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こいしたんとはLINEのネカマである。 学歴は中卒で、親の脛をかじって生きている典型的なニート。 LINEでは東方projectのキャラクター「古明地こいし」をトプ画にしていた。
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こいし ロダ src2/up0110 up0026 yndr/src/up0312 路傍の意思.txt Spiegel von Hartmann 1.雨の日の邂逅- 2.アシンメトリのシンメトリ- 3.少女Kとの異常な日常- 4.ゆびきりげんまん- 5.針と糸- 6.鏡の向こう、その先にある世界。- スレネタ ■5スレ目 こいし/5スレ/669 こいし/5スレ/775 ■6スレ目 こいし/6スレ/914-915 こいし/6スレ/938-940 ■10スレ目 こいし/10スレ/399 ■12スレ目 こいし/12スレ/624 見えない恋心 こいし/12スレ/706 勇儀12スレ655の続き ■13スレ目 こいし/13スレ/329と350 こいし/13スレ/495 こいし/13スレ/550 ■14スレ目 こいし/14スレ/352 或る男の一日 ■15スレ目 こいし/15スレ/397-398 夏の夜のソネット こいし/15スレ/837 ■16スレ目 こいし/16スレ/4・6 こいし/16スレ/168 ■18スレ目 こいし/18スレ/705 ■19スレ目 こいし/19スレ/8 こいし/19スレ/81・86 ■21スレ目 こいし/21スレ/82-83 116-117 こいし/21スレ/132-133 139 152 こいし/21スレ/169-170 184-186 こいし/21スレ/134-135 138 143 こいし/21スレ/150 153 160-161 こいし/21スレ/179 202 ■22スレ目 こいし/22スレ/36 こいし/22スレ/201-203 こいし/22スレ/328 こいし/22スレ/ ■23スレ目 古明地こいしの深層心理 ■24スレ目 こいし/24スレ/2 古明地さとりのカウンセリング20 hypnotherapist K K hypnotherapist K K 2 hypnotherapist K K 3 hypnotherapist K K 4 こいし/24スレ/399 『アニムス』 ■25スレ目 こいし/25スレ/68 こいし/25スレ/545 ■ジョバンニ氏 こいし/ジョバンニ氏① ■New User 自由人こいし 自由人こいし2
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気が付くと、年はもう超えて居たらしい。 除夜の鐘はとうに聞こえず、偶に遠くの方で騒ぐ声が聞こえる。 時間は解らないが、初日の出が見えればどれくらいか解るだろう。 布団から出る事もなく、転がったまま暗闇を見つめた。 今、丁度目が覚めて身体を起こしたところだ。 布団の中は暖かい。 それは、きっと一人でなく二人分の暖かさだから。 安心した表情で眠りこける彼女がそこにあるから。 「……くー……」 まるで妖怪とは思えないその緩みきった寝顔に軽くため息。 俺よりずっと年上だと言われても全く実感は湧かない訳で。 彼女の姉も全くそう見えなかったが、その妹なら尚の事。 くい、と服の裾を掴まれていたのに気付き、もう一度ため息。 身体を起こすだけならまだしも、立ちあがって酒でも取りに行こうものなら起きてしまう。 冬の風は、微かに扉を揺らして吹きこみ、寒さが身体に沁みる。 布団を被り、横になった。 「……すぅ……くー……」 ふわふわの髪が広がっていて、女の子の柔らかな匂いが感じ取れる。 さわさわと頭を撫でてやると、心地よい髪の感触。 「……ん」 目を覚ます様子は無く、寝息がまた聞こえてくる。 時たまそう見えて起きて居る事はあっても、今回は本当に寝ているようで。 安らいだ様子のこいしの姿に苦笑を一つこぼす。 全く以てこの様子だけ見て居ると、妖怪らしく無さ過ぎて。 「ふふー……」 無意識を操る程度と言われる彼女の能力。 夢の中は、きっと彼女の望む世界が広がっているんだろう。 夢は、無意識の範疇と聞いた事もある。 無意識を操る程度の能力は、彼女が第三の瞳を閉ざしてからのものと教えて貰った。 彼女の姉、古明地さとりは他人の心を読む事が出来る。 こいしは、その能力を厭って他人の心を読む事が出来なくなった。 何故閉ざしてしまったのか――それは、まだ聞く事が出来なかった。 それから、彼女はずっと孤独で生きて来たのか。 俺が産まれて死ぬまでよりも永い、途方も無い程に永い歳月を。 地霊殿に居る間は姉が居るから孤独でなかったとしても、それ以外の瞬間を全て。 地上に一人出て、一人彷徨い、一人人を襲い、一人生きて来た。 ――一瞬、背中にぞく、と寒気を感じた。 それが何なのか、と言う事に気付くのは一瞬、直後に襲い来るものは自己嫌悪。 飛び退きかけて、布団の中から出る事も出来ない拷問に似た瞬間に眉を顰める。 ……ああ、これは、彼女と言う異質の存在に対する、恐怖だ。 孤独でそんな永い時間を過ごしたら、心の何処かが破綻する。 彼女の心はきっと何処かが壊れて居て、俺が知ることが出来ない場所がある。 その知らない要素は何処かで顔を出し、異質さを俺の前に見せつける。 彼女の存在は俺とは違う事は、とうに解っていた筈なのに。 「……んぅー……」 彼女の頭に置いていた手が堅く硬直し、微かに震えている事に気付く。 少しだけ寝苦しそうに、一度こいしが寝がえりを打った。 軽く身体を抱くような体制になりながら、背中を嫌な汗が伝う。 「……っ」 奥歯を噛みしめて、叫び出しそうになるのを堪えた。 こんな感情をぶつけられたら誰だって知りたくないと思う。 ましてや、親しい人にぶつけられたこんな悪夢のような感情なんて。 耐えられるものでないから、瞳を閉ざした。 『だから、私は他人の心を知る事が出来ないんだよ――』 刹那、彼女の寂し過ぎる横顔が脳裏を過った。 途方も知れない彼女の苦痛があったのだろう。 途方も知れない彼女の嘆きがあったのだろう。 途方も知れない彼女の悲嘆があったのだろう。 途方も知れない彼女の後悔があったのだろう。 それの全てをひっくるめて、怖い、と? 臆病も良い所の自分に、軽く殺意すら覚える。 どれだけこいしが苦しんできたのか解らずに、恐怖を感じた自分に。 腕の中に居る妖怪少女は、もっと恐ろしいものと戦って来た筈ではないか、と。 人の心を知る事無く、孤独になる事に逃げただけ。 彼女の事を深く知らない人はそう言うかもしれない。 けれど、こいしは、途方も無い間、孤独と戦ってきた。 ひとりぼっち、誰も居なくて、誰にも愛されないところで、誰にも知られる事なく、一人で。 それは、誰でも無い、こいしだから戦えた事で。 どの妖怪でも、どの人間でも戦えるものではない。 他の存在から認識されないように無意識を操り、自分の存在を覚られなくする事で孤独に居ようとする事なんて。 決して、当人が気付いていなかったとしても、それは一つの戦いだから。 愛するものを救うヒーローなんてものとは程遠い。 柄じゃないし、そんな強さなんてただの人間の俺にある訳がない。 でも、それでも一つだけ、出来る事がある。 こいしの傍に居て、孤独だけは打ち払ってやる事が出来る。 腕の震えはもう止まっていた。 呼吸は落ちついて、何処か胸の中に暖かなものを感じる。 それは、きっとこいしに触れる勇気。 孤独に過ごしてきた妖怪少女の全てを包みこむ覚悟。 「ふぁ……?」 ごし、と目を袖で擦り、こいしが目を覚まして俺を見上げる。 「……っ」 澄んだ瞳を見下ろして、一瞬だけ息を呑んだ。 その眼が、最上級の翡翠のように煌めいて、綺麗過ぎたから。 「……おはよー……ぅわぷっ」 目をごしごしと擦っているこいしの頭を包むように抱き締める。 それで目が完全に醒めたのか、何するのー、と言うように見上げて来た。 そのまま髪をくしゃりと触れてやると、目を細めて猫のように甘えた声を上げるこいし。 「……もー、まだ真夜中なのにー……」 すりすりと胸元に顔を擦りつけながら、幸せそうな声を漏らす。 ふわふわの髪が口元を擽って気持ちいい。 一度軽く唇を髪に落とした。 「あけましておめでとう、こいし」 「そだね、あけましておめでとう、だねー」 ふふ、と笑うこいしと新年の挨拶を布団の中で交わす。 抱き合ったまま笑い合い、闇の中で温もりを交わし合う。 先程の恐れや重い気持ちは、もう何処かに消えて居る。 闇の中映るこの笑顔が全てをぬぐい去ってくれたから。 「……どしたの? 何か、凄い真面目な顔してるよ?」 じ、と見上げたこいしが首を傾げた。 「気にするなって」 ぽふ、と頭を撫でて、笑顔を浮かべてやる。 「……ん。でも、前より、何だか……こうやると、安心するのー……」 ぐいぐい、と顔を押しつけて来るこいしの吐息が少しくすぐったい。 抱き締めたまま、ふと障子を見ると微かに下側が明るくなっていた。 「……夜明け……?」 こいしが俺の肩の上に顎を乗せるようにして、覗き込む。 「初日の出、見てみようよっ」 ぱぁっと笑顔を輝かせたこいしの身体をそっと離してやる。 「いいぜ、代わりにきちんと上着着とけよ」 言って起き上がると、俺自身も上着を羽織って毛布を丸めて手に取った。 「はーいっ」 こいしの返事が返ってくると、扉を開け放った。 冷気が部屋に吹きこんで、身体を貫いて行く。 「ひゃ、風冷たっ」 こいしが自分の身体を抱くようにして、上着を羽織った。 「ぁー……寒」 ぼやきながら梯子を建て掛け、布団を屋根の上に放り投げる。 冷たい風に身体を貫かれる感覚は決して好きなものではない。 急ぎ梯子を登ろうと足を掛けると、ばたんと扉の閉まった音。 ひゅう、と空を舞って屋根の上に降り立つこいしが、すぐに布団を身体に纏った。 「ぬくぬくー……」 蕩けたような表情で言う彼女を見て、俺も梯子を登りきった。 「俺も入れてくれ、寒いって」 「どーぉーしよっかなーぁ」 妙な間延びした声で、こいしが悪戯を思いついた子供の表情をこちらに向けた。 「入りたいー?」 何処となく嬉しそうな様子で、笑顔を浮かべながら。 「入らんと、初日の出待つ間に風邪引いちまうっての」 「大丈夫、きちんと看病してあげるからー」 くすくすと笑いながら、冬風の中屋根に上り傍らに立つ俺を見上げるこいし。 「どうしても、入れて欲しいのなら、お願い事聞いて貰っても、いーい? そうしたら、入れてあげる」 甘えた声を上げてはしゃぐこいしにため息をもらしたいが、出るのは白く冷たさを感じさせる吐息ばかり。 「なら、そのお願い事とやらを早く言ってくれって」 本気でこのままだと凍え死ぬ寸前まで行きそうだと何処か冷静な思考で思いながら、こいしの言葉に耳を傾ける。 「じゃあ、ねー……キス、して?」 「ああ」 言うが早いが、しゃがみ込み、顔を俺の方に向けさせると唇を奪った。 「――んっ」 こいしが珍しく目を白黒させて居る様子が間近に見えたが、そのまま味わうように口づけて。 数瞬後、そっと唇を離した。 「言ったのは、こいしからだからな」 呆けたような様子のこいしに声をかけてやりながら、毛布を被り後ろから抱き寄せる。 「……ふぁ、もっと照れたりするのかと思ったのに」 こて、と暖かい背中を預けて来るこいしをぎゅ、と抱き締めて。 「何時までも弄られてばっかりじゃないんだよ、俺も」 何も持たずに此処に来た自分が初めて持った覚悟は、何にも打ち破らせないと決めたから。 この温もりだけは誰にも奪わせないと決めたから。 「……うん」 気持ち良さそうな甘えた声でこいしが呟いた。 聞いているだけで脳髄までが蕩けそうな声音に、鼓動が高なる。 「どきどき、してるよ?」 微かに頭をこちらに向けてこいしが囁く。 「そんな蕩けたようなこいしの声が悪い」 ぼやきながら白み始めた東の空を遠く眺めた。 「えへへー……だって、暖かいんだもの」 甘えたままの声と、ふわふわした髪と、翠の瞳と。 頬に頬を寄せて、その一瞬を待つ。 東の空に陽が昇る。 冷え込んだ夜の帳は氷のように溶けて、朝焼けた緋色が世界を染め上げて行く。 「あ、来たよっ、初日の出」 「ああ」 この腕の中の愛しい少女を、何時までも手放すことのないように。 それだけを願って、瞳を閉じてもう一度唇に口付けた。 ─────────── 「――ごほっ」 目を覚ますと、身体が重かった。 身体を起こそうとして、力が入らない。 背筋から全身を走り抜けていくような寒気が、体調の異常を告げる。 頭の中を蛇がのたうつような痛みに、起き上がる事が出来ない。 喉の具合は勿論悪く、掠れた声と咳しか出ない。 「あ。朝だよー……どしたのー?」 きっと昨日も泊まり、先に起きて居たであろうこいしがしゃがみこんで俺の頭を軽く揺する。 すると頭にがんがんと響き、最早成り振り構っていられそうにない。 「……ごほ、こいし、揺らす、な……風邪、引いた、みたい、だ」 今日と言う一日は、そんな事から幕を開けて――開けた早々、俺は意識を失った。 「……大丈夫ー……?」 もう一度目を覚ますと、何処か不安げな様子をしたこいしが心配そうに見下ろしていた。 額には冷たい手拭を置かれ、布団は何時もの倍くらい掛けられていて少し重い。 暑く…と言うか熱く感じるのは、身体の熱の所為もあるだろう。 「……あぁ」 額に置かれた手拭に触れて息を吸うと、そのままごほ、と咳き込み言葉が続かない。 「……無理して話そうとしたり、しないで大丈夫。私は、此処にいるよ?」 そっと手に触れて、安心させるように微笑む彼女の表情に救われる。 「……感染らない、のか?」 「大丈夫。人間と妖怪じゃ、病気の掛かり方は違うみたいだし」 初めて聞いた話だ。 「でも、私じゃ解らないから、詳しい妖怪に来て貰ったの」 「地底からこっそりお邪魔してるよ、あんまり顔出し過ぎると拙いからね」 ひょこっと顔を覗かすポニーテールの少女。 確か土蜘蛛と言う種族だった気がする。 「こいし様から話聞いた時にゃ何事かと思ったけどねぇ」 「……黒谷ヤマメ、で良いんだっけ、か?」 意識が朦朧としているのもあって、名前を絞り出すのが精一杯だ。 「そうそう。良く覚えてたねぇ。ヤマメで良いよ、私のことは」 神社の宴会騒ぎの時に顔を出した時に顔を合わせて居た覚えはある。 「ね……大丈夫、なの?」 いつもの能天気な様子とは違うこいしにヤマメも何処か苦笑して様子で声を掛ける。 「治す為に私を呼んだとしたら、それはそれで間違ってる気もするんだけどねぇ」 元々は病気を引き起こす側なんだろう彼女が、対処法を聞きに来られるというのも当人にとっては皮肉か。 「……ま、風邪の中でもちとタチ悪くて感染りやすい奴だね。人間と人間だったら看病しているだけで感染ってしまうくらいには」 「良かったぁー……」 ほっとこいしが安堵したような吐息を漏らす。 ……待った、今の説明だと該当する病気が一つしか思い浮かばないんだが。 「……なあ、それ、大分高熱出たり、しなかったか……」 外の世界で言う、インフルエンザか……。 こんなものが幻想入りしてるって事は、大分前に流行したものかもしれないが。 ごほ、ごほ、と咳込みながら続けると。 「そう言えばそうだねぇ。治療法ってもま、しっかりこいし様が看病するだろうし……」 きょろきょろとヤマメは周囲を見回す。 木で出来た箱を見つけると引っ張り出して、こいしに手渡した。 「はい、薬箱もあるんで。ただまぁあんたがこの分だと里全体で流行って薬師が回ってるだろうね」 かちゃ、とこいしが開けると白い袋に包まれて入っている薬の数々が視界に入る。 「頭痛、感冒、咳……うん。効きそうな薬、ありそうっ」 がさごそとそのまま探し始めるこいし。 「あ、こいし様。私はもう退散するよ、お二人の邪魔したくないってのがあるのと」 ヤマメが立ちあがりながら肩を竦めた。 「今巫女にでも見つかったら、原因が土蜘蛛だとか言われて潰されそうなんで、さっさと旧都逃げ込まないとならないからね」 深くため息をついて呟く彼女は彼女で、こう言う時は大変なのかもしれない。 「お邪魔とは思ってないけど、うん。解ったよ、ありがとね」 こいしが笑顔を浮かべながら、手を振ると。 「いーえー、どうぞ末永くお幸せに」 ヤマメが笑いながら扉に手を掛ける。 その背中に、掠れた感謝を投げかけた。 「ありがとう、な……今度、地霊殿、行く途中に……土産でも、持ってってやるよ」 「あっはっはっは、普段病魔操ってる私が言われる事じゃないね。どうしてもってのなら、キスメやパルスィ、勇儀さんの分も宜しく頼むよ」 彼女は朗らかに笑いながら、扉を閉めた。 暖炉の方で湯が煮え立つ音が聞こえる。 こいしが静かに立ち上がると、鍋で煮て居た湯と井戸の水を混ぜて微温湯を作っていた。 ――……。 ヤマメが明るい声を出して居たからと言うのもあるが、こいしと二人になると一気に静かになった。 俺の体を気遣ってか、あまり声を大きく出さず悪戯心や子供っぽさを見せる様子の無いこいしと。 「ごほっ、ごほ」 話題を作る程の思考も、何かしてやる体力も病に奪われている俺だけ、と言うのもあるだろう。 「……ね、お薬」 「ああ」 個包装の薬を手に取ると、こいしは白湯に溶かしこんだ。 「起きれる?」 そっと俺の身体を支えるように、肩に手を回す彼女。 同時に身体を動かした事で頭に走る痛みに眉を顰める。 意識が遠くなった方が気が楽な痛みなのに、朦朧としたそれは未だに俺を引きとめて居る。 「っぁ――」 知れず、口をついてでる呻き。 こいしが驚いたような様子をして、すぐに身体を横に戻した。 「……ごめんね、痛かった?」 「ああ、いや……我慢なら、出来ると、思う……ごほ」 少しだけだ、と思って手を布団について起き上がろうとすると。 「ダメだよ?」 そっとこいしに額を抑えられ、布団に身体を沈み込ます事になった。 「飲ませてあげるから、大丈夫」 大人びた様子で微笑んで、くい、と器を傾けるこいし。 こいし自身の口へと。 「――」 何を、と言うよりも早くこいしが身体を屈め、俺の唇に唇を押しつけた。 「……んっ。……っ、っ……」 同時に口の中に注ぎ込まれて来る苦い薬液。 鼻が詰まっていて、匂いを嗅ぐ事も出来ないし舌も馬鹿になっているけれど。 「……っ。……く、……くっ……」 暖かい。 彼女の吐息も、薬液も。 湿った唇は、熱で渇き罅割れた俺の唇を潤して行く。 「ん、ちゅ……っ」 そのまま、ちゅぷ、と少しだけ濡れたような音を響かせて、唇が離れた。 朦朧としていた意識は、尚彼女へと焼けて行く。 「……あと、二包。きちんと、飲んで?」 じ。 見下ろして来る瞳に、一抹の不安も迷いも見られない。 「……先に、言え、って」 「……無意識だもん」 言いながら、白湯に薬を溶いていくこいし。 「……んっ」 溶き終わったのか、もう一度口に薬液を含んだ。 「……仕方、ないな」 瞳を閉じる。 「……ん、んっ」 ちゅ、と再度の口づけ。 今度の薬液は、妙に甘ったるかった。 薬そのものが甘かったのだろうけれど、きっと。 「……っ、く、……っく、っ」 こく、こく、と嚥下する間、こいしは唇を離そうとしなかった。 そのままちゅ、ちゅと残った薬を軽く吸われる感覚。 「……ん……はぁ、っ」 そのまま、ぺろぺろと俺の唇を舐めてはくすぐったい。 咳を我慢してなければならない時間が、長く咽そうでこいしの腕を軽くとんとん、と叩いた。 「……っ、ごほっごほ、っ、ごほっ……!!!」 ひときわ強く咳き込むと、頭痛がぐらぐらと響く。 口うつしやキスの余韻も合ったもんじゃなく、頭痛も咳もさっきまでの比にならない。 「……ごめんね、つい、無意識で」 本当に、便利な、無意識、だよな…。 返す余裕も無く、目を閉じた。 「最後の」 ……キスを求めてるようで何とも女々しい気はしないでもない。 「ん、飲ませたげるよ」 もう薬を溶かしてあったのか、こいしが器を手に取った。 「……」 くい、と傾けて――唇を落とされる。 「んっ」 三度唇が落とされて、俺の唇が潤される。 今度の薬は、殆ど味がしなかった。 少し粉っぽい水と、こいしの味が流れ込んで来る。 「んん……っ」 こく、こくと嚥下するところで。 「……。ちゅ、……ちゅく、っ」 「っ……!?」 こいしが舌を絡めるように唇を合わせて来て、思考が一瞬停止した。 流石にそこまで深くは予想してなくて、焦りつつも何とか嚥下しきる。 唇を重ねる事はあっても、舌を絡めるような事はしたことが無かったのもあってか頭の熱が限度を超える程に焼けていた。 「……ん、ちゅっ、ん――」 離そうとしても身体を動かせないから自分からは離せず、逸らすには逸らすで惜しいものがある。 結局、こいしの身体をつんつん、とやって離させるしかない訳で。 「……ちゅ、ぱぁっ」 ……こいしが唇と舌を離すと、にぱ、と彼女は笑顔を浮かべた。 「……ぺろぺろがダメだったから、舌なら良いかなーって」 少なくとも今は全く良くない。 その反論をする間も無く、意識が闇に落ちて行った。 赤い薔薇が見えた。 地を覆い尽くす程一面に広がる、赤い薔薇だ。 それを見下ろしている。 緋色の絨毯のような花の大群は、気が付くと呑まれてしまいそうだ。 一歩左足を踏み出す。 微かな痛みが走ると、薔薇の棘が足に棘を突きたてていた。 まるで、警告のように。 これ以上先に足を踏み入れるな、とでも言うように。 引き返そうとして、踏み止まった。 この薔薇の先には、俺は何か大切なものを忘れていなかったか、と。 それを取り返すまでは、進むしか無いんだ、と言う妙な使命感が心を満たしていた。 ――やめて。 声が聞こえた気がして見回すが、誰かが居る訳でもない。 この声はとても聞き覚えがある 懐かしい声、けれど悲痛な嘆きにも聞こえる。 ――もう、やめて。 もう一度聞こえた声は、確かにこの薔薇の原野の先から聞こえてきた。 行かなきゃならない。 右足を前に踏みしめると、刹那斬り裂いて行く棘が牙を剥く。 血が飛沫いて脹脛から激痛が走った。 棘、いや、まるで鎌のように断ち切られた痕。 それは、「行くな」と警告しているかのように感じられた。 ――やめて。 けれど。 この声の所まで行かなければ、きっと後悔する。 ぶしゅっ。 朱が緋の原野に爆ぜ、緑の茨に朱が零れ落ちて濡らして行く。 足先が痛みに焼け、流れゆく血液が落ちて身体の熱を奪っていく。 けれど、今はそれも構わない。 この、心の中だけは何故か妙に燃えて居たから。 何故かなんて解らないけれど。 意識し、自覚しているものではないからこそこの先に進もうと思える。 全てはこの声を主を見れば知る事が出来る、そんな確信があるから。 足を踏み進める度に、茨が血で緋色に染まって行く。 まるで血を吸って歓喜の声を上げるかのように道を阻む茨の棘。 刻まれ、血を流しながら進み続ける。 果たしてこの道の先に何があるのかなんて、知らないけれど。 足の感覚が少しずつ無くなってきた。 ただただ失われていく感覚に、背筋が凍りそうになる。 いっそ足を止めて、引き返そうかとすら思いたくなる。 ――やめて、よ……。 聞こえた声は彼方ではなくなって来ている。 もう少し、もう少し近くに行けばこの声の主と対面出来る。 けれどその為には、今までも歩き続けて居た茨の原野を抜けなければならな。 此処から先、その背は高く俺の身長程になろうとしている。 この先に進めば、足だけどころか全身をこの茨が切りつけて行く事になる。 足はもう感覚は無く、立っている事すら危うい程になっていると言うのに。 けれど。 「――っ」 歯を強く、奥歯が割れんばかりに噛みしめた。 此処で引く事が出来るか、と萎えかけた自らの意思を奮起させる。 きっとこれは夢だろうと何処かで確信している。 けれど、この痛みは紛れもなく現実のものと同じで――。 ――きっと、この場で倒れ伏したら、実際に起き上がる事は出来ない気がした。 ぞ、と背筋に寒気が走り、全身が震える。 強く目を瞑り、茨に手を掛けた。 まず棘が指先を貫き、それを意に介さず思いきりこじ開けるように強く力を掛けると指先から爪までが割れんばかりの苦痛を訴える。 そのまま身体を滑り込ませると、左右から身体を挟まれてまるで蔦に噛み砕かれるかのように。 歯を強く噛みしめ、声が出るのを必死に堪え全身を刻まれながら。 ず、ぶしゅ。 もう感覚は、殆ど無くなっていた。 身体を前に動かす、ただそれだけの思考が身体を支配する。 あと一歩、あと一歩前へ、この茨の野を進んでいけと。 ――――見。 視界が。 ――――な。 開けて。 ――――い。 こいしと。 ――――で。 人の残骸。 座り込みながら、身体を引き裂いて居た彼女は赤に染まっていた。 転がっている人の残骸の頭を見ると、どうも俺に似ている。 自分の寝顔なんて気付けたものでないからな、と何処か冷めた思考でその場にいた。 似ている、ではなくて俺自身だ、と言う事に気付いて納得した。 「見ないで、って言ったのに」 朱色に染まったままの少女が、涙声で俺を見上げて言った。 「……悪い」 血に塗れ掠れた声は、辛うじてその一言を絞り出す。 もっと気の利いた一言が言えないのか、と軽い自己嫌悪すら覚えた。 「これが、私の、本質、だから」 何時も見て居る少女の姿にしては、何処かおぼろげで不安そうにも見える。 ――違う、と口に出そうとして、口を閉ざす。 なぜならそれは、此処に来て俺が知ったただ一つの命題だから。 「妖怪は、人を襲い食らうものだから」 転がっている頭を、彼女はぎゅ、と抱き締めて――。 「けれど、私は……もう、それですら、居られない」 首を横に振って、そ、と抱いていた頭を離して、地に置いた。 「……ねぇ、人の姿を取っているからなの?」 虚な表情で俺に視線を注視しながら、うわごとのようにこいしは呟く。 「人の形を取っているから、私はこんな辛い思いを覚えたの?」 瞳を閉じる前に見せた笑顔とは、全く別の表情。 これが心の芯、ならあの表情は。 「……好きだから」 ぽそり、とこいしが呟いた。 「好きなあなたの前では、愛されたいから、愛される私で居たいから、無意識に笑顔を浮かべてた」 ぎゅ、と己の身体を抱くようにして、こいしは微かに震える。 「……人間だったら、私はあなたを好きになってもこんな思いを、しなくて済んだの?」 歯をぎり、と噛みしめる彼女の表情は、見た事の無い色に染まっていた。 ――憤怒。 こいしの中にこんな激烈な感情があったのか、と思わせる程。 「また、この瞳だ……閉じても、私を、苦しめるの?」 何も無い所に、一つのものを入れた。 その何も無い場所にはただ一つのものだけがある。 その一つのものだけで全てが埋め尽くされていくなら。 暴発するまでは、微かな時間でしかない。 「待」 待て、と声をかけようとして咳き込んだ。 こんなにも血が溢れて居るのかと嫌になったが、止められるものではない。 「こんなものが――」 ゆら、とこいしが立ち上がる。 「こんなものがあるからっ!!!」 彼女が閉ざした瞳を繋ぐ紐へと、手を掛けて引き千切ろうと――。 「違うっ!!!」 刹那。 彼女の身体は、薔薇の絨毯に倒れ込んで居た。 押し倒して手を離させるのが間一髪。 もう少し遅ければ、本当に引き千切って居ただろう。 「ぁ」 俺の身体の下に居る妖怪少女が、呻くような声を上げた。 「離して、離して、よっ……」 ひっく、としゃくりあげて、碧の瞳からは大粒の涙がこぼれおちている。 ああ、綺麗だ、と思う以前に身体を貫いていく罪悪感。 けれど、この一言だけは、どうしてもこのまま、伝えなければ、ならない。 「俺は、お前のすべてを、肯定、する……っ!」 ああ、そうだ、この言葉だ。 肯定し、受け入れる、 「どうして……」 呆けた表情でつぶやくこいしに、怒声のような叫び声を浴びせ掛けた。 「愛してるからに、決まってるだろうがっ!」 耳元で叫び続けると、軋むような痛みが全身を走った。 薔薇の絨毯が、茨のカーペットが俺の身体を貫き続けて居る。 それでも続ける、この、想いを。 「愛している奴の全てを肯定して何が悪い! 何処へ行こうが、何をしてようが認めてやるっ!」 血液が零れ落ちて血に塗れて居たこいしを更に朱に染めて行った。 色が無いなら、染め上げてやる。 心に隙間があるなら、埋めてやる。、 「お前が妖怪な事も肯定してやる、俺が、な……!」 こいしが呆けた表情で俺を見上げたまま――。 急に視界に、靄が掛かったように暗くなっていく。 宵闇になった訳でも無いのに。 きっと、意識がもうそろそろ奪われてしまうだろう。 だから、もう少しだけ保ってくれ。 「だから」 ああ、もう少し。 「自分を」 もう少しだけで良い。 「否定」 やっと、最後の、言葉だ。 「するな」 その一言を最後に、意識がもう一度闇へと落ちて行った。 『――あり、がとう』 ――夜はもうとうに更けて居た。 先程までの夢の景色は、鮮烈に脳裏に焼き付いている。 薔薇の絨毯も、閉じた瞳を引き千切ろうとするこいしも。 「……」 身体の上のが微かに重い。 体調はもう悪くないのもあって、身体を動かしても全身が痛む程ではない。 熱っぽいのは変わらないが。 「……ぅ」 身体を起こそうとすると、丁度俺の胸の上にこいしが突っ伏して瞳を閉じて居た。 目元には涙を滲ませていて、それが夢の光景とダブる。 あの夢が彼女の意識の何処かにあるのなら、彼女は何処までも苦悩していたのだろう。 出会う前から、ずっと、ずっと。 「……俺に出来る事は、傍にいることだけだけど――愛している」 でも、その想いは変わらない。 呟くと、彼女の頬が珍しく真っ赤になっているのを見て、一つ確信した。 「こいし、起きてるだろ」 耳元でそっと囁いてやると、すぅ、と寝息のような声を上げた。 「起きないとキスするぞ。それはもう情熱的に……ごほっ」 せめてこう言うセリフの時位は治まっててくれないか、俺の熱と咳。 「じゃあ、起きない、よ」 ぽそ、ぽそと呟く声は、猫が甘えたような声。 「ああ。やっぱり止めた。風邪が移ると拙いからな」 悪戯めいて呟くと、ぷぅ、とこいしの頬が膨れてそれが可愛い事この上無い。 「……いいもーんだ」 呟くと、こいしが俺の胸元を抑えて身体を乗り出してきた。 唇を一度ちゅ、と奪われ、離れると満面の笑みを浮かべてこいしが囁いた。 「一つだけ妖怪で良かった事があるの。風邪をひいている人とキスをしても伝染らない、ってこと」 苦笑して、頭をぽふっと撫でてやる。 「今現在の状況の事じゃないかそれ」 呆れて身体を抱き寄せると、布団ごしなのが嫌だったのかこいしが潜り込んできた。 「良いの。……もっと、ぎゅって、して?」 見上げて呟く翠の瞳のお姫様には、俺は逆らえない。 あと、すこし。 このまま眠りにつくまでのわずかな時間を。 至福のままに過ごせたら――。 「すぅー……」 「……おやす、み」 最後に見たのは、こいしの安らかな寝顔だった。 そっと口づけ、瞳を閉じる。 今晩は、良い夢が、見られそうだ。 ────────────────── ――どさ。 重量の限界を超えた雪が屋根から落ちて行く音が聞こえて軽くため息をつく。 これは明日もまた雪掻きをしないとならないな、と考えると気が重い。 囲炉裏の火はまだ絶やして居ないが、絶やしてしまったら凍死しかねない。 その前に、暖かくなるように晒して置いた布団に篭るのが一番だろう。 今日中はこの灯りは絶やさないようにしないとならないが、薪の量を間違えてしまえば下手すればそのまま起き上がれない。 ある程度の寒さまでは仕方ないと開き直って、定量の薪をくべるしか無い訳だ。 「あぁ……寒」 ぼやくように呟き、幻想郷でのカレンダーに目を走らせた。 2月14日――と言う今日の日付を、捲る。 そう言えば今日は外の世界でバレンタインデーだったか、と気付いた。 人里を歩くと浮かれて居る女性が居る気がしないでもない様子はコレだったのか、と納得する。 「そんな時期になってもまだこの寒さかよ」 後もう2週間もすれば3月になる時期なのに、この様か。 外の世界で暖房に当たってゆっくりしていた時期が懐かしいが、此処でそんなものを求めるのは流石に贅沢過ぎると言うものだ。 囲炉裏と、油の灯りしか此処には無いのだから我慢するしかない。 そもそも人里に元から住んでる奴は、この寒さに慣れて居るんだろう。 少なくとも凍死はしないと解っているので、耐える事に意識だけを傾けよう。 ……それとももう一度風呂にでも入るべきか。 そんな事を考えて居た時に、こんこんと扉をノックするような音がした。 「誰だ、こんな時間……」 に、と言いかけてはた、と気付いて急ぎ扉に駆け寄った。 こんな時間に。 こんな場所を。 こんな雪の中。 訪れる奴なんて、俺は一人しか知らない――。 「こいしっ!」 ばたんっ! と扉を開けると、そこには確かにこいしの姿。 「あ、まだ起きてたんだーっ」 帽子は既に雪帽子となっていて。 服は肩まで白く染まっていて。 身体は冷え切っている様子で、手に触れるととても冷たくて。 「馬鹿、こんな雪の中に無理して来るから――」 ぱっぱっ、と軽く身体に纏う雪を払ってやると、こいしが目を瞑ってぷるぷると小動物のように身体を震わせた。 「無意識だったから大丈夫」 「幾ら妖怪だろうが寒いもんは寒いし冷たいもんは冷たいだろうがっ」 碧の瞳が俺を見上げて、そのままにぱっと笑う。 「大丈夫、寒く無いよ」 「馬鹿、とっとと服脱いで風呂入れっ!!!」 そのまま彼女の身体を引き寄せると、ばたんっ、と強く扉を閉めた。 目を白黒させるこいしを脱衣所に放りこんで一息付く。 『もう、別に入らなくても大丈夫なのにー。髪とかはちょっと濡れてるけど……』 扉越しに聞こえる声は、何処か不満そうに。 「良いから入って温まれ。まずはそれからだ」 ぴしゃ、と言い切って脱衣所の壁に背を預ける。 衣擦れの音が聞こえて、一つため息をつく。 直後、一枚板越しに少女が一糸纏わぬ姿になろうとしている、と言う事に気付いて途端に熱くなった額を抑えた。 『ねー、一緒に入る?』 「俺はもう入った」 さっきまで入ろうか迷っていたと言う事は口にせず、きっぱりと拒絶。 『この甲斐性なしー』 扉の奥で、もう一枚の扉を開ける音。 その音が聞こえた後にぴしゃり、と閉められたのを確認して、脱衣所の扉を開けた。 こいしの何時もの黄色と緑の服が濡れたまま籠に置かれている。 下着は見なかった――と言う事にしておく。 視界に意図的に入れないようにしていた、が正しいが。 とりあえず、スカートとブラウスに帽子を取って、その代わりに俺の普段着ている寝巻を置いてやった。 下着まで濡れている事は想定していないが、そもそもそこまで濡れて居たら俺では対処が出来ない。 大人しく我慢して貰うしかないだろう、こいしと俺の本能に。 「替えの服、置いておくぞ。それと、湯加減は?」 扉越しに声を掛けると、うん、と響いた声が聞こえてきた。 『あったかいよー、気持ちいい』 こいしの声は何処か弾んでいて、それに呆れて俺は苦笑する。 此処の湯は、地下から湧きだした温泉からのかけながし。 大きい家や湯屋へ樋で流す途中にあるので、お零れを預かった形になる。 その代わり手伝いもたまにあるが、文句を言う程度のものではない。 「のぼせるなよ、幾ら暖かいからって」 『解ってるよー、冬妖怪じゃないから大丈夫、ちょっと長いくらいなら』 だが長湯はするつもりらしい。 「やれやれ」 座りこんで背を風呂場の扉に預ける。 ちゃぽ――と水を掬いあげるような音が聞こえ、彼女が問いかける声が続く。 『……まだそこに居るの? 冷えちゃうよ?』 「もうすぐ戻るっての。けど、何でこんな雪の時に?」 彼女の俺を慮る言葉に、疑問を投げ返す。 こんな雪の中に好きで外出かけ回るのは冬妖怪と氷精が良い所だろう。 この幻想郷に居るかどうか解らない一般的な人間も、巷に見かける幻想郷では一般的な妖怪も出歩く事は無いだろう。 ましてやこいしの普段帰っている場所は地底。 寒空の下、外に出るよりも余程暖かい、とはこいし当人からも聞いたし、実際にそう思った。 『ん? んー…』 考えるような鼻声と、それに続く言葉は。 『何だか外の世界のお祭りがある日だったみたいだから』 「バレンタイン・デーの事か?」 とても日付らしい発言だった。 こいしも何処かで聞いたのかもしれない。 『そうそう、それのことー』 「もう時間的に過ぎちまったかもしれないけどな」 時間が時間だった。 そろそろ休もうと思っていた時間に来るものだから、仕方ない。 何時も寝る時間が遅いとか言われるが、来る時間が毎回遅いこいしが言う言葉ではない気がする。 『ね、ねー。どんなお祭りなの?』 ちゃぽ、と水音が響くと、とぷん、と深くまで浸かるような音が聞こえた。 「チョコレートを贈って愛を誓う祭り。外の世界じゃ全く縁が無かったお話だがな」 幻想郷に来てから縁が出来たのは喜ばしいが、外の世界で全く縁が無かったと言うのも我ながら悲しい話だ。 『じゃあ、私に愛を誓ってみて?』 ふふー、と鼻歌が微かに耳に届くと、嬉しそうなこいしの声。 「今語ると扉一枚超えかねないから止めておく」 自重とか俺の精神的なタガとかそこら辺が何処か行きそうで怖いので、しれ、と流すことにした。 『もう、つれないなぁー』 不満そうな声は、もっと別の言葉を求めて居るようでまた苦笑。 言葉にされるのが好きな奴と言うのは知っているが、俺としてはまだ恥ずかしいものは恥ずかしい。 だが。 今こそ逆襲の時だ。 立ち上がり、こんこん、と風呂場の扉を軽く叩いてやる。 「出たら存分に語ってやるから、あまり長湯し過ぎるなよ」 とぷんっ。 風呂場から響いた音が、こいしが深く湯船に沈んだ様子を示して頬が緩んだ。 ごぽ、ごぽぽ、と俺一人の居間に響く静かな音。 我が家では湯を沸かすのに鉄器を使っている。 持ち手を持つのも手拭が無いと熱くて持てないが、この鉄の器で入れた茶は実に美味い。 便利さではポットに及ばず、入手しやすさでは薬缶に及ばないが味はこれに勝るものは無い。 もっとも、便利さも入手しやすさも外の世界でのことであるが。 鉤から外し、急須に淹れ終わると丁度脱衣所の扉が開いた。 「ふーらー…ふーらー…」 「言わんで宜しい」 ぼーっとした表情で今にも眠りそうなこいしが、上下揃いのスウェットを着て揺れて居た。 「あったかかったから、つい……」 「茶飲め茶。飲み終わったら寝るぞ」 呆れながら、急須から茶を注ぐ。 「うん……」 こくん、とこいしが頷いて茶を一口。 「っあ!?」 熱い茶を口に含んで目が覚めたのか、それとも舌が火傷でもしたか。 妙な叫び声をあげて、こいしが半ば涙目で俺を睨んだ。 「このお茶、熱いー……」 「寝ぼけたまま飲むからだっての」 ずず、と茶を啜ると心地よい香りが口の中に広がる。 「むー、火傷しちゃったかも」 ふーふー、と吹きながら呟いたこいしが上目に俺を見上げた。 「飲み終わったらお休み?」 「明日雪下ろさなきゃならんだろ、このザマじゃ」 外の様子を見るまでも無く、明日の仕事は決まっている。 「うん、……ふー、ふー」 扉を一度こいしは見やり、もう一度茶を吹き始めた。 ぱち、と火の爆ぜる音。 火箸で端の炭を真ん中に置いてひっくり返す。 「流石に外はもう誰も出て無かったろ? 来る時」 丁度良い温度になったのかこくこく、と茶を飲むこいしが、器から唇を離す。 「そだねー、時間が遅かったからだと思うけど」 「それ以上に雪だろうが」 何度ため息をつけばいいのか解らない程になって、その程度には疲れて居た事を忘れて居た。 程良く冷め始めて居た茶を二度三度と分けて、流し込む。 もっと味わえば良いものを、とか、もっとお茶を美味しく飲める事への感謝を、とか言う口うるさい巫女どもの声が聞こえた気がして心底面倒臭くなった。 「一気に飲みすぎじゃないかなぁ」 「早く飲まないと寝ちまうぞ」 仕方ないなぁ、とこいしが一度呟くと、くい、と煽るようにして器を置いた。 「じゃあ」 くるっと此方を向くと、飛びかかるように抱きついてくるこいしを抱きとめてやる。 「ったく」 軽く悪態を付きながら、きっと俺の頬も緩んでいるんだろう。 「えへへ」 こいしの嬉しそうな笑顔が、それを示している。 そのまま隅に転がっている毛布を手に取ると、少し囲炉裏から離れてこいしの身体を抱いたまま布団に転がった。 「わ……。流石に今日は、干せなかったんだね」 冷え切った煎餅蒲団にふわ、と広がるフローラルな香り。 我が家の石鹸はこんな良い香りがしたか、と一瞬戸惑う。 「仕方ないだろ、外に干して居た奴は完全に湿気てる」 曇りでも干さないよりマシか、と思って干したら運の尽きだった。 雨から雪のコンボを食らい、帰ってきた時には無駄に重く家の中に放り込むのがやっとという程には。 「じゃあ、晴れたらきちんと干そう?」 「ずっと家事任せられる奴が居りゃ、安心して仕事に出れるんだけどな。ちとこいしには荷が重いだろ」 後一時間程度はそのままでも大丈夫だろう、と火の具合を見ながら、こいしを抱き直す。 ころん、と転がると囲炉裏の火にこいしの表情が照らされて、橙色がゆらりと揺れた。 今度は後ろから身体を抱き包む。 第三の目からこいしの身体へと繋がる紐に、そっと右手で触れた。 「ん、少しくすぐったいよ」 つ、とそのまま指先を紐から第三の瞳へと、ゆるやかにそっと這わせて行く。 「少し我慢してろって。別に変な事するつもりは無いから」 「してくれてもいいのにー」 何処か不満そうに、けれど何処か嬉しそうにこいしが唇を尖らせた。 「こっちも自制してんだよ、少しは」 第三の瞳に触れて、撫でる。 「ひゃあっ。……そこ、感覚、敏感なんだよ?」 そのまま左手も伸ばし、包むように第三の瞳に触れた 「何処かの誰かみたいに無意識に悪戯しようとしてる訳じゃないんだよ」 ただ、何となく触れてみたいと思っていただけで。 そう口に出さず、ただただ触れるためだけに包んで居る。 堅くはないが、あまり柔らかい訳でも無い。 「別にいつも悪戯しようとしている訳じゃないけど……でも」 こいしが瞳を閉じて、呟く。 「暖かいね」 安堵しきったその声音に、身体をもう少しだけ密着させて。 「……抱きあう時に、無意識にね、目を閉じる人が居るんだよ。妖怪の中にも居るけど」 ぽそ、ぽそと呟きながら、こいしは続ける。 「キスする訳じゃなくて、ただ寄りそうだけ。でも、目を閉じてしまうの」 第三の瞳を包む俺の手に、こいしの少しだけ冷たい手がそっと触れる。 「暖かさは、目を閉じていても感じることが出来るものだから」 と――と背を俺の胸に預けるように、暖かい身体が更に深くまで触れる。 まるで、心の底までその暖かさを伝えようとするように。 身体を腕で抱き締めると、目を閉じたままのこいしがこちらを向いた。 「見えないけれど、それで良いの。見えないから、それが良いの」 こいしが更に続けて、目を開き見上げる。 そ、と掌から第三の瞳を離してやると、微笑んでこいしが囁いた。 「私は、あなたが、大好き。見えないけれど、感じられるから」 そしてそのまま、頬に淡く口づけされる。 「……ね。愛を誓うの、ってこんなので、良いの?」 目をぱちぱちしながらこいしが見上げると、気恥ずかしくなり視線を逸らした。 「……急に真面目な顔して言うもんだから」 何処で話を挟んでやろうかと思ったが、挟む余地すら無かった。 「わ、顔が真っ赤ー」 「煩い、無意識だっ」 ぎゅうー、と少し強く、半ば小さな身体には痛いだろうと言う程度に照れ隠しに抱き締めた。 「じゃあ、次はあなたの番。あなたの愛を誓って?」 とびきりの笑顔を浮かべながら、こいしが顔を近づけて囁く。 そんなものは、どう返すかなんて決まっている。 「こいし、お前に恋して、お前を愛してる。お前が大好きだ」 囁くと、瞳をもう一度閉じたこいしの唇へと口付けた。 ――愛を誓う日は、想いを繋げて。 雪の降り積もる日は、想いで暖めて――。 ──────────────────── 空は青く澄み渡っていた。 春はもうとうに来ていたらしく、暖かい日差しが身体を包む。 雲一つ無いぽっかりとした青空をずっと遠く眺めると、その青の中に落ちてしまいそうになる。 天にあるものに落ちて行くとは妙な気分だが、その表現が最もしっくりくる。 吸い込まれる、と言うものとはまた違ったものを感じられるからだ。 空を飛びまわる巫女だの妖怪だの妖精だのが居る幻想郷では、そう言う感覚は無いのだろうが。 そう言えば、此処へ来る前にもあんな青空を見た気がした、と思い出す。 まだ学生だった頃、その時期に見た雲一つない青空。 あの頃の友人達は元気にやってるだろうか、とらしくない事を思った。 例え、向こうは俺を覚えて居ないとしても。 俺が此処にある事が、彼らが俺を覚えて居ない事の反証と言う皮肉。 全ては過去の事なのは解っていて、それで思う事を止められないのはまだ現代人の感覚が残っているのか。 それとも、幻想郷に溶け込んで行く自分自身への忌避が何処かにあるのか。 幻想郷は全てを受け入れる、それはとても残酷な話――。 何処かの妖怪から聞いた言葉を繰り返し思えば、まるで自分自身の事のようにも感じた。 幻想郷に受け入れられた自分自身は、何処までも隔絶した存在。 それすらも受け入れられていると言う事が――。 「ねぇ」 くいくい、と裾を引かれて視線を戻した。 「あ」 見下ろすと黒い帽子を被った少女の姿。 彼女は何処かむくれた様子で、俺の服の裾を掴んでいた。 「もー、折角一緒に居るのに何で空ばっかり見上げちゃうのかな」 ため息をついて彼女――古明地こいしは服の裾を離す。 彼女の第三の瞳は閉じたまま、俺の方を向いて居た。 「空が青かったから、だな」 「哲学的な事言って煙に巻こうとしてもダメよ?」 ぴっ、と人差し指を立てて彼女はふふ、と笑った。 此処は人里から少し離れた道の途中。 こいしに腕を引っ張られて散歩に出かけた山へ向かう道中、通りかかった開けた場所だ。 地底に帰る道を進んでいないのは解るので、ふらふらしながら神社へ向かう道のりだろう。 彼女の歩く方に身体を歩かせるに任せてて、気が付いたら空を見上げてたのを注意された。 「空を飛んでみたいとか思ってたの?」 微かに首を傾げて訪ねて来る少女。 「いや、落ちたら死ぬから勘弁……ふぁぁ」 至極真っ当な外来人らしい正論を返すと、眠気を軽く感じて欠伸が出た。 春の日差しは、どうも眠気を加速させるらしい。 「軽く休んで行かないか?」 葉の隙魔から漏れた日差しを見て、樹の足元へと視線を向けた。 「疲れてるの?」 「むしろ、眠い」 そしてその方へ歩みを進め、座り込む。 こいしがきょとんと俺の顔を覗きこみ、立ったまま頬をふにっと突いてくる。 「もー」 軽く樹に身体を預けると、先程以上の眠気が襲いかかってきた。 まだ少しだけ風は冷たいが、それ以上に日差しは暖かい。 「寝ぼすけさんはしょうがないねー」 くすくすと笑いながらこいしは正座して座り込む。 「膝枕、してあげるよ?」 ありがたい申し出をこいしがしてくれたお陰で、ゆっくり休めそうだ。 「ああ、じゃあ」 ――とっ。 そっとこいしの膝の上に頭を乗せると、柔らかい絹の肌触りが伝わってきた。 それと、柔らかな弾力。 ころ、と頭を少し動かすと。 「ひぁ」 こいしが変な声をあげて軽く俺を睨んだ。 「もー、動かないでよー」 動きたくても動けないように、こいしが俺の頭に手を乗せる。 「解った解った」 思考が半ば眠りと言う靄に冒され始めて居た。 その靄は視界から身体の隅へ伝わって行き、ただこいしの身体がすぐそこにあると言う暖かさだけが黒の世界に残る。 やがてそれすらも、溶かされて行き――。 ふと、何か声が聞こえた気がして目を開いた。 「……て。……あー。……の……」 「……すから、……ので……ありませんから……」 「……おめに……あげて……わこには……」 女性数人の声。 それと、すぐ近くから聞こえるすぅ、すぅと言う規則的な吐息。 目を擦り、開くと目を丸くしている緑髪の巫女と二柱の神の姿。 「……あ? 何時の間に……」 彼女達の事は良く知っている。 幻想郷に来て一番最初に世話になった面々でもあるのだから。 「あ、目を覚ましたみたいだよ?」 帽子の下に稲穂のような金に見える髪の少女が首を傾げた。 「すみません、お休みしてるところを起こしてしまい……」 すると巫女が頭を下げて来る。 「青年、こんな所で寝て居ると神様からのバチが当たるかもしれないぞ?」 腕を組み、笑いながら話しかけて来たのは縄と鏡が印象的な女性。 「あれ、何でこんな所に……」 ふぁあ、と大あくびをして起き上がろうとすると、こいしの頭にぶつかりそうになった。 「っと」 「……すぅー……」 座ったまま静かな寝息を立てるこいしを起こさないようにして、座ったまま彼女たちを見上げた。 「で、早苗も神奈子様も諏訪子様も何でこんな所に居るんだ一体……ふぁ」 もう一度欠伸して、軽く身体を伸ばす。 守矢神社の一党がこんな所に降りて来てたとは思わなかったが。 「今日は皆で、里まで買い出しに行こうって思ったんだよー」 そう言いながら諏訪子様はくるっと回った。 様、と言うイメージがあまりしっくり来なかったのは昔の話。 「……ふぁ、だーれー……?」 こいしが目をごしごしと擦り、腕を伸ばしてふぁあ、と欠伸した。 「あ……諏訪子さんも早苗さんも神奈子さんもおはようございます……?」 「今は昼だがな」 横槍入れてやると、こいしが空を見上げて頷いた。 「そだねー……ほんとだぁ」 「お二人はどうしてここに?」 早苗が首を傾げると、こいしがあ、と声をあげた。 「神社までふらふらと寄り道しながら行こうとしてたんだけれど……」 やっぱり神社だったようだ。 「此処で会えたから用事も済んじゃいましたね、久しぶりに顔も見れたし」 にぱ、と早苗を笑いながら見上げるこいしの笑みに、全く邪気は感じられない。 「あ、それとお姉ちゃんがたまにはお空の様子を見に来て下さい、って言ってましたよー」 全く悪意無く本題を、後にさりげない事のように伝えるこいしはある種の天才だと思う。 下手をしたら間違えかねないし忘れかねない。 むしろ本題を先に言うべきなんじゃないか、と眺める俺は呆れながらため息をつく。 「どしたの?」 こいしが俺の顔を覗きこみ、碧の瞳は俺を射抜く。 「いや、何でも」 手を軽く振りながら、はぁと一つ息を付くと早苗が言った。 「はい、じゃあ今度伺いますね。さとりさんも空さんも、たまには来て下さっても宜しいのに」 そして空を見上げて呟く。 「こんな青空の下なら、ピクニック代わりにお出かけするのも良さそうですしね。地霊殿の方にはお世話になっていますし」 こいしに笑みを浮かべ、早苗は手に持っている袋を軽く上げた。 「今日はちょっと難しいですけれどね」 「……早苗さんは」 こいしがぽつ、と呟く。 「この青空が、好きですか?」 「はい?」 きょと、と首を傾げた早苗に問いかけるこいしは、何時もの碧の瞳で早苗をじ、と見つめる。 「好きですよ、大好きです」 早苗は言って、もう一度空を見上げた。 「早苗らしいねー。解らないではないけど」 「ああ。私の巫女として誇らしいな」 諏訪子様は合わせるように頷くと、笑って神奈子様を見上げた。 神奈子様が腕を組んで頷き、朗らかに笑う。 「ええ。神奈子様の加護がこの空の下には有りますから」 微笑みながら二柱の神に微笑み返す巫女。 こいしは彼女たちを見て、微笑んだ。 「そうですか。お姉ちゃん達に、今度会ったら伝えておきますね」 ――ああ、この笑顔を俺は知っている。 何処か隔絶した、線を引く笑い方だ。 「はい。……あ、そろそろ行かないと。神奈子様、諏訪子様」 「地獄烏とその主に宜しく頼むよ。またな青年、米が無かったら今度分けてやろうか」 「ってそれ、私の領分だってー! 地から生える作物は私の領分だよっ」 「もう、お二人とも……それでは、また。」 じゃれあう二柱を抑えるようにしながら、早苗は神社の方に歩いて行った。 その背を見送り、こいしが身体を軽く持たせかかってくる。 表情は何処か冷めて居て、けれど何処か納得したように。 「それ」 軽く身体を引き寄せるようにしてやると、目をぱちくりさせながら俺を見上げて来た。 「……あ」 ふわ、と少女は微笑みを浮かべ、俺の手をぎゅ、と握って軽く瞳を閉じた。 陽は落ち始め、宵の帳が世界を覆い始める時間。 山からの下り道を、こいしと手を繋ぎながら降りて行く。 やがて落ち行く白焼けた橙は消えてしまい、塗り潰した黒の上に銀の滴が輝くのだろう。 少しご機嫌そうなこいしの様子に問いかけた。 「さっきまであんまり機嫌良さそうじゃなかったのにな」 「ふぇ?」 こいしが間の抜けたような様子で俺を見返して来る。 そして、何か納得したようにああ、と呟いた。 「別に機嫌が悪かった訳じゃないけど……」 「けど?」 「きっと、早苗さんには解らないことなんだろうなーって思っちゃっただけ。早苗さんが悪い訳じゃないけどね」 ふふ、とこいしは笑うと、木で陰った空を見上げた。 「あんなに、空を好きって言えるのが少しだけ羨ましいかも」 そして瞳を閉じて、呟く。 「きっと、お姉ちゃんは外に出てこないと思う」 「……まあ、な」 彼女なら、確かに出て来るとは考え辛い。 そもそも地霊殿のペット以外と積極的に触れ合うとは考え辛いのだ。 けれど、こいしが呟いた理由とはそれとは違っていた。 「お姉ちゃんは、きっとこの青空が嫌いだから」 目を開いたこいしは、そんな言葉を口にして足を踏み出した。 「青空の下では嫌われてたから」 彼女が絞り出したその言葉は、自分自身への言葉も含まれているようだった。 彼女自身も嫌われていたから。 「でも、早苗さんはそんなに嫌じゃないかもね。話し相手になれるかもしれない。あの人は、建前はあるけど嘘はつかないから」 ふふ、と彼女は笑って俺の方を見た。 「お姉ちゃんの交友関係を考える妹って立場も、なかなか大変なんだよ?」 「大変にしてはあちこちに出かけ回って心配させてるようにも見えるがな」 やれやれ、と肩を竦めるとこいしは口元に手を当ててえへへ、と笑いながらジト目でこちらを見た。 「そんな事を言って、一番私を占有してるのあなたなのに気付いてるのかなぁ?」 「仕方ないだろう」 は、と軽く笑い飛ばすと、空を見上げた。 「こいしは」 そして、問いかける。 「この空が、嫌いか?」 さっきの言葉から辿りついた疑問。 瞳を閉じたこいしは、姉以上に空を嫌っているのではないか、と。 問いかけてから、何を問いかけたんだ、と言う事に気付いて我ながら呆れるしかなかった。 こんな質問をしたら、こいしはきっと嫌いと――。 「私は、好きだよ」 にこ、と笑いながら彼女は俺に答えを返した。 「始めはね。久しぶりに地底から出た時はね」 そして、軽く俯き瞳を閉じる。 「――憎んでた。青空が何処までも綺麗だったから。その下に生きるもの全てを、憎んでた」 そして続ける言葉は、先程の言葉を否定するようなもの。 「けれどね――」 彼女は、俺を見て微笑む。 「今は、大好きだよ。青空の下なら、あなたの笑顔が映えるから」 一つ区切って続ける彼女の笑顔は、安堵したようなものになっていた。 「夕空の下も大好き。陽が落ちて行く瞬間を、あなたと一緒に見るのが好きだから」 そのままこいしは腕を絡めるように俺の手を握った。 見上げられて、最後のフレーズを耳元に囁く。 「夜の空は、もっと大好き。あなたがぎゅ、って抱き締めてくれるから」 聞いているだけで顔が熱くなってきたのを感じる。 臆面無く言われるとこうも心に来るものか、と。 頬にこいしが触れるような淡いキスをして、そっと離れる。 「……真っ赤だよ?」 「ああもう」 己の額を軽く照れ隠しに押さえてがしがしとやって、視線を逸らす。 「えへへ」 笑うこいしの手を引っ張って、家路を急ぎ山を下る。 その手は何処までも、暖かかった。 ─────────────────── 里は、春で埋め尽くされていた。 華やいだ少女が道を歩き、暖かな風は緩やかに身体を包んで吹き抜ける。 冬の間は土の下に眠っていた草花も今は活力を吹き込まれたかのように生命を輝かせている。 どこまでも、幻想の郷は春に包まれていた。 人々のざわめきの声は、人里を響き渡る。 「ったく、何処行っても人ばっかりだな」 冬の間は見られなかった人里での人ごみに軽くため息をついて、。 祭りならまだしも、ただの休みで此処まで人が多いとなると面倒臭い。 元より、あまり人が多い場所を歩くのが好きではないのだ。 そう言えば連れが居た筈だが、横を歩く軽快な足音が聞こえず、浮かんでいる閉じた瞳が見えない。 「あ、おじちゃん。これ一つ頂戴な」 「あいよ嬢ちゃん、オマケに一つ付けてやるよ」 視線をぐるりと彷徨わせれば、いつの間にかに屋台の近くに居る彼女の姿。 ため息一つついて、そちらに足を進めた。 「こーいーしー」 がし、と肩を掴む。 「あ」 しまった、と言う顔をしてこいしが息を呑みこちらを振り返った。 「お、兄ちゃんこの子のツレみたいだな、も一つオマケしておくか!」 「あぁ、ども。……じゃなくて」 お焼きの屋台のおやじが一つ追加でつまみ、袋に放り込んだ。 「わーい、ありがとっ」 こいしが小躍りしそうな嬉しそうな顔をして俺の顔を見上げる。 「……はいはい、支払いますよ」 家計が苦しいのを知ってか知らずかこう言う時に良く外で買い食いするこいしに溜息を付く。 嬉しそうな様子を見て居れば、多少は心が晴れそうなものであるが。 「いいじゃねぇか兄ちゃん、ケチ臭くっちゃ男たぁ言えねぇな」 「そうやって乗せられるのが一番癪なんだよ」 「細かいこたぁ気にすんなって」 けらけらと笑い飛ばす、この場で一番の勝ち組である屋台のおやじが恨めしい。 昼飯代わりくらいにはなるかと開き直るのも何か癪で、反駁しようと口を開いた所で。 「もう、しかめっ面してないの。えい」 「む、ぐっ」 口にお焼きを詰め込まれて、熱い南瓜餡の味が広がった。 微かに甘く、しっとりとした味がするがとにかく熱い。 「……っ!? あっ、つ」 「美味しいでしょ?」 はむ、と小豆餡のお焼きを一口齧り、こいしが笑顔で見上げて来る。 「お前なぁ……」 「お熱いのは解ったから商売の邪魔だぜお二人さん」 けらけらと笑いながら、おやじがしっし、と軽く手を振る。 「ったく、行くぞこいし」 「はーいっ」 二人、春の雑踏の中を歩きだした。 「美味しいよねー」 「はしたないから歩きながら食うなっての」 歩きながらお焼きを食べるこいしを窘めながら、何処か座って食べられそうな場所は無いかと周囲を見回した。 「だって、今食べないと冷めちゃうもん。それに、無意識を弄っちゃえばはしたなくなんて無いよ?」 ホクホク顔のこいしは聞く耳を持たないらしい。 「そんな事で他所様の無意識弄るなよ……」 とは言え、能力の使用は妖怪の本質とも言えるものだからこそ仕方ないのだろうが。 もう一つため息付いて顔を上げると、路地の先に腰掛けられそうな切り株が見えた。 「仕方ない、あそこで食うか。人もあまり多く無さそうだしな」 「うんっ」 笑顔で頷くこいしを見て、少しだけ買って良かったと思い、それこそが屋台の親父に乗せられた証になる事に気付いて嫌になる。 「ゆっくり出来そうだよねー。どしたの?」 知らず眉を顰めて居たのか、首を傾げる少女が目の前に。 「いや、何でも」 あれこれ考えても仕方ない。 ふぅ、と軽く息をついて切り株まで足を運ぶ。 「早く食っちまえよ?」 「んー」 声を掛けてやるが、こいしは切り株に腰掛ける様子が無い。 お焼きを口に食みながらこくこく、と頷いて、そのまま切り株の前に立った。 「ひゅはははいほ?」 「食べ終わってから口を開こうか」 口をもごもごさせながら喋るこいしを窘める。 そのまま彼女は食べながらごくん、と飲みこんで。 「座らないの?」 首を傾げ、訪ねて来る。 目の前には一人用の椅子と大して変わらない大きさの切り株。 「ああ」 「座ってよー、私も座れないじゃない」 むー、と脹れっ面でこいしが呟く。 「私も、ってどう言う事やら」 こいしが座れるように、少しだけ位置をずらして切り株に腰掛ける。 そうするとこいしがにこ、と笑顔を浮かべて俺の膝の上に身体を降ろした。 「ちょ、待っ」 反駁する暇も無く、膝の上に座りこまれ微かな薔薇の香りが漂う。 こいしの匂いだな、と思うよりも先にその身体がもたれかかってきて、軽く抱きとめた。 「えへへー、私の専用椅子っ」 人前でも人が居ない所でもやるものではない。 絹を超えて押しあてられる柔らかい身体の感触に、理性の箍が外れないよう堪える。 「こいし、おま、退けって」 「やーだーっ、ここなら落ちついて食べられるし」 「人から見られる場所じゃ恥ずかしいってんだろ!?」 「私は恥ずかしくないよ? だって無意識だもん」 なるほど、今のやり取りで何処までもこいしは退く気が無いと言う事が解った。 仕方ないので専用椅子になって耐えるしかない。 こいしの身長がそんなに高く無いので、丁度俺の頭とこいしの頭が同じ高さになるかならないかくらいになっている。 もっと身長差が無ければ、そう上手い高さにならないんだろうが。 ――そして、ふと視界に妙なものを見つけた。 あちこちが泥や土に汚れた着物を着た、六歳くらいと思しき少女の姿を。 淡い桜色の髪を、肩くらいまで伸ばしている少女は何処か呆けたような表情をしながら、指を口に咥えて居る。 どことなくこいしとイメージが被らないではない。 こいしの肩をちょんちょんと突いて、視線を向けさせた。 「なぁ、こいし、退けって、人居るし」 「ふぇ? ……そいえば、さっきからずっと居たね。こんにちはー」 確信犯かよお前。 こいしが話しかけるもんだから口を閉ざし、ため息一つで済ませるしかなくなった。 今度タイミング次第で第三の瞳を弄ってやろうと決めたところ、こいしが袋からまだ手のついてないお焼きを取りだすのが見える。 「ねね、そこの子、食べる?」 「……!」 女の子が目を輝かせ――。 数瞬後、不安そうな目を俺とこいしに向け、きょろきょろと周囲を見回して首をぷるぷると遠慮するように横に振った。 「大丈夫、落としたりしてないから」 こいしが笑顔を浮かべながら少女を招くような言葉を投げかけた。 最も。全く以てそう言う問題では無く、相変わらずズレているようだがこいしと一緒に居る限り今更気にしても仕方ない事だろう。 「美味しいよ?」 それは金掛けて買ってるんだから普通は美味いだろうな、不味かったら即刻返却申し上げているところだ。 お焼き屋の親父のしてやった顔を、首を振って思考の外に追いやれば、近づいてくる少女の手足に視線を向けて大分痩せ細っている事を知った。 ただ痩せて居るにしては少々病的な程で、常に飢えて居るのだろうという事まで推察出来る。 他の子供は、痩せて居るとは言え此処まで細くはなっていない。 「……」 餡とは違う、何か甘い香りが一瞬感じ取れてこいしの香りと混ざり、鼻に柔らかく触れて来た。 「どうぞっ」 にこにこしながら俺の膝の上で可愛らしく首を傾げる妖怪少女の姿に安堵したのか不安を抱いたか、此方まで歩いて来た少女の手が伸ばされる。 ぺこんと頭を下げたその少女はぎゅ、と目を瞑ってお焼きを一口、食んだ。 「……っ!」 緊張していた口元が綻び、大きく目を見開く。 「ね、美味しいでしょ?」 こいしがにこにこしながら少女を見て、その後俺に微笑みかけた。 何故か「へへー、どうだー」と言った様子に見えて負けた気になるのがまた癪で、そのえらぶった様子を崩してやりたくなってきた。 「ほう」 一言だけ呟くと、帽子をそ、と取ってこいしの髪に触れる。 「どしたの?」 問いかけには答えず、こいしのくるくるとした髪を思いきりかき乱してやる。 「って、あっ!」 こいしが上げる声には気を取られずに、念入りに何度も手櫛で四方八方に梳きしながら髪を持ちあげては落とし持ちあげては落とし。 そのままぐるぐるぐるぐるとスープをかき混ぜてやるように、大きく手を動かして。 「わ、わ、ひゃ、ぁっ、もっ、何するのっ」 段々と落ちついていた髪型がまるで朝起きた直後みたいになってきて、手を抜いた。 「髪がぐしゃぐしゃになっちゃうじゃない……馬鹿ぁ」 こいしの髪は癖が強く、元通りにするには時間がかかるのを良く知っている。 必死に髪を直しているこいしを見ているといい気味だと思う。 その間もこくん、こくんと少女は頷いて、こいしの第三の瞳をじ、と見続けながらお焼きを食べ続けて居た。 「酷いなぁ、もうっ」 口を尖らせて膨れるこいしと、食べ終わった少女の視線がこちらに同時に向けられる。 少女は少女でこいしを注視し、こいしはこいしで膨れたまま俺を見て居る。 「こいし」 少女の方に視線をやると、こいしがにこ、と笑顔を少女に向けた。 後ろ手で俺の手をつねって来るあたり、まだ機嫌はあんまり良く無いらしいが。 「痛、っ」 一瞬だけ痛みに顔を顰めると、ふふん、と済ました笑顔のこいし。 「……?」 少女が一瞬だけ首を傾げて、ぺこん、と頭を下げるとこいしの近くに歩いて来た。 そして、くいくい、とこいしの袖を引く。 「……ふぇ?」 間の抜けた顔のこいしが、少女に問いを投げかけた。 「何か礼をしてくれるんじゃないか、その様子だと」 ぱ、と指先が離れると。力を入れていたことが解るようなじんじんとした痛みが響いて来た。 少女がこくこくと頷くと、こいしの袖をもう一度くい、と引く。 そして、村外れの方を指差した。 「ありがと、あっちに行けば良いの?」 こいしが笑顔をもう一度浮かべ、ぴょこんと俺の上から飛び降りると少女の手を引く。 「あそこの不機嫌そうな顔のお兄ちゃんも連れてくよ? 大丈夫、人相は悪いけど優しいから」 そして一度俺の方を振り返り、してやったりと言う風に笑った。 少女がこくこくと頷くのを見て、俺も後を追うように立ち上がる。 「解った解った」 人里を背にして歩きながら二人に追いつくと、こいしの帽子を取った。 「どんなお礼なんだろうー? 楽しみっ」 少女と話しながら足を勧めるこいしが、俺を振り返る。 どしたの? とでも首を傾げるこいしを見て確信した。 ――なるほど、無意識で人の顔の事に言及したのかこの妖怪少女は。 その事に思い至った俺が取る行動は一つだった。 「誰が不機嫌そうな顔で人相が悪いだコラ」 わしゃくしゃわしゃわしゃくしゃわしゃ。 「ひぁ、やっ、うぅっ、ひゃあああっ」 細い道を歩き、人里から段々と離れて行く。 このあたりまで来ると何の力も無い俺やこの少女あたりでは危険そうなものだ。 けれど、少女は気にする様子も無くこいしは言うまでも無いだろう。 確かに人食い妖怪でも襲おうとは思わないだろうが、妖怪と共に歩いている人間などは。 何処か嬉しそうに獣道を歩くこいしに。 「なぁ、里から離れて無いか」 「まだ十分くらいだよー」 それでも里の外と言うものは、あまり落ちつかない。 その程度にはこの人里とこの家に染まって来ていた事に気付かされる。 この里には、俺が知っている"失われてしまった全て"があったから。 「……」 少女がもう一度指差して、こいしの腕をくい、と引いた。 「あ、っと。こっちなの?」 桜色の少女がこくこくと頷いて手を引いてこいしを導いて行く。 髪の色が何処か似通ってるので、普段は妹の立場にあるこいしが姉のように見えてしまい、少し可笑しかった。 苦笑するように笑みを漏らすと、こいしがむー、と膨れたように俺に視線を向ける。 心の中を読めて無い割りには、随分と的確に心情を当ててくるものだと感心した。 続く道は、洞がまるでトンネルのようになった本当の獣道。 歩き辛い靴だったらどうするつもりだったのかと呆れないでもないが、考えるだけ野暮か。 「もー、遅いよ。置いてっちゃうよ?」 少々お怒りのお姫様に置いて行かれないように、足を少し早く進める。 追いついてこいしの手を取ってやると、にへら、と蕩けたように笑った。 青く暗く茂る、その先へと。 ――開けた視界には白が舞っていた。 はらはら、はらはらと、舞い落ちる花弁。 「桜……?」 洞を出て、見上げた先には大きな木が立ちつくしている。 こいしが大木を見上げながら、手をそ、と差し出すようにして呟いた。 はらり、ひとひら、その掌に零れ落ちる大樹からの贈り物。 「違う。これは」 良く似た色合いながら、確実に違うと断言出来る。 「梅だ」 こいしの肩の上に落ちた、花弁を取って。 桜と比べれば何処か侘しく、けれど静かに咲く梅の花。 白は静かに、柔らかく。 少女がにこり、笑いながら振り返りこいしの手を離した。 そして、大樹の袂へと駆けて行く。 男が一人、座り込んで大樹に身体を預けて居た。 壮年の男かと見間違えたが、歳をそこまで食っているようには見えない。 髪の色が薄く、何処か似たような印象を少女と彼に覚える。 この二人が父子であろうことは想像に難くない。 少女が身振り手振りで、俺達の事を指差して。 「――何やってんだよ、お前は」 ぱぁんっ、と乾いた音が響いた。 少女の頬を張り飛ばした中年の男は、俺とこいしに胡乱げな視線を向けた。 目を真ん丸くした後に、頬を抑えて震える少女の姿。 「っ……!」 瞳からは涙をぽろぽろと流して、止める様子も無く腫れた頬を抑えて。 これまで生きて来た俺自身の価値観で、認められる光景では無かった。 これが幻想郷の流儀だ、と言われても知った事じゃない。 ふつふつと滾るその感情をすんでの所で抑える。 「おい」 声を掛けようとしたところで、男が嗤いながら俺を振り返った。 「帰れよ、バケモノ連れ」 バケモノ、と言う言葉にこいしがびく、と身体を竦める。 「何処から湧いて出て来たか知らねぇが」 視線は何処までも嘲うように、嫌悪するように俺とこいしを睨み続けて居る。 「俺はバケモノ連中が嫌いなんだよ、それにひっついて回るバカ野郎もな」 そして、大した道化だとでも言う風に笑い飛ばすその男。 「怒りでもしたんならバケモノらしくオレを殺してみたらどうだ?」 我慢の限界だった。 「テメェっ!」 煮え滾るその感情のままに拳を握り、踏み込もうと――。 「止めてっ!」 こいしが、懇願するような瞳で俺の手を抑えて居た。 刹那、幾ばくかの冷静さを取り戻し、ふ、と一つ息を付く。 身を突き動かす衝動が何処かに消えて居たのに気付き、違和感を覚えた。 これは――。 「……ごめんね、帰ろ?」 じ、とこいしが真摯な瞳で俺を射抜く。 衝動は、意識出来るものではない。 無意識を操る程度の能力で、衝動を彼方へと追いやったのか。 ごめんね、と言うのは俺に対して能力を使った事への謝罪なのだろう。 冷めた思考回路で理解しつつ、男と少女へと背を向けた。 こいしの腕をぐい、と引くと歩きだす。 その表情を見ないままに。 ざぁ、と耳触りな音が取り巻いて、何時か空からは大粒の雨が零れ始めて居た。 さっきから引いている筈のこいしの手は何時しか俺の手をする、と離れて居て。 気付かない内の別離に、一瞬だけ焦りかけた震える声を出来るだけ平静に、彼女の名前を呼んだ。 「こいし?」 「大丈夫、此処に居るから」 一歩遅れた所から言葉が帰ってきて、少しだけ安堵しながら振り返る。 閉じた第三の瞳は、何も見ずただ雨に濡れて居る。 傘を持ってくる発想がそもそも無かったため、もう二人とも酷い事になっていた。 雨宿りする場所があれば良かったのだが、里の近くまで来るともうそんな場所すら無くなっていた。 こいしなんて、水を吸ってフリルがだらんと垂れてスカートの広がりは何処か凹んだりでっぱったり、帽子は黒光りしていて髪は濡れたお陰でウェーブが酷い事になっている。 「畜生」 呟いて、空を見上げた。 ふと俺が無意識に呟いたそれは、この天候に対する恨み辛みか、それとも先程の出来事の理不尽さに対する悪意か。 「……ダメだよ、暗い思いを、抱いちゃ」 こいしがぽつ、と呟いて俺の瞳を覗き込むように、身体を寄せて来た。 何時も変わらない碧の瞳は昏く、冬のように冷めた表情からは、平坦な声しか出てこない。 こいしの何時もの線を引いた笑顔も、その裏の感情も――全てがこの雨に洗い流されて、消えてしまったかのように。 「……おい」 背筋に感じたぞく、と言う悪寒に耐えて、声を掛けた。 「だから、何とも、思わない。…好きな人も、そう、思って、無い」 聞いて居るのか聞いて居ないのか、こいしの冷たい声が耳から伝わって身体に刻み込まれていく。 こいしの本質の本質――絶望に満ち満ちた、「眼を失った覚妖怪」のように見えて、恐ろしかった。 「こいし」 「……大丈夫、笑える。お姉ちゃんも、笑って欲しいって、言ってた。お燐もお空も、みんな笑顔が大好き」 呼びかけて、帰ってくる言葉は何処か焦点を失った事ばかり。 「あなたの、笑顔が、大好き、だから」 ”俺”を見ないままに、彼女は虚空に向かって呟いたが俺は何も返す事が出来なかった。 彼女の中の”俺”と、実際に今此処に居る”俺”の乖離――。 こいしは、今の今までさっきから無意識に没頭していて、自分の言葉に気付いている様子は全く無い。 「去ろう……去りましょう、あなたの、元から」 「こいし」 昏く、虚ろな焦点で俺を見上げて、彼女がうわごとのように口を開いた。 「さよう、な――」 「んの、馬ッ鹿野郎っ!」 ところを、ぐい、と無理矢理引き寄せる。 「――」 特に抵抗も無く引き寄せられた少女の呆けたように空いた唇――その唇へ、己の唇を叩きつけるように、唇を強引に奪った。 「んっ――!?」 こいしがどんっ、と俺の胸を強く叩いたが、気にする事は無い。 本当に嫌なら、今頃はもう俺の心臓と言わず、身体全てが完全に壊れているだろうから。 「……っ、……ぁ、……は、っ」 「……ぁ、んっ……? ……っ……」 舌先を唇の中に滑り込ませて、歯茎をなぞるように触れてやる。 第三の瞳を触れるように包み、舌先でこいしの舌先に触れてそのまま絡めるように伸ばした。 「っ、ぁ……ん、む、んむっ」 「……っ、ちゅ、……んむっ、ぁ」 無意識かどうか解らないが、こいしから舌を緩く絡めて来るのを確認しながら、口の外に引きずり出すように舌を絡めた。 雨の音は煩く、何時降り止むかも解らない。 それでも、聞こえる音色が理性を緩く、蕩かして行く――唇を絡め合う、口づけのハーモニーが。 抱く手を離し、こいしの肩に乗せて屈みこむようにしながらも舌だけは絡めて、唇を離さない。 未だ冷たい雨の中、火照ってくる身体の温もりを感じて意識と理性が段々と失せて。 絡みあった唾液は雨露と混ざり、既に解らなくなっていて、身体を伝う雨水すら唾液と認識するようになっていく。 「……っ、んんんっ」 「……ふぁ、っ、はぁ……っ……!」 いつしか、こいしからも俺の唇を求め始めて居た。 荒い吐息、呼吸は激しく、唇を奪うのに手一杯だった俺が反撃を受けたように一度離れようかと頭を動かそうと。 ――した、ところでこいしが俺の頭をがし、と固定するように腕を伸ばし、まだ唇を触れ合わせるようにしていた。 瞳を開くと、こいしの頬が上気したように真っ赤に染まっている。 吐息は熱く甘く、情熱的に奪うように、奪われたものを奪い返すようにと荒い吐息が絡み合い、不規則な音色を奏でるようになっていた。 こちらもこいしの頭をしか、と支えるようにして、深くへと舌を突き入れる。 ばしゃ、と地に何か落ちる音、濡れそぼった帽子がこいしの頭から消えて居た。 「んん――っ……!」 こいしが少しくぐもった声をあげて、合わせて居た唇から逃れようと少しもがいた。 けれど、支えている頭がお互いにお互いの顔の前にあるので、逃れようも無い。 ぎゅ、と瞳を閉じたまま、端から涙が零れ落ちようとしていて攻め過ぎたかと一瞬思ったが、またすぐにこいしが舌を絡めて来るのを感じて安堵しつつも少し息が続かなくなってきたのを感じて唇を少しだけ離す。 「っ、はぁ、……はぁ、っ」 「……っ。……っ」 熱く甘い吐息が、雨の落ち続ける大気の中で白く、淡く。 こいしがうっすらと瞳を開いて蕩けたような視線を向けて、唇から絡んだ唾液を人差し指でゆるゆると拭うと、俺の唇に運ぶようにそっと伸ばした。 「……あまぁい」 先ほどとは違った意味で、背筋がぞく、と震えた。 背徳感、衝動、欲望、愛情、恋慕、思慕、我欲、破壊、冒涜――。 全てをごちゃまぜにして、煮込んだスープを口元に運ばれその人差し指を、ぺろ、と舐めて。 「でしょ……?」 「ああ……」 身体から熱を奪われて風邪でも引く寸前か、それともこの唇から熱を伝え合えばそれすらも打ち破れてしまうのか。 「ね、もう、一度……しよ……?」 耳から脳髄を焼きつくす、甘く熱く、尖った針が理性の風船に突き刺されて、一瞬で破裂した。 「――んっ……」 互いに瞳を閉じて、唇をもう一度触れ合わせ――。 「――た、頼む、お二人とも。私はまだしも、ご主人が壮絶な事になっているのでそろそろ自重して頂きたい……」 顔を真っ赤にしたネズミの耳を付けた灰色の妖怪が、『とても言いたくないんだけれども言わなきゃどうにもならないな』と言う様子で俺達に声を掛けられた刹那、唇を離すまで。 視界の端で、法服を着た金髪の妖怪が頭から煙を吹いて倒れて居たのにやっと気付いて、悪い事をしたなぁ、と呟くしかなかった。 ──────────────────────── 酷く気拙かった。 雨上がりを待っている間、ほぼ口を開く事無く、一応名前を聞いただけ。 ナズーリンと言った灰色の少女と、最初は動転していて謝られたりふしだらですと言われたりした寅丸星と言う少女。 星はナズーリンの主人らしく「ご主人」と口にしていたが何処までも敬っている様子は見えない。 此方も名乗るだけ名乗っておいて、後はただ時の過ぎるのを待っていた。 何時しか雨の落ちる音は段々と聞こえなくなり、薄闇が少しずつ明けて行く。 「上がり、ましたね」 星が空を見上げて呟いた。 「……ご主人、流石にこの二人の服は放っておけないと思うのだが。通りすがりとは言え、寺で着替えさせてあげた方が良いのでは?」 ナズーリンが俺とこいしを見て、ため息を付いて星に声を掛ける。 「それに、此処からなら人里も寺も大して変わるまいよ」 「そうですね」 二人が頷き合う。 「大丈夫ですよ、このくらいなら」 普段と同じような様子を取り戻したこいしが、濡れそぼった袖をぎゅーっと絞りながら返すと、星が首を横に振った。 「いえ。あなたは大丈夫かもしれまえせんが彼は人間ですし。何よりも、私達としてはあなた達にお詫びもしなければなりませんから」 「詫び?」 俺が問い返すと、星は真っ赤になり上ずった声で、言葉を絞り出した。 「その、き、キ……き、キスを、見て、しまった、その、お、お詫び、を……」 「いやそれは本当にお相子様にして貰いたいものなんだが」 「……失敗したねー、夢中になっちゃって、無意識弄るの忘れちゃってたなぁ……」 今に始まった事ではないが、無意識を弄るとかそう言う問題ではない。 頭を抱える俺と対照的にこいしは何処かあっさりと落ちついた様子で呟いていた。 「はぁ……あとは、その。聖にあなた方のことをお話して貰いたい、と思ったのもありますし」 息を整えてから星は続けて、俺の見知らぬ名前を口に出す。 「聖?」 「ええ。私達は命蓮寺と言う寺院に住んでいるのですが、彼女はそこで教えを説いております」 「なるほどな、つまりは尼さんか。それと俺達が、何か関係あるのか?」 教えを説いている、と考えると先に人里の守護者と言われる慧音が先に浮かぶ。 とは言えこの教えの意味は、寺と言うからには宗教的な意味を多分に含めて居るため、イコールで結びつけるのは失礼な所だろう。 だが、そうなると俺やこいしとが全く繋がって来ない。 こいしもまた何でだろ? と言う様子で星の顔を注視していた。 「聖は、妖怪と人間の共存を心から望んで居ます。あなた方もまた、そうですよね」 確信をこめた言葉を口にした星は、俺達を見て微かに微笑う。 「あなた方のように愛し合う人と妖怪を見て、聖の心の救いと、導きになってくれれば、と。私の勝手ですが」 その笑みが何処か困った様子にも見えると、ナズーリンが呆れたように続けた。 「つまり君たちだけにメリットがある話で無いと言う事さ、君たちを招く打算も目的もある」 星と比べてナズーリンは大分ドライな考え方をしているようだ。 星が彼女を止めようとして腕を抑えようとすると、するっとすり抜けて呟く。 「ちょっ、ナズーリンっ、それは失礼に……って、あっ」 「ご主人、ギブアンドテイクの関係の方が気が楽なタイプも居るんだよ。ましてや彼の服を見る限り外来人だからね」 俺の雨に濡れた服装を見て、ナズーリンは続ける。 「だから、そんなに重く捉える事はない。何、雨宿りのあとにお茶を一杯飲むようなものさ」 俺はそろそろどちらが主人なのか解らなくなってきた。 真面目さのあまり目を白黒させている星と、あくまでドライな発言を続けるナズーリンのデコボコっぷりが笑えて来る。 見れば、こいしもくすくすと声を抑えるようにして笑っていた。 口元に笑みが浮かぶのを実感すると、彼女が俺の顔へと視線を向けて目が合った。 「行こ? 他の人とお話するの、楽しいよ」 こいしが俺の手をぎゅ、と握って囁くと、ぴちゃっと濡れた袖が手の甲に触れた。 先程他人から傷つけられたばかりだろうに、やれやれ全く――そう思いながら、手を握り返す。 「そうだな。じゃあ、お邪魔させて貰うか」 「喜んで」 「すみません、聖。失礼します」 濡れ鼠も良い所のまま余所様の家に上がり込んだ挙句家人の前に出ていいものかと一瞬首を傾げたが、玄関先で着替える訳にも行かないだろう。 詫びとして後で掃除の手伝いでもするか、とため息をひとつつきながら、星とナズーリンに続く。 「あら、星、ナズーリン?」 「先程の雨に大分降られたみたいだな、大丈夫か?」 部屋の中からは言葉が二つ聞こえるが、凛とした片方の女性の声には聞き覚えがあった。 「すみません、ご客人。替えの服だけでも取らせて頂けませんか」 「おや、客人か。これは失礼」 水の滴る髪も服も一度畳に擦りつけて頭を下げる星と、軽く一度頭を下げるだけのナズーリンを見ると本当にどちらが主だか解らなくなってくる。 だが、俺はここに居るとは思っていなかった人物に視線を向けて居た。 こいしも見れば、その人物に視線を注視している。 「君は――。珍しいな。彼女等と一緒に雨にでも降られたか?」 上白沢慧音――人里の守護者が此処に居るとは思わなかった。 人里に住んで居る限り誰でも一度は世話になっており、無論俺もその例外ではない。 傍らに居るこいしに慧音は視線を向けて、二人の視線が交錯する。 「それと、古明地こいしか。閉じた第三の瞳」 視線を一度だけ俺に向けて、慧音はこいしに向き直って腕を組み、諭すように話しかける。 「人里に黒猫が時たま君と思しき人影を探しに来ているのを見かけるが、君は姉に話をしていないのか? そうだとしたら、あまり感心出来たものではないな」 何故か慧音は彼女たちの関係を知っていた。 姉――さとりが居り、黒猫――燐が時折こいしを探しに人里に来ている事を。 「それは」 こいしが軽く息を呑み、少し伏せるように視線を逸らす。 「……確かに、毎回話をしている訳じゃ、無いけど……」 ぽそぽそと聞こえる声は、何かを隠すようで尻すぼみに聞こえなくなる。 「妖怪としても、生きる上での道理だろう。姉に心配を掛けないようにする。それくらいの事は難しく無いはずだ」 少し慧音の口調が厳しく、尖ったものになって来た。 「特に妖怪は心へのストレスが病の原因ともなる。君自身が良く知っている事だろうに」 「慧音っ!」 耐えかねて止める為に声を荒げると、慧音が俺を睨んで言葉を吐き出す。 「君も逃げる場所を与えるべきではないな。君は人間で彼女は妖怪、その差を認識するべきだ」 それは、確実に俺の心への楔となる一撃だった。 確かに、彼女を人間と同じように扱って来ていた事は否定しないし、否定出来ない。 「でも――」 反駁しようとすると、座っていたもう一人の女性が手で制するように俺の前に立った。 「まあまあ、お二人とも、今は落ちついて下さいな、それと古明地さん?」 穏やかで柔らかい声音が、張りつめた空気の中に響く。 「こいし、で良いです。…お邪魔します」 表情は何処か不満そうで、少し沈んだままだったがこいしは頭を下げる。 「私は、聖白蓮と申します。こいしさん、ですね。いらっしゃい、命蓮寺へ。勿論、あなたも」 白蓮が朗らかな笑顔を浮かべて挨拶し、氷に閉ざされたような雰囲気が溶けるように緩んで行った。 「あ、はい。お邪魔します」 立っているのもバツが悪くなり俺も座り込んで頭を深く白蓮に下げる。、 「とりあえず、濡れて居てはお風邪を召してしまいますし、お風呂に入って来てください。暖まるでしょう」 「えっと、それよりも彼女たちを先に」 全員が全員妖怪だとは言え、何時までも濡れた服を着させたままで居る訳にはいかないし見た目としても宜しく無い。 「大丈夫だよ、逆に人間はあなただけなんだから身体を冷やすと一番良くないのはあなただよ?」 こいしが腕をくいくいと引いて俺の顔を見つめるのを、首を横に振った。 「俺は良いっての、幾ら妖怪とは言え女三人の方が多いんだからそっち優先して入れるべきだろ」 男としての矜持と言うものもある。 「でしたら、全員でお風呂の方がよろしいでしょうか?」 「いや、聖……それは、ちょっと」 名案、と言った様子で手を叩いた白蓮に星が待ってくれと言う風にでも手を挙げて反駁する。 「彼は男性ですし、彼らの間だけでそう言う関係になっていたとしても……」 星の反論に、少し首を傾げて白蓮が呟く。 「あら……そうなのですね。愛を交わし合うのなら、星とナズーリン、二人を人払いさせましょうか?」 途端、星が思いっきりとんでもない事をとんでもない大声で叫んだ。 「はっ、はしたないですよっ!? あなた方はお風呂でどんな破廉恥な事をするおつもりですかっ!? そのような事は節度を持ってもっと情緒のある場所できちんと夜中に行って――」 俺が噴き出すより早く、矢継ぎ早に言葉を叩きつけられて面食らってしまい、慌てる時間すらなかった。 「……聖は人と妖怪の間の溝を埋めるためなら多少の不都合等は意識から洗い流してしまうんだ。逆にご主人は、聞いての通り堅物なものだからこうなってしまう。――それに」 小さな声がぽそぽそと聞こえて振り返ると、ナズーリンが呆れた様子で囁いて居た。 「少々、ロマンチストだ」 「……苦労してんだな、お前……」 呆れた声で呟き返すと、ナズーリンが苦笑する。 「ご理解頂けて何より。君には少し待っていて貰うことになりそうだね、これは」 「きちんと聞いているのですかっ!?」 と、刹那真面目に聞いて居なかったように見えたのか星の怒号が飛んできた。 「あー……、ご主人、あなたが思うような事は無いだろうから安心した方が良い、私達の肌も直視できない見ての通りの度胸無しだよ、彼は」 なるほど、このネズミ、援護するどころか他人様にケンカ売っているらしい。 妖怪だろうが流石に今のは俺は怒っていい所だと思う。 「おいコラ」 俺の反駁をにやりと笑って流す灰色鼠の横で、こいしが首を傾げていた。 「むー……そんなに魅力無いかなぁ?」 「こいしも妙な事言うなって!?」 「何だい、まだ手を出されてないのかい君は? こんな可愛い彼女が居ながらそれは男として頂けないと思うんだが」 「手を出すだなんてなんて恐ろしい事を! まだ結婚前の女性を辱めるなんて外道も良い所、そんな事をしたら私は断じて許しませんからねっ!?」 「むー、違うよーっ、ほら、この人顔は強面だけどそう言う所は初心だからー」 「それにしてもあそこまで熱烈にキスを交わして居てはだね、君」 「そうですよ、あんな場所で押し倒してそれ以上の事までしようとしていたでしょう!? そんなもの絶対許しませんから、例え毘沙門天が許しても!」 わーぎゃーわーぎゃーぎゃーてーぎゃーてーぜーむーとーどーしゅー。 俺の中の何かがぷち、と切れる音がした。 「良いからとっとと風呂入って来いってんだろうが!?」 聖と慧音がぽかんとした表情で、真っ赤になっていた俺の顔を眺めている。 星とナズーリンも同じようにぽかんとしていて、こいしだけが普段通りと言った様子でこくんと頷いた。 「じゃ、私たちが入ったらきちんと入るんだよー?」 言われんでも入るからとっとと行きなさい、と目で合図しながら手を軽くしっし、と振る。 むぅー、と膨れたこいしの顔がにへら、と崩れたのを見てもう機嫌は戻ってると確信し、一つ息を付いた。 「あまり怒らないタイプだからな、君は……珍しい物を見れたと思ったものだ」 「忘れてくれ、今のは……」 慧音の冷やかしが、なんとはなしに心に堪えた。 「けど、好都合だな。慧音に聞きたい事があったんだが」 騒がしい群れが走り去ってから口を開くと、慧音が訝しむような視線を俺に向けた。 「あそこまで厳しく諭した私に聞きたい事か。どんな?」 やはりこいしに対して彼女自身が抱いていた確信も含めて厳しく言っていたのか、とその言葉を聞いて納得した。 白蓮が首を傾げ、俺に視線を向けて来る。 「慧音さんに何かお話があったのですか? 私も失礼して」 そしてそのまま立ち上がろうとした白蓮を、手で制した。 「ああ、いや。特に聞かれて問題がある話じゃないと思うんで。それで――」 梅の木での出来事を話すと、慧音が苦虫を噛みつぶしたような顔をして呟く。 「……じゃあ、君達は彼に会ってしまったのか」 白蓮はと言うと、神妙な顔をしてじ、と耳を傾けて居る。 「知っていたのか? やはり」 「ああ、知っているさ」 ――曰く、そこには妖精が一匹居たらしい。 ――曰く、その男は妖精と夫婦になったらしい。 ――曰く、その妖精が消えてしまったらしい。 ――曰く、彼はそれから自暴自棄な生活を続けているらしい。 ――曰く、小さな子供がその周囲に纏わりついて居るらしいが邪険に扱っているらしい。 「と、言う訳だ。その少女は察しの通り彼と件の妖精の娘だろう。人間と妖精の間に子が生まれるとは眉唾だが」 「それにしては、人里で話にも上ってなかった筈だ」 あの場所へは、訪れる人が殆ど居ないように見えた。 また、そのような経緯なら人里で長らく噂になって居てもおかしくない。 「ああ、済まないな、その”歴史”は私が隠した」 しれ、と慧音は重大な言葉を口にした。 人伝手に聞いた事がある、彼女は幻想郷の歴史を全て知っていると、知っているからこそ、隠す事も出来ると。 「おい、何で」 「その時期前後に人と妖怪の関係が緊張していてな。知られてしまっては、例え妖精と人とは言え、妖怪に与するものとして彼らも討たれて居たかも知れない」 俺の言葉を遮り、瞳を閉じて慧音はため息を漏らす。 だからと言って、それで良いのか――。 「それに、人と妖精は根本的にあり方が違うものだ。知られない方がむしろ自然だろうし、種族にとっては幸せに繋がる」 彼女は俺の感情を知ってか知らずか、そのまま落ちついた様子で続けた。 「共同体と言うものが人にも妖精にもある。互いにそれを侵すべきではないんだ。そもそも人間と妖精の合いの子など、本来有り得ない存在だ――」 ふ、と吐息を一つ漏らし、慧音は白蓮に視線を向ける。 「聖殿。どう思う?」 「そう、ですね」 何処か困ったような微笑みを浮かべて、慧音へと向き直った白蓮は言葉を発した。 「慧音さんの言葉は御尤もです。けれど、その方々が夫婦になった段階で、何故放っておかれたのです?」 私の本分ではないですが、と呟いて彼女は続ける。 「その段階で本来、あなたは別れを推すべきだったのではないかと思いますが」 白蓮の問いに、慧音が苦い表情をして呟いた。 「それが、出来なかった。妖精にしては非常に力が強かった、私でも手を焼くほどに。妖精は、本来子を為すものではないだろうが、その力が強大となり過ぎた為に」 そしてそのまま慧音は瞳を瞑る。 「子を為し、消えたのだろう」 沈黙が部屋に落ちた。 「……それで」 しん、とした部屋に俺の呟いた声が取り残される。 「彼も、その子も、残されて今のままだ、と言う事か」 「ああ。それと私の知っている限りではあるが――」 慧音が瞳を閉じたまま、唇を開く。 「まだ生きて居たとしても彼は永くない。妖精とともに居た頃から老咳を患ってる筈だ」 すると白蓮が微かに首を傾げ、問いかけた。 「もう薬師の手には負えないのですか?」 「とうに聞いたよ、私も薬師は知らない仲ではないからな」 ふぅ、と一つ息を付くと彼女は瞳を開く。 「症状は末期。治療したとしても身体が保ち直さない。心が生きて居れば、まだ治療の目もあるが」 「あのザマでは生きている事すら辛い。そう言う事か」 俺の呟きに慧音が無言で頷くと、白蓮がはぁ、と溜めて居た吐息を漏らした。 「……救いたい、ですね。二人とも」 「同感だ。しかしな聖殿、実際に出来る事と出来ない事がある」 「なかなか上手く行かないものですね、里の人妖が供に学ぶ寺子屋にしても」 慧音と白蓮、二人が向かい合ってため息を付くと、片方が立ち上がった。 「さて、邪魔をしたな。君も彼女たちが風呂から出たらすぐに入った方が良いだろう、風邪をひかない為にも」 慧音は何処か説教臭く言いながら、風呂敷に書物を包み手に取ると襖に手を掛ける。 「お帰りですか。それではまた、慧音さん」 笑顔で見送る白蓮と。 「ああ、ではな、聖殿。それと君も」 「ああ、またな」 自分でも顔が少し厳しくなっているのを感じる声音で返した。 「いけませんよ。あなたの想い人が心配してしまいます」 くすくす、と笑う白蓮に、息を軽く呑んで深呼吸。 「ああ、それはすみません」 どうも、と気拙い様子でぽそぽそと呟くと、ふと白蓮が首を傾げた。 「そう言えば……あなた方は此方へは雨宿りにいらっしゃったのですか?」 「ああ、それは」 星が言っていた事をふと思い出す。 聖の救いになってくれれば、と彼女は語っていた。 「星に連れられて話でもしてくれと」 とは言え、俺の口から言っては元も子も無いので簡単な言葉で逃げておく。 「あら、そうだったのですか。あなた方は、人と妖怪の恋人同士なのですよね」 恋人同士、と聞いて少しどき、と跳ねる鼓動が我がものながら嘆かわしい。 もう少し、恋人という言葉についての耐性を付けた方が良いのかもしれない。 「ああ、はい」 少し畏まった様子で答えると、聖が表情を綻ばせて笑みを浮かべた。 「良かった、です。あなた方のような存在が、居てくれた事が」 何処か安堵したようにも見えるその笑みに、少しだけ魅せられる。 星が俺に求めて居たのは、これだったのか。 「どうか末永く続かれるよう、この寺でお祈りさせて頂きますね」 「あー……」 正直ここまで畏まられると非常にどうしたらいいのか解らない。 解答に困り頬を掻いて居ると。 「てーやーっ」 こいしが俺の首元に腕を回すようにして、飛びついて来た。 「のわっ……離れろって、服濡れるだろうがっ」 俺の服がまだ濡れたままだと言うのにお構いなしに浴衣で飛びついてくるこいしを引き剥がす。 「濡れたら入り直せばいいもん、今度は一緒にー」 笑顔で身体を寄せて来るこいしの言葉を右から左に聞きながすと、後ろから黄と灰の組み合わせが戻ってくる。 星は顔も良い真っ赤具合で、ナズーリンはふぅ、と一つ溜息をついて居た。 無意識に借り物の服を濡らす妖怪少女の処置をどうしようかと思案しながら俺も負けじと呆れるような溜息一つ。 暖かい肌と、さらさらとした綿の肌触りが心地よい。 「星、ナズーリン。お帰りなさい」 視線を聖とやりとりしている主従に向ければ、ぐるんとこいしに顔を向けさせられた。 「目移りするの、禁止っ」 「ぐぉあ、そう言う訳じゃないっての!?」 声だけが聞こえてくれば、会話の内容が読めて来る。 「戻りました、聖……はぁ」 「ただいま、と。いや……中てられたねご主人」 「どうしたのですか二人とも。のぼせました?」 「ええ……」 「惚気に、ね」 惚気、と聞いてぐいぐいやってるこいしの表情がにぱ、と言う笑顔になる。 逆に俺は俺で顔が少し蒼くなったのを実感しながら、こいしの肩に手を乗せた。 「なぁ」 「どしたの?」 こて、と首を傾げる彼女はやっぱり笑顔で。 「何を、話した」 「色々っ」 軽い絶望感と眩暈を感じながら何とか立ち上がる。 「あ、背中流したげるよー?」 「良い、余所様の所だからな……」 「もー、つれないなぁ」 いつものやりとりをしながら。 そのやりとりが、何処か暖かく、何処か可笑しく。 ふと、口元から笑みが漏れて、一度こいしの頭をぽふっとやって。 「あ」 その表情があ、の形で構って、それが解けて笑みに変わる瞬間が嬉しくて。 何処か、彼女のお陰で彼女自身も俺自身も救われた気がした。 ───────────────────────────────────────────────────── 「さ、て」 風呂を上がると、雨は止んで居た。 既に陽が暮れかけて居り、早めに戻った方が良さそうである。 火に晒されて乾いた服を着て、立ちあがった。 「もう帰っちゃう?」 こて、と首を傾げるこいしに一度頷いて立ち上がろうとすると。 「あら、此処まで居て頂いたのなら夕飯も食べて行かれては?」 「うーん」 白蓮の言葉に、こいしが俺の方へと視線を彷徨わせる。 「どうしよっか」 嬉しそうな口調で問いかけるこいしに、悪いと思いながらも俺は決めて居た言葉を口にする。 「丁度良い。こいし。ちょっとお前だけ一緒に食べて行ってくれ」 「……え。あなたは?」 刹那、不安げに揺れる俺を見上げるその瞳。 白蓮ははい、と相槌を返すと一度頷いて、じ、と俺達の方を坐したまま見続けている。 何をしに行くのだろうかと言うことと、こいしを何故連れて行かないのか程度は察しているのだろう。 「ちょっと野暮用が出来てな」 ぽんぽん、と軽く頭に触れてやると、少し沈んだ瞳を伏せるように俯いてこいしはこくん、と頷く。 「……どんな?」 そして、微かに首を傾げてもう一度俺を見上げる彼女。 「それは」 言葉に詰まり、首を微かに横に振って、一つため息をついた。 真摯に俺を見上げたままの瞳に、どう解答を返すべきか一瞬の思考。 「答えたくないんだね」 じと、と言う様子でその瞳が睨むような、貫くような瞳へとなるまで数瞬。 「――」 こいしがふと、瞳を閉じた。 不甲斐無い男と呆れたか、それとも怒りで俺の顔を見たくすら無くなったか。 ――気付けば顔見知りになった連中が悉く俺達を注視していた。 部屋の中に座っていた白蓮は解っているのか解っていないのか、微笑みながらお茶を飲んで居る。 逆に物陰に隠れている星は今すぐにでも飛び出して来そうな様子だが、こいしの手前それが出来ないらしく耳だけが壁から飛び出て居る。 ナズーリンはやれやれ、と溜息をつきながら廊下を歩いて行った。 こいしに視線を戻すと、まだ瞳を閉じたまま俺を見上げるようにしている。 そのままじっとしているのは何か意味でもあるのか、と戸惑いながらそ、と肩に手を置いた。 「……」 そのまま、何をするでもなく数瞬。 身体を突き放すか、それとも落ちつくまで待つか、どちらかを選ぼうとしたところでこいしが唇を開いた。 「キス」 「……は?」 一瞬何を言っているのか解らず、間抜けな言葉を呟いてこいしの肩から手を離す。 「……だから、キス」 眼をぱち、と開いたこいしは脹れっ面でむー、と唸ると俺の眼をもう一度睨む。 ――今、ようやっと瞳を閉じて居たこいしが何を求めているのか理解した。 「解るかそんなの!?」 己の頭をがしがしとやって半ば叫ぶような声が俺の口から飛び出して来た。 「キスしないんだったら、良いよ。ふーん、だっ」 脹れっ面のままのこいしが身体を離して視線を離す。 非常に釈然としない、何が釈然としないって不機嫌そうに怒る理由がキスしない事と言うのが釈然としない。 普通は理由を話さないからだとかそういう事だろうがと叫びたくなった。 「なるほどこの無意識妖怪娘、どうもロジックがおかしい事を理解出来て居ないらしいな」 「おかしくなんてないもんっ、気付かないあなたが悪いんだよっ」 このあたりでどうも俺もプチンと何かが切れたらしい。 叫ぶように言いたい事を叩きつけていくと、それを超える勢いのこいしの言葉が帰ってくる。 こんな勢いで言葉の応酬をした事なんて、これまでに無い出来事だ。 「第三の瞳は俺には付いてないってんだよ! さとりだって心読めないだろうが大体!」 「お姉ちゃんは瞳に頼り過ぎだから行間読むのが苦手なの! 気付くものは気付くと思うのに! 人間だったら察することできるでしょ!?」 「あの流れで眼を閉じたら普通呆れるかそれとも怒って顔も見たくないかのどちらかだろう普通! 察した結果がキスしてくれとか誰が想像できるか!」 「眼を閉じて見上げたらキスするものなの! そう言うものなの! 誰が決めたのかは知らないけど、そもそも聞いた事もないけど!」 「やっぱり聞いた事ないんじゃねーか! 聞いたんだか聞いてないんだかどっちかにしろよ! 別にしてやっても良いけどな!」 「ならしてよ! 今すぐしてよ人前で! 照れて出来ない初心な男の人は可愛いねー! 虚勢張ってるようにしか見えないけど!」 「んにゃろう、なら今すぐしてやるからそこ動くんじゃ――」 「……痴話喧嘩は程々に外でやりたまえよ、君たち……」 誰か俺達以外の声が聞こえた気がするが意識の外に消えて行く 「煩ッいなもうっ!!!」 同時に襖をすぱーんっ! と開けて黒い服を着た少女が怒鳴り声を上げた。 「……あー悪い」 「……ごめん、なさい」 その後黒い服の少女がぶつくさと呟きながら襖を閉めたのを見届けて、ほ、と一つ互いに息をついた。 気が付くと何処かにシリアスな空気はすっ飛んでいた。 そして直後、残ったのはバツの悪さとこっ恥ずかしいセリフの山と、押し寄せて来る多大な後悔。 こいしも何処か視線を彷徨わせるように俺の方を見ようとせず、真っ赤な上気した顔で呻くような声を上げるばかり。 「……うぅ」 「ったく……」 やり切れない気持ちを落ちつかせるために、こいしの頬にそっと触れてやる。 はふ、と安堵したような吐息を漏らしたこいしが、触れた掌にそっと掌を乗せて瞳を閉じた。 「……信じてる」 ぽそ、と呟いた彼女の様子に、怯えは見られない。 「信じてる」 もう一度、こいしが呟いて瞳を開き、俺をじ、と見据えた。 その瞳には怯えも怒りも無く、ただただ強い確信だけが宿っているように見えてその瞳から眼を逸らす事が出来ない。 「私は、あなたを、信じてる」 確認するようにこいしが一節一節区切りながら、同じ言葉を繰り返し口にした。 第三の瞳は、彼女の傍らにあって何も見ないまま虚空へと向けて瞳を閉じて居る。 三度、古明地こいしは口にした。 「信じてる。絶対に。例え、あなたが裏切ったとしても」 俺を信じてる、と。 「裏切る事なんてないって、信じてる」 ……ああ。 この、幻想郷に来て気付いた事を強く思い知らされた気がした。 この郷に生きる妖怪も、人も、須らくある一つの事で共通している。 嘘をついて悪戯はすれど、本質で嘘は絶対につかない。 取り繕ったような嘘と人の顔を窺うことに満ちて居た人の世と比べてみれば、どれだけその事実が幻想である事か。 この妖怪少女は、嘘をつかないと言う事実を無意識に俺の無意識に強く植え付けて――今、その芽が巨大な木になり、認識出来るようになったのだ。 「だから、帰るべき場所に帰ってくるって信じてる。……晩御飯は何が良いかなぁ? 良ければ白蓮さん達に貰ってこうと思うけど」 もう一度信じてる、と口にしながら彼女は微笑んだ。 ならば、俺もこう返すしかない。 「なら、こいしが食べて美味いと思ったものを頼む」 日常の会話を口にして、己の口元に笑みが浮かぶのを自覚していた。 幸せな瞬間には、人は全て微笑むものである――無意識に微笑むものである。 「わー、丸投げだー。でも、りょーかい、ふふふっ。遅くなっちゃうようなら追いかけちゃうよ?」 「はは、余り遅くなるつもりは無いけれどな」 二人、互いに笑みを隠す事が出来ずに交わし合って、視線を合わせて。 「では、宜しいですか? それでしたらこいしさんにもお料理を手伝って頂こうかと」 白蓮がにこり、と微笑んでこいしに笑いかける。 「はーいっ、頑張りますっ」 明るい声がこだまして、心地よいハーモニーを奏でる。 「……では、あなたはお帰りになるのですね?」 白蓮が俺の方を向いて笑顔を浮かべて居た。 きっと、こいしも白蓮も俺が今から何をしに行くのかは解っているのだろう。 俺が風呂に入っている間、彼女たちが何を話していたのかは解らないし、知る必要も無い。 「ああ。どうもお世話になりまして」 日常では口先ばかりの社交辞令でも、彼女達の前では真の意味を持つ。 本当に世話になった、と思いながら頭を下げて部屋を退出する。 彼女たちは、笑いながら俺を見送っていた。 「……お二人は、本当に想い合っているのですね」 ふと、玄関に行こうとすると星が少しバツの悪そうな表情で佇んで居た。 「それしか出来ない不器用者同士なんだよ、俺達の場合は」 苦笑し、脇を通り抜けて靴を取って立ち上がろうとすると星が呟いた。 「素晴らしい事だと、思いますよ」 微笑んで、彼女は一度頷く。 「では、また」 「ああ」 そして、あの場所へと歩きだした。 はらり、はらはら。 宵闇に白い梅の花が舞い落ちる。 またこの場所へと来たは良いが、男の姿は見えなかった。 そして、あの少女の姿も。 流石にもう飲み続けて居る時間では無いとは思うが。 ……しかし、来たは良いものの、何をしてやったらいいかの検討が全く付かない。 少なくとも、こいしが居るべきではないと思ったからこそ置いて来た訳だが。 あの少女を此処から逃がして野垂れ死にさせるか? それとも、男を諭して生きる気力を取り戻させるか? 少なくとも、俺は前者を迷う事無く行う事が出来る程の悪人ではなく、後者の解答を持っていて他人を改心させられる程の善人では無い。 精々が、憎まれ役代わりに道化を演じるか、正面から説得しようとして頑なさに溜息を付いて見殺しにする弱者が関の山だろう。 所詮は人間が出来る程度の事しか俺には出来るものではない。 「さて」 溜息をつきかけて、ついたところで始まらないと言う事を再確認して首を横に振ると、ふと。 ――う。 「何だ?」 うめき声のようなものが何処かから聞こえ、一人ごちて周囲を見回した。 うう、ともう一度低く聞こえた声の方へと足を向ける。 近寄ると同時に何か軽いものが何かがバタバタと走り回るような音が聞こえてきた。 その音が出口の方に近付いて来て、何かの影がどすんっ、と俺の腹のあたりにぶつかって来る。 「んな、っ!?」 「……!!?」 どっ、と押されながら足を踏み堪えると、白い少女の姿がそこにあった。 その身体の半分程にぶちまけられた闇色と、鉄臭い臭いに息を呑む。 これは、きっと太陽の灯りに照らされたなら、きっとそれは暗い赤。 身体半分を血色に染めて、大きな目から涙を流し、何かすがるものを求めるような少女の姿。 「……! ……!!!」 口をぱくぱくと開けながらも掠れた悲鳴がひゅ、ひゅ、としか漏れない少女が、俺の服の裾を引っ張り小屋の中へ引きずり込もうとしていた。 「何だ一体っ!?」 体を押し戻すようにしてやるが、惑い行く先を失ったその瞳はただ俺を茫洋と見続ける。 一見細い壊れそうな体にも関わらず、まるで人とは思えない強い力。 背中にうっすらと羽のようなものが見えて居るのは、妖精としての力の顕現なのか――。 「って、まさか」 直後、一つの結論が導き出されて電撃が身体を貫いたかのような錯覚を覚えた。 なら、あの男はもう――! 「大丈夫かっ!?」 居ても立っても居られず、少女の体に引きこまれるように小屋の中へ飛び込んだ。 赤い。 黒い朱が汚れた木の床に広がっていた。 床に突っ伏したまま動かない白い男。 ぜいめいが聞こえ、突っ伏した頭、口元からあふれ出たようなドス黒い血液。 ひく、ひくっとしゃくりあげるような声が後ろから聞こえるが、最早構ってる余裕すら無い。 「大丈夫か!?」 走り寄り、身体を仰向けにすると半ば気を失ったかのような様子の白い男が薄く目を開いた。 「――テ、メェ……は」 は、と笑い飛ばそうとする様子で視線を逸らそうとすると、ごほ、ごほと横を向きながら咳をする。 そして、あふれ出る血液。 「黙ってろ、っ!」 本当に症状が労咳、肺結核なら、彼の娘は解らないが此方の身は確実に拙い。 無論、専門的な知識がある訳でもなく特効薬の組成なんてものが解る訳も無い。 そんな、外の世界で見た漫画や映画の英雄とは程遠い俺自身が、出来る事――。 「手伝ってくれ、力になってくれる奴らが居る場所を知っている!」 白い少女に半ば怒鳴るような声をかけると彼女はびく、と怯えたように身体を竦めた。 そして、瞳に光を、力をゆっくりと取り戻していく。 こく、ん。 頷いて、彼女は父親に走りよると身体を起こすように、背を押した。 がくん、と揺れたその腕を俺は肩から下げさせるようにし、体を背負い込む。 重さは、殆ど皆無だった。 体を鍛えて居た訳でもない俺にすら軽々と抱えあげられる程度の体重にまで落ち込んでいる男。 もしも、殴って居たら全く格闘などの心得がない俺でも簡単に吹き飛ばせていたのかもしれない。 考えて居ても仕方ない事である、と自分に言い聞かせて首を横に振った。 今考えるべきことではない、今しなければならないことは――。 「っ……!」 地を蹴り、走り出す。 少女が必死に走りながら、後を追って来た。 ――絶対に力になってくれる、その願いだけを、確信だけをこめて。 空には満月の明かりが灯り、暗闇を静かに照らしていた。 「……は、ぁっ……!」 命連寺までの道のりは、鬱蒼と茂った森を通る為妖怪に襲われたら決して生きては居られないだろうと思えた。 先程まではまだ多少明るい時間だったので良かったが、最早闇の中に何があるかすら解らない状態では狙われたらそれこそ一瞬で命を狩り取られる。 背負った男は、身動ぎせず体をただ預け、少女は何時しか俺の前の道を走っていた。 「そこを右だ!」 三叉路をうすぼんやりと照らす月の助けがなければ、どこを走っているのかすら解らない。 少女が急旋回するように右側に方向転換し、その後を追い続ける。 命蓮寺まではもう遠くなく、間近な街道まで差し掛かるが人影は殆ど無い。 「……ろ、せ」 男がぽそ、と呟いたように聞こえた。 「な、んだ、よっ!」 走りながらのため、息がとぎれとぎれになりながらだが何とか返すとそいつはもう一度口にする。 「下、ろせ……くわ、れた、ほうが、マシ、だ」 「まだそんな事言ってるのかテメェはよ!」 今日は程良く何度もブチ切れる日だと何処か冷めた感情で、激高し叫び返す自分自身を見つめる。 「お前が死にたがって、ようが、知ったことか、生かす努力くらい、させろってんだよ!」 「あがいても、もう、ダメ、だから、な」 とぎれとぎれに呟く男の声が煩わしい。 「良い、から、黙れ、ってん、だっ!」 幾ら軽い体とは言え、所詮人間程度の腕力や体力では俺自身の限界もそう遠くない。 目の前を走る少女が、何処か焦燥めいた表情で俺達の方を振り返った。 「そこの門! 閂閉まってたら思いっきり門を叩け!」 塀が近くに見えて来て、足を動かすスピードを上げる。 少女がこくんと真剣な表情で頷いて、どんどんどんどん! と強く門扉を叩いた。 絶対に、この中には彼らの力になってくれる奴が居る。 「……こんな時間に何ですか? 迷惑――……!?」 水夫の服のような格好の女性がふと出て来ると、少女の姿を見て女性は息を呑んだ。 「どうしたんです!?」 そして後ろから駆けて来る俺を見やり、大声で彼女は叫ぶ。 「あなた方は一体!?」 「おい、白蓮居るか!?」 返す余裕すら無かった俺はそこで膝をつき、荒い吐息を上げるだけ。 「……待ってて! すぐ話をするから……!」 俺の担いでいる人影を見たその女性は、焦った様子で境内の中へと走って行った。 「どうしたんだい船長、随分と急いで」 「緊急事態よ、ナズーリン! 倒れた人が運ばれてきたんだよ!」 聞き覚えがある声が聞こえて、その後を追うと灰色の鼠娘の姿。 「キミは――ってどうしたんだい本当に! 肩も血で汚れてるし、それに、その子は?」 ふと少女を見やると、微かに身体が浮いていた。 途中から走るのではなく、空を飛んでいたのか、と気付く。 「とりあえず、キミ自身も、一旦休んだ方が良い。キミの連れも帰る直前だったけれど……」 こいしが、まだ中に居る。 噛みしめるように呟いて、少しだけ安堵すると一つの欲求が身体に競り上がってきた。 「布団の用意が出来たよ、聖も居るから!」 先程の水夫の服を着た女性が現れて、こちらに走ってくると力の抜けた俺から男の身体を担ぎあげて、空を飛んで行く。 ふと肩に背負っていた重みが消えて、何とか立ち上がろうとすると今度は少女の姿がふら、と揺れた。 空に浮いていた足はとうに地についていて、そのままだと仰向けに倒れてしまいそうに――。 「だい、じょう、ぶ、か!?」 声をあげても、身体が上手く動かない。 このままだと、頭を打ってしまうが俺の身体は全く動いてくれなかった。 「っと、危ないね」 そこに助けの手、倒れ込む寸前にナズーリンが走り込んで抱きとめる。 「……しかしこの子は一体。とりあえず、目を覚ますまで寝かせておくよ」 そして少女を抱えあげ、建物へと歩いて行くナズーリン。 最後に一人取り残され、周囲から人影が消えて建物の中で音がにわかに鳴るようになってから、感じるもの。 ――それは、一人取り残された恐怖だった。 人の死が近くにあったが故の恐怖だった。 その恐怖が自らに降りかかっていない事を安堵し、それを知られたくないための恐怖だった。 人が今すぐにただの肉塊に変わってしまう、ただそれだけの恐怖だった。 こいし、何処だ。 周囲を見回して、求める人影が見当たらないだけで覚えた焦燥感。 こいし、会いたい。 何故か解らないし、永遠に別れた訳ではないのに覚えるこの胸を締め付けられる感覚。 こいし、こいし……! こいしを乞うて手を伸ばしても、すぐ近くに居るハズの彼女の姿は全く見当たらない。 こいしを恋いて声をあげようとしても、疲れ切った俺の身体は掠れた荒い吐息を繰り返すばかり。 何故、彼女の姿をこんなに俺は求めて居るんだろう。 何故、彼女の声が聞こえないだけで俺はこんなに不安になるんだろう。 考える余地も無いほどに、俺の頭はただただ彼女を求め続けて居る。 「こいし、っ……!」 辛うじて上げたそれは、聞こえるかも解らない程の叫びでしかなかった。 それでも――。 「――うん」 ぽす、と背中に背中を合わせられる暖かさ。 「此処に、居るよ」 彼女の優しい声音に、緊張し続けて居た心が解きほぐされる。 「だから、大丈夫」 柔らかな声と、心地よい重量と、暖かい身体と――。 「こいしっ……!」 振り返ると、揺れる帽子とその下の白い髪。 浮かべる笑みは、俺を安堵させるためか形の良い唇を程良く曲げていて。 翠の瞳は、何処までも優しくまるで母親のように俺を見つめて居た。 溜まらず、彼女の体をぎゅう、と強く抱きよせた。 「っひゃあ!?」 急に身体を抱き寄せられた彼女が素っ頓狂な声を上げるが、それでも構わず強く強く抱き締める。 先程まで抱いていた不安が少しずつ、彼女の身体に心地よく浄化されていくようで気持ち良い。 「っ、痛いよ、っ」 瞳を閉じて彼女が微かに呟くが、抱き締める力を弱められない。 「……すま、ないっ」 謝罪の言葉を口にするが、身体を抱き締める事だけは、強く抱き締め続けることだけは、止められそうもない。 「もー、仕方ない、なぁ」 こいしが身体の力を抜いて、瞳を開いて微笑み俺を見上げた。 「……確かに、無意識弄って驚かせようとしちゃったけど」 ふふ、と笑いながら彼女は続ける。 「ちょっと、熱烈過ぎだよ?」 言葉を返す事すらしなかった、いや、出来なかった。 少しでもこの不安を減らす為には、ただこうすることしかできなかったから。 「大丈夫。私は、此処に居るよ」 もう一度、同じフレーズを囁くと笑いながらこいしは瞳を閉じて、身体をなすがままにさせてくれようと力を抜いてくれる。 ゆっくりと、抱擁する力を弱めて、彼女の身体を支えるように、抱き締められる程まで回復したらしい。 何ともしれない不安と、一人取り残されて行ったような恐怖は暖かな安堵へと変わっていた。 「……も、大丈夫? 泣いてない?」 くすくす、とこいしが笑い、俺はその表情を見て深く頷く。 瞳が熱いと思っていたら、涙が零れ落ちて居たのかと後になってから気付く。 そんなに情緒が不安定だったのかと少し自省し、ふぅ、と一つ息をついた。 「大丈夫だ、ああ……」 と、扉が開く音が聞こえて星の姿がふと見えた。 「お二人ともとりあえず上がって下さい。聖も何が起こっていたのか、伺いたいようなので――」 「そだね、私も聞きたいし」 傍らのこいしも、先程行ったナズーリンも、この中に居るであろう白蓮も、少なくとも今の様子を見た人妖には、説明しなければならない。 当然の義務に思えて、首を縦に振って建物へと足を踏み入れた。 「なるほど」 話を終えて、ナズーリンが微かに頷いてそれきり口を閉ざした。 一輪と言う尼僧の服を着た女性と、先程の船長と呼ばれた村紗と言った女性は、一つため息をついて白蓮を見る。 「星、ナズーリン。人里の守護者を呼んできて頂けませんか? 彼女なら、薬師の場所を知っている筈です」 「……解りました」 二人に指示を出す白蓮の口調は、何処か荘厳にも聞こえ、星が静かに、けれど何かを言いたげな様子で立ち上がる。 「了解したよ。ご主人、行こう」 「はい」 星とナズーリンの二人が頷き、部屋を退出すると聖が呟く。 「……一度、治療を受けて頂かないと」 ふ、と首を横に振り、もう一度深い溜息をつく白蓮。 「姐さん、それは」 「一輪、解ってると思うんだ、聖も……」 一輪の言葉に首を横に振りながら、村紗は立ち上がる。 「とりあえず、水を組んできます。一輪、ちょっと手伝って欲しいから一緒に来て」 「ええ。……では、姐さん。失礼します」 深く頭を下げて、二人は退出する。 部屋に重い沈黙が満ちて、襖の奥から聞こえる病人の掠れたぜんめいだけが響いてくる。 「……会わせて、貰えませんか? 二人に」 それまでずっと黙りっきり聞いて居たこいしが唇を開いた。 「こいしさんがですか?」 「夢についてと、人の心については『覚』の方が適任だから。心の読めない、出来損ないだけど」 自分に出来る事はあるのだ、と言うようにこいしは強い確信をこめた瞳で聖を見つめながら続ける。 違う、出来損ないなんかじゃない。 後から瞳を閉ざしたお前は、出来損ないの『覚』なんかじゃない、と反駁しようとし、とどまった。 彼女は、そこまで俺を許しては居ない――見えない一線を、感じてしまうのだ。 少なくとも、俺は人間で彼女は『覚』と言う妖怪で、互いを知っても知りきることが出来ないのだから――。 「それに、無意識は私自身。私は無意識で、無意識は私。だから、大丈夫」 にこ、と微笑んだ彼女の瞳は迷いは見られない。 白蓮が頷いて、襖をあけた。 「こいし」 立ち上がろうとするその手をぎゅ、と軽く握り、瞳を見上げる。 少し驚いた様子で見下ろしたこいしは、笑って俺の手を解いた。 「大丈夫。何か出来る訳じゃないけど」 それでも、やれる事はあるかもしれない、と言ってこいしはもう一度笑った。 「大丈夫、ですか?」 こいしが部屋を出て行った後、俺の様子がおかしい、と思ったのか白蓮がそんなことを言いながら俺の方を何処か責めるような瞳で射抜く。 「いや……」 自分でも自覚症状がないほどに、解らない。 普段放っておいても寂しいとも思わず、何時も抱き締めて居たいだなんて思う事はこれまでなかった。 つれないなぁ、なんて言葉をこいしから聞くたびに自分のヘタレを自覚しながらなぁなぁで過ごして来ていた。 覚悟を決めた、なんて自分に呟いて居ながら。 正直、白蓮や寺の面々が居てくれて理性的に非常に助かった。 誰も居なかったとして、傍らにこいしだけが居たらきっと俺は一人で行くと言ったこいしに首を横に振ったに違いない。 そして、こいしの身体を抱き締めるだけでは足らず、きっと自分のものにしようとしていただろう。 理性も何もかもかなぐり捨てて、この寂寥感と不安を埋めるだけのために、こいしを己の欲望のままに抱き、傷つけようとしていたろう。 例えそれが彼女の言う通り望んだものであったとしても、俺は――。 「死の恐怖は、そう簡単に逃げられるものではないと思いますよ」 白蓮がぽそ、と呟いた。 「私も、よく知っていますから」 そして、何処か自嘲めいた笑みを浮かべて彼女は続ける。 本質的には、彼女の言うそれが俺の感じて居た不安や恐怖の源なのだろうか。 「……俺は」 後ろに倒れるようにして、天井を見上げて俺は呟いた。 「弱いな」 「……ええ。人間ですからね。嫌なら、人間であることを辞めるしかない」 白蓮が呟き、続ける言葉をただ耳にまるで経のように流し入れる。 「でも、こいしさんはあなたが人間であることを望んでるみたい。お話していて、とてもそれが印象に残ってます」 愛しい者が、何処までも俺の事を考えていた事に喜びと一抹の寂しさを感じる。 人間でありたいけれど、それと同じ程に、人の身を捨ててこいしと伴にありたいと言うのに。 「……お二人の為に、お部屋を用意しておきます。もう遅いですしゆっくりお休みになった方が良いでしょう。今日は泊まって行って下さい」 自分の弱さが嫌になって、瞳を閉じて頷いた。 静かな部屋だった。 俺の吐息以外は何も聞こえない、完全な静寂。 虫の声も聞こえない、無音の空間がここにある。 言葉を呟くでもなく、何かをするでもなく孤独を抱えて居た。 布団に転がってぼう、と見つめた天井と、何かで満たされたような満たされないような心。 「たーだいまっ」 襖を開ける音が響き、こいしが俺の顔を見下ろすように覗き込んできた。 「ああ」 気の抜けたような声で返すと、こいしがじ、と俺を睨む。 「本当に、大丈夫? おかしいよ、今日のあなた。怒ったり、ぼーっとしたり、不安そうな顔したり」 ふぅ、と溜息をついて彼女は布団に横になる。 「ね」 「……ん?」 こいしへと視線を向けると、彼女は真剣な瞳で俺の瞳を射抜いて居た。 目線が離す事が出来ず、ただ碧に呑まれていくような感覚を覚える。 そして。 「抱いて」 こいしはぽそり、と俺の耳元に囁いた。 「……おい」 一瞬呆気に取られ、何を返すかが思い浮かばず抑止する言葉しか投げ掛けられない。 「大丈夫、本能は無意識の領域だから」 仰向けになったままの俺の身体の上に、こいしはそっと手を乗せる。 「止めろって!?」 抑止しようと声をわざと荒げたが、止める様子もなく俺の胸に手を置いて、俺の上に覆いかぶさるようにしながらこいしが囁いた。 「任せて、多分大丈夫だから」 笑う訳でもなく、照れた様子を浮かべるでもなくただ淡々とこいしは続ける。 ――何か、違う。 今、この場で彼女と愛し合う事は、何かが違う。 「おい、こいし」 「今のあなたに反論の余地なんて、与えない」 反駁しようとするも冷めた声でこいしは言いきって俺の上にまたがり、自分の服に手を掛けようとしていた。 彼女は、一体何をあの男と少女に見た――? 「気持ち良いから、きっと」 表情を見て、絶対に彼女は今のままでは止める気は無いと確信した。 背筋にぞぉ、と寒気が走り、抵抗の必要を覚えて必死にあがく。 「こいしっ!」 抑止するために叫び声をあげて突き飛ばそうとするが、ぐ、と身体を抑えつけられて俺には動く事すら許されない。 「動かないで、殺しちゃいたくなるから」 冷たい声が、俺の身体を縛りつけて、こいしが俺の唇にキスを落とそうと屈みこむ。 肩を押す事も出来ず、身体を布団の上に押さえつけられて、それでも止まる様子は全く無い。 抵抗できるものではない、そのことに納得は行くが、こいしがこのような事をするのに対して心が納得しない。 「ねぇ、――」 そして、彼女は俺の名前を呼んだ。 「解らないよ、人間が。何で、脆いのに、何で、すぐに死んじゃうのに」 静かな激情を、瞳の中に強く携えて。 「口で言う事と心の中で言う事が全然違う事を言うくせに、決めた事をすぐに止めたり変えちゃうのに」 瞳からぽろ、と滴が零れ落ちた。 「なんで、そんなに、歩いて行けるの!? なんで、間違っても間違っても前に進もうと足掻くの!?」 ぽた、ぽた、と流れ落ちるその滴は俺の頬を濡らし、留まる事を知らないと言うように溢れ出す。 「なんで、なんであなたは私の心に残ろうとするの!? いつか絶対に消えてしまうあなたの存在なんて、私の中に居て欲しくなんてないのに!」 疑う事のない本心が、零れ落ちて居た。 「なんで、なんで、っ」 どん、どん、と俺の胸を強く叩くこいしが、どんっ、ともう一度強く叩いて悲鳴のように泣き叫んだ。 「なんで、妖怪(わたし)は人間(あなた)を好きになってしまったのっ!?」 正直、妖怪のかなり遠慮のない勢いで叩かれているお陰で痛い。 そして、俺は今のぼろぼろになった心と、疲れ切った身体しか持っていない。 こいしのバラバラになりかけた心を繋ぐものなんて、俺は何も持っていなかった。 繋いでやるためのセロテープのような言葉も、隙間を埋めてやるためのパテのような口づけも。 ただ一つだけ持っていたのは、ぼろぼろになってもまだ、こいしという存在を求めて止まない心の欠片。 茫洋としたまま、ひっく、と嗚咽を漏らす彼女の体を引き寄せる。 ぼう、としたまま着衣の乱れたこいしの身体を柔く包み、囁いた。 「俺にだって、解らない。そんなものは」 自分の言っている言葉が、何を指しているのかも最早定まっていない。 「人間が、何で進んで行けるのかも、解らない。進んでるのか、その実感も無い」 ぽそぽそ、と耳元に囁くように続いたのはただのエゴの塊である自分を証明する言葉だった。 「お前の中に、残りたいのは単純だ。俺は人間で、何時か死ぬ。だから、俺って存在が何時までも残るものを残したい。子が産まれたら、後に残るだろうしな。それと」 でも、三つ目は――。 これだけは、どうやっても紡ぎ出さなければならない、一番大切な言葉だから。 「人間(おれ)は、妖怪(おまえ)を、愛してる。理由なんて、無いけれど」 こいしが顔をあげて、茫然とした表情を浮かべた。 「好きな事に、理由なんて無い。愛してる事に、理由なんて無い。けれど、俺はどうしてもこいしの全てが欲しい」 どっ、と胸に灯ったロケットブースター。 「例え、お前がヒトを食い人を殺してきた、ただの暴れ者の妖怪だったとしても」 笑いながら点火して、推進力を発した心。 「それでも、俺はお前を好きなんだよ、こいし」 触れ合わせて、ぎゅ、と固めて、手をつないで。 「俺だって、死にたくなんてない、お前を残してなんて死にたくあるものかよ」 大好きな人とともにそのブースターで、空まで飛んで行こう。 「でもな、俺は人間だ。幸せに死ぬ為に、生きるんだと思う」 いっそ二人でこの郷を抜け出して、月でも一週してうさぎを驚かせてやろうか。 「だから、俺はお前と幸せになって、そして幸せに死んで行きたい。それが人間の寿命であっても、仮にそうでなかったとしても」 魔女には二重惑星だと勘違いされるだろうか、巫女には凶兆と勘違いされるだろうか。 「俺は幸せになれるから、進むんだ。迷っても、間違っても前に進むし、何度自分が傷つくかも解らないし何度こいしを傷つけるかも解らない」 だから泣かないで、大好きな人よ、僕等はずっと、手を互いに離せないから。 「それでも、俺と一緒に、生きてくれ。――幸せになろう、こいし」 何する訳でもなく、無意識に目を閉じた。 刹那、心の中をそ、と触れられるような優しい感覚が身体に伝わる。 「……もー、つれないなぁ」 こいしが身体を軽く持ちあげ、先程覆いかぶさっていた時のような体勢になって俺の瞳を覗き込む。 少女は、笑っていて、そして泣いて居た。 満面の笑みを浮かべながら、瞳からはぼろぼろと零れ落ちた涙が俺の額に落ちてくる。 「積極的にアプローチ掛けてみようかなって思ったらこの様だもんねぇー」 何処か苦笑するようなセリフで笑い続けるこいしには負の感情は感じられなかった。 「確かに、あなたを好きになった理由なんて、必要無い。きっと、無意識に惹かれたんだろうから説明なんて出来ない」 こつん、と額を俺の胸に載せるように呟いた彼女の涙が俺の服を静かに濡らす。 理由を求めようとしたら、幾らでもそれに似た理由なんて作り出せる、俺も、こいしも。 けれど、その理由は敢えて求めないし、定まらない、決まる事ではないから。 優しいから、可愛いから、孤独を埋めてやりたいから、何時も一緒に居るから、出会った時からずっと――。 数えた理由はいくつもあれど、どれもが該当していてどれもが該当していない。 それを全て含めた上で、好きになった、愛している。 傷つけあいながら、互いにそれを気付かされて、こいしは今俺とこうしている。 ただ爆発しそうなこの想いが、身体の芯に焼けるように詰まって行き、留まるところを知らない。 そ、と抱きよせたままの身体を布団に横たえて、その上に軽く覆いかぶさる。 先程までとは全く逆の構図で、寄せるように唇を唇に重ねるとこいしが、あ、と声を小さく漏らした。 「……ね」 そしてこいしがもう一度じ、と瞳を覗き込むように、先程とは正反対の体勢で頭を上げて呟く。 そして、両方の手で俺の頬を包むように、そして笑顔で俺の心を包むように。 「したいこと、していい、よ」 その一言で、先程堪えて居たものとは違う場所で理性が吹き飛び――。 何処かで走るような音が聞こえるが、構わずこいしの唇を奪おうと寄せた刹那。 すぱぁんっ! と襖を開け放つ音が響く。 立っていたのは星。 「夜分にすいません! 先程のお二人が目を覚まし……って何をやってるんですかぁぁぁぁぁぁぁ!?」 そして、星の悲鳴が夜の命蓮寺に木霊した。 「……すみません、取り乱しまして」 「いや」 「気にしないで下さい」 服を直してから星について歩いて行く途中。 むしろ畏まるべきはこちらでお前が気にしろこいし、と思ったが今回ばかりは俺も相当以上に悪いので口には絶対出来ない。 理性が目を覚まさなければ、確実に行きつく所まで行きついてたのが見える為あそこで留まって良かったと思える。 「それで、あの男の容体は?」 星が首を横に振る。 「私の方は居ませんでした。ナズーリンに、上白沢さんを探しに行って貰ってますが」 芳しくないか、間に合わない。 そう言った様子で、星が首を横に振った。 「私は一旦報告に。丁度目を覚ましたので、急ぎ起こそうと思って……」 ぷしゅう、と顔から湯気が噴き出してふらり、と倒れそうになるのをこいしが後ろから支える。 俺達絡みの事で、非常に今日一日迷惑を被ってるに違いない彼女に、正直申し訳が立たない。 「大丈夫?」 「ええ、何とか」 星がもう一度立ち直し、ふぅと一つ息をついた。 「そう言う訳です、お邪魔をして申し訳ありませんでした……」 「いや」 俺が首を横に振り、こいしも大丈夫、と言って頷いた。 むしろ本心としては、あれは正直前に出てこられても後に出てこられても確実に困ったので丁度タイミング的に良かったのではないかと思う。 「あ、星。呼んできて頂けましたか?」 ふと正面の戸が開くと、先程と変わらない白蓮の姿。 「はい」 こくり、と星が頷いて先を促すように俺を見る。 こいしの手がぎゅ、と無意識に俺の手を握り締めてきて視線を向けると、こいしは微笑んで一度深く頷いた。 「あ、ぁ?」 ぜ、は、と途切れ途切れの声音が聞こえる。 白蓮が座して二人の様子をただ見守っていた。 傍らの白い少女は、正座して自分の父親の手を握り締めて居た。 苦痛に満ちた表情の中、俺を見ながら男が微かに皮肉げな笑みを浮かべる。 「……お人好し、が」 とぎれとぎれにそう呟いた男の表情は、まるで死人のような顔の青さだった。 「化けものと、お似合い、だ。そんな奴、は」 途切れながら、男が続けるのをこいしが見てふ、と笑みを浮かべた。 「もう、良いんじゃないかな」 笑いながら声をかけるこいしを見守ると、男が眉を顰めて途切れながらの声を上げた。 「何が、だよ。俺は、別に」 「この子を――自分の娘を傷つけて、人間に対する不信を植え付けて。その後出会った人妖へと懐かせる」 一瞬、こいしと男の話している間だけの空間が止まったようにも見えた。 俺には全く何の事だか解らないが、その一言でこの男の行動が大体は推測出来た。 「バケモノ呼ばわりだけして、私を知ろうとして居なかったのが大失敗。私は、古明地こいし。無意識を操る妖怪」 くすり、ともう一度微笑んだこいしは白い半精の少女の頭に触れた。 「夢って言うのは、無意識の領域。おじさんの無意識と、この子の無意識両方に触れさせて貰ったの」 少女がこくん、と頷いてこいしを見上げる。 「この子はもう知っているよ、あなたの愛情と、あなたの想い。この子のお母さんの事を、忘れられていないのも知ってる」 自分の帽子を軽く押さえ、笑いながら続けるこいしの様子が探偵か何かのようにも見えて来た。 無意識を覗き、無意識に触れて無意識に接触する、確かにこいしが最も得意とすることだ。 そして、妖怪としての力の顕現。 「……ああ、だから先程」 白蓮が一人ごち、納得したかのように頷いた。 男はと言えば、ぱく、ぱくと口を開くが言葉になって居ない。 「……生きたい。幸せに逝きたい。それなら、この子と生きるしかないよね。あなたは」 くすくす、と笑いながらこいしは全てを見通した瞳で続ける。 それは、先程の俺とこいしのやりとりで、俺が行きつきたいと思っている果て。 人は、幸せになる為に生きて行く、そのために他者が必要だと言う事。 「……」 こくん、と白の少女が力強く意思をこめた瞳で頷いた。 「まだ、やり直せる。あなたの命は、一時間後に終わるかもしれないし、もしかしたら今日や明日では終わらないかもしれない」 目を閉じてこいしが呟く。 「だから、少しでも、生きて。…私が言いたいのは、それだけ」 「馬鹿を――」 ごほ、と一度男が咳き込んで血が飛び舞う。 「無理はしない方が良いのではないかと思いますっ」 白蓮が男を抑止するように傍らに寄るが、こいしは言葉を止めずに続ける。 「うん、馬鹿だよ、男の人って。馬鹿みたいな事で悩んで泣いて、馬鹿みたいな事で喜んで笑う。……ね」 こいしがちら、と俺を見て笑った。 こいつはどうも俺の事も馬鹿だと言いたいらしいが、何故俺に飛んでくるのか非常に不可解である。 「おいコラ」 「なーにー?」 にっこり、と俺に笑いかけながら知らないと言った顔をするこいしが小憎らしく、愛しい。 「解ったよ、ったく、完敗だ――」 ふ、と件の男の柔らかな笑みが漏れて、少女が笑みを浮かべて父親の手を握り締めた。 「そして、完敗、だ」 ごぼっ。 顔を出していた掛け布団の枕、そして男の体――それらが吐きだされた暗い朱色に染まった。 鉄分の強い、血の臭いが部屋の空気を塗り替える。 漏れ掛けた柔らかな空気が、一瞬で凍りついた。 「……!!?」 少女が息を呑んで、父親の手を握り顔を覗き込む。 「もう、お迎え、来ちまったらしい、な」 男の声は掠れ切っていて、言葉になっていない。 「大丈夫ですかっ!?」 白蓮が男の様子を覗き込み、すぐに立ち上がってバタバタと走り出す。 「何か拭くものを持って来ないと」 命の消滅と言うタイムリミットは間近に迫って来ていた。 いやいや、とでも言うように少女が首を横に振る。 「……そう、だよ、名前――付けて、なかったな。……お前、は――」 ふ、と笑いながら男が少女の名を呼ぶ。 それは、世の中に咲き誇るありふれたものの中でもたった一つの、大切な名前。 「……」 こく、こくと少女が頷いて手を強く握り締める。 零れ落ちた滴は、ただ涙となって流れ落ちて頬を伝い落ちて布団の上を涙の色で染めて行く。 「……さ、ん」 すると、名前を呼ばれた少女が微かな声を上げ始める。 喋る事が出来たのか? それとも、口を開けて喋る事が出来るようになる奇跡でも起こったのか? 解らないが、それでも――。 「……お、とう、さん……っ!」 部屋の中に掠れた悲鳴が響き渡る。 驚いた様子を一度口元に浮かべた瀕死の男は、唇を笑みの形に変えて、弱弱しく手を娘の手に伸ばす。 長い間表だって向けられなかった愛情は、最後の瞬間にだけ向けられて。 二人が果たしてどれほどの期間を過ごしていたのかは俺には解らないけれど。 「おとう、さんっ!!!」 こいしはただただ二人の様子をじ、と見守っていた。 握りしめられた俺の手は白くなってきていたが、その手を強く俺からも握りしめる。 そして、心の中に競り上がってくる堪えようも無い感情を、ただただ抑え込める。 男は笑っていた。 笑いながら、死に始めていた。 声なんて出る訳がないのに、唇が幸せそうな笑みを浮かべる。 泣き叫ぶ少女の姿は悲痛な程に胸を締め付けるのに、この男は――。 少女の方に向けて居た視線を、一度俺の方に男は向ける。 それは何処か苦笑するようなもので、直後に男は瞳を閉じた。 安らかな笑顔で、ただ瞳を閉じているだけで、二度と覚めない眠り。 「おとうさん、めをあけてぇっ!!!」 悲痛な声がこだまして、寺の人妖が片っぱしから集まって来た。 何があったのかとでも言うように――。 「こいし」 ふ、と視線を落とすとただ茫洋とした視線でその方を見ながら涙を流しているこいしの姿。 他の奴にその涙を見せたくなくて、こいしの手を引いて頭を包むように抱き締めた。 「……最後、ね」 葬儀の準備がひと段落して、こいしと二人もう一度布団に横になる。 直後、呟きながらこいしが俺に手を伸ばした。 「最後、あの人は笑いながら、死にたくないなって思ってた――」 ぽそ、ぽそ、と色の無い表情でつぶやくこいしと、同じように色の無い冷めた心で頷き返す俺。 疲労と、人の死を目の前で見ると言う心と、全てを出しつくして結末はただの死と言う心の限界と。 辛うじて二人で居るから心を繋げている。 「……解って、る」 ぽそり、と返すとこいしがぎゅ、と身体を寄せて来た。 何度繰り返したか解らない、そして何度繰り返すか解らないこの行動。 後何度俺はこいしを抱き締められるんだろうか。 「……ずっと、一緒」 ぽそ、とこいしが呟き、ゆるりと伸ばされた手が絡み合う。 「ああ」 言いながら、瞳を閉じた。 この身体がある間は、共に、常に共にあれたら。 ただそう思いながら、二人、瞳を閉じた。 疲れ切った身体をただただ休める為に、互いの心と体を癒すために。 ――満月はとうに終わり、空を朝焼けが染め上げ始めていた。 日はまた昇り繰り返して、世界を照らしていく。 少しでも、少しでも良い、彼女と少しでも長く共にあれたら――。 その想いだけが、最後に頭に焼けながら、睡眠と言う深い闇に思考は沈んで行った。 Megalith 2011/01/04, 2011/01/19, 2011/02/23, 2011/03/28, 2011/04/24,2011/05/23,2011/08/16 ───────────────────────────────────────────────────────────
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能力比較 属性 耐久 集攻 集防 散攻 散防 俊敏 備考 Pこいし 無 100 60 100 100 100 60 100 60 100 160 160 60 凪CD無振り 100 60 100 176 176 60 凪CD全振り Aこいし 無/幻 105 40 85 80 85 125 ミミロップ ノーマル 65 76 84 54 96 105 属性相性 Pこいし 無 Aこいし 無/幻 貫通する(4倍) --- 貫通する(4倍) --- 貫通する(2倍) 闇 貫通する(2倍) 音 阻まれる(1/2) --- 阻まれる(1/2) 光/闘 阻まれる(1/4) --- 阻まれる(1/4) --- 効果がない 幻 効果がない 無/幻 アビリティ考察 名称 スタイル 効果 備考 突貫 P 追加効果のあるスキルの威力が1.3倍になるが追加効果が発動しなくなる。 多様な追加効果スキルを覚えるので、強力なアタッカーとして機能できる。 弾道修正 P 気象:凪の時自分の散弾・散防が1.5倍になる。 Pこいし専用アビリティ。凪なら脅威のCD全振り種族値176相当。そう、凪ならね。 持ち腐れ A 持っている装飾品の効果を受けない。 (スタイルチェンジ後は)Aこいし専用アビリティ。基本はこだわり系やかんざし鮫トレで相手を縛っていく。かんざしを鮫トレできるのはAこいしだけ! 好奇心 A 補助スキルの優先度が+1される。 \はやい/ 元々の俊敏値の高さも相まって、好奇心持ち同士でも、先手を取られることは稀。 スキル考察 Pこいし 集弾技 タイプ 威力 命中 追加効果 備考 ロストクライシス 闇 60 100 地相解除(120) 地相メタ。この技必要? 散弾技 タイプ 威力 命中 追加効果 備考 弾幕乱舞 無 120(180) 100 2~3T攻撃。のち混乱 メインウエポン1。火力は高いが弱点は突けない。 インフェルノ 炎 120 85 火傷10% 突貫時威力156。自然と鋼鉄に。 コールドレイン 水 120 80 停止10% 突貫時威力156。炎と大地に。 雷帝インディグネイト 雷 120 85 麻痺10% 突貫時威力156。水と風に。 変化技 タイプ 命中 備考 ブレイブソング 音 - 積みたい時に。 虚像 幻 - 突貫時威力156の技を一致で打てる(234)。ブレイブソングでよくね?手数が多いので、属性の幅が多くて便利。 Aこいし 集弾技 タイプ 威力 命中 追加効果 備考 ロストクライシス 闇 60 100 地相解除(120) 地相メタ。ぴんぽぴんぽーん 散弾技 タイプ 威力 命中 追加効果 備考 カタストロフィ 幻 95(142.5) 100 散防↓10% 何も考えずに一致で打てる、幻定番スキル。 不思議な波動 幻 80(120) 100 集防で計算 集防が極端に低い相手には刺さる。おささる。 インフェルノ 炎 120 85 火傷10% サブウェポン1。Aこいしは割と散弾高めなので、 コールドレイン 水 120 80 停止10% サブウェポン2。沢山手数が用意できることは、 雷帝インディグネイト 雷 120 85 麻痺10% サブウェポン3。とても良いことだと思います。 変化技 タイプ 命中 備考 シャークトレード 闇 100 かんざし系を鮫トレしたターンにも、相手は変化技を発動できなくなってしまった(パッチ1.17)。gg。 マインドコントロール 幻 100 持ち腐れ鮫トレ後に使うと、相手は困惑のあまり降参する。gg。んなわけねーだろカス サンダーベール 雷 100 命中100%麻痺。 後ろの正面 冥 85 命中85%恐怖。 閃光弾 光 100 命中100%混乱。 森羅結界 無 - まも。 バリアオプション 無 - みが。 フィールドバリア 光 - 壁。 フィールドプロテクト 光 - 張り。 アップビート 音 - 俊敏125から繰り出される好奇心アップビートは、全ての変化型を置き去りにする。 型考察 Pこいし:基本型 アビリティ: 印: PP: 装飾品: 確定技: 選択技: Aこいし:基本型 アビリティ: 印: PP: 装飾品: 確定技: 選択技: 対こいし Pこいし 注意すべき点 対策方法 Aこいし 注意すべき点 対策方法
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信仰+ コスト 戦闘力 HP df 労働 知識 探索 特殊能力 000 10万 7000 90 10 2 5 9 無意識 破壊 心を閉ざした無意識少女。今日もどこかをふらついている。 能力の1つである無意識により、いじめによるペナルティなどを一切無視して攻めこむことが出来る。 その代わりこいし自身の力だけでは相手から信仰を奪うことはできないので、他のメンバーもしっかり鍛えておこう。 地味にコストが10万と決して安い数値ではないので、常にある程度の信仰をキープしておくことも忘れずに。 何も対策がなければターン終了時に確定で失踪してしまうというやや困った特徴を持つ。 そのため長時間場に維持するにはお姉ちゃんとの絆?が必須となる。 尤も、絆のレベルが低ければ原作に忠実に失踪してしまう可能性があるので何にせよ少し手間がかかる。 こいしを活かす上では「失踪しないようにする」ではなく、「失踪してもいいようにする」という考え方も必要だろう。 その場合は在家信者こいしで失踪しても手札に加わるようにし、なかよし地霊殿?で戦闘力をキープするといい。 以前はそれなりに素の状態でも場に残っていたのだが、「序盤から相手を叩き潰す」という仲良く遊ぶのに適さない戦術を 後押しするかのような能力を持ってしまっているために粛清されたという歴史を持つ。 現に十分な戦力とコストさえ確保出来れば、序盤から確実に相手を叩き潰す手段としては最も手軽な方法として有名。 他にも序盤から相手を潰すことが出来る戦術は数多に存在するので、やってみたい人は色々と試してみよう。 専用AF?は一部の人のトラウマを抉るということで割と有名。 不死などの耐性を一切無視してユニットを除去できるのはそれなりに強力ではあるのだが、 ・対象が完全にランダム ・その対象に自分も含まれる ・これに頼らずともユニット除去手段は豊富 ・そもそもこいしちゃんが場に留まってくれない といった理由により、どうしても使いにくさが目立ってしまう。 使うなら専用の構築、かつファンデッキだという自覚を持ってプレイしよう。 攻撃 スペルカード名 攻撃対象 ダメージ量 ダメージ発生回数 弱 表象「夢枕にご先祖総立ち」 単体 戦闘力×0.6 1回 中 本能「イドの解放」 全体 戦闘力×0.2 1回* 中 抑制「スーパーエゴ」 全体 戦闘力×0.2 1回* 強 「サブタレイニアンローズ」 全体 戦闘力×0.5 1回 *連続で繰り出される 関連霊撃 なし 関連アーティファクト カード名 コスト 効果 旧地獄街道 50万 強さこそ信仰 灼熱地獄探題地霊殿 50万 死体を焼却して発電 ドキドキする帽子? 50万 ランダムで謎の失踪 絆 絆名称 組み合わせ 効果 リモート可否 新しいおともだち こいし×フラン 破壊無効化 ○ 古明地姉妹? こいし×さとり こいしの失踪確率低下 ○ なかよし地霊殿? 地霊殿4人 戦闘力最大に合わせる - EX3人娘? こいし×ぬえ×フラン 毎ターンいじめペナ低下 - 在家信者こいし こいし×白蓮 こいしが失踪しても手札に戻る ○ 無意識な上に非常識 こいし×早苗 こいしが失踪すると許早苗 ○ ※○:問題なく成立し効果発動 △:成立はするが一部効果は使えない ×:成立するが効果は使えない -:成立しない 特別な入手法 ・異変「嫌われ者のフィロソフィ(H)」をクリア
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no +信仰 コスト 戦闘力 HP df 労働 知識 探索 特殊能力 055u -5 050000 007000 090 10 2 5 9 破壊,無意識 無意識によりいじめペナルティを受けることなく弱者を襲撃できる 戦闘力調整が難しく、所持信仰量に余裕のない序盤でも平気で襲撃が可能で 1ボス保護法やおお、こわいこわいによる防御も無視できる 反面、毎ターン失踪判定があるため、修行などで強化して使うには不向き 一応探索系の仕事に適性があるが、信仰-5%や失踪した際の出しなおしコストも馬鹿にならないので仕事も不向き 襲撃の直前に呼び出す使い方が主だろう ただし♪虎柄の毘沙門天など、イジメ貫通できてもアウトなカードもあるので気をつけよう。 こいし自身の強さはコストやペナルティ能力の割には微妙。やはり戦闘向けのキャラと組ませて圧倒的戦力で相手を蹂躙したい所 戦闘向けの必殺サポートや霊撃が豊富で、フランドールとのコンビも期待できる紅魔館勢と組ませたり 戦闘毎に強化される幽香と霊夢のドSコンビと組ませる等が考えられる サポートはさとりとの古明地姉妹による失踪無効化とフランドールとの新しいおともだちによる襲撃信仰獲得が有効 使う際はその力を十分に発揮できるようにデッキや戦略を組み立てたい 現環境ではイジメペナルティは数十万~数百万になることも頻繁に起こり得るため、可能であれば1枚は手札に持っておきたいところ。 ただし、それに合わせて信仰量もインフレしてきているため、このカードに頼らずともペナルティを気にしなくて良い場面もそれなりに増えている。 テーマソングはこいしを定住させるための一つの方法となる。 襲撃対象が選べなくなるため、終盤での立ち回りは予めシミュレートしておこう。 ドキドキ大冒険は(自分を含めて)全員をドキドキさせてくれる。色んな意味で。 運さえ良ければヴァナを含むどんなユニットでも消しされるため、はまった時は非常に強力。 こいし自身がこれで消えることもある。その時なんとも言えない気持ちになるのはこいし使いの誰もが通る道。 攻撃 弱 表象「夢枕にご先祖総立ち」 単体 戦闘力×0.5 1回 中 本能「イドの解放」* 全体 戦闘力×0.2 1回 中 抑制「スーパーエゴ」* 全体 戦闘力×0.2 1回 強 「サブタレイニアンローズ」 全体 戦闘力×0.44 1回 *2回攻撃 関連霊撃 なし 関連サポートカード 159s 新しいおともだち フラン×こいし 戦いで信仰を獲得できる 196s 古明地姉妹 さとり×こいし こいし定住 199s なかよし地霊殿 さとり×空×お燐×こいし 戦闘力リンク 291s EX3人娘 フラン×こいし×ぬえ マイナス信仰でパワーアップ 292s 太陽の祝福 サニーミルク×地霊殿 地熱強化 502s ドキドキ大冒険 こいし ランダムで謎の失踪 514s 無意識な上に非常識 こいし×早苗 招待や挑発を無視 271s 地霊トラベルバス 超必殺:さとり×こいし 地霊殿バスターコール 252S さよなら人類 独立宣言:脱霊魔咲早妖 キャラ制限ボーナスLv1 246s 地霊殿は秘めたる想い 独立宣言:地霊殿オンリー リモートサポート 249s 文花帖はブン屋の意地 独立宣言:文花帖オンリー 文とはたてに『根性』 251s EXは帰らずの旅 独立宣言:EXボスオンリー 召還コスト0 テーマソング 355S ♪ハルトマンの妖怪少女 こいしのテーマ こいし定住 無意識襲撃 特別な入手方法 異変「行方不明のフィロソフィ」(H)をクリア
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こいし 転職条件 お空+こいし人形 ムイシキッ 成長率 HP MP 攻 守 素 魔 精 C SSS E D A SSS ⑨ 備考 ・閉じた恋の瞳。帽子がキュートな無意識を操る妖怪少女・精神魔力の伸びはいいが防御面が疎か。サブ職をしっかり考えてあげないと簡単にたおされてしまう。 習得スキル 名前 習得SP 威力 消費MP 属性 判定 攻撃側/防御側 備考 弾幕パラノイア 10 ? 20 無 魔法 魔力/精神 全体攻撃 イドの開放 20 ? 20 無 - 魔力/精神 (通常) 無意識付加、(無意識) 全体攻撃 スーパーエゴ 35 - 35 - - -/- (通常) 無意識付加、(無意識) 全体に混乱or魔力-55%・精神-100% 恋の埋火 50 - 40 - - -/- (通常) 無意識付加、(無意識) 味方全体の攻撃・魔力+80% 無意識の遺伝子 75 - 100 - - -/- (通常) 無意識付加、(無意識) 味方全体に無意識付加 サブタレイニアンローズ 100 ? 100 無 魔法 魔力/精神? 全体攻撃+魅了+(通常) 無意識付加、(無意識)体力回復 荒ぶるグリコのポーズ 1000 - 150 - - -/- (通常) 効果なし、(無意識)自全能力100%アップ+無意識解除? ほとんどの技に自分を無意識状態にする効果がついている。 無意識状態とそうでないときで効果が違う技を多数持つ。消費MPはそれほど高くないが、自分が無意識状態でないと発動しない技が多いので燃費が良いとは言い辛い。 無意識状態はうまく使えれば強力だが若干運要素が絡む。現在無意識は、自分の行動後50%の確率で解除される模様。また、無意識中は受けるダメージも上昇するので注意。張ったターンには剥がれてるなんて日常茶飯事。挫けない。 地味に属性持ちの技がないのも辛いところ。こいしの技自体が補助に向いたものが多いため、無理にアタッカーを張らずにPT戦では味方の援護に回ると幸せになれるかもしれない。 サポート型職のお約束として、高火力の職業を前職に持ってくるとソロでも道中が楽になる。こいしの場合、転職条件がお空なのでそれをそのまま使ってもいいが、どうせならHP・守備力の高い職業を持ってくると打たれ弱さを補うことができてGOOD。 常に無意識を張っている必要があるため、輝夜や永琳などの特殊状態を上書きする職とは相性が悪い。この辺も考慮したサブ職選びを!(そもそも、こいしの技を使わないなら話は別だが) バランス調整の為、SP1000技は消滅しました スペカ考察 弾幕パラノイア:道中での雑魚散らしに便利な全体攻撃。消費が20と控えめだがその分威力も控えめ。6面までは申し分ない威力だが、7面になると火力不足が気になってくる。属性がないのを長所とみるか短所とみるか・・・。 イドの解放:無意識状態を張る際にお世話になる技。消費20で手軽に無意識を張ることができる。こいしの技は無意識を使ったものが多いので、MP20消費の溜めとして捉えることもできる。無意識時の全体攻撃の威力はパラノイアと大差はない。(少し低いくらい?) スーパーエゴ:無意識状態でのみ発動する効果は混乱か能力ダウンかのランダム。能力ダウンの方はボスにも有効だが混乱は効かないので若干運の要素が強い。混乱自体確実に攻撃を防げるものでもないので、引き当てたとしてもいまいち信頼できない。また、消費35は決して軽い消費ではなく、使い勝手が悪い。 恋の埋火:「こいのうずみび」と読む。ソロでは普通にテンションを溜めた方が早くいまいちパッとしないが、PT戦で化ける技。PTの人数が多ければ多いほどその能力をいかんなく発揮できる。攻撃型・魔力型に囚われないのも魅力。 無意識の遺伝子:味方全体に無意識状態を付与できる。問題は無意識状態でないと自分にしか効果がないこと。自分に無意識を張ってからでないといけないので最低でも1ターンかかってしまい緊急性がない。「閉じた恋の瞳」を付けると初ターンから撃てて便利。ソロだと完全に死にスキル サブタレイニアンローズ:ボス戦でのメイン火力となる技。また、道中の堅い敵にも有効。攻撃しながら無意識を張れるのもオンリーワンの特性である。ただし、消費が高く連発は効かない。無意識の張り直しの為などと考えなしに撃っているとすぐにMP切れを起こしてしまう。道中での使用はここぞというときにとどめるといい。地味に魅了状態付与もついている。 立ち回り ~ソロ~ 無意識は高確率で攻撃を回避するとはいえ、当たった時はどうしても痛い。7ボスの火力を前にすると、大技で一発KOも日常茶飯事。当たる時はガスガス当たるので割り切ろう。当たらなければどうという事はないの精神ではどうにもならなそうである。 低燃費スペルの火力が低い。少なくとも7面道中では頼りない性能なので、道中の雑魚処理が最大の課題となる。 ~パーティ~ EX職どころか、6面職と比べても火力が見劣りしている事が多いので、ヘタに出しゃばらない方が良い。ゆっくり機を見て補助技を使ってあげよう。回復と攻撃を同時に行える「サブタレイニアンローズ」を要所要所で使ってあげると喜ばれる。 ボス戦では、他の人と行動を合わせるテクニックが必須となる。また、状況に応じて「無意識の遺伝子」等を使うのも効果的。 他のPTメンバーに別の状態を上書きされることもしょっちゅう。文句など言わず、落ち着いて無意識を張り直そう。くれぐれも勝手に動いたりしてはいけない。あくまで他の人の行動に合わせて使おう。 結局のところ、動かない方が良いなんて場面もしばしば(動くと無意識が解けることが多いため)。状況に合わせた的確な行動を心がけよう。 ~総評~ 無意識を張り続けなければいけないという特性のおかげで使い勝手は著しく悪い。また、そうまでして使った技の性能がそれほど高いわけでもない。世の中シビアである。 「技を使おうとして無意識張ったのにそのターンで剥がれたよ!こんなの絶対おかしいよ!」なんて当たり前。安定した戦いのためには「閉じた恋の瞳」が必須。それでも行動後に一定確率で剥がれるのが痛い。 そのため、装備品が固定されてしまうのも厳しいところ。 補助職ではあるが、前述の特性もありPT戦で活躍しづらい。運用できるだけの力量と状況を見極める洞察力が大事。無意識消されても泣かない。 総じて辛口のコメントを書いてきたが、「サブタレイニアンローズ」の性能は圧巻の一言!火力、回復力、無意識付与に状態異常率・・・どれをとっても高水準でまとまったまさに切り札!(ただし、火力は妹紅などと比べると低め)こいしの強さはこの技に支えられているといっても過言ではない。 というか、これくらいしか長所がないのが現状 あと、可愛い。超可愛い。死ぬほどかわいい。無意識可愛い。詰まる所可愛い。宇宙がヤバイ。 そして可愛い。なんでかって、こいしちゃんだから可愛い。これが可愛いからこいしちゃんかっていうとそういう訳にはいかない。ヤバイ。すなわちこいしちゃん可愛い。ここに帰結する。 じゃあ、なぜこいしが可愛いか考えてみよう。まず、可愛い。そしてかわいい。なぜなら、かわいい、無意識可愛い。つまり・・・そういうことだ・・・。ここを見ているあなたにも答えは出ているはず、こいしは・・・可愛いのである。こいしこいし。 こいしヤバイ +... ヤバイ。こいしヤバイ。まじでヤバイよ、マジヤバイ。 こいしヤバイ。 まず強い。もう強いなんてもんじゃない。超強い。 強いとかっても 「チルノ⑨人分くらい?」 とか、もう、そういうレベルじゃない。 何しろEX。スゲェ!1stageボスとかラスボスとかを超越してる。EXボスだし超強い。 しかも無意識らしい。ヤバイよ、無意識だよ。 だって普通はさとりとか心閉ざしたりしないじゃん。だって心が読めなくなったりしたら困るじゃん。 姉妹なのに心の中が分からないとか困るっしょ。 無意識で行動してるからどこにいるかもわからないとか泣くっしょ。 だからさとりとか心を閉ざしたりしない。話のわかるヤツだ。 けどこいしはヤバイ。そんなの気にしない。博麗の巫女とかの隣りを通ってもよくわかんないくらい無意識。ヤバすぎ。 無意っていたけど、もしかしたら有意かもしんない。でも有意って事にすると 「じゃあ、無意識の意識ってナニよ?」 って事になるし、それは誰もわからない。ヤバイ。誰にも分からないなんて凄すぎる。 それに超哲学。それに超心理学。エゴとか平気で出てくる。エゴて。小学生でも言わねぇよ、最近。 なんつってもこいしは人気が凄い。第十一回の人気投票なんか一位とっちゃったし。 秋姉妹なんて人気とかたかだか不人気ネタで人気出てきただけで上位狙えないから同じ順位にしたり、票を足したりするのに、 古明地姉妹は全然平気。姉妹を姉妹のまま扱ってる。凄い。ヤバイ。 とにかく貴様ら、こいしのヤバさをもっと知るべきだと思います。 そんなヤバイこいしを生み出したZUNとか超偉い。もっとがんばれ。超がんばれ。 /´ ̄ヽ'⌒ヽ '、 <O / \ / __ \,/ |/ く| ,. -‐──- 、., ト 、, l> /-──-- 、;; _ `ヽ / `!-─ァ _,,... -‐'───-- 、..,,__ `゙'<._ / 〈 ,. '"´ _;; '"´ ̄ `"' 、 \」 / _」 ヽ、__ >'"´ ̄ / ! \ Y´ ̄ 7 ,' ,ハ-‐ ∨`ヽ. l , ‐!‐.! ! ./ _」_ ノ | ) 、_ノ ./ ,ハ_」/| / '´;'´ハY ├ ''" , '⌒ヽ. `> | 7´;'´ハ レ' 弋__ソイ 八 l '⌒ヽ / .l 八弋_り . ⊂⊃ .,' ) ヽ、 ノ あはは、実はワタシ、無敵になれるんだよ?知ってた? (⌒ヽ. ∨⊂⊃ __ ノ | ! ( ', / , -) 八 ,.イ \_,.> `ヽ. !/ / / / |`7ァ=‐-rァ レ'、,⌒V ノ /| .| | ./しイ_>'/ / `>ァ、 / /) | ', '、__.ノ´∨ `ア7 / `'| // Y !`V レ'´) \ r/´i/) / 、レヘ'〈〉 ! ; イ/ ,.. -ト、l `ヽ 'つ r'7ーr'-、'つ / `メγ ⌒ヽ._/ 「 八_ _,ァ' |/-┴、 `ンv' 〈〉 .l ー~ l' /! | 'ア´ | /| \_7 .ゝ、_ノ! '7´ .|-| ./ / ,' / ,| /!、 〈〉 _,,.〈`l. | 7 / / / コメント 名前 コメント
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加入条件 地底深度30到達 能力 タイプ HP 攻撃 防御 魔抵 素質 コスト 移動 射程 命中 回避 必殺 吹飛 拡大 再動 便乗 反撃 アイテム 療養 魔法 36+16 38+19 4+2 12+6 D(48) 4 3 3 13 5 15 0 15 0 2 9 106/201 5 評価 地霊殿の主の妹。どこからともなくやってくる。 姉より火力が2割ほど高くその代わりコストも1高い。 陰陽玉が出てくる少し前に加入するので対陰陽玉要員として重宝する。 魔法ユニットとしては尖った性能はないが、高い火力で高防御敵を排除するのに適したそんなキャラである。 台詞集 初登場時 +... ー少女宴会中ー 魔理沙 あっはっはっはっは……ん? 魔理沙 つまみ減ってきたな。 妖夢ー! 妖夢 はーい、今やってますー! 妖夢 これをこっちに盛って、と……。 妖夢 すみません、誰かコレ先に そっち持ってってくれませんかー? こいし はーい! 妖夢 お願いしますねー。 こいし うん! さとり ……。 霊夢 お酒ー! お酒きれてるわよー! 紫 はいはい、っと……。 紫はスキマから酒をどんどん取り出し 床に並べている。 ルーミア わー、凄いなー。 どこから持ってきてるの? 紫 沢山ある所からよ。 どこかは知りませんわ。 ヤマメ いいのかそれ……。 てゐ 堅いことはいいっこなしだ。 ほらコレ運ぶよー! こいし はーい! 勇儀 転ぶなよー。 こいし うん! さとり …………。 霊夢 よーし来た来たー。 さぁ勝負、飲み比べよ! キスメ わ、私? あわわわわ………。 妖夢 さぁさ、紫さんがどこからか持ってきた 何なのかよく分からないけども 多分魚だと思う物のお刺身ですよ~。 勇儀 なんだそれは……食べられるのか? 椛 ……(ふんふん) 椛 ………くぅん……。 魔理沙 おい、犬が匂いでやられたぞ! 霊夢 くさやみたいなノリの物かも知れないし、 とりあえず食べてみなさいよー。 てゐ いや、誰が食べるのさ………。 魔理沙 お前。 霊夢 アンタ。 紫 貴女よ。 てゐ えーーー! ルーミア あっはははははは。 ヤマメ で、これ、食べられるんだよね? 紫 ええ、外界の珍味よ。 妖夢 さっきちょっとつまみましたけど、 コクがあって美味しかったですよ。 勇儀 そんじゃひとつ……おお、イケるねこれ。 ヤマメ ふむふむなるほど……旨いね こいし あたしも貰っていーい? さとり ………………。 魔理沙 おー、いっとけいっとけ。 こいし わーい。 いっただっきま [ぽかっ] こいし あいたっ! こいし お姉ちゃん、何するのよー。 さとり 何するのはありません。 挨拶くらいなさい。 こいし むー。 さとり 皆さんすみません。 妹が勝手に紛れ込んでまして……。 霊夢 いーわよいーわよ、そんな細かいこと。 やることやってくれるならねー。 さとり それは大丈夫ね。 大方、皆さんと遊びたかったんでしょうし。 こいし うんー。 あたしも遊びたいー。 さとり はぁ……。 ……というわけで、すみませんが 妹も厄介になって良いでしょうか? 魔理沙 おう、よろしくなー。 こいし うん、よろしく! 勇儀 おー、よかったなー。 こいし うん! こいしが部隊に加入します。 戦闘台詞 +... レベルアップ …………。 え、レベルアップ? アイテム発見 何かな? クリティカル あ、当たっちゃった。 吹っ飛ばし あれ、どこか行った? 効果拡大 何か強すぎたかな? まぁどうでもいいかー。 再行動 もちょっと遊んでいこうかな。 反撃 痛いなーもー。 便乗 私もいーい? 撤退 ただいまー。 ん、早かった? だいじょぶだよね? 体力0 いたたたた……。酷いなぁもう……。
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名前 こいし 愛称 こいし 職業 妖精 LV 70 性別 女性 誕生日 --月 --日 血液型 -- コメント 名前の由来は「恋し」であって「小石」ではありません(本人談) 区切り
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概要 製作者:柊一 地霊殿キャラでまっさきにコンセプトが決まった子。 スペルが足りてたんで作りやすかったです。 前々からやってみたかった打点減少と、干渉できない無意識→アンタッチャブル、とやりたいことを見事に体現してくれたキャラ。 はぁこいしちゃんちゅっちゅしたいよぉ デッキタイプ こいしの特徴は二つ。 相手スペルの打点減少 アンタッチャブル つまるところ受け殺しの形になる。 しかしリーダー性能は低いので、いかに序盤のダメージを抑えられるかに鍵がかかっている。 場が揃えば攻撃・迎撃ともに4点のダメージ減少となり、打点の低いキャラでは対抗不可能となる。 弱点 場が揃わないと如何ともしがたい。そのあたり鈴仙と似ている。 が、鈴仙は回避によりスペルを起こす分の呪力を節約できるが、こいしにはそれがない。 よって鈴仙よりもさらに呪力運用が厳しくなると言える。 また、アンタッチャブルを使うわりには自分もアンタッチャブルに弱い。目には目を、無意識には無意識を。 半幽霊とか幻想結界とか目も当てられなくなる。 カードリスト カードデータ リーダーカード 名前 体力 回避 決死 属性 閉じた恋の瞳 古明地 こいし 18 3 3 妖怪 地霊殿 スペルカード Lv 呪力 名前 攻撃 迎撃 命中 性質 基本能力 1 2 表象「夢枕にご先祖総立ち」 2 1 4 集中 誘導弾 1 2 表象「弾幕パラノイア」 2 2 3 通常 1 3 本能「イドの解放」 2 1 5 拡散 1 3 抑制「スーパーエゴ」 1 2 5 集中 2 3 反応「妖怪ポリグラフ」 3 2 4 集中 2 4 復燃「恋の埋火」 4 1 4 集中 誘導弾 2 4 深層「無意識の遺伝子」 2 2 6 通常 高速移動(2) 低速移動(2) 3 5 「嫌われ者のフィロソフィ」 3 3 5 通常 防壁(1) 3 6 「サブタレイニアンローズ」 4 3 6 拡散 サポートカード Lv 呪力 名前 配置 2 3 閉じた恋の瞳 リーダー 2 4 ハルトマンの妖怪少女 シーン 3 4 無の境地 リーダー 2 3 深層心理 スペル イベントカード Lv 呪力 名前 使用 1 3 無気配 戦闘 1 2 無意識操作 戦闘 2 3 放浪 充填 3 2 地獄のラブリービジター 戦闘