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「やっほ~、つかさにかがみん♪」 「こなちゃん、いらっしゃい。」 「おーっす、こなた。」 「かがみの太る時期の到来だね~」 「って、おい、なんだと!?」 雪もそろそろ限界を迎え始め、溶ける物が他にもたくさん出てくる時期である。 今日はまさしくその当日であるが、私の場合は受験で脳まで溶けそうな勢いだった。 そう、大学入試が数日後に差し迫った日なのである。 『メルトダウン』 「いやぁ、チョコレートの季節だからね。かがみは注意しないt…いはいいはい!」 「余計な事を言うからよ。」 「かがひ、いはいっへは!」 「お、お姉ちゃん、そろそろ放してあげたら?」 そう言われて、ようやくこなたの頬を放す。この感触が良くて放したくなくなるのよねぇ。 「かがみ…もう少し手加減してよ…。私だってデリケートなんだからサ。」 「なーにがデリケートよ、化粧とかあんまりしてないくせに。」 「そりゃ、いつもはしてないけど、たまにはしてるんだよ?」 「じゃあ例えば、いつしてたのよ?」 「ん~、入学式とか写真撮る時とか?あと、かがみとのデート前は欠かさずしてるね♪」 不意打ちに顔が熱くなる。でも、付き合い始めて数ヶ月も経つ。さすがに慣れてきた。 「へ、へぇ、あんたしてたんだ。全然気付かなかったわ。」 「ひどっ!せっかく時間かけてるのに…。」 「仕方ないでしょ、あんたと行くような場所じゃ気付きにくいわよ。」 私の反応がいたって普通だったのに対してか、今まで気づいてなかった事に対してか、 どことなくがっかりしてるようだったが、後者の場合は仕方がないと思う。 行くところはゲマズやアニメイト、良くて映画かお互いの家だし、最近は受験でそれらすらいけない。 それでも気付くべきかもしれないが、相手の顔が良く見れる場所じゃないと気付けないと思う。 正直、ムードのあるデートなんぞ行った事がないし、こっちから計画しない限りないだろう。 前に一度計画したものの、雨で計画崩れして、その後は受験で忙しくて実行できてない。 今日は受験を控えた直前かつ、最終となる息抜きである。 「結構大変なんだよ?このさらさら感を保つのって。」 「そうだよねぇ、それだけ長いと大変そう…。お姉ちゃんも結構苦労してるよねー。」 「…さらさらって、髪かい!」 「うん、そだヨ。かなり大変なんだよねぇ。最近はゆーちゃんにも手伝ったりしてもらったり…」 「ほっぺた関係ないじゃないのよ!」 「ばれた?でも、ちゃんと手入れはしてるよ~。化粧はしてないけどね。」 「手入れぐらいなら誰だってやるわよ、まったく。」 「でも、あんなに長くやんなくたっていいじゃん。いくら受験でストレス貯まるからってさぁ…」 「やつあたりじゃないわよ!ただ、あんたの…!!な、なんでもない…」 思わず、柔らかくて気持ちいいからやりすぎたって言いそうになってしまった。 素直に言ってしまえばいいと思う人もいるだろうが、弄られると分かって言うのは特定の人しかいない。 そして私は弄られるのは嫌いではないが、だからと言って自分から志願する気は毛頭ない。 「ん~~?なにかなぁ、かがみん。気にせずデレてごらん♪」 「言えるかぁ!そして、デレとか言うな!」 「いいじゃん、減るもんでもないし~。それにこれじゃあ、私が理不尽な怒りを食らったみたいだし。」 「だから、違うって言ってるでしょ!た、ただ…柔らかったから…つい…。」 それでも言ってしまうのは私の心の弱さか…決して弄られるのを望んでるわけじゃないからね! 「確かにこなちゃんのほっぺたって柔らかそうだね~。」 「素直に言えばいいのに~。むふふっ、照れたり怒ったり、相変わらずかがみは可愛いねぇ。」 「だぁー!人前で恥ずかしいこと言うなー!!」 「お姉ちゃん、お、落ち着いて!」 しばらく弄り倒された上に、つかさの天然発言も重なって、私は抵抗できないままだった。 お決まりのパターン、結局いつもこうなるのよね…だ、誰も嫌だなんて言ってないわよ? ただ、こう男女で言う尻に敷かれる感じかしら…怒られたわけじゃないんだけど、敵わないのよね。 たまに勝てても、すぐに切り返されて結局弄られるのは私になるから、完全勝利したことないし…。 どうにかして完全勝利、つまりこなたが弄られっぱなしになる方法を考えていると、 「かがみんや、本来の目的を忘れていないかね?」 「本来の目的?」 言われなくても分かってる。でも、ここであることにピンと来た。 「私がなんのために今日ここに来たのか分かってない?」 「受験前の最後の息抜きよね?」 「そうだけど、そうじゃなくて!…かがみ、わざとやってる?」 「冗談よ、バレンタインでしょ?わざわざ言わなくても分かるわよ。」 「んじゃあ、はい。」 こなたはおねだりの顔をしながらこっちを見て、手を出している。明らかに催促してる体勢だ。 あちらからチョコを差し出してくるかと思ったが、これはかえって好都合だ。 「あー、ごめん。今年は受験で忙しいから作ってないんだわ。受験後でいいなら作るけど?」 「え、だっt(むぐっ)」 一度制止して、つかさにしばらく黙っているか、話をあわせるように言って、解放する。 つかさは素直すぎるから、あらかじめ止めておかないと何から何まで話す危険があるからね。 「ねぇ、つかさ、何を言おうとしたの?」 「ふえっ?そ、それはお姉ちゃんが…。」 「あんたが作ってくれるかなって少し期待してたのよ。 でも、少し考えればこなたも私達と同じで、忙しいのにね。ただそれだけよ。」 「えーっ!それじゃあ、今年は私チョコ0個じゃん!そりゃないよー…。」 よっぽど私からのチョコを期待してたのか、心からがっかりしたようだ。 顔だけじゃなくて、体全体から気が抜けたようになってる。青菜に塩とはこの状態を指すのね。 「ゆたかちゃんとか、バイト先からもらえるんじゃないの?」 「ゆーちゃんはみなみちゃんので手一杯だったし、バイトは受験で行ってないからもらえないよ…。」 「ご、ごめんね、こなちゃん。私も実は料理学校のことで忙しくて何もしてないんだ…。」 「私達だって貰ってないんだし、お互い様よ。今年ぐらい諦めたっていいじゃ…?。」 こなたが持っていたカバンから出してきたのは二つのチョコレート。 片方はハート型の箱でリボンに結ばれ、もう一つは袋に包んであって、同じようにリボンで結ばれてる。 「これ…かがみに。こっちはつかさに。」 「あんた、この時期に手作りしたの?」 「だ、だって、かがみと…付き合ってからの初めての…バレンタインだから…。」 こなたは俯きながら、恥ずかしそうに私達にそれを渡し、私とつかさはそれを受け取る。 照れて恥ずかしそうな、普段とあまりにも違う雰囲気のこなた。 何回か見たことのある状態だけど、それはいつも私がちょっとした意地悪をした時ばかりだ。 こなたは、相手からの反応があってからこそ、それを盾に相手を茶化すことが出来る。 自分だけが何かをした時は、それをおおっぴらにするのが恥ずかしいタイプなのだ(多分)。 もちろん、その都度、相手となる対象の輪を大きくしたり、小さくしたりしていて、 オタクという輪にしたり、家族内の輪にしたりしているため、普段は恥ずかしがらない。 でも、今回は私達3人の中で、極端に言えば私とこなただけでの輪だったのだろう。 ただ、私が作っていないだけであれば、恥ずかしがることなくがっかりしただけだった。 しかし、料理好きのつかさですら作ってないと聞いたら、自分だけという意識の上に、 私が作れなかったのも仕方が無いという考えから、恥ずかしいという感情が成り立つのだろう。 もちろん、これも作戦のうちである。ちょっと可哀相ではあるけど、いつものお返しだし、いいわよね? 「(お姉ちゃん、凄いね。本当に言った通りの反応だよ~。でも、可哀相かも…)」 「(そうね、これ以上はやりすぎになるわね。そろそろあれを出すか…)」 そうつかさに耳打ちして、私はベッドの下から『それ』を取り出す。 「ほら、こなた。私からのチョコ、しっかり受け取りなさい。」 「ふえっ?だ、だって、さっき…」 さっきの表情から一転、目を丸くして私のことを見てくる。 「う・そ・よ。ちゃんと作ったわよ、昨日の夜にね。」 「…っ!もう、かがみの意地悪!本当にもらえないかと思って、私すごくショックだったんだから!」 「ふふ、いつものお返しよ、たまにはいいでしょ?あんたに負けっぱなしじゃ、つまらないもんね♪」 「ぶーっ、私は弄るだけなのに、かがみはいつも意地悪だ!」 「し、仕方ないでしょ。人を弄ることにおいては、あんたに敵う人なんていないじゃないのよ。」 おもいっきり頬を膨らませて講義してくるこなたは、どうみても可愛らしい子供だ。 でも、そんなことを考えている暇も僅かしか与えられなかった。 「…まぁ、いっか。かがみの愛をちゃんともらえたし、満足、満足♪」 「それにお姉ちゃんが意地悪するのは、こなちゃんがお姉ちゃんを弄るのと同じで、愛情の裏返しだよ♪」 「つ、つかさっ!」 「そんなのは分かりきったことだよ、つかさ。ただこうしないと、かがみが不満だからさぁ。」 「あんたもさっきまで思いっきりしおれてたのに、何を言うか!」 「私はちゃんとかがみが作ってくれたって信じてたヨ?だから、いつくれるか待ってたのさ。」 絶対嘘に決まってる。チョコを出した時の顔の表情や、あの後の反応は絶対素のはずよ。 でも、そんなことを冷静に言える状態じゃなく、つい大声になってしまう。 「う、う、嘘だっ!だって、さっき思いっきり驚いてたじゃない!」 「確かに、こなちゃん凄いびっくりした顔だったよ?」 「いやぁ、私って演技派だよねぇ~。残念ながら、かがみがやることはお見通しだよ♪ …それにしても、会話に自然とアニメネタが入るあたり、かがみもずいぶんオタクっぽく…。」 「うぐぅ…」 「ほら、その台詞もね♪」 「今のは素だ!ってか、私はオタクじゃない!」 「じゃあ、あれだね、きっと。オタクの才能!」 「わぁ、お姉ちゃん才能あるんだって!良かったね♪」 「そんな才能嬉しくない!というか、私は認めないわよ!!」 (くっ、結局弄られるのは私だけじゃない!私が甘いのか、こなたが上手いのか…きっと両方ね。) ☆★☆ 「それじゃあ、そろそろチョコを開けましょー!」 「おぉーっ!(おー…)」 その後、二重の攻撃にあった私は、ほとんど何も言う元気もなかった。 そもそも、受験勉強の息抜きなのに、なんでこんなに疲れてるのかしら…。 「ほら、かがみが先に開けてよ。」 「う、うん。」 「あ、それじゃあ私は牛乳取って来るね~。」 つかさはそういって、そそくさと出て行ってしまった。 空気を読んだのか、それとも居辛かったのか。どっちでもいいけど、ありがたい。 改めて箱を手に取り、丁寧にリボンを緩ませ、箱を開けるとそこには「かがみは私の嫁!」と書いてある。 一体全体、こいつはどうしてこう恥ずかしいことを堂々と出来るのかが不思議だ。 こなたでも恥ずかしいと思うことはあっても、さっき言った理論のその範囲がやたら狭い気がする。 「あ、あんたねぇ…。」 「かがみは私の嫁じゃ不満?」 「そうじゃなくて、少しはムードとかさぁ…まぁ、あんたらしいっちゃ、あんたらしいけどね。」 「でも、かなり気合入れたから味は保証するヨ。あ、もちろん愛も入れたけどネ♪」 「恥ずかしい台詞禁止っ!…でも、忙しいのに作ってくれてありがと。」 「なになに、かがみのためならお安いご用だヨ!それじゃあ、私もかがみのを~。」 すぐさまこなたは私があげた箱を開け始めた。 一応、昨晩数時間かけて作ったものだし、それなりに自信はあるけど、ドキドキの瞬間だ。 「どれどれ~、かがみが作ってくれたチョコの出来栄えは、っと!おぉ、ちゃんと出来てる!」 「ちょ、なによそれ!褒められても、嬉しくないんだけど?」 「いやいや、美味しそうだよ、かがみん♪それにしても、〈I Love You Konata〉って、ベタだね~。」 「べ、ベタで悪かったわね!」 「でも、ちゃんとかがみの愛は受け取ったよ~♪額縁にでもいれよっかなー。」 「入れんな!ちゃんと食べなさいよ、人が苦労して作ったんだから。」 「冗談だよ、かがみ~。それじゃあ、一口もらうとしま…って、ん?何かまだ箱に入ってる。」 こなたの言うとおり、ハートの箱の底にはカードが一枚張り付いていた。って、え?!そ、それは…! 止める間もなくこなたはそれを手に取り、読み始める。 「ま、待ってこなた、それは!!」 途端にこなたの顔が真っ赤になり、釣られて私の顔も朱に染まる。 「〈こなたへ これから一生、私と一緒に居てください。これが私の気持ちです。 かがみより〉 …かがみ、これってプロポーズ…?」 「あ、いや、ち、違うの!それは、そ、その…」 このカードが何故ここにあったのかという焦りと、おまけにそれを読まれた恥ずかしさで私は気が気でない。 おまけにこなたは真剣な顔でこっちを見てくるし、私は半パニック状態に陥っている。 少しの間が空いて、不思議そうな顔になり始めたこなたを見て、何かを言わなければならないと思うも、 それでも私は混乱から抜けられず、紡ぎだせる言葉は本当のことしかなかった。 「き、気持ちが通じ合ってるならチョコだけじゃ足りないかと思って、カードを書こうと思ったのよ…。 何を書いたらいいのか分からなくて、つかさに素直な気持ちでって言われたんだけど、書いてみたの…。 でも、は、恥ずかしくて渡せたもんじゃないから、捨てたはずだったのに…何故かそこに入ったの!!」 半分やけになりながら一気にまくし立てて、私はすぐに俯いてしまった。 本当のことだし、今更なことだけど、これはそのまま読んだら本当にプロポーズだ。 でも、私の複雑な気持ちは全てこなたによって消えうせた。 「ぷふっ、相変わらずかがみって素直じゃないね~。」 「だ、だからそれが素直な気持ちよ!」 「違うよかがみん。私が言ってるのは、そこまで書いてるのに素直に渡そうとしなかってことだよ~。 それに、こんな分かりきってることを書かなくても、私は前からそのつもりだったんだけど?」 その言葉に、私の全ての脳細胞が感極まったけど、それと同時にオーバーヒートしそうだった。 (えぇ?!これはどういう展開?プロポーズとして受けられたことを、Okされたってこと?! 別にプロポーズのつもりなかったんだけど…。い、いや、私も前からずっとそのつもりだったけど、 でも、そうじゃなかったというか、まだそこまで考えてなかったけど…えーと、でもOKされた=結婚? って、何考えてんだ私!いや、ゆくゆくはそうありたいけど、ってかこの展開はそういうことよね?) などと、私は暴走と妄想、どちらとも取れることをしていた。 「おーい、かがみんやー、戻ってこーい。」 「…はっ!こ、こなた、何か言った?」 「いんや、まだ何も。でも、そんなに顔を真っ赤にして何を考えてたのかなぁ?」 ここぞとばかしに、ニヤニヤした顔でこなたが擦り寄ってくる。 猫口+ニヤニヤ顔というのは一見ムカつくように思えるが、こいつの場合は反則的に可愛い。 これが見れるから、私はこなたに弄られるこの立場が好k、コホン、嫌じゃないのよ。 「な、なんでもないわよ。…ただ、ちょっと嬉しかっただけよ。」 「おぉ、さっすがかがみん!ツンデレの本領発揮だネ!」 「だから、私はツンデレじゃない!」 「普段は素直じゃないのに、私と二人きりの時はデレてくるんだから、まさしくツンデレだよ~♪」 「素直じゃないのは認めるけど、デレてくるってなんだ!それに、二人きりの時に限らないでしょうが。」 「いやいや、今日だってつかさがいなくなってからじゃないと、素直さのカケラも無かったよ。」 「そ、そんなことなかったわy…」 「はい、かがみ、あ~ん。」 「?!な、何よ突然!」 何の脈絡もなく、いきなりこなたが自分で作ったチョコを一口サイズに割って、私の口元に運んできた。 …というか、いつの間に私の手から取ったかしら…さっきまで握ってたのに。 「ほら、やってよかがみぃ。それとも口移しがいい?」 「ば、馬鹿言ってんじゃないわよ!」 「んじゃ、はい。あ~ん♪」 「…あ、あ~ん。」 口に入れた瞬間、チョコレートの風味が一杯に広がる。 でも甘すぎず、ほど良い苦味を持った本格チョコの味で、チョコが溶けるのと同時に口もとろけそうだ。 私が今まで食べた中で一番美味しいものだった。もちろんこなたの気持ちが入っているからこそだ。 私の中では世界一、宇宙一のものだけど、味だけで純粋に見ても、市販のとは比べ物にならない。 「私の自信作なんだけど…どうかな?」 「正直、言葉で言い表せないぐらい美味しいわ。ただ甘いだけじゃないし、凄い深い味かも…。 チョコレートでこんなの初めてよ!」 「良かったぁ、愛を込めた甲斐があったヨ!…それに、やっぱりかがみはツンデレだと確認できたし♪」 「ど、どういうことよ?」 「だって、ちゃんとあ~んってしてくれたし。つかさがいたら絶対やってないでしょ?公の前じゃなおさら。」 「うっ…そ、それは…。だぁ、もう!素直に褒めたんだから、あんたも純粋に喜びなさいよ!」 (ったく、こいつは常に私を弄ることしか考えてないんじゃないかしら…不満じゃないけどね。) 「いやぁ、気に入ってもらえて心から嬉しいよ。糖分控え目、味も色々調整したオリジナルだからネ。」 「ちょっと引っかかるわね…でも、ありがとう、こなた。」 「愛しい嫁のためだもん、当たり前だよ。それじゃ、今度はかがみ・を食べる番だね♪」 「わ、私?!」 思わずビクッと擬音が似合うような反応をしてしまい、こなたも何事かとこちらを見てる。 (ええぇ!?!?さ、さっきのOKしたから?!で、でも、いくらなんでも展開が速すぎよ! バレンタイン効果?知らないわよそんなの!い、嫌じゃないけど…心の準備とか…色々時間がまだ…!) 「かがみどうしたの?この流れからしたらフツーじゃん。そんなに驚かなくてもいいんじゃない?」 「ふ、普通?!あ、いや、ま、まだ心の準備が!!つ、つかさだって戻ってくるかもしれないし!!」 「別に戻ってきたって問題ないじゃん?それとも他の人がいるとやっぱり素直になれないとか? かがみんもついにツンデレを自覚し始めたのかな、かな?」 「いや、問題大有りでしょ!そ、そんなのつかさに見られたら…」 「…?かがみ、なにか勘違いしてない?チョコを食べようって話をしてるんだヨ?」 「えっ?!あ、ああ、そうよね、なんでもないわ。」 (もしかして、さっきのは聞き間違い?そうだとしら恥ずかしすぎる…こなたの顔がまともに見れないわ…) 「でも、勘違いするような話をしたっけな??確かあの時は…愛しい嫁の…ブツブツ。」 真剣な顔でさっきのフレーズを思い出しているらしい。そ、そんなに真剣にならなくていいから! むしろ思い出さないで居てくれた方が、私のためだから!私のためを思って、ね? 「い、いいじゃないのよ、その話はもう。私のチョコを食べる番なんでしょ?」 「…!ああ、そうかぁ~」 再度ニヤニヤ顔になったこなた。あぁ、嫌な予感がするというか、もはや確信かしら。 私の必死かつ切実な願いは通じず、このあとの言葉により無残に散ることとなった。 「な、何よ。」 「さっき私が〈かがみのを食べる番〉ってやつを聞き間違えて、私がかがみを食べると思ったんでしょ? もう、かがみはエッチなんだから~♪」 「うっ…ち、ちがっ」 「何がどう違うのかなあ?ねぇ?」 「うぅ、うるさい。と、溶けないうちにチョコ食べなさいよ!せっかく作ったんだから。」 「…それも、そだね。んじゃ、かがみよろしく~」 今度は冷静に考えて、どうすればいいかを判断する。これ以上弄られるネタを提供したら、私が持たない。 受験後ならいいかなぁ?なんて悠長に考えている自分も中にはいたが、それはまたいつか脳内会議しよう。 「は、はい、あ~ん…」 「あ~ん♪…パクッ」 「っ?!?!」 「かがみもちょっとだけ食べちゃった♪あはっ」 私が差し出した指を軽く咥えられただけなのだけど、それがいかほどの破壊力を誇るものか分かるでしょ? (お、お、おおおおお落ち着け、私!ゆ、指を咥えられただけよ!そう、咥えられた…だ…ふおおお!!) 「顔の沸騰具合、過去最大だね~。初々しくて、可愛いなぁ、もう♪」 「…っ!ち、ち、ちち、チョコの味はどうだったのよ!」 「もちろん、最高においしかったよ♪随分腕を上げたんじゃないかな?」 「ほ、本当?」 「クリスマスのやつよりは美味しくなってるよ。ほら…」 私の口に入れてくれるもんだと思って待っていたら、自分の口に入れ…!! 「ん~っ!!(く、口移し?!?!)」 「ありがと、かがみ。来年も期待してるヨ。ご馳走様でした…かがみも美味しかったよ♪」 ボンッ!!…プシュー………。柊かがみ、オーバーヒートにより離脱。 「あちゃー、ちょっとかがみにはまだこのシチュは刺激が強かったかな?」 ドタドタドタ、ガチャッ! 「ごめーん、牛乳なくってコンビニまで買いに行ってたら遅くなっちゃったよ~…お姉ちゃんどうしたの?」 「いやぁ、ちょっと弄りすぎちゃったかなぁ?あははっ。」 「顔真っ赤だよ?熱とかじゃなくって?」 「さすがつかさ、そっちの発想か。いや、そうじゃなくってね、実は…」 「言うなーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」 私の声が家中にこだました。 ☆★☆ つかさが戻り、私が復活したところでつかさにもチョコを渡し、つかさも私に用意してくれていた。 といってもつかさは、調理師免許用の専門学校にすでに合格しているから、暇なんだけどね。 こなたとつかさもお互いにチョコレートの交換を終えて、皆で遅めのおやつとなった。 つかさのチョコは相変わらず手が込んでいて、私にもこなたにも大きなハートのものだった。 前にこなたが、義理でも渡したら本命と勘違いされると言っていたけど、それを再認識するわね。 「ふぅ、美味しかった。さすがつかさ、中々やるね。」 「そりゃ、専門学校に通うことになったんだから、当たり前でしょ。腕前は文句なしよ。」 「て、照れるよ、お姉ちゃん…」 「まぁ、普通の受験だったらつかさには辛かったかもネ。」 「な、なに~!」 「否定は出来ないけど、それはちょっと酷いかも…」 「お、お姉ちゃんまで…」 ごめん、つかさ。私でもそれはフォローしづらいわ。こなたも人のことは言えない立場だけどね。って… 「そういえば、あんたはどこ受けるのよ?まさか大学には行かないとか言い出さないでしょうね?」 「うん、行かないよ。」 「ちょ、おまっ!大学行かないでどうするつもりよ!」 思わぬ告白につい大声になってしまう。 大学に行かないって、こいつ本当に自宅警備員、またの名をニートになるつもりなんだろうか? そう思って、真意を問いただそうと意気込んだところで、 「いやだなぁ、冗談だよ冗談。」 「じ、冗談かぁ、そうだよね~。びっくりしたよ、こなちゃん。」 「はぁ…ビックリさせんじゃないわよ。どうするか真剣に考えちゃったじゃない。」 「なにを言っても私の心配をしてくれるかがみ萌え~♪」 「し、心配ぐらいしたっていいじゃない!それで、結局どこに行くつもりなのよ?」 「う~ん…ひ・み・つ♪ってことで。」 「ぶっ」 こなたの似合わない台詞に思わず吹き出してしまったが、これはこれでこなたらしくないけど、可愛らしい。 でも、今はそこに気を取られてはいけない。私が言えたことじゃないけど。 「秘密って、どういうことよ?隠し事は…」 「大丈夫、ちゃんと教えるからさ。ただ、今はってことだよヨ。3月になったら教えるから。」 「まぁ、合格したらの話になるんでしょうね。」 「む~、ちゃんと合格するもん。おとーさんとまた賭けもしてるしね。」 この陵桜にも合格したのも、父親との賭け事に勝つためという不順極まりない理由だったからね。 でも、そのおかげで私はこなたに出会えたんだから、どうあれ感謝しないといけないけど。 「こなちゃん、今度はなにを賭けたの?WiiやPS3とか?」 「いや、Wiiはもう既に購入済みだよつかさ。PS3もバイトでどうにかなるしね。」 「じゃあ、新しいパソコンとか?」 「そんなのよりよっぽど私にとって大きなものなのだよ♪まぁ、それもその時教えるよ。」 こなたの趣味に合いそうで、高額なものか何か珍しいものと言われても今の以外あまり思いつかない。 何か限定者のフィギュアとかだろうか?でも、あの言い方だと物じゃないのかな?う~ん…まぁ、いいか。 「…ふ~ん。でも、その代わり3月に入ったら絶対教えないさいよ?」 「合格発表が終わった時にでも教える、それは約束するよ、かがみん。もちろんつかさにも言うよ。」 「わ~、楽しみだね、お姉ちゃん!」 果たしてそれは楽しいことなのかは分からないが、気になるというのは認めよう。 それより、何故行きたい大学を隠す必要があるのかに対して疑問が残るわけだ。 あまりにも低レベルだから?でも、あいつならそんなことは気にしないはずだと思う。 逆に実は相当難しいところで、逆に恥ずかしいとか?…なくはないけど、隠すことはないわね。 ここから遠くて、私にそうそう会えなくなる?それはあるかもしれないけど…あまり考えたくない。 一番ありそうなのが最悪のパターンってのが気になって、私は一応聞いてみた。 「こなた、一つだけ答えて。」 「ん、怖い顔してどったの?」 「その希望してる大学って、私が…いつでも会える場所にあるの?他の地方とかじゃないわよね?」 「むふっ、かがみはその心配してたのか~。それならご安心あれ、かがみと近くに居る事が最優先だからネ♪」 「じゃ、じゃあ!」 「かがみの家、というかここと、かがみの志望大学の近くどっちかだヨ。」 「良かった、ひとまず安心だわ。」 最悪のパターンでない上に、こなたがそこまで気を使ってくれたのが何より嬉しかった。 でも、気になる点はもう一つある、というより、いま浮かんだ。 「…ここまで素直なかがみんって、何か違和感あるなぁ。口調だけは相変わらずツンデレだけど。」 「ちょ、それどういう意味よ!…まぁ、それは置いておいて、近くの大学を優先してくれたのはいいんだけど、その条件に縛られて自分のやりたいことは制限してないわよね?こなたを縛ってるようなら、嫌だから…。」 「大丈夫だよ、かがみん。ちゃんと自分のやりたいことはやるようにしてるからさ。」 「そう?ほんとに?…ならいいんだけどね。」 「もう、そんなに心配しなくていいって。気軽に生きようよ、かがみん♪」 「あんたが軽すぎるから心配になるんでしょ?!二人して突っ走ったら誰が止めるのよ?」 「まぁ、それもそうだね~。でも、二人で突っ走る愛の道は誰にも止められないよ、ね?かがみん♪」 〈ね?〉のあたりで私の首に腕をまわして抱きついてきた。 「ちょ、ちょっと。恥ずかしい台詞禁止って言ったでしょ、もう…。」 1ヶ月強の時間が経っても、不意に抱きつかれるのには未だに恥ずかしい。 こなたに、キスするのには慣れたんじゃないかと言われたけど、内心はもちろん活火山状態だ。 正月も徹夜で若干ハイになってたから、こなたの寝起きにキスなんてしてたけど、今思い出しても… 「…どんだけ~」 (そうそう、どんだけ~…って!) 「こ、こなた!つかさが見てるから、離れなさいって!」 「周りの視線は気にしないって言ったじゃーん、かがみぃ。」 「屁理屈はいいから、離れろぉ!!」 半ば強引に引き離されたこなたはもちろん、空気化しかけていたつかさもどこか不満そうだ。 その後、こなたの機嫌をとりつつ、つかさにも話題を振りながら過ごすという何とも疲れる時間になった。 少なくても、私にとっては…やれやれ。 ☆★☆ その後も、臭いものや机に書いてある落書きのユニークさ、物価高騰によるお菓子の値段上昇などについて話した。こなたがネタに走り、つかさがボケて、私が突っ込むか弄られるいつもの雰囲気だった。 4人で過ごしてきた高校3年間、こういう空気の中でずっと過ごしてきたからか、どこよりも心地よい。 弄られたり、気苦労があったりしても、息抜きとして最高のものとなった。みゆきがいないのが残念だけどね。 「つかさー、ちょっと来て手伝ってー!」 下から突然いのり姉さんの声がする。時間を見ると6時前、おそらく夕飯の手伝いで呼んだのだろう。 …悔しいけど、料理の手伝いで私が呼ばれたことは中学に入ってから一度もない。せいぜい皿洗いだ。 「すぐ行くから、ちょっと待ってー!…ごめん、ちょっと行ってくるね。」 「いってら~(いってらっしゃい)」 つかさはすぐに立ち上がって降りていった。 「もうこんな時間かぁ、私もそろそろ帰らないとね。」 「そうね、おじさんも心配するだろうし。」 「かがみも、そろそろ『おじさん』じゃなくて、『おとーさん』って呼んでみたら?絶対喜ぶと思うよ♪」 「な、なななに馬鹿なこと言ってんのよ!出来るわけないでしょ、そんなこと!」 「うぶで余計な事ばかり考えては、顔を赤くするかがみ萌え~」 「うぅ、うるさい!」 「その反応!最高だよ~、やっぱ可愛いねぇ~♪」 さっき突き放したのを根に持ってるのか、執拗に弄り続けてくるこなたと反撃が出来ない私。 擦り寄ったり、上目遣いで見上げてきたり、後ろから抱き付いてきたり、やられ放題だ。 私も少なからず抵抗してみるも、こなたには逆効果なのか、私が恥ずかしいだけで終わる。 この小動物みたいなこなたの連続攻撃に私の『理性』という精神はボロボロになりつつある。 ひたすら顔を赤くしてる私にこなたの行動はエスカレートし、ついには… 「ひゃうっ!…こ、こなたぁ!!」 「おぉ、予想以上の反応だね。」 「いい、いきなり、うなじを舐めないでよ!」 「じゃあ、いきなりじゃなきゃいいの?」 「そ、そういう意味じゃないわよ。私にも理性ってのがあるんだから…その…ほどほどにしなさいよね…。」 「かがみん、それって…「みんみんみらくる、みーくるんるん~」」 突如、恐ろしく音程を外した声と共に、音楽が流れ始めた。これは確か…こなたの携帯だ。 「ごめん、かがみちょっと待っててね。 〈もしもし、なーにおとーさん?…うん、まだかがみんちだよ。…えっ?ああ、そうだごめん! 今からすぐ帰るから、下準備だけ済ませてて!…分かったよ、だから悪かったって。…うん、じゃあ。〉ピッ かがみ、ごめん!今日夕飯の当番だったのすっかり忘れてたよ!!今から帰って作らないと…。」 「いいのよ、そんなの。また受験後にいつでも来てよ。今度はそっちにいくかもしれないし、遊びに行ってもいいしね。二人切りもいいけど、みゆきとつかさを呼んでもいいしね。もちろんゆたかちゃんとかも。」 「そだネ、何か考えておいてよ。私も私なりに考えておくからさ。んじゃ!」 「あ、待ってよ。玄関までは送るから。」 「夫を送るのが嫁の仕事だしね~♪」 「それは朝の話でしょ?夜の場合は、嫁を見送る夫でしょ。ほらいったいった。」 「えぇ、それこそ屁理t…って、うわ押さないでよ、危ないって!」 こなたの反論を無視し、玄関にたどり着く。 「それじゃあ、気をつけて帰りなさいよ。夜道は危ないんだし。」 「格闘技やってたから平気だよ~。万が一があっても、かがみが助けてくれるだろうしネ。」 「…万が一、何かあったらな。」 「んじゃ、またね~、かがみん。今度は〈かがみを〉食べに来るから、覚悟しといてよ♪」 満面の笑みを浮かべて最後に言った一言は、本気なのか冗談なのか、期待と不安を抱きつつ、 私はつかさに揺すられて正気に戻るまで、呆然と玄関前で立ち尽くしていた。 - Fin - コメントフォーム 名前 コメント GJ!!!!! -- 名無しさん (2022-12-28 21 06 02)
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「いやー、大丈夫だよ!ほ、ほら!回りに人もちらほらいるしさっ!」 ホントは人なんていない。私達だけが歩く夜道。 「それにさー、いいよって言われると逆にさ・・・ねぇ?」 頭が真っ白な中奮闘する私。内緒にするって決めたんだ。これ以上、かがみに迷惑は、かけたくないんだ。 「・・・バカ。」 「え?バカって?」 そう言い終わらないウチに、私は包まれる。春の陽気のような温かさ。私に安らぎを与える匂い。心地よい空間。 思考が現状についてきてくれない。本当に真っ白。 「あんたの事よ・・・私に恥かかせる気?」 やっと分かった。私は今、かがみの腕の中。だからこんなにドキドキするんだ。 柔らかい感触。優しい雰囲気。全てが私をおかしくさせる。 「え、あぅ・・・」 「ねぇ、こなた。これでも・・・ぎゅってしてくれないの?」 糸が切れる。作り物の私が壊れる。我慢しないでいいんだ。この想い、止めなくて、いいんだ。 「かがみ・・・」 何も言えない。気のきいたセリフも、ムードを作る言葉も、出てこない。 だから、3つの音を繋いだ単語を口にして、思いっきり抱き締めた。 「全く。待ちくたびれたわよ。あんた、いつまでたっても言ってくれないんだもん・・・」 「・・・ごめん。」 「い、今だって、ホントは凄く恥ずかしいんだからねっ!」 「あぅ・・・」 「でもね・・・私は、今幸せだよ。こなたは?」 ホントにバカだな。恐がって、怯えて、動けなかった私。想いを届ける事さえしなかった私。 でも、今なら言える。これはかがみへのお礼。勇気を出してくれた、私に勇気をくれた、愛しい人への大切な想い。 「んー、やっぱりかがみは私の嫁!」 「言うと思った!」 笑い合う薄紫と深青。交われば何色になるのかな?何色にだって慣れる。全部私達しだい。 「ずっと一緒だよね、私とかがみ!」 「・・・うん!」 未来は赤色?黄色?それともオレンジ?分からない。だって、これから始まるから。私とかがみの第2章。 さぁ、始まるザマスよ!
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戻らないD/柊かがみ ◆gFOqjEuBs6 嗚呼、こなた。 私はあんたに、なんて謝ればいいんだろう。 あんたは最後の最後まで、こんな私を信じてくれてた。 人を殺めてのうのうと生きる、どうしようもないクズを救ってくれた。 そして最後は無常にも、あの女の刃に――。 混濁する意識の中で、柊かがみが思い出すのは最後に残った親友の事。 青い髪の毛を揺らして、いつだって能天気に笑っていた。 だけども、その笑顔は本当は誰よりも優しい笑顔で。 アニメやゲームが大好きな彼女は、得意分野の話となれば何時にも増して笑顔になった。 振り回されてばかりだったけど、あの子と一緒に居る時間は楽しかった。 いつも素直になれなくて、怒ってばかりだったけど、今なら言える。 私はあの子と、そして他の皆と過ごす時間が何よりも大好きだった。 (今更ズルいわよね、こんな事) 自分でも分かる。ああ、分かっている。 失った今となっては何を思おうと、何を言おうと、もう遅いのだ。 かがみが伝えようとした言葉は永遠に伝える事は出来ないし、二度と話をすることも叶わない。 だってそうだろう。いくら話したいと願った所で、いくら謝りたいと願った所で――。 泉こなたは、もう居ない。遠い遠い、最果ての地へ旅立ってしまったのだから。 (嗚呼、私って馬鹿よね……ええ、大馬鹿よ……本当に、本当に……! あの子とは何度だって話すチャンスがあったのに……ええそうよ、あの時だって!) スバル・ナカジマとの一度目の交戦。 あの時あの場所に泉こなたが居たのは間違いない。 スバルだって、全力で自分の暴挙を止めようとしてくれた。 だのに、馬鹿な自分は自分の心にまで嘘を吐いて、修羅の道を貫こうとした。 中途半端な覚悟で、自分だけでなく、周囲まで騙し続けて。 その結果が、泉こなたの哀れな死。 (あんなに簡単にっ……! あんなに呆気なくっ……! 圧倒的なまでに、容易くっ……!) 頭に焼き付いて離れない、泉こなたの最後。 死に損ないの自分を守る為に“生きる筈だった”彼女は死んだ。 何人もの命を奪って、それでも許されようとしている愚かな自分の為に。 あまりに無常。あまりに非情。あまりにも、哀れ過ぎる……! だから……だから私は、こなたを殺したアイツを―― ――八神はやてを、この手でブチ殺すっ!!! 湧き上がるのは怒りと憎しみ。 それは泉こなたを奪われた虚無感と相俟って、壮絶なまでの愛憎へと変わっていく。 もう枯れ果てたとばかり思っていたこの瞳からは、止めどなく涙が溢れ続ける。 嗚呼、自分はまだこんなにも涙を流す事が出来るのだ。誰かの為に、泣く事が出来るのだ。 なれば……なればこそ。自分はやらねばならない。この手で、この力で―― 家族も友も、何もかも失っても未だ消えぬ“友情”の為に。友への想いの為に。 最後に残ったこの感情は、友の仇を取らんと熱く燃え滾っているのだ。 ならば立ち止まってなどいられない。挫けてなどいられない。 起ち上がるのだ。あの子との友情を果たすまで、何度だって。 (ええ、そうよ……そうと決めたら迷わない! 私はもう立ち止まらない!) 涙は止まらない。 湧き出る想いと激情は、どうしたって止められない。 だけど、それでいい。これは柊かがみに残った、人としての最後の感情だから。 この感情を抱えたまま、最後まで走り抜くのだ。例え刺し違える事になったとしても。 そうだ。死ぬのが怖い訳じゃない。このまま何もせずに、黙って死ぬのが怖いのだ。 こなたの命を踏み躙ったアイツに一矢報いる事無く、何の証も立てられずに死ぬのが怖いのだ。 だからこそ――命を、魂を、自分を自分としている全てを賭けて、あの女だけはこの手で倒す! (我儘かしら……?) ああそうだ。これは只の我儘だ。 こなたがそんな事を望む筈がないなんて事は分かる。 嗚呼、自分でも分かっている! 嫌という程に、分かっている! (我儘よね……!) だけれど、もうこの身体は止まらない。 もう二度と自分の心に嘘を吐いて生きて行くのは御免だから。 罪を背負ってでも前に進みたい。その気持ちには一片の嘘も無い。 だけど、その為に八神はやてを許すなんて事は出来ない。だから―― だからもう一度だけ罪を犯す。あの女も罪も、全部背負って、それが今の自分だから。 歪んでいると言われようと、クズだと罵られようと構いはしない。 こればっかりは、誰でも無い自分自身で決めた意思だから! (そうよねぇっ……!) 嗚呼、ようやく気付いた。 泉こなたの為だなんて言って、これは結局自分の為の戦いだ。 友情の為だなんて言って、結局自分はあの女を許せないだけなのだ。 だけど、それは意地だ。たった一つのちっぽけな意地(プライド)なのだ。 自分が自分で有り続ける為にも、意地と力の全てを賭けて、あの女を倒す! その為に邪魔なら、目の前の壁もブッ潰す! (さぁ、進むわよ……!) 前に。ただひたすら、前に! 最早涙を止める事すら考えずに、柊かがみは拳を握り締めた。 白銀と黒のデルタの拳。それを大地に打ち付けて、ボロボロの身体を起こした。 まだ戦える。戦える筈だ。自分はまだ、何一つ成し遂げてはいないのだから。 この殺し合いの中で見付けた、たった一つの目的。最初で最後の、願い。 復讐と言う名の自分勝手なエゴを押し貫く為に、もう一度立ち上る。 「ぬるいわね……甘くて、ぬるいっ!」 痛みが何だ。苦しみが何だ。 無惨な殺され方をしたこなたの痛みと比べれば。 自分が殺した三人が受けた苦しみに比べれば。 こんなものは致命傷でも何でもない。 甘くて温い、陳腐なダメージだ。 「そんなになっても、まだ戦うんですか……?」 「ええ、そうよ……! そんなんじゃ、今の私は止められない……! この私は倒せない!」 スバルの想いは伝わっている。 自分があの女を殺したいと思っているのと同じくらい、スバルは誰にも傷ついて欲しくないのだ。 だけど、それだけじゃない。あろうことか、目の前の女は救おうとしているのだ。 その手で……救いようも無い、バカでクズで、どうしようもないこんな自分を。 なのはと同じだ。優しくて、強くて、きっとこれからも沢山辛い経験をするだろう。 だが、それでもスバルは止まらないのだろうと……そんな事は容易に想像できる。 あいつはいい奴だ。どうしようもないくらい、真っ直ぐで、優しい御人好しだ。 嗚呼……こんな出会い方をしなければ。もっと、もっと違う出会い方をしていたなら。 きっと、これ以上無い程に良い友達になれた事だろう。 (でも、それは夢……儚い、夢) 一緒に笑いあって、一緒にふざけ合って。 一緒に他愛の無い日々を送って居られた事だろう。 いや、きっとそれは只のIFではない。実際にあり得た事だ。 何処かの世界で、きっと二人はもっと別な出会い方をしていた筈なのだ。 こなたと、つかさと、スバルと、皆と――きっと、毎日楽しく過ごせた事だろう。 こんな殺し合いにさえ放り込まれなければ、実現していたかもしれない夢。 きっといつまでも続いていたであろう、幸せな日々……そんな現実。 けど、それは今ここにいるかがみは永久に掴み取る事は出来ない、儚い夢。 もう戻る事は出来ない。引き返す事は出来ない。退路等何処にも無い。 だから戦うのだ。前に進む為に。最期まで自分を貫く為に。 「そう……ですか。まだ、やる気なんですね……!」 「当然でしょう……!? 何かさ……私はもう、負けらんないのよね……! クズだの何だの罵られようと……あんたをブッ倒してでも、アイツだけはこの手で殺さなきゃあ!」 何度も立ち止まって、何度も負けた。 自分の意思で戦おうとすらせずに、何度も地べたを舐めた。 だけど、今回ばかりは違う。こればっかりは譲れない。誰が何と言おうと譲れない。 柊かがみはクズだ。柊かがみはバカだ。どうしようもない、人殺しの狂人だ。 嗚呼、何とでも言えばいい。バカだのクズだの人殺しだの、何だって受け入れてやる。 それであの女を殺せるのならば、最早何だっていい。それが今の自分なのだ。 「なら、私ももう容赦は出来ない! 貴女が部隊長を殺すというのなら、その前に私が貴女を倒して見せる!」 ああそうだ。それでいい。 ここで引き下がろうものなら、拍子抜けだ。 きっとこれで、柊かがみが誰かと気持ちをぶつけ合えるのは最後になるだろう。 だから最後に戦うスバルにだけは、その真っ直ぐな気持ちを偽って欲しくはない。 妥協も何も許さずに、ただひたすらに素直な気持ちをぶつけてくれる。 八神はやてとの最後の戦いに赴く前に、スバルと戦えて良かったと思う。 自分の意思で人を殺して、悪鬼へと堕ちてしまう前に―― 人として、最後に拳を交える相手がスバルで、本当に良かったと思う。 (……なんて、自分勝手よね。そんな事は分かってるのよ) 嫌になる程、つくづく思う。 本当に自分は自分の事しか考えていないのだな、と。 スバルなら良かった。そんな物は逃げだ。ただの逃避だ。 勝手に自分の最後の相手をスバルに押し付けて、勝手に一人で満足している。 あんなになってまで戦うスバルの気持ちを理解していながら、自分はそれをスバルに押し付けるのだ。 なんて醜い事だろうか。なんて卑怯な事だろうか。なんて自分勝手な事だろうか。 だけど、それが今の自分。目の前のあいつとは、絶対に相容れる事の無い自分。 相容れる事があり得ないのであれば、もう戦いしか残されてはいない。 「さあ、来なさいよスバル! あんたの魔法なんて、ぜんっぜん効いてないのよ!」 嘘だ。効いていない訳がない。 痛い程に、スバルの魔法はこの身に響いている。 この言葉は、言うならばスバルへのメッセージだ。 もっと全力で来い。もっと力を見せ付けろ。あんたの全てを私にぶつけてくれ。 今の言葉には、そんな柊かがみの想いが痛いくらいに詰め込まれていた。 その行動に恥じぬ様に、今にも倒れそうな身体に鞭打って、デルタは大地を蹴った。 デルタが駆け出すと同時、スバルのジェットが轟音を掻き立てて噴射を開始。 お互いがお互いの間合いに踏み込むのに掛る時間は、加速から一合まで数えてもほんの一瞬。 何度目になるか分からないこの“一瞬”で、二人はお互いの力をぶつけ合うのだ。 「はあああああああああっ!!」 「うおおおおおおおおおっ!!」 右の拳を振り上げ、真っ直ぐに突き出すデルタ。 ジェットの加速をそのままに、魔力を込めた拳を真っ直ぐに突き出すスバル。 歴戦の勇士に遜色無い見事なまでのパンチングスタイルで、二人の拳が激突した。 黒いグローブを振り抜いたデルタと、蒼の魔力光を宿したスバルの拳。 二つが激突した刹那、巻き起こるのは蒼の魔力による激しい爆発。 拳に込めた魔力が、デルタと接触するや否や炸裂したのだ。 「なっ……!?」 眩い魔力の光に、一瞬視界を奪われる。 次いで、容易く吹っ飛ばされてしまう身体。 宙を舞う速度は、錯覚であろうか、酷くスローに感じられた。 夜空に煌めく無数の星。自分達を照らす、淡い月の輝き。 それらに心奪われる余裕など与えられる訳も無く、デルタの視界を覆ったのは蒼の光。 宙を舞うデルタの周囲360度。全方位、縦横無尽に駆け巡る、蒼の魔法陣。 もう何度も目にした、ウイングロードだ。 「がっ……ぐっ……あぁっ――!!」 次いで、身体中のあちこちが悲鳴を上げる。 身動きの取れぬデルタでは対処しきれぬ、あらゆる角度からの攻撃。 右斜め下から蹴り上げられたかと思えば、左斜め上から叩き落される。 凄まじいまでの加速。知覚すら追い付かない、強烈なヒットアンドアウェイ。 ウイングロードを縦横無尽に駆け巡り、何度も何度も、デルタの身体が宙を舞う。 やがて攻撃が止まる。スバルも手負いの身だ。攻撃する側とは言え、体力にも限界があるのだろう。 気付けば自分の身体は、空を翔けるウイングロードの内の一本に、力無く横たわっていた。 「ぐっ……スバ、ルぅ……」 軽く寝返りを打てば、その身体は真っ逆さま。 重力に引かれるままに、固い地面へと打ち付けられた。 だけれど、それで終わりはしない。這う様に身体を引きずって、その身を起こす。 拳で大地を殴りつけて、その反動でもう一度立ち上がったのだ。 「全く……何処まで強いのよ、あんたは…… 八神はやてなんかより、あんたの方が100倍は怖いわよ……!」 「あたしなんかに勝てないなら、八神部隊長と戦おうなんて止めた方がいいですよ」 「ええ、分かってるわよ! アイツがあんたと違うって事は!」 きっと八神はやては、最初から自分を殺すつもりで来るだろう。 どんな状況にあろうと絶対に人を殺めはしないであろうスバルとは、決定的に違う。 あの非情さ。冷徹さ。冷たさ。何を取っても、スバルのそれとは比べ物にならない。 想いを乗せてぶつけるスバルの攻撃は、どれも温かいのだ。それこそ、ぬるいくらいに。 だけど、あの女は違う。こなたを殺したあの攻撃は、凍て付く様に冷たかった。 だが、それだけの話だ。そんな事で立ち止まるつもりはない。 スバルに勝てないのならあの女にも勝てない? ならばスバルを倒すまでの話。 嗚呼そうだ。もう、この想いに迷いは無いのだ。一片たりとも……! 「だからさぁ……こんなんじゃ終われない……! 終われないのよっ!!」 デルタの大容量コンピュータが、かがみの脳に絶えず情報を送ってくれる。 戦う為の技術。理想的な反射。勝つ為の法則。そしてデルタのシステム概要。 この状況に於いての、最良の判断。それらが、システムと同調したかがみの脳へと直接流し込まれる。 「――おおおおおおおおっ!」 かがみの頭に煩いくらいに響き渡る、スバルの絶叫。 ウイングロードから飛び降りたスバルが、右の回し蹴りでデルタを蹴り飛ばそうと迫る。 デルタのシステムが教えてくれる、理想的な回避の手段。攻撃を受ければ受ける程、デルタは学習するのだ。 対してスバルは、骨折と戦闘によって体力を消耗し、技を繰り出す度にその鋭さを鈍らせている。 落ち着いて対応すれば、回避できない攻撃では無い。 上体を屈めて、スバルの蹴りを回避した。 「……かわされた!?」 心の中で呟いたのであろう言葉が、早口に口から紡ぎ出される。 当然だ。誰も今のデルタにスバルの攻撃を回避出来る等とは思わない。 それを成したのは、スバルの想像を超えたライダーズギアの装甲。 そして、理想的な兵士を生み出す為のシステム……デモンズスレート。 対するデルタは、バネの様に状態を伸ばした。 空中で蹴りを空振ったスバルへと繰り出す、右のアッパー。 「あぐ……っ!?」 腹部から突き上げられたスバルの身体が、宙を舞った。 刹那、がら空きになった守り。連撃を叩き込むなら、これ以上のチャンスは無い。 そして今のデルタになら、それが出来る。格闘における連続攻撃のやり方は、最高の相手から教わった。 何度も何度も繰り出されたスバルの連撃を、かがみとデルタはその身体で、痛みと共に覚えたのだ。 スバルの動きを、そのままコピーする様に……繰り出す攻撃は、右の回し蹴り。 「はっ!」 「ぐっ……ぁ――!」 重力に引かれて落下するスバルの胴体に、重たい回し蹴りが炸裂した。 生身とは言え、スバルの身体はデルタの攻撃を耐え切れる。だから、手加減もしない。 どごんっ! と、不吉な音を立てて、デルタの右脚装甲が、スバルの身体を吹っ飛ばした。 近くの岩場に激突したスバルの身体は、軽く痙攣して、すぐに立ち上がる。 「やっぱり、今のあんたは万全じゃない! これなら!」 「今のあたし達の戦力は……互角!」 憎々しげに、スバルが告げた。 スバルの判断は正しい。事実として、発展途上のデルタにもそれ程の技量がある訳ではないのだから。 その上、見ればスバルの左腕は骨折している様に見える。そんな状態でであれだけ動いていたのだ。 何という体力か。何という精神力か。やはりスバルは只者では無いと認めざるを得ない。 だけども、それでも骨折による体力の消耗は半端な物ではない。 ここまでデルタと互角以上に戦って、体力がろくに残っている訳がないのだ。 ならば、自分にも勝機はある。デルタが教えてくれるデータによれば、自分にはまだ奥の手がある。 それをスバルは知らない。デルタが持てる最大の必殺技を、奴はまだ知らないのだ。 「終わりにしよう、スバル……これ以上戦ったら、あんたは壊れてしまう!」 「そんな事、構うもんか! あたしは死なない……あたしはまだ、夢を叶えて居ないから!」 その夢の為に、スバルは死さえ厭わずに自分に向き合ってくれているというのか。 何て真っ直ぐな少女なんだろう。何でそんな事が出来るんだろう。 考えれば考える程に、スバルの優しさに触れそうになる度に、涙が止まらなくなる。 嗚呼、もう終わりにしよう。こんな苦痛は、終わらせてやろう。 それがスバルに出来る、唯一の恩返しだ。 「行くわよ……スバルッ!!」 かがみの絶叫を皮切りに、最後の戦いが始まった。 この夜空を縦横無尽に駆け巡る蒼き光の魔法陣。先程までに展開を続けて来たウイングロードだ。 天にだって届くのではないか。この大空を、何処までだって走って行けるのではないか。 そんな錯覚さえも覚えるウイングロードに、デルタとスバルは飛び乗った。 「はぁあああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」 重なる絶叫。 相反する想いを賭けた、壮絶な激突。 縦横無尽の翼の道を、跳び移り、駆け廻り、何度も何度も拳を交える。 スバルが拳を振るえばデルタの腕に阻まれる。デルタが蹴りを放てばスバルが回避する。 スバルが魔力を解き放てば、腰にマウントされた銃から放たれる光弾がそれを相殺させる。 何度も何度もぶつかり合って、それでも二人の攻撃は一向にお互いの身体へ命中しない。 一進一退。攻めては守られ、守れば攻められの攻防が続いた。 そうしている間に、果てしない程の時間が流れてゆく。 それでも白黒ハッキリ付けるまで、二人の身体は止まらない。 この手に勝利の二文字を掴み取るまで、二人の殴り合いは終わらない。 だが。 「おおおおおおおおおおおッ!!」 「えっ――」 戦いの終幕は、唐突に訪れる。 何度も何度もウイングロードの上で戦いを繰り返した。 魔力を、フォトンを爆発させて、何度も何度も殴り合った。 その果てに、劣化したウイングロードはデルタの体重に耐えられなくなっていたのだ。 スバルのパンチを防ぐと同時。パンチの衝撃を受けたデルタの足場が、崩れ去ったのだ。 天高く、まるで蜘蛛の巣の様に張り巡らされたウイングロードから、落下するデルタ。 「――まだよっ! まだ、終わらないっ!!!」 嗚呼、だけどもこの死に損ないの身体は、そんな事では挫けてくれない。 立ち止まってもくれないし、スバルの想いに負けてくれるなんて、もっとあり得ない。 嗚呼そうだ。こんな下らない事で、何も成し遂げられぬままに負ける事など出来る訳がないのだ。 空中で姿勢を制御したデルタが、すぐ下方に展開されていたウイングロードに着地した。 だけど、これで隙は出来た。スバルがデルタに一撃を撃ち込むには十分過ぎる隙が。 ならばもう回避をする必要も無い。もうこれ以上、こんな戦いを続ける必要も無い。 終わらせよう。この泥沼のような戦いを。 「チェック、メイトよっ! スゥゥゥバァァァァルッ!!」 ――Exceed Charge―― 「うおおおおおおおおおおおおりゃぁああああああああああああああああッ!!」 デルタムーバーの銃身が、ガチャンと音を立てて伸びた。 スバルの左腕に装着されたストラーダが、ガシャンと音を立てて弾丸を排出した。 真上へと跳び上がったデルタと、真っ直ぐに走り続けるスバル。 スバルの右腕には、今までと同じ要領で、蒼の光が集束していく。 一方で、空に舞い上がったデルタの身体を駆け巡るのは、白銀のフォトンブラッド。 ベルトから駆け廻った光は、ブライトストリームを通して、右腕のデルタムーバーへと送られてゆく。 やがて、変形したデルタムーバーの銃口から発射されたのは、一発の光弾であった。 螺旋を描きながらスバルへと迫る光弾に対して、スバルはその右腕を一気に振り抜いた。 あの光弾ごと、その先のデルタを吹き飛ばすつもりなのだろう。だけれど、それはミスだ。 されど、そのミスを笑う気にはならない。本当に、最後まで真っ直ぐな戦い方をする奴だと、かがみは思う。 「なっ……なに、コレ……!?」 スバルが驚くのも、無理は無い。 身体を動かそうにも、その身体が動かないのだ。 魔力を撃ち放とうにも、それ以前に右腕が自由に動かないのだ。 それこそが、デルタの持てる最大の必殺技。何体ものオルフェノクを葬って来た、最強の必殺技。 それを放つ為の第一段階。スバルの眼前に、光り輝く逆三角錐が形成された。 まるで頂点はスバルに突き刺さるかの様に。底辺はデルタの身体を待ち受けるかの様に。 ドリルの如き高速回転を始めた逆三角錐に向かって、デルタは真っ直ぐに両足を突き出し―― 「やぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」 逆三角錐の底辺へと、跳び込んだ。 ◆ 空に輝くウイングロードは、もうない。 何処までも真っ直ぐだった少女は、もういない。 思えば、さっきまでは随分と騒々しかったなと思う。 空は一面、何処を見渡しても蒼く輝く光の道。 耳に入って来るのは、口煩い女の叫び声。 少女の絶叫を聞く度に、その言葉がかがみの胸へと突き刺さる様だった。 もううんざりだ。あんな御託をいつまでも聞き続けていては、ノイローゼになってしまう。 だけれども、かがみはスバルに対して、一片たりとも怨みの感情を抱いては居なかった。 「ありがとう、スバル」 右腕に掴んだ少女に、一言礼を告げた。 この子が居てくれて、本当に良かったと思う。 まさかこの殺し合いに放り込まれてから、自分がこんな気持ちで戦える等とは夢にも思って居なかった。 最後に触れ合えた人間らしい相手。彼女が居たから、彼女の名前をこの胸に刻み付けたから。 かがみはもう、何の迷いも無く前へ進む事が出来る。 「スリー、エイト、トゥー、ワン」 左腕に携えたデルタムーバーへと、何事かを告げた。 それは、来るべき最後の戦いに於いて、必要となるであろう戦力。 殺す事に何の躊躇いも持たない、あの悪魔の様な女に何処まで通用するかは分からない。 だけれども、それでも無いよりは幾分かマシだった。 そうだ。これはかがみが自分自身の因縁に決着を付ける為に必要な、空への翼。 この大空を自由に跳び回るあの女に届く為に、必要な翼なのだ。 「私はもう行くから……さよなら」 スバル・ナカジマの身体を、大穴が空いた洞穴へと投げ込んだ。 八神はやての攻撃でその入り口を閉ざし、スバルの攻撃で再び道を開いた洞穴へと。 否……それは只の洞穴ではない。スカリエッティのアジトと言う、立派な名前を与えられた施設だ。 きっとこのアジトの中なら、どんなに激しい戦いが起こっても飛び火する事はないだろう。 この中に隠れて居れば、きっとこれ以上スバルの身体が傷つく事はないから。 最後に眠る様に横たわるスバルへと一瞥し、デルタは歩き出した。 柊かがみはもう居ない。 何もかもを捨てて、彼女は魔人となったのだ。 己の信念を貫いて戦った戦士達の戦いの果てに、勝者は居なかった。 事実上戦いに敗北したスバルは勿論の事、柊かがみという一人の少女も、居なくなったのだから。 「ええ、そうよ。私はもう柊かがみなんかじゃない。 復讐の為だけに戦う一人の仮面ライダー、デルタ」 それだけで、十分だ。 【2日目 早朝】 【現在地 C-9】 【柊かがみ@なの☆すた】 【状態】疲労(大)、全身ダメージ(大)、つかさとこなたの死への悲しみ、はやてへの強い怒り、デルタに変身中 【装備】とがめの着物(上着のみ)@小話メドレー、デルタギア一式@魔法少女リリカルなのは マスカレード 【道具】なし 【思考】 基本:はやてを殺す。 1.はやてを殺す。 2.1が叶えば、みんなに身を委ねる。 【備考】 ※一部の参加者やそれに関する知識が消されています(たびかさなる心身に対するショックで思い出す可能性があります)。 ※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。 ※第4回放送を聞き逃しました。その為、放送の異変に気付いていません。 ※デルタのシステムと完全に同調しました。 ◆ 月夜が照らす市街地に、その建造物はあった。 未だかつて誰も踏み居る事無く、奇跡的にも傷を負う事の無かった施設。 周囲の高層ビルがちっぽけに見えてしまう程、巨大なビル。 かつてとある世界において、最先端の技術を世に送り出し続けていた企業。 その本社ともなれば、豪華絢爛の限りを尽くした造りになるのは当然の事。 そんなビルに――スマートブレイン本社ビルに今、異変が起ころうとしていた。 ゴゴゴゴゴ、と鳴り響く地響き。それは周囲のビルにまで響き渡り、小規模な地震と勘違いしてしまう程だった。 スマートブレインのビルの側面……一面に張り巡らされた窓ガラスが、音を立てて割れて行く。 耐震性、テロ行動。あらゆる状況に備えて造られたビルが、遂に耐える事敵わなくなったのだ。 そもそも、何故このデスゲームにこの施設が設置されたのか。 全てのライダーベルトは参加者に支給され、それ以上の道具はこの会場には存在しない。 それならば、ライダーズギアシステムを開発したこの企業がここに存在する理由など、何処にも無い。 せめて本社内部に未だ参加者の知り得ぬライダーズギアが有るのならば話は別だが。 そしてその答えが今、明かされる。 それは空で戦う術を持たぬ戦士の為に開発された翼。 圧倒的なスピードと、圧倒的なパワーを持って、敵を殲滅する為に開発された兵器。 スマートブレインモータースが誇る、最高の技術の粋を凝らして造られたスーパーマシン。 今この瞬間、スマートブレイン本社の壁をぶち壊して、“それ”が姿を現した。 コンクリもガラスも、全てを粉々に粉砕して、この地上に解き放たれた。 “それ”を持つべき者が、“それ”の力を必要としているから。 だから“それ”行く。 戦場と化した北東へと、その轟音を響かせながら。 空中をホバリングしながら旋回。次の瞬間には、大出力のジェットを燃やしていた。 時速1300kmを誇る“それ”ならば、すぐに主人の元へと駆け付ける事が出来るだろう。 マシンの名はジェットスライガー。 最後の戦場へ赴くデルタの為に。 飛び立てないデルタの翼となる為に――。 【全体の備考】 ※F-5からC-9へとジェットスライガーが向かっています。 ※アジトの入口に再び穴が空きました。 ◆ 「う……ぐっ……」 目を覚ませば、そこは薄暗い闇の中であった。 こんな洞穴の中だ。夜である事も手伝って、内部まで光は届かない。 どうやらこの洞穴の中に元々あった筈の光源も、八神はやての攻撃で破壊されてしまったらしい。 だけれど、破壊されたのはアジトの入口付近だけなのだろう。 奥を見れば、少しずつ明るくなっているのが見える。 「そう、だ……かがみさんは……!」 そうだ。自分は、スバル・ナカジマは、先程までかがみと戦っていた筈だ。 それがこんなアジトの中に放り出されているとは、一体どういう事なのであろうか。 その答えを見付ける為にも、重たい身体を持ち上げて、立ち上がろうとするが―― 「――つっ……!」 身を裂く様な激痛。 左腕の骨折個所だけでなく、体中のあちこちが悲鳴を上げていた。 身体を起こそうとすれば、上半身が……恐らく内部フレームが痛む。 立ち上がろうとすれば、二本の脚が軋みを上げて、がくがくと震え出す。 無理に戦闘を続けようとすれば、全身が砕けてしまうのではないかと。 そんな錯覚すら覚えてしまう程に、スバルのコンディションは絶望的だった。 当然のように、こんなコンディションでは戦闘どころでは無い。 かがみ達を止めるどころか、足手まといも良い所だ。 (こんな時に……! なんて、不甲斐ない……!) 右腕で、地べたを殴りつけた。 悔しい。自分の力が必要とされるこの局面で、自分は何も出来ないのだ。 かがみを止める為に戦うつもりが、逆にかがみに破れてしまったのだ。 こんなに不甲斐ない事があろうか。こんなに情けない事があろうか。 自分を責め立てて、自己嫌悪に陥る。 (でも……どうしてあたしは生きているんだろう) 今のかがみに、人の言う事を聞く余裕など存在しない。 目の前の敵を叩き潰して、その先へと進む。最早それしか頭に無かった筈だ。 きっとあの状況のかがみならば、相手を殺す事も厭わないと思っていた。 それ故に、かがみとの戦いに負ける事は即ち死を意味するのだと思っていた。 だけれども、自分は生きている。今こうして、この場所に存在している。 それは何故かと考えて……そして、思い出す。 (そうだ……かがみさんは、あの時わざと……!) 最後の瞬間、柊かがみは―― 「やぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」 デルタが、逆三角錐へと跳び込んだ。 逆三角錐の頂点は、スバルの身を抉るドリルの如く回転を続ける。 身を削らんと迫る蒼紫の光のドリル。だのに、スバルの身体は身動き一つ取れはしない。 このままでは、自分は死ぬ。圧倒的な力の前に、このまま成す術もなく殺されてしまう。 だけど、そんなスバルの運命を変えたのは、一人の少女の意思だった。 「ぐっ……うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」 聞こえる絶叫。 それはスバルのものではない。もう一人の少女が発する声。 まるで何かに抗う様に。何かの力に立ち向かう様に。 低く、唸るような声の発生源へと、スバルは視線を向けた。 (かがみさん……まさか……!) 少しずつ、頂点の座標がズレてゆく。 スバルに突き刺さらんばかりの軌道で迫っていた逆三角錐が、ブレていく。 何故だ。このままその光のドリルを突き出せば、スバルの命は散ると言うのに。 柊かがみの勝利は揺るがぬものになるというのに。 それなのに……それなのに、何故! (かがみさん……貴女は、あたしを……) それ以上の出来事を考える事は敵わなかった。 蒼紫の光のドリルが、スバルから見て左側を通過したのだ。 だけども、通過と言ってもただ攻撃が外れた訳ではない。それでは意味がないからだ。 スバルへと迫る蒼紫は、スバルの身体に触れか否かのギリギリを走り抜けて行った。 犠牲になったのは、左腕に装着していたストラーダ。 巨大なドリルとなって迫るデルタが、ストラーダを砕いて粉々にしてゆく。 ここまで共に闘ってくれたストラーダの最期。されど、衝撃はそれだけにあらず。 外れたとは言え、絶大な威力を誇る必殺技がスバルの身体へ与えた衝撃と振動は半端な物では無かった。 それこそスバルの持つIS――振動破砕をまともに食らうのと、遜色無い程の威力。 そんな衝撃を……身体がバラバラになりそうな程の振動を、スバルは身体に叩き込まれたのだ。 だけど、結果としては――。 ――柊かがみはスバルの命を奪わなかった。 それが事の真相。それがこの戦いの決着。 だけど、スバルの身体にもう戦う力などは残されていない。 骨折した左腕。蓄積された疲労。デルタから受けた攻撃の数々。 それらはスバルの身体を蝕み、今では最早動くだけでもフレームが軋みを上げる。 このままでは、戦い以前に、その場にいるだけでも足手まといだ。 だけど――。 「まだ、方法はある……!!」 ここは、スカリエッティのアジト。 壊れた戦闘機人を修理し、メンテナンスまでもこなせる施設。 13体ものナンバーズを修理するだけの技術と設備が整っているのだ。 この左腕を直して、もう一度戦えるレベルまで修復する事だって、不可能ではない筈。 いいや、この際贅沢は言わない。完全回復でなくたって構わない。 足手まといにならない様に、最低限戦う事が出来ればそれで良いのだ。 そうと決めれば迷いはしない。 「早く、しないと……!」 自分がどれ程寝ていたのかは分からない。 だけど、デルタとの戦いは相当な時間を掛けた覚えだけはある。 その間に戦っていたのは、高町なのはと八神はやて。ストライカー魔道師二人。 Sランク魔道師二人が全力で激突したとあれば、一体どんな結末が訪れるのかなどスバルにも分からない。 だけれども、デルタがスバルを倒した時点で、二人の決着も付いていた可能性もある。 そこに加えて、自分はこんな大切な時に眠っていたのだ。 何分、何時間寝ていたのかは分からないが、最悪の事態に陥っている可能性もある。 ――既に全ての戦いが終結し、誰一人生き残ってはいないという可能性。 「そんなのは、嫌だ!」 だから、スバルは今の自分に出来る事をする。 今は一刻も早くこの身体を修理して、すぐに戦場に戻らなければならない。 せめて足手まといにならないだけの力を、もう一度手に入れる為に。 自分の夢を果たす為にも、こんな所で立ち止まってはいられないから。 その想いを胸に、スバルは壁へと寄りかかり、少しずつ奥へと歩を進めて行くのであった。 【2日目 早朝】 【現在地 C-9 スカリエッティのアジト内部】 【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】疲労(大)、魔力消費(大)、全身ダメージ(大)、左腕骨折(処置済み)、悲しみとそれ以上の決意 【装備】ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レヴァンティン(待機フォルム、0/3)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、クロスミラージュ(破損)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、治療の神 ディアン・ケト@リリカル遊戯王GX 【道具】なし 【思考】 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。 1.一刻も早く身体を修理し、戦場に戻る。 2.ヴァッシュと天道を探して、駅でユーノ達と合流する。 【備考】 ※金居を警戒しています。 ※アンジールが味方かどうか判断しかねています。 ※ストラーダはルシファーズハンマーによって破壊されました。 Back 戻らないD/スバル・ナカジマ 時系列順で読む Next 抱えしP/makemagic 投下順で読む Next S少年の事件簿/殺人犯、八神はやて スバル・ナカジマ Next Zに繋がる物語/白銀の堕天使 柊かがみ Next ……起きないから奇跡って言うんですよ
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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 拝啓、泉こなた様 こんにちは。元気してる?いいこといっぱいあった? 手紙の書き出しって、こんなのでいいのかしら。 手紙なんて年賀状以外で書くのはホントに久しぶり。 最後に書いたのがいつだったのか忘れちゃうくらい。 この封筒や便箋を選ぶのだって結構苦労したのよ。デパートや本屋に行ったんだけど、レターセットってたくさんあるのね。 可愛いデザインのものやシンプルで格好いいもの、アニメのキャラクターもののレターセットとかも売ってて目移りしちゃったわ。 久しぶりに手紙を書く、って思うと凝りたくなっちゃって、選ぶのに随分時間がかかったわ。 べ、別に、こなたのために選んだわけじゃないのよ!単に見てるのが楽しくて…そう!一種のウィンドショッピングってやつよ! う~これを読んでるこなたの顔が目に浮かぶわ…きっと口元を猫みたいにしてニヤニヤしてるんでしょうね。でもって「ツンデレかがみん萌え~」とか思ってるのよ。 言っとくけど、私はツンデレじゃない! ああ~もう!手紙なんて書きなれてないから何を書けばいいのかわかんないわ。 大体今時手紙なんかよりメールをつかうわよね。 メールのほうが安いし手軽だしすぐに返事がもらえるし。あ、でもこなたの場合はそうでもないか。あんたの携帯は当てにならないからね~携帯してない携帯電話ってどんだけよ。 でもさ、私は結構手紙って好きなんだ。メールは確かに便利なんだけど、あくまで通信手段で、手紙はそれ以上に心が伝わってくるような気がするの。 私さ、小さいころ遠くに住んでる友達と文通してたことがあるんだけど、当時は家のポストを見るのが毎日とっても楽しみだったの。 ポストを見て、私宛の封筒が届いてたら、なんだかすっごく嬉しくなった。 この手紙にはどんなことが書いてあるのかな?早く読みたいな。返事はどんなことを書こうかな。 そんなことを考えながら、わくわくしながらペーパーナイフで封筒を開けるの。 そして返事をポストに投函して、次の日にはもう相手からの返事が待ち遠しくてたまらないの。 それに手紙って、いろんな人の手を経て私達のところに届くんだよ。 まずポストに投函されて、それを郵便局の人が回収して、仕分けされて、送り先の郵便局に送られて、また仕分けされて、配達の人が届けてくれる。 そう考えるとさ、手紙ってあったかいな~って思わない? なにより手紙は、メールと違って書くことをじっくり考えられるでしょ?だから、普段言いたいけど言えないようなこととかも、手紙なら伝えられると思うんだ。 大事な事だから二回言うけど、私はツンデレじゃないよ。 でもね、いつもこなたに素直になれないでいるのは本当。 私は昔からそうなんだ。 強がって、意地張って、素直にありがとうって、言えない… でも、こなたの前では素直な女の子でいたいの。 だからこれは、その第一歩。 私はこなたに、ありがとうって、言いたい。 いつも仲良くしてくれて、ありがとう。 そばにいてくれて、ありがとう。 私のこと好きになってくれて、ありがとう。 なによりこの世界に、いてくれてありがとう。 これからも、ずっと、私のそばにいてね。 大好きなこなたへ ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「大好きなこなたh」 「だああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 家中にかがみの叫び声が響き渡った。 「こなたぁ!人の手紙を勝手に読むなぁ!!」 かがみの家にこなたが遊びにきた。 かがみが飲み物を取りに部屋をでたほんの僅かな時間に、こなたは机の上にあった自分に宛てた手紙を発見し、好奇心には勝てず読んでしまい、その瞬間をかがみに見つかってしまったのだった。 「返せっ!」 かがみはこなたの手に握られていた手紙をひったくった。 「いいじゃん、宛名は私になってるんだから私に出すつもりだったんでしょ?」 「そうだけど……でもイヤなの!!」 「う~ん、内容が内容だからねぇ~」 「っ////」 「でも嬉しいよ、かがみ」 耳まで真っ赤になって言葉を詰まらせたかがみに、こなたは優しく言った。 「な…なにがよ…」 ぶっきらぼうに答えるかがみの背中にこなたはそっと抱きついた。 「私、ずっとかがみのそばにいるよ…かがみのこと、大好きだから」 「……ばか……」 「この手紙、もらっていい?」 「………うん」 今日は郵政記念日。 1871年(明治4年)の今日、それまでの飛脚制度にかわって、郵便制度が実施されたのを記念して、1934年(昭和9年)に制定された記念日。 この日から1週間を「郵便週間」として、郵便業務のPR活動などが行われる。 ラブレターにありがとうの気持ちをこめて、かがみからこなたへ コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-10-10 12 58 46) 私も欲しい! -- かがみんラブ (2012-09-18 22 52 34) 激しくGJです -- 白夜 (2010-04-25 23 55 56) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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ひとり、ふたり(前編)へ 4 「落ち着いた?」 「…うん。さっきよりは」 こなたが小康状態になるまでは、かなりの時間を費やした。どうやらこなたの気持ちの暴走も一段落したようだ。 私はこなたを正面から見据えて、切り出した。 「じゃあ、私の話…さっきの続きなんだけど…中断しちゃったからね…聞いてくれる?」 「…できれば…聞きたくないよ…。でも、聞く」 こなたも私を正面から見ている。まつげがふるふる震えている。ちょっと怯えた顔だけど、それでも私の話を聞いてくれた。 「私ね…こなたとずっと一緒にいたらいけないと思うの。あの…こなたが私を好きって言ってくれてからこんなこと言うのもすごくずるいんだけど…こなた、寂しかったんだよね?」 「…!」 こなたが息をのんだ。 「…気づいて…たの…?」 「いや、確証があったわけじゃないよ?でも、んー、結構前になるんだけど、ほら、2年の7月くらいだっけ?こなたがお母さんいないって初めて言ってくれたことがあるじゃない?あのときから、ちょっと注意してこなたをみるようにしてたのよ。最初は全然分からなかった。こなた、意識して寂しさなんて見せないようにしてたでしょ。特に私には。でもね、だから逆になんとなくそうじゃないかな、とも思い始めたのよ。それでよく考えてみると、あんたが甘える、みたいなときって、私だけなのよね。それで、ひょっとしてこなた、お母さんがいなくて寂しくて、甘える相手を欲しがってるのかな、って思って…。でも、もし本当に寂しがってて、そのこと隠してるんだったら、気づかれたくはないわけでしょ?だから私、こなたが寂しがっていたんだとしても、そのことを分かってるって気づかれないように、みたいなことをするようになって…。今年の初詣のときとかね。あのとき、私のお祈りの話が出たじゃない。あのとき私何て言ったか覚えてる?」 「えーと…確か…つかさやみゆきさんと同じクラスになりたい…だったよね…」 「うん。あれ、こなたの名前出したら、こなたとも一緒にって思われるじゃない?でも、それだと万一『一緒になりたい』じゃなくて『一緒になってあげたい』っていうふうに気づかれちゃうかもって思ったのよ。だったら名前出さないで単に照れてるって思われてた方がいいかなーって…。でも、今から考えれば一人だけ名前出さない方が目立つよね。普通にこなたの名前も出してた方がよかったのかなー…なんて」 「かがみ…。気を使わせちゃったみたいだね…ごめんね…」 こなたの目にまた涙が浮かんだ。 「ああもう、泣かない泣かない!実はほんとに少し照れてたってのもあるしね」 ちょっと笑みをつくってあげる。 こなたもつられてちょっとだけ笑う。 「それで、そんな寂しさ抱えてるかもしれない友だちを放っておけないでしょ?だから、私はこなたを支えてあげようって思うようになったの。こなたが私に甘えてきてるなー…ってことはわかったから、こなたがいつかそういう気持ちを乗り越えて、私がいなくても生きていけるようにってね。だから、まずはこなたのことならどんなことでも受けとめてあげよう、寂しくないようにって思って…からかわれても、意味不明なオタク用語使われても、宿題写しに押し掛けられても、全部受けとめてあげた。本当に嫌だったら、とっくに友だちなんてやめてるよ。でも、こなたの寂しさが少しでも薄まるならって思ったら、我慢できたよ。いや、我慢なんて言い方、おかしいね。こなたが嬉しそうにしてると、私も嬉しかったよ」 こなたは泣き笑いのような表情だった。色んな感情がない混ぜになっているのだろう。 実を言うと私もそうだ。 「だから、私はこなたが私なしでも生きていけるようにっていうふうに接してきたの。それで、今回のことで、もしかしたらこなた、もう私を必要としてないのかなって…避けられ始めて思った。避けられ始めた原因は、多分、私が何かミスって私がこなたの寂しさに気づいてるって感付かれたことだと思ったんだよね。自分が隠してる、一番奥のとこにある気持ちに触れられるって…すごく嫌なことじゃない?だから、嫌われて当然だと思った。…でも、このことで私を吹っ切ってくれるかも、とも思ったのよ。自分で言うのもなんだけど、今のところ一番あんたが頼ってるのは私でしょ?だから、私なしじゃ生きられない、なんて、そんなことになってほしくなかったの。こなたにはしっかり自分で自分に支えを持って、一人でも生きられるようになってほしかったのよ」 「…だから私にしょっちゅう宿題自分でやれとか、進路本気で考えろとか言ってくれてたんだね…」 「…まあね。それで、今日の最初の話に繋がるわけよ。こなたのデリケートな部分に触れちゃったことは謝るよ。だけど、そのことをこなたが許すかどうかにかかわらず、こなたとはお別れしたいなって…」 「待ってよ!」 こなたが大声を出した。 すがるような目で私を見つめている。 「待ってよ…待ってよ…。私の寂しさをかがみが知ってたことに私が気づいてたかどうかってことだってそもそも勘違いだったわけじゃない…。私は確かにお母さんいなくて寂しかったよ。家でも外でもそれに気づかれないようにしてたよ。でも、そのことにかがみか気づいてくれて、それで色々やってくれてたってことが分かって、すごく嬉しいんだよ!全然嫌だなんて思ってないよ…。それなのに…そんないきなり…お別れなんて…」 こなたの目から、また大粒の涙が溢れ出した。 「かがみ…せっかく好きだって分かったのに…。やっと伝えられたのに…」 再び、私は息をつく。 そして、言おうか言うまいか最後まで悩んでいたことを、言うことにした。 ちょっとだけ笑って口を開く。 「…とまあここまでの話は私の気持ち一つの形。あんたに一人でも生きられるようになってほしい、私がいなくても大丈夫になってほしい、それは間違いないよ。でもね…」 「…え…?」 「こなたを支えよう支えようって思ってるうちにね、私…だんだん変な気持ちになってきちゃってね、なんて言ったらいいのかな…こなたには私がいなくちゃダメっていうかね…」 「え…?それって…」 「あはは…本末転倒よね…。一人立ちさせるために支えてたのに、支えること自体が目的になってきちゃってね…。で、それからはもっとこなたに近づかなくちゃ、もっとこなたを知らなくちゃ…とか思うようになってね…。矛盾してるよね…。『私がいなくても大丈夫なように』…と…『私が支えてあげなくちゃダメ』…と…。でも…多分…だから…私もね、こなたのこと、好きなのかも…ね…」 「かがみ…」 こなたはしばらくぼー…っとした後、私の胸に飛び込んできた。 「かがみ…かがみ…かがみ…!」 「こらこら、ちょっと落ち着いて」 言いながら、それが意味をなさないことは分かっていた。 だから私も、こなたを抱きしめてあげた。 こんな小さな身体で…よく耐えてきたよね…。 悲しかったよね…。辛かったよね…。 こなたの髪を優しく撫でると、こなたは気持ちよさそうに目を閉じる。 こなたはまだ、泣いていた。 5 こなたの自制がきくようになるまでは、また時間を費やさなければならなかった。 もうとっくに日は沈んでおり、外は夜の帳が下りていた。 「あー…続き話しても、いい?」 「うん…ごめん…嬉しくて…」 「あの、つまりね?私はこなたが好きでもあるけど、離れていてもほしいのよ。だから、まあちょっと余談になるけど、海で普通にナンパとかも期待するし、修学旅行のとき手紙もらって告白期待しちゃったりとかもするわけよ。あ、ずっと考えてたんだけど、あんた修学旅行の手紙の一件、どっかで覗いてたろ!」 「たはは…ばれたか」 「家に帰ってからの電話で、変なこと言ったわよね。『不貞寝してるかと思った』って言ったでしょ?何言ってるのかと思ったけど、私が告白期待して男子と待ち合わせて、それがただの人形譲ってくれってお願いだったってこと知ってたと考えれば辻褄が合うわ。まったく…」 「いやだって…かがみあのときつっこんでくれなくなって…寂しくて…で男子の方みてたりそわそわしてたから、これは何かあるなと。で、ご飯の前に別れてからあとつけていったらあの場面に」 「あんたなぁ!人のプライバシーをなんだと思ってんのよ!ほんとに告白だったらどうするつもりだったのよ…」 いつものやりとりだった。 ほんのちょっとだけ、気が緩む。 「う…どうしてたかな…泣いてたかも…いや、その男子闇討ちとかしてたかな…。あ、じゃあ、もしあれが告白で、そのとき私が飛び出していって同時に告白してたら、かがみはあの男子と私、どっちをとった?」 「え?えーと…」 答えにつまる。 なんと言ったものだろう。 どっちをとっても私の本心ではない。 「うーん…」 私からの答えが返ってこないので、こなたの顔に影が差してきた。 私は慌てて手を振った。 「あ、いや、だからね?あんたが嫌いなわけじゃないのよ?あの男子が特別好きだったわけでもないの。でも…」 「うん…分かってる…。かがみは、私がかがみに頼りっきりになってほしくないんだよね…。言いにくいこときいてごめんね…」 こういうとき、嘘でも「こなた」って言ってあげられないのが、私の悪いところだよね。ときどき嫌になる。 代わりといってはなんだけど、本当のところを言うことにした。 「うーん…そうなんだけど…。両方断って、後でこっそりこなただけにOKしちゃったりとかしたかもね。そうすることが、本当は違うって分かってても。正直、どうなったかは分からない。あのときから、私こなたのこと好きだったしね。すごく悩むと思うけど、好きって気持ちが、支えてあげたいって気持ちに勝っちゃってたら、多分、こなたと、つきあってた」 「えへへ…そっか。ありがと」 こなたの顔に笑みが戻る。 それが、私の一番好きな顔なんだよ。 「…でもさ、あの男子、『こんなこと柊にしか言えないから』って言ってたよね?あれも十分フラグ立ててると思うんだけどねー…。何考えてたんだろうねー…」 「あーもう!終わった話はいいの!」 「かがみから話ずらしたんじゃん」 「悪かったわよ!それで!今後の話を真面目にするけど…」 「…」 こなたの表情が一気に引き締まる。 「考えてみるとさ、こなたのその『好き』って想い…えーと、嬉しいんだけど、ちょっと違うなって気もするのよ」 「え…?どういうこと?」 「その想いはさ、元々私に甘えたいって気持ちからきてるわけだよね?でも、こなたの周りにいる人をみてみると、みゆきには『いい人すぎて頼みづらい』から甘えられないんでしょ?つかさには…まあ言わなくても分かるわね。姉として腹立つけど、あんたつかさを自分と同レベル以下と見なしてるでしょ。あの子、根は真面目なのに…。なら甘えるわけにはいかないわね。ゆたかちゃんには『姉としてのプレッシャー』がどうこう言ってたから甘えられない。あとはおじさんだけど、さっきの話だと家の中でも寂しさ見せないように振舞ってるのよね。…まあ、おじさん親だし、そのこと気づいててもよさそうだけど…。とにかく、そうすると、私くらいしか残らないのよね。つまり、私に甘えたいというより、他に甘える人がいないって言った方が正しいんじゃないかと思うわけよ」 「…そんなこと…」 「あ、別にあんたの想いを否定したいわけじゃないのよ?ただ、その想いは、『私が好き』っていう積極的なものじゃなくて、選択肢を消していった結果残った、消去法みたいなものなんじゃないかなー…って」 「…そうなのかな…。私、ずっとかがみが好きって本当に思ってたんだけど…」 「このことはよく考えなきゃいけないわよ?だって、単に甘えたい人がほしいんだったら、私じゃなくてもいいじゃない」 こなたの表情がどんどん暗くなっていく。 ん…でもここで妥協しちゃいけないよね。 「まあ、このことは私にも言えるんだけどね。私がなんで弁護士志望なんだかわかる?」 「え…?えーと…そりゃ…人助けしたいから?」 「まあだいたいそうね。私ね、危なっかしい人とか見てると、私が支えてあげなきゃって思っちゃうのよ。つかさもそうだしね。そんなふうに、できるだけ多くの人を支えられる人になりたいのね。…だから、支えをほしがってる人をみたら、あんたじゃなくても力になってあげたくなると思うのよ」 こなたが雨に濡れた子犬のような声で問いかける。 「…じゃあかがみは…やっぱり私と一緒にはいられないの…?私もかがみも違う人好きになっちゃうかもしれないし、離れてた方がいいよ、って…そういうことなの…?」 「ほら、そんな顔しないで。離れてた方がいいとは思うよ?でも私だって将来どうなるかは分からないけど、今好きな人はこなただし…本当言うと離れたくない気持ちもあるわけよ」 「…難しいね」 「んー…私は、恋愛の関係と支える関係って対極にあると思うのよ。恋愛関係は、お互いがお互いを求める、相互依存の関係ね。支える関係っていうのは、いつか互いが独立して離れていく、その離れる力をつけるための関係。まあ優劣はないと思うけど、どっちが好きかっていうと支える関係の方よね。お互いがいなきゃ生きていけない人たちよりは、一人でも生きていける、強い人の方が好きだな、私は」 「…え、でもかがみその…結婚とか考えたことないの?」 「勿論あるわよ。でも、それもお互いがなきゃ生きていけない、みたいな関係よりは、強い人どうしが互いを認め合って好きになるっていう関係を考えてたのよ」 「そっか…それじゃ私はどうしよう…」 「それを決めるのも、強さの一つなのよ?私はだいたい決まったけど」 こなたは目を閉じてしばし沈黙する。 やがて、ゆっくりと目を開いた。 「…わかった。じゃあこうしよう。これからは自分一人で生きていけるように頑張るから。私、諦めないよ。私が一人でも生きていける、かがみなしでも大丈夫ってかがみがわかって、そのときまだ私がかがみを好きで、かがみが私を好きだったら…一緒に暮らそう?なんで私がかがみを好きなのか、よく考えてみるから、かがみも私を好きな理由、もっと考えてみて。それから、当面のところの付き合いは…あの、せめて高校卒業までは…一緒に…いてほしいな…。あとちょっとだし…。宿題とか進路とかはかがみに頼らないで真面目にやるから…。私まだ…かがみがいてくれないと…寂しいから…」 私は緩やかに笑った。 自然とこの表情ができた。 「うん。私の考えとだいたい同じね。いいよ、それで。でも、高校卒業までは一緒にいるけど、その先、どれだけ長い間離れてるかわからないよ?こなたが一人でも大丈夫って、私がどうやって判断するかもまだわからないんだよ?それでも私を好きだって想い続けていられる?私がこなたを好きだって想い続けていられると思う?」 こなたがちょっとむくれる。 「うう…意地悪言わないでよぅ…。大丈夫だよ…。きっと大丈夫だから…」 私はちょっとおかしくなって、そして、そんなこなたが…ちょっとかわいくて、少しだけ、心が揺れてしまった。だからこそ、今、言っておかないと。 「ふふ…ごめんごめん。わかったよ。応援してるからね。あ、それから、これは覚えておいてほしいんだけど、私が今日言ったことは、別にこなたの自由な恋愛を禁止するものじゃないからね。あくまでこれは私の考え。こなたが、この先、私以外の人を好きになって、その人と一緒になりたいと思うようになったら、私の言ったことはすっぱり忘れて、その人と幸せになって。こなたが私の考えに縛られることは私も望んでないから…。私のためにがんばることが窮屈に思うようになったら、いつでもそこから抜け出していいんだからね。私は、こなたが私のことをどう思うようになっても、そのことでこなたを嫌ったり恨んだりしないから、遠慮なんてする必要ないからね…」 こなたがまた少し夕立の顔になる。 「どうしてそういうことばっかり言うの、かがみは…。私がかがみを好きじゃなくなった後の話なんて聞きたくないよ…」 「ごめん。まあつまり、私は恩を売りたくてこういうことしてるわけじゃないよって言いたかったのよ。こなたが私をどう思ってもいいよって…。私が人を支えたいっていうのも、その人自身のためっていうのも勿論あるけど、どっちかっていうと、私がそうしたいからなんだよね。私より人の気持ちをよく考えてあげられる人なんていっぱいいるでしょうし、私より人のためになることをできる人もいっぱいいるよ。私ができることなんて大したことないんだから、もし私に不満があれば、別の人のところにいってくれていいんだよ。だから、余計なお世話だと思われこそすれ、感謝なんてされるつもりない。私は、私のできることを、ただやりたいようにやってるだけなんだから。勿論、全力は尽くすけどね」 「かがみ…。でも、私は、かがみが一緒にいてくれて…本当に楽しかったよ。かがみ、そういうこと全然言ってくれないから、気づかないで過ごしてきちゃったけど…今まで一緒に過ごしてきた時間の中に…かがみの想いがいっぱいつまってたんだよね…。私…かがみがいてくれなきゃ…もっとダメになってたと思う…。人を好きになるって気持ちもわからないままだっただろうし…。この先、どうなるかわかんないかもしれないけど…今の気持ちだけは、私、絶対に忘れないよ…」 こなたの気持ちが痛いほど伝わってくる。 少しだけ嬉しくて、少しだけ罪悪感に胸が痛む。 「うん。そう言ってもらえるとありがたいわね…。だけど、本当に寂しくなって、どうしようもなくなったら、無理しないで言ってくれていいからね。もうちょっとの間だけだけど、私が一緒にいてこなたが落ち着くんなら、一晩中でも一緒にいてあげるから。それで元気になれたら、また次の日からがんばって。ね?」 「かがみ…ありがとう…。あは…なんか、逆になっちゃったね…」 こなたが照れくさそうに言う。 「逆って?」 「ほら、私、ずっとかがみのこと寂しがりとかツンデレとか言ってたけど…私の方がよっぽど、自分の気持ち出すの苦手だったね…。寂しがってたのは私の方だったし…かがみのこと、こんなになるまで恥ずかしくて怖くて…好きって言えなかったし…。私、かがみが寂しがってるかなって思ったときは、茶化して紛らわしてあげようとかはしたけど…支える役目はかがみの方だったんだね」 「そうかもね…」 「すごいよね、かがみは。私なんか今日はもういっぱいいっぱいだったのに…。かがみはこんな話なのに全然照れてもないし、堂々としてるよね。今までは照れ屋で寂しがりで、こういうことなんかかなり苦手だと思ってたけど」 「そんなことないわよ?私だって恥ずかしい気持ちくらいあるわよ。けど、しっかり伝えなきゃいけないことは、ちゃんと言わなきゃダメだってことよ」 「そうだよね…。ん?あれ?」 「どうしたの?」 こなたが急に首をひねった。 「今気づいたんだけど、かがみが私が寂しがってることに気づいたのって、私がお母さんいないって言ってからだよね?」 「ええ、そうね」 「あーそっかー…ふーん…ていうことは…」 こなたがにまにましだした。 何だか猛烈に嫌な予感がする。 「な…何よ」 「3年に上がるとき、私らと一緒のクラスになりたいって思ってたのは、私と一緒にいてくれるため…それはわかったよ。でもさ…2年に上がるときも私らと一緒のクラスになりたいって思ってたんだよね?たーしかそんなこと言ってたよねー…」 あれか!あのことか! こいつ、こんなときにそんなこと思い出しやがって! 「そのときはまだ私が寂しがってるってわかってなかったんだよねぇ…?つまり…」 「黙れ黙れ黙れ!それ以上言うなああ!」 「あー…やっぱりかがみも寂しかったんだねー恥ずかしかったんだねー。ほらおいでー?なでなでしてあげるよー?」 つかさのやつめ…。いくら姉妹だからって何でもかんでもつかさに言うのはやめた方がいいのかしらね…。 「いいじゃない。似たものどうし、慰めあおうよー」 「あんたと一緒にするな…」 「えーどうしてー?そんなにツンデレっ娘しなくていいのにー」 「ツンデレ言うなってのに!」 結局私がこなたを支えようとしてたのは、自分も寂しかったからなんだろうか。こなたといつか離れてしまうのが寂しかったから、何とか理由を見つけて、こなたと一緒にいようとしただけなんだろうか。 そんな疑問は、とっくに解決したものだと思っていたのに。 「言ったでしょ?あんたは、私が支えてあげたいのよ。その私が寂しがったりしてちゃ…あんたの支えが、なくなっちゃうじゃない…。私に頼りっきりってのも困るけど…そんな寂しがってるこなた…みたくないよ…。こなたには、寂しさを隠すためじゃなくて、寂しさを乗り越えて、本当に心から笑っていてほしいんだよ…」 「かがみ…」 こなたがちょっと真面目な顔になる。 「あのさ…そいじゃきくけど、かがみ自身の支えって…何?」 「…え?」 私の支え。 そんなことはわかりきっている。 「何言ってんの。私が支えた人が、私なしでも生きていけるようになったら、それが何よりよ。今はこなた。あんたがそれだけどね」 「そう…。ならいいんだけど…。私よりかがみの方が無理してたりするんじゃないかなって…。さっきもさ…私の想いが強すぎてどうにもならなくなったとき、かがみ、私には離れていてほしいって思ってたのに、私を落ち着かせるために、躊躇なくキスしてくれたり、その…身体、差し出したりしてくれたよね?私には辛くなったらそんなふうにかがみがいてくれるけど…かがみには…」 「バカにすんじゃないわよ。そんなに私は弱くないつもりよ」 そうだよ。 こなたが私のもとから去っていく。そう考えたとき、私はどう感じる?こなたが寂しい気持ちを抱えたままどこかへ行ってしまったら、私はそれをずっと引きずるだろう。私に何かしてあげられたことはあったんじゃないか、こなたが寂しさを乗り越える手助けをできたんじゃないか、とずっと考えてしまうだろう。 でも、こなたが私を必要としなくなってからお別れしたらどうだろう。きっと、悔いはない。こなたがちゃんと自分で自分を支えられるようになった姿を見たら、私はもうそれだけで嬉しい。私がこなたをしっかり支えてあげられた、こなたはもう一人で大丈夫だ、そう実感できたときが、何よりの私の支えになるだろう。 それは確かに私にだって寂しく思うときはある。一人きりでいると、皆と一緒にいたい、なんでもない話題で盛り上がったり、冗談言いあったりしたいと思うときはある。でも、誰かを支えるっていうのは、一人きりでやることじゃない。その相手と一緒の時間を過ごすってことだ。その結果、私の力でその人が何かを克服できたり、悩みを解決できたりするなら、私が一緒にいられた意味があったということになる。そこには、私が寂しさを感じる余地なんてない。支えてる相手に入れ込んじゃったりするあたり、まだまだ私も修行が足りないとは思うけど。ん…だけど、こなたなら…いいのかな…。それは…これから考えることにしよう。 「だから、とにかくあんたがしっかりしてくれるのが一番なんだから。今は余計なことは考えないで、そこだけに集中しなさいよ」 「うん…。わかった。かがみがそれでいいんだったら、私、がんばってみるよ」 それでいいんだよ。 それでいいんだよ。 そうしてくれないと、本当に、困るんだから。 「かがみ…その…これからも、よろしくね?」 こなたが右手を差し出してくる。 その手をそっと握り返す。 「こちらこそ、よろしく。期待してるんだからね?」 「うん!」 こなたは満面の笑みで、頷いてくれた。 6 「おはようございます、泉さん」 「みゆきさん、おはよー」 「あ、かがみさんとつかささんもご一緒でしたか。おはようございます」 「おはよう、みゆき」 「おはよ、ゆきちゃん」 月曜日。朝、私たちは久しぶりに四人で机を囲んだ。 もう来ないと思っていた風景。 あの日、私の手で終わらせる筈だった風景。 それを目にして、これでよかったのかな、とちょっと思う。 けど、それはこなたのため、自分のため、と言いながらどこかに思い描いていた虚像だっただけのかもしれない。 本当は私はどう思っているんだろう。 それは、簡単なことだ。 今、心いっぱいに満ちている、この思いが答えだ。 コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-08-22 20 33 32) くどい。 -- 名無しさん (2010-10-07 15 13 24) やっぱ普通に考えると百合って難しいよなぁ…ありがとうございました -- 名無しさん (2009-04-14 22 23 15) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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「おはよーこなちゃん、お姉ちゃん!」 「おはようございます!お姉ちゃん、かがみ先輩!」 「やぁつかさ、ゆうちゃん、おはよ。ふぇ・・・はっくしゅんっ!」 はぁっと吐く息は白く空に消えていく。耳や頬は冬ならではの冷たさだ。 センターまで、あと1週間。なんだかソワソワする。けど、私はそれとは関係なくフワフワした感覚でいる。 「ホラ、こなたっ!マフラー忘れてるわよ。大事な時期なんだから、気を付けないと!」 全く、と悪態をつきながら私はこなたの首にマフラーをまく。あぅあぅ言いながら巻かれているこなた。 こいつは以外にしっかりしてると思えば、こういうところでだらしない。そこは3年目でも変わらないなぁ。 「ふふっ。かがみ先輩、奥さんみたいですね。」 「あぁ、確かにそうかも。お姉ちゃんとこなちゃん、段々恋人らしくなってきたね。」 ・・・妹よ。その純粋で天然な所は長所でもあり、短所でもあるのよ?自覚してくれ。 とかなんとか考えていても、鼓動は早くなる一方。頬も耳も冬なのにぽかぽかだよ。 「な、何朝っぱらから恥ずかしい事言ってんのよ!?ほらさっさと行くわよっ!」 「ぐぇ。か、かがみ・・・マフラーひっぱんないで・・・」 「つかさ先輩?」 「なぁに、ゆたかちゃん?」 「かがみ先輩って可愛いですね。」 「うんそうでしょう?かぁいいよね?」 「外野うるさいわよっ!」 何故朝からこんな恥ずかしい目にあっているのか。それはクリスマスが始まり。 あの日、私とこなたは、所謂恋人同士になった。その証はこなたの右の手首にある。 我ながらちょっと恥ずかしい。でも、幸せ。右手首の紫と青の螺旋を見るだけで胸が温かくなる。 きっとこれがフワフワした気持ちの正体。好きっていうトクベツな感情。 「ふふっ。」 「何?どうしたのかがみ?」 無意識のうちに笑みがこぼれてしまう。全くたるんでるなぁ、私。ちょっとらしくないかな? 「なんでもないわよ。」 冬の青空は眩しくて綺麗だ。肌に触れる空気も澄んでいる。私は一つ深呼吸。 「さ、行きましょ、こなた。」 「うん、かがみ。」 「あ、置いていかないでよお姉ちゃん!」 「待ってくださーい!」 今日も始まる、同居人兼恋人との大切な優しい日。 ☆☆☆☆ 「・・・ちゅうワケで、ってもう時間やな。ほな今日の授業はここでしまいや。お疲れさん。」 黒井先生の言葉と同時に響き渡るベル。ちなみに私の腹時計も、ぐーっとベルが鳴る。 「おっ、なんだー柊ぃ。腹鳴らしてさ。ま、私もめちゃくちゃ減ってるけど。」 「もし良かったら柊ちゃんも一緒に寄り道でもどう?」 「んー・・・んじゃお言葉に甘えます。ほら日下部も早くしなさいよ。」 八重歯が可愛らしく光る日下部と今日も菩薩のような笑顔の峰岸。 高校3年間、ずっと同じクラスだ。付き合いだけならこなた達よりも長い。 それだけに、この2人には気が許せるし、とても安らげる場所でもある。 「そういえば最近泉ちゃんとどう?」 「そーだそーだ!!付き合い始めてだいたい2週間ぐらいだろ?」 むぐっ、とむせてしまう私。最近こんなんばっかな気がする。なんなんだ。これが付き合い初めの洗礼なのか? 私達が付き合っている事を知っているのはごくわずかの人だけである。 やっぱりどこかで背徳感や知られたくないっていう気持ちがあるのかもしれない。 覚悟はしていた。幸せになる為なら大丈夫、なんでもやる。でもいざとなると、なんとなく切ない。 だからなんの気兼ねもいらずに話せる人達にはとても感謝している。無論、この2人も例外じゃない。 「まぁ、普通なんじゃない?来週センター試験だから遊びにはいけないけどさ。」 「ふーん。って普通じゃ面白くねーだろ。なんかないのかよ?こうさ・・・」 「べ、別に面白くなくてもいいでしょーが!」 「そうね。確かに普通って簡単に見えて難しい事よ、みさちゃん?私はいいと思うよ、普通って事。」 峰岸はふわりと笑っている。特別になっても、普通でいる。今の私にずしりと響く言葉。 特別になったのに。せっかく勝ち取った特別なのに。あまりに普通すぎる『特別な日々』。 「そんなもんかねー。ノロケの一つでも聞かせてくれてもいいのにさ。」 「・・・そのノロケがないから困ってるんじゃない・・・」 「え?」 「なに?」 ☆☆☆☆ 今までのような普通な毎日が嫌なワケじゃない。むしろ峰岸の言うように普通って大切な事。 それでも、やっぱり夢はみちゃう。手をつないだり、どこか遊びに行ったり、2人だけで過ごしたりしたい。 ワガママなのは分かってる。それでも私はさらなる幸せを求めてしまう。 「なるほどなー。でも別に悩みって程じゃないんじゃね?」 「柊ちゃん、その事泉ちゃんに話したの?」 「うーん・・・ここからが本題というか・・・」 「どいうことだよ?」 「・・・ホントにこなたは、私の事、好きでいてくれてるのかなって。」 「は!?」 「・・・」 「聞けないのよ、怖くて。拒絶されるんじゃないか、ホントは・・・同情で付き合ってるんじゃないかなって。」 こんなに私は弱かった。強くなったつもりだったのに、こなたと肩を並べてるつもりだったのに。 自分が嫌い。こなたを信じてあげられない自分、普通に満足できない自分、強くなれない自分。 「なら、もう一度泣き虫に戻る?柊ちゃん。」 「あ、あやの・・・」 「・・・泣き虫?」 「『前』の柊ちゃんは泣き虫でも、諦めなかった。追いかけて追いかけて、未来を掴んだ。」 泣き虫。追い掛ける。未来。諦めない。そういわれてズキッと痛む胸。 峰岸の目に、雫石が見えた。その姿が強くて、自分にないものを持っているようで。 「本当の強さ、そんなの言葉遊び。大切なのは意志じゃないかな? 犯した過ちを取り戻そうと堅い意志であがく。それが柊ちゃんの力。」 意志。足掻く。そうだ、そうだ。忘れてた。アホだ、私。やっぱりたるんでた。 「それを忘れないで、柊ちゃん。柊ちゃんの力は柊ちゃんにしかないものだから。」 「・・・私、行かなきゃ。こなたの所に、行かなきゃ・・・」 「・・・仕方ねーな。私達の事はいいから早く行けって!」 にかっと笑い、背中を叩かれる。ちょっと痛いけど、逆にそれが嬉しかった。 「ありがと、日下部。ありがとう、峰岸。危なく見失うトコだった。今度、何かおごるね。」 「いってらっしゃい、柊ちゃん。」 校舎から見える夕焼け。朝の眩しさとは違うもの。それを背に私は走る。大好きな、あいつの元へ。 「・・・行っちまったな。」 「大丈夫よ、きっと。『今』は大丈夫。柊ちゃんと、泉ちゃんなら。」 ☆☆☆☆ 夕暮れ。冬なので暗くなるのが早くなっている。それでも空は紅色に染まり、世界をも染めている。 校門を出たところである後ろ姿を見つけた。その後ろ姿は小さい。青い髪が紅と混じり、ゆらゆらゆれている。 「こなたっ!」 「あ、かがみ。さっきC組覗いたらみさきち達といたからてっきり・・・」 「あれ?つかさとみゆきは?」 「黒井先生に用事があるみたいで、先帰ってて、だってさ。」 「そっか・・・」 「なんか、久しぶりだね、かがみと2人で帰るの。」 ニヤニヤっと笑っているこなた。なんか心を読まれているようで悔しい。 色んな意味で、ドキドキしている私の胸。下手したらミサンガを渡した時よりも。 「そ、そうね。最近は皆で勉強して、その後帰ってたしね。」 「あと1週間でセンター試験か・・・早いね。てかもう卒業だよ!?」 「確かに。あんたと住み始めて3年、か。」 そうだ、あれが始まりだった。ドアを開けたら、こなたがいて。あの日からもう私は惹かれていたんだ。 「色々あったねー。風邪引いて看病して貰ったし。料理の腕も上達したね、かがみん?」 2人で過ごした毎日。笑いあって、ふざけあって。たまに喧嘩したり、怒ったり、泣いたりした。 何も変わらない。今の特別だと思ってる日も、前の日常も、同じ。 「それを言ったら、あんただって。最初は全然つれなかったのに、今じゃこんなんだしねー。」 「こんなんって!失礼なかがみん!」 私は分かってなかった。特別な事なんて何もない。私達はずっと私達。 こなたが、私をどう思ってるかなんて、分からない。でも、私はこなたが、好き。 「あはは、うそうそ。冗談よ。こなたは成長したわ。私が保証する。一番近くにいた私がよ?」 「むぅ。ちょっと照れるじゃないか。・・・ありがと、かがみん!」 こなたの思ってる事、どんな事も受け入れよう。受け入れて、悩んで、足掻いて私は進む。こなたと幸せになる為に。 後悔しないように、させないように、私は進み続けよう。歩き続けよう。これが、私の力。 「ねぇ、こなた?」 「なんだいかがみん?」 ☆☆☆☆ 「やー、買った買った。久しぶりのゲマズだったから奮発しちゃったよ。おかげでもう7時過ぎちゃったね。」 「ま、でもいいんじゃない?息抜きも必要だし。私もなんだんだで楽しかったし。」 町は夜の闇で覆われている。それでも月と星達が煌めいている。美しく、強く、この世界を照らす。 「ありがと、かがみ。誘ってくれて。」 「あ、いや・・・その・・・」 「実はさ、前々からどこかに行こう、一緒に2人で帰ろうって誘おうと思ってたんだ。」 「え?」 「んー、でもさ・・・なかなか言いだせなくて・・・」 頬っぺたを照れるようにかくこなた。こなたの頬が夜でも分かるぐらい紅潮してる。 「なんと言うか・・・んー、怖かったんだよね。本当に付き合ってるのか、かがみは私の事、本当に好きなのかなって。」 あれ?どこかで聞いたことがあるようなセリフだ。こなたは申し訳なさそうに苦笑いしている。 「でもさ、やっぱ違うよね。私達の関係が変わっても、かがみはかがみ。ずっと一緒にいたかがみ。」 それでも力強い瞳。そして凛とした表情。やっぱりこなたはこなただ。私の大好きなこなた。 「私の大好きなかがみ、だよね。だから私は受け入れられるよ。今までみたいに、ね。だから・・・」 あぁ、そういえば、まだ言ってなかったな。焦りすぎて、テンパっててあの時言えなかった言葉。 「好きだよ、こなた。」 「・・・え?何て?」 特別な日々が、日常へ。これが私達なんだ。2人で見失ってた普通。でも、もう大丈夫だよね。 「は、恥ずかしいんだから、あと1回しか言わないからねっ!」 「・・・うん、聞き逃さないよ、かがみん?」 うーん、余裕な表情がちょっと悔しい。やっぱりこんな感じが、私達にはお似合いなんだ。 「・・・大好き、だよ。」 「私もだよ、かがみ。」 大切で、かけがえのない、この普通。2人でなら守れる。ううん、守ってみせるよ。 満月の夜に、美しく映えるこなたの笑顔。ずっとずっと傍にいよう。毎日毎日、笑いあおう。 「さ、ほら。さっさと帰って勉強するわよ!」 「あー、待ってよかがみ。」 私達は歩き出す。どちらともなく握る手。温もりと、幸せを胸に私達は歩く。 長く、辛い道のりかもしれない。それでも、私達は止まらない。手をつないで歩いてゆく。 ゆっくり、ゆっくりと。 ☆☆☆☆ コメントフォーム 名前 コメント ほんとっ、こなかがって言うジャンルに出会えて良かった GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-01-04 23 52 51) こなかが最高! -- 名無しさん (2017-12-26 21 29 39) なんで私の顔、こんなニヤけてるのッ! -- ぷにゃねこ (2013-01-25 17 29 02) 最後の最後まで魅せてくれました! ありがとうございます! -- 名無しさん (2012-11-19 16 11 09) こなたかがみセンターガンバ! -- かがみんラブ (2012-09-17 06 19 57) あふぅ! かがみん萌えヽ(;*´ω`)ゞ -- かみのまにまに (2010-04-23 10 01 30) 888888 -- 名無しさん (2009-11-21 14 03 54) 感動しました!こんなステキな作品に出合えてよかったです これからも頑張ってください -- saori (2009-07-12 12 43 58) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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空はもう完全に暗くなっていた。 街灯が街を薄暗く照らす中を、私は走り続ける。 早いペースで吐かれる白い息が、夜の寒さを証明する。 はぁ、はぁ……げほっ……はぁ、はぁ………。 ずっと走り続けていたせいか、両脚に激痛が襲う。 体力も、とっくに限界を超えている。 「ぁっ………」 ふわりと私の身体が宙に浮き、そのまま地面に倒れる。 「いたた………」 こんな、なんにもないところで転んじゃうなんて……。 もしこなたに見られたら、またからかわれちゃうな……。 『かがみぃ~、こんなところで転んじゃうなんて、もしかして、ドジッ娘属性もあったのかな~? ツンデレにドジッ娘……。よくゲームにでてくるパターンだねぇ~?? また1つかがみんの魅力に気づいちゃったよ~♪ でも、俺の嫁なんだから、ちゃんと身体を大事にしてよね~?』 こなたのニヤニヤ顔と独特間の延びした声が浮かぶ。 ―――こなただけじゃない。 『信じてます、かがみさん』 うん―――。そうだよね―――。 『お姉ちゃんが、できないことなんてないよ!』 みんな、私を信じてくれてる――。みんな、私を支えてくれてる――。 『こなたを……頼んだよ』 近くからも―――。 『……あの子を……お願いします』 彼方からも―――。 みんなの気持ちを、無駄にできない。 私の覚悟を、曲げられない!! 「しっかり……しなさい……!今だけでいいから……!!」 振り疲れた腕を叱咤し、疲労困憊の脚に力を込め、なんとか立ち上がる。 痛っ……。 今までとは違う痛みを感じ、見ると、右脚から赤い鮮血が流れていた。 転んだ時に怪我しちゃったみたいね……。 でもこれくらい、どうってことない。 こなたへの気持ちを我慢していた頃に比べたら、ちっとも辛くない。 『わあぁ!お姉ちゃん、その脚どうしたの!?』 『かがみさん、すぐ消毒しましょう!菌が入ってしまうと大変です!』 『かがみん何してたの?もしかして獣人と戦闘してその程度の傷っていうわけじゃ……』 頭だけは、ちゃんと働くみたいね………。 『誰が戦闘するか!』 私も、『いつものみんな』の中に入る。 こなた、聞こえてる? 私はね、そんないつもの風景を取り戻しに来たの。 あなたを取り戻しに来たの。 わたしを―――――取り戻しに来たの。 それだけを、その場所だけを目指して、走り出した。 さっきまでの疲れが嘘のように消え、脚の傷の痛みなんて少しも感じなかった。 まるで、昼に屋上の空を祝福していた神様が、今度は私を祝福してくれてるみたいだった。 ―――ありがとうございます、神様―――。 心の中でお礼を言った。 見慣れた建物が、見えてきた。 そう、そこは―――学校。 やっと着いた……!! こんなにも望んで、強い思いを抱いて校門をくぐるのは、初めてだった。 「こなた……!!」 早く探さないと……!! 校舎の中は昼とは違い、多分つかさなら怖がってその場から動けなくなるくらい、真っ暗。 ………………私も正直、怖い。 けれど今はそんなこと言ってられない。 感覚を頼りに教室を目指し、月明かりに照らされた廊下を駆け抜け、扉を開ける。 そこには暗闇に覆われた光景が広がっていた。 「こなた……?」 呼び掛けた相手の有無を確認するように、名前を呼ぶ。 存在が認知出来るのは、机と椅子と窓と黒板。 ………こなたの姿はなかった。 まだ――。 まだ1つしか見てないじゃない。 まだこなたがいないって決ったらワケじゃないわ。 ――窓には、少し陰った月がうつっていた。 私はやみくもに探し回る。 けれどその姿はない。 こなた、何処にいるの……!? こなた、こなた、こなた……!! ねぇ、隠れてないで、出てきてよ!! こなた、お願いっ!!私の願いに応えて……!! 私はその名前を呼び続けた。 けれど声は闇に吸い込まれていくだけだった。 最後の教室――――。 私はすがるような思いで扉を開ける。 熱いものが込み上げてきて、視界が歪む。 そこにも、私の求めてる姿はなかった――――――。 まだ……まだ……。 そう思いたい。だけど、もう探す場所がない。 もう一度探してみよう……。 ほんの数十分前まで気にならなかった疲れと痛みが、徐々に襲ってくる。 それでも私は来た道を戻りながら、一つひとつ見て回る。 けれど、どこの教室もあるのは暗闇だけ。 漆黒の空にたった一つ浮かぶ光。 空の教室を見る度に、その光も暗雲に覆われていく。 さっきまで私の中であんなに強い意志という名の光を放っていた心は、 今ではとても弱々しい、今にも消えてしまいそうなほど儚いものになっていた。 スタートラインだった教室。 今、そこに私は戻ってきた。 これが最後。 ………怖い。 もしこなたがいなかったら………。 ううん、いない確率のほうが高い……。 『扉をあける』という、誰でも日常的にやっていること。 今の私にはそれが計り知れないほどの恐怖の対象だった。 ―――こなた―――。 震える手で、扉を開けた。 ――――あったのは、どこまでもつづく暗闇。 ………こなたぁ……。 ねぇ……どこなの……? ……もしかして……違ったの……? こなたの望んでいたことは、私の望んでいたことと違ったの……? 私の中の僅かな光さえも、闇に――――。 月明かりが照らす僅かな光の中。 そこにうつるもの――――。 私の心の闇の中を、一筋の光が差し込み始めた。 小さな身体。 蒼の長い綺麗な髪。 頭に象徴を主張するようにあるアホ毛。 右目の下の泣き黒子。 エメラルドグリーンの瞳。 私の目にうつるもの―――。 一筋の光が、一瞬で大きくなった。 「こなたぁっ!!!」 私はその名前を呼んでいた。 また走り出していた。 さっきまでの辛さを少しも感じなかった。 私の心は、完全に光を取り戻していた。 そこは―――― ―――3年C組。私のクラス。 こなたはいてくれた。 私が思ったところに。 その小さな身体をさらに小さくして、膝を抱えて座る姿がそこにあった。 「こなた……!」 私はただただ嬉しくて、その名前を呼ぶ。 「か、かがみ……?」 こなたは対照的に、暗く小さな声で私の名前を呼んだ。 「本当にかがみなの………?夢とかお化けじゃない……?」 「そうよ……」 「さっきのも、夢じゃなかったんだ……」 こなたはびっくりしたような顔になった。 「こなた……な、なにやってたのよ……?」 息があがってしまい、単純な言葉しか話せないのが、もどかしい。 「今日休んだ分のノート写させてもらいたいから、かがみが来るのを待ってようかなって……」 「何時間……待つつもりなのよ……!」 「6時間でも12時間でも24時間でも……。かがみが朝に登校するのを待ってるつもりだったよ。 ほら私、ネトゲのモンスターの出現待ちとかで、待つのには慣れてるしね」 放課後から朝まで。 半日を越える時間。 わざわざ制服をきているし、本気で待つつもりだったんだろう。 「もう……!何言ってんのよ……!」 こなたが言っていることが建前だっていうのは分かる。 ……何で……。何でそこまでするのよ……。 私のためにそこまでしてくれたのはすごく嬉しい。 だけど、こなたがそんな辛い思いするようなことしなくていいのに……。 悪いのは私なんだから、辛いのは私だけで良いのに……。 「……かがみはどうしてこんなところに……?もしかして、忘れ物? 人に見られちゃマズイ物だから、夜に取りに来たのかな~?」 「バカ……。アンタを探してたのよ……!」 「えっ………?」 こなたは驚いたような顔になる。 「かがみが、私を……?」 「そうよ!な、なんかおかしいの!?」 もう息は整っていた。 「かがみはやっぱり優しいね……。私なんかのこと、探してくれてたんだ……」 「当たり前じゃない……!」 だって、こなたに会いたかったから……! 「…………ありがとう」 「私がそうしたかったからやったのよ。だから、お礼を言われる資格はないわ」 そう、これは私の意志――――。 だから私は今、こうしてこなたの前にいれる。 「私もかがみに会いたかった……。だから、学校に来たんだけど、もう放課後で……。 かがみがいるわけなかったんだよね……」 「こなた………」 待たせてごめんね……。 もっと早く気づいてあげればよかったのに……。 「かがみ、ごめん」 「こなたは謝らなくていいの。だって―――」 「何も言わないで良いよ。私、分かってるから……」 「違うの!」 「私、何か怒らせることしちゃったんだよね。だから、私のこと、最近避けてるんだよね……」 「こなたのせいじゃ―――」 言い終わる前に、言葉が止まった。 小さな身体が、小さな声が、小さく震えていた。 「ごめん……ごめん……なさい……。私……何でも……するから……かがみが…… して……欲しいこと……絶対……するから……許して……かがみ……お願い……」 こなたが……あのこなたが、泣いてる……。 いつもふざけたことばっかり言ってるこなたが……。 いつも私の宿題を写してばっかりのこなたが……。 いつも猫口で私の名前を呼んでくれるこなたが……。 いつも私の隣にいてくれたこなたが……。 私の好きな――ううん、愛してるこなたが……。 そのこなたが、泣いている。 こなたに悲しい涙を流させてるのは誰――? ――私だ。 なら、私のすべきことは何―――? ――それは、私が一番よく知ってる。 「こなた、ごめんね………」 「えっ……?」 私は、こなたをぎゅっと抱き締めた。 「謝らなくちゃいけないのは、私……。ごめんね……。 私にもっと勇気があれば、こなたにこんな悲しい思いをさせずにすんだのに……」 「かがみ……どうゆう……こと……?」 私は、こなたを抱き締めていた手を離し、こなたと向き合う。 「私、こなたのことが好き。世界中で一番好き。誰よりもこなたを愛してる」 「えっぇっ……?」 こなたの顔が、見たことがないくらい真っ赤になっている。 「ずっと、自分の気持ちを抑えてた……。こなたに迷惑かかるって思って。 それにもし伝えて、それで断られたら、こなたと、それからつかさやみゆきとも一緒にいられなくなるって……」 辛かった。でも、それが最善の策だと思ってた。 「だから、こなたと少し離れて気持ちを消そうって思ったの。 でも逆に、気持ちはどんどん大きくなっていちゃって……」 そう、自分の気持ちにウソはつけない。 「こなたが今日休んで……つかさとみゆきに呼び出されたわ。 そこで二人に言われて、やっとこなたと向き合う勇気が持てたの」 こなたは呆然としていたけど、すぐハッとなったように慌て始める。 「でも私、背も小さいし、胸もないし、オタクだし、アニメとゲームとマンガの 話ばっかりだし、勉強出来ないし、宿題も写してもらってばっかりだよ……?」 「バカ……。そんなところも全部好きなのよ」 こなたの全部。良いところも悪いところも。 その全てを、私は好きになったんだ。 「かがみ……」 こなたが、顔を伏せる。 「でも、女………だよ………?」 こなたもやっぱりそう思ってたんだ……。 でも、私の答えはもう出てる。 「私もずっと悩んでた……。でもわかったの。 私は一人の人間として、こなたを好きになったんだから、性別なんて関係ないって」 「ぁっ……」 「だから、こな――」 「かがみッ!!」 こなたが抱きついてきた。 「私もかがみのことが好き!」 「こなた……!」 私もこなたを抱きしめ返した。 「私も怖かったんだ……!かがみ、普通に彼氏とか作りたいみたいだったから……。 だから、身近に自分のことを好きだと思ってる『女』がいたら、距離を置かれると思った。 そしたら、今までみたいに、かがみと一緒にいることも出来なくなる……。 それだけは、絶対嫌だったんだ……。だから、隠そうと思った。 少しかがみに触れたり、私の嫁だって言うくらいなら良いよね、って自分に言い聞かせて、 それで我慢しようとしてたんだ。でもかがみはそれも嫌がってるみたいだった――。 だから、もう私はかがみの近くにいることを諦めたんだ……。 もう、私にはかがみの近くにいる資格をなくしちゃったから……」 それって――――私と同じ―――。 「でも、私は耐えられなくなっちゃったんだ……かがみが近くにいてくれないことに。 資格がないのに会おうとするのは、違反だってわかってたよ。 でも、自分の心にウソをつけなかった。 だから、無理やりにでも明日学校にくるまで、かがみを待ってることにしたんだ」 すごい……。こなたは私と違って、強いのね……。 「こなたは、自分でちゃんと正しい答えをだせたんだ……」 「実は……そうでもないんだよね……」 こなたはあはは、と笑いながら言いにくそうに言った。 「えっ?」 「実は私も、つかさやみゆきさんに色々言われてね……。 でも私、悪い想像ばっかりしちゃっててさ。それじゃダメだ!って思って、 今日休んでずっと考えた。それで、行動に移そうって決めたんだ」 「そうだったんだ」 つかさ、みゆき……本当にありがとう。 もし二人がいなかったら、私たちはきっと今ここにいなかった。 二人には、感謝してもしたりないわ……。 「ね、かがみ。私からも言わせて」 その時のこなたの顔は、力強かった。 「う、うん……」 「私もかがみのこと、1億年と2千年前から愛してる!!」 こなたの言葉が、私の心に何度も木霊する。 ――嬉しい。 私とこなた、ちゃんと繋がってる。そんな気がする。 でも、不思議……。照れくさくなると、つい憎まれ口を叩いちゃう。 「もう、こんなときにもアニメネタか」 「いいじゃん。そうゆうところも好きでいてくれてるん……でしょ?」 「ば、バカ……。恥ずかしいこと言わせるな……」 「自分で言ったことなのに照れてるかがみ萌え♪」 こなたは、もういつものこなたに戻っていた。 「う、うるさいわね……!もう、せっかくのムードが台無しよ」 「むふふ、かがみ、かっこよかったよ~?あんなこと言われたら、誰でもイチコロだよ♪」 「そ、そうゆうこなたも、さっき私のお願い、なんでも聞いてくれるって言ったわよね」 「い、言ったけど、それが?」 泣いたことが恥ずかしかったのか、こなたは少し顔を赤くして言った。 「それじゃ、一つ聞いてもらおうかしら」 「でも良いの?一回限定だよ?」 「そんなこといつ言ったのよ?」 「七つの玉で召喚される大きな龍だって、一回でしょ?」 また適当な言い訳を……。 ま、でも良いわ。 何回でもだったら、何か弱味を握ってるみたいだし、それに―――。 「それじゃ、こなた……」 「かがみ、ここは全年齢対象の板だからね?それを踏まえた発言をしてよね?」 「そんな変なことなんて言わないわよ!」 もう……!まぁ、でも今の方がこなたらしいんだけどね……。 「で、なに?」 不思議そうに眺めてくるこなた。 私は、いつもと変わらない口調で言った。 「もう『俺の嫁』って言うの、やめてくれる?」 「えっ、なんで……?」 さっきまでの顔から一変、こなたの顔は不安の色に染まる。 色んな表情を見せるこなた。 もう少しこの顔をみていたい気もするけれど、憂慮したままじゃ可哀想だしね……。 「それはね――――こなたが『俺の嫁』だからよ」 ふふ、こなたがまた顔を真っ赤にしてる。 「か、かがみ……それって……」 私はそれ以上何も言わなかった。 お互いの考えは同じだから、言葉にする必要ないから。 「ねぇ、こなた」 「なに?」 「あれ、見てよ」 私がこなたを抱き締めていた片手で、ある物を指差した。 こなたが、うわぁっ、と驚いたような表情をする。 「満月だ……」 黒い夜空に浮かぶ、真ん丸な月。 さっきまであんなに翳っていたはずの光……。 それがいつしか、神々しく輝いていた。 吉田兼好は陰りがあるほうが良いって言ってたけど、私はそんなことないと思う。 だって――――。 「私たちの未来は、きっと円満よ」 「それは、鏡じゃ……?」 「月は私なの」 「え?それってどう言うこと?」 「……ヒミツ」 「むむ、隠し事なんて、酷いなぁ」 「仕方ないわね。こなたがウサギだからよ」 「えぇっ!何で私がウサギなのさ!」 「私に会えなくて、寂しくなって目を赤くしちゃったじゃない」 「むむぅっ……かがみのイジワル……」 「良いじゃない、好きな子にはイジワルしたくなるものよ?」 「それって、小学生の男の子と同じLvだよ……」 「な、何とでも言いなさい」 「むむむ~~」 私はこなたの耳元でこっそりと囁く。 「そうすれば、私たち、毎日一緒にいられるでしょ………?」 「うわ……か、かがみ、大胆……だね」 「ふふ、こんなときくらい、素直になってもいいじゃない?」 「やっぱり普段は素直じゃなかったんだね」 「ば、バカ………そうゆうのは言わないものよ……」 『色々』の一言ですませられないくらいたくさんのことがあった……。 そして私は今――――こなたとここにいる。 お父さん、お母さん。 『かがみ』って名前をつけてくれて、ありがとう―――。 私、神様の恩恵をうけれたよ―――。 私とこなたの回りにいてくれている、みんな――― ――――ありがとう―――― この世界には、約60億人もの多くの人がいる。 その60億人の中で、私とこなたは出会えた。 そして私たちは今――――‘辛’さが‘幸’せになった。 「こなた」 「何?かがみ」 「もうこなたのこと、離さないわよ」 「望むところだよ、かがみん♪」 わたしの目にうつるもの。 それは、泉こなた。 ――――最愛の人。 うつるもの-Oath of Eleven-へ続く コメントフォーム 名前 コメント b(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-01-01 23 49 50) 月は太陽の光をうつして輝く... つまりそういうことか -- 名無しさん (2021-01-24 18 21 31) やばい、感動してしもた…。 -- 名無し (2010-05-16 07 41 58)
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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『騎馬戦・その2』 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 不意にみさおの周囲の景色が歪む。いや、正確には彼女の見ていた外の世界が。 (あ、あれ?) 彼女には何が起きたのか把握できない。ただ、鍛え抜かれた肉体が非言語レベルでの警告を発していた。ここは危険だ、逃げろ、と。わずかに残された理性が行動を開始しようとする。しかし圧倒的な多幸感の前に、たちまち抵抗も空しく押し潰されてしまう。 (なんか、すっごくいい気持ちだ……) そのまま彼女の意識は闇に呑まれた。 そして。 みさおの顔から表情が消える。眼に獣のごとき紅い光が宿る。筋肉という筋肉にかつてない緊張が走る。身体が三割ほど膨れ上がる。 「……Va……」 そこに存在しているのは、かつて日下部みさおと呼ばれた何かだった。 ◇ 「ナイスフォロー、さすがみゆき」 間一髪でつかさがみゆきにキャッチされるのを見届けたかがみは、改めてみさおを睨みつける。 「今度はこっちの番よ。日下部、覚悟はできてるんでしょうね」 「Va?」 もしかがみが怒りに我を忘れていなければ、みさおの異変にいち早く気づくことができたかも知れない。こう見えても中学以来、五年近くの付き合いである。彼女がやっていいことと悪いことの区別がつく人間だ、というくらいは理解していたはずなのに。全てが終わってからしばらくして、かがみはそのことに思い至ることになるが、それはまた別の話である。 首から上は激情に支配されていたかがみだが、肩から先は極めて冷静だった。慣れ親しんだドグファイト・スイッチを指だけでオン。HUD(ヘッドアップディスプレイ)の表示はガン・モードに替わる。自動的にロックオン。だが最適射撃体勢をとる前にみさおが動く。かがみはただちに戦闘機動を開始。大推力にものをいわせて急旋回。逃げるみさおを追撃する。照準環に入る。射程内。トリガーを引く。みさお、右にブレイク。HUDの残弾表示の数字があっという間に減る。命中しない。 「くっ」 思わずかがみは奥歯をかみ締める。やはり高機動能力では向こうが一枚上か。 後下方に敵騎、の警報音。反射的にブレイク。大G加速。あざ笑うようにみさおが下方を高速ですり抜けていく。照準する余裕もない。急ロール。距離を取って体勢を立て直す。 かがみはストア・コントロール・パネルをちらりと見る。RDY GUN、RDY AAMⅢ-4、RDY AAMⅤ-4、RDY AAMⅦ-6──対空兵装は完全武装。ミサイル発射レリーズに指をかける。心に迷いが生じる。これを押したらもう引き返せない。 不意にインカムの呼び出し音が鳴り響く。 「はい、こちら柊」 『桜庭だ。お楽しみのところ悪いが、少し話がしたい。すまんが運営席まで戻ってくれ』 「でも……」 『日下部の相手なら、あとでいくらでもさせてやる』 「話というのは」 『なに、ちょっとしたことさ』 まるで世間話でも始めようといわんばかり。だが、かがみは、この桜庭ひかるという教師がある種の韜晦癖の持ち主であることを知っている。 (暗号化通信でも話せないヤバイ内容ってことか) FC(射撃管制)レーダーがみさおを捉えている。HUDにキュー。ブリップの脇にHシンボル。高速接近中の表示。 (つかさの容態も気になるし。しかたない、一度戻るか) 「了解。戻ります」 かがみ騎、MAXアフターバーナー。戦場から離脱する。最高速度で劣るみさお騎は追いつけない。 ◇ 一方、一対四で防戦中だったこなたにも異変が起きていた。 「つかさ、つかさ、つかさ、つかさ……」 何も見えない。 何も聞こえない。 何も感じられない。 こなたの脳内でリフレインされる、つかさが吹き飛ばされる瞬間の映像。 「つかさを、返せーーーーーっ!」 種が、割れる。 「な、なんだ。急に動きが──」 圧倒的優位に立っていたはずの四騎は、突然のこなたの反撃に対応し切れない。 「ハルカ、右にブレイクッ!」 「へっ?」 坂本美緒の警告と迫水ハルカのハチマキが奪われたのは、ほぼ同時だった。 (なんだあいつ、反応速度が今までとは桁違いだ) 危険を感じた美緒は列騎に指示を飛ばす。 「智子、宮藤、一旦引いて距離を取れ。体勢を立て直して、ジェットストリームアタックをかける」 「了解っ!」 生き残った三騎は思い思いの方向に離脱する。 「お願いします、仇を取ってくださいよ~」 ハチマキを奪われリタイアしたハルカが、瓶底眼鏡をずり上げながら情けない声で叫んでいた。 スーパーフェニックスが吼える。こなたは姿勢を変化させずに美緒騎の後を追い上昇する──騎首をもたげることなく、対地水平姿勢のまま上昇増速。 「狙いはあたしか。ずいぶんと舐めてくれる」 こなたは六発の中距離仮想高速ミサイルを発射。美緒騎のMTI(移動目標インジケータ)上に仮想ミサイルの航跡が合成シミュレートされて表示される。 来るぞ。美緒はMTIからHUDに目をうつす。最初の五騎はこれで一方的に潰滅したのだ。 美緒騎、C組の新型高速ミサイルを発射。四発。これもシミュレート。ミサイル迎撃成功。その前に美緒騎は魔法障壁を展開しながら高機動回避に入っている。残りの二発の敵ミサイルはなおも接近、十秒で美緒騎に達する。美緒騎は騎首を敵ミサイルに向けたまま螺旋を描き、第一弾を回避。二発目を高速射撃で撃墜、瞬時に騎体を右にスライド、三発目にそなえて騎体をバンクさせずにジグザグ機動、こなたに接近する。こなたは逃げずに突っ込んでくる。真正面から。 突然、こなたはエアブレーキを開いて急減速した。速度を殺す。ダイブ。急降下。 美緒は目を見開く。こなたのふるまいは騎馬戦のセオリーからはずれている。 美緒騎、こなた上空を亜音速で通過。 一瞬、美緒はこなたを見失う。とっさに騎首を下げ、そのままロールせず順面のまま逆宙返り。美緒の頭に血がのぼり、視界が真っ赤になる。レッドアウト。思わずループ径をゆるめ、こなたを捜す。上後方に敵騎、の警告音。急反転上昇旋回。こなた、最大AOA、ガンサイト=オープン。上昇に移る直前の美緒騎をロックオン。もちろん実弾射撃はしない。ファイア。射程ぎりぎりでのこの攻撃は運営席の戦術シミュレータにより失敗と判定される。美緒騎、ただちに反撃。 急旋回した美緒騎はこなたの左後方に占位。こなた、アフターバーナー点火。亜音速から大G加速。すかさず美緒騎は騎首をこなたに向けて、振る。騎体がぐいと回転。ロックオン。自動射撃。射程外。短距離高速ミサイル発射。四発。こなた、突発的に一六Gをかけて仮想ミサイル群を回避。 「なんてやつだ──あいつは……泉こなたは化け物だ」 (作者:もう少し続けてもいいですか?) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『騎馬戦・いんたーみっしょん』 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― こなた:……なんか、妙なところで引きになってますネ。 かがみ:話によると、作者の中の人があそこまで書いたら朝になってた、ってことらしいわよ。 こなた:あー、なんかわかるなぁ。深夜のテンションって、ときとして異常なものがあるけど、いざ朝になって見直してみたら『なんて恥ずかしいことしてんだ、私は』みたいな? かがみ:まあ、わからないでもないかな。でもそう言うからには、あんたもそういう経験とかあるの? こなた:そりゃぁ……(何故か頬を朱に染める)。ほら、昨日だって一晩中あんなことやこんな──。 かがみ:はいストーップ! アブない発言禁止ーっ! こなた:……むぅ、読者の人はむしろそっちの方を期待してんじゃん(ブツブツ)……。 かがみ:何か言ったか。 なんなら一度、拳で教育が必要か? こなた:えー、気を取り直しまして。なんかみさきちがヤバイ雰囲気ですよ。暴走? かがみ:こなたも種割れしてたしね(笑)。あ、それと桜庭先生が私のことを呼び戻したりしたのも、気になるといえば気になるわね。 こなた:なるほど、未回収の伏線がいろいろあるわけだね。これはやっぱり続編に期待でしょうか、解説者のかがみさん。 かがみ:誰が解説者だよっ。まあでも、確かにあのまま終わらされちゃ、演じてるこっちとしても後味悪いもんね。 こなた:ではそのあたりの期待感なども盛り込みつつ、上手にまとめていただけますかね。 かがみ:そこで私にふるのかよ。たまには自分でやったらどうなんだ? かがみ:いやまあ、そこはそれですよ、お代官様。あとでタンマリと山吹色のカスティラが……。 かがみ:いらねーよ。 こなた:じゃあ、こういうのは? (こなたがかがみの席に回りこみ、耳元で何ごとか囁く) かがみ:(耳まで朱に染めて)……ホ、ホントに? こなた:万事このお姉さんに、泥舟に乗ったつもりで任せなさいっ! かがみ:し、しかたないわね。今日のところはだまされてあげるわ。 こなた:一見不満そうに見えてそれでもきちんと役割はたしてくれるかがみ萌え。 かがみ:萌えって言うなっ! (コホン)では、今後を楽しみにしつつ応援していただければ、またなにか新しい展開があるかもしれないので、引き続き応援をよろしくお願いします。 こなた:では最後に、恒例のお約束のあれを。 かがみ:はいはい。では、せーのっ! ふたり:バイニー! (2008.10.16 都内某スタジオで収録) 坂本:うーむ、はたしてあたし達は次回も出番あるのだろうか。 宮藤:はいはいはーい。あたし実は、高良さんの胸にすっごい興味があるんです。 坂本:……宮藤、お前だけは出なくていいから。 宮藤:えーっ、なんでですかー? 坂本さん酷いですよ~! P:OH! ユ○カは、コナタのことが心配じゃないですか? Y:そ、そんなことないけど。でもあの、本当に大丈夫なのかな、これ? H:いや、だからさパ○ィ。あの戦闘に介入するなんて、無茶を通り越して無謀という気がするんだけど。 P:問題ありませーん。我らソレス○ルビーイングのガン○ムマイスターには、この地球上の争いゴトを根絶する、という大儀があるのデ~ス! M:……いつに間に、そんなことに……。 (Fin) コメントフォーム 名前 コメント まてwwこれはなんなんだwww もはやらき☆すたじゃねぇww -- 名無しさん (2008-10-25 13 46 16) カオスだがやっぱり面白いw これからも枕元で毎晩囁いてみますので、これからも楽しい作品お願いします。 GJ!! -- にゃあ (2008-10-23 04 41 48) いろんな意味でカオスだ… -- 名無しさん (2008-10-19 02 13 36)
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295 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/29(土) 17 20 44 ID dI8Zz2m2 GJ! こういうの読むと二人の仲が高校の間だけの儚いものって気がしなくてホッとする。 それにしても人間の科学技術の発達は恐ろしいな…w 296 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/29(土) 17 59 22 ID Xuo5x2Dp かなたさんのことがあるから、こなたに無理させたくなかったんだろうなぁ。 言わないけど。 297 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/29(土) 18 04 24 ID dkipb4QB すっげえ科学力だなww 超展開GJ 298 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/29(土) 18 41 06 ID fq7ktFiB GJと言いたいけど超展開過ぎる気がした。 ちと短絡的な印象を受ける、テーマがテーマだけにね。ま、通りすがりの一意見です。 作者の、二人のこと幸せにしてやろうという気概はすごくよく伝わったんでその辺はGJ 299 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/29(土) 18 49 29 ID 6W+ew+gI 293 GJ! いい話だったよ。 同性愛の一つの解決策を示してくれたSSだな。 でもやっぱり海外に行くしか道はないのかな。 300 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/29(土) 19 50 56 ID imXLpzsT 293 少し駆け足気味だったけど、よくがんばった ! 俺は結婚まで行かなくても、仲良く二人で生きていければいい派 なんだが、二人の関係を結婚という形で締めくくりたいなら、こういったフィナーレもありだと思う。 …テスト疎かにするなよ? w 301 名前:1-176[sage] 投稿日:2007/09/29(土) 20 05 14 ID wYJcrIlf ご感想どうもありがとうございます。テスト勉強・・・数学はまあいいとして英語が・・・ 295,297,298 ・超展開 この話を書き始めた時は超展開のつもりだったのですが、2日前に友人から聞いた話、動物実験段階では成功してるらしいです。 今は人間では無理でも10年後くらいには・・・ 298,299 ・テーマ、解決策 一応「今の日本には社会的少数派に対する救いがほとんどない」ことを基軸に書いたつもりです。 私自身それでつらい思いをしたことがあるので。 せめてこの二人(+一人)には幸せになってもらいたいなぁ・・・という想いが伝われば本望です。 298,300 ・短絡的、駆け足 それに対しては純粋に私の失敗なんです・・・精進します(滝汗) 302 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/29(土) 20 24 37 ID dkipb4QB 301 まじでか 男がいらなくなる時が来そうだww 303 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/29(土) 20 31 21 ID ahg1qv3j 302 男オワタ\(^o^)/ 昔読んだSFで 女性だけで子孫を残せるようになって 男性は虐げられて絶滅寸前とか言うのがあったが 現実になったりしてな 304 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/29(土) 20 33 57 ID fq7ktFiB 301 短絡的ってのは、 結婚できないから海外でさせよう、子供作れないから科学で作ろう、とかそういうのじゃなくて 制約があるなかでもやっていくという方向性もあるんじゃないかということが言いたかった。 別に既存の形である結婚だけが幸せじゃないよね、とか上手く言えないんだけど思うなー。 とまぁ、gdgd言ってるのは俺だけなんで、こういう意見はたぶん異端かと それに300氏が言ってたようにこういったフィナーレもありなんだと思う、好みの問題みたいなもんなのかなあ 302-303 まてまて、いつかアーッ!の時代が来るかもしれんよw 305 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/29(土) 20 58 01 ID YPcbaBby 293 GJですよ 日本はマイノリティに対する社会的理解度が低いですからねぇ なんとかしないといかんですな 304 アッー!が正解なのだぜ 306 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/29(土) 21 02 00 ID UmdJ6OpX いよいよもって日本の未来が不安になってきた(苦笑 309 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/29(土) 21 11 55 ID jjIiXTgW 293 実にGJです。 こういう時代ホントに来そうだ 色々問題視されそうだけど結局受け入れられそう こなたとかがみよかったね 313 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/29(土) 21 40 24 ID C3GWcq2v 293 最新科学情報を早速SSに導入→こなかが幸せ 実にGJ。 子供の存在は考えてなかったので新たなレベルに妄想が進化するぜ… きっと髪の色はかがみで目の色はこなたなんだろうなぁ… ちなみにちょっとツリ目w それにしても結婚ルートだといつもそうじろうは涙を流すのね… 祝福は…難しいのかな(´・ω・`) そうだ、いいこと思い付いた。古泉( 307)そうじろうを誘惑してみるんだ。 そうすれば理解し合えて親子仲もより良く… …あれ?なんか旧に背筋が寒くなって肩が重くなったぞ… 何か後ろにうわっ!?かなたさんなにするry 355 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[] 投稿日:2007/09/30(日) 06 03 30 ID pypsqR/D 293 言いたいことはよくわかるんだけれど、少しだけ突っ込み。 普通の細胞の遺伝子使って卵核を作る技術 これは確かに体細胞クローンのドリーで実現してるけど、これじゃ生まれてくるのはこなたかかがみのクローンでしかなくて、こなたとかがみの遺伝情報を半分ずつ受け継いだ「子供」にはならないよ。 そもそも2人とも健康な女なら卵細胞は手に入るんだから、わざわざ体細胞使う必要無くね? 女同士で交配するために必要な技術は、 1)2人の染色体をひとつの卵に放り込んで、2)受精が行われたと細胞に勘違いさせることじゃないか? 2人の染色体同士で交叉がおこれば、こなたとかがみの両方の形質を半分ずつ受け継いだ子が生まれてくることになる。 ただし、親が両方女だとy染色体が存在しないことになるから、生まれてくる子も必ず女の子になってしまうんじゃないか? まぁ仮にそうだとすればこのスレ的にはおkなんだろうけれど...。 すみません生物の知識は中学どまりなんで的を得てないかもしれません。 誰かみゆきさんに聞いてみてください。 356 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[] 投稿日:2007/09/30(日) 06 08 54 ID pypsqR/D ぁ、いい忘れてたけど、話としては大変良かった(てか俺が妄想してたことと結構近い)と思う。GJ! 372 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 11 42 55 ID W5FlUmB1 355 そうじゃなくて、普通の体細胞から半数染色体を取り出して 卵子に組み込むことで受精卵を作るんだろ まあ、元の作品もその点つっこみどころなんだけども、 卵子に受精させる染色体を「(生殖細胞じゃなくて)普通の細胞のものを使っている」、 といえなくもないとおもう ちなみに技術的な点ではすでに成功してるよ↓ ttp //hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20040422301.html 374 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 12 00 27 ID yIvrVe7Q こなたの卵子とかがみの卵子いっしょにしとけば こなたの方がかがみの方に襲いかかるんじゃね? 375 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 12 01 24 ID IrAx+2wD 想像して吹いたw 376 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 12 07 40 ID W5FlUmB1 ●<も~、そんなに私と一緒になりたかったの?さびしんぼかがみん萌えー ●<う、うるさ~い!! おーけー、こなかがなら卵子でもイケるな 377 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 12 50 05 ID GrNVHBpi ●<マッガーレ 378 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 12 53 46 ID UoNs7SJV 卵子萌えはコアすぎるだろ……常考 379 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 12 55 47 ID IrAx+2wD 飴玉になっても普通に喋って強さも変わらないベジットを思い出した 380 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 12 57 28 ID TlvJG3GN アニメ終わってかえって妄想が膨らみまくっているな。 毎日ここを読むのがすげえ楽しみだわ。 ついに女同士で子供まで作っちまうのか(*´д`) 真面目な考察も良いが、こなかがなら 374のやり方でも 子供ができそうだな。思わず想像して吹いた。 それはそうと来週はサンクリだっけ? 新刊こなかが本がたくさん出ているのを期待。 382 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 13 24 55 ID DyWPQZjT 常識なんて ●<マッゲール ↑ こなた卵子 383 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 13 26 56 ID YJjMX+JB 遺伝子レベルで激しく! 386 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 13 59 48 ID IrAx+2wD 376 _,.‐  ̄ ̄` ゙` ‐.、 / \ / _ _ _ . ! i ,r ´ `\ .゙! i i ゙! .゙! | | ≡ω≡. | | <も~、そんなに私と一緒になりたかったの? i,. i, ,i ./ <さびしんぼかがみん萌えー 〉、 \ _ __,/ ,r 、 __//\  ̄ /\ ヽ, 彡へu ゙T ‐.、____ ,.‐ イ" ⊂、 〈 ヽ、 /. リリ r"´>、.____ ,.‐ \ `~´ `) ) // -=iil|||||||||||||||||||||||||〈_ノ ,, --──-- 、._ / `ヽ ハ \ / ノ ,...---.、` 、 ヽ , `ゞ、 /、_ヽ;;;;;;;;ヽ ,ゝ‐、_ , | |;;;;;;;;●ー-;;| ´ | . ; ////ゝ;;;;;;;;;;;ヽノ////. , _ <ぅうるさい! / ̄`ヽ .`゙―‐ " . 、_/ ゝ ヽ、 ヽ、 -、 _... ,/ ./ `ヽ、 \_Y__;; ;_,/ / \ / | | i `/ ̄`l / \ // l´\__/ | / `ー´ 387 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 14 08 09 ID FyhZ5wwD なんというフリーダムで超展開なスレの流れwww おまえらのこなかが愛っぷりに俺感涙w 383 こなたのそのセリフはこの状況の複線だったのか! 396 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 16 22 07 ID fw8ZlI2R ●<かがみ~ん ●<ちょっと、離れなさいよ ●<ふふふ、フュージョン! ●<こらっ!あっ!受精しちゃったじゃない ●<責任とって着床するからさ。生まれてもずっと一緒だよ、かがみん 397 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 16 23 27 ID Zoj2IeVr 396 ワロス 398 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[] 投稿日:2007/09/30(日) 16 45 25 ID pypsqR/D 372 みwikiさんthx 記事読んだが、片方のマウスの遺伝子は予め弄ってあるんだな...。 374 GJ 遺伝子ネタに釣られてくれたみんな 遺伝子云々に関しては俺は全くの専門外なので、こういう方面詳しい人もっと増えると 妄想が深まっていいかもしれませんな。 それにしても卵子ネタが暴走してるな 399 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 16 51 45 ID 3RWh2QKB 396 双子が生まれてきそうだなw 405 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 19 18 49 ID 0iVk1Ogc 卵子ネタって、お前らいい意味で馬鹿ばっかだな~ ☆ 321 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/29(土) 22 28 35 ID jSkZcs05 こなかがの子供 322 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/29(土) 22 32 43 ID UmdJ6OpX DQ5でフローラと結婚したら子供の色が青くなったの思い出したぜ 363 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 09 10 47 ID IrAx+2wD 321 二卵双生児? 364 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 09 23 33 ID yVwnj181 こなかがの子供その2 二人の子供と聞いてこれを思い浮かべた。 反省はしていない。 365 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 09 28 24 ID IrAx+2wD それもいいね 泣きボクロはしっかり遺伝してるのね 366 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 09 37 13 ID Zoj2IeVr 364 柊こなみ? 369 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 10 48 05 ID IrAx+2wD 366 こなたとかがみんの名前融合なら「かなた」も有り得るよなw 370 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 11 09 46 ID WD3OE+8c 確か同人誌かなんかで結局かがみの夢オチなんだけど、 かがみとこなたが同棲しててかがみが弁護士でこなたが主婦やってて「かなた」という子供がいる っていうのを見たことがある 371 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 11 14 25 ID o8OKKrOp 370 東ガルの同人誌はこのスレのバイブルだから知らないやつはほとんどいないぜ
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ひとしきり、手を繋ぎながら路地を散策したあとに、私とこなたは適当なお店でランチを取ることにした。 お店に入って、思い思いの品を注文し、それを食べ終えた私たちは、今、紅茶を片手に、デザートを堪能している最中だ。 しかし、相変わらずだけど、こなたって…食べるの下手なのかな? こなたの周りには、たくさんとはいかないものの、目にあまる程度には、食べカスやソースの汚れが飛んでいる。 私が気を使って、紙エプロンを頼んでいなければ、彼女の真っ白なワンピースも、その餌食になっていただろう。 あぁ、今だってほら… 頼んでみたら、結構大きなサイズのものが来たチョコレートパフェに、一生懸命戦いを挑んでいるこなたは、全くと言っていいくらい気にとめていないみたいだが、 「ほら、こなた。ほっぺたにクリームがついてるわよ?」 柔らかそうなほっぺたに白いクリームが見事にトッピングされている。 格闘をやめ、こちらに向けた彼女の瞳は、嬉しそうに細く伸び、私とこなたの間をさえぎるチョコパフェをはじに退けながら、ずいっと私の方に顔を差し出す。 「そういう台詞は、指ですくい取ってくれながら言うのがセオリーだよ?かがみん♪」 なに、恥ずかしいこと言ってんのよ。 「そんなの何処の世界のセオリーだ!」 そんな私の抵抗を気にもせず、さらにずずいと顔を寄せてくるこなた。 ちょ、近いわよ。ほら、店員さんが見てるって! 「ほらほら、恋人同士なんだからさ~。 予行演習だよ?私に気にせずやっちゃいな?」 いったい誰の予行演習なのよ…もう。 「もういい、わかった。観念したわ… ほら、これでいいのね?」 こなたの温かなほっぺたで、溶けそうになっているホイップを、人指し指ですくい上げる。 この程度のことなのに、触れただけでドキドキしてしまう私は異常なのだろうか? 私の一連の動作が終わっても、なお、私を見つめ続ける彼女の瞳を、まっすぐ見られないまま、横目で抗議を言葉にする。 「…なによ」 「…それでかがみはその指に付いたクリームをどうするのかな?…って」 「うっ! な、ナフキンで拭くに決まってるでしょ!ヘンな事、想像するな!」 「あれあれ~? 私は質問しただけだよ?そうか、かがみはヘンなこと…想像しちゃったんだぁ。」 「な!」 「ねぇ、かがみ。そのホイップ、パクってさ。食べてみてよ」 「やっぱりヘンなことさせる気じゃない!」 「えーっ、定番のシュチュじゃん。常識だよ。かがみにやってほしいなぁ~♪」 「ぅうう~っ、い、いやよ。そんな恥ずかしいこと!あぁもうそんな目で見るな! どうしてもやりたいならアンタがやればいいじゃない!」 「ほぇ?」 私はクリームがついた人差し指を、こなたの前に真っ直ぐ突き出す。 …あれ?何かがおかしい。いま、私は混乱してとんでもない事を言ったような… 呆けていたこなたの表情が次第に赤く色づき、口元がにやりとした形をつくる。 私の台詞『アンタがやればいいじゃない』ってのはつまり……! 「…あっ、違っ!」 あわてて引っ込めようとする腕を、手首から力強くこなたが掴む。 「…むふ、かがみも意外と大胆だねぇ…もう遅いよ!」 ――パクッ… ぺろ 「――――――――――――ッ!!!」 「うん、甘い」 「………」 「あれ、かがみ?」 たぶんこなたは、ここで叫びながらくってかかる私を期待していたのだろう。 捕らえられた腕はそのままに、肩を小刻みに振るわせながら、俯き、顔を芯まで赤くさせて、何も言ってこない私を不思議そうに眺めている。 てか…もう限界。 「…で」 「で?」 「出るわよ!お勘定!!」 「うぉ、かがみ!?」 勢いよく立ち上がり、椅子の倒れる音がお店いっぱいに響く。 周りの注目を集める結果になったが気になんてしてられない。 「え?ええ?私まだ食べきってないよ?かがみ、ちょ、落ち着いて…」 「知らない! ばか! バカこなた!!」 「あっれぇ~、やりすぎちゃった? かがみ、ゴメンて、ねぇ。かがみぃ~、まってよぉ!」 半分涙目で立ち去る私。 指先にまだ、かすかにこなたの唇の…舌の感触が残っている。 思い出すたびに卒倒しそうでまともに彼女を見られない。 …… 「ごめんね、かがみ様ぁ」 お店を出て、しばらく進んだところにある公園で、ベンチに腰を下ろしながら、私の目の前にいる彼女のほうを、上目遣いにじと目でにらむ。 「様付けで呼ぶな! …もう、いいわよ。でもあんな事、二度とやんないで」 「…かがみがやれって言ったんじゃん…」 「返事は?」 「はい!」 やや…本当に『やや』ではあるが、落ち着いて来た。 でも、さっきのやりとりがまだ尾を引きずって、顔を赤らめたまま私。 だけど、いつまでもこうしていたら、貴重な時間の無駄になってしまう。 「次…どこ行こっか?」 こなたも同じ考えなのだろう。ただ、すこし申し訳なさそうに言う彼女の表情がおかしくて、ついつい口元に笑みが出てしまう。 「ふふ、こなたの好きなところでいいわ」 「その答え方が一番難しいんだよ… う~ん、じゃあさ!」 …… 「うりゃ~!! 10連コンボぉ!」 「…で、なんでゲーセンなんだ? いつでも行けるじゃない…」 独特の暗さや雰囲気に、けたたましい電子音。さまざまな光があたりをランダムで照らしている。 どこでもいいといった手前、文句を言えた義理じゃないのだが… まあ、こんなところをデートコースに選ぶあたり、こなたらしいといえばこなたらしい。 「あ、かがみ。負けてる負けてる!」 「え?あっ…まって! ぁ…あっ!」 隣に座るこなたのことが気になって、画面を真剣に見ていなかったのがいけない。 画面に表示されるのは、負けを意味する英単語。 「…あ~、だめだねかがみぃ。よし、嫁のカタキは私がとる!」 「誰が嫁よ…」 こなたはご機嫌に財布からいくつかの百円硬貨を取り出すと、台の上に並べ、その一枚だけを機械の中に投入する。 私から席を奪うと、その横に私を座らせ、にっこりブイサインをとったあとゲームに集中を始める。 あれ?そういえば、なんか… 「ねぇなんだか周りに人が集まってない?」 私達の周りには、いつの間にか人だかりが出来ていた。 「そりゃあ、こんな可愛い女の子が二人ずれで並んでたら、目立つだろうしね」 「おもにアンタの背格好が目立ってんのよ! あと自分で可愛いとか言うな!」 「じゃあ、こんなに可愛いかがみが?」 「と、とりあえず恥ずかしいから可愛いは禁止! …だけど、ねぇこなた、ちょっと怖いよ。ここ離れよ?」 男性の壁は私達を見ているのか、それともこなたのプレイを見ているのか。 少し、いやな雰囲気に、流石の私も不安になる。 「…大丈夫、かがみは私が守るから…」 またこいつは… 「また何かのアニメネタか? ね、行きましょうよ」 「…本心、だよ」 「ん? 何か言った?」 「ううん、そだね。そろそろ行こうかぁ」 そういって彼女は私の手を取った。 …… 「ちょ、かがみ! 近い、近いから!」 「アンタがプリクラ撮りたいって言ったんじゃない。このフレームだと近づかないと撮れないんだから、もっと引っ付きなさいよ!」 「そ、そうなんだけどさ… にゃぁ!かがみ、髪! 私の髪、さわっちゃダメだよ!」 「なによ、そんなの… 私の髪の毛をいつも弄ってくるくせに」 「とにかくかがみは私のにさわっちゃダメなの! あ、言ってるそばから! あぅ…」 「アンタの意外な弱点を発見したわ。へぇ?髪の毛が弱いんだぁ。うりうり」 「か、かがみ!いい加減、怒るよ!あ、かがみ、ほっぺた。ほっぺたくっついてるから!」 「わかってるわよ、我慢なさい? この角度が一番可愛く撮れるんだから… ほら笑って、撮るわよ?」 「にゃぁぁぁあぁあっ!!」 …… … 「次、どこに行くの?」 「かがみは行きたい所、ある?」 …正直、『 私 』 は 『 彼女 』 と行ける所なら何処でも良かった。 「う~ん、私は何処でいいかな…」 二人でなら、たぶん、何処に行ったって、その一瞬、一瞬が素晴らしく輝くものになるはずだから。 「私も…でも… そうだねぇ、あそこにかがみと行きたいかな?」 「彼氏とのデートなんでしょ? 私と行きたい所に行ってどうするのよ」 二人でこうやって手と手を取り合って、歩くだけでもいい。 寄り添って、お互いの温かさを感じ取るだけでもいい。 この一瞬が、今、辛い現実に立っている『 私 』を優しさで包み込んでくれている。 「あぁ、そうだったね…。でもさ、行こうよ」 「うん…いいわよ」 たとえ、これが偽りの時間であったとしても『 私 』はかまわない。 『 私 』が手に入れたかったものの全てが、今ここに…あるのだから。 … …… ………… 「ふぅ~…、ちょっと休憩ね」 その後もいくつかの場所を、まるで時間を惜しむかのように駆け足で回った私とこなた。 私達は再び駅前の広場に戻ってきて、その、石造りのベンチに体を預ける。 ひんやりとした感触が腰の辺りに心地よく広がり、歩き疲れていた私を少しだけ癒してくれた。 「あ、そうだ。かがみ、ゴメン!」 「え、なに?」 そう、急にこなたは立ち上がる。さりげなく肩を預けていた私は、急に生まれた喪失感とともにバランスを崩す。こなたはくるりと私に向き直ると、今日で何度目かになる申し訳ないといった顔を作り、私の顔の前に人差し指を突きつけた。 「ちょっと寄ってく所があるんだよね。かがみはここで待っててよ」 「え?いや、私も行くわよ」 立ち上がろうとした私だが、こなたが差し出していたその人差し指に眉間を押され、立ち上がることはかなわない。 「どういうつもり?」 「寂しがらなくってもすぐ戻ってきてあげるからぁ。そこで大人しく待っててよ」 「寂しいなんて、いって…ないわよ」 「ふふ~ん、分かってるって、かがみん。 じゃ、行ってくるね。まっててよ~!!」 「あ、ちょ…!」 こなたはそう言い残し、駆け足でその場から離れていく。 蒼い髪を揺らしながら人々の間をすり抜けていくこなたを見送ることしか出来なかった私は、ふと、すぐ横に、置き去りにされたこなたの白いつば広の帽子があるのに気がついた。 「…あんたの主人って、何を考えているのかしらね」 その帽子を手に取り、それに向かって独り言に近い言葉をかけてみる。 かすかに彼女の香りが感じられるそれを、形が崩れないようにやさしく抱きしめた後、自分の頭にかぶせてみる。少しだけサイズが合わない帽子を、乗せるだけの格好で、そのまま、上半身をベンチの背もたれに預け、私は静かに空を見上げた。 つば広の帽子によって、半分、隠されてしまった空。 瞳に写りこんだ半分の空は、徐々にではあるが、青かった色がその濃さを増し、夜に変わる準備をしているかのように感じられる。 おそらく、太陽は隠された向こう側で、白く強い光から、やさしいオレンジの光に変わっていっているのだろう。 そうか…もう、こんな時間なんだ。 正確な時間を確認したりはしない。 すれば、この大切な時間も、もう、終わりが来てしまうような気がしたから。 楽しい時間は本当に一瞬の出来事で… 長く苦しんでいた時間は、永遠ともいえるくらいに感じてしまう。 そして私は、これからも茫漠としたこの世界で緩やかに流れる時間を、同じだけの苦しみを感じながら歩いていかなければならないのだろうか。 …いや。 この想い。 こなたに感じるこの想いを、忘れることが出来たのなら。 想いは罪。苦しみは罰。 この罪は、きっと、その茫漠たる時間がゆっくり洗い流してくれるはず。 いつか、この想いを、こなたを親友と呼べるところまで帰すことができたのなら、この罰も消えていってくれるだろう。 そして、彼女への想いと、同じだけの想いを…私は彼に捧げてあげなくちゃいけない。 こんな卑怯な私を、それでも好きだって言ってくれる彼だから。 愛して…あげなくちゃいけないんだ。 いふ☆すた EpisodeⅣ~大地はやさしく受けとめる~ 後半へ コメントフォーム 名前 コメント (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-07-09 02 03 05) 投票ボタン