約 3,515,208 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2890.html
『SSC part2』 presented by 春巻 ※注意 このお話の《おにいさん》は、香霖堂の店主、河城にとり、さらにはAQNと仲が好い。というように、幻想郷メンバーに知り合いはそれなりに居る設定。 幻想郷キャラには協力を仰ぐ程度で、台詞は存在しない。 冒頭で登場するゆっくりは《直接的で》肉体的な虐待は受けない……けど。 ハイテクな製品が登場しますが、舞台は幻想郷である。 おにいさんがハイテク機器を巧みに操れるのは、にとりちゃんの指導もあるが、おにいさん本人が幻想郷に来る以前はシステムエンジニアをしていたから。 過度な改行はしていない。読みにくければ各自Windowsのメモ帳などにコピペするなど、折り返し機能のあるテキスト閲覧ソフトを使ったりして自分で見やすくして欲しい。というか、メモ帳にコピペしたほうが見やすい、これ絶対。(∵Word2007を使用している) ※以上、注意 朝の目覚めは、優雅に珈琲を飲みながら。 「ゆううううううう!! どぼぢでこんなことにいいいい!!」 「ゆっぐりさせてよおおおおおおおおお!!」 ゆっくりの悲鳴を聞くことから始まる。 ○ お久しぶりですね。 先日、SSC――スーパースローカメラで撮影した活動写真でゆっくりをいじめたおにいさんです。 あの映像を見せた後で、あまりの精神的衝撃に耐え切れず死んだぱちゅりーを処理しようと部屋に入ったところ、れいむも餡子を吐ききって息絶えていた。 タイミングを考慮して、恐らく眼窩から眼球と餡子が飛び出していったところで、心が壊れてしまったようだ。 ちぇんやまりさも具合はよくないようだったが、れいむほどではない。れいむ種というものは、精神面においてはぱちゅりーほどに弱いのかもしれない。 それから一夜経った今日は、先日の生き残りに加えて、今朝玄関先の罠にかかっていたゆっくり四つを追加した。 罠と言っても、よく聞かれるものだ。開け放された窓のしたに落とし穴を掘っただけ。人間、しかもおにいさんの家であり、その癖開け放された窓。何か仕込まれているのではないか、こいつは怪しいぞ、と他の妖怪や妖精ならば考えそうなものだ。たとえチルノでもそう考えるだろう。あの氷精だって計算くらいは簡単に出来るし、弾幕ごっこだって状況判断して出来るじゃないか。 ま、今は氷精を語っても意味が無い。ゆっくりいじめだからな、このスレッドは。 今日捕まえられたゆっくりは、れいむ、まりさ、ぱちゅりー、ありす。 ありすは、今までここに来たことは無かった。俺が捕まえてくるのは大概が《れい・まり》コンビであったので、いつもと違う反応が見られるかもしれない。 さらに、正直なことを言うと、ぱちゅりー種はあまり来てほしくない。頭がよく、液晶テレビに表示した文字などを簡単に読んでくれる面では重宝しているが、精神的ショックによる喘息の発作(本当にそうなのかは判じ得ないところがある)ですぐに死んでしまい、面白くないのだ。 ビデオを作りときにも、すぐ死んでしまうために面白い反応が得られにくいのだ。 何か、ぱちゅりーを使っても愉快に虐待できる題材があったら、ぜひ教えていただきたい。 さて。 それでは、本日のビデオを放映するとしよう。 今日は、前回も登場し手伝ってくれた虐待おにいさんと、にとりちゃん。更には『文々。新聞』でおなじみの、射命丸文ちゃんにも協力願った。文ちゃんには、空撮をお願いしたのだが、こういってしまうと何をとったか推測できるかもしれないので、早速ビデオを再生するとしよう。 遠隔操作で部屋の照明を落とす。現在は正午を過ぎたくらいであるため、明るさは然程変わらない。そのため、もうひとつの釦を操作して厚手のカーテンを閉めた。これで虐待部屋に光は殆んど入ってこなくなった。 その様子を見ていたゆっくりたち(現在は十個居る)は、俄かに騒ぎ出す。誰も来ていないし、何もしていないのに部屋が真っ暗になったのだ。ハイテク機器のいろはも解からないゆっくりには脅威だろう。 中でも、昨日、似たような体験をした記憶があるまりさとちぇんは、一際騒ぎ立てていた。ゆっくりできなくなるよー、という絶叫は、この上なく邪魔である。 最も、今はそれどころではない。 さっさとスペシャル映像を見てみたいだろう。 まずは標準カメラで地上から撮影したものだ。 ○ 「おそらをとんでいるよ!! ほんとにおそらをとんでいるよ!!」 「れいむ!! まりさたちとりになったみたいだぜ!! これでもうすぐゆっくりぷれいすにつくんだぜ!!」 「ゆゆゆううううう!!」 「うーっ、うーっ!!」 繁みから撮っているため視覚的には判別しにくいが、声で判ると思われる。 上空十メートルほどのところには、うーぱっくに乗ったれいむとまりさが空中散歩を楽しんでいる。 うーぱっくは全部で五個。その内三個には何も乗っていないようだ。 恐らく、どこかの人間の畑に降り立って作物を食い荒らし、あまつまで盗んでしまおうという腹のようだ。 うーぱっくと共に動き回る盗賊ゆっくりがいるというのは、最近ではよく聞く話になった。れみりゃ種亜種のうーぱっくの性質を巧く利用した、賢い奴らだ。 この先にあるのは小さな集落。住んでいるのは年配の、しかも普通の人間である。盗みやすいことこの上ないのだが、その情報はどこから手に入れたのだろうか。有能なボスの手下なのかもしれない。 しかし、このゆっくりたちを乗せているうーぱっくは大柄だ。一般的なサイズとしては大人のゆっくりを乗せるとスペースがなくなるはずだが、まるでゆっくりふたつを乗せても問題が無いように見える。 だが、その方が好都合だ。 「ゆゆっ!! れいむ!! はたけはもうすぐなんだぜ!!」 「ほんとだね、まりさ!! にんげんたちはれいむたちのためにたべものよういしてくれているなんて、ほんとうにゆっくりしているね!!」 「ゆゆう!! これからもよろしくたのみたいものだぜ!!」 なにやら勝手なことを言っている。 撮影しているこの場所は畑から三十メートルの地点に聳える崖の下側。 ふいよふいよと高度を下げつつ崖の上を飛んでくるうーぱっくは、見るからにゆっくりしていて、その魂胆さえなければそのまま空中散歩をさせてあげたいものだが――。 ――世の中、決して、ゆっくりを中心には廻らない。 「う……? う、うあっ!? う゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!??」 最後尾を浮遊していたうーぱっくが、いきなり叫び始めた。前を行くうーぱっくと、それに乗っているれいむとまりさも後ろを気にかけた。 「どうしたんだぜ、うーぱっく!!」 「しずかにしないとにんげんがくるよ!!」 うーぱっくに乗ったまま振り向くふたつの饅頭。うーぱっく本体は急な方向転換を避けるため振り向きはしなかった。 だが。 「ゆうううううううううう!!??」 「どおしでもえでいるんだぜ!!??」 最後尾のうーぱっくの中からは、紅蓮の色をして踊り狂う炎。 段ボールで出来ているうーぱっくの最大の敵のひとつだ。 「ううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!??」 為す術無く見つめていると、れいむを乗せたうーぱっくの横を飛んでいた空のうーぱっくも叫びだし、間もなく煙と炎を出して燃え始めた。 「ゆううううう!! まりざあああ、あづいいいいいいい!!」 「ゆゆゆ!! うーぱっく、はやぐそいづからよけるんだぜえ!!」 完全にパニックに陥ったれいむに比べて冷静な対応を促すまりさ。やはりこちらの方が餡子の質がいいらしい。 しかし。 「う゛あ゛っっっ!!!」 ちゅどーん、という音を立て、先頭を飛んでいたうーぱっくが、突如として姿を消した。 そのすぐ後ろを飛んでいたまりさを乗せたうーぱっくは、爆風の直撃を受けてバランスを崩す。 目の前で仲間が燃やされている。この状況にあって、うーぱっくには傾いた体勢を立て直せるほどの余裕は無かった。 「まりざっっ!?」 「ゆううううううううううううう!!! れいぶうううううう、はやぐまりざをたずげるんだぜえええええええええ!!」 絶叫を残し、まりさはうーぱっくから落下。 運の悪いことに、ゆっくりたちの目指していた畑の手前には崖があり、その下は硬質の岩だらけ。時々この崖が崩れることがあるらしく、そのたびごとに出来る岩の塊だ。 「ばあああああありいいいいいいいいいざあああああああああああ!!」 「ゆううううううううううううううううううううう!!!!!」 まりさはその岩塊に向かって落ちてくる。 「ぼっどゆっぐりぢいいいいいいいやああああああああああっ!!」 ぶづぐじぃゃああ!! 得体の知れない擬音を残して、まりさはぺしゃんこになった。 《もっとゆっくりしたかった》 その言葉すら遺す事も出来なかった。 「ゆうううううっ、ゆうううううううっ!!!!!」 眼下に広がる岩場には、同心円を描くように餡子の海。それを真上から見ていたれいむは、ただ涙を流すのみ。 「うーーーあーーーーっ!!」 「うあっ、うあっ、うあっ!!」 れいむを乗せていたうーぱっくもブサイクな顔で泣いている。 だが、一番精神的衝撃が大きかったのは、まりさを乗せていたうーぱっくなのだろう。仕事も完了していないだけならまだ救い様がある。だが、乗せていたゆっくりを転落死させてしまうということは、うーぱっくの至上の汚点。その衝撃は計り知れない。 しかし、悪夢はまだ続く。 「……ゆ? !!???」 急に背中が熱くなったことに気づいたれいむ。だが、それに気づくのに、若干ゆっくりしすぎたようだ。 れいむの背後には火の玉がひとつ。 自分の野菜の取り分を多くしようと目論んで、大きなうーぱっくに乗り込んだのが、ここで裏目に出た。丁度のサイズのうーぱっくに乗り込んで、荷物運搬用として大柄なうーぱっくを使ったほうが効率も良かったはずなのだが、それすら解からないのは餡子脳が餡子脳たらしめている証だった。 「ううううううううううううあああああああああああああああ!!!!」 うーぱっくも自分の体が燃えていく痛みに耐えられるはずも無い。あっというまにれいむとうーぱっくは炎に包まれ、まりさの後を追った。 「うーーーーうーーーーーーーーー……」 唯一生き残った、生き残ってしまったうーぱっくは茫然自失。仲間をすべて失い、乗せていたゆっくりも殺してしまった。 完全なる無表情でふらふらと高度を下げ、畑の手前に墜落するように着陸した。 「うー、うー……」 さめざめと涙を流すが、こいつも頭がよろしくない。元をたどればれみりゃ種であるから無理は無いのだが。 「うあっ!!」 近くの繁みには虐待おにいさんが潜んでいることを、うーぱっくは知らなかった。 身動きも、絶叫も残せぬままに、最後のうーぱっくは虐待おにいさんの両腕に引き裂かれた。 ○ 「えれえれえれえれえれえれえれえええれえれえれれれれれれれれれれれれれれれ」 「ちょっと、ぱちゅりー!! なにはいてるの!? しっかりしなさいよ!!」 ホラ。やっぱり即死した。 だから、面白みが無いというのだ。標準カメラの撮影動画で死なれたら、折角のSSCが役に立たないではないか。 それにしても、このありすは精神的に強いのか、上映が終わるとすぐさまぱちゅりーの心配を始めた。セクシャルマシンはそういうものなのだろうか。噂に聞けば、ありす種もぱちゅりー種に及ばないものの中身の質がいいらしいので、この反応にもある程度納得がいく。 他のゆっくりの様子はと言えば、今日連れてきたれいむとまりさは相当なダメージを受けたようで、ゆっゆっと呟いているだけだ。 昨日から居るゆっくりは幾分慣れたようで、呆然と何かを呟くような状態まではいっていない。ただ、見方を変えれば、現実逃避をしているようにも見て取れる。どちらでも大差はない。皆さんが思ったほうで構わないし、俺はとくにその考えに固執しない。所詮、小事の前の大事である。 さて、今日のテーマはもうお分かりのように《うーぱっく盗賊団の抹殺》だった。 実のところ、今回のターゲットがうーぱっくたちになったのには、結構大きな理由が在る。 撮影を手伝ってくれた虐待おにいさんは、その正確をカモフラージュするために、ゆっくり処理を副業としていた。今回おにいさんは、ビデオに出てきた畑の主である集落の長をゆっくり盗賊団から守るという役を拝命していた。それを耳に入れた私が、撮影の許可を得て、今回のビデオが完成したという筋書きだった。 おにいさんも、自分の武勇伝となる記録映画ができたし、集落の長も畑も守ることが出来た。とりあえず、ゆっくりを除外して、皆が利益を得たというわけだ。 どういった手段がとられたかは何となくわかるだろうが、ここでひとつ説明を挟みたい。 まず、うーぱっくの隊列で最後尾を飛んでいた段ボールの中に、火の点いたマッチ棒を投げ込む。これは木の上に潜んでいた犬走椛ちゃんがやってくれた。何でも、今回の撮影で文ちゃんに依頼したときに、文ちゃんが半ば無理やり引き摺ってきたのだ。ちょっと申し訳なく思っている。 最後尾のうーぱっくが墜落を開始したところで、れいむの乗っているのに直近を飛行するうーぱっくを攻撃する。これは、絶望感を煽ってパニック状態に引きずり込むための戦法だ。 案の定れいむが混乱状態になったところで、今度は先頭のうーぱっくに小型合成樹脂爆弾を放り込む。薬剤の調合などは自前だ。 本当なら、注意を逸らされたこのタイミングでまりさを攻撃する手筈だった。だが、先頭のうーぱっくにやたらと近いところを飛んでいたまりさのうーぱっくは、この爆風を直接的に受けてしまった。どうやらまりさは、れいむのみ被攻撃対象とし、自分はさっさと逃げようとしていたらしい。此処に来て、その根性の腐り具合が裏目に出たと言うことだ。 爆風を受けたうーぱっくはバランスを崩し、完全に横倒し体勢になった。まりさはその(ゆっくりたちのレベルで考えて)急な動きを堪えることができず、運悪く真下に控えていた岩の塊(しかも都合よく一番尖ったところ)に落下し、その身体を砕いた。 絶望感に包まれたれいむが乗るうーぱっくには、上空を飛んでいた文ちゃんから火の点いた藁の球体が投げ込まれ、あっというまに火の車。 唯一生き残ったうーぱっくは、予定通りに、虐待おにいさんが破り捨てた。 以上だ。 うーぱっくというゆっくりについて、恥ずかしながら、私はこのビデオ撮影のときが初顔合わせだった。 素材としては段ボール箱に羽と顔がついて、ゆっくりれみりゃのように頭のよろしくない種類だということを知識としていた程度で、実際どのようなものなのかという点では心許無かった。 その弱点を補うべく、この撮影には文ちゃんに協力をお願いした。 彼女もゆっくりを追跡する記事をいくつか書いていたらしく、あっさりと乗ってくれたので交渉はきわめてスムーズであった。 なお、空撮もお願いできたので、今回SSCを持ったのは他ならぬ文ちゃんである。 ブンヤの血が騒ぐのか、SSCの操作法を口頭教授しただけで完璧に使いこなしたのには驚いたが、そのおかげで決定的瞬間を間近で撮影することができた。 虐待部屋は予想通りの大騒ぎだった。 とくに部屋の中に居るまりさ、全四つが、揃いに揃って喚いている。もしかしたら、このまりさたちもうーぱっく強盗団の一味なのかもしれない。別な考え方をすれば、まりさたちの属するゆっくり集団がうーぱっくと仲が良いのかもしれない。 最も、そんなことは関係ない。 今から、もっと恐ろしい瞬間を目の当たりにするのだ。 虐待部屋の餡子の処理が大変になればなるほど、ビデオが高評価を受けたということだから。 ○ 「ゆゆっ!?」 「わかるよー、でもわかりたくないよー!!」 「ぼうやべでえええええ!!」 怒号の飛び交う虐待部屋では、加工後の映像とSSCで撮影された映像が映し出されようとしている。 前回と同じく急激に画像が初期状態に戻されたのを見て、昨日から居るゆっくりにはこれから何が起こるのか理解が出来ているようだ。優秀なのは、このあたりで助かる。 今日から入ったゆっくりも、この発言を受けて恐ろしいことが始まるということが分かったようだ。ゆっくり同士で助け合い(ゆっくりからすれば首の絞め合いだろうか。首なんか無いけど)をしてくれるのは好ましいことだ。 ビデオの映像は、静止画面。うーぱっく五個とれいむ、まりさが、これから自分の身に降りかかる悲劇など知らぬように(実際知らなかったが)楽しそうな遊覧を続けていた。 テレビの静止画像というのは、意外にも不安を煽るものだ。通常動いている映像が映るという先入観のようなものを持っている場合、よからぬことが起こっている、もしくは起こってしまうような気がするのだ。 どうやらこのゆっくりたちも、そんな先入観を既に持ってしまったようだ。余計な先入観は視野を狭めるというが、まさか饅頭の世界にも起こり得るとは思わなかった。 数秒間の沈黙の後、画像がゆっくりと動き始める。今回の映像は、スロー音声も重ねておいた。標準カメラで取った映像にしか対応していないのでまだ面白みに欠けるが、いくらかよいだろう。一回目の教訓を受けて、この映像を撮ったときは椛ちゃんにガンマイクを持たせていたのだ。 壊れたカセットプレイヤーから出る声は気持ち悪い。今虐待部屋には、そんなゆっくりたちのきわめてゆっくりとした会話がかかっている。 「ほぉんとだぁねぇぇぇ、むぁりぃさぁ!! にぃんげぇんたぁちぃはぁ、れぇいいむぅたぁちぃのぉたぁめぇにぃたぁべぇもぉのぉよぉうぅいぃしぃてぇくぅれぇてぇいぃるぅなぁんてぇ、ほぉぉんとぉうにぃゆぅっっくぅりぃしぃてぇいぃるぅねぇ!!」 「ぃゆぅゆぅうぅぅ!! こぉれぇかぁらぁもぉぉ、よぉろぉしぃくぅたぁのぉみぃたぁいぃもぉのぉだぁぜぇぇ!!」 いい加減、これはうざったい。 だが、ゆっくりたちの恐怖心を煽るには充分らしい。先ほども見た画像で、これから何が起こるかなんて、あのインパクトの所為で餡子脳でもメモライズできている。早く終わって欲しい画像なのに中々始まらないのは、生殺しに近い。 そして、ついに、恐怖の時間がやってきた。 「う……?」 身体の中から、 不意なる暑さ。 経験し得ない、 おかしな熱さ。 「う、うあっ!?」 自分で見るのは、 出来ないけれど、 見なくてもわかる、 この熱さ。 「う゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!??」 身体の中から、 広がる熱さ、 気づいたときには、 身体は明るく、 火の玉のように なっていた。 「どうしたんだぜ、うーぱっく!!」 「しずかにしないとにんげんがくるよ!!」 急に叫んだ うーぱっく。 こういう行動、 困るんだ。 振り向き見たのは、 悲劇の序章。 「ゆうううううううううう!!??」 「どおしでもえでいるんだぜ!!??」 知らなければ良かった。 でも、知らずにはいられない。 一番子供のうーぱっく、 火の玉になって消えてった。 「ううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!??」 「ゆううううう!! まりざあああ、あづいいいいいいい!!」 「ゆゆゆ!! うーぱっく、はやぐそいづからよけるんだぜえ!!」 れいむの横の うーぱっく。 今度はこの子が、 叫びだす。 さっきと同じく、 身体が燃える。 悲劇はまだまだ、 終わらない。 「う゛あ゛っっっ!!!」 一体何が、 起こったの。 先頭飛んでた うーぱっく、 最初っから、最期まで、 何がどうだか知らぬまま。 身体は空気の 塵になる。 「まりざっっ!?」 「ゆううううううううううううう!!! れいぶうううううう、はやぐまりざをたずげるんだぜえええええええええ!!」 油断したのが、 不味かった。 急に倒れた、 うーぱっく。 いきなり横に、 なるものだから、 ゆっくり反応、 できないよ。 「ばあああああありいいいいいいいいいざあああああああああああ!!」 「ゆううううううううううううううううううううう!!!!!」 まりさは、お空を 飛んでいる。 最初は、箱の 力を借りて、 今度は、自分の 力だけ。 だけど、ホントは、 お空を飛べない。 まりさは、お空を、 飛べないぜ。 「ぼっどゆっぐりぢいいいいいいいやああああああああああっ!!」 ぶづぐじぃゃああ!! 「ゆうううううっ、ゆうううううううっ!!!!!」 「うーーーあーーーーっ!!」 「うあっ、うあっ、うあっ!!」 仲間がみるみる 減ってゆく。 流れる涙は、 増えてゆく。 悲劇はますます、 加速する。 「……ゆ? !!???」 「ううううううううううううあああああああああああああああ!!!!」 またも燃えてく うーぱっく。 今度はれいむも 道連れだ。 「うーーーーうーーーーーーーーー……」 最期に残った うーぱっく。 最早、生きてる 仲間も居ない。 「うあっ!!」 もう、これ以上は無いはずだ。 こんな悲劇は、無いはずだ。 そう思っていたれど、 ゆっくり中心の世界は、無い。 To be continued...? あとがき。 何となく。SSCで撮影したら、こんなのも面白いかなと思って、燃やしてみました。 今度は、れみりゃを被写体に、おにいさんは大暴れする……、かもしれませんよ。 ○過去作品リスト(ゆっくりいじめのみ) 拳の歳末 (fuku1905.txt,fuku1908.txt) SSCシリーズ 第一弾『握りつぶす』(fuku2196.txt) その他、幻想郷キャラいじめを数作品(春巻リリーホワイト、人参と胡瓜の悲劇、放置プレイ、陰の薄い秋姉妹いじめ) このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/1482.html
「ふたば系ゆっくりいじめ 704 展示品/コメントログ」 アストロンれいむ絶滅したのかw まぁ鉄の需要は無いが、レアメタルに変化するなら研究されてそうだなー -- 2010-10-27 19 00 16 ↓いやいや鉄の需要めちゃくちゃあるって。日本は鉄資源ほぼ輸入だかられいむで全て賄えるなら重工業企業の負担が大きく減ると思うぞ。 -- 2011-02-13 14 35 34 ゆっくりに高価な資源価値があったらなんとなくゆっくり出来ない 饅頭の材料くらいが丁度いいよ -- 2011-06-22 07 36 17 ↓その通り、食糧や堆肥の足しになれば役立っている方。 大体、アストロン化って時間経過で戻るから鉱業では使えないww -- 2018-01-09 16 18 25
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/1318.html
ループ・プレイス 19KB 虐待-普通 制裁 観察 自業自得 差別・格差 飾り 自滅 家族崩壊 同族殺し 駆除 妊娠 ツガイ 野良ゆ 赤子・子供 都会 現代 独自設定 うんしー 八作目 「ループ・プレイス」 ・「ふたば系ゆっくりいじめ 604 ロンリー・ラック」からの続編という形を取っています。 ・人間視点ですが主軸はゆっくりです ・駄文注意 ・いくつかの独自設定を使っています ・うんしー注意 ・自滅モノです 冬のゆっくりと言うのは越冬をする。これは当然の常識だ。 いくつかに分類するなら越冬型、冬眠型等があるが巣ごもりすることには変わらない。 だが街のゆっくりは違う。山野のゆっくりと違い食料なら冬でも何とか手に入るからだ。 なので遠出とはいかなくとも巣の周辺を出歩いたりすることはある。 さて、街のゆっくりがいる所…と言えば路地裏、空地、そして公園の大体三つだ。 特に空地、公園にはゆっくりが集まるいわゆる「コロニー」(饅頭にコロニーという言葉は似つかわしくないかもしれないが)のような状態になっている。 なので時折加工所の職員がやってきて定期的に「掃除」をするのだ。 あの時、私と羽付きが見たのは公園に吸い寄せられうように集まったあるゆっくりの悲劇である。 冬の公園を私と羽付きは歩いていた。冬は相変わらずどんよりとした雲が立ち込め冷たい風が嫌がおいにも荒涼とした雰囲気を演出していた。 大きな公園であるがためにゆっくりが大量にここに居ついている。 近々大規模な加工所による掃除が行われると告知されているので、その前にここのゆっくり達の様子を観察して置きたかったからだ。 早速の如く私と羽付きの周りにはピンポン玉サイズの子ゆっくりからバスケットボールサイズのゆっくりまで大小様々なゆっくりが寄ってきていた。 「きゃわいいれいみゅにあみゃあみゃしゃんをおいちぇいっちぇね!」 「まりしゃはちゅよいんだじぇ!あみゃあみゃをおいちぇいきゃにゃいちょいちゃいめにあうんだじぇ!」 「むきゅ!ここはぱちぇのしきちよ!かってにはいってきたのならあまあまさんをおいていきなさい!」 「ゆゆーん!れいむはしんぐるまざーなんだよ!はやくあまあまさんをおいていってね!」 「はやくするんだぜ!まりささまはぐずがきらいなんだぜ!」 「みすぼらしいじじいはさっさとあまあまをおいていくんだねーわかるよー!」 「いなかものはさっさとあまあまをおいていきなさい!」 耳をふさぎたくなるほどの音だ。口々に勝手な事を言いながら小麦粉の皮をグネグネと押し合い形を変えながら私の足へ寄ってくる。 赤ゆっくりや子ゆっくりは膨れながら威嚇を繰り返し、私の靴やズボンのすそを口で噛んでいた。 私は羽付きを見て「なんとかならないか?」といった。 羽付きは私に帽子をとってくれと言った。秘密兵器があるらしい。 私は羽付きのとんがり帽子をとる。そこに現れたのはれみりゃの帽子であった。 「うー!こんなところにあまあまがいっぱいいるんだどー!」 羽付きがれみりゃのまねをしながら上下にピョンピョンと跳ねた。 次の瞬間、私の鼓膜が破れると思うほどの大音響が響きわたった。 「「「「「「でびりゃだああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」」」」」 蜘蛛の子を散らすように四方八方に飛び跳ねて退散するゆっくり達。10秒ほどたてば辺りには踏まれたのか押しつぶされたのか、それともその両方か分からないが餡子やクリーム、チョコレートを口から吐き出しながら悶絶するいくつかのゆっくりの姿以外無くなっていた。 「むぎゅぅぅ…えれえれ…」 「ゆ”!ゆ”!ゆ”!」 「わがらないよおおおおおおお!!おそらがじだにあるよおおおおおおおおお!?」 「ごんなのどがいばじゃないわあああああああああ!!あでぃずのおがざりざんんんんんんんんんんんんん!!」 体当たりを受けすぎて餡子を大量に吐きだしたのか、手前に帽子を投げだしたまま寒天の白目をむいて痙攣しているまりさ種、ありす種は飾りを途中で落としてスタンピートに巻き込まれたのか、無残にボロボロになった飾りの欠片を舌で拾い集めながら喚き散らし、ちぇん種に至っては跳ね飛ばされ転がったのか逆さに向いて叫んでいた。底部の方がグネグネと不規則に動き、砂糖水の涙を流しながらすごい勢いで喚いている(ゆっくりはその特性上逆さまになると自力で元に戻れない) 私は羽付きの方を向くとこう言った。 「…凄い効果だね」 「こうえんひっすの"あいてむ"だぜ。おにいさんももってるといいんだぜ」 「いや…遠慮しとくよ」 ニヤリと羽付きが笑って答えた。 ひと段落ついた所で羽付きはそのトレードマークの帽子を被り、私も公園の中心部へと進んでいく。 人気のない一角、魚が泳ぐ池の前にある木の麓に、ポツンとダンボール箱が置いてあった。 どうやらゆっくりの「おうち」の様だ。横に倒しておかれて、ボロボロではあるがゴミ袋の様な袋がかぶさっている。 袋が飛ぶのを防いでいるのか、いくつかの小石がダンボールの上に置かれていた。 私が近づくと中からガサガサと2匹のゆっくりが飛び出してきた。 「ここはまりさとありすのおうちなんだぜ!ゆっくりできないじじいとへんなまりさはさっさとかえるんだぜ!」 大きく膨れて威嚇しているその口ぶりの「ゆっくりまりさ」は私と羽付きを睨みつけている。 奥の方には下顎が不自然に膨れているありすとその横で小麦粉の皮をぴったりとくっつけている、2匹のソフトボールほどの子ありすと子まりさがいた。 比較的よくある組み合わせだ。ありすの様子を察するに胎生型にんっしんっ(ゆっくりの場合はこう表記する)をしている様で、これがまた珍しい。 子ありすと子まりさ、そしてありすが巣の奥で私と羽付きに声を投げかける。 「いなかものなにんげんさんとまりさはゆっくりかえりさない!」 「しょうじゃよ!ゆっきゅりかえりなちゃい!」 「まりしゃはちゅよいんだじぇ!しゃっしゃとどっきゃいきゃにゃいちょゆっきゅりできなきゅしてやりゅんだじぇ!」 …あくまで推定だがあまりよいゆっくりではないようだ。れいぱーありすになっていないのが判断の迷う所である。 私は羽付きの方を見る羽付きは私を横目で一瞥するとこう言いだした。 「ゆ!ゆゆうううう!?ま、まさかこんなつよそうでとかいはなありすやまりさがいるとはおもわなかったんだぜ!?ゆっくりまりさのけらいといっしょににげるんだぜ!」 そう言うと羽付きは急いで別の所へ跳ねだす。私もそれについていった。 少し離れたベンチに羽付きは跳ねていった。私も息を切らせながら何とかたどり着く。 「そういえばにんげんさん、げすゆっくりをみるのははじめてかぜ?」 「最初のありす以来だね」 「だったらちょうどいいんだぜ、ああいうゆっくりがどうなるかがわかるんだぜ」 私はメモ帳を取り出しあのまりさ一家の様子を眺めていた。 「ゆゆーん♪だーりんはつよいのね!とってもとかいはよ!」 「ゆ!そうだぜ!まりさはつよいんだぜ!」 「だーりんすーりすーり!」 「ありすすーりすーり!」 そんな事を言いあいながら小麦粉の皮を上下に伸び縮みさせて擦り合わせる二匹のゆっくり。 後ろの方で子ゆっくり二匹ピョンピョンと跳ねまわっている。 「ゲス」であろうか?街ゆっくりはそれが判断の難しい所である。 「でいぶ」や「れいぱーありす」の様に明らかに問題のあるゆっくりではなく、かといって「だぜ」という言葉遣いだったり人間に対して積極的と言わずとも近づいてくれば傲岸不遜な事を言うゆっくりがいる。 それらは中間のゆっくりと位置付けられているので判断が非常に難しいのだ。(羽付きはゲスと断定しているし、私もそうだとは思うがありす種が何ともないのが妙に引っかかる) 改めて様子を見てみよう。 「ゆゆ!おなかすいたんだぜ!」 「ゆ!じゃあごはんさんにしましょう!」 どうやら外で食べるようだ。 ありす種がいるつがいはよくこう言った一見無駄に見える行動をとる。葉っぱの上に何かを乗せたり、役にも立たない石っころを「とかいはなたからもの」なんて言っておいて言ったりと。 「とかいは」の概念からなる行動だと言われているが正直な話、全く無駄な行為だ。 ダンボール箱の奥から食糧が詰まったビニール袋をありすが引っ張り出す。 ガサガサと振ると中からパン切れや魚の骨、野菜くず等が出てきた。 また、ありすが平たい石の上にそれらを並べた。そうしてそれを中心にまりさ一家が円を組むように並ぶ。 そして一斉にむさぼる様に口をつけ始めた。グネグネと押し合いを繰り返しながら食べていくその光景は「とかいは」(少なくとも私の持つイメージとは)とはかけ離れたものだった。 「うめっ!めっちゃうめっ!」 「む~ちゃむ~ちゃ!ちあわちぇえええええ!!」 「む~ちゃむ~ちゃ…ちょっちぇもちょかいはにぇ!」 「がぶがふ!ごふ!がつ!ぐちゃ!ずるずるっ!とってもとかいはなごはんさんね!」 パンきれを砂糖水の涎を垂らしながらむさぼり、魚の骨をバリバリとかみ砕き、野菜くずをグチャグチャと咀嚼し生麺をずるずるとすする。 あまり言いたくないが見ていて気分のいいものではない。少なくとも私が今まで見てきたゆっくりの中では一番食べた量が多いのではないかと思う。 「ゆっくりとしたごはんなんだぜ!」 「おながのおぢびぢゃんもよろごんでるわ!ゆげぇっぷ!」 「ゆゆ~ん・・・おなきゃいっぴゃいだじぇ!」 「のーびのーび!しょくごのうんどうをしゅりゅわ!」 一様に勝手気ままな行動をしている。どうやらゲス寄りのゆっくりの様だ。 その後はダンボール箱の中にぴったりと納まり、ありすに子ゆっくりがすーりすーりを繰り返している。 「ゆゆ~ん!おきゃあしゃんしゅーりしゅーり!」 「まりしゃもしゅーりしゅーり!」 「すーりすーり!とってもとかいはね!」 羽付きがその光景を眺めてただ一言呟いた。「気に入らない」と。 その後言った一言を私は今でもよく覚えている。 「なにが"とかいは"だ。」と 私は何も言う事が出来なかった。何か並々ならぬありす種に対する想いがあるようだ。 羽付きはただ私の方へ視線をやってこう聞いた。 「…そろそろかこうじょがくるんだぜ。おもてへいくと"そうじ"がみられるんだぜ」 私は時計を見た。確かにあと数分ほどで切りのいい時間帯だが何故羽付きがその時間を知っているのか?それが不思議でならない。 私がその事を尋ねるとただ一言「きまったじかんにやるだからそとからみればわかるんだぜ」といった。 急いで羽付きとその場を後にする。 すぐに戻っては来れたが一斉に掃除が始まっている様だ。棒の先に鋭いフックをつけた物を持ってそこら中に人がゆっくりを追い回している。 あれでダンボール箱をひっかけたり、ゆっくりをひっかけて袋に詰めるようだ。 一様に逃げ惑うゆっくりや袋に番いや子ゆっくりを入れられ体当たりや威嚇を繰り返すゆっくりで辺りはあふれかえっていた。 「ゆんやああああああああ!!いだいいいいいいいいいい!!」 「までぃざのおぼうじざんがえずんだぜええええええええええ!?」 「ぢぇええええええええええええええん!?」 「どぐんだぜえええええええ!!までぃざいがいのぐずなゆっぐりはゆっぐりじねえええええええええ!!」 「までぃざあああああああああ!ごのうらぎりぼのおおおおおおおおおお!!」 「いだいいいいいいいいいい!!ばぢぇのがわざんびっばらないでええええええええ!!」 「ごんなのどがいばじゃないわああああああああああああ!?」 どこもかしこも袋詰めにされたゆっくりと辺りを跳ねまわるゆっくりばかり。 あまりにも多くのゆっくり達がつかまり袋に詰められる。そんな中で私はふと先ほどのまりさ一家が気になって。戻ってみることにした。 羽付きも渋々付いていく。私の周りから少しでも離れればそれは捕獲対象になってしまうからだ。 …私と羽付きがついた頃には頃にはすでにまりさ一家はダンボール箱から蹴りだされて木の根元をバックにひと固まりになっていた。 「ゆゆ!ありす!おちびちゃんたち!ゆっくりうしろにいるんだぜ!まりさがいまからこのじじいをせいっさいっしてやるんだぜ!」 「ゆんやあああああああ!!きょわいわああああああ!!」 「おとうしゃんはちゅよいんぢゃよ!ゆっきゅりどっかいっちぇね!ぷきゅー!」 「ゆゆ!だいじょうぶよ!だーりんはつよいからきっとあんないなかものたおしてくれるわ!」 後ろで子ゆっくり二匹が小麦粉の皮をありすにくっ付けて様々な行動を取っていた。ありすの方もキリッとした表情でまりさを見ている。 私も羽付きもあのゆっくり達はもう捕まったと思った。あまりにも不利すぎるからだ。 職員がフック付きの棒をびゅっとふるう。本来なら側面や後部の小麦粉の皮に引っ掛けるのが普通だが、あまりなれていないのか。とんでもない方向に刺さる。 「ゆがあああああああああああ!!までぃざのおべべがあああああああああああああ!!」 棒をふるったのとまりさが体当たりを仕掛けようとしたのが同じタイミングだったからだろうか?まるで導かれるようにまりさの寒天の右目にプッスリと刺さった。 かなり狼狽しているのか。職員がグイグイと引っ張る。当然寒天の右目がブチンと音を立てて離れてしまった。 「いだいいいいいいいいいい!!」 「「おどうじゃあああああああああん!?」」 「だーりんんんんんんんんんんんんんんんん!?」 後ろで余裕をこいていた子ゆっくりとありすが驚く。人間にも勝てる強いゆっくりと思っていたのだろうか?だが現実は無常だ。 目の前で砂糖水の涙と涎を吐き散らしながら帽子を投げだしゴロゴロと転がるそれが私と羽付きと、そしてあのありす達が見た「強いまりさ」の真実だった。 職員が動きまわるまりさを四苦八苦してとらえようと何度も棒をふるった。 だがわざとかと思うほどきれいに刺さらず。小麦粉の皮がまるでふらんに引っ掛かれるかの如くズタズタになるばかりで餡子を飛び散らせながらのたうち回るばかりであった。 「いだい!いだいいいいいいいい!!ゆぎいいいいいいい!!やべでぐださいいいいいいいいい!!あ”あ”あ”あ”!?あでぃずううううううう!だづげでええええええええ!!あでぃずうううううううう!?」 ボロボロの体で必死にありすの名前を呼ぶ。だが… 「こんないなかものなまりさとはゆっくりできないわ!さっさとにげましょう!」 「きょんなぐじゅにゃんきゃほっちょくわ!ゆ!ゆ!」 「じゃこのまりちゃはしゃっしゃちょしにゅんだじぇ!」 そう吐き捨てながらくるっと後ろを向くと一斉に跳ねて逃げ始めていた。ここで私は間違いなくゲスゆっくりであると断定したのである。 「ぞんなああああああああああああ!!ゆがあああああああ!!だずげでえええええええええ!!」 まりさが地面に突っ伏したまま凄まじい声で泣き叫ぶ。先ほどの威勢はどうしたのかという勢いだ。 職員が逃げるありすに棒をふるった。かなり焦っている様だ。慣れない手つきから見て新入りではないかと推測する。 フックはありすの上部前方にスコンと刺さり、グイッとありすの体が持ち上がる。 「ゆっがあああああああああ!?あでぃずのあだばがあああああああ!?」 グネグネと底部を動かしまるでメトロノームの様に勢いをつけて前後に揺れている。そのおかげだろうか。ミチミチと音がして小麦粉の皮と飾りがフックの先についてありすはボトンと地面に落ちた。 「ごんなのどがいばじゃないわあああああああああああああああああああああ!!」 「ゆびぇえええええええええええん!!きょわいんだじぇえええええええええ!!」 「ちょかいはにゃありちゅをたしゅけちぇねええええええええええええ!!」 口々に勝手な事を言いながら寒天の目を血走らせ涎をまき散らし逃げるありす達。 職員は諦めたのか「ゆ”!ゆ”!」と餡子が出すぎて息も絶え絶えのまりさを袋に詰めると、キョロキョロと辺りをうかがってそのまま引き上げていってしまった。 私と羽付きはあのありす達の言った方向へと向かった。 まだそんなに遠くへは言って無いだろう。 人気のない公衆便所の壁面の端にありす達がいた。 だが、私と羽付きはその目を疑った。 先ほどまでともに逃げていた子ゆっくり二匹をなんとあのありすが攻撃していたのである。 子まりさの方はすでに帽子と砂糖細工の髪の毛以外は判断できない程に潰れていた。恐らくありすが踏みつぶしたのだろう。 そして残った子ありすはありすの舌で持ち上げられ、硬い地面に底部をドカドカと打ちつけられている。 「ゆびゅあ!ゆぎゅっ!ゆげぇっ!やべぢぇええええええ!!ありぢゅのぢょがいばなぎゃおぎゃあああああああ!?」 「ありすをおいてにげるようないなかものはゆっくりしになさい!」 …既に子ありすは小麦粉の皮が数倍にも腫れてどこがどうか判別できなくなっていた。中のクリームが不規則に移動しているからだろう。 口からカスタードクリームを吐きだしてもがき苦しんでいる。だが、あと二度ほども叩きつけられて 「ゆ”!…ゆ”!…ゅ”!」とピクピクと震えるだけになってやがて動かなくなってしまった。 ありすはそれを見て満足そうに 「ゆゆーん♪いなかものがきえてすっきりしたわ!」と満足げにニタニタと笑っているのだ。 私は怒りを通り越して呆れ果てた。目の前でニタニタと笑っている泥やゴミを砂糖細工の髪や小麦粉の皮につけているありすを見ていると、そんな事しか浮かばない。 私は振り向いて歩き出す。羽付きもそれに呼応して跳ねて着いてきた。 たった一匹残った胎生型のありす…羽付きの予想を聞かなくともどうなるかは大体想像がつくからだ。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー あれから一週間後。私は再び公園の様子を羽付きとともに見に来ていた。 まだ数は少ないなれども、再び全く別の所からやってきたゆっくり達が住み着いている様だ。 羽付きが言うにはあの掃除から零れ出たとしてもここから出ていくゆっくりが殆どで、後は全部新しいゆっくりがやってくるから「掃除」に永遠に気づかないらしい。 その話を聞きながらあのありすの事を思い出していた。あのありすは今何をしているのだろうか? 羽付きにその事を尋ねると「もういないかもしれない、いるとすれば他のゆっくりの"家来"になっているだろう」と答えた 家来?それは一体どういう意味なのか? 歩いていくと池の周り、まりさ一家がいたダンボール箱がそのまま残っていた。 「ほらほら!はやくまりささまとれいむのうんうんをたべないとそこのちびがつぶれちゃうんだぜ?」 「ゆゆ!すっきりー!」 「あ”あ”あ”あ”あ”あ”おぢびぢゃんんんんんんんんんんん!?」 そこにはふた回りも大きいれいむとまりさがいた。一様にあにゃるを突き出してうんうんを一か所にかましている。 うんうんがよく見ると動いている。いや…中に何かがいるようだ。 良く見てみるとそこには三匹のミカン程の小ささの子ありすが三匹、苦しそうにウネウネとうんうんの中で動いていた。 「ゆ”・・・ゆ”…!」 「ぐざいわあああああああ!!」 「ぢょがいばじゃないいいいいいいい!!」 だが、それより目についたのはあのありすの風貌だった。 頭の飾りが無くなったのは当然だが、何より砂糖細工の髪の毛が全て無くなっていた。 毟られたのだろうか?後部の上方に木の枝が三本刺さっているのを見るとどうやらあのれいむとありすにやられたのではないかと思えてくる。 ボロボロになったありすは必死にれいむとまりさの餡子…うんうんをグチャグチャとかき分けるように顔を突っ込んで食べながら必死に寒天の両目から涙を流していた。 「おぢびぢゃんまっででね!いばだずげるがらね!がふ!ぐふっ!ゆおげぇぇぇえええ!!ゆげぇぇえええっ!」 何度もえずきながらうんうんをぐちゃぐちゃと食べながら時にクリームと餡子が混じった物を吐き出して必死に子ありすを探す。 全て片付けるまで約二分近くかかっただろうか。ボロボロのありすの横に怯えるように小麦粉の皮をくっつけて震える子ありすの姿。 「あでぃずのおぢびぢゃんがああああああ!?ゆっぐりよぐなるのよ!?ぺーろぺーろ!」 だがもう一匹の子ありすの方はかなり致命的の様だ。口からカスタードクリームをぼとぼとと吐き出し、しわしわになって地面に潰れかけている。 ありすが必死にぺーろぺーろしようにも全く意味はない。やがて「ゅ”!」と小さく跳ねると完全に動かなくなってしまっていた。 「あ”あ”あ”あ”あ”!?あでぃずのおぢびぢゃゆがあああ!?」 「うるさいよ!ぎゃーぎゃーさわがないでね!」 悲しむ間もなくれいむに弾き飛ばされるありす。まりさが帽子から木の枝を取り出してありすの右側面に突き立てる。 「ゆぎゃあああああ!!いだいいいいいいい!?」 「これでよんかいめなんだぜ!つぎごはんさんをさがしにいってもごはんさんをとれないのならおなじことをもういっかするんだぜ!」 「れいむあまあまさんがたべたいよ!さっさととってきてね!」 「そうだぜ!さっさとごはんさんをとってくるんだぜ!あとばつとしてきょうのごはんさんはそこのまんじゅうなんだぜ!」 まりさとれいむがことごとく注文をつけるとよろよろと立ち上がり、子ありす二匹を口に入れ力なくズリズリと這いだした。 それを見たまりさが一匹の子ありすの髪の毛を口でくわえて乱暴に引っ張る。 「おまえはこっちにくるんだぜ!かってににげだされたらこまるんだぜ!」 「ゆんやあああああ!!いぢゃいわいいいいい!!ありぢゅのぢょがいばなぎゃみをひっびゃらにゃいぢぇえええええ!!」 「おぢびぢゃんんんんんんん!?」 「なにかもんくあるの!?かざりのないゆっくりはだまっててね!」 どうやら子ありす一匹を盾に取っている様だ。容赦なく自分の子ゆっくりを潰したありすならそのまま逃げだしそうだがそうはいかないらしい。その辺の事は私や羽付きでもその心情を察する事は出来なかった。 「ゆうう…ゆっくりまってるのよ…!ありすがいっぱいごはんさんをとってくるから…!」 「ゆええええええええん!おねえしゃんだけぢゅるいわあああああ!!ゆんやああああああああ!!」 子ありすの悲鳴に振り返りもせずとぼとぼと跳ねていくありすと子ありす。 それを見ながられいむとまりさは小麦粉の皮を合わせてすーりすーりを繰り返している。 「ゆゆ!れいむすーりすーり!」 「ゆゆ~ん♪まりさすーりすーり!」 そのすぐ横には残ったうんうんをしかめながらちょぼちょぼと口に運ぶ子ありすの姿があった。 「ゆうう…くぢゃいわぁぁ…でもゆっきゅりちゃべりゅわ…む~ちゃむ~ちゃ…」 …その対照的な姿を見ても何の感情すらも思い浮かばない。なんとなくこうなるだろうと言う事はあのありす達の達振る舞いを見ていたら予想がつくからだ。 羽付きはそれを見ると「もう帰ろう」と言うとそのまま振り返りもせずに飛び跳ねだした。 私も踵を返して池の周りを後にする。 羽付きと別れた帰り道の途中、あのありすを見た。 ありすはただひたすらに寒天の両目から涙を流して道路の端に生えた雑草をブチブチと引き抜いていた。 子ありすの方も同様だ。一様に心配そうな表情を浮かべてありすの後部を見ていると言うこと以外は。 「ゆ”!ゆ”!もういやだわぁぁ…!ゆっぐりじだいよぉぉ…!どぼじであでぃずがごんなめにあわないどいげないのぉぉ…」 そう言いながらブチブチとただひたすらに雑草を引き抜きありすを尻目に私はそこを後にした。 羽付きが言うにはあの公園に居ついたゆっくりは大体ああいった末路をたどるという。あのありす達が特別なのではなく。少し足を延ばせばどこでも見られる光景だそうだ。 家路につく途中にあのありす達の事を思い返していた。シビアな冬の街をあんな気楽な心持ちで生きていたのだ。もしかすればまりさ種の方がとてつもなく優秀だったのかもしれない。 だが、整理して考えてみるとあのまりさ一家も同じように「掃除」によってあぶれたゆっくりを「家来」にして越冬用の食料を集めたと思うのが妥当だろう。 ――――あの公園には今日も外から吸い寄せられるようにゆっくりが集まっていく。まるで「ドスまりさの群れ」がいると聞きつけたかのように… 過去作品 ふたば系ゆっくりいじめ 504 かりすま☆ふぁいたー ふたば系ゆっくりいじめ 516 サバイバル・ウィンター ふたば系ゆっくりいじめ 527 シティ・リベンジャーズ ふたば系ゆっくりいじめ 582 ビルディング・フォレスト ふたば系ゆっくりいじめ 587 バトル・プレイス ふたば系ゆっくりいじめ 592 コールド・ソング ふたば系ゆっくりいじめ 604 ロンリー・ラック トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る いつもコメ欄に涌くキモ厨二あきさん乙ですwwwwww批判する前に自分で書いたらどうすかwwwwwwwww -- 2013-03-22 14 54 12 毎度ながらハゲェェェが笑えて仕方ないな -- 2011-09-02 21 57 45 ひはんちゅうはまりさがせいっさい!するんだぜ! -- 2011-08-11 21 34 05 ゆっくり達は直接虐待しなくても観察するだけでホッコリするねぇ -- 2011-06-06 17 25 29 こいつがトップで噂のキモいしか語彙が無いゆとりDQNの荒らしか…噂通りだなwきめえ -- 2011-03-09 08 03 16 うわっww本当にいたよキモ荒らしwキモッww -- 2011-03-09 00 00 47 俺赤ゆありす虐待大好きだからゆっくりできたわ。 -- 2011-03-08 23 42 04 ふむふむ、羽付きがとんがり帽子を取るとそこに現れたのはれみりゃの帽子であったと・・・ 更にれみりゃの帽子を取ると邪気眼が現れるというわけだ キモいんだよハゲェェ!! なんかどんどんキモい方へキモい方へと突き進んでいるな 次はいったいどんなキモい厨二設定が出てくるのかと思うと 吐き気を押さえらんねえぜ -- 2011-03-08 08 48 01 羽付きの秘密兵器に吹いたw このゆっくりは好きだわー 胎生出産した子ゆっくりは特別なのかねぇ。 お腹痛めて生まない赤ゆっくりって簡単に見捨てられるのかなぁ -- 2010-10-21 15 33 41 ゆっくりがみんなゲスだったらいいのに・・・ -- 2010-08-25 21 28 29
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/1341.html
散歩した冬の日に 25KB ギャグ 野良ゆ 都会 借ります ゆっくりぬるいじめ 皆さんは、ビルなどに取り付けられている排気口をご存知だろうか。 いや、正確に言えば、そこから吐き出される空気の事を。 エアコン、空調設備なんてものは文字通り、室内の空気を入れ替えるためのものだ。 当然そこに至る過程として、外から空気の取り込み、そして中から空気の排出が必要となる。 途中機械による温度の変更や、それに類するものも含まれるのだろうが、それは今語る必要はないだろう。 それ自体は何の変哲も無い事実だ。ケチをつけるつもりも無い。 私だって現代人、エアコンという文明の利器に頼った経験がある。あれは素晴らしい物だ。 ただ、それは「中」からの話。 「外」側からとなると、少々都合が違ってくる。 これは、私の完全に個人的な経験から来ている話なのだが。 とある夏の日。 道を歩いていたとする。そう、ビルの間に挟まれたような小さい路地裏だ。 そこでふと見ると、右か左、どちらでも良いがどちらかのビルに排気口がこれ見よがしに取り付けられているのだ。 別に障害物となるわけではない。気に病むほどの事は無く、ただ通り過ぎれば良いだけ。 歩を進め、排気口を通り過ぎようとしたその時、 むわっ。 吹き付けられる風、と言うか空気の塊。 何とも言えない微臭。 そして何より、糞暑い中、それなりに溜まっていた苛つきを更に煽るような生暖かさ。 私は破壊衝動を高め、そこら辺にいるゆっくりを踏み潰しながら、往く、もしくは帰る。 排気口から流れ出す空気とは、かくもその様な悪意に満ち溢れた代物なのだ。 まったくもって救い難い。地球温暖化とかより先にこの問題を解決してもらいたいものである。 今のは夏の話だったが、冬もこの生暖かい風は絶賛稼動中だったりする。 夏に比べればそれなりに邪魔ではないにしても、それでもやはりちょっと臭かったり、気持ち悪い。 そもそも暖まりたければどこか室内に移動して暖房の恩恵を被ればよいのだ。 多くの人間様は、こんなものに頼る必要性を持ち合わせていない。 やはり排気とは読んで字の通り、「排」される空「気」以外の何ものでもないのだ。 いろいろと長く語ってしまったが。 まぁ、何が言いたいかっつーと。 「おがぁしゃん……しゃぶいよぅ……」 「あっちゃかいところにいきちゃいよ……」 「まりしゃ……ゆっくりしたいぃ」 「ゆっく…ぶるぶるさん、とまってね……」 「だいじょうぶだよ、おちびちゃんたち……ここならあったかいから、おかーさんとゆっくりしようね……?」 その排気口から垂れ流される温風を、身を寄せ合いながら受けているゆっくりの一家を見つけたというだけなんだけどね。 散歩した冬の日に 漸く寒くなってきた最近。 とは言っても、気温の変化は緩やかとは感じ難かった。 季節の変わり目は急だと云うが、よもや風呂入ったら秋から冬だったでござる、なんて感想を抱くとは思ってもいなかったのだ。 それ程までに寒い。正直もう既に夏が恋しかったりする。 夜にもなると更に寒さは顕著となり、息を白くして道を歩く日々である。 厚めのコートにズボンを穿き、自動販売機であったか~いコーヒーを買いながら家へと帰る。 今日もそんな一日の筈だった。 目の前に居る饅頭一家という例外さえ除けば。 でかい親ゆっくりと思われる、れいむ種が一匹。 その側には様々なサイズの子ゆっくり、子れいむ、子まりさが纏わりついている。 大体片手で数えられる程度の数。 何処ででも見かけ、何処ででも死んでいる程オードソックスな一家だった。 「ほら、おちびちゃんたち!みんなでいっしょにくっつけば、もっとあったかいよ!」 「ゆ……ゆんしょ……ゆんしょ……」 「ちょっとだけあったかくなってきたよ……」 「ゆっきゅ……ゆっくり」 「でもまださむいよぉ……」 饅頭が押しくら饅頭してる。 なんの諧謔だろう。 「……おかーしゃん、おとーしゃんかえってくるのいつ?」 「ゆ……」 「おとーしゃんはやくかえってきてほしいよ……」 「あったかいおうちみつけてくるっていってたよ……」 「おいしいごはんしゃんに、あまあましゃんもとってくるって……」 「まいしゃたち、もうまちぇないよぉ!」 「ゆ、ゆ……もうちょっとのがまんだからね、まりさはもうすぐかえってくるから……」 「おかーしゃん、もうかえろうよぉ……」 「……だめなんだよ、おちびちゃん」 「どーしてぇ!?おかーしゃん、もうおうちかえろうよぉ!」 「れいむたちは、『いそうろう』だったから……。もうあそこは、れいむたちのおうちじゃないんだよ」 「でもぉ!ごめんなしゃいすれば、きっとありしゅおねーしゃんだって……!」 「……だめなんだよ」 ……………………。 「だから、まりさがもうすぐあたらしいおうちをみつけてくれるから、それまでがまんしようね……」 「れいむ、おかーさんをこまらせたらだめだよ…?おねーちゃんといっしょにがまんしようね……?」 「わかっちゃよ!まいしゃもがまんしゅる!おとーしゃん、もうしゅぐかえってくるもん!」 「ね、れいむ、いもうともがまんするっていってるよ?」 「……ゆ、わかっちゃよ、れいみゅ、がまんしゅる……!」 (……邪魔だなぁ……) 苦い温もりを含みながら、そんな事を考える。 この道は帰宅時における最短ルートなのだ。 今更迂回すると言うのは面倒だし、ゆっくりに遠慮してやる理由などこの広い宇宙を隈なく探しても見つからない。 よし。押し通るか。 決めた所で、再び歩を進める。 硬い靴底が床に当たり、その音は一家にも聞こえたようだ。 「ゆ!にんげんしゃん!」 真っ先に気付いたのは幼い子まりさ。 そこから親れいむ達が振り返り、それぞれ興味、警戒、そして恐怖の表情を浮かべている。 前者は末女辺りの子ゆっくり、後者は長女から親れいむ。 一応ゆっくりにも経験の差はあるということか。 「にんげんしゃん!ゆっきゅりしちぇいってね!!!」 「おねーしゃん、ゆっくり!!」 「ゆ、ゆっくりしていってね……?」 「……れいむ、まりさ……」 見るからに小さい子れいむ、子まりさの二匹(幼れいむ、幼まりさとでも呼ぼう)は物怖じせずに挨拶。 それよりも二周りほど大きい次女(だと思う)まりさは明らかに警戒している。 亜成体ほどの長女(だろう)れいむに至っては妹達を逃がせるように何かの算段をしているようだった。 さて、親れいむは。 「………………」 ………仮に、初対面の相手がいきなり目の前で地面と熱い接吻を交わしていたら、 その意図が何であるか多少の時間は要すると思う。 見紛う事無く平伏叩頭。 どう悪意的に解釈しても、土下座以外の何ものでもない。 あるいは辞書の範例になりそうな程の、「下手に出る」態度。 自尊心だけは地球上の何者にも負けないゆっくりというナマモノが、こうまでする意味。 このれいむが今までのゆん生でどれだけ辛酸を舐めたか、この行為だけで想像できた。 「おい」 とりあえず、声をかける。 出会っていきなり土下座されるような悪行を、私はまだしていないつもりだ。 びくりと震えるデカ饅頭。恐る恐るといった様子で顔を上げ、私を見る。 分かり易い、滑稽な程の、怯えが目の中に見て取れた。 「………れいむはどうなってもいいですから、おちびちゃんだけはたすけてあげてください……」 「は?」 「おちびちゃんたちはゆっくりしたいいこなんです、れいむがかわりになんでもしますから………」 おいおいちょっと待て。土下座の次は命乞いか。 何を言っているんだこいつは。 そんなに私は恐ろしく見えるのだろうか。 少し傷付いたような気がしないでもない。 「どうか、どうかおちびちゃんたちだけは……」 「いやちょっと待て」 「ゆ?」 「いきなりそんなこと言われても意味分からん。 とりあえず私にはあんた達を殺す気は無いよ」 「ゆ!?ほ、ほんとうですか!?」 うん。とりあえず今のところは。 口には出さずに首肯だけ返す。 「私は此処を通りたいだけ。あんた達が邪魔だったから声をかけたの」 「ゆっ……よかったよぉ……」 へなへなと、その場に崩れ落ちるかのように身体を弛緩させるれいむ。 だから邪魔なんだが。 人の言うことを聞いているのだろうかこいつは。 「ねぇ、私はここを通りたいだけって言ったよね?さっさと退いてくれない?」 「ゆっ、わ、わかりました」 おちびちゃん、と声をかけて道の脇にどくれいむ一家。 冷えたビルの壁に体が触れて「ちゅべたい……」と子れいむが漏らす。 だがそこから動こうとはしない。一家揃って直立不動、私の邪魔をする気は皆目無いようだ。 「………………」 道は空いた。 もう私はまっすぐにこの道を行けるだろう。 そこには何の障害も無い。 が、私の心には一抹の好奇心が発生しつつある。 その対象は、このれいむ一家。 冬のうらびれた路地裏に佇む、どう見ても凍死を目前に控えたこの哀れな饅頭たち。 これだけならば何処にでもいるそこらの野良と変わらない。 ―――――だが。 随分と、お行儀が良いじゃないか? いっそ場違いな程、このれいむ一家は礼儀正しい。 テンプレならばここらでゲスクズカスと三拍子揃った糞饅頭が出てくるはずなのに。 不思議なことにこの一家は、少なくとも人間を恐れ、逆らおうとはしないように見える。 ………なんでだろうね? 一度気になったからには聞いてみたくなるのが人の性分。 私もその範疇にはしっかりと含まれている。 ならば聞いてみようじゃないか。 「ねぇ、あんた達………」 「ゆ?」 「れいむたちは、あっちのほうからきたゆっくりなんだよ」 そう言いながら、闇夜のどこか一部分を示すように見るれいむ。 あっちの方って。分からんがな。 「そこにはたくさんゆっくりがいて、みんなできょうりょくしてくらしあってて……」 「れいむたちはそこのありすに、『いそうろう』させてもらってたの」 「でも、もうすぐふゆごもりだからって、こんなにたくさんのめんどうはみられないって……」 「だから……だがらぁ……れ、れいぶは、ばでぃざといっじょに、あだらじいおうぢをぉ……」 「あー分かった分かった、いいから泣かない」 今此処に至るまでの道程を噛み締めているのか、徐々に泣き声交じりになっていくれいむの話。 きっと饅頭なりに辛い事があったのだろう。果てなくどうでも良いが。 「で、そのまりさは何処に行ってるの?」 「まりさは……あたらしいおうちとごはんをみつけて、れいむたちのところにかえってくるって……」 「ふーん」 逃げたか。 もしくは本当に新しい住居を探しているのかもしれないが、現実はそう甘くは無い。 今もまりさはこの寒空の下、存在するかも分からない『おうち』を見つけようとしているのか。 「ところで、何でその、群れ?を追い出されたのか、良く分からないんだけど」 「ゆっ、それは……」 「働かなかったなら、それは分かる。 でもさ、あんた達は見たところ、怠け者っていう風にも見えない。なんで?」 「ゆゆっ、ゆっ……………」 「……………………ああ、成る程」 れいむの話を聞きながら、私は最近読んだ本に書かれていた内容を思い出す。 あれは―――確か、都市部に於けるゆっくりの行動学、だったか。 ―――ゆっくりにとって、冬とは即ち死の季節に他ならない。 飢えに倒れ、寒さに凍え、それを避けようと穴蔵に篭り、またそこで不慮の死を量産する。 年がら年中死に続けているゆっくりだが、冬とそのほかの季節では死亡率に差があるのだ。 これは野良、というよりも、むしろ野生のゆっくりがそうであると云えよう。 では野良ゆっくりはどうであるか。 驚くべきことに、野良ゆっくりの冬における死亡率は、他のそれを下回るのだ。 (ちなみに、それでも野生のゆっくりが1匹死ぬ間に野良ゆっくりは2~3倍ほど死んでいるのだが、事実は事実だ) 自然の摂理に逆らうかの如きこの現象は、大別して三つの理由から説明付けることが出来る。 一つ、寒さを凌げることの出来る場所の多さ。 街には、様々な所にゆっくりが隠れ住むことの出来るスペースを有している。 例を挙げれば、路地裏の目立たぬ一角、公園の隅、自動販売機の下、或いは公衆便所、或いは高架の下、etc。 加えて、段ボールでも確保できればそれ自体が即席の住処としても機能するのだ。 現に、この一家はひとまず寒さを凌ぐことに成功している。 本当にひとまず、ではあるが。野良ゆっくりにとって巣とは、「隠れ住める」という条件も必要になる。 一つ、ゆっくりの活動減少。 冬になれば、ゆっくりはその寒さから多くの行動を控えるようになる。 気軽に外へ出ようとはせずに、巣に篭りがちになる。 普段用も無く外出するゆっくりは、外敵(主に人間)との遭遇により命を落とすことが珍しくない。野良ゆっくりは更に顕著だ。 だが反面、冬にお決まりの飢えとはそれほど縁が無い。人間が出すゴミという食料のためだ。 野良ゆっくりは人前に姿を晒さなければ、安全に生を送れると言っても過言ではない。 もっとも、この一家はこの時期に巣を探し、あまつさえ人間に見つかってはいるが。 最後に一つ、これが最も大きい理由となる。 これは近年になって確認されてきた事項であるが…… 野良ゆっくりは、他ゆっくりとの相互間における協力度合いが、野生ゆっくりのそれとは比べ物にならないほど高い。 これは、野良ゆっくりの主な死亡原因、外敵の多さにそのまま起因する。 通常、ゆっくりとは自侭な性格で協調性がほぼ無い、という認識が一般的だろう。これは凡その所、正しいと言える。 しかし野良ゆっくりは苛酷な環境を生き抜くため、狡猾さという特長を備えた。即ち、他者を利用する事を。 例を挙げよう。 人間のゴミ捨て場を、10匹のゆっくりが窺っている。 目の前にはゆっくりからすればご馳走、宝の山。我慢しきれずに一匹のゆっくりが飛び出していった。 だが、残り9匹は動かない。凝と走る一匹の後ろ姿を見つめている。 それは何故か? 簡単である。 欲に駆られて飛び出せば、罠に掛かるかもしれない可能性を考慮したためだ。 9匹の危惧通りに現れた人間は、哀れなスケープゴートを踏みつけ、掴み、何処かへと連れて行く。 その隙を突いて、9匹はそこそこの量の獲物をきっちりと分け合った。 欲張れば諍いが起きる。そしてそれは時間を食う。いつ人間が戻ってくるか分からないのに、暢気に喧嘩?冗談ではない。 急がば回れ。慌てる乞食は貰いが少ないのだ。 かくの如し、ゆっくり達は他者を競争相手であり、撒き餌であり、盾であり、仲間と見た。 狡猾は一種の協調性と成し、それはある種の協力へと発展したのだ。 知っての通り、ゆっくりは弱い。一匹だけでは脆弱も極まるだろう。 だが多数のゆっくりが団結し、一つに纏まればその力も大きくなるのは自明の理。 野良ゆっくりは『情報』というものの価値に気付き、それを共有し始めたのだ。 直接の利害関係になくても、他者を知っているという事実は重要なことになる。 何故ならば、それは「知り合いがそこに居る」という事実自体が既に大切な情報だからだ。 もしも、知る筈の者が居なければ、そこに何らかの危険があったという可能性も考え得る。 他者の存在自体が、その場所の安全を確保しているという証明に他ならないのだ。 かくして、野良ゆっくり達は一種のコミュニティとも呼べる情報網を作り上げつつある。 これにより、保健所や加工所の野良ゆっくり狩りは、その効率を大きく引き下げることになるだろう。 コミュニティは、最低限度の能力を持つゆっくりさえ居れば、その数に正比例し拡大する――― と。 本の内容と現状をすり合わせるうちに、大体の話は掴めた。 コーヒーを一口飲む。少し冷めてきたな。 この家族、少なくとも親れいむか親まりさは、『最低限の能力を持つゆっくり』以下の、穀潰しだった様だ。 先述のように、ゆっくり間のコミュニティは最低限度の能力さえあればいくらでも大きくなる。 逆に言えば、その能力が無い奴、それどころか皆の足を引っ張るような無能者も居るということに他ならない。 これまでれいむ一家がコミュニティに属していられたのは、何らかの情けでもあったのだろう。 来る冬に備えて、口減らしとして切り捨てられるのは寧ろ当然といえる。 そしてれいむ一家の行儀の良さもなんとなく理解できた。 こいつらは、それ以外に能が無かったのだ。 居ても居なくてもどちらでも構わないが、人が良いからとりあえず邪魔にはならない。 そんな程度の存在。 頭を下げ、媚び、諂い、情けを恵んでもらう。 無能が無能なりに編み出した処世術だったのか。 成る程、れいむ一家が此処でこうして路頭に迷っているのは、当然の結果なのだ。 寒さに震えるのも、惨めな思いをするのも、全て自業自得に過ぎない。 それに、まだこの一家は幸せな方だろう―――寒さに震える、という行為自体を行えないゆっくりはそこらじゅうに居る。 「ゆ、おねえさ……」 「寄るな、臭い」 「ゆ、ごめんなさい……」 近寄ろうとしたれいむから距離を置く。 元から野良の身なりの上に、排気口の風をたっぷりと浴びたれいむ一家の臭気は少々耐え難いものがあった。 コーヒーの残りを流し込む。 もうこの一家に対する興味は薄れてきていた。 やはり、何処にでも居るありふれた野良ゆっくりでしかなかったのだ。 それがどれほど善良な個体だとしても。 多少、気の毒ではある。 だが私には何もしてやれないし、する気も無い。 そこまでする義理も情けも私は持ち合わせていない。 ―――もう、帰るか。 そう、足を踏み出そうとして、 「おねーしゃん」 「ん?」 幼まりさの呼びかけに、振り向いた。 何の用だ。 口には出さずとも、そう表情で問い質す。 幼まりさの顔には純粋な好奇心が見えた。 「おねーしゃん、そのごくごくしゃん、おいしい?」 「あ……? コーヒーの事?」 「ゆん、そのこーひーしゃん、おいしい?」 キラキラした瞳でそう訊いてくる幼まりさ。 その隣にいる幼れいむも、喋らずとも似たような態度だ。 「不味い。少なくともあんた達には。 それに私は、あんた達にあげる気は無いよ。もう無くなっちゃったし」 「ゆぅ」 「じゃんねんだね、まりしゃ」 しょんぼりする幼まりさ、そしてそれを慰める幼れいむ。 ……やけに諦めが良かった。 やはり野良の割には、性格が良い。 「……っお、おねえさん!」 再びれいむが私を呼ぶ。 さっきから何だ。 「おねえさんに、おねがいがあります!」 お願いとな。 ………嫌な予感がする。 褒めた途端にこれか。 「おねえさん、どうか―――」 もみあげでリボンの付け根辺りをまさぐるれいむ。 そうして取り出した先には、 「これで、おちびちゃんたちにぽかぽかさんをかってあげてください!」 それはどう見ても、千円札以外の何物でもなかった。 「……………ぁえ?」 我ながら、素っ頓狂な声が出た。 あれ? そこは「れいむ達を飼って下さい」じゃないのか? そうして分不相応な願いを以って、人間の怒りを逆撫でするのがゆっくりだと思――― 「っていやいやいや、れいむ、それは一体、何?」 「………ゆ?………おかね、だと、おもいます………」 尻切れトンボになっていくれいむの声。 いや、確かに合ってはいるんだが。それは紛う事なきお金だが。 「たまたまひろったけど……れいむはゆっくりだから、おかいものができないんです……」 それはそうだろう。 飲食店の野良ゆっくりに対する心証は、『悪い』どころでは済まされないものだ。 見つけ次第追い払い、酷い場合は(そしてそれが殆どだが)殺してしまう。 加えて、自動販売機なども――身長などの理由で――ゆっくりが使えるような代物ではない。 総合して、ゆっくりが持つ金銭など、猫に小判の喩えそのものと言って良い。 「おねえさんは、れいむたちのおはなしきいてくれたいいひとだから…… おねえさんならきっと、ぽかぽかさんをかってくれるとおもって………!」 ゆっくりが持って無意味なものでも、人間が持てば意味を持つ。 ならば、人間に頼んで買い物をして貰おうというのか。 それは、全く以って正しい。 「おねがいじばず!!おぢびぢゃんだぢに、どうかぽがぽがざんをがっであげでぐだざい!!! ほがのひどにはたのべないんでずぅ!!おでがいじばずぅぅ!!!」 再び土下座。それも滝のような涙を流して。 必死すぎる。 逆に言えば、それだけ追い詰められているということか。 「おでがいじばず……どうか、どう゛かぁ………」 冷えた道路は痛みさえ齎すだろうに、それでもれいむはぐりぐりと己の顔を擦り付けている。 「………あのさ、そこは普通、『れいむ達を飼って』とか、そんなんじゃないの? そうすればこんな場所に居る必要もないんだし……」 ピタリ、とれいむの動きが止まる。 そこから一際大きく、ブルルッ、と震えた。 「………れいむ゛たちは『のらゆっくり』だから゛、かっても゛らうなんてむ゛りなんです………」 「は?」 「ぱちゅりーも、ま゛りさも、おむかいのれいむも…… 『にんげんさんにかってもらう』っでいって、それで、ずっどゆっぐりしぢゃいまじだぁ」 「ほがにも、たくざん、たぐさん……『かいゆっくり』になろ゛うとして、ゆっぐりしちゃったゆっぐりが、いる゛っで。 ありずが、おじえでぐれまじたぁ」 「だがらぁ……どうか、おねがいじまず……おちびぢゃんに、ぽかぽかざんをぉ…… それだげでいい゛んでず、どうか、どう゛かぁ………!!」 「………………………………………は、ははっ」 思わず。 笑ってしまった。 自分達は野良ゆっくりだから、どう頑張っても飼いゆっくりにはなれない、か。 何匹も何匹も、そんな幻想を求めて死んでいった仲間を知っている、か。 だからそんな夢よりも、今はよりちっぽけなものに縋りつきたい、と言うのか。 ―――――このれいむ、弁えている。 素晴らしい。 全く素晴らしい。 これほど面白いゆっくりに会ったのは久しぶりだ。 拍手喝采を送りたいほどだ。 無能だから群れを追い出された? 馬鹿を言うな。 こいつらにはそんな事より大事な、己の分というものを知っている。 寧ろ野良でいさせることが惜しいほどだ。 「れいむ」 「ゆ゛、はい゛っ」 思えば何と不憫な連中だろう。 生まれる場所さえ違っていれば、きっとこの一家は幸せな一生を送れたはずなのだ。 それをどう間違えたか、こんな場所で、こんなに哀れに。 だから。 初めはそんな気など微塵も無かったのだが。 「その千円札、よこしなさい。 ………買ってきてあげる」 ここは一つ、情けをかけてやろうじゃないか。 「ゆ゛ぅ……よかった……よかったよぉ……!」 「おねーちゃん、ぽかぽかさんたのしみだねー」 「ねー」 そんな会話を離れて聞きつつ、私は自動販売機の前に立っていた。 手の中の千円札は薄汚れている。 だがまぁ、使えないほどではない。 れいむ達は「ぽかぽかさん」と言っていたか。 その要望を叶えるには、コーヒー……では不可だろう。 ゆっくりの舌には苦すぎて、とても飲めた物ではない。 相応しいとするならば、恐らくこれであろうか。 「あったか~い」と銘打たれている、つぶ餡入りお汁粉、120円。 一本で十分だろう。そういえば、釣銭をどうするか聞いていなかった。 ………頂いてしまおう。 他に、めぼしい物は……無し。 と、すれば決まりか。 指を伸ばしてボタンに触れ、 ―――――お決まりの落下音。 私は取り出し口から目的のものを取り、釣銭用のレバーを引く。 戻ってきたのは500円玉一枚に、100円玉が四枚。 900円だった。 「お待たせ」 「ゆわーい!!」 「ぽかぽかしゃんだー!!」 「ゆううぅぅぅ!!ありがとうございばず、ありがとうございばずぅ……!!」 戻ってきた私を迎えたのは、歓喜と感謝の声。 特にれいむは、三度目の土下座をするほど感極まっていた。 「おねーさん、それがぽかぽかさん?」 「ああ、そうだよ」 「おねーちゃん!ぽかぽかさんだってー!!」 「やったね、まりさ!!」 長女れいむと次女まりさも喜色満面、最初の警戒が嘘のようだ。 「おねーちゃん、ありがちょー!いっしょにゆっくちちようね!!」 「れいみゅも!!れいみゅもいっちょにゆっくちしゅる!!!」 「そうだね、一緒にゆっくりしようね」 適当に相槌を打つが、それでも幸せそうな満面の笑顔。 思えば最初から幼まりさと幼れいむは私に対して一切の警戒を抱かなかった。 「このごお゛んは、いっじょうわずればぜん!ありがとうございばずうぅ!!!」 「いいんだよ、そんな大層なものじゃないし」 れいむの金で私が買い物をしたと言うだけの話なのだから。 「ほら、あんた達。そこに並んで、口を空けて」 「ゆ?」 「今から私が飲ませてあげるから。 あんた達、手が無いでしょ?コレを噛み千切るってのは無理があると思うし」 「ゆ、そうだね!ありがとうおねえさん!ゆっくりひらくよ!!」 そのまま「ゆぁ~ん」と、一様にその大きな口を開けるれいむ一家。 少し苦笑してしまう。私が言い出さなかったら、どうするつもりだったのか。 まさかまた他の人間を捕まえて、開けてくれるように頼みでもする気だったのかもしれない。 出会って数分、たったそれだけの時間でこの一家は私をここまで信頼している。 もはや野良ゆっくりには見られなくなった気質。 おそらくこれが、本来の「ゆっくり」という奴なのだ。 返す返すも、このゆっくり達が不憫でならない。 こんな所で寒さに、飢えに苦しむのは彼女達にとって不幸でしかない。 出来得る事ならば、そんな目には遭わせたくなかった。 私と別れた後も、彼女たちは不幸でい続けるのだろう。 それを回避するには、どうしたら良いか。 だから私は、そっと、 ―――――ペットボトルのキャップを外し、中身のミネラルウォーターをぶち撒けた。 「ど、どぼ、どぼぢで」 今度こそ本当に帰ろうとした私を、れいむが呼び止める。 歯の根が合わず、ガチガチと鳴らすその姿は「暖かい」などと云うものからは無縁だろう。 ―――当然だ。頭から冷水を被って、濡れ鼠ならぬ濡れ饅頭になったのだから。 むしろ今すぐ凍死してしまわないのが不思議な程だ。 「お゛、お゛ね゛え゛ざん、どぼ、じで、ごんな゛、ごど」 息も絶え絶えに言葉を紡ぐれいむの側には、同じく4つの濡れ饅頭。 長女れいむと次女まりさはひたすら震えるだけの物体と成り果てている。 幼れいむと幼まりさは……水を掛けられたショックで逝った様だ。ピクリとも動かなかい。 「れ゛、れ゛いむ゛は、お゛ね゛えざんを」 「あのね、れいむ」 振り返りつつ、答えてやるとする。 きっとれいむは、何故私がこんな事をしたのか知りたいだろうから。 「どうしてこんな事をしたのか、ですって? 決まってるじゃない。簡単なことだよ」 「―――あんた達が可哀想だったから、情けをかけたのさ」 それに尽きる。 でなければ、どうして私がこんな事をするのだろうか。 この無能な家族は、野良には相応しくない善良なゆっくりだった。 そして野良らしく、惨めに苦しんでいた。 寒さに震え人に慄き、帰るかどうかも分からない父親を待っていた。 それを哀れと思うのに、不思議な点など何一つも無い。 仮に、私がれいむの為に餌を恵んでやったとする。 それは感謝されるだろう。つい先ほどまでのように。 だが、それで終わりだ。 後の彼女たちを待つのは、長い冬と、寒さと、飢えしかない。 それを見過ごせないのなら、いっそ本当に飼いゆっくりにしてやれば良いか。 生憎だが私は、そこまで優しくはない。 哀れだと思うから飼ってやる――とは、どうしても思えない。 れいむも弁えていたように、野良ゆっくりが飼われる事など、そう有り得る話ではないのだ。 では、どうするか。 その場限りの情けは無用。飼ってやる程の義理は持ち合わせていないとなると、何をすれば良いか。 幸いにも私は、その問いに対して一つの答えを持っている。 出来るだけ苦しまずに、死なせてやれば良い。 どうせこの先生きていても、野良ゆっくりに幸福など訪れない。 で、あるならば――すっぱりとその生を断ち切ってやるのも良いのではないか? そう、例えば、凍死とか。 濡れた身体とこの寒さは、容赦なく体温を奪っていく。 やがて感覚は麻痺し、寒さというものすら分からなくなって、ただ凍えるよりも簡単に、呆気なく、逝く。 じわじわと押し寄せる冬や、飢えや、あるいは人の暴力に晒されて死ぬよりも―――何倍もましな死に方だろう。 だから私はこの行動を選択した。 一日生かして残りを苦しみ抜かせるより、苦しみを味わわせる前に終わらせてあげた。 これこそ慈悲というものだ。 「まぁ、なんだ。あんた達」 涙も凍りついた、と言う表情のれいむに告げる。 「今回、って言うかさ、生まれつきが悪かったと思うんだ。 よりにもよって、野良ゆっくりの、れいむ、まりさ種とか」 れいむ達は、私の気持ちを理解しないだろう。 が、構わない。 『救い』には、こういう形もある。 「だからさ、来世――があるとすればだけど……… その時にはもうちょっと、ましなものに生まれてこよう、な?」 もう振り向かない。 私は家へと続く道を歩き始める。 れいむはもう、何も言わなかった。 帰り道を歩きながら、ふと思う。 ―――情けをくれてやったのは良いが、あれはゆっくりの死体という生ゴミを作り出す行為ではなかったか? しまった。 その事に考慮が全く行き届いていなかった。 個人的動機で、公共の場を汚すなどあってはならない事だ。 明日の朝は、ゆっくり酔うビニール袋でも持って行った方が良いかもしれない。 凍りかけの饅頭5個がそのままになっていたら、私がしっかりと回収しなければ。 自分で出したゴミは、自分で捨てる。当然の事だ。 そう思いながら、私は歩き続けた。 これは蛇足だが、歩いている途中にゆっくりの死体を見つけた。 ゆっくりまりさ、だったと思われるもの。 顔が潰され、帽子も無いのであくまで推測に過ぎないのだが。 大きさは、ちょうど先程のれいむと同じくらい。 点々と続いていた餡子から推測するに、こいつは私のもと来た道に向かっていたようだ。 まぁ、それがどうしたと言うことも無く。 私は気にせず、そのまま去った。 おわり * * * * * 話の構成的に駄文。 だけどゴミ箱に沈めるのも勿体無いので、こうして供養させました。 ゲスをぶっちめるのも良いけど善良なゆっくりを理不尽に絶望、蹂躙するのも素敵だと思うんだ。 お久しぶり。 色々忙しかったけど人心地ついてまたSS書きました。 ほら、これリハビリも兼ねてるから「つまらん」とか「善良に見せようと無理して装ってない?」とか叩かないでね! byテンタクルあき 過去作品 ふたば系ゆっくりいじめ 2 散歩した春の日に ふたば系ゆっくりいじめ 3 ちょっと鴉が多い街のお話 ふたば系ゆっくりいじめ 22 伝説の超餡子戦士 ふたば系ゆっくりいじめ 38 とある野良ゆっくり達の話 ふたば系ゆっくりいじめ 46 散歩した5月の日に ふたば系ゆっくりいじめ 48 ゆうかにゃんと色々してみよう! ふたば系ゆっくりいじめ 128 れいむとまりさがだーい好き!! ふたば系ゆっくりいじめ 136 つむりはとってもゆっくりできるんだよ! ふたば系ゆっくりいじめ 324 散歩した秋の夜に ふたば系ゆっくりいじめ 372 新世代清掃工場 ふたば系ゆっくりいじめ 385 どうしてそう思ったの? ふたば系ゆっくりいじめ 386 最終地獄 テンタクルあきの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る ↓はいはいニートニート -- 2016-01-31 10 50 22 内容も好きだが文章、というか文体も好きだ 良質なSSを読ませてもらいました。感謝 ただ冒頭の排気口の流れ、エアコンは熱交換だから内部の冷却に対して外部に熱排出がある それは分かっているような口ぶりだが、地球温暖化云々を言うなら冷房自体をやめろというに他ならず 無知なのかなんなのかよく分からない。 もっとも、このお姉さんがそうだというだけで作者はそういうキャラを描いただけだと思うが 冬場は暖房の熱交換で室外機は冷気を吐き出すんだけど、温風と言うことは ボイラーの廃熱とかの暖房機の排気なのかな? 無煙とは言え油の燃えた臭いは確かにキツイw -- 2012-12-30 16 17 56 120円のお汁粉買ったはずなのに、釣りが900円ってのに首をかしげたんだが。成る程。確かに水なら100円でかえるもんな。 -- 2011-09-08 06 03 51 でいぶのおぢびぢゃんがああああああああああ!! とか言う間もなく逝ったのかね? あ、それはゲスのセリフかw それにしてもこのおねえさん冷めてるなぁ・・・素敵だ -- 2011-08-27 02 51 00 >なぜわざわざ水掛けたんだこの人? おもしろいからでしょ 温かいあまあまが来ると思ってるところに冷水をぶっかけるなんて最高じゃないw 苦しまずに死なせたいとか言いながら虐待しちゃうところがまたおもしろいw -- 2011-05-26 05 27 14 苦しまずに死なせたいならサクッと潰してやればいいじゃないの もっと手軽で金もかからず何より自分の目的に沿った方法があるのに なぜわざわざ水掛けたんだこの人? -- 2011-05-24 00 30 16 これめっちゃおもしれえ!!パネェゆっくりできたよ!! 善良理不尽虐待は最高だね! まあこのSSのおねえさんは理不尽だとも虐待したとも思ってないけどね 筋が通っていないという意見もあるようだが饅頭に筋なんか通さなくていいよ むしろ理不尽だからこそ楽しいんだよ このSSでゆっくりできなかった人はおそらくゲス制裁が好きで 善良は幸せになってほしいタイプの人だろうと思うけど 善良理不尽虐待が大好きな人だっているし、どっちが偉いなんて事はないんだから お互いを尊重し合いましょうよ ただし愛では逝ってよし! 特に自分の考えたオリジナルゆっくりを過剰贔屓する奴は地獄行きな!! -- 2011-03-10 13 17 55 コメント欄にはあきれるばかりだな お前等はゆっくりを人と同等クラスに例えて話を読みすぎだ 意思を持って人語の話せる畜生以下の「物」として扱うのが普通だぞ? そしてそのクズが苦しんでる中、苦しみを終わらせる為に人間の時間を使う事が どれだけ慈悲深い事か考え直せ -- 2010-11-26 04 18 50 ナルシストに感じたなー ゆっくりから金巻き上げただけにしか見えない -- 2010-10-21 20 32 33 でも筋を通さない虐待お兄さんとか美学がない感じがして嫌だ -- 2010-09-11 15 58 05 いじめSSWikiなんてトコロで「自分は筋の通った事しかしない立派な人間」を主張するなんてカッコいいね! -- 2010-08-22 23 34 50 憐れな末路なゆっくりは心がなごむね。 -- 2010-08-20 15 37 57 まあ、ゲスじゃなかったから一発で殺してやればよかったんじゃないかと。 おもしろかったよ -- 2010-07-26 05 15 30 「これこそ慈悲というものだ」?「『救い』にはこういう形もある」? 自分で完結させた常識を他者に勝手に当てはめて命奪ってああいいことしたって、完全にナルシストのゲス人間の発想だなおい 虐待するなら自分の負の部分をまっすぐ見ることは必要なはずだ そうじゃなきゃただの気狂いの犯罪者となんら変わりない 虐待しといて自分の善人っぷりに酔ってるような人格は最低だと思う -- 2010-07-25 00 56 21 あまったおしるこさんはちぇんにちょうだいね わかってねー -- 2010-07-14 19 30 32 水をぶっかけるとか、このお姉さんとっても都会派ね。 -- 2010-06-30 09 43 48 お汁粉食べさせてやれよ。 「しあわせー」状態でうっとりしている間に、苦痛に無いように即死させてやれよ。 やってることが「持ち上げて➝落とす」タイプの虐待じゃん。 -- 2010-06-30 06 24 51 おねーさん素敵過ぎ -- 2010-06-27 01 01 04 こういうの好き。 -- 2010-06-11 04 47 10 ゲスゆっくりの話かと思ったらゲス人間の話かよ・・・ 情けをかけるならせめて汁粉かけてから殺せよ 貧乏人だから楽にしてあげる精神は優越感からくる侮蔑だ -- 2010-03-18 00 29 04
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/1018.html
「ふたば系ゆっくりいじめ 480 採用通知?/コメントログ」 「おざうさま・いもうとさま優遇はゆっくりできますわ!!」とウチのさくやが申しておりますので、れみ・ふら虐待は無しでおねがいします。 -- 2010-07-09 13 10 43 お前の家にさくやはいないから安心しろ。 -- 2010-09-15 01 47 55 ゆっくりできたよ!! -- 2010-09-23 01 57 25 ↓↓↓どういせざるをえないんだぜ! れみりゃふらんいじめはゆっくりできないのぜ! やるんならまりささまをじごくにつきおとしてほしいのぜ!! -- 2010-11-12 06 30 46 れみふら虐め… 私は一向にかまわん! 少ないし面白いからむしろもっと増えてほしい。 そしてお前の家にさくやはいないから安心しろ。 -- 2011-01-12 22 21 26 細かいことだが お客様(読者)を L田「くん」 なんて呼ばないだろ L田「さん」 だろ -- 2011-06-30 01 59 13 ふらんをいじめるのはちょっとなぁ… -- 2011-10-05 20 12 53
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/1793.html
「ふたば系ゆっくりいじめ 857 レイプあれこれ/コメントログ」 でいぶはいやだがさすがにこれは他がゲスすぎるだろ -- 2010-04-07 17 52 09 ぜんぶ醜悪だからまとめて駆除しようぜ -- 2010-07-12 19 12 22 なんだただのれいむいじめか ゲスが可愛がられて被害者が虐待されるっていうのがなんとも言えん、醜い -- 2010-07-12 20 07 41 れいむだから仕方がない -- 2010-07-12 21 45 55 全部、駆除で。 -- 2010-07-14 12 35 20 れいむじゃ仕方ないな -- 2010-07-18 23 02 12 れいむなんてこれくらいしか価値ないね。 -- 2010-08-12 18 12 57 れいむとかwwwいらなすぎる存在ww -- 2011-02-14 05 20 38 これみたいに不自然なまでにちぇんを優遇するやつがいるからちぇんが大嫌い -- 2011-02-15 15 18 17 ↓気が合うね 俺も同じ理由で希少種が大嫌いだ -- 2011-02-15 15 21 50 このコメ欄はまりさたちの巣なのかー -- 2011-07-11 13 53 40 めっちゃおもしろかったww こういう狡猾なゲスは好きだな ただしれいむ!てめーは死刑だぁ!! -- 2011-11-06 12 19 44 すっきりー奴隷のやつも見て見たい♪ -- 2013-12-31 11 07 13 ゲスれいむは嫌だが、優秀で賢いれいむならok。 てか、ここの群れ…ゲス多すぎ。 虐待お兄さんでも呼ぼうか?ゲス群れ共。それと家のれいむとまりさとようむとふらんとこころに近寄るなゲス群れ共。あっ!そうだ!ここに虐待お兄さんが居るんだよね~クスクス!さぁ!虐待お兄さんよ、奴等を虐待してもいい、飼ってもいい、虐殺しても敵わん! -- 2014-10-08 20 39 28 ちぇんが不幸になるべき -- 2016-04-25 20 23 28 なんだ、ただの日常か。 どんどんヤれwwそれが人間と自然界の為だ!(=ゆっくり同士で潰しあえ!) -- 2018-03-20 17 19 32
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/792.html
ショータイム 34KB 『ショータイム』 序、 「ゆっくりできないにんげんさんはどこかいってね!!」 バスケットボールぐらいのサイズの饅頭…通称ゆっくりの“れいむ種”が頬に空気をため目の前 に立つ人間に向かって叫んだ。その饅頭の後ろには、四匹ばかりの赤ちゃんゆっくり…赤れいむと 赤まりさがそれぞれ二匹ずつ、震える身を寄せ合って泣いていた。 「あぁ…お前は別にどうでもいいんだ。後ろのガキをよこしなよ」 人間の男は親れいむを踏みつけ、棒読みで言い放つ。大好きなお母さんを足蹴にされた悔しさか らか勇敢な赤まりさは、親れいむの後ろから飛び出すと、小さな体を限界まで膨らませて、 「ぷっきゅぅうう!!!やめちぇにぇっ!まりしゃたちのおかーしゃんにひじょいこちょちにゃい でにぇっ!!!!!」 「ちび…ちゃん…かくれでてぇ…ゆぶぶぶぶぶぶ」 男は親れいむが潰れない程度に足に力をかけ、赤まりさに向かって唾を吐きかけた。男の唾液が 赤まりさの柔らかな顔と素敵な帽子に降りかかる。 「ゆきゃっ…き…きちゃにゃいよぅ…っ!!」 「汚物の分際で何言ってやがる」 男は笑いながら、もう二度三度唾を吐きかけた。赤まりさはたったそれだけで先ほどの威勢はど こへやら。ぴーぴー泣き出して親れいむの後ろにまた隠れてしまった。赤れいむの一匹が赤まりさ の頬をぺーろぺーろしながら慰めている。 どうやら、親れいむは自分の身に何があったとしても、赤ゆたちを渡すつもりはないらしい。歯 を食いしばり、涙目ではあるが芯の一本通った力強い眼差しで男を睨みつけていた。踏まれて顔の 形がやや変化しているものの、そこには野生動物の意地を感じた。 ゆっくりにしては珍しいタイプだろう。大概は自分の命と引き換えに子供の命など簡単にくれて やるゲスが多いはずなのだが、この親れいむは違った。 「さすが野生ゆっくり…。まだまだ純情なんだな…」 男は言いながら親れいむの顔の両側を両手でつかみ、持ち上げる。震える赤ゆたちが露わになる。 親れいむの大きな体に寄り添っていた赤ゆたちは、ぽてぽてと倒れ込む。 「ゆっ!」「ゆぅ…」「ゅ」「ゆうっ!」 親れいむは男に掴まれながらも必死にお尻を振って振りほどこうとしている。しかし、頭を抑え られていては動くことなどできない。挟まれた両手の中で、前に出ようとしたり後ろに顔を引っ込 めようとしたり、あらゆる方法を取ってみたが男の手から抜け出すことは叶わなかった。 「ゆ…ゆっくり…ゆっくり…」 頭が混乱すると極端に語彙が減る。鳴き声のバリエーションが減る…とでも言えばいいだろうか。 男はサーカス団の団員だった。まだ新人である彼は自分の芸というものを確立できてなどいなか ったのだ。そんなある日、街の中で小学生くらいの子供たちがゆっくりの家族を潰して遊んでいる 姿を見かけた。そこには子供たちの幸せそうな笑顔があった。笑顔のヒントを得た男は、適当に野 良ゆを捕まえると、それをゆっくり踏みつけ、徐々に潰していった。 足の裏にゆっくりの髪の毛と柔らかい頭の感触が広がり…足を押し込むことで変形した頭の皮が 足を包み込む…。甘美なる悲鳴と絶叫を耳に感じながら、さらに足を押し込む。目玉が飛び出す瞬 間のびくんっ!と皮ごと跳ねる一瞬の感触もたまらない。そして裂けた皮の間から漏れ出すあんこ のぬっとりした感覚。 「ひゃ…ヒャッハアアアアア!!!!!!」 人目も憚らず男は咆哮を上げた。湧きあがる高揚感を抑えることはできない。顔が…自然にほこ ろんでくる。 男は動物に芸を仕込む代わりに、ゆっくりに芸を仕込もうと考えた。上手くいけば新しいジャン ルが確立でき、上手くいかなったとしたら潰して捨てればいい。替えの効かない動物を調教するよ りも遥かに効率がいい。死ねばまた拾ってくればいいだけの話なのだから。 そんなわけで男は自然の中に足を踏み入れ、ゆっくり回収に勤しんでいたのだ。野生のまりさが 巣穴の中に入ろうとした瞬間を狙って捕まえ、踏みつぶし、巣穴の中に投げ入れる。それだけで家 族はぴょんぴょん飛び跳ねて巣穴の外に出てきた。そこを一網打尽にする予定だったが…親れいむ の思わぬ抵抗に遭い、現在に至るわけである。 抵抗、と言っても頬を膨らませ赤ゆたちの壁になるくらいのものでしかなかったわけだが。その 壁も今は綺麗に取り払われ、守るべき小さく儚い命は風前の灯である。男に捕まるのは恐ろしくて たまらなかったが、大好きな親れいむを置いて逃げるのも辛い。どうしていいかわからない赤ゆた ちは互いの顔をきょろきょろ見合わせながら、 「ゆっ」「ゆゆっ?!」「ゆ゛っ…」「ゆぅ…!」 泣き続ける。 「だいぶ混乱してるな。“ゆ”としか言えてませんよ?おちびちゃん…?」 男が赤ゆたちを嘲笑する。自分の子供を笑われた親れいむは当然ゆっくりできない。親れいむは 男に向かって唾を吐きかけた。汚い饅頭のねちょねちょした唾液が男の服を垂れる。親れいむは口 をもごもごさせると、 「ゆっくり、ぺっ、するよっ!!ぺっ!ぺっ!!」 親れいむの勇敢な行動に感動したのか、赤れいむと赤まりさは男の足元に近寄ると、 「ぴぇっ、すりゅにぇっ!」「ぴぇっ!!!ぴぇっ!!!!」 「にんげんさん、れいむをゆっくりはなしてねっ!そうしないとまた、ぺっ、するよ?」 男は親れいむを離さない。親れいむはまたぷくーっと頬を膨らませ口をもごもごさせる。 「ぺっ!!ぺっ!!!んべぇっっっ????!!!!!!」 素早い動きで親れいむの髪の毛を左手で掴むと、勢いよく右の拳を叩きつけた。その際、衝撃で 餡子が押し込まれたのか、親れいむのあにゃるからうんうんが少しだけ飛び出る。 「ゆ゛っ…ゆ゛っ…」 「お…おがああああじゃあああん!!!!」 「ゆっくちやめちぇにぇっ!!!!」 「おきゃーしゃんいちゃがっちぇりゅよっ!?」 殴る。 「ゆ゛げぇっ!!!」 殴る。 「ゆぼほぉっ…!!!」 まだ殴る。 「ぎびぃ!!!」 殴られた勢いで親れいむの汚い尻が力なく前後に揺れる。飛び出切らなかった親れいむのうんう んもあにゃるにくっついたまま、ぷらぷらしている。 「ゆ…ぐぢぃ………や…べ…でねぇ………」 親れいむの口から声が漏れる。赤ゆたちは恐ろしーしーを漏らしながら、大量の涙を流し続ける。 体中の水分が全部なくなるのではないかと思うほどだ。 「やめちぇえええ!おかーしゃんをいじめにゃいでぇぇ!!!」 赤まりさが叫ぶ。殴られた部分は腫れあがり、目を半分ほども覆っている。ぐしゃぐしゃのボロ 雑巾のようになった親れいむを草むらに放り投げる。餌に群がるピラニアのように集まる赤ゆたち。 「おきゃーしゃん!!おきゃーしゃああん!!!」 「ゆっくちしちぇにぇっ!!!ぺーりょ…ぺーりょ…」 「ゆっくちぃ!!!ゆっくちぃぃぃぃ!!!」 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆん…」 親れいむにすがりつく四匹の赤ゆたちを一匹ずつ掴んでは袋の中に投げ入れる。 「ゆああああん!!!くりゃいよぅ!おきゃーしゃん!!たしゅけちぇぇえぇえ!!!」 「ゆぶっ!ここはゆっくちできにゃいょう!!!」 「おきゃーしゃん!どこぉ??!!!!」 「どおちちぇこんにゃことしゅりゅにょぉおお???!!!!」 袋の口を縛り、地面に置く。四つの盛り上がりがもそもそと動く。真っ暗な袋の中を必死に歩き 回っているのだろう。どこにもない出口を探して。 「さて…このクソ饅頭…」 「ゆぎっ!!い゛い゛ぃっ!!ゆべ!!!ゆびゅっ…」 男は親れいむの揉み上げを掴んで、何度も何度も草むらに叩きつけた。叩きつけるたびに、しー しーがぴゅっ、と噴き出たり餡子を吐いたり、うんうんが飛び散ったりする。やがて掴んでいた左 の揉み上げが引きちぎれた。 「ゆがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!」 親れいむの赤ゆたちがこれまでに聞いたことのないような絶叫に、動きを止める。もそもそと声 のする方へ袋の中を移動し、 「おきゃーしゃん!おきゃーしゃん!!」 「ゆんやあああああああ!!!!」 「ゆっくちしちゃいよっ!!!もうやめちぇえぇぇぇ!!!」 「ゆびゃあああああああん!!!!!」 「かひゅっ…こひゅぅ…ゆ…ゆ゛…ゆ゛っ!!!」 鳴き声が徐々に濁っていく。死ぬ間際だ。赤ゆたちの入った袋を親れいむの傍まで持ってくる。 親れいむの死に際の声を聞かせてやろうという、男のせめてもの情けだった。 「ちび…ちゃん…だちぃ…ぞご…ぃ…いる゛…の?」 「おきゃーしゃん!!!れいみゅはここにいりゅよっ!!」 「まりしゃもだよっ!!」「れいみゅもっ!!!」「まりしゃだよっ!!!」 「ゆ…ぐぃ…じだ…ちび…ちゃ…じあわ゛…ぜ………にぃ…………ゆぐふっ…」 切れ切れの“最後の言葉”を最愛の子供たちに残し、絶命する親れいむ。中身が餡子のゆっく りたちにも、今、まさに最愛の母が死んだのだということが理解できた。袋越しに赤ゆたちの震 えが見て取れる。 「おきゃーしゃんともっちょ…いっちょに…」 「ゆっくちしちゃかっちゃよおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」 二匹の赤ゆの叫びを皮きりに大声で泣き出す赤ゆたち。そんな赤ゆたちを気にも留めず、男は 袋を持ち上げ肩に引っ掛ける。袋の中で四匹の赤ゆたちはごろごろと転がり、袋の底で止まった。 更に大きくなる泣き声。泣けばどうにかなる、と思っている根性が気に入らない。泣いても親れ いむは生き返らないのだ。泣いても袋からは出られないのだ。これだから無知な饅頭には腹が立 つ。 男は親れいむの死体を蹴り飛ばすと、夕暮れの緋色に染まった道を歩き、家路に着いた。 一、 「おいおい…なんだぁ?そりゃ、ゆっくりか?」 「どうしたんだよ…飼うのか?」 「違いますよ。ちょっとこいつらに芸を仕込めば、客寄せになるかなぁと思って」 「猛獣使いならぬ、ゆっくり使いってか…」 「言葉も話すし、面白いんじゃないかしら?頭の上にリンゴを乗せて、私の投げナイフの的に してもいいかも」 「乗せるならリンゴよりも赤ゆだろ」 「何それ、どうやっても死ぬじゃない」 陽気に笑う団員たちが囲むテーブルの上で四匹の赤ゆはお互いにぴったりと身を寄せ合い、 がたがたがたがた震えていた。とめどなく溢れる涙はテーブルを濡らし、まるでお漏らしをし ているかのようだ。 「でもこんな饅頭にできることなんてたかが知れてるだろ…?何をやらせるんだ?」 「そうですねぇ…空中ブランコに火の輪くぐり…玉乗りとか…」 「どれも絶望的なまでにできそうにないわね…」 「できなきゃ潰して捨てます。餌は自分らの残飯でも置いとけば日持ちするでしょうし」 「そうだな。確かに動物は人気だが餌代が馬鹿にならない」 団員たちはこの赤ゆ四匹を自分たちの一座の一員として迎え入れることにした。赤ゆたち に選択権などなかった。たかが饅頭にそんな権利などはない。こんなクソ饅頭などではなく 市販で売られている美味しい饅頭でさえ、売れ残って賞味期限が切れたら捨てられるのだ。 生まれながらにして賞味期限切れのゆっくりに、希望に満ちた明日などない。かくして、四 匹の赤ゆたちは、男によって水槽の中に放り込まれた。 「明日からビシバシ仕込んでやるから覚悟しとけよ」 「「「「ゆゆぅ………」」」」 四匹は水槽ごしに男を潤んだ目で見つめる。近くに転がっていた小さな釘をつまむと、赤 まりさの額に突き刺した。釘の刺さった箇所から痛みが波紋のように広がり、目を見開く赤 まりさ。 「ゆっびゃああああああ!!!いちゃい!!いちゃいよぉぉぉぉ!!!!これとっちぇぇえ!!」 「ゆーしょ!ゆーしょ!!」 赤れいむが釘を咥え、赤まりさから引き抜く。泣きじゃくる赤まりさ以外の三匹が水槽の 外に向き直り、一様にぷくぅと頬を膨らませるが、もう男はいなかった。 「ひじょい…よぅ…」 消え入るような声を漏らす。どの赤ゆが言ったかはわからない。だが、どの赤ゆもそう思 っていることだろう。痛みに震え、涙が止まらない赤まりさを囲んで三匹の赤ゆは頬をすり 寄せた。 「ゆぅ…ゆぅん…ゆっく…」 優しさが嬉しいのか、赤まりさはまた涙をこぼす。その涙を赤れいむがぺーろぺーろして あげる。四匹は本当に仲のいい姉妹だったのだ。寂しさを紛らわすかのように、ぴったりと くっついて、お互いに泣いていることを悟られないよう、水槽の中での最初の夜を過ごす。 疲れたのだろう。四匹はいつのまにか静かな寝息を立てていた。 夢を、見ていた。 親れいむがいて、親まりさがいて…暖かくて大きな体で自分たちを守ってくれる。親まり さのおさげに噛みついてぷーらぷーらさせてもらったり、親れいむのゆっくりできるおうた を聞かせてもらったり…そこには幸せな自分たちがいた。口を揃えて“ゆっくりしていって ね”と言い合い、笑い合う。ただそれだけのゆん生。 何でもないようなことがしあわせー!だったと思う。なんでもない夜のこと。二度とは戻 れない夜。 今、ここにある“夜”は、暗く…冷たい、ただの闇だ。 夜が明けて行く。小さな窓から朝日が入り込み、死んだように眠る赤ゆたちを照らした。 赤れいむのまんまるな目がぱちり、と開く。そして、力いっぱいのーびのーびすると、三匹 を振り返り、 「ゆっくちしちぇいっちぇにぇっ!!!」 叫ぶ。 「「「ゆっくちしちぇいっちぇにぇっ!!!!」」」 本能で挨拶を返し、その段階で餡子脳が覚醒する。一日の始まりだ。赤まりさは元気よく 「おかーしゃん!!!まりしゃ、ゆっくちおきちゃよっ!!あしゃのしゅーりしゅーり……」 「「「…………ゆぅ…」」」 三匹が涙目になって俯く。言いかけて赤まりさも気づく。ここは昨日までのおうちではな い。無機質な壁に囲まれた箱の中だ。 「ゆっ…ゆっくち…ごめんにぇ…」 帽子で顔を隠し、震える赤まりさ。悪いことをした、と思っているのだろう。赤れいむが ずりずりとあんよを引きずり、赤まりさの帽子を持ち上げる。案の定、涙を流している赤ま りさにすーりすーりしながら、 「ゆっ!!れいみゅはげんきだよっ!!!だからまりしゃもげんきだしちぇにぇっ!!!」 「ゆぅ…ゆゆゆゆぅ…」 「ったく…てめぇらのくだらねー友情ごっこなんかどうでもいいんだよ…」 赤ゆたちの上から声が聞こえる。水槽の中から一斉に上を見上げる赤ゆたち。男がいた。 「メシだ、食え」 言って、動物たちの餌の残りカスや、野菜クズ、卵のカラ、果てには昨日の味噌汁の残り がべちゃべちゃと注がれ、上を向いていた赤ゆたちの顔に残飯シャワーが浴びせられる。 「く…くちゃいよぉ…!!」 「ゆっくちできにゃいぃぃぃぃぃぃぃ」 「こんにゃのたべりゃれにゃいよっ!!!!」 「いもむししゃんでいいかりゃちょうらいにぇっ!!」 お玉に掬った小さな豆腐を、最後のセリフを吐いた赤まりさに叩きつける。豆腐は赤まり さの額に当たり、弾け飛んだ。 「芋虫でいいから、だと?お前らがそんな風に言える生物なんて、この世界にはいねぇんだよ」 「ゆっ…!れいみゅたちはいもむししゃんとかたべりゅんだよっ!!!いもむししゃんはれ いみゅたちよりも…」 「芋虫は成長したら、綺麗な羽を持つ蝶々になれる」 「ゆっ?!」 「お前らは成長したら何になれるんだ?顔がでかくなって、無駄に生意気なことしか喋れな い中身の餡子が増えるだけだろ?お前らは育ったところで誰にも喜ばれないんだよ」 「ゆぐぅっ!!!!」 “ちびちゃん…ゆっくりゆっくりおおきくなってね…!”そう言ってくれた親れいむと親 まりさを馬鹿にされているようで、悔しくてたまらない四匹は一斉に頬を膨らませる。 「お前らゆっくりはなぁ…成長しようがしまいが、殴られるか蹴られるぐらいしか価値がな いんだよ」 「ゆ…ゆっぐぢぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」 ますます頬を膨らませる。顔は真っ赤だ。よほど悔しかったのだろう。男はそんな赤ゆた ちを無視して部屋の外に向かう。扉の前で振り返り、 「早くそれ全部食えよ」 言って、立ち去る。そして、残された残飯タワー。臭いような気がしてきた。 「く…くちゃあああああい」 「こんにゃの…じぇったい…たべにゃいよっ!!!」 赤ゆたちは、残飯の山から可能な限り離れて悪臭と空腹に耐えていた。残飯から一番遠い ガラス壁に顔を押しつけ、そのまま動かない赤ゆたち。 しばらしくして、男が部屋に入ってきた。残飯には一切手をつけていないようだ。四匹の 赤ゆは一様にきゅるるる…と腹を鳴らし、表情は疲れ切っている。空腹の限界なのだろう。 それでもその“餌”を食べないとは強情な饅頭だ。 「ゆゆっ?!」 赤れいむが男の手に掴まれ、水槽の外に出される。一斉に抗議を始める三匹。男の耳には 当然入らない。男は、用意した箱の中に熱湯を注ぐ。そして、おもむろに掴んだ赤れいむの あんよを少しだけ熱湯の中に鎮めた。 「あぢゅうううううういょぉおおおお!!!!!!」 「やめちぇにぇっ!!!れいみゅ、あちゅがっちぇりゅよっ!!!!」 赤まりさが、ぷんぷんしながら異議を申し立てる。男はすぐに赤れいむを熱湯から出した のでそこまで大きなダメージはなかったはずだが、赤れいむは体をじたばた振り回して泣き 叫んでいる。手に伝わる振動がこの上なくイライラさせられる。 「じたばたしてんじゃねぇよっ!!!次はその汚ぇ顔から沈めてそのまま殺すぞっ!!!」 汚い言葉で赤れいむに怒鳴りつける男。そのあまりの迫力に赤れいむは体をビクッと震わ せ、ゆっく…ゆっく…としゃくり上げながら涙をこぼした。男の剣幕に静まり返る水槽の中 の赤ゆたち。 「…大人しくできるじゃねぇか…。熱がってるフリでもしてたってか?たかが饅頭の癖に小 賢しいマネしてんじゃねぇよ。次やったら、即、ぶっ潰すからな」 がたがたと震える赤れいむ。男は水槽の方に向き直り、 「てめぇらもだ。覚えとけよ」 三匹の赤ゆたちは視線を逸らす。みな、一様に震え、涙を流すものもいた。 男は、熱湯の入れられた箱の上に小さな空中ブランコの模型をセットする。そして、 「オラ、これ噛め」 「ゆゆっ??!!」 「ゆ、じゃねぇよ。さっさと噛めっつってんだろうが」 赤れいむは小さな木の棒に噛みつく。その状態で男は赤れいむに説明を始めた。 「いいか?今からお前を俺の手から離す。ずっとそれ咥えてろよ。でなきゃ、また下の熱湯 にドボン、だ。次は助けない。落ちたらそのまま死ね」 「ん…んぐぃぃ…!!!」 言われた通りに木の棒を咥えたまま、涙を流し顔を横に振る赤れいむ。水槽の中の姉妹た ちもそれがどんなに恐ろしいことか理解しているのだろう。心配そうに一人と一匹のやり取 りを見ている。 男が赤れいむから手を離す。途端に下へ下へと引っ張られる赤れいむ。木の棒を咥える力 が強くなる。ギリギリと木の棒に噛みつき、必死で耐えている。男は必死の形相の赤れいむ に向かってなおも淡々と説明を続けた。 「で、だ。今からお前の咥えている木の棒と、向こう側にある木の棒を揺らす。そして、向 こう側の木の棒に飛び移れるタイミングを見計らって、飛び移れ。つまり、上手く向こう 側の木の棒に噛みついてぶら下がれればいいんだ」 そう言って、赤れいむとは反対側のブランコをまず揺らし始める。 (あんにゃにはやくうごきゅものになんちぇとびうちゅれにゃいよっ!!!) 心の中で叫ぶ。続いて、赤れいむのブランコが揺らされる。木の棒を咥えたまま、前後に 空中移動する饅頭の光景はなかなかに間抜けなものだった。と、そのとき。 「ゆっ!!!おしゃりゃをとんd…ゆっ!!!ゆあああああああああ!!!!!」 「「「れいみゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」」」 叫んだ瞬間、木の棒を咥えていた口が開かれ、真っ逆さまに落ちて行く赤れいむ。やがて 熱湯の中に着水する。飛び上がって 「ゆぎゃあああああ!!!あぢゅい゛っ!!!!あちゅいよ゛っ!!!!だじゅげぢぇ!! だじゅけちぇくだちゃい゛い゛い゛!!!!おにぇがいしましゅうううう!!!!」 熱湯の中をバシャバシャと跳ねながら必死の懇願を続ける赤れいむ。男は無視。水槽の中 の姉妹も、 「おにいしゃん!!!おねがいしましゅぅぅぅぅ!!!れいみゅを…れいびゅをたちゅけて あげちぇくだしゃいいいいいいい!!!!!」 「おにぇぇぇちゃあああああん!!!あちゅいよぅぅぅ!!!たちゅけちぇぇえ!!!」 「れいびゅぅ!!!!ゆあああああああああああああああ!!!!」 赤ゆたちの絶叫が殺風景な部屋の中にこだまする。熱湯の中の赤れいむはと言うと、皮が 真っ赤に腫れあがり、熱で溶かされたのか、体中の穴という穴から液状化した餡子が漏れ出 ている。もはや、跳ねる力さえ失った赤れいむは目を見開き、びくびくと痙攣を起こし始め た。 「おにいぃぃぃぃしゃああああああああん!!!!!!!」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛………っ!!!!」 水槽の中からの叫び声。そうこうしているうちに、赤れいむの皮はふやけていき、顔の形 を構成していた部分が崩れ始めていた。両の目玉は力なく溢れ出し、綺麗に揃っていた歯も 次々と抜け落ちて行く。そして、舌に当たる部分がだらしなく垂れ下がると、 「もっちょ……ゆ………くち………しちゃ………………」 言い残し、赤れいむは絶命した。死体はとても目を向けられるようなものではなかった。 空洞になった目の部分からも溶けた餡子が未だに外へと漏れ続けている。赤ゆのまだ薄い皮 が破れ、水面を漂う。 「ゆ…ゆげぇっ!!!!」 あまりの凄惨な光景に、赤まりさが思わず餡子を吐く。男はため息をつくと、 「“お空飛んでる”もある意味、条件反射みたいなもんだったな…空中ブランコは駄目か」 言いながら、空中ブランコの模型を片付ける。目の前のゆ殺装置が取り除かれたのを確認 した姉妹たちに刹那、安堵の色が見える。男は赤れいむの死体の入った箱を持ち上げると、 流し台に赤れいむごと熱湯を流した。アルミ製の流し台がベコンと音を立てる。皮と餡子は 綺麗に流れたが、髪の毛と飾りの赤いリボンは排水溝のネットに引っ掛かったので、ゴム手 袋をしてそれを取り除いた。 「れい…みゅ…?」 一匹の赤ゆの呼びかけに、男は無言で空っぽになった箱を姉妹たちに見せつける。 「ゆんやあああああ!!!!!」 「れーみゅ!!!れーみゅどこぉぉぉぉぉ?!!!」 叫んで叫んで、叫んで。叫び疲れて眠りにつくまで、三匹になった赤ゆは叫び続けた。返 事を返してくれる赤れいむはもう、死んでいるというのに。 二、 「まりしゃ……もう…」 「おにゃか…ぺこぺこ…だよぅ…」 姉妹の壮絶な死を目の当たりにし、あれほど絶叫していた赤ゆたちは、空腹で目覚めると 次の難題を前に右往左往していた。動けばそれだけエネルギーを消費する。体内の餡子を熱 エネルギーに変換して移動の力に当てているので、餡子はどんどん体の中から消えていく。 この餡子の量が三分の一になると、自分の意思とは無関係に熱エネルギーに変換するための 機能が完全に停止する。そうなると、もうそこから一歩も動けない状態になり、生命の維持 だけを優先するようになるのだ。当然、餡子の量が三分の一以下になると息絶える。瞬間的 に体内の餡子を失った場合は、熱エネルギーに変換した分の力が残っているために、 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」 と言ったような声を残し、直後に逝くのだ。逆に、 「もっとゆっくりしたかった…」 と言うような言葉を残すときは、顔などの皮に壊滅的なダメージを受け、熱エネルギーを生 み出す器官そのものが破壊された場合や、体内の餡子が徐々に漏れ出してしまった場合など によく見られる。…御託はどうでもいい。とりあえず、死ぬのだ。 そんなわけで、三匹の赤ゆたちは、今すぐにでも食事をし食べた物を餡子に変換しなくて は、生命の維持が危うい状態にまで達していた。すでに夕方になってはいたが、空中ブラン コの件以降、男はこの部屋には一歩も踏み入れてなかった。赤ゆたちの目の前にはるのは、 今朝の残飯だけである。 「ゆぅ…ゆぅ…」 残飯の前に進んでは、引き返す。そんな無駄な行動を赤ゆたちはずっと繰り返していた。 生きるためには目の前の残飯を食べるほかない。しかし、それはとてもゆっくりできるよう な代物ではない。もう泣く気力も失せていた。 そのとき、赤まりさがずりずりと残飯の元に向かい、目にいっぱいの涙を溜めながら、 「…ゆっくちたべりゅよっ!」 「「ま…まりしゃっ!!!」」 「むーちゃ、むー…ゆぶるぇぇえぇぇええぇ!!!!」 すでに腐臭を放っている、キュウリの切れっぱしを口に含んだ赤まりさは、餡子と一緒に それを吐き出す。本能が赤まりさに危険信号を送る。赤まりさはすでに動かなくなりつつあ るあんよに全神経を集中して、先ほど吐いた自分の餡子と腐ったキュウリの切れっぱしを口 に入れて、飲み込んだ。 「…ゆぐぅ…ゆべっ………ふちあわちぇ…」 それだけでも違うのだろう。幸せか不幸せを判断する程度の思考能力と、それを口に出す だけの力は戻ったらしい。予断を許さぬ状態であることには変わりないが。赤まりさはもう 一度吐き出しそうになる餡子を必死に口の中で抑え、またそれを飲み込んだ。 「むーちゃ。むーちゃ…ゆぐぅっ!!!!んうぐっ…んゆぇ…まじゅいよぅ…」 「むーちゃ……む…ゆぐぎぃ……ぎぐ…ゆぐ…りぃ……ふちあわちぇ~…」 想像を絶する酷い味だ。口の中に入れた瞬間、ぬめっとしたものと腐臭が広がる。飲み込 まないといけないのに、体の中からは餡子が逆流してくるため、それを容易には行わせてく れない。 「ゆっくち…ゆっくち…いもむししゃんが…たべちゃいよぅ…」 「ゆぇぇ…もう…ざっそうしゃんまじゅいにゃんていわにゃいよぅ…」 「ゆぇっ…ゆぐっ…ちあわちぇ~…しちゃいよぅ…」 食事は命の洗濯、である。それだけは人間もゆっくりも共通事項であったようだ。食べな ければ、死ぬ。食べても死ぬような思いをする。これから、この地獄を毎日繰り返すと思う と、どれからともなく赤ゆたちは泣き出し始めた。 「よう。飯は食ったか?…おぅおぅ、食ってんじゃねーか。よくそんなもん食えるな」 血気盛んな赤まりさが頬を膨らませ、 「おにぃしゃんが…もっちぇきちゃんでしょっ!!!こんにゃのじゃまりしゃたちちんじゃ うよっ!」 「何言ってやがる。それが食えない、ってんなら飢えて死ね」 「ゆゆゆゆゆっ???!!!!」 「何度も言わせんなよ。お前らが何匹死んでも誰も困らないの。さっきも饅頭一匹死んだけ ど、泣いてんのはお前らぐらいのもんなんだよ」 「ゆぐ…ゆっくちぃ……」 どうしてこの人間さんはこんなに酷いことばかり言うのだろう?赤まりさは悲しくて悔し くて涙をぽろぽろとこぼし始める。少なくとも、おかあさんたちは悲しんでくれるはずだ。 思い、在りし日の母を思い出し、更に涙が込み上げる。残りの姉妹も同じことを考えている のだろう。それぞれ、体全体を震わせ嗚咽を上げる。 「泣いてもなんにもなりゃしねぇよ。何もできない、ってわかりゃびーびー泣くだけか?だ からお前らは屑なんだよ」 あまりにも理不尽な物言いだった。自分たちから何もかも奪い去っておいて、無理矢理こ こへ連れてきて、屑だ死ねだと言われる。悔しくて悔しくて涙がいつまでたっても止まらな かった。それなのに、この人間は“泣けば済むと思ってるのか”と問うてくる。 男は戯れに赤まりさの帽子をむしり取った。悔し泣きが一転、この世の終わりのような顔 をして男に向き直る赤まりさ。涙も止まり、必死に体を伸ばし、 「お…おぼうち…!まりしゃのだいじにゃおぼうちしゃん!!!ゆっくちしにゃいでかえし ちぇにぇっ!!!!!」 「そんなことより、後ろを見てみなよ」 「ゆっ?」 振り返り際、何かが自分の顔に激突し、残飯の海の中に叩きつけられる。赤まりさの体は 残飯と腐った汁にまみれ、ぐちょぐちょだ。赤まりさは自分に激突したものの正体を悟った。 それは他でもない、赤まりさの姉妹たちだった。 「かじゃりのにゃいゆっくちはゆっくちできにゃいよっ!!!」 「ぼうちのにゃいまりしゃはゆっくちしにゃいでちんじぇねっ!!!!!」 帽子をかぶった赤まりさが、帽子をかぶっていない赤まりさを罵倒する。 「おいおい…お前ら、それでも姉妹かよ」 男が笑いながら水槽の中の赤ゆたちに声を掛ける。右手の指でつまんだ赤まりさの帽子を ぷらぷらと揺らしている。まるで、汚物でも見るような二匹の姉妹たちの視線に耐えられな かった赤まりさは、水槽に顔を押しつけて、 「おでがいじばじゅぅぅぅぅぅ!!!!まりじゃの…おぼうぢぃ…がえしちぇぇえ!!!」 「くっだらねぇ」 男は、水槽の壁の外に赤まりさの帽子を置いた。目の前にある帽子に向かって赤まりさが あんよをずりずり必死に拾いに行こうとする。 「ゆああああ!!!かべしゃん!!!!いじわりゅしにゃいでゆっくちどいちぇにぇっ!!」 水槽の壁に遮られ、一ミリたりとも帽子に近づくことができない赤まりさ。理由は不明だ が、ゆっくりという生き物は帽子やリボンといった飾りに異様なほどの執着を見せる。そし て飾りのないゆっくりは、生涯迫害され続けて生きていくか、同族によって執拗に苛めぬか れた末に殺されて、そのゆん生を終えることになる。この姉妹も例外ではなかった。 「まりじゃの…おbゆげぇっ?!!!」 背後から赤れいむの体当たりが炸裂し、赤まりさの顔は水槽の壁に押しつけられ皮が伸びた 状態で張り付いていた。これには男も腹を抱えて笑った。 「れい…みゅぅ…」 もうそこには、昨夜まで互いに身を寄せ合い、励まし合った姉妹たちはいなかった。ゆっく りという種族は“自分と違うモノ”を極端に毛嫌いし、それを迫害することに快感を覚える。 例としては、めーりん種という言葉を喋れないゆっくりがいるのだが、そのめーりんが他の ゆっくりに見つかろうものなら、酷いことになる。何もしてなくても、暴力を受け群れの中 に引きずり込まれ、死ぬまで集団リンチの的にされるのだ。 ゆっくりが弱いモノ苛めをできるのは、ゆっくりだけなのだ。それは、自らの手で自分たち が生物界の底辺に位置すると証明しているようなものなのである。 「ゆ…ゆっくちやめちぇにぇっ!!!!」 「かざりのにゃいばかなゆっくちはちねっ!!!!」 あんなに優しくしてくれた赤れいむが、鬼のような形相で何度も何度も赤まりさに体当たり をする。帽子をかぶった赤まりさは、帽子のない赤まりさのおさげを咥え、動けないようにし ている。何度目の体当たりかはわからないが、ついに帽子なし赤まりさの皮が破れ、中身の餡 子が飛び出した。 「ゆぎいぃいぃいいいぃ!!!!」 「ゆぷぷっ!いいきみだにぇっ!!!」 「はやくちんじぇにぇっ!!」 赤れいむは、帽子なし赤まりさの頭に飛び乗り、ばむばむと踏みつけた。破れた箇所から餡 子がさらに飛び出す。赤れいむは、確実に殺しにかかっていた。そして、体内の餡子のほとん どを失った帽子なし赤まりさは 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ…」 悲鳴を上げ始めた。男は、赤れいむをふりほどくと、赤まりさの頭に帽子を乗せた。瞬間、 「ま…まりじゃあああああああああっ???!!!!!!」 先ほどまで悲しみを分かち合っていたはずの赤まりさの顔はボロボロだ。片目が飛び出し、 顔はアザだらけで所々破れており、餡子が伝っている。すでに言葉を発するだけの餡子を備え てはいないのだろう。苦しそうにうめき声を上げるだけだった。焦点も定かではなくずっと宙 を向いていた。 「しゅーりしゅーり…」 「ぺーりょぺーりょ…」 赤まりさに瀕死の重傷を負わせた当の本人たちが、傷をなめたり頬をすり寄せたりしている のは滑稽以外の何物でもなかった。ほどなくして、赤まりさは死んだ。男はずっと笑っていた。 「おもしれぇなお前らは。それから明日の朝飯はヌキだ。先にそれ全部食え。全部なくならな い限り、餌は持ってこない。じゃあな。ちゃんと食べとけよ。明日はきついぞ」 半笑いのまま、男は部屋を後にした。鍵をかける音が狭い部屋に短く響いた。ついに二匹と なってしまった赤れいむと赤まりさの目の前には、少量の残飯と赤まりさの死体。命に替える ことはできないため、二匹の赤ゆは何度も何度も吐きそうになるのをこらえ、残飯を食べ終え た。…空腹はそれでも満たされなかった。 三、 「あっはっはっはっは!!!!!信じらんねぇ、なんなんだお前ら!!!!!」 残飯を…腐った生ごみを二匹はすべて食べ終わっていた。それだけならここまで笑いごとに はならない。男が笑っていたのは、申し訳なさそうに水槽の片隅に置かれていた、昨日の赤ま りさのものと思われる帽子と、散らばった無数の金色の髪の毛だった。 「食ったの?ねぇ、食ったの?姉妹を?最悪だな、お前ら!!!腹が減ったら家族も食うのか!」 ゲラゲラと大笑いする男の言葉を聞きながら、二匹はぷるぷる震えて涙を流す。 「泣いてんじゃねぇよ、共食い饅頭どもが。オラ、今日の餌だ」 汚物と言ってもいいような液体や食べ物であったものが、どちゃどちゃと注がれる。空腹で 必死に残飯の元へたどり着く、二匹の赤ゆ。口を開けたところで動きを止め、そわそわしなが ら男に視線を送る。 「みられてりゅと…ゆっくちちあわちぇー…できにゃいよ…」 「おにぃしゃんは…あっちむいちぇちぇにぇ…」 「早く食えよ。お前らが残飯食うとこしっかり見ててやるからよ」 「ゆぅ…ゆぅぅ…」 残飯を食すところを見られるのはかなりの屈辱のようだ。それでも、べちゃ…べちゃ…とい う音を立てながら、口の中に入れていく二匹の赤ゆ。顔面蒼白だが、咀嚼する口の動きは止ま らない。二匹は気づいていた。自分たちがとてもゆっくりできていないゆっくりになっている ことに。そして、それこそが最大の恥辱であった。 「むーちゃ…むーちゃ…ゆぐぅ…」 ゆっくりできていない姿を見られるのは悔しくてたまらなかった。ゆっくりできていないゆ っくりは制裁されるのだ。それを思えば二匹の反応は至極当然のことであると言える。 泣きながら“餌”を食べるゆっくりの傍ら、男は何やらまた準備を始めた。昨日の赤れいむ の姿が頭をよぎる。今度は何をやらされるのだろう。 男は取りだした小さな縄で造られた輪っかをセットする。三本の支柱から鎖が伸び、その輪 っかを固定している。男はライターを取り出すと、その縄の輪っかに火をつけた。灯油が染み 込ませてある縄は、突如として勢いよく燃え上がる。 突然の閃光に二匹の赤ゆは目を点にして固まる。開いた口から魚の目玉がこぼれた。 「ゆ…ゆっくちしちぇいっちぇにぇっ!ゆっくちしちぇいっちぇにぇっ…!!!」 嫌な予感がしたのだろう。赤まりさが必死に男に呼びかける。赤れいむは言葉も出せずにが たがた震えている。ぱちぱちと音を立てて揺らめく炎を初めて見る赤ゆたちも、それがゆっく りできなさそうなものだということを本能で理解しているようだ。 「何が“ゆっくりしていってね”だ。俺はゆっくりしてるっての」 男が水槽の中に手を伸ばす。まるでカエルのようにぴょんぴょん飛び跳ね水槽の中を逃げ回 る二匹の赤ゆ。やがて、赤まりさのおさげが男の手に捕えられた。おさげを掴まれ宙に釣られ る赤まりさ。 「ゆんやあああああ!!!いちゃいよぅっ!!!!はなちちぇぇええええ!!!!」 顔をぐしゃぐしゃにして泣き叫ぶ。自身にはどうすることもできない、ということを悟った 赤れいむは、水槽の角でぷるぷるぷるぷる震えながら赤まりさを見つめている。もう、水槽の 中に身を寄せ合う姉妹はいない。水槽の中に赤れいむのしーしーが広がる。それにさえも気づ かない。否、気づけない。それぐらい心が恐怖で支配されていた。 赤まりさは、燃え盛る炎の輪の目の前にちょこんと置かれると、熱風と強烈な光に身をくね らせ男の手から逃げようとする。しかし、男の緊縛はそれを許さない。男は、赤まりさの頭を 潰さないように注意しながら踏みつけると、 「いいか。その輪っかの中をジャンプしてくぐれ。お前がやるのはそれだけだ。できないなら 潰す」 理不尽な二択を迫られ、歯をカチカチ鳴らし震え始める赤まりさ。熱気と恐怖で意識が飛び そうになるのを必死で耐えている。二度、三度、目眩がした。額から大粒の汗が流れる。この ままこの場に留まっていたら、水分を失い乾燥死するだろう。 「ゆっくち…しゃしぇちぇよぅぅぅぅぅ!!!まりしゃ…なんにもわりゅいことしちぇにゃい にょにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!」 踏みつけている足の下から、赤まりさの声が響く。靴越しに震えが伝わってくる。そんな赤 まりさに男は一言。 「飛ぶか、潰れるか、選べ」 赤まりさは声を出すのをやめた。涙は流れ続けたままだ。赤まりさは、男の足からずりずり と這いだすと、赤い巨大な魔物と対峙した。迷っている暇はなかった。飛ぶ前に水分を失って 死ぬ。そう判断した赤まりさは、決しの覚悟で業火の中に身を投げた。 「ゆ゛ぎい゛い゛い゛い゛い゛っっっっっっ????!!!!!!!!」 もともと、そんなに広くない直径の輪っかに赤まりさの帽子が引っ掛かって身動きができな くなる。 「ゆ゛があ゛あ゛っ??!!!あ゛ぢゅい゛!!!あ゛ぢゅい゛よ゛お゛お゛お゛!!!!!」 炎が、赤まりさの素敵なお帽子を、柔らかな皮を、綺麗な金髪を舐めまわす。 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!」 完全に帽子が焼け落ちるとともに、半身を炎に包まれた赤まりさが輪っかから落ち、周囲を 跳ねまわる。恐ろしい形相の赤まりさを見た赤れいむは勢いよくしーしーを噴出する。 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ…」 恐怖を抑えられない赤れいむは混乱に陥り、視点の定まらない瞳をぐるぐる回し始めた。男 がオレンジジュースを赤れいむにかける。正気を取り戻す。水槽のガラス越しに、全身を炎に 蹂躙されている赤まりさの姿。皮のほとんどを焼かれ、動くことすらままならない赤まりさは 焼けて膨張した目玉が今にも飛び出そうな状態で、赤れいむを見つめながら、 「ゆ゛…ぐぢぃ…ゆ゛…ゆ゛…ゆ゛…」 流れ出した傍から蒸発していく涙。顔の半分以上は既に炭化し、それでもなお炎は赤まりさ を捕えて離さない。 「お前は観客だよ。水槽の中という安全な場所から、もがき苦しむ姉妹を観賞するだけの存在。 どうだ?なかなか見れないだろう?自分の姉妹が焼け死ぬところなんか」 「…っ!!!…ぅ……ぁ…ゅ…………ゅぅ…」 やがて、赤まりさが朽ち果てた。水槽の中は観客席だった。水槽の外はステージ。未だ燃え 盛る炎が赤れいむの瞳に映る。次は自分の番なのだろうとゆっくり理解した。男は、赤れいむ のリボンをつかむ。ステージの上に放り出される。 「…イッツ…ショータイム…」 観客は男ただ一人。ステージの上には、赤れいむと赤い悪魔。炎の輪っかは、まるで大きな 口を開けた怪物だった。赤まりさ同様、熱気が全身を襲い、それだけで意識を失いそうになる。 とめどなく溢れる涙と汗のせいで、喉はカラカラだ。赤れいむは意を決して、眼前の炎から逃 げ出した。男が腕を振り上げる。それでも距離がある。赤れいむは逃げ切る自信があった。 「ゆびいぃっ??!!!」 赤れいむの頬が弾ける。破れた皮から餡子が飛び出した。風を切る音が赤れいむの顔の周り を行ったり来たりする。 「ゆぎっ!!!ひぎぅっ!!!ゆべぇっ!!!!!!」 男は鞭を振り回していた。鞭が無知を襲う。何度も何度も柔らかな頬を、あんよを…汚い尻 を打ちつける。 「ゆっぐちぃ…しちゃい゛よ゛おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」 「何逃げようとしてんだよ、カス。逃げられるわけねーだろ。お手玉もどきが」 何度目の衝撃だろうか。ついに赤れいむの片目が弾け飛ぶ。突然狭まる視界と強烈な痛みに 床の上をのた打ち回る。 「いぎゃああああああああ!!!!れいみゅの…おべべがあああああああ!!!!!!!」 この期に及んで目玉一つの心配とは恐れ入る。男は鞭を振るう手を止めなかった。鞭に弾か れた赤れいむは、右に左に飛ばされる。膨れ上がった顔は、もはや原形を留めていなかった。 ころころと転がることもない。衝撃がリボンをむしり取り、揉み上げを吹き飛ばし、赤れいむ はゆっくり…ゆっくり…ただの饅頭になろうとしていた。 「い゛ぢゃい゛よ゛ぅぅぅ!!!おがあ゛じゃあああああん!!!たじゅげぢぇええええ!」 なおも叫び続ける。生命力だけは凄まじい。こんな状態になってまでまだ生きようというの だろうか。最後に、力任せに振り下ろした鞭は、赤れいむを真っ二つに寸断した。 「う゛…ゆ゛…ぎぃぎぃ…」 二つに割れた饅頭は、しばらくうねうねと動いていたが、やがてぴたりと動きを止めた。死 んだのだ。 ゆっくりに芸を仕込む、という計画は失敗に終わった。しかし、まだたったの四匹だ。四つ の饅頭が駄目になったからと言って、諦めるには早すぎる。ゆっくりたちはよく、“おやさい さんはかってにはえてくるんだよ!!”と言う。しかし、男は言う。 「ゆっくりは勝手に生えてくるからなぁ…」 と。 空っぽの水槽の中。半分以上残された残飯の山は、まるで身を寄せ合い震え続ける四匹の赤 ゆたちのようだった。 終わり。 何度かボリューム少ない、と言われたから増やしてみたよっ!! 日常起こりうるゆっくりたちの悲劇をこよなく愛する余白あきでした。 過去作一覧 ふたば系ゆっくりいじめ 317 田舎の少年たち ふたば系ゆっくりいじめ 325 ローテーション ふたば系ゆっくりいじめ 329 アリ×まり ふたば系ゆっくりいじめ 338 水上の弾幕 ふたば系ゆっくりいじめ 341 手近なもので ふたば系ゆっくりいじめ 348 ペトショの裏 その1 ふたば系ゆっくりいじめ 350 ペトショの裏 その2 ふたば系ゆっくりいじめ 352 ペトショの裏 その3 ふたば系ゆっくりいじめ 356 働かざるモノ食うべからず 余白あきの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る ↓そーなのかー -- 2011-11-03 00 42 38 下の米で新人がどーたらもめてるけど、サーカスで持ち芸のない人なんて8割くらいいるぞ。 ステージで道具を持ってくる人も、雑務も、数年間やってからステージに立つんだよ… -- 2011-09-22 18 50 06 空中ブランコが面白かった -- 2011-04-06 20 48 12 ↓だから下っぱなりに新しいスキル獲得に挑戦してんじゃねえか。 なんか勘違いしてるようだが、ゆっくりを操る能力に関しては今現在習得の途中段階だろ。いきなり操れるようになんてなるわけが無し。 芸が無くてもサーカスで働く新人はいておかしくないし、こんな勤勉な新人クビにしてたらサーカス団こそ潰れちまうだろ。 -- 2011-01-09 19 44 25 こいつ自分の立場分かってんのかな? サーカス団も慈善事業じゃないんだから、自分の芸もなく ゆっくりを操る能力もないんじゃサーカス団にとってはただの無駄飯食い。 新人だし早々にクビだな。 -- 2010-10-30 00 11 26 おにいさんがばかすぎてゆっくりできないよ・・・・ -- 2010-10-14 21 20 39 すっ!すっきりー!! これめっちゃおもしれえ!! 最高にQNQNできました このお兄さんがDQNっぽいところがまたいい! 自分でやらせておいて、何やってんだよゲラゲラの王道がいいねw -- 2010-09-28 08 33 18 クソゴミの扱いが妥当です -- 2010-09-28 00 53 11 >上手くいかなったとしたら潰して捨てればいい。替えの効かない動物を調教するよりも遥かに効率がいい。 >死ねばまた拾ってくればいいだけの話なのだから。 すごく効率が悪くて、永久に無理な気がする。 言動に矛盾が多く、仕事するふりしてオナニーしてるこの男の頭の悪さがイライラした。 -- 2010-08-28 23 01 52 ゆっくりできたが…これ日常で起こりうるか?w -- 2010-07-10 23 27 46 この男の計画性のなさと効率の悪さに少しいらいらした あと自分で食えと言っといて食ったら笑う系の虐めはゆっくりできね -- 2010-03-03 11 46 55
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/643.html
「ふたば系ゆっくりいじめ 295 秋の風物詩/コメントログ」 あにゃるに焼けた薪が最高! とてもONONすっきりできましたw -- 2010-09-12 03 53 45
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/2203.html
「ふたば系ゆっくりいじめ 1054 夢想天生/コメントログ」 作者別 -- 2010-03-27 20 08 28 微妙に役に立たなさそうな辺りが面白そうな設定 -- 2010-06-10 00 15 30 次は二重結界で。 -- 2010-07-08 05 49 31 北○神拳の前には死あるのみ・・・ -- 2011-07-07 08 52 31 このれいむはケン○ロウ -- 2013-01-02 07 48 53
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1361.html
前? 「う~?」 ゆっくりれみりゃがパチュリーに連れてこられたのは、今までの自分の家では無かった。 「お姉さんも、ここでいっしょにゆっくりしようね」 ゆっくり霊夢が言ったが、ここはもうゆっくり達の家でもない。 「あら、思ったほど酷くなかったわね。これなら意外と早く終わりそうね」 「じゃあ、さっさとやって頂戴。私はここ数日働きすぎて疲れたわ」 「何を言っているの? あんたにも手伝ってもらって、やっと意外と早くよ」 「むきゅーん」 そういって人形を使い家を直してくアリス。 彼女がこの家の主である。 「あぁ、でも人形のダメージは酷いわね。コレが終わったらいったん修理しないといけないわね」 ブツブツ言いながら、同じくブツブツ言っているパチュリーにアレコレ指示をする。 ちなみに、パチェリーのブツブツは、小悪魔早くこっちに来いだったりするが。 「お姉さん、わたしたちもてつだうよ!」 三匹が、何か仕事は無いものかと、ウズウズしながら話しかける。 「大丈夫よ。あなた達は外で遊んでいらっしゃい。ずっと檻の中に居たから、体が鈍ってるんじゃない?」 「いいの?」 「えぇ、良いわよ」 「やったぁ、まりさ、ぱちぇりー行こう」 「むきゅー」 「お姉さんゆっくりしてくるよ!!!」 ゆっくり魔理沙がアリスにそう話す。 元が単純なゆっくり種であるゆっくり魔理沙は、先ほどの会話で、アリスが優しくなったと思ったらしい。 その口調は、普通のゆっくりが人に向けるそれと同じであった。 「いってらっしゃい」 「イッテラシャィ」 「ラシャーイ」 笑顔で送り出すアリスとその人形達。 「お庭もひどいねー」 「あらしだったからだよ」 「ぱちぇりーはものしりだね」 「きょうはおともだちこないねー」 「「ねー」」 日が天辺まで昇った時、木陰を求めて、何時もの木の下で話す三匹。 ゆっくり魔理沙も、アリスが居なくなってからの暮らしと、何も変わっていない事に安堵する。 「う~♪」 玄関からした声は、庭に追い出されたゆっくりれみりゃの声だ。 「う~! ゆっくりゆっくり♪」 一昨日、加工場内で見たゆっくり達が忘れられなかったのだろう。 木陰で屯っている三匹を見て、とても嬉しそうにダンスを踊る。 「いっしょに来たゆっくりだね」 「にんげんみたいに、からだもあるね」 「きしょうしゅっていうんだよ」 「「ぱちゅりーはものしりだね!!!」」 「むきゅ~」 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 「う~~!!! ゆっくりしゅるしゅる!」 それから、四匹はいっしょになって遊んだ。 庭を駆け、一緒になって話をしている内に、日は森の木よりも低くなっていた。 家の修理もそろそろ終わるようだ。 「みんなー、修理は終わったわよ。そろそろ暗くなるから、入ってらっしゃい」 「「「はーい」」」 「うっう~」 四匹がドアに近づくよりも前に、ドアの前に一人の人影が立った。 「すいませーん。遅くなっちゃいました。もう修理は終わっちゃいましたか?」 小悪魔だ。 片手に持っている大きな紙袋は、荷物が入っているのだろう。 「小悪魔。あなた随分遅かったじゃない。外で様子でも見てたんじゃないの?」 「いいえー。そんなことないですよ。私は、パチュリーさまに使役される身ですから。主が必要としているなら、直ぐにでも駆けつけますよ」 「お姉さん、ずっと外に居たよ」 「れいむたちが、そとにでたときからいたよ」 「おそとでゆっくりしてたよ」 「う~♪」 「ちょ!! 止めてよ!! 折角直したんだから!!!」 それを聞いてスペルカードを使おうとするパチュリーを必死に止めるアリス。 「いえ、それは落としていった幻影のスペルカードがですね……」 必死に言い訳する小悪魔。 「ゆゆゆ!!」 「「ゆ~~♪」」 「うっう~♪」 面白そうに笑う四匹。 暗くなった外から見るそれは、とても幸福そうな生活の一ページに見えた。 翌日、数少ないゆっくりれみりゃの持ち物(主にきぐるみ)を置いて、パチュリーとその使い魔は帰っていった。 太陽が、地面から切離されたばかりの、まだ早朝と言ってもいいような時間。 今、この家で起きているのはアリスだけだ。 「さてと。それじゃあ、朝食の用意をしちゃいますか」 上海と蓬莱を起こし、朝食の用意に取り掛かるアリス。 二人で、必死に野菜を切る人形達。 そして、切った野菜を鍋に入れ、調理していくアリス。 クツクツと煮立つその鍋からは、食欲をそそる匂いが漏れている。 「うん! 上出来ね。二人とも、四匹を起こしてきて」 二人は頷いて台所から出る。 向かう先は、随分前から使っていなかった石造りの小屋。 二人が中に入ると、たっぷりと敷き詰められた藁の中で、三匹が気持ち良さそうに眠っていた。 外で寝ると言っていたので、アリスが急遽、藁をしいて寝室にしたのだ。 それまで、ベットやソファーの上で寝ることはあっても、専用の寝室がなかった三匹には、与えられた専用の寝室を非常に喜んでいた。 一方のれみりゃは、壁際で毛布に包まって眠っていた。 昨夜、仲良くなった三匹と一緒にこの部屋をみた直後、れみりゃだけは走って家の中に行ってしまった。 初めての寝室に興奮している三匹に、おやすみを言って家の中に入ったアリス達。 家に戻り、れみりゃを探すと、アリスの部屋のベッドで跳ねて遊んでいるところを見つけた。 「う~♪ ゆっくり!!!」 本人は、ゆっくりのつもりで遊んでいるのだろうその様子は、アリスを突き動かすには十分だった。 「ねぇ、れみりゃ。三匹はもう寝ちゃったわよ。一緒に寝ないのかしら?」 「ここでねりゅ~。べっど♪べっど♪」 加工場で床で寝ていた事はあっても、やはりベッドが恋しかったのだろう。 まして、あんなところで寝るなどということは、紅魔館ぐらしのれみりゃには考えられないことであった。 「ふーん。でもそこは私のベッドよ?」 「ん~ん。れみりゃの。ちかづくとた~べちゃうぞ~♪」 この時、ゆっくり魔理沙がいたならば気付いただろうが、今のアリスの目は何時もの、ゆっくりを見る目であった。 「せっかくお風呂にも入れてあげたのに。それでもまだそんなに図々しいなんてね」 つかつかと、無言で自分のベットに近づいていくアリス。 「きちゃだめ~♪ ぎゃお~♪ぎゃお~♪」 暖房を効かせた部屋と外の様な、二人の温度差はすさまじいものであった。 「た~べty!?」 かいじゅうの真似事をしているれみりゃに回し蹴り。 れみりゃは、衝撃をモロにくらって部屋の入り口に吹っ飛ぶ。 「うー。うー」 「コレは私のベッドよ? あんたはさっきの三匹と一緒に、あの中で眠るのよ。分かった?」 「うー。わがっだ。わがっだー!! うあ!!! ああ!!!」 れみりゃの返事も無視し、更に二三発蹴る。 とたんに、先ほどまで大泣きしていたれみりゃが大人しくなった。 「……あら、もう気絶しちゃったの?」 「本気で蹴り過ぎよ。あれじゃあ誰だって気絶するわよ。まぁ気持ちは分かるけど」 呆れた声で言うパチェリー、だが余程眠いのかしきりに目を擦っている。 「あんなのが私の部屋に入っただけで嫌気がするわ。小悪魔、コイツさっきの小屋に入れてきてくれるかしら」 同時に、シーツかと思う程つぶれた毛布が投げられる。 「人間らしく寝たがってたから、それでもかけてあげて」 「はい。分かりました、アリスさん」 アリスも疲れていたのだろう、後は小悪魔に任せて、自分も早々にベッドに潜っていった。 ―― そして、昨日のそれが引きがねになったのだろう。 アリスは早々に、れみりゃを最重要に、と人形たちに命じた。 魔理沙たちには余力でいい、とも言った。 その言葉の通り、眠っているれみりゃの顔面にパンチをして起こす上海。 「うー? うー?」 れみりゃの方は、何が起こったのか分からずおろおろしていたが、やがて何時ものように泣き出した。 さらに、自分が小汚い小屋の中で寝て言うことに気付いてまた泣き出す。 「どーしたの?」 「なんでないてるの」 「むきゅー」 その声で起き出した三匹、れみりゃが泣いているのが不思議なようだ。 「ォコシタラナィタノ」 「イエ、カワテサビシークナタノ」 「そっか~」 「れみりゃもゆっくりしようね!!!」 「しよおねー、……むきゅ」 懸命にゆっくりれみりゃを気遣う三匹。 れみりゃも、三匹に励まされだんだんと泣き止んだ。 「「今日もいっしょにゆっくりしようね!!!」」 「むきゅ~」 「う~♪」 大声で泣いたので目も覚めたのだろう、れみりゃは機嫌よく返事をする。 「ゴハンダァヨ」 「アサゴーハン」 人形達に引きつれらて家の中に入る、玄関から既に美味しそうな匂いが漂っていた。 「おねえさん、おはよー。おいしようなにおいだよ」 「おはよー。おなかへったよ、おねえさん」 「ごはん。ごはん」 「はいはい、どうぞ。」 トン。 軽い音と共に、パンとスープを人数分床に置くアリス。 それは、犬用の入れ物であった。 「テーブルの上は狭いから、ここで我慢してね」 たしかに、アリスの家のテーブルは狭い。 仮にゆっくりが三人のったら、それだけでいっぱいになってしまうだろう。 それを食事代わりにするのであれば、話は別だが。 「だいじょうぶだよ、お姉さん」 「魔理沙おねーさんがきたときもこうしてたべたよ」 「ごはん。ごはん」 ガツガツと、意地汚く食べる三匹。 以前の魔理沙なら、ここまで汚く食べていたら、すぐにアリスにイジメられていたが、一年という月日ですっかり忘れていた為、他のゆっくりと同じような食べ方に戻っていた。 それを見て、嫌悪感を感じているのではないかと思われたアリスだったが、それよりも、突然飛び出た魔理沙の名前に、一瞬頬を赤らめていた。 しかし、すぐにその熱は直ぐに冷めることとなった。 この三匹が、魔理沙を慕っているのが許せなかったからだ。 「う~? う~?」 その上このゆっくりれみりゃである。 以前、レミリアから散々コケにされていたアリスにとって、このゆっくりに出会えたことは幸せだった。 普通のれみりゃ種を相手にしたところでは晴れない。 しかし、この『元』レミリアであれば、その気持ちが晴らせるのだ、これ以上このれみりゃができる恩返しは無い。 「う~! ぱちぇ? こぁくま?」 そのれみりゃは、嘗て大事にしてくれた人の名前を叫びながら、キョロキョロと辺りを伺っている。 どうやら、パチェリーと小悪魔が見当たらないので騒いでいるらしい。 「あの二人ならもう帰ったわよ」 「っ!!」 その表情を見るたびに、体が小刻み震えていく事を感じるアリス、あのレミリアを自分が責めている。 それだけで、それだけで最高の興奮剤になり得た。 「ほら、パチュリーがあなたにって置いていったわ」 パチュリーが作っておいたプリンを差し出す。 とたんに、飛びつかんばかりの勢いでアリスの元に駆け寄るれみりゃ。 「う~♪ぷりんたべるたべる♪」 その表情でうかがい知れる。 どうやら、早くよこせといっている。 スプーンを両手に持って、椅子に座って待っている。 「どこに座っているの?」 「う~♪はやくちょうだい♪」 昨日のことを既に忘れたのか、それとも気絶して記憶が無いのか、アリスのどす黒い空気を全く気に止めないれみりゃ。 そのまま、笑顔でプリンを出す、バケツ一杯分もある大きなプリンだった。 「う~♪おっきいおっきい」 自分の顔ほどもある大きなプリンにご満悦のれみりゃ、彼女ならものの数分で平らげてしまうだろう。 「そのまえに、きちんとご飯をたべなさい」 スープとパンを三匹と同じ皿に装ってれみりゃの前にだすアリス。 「い~らない♪ ぷりん~ぷりん~♪」 元からお菓子しか食べないれみりゃは、聞く耳を持たない。ましてや、目の前に大きなプリンがある状態ではなおさらだった。 「そう、仕方ないわね」 いざ、スプーンを付けようとした瞬間に取り上げる。 当然、れみりゃは不満爆発だ。 「うー!れみりゃのぷりん!ぷりん!」 意に返さず、一人前だけを切り取ってれみりゃの前に出しなおす。 残ったプリンは三匹の前に出し。 「好き嫌いしたからよ。……さぁ、デザートのプリンよ」 食事に夢中で気が付かなかった三匹、突然出された大きなプリンにご満悦だ。 「すっげっ、でっけぇ!」 「うまい! うまいよお姉さん!!!」 「ごはん! ごはん! むきゅ~」 むしゃぶりつく三匹、対照的に自分のプリンと三匹のプリンを交互に見るれみりゃ。 急いで自分の分を食べ終える。 そして、その中に割り込もうとする。 「う~!」 しかし、既にプリンは無くなっていた。 れみりゃに限らず、お菓子はゆっくり達にとってご馳走のようだ。 「うーー」 「好き嫌いした方がわるいのよ。これからはきちんと食べなさい」 紅魔館ではお菓子しか出されなかったれみりゃは、アレは違う人の食事だと思っていたのだろう。 「うー!! いぎゃあ!!!!」 「そして、あそこは私の席よ。分かった?」 突き破らんばかりの蹴りを放ったアリスは、代わりの椅子を準備して自分も朝食を取った。 ―― 「おーいアリス、いるかぁ?」 「まっ魔理沙! いっ居るわよ」 朝食を終えて、人形達の修理でもしようかと思っていたアリスの家に、意外な来訪者がやってきた。 「まぁ、もう入ってるけどな。それにしても一日でここまで直すとはなぁ」 いつでもあんたを迎え入れるためよ、とは口が裂けても言えないアリス。 適当に相槌を打ってごまかした。 「あっ、魔理沙おねーさんだ」 「魔理沙おねーさん~いらっしゃい」 「ゆっくりしていってね」 「おお、元気だったか。あの嵐だったから心配したぜ。まぁアリスがいたんなら、大丈夫だろうけどな」 とたんにアリスの表情が曇る。 馴れ馴れしく魔理沙に話しかけるゆっくり達を見ているアリスの顔、それは先ほどと同じ感情だった。 「はは、そうだな。ところでアリス、これからちょっと出かけないか?」 「でっ、でかける! 何処へ?」 ひっそりとアリスに耳打ちする魔理沙。 当の本人は、昨日はきちんとお風呂に入ったか、寝癖はないか、そればかり考えていた。 「紅魔館さ、フランの奴がたまには運動したいって言うからな。お前もずっと図書館に篭ってただろ? 運動しないと体に毒だぜ」 「……ごめんなさい。今日はちょっと行けそうに無いわ。家に置いておいた人形の修理もあるから」 そうか、それじゃな、と言い残して出て行った声も、さよならと言った三匹の声も、既にアリスには届いていなかった。 また、他の人の所に行くのは別に良い、こうして誘ってくれたから。 でも、私より饅頭三匹を心配していたのが気に食わなかった。許せなかった。 「ねぇ、あなた達。私はこれから街に行ってくるから、魔理沙の所に遊びに行ってきたら?」 「まりさのところ?」 「いくいく!」 「そう、場所は分かる? えぇ、大丈夫。蓬莱に道案内を頼むわ」 「ホラーイ」 蓬莱人形に連れられて家を出る三匹、もう一匹はもたもたと何かをしているようだ。 「あなたは、何をしているの?」 「うー、がお~!がお~!」 どうやら、お気に入りのきぐるみを着て行きたいらしい。 「それなら、何日も着ていたから洗濯するわよ」 「うー! もうひとつだして! だして!」 代わりのきぐるみを出せと、駄々をこねるれみりゃ。 「これかしら?」 「う~♪はやくはやく」 良くやったと言わんばかりの顔をしているれみりゃの前で、きぐるみに朝のスープの残りをかける。 「う゛ー!」 ころころと表情が変わるれみりゃ、それを見て興奮するアリス。 「あらあら、これも洗濯しないとね。ダメじゃない、こぼさずに食べないと」 「う~! やってない! やってない!」 ブンブンと首を振って否定するれみりゃ。 「……その態度がムカツクのよね。いいわ、きぐるみを着せてあげる」 ちょっと待ってなさい、そう言いながら上着を脱がす。 ドロワーズ一枚になったゆっくりれみりゃを取り合えず庭に出しておく。 「そのこのきぐるみを乾かすまでちょっと待っててもらえるかしら」 「うん、いいよおねえさん。ゆっくりまってるよ!!!」 魔法を使えば直ぐ乾くが、あえて一時間ほど自然乾燥させてから魔法を使う。 傍から見ると何をしているのか分からないが、当の本人は酷く嬉しそうなので何か意味が有るのだろう。 「ほら、乾いたわよ。自分で着れるでしょ?」 「う~!きる~!」 ばしっとアリスの手から奪い取る、きぐるみが着れる事が嬉しいようで、ドロワーズの上から直接着ていることに気付いていない。 「がぁお~♪ た~べちゃ~うぞ♪」 「ゆっくりしてね!!!」 「おおこわいこわい」 「むきゅー」 三匹の元へ駆け寄っていくれみりゃ、これで全員準備はできたようだ。 「じゃぁ、きおつけていってらっしゃい」 「うん、ゆっくりしてくるよ!!!」 四匹を送り出したアリスも町へ向かった。 そこで、急遽製作した特製のゆっくり専用のセルフ販売ボックス設置する。 勿論、ゆっくり達の餌代対策であるが、思いのほか順調に事が運んでいる。 これは、なかなかいいビジネスかもしれない。 アリスはそう思っていた。 続き? このSSに感想を付ける