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ひとり、ふたり そうなのかなって思い始めたのはずっと前 その言葉を聞いたときから 私はあの子をもっともっとよくみるようになった それまでは あの子隠してたからわからなかったけれど しっかり見据えるようになってやっとわかった それで 私はこっそり決意した 誰にもわからないように でも 絶対に揺れないように 1 最近、こなたの様子がおかしい。妙によそよそしいというか、多分私を避けている。つかさやみゆきと話しているときはいつも通りに見える。なのに、私が絡むと途端に態度が変わるみたいだ。昨日の放課後もこんな感じだった。 「つかさー、この前貸した漫画どうだったー?」 「あ、あれ?えーと…」 「2巻の主人公がもうかっこよくてさー。『ハリー!ハリーハリー!!ハリーハリーハリー!!!』は最高だね!私大好きなんだー。今一番燃えるねあれが」 「うんと…まだちょっとしか読んでないけど…」 「4巻の大演説もいいよね。ちょっと調べてみたけど、改変ネタとかけっこうあるみたいだし。もう作者やりたい放題だよね」 「あの…あれって主人公誰なのかな…?サングラスして帽子かぶってる男の人?それともおっきな大砲持ってる女の人の方…?振り仮名振ってないと読めない漢字とかあるし…。最近の漫画って難しいよね…」 「えええー?何それー…。ちょっとそりゃないよー…。もうちょっとさあ…まあつかさだししょうがないか」 「はぅ!ひどいよこなちゃん…」 「みゆきさんなら分かってくれるよねーきっと」 「うーんどうでしょう…。私は漫画はそれほど読みませんので…」 「んーでも小説とかは結構読むんじゃない?そこからファンタジー→ラノベ→漫画とくれば大丈夫!これでみゆきさんも私たちの一員だよ!」 「そ、そうなんですか…?」 「こらこら、みゆきをそっちの世界に引きずり込むんじゃない」 「あ、お姉ちゃん」 「おっす」 「!」 「かがみさんも漫画は読まれるんですよね?」 「まあこなたほどじゃないけどね。こなたは教科書まで漫画にしてるくらいだもんねぇ?」 「…ん」 「いつだったか教科書借りたときはひどい目にあったわよ、まったく」 「…私…そろそろ行くね…」 「え?こなちゃんもう帰っちゃうの?いつももう少し…」 「今日ちょっとバイトあるから一緒に帰れないや。じゃ」 「…そうですか。ではお気をつけて。さようなら」 「うん。じゃねー」 「じゃあこなちゃんまた明日ねー」 「あ、こなたっ…」 まず、宿題を写しにこなくなった。夏休み中なんてあれだけ家に来てたのに、最近はぷっつりこなくなった。つかさは普通に教えてもらいにくるから、宿題が出てないってことはない。それとなくみゆきにきいてみたけど、やっぱりみゆきにも頼っている様子はない。 それから、寄り道にも誘いにこなくなった。これまでは新刊やら限定グッズやらが出る度に寄り道に誘ってきたけど、最近はそれがない。というか、私と一緒に帰ること自体が少なくなった。バイトとか用事とか色々言って先に帰ってしまう。たまに一緒になることはある。けど、つかさには話しかける。つかさが話しかけたときも普通に答えてる。でも、私に話しかけることはない。私が話しかけると顔を背けて生返事をするだけだ。あとはずっと目をつぶってたり。多分寝てるのだろう。 私の教室にも顔を出さなくなった。私がこなたの教室に行かないとき、ちょくちょく「かがみー」って言いながらきてたのに。 朝も会わなくなった。前は一緒の電車に乗ったりすることも多かったのだが、最近は意図的に時間をずらしているようだ。私とつかさが乗るのより一本早い電車で登校しているらしい。 総じて顔を合わせることが激減した。唯一残った時間はお弁当のときだが、それも最近になって急に一人だけ学食を使い出した。じゃあ、ということで皆で学食についていくと、やっぱり私とは目も合わせない。 どう考えても普通じゃない。夏休みが終わってしばらくの間は確かに普通だった筈だ。おかしくなり始めたのは10月に入ってちょっとしたあたりからだと思う。 最初は戸惑うばかりで心当たりなんてなかった。 2 でも、よく考えると、思い当たる節が一つある。ばれたのだ。あのことが。 いつかは分からない。全く外に出したつもりはなかったのに。 でも、だとすると、こなたが私を避け始めたのも合点がいく。 …もしそうだとしたら…今がそのときなのかもしれない。少なくとも、このまま放置するわけにもいかない。 そう考えて、私はその日、つかさとみゆきに話してみることにした。 放課後。こなたは今日も先に一人で帰ってしまった。私とは一度も会うことはなかった。でも、今日ばかりは都合がいい。教室に残っていたつかさとみゆきをつかまえて切り出す。 「ねえつかさ、みゆき、ちょっと話があるんだけど」 「何?お姉ちゃん?」 「どうしたんですか?かがみさん?」 「あの…こなたのことなんだけど」 私がそう言うと、二人とも顔がちょっと引き締まった。 「そっか…。こなちゃん…最近ちょっとおかしいもんね…」 「ええ…言いにくいですけど…かがみさんから逃げているような…」 やっぱり二人とも気づいてたか。 「…うん。多分、私を避けてる」 「あの、無理にお聞きするつもりはありません。言いづらければ言わないで下さい。でも、私たちに相談できることであれば仰って下さい。…何か心当たりがおありなんですか?」 「お姉ちゃん…」 ここから先は言いにくい。私にも確証がないのだ。憶測の上に推測を重ねたものだから、私の単なる思い込みの可能性も十分ある。私の考えていることと全く別のことが起きているのかもしれない。でも、可能性は一つ一つ潰していかなきゃダメだ。そうしないと始まらない。 ちょっと間をおいて、言った。 「私ね、こなたにひどいことしちゃったんだと思う。こなた、今すごい傷ついてる。私、避けられて当然かなって…」 「そうですか…」 みゆきも声が沈む。 「でも、かがみさんはそのことをちゃんと分かってらっしゃるんですよね?」 「うん…。自分でも…なんでこんなことになっちゃったんだろうって…。こんなことするつもりじゃなかったのに…」 「なら大丈夫です。その気持ちをしっかり泉さんに伝えて下さい。そしていつもの泉さんに戻してあげて下さい。私も…泉さんとかがみさんがこのままでは…悲しいです」 「そうだよお姉ちゃん。こなちゃんだって、いつまでもこのままじゃいたくないと思ってるよ、きっと」 本当のところは分からなかった。こなたが心底私を嫌ってるのなら、もうこのまま縁を切ってやりたいと思ってるのかもしれない。でも―― 「…ありがとう、二人とも」 背中は押してもらった。それは間違いない。 「あの…お姉ちゃん…ところで…」 つかさがおずおずと口を開いた。 「その…何を…しちゃったの?そこ聞いてないんだけど…」 それから、慌てて手を振った。 「あ、言えないならいいから!ほんとに!」 私は首を傾ける。これをここで言っていいものかどうか。 答えは勿論ダメだ。ここで言ってしまったら、こなたを余計傷つけることになる。 「ごめん…言えない」 「そっか…。あの、でも、そうしようと思ってやったことじゃないんでしょ?わざとこなちゃんを悲しませようとしたわけじゃないんでしょ?」 「それはそうなんだけどね…」 「いいんですよ、かがみさん。言えるときに、言いたくなったら言って下さい。このままずっと言わなくても、それでも構いません。ただ、これだけは覚えておいて下さい。私たちは、この件でかがみさんを見下げたりしません。そのことを気にしてらっしゃるのでしたら、ご心配には及びません。詳細は存じませんが、多分、不幸な行き違いなのでしょう。かがみさんもそのことは十分にお分かりなのではないですか?」 「そうだよね。私、いつでもお姉ちゃんを応援してるから」 つかさのフォローが痛い。 みゆきの優しい言葉が痛い。 私はもっと嫌われなければならない人間なのかもしれないのだから。 まだそうなのかどうかは、ちゃんと聞かないとわからないけれど。 いや、それも逃げだよね。 それでも、この二人に非はない。 だから、もう一度、繰り返した。 「ありがとう、二人とも…」 さて、それからもうちょっとつめていかないと。 「それで、明日、こなたを家に呼んで一度ちゃんと謝りたいんだけど…」 「あ、そうか。明日、家、私とお姉ちゃんだけだもんね。明後日は土曜日だし」 「私たちが間に入ることは…できないのでしょうね」 「うん…ここまで話しといてごめん…これは、私とこなただけで解決したいことだから…」 「え、じゃあ私もどっか行ってた方がいいのかな?」 「…うん…本当にごめん…」 つかさがちょっと微笑む。 「わかったよ。それじゃ、私、ゆきちゃんの家にいるから。何かあったらいつでも呼んでね」 「うん…」 「分かりました。では、明日、泉さんが先に帰ろうとしましたら、何とか引き止めておきます。あとは…こんなことしか言えませんが…がんばって下さい。月曜日、泉さんとかがみさんの笑顔にお会いできることを、心からお祈りしています」 「お姉ちゃん…大丈夫だから。お姉ちゃんとこなちゃんなら大丈夫だよ。きっと今までみたいに戻れるよ。だから…約束してね。絶対仲直りしてね」 「わかった…。私…やってみるよ…。二人とも…ごめんね…ありがとう…」 私は本当に最低な人間だ。 私の考えている通りにいくなら、この二人までも裏切ることになる。 私の周りには誰もいなくなるのかもしれない。 でもそれでいいんだ。 いいんだ。 いいんだよ。 そうだよね? こなた…。 3 翌日の放課後、意外なことが起きた。今日、一番難しいのは、いかにこなたと二人きりで家に行くかだと思っていた。こなたはみゆきが引き止めていてくれるにしても、私しか一緒に帰る相手がいないと分かれば、絶対嫌がるだろうし、下手すれば逃げ出してしまうだろうと考えていた。 しかし放課後。私がこなたの教室に行くと、みゆきと話しているこなたが目に入った。引き止めてくれていたみゆきに感謝して、こなたの姿を見てほっとするとともに、これからどう切り出そうか、昨日考えた何パターンかの台詞を反芻しながら歩いていくと、私の姿を見とめたこなたの方からとてとてと近寄ってきた。そして、私に声をかけた。 「かがみ…。あの…今日、かがみの家に行ってもいい?」 顔は相変わらず背けたままだったから分からないけど、久しぶりに聞く、私に向けられたこなたの声だった。ただ、その声はとても小さく、聞こえるか聞こえないかくらい。それに何かに怯えるようにちょっと震えていた。こんなこなたみたことがない。 私は、努めて平静に返事をした。 「ええ、いいわよ。今日はバイトとかないの?最近忙しそうだったじゃない」 こなたは顔を俯かせた。 しまった。嫌味に聞こえたかな? しかし、私が次の句を告げる前にこなたの方から声を出した。 「…うん。今日はないよ…。その…ちょっと…話したいことがあって」 「そっか。じゃ、行きましょ」 ごめんこなた。 また嫌な思いさせちゃったね。 でも、もうすぐ終わりにするから。 こなたがちょっと不安そうにきいてきた。 「あれ…?つかさは…?」 「ああ、つかさはね、この前みゆきの家に遊びに行ったとき忘れ物しちゃって、それ取りに行くついでにちょっとみゆきの家で勉強教えてもらうんだって。だから今日は一緒じゃないのよ。あの子ほんとに忘れ物とか多いんだから」 「そっか…」 この辺は用意した通りの台詞だ。 こなたはそれで納得したらしく、みゆきに手を振って歩き始め、それからはまた下を向いたっきり、黙ってしまった。 電車の中でも、こなたは何も喋らなかった。こっちを向こうともしない。しかし、こちらから話しかけてもあまり意味がないことはわかっているので、何よりもうすぐ家だ、私も何も話しかけなかった。 ただ並んでじっとしているだけの時間が過ぎる。 そんな時間が、少しだけ、欲しかった頃もあった。 でも、それを考えてはいけないんだ。 私は、もうそれを許される人間じゃないから。 家に向かって、こなたと並んで歩く。こなたはいつもよりペースが遅い。こころなしかふらふらしているようにも見える。私も合わせてゆっくり歩く。 これから私がしようとしていることに対して、こなたがどういう反応をするか、それは勿論気にはなる。けど、ちょっと別のことが心配になってきた。思わず声をかける。 「ちょっとこなた、あんた体とか大丈夫なの?なんか足元おぼついてないわよ?」 倒れられては話どころではない。 「あ…うん、平気だよ。別に風邪とかじゃないし」 本当なのだろうか。熱をはかったりしたいのだが、今のこなたに不用意に近づくと逃げられてしまいそうだ。やめておくことにする。。 話題を変えてみる。 「実はさ、今日、私もこなたを家に誘おうと思ってたのよね」 「え…?」 こなたがほんの少しだけこっちに顔を向ける。髪に隠れて表情は読み取れない。 「…なんで?」 「いや、私も話したいことがあってさ」 こなたは何も言わずに、また顔を背けてしまった。ただ、何かをとても小さい声で呟いた気がした。それがなんなのか、追求することはしなかったけど。 家に着いた。恥ずかしいことに、私が話そうとしていることに、自分で緊張し始めていた。 これでいいのかな。 いいんだよね。 何度も言い聞かせる。 鼓動が、少し早い。 でも、それ以上にこなたが言っていた話したいこと、というのも気になっていた。私の予想通りなら、それは多分私の罪を責めるものだろう。それは覚悟していた。 そして、それにどう対応するべきかも、考えてはいた。 私の部屋にこなたを通す。 しかし、こなたは入り口のところで足を止めた。 下を向いたまま、手をぎゅっと握りしめている。 私とこなたとつかさとみゆき。何度も皆で遊んで、勉強して、お喋りして、お菓子を食べて――思い出のいっぱい詰まったこの部屋。 でも、もうこの部屋には―― 「まあ、座ってよ」 入り口で固まっていたこなたをなんとか中に入れ、取りあえず座らせる。こなたは大きく息を吐き、無言でクッションの上に座った。私も隣に座る。 しばらく静寂が続いた。 少しして、こなたがぽつりと口を開いた。 「かがみ…なんか今日、静かだけど…」 「えーとね、お父さんとお母さんは仕事でちょっと遠出してて、いのりお姉ちゃんとまつりお姉ちゃんはお友だちのところに泊まるんだって。だから今日は誰もいないのよ。ちょっとくらい騒いでも平気かな」 「そうなんだ…」 こなたはまた黙る。 ちょっと待ってみたが、口を開く気配はない。 このままじゃ埒が明かない。 もう直接いかなきゃだめかな。 こなたに話しかける。 「ねぇこなた、話したいことがあるって言ってたよね。何か、聞いてもいい?」 こなたはまた沈黙した後、言った。 「…かがみも話したいことあるって言ってたよね。そっちからでいいよ…」 できればこなたの話を聞いてから、この話はしたかった。 もう、聞くチャンスはないかもしれないから。 でも、こなたがこの様子では、多分いくら待っても話さないだろう。 仕方ないか。 「…わかった。じゃあ話すね。…あのさ、私、こなたにずっと謝ろうと思ってたんだよ」 こなたの方を向いて話し出す。 ひとことひとことはっきり口にする。 こなたがこっちを向いてくれないのが、少し、心残りだ。 「私、こなたに、ひどいこと、したよね…。ごめんね。ごめん。本当にごめん。ここ2週間くらいかな、こなた、私から…離れようとしてたよね?だから分かったんだけど…」 こなたが、ちょっと顔を上げている。片方の目だけが、こっちを見ているように思った。 「あのね、でも、私、これでいいかな、とも思ってたんだよ。勿論、謝らなきゃとは思ってた。なんとかして話す機会つくれないかなって考えてて、それで今日こなたを誘ったんだけど。…謝れてよかったよ。あ、気がすまないなら何でも言ってね。何でもするから。それでね、謝って、謝って、本当に心から謝って、それから…こなたと、お別れした方がいいのかなって、そう思ってた」 「え…?」 こなたがはじめてこっちを向いた。 真正面からこなたの顔を見れたのは本当に久しぶりだ。 「えーと、転校するとかじゃなくて、普通に学校には行くよ?でも、もうこなたとは…あんまり話さない方がいいんだよ…。そっちのクラスにも行かないようにするね…。私は…もう、こなたと一緒には――」 そこまで言ったとき、こなたが飛び込んできた。 「かがみっ…」 私の名前を呼びながら私の身体をぐっと抱き締めた。 「やだよ…かがみと会えなくなるなんて…やだよぉ…」 こなたの目には涙が滲んでいた。 身体が小刻みに震えている。 「こなた…?」 「かがみ…今度は私の話す番。…聞いて」 「うん…」 こなたは私に身体をうずめながら、囁くような声で、言った。 「かがみは、私のこと、どう思ってるの?」 「え…?そりゃ…親友よ。今、一番大切な友だちっていったらあんたになるわね」 むかついたり呆れたりすることも結構あるけどね、とつけたそうかとも思ったが、こなたの雰囲気にちょっと押されて、口に出すのはやめておいた。 「そっか…。…もう一つ聞かせて。今、かがみに好きな人っている?」 脈絡のない質問だったが、私には、その質問の意図するところがぼんやりとつかめたような気がした。 だからこそ、どう答えるか悩んだ。 難しい。 正直に言ってしまっていいのだろうか。それもまずいだろう。それとも嘘をついた方がいいのだろうか。いや、それでは何のための真剣な話しあいなのかわからない。 少し考えて、結局その折衷案をとることにした。 「いないといえばいないわね。ちょっといいかなーって思ってる人はいるけど」 「…わかった」 こなたはそれからまたちょっと黙ったが、意を決したように、しかし濡れた声で、言った。 「私…かがみのことが…好き…なんだよ…。大好き…なんだよ…。だから…お別れなんてやだよ…」 「…そう…なんだ…」 さっきの質問を聞いてから、なんとなく予想はしていたけど、やはりちょっと驚いた。こなたの口から、私に向かってそんな言葉が出てくるとは。というかこなたは私を避けてたんじゃ? 「あのね、最初にそうなのかなって気づいたのは、あのライブのとき…。覚えてる?つかさもみゆきさんも前が見えないで跳ねてた私のことに気づかないでいたところで、かがみだけが、私に場所譲って前見せてくれたよね?あの後…。なんだかすごくどきどきして、気持ちが落ち着かなくて…そのときはよくわからなかったの。お祭の熱とも萌えとも違う、この気持ちが何なのか。でもね、それから考えてみると、かがみのこと考えるとおんなじ感じになるんだよ…。これがきっと、好きってことなんだよね…。それに気づいてからは…もう止まらなくて…かがみと会うたびに、かがみと話すたびに、かがみに触るたびにどんどんこの気持ちが強くなっていって…。でも、女どうしで好きなんて、そんなこと言えるわけなくて…。ずっと我慢してて…それでこの2週間は限界だったんだよ…。もうかがみとどんな顔して会えばいいのか、何を話せばいいのかわかんなくなって…。かがみと一緒にいたら、この気持ちがあふれ出しそうで…。変だよね?おかしいよね?迷惑だよね…。ごめんねかがみ…。でも、かがみがキライになったからじゃないんだよ…」 そっか…そうだったんだ…。 「…それ、ひょっとして今も?」 「…うん…。もう押さえられないんだよ…。かがみが…かがみが…好きで…ごめんね…」 あとはもう言葉にならなかった。 こなたの嗚咽だけが部屋に響いていた。 気がつけば、こなたの顔は真っ赤で、目からは涙がぽろぽろこぼれていた。私の背中に回した手はぎゅうっと私の制服を掴んでいる。 私は息をついた。 そして、こなたの肩に手をかけた。 「こなた…ちょっといい?」 「…え?」 私はこなたを優しく身体から離すと、こなたの背中に手を回した。 「こなた…」 名前を呼んで、同時に唇を重ねた。 「んっ…!」 こなたは目を見開いたようだったが、私の方はすぐに目を閉じたのでよくは見えなかった。 時間にしてどれくらいだろう。わからない。ほんの10秒くらいだったかもしれないし、2、3分はそのままだったかもしれない。 私たちは、どちらからともなく唇を離した。 こなたをみると、目はとろんとしており、呼吸は浅く、荒かった。半ば放心状態のようで、全身から力が抜けているようだった。 私はこなたを抱きかかえると、そのままベッドに横になった。 「こなた…まだ…収まらない?どきどきする?」 「ん…」 こなたはぼーっとしながら、曖昧に声を出した。 「だったら…私の身体…好きにしていいから…。このままじゃ話もできないでしょ?ほら…」 私はこなたを抱く力を少し強めた。 それで、こなたはちょっと意識が戻ってきたようだった。 「え…でも…かがみは…」 「私のことなら気にしないで…。こなたのやりたいようにやっていいよ…」 「…あの…でも…わかんないんだよ…どうすればいいのか…」 こなたはまた少し泣きながら、戸惑いの声を出す。 「え?でもあんたよくゲームとかでやってるんじゃ…」 「…そういうのとは違うんだよこれは…。あ…じゃあ…」 こなたは私の身体に手を回してきた。そして、ぎゅっと抱き締めた。 「ふふ…さっきと同じじゃない?これでいいの?」 「いいんだよ…これで…。これが一番…落ち着くから…。かがみ…もっと、ぎゅってして…」 「うん…いいよ…」 私はこなたに抱かれながら、少しずつ力を強めた。 こなたの涙は止まらなかった。 「かがみ…ごめんね…いっぱいからかって…ごめんね…いっぱい嫌な思いさせて…ごめんね…いっぱい迷惑かけて…ごめんね…。…なんにもできなくて…ごめんね…。私は…かがみにいっぱいいっぱい好きって気持ち…もらったのに…。かがみの気持ち…少しも考えてなくて…今も私は自分のことしか考えられなくて…本当に…ごめんね…」 「こなた…大丈夫よ…大丈夫だから…。今はその気持ち、思いっきり出していいから…」 「うん…」 私たちは、強く、強く、抱きしめあった。 後編へ コメントフォーム 名前 コメント (/ _ ; )b -- 名無しさん (2023-08-22 13 55 38) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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寄り添う2人 かがみはわたしのよめ byこなた こなたがかがみの制服に着替えたら こなたに乗っかがみ ポッキーゲーム コメントフォーム 名前 コメント
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気づけば私は映画館にいた。 いや───正確には映画館にいるような、ただ流されている映像をひたすら見せられている感覚だ。 私という器をもった存在はなく、意識だけしかそこにはない。 …ないはずなのに。 あくまでここにいる“私”は傍観者以外の何者でもないはずなのに、 体感できるはずのない気温や湿度もなんとなくわかってしまう不思議な空間だった。 最初は古ぼけた8ミリフィルムのように、ピンボケた不鮮明な映像から始まったそれは徐々に輪郭を持ち始めた。 * * * 《Interlude:始まり》 時期として例えるなら、秋から冬へ移り変わるときくらいだろうか。 雲も疎らに、高く透き通った空。 それでもどこか乾いた空気を含んでいる蒼は寂寞を覚える。 木枯らしにも似た冷たい風が追い討ちをかけるように、 小さな歩調で進む小さな二人の女の子を追いかけていた。 薄い紫色の髪の毛を持つ幼い二人は、手をしっかりと握り合い、その風から逃げるようにどこかへ向かっていた。 しかし、風に追いつかれてしまったのか──少し後ろを歩いていた比較的短い髪をした少女が立ち止まってしまった。 「かがみぃ…」 若干舌足らずな声が冷たい風に乗って、前を歩いていた少女にも届き、彼女もまた足を止めた。 「おうち、まだつかないの…?」 「つかさ、もうすこし。もうすこしだから…がんばろ」 不安に支配された声に違わず、泣きそうな表情をした髪の毛の短い“つかさ”という少女を 励ます少し長めの髪の“かがみ”という少女。 彼女たちは外見こそは違うけど、心は2人で1つのような存在なのかもしれないと、ふと思った。 現にかがみという少女は、つかさという少女の心を支配した不安が移りつつあるのか、 先程まで明るかった表情を不安へと曇らせていった。 ── きっと彼女たちも私が感じた寂寞に、幼き心を飲まれたんだろう。 頬を撫でる冷気に、どこまでも続く高い蒼に飲まれたんだ。 そうだと、何故か私にはわかってしまった。 そして瞼を閉じたように世界が一度ブラックアウトして、すぐに世界が開けた時には空は橙色へと変化していた。 変化したのは空の色だけでなく、彼女たちを包む外気も先程より冷たいものへとなっていた。 変わらなかったのは、少女2人だけ。 「ひぐっ…おかあさぁん、おとうさぁん、おねえちゃん…ひぐっ」 「つかさぁ、ないたら、ないたら駄目だよぉ」 その場に立ち尽くし、つかさに続きかがみも泣きはじめていた。 2人合わせたところで大きさなんて知れていて。 ただ世界が大きすぎた、それだけが涙の理由だった。 かがみの小さな手から、何かが零れ落ち、地面について割れた。 お遣い先でもらった飴玉。彼女たちの心みたいだった。 夕暮れも終りかけたその時。 大きな影2つと中くらいの影が2つが、2人の元へと走り寄っていくところで再び世界はブラックアウトした。 間際、中くらいの影1つが言った。 その言葉が傍観者である私の心に届いた。 『かがみはお姉ちゃんなんだから、しっかりしなきゃ』 Interlude :変化へ続く コメントフォーム 名前 コメント ( ; ; )b -- 名無しさん (2023-04-03 07 37 44)
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『待ち時間のその後に』 「う~ん、楽しいデートだったね!」 「デートって言うより、オタクグッツ買い物ツアーって感じだったけどな。」 とあるデートの帰り道。そんな会話をしながら、私達はこなたの家へと向かっていた。 互いの片手には、こなたお手製の手編みの手袋。これがまたとっても暖かで、もうこれがないと外になんか出る気にならないくらいの代物となっている。 前の手袋は運悪くなくしてしまったけれど、これは絶対になくさないようにしないと! さて、もう片方の手なのだけれど、こちらには手袋ははめていない。 だって、手を繋いでるから……こなたと。 言っておくが、決してこなたの手袋がいらないと言っているわけじゃない。 ただ、互いの手の温もりを感じるには、どうしてもそれは邪魔なわけで…… それに人前では、こなたも私もちゃんと両手につけるからやっぱり必要なのよ! 今はその……周りに誰もいなし、こなたもして欲しいっていうから…… って、一体誰に言い訳してるんだ? 「ねえ、かがみ。次もまたデートしようね。アキバで。」 そんな心の言い訳など露知らず、こなたが私のほうを見ながら言った。 「あのさぁ、いいかげんデートの時に秋葉原選ぶの止めない?」 「けどかがみだってものすごく楽しんでたじゃん?手に持ってるバックからちらりと見えるビニール袋の数々は、一体なんなのかな~?」 こなたはニヤニヤしながら、私のバックの中を覗き見ようと身を乗り出した。 私はとっさにバックを持った手を後ろに持っていく。 「前に出てくるな、転ぶぞ!あのねえ…残念だけど、中身はラノベよ。欲しかったラノベを買っただけだからね。」 「ふ~ん。それじゃあ、そういうことにしとこうかな。そうそう、かがみ。」 「なに?」 「『ガウ×宗』本をこっそり買ってたのは、私だけの秘密にしとくからね。」 「勝手に買ったことにするな~~!!」 そんなどうしようもない話(いつも通りではあるんだけど)をしながら、私達は歩いていく。 こんな風にしていると、この瞬間がまるで高校の帰り道のように思えてしまう。 卒業してから結構な月日が経つけれど、あの帰り道は、学校はどうなっているだろうか? こなたの家についたらゆたかちゃんに聞いてみようかな。 「どうしたの?かがみ。着いたよ?」 「ああ…うん。」 考え事をしている内に、どうやらこなたの家に着いていたようだ。 こなたの手や手袋は非常に暖かいのだけれど、やっぱり外はちょっと寒い。 さっさと中に入りたいなーなんて思っていたのだけれど、こなたはドアの前で立ち止まったままだ。 「どうした?」 「ええっと……」 指で頬をかきながら、視線を逸らすこなた。 一体なんだというのだろう?なにか無くしたりしたのだろうか? 「……鍵が見つからなくてさ。だから…かがみが開けてくれない?」 こなたはそう言うと、ドアから一歩後ろに離れた。 他人の家の鍵なんか普通は持っていないだろう。だけど私は違う。私はこなたの家のかぎを持っている。 こなたの家の合鍵を、私はデートの前に手渡されていた。あの時の私の言葉を、こなたはしっかりと覚えていたわけだ。 私はポケットに入っているその鍵をそっと握りながらこなたを見つめた。鍵をなくしたのなら少しは焦るものだけど、こなたにはそんな焦りの表情なんかまったくない。 ねだるような、なにかを期待するような、そんな顔をしていた。 「……」 疑問に思いながらも無言でドアに近づき、合鍵を取り出した。 なぜだろう?ものすごく緊張する。こなたがじっと見ているのが分かる。そんなに見るな。恥ずかしいだろ。 私はゆっくりゆっくりと鍵を近づけていき、スッと鍵穴に差し込んだ。鍵はなんの引っかかりもせず入りきった。 合鍵なのだから当然といえば当然なんだけど。 そしてそのまま回すと、カチャッという音が辺りに響いた。 「ほら、開いたぞ~。」 私がドアを開けると、こなたはスッと家の中へと入っていった。私も遅れて中へと入ると、ドアを閉めて鍵をかけた。 この前のこなたみたいに、勝手に入ってくる人がいるかもしれないしね。 鍵をかけ振り返えると、こなたが私の方を見て立っていた。 「なによ?」 こなたは嬉しそうな顔をしながら、すぅっと息を吸い込んだ。 「おかえり、かがみ。」 ああ、これが言いたかったのか…… 軽いため息と一緒に笑みもこぼれた。 私はこなたと同じように、すぅっと息を吸い込んだ。 「ただいま、こなた。」 これ以外の返事をするのはきっと無粋な事だろう。 ―――――――― 「はい、かがみ。紅茶だよ。」 こなたの部屋でくつろいでいた私の前のテーブルに、ティーカップとクッキーが置かれた。 あたりにダージリン特有の鈴蘭のような匂いが立ち込める。 「ありがとう、こなた。でもなあ…クッキーはなあ…」 「実はかがみん、またダイエット中だったり?」 「……実は昨日から始めてたりするのよね。」 私は恨めしそうに目の前のクッキーを見つめた。 「そっか、それじゃあいらないんだ。残念だな。そのクッキーも私が作ったのに……」 「前言撤回。美味しくいただくわ。」 最初からそういってくれればいいのに。まったく、こなたにも困ったものだ。 こなたが作ったんだったら食べるに決まってるじゃない。 「切り替えはやっ!けど、まあいいや。素直が一番だよ、かがみん。」 「……それじゃあ、遠慮なく。」 さっそくクッキーを一枚手にとって口に含む。クッキーはしっとりとした触感で、カントリーマアムような感じ。 もちろんこなたの作ったこっちの方が何倍もおいしいけど。 クッキーを食べたら水分が欲しくなる。私は目の前の紅茶を静かに啜った。 ダージリンの渋みがクッキーの甘みを洗い流していく。絶妙といっていいほどの組み合わせだった。 「うん、紅茶もクッキーも美味しいわ。」 「愛情こめて入れたし作ったからね。当然だよ。」 私が感想を言うのを見届けると、こなたはパソコンの方へと向かった。 「一緒に食べないの?」 「食べるよ。けどちょっと露天の状況をチェックするからさ。その間に全部食べちゃ駄目だよ。」 「食べないわよ!っていうか、またネトゲーか?」 こなたの趣味は十分理解しているけれど、本音を言えば私といるときぐらいは止めてもらいたいんだけどな。 「かがみも一緒にやろうよ。ほら、高校の時だって少しだけやったじゃん!」 「やらない。大体あれだって、何時になったらあのジョブ増えるのよ?!私あれだけはずっと待ってるのに。」 「まあ、ネトゲーではよくある話だよね。永遠に未実装……」 「あってもらっちゃ困るって。というわけで、やらないからな。」 私はそこまで言うと、クッキーに手を伸ばした。うん…やっぱり美味しいわ、これ。 「うーん、かがみなら絶対ネトゲーにハマると思うんだけどな。声的に考えて。」 「はあ?!何よそれ?!いくらなんでも、声でハマるハマらないを決められちゃたまんないわよ!」 今度は思いっきり紅茶を啜った。うん、やっぱり紅茶とクッキーの組み合わせがいいわね。 「なんとなくだよ、なんとなく。もう、そんなに怒らないでよ。」 こなたはパソコンの前に座ると、キーボードをカチャカチャと動かし始めた。 「……」 こなたがゲームをし始めると、途端にやることがなくなった。手持ち無沙汰になった私は何か暇つぶしになるものはないかとあたりを見渡した。 すると目に付いた本が一冊。手にとって見てみると、どうやら編み物の本らしい。きっとこなたが手袋を編む際に買ったのだろう。 開いて中を読んでみると。手袋だけでなくセーターやマフラーなんかの編み方も書いてあった。 「ねえ、こなたー。」 「なーに?」 こなたは私の方に振り向かない。私は構わず続けた。 「今度はさ、マフラーとかセーターとか編んでよ。」 「えー?!そこまでやったらバカップルぽいよ。手袋ぐらいで十分だって。」 そこまで露骨に嫌がられるとちょっと腹が立つ。よし、絶対に作らせてやる! 「欲しいんだけどなー。こなたの手作りマフラーとセーター。」 「……」 こなたの頭のアンテナがピクッと動いた。よし、効いてる効いてる。 「お礼もしちゃうわよー。手袋のときよりすごいやつ。」 「……」 今度はピクピクッと二回。 ……駄目だ。笑いがこみ上げてきて止まらない。えっと、もう一押しっていったところかなー? 「こなたの大好きな私がこんなにも頼んでるのに、こなたは作ってくれないんだー。」 「……分かったよ。それじゃあ、今度サイズ測らせて。」 よし、落ちた! なんだか、だんだんこなたの扱い方が分かってきた気がするわ。 「それじゃあ、よろしくね。すっごい楽しみにしてるから。」 「別にいいけどさ。かがみってさ、最近なんだかずるくなったよね。」 「なんのことかしら?」 こなたの言葉を気にもせず、私は本を最初から読み直した。 せっかく作ってくれるんだから、ちゃんとリクエストも用意しておかないと。 ……マフラーだったら、ちょっと長めにして一緒に巻くのが恋人同士っぽいわよね。 うん、マフラーはそれで決定と。セーターはどうしようかな?やっぱりペアルック? でもそれだと本当にバカップルみたいだし……いやまて、この時期はコートを羽織るから別にそれでも構わないのか…… うん、両方ともベタだけどこれがいいかな。 サイズを測る時にはこなたのサイズも測るとしよう……私が。 ……サイズと言えばこなたに聞きたいことがあったんだっけ? 「そう言えばサイズで思い出したんだけどさ。」 「次はなに?」 ぶっきらぼうな返事をこなたは返した。うーん、いけない。からかいすぎたか? 「こなたが作ってくれた手袋さ、サイズがぴったりだったじゃない。どうやってサイズとか計ったのかなって。」 「ん~、適当にこれくらいかなって思って決めたけど?」 「マジで?!それにしては、よくもまあこんなにピッタリに作れたものね。」 驚きだった。誰かの手(つかさとかみゆきとか)を参考にしたなら、これだけちゃんと作れるのはわかるんだけど。 まさか適当に作ってたとは…… 「ふっふっふ。かがみのことなら誰よりも知ってるからね。自分を信じたまでだよ。」 「自信満々だな。これでサイズが違ったらどうするつもりだったのよ?」 いや、まったく、本当に。 「うん、だからほんの少しだけ怖かった。」 「こなた?」 雰囲気が変わった。こなたの話し方はまったく変わらないのに、その部屋に流れる空気だけがはっきりと変化した。 「自分を信じる気持ちの方が強かったけど、やっぱりちょっとだけ不安だったんだ。 私の思っているかがみの手の大きさと、実際のかがみの手の大きさは違うんじゃないかって。 だからね…かがみに実際につけてもらってそれがピッタリだったとき、すごく……すごく嬉しかったよ。」 「……」 こなたの独白に私は何も言う事ができなかった。ただただ聞くことしか出来なかった。 「ねえ、かがみ。これからは言う事は後で全部忘れて欲しいんだけどさ。」 そんなこと言われて、忘れられるやつなんかいるものか。 きっとこなたは私に聞いてもらいたいんだろう。勝手な私の解釈かな?どうなんだろう?よく分からない。 「私ね、かがみに『しばらく家に来るな』って言われた時、すごくショックだったんだ。 もしかがみと別れることになったら、なんてことも考えちゃった。 手袋を編もうって思ったのも、それが私とかがみの絆になってくれればって思ったからなんだよ。 もちろん、かがみんが手袋を無くしたって話から思いついたんだけどね。」 こなたの独白は続く。 「ねえ、かがみ。私はかがみのことを一番よく知ってると思う。みゆきさんより、つかさより、かがみの両親より知ってると思う。 だけど、それでも今回みたいに不安に思うことがあるんだよ。私の思っているかがみは私の考えているかがみとは違うんじゃないかって。 まあ、現実に違うんだけどね。」 こなたはパソコンの方を向いたままだ。だからこなたが今どんな表情をしてるのか、私には分からない。 私は……すごく苦しい。ただ聞いてるだけなのに、ものすごく泣きたくなるよ、こなた。 「やっぱり変だし、私らしくないね。約束だから忘れてよ。」 忘れられるわけ無かった。 「こなた……ちょっと、こっち着なさいよ。」 「まだ露天の確認が終わってないよ。」 「うそつき!来ないならこっちから行くわよ。」 そこまで言ってようやくこなたはパソコンの前から、私の隣に座ってくれた。 「もっと近くにきて。」 「……」 こなたは何も言わずに、ほんの少し私の傍に近寄った。 「もっとよ。」 「……」 「もっと。」 「……」 私の『もっと』の声に合わせて、少し……また少しと私達はその距離を縮めた。 そして、もうこれ以上近づきようがないという距離になる。 「もっと。」 「ねえ、かがっ―――――?!」 その距離で、私は思いっきりこなたを抱き寄せた。 抱きしめるとき何時も感じるのだけど、こなたはいつも思っている以上に小さい。そして儚い。 そして今はその感覚が何時も以上に思えた。 「かがみ…」 「どう?」 「どうって?」 「安心……する?」 「……」 一瞬、辺りが静かになった。 「うん、すごく温かくて気持ちよくて嬉しくて……安心する。」 「私もよ。…ねえ、こなた。私達は普通じゃないわ。」 「うん。」 そう、私達は世間一般で言うところの普通ではない。 それは私達、それに私達の周りがこの関係を認めていてくれたとしても…だ。 「だからね、ちょっとしたことで不安になるのは仕方の無い事だと思うの。 私だってこなたがちょっと家にこないだけで、こなたが私のこと嫌いになったのかと思ったし。」 「そうなの?」 「そうよ。あんただって見てたし、声真似だってしてくれたじゃない。『もしかして……私に飽きた?私のこと、嫌いになった?!』だったけ?」 自分で自分の言葉を真似るのはなんだか変な気分だった。でも、構わず続ける。 「でもね、そうやって不安になるんだったら、こうして安心すればいいと思うのよ。 こうやって一緒にいると、不安なんてどうでもよくなっちゃうし、なくなっちゃうでしょ?」 「そうだね…かがみの言うとおりだよ。今は不安なんて無い。」 こなたはそう言うと、ギュッと私を抱きしめ返した。 「キスでもしてあげようか?」 「……今日はいいや。その代わり……私がいいって言うまで抱きしめて。」 「はいはい。」 ああ、それにしても…… こなたを抱きしめながら私は思う。 もしこの一連の話を誰かに話したとしたなら(例えばつかさとかみゆきとか)、一体どんな反応が返ってくるのだろう? 私はこなたと二週間ばかり会えなかっただけ、こなたは私にちょっとうちに来るなと言われただけ。 たったそれだけの事なのに、なんでこんな大事になってるんだこのこのバカップルは……とでも思われるのだろうか? でも、私もこのことは誰にも話す気はないし、こなただって話すことは無いだろう。 したがって私たちはバカップルなんかでは決して無いのだ。…うん、そうなのだ。 って、この状況で何考えてるんだろう? 「かがみ、何笑ってるの?」 腕の中のこなたが私を見上げる。ああ、私笑ってたんだ。 「別になんでもないわよ。」 「―――――?」 不思議そうに顔を首をかしげるこなたに対して、知らなくていいことだからと、私は心の中で弁明した。 さて、私の他愛の無い一言から始まったこの話もこれでお終い。 だとするならば…… 「ねえ?こなた。」 「なに?かがみ。」 私達らしく、この言葉で幕を下ろすのが相応しいだろう。 「こなた…好きよ、大好き。」 「うん、私もかがみが大好きだよ。」 コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-07-14 18 49 57) ニヤニヤが止まらない -- 名無しさん (2010-04-03 00 52 47) ヤベ~読んでてニヤついてる口からヨダレが・・・食べ物もこな×かがも甘いのは大好きだ!! -- kk (2009-02-13 21 14 02) こな×かがはバカップルぐらいが ちょうどいいんですよね。 甘〜い作品御馳走様でした! -- 無垢無垢 (2009-02-13 17 42 19) うん、アールグレイのストレートティーかモカのブラックでも飲んで来ます。 しんみり、でも甘甘な二人を見てるときはそう言う方が似合うしね。 あと、どう見ても十二分にバカップルです。ありが(ry -- こなかがは正義ッ! (2009-02-13 02 55 51) 甘いなぁ 素晴らしいです GJ!! -- 名無しさん (2009-02-13 01 55 49) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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「ふとしたことで~告白~」 あの後、風邪を拗らせて本格的に熱を出した私は、土日の連休を挟んで、一週間近くも学校を休む事になってしまった。 …でも、私にとってはそっちの方が良かったのかもしれない。 ――あんたとはもう絶交よ――。 こんな事を言われた以上、私はかがみに合わす顔が見つからなかった。 ちゃんと謝れば許してくれるかもしれない…。 そんな考えも、あの時のかがみを見ていれば、あの事を本気で怒っていて、簡単にそれを水に流してくれるとは思えないのは分かっている。 何より、仮にかがみが私の謝罪を受け入れてくれたとして、私達はそれまでのような友情関係に戻れるのだろうか? …ありえない。 どれだけ関係の修復に奔走したとしても、私がかがみのファーストキスを奪ってしまったという事実は一生消えない。 その上、もう私があんな暴走をしないなんて保障はどこにもない。 もしも、また同じような過ちを繰り返してしまえば、今度こそ私達の関係は終わる。完全に断絶してしまうだろう。 いっその事、このまま私のこの想いをかがみに伝えてしまおうかとさえ考える。 …でも、それも出来ない。 彼という存在が居る以上、私の恋が成就する可能性はゼロに違いない。 挙句の果てには、私が同性愛者だという事を知ったかがみや周りの人達が、好奇や侮蔑の視線で私を見るようになるかもしれない…。 …じゃあ、私はどうしたら良いんだよ…。 これじゃあ、何をしたってバッドエンド一直線じゃないか…。 そうなって当然の間違いを犯したのだから、自業自得でしかないのに…。 覆水盆に返らず。 そんなことわざの意味を改めて噛み締めても、私の後悔は消えてくれはしなかった。 § 月曜日。 風邪もすっかり完治してしまった私は、いよいよ学校に行く事になる。 でも、まだ私はかがみに会いたくない。 会ってしまえば、その瞬間に何もかもが終わってしまう気がして仕方が無かったのだ。 だから、いつも通りの時間に家を出たのにも関わらず、私は乗る電車をわざと一本遅らせた。 そして、朝のHRが終わる寸前に教室の中へ駆け込んで、私が遅刻した事に対する黒井先生の軽いお説教に平謝りしながら、無事に自分の席に着いたのだった。 HRが終わると、つかさが私の席に近づいて来た。 自然と自分の表情が強張っていくのが分かる。 「こなちゃん、風邪の方は治ったの?」 「え…。あ、うん。もう完全復活だよ」 「そうなんだ、ちゃんと治って良かったね~。土日にお見舞いに行こうかと思ってたんだけど、お姉ちゃんはデートだったし、私は金曜日に英語の宿題がどっさりと出ちゃって、それをやるだけで連休が終わっちゃって、行く事が出来なかったんだよ~。だから、ごめんね」 「う、うん。ま、まぁ、その頃にはほぼ完治してたから、お見舞いに来て貰う程でも無かったんだけどね…」 このつかさの様子を見ると、どうやらかがみはあの事を誰にも告げていないようだ…。 私はそれに気付いて、少し安堵する。 …って、英語の宿題!? 「つ、つかさ、英語の宿題って何が出たの?」 「えっ? いつも出てくる、次の授業で出てくる英単語の語訳と、その単語をそれぞれ10回ずつ書いて練習するプリントを貰ったんだけど…。机の中に入ってない?」 慌てて机の中を穿り出すと、それらしきプリントが出てきた。 そして、その提出日は今日の二時間目…。 一時間目は先生の目を誤魔化しながら、単語10回ずつを光速の勢いで書けば、ギリギリいけそうだけど、英単語の訳は誰かに見せてもらわないと明らかにマニア移送(←敢えて誤変換)にない。 あの先生、提出物に物凄く煩くて、一枚でも提出が遅れると無茶苦茶評点を下げられるんだよね…。 「うわぁ~、どうしよ~」 思わず、頭を抱え込む私。 「あっ、それならお姉ちゃんのを見せて貰えば良いよ。お姉ちゃんも同じ宿題が出て今日が提出だけど、お姉ちゃんのクラスは英語の授業が午後からだし、今回は事情が事情だし、ちゃんと貸してくれる筈だよ~?」 確かに、風邪で休んでたという大義名分があるから、普段のかがみなら、「もう、仕方ないわね…」と愚痴を言いながらもプリントを貸してくれる事だろう。 ……でも、今は――。 「つかさ…。悪いんだけど、つかさのプリントを見せてくれないかな…?」 「へっ?」 私がそう言うと、つかさはとても驚いた表情を見せた。 「私のは多分間違いが多いと思うから、お姉ちゃんのを借りた方が…」 「い、いや、あの……もう授業も始まっちゃうし、わざわざ隣のクラスに行ってかがみに事情を説明する時間も今は勿体無いというか、なんというか…」 「そっか…。じゃあ、私のプリントを持ってくるね」 「う、うん。ありがとう…」 一旦自分の席に戻っていくつかさの姿を見て、私はホッと胸を撫で下ろした。 …ただ、こうやって、つかさが事情を知らない事に付け込んで、私とかがみの関係に亀裂が入った事を時間稼ぎのように誤魔化そうとしている私自身が、この上なく情けなかった。 ……その後も私は何かと理由を付けて、かがみとの接触を拒み続けた。 朝は遅刻ギリギリの時間に教室に駆け込み、休み時間はかがみがやって来そうな気配がするとトイレに逃げ込んで授業が始まるまで時間を稼ぐ。放課後は用事があるからと告げて急いで帰る。 かがみの方も、きっと私に会いたくないのだろう。 昼休みは自分のクラスで食事をするようになったし、つかさに用事があれば、わざわざメールをして呼び出すようになった。 そんなルーチン・ワークで一日をやり過ごし、学校を出ると、今日も何とか誤魔化し切れた事に安堵する。 …自分でも最低な人間だと思う。 だけど、こうでもしないと、私は一瞬にしてこの大好きだった日常を失ってしまうのだ。 いくら誤魔化しても、もうこの日常にかがみは戻って来ないのに。 そして、その日常も、崩壊は最早時間の問題でしかないのに――。 § その日の放課後も、私はつかさに一緒に帰れないという断りを入れて、急いで学校を離れようとしていた。 「ごめん、つかさ! 私、今日もちょっと急用があって一緒に帰れな――」 「待って、こなちゃん」 その日、私は初めてつかさに呼び止められた。 「…な、なにかな?」 「…話したい事があるんだけど、良いかな?」 「で、でも、私、もう時間が――」 「かがみさんなら、今日はここに来ませんよ」 「っ!?」 私の背後にはみゆきさんの姿があった。 「…ここじゃ話せないから、屋上までついて来てもらって良いかな?」 「……」 これで全てが終わっちゃうんだな……。 観念した私は、静かにそれに頷いた。 § ゲームやアニメでは良く出てくる風景だけれど、このご時世に屋上を自由に出入り出来る学校は、ウチの学校を除いては早々無いと思う。 そんな場所で、私はこれまでに無いほど真剣な面持ちの二人の少女と対峙していた。 「…で、話ってなに?」 「うん。話っていうのはね、こなちゃんとお姉ちゃんの事なんだ」 この瞬間、私の中にあった、もしかしたら予想とは全く違う話題を振ってくるかも…という淡い期待すらも消えてなくなった。 「ここ最近、お姉ちゃんもこなちゃんもお互いの事を避けてるみたいだったから、喧嘩でもしちゃったのかなって思って、お姉ちゃんにこなちゃんと何があったのか聞いたの」 「……」 「…最初は、何も話してくれなかったけど、何度も聞いてる内にやっと昨日になって、お姉ちゃんが事情を全部を話してくれたんだ」 「…そう、だったんだ…」 淡々と話すつかさに、私は掠れた声でそう返答する事しか出来なかった。 「お姉ちゃんね、ファーストキスは好きな人とロマンチックに交わしたいってずっと前から願ってたんだ。…恥ずかしがりやさんだから、ハッキリとその事を口にはしていなかったけど、私には分かるんだよ」 双子の姉妹だからだろうか、つかさの言葉には、その事実に間違いは無いという自信が感じられた。 「お姉ちゃん、キスされた事に凄くショックを受けてた。私にその時の事を話してくれた時も、ずっと悲しそうな表情をして最後まで話してくれたんだ」 「……」 私があの日から知る事の出来なかったかがみの様子をつかさの口から聞かされる。 キスした事に対する罪悪感と、明らかに私が拒絶されている事に対する悲しさとで、胸が張り裂けそうになる。 「……私ね、お姉ちゃんの事が大好きなんだ。双子の妹として生まれてきた事を誇りに思ってる。だから――」 ニュアンスは違うとはいえ、つかさの「好き」という言葉に私の心臓はビクリと跳ね上がった。 「――だから、お姉ちゃんの事を傷つける人は、例え友達でも許す事が出来ないんだよ」 普段は温和な性格のつかさだからこそ、その放たれた言葉がどんな鋭利な刃物よりも私の心に深く突き刺さる。 「…ホントは、こなちゃんとお姉ちゃんの事だから、どんな喧嘩をしても、すぐに仲直りしてくれるって信じてた。でも、一週間以上経ってもこなちゃんはお姉ちゃんに謝りもしない。どうして謝ろうとしないの?」 つかさの表情からは、端から見れば表立った感情は感じ取れない。 だけど、私には――あの時、外国人に道を聞かれ、当惑していたつかさを勘違いで救い出して以降ずっと友達を続けてきた私には、それが手に取るように良く分かる。 私に向けられた感情が、私がかがみを傷つけた事に対する憎しみと、私がつかさの信頼を裏切った事への悲しみだけしかないという事を……。 私の瞳から、抑えきれなくなった感情が流れ出しそうになる。 ここで泣いたら卑怯じゃないか。 悪い事をしたのは私の方なのに……。 「……黙ってても、何も分からないよ」 何も答えられない私に対して、つかさの語気が徐々に強まっていく。 でも、私は自分の意思を伝える事が出来ずに居た。 この抑え切れない感情を、なんとか抑え付けるのに精一杯で――。 皆と一緒に居る事が出来た幸せを失いたくなくて――。 「こなちゃん!」 「好きなんだよっ! かがみの事が!!」 つかさの怒りが臨界点を超えたその瞬間、私はとうとう崩壊のスイッチを押してしまった。 「…へっ?」 「…こなたさん?」 二人とも、私の口からそんな答えが返ってくるとは考えてもいなかったのだろう、心の底から驚いた表情を私に見せている。 …でも、私が今までずっと溜め込んできた想いは、もう止まらなかった。 「…ずっと、ずっと前から好きだった。何度もかがみに告白したいって思って、その度に諦めてた……私達は女同士だから。それに、私がその想いを告げる事で、今の関係――かがみや、つかさやみゆきさんと一緒に過ごす関係が壊れてしまうんじゃないかと思って、そうなるのが怖くて、ずっと気持ちを隠してた。その内に、私は親友としてかがみの傍に居られればそれで良いって思うようになった。…でも、そんな時にあの人が私達の前に現れて、あっという間にかがみを奪っていって、私達と過ごす時間がどんどん減っていって……。それが本当に悔しくて、悔しくて…。それでも必死に耐えようとした。でも、無理だったんだよ! 好きな人が自分の目の前で他の誰かに奪われて行く様子なんて、見たくなんか無かったんだよっ!!」 私の瞳からたくさんの涙が落ちていく。 人前で涙を見せるのは、何年ぶりだろう。 それでも私は溢れ出す感情を、言葉にして紡ぎ続ける。 「今日までずっと後悔してたんだよ。かがみを不幸にしてしまった自分自身に。私がかがみに恋愛感情なんか抱いちゃったから…私がこんなキモイ感情を持っちゃったからっ!! こんな感情、持たなければ良かったのに…。私なんか、存在しなければ良かったのに…!!」 立ってる事も出来なくなって、私はその場に崩れ落ちた。 そこから先は、もう喋る事も出来なくなって、私の嗚咽だけが屋上に響き渡る。 つかさ達の様子を確認する気力すら、最早残っていなかった。 ……でも、もういいや。 何もかもが終わってしまった。 永遠に続くと思っていた関係なのに、ふとしたことで全てが壊れてなくなってしまった。 そして、その原因を作ったのは、全て私のせいだ……。 § どのくらいそうして居ただろうか。 暴走した感情が、再び抑制出来る程に落ち着きを取り戻すと同時に、私は再び立ち上がる。 その間も二人はずっと、私の目の前に佇んでいる。 私は二人の顔が見るのが――拒絶され、軽蔑の目で見られる事が怖くて、顔を灰色のコンクリートに伏せたまま目を瞑った。 過ちを犯した事に対する罰を受けなければならない。 私はその体勢のままで、二人の言葉を待った。 「…こなちゃん、ごめん…」 私の耳に最初に飛び込んできたのは、私に対する罵声でも拒絶の声でもなく、つかさの涙の交じった謝罪の言葉だった。 「えっ?」 驚いた私は、目を開いて視線をつかさに向ける。 つかさは、涙を零しながら、私に謝っていた。 「…私、ずっと勘違いしてた…。お姉ちゃんとけんちゃんが付き合い始める事で、みんなが幸せになれると思ってた…。不幸になる人なんて誰もいないって思ってた……。でも、私は、私の大切な友達を苦しめてた…。ごめん、こなちゃん。本当に…ごめん…なさい……」 そのつかさの様子を見て、今度は私が狼狽する。 「な、なんでつかさが私に謝ってんの? 悪い事をしたのは私なのに。女なのに同じ女の人を好きになっちゃった私が悪いのに…」 「…確かに、こなたさんがかがみさんにキスした事自体は、許される事ではないかもしれません」 泣いたままで、喋れなくなってしまったつかさに代わって、ようやくみゆきさんが口を開き始める。 「…ですが、こなたさんがかがみさんに恋愛感情を抱くという事に関しては、私自身は決して悪いとは思いません。同性愛に偏見を持っている人は確かに少なくはありません。しかし、実際に同性の人を愛してしまう人は存在するのですから、周囲の偏見だけでその人達の権利を蔑ろにするのは私は間違っていると思います。そして、それ以上に――」 そこまで言って、みゆきさんは意図したかのように一度言葉を止める。 「…それ以上に?」 私がみゆきさんの方を向いて、続きを促すと、みゆきさんは穏やかな微笑みを向けて私にこう告げた。 「――友達じゃないですか。私達は。誰かが幸せを感じれば、それを皆で分かち合い、誰かが悩みを抱えれば、それを皆で分かち合い、解決出来るように惜しみのない支援を送る…。それが友達という関係なんだと、私は思っていますよ」 みゆきさんの言葉に続けて、つかさも涙を堪えながら口を開く。 「…私も、こなちゃんの願いを叶える事はもう出来ないかもしれない…。でも、これからもずっとこなちゃん達と一緒に居たいよ……」 「…あ…あ…」 私の瞳からまた涙が溢れ出して来る。 だけど、今度は嬉し泣きだ。 「みんな…ありがとう…ありがとう…」 既に薄暗くなった屋上で、私は泣きじゃくりながらも、精一杯の声でずっと二人にそう伝え続けた。 喪失したものへ コメントフォーム 名前 コメント (/ _ ; )b -- 名無しさん (2023-06-21 16 00 06) 信じられねぇ…優しいな。 いい友達じゃねえか -- 名無しさん (2009-06-01 02 14 03) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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☆ずっと一緒に いいか、みんな (゚д゚ ) (| y |) to getとherでは単なる下心だが、 to get ( ゚д゚) her \/| y |\/ 二つ合わさればtogetherとなる。 ( ゚д゚) together (\/\/ レス番480~542の流れを独立してまとめさせていただきました。 480 名前:274[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 12 27 29 ID pL0Qpe6r 今現在第二期の2話目(続編)を書いてるオレなんですが 書いてる途中、絶対的な疑問が浮かび上がるんですよ "こなたとかがみの二人は一生二人で暮らすのか?" と……… だって、その周りのつかさとみゆきは男と結婚するでしょ普通は 一生二人でって事は無いかも知れない……… オレはどっちかってと、NANAみたいに二人は友達として大好きなだけで、二人はそれぞれ違う男に恋するって考えの方が強い(個人的にそっちのが好きだって意味じゃあないよ><) お前らはどうだ? ぜひ今後の参考にしたい 481 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 12 36 12 ID 3mG5sbjT 高校卒業させなきゃいいじゃん 482 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 12 45 12 ID 0KQ+/45v 480 これはガチ百合が好きか、そこまでいかないのがいいかで分かれるんじゃないか? 俺はずっと一緒にいて欲しいが。 でも何年か一緒に住んだ後で、やっぱり女同士は駄目だから、これからはそれぞれ男を見つけて幸せになろうって別れるのもいいと思う。 483 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 13 11 44 ID dWkl9hru 480 確かに一分に一組離婚する時代だからなぁ しかも女同士だからなぁ でも女同士だからこそ別れないで済むかもしれない 難しい…… 485 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 13 46 25 ID QpgWk/uk 482 ガチ百合以外認めない、そんな自分の生殖機能が時々心配になります 487 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 14 24 16 ID 8c4HlIqR 常識に縛られてるようじゃ妄想は出来ん。 誰がなんと言おうとこなかがは夫婦だ 488 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 14 34 14 ID i3wjfr0e 487 お前かっこいいな 489 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 14 35 04 ID g+00Hlnh 友情もいいけど わざわざこなかがスレでやるくらいなんだからガチがいいな 490 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 14 39 00 ID p2ysqptQ 487 あんた輝いてるぜ 491 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 14 45 54 ID n3PAqR3E 487 さすがはそうじろう。やっぱりプロはちがうな 492 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 14 49 35 ID vDka4P9W 480 そこは百合ものの重要ポイントだから~ 個人的には、かがみは純粋に女同士というところで悩んでるのに対して こなたにとってはそこのハードルは高くないけど、将来のことを考えると踏み出せない 正確には、ガチヲタな自分が世間の価値観から外れる事は今更気にしないけど かがみをそこに引き込むことに迷いがある、みたいなのがいいかなーと 「かがみは可愛いし、いいコだし、こんなところで道を踏み外さないで普通の人生を送った方が幸せなのかな・・・・」って感じで そう思ってるから、普段はからかっていてもフラグが立ちそうな空気になるとつい躱してしまう、逃げてしまう 反面、好きな気持ちを抑えきれなくて、かがみに絡んだり甘えたり、独占しようとしたりはやめられない それがかがみの百合フラグを加速させてると頭では分かっているんだけど・・・そんな矛盾した行動をとってしまうこなた・・・・ もちろん最後はかがみからの告白で決壊ですよw ちなみに俺は 表向きは かが→こな が強いけど、根が深いのは実はこな→かが っていう こな×かが派w ま、一生って言うと想像しにくいかも知らんが、30台になってもルームメイトっぽく一緒に住んでるっていうのも ドラマとかでは割とあるじゃん、負け組的な感じでw なんとなく女性漫画家コンビみたいな感じもしないでもないw それ以降となると世の中の価値観がもっと多様化してるんじゃないかなあと それこそ今から2~30年前でも今とは大分違うじゃん? まーその辺は余りリアルに考えても仕方ないぜ 494 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 15 06 23 ID p2ysqptQ 492 「表向きは かが→こな が強いけど、根が深いのは実はこな→かが っていう こな×かが派w」 ここら辺に全力で同意 495 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 16 10 20 ID te4IBBSr 492 うむ。まさにお前は俺だw 全く同じ意見だな。 ところでリアルな話になって申し訳ないが、未婚化が進む中、一人では生活が立ち行かなくなる人が将来続出する と思う。すると、男女の夫婦のみが相互扶助の形を取れるのは時代に合わないとの声が将来上がる可能性がある。 そして性別を問わず、パートナーという新しい形での相互扶助形態が現れるのではないかと俺は予想している。 常識なんてものは、厳しい現実の前には案外脆いものなのかもしれん。 497 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 16 35 13 ID K38hSbQp こなかがが男を作るなど認められんな 死ぬまで2人に決まっておろう 498 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 16 54 39 ID XCtBjQqX 未婚化が進んでるのは、むしろ生活が立ちいく収入を女性が得られるように なってきたからだとおもうが。社会で認められて、一人でいきていけるのに、 結婚したら絶対仕事辞めて子育てしないといけないとか馬鹿らしいだろ もう男性であるだけで家族を養えるような収入を得られる社会じゃないしな。 そういうふうに家父長制が崩壊するなかで、性役割分担の見直しや、クィア理論的な ジェンダーセンシティビティが浸透していって、他人の性に寛容な社会になるとおもう ようするに、こなかがは一生幸せに二人で暮らすんだよ 502 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 18 31 28 ID 0KQ+/45v 492 本当にGJだ。 そういうことを考えられるのも文章に出来るのも凄いと思う。 やっぱり自分より相手のことを考えるっていうのは、愛の証だよな。 503 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 19 05 42 ID 0RYx6QMR 492 だからいざとなると「いや、私リアルで同性趣味ないし」と逃げてしまうんですな かがみも「私だって嫌だよ」と返しつつも 帰ってから自室で枕に埋もれて泣く 504 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 19 14 35 ID i3wjfr0e こなたとかがみなんか 軋むベッドの上でやさしさ持ち寄ればいいのに 505 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 19 22 04 ID 1Ndxvx+4 480 俺のワガママかもしれないが・・・こなたとかがみには別れて欲しくない。 こなたとかがみ、どちらか片方だけでも男と付き合うなんて考えただけで、まるで我が事のようにズキリと胸が痛む。 馬鹿馬鹿しいと笑ってくれ・・・。俺は、こんなにも、この二人の幸せそうな姿に入れ込んじまった。 わかってはいるんだが、虚構の世界の住人に共感しすぎだ。重症だな。 それでもこなたとかがみのカップルに「幸せになってくれ」と願わずにいられない。 506 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 19 39 51 ID xCiL9CPp お前らほんとにイイ奴ばっかりだな 尊敬するぜ 507 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 20 06 13 ID 0RYx6QMR こなたやかがみに突っ込みたい欲情も少なからずあるだろうに、お前ら 「好きな人の幸せを願いたい心境」ってやつか… なんつぅか、女同士だとか関係ないんだよな 「並んで立っているのがお似合いの二人」というか 508 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 20 22 16 ID 0KQ+/45v 507 今までは○○は俺の嫁とか言ってたのに、今回はそれがないんだよな。 二人が一緒になれて、そのまま幸せに暮らせればそれでいいと思ってしまう。 むしろSSとかで二人を幸せにしてあげたい。 509 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 20 27 23 ID n3PAqR3E つまり俺達は二人を見守るそうじろうってところか 510 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 20 40 10 ID 8c4HlIqR 507 こなたとかがみはお似合い過ぎるんだ。その間に何者かが、ましてや俺なんかが入る事は許されん。 それも分からずにこなたやかがみに突っ込みたがってるような 棒至上主義の奴はこの俺が許さん。 511 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 20 40 18 ID QpgWk/uk そうじろう大杉w 512 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 20 40 53 ID 2HvrAiFM 508 「今までは○○は俺の嫁とか言ってたのに、今回はそれがないんだよな」 俺もそうなんだよ。 なぜかいつもと違うんだよ、今回は… 513 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 20 45 32 ID rKzGHpN3 俺のイメージでは・・・ こなた、かがみをからかう(でもどこか可愛い) ↓ かがみ、色んな意味で我慢の限界 ↓ こなた「か…かがみ?どったの?なんか目が怖いよ?(汗」 ↓ かがみ「あんたが悪いんだからね…!」 ↓ こなた「アッー!」 525 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 21 19 40 ID j+QyfcMJ 480 ちょうどその問題を書こうと思ってたとこだ なんというシンクロ 常識は打ち破るものだけどその常識の偉大さに逆に打ちのめされたり… お父さんお母さんのいる幸せな常識をつくれないのは悲しい気がする… 495、498 俺は未婚化の原因は個人主義による生活単位の個人化に見てる その中で日本は圧倒的に夫婦であることが有利になってる社会らしいな 父系社会ではどこでもそうなんだろうが 新しい法的な相互扶助関係は欧州のどっかで既にできてると聞いた でも個人的には社会はそこまで進んではいないなと感じる、というか俺がそこまで進めてない 527 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 21 29 11 ID yamj5rHy とりあえず、ルームシェアの延長みたいなノリで だらだら一緒に暮らしていけばいいじゃないとか思っている俺はぬるいのね……w 528 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 21 32 02 ID n3PAqR3E 527 らき☆すた的にはそれでもいいけどこのスレ的には足りんのかもw 530 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 21 57 03 ID dfUWtPKM 527 おれもそういうレベルで満足するよ 正直ちょっと上のガチすぎる妄想には付いていけないw 531 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 22 24 10 ID lx0z82by 527 2人、黙々と読書中にふとさりげなく (しかも視線は本に向いたままで) かがみ「…ねぇ、こなた」 こなた「…んー?」 かがみ「そろそろ一人暮らし始めようかと思ってるんだけど…」 こなた「んー」 かがみ「……アンタも一緒に住む?」 こなた「………んー、別に良いよー」 かがみ「…そう」 こなた「…うん」 だ、駄目だ…なんか違うな… 532 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 22 25 51 ID aSRQzTH0 527 二人でだらだら一緒に生活で十分満足だけど、そこに男の影が入るのだけはダメだ! ってのが多いんじゃない? 俺がそうw 533 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 22 27 31 ID RrhSxiMj どっちかっつーと 「やふー、かがみー」 「ちょっ…吃驚するじゃない、事前連絡もなしに…って、何その荷物」 「今日から私、ここに住むことにしたから」 「また何かの漫画に影響されたか?それともアニメ…… ………えぇぇぇぇーーーー!??」 こんなノリがいい 536 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 23 07 47 ID 3dT/y92f 527 俺としては、「やっぱり猫が好き」みたいなノリでやってほしい あれは三姉妹だが 537 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 23 19 36 ID 2EAlMK7P ガチでもマターリでもいいんでないか。こなかがが幸せなら。 540 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 23 57 55 ID g60GoL/W ルームシェアなら 大学が違ってもできるだろうから かがみが司法試験の勉強をする間に こなたは在学中にラノベ作家の道を志し かがみに批評してもらう日々を送って 回る糸車のように父と同じような道を歩み 今度こそ幸せになってほしいな。 数年後の設定は 女弁護士かがみと ラノベ作家こなたの推理モノになっても それはそれで見たい。 542 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 01 42 39 ID 8STvG/Nu 女弁護士かがみの親友にしてブレイン、それがラノベ作家こなた!
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「ねぇ、かがみぃ~」 「うわっ、ど、どうしたのよ、突然っ!」 廊下を歩いてると、突然こなたに、後ろから飛び付かれて思わずドキッとする私。 「にひひ、驚いたかね、かがみ。背後にも気を付けないと、だめじゃん。いつ敵に襲われるかわからないよ~?」 ニヤリと笑いながら、回した手を離さず、顔をこっちに向けている。 「またゲームの話かぁ?そんなこと、現実であるわけないでしょ」 「い~や、わからないよ?かがみは可愛いからね~、いつ野獣化した男子に襲われるか……」 「ば、バカ!そんなことあるわけないわよ!」 「あれぇ~?もしかして、想像してる?」 「するかッ!!」 そう言って、思わず呆れてため息をつく。 「ねぇかがみ~、今日は昼はこっちに来るの?」 こなたの声が、いつもの感じに戻る。 「うん、行く予定よ。そんなの、わざわざ確認する必要ないでしょ」 「良いじゃん、ちょっと聞きたかっただけ~」 まったく……。相変わらず変ね、コイツは……。 まぁ、確かに最近、日下部や峰岸と食べる時もあるけど、 ほとんどそっちに行ってるじゃない。 それに、そういう時は事前に私が一声かけるし……。 「んじゃ、みんなで待ってるね~」 いつものこなたの顔でそう言って、こなたは私から離れた。 「はいはい、お昼まで後一時間あるんだから、授業ちゃんと受けなさいよ」 「いつでもバッチリだよっ!」 「そーゆーのは、人にノート借りなくなってから言いなさいよね」 「うわ、かがみ様、痛いところついてくるね~……」 こなたがそう、言いにくそうに言った時、 次の授業の開始を告げるチャイムが鳴り響いた。 「やば、急がなきゃ!」 「もう、アンタがしがみついてくるからよ!」 私がそう言うと、こなたは気にした素振りもなく、 「とんずら~!」 と、走り出した。 「も~!自分だけいくな~~!」 私も文句を言いながら、急いで自分の教室まで戻った。 授業が終わり、やっとお昼の時間。 それは、学校にいる間で、数少ない、クラスの違いを感じないでいられる時間。 その時間を少しでも親友達と長く過ごしたい。 表には出さないけど、やっぱりみんなといられる時が、最高に楽しいからね……。 ま、こんなこと言った暁には、こなたに何を言われることやら……。 「あ、お姉ちゃん~」 「かがみ、遅い~~」 「かがみさん、いらっしゃいませ」 「ごめんね、お待たせ。ちょっと長引いちゃってさ~」 私はみんなに謝る。 「かがみさんのせいではありませんよ」 「そだよ、お姉ちゃん。仕方ないって」 みゆきとつかさがそう言ってくれたが、こなたは一人、 「抜け出してくれば良かったのに~」 とかバカみたいなことを言っている。 「小学生じゃあるまいし、そんなことできるわけないでしょ」 私がこうやって律儀に突っ込むから、図に乗るのかなぁ……。はぁ。 「ま、いいや。食べよ食べよ~」 みんな、お弁当を開けないで待っててくれたみたいね。 そんなちょっとした気遣いが、嬉しい。 そう感じてる私だった。 「も~、こなたのせいでさっきの授業、危なかったわよ………」 「ごめんごめん」 お弁当を食べ初めて、早速こなたに文句を言う。 「どうしたの?」 「こなたに、前の休み時間に捕まってさ、身動き出来なくて、 危うく遅刻になるとこだったのよ」 「そ、それは大変でしたね、かがみさん」 みゆきが労いの言葉をくれてるけど、当の本人は大して悪びれた様子もない。 「ま、間に合ったから、良いじゃん~?」 「良くないわよ!」 「まぁまぁ、お姉ちゃん、それくらいにしてあげなよ」 つかさはそう宥めてくるけど、事実、後十数秒遅かったら、 本当に遅刻をつけられるとこだったんだから、 これくらい文句言わせてもらわないとね。 「むぅ、かがみんよ、俺の嫁なんだから、それくらいちゃんと許容しなきゃ!」 「誰がアンタの嫁よ!まったく、バカも休み休み言いなさいよね」 「うわ、酷いなぁ」 こなたが口を尖らすけれど、それはもういつものこと。 「えっ!?お姉ちゃんってこなちゃんのお嫁さんだったの!?」 つかさがワンテンポ遅れて驚く。 「だから、違うって言ってるじゃない!」 双子の妹にまで突っ込まなきゃいけないんだから、私も楽じゃないわ……。 そう思っていると、以外なところからも以外な言葉が出る。 「でも、お二人とも、お似合いですよ?」 「み、みゆきまで、何言ってるのよ!」 「おお!かがみん、これならきっと私達の未来は明るいね! 結婚式はお互いが選んだ料理を交換して食べあうっていう連邦形式のがいいなぁ…… かがみんが何を私のために用意してくれるのか楽しみだ~。 あ、つかさとみゆきさん、仲人として、ウェディングサポートの抽選の登録お願いするね~」 「勝手に話進めるな!第一、何よ、その抽選って!またゲームかっ!」 「さすがかがみん!ちゃんと分かってるね☆それでこそ俺の嫁」 「だから勝手にわけわからんこと言うなーーッ!」 こんな、わけのわからない会話だけど―――― 私にとって、最高に楽しい時間―――。 いつからだろうか……? こなたのことばかりを、考えるようになったのは。 今日だって、ほとんどこなたのことばっかり考えていたきがする。 いつからだろうか……? こなたの事を考えると、顔を見ると、話をしていると、落ち着かなくなったのは……。 今日のお昼だってあんな話をした後、こなたの顔をまともに見れなかった。 と言っても、時々、本当に時々だし、いつものように接せられてるし、 これといって困ったこともないから、あまり気にしないけれど……。 私は夜、ベッドの中でそんなことをふっと思っていた。 でも、この気持ちが何なのか、未だにわからない。 多分、保護者的な気持ち……なのかな……? 今まで生きてきて、こんな感情になったことがないからわからないけど……。 多分、手話のかかる子どもを世話する母親の感覚なんだろうな、と勝手に思う。 ま、何でもいっか……。 丁度身体も温まってきたし、明日も授業あるから、ちゃんと寝とかなきゃ。 もし寝坊なんかしたら、つかさの事いえなくなっちゃうしね。 そう思って目を瞑った暗闇にうつる、あいつの顔。 はあ、なんて小さなため息をつく私。 私はまだ知らない。 今日という日が眠れない夜を過ごすことと、自分の心を―――。 うつるもの2へ続く コメントフォーム 名前 コメント (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-01-01 08 21 27)
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【第13話 移植】 コミケ参加サークルの抽選結果がとどき、同人イベント板が異様な空気に包まれる頃……。 癌研有明病院の無菌病棟のとある一室もまた異様な空気だった。 上半身だけ起きているこなたの周りを、白衣にガウン、巨大マスク、帽子で目しか地肌が見えない完全フル装備の医師団が取り囲んでいる。 無菌室の面会用窓の外で、かがみ、つかさやそうじろうやゆい姉さん、ゆたかが見守っている。 中のこなたとは備え付けの専用電話で会話できる。 「つかさ、ほら、よくみるんだよ」と受話器を耳に当てるこなた。 「う、うん……緊張するね」とつかさ。 「ほら、あれが移植されるんだよ。医学部の授業で出るからよーく記憶にとどめておくんだよ」 医師団の中の一人の看護師が、手のひら2つ分のサイズの赤いドロッとした液体の入ったパックを掲げている。 シールの上にマジックで「泉こなた」と名前が書いてある あれが、こなたの新しい命。 「つかさ、琉球大学行ってもサンゴ礁の海でイリオモテヤマネコと遊んでちゃだめだよ。医学部は入ってからが本番なんだよ。たくさん勉強しまくってえらくなってここにいる人たちみたいになるんだよ」 「う、うん。こなちゃん、私絶対居眠りしないでがんばるよ!」 こなたはつかさを先生のような口調でさとし、つかさはそれに応える。まるで師弟……? 「あ、そうだ私まだ受験前だ……えへへ」 そしてこなたの「命」は、静かに点滴台につながれる。 緊張する空気が一斉に走る。 午前10時00分 「複数臍帯血移植」開始。 栓が外される。 真っ赤な臍帯血がチューブを走る。スルスルと生き物のようにこなたに向かう。 鎖骨下の針から心臓近くの太い血管へ駆け込んでいく。 フル装備の医師団は、何も言わずに見つめ続ける。記録係の看護師だけがひたすらペンを走らせている。 こなたも、面会用廊下のかがみたちも見つめ続ける。 つかさに至っては窓にへばりついている。 完全密閉の分厚い三重窓を通してビッグサイトも見ている。 「お姉ちゃんがんばって……」とゆたかは必死に励ます。 「うん、今のところ大丈夫」 ゆたかは臍帯血パックを感動しながら指差す。 「見て、きれいな赤い色だね、あれが命の色っていうんだね……」 キラキラした眼差しで見つめ…… 見る見るうちにパックはカラッポになっていく。 「……え、あ、あれ?終わるの?これでおしまい??」 「えっ!!まだ涙も流してないのに……」とゆい姉さんはあわてる。 午前10時10分 「複数臍帯血移植」終了。 数枚写真を撮った後、ものものしい数の医師団はあっさりと無菌室から出て詰所へ去っていく。 あとに残されたのは呆然としているこなたたち。 「……なんかさ」 その空気に耐えられなくなったのか、こなたは言葉を発する。 「……すごい、地味だよね」 「う、うん……」とつかさ 「そ、そうかな、お、お姉さんは感動だよ」 「よよくわかんない……」 おろおろするゆたか。 「医療マンガの主人公がみんな外科医って、当然だよね。ワンパターンでマンネリだなって思ってたけど……これじゃしょうがないよね」 こなたはかがみに話を振る。 「もし私が心臓移植だったらもっと盛り上がっただろうねー♪10時間とかやるらしいし。はやくバチスタを!とかいったり、動け!!心臓!!動くんだ!!とかいったり。幼女が手術の助手したりして萌え要素もありじゃん。かがみなんか、手術室の前で泣きまくるだろうね♪死なないで!とか、無事終わってよかった!!とかいってさ♪」 「無事終わってよかった……」 かがみはこなたを見つめながら涙を流していた 「よかった、よかった……死ななくて、よかった……ほんとうに、よか……った……」 かがみはその場にしゃがみこんだ。 つかさがいるにもかかわらず、子供のようにわーっと泣き出した。 そうじろうもしゃがんで泣いている。 静かな廊下に二人の大きな嗚咽が響く。 それをみて、つかさもゆたかもゆい姉さんも顔を手で押さえた。 防音構造で声が伝わらないこなたも、その姿を見て目頭を押さえる。 三重窓の向こうのビッグサイトと東京湾を見つめた。 「76から行けるかな……」 小さくつぶやく 「6月のオンリーにも行きたいな、サンクリにも……」 こなたの目には、ここから見えないはずの都産貿やサンシャインシティなども見えていた。 「絶対、かがみんと一緒に行くんだ……」 その日の夜、こなたは口に痛みを覚えるようになった。 今までよりずっと激しい副作用が、ようやく今やって来たのだ。 【非常に鬱なシーンにつき注意】 「……!!」「……!!」 防音窓の向こうで声は聞こえない。何かをさけんでいる。かがみは受話器でこなたに呼びかける。 こなたは枕もとの受話器すら取れない。猛烈な口内炎を起こし「……!!」と声をあげるたびに口元を押さえている。 ちょっと口をあけるだけでも針山を突っ込まれたような痛みが走っている。 5分に1回、昼夜関係なく上から下から出す。ベッドサイドにあるトイレにも間に合わず、ポータブルの便器をベッドに持ち込む。 。制吐剤も下痢止めも効かない。 口をあけると激痛が走るにもかかわらず、口を大きく開く。叫び声を上げる。そのたびに針で刺されたように背中をのけぞらせる。 こなたの手には苦痛緩和用のモルヒネの注入ポンプのスイッチが握られている。 苦痛が激しいときはスイッチを押せばモルヒネが流れこみ、緩和されるのだが、中毒を防ぐために一日3回しか使えない設定になっている。 こなたは苦痛のあまり、夜明け前にすでに3回分押してしまっていた。 「……!!」 こなたは泣けなかった。 涙がこぼれるたびに激痛が走るからだ。目を押さえ、顔をボンボンと枕にぶつける。涙に血が混じっている。 激しい結膜炎を起こしているのだ。 ベッドサイドのペンとノートに力なく手を伸ばし、途中でエチケット袋に嘔吐しながら、震える手でつかんで、文字を書いてかがみに示す ”かがみ わたし みぐるしいでしょ” 弱弱しくほとんど判別できない字を見せる。 かがみはすぐにメモ帳に返事を書いた。 ”全然見苦しくない” こなたは20分かけて返事を書く。 だが、その字は判読不能だった。 かがみ”私がついてるから大丈夫”と書いた。 こなたは笑おうとした……が、口元を動かすたびに激しい痛みが走るのだった。 真夜中。 突然、こなたの全身に激しい悪寒が走る。 何がおきたのか分からないこなた。 人気のない真っ暗な無菌室。医療機器の小さなランプだけが星のように点っている。 なのになぜか、部屋一面にキラキラとまばゆい光が舞っている。 誰かがいる気配を感じる。 (……お母さん?) 光は真っ白な人影となり、かつて見たかなたの姿に変わる。 こなたにゆっくり手をさしのべる。 (ちょっと待って、かがみが、コミケが……) すっと伸びたその手が、こなたの肩に触れる。 その瞬間、背中を走る猛烈な痺れ。強烈な短い周期の痙攣。体が誰かに操られているよう……。 遠のく五感。薄れ行く意識。 ガクガクと震える指で、こなたはひたすらナースコールを押した。 第14話:壊れた人形へ続く コメントフォーム 名前 コメント このまま鬱で終わっちゃ嫌だぁ〜〜〜(T◇T) 逆転を!奇跡の逆転をぷり〜〜〜ず! -- にゃあ (2008-10-01 19 44 55) 大丈夫だよね・・・? かがみがきっと、こっちの世界に連れ戻してくれるよ!!!( _ ) -- チハヤ (2008-10-01 16 29 51) こなたしんじゃあいやぁああああああああああああああああああああ 作者のハッピーエンドに期待 -- 名無しさん (2008-10-01 02 14 13)
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さて、今年のカレンダーを見ていただければお分かりになると思うが、1月の12、13、14日は三連休である。 これは、センター試験や受験を直前に控えた受験生に対して用意された「せいぜい足掻けよ」といった意味か、もしくは「少しの間息抜きしてください」といった意味の連休か、どちらを取るかは、学生諸君にお任せしよう。 そして、この連休を利用して、この物語の主人公である4人組、泉こなた、柊かがみ、柊つかさ、高良みゆきは後輩の岩崎みなみ家が所有する別荘を借り、気分転換を兼ねた一泊二日の勉強合宿を開こうと計画していた。 さて、この計画を持ち出したのはみゆきであり、こなたとかがみが互いに恋心を抱いていて、さらに互いが無自覚であることに一石を投じる為、というのは今まで読んで頂けたのならばお分かりいただいていると思うので、詳しくは割愛させていただきましょう。 ところで、女子高生四人が別荘を借りて一夜を共にする、ということは常識的に考えたら危ない。故に、岩崎家から出された条件が二つ。 信頼の置ける保護者を一人、随伴させること。そしてもう一つ、持ち主の岩崎家の一員であるみなみを連れて行くこと。 まぁ、そもそも他人に別荘を貸すと言う行為自体が、珍しいと言えば珍しいのだが、そこは姉妹のような付き合いをしている高良家、岩崎家の信頼がなせる業と言えるだろう。 ところで、岩崎家の一員、みなみからも提案が一つ。こなたの従姉である小早川ゆたかをこの合宿に参加させて欲しい、というものだった。さてはて、みなみの真意はどこにあるのか。やはりこの話では関係ないので割愛させていただく。 そして運命の1月12日、朝。 「よ~し、みんな準備はいい?」 この言葉を発したのは成実ゆい。ゆたかの姉であり、こなたの従姉なのだが、とにかくノリが軽い。信頼が置ける保護者であるかは微妙な所だが、取りあえず、この時期に暇人をと探した結果、該当したのが彼女だったのでやむを得ない。この際、贅沢は言っていられないのだ。 「お、オッケーですよ……姉さん」 少し怯えたようにこなたが答える。ゆいはハンドルを握ると性格が変わる。その恐怖を、ここにいる全員が知っている以上、反応が鈍いのもやむなし。天の神様が存在するのならば、願わくば、事故にだけは逢いませんように。ゆいを除いた全員が祈った瞬間だった。 「んじゃぁ、出発!!!」 ゆいの言葉に合わせて、7人を乗せた車はいきなりのオーバースピードを披露した。 さて、荒い運転である以上舗装された道であろうとなんのその。揺れる揺れる、車に弱い人間なら一発でKO。そうでなくてもウッと来る。 さて、何回乗っても何回乗っても、慣れる事は無いこなた。僅かに顔色が悪くなり、汗が吹き出てくる。 そんな状況を見かねたのだろう、隣の席に座っていたかがみは極自然に、こなたの背中をさする。少しでも楽になるようにと。 そんな彼女の気遣いが分かったのだろう。こなたは、気丈にもかがみに笑いかけると、その手を握った。 ちなみに寒い寒いこの季節、車内は地球温暖化に大貢献。暖房ガンガンなのだが、二人には、それが少し熱いように感じたのは、何故だろう、何故だろう? さて、この地獄が続いて凡そ一時間。ようやく岩崎家所有の別荘にたどり着いた。車から降りた7人、ゆいを除いて、他6人には贖罪を終えた、殉教者のような顔をしていたが、気にしない気にしない。重要なのはこれからだ。 この別荘の外観について語ることも割愛させていただく。とにかくデカイ、とだけは言っておくが。そして、この別荘の内観を知っているみなみから一つ注意が促された。 「えっと……我が家は人数が少ないので、部屋数もそんなに多くありません。ですから……大体が相部屋になってしまうかと」 それを聞いたかがみ。だが、大した事は無いというように、 「ふ~ん、ま、気心知れた仲だしね。私は誰と相部屋になってもいいわよ」 と、言いながら。さり気なくこなたの手を握ると先導する。素直についていくこなた。それが当たり前のような空気が、二人の間には出来ていた。 だが、このタイミングはみゆきにとっては、まだ早い。みゆきは、コホン、と咳払いをして皆の注目を集めると、 「お恥ずかしながら、くじを作ってきたんですよ。折角の気分転換、ちょっとしたサプライズもいいと思いません?部屋割りをこれで決めたいと思うのですが」 といって7本に割った割り箸を差し出した。割り箸にはそれぞれに対の色が付いていて、同じ色を引いた人が同じ部屋になると言う仕組みだ。ちなみに余りの一本には何も印が無い。 「さあ、どうぞ」 ズイ、と差し出される運命のくじ。かがみの表情がピクと強張る。彼女はこなたと同じクラスになりたいと思いつつ、3年間、結局その機会に恵まれることはなかった。 今度こそ、と意気込んでくじを引くかがみ。さて、割り箸の先端には赤色の印が付いている。 「じゃあ、次は私の番だね~」 表情こそ変化無しだが、声に僅かに緊張感を滲ませたこなたが、くじを引く……その結果は、緑色。また、違う部屋になってしまった。 落胆する二人を尻目にくじ引きは進み、結果、みなみ、ゆたか。こなた、つかさ。みゆき、かがみ。ゆいは一人部屋という組み合わせになった。 「いいよ、どうせおねーさん、背景さ……」 落胆するゆいを尻目に、みゆきはどんどん話しを進めていく。 「さて、一応勉強合宿、という名目もありますので、私たちは30分程自室で勉強をしたいと思います。よろしいですね?」 問いではなく、確認。いつもより強硬なみゆきの態度に、残りの受験生3人は訝しみながらも、素直に頷く。 「その間、みなみさんとゆたかさん、それにゆいさんはリビングでくつろいでいてください。後程私達も合流いたしますので」 その言葉は、これ以上の疑問も反証も一切受け付けない、という力強さに満ち溢れていた さて、こちらはみゆき、かがみ部屋。もとより真面目な二人はセンターで受ける科目に重点を置いて、総復習、とまでは行かなくても、軽快にペンを走らせていた。 「x-y=(D-1)-z」 みゆきが持ってきたナガト式数学問題集に目を通してその答えに頭を悩ませている間、凡そ5分。たったそれだけの時間で、かがみの様子が少し変わっていた。 最初は真面目に問題を解いていたのだが、段々、周りをキョロキョロし始め、扉の方を気にする様になってきた。 勿論、それを見逃すみゆきではない。 「おや?どうかなさいましたか、かがみさん」 すると、かがみは明らかにギクッとした表情、仕草で、 「あ、い、いやね。こな――いや、つかさがちゃんと勉強してるかなって気になって」 僅かにどもりながら、言い訳をする。内容としては妹を心配する姉、としてとても微笑ましいのだが、一瞬漏れた‘こな――’この言葉を聞き流すほど、みゆきは甘くない。 「そうですね、でも、つかささんはああ見えて真面目ですし、大丈夫ではないでしょうか?」 「そ、そうよね」 みゆきの言葉に安堵の表情を見せるかがみ。だが、油断大敵。 「ところで、かがみさんは、泉さんの様子は気になりませんか?」 「ふぇっ!?」 「どちらかと言うと、泉さんの方が勉強をしていないイメージがありますけど、そちらは気にならないんですか?」 みゆきの言葉に、かがみは最初、あぅ、あぅなんて言っていたが、その内、自棄になったように、 「あ、アイツの事はアイツの事で心配に――あー!もう、私達の勉強を進めるわよっ!!」 怒った振りをして話を紛らわせる、所謂逆切れ、というヤツだろう。を披露した。 だが、みゆきはそれにも動じず、ただ、「はい」とだけ頷いた。 さて、それから更に10分程度。もはや、かがみの行動は勉強とは全くかけ離れた所にあった。しきりにドアを気にし、ペンを回しては、口だけでこなた、と呟く。 みゆきはこの辺りがタイミングだろうと見極めると、先程から考えていた言葉を紡ぐ。 「かがみさん、もしかして、お手洗いに行きたいのですか?」 「へ?」 突然のことに戸惑うかがみ。だが、茫然自失は一瞬で、すぐに立ち直ると、 「そ、そう。実はさっきから我慢しててさ~」 と言葉を返した。 計画通り。みゆきは眼鏡の位置を直す振りをして表情を隠す。柊かがみという人物は負けん気が強い。そういった人は本当にやりたいことでも自分からアプローチするのでは負けだと思う。 だから、第3者が如何にもそれっぽく、且つ万人が納得する理由を提示してやればそれに食いつく。つまり、思惑通りに動かしやすい。 「だったら、無理をせず行って来て下さい。ここから出て、右手奥の扉がそうですから」 「そう?悪いわね」 そう言って部屋を出ようとするかがみ。ここで更なる一手、みゆきは、 「この別荘は広いですからね。‘途中で道に迷って、別の部屋に入らないように注意してください’」 分かってるわよ、と言って、かがみは部屋を出て行った。 さて、ここからは賭けだ。かがみがどう動くか。この後のシナリオに繋げられるか。 みゆきはやおらにチェス板を鞄の中から取り出すと、いくらか進んでいる盤面、その上の駒をまた一手、動かした。 場面を変えよう。こちらは、こなた、つかさ部屋。 この二人は、決して不真面目、というわけではないのだが、 さてはて学校の教室とは不思議なもので、しっかり眠ったつもりでもそこに存在する一種独特な怪電波……この場合は教師の講義と言い換えようか、の反響によって更なる睡魔を呼び起こす魔力を秘めている。 そしてこの二人は、その魔力に対抗する術を知らない。ぶっちゃければ、授業中の居眠りが日常茶飯事で真面目に授業を聞けたためしが少ない。 だが、流石に時期が時期なうえに、場所まで違うと気合が入るのか、つかさは英語の教科書、ノートを開き、一心不乱に英文を訳していた。 「えっと、この訳は……フタエノキワミデ……アッ、そうか、だから次は絶対勝つために、僕はとかちつくちてミックミクにしてやんよってことなんだ!」 意味不明にして、理解不能。姉が聞いたらさぞ嘆くであろう和訳を展開するつかさに対して、こなたは未だ教科書すら用意していなかった。 こなたは、ぼんやりとしながら、扉を、廊下を挟んで向かい側の部屋にいるであろう人物の事を、思っていた。 さっき、車の中で、自らの体調に気が付いて気を遣ってくれたかがみ。別荘に着いた時、自然に手を引いて先導しようとしてくれたかがみ。 いや、もっとそれ以前。冬休みから感じ始めた違和感。でも、それはもっと前から存在していたような、親友に対する、気持ち。 親友?そう、親友。ネトゲにも仲間はたくさんいる、画面越しとはいえ気軽に話せる。ある意味、彼らも親友。 だけど、かがみは?リアルで話が出来る、親友。彼らとは一次元超越した、実際に触れる、ことが出来る人間。 だから、こうなのかな?こんな気持ちに、なるのかな?この気持ちは、何だろう? こなたの問いに対する答え。それはセンター試験や受験で、全く役に立たないもの。故に教科書なんかには載っていない。じゃあ、この答えは誰に求めればいいの?誰が、教えてくれるのかな? 本当は、すぐ近くに、その答えを持っている人がいる。それは、自分。でも、気が付かない。悩んで、悩んで、悩んで、心の奥に隠された、どんな方程式にも当てはまらないその答えを、自力で拾い上げなくてはならないのだ。 かがみが出て行った部屋で、みゆきは一人チェス板をいじっていた。こなたは、そしてかがみも気が付いていないが、二人が持つその気持ちに対するヒント自体は、みゆきが何度も出している。 さて、そのヒントが、蒔かれた種がどう芽吹くか、それをチェスに例えて、駒を動かす。最終目標は、キングの駒。そこに到達するまで、後、何手足りないのか。それはみゆきにも分からない。人の心は、ゲームのようにはいかず、難しい。 「頑張ってくださいね、泉さん、かがみさん……」 一人しかいない部屋で、みゆきはそっと、呟く。 時計を見ると、かがみが出て行ってからもう10分経っていた。みゆきはチェス番の駒の位置、それを正確に記憶すると仕舞い、立ち上がった。 扉を開ける、向かいの部屋が見えた。きっと彼女は愛しい人の下へ向かっただろう。自分は、そのための種を蒔いたのだから。 さて、ここからどう動かすか……微かに苦笑しながら、みゆきは‘3人’がいる部屋の扉へと手を伸ばした。 1月12日・中編へ続く コメントフォーム 名前 コメント みゆきさんがカッコいい -- 名無しさん (2012-12-16 11 10 03)