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――――――――――― 『パーフェクトスター』 ●第4章「夢の終わりに謳う歌」Cパート2 ――――――――――― つかさの申し入れを了承し、その1時間後につかさはうちにきた。 会って話すだけなら、前の公園で待ち合わせることも考えたけど、今日も炎天下。 それにかがみにご飯を作って待っていると言った事、沈んだ気分のまま遠出はしたくなかったから、つかさをうちに招く事にした。 そして、正午過ぎ。かがみが急に帰ってくる事はないとは思ったけど、 念のためにかがみにはバイトが終り次第メールをくれるように手配はしておく。 「ちょっち散らかってるけど、どうぞどうぞ」 「お邪魔します」と律儀に一言いれてから上がるつかさを部屋に通し、冷蔵庫に入ってるお茶を2人分準備する。 かがみと一緒に暮らすようになってから、常備するようになったお茶だ。 手元にあるコップが、注がれていくお茶の量に比例して冷えていくのが心地いい。 「こなちゃんのアパートにくるの、これで2回目かな?」 「ん、確かそだったかな? まぁ相変わらずの部屋だけどね」 何故か立ちっぱなしのつかさにお茶を手渡す。 つかさが言うように、つかさがこの家にくるのは2回目だ。 ちなみに1回目は、つかさにみゆきさんに、ご招待というなのお手伝いをしてもらった日。 ストレートにいうと、引っ越し初日だった。 手伝ってもらったはずなのに、片付くまで当社比2倍の時間が掛かったあの日の思い出に関連してなのか、 ふと漫画やDVDを収納した棚や棚の前に極限まで積まれたアニメグッズ、数不明な積みゲーの区域に目がいく。 引っ越す際にお気に入り以外のものはほとんど実家においてきた分、あの区域は物が増えたという証拠でもある。 ── かがみにもあのヲタ区域については、2日に1回は口うるさく言われてたっけ。 そこまで考えが至って、自分の思考に落胆した。 ── …また、やってしまった。 最近は何を考えても、最後はかがみに結びついてしまう。 それが悪いとは思ってはいなかった。…つい2日前までは。 今の私はかがみのことに考えが至る度に、かがみを失う可能性の未来を考えては、陰鬱になり、周りが見えなくなってしまう。 ── まだ失うとは決まったわけじゃないのに、ね…。 そう。その可能性に縋るか、捨てるかは自分次第なのに、私は未だ決められていない。 「こなちゃん、どうしたの?」 「へ…あー…なんでもないよ」 「そっかぁ」 今朝同様、トリップしていたらしい。 手元のお茶を一口含んだつかさは、見るからに不服そうな表情をしてる。 「いや、まぁ私のことよりさ。つかさ、今日はどうしたの?」 「ふぇ?あ、うん…その事なんだけど…」 微妙な空気が生まれたのを感じて、話題転換を図ったものの、帰ってきたのはいつも以上につかさの歯切れが悪い返事。 そんなつかさの様子から、心の何処かで嫌な予感をひしひしと感じていたけど、今の所は見て見ぬ振りをした。 気を紛らわせる為に、お茶を飲む。 「一個だけ、こなちゃんに聞きたいことがあってね」 「ん」 「その、こなちゃんは………お姉ちゃんのこと、好き?」 「ぶっ!!」 お茶を吹きかけた。 ついでに、気管にお茶が入って、さらには手の中にあるコップを落としかけた。 そんな慌ただしい今の心境をゲームに例えると、グラフィックでエネミーエンカウントするRPGのプレイ中、 目視出来ない敵にバックアタック食らった感じだ。 一見冷静に例えてるけど、実際は唐突かつ意外な不意打ちに、咽せつつも頭の中はぐちゃぐちゃになってた。 「こ、こなちゃん、大丈夫!??」 「げほっ!げほっ!」 本気とかいてマジで心配そうな顔なつかさに、咽せつつもジェスチャーで大丈夫と意思表示しておく。 まぁ咽せた原因は間違いなくつかさにあって、本人はそんなこと露にも思ってないのはさすがだと思う。 一通り咳き込んですっきりしてから、一方すっきりとは程遠い頭を稼働させた。 つかさの質問の意図は解らないけど、言葉の意味は理解できる。 「かがみのことが好きか?」と言われれば、もちろんYesだ。 だから、私は口を開いた。 「私は」 なのに。 何故か言葉が続かない。もう一度喉へ風を通す。 「私は…!」 ── かがみのことが好き。 またしても、肝心なところは音にならなかった。 答えは出てるのに、どうして言えないのだろうかと、自分を顧みる。 ── ああ、そうか。 常識的に考えればすぐにわかることだった。 私の口を止めていたのは、僅かに残っていた常識なのだ。 人と人とが好き合うことに問題はない── けど、それは世間一般の常識の範疇である同性間や異性間に生まれるのは友情、 または特定の異性に対して恋愛感情を抱くことに問題ないだけだ。 私もその常識の中にいて、ずっとリアル同性趣味はないと豪語していたのに。 ──ふたを開けてみれば、私はかがみを好きになっていた。 同性の、しかも抱いてる感情は限りなく恋愛寄りなものであって、友情じゃ留まれないくらい強い想い。 そんな私の想いは、日本という世間では冷たい目で見られる上に、 かがみの家族であるつかさに、非常識を一方的に突きつけていいはずがない。 そんな常識が、私の口を止めていた。 「…それともこなちゃんは、お姉ちゃんのこと…嫌い?」 しばしの間の後、背に刺さる言葉。 いや、この痛みはもっと深いところに刺さったんだろう。 《かがみのこと嫌い?》 その一部だけが頭の中で反復され、心の中の何かが軋む音がした。 「そんなことない!嫌いなんかじゃない!」 脊髄反射ともいうのだろうか。 気付けば、語尾を強めた言葉を返しながら振り返っていた。 思ったよりつかさとの距離が近くて、驚いたのもつかの間。 彼女の持っているほんわかした雰囲気で忘れがちだけど、つかさは私より目線一個分身長が高い。 そんな身体的な特徴や、今、つかさが纏っている空気に、表情のせいもあるのかもしれないけど。 …記憶の中のかがみの面影と、目の前にいるつかさが重なって見えて、私はつかさに釘付けになった。 かがみが、泣いている私を抱き締めてくれたときと、同じ優しさが、 あのとき同様に、“我慢しなくていい”と言われてるような感覚に、私の気持ちを抑えつけていたものを取り除いていく。 「かがみのこと…かがみのこと」 つばを飲んで、想いを吐き出す準備をして。 「嫌いじゃないよ…」 このときの私は、紡いだ言葉と共に素直な想いを篭城していた常識が取り除かれて。 「むしろ…好き、大好きなんだよ!」 ── 私は完全に、自分の想いに飲まれていた。 「友達として、じゃなくて…多分、恋愛感情的な意味で。 つかさに言うような事じゃないし、気持ち悪いって思われても仕方ない。 女同士で、こんな気持ち抱くのは間違いだって、自分でもわかってるんだよ。 でも、そんなこと関係ないって、周りにどう思われてもいいって思っちゃうくらい、かがみが好き──」 そこまでいって、ようやく口の暴走が止まる。 雰囲気に飲み込まれた自我が、目の前にいるつかさの笑顔を確認したとき、そろっと帰ってきた。 想いの相手に伝えたわけじゃないのに、今の自分は間違いなく愛の告白をしているわけで。 沸き上がる羞恥心が顔を赤に染め上げるには、そう時間は掛からなかった。 顔が熱い。 ── は、恥ずかしすぎる…。 そんな私をつかさは見続けていた。 ある種の羞恥プレイに心は悶えながら、身体は頭を抱え込んで、とりあえずつかさの視線から逃亡を図る。 「あ、いや…その、つかさ、今の…一部忘れてくれると、助かるんだけど…」 絞りだした私の言葉と様子を見てか、つかさは声を出して笑っていた。 馬鹿にするような笑いじゃないのは、顔を見ていなくても解ったから、気が済むまでそのままにしようと思う。 しばらくして、幾分か落ち着きを取り戻した顔の温度を確認した後、抱え込んでいた手を離した。 「あははっ、ご、ごめんね、こなちゃん。こなちゃんの慌て方が楽しくてつい…」 目の前にいるつかさは、先程見たかがみの面影はすでにないものの、笑顔は健在のまま、本当に嬉しそうに笑っていた。 「つかさ、そ、そんなに笑わなくてもいいじゃん」 心から怒ってなんかない、上辺だけの悪態でコミュニケーションをとる。 こうやって、私が弄られる立場に立つ事は滅多になかっただけに、新鮮味があった。 つかさは目に溜めた涙をスッと拭って、もう一度「ごめんね」と謝罪を入れてから。 「私ね、こなちゃんからその言葉聞きたかったんだ」 屈託のない笑顔を浮かべて、つかさはそう言いきった。 コメントフォーム 名前 コメント ここで終わりなんて嫌だ‼︎ どうか続きを書いて、ください...泣 完結した後にGJ!って叫び、たいんです…泣 だから、いつまでも待つので、どうか…orz -- 名無しさん (2022-12-23 23 33 13) 今でも続き待ってます -- 名無しさん (2019-11-04 22 50 12) 続き待ってます… -- 名無しさん (2018-06-22 23 13 58) 今でも待ってます -- 名無しさん (2017-11-30 13 39 57) 続き···待ってます -- 名無しさん (2014-08-25 00 57 36) 続き今でもお待ちしております……… -- 名無しさん (2014-03-23 09 53 08) つかさ………‥“すべてお見通しですか? -- かがみんラブ (2012-09-25 21 22 19) 諦めたらおわりだよね…? -- 名無しさん (2012-03-01 15 51 47) 続編を待って早2年・・・でも作者様を信じて待つのみ。 -- kk (2010-09-20 01 00 45) 続きがすごく楽しみです!いつ迄も待ってます。 -- 名無しさん (2010-09-19 14 27 49) 目が放せない展開ですね 続編待ってます -- 名無しさん (2010-04-24 18 12 25) 最高です!期待して続き待ってますw -- 名無しさん (2008-10-19 20 33 27) すれ違い出会わなかった2人が偶然出会い、絆を深めてゆく描写がとても好きです。 これから2人の関係はどうなるのか(かがみの記憶が戻ったらこなたとの日々は忘れてしますのか?)、 とても気になります。 続きを期待して待っています。 -- 名無しさん (2008-10-13 01 05 15) かがみならこなたのことを忘れるはずがない。 二人の間には記憶以上の繋がりがあるはず。 彼女たちに明るい未来が必ず来ると信じながら、続きを楽しみに待っています。 -- 18-236 (2008-10-04 18 34 59) 続き楽しみにしてますw -- 名無しさん (2008-06-26 02 02 36) ブログに執筆再開って書いてらっしゃいましたよ。まぁのんびり待ちましょうや。 -- 名無しさん (2008-05-26 20 57 39) どうか続きをお願いします。 -- 名無しさん (2008-05-26 18 41 06) ↓同じく・・・首を長~くして待ってます。 -- kk (2008-05-18 21 51 12) 続き、まだかなぁ…… -- 名無しさん (2008-05-18 10 42 34)
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楽しいとつまらない。嬉しいと悲しい。そんな対照的な気分を同時に持つのは変なのかな? 困ったことになった。これは本音。あともう一つ。でもよく分からない。なんで、いいよ、なんて言ったんだろう? 「こなたー!8時になったけど朝ごはん食べない?ってもう起きてたの?」 透き通った声。綺麗に響く私の名前。なんかくすぐったいよ。 「おはよ、かがみ。起きてるには起きてたよ。」 「・・・あんた、また徹夜か?」 「勘がいいね。」 ドアの方を見ると、エプロン姿の女の子。髪の毛の色はパープル。そしてツインテール。 なんとまぁ、改めてみると絵に書いたようなツンデレキャラだ。 「あのさ、同居し始めて1週間たったよね?」 「うん。」 「さて、問題。徹夜でゲームしたのは何回目だ?」 きりっとしたつり目。これも萌え要素だよね。でも、つり目はつり目でも、なんとなく優しく見えるのは気のせいじゃない。 「5回目。」 「・・・体壊すわよ?」 「大丈夫。慣れてるから。それより・・・焦げ臭いよ?」 「やばっ!卵焼きこげちゃうっ!」 そういって慌てて駆け出すかがみ。ツインテールが宙を舞った。あんな理想のツインテール、初めて見た。 「はぁ。」 無意識にため息が出る。 自分のペースを崩したくない。あまり人と話すのは得意じゃない。もちろん、甘えるのも苦手。 かがみにはまだあまり知られてないが、いわゆるオタク。一人がスキだ。 なのに、何故? この質問は1時間に1回、私を駆け巡る。自分でも分からない、同居の理由。 私に光は似合わない。かがみが陽性植物なら、私は陰性植物。 同じ環境では暮らせない。それなのに始まってしまった同居。お父さん、いきなりこなたは憂鬱です。 隣の2号室にはつかさ。かがみの妹。天然な女の子。 私の部屋は3号室です。同居人がいます。名前はかがみ。きっとツンデレな女の子です・・・仲良くできるか不安です。 始まりは半分の憂鬱と、半分の、期待。ここから始まる幸運星荘での生活。 ‐‐‐‐ 「徹夜までして何やってるの?」 もぐもぐとパンをかじりながらかがみは私に問い掛ける。やはり少女とパンは合うな。 「んー、まぁ、ゲームしたり、マンガ読んだりかな。」 ギャルゲーや、ネトゲーだけど。きっとかがみには検討もつかないだろう。 いわゆるオタク文化。ディープな世界の住人。中学時代から、変わらない私。 「へー。今度私にもやらせてよね。」 「うん。」 変わらなくていい。ずっと狭い無機質な世界で生きていきたい。現実より楽なデータの世界で。 なのに。神様は酷だ。私の願いなんて聞き入れてくれない。 「夜更かしは体にも美容にも悪いわよ?今日は早く寝なさい。いいわね?」 「大丈夫だよ。」 「ダメ!約束だからね。それと、人と話すときは人の目を見る!あと、もっとはっきり喋りなさい!」 なんだこれは?これなんて罰ゲーム?望まない介入。つまりはお節介。 それなのに、私の半分は、そんな事を微塵に思っていなかった。 「・・・はい。」 「まぁ、いいわ。ごちそうさまでした。じゃ、私ここで勉強してるから。」 そう、半分は。この半分の気持ちは中学の時にはなかった。だから私は戸惑う。かがみを見ると、戸惑う。 「こなたも気が向いたらおいでよ。ま、ムリにとは言わないけどさ。でも案外楽しいかもよ?友達同士で勉強するのもいいものよ。」 トモ、ダチ? あぁ、そっか。私ってやっぱり馬鹿なんだな。こんな単純な事に気が付かなかったなんてね。 「あのさ、かがみ。」 有り得ないと思っていた感情。でもこの瞬間、憂鬱が負けた。だから認めなきゃいけない。 私の密かな期待と感情を。 「なに?」 「いや、別に、何って言う程じゃないけど・・・」 期待してるだけじゃ変わらない。せっかく、幸運に恵まれた、かもしれないこの同居。 後悔はしたくないもんね。 ‐‐‐‐ 「あのさ・・・」 たまには光を浴びるのも、悪くない。強い光を浴びて、変わってみるのも、悪くない。 やっと分かった、答え。1週間悩み続けた問題。答えは本当に単純。 「勉強教えてくれないかな?」 「私がこなたに?」 「ダメ、かな?」 惹かれたんだ。 「いいけど、私こなたに教えられるかどうか・・・」 「大丈夫。私も今年の春から・・・」 無機質な世界から生身の世界を感じてみたい。かがみを見た時、そう思ってしまった自分がいた。 ずっと、このままでいい。そんな考えを押し退けて、陰性植物は陽性植物に惹かれたんだ。 だから、ちょっと勇気を出して、光を浴びてみようと思った。 「陵桜学園に行くんだ。だから宿題は同じだよ。」 「え!?それマジ!?」 「・・・そんなにビックリしないでよ。いくら小さいからって失礼だぞ。」 「いや・・・それもビックリだけどさ・・・」 「ふぇ?」 「・・・陵桜の始業式、明日よ?もしかして、宿題手付かず?」 パープルのツインテール。女の子らしい繊細な体躯。凛と響く声。 初めて見た時から、友達になりたいって思っていた。初めて、生身の人間と友達になりたいって思った。 かがみの性格、全然分からないのにね。変かな? 「・・・」 「図星か?」 「・・・テヘ。」 「テヘ、じゃない!」 「というワケで、宿題見せてー、かがみん。」 「かがみんって・・・てか自分でやりなさいよっ!」 「とか言いつつ、今、バックからテキストを取り出して私に見せてくれるような素振りを見せるのはなんなのカナ?」 「う、うるさいっ!・・・今回だけだからね。」 「おぉ!リアルツンデレ!かがみんは可愛いなぁ。」 「ツンデレってあんたね・・・いいからさっさとやりなさいよ・・・」 私の部屋は3号室。同居人が、友達になりました。名前はかがみ。立派なツンデレです。 これが今日の幸運。さて、明日はどんな幸運があるのかな? ‐‐‐‐ 3話 目の合わせ方へ続く コメントフォーム 名前 コメント (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-01-04 14 17 24)
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雨が冷たい。肌がヒリヒリする。指がかじかむ。私の中に温かさはない。 私の胸にポッカリ空いた空虚に吸い込まれるように、春雨が降り注ぐ。 私を責め立てるように。 こなたの温度をかき消すように。 私がこなたに出会ってから3年。私達は陵桜学園を卒業した。 「早かったね。高校三年間。お姉ちゃんやこなちゃん、ゆきちゃんと居たからかな?」 「そう考えるととても感慨深いですね。」 「つかさやみゆきさんはロマンチストだねー。ま、かがみはどうか分からないけど。」 「うるさいわね。私だって少しぐらい感傷に浸るわよ。」 少しぐらいじゃなかった。たくさん、たくさん、胸にくるものがあった。 思い出が多過ぎて、私に刻みきれないくらい、たくさんの幸せがあった。 それはもちろん日下部達ともそうだけど、やっぱり。 「私、皆と同じクラスにはなれなかったけど、楽しかった。 胸を張って大人になったって言える。皆ありがと。」 「お姉ちゃん・・私も凄く楽しかったよ。専門学校に行っても、おばーちゃんになっても忘れないよ。」 「私もです。泉さんやかがみさん、つかささんとの思い出、大事にします。」 「忘れない・・私は皆がくれた萌えを決して忘れない!」 「はいはい、こなたらしいわね。」 「最後ぐらいもっとデレていいんだよ?かがみ。」 「う、うるさいわね!」 4人で笑い合った、高校最後の帰り道。ずっと続くと思ってた。 皆それぞれの道を歩み初めて、少しずつ変わるだろうけど、 つかさがいて、みゆきがいて、そしてこなたがいる。 ずっとずっと一緒に笑い合える。そう、信じてた。 『で、かがみは一人暮らしにするの?』 ほぼ毎日していたこなたとの電話。卒業した日の夜もこなたの声を受話器越しに聞いていた。 「まーね。家からだとちょっと不便だし。」 『寂しくなったら逢いに来ていいんだからね?』 正直寂しくないって言ったら嘘になる。でも私は素直になれなかった。 今なら素直に言えるのに。 失ってから大事なものに気が付くって本当だった。 「さ、寂しくなんてないわよ。・・ちょっとつまんなくなるだけよ。」 『素直になれないかがみは可愛いなぁー。まさにツンデレ。』 「うっさいわねー。」 『ねぇかがみ?』 私は名前を呼ばれるのが好きだった。こなたが発する『かがみ』という単語が好きだった。 柔らかくて、心地よくて。眠くなるように温かい。こなたはそんな風に私の名を呼んでいた。 でも今思い出すと、この時のこなたの声は、泣きだしそうな少女のように、震えていた。 「何よ?たまにはデレてって言われても無理だからね!」 この時の私には、震えたこなたの声に気付けなかった。気付いてあげられなかった。 そしてこんなバカらしい事を口にしていたんだ。 『んーん、何でもない。・・・ねぇ、明日遊びにいかない?』 「いいわよー。どうせ暇だし。」 今でも腹が立つ。のんきに返事をした自分に、こなたの声の変化に気が付かなかった自分に。 「んーおいし。」 「相変わらずケーキ好きだねーかがみは。太るよ?」 私達はいつも通っていたケーキバイキングに足を運んだ。 こなたとの思い出もここにはたくさんあった。 「いーのよたまには!こなたも食べないと損よ?」 「いやー私はもうお腹いっぱいだよ。かがみのその弛んだ顔を見れただけで。」 「な、何言ってんのよ!?」 「照れるかがみも萌えるなー。」 「あんた結局三年間変わらなかったわね。まぁそれがいいんだけどね。」 そこがこなたのいいトコだと思った。無邪気な笑顔でアニメやゲームの話をしてくる。 そういうトコが好きだった。 「さ、次はどこ行きますか、かがみ様?」 「そーねー・・こなたはどこ行きたい?」 「じゃとりあえずブラブラしない?大学に入ったら逢える時間もへっちゃうからね。 いまのうちに思い出作り。」 「ブラブラのどこが思いで作りだよ。」 「まぁいいじゃん、行きましょーかがみ様。」 「様をつけるな!」 ごめんね、こなた。 こなたがブラブラするのが思い出作りだって意味が分かったのはついさっき。 こうやって、私はこなたを傷つけていたのかな? 今とても悔やんでる。ずっとこなたの近くにいたのに。三年間もいたのに。 大事な人なのに。 「・・・でね、あっ、雨?」 「雨、だね。」 「どっかで雨宿りしよう?こなたんちも私の家もあんま近くないから。」 「だね、じゃあの公園の広場まで競争!」 「あ、まてこら!!」 久しぶりに全力で走った。受験勉強でカラダが鈍っているはずなのに、体が軽かった。 横には私に気を遣いながら走るこなた。だから、爽快な気分だったのかもしれない。 「はぁっ・・・はぁっ・・あーっ冷たい。結構濡れちゃった。」 「かがみ大丈夫?」 「うん、でも少し寒いかな。」 「じゃーこうしよー!」 春雨で濡れた背中に温かいぬくもりを感じたのを覚えている。いつも感じていた確かな温度。 「どう?背中合わせ。結構萌えない?」 「質問違うだろ。普通温かい?とか聞くだろ?」 「あーあったかい。」 「無視かい。でも何もしないよりはマシね。」 春雨は少しずつ雨脚を強くして街を濡らしていく。 雨の音の他に2つの鼓動が私の耳に響きわたる。私とこなたの間にはちょっとした沈黙が流れる。 「かがみ。」 「んー?」 沈黙を破るこなた。 こなたがどんな顔をしているか私には見えなかった。 そして、雨の音をかき消す、か弱い声が私に届いた。 「好き。」 2つの鼓動が一瞬止まったように、感じた。 雨の音が聞こえなくなった。たった2つの言葉を並べた単語によって。 「・・・え?」 「好き。私、かがみが好き。ずっと、かがみの傍にいたい。」 この時の事はよく覚えていない。ただ好きという単語の意味を考えていた。 「気が付いたら、いつも傍にかがみがいて、私を助けてくれていた。」 「・・・」 「かがみを見ていると胸が苦しいんだ。あー、これが恋なんだって思った。」 「こなた・・・」 「最後まで聞いて!女の子同士なんておかしいよね?私も何度も思った。 でも、理屈じゃないんだ。かがみが好き。上手く伝えられないけど・・・ もっともっと、伝えたいことあるのに、言葉がでないんだ・・・」 こなたが私を・・・好き? 私は?こなたをどう思っているの? 親友?好きな人? そんな事が頭をぐるぐる回っていた。それで、何も話せなかった。 「・・・」 「かがみは、私のこと、キライ?」 分からない。分からない。分からない。分からない。私がこなたに抱いている好きと、こなたが私に抱いている好き。 ずっと親友だと思ってた。 ずっと笑いあえる大切な人だと思っていた。 錯乱していた私は、一番残酷な答えを、こなたに出した。 「ぐすっ・・ひっぐ・・ぐすっ・」 「か、かがみ・・・ごめん・・・」 いつの間にか、泣いていた。目から涙が、止まらなかった。こうやって私は悲劇のヒロインを演じた。 最低だ。私はこなたから逃げたんだ。泣く、という最低な方法で。 「泣かせてごめん。いつも迷惑かけちゃうね。なんでだろうね・・・」 違う、違う。 そう叫びたかった。それなのに、口から出るのは醜い嗚咽だけ。 「かがみ・・・返事はいらない。かがみは優しいから私のこと、傷つけないようにしてくれてるんだよね。ごめん・・・」 背中からぬくもりが消え、代わりに小さな腕が私を包んだ。 包んだこなたの腕は優しく、私を抱き締めた。 「かがみ、今までありがと・・・大好きだよ。私は貴女の傍にいれて幸せだった。」 もう、涙腺が壊れた。 春雨なんじゃないかってぐらい、大粒の雫石が頬を伝った。 「こ・・なた・・・ぐずっ・・・」 「大切な気持ちをくれて、ありがとう。忘れない、忘れ・・ない・よ・・・」 こなたも、きっと泣いていた。優しく抱き締めた腕が哀しく震えていた。 私を抱き締めていた腕が、私から離れていった。 振り向いた時には、もうこなたは広場から離れ、春雨に打たれていた。 「こなっ・・・た!」 嗚咽で上手く叫べなかった。こなたの名を叫べなかった。 「かがみ。幸せに、なってね。」 春雨で濡れた笑顔、哀しい笑顔は、私の脳裏にするどく、刻まれた。3年間の思い出よりも深く。 「さよなら。」 そう、こなたが言うと、こなたは雨の中に消えていった。雨に濡れた、世界に。 どうして引き止められなかったのだろう? どうして答えを出せなかったのだろう? どうして、傷つけてしまうだろう? どうして・・・分からないんだろう? 今も止まない、春雨。風邪を引いたって構わない。 私は、何度自問しても答えが出ない問いを、麻痺した脳に与えている。 自分を責めるように。 遅すぎる後悔と共に。 こなたの哀しい笑顔と共に。 新しい季節、こなたに出会って13回目の季節、4回目の春はもう始まっていた。 哀詞へ続く コメントフォーム 名前 コメント (´;Д;`)b -- 名無しさん (2023-01-02 21 58 36) 最初だからかな? あまり盛り上がらないんだね -- 名無しさん (2013-11-18 18 03 13)
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どうやら俺の好きなシチュエーションは冬らしい [´・ω・`] -- 名無しさん (2008-12-07 14 25 13) おおっGJ!! -- 名無しさん (2008-12-07 14 27 40) 寒さってのは、やっぱりその分心の繋がりの暖かさを引き立てるよなぁ。“さりげなく”手をつないでる辺りの描写が素晴しい! -- 通りすがり (2008-12-07 19 05 19) 手袋ないと寒そうーww -- 名無しさん (2008-12-07 23 12 22) だから握っているんじゃないか!ってかばん持つ手か -- 名無しさん (2008-12-07 23 20 03) お久です!なるほど確か前も冬シチュでしたなwかがみは緊張してる顔なのにこなたは余裕で嬉しそうなのがらしいと思ったw -- 名無しさん (2008-12-08 03 42 14) まさかのアク禁神光臨!あなたも週間こなかがにエントリーするんだw -- 名無しさん (2008-12-08 12 37 13) ナイス雰囲気!GJ!! -- 名無しさん (2008-12-09 02 47 52) かがみの腹が妊娠してるように見え…おや、誰か来たようだ -- 名無しさん (2008-12-12 23 59 43) べ、別に太ってる訳じゃないんだからね。妊娠してるだけだから! という妄想をしてしまった。こなたの子か? -- 名無しさん (2008-12-13 00 32 41) そうか!これからあの絵に繋がっていくのか!w -- 名無しさん (2008-12-13 00 51 27) こなた、幸せそう☆。いいなー♪ -- ノン (2008-12-22 18 13 24) 名前 コメント
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私はこなたの家にいた。 「かがみん、大好きだよ。」 「えっ?こなた?」 急に言われた言葉に私は困惑する。 「え?じゃないよ。わたしはかがみんことが世界で一番大好き・・・だ、だめかなぁ?」 こなたは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。 こなたが私に愛の告白をしている? 私はずっとこなたが好きだった。恋人同士になりたいと、ずっとそれを夢見てきた。 それが今、私の目の前にある。 「こなた、わたしもずっと前から大好きだったよ!」 「かがみん、大好き!」 こなたが私にダイブするように抱きついてきた。 そんなこなたをいとおしく思い、私もこなたを強く抱きしめる。 小さくて、やわらかくて、あたたかくて、昇天しそうなほど気持ちがいい。 すると、こなたが、うるんだ瞳で私を見上げてきた。 こなたのかわいい唇が私に迫ってくる。 もしかして、これって・・・ 「こなた・・・」 私はこなたの唇に私の唇を重ねた。 「かがみん。」 「んぁ・・・こなた・・・」 私とこなたの口付けは次第に激しくなる。 「こなた・・・こなた・・・」 ああ、こんなことって、本当に夢みたい。 ・・・夢? ・・・あれ? さっきまで高校にいたハズ。 私は私服を着ている。自分の服装も制服のハズ・・・ 「んぁ・・・夢か・・・」 こなたとの事を考えてたら眠っちゃってたのか。最近寝不足だったしね。 「って、ぬぉ!」 目を覚ますとこなたがあごだけ机に乗せて私を見ていた。 「やぁ、かがみん、お目覚め?」 「な、なんなのよ?」 こなた、なんで? 「なんなのって、待ってたんじゃん。むぅ~」 「なんで?つかさとみゆきは?」 「もぅ、かがみんは寝ぼけてるんだね。二人は先に帰ったよ。みゆきさんは家の用事でつかさは夕食の食材を買いに行くって昼休みに言ってたじゃん。」 「そっか・・・」 「だから帰ろっ」 「うん。」こなたと二人きり、久しぶりかもしれない。 「でも、かがみんの寝顔はやっぱ、かわいいよねぇ~、いいもの見せてもらったよ」 「なぁっ!なに言ってんのよ!」 「照れない照れない。」 「うぅ~うっるさい!」 校舎の外に出るとどんよりと湿った冷たい空気が頬をなでて来た。 あと、十日もしないうちに十一月は終わり、十二月に入る。 もうあと、四ヶ月しかない。 「寒い~。ねぇ、かがみん、コートの中に入れて~」 「なにいってんのよ。あんたコートきてるじゃない。」 「いいじゃん。」 こなたがギュッと抱きしめてくる。 「なっ、ちょっと・・・」 私はさっきの夢を思い出して赤くなる。 「あったかい~、ん~」 こなたは私のコートに頬をすりすりしている。 「ちょっ、やめっ、そこにいると、あ、歩けないからさ・・・」 こなたは真正面から抱きついているので動けない。 「んぁ、ごめん。って、あれ?」 こなたが私の顔を見上げてくる。 うわっ、夢と同じだ。こなたの顔が少しずつ近づいてくる。 「かがみ~、顔赤いよ。熱でもあるんじゃないの?」 こなたが私のおでこに手を当てる。 こなたが私のおでこに手を当てる。 冷たい。こなたの手はひどく冷たかった。 「んぁ~、あったかい。でも、熱は無いみたいだね。」 「こなた、あんた、手、冷たくない?」 「あ、わたし冷え性だからね。ごめん、いやだった?」 こなたは苦笑いをしながら聞く。 「そうじゃなくて、手袋とかは?」 「ん、無いけど・・・」 「じゃあ、私の手袋貸してあげるわよ。」 あんたの手、冷たすぎるのよ。ちょっと、心配しちゃうじゃない。 「え?いいって、かがみの手が冷えちゃうじゃん。」 「平気よ。私冷え性ひどくないし。」 「え~、でも・・・・」 なに遠慮してるのよ。 「なんだ?私のだと嫌なのか?」 「わかったよ。じゃあ、左手のだけ貸して。」 「片方?・・・はい」 私はこなたに手袋を渡す。 「これで、手をつなげば、二人ともあったかくなるでしょ?」 「え?ええ?」 「ん~、やっぱわたしのほうが手が冷たいから嫌か・・・」 「いやっ、そうじゃなくて・・・」 「ん?じゃあなんで?・・・あ、そっか、かがみったら、恋人だと思われるとか心配してるんだ~」 「そ、そんなんじゃないって」 「大丈夫だよ。たまにあの子達百合っぽいとか思うことがあるけど、実際にはほとんどそういうのって無いしね」 それって、どういう・・・ 「だから。」 そう言ってこなたに私の手を握る。 やっぱりこなたの手は冷たかった。でも、なぜか私はぽかぽかと暖かくなってくるような気がした。 「あっ、ところでさ~」 「ん?」 「なんの夢見てたの?」 「えっ?」 「いや、寝言でわたしの名前を呼んでからさ、どんな夢を見てたのかなと思って・・・」 「いやっ、それは・・・」 あんな夢を見てたってばれたら私・・・あぁぁぁぁぁぁぁ 「えと、どこまで聞いてたの?」 「えと、どこまで聞いてたの?」 「名前呼んでたとこしか聞いてないけど・・・」 「そっか・・・」 私はため息を付く。 「なに?その意味深な反応。愛の告白でもしてたのかな~?」 「そんなわけ無いでしょ!」 こなたはなんでこういうことを堂々と聞けるんだろ?やっぱ、脈ないのかな? 「そうだよね~でも、夢の中でも怒ってるだなんて、かがみ凶暴www」 「・・・・。ねぇ、こなた。」 「どしたの?かがみん?」 「もし、本当に愛の告白してたとしたらどう思う?」 夢では私じゃなくてこなたからだったけど・・・ 「かがみん?」 もう時間は少ない。 「私さ、ずっと思ってたんだ。」 でも、もう二年以上一緒にいる。十分以上の時間をかけたハズだ。 「私、こなたが好き。」 これでだめなら、きっとあきらめるしか無い。 「え・・・・?」 空気が一瞬、凍りついた気がした。 こなたは私と繋いでいた手を離し、私へと向きかえる。 こなたの顔にはあきらかな困惑と驚きが広がっていた。 「な、なにいってるの?かがみ?」 「だから、私はこなたのことが本気で好きなのよ。」 こなたの顔がみるみるうちに青ざめていく。 やっぱり、だめだったんだね。 「お、おかしいよ。私たち女同士だよ。あ、ありえないよ・・・」 「だって、漫画とかラノベとかにだって・・・」 「二次と三次は違うよ」 こなたにそう言われるとは思わなかった。 「ごめん。かがみ・・・」 そう言うとこなたは左手にはめられていた手袋を付き返し、走っていってしまった。 私は・・・どうすればいいんだろう? 翌日、私はつかさに風邪だと言って学校を休んだ。 これから、どうやってこなたに接して行けばいいのかわからない。 あの別れ方だから、もう顔を合わせることも無理なのかもしれない。 もしかしたら、これで私たちの友情も終わってしまうかもしれない。 そんなことを一日中考えながら、結局、何もすることが出来ずにその日は終わってしまった。 一日あけた次の日、私はつかさと共に家を出た。 12月の第二週は期末試験だし、受験ももう間近だからこなたのことばかり考えて、うじうじと休んでるわけにも行かない。 私はつかさと一緒にこなたをドキドキしながら待っていた。 こなたがどう接してくれるかとても不安だったからだ。 やっぱりこなたとは友達のままでもいいから一緒にいたい。 「こなちゃん、おはよ~」 つかさがいちはやくこなたの姿を見つけ、あいさつをする。 こなたは眠そうに両手で目をこすっている。こなたはやっぱりかわいいなと思う。 「オッス、こなた。」 私も一歩遅れて、出来る限り前のようにあいさつをする。 すると、こなたは私の姿を気づき、ビクッと肩を震わせる。 「お、おはよう。」 こなたは少しこわばったような笑顔で言う。 その表情を見て、私の胸がズキッと痛む。もう私の前でこなたは以前のように笑ってくれることは無いのだろうか? 「こなちゃん、何が元気ないね。寝不足?」 こうしてこなたの落ち込んだ表情を見ていると、一緒にいるだけで私はこなたを傷つけているように思えてくる。 「え?あ、うん。ちょっとね。」 もしそうなら、私はもう、この場所にいていい人間じゃない。何より私がいたくない。 「今日は4時間ぐらいかな?」 こなたは苦笑しながらつかさと話している。どちらにしろしばらくはこなたに会うの控えよう。 「すごいね。こなちゃん。私には・・・・」 私はこれ以上こなたに嫌われたくない。 その日から私はこなたの教室に行くのを止めた。 こなたたちといると話ばかりして勉強が出来ないから、そう言って私はこなたから逃げた。 自分のクラスには峰岸やみさおがいるし、勉強にかまけていれば一時的にでもこなたのことを忘れることができた。 卒業まであまり無い中、二人と一緒にすごすのも悪くない。 テスト期間に入る頃になるとこなたは私と一人ですれ違うたびにビクッと反応するようになっていた。そのとき、私は本当に嫌われてしまったんだなと確信した。 そうして、時は過ぎて行き、テスト週間も終わった。 そして、その間、こなたがわざわざ私に会い来る事は無かった。 「おねぇちゃん。なんで今日先に帰っちゃったの?」 つかさが怒った顔で私に問い詰めてくる。めったに怒らないつかさが怒っていた。 今日、テストが終わった日。私達は四人で大宮にでかける約束をしていた。 テストが始まる前、つかさに半ば無理やりに約束させられた。それを私はドタキャンして先に家に帰ってしまったのだ。 「最近こっちに来ないんだから今日ぐらい約束守ってよ。こなちゃんだってすごく楽しみしてたのに」 私はいらいらした。私は堂々とこなたに会いに行けるつかさとは違うのよ。 「うるさいわねぇ、そんな暇は無いのよ。あんたもそんなことしてないで勉強しなさいよ。」 私より成績よく無いくせに・・・ 「おねぇちゃん、どうしたの?最近変だよ。ずっと、いらいらしてる。」 「それは受験が近いから、もう邪魔しないでつかさ。」 もうほっといてくればいいのに 「おねぇちゃん、たまには休まないと・・・」 「うるさいなぁ、なんなの一体?」 「なんなのって、みんな心配してるんだよ。」 嘘ばっか・・・そしたら、こなたが何も話しかけてこないわけ無い! 「う・ば・・か」 「え?なんて言ったの?」 「嘘ばっかって言ったの!」 「嘘じゃないよ。おねぇちゃんは知らないかもしれないけど、こなちゃんなんておねぇちゃんを心配してずっと落ち込んでるんだよ。」 つかさは何もわかってない。それは心配してるんじゃない。私がこなたを裏切ったからだ。 「だからさ、今度みんなと一緒に遊びに行こうよ。」 「いいわよ。そんなの」 だから、もうその話は止めにして。しつこい。 「なんで?じゃあ、こなちゃんのためだと思って、こなちゃんずっと楽しみにしてんだよ。」 バシッ 気づくと私はつかさを張り倒していた。左手が痛い。 「お、おねぇちゃん・・・?」つかさは尻餅をつき、頬押さえて、うめくように私を呼ぶ。 事態の大きさに気づき私はあわててつかさに駆け寄る。 「ご、ごめん。つかさ、大丈夫?」 「大丈夫だよ。」つかさはにっこりと笑いかけてくれる。 ホント、私は何してるんだろう? 「って、あれ?おねえちゃん、泣いてる。」 「え?」 私は自分の頬に触ってみる。何かが指に触れる。 その瞬間、私の目から涙がとめどなく溢れ出してきた。 「な、なんで?私泣いてるの?」 涙はいくら止めようとしても止まってはくれない。私の目からぼろぼろと涙が流れ出てくる。 私はつかさに抱きしめられる。 「おねぇちゃんもう大丈夫だから。だから、ね。」 「ぁ・・うぅ・・・ゎぁぁぁぁ」 「こなちゃんと何があったの?」 「も、もう私どうしていいかわから無くて・・・」 テスト返却もおわり、三年の私たちは今日を境に一足先に冬休みに入る。 あのあとつかさから聞いた話ではこなたが一緒に出かけるのを楽しみしてたのはやっぱり本当で、でもその反面、そのことを不安がってたりもしてたらしい。 そしてつかさはギクシャクしたまま四人で遊んで友達関係に戻る前に、やっぱり一度ちゃんとよく話したほうがいいと言ってきた。 なんならつかさはこなたと話し合う機会を自分がつくってもいいとも言っていたけれど私は断った。やはり、こういうのは自分でやらなきゃいけないと思う。 でも結局、私は今日までこなたに話しかけることが出来なかった。 今にも、雪が降ってきそうな曇り空を誰も居なくなった教室で私は眺める。もうあれから約一ヶ月。ずいぶんと遠いところにきてしまったような気がする。 私はそっと携帯電話を開け、こなたのアドレス張へたどり着く。 過去に何回もやった操作。つかさに言われた日から何度もたどり着いたその画面。それなのにずっと最後のたった一つのボタンが押せなかった。 こなたを裏切って友達という関係を壊した私が友達に戻ってなんて言うのはただのわがままなのかもしれない。 でも、どんな形でも、どんななにわがままでも、やっぱり私はこなた一緒にいたかった。 こなたに付き返されたあの手袋。今度は付き返されないように、そう願い、その手袋で最後のボタンを私は押す。 「みん♪みん♪みらくる♪みくるんるん♪みん♪みん♪みら・・・」 こなたの着信音が静かだったはずの教室にこだました。 「みん♪みん♪みらくる♪みくるんるん♪みん♪みん♪みら・・・」 こなたの着信音が静かだったはずの教室にこだました。 振り向くとそこにはこなたがいた。 「もしもし、かがみ?」 耳に当てた携帯から、直接こなたから、こなたの声を聞いた。 「もしもし、こなた?」 「うん。そうだよ。」 「なんか、ひさしぶりにこなたの声を聞いたような気がする。」 「うん。私もひさしぶりにかがみの声を聞いた。」 こなたはゆっくりと近づいてくる。 「私さ、やっぱ冬休みに入る前にこなたと話しておきたくて。」 「うん。私もかがみと直接話がしたかった。」 「そう。。。」 パタン こなたが携帯の画面を閉める。 「先にさ、謝っていいかな?」 「な、なんで?」 「だって、やっぱ、ひどいこと言っちゃったじゃん。」 「そんな謝る必要ないって!一般的に見れば普通の反応だしさ!急に言ってびっくりさせちゃったのは私だし。」 「でも、かがみずっと怒ってた。」 「ちがっ、怒ってなんか(無い。ただちょっと悲しかっただけ。)」 「・・・・かがみん。私、かがみがいなくなって気づいたんだ。やっぱ、私はかがみがいないとだめだよ。」 こなたは私の手が届くぐらい近くいた。 「だからさ、すこしぐらいなら私をかがみんが好きにしてもいいから、もう無視しないでよ。」 急にこなたが私にガシッとしがみついてきた。 「む、無視なんかしてないわよ。って、いう・・・」 「無視してたんじゃないの?」 こなたは少し目を見開いて驚いた表情で聞いてくる。 「なんで、そうなるの?」どこをどう見たらそうなるんだ? 「だって、いくら話しかけようとしても目をそむけるし。」 「あれは私がこなたに嫌われてると思って・・・」 「あの時は驚いたけど、嫌いになるわけ無いって!」 「そっか、ありがと。」 私と一緒でこの一ヶ月、こなたも悩んでた。私とどうすれば一緒にいられるか悩んでくれていた。それだけで私はとてもうれしかった。私はこなたを包み込むように抱きしめる。この一ヶ月がただのたちの悪い悪夢だったように思える。 この一ヶ月がただのたちの悪い悪夢だったように思える。 「それにしても好きにしてもいいって・・・」 「かがみんが私のこと嫌ってないなら取り消すヨ。もしかしていろいろ期待したりしちゃった?」 「なっ!」いろんろって・・・ 「かがみん、真っ赤。でも、ほんとかがみはいじりがいがあるよね。」 「なにぃ!?」 「わぁ、かがみん、こわ~い。」 「コイツ、ムカツク!」こういう時までこいつは・・・ 「・・・でもさ、前みたいに戻れたね。」 「え?」 「かがみんにそっち気があるなら私、これからギャルゲーで一生懸命勉強するよ。かがみんのこと好きだし。」 「なっ?そ、そんなことしてる時間あるなら受験勉強しなさいよね!私がいない間さぼってたなんてことないわよね?」 まったく、そういうはずかしいことをあんまストレートに言うな。 「あははははh・・・」 こなたは急に走り出す。ちょっ、マジっすか? 「こらぁ~にげるなぁ~!」 追いかける私から自然と笑みがこぼれる。これからこなたにいろんなことをみっちり教えてあげなきゃね♪ コメントフォーム 名前 コメント GJ! -- 名無しさん (2022-12-23 23 50 43)
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118 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/13(日) 22 51 39 ID KyhcABhO 今かららき☆すた見直すんだが何話おすすめ? 皆もたまには本編観ようぜ 119 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/13(日) 23 21 47 ID KyhcABhO 取り合えず鉄板の七話観た 普通に面白いな… この回はパロもさりげないし 120 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/13(日) 23 43 04 ID wMI+EGZR じゃあ俺は一番好きな13話観てくる。 こなたに男が!?って大口あけるかがみにこなたが跳ねる最萌カット さらにかがみのデレが見れるバレンタイン話は何度見ても良い。 121 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/13(日) 23 52 19 ID KyhcABhO 120 さんくす 一話観てるんだが終わったら十三話観るわ 122 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/13(日) 23 59 39 ID PdfGtKb+ 原作も忘れてはいけない。 ちょっとしたことでこなかが変換出来るネタてんこ盛りだ。 123 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/14(月) 00 08 02 ID MIXPbMUv よし。13話の後は15話、21話見て身体が温まってきたら 最初からまた全話見直して、インターバルに原作、デザートにゲームで パーフェクト! 124 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/14(月) 00 44 46 ID PuES4uah コミックス3巻 p105 「狙い目」 こなた「ふー、よくやったっ 私にしては頑張った!!」 こなた「というワケでちょっとゲームをねー…」 トゥルルル そうじろう「こなたー、かがみちゃんから電話だぞー」 こなた「というワケでちょっとゲームを――」 トゥルルル ゆたか「お姉ちゃーん、かがみ先輩から電話だよ~」 かがみ『あ もしもしこなた?』 こなた「かがみさぁ、私の部屋に監視カメラとかつけてないよネ?」 かがみ『はぁ?何で知ってるのよ』 こなた「え……」 125 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/14(月) 08 12 13 ID qp2FcEXY ちょっとみんな、原作5巻P113第24回 ミッションの上の方にあるかがみの絵を見てくれ。正確にはかがみが腰掛けているものだ。 何を思ってかがみはこれに腰掛けているのか。 126 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/14(月) 08 49 27 ID q6MjJbMA 23話の6分(適当)あたりが好きかな なんか普通に「かっがみーん♪かっがみーん♪」で嬉しそうにじゃれついてるし、 かがみも「仕方ないわねー」とか言いながらこなたに付き合っちゃってるし まさにこなかがじゃなかろうか 127 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/14(月) 09 19 15 ID f8734QBL 125 そりゃもちろん「こなたは私のもの」と回りに誇示してるんだと思うよ つまりは、オマエラ近づくんじゃない、と。 129 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/14(月) 15 33 43 ID YgN5kzK2 みんながこなかが好きになれば、世の中平和になると思うんだ・・・ 130 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/14(月) 15 44 11 ID xvp26GiI 129 こなかが派とかがこな派が血で血を(ry 131 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/14(月) 16 26 34 ID f8734QBL 130 かがこなでもこなかがでも、どちらでも美味しくいただける自分は、 もしかすると、その両陣営からも狙われる立ち位置になってしまうのだろうか。 132 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/14(月) 17 20 54 ID JJVaHezP 131 戦争を根絶するために武力介入する私設武装組織とかでどうだろう 133 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/14(月) 17 29 41 ID v5xrP8Pb 132 ソレナンテ・ビーイング? 134 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/07/14(月) 17 47 08 ID JJVaHezP さしあたって、コナカガル・ビーイングでw
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中編その2にするか、後編としてしまうか相当迷ったが、ここはあえて中編その2とさせて頂いて、まだ合宿を続けよう。 さて、色々なドタバタがあったUNOの後、一旦解散。各々部屋に戻ってくつろいだり、或いは勉強したり、また或いはリビングに残り談笑をしている。 「う~……」 と、唸り声を上げながら宛がわれた部屋のベッドに倒れこんだのはかがみ。枕に顔を埋めて唸り続ける。 どうしてもさっきのことが頭から離れない。 ――大好きっ!! 何も叫ぶ必要はなかった……そう思うと恥ずかしくて顔が上げられない。と、いうか何でそもそもあんな事を言うハメになったのか。 「こなたもこなたよ……なんか言いなさいよね」 かがみが叫んだとき、こなたは何も言わなかった。ただ、驚いたような顔をしていただけ。 だから、ただの罰ゲーム、まぁ、本来受ける立場にはいなかったにも拘らずやらされるハメになったわけなのだが、それを、こなたが何も言わなかったせいで罰ゲームと笑い飛ばせなかった。 「何であそこで黙るのよ……いつもみたいに‘萌え~’とか言いなさいよ……」 何でこんな気持ちになるのだろう?何で?何で?何で? 思い返されるこなたの顔、その細部まで完全に脳内再生できる。出来てしまう。 「く……こなたの、ばかぁ……」 理不尽。だけど言わずにはいられない。この気持ちの奥を覗けない。それを誰かのせいにしたかった。 いつも一緒にいるこなた。こなたが茶化して、かがみが突っ込んで。楽しい、毎日。 でも、最近ちょっとずつ変わってきた。何かに悩むこなた。それが最初。相談されなくて、落ち込んだ。 次は……何だろう?そういえば、みゆきに‘以心伝心’という言葉を使われた。あの日の電話、その時思った。これが以心伝心だと。言葉無しで伝わる、私達の関係。 そして、今日。‘ずっと一緒じゃん’こなたに電話で言われたのに部屋は別。ゲームでもチームは別。 「どこが一緒なのよ……私、今、一人じゃない……」 さて、そんな様子を扉の隙間から伺っていたみゆきは、深々とため息をついた。 「流石に、やりすぎでしたかね……」 こなたとかがみ、二人の恋を応援する為にと、持てる知識を使い、また、新たに獲得しながら、動いてきた。 チェスに例えて、駒を動かし、二人の距離――キングへの道は近づいた。そう思っていたのだが。思わぬところで返しの一手をくらったようだ。 「困りましたね」 頬に手を当て、考える。 こんなに回りくどくしなくても良かったのかもしれない。ただ一言「それは恋です」と告げるだけでも。 相思相愛の二人なら受け入れただろう。親友をここまで悩ませるのは、みゆきとしても辛い。 だが、とみゆきは頭を振った。軽くはない、軽くはないのだ二人の恋路は。 自分はどんな時でも二人の味方だ。でも、世間は?同性愛、それは少なくともこの国では異端視される。 だから尚更、二人には自分の力で乗り越えてもらいたい。親友だからこそ、敢えて答えは与えない。自力で恋だと気が付いて欲しい。 チェックは至るまでの道は自分がかけても、チェックメイトは二人で取ってもらわなくては意味が無い。 「何かないものでしょうか……」 誰にともなく呟いた。本当に、逆転を逆転させる一手……そんな都合のいいものは、とそこまで考えた時、微かに衣擦れの音がしてハッと振り返った。 誰か来る。そう思った瞬間、何故か、本能的に身を隠した。物陰からそっと、その誰か、を伺う。 (あれは、泉さん?) そう、こなただった。こなたはしきりに辺りを気にしながら、かがみの部屋の前まで来ると、躊躇いがちに、ノックした。 コンコン……ノックの音がする。起きたくは無かったが仕方が無い。かがみは枕から顔を上げた。枕には濡れた後。 「……誰?」 鬱陶しい、そう思いながら扉を開け、前に立つ人物を認め、固まった。 「こなた……」 「かがみ……」 こなたは、いつものこなたらしくなかった。物憂げに瞳を細め、視線は落ち着かず、手がせわしなく動いている。 「今、いいかな?」 聞かれ、是とも否とも言わず、こなたを招き入れた。もはや無意識の行動。何も考えられなかった。 部屋に入ったこなたは、やはり落ち着かず、口を開いては閉じ開いては閉じを繰り返し、5回目にようやっと言いにくそうに、 「えっと、あのさ、さっきの……あの、罰ゲームでのことなんだけど」 と言った。 「……何?」 思っていたより低い声が出て、かがみは自身でも驚いた、そして後悔した。こなたが、ビクッとしたから。 「いや、あの……」 オドオドしているこなたはまるで、天敵に出会ってしまった小動物。そんな印象をかがみに与えた。 「あのさ……さっき……」 あぁ、と、かがみは思う。いつものこなたらしくない。そうしたのは私か。それとも? そして、どうしてそこまで分かる?こなたらしいって何?私にとってのこなたって何? 親友?そう、親友。 ――大好きっ!! 親友なら、なんでこんな気持ちになるのか。これは親友に対する気持ち、それだけなのか。本人を目の前にしてなら、その奥を覗けるかもしれない。 かがみがそこまで思ったとき、 「さっきのかがみ……萌えたよ!!」 「はぁ!?」 外で二人のやり取りをハラハラしつつ聞いていたみゆきは、思い切り苦笑した。 部屋の中から、こなたの得意そうな声が続く。 「いやぁ、もう、あの大好きっ!!って言葉がさ、感情こもりまくり!!まさにツンデレ!!」 「ちょ……おまっ、わざわざそれ言いに来たのか?」 「そだよ~、だってあの後すぐにかがみ部屋に帰っちゃうんだもん」 こなたが頬を膨らませている姿が容易に想像できる。 「もう、ホントはあの場で萌え~って言いたかったんだけどねぇ、ま、そこは流石に自重したよ。ホントはゆーちゃんとみなみちゃんの罰ゲームだったしね」 「じゃあ、もしあの罰ゲームが私のだったら?」 「勿論、萌え~!!って言ったね。そのまま勢いでかがみんは俺の嫁とか言っちゃったかも」 「な、なによ、それ!!」 「ん~?何々、照れてんの?お~、愛いヤツめ」 「やめろ、触るな、暑苦しい!!」 廊下まで聞こえる大騒ぎ、全くいつもの二人の様子。 なんと言うか、もう苦笑するしかない。逆転の一手、それは本人達が持っていた。 (そうですね、元々はお二人の恋ですからね) 今回は出る幕は無し。さて、とは言えまだチェックはかけれない。 でも、それはそう遠くないことかもしれない。 「早く気がついてくださいね、泉さん、かがみさん」 みゆきは苦笑を微笑みへと変えると、騒ぎ続ける二人の声を心地良く聞きながら歩き出した。 1月12日・後編へ続く コメントフォーム 名前 コメント
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新年度が始まってから早いうちに誕生日を迎える私は正直今年のその日をあんまり期待していなかった。 理由は単純。祝ってくれる人がそんなにいないから。 いや別に昔から誕生日が好きってほどじゃないんだけど。それでも誕生日が特別なんだと気付いたと言うかなんと言うか。 待ち遠しいだとかそんな気持ちにさせるのは高校時代の友人達のせい。無頓着だった私を色々と変えてくれた親友がいたからだ。 だから世間一般ではただの平日の一日にすぎないけど、今日という日に期待とちょっと寂しさを感じてしまう私がいた。 大学も入って二ヶ月足らずじゃ大して人間関係を築けない。 それでも同志の子達とかみさきちがいたこともあって何人か仲良くなれた人達からはお祝いの言葉や誕生日プレゼントなんてもらったりした。 今のところ知り合いの中じゃ一番先に誕生日を迎えたらしく、全然年上に見えないって言葉が第一声。 全く成長してないのは高校生の頃からだけどやっぱり言われたら少なからずへこむ。まあ誕生日に落ち込んでらんないからテンプレ反応で笑いをとっといて。 別々の学校に進学したんだからつかさやみゆきさんに会えるわけもなく残念だけど、二人とも日付の変わるタイミングでメールをくれるという味なことをしてくれたし。 そこまで深く知り合えたわけでもないのにプレゼントを貰えただけで十分幸せ者だと思う。 それなら今感じているこの気持ちは一体なんなんだろう。 「たっだいまー」 荷物を抱えて勢いよく玄関をくぐったのはいいけど、返事が何もない。 あれ、今日ってお父さん打ち合わせかなんか言ってたっけ。ゆーちゃんだって帰ってきていい時間なのに。 さては去年誕生日パーティーすっぽかしたから仕返しも兼ねたサプライズかなんかかな。 無音の圧力って結構心臓に悪い。とりあえず荷物を部屋に置いてからっと。 「おかえりこなた誕生日おめでとう!」 「ふぉっ!?」 自室の扉を開けたら目の前に仁王立ちのかがみ。クラッカーは自重してくれたみたいだけど声大きすぎ。 驚いて持ってた物全部落としちゃったじゃん。食べ物割れ物なんてないからいいけど。 「あ、ありがとかがみ。それと、ただいま」 去年とは違う満面の笑みで言われると少し照れくさい。 素直なのは良いことだけど、たまにはアイデンティティーを思い出してくれてもいいと思う。 なんて、がっしりホールドされてかがみの柔らかさと暖かさを感じながら考えていた。 「と言うことは今日はかがみと二人きりってこと?」 「そ。おじさんにダメ元で話してみたら二つ返事で良いよって。ゆたかちゃんも喜んでって言ってくれたわよ」 「……平日なんだしそんな無理しなくてもいいのに」 「土日に改めてパーティー計画してるみたいだし。いいじゃない、せっかくの好意なんだから甘えときましょ」 帰ってから全然私を離すつもりがないらしいかがみはニコニコと経緯を説明してくれた。 甘えればってもねえ。……あんまり都合が良すぎると私的には嬉しくなかったりするんだよね。 時間はまだ18時すぎ。晩ごはんはこの状況だと期待できなさそうだけど、大学でみんなと少し食べたりしたからお腹もそんなに空いてないしいいかな。 かがみに抱きしめられながら考える。この腕にすっぽり収まる感覚は嫌いってわけじゃないけど。 「19歳かあ。もうあと一年で二十歳になるんだよね。全然実感湧かない」 「年食っただけで全然変わんないわよねーあんたは。……良い意味で」 ふっと耳に息を吹きかけられたので反射とお返しに後頭部頭突きをかましておく。 ちょっと痛そうな声が聞こえたけど抱きしめてる手の力が緩んでないあたり効果はなさそうだ。 「お母さんを見てたらしょうがないかなって思うけどさ」 背格好はこれ以上望めないかなって心構えはできてたし。 でも写真に映るお母さんは『お母さん』で、見た目は小さいけれど雰囲気があるって言うのかな。 私自身は大人に近づいてるなんて思えてないから、ちゃんとお母さんみたいに立派になれるか不安になる。 私が一足先に誕生日を迎えたのに周りの子達のほうが全然大人っぽくて。 「ねえかがみ」 もぞもぞとかがみの腕の中で体勢を変える。 呼び掛けながら見上げた瞳が真っ直ぐ私を見つめてきて気恥ずかしくさに少し俯く。両手はかがみの背中に回して。 私より大きいけれど柔らかくて細くて同じ女なんだなって思う。強いけれど男の人みたいな強さがあるわけじゃない。 かがみは変わったよね。私に対する接し方とかじゃなくて雰囲気が大人っぽくなったよね。 待ち合わせ場所での凛とした姿勢とか、話し方話す言葉とか、ふとした瞬間に見せる表情とか。 薄く塗られた口紅が艶めいて色っぽいなと思う。 「どうしたの?」 「ごめんなんでもない」 それに比べて私はどうなんだろう。言葉通り成長してないんだろうか。 優しい笑みを浮かべるかがみに私は何も言えなかった。 「どしたー?隠し事はなしだぞー?」 「別になんでもないってば」 「嘘でしょ。なんでもないわけないじゃない」 両手で私の頬を挟んで顔を背けることを許してくれないかがみ。 見透かすような瞳が怖くて、そして吸い込まれるように綺麗で。 じっと見つめあっていると顔が熱くなっていくが感じとれる。恥ずかしいのに逃げ場がない。 「ほんと、あんたは可愛いわね」 からかいを含まずに笑うかがみはやっぱり綺麗だなって思う。 そういう色っぽさとか優しさとか。かわいいね萌えとか言ってた頃のかがみとは別人のように大人びて見えた。 「そ、そんなことないよ」 「あるわよ」 「ないっ」 「あるの!」 だってこんなちんちくりんで子どもっぽいのに。かわいいって言うのは幼いってことじゃん。 年不相なところが誉められたって嬉しくない。こうやって否定してるのも駄々こねてるみたいでイヤになる。 こんな日に、かがみの前で、こんなことしたくないのに。 「もう、どうしたっていうのよ?」 「……今日が誕生日っていうのに私は全然変わってなくて」 「そんなことないわよ」 「そんなことあるよ。で、大学生になって周りの人達は、かがみは急に大人びていって。私だけおいてけぼりみたいで」 なんか考えてることが情けなくて泣きたくなってきた。 上を向いてるから涙は零れたりしない、のであればいいのに。 こんなこと話したってかがみに呆れられるだけ。はぁー、とわざとらしいため息をついて。 「私はこなたが一番大人だと思ってたんだけどな。いつもの四人の中で」 くしゃくしゃと乱暴に頭を撫でられた。 普段は優しく髪を梳くようにしてくれるのに。ふざけてるわけじゃないもん。 「いつもアニメとかゲームの話ばかりしてて全然先のこと考えてないように見えて、どこか冷めた眼で本気を見せなかったり。距離感が掴めないって言うか、踏み込んできたかと思えば全然自分の底は見せてくれなかったり」 かがみの言ってることは合ってるとも違ってるとも言える。 そういう心構えはしてなくなかったけど、全部人間関係に臆病だったからって理由。 「達観してるって言うのかな。そういう意味で大人びてるって思ってたけど」 「……」 「だからこそ私は今のこなたが一番好きよ」 と、言われましても。そんな話だっけ。 私のリアクションにかがみはなぜか声をあげて笑い私を強く抱き寄せた。 「こうして私の一言一言に反応するところとか特に。装ったりしない素顔を見せてくれるから」 なにさそれ。結局私は子どもに逆行してるんじゃん。 とか思ったけど言わない。認めるのは気恥ずかしいけど昔より今の私は幸せって言えるから。 全部かがみのせいだよ。 「私も好きだよ」 軽く唇を触れさせ精一杯の笑顔を見せる。 応えるように笑ったかがみは、やっぱり見惚れるほど綺麗だった。 コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-11-29 09 32 47) こなたのは幼さというよりあどけなさ、いや やっぱり幼さかな...?w まぁ一方でラノベやダイエットの件でかがみが幼く見えることもあるし、どっちも似て非なる意味で可愛いなって思います。 この二人の友情もとい愛情が長く健やかに続きますように... -- 名無しさん (2015-01-10 23 15 30) 子供から大人へ、この年頃の微妙な心境がスゴク伝わってきました。 読んでいて過去の自分も思い出せた様な気がします。 GJ!! -- kk (2014-05-29 01 11 13) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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「ねえ、こなた。今日の放課後、暇?」 「今日はバイトも入ってないし、暇だけど」 「よかった。放課後、ちょっと付き合ってくれない?」 「いいけど。珍しいね、かがみから誘ってくれるのって」 「たまにはね。あんたと行きたいとこがあってさ」 「行きたいとこ?」 「別に大したところじゃないわ。ちょっとしたとこよ」 「ふぅん…待ち合わせとかどうする?」 「うちのクラスのHRが終わったらそっちに行くから、教室で待ってて」 「わかった。じゃあ放課後、待ってるね」 …よし、ここまでは問題ない。 あとは放課後だ。今日は、今日だけは予定があってもらっては困る。 だって今日は―――。 こなたと付き合い始めてちょうど一ヶ月の日、なんだから。 だから今日は、何か記念に残るようなことをしたかった。 そして放課後。 「こなた、お待たせ」 「ん、別に大して待ってないから」 「そう?じゃあ、行きましょ」 「かがみ、結局どこに行くの?」 「朝も言ったとおり、大したとこじゃないわ。 ついてくればわかるわよ」 訝しげなこなたを連れて、着いたところは…。 「…ゲーセン?」 「だから言ったでしょ。大したとこじゃないって」 「確かにそうだけど…なんでまたゲーセンなのさ」 「その前に一つ、いい?」 「…?」 「今日は、何の日?」 「今日…?なんかあったっけ」 「…そんなことだろうと思ってたわ」 案の定、こなたは覚えていなかった。 覚えてないんなら、忘れられない日にしてやるだけよ。 その程度でいちいち凹んでたら、こいつと付き合ってなんていられない。 「む、どういう意味それ」 「つくづくあんたらしいって意味」 「ほめられ…てないよね、絶対」 「そうね。とにかく今日は特別な日。あんたが覚えてないんなら、それでも構わない。 私が今日を、こなたが絶対に忘れない日にしてあげる」 「ふぅん…じゃあ、期待しちゃおうかな」 「任せときなさい」 「それじゃ、そろそろ行かない? いつまでも店の前にいても邪魔になるし」 さて、行くとしますか。 一度しかない今日この日。 絶対思い出に残るようなことをしてあげるんだから。 「で、どれやるのさ。 私がいつもやるようなものじゃないってことはわかるけど」 「アレよ、アレ」 そうしてこなたを連れてきたところは…。 「プリクラっすか、かがみ様…」 「そ。別におかしなことじゃないでしょ?あとかがみ様言うな」 「いや、そうだけど…」 「何か問題でもあるの?」 「問題ってわけじゃないけど、私はあまりこういうのやんないからさ」 「なら、好都合じゃない。普段やらないなら、思い出にも残りやすいでしょう」 「そんなもんかなぁ」 「そういうものよ。さ、行きましょ」 そうして、二人で中へ入る。 よし。ここなら…。 「こなた」 「っ!か、かがみ?」 「いいじゃない、誰も見てないんだしさ」 「だからって…いきなり抱きつかないでよ…恥ずかしいよ」 「今に始まったことでもないでしょ。ほら、時間ないわよ」 「え?…あっ」 ―――そして、フラッシュの光が私たち二人を照らす。 そうして印刷されたものを手に、二人で外に出た。 「むぅ…かがみがいきなり抱きついてくるから…」 「そう?よく撮れてるじゃない。可愛いわよ」 「なんか素直に喜べない…」 少し拗ねている様子のこなたを尻目に、 私は携帯の操作をする。 「これでよしっと」 「かがみ?」 「すぐわかるわ」 「ふぅん…お、メールだ…かがみから?なんでまた?」 「いいから。見てみなさい」 こなたが携帯を開く。 その直後、こなたの顔が真っ赤になった。 「か、かがみ!?これ!」 「そ。今さっき撮ったやつ」 そう、私がこなたに送ったものは、たった今撮ったばかりのやつだ。 笑顔の私と、その私の腕の中で真っ赤になったこなた。 「どう?それなら絶対忘れないでしょ?」 「そうだけど…」 「それともう一つ、あんたに渡すものがあるの。本命はこっちかな…」 鞄の中から小さな紙袋を取り出して、こなたに渡す。 普通に渡せばよかったんだろうけど、他にも何か思い出になるものを残したかった。 だからこんな回りくどい真似までしたけど、結果だけ見ればよかったのかな。 普段見れないこなたも見れたしね。 「これは?」 「開けてみて」 「…!これ…指輪?」 「ちょっと高かったけどね。あんたとの大事な日だもの。 このくらい、どうってことないわ。 それとね、その指輪のついてる宝石。ラピスラズリって言ってね。 その宝石言葉…花言葉みたいなものね。それは―――」 「―――永遠の誓い」 「…永遠の、誓い…」 「この先もずっと、何があっても、 こなたと一緒にいるって決めたから。その証」 「そっか…。私、ずっと大切にする」 こなたは、その小さな指輪を胸に抱いた。 「しかし参ったなぁ。 まさか、かがみも同じようなこと考えてるとは思わなかったよ」 …同じこと? 「こなた?同じって、どういうこと?」 「私もかがみにプレゼントを用意してた、ってこと」 「え…?」 そしてこなたが私に差し出してきたものは…。 「はい、これ。私からかがみへプレゼント」 「ネックレス…?」 こなたが渡してくれたそれは、緑色の宝石のついたネックレスだった。 「これは、エメラルド…?」 「うん。エメラルドにはね、『幸福』って意味があるんだって。 かがみと、二人で幸せになりたいから」 「こなた…ありがとう」 「かがみがくれた、ラピスラズリとあわせて『永遠の幸せ』、なんてね」 「そうね。なら…その二つの宝石に誓って永遠の幸せ、実現してやろうじゃない」 「大丈夫だよ。私は…かがみと一緒にいられれば、それが幸せなんだから」 「私も、こなたと一緒なら、絶対に世界で一番幸せになれるって思えるわ」 こなたと一緒なら…何があっても平気。 どんなことでも乗り越えられる。 「そういえば、どうして私にプレゼントなんて? だってあんた」 「―――今日は、私とかがみが付き合いはじめて、ちょうど一ヶ月の日。 …だよね」 ―――え? 「…!覚えてたの!?」 「当たり前だよ。一度しかない最初の記念日だよ?忘れるわけないよ」 「だって、あんた…」 「覚えてない、なんて言った覚えはないよ」 …言われてみれば、こなたは覚えてないとは言ってはいなかった。 シラを切っていただけ…? 「じゃあ、なんであんなこと…」 「かがみを驚かせようとと思って。 まさか逆に驚かされるなんて思わなかったけどね」 まったく…こんなことばっかり頭が回るんだから。 こなたらしいといえばらしいけど。 「こなた。渡した指輪、貸してくれる?」 「…?いいけど、どうしたのさ」 指輪を受け取り、こなたの左手を取る。 そして、その薬指に指輪を通した。 「…じゃあ、私も。ネックレス、貸して」 そう言って、こなたが私にネックレスをつけてくれた。 「ありがとう、こなた」 「ありがとう、かがみ」 私の胸と、こなたの指でかがやく二つの光。 その光に誓って、二人で幸せになる。絶対に…。 「私もね、かがみにもう一つプレゼントがあるんだ」 「こなたも?」 「その前に確認しておきたいんだけど…かがみ、今日はうちに泊まれる?」 「明日は学校も休みだし、大丈夫だけど…それがどうかしたの?」 こなたの家でないと受け取れないものなのだろうか。 だとしても、一体なんだというのだろう。 「よかった。もし断られたらダメになっちゃうとこだったよ」 「何なのよさっきから」 「えっとね。この日を記念して、かがみにご馳走してあげようと思って。 先週から仕込みしてたんだ」 「本当?…なんか私のほうが割に合わないものになってきた気がするわ…」 「こういうのは気持ちの問題。私は凄い嬉しかったから問題ないよ」 こなたは本当に嬉しそうにそう言ってくれた。 この笑顔が見れたのなら、確かに実際のものが何であってもよかったと思える。 「私の家には後で連絡入れるから、行きましょうか」 「うんっ!あぁそうだ。言い忘れてたことがあったよ」 「言い忘れてたこと?」 そしてこなたは私の耳元でこう、囁いた。 「今日はね―――」 ―――お父さんもゆーちゃんも用事があって家にいないんだ。 だから、今日は久しぶりに…ね――― 「なっ!?」 「ほーら、かがみ!置いてくよー!」 道の先で手を振るこなたの笑顔を見て私は思う。 ―――今日は眠れない日になりそうだ――― fin コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-03-29 10 53 12) こんなの反則だろおぉぉ!! -- 名無しさん (2010-07-22 14 53 01) やばい!!甘すぎるやろ~~~~~~~~ -- 名無しさん組長 (2009-09-04 00 12 56)
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卒業式。新たな旅立ちのためへの一つの区切り、つまり今まで過ごした日々との別れ。 過去二回の同じような儀式は正直に言ってほとんど覚えていない。 それはきっと小学校で過ごした毎日と、中学校で過ごした毎日を失うことにあまり思い入れがなかったからだと思う。 友達がいなかったというわけでもなく、早く大人になりたかったというわけでもなくて。 ただ単純にその日に何かが変わったのだと感じることができなかったからだ。 だけど今日は違う。忘れられない日になる。 つかさが予想通りに泣いていてなんとなく羨ましいなと思ったこと。 大人びたみゆきさんの、年相応の可愛らしい泣き顔。 名前もろくに知らない同じ境遇の人たちの弾んだ空気の中に確かに含まれた別れを前にした様々な思い。 それらはどれもこの日に相応しく、これこそが卒業なんだと思わせるけどそういう意味ではない。 今日という日に私は大切なあなたと一つのけじめをつけようと思います。 数百という卒業生が一堂に会した体育館を一歩外に出てしまうと、いろんな響きを乗せた声は吹き抜ける風にかき消される。 私は人の涙を見て楽しむような趣味はなくうるさいのも嫌いだから、たとえ日陰で草木に囲まれた場違いなところに佇んでいるのも関係ない。 冬の間はすっかり裸になってしまっていた木々も今は緑の葉をつけているあたりに一年のサイクルを思わせる。 葉をつけ花を咲かせ、そのどちらも散らせたあと、また時期がやってくると繰り返す。 ほとんど変わることのない、何年にもおよぶ循環。でも私たち人間はそうはいかない。 一年もあればどれだけ変わることができるだろう、たった一日24時間だけでもう前日の自分ではなくなっている。 身体的な特徴はまだ変化しにくいものだけれど、心というものは些細なことで変わってしまう。 それが悪いものだなんて思ってないけど、永遠があってほしいと願ってしまった。 願いは自分で叶えるものであるが、私のそれは儚い希望に過ぎない。 それが二人にとって一番なのだと、わかるはずもない気持ちを自分の物差しで考えていた。 「ごめん、待った?」 思い思いに写真を撮ったりこれからの約束を話し合うのが通常とするこの時間にわざわざ人の寄りつかない場所に来る者などいない。 私の待ち人柊かがみがそこにいた。 しばらく時間をおいたのは彼女も例に漏れず友と思いを交わしていたのだろう。 それを私に咎める権利はないし、ただ用件を告げて終わりというような急ぐ気持ちはさらさらなかった。 「気にするほどでもないよ」 「確かに。待ち合わせに遅れるのはあんたの専売特許だもんね」 どんな状況でもこうしてふざけ合うことができるのはとても居心地が良い。 この日の当らない場所に不釣り合いな、今日巣立っていくという自覚のある強い眼差しに思わず見惚れていたことに気づかれないように。 まだまだ子どもだと思われるとわかっていながらふてくされた表情を作る。 もう一度、かがみは笑った。卒業式の余韻を残した綺麗な笑みだった。 それに目を奪われ、体の奥から熱が込み上げてくるのは仕方のないこと。 移り変わりやすい心なれど、大きく膨らみすぎた気持ちはそう簡単に無視できるものではない。 風になびく二つに分けた髪を抑えながら、かがみは何も言わずじっと私の言葉を待っていた。 「今日で卒業だね」 「そうね」 「三年間、かがみと過ごした毎日は楽しかった」 出会った当初は今のように自分をさらけ出すことができるなんて想像もしていなかった。 オタクだなんだ、勉強もしないだらしない私を、それでも全て受け入れてくれたかがみ。 二年の時の数えきれない思い出。お祭り、海、お泊り会、初詣など。 たとえ大層なイベントごとがなくとも、通学路や休み時間、放課後といった一緒に過ごした時間は今も輝いている。 ただあなたといられるだけで、私は幸せな日々を送ることができたんだ。 「そうね、私もこなたと一緒に過ごした高校生活は忘れられないと思う」 一年以上前だったら「つかさとみゆきと……ついでにあんたも」って言ってただろうな。 かがみが正直にそう言ってくれることは嬉しくて、またくすぐったさもある。 慣れない素直に気持ちを伝えることにどこか恥ずかしそうなかがみに、私は今一度感謝の気持ちを伝えた。 「奇跡みたいなもんだよネ。かがみと出会えたことに感謝しないと」 運命だとかは信じないし、奇跡なんて安っぽい言葉も嫌いだけど、この出会いは何物にも代えられぬ大切なもの。 柄にもない私の言葉にかがみは笑う。何の屈託もない可愛らしい笑みだった。 その笑顔を見てまだ私は考え直すべきだという思考がよぎる。 確かにこの笑顔があれば他に何もいらないと思っていた時期もあった。今でもそう信じたい気持ちがある。 だけど遠く離れてしまわぬうちに、笑顔を変えてしまわぬうちに。 「かがみ、ありがとう。それから……ごめん」 「えっ……?」 ひどく不快な静寂を紛らわすように、ひと際強い風が音を立てて吹き抜けた。 去年の夏頃から私たちの関係は友達から恋人へと変わっていた。 同性愛ということも気にかけることなく、間違っていると諭されても頑として譲らないで。 実際反対らしい反対はされなかった。確かに幾度となく話し合ったけれど、一方的に拒絶されたわけではなく想いの確認という意味で。 だから身近な人は少なからず認めてくれる感じがあって、私たちもそれを裏切るつもりはなかった。 キスもしたし、体の交わりもあった。想いは冷めるどころかどんどん強くなっていった。 ……それでも少なからずあった不安はぬぐえずにいた。 今でも、この先も残るだろうかがみへの想い。それは嘘偽りなんかじゃない。 そもそも受け入れるのに生半可な覚悟では済まないだろう将来を予測した上で告白を受けたのだ。 ここにきて足りないのは何なのだろう。それはきっと自分の強さだ。 秋頃、もう進路をどうしようなんて迷っている場合じゃない時期、それでも私は迷っていた。 私を除くクラスの全員が心に決めた目標へ向かってひたすら突き進む日々に、私はあてもなくさまよっている。 動機はとても不純なものだ。大学に入っておけばなんとかなる、かがみが勉強するから私もしようと。 一緒に遊ぶ余裕がなくて勉強に時間をあてることがほとんどだし、今すぐやりたいことが見つかるわけでもなくて。 ちゃんと自分に合ったレベルのところには合格できた。確かに努力した証は残っている。 でもそれは、おそらく社会に出ていく上で何の足しにもならない脆いものだろう。 「かがみは弁護士を目指して頑張っている。大変だろうけどかがみならできると思うよ」 つかさもみゆきさんも、それぞれが選んだ道をしっかりと歩み続けて行くことだろう。 でも、それには本当に大変な労力と時間を費やさなければならないだろう。そこに私がいてはダメなんだ。 「別に会おうと思えばいつでも会えるでしょ。今までと変わらないんだし」 どちらかが一人暮らしを始めるわけでもないから、まだ延長線上にいる。 それは言ってしまえば甘えに過ぎない。いつまでもかがみに寄りかかっていられるという甘え。 これからさらに勉強量が増えるかがみと、たぶん余計にできた時間を遊びに回す私。 もともと受験勉強の段階から開いていたその差はきっと埋まることはない。 今までだってそれを卑下されたことはないけど、かがみの優しさでしかないと知っているから。 そして、一番の問題は時間じゃないんだ。 「法律で守られていない以上自分の身は自分で守らなきゃいけない。でも私たちにはまだそんな力ないでしょ」 「それはっ、今すぐどうにかなる問題じゃないじゃない……っ」 かがみの悲痛な、あまり見ることのできない強い表情にひるみそうになる。 だけど、やっぱり一時の感情には流されてはいけないと、それはかがみのためにならないと言い聞かせた。 ──かがみのためとか言って、自分が傷つきたくないからじゃないの? 人の心なんて計り知れないものだ。もしかするとこの選択が一生かがみの心に残るものになるかもしれない。 そして私自身の心にも。すでに大きな痕を残しているのだから。 だんだんと離れて行って会えなくなるのが怖い?違う、そんなんじゃない。 本当は離れていても心は繋がっているんだと、そう信じたい気持ちがあるんだ。 「五年後、十年後になるかわからないけど、一人前の女性となったその時でも」 今から過ごす大学四年間を何を犠牲にしてもあなたを想い続ける覚悟は私にできているのかな。 あなたは何を犠牲にしても私のことを思い続けていてくれていると自惚れてもいいんですか。 信じたい気持ちは今でもある、ちっぽけな覚悟も持っているはずなのに。 心という移り変わりの激しいものは、私自身が持つ気持ちの大きさでは信頼に足らなかったのだ。 「変わらずに好きだと言ってくれるのなら、一生を共に生きると誓うよ」 でも、私が胸を張ってあなたに会いにいけるようになるまでは。 「親友だったあの頃の私たちでいよう。これは別れじゃなくて、強くなるための契り」 ただ恋人から親友に戻るだけ。今日が最後ってわけじゃない。 まだ見ぬ未来、あなたの隣に立っているのは私であってほしいと望むけれど、もっと相応しい人もいると思う。 私の中に残り続ける火種は、消さないで代わりに糧とするから。 対等な人間であるために、隣に立って幸せにすると堂々と生きて行くために。 世の中に生きる一人の人間としての挑戦、これからもう二度とないかもしれない恋人の証が始まりの合図。 この熱さは一生忘れることができないだろうと、澄んだ青空の下、思っていた。 コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b 再び関係が戻る事を願う限りです! -- 名無しさん (2023-08-07 00 07 26) 微妙。 -- 名無しさん (2010-04-07 09 06 16) いつもかがみの隣にこなただ!! -- 名無しさん (2009-09-01 20 27 10) せつねぇ・・・でも数年後、かがみの隣に居るのはこなたです! GJ!! -- kk (2009-08-08 00 59 14) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)