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私はこの青いアホ毛のちびっ子、こなたが大好きだ。 しかしそれを口に出せずにいる。 「かがみーん♪かがみーん♪ぎゅう~♪」 こなたがいつものように抱き付いてきた。 私はこの瞬間が嬉しくて嬉しくて仕方ない。 「ちょ、ちょっと!何で抱き付いてんのよ!」 だけど素直になれない私。 嬉しくて仕方ないのに。 「えー!だってかがみと私の仲じゃーん♪」 そうやって一層密着してくる青いアホ毛の女の子。 こんなことをされて私の気持ちが揺さ振られないはずがないのに。 でも、だけど私の手がこの女の子を包み込むことはなかった。 いっその事『私もこなたの事が大好きだよ』と、言ってしまいたい。 そんな衝動をいつも抑えている。 だって、もし私からこの子を抱き締めることがあったら、この子は私のことをどう思ってしまうだろう? 「か、かがみ?!もしかしてそんな趣味だったの!?」…なんて、引かれてしまうかもしれないじゃないか。 いや待て待て。じゃあなんでこの子は私に抱き付く? …ああ、うん、多分からかってるだけ。間違いなくそうだ。 もし私がガチ(?)だと分かればもう引かれて嫌われてしまうかも。 「かがみ~ん大好きー♪」 ぎゅう、と抱き付いてくるこなた。 ああ、もうだめ。ヤバイって。私も抱き締めてしまいそう。 こなた、お願いだからもう私を戸惑わせないで…。 「かっがみーん♪かっがみーん♪」 頬と頬をぺったり合わせてくる。 もう、…だめだって。 「こなたぁー!!私、私も… こなたの事が大好きなのー!!!」 ぎゅぅうううっ!!と抱き締め返してしまった。 あー、 やってしまった…、、。 もう、どうすればいいのかわかんない。 ただ、こなたが好き過ぎて、抱き締めてるのが嬉しくて、、。 私は泣いていた。 何故だか分からないけど。 涙が出るのを抑えられなかった。 ……。 一体どれくらいの時間が過ぎただろう。 こなたは何も言わなかった。 私も何も言えなかった。 あまり働いていない頭の片隅で、 この手を離せば二度と元には戻れないんだろなー、 などと考えていた。 最後の抱擁かもしれない。 温もりを、ずっと忘れたく無かった。 もっとこのまま、感じていたかった。 こなたが正気に戻って私を突き放す瞬間、 それが私の最後の瞬間なのだろう。 「かがみ…」 …来た。 私の夢の終わりが。 「大好き……」 ああ、私はなんでこなたを抱き締めたりしてしまったのだろう。 我慢していればこなたの方から冗談混じりに抱き付いてくれてた毎日が送れたのに。 ほんのちょっとした欲望でそれを棒に振るって私バカじゃないの?! ああもう、私のバカバカバカ… ってあれ?! あ、幻聴か。 って!なんかこなたの方から強く抱き締められてるし?! えっ、何どういう事ー!!? 「かがみぃ…大好きだよ」 ぎゅううぅ~…。 The End. コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-04-23 09 41 40) これいい。これ好き。 -- 名無しさん (2013-02-03 12 40 16) キターーーーー(・∀・) -- 名無しさん (2012-10-24 16 41 45) 自分もかがみんの告白ききたい! -- かがみんラブ (2012-09-20 23 17 58) こ〜の〜バカップルがぁvV(笑) -- チハヤ (2008-08-02 23 48 42) 萌えました (*´Д`) -- ハルヒ@ (2008-06-29 13 17 25)
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34 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/02/25(月) 23 20 35 1Uv/OP2l アニ研部室 こなた「こうちゃんいるー?」 こう「あ、先輩方。どうしました」 こな「今月のコンプ無いかなと思ってさー。」 こう「ありますよ。あー、ひよりんのオリキャラですか」 こな「そうそうそう。かがみんも見て見て」 かが「・・・はー・・・オリキャラってか何と言うか・・・」 こな「まあ、私的には全然アリだけどね」 かが「こんな感じでずっとほのぼのと話が続くのなら健康的だわね」 こう「まあ、その辺はお察しで・・・。あ、このキャラの同人も一冊ありますよ、どうぞ」 こな・かが「(うっ・・・)」 ボソボソ かが「(ちょっと!覚えがある内容じゃない!)」 こな「(いやー、こんな事細かに見られてたとは・・・)」 かが「(だから学校ではやめようって言ったんでしょ!)」 こな「(えーかがみんもノリノリだったじゃーん)」 こう「アレ、不評でした?キャラのセリフとか高1が描いたわりに臨場感あると思うんスけど」 こな「いや・・・よ、よ、良くできてると思うナー」 かが「そ、そ、そうね。キャラ愛が感じられるわにゃ(噛んだ)。じゃあ、私達これで失礼するんで」 こな「あ、ありがとね、こうちゃん」 こう「いえいえ、いつでもまた来てください」 こう「…(でも学校では控えた方がいいですよ、先輩方)」 380 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 本日のレス 投稿日:2008/03/03(月) 00 36 06 4OByLZlc ほっかいどーGJ! そして真夜中の一発ネタ行きます。 「はあ?こなたファイトぉ?」 帰り道、こなたは突拍子も無い事を言い出した。まあいつものことだけど。 「そう、四年に一度世界各国のこなたが一堂に会して戦うんだよ」 「そういえば、今年はオリンピックイヤーですよね」 「こなちゃん凄いね~♪」 いや、あんたらおかしいだろその反応は。慣れたけど。 「でね、戦って戦って戦い抜いて、最後に勝ち残った一人がかがみを嫁にできるんだ」 「どこから出て来た設定だよ!」 「ちなみにあたしはネオサイタマ代表の、シャイニング・コナタなんだよ。 あたしのアホ毛が光って唸る!かがみを奪えと輝き叫ぶ!」 「はいはい」 軽い脱力感に見舞われながら、私は適当に相槌を打つ。 その時、前方に大勢のこなたが立ち塞がった。文字通りこなたがいっぱい居る、冗談抜きで。 おお神よ、ここはわたしのパラダイス? 「ふっ・・・遅かったね」 ニヤリと笑うこなた(ネオサイタマ代表)の拳に浮かぶのは毎度御馴染みカドカワの紋章。 コートとカバンが高々と宙に舞う。 「こなたファイトォーーーーー!!!レディーーーGO!!!」 戦えこなた、地球がリングだ! ・・・多分。 「俺の・・・俺のネタなのに・・・」 そして、電柱のカゲで某店長が泣いているのを私は見逃さなかった。 どうでもいいけど。 387 名前:14-586 投稿日:2008/03/03(月) 01 26 24 4EOruEYZ 380 「思いだして、こなた。 あの陵桜祭で見た境地・明鏡至粋…… 曇りのないかがみちゃんへの気持ち、性別も邪魔な常識も取っ払った、本当の気持ち……」 「本当の、気持ち……!」 大丈夫よ、別に。 こなたはもう近寄らないで。 こなたと一緒にいると、辛いのよ!だって、私…… ……こなたぁ…… 「そうだ、あの時かがみは私を拒絶した。だから私は苛立って、あやうくお父さんの罠に…… でも、別れ際の泣きそうな顔、あれは嫌いだから避けたんじゃなくて…… そっか、見えたよっ、かがみの愛のひとしずくっ」 「(ええ、それこそ正しく真の百合百合もーどですっ!!)」 「むぅっ、なんだこの気迫はっ!?今までのこなたのモノとは違う……まさかぁっ!?」 「そうだよ、女同士だからって諦めてたけど、私決めた!!」 「ぬおおおおっ、お父さんも狙っていたのに、キサマがかがみちゃんとケコーンする気かぁっ! だがつけ上がるなよこなたっ、かがみちゃんと神前で」 「ごちゃごちゃうるさいっ、しゃぁーいにんぐっ、うぃざぁーーどっ!」 「ぐぼぁっ!!なっ、こんな馬鹿なぁっ!?この俺がっ、当方腐敗マスターファーザーがっっ、 手も足も出せんなどということがあってぇぇぇ、たまるかぁあああぁぁぁっ!!」 「……諦めが悪いですよ、そう君。あなたはあなたの娘に敗れたんですっ」 ……はっ、まてよ、ということは、最後は恥ずかしい告白の後こなたとかがみんが!! きさまあっ、一体なんてものを想像させるんだあああっ!! 437 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/03/03(月) 22 59 45 I97ln1Ut こねた 「私がいちばん幸せな時ってどんな時か知ってる?」 「んー限定グッズを手に入れたときとか?」 「ふふ、正解はかがみが隣にいる時だよ」 「…それじゃあ私がいちばん幸せな時も教えてあげよっか」 「どんな時?」 「こなたが私の隣にいる時よ」 459 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2008/03/04(火)01 22 58 x8BJHZgd じゃあ、ちょっと小ネタでも 「ねぇ、かがみん。」 「んー?何よ。」 「やっぱさぁ。」 「だから何よ。」 「かがみんのフトモモは気持ちいいね~。」 「こ、こら!なんてこと言うんだアンタは!」 「だってさぁ、気持ちいいんだもん。この柔らかさがたまんないよ。プニプにしてるしさ。」 「ほ~う、それは私の太腿に脂肪がついてるってことをいいたいのね。って、頬擦りするな!」 「照れてるかがみんの顔をこう、下から見上げるのもまた格別だね。」 「ホント発言がオヤジだな。」 「でも、照れてるかがみの顔が好きなのは本当だよ?」 「え、あ、う、、、うん。」 「あ、えっと、そのぉ、か、かがみんの膝枕が気持ちいいから、なんか眠くなっちゃったよ。」 「ネットゲームのやりすぎじゃないの?」 「最近はちゃんと寝てるよ!かがみんのひざが気持ち良過ぎるの。じゃオヤスミ。」 「はいはい。」 (あ~、ヘタレだなぁ。私って) 585 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 本日のレス 投稿日:2008/03/06(木) 19 30 21 toPp/vAV 「こなたー。 ……。 ……こーちゃん。 …………いずみん。 こな……たん? こなこな……。 私の嫁? ……こなた様。 ご主人様……」 「かがみさんや、さっきから私の写真相手になに「ひゃっほう!?」」 こなたに聞かれました。 588 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 本日のレス 投稿日:2008/03/06(木) 19 58 49 toPp/vAV 585の続き 「かがみんは私の呼び方を考えてたの? ふ~ん(ニヤニヤ)」 「な、何よ! 何か言いたい事があるならはっきりと……!」 「いやいや~、な~んにもないですよ? 未来の旦那様?」 「またあんたは人を馬鹿に……え?」 「期待してるよ?」 「え? ちょっ、待っ……えぇ?!」 「さてと、どこか遊びに行こっか?」 「こなた、今あんた私の事を……」 「ケーキバイキングでも行こうか? さあ行こ行こ~♪」 「こらっ! 待ちなさい!」 後ろから見ても耳が赤いのまるわかりよ、ばか……。 …………まぁ。 あたしも、なんだけどね……/// 654 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 本日のレス 投稿日:2008/03/07(金) 07 30 03 BvZIjsv6 「こなたー」 「どしたの、かがみ様?」 「ううん、ちょっと呼んでみただけ」 「かがみん」 「どうしたの、こなた」 「何でもないよ。 ちょっと呼んでみただけ」 チュッ 「ん……」 「急にキスしてくるなんて、どうしちゃったのさ?」 「え? ああ、こなたの頬が柔らかそうだなーって思ったら自然に、ね」 チュッ 「はむ……」 「あんただってキスして来たじゃないの」 「いや、かがみの横顔が綺麗だなーって思ったら自然と、ね」 「ふふふ……」 「えへへ……」 「夜ね」 「夜だね」 「一緒に寝よっか、夜だし」 「そうだね。 夜だし、仕方ないよね」 「じゃあ部屋まで手を繋いで行きましょ」 「うんっ」 ……。 「……お母さん達、仲良しだよね」 「お姉ちゃん、眠いよぅ……」 「相変わらず可愛いよね、我が妹よー」 「きゃっ! どこ触ってるのよ、お姉ちゃん!」 「私達も一緒に寝よっか」 「うん……」 655 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 本日のレス 投稿日:2008/03/07(金) 07 41 05 BvZIjsv6 「朝ね」 「朝だね」 「コーヒーにしましょうか、朝だし」 「そうだね。 モーニングコーヒーだね」 「砂糖はいる?」 「ううん、いいよ」 「苦いわよ?」 「かがみと一緒なら甘くなるよ」 「そっか」 「うん」 ゴク……ゴク…… 「苦いわね」 「苦いね」 「あ……」 「? どうしたの」 「コーヒーのおひげが付いてるわよ」 「え?」 ペロッ 「ん……取れた」 「あ、ありがと……」 「甘いわね」 「甘いね」 ……。 「お姉ちゃん、砂糖いる?」 「あ"ー、お母さん達見てたから甘いのは食傷気味だわ。 ブラックで貰える?」 「うん、わかった」 「……ところでさ」 「何? お姉ちゃん」 「やっぱり可愛いわよね、我が妹よー」 「お姉ちゃん、それ3回目ー」 656 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 本日のレス 投稿日:2008/03/07(金) 07 53 12 BvZIjsv6 「朝ご飯美味しいわね」 「うん。 でも……」 「何?」 「さっきからかがみん、梅干し食べ過ぎじゃない? もう7個目だよ?」 「……」 「何か隠してる?」 「実は……」 ……。 「妹、聞いた?」 「どうしたの? お姉ちゃん」 「私達に弟か妹が出来るって!」 「ホント!?」 「妹、急いでもち米買ってきて! あと小豆とゴマ塩!」 「どうするの、お姉ちゃん?」 「決まってるじゃない、お赤飯を炊くのよ!」 「ラ、ラジャー!」 「あ、ちょっと待った!」 「な、何? どうしたの?」 「可愛いわね、我が妹よー」 「それ朝から通算25回目!」 「行ってきますのチューは?」 「う……」 チュッ 「……やっぱり可愛いわねー」 「……帰ってきたら絶対仕返しするんだから」 「楽しみにしてるよ、我が妹よ」
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何気ない日々:梅雨晴れのち夕立“二人の気持ち” 「かがみは私に、あんな事絶対言わないのに・・・どうして?」 公園から駅まではそんなに距離は無かった。全力で走ったのだから、後ろにかがみの姿は無いのも当然だ。 丁度私が駅に着いたとき、バケツをひっくり返した様な土砂降りの雨。そろそろ追いついて来ても良さそうなのに、かがみが追いかけてくる様子は無い、かがみは大丈夫だろうか。まだ、呆けてあのままだったら、もうずぶ濡れになってる。心配だけど、走って戻る勇気が無かったし、傘も無いしね。駅の購買の傘なんて雨が降った瞬間に完売だから。 「私は、かがみがあんな事を言うのを望んでいなかったのかな・・・ううん、違う、望んでいたはずなのに。でもそれは映画のワンシーンの言葉としてじゃなくて、本当の気持ちで、でもそれはありえなくて・・・」 ぶつぶつと呟く私の横に座っていた男性は、それが嫌だったのか立って遠くの椅子へと向かった。どうでも良い事だった、今の私には、かがみが心配だった。心配なのに、拒絶したような行動をとってしまったことが怖くて、携帯で電話をかける事も出来ない。意気地無しすぎるよね、私。 でも、どうしても走って戻る勇気が無くて、ただ椅子に腰掛けていることしか出来なかった。頬を流れる涙にも気がついていた。けれど、恥ずかしさを感じることも無く、また拭う気にもなれなかった。 かがみが私を好きになるはずが無い、そう決め付けていた。私はそうする事でこの気持ちが親友への裏切りであったとしても許されるものだと信じていたかった。 「かがみが私を好きなはず・・・」 無いなんてどうして私は、決め付けられるのだろう。そこで、お父さんが言っていた事を思いだした。“イメージや思っていた姿、想像していた虚像と違う”つまりは、気持ちはコインの裏と表とは違って、嫌いと好きに二分するだけではないという事だ。私はかがみが好きだけど、かがみは絶対にそんな気持ちを私に抱かない。それは臆病な私が想像して願っていた姿、思い込んでいた虚像。 かがみが同じ思いを持っていてくれるかも知れないと思う事は怖くて、想像しなかった可能性。でも、それも考えてよかったんだ・・・いや、考えておかなければいけなかったんだ。あんな風に突き飛ばしてしまったんだ。かがみは、私に拒絶されたと思っただろうか、嫌われてしまったと思っただろうか。かがみが傷ついた分だけ私の心も傷ついていく様に胸が痛かった。でも、きっとそれは、かがみが受けた傷の痛みの何分の一でしかないんだ。 「かがみ・・・」 私はホームから見える雨を落とし続ける、灰色の空を見つめて呟いた。そして心の中で謝り続け、涙が溢れてしゃくり上げて泣く姿を見られていても、涙を、気持ちを抑えることは出来なかった。 ◆ 「寒い・・・わね」 このまま、凍えてしまえたらこの気持ちも凍えてくれるかしらね?そんな事を思い、馬鹿な考えだと泣きながら笑い飛ばした。きっと凍えてもこの気持ちは凍えないだろうから。 駅にはまだこなたがいる。今は何て言って冗談にすればいいのかわからない。服が濡れて体に吸い付いて気持ちが悪い。そして、胸が痛かった。 「こなた・・・」 呟いた言葉が白いもやになって消えていく。私も一緒に消えてしまいたかった・・・あれ程、思っていたじゃないか。気持ちを暴走させてはいけないって、言ってはいけない気持ちだと。なのに、私は映画のラストシーンに託けて言おうとしてしまった。そして結果がこれだ、笑うに笑えないなら、泣き笑うしかない。学校への待ち合わせ、どうしよう。一緒に登校するのはまだ許されるのだろうか、せめて友人でいたいな。 雨に打たれながらそんな事を考えていた。体温が急激に奪われていく、寒いわね。でも、どこに行く気にもなれず、公園にある、錆付いて惨めな姿になったジャングルジムに背中を預けて、両手で体を抱くようにして、立っているのがやっとだった。 見上げれば雨が目に入る。それが涙と交じり合って、私の目から零れていく。何時までこうしているつもりなのだろう。このまま、雨に打たれて溶けてしまうまでだろうか。 私は、拒絶されたんだ。でも、こなたは、嫌いだとか気持ち悪いとかそんな言葉は言わなかった。まだ、きっと間に合う。 「わかっていたのに、気持ちを表に出しちゃいけないって、私って馬鹿ね」 乾いた笑い声が、公園の中で響く。けれど、その笑い声は、誰の耳に入る前に雨音に消されていった。 少し体が冷えすぎたのか、立っているのもなんだか辛くなってきた。どうしよう・・・電車が出るのは、私の記憶に間違いがなければまだまだ先だろう。駅に行くわけにも行かず、ここに居続けるわけにもいかない・・・では、どこへ行けばいいのだろう。 「かがみ先輩!?」 どこかで聞いたことがある声。髪が水分を吸って頭が重いが、声の方へ顔を向けると、そこには、ゆたかちゃんが居た。髪と同じ色の可愛らしい傘を差して、その後ろには、髪と同じ色をした傘を差したいつもゆたかちゃんの傍らにいる・・・そう、みなみちゃんだったかしら、頭が上手く回らないわね、二人が立っていた。 「・・・どうしたんですか?」 「ちょっとね。電車に乗るなら早く駅に行った方がいいわよ?この雨だと、座るスペース所か立つスペースだって危ういと思うしね」 震える唇が喋ったにしては何時も通りの声だった。二人は、ただ私の事を見ていた。どうして、こんな所で雨に打たれているのか、どうして、自分は駅に行かないのか、その答えを探すように。 「私は、まだ駅にはちょっといけない・・・用事が・・・あってね。だから、ほ、ほ、放っておいて、大丈夫よ」 上手く言葉が出ない。雨が降る前はそんなに寒くは無かったのに、今は体の底から、心の底から凍りつくように寒い。どちらも冷え切っているみたいだから。たった一つの想いを除いては。 「・・・ゆたか、傘をかがみ先輩に」 みなみちゃんがそう言う。ゆたかちゃんの事を何時も気にかけている彼女が、そのゆたかちゃんに傘を私に差し出せというのだ。私はかなり驚いた。もっともそれを表情に出せる程の余裕は無かったけれど。それに、もう傘を差しても意味がないくらいに濡れている、だから断らなくちゃいけないわね。 「気にしなくて・・・いいのよ?身長が違うと、どちらか濡れてしまうし」 それは経験に基づいた事からの言葉だった。たった十二センチ違うだけでこなたの背中はびしょびしょになっていたのだから。 そして、今の私には、雨を凌ごうという気分でもなかったし、このまま打たれ続けていたいとさえ思う。 ゆたかちゃんの傘を受け取ろうとしない私を見るに見かねたのか、みなみちゃんは、私に自分の傘を傾けた。そんな事をしたら貴女が濡れてしまう、それに・・・私が泣いていることが知られてしまう。 私は強がりで見栄っ張りなのに、その癖本当は寂しがり屋で。泣いていることが知られてしまったら事情を話さなければならないだろう。ゆたかちゃんと違ってみなみちゃんはみゆきの知り合いという事もあって、ある意味鋭い。それはつかさやみゆきの鋭さとは違うけれど、でも、この拒絶された想いをもう誰にも知られたくなかった。だけど、もう寒さと胸の痛みで動けなくて・・・。 「どうしたんですか・・・?」 涙が頬を伝わる感触がまた戻ってきた。言いたくは無い。言わなければみなみちゃんはずっと傘を私に傾けたままかもしれない。ゆたかちゃんは、そんなみなみちゃんの事を心配そうに見ている。・・・その視線が私にも向けられているという事には気づけなかったけれど。 「なんでもないのよ」 精一杯の虚勢だった。必死に仮面を被って笑ってみせるけど流れる涙は止まらなくて、もうどうしていいのかわからなかった。 本当は叫びたかったんだと思う。それが例え八つ当たりだとしても、こなたに拒絶されたんだって、もう友人ですらいられないかも知れなくて、それが怖くて泣いているんだって・・・喚き散らしたかったのかもしれない。けれど、それは強がりで見栄っ張りな私には出来なかっただけの事。 その言葉に、聞いてはいけないのか、聞くべきなのか戸惑ってしまっているみなみちゃんは、優しい人なんだなと思う。ゆたかちゃんが言っていた以上に、優しくて気遣いの出来る人。私の好きな人も、そんな気遣いが出来るのよ?そんな事を思ってしまう。誰よりも元気でマイペースなのに、どこか、誰にも気づかれない所で気を使っているあいつ。そんな優しくて大好きな“親友”を私は、この想いで裏切って、この想いで傷つけて・・・ああ、駄目だ、お願いだから、傘をどけて。涙はもうどうしようもなく流れ続けていて、止まりそうも無くて、どうしていいのかわからないのだから。せめて、もう涙を見るのはやめて・・・お願いだから。 「本当になんでもないのよ、だから、もうしばらく・・・このままで居させてくれないかしら」 寒さなんて、もうわからない、だから唇も震えなかった。 「みなみちゃん、かがみ先輩・・・」 ゆたかちゃんは、みなみちゃんがわかり辛いが凄く戸惑った表情を浮かべているのに対して、私が涙を零しながら笑顔で放っておいてくれてという状況が上手く飲み込めずに戸惑っていた。とにかく、傘をどけて欲しかった、涙を流している姿を見られたくはなかった。 「お願いだから放っておいてっ!」 私は笑顔という仮面が剥がれた顔で、悲鳴にも近い叫び声を上げた。もう我慢の限界だったのもあるが、みなみちゃんが濡れていくのをゆたかちゃんに心配させたくなかったし、自分勝手な行動で友人の心を傷つけてしまったのに、それで涙を流しているのをゆたかちゃんからこなたに伝わるのも怖かった。傷つけた人間に泣く資格など無いというのに、私の目からは未だ涙が止まらない。もうどれくらいの時間流れているのだろう、どうして涸れてくれないのだろう。 二人はそんな取り乱した私の姿に虚をつかれたのか、目を丸く開いて固まっていた。その隙に傘を傾けているみなみちゃんの手を彼女が濡れない様に動かす。 「ゆたか~?みなみちゃ~ん、車近くまで持ってきたよ~」 聞き覚えのある元気な声。こなたがそういえば、前に元気に動き回るイメージがあるから、豹って言っていた気がする。さっきから私の考えの中心はこなたがいる。だからなのか、傷つけてしまった痛みが、傷つけてしまった事への心が零す血液が涙に変わって零れ落ちていくのだろうか。 「私は、そろそろ行くね」 そう言ってこの場から去るつもりだった。駅へ向かおうとしたのに、私の目に映ったのは砂利の混ざったむき出しの地面と水溜りで、体には衝撃が走った。それなのに、不思議と痛みはわからなくて、何が起こったのだろう、頭が上手く回らないのは寒さの所為だろうか。 「かがみ先輩!?」 「・・・大丈夫ですか?」 二人の言葉に、あぁ、私は転んだんなぁと言うことにやっと気がついた。お気に入りの服も私も泥水を浴びて泥や砂利まみれで惨めだった。それでも立ち上がる気になれなくて、今の私にはその姿が、相応しいとさえ思えてならなくて・・・。 二人は手を伸ばすべきかどうかを凄く迷っていて、私は私で起き上がれないでいると、不意に片腕を引っ張り上げられて立たされた。 「大丈夫かな?あ~あ、折角のお洒落さんが台無しになっちゃってるねぇ」 明るい声、私に言っているのだろうか。何時の間にか側に来ていたゆいさんに私は起こされたらしい。あのまま雨の中で泥のように解けてしまいたかったのに。 「すみません、ありがとうございます」 お辞儀をしようとしてふらついてしまう。寒さで色んな感覚が麻痺している気がする。それなのに、傷つけた痛みだけはズキズキと心を針で刺すような痛みを出し続けていた。 「んー、電車は行っちゃったみたいだねぇ。かがみちゃんだったねー、一緒に乗っていく?お姉さんが送って行っちゃうよー」 ゆいさんは、優しく聞いてくれる。でも、こんなにびしょ濡れで泥まみれの私が車に乗せてもらうのは申し訳ない気がする。 「かがみちゃん、遠慮することはないよ~。さぁ、おいで」 ゆいさんが手を掴む。その手はぎゅっと強く掴まれていて振り解くことが出来なかった。もっとも、ぎゅっと掴まれていなくても今の私には振り解く力は無くて。手を引かれるままに歩いた。 どうしてだろう、誰も掴まない手。それは、あの日にバスで繋いだ手、あの日にお見舞いで涙味の口付けの味を感じた時に繋いでいた手。今は、泥で汚れてしまった手・・・あの温もりも想いも何もかも、全てはあのバスの日から始まった。いや、きっとそうじゃないんだ、あの日に私は知っただけの事。一体何時、こなたに想いを馳せたのか何て理由、わかりはしない。でも、もう始まってしまった、動き始めてしまった想いを消してしまう事なんてきっと出来ない。なら、私はどうすればいいの?誰も答えはくれない。 「さぁ、乗った、乗った~。ゆたかとみなみちゃんはちょっと荷物で狭くなっちゃってるけど二人で後部座席の方にお願いするね~」 何時の間にか、ゆいさんの車の前まで連れて来られていた。空けられた助手席のドア、後部座席が狭くなっているのは、きっとここに物が積んであったからだろう。座席に座ってもよいものだろうか、泥水に濡れた服、きっと座席を汚してしまうだろう。 「シートの事は気にしなくていいから、乗った、乗った~。お姉さん、警察官だからね~。ほっとけないしさ」 半ば強引に助手席に押し込まれた。シートを汚してしまったな、そんな事しか思い浮かべられなかった。心配してくれたことを感謝するとか、そういう事を思いつけない程に私は消耗していたらしい。 「シートベルトをしてくれたまへ~。よし、じゃぁいくよ~」 私がシートベルトをしたのを確認すると、ゆいさんは車を発進させた。髪から水滴がたれてくるのか、膝の上においた手の甲が濡れている。 「何があったのかな?お姉さんでよければ相談に乗るよ~」 「友人を傷つけてしまったんです・・・」 私は、言いたくないのに言葉を口にしていた。誰かに聞いてもらいたいと思ったのかもしれないし、このゆいさんの雰囲気に口を動かしていたのかもしれない。 「きっと仲直りできるよ。そんなに泣かなくったってさ」 手の甲を濡らしているのは、どうやら私の涙らしかった。そういえば、まだ目から顎に温かい水滴が流れるのを感じる。 「そうだと良いんですけど・・・凄く傷つけちゃったから、どうしたらいいのか、わからなくて」 同性に告白されそうになるのはどんな気持ちなのだろう。しかも、信用している友人から。どれだけ、こなた、あんたは傷ついたのかな?それを考えると涙の量が増えるばかりだ。 「そういえば、今日、こなたお姉ちゃんが出掛けてたからもしかして・・・」 「・・・ゆたか」 「あ、ご、ごめんなさい」 私は言わなくていい事ばかり口にしそうだった。想いを支える堤防は決壊しかけているようで、口にしてしまう。 「そう、私はこなたに酷い事を言って傷つけちゃったのよ、ゆたかちゃん」 後は言葉にならなくて、泥に汚れた手で涙を如何にか止めようと、嗚咽をどうにか堪え様と頑張ったが、どうにもならなかった。 「こなたと喧嘩しちゃったわけだ、しかし、あのこなたが友人と喧嘩だなんて、お姉さんびっくりだ」 ゆいさんは相変わらず明るい声で言う。それが気遣いだという事には気がつけるくらいになっていた。涙が零れるほど、私の頭は冷静になっていくのに涙だけは止め処無く溢れ続ける。 「ごめんなさい、でも、止まらなくて・・・。私が悪いのに、私が泣いてちゃいけませんよね」 「かがみちゃんだけが悪かったのかな。こなたには、悪いところ無かった?」 あるはずが無い。きっと怖かったのだ、友人が言うはずの無い言葉を口にする事が。 「喧嘩って言うのは、お互い悪い所が無いと出来ないものだからねぇ」 そもそも、喧嘩というのが私の嘘だから。だから、一方的に私が悪いの、こんな気持ちを持ってしまった事が。 「本当は、喧嘩したんじゃないです。こなたに・・・友人が言っちゃいけない事を・・・」 「何をって聞いたら野暮かな?」 何時の間にか、家の近くまで来ていた。言ってしまって気味悪がられて、車から降ろされても何とか歩いて帰れるだろう。どの道、こなたから聞くことになるだろうから、私が今ここで言ってしまっても、結果は同じ事。気味悪がられるのが早いか遅いかの違いに過ぎない。 「こなたに・・・す・・・」 嗚咽で上手く喋れなかった、何とか抑える。もう誰かに聞いて欲しかった、みゆきに聞いてもらうだけじゃ足りなくて、母に聞いてもらうだけじゃ足りなくて、私の不安の海はどこまでも果てが無い程に広かった。 「こなたに好きだって・・・伝えようとしたんです。二人でみた映画のシーンの説明に託けて、告白しようなんて卑怯な真似をして、こなたを凄く傷つけてしまったんです」 車内の空気が張り詰める、当然だろう。想ってはいけない気持ち、異端視される気持ちなのだから。 「かがみちゃんは、こなたが好きなんだねぇ」 張り詰めた空気なんてなかった、ゆいさんは事も無げにそう言った。どうして、どうして受け入れられるの? 「お姉さんそう言うのは良くわからないけど、でも、それはきっと悪い事じゃないとないと思うよ」 「そうなの・・・かな・・・」 敬語を使うことも忘れて、呟くように言う。悪い事じゃないのかな、でも良い事でもないはずだ。その後は会話も無く、私の家の前で車は止まった。 シートを汚してしまったこともあり、私は母を呼んで一緒に謝罪した。謝罪した後の会話はただ聞いていただけだったが、ゆいさんは特に気にした風も無く、それじゃまたね~と明るく行ってしまった。失礼にも、その姿を私は、あまり関りたくなかったんじゃないだろうかと思ってしまった。 雨の中、家にも入らず呆然と立っているだけの私を、母は脱衣所に連れて行き、お風呂は沸くのに時間がかかるからとりあえずシャワーで温まってきなさいと告げた。私はといえば言われるがままに頷いて、シャワーを浴びた。お湯が肌に当たるたびに走る痺れる様なジンジンとした感覚、最初温かいとは感じなかった。それほどまでに冷え切っていた事に驚いたが、黙ってシャワーを浴び続けた。 温まって外に出ると着替えが用意してあり、それを着て、私は自分の部屋に向かう。中に入った所で操り人形の糸が切れてしまったかのようにフラフラとして、ベッドに座り込んだ。寝転ぶ気にはなれず、ただ座っていただけ、涙も何時の間にか止まっていた。 しばらくの沈黙の後、不意に遠慮がちなノックの音、そして、つかさが入ってきた。 「お姉ちゃん、大丈夫?」 「よく、わかんない・・・」 大丈夫と聞かれて大丈夫と答えられる状態でもなかった。心の中はグチャグチャで、想いだけが先走りそうで、また泣きそうになって・・・。 「お姉ちゃんが帰ってくる前にね、こなちゃんから電話があったの。お姉ちゃんの携帯繋がらないからって。その、さっきはごめんって伝えて欲しいって」 「こなたが謝ることなんて何にも無いのに、どうしてあいつは謝るんだろう」 私の言葉はもう、うわ言の様だ。目に映るつかさの姿でさえ夢の中の様で、ふわふわしたおかしな思考感覚だった。 「お姉ちゃんは、こなちゃんに・・・言ったの?」 つかさも知っているのか。こなたから電話があったのなら知っていてもおかしくは無いか。 「最後までは言えなかったわ。でも、もう友達でもいられないかも知れないわね。つかさにも迷惑掛けるかもしれない、ごめん」 「だ、大丈夫だよ。こなちゃんだって、その、お姉ちゃんの事、好きだって悩んでたんだから!!」 言い終わってから、つかさはしまったという顔をした。どういう事だろう、こなたが私の事を好きで、悩んでいた・・・? 「意味がわからないわよ、つかさ。私はあいつに好きと言おうとして突き飛ばされたのよ、拒絶されたのよ?それなのに、こなたがどうして私を好きなのよ」 「えっと、それはその、あの、お姉ちゃんがこなちゃんを好きなのも私知ってて、あの、うーんと・・・」 言葉を探しているつかさに立ち上がって肩を持って、問いただしたかったが。肩を持った所でどういう言葉を言えばいいのかが、わからなくなってしまった。 「あのね、だから、お姉ちゃん・・・と、とにかく大丈夫なんだよ」 「意味がわからないわよ」 疲れていた所為だろうか、急に体から力が抜けて、転びそうになったのを何とか堪え様として、結局つかさを押し倒す形でベッドに倒れた。 「ごめん、すぐ退くから」 そうは言ったものの体に力が入らない、何だか凄く疲れてしまって、動く事が出来ない。涙が出てきた、まだ仲直りの出来る可能性に、拒絶されてはいないかもしれない可能性に。 「お姉ちゃん、たまには私を頼ってよ。頼りないかもしれないけど、頑張って力になるから!」 「じゃあ、少しだけお姉ちゃんをやめてもいい?」 「えと、うーんと、それは困る・・・かなぁ」 「ほんの少しだけ・・・いいかな?」 「ほんの少しだけならいいよ」 つかさの胸に顔を押し付けるようにして泣いた。声を上げて、感情をさらけ出して、それは姉としての強さを外す事だから。 そんな泣きじゃくる私の頭をつかさは優しく撫で続けていてくれた。 ◆ どうやって家に帰ってきたのか良く覚えてない。けれど、家に着いてすぐにかがみに謝ろうと思って携帯にかけたが、繋がらなかった。直接の方がいいと思ったけど、拗れる前に謝っておきたかったから、つかさにメールを送る事にした。 「イメージと現実かぁ」 電話を終えて呟く。かがみが私を好きになるなんてありえないと思った。でも、どうやら現実は違うらしかった・・・確信は持てないがあの時の私が突き飛ばしてしまった、かがみの反応を思い出すともしかすると、あの言葉は本当の気持ちだったんじゃないのかという可能性もあるかな、なんて思い始めていた。 「でも、かがみはあんな事思わないし、そんな事言わないはずなのに」 私は冷えた体を温めようとコーヒーでも飲もうと思い、そんな事を呟きながら居間に入った。テーブルには、曖昧な表情をしたお父さんがいた、私の独り言は聞こえていたらしい。 「絶対そうだって事は無かっただろう?」 「でも、かがみがあんな事を言うなんて思わなかったし、そんな可能性無いと思ってたよ」 「それで、こなたはどうしたんだ?」 「かがみを突き飛ばして逃げただけ・・・」 「そうか。しかし、こなたとしては、かがみちゃんが好きなんだろ?お父さんは、認めていないわけじゃぁないし、同じ気持ち同士で良かったじゃないか、どうして突き飛ばしてしまったんだ?」 「わかんない・・・でも、かがみがあのまま、雨に打たれていたらどうしよう」 かがみがあのまま、傷ついたまま、あの場所にいたらどうしよう。今からでも戻るべきなのだろうか・・・わからない。 「そういえば、偶然ゆい達が、かがみちゃんにあったらしくて、かがみちゃんを送ってくれてるらしい電話があったな」 「そっか、ゆい姉さんが・・・良かった」 心から良かったと思う。あのまま、かがみが雨に打たれていたらと思うだけで胸が締め付けられる気分だった。それだけ好きなのに、私は・・・かがみを突き飛ばして逃げたのだ。 卑怯じゃないだろうか、いくら信じられなかった事で取り乱していたとはいえあれでは、拒絶されたと思う以外には無いのだから。 まぁ、座ったらどうだ、こなた。そう告げられ、私の前には湯気を立てて入る熱めのコーヒー。座って一口飲むと、また思っていたのと味が違った。朝飲んだコーヒーとは明らかに違う、いや・・・これは何時ものインスタントコーヒーの味だ。 「味が戻っただろ。実は朝の分はな、こなたが飲んだので丁度最後だったんだよ。で、あのメーカーを飲んでいる近所の人が同じ福引で、うちがいつも買っているメーカーのインスタントコーヒーを貰ったたらしくてなぁ、その人はお父さんが、自分が買っているインスタントメーカーのコーヒーを福引で当てたのを見てたらしくてだ。電話をくれて、交換する事になったんだよ」 「でも、何か変な感じだネ。朝と味が違うだけなのに、元の味に戻っただけなのに、逆に変な違和感を感じるよ、まぁ、飲みなれてるからいいけどさ」 二口目には、さっきの違和感が嘘の様に無くなっていた。違和感・・・かぁ。かがみが私の耳元で愛の言葉を囁く・・・そういうシチュエーションが既に違和感だらけで信じられなかった。 「こなた、今朝のイメージと現実の話なんだが・・・」 「うん」 「イメージはイメージでしかないと思うんだ。現実とは違う、まぁ、そこはオタクとして生きてきた中で学びとっていると思うが・・・これをかなたが聞いたら激怒するに違いないな。と、話が逸れたな。つまりだ、こなたにとってかがみちゃんは女の子を好きにはなったりしない、ましてや自分に対してそんなことはありえない、というイメージがあったんだよな?」 「そうだよ。かがみは私なんか好きになったりしない、そんなことありえないって思ってた」 でも、そうじゃなかったらって考えられていたら今日の事を受け入れられていたのかな。わからない・・・いや、たぶん、そうじゃなかったら何て、思えていてもきっと受け入れられなかった。きっとかがみは決意を、私のような弱い決意じゃない、もっと強い決意を固めていたのかも知れない。 「かがみは、きっと勇気を振り絞ったんだよね・・・それを私は踏みにじった」 「いや、そうとも限らないぞ。かがみちゃんが今日、本当にそういう事を話すつもりだったかどうかは、かがみちゃんにしかわからないんだ。そこが既にイメージになってしまうんだよ。予測とも言えなくは無いが、恋愛感情となるとそこはその場の勢いもあるからな」 確かに、あの時に私があの映画のラストシーンの事を聞かなければ、かがみは口にしなかったかもしれない。それは、お父さんの言う通り、かがみにしかわからないけどさ。 「私はどうしたらいいかな?」 「そうだな、よく考える事じゃないかな。かがみちゃんは今日突き飛ばされて、拒絶されたと思ったはずだ。きっと、こなたを傷つけてしまったと酷く落ち込んでいるに違いない。ゆいの話だと、あまりにも目が虚ろだったから、警官として放っておけないと言ってたからなぁ」 どうして、私を傷つけたと思ってしまったんだろう。悪いのはわたしなのに、かがみじゃないのに・・・どうして? お父さんは私の表情から心のうちを読み取ったのか言葉を続ける。 「かがみちゃんも、こなたと一緒で、絶対にそんな気持ちを抱かないと思っていたからじゃないかな。前に遊びに来たことがあったときに感じた事なんだが、しっかりしているけれど芯が少し弱い子なんじゃないか?かがみちゃんは」 どうだろう。つかさを守って生きてきたのだから、強いんじゃないかな・・・でも寂しがり屋で強がりだから・・・本当は脆く弱いのかもしれない。それは、私も同じようなものだけど。 「お父さんはさぁ、どうして変だとか思わないの?私の気持ちとか・・・」 「ま、お父さんとしてはだな、こなたが幸せならそれでもいいんじゃないかと思っただけだが・・・」 冷めたコーヒーを一口飲んでから続ける。 「普通に恋愛して、普通に結婚したほうが無論幸せになれる確率は高いだろうな。世間からは冷たい目で見られるわけだし・・・でもなぁ、こなたには強い味方がいたろう?つかさちゃんってさ。普通は姉に想いを寄せている、それがたとえ友人であっても同性愛に関して味方になるって決意を固めるのは簡単な事じゃ無いと思うんだよ。だから、つかさちゃんをみて、あえて反対する気は無くなったんだがなぁ」 「そんな事で決めちゃっていいの?」 「いや、それはかなり大きい事だと思うからなぁ」 私も冷めたコーヒーを飲む、するとカップは空になった。つかさは、かがみと双子で、私と親友で、味方だけど・・・どうしてつかさは味方になるって言い切れたんだろう。そして、かがみには味方はいるのだろうか。 「お父さん。私、部屋に戻るね」 「まぁ、よく考えるんだぞ」 よく考えるか・・・どうすればいいのかわからない事だらけだ。 部屋に戻って、首にかがみがつけてくれたチョーカーを指でなぞる。金属のひんやりとしたハートの感触。 「かがみ、ごめん・・・ごめんなさい」 その声はもう、かがみには届かない。お互いに傷つけてしまったと思い込んで涙する。何だ、わたしとかがみはどこまでも同じ道を歩いていた事に気がつかなかっただけなんだ。 だからこそ、決めなくてはいけないと思うんだ。かがみと世間の茨道を歩くのか、この想いを封印してかがみの心を傷つけてでも、違う相手を見つけてもらうか。 ―選ばなくちゃいけないんだ。 私はもう一度チョーカーについた金属のハートをなぞる。かがみがつけてくれる時、こんな可愛いものは私には、似合わないと思った。けれど今ははずす気になれない。考えが纏まるまでは着けていよう、そう思いつつ、バルーンニット帽を乱暴に脱ぎ捨て、ベッドに倒れこんだ。 何気ない日々:想い流るる前日“互いに違う答え”へ コメントフォーム 名前 コメント 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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架神恭介 Mr.スカー MCヒロシ ニカイア・カルケドン 流樹苗 服部あすか モヒカンザコ太郎 モヒカンザコ先生 清水おしるこ 無神月ルカ 架神恭介 性 学年 攻 防 体 精 FS 発 成 男性 その他 0 0 3 2 20 100 100 範囲:世界全体 効果:精神力増加2点 範囲:世界全体※ 時間:一瞬 消費制約:永続戦線離脱 非消費制約1:女子高生のみ 非消費制約2:敵味方区別なし 非消費制約3:1ターン目のみ使用可能 ※MAP全体+ベンチにいるキャラクターも含める ※1ターン目先手でも発動できる Mr.スカー 性 学年 攻 防 体 精 FS 発 成 男 その他 0 0 10 1 14 100 0 効果:DP2獲得 範囲+対象:ルール 時間:一瞬 タイプ:瞬間型 スタイル:アクティブ 消費制約:ゲーム終了時にDP3消失 ※ GK注:消費制約は、仮にゲーム終了前にこのキャラクターが死んだとしても支払わなければならない。 ※ GK注:消費制約を支払う段階でDPが3よりも少なかった場合、特殊処理としてDPはマイナス扱いとし、相手陣営の所持DPが0だった場合は敗北する。 MCヒロシ 性 学年 攻 防 体 精 FS 発 成 男 0 17 7 3 3 85 100 •効果:即死 -100 •範囲:半径2マス 0.9 •対象:範囲内敵全員 0.7 •時間:瞬間 1倍 •効果付属:なし •補正1:DP5消費 125 •補正2:最終ターンのみ使用可 100 •ボーナス:なし ニカイア・カルケドン 性 学年 攻 防 体 精 FS 発 成 男 1年 18 0 5 5 2 87 0 効果1 •1ターン後死亡・条件達成により解除可能:75(精神即死に準拠) •範囲対象 同マス敵:0.8 •時間 1ターン:1倍 75×0.8×1=60 効果2(バステ「契約」に含む カウンター条件を自動で満たすので純粋なカウンターではない) •死亡カウンター付与:75(時間補正大) •範囲対象 同マス敵:0.8 •カウンター範囲 周囲2マス:+1.0 •カウンター対象 ランダム1体:+0.1 •時間 3ターン:3倍 •カウンター待ち受け時間 1ターン:0.7倍 •カウンター回数 1回:1倍 75×(0.8+1.0+0.1)×3×0.7×1=299.25 バステ「契約」効果数値 60+299.25=359.25 FS2:1.2倍 制約 直接通常攻撃で殺せる相手にのみ有効:0.45倍 精神攻撃:+100 カウンター条件後手死亡(敵からの攻撃を除く):+65(半減32.5) 調整 対象が死亡しても効果継続:10 術者が死んでも効果継続:10 精神攻撃ボーナス:+10 国籍ボーナス:名前など3、能力4、キャラ説5:+12 {100-(359.25×0.45)+100+32.5}×1.2-10-10+10+12=87.005≒87 発動率87% 成功率0% 能力の流れ 1 能力発動 2 同マスの対象に対して通常攻撃判定 3 失敗時には何も起きない 4 成功時(=敵死亡時/ただし、敵は死なない)に精神攻撃判定 5 精神攻撃判定成功時に相手にバステ「契約」付与 6 「契約」者は自軍フェイズに味方を殺さなければフェイズ終了時に死亡 7 「契約」者は敵に殺される以外のいかなる死因においても「契約」が周囲2マスの味方キャラにランダムで移動する 8 「契約」者は通常攻撃か特殊能力の直接効果によって味方を殺した場合のみ「契約」が解除される 流樹苗 性 学年 攻 防 体 精 FS 発 成 女 2年 0 8 6 3 13 77 100 •効果:移動封印 35 •タイプ:付与型 •スタイル:アクティブ •範囲+対象:隣接2マス敵全員 2.2 •時間:1ターン 1 •消費制約:制約無し 15 •付属効果:壁貫通 10 •FS:13 服部あすか 性 学年 攻 防 体 精 FS 発 成 女 1年 0 0 3 2 20 95 100 効果1:2マス強制移動相当:110% 範囲:同マス味方全員:1.4倍 時間:一瞬:1倍 制約:1ターン遅延発動:0.98倍 制限:道連れ死亡あり:0.92倍 制限:味方女性にしか効果が無い:0.75% 効果2:単体で意味のないバステ「いんもーたるα」「いんもーたるβ」付与:3% 範囲:同マス味方全員:1.4倍 時間:永続(実質2ターン):1.5倍 制限:道連れ死亡あり:0.92倍 制限:「いんもーたるα」は味方女性キャラ(服部あすか含む)にのみ付与可能「いんもーたるβ」は味方男性キャラにのみ付与可能:0.75% 消費制約:永続行動不能:40% モヒカンザコ太郎 性 学年 攻 防 体 精 FS 発 成 男 3年 20 0 4 3 3 41 100 スタイル:パッシヴ 効果:初期配置から前方4マス目へ登場 ※GK註1 対象:自分 時間:一瞬 制約1:3ターン目開始時に登場する ※GK註2 制約2:スタメンでなければ効果発動しない ※GK註1:壁を越えて登場はできない。壁があるマスが初期配置の場合、壁の手前で登場する。 ※GK註2:登場タイミングは3ターン目の自軍フェイズ開始(後手の場合は3ターン目後手)である。 モヒカンザコ先生 性 学年 攻 防 体 精 FS 発 成 男 その他 1 1 9 5 9 100 100 効果1:敵リザーバー召喚 効果対象:同マス一人 時間:一瞬 効果2:敵特殊能力強制発動 オプション:陣営変更なし※1 効果対象:同マス一人 時間:一瞬 ※1 •操作してる間も所属陣営は変わらない(敵のみの能力は元々敵のキャラにしか使えない、味方のみも元々味方のキャラにしか使えない) •制約などは普通に操作した時と同様操作してる側が支払う 消費制約:自分死亡(凄惨な死) 非消費制約1:敵か味方かで効果値が変わるような効果は能力使用後巻き戻しが起こり、なかったことになる ※2 非消費制約2:敵味方無差別が付いている能力は使えない 非消費制約3:単体を対象にする能力の場合は基本対象が範囲内全員の方の陣営しか選べない ※2 戦線離脱や強制移動の効果を発揮して、モヒカンの能力発動処理が全て終わった後で その戦線離脱や強制移動を巻戻して、なかったことにします。 複数の効果を組み合わせた能力で、非消費制約1に該当しない方の効果は 巻き戻されずにそのまま残りますが、そのために何かおかしな処理になってしまう場合は その都度GK判断で処理します。 清水おしるこ 性 学年 攻 防 体 精 FS 発 成 女 2年 17 0 5 2 6 100 100 効果1:1マス移動 55 対象:自分 0.75 時間:一瞬 1.0 効果2:通常攻撃 30 対象:同マス敵全員 1.2 時間:一瞬 1.0 制約:自分永続行動不能 40 FS:6 無神月ルカ 性 学年 攻 防 体 精 FS 発 成 男 2年 0 13 9 5 3 79 100 効果: DP1獲得 110 タイプ: 瞬間型 範囲+対象: ルール 1.0 時間: 一瞬 1.0 非消費制約1: 最終ターンのみ 0.65 非消費制約2: 死体のあるマスでしか使えない 0.9 非消費制約3: 消費制約: 防御5消費 +25
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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『みゆきさんを着せ替え隊・後編』 ──着せ替え隊よ永遠に── ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― どんよりとした曇り空だった。湿り気を含んだ弱い風が、あたりを吹きぬけていく。道行く人々は、その気配にほのかに雨の到来を感じとっていた。 かすかな車の走行音がどこからともなく響いてくる。それをかき消すかのように、スズメの短い鳴き声や、カラスの間延びした鳴き声が奇妙なハーモニーを奏でていた。地上には、広大でよく手入れされた庭をそなえる一軒家が、これでもかとばかりに立ち並んでいる。もっとも狭い車道でも六メートルの幅が確保されていて、普通乗用車であれば余裕ですれ違うことができた。そして歩道には等間隔で街路樹が整備され、植え込みには色とりどりの秋の花が賑わいを見せている。 そんな閑静な高級住宅街の一角に、その小学校はあった。 狭いグラウンドは、鮮やかすぎる碧色の人工芝で塗り固められている。それを三方から囲むように、くすんだ灰色の鉄筋コンクリート四階建ての校舎と、度重なる耐震補強工事で無残な姿をさらす体育館と、水を抜かれた役立たずのプールとが、コの字型に配置されていた。築三十年ほどのそれらの建物たちには、いたるところにひびやほころびを見つけることができる。ある種の人間には歴史を感じさせ、あるいはここから巣立った子ども達に思いをはせるかも知れない。 かすかにすえた臭いの漂う児童玄関に『学芸会』と大書された看板が設置されている。 いつもと少し異なる空気を感じる児童たちが。 似合わないスーツを身にまとう先生たちが。 撮影場所を巡り争う保護者たちが。 それら全てが、あたかも偽りの宴に集う愚者たちの群れのように見えた。 その体育館の中で。 黙々とほうきを動かす係たち。 教室に椅子に戻す一般児童たち。 次々と無意味な指示を飛ばす教師たち。 暗幕や舞台装置、装飾品が、次々と取り外されていく。 お祭り騒ぎの時間は終わったのだ。 その片隅で、安物のくたびれたパイプ椅子に腰かけ、しょんぼりと肩を落す一人の少女。 慰めの言葉も尽き果て、その脇で立ちすくむ母親。 約束した。 約束した、必ず来ると。 約束した、今日こそは必ず来ると。 今年六年生になった少女にとって、それは最後の学芸会だった。 今度こそ父親が見に来てくれるから。 そう信じたから。 だから。 普段引っ込みがちだった少女は、その勇気の全てを振り絞って主役に応募した。 クラスメイトが、教師が、母親が、見物客たちが、少女の演技を絶賛した。 なのに。 父親が。 父親だけが。 父親だけが、その輪の中に存在していなかった。 約束したのに。 約束したのに、必ず来ると。 約束したのに、今日こそは必ず来ると。 やがて顔を上げた少女は、輝くような笑顔を浮かべ、ようやく口を開いた。 「私、もっと勉強する。もっともっと勉強する。もっともっともーっといい子になる」 次第に気分が高揚してきたのであろうか。少女はなおも続ける。 「そうすれば、きっとお父さんも、見に来てくれるよね?」 「そうね、きっとそうね」 目頭を抑えながら母親はそう答えた。 いつのまにか霧雨が降りはじめていた。それはあたかも天使の白いベールがこの世を覆い尽くし、全ての痛みを包み隠そうとしているかのようだった。この醜くも美しい悪しき世界のどこかに存在しているであろう、たった十人の善き人々に対して、全能の神の祝福を授けるために。 ◇ ふたたび。 泉邸。 こなたの部屋。 「で、なんなのよ。その見るからに恥ずかしそうな服は」 「んふ。『超昇天使エス○レイヤー』だよ」 かがみの疑問に、いつの間にか黒焦げ状態から復帰したこなたが答える。 「はいはい。どうせゲームか深夜アニメのキャラなんでしょ?」 「ま、否定はしないけど。せっかくだから元ネタもチェックしとく?」 そう言いながら、こなたはスタンバイさせていたPCを叩き起こす。 「とりあえず、オリジナルなビデオとアニメーションとか」 「いらんわっ」 再生開始。 五分経過。 十分経過。 「うわ……エロ……」 思わずかがみがうめく。 「女の子同士で、あんなことしてる」 興味津々という感じで、つかさが画面に釘付けになっている。耳まで真っ赤になっているみゆきですら、視線だけはずしていない。 「ささっ、かがみ。さっそく実践だよ」 と、そこでこなたがツッコンでくる。 「そ、そんなこと、で、できるわけないでしょ!」 すかざず否定するかがみ。だが頬が朱に染まっている事までは隠しようがない。と、そのときである。 「ンー、やはりニホンのアニメには萌えがありますネ~」 妖しげな日本語が部屋に響き渡る。かがみがぎょっとしてその方向に目をやると、いったいどこから現われたのか、あのブクロ系米国人の姿があった。 「パトリシアさん。どうしてここに?」 「コナタにコスプレを手伝って欲しい、言われましタ。もちろん、ワタシだけではないですが」 「え……?」 嫌な予感を覚え、かがみは部屋の入り口の方を振り返る。すると── 「はぅ!」 「……ゆ、ゆたか……!」 ちょうど過激なエッチ動画にショックを受けて卒倒するゆたかを、背後からみなみが抱きとめるところだった。 「……あ、さっきかがみが部屋の鍵を壊しちゃったから、みんな入ってきちゃったんだね」 一人こなただけが納得の表情を浮かべている。ちなみに新たな訪問客たち──あやの、みさお、ひより──も、どうやらPCの映像に興味津々のようだった。 「へぇ、柊ちゃんもこういうのに興味あるんだ。ちょっと意外かな」 「待て峰岸。激しく誤解だから、それ」 「まあひーらぎだって若くて健康な肉体の持ち主だもんな。仕方ねーZE」 「だから話を聞け。頼むからそういう納得をしないでくれ」 「若くて、健康な、肉体っスか?」 「ほらそこ、発言のごく一部だけに変なフォーカスあてんなっ」 さすがのかがみも息が上がりかけている。これだけの大人数相手にいちいちツッコムのは大変なようだった。 ◇ 一通りみゆきをいじり倒したあと、全員で仮装をすることになった。 : : : : 「ちょっと待て。この流れって、なんかおかしくないか?」 「んー、何かな?」 「だって、肝心のみゆきのコスプレはどうしたのよ」 「それはだね、いろいろとオトナの事情があるのだよ、かがみん」 「って、それじゃあまりにも看板倒れだろ」 「もちろん救済策はちゃんと用意してあるよ」 「へえ、どうするのよ」 「いちおう三択にしておくので、好きなのを選んでくれたまヘー」 ①pixivに行って『コスプレみゆきさん』のタグを検索する ②作者のブログで『みゆきさんを着せ替え隊・れびゅー編』を読む ③ひたすら脳内妄想する 「なんかこう、ずいぶんと投げやりだな」 「いいんじゃないの。もともとはpixivの企画を支援するために作られた話だから」 「ったく、しょうがないわね。というわけですので、こちらの方はこのまま続けさせていただきます」 「作者の中の人もAAAでPADな胸を痛めておりますので、どうかお許しいただければと」 「ちょ、おま。そこまで中の人を貶めんなよ」 「いやだって事実だし……」 「たとえ事実でも、そこは生暖かくスルーしてあげるのが礼儀ってもんでしょうが」 「否定はしないんだ」 「……気を取り直しまして、『みゆきさんを着せ替え隊・後編』を続行いたします」 「あ、逃げた」 「うるっさい」 ◇ 一通りみゆきをいじり倒したあと、全員で仮装をすることになった。 「ここはやっぱりお約束でしょう」 「そういうもんなのか?」 「そそ。じゃあ、いっつ、しょーうたいむっ!」 おのおのが着替えた後、パーティの準備が整えられている泉家のリビングに移動した。 「おー、意外とひよりんのマーズがいい感じじゃん? これなら充分バイトでイケルよ」 「え、そ、そうスっかね」 ジュピターこなたのお世辞にテレながらも、姿見の前でくるりとターンを決めてみたりするあたり、マーズひよりもまんざらではないらしい。ピタリとポーズを取ると、誰もが知っている決め台詞を吐いてみる。 「火星に代わって折檻よっ!」 たちまち拍手と歓声が巻き起こった。 「その調子デス。もーっと自信持ってくだサイ、ヒヨリン。貴女はカワイイ、カワイイのですヨ」 そう言うパティはヴィーナスの仮装である。今にも胸元が破裂しそうになっていることは、あえて誰も指摘しない。 ところでロングヘアなかがみは、なぜかショートカットのマーキュリーのコスプレである。正直、めちゃくちゃ無理があると全員が思っていたが、ジュピターこなたのたっての希望で押し切られた。 「亜美xまこ、またはまこx亜美はガチなのだよ、かがみん」 「百歩譲ってそれが正しいとして、なんで私がそれに巻き込まれなくちゃなんないのよ」 「言ってほしいの。ねえ、言ってほしいの」 「……いや、いい。いろいろと」 深く追求すると墓穴を掘りそうな予感に震えるマーキュリーかがみだった。 「えーっと、私のこれは……なんだっけ?」 「日下部のはセーラーサターンよ」 疑問符まみれのサターンみさおに、そんな感じでマーキュリーかがみがフォローする。 「このキャラはね、出番自体は少ないんだけど、当時はセーラーマーキュリーに次ぐ人気を誇ってたんだヨ。『土萌ほたる』って名前だったから『萌え』の語源になった、という説もあるくらいだし」 さらにジュピターこなたが詳細な説明を加えていく。 「そっかそっか。これで私も萌え~キャラの仲間ってわけだな」 「いやいや。みさきちのバカキャラって位置づけは不変だから」 「バ、バカキャラって言うな~!」 「まあまあ、みさちゃん」 困ったような微笑を浮かべつつ、サターンみさおをなだめているのはプルートあやのだ。これはまずまずのキャスティングだとみんな思っている。 「それにしても、みゆきがちびムーンだなんて。かなり無理があるんじゃ」 「うーん。髪の毛の色つながりにしたつもりだったんだけど。せっかくのボインが50%減(当社比)になっちゃったような気がする」 「じゃあ、なんでつかさはムーンなのよ?」 「いやー、なかなかいい配役が思いつかなくて」 「……さては、段々めんどくさくなってきたな」 だが金髪のウィッグを装着したつかさは、意外にもノリノリであった。 「ムーン・ティアラ・アクショーン!」 すっかり気に入ってしまったのか、ムーンつかさが硬質ゴム製のティアラを所かまわず投げつけている。これはこれで、いろいろと危険かもしれない。 「ゆ、ゆたか……似合ってるよ」 「みなみちゃんも、可愛いよ」 そんなカオスな状況で二人だけの世界を構築しているのが、ウラヌスみなみとネプチューンゆたか。はまり過ぎててちょっと怖いな、とマーキュリーかがみは思う。 「おおおおっ、すばらしい!」 そんな中、興奮に打ち震えながらカメラのシャッターを切っているのはそうじろうである。今回のパーティのカメラマンとして採用されていた。 「いっそのこと、お父さんもタキシード仮面のコスプレでもしちゃおうかな」 「お父さん、自重」 そう言い放つジュピターこなたの温度は、普段より二~三度くらい低いかもしれない。カメラを取り上げられると、サターンみさおとウラヌスみなみに引きずられ、あっさりと退場処分となった。 「──こなたぁ。お父さん、まだなんにもしてな~い──」 「泉さんとお父様は本当に仲がよろしいのですね。うらやましいです」 「えー、そかなー。いつもあんな調子だし。それにぺったぺた引っ付いてきて困ることもあるんだけどね」 「それでも、ですよ」 「……みゆき?」 ある種の羨望の色がみゆきの瞳に浮かんでいることに、かがみだけが気づいていた。 ◇ さてここで、恒例の誕生プレゼント贈呈である。 「お誕生日おめでとう、ゆきちゃん」 「まあ、これは可愛らしいネックレスですね。ありがとうございます」 「はい、私はこれよ」 「こ、これは……幻の名作の呼び名も高い、佐藤○輔の『○かなる星』の初版本ではありませんか。よく手に入りましたね」 「そそ。その佐○大輔の『遥かなる○』の初版本よ。まあ、たまたま手に入ったから」 「わかったよお姉ちゃん。これを探すために、最近神某町に通ってたんだね」 「こら、あんたはまた余計なことを」 「えへへ、ごめん。でもてっきり私はこなちゃんとデートしてるんだとばっかり思ってたから」 「ち、ちが……!」 図星を差されたかがみがなんとか反論しようとするが、朱に染まった頬が全てを物語っている。そこにこなたがさらなる追い討ちをかけた。 「おーや、かがみんや。嘘はよくないよ、嘘は」 「う、うう、うるさいぃ!」 「まあまあ、二人は本当に仲良しさんですね」 「ほんとだよね~。いいなぁ」 つかさとみゆきは、そんな婦婦漫才を繰り広げる二人のことを微笑ましげに見つめていた。 そんな調子で、訪問客がおのおののプレゼントをみゆきに差し出していた頃、こなたの様子がにわかにおかしくなった。まるでくのいちのように、かがみの背後にそっと忍び寄る。 「おっとこんなところにXXが」 何かにつまずいたようなふりをして、こなたがガムシロ入りのアイスティをかがみに向かってぶちまける。反射的にかがみはその場で屈みこみ、紙一重でその攻撃を回避。 「ちっ」 「おい、今『ちっ』って言ったか、『ちっ』って」 舌打ちしたこなたのことを見咎め、追及しようとするかがみ。だがそれよりも速く、今度はひよりがまったく同じパターンで仕掛けてきた。 「おっとこんなところにXXがあったッス!」 声と同時にかがみは反応。右足を軸にくるりと身体を半回転させ、間一髪でその一撃をかわす。しかしさらにひよりの背後からパティが襲い掛かってきた。 「おっとコンナところにXXがあるなんテェ!」 かがみ、突発的に十六Gをかけて仮想ミサイル群を……じゃなくて、突発的にひよりの背中に飛び乗り、さらにパティの後頭部に両手をかけて跳び箱の要領で跳躍する。その上で、もつれるように倒れこむひよりとパティを尻目に、両足をきちんとそろえて着地を決めた。オリンピックの跳馬競技であれば幻の十点満点がもらえそうである。 「あた、あたしを踏み台にしたっ!」 驚愕の表情を浮かべるひより。しかし、どこかに嬉しそうな雰囲気をまとっているのは決して気のせいではない。握り締められた左手の親指だけが『グッ!』と天井めがけて突き立てられていた。 「いや、ひよりん。そういうお約束はいいから」 敵味方の区別も忘れ、思わずこなたがツッコミを入れる。 「こなたといい……お前ら、いったい何を狙ってるのかな?」 あまりのわかり易さに、いい加減かがみも切れそうになってきたところだった。 「きゃあああっ!」 その声よりも速く、かがみの頭上に結構な量の液体が降り注いできた。 「ああ、あの、す、すいませんっ!」 真っ青になったゆたかがぺこぺこと頭を下げる。 「あちゃー。さすがのかがみも、ゆーちゃんの天然攻撃までは防げなかったか」 「お ま え な ぁ~」 ついにブチ切れたかがみは、こなたの胸ぐらをつかんでつるし上げにかかろうとする。 「まあともかく、そんな格好じゃ風邪引いちゃうよ。お風呂も用意してあるから、とりあえずあったまろ? それにオレンジジュースだから、髪だって洗わないとべとべとになるし」 「なんでそんなに準備万端なんだ……とか聞いちゃ負けなんだろうなぁ」 「かがみもずいぶんと慣れてきたね」 「まるでギャルゲー世界の住人になったような気分だわ」 がっくりと肩を落としたかがみは、売られていく仔牛のような風情でこなたに手を引かれ、風呂場へと向かっていく。もちろんBGMは『ドナドナ』だった。 ◇ それからしばらく後。 (†1) 「ところでお姉ちゃん達、ちょっと遅いね」 姉の身に何かあったのではないかと、つかさが当然の疑念を口にする。しかしパティには別のひらめきがあったらしい。 「Hey、ヒヨリン。カメラの用意ですネ」 「えっと、いまいち話が見えないんだけど。どゆこと?」 「わかりませんカ? これだけ遅いということはデスネ、コナタたちはきっと今頃、お風呂でイケない行為に走っているに違いないのデス!」 「おおっ!」 このパティの爆弾発言に、とたんに部屋の空気が色めく。 「しーっ。静かにしないと気づかれるッス」 デジカメのメモリの残量を再確認したひよりが、今にもパティと行動を開始しようとする。 「いやでも、さすがに盗撮はまずいんじゃ、ないかな……」 「そ、そうだよパティちゃん。お邪魔虫さんは馬に蹴られて死んじゃうんだよ」 妹ズがなんとか阻止しようと口々に声を上げる。しかしその彼女たちも『こなたとかがみがイケない行為に走っている可能性』自体を否定しようとはしなかった。 (†2) 「盛り上がってるとこ悪いけど、あんた達が期待してるようなことなんて全然ないから」 そう言いながら現れたかがみは、これ以上ないという不快さを示す表情を浮かべていた。 「あー、可愛いっ!」 こなたとかがみの着替えはお揃いのヴォーカロイド。ご丁寧にこなたは髪の毛をツインテールに結い直している。そして両手のネギを振り回して決めポーズ。 「らっきらきにしてやんよっ!」 「おおおおおーっ!」 再び歓声に包まれる室内。しかしただひとり、この雰囲気に飲まれていない人間がいた。 「こなたっ! 私はもう自分の服に着替えるわよっ」 「えー、いいじゃん別に。せっかくペアルックになったことだし、ここはひとつ記念撮影でも……」 「やらん。もう帰るっ!」 「その格好で?」 「アホかっ。こんな格好で帰れるわけないじゃない!」 「じゃあ泊まっていけば?」 「そんなマネできるか。明日は学校あんのよ。だいたい制服だって……」 「大丈夫だよお姉ちゃん。ちゃーんと学校の制服も用意してあるよ」 のらりくらりと微妙にはぐらかすこなた。その態度に苛立つかがみに、つかさがダメなフォローを入れる。 「ちょ……なんだよお前ら、最初から『計画通り』なのか? そうなのか? え?」 「うー、めんご。ほんとはこなちゃんの指示で」 「やっぱりお前の仕業か」 「誤解だよ、かがみ。半分くらいは不可抗力だって」 「半分かよ!」 完璧にだまし討ちを食らった形のかがみは、どうにも怒りが収まらない。そこで、こなたは素早く間合いを詰めると、かがみの耳元でそっと囁いた。 「みんなが帰ったら、エス○レイヤーの続き、見よ」 「えっ……あ、うん」 一瞬虚を衝かれたかがみは、頬を赤らめながらコクリとうなずく。その反応を見て、こなたはしてやったりとばかりに無言でニヨニヨと笑う。この機転で、もはや服装のことなどどーでもよくなっていた。 ◇ 「医者をめざした理由、ですか?」 「なんとなく今まで聞きそびれちゃったけど、みゆきのことだから何か深い理由でもあるのかな、と思って」 宴もたけなわ。その片隅では、セーラーちびムーンとヴォーカロイドとの対話という、かなり超現実的な光景が展開されていた。 「お恥ずかしい話なのですが、笑いませんか?」 「うん、約束する」 「痛いのが……イヤなんですよね」 苦い笑みを浮かべながらみゆきが答える。 「あー、そういえばみゆきって、歯医者とか苦手だったっけ」 「今までさんざん痛い思いや、いろいろとイヤな経験をしてきましたから。ですので、一人でもそういう方を減らせたら、と思いまして」 「ああ、なんかみゆきらしいかもね」 「後は……ひょっとしたら、父のことを追いかけたかったから、かも知れません」 「お父さん?」 予想の斜め上の展開について行けず、かがみは小首を傾げてしまう。 「父が医者だということは、お話したことありませんでしたよね」 「うん、初耳だわ」 「昔から本当に家庭を顧みない人で。たまに帰ってきても電話一本ですぐ病院にとんぼ返り。母もずいぶんと寂しい思いをしていたようです。そして私も」 「そう。大変なんだ、いろいろと」 「あれは確か小学校六年の時でしたか。めずらしく学芸会の主役に立候補したことがありました。最後の学芸会でしたから、何か一つくらい挑戦してみたかったんです。そして……」 「ひょっとしたら、お父さんが見に来てくれるかも?」 「はい。両親はまるで我が事のように喜んでくれて。父も『必ず見に行くから』と約束してくれました。でも……」 「来て──くれなかったんだ」 「仕方がないんです。わかってはいたんです。この世には、父の手でなければ救えない人が何人もいて、そのためには私たちが我慢するのは当然なのだと」 不意に、高校二年のころに交わした何気ないやりとりが、かがみの脳裏に甦った。 『みゆきは何か、夏休みの定番ってある?』 『そうですね。今年もいちおう、海外に行く予定がありますね』 それを聞いたとき、かがみは内心とても羨んだものだった。だがその言葉の裏に、そんなドラマが隠されていたとは。 「私が医者を目指したのは、父を見返してやりたかったから。ちゃんと仕事をしながら、でも家庭も両立できる。それを証明することで父に復讐したかったから。そう思っていました」 普段と何一つ変わらないみゆきの微笑み。だが、そんな彼女の瞳の奥底に潜む深い哀しみの色を、かがみは確かに見た。 「でも最近、だんだんわからなくなってきてしまって。本当は復讐なんかじゃなくて、父に少しでも近づきたいから、父の見ている世界を見てみたいから、父に振り返ってもらいたいから、父に認めてもらいたいから、なんだかそんな気もするんです」 大嫌い。 でも大好き。 届かない想い。 父親を愛してみたい。 恨んでも恨みきれない。 憎んでいてもなお求めてしまう。 そんなみゆきの複雑な心根を、かがみは垣間見たような気がした。 「すいません、こんな話をしてしまって。今日はなんだかおかしいですね」 「ううん、そんなことない。私には何の力にもなれないけど、こうやって話を聞くくらいならいつでも。ね?」 「はい、ありがとうございます」 「ねえみゆき。お父さんと過ごしたことって、何か思い出せない?」 「父と過ごした記憶……ですか?」 わずかに首を傾げたみゆきだったが、すぐに何かを思い出す。 「……ああ、そうですね。幼稚園の年長組の時に家で開いた、ハロウィンパーティだったような気がします」 「それで、今日のパーティが楽しみだって言ってたのか」 「あるいは、そうかもしれません。今まですっかり忘れていたのですが、無意識の領域で反応していたのでしょうか」 わずかに宙を舞う、みゆきの視線。あるいはその時の思い出がよぎったのだろうか。 「ねえみゆき。お父さんと過ごしたことって、何か思い出せない?」 「父と過ごした記憶……ですか?」 わずかに首を傾げたみゆきだったが、すぐに何かを思い出す。 「……ああ、そうですね。幼稚園の年長組の時に家で開いた、ハロウィンパーティだったような気がします」 「それで、今日のパーティが楽しみだって言ってたのか」 「あるいは、そうかもしれません。今まですっかり忘れていたのですが、無意識の領域で反応していたのでしょうか」 わずかに宙を舞う、みゆきの視線。あるいはその時の思い出がよぎったのだろうか。 「そういえば最近は、お医者さんも患者に訴えられたりとかで、けっこう大変なんだってね」 「そうですね。たとえば産婦人科や小児科の場合ですと、医師一人あたり一件以上の訴訟を抱えている計算になる、と聞いたことがあります」 「もしみゆきがそんなことになったら私に任せて。どんな手を使ってでも必ず勝訴に持ち込めるように頑張るから」 (うーん。いくらなんでも、ちょっとお子様すぎたかな) 暗くなってしまった雰囲気を払拭しようとしたつもりが、実際に口にしてみるとあまりにも軽すぎる発言に思えて、かがみは少し落ち込んでしまう。 「ええ。万が一の時には、この世の誰よりも頼りにさせていただきます」 だがみゆきは満面の笑みでかがみの言葉に答えた。彼女はそれも含めて、ちゃんとかがみのメッセージを受け取っているようだった。 そんな二人のやりとりを、こなたがいつものニヨニヨ顔で眺めていた。 「あんた、みゆきの事情、知ってたの?」 「うんにゃ」 首を軽く左右に振りながら、こなたは答える。 「じゃあ、どうして」 「大した意味じゃないんだよ。みゆきさんにはいつも心の底から笑っていてほしいな、と思っただけ」 「そ、か」 こいつには敵わないな、と改めて思うかがみだった。 ◇ 「ねえ、来年もやろうよ。コスプレハロウィン誕生パーティ」 「……もう少し穏当なネーミングはないのか」 呆れ声でかがみがこなたにツッコむ。 「いいですね。私は大賛成です」 「そ、そうなんだ。ひょっとして、楽しかったとか?」 うふふ、と微妙な笑顔で答えるみゆき。 「まあ、みゆきがそういうなら、私は別に反対しないけど」 「じゃあ来年の今頃、またみんなに声かけるヨ。次回はコスプレ衣装ももっと用意するし」 「やる気満々だな。このエネルギーをもう少し勉強にも向けてくれれば……」 「かがみには乙女の夢が理解できないんだね。可愛そうに」 「だからそんな乙女の夢はいらんと言っとるだろ」 先ほどこなたの事を見直したのは、やはり一時の気の迷いだったのだろうか、とかがみは深い深いため息をついた。 ◇ 翌日。 月曜日。 「お姉ちゃ~ん、宿題見せて~!」 ……つかさだけが宿題を忘れた。 (Fin) コメントフォーム 名前 コメント 佐藤大輔が出てくるとは思わなかったなw -- 名無しさん (2009-01-22 19 36 13) 何このカオスwww -- 名無しさん (2008-11-18 15 49 54)
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「あんたさあ、私達以外にリアルの友達って居たことあるの?」 「えっ」 それまでもきゅもきゅとコロネを貪っていたこなたが、びくっとその動きを止めた。 「? ちょ、ちょっとこなた……?」 「…………」 何気ない一言のつもりだった。 飄々としたこなたのこと、どうせ何かしらのネタで返してくるに違いない…… かがみはそう思っていた。 「………うっ」 こなたが嗚咽を漏らすまでは。 「!? こ、こなた!?」 予想外の展開に、かがみは動揺した。 「……えぐっ、うっ……」 こなたは泣いていた。 小さな肩を震わせ、ぽろぽろと涙を零していた。 「あ、あっと、えっと……」 困惑し、狼狽するかがみ。 どうすればいい? 否、頭ではわかっていた。 このいたいけな少女を泣かしたのは他でもない自分なのだ。 今すぐにでも、自分は心の底から謝罪をしなければならない。 しかし、それを伝える言葉が浮かんでこない。 ごめんなさい? 悪かったわ? 冗談だったのよ? 違う、違う、違う。 そんな言葉じゃないんだ。 今眼前ですすり泣いている親友に向けるべきものは、そんな言葉じゃなくて―― 気が付くと、かがみはこなたを抱きしめていた。 「……かがみ……?」 ふと顔を上げ、きょとんとするこなた。 「…………」 かがみは何も言わず、黙ってこなたを抱きしめる。 ぎゅっと、強く。 「……かがみ……」 こなたの表情が和らいでいく。 「……ごめんね」 「ううん」 「ごめん……」 「もういいよ、かがみ」 こなたは笑った。 すっかり、涙は枯れていた。 あの頃の自分。 泣いてばかりいた自分。 そんな自分も、今度こんな風に抱きしめてやろうと、こなたは思った。 コメントフォーム 名前 コメント oh...sogood -- 名無しさん (2024-03-07 23 41 50) GJ! -- 名無しさん (2022-12-18 11 35 21) 完全なギャグかと思ったら、意外と真面目な話だったな。 -- 名無しさん (2012-11-23 10 49 44) 口を尖らせて涙をこらえるこなたを想像すると 萌え死にそう -- 名無しさん (2011-10-23 18 25 41) えと・・んと・・ -- 名無しさん (2010-01-15 22 20 38) いやいや、俺の嫁。 -- 名無しさん (2010-01-15 07 12 35) こなたは俺の嫁 -- 名無しさん (2009-12-07 19 56 20) ★★★★★ -- マヨラ (2008-10-05 02 52 30)
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「おはよーこなちゃん、お姉ちゃん!」 「おはようございます!お姉ちゃん、かがみ先輩!」 「やぁつかさ、ゆうちゃん、おはよ。ふぇ・・・はっくしゅんっ!」 はぁっと吐く息は白く空に消えていく。耳や頬は冬ならではの冷たさだ。 センターまで、あと1週間。なんだかソワソワする。けど、私はそれとは関係なくフワフワした感覚でいる。 「ホラ、こなたっ!マフラー忘れてるわよ。大事な時期なんだから、気を付けないと!」 全く、と悪態をつきながら私はこなたの首にマフラーをまく。あぅあぅ言いながら巻かれているこなた。 こいつは以外にしっかりしてると思えば、こういうところでだらしない。そこは3年目でも変わらないなぁ。 「ふふっ。かがみ先輩、奥さんみたいですね。」 「あぁ、確かにそうかも。お姉ちゃんとこなちゃん、段々恋人らしくなってきたね。」 ・・・妹よ。その純粋で天然な所は長所でもあり、短所でもあるのよ?自覚してくれ。 とかなんとか考えていても、鼓動は早くなる一方。頬も耳も冬なのにぽかぽかだよ。 「な、何朝っぱらから恥ずかしい事言ってんのよ!?ほらさっさと行くわよっ!」 「ぐぇ。か、かがみ・・・マフラーひっぱんないで・・・」 「つかさ先輩?」 「なぁに、ゆたかちゃん?」 「かがみ先輩って可愛いですね。」 「うんそうでしょう?かぁいいよね?」 「外野うるさいわよっ!」 何故朝からこんな恥ずかしい目にあっているのか。それはクリスマスが始まり。 あの日、私とこなたは、所謂恋人同士になった。その証はこなたの右の手首にある。 我ながらちょっと恥ずかしい。でも、幸せ。右手首の紫と青の螺旋を見るだけで胸が温かくなる。 きっとこれがフワフワした気持ちの正体。好きっていうトクベツな感情。 「ふふっ。」 「何?どうしたのかがみ?」 無意識のうちに笑みがこぼれてしまう。全くたるんでるなぁ、私。ちょっとらしくないかな? 「なんでもないわよ。」 冬の青空は眩しくて綺麗だ。肌に触れる空気も澄んでいる。私は一つ深呼吸。 「さ、行きましょ、こなた。」 「うん、かがみ。」 「あ、置いていかないでよお姉ちゃん!」 「待ってくださーい!」 今日も始まる、同居人兼恋人との大切な優しい日。 ☆☆☆☆ 「・・・ちゅうワケで、ってもう時間やな。ほな今日の授業はここでしまいや。お疲れさん。」 黒井先生の言葉と同時に響き渡るベル。ちなみに私の腹時計も、ぐーっとベルが鳴る。 「おっ、なんだー柊ぃ。腹鳴らしてさ。ま、私もめちゃくちゃ減ってるけど。」 「もし良かったら柊ちゃんも一緒に寄り道でもどう?」 「んー・・・んじゃお言葉に甘えます。ほら日下部も早くしなさいよ。」 八重歯が可愛らしく光る日下部と今日も菩薩のような笑顔の峰岸。 高校3年間、ずっと同じクラスだ。付き合いだけならこなた達よりも長い。 それだけに、この2人には気が許せるし、とても安らげる場所でもある。 「そういえば最近泉ちゃんとどう?」 「そーだそーだ!!付き合い始めてだいたい2週間ぐらいだろ?」 むぐっ、とむせてしまう私。最近こんなんばっかな気がする。なんなんだ。これが付き合い初めの洗礼なのか? 私達が付き合っている事を知っているのはごくわずかの人だけである。 やっぱりどこかで背徳感や知られたくないっていう気持ちがあるのかもしれない。 覚悟はしていた。幸せになる為なら大丈夫、なんでもやる。でもいざとなると、なんとなく切ない。 だからなんの気兼ねもいらずに話せる人達にはとても感謝している。無論、この2人も例外じゃない。 「まぁ、普通なんじゃない?来週センター試験だから遊びにはいけないけどさ。」 「ふーん。って普通じゃ面白くねーだろ。なんかないのかよ?こうさ・・・」 「べ、別に面白くなくてもいいでしょーが!」 「そうね。確かに普通って簡単に見えて難しい事よ、みさちゃん?私はいいと思うよ、普通って事。」 峰岸はふわりと笑っている。特別になっても、普通でいる。今の私にずしりと響く言葉。 特別になったのに。せっかく勝ち取った特別なのに。あまりに普通すぎる『特別な日々』。 「そんなもんかねー。ノロケの一つでも聞かせてくれてもいいのにさ。」 「・・・そのノロケがないから困ってるんじゃない・・・」 「え?」 「なに?」 ☆☆☆☆ 今までのような普通な毎日が嫌なワケじゃない。むしろ峰岸の言うように普通って大切な事。 それでも、やっぱり夢はみちゃう。手をつないだり、どこか遊びに行ったり、2人だけで過ごしたりしたい。 ワガママなのは分かってる。それでも私はさらなる幸せを求めてしまう。 「なるほどなー。でも別に悩みって程じゃないんじゃね?」 「柊ちゃん、その事泉ちゃんに話したの?」 「うーん・・・ここからが本題というか・・・」 「どいうことだよ?」 「・・・ホントにこなたは、私の事、好きでいてくれてるのかなって。」 「は!?」 「・・・」 「聞けないのよ、怖くて。拒絶されるんじゃないか、ホントは・・・同情で付き合ってるんじゃないかなって。」 こんなに私は弱かった。強くなったつもりだったのに、こなたと肩を並べてるつもりだったのに。 自分が嫌い。こなたを信じてあげられない自分、普通に満足できない自分、強くなれない自分。 「なら、もう一度泣き虫に戻る?柊ちゃん。」 「あ、あやの・・・」 「・・・泣き虫?」 「『前』の柊ちゃんは泣き虫でも、諦めなかった。追いかけて追いかけて、未来を掴んだ。」 泣き虫。追い掛ける。未来。諦めない。そういわれてズキッと痛む胸。 峰岸の目に、雫石が見えた。その姿が強くて、自分にないものを持っているようで。 「本当の強さ、そんなの言葉遊び。大切なのは意志じゃないかな? 犯した過ちを取り戻そうと堅い意志であがく。それが柊ちゃんの力。」 意志。足掻く。そうだ、そうだ。忘れてた。アホだ、私。やっぱりたるんでた。 「それを忘れないで、柊ちゃん。柊ちゃんの力は柊ちゃんにしかないものだから。」 「・・・私、行かなきゃ。こなたの所に、行かなきゃ・・・」 「・・・仕方ねーな。私達の事はいいから早く行けって!」 にかっと笑い、背中を叩かれる。ちょっと痛いけど、逆にそれが嬉しかった。 「ありがと、日下部。ありがとう、峰岸。危なく見失うトコだった。今度、何かおごるね。」 「いってらっしゃい、柊ちゃん。」 校舎から見える夕焼け。朝の眩しさとは違うもの。それを背に私は走る。大好きな、あいつの元へ。 「・・・行っちまったな。」 「大丈夫よ、きっと。『今』は大丈夫。柊ちゃんと、泉ちゃんなら。」 ☆☆☆☆ 夕暮れ。冬なので暗くなるのが早くなっている。それでも空は紅色に染まり、世界をも染めている。 校門を出たところである後ろ姿を見つけた。その後ろ姿は小さい。青い髪が紅と混じり、ゆらゆらゆれている。 「こなたっ!」 「あ、かがみ。さっきC組覗いたらみさきち達といたからてっきり・・・」 「あれ?つかさとみゆきは?」 「黒井先生に用事があるみたいで、先帰ってて、だってさ。」 「そっか・・・」 「なんか、久しぶりだね、かがみと2人で帰るの。」 ニヤニヤっと笑っているこなた。なんか心を読まれているようで悔しい。 色んな意味で、ドキドキしている私の胸。下手したらミサンガを渡した時よりも。 「そ、そうね。最近は皆で勉強して、その後帰ってたしね。」 「あと1週間でセンター試験か・・・早いね。てかもう卒業だよ!?」 「確かに。あんたと住み始めて3年、か。」 そうだ、あれが始まりだった。ドアを開けたら、こなたがいて。あの日からもう私は惹かれていたんだ。 「色々あったねー。風邪引いて看病して貰ったし。料理の腕も上達したね、かがみん?」 2人で過ごした毎日。笑いあって、ふざけあって。たまに喧嘩したり、怒ったり、泣いたりした。 何も変わらない。今の特別だと思ってる日も、前の日常も、同じ。 「それを言ったら、あんただって。最初は全然つれなかったのに、今じゃこんなんだしねー。」 「こんなんって!失礼なかがみん!」 私は分かってなかった。特別な事なんて何もない。私達はずっと私達。 こなたが、私をどう思ってるかなんて、分からない。でも、私はこなたが、好き。 「あはは、うそうそ。冗談よ。こなたは成長したわ。私が保証する。一番近くにいた私がよ?」 「むぅ。ちょっと照れるじゃないか。・・・ありがと、かがみん!」 こなたの思ってる事、どんな事も受け入れよう。受け入れて、悩んで、足掻いて私は進む。こなたと幸せになる為に。 後悔しないように、させないように、私は進み続けよう。歩き続けよう。これが、私の力。 「ねぇ、こなた?」 「なんだいかがみん?」 ☆☆☆☆ 「やー、買った買った。久しぶりのゲマズだったから奮発しちゃったよ。おかげでもう7時過ぎちゃったね。」 「ま、でもいいんじゃない?息抜きも必要だし。私もなんだんだで楽しかったし。」 町は夜の闇で覆われている。それでも月と星達が煌めいている。美しく、強く、この世界を照らす。 「ありがと、かがみ。誘ってくれて。」 「あ、いや・・・その・・・」 「実はさ、前々からどこかに行こう、一緒に2人で帰ろうって誘おうと思ってたんだ。」 「え?」 「んー、でもさ・・・なかなか言いだせなくて・・・」 頬っぺたを照れるようにかくこなた。こなたの頬が夜でも分かるぐらい紅潮してる。 「なんと言うか・・・んー、怖かったんだよね。本当に付き合ってるのか、かがみは私の事、本当に好きなのかなって。」 あれ?どこかで聞いたことがあるようなセリフだ。こなたは申し訳なさそうに苦笑いしている。 「でもさ、やっぱ違うよね。私達の関係が変わっても、かがみはかがみ。ずっと一緒にいたかがみ。」 それでも力強い瞳。そして凛とした表情。やっぱりこなたはこなただ。私の大好きなこなた。 「私の大好きなかがみ、だよね。だから私は受け入れられるよ。今までみたいに、ね。だから・・・」 あぁ、そういえば、まだ言ってなかったな。焦りすぎて、テンパっててあの時言えなかった言葉。 「好きだよ、こなた。」 「・・・え?何て?」 特別な日々が、日常へ。これが私達なんだ。2人で見失ってた普通。でも、もう大丈夫だよね。 「は、恥ずかしいんだから、あと1回しか言わないからねっ!」 「・・・うん、聞き逃さないよ、かがみん?」 うーん、余裕な表情がちょっと悔しい。やっぱりこんな感じが、私達にはお似合いなんだ。 「・・・大好き、だよ。」 「私もだよ、かがみ。」 大切で、かけがえのない、この普通。2人でなら守れる。ううん、守ってみせるよ。 満月の夜に、美しく映えるこなたの笑顔。ずっとずっと傍にいよう。毎日毎日、笑いあおう。 「さ、ほら。さっさと帰って勉強するわよ!」 「あー、待ってよかがみ。」 私達は歩き出す。どちらともなく握る手。温もりと、幸せを胸に私達は歩く。 長く、辛い道のりかもしれない。それでも、私達は止まらない。手をつないで歩いてゆく。 ゆっくり、ゆっくりと。 ☆☆☆☆ コメントフォーム 名前 コメント ほんとっ、こなかがって言うジャンルに出会えて良かった GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-01-04 23 52 51) こなかが最高! -- 名無しさん (2017-12-26 21 29 39) なんで私の顔、こんなニヤけてるのッ! -- ぷにゃねこ (2013-01-25 17 29 02) 最後の最後まで魅せてくれました! ありがとうございます! -- 名無しさん (2012-11-19 16 11 09) こなたかがみセンターガンバ! -- かがみんラブ (2012-09-17 06 19 57) あふぅ! かがみん萌えヽ(;*´ω`)ゞ -- かみのまにまに (2010-04-23 10 01 30) 888888 -- 名無しさん (2009-11-21 14 03 54) 感動しました!こんなステキな作品に出合えてよかったです これからも頑張ってください -- saori (2009-07-12 12 43 58) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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25話? 未定後の別視点版 桜藤祭終了後、私たちは体育館で打ち上げ会について会議していた。 「それじゃ、打ち上げ会はどこにする?」 「家が広いからゆきちゃん家かみなみちゃん家がいいんじゃないかな…?」 「なるほどぉ!」 「高良の家って広いんだってなー!鹿の頭とかトラの毛皮とかあんのかな~?」 「鹿の頭って確か薬になるんだよね?」 「それは鹿の角ね…」 「あの…私の家に来て頂くのは構わないのですが…私の家もみなみさんの家も 少し遠い所にあるので…帰る時の心配があるのですが…」 「…(コク)。…それに…ゆたかが疲れてないか心配…」 「みなみちゃん…。私は大丈夫だよ!」 「そこはみんなで泊まってしまえばいいのではナイデスカ~?」 「でも、一応そのことも考えた方がいいかなあ?じゃあ、家にしようよ! 今日はお父さんとお母さんは旅行に行ってるし。お姉ちゃんたちもたぶん許してくれるよ」 「おぉ~。それなら大丈夫っすね!柊先輩の家からなら泉先輩の家は近いから!」 「それじゃ決まりネ☆」 「て…あれ…?おねえちゃんは?」 ひよりが動物的な本能で、ある電波を察した。 「…はっ!かがみ先輩もいない!?パティ、まさかこれは…」 「う~ん、なんだかロマンスの香りがするネ♪」 In体育館倉庫 「明かりを付けたらダメデ~スよ?」 パティが既に聞き耳を立てて、みんなを手招きしている。 「暗いよぅ…」 「ね、ねえ…だ、だめだよぉ、覗き見なんて…」 「…(コク)」 「いやいや!あの二人の先輩は前々から何かあると私は睨んでたっす!私はそれを見届けなければならないっす!」 「だめだぁ…ひよりちゃんが止まらないよぉ…」 「どこ?どこだ?暗くてよくわかんねーんだってヴぁ」 「みさちゃん、そんなに押さないで…」 「あ…いましたよ。すぐ右のところに」 一同は、窓の奥を見ながら耳をすます。 『かがみって優しいよね』 はにかむようなこなたの声が聞こえる。 『な…なあに、突然?…そんなこと言って…』 少し恥ずかしがっているようなかがみの声。 『私…いっつもかがみのことからかってばかりだけどさ…』 「ちょ、ちょっと…これはマジでイイ感じじゃないっすか!?」 「なんだかこなちゃん、いつもと違う感じ…」 「うふふ、そうみたいですね…」 『私…かがみのことが好きだよ!』 「!!!!!!!」 「ワ~オ、やっぱり愛の告白ネ♪」 「お、おねえちゃん!!?」 「キ、キタぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」 『…女の子同士だけどさ…でも、私、かがみのこと好き』 「うおぉぉ~~~!!!!泉先輩完全百合発言っす!!!やばいっす。鼻血出そうっす」 「…ひより落ちついて…」 「なんだぁ?ちびっこの声しか聞こえねーぞ?ひいらぎはどしたぁ?」 『や…やっぱりだめかなあ…?』 こなたの心配そうな声。 『ううん。私は…嬉しいわよ。こなたがそう言ってくれて…ずっとそう思っててくれてて…』 (ドキドキ…) 『好きよ、私も。女の子同士だっていいわよ。私は…こなたのこと、好きでしょうがないんだから…』 「「「「おお~~~~~~~!!!」」」」 「お姉ちゃんも…」 「あらあら、柊ちゃんたら…」 「こ…これがツンデレの影の部分か…」 『…来て』 『…かがみっ!』 窓の外では二人が抱きあっているのが見える。 「う~ん、なんてグッドシチュエイショ~ン♪」 「こなちゃんとお姉ちゃんが…」 「お、お熱いですね…」 『こなたぁ!』『かがみぃっ!』 「わぁ…二人ともすごい嬉しそう…」 「(…コク)」 「あらあら、柊ちゃんたら…」 「ぐはああっ…やばいっすやばいっすやばいっすやばいっすやばいっすやばいっすやば ひよりは悶絶している。 「…落ち着いて…」 『…今日はずっと思い出に残る日にしたいんだヨ、かがみ』 ちゅっ 『…ほっぺただけじゃいやよ。ちゃんとキスして…』 つかさやゆたかは恥ずかしくなって隠れてしまった。 「わーっ!わーっ!お姉ちゃんがすごい甘えてるよ~! …どんだけ~」 「す…すごい…おねえちゃんがやってるゲームみたい…」 ゆたかは顔を赤くして両手でほっぺたを当てながら言った。 「あらあら、柊ちゃんたら…」 「きゃあ~!☆暗闇の中でkissなんて、もう萌え萌えで~ス!」 「……!……!!!………!!………!…!!!……!!??!!………!!…?!……」 「おまえ、顔すごいことになってんぞ~」 「…ひより…」 「あ…あの…皆さん。戻ろうという声が聞こえるのですが…」 「んじゃ戻ろっか」 「そ~ですネ♪」 そして倉庫から出て、こなたとかがみの二人を向かえてパティが言った。 「ハ~~~イ!!コングラチュエイショ~ン!!!」 いきなり人が出てきたため、最初二人は驚いていたが、すぐにほっとしたような顔になった。 しかし、皆の顔がニヤついているため、うすうす状況を察してきた二人にとどめを刺す。 「うふふ…灼けるわね、柊ちゃん」 「熱いぜぇ~、二人とも~!」 二人は顔を真っ赤にして「「ぬ、ぬぁにぃ!!?」」と叫んだ。 コメントフォーム 名前 コメント ※ovaだと見れます -- 名無しさん (2024-06-29 23 42 03) GJ! -- 名無しさん (2022-12-21 19 39 34) 放送して欲しかった! -- かがみんラブ (2012-09-23 18 14 42)
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「ねえ、お姉ちゃん?」 「んー?」 私の言葉にもお姉ちゃんは上の空。こちらにも振り向こうともしない。 お姉ちゃんの視線はただ一点。テーブルの上にある物に集中し続けている。 もしかしたら、空返事をしただけで私の声なんて聞こえてないのかもしれない。 「お姉ちゃんてばっ!!」 「もー?!なによつかさ!!」 私がさっきより大きな声を出すと、ようやくお姉ちゃんは怒りながらもこちらを向いてくれた。 「ねえ、お姉ちゃん……」 「だから何よ」 「これって……なに?」 私はさっきまでお姉ちゃんが見つめていた物を指差した。 そう…… 「開封厳禁」と書かれたガムテープに密封されているダンボールを…… 『厳禁』 それはちょっと前のこと。お姉ちゃんがすごく怒った顔をして帰ってきたことがあった。 その日はこなちゃんとデートだったから何かあったのだろうと、話を聞く為、夜にお茶会をしたことがある。 結局、お姉ちゃんの怒った理由含めて、惚気とも取れる愚痴を2時間以上も聞かされただけだったけど。 けどお姉ちゃんはそのお茶会をとっても気に入ってくれたみたいで、最近じゃ事あるようにそれをするようになった。 まあほとんど、お姉ちゃんがこなちゃんのことを色々話してくれるだけで終わっちゃうんだけどね。 でも、私でもお姉ちゃんの聞き役くらいにはなれるんだなーって思うと、ちょっと嬉しかったり。 でもそんな夜中のお茶会の主役、お茶やお菓子を乗せるテーブルは、今やちょっと大きめなダンボールに占領されている。 ちなみに主役達はというと、テーブルの隣にあるお盆に寂しそうに乗っかってる状態。 今日のクッキーはお姉ちゃんの為の意欲作(砂糖の代わりに合成甘味料を使ってみたんだ。カロリーゼロの)だし、お茶だって今年の春摘みのダージリンなんだよ。 だからすぐにでも味の感想が聞きたいんだけどなあ…… でもお姉ちゃんはどうやらそれどころじゃないみたいで、気が付くと目の前のダンボールを見つめ続けてる。 本当になんなんだろう? 「こなたがね…」 「こなちゃん?」 いきなり出てきたこなちゃんという言葉に、私は疑問の声を上げてしまった。 でも、すぐに理解した。ああ、やっぱり今回もこなちゃんなんだなって。 「こなたがね、昨日私の部屋に来て、顔を赤くしながら預けていったの。『うちに置いとくと危険だから』って」 「へえ~、そうだったんだ」 それで納得。あのダンボールに書いてある独特の文字は、こなちゃんが書いたんだ。 なんだかすごく見覚えのある字だと思ったよ。 「顔を赤らめて恥ずかしがってるこなたはすごく可愛かったわ」 お姉ちゃんはやっぱり私の方を見てくれない。見つめるのはやっぱりダンボール。 でもその見つめ方は、ペットショップで家では飼えない子犬を見つめてる子供のようだった。 もしかして…… 「ねえ、お姉ちゃん……」 「んー……」 お姉ちゃんは相変わらずの上の空の空返事。だから私は気に鳴った事をお姉ちゃんに聞いてみた。 「開けたいの?」 「―――っ!!」 私の言葉にお姉ちゃんがガバっと振り向いた。 「………」 「………」 えーっと、なになに?!この沈黙?!すごく不安なんだけど。 そうやって不安がりつつも黙っていることおよそ数秒…… 「ばっ!馬鹿言わないでよ、つかさ!!このダンボールはこなたが恋人の私を信頼して預けていったんだから、開けるはずないじゃない! 本当に何言ってるのかしら?!あは…あはははは!!!」 我に返ったかのように、お姉ちゃんは急に笑い出した。 本当に、ダンボールを開けようなんて思ってないんだよね。 信用してもいいんだよね……お姉ちゃん。 「そ、そうだよね。ごめんね~、お姉ちゃん。変なこと聞いちゃった」 「まったく、本当にしょうがないなー、あんたは」 お姉ちゃんは呆れてるような…でもすごく優しい眼差しをしながらニッコリと笑った。 よかった。いつも通りのお姉ちゃんだ。 「それじゃあダンボールどかしてお茶にしようよ。今日のお菓子は意欲作なんだ―――??」 私はそう言ってテーブルの上にあるダンボールをどかそうとした。でも、それは出来なかったんだ。 だって……お姉ちゃんの手がガッチリとダンボールを押さえつけて話さなかったから。 「お、お姉ちゃん?」 お姉ちゃんは私の目を見るとポンと両手で私の両肩をたたいた。 「ねえ、つかさ……」 「な、なに…?」 「私とこなたは恋人なの、運命の人なの、将来の伴侶なのよ」 「し、知ってるよ」 それはものすごく知ってる。こなちゃんとお姉ちゃんを除いたら、私が一番よく知ってるよ。 伊達に毎回毎回、二時間以上お姉ちゃん達の惚気話を聞いてないんだよ? 「そう、その恋人のこなたが私に恥ずかしがりながら、このダンボールを手渡した。 きっとこの中には私にも見せたくないものが入ってるのかもしれないわ! でもね、だからこそ、恋人の私はちゃんとそれを知っておかないといけないと思うのよ。 こなたがどんなに恥ずかしいものでも、ちゃんと受け入れてあげないといけないの!!」 目を閉じながらギュっと手を握り締めるお姉ちゃん。なんとなくだけど、話し方から興奮してるような気もする。 「だから……この『開封厳禁』を破っても、私はこの中身を見る必要がある!!」 「えっ…ええっ~~~!!!」 なっ、なんで?! どうして、そういう風な結論に達しちゃうのお姉ちゃん!! 「ちょっ……ちょっと、お姉ちゃんっ!」 駄目だって言わないといけないよね。いくら恋人さん同士だからって、やっていいことと悪い事があるよ。 「ありがとう、つかさ。つかさの言いたいことは分かるわ。こんなにも応援してくれるなんて、私はいい妹を持ったわ!!」 「ちっ、違うよ~~!!」 おかしい、おかしいよお姉ちゃん?! 何時ものお姉ちゃんだったら、絶対そんなこと言わないのに!! やっぱりこなちゃんが関わってるから?! 「というわけで……おりゃっ!!」 「あ~~!」 ビリビリビリと音を立てて封が破られていくダンボール。 ねえ、こなちゃん?私ちゃんと止めたよ。頑張ったよ。だから許してね…… 「さて、何が入ってるのかしら?」 封を破り終わると。お姉ちゃんはお菓子を選んでる子供みたいに、目を輝かせながらダンボールを覗き込んだ。 どことなくその目はこなちゃんに似てる気がする。 「これは……すごいわね!!」 お姉ちゃんがダンボールから何かを手に取ると、すごく嬉しそうな声を出した。 そんな声を出されると、私だって見たくなっちゃう。 ごめんね、こなちゃん。本当は私は見たくなかったんだけど、お姉ちゃんが見ちゃったから…… そう、たまたま見えちゃったんだよ、たまたま!! そんな風に自分に言い訳しつつ、私はお姉ちゃんの見ているものを後ろから覗き込んだ。 「それって、写真?」 お姉ちゃんが真剣になって見ていたもの。それはこなちゃんの写真だった。 何十枚もあるこなちゃんの写真。それを一枚一枚焼き付けるかのように、お姉ちゃんは見続けていた 「ただの写真じゃないわ……だって、全部私が見たことないやつだし……これも!!ああっ、これもだ!!」 お姉ちゃんの言うとおり、確かに普通の写真じゃないみたい。 高校のじゃないセーラー服(中学校のかな?)、ブレザー、メイド服に着物姿、それにフリフリの可愛い服と こなちゃんが普段着ないような服装や髪型の写真ばっかりだったから。 よく分からないけど、コスプレ……なのかな? 「もしかしたら、お仕事しているときに撮られたのかも。こなちゃんのバイト先ならそういうことしてそうだし」 「そうね……」 お姉ちゃんはやっぱり私の事なんて気にしてないみたいで、写真を見るのに一生懸命。 いくら恋人さんの写真だからって、ちょっと酷いよ…… 「うん!」 お姉ちゃんはそうやって一人で頷くと、スッと立ち上がった。 そして近くの上着を手にとって羽織ると、テクテクと部屋から出て行こうした。手には件の写真を持って…… 「お、お姉ちゃんどこ行くの?!」 「えっ……コピーでもしてこようかなーって」 「い、いくらなんでそれは駄目だよ!こなちゃん、きっと怒るよ!」 「そ、そうね。流石にね、まずいわよね。ありがと、つかさ。ちょっとどうかしてたみたい」 どうやら思いとどまってくれたみたい。私は上着を脱いで隣に座りなおすお姉ちゃんを見ながら、気付かれないようにため息を吐いた。 「ネガとかないかしら?いやいや、今の時代メモリカードか……」 「お、お姉ちゃん?」 あれー?お姉ちゃん、もしかしてまだ直ってない? お願いだから、早くカッコよくて優しくて何でも出来るお姉ちゃんに戻ってよ… 「さてと、他にはっと……あっビデオテープ発見。家にまだビデオデッキってあったかなー?」 「お姉ちゃん……」 そんな私の悲痛な願いを神様は叶えてくれず、お姉ちゃんの宝物探しは続く。 だけどそんなお姉ちゃんの宝物探しも終わりを告げるかのように、不意にお姉ちゃんの動きが止まった。 「お姉ちゃん?」 「つ、つかさ……こ、これ?!」 お姉ちゃんは少しだけ震えながら、ダンボールの中から一冊のノートを取り出した。 ノートの表紙には『日記-○○年××月△△日~○○年××月△△日-』って書かれていた。 これってつまり……こなちゃんの日記? 「し、しかもこの日付、こなたが私を好きになった頃の日付よ……」 「えっ?そうなの?」 「前にこなたから聞いたことがあるから間違いないわ」 お姉ちゃんはそう言うと、吸い込まれるようにゆっくりゆっくりとノートの表紙を開こうとした。 「お姉ちゃん!それだけは駄目だよ!!」 「つかさ……」 「お姉ちゃん、よーく考えて。その日記には、こなちゃんの気持ちが詰まってるんだよ。 そんな大事な日記をいくら恋人さんだからって勝手に見ちゃ絶対に駄目!!」 「……そうね、つかさ。流石に目が覚めたわ。まったく、今日はあんたに助けられてばっかりね」 「えへへ、これくらいどうってことないよー。でもね、お姉ちゃん?」 「どうしたの、つかさ?」 「なんでそういう風に私が言ってる間にノート開いちゃってるのかな?」 「えっ?!」 なんだか本当に気が付いてなかったみたい。私と話してる間にもノート開こうとし続けてたんだよ、お姉ちゃん? 「ち、ちがっ!!か、体が勝手に?!そう、どうしてもノートが見たいっていうもう一人の私の深層心理が……」 一生懸命言い訳してるけどね、お姉ちゃん。ノートは全然しまおうとしてないよ? 「あー、もうこうなっちゃったら、見てるのと同じよねー。あははは……」 お姉ちゃんはそうやって軽く笑うと、食い入るようにノートの中身を見始めた。 「………」 「……お姉ちゃん?」 お姉ちゃんの様子が変わったのはそれからすぐの事。ワナワナと震え始めたかと思うと、バサッとテーブルに持っていたノートを投げ捨てた。 そして先ほどの上着を手に取るとわき目も振らず、部屋から出て行った。 どうやらものすごく、怒ってたみたいだけどどうしたんだろう? その私の疑問はすぐに解決することができた。お姉ちゃんが投げ捨てたノート。 そのノートの最初のページには、こなちゃんの字でこう書いてあったんだから。 『かがみのエッチ』って 「お見通しだったんだね、空けるの……」 私はため息を吐くと写真やビデオテープ、それにお姉ちゃんが投げ捨てた日記?を綺麗にダンボールにしまいこんだ。 そして元通り「開封厳禁」のガムテープを貼り付ける。 それが終わるとテーブルの隣に置き、代わりにお茶とお菓子が乗っかっているお盆を置きなおした。 きっとこれからこなちゃん大変な目にあっちゃうんだろうな。それはもう、色々と…… こなちゃんみたいなことする人のことをなんていうんだっけ? 確か……『誘い受け』だっけ?うーん、なんか違うような気がするけど、よく分からないや。 とにかく…… 「こなちゃん、ご愁傷様」 私はそんな風にこなちゃんを心配しつつ、今日始めてカップに紅茶を注いだ。 コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-08-16 19 08 52) 何か幸せな雰囲気のSSだね。キャラ崩壊かがみおもしろいw -- 名無しさん (2013-01-30 19 46 13) まさかかがみ、え、ええええっちなコトしに行ったんじゃ・・・ -- ぷにゃねこ (2013-01-25 17 05 26) かがみ怒り -- かがみんラブ (2012-09-23 16 58 44) こなかがは正義ッ!様 この手のSSは比較的作成時間もかからず、かつ軽めに作れるので、 「こなたが出てこないこなかが」としてこれからも投稿する予定です。 拙い文章ではありますが、お楽しみいだければ幸いです -- H3-525 (2009-05-09 16 41 24) ダメと言われるとやりたくなるよね、うん。 -- 名無しさん (2009-05-06 22 38 38) 流石はこなた。かがみんの性格を知り尽くしてますなぁ… つかかがみん遊ばれすぎ♪ 是非ともこう言うバカップルの日常的な作品のシリーズかを御願い致します。 -- こなかがは正義ッ! (2009-05-05 20 05 20) かがみのエッチ♪ -- 無垢無垢 (2009-05-05 16 22 22) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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ジリリリリリリリリリリリリリリリリリ バンッ 前者は私の耳元で喧しく喚き散らす目覚まし時計の音。 後者は私が目覚ましのスイッチを叩いた音。 「ん……んんっ」 もそもそと布団から手を出して目覚まし時計を見ると、7時を少し過ぎたところだった。 二度寝する気満々のつかさと違って、即布団から出て身支度を始めるのが私の普段なのだが、 「ん~~」 昨夜は遅くまでレポートを書いていたせいで、今朝の睡魔は随分と強力だった。 おまけにこの季節はまだまだ朝夕と寒い日が多く、お布団の温もりは強烈に私を誘惑し、抜け出すのは困難を極めた。 私は枕元に置いておいた大学の時間割を手にとり、今日の講義は昼からという現実を確認する。 ―ま、たまにはいいわよね。 私は布団を被り直し、再びぬくぬくのお布団に包まって夢の世界へと旅立とうとした。 ところが、 「起きろー!」 がばっ 「ひゃうっ!!!」 無情にもお布団は剥ぎ取られ、たちまち私はお布団天国から極寒の寒空へと放り出された。 「極寒って…大げさだよかがみん」 「地の文にツッコミを入れるな!だいたいなんであんたがここにいるのよ!」 「スペアキーを郵便ポストに入れておくのは考え物だよかがみん。防犯上よくないよ。一人暮らしの基本だよ」 「うるさい!それより布団、早く返しなさいよ」 せっかくの貴重な朝の時間を二度寝で過ごすと決めたのだ。 こんな防犯協会の回し者にかまっている暇などない。 「だめ。今すぐ起きて顔洗ってきて」 「はぁ?!勝手なこと言ってないで返しなさい!」 私は布団をひったくるように奪い返し、こなたに背をむけるようにして被り直す。 「ちょwwかがみぃ~」 ―ふん、無視だ無視。 ―だいたいなんでこんな朝早くにこなたが家にいるのよ。 「かがみ~起きてよぉ~」 こなたが私の身体をゆさゆさとゆするが、私は沈黙を返す。 布団の中は少し冷えてはいたが、まだ先ほどの温もりが残っていてすぐにあのぬくぬくの空間を再現できそうだった。 「ねぇ~かがみってばぁ~」 ゆさゆさ ゆさゆさ どれだけ揺らされても一向に気にしない。 再度布団を取られないようにしっかりと握り締め、放さないようにする。 これで防御は完璧だ。 「う~」 とうとうこなたは私を揺さぶるのを止め、悔しそうにため息をついた。 「むぅ~眠りについたお姫様を起こすには……コレしかないよね」 なんだ?またなにかたくらんでるのか? 私が身構えた、そのとき、 「ちゅっ」 ほっぺに柔らかくて温かい“何か”が触れた。 「っ????!!!!??!!!」 その瞬間、私は弾かれたように飛び起きた。 「わーい、かがみん起きたー」 「なっ!ななななな!!??」 「おはよー」 「なにしとんじゃー!!」 「王子様からのキ・ス☆」 「キッ!キキキキキキスって!」 「眠り姫を起こすのにキスってのはデフォだよね」 「だよねじゃねぇ!大体だれが王子様だ!」 「かがみぃ、声大きすぎるよ、隣の部屋に迷惑じゃない?」 「誰がそうさせていると思っているんだ……まったく、すっかり目が覚めちゃったじゃない」 私は盛大にため息をつきながらお布団天国に別れを告げた。 「おはよう、かがみん」 「おはよう。ところで、その格好はどうしたのよ」 よく見ると、こなたはエプロンを身につけ、片手にお玉を握っていた。 さらに台所からはなにやらいい匂いが漂ってくる。 「むふふ~裸エプロンのほうが良かったかな?」 「なワケあるか!」 「とりあえず顔洗っておいでよ。その間に準備しておくからさ」 なにか釈然としなかったが、とりあえず言われるがままに洗面所へ向かい、顔を洗って歯を磨いた。 戻ってくるとテーブルの上には美味しそうな朝食が湯気をたてて並んでいた。 「ちょっと、これ全部アンタが作ったの?!」 「そだよ~遠慮せず召し上がりたまへ~」 ほっかほかの白いご飯、焼きたての鯵、季節の野菜の浅漬け、きんぴらごぼうにほうれん草のごまよごし、極めつけは豆腐とわかめの味噌汁。 くうぅぅ~ と、空気を読まない私のお腹が目の前の光景に感動の鳴き声をあげた。 「っ!」 ぼっと顔が赤くなるのを感じ、こなたを見るといつもの猫ような口でニマニマといやらしい笑みを浮かべていた。 「くっくっくっ、遠慮はいらないよ、思う存分召し上がってくださいな♪」 私の中でプライドと食欲が対峙するが、テーブルにならんだごちそうの前にあっさりと食欲の勝利に終わった。 悔しいがこのような完璧な朝食の前ではプライドなど吹けば飛ぶような軽いものなのだ。 「……いただきます」 こう見えて案外私は料理にはうるさい。 お母さんはとても料理が上手だったし、専門学校に進学したつかさに至っては調理師の卵だ。 この私の肥えた舌を満足させることがこなたに可能かしら? ずずぅ~と味噌汁をすする。 「…………」 濃厚に香るかつおダシの風味と味噌の味が見事に調和していた。 ご飯は一粒一粒が立っていて、とてもいい香りを放っている。よほど上手く研がなければこうはいかない。水加減もバッチリだ。 きんぴらも和え物も素材を生かした薄味で、ご飯との相性も素晴らしい。 ご飯といえば浅漬けだ。 これほどご飯と合う食べ物もそうはあるまい。 気付いたらお椀のご飯がなくなっていて、こなたがしゃもじをもってスタンバイしていた。 極めつけは鯵だ。 パリッと焼けた皮の下にはふっくらと脂ののった身が!どれほど焼き加減を見切ればこれほどの絶品ができるのだろうか。 夢中になって朝食を平らげる様子を、こなたはずっと笑顔で見守っていた。 「かがみ、そんなに急がなくてもご飯は逃げないよ~」 「んぐっ!」 「あ~あ~ほら、今お茶淹れてあげるから」 差し出されたお茶で喉に詰まりかけたご飯を流し込む。 「ぷはっ!」 「まぁ美味しいと感じてくれるのは嬉しいけどさ」 「ええ美味しいわよ。こんな朝食なら毎日でも食べたいくらいよ」 「それはなにより」 「ところでこなた、なんで急に朝ごはんなんて作りにきたのよ」 「いやね、この春からかがみん一人暮らしじゃん。ちゃんと食べてるのか心配になってさ」 私は一瞬言葉に詰まった。 あまり家事が得意ではない私は、早くも自炊の大変さに音を上げ、インスタントラーメンやレトルトカレーに逃げるようになっていた。 「かがみ、今日は出発の日だよ。 新生活のスタートの時期に合わせ、忙しく乱れがちな生活もリズムを整えるために、朝食を摂ることを提案する味の素株式会社が制定した 記念日だよ。 日付は新年度のスタートの時期であり、4と8で「出発(しゅっぱつ)」と読む語呂合わせからきてるんだって」 「へぇ~それで来てくれたってわけか。なんとも押しかけ女房的な発想だな」 嬉しいけどさ。という言葉はすんでのところで飲み込んだ。 「女房とはねぇ~かがみは俺の嫁、じゃなくて私がかがみの嫁?」 「嫁とか言うな!」 「ぷくくっ、私をお嫁さんにしたら毎日ご飯作ってあげるよ」 「こ、このご飯を毎日……」 「(私よりごはんのほうが魅力的なのかねかがみんや)」 「でも、ま」 「?」 「心配してくれてありがとね」 「あ、今デレた?デレた?いいとも!毎日でも通いつめてあげるよ!まずはかがみんの胃袋を鷲づかみにしてみせよう。 これがツンデレかがみんを嫁にする第一歩……」 ない胸を張って力説するこなたを他所に、この朝ごはんが私達二人の関係の新しい出発になればいいな、と思うのだった。 「かがみんに『君の作った味噌汁を毎日飲みたい。』と言わせてみせる!」 「言わん!」 コメントフォーム 名前 コメント (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-10-10 12 50 27) かがみの方が飲みだい -- かがみんラブ (2012-09-18 22 49 35) 餌付けと書くと聞こえは悪いが…上手く行ってるw -- 名無しさん (2010-04-12 00 15 18) ↓激しく同意 -- 名無しさん (2010-04-11 15 17 10) 俺なら簡単に言うぞ!! -- kk (2010-04-10 22 09 10) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)