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「こなた~」 「やふ~♪ かがみん、どうしたの?」 「途中まで帰りましょう?」 「うぃうぃ~♪」 「………………手を繋いで」 「了解~……ぃえ゛あぁぁあ?!」 「ダメ?」 「ダメ、ぢゃ、ない、デス」 「じゃあ、行くわよ」 「う、ううううんっ!」 「……………………」 「……………………(これなんて羞恥プレイですかかがみ様……)」 「………………こなた」 「ひゃい!?」 「腕、組もっか?」 「ふえぇええええ!?」 「ダメ?」 「ダメじゃないよ?!」 「良かった……」 「(さっきから上目遣いとか、反則すぐる……って、かがみん、胸! 胸当たってる!)」 「こなた……」 「コンドハナンデスカ!?」 「好きよ、こなた」 「…………アハ☆(脳内パンク)」 「愛してるの……もちろん恋愛感情で」 「落ち着け! 落ち着いて素数を数えるんだ! 1、2、3、4、5……」 「真面目に聞いてよ!」 「う、あ……」 「こなたは私の事どう思う? 女の子同士だし、やっぱり私おかしいかな?」 「……そんな事ないよ!」 「え?」 「かがみんは料理下手だし暴力的だしツンデレだし!」 「う、うん……」 「だけど、本当は凄く優しいし、美人だし、ツインテール可愛いし! そういうところも全部含めて、私はそんなかがみんが大好きだよ!」 「こなた……」 「かがみん……」 「こなた!」 「かがみん!」 「(つかささん……)」 「(どうしたの、ゆきちゃん?)」 「(どうしたの、ではありませんよ! このままでは本当にカップル成立してしまいますよ!)」 「(だって二人共幸せそうだし、今更『ドッキリ大成功』なんてプラカード持っていけないよ~)」 「(まさか、かがみさんが本気で泉さん狙いだったなんて……)」 「(ゆきちゃん、ゆきちゃん)」 「(何ですかつかささん。 私達は新たに作戦を……)」 チュッ 「(~~~~ッ!?)」 「(私はゆきちゃん狙いだよ?)」 (あれ? 何で天使がこんなところに居るんですか?) 「?」 「(つかささん、今から予定が空いていたら、夜景の綺麗なホテルで桐タンスの今後について語りませんか)」 「(バルサミコ酢の事も話していい?)」 「(もちのろんです。 二人で朝まで創○のアク○リオンです)」 「こなこな♪」 「私の嫁♪」 コメントフォーム 名前 コメント GJ!!笑 -- 名無しさん (2023-05-15 17 55 23) どうしてこうなった…(笑) -- 名無しさん (2017-04-04 23 44 10) これがいい道ですね〜♪ -- かがみんラブ (2012-09-15 21 43 49) どうしたの かがみ? -- 名無しさん (2010-06-15 16 32 35) 和むvV四人が幸せそうでなにより -- 小谷 (2010-01-17 20 00 45) やっぱり、こな×かがは明るくラブラブじゃなぃと☆ つか×ゆきにも和みました(笑) -- 名無しさん (2009-11-13 19 08 23) つかさ×みゆき… 是非とも作ってもらいたいですね -- 名無しさん (2009-05-02 03 03 37) こういうお話が大好きです。作者殿GJです!! -- 名無しさん (2008-09-07 08 00 49) おおおおおう、こ れ は い い w -- 名無しさん (2008-09-05 19 23 58) 素数じゃねえwww -- 名無しさん (2008-09-05 06 11 37)
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「それでですね……」 「ああ、そうするわ」 「お姉ちゃん、大丈夫なの?」 帰り道、何故かかがみとつかさとみゆきさんは、私に隠れてこそこそ話している。 何の話だろう。気になる。 その間、私は三人の後ろを独りで歩いていた。 無理矢理話に参加したり、何の話をしてたか聞こうか。でも、さすがにそれは強引過ぎるかな。 みんなにもプライバシーとかがあるし。 でも、今日こんなことがあると、疎外感で少し悲しくなる。 明日は五月二十八日。私の誕生日。 ちょうど土日と重なったし、かがみたちとどっかに遊びに行きたい。そう思ってる。 話が一段落したようなので、さりげなくかがみに聞いてみた。 「ねえ、かがみ。明日どこかに遊びに行かない?」 「こなた、急いでるからまた今度にしてくれる?」 「え、かがみ……」 かがみは走り去ってしまった。 何でだろう。話しかけただけなのに。そこまでツンデレだったっけ? 「つかさ。かがみ何かあったの?」 「え、な、なんでもないよ。じゃ、私も急いでるから、またね、こなちゃん」 つかさもかがみの後を追うように走って行った。 なんだか避けられてるような気がする。 みんな、明日が私の誕生日だってこと忘れてるのかな? それとも……。 いつの間にか、私とみゆきさんだけになっていた。 「みゆきさん、明日何の日か知ってる?」 ほんの小さな不安に駆られて、思わず聞いてみた。 本当は、本人がこういうのを言うべきじゃないんだろうけど、確かめずに入られなかった。 「明日ですか? 日本海海戦が開戦した日でもありませんし、何かありましたっけ?」 「え……」 「あの、私も少し用事がありますので、失礼します」 みゆきさんも小走りで去っていく。 そして誰もいなくなった……か。 「みんな忘れっぽいなあ。何とか気づかせてあげないとね」 でも、忘れてるだけなら分かるけど、どうして皆いなくなっちゃったんだろう。 急いでるとか用事があるとか、典型的な言い訳のネタだ。 私の知らないところで、何してるんだろ。 不意にお腹の辺りが冷たくなってきた。この気持ちは何なんだろう。 怖いのかな。不安なのかな。分からないや。 家に帰ってから、かがみに電話してみた。 不安を消したくて、たまらなかった。 きっと、かがみも普通に話してくれるよ。さっきは本当に用事があって忙しかっただけ。そうに違いない。 「もしもし、かがみ?」 「こなた? ちょっと今手が離せないの。ごめんなさい」 「あ、まっ……」 ツー、ツー、ツー 布団に入った。 明日誕生日なのに、全然嬉しくなかった。 みんなに避けられてる。 つかさにも、みゆきさんにも、かがみにも。 何がなんだか分からなかった。知らないうちに、何か気に障るようなことをしてしまったのだろうか。 でも、三人はそれくらいで私を避けたりしない。勘だけど、自信を持って言える。 もう訳が分かんないよ……。 ツー、ツー、ツー 頭の中で無機質な電子音が駆け回っている。 朝が来た。 今までで一番悲しい誕生日。自分でケーキでも買ってささやかに祝おうかな。 もう少し寝ておこうか。目が覚めたら明日になってくれるかもしれないし。 でも、これ以上はどうしても寝れなかった。 仕方なく目を開けて、立ち上がる。 パンッ! パンッ! パンッ! 「わっ!」 目が完全に覚めるほどの破裂音。 何? 戦争で始まったのかな? 上から何かが大量に降ってきた。手にかかったそれを見ると、紙テープだった。 「ハッピーバースデー」 その後は何を言ってるか聞き取れなかった。 でも、振り向くと、ベッドの横に。 かがみとつかさとみゆきさんがいた。 どうなってるんだろう。私は避けられてたはずなのに。 「誕生日おめでとう」 「びっくりさせようと思って秘密にしといたの、ごめんね、こなちゃん」 これは、現実かな。夢だったりしないかな。 みんな、私を避けてたわけじゃなかったんだ。私を驚かせようとしてただけだったんだ。 良かったぁ。本当に、良かった……。 「このケーキ、かがみさんが一人で作ったんですよ」 「どうしても自分だけで作りたいって言うからね」 「ちょ、二人とも、そんなこと言わないでよ」 「ほら、お姉ちゃん。早く渡して」 「わ、分かってるわよ。はい、こなた。ケーキよ」 目が熱くなってきた。緩まないように、ぐっとこらえる。 でも、我慢するのは無理だった。すぐに弾けた。 滲んで、何も見えないや。 かがみ、つかさ、みゆきさん、ありがとう。本当に、ありがとう。 「ど、どうしたのよこなた。いきなり泣き出して」 「ううん。なんでもないよ。ただ、みんな粋な計らいをするなぁって。それで嬉しくなって……。ありがとう、みんな」 目を擦って、笑みを作る。 起き上がって、ベッドに腰を下ろした。 いつの間にか、用意されていたテーブルに、かがみがラッピングされた箱を置く。 リボンがついた、まさにプレゼントといった箱だ。 「泉さん、あけてください」 「うん」 リボンをほどいて、箱を開ける。 生クリームのケーキが出てきた。 でもそれは、ケーキではあるのだが、なんと言うか、見てくれが悪い。 「何か……変な形だね」 「悪かったわね。変な形で。これでも頑張った方なのよ」 「まあまあ、お姉ちゃん。それより、ろうそく立てよう」 ケーキに十八本のろうそくが刺さっていく。それにみゆきさんが火をつけていく。 私はそれをぼんやりと見つめていた。 十八の明かりが、カーテンで薄暗い部屋に浮かび上がった。 「こなちゃん、一息で消してね」 「任せてよ」 大きく息を吸い込む。思いっきり吐き出す。 一気に炎は消えていった。 拍手の音が生まれる。 それから、つかさがナイフでケーキを四等分にして、お皿に乗せた。 「じゃあ、朝からで変な感じだけど、食べよう。いただきます」 その言葉に、私はフォークでケーキを口に運んだ。 「変な形で、変な味になっちゃったけど……」 これは、甘すぎるような……。でも、今はこれくらいがちょうどいいかな。 それに、味なんて関係ないよ。おいしくないわけがない。 何しろあのかがみが作ってくれたんだから。料理が苦手なのに、一人で頑張って。私の為に。 「こんなおいしいケーキは、初めてだよ」 コメントフォーム 名前 コメント GJ! -- 名無しさん (2022-12-15 08 57 54) いい話だなぁ。。 -- 名無し (2021-08-01 23 41 55) わらしにも!わらしにも一口! -- ぷにゃねこ (2013-02-07 19 10 42)
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『梅雨の夜』 暦の上で梅雨に入り、土砂降りの雨が私たちに降り注ぐ。 しかも突風のせいで傘が壊れ、ずぶ濡れで帰る羽目になった。 「何なんだよもう…降水確率30パーセントって言うから安心してたのに」 天気予報に不満を言う私。 「いや、0パーセントじゃないってことは、降るかも知れないってことだよ」 冷静に突っ込むこなた。 「…それはそうだけど、ここまで酷い天気になるなら、先に言って欲しいわ」 最終バスを逃してしまい、駅まで歩くことになった私たち。 教室でテスト勉強していたら、いつの間にか下校時間をとっくに過ぎてしまい、外は真っ暗になっていた。 見回りの先生には怒られるし、本当に最悪の一日だ。 「あーあ、テスト勉強、真面目に頑張ってるのになぁ…ちょっとくらい、いい事あってもいいんじゃないかしら」 「かがみん、世の中そんなに甘くないんだよ」 「…あんたに言われると無性に腹が立つ」 そうは言っても、この暗い夜道を一緒に歩いてくれる友達がいるのは心強い。 この辺にはコンビニもないので、一人っきりだったら、どれほど怖い思いをしていただろう。 「それにしても、駅までこんなに遠かったかしら?バスだと結構早いのに…」 「いつも中でしゃべってるから、早く感じるんじゃないの?」 「あぁ…そうかもね…」 しばらく歩くと、物置のような建物が見えてきた。農機具か何かを保管しているのだろう。 「ちょっと、あそこで雨宿りしない?」 「そだねー」 私たちは駆け足で軒下までたどり着いた。 「ここなら、しばらくはしのげそうね…」 「でも、いつまでもこうしちゃいられないね…」 こなたがポケットから携帯を取り出した。 「ちょっとうちに電話してみる」 「え、迎えに来てもらうの?」 「今日、ゆい姉さんが来てるかも知れない」 しばらく呼び出し音が聞こえた後、おじさんの声が聞こえてきた。 「あ、お父さん?私だけど…うん、今帰る途中でさ……うん、最終バス逃しちゃってさ……姉さん来てるの? ……あ、そうなんだ。じゃあ、お願いしてもいいかな?場所はね…」 パタン、と携帯を閉じた。 「大丈夫だよ。迎えに来てくれるってさ」 「なんか、悪いわね…気を遣わせちゃって」 「いいのいいの、今日はいっぱい勉強教えてもらったし」 こなたが笑う。 「今度の試験で赤点取ったら、追試だって言われてるし…」 「確かにそれは嫌ね…」 こなたは暗記が得意なのか、世界史の成績はいつも上位だが、他の科目はパッとしないのだ。 特に英語や理系の科目は、一夜漬けでどうにかなるものじゃない。 「あぁ…こんな事なら、一年のときからもうちょっと真面目にやっとけばよかったなぁ…」 「お、珍しく弱気じゃない」 「だってさ、追試でアニメやゲームの時間がさらに削られたら…私は禁断症状で苦しみぬくんだよ…」 「大げさなんだから…別に死ぬわけじゃないのに」 「いや、私にとっては栄養と一緒なんだよ。アニメやゲームのない暗黒世界に生きられるわけないんだよ」 「はいはい、じゃあ明日も頑張ろう。それから好きなだけ楽しめばいいわ」 「うぅ…ありがと。かがみん」 こなたが私に抱きついてきた。 「むにゃー…やわらかい…」 「こ、こら…変な事言うんじゃない」 「かがみぃ、寒いよー、しばらくこのままでいたーい」 「ちょ…誰かに見られたらどうするの?」 「風邪引いちゃうよ~~…」 「わ…わかったわよ」 「ねぇ…かがみ」 「ん?」 「ホント…いつもありがとう…感謝してる」 「どうしたのよ、いきなり…」 「私さ…かがみがいなかったら、途中で投げ出してたと思う…」 「え?」 「自分の勉強もやってるのに、私のために昔の教科書一つ一つチェックしてくれてさ、 わかりやすく教えてくれるのって、かがみだけだよ」 「でも、みゆきだって聞けば教えてくれるでしょ?」 「…そうだけどね…なんか、かがみのほうが気軽に聞けるって言うか…」 「それって、私はみゆきより下に見られてるってこと?」 ちょっと意地悪な質問をしてみた。 「違う…そうじゃない」 こなたが急に真顔になった。 「……かがみと一緒にいると、なんか気持ちが落ち着くって言うか… うまく言えないんだけど、他の友達には無いものがあるんだよ」 「え…?」 「かがみと一緒にいたいんだ…」 まっすぐに私を見つめて、こなたが言った。 「そ…そっか、頼りにされるのも悪くないわね…」 なぜだろう…心臓の動きが早くなっている。 (何なんだ一体…こなたってこんなこと言う奴だったか?) 「かがみん…」 「な…何?」 「今日は水色ですか…ふむ…」 「ば…ばかっ!恥ずかしいから見るな!!!」 下着が透けて見えていることに今更気づいた。 「いやぁ、かがみんって細いのに出てるところはしっかり出てるよね」 「品の無い事言うな!お前はスケベオヤジか!」 「女に生まれてよかったなぁ、こうしてかがみとイチャイチャ出来るし」 「う…うるさいっ、…こら、そんなとこ触るな!」 「あー…赤くなってるかがみんもかわいい~~」 こなたはやっぱりこなただ。 いつも明るい雰囲気を作ってくれるから、大変な勉強も乗り越えられそうだ。 「あぁ~、二の腕の感触…たまりませんなぁ…」 「だからやめろって言ってるだろ!」 「嫌がる顔もかわいいのぉ…むふふふふふ…」 「何なんだよもぉーーー!!!」 ただ、今は早く迎えが来てほしい。 こなた責めはそろそろ勘弁してほしいのだが。 (終) コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-02-18 07 43 12) 最後のツンデレ最高ッス!ニヤニヤが止まらないッス!! -- 名無しさん (2011-05-15 02 58 17)
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修学旅行も終わり残す行事といえば学園祭だけであろう・・・ その学園祭が終わったら私たちは受験に向けて勉強漬けの日々を過ごさなければならない。 そして、今は学園祭開催まで一週間をきろうとしていた。 パティーが急に提案したチアダンスも未完成ではあるが形になってきておりまだ確信はないが間に合うはずだ。 「相変わらず柊の練習はハードだってヴァよ~休憩ほとんどなしでここまでやるんだもんなぁ~」 「お姉ちゃん~もうくたくただよ~;;」 「わたしももうくたくたデ~ス、チアダンスはやっぱ疲れるネ~」 「せ、先輩・・・筋肉痛で動けないっす・・・」 「柊ちゃん、みんな動けないみたいよ」 時計を見てみる、もう七時半か。 みんなとても疲れている様子だし時間的にもさすがにこれ以上続けるのは無理であろう。 「そっか、練習はじめたのはたしか四時からだったもんね。 みんなよくがんばったわね、今日はこのくらいにしてあがるか」 「そうですね、かがみさん今日もコーチしていただき誠にありがとうございます」 「いやいや、私だってまだ完璧にできるわけじゃないしお礼なんていらないわよ。 それよりみなみちゃん、ゆたかちゃんは大丈夫?」 「大丈夫・・・よく眠ってる・・・」 「よかった、ゆたかちゃんが起きたら無理だけはしないでって言っておいてね、 ただでさえ体も弱いんだし」 「ん・・・?」 「ゆたか・・・大丈夫・・・?」 「岩崎さん・・・ごめんね私また寝てたんだね・・・」 「ゆたか・・・無理しないで・・・」 「岩崎さん・・・」 「うお!ここでいきなり百合っすか!!!」 ひよりが急に元気を取り戻したようだ。 「かがみ先輩・・・いつも休んですいません、みんなにも迷惑かけてますし・・・」 「気にしないで大丈夫よ、まだ時間あるんだし無理して体壊したりしたら大変だし、ゆっくり自分のペースで練習しましょ! とりあえず、ゆたかちゃんも起きたことだし帰ろうか」 みんな帰る準備をして一斉に教室から出ていく 「はぁ・・・」 「どうしたの?お姉ちゃん?ため息なんかついて」 「え?いや、なんでもないの・・・」 なんでだろう、今日もこなたがいないだけですごく寂しい・・・ 最近、こなたは何か用事があると言ってチアダンスの練習もすぐ途中で抜けてしまう・・・ こなた本人に何の用事か聞いても教えてくれない・・・ 「ねぇ、パティー、こなたは何の用事でいつもいなくなるのか知らない?」 「オ~ゥそれは禁則事項ネ~特にかがみにわネ~」 「え?どういうことよ??」 「時が来たらわかりますヨ~」 「・・・」 「じゃワタシはこの辺デ~つかさかがみまた明日デ~ス」 「あ・・・うん、また明日ね」 「じゃあねパティーちゃん!」 いつからだっただろう・・・こなたの事ばかり考えるようになったのは・・・ 気がついたらいつもこなたは傍にいて・・・いつも私のことをからかってくる・・・ どんな時も猫口に笑顔で・・・ 「か~がみ~ん♪ナデナデ」 こなたが後ろから頭を撫でてくる 「ちょ!!おま!は、恥ずかしいから・・・や、やめろ!!///」 「またそんなにデレちゃってぇ~♪デレるかがみ萌え~♪」 「う!うるさい!!!///」 何気ないそんな時間がいつも幸せに感じた・・・ 私とこなたは親友である・・・でも最近それ以上のものを感じるようになった・・・ それ以上?・・・ってことは好き・・・なのかな・・・? でも、女同士だ!もしかしたら、何かの気の迷いのせいかもしれない・・・ 最近はこの事ばかり考え勉強も手付かずになるくらい悪化している・・・ わからない・・・・・・この気持ちはいったいなんなんだろうか・・・ こなた・・・あんたは今どこでなにしてるの? あんたは私のことどう思ってるの? なんで私を寂しくさせるのよ・・・・・・ ばか・・・・・・ 「お姉ちゃん!!!大丈夫!?」 「え?あぁごめんごめん大丈夫よ」 気がついたらすでに学校から出てつかさと二人で家へ向かっている途中だった。 「さっきからどうしたの?ずっと考え込んだまま歩いて、私でよかったら相談に乗るよ」 つかさは本当に優しい子だ、でも、ここで甘えてはいけないと思う・・・ このことは自分自身の問題でありつかさに迷惑をかけてはいけないし、 それにこれは自分にしかわからないことだから・・・ 「ありがとうつかさ、最近練習とかで忙しいし多分その疲れが出てきてるだけだと思うから・・・ だから、私は大丈夫だよ!」 私は笑顔でつかさに言う 「そっか、でも本当に無理はしないでね」 つかさも笑顔で返してくれた。 とりあえず、つかさに心配されているのだから早く解決してしまわないと・・・ そして私たちは普段どおり帰宅した ---------------- 「むぅぅぅここの楽譜難しいな~」 私はきたる日に備えて家でエレキギターの練習をしていた。 一ヶ月前くらいから練習しているのだがやはりそう簡単にできるものではないらしい、 もう一週間をきろうとしているのに、間に合うかどうか心配だ・・・ 「ううぅぅぅ指が痛い~くそぅ~動け私の指~」 私は苦悶の表情で弦を押さえる方の右手の指を素早く動かそうとする、 だが、中々指は言う事を聞いてはくれない・・・ また音が外れてしまった・・・ 「うぅぅぅぅ~くそぉ~もう一回だぁ」 私は真剣なまなざしで楽譜を見ながら再挑戦する・・・ そう、いつもだらけてる私がこんなに真剣になれるのは かがみのおかげなのである、 あの薄紫の髪のツインテールも・・・ キリっとしたツリ目に綺麗なラベンダー色に近い瞳も・・・ 普段はツンツンしてるけどその奥にある優しさも・・・ その全てが可愛らしくて愛しいくらいだ・・・ なぜ私はかがみのことを好きになったんだろう・・・ 昔は一番仲のいい友達で「同性趣味なんてない」なんて言い張ってたはずだった・・・ だけど・・・あのライブの日の出来事がきっかけで、私の、かがみに対する気持ちが変わった・・・ 「うぅ~くそ~見えない・・・」 前の席の人の身長が高くてステージが見えない。 「ほら」 かがみが肩をつかみ席を交換してくれる。 「え?かがみ・・・」 「そこならよく見えるでしょ?」 「でも・・・かがみが見えなくなっちゃうよ・・・」 「ライブ行きたいって言い出したのはあんたでしょ、その本人が一番いい所見逃してどうするのよ・・・」 かがみに優しい笑顔で言われて自分の顔がだんだん火照ってくるのがわかった・・・ 「・・・・・///」 正直、あの時のかがみの優しさは反則だと思った・・・ みゆきさんもつかさも気が付かなかったのにかがみだけが私に気が付いてくれた・・・ 本当にうれしかった・・・ その後からだんだん私の気持ちが芽生えてきて今にいたるのである。 「お!やったぁ~!!やっとここ弾けたよ!よ~し次々~♪」 一ヶ月かけてここまで頑張ってるのはおそらく高校入試以来だろう。 ギターの弦を押さえてる右手の指は常に包帯を巻いている、取って見てみるとわかるのだが 弦を押さえたり激しくこすったりするため皮膚はボロボロになっていて毎日ひりひりしてとても痛いのだ。 かがみに「あんたそれどうしたのよ!」と前に言われたことがあったが料理で火傷をしてしまっただけだと言ってごまかしている。 だって、本番までこれはお楽しみとして取っておきたかったから・・・ そして・・・私の思いを本番の日にちゃんと伝えようと思ったから・・・ 今回のバンドメンバーのみなみちゃんとパティーには事情を話してあるからばれることはないだろう、 あの二人はドラムとベースでしかも覚えが早かったため極力チアダンスの方に出てもらっている。 ライブの曲はあの出来事の日の曲を歌う。 かがみは私のためにほとんど見れなくなっちゃったからね・・・ 今度は私がかがみに恩返しをする番だ! 明日まで父は旅行で帰って来ないから今日はぶっ通し練習できる・・・ 「絶対にかがみを感動させてやるんだから・・・♪」 もう日も落ちチアダンスの練習も終わっただろうけど私の練習はまだ終わらない。 God knows...(中編)へ続く コメントフォーム 名前 コメント
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さてはて、いつまでも中編では流れに狂いが生じる。ここは敢えて後編と銘を打ち。合宿の最後を最終章、としたいと思う。 昨今の情報化社会、却って溢れかえっている情報のせいで、自分に何が必要で、何が必要でないのか混乱しそうになるが、或いは目標、というか到達地点が決まっている場合はそうでもない。 故に、その到達地点に向かう為に必要な情報は、常にチェックしておく必要がある。 例えば、 「みなみさん、以前小早川さんとお泊り会をしたことがありましたよね?」 今のみゆきのように。 「はい。それが……何か?」 みゆきの問いに微かに首をかしげながら、みなみは答えた。 「いえ、些細なことなのですが、その時一緒にお風呂に入りましたか?」 続けられた問いに、みなみはギョッ、或いはギクッと言った擬音が聞こえるほど動揺し、 「は、入りましたけど……そ、その、わ、ワワワ忘れ……私達は、何もしていませんよ」 「あ、いえ、その時、背中を洗いっこ……何てことはしなかったのですか?と聞きたかったのですが」 予想だにせぬ戸惑いに、みゆきは訝りながら、問いの核心を突いてみた。みなみは傍目にも分かるようホゥッと息を吐くと、 「はい。やりましたよ。ゆたか……可愛かったです」 と、超個人的な感想を加えて返してくれた。どこが可愛かった、とは聞かない。今は必要の無い情報だから。残念。 必要だったのは、一緒のお風呂、洗いっこという既成事実。みゆきは、そうですか、と答えて、この情報を記憶する。 さてもう一つ、情報化社会で生きぬくコツは、常にアンテナを高く持て。ということである。例えば周りの人の会話、聞いてみると案外面白いものだ。 「わ~、ゆたかちゃんの携帯の待ち受けって、みなみちゃんの写真なんだね」 「はぅっ!つ、つかさ先輩、見ないでくださいよぉ」 「ゆたかちゃん、みなみちゃんのこと本当に大好きなんだね」 つかさの言葉に、赤面し、今にも倒れそうなゆたか。慌ててみなみが支えて二人は抱き合う形となる。 成る程、人生とはどう転ぶか分からないものである。携帯、待ち受け。さて、必要になるかは分からないが、覚えておいて損は無い。 「あ、そうだゆきちゃん。お姉ちゃんとこなちゃん、呼んできてくれないかな?もうそろそろお風呂沸くから」 「はい、行ってきますね」 みゆきが先程かがみとこなたを見たのが凡そ一時間前。さてはて、今頃二人は何をしているやら。 (喧嘩……は先程の様子だとなさそうですね) 足取り軽く、でも慎重に、みゆきは二人がいる部屋へと向かった。 コンコン……と扉をノックする。一応、かがみとみゆきは相部屋なのだが、どんな時でも礼節を忘れない。 しかし、反応が無い。他の部屋、と言っても所詮別荘。数えるほどしかない上に、動く理由も無いだろう。外に出た気配も無し。 (はて?どうしたのでしょうか……) 若干の不安を覚えながら、開けますよ、と声をかけ、そうっと扉を開く。果たしてそこに、こなたとかがみはいた。 「まぁ……」 ただし、眠っていた。かがみがベットにもたれかかり、こなたはその膝を枕に、と言った状態で。スヤスヤと擬音ではなく本当に寝息を立てている二人が可愛らしい。 元々、互いの肩にもたれかかっていたのだろう。だが如何せん身長差がありすぎる。故に徐々にずれ込んで今の体勢に、と言った具合か。 やれやれ、とみゆきは息をつくと携帯を取り出した。こなれてきた操作をしつつ、思う。 (こんなに相思相愛なのに、本人達が気が付かないのが却って不思議なくらいです) 或いは、近すぎる故に気が付かないのかもしれないが。 とにかく、どちらかだけにでも早く自覚してもらいたい。 クルリと振り向くと、みゆきは二人を起こさないように慎重に部屋の外へでる。先程の失敗の事もある、ここは外陣要請をするべきかもしれない。 数回のコールの後、目的とする人物に繋がった。 「もしもし……」 ブーブー……と、どこかでバイブ音がする。それが自分の携帯から発せられているものだと気が付いたかがみは、薄く目を開け、まだ眠い頭を振って、通話ボタンを押す。 「もしもし?」 「あ、もしもし、柊?私、みさお」 誰? と一瞬思ったが、そこは長い付き合い(みさお談)薄ぼんやりと輪郭が浮かんできた。特徴的な八重歯、舌ったらずな口調。日下部みさおだ。 「あ~、日下部?何か用?」 まだ眠い、余程リラックスしていたんだな、と思いつつ、旧友に用件を尋ねる。どうせロクなことじゃないとは見当がついているが。 「あ~、もしかしたらそこに‘ウチ’のちびっ子がいねぇかと思って」 「こなたぁ?」 ちら、と膝元を見ると、いた。自分の膝を枕に寝ている。ぼんやりとした頭ではそれが何を意味するかは分からない。ただ、寝顔が可愛いなと思ったくらいだ。 「そうなんだよ。ウチのちびっ子に何回かけてもつながらないし、柊ならウチのちびっ子といつも一緒にいるじゃん?だからいるかと思って」 「あ、そう……」 会話を続けると段々頭がハッキリとしてくる。ふと、そこでみさおの言葉にいつもと違うニュアンスが含まれていることに気がついた。 「ちょっと待て、‘ウチ’のちびっ子ってどういうこと?」 すると、みさおは得意そうに、 「いやぁ、いつもちびっ子と私で柊の取り合いすんじゃん?でも決着はつかないわけよ。そこで、私は考えたね。なら、ちびっ子を私のものにしてしまえば、自動的に柊も私のものになるじゃんってね。だから、今からちびっ子に愛の告白タイム!」 と、答えてくれた。はぁ、とかがみは思う。呆れた話だ。 「そんな馬鹿なこと言ってないで、センターの勉強、進んでるんでしょうね?」 やれやれ、とかがみは首を振った。だが、 「なぁ、柊……」 突然みさおの口調が変わった。いつものふざけた感じなど微塵もなく、ただ、シリアスに。 「な、何よ……」 つられて、かがみも口調を切り替える。何だ、この感じは? 「好きな奴に好きって言うのは、馬鹿なことなのか?」 「え……?」 「私は冗談じゃそんなこと言わないゼ。柊のことも好きだし、勿論、生意気だけどちびっ子のこともな」 「ど、どうしたのよ、急に」 いつもの日下部らしくない、真面目な内容。ゴクリ、とかがみの喉が鳴る。こなたを好き?日下部が? 「柊にとってちびっ子ってなんなんだよ!?どうでもいい奴だって言うんなら、本当に私が貰っちゃうぞ!」 その言葉に、かがみの思考は停止する。どうでもいい?そんなわけ無い、感情が訴える。理性は常識を持って反論する。 「何言ってるのよ!女同士よ!ありえないじゃない!!」 「私が言ってるのは好きか嫌いか!それこそ今は関係ないだろ!」 好きか、嫌いか……先程、かがみは罰ゲームとは言え、こう言った。 ――大好きっ!! と。なら、答えは? 「……好き、よ。こなたのことは」 その言葉に、みさおは満足したように、 「ん~、じゃあライバルだな。どっちがちびっ子の親友ポジションに立てるか、勝負だ!柊!」 と言って、電話を切った。 親友ポジション? 「は?アレ?」 理性も常識を保ってなかったか、とかがみは思う。普通はそうじゃないか。 なんで、あんな受け答えをしたのだろう。いや、それより……。 かがみは、こなたを見る。スヤスヤ言ってるその顔を眺め。その小さな体を抱きしめる。 嫌だ、と思った。こなたが、誰かに取られるのが。何で?親友だから?感情の整理がつかない。抱きしめる手に力が篭る。 流石に、んみゅう、とこなたが目を覚ました。 「あ、あれ?かがみ?どうしたの?」 「分かんないわよ……私にだって」 さて、扉の向こう。少しだけ扉を開けてその様子を見守っていたみゆきは電話の相手――峰岸あやのに礼を言う。 「本当に、ありがとうございました。日下部さんも大変演技派で……はぁ、日下部さん、本気、ですか?」 「うん、みさちゃん。やるぞーって、待ってろ、ちびっ子って言ってる」 「そうですか……頑張ってくださいとお伝えくださいね」 苦笑しながら電話を切った。ある程度の事情を話して協力してもらっているみさおとあやのは心強い味方だ。かがみとの付き合いはみゆきより長いのだから。 今のは、みゆきが考えた大まかな流れをあやのに伝え、みさおが電話する。ちょっと過激なモーニングコール……のはずだったのだが。 「まぁ、大丈夫、でしょうね?」 少し自信の無い、みゆきだった。 「な、なんと、聞いてくれたまへ~!この別荘、一度に6人は入れるくらいお風呂がでかいんだよ~!」 さて、こう叫んだのはゆい。自室で寝ていたところを叩き起こされ、お風呂沸かしをしていたのだが、そのあまりの大きさに叫ばずにはいられなかったようだ。 でも、6人。現在この別荘にいる人間は7人。 「じゃあ、姉さん後で一人で入って」 と、こなた。 「ゴメンね~、お姉ちゃん。私、みなみちゃんとどうしても一緒に入りたいから」 「私も、ゆたかと一緒がいいので……すみません」 と、一年生コンビ。 「おっきなお風呂って海以来だよね」 「そうね~、あの時はあの時で色々大変だったわ」 「そうですね。ですが、今となっては良い思い出です」 他、3名。 「あ、あの~、もしもし?3:4に分けるとかそういう発想は無し?」 「ないです。じゃあ、姉さん後よろしく~」 そう言って6人は思い思いに話をしながらお風呂場へと向かっていった。 「ちょ……あんまりじゃない?」 その時、携帯に着信アリ。メールだ。送信者・黒井ななこ。件名・無題。内容『お互い、独りモンは辛いな~。同士よ!!』 「だから私人妻ですってば~!きよたかさ~ん!!」 さて、皆さんは空気というものをご存知だろうか?酸素、二酸化炭素、窒素等から構成されるアレではなく。所謂雰囲気、と言うものだ。 雰囲気というものは恐ろしいもので、一度流されてしまうと思ってもみなかった行動をしてしまう。 カポーン、と擬音が聞こえてきそうな大浴場、いや、もうこれは温泉というレベルに到達していると言っても過言ではないだろう。 とは言え流石に6人で入ると少々手狭、自然、密着した陣形を取る事になる。 「はぁ~、極楽極楽」 とはこなたの弁。彼女の頭にはタオルも載っており、もう完全にリラッコナ。 「そうね、今回ばかりはあんたに同意するわ」 かがみも、ほぅと息をついてこなたの言葉に頷く。ちなみに2人は隣同士に湯船に浸かっている。以前一緒に風呂に入った仲、なに、恥ずかしがることは無いさと気楽なものだ。 とは言え2人には、少し熱いように感じる。何故だろう、さあ何故だろう? ところで、冒頭、みゆきがお風呂についての話をしたのを覚えていらっしゃるだろうか?洗いっこがどうのというアレだ。さて、 「そういえば、以前、海に行った時は背中の洗いっこをしませんでしたね。どうです、つかささん、やりませんか?」 「あ、いいね~。やろうやろう」 そう言って湯船から上がる2人。この流れなら既成事実を持ってる2人も、 「ゆたか、私たちも……」 「うん、行こう、みなみちゃん」 湯船から上がる。残されたのはこなたとかがみ。もうお分かりだろう。雰囲気。皆がやるなら私たちもやらなくちゃいけないんじゃない?という集団心理。そして、これに流されやすいのは、かがみ。 「えと、こなた?」 「んぅ?」 人が抜けて広くなった湯船に肩まで浸かりながら、聞き返すこなた。身長が低い分、かがみからはちょっと見下ろす形。 「わ、私たちもよかったら……その、やらない?」 「な、なにをぉ!?」 ブハッっと湯が飛んできた。こなたが何でそんなに驚くのか、一瞬考え‘やらない’の一言に行き着く。 「洗いっこよ、洗いっこ!何考えてるのよ、全く」 普段、空気嫁なんて平然と言うくせに、こういうときだけは鈍いヤツだ。こなたは肩で息をしながら、 「そ、そだよね~……ビックラこいた」 そう言って、2人も湯船から上がり桶を持つ。こなたが座り、かがみが後ろに立った。 「じゃあ、背中から流すわよ」 少し、緊張する。スキンシップはあっても、地肌に触れるというところまでは中々行かない。 かがみは慎重に、且つ丁寧にこなたの背中を洗い始めた。先程のみさおとの会話も功を奏しているのか、こなたに構いたい、と無意識で感じているようだ。 「つかささんのお肌、綺麗ですね」 「えへへ、ゆきちゃんに言われるとなんか照れちゃうな」 さて、雰囲気、雰囲気。 「ゆたか、この前は、ゴメン。その……初めて、だったから」 「ううん、私こそ、ゴメンね。ああいうの、慣れて、なかったから」 雰囲気良好。ところで、2人の会話は、一緒にお風呂に入るのが初めてだった、と言う意味ですよ? 周りが何か話している、と、かがみの頭もパニックになる。何か話さなくちゃ、なにか話さなくちゃ。 「こ、ここここここなたって、えーと、ちっちゃい、よね」 ピク、とこなたの肩が動いた。 「うぅ、さり気に気にしてる事を。でもいいもん、ステータス、希少価値だもん」 唇を尖らせる。かがみは、そんな所も含めて、改めて、意識がハッキリしながら、思った。 「そ、そうじゃなくて……可愛いなって」 ハッとこなたの体が強張った。少し、肌の色に赤みが増したような気もする。 「な、何か言いなさいよ!こっちが恥ずかしいでしょ」 いたたまれなくなり、こなたに回答を促すかがみ。早く、早く……ドキドキする。 「萌えた、じゃダメ?」 上目遣いにそっと、呟いた。空気が霞んで見える、湯気のせい?それとも? さて、いい雰囲気。みゆきは少し口元を歪めて、微笑みを作る。 「つかささん、お鼻に石鹸の泡がついてますよ。取りますから、じっとしててくださいね」 「あ、ありがと~。なんかドキドキするね」 「そうですね~」 この流れ、次に来るのは、 「ゆたか、唇に石鹸の泡が……じっとして、今取るから」 「み、みなみちゃん……私も、みなみちゃんに取って、欲しい、な」 「ゆたか、目を閉じて。泡が入る」 「うん」 つと、近づきあう2人。そんな様子を見せられては、空気に流されやすいかがみも、黙ってはいられない。何か言わなくちゃ、なにか言わなくちゃ。 「ここここここここ」 「何言ってんの、かがみん」 「こなたの、ア、アホ毛にシャンプーが!今、取るから動かないでっ!!」 「え、シャンプーならいいって。あぁっ!」 スポン、とかがみに包まれる形となったこなた。素肌、密着、伝わる体温……隠された気持ち。 「「うきゃぁぁぁぁぁぁ!!!」」 「ねえ、ゆきちゃん。お姉ちゃんとこなちゃん、楽しそうだね」 「はい、楽しそうで、何よりです」 にっこりと微笑むみゆきは、誰よりも満足そうだった。 ちなみにこなたかがみ、ついでにみなみゆたかがのぼせたのは言うまでも無いだろう。 1月12日・最終章~そして詰め将棋へ~へ続く コメントフォーム 名前 コメント
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私は卑怯者だ。 私は誰も幸せに出来ない。 自らの想いを伝える勇気も無く、好きな人の純情を踏みにじり、懺悔もせずに逃げ出した。 それでも、自分にとって都合の良い日常を保とうとして、必死に立ち振る舞って――大切な友達の事まで傷つけてしまった。 私は、一体何の為に生まれてきたのだろう? 卑怯者の私に、一体何が出来るというのだろう――? 「ふとしたことで~救済~」 日に日にクリスマスムードが高まっていく中で、私にとって悪夢以外の何者でも無かった二学期は、本日の三者面談と、22日の終業式を以ってようやく終わりを告げる。 「――まぁ、泉の話に関してはそんなところです。あ、あと、冬休みはあっという間に終わるんで、徹夜でネトゲとかし過ぎて生活のリズムが狂い過ぎんよう、ご家庭の方でも指導の方よろしくお願いします」 「分かりました。こなたにもそう言い聞かせておきます」 その三者面談も、私の成績の話と偏った生活習慣に対する指摘を経て、最後のまとめに入ろうとしていた。 「…泉も、今日はあんまり喋ってないけど、特に言う事は無いんか?」 「あ、はい、大丈夫です」 「そうか。それならええけど…。じゃあ、これで終わりです」 黒井先生に軽く頭を下げるお父さんに合わせて、私も軽く会釈をして椅子から立ち上がる。 こんな強制イベントは早く終わらせて、一刻も早く冬休みを――かがみの影に怯えるような自分自身の情けなさから逃避する事の出来る冬休みを迎えたい。 それが今の私の率直な気持ちだった。 「あっ、せや、アレを言うのを忘れとった」 唐突に先生が何かを思い出したかのように、手をポンと叩いた。 「まだ、こなたの事でなにか…?」 「いや、別に大した事やないんですけど、ここ最近、泉と柊姉の方が顔を合わせてるとこを見てないなぁ~思いまして」 一番聞かれたくなかった話題が飛び出てきて、私は思わずその場で固まってしまった。 「そういえば、家でも最近かがみちゃんの話は聞いてないなぁ…。まぁ、その事はまた家の方で話をしておきます」 お父さんがそう答えた後、ようやく面談は終わった。 先生も最後の最後で余計な課題を押し付けて来なくても良かったのに…。 「…かがみちゃんと喧嘩でもしたのか?」 帰りの車内、タイミングを見計らったかのようにお父さんがその話を切り出してきた。 「別にそんなんじゃ無いよ……」 窓の外で流れる、曇り空で澱んだ街並みを眺めながら、私はポツリと言葉を零す。 お父さんには、未だにかがみの事は何も話せずにいた。 お母さんが居ない私にとって、お父さんは家族と呼べる唯一の存在だ。 もしも、私が同性の親友に対して不埒な行為をし、あまつさえ私がその娘の事を好いているとお父さんが知ってしまったら――。考えただけでもゾッとする。 だから、もうその事に関してはそっとしておいて欲しい…。 「家での会話の内容を遡ったら、もう一ヶ月以上になるな…。どっちにせよ、早く仲直りした方が良いんじゃないか? かがみちゃんも、こんな状態は望んでないと思うけどなぁ…」 「……」 でも、そんな願いも空しく、その話題はお父さん主導でどんどん話が進められていく。 お父さんは、何も知らないくせに…。 そんな私のどす黒い感情が、心の奥深くから蠢き出す。 「なぁ、こな――」 「お父さんには関係無いじゃん」 私がそう発した瞬間、車の中の空気が凍り付くのが分かった。 言ってから、しまったと思った。 恐らく、車を運転するお父さんの穏やかな表情も、瞬間凍結されたような状態になってるんだろう。 だけど…、私は振り向いてそれを確認する事も出来ず、ずっと窓の外を見つめ続けていた。 どうして私はこんなにも人を傷つけてしまうのだろう……。 そこから家に着くまでの間、車内には鈍いエンジン音と、カーステレオから流れる場違いなアニメ主題歌だけが延々と鳴り続けていた。 § 「先日、かがみさんとつかささんが喧嘩をしました。…そして、今の時点でもまだ仲直り出来ないでいるそうです」 数日前。みゆきさんに呼び出され、糟日部駅近くのあのカフェにやって来た私は、そう話を切り出された。 「…へぇ、そうなんだ」 まさか、私が原因で、とかじゃないよね…? そんな不安を顔には出さず、あくまでも私は平静を装う。 「その喧嘩の原因なんですが…。どうやら、つかささんがこなたさんとかがみさんの仲を取り持とうと持ちかけた時に起こったそうなんです」 「そう…なんだ…」 ああ、やっぱりそういう展開になってるのか…。 悪い予感が当たってしまい、私は歯切れ悪く返事をする事で精一杯だった。 そんな様子の私を前にして、みゆきさんは更に話を続ける。 「実は、今回の問題が起きた時、私もつかささんも、ここまで事が長引くとは思っていませんでした。ある程度すればお二人が自発的に和解するだろうと考えていましたので…。私もつかささんも、無理に仲裁せずに経過を見守ろうという事で見解を一致させていました。ですが、1ヶ月近く経っても、お二人の関係に何の進展も無い事につかささんが痺れを切らして、その話をかがみさんに持ちかけた……というのが全ての真相です」 「……」 それを聞いて、私は自分自身の認識の甘さを恥じずにはいられなかった。 ほんの少し前まで、私はかがみのいない日常でも、私が何もしなければ問題は無いんだと思い込んでいた。 でも、その仮初めの日常も、つかさとみゆきさんが常に気配りをする事でようやく保つ事が出来ていたに過ぎなかったのだ……。 「こなたさん」 そして、打ちひしがれる私に更に追い討ちを掛けるかのように、みゆきさんが私の顔を見据えながら、私の名前を呼ぶ。 「友達として、敢えて言わせて頂きます。……かがみさんと会って下さい。会って、話し合いをして下さい。私もつかささんも、今のお二人の不安定な関係を見続けるのはもう辛いんです…」 その目尻に涙すらも漂わせて、みゆきさんが私に懇願している。 それでも、私は自分の首を縦に振る事が出来ない。 「…ごめん、みゆきさん。今の私には、かがみと今までのような関係に戻れる自信が無いんだよ…。もう、かがみの事を“ただの友達”としては見られない。…だから、もう私はかがみと会わない方が――」 「それは違います」 想定していなかったみゆきさんからの反論に、私は思わずビクリと体を震わせた。 「こなたさんは自分を誤魔化して逃げてるだけです。かがみさんからも、ご自身の大切な気持ちからも。…そんなの、絶対に間違ってます…」 「……」 ……正論以外の何物でも無かった。 結局、私はどこまで言っても臆病な人間で、誰も傷つけたくないと言いながら、本当は自分の保身しか考えてない卑怯者で――。 「…少し、考えさせて」 だから、この前向きに見える発言も、実際はこの場から逃れる為の単なる出任せでしか無かったんだ…。 § 太陽が沈み、限りない闇の世界が窓を通り抜けて私の部屋を侵食する。 それでも私は、灯りの一つも付けないまま、部屋の片隅に蹲っていた。 蹲り、後悔の念にひたすら駆られていた。 どうして、私はかがみの事なんか好きになってしまったんだろう…。 好きにならなければ、誰も辛い思いをせずに済んだ筈なのに。 こんな感情、気付かなければずっと幸せのままでいられたのに…。 涙が止めとなく溢れくる。 いくら泣いたって、何も解決しないのに…。 コンコン。 突然のノック音。 取り繕う暇も無く、お父さんが部屋に入ってきた。 そして、私の様子を一目見て、思わず苦笑いの表情を見せた。 「何か辛い事や悲しい事があると、そうやって部屋の片隅で三角座りする所は、昔から変わってないな…」 そう言うと、電気を点け、動かないままの私の隣に座り込んだ。 そして、何も言わず、その大きな手で私の頭を優しく撫で続ける。 私がこういう状態になっている事に気付いた時、いつもお父さんはこうして私が“それ”を話し出すのをじっと待つのだ。 私が歳を重ねていくにつれて、そういう行為をする事も無くなっていったのだけれど、今でもこれは変わってないんだな……。 そう思うと、もう耐え切れなかった。 「…おとう…さん…」 「ん?」 「わたし……。かがみのことが……かがみのことが……」 言ってしまったら、もう後戻りは出来ないという恐怖が私を襲う。 「す…き」 その恐怖に打ち克ち、しゃくり上げながらようやくそれだけを伝えた。 「そうか…」 私のタブーな告白を聞いても、お父さんの穏やかな表情は曇る気配を見せなかった。 「…なぁ、こなた」 お父さんの顔と私の顔が真正面で向かい合う。 「…お父さんはな、こなたが幸せで居られるのなら、他はなんにもいらないんだ。自分の子供の不幸を願う親なんて誰も居ないし、そんな親が居たらそいつは親として失格だと思ってる。だから、もう一人で全てを抱え込もうとしないでおくれ。例え、世界中の人間がお前の敵に回ったとしても、俺だけは――いや、お父さんとお母さんはいつまでもお前の味方だ」 その言葉を聞いた瞬間、私の中で縛られていた全ての想いが解き放たれた。 「…う…うぐっ…」 何かを伝えたいのに、それが嗚咽になってしまい、言葉として出てこない。 そんな私をお父さんはそっと抱きしめた。 そのお父さんの腕の中で、私はいつまでも涙を流し続けた。 キスした事に対する自責の念も、自らの想いがかがみに拒絶されるのではないかという恐怖も、全てが涙として流れ落ちていくようだった。 0の関係、1の感情へ コメントフォーム 名前 コメント (T ^ T)b -- 名無しさん (2023-06-22 07 40 30) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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「ねえ、こなた。今日の放課後、暇?」 「今日はバイトも入ってないし、暇だけど」 「よかった。放課後、ちょっと付き合ってくれない?」 「いいけど。珍しいね、かがみから誘ってくれるのって」 「たまにはね。あんたと行きたいとこがあってさ」 「行きたいとこ?」 「別に大したところじゃないわ。ちょっとしたとこよ」 「ふぅん…待ち合わせとかどうする?」 「うちのクラスのHRが終わったらそっちに行くから、教室で待ってて」 「わかった。じゃあ放課後、待ってるね」 …よし、ここまでは問題ない。 あとは放課後だ。今日は、今日だけは予定があってもらっては困る。 だって今日は―――。 こなたと付き合い始めてちょうど一ヶ月の日、なんだから。 だから今日は、何か記念に残るようなことをしたかった。 そして放課後。 「こなた、お待たせ」 「ん、別に大して待ってないから」 「そう?じゃあ、行きましょ」 「かがみ、結局どこに行くの?」 「朝も言ったとおり、大したとこじゃないわ。 ついてくればわかるわよ」 訝しげなこなたを連れて、着いたところは…。 「…ゲーセン?」 「だから言ったでしょ。大したとこじゃないって」 「確かにそうだけど…なんでまたゲーセンなのさ」 「その前に一つ、いい?」 「…?」 「今日は、何の日?」 「今日…?なんかあったっけ」 「…そんなことだろうと思ってたわ」 案の定、こなたは覚えていなかった。 覚えてないんなら、忘れられない日にしてやるだけよ。 その程度でいちいち凹んでたら、こいつと付き合ってなんていられない。 「む、どういう意味それ」 「つくづくあんたらしいって意味」 「ほめられ…てないよね、絶対」 「そうね。とにかく今日は特別な日。あんたが覚えてないんなら、それでも構わない。 私が今日を、こなたが絶対に忘れない日にしてあげる」 「ふぅん…じゃあ、期待しちゃおうかな」 「任せときなさい」 「それじゃ、そろそろ行かない? いつまでも店の前にいても邪魔になるし」 さて、行くとしますか。 一度しかない今日この日。 絶対思い出に残るようなことをしてあげるんだから。 「で、どれやるのさ。 私がいつもやるようなものじゃないってことはわかるけど」 「アレよ、アレ」 そうしてこなたを連れてきたところは…。 「プリクラっすか、かがみ様…」 「そ。別におかしなことじゃないでしょ?あとかがみ様言うな」 「いや、そうだけど…」 「何か問題でもあるの?」 「問題ってわけじゃないけど、私はあまりこういうのやんないからさ」 「なら、好都合じゃない。普段やらないなら、思い出にも残りやすいでしょう」 「そんなもんかなぁ」 「そういうものよ。さ、行きましょ」 そうして、二人で中へ入る。 よし。ここなら…。 「こなた」 「っ!か、かがみ?」 「いいじゃない、誰も見てないんだしさ」 「だからって…いきなり抱きつかないでよ…恥ずかしいよ」 「今に始まったことでもないでしょ。ほら、時間ないわよ」 「え?…あっ」 ―――そして、フラッシュの光が私たち二人を照らす。 そうして印刷されたものを手に、二人で外に出た。 「むぅ…かがみがいきなり抱きついてくるから…」 「そう?よく撮れてるじゃない。可愛いわよ」 「なんか素直に喜べない…」 少し拗ねている様子のこなたを尻目に、 私は携帯の操作をする。 「これでよしっと」 「かがみ?」 「すぐわかるわ」 「ふぅん…お、メールだ…かがみから?なんでまた?」 「いいから。見てみなさい」 こなたが携帯を開く。 その直後、こなたの顔が真っ赤になった。 「か、かがみ!?これ!」 「そ。今さっき撮ったやつ」 そう、私がこなたに送ったものは、たった今撮ったばかりのやつだ。 笑顔の私と、その私の腕の中で真っ赤になったこなた。 「どう?それなら絶対忘れないでしょ?」 「そうだけど…」 「それともう一つ、あんたに渡すものがあるの。本命はこっちかな…」 鞄の中から小さな紙袋を取り出して、こなたに渡す。 普通に渡せばよかったんだろうけど、他にも何か思い出になるものを残したかった。 だからこんな回りくどい真似までしたけど、結果だけ見ればよかったのかな。 普段見れないこなたも見れたしね。 「これは?」 「開けてみて」 「…!これ…指輪?」 「ちょっと高かったけどね。あんたとの大事な日だもの。 このくらい、どうってことないわ。 それとね、その指輪のついてる宝石。ラピスラズリって言ってね。 その宝石言葉…花言葉みたいなものね。それは―――」 「―――永遠の誓い」 「…永遠の、誓い…」 「この先もずっと、何があっても、 こなたと一緒にいるって決めたから。その証」 「そっか…。私、ずっと大切にする」 こなたは、その小さな指輪を胸に抱いた。 「しかし参ったなぁ。 まさか、かがみも同じようなこと考えてるとは思わなかったよ」 …同じこと? 「こなた?同じって、どういうこと?」 「私もかがみにプレゼントを用意してた、ってこと」 「え…?」 そしてこなたが私に差し出してきたものは…。 「はい、これ。私からかがみへプレゼント」 「ネックレス…?」 こなたが渡してくれたそれは、緑色の宝石のついたネックレスだった。 「これは、エメラルド…?」 「うん。エメラルドにはね、『幸福』って意味があるんだって。 かがみと、二人で幸せになりたいから」 「こなた…ありがとう」 「かがみがくれた、ラピスラズリとあわせて『永遠の幸せ』、なんてね」 「そうね。なら…その二つの宝石に誓って永遠の幸せ、実現してやろうじゃない」 「大丈夫だよ。私は…かがみと一緒にいられれば、それが幸せなんだから」 「私も、こなたと一緒なら、絶対に世界で一番幸せになれるって思えるわ」 こなたと一緒なら…何があっても平気。 どんなことでも乗り越えられる。 「そういえば、どうして私にプレゼントなんて? だってあんた」 「―――今日は、私とかがみが付き合いはじめて、ちょうど一ヶ月の日。 …だよね」 ―――え? 「…!覚えてたの!?」 「当たり前だよ。一度しかない最初の記念日だよ?忘れるわけないよ」 「だって、あんた…」 「覚えてない、なんて言った覚えはないよ」 …言われてみれば、こなたは覚えてないとは言ってはいなかった。 シラを切っていただけ…? 「じゃあ、なんであんなこと…」 「かがみを驚かせようとと思って。 まさか逆に驚かされるなんて思わなかったけどね」 まったく…こんなことばっかり頭が回るんだから。 こなたらしいといえばらしいけど。 「こなた。渡した指輪、貸してくれる?」 「…?いいけど、どうしたのさ」 指輪を受け取り、こなたの左手を取る。 そして、その薬指に指輪を通した。 「…じゃあ、私も。ネックレス、貸して」 そう言って、こなたが私にネックレスをつけてくれた。 「ありがとう、こなた」 「ありがとう、かがみ」 私の胸と、こなたの指でかがやく二つの光。 その光に誓って、二人で幸せになる。絶対に…。 「私もね、かがみにもう一つプレゼントがあるんだ」 「こなたも?」 「その前に確認しておきたいんだけど…かがみ、今日はうちに泊まれる?」 「明日は学校も休みだし、大丈夫だけど…それがどうかしたの?」 こなたの家でないと受け取れないものなのだろうか。 だとしても、一体なんだというのだろう。 「よかった。もし断られたらダメになっちゃうとこだったよ」 「何なのよさっきから」 「えっとね。この日を記念して、かがみにご馳走してあげようと思って。 先週から仕込みしてたんだ」 「本当?…なんか私のほうが割に合わないものになってきた気がするわ…」 「こういうのは気持ちの問題。私は凄い嬉しかったから問題ないよ」 こなたは本当に嬉しそうにそう言ってくれた。 この笑顔が見れたのなら、確かに実際のものが何であってもよかったと思える。 「私の家には後で連絡入れるから、行きましょうか」 「うんっ!あぁそうだ。言い忘れてたことがあったよ」 「言い忘れてたこと?」 そしてこなたは私の耳元でこう、囁いた。 「今日はね―――」 ―――お父さんもゆーちゃんも用事があって家にいないんだ。 だから、今日は久しぶりに…ね――― 「なっ!?」 「ほーら、かがみ!置いてくよー!」 道の先で手を振るこなたの笑顔を見て私は思う。 ―――今日は眠れない日になりそうだ――― fin コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-03-29 10 53 12) こんなの反則だろおぉぉ!! -- 名無しさん (2010-07-22 14 53 01) やばい!!甘すぎるやろ~~~~~~~~ -- 名無しさん組長 (2009-09-04 00 12 56)
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―――2月14日。 恋心を抱く女の子が、意中の相手にチョコレートを送る日。 それが今日、聖・バレンタインデー。 ……自分で言うのも恥ずかしいけれど、私もその一人で……。 とある夜に、こなたが『俺の嫁』だからよ、と言った私だけど、女の子として付き合ってる相手に贈りたいのよ、やっぱり……。 それも……できれば、手作りチョコ。 工夫とか出来ないし、市販のより味は悪くなっちゃう……と思う。 でも、愛情をお金で賄うのは無理よ! ……きっと……。 私は、時計を見た。 短針は0と1の間、長針は3を指している。窓から見える外の風景は、黒一色。 つまり、AM0:15 学校の準備をしなきゃいけない時間まで、後約7時間足らず。 ……まだ、肝心のチョコは出来てない。 一週間前からつかさに協力してもらって、勉強の合間をぬって練習してきたけど、やっぱりなかなか上手くいかなかった。 頭ではわかっているけど、実践出来るだけの技術が私にはない。 何で私はこんな料理出来ないんだろ……。 思わずため息がこぼれる。 やっぱりつかさに手伝って………って、それはダメ……。 ―――数時間前。 「お姉ちゃん、本当に大丈夫?」 「自信はないわ……。けど、やらなくちゃ」 「でも、今まで一人でやったことないんだよ?」 「うん……。だけど、これは私自身の力で作らなきゃダメなのよ。完全に自己満足なんだけどね」 「お姉ちゃん……」 「こなたに思いを伝える物だから、私一人でやりたいの。わざわざ言ってくれたのにごめんね、つかさ」 「ううん、いいよ。私こそ、何にも考えないでごめんね」 「何言ってるのよ、つかさは私たちのこと、よく考えてくれてるわ。つかさとみゆきがいてくれなかったら、今私がこうしてチョコを作っていられることはなかったわよ」 「そ、そう言われると、照れるなぁ……」 「二人のためにも、こなたのためにも、そして私のためにも、頑張りたいの」 「えへへ、お姉ちゃんがお料理でこんな頑張ってるの初めてみたよ。こなちゃんも、きっと喜んでくれるよ」 「ば、バカ、からかってくる、の間違いでしょ!」 「あはは、お姉ちゃん最近可愛くなったよね」 「はぁッ!?突然何わけわかんないこと言ってるのよ!?」 「わけわかんなくないよ~。実際そうだしね~♪お姉ちゃん、頑張ってね!」 「ちょ、ちょっとつかさ、言いっぱなしのままいかないでよ……って、行っちゃったし。……時間もあんまりないし、作り始めなきゃ」 ―――そして今。 うう……静かに混ぜるってあれだけ言われてたのに、忘れるなんて……。 つかさといるときはできてたのに、私一人になったら何であんな慌てちゃったんだろ……。 ―――冷やす時間も考えたら、これが最後。 今度は、ミスしないように……。 「なんか凄いねぇ。受験真っ只中の人もいるのに、空気がいつもみたいに殺気じみてないよ」 こなたが、自分の教室に入る直前に言う。 「そうね。やっぱりみんな、多かれ少なかれ期待してるんじゃない?」 「かがみもその一人かな~?」 こなたが、ニヤニヤしながら私を見る。 「う、うるさい。そうゆうのは黙して語らないものよ」 「デレながらも否定しないかがみ萌え♪」 「へ、変なこと言うな」 相変わらずニヤニヤしながらこなたは私を見て言う。 「ね、かがみ」 「何?」 こなたが突然私に近づき、背伸びして耳元でそっと囁いた。 ――――――放課後、教室来てね。 「う、うん……」 私は顔が熱くなるのを感じながら、小さく頷いた。 満ちた月が空に浮かんでいた『あの』夜。 私とこなたの恋人としての関係がスタートした。 まだ私たちの関係を知る人は多くない。 つかさとみゆきとこなたのご両親とゆたかちゃん、そして私の家族。 私たちは、お父さん、お母さん、姉さんたちにちゃんと関係を伝えた。 最初はみんな驚いてたし、先のことを諭すようなことも言われた。 でも、私とこなたの意志の強さをだんだん理解してくれて、最後には私たち二人の関係を認めてくれるだけでなく、どんな状況でも私たちの味方になってくれるとまで言ってくれた。 あのときは嬉しくて、みんないるのに涙が止まらなかったっけ……。 こなたもこなたで、私をからかいながらも、目に涙を溜めてた。 やっぱり、一番身近な人が味方になってくれるのは、とっても心強い……。 ありがとう、お父さん、お母さん、姉さんたち―――。 日下部と峰岸にも伝えた。 「なんだよ、やっぱり柊はちびっこの妻だったのかよ」 と日下部言ってきたので、私はすかさず返す。 「こなたが私の嫁なのよ。勘違いしないでよね?」 「ひ、柊……」 私の言葉に、日下部は何故か呆然としている。 「ん~?どうかした?」 「ずいぶん惚気てるな……」 「それを言うなら、峰岸のほうがそうなんじゃない?」 彼氏いるし、ね。 「ひ、柊ちゃん……そんなことないよ」 「そのあやのとおんなじ顔してっぞ……」 「み、みさちゃんまで……」 「いや、それ以上かもしんねぇ……」 そうかしら……?そこまで言われるほどじゃないと思うんだけどね……。 私の感覚がおかしいだけ? 「でも柊ちゃん」 「何?」 峰岸は、私にむかってにっこり微笑みながら言った。 「今の柊ちゃん、とっても幸せそう。悩みなんて何にもないって顔してるよ」 「そうだな、いつかの時の暗い顔がウソみたいだぜ」 峰岸はあの頃から気づいていたみたいだからね……。 日下部も多分同じだったんだと思う……。 やっぱり、あの頃の私は他の人が見てもわかるくらい悩んでたんだ……。 ―――あの頃は、本当に辛かったわ……。 ―――でも今は、本当に幸せ……。 「よかったな、柊」 「おめでとう、柊ちゃん」 日下部は快活な、峰岸は柔らかな笑顔で私に言ってくれた。 「うん、ありがとう、二人とも」 私は自然と微笑みながら、その言葉を口にしていた。 キーンコーンカーンコーン――。 今日という日の出来事も、開幕はチャイムだった。 そのチャイムは、最後の授業の終了を告げるもの。 つまり―――――放課後になったことを知らせる音。 「こなた、お待たせ」 私はこなたに言われた通り、3年B組の教室にきていた。 3年のこの時期となると、みんなすぐ帰って家や予備校での勉強に勤しむため、 掃除当番に当たっていたとは言え、まだ放課後になって二十分も経ってない今でさえ、もう教室は静まりかえっていた。 「お、かがみん、待ってたよ~♪」 「ごめん、ちょっと掃除当番になってて……」 「いやいやぁ、ちょっとくらい遅いほうが周りに人もいないし、恥ずかしくなくっていいよ」 「ま、まぁそうね」 その言葉の後、少しの間静寂が流れる。 お互い、切り出すのに少しの勇気が必要……。 けど、必要な少しの勇気が、絞り出せなくて……。 先に口火をきったのはこなた。 「それでね、かがみ」 こなたは少し言いづらそうに、切り出した。 「う、うん……」 「実は、ね」 「うん……」 「つかさとみゆきさんにも、いてもらってるんだ」 「えええっ!?」 こなたの口から出た想定外の言葉に、教室を見渡すと私達の対角線につかさとみゆきがいた。 「あはは、お姉ちゃん、ごめんね……」 「そ、その、お邪魔でしたらすぐ私たちは出て行きますので……」 つかさとみゆきは、二人とも気まずそうな顔をしていた。 私には、こなたが何を考えて二人に残ってもらってるのかがわからなかった。 けれど、その問題の解はすぐにこなたに明かされた。 「今日は実はチョコを渡しあうだけの日にしたくないんだ」 「えっ……?」 こなたの顔は、いつになく真面目だった。 「私が前に言った、お互いの選んだ料理を交換するって話、覚えてる?」 漠然と記憶にある、単語の欠片。 それを1つずつ結び、少しずつ浮かび上がる、記憶の像。 導き出されたその内容。 「それって……」 「う、うん……」 顔が熱くなるのを感じる。こなたの顔もいつの間にか真っ赤になっていた。 「け、けけけっけっけ………」 恥ずかしさのあまり、思考回路はショート寸前な私は、舌が回らない。 「そう、結婚式……」 こなたは小さな声でそう言った。 「な、なななな、なななぁぁぁ!?」 ―――――ッ。 「で、でね、かがみ」 「ハウウゥ……しょーとシマシタデスゥ……」 「か、かがみ?大丈夫…・…?」 「はっ!?わ、私どうかしてた!?」 こなたが心配そうな顔で私の言葉に頷く。 「う、うん……」 「ごめん……。それで、なに?」 私の言葉に、こなたはその小さな口を開いた。 「今日、ここでやりたいんだ。想いが詰まった食べ物を交換して食べあって、そして誓いの言葉を言う。そんな簡単な、ネトゲの中でのと同じ結婚式だけど……私はそれがやりたいんだ。………もちろん、かがみがよければ、だけど……」 そっか……。 今まで私たち、付き合ってからこれといってお互いにその証となるようなこと、ほとんどしてなかったからね……。 やっぱり、少し不安なんだ……。 それにしても、お互いの選んだ食べ物を交換して食べる結婚式、か――――。 「ねぇ、こなた……」 「うん、分かってるよ……。ネトゲの中でのなんて、バカみたいかもしれないね。遠慮しなくていいよ、嫌だったらはっきり―――」 「そんな素敵な結婚式をあげるつもりだったなら、ちゃんと言っておいてよね!」 「えっ?」 こなたは、きょとんとしていた。 「い、良いの?ネトゲのやつのなんだよ?」 「当たり前じゃない。そんな素敵な式、私もやってみたいわ。たとえネトゲのでも、中身は人なんだから、現実のと変わらないわよ。それでたくさんの人が幸せになれるんだから、私たちも幸せになれるに決まってるじゃない」 「かがみ…………ありがと」 「お礼を言いたいのは私のほうよ。ありがとね、こなた」 私の言葉に照れたような顔を一瞬するこなた。でも、それを隠すようにいつもにすぐ戻った。 「ツンとデレを両方兼ね備えた言い方とは流石だね、かがみん♪」 「もう………茶化すな」 いい雰囲気なんだから、余計なこと言わなきゃいいのに、こいつはまったく……。 「それで、つかさとみゆきさんにも、私たちの結婚式を祝って欲しかったんだ」 「だから、二人に残ってもらったわけね」 「うん……」 ―――そっか、そうだよね……。 二人のおかげで私たちは今こうしていられる。 そんな二人には祝って欲しいよね……。 「つかさ、みゆき」 私は二人のほうを向く。 「私からも、お願いしてもらって良い?」 私の言葉に、つかさとみゆきは笑顔を咲かせた。 「うんっ!」 「はい、まかせてください!」 「二人とも、ありがとう」 私も笑顔で返した。 「それじゃ、みゆきさん、お願いしていいかな?」 「はい、任せてください」 こなたの言葉に、みゆきが笑顔のまま頷く。 「え、どうしたの?」 よくわからない中、みゆきはそそくさと本を用意し始めた。 「ふふ、かがみん、やるなら本格的に、がいいでしょ?」 「そ、そりゃそうだけど……」 「ってことで、みゆきさんに神父様役をお願いしたのだよ!」 「ええっ!?」 こなたの言葉に、本日何度目かの吃驚。 「調べてまとめた台本を用意して一昨日に聞いたんだけど、快く引き受けてくれて助かったよ~」 「本物の神父様とは程遠いものとは思いますが、全力を尽くしますね」 「ありがと、お願いね、みゆきさん」 私は二人のやり取りを見て、こっそりとこなたに聞く。 「こ、こんな大掛かりなお願いしちゃって、もし私が作ってなかったらどうするつもりだったのよ……」 受験も始まってるし、作ってない可能性も十分にありえたのに……。 「私にはかがみが作ってくれてるって、分かってたからね♪」 自信満々に言うこなた。 まったくどっからその自身が沸いてくるのやら、と思った矢先に浮かぶ、一人の顔。 「またつかさか………。まったくあの子は―――」 「いや、違うよ?」 「え?」 「かがみの手、丁度一週間前くらいから絆創膏がどんどん増えてるんだもん。練習してくれてるんだって、すぐわかったよ」 こなたが笑った。でも、それは表現するなら、ニヤリ。 「ありがとね、かがみん♪」 「ば、バカ……分かってたなら言いなさいよ……」 「え~?だって、ねぇ?」 うう……、ずっと隠れてやっていたのに筒抜けだったなんて……。すごい恥ずかしい……。 「ああ、もういいわよ!!早く始めるわよ!!」 「にひひ、照れ隠しするかがみは相変わらず可愛いねぇぇ~?」 「う、うるさい!みゆき、お願い!」 「はい、わかりました。では、お二人とも、こちらへ」 窓を背にしながら、優しく微笑んでいるみゆき。 ちょっと離れたところで、にっこりと見ているつかさ。 みゆきの方を向きながら、少し緊張しているこなた。 こなたの横に並んで、始まりの時を待ち続ける私。 「えー、コホン。それではここに、柊かがみと泉こなたの挙式を始めます」 ―――そして、式は開かれた。 窓には真っ青にもかかわらず、月が浮かんでいた。 「――――でも、消して忘れないでくたさい。夜空を見上げることを」 すらすらと止まることなく、みゆきの口から紡がれていく言葉。 「星々のひとつひとつが大いなる天空を形づくっているように、私たちひとりひとりにも必ず意味があることを。皆が出会いを大切に、互いを愛している限り、この地は祝福と加護を受けられるのです、と」 その言葉のひとつひとつが、とてもゲームの中でのものとは思えない程、素敵な表現ばかり。 「出会いは星の運命ですが、愛を成就させるためには試練が必要です。星の運命によって出会いし、この2人も、今宵その試練を受けます。ここに集った我らは、その証人となるのです」 今はその証人は、つかさとみゆきだけ。 でも、いつかきっと、もっとたくさんの人が私たちを祝福してくれる日が来てくれる。 「かがみ、こなた、向かい合ってください」 みゆきの言葉に、向かい合う私とこなた。 「こなた、今日はかがみの血肉となるものを持ってきましたか?」 「はい。ホワイトチョコを用意しました。私たちの関係が円満なように、鏡のように丸く、月のように真っ白なチョコです」 こなた……そこまで考えてくれて、作ってくれてたのね……。 って、エピソードまで言わなきゃいけないの!?聞いてないわよーーッ! 「よいでしょう」 みゆきはそう言って頷いた後、今度は私の方を向く。 「かがみ、今日はこなたの血肉となるものを持ってきましたか?」 ど、どうしよう……。何も思い浮かばないし……。 ああ、もういいわ!はっきりそのまま言ってやるわ!! 「はい。生チョコを作ってきました。一週間前からつかさと練習して、最後には私一人の力で作りました。ちょっと不恰好だけど、私の想いをこめました」 「よいでしょう」 さっきと同じように頷いてから、みゆきは再びこなたの方を見る。 「こなた、汝、この者を夫とし、星の雨が降りし朝も、陽が失われし昼も、闇が訪れぬ夜も、助け合い、分かち合い、共に過ごすことを願いますか?」 「はい、願います。我が運命は、かがみと共に」 「よいでしょう」 みゆきはこなた向かってうなずいた後に、また私のほうを見る 「かがみ、汝、この者を嫁とし、星の雨が降りし朝も、陽が失われし昼も、闇が訪れぬ夜も、助け合い、分かち合い、共に過ごすことを願いますか?」 「はい、願います。我が運命は、こなたと共に」 「よいでしょう」 みゆきは今度はまっすぐ私たち2人を見る。 「それでは、互いの願いを血肉とするため、交換した食物を口にしてください」 みゆきの言葉通り、私はこなたにチョコレートを差し出す。 こなたも、キレイに包装されてリボンまで可愛く結んであるチョコレートを私に差し出してくれた。 私はこなたに、こなたは私に。 それぞれの思いが、それぞれの手に。 こなたの渡してくれたチョコのリボンをとって包みを敗れないように剥がして中の箱を開けると、こなたの言葉通りの丸い大きなホワイトチョコが1つと小さめのが1つ、きれいに収まっていた。 さ、流石こなた、上手ね……。 こなたの方を見ると、こなたも私の作ったチョコを丁度見ているところだった。 ――早朝、今度はなんとか成功したけど、時間がなくて……ううん、言い訳しないわ。私が不器用で、セルクルから外した後のカットが上手くいかなく出来なくて……。 それに、専用の箱に入れて包むときも、少しきたなくなっちゃったし……。 あれじゃ、こなたに笑われるかも……。 そう思ったけど、こなたの私の作った不恰好なチョコを見る目は、嬉しそうだった。 「かがみ」 突然こなたが小声で話しかけてくる。 「何?」 私も小声で返す。 「今はそっちの小さいほうを食べてね。そうすれば、同じくらいの時間で食べ終われるから」 「わかったわ」 「それと……せーの、で食べよ?」 「ふふ、そうね、わかったわ」 私とこなた、2人で頷きあう。 「「せーの」」 私とこなたは同時に食べた。 口の中に、甘い味が広がる。 「美味しい……」 つい、そう言葉が漏れていた。 「かがみのも、美味しいよ」 「あ、ありがと……」 素直に美味しいっていわれると、結構恥ずかしいわね……。 そう思いながら、わたしもこなたもお互いのチョコを食べ終える。 それを確認してから、みゆきが再び口を開いた。 「こなたよ、我が後に続いて、誓いの言葉を述べなさい」 みゆきの言葉をこなたが、その後に私が繰り返して、神への宣誓をする。 ―――そして、いよいよ式はクライマックスへ。 「指輪交換、といきたいところですが、それは数年後の楽しみにしておきましょう」 流石に指輪交換までは出来ないわね……。 「月とうさぎのように、2人が末永く時を共にせんことを……」 みゆきがにっこりと微笑む。 「さあ、歩み始めるのです―――と言いたいところですが」 みゆきがそこでこほん、と式の幕開けのとき同様に演出で咳き込んだ。 「その前に、お互いに向き合い、心で誓約の言葉を交わして下さい」 「ちょ、ちょっとみゆきさん、それはカットって言ったじゃん!」 こなたが当然慌てたように言い出す。 「どうしたの?」 「カットするはずだった場所をみゆきさんが……」 「どうしましたか?式の最中ですよ。神父である、私の指示通りにしてください」 みゆきがいつも以上ににっこりと微笑む。 「えっと、何すればいいの?いまいちよくわからないんだけど……」 私はこなたに小声で聞く。 何故かこなたは顔を真っ赤にして俯いていた。 何気なくつかさのほうを見ると、つかさもさっき以上の笑みを浮かべている。 なんなの、いったい………? 私だけ理解できていないようだった。 「―――――」 「え?」 こなたが突然小さな声で何かを言った。けど、小さすぎて聞き取れなかった。 今度は聞き逃さないように、と注意深くこなたを見る。 そしてこなたの口から、本日何度目かわからない程の吃驚単語が飛び出た。 「キス……」 「き、きキきき、キきキ!?」 「お姉ちゃん、結婚式なんだから当たり前だよ~」 そ、そりゃ、結婚式っていったら確かにそうかもだけど、でも……!! …………まだ1回もしたことないし…………。 「か、かがみ……どうする……?」 「どうするもこうするもないわよ……」 小声で話す私とこなた。 「お姉ちゃん、こなちゃん、頑張って!」 応援してくるつかさ。 「ふふ」 にっこりと微笑むみゆき。 こなたとのキス。 言われてみれば、一回もしていなかった。 ――――――――。 「そうね、こなた、せっかくの結婚式なんだから……」 「かがみ……?」 「しよっか……?」 「それ、すっごくいやらしく聞こえるよ」 「ば、バカ、キスよ、キス」 「わ、わかってるよ」 「い、いい?」 「う、うん……」 ああ、自分で言い出したのに、やっぱり意識しちゃう……。 少しずつ近づく、私とこなた。 その距離に比例して鼓動が、いつもよりもさらに速く鳴る。 こなたの顔が、もうほとんど目の前。 曖昧だけど、3センチくらい……。 こなたが瞳を閉じる。 私も、同じように瞳を閉じた。 そして、距離が―――――――――0になった。 お互いから感じられる、お互いの想いが詰まった味。 ファーストキスはレモンの味って聞くけど、私たちのそれは、とっても甘いチョコの味だった。 少しして、名残惜しい気持ちがありながらも、私とこなたの間に再び距離が出来た。 こなたの顔を見ると、真っ赤な顔で照れながら私を見つめていた。 多分、私もおんなじような顔、してるんだろうな……。 「おめでとうございます、泉さん、かがみさん」 「お姉ちゃん、こなちゃん、おめでと~~!」 つかさとみゆきが、拍手をして祝ってくれる。 「あ、ありがとう、二人とも……」 私は、恥ずかしい気持ちをなんとかこらえながら、2人にお礼をする。 「ありがと……」 こなたも聞こえないくらいの小声でそう言った。 「さあ、歩み始めるのです」 私とこなたは、自然とお互いの手を繋ぐ。 「祝福に満ちた、第一歩を………」 私たちは何も言わず、けれど同時に歩き出した。 「おめでとう~~、二人とも!」 つかさはまた私たちに祝いの言葉をくれる。 「お二人とも、本当におめでとうございます」 みゆきもいつもの口調に戻って、私たちを祝福してくれた。 「かがみん」 「どうしたの?」 「いつか本当の結婚式があげられる時はさ、私、純白のウェディングドレスが着たいな。かがみは白のタキシードを着てね」 「ふふ、いいわね。そうしよっか。そのときはちゃんと、指輪の交換もね」 「うん。つかさとみゆきさんにも、また祝ってもらわなきゃね」 「そうね。きっとつかさはラッパみたいのを吹いて、みゆきは紙ふぶきを撒いて祝福してくれるわよ。天使みたいにね」 「あはは、かがみの言ってる通りになる気がするよ」 私たちはゆっくりと並んで歩きつづける。 「ねぇ、かがみ、それとさ」 「ん、こなた?」 こなたは私のほうを向いて、顔を赤くしたまま笑顔を向ける。 「これからもよろしくね、ステキな旦那さま」 私もこなたに笑顔で返す。 「うん、この先もずっと一緒よ、カワイイお嫁さん」 ――時はうつるもの。 ――その先にある私たちの未来にうつるもの。 それは―――――『11』。 私とこなたが一緒に並んでお互いを助け合って生きていける、そんな『11』の世界。 Fin... コメントフォーム 名前 コメント 2023年になった今でも素敵な作品出会えて良かったです。 GJ!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-01-02 21 47 17) これ見たっけぇぇぇぇぇっ!? -- 猫好きカービィ (2021-01-24 18 36 07) いやいや、俺はなあ、2020年じゃあああ!!! -- 猫好きカービィ (2020-02-16 11 47 12) こなかがに幸あれ -- 名無しさん (2017-07-09 18 22 24) 2017…だと… みwikiさんすげぇ -- 名無しさん (2017-03-27 09 35 49) いや....俺は2014年だ!! 感動した!! -- こなみん (2014-08-17 02 15 41) とっても感動する話でした! これからも、こういう作品を作り続けてください 応援しています! まぁ・・・2013年じゃ遅い気もするけど(-。-; -- チョココロネ (2013-11-16 22 38 53) 毎度おもうが、みwikiさん結構主要キャラになってないッスか? -- 名無しさん (2010-08-14 01 30 28) 最高です…!! 本当にこうなれればいいね -- 名無し (2010-06-10 01 56 27) なんという素晴らしいハッピーエンド…感動しました -- 名無し (2010-06-02 00 11 15) 成る程これがあのメガミのピンナップのイラストに繋がって行くと -- 名無し (2010-05-18 17 48 20) あれ、なぜだか目から汗がダラダラ出てくるぞ…。 -- 名無し (2010-05-05 19 57 55) 同じく全俺が泣いた -- 白夜 (2009-12-16 23 55 45) なんだろう…さっきから頬が湿っぽい…PCの画面も妙にぼやけてるぞ? -- こなかがは正義ッ (2009-11-13 01 02 19) 全俺と表情筋ですら泣いた -- 名無しさん (2009-11-11 23 00 48) 全俺が泣いた -- 名無しさん (2009-03-11 18 22 50) 素敵なSSでした GJ☆ -- ポーター (2008-10-05 22 56 45) 感動しました -- 名無しさん (2008-10-03 21 37 01) 泣いた -- 名無しさん (2008-09-01 00 11 38) GJ 本当に将来こうなるといいね -- 名無しさん (2008-03-17 16 47 12)
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夢。 夢を見ていた。 あ、別に某たい焼き少女の真似じゃないよ? それに、こんな夢を見ることになっちゃったのは、結局自分のせいなんだし。 まさか、かがみに高校一年生の頃の話を振っただけで、あんな展開になる とは思ってなかったからね。 そう、あんな昔話をしただけで―― ―――――――――――――――――――――――――――――――― 「はぁ~、こりゃ完全に待ち合わせ時間オーバーだね。 参っちゃうよ」 誰かに話しかけている訳でもないのに、私は移動中の電車の中で つり革に揺られながらぽつりと呟いていた。 加えて車内は朝のラッシュに 突入していることもあり、通勤や通学の人達でごったがえしていた。 その光景は高校に入学してから間もない私の気を滅入らせるには、 大きなお釣りがついて来るほどに充分過ぎるものだった。 (う~。 よりにもよって、こんな日に寝坊しちゃうなんて、 最悪だよ……。 二人になんて言えばいいんだろ) そして、私をへこませているもう一つの原因。 それは自分にあった。 実を言うと、今日から新しい友達であるつかさ達と一緒に登校する ことにしたのだが、待ち合わせ場所に派手に遅刻しそうなのだ。 しかも、まさか自分から言い出した待ち合わせの時間に遅刻するなんて。 つかさはまだしも、柊さんは全力で怒るだろうなぁ。 ……って待てよ。 (あれ? そういえば、つかさの方は名前で呼んでるけど、かがみは……) ここに来て、私はかがみの方だけ苗字で呼んでいることに気が付いていた。 といっても、つかさに紹介されてからまだ一週間も経ってないから、当然と 言えば当然なのかな。 ……よし! 今日からはちゃんと名前で呼ぼうっと。 「ま、それ以前に今回の件を許してもらえるかなぁ。 そこが問題だよ」 再びぽつりと呟いた私をよそに、電車が目的の駅のホームに到着していた。 少しグラリと揺れながら駅のホームに収まった電車のドアが一斉に開く。 と同時に、今日の待ち合わせの相手達が私の目の前に現れていた。 似ているようで全然違う特徴を持った双子の姉妹、かがみとつかさだ。 そして、次の瞬間二人と目線が合った。 私はとっさに頭を掻きながら、 「ごめんごめ~ん。 遅れちゃったよ。 朝の準備で少し手間取っちゃってさぁ」 という様な感じで謝っていた。 う~、我ながら下手な言い訳だなぁ。 かがみに至っては相当怒ってるみたいだし。 どうしよう、ここはとりあえず…… 「あ、こなちゃん。 おはよ~」 って、この微妙な空気を完全にスルーですかい! さっすがつかさ。 う~、まあいいや。 これに乗じて、二人に挨拶を…… 「おはよっ、つかさ! あと……。 え~っと、柊さんもおはよ~」 「えっ!? お、おはよう」 あっ、あれぇ~? 何で苗字で呼んじゃったんだろ、私。 やっぱり、一度定着した呼びかたって変えづらいのかな? だけど、かがみの方はどう思ってるのかなぁ。 今だって色々考え込んじゃってるみたいだし。 「どうしたの、お姉ちゃん。 具合でも悪いの?」 いやいやつかさ。 それ多分私のせいだからさ、私の。 よ、よ~し。 それじゃあ今度こそかがみをちゃんと名前で…… 「ううん、なんでもないわよ。 とにかく、早く駅から出ましょ。 じゃないと、ホントに遅刻しちゃうもの」 「そうだね。 それじゃあ急ごっか、こなちゃん」 「はいは~い、柊さんもああ言ってるしね」 ぐわぁ~! 何でまた失敗してるのさ~。 朝日が目に染みるよ、全くさ。 だけど、このままじゃどうしようもないな~。 「よし、それじゃあさっさと急ぐわよ! ……あ、言い忘れてたけど、私今日は学級委員会で遅くなるから、 放課後になったら先に二人で帰っててくれないかな?」 「うん、いいよ~。 ね、こなちゃん」 「えっ? あ……うん」 その後、私はしっかりと自覚できる程もやもやした気持ちで 一日を過ごすことになった。 授業でうっかり寝ていた時も、 チョココロネを食べていた時も、雑誌を見ていた時も、 そのもやもやを拭うことは出来なかったわけで―― 「こなちゃん。 もう放課後だよ、早く帰ろ?」 「ん……。 もう放課後かぁ」 結局、あっという間に放課後になってしまった。 変わった出来事といえば、世界史の授業で居眠りしていた時、 担当の黒井先生にコツンとやられたくらいかな。 でも、あの先生ど~も私と似たような匂いがするんだよね。 今度じっくりと話してみよっかな。 それに…… 「こなちゃん、大丈夫? なんかぼ~っとしてるけど」 「えっ? ああ、大丈夫だよつかさ。 心配しないで。 それより、後は肝心な人を待つだ……」 そう言いかけた瞬間、私は自分の机に両手をついていた。 しまった。 かがみは今日、これから学級委員会に出るんだった。 だから、今日は一緒に帰れないって今朝私たちに言ってたじゃん。 う~、これじゃあかがみとうち解けられないじゃないのさ~。 って待てよ、うちのクラスの方の学級委員って確か…… 「そっ、そうだっ!」 「わっ。 びっくりしたぁ」 「つかさっ! 高良さんってまだ近くにいるでしょ?」 「う、うん。 ていうか、もの凄く近くにいるよ。 ほら」 つかさが反射的に指さしたすぐそこに、彼女はいた。 容姿端麗、品行方正、加えて眼鏡っ娘という、まさに委員長 というキャラがそのまま具現化したような人だった。 どうやら学級委員会で使う資料の準備をしているらしく、 机の中から数枚のプリントを出して鞄に入れているのが見えた。 「高良さ~ん。 ちょっと頼みたいことがあるんだけど」 おもむろに高良さんの机に向かって呼びかけてみる。 すると高良さんは少し申し訳なさそうに左手を頬に 当てながら、私の方に振り向いていた。 「すみません、泉さん。 これから委員会がありますので、 ご要望にお応え出来ない可能性が……」 「いやいや~、そんなに考え込まなくたって大丈夫だよ。 その委員会に出てもらうっていうのが重要なんだから」 「えっ、そうなんですか? それなら大丈夫かもしれませんが……」 高良さんは、呆気にとられた様な表情で私を見つめていた。 ま、仕方ないよね。 私だって今の今までこんなこと考えつきも しなかったんだから。 さて、後は…… 「あ、あとつかさにもお願いしたいことがあるんだけど」 「いいよ~。 私に出来ることがあったら、何でもするよぉ」 「ありがとっ、つかさ。 それじゃあ本題に入るね。 実は……」 今さっき思いついた妙案を二人に説明していく私。 春眠を繰り返していた授業中も、このくらい頭が回ればいいのに。 「ていう訳なんだよ。 どうかな?」 「うん、いいよ~。 お姉ちゃんとこなちゃんの為だもん」 「ええ。 そういうことならお力になりますよ」 「ありがと~、二人とも。 恩に着るよ。 それじゃあ早速行動開始だぁ!」 今考えると、この頃の自分はものすごく照れていたんだと思う。 だって、二人にこんな無茶な頼み事をしてまで、かがみと話す 機会を作ろうとしていたのだから―― 「遅いなぁ、高良さん。 何かあったのかな?」 行動を開始してから約一時間後、学級委員会が行われていた 会議室の廊下の壁に寄りかかっている私がいた。 そして、さっき閃いたこの作戦についての概要を確認してみる。 私が考えた作戦はこうだ。 まず高良さんには委員会が行われる 会議室でかがみをほんの少しだけ足止めしてもらう。 そして頃合いを見て高良さんの方が先に会議室を出てその直後に 私が中に突入して二人きり。 といった感じだ。 そして、つかさには予定通り先に帰ってもらうことにした。 明日になったらたくさんお礼を言わなきゃね。 (そんでもって、後は私がちゃんとしなきゃね、よしっ) ぐっと右手を握りしめて改めて気合いを入れ直す。 そんな最中、目標の会議室のドアが静かに開き、 中から出てきた高良さんと目が合っていた。 私は、握りしめたままの拳を素早くパーの形に戻し、 そろそろと高良さんに近づき、ひそひそと話しかけた。 「どう、うまくいった?」 「ええ。 かがみさんはまだ会議室の中にいらっしゃいますよ。 ですが、私はこれといってなにかしたわけでは……。 実を言うと、かがみさんの方から私に話しかけて来てくれましたので」 「あ、そうだったんだ~。 それで、どんな話をしたわけ?」 私がそう聞き返すと同時に、高良さんは少し複雑そうな顔をしながら、 なにやら考え込んでしまった。 しかし、それからジャスト五秒後。 高良さんは急に元の笑顔に戻ると、 「ふふっ、秘密です」 と言いながら、人差し指を唇に軽く当てていた。 ……何か、ものすごい勢いで誤魔化されたような気がする。 だけど、そんな満面の笑顔でそんなこと言われたら、 逆に聞き返せないじゃないか~。 まあ、ここまで真剣に 協力してくれたんだし、いちいち確認するのも失礼ってもんだよね。 「……よぉ~しっ! じゃあそろそろ行ってくるよ」 「頑張って下さいね、泉さん」 「うん! 色々ありがとねっ」 ぶんぶんと手を振って高良さんに別れを告げた私は、 足早に目の前にある会議室のドアに手をかけた。 刹那、言葉では表現できない緊張感に襲われ、私は唾を飲み込んだ。 この先に、かがみがいる。 ごく最近に知り合ったばかりの新しい友達。 だけど、迷っている暇なんてない。 前に進まなきゃ。 そう思った瞬間、 私はドアを開けていた。 と同時に、正面からかがみの声が聞こえていた。 「い、泉さん?」 「あっ。 やっと見つけたよ~」 うっ、いきなり第一声が、『見つけたよ~』 はまずかったかな。 何かもの凄い違和感が。 「見つけた~もなにもないわよ。 つかさと一緒に帰ったんじゃなかったの?」 「いや~、なんとな~く柊さんのことが気になったと いうかなんというか……。 あ、ちゃんとつかさには 事情を説明してきたから、心配しなくていいからね」 懲りずに名前で呼んでしまっている自分がいたが、 話題を維持するので精一杯でそれどころでは無い。 それに、朝の時は悪い思いさせちゃっただろうし、 ここは正直に…… 「まぁ~、なんて言うのかねぇ。 朝の時の柊さん、 少し様子がおかしかったからさ。 それで……」 「えっ? それでこんな時間になるまで私を待ってたわけ!?」 私自身、まさかこんなに時間がかかるとは思ってもいなかった。 ま、こうやってちゃんと話せているんだから時間なんて関係ないよね。 ……ゴールデンタイムのアニメだってちゃんと録画予約頼んできたし。 「ま、そういうことになるよね。 思ってたより待たされちゃったけど」 「なるほど、そういうことだったわけね。 だけど、つかさには改めて説明してあげた方がいいわよ。 あの子だって、泉さんと帰るの楽しみにしてたハズだから」 「うっ…… そうだね、つかさには明日話しておくよ」 ……かがみの言う通りだった。 私一人のわがままのせいで、 こんなことになっちゃったんだし。 ううっ、ダメダメだよね、私。 一方、かがみの方はというと、顔を曇らせたままの私をじっと 見つめた後、ふうっと息を吐きながら静かに喋り出していた。 「……まっ、ちゃんとわかってくれたみたいだし、 朝のことも含めて全部許してあげよっかな」 「えっ、ホント!?」 瞬間、自分の顔が一気に綻んでいくのを感じた。 それだけ、かがみがかけてくれたその一言が、 嬉しくてたまらなかったってことなのかな。 「うん。 だから、もう帰りましょ」 「そうだね。 それじゃあ、早くバス停に行かなくちゃ。 もうすぐ、バス来ちゃうもん」 「……」 さりげなく歩き出しながら伝えた私の言葉に対して、 不思議とかがみからのリアクションが無かった。 振り返ってかがみを見てみると、青紫色の瞳を宙に 浮かせたまま、何やら物思いにふけっているようだった。 「どったの? ぼ~っとしちゃってさ。 早くしないと置いてっちゃうぞ~」 「あ、ちょっと待ちなさいよ~」 私の一言で我に返ったかがみは、急いで鞄を 持ち直しながら、歩幅を合わせて一緒に歩き始めてくれていた。 そんなかがみのさりげない行動に優しさを感じながら、 私達はスクールバスの発車所へ向かうのであった…… 「ふう、やっと駅まで来れたわね」 「そだね~。 結構時間かかったよね」 傾きかけた夕日が斜めに差し込み始めた頃、私は駅の ホームに立っている柱に身を預けながらかがみと話していた。 ホームの周りは帰宅ラッシュの影響でにわかに混み始め、 朝の時とは違った雰囲気に包まれていた。 (それにしてもかがみって、アニメや漫画の話には少し疎いみたいだね。 ……ふふ、まあこれからちょっとずつレクチャーしてけばいいかっ) 自分が乗ろうとしている電車の案内放送を聞きながら、 バスの中でのかがみとの会話を思い出し、自然と頬が緩む。 だけど、もうすぐお別れだ。 なんか寂しい。 「んじゃ私、この電車に乗ってくからさ。 柊さんも、気をつけて帰ってね」 「あ、うん……」 それに、結局かがみのことを名前で呼べなかった。 何度も勇気を出そうとしてるのに。 だから私は…… 「こっ、こなたっ!」 「えっ?」 一瞬、時が止まった。 柱に密着させている背中がじんと熱くなる。 予想外の言葉。 その言葉の力に影響された私は、ただ呆然と 立ちつくすしか選択肢がなかった。 「あっ、明日は、ちゃんと遅れずに来なさいよね。 そうしてくれないと、私やつかさが困るんだから!」 駅の雑踏がさらに増していく中、かがみは緊張した素振りを 一切隠すことなく、か細く声を震わせながら私に向かって喋っていた。 (そっか。 かがみも私と同じ気持ちだったんだ……) 途端、自分の頬が赤く染まっていくのがわかった。 だけど、それ以上にかがみが私のことを名前で呼んでくれた ことが嬉しくて、私はいつものテンションで返事を返すことにした。 「そうだね、今度はちゃんと早起きするよ。 それに――」 そこまで言いかけた時、電車がホームに到着していた。 騒音が辺りに響き、思考が一時中断される。 だけど、一度伝えようとした気持ちは止まることはなく、 私は躊躇することなく息を吸い込んだ。 「それに、これから楽しくなりそうだよね! できれば、来年は同じクラスにでもなって 一緒にいられたら、いいよね!」 ここで、一旦息継ぎ。 後は、さよならの挨拶だ。 「ま、来年の話だけどさ。 あっ、それじゃあ私は先にこの電車で帰るから」 「えっ。 あ、ちょっと!」 たった今自分が言ったことに恥じらいを感じながら、 私は目の前の電車に飛び乗る体制に入った。 ……そういえば、今かがみが何か驚いてたような? よ~し、それならもっと驚かしてあげなきゃね。 そう決意した私は、車内に入ると同時にくるりとかがみの 方を向いた。 そして、今までどうしても伝えられなかったかった 言葉を、初めて口に出していた。 「う~んと、今日は楽しかったよ、色々話せてさ。 ――それじゃあまた明日ね、かがみっ!」 「あっ……」 次の瞬間、私の中のもやもやは完全に消えていた。 もしかしたら、それはかがみにも同じことが言えてるのかな。 だってさ。 かがみの顔、すっごい幸せそうなんだもん。 ふと気が付くと、かがみが私のことをじ~っと見つめていた。 そして、言葉が紡がれる。 私たちだけの、さよならの挨拶。 「うん。 また明日ね、こなたっ」 かがみの優しい声が聞こえたのとほぼ同時に、電車のドアが閉まっていた。 そして、ホームにいるかがみの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。 発車時に電車の中にあったざわめきはだんだんと消え始め、私は 朝と同じようにつり革に揺られながら、今日の出来事を振り返っていた。 (かがみ……か。 これから長い付き合いになりそうだね。 あ、もしかしたらかがみの方もそう思ってたりしてねっ) ―――――――――――――――――――――――――――――――― そして、その予感は見事に的中。 まあ、大学二年生になってまで、 こんなに密着しながら一緒に寝ることになるとは思ってなかったけどね。 ……結局、今思うとこの頃からかがみフラグ全開で立ててたんだね、私。 そう考えると、多分この夢を見たことは偶然なんかじゃない。 だって、おかげではっきりしたもん。 私の、本当の気持ちがさ。 夢の果てに得たものは(後)へ続く コメントフォーム 名前 コメント
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――――――――――― 『パーフェクトスター』 ●第4章「夢の終わりに謳う歌」Cパート2 ――――――――――― つかさの申し入れを了承し、その1時間後につかさはうちにきた。 会って話すだけなら、前の公園で待ち合わせることも考えたけど、今日も炎天下。 それにかがみにご飯を作って待っていると言った事、沈んだ気分のまま遠出はしたくなかったから、つかさをうちに招く事にした。 そして、正午過ぎ。かがみが急に帰ってくる事はないとは思ったけど、 念のためにかがみにはバイトが終り次第メールをくれるように手配はしておく。 「ちょっち散らかってるけど、どうぞどうぞ」 「お邪魔します」と律儀に一言いれてから上がるつかさを部屋に通し、冷蔵庫に入ってるお茶を2人分準備する。 かがみと一緒に暮らすようになってから、常備するようになったお茶だ。 手元にあるコップが、注がれていくお茶の量に比例して冷えていくのが心地いい。 「こなちゃんのアパートにくるの、これで2回目かな?」 「ん、確かそだったかな? まぁ相変わらずの部屋だけどね」 何故か立ちっぱなしのつかさにお茶を手渡す。 つかさが言うように、つかさがこの家にくるのは2回目だ。 ちなみに1回目は、つかさにみゆきさんに、ご招待というなのお手伝いをしてもらった日。 ストレートにいうと、引っ越し初日だった。 手伝ってもらったはずなのに、片付くまで当社比2倍の時間が掛かったあの日の思い出に関連してなのか、 ふと漫画やDVDを収納した棚や棚の前に極限まで積まれたアニメグッズ、数不明な積みゲーの区域に目がいく。 引っ越す際にお気に入り以外のものはほとんど実家においてきた分、あの区域は物が増えたという証拠でもある。 ── かがみにもあのヲタ区域については、2日に1回は口うるさく言われてたっけ。 そこまで考えが至って、自分の思考に落胆した。 ── …また、やってしまった。 最近は何を考えても、最後はかがみに結びついてしまう。 それが悪いとは思ってはいなかった。…つい2日前までは。 今の私はかがみのことに考えが至る度に、かがみを失う可能性の未来を考えては、陰鬱になり、周りが見えなくなってしまう。 ── まだ失うとは決まったわけじゃないのに、ね…。 そう。その可能性に縋るか、捨てるかは自分次第なのに、私は未だ決められていない。 「こなちゃん、どうしたの?」 「へ…あー…なんでもないよ」 「そっかぁ」 今朝同様、トリップしていたらしい。 手元のお茶を一口含んだつかさは、見るからに不服そうな表情をしてる。 「いや、まぁ私のことよりさ。つかさ、今日はどうしたの?」 「ふぇ?あ、うん…その事なんだけど…」 微妙な空気が生まれたのを感じて、話題転換を図ったものの、帰ってきたのはいつも以上につかさの歯切れが悪い返事。 そんなつかさの様子から、心の何処かで嫌な予感をひしひしと感じていたけど、今の所は見て見ぬ振りをした。 気を紛らわせる為に、お茶を飲む。 「一個だけ、こなちゃんに聞きたいことがあってね」 「ん」 「その、こなちゃんは………お姉ちゃんのこと、好き?」 「ぶっ!!」 お茶を吹きかけた。 ついでに、気管にお茶が入って、さらには手の中にあるコップを落としかけた。 そんな慌ただしい今の心境をゲームに例えると、グラフィックでエネミーエンカウントするRPGのプレイ中、 目視出来ない敵にバックアタック食らった感じだ。 一見冷静に例えてるけど、実際は唐突かつ意外な不意打ちに、咽せつつも頭の中はぐちゃぐちゃになってた。 「こ、こなちゃん、大丈夫!??」 「げほっ!げほっ!」 本気とかいてマジで心配そうな顔なつかさに、咽せつつもジェスチャーで大丈夫と意思表示しておく。 まぁ咽せた原因は間違いなくつかさにあって、本人はそんなこと露にも思ってないのはさすがだと思う。 一通り咳き込んですっきりしてから、一方すっきりとは程遠い頭を稼働させた。 つかさの質問の意図は解らないけど、言葉の意味は理解できる。 「かがみのことが好きか?」と言われれば、もちろんYesだ。 だから、私は口を開いた。 「私は」 なのに。 何故か言葉が続かない。もう一度喉へ風を通す。 「私は…!」 ── かがみのことが好き。 またしても、肝心なところは音にならなかった。 答えは出てるのに、どうして言えないのだろうかと、自分を顧みる。 ── ああ、そうか。 常識的に考えればすぐにわかることだった。 私の口を止めていたのは、僅かに残っていた常識なのだ。 人と人とが好き合うことに問題はない── けど、それは世間一般の常識の範疇である同性間や異性間に生まれるのは友情、 または特定の異性に対して恋愛感情を抱くことに問題ないだけだ。 私もその常識の中にいて、ずっとリアル同性趣味はないと豪語していたのに。 ──ふたを開けてみれば、私はかがみを好きになっていた。 同性の、しかも抱いてる感情は限りなく恋愛寄りなものであって、友情じゃ留まれないくらい強い想い。 そんな私の想いは、日本という世間では冷たい目で見られる上に、 かがみの家族であるつかさに、非常識を一方的に突きつけていいはずがない。 そんな常識が、私の口を止めていた。 「…それともこなちゃんは、お姉ちゃんのこと…嫌い?」 しばしの間の後、背に刺さる言葉。 いや、この痛みはもっと深いところに刺さったんだろう。 《かがみのこと嫌い?》 その一部だけが頭の中で反復され、心の中の何かが軋む音がした。 「そんなことない!嫌いなんかじゃない!」 脊髄反射ともいうのだろうか。 気付けば、語尾を強めた言葉を返しながら振り返っていた。 思ったよりつかさとの距離が近くて、驚いたのもつかの間。 彼女の持っているほんわかした雰囲気で忘れがちだけど、つかさは私より目線一個分身長が高い。 そんな身体的な特徴や、今、つかさが纏っている空気に、表情のせいもあるのかもしれないけど。 …記憶の中のかがみの面影と、目の前にいるつかさが重なって見えて、私はつかさに釘付けになった。 かがみが、泣いている私を抱き締めてくれたときと、同じ優しさが、 あのとき同様に、“我慢しなくていい”と言われてるような感覚に、私の気持ちを抑えつけていたものを取り除いていく。 「かがみのこと…かがみのこと」 つばを飲んで、想いを吐き出す準備をして。 「嫌いじゃないよ…」 このときの私は、紡いだ言葉と共に素直な想いを篭城していた常識が取り除かれて。 「むしろ…好き、大好きなんだよ!」 ── 私は完全に、自分の想いに飲まれていた。 「友達として、じゃなくて…多分、恋愛感情的な意味で。 つかさに言うような事じゃないし、気持ち悪いって思われても仕方ない。 女同士で、こんな気持ち抱くのは間違いだって、自分でもわかってるんだよ。 でも、そんなこと関係ないって、周りにどう思われてもいいって思っちゃうくらい、かがみが好き──」 そこまでいって、ようやく口の暴走が止まる。 雰囲気に飲み込まれた自我が、目の前にいるつかさの笑顔を確認したとき、そろっと帰ってきた。 想いの相手に伝えたわけじゃないのに、今の自分は間違いなく愛の告白をしているわけで。 沸き上がる羞恥心が顔を赤に染め上げるには、そう時間は掛からなかった。 顔が熱い。 ── は、恥ずかしすぎる…。 そんな私をつかさは見続けていた。 ある種の羞恥プレイに心は悶えながら、身体は頭を抱え込んで、とりあえずつかさの視線から逃亡を図る。 「あ、いや…その、つかさ、今の…一部忘れてくれると、助かるんだけど…」 絞りだした私の言葉と様子を見てか、つかさは声を出して笑っていた。 馬鹿にするような笑いじゃないのは、顔を見ていなくても解ったから、気が済むまでそのままにしようと思う。 しばらくして、幾分か落ち着きを取り戻した顔の温度を確認した後、抱え込んでいた手を離した。 「あははっ、ご、ごめんね、こなちゃん。こなちゃんの慌て方が楽しくてつい…」 目の前にいるつかさは、先程見たかがみの面影はすでにないものの、笑顔は健在のまま、本当に嬉しそうに笑っていた。 「つかさ、そ、そんなに笑わなくてもいいじゃん」 心から怒ってなんかない、上辺だけの悪態でコミュニケーションをとる。 こうやって、私が弄られる立場に立つ事は滅多になかっただけに、新鮮味があった。 つかさは目に溜めた涙をスッと拭って、もう一度「ごめんね」と謝罪を入れてから。 「私ね、こなちゃんからその言葉聞きたかったんだ」 屈託のない笑顔を浮かべて、つかさはそう言いきった。 コメントフォーム 名前 コメント ここで終わりなんて嫌だ‼︎ どうか続きを書いて、ください...泣 完結した後にGJ!って叫び、たいんです…泣 だから、いつまでも待つので、どうか…orz -- 名無しさん (2022-12-23 23 33 13) 今でも続き待ってます -- 名無しさん (2019-11-04 22 50 12) 続き待ってます… -- 名無しさん (2018-06-22 23 13 58) 今でも待ってます -- 名無しさん (2017-11-30 13 39 57) 続き···待ってます -- 名無しさん (2014-08-25 00 57 36) 続き今でもお待ちしております……… -- 名無しさん (2014-03-23 09 53 08) つかさ………‥“すべてお見通しですか? -- かがみんラブ (2012-09-25 21 22 19) 諦めたらおわりだよね…? -- 名無しさん (2012-03-01 15 51 47) 続編を待って早2年・・・でも作者様を信じて待つのみ。 -- kk (2010-09-20 01 00 45) 続きがすごく楽しみです!いつ迄も待ってます。 -- 名無しさん (2010-09-19 14 27 49) 目が放せない展開ですね 続編待ってます -- 名無しさん (2010-04-24 18 12 25) 最高です!期待して続き待ってますw -- 名無しさん (2008-10-19 20 33 27) すれ違い出会わなかった2人が偶然出会い、絆を深めてゆく描写がとても好きです。 これから2人の関係はどうなるのか(かがみの記憶が戻ったらこなたとの日々は忘れてしますのか?)、 とても気になります。 続きを期待して待っています。 -- 名無しさん (2008-10-13 01 05 15) かがみならこなたのことを忘れるはずがない。 二人の間には記憶以上の繋がりがあるはず。 彼女たちに明るい未来が必ず来ると信じながら、続きを楽しみに待っています。 -- 18-236 (2008-10-04 18 34 59) 続き楽しみにしてますw -- 名無しさん (2008-06-26 02 02 36) ブログに執筆再開って書いてらっしゃいましたよ。まぁのんびり待ちましょうや。 -- 名無しさん (2008-05-26 20 57 39) どうか続きをお願いします。 -- 名無しさん (2008-05-26 18 41 06) ↓同じく・・・首を長~くして待ってます。 -- kk (2008-05-18 21 51 12) 続き、まだかなぁ…… -- 名無しさん (2008-05-18 10 42 34)