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何気ない日々:梅雨晴れのち夕立“二人の気持ち” 「かがみは私に、あんな事絶対言わないのに・・・どうして?」 公園から駅まではそんなに距離は無かった。全力で走ったのだから、後ろにかがみの姿は無いのも当然だ。 丁度私が駅に着いたとき、バケツをひっくり返した様な土砂降りの雨。そろそろ追いついて来ても良さそうなのに、かがみが追いかけてくる様子は無い、かがみは大丈夫だろうか。まだ、呆けてあのままだったら、もうずぶ濡れになってる。心配だけど、走って戻る勇気が無かったし、傘も無いしね。駅の購買の傘なんて雨が降った瞬間に完売だから。 「私は、かがみがあんな事を言うのを望んでいなかったのかな・・・ううん、違う、望んでいたはずなのに。でもそれは映画のワンシーンの言葉としてじゃなくて、本当の気持ちで、でもそれはありえなくて・・・」 ぶつぶつと呟く私の横に座っていた男性は、それが嫌だったのか立って遠くの椅子へと向かった。どうでも良い事だった、今の私には、かがみが心配だった。心配なのに、拒絶したような行動をとってしまったことが怖くて、携帯で電話をかける事も出来ない。意気地無しすぎるよね、私。 でも、どうしても走って戻る勇気が無くて、ただ椅子に腰掛けていることしか出来なかった。頬を流れる涙にも気がついていた。けれど、恥ずかしさを感じることも無く、また拭う気にもなれなかった。 かがみが私を好きになるはずが無い、そう決め付けていた。私はそうする事でこの気持ちが親友への裏切りであったとしても許されるものだと信じていたかった。 「かがみが私を好きなはず・・・」 無いなんてどうして私は、決め付けられるのだろう。そこで、お父さんが言っていた事を思いだした。“イメージや思っていた姿、想像していた虚像と違う”つまりは、気持ちはコインの裏と表とは違って、嫌いと好きに二分するだけではないという事だ。私はかがみが好きだけど、かがみは絶対にそんな気持ちを私に抱かない。それは臆病な私が想像して願っていた姿、思い込んでいた虚像。 かがみが同じ思いを持っていてくれるかも知れないと思う事は怖くて、想像しなかった可能性。でも、それも考えてよかったんだ・・・いや、考えておかなければいけなかったんだ。あんな風に突き飛ばしてしまったんだ。かがみは、私に拒絶されたと思っただろうか、嫌われてしまったと思っただろうか。かがみが傷ついた分だけ私の心も傷ついていく様に胸が痛かった。でも、きっとそれは、かがみが受けた傷の痛みの何分の一でしかないんだ。 「かがみ・・・」 私はホームから見える雨を落とし続ける、灰色の空を見つめて呟いた。そして心の中で謝り続け、涙が溢れてしゃくり上げて泣く姿を見られていても、涙を、気持ちを抑えることは出来なかった。 ◆ 「寒い・・・わね」 このまま、凍えてしまえたらこの気持ちも凍えてくれるかしらね?そんな事を思い、馬鹿な考えだと泣きながら笑い飛ばした。きっと凍えてもこの気持ちは凍えないだろうから。 駅にはまだこなたがいる。今は何て言って冗談にすればいいのかわからない。服が濡れて体に吸い付いて気持ちが悪い。そして、胸が痛かった。 「こなた・・・」 呟いた言葉が白いもやになって消えていく。私も一緒に消えてしまいたかった・・・あれ程、思っていたじゃないか。気持ちを暴走させてはいけないって、言ってはいけない気持ちだと。なのに、私は映画のラストシーンに託けて言おうとしてしまった。そして結果がこれだ、笑うに笑えないなら、泣き笑うしかない。学校への待ち合わせ、どうしよう。一緒に登校するのはまだ許されるのだろうか、せめて友人でいたいな。 雨に打たれながらそんな事を考えていた。体温が急激に奪われていく、寒いわね。でも、どこに行く気にもなれず、公園にある、錆付いて惨めな姿になったジャングルジムに背中を預けて、両手で体を抱くようにして、立っているのがやっとだった。 見上げれば雨が目に入る。それが涙と交じり合って、私の目から零れていく。何時までこうしているつもりなのだろう。このまま、雨に打たれて溶けてしまうまでだろうか。 私は、拒絶されたんだ。でも、こなたは、嫌いだとか気持ち悪いとかそんな言葉は言わなかった。まだ、きっと間に合う。 「わかっていたのに、気持ちを表に出しちゃいけないって、私って馬鹿ね」 乾いた笑い声が、公園の中で響く。けれど、その笑い声は、誰の耳に入る前に雨音に消されていった。 少し体が冷えすぎたのか、立っているのもなんだか辛くなってきた。どうしよう・・・電車が出るのは、私の記憶に間違いがなければまだまだ先だろう。駅に行くわけにも行かず、ここに居続けるわけにもいかない・・・では、どこへ行けばいいのだろう。 「かがみ先輩!?」 どこかで聞いたことがある声。髪が水分を吸って頭が重いが、声の方へ顔を向けると、そこには、ゆたかちゃんが居た。髪と同じ色の可愛らしい傘を差して、その後ろには、髪と同じ色をした傘を差したいつもゆたかちゃんの傍らにいる・・・そう、みなみちゃんだったかしら、頭が上手く回らないわね、二人が立っていた。 「・・・どうしたんですか?」 「ちょっとね。電車に乗るなら早く駅に行った方がいいわよ?この雨だと、座るスペース所か立つスペースだって危ういと思うしね」 震える唇が喋ったにしては何時も通りの声だった。二人は、ただ私の事を見ていた。どうして、こんな所で雨に打たれているのか、どうして、自分は駅に行かないのか、その答えを探すように。 「私は、まだ駅にはちょっといけない・・・用事が・・・あってね。だから、ほ、ほ、放っておいて、大丈夫よ」 上手く言葉が出ない。雨が降る前はそんなに寒くは無かったのに、今は体の底から、心の底から凍りつくように寒い。どちらも冷え切っているみたいだから。たった一つの想いを除いては。 「・・・ゆたか、傘をかがみ先輩に」 みなみちゃんがそう言う。ゆたかちゃんの事を何時も気にかけている彼女が、そのゆたかちゃんに傘を私に差し出せというのだ。私はかなり驚いた。もっともそれを表情に出せる程の余裕は無かったけれど。それに、もう傘を差しても意味がないくらいに濡れている、だから断らなくちゃいけないわね。 「気にしなくて・・・いいのよ?身長が違うと、どちらか濡れてしまうし」 それは経験に基づいた事からの言葉だった。たった十二センチ違うだけでこなたの背中はびしょびしょになっていたのだから。 そして、今の私には、雨を凌ごうという気分でもなかったし、このまま打たれ続けていたいとさえ思う。 ゆたかちゃんの傘を受け取ろうとしない私を見るに見かねたのか、みなみちゃんは、私に自分の傘を傾けた。そんな事をしたら貴女が濡れてしまう、それに・・・私が泣いていることが知られてしまう。 私は強がりで見栄っ張りなのに、その癖本当は寂しがり屋で。泣いていることが知られてしまったら事情を話さなければならないだろう。ゆたかちゃんと違ってみなみちゃんはみゆきの知り合いという事もあって、ある意味鋭い。それはつかさやみゆきの鋭さとは違うけれど、でも、この拒絶された想いをもう誰にも知られたくなかった。だけど、もう寒さと胸の痛みで動けなくて・・・。 「どうしたんですか・・・?」 涙が頬を伝わる感触がまた戻ってきた。言いたくは無い。言わなければみなみちゃんはずっと傘を私に傾けたままかもしれない。ゆたかちゃんは、そんなみなみちゃんの事を心配そうに見ている。・・・その視線が私にも向けられているという事には気づけなかったけれど。 「なんでもないのよ」 精一杯の虚勢だった。必死に仮面を被って笑ってみせるけど流れる涙は止まらなくて、もうどうしていいのかわからなかった。 本当は叫びたかったんだと思う。それが例え八つ当たりだとしても、こなたに拒絶されたんだって、もう友人ですらいられないかも知れなくて、それが怖くて泣いているんだって・・・喚き散らしたかったのかもしれない。けれど、それは強がりで見栄っ張りな私には出来なかっただけの事。 その言葉に、聞いてはいけないのか、聞くべきなのか戸惑ってしまっているみなみちゃんは、優しい人なんだなと思う。ゆたかちゃんが言っていた以上に、優しくて気遣いの出来る人。私の好きな人も、そんな気遣いが出来るのよ?そんな事を思ってしまう。誰よりも元気でマイペースなのに、どこか、誰にも気づかれない所で気を使っているあいつ。そんな優しくて大好きな“親友”を私は、この想いで裏切って、この想いで傷つけて・・・ああ、駄目だ、お願いだから、傘をどけて。涙はもうどうしようもなく流れ続けていて、止まりそうも無くて、どうしていいのかわからないのだから。せめて、もう涙を見るのはやめて・・・お願いだから。 「本当になんでもないのよ、だから、もうしばらく・・・このままで居させてくれないかしら」 寒さなんて、もうわからない、だから唇も震えなかった。 「みなみちゃん、かがみ先輩・・・」 ゆたかちゃんは、みなみちゃんがわかり辛いが凄く戸惑った表情を浮かべているのに対して、私が涙を零しながら笑顔で放っておいてくれてという状況が上手く飲み込めずに戸惑っていた。とにかく、傘をどけて欲しかった、涙を流している姿を見られたくはなかった。 「お願いだから放っておいてっ!」 私は笑顔という仮面が剥がれた顔で、悲鳴にも近い叫び声を上げた。もう我慢の限界だったのもあるが、みなみちゃんが濡れていくのをゆたかちゃんに心配させたくなかったし、自分勝手な行動で友人の心を傷つけてしまったのに、それで涙を流しているのをゆたかちゃんからこなたに伝わるのも怖かった。傷つけた人間に泣く資格など無いというのに、私の目からは未だ涙が止まらない。もうどれくらいの時間流れているのだろう、どうして涸れてくれないのだろう。 二人はそんな取り乱した私の姿に虚をつかれたのか、目を丸く開いて固まっていた。その隙に傘を傾けているみなみちゃんの手を彼女が濡れない様に動かす。 「ゆたか~?みなみちゃ~ん、車近くまで持ってきたよ~」 聞き覚えのある元気な声。こなたがそういえば、前に元気に動き回るイメージがあるから、豹って言っていた気がする。さっきから私の考えの中心はこなたがいる。だからなのか、傷つけてしまった痛みが、傷つけてしまった事への心が零す血液が涙に変わって零れ落ちていくのだろうか。 「私は、そろそろ行くね」 そう言ってこの場から去るつもりだった。駅へ向かおうとしたのに、私の目に映ったのは砂利の混ざったむき出しの地面と水溜りで、体には衝撃が走った。それなのに、不思議と痛みはわからなくて、何が起こったのだろう、頭が上手く回らないのは寒さの所為だろうか。 「かがみ先輩!?」 「・・・大丈夫ですか?」 二人の言葉に、あぁ、私は転んだんなぁと言うことにやっと気がついた。お気に入りの服も私も泥水を浴びて泥や砂利まみれで惨めだった。それでも立ち上がる気になれなくて、今の私にはその姿が、相応しいとさえ思えてならなくて・・・。 二人は手を伸ばすべきかどうかを凄く迷っていて、私は私で起き上がれないでいると、不意に片腕を引っ張り上げられて立たされた。 「大丈夫かな?あ~あ、折角のお洒落さんが台無しになっちゃってるねぇ」 明るい声、私に言っているのだろうか。何時の間にか側に来ていたゆいさんに私は起こされたらしい。あのまま雨の中で泥のように解けてしまいたかったのに。 「すみません、ありがとうございます」 お辞儀をしようとしてふらついてしまう。寒さで色んな感覚が麻痺している気がする。それなのに、傷つけた痛みだけはズキズキと心を針で刺すような痛みを出し続けていた。 「んー、電車は行っちゃったみたいだねぇ。かがみちゃんだったねー、一緒に乗っていく?お姉さんが送って行っちゃうよー」 ゆいさんは、優しく聞いてくれる。でも、こんなにびしょ濡れで泥まみれの私が車に乗せてもらうのは申し訳ない気がする。 「かがみちゃん、遠慮することはないよ~。さぁ、おいで」 ゆいさんが手を掴む。その手はぎゅっと強く掴まれていて振り解くことが出来なかった。もっとも、ぎゅっと掴まれていなくても今の私には振り解く力は無くて。手を引かれるままに歩いた。 どうしてだろう、誰も掴まない手。それは、あの日にバスで繋いだ手、あの日にお見舞いで涙味の口付けの味を感じた時に繋いでいた手。今は、泥で汚れてしまった手・・・あの温もりも想いも何もかも、全てはあのバスの日から始まった。いや、きっとそうじゃないんだ、あの日に私は知っただけの事。一体何時、こなたに想いを馳せたのか何て理由、わかりはしない。でも、もう始まってしまった、動き始めてしまった想いを消してしまう事なんてきっと出来ない。なら、私はどうすればいいの?誰も答えはくれない。 「さぁ、乗った、乗った~。ゆたかとみなみちゃんはちょっと荷物で狭くなっちゃってるけど二人で後部座席の方にお願いするね~」 何時の間にか、ゆいさんの車の前まで連れて来られていた。空けられた助手席のドア、後部座席が狭くなっているのは、きっとここに物が積んであったからだろう。座席に座ってもよいものだろうか、泥水に濡れた服、きっと座席を汚してしまうだろう。 「シートの事は気にしなくていいから、乗った、乗った~。お姉さん、警察官だからね~。ほっとけないしさ」 半ば強引に助手席に押し込まれた。シートを汚してしまったな、そんな事しか思い浮かべられなかった。心配してくれたことを感謝するとか、そういう事を思いつけない程に私は消耗していたらしい。 「シートベルトをしてくれたまへ~。よし、じゃぁいくよ~」 私がシートベルトをしたのを確認すると、ゆいさんは車を発進させた。髪から水滴がたれてくるのか、膝の上においた手の甲が濡れている。 「何があったのかな?お姉さんでよければ相談に乗るよ~」 「友人を傷つけてしまったんです・・・」 私は、言いたくないのに言葉を口にしていた。誰かに聞いてもらいたいと思ったのかもしれないし、このゆいさんの雰囲気に口を動かしていたのかもしれない。 「きっと仲直りできるよ。そんなに泣かなくったってさ」 手の甲を濡らしているのは、どうやら私の涙らしかった。そういえば、まだ目から顎に温かい水滴が流れるのを感じる。 「そうだと良いんですけど・・・凄く傷つけちゃったから、どうしたらいいのか、わからなくて」 同性に告白されそうになるのはどんな気持ちなのだろう。しかも、信用している友人から。どれだけ、こなた、あんたは傷ついたのかな?それを考えると涙の量が増えるばかりだ。 「そういえば、今日、こなたお姉ちゃんが出掛けてたからもしかして・・・」 「・・・ゆたか」 「あ、ご、ごめんなさい」 私は言わなくていい事ばかり口にしそうだった。想いを支える堤防は決壊しかけているようで、口にしてしまう。 「そう、私はこなたに酷い事を言って傷つけちゃったのよ、ゆたかちゃん」 後は言葉にならなくて、泥に汚れた手で涙を如何にか止めようと、嗚咽をどうにか堪え様と頑張ったが、どうにもならなかった。 「こなたと喧嘩しちゃったわけだ、しかし、あのこなたが友人と喧嘩だなんて、お姉さんびっくりだ」 ゆいさんは相変わらず明るい声で言う。それが気遣いだという事には気がつけるくらいになっていた。涙が零れるほど、私の頭は冷静になっていくのに涙だけは止め処無く溢れ続ける。 「ごめんなさい、でも、止まらなくて・・・。私が悪いのに、私が泣いてちゃいけませんよね」 「かがみちゃんだけが悪かったのかな。こなたには、悪いところ無かった?」 あるはずが無い。きっと怖かったのだ、友人が言うはずの無い言葉を口にする事が。 「喧嘩って言うのは、お互い悪い所が無いと出来ないものだからねぇ」 そもそも、喧嘩というのが私の嘘だから。だから、一方的に私が悪いの、こんな気持ちを持ってしまった事が。 「本当は、喧嘩したんじゃないです。こなたに・・・友人が言っちゃいけない事を・・・」 「何をって聞いたら野暮かな?」 何時の間にか、家の近くまで来ていた。言ってしまって気味悪がられて、車から降ろされても何とか歩いて帰れるだろう。どの道、こなたから聞くことになるだろうから、私が今ここで言ってしまっても、結果は同じ事。気味悪がられるのが早いか遅いかの違いに過ぎない。 「こなたに・・・す・・・」 嗚咽で上手く喋れなかった、何とか抑える。もう誰かに聞いて欲しかった、みゆきに聞いてもらうだけじゃ足りなくて、母に聞いてもらうだけじゃ足りなくて、私の不安の海はどこまでも果てが無い程に広かった。 「こなたに好きだって・・・伝えようとしたんです。二人でみた映画のシーンの説明に託けて、告白しようなんて卑怯な真似をして、こなたを凄く傷つけてしまったんです」 車内の空気が張り詰める、当然だろう。想ってはいけない気持ち、異端視される気持ちなのだから。 「かがみちゃんは、こなたが好きなんだねぇ」 張り詰めた空気なんてなかった、ゆいさんは事も無げにそう言った。どうして、どうして受け入れられるの? 「お姉さんそう言うのは良くわからないけど、でも、それはきっと悪い事じゃないとないと思うよ」 「そうなの・・・かな・・・」 敬語を使うことも忘れて、呟くように言う。悪い事じゃないのかな、でも良い事でもないはずだ。その後は会話も無く、私の家の前で車は止まった。 シートを汚してしまったこともあり、私は母を呼んで一緒に謝罪した。謝罪した後の会話はただ聞いていただけだったが、ゆいさんは特に気にした風も無く、それじゃまたね~と明るく行ってしまった。失礼にも、その姿を私は、あまり関りたくなかったんじゃないだろうかと思ってしまった。 雨の中、家にも入らず呆然と立っているだけの私を、母は脱衣所に連れて行き、お風呂は沸くのに時間がかかるからとりあえずシャワーで温まってきなさいと告げた。私はといえば言われるがままに頷いて、シャワーを浴びた。お湯が肌に当たるたびに走る痺れる様なジンジンとした感覚、最初温かいとは感じなかった。それほどまでに冷え切っていた事に驚いたが、黙ってシャワーを浴び続けた。 温まって外に出ると着替えが用意してあり、それを着て、私は自分の部屋に向かう。中に入った所で操り人形の糸が切れてしまったかのようにフラフラとして、ベッドに座り込んだ。寝転ぶ気にはなれず、ただ座っていただけ、涙も何時の間にか止まっていた。 しばらくの沈黙の後、不意に遠慮がちなノックの音、そして、つかさが入ってきた。 「お姉ちゃん、大丈夫?」 「よく、わかんない・・・」 大丈夫と聞かれて大丈夫と答えられる状態でもなかった。心の中はグチャグチャで、想いだけが先走りそうで、また泣きそうになって・・・。 「お姉ちゃんが帰ってくる前にね、こなちゃんから電話があったの。お姉ちゃんの携帯繋がらないからって。その、さっきはごめんって伝えて欲しいって」 「こなたが謝ることなんて何にも無いのに、どうしてあいつは謝るんだろう」 私の言葉はもう、うわ言の様だ。目に映るつかさの姿でさえ夢の中の様で、ふわふわしたおかしな思考感覚だった。 「お姉ちゃんは、こなちゃんに・・・言ったの?」 つかさも知っているのか。こなたから電話があったのなら知っていてもおかしくは無いか。 「最後までは言えなかったわ。でも、もう友達でもいられないかも知れないわね。つかさにも迷惑掛けるかもしれない、ごめん」 「だ、大丈夫だよ。こなちゃんだって、その、お姉ちゃんの事、好きだって悩んでたんだから!!」 言い終わってから、つかさはしまったという顔をした。どういう事だろう、こなたが私の事を好きで、悩んでいた・・・? 「意味がわからないわよ、つかさ。私はあいつに好きと言おうとして突き飛ばされたのよ、拒絶されたのよ?それなのに、こなたがどうして私を好きなのよ」 「えっと、それはその、あの、お姉ちゃんがこなちゃんを好きなのも私知ってて、あの、うーんと・・・」 言葉を探しているつかさに立ち上がって肩を持って、問いただしたかったが。肩を持った所でどういう言葉を言えばいいのかが、わからなくなってしまった。 「あのね、だから、お姉ちゃん・・・と、とにかく大丈夫なんだよ」 「意味がわからないわよ」 疲れていた所為だろうか、急に体から力が抜けて、転びそうになったのを何とか堪え様として、結局つかさを押し倒す形でベッドに倒れた。 「ごめん、すぐ退くから」 そうは言ったものの体に力が入らない、何だか凄く疲れてしまって、動く事が出来ない。涙が出てきた、まだ仲直りの出来る可能性に、拒絶されてはいないかもしれない可能性に。 「お姉ちゃん、たまには私を頼ってよ。頼りないかもしれないけど、頑張って力になるから!」 「じゃあ、少しだけお姉ちゃんをやめてもいい?」 「えと、うーんと、それは困る・・・かなぁ」 「ほんの少しだけ・・・いいかな?」 「ほんの少しだけならいいよ」 つかさの胸に顔を押し付けるようにして泣いた。声を上げて、感情をさらけ出して、それは姉としての強さを外す事だから。 そんな泣きじゃくる私の頭をつかさは優しく撫で続けていてくれた。 ◆ どうやって家に帰ってきたのか良く覚えてない。けれど、家に着いてすぐにかがみに謝ろうと思って携帯にかけたが、繋がらなかった。直接の方がいいと思ったけど、拗れる前に謝っておきたかったから、つかさにメールを送る事にした。 「イメージと現実かぁ」 電話を終えて呟く。かがみが私を好きになるなんてありえないと思った。でも、どうやら現実は違うらしかった・・・確信は持てないがあの時の私が突き飛ばしてしまった、かがみの反応を思い出すともしかすると、あの言葉は本当の気持ちだったんじゃないのかという可能性もあるかな、なんて思い始めていた。 「でも、かがみはあんな事思わないし、そんな事言わないはずなのに」 私は冷えた体を温めようとコーヒーでも飲もうと思い、そんな事を呟きながら居間に入った。テーブルには、曖昧な表情をしたお父さんがいた、私の独り言は聞こえていたらしい。 「絶対そうだって事は無かっただろう?」 「でも、かがみがあんな事を言うなんて思わなかったし、そんな可能性無いと思ってたよ」 「それで、こなたはどうしたんだ?」 「かがみを突き飛ばして逃げただけ・・・」 「そうか。しかし、こなたとしては、かがみちゃんが好きなんだろ?お父さんは、認めていないわけじゃぁないし、同じ気持ち同士で良かったじゃないか、どうして突き飛ばしてしまったんだ?」 「わかんない・・・でも、かがみがあのまま、雨に打たれていたらどうしよう」 かがみがあのまま、傷ついたまま、あの場所にいたらどうしよう。今からでも戻るべきなのだろうか・・・わからない。 「そういえば、偶然ゆい達が、かがみちゃんにあったらしくて、かがみちゃんを送ってくれてるらしい電話があったな」 「そっか、ゆい姉さんが・・・良かった」 心から良かったと思う。あのまま、かがみが雨に打たれていたらと思うだけで胸が締め付けられる気分だった。それだけ好きなのに、私は・・・かがみを突き飛ばして逃げたのだ。 卑怯じゃないだろうか、いくら信じられなかった事で取り乱していたとはいえあれでは、拒絶されたと思う以外には無いのだから。 まぁ、座ったらどうだ、こなた。そう告げられ、私の前には湯気を立てて入る熱めのコーヒー。座って一口飲むと、また思っていたのと味が違った。朝飲んだコーヒーとは明らかに違う、いや・・・これは何時ものインスタントコーヒーの味だ。 「味が戻っただろ。実は朝の分はな、こなたが飲んだので丁度最後だったんだよ。で、あのメーカーを飲んでいる近所の人が同じ福引で、うちがいつも買っているメーカーのインスタントコーヒーを貰ったたらしくてなぁ、その人はお父さんが、自分が買っているインスタントメーカーのコーヒーを福引で当てたのを見てたらしくてだ。電話をくれて、交換する事になったんだよ」 「でも、何か変な感じだネ。朝と味が違うだけなのに、元の味に戻っただけなのに、逆に変な違和感を感じるよ、まぁ、飲みなれてるからいいけどさ」 二口目には、さっきの違和感が嘘の様に無くなっていた。違和感・・・かぁ。かがみが私の耳元で愛の言葉を囁く・・・そういうシチュエーションが既に違和感だらけで信じられなかった。 「こなた、今朝のイメージと現実の話なんだが・・・」 「うん」 「イメージはイメージでしかないと思うんだ。現実とは違う、まぁ、そこはオタクとして生きてきた中で学びとっていると思うが・・・これをかなたが聞いたら激怒するに違いないな。と、話が逸れたな。つまりだ、こなたにとってかがみちゃんは女の子を好きにはなったりしない、ましてや自分に対してそんなことはありえない、というイメージがあったんだよな?」 「そうだよ。かがみは私なんか好きになったりしない、そんなことありえないって思ってた」 でも、そうじゃなかったらって考えられていたら今日の事を受け入れられていたのかな。わからない・・・いや、たぶん、そうじゃなかったら何て、思えていてもきっと受け入れられなかった。きっとかがみは決意を、私のような弱い決意じゃない、もっと強い決意を固めていたのかも知れない。 「かがみは、きっと勇気を振り絞ったんだよね・・・それを私は踏みにじった」 「いや、そうとも限らないぞ。かがみちゃんが今日、本当にそういう事を話すつもりだったかどうかは、かがみちゃんにしかわからないんだ。そこが既にイメージになってしまうんだよ。予測とも言えなくは無いが、恋愛感情となるとそこはその場の勢いもあるからな」 確かに、あの時に私があの映画のラストシーンの事を聞かなければ、かがみは口にしなかったかもしれない。それは、お父さんの言う通り、かがみにしかわからないけどさ。 「私はどうしたらいいかな?」 「そうだな、よく考える事じゃないかな。かがみちゃんは今日突き飛ばされて、拒絶されたと思ったはずだ。きっと、こなたを傷つけてしまったと酷く落ち込んでいるに違いない。ゆいの話だと、あまりにも目が虚ろだったから、警官として放っておけないと言ってたからなぁ」 どうして、私を傷つけたと思ってしまったんだろう。悪いのはわたしなのに、かがみじゃないのに・・・どうして? お父さんは私の表情から心のうちを読み取ったのか言葉を続ける。 「かがみちゃんも、こなたと一緒で、絶対にそんな気持ちを抱かないと思っていたからじゃないかな。前に遊びに来たことがあったときに感じた事なんだが、しっかりしているけれど芯が少し弱い子なんじゃないか?かがみちゃんは」 どうだろう。つかさを守って生きてきたのだから、強いんじゃないかな・・・でも寂しがり屋で強がりだから・・・本当は脆く弱いのかもしれない。それは、私も同じようなものだけど。 「お父さんはさぁ、どうして変だとか思わないの?私の気持ちとか・・・」 「ま、お父さんとしてはだな、こなたが幸せならそれでもいいんじゃないかと思っただけだが・・・」 冷めたコーヒーを一口飲んでから続ける。 「普通に恋愛して、普通に結婚したほうが無論幸せになれる確率は高いだろうな。世間からは冷たい目で見られるわけだし・・・でもなぁ、こなたには強い味方がいたろう?つかさちゃんってさ。普通は姉に想いを寄せている、それがたとえ友人であっても同性愛に関して味方になるって決意を固めるのは簡単な事じゃ無いと思うんだよ。だから、つかさちゃんをみて、あえて反対する気は無くなったんだがなぁ」 「そんな事で決めちゃっていいの?」 「いや、それはかなり大きい事だと思うからなぁ」 私も冷めたコーヒーを飲む、するとカップは空になった。つかさは、かがみと双子で、私と親友で、味方だけど・・・どうしてつかさは味方になるって言い切れたんだろう。そして、かがみには味方はいるのだろうか。 「お父さん。私、部屋に戻るね」 「まぁ、よく考えるんだぞ」 よく考えるか・・・どうすればいいのかわからない事だらけだ。 部屋に戻って、首にかがみがつけてくれたチョーカーを指でなぞる。金属のひんやりとしたハートの感触。 「かがみ、ごめん・・・ごめんなさい」 その声はもう、かがみには届かない。お互いに傷つけてしまったと思い込んで涙する。何だ、わたしとかがみはどこまでも同じ道を歩いていた事に気がつかなかっただけなんだ。 だからこそ、決めなくてはいけないと思うんだ。かがみと世間の茨道を歩くのか、この想いを封印してかがみの心を傷つけてでも、違う相手を見つけてもらうか。 ―選ばなくちゃいけないんだ。 私はもう一度チョーカーについた金属のハートをなぞる。かがみがつけてくれる時、こんな可愛いものは私には、似合わないと思った。けれど今ははずす気になれない。考えが纏まるまでは着けていよう、そう思いつつ、バルーンニット帽を乱暴に脱ぎ捨て、ベッドに倒れこんだ。 何気ない日々:想い流るる前日“互いに違う答え”へ コメントフォーム 名前 コメント 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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・・・・・埼玉県久喜市に住んでおります、柊かがみと申します。 実家が神社である私がこちらで願うのも変な話ですが、 実家では少々願いにくい事ですので、こちらで願わせて頂きます。 ―――今年こそは、つかさ並みの隠れ天然が治りますように! 偶にやらかす天然ネタで、こなたに弄られるのは正直嫌なんです!! しかも新年早々、『柚子』の事を『カサカサのみかん』と言って、 つかさ含む家族一同から白い目で見られたばかりなのです。 『wishes』 そんな恥ずかしくて実家では願う事が出来ない願いをし、神社の拝殿を後にする。 正月三が日が過ぎた、大学の冬休みのある日。 私はこなたと一緒に神田明神へ初詣に来ている。 ちなみにここの初詣に誘ってきたのはこなたからだ。こなた曰く 『アキバに歩いて行けるから、アキバへの買い物に便利なのだよ~』 だそうで、初詣と趣味の買い物、そして私とのデートを一緒にこなしたいという、 ホントにものぐさなアイツらしい案だ。 3が日の家の手伝いが終わり予定が空いていることと、やっぱりあいつと一緒にいたいという思いから、 こなたの思惑に乗るのは正直癪にさわるけれどOKの返事をした。 するとこなたから『合点承知の助~』とずいぶんと気の抜けた返事をされ、やっぱりやめたろかと考えたが、 断ることをせずに今日こうして来ることと相成った。 少々お祈りが長かっただろうか、隣にいたはずのこなたがいない。 一体何処に行ってしまったのだろうか? そう思い周囲を見渡すと、数メートル先に特徴的なアホ毛のある、見慣れた後姿を見つけた。 アイツ私のお祈りが長いからって、先に行かなくてもいいじゃないか。 そんなに自分の買い物が大事か~?まったく、そんなやつは・・・エイッ!! 「こ~なた(がしっと抱きつく)。お待たせ~。」 「きゃっ、あなた誰ですが?」 「え・・・。」 あれ?もしかして人違い? 「かがみ・・・私、ずっとかがみのそばにいたんだけど。」 「え、間違えました!ごめんなさい!!」 「いえ、いいですよ。」 こなたと間違えた女子中学生と思わしき女の子は、わずかに引きつつもそう私に返し、その場を去って行った。 「まさか、正月一発目からかがみの天然ボケを拝めるとは、今年は良い予感するな~。 これで、実は『今年こそ偶に出る天然が直りますように』って願った後だったら尚良い。」 「うっ‥‥。」 「かがみ~ここは、『そんな訳ないでしょ』って返すとこだよ~どうしたの?」 あまりに的確過ぎるこなたの指摘に驚いた私は、 言葉を発することが出来ず、ボフッと顔を真っ赤にさせる。 「え、まさかのまさか~(ニマー)。」 ぐ、恋愛感情から付き合っている今でも一瞬で好感度がマイナスまで落ちる、ニマニマした表情を向けてきた。 ここで顔を真っ赤にさせて反論しても、いいように弄られるだけだ。まずはお茶を飲んで落ち着こう。 「かがみ~天然直りますようにって言っている傍から、 フタしたままペットボトルのお茶を飲もうとしているよ~(ニマニマ)。」 ‥‥‥‥‥ 「(すごくにこやかに)そんなのフタ取れば良いだけじゃないのー。 ソンナコトヨリ、ハヤクイコー。」 私、割と本気でアップアップなの。こんなときは暖かい目で見守ってね、こなた。 そんな思いを胸に、作り笑顔をしたまま秋葉原方面へ歩を進めた。 「うわ~、ごまかそうとしている作り笑顔がすごいよかがみん・・・ホントに逞しくなったなあ~。」 神田明神通りからこなたがお目当ての店が密集している中央通りへと歩いてゆく。 途中昼ごはんをとる為、こなたお勧めの老舗パスタ店へと入る。店内に入るとこなたから 「かがみんの為に、ガッツリ食べられる大盛りが人気のパスタ専門店を選んだよ~。」 等と言われた。 「うっさい黙れ!」 「でも、大盛りを頼むんだね、かがみん。」 「い、いいでしょ。変更料金安いんだし。」 「かがみ、盛り頼もうとしてるけどさ。」 「何よ。」 「私、メニューに載ってる写真よりも少ない量で、お腹一杯になっちゃうんだよね。」 「それは私に対しての嫌味か?」 「だから私の分のカルボナーラ少しあげるよ。そうすれば大盛りにする必要ないよ。」 「・・・だったら、私の分のずわいガニのトマトソース分けてあげる。私だけもらうのもなんか悪いし。」 「わ~い。かがみと分け合いっこ♪」 こんなちょっとした気遣いが嬉しく、神田明神で下がった好感度はプラスへと戻った。 あとこなたが『わ~い。かがみと分け合いっこ♪』といったときの仕草がとてもかわいらしく、 不覚にもときめいてしまったことは内緒だ。 食事が終わった後そのまま中央通りへと向かい、 こなたがお目当てのアニメショップや同人ショップ、PCショップを巡っていった。 「あ~、やっぱりガンダムカフェはいつ行っても行列で来てるね~。」 「そうね。」 「(かがみの方へチラチラ見ながら)やっぱり、休憩だったら向こうの方が良かったな~。」 「こなた、今日はあんたの買い物メインになっちゃってるんだから、 休憩場所ぐらい私の希望を通してもいいんじゃない?」 私達は今、休憩と称してガンダムカフェを見下ろせる位置にあるヴィクトリアンパブにいる。 店内は英国風の作りとなっておりとても上品で、落ち着いてじっくりと話し合ったり、 一人で飲みに来てもゆったりと出来る雰囲気を醸し出しており、 秋葉原に来るたびに一度は入ってみたいと思っていた。 高いフロアにあるわけではないが、秋葉原駅前の再開発エリア(青果市場跡)の広場 を見下ろす事が出来、行き交うヒトやひっきりなしに発着する電車を眺めることが出来た。 「む~・・・・・・ところでさ、かがみん。神田明神でお願いしていたお願い事の内容なんだけど、 どうして『天然ボケ直りますように』ってお願いしちゃったわけ?」 「う、それは・・・」 かなり弄られるのが分かっているのであまり言いたくないが、ここまできたら仕方が無い。 渋々願うことになった理由をこなたに説明した。 「へ~新年早々そんなことがあったんだ~(ニマニマ)。 見た目で分かりにくかったら、匂いで判別すればいいことなのに出来なかったから、 すごくショックだったんだね~、かがみんはホントかわゆいね~。」 「うるさい。かわいい言うな。」 案の定、新しいおもちゃを手に入れたこどものようにはしゃぐこなた。 「まあそんなかがみもかわいいんだけど、それよりもつかさの声真似がうまかったことに驚いたよ。 かがみとつかさって見た目も性格も違うから、絶対大して付き合いたくない男の子からかがみ宛てに 誘いの電話がかかって来ても、つかさの声真似で『ごめんね~お姉ちゃん今出掛けているんだ~。』 と言う風に出来ないと思っていたよ。」 「なんじゃそりゃ?別にそんな事しないわよ、私は。」 「あと今やっていた親指と小指を立てて行う電話のジェスチャー、決してドラゴンボールの孫悟空を 耳に近付けるってボケじゃないから。」 「そんな発想誰もしないから。ちなみにそれは何かのネタか?」 「こうすると(親指と小指を立てる)孫悟空だけど、こうすると(手をグーにする)クリリン。」 「くだらねえよ。」 こうして上品なヴィクトリアンパブでの、騒々しい午後のティータイムは過ぎて行った。 再びこなたの買い物に付き合い、時刻は午後7時過ぎへと回った。 そして晩御飯として中央改札口にあるテナントビル内の和風ダイニングへ入る。 「『たこわさび、漬物盛り合わせ、軟骨から上げ、お肉屋さんコロッケと生ください。』って 頼んだ訳なんだけど。この注文を組みかえるとさ。」 「何?」 「漬物のから揚げ。」 「食べたくない。」 「生コロッケ。」 「ただのじゃがいもじゃないの。」 「わさび盛り合わせ。」 「嫌がらせか?」 「とまあ、かがみが作った料理となるから不思議だよね?」 「ならねえよ。残りの組みかえられてないのはどうしたのよ。」 「・・・あとは産業廃棄物と化しました。」 「ふざけるな、どんだけ私の料理下手をいじくり倒す気だ!」 和食ダイニングで食事した後、時間も時間だから帰ろうかと思ったところ、 「かがみん諦めなって、もう終電ないんだから~。」 「嘘、マジで?ってこの時間だったら、まだあるじゃない。」 「2次会カラオケ用意してるから朝まで付き合ってよ~。大学の冬休みまだあるでしょ。」 「『2次会カラオケ用意してる』ってお前はどこの宴会の幹事だ!う~んそうね・・・いいわよ、折角だし。」 「やったー、こういう時のかがみって本当に付き合いいいよね。」 と言う流れで、このままオールで遊ぶこととなった。 カラオケではお互いに遠慮することなくアニソン、J-pop問わず 各々好きな曲を入れ、好きなように歌い盛り上げ、大いに楽しんだ。 いよいよ終電が無くなった頃、こなたから『実は今日ホテル予約しているんだ』と言われ、 こなたが予約している、秋葉原駅に隣接している高層のホテルへと行く。 このあいだのクリスマスデートの際に、クリスマスイブ前の予約状況が例年と比べ それほど入っていないという情報を信じ、こなたをホテルへと誘ったが、回ったホテルはすべて満室で 泊まることが出来ず、なんとも言えない寂しさとわびしさを感じながら電車で帰って行った。 ホテルに行くということで、そんな私が強引に引き込んだにもかかわらず、 見事グダグダな結果になったこのあいだのクリスマスデートを思い出し、少しだけ気落ちをする。 そうしてホテルへ着き、12階へと昇り、白にビビッドな赤をきかせた内装のシングルルームへと入る。 寝室と部屋の入口側にあるシャワールームを仕切るのがガラスパーティションなのに驚きつつも、 こなた、私の順でシャワーを浴びた。 シャワーを浴び、濡れた髪をタオルで乾かしながらベッドのところへ行くと 先にあがっていたこなたが、部屋に置かれているマッサージチェアに座り、おっさんのマネをした 子供のように『あ~極楽、極楽』とうわごとのようにつぶやいていた。 こいつにとって普段通りの行動の為、多少呆れつつもわざわざ構うことなく私は自分の髪を乾かすことを続ける。 しばらくしてマッサージチェアに満足したこなたが、ダブルベッドに座る私のそばに座って来た。 「あのさ、かがみ・・・・・この間のクリスマスデートの続き、しよ。」 「え?」 「前のデートの時さ結局ホテルに行けず、最後かがみが我慢しきれず駅のホームで 抱きしめてキスしただけじゃん。」 「そういえばそうだったね‥‥あの時はごめんね、強引に引きずりまわしちゃって。」 そう言って、私はうつむく。 そんな私に対し、こなたはそっと微笑みながら私の手に重ねてきて 優しく語りかける。 「別に気にしなくてもいいのに。本当にかがみは律義で真面目だよね ・・・でもかがみのそういうとこ、すごく大好きだよ。」 「こなた・・・。」 「実はね、今年の初詣願い事『これからもかがみのそばで、過ごしていきたい』なんだ。 はっきり言って自分でもストレート過ぎて恥ずかしいんだけど、偽りの無い気持ちなんだ。 だからさ、これからも一緒に過ごしてゆきたいんだ。だから全然気にしてないよ。」 こなたの柔らかく、けどはっきりと語りかけるように伝える優しい言葉と、 重ねてきている手から伝わるぬくもりが、温かく幸せな気持にさせる。 「ありがとう、こなた。私もねそういつもそう願っているわよ。わざわざ初詣で祈る必要がないくらいにね。 なんかこういう言い方って恥ずかしいんだけど、『君の夢が、私の夢』って感じですごくうれしいな。」 互いに恥ずかしいセリフを相手に伝えつつ、笑いあう。 そしてバスローブ姿のこなたに抱きしめられ、甘ったるいような優しいような匂いに包まれた。 「かがみ、好きだよ。」 「私も愛しているわよ、こなた。」 こうして私達は部屋の灯りを落とし、 私の部屋のベッドよりも弾力性があって、寝心地のよいベッドに入っていった。 コメントフォーム 名前 コメント 続き見せて〜♪ -- かがみんラブ (2012-09-16 23 05 16) 続き来たョこれ。 いやいや、やはり前回?は二人とも満室攻撃で撃沈してたのですね。 オイラにも経験ありますが、その分今回は萌・・・じゃない、燃えますなお二人さん。 GJ!! -- kk (2011-01-11 23 00 06) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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お読みの際は以下をご留意下さい。 当SSはこなた、かがみ達3年生組の陵桜学園卒業後を舞台としています 今作に限らず、冒頭に特別な付記がない限り、拙作は一つの時間軸を辿ってゆきます(ゆく予定です) その為、未確認の設定やオリキャラ等の由来が気にかかった際は、まず前作かそれ以前の流れをご確認下さい それぞれのキャラクターの全体像に“自己流解釈”が掛かっており、それによるキャラ崩壊が著しいものです 全体的に堅苦しく、専門用語を(やや)伴う文体で書かれています 誤字・脱字や文章表現の見直しに、抜け・漏れが含まれている場合があります 相変わらず長ったらしくなってしまいましたが、お時間の許す方はどうぞお付き合い下さい。 今作はとある洋楽をモチーフに製作されています。 その歌詞と曲調は今作内で前提的に扱われている為、内容を事前に把握して頂けると 各キャラの語調や展開する世界観等の組成が幾分か判り易くなる… 筈です。 以降のタイトルをご存じない方は、歌詞の意味も含めて以下のURLをご参照下さい。 ttp //goldenblue.blog72.fc2.com/blog-entry-20.html ここは私とは何の関係もございませんが、歌詞を自己流に和訳する際最も参照となったHPです。 管理者のgoldenblue様に、この場で深く御礼と非礼を(お詫び)申し上げます。 「Me and Bobby McGee」 その1 「Me and Bobby McGee」 その2 「Me and Bobby McGee」 その3 「Me and Bobby McGee」 その4 名前 コメント
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ある夏休みの日常の風景 今、まさに夏真っ盛りだった。もっとも、家を離れて安いアパートに引っ越したので、私の部屋にはエアコン等はなく、暑いことこの上ない。あ、でもかがみの部屋にはあったような……そういえば、つかさの部屋にも……はぁ、ならばみゆきの部屋には絶対あるはずだよね?だってみゆきさんだもん。 かがみがいたら、心の中では頷いていてもとりあえず、“一体どんな理屈よ!”と突っ込んでくれるに違いない、きっとそうに違いない。 私―泉こなたは、とりあえず、夏で夏真っ盛りでその上夏休みという学生には時間としてはあまり余った時間を力の限り謳歌しているはずだった。 まぁ、その、現実は、三角巾にエプロンをして、はたき掛けやら箒やらもって部屋の掃除にいそしんでいるわけだけどさ。エアコンはないけど、風通しのいい部屋を選んでたのが幸いしてか、扇風機でも十二分に涼しい。 どうして、私がこうしてせっせと部屋の掃除に勤しんでいるかといえば理由なんて一つしかない。つかさが遊ぼうといえば、つかさの家にいくし、みゆきさんが遊ぼうといえば、つかさの家で集まるわけで、この部屋を訪れる人はたった一人だけ。私の嫁!……でも、かがみにはタキシードが似合いそうだから、私が嫁かなぁ?と、そんな風に気持ちがすぐに逸れてしまう、今日のお昼過ぎにかがみが来るので一生懸命、昨日から少しずつ色々と準備をしているわけなのだけど、いや、まぁ、ハルヒを見て、またか……などど思ったりしているあたりそこそこにしか進んでいないのが現実って奴さぁ。 最後にかがみに会えたのは、もう二週間ほど前になる。夏休み開始よりちょっと前に二人して都合があったので軽くデートをしたのだよ!誕生日プレゼントに私がヘマした指輪の事もあったし、楽しかったなぁ、かがみに夏休みの予定を聞くまでは。 もちろん、私のオタク度って奴はそうそう簡単に直るわけがない。もちろん今年も夏コミに行く予定だったのだけどね~、今年は行かないかもしれない。 かがみが夏休みを私と謳歌できるのは、その辺りしかないからなんだけどね。夏コミにいくのとかがみと一緒にいるのとを天秤にはかけられないからさ? だって天秤にかけたところで傾くのはかがみの方に何だから意味ないでしょ? う、何か自分で考えておいてアレだけど、すごい恥ずかしい事考えてるなぁ、私。 「夕飯の準備には万全だし、ハルヒはまたか、だったし……掃除も終わったしどうしたものかな?」 恥ずかしさを少しでも打ち消すための独り言。非常に空しい……思わずうなだれてしまうヨ。 正直言うとあまり心中穏やかな気分じゃない。かがみから、“ごめん、こなた。やっぱりいけそうにないかも”と、電話がなるのではないかと不安だったりする。 本当は会うのは三日ほど前のはずだったんだよね。でも、かがみのレポートの進み具合が芳しくなくて結局その日は無理になって、今日までには必ず遊べるくらいに仕上げるからと、非常に強い意気込みをつげられたので、私も一応は気合を入れて準備をしている。夕飯の下ごしらえだって完璧なのだ。後は調理するだけだし、ワインもいいのを買ってあるし、ワインばっかりじゃなんだから色々用意してある。 さすがにお神酒を口にしているだけあるのか、弱い割りにかがみは日本酒にはうるさいからその辺はつかさにこそっと聞いて調査済み。 まぁ、そんなに飲めないから小瓶を一つ用意しただけなんだけどさ。 しかし、かがみがやってきたら、ちょっと試してみたい事がある。ちょっとした悪戯に近いけど、言ってみたい。 “いらっしゃい、かがみん!さぁ、ご飯にする?お風呂にする?それとも、わ・た・し?” 言ってみたいのだけど、すごい呆れた目を向けられそうなきもする。真っ赤になって上ずった声で突っ込んでくれるとすごいうれしいんだけど、はてさて、どうなるかな? ふと、時計に目が言ってしまうのはやっぱり待ち遠しいからだろう。胸がそわそわして、心臓が高鳴って、少しだけ落胆の気持ち。自分に尻尾があったらきっと、千切れんばかりに振られていながら、時折不安で止まってしまう、そんな状態に間違いないと思うヨ。恥ずかしいけど、それくらいかがみに会いたいわけでして。 まぁ、まだかがみが来る予定の時間にはちょっと早い。アニメでもみて時間をつぶすべきか、ネトゲでもやっているべきか。 どっちも集中できそうにない気がする。ため息をつきたくなるくらい待ち遠しいから、胸がそわそわして心臓がいつもより早く動いてる。 昔、かがみの事を兎なんて言って、私は自分のことを狐なんて言ったけど、これじゃあ、どっちが兎かわからない。それくらい、かがみに会えない時間はふと寂しくなる。 ずっと寂しいわけじゃないヨ?大学の友人だっているし、つかさやみゆきさんと会うことは私のほうがかがみより多いくらいだしね。 でも、その、はっきり言うと……それとかがみと会うっていうのはやっぱり少し違う。だから、たまにふと寂しいと思ってしまう。 そんな事を考えていると駄目だ、頬が熱くなってくるのがよくわかる。赤面するのはかがみの専売特許で十分なのになぁ。 で、また私の目は時計に向けられる。まだ、あれから十分も立ってなかったので、さらに胸がそわそわして、心臓が緩やかに高鳴りの速度を上げていき、軽い落胆もやっぱりついてくる。要するに、私はいても立ってもいられない子どもみたいなもんだねぇ。ちょっとへこむかも。 よし!と一人意気込んでこのそわそわや高鳴りは、かがみが来たときに思いっきりからかうエネルギーにしようと決めてしまう。 「ん~、はやくかがみ来ないかなぁ」 口に出してしまう辺りもう、末期症状な気がしなくもないネ。私ってこんな性格だったっけ……? 立っていても仕方がないので、私はベッドに横になってクッションを抱きしめる。なんか私らしくないなぁ、とため息が漏れてしまうし、この熱いのに何でクッションなんか抱きしめるのか正気を疑ってしまいそうだヨ。 しばらくすると、今度は昨日から気合を入れすぎていたのか、瞼が重くなってきていた。かがみには合鍵を渡してあるから万が一寝ちゃっても大丈夫ではあるけど、寝ちゃったらあの台詞を芝居がかった口調で言えないじゃん? でも、なんだかまぶたの重さには逆らえない。そんな状態なのに私の目はまた、時計を見つめる。時間がたってないのは当たり前だが、そわそわと高鳴りに混じって相変わらず落胆の気持ちが入り混じる。 だから、もうまぶたの重さに逆らわない。少し眠れば……かがみがやってくる時間なんてすぐにやってくるのだから。 ◆ 眠たい。正直、体が重くてこなたの部屋のあるアパートへ行くのが億劫だったりする。もっとも、それは身体的な問題で、気持ちのほうではこなたに会いたいというほうが強かったのでこうして歩いているのだけど、頭の中はこなたで一杯というより、ついさっきまで解いていた事例問題やレポートの事がうろうろしている。 流石に無理はするものじゃないと身にしみて思った。先輩に説き方を懇願し、対価として散々こなたとの事についてから変われる羽目になったが、その先輩のおかげでなんとか今こなたの部屋へと歩いていられるというのもある。 こなたに断りの電話を入れてから三日。睡眠時間はたったの三時間だから、顔色は悪いし目の下にクマはあるし、こんなボロボロな状態をこなたに見せたくはないのだけど、それだけがんばった分時間に余裕ができた。 三~四日はこなたの家に泊まっても残りのレポートを仕上げるには時間的余裕ができたのだ。だから、ボストンバックに着替えをつめてきたのだけど。 “柊ぃ~?勝負下着は入れておかなくていいのかなぁ~?”という先輩のからかいの言葉に思わずのけぞって強かに頭をぶつけた辺り、私はこなたにもこの先輩にも勝てそうにないなぁとため息混じりに思った。柊ぃ~と舌ったらずな呼び方する親友の事を思い出すと先輩も憎めないなぁと思ってしまう。 そういえば、随分と日下部と連絡とってないわね。今度電話でもかけてみようかな?と思ったくらいだしね。 バスを降りればすぐのこなたの部屋がすごく遠く感じる。足が鉛のように重いし、まぶたは気を抜くと道端でも閉じてしまいそうだし、今日はこなたの部屋に行ってもただ寝るだけになりそうなきがするわね。 それでも、重い足を何とか動かして、やっとの事でこなたの部屋に着いた。呼び鈴を押しても全く変化がないので、合鍵で中に入る。 どうせ、ネトゲか、ゲームか、アニメに没頭しているんだろうなぁと思いつつも、ため息すらでなかった。いや、ため息を吐くのもちょっと億劫だったのだ。 こなたの部屋は、アパートにしては広く、家賃の割りに環境はいい。バスもトイレも共同ではないし、キッチンとリビングに小さい寝室があるくらい。 マンションならまだしも、家賃もそこそこでこれだけの設備が揃っているのだから、間違いなく大当たりの物件だと思う。 リビングを見渡してもこなたの姿はなかった。いや、こなたがいたならすぐによってきてからかってくるだろうから、寝室においてあるパソコンでネトゲに熱中してるのだろうか。 ここで、もしや夏休みの宿題をやっているのではないかと思わないのは、こなたはもう終わっているからだ。半分は大学の友人が早めにやっていたのを写したらしいのだが、もう半分は自力でやったらしい。 夏休みはたっぷり、夏休みらしい事を(あくまでもこなたの定義でだけど)私と一緒にしたかった(つかさやみゆきも一部入っていたけどわりと今思えばあからさま言葉だったな)のでがんばったらしいのだけど、私といえば夏休みの前半は夏期講習、それから大量ではないにしろ一つ一つ、片付けていくのに時間のかかる課題の為、こなたの努力も空しくほとんど会えなかったわけなのよね。 寝室のほうに入ると窓があけてあり、前にあったときにあげた風鈴が窓辺で鳴っている。扇風機も回しっぱなしで、当のこなたはクッションを抱いてベッドの上で丸くなって眠っていた。 私は、ボストンバックを置いて、そんな無防備なこなたに忍び寄る。別に酷い事をしようと思っているわけじゃないのよ?こっちが眠いのに、そっちは寝ていていいご身分だとか思ってはいないんだから。 ただ、丸まって寝息を立てていたこなたがとても……その、可愛らしくて大学生にはとても見えないというのはほめ言葉にならないわね。 でも、可愛らしいとは本当に思った。 それから私のとった行動は自分でもちょっと驚きだった。ただ、たぶん十人いたら十人やっただろうなとは思う。 無防備に丸まって眠っているこなたの横顔を見てから、ほっぺたを軽く指でぷにぷにとつついていた。さっきまでの疲労感はどこへやら、それが楽しくて仕方がなかった。 「ん……かがみ……」 軽く目を開けて、私のほうに手を伸ばしてくる。おきたのかと思ったけど手をつかんだ瞬間、また目を閉じて寝息を立て始めてしまった。 起こそうかと思ったのだけど、こんなにも安心した寝顔を見て起こすのも無粋よね?と思い、私は手をつないだまま、座ってベッドに体を少し乗せる。 こなたの顔が目の前に来るように、そのままキスの一つでもしようと思ったけど、それはこなたがおきてからでいい気がした。 私も目を閉じる。こなたの寝息を聞いていると、気持ちが安らいで瞼が鉛のように重くて、それなのにとても心地よかった。 ここが私の居場所なのよね、きっと。そんな事を思いながら目を閉じる。 何もしていなくても、こなたの手は暖かくて、心地がよくて、それだけでなんだか物凄く幸せな夏休みを味わえた様な気がした。 コメントフォーム 名前 コメント 『ここが私の居場所なのよね、きっと』になんか知らんけど感動した。GJ -- kk (2010-02-11 23 17 15) いい作品ですね~☆ GJ! -- 鏡ちゃん (2009-09-23 19 17 58) たいしたことが起きているわけでもないのに、繰り広げられる甘々な空間にあてられましたw GJ! -- 名無しさん (2009-08-02 23 02 07) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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『二人の時間』 「あれ…ここどこ?」 「お、やっとお目覚めか。着いたわよ」 どうやら、あの後また寝てしまったようだ。 ここはどこだろう。かなり山奥に来ているみたいだけど…。 「アキバだけじゃなくて、たまにはこういう所も見てみなさいよ」 「あ?何なのさ一体」 寝起きのせいか、つい不機嫌そうに返事をしてしまう。 「おもちゃの博物館よ」 「あの、私そういう所に無縁な人間なんだけど…」 「いいからいいから」 そう言って車を駐車場に止めると、私の手を引いて歩き出した。 「ネットで見つけて一度だけ来たんだけどね、誰かともう一度来たいなーって思ってたんだ」 「なんか、すごい楽しそうだね」 「そうかな?いいじゃない、別に」 満面の笑みで言うかがみ。 なるほど、もてるのもうなずける。 「すいません、大人二枚」 いつの間にか入場券を買っているかがみ。気前がいいのか、機嫌がいいのか。 「行きましょう」 やはり楽しそうだ。こんなかがみを見るのは久しぶりだ。 館内に入ると、電器仕掛けの人形や、今ではもう手に入らないレアな物がたくさん並んでいる。 それらも十分楽しかったが、一番私が興味を持ったのは…。 パ○クマン。 「おおう、これお父さんから聞いたことあるよ。昔やったって。まさか実物をプレー出来るとは…」 「やっぱ、こっち系のモノが好きなんだなー」 「んー、どれどれ…」 単純に見えてかなり奥が深い。みゆきさんはハマりそうだ。 最初は負けてばかりだったが、段々コツがつかめてきて、点数も伸びてきた。 「こなた、ちょっと貸してよ」 「えー、今いい所なのにぃ…」 「あんたばっかりやってるなんて不公平よ。ホラ」 強引にコントローラーを奪われてしまった。 早速、かがみのプレーが始まった。 うむ、予想通りハマっている。 「ねぇ、かがみん」 「何よ、今いい所なんだから、ジャマしないでよ」 「いや、だって、後ろで待ってる人いるよ」 気がつくと、後ろで困ったような顔で笑っている親子がいた。 どうやら、母親と娘のようだ。 「…す、すみません!どうぞ!!」 「ありがとうございます…フフフ」 笑われてしまった。恥ずかしい。この年になって我を忘れてゲームにのめりこむとは。 「まだまだお子様ですなぁ。かがみんは」 「う…うるさい。放っといてくれ」 それから私たちは土産売り場で、珍しいものを探した。 こなたは家族にお土産を買い、私はお菓子をいくつか買った。 外に出ると、もう日が暮れている。 「あ…もうこんな時間だ」 「本当…結構中にいたのね」 「まぁ大部分はかがみのゲームだったけど」 「は?あんただって、かじりついてたじゃない」 「おぉう、凶暴モード発動!」 「なんだとー」 こんなやり取り、何年ぶりだろう。 ちょっと前まで、当たり前のようにしていた会話が、何故かとても楽しいひと時のように思える。 これからの人生で、あのどのくらい、こんな時間を過ごせるのだろう。 大学を出て、社会人になり、結婚して、子供を産んで…。 そういうお決まりの人生を、私も歩むのだろうか。 そして、こなたも…。 「あー、それよりお腹空いたー」 「あらそう。じゃあ、そこのハンバーガー食べましょう」 「おっけい!じゃあ今度は私が出すよ」 「お、いいのか。じゃあお願いするわ」 「あー、やっぱ美味しー」 嬉しそうに食べるかがみ。食いしん坊さんだ。 ただのハンバーガーだと思っていたら、予想より少し高い値段だった。 (まぁ、味も予想以上だったし、よしとしよう) 「ねぇ、こなた」 「ん?」 「今日、ありがとう。付き合ってくれて」 「いやいや、私も久々に会えて楽しかったよ。リアルもいいもんだねぇ」 「フフッ…相変わらずね…」 笑顔がかわいい。 私が男だったら、これだけで惚れるだろう。 「ねぇかがみ、最近どうしてるの?学校とか」 「あぁ、もうやることもないから、たまに行って適当に時間潰してるわ」 「やっぱり真面目に生きてるんだねぇ」 「だって、留年したくないし…後で苦労するよりマシよ」 「う…」 「その顔は…さては卒業ピンチなのか」 「た…単位落とさなきゃいいんだもん」 「やれやれ…」 「あ、ちょっと、じっとして」 「え?」 私はかがみの唇の真横についているマスタードをナプキンでそっと拭いた。 「あ、ありがと…」 「ふふん、お子様チックなかがみん萌え~」 「いつも思うんだけど、一言多いんだよ」 おしゃべりが続く。 楽しいな、こうやって過ごせるなんて。 今まで、一番一緒にいて楽しい人は誰かと聞かれたら、間違いなくかがみと答えるだろう。 「じゃあ、そろそろ行きましょうか」 「そだね」 こなたに代金を払ってもらって店を出ると、きれいな夜空が広がっていた。 「わぁ…」 「来て良かったでしょ」 「うん…」 口が半開きになっている。 この気持ちはどう説明したらいいのだろう。 この瞬間が終わって欲しくない、そういう願いが、頭の中を回っている。 どうしてなのだろう…。 「…クシュン!」 「あ、寒いの」 「…うーん、ちょっとね。まさかここまで来るとは思わなかったから」 「じゃあ、暗くなっちゃったし、そろそろ帰りましょ。うち泊まってく?」 「ふふ、そう思ってちゃんと着替えを用意してきたのだよ」 そう言ってバッグの中身を見せる。普段学校に行くときも使っているのか、 筆箱やノートの他に、着替えの入ったビニール袋が見える。 「学校のものは置いて来ればよかったのに」 「いやいや、忘れちゃったら困るんだよ」 「なるほど、あんたらしいわ…」 車に乗り込んでエンジンをかける。 早速暖房を入れた。早く暖まれ。 「じゃあ、行きましょう」 「そだね、じゃ、頼んだよ」 「はいはい」 これでは、こなたの運転手だ。でも、たまにはいいか。 帰りの道は空いていたので、スムーズに走ることが出来た。 友達(元彼)の家に車を返しに行くと、ガソリンくらい入れろとか、こすっただろとか、 色々言って来たが、全部無視した。 やはり別れて正解だった。 アパートに着くころには、もう夜中だった。 「ふー、やっと帰ってこれた」 「おうおう、お疲れだねえかがみん」 「…だるいからちょっと横になっていい?先にお風呂入っててよ」 「ほーい」 湯船にお湯を入れ始めてしばらく経った。 うん、こんなものでいいだろう。 (結構いい所住んでるな…かがみって意外とお嬢様なのかな。そういえば結構大きい家に住んでたし、神主って稼ぎいいのかな…) ぼんやりとそんなことを考えながら、シャワーのお湯を全身にかける。 (かがみ…随分きれいになってたな。でも性格は昔のまま…ふふふ、変わって欲しくないところは変わらないなんて ……萌えすぎて苦しいじゃないか) (でも、今度はいつ会えるのかな、学生時代みたいにはいかないだろうし…) (もっと一緒にいたいよ…) 「何がもっと一緒なのよ?」 「のおわぁ!!」 振り向くとそこには、生まれたままの姿のかがみが。 「何一人でぶつぶつしゃべってんの?早く寝たいから私も一緒に入るわ」 「え…そうなの?」 「何よ?女同士でしょ?別に恥ずかしがることないじゃない」 「それは、そうだけど…心の準備が出来ていなかったもので…」 「いいじゃん別に。高校の頃も一緒にお風呂入ったじゃない」 (何なんだ、私は…女相手にドキドキしちゃうなんて…い、いや、これはかがみが特別なんだ。そう、私は悪くないんだ) 訳のわからないことを心の中で繰り返す自分がそこにいた。 「それにしても、いい所住んでるよねぇ」 私たちは湯船につかりながら語り始めた。 「まぁね、早く探し始めたのが良かったみたい」 「ちなみに…お家賃は?」 「…これだけ」 「え、それでこの広さ」 「うん」 「お化けでも出るんじゃないの~」 「気持ち悪いこと言うな。残念だけど、そんなの一回も見なかったから」 「わかんないよ…明日の夜にバーって…」 「う…うるさい!私に怖い思いをさせたいのか」 「あはは、冗談が通じない子ですねぇ」 「うっ…わ、悪かったな」 なぜ、どうして? 心臓がドクドクしている。 表向きは平静を装っているけど、ずっとドキドキしている。 なんで? せっかくかがみが傍にいてくれるのに 「さて、そろそろ出ようかな」 「え、まだ入ったばかりじゃない。風邪引くわよ」 「うーん、その…窮屈じゃないかと思って」 「そんなに気を遣うことないのよ、ほら」 かがみに手を引っ張られ、強引に湯船の中に戻された。 「こうすれば、足を伸ばせるでしょ」 「へっ?」 予想外…これぞまさしく予想外。かがみは私を後ろから抱き寄せた。 「どうしたのよ?下向いちゃって、まさか恥ずかしいとか?」 「え、いや、そんな訳じゃ…」 「ふふ…さっきまでの元気はどうしたのかしら」 耳元でささやくかがみ。背中に胸を押し付けられ、おなかの辺りに手を置かれている。 (あぁ…何だこれ、私は同性に興味なんて…) 私が男だったらどうしていたんだろう。こんな時ギャルゲーだったら…。 あぁ、だめだ。もうまともに思考できない。 どのくらいの間、そうしていたかはわからない。ただ、のぼせそうになったのは確かだ。 たくさん水を飲めば気分が変わるかと思ったが、胸の高鳴りはおさまる気配が無い。 何とか服を着たのだが。 「もう眠くてたまんないわ…限界」 「健康的な生活してるんだねぇ」 「春から社会人なんだし、夜型の生活は今のうちに直しておきなさいよ」 「そう言えばそうでしたなぁ…」 「ほら、入んなさいよ」 「おぉう、かがみの匂いが染み込んだ布団で一緒に寝るなんて…何て言うギャルゲーですか」 「変な言い回しはやめろ。嫌なら床で寝てもいいんだぞ」 「えー、やだよ。風邪引いちゃう」 「…じゃあ早く入りなさいよ」 かがみの布団にもそもそと潜り込む。 「じゃ、電気消すからね。おやすみー」 リモコンを天井に向けてボタンを押すと、部屋が暗闇に包まれる。 「…ねぇかがみ」 「ん?」 「私たちさ、高校のときから結構長い付き合いだよね」 「そうね…」 「働くようになってからも、こうやって会えたりするかな…」 「まぁ、大丈夫だと思うけど、でも今までどおりってわけには行かないと思うわ」 「そっか、そうだよね…」 「どうしたのよ?別にずっと会えないってわけじゃないし、携帯やメールだってあるじゃない」 「そうなんだけどさ、現実に会うのと、携帯とじゃ、やっぱり違うと思うよ」 「へぇ…あんたにもそういう一面あるんだ。意外ね…」 「ゲームやネットは確かに楽しいけどさ、でも…現実とはやっぱり違うよ」 「そうね…」 「なんかさ…かがみがどこか遠くに行っちゃったらどうしようとか、そういう事考えると…」 「大丈夫よ。私は東京勤務だし、転勤もないって」 「…そっか」 「ねぇ、こなた」 不意に、かがみが私を抱きしめた。 「何かあったら、すぐ私に言うのよ。上司にセクハラされてるとか、そういう事あったら、遠慮なく電話でも何でもしてきなさい。友達の親が弁護士だから、紹介してもいいわ」 「かがみ…」 「何も心配することなんてないのよ」 思わず、かがみの胸元に顔を埋めた。 優しくて、あったかくて、力強くて…。 そういう感じが、全部伝わって来る気がした。 「うっ…かがみ…」 「ふふ…泣いたっていいのよ」 何だろう…この感じ…。心の中で凍っていたものが、一気に解凍されたような…。 こんな気分になったのは、生まれて初めてだ。母親に甘えたら、こんな気分になるのだろうか。 わからない…でも…。 私は…もしかすると、かがみのことが…。 それからしばらく経って、私は大学を無事卒業した。 お父さんは涙を流して喜び、ゆーちゃんはわざわざバイト代を使って、卒業祝いのプレゼントをくれた。 私は幸せだと思う。こんなにも大切にしてくれる人が周りにいてくれるのだから。 春からは会社に通勤するために、都内で一人暮らしをすることにした。 お父さんは寂しそうな顔をしていたが、なるべく電車に乗る時間は少なくしたい。それに、かがみが一人暮らししているのを見て、私もやってみたいと思ったのだ。 …また会えるのは、いつになるのだろうか。 社会人になってからは、今までの生活が夢幻のように思える毎日だ。 出版業界は厳しいとは聞いていたが、想像以上の激務と体育会系気質だった。 一体私は、これからどうなるのだろう…。 「ふぅ…」 電車の中で私は、軽くため息をついた。 今の会社は、有名な大手企業で、待遇もいい方らしい。 入社したことを後悔しているわけではないが、時々ふと、学生時代に戻りたくなる。 つかさ、みゆきさん……そしてかがみ。 四人で楽しく過ごしていた頃が、ものすごく遠い昔のことのように思える。 (今日は家でちょっと飲もうかな。明日休みだし) 電車を降りた私は、駅前のコンビニで、ビール数本とつまみを買った。そしてまっすぐにアパートへ向かった。 アパートは三階建てで、私は最上階に住んでいる。この街は治安が良いので、少しくらい遅くなっても大丈夫だ。 階段を上って二階に着くと、何やらごそごそとかばんの中を探している人がいる。カギが見つからないのだろうか。 (あれ…まさか…) よく見ると、それは私のよく知っている人だった。 私が一番、会いたかった人…。 (続く) 二人の時間 5話へ続く コメントフォーム 名前 コメント (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-01-07 02 45 43)
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「ねえ、お姉ちゃん?」 「んー?」 私の言葉にもお姉ちゃんは上の空。こちらにも振り向こうともしない。 お姉ちゃんの視線はただ一点。テーブルの上にある物に集中し続けている。 もしかしたら、空返事をしただけで私の声なんて聞こえてないのかもしれない。 「お姉ちゃんてばっ!!」 「もー?!なによつかさ!!」 私がさっきより大きな声を出すと、ようやくお姉ちゃんは怒りながらもこちらを向いてくれた。 「ねえ、お姉ちゃん……」 「だから何よ」 「これって……なに?」 私はさっきまでお姉ちゃんが見つめていた物を指差した。 そう…… 「開封厳禁」と書かれたガムテープに密封されているダンボールを…… 『厳禁』 それはちょっと前のこと。お姉ちゃんがすごく怒った顔をして帰ってきたことがあった。 その日はこなちゃんとデートだったから何かあったのだろうと、話を聞く為、夜にお茶会をしたことがある。 結局、お姉ちゃんの怒った理由含めて、惚気とも取れる愚痴を2時間以上も聞かされただけだったけど。 けどお姉ちゃんはそのお茶会をとっても気に入ってくれたみたいで、最近じゃ事あるようにそれをするようになった。 まあほとんど、お姉ちゃんがこなちゃんのことを色々話してくれるだけで終わっちゃうんだけどね。 でも、私でもお姉ちゃんの聞き役くらいにはなれるんだなーって思うと、ちょっと嬉しかったり。 でもそんな夜中のお茶会の主役、お茶やお菓子を乗せるテーブルは、今やちょっと大きめなダンボールに占領されている。 ちなみに主役達はというと、テーブルの隣にあるお盆に寂しそうに乗っかってる状態。 今日のクッキーはお姉ちゃんの為の意欲作(砂糖の代わりに合成甘味料を使ってみたんだ。カロリーゼロの)だし、お茶だって今年の春摘みのダージリンなんだよ。 だからすぐにでも味の感想が聞きたいんだけどなあ…… でもお姉ちゃんはどうやらそれどころじゃないみたいで、気が付くと目の前のダンボールを見つめ続けてる。 本当になんなんだろう? 「こなたがね…」 「こなちゃん?」 いきなり出てきたこなちゃんという言葉に、私は疑問の声を上げてしまった。 でも、すぐに理解した。ああ、やっぱり今回もこなちゃんなんだなって。 「こなたがね、昨日私の部屋に来て、顔を赤くしながら預けていったの。『うちに置いとくと危険だから』って」 「へえ~、そうだったんだ」 それで納得。あのダンボールに書いてある独特の文字は、こなちゃんが書いたんだ。 なんだかすごく見覚えのある字だと思ったよ。 「顔を赤らめて恥ずかしがってるこなたはすごく可愛かったわ」 お姉ちゃんはやっぱり私の方を見てくれない。見つめるのはやっぱりダンボール。 でもその見つめ方は、ペットショップで家では飼えない子犬を見つめてる子供のようだった。 もしかして…… 「ねえ、お姉ちゃん……」 「んー……」 お姉ちゃんは相変わらずの上の空の空返事。だから私は気に鳴った事をお姉ちゃんに聞いてみた。 「開けたいの?」 「―――っ!!」 私の言葉にお姉ちゃんがガバっと振り向いた。 「………」 「………」 えーっと、なになに?!この沈黙?!すごく不安なんだけど。 そうやって不安がりつつも黙っていることおよそ数秒…… 「ばっ!馬鹿言わないでよ、つかさ!!このダンボールはこなたが恋人の私を信頼して預けていったんだから、開けるはずないじゃない! 本当に何言ってるのかしら?!あは…あはははは!!!」 我に返ったかのように、お姉ちゃんは急に笑い出した。 本当に、ダンボールを開けようなんて思ってないんだよね。 信用してもいいんだよね……お姉ちゃん。 「そ、そうだよね。ごめんね~、お姉ちゃん。変なこと聞いちゃった」 「まったく、本当にしょうがないなー、あんたは」 お姉ちゃんは呆れてるような…でもすごく優しい眼差しをしながらニッコリと笑った。 よかった。いつも通りのお姉ちゃんだ。 「それじゃあダンボールどかしてお茶にしようよ。今日のお菓子は意欲作なんだ―――??」 私はそう言ってテーブルの上にあるダンボールをどかそうとした。でも、それは出来なかったんだ。 だって……お姉ちゃんの手がガッチリとダンボールを押さえつけて話さなかったから。 「お、お姉ちゃん?」 お姉ちゃんは私の目を見るとポンと両手で私の両肩をたたいた。 「ねえ、つかさ……」 「な、なに…?」 「私とこなたは恋人なの、運命の人なの、将来の伴侶なのよ」 「し、知ってるよ」 それはものすごく知ってる。こなちゃんとお姉ちゃんを除いたら、私が一番よく知ってるよ。 伊達に毎回毎回、二時間以上お姉ちゃん達の惚気話を聞いてないんだよ? 「そう、その恋人のこなたが私に恥ずかしがりながら、このダンボールを手渡した。 きっとこの中には私にも見せたくないものが入ってるのかもしれないわ! でもね、だからこそ、恋人の私はちゃんとそれを知っておかないといけないと思うのよ。 こなたがどんなに恥ずかしいものでも、ちゃんと受け入れてあげないといけないの!!」 目を閉じながらギュっと手を握り締めるお姉ちゃん。なんとなくだけど、話し方から興奮してるような気もする。 「だから……この『開封厳禁』を破っても、私はこの中身を見る必要がある!!」 「えっ…ええっ~~~!!!」 なっ、なんで?! どうして、そういう風な結論に達しちゃうのお姉ちゃん!! 「ちょっ……ちょっと、お姉ちゃんっ!」 駄目だって言わないといけないよね。いくら恋人さん同士だからって、やっていいことと悪い事があるよ。 「ありがとう、つかさ。つかさの言いたいことは分かるわ。こんなにも応援してくれるなんて、私はいい妹を持ったわ!!」 「ちっ、違うよ~~!!」 おかしい、おかしいよお姉ちゃん?! 何時ものお姉ちゃんだったら、絶対そんなこと言わないのに!! やっぱりこなちゃんが関わってるから?! 「というわけで……おりゃっ!!」 「あ~~!」 ビリビリビリと音を立てて封が破られていくダンボール。 ねえ、こなちゃん?私ちゃんと止めたよ。頑張ったよ。だから許してね…… 「さて、何が入ってるのかしら?」 封を破り終わると。お姉ちゃんはお菓子を選んでる子供みたいに、目を輝かせながらダンボールを覗き込んだ。 どことなくその目はこなちゃんに似てる気がする。 「これは……すごいわね!!」 お姉ちゃんがダンボールから何かを手に取ると、すごく嬉しそうな声を出した。 そんな声を出されると、私だって見たくなっちゃう。 ごめんね、こなちゃん。本当は私は見たくなかったんだけど、お姉ちゃんが見ちゃったから…… そう、たまたま見えちゃったんだよ、たまたま!! そんな風に自分に言い訳しつつ、私はお姉ちゃんの見ているものを後ろから覗き込んだ。 「それって、写真?」 お姉ちゃんが真剣になって見ていたもの。それはこなちゃんの写真だった。 何十枚もあるこなちゃんの写真。それを一枚一枚焼き付けるかのように、お姉ちゃんは見続けていた 「ただの写真じゃないわ……だって、全部私が見たことないやつだし……これも!!ああっ、これもだ!!」 お姉ちゃんの言うとおり、確かに普通の写真じゃないみたい。 高校のじゃないセーラー服(中学校のかな?)、ブレザー、メイド服に着物姿、それにフリフリの可愛い服と こなちゃんが普段着ないような服装や髪型の写真ばっかりだったから。 よく分からないけど、コスプレ……なのかな? 「もしかしたら、お仕事しているときに撮られたのかも。こなちゃんのバイト先ならそういうことしてそうだし」 「そうね……」 お姉ちゃんはやっぱり私の事なんて気にしてないみたいで、写真を見るのに一生懸命。 いくら恋人さんの写真だからって、ちょっと酷いよ…… 「うん!」 お姉ちゃんはそうやって一人で頷くと、スッと立ち上がった。 そして近くの上着を手にとって羽織ると、テクテクと部屋から出て行こうした。手には件の写真を持って…… 「お、お姉ちゃんどこ行くの?!」 「えっ……コピーでもしてこようかなーって」 「い、いくらなんでそれは駄目だよ!こなちゃん、きっと怒るよ!」 「そ、そうね。流石にね、まずいわよね。ありがと、つかさ。ちょっとどうかしてたみたい」 どうやら思いとどまってくれたみたい。私は上着を脱いで隣に座りなおすお姉ちゃんを見ながら、気付かれないようにため息を吐いた。 「ネガとかないかしら?いやいや、今の時代メモリカードか……」 「お、お姉ちゃん?」 あれー?お姉ちゃん、もしかしてまだ直ってない? お願いだから、早くカッコよくて優しくて何でも出来るお姉ちゃんに戻ってよ… 「さてと、他にはっと……あっビデオテープ発見。家にまだビデオデッキってあったかなー?」 「お姉ちゃん……」 そんな私の悲痛な願いを神様は叶えてくれず、お姉ちゃんの宝物探しは続く。 だけどそんなお姉ちゃんの宝物探しも終わりを告げるかのように、不意にお姉ちゃんの動きが止まった。 「お姉ちゃん?」 「つ、つかさ……こ、これ?!」 お姉ちゃんは少しだけ震えながら、ダンボールの中から一冊のノートを取り出した。 ノートの表紙には『日記-○○年××月△△日~○○年××月△△日-』って書かれていた。 これってつまり……こなちゃんの日記? 「し、しかもこの日付、こなたが私を好きになった頃の日付よ……」 「えっ?そうなの?」 「前にこなたから聞いたことがあるから間違いないわ」 お姉ちゃんはそう言うと、吸い込まれるようにゆっくりゆっくりとノートの表紙を開こうとした。 「お姉ちゃん!それだけは駄目だよ!!」 「つかさ……」 「お姉ちゃん、よーく考えて。その日記には、こなちゃんの気持ちが詰まってるんだよ。 そんな大事な日記をいくら恋人さんだからって勝手に見ちゃ絶対に駄目!!」 「……そうね、つかさ。流石に目が覚めたわ。まったく、今日はあんたに助けられてばっかりね」 「えへへ、これくらいどうってことないよー。でもね、お姉ちゃん?」 「どうしたの、つかさ?」 「なんでそういう風に私が言ってる間にノート開いちゃってるのかな?」 「えっ?!」 なんだか本当に気が付いてなかったみたい。私と話してる間にもノート開こうとし続けてたんだよ、お姉ちゃん? 「ち、ちがっ!!か、体が勝手に?!そう、どうしてもノートが見たいっていうもう一人の私の深層心理が……」 一生懸命言い訳してるけどね、お姉ちゃん。ノートは全然しまおうとしてないよ? 「あー、もうこうなっちゃったら、見てるのと同じよねー。あははは……」 お姉ちゃんはそうやって軽く笑うと、食い入るようにノートの中身を見始めた。 「………」 「……お姉ちゃん?」 お姉ちゃんの様子が変わったのはそれからすぐの事。ワナワナと震え始めたかと思うと、バサッとテーブルに持っていたノートを投げ捨てた。 そして先ほどの上着を手に取るとわき目も振らず、部屋から出て行った。 どうやらものすごく、怒ってたみたいだけどどうしたんだろう? その私の疑問はすぐに解決することができた。お姉ちゃんが投げ捨てたノート。 そのノートの最初のページには、こなちゃんの字でこう書いてあったんだから。 『かがみのエッチ』って 「お見通しだったんだね、空けるの……」 私はため息を吐くと写真やビデオテープ、それにお姉ちゃんが投げ捨てた日記?を綺麗にダンボールにしまいこんだ。 そして元通り「開封厳禁」のガムテープを貼り付ける。 それが終わるとテーブルの隣に置き、代わりにお茶とお菓子が乗っかっているお盆を置きなおした。 きっとこれからこなちゃん大変な目にあっちゃうんだろうな。それはもう、色々と…… こなちゃんみたいなことする人のことをなんていうんだっけ? 確か……『誘い受け』だっけ?うーん、なんか違うような気がするけど、よく分からないや。 とにかく…… 「こなちゃん、ご愁傷様」 私はそんな風にこなちゃんを心配しつつ、今日始めてカップに紅茶を注いだ。 コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-08-16 19 08 52) 何か幸せな雰囲気のSSだね。キャラ崩壊かがみおもしろいw -- 名無しさん (2013-01-30 19 46 13) まさかかがみ、え、ええええっちなコトしに行ったんじゃ・・・ -- ぷにゃねこ (2013-01-25 17 05 26) かがみ怒り -- かがみんラブ (2012-09-23 16 58 44) こなかがは正義ッ!様 この手のSSは比較的作成時間もかからず、かつ軽めに作れるので、 「こなたが出てこないこなかが」としてこれからも投稿する予定です。 拙い文章ではありますが、お楽しみいだければ幸いです -- H3-525 (2009-05-09 16 41 24) ダメと言われるとやりたくなるよね、うん。 -- 名無しさん (2009-05-06 22 38 38) 流石はこなた。かがみんの性格を知り尽くしてますなぁ… つかかがみん遊ばれすぎ♪ 是非ともこう言うバカップルの日常的な作品のシリーズかを御願い致します。 -- こなかがは正義ッ! (2009-05-05 20 05 20) かがみのエッチ♪ -- 無垢無垢 (2009-05-05 16 22 22) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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☆ある意味拷問 221 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/08(水) 21 56 53 ID yIx/SQkI 一時間レスがなかったら、こなたとかがみがポッキーゲーム 222 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/08(水) 22 58 09 ID LChqFsfY _,-,ニ二ニヽ、 // // //__ゞ`、 ヾ`ニ´ ゝ  ̄ `  ̄ l.、___,/ / / / l く‐´´ / / / / l 、 \ l / / /l ∧ l ヽ ヽ / / / _, _∠L、 / / l l ヽ ヽ l / // / / / / -H、 lト、 ヽ l // // イミ土=、_/ / l∧ l l `ヾ、 l/ l l イ llo / / // テテヵl ハ l l l l /. l. l し 」 l/ P / /l l N l . l W/ N 、 `‐ l l lN V かがみん、ポッキー買って来たよ . l ハ ト、 ー= ノlハ ハl l 、 「フ`‐- ,、-┬ T´ l l/ . l ,レ、 ヾ、 /、`Y/ l l l / rニミミヽ ヾ、-─┤ `┤ l / / ̄\ヾヽ ヾ、 l ll l / / ヽヾヽ lヽ l /l l / / l \ヾ、 l ヽ l //l / / l l ハ ヾ、l、、l l////l 223 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/08(水) 23 09 15 ID dY8FrJUs 時間レス成功されたようですねw ttp //www.uploda.org/uporg950980.jpg.html ニコ動のキャプで悪いw 思えばコレが俺にssを書かせたきっかけだったんだよなぁ…。 224 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/08(水) 23 32 50 ID yIx/SQkI ちょ!一時間もあれば誰か止めるだろうと思ったのにw とりあえずかがみ、おめでとう 225 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 00 16 12 ID e4q+f/H0 224 わざと止めなかったに…決まってんだろ。 226 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 00 18 02 ID 4uwPx8wB 止める理由がないからだろ…常考 227 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 00 33 09 ID QB/wf0p9 だが……一時間は長すぎた………息が…。 228 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 15 18 02 ID nmZ5r2Yl ある意味、このスレ住人に対しての「1時間書込み禁止」だもんなぁ。 229 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 15 24 55 ID C0uUzkST おまえらの空気読みっぷりに感動した 今頃こなたとかがみは、ポッキーを両端からかじっているに違いない 230 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 17 32 36 ID /4K7jIBe ポリポリポリ… 次第に距離が近付く2人… かがみ「う……」 こなた「……(ニヤニヤ)」 ポリポリッむちゅっ かがみ「ちょっ…何すんのよ!」 こなた「だってかがみとしたかったもーん(ニヤニヤ)」 かがみ「な…なによ!…………う…嬉しいじゃない…」 こなた「ツンデレかがみん萌え~」 自重しろ、俺 231 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 20 19 07 ID C0uUzkST 230 俺の脳内バージョン 某ゲームで優勝したこなたと、ビリだったかがみ こ「とゆーワケでっ、ビリだったかがみには、私とのポッキーゲームを命じますっ !」 か「ち、ちょっと ! そんな恥ずかしいことできるわけないでしょっ !」 み「かがみさん、約束は守らないといけませんよ?」 つ (ドキドキ・・・) か「くっ・・・じゃあちょっとだけよ? 近づいてきたら、突き飛ばしてやるんだから !」 かくしてポッキーを両端からかじることになった二人 み「それでは・・・スタートです♪」 こ「むごごごごごごごごごごごっ」←あり得ないスピードでポッキーをかじり切るこなた か「んっん゛ー ?!!!」←こなたの気迫にビビッて、なすすべなく硬直中のかがみ ちゅっ☆ か「あ、あ、あ・・・キス・・・私のファーストキス・・・」 こ「ぷはぁ~、ごちそうさん♪」 か「こ、こんな形で・・・もっと、せめて、こう、ロマンティックに・・」 つ「あわわ・・・ゆ、ゆきちゃんどうしよう? お姉ちゃん達ホントにキスしちゃったよぅ~(汗)」 そっ・・・(包み込むように優しく、つかさの手を握り締めるみゆき) み「・・・つかささんの唇って、とっても柔らかそうですよね・・・」 つ「えっ? ええっ? ゆ、ゆきちゃん !?」 ダメだ俺 orz 232 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 23 22 59 ID MAumqQG9 みゆきさんフラグ立てんなw でも俺としては敢えて直前でこなたにポッキー折って欲しい、わざと ☆ラブ・ゲーム 第57回戦 ラッキースタジアム 観客:不特定多数 こ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0|0 か 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0|0 延長18回規定により引き分け 261 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 08 52 26 ID Mn9TpPtS かがみんが嫁以外認めんっ! 262 名前:63[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 13 04 10 ID aadhiQV4 三串で忙しくて数日ぶりに来てみたら 176がまた良ssを投下しているようだな。 GJ!! 261 俺はこなた受け派なんだが、 安心していいぞ。 俺の分析では場を重ねるごとに か が み ん が 嫁 に な る。 263 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 21 33 12 ID 1oEvFvZY むしろ毎晩攻守交代で 264 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[] 投稿日:2007/08/12(日) 16 53 35 ID 5nH0bL7a Which do you like? こな×かが or かが×こな 265 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/12(日) 17 18 24 ID WhA9ow0u I like kona×kaga beter 266 名前:166[sage] 投稿日:2007/08/12(日) 17 26 27 ID Z/0B0q2t 263 こなた「じゃあ今日も私が先に攻めるね~。」 かがみ「ちょっと!最近いつもアンタが先じゃないのよ。 たまには交代しない?」 こなた「いいじゃ~ん。たいして変わらないってば。 それじゃあ始めるよ~。」 かがみ「お、おう。あんまり激しくするのは無しだからね…。」 こなた「りょうか~い。努力はしてみるよ。」 パカーン! こなた「よ~し、回れ回れ~! うし、3点追加~!」 かがみ「うわっ、また取られた…。」 こなた「ふっふっふ。いかなるジャンルのゲームであろうとも、 一切妥協しない。それが泉家の教えってやつなのさ!」 かがみ「あまり激しくしないでって言ったでしょ~が! 大体、あれだけ普段、野球はやだやだって言ってるのに、 どうしてゲームではこんなに張り切ってるのよ?」 こなた「それとこれとは話が別、って事でよろしく頼むよ。 さあ、今夜は夜通しでやるよ~。」 かがみ「うわ~。こりゃ明日は寝不足だな…。」 攻守交代とパワプロって単語見てたらこんなイメージが…。 やっぱり末期ですね、こりゃ。 ☆比翼連理} 295 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 17 07 44 ID 2xIJI7we まだ19話見てない人はネタバレになるかもしれないからスルーしてくれ 今回の話は、ほとんどこなかが百合っぽいシーンがない めっちゃ凹んだ・・・ だけど、負けないぜ ! らき☆すたの中で、こなたとかがみほどお似合いのカップルはいない ! 俺は断言できる ! 296 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 18 03 02 ID FdRV43EQ あの二人はまさに水魚の交わりだと俺は思うんだ。 こなたに対しては遠慮のないツッコミをいれられるかがみ。 つかさやみゆきの時とは違い活き活きとボケをかますこなた。 (かがみのツンデレを引き出せるのもこなたくらいだしね。) お互いのいい所がいい感じに同調してても~ほんと・・・ カナダに移住して結婚すればいいのに! 297 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 18 39 21 ID WYNOeJaj お互い相手に思う事を、良いとこも悪いとこもハッキリ伝えつつも 特に後腐れはなく、常に一緒にいてしまってるとか… なんかもう理想的過ぎて嫉妬すらできません! 299 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 21 38 35 ID HVpDZDCb 296 お互い誰かと結婚して、近所に住んで、ことあるごとに一緒に遊びに出てはダンナのグチ合戦…… という路線に萌えを感じてしまう俺は邪道ですかそうですか orz 300 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 21 43 50 ID DOwfm6kH 299 逆にダンナにベタ惚れで会う耽美にノロケてそうだな、こなたは かがみもツンデレ発揮してグチは言うけど実はゾッコンLOVE(死語)だろうな 301 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 22 53 46 ID 2xIJI7we なんだか残りの話数が少なくなってきたのだが… 修学旅行は間違いなくオリジナルの話のはず かなたさんが出てくる回も、おそらくほぼオリジナルだと思う 果たして京アニオリジナル話にこな×かがラブラブ路線は取り入れてもらえるのだろうか… せめて、みさおとこなたがかがみを奪い合う話だけでも22話23話辺りにねじ込んで欲しい 302 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 23 10 13 ID mh+KjLka こなたがかがみの横でラノベ読んでいて 「奥付気になる?」って迫る話もやって欲しい この前の続編みたいなもんだし
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「かがみ。私からの誕生日プレゼントだよ」 そう言ってこなたは鞄の中からプラスチックケースを取り出した。 そして取り出したケースを開け、また中から出てきたのは白い箱。 ‥えらく大事にしてるなぁ、と思いながらその一連の動作を見ていると、 はい、と言って白い箱をこなたから手渡された。 「開けてみて、かがみ」 うん、と返事をしながら白い箱を開けてみる。 あんなに大事にしてるんだ、一体何が入っているのだろうと中を覗いてみると・・ 「これは・・星?」 中に入っていたのは星の形をした物体だった。 キラキラと多彩な色をしている。 両手で心地良く持てるようなサイズと重量感。。 「うん、星だよ。意表を突いてヒトデなんてことはないから安心して」 また何かのネタか、と思いつつも私は星を見ることに夢中だった。 なんだろう、何故か不思議なかんじがする。。 「こなた‥何なのコレ?」 思わず聞いた。 「その星は“Lucky Star”。幸せを呼ぶ、幸運の星だよ」 ‥幸運の星?おまじないか何かのアイテムだろうか。 しかし何故かただの星には見えない。 私はこの星を知っている――…? 「かがみ。」 こなたが突然、真剣な顔になる。 「かがみは可愛いよね」 「――なぁ!?‥」 一瞬、心臓が止まるかと思った。 急に真剣な顔して可愛いだなんて言ってくるもんだから。 頭のヒューズが1、2本飛んでしまったかもしれない。 「な、何いきなり変なこと言い出すのよ!」 「いや、かがみは凄く綺麗で可愛いなーと思って。それに優しいし、面倒見が良くて、おまけにツンデレでツインテールだし」 なにやら私を褒め出すこなた。 私はもう真っ赤になるしかなかった。 最後変なの混ざってたけど‥。 「頑張り屋さんだし、しっかり者だし、ウサギさんだし」 なおも続くこなたの褒め殺し。 あんたは私を羞恥死させる気か! 「だから、かがみはこの星を持つに相応しい人だと思うんだ」 こなたは至って真面目に言った。 「‥星を持つのに資格とかいるんかい」 私はたまらず突っ込みを入れたが、こなたは普通に「うん」と答えるだけだった。 「…ツンデレとかは絶対関係ないだろ」 「‥重要な事だと思うよ?」 なぜだろう…言ってる内容はかなりふざけてると思うのに、 こなたは真面目な態度だし、 この星を見てると実はふざけてないんじゃないかという気になってくる。 「…かがみ。私がみんなと陵桜で出会えたのは、私がこの星に願ったからなんだ」 「・・は?」 「毎日かがみと会って、つかさと一緒に登校して、教室でみゆきさんと一緒に4人で昼食を食べて・・ ――それは全部、私がその星に望んだからなんだ‥」 「・・何、どういう事?」 意味がわからない。こなたは何を言っているのだろう。 こなたがこの星に望んだから私たちは出会った・・? そんなバカな―― だけど、何故かこの星を見てるとそれは本当の事なんじゃないかという気がしてくる。 「かがみは学校楽しい?」 こなたが突然質問してきた。 「?!‥う、うん。楽しいわよ?」 「それも、楽しい学校生活をみんなが送れるように、私がその星に願ったから…」 …どうしてだろう。 よく分からないけどこなたは今とても重要なことを言っている気がする。 それに、私はやっぱりこの星を知っている‥‥‥。 こうして手に持つのは本当に初めてなんだけど、 星の存在は最初から知っていたような‥。 「…私なんて、その星がなければただのチビでオタクな人間でしかないよ」 「なっ…そんな事ないでしょ!こなたには良い所がいっぱいあるわよ!」 「…くふふ。ありがと、かがみん♪」 何故だろう。どうしてだろう。 とても重要な事を聞いている気がするのに、私は理解が追い付いていない。 この星を見た時から――私の中で何かが混乱し続けている。 私はこの星を知っていて――そうか、この星はこなたの持ち物だったんだ。 私はバラバラのパズルピースのたった一つだけを繋ぎ合わせる事ができた。 それは、星の持ち主がこなただったという事――。 そしてこなたに聞いた。 「…こなた、これ本当に私が貰ってもいいの?」 少なくとも、この星が私たちにとって重要なものであることは間違いない。 私はそれをなんとなく確信している。 そしてそれは、こなたが持っていた物だ。 「言ったでしょ、かがみ。その星はかがみが持つにこそふさわしい、ってね」 「でも…」 こなたは私の言葉を制した。 「それにね‥」と言って、こなたは一つ息を吸い直す。 「その星にも叶えられる願いには限度があるんだ。 私が望んだものは、その星の力でも届かなかった」 そう言って、ちょっとだけ悲しい顔をする。 「…あんた、一体何を望んだのよ」 「…べつに。ちょっと求め過ぎちゃっただけ」 この星の力を持ってしても叶えられない願いって何だろう。 聞いてる限り、そして私が感じてる限りでは、この星にはとてつもない力があるように思える。 だけど、もしかしたらこの星は万能ってわけではない‥? 知りたい。こなたの願いを―――・・・。 「こなた、あんたの願いが何なのか教えてよ」 「・・ちょっと場所変えようか」 ――――――――――― コメントフォーム 名前 コメント (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-04-24 01 35 08) 行きた〜い! -- かがみんラブ (2012-09-20 23 28 52)
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◆シリーズ物 聖夜は素直に(前編) 聖夜は素直に(後編) かがみまもり(「聖夜は素直に」の続編) 『かがみ開きすぎっ!』(かがみまもりの続編・鏡開き作品) メルトダウン(↑の続き・バレンタイン祭り投下作品) ダッシュで奪取?!(↑の続き) 差し出された手、変われた私(↑の続き) こなかがライフ(↑の続き) and many more ~それとたくさんの幸せを~(↑の続き) コメントフォーム 名前 コメント メルトダウンのLinkを訂正しました -- 名無しさん (2008-03-31 01 15 20) メルトダウンはかがみ開きすぎの続きじゃなくね? -- 名無しさん (2008-03-27 04 03 08)
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『Everything is so dear ~すべてが愛おしい~』 冷たく乾燥した風の吹く、冬の晴天の午後。 今年最後の講義を終えた、私・・・柊かがみは、大学に入ってから向こうから告白され 親友から恋人になった泉こなたと、クリスマスデートに出かける待ち合わせの為、 こなたが指定した待ち合わせ場所である代々木公園に来ていた。 約束の時間より早く来た私は、近くのベンチに腰をかけ、一心地つく。 日が傾きかけた夕方の時分、日差しが弱まり木枯らしが吹き 冷え込みが厳しくなった為、ブルッと体が勝手に震え体が縮こまる。 年末を迎え寒さが一段と厳しくなったからと、厚手のコートを着てマフラーや 手袋を付けてきたにも関わらず、体が縮こまるほどの冷えた空気と吹きすさぶ寒風 ・・・やっぱり使い捨てのカイロを持ってくればよかったわ。 そんな後悔をしつつ、私はカバンの中から暖かいお茶の入った 水筒を取り出し、一口飲む。 冷え切った体に暖かさがしみ込み、少しばかり寒さが和らぐ。 「お~い!かがみ~ん。遅れてごめ~ん。」 こうしてホッと一息入れていると、遠くから小さい恋人が、白い息を吐きつつ走って来た。 約束の時間より遅れたと思っているのか、少し焦り気味だ。 「全然良いわよ、こなた。約束の時間より全然早いわよ。」 焦り気味な恋人に、柔らかな笑顔で答える。 するとこなたは 「・・・ふぉおぉぉ。」 と奇声を上げ、照れ照れさせながら体をもじもじとし始めた。 そんなこなたの姿をみて、先ほどの柔らかな笑顔から引きつった呆れ顔に変わってゆくのを実感する私。 どうにか勇気を出し、奇行に走る恋人に恐る恐る声をかける。 「あ、あのう・・・こなたさん?」 「これだーこれを求めていたんだ、私はー。」 もじもじしていたと思ったら、急にガッツポーズをして力説を始めるこなた。 ごめんね、こなた。いくら愛していても、もうついていけないや。 「ドラマで使われそうな公園で、待ち合わせした恋人に優しく笑顔で迎えられるシチュ。 髪を下ろしているかがみんが、両手で水筒を持って暖かいお茶でヌクヌクしているのも、 女子力が上がっていてなお良い!・・・やばい、鼻血出てきた(首筋を手の平で叩く)。」 「おまっ、女の子としてそれはどうなんだ?」 「んじゃ、お腹一杯になったから私もう帰るね~。」 「待て、オマエ。」 好き勝手なことを言って帰ろうとするこなたを、襟首つかんで引き留める。 「クリスマスデートはどうした?確かイブの24日はアンタのバイトで無理ってことで、 25日である今日になったんじゃなかったか?何故帰る。」 思いっきり怒気をはらんで力強く言う。 コノヤロウ、人がどんだけ楽しみにしていたんだと思うんだ。 「ウソウソ、冗談だよ。んじゃ行こうか、かがみん。」 「まったく。」 ホントにまったく・・・でもこなただって本気で嫌がらせようとしているんじゃなく、 こうすると私がどう反応するか分かっている上でやっているし、私もそんなこなたの 考えが分かっている。つまりは互いに信頼しているからこそ出来るやりとりなんだ。 じゃあなければ、恋人として付き合ったりなんてしない。 むしろこの子とのそんな日常がとても愛おしく大切なものだからこそ、 同性だけれども、恋人として一緒にいる。 そんないつも通りのやりとりをしつつ、私達は渋谷方面へと向かっていった。 渋谷に着いたらこなたの希望でまんだらけへ、私の希望でロフトへとそれぞれ一緒に回っていった。 こうしているうちにうちにあっという間に時間が過ぎ、時刻は夜へと移った。 「う~冷えるね、かがみ。」 「そうね。さすがに夜になると、昼より冷え込みは厳しくなるわね。」 「う~ん、こんなに寒いと、かがみが寒い事に乗じて暖かいものを食べすぎて 冬太りしてしまうことが懸念されてしまう・・・どうしよう?」 「どうしよう・・・じゃないわよ。こっちだってそう毎年毎年失敗しないわよ。 カロリーにも気を付けているし、運動だってしてるわ。」 「そう、そんなかがみだからこそ今年は、 『ケンタッキー食べては懸垂し、けんちん汁飲んでは懸垂し、まるでケンタウロスのような体になる』 ことを期待するよ、かがみん。」 「どんな期待だよ。しかも女でケンタウロスって、すごくきもいわ!!」 「でもかがみのことだから~ケンタウロスのような体じゃなくて、ミノタウロスのような体かな~?」 「誰が牛の化け物だ。ホント失礼ね!」 変な声を上げつつ、私の体を下から上にまさぐる 「なんだよ!やめろよ!!」 「(かがみの腹をさすりながら)こりゃ、大物になりますぞ~。」 「うるさい!」 そんな私弄りを繰り広げつつ、これからどこかで晩御飯を食べようかってことになった訳だが・・・ 「で、こなたさん・・・此処はどこかな?」 「しゃぶしゃぶ食べ放題~。」 「私が太る太る言っといて、行くとこ此処かい!!」 私は今、渋谷公園沿いの映画館や飲食店の入っているテナントビルの1階、 エレベータホールにいる。 「甘いねかがみん。しゃぶしゃぶは湯にくぐらせた際に肉の脂を落とすから、 焼き肉よりもヘルシーなんだよ。とゆーわけでいこー。」 「ちょっ、ちょっと。」 手を握られ、エレベータの中に無理やり連れて行かれた。 プシューとエレベータの扉が開く。 「扉が開きま~す。私達の未来も開きま~す。」 「何か言わないと気がすまないのか、アンタは。」 和風モダンでシックな店内。入ると早速個室へ案内された。 どうやらこなたがあらかじめ予約していたらしい。 個室からは渋谷の夜景が一望出来、なかなかの雰囲気だった。 「食べ放題だって言うから、なんか殺風景な店内かなと思ったけど、全然違うわね。」 「そだね~。私もこんな個室のとこは初めてだよ。 ところで結構夜景が見えるけど、ここは五階だっけ。」 「それは誤解よ、こなた。ここは八階よ。」 「『ここは五階かな?それは誤解よ!』うちの嫁です!!」 「なんで私がダジャレ言ってるみたいになっているのよ。そんなこと外に向かって強調するな。」 「ちなみに『五階にいるかがみは豪快です!』うちの嫁です!!」 「しつこい。初めての場所に来てはしゃいでいる子供か、アンタは!」 「ごめん、ごめん。こんなに眺めがいいんだよ?嫁を紹介したくなったんだよ。」 「ホントに良く分からん。」 しばらくすると、店員さんが注文していた牛肉を御重に入れて持ってきた。 「かがみ~。ミノタウロスの肉、2重分だよ~。」 「食べにくくなる言い方するな!普通に牛肉でいいだろ。」 牛肉と一緒に頼んでいた瓶ビールを互いのグラスに注ぎ、乾杯をすることとなった。 「それじゃ、乾杯。」 「かんぱ~い、お疲れ様・・・パウエル。」 「日本人でお願い。」 「んじゃ、かがみ・・・またお金?」 「違えよ。何で私があんたに金の無心しにここまで来るのよ。」 「司法試験頑張るって言って数年。もうお互いに20代後半だけどさ、 まだまだあきらめないで欲しいな、かがみには・・・。 私正社員で働いてるし、貯金も少しづつだけど作って、将来のこと考えているからさ。 頑張って、かがみ。毎日祈っているからね。」 「ちょっ、待てお前。何勝手な未来予想図作ってんだ。それとお前が今している祈り、 アフリカ原住民族の雨乞いの儀式みたいになっているわよ、こなた。 頼むから日本風に手と手のしわに合わせる形でお願い。 ほら、IHクッキングヒーターの前でのろし上げるマネしない。 そして鍋が沸騰したのに驚かない!」 「とまあ、みんなに寄生して生きていきたいと思っていた私が、 かがみに寄生される未来を描いたところで食べようか?」 「いいからさっさと食べるわよ。」 「‥‥・」 「何?」 「安心して、もうボケは無い。」 「いちいち言わなくていいわよ、そんな事。」 店内に入ってからなが~いふざけ合い経て、ようやく食事の時間となった。 牛肩ロース肉に国産豚肉をはじめ、つくね、季節の野菜、きのこ類、豆腐、 春雨などまんべんなく食べてゆく。 こなたはこなたで『一度こんなふうにしてみたかったんだよね~。』と言って、 御重の中に盛り付けられている肉を箸でいっぺんに取れる限り取り、 鍋の湯にくぐらせて楽しんでいる。 私はこなたに懸念されたダイエットの事など忘れ、家だったら起こっていた 姉たちとの肉の奪い合いも気にすることなく、こなたが無駄に湯にくぐらせた分も 含めゆっくりと満足ゆくまで舌鼓を打つことが出来た。 それとお肉もきれいで、量を食べた割には、ほとんど胃もたれすることがなかった。 また店員さんはとても明るく親切で、時間を忘れ90分を過ぎてもお茶を出してもらえ すぐ追い出そうとはせず、満足のいくまでいられる雰囲気であった。 あまりに言われないので、申し訳なくなり自分達から早めに出て行った。 こなたに『まさかあんたがこんな店見つけてくるとは、驚いたわ。』と言ったところ、 『愛は人を変える力があるのだよ~。』と軽く返された。そんな私の事を気遣って いるのだけど、そんなことを感じさせない普段の飄々とした態度で接するこなたに 嬉しさを感じ、クスッと自然に笑みがこぼれた。 暖房の効いた店内から出る際、外のあまりの寒さに震えるに違いないと身構えて出てみたが、 鍋物を食べ、体があったまっていたからかあまり寒さを感じなかった。 もしかしたらこのことも考えてここにしたのだろうか、 本当に相手に気づかれないところですごく気を使っているな、この子は。 そう思っていると、こなたが 「折角だしさ、クリスマスイルミネーションの渋谷の街を歩いてみようよ。」 と散策に誘ってきた。『そうね、折角だし』と私も同意し、 こなたに誘われるがまま手を繋ぎ、体を近付けつつ一緒に行くことになった。 クリスマスイルミネーションに彩られた街を2人歩いてゆく。 冬の澄み切った空気にイルミネーションの光が映え、 より一層美しく光り輝いていた。 そんな光景を楽しみながら、私達は公園通りからパルコ方面へと歩いて行った。 渋谷パルコの正面口に飾られているクリスマスツリーのところで、 こなたが話しかけてきた。 「ねえ、ザ―ボンさん。」 「・・・地球人でお願い。」 「決して『普段のザ―ボン=普段のかがみん』、 『醜くなって戦闘力の上がったザ―ボン=ダイエット失敗のかがみん』と言う訳じゃないからね。」 「もうオマエ、口開くな。」 「あのさかがみ。ちょっと遅れたけど、クリスマスプレゼント。」 こなたはカバンから、赤い光沢のあるどこかのジュエリーショップと思わしき 紙袋を差し出してきた。 そのこなたからのプレゼントに顔の引きつりを隠しきれない私。 決していつぞやの時の様なひどいオタグッズだったからではない、 だってそれ・・・・・ 「あ、あのさ。私からもこれ・・・プレゼント。」 今こなたから貰ったプレゼントと同じ包装の紙袋をカバンから取り出し、こなたに手渡す。 そう、どうやら私とこなたは、互いのプレゼントを同じ店で購入したみたいだ。 こなたも糸目ネコ口の状態でなんとも言えない表情をしている。 そんな状態で互いに無言で、それぞれ渡したプレゼントを開けてみることにした。 ちなみにこなたからのプレゼントは、ピンクゴールドでコーティングされ、 ダイヤでクロスをモチーフにしたシルバーリング。 私からは、ピンクゴールドでコーティングされたクロスに、ダイヤのリングが かかったペンダントトップが付いたネックレスと、さすがにお互いの品は違っていた。 「あ、ありがと、かがみ。すごく嬉しいよ。でもさ、モノは違ったけど、 両方のプレゼントに『すべてが愛おしい』ってメッセージが入っているって なんなの?かなり通じ合い過ぎて、すごく恥ずかしいんだけど・・・。」 そう言ってこなたは、もじもじと照れ始める。 確かに品は違っていたのだが、両方とも英語で 『Everything is so dear ~すべてが愛おしい~』 とメッセージが刻まれていたのだった。 正直少し恥ずかしいのだけど、お互いに同じ事を考えていたと思うとすごく嬉しく、 私としては恥ずかしさよりも嬉しさの方が強い。 でもこなたは恥ずかしさの方が強く、しばらく元に戻らなそう。 付き合ってみて分かった事だが、こなたはこうやって照れるとなかなか戻らない。 だから照れそうになると、照れ隠しに突拍子の無いボケや誰にも分からない内容の話を振って 茶を濁してきたみたいだ。 まあ、こうやって照れているこなたもかわいいから、私としてはこのまま眺めて いるのもいいんだけれども・・・・・いけない、思考が横道にそれた。 とりあえず、このままだとグダグダなまま終わってしまいそうだ。 そんな終わり方は正直嫌なので、ちょっと暴走気味になるけれど、強引に展開を進めよう。 「あのさ、こなた。私アンタのすべて、すごく愛おしいって思っているわよ。」 「ふぇ?」 「だからこのプレゼント貰って、こなたも私も同じことを考えていたって分かってすごく嬉しい。」 まだ反応が悪い。ちょっと言い方を変えてみるか。 「まあアンタ好みの言い方で言わせてもらうと、 ずっとずっと夢だった、叶わぬ夢だと思っていた。それでは言って頂きましょう。 柊かがみさん『ずっとこなたが、好きでした』・・・初めて出会った高校の時からずっとね。」 高校の頃は友達として付き合っていたけど、 どこかこなたに恋愛感情らしきものを抱いていたのは確かだ。 「み、みゃー!かがみ、落ち着こうよ、ね!」 やった、やっと反応があった。 「冷静に今の状況を見てみようよ、かがみ。クリスマスの街の中心で 美人女子大生が、見た目女子中学生のロリババァに愛を叫ぶってすごい光景だよ。 これこそ、捨て身の幸せだよ。かがみ。」 わあ、こなたから美人女子大生って言われた。 ポロっと本音をこぼしちゃったんだったら、なんか嬉しいな。 じゃなくて、捨て身の幸せって・・・ 「でも幸せであることには変わりないじゃない、こなた。 私こなたがいないと寂しいし、今日も待っている時、こなたに会うまでむなしかった。 でもこなたといればどんな未来も怖くないし、むしろこなたなしではもう生きていけない気がする。」 「ううう、かがみ暴走し過ぎだよ。ラノベや美味しい料理といった好きなモノだけじゃなくて、 好きなヒトにまで暴走するなんて、好きになって初めて気がついたよ。」 そう、それは私もこなたと付き合って初めて気がついた。 でもそれは好きな人に対してというよりも、こなたのことを好きになったからだと思う。 自由奔放で楽しい事を追及してゆくこなたを、いつもは見守っているのだけれども、 いつも素でいようとするこの子の陰りの無い笑顔や雰囲気に当てられ、 なぜか見守る方がはしゃぎすぎてしまう。 そんな自分が好きだし、そうさせてくれるこなたのことが好きなんだ。 だから、一緒にいるのはすごく嬉しい。 とりあえず、こなたも元に戻ったみたいね。 私は戻りそうもないけど。 「あのさ、こなた。」 「なにさ、かがみん。」 「今日泊まってゆかない?お代は私持ちでもいいからさ。まだこなたと一緒にいたい。」 「ぎにゃー、私の部屋の鏡じゃなくて、私の嫁のかがみが壊れたー。」 「何こなた?お泊りと聞いてホテルで女子中学生が女子大生にエッチな事されると想像したの? もう・・・バカ‥(テレテレ)」 「自分から言っといて、自分で照れるって何なの一体?」 「ということで行くわよ、こなた。今夜は帰らせないから。」 「にゃーーー。」 また恥ずかしがり、もじもじし始めたこなたの手をひっぱりつつホテルへと向かう。 ホテルの部屋に入ったらまず抱きしめて、キスをしよう。後は・・・おいおい考えよう。 でも家への良い訳も考えなきゃなー、けどワクワクして楽しい。 こなたといればそれだけで、永遠さえあると信じられるんだ。 そんな高揚感の中、私達はイルミネーションの街の中へと消えていった。 「本当に暴走しすぎだよ、かがみん。 ・・・・・(小声で)でもそんな暴走するかがみも含めて、かがみのすべてが愛おしいんだけどね、私も。」 「何か言った、こなた?」 「何でもないよ~。好きだよ、かがみ。」 コメントフォーム 名前 コメント この後どうなる?こなた -- かがみんラブ (2012-09-14 22 39 49) お互い理解し合ってていいですな 暴走かがみはやっぱり好きだ -- 名無しさん (2010-12-28 12 06 24) * 社会人&恋人同士となっても、この2人の関係は最高ですね~。 だがしかし、お二人さん、イブほどでもないが25日でも ホテルの空き部屋は無いのでは? -- kk (2010-12-26 22 23 07) 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