約 3,515,149 件
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/1273.html
ロンリー・ラック 23KB 悲劇 観察 自業自得 自滅 家族崩壊 ツガイ 赤子・子供 都会 現代 うんしー 七作目 「ロンリー・ラック」 ・「ふたば系ゆっくりいじめ 592 コールド・ソング」の続編という形を取っています。 ・人間視点ですが主軸はゆっくりです ・駄文注意 ・いくつかの独自設定を使っています ・セールスあきさんの「未熟ゆっくり」の設定を使わせていただいております。 ・うんしー注意 ・善良?なゆっくりがひどい目にあいますご注意を ・自滅モノです 冬、空はまるで突き抜けるような雲ひとつない光景。 燦々と輝く太陽が眩しいとすら感じる。だが今は冬、肌を刺すような冷たい風が過酷な環境だと言う現実に私を引き戻す。 私の「観察」は続く。冬のゆっくりのダイレクトな姿を、別の側面を捉えたいのだ。 …そこに意味などないのかもしれない。だが名もなく、人々の記憶にも残らず、時に蔑まれる街のゆっくりの姿を少しでも残しておきたいと私は思っていた。 その日、忘れ去られた様な寂れた高架下で私は変わった子ゆっくりを持つ「捨てゆっくり」に出会った。 高架下、上ではブンブンと車が行き交うその下は驚くほどに退廃的で、荒涼とした風景が広がっている。 うす暗く、廃棄されたゴミやベンチを見るに、使われなくなったゲートボール場の様だ。 高架下の支柱にもたれるように置かれたベンチの下に、そのゆっくり達はいた。 羽付きがこっちへ来いとせかす。私は高架下に入ってそのベンチの下をのぞき込んでいった。 ダンボールで風よけを作っているその奥に、二匹のゆっくりが警戒しながらこちらの様子をうかがっている。 トンガリ帽子に砂糖細工の金の髪と赤いリボンに左右のピコピコ、あれは「ゆっくりれいむ」と「ゆっくりまりさ」だ。 見たところ二匹だけの様だ。そう思っていたが急にまりさの帽子から何かがピョコンと複数飛び出て来る。 「ゆわ!?なんなのぜこれは!?」 羽付きが驚きの声を上げた。私もそれを見て違和感の様なものを感じる。 「ゆっきゅり!ゆっきゅり!」 「あみゃあみゃ!あみゃあみゃ!」 「むきゅ!むきゅ!」 三匹の赤ゆっくり「らしき」ゆっくりがそこにいた。 何と形容していいか分からない。新種か何かだろうか? サイズは赤ゆっくりよりさらに一回り小さいプチトマトの様なサイズだ。 サイズはまだいい。問題はその風貌である。 通常ゆっくりの「砂糖細工の髪」と言うのは地面に垂れるほど…とはいかずとも側面まで生えている筈だ。 だがこのゆっくりは頭頂部から上部の一部。形容するならまるで「カッパの皿」の様な生え方をしていた。 一匹の赤ゆっくりらしき饅頭は小麦粉の皮が陰になって見えなくなるほど小さいがリボンの様な物があり、殆ど頭と平行についた「ピコピコらしきもの」が動いている。恐らくは「れいむ種」だろう。 もう一匹は柿のヘタのような物が頭に乗っかっている。何かと見れば小さなトンガリ帽子の様だ。 かろうじて左の砂糖細工の髪がわずかに伸びている。そして金…と言うより黄色がかった色…恐らくではあるがこれは「まりさ種」であろうか? 一体これはどういう事なのだろうか?全く見たことのない未知のものを見た時の様な恐怖が私の背筋を冷たくさせていた。 最後の一匹は、泣き声で分かる。「ぱちゅりー種」だ。 だが私の知っているぱちゅりー種とは大きく何かが違う。 これも側面についている地面にたれる程の「モミアゲ」部分が殆ど頭と平行についている。周りの髪と比べてわずかに長いという程度で飛び跳ねるたびに上下にビュンビュンと振れていた。 帽子…は髪に埋もれるように小さくあるようだ。 寒天の目が顔のパーツのほとんどを占めているため「ギョロ目」の様になっておりそれが違和感からくる気持ち悪さの原因になっていた。 言葉も話せないようだ。一様に「むきゅ」「ゆっきゅち」「あみゃあみゃ」等しか言わない。 私の足もとで跳ねているそれらを見て、二匹のゆっくりが飛び出してきた。 「おぢびぢゃんでぢゃだめでじょおおおおおおおお!?」 「ゆ、ゆっくりかえってね!れ、れいむおこるよ!」 同じ事を壊れたラジカセの様に繰り返す赤ゆっくり達を庇うように帽子の中に詰めていくまりさ。 そして私と羽付きの前で動揺しながらも大きく膨れて威嚇しているれいむ。 「なにかかんちがいしてるようだけどまりさたちはべつになにもするきはないんだぜ」 羽付きが冷静に話を進める。 最初は懐疑的だったれいむとまりさも羽付きの説得により、ようやく落ち着いた様だ。 私はメモ帳を片手に赤ゆっくりの特徴を書き、そしてなぜそのゆっくり達の生い立ちとこれまでのいきさつを聞いていた。 まりさ一家が話した言葉を整理するとこうだ。 元々、このゆっくり達は二匹とも同じ場所で飼われている銀バッジの飼いゆっくりであった。 バスケットボールサイズに大きくなる頃に、「すっきり禁止」を破ってしまい、れいむの頭に蔓が生えてしまう。 それが見つかり蔓を引き抜かれた上で外へ叩きだされたそうだ。 当然の事だが蔓が引き抜かれると実ゆっくりは枯れてしまう。それを阻止するためにれいむ自らが機転を利かせて餡子を吐き出し水で薄めた液体に蔓をつけたそうだ。 蔓には全部で五つの実がなっていたが、結局生まれたのは三つ。その内一つは生まれるはずのないぱちゅりー種だった。 だが自分の子ゆっくりである事には変わりない。ひいきもせず愛情を注いでいる、との事だ。 「おうち」の中をのぞかせてもらった私は信じられない光景を目にした。 そこにあるのはいくつかの菓子パンとゆっくりフードの空き箱、そしてボロボロの毛布と、ゆっくりの言葉を借りるなら「ふかふか」がそこにあった。 羽付きも私も怪訝に思った。捨てゆっくりの様なゆっくりが毛布ならまだしも、ここまで新しい菓子類をこんなに手に入れる事は通常ありえないはずだ。 羽付きは「これはどこでてにいれたのかぜ?」と聞いた。それに対してれいむとまりさはこう言った 「ゆゆ…にんげんさんがおいていってくれたんだよ…」 「まりさたちはこれからおちびちゃんたちとゆっくりしてからごはんさんをさがしにいくんだよ!」 どうやら、おいていった食料が底をついたのはあまり前の事ではない様だ。これだけのものを手心で置いていっただけでも相当恵まれていると言っていいだろう。 私はさっきから足もとで喚く赤ゆっくり三匹を眺めて考える。唯一種類の違うぱちゅりー種… 記憶の奥底である事を閃くように思い出した。これは「取り替え子ゆっくり」ではないだろうか? 「取り替え子」という物が稀に番いのゆっくりから生まれる。様は番いの組み合わから生まれるはずのないゆっくりが生まれるのだ。 取り替え子ゆっくりの凄い所は「幸運」である事だ。いくつかの資料にや文献では、取り替え子は飼いゆっくりになるといった話が多々見受けられる。 と、言う事はこの捨てゆっくり達はその恩恵のお陰で生き残れているのだろうか? 俄かに信じがたい話だが、(ゆっくりにとって)生き抜く知恵も力も常に試され続ける過酷なこの街で生き残っていると言う事実を目にして、それが真実だと思わざる負えなかった。 私はそのまりさ一家に話を聞き、一旦その場から離れて様子がうかがえる所で一旦休憩をとる。 道中、羽付きにその話をした。羽付きもかなり意外そうな顔だ。 「ゆぅぅ…まりさがしってるゆっくりのなかにもそんなのはいくつかきいたけど、まさかそんなとくべつなゆっくりとはおもわなかったんだぜ」 「野良ゆっくりは必ず潰してしまうかぞんざいな扱いをするからと聞いているからね…」 「ゆゆ、たしかにそうだぜ。「ゆっくりできないゆっくり」といってつぶしてしまうのがふつうだとおもってたぜ!そもそも「ゆっくりできるゆっくり」なんてまりさはつむりぐらいしかきいたことがないんだぜ」 羽付きでも知らない事があるらしい。それが私にとっては一番の驚きだ(当たり前の話だが私にはどうしても羽付きが何でも知っているイメージが先行してしまっているので驚くという感情をもったのだろう) これでとても興味が出てきた。それほどラッキーなゆっくりを育てる捨てゆっくり一家、生活はどうなっているのか。ますます興味がわく。 高揚していく気分の中で脳裏にフッとある考えが出てきた。取り替え子ぱちゅりーはタダでさえ種類的に脆弱だ。 更に赤ゆっくりならぬ「未熟ゆっくり」である。いくら幸運が舞い降りると言えこの季節にこの街だ。厳しいかもしれない。 改めて様子を見てみる。 二匹のれいむとまりさは「おうち」の奥で小麦粉の皮をくっつけてニコニコと笑っていた。 その前にあいた僅かなスペースで赤ゆっくりがピョコピョコと跳ねまわっていた。 「ゆっきゅちゆっきゅち!」 「ゆゆ!ゆっきゅち!ゆ!」 「むきゅ!むっきゅ!」 見るたびに思うが何か不気味だ。前述したような見慣れないものを見た時の違和感がそのまま恐怖心に変わったような感情を私は感じていた。 「ゆ!おちびちゃんたちとってもゆっくりしてるね!」 まりさがそう言った。れいむはその言葉を聞きながらうれしそうに左右のピコピコを揺らす。 不意に赤ゆっくり達がプルプルと震えはじめた。 何をするかと思えば毛布の上であにゃるを出してうんうんをし始める。 「「ちゅっきり!ちゅっきりー!」」 わずかな量ではあるがシツケがなっていないようだ。れいむが舌を伸ばしてうんうんを掴むと外へ投げだした。 元飼いゆっくりと言う事は「トイレ」の概念を持っているはずである。それをいくらまだいくつかの単語しかしゃべれないとはいえ咎めもしないあたり、私はこの番いがなぜ捨てられたかなんとなくわかった気がした。 羽付きも怪訝な顔でその様子を眺めている。恐らくではあるが「取り替え子ゆっくり」の話をまだ信じていないようだ。私だってそんな話を聞いただけで実際検証も確信も統計も得られていない様な雲をつかむ話なのだ。 「街」という「現実」が集まって作られた様な場所で生き抜いている羽付きが半信半疑なのは当然だろう。 相も変わらずまりさ一家の日常が私の目の前で続いていた。 不意に赤まりさが何かを言いかけている。騒ぐれいむとまりさを見れば、いやでも耳に入った。 「ゆっきゅち!だ、だっきゅち!だ、だじ!…じぇ!」 「ゆゆううう!!おちびちゃんがあたらしくなにかしゃべろうとしているよ!」 「ゆ!まりさ!?ほんとだ!おちびちゃんゆっくりがんばってね!」 喋る言葉とは何なのだろうか?と私が羽付きに聞くと興味が無いようにさらっと答える。 「ゆゆぅ…たぶん"だぜ"だとおもうんだぜ…まだうまれたてのあかゆっくりがおしえてもいないのにおぼえるってことはぎんばっじのなかでもわるいほうのあんこをついだゆっくりだとおもうんだぜ」 羽付きが説明してくれた。 ゆっくりは餡子の中に記憶を引き継ぐ。 なのであの赤まりさが「だぜ」口調でもなんでもないまりさからなにも教わってもないのに覚えようとしているのは恐らくあのまりさの親ゆっくりの片方が「だぜ」と言う喋り方をしていたか、もしくはあのまりさが「だぜ口調」を矯正されたかの二択という話だ。(羽付きがどうなのかは分からないが少なくとも聞ける雰囲気ではなかった) さて、まりさ一家に目を向ける。「ゆっくりがんばってね!」とはやし立てる横で「ゆっきゅち!ゆっきゅち!」だの「むきゅむきゅ!」だのと言って周りを跳ねまわっている赤ゆっくり二匹が非常にシュールだ。 「ゆっきゅ!だ、だ!じぇ!だじぇ!だじぇ!」 「ゆゆゆうううううううううううん!!までぃざああああああああ!!すごいよおおおおおおお!!」 「さすがまりさとれいむのこゆっくりなんだぜええええええええええ!」 「までぃざあああああああああ!!すーりすーりいいいいいいいいい!!」 「でいぶううううううう!!すーりすーりいいいいいいいいいいい!!」 また同じように「だじぇ!だじぇ!」と繰り返し続ける赤まりさを見ながら寒天の両目から涙とそして口からよだれを撒き散らしてすーりすーりをしているまりさとれいむ。 羽付きが一言「喜ぶことじゃないだろう」と言ったのが一番鮮明に記憶に残っている。 ここまでは感動的な光景だ。確かに私が今まで観察してきたゆっくりの中では最も幸せなゆっくり達なのかもしれない。 喜んですっきりでもするのかという速度ですーりすーりを繰り返すまりさとれいむを見ながら考えていた。食料も尽きたのになぜそんなに能天気なのか?と 喜ぶのもつかの間、まりさが急に眉をキリッとさせて厳格にこう切り出した。 「ゆゆ!これからごはんさんをとりにいくよ!」とまりさが言った。 それにれいむが「ゆっくりわかったよ!」と答える。 まりさは帽子を頭から取り払い、舌で丁重に赤ゆっくりを頭の上に載せ、蓋をするように帽子をかぶる。 私はその光景に目を疑った。いくらなんでも不用心すぎるのではないだろうか?食料は食いつくしてないからとはいえ、まだ「おうち」には毛布が残っているのだ。 帽子の中で「だじぇ!だじぇ!」とか「ゆっきゅち!」とか「むきゅ!」とかの声が聞こえる。そんなに跳ねまわっては帽子から転がり落ちてしまうのではないだろうかという勢いの様だ。 「「ゆっくりいってきます!」」と何もない「おうち」に言うとそのまま高架下から勢いよく跳ねだしていった。 羽付きが追う。私もその後ろをついていった。捨てゆっくりの狩りとは一体どのような物なのだろうか? ―−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ゆ!ゆ!おちびちゃんゆっくりうごかないでね!おちちゃうよ!」 まりさが帽子を気遣いながら跳ねていた。スピードは赤ゆっくりを気遣ってかかなり遅い。 「ゆゆ!おちびちゃんまりさをこまらせないでね!」 れいむがなだめ様にも赤ゆっくり達は飛び跳ねるのを止めないみたいだ。 どうやら「だじぇ」と喋れるようになったのが余程うれしいらしい。周りの赤れいむや赤ぱちゅりーにも波及して手に負えない程に跳ねまわっている様だ。 「ゆゆう…しかたないよ…おぼうしさんからいったんだすね…おちびちゃんたちだいじょうぶかな…」 「ゆっくりだいじょうぶだよ!いつももうふさんやくささんのうえをげんきにかけっこしてるんだからかたいじめんさんのうえでもだいじょうぶだよ!」 まりさが帽子を舌で取り払う。コロンと三つの赤ゆっくりが飛び出て来た。 左右のピコピコやおさげ、もみあげを上下に振りながら「ゆっきゅち!ゆっきゅち!」「だじぇ!だじぇ!」「むきゅ!むきゅ!」と各々が言って跳ねまわる。 「おちびちゃんたちゆっくりついてきてね!」 まりさが飛び跳ねる。その後ろを赤ゆっくりが跳ねまわってついていき、最後にれいむが赤ゆっくりの後ろをついて跳ねるといった構図だ。 中々考えている様だがすぐに陣形が横並びに左からまりさ、赤ゆっくり、れいむに変わったりと不規則になっている。あれではあまり意味がない。 元気よく跳ねまわる赤ゆっくりの姿は秋頃よく見かけた茶色ともネズミ色ともつかないバッタを彷彿とさせた。あのバッタの名は前なんて言うんだろうか…そんな事を考えながらついていく。 あのまりさの口ぶりからするにアスファルトの上を跳ねるのはどうやら初めての様だ。高架下は剥き出しの砂粒の上だが下生えの雑草が生えているためそれほど負担にならなかったのだろう。 だが、私の考えに反して中々元気に跳ねまわっている様だ。 道を歩いていると人通りの少ない歩道の端に空き缶が立てられていた。 まりさ一家がそれを見つけたようだ。一斉に跳ねて回りをぐるりと囲む。 まりさが舌でグイグイと押すが簡単に倒れず底の方を支点にぐるぐるとまわっている。誰かが飲みかけを放置した様だ。(ゆっくり達がひっくり返したりするのでしない方が好ましいとされている) 「ゆ!あまあまさんがはいってるかもしれないよ!」 まりさがそう言うとれいむはこう答えた。 「まりさはつつさんをたおしてね!れいむはころがしてあまあまさんをだすよ!」 「ゆっくりわかったよ!ゆ!」 まりさがそう答えて缶を体当たりで倒す。中からコポンと音がして何か液体がでだした。 れいむが舌で転がして缶の口を下にする。コポコポと液体がこぼれ出た。 「ゆゆ!おいしそうだね!ゆっくりごーくごーくするよ!」 れいむが先んじて舌を伸ばす。赤ゆっくり達がそれに気づいて急いで跳ねてきていた。 羽付きが声を押し殺しながら叫ぶ。 「にんげんさん…!あれ…!」 私も気づいた。あの水たまりの様になった液体の色合い、あれは明らかに… 「ごーくごーく…ゆげええええええええええええええええ!!??」 「「ゆっきゅち!?」」 「れ、れいむ?」 地面に口をつけて啜る様に空き缶の残りを飲んだれいむが突如拳大の大きさの餡子を吐き出した。餡子と砂糖水が混ざった液体も一緒でビチャビチャと音がする。 羽付きと私が気づいたもの、それは腐敗だった。 辺り前だ。飲みかけで開封済みのジュースを道の端に置いている物を飲むなんて自殺行為だ。 腐っていたら大変だ。つまりれいむはその「大変な物」にあたってしまったのである。 缶に書いてあるのは牛乳を使った飲料。腐れば酸味と苦味がマッチした凄まじい「刺激物」となるはずだ。刺激物はゆっくりにとっては猛毒に等しいもの。それを飲み込んだれいむは餡子を吐き出し始めたというわけだ(そもそもなぜ臭いで気がつかなかったのだろうか?) 「でいぶうううううう!!ゆっぐりなおっでね!ぺーろぺーろ!」 「ゆっきゅ!ゆっきゅち!」 「だじぇ!ゆっきゅちだじぇ!」 「むきゅ!」 まりさがれいむをぺーろぺーろし始める。相も変わらず赤ゆっくり達はれいむの周りを飛び跳ねていた。 だが吐き出すゆっくりに対してぺーろぺーろしたところで何の意味もない。 「ゆごっ!ゆげっゆごぶぐぇ!ゆげぇぇえええええ…ゆげほ!ゆごほ!!!ゆげぇぇ…!!」 砂糖水と餡子が混ざり合ったような液体を吐き出しながらせき込むれいむ。バスケットボール大のゆっくりが拳大の餡子を吐き出した位では死にはしないがしばらく動けないだろう。 すぐにれいむが寒天の目をグリンと上に向けて痙攣を始めた。これはゆっくりが急激に餡子が無くなった時に起こる症状だ。致死量ではないが急激に餡子を吐き出した時でも、異物が饅頭内に残っているため暫くこんな行動を起こす。 まりさはれいむのピコピコを口で掴むと後ろ向きで引っ張る様にズルズルと移動を始めた。狩りはこれでおしまいの様だ。 周りには赤ゆっくり達が相も変わらず跳ねまわって付いていっている。 羽付きがやれやれといった表情で解説を始めた。 曰く、番いが両方とも捨てゆっくりだった場合、あの様に人間が作ったものしか食べ物として認識しないらしい。 確かに道中食べられそうな雑草があっても見向きもしなかった。それはあのゆっくり達が食料として認識していないからとの事だ。 そして一番の不幸は「痛んだ物」をも認識できないその知識量にある。見た事があるものでもそれは「腐っている」と分からない。物が腐ると言う現象すら知らないのだ。 あのまりさ一家の末路はどうなるか、私は羽付きにそれを聞いてみた。羽付きは鼻で笑うとこう言った。 「まずあのれいむはもうだめだぜ。たぶんあのまりさがぺーろぺーろしまくってさらにぽんぽんをひやしてうんうんのだしすぎですぐにみいらだぜ」 私はまりさ一家に目を向ける。 「ゆ!ゆううう!いまおうちにかえるからね!あまあまさんをたべてゆっくりやすめばなおるよ!」 「ゆ”!ゆ”!ゆ”!ゆ”!」 「「「ゆっきゅちちちぇぇ!」」」 バラバラに言っていた赤ゆっくり達が初めてハモった。 新しい言葉だがそれを喜ぶ暇は当然の様にないようだ。 れいむを心配しているわけではなく、その表情から察するに相手をしてくれない事に対しての言葉だろうか? 十分かけてようやく高架下につく。 まりさ一家は巣に入って必死にれいむをぺーろぺーろしている。 「ゆ!ゆ!れいむだいじょうぶ!?ぺーろぺーろ!」 「ゆ”!ゆ”!ぽんぽんいだいいいいい…!」 れいむの方が小麦粉の皮に玉の様な砂糖水の汗をびっしりとかいて苦しんでいる。グネグネと動きながらビチビチのうんうんがあにゃるから流れるように出ている。 赤ぱちゅりー…もとい赤ゆっくりはと言うと。 「「ちゅーやちゅーや…」」と三匹仲良くおうちの入り口近くで横にこかす様に置かれたまりさの帽子の中で小麦粉の皮を寄せ合って眠っていた。疲れたようだ。 恐らくまりさが帽子と赤ゆっくりがうんうんで汚れないようにするために脱いでおいてあるのだろう。 まりさが毛布についたうんうんを舌で外に捨てる。だがいくらやってもキリがない。 うんうんを捨て去った後は、まりさはれいむをぺーろぺーろしはじめる。 さっきからうんうんを捨ててはぺーろぺーろしてそしてまたうんうんが出ては捨てての繰り返しだ。 「あんこさんがなくなったらでいぶがゆっぐりでぎないよおおおお!!あんござんゆっぐりどまっでね!ぺーろぺーろ!」 「ゆ”うううう!!なべないでぇぇえええっ!」 まりさがれいむの下部分をぺーろぺーろする。だが隙間風が入るぐらいには風のある冬の日に、そんな小麦粉の皮を冷やす様な事をしていては、治るものも治らない。当然れいむの「びちうん」(お汁粉)は激しさを増す。 れいむがうんうんをびちびちとひり出しながらグネグネと動いて叫ぶ。砂糖水の涙と涎、そして液体状の餡子にまみれたその姿は今食事中なら思わず吐き出しそうな光景だった。(いくらただの餡子とはいえ精神衛生上気味が悪すぎる) 「でぢゃううううう!!ゆぎぎぃぃ…!」 「あ”あ”あ”あ”!!でいぶうううう!?」 今度はれいむが苦しそうに上を向いてあにゃるを向ける。 あにゃるの先にはまりさの帽子の内部、つまり赤ゆっくりが眠っている場所にロックオンされていた。 「ゆぐぐぐ・・・うんうんがどまらないぃぃ・・・!!」 「ゆ!?まってね!ゆっくりがまんしてね!まりさのおぼうしさんをいまどけるからね!」 まりさが舌で帽子をどけようとする。その時目覚めた赤ぱちゅりーがすぐさまモミアゲを上下に振るってピョコンと跳ねた。 「むきゅ!」 「ゆゆうう!?」 着地場所がまりさの舌の先だったのがまずかった。赤ぱちゅりーはもう一度跳ねて帽子の外へと出てしまったが、最初のジャンプでまりさの舌は帽子から一瞬離れてしまっていた。それが命取りとなる。 「ゆぐぐぐ・・・!ぼうだべえええええええ!!でるうううううううう!!」 「でいぶやべでええええええええええ!!」 その声に目覚めたのか、赤まりさと赤れいむがパッチリと目を開けた。 あにゃるをこちらに向けて砂糖細工の歯を食いしばっている凄まじい表情のれいむと泣き叫ぶまりさの姿がその時見えたのではないかと私は後に推測する。 「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!ずっぎりいいいいいいいいいいいい!!」 れいむのあにゃるからびちうん(お汁粉)が勢いよく噴き出した。その勢いはまるで土石流 落ち行く先はまりさの帽子と中にいる赤まりさと赤れいむだった。 うんうんまみれになったまりさの帽子を見てまりさが叫ぶ。 「までぃざのおぼうじざんがああああああああああああああああ!!でいぶのばがあああああああああああ!!」 「ゆ”!ゆ”!ゆ”!」 れいむは最後に凄まじい勢いでうんうんを噴き出すとそのまま中の餡子が無くなったのか、寒天の目が白目をむいて痙攣したまま最後に大きく小麦粉の体を跳ねさせるとそのまま動かなくなってしまった。 私には帽子の中の様子がよく見えなかった。まりさが口で帽子の唾を掴んでブンっと振るとうんうんにまみれた赤れいむと赤まりさが出てくる。 そこで私はようやく大量のうんうんにまみれた赤れいむと赤まりさを見ることになる。 「ゆっぐりまっででね!いばまでぃざがうんうんをどるがらね!ぺーろぺーろ!」 まりさが必死にぺーろぺーろしてうんうんを取り払うがぴくりとも動かない。うんうんをぶっかけられたショックでそのまま物言わぬ饅頭となってしまったようだ。 「あ”あ”あ”あ”!?おぢびぢゃんんんんんんんんんんんん!?」 まりさの叫び声が辺りにこだました。 「ゆげぇ…いくらなんでもひどすぎるんだぜ…あれは…」 羽付きがえずくほどの光景がそこにあった。今度はまりさが必死に舌で帽子にこびりついたうんうんをなめとっている。 その真ん中で唯一無事だった赤ぱちゅりーが「むきゅ!むきゅ!」と元気に跳ねまわっていた。 それなりに綺麗になった帽子をかぶってまりさとれいむが叫ぶ。 「おぢびぢゃんんんんんんんんん!!ぶじだっだんだねええええええ!!よがっだよおおおおおおお!!すーりすーりいいいいいいいい!!」 「むきゅ!ちゅーりちゅーり!」 砂糖水の涙と涎を垂れ流しながらうんうんまみれの小麦粉の皮をすーりすーりする光景。感動もへったくれもない。その汚さに流石に私も辟易とした。 ようやく落ち着きを取り戻したようだが、問題はこれからであった。 「ゆ・・・ゆ・・・れいぶううう・・・おぢびぢゃん・・・」 かつてゆっくりだったれいむと赤ゆっくりにまりさが目を向ける。 私が遠めに見たかぎりでだが、れいむと赤れいむ、そして赤まりさは凄まじい形相で倒れ伏していた。 カピカピに干からびて寒天の白目をむいているれいむ。小麦粉の皮が水分をなくし、ひび割れが入っている程だ。 赤れいむと赤まりさはうんうんがどけられると舌を投げだしこれも同じように寒天の両目を白目になったまま物言わぬ饅頭となり果ててしまっていた。 「ゆ”!ゆ”!れいむ…おちびちゃんたち…おそらでゆっくりしててね…!」 まりさはそれを見て泣いている様だ。殆ど自分が原因だと言う事に気づいていないのが何とも言えずお粗末な物として私の目に映った。 まりさはくるっと振り返り、赤ぱちゅりーの方を向くとこう言った。 「いなくなったれいむやおちぢちゃんのぶんまでゆっくりしようね…!」 「むきゅ!ゆっきゅち!」 何とも感動的な光景だ。羽付きがその光景を嫌悪感を剥き出しにして見ながら、こう私に行った。 「もういいとおもうんだぜ…はやくかえるんだぜ…どうせあんなようすじゃあしたにはゆっくりできなくなってるんだぜ…」 一刻も早くどこかへ行ってしまいたいようだ。仕方がないので私と羽付きはそのまま引き上げることにする。 捨てまりさの決意を見た私は、そのまま羽付きとともに引き上げていった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー それから次の日、私と羽付きはあの「うんうんまりさ」と赤ぱちゅりーの様子を見るために再び高架下へとやってきていた。 様子が気になったからだ。 さて高架下のベンチの下へとやってくると羽付きが言ったとおり「うんうんまりさ」は頭から大量の蔓を生やしてそのまま小麦粉の皮だけとなって仲良くれいむだった饅頭の横で突っ伏して倒れていた。 どうやら昨日の騒音を聞きつけたいくつかのありすにすっきりし殺されたようだ。 蔓の先に生えている萎れた実を木の棒でつつきながら羽付きが呟く。 「やっぱりまりさのおもったとおりなんだぜ。あれだけさわげばおうちのいちをれいぱーありすにおしえるようなものなんだぜ」 基本的に街ゆっくりは自身の巣の周りではあまり騒がない。それはその音を聞きつけてやってくるありすやゲスゆっくり、しいてはれみりゃやふらん対策のためである。 羽付きが言うには、他の街ゆっくりの中でも警戒心が強いゆっくりは「おうち」を複数持っているという。 雨が降った時や何か危険が身に迫った時は近くの方の巣へ避難するためという意味合いがあるといった。 その話を聞きながら、ふと気になった。そういえば昨日の赤ぱちゅりーはどこだろうか? その時、うんうんまりさの横に落ちていた帽子の唾がモゾモゾと動いた。どけてみるとあの赤ぱちゅりーが元気よく飛び跳ねてくる。 「むきゅ!ゆっきゅち!ゆっきゅち!」 全く無傷なその姿を見て羽付きが半ばあきれるように驚いた。 「たすかってたのかぜ!?」 取り換え子ゆっくり、運がいいのは本当なのかもしれない。 私の足もとで飛び跳ねながら何かを口にしている。 「あみゃあみゃ!むきゅ!しゅっ!しゅっき!しゅっきり!あみゃあみゃ!」 あまあまを要求している様だ。そしてありす種の口癖らしきものを叫びながら私の足もとを跳ねまわっている。 跳ねまわる赤ぱちゅりーを尻目に、私は羽付きと一緒に踵を返して高架下を後にする。 あれだけ運のいい赤ぱちゅりーだ。きっと生き残るだろう。 私がそう思いつつ振り返る。羽付きもそれにあわせて赤ぱちゅりーの方を見る。 そのとてもラッキーな赤ぱちゅりーはすでに動かなくなったまりさ一家の周りをピョコピョコとただ孤独に跳ねまわり続けていた。 それからあの赤ぱちゅりーがどうなったか、羽付きが私と別れてすぐに見に行った頃には既にいなくなっていたという話だ。 今頃どこへ行っているのだろうか?少なくともあの赤ぱちゅりーが死ぬと言う事はまずあり得ないだろう。 自分だけが生き残って、周りが不運で淘汰されていく光景は、ある意味赤ぱちゅりーにとっては「アンラッキー」なのかもしれない――― 挿絵 byM1 過去作品 ふたば系ゆっくりいじめ 504 かりすま☆ふぁいたー ふたば系ゆっくりいじめ 516 サバイバル・ウィンター ふたば系ゆっくりいじめ 527 シティ・リベンジャーズ ふたば系ゆっくりいじめ 582 ビルディング・フォレスト ふたば系ゆっくりいじめ 587 バトル・プレイス ふたば系ゆっくりいじめ 592 コールド・ソング トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る ミス…現地の案内人さんが厨二説ってのに変えます -- 2016-05-20 19 52 31 渡部陽一さんは厨二だった説に変わりそう…なんかこれが日常なんだなぁと…色んな野良の生き方があっていいなって思えました。 -- 2016-05-20 19 47 28 こういった、外部の人物が探索に出向く内容だと、案内役が必要不可欠。 で、こういうスラムのような場所に詳しく、かつ他種族(この場合は人間) と交渉できる強かさを持つ、となれば、羽付きのようなキャラクターになるのは 必然。毎度毎度厨二言ってるコメは、そうした事が解らないんだろうな。哀れだ。 まあ当時子供だったんだろうが…、コメントから5年後の今は多少は矯正された のかねえ?w -- 2016-01-18 17 52 06 実話ゆックルズ -- 2015-11-16 01 09 34 厨二コメがくど過ぎる。こいついつも湧くな。 -- 2013-03-25 18 32 32 相変わらずハードな内容だ。でも読んでしまう… -- 2011-10-04 23 23 25 いいや違うっ!ステアウェイトゥゆっげえだっ! -- 2011-07-09 19 54 01 真の馬鹿は自覚が無いっていうしな -- 2011-07-08 23 57 21 厨二厨二言うわりには自分が小学生以下みたいなことしてるのに気がつかないのね -- 2011-07-08 02 34 27 ↓ゆっくりりかいしたよ! -- 2011-03-05 22 56 53 ↓デレても毛ほども嬉しくないツンデレだなwwむしろ害悪だ みんな〜そんな頭悪い荒らしに付き合っちゃだめなんだぜ〜付け上がるから -- 2011-03-05 11 59 53 ↓実は羽付きにことが好きなんでない?ひょっとしてツンデレ? -- 2011-03-05 01 02 23 ↓↓の人は作品に厨二設定があるとキモいって言ってるの?最近のアニメ・マンガはおろか小説(ラノベじゃなくても)や、それこそ東方原作だってなにがしか製作者の作った厨二設定や厨キャラはあるでしょ。世界の村上春樹の小説にだってあるくらいだし。それら全部批判してるわけ? というかなんで他の羽付きSSにも同じこと書いてんの?キモくて嫌なら読まなければいいじゃん。なんで読み続けてるの? -- 2011-03-04 16 18 55 醜く殺されたから安心しろっつってんだろ ここにあるSSが全部だと思って調子こいてるんじゃないよ -- 2011-03-04 13 15 03 ↓ゆあ~ん?いつも連続投稿一人小芝居してる知恵遅れさんなのかぜ? キモい厨二設定はキモいとしか言いようがないのぜ キモ!羽付きとかキモ!キンモ~!キモキモ!! ウォッオゲェッエエエエェェッェ!キモ過ぎて吐いてしまったのぜ -- 2011-03-04 08 50 06 ↓×2こいつっていつもSSにキモイばっかコメントしてる奴じゃない?他に言葉知らないの? -- 2011-03-04 02 53 18 ↓何この頭悪いコメント。 -- 2011-03-04 00 09 59 羽付きがキモ過ぎて どんな話であっても羽付きがキモ過ぎたしか感想が残らないね たぶん羽付きはお帽子を脱ぐと邪気眼が付いてるんだろうな -- 2011-03-03 18 11 19 あのぱちゅりーがどうなったのか、激しく気になるぜ… -- 2010-10-18 23 56 28 どんどん書いて欲しい・・・ -- 2010-06-10 00 36 02
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/1509.html
「ふたば系ゆっくりいじめ 717 売ゆん婦2/コメントログ」
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/2485.html
「ふたば系ゆっくりいじめ 1189 スィークリング/コメントログ」 おもしろかったよー。じかいもたのしみなんだねー。わかるよー。 -- 2010-05-16 13 28 53 ゆっくりできるSSだね -- 2011-06-17 21 30 12 こういう格好いのが似合うのがゆっくりまりさ。くそうざい調子乗りが似合うのもゆっくりまりさ。 -- 2013-03-03 23 42 41
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/960.html
体3 28KB ※『ふたば系ゆっくりいじめ 393 体』『ふたば系ゆっくりいじめ 401 体2』の続きです先にそちらを見なければわからない描写が存在します。 ※俺設定要注意 ※ご都合主義満載です ※虐待されないゆっくりも存在します ※ガ板ネタ 要 注 意!! 体3 先生は喜んでいた。とある『計画』のために街の排ガスなどに汚染されていない野生のゆっくりが欲しかったのだ。そこへ4匹も、それも山からこんなところまで歩いて来れる活きのいいゆっくりを無償・無労働で手に入れることができたのだから。 先生はそれぞれの箱にお菓子を入れ、皆が食べるのに夢中になっている隙に長ぱちゅりーの箱にのみ蓋をして積み込んだ。これによって長に他の連中の言葉を遮らせない。しかもぱちゅりーの箱にのみお菓子を多めに、他3匹には見えない角度で、という徹底ぶりである。 そして車を発車させた。これにより、車は中の会話は誰にも聞けない動く密室と化す。 「やあ君たち!本当は何か別の目的があって山からきたんじゃないのかい?」 「ゆゆっ!?どうしてわかったんだぜ?」 「うん!さっきお話ししたとき、ぱちゅりーが何だかゆっくりしてなかったからね。何かあるんじゃないのかって思ってね!」 「ゆー!すごいよ!実はね……」 先生は人目を気にする心配がなくなったため、鬼意山口調になっていた。 にもかかわらず、ゆっくり達は命の恩人でありお菓子をくれた先生を完全に信用していた。そして、計画をしゃべってしまったのだった。 「へえ…なるほどね」 心の中ではもう踊りたくなるほど喜んだ。 ―――なんということだろう!すぐゆっくりが欲しかった時にこんな好都合なゆっくりが手に入るなんて。まるで腐女子の前の投手と捕手!!!――― 「そうだ!皆今日は疲れただろう。『おにいさん』の家に泊まって、明日ゆっくり帰ればいいよ」 「ゆゆっ!それはめいあんだぜ!さすが『おにいさん』だぜ」 「ゆわーい!おとまりだよ!みんなでおとまりなんてちいさかったときいらいだよ」 「ちこう!ちんこ!ちぃぃぃぃぃぃんぽぅ!」 (むーしゃむーしゃ!むきゅうう!し・あ・わ・せええ!) 当然、この『おにいさん』と『おにいさん』はまったくニュアンスが違う。ゆっくりが「まりさのいえのまりさはまりさのところのまりさといっしょにゆっくりすることにしたんだって」というのと同じである。ただ、人間は漢字でそのニュアンスを区別できる。そう、『鬼意山』と『お兄さん』の違いを…。 なお、ぱちゅりーであればさすがに泊まることは何かと理由を付けて反対しただろうが、「完っ全っ防音!透明な箱Z」(拘束鬼意加工所製、¥3,980)のせいでこの会話を聞くことはかなわない。 計画どおり! 「よし、そうと決まればおにいさんのお家に行こうね。」 といっても元々山になど向かっていなかったので、すぐに到着した。 箱に入れたままゆっくり達を虐待ゆっくり用の待機部屋に入れ、そこでようやく箱から出した。 「ゆわー…。とってもゆっくりしたゆっくりぷれいすだね」 「ここをまr「おにいさんの家だからね」…そ、そうだったんだぜ」 「ちーーーんぽ!」 「むきゅう。なんでこんなことに…?」 ぱちゅりーは一応心配はしていたが、先ほどからお菓子をたくさん食べて満腹に近かったため、警戒心が薄れて実際に何か行動を起こすようなことはしなかった。 そしてゆっくりたちがその場でくつろごうとしたとろで、先生は大きな声で言った。 「あらためていらっしゃいませ!加工所にようこそ!」 「がごうじょはい゛や゛あああああああああああああああああああああ」 「ゆぎゃああああああああああああああああああああああああああああ」 「いいいいいいいいでぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」 「むぎゅううううううう!だましたわねええええええええええええええ」 「ああ、ごめんごめん。説明が足りなかったね。ここはゆっくり加工所じゃなくて人間加工所だよ」 「ああああ…ゆ?どういうことなんだぜ!?」 「君たちは胴が無い人間の子供を探しにきたんだろ?」 「むぎゅ!?どぼじでぞれを!?」 「さっき君のお友達に教えてもらった」 「むぎゅうううううううう。なんでおしえたのーーー!?」 「だってこのおにいさんはゆっくりできるんだぜ!」 「そうだよ!ねー」 「さお!」 「というわけで何で胴が無いのか教えてあげようと思ってね」 「お、おにいさん…ぱちゅりーたちをころさないいの?」 「はっはっは、今回は許してあげるさ。でももうやっちゃだめだぞ。虐待鬼意山に捕まっちゃうかもしれないからな」 ここで普段のぱちゅりーなら本当に許されたのかと警戒したが、先生はとてもゆっくりした人間であり、愛で派であるだろうと認識してしまっていた。偶然助けたことに始まり、意識を逸らせる為にお菓子を多くあげたことでそのような判断を下してしまったのである。 「あ、ありがとう…でもにんげんかこうじょってどういうことなの?」 ぱちゅりーは先ほどの疑問を思い出して質問した。なにせ加工所といったらゆっくりを捕まえ、苦しませて殺すことで有名なのだ。故に『ゆっくり』加工所。つまり『人間』加工所と言ったら人間を捕まえてを殺す場所という意味になってしまう。 そしてその疑問に応えるべく先生は笑顔で説明を始めた。 「君ちは人間が生まれた時は胴が無いのは理解しているかい?当然だよね。捕食種だって最初は胴無しなんだもの。そっくりな人間が最初から胴があるわけないもんね」 「ゆー!おさのいったとおりなんだぜ!」 「でもなんでさっきのばしょにいたおちびちゃんたちはみんなどうがあったの?おかしいよ!」 「その通り!」 先生は的を射た発言をした生徒に対するようにれいむに反応した。 「そう!彼らは子供なのにもう胴付き人間になっている!そしてその答えがこの人間加工所なのさ!つまり…」 「つ…つまり?」 「ここで生まれてすぐの子供に胴を付けてあげているのさ!」 「「「な、なんだってーー!?」」」「ど、どぴゅどっぴゅーー!?」 「だって考えてごらん。街は危険がいっぱいだ。とても大きなスィーや硬い地面、それに猫や犬、鴉それがどんなに危険かわかるだろう?」 「た、たしかにそうだわ!」 「だから生まれてすぐに胴付きにして何倍も強くしてあげるんだ。そうすることで街でも生き延びれるし、街で鍛えられているからこそ人間は強いんだよ」 「りにかなっているわ…。まさかにんげんさんにそんなひみつがかくされていたなんて…」 ぱちゅりーはショックを受けていた。それならば同じ胴付きであるれみりゃやふらんが敵わないのも無理はない。生まれてすぐに強くなる上、こんな場所に住み続けているのだから。車に乗る前は人間の強さを探り、ゆっくりもそれをやろうと思っていたが、これでは無理だ。自分の計画が完全に破たんしたことを理解し泣きそうになっていた。しかし… 「ところでさ、提案があるんだ」 「ていあん?いったいなんなんだぜ!?」 「うん、ねえ君たち…」 胴付きに、なりたくない? 「え?」 「それっていったい…」 「なんなら、順番に君たちを胴付きにしてあげてもいいんだ。やめておくかい?」 「で、できるの!?」 「勿論さあ!おにいさんは気に入ったゆっくりがいると、ついやっちゃうんだ!ゆっくりの体のことなら何でも知ってる、胴ぐらい朝飯前さ!」 「そ…それは…」 さすがのゆっくり達もこの提案には困惑していた。確かに胴付きになれば何倍も強くなれる。しかし通常6種の胴付き化など聞いたことがない。そう不安がっていると、 「ぱちゅりーはどうつきになりたわ!そしてぜんそくとはおさらばするのよ!」 ぱちゅりーは意を決したように叫んだ。人間ほど強くならずとも、胴があればかなり今の状況が改善される。あわよくば群れに帰った後、みんなをここに連れてきて胴付きにしてもらおう、と。 むきゅ!どうつきになればたとえにんげんさんにかてなくても、かなりていこうすることができるわ。そうなればきっとにんげんさんもわたしたちをけいかいしてあまりひどいことをしなくなるにちがいないわ!れみりゃたちはかずがすくないからにんげんさんからにげているんでしょうけど、ぱちゅりーたちならゆうかんにいどむわ。かんぺきなさくせんね!むきゃきゃ! ぱちゅりーの頭の中では、全員胴付きになった時の強さを人間≧捕食種≧通常種ぐらいにしか考えていなかった。自分たちと胴無しの捕食種との戦力差など頭にない。やはり森の賢者(笑)であった! ちなみにもう1つ。ぱちゅりー種、というかゆっくり自体喘息にならない。体が弱い=喘息という単なる思い込みである。 「おさがなるんなられいむもなるよ!」 「まりさもどうつきになってきのみさんをいっぱいあつめるんだぜ!」 「にじせーちょー!」 「じゃあ決まりだね。順番はそうだな・・・一番元気なまりさ!きみに決めた!」 「やったぜ!いちばんのりだぜ!」 「いいなあ。れいむもはやくやってほしいよ!」 「ははは、でもまりさ1つ聞いておくよ。一度この手術をしたらもう元には戻れない。いいね?」 「かまわないんだぜ!どうつきになってれみりゃをぎったんぎったんにしてやるぜ!」 「よし、では胴付き手術にレッツゴー!」 まりさと先生は笑顔で部屋から出て行った。まりさは好奇心に満ちた笑顔で。しかし先生の笑顔は違った。 そこにあったものは、先ほどの惨劇になかったもの……悪意に満ちた、大人の笑顔であった。 「むきゅ。げんきなゆっくりのじゅんってことはぱちゅりーはいちばんさいごね…はやくやってもらいたいわ!」 ユギャアアアアアア! 「そうだね!つぎはれいむだよ!」 パイルダーーーーーオンッ! 「あばれうま!」 ナジム!ナジムゾオオオ!! 「むきゅきゅ。そうねみょんもげんきだものね」 バリザノナガニハイッデゴナイデエエエ 何やら非常にゆっくりできない声が家じゅうに響いているが、生憎ゆっくりたちには聞こえていなかった。虐待鬼意山たちの例に漏れず、虐待関連の部屋には防音が施されているのだ。もしこれがなければ「胴付きになれる」という本当の意味を理解して泣きわめいてしまっただろう。 がちゃ 「ふぅ…。手術は終わったよ。後は2日間安静にしていれば体が馴染むだろうね」 「おにいさん!まりさはもうどうつきになったの!?」 「なったけど、体がまだなじんでないんだ。もうちょっとしたら完全な胴付きさ!」 「ゆー!じゃあつぎはれいむだよ!はやくつれていってね!」 「せいてんかん!ばべるのとう!!」 「悪いけど、胴付き手術に必要なものを休ませなければならないんだ…。もう3日待ってくれよ。それまでご飯もあげるしさ」 「ゆえええええいやだよさっさとしてね!」 「おちついてれいむ!いそいでもなれないんだったらまちましょう。でもおにいさん、ごはんはちゃんとちょうだいね」 「お安い御用さ」 このような調子でれいむ、みょんと3日ごとに部屋から出されて手術を受けに行った。しかし、みょんが連れ出された時点でにぱちゅりーはあることに気づいた。 みんな帰ってこないのだ。もうだいぶ経つのにれいむはおろかまりさも戻ってこない。さすがに怪しいと感じてそのことを話したが、 「今はリハビリ中なんだ。体を動かす訓練で毎日クタクタだから来れないんだよ」 と言って会わせてもらえない。では自分が会いに行くといっても何かと理由をつけて部屋から出してもらえないのだ。 そしてとうとうぱちゅりーの番が来た。 「むきゅ。おにいさん…よろしく…おねがいするわ」 ―――あちゃーまずいな。さすがに警戒している。暴れてもいいように力が弱いぱちゅりーを最後にしておいてよかった。――― 先生は自分の判断の正しさに安心して、ぱちゅりーを抱いて作業部屋の扉を開けた。そこにはさまざまなものが置いてあった。インパクトや電ノコなどの工具、薬品が多く陳列している棚、それとは別にさまざまなゆっくり関連の本が並んでいる棚、他にもいろいろなものがあったが、ぱちゅりーの目はそれらを見ていなかった。なぜなら、 「ついにそれが最後ですね。おお感謝感謝」 捕食種に並ぶ天敵、胴なしのきめえ丸が部屋の真ん中にいたのだから。 「むぎゃあああ。き、きめえま………る?」 叫んでいる途中でぱちゅりーはあるきめえ丸のある異常に気づいた。 子ゆっくりであろう小柄なきめえ丸の体の下に何やら大きめの丸い物が3つ付いていた。胴付きで四肢が欠損しているのであればもっと平坦なはずである。だがそれにはくびれが3つも付いてるうえ、1つ1つが丸い。先ほどのように丸い物体が3つと表現するほうが近い。しかも真ん中と下は少し動いているのだ。 「ゅ……ゅぅ……」 「まら…だんこーん……」 「むきゅっ!?れいむ!?みょん!?」 ぱちゅりーは3日ぶりの友人の声に思わず声をあげた。だが、その聞こえた方向がおかしい。なぜならそれはきめえ丸に付いている謎の物体から聞こえてきたのだ。 「まだ意識があるとは。黒饅頭とは一味違いますね。おお、あっぱれあっぱれ」 「ど、どういうことなのきめえまる!!」 「そのことについて僕が説明してあげるよ!あれは君と会う前日だった…」 先生は待ってましたといわんばかりに話を始めた。 ――――――10日前 休日を利用して先生は虐待に使うゆっくりを収穫するために森に来ていた。ぱちゅりー達が来た時に待機部屋に誰もいなかったのもストックが切れていたためだ。 何匹かは見つけたが、先生の虐待に耐えられそうなゆっくりはおらず、見つけては潰し、巣を暴いては潰すを繰り返していた。 そうしてしばらく歩いていると、何やら泣き声が聞こえてきた。先生はしめた!と思いその場に急いで駆け付けてみると、2匹の野犬達がそれぞれゆっくりを襲っていた。その後ろには子供以上大人未満の大きさのきめえ丸が横になって涙を流して叫んでいた。先程聞こえた声は彼女のものだったのだ。 先生は大声を出して野犬を驚かすと、彼らはそのまま逃げだしていった。するときめえ丸は2匹の元に駆け寄ろうと体を起こしたが、同時にすさまじい絶叫をあげた。どうやらあんよを食い破られていたにもかかわらず起きたため、中身が地面に触れてしまったようだった。 「おお…人ゲンさン……」 「オ゛、おぢビじゃンヴぁだいじょウぶだドゥ…?」 「父上ぇーーー!母上ぇーーー!」 襲われていたゆっくりはきめえ丸とふらんだった。だが、この2匹はもう長くないであろう。羽は食いちぎられ、振りまわされたであろう髪もあちこちに散らばっていた。歯もかなり砕けているし体中に噛み跡がありかなりの量の中身が飛び出ていた。何より、顔面の4分の1が喰われているのだ。きめえ丸は左目しか残っていないし、ふらんは頬が消えて口の中が丸見えだ。 どうやら手遅れだったようだが、落胆以上にこの状況を不思議に思った。きめえ丸とふらんが一緒になって動物に襲われるなど珍しい。ふらんがきめえ丸を襲っている最中に犬が来たのかと一瞬思ったが、ふらんがきめえ丸を積極的に襲うなど聞いたことが無い。 とりあえず小さいほうのきめえ丸をそっと反対にして抱いてやり、オレンジジュースをかけてやった。そして無駄とは分かっていたが2匹にもオレンジジュースをかけてやることにした。 「おお、痛みが…少し…引きました」 「うー…ありがと…」 「父上!母上!大丈夫ですか!?人間さんありがとうございます!」 「いや、この傷じゃもうだめだ…もうこのジュースじゃ鎮痛剤ぐらいの効果しか期待できないよ」 「かまいません…最期に、この子の顔が見れるのですから」 「おにいさん…たすけてくれて…ありがと」 「そんな!?気をしっかり持って!休めば大丈夫ですよ!?」 「いいえ、私達はもう助かりません…。だから…これからはあなた1人で…生きていくのですよ」 「で、でも…おちびちゃんもケガしてるんだどう。おにいさん、おねがいが…あるんだどう」 「子供を助けてやってくれってか?別に構わないが、お前ら番いなのか。珍しい組み合わせだな」 「…ええ…そんな珍しいが故の…たった1人だけの可愛い可愛い子供です…どうか…怪我が治るまで…ぐふっ」 「もう…おわかれだど…おちびちゃん…げんきで…」 「「さよう…な…ら…」」 「うううう。うわああああああああ」 先生も虐待鬼意山である。親が目の前で死んだ子ゆっくりなどよく見かけるし、親の死体をさらにぐしゃぐしゃにして子のお飾りをそれに突っ込みヒャッハーするなど日常茶飯事だ。 だがそれは餡子脳饅頭の話。彼女らのような高い知能を持つ稀有なゆっくりの死にはある程度敬意をはらう。 先生はきめえ丸が落ち着くのを待ち、今後の話を始めた。 「お前の両親に頼まれた。だからそのあんよの傷がふさがって自立できるようになるまで俺の家に来い。」 「ぐすっ。本当によろしいのですか?」 「子ゆっくり1匹ぐらいなら当面はわけないさ」 「おお、感謝…感謝…」 先生は親の死体を別々の袋に入れ、きめえ丸を手に持って帰路に着いた。驚いたことに、きめえ丸のあんよすでに膜が張っていた。 ―――オレンジジュース効果とはいえ普通これだけの大怪我はこんなに早く治らないぞ!?ふらんの血…餡を引いてる影響か――― 帰宅後、きめえ丸にさらにオレンジジュースをかけてやり、死体入り袋を冷蔵庫に入れた。死体を処理するのはあることを確認した後に、と先生は決めていた。そして、あの4匹の運命を決定した『計画』について話を始めた。 「なあきめえ丸、お前も栄養をちゃんとつけたらいずれ胴付きになるんだよな?」 「ええ。その通りです。でもあの森は食べ物は決して多くありませんからね。きめえ丸種は雑草はあまり食べれませんから、母も胴なしのままだったんです。父も私達に合わせてゆっくりを食べるのを控えてましたし…」 「その事なんだが、お前、子供のまま胴付きになってみないか」 「は?」 「お前が大人になるのを待っていたら秋の中盤になっちまうんだ。その頃には冬ごもりの準備はほぼ終わってなきゃいけない。でもお前は人間の家から森に帰ったばかり、しかも独り立ち直後だ。ほぼ確実に失敗して死ぬ。」 「おお…おお…」 「でも胴付きなら大人になる前に森に帰れる。それどころか身体っていうアドバンテージがあるから準備もスムーズに進む」 「それならとても魅力的な提案ですが…可能なんですか?」 「ああ。最近『月刊ゆ虐の友』で見てな。それによると成功率は低いそうだが、俺の見立てではお前の場合かなりの高確率でうまくいく。」 「…元々選択肢など無いに等しいのです。それをお願いします」 ――――――9日前(ぱちゅりー一行捕獲、まりさ手術日) 「ゆゆーん。これでまりさもどうつきだぜ!」 「そうだね。まりさは胴の上部分や手になるんだよ」 「ゆ?」 がちゃ 「おお、それが『あれ』の材料ですか」 「ゆぎゃあああ!きめえまるだあああああ!」 「そおい!」 先生は部屋に入るやいなやまりさを顔面から床に叩きつけた。そのせいでまりさの前歯が折れてしまっていた。 「ゆぎゃあああ!?なにするんだぜ!?」 「ヒャアアアアア!ゆっくりは改造だああああああ!」 虐待鬼意山の中には称号やG(ぎゃくたい)ネームとして○○鬼意山と呼ばれる者がいる。ぺにぺにがおちびちゃんな『短小鬼意山』や自動車の修理工として働く『修理工鬼意山』などが後者にあたる。 先生は前者……Gネーム、『改造鬼意山』と皆に呼ばれる虐待鬼意山であった。 よし、ではまずはまりさのあんよを切り刻む! 「ゆひいいいいい!?やめるんだぜえええゆぐおおおおおあああああ!?」 カッターで碁盤目のように縦横に切っていく。中の餡子も一緒に傷つけることで痛みも加わりより一層移動能力を奪える。 「ゆああ。ばりざのしんそくのあんよが…」 これで安心してより痛い作業に移れる。次はまりさの目に指を突っこもう。 「ゆぎゃああああああ!」 抉る、抜くなどという生易しいものではない。掻き出す。何回にも分けて眼球をほじくり出す。これにより眼球からの痛覚の信号がいつまでも餡子に送れていく。それを2回、両目で行われることでまりさを気絶も出来ずに苦しませ続ける。 「ゆがあ、ゆがあ」 うん!スプーンの方がきれいだけど、今回はどうせ眼の痕は消えるんだ。だったら声を楽しまなきゃな。 おつぎはぺにぺに。さすがに手では餡子を削り取りすぎてしまうな。ならば…これだ! 先生……改造鬼意山は短いアルミパイプを取り出した。直径は4?ほどであり、これをまりさのぺにぺにがあるであろうの位置にあてがった。 そおい! 「ゆごああああああ!!!!!!」 先程よりさらに大きな声をあげたな。まあ当然だ。内臓にダイレクトで異物を入れられたんだから。ではこれを体内から出してっと。 上手に抉れました~♪ いまアルミパイプに詰まっている餡子はぺにぺに、まむまむとして機能する部分だ。これで変な所でにんっしんする心配もなくなった。穴がでかいからジュースを流して出餡多量を防ぐ。 「いじゃい…いじゃいよおおおお…もうおうちかえるぅぅぅ」 まりさがうるさいが無問題だ。あんよ、目、ぺにぺに…ならば次は歯だな。 「ふが!?」 まりさの口の上下をフックで固定し、大開きにする。そして!ペンチで!!抜く!!! 「ふごおおおおお!?!?」 一本一本丁寧に抜いていく。なるべく痛みをあたえるのがゆっくりの歯医者の極意だと聞く。ならば虐待鬼意山にだって可能。 ぶちっ「ぬ゛」 ずぽっ「ヴぁ」 べきっ「あ゛」 めりっ「ぼ」 ついにすべての歯を抜き終わり、残すはあと一か所。頭だ。これが今回の肝であり、失敗は許されない。 まず頭髪を表皮ごとナイフではぎとり、ハゲ饅頭にする。そして目的に合わせて頭頂の皮を切り取った。 次に冷蔵庫から2種類の餡入りのビンを取り出す。これはきめえ丸の両親の中身だ。あの後、計画の為に中身の一部を取り出し、保管しておいたのだ。 親きめえ丸の餡子をふらんのものより多くビンから出し、小皿の中で混ぜた。そしてまりさを立たせて固定し、見えている餡子を覆うように先程の混合餡を乗せた。 「きめえ丸、いいな!タオルをしっかり噛んで喰いしばれ!」 「わ、わかりました。お願いします」 きめえ丸の底部をナイフで切り取っていく。可哀想に。あんなに痛そうなうめき声を上げて…。もう少しの辛抱だからな! 幸いにも前日の確認後、あんよの治療を中止していたので薄皮を切るだけで済む。健全なあんよを切り取ることになっていたらと思うと自分まで痛くなりそうだった。 「きめえ丸、よく頑張った!さあ最後の仕上げだ」 先程放置しておいたまりさのところまで抱えて行き、 「パイルダーーーーーオンッ!」 餡子がむき出しのあんよをまりさの餡子むき出しの頭に合体させた。 すぐさま結合部にオレンジジュースを浴びせ、今までの手術の成果を見守る。すると3分も経つと… 「ゆ゛!?」 「おおっ!?」 ついに反応が出てきた! 「馴染む!馴染むぞおおお!!」 「はひはのははひはひっへほはひへえええ!」 うん、まりさお前何言ってるんだ?しょうがないので以前ゆっくりの歯で作った入れ歯を口に突っ込んでやると、 「ばりざのながにはいっでごないでえええ」 と弱弱しく叫んだ。 普通、ゆっくり同士を結合させるとバラバラの意思を持つ双頭ゆっくりができる。だが今回の虐待…もとい手術ではだんだんきめえ丸に主導権が移っていっているようだ。これこそが俺が雑誌の方法に独自のアイデアを加えた胴付き化の手法なのだ! その秘密はあの混合餡にある。あれはきめえ丸の両親のものだ。ふらんの餡がふらんとのハーフであるきめえ丸の餡に反応して『傷ついている』と認識することで、再生能力をまりさの餡子に作用させて置き換えているのだ。だが、そのままではふらんの餡が増殖しかねないと思い、親きめえ丸の大量の餡と混ぜた。 こうすることで量を確保しつつふらんの餡の濃度を下げ、同時に混合して一体化した親きめえ丸の餡がきめえ丸の餡との『つなぎ』として働き、きめえ丸側の餡がまりさを侵食していったのだ。やがて混合餡もきめえ丸の大量の餡に駆逐されて一体化するだろう。両親は死んでなお子供を助け、子供の一部として生きていくのだ。 今は1匹分だけだし体もくそもないが、最終的に成ゆっくり4匹分の餡子と大量のオレンジジュースの効果で下のパーツから胴が形成されていくだろう。その形成もふらん再生能力による欠損部の修復作用のおかげなのだ。 手術は大成功だったが、俺もきめえ丸もくたくただ。念のため時間を置きたかったし、きめえ丸の体力回復もかねて残りの3匹には3日後と伝えておこう。 ――――――6日前(れいむ手術日) 「ゆぎゃああああああ」 「いやだやめてだれかれいむをたすけて」 「ゆあああああ…れい丸は…しにたく…おお、いやだ…」 ――――――3日前(みょん手術日) 「ちんぽおおおおお」 「でかまらあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 「ぢ…ん…わたしのほわいとちょこがなにかにおかされていく…。だがたとえからだとこころはあけわたしても、このたましいだけはまもってみせる…」 ――――――現在(ぱちゅりー手術日) 「……とまあこんな感じで目の前のきめえ丸…いや寄生丸がいるんだ。さっき声がしたのは上からまりさ、れいむ、みょんだよ。まりさは完全に一体化したみたいだけど、下2つは本体から遠い分しぶといね」 あまりにも凄惨な内容のため、クリームを吐き出さないように口をホッチキスで止められたぱちゅりーは大粒の涙を流していた。 改造鬼意山がホッチキスを外してやるとぱちゅりーは弱弱しく体当たりしながら責めてきた。 「だましたのねええ!どうつきにするなんていってええええ!ふざけるなああ。みんなをかえせええええ!!!!」 「おいおい、落ち着いてくれよ。僕は何にもだましちゃいないよ。寄生丸に取り込まれて一体化することで胴付きになったじゃないか。たかがゆん格が消滅しちゃっただけだよ。いつか勝手に生えてくるよ。それに二度と元に戻れないって念を押したのに志願したのは君たちじゃないか」 「むぎゅうううううううぁああああああああ!」 「やれやれ…ヒャッハパンチ!」 改造鬼意山はもう会話は無駄だと結論を出し、パンチの先制攻撃を口にお見舞いした。 「がは…」 「さて、では恒例の……ヒャア!我慢できねえ!改造だあ!」 先生はぱちゅりーに再びホッチキスをして身体をひっくり返した。あんよを切るつもりだが、今回はカッターでなく名刺を取り出した。 「一流の社会人鬼意山は仕事道具を虐待に応用できるという。部品はともかく作業くらいはその域に達したいものだ。というわけで練習に付き合ってくれよっ!」 そういうとあんよに当たるような軌道で名刺を高速で振りぬいた。紙とは張りを持たせることで時に人間の皮膚すら切り裂ける。ぱちゅりーのあんよも例外でなく切られたが、饅頭であるがゆえに人間より皮が厚く、運動能力を奪うほどの深さには達しなかった。 「~~~~~!?」 「やはり1回じゃ無理か。せめて名刺2,3枚で済むようにしたいな。」 そう言って名刺であんよを切る作業を続けていった。慣れていないせいもあり、結局名刺15枚をダメにし、時間もまりさの3倍もかかってしまった。だが苦痛はそれに比例していない。少しずつ削られていくあんよ、時間をかけ露出していく中身のクリーム。口がふさがっていなければおそらく今頃皮だけになっていただろう。 続いて、半田ごてを持ち出した。餡子よりも流動性の高いクリームがこぼれないように少し焼いて固めるのだ。 あんよを切られた苦痛に参っていたぱちゅりーはいままでをはるかに超える激痛に白目をむいた。なにせ内臓むき出しの部分を焼かれているのだ。やがてあんよ全体が焼かれ、気絶してしまったぱちゅりーにオレンジジュースとキツケの胡椒をかけて無理やり覚醒させた。 改造鬼意山は次はどの作業をしようかと迷っていた。あんよ→目→まむまむ→口→頭ばかりでは芸がない。最初と最後は必須なので、中の3つを入れ替えるべきなのだろうが、どれが一番いいか悩んでいた。 考えること10秒。逆転の発想、ならば同時進行でやってみようという意見に至った。 先程のようにわざわざオレンジジュースをかけるのも面倒なので、今回はスプーンで右目をくりぬいた。それを左目の前に持っていくと、滝のような涙を流してそれを食い入るように見つめた。いったん目の作業は中止。続いて口の作業に移る。 問題は口の中の大量のクリームである。おそらくホッチキスを外した瞬間一気にこぼれて絶命してしまうだろう。そこで、今回の副題、同時進行にふさわしいやり方で解決する。そのために口より先にまむまむを処理する必要がある。 今回のまむまむくり抜きは、まりさの時と違い大き目に穴をあける。そこでパイプでなくショベルで穴をあけることにした。 理論もくそもない。改造鬼意山はただひたすら掘った。やがて口の下に直径8?、深さ6?程の穴がぽっかり空いた。中枢餡を傷つけないかと少し心配していたが、杞憂に終わったようだった。 この余分な大きな穴が役に立つ。今度は真ん中あたりから上に掘り進み、口とまむまむ跡とをつなげた。 口からまむまむ跡へ大量のクリームが流れ込んでいく。だが元々体内にあったものが戻っただけなので、多くは吸収され残りは穴をふさぐ程度だった。 これで口の中はきれいになった。まむまむにも半田ごてを軽く当てて漏れないようにし、いよいよ口を開いた。 「む゛…おに゛いざん…やべで…やべで…」 オニイサンハキニシナーイ。ラグラージハキモクナーイ。 ぱちゅりーに死なれても困るし、新しい手法も作りたかったので今回はペンチを使わない。ナイフで歯茎ごと切り落としてすぐに口を閉じ、再び半田ごてを用いて唇を癒着させた。今回の功労賞は間違いなく半田ごてである。後でバーナー派に布教でもしようかな、とも改造鬼意山は考えていた。 「~~…~…」 もうぱちゅりーと口をきくことはない。目を残しておいたので口をふさいでも恐怖の感情がはっきりわかる。同時進行プロジェクト、大成功である。 髪の毛の作業に移るが、さすがに工夫を凝らすこともなかったのでここでは割愛する。 そして最後に残った目の除去である。 「やあぱちゅりー!どうしてこうなったんだろうって疑問に思っているだろうね。目をとる前に答え合わせしてあげるよ!」 「…~~」 「まずタイミングが悪かったね。寄生丸がいなければ、もしかしたら君たちは生きて山に帰れたかもしれない。まあ十中八九改造した上でだろうけど」 「……」 「次に胴付きになった後の夢だね。言っとくけど人間は胴付きふらんを1人で10匹皆殺しにできる。5匹ぐらいなら無傷だよ。人間に抵抗できないし、そもそも胴付きになっても捕食種に敵わないよ。今だって胴なしに勝てないだろ?」 「~~!」 「そして教師に捕まったこともアウトだね。自分の教え子に危害を加えようとしていたゆっくりを優しくするわけないさ」 「~!~!」 「そして最後に…人間は生まれたときから胴があるんだよ。成長して胴が生えるなんて、虫じゃないんだからさあ」 「……!?」 ぱちゅりーは最後の言葉を理解できなかった。自身の計画の根幹の理論。そもそもそれが完全否定されたのだ。ぱちゅりーの餡子脳はその瞬間思考を停止していた。 改造鬼意山はきめえ丸ももとへぱちゅりーを連れていき、自分の未来を目に焼き付けさせてからスプーンを左目にあてがった。 「じゃあさよならぱちゅりー。暗闇の中、徐々に浸食されながらヒャッハりしていってね!」 ――――――約2週間後 改造鬼意山…いや先生は卒業生を送るような目で玄関に立っていた。 「今まで本当にお世話になりました」 「ああ、達者でな。でもホントに森に帰るのか?お前さえよければ俺の飼いゆっくりになってほしいんだが」 「嬉しい提案ですが、やはり父と母と一緒に暮らした森こそが私の住む場所なのです」 寄生丸…否、きめえ丸は見事な胴付きになっていた。 あの後順調に体が形成されていき、3日前ついに成体前に完全に胴付き化した。形成の過程で餡子が大量に消費されたので体も頭の大きさに見合ったものになっており、とても整った美ゆっくりになっていた。 なによりうれしい誤算だったのは、ぱちゅりーの野生で生きるための豊富かつ有用な知識がきめえ丸に残った事だ。一番頭から遠かっただゆえにクリームの中にあった記憶がが中途半端に残り、それが『記憶』でなく『知識』としてきめえ丸に定着した。おかげでかなりの知識を手に入れ、おまけにぱちゅりーの記憶と混同することもなかった。 そして残りの日々をリハビリ・訓練にあててこの日ついに一人立ちとなったのだった。 「じゃあ元気でな」 「ええ、春になったら挨拶に来ます。先生もお元気で!」 こうして、きめえ丸は森に帰って行った。その後も交流を続け、きめえ丸が森を案内したり奥さんになったふらんを紹介したりして死ぬまできめえ丸は先生を慕い続けるのだった。 「さあて、たまには作業部屋を掃除するか。ん?なんだっけこの頭皮?気持ち悪いなあ」 それぞれ色の違う髪の付いた4つのゆっくりの頭皮が部屋の隅に積まれていたが、先生はそれが何なのか完全に忘れていた。 こうして森の賢者(笑)の作戦は失敗し、優秀な長と多くの大人を失った残りの群れは今までの敵に加え、最近出現した人間の協力者と噂される胴付ききめえ丸による誘拐にも頭を悩まされいったのだった。 【あとがき】 補足 1.先生は二重人格ではありません。ただ単にTPOをわきまえているだけです。 2.作者の作品ではゆっくりの知能によって喋り方を変えています。 ドスクラス、特に高い知能のゆっくり(例:きめえ丸)・・・・・・漢字混じり 一般的な知能の高いゆっくり(例:ふらん、『仏』の帰依なずーりん)・・・・・・カタカナ混じり 普通のゆっくり(例:言うまでもないでしょ。馬鹿なの?死ぬの?)・・・・・・ひらがなのみ 終わった…終わったぞ…。 元々『体』で完結させていた作品。中途半端との声を聞き無理矢理『体2』を書いたため、ネタ切れ・虐待描写下手・レポート三昧の三重苦で結局『体3』の完成に2週間弱も近くもかかってしまった。 もう…寝てもいいよね…? 今まで書いた作品 ふたば系ゆっくりいじめ 310 仏 ふたば系ゆっくりいじめ 393 体 ふたば系ゆっくりいじめ 401 体2 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る ラグラージはカワイイ -- 2014-06-21 22 38 28 いいはなしだ 。・゚・(ノ∀`)・゚・。 -- 2011-06-04 06 38 12 みょん実は誇り高いこと言ってたwww -- 2011-01-13 00 38 31 けっこうシリアスに見てたのにパイルダーオンッ!!でクッソワロタwwww -- 2010-12-07 02 03 23 きめぇ丸を嫁にしたいぜ・・・ -- 2010-11-06 17 50 37 きめぇ丸の両親が、子供の一部となり命を繋いでいく、か。 感動的だなぁ… きめぇ丸達、幸せになってね! -- 2010-10-10 19 13 45 みょんの言葉が微妙に感動的だった。 -- 2010-08-15 22 04 34 死んでなお子供の一部となり まさかゆ虐で涙腺緩む日がくるとは…… イイハナシダナー (つд`) P.S. いや、ラグラージはキモいだろjk -- 2010-07-19 20 14 42 きめぇ丸優遇は、ゆっくりできるね!! -- 2010-06-23 12 17 03
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/2568.html
「ふたば系ゆっくりいじめ 1228 ゆっくり種6/コメントログ」
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/259.html
「ふたば系ゆっくりいじめ 70 かわいくてごめんねー/コメントログ」 狂ってやがる -- 2010-08-18 23 08 25 虐待成分が足りないぜ… -- 2010-09-06 01 38 44 鬼意山の解釈が素晴らしい -- 2010-09-27 16 24 20 痛みを与えず、恐怖を感じず殺されたこのゆっくりは、しあわせなほうだな っつーか、このお兄さんの解釈いいね -- 2010-12-12 23 46 44 鬼意山解釈神です -- 2011-12-22 17 33 16 お兄さん、本気でそう思ってんなら ちょいバカ? -- 2012-06-19 19 51 52 ↓何言ってんだよ、これはそう言う虐待なの -- 2012-12-12 07 46 13
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/646.html
あまあまスイッチ 39KB 【注意】 冗長です ネタ被りはご容赦を ある日、近所に住む菓子職人が箱一杯の飴を持ってきた。 時々あることなのだが、こいつが持ってきたものが美味かった例がない。 「美味しかったら店に並べるに決まってるだろう」 「正直者はホントむかつきますね。てか何で俺のとこに?」 「君なら使い道があると思ったんだけど」 「自分とこのゆっくりの餌にするべきだそうするべきだ。だからもって帰れ」 こいつの家には菓子の材料用のゆっくりが大量にいる。 どうせこの飴もゆっくりが材料なのだろうし、還元すればいいだろうに。 「あれらの餌にこういうものをやると、次から餌を食べなくなるんだ。 死んだほうがマシ、と思うのかは知らないけれど、餓死されるのは困る」 「だったら飼いゆにやれば? この前子供が産まれたらしいじゃないの」 「ゆっくりの餌にゆっくりをあげるとか、よくそんなひどい事言えるね」 「どうせ巡り巡ってゆっくりの腹に収まるのに。ショートカットくらいいいんじゃね?」 「それについてはあんまり触れないでくれよ」 「とにかく産業廃棄物なら産廃業者にお願いするのが世の中の常識であり俺んちに不法投棄すんな」 「わかったよ。はいこれ」 わさビーフ1袋。 なめとんのか。 「ふぉまえふぉふぁいふふぁふぃっふぃりふぁなふぃふぉふふぇふぁいふぉいふぇふぁいふぉうふぁな」 「食べるか喋るかどっちかにしてくれよ」 食べた。 「じゃあそれが代金ってことでよろしく頼むよ。たまにはうちのケーキでも買いに来てよ」 「甘いものは嫌いなんだよ」 ホントにどうすんだ、この飴玉ども。 今は家にゆっくりはいないし、愛で兄の家に持っていくとデブが蘇るし。 森に持ってってばら撒いても、ゆっくりがしあわせーとか言い出すとムカツクし。 ああ、不法投棄とか言われるのも勘弁だな、また警察で説教されたくない。 とりあえずネットでも見ながら使い道考えるか…。 「…はっ!?」 気がついたら一心不乱にクリック連打していた。 げに恐ろしきサイトがあったもんたい。 クリックするとお金がもらえる。 いや、別に本当にもらえるわけじゃない、表示される単位が「万円」というだけだ。 そして、たまに死ぬ。 これも当然本当に死ぬわけじゃないし、死ぬと金額がリセットされる。 ただこれだけの、リアルとは何の関係もないスイッチを、気付けば1時間もクリックしていた。 なんかこう、欲望の琴線に触れるストレートすぎる内容にハートが鷲掴みされたのだな、うん。 で、ここで思いついた。 これ、ゆっくりにやらせたら面白いんじゃね? 【あまあまスイッチ】 「という仕組みのものなのだよ」 「にんげんさん、どこむいてはなしてるの?」 という事で場所は家の裏手の森を奥深く進んだところ。 規模の大きな複数の群れなど、結構な数のゆっくりが住んでいるので、こいつを置くにはちょうどいい。 さすがに俺が張り付いて観察するわけにはいかないので、開けた場所に機械を置いた後、周囲を観察できるように仕掛けをした。 盗撮用の、無線で映像を飛ばせるタイプのカメラと、盗聴用の無線マイクをセットでだ。 大した距離を伝送できるわけではないが、中継器を置いてそこから有線すれば、後は自室に居ながらにして観察し放題だ。 手持ちの小型モニタを確認すると、カメラに向かって話していた俺の顔が映っている。 スピーカーは切ってあるが、横のレベルメーターが動いているので問題は無いだろう。 振り返ると、俺がその辺にいたゆっくりに声をかけて集めさせた群れが大集合している。 後はこいつらに仕組みを教えて帰るだけだ。 「そこのぱちゅりー、ちょっといいか?」 「むきゅ、ぱちぇになんのごよう?」 「お前ら全員が仕組みをきちんと覚えられるかわからんからな。 もちろん全員に説明はするが、お前には近くでよく見てもらう」 「むきゅ、そういうことならしかたないわね」 のんびりと這って近付いてきたぱちゅりーを抱えあげると、群れの中の1匹が声を上げた。 「ずるいよ! ぱちゅりーがあまあまさんをひとりじめするよ!」 いきなりこの調子でげんなりするが、今だけはちょうどいい。 「よし、じゃあお前。そう、そこのれいむ。お前に最初にあまあまをとらせてやろう」 「ゆ! さすがかわいいれいむはちがったね!!」 当然他のゆっくりからはブーイングの嵐だが、全員分のあまあまがあると言って黙らせる。 ウソは言っていない。 全員が生きて帰れるかは別問題だが。 「じゃあ、よく聞けよ、お前ら」 「「「ゆっくりきくよ!!」」」 まずは機械の外観から。 見た目には巨大なコーヒーメーカーだ。 上のコーヒーを抽出する部分に相当する場所が、飴玉タンクだ。 押し付けられた飴玉が、片栗粉をまぶした上で全部入っている。 片栗粉は飴玉同士の貼りつき防止のためだ。 最近涼しくなってきたし、近頃雨も少ないので、中で融けたりして出てこなくなるということは当分無いだろう。 下のポットを置く部分に相当する場所はスイッチになっている。 耐久性と誤動作防止の関係上、子ゆっくり程度の重量では反応しないが、これについては致し方ない。 ここに大人のゆっくりが乗ると、スイッチが反応して仕組みが作動する。 「れいむ、ここに乗ってみろ」 「ゆっくりのるよ!」 れいむはぽよんと飛び乗ったが、そんな勢いをつけなくても重さだけで反応するように出来ている。 スイッチが沈み込むと、中の機械が動く音が聞こえた。 ガコン! カラカラカラ…コトン 「ゆ、まんまるさんがでてきたよ!」 「それがあまあまさんだ」 「ゆゆっ!! ゆっくりたべるよ!! むーしゃ…がだいいいいいいいいいいいいいい!!!」 まあ、飴の歯で飴玉かじったらそうなるよな。 ていうか教えるの忘れてた。 「くそじじいいいいいい!! こんなのたべられないでしょおおおおおおお!?」 「悪い悪い。それはむーしゃむーしゃするんじゃなくて、ぺーろぺーろするあまあまさんなんだ」 「ゆゆ? ぺーろぺーろ…ししししあわせええええええええええええええ!!」 最初は飴玉を地面に置いたまま汚らしく舐めていたれいむだが、転がって食べにくいのに気がついたのか、すくい上げて頬張った。 しあわせーな顔がムカツク。 「むきゅ、あそこにのるとあまあまさんがでるのね。りかいしたわ」 「ま、それだけじゃないんだけどな」 「きゅ?」 「れいむ、そこで跳ねてみろ。あまあまさんがもっとでるぞ」 「ゆゆ!? ゆっくりりかいしたよ!」 聞くが早いか、れいむがぽゆんぽゆんとその場で飛び跳ねる。 跳ねるたびに出てくる飴玉を、跳ねながら器用に舌で拾い上げて口の中に放り込んでいく。 「しあわせーーー!!!」 周囲で見ているほかのゆっくりたちも、我慢できずに機械に群がってくる。 その時、それは起きた。 「…9、10」 「ゆべっ!!?」 元ネタだって死ぬことがあるんだから、この機械でも死なないはずが無い。 れいむは機械正面から飛び出した何本もの鉄槍に貫かれていた。 「「「ゆうううううううううううううううううううううううううう!?」」」 「むぎゅっ!? えれえれえれ…」 「おっとっと、こいつに死なれたら困るな」 ショックで吐き出したぱちゅりーの口元を押さえ、落ち着いたところでオレンジジュースをかけてやる。 その間に、れいむを串刺しにしていた鉄槍は機械の中に戻り、代わりに横から板が振るわれ、れいむの死体を弾き飛ばした。 死体に居残られると次のゆっくりが怯えて機械を使わないかもしれないので、そのための処置だ。 「…に、にんげんさん! なんなのこれはああああああ!?」 「実はな、これはゆっくりの神様からお前たちに持って行ってほしいと頼まれたんだ」 「むきゅ!?」 「ゆっくりしているゆっくりにご褒美だってな。 でも、ゆっくりの神様でも、どうしてもご褒美だけには出来なかったそうだ。 だから、時々罰があるようにもなっているんだ」 「むきゅう…そうだったの…」 こんな出鱈目でも信じるから餡子脳って素敵です。 ちなみに時々は時々だ、具体的には10回に1回。 こんな機械に乱数出すためにだけ電子機器乗せるの面倒だったので、歯車でカウントして定期的に罠が発動するようになっている。 どうせ3以上は数えられない餡子脳が相手だ、連中には乱数も同然だろう。 こうして準備は整った。 ぱちゅりーに群れ全体への説明を任せて、俺は家に戻った。 [初日] 「ゆうぅ…あまあまさんたべたいよ…」 群れの大半がこんな調子だった。 死んだれいむのしあわせー!な様子を見ているので、やはり自分も食べたいのだろう。 だが、死んでしまうのも間近に見たので、怖くてスイッチを押すことが出来ない。 「ゆん! まりさがあまあまをたべるよ!!」 機械を遠巻きに囲んでいる群れをかき分けて、1匹のまりさが機械に寄っていった。 このまりさ、狩りの腕前は群れ随一だが、おつむのダメさ加減も群れ随一。 「まりさまってね! えいえんにゆっくりしちゃうかもしれないんだよ!」 「まりさはとってもゆっくりしてるよ! だからだいじょうぶなんだよ! そんなこともわからないの?」 とまあ、こんな調子である。 群れのみんながはらはらしながら見守る中、ためらいも無くスイッチに飛び乗った。 ガコン! カラカラカラ…コトン 「ゆゆーん、しあわせー!!」 出てきた飴をひとつ頬張ると、まりさは意気揚々と巣に帰っていった。 こうなると後は早い。 「つぎはれいむがたべるよ!」 「ありすがさきよ!」 「まりさもたべたいんだぜ!」 「「まりさはさっきたべたでしょ!!」」 「それはまりさじゃないんだぜえええええええ!!」 「わからないよー!!」 次を争って群れ全体が一斉に機械に迫っていく。 遠景からのカメラの画像は、波が押し寄せていくようだった。 「や、やべっ! おざな…おさばびゅううっ!!」 「いぢゃい!! じんじゃう!! じにゅううううううう!!」 そのあちこちで、勢いに押されて潰れていくゆっくりが多発する。 「あまあまざん! じあわぜ! じあばびゃああああああああああああ!!」 爆心地であるスイッチの地点はなおひどいことになっていた。 スイッチに乗ることが出来たゆっくりも、四方八方から押し寄せるゆっくりの波に一方的に押し潰される。 運良く逃げる、などと期待できるような生易しい状態ではない。 全方位から来るゆっくりの津波から逃げられるはずも無い。 「そこまでよ!!」 ぱちゅりー渾身の大声で群れの動きが止まったとき、機械の周囲は潰れたゆっくりで埋め尽くされていた。 [2日目] 「やれやれ、これは手間だな…」 実に群れの3割が潰れ死んだ大惨事の翌日、俺は機械に積もった餡子の掃除に来ていた。 正直、欲望に忠実なゆっくりの性格を甘く見すぎていた。 「どうしてこんなことに…」 「全くだ」 隣では最初に機械の説明をしたぱちゅりーが嘆いている。 「にんげんさん、おねがいがあるわ」 さらにその隣から声をかけてきたのはありす。 このありすが、ぱちゅりーたちの群れを統治している長だった。 「ありすのむれに、とかいはじゃないゆっくりがたくさんいることがわかったわ。 せっかくのごほうびだけど、みんながゆっくりできなくなるからもってかえってほしいの」 おお、なかなか賢いありすだ。 ドスでもないのにこの規模の群れを率いているだけはあるということか。 なんでも昨日は群れの赤ちゃんの面倒を見るために残っていたが、ぱちゅりーに呼ばれて今日は来たらしい。 こいつがあの場にいればあんな混乱は無かったと思うのだが、ままならない。 「そうは言ってもな、神様からのお願いだから、俺が持って帰るわけにはいかないさ」 「ゆぅ…」 神様にかこつけているが、要するに機械の引越しをするのが面倒くさいだけだ。 別の群れに持ち込んだところで、初日の大混乱は大して変わらないだろう。 だったら、学習したこの群れに継続使用してもらったほうがいい。 「神様がせっかくくれたご褒美なんだぞ、お前がみんなをまとめて使わせればいいんじゃないか?」 「ゆううぅぅ…」 こんな感じで言いくるめて、機械を押し付けて帰った。 「ゆぅ、どうしようかしら…」 ありすは困っていた。 参謀のぱちゅりーに聞いた話によれば、昨日は群れの誰も彼もがご褒美に押し寄せたという。 特別に素行の悪いゆっくりだけ、というわけではないのだ。 今日は群れの誰もここに来てはいないが、いずれ誰かがここに来る。 そうすれば、先を争って殺到するようになるのも遠くない。 来てはいけないと制限することもできるが、いずれは破綻するだろう。 今群れに強いているすっきり制限がみんなにかけている負担を、ありす種の長だからこそ理解できた。 この上あまあま禁止などといっては、群れの統治が立ち行かなくなるだろう。 「ゆっ! ゆっ!」 そんなことを考えている間にゆっくりが1匹やってきた。 昨日の大混乱の引き金になった、あのまりさだ。 「ちょ、ちょっとまちなさいまりさ! どこにいくの!」 「ゆ、おさ? まりさはあまあまをとりにいくんだよ!」 「だ、だめよまりさ! いま、あのあまあまさんをどうするかかんがえているのよ!」 「あまあまはかみさまがくれたんだよ! みんなのものだよ! おさのものじゃないのになにいってるの?」 そう言って、長ありすの言うことなど全く聞かずに、まりさは機械に向かって跳ねていった。 「むきゅ、これはもうしかたないわ、おさ」 「ぱちゅりー…」 「むれのじゅうちんでこうたいで、かみさまのごほうびをみはるしかないわ。 そうしないと、きのうみたいなことになるとおもうの。 ぱちぇはもう、あんなのみたくないわ」 「そうね……そうするしかないわね」 「しあわせー!!」 無事に飴玉を手に入れたまりさが歓声を上げている。 それを聞きながら、長ありすと参謀ぱちゅりーはため息をついた。 [3日目] 昨日の長と重鎮たちの会議で、機械に見張りが付くことに加え、もうひとつだけルールができた。 それは「あまあまさんをもらいに行ったら、次は太陽さんが2回上がるまでもらいに行けない」だ。 一度に機械に集まるゆっくりを少しでも減らすための策で、参謀以外に重鎮の中にもう1匹いるぱちゅりーから提案された。 「これなら、ならぶのはだいたいはんぶんくらいですむわ。 むれのみんなも、このくらいならがまんできるとおもうわ」 早速群れにはルールが伝えられ、見張りの言うことを聞かないと群れから追放という罰も伝えられた。 不満を言うものがないでもなかったが、群れの大部分が一昨日の惨禍の当事者だけあり、そのことを持ち出されては黙って従った。 「まりさはきょうもいくの?」 「もちろんいくよ! れいむはいかないの?」 「みんないっぱいならんでるから、あしたにするよ」 「ゆん、じゃあまりさはれつさんにならぶよ!」 「れいむはかりにいってくるね!」 こうして重鎮ぱちゅりーの目論見通り、列を成すのは群れのおよそ半分のゆっくりたちだった。 今日の見張り担当はちぇんで、長い列を前後に走り回って割り込みやけんかを仲裁していった。 「しあわせー!」 「しあわせー!」 「しあわせー!」 「ゆびゃああああああああああああああああああ!!」 こんな具合に、適度に悲鳴をはさみながら、列は徐々に短くなっていく。 と、その列が半分ほどになった頃。 「ねえ、ちぇん」 「よんだんだねー?」 順番になったれいむが見張りちぇんを呼んだ。 「あのね、あまあまさんはたくさんもらってもいいの?」 「にゃ?」 このれいむは初日に、実験台になったれいむがスイッチの上で何度も飛び跳ね、あまあまをたくさん出していたことを覚えていた。 「れいむのはにーのまりさは、あのときにつぶれてえいえんにゆっくりしちゃったよ。 れいむのおうちにはおちびちゃんたちがいるよ。れいむはかわいそうなしんぐるまざーなんだよ。 れいむはおちびちゃんたちみんなのぶんのあまあまさんがほしいよ!」 「にゃにゃにゃにゃ!? ちぇんにはわからないよー!」 実を言うと、これは重鎮たちは誰も考えていなかった。 神様のご褒美は時々罰が出ることもあって、その時には永遠にゆっくりしてしまう。 なので、余計なリスクを負ってまでたくさんほしいというものが出るというのは想定外だったのだ。 「ちょ、ちょっとまってほしいよ! おさにきいてくるよー!」 そう言ってちぇんは長の巣目指して跳ねていったが、れいむはそれを待ってはいなかった。 あまあまさんを出してしまえばこっちのもの、そういう短絡的な思考でスイッチに飛び乗った。 「れいむー! おさがいいって……にゃ?」 ちぇんが戻ってくると、れいむはいなかった。 れいむの後ろに並んでいたありすが、顔を青くして震えている。 「ありす、れいむがどこにいったのかおしえてほしいよー?」 「れいむは……」 「……にゃっ!?」 ありすの見る先をちぇんも追うと、そこには体中を穴だらけにしてなお息のあるれいむが転がっていた。 「れいむううううううううううううう!?」 「…どぼぢで……でいぶは…がわいぞうな……じんぐ……まざー…な……に…」 駆け寄ったちぇんに恨み言を残して、れいむは永遠にゆっくりした。 この有様を見ていたゆっくりたちは、理解した。 かわいそうだとかは関係ない、ゆっくりしていないゆっくりは永遠にゆっくりさせられる、と。 もちろんそれは思い込みで、実際は10匹ごとに1匹が淡々と殺されるだけだ。 だが、機械を神様のご褒美と信じているゆっくりたちは、目の前の出来事を関係ありそうなことと結び付けて考えた。 「あ…ありすは、あまあまさんはいいわ。ゆっくりかえるわ…」 とかいはじゃない、とかいはじゃないと繰り返しつぶやきながら、ありすは列を離れて帰っていった。 リスクを考えられる頭の良い個体は、自分が本当にゆっくりできているかに悩み、列を離れていった。 残ったのは、自分がゆっくりできていると信じて疑わないゆっくりばかり。 「ゆぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!」 その後1匹が犠牲になり、都合4匹の犠牲でこの日を終えた。 [7日後] その後も頭の良い個体から列に並ばなくなり、比較的おつむが残念な個体ばかりが列に陣取るようになっていた。 一度にもらえるだけもらっても構わないという長のお達しもあり、その手の個体は死ぬまでスイッチの上で飛び跳ねる。 こうしてこの頃になると列に並ぶゆっくりは片手の指で足りるほどになっていたのだが、この日は様子が違っていた。 いつもの面々に加えて、やけに悲愴な面持ちのゆっくりが混じっているのだ。 「おちびちゃんたち……かならずあまあまさんをもってかえるよ……」 これらは、この機械が原因で親を失い、孤ゆとなった子供たちを引き取ったゆっくりたちだった。 このゆっくりたち自身も子供を抱えており、そこに親類の子供を引き取ったため、餌がとても足りていない。 そのゆっくりできない毎日の慰めに少しでもと、あまあまの列に並んだのだ。 「ゆげえええええええええええええええええええええええええええええええ!!」 「ゆごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 結果は語るまでもない。 ゆっくりは子沢山だ、自身の子供に加えて親類の弧ゆまで引き取れば、10匹を超えるのが当たり前だ。 都合10匹以上もの子ゆっくりに行き渡るように、あまあまを用意しようとすればどうなるか。 こうして数日のうちに、善良だがあまあまの誘惑に抗えない個体が全滅することになる。 [14日後] 「どうだった、おさ?」 「だめね…みんなはなしをきいてくれないわ」 戻ってきた長や参謀、重鎮たちに声をかけたゆっくりたちは、長の返事にうつむいた。 長たちを待っていたのは、群れの弧ゆ院を担当するゆっくりたちだ。 群れの中で弧ゆが爆発的に増加し、弧ゆ院では育てきれなくなったのだ。 その弧ゆたち、総勢100匹あまり。 わずか2匹の弧ゆ院担当ゆっくりで賄いきれるはずもない。 弧ゆ院として用意された大きめな巣穴には収まりきらず、空き家となった巣のいくつかに分散して暮らしている。 それらの巣を順番に回り、世話をするのだが、とても足りない。 ぺーろぺーろでの身繕いは2,3日に1度が精一杯で、餌を届けるだけでほぼ1日が終わってしまうのだ。 その、餌の問題のほうが遥かに深刻だ。 2週間前、弧ゆ院の子供たちは10匹もいなかった。 それが、たったこれだけの間に群れの成ゆが半減し、弧ゆが10倍となる事態となったのだ。 単純に考えて、狩り手が半減したのだから、群れ全体の集める餌の量も半減している。 だが、すっきり制限のおかげで、孤ゆの数は幸い100匹で済んでいるとも言え、今なら群れ全体の協力で支えられないこともない。 しかし、長たちによる説得は失敗に終わった。 長たちの命令に従順な善良個体は、このときすでに全滅に近い状態だった。 残っているのは、ご褒美のあまあまに通い続ける極わずかな生き残りと、早々にあまあまを諦めた比較的頭の良い個体たちだ。 まず、あまあまに通い続ける個体たち。 これはダメだ、端から当てには出来ない。 すでに味覚があまあまで破壊されており、以前にはご馳走だったおはなさんやいもむしさんさえ受け付けなくなっているという。 また、あまあまへの中毒症状も出ており、性格も攻撃的になっていて、群れでの生活に支障が出ている。 数少ない例外が、あの最初に自分からあまあまを取りに行ったまりさだったが、先日とうとう永遠にゆっくりさせられてしまった。 彼女らがあまあまに通い続ける限り、いずれ同じように永遠にゆっくりしてしまうだろう。 そして比較的頭の良い個体たちだが、これらが実に始末が悪い。 そもそも彼女らがあまあまを諦めたのは、ゆっくりしていないゆっくりは永遠にゆっくりさせられる、という思い込みからだ。 つまり彼女らには、自分がゆっくりしていないゆっくりだという自覚が、多少なりともある。 自己中心的な、あからさまに言ってしまえばゲスの素養があるゆっくりだと、彼女らはこの時に自分で認めてしまったのだ。 それからというもの、彼女らは徹底的に保身に走っている。 今のこの現状を予測できたものも少なくないのだろう、彼女らは決して身内の弧ゆを引き取らず、自分の子供だけを養ってきた。 そしてまだ秋も始まったばかりだというのに、今冬篭りをはじめても十分なほどの食料を溜め込んでいた。 当然、その食料は長たちには秘密だ。 その上で、冬篭りが出来なくなると、弧ゆたちへの援助を求める長の要求を跳ね除けた。 「おさ、けつだんしないといけないわ」 「でも……でも、ぱちぇ!」 「むきゅ、わたしだってつらいわ。でも、このままだとみんな、ふゆをこせないわ」 参謀ぱちゅりーが長に迫っているのは、間引きだ。 今は長と参謀が弧ゆの世話を手伝い、重鎮たちが狩りに奔走することで辛うじて食い繋いでいる。 だが、冬に備えての蓄えとなると絶望的だ。 日ごろのわずかな備蓄自体、弧ゆの急増のために吐き出してしまったのだ。 参謀ぱちゅりーの言うこともわかる。 長ありすは群れの長の子として生まれ、先代の長ありすから徹底的に長の心構えを叩き込まれてきた。 その教えの中には、大を生かすために小を捨てるというものもある。 だが、長ありすにとっては群れのみんなは全て家族で、それを切り捨てることなど今まで考えたこともなかったのだ。 「…ひとつだけ、かんがえがあるわ」 声を上げたのは、群れのみんなにご褒美のあまあまに並ぶことを許したとき、ルールをひとつ加えた重鎮ぱちゅりーだった。 今ではあまあまに通うゆっくりが減ったため、監視もルールも無くなっていた。 が、次の参謀と目されている重鎮ぱちゅりーの発言に、皆が注目した。 「そ、そんなことできるわけないでしょおおおおおおおおおおおおお!?」 「ぱちゅりーのいってることがわからないよーーー!!」 「でも、ぱちゅりーにはこれくらいしか、みんながふゆをこせるほうほうはおもいつかないわ」 「ゆーーーーん……」 「……やるわ」 「おさ!?」 「みんながえいえんにゆっくりしないですむなら、それをやりましょう」 [15日目] 夜まで続いた会議の翌日、長ありすの群れから重鎮ちぇんが跳ねて行った。 向かう先は、神様のご褒美をはさんで群れの反対側、この森で2番目に大きい──今では最大の群れだ。 「ちぇんはとなりのむれのちぇんだよ! おさにあわせてほしいよ!」 その声に、この群れのゆっくりたちが集まってきた。 ちぇんを囲んで遠巻きに集まり、特に近寄って来ようとはしない。 ひそひそと何事か話しながら眺められることに居心地の悪さを感じながら待っていると、その壁を割って1匹のまりさが現れた。 「まりさのむれになんのようなのぜ?」 「ちぇんのおさから、おくりものをしにきたんだよー」 そのちぇんの言葉に長まりさが眉をひそめる。 隣の群れとは餌場を巡って対立することが多く、こんな贈り物の申し出など今までに無かったからだ。 「じつは、ちぇんのむれにたいへんなことがあったんだよー」 「たいへんなこと?」 ちぇんは参謀ぱちゅりーに教わったことを思い出しながら話していた。 曰く、隣の群れの長は疑い深いから、まずこちらの弱みを話して、それに対するお願いということにしろと。 そのためにみんなで考えた言葉を、長まりさの態度に注意しながら一つ一つ話していった。 「そうなんだよー。 はぐれれみりゃがやってきて、むれのみんながたくさん、えいえんにゆっくりしちゃったんだねー」 ここで長まりさがにやりと笑う。 隣の群れの勢いが弱まったのなら、この秋は餌場を拡大することが出来る。 今年の冬は楽に越せそうだ、と。 「それでおねがいがあるんだよー。 おとなのみんなはへっちゃったけど、こどもはたくさんいるからたいへんなんだねー。 だから、ちぇんたちのむーしゃむーしゃぽいんとにはこないでほしいよー」 「ゆ? それはできないそうだんなのぜ! まりさたちだって、ふゆさんをこすのはたいへんなのぜ! ごはんさんはあるところからとるんだぜ! ひつようだったらちからずくなのぜ!」 「ただとはいわないよー。そのためのおくりものなんだねー」 そのちぇんの台詞を長まりさが鼻で笑い飛ばす。 「ゆっはっは! おもしろいことをいうのぜ! ちぇんがどこにおくりものをもってるのか、まりささまにはみえないのぜ!」 「ここにはないんだよー。あんないするからついてきてほしいんだよー」 罠かもしれない、そう構えた長まりさだったが、道々ちぇんの話を聞くうちに、見るだけ見てみようという気持ちになった。 何でも、ゆっくりの神様がご褒美にくれたあまあまだという。 ただあまあまさんを出すだけでなく、時々罰があるというのが気に入らないが。 ともかく、本当にあまあまだったら、ちぇんたちの群れのいうことを聞いてやってもいい。 あまあまがあればゆっくり出来る、つらい冬篭りを楽しく過ごせるかもしれない。 「これなんだよー」 ちょうど、長ありすと長まりさのそれぞれの群れの真ん中辺りに、それはあった。 ここに置かれたのはお兄さんの計算ずくなのだが、それについては今は触れない。 銀色にぴかぴかしたそれは、普通の森の中にあるものではない。 長まりさが街に出たことがあれば、人間の実物などを見て、これが人間に関係するものと気付けたかもしれない。 だが、生まれてからずっとこの森で過ごしてきた長まりさには、この見たことの無いものが神様のものだと信じてしまった。 「こうするとあまあまさんがでてくるんだよー」 そう言ってちぇんが平らな部分に飛び乗ると、小さな丸いものが出てきた。 ちぇんはそれを長まりさの前においた。 「これがあまあまさんだよー。ぺーろぺーろしてみてほしいよー」 「ゆん、どれどれ。 ぺーろぺーろ……ししししあわせえええええええええええええええ!!!」 「むーしゃむーしゃすると、かたくてゆっくりできないんだよー。 おくちにいれてぺーろぺーろしてるといいんだよー」 「むぐむぐ、んぐ……ふぃあふぁふぇええええええええええええええええ!!!」 一心不乱にあまあまを食べる長まりさの反応に、ついて来た取り巻きたちが驚いている。 そして、自分も食べたいと、物欲しそうな顔を長まりさに向け始めた。 「ゆぐん、しあわせー!!だったのぜ!! みんなもたべるといいのぜ!!」 「ちょっとまってほしいよ!!」 長まりさの言葉で機械に取り付こうとしたゆっくりたちが、一斉に不機嫌な目をちぇんに向ける。 自分の言葉を止められた長まりさも同じだ。 だが、これは参謀ぱちゅりーに特に言われたことなので、ちぇんも言わないわけにはいかなかった。 「そのあまあまさんは、ときどきばつがあってえいえんにゆっくりすることがあるんだよ。 それはおぼえておいてほしいよー」 「それはさっききいたのぜ!」 「じゃあ、このあまあまさんはまりさたちのものなんだよー。 ちぇんたちのおねがいもきいてほしいよー」 「ああもうわかったのぜ! むーしゃむーしゃぽいんとはいまのままでいいのぜ! まりさたちはあまあまでいそがしいからさっさとかえるんだぜ!!」 「というかんじだったんだよー」 「むきゅ。ありがとう、ちぇん。おつかれさま」 群れに戻ってきたちぇんを出迎え、一通り話を聞いてから参謀ぱちゅりーはねぎらいの言葉をかけた。 隣の群れの長まりさの反応は、大体ぱちゅりーたちが予想したとおりだった。 「でも、わからないよー」 「どうしたの、ちぇん?」 「となりのおさは、こわいけどかしこいんだよー。ほんとうのことにきづくかもしれないんだよー。 ちぇんたちのむれにせめてこないか、しんぱいなんだよー」 ちぇんの心配とは、長ありすの群れが激減した原因がご褒美のあまあまだと、隣の群れに気付かれるかもしれないということだ。 そのときに罠にはめた報復をされるのでは、と恐れているのだ。 「むきゅ、それはしんぱいないとおもうわ」 「にゃ? どういうことなのかおしえてほしいよー」 「となりのおさがかしこいからよ」 [20日目] 長まりさは満足していた。 こんな素晴らしいあまあまをもらえるまりさは、きっと特別な存在なのだと感じていた。 隣の群れの後というのが気に入らないが、それも大したことではない。 どうせ隣の群れは、神様のご褒美を使いこなせなかったのだろう、その程度なのだ。 「ゆん! さっさとくるのぜ!」 「いやああああああぁぁぁぁぁぁぁ…」 長まりさと取り巻きたちに、1匹のありすが連れられてきた。 このありすは群れの掟を破って、群れ以外のゆっくりとすっきりしようとしたのだ。 「ごべんだざいぃぃ、もうじばぜんんん…ゆるじでぐだざいいいいぃぃぃぃぃぃ…」 この群れで罰を受けるということは、すなわち永遠にゆっくりするということだった。 そのため、ありすは自身の末路を悟りながらも命乞いを続けていた。 「ゆふん、まりささまのいうことがきけるなら、ゆるしてやってもいいのぜ!」 「ゆ?」 「まりささまがいいというまで、あそこではねることができたら、ついほうだけでゆるしてやるのぜ!」 「ゆぅ…もうすぐふゆさんがくるのに、ついほうされたらゆっくりできなくなっちゃうわ…」 「ゆあーん!? ばつをうけたいというなら、まりささまはかまわないんだぜ!!」 「ゆぴいいいいぃぃぃぃぃ!! やりばずうううぅぅ!! だがらだずげでぐだざいいいいいい!!」 長まりさに凄まれたありすは、泣きながらスイッチに飛び乗った。 何か出てきたが、今はそんなものを気にしている場合ではない。 こんなところで跳ねるだけで命が助かるなら、いくらでも跳ねる。 だからありすは長の合図も待たずに飛び跳ね始めた。 「ゆっ! ゆっ! ゆっ! ゆっ! ゆっ! ゆっ! ゆっ! ゆっ! っゆぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 ありすが飛び跳ねていた場所は、ご褒美のスイッチの上だった。 長まりさは、群れの罪ゆっくりの処刑をここで行うことにしたのだ。 長まりさの群れでは恐怖政治が敷かれている。 群れの勃興期には見せしめの処刑を頻繁に行っていたが、それも群れの規模が大きくなりすぎた今では逆効果だった。 締め付けすぎると、その分反発も強力になるからだ。 そのため、処刑は取り巻きたちだけで密室で行っていたが、これがなかなかに手間がかかる。 動けない程度に痛めつけてから群れから離れた穴に閉じ込め、誰も助けに来ないように死ぬまで見張るのだ。 直接手を下してしまっては、死臭が体についてゆっくり出来なくなる。 だからこんな手順を踏んでいたが、面倒なので別の方法を考えていた。 そこに、神様のご褒美がやってきた。 罪ゆを簡単に処分できる上にあまあままでもらえる、まさに一石二鳥のご褒美だった。 中から出てきたあまあまは、1個ずつ取り巻きに分け、残りは長まりさの分となる。 初めての日に取り巻きが1匹、永遠にゆっくりしてしまったが、今となってはそれもいい教訓だ。 取り巻きの誰もがこのやり方に文句を言わず、1匹でこっそりあまあまを取りに来ようとすることもない。 群れの一般のゆっくりには、神様のご褒美のことは教えていない。 元々、特別なご馳走が手に入っても長まりさの総取りだったので、ちぇんの話をきいたゆっくりたちも気に留めていない。 知っている取り巻きたちは、今のやり方で十分に満足している。 長まりさも、全てがうまくいっていることに満足だった。 だから長まりさは気付かなかった。 あまあま欲しさに微罪で罰せられるゆっくりが増えていたことに。 物陰で様子を伺っている視線があることに。 「…ゆ、いったよ」 物陰の視線は、長ありすの群れの重鎮まりさだった。 その後ろには重鎮みょんと重鎮ちぇんの姿もある。 3匹の視線の先には、隣の群れの長まりさ一行がいる。 あまあまを手にして帰っていくところで、もう少し待つと完全に見えなくなった。 茂みの陰から姿を現した3匹は、それぞれ朴の木の落ち葉をくわえている。 向かった先は処刑されたありすの死骸。 持ってきた落ち葉をその隣に重ねると、ありすの死骸を落ち葉の上に乗せた。 「じゃあ、さいしょはまりさとみょんがはこぶよ」 「わかったみょん」 「ちぇんはみちをみるんだね。わかるよー」 そうして3匹は、ありすの死骸を運んでいった。 弧ゆたちの食料にするためだ。 当然、同属食いの禁忌はこの群れの中にもある。 だが、何にでも例外はある。 過去に群れが飢餓に陥ったとき、餓死した仲間の死骸を食らって生き延び、そこから再興して今の群れがある。 長も参謀も重鎮たちも、そのことは代々引き継ぎ、群れの歴史として知っているのだ。 だから重鎮ぱちゅりーは、この非常時を乗り切るために提案したのだ。 群れの中から死骸を出すのは抵抗があるし、何よりこれ以上の死ゆは出したくない。 ならば、他の群れから死骸を調達すればよいのでは? さすがに死骸をくれなどと真正直に話しては、群れ全体がゆっくり出来ないとして敬遠されてしまう。 だから、神様のご褒美を隣の群れに送ったのだ。 きっと隣の群れでもあまあまに目がくらんで、死ゆを出してでも手に入れようとするだろう。 その死骸を、こっそり頂戴するわけだ。 惨めだなどと嘆いている場合ではない、100匹もの弧ゆの命がかかっているのだ。 もちろん同属1体分のあまあまなど、100匹の弧ゆの前には焼け石に水だ。 なので、これは普段なら食べないような美味しくない草さんに混ぜて出される。 これは不要に舌を肥えさせないためでもあるが、死骸を死骸と思わせないための処理と、少ない餌を可能な限り補うことも兼ねている。 今も他の重鎮たちが、手伝ってくれない群れの仲間の代わりに、必死になって狩りをしているのだ。 正直なところ、このままではまともに冬を越せる個体は少ないだろう。 それでも、まともな成ゆが壊滅状態の長ありすの群れでは、次代のために弧ゆたちの命を諦めるわけにはいかないのだった。 [25日目] 「ゆっくりできないおさはでていってね!」 「ゆっくりできないおさはでていってね!」 長ありすは窮地に陥っていた。 群れのゆっくりに、死骸を集めていることを知られてしまったのだ。 群れで生き残った頭の良いのゆっくりたちは、豊かな餌場を少ないゆっくりで独占しているうちに、完全にゲスとなっていた。 冬の蓄えをたっぷりと溜め込んだ上での日々のたっぷりの餌に、我慢することをどんどん忘れていった。 また、長たちも弧ゆのために日々奔走しており、誰もそれを正すことが無かった。 そしてある日、あるゆっくりが、長たちが何か隠していることに気付いた。 思えばあれほどの数の弧ゆが、誰も永遠にゆっくりすることなく育っている。 長たちはとてもゆっくりした餌場を、自分たちに秘密にしているのでは? そう勘繰ったのだ。 そして、見たものは死骸をあさる重鎮たち。 ゆっくりを食べるゆっくりはゲスだ、ゆっくりしていない。 だからあの弧ゆたちは全部ゲスだ。 ゲスを育てる長たちもゲスだ。 ゲスは群れにいらない、出て行け。 そういうことだ。 長たちはぱちゅりー種まで含めても10匹ほどで、弧ゆたちのための重労働で疲れきり、栄養状態も悪い。 対して群れのゆっくりは、ぱちゅりー種を除いても20匹あまりで、長たちより一回りも大きいほど肥えていた。 群れのゆっくりの子ゆまで含めれば数は圧倒的で、一斉に襲い掛かられては弧ゆも含めて全滅は必至だった。 「…いきましょう、おさ」 「ゆぐっ…ゆうううぅぅぅぅぅぅ……」 父祖の地を追われる長の心境、如何ばかりか。 長ありす以下、重鎮・弧ゆを合わせて総勢100匹以上。 この日、あても無く群れを去っていった。 [27日目] 「どういうことなんだぜえええええええええええ!?」 神様のご褒美の前で、隣の群れの長まりさが激昂していた。 罪ゆを処刑したのに、あまあまが出てこないのだ。 何かの間違いと思った長まりさは、立て続けに3匹を処刑した。 だが、あまあまは全く出てこなかった。 この日、ついに機械の中の飴玉が尽きたのだ。 「どういうことなの、おさ!」 「ありすもあまあまさんがほしいわ!」 取り巻きたちが騒いでいるが、無いものはどうしようもない。 長の巣にためてあるあまあまを使うか? いや、あれはダメだ、あれは冬篭りの間に長のかわいいおちびちゃんたちが食べるのだ。 だが、このままでは取り巻きたちの収まりが付かない。 どうすれば。 「…となりのむれがわるいんだぜ!!」 「「「ゆ!?」」」 短い時間で必死に考え、長は隣の群れに転嫁することを選んだ。 「このごほうびは、さいしょとなりのむれがつかっていたのぜ!! やつらがつかわなければ、あまあまがでなくなったりしなかったはずなのぜ!」 「ゆーん、そういうものなのかしら?」 「そうにきまってるのぜ! となりのむれがまりささまたちのぶんのあまあまをたべたのがわるいんだぜ!!」 「ゆ、なんだかそんなきがするよ!!」 「だからとなりのむれをせいさいしにいくんだぜ!!」 「「「ゆ゛!!?」」」 勢いに乗りすぎた長まりさがとんでもないことを言い出した。 今まで隣の群れとは小競り合いはあっても、全面戦争にまで発展したことは無い。 長まりさの周りで安穏と暮らしていた取り巻きたちは、自分に危害が及ぶようなことを経験したことが無い。 だから、自分が死ぬことがあるかもしれない事態に驚いた。 「お、おさ! れいむはあまあまさんはいらないから、せいさいはかんがえなおしてほしいよ!」 「ゆぁーーーん!? れいむはとなりのむれのすぱいなのかぜ!?」 「ぢぢぢぢがうでじょおおおおおおお!? せいさいはれいむがゆっくりできないからやりたくないよおおおおお!!」 「うるさいうるさい!! やるといったらまりささまはやるのぜ!! げすのむれはねだやしにするのぜ!! いますぐもどってせんそうのじゅんびをするのぜ!!」 踵を返して群れに戻ろうとする長まりさの後姿を、取り巻きたちは暗澹たる思いで見ていた。 元々取り巻きたちは、長の周りで調子のいいことを言っているだけでゆっくりできるので、そうしていただけだ。 それが、本当に戦争になってしまったらゆっくりどころではない。 実際には元長ありすの群れはすでに群れとして機能していないので、一方的な蹂躙で終わるだろうが、それを長まりさの群れが知る由は無い。 どうやって群れから逃げ出そうか、何を持って逃げ出そうか、どこへ逃げていこうか。 顔を真っ赤にした長の後ろで取り巻きたちが顔を青くしているとき。 「まつんだよ!!」 「ゆぅーーーん?」 長まりさ一行の前に、1匹のゆっくりが立ちふさがった。 厳しい目をした、長とは別の若いまりさだった。 「どうしてかってにこんなところにくるのぜ! せいさいされたくなかったらさっさとむれにかえるんだぜ!!」 「まりさはしっているよ! おさたちがここで、みんなをあまあまにかえていたことを!」 「それがどうしたのぜ! ざいゆっくりはせいさいされてとうぜんなのぜ!! ついでにあまあまがでてきても、かんけいないのぜ!!」 「じゃあ、きょうえいえんにゆっくりしたありすはなにをしたの!? きのうえいえんにゆっくりしたれいむは!? そのまえのぱちゅりーは!?」 「ゆぎっ!?」 長まりさは咄嗟の言葉に詰まった。 ここ数日はあまあま欲しさに、ほとんど言いがかりで罪ゆを仕立て上げていたからだ。 「ぱちゅりーはまりさのおかあさんだったよ! とってもかしこくてゆっくりしたおかあさんだったよ! れいむはまりさのいいなずけだったよ! とってもやさしくてゆっくりしたれいむだったよ! ありすだって……それを…それををををををををををを!!」 「ゆがああああああああああああああああああ!! うるさいうるさい!! まりささまはおさなのぜ!! えらいのぜ!! おさにさからうげすはしねええええええええええええ!!」 言うが早いか、長まりさが目の前の若まりさに飛び掛る。 だが、若まりさはそれを冷静に避けると声を上げた。 「いまだよ!」 「ゆん!?」 長まりさは横から飛び出してきた影に気付いた。 気付いたが、そこまでだった。 「ゆっくりしねみょん!!」 ざくっ 「ゆっぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 横の木陰に潜んでいたみょんが口にした木の枝で、長まりさは貫かれた。 「ゆばあああああああああああ!! だれがばりざざばをだずげろおおおおおおおおおおお!!」 「むりだよ」 「ゆ!? ゆびゃあああああああああああああ!! いぢゃいいぢゃい!! おずなあああああああああああ!!」 枝に貫かれたままの体を若まりさに押され、長まりさは悲鳴を上げる。 そうして無理矢理後ろを向かされて、目に入ったのは木の枝で武装したゆっくりに囲まれた取り巻きたちだった。 「だ…だずげで……おざ…」 「ゆああああああああああああああああ!! おばえらがばりざざばをだずげるんでじょおおおおおおお!? ばがなの!? じぬの!?」 「しぬのはおまえだよ」 「ゆ゛っ!?」 若まりさは長まりさから枝を引き抜くと、長まりさの上に飛び乗った。 「ゆぴゃあああああああああああああああああああああ!! でぢゃう!! あんごでぢゃう!! やべで!! だずげでええええええええ!!」 「いのちごいなんてきかないよ」 「どぼぢで!?」 「どうしてそんなこときくの? ばかなの? しぬの?」 「ばりざはばがじゃな……ゆぎょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! 若まりさは何度も長まりさの上で飛び跳ね、念入りに押し潰していった。 やがて長まりさの声が聞こえなくなり、目玉も潰れて真っ平らになり、土に混じって原形を留めなくなるまで、何度も、何度も。 「おまえたちはむれにつれてかえるよ」 「おでがい…いのぢだげば……」 「おまえたちのしょけいは、むれのみんなでするよ」 「「「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」」」 [30日後] 隣の群れあたらしい長となった若まりさは、長ありすが統治していた群れを訪れた。 長まりさの苛烈な統治で半減してしまった群れの安堵を担保するために、平和条約を結ぶためだ。 そして、隣の群れの現状を見て愕然とした。 これ程広大なゆっくりぷれいすに、いるのはわずかに十数の家族だけで、その誰も彼もがゲスだった。 聞けば、長たちはゲスが追い出したという。 賢く立派な長がいると評判で、いつか移り住みたいと思っていた若まりさの理想郷の、現実がこれだった。 ゆっくりの群れなんて、どこもこうなのかもしれない。 長まりさに家族の全てを奪われた若まりさは、復讐を終え、理想の結末を見、全てが空しくなった。 こうして、隣の群れはわずか3日で新しい長を失った。 この後、統率を失ったゆっくりたちが餌場を巡って散発的に争っていたが、やがて来た冬が全てを雪の白の下に包み隠してしまった。 いずれ来る春に新しい秩序が生まれるかは、その時にならないとわからない。 [後日] 「いや、なかなかドラマチックだったね」 観察記録の編集を終えた俺は、ため息混じりにつぶやいた。 もちろん、満足満腹のため息だ。 2つの群れの中央に機械を置いたのは、機械を巡って群れ同士が醜い争いでもしてくれないかと期待してのことだった。 だが、現実は俺の予想をはるかに超えて劇的だった。 こんなおもしろいものを俺一人で見るのはつまらない。 最近、愛で兄が虐待に目覚めたので、これを見せて反応を見てみよう。 愛でと虐、どちらに振れるかはわからないが、どっちにしても面白いだろう。 面白いといえば。 モニタの画像を切り替える。 赤外線カメラの白黒画像に映っているのは、長ありすとその御一行様だ。 裏手の広大な森は、人里近いにもかかわらず純野生種に極めて近いゆっくりを観察できる、貴重な土地だ。 そこであれほど大きな群れを維持できた長ありすを使い捨てるのはもったいない。 以前別の実験のために誰も住まなくなってしまったゆっくりぷれいすに、人間の仕業と気付かれないように誘導したのだ。 長ありすたちは、かつて熊の巣穴だった場所で冬篭りをしている。 かつての主は、猟友会の手にかかってすでにこの世にはいない。 巣穴の置くにはたっぷりの餌が溜め込んである。 数年は放置されていたゆっくりぷれいすなので、餌だけはたっぷりと集めることができたのだ。 当然、それだけでは100匹以上の群れを維持できない。 なので、森に仕掛けたあれこれの罠を使い、適正と思える数にまで俺が間引いた。 新作の罠の動作確認にもなり、一石二鳥だった。 長たち大人のゆっくりの輪の中で、30匹ほどの子ゆっくりが眠っている。 全てが冬を越せないとしても、これだけの数がいれば、春には新しい群れとして機能し始めるだろう。 その新しい群れは、一体どんなドラマを見せてくれるのだろう。 来るべきその時のために、新作の開発に余念は無い。 (完) 作者:元ネタ → 「98%の確率でお金がもらえるが、2%で死ぬボタン」 (記事:ttp //internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20090916_315857.html) 作者は898万円で死にました。 by (め)の人 想定以上に長くなったので、せっかくなので拙作一覧もつけておきますね。 ふたば系ゆっくりいじめ 166 ゆっくり繁殖していってね! ふたば系ゆっくりいじめ 179 にんげんさんはゆっくりできない ふたば系ゆっくりいじめ 203 まりさのだいじな ふたば系ゆっくりいじめ 207 ゆっくりせいいをみせてね! ふたば系ゆっくりいじめ 215 ゆっくりほいほい ふたば系ゆっくりいじめ 219 ゆっくりアップダウン ふたば系ゆっくりいじめ 244 ぽんぽんいたいよ ふたば系ゆっくりいじめ 251 ゆゾンデートル ふたば系ゆっくりいじめ 255 れいむのラッキーライフ ふたば系ゆっくりいじめ 259 れいむのアンラッキーライフ ふたば系ゆっくりいじめ 262 目と目で通じあう ふたば系ゆっくりいじめ 269 約束しよう ふたば系ゆっくりいじめ 278 れいむの性格改善教室 めーりんあきの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 最高の作品の1つに出会えた -- 2012-11-19 01 41 10 俺1億5000万超えた! -- 2011-05-30 20 15 12 物語性が素晴らしいなぁ。 仕掛けも良いが、その後のゆっくり達の考えも素晴らしい -- 2010-10-03 22 05 02 すごく完成度が高くてゆっくりできたよ! こういう読み応えがある作品はうれしいね! -- 2010-07-31 09 05 47 面白かった! こういうのを読みたかった -- 2010-07-11 12 10 34 フォローは『あの向こうへ』をどうぞ -- 2010-03-07 02 18 18
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/3082.html
その1より れいむたちが考え付く限りの作戦を敢行しておよそ3時間。3匹は未だ部屋から出られないでいた。 壁に体当たりをしても壊れない、床に穴を開けようとしても硬くて掘り返せない、再度3匹でお兄さんを呼んでも返事は返ってこない。 疲れてお腹の空いてきた3匹は、一時休憩とばかりにドッと床に座り込む。 「でられないね……」 まりさがポツリと呟く。 どんなに頑張ろうと、この部屋のありとあらゆる物が、自分たちの行く手を阻む。 かつて見たこともない物で溢れかえっていることもあり、れいむはまるでここが異次元の世界のように感じられた。 更にはお腹が空いてきたこともあり、いよいよもってれいむはこの状況に恐怖を感じ始めた。 もしまりさやありすが側にいなく、一匹でここに閉じ込められでもしたら、たちどころに精神が参ってしまうだろう。 本当に自分たちはここで一生を終えることになるのではないか? まりさの一言は、精神的にも肉体的にも憔悴したれいむを落とすのには、あまりにも雄弁すぎる言葉だった。 すでに頭の中は最悪の事態まで考え始めている。 しかし、れいむの悪い空想とは裏腹に、ここに来てようやく事態が動き始めた。 突然、遠くから物音がしたかと思うと、徐々に足音らしきものが近付いてきて、すぐそばでピタリと止まった。 そして今までビクともしなかった壁がいきなり開き始めた。単に扉が開いただけともいう。 そこから部屋に入ってきたのは、三匹をここに連れて男その人であった。 「おにいさん!! くるのがおそいよ!! れいむぷんぷんだよ!! あのおいしいものをいっぱいもってきてくれないと、れいむおこっちゃうよ!!」 扉が開き、暗黒の世界に一変して光が差し込んだれいむは、嬉しさを隠しきれず、男の元に跳ねていった。 お菓子を寄こせとは言ったものの、別に本気で言ったわけではない。 もし男が自分たちの苦労の一端を知れば、もう一度あの美味しいものを食べさせてくれるかもしれないという僅かばかりの打算が働いただけである。 しかし男がれいむにくれたのは、甘い甘いお菓子などではなかった。 「ゆべっ!!!!」 突然、れいむの体が浮いた。そして、背後の壁に叩きつけられる。 れいむは何が起こったのか理解できなかった。 床に落ちると同時に襲ってきた強烈な痛みに、何が起こったと考えている暇などありはしなかった。 ただ、れいむが男の足元に行った瞬間、男の足が目の前に迫ってきたことだけは、無意識で理解していた。 「ゆぎゃああぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあ―――――――――――――!!!!!」 れいむはあまりの激痛に、蹴られた鼻(?)周りを地面に擦りつけたり、床を転がりまわったりして、必死で痛みを和らげようとする。 しかし、男はれいむの元に来ると、無造作に髪の毛を掴み上げ、まりさとありすの居る所に放り投げる。 「ゆぶっ!!!」 痛さを和らげる暇もないれいむ。 まりさとありすは、そんなれいむを心配しつつ、男に食ってかかる。 「おにいさん、れいむになにするの!! ゆっくりあやまってね!!」 「そうよ!! こんなことするなんて、とかいはのすることじゃないわ!!」 二匹は「ぷくー!!」と頬を膨らませて、威嚇のポーズを見せる。 しかし、威勢のいい言葉や態度とは裏腹に、決して男の元に近づこうとはしなかった。 頭のいい個体なら、今の一見を見ただけで、自分たちが人間に敵わないのが分かるというものだ。おそらく二匹にはそれが分かっているのだろう。 それでも男に食ってかかるあたり、れいむを心配しているのと、未だあの優しかった男の行動が信じられないと言ったところだろうか。 そんな男はというと、二匹に言葉ではなく行動で返事を返す。 バアン!!! 男が盛大に床を踏み、壁を叩く。聞くからに痛そうな音が部屋中に響き渡った。 たったそれだけの行動であるが、まりさとありすに恐怖を植え付けるには充分であったようだ。 風船のような頬は萎み、未だ痛みのひかないれいむも含めて、体を寄せ合ってブルブル震え始める。 男はその様子に満足そうな笑みを浮かべると、入ってきたドアを閉め、ようやく口を開いた。 「もう起きていたとは……意外と薬の効きが弱かったらしいな」 ようやく痛みの引いて来たれいむは、男の言葉に耳を傾けるも、その意味が理解できなかった。 隣のまりさ、ありすも同様に首をかしげている。 「さてと、まず何から話すべきか。まあ、これから一緒に暮すんだし、まずは挨拶からか。お前たち、おはよう。ゆっくり寝られたかな?」 またもや話しかけてくる男。 今回もれいむは男が何を言っているのか分からなかった。と言っても、最初のとは意味合いが違う。 “これから一緒に暮らすんだし” いったいどういう意味だ? 普通に考えれば、男が言葉をかけたのは自分たちであり、自分たちと一緒に生活するということである。 しかし、れいむたちは自分のお家がちゃんと森の中に存在する。いや、れいむはまだ出来ていないが、それも数日たたず出来上がるだろう。 男と一緒に暮らせば、毎日おいしいものを食べられるかもしれないが、正直ここに住みたいとは思わない。 この歪みのない均一のとれた空間が森暮らしのれいむには違和感だらけで、どうにも心地よくないからだ。 「お、おにいさん、なにいってるの? まりさはじぶんのおうちがあるから、おにいさんといっしょにくらせないよ!! ゆっくりりかいしてね!!」 まりさもれいむ同様男の言葉に疑問をもったらしい。 さっきの男の行動にビクビクしながらも、きっぱりと意思を示す。 「う〜ん、いきなり言っても分からないよな。まあいい、これから説明してやろう」 「ゆっ?」 「お前たち、昨日食べたビスケットは美味しかったかな?」 「ビスケット?」 ビスケットという言葉に聞き覚えのないれいむだが、おそらく森で食べた甘いものであろうと当たりをつける。 その味を再び思い出し、痛みも忘れ、涎を垂らす。 「おいしかったよ!! いっぱいゆっくりできたよ!!」 「そうか、それはよかったな」 「ゆっくりまたほしいよ!!」 「ざんねんながら、あれはもうないよ。まあ睡眠薬の入ってないものなら、まだたくさんあるがね、ハハハ」 「すいみんやく?」 「睡眠薬ってのは、無理やり眠らせる為の薬だ。お前たちが食べたビスケットの中に含まれていたんだ。食ってる最中、いきなり眠くなってきたのはそのためだ」 「ゆゆっ!!」 そういえば、まりさもありすもあまあまを食べていた時、急に眠くなったと言っていた。 まりさと同じだということで浮かれたが、よく考えてみたら、全員がいきなり眠くなるなんておかしいことだ。 れいむはようやくそれに気が付いた。 「どうやら理解できたようだな」 「おにいさんがれいむたちをねむらせて、ここにつれてきたの?」 「ご名答ありがとうございま〜〜す」 「ゆゆっ!! ざんねんだけど、れいむはおにいさんといっしょにくらせないよ!! れいむはゆっくりはやくおうちをかんせいさせなくちゃならないんだよ!! ゆっくりさびしくても、がまんしてね!!」 自分たちを眠らせて連れてきたということは理解できたが、れいむは思いっきり蹴られたにも関わらず、全く危機意識を持っていなかった。 自分が蹴られたのは、お菓子を持って来いと我儘を言ったからだ。 自分たちを連れてきたのは、きっと一人暮らしが寂しかったからだ。 これがれいむの出した結論だった。 れいむは群れ一番の狩人である親れいむと、群れ一番の識者である親ぱちゅりーから生まれたゆっくりである。 母体が体の弱いぱちゅりーだったため、ぱちゅりーの体を重んじた親れいむは、れいむを除いた姉妹の蕾をすべて間引いてしまった。 とは言え、親れいむが無理強いをしたわけではなく、ぱちゅりーとの相談のもと、断腸の思いでの間引きであった。 本来、ゆっくり殺しは禁忌であるが、蕾の段階なら間引くことは問題ない。 そのため、多産のゆっくりにしては珍しく、れいむには姉妹がいなかった。 そんなこともあって、両親がれいむに与える愛情は相当なものであった。 周りのゆっくりたちも、群れに貢献度の高い偉大な二匹から生まれたれいむを誉め湛え、れいむはそれを当たり前として育った。 それでいて我儘なゲスにならなかったのは、ひとえに両親の惜しみない愛情と、親ぱちゅりーのしっかりした教育の賜物であろう。 しかし、それは言いかえれば籠の中の小鳥とも言い換えられる。 知識では教えられていても、所謂本当の悪意を知らずに育った箱入り娘のれいむは、あまり疑うということを知らなかった。 よく言えば純粋、悪く言えば世間知らず。 ここにホイホイ連れてこられた経緯を見れば、まあ言うまでもないだろう。 「はは、寂しいねえ……まあ、この年になって嫁さんも貰わず、こんな趣味をしてるようじゃ、そう言われても仕方ないか」 「ゆっくりりかいしてね!!」 「ああ、ゆっくり理解したよ。まあ理解はしても、改めはしないがね」 「ゆっ?」 「繰り返すが、お前たちが俺と一緒に暮らすのは決定事項だ。そこにお前らの事情は関係ない。明日も明後日も一週間後も十日後も、お前たちはここで生活するんだよ」 「ゆぅ……だからゆっくりりかいしてねっていってるでしょ!! まりさたちはおうちがあるから、おにいさんとはくらせないんだよ!!」 まりさが語気を強くして反論する。 いい加減、自分たちの話をまともに取ってくれない男に、イラつき始めたのだろう。 れいむも同じ気持ちだった。 しかし、男はまりさの言い分を全く聞こうとしないばかりか、突然、態度を豹変させた。 「うっせーぞ、饅頭どもっ!! ホント、頭がわりーな!! 人が下手に出ていりゃ、つけあがりやがって!! もう一度だけ言ってやる。これからお前らはここで暮らすんだ。ゆっくり理解しな!!」 ガラの悪い言葉と共に、壁を壊れるのではという勢いで叩いてくる。 三匹はそんな男の言葉と行動に再度萎縮させられた。 れいむには信じられなかった。 これが本当にあの優しいお兄さんの言葉なのか? 森であまあまをくれた時は、あんなに優しそうな声を掛けてくれたというのに!! これでは丸っきり別人じゃないか!! おそらく、隣にいるまりさやありすもそう感じたのだろう。 「ゆっ……」と言葉を詰まらせ呑み込んだまま、まりさは男に言葉を返せないでいた。 三匹の委縮した様子を見て、男はようやく鬼のような形相を静めると、ゆっくりと説明を加えてきた。 「これでようやく話が進められるな。結構結構。それでは、お前らの今後の生活について簡単に説明してやろう。お前ら3匹には、これからこの家で生活してもらう」 「な、なんで、こんなところでせいかつしなくちゃいけないの?」 「理由は至極簡単。お前らを虐待するためだ」 「ぎゃくたい?」 聞きなれない言葉に、れいむがビクビクしながら質問を返す。 「ちっ、虐待の意味も知らんとはな。まあ、饅頭なんてそんなもんか。お前らふうに分かりやすく言えば、お前らを苛めるために連れて来たんだよ!!」 「い、いじめ!? いじめはしちゃいけないって、れいむのおかあさんがいってたよ!!」 「そうだな。確かにしてはいけない。だが、虐めというのは、生物に対しすることだ。お前らは生物(いきもの)ではなく生物(なまもの)だ。故に問題なし!!」 「れいむたちは、いきものでもなまものでもなくて、ゆっくりだよ!!」 「なら、なおよし!!」 「「「そんなあああぁぁぁぁぁ―――――!!!!」」」 3匹は一斉に悲鳴を上げる。 男に説明されて、ようやくれいむは理解出来た。 つまり、れいむたちは、この男に嵌められたのだ。 あの時の優しそうな態度は演技で、これが男の本当の姿ということなのだろう。 しかし、それが分かったからと言って、どうなるわけでもない。 親ぱちゅりーから、何があっても人間に刃向ってはいけないと言われていたのも忘れ、れいむは苛めという言葉に反応し、男から急いで離れようとした。 とは言え、ここは狭い部屋の中。 ドアも閉められており、れいむたちに出る術はない。 痛いのを我慢して壁に体当たりしたが、一向に壊れる気配は無かった。 「無駄なことは止めておけ。お前ら程度の力で、人間の家の壁を壊せるわけがない」 「なんでれいむたちをいじめるのおおぉぉ―――!!! れいむ、わるいことしてないよおおぉぉぉ―――!!!」 「まりさだって、なんにもわるいことしてないよおおぉぉぉ―――――!!!」 「とかいはをいじめるなんて、いなかもののすることよおおおぉぉぉぉ――――――――!!!」 各々が感情を爆発させる。 しかし、男は淡々とあり得ないことを口にする。 「理由は至って明快、俺はゆっくりいじめが好きだからだ」 「そんなあああぁぁぁぁぁ―――――――――――――――――――――――――!!!」 「ちなみに、お前ら三匹を選んだ理由は特にない。俺の目に止まったから連れて来ただけだ。睡眠薬入りとはいえ、人間のお菓子を食べられるなんて運がいいな」 「ぜんぜんよぐないよおおおおぉぉぉぉ――――――!!!」 「何言ってる。しあわせ〜〜♪ とか言ってたくせに!!」 「ゆっぐりおうぢにがえじでええぇぇぇぇぇ―――――!!!」 「れいむ、お前の巣はまだ建造中だろうが。帰る家もないんだし、ちょうどいいだろ」 「やだあああぁぁぁぁぁ―――――――!!!!!」 れいむは泣き叫んだ。 隣のまりさもありすも、れいむに負けず劣らず、大声で悲鳴を上げている。 男はそんな三匹の歪んだ顔に満足そうな笑みを浮かべながら、説明を続けてくる。 「お前たち。これから虐待をするに当たって、いくつか説明しておこう。 まず虐待は一日一回。一匹につき一時間行う。それ以上は一切しない。 また、お前たちを殺しもしない。俺は殺すことに興味がない。せいぜい精神崩壊を起こさないように気を強く持て。 次に虐待は一匹ずつ行う。その時、他の二匹は待機。 気が散るとあれだから、大声は上げるなよ。もし俺の不興を買ったら、虐待時間を延長するからな。 ちなみに、虐待されている者は、どんなに泣き叫んでも構わない。むしろ泣き叫べ。歪んだ顔を見せろ。そのほうが、俺は興奮する。 以上だ。何か質問があったら受け付けよう」 男は淡々と事務的な口調で述べてくる。 質問と言われても、れいむたちに質問するようなことなどありはしない。 「れいぶだぢ、いじめられだぐないよおおおぉぉぉぉ―――――!!!」 「却下だ。お前たちを、虐待することはすでに決定事項だ。他には?」 「まりざをおうぢにがえじでえええぇぇぇ―――――!!!!」 「さっきも言ったように、お前らを殺しはしない。いずれ、虐待に飽きたら森に帰してやろう。まあ、何時になるかは未定だが」 「ぞんなあああぁぁぁぁぁ―――――!!!」 「とかいはをいじめるなんで、いながもののずるごどよおおぉぉぉぉぉ――――――――――!!!!」 「お前はそれしか言えんのか……だいたい森暮らしのゆっくりに、都会派とか言われてもな。それにお前に言われるまでもなく、ここは田舎で、俺は田舎者だ」 「「「ここがらだじでえええぇぇぇぇぇぇぇ――――――――――――――!!!!」」」 「……どうやら、もう質問はないようだな。それじゃあ、そろそろ始めるか」 「「「やだああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――!!!!」」」 「まず最初はまりさ、続いてありす、最後にれいむの順番で虐待を行う」 男はそう言うや、三匹に迫ってくる。 対して、三匹は捕まるまいと、泣きながら部屋中を逃げ回る。特に、最初に指名されたまりさは必至だ。 しかし、そこは狭い部屋の中。 ゆっくりと人間とでは、勝負になるはずもなく、あっさりとまりさは捕まってしまう。 「や、やだああぁぁぁぁぁぁぁ―――――!!! やだああああぁぁぁぁぁぁぁ―――――!!!!」 まりさは必死で男の手の中から抜け出そうとするも、ガッチリと締め付けられており、どうしても抜け出せなかった。 「まあ安心しろ。今日は初日だからな。特別緩い虐待で我慢してやる」 「ぜんぜんあんじんでぎないよおおぉぉぉぉぉ――――――――――!!!!」 「それじゃあ、虐待部屋に行きますか」 「はなじでええぇぇぇぇぇ―――――――――――――!!!! やめでええぇぇぇぇぇ――――――――――――――!!!!」 男は右手でまりさを抱えたまま、部屋の扉を開けた。 れいむはこの瞬間しか逃げるチャンスはないと、男の隙間をぬって、扉に滑り込もうとした。 しかし、男はすでにお見通しだったのか、れいむの顔面を蹴りつけ、部屋の中に吹っ飛ばす。 「ゆぶっ!!」 「余計なことはしない方がいいぞ。何度もこういう目に逢いたくなかったらな。もっとも、たとえこの部屋を抜け出せたとしても、この閉め切った家から出られる訳ではないが」 男はそう言うや、泣き叫ぶまりさを連れて、部屋の中から出て行った。 しっかりと扉を閉めて、外から鍵をかけられる。 男になんと言われようと、虐待されるなんて真っ平である。 れいむは何とかここから出ようと、壁に体当たりをしたり柱にかみついたりしたが、男の言葉通り、無情にも壁や柱はビクともしなかった。 逆に、体当たりをした箇所に、痣や切り傷が出来る。 それでも、懸命に部屋から抜け出そうと、れいむはもがきまくる。 ありすは、そんなれいむに目もくれず、未だにグズグズ泣きわめいている。 れいむは泣いている暇があったら手伝えと、何もしないありすにイラつくが、数分後、微かに聞こえてくるまりさの絶叫に震えあがり、自然と手が止まってしまう。 そして、どうしても考えざるを得ない未来の自分。 一時間というのがゆっくりであるれいむにはどれほどの永さか分からないが、まりさが終わりありすが終えた後、れいむも同じ道を辿ることになるのだ。 まりさは一体どんな酷いことをされているのだろう? どれほど痛いのだろう? 時間がたてば、それを自分も受けることになるのだ。 自然と涙腺の緩んでくるれいむ。 部屋から抜け出せないせいか、それともありすに釣られてか、はたまた近い将来の自分の姿を想像してか…… れいむは一気に感情を爆発させた。 「ゆああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――ん!!! おがあざあー――――――――――ん!!! だずげでえええぇぇぇぇぇ―――――――――!!!!!」 以前両親は言った。 自分たちのお家の近くに家を作りなさいと。 大人になったといっても、れいむはまだ完全な大人じゃないんだから、自分たちの目の届くところに居ろと。 お前の友達もみんなそうしているんだと。 それを断わって、遠く離れた所に来たのは、れいむの意志だった。 今まで、何不自由なく暮らしてきたれいむ。安全で、温かく、満ち足りた生活を送っていた。 しかし、それでいてどこか現状に不満を抱いていた。所謂刺激が足りなかった。 それは満ち足りているからこそ持ち得る贅沢な悩み。 れいむは両親の反対を押し切り、群れを出た。 これから刺激に満ち溢れた生活が始まるはずだった。 本当なら……本当なら……そうなるはずだったのだ!! なんでこんなことになったのだろう。 れいむは今激しく後悔した。 何であの時両親の言葉を素直に聞かなかったのだろう。 何でホイホイと人間を信用してしまったんだろう。 まりさの絶叫は、さらに大きさを増してくる。 れいむは男がまりさの虐待を終え、部屋に来るまで延々と泣き続けた。 まりさが連れていかれてから一時間後。 れいむとありすの閉じ込められていた部屋のドアが開かれた。 二匹は、ビクッと体を震わせる。 「まりさの虐待は終わりだ。続いて、ありす、お前の番だ」 「いやああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――!!! ごないでええぇぇぇぇ――――――――――――!!!!」 先程同様、部屋の中で鬼ごっこをするも、やはり呆気なく捕まってしまうありす。 今回はれいむの番ではないと分かっていつつも、泣きながら最大限男と距離を取る。 ありすが終わればいよいよ自分の番なのだ。 いったいまりさはどんな酷い目にあわされたのだろう? 少しでも情報が聞ければ、対策の立てようも……と、ここにきて、ようやく気が付いた。 まりさがいないのだ!! 男は部屋に入ってくるとき、まりさを連れて来なかった。 もしかしたらまりさの身に何か起きたのではないか? 殺さないとは言ったが、もしかしたらあまりの痛さに死んでしまったのではないか? 最悪の状況が浮かび上がる。 「おにいさん!! まりさをどうしたの!? なんでつれてきてくれないの!?」 震える体を必死で抑え、男に問いただす。 男は泣き叫ぶありすを抱えたまま、れいむの方を向き、口を開いた。 「ああ、心配すんな。ちゃんと生きてるさ。今は別室で休んでるよ」 「ゆぅ……よかったよ」 「大事な虐待要員だ。簡単に死なせてたまるか」 「……」 「それにしても、お前も呑気だねえ。次は自分の番だってのに、ここにきて友達の心配か。そんなことするより、自分の心配をした方がいいと思うがね」 男は、「一時間後にまたな」と残し、泣き叫ぶありすを抱えて、部屋の中から出て行った。 れいむは、まりさが助かったことに安堵した反面、一匹部屋に取り残された状況に恐怖で押しつぶされそうになった。 この一時間、ありすは泣き続けていただけだが、それでも誰も居ない今よりはずっとマシであった。 シーンと静まり返る密閉された空間が、恐怖感や緊張感をこれでもかと演出してくれる。 再びれいむの頬に涙が伝う。 一時間。一時間後には、れいむもまりさやありす同様、男に虐待されてしまう。 いったいどんなことをされるのだろうか? どれほど痛いのだろうか? れいむの餡子脳が思い描くのは、最悪の想像ばかり。 なんとか回避できないものか? なんとかここから出られないか? もう何べん考えただろう。考えては、絶対不可避な状況に絶望させられる。 もうどれだけ泣いただろう。 一生分の涙を流したといっても過言ではない。 なのに涙は止めどなく流れてくる。 時間というものは、早く来てほしいと思うときほど遅く、まだ来るなと思っている時はとてつもなく早く来る。 今のれいむにとって、一時間というのはあまりにも短い時間であった。 れいむがどんなに泣き叫ぼうが、時間は流れ、その時は来る。 徐々に男の足跡が近付いてくる。 部屋の扉が開かれた。 その3?へ
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/1558.html
ゆっくりマンション 6KB 自業自得 自滅 引越し 群れ 赤子・子供 希少種 自然界 人間なし 感想・批評・ツッコミを頂けると幸いです ゆっくりマンション 山の中に開けた場所がある。 南にある切り立った崖を除けば、三方を森に囲まれ、広く、草花が生い茂り、陽を遮る物が無い。 自然界に不動産情報誌があれば、優良物件と評されるに違いないここには、ゆっくりが住んでいた。 辛く苦しい冬を乗り切り、春の暖かさに開放的な気分を味わった後、若いゆっくりは巣立ちの時を迎える。 この広場に住む群れでも、若いゆっくり達の巣立ちが行われようとしていた。 この群れは外敵は少なく餌も豊富なここで、長い間生活を送っていたが、ゆっくりの数が増え、これ以上ここに住むことは出来なくなっていた。 新天地を探しに若いゆっくりが今、旅立つ。 「まりさはあたらしいゆっくりぷれいすを、ゆっくりみつけるよ」 「ありすはあたらしいいえを、とかいはにこーでぃねーとするわ」 「れいむはおちびちゃんを、いっぱいつくってゆっくりするよ」 「むきゅ、むきゅ」 巣立ちの第一陣である、まりさ、ありす、れいむ、ぱちゅりーの4匹は、思い描く未来を語り合いながら、なだらかな坂を木を避けつつ考え無しに進んでいく。 茂みを抜けた向こうに切り立った崖が姿を現した。 「すごいおおきなかべさんだね」 「ねえ、ぱちゅりー、ここならあれができるんじゃないかしら」 「そうね、ここならもうしぶんないわ」 「ゆ?あれってなに?」 ありすとぱちゅりーの会話に、れいむが疑問を差し挟む。 「にんげんさんのおうちよ」 「にんげんさんのおうち?」 「ええ、へやをたくさんつなげてできるの。まえにみたまどうしょにのっていたわ」 「すごいね、にんげんさんのおうちはゆっくりできるよ」 「あそこをまりさたちのゆっくりぷれいすにするのぜ」 まりさ達は、ここに巣を作ることに決めたようだ。 「ゆっ、ぐずのめーりんがいるよ」 しかし、崖の下にはすでにめーりんが群れを作り、穏やかに暮らしている。 崖は南を向いているので、暖かい陽が差し込む。今も何匹かのめーりんがゆっくりと昼寝をしていた。 「ぐずはゆっくりできないのぜ、たたきだすのぜ」 「まって、かずがおおいわ」 ゆっくりは余り数を数えられないが、自分達よりめーりん達が多いことくらいは分かるようだ。 数が同数以下ならば、不意打ちや袋叩きで何とかなる。けれど数が多いとなれば正面からは難しい。 「むっきゅっきゅっ、だいじょうぶよ。このぱちゅりーにさくがあるわ」 ぱちゅりーが声を上げる。 「どうするのぜ?」 「あのきにはみおぼえがあるわ。ここはむらのしたなのよ」 ぱちゅりーが崖の上に生える木を示す。 「このさくせんにはむれのきょうりょくがひつようよ…」 ぱちゅりーの作戦を聞いた四匹は元の群れへ戻っていった。 元の群れに戻った四匹は長に事情を説明した。 決死行の末に新しいゆっくりプレイスを見つけたが、ぐずのめーりんに奪われてしまった。 勇敢に戦ったが、多勢に無勢で止むを得ず撤退したなどと、九割程嘘を混ぜて誇張して話す。 新しいゆっくりプレイスが見つかったとなれば、危険な巣立ちもする必要が無くなる。 まだ村を出ていなかった巣立ち組みを含め、村総出でゆっくり出来ないめーりんを排除することに決まった。 茂みから複数のゆっくりが飛び出す。 「ここをまりさたちのゆっくりぷれいすにするのぜ」 突然のゆっくりぷれいす宣言に驚いためーりん達が、表に出て抗議の声を上げる。 「じゃおーんっ!」 「じゃお、じゃおーんっ!」 奪い取りに来たゆっくり達は、挑発するようにめーりん達を嘲る。 「なにいってるのか、わからないのぜ」 「しゃべれないゆっくりは、ゆっくりしないででていってね」 「ちーんぽ」 めーりん達は巣を守る為、崖の下に陣取った。 相対したゆっくり達は、めーりん達の方が数が多い。 「いまなんだぜっ!」 まりさがどこかに合図を送る。 すると、めーりんが何かに潰された。 「「「じゃおっ?!」」」 崖の上から村のゆっくりが、いろいろなものを投げ落としている。 ぱちゅりーの作戦はめーりんを崖の下に引きつけ、そこに上から物を落として叩き潰すというものだった。 上からの攻撃にめーりん達は身を守る手段が無い。仲間が次々と傷つき、めーりん達は混乱している。 数が少なくなったところにまりさ達が襲い掛かり、為す術も無く討ち減らされためーりん達は、森の奥へと逃げていった。 「さすが、まりささまたちなのぜ」 「ぐずがじゃまするからだよ」 「さっそく、とかいはなおうちをつくりましょう」 「ぱちゅりーのさくせんがちね、むっきゅっきゅっ」 めーりん達を追い出すと、巣立ちをした若いゆっくり総出で、新しい巣作りが始まった。 崖下に並べて巣穴を掘る。さらに土を盛って傾斜を作り、上にも巣穴を掘った。 巣穴が完成した時には、崖の下は穴だらけになっていた。 「とってもとかいはなおうちができたわ」 「こんなにゆっくりしたおうちは、にんげんさんでももてないでしょうね」 「まりさたちはいちばんうえにすむよ」 「わかるよー、すごいおうちなんだねー」 ゆっくりの目には素晴らしい高層住宅に映るらしい。 おうちが完成した後、若いゆっくり達は初めてのすっきりーを済ませ、生まれた赤ゆっくりに囲まれてゆん生を謳歌した。 季節は巡り、梅雨の長雨にゆっくりは巣に閉じ込められる。 「あめしゃん、やまにゃいね」 「あめしゃんは、ゆっきゅりできにゃいよ」 赤ゆっくりが長雨に不満の声を上げる。 「しんぱいいらないのぜ、おちびちゃん」 父親になった若まりさが自信満々に言い放つ。 「おとうさんがつくったおうちはがんじょうなのぜ、あめさんにもびくともしないのぜ」 「さすが、おとうしゃんだね」 「しゅごいしゅごい」 赤ゆっくりが父親を褒め、はしゃいでいるところに、母親になった若れいむが口を挟む。 「だけど、おちびちゃんがふえたから、すこしてぜまだよ」 「ゆゆっ」 確かにそうだと感じたまりさは、どうするか餡子をめぐらせ、 「ぞうちくするのぜ」 長雨でやることも無いのを幸いに、もっと奥まで掘り進めることにした。 まりさが巣の奥で土を掘り進めていると、上から落ちた何かが頬に当たった。 「なんなのぜ」 頬に当たり、地面に落ちた何かを確かめようとするが、見えるの土ばかり。 疑問符を頭に浮かべたまま、まりさは穴掘りを再開した。 それから何度も、上から落ちてきたものがまりさに当たる。 そのたびに作業を止め、落ちてきたものを確かめようとするが、それらしいものは見当たらない。 「いったいなんなんだぜっ!ゆっくりしないででてくるんだぜっ!」 最後にはまりさはかんしゃくを起こし、巣の奥で飛び跳ねた。 その時、重く低い音が崖の下の巣全体に響いてきた。 「な、な、な、なんなのぜ」「なんなのかしら」「おかーしゃん?」「なになに」「むきゅー」「こわいんだじぇー」「ちーんぽ」「わからないよー」 長雨と無計画に掘られた穴によって、地盤が緩んだ崖は、まりさの飛び跳ねた衝撃を引き金に、大きな音を立てて崩れ去った。 梅雨が明け、からりと空が晴れ渡る中、乾いた地面を走る一匹のゆっくりがいる。 まりさ達に巣を追い出されためーりんだ。 森の奥に逃げた後、めーりん達は知り合いのゆうかの世話になっていた。 梅雨のある日、崖から響いてきた大きな音を聞いたこのめーりんは、元の巣がとても気になり今こうして走っている。 茂みを抜けためーりんの目に入ったのは、懐かしい崖ではなかった。 梅雨のあの日に、上と下に住んでいたすべてのゆっくりを飲み込んで崩れた崖は、なだらかな丘に姿を変えていた。 山の中に開けた丘がある。 四方を森に囲まれ、広く、草花が生い茂り、陽を遮る物が無い。 自然界に不動産情報誌があれば、優良物件と評されるに違いないここには、ゆっくりが住んでいた。 ちるのやるーみあが追いかけっこをしている。その向こうで、ゆうかが植えた花や樹の手入れしている。 そして暖かい陽の射す丘で、帰ってきためーりんがゆっくりと昼寝をしていた。 書いたもの ・ふたば系ゆっくりいじめ 732 門番ゆっくり トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 希少種は絶対優遇!というのは、希少種にゲスが少ないから虐待する理由が無いからでは? その経緯が簡略化されて、希少種=優遇という風潮が出来ただけ。 個人的には、希少種でもゲスなら虐待したいwww みょん種が迫害されないのは、 ・喋れる単語が「ちんぽ」「まら」「ごりっぱさま」など複数あること ・何故かみょん種の言葉は通常種に通じること ・中身が唐辛子系のめーりん種に対し、みょん種はホワイトチョコであること このあたりが通常種とみょん種の仲がいい理由では? -- 2018-02-16 01 40 24 ゲスは消えろ -- 2017-05-06 00 30 39 どうせならあっさり殺さずに徹底的にゲス通常種を虐待してくれればよかったのに -- 2016-09-14 20 13 47 ↓ごもっとも -- 2016-02-14 18 32 09 希少種を虐待する馬鹿は首吊って死んでね -- 2013-12-23 13 28 03 イイハナシダナー -- 2013-08-27 01 34 36 じゃおーん -- 2013-08-22 08 24 21 書く人によって好みも様々でしょ。俺はゲスなら希少種の虐待もOKだ。善良ならまりさもれいむも愛でられる。 勝手に自分の中の『絶対の掟(笑』とやらを人に押し付けるなよ たしかに同感だわ。 通常・希少問わずゲス→死 善良→愛で -- 2013-03-02 18 09 07 ↓me tooだわ -- 2013-03-02 18 06 46 よう、餡子脳以下のクズ野郎↓ -- 2013-01-16 22 33 35 めーりんゆうぐうのクソあきって名前が似合いそうな作者だな。 -- 2012-11-27 22 02 42 希少種優遇は良いんだけど、めーりんなら即優遇確定っていうこの風潮があまり納得できない -- 2012-04-06 18 21 20 最後にはめーりんが救われる内容でよかった めーりんを追い出した糞饅頭共ざまああああwwww -- 2012-04-06 01 09 06 ↓↓俺もそう思う。かなこさま虐待はダメ絶対! でもやっぱり自分の好みを 押し付けるのはよくないと思う。あとこういう議論になってる米で自分の好みを書くのは違うと思う。 (あれオレもかwww) -- 2012-01-11 23 49 14 ↓書く人によって好みも様々でしょ。俺はゲスなら希少種の虐待もOKだ。善良ならまりさもれいむも愛でられる。 勝手に自分の中の『絶対の掟(笑』とやらを人に押し付けるなよ。 -- 2011-07-26 23 51 17 希少種虐待でも通常種優遇でも作者の好きなように書けばいい、ルールなんかない ただしめーりん・かなこ虐待とまりさ・れいむ優遇だけは絶対にダメ、これは絶対の掟 -- 2011-07-18 09 28 23 下でもう触れてる人いるけど 「じゃおーん」は駄目で 「ちーんぽ」はいいのかww -- 2011-06-04 15 38 32 一つ言えるのは、希少種は最高だからだめだけど通常種はクズだから虐待していいよ、って言う人は、自分たちは最高にゆっくりしてるからいじめちゃだめだけどめーりんはゆっくりしてないクズだからいじめていいんだよ!っていうゆっくり達と、根本的な部分でほとんど変わらないということ。両方とも自分で培った根拠や裏付けが無い自信だけが絶対の正義だもんな。 -- 2011-01-22 18 15 28 とりあえずふたばでは希少種を大変強く贔屓にする傾向があるよと それだけのことだ。下の方の米たちよ 壺(現したらば)だとそこまででもないんだがな 何か理屈があってそうなってるのではなくてそういう趣向の人が多いだけ -- 2010-11-20 15 48 11 めーりん達を虐殺する下種共ざまぁwww ゆっくりに建築技術なんて無理やったんやなー ワロタw -- 2010-10-31 15 13 10
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/784.html
久城学園の夜 20KB 一発キャラにまで名前を付けてしまったのが、読みにくくしてる原因だと今更気づきました。 と、言うわけでこの場を借りて一端整理。 理事長 理事長さんです。毎回出てきます。久城学園なので名前は久城さんです。 このお話はチャイムで始まりこの人のねぇ?で終わります。 初等部 鬼居くん、芽出さん、逆多さん 生徒です初等部編では出てきます。 中等部 鬼居先生、芽出先生、逆多先生 先生です初等部の子達のお兄さんお姉さんです。中等部編で出てきます。おまけでもたまに出てきます。 めーりん 鬼居先生が買ってきためーりんです。金バッチです。 高等部 甘霧先生 ゆ虐拳法、通称ゆてての使い手。 高等部編で出てきます。 後は一発キャラばっかです。 どうも、ご迷惑おかけしました。 それと、視点変更はほどほどに、との意見も大分参考に。 ありがとうございます。 ※久城学園の飼育に出てきた鬼居クラスのまりさの話です 久城学園の飼育を読んでなければ訳が分からないと思います。 中等部のお話です。 あらすじ 学校でゆっくり飼おう!→めーりんとまりさ→雨の日にまりさがめーりんをお家に入れない →めーりん死亡(実際は先生が回収)→その夜(今ここ) キーンコーンカーンコーン と、いうチャイムの音はない。 今は夜・・・すでに校舎(中等部)の電気は消えている。 昼間、あんなに降っていた雨はすでに止み、聞こえてくるのはざざざ・・・という葉擦れの音。 犬小屋に入ってくるすきま風の音と冷たさ。 そして、昼間雨の間はずっと寝ていた事もあって、まりさはこんな暗くなってから目を覚ました。 夜は、れみりゃの出る時間。 本能的な恐怖が、まりさを振るわせる。 もう、寝ることは出来そうになかった・・・。 ―久城学園の夜― 「ゆぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!どぼじであんなにれみりゃがいるのぉぉぉぉぉ!?」 まりさ(鬼居クラスの飼いまりさとは別)は、逃げていた。・・・れみりゃから。 久城学園高等部では、夜間部の生徒がれみりゃの訓練をしている。 通常のれみりゃ(昼型に改良されてないれみりゃ)は光を嫌うため、彼らも薄暗い中で訓練をしているのだ。 まりさは、山で生まれ山で育ったゆっくりであった。 町に出てきたのは、「ゆっくりできない人間如きがゆっくりをゆっくりさせていないらしい」という噂を聞いたからだ。 人間め・・・自分たちがゆっくり出来ないからといって、まりさたちゆっくりまでゆっくりさせないとは・・・。 逆恨みにも程がある。 語彙力が無いので、本当にこんな事を考えて居たわけではないが、まあ、大体意味としてはこんな処だ。 果たして、町は地獄だった。 駅前で、人間をゆっくりさせてあげようと『おうた』を歌ったのに蹴飛ばされ、永遠にゆっくりさせられたれいむ。 町中で、勇猛果敢にも一人で人間の群れに突撃し、人間の卑怯な手段で永遠にゆっくりしたまりさ(人波に踏みつぶされた) 二人でゆっくりとすっきりしていたのに、いきなり棒で潰されたありすとちぇん。 本を見つけ喜んでいるところを人間のスィーに引かれたぱちゅりー・・・ 数えればきりがない。数えられないが。 まりさはもう我慢が出来なかった。 なんと、町でごはんが置いてある箱(ゴミ箱)を人間が独り占めしてしまったらしいのだ。 人間は、ご飯の箱にふたを付けてしまったそうだ。 自分たちゆっくりでは開けられないふただ。 まりさは、もう、我慢の限界であった。 お野菜が勝手に生えてくるゆっくりプレイス・・・畑を独り占めにしてしまった人間。 まりさたちゆっくりは我慢をしていたはずだ。 人間がゆっくりプレイスを独り占めしてしまったことに。 人間ばかりゆっくりしていることに!!! だから、決心したのだ。人間達が独り占めしているゆっくりプレイスを取り戻すのだと。 そうと決まれば、まりさの行動は迅速であった。 世話になっていたれいむの『おうち』にため込んであったご飯を平らげると、この町で一番大きな建物に向かったのだ。 まりさは、まずはあの大きなお家(久城学園のこと)をこの町のゆっくり達のゆっくりプレイスにするつもりだった。 畑を襲うにも、数が必要だ。 『いっきとうせん』の強さを持つまりさなら兎も角、他の弱いゆっくりでは、人間が数で攻めてきたら負けてしまうだろう。 それでなくても、人間にはあの大きなスィーがある。 流石のまりさも、スィーに当たれば痛いのだから。 「みんなっ、きいてほしいんだぜ! にんげんはひきょうにも、じぶんたちがゆっくりできないからといってゆっくりをゆっくりさせないんだぜ。 ゆっくりがゆっくりするためには!にんげんをやっつけるしかないんだぜ! いまならにんげんもねてるんだぜ! まちのなかにはれみりゃがでないんだぜ! にんげんはれみりゃがでないゆっくりぷれいすまでひとりじめしてるんだぜ! そんなにんげんを、いまなら・・・いまならやっつれられるんだぜっ!!! まずは、あのおおきなたてものをゆっくりたちのいえにして、そこからにんげんのまちにせめこむんだぜ!」 まりさは、演説をしていた。 近くの公園に、ゆっくりがあつまって居るのは知っていたから。 しかし、まりさの声に耳を傾ける成ゆは居なかった。 町のゆっくりは、人間の恐ろしさを知っていた。 人間が、ゆっくりより強いことも。 だから、まりさの声に賛同したのは、 「ゆっ!まりしゃおねーしゃんがりぇいむちぇちをゆっきゅりさしぇてくりぇりゅの?」 「そうだぜ!みんなでゆっくりするんだぜ!」 「ゆわーさすが、まりさおねえちゃんはとかいはね!」 「まりさは、まりさおねーちゃんとおなじまりさであることをほこりにおもうんだぜ!」 赤ゆ、子ゆばかりであった。 「ゆうう!?おちびちゃん、だめだよっ、にんげんにかなうわけないでしょぉぉぉぉ!?」 「ゆっ!おちびちゃんたちをだますゆっくりはしねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 怒りに満ちた成ゆ達が、山まりさに攻撃をしかける。 「ゆっ!まりしゃおねーしゃんは、りぇいむたちをゆっくりしゃせてくりぇりゅんじゃよ!」 「おかーさんたちといても、ぜんぜんゆっくりできなかったよ!ぷんぷん!」 「「どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉぉぉ!?」」 しかし、それを子供達が遮った。 欲の前では親子の絆など無いも同じ。 ああ、なんと罪深い生き物であることか。 兎も角、こうして山まりさは子供たちを引き連れて学校へと向かったのだ。 まりさの考えではこうだった。 本来、人間一匹に対して、一人のゆっくりが当たる予定だった・・・ しかし、まさかあそこまで町ゆっくりが弱虫だとは。 いや!これも全部人間が悪い。 人間が、本来勇猛果敢なゆっくりをあんなゆっくり出来ない弱虫に変えてしまったのだ! だが、まだ救いはあった。 この子供達・・・そう、この子供達は人間に臆する事なく立ち向かう勇気を持っている。 この子供達をまりさが教育すれば、まりさの様な強いゆっくりの軍団ができあがるのだ! 今はまだ弱い子供達だ。 人間一匹を相手にするのに、三人がかりでやっとかもしれない。 でも、この数がいれば・・・勝てる! 卑劣なる人間を町から追い出し、この町をまりさの王国にしよう。 びゆっくりたちを侍らせ、まりさのハーレムを築こう! ぽよん、ぽよん。 希望に満ちた子供達を引き連れて、にまにまと笑いながら、まりさは学校のフェンスに開いていた穴をくぐり抜けた。 そんなまりさの目に飛び込んできた物・・・それは。 「ゆううううう!おやしゃいがありゅよ!」 「ゆっ・・・にんげんめ、こんなところにまでゆっくりぷれいすをかくしてたのかだぜ!」 高等部の生徒達が作り上げた畑であった。 「ようし!まずはたたかいのまえのはらごしらえなんだぜ! あのゆっくりぷれいすをとりもどすんだぜ!」 「「「えいえいゆーーーーーーっ!!!」」」 そう言って、きょろきょろとあたりを見回す。 人間の姿は、無い。 もしここで人間が出てくれば、まりさは自分が人間を倒すつもりだった。 まだ、戦力を消耗するときではない。 もし此処で子ゆ達に戦わせれば、一人か二人は永遠にゆっくりしてしまうかもしれないのだ。 だから、まりさはとりあえず、子供達に野菜をとってこさせることにした。 まりさは、見張り。 大将はいつもどっしりと構えるものなのだ。 これが、まりさの命運を分けることとなった。 この畑、高等部の学生が張り巡らせた落とし穴が掘ってある。 もし、体重の重いまりさが乗っていれば、落とし穴に落ちてしまったに違いない。 「「ゆわーーーーーいっ」」 「「まりしゃはせっかくだから、このあかいみをえらぶのじぇ!」」 畑にたどり着き、お野菜に目を輝かせる子供達を、まりさは愛おしそうに見つめた。 (ゆっ・・・いつかまりさもびゆっくりと、あんなこどもたちをつくるのぜ・・・) と思いながら。 さて、この畑の周囲に植えてあるのは赤唐辛子、指上等の辛い野菜である。 もちろん、本物の野菜など見たことがない子ゆっくりたちにそんな事が分かるはずもなく。 子ゆっくり達は、近くにあった唐辛子にかぶりついた。 「「むーしゃむーしゃ・・・しあわ・・・ゆげべぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」 一斉に餡子をはき出す子供達。 まりさは、何が起こったかさっぱり分からなかった。 子供達が、やっとの思いで取り返したお野菜にかぶりついた途端、餡子をはき出してしまったのだ。 「こ・・・こりぇどくはいっちぇ・・・」 その声に、やっとまりさは理解した。 まりさたちを陥れるために、毒の入った野菜を用意してたのだ!!! ゆるせない・・・!! まりさは怒りに燃えた。 まさか、人間達が自分たちも食べるであろう野菜に毒を仕込んでおく・・・。 そこまで卑劣な手段を取るとは思っていなかったのだ。 どうやら、認識を改める必要があった。 人間を『どれい』にして生かしておいてやろう。 そんな考えは甘いのだと。 ジェノサイド・・・人間は、抹殺しなければならないのだ! 子供達、見ていておくれ・・・まりさは、まりさはきっとやる! まりさが、そんな決意を胸に宿し校舎に向かおうとした時だ・・・。 「おい、ゆっくりの声が聞こえなかったか!?」 「畑の方っぽいぞ!」 人間の声。 丁度いい、あいつらから血祭りにあげてやる。 憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い・・・・ 「うーーーーっ」 「よしれみりゃ、行けッ!」 憎しみは一瞬で吹き飛んだ。 (れみりゃっ!?どぼじで!?まちにはれみりゃはいないんじゃなかったの!?) れみりゃの声が聞こえてきたからだ。 学園のれみりゃ飼育部の生徒が、さっきの子ゆの悲鳴に飛んできたのだ。 なんてことだ・・・。 れみりゃはいなかったんじゃない。 人間を奴隷にして、この王宮に住み着いていたのだ! その証拠に、人間がれみりゃを運んで居るではないか・・・。 まりさの本当の敵は、人間じゃ無く、れみりゃだった!? 本能的な恐怖がまりさを動かす。 本能的に悲鳴が口からもれる・・・。 「ゆぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!どぼじであんなにれみりゃがいるのぉぉぉぉぉ!?」 当然、飼育部で飼っているれみりゃは一匹ではなかった。 まりさは、全力で逃げ出した。 れみりゃの声に足がすくみ、動けなくなってしまった子供達全てを投げ出して。 鬼居クラスのまりさは、聞こえてきた悲鳴がどんどん近付いて居ることに気づいた。 少し気になるが、帽子に取り付けられた鎖はまりさをこの場所に縛り付けている。 帽子をおいてまで、様子を見に行く気にはならなかった。 「ゆぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!ゆぴぃぃぃぃ!!」 犬小屋で寝ていたまりさに、声の主が近づいてきた。 薄暗くて良くは見えないが、シルエットからゆっくりであると分かる。 更に近くに来て、まりさは声の主がまりさであると理解した。 「まりさ・・・まりさはまりさなんだぜ?」 「ゆぴ・・・?ま、まりさはまりさだぜ!まりさはまりさ?」 「ゆっ!まりさはまりさだぜっ、ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっ・・・あまりゆっくりしちゃいられないんだぜ!」 ぐずめーりんとは違う、久々に会う本物の同族にまりさははりきって挨拶した。 だが、走ってきたまりさ(以後山まりさと明記)はゆっくりしていない様子。 まりさは、不思議に思って訪ねた。 「ゆぅ・・・?どうかしたんだぜ?」 「れみりゃがにんげんをどれいにして、まりさをおってきてるんだぜ!!」 「ゆっ!!!」 まりさは考えた。 人間はぐずだが、れみりゃよりは強かったはずだ。 れみりゃが人間を奴隷にしていると言うことはあるまい。 そうか、人間がれみりゃを使っているんだ。 (まりさの中での強さの順位 自分>人間>れみりゃ>普通のゆっくり) (山まりさにとっての強さ れみりゃ>自分>他のゆっくり>人間) これは、山まりさが山にいてれみりゃとは良く会うが人間には会わないため。 「ゆっ、そう言うことなら、まかせるんだぜ!」 おびえる山まりさに、はりきって答えるまりさ 「ゆぅ・・・?どうするんだぜ? さすがのまりささまも、あんなにいっぱいのれみりゃにはかなわないんだぜ!」 「ゆっふっふ・・・まりささまはかいゆっくりなんだぜ! だから、まりささまのぼうしをかぶってれば、ばかなにんげんとれみりゃはてだしできないんだぜ! まりさがおとりになるから、まりさはここでまりさのおぼうしをかぶってゆっくりしてるんだぜ!」 「ゆっ・・・でも、まりさはどうするんだぜ?」 「ゆふっふ・・・まりささまがかいゆっくりになったのはにんげんのじゃくてんをしらべるためなんだぜ いまのまりささまなら、にんげんごときなんでもないんだぜ!」 「ゆううううう!」 山まりさは感激した。 弱虫だとばかり思っていた町ゆっくりに、こんなにも思慮深いゆっくりがいたなんて! 「ゆっ・・・!まりさは、まりさのおぼうしをかぶって逃げて、みかたをつれてくるんだぜ! かならず・・・かならずむかえにくるんだぜ!」 「ゆっ!まりさはまってるんだぜっ!!」 まりさと山まりさは帽子を交換し、まりさは駆けだした。 これで、自由をてにいれたのだ!!! 山まりさは、犬小屋の中で眠りにつこうとしていた。 飼いゆっくりになったのだ。れみりゃに襲われる心配もないらしい。 帽子に付けられた鎖のせいで、遠くには行けないけれど、それでも山まりさは安心していた。 「たしか、中等部の方から声がしたな」 「しかし、あんなに子ゆっくりがいるなんてなあ・・・何匹か逃げちまったぜ」 「うーっ」 そこに、れみりゃを連れた生徒達がやってくる。 山まりさは、れみりゃの声に体を震わせたが、今、自分は飼いゆっくりなのだと思い直しほっとした。 「ん・・・あれ、なんだ?」 「中等部の生徒が作ったゆっくり小屋だよ。 ほら、俺らもやったじゃないか」 「あー、あれか。ゆっくりの本質を学ぶ・・・ってやつな。」 「おい、まりさ」 生徒の一人(以下生徒A)が声をかけてくる。 「ゆぅ・・・?なんなんだぜ?」 良くは分からないが、飼いゆっくりとかいう高貴なものになった山まりさに声をかけるとは・・・ あとで、制裁をせねばなるまい。 そう考えるが、生徒がれみりゃを連れていることを思い出して一応答えてやった。 「こっちに、ゆっくりが逃げてこなかったか?」 「ししし、しらないんだぜっ!こっちにはだれもきてないんだぜ!」 慌てて答える山まりさ。 生徒にしてみれば、なんとなく聞いただけだが、山まりさは自分の正体がばれたんじゃないか・・・。 そんな心配で気が気ではない。 「そうか・・・確かにこっちから聞こえたんだけどなあ?」 「ししし、しらないんだぜ。じじいのみみがわるいからきっとききまちがえたんだぜ!」 「そうかなあ?」 「そ・・・そうなんだぜっ!そうにちがいないのぜ!?まりささまをうたがうのぜ? まりさはまりさなんだぜ!べつにぼうしをとりかえていれかわったりなんかしてないんだぜっ!!!」 「ほう」 口からつばを飛ばししゃべりまくる山まりさ。 生徒Aは、当然今ので気がついた。 このまりさは、飼いまりさでは無いことに。 おそらく、中には飼いまりさの死骸があるんだろう。 もっとも、中を覗く気にはならないが。 「そういえば、さ」 生徒Bが口を開く。 「確か中学の飼育授業って、二匹飼う決まりだったんじゃね?」 「あ、そういえばそうだな。めーりんが居るとこ見た気がする」 「おい、めーりんはどうした?」 「ししし、しらないんだぜ!はじめからいなかったんだぜ!? めーりんがいるなんてきいてないんだぜ!!!」 「そうかい」 最早、自分が飼いまりさで無いことを自白したも同然だが、聞かなかったことにして話を進める生徒達。 「どう思う?」 「あれだ、きっと夕方の雨で溶かしたんだろ? 俺らの一個下の学年で似たようなことあったじゃん?」 「なるほどね。まりさとめーりんだったって事は、めーりんがれみりゃからまりさを守ってたって事だよね」 「だな。じゃあ、めーりんが死んだらまりさが死ぬのも仕方ないか。」 「やっちまう?」 「ま、後輩の育成に協力するってことでさ」 彼ら、高等部の生徒にしてみれば通った道。 当然、この授業の趣旨も理解していた。 ならば、やることは一つ・・・これが本物であっても、偽物であっても関係ない。 「「れみりゃ、襲え」」 二人は、そろってれみりゃに命令する。 山まりさは慌てた。 「どどど、どういうことなんだぜ!? まりさはかいゆっくりなんだぜ? こうきなまりささまにてをだしていいとおもってるのかだぜ!?」 「んー、めーりん殺しちゃったんでしょ? じゃあ、死んでもらわないとね」 「ゆっ!?めめめ、めーりんなんかしらないのぜ!」 「えー、お昼まで一緒にいたじゃあないか。 俺、ばっちりみたんだけどなあ。」 嘘である。 彼は数日前にちらっとめーりんが居るところを見ただけだ。 めーりんが、飼いゆっくりではない可能性は低い。 こんな犬小屋で飼う以上、番人が居なければすぐにれみりゃに襲われてしまうだろう。 「ゆっ、ききき、きっとまりさがねてるあいだににげたのぜ! にげだすなんて、かいゆっくりのかざかみにもおけないのぜ!」 「ふぅん・・・ま、どのみち、お前は殺すんだけどね」 「どどど、どうしてなんだぜ?」 「番人が居ない以上、喰われても仕方がないだろ?」 「ゆぅぅぅぅぅ!?」 話が違う!飼いゆっくりになれば、れみりゃにも人間にも襲われないんじゃないのか!!! このままでは、まりさはれみりゃに殺されてしまう! れみりゃさえいなければ、人間如きはまりさ一人で十分殺せるのに!!! この場を乗り切るには、どうすればいい!? そうだ・・・まりさが飼いゆっくりでないことを話せばいいのだ! まりさは、この町の王になるゆっくりだ! その事を知れば、人間だって、自分の無礼さを恥じてひれ伏し、 れみりゃをやっつけるに違いない!! まりさの中では、こういう策略が張り巡らされていた。 「ま、まつんだぜっ!」 「ん?何だよ」 「じ、じつはまりさはまりさじゃないんだぜ!」 「は・・・?どうみてもまりさなんだが。」 「いや、たぶんこいつ、元々此処にいたまりさじゃない、って言いたいんだろ」 「そのとおりなんだぜ! まりささまはっ、このまちのっ、おうさまになるゆっくりなんだぜ!」 「・・・だから?」 「わかったら、このくさりさんをはずしてあまあまをもってくるんだぜ!!!」 「へえ・・・まりさは、飼いまりさじゃないんだ。」 「なんどもいわせるななんだぜ! さっさとあまあまをもってきてね!あと、そのれみりゃはこわいからころしてね!!」 「飼いゆっくりじゃないなら、殺すしかないな。無断で学園に入ったんだから。」 「ゆっ・・・?」 まりさの動きが止まった。 今、このじじいはなんと言った? 殺す・・・と言わなかったか? この、高貴なまりさを?王様になるまりさを殺す、と言ったのか? 馬鹿な、まりさはこんな処で死ぬまりさじゃない。 そうだ、人間如きにまりさが殺せるはずない。 でも人間はれみりゃの奴隷で。 れみりゃは人間の言うことを聞いていて。 だから、れみりゃは、人間の・・・ うそだうそだうそだうそだ 人間がれみりゃを奴隷にしてるはずないじゃないか。 人間がれみりゃより強いはずないじゃないか。 だって、そうしたら、まりさは人間より 「襲え。」 れみりゃがまりさを抱え空に舞い上がる。 わーい、おそらをとんでるみたい!という鳴き声が、山まりさの口から本能的にわき上がる。 心ではゆっくりしている訳じゃない。 これから、何が起こるか知っている。 獲物を捕まえたれみりゃは、つかまえたゆっくりを・・・ ひゅぅぅぅぅぅ れみりゃが、山まりさを地面に落とす。 れみりゃは捕まえたゆっくりを甘くするため、これを行う習性があるのだ。 「いいぞ、れみりゃ。 ナイスパス!」 落下地点で待ち構えてた生徒Aが、れみりゃに向かってまりさを蹴り上げた。 落下の衝撃に加え、蹴りの力がまりさにかかる。 足が当たって、歯が折れた。 いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい だが、餡子は漏れていない。 空中では、体に力が入らず嘔吐もままならない。 口の中には餡子の味が混じっているのに・・・。 いたい。 こんな痛い目に遭うなら、来なければ良かった。 山で大人しくしていれば良かった。 どうして、まりさはこんなところに来たんだっけ。 そうだ、あのまりさが悪いんだ、お帽子を交換しなければこんな目に遭わなかった。 そうだ、役立たずの子ゆっくりが悪いんだ、あいつらがれみりゃを呼び寄せた。 そうだ、町のゆっくりたちが悪いんだ、みんなで来ればこんなことにはならなかった。 そうだ、町でまりさにご飯をくれたれいむが悪いんだ、れいむがご飯が取ってこれなくなった、なんて言ったから。 そうだ、山でうわさ話をしてたちぇんが悪いんだ、ちぇんが町のゆっくりがゆっくり出来ていないなんて言ったから。 そうだ、そうだ、そうだ、そうだ・・・悪いのはまりさじゃない。 そうだ、そうだ、そうだ、そうだ・・・悪いのは・・・悪いのは・・・ そうだ、一番悪いのは・・・まりさがこんな目に遭ってるのは・・・ おかあさんが悪いんだ、まりさを産んだ、おかあさんが悪いんだ。 どうして、もっと強く産んでくれなかった? どうして、れみりゃなんかに負ける体に産んだんだ? どうして、どうして、どうして・・・。 生徒Aが蹴り上げるたび、まりさの口から少しずつ、少しずつ餡子が漏れる。 れみりゃが体当たりして下に落とすたび、少しずつ少しずつ皮が傷ついていく。 だが、まりさは何も感じなかった。 悪いのはまりさじゃないのだから。 まりさを産んだおかあさんなのだから。 だから、これは間違いなんだ。 まりさが生まれたのが間違いなんだから、ここにいるのも間違い。 此処にはまりさがいないはずなんだから、痛くないんだ。 体がひしゃげる。 上に持ち上がる。 下に落とされる。 体がひしゃげる。 一体何度繰り返したろう? 人間を奴隷にするために町に来たまりさは。 ゆっくりをゆっくりさせるために来たまりさは。 全ての美ゆっくりを侍らせて王様になるはずのまりさは。 人間の玩具にされ。 山に帰りたいと願い。 全てのゆっくりを呪いながら。 一人で。 最後に、餡子を吸われ。 死んだ。 「ふーっ、いい汗かいたぜ。」 「うーっ」 「小屋の中に死骸戻しとけよ?」 「分かてるって。 んー運動したら小便したくなったな・・・やべ、もれるっ」 「おいおい・・・校舎の隅にしちまえば?」 「んー、あ、あれでいいな。ほっとけば水吸うだろ」 じょぼじょぼじょぼ。 残された帽子に、小便が注ぎ込まれ。 小屋の前には、溶けて形が分からなくなった帽子。 小屋の中には、餡子を吸われてかさかさになった饅頭だけが残された。 帽子を取り替え、自由を手に入れたまりさは校舎に侵入。 そこで、久城学園の七不思議を目にし、とてもゆっくり出来ない目にあうのだが・・・ それはまた別のお話。 おまけ 「あ、そうだ良いこと思いつきました」 「何です、理事長?」 「山に道具だけ持って行って、ゆっくりを捕まえて調理。 大自然を満喫する、ゆっくり炊事遠足なんてどうでしょう・・・ねぇ?」 あとがき 今までに仰って頂いた意見、大分参考にさせてもらいました。 どうでしょう? 少しは良くなってるといいな。 続けても、いいよね? 書いたもの ふたば系ゆっくりいじめ 349 久城学園のボランティア ふたば系ゆっくりいじめ 351 久城学園の飼育 ふたば系ゆっくりいじめ 354 久城学園の運動会~うえ~ ふたば系ゆっくりいじめ 355 久城学園の運動会~した~ ふたば系ゆっくりいじめ 358 久城学園の番人 ふたば系ゆっくりいじめ 363 久城学園の日常 これ トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 理事長って怪談レストランっぽい話し方だね -- 2011-08-04 00 26 17 阿呆まりさざまぁww 町ゆっくりに迷惑かけただけかぁ -- 2010-10-08 16 58 12 理事長って男だよね? ねぇ?がなんか好きだ -- 2010-07-17 00 31 20 めーりんは無事なんだね!良かったよ!! -- 2010-07-09 12 51 01