約 1,324,887 件
https://w.atwiki.jp/25438/pages/3372.html
そうやって、先輩が冗談っぽく言ってさよならをした日があった。 あれはたしか二年前、オリオン座が消えるってニュースが流れてて、慌てて二人で夜空を見上げに行った日。 先輩の手は私より少し大きくて、でもきっとだぶん平均的には少し小さな手。 そんな華奢な手の平で私の手をギュっと握りながら、唯先輩はオリオン座を見上げていた。 その日、先輩は言った。 「目に見えなくなるって意外と信じられなくて困る」 そのセリフは全てがすべてあの日と同じわけではない。 私の記憶力はたかが知れているから、ニュアンスだけを、雰囲気だけを残して、細部なんて時間の経過と共に消えてしまう。 あの日一緒に観たオリオン座だって、今頭に思い浮かべられるものはあの日のオリオン座そのものではなくって、私がそうであると記憶して、そうであってほしいと願っている、あの日のオリオン座っぽいものだ。 そういう意味ではあの日の唯先輩のそれっぽいセリフは正しかったんだな、と私はいまさらになって思う。 目に見えなくなるって、信じられなくて困る。 私は唯先輩と一緒にいないとき、唯先輩の存在を信じられない。 唯先輩と手を繋いでいただなんて。唯先輩と互いに寄り添っていただなんて。 唯先輩が私のことを、私が唯先輩を好きなように好きだなんて。 私は疑い深いほうだから、唯先輩の存在を感じられないと、唯先輩のことをなかなか信じられないときがある。 だから、唯先輩に抱きしめられること、私は内心とてもうれしと思っている。 その日、私たちはさっぶい十一月の真夜中の歩道橋の上で、オリオン座を見つめた。 誰もこなくって、歩道橋の上にまで街頭の灯りは届いてこなくって。 自販機で買った午後ティーをカイロ代わりに買い込んで、歩道橋の真ん中あたりに座って二人でいた。 普段は律先輩とバカなやり取りをしている唯先輩も、消えてなくなってしまう運命にあるらしいオリオン座の真下では、なにやらセンチメンタリズムに浸っているらしくって。 ズズッと午後ティーのミルクをすすって、はぁ、と息を吐く。 その息がマフラーの隙間にこしだされて、とても白い息となって、夜空へと舞い上がっていった。 そんな何気のない、まるで意味のない冬のワンシーンを私はふとした瞬間に思い出すことがあった。 炊飯ジャーを開けたときとか、 お鍋の蓋を開けたときとか、 お風呂でお湯につかっているときとか、 肉まんにパクッとかぶりついて離れたその瞬間とかに。 唯先輩が夜空に白い息を吐くその光景を。 そして、こう思うのである。 唯先輩はあの時、 白い息を吐いていたのだろうか、 それとも白い息を作っていたのだろうか、と。 そんな他人にとってはどうでもいい言葉の違いでも私は唯先輩のこととなると妙に気になる。 きっと先輩はなんにも考えずにただオリオン座を観ていたセンチメンタルな気持ちを引きずって、 そのセリフを言ったっていうこともなんとなくわかってる。 そのセリフの後に続く言葉だってなんとなく推測できている。 でも、私は、ふと、きっと唯先輩と私の間でお別れのようなものが来るときに、おそらく唯先輩はそのセリフみたいなことを言うんだろうな、となんとなく思ってしまった。 そう、だから、だからだから、そう。 帰りがけに朝焼けの中で唯先輩が言ったその別れのセリフは、 私の中で消えようとしていたオリオン座の灯りよりも鮮明に私の中に残ったのだ。 「さよならあずにゃん、またいつか」 その日から二年後の私は一人で夜空を見上げていた。 バイト帰り、これまたさっぶい十一月の夜空を、今度は自転車にまたがって。 コンビニで買ったピザまんを頬張って、中身のチーズをハフハフしているときに、 その内側から立っている白い湯気にまた唯先輩のあの白い息のことを思い出しながら、 ふと夜空を見上げたのである。 そして、頭上に広がっている光景に仰天して思わずアツアツホカホカのチーズを丸呑みしてしまって、 喉元を涙目で叩きながら、信じられない、と一言を発する。 そこには消える運命であったはずのオリオン座が鎮座していた。 あれれ、私、二年前に唯に騙されたのかな、 たしかに光は薄くなっているけど、オリオン座あるじゃん、 まだオリオン座あるじゃん、 なんだよ、もう。 ゴホゴホと、さっきのチーズの丸呑みで火傷したようにいがらっぽい喉からおっさんっぽい咳を出しながら 私は帰ったら唯に言ってやろうと思った。 オリオン座、今から見に行かないって。 午後ティーを買いこんで、あの日のように手をつないで歩道橋の上から。 で、こう言ってやるんだ。 一緒に住んでいるから全く意味はないんだろうけど。 「さよなら唯、またいつかオリオン座を一緒に観ましょう」 そんな感じのニュアンスのようなそれっぽいセリフを白い息を吐くだか作るだかしながら。 戻る
https://w.atwiki.jp/yurina0106/pages/663.html
タグ 作品名さ さよならを教えて ~comment te dire adieu~ 曲名 歌手名 作詞 作曲 ジャンル カラオケ OP さよならを教えて-comment te dire adieu- MELL 長岡建蔵 さっぽろももこ おっとり DAM
https://w.atwiki.jp/mimatsu/pages/122.html
糸色望:神谷浩史 風浦可符香:野中藍 木津千里:井上麻里奈 音無芽留:??? 関内・マリア・太郎:沢城みゆき 木村カエレ:小林ゆう 小節あびる:後藤邑子 小森霧:谷井あすか 常月まとい:真田アサミ 日塔奈美:新谷良子 藤吉晴美:松来未祐 新井智恵:矢島晶子 臼井影郎:上田陽司 久藤准:水島大宙 糸色倫:矢島晶子 糸色交:矢島晶子 2話 クリーニング屋:MAEDAX 4話 あびる父:中村悠一 5話 男子生徒A:水島大宙 前田君:MAEDAX 6話 時田:上田陽司 集配員:水島大宙 使用人:中村悠一 糸色倫:矢島晶子 7話 ヲタク:上田陽司、水島大宙、遠藤圭一郎 8話 指導係:水島大宙 警官:中村悠一 9話 糸色交:矢島晶子 医者:水島大宙 白髪:中村悠一 10話 下見寺住職:中村悠一 作品一覧 さ行 アニメ一覧:さ行? @wikiへ
https://w.atwiki.jp/onirensing/pages/526.html
アーティスト:菅田将暉 レベル:4 登場回数:11(パイロット版第2回、レギュラー版第3回、第9回、第10回、第11回、第12回、第15回、第21回、第38回、明治コラボ、FNS27時間テレビ2024) 挑戦結果 ほしのディスコ:成功(パイロット版第2回) 細シャ:成功(レギュラー版第9回) 神山智洋:成功(レギュラー版第11回) Hiro:成功(レギュラー版第15回)(キー3つ上げ) 松田元太&松倉海斗:成功(FNS27時間テレビ2024)
https://w.atwiki.jp/vocaloidchly/pages/1175.html
作詞:プーチンP 作曲:プーチンP 編曲:プーチンP 歌:鏡音リン 翻譯:rufus0616 建議:Jeiz、Sin 向夢境道別 一直相信 你不會丟下我一個人☆ 不是理想 而是真實的你呢 在你前來搭救我...這並非夢境的現實中 也不需要力量這種東西了吧?☆ 但是你還是還是太天真了!既沒戴鬍子也沒劃皺紋! 重要的是來得也太慢了吧?回去後我要送你四字固喵!(註一) 因為那人很危險 中途你自己要逃開喔可以嗎? 起碼你跑得快… 所以沒問題的! 再也無法安裝備份了 不過沒關係,我很幸福喵 就因為終有一天會失去 所以才覺得值得! 因此 你能說「我愛你」嗎? 我想讓你說出「我愛你」喲! 給我說「我愛你」啦─! 你能說「我愛你」嗎? 我想讓你說出「我愛你」喲! 給我說「我愛你」啦─! 最後的日子近了 ... 從這開始 我再也不說謊了 就將一切全盤忘卻吧 如同少女 漫畫般 答應交往的台詞 麻煩你說我聽啦! 不論幾次! 再也不需要備份囉! 我的心就在這裡喲☆ 要是你回來 就來製造最後的回憶☆ 你能說「我愛你」嗎? 我想讓你說出「我愛你」喲! 給我說「我愛你」啦─! 你能說「我愛你」嗎? 我想讓你說出「我愛你」喲! 給我說「我愛你」啦─! 要向夢境道別☆ 這段時間謝謝了♥ 我是否能勝過 他喵? 如果沒有任何遺憾 就此消失也無所謂! 「我愛你」 「有裝SECOM嗎?還是沒裝?」(註二) 「我愛你」 「三小啊,你這笨蛋!」(註三) 「我愛你」 「要做嗎?」 「可別撤回你剛說的話啊,你這傢伙」 「我愛你」 「有裝SECOM嗎?還是沒裝?」 「我愛你」 「三小啊,你這笨蛋!」 「我愛你」 「要做嗎?」 「可別撤回你剛說的話啊,你這傢伙」(註四) ("下回預告”) 「鏡子的彼端 」(LEN 神威) 註一:這裡的四の字我的理解是「四字固」(某摔角招式名)的意思,而且プーチンP喜歡喜歡格鬥事物,我想應該沒錯吧。 註二:這是惡搞長嶋茂雄和木村拍的保全廣告,那家保全在台灣的名字是中●保全的樣子 註三:可參考這裡,是橋本真也和長州 力吵架時出現的話語,被人戲稱為史上最低の、大の大人による口げんか(史上最低級的巨漢吵架),長州可能是對橋本真也這句「何がコラじゃ、コラ!バカ野郎!!!」很有反應,想回應他,卻不小心說成ナニコラァ!タココラァ!!!,於是這句就變成很謎的流行語。 註四:這句也是長州的名言。 1020112 將「これがはじまりで 」從「從這裡開始」改為「從這開始」,避免過度解讀(大概吧(喂
https://w.atwiki.jp/nnioriginal/pages/31.html
作詞:マチゲリータP 作曲:マチゲリータP 編曲:マチゲリータP 歌:このり 翻譯:yanao(此情只待成追憶……) 向舞會說聲再會了 在無垠闇夜中聳立著的黑色城堡 今夜就卸下所有遮住了面目的事物 燭光火焰之中正閃著藍色的光輝呢 歡迎來到我的舞會,女王如此邀請著 在被倒轉的鬧街之中 看到的是懸著上吊骷髏的蘋果樹 被掛在蜘蛛網下的人 咕嚕咕嚕嚕地轉著圈 雖然無法呼吸但這感覺還真是好呀 再見了開始虧缺的月光啊 被蟲子蛀蝕啃咬的月光啊 此處是虧缺月光的王國 千隻玉兔奔馳著 再見了開始虧缺的月光啊 我是被光明所迷惑的人 明日是盈滿月光的王國 百匹狂狼猛衝著 美麗得像是能迷惑視線的月色 在碧藍闇色中逐漸腐朽的金色蝴蝶 就在幻覺深淵裡所不可見的恐怖中 我們的世界逐漸走向崩壞 已然風化的音符 會在心裡留下什麼呢 在陶醉回歸的盡頭所看見的 那入天的階梯意義又為何 立於前方的孤獨山丘 在星光閃爍的夜裡 我們存在的意義 就在手心間浮現而出的天空之中 再見了已然虧缺的月光啊 持續地被蛀蝕啃咬的月光啊 那處是虧缺月光的王國 剩下的是要塞與最後的劍刃 再見了已然虧缺的月光啊 在不可見的恐怖當中 那處是虧缺月光的王國 存在著旋律以及醜陋的公主們
https://w.atwiki.jp/ddrdp/pages/2158.html
さよならトリップ ~夏陽 EDM edition~(踊) 曲名 アーティスト フォルダ 難易度 BPM NOTES/FA(SA) その他 さよならトリップ ~夏陽 EDM edition~ 東雲夏陽(from ここなつ) A 踊9 135 255 / 20 STREAM VOLTAGE AIR FREEZE CHAOS 47 39 36 54 10 楽譜面(4) /踊譜面(9) / 激譜面(11) / 鬼譜面(-) 属性 プレイ動画 https //www.youtube.com/watch?v=fuB1m3ef4Ak (x2.5, NOTE) 解説 名前 コメント コメント(私的なことや感想はこちら) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/c-atelier/pages/2464.html
実際に読む(リンク) 前話『ダシガライダー Climax form』 概要 さぁ、お前の罪を数えろ! ついでに300スレ前後ではダシガライダーは人気がないという衝撃の事実が判明 レシピ追加 無 登場キャラ 登場 ルーシィー ダシガライダー 神父さん ノートン キャットイマジン 元ネタ解説 タイトル 「『Tにさよなら/教会に正義の花束を』」 『仮面ライダーW』最終話タイトル『Eにさよなら / この街に正義の花束を』より。 実はこのタイトル自体も仮面ライダーBLACKの総集編『海に追憶の花束を』のパロディである 323 ルーシィー ダシガライダー「俺たちは!私たちは!二人で一人のダシガライダーだ!」 『仮面ライダーW』の主人公左翔太郎及びフィリップによる、この作品を象徴するセリフ。 321 ダシガライダー「“T2ガイアメモリ”トカナントカ」 『仮面ライダーW』の劇場版『AtoZ/運命のガイアメモリ』に登場するガイアメモリ群の名称。 作中ではこの「T2」に作者のトリップである「◆TAI2.kX92w」(タイツ)をかけている。 325-335 挿入歌「Α-Α-Ε ~An Aion Existent~」 『仮面ライダーW』OP『W-B-X ~W-Boiled Extreme~』の替え歌。 また、「AAE」はAA作成ツール「アスキーアートエディター」の略称でもある。 333 ト書き「エターナルカオス」 『仮面ライダー龍騎』に登場する仮面ライダーオーディンの必殺技で、仮面ライダーナイトに致命傷を与えた。 余談だが、ゲーム作品ではこの必殺技の全容を拝むことができる。 336 ナレーション「…以上が、原因不明の消失事件の真相であり、”ダシガライダー”と名乗るAAたちの戦いの真実である。この戦いにあるのは、正義と、出番が欲しいという願いだけである。」 『仮面ライダー龍騎』最終話における、OREジャーナルの大久保編集長のライダーバトルに対する記事の一部「…以上が、原因不明の失踪事件の真相であり、仮面ライダーと名乗る人間たちの、戦いの真実である。この戦いに、正義は、ない。そこにあるのは、純粋な願いだけである。」より 『龍騎』という作品における戦いの無常さが伝わってくる。
https://w.atwiki.jp/tsurucale/pages/112.html
アニメ『俗・さよなら絶望先生』のエンディングで、毎回違ったイラストレーターや漫画家がイラストを描いていますが、第9話のイラストを描いています。 俗・さよなら絶望先生 エンドカード (アニメ雑録)
https://w.atwiki.jp/kairakunoza/pages/760.html
1時間近くたっても、こなたはまだ戻ってこなかった。 六月の空は今だ夕焼けの気配を感じさせなかったが、教室は閑散としていた。 「こなちゃんとお姉ちゃん遅いね」 「そうですね」 校庭で練習に励む運動部を見ながら、つかさが呟いた。 みゆきはこの日何度目かの、意味のない相づちを打つ。 その時、机の上においた携帯が振動した。 「どうしました?」 「こなちゃんから……ごめん、先に帰ってて、だって」 二人は揃ってため息をつくと、おもむろに腰を上げた。 帰るついでにかがみのクラスを覗いたが、そこにもこなたとかがみはいなかった。 いつもは滅多に座れないバス停のベンチに、二人並んで腰掛ける。 「この時間は人が全然いないね」 「部活のない生徒はみんな帰ってますからね」 こなたが出て行ってからのつかさは、ずっとうわの空だった。 一旦自分の世界に入ってしまった時のつかさと会話することを、みゆきは諦めていた。 つかさはかなり個性的だ。 その純粋さはいつか人の怒りを買いそうで、見ていてたまに不安になる。 今年18歳になるというのに、なぜか黄色いリボンが似合っている。 お料理とお裁縫と好き。 突飛な独り言。 たまに付き合いづらさを感じることも、正直ある。 それでもみゆきは、この一種奇跡的な少女を好ましく思っていた。 「……私悪い子なのかな?」 「どうしてですか?」 「だって……えっ……あ」 つかさがようやく頭の中の一人旅から帰ってきた。 それを感じたみゆきは、まるで捕らえるかのようにつかさの手を取った。 つかさが少し赤くなったの見て、みゆきが微笑む。 「もう……ゆきちゃんってば。 ……だってさ、もし二人が私たちが感じてるように両思いだったら、 思いが通じるのはいいことだよね? そりゃ女の子同士だけど、私は別にいいと思うし……。 それなのに、なんで素直に喜んであげられないんだろう」 「仕方ありませんよ。 もし二人が特別な関係になったら、今までと同じようにはいきませんからね。 彼氏ができた途端に付き合いが悪くなる方もいるらしいですし」 「そうなんだよねー。 それって良く聞くけど本当なのかなぁ?わかんないや。 ……でも私、これもいい機会なのかなって思ったりもするんだよね」 「何の機会ですか?」 「お姉ちゃん離れの機会。 どうせ来年になれば、多分お姉ちゃんは東京に行っちゃうだろうし。 今まで私お姉ちゃんにべったりだったから、ちょうどいいのかなって」 つかさは色々とコンプレックスを抱えていた。 かがみに対しては勿論、みゆき、こなたに対しても。 みゆきはつかさが時々、自分の身体を羨ましそうに見ていたことを覚えている。 「大丈夫ですよ。 つかささんはかがみさんがいなくたって、ちゃんと生きていけますよ。 それと、寂しいと思うこととは別の問題です」 「えへへ、ゆきちゃん優しいね。 でもさ、もしこなちゃんとお姉ちゃんがすっごいラブラブになってさ、 お互いしか見えないー、ってなったらゆきちゃんどうする?」 「そうですね、もしそうなったらお尻を蹴っ飛ばしてやりましょうか」 「ふーん……えええ!?蹴っ飛ばす!?」 「私達は友達ですから。 友情にもとることをするなら、黙っているわけにはいけません。 あ、つかささんは平手のほうが好みでしたか?」 指を口に当て小首を傾げたみゆきは、まるでいたずらっ子のようだった。 「ゆきちゃんって結構過激…… でもそうだよね、私たちが文句言っちゃいけない理由なんてないよね! うふふ、そう思ったらちょっと元気が出てきたよ」 こなたとかがみが、自分たちのことを忘れるはずはないと、二人とも本当は解っていた。 そんな単純な展開にはきっとならない。 感情に任せて蹴っ飛ばせる機会なんて、あるはずないのだ。 それでも、だからこそ、この想像はとても愉快だった。 二人の少女の笑い声は、誰に聞かれることもなく風に溶けていった。 「ごめん、先に、帰っててってと」 こなたはメールを打ち終わると携帯の電源を切った。 こなたとかがみは、屋上に繋がる階段の踊り場にいた。 普段屋上が開放されていないことから、ここにくる生徒は滅多にいない。 「つかさとみゆきに悪いことしちゃったね」 「二人なら大丈夫だよ、気にしなくっていいよ」 「あんたが言うなよ」 かがみは階段に腰を下ろして膝を抱えて座っていた。 こなたはかがみと少し距離をとって、手すりに寄りかかる。 「なんだか昨日から人に迷惑かけてばっかり。 まあ日下部に関しては私が気付いてないだけで、ずっとそうだったんだけど」 かがみは自嘲的に唇をつり上げると、膝を抱く腕にさらに力を入れた。 「まあ私もたまに気になってはいたんだよね。 でもそれを言ってかがみが来なくなったら、って思うと怖くてさ。 つい言いそびれちゃった」 「あぁ~あ、私だけかよ、気にしてなかったの。 ねえ、私ってあんたの教室に行く時そんないい顔してた?」 「私が言うのもなんだけど、結構」 「うわぁ……」 それを聞くとかがみは、背中を丸めて顔を伏せてしまった。 「おーい、かがみー」 呼びかけてもかがみの返事はなかった。 こなたはかがみの下に回ってもう一度声をかける。 「かがみー、パンツ見えてるよ」 「別にいいわよー、今更あんた相手にそんなこと気にしないわ……」 こなたは、かがみの気のない返事に拍子抜けした。 「じゃあ触ってもいい?」 「別にいいわよー……え!?やっ、ほんとに触るなぁ!もう冗談でも……」 内股に指の感触を感じて、首を上げると紅潮したこなたの顔が目の前にあった。 いつものにやけ顔を想像していたかがみは、思わず息をのんだ。 「私も冗談のつもりだったんだけど、ちょっと恥ずかしいね」 「もう、なんて顔してるのよ」 かがみは立ち上がるとスカートについた埃を手で払った。 こなたはむせながら手を顔の前で振った。 「けほっ……人の顔の前でやんないでよ。 ふふ、やっとかがみ話をする姿勢になったね」 「う、私が悪かったわよ、でも次からは口でいいなさいよね」 かがみは腰に手を当てて大きく背中を反らした。 背骨がゴキゴキと中年のような音をたてる。 「かがみって昨日からずっといじけてたんだね」 「くぅ~……はあぁ、我ながら情けないわ……。 ねえこなた、もし私があんたを好きだったら、あんたはどう思うの?」 「私も今まで考えたことなかったけど、かがみだったら嬉しいかも」 「確かに私にとってもあんたは特別よ。悔しいけど。 でもそれが恋なのか、自信がないのよ」 女同士、しかもその思いを人から指摘されてしまったせいで、かがみは混乱していた。 「だったらさ、とりあえず付き合ってみない? それでやっぱり恋じゃなかって言うなら、それでいいしさ」 「付き合うって何するのよ?」 「二人で遊びにいったり、家でゴロゴロしたり。ようは今まで通りってことだよ」 かがみは少し考え込んだが、結局こなたの提案を受け入れることにした。 自分としてもこの宙づり状態は気持ちが悪かったからだ。 「そうしてみよっか。 あぁ~あ、なんでこうはっきりしないんだろ。 付き合うってもう少し解りやすいものだと思ってた」 「現実はゲームみたいにいかないんだよ」 「うわっ、あんたに言われるとすげえむかつく」 「じゃあ、こういうのは?」 こなたはかがみの前に、そっと手を差し出した。 かがみはためらいながらもその手を取る。 「どう?解りやすいでしょ?」 こなたの顔は得意気で、少し興奮していた。 かがみより一段先に降りて、エスコートするかのように歩き出す。 「もう、調子いいんだから……」 そういいながらも、かがみは満更でもなかった。 これから二人で過ごす時間を想像すると胸が高鳴る。 しかしその時ふっとみさおの顔が、かがみの脳裏によぎった。 「あ、あのね、こなた。 付き合うのはいいんだけど私お昼はもう、自分のクラスで食べようかと思う。 日下部や峰岸とも、今年でお別れなのは同じだから。 ……いいかな?」 「まあしょうがないよね、でも帰りは私にとっておいて。 ……やれやれ、女の子はめんどくさいよ。」 「うん、みゆきとつかさもいるしね。解ってるわよ」 こなたの口調はどこか気取っていて、物まねをしているように不自然だった。 その裏にある寂しさをかがみは感じとったが、敢えて無視した。 こなたも、一人にべったりになることの不毛さを知っているのだから。 だからこそ、かがみは自分から提案することにした。 「こなた、今度の日曜日デートしようよ。 私今ちょうど見たい映画があるんだ」 こなたの顔がぱっと明るくなる、 「折角デートなんだったらさ、お昼も一緒に食べてから行こうよ。 こないだとってもパスタの美味しい店を見つけたんだ。 ランチなら安いしね」 「いいね、楽しみにしてるわよ」 こなたはデートの計画を夢中になって考えだした。 あそこに行きたい、あれが食べたい。話はどんどん飛躍していく。 「もう、全部行ったら一日で足りないじゃない。それじゃ旅行よ」 さっきは、今まで通りだよ、なんて言ったくせに。 呆れながらも、かがみもつられて笑い出す。 二人だけの、特別な時間。 何かがはじまりそうな予感に、二人はいつまでも身をゆだねていた。 コメントフォーム 名前 コメント これで完結なの?ここからでしょうに~。 でもよかった。単純な百合ラブとはちょっと趣が違ってて。 ここから先がもっと楽しみになる話でした。 -- 名無しさん (2011-04-26 16 24 08)