き込む同じゆっくりの顔。通常なら、親切な性質を持つゆっくりありすのものです。 助かったと思ったのでしょうね。 「ゆっくり、ひっぱりだしてね!」 髪の毛や装飾品すらも詰め込まれて、唯一相手が噛んで引っ張り出せる舌を伸ばします。 けれど、ありすの受け止め方は違いました。 「いきなり、でぃーぷなんて、まりさは焦りすぎよ!」 「でも、大丈夫! ありすがきちんとリードしてあげるね、まりさああああ!」 数十匹のアリスが、ゆっくりの苗床にびっしりと圧し掛かり、下を向くなりいきなり響きわたる湿った音の大合唱。 くぐもった下のゆっくりの絶叫と、とろけたようなアリスたちのあえぎ。 新しい拷問のようで、思わず私は耳を塞ぎたくなるものの、加工所の方々はまったく平気な顔。 顔色一つ変えず、今回の予想収穫量なんかを話しています。 人間の主な特徴、適応性というものは一種の狂気ですね、ほんと。 「まりさまりさまりさああああああ!!!」 「やめでええええ!!! すっ、すっきりしちゃううううう!」 「やめては、とかいではやめないでということよおおお、いぐううううううんほおおおおおおお!」 「ひぎいい、隣にれいむがいるのにいいいいい、いぎだぐないいひぎいいいいいい! ずっぎりいいいい!」 最後の抵抗の声もむなしく、まりさたちの悲鳴をバックに種まきは終わりました。 いや、終わったと思ったのですが。 「あと、2セット」 冷静な主任の言葉に応じて、一斉に苗床に向かう職員たち。 ご丁寧にも、すっきり満足していたアリスたちを揺らし、再び発情へとのぼらせていきます。 こんな変態生物の発情を助けるぐらいなら馬でも種付けでもした方が100倍マシだと思うのですが、そこはプロ根性。匠の技です。 「だめだよおおお! あかじゃん、ごんなにでぎだら、じぬのおおおおお!!」 ねとねとの粘液に覆われたれいむの顔が、目を血走らせて必死に叫んでいます。 「そんなことより、アリスをちゃんとすっきりさせてね! きっと、愛があればだいじょうぶなの!」 ですが、そんな愛の足りない戯言はアリスに通じません。すぐさま、欲情の囀りにかき消されるばかり。 結局、アリスが職員に引き離されて扉に蹴りこまれるまで「種まき」は続きました。 ゆっくりの生態の神秘は、やはりこの生殖後の反応でしょう。 犯されつくしたゆっくりたちから、次々と発芽する茎たち。 通常茎が生える頭の上は他のゆっくりや壁に塞がれているので、唯一の隙間、天に向けてにょきにょきと伸びていきます。 これが、種まきの成果。 この伸びた茎が、加工所の新たな生産物とのことです。 出産後、親が朽ちても赤ちゃんをしばらく育てられるほどに栄養価が高く、人間にとっては煮ると口当たりのよい、ほのかな甘味が野菜嫌いのお子様にも人気の新商品。ゆっくりの茎。 まさか、ゆっくりから野菜がとれるとは驚きです。 「次は、肥料ですね」 ですから、各工程の呼び名が農業のような呼び名になるのでしょう。 確かに、アリスに蹂躙されて黒ずみ始めたゆっくりたちの様子からすると肥料は必要なように思えますが、さて何を与えるのでしょうか。 応えは、手押し車に詰まれた黒い物体でしょう。 植物であれば、まず間違いなく腐葉土の黒土でしょうが、相手はゆっくり。 「あれは、餡子ですか?」 「そのとおりです」 私の問いかけににっこりと応じる主任さん。 こうしている間にも、「むーしゃ……むー……」「……しあわせー」「めっちゃ……うめ……」と、かすれた声が響いてきた。 ゆっくりの中身も餡子だけに、効果は抜群といったところでしょうか。 「餡子は、繁殖もできなくなった末期のゆっくりや、商品にならなかったもの、間引きした子供らを与えています。化学肥料を使わず、コストにも気を配っています」 主任さんの淡々とした説明に、経営不振を乗り越えたこの加工所に培われたコスト意識が伺えます。 こういう企業は力があります。株を上場するときは教えてください。けして、私はインサイダーなど行いません。 それはともかくとして、ゆっくりたちはその栄養満点の肥料に元気を少しだけ取り戻していました。 そんな中、主任さんは次の指示を伝えます。 「さて、次はお水をあげましょう」 水? 見れば、桶に汲まれたオレンジ色の水がめを台車にのせて、従業員たちが押してきます。 はてさて、あれは一体なんなのでしょうか。 膨らむ私の期待でしたが、私の期待は報われません。 本当に、主任さんの言葉とおり、染料でオレンジ色に着色されただけのただの水でした。 ですが、それを知るのは私と職員の方々だけ。当然、ゆっくりは知りません。 「ほうら、口を開けろ。オレンジジュースだぞー!」 棒読みの職員の台詞を耳にするなり、一斉に口を開くゆっくりたち。 ひしゃくで注ぐそのオレンジ色の液体を一滴ももらすまいと、食虫花のようにぱっかりと大口を開けています。 その間抜けな光景に脱力の私ですが、ゆっくりたちの反応は、さらに私の足腰から力を奪うものでした。 「うっめ、これ、めちゃうめ!」 「しゅっごく、おいしい♪」 「あんまあああああい!」 なんですか。 ゆっくりとはいえ、蒙昧すぎるでしょう。 「プラシーボもあるでしょうが、たっぷり口に水を含んだせいで、口の中の餡子が溶けているんですね」 「でも、それじゃあプラマイ0では」 「いいんです。これは、ゆっくりたちの心のケアですから」 ゆっくりの心なんか、ケアする必要があるのでしょうか。 それならば、霊夢さんに「印刷してある文字が邪魔だから、今度から白紙で頂戴。森近さんに売るから」と、凄まじい要求をされた私の心をまず最初にケアしてほしいところですが。その日の夜のお酒は、ひどくしょっぱい涙酒。霊夢さんは時々、無意識に萃香さん以上の鬼ですよね。 そんな感じに私がちょっぴりブルーになっているというのに、ゆっくりたちからは案の定な能天気な声が沸き始めます。 「すっきりしたよ」 「この子のために、がんばれるね!」 顔面から伸びていく茎も色艶がよく、その先に鈴なりにふくらみつつある子供の実。 実ってしまえば、可愛いわが子なのでしょう。 「ゆー……♪ ゆゆーゆー♪」 「ゆっくりそだってね」 「まりさの赤ちゃんが、いちばん大きくてゆっくりしているー♪」 歌ったり、話しかけたり、自慢したり、ゆっくりたちはたちまちのうちに元気を取り戻していきます。 もうすぐ、この実がぷっくりと膨らんで子供をなすのでしょう。 「では、次は害虫駆除と茎の手入れです」 主任さんの宣言に、不意に私はリグル・ナイトバグさんを思い出します。なぜでしょうか。 ともかく、確かに害虫というのは問題ですね。 風見幽香さんなら、リグルさんの首に腕を回しながら耳元にそっとお願いすれば済む話でしょうが、人間はそうもいきません。 まず、職員が最初のまりさと向き合うように覗き込みます。 「ゆ? お兄さん、まりさのこどもゆっくりしているでしょ♪」 「れいむの方がもっとゆっくりしているよ! とくべつに、お兄さんもゆっくり見ていっていいよ!」 対抗するれいむたちの声は、おそらく職員の方にとって耳朶を吹き抜ける風のうねりのようにしか感じていないのでしょう。 無言でその手を茎へと、その茎に実る赤ちゃんへと伸ばしていきます。 「ゆ! 赤ちゃんを、いいこいいこしてあげ……」 ブチャ。 湿った破裂音が響きました。 職員の方は一瞬で至福から白目をむいた表情の親を気にもとめず、その手を次の実へ。 「お、おにいさん?」 ブチ。 「なっ!?」 ブチ。 「やめ……」 ブチャ。 「あがちゃ……!」 ブチャ。 ろくな台詞言えないまま、瞬く間に手馴れた手つきで赤ちゃんを全て潰された親まりさ。 もう、口を開いたまま固まってしまっているが、やがてぷるぷると震えだします。 「ま、まりさのあがぢゃんがあああああああああ!!!」 その言葉がゆっくりたちの間を漣のように駆け巡っていく。 「どうじだの、まりさああああ!?」 不安と恐怖にまみれた仲間たちの声も、あえぐような嗚咽が応じるのみ。 再び始まる身動きできず、周囲の様子も伺えない狂乱のゆっくりタイム。 特に、その隣で赤ちゃんの顛末を視界の端に捕らえていたれいむは、笑顔がひきつって今にも崩れだしそう。 そのこわばった笑顔は、やがて媚びの色彩をともなって職員の方に向けられるのですが。 「れ、れいむの赤ちゃんは大丈夫だよね! だって、こんなにかわい……」 ブチ。ブチャ。ブチャ。プチ。 「がわいいのにいいいいい、なんでええええええっ!?」 職員の指先は熟練の動きでした。 一息に、れいむに芽生えた命をこそぎ落とします。 あとはもう、流れるような作業の連続でした。 「こどもだけは、ゆっぐりさせ……ああああああああああ!!!」 「早く、うまれでええええええ……っ! ゆっくりしないでえええ、ゆぎいいいいいいい!!」 「初めてのこどもなのおお、もってかないでえええ……むきゅううううううううん!」 職員の方が一歩進むたび、茎の成長を阻害する害虫たちは的確に駆除されていきます。 食の安全が叫ばれる今、このように薬品に頼らず、手作業で剪定していく細やかさに思わず感動してしまいます。 「さて。この作業はしばらくかかりますので、一足先に収穫間際の畑をごらんにいれましょう」 私が一通りその様子を写真に収めると、それを見計らって声をかけてくれる主任さん。 案内されて行ったのは、今の畑とは反対側の一角。 青々とした茎は豊かで、かすかに揺れる様子はまるで湖畔の波のよう。圧巻の光景。 害虫をきっちり駆除して手入れをすれば、ゆっくりの茎ですらここまでに実りを結ぶのでしょうか。 「これでも、本職の農家さんに比べるとまだ素人仕事なのですが」 主任さんの言葉は明らかに謙遜ですが、新規事業として進出しただけに農家への兼ね合いもあるのでしょう。 私も余計なことは言わず、ただその鮮やかな緑に見蕩れていました。 とはいえ、私には記者としての役目があります。しゃがみこみ、その茎を一本もちあげてみますと、ずっしりとした手ごたえ。 「おもい……よ……」 「ちぎれえ……」 「あかちゃん……あかちゃん……」 かすかに聞こえるのは、ゆっくりのうめき。 新鮮なはずです。苗床すら生きているのですから。 「実は、先ほどの状態からここまで育つのに十日もたっていません」 主任が自負と、ちょっぴりの自慢を秘めた口調で話し始めます。 ゆっくりの生命力は、まさに恐るべし。 けれど、脅威の生命力に驚くにはまだ早い。 「それどころか、数日おけばまたこの畑で連作が可能なのです。」 それは、人間生活にどれだけの恩恵を与えることでしょう。 うまく流通にのれば、博麗神社の貧乏人ですらビタミンB2やベータカロチンを摂取できます。もう、障子の紙を食べる必要はありません。 ……ごめんなさい、一部悪意に基づいた偏向記事がありました。 それはともかく、ゆっくり農園。 実に魅力的な存在ではないでしょうか。 おかげさまで、取材当初の思惑を超えて実に有意義な取材となりました。 そのことを、快く取材に応じていただきました関係各位に深く謝意を表し、今回の取材の終わりの言葉と代えさせていただきます。 以上、現場の射命丸文でした。 PS: 以前のゆっくりの単価暴落で一時は捕獲者がいなくなり、触れすぎた野生ゆっくりたち。 有益性も低い害獣のために全面駆除が検討されておりましたが、今回の発明と、ゆっくりを 愛好する諸氏及びゆっくりを虐待する諸氏の嘆願により、全面駆除は見合わせとなりました。 ゆっくりは、いつ幻想から消え去るかわからない、儚いもの。 息の長いお付き合いを、節に望むところであります。 by小山田 茎トークから、妄想拡大。 あと、地霊殿の委託までちょっとだけお休みします。 このSSに感想を付ける