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アップル #ref error :画像URLまたは、画像ファイル名を指定してください。 基本マニ:4 最大マニ: コンボ情報 このカードを使ったコンボ このカードになるコンボ 名前 コメント
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夢じゃ、なかったのよね。 狭山純子は教室の片隅でぼんやりと考えていた。確かめるように右の頬に触れてみた。細長いかさぶたがあるのがわかる。昨日、爪の長い怪物につけられた傷だ。狭山は昨日のことを思い出す。 あれは一体なんだったのだろう。あの後、呆然としている狭山を、少年はホテルへと誘った。ワケも分からず付いて行こうとすると、アップルが駆け足でこちらにやってきて、少年を叱った。 「またかよ先輩。ちっとは恥を知りやがれ。出会ったばかりの女の子に手をだすなんざ、便所臭い鼠にも劣る最低の振る舞いだって何度も言ってんだろうが」 「冗談だよ、冗談。林檎ちゃんはきついなー」 少年は悪怯れる風もなく、笑った。また、ということはこの少年はいつもこのようなことをしているのか、と狭山はぼんやりと考えた。 今思えば、貞操のピンチだったのだな、と狭山は苦笑する。いや、貞操だけではない。生命すら失うところだった。 それから、彼女は二人に送られて家路についた。道中、少年は自分の名は飛南瓜光次郎だと言った。彼の制服は、狭山が通う中学のものだった。狭山は考えた。軽薄そうな美少年の隣を歩く、奇抜な格好の大柄な女性、彼女は一体何者なのだろう。腕力、体力、戦闘技術、どれをとっても人間離れしていた。それに、あの炎を出した魔法のような力はいったい。考えれば考えるほど、謎は深まっていった。 そういえば、アップルと名乗ったこの女性は、少年のことを先輩と呼んでいた。もし少年が狭山と同じ牌ヶ原中学校の生徒だとすると、この大柄な女性も中学生、それも狭山と同い年か、たった一つ上の年齢ということになる。この、まるでグリズリーのような巨大な体躯が、十三か、十四そこらの年齢の少女のものだなんて。 狭山がアップルをちらちらと見ていると、飛南瓜がいろいろと話しかけてきた。年齢、クラスはどこか、クラブには入っているか、星座、血液型、体を洗う時どこからあらうか、好きな男のタイプは何か。狭山は聞かれるがままにそれに答えていた。すると、突然アップルが怒ったように「いい加減にしやがれ」と叫んだ。夜空の星まで届くようなその怒声に、狭山は驚いて彼女の方を見た。アップルの目には奇妙な色の炎が灯っていた。 「わかったよ」 飛南瓜はいたずらっぽく口を窄める。それから三人はほとんどしゃべらず、田舎の道を歩いた。そのうち、狭山の家に到着し、そこで二人と別れた。 「今日のことは内緒にして、出来る限り忘れてもらいたい」 別れ際にアップルが言った。何故、と反射的に尋ねる。アップルは無言で首を横にふった。 「済まないが、言えない」 「でも、改めてお礼もしたいし」 「まあまあ、いいじゃない」 飛南瓜が二人の間に入った。 「僕たちは僕たちで事情がある。わかるかい?」 「……もし誰かに話したりしたら?」 「食べちゃうかも」 飛南瓜はそう言って舌舐めずりをした。すると、アップルは大きくため息を付いてから、さあそろそろ帰るぞ、と言った。 「じゃあな」 「ばいばい」 「あの、今日は本当にありがとうございました」 狭山が頭を下げると、二人は顔を見合わせたあと、にっこり笑った。そして狭山に背を向けて夜の闇の中へと消えていった。 「起立」 担任教師の声が突然聞こえ、狭山は回想を終わり慌てて立ち上がる。昨日出来た太ももの痣を机にぶつけてしまい、小さな声が漏れる。クスクスと言う笑い声が、耳に入った。 「礼」 他の生徒がありがとうございましたと言うなか、彼女は無言で口だけ開閉しながら頭を下げた。そして、手提げカバンを掴むと、大急ぎで教室から外に出た。駆け足で廊下の角を曲がり、階段を駆け下りる。 そこでふと、階段の踊り場に一枚のポスターがはられていることに彼女は気がついた。 「新入生募集 クラヴマガ部」 達筆な筆字で、たったそれだけ書かれている。 クラヴマガ。彼女はこの言葉に聞き覚えがあった。昨日、飛南瓜が言っていた。あのアップルと言う女性が使っていた格闘術。たしかその名前がクラヴマガだった。 狭山はクラヴマガ部とやらのポスターを何度か読み返す。 そこにはデカデカとした文字で「新入生募集 クラヴマガ部」と書かれている以外には、部長・椎名橋林檎、顧問・桂浜竜果としか書かれていなかった。 まてよ。狭山は考える。林檎。この名前にも聞き覚えがある。そうだ、あの飛南瓜は確か、アップルのことを林檎ちゃんと呼んでいた。クラヴマガをしている、林檎ちゃん。間違いない。狭山は部室棟へ行こうと、慌てて階段を駆け下りた。階段の下にいた男子学生と危うくぶつかりそうになる 「おいおい、危ないだろ」 男子学生が注意する。すいません、と謝った後、狭山はクラヴマガ部の椎名橋林檎について、彼に尋ねてみた。 「ああ、戦乙女のことね」 「戦乙女?」 「そういうあだ名だよ。2年の椎名橋林檎だろ、有名だよ。女子だけど、スゲーでかくて、スゲー強いんだ。だから、戦乙女。知らないの?」 狭山はしらないと答えた後に、飛南瓜についても尋ねてみる。男子生徒は彼に対しても知ってるよ、と答えた。 「イケスかねえヤツだ」 彼によると、飛南瓜はいつも女の尻ばかり追い回していて、学校中の女生徒、はては女教師にまで手を出しているらしい。 「だけどなあ、あいつもめちゃくちゃ強いんだよ」 飛南瓜はなんでも、ブラジリアン柔術部の部長で、全国大会優勝の経験もあるらしい。 「暴走族の総長の女に手を出して、フクロにされた時も、一人で返り討ちにしたって噂だぜ」 狭山には信じられなかった。飛南瓜が女の尻ばかり追い回していると言うことにではない。それはなんとなく予想出来た。驚いたのは、彼がそんなに強いということにだ。 「なに、君、格闘技に興味があるの? 一年生だよね? どう、うちの部に入らない、サンボ部なんだけど」 男子生徒の誘いを、狭山は丁重に断った。それから、彼女は残念そうにしている男子生徒にお礼を言ってから、校舎の端にある部室棟へと向かった。 校舎の端の部室棟のさらに端に、クラヴマガ部の部室はあった。一旦深呼吸してから、狭山はドアノブを回す。 そこにいたのは大柄な女性。忘れるはずのない、昨日のあの姿。ただ、昨日と違うのは、不可思議なドレスではなく、制服を半分脱いだ、下着姿であったことだ。可愛らしい、淡いピンク色のブラジャーに締め付けられている、彼女のはちきれんばかりの大きな胸は、苦しそうにすら見える。布で覆われておらず、何にも隠されていない腰は、ウエッジウッドのように白く、滑らかだった。膝まで脱がれたスカートで隠されていたのだろうパンティも、ブラジャーと同じ色をしていた。その体に無駄な脂肪はどこにも見あたらない。さながら、ギリシアの彫刻のように美しい。狭山がそれを観察して息を飲んでいると、こちらを向いたアップルと目が合った。 太い声の悲鳴が部室棟に響く。狭山は失礼しました、と言って、慌ててドアを閉めた。 それからしばらくして、ドアが開いた。学校指定のジャージを着た女が姿を現した。 「ごめんなさい、大声出しちゃって」 彼女はそう言ってから狭山を部室にはいるよう促した。狭山は部屋の中に入り、ドアを閉め、先程のことを謝った。アップル、椎名橋林檎は首を振って、私が鍵をかけなかったのが悪いから、と静かに言って、部屋の中の椅子を指し、座るようすすめた。昨日とはまったく違う、静かで優しい口調だ。狭山はそれに従う。 「昨日の子よね」 「はい」 「あのことは忘れてって言ったじゃないの」 「でも」 「でもじゃないわ。これ以上私や、スナックンのことに関わられたら、あなたの命を保証することが出来ないわ」 「スナックン? なんですか?」 狭山の問いに林檎は口をつぐむ。それから、諦めたように首をふった。 「もう帰りなさい、あなたと話すことは何も無いわ。昨日のことは夢だったのよ」 「お願いします、教えてください。私、知りたいんです、私が襲われたのがなんなのか、あなたたちの力がなんなのか」 「知ってどうするの?」 「それは……」 今度は狭山の方が言葉につまる。わたしは、いったいどうしたいのだ。私はどうして彼女のことを知りたいのだ。どうして? 「ぐぁー」 自問していると、突如、男の悲鳴が聞こえた。林檎は突然立ち上がり、「ここで待ってて!」と狭山に向かって叫んだ。 そして、勢い良くドアを開けると、大きな足音を立てて部室から出て行った。林檎の言葉を無視して、狭山もそれに付いて行く。 校庭では、さっき狭山とぶつかりそうになった男子生徒が怪物に襲われていた。昨日狭山が襲われた浅黒い殻に覆われた怪物が四体、そして狐のような顔をした怪物が一体である。狐頭の怪物の両腕は鉄製の洗濯バサミのようになっていて、時々それを開けたり閉じたりして、そのたびにバシッと鋭い音がする。 「グヒャ、グヒュ、グヒャヒャ、喰ってやるゼイ、お前、喰って、俺の頭良くなるゼイ、もっと強くなるゼイ」 狐頭の怪物はそう言って男子生徒ににじり寄る。男子生徒はサンボの間合いに持ち込もうとするが、しかし、怪物の関節が人間のそれと明らかに違うことに気づくと、へなへなとその場にしなだれ落ちた。 「超戦闘魔法・アップルトランスフォーム・変身!!」 廊下を走りながら、椎名橋林檎は叫んだ。彼女のジャージが端の方からみるみるうちに消えていく。見事に筋肉のついた彼女の裸体が顕になる。林檎が右腕を振り上げると、そこに炎が巻き起こり、彼女の身体を包み込んだ。そして、その炎がちりちりと音を立てて消えていったかと思うと、そこにいたのは、狭山が昨日出会った戦士、超戦闘魔法少女アップルだった。 「行くぜ!!」 アップルの雄叫びが廊下に響く。 「グヒャ、グヒュ、グヒャヒャ、喰うぜ、喰うぜ、タラフク喰うゼイ」 狐頭の化物、闇生物ピンチーフォックスは手のハサミで男子生徒の頭をはさみ、宙へと持ち上げる。 「いてー、砕けるっ!」 男子生徒は悲鳴をあげる。 「安心しろヨ、おまえの脳からこのまま潰して喰ってやるゼイ、脳みそは頭蓋骨をこうして砕くと格別なんだヨ」 「そこまでだ、スナックン!」 勇ましい声がピンチーフォックスの後ろから聞こえた。 「誰だァ!?」 気をとられたピンチーフォックスは、ぼとりと男子生徒を落とす。男子生徒は這いつくばって逃げて行く。 「天知る、地知る、人が知る、邪悪な力も我を知る、真っ赤に燃えるは闘志の炎、長野県最強の戦士、超戦闘魔法少女アップル!! 只今参上!!」 ピンチーフォックスはじろりと彼女を見る。 「シッテル、シッテル、お前シッテル、俺の仲間いっぱい倒したヤツダロ、殺すゼイ、殺して喰ってやるゼイ!! かかれ、ドリアンヌ!」 ドリアンヌと呼ばれた怪物、浅黒い外殻に覆われた怪物がその長い爪を振りかざして襲いかかってきた。 ふん、と彼女は鼻を鳴らし、左足を高く上げる。 「千秋!」 彼女の脚に炎が灯ったかと思うと、あっという間に四体いたドリアンヌが全て吹き飛ばされる。 「雑魚が……」 アップルは追い打ちをかけるために飛び上がり、そしてドリアンヌの頭を次々に踏みつぶして行く。鈍い音がして、彼らの頭は潰れていく。そして、全ての頭を踏潰してから地上に舞い降りた途端、轟音を上げてドリアンヌたちが一斉に爆発した。 「次はお前だ」 アップルが振り返る。と、そこにはピンチーフォックスと、狭山純子がいた。狭山の頭をピンチーフォックスの洗濯バサミが挟んでいる。 「お前、部室に残っていろって言っただろうが!」 「すいません」 「おしゃべりはそこまでだゼイ」 ピンチーフォックスが力を強め、狭山が小さく声を上げる。 「さあて、おまえさんが強いということはヨウク知ってるゼイ、だからな、このオンナを人質にとってやるゼイ、こいつの生命が惜しかったら、そこから動くんじゃネエ」 そう言って、ピンチーフォックスは高笑いを上げた。勝ち誇った、学校中に響く高笑い。 「遺言はそれだけか」 アップルの声が高笑いの中に聞こえたかと思うと、ぼとり、と音を立てて、ピンチーフォックスの腕が、落ちた。 「テメエの肉はミートパイにも使えねえよ、クソギツネ」 そう冷たく言い放つアップルの姿が、ピンチーフォックスの懐にあった。 「バカナ……」 「バカはお前だよ」 炎を纏った左足で、アップルはピンチーフォックスの腕以外、つまり胴体を蹴り飛ばした。怪物の身体が校庭の真ん中に落ちたかと思うと、爆音と熱風が校庭中に広がった。 「ありがとうございます」 狭山はまた頭を下げた。男子生徒はもうどこかへ逃げたようで、姿が見えなかった。遠くからバタバタと足音が聞こえた。 「人がくるな」 アップルは右腕を振り上げる。すると、一瞬にしてドレスがジャージへと変化した。 「私のこと、しゃべらないでね、お願い」 椎名橋林檎はそう言って、その場から走り去っていった。 「待ってください!」 狭山もそれを追いかける。 「だから、私に関わらないでって、言ったじゃない」 部室の中で林檎が言った。 「私たちのことを知れば、あなたが危険にさらされる、私たちのことを知ったって、何一ついいことないわ!」 「そんなことないです!」 狭山が叫んだ。自分でも驚くほど、大きな声だった。 「私、林檎さんのこともっと知りたい、だって、だって……」 狭山は大きく息を吸う。 「私、林檎さんとお友達になりたいから!」 それから、しばらく二人は黙っていた。狭山は直前の言葉に、なんとなく気恥ずかしさを覚えた。りんごの香を見ると、彼女もその頬を赤らめていた。目が合い、二人は微笑み合う。突然、ノックの音がした。ガチャリとドアが開き、背の低い男子生徒と、髪の長い女子生徒がひとりずつ部室に入ってきた。クラヴマガ部の部員か、と狭山は考えた。 「大変よ、大変、校庭にまた化け物が現れたって、大騒ぎよ!」 髪の長い女性とが入ってくるなりそういった。そして、すぐに狭山を見つける。 「あれ、林檎ちゃん、その子、誰? 入部希望者?」 髪の長い女子生徒が林檎に尋ねた。 林檎は首を振って「違うよ、友達だよ」とだけ答えた。 次回予告 私の親友、無礼門京子、彼女がスナックンに殺されたですって!? 許さないわ、スナックン、おまえら全員、八つ裂きにしてこの世に灰すら残してやらないからな!! 次回、超戦闘魔法少女アップル第二話「乙女は死から逃れ、復讐を誓う」 見ないヤツはシナモンを振りかける価値すらない!! (作・恋人が南十字星)
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あつふるP【登録タグ 作あ 作あた 作り手】 【ニコニコ動画】 特徴 2010年12月『願い』でデビュー。以後、ロック楽曲をメインに発表している。 アップルPの「P」はパイと読む。しかし、アップルパイはあまり好きじゃないらしい。 使用ボーカロイドは 初音ミク、鏡音リン、巡音ルカ。 リンク あまり好きじゃないアップルパイ(作者ブログ) Twitter 曲 Escapism Guitar Repetition Guitar 思い描く道 せいいっぱいの愛 願い/アップルP CD みちしるべ ~the 7th door~ 動画 コメント 作成乙!! -- 名無しさん (2011-12-17 14 28 22) 名前 コメント
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――キィン―― 金属と金属がぶつかり合う音が、暗闇に響く。超戦闘魔法少女アップルは、岩壁に寄り添っていた。彼女の片腕は熱を帯び、白熱灯のごとく輝いている。真っ赤なドレスの脇腹部分が破れ、肌が露出している。一筋の切り傷から血がつうと流れ出ていた。アップルは親指で血を拭い、それを舐めとってから、唾と一緒に吐き出す。 「毒のたぐいは喰らってなさそうだね」 彼女が今立っているのは、牌ヶ原中学の真下、地下数キロメートルの場所らしい。もっとも、それを確かめる術は彼女にはない。 アップルはそっと岩壁に触れる。かすかな振動が皮膚から伝わってくる。次第に大きくなってくるそれに、アップルは呼吸を合わせる。そして、振動が最大になった瞬間、後ろに飛び退く。 岩壁を破って巨大な影が現れた。アップルはすぐさま発熱した拳を振り下ろす。しかし、手応えがない。 「ハハッ!」 笑い声を上げてアップルの攻撃を避けた影は、地面を鋭利な爪で抉り、石礫を飛ばしてくる。アップルは両腕を盾にしてそれを凌ぐ。アップルが腕をどけると、すでに影はどこかへ消えてしまっていた。 「また逃げやがったか!」 アップルの苛立った声が暗闇に響き渡る。不意に、背後の地面が盛り上がる。アップルは右腕に炎を灯しながら、すぐさま振り返る。 「タイムタイム、僕だよ林檎ちゃん、攻撃しないで」 軽薄で気の抜けるような声が聞こえて、アップルは慌てて攻撃を中止する。 「先輩でしたか……」 アップルは炎を消して溜息をつく。 そこにいたのはアップル、椎名橋林檎の先輩、飛南瓜光次郎だった。だが、いつもの姿とは違う。細身の、それでいて筋肉質な身体には鴉のような漆黒のマントが巻き付いている。背からは蝙蝠のそれによく似た羽が生えている。そして、腕である。彼の左手には、巨大なドリルがくっついていて、鈍い色で輝いていた。表面には一線の堀溝が螺旋を描いている。 「自分の腕にドリルが付いているってのは、子供の頃は憧れたものだけど、でも実際に付いてみると実に不愉快なものだね。重みと振動で肩は痛いし、自分の身体に当たりそうで怖い。なにより女の子にモテそうにない」 飛南瓜は溜息をつくと、ドリルになってない左手で、マントから土を払う。 「さすがに、付け焼刃のドリルでは限界があるね。アイツの速度には全然敵わないよ。どうだい、林檎ちゃんの方は?」 「だいぶ慣れてきたけど、まだ体が重いね。それに、ただでさえ空気が薄いってのに、炎をずっと出しながら戦うってのは厳しいかな」 アップルは感じたことをそのまま言う。地下に来た時から、ずいぶんと体がだるいと感じていた。生まれて一度も風邪すら引いたことのない(致死性の毒を食らったことはあるが)彼女にとって、その感覚は実に不愉快なものだった。近くに近いせいもあるだろうが、やはり酸素が薄いことが一番の原因だろう。 「大変だね。僕は反対に結構調子がいいんだ。どうも地下世界ってのは闇エネルギーが多いところらしい。一日中夜みたいなものだからかな? もっとも、こんなものをつけて戦うのには慣れたくないものだけどね」 飛南瓜はドリルを回して遊んでみるアップルは飛南瓜の腕についたドリルをじっと見た。金属の円錐はアップルの放つ光が反射している。 「ドリルってのもなかなかカッコいいと思うぞ? 男のロマンって感じで」 「え?」 「なんでもない……」 「なんだい、つれないなあ」 飛南瓜はニヤニヤと笑う。アップルは少し顔を赤らめ、そっぽを向いて土壁に触った。その瞬間、彼女の表情が一変した。目付きが鋭くなる。 「どうしたんだい?」 飛南瓜が尋ねると、アップルは返答の代わりに人差し指を立てた。飛南瓜はうなずき、すぐにアップルと背中を合わせて身構える。アップルは土壁に手を当てたまま、神経を研ぎ澄ませる。 「来る! 上だ!」 アップルは叫んで上方に拳を向ける。途端、天井が崩れ、大量の土塊が大量に降り注ぐ。 「超戦闘魔法・富士!」 アップルは片腕から熱線を天井にできた大穴めがけて放出しながら跳躍し、その場から退く。飛南瓜は一歩も動かないまま、ドリルで次々と岩石や土の塊を砕いていった。 ドリルの回転音と、土塊の中で上がった悲鳴が混じり合う。飛南瓜はドリルを上方から悲鳴のした方に向ける。アップルはもう一度熱光線を撃ちこむ。 「そんなに何度も当たらないヨッ! ハハッ!」 甲高い声がアップルの耳を突く。アップルは声の方に視線と腕を向ける。アップルの腕から放たれた光が、スナックンの姿をはっきりと捉えた。 恐らく、地下世界で視覚に頼らず聴覚だけで生活するためだろう、頭部にはやたらと目立つ円形の巨大な耳が付いている。顔にはまるで目を隠すように、黒線が一本通っている。そして、奇妙なことにどう見ても燕尾服にしか見えない衣服を身に纏っている。 その姿を見て、アップルは気を引き締める。服を着たスナックン、彼女はこれまでにも何度かそういう敵と戦ったことがある。彼らは例外なく強敵であった。服を着ているということは、知能や地位の高さを表している。そして、知能が高ければ高いほど複雑な魔法を使えるため、戦闘能力も高くなるのだ。 アップルはすぐに火炎弾を一発打ち込むが、その瞬間、地面に落ちていた大きな岩が浮き上がって、火炎弾を遮ってしまった。 「ハハッ! ムダだよ! この地下世界でこのボク、ダンディマウスに出会うなんて、キミタチはホントに運がないネ! ハハッ!」 「おしゃべりな鼠だね。キャロル!」 飛南瓜が後ろからエネルギー弾を放つが、ダンディマウスと名乗ったスナックンはそれをやすやすと避ける。 「光のない世界で育ったボクに、後ろからの攻撃なんてムダだって! ハハッ!」 そしてダンディマウスは鋭利な爪のついた両手を振り上げる。周囲に散らばっていた石ころが浮遊し、彼の手に吸い寄せられていく。そして、あっという間にダンディマウスの手を、まるで巨大な手袋のように、覆ってしまった。 「ハハッ! 行くよ!」 ダンディマウスは笑うと、その岩石の拳を林檎めがけて飛ばしてきた。アップルはとっさに腕でそれを防ぐが、岩の拳はぶつかった瞬間にはじけ飛び、アップルの全身を石礫が雨霰のように襲う。 「この程度の攻撃……」 一瞬の隙をついてダンディマウスは距離を詰めていた。そして、発射していないもう片方の岩の手でアップルの腹に強力な一撃をお見舞いする。 「ハハッ! これで終わりだよ!」 「舐めるな!」 アップルは浅黒くゴツゴツした腕を突き出し、ダンディマウスの巨大な耳をむんずと掴む。肉の焼ける匂いが、周囲に漂った。熱さに悲鳴をあげながら、ダンディマウスは岩石の拳でアップルの顔を殴る。鼻から血が流れ、アップルの彫りの深い顔を汚す。しかし、アップルは手を離さない。片耳が焼きちぎれる。 「痛いナ! ヒドイことするナ! ハハッ!」 アップルの背中に怖気が走る。こいつは、なぜ自分の耳がちぎれたというのに笑っていられるのだろうか。しかしアップルはひるまずに、ダンディマウスの顔に拳を撃ちこむ。鈍い音がして、拳が頭蓋骨を貫通する。これで終わった。そう思ってアップルが腕を抜いた瞬間―― 「ハハッ! 痛い痛い!」 ダンディマウスはまだ笑っている。さすがのアップルもぎょっとする。アップルに一瞬の隙ができたのを見逃さず、ダンディマウスはちぎれた耳を拾うと、アップルの懐から離れる。 そして、耳を傷跡にくっつけると、指をグルグルと回し、少量の土を浮遊させて、継ぎ目にくっつける。大穴がふさがり、円形の耳もくっついて、頭の形が元に戻る。 「ハハッ! これでもう大丈夫!」 「プラナリアかよ……」 「君、さっきから僕のこと無視しすぎだよ」 ダンディマウスの真横の壁が崩れ、飛南瓜が飛び出す。そして、彼のドリルが、頭部を木っ端微塵に砕いてしまう。 「だからムダだって! ハハッ!」 「しぶといなあ」 頭を砕かれてもなお、ダンディマウスは動きを止めない。岩石の腕で飛南瓜を殴ろうとするが、飛び南瓜もそれを避けて、アップルの隣に飛び退く。 「ハハッ! このままじゃ埒があかないね! それに、二対一はズルイな! ちょっと逃げさせてもらうヨ!」 ダンディマウスは首なしのまま、また地面を掘り始める。 「させるか!」 アップルは石ころを拾ってそれを火焔弾にして投げつける。そして、ダンディマウスの足に当たる。足首から先が切れ、ぼとりと落ちる。しかし、やはりダンディマウスは笑い声をあげたまま、すっかり地面に隠れてしまった。 「とんだ化物だね」 「先輩、追わないんですか?」 「いや、作戦を立てなおそう。今のままじゃ、アイツの言うとおり、埒があかない。イタチごっこさ。それに、そろそろ君の体力も限界に近いだろう? 林檎ちゃん、炎出しすぎだもの。僕もだいぶ息苦しくなってきたしね」 「……」 林檎は親指から炎を出してみる。いつもよりずいぶん弱々しい。酸素がかなり減っているのだ。 「わかりました、一旦地上に戻りましょう」 そして二人は今まで通ってきた地下道を、逆方向に歩き出した。途中であの不死身のスナックンがまた襲ってくるかとも思ったが、本当に一時退却してしまったようで、相まみえることはなかった。三十分ほど歩いて、巨大なエレベーターにたどり着く。この地下世界まで林檎と飛南瓜を運んできたものだ。二人はそれに乗り込んで、地上へと向かった。地上へ向かうエレベーターの中、林檎は超戦闘魔法少女ドリルアーム化計画について考える。 超戦闘魔法少女ドリルアーム化計画。 現在、日本国内に超戦闘魔法少女は七人存在する。そのうち、空中戦闘能力を持つ魔法少女はわずかに一人。そして、地下戦闘能力を持つものは皆無である。しかし、政府は超戦闘魔法少女の空中戦闘能力開発は研究者たちに命じたが、地下戦闘能力開発には乗り出さなかった。 そして、それに反発する研究者が数名いた。彼らは独自に超戦闘魔法少女達に地下戦闘能力を持たせようと研究と開発を始めた。それが超戦闘魔法少女ドリルアーム化計画の発端である。 超戦闘魔法少女ドリルアーム化計画研究書の第一ページには次のように書かれている。 「我らは巨大な翼で大空に羽ばたく少女たちよりも、ただ金属製のドリルが回転する様に浪漫を覚える――それがこの研究の唯一にして最大の動機である」 時はアップルと飛南瓜が地下での戦闘を開始する二日前、林檎と京子が保健室を訪れた時まで遡る。 「どういうつもりですか、先生。一般生徒に超戦闘魔法少女計画について話すなんて」 口を細めて、マグカップから昇る湯気に息を吹きかけている笹岡に、京子は歩み寄る。林檎の方は動揺からかその場に固まったまま、飛南瓜と笹岡を交互に見ている。 「まあ落ち着きなさい、無礼門くん。君もコーヒー飲むかい? インスタントだけどね」 笹岡の方はいつもの調子を変えようともしない。 「結構です」 「ああそう。でも、二人共とりあえず座りなさい。真面目な話はゆっくりしたいものだからね」 京子は目を細めて笹岡を一瞥した後、露骨にため息を付いて見せてから、パイプ椅子に座った。林檎は首を振って、私は立っていますと言った。普通のパイプ椅子は林檎にとって小さすぎるからだ。 いったいコレはどういう状況なのだ。林檎と京子は同時に同じことを考える。笹岡は十中八九、飛南瓜の秘密を知っている。そのことはどうやら間違いないようだ。数日前の事件、学校中の女子生徒からパンツが盗まれるという怪事件において提示された機械のことが頭をよぎる。スナックンが糧とする闇エネルギーを探査する機械。あれさえあれば、飛南瓜の秘密に感づくことは十分可能だ。そのことはすでにわかっていたし、飛南瓜にも注意を促しておいた。だが、それにしてもこの状況はおかしい。 どうして笹岡が飛南瓜に接触を図るのだろうか? 笹岡の専門は科学技術の研究及び開発だ。「政府」が笹岡にスナックンの血が流れていると把握したとして、笹岡に飛南瓜との接触任務を与えるだろうか? 戦闘能力も、交渉能力も皆無な笹岡に? どう考えてもありえないことだ。ならば、考えられることは一つである。笹岡は完全に独断で動いている。恐らく、上層部には闇エネルギー探知機が完成したことすら報告せずに、勝手に飛南瓜と接触を図っている。笹岡ならやりかねない、と二人は思った。ならばそんなことをする意図はなんだろうか。 「何難しい顔してるんだい、二人とも」 笹岡が首筋をボリボリと掻きながら言って、コーヒーを一気に飲み干した。そして机の上の瓶を手にとり、インスタントコーヒーの粉末をスプーンも使わないでマグカップに入れた。そして、足元に置かれた魔法瓶をひょいと持ち上げ、マグカップにお湯を注ぐ。 「さて、どこから話したものかね」 言いながら、笹岡は菓子皿に立て掛けるかたちで置かれた銀色のスプーンに手を伸ばした。そして、スプーンでカップの中身をゆっくりかき混ぜる。 「二人は知ってたかい? 飛南瓜君、人間じゃないってこと」 周囲の空気が凍りつく。林檎も京子も眉根一つ動かさず、目の前の胡散臭い中年に視線を送る。笹岡の方は一切気にする様子なく、マグカップに口を付けている。飛び南瓜もそれに合わせるようにコーヒーを啜る。京子は静かに口を開く。 「……笹岡先生はどこまで知ってるんですか?」 「それをこれから話そうと言ってるのに、せっかちだねえ、無礼門くんは」 無精髭を撫でながら、笹岡は笑う。すると、飛南瓜が溜息をつくように大きく息を吐いて、マグカップを机に置いた。 「失敬ですねえ、先生。僕は人間ですよ、少なくとも半分はね」 いつもと変わらない、紙風船みたいに軽薄な声だった。少なくとも、京子はそう感じた。しかし、林檎だけはその声がいつもと比べて、僅かに曇っていることに気がついた。 「先輩……」 林檎が唸るように声を出す。 「あー、いいよいいよ、二人共、隠そうとしないでも大丈夫。僕は生まれついての正直者なんだ。女の子に嘘を吐かせてまで自分の身を守ろうだなんて思わないよ」 「でも……」 「続けてください、笹岡先生、いや、笹岡博士と呼んだほうが?」 「博士、いい響きだねえ、でもまあ、好きに呼び給えよ。それに、そんなことは今はどうでもいいさ。とっとと話を進めよう。そうだね、僕は飛南瓜君が“普通の”人間じゃないってことに気づいている。何しろ彼は、闇エネルギーの塊だ。御存知の通り僕は闇エネルギーを探知する機械を開発中でね、そいつのおかげで簡単にわかったよ。ああ、大丈夫、上層部の連中はまだこのことを知らないよ。彼らは僕の研究になんて微塵も興味ないんだ。彼らが興味を持ってるのは結果だけさ。もっとも、僕も彼らに興味なんて全く持ってないわけだから、おあいこだけどね。話が逸れたね。とにかく、飛南瓜君については今のところ僕しか知らないわけだ。ところで、最近例の機械、闇エネルギー探知機が完成してね、給料をもらっている身としては上層部への報告義務ができたってわけさ。研究費用も落としてもらわなきゃいけないしね」 「要するに、僕を脅しているわけですね」 飛南瓜の言葉に笹岡は唇を釣り上げる。 「平たく言うとね」 飛南瓜と笹岡の視線が交差した瞬間、二人の眼の色が劇的に変化したのが、林檎と京子にもはっきりと分かった。 「僕が闇エネルギー探知機の完成を報告すれば、すぐにでも「政府」は超戦闘魔法少女計画の前線に投入することだろうね。仮にそうでなくとも、とりあえず、試用ぐらいはしてくれるだろうさ。そうなれば、君の生活は確実に崩壊するね。研究所のスナックン専門のヤツらに回されるか、そこの可愛い二人に討伐依頼が課されるか、まあそんなとこだろうね」 徐々に笹岡の口調が芝居がかってくる。 「そこで相談だ。僕は今、ある仕事を任されていてね、それを手伝ってくれるというなら、もしかしたら、君の存在をお偉いさんたちが知ることはないかもしれないね。どこかのうっかりした研究員が報告を怠るかもしれないから」 飛南瓜と笹岡は見つめ合う。僅かなときが流れた後、こんなに長い時間男と目を合わせるなんて不愉快だと言わんばかりに、飛南瓜はため息を突きながら視線を逸らした。 「いいんですか? 闇エネルギー探知機なんて便利そうなもの、早く導入したほうがあなた達の計画もスムーズに進むでしょうに」 「そのくらいは僕も考えているよ、もちろんね。闇エネルギー探知機の発明については、そのうちちゃんと報告して、ボーナスまでしっかりもらうつもりさ。そこでこいつの登場だ」 笹岡はそう言って、白衣のポケットから黒いペンダントのようなものを取り出した。 「それは?」 「このペンダントをつけると、あら不思議、君は闇エネルギー探知機に引っかからなくなる。要はチャフのようなものさ」 「チャフ?」 「電波を乱反射させて、レーダーなんかからの探知を妨害する、情報兵器の一種よ」 首を傾げる林檎に京子が説明する。 「その通り、正確に言うとチャフともだいぶ原理は違うんだが……まあ、そこら辺は長くなるから省くとして、簡単に言えばこいつがあれば、闇エネルギー探知機に引っかからなくなるって代物さ」 自分の発明に自分で対抗策を用意しているとは、と林檎は呆れる。 「なるほど、つまり僕が協力すればそれを貸してくれるというわけですか」 「その通り」 笹岡は満足気に頷く。 「僕がその気になれば今ここで、あなたを殺してでも奪いとることが出来る、そうは考えないのですか?」 「さあ、どうだろうね考えたかな、考えてないかな。でも、少なくとも今それは無理だろうね、すぐ近くに可愛らしい護衛が二人も付いているんだから」 笹岡が林檎と京子に目配せする。全ては笹岡の掌の上だと二人は同時に思った。 「わかりました、引き受けますよ。それで、僕は具体的に何をすればいいんですか?」 飛南瓜が首を振りながらため息混じりにそう言うと、笹岡は満足そうに頷いた。 「ちょっと腕にドリルをつけてくれ」 『改造手術によって腕にドリルをつけるのには無理がある。それでは超戦闘魔法少女たちの生活に支障が出てしまう。彼女たちは本当に兵器として生きることを余儀なくされ、それは超戦闘魔法少女計画の本流からも反してしまう。そこで僕が提案するのは魔法エネルギーによるドリルの具現化である。もちろん、これは誰しもが思いつく方法であろうが、しかし、それでもこれが最もリスクの低い方法であることは明白である。ただし、魔法エンジンに直接ドリルの情報をインプットすることも問題がある。物質具現化による情報キャパシティの消費は著しい。ただでさえ限界に近い超戦闘魔法少女の魔法エンジンにこれ以上の負荷をかけるのは好ましくない。そこで、外部的に魔法エンジンを取り付ける必要がある。そのエンジンに必要なときだけ魔法エネルギーを送るようにするのだ。ただし、この方法でも問題はまだ残る。いかにして外部へ純度の高い魔法エネルギーを送るかである。スナックンのような、生まれつき魔法エネルギーを操作する仕組みがあればもちろんこれは可能であろうが』――「超戦闘魔法少女ドリルアーム化計画研究書」より抜粋 つづく 次回予告 地上に戻ってきた林檎と飛南瓜。しかし、そこではレモンとダンディマウスの死闘が繰り広げられていた! 不死身のダンディマウスを倒す手段はあるのだろうか? そして飛南瓜の腕は元に戻るのだろうか!? 次回超戦闘魔法少女アップル第六話「乙女、大地に立つ!」乞うご期待!! (作・恋人が南十字星)
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/ \ /ー─、_ r6 ノリ(ハ) .(゚- ゚,,リヽ ノリ,,- o) =3 |☆ )、). ( ,(|_乂|) | 丶 / ゝ 名前:アップル 職業:Unknown(不明) 性別:♀ 年齢:??歳 種族:??族 技能:口数Lv3, 格闘Lv8 初登場:Recipe 100 チエノカジツ ~アトリエR取材前哨戦~ 本編 287 とある日アトリエRへ新たに加わった少女。やや無口。 主に店番・調合の手伝い・採取を担当。 とある理由で気配を隠すのが得意なために採取は物凄く得意。 何気にレッドのロリコン疑惑の原因でもある。 人物相関 キャラ キャラとの関係 初遭遇 レッド 雇い主 Recipe 100 チエノカジツ ~アトリエR取材前哨戦~ モランス Recipe 100 チエノカジツ ~アトリエR取材前哨戦~ リア レッドとの関係を疑われる Recipe 169 お兄ちゃん…っ!? 登場作品 Recipe 100 ├チエノカジツ ~アトリエR取材前哨戦~ Recipe 150 ├東風の旅人-第3話 Recipe 151 ├東風の旅人-第6話 Recipe 153 ├東風の旅人-第7話
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月の大きな夜だった。 冷たい風を素肌に感じながら、狭山純子は自転車のペダルに体重をのせる。昨日通い始めたばかりの、塾から家への帰り道。まだ田植えの始まっていない田圃の畦道を自転車はゴトゴト揺れながら走っていく。ペダルを踏みながら、彼女は重苦しく息を吐き出した。入学式からすでに二週間、小学生の頃とぜんぜん違う生活にも慣れ、友達も出来ているはずの時期である。 「なんでかな」 狭山は呟く。誰もそれに答えない。 彼女には友達と呼べる存在がいなかった。小学校卒業と同時に親の都合で引っ越し、誰も知り合いのいない状態で中学校に入学してしまったのだ。非社交的なわけではない。小学校の頃はどちらかと言えば人気者と言えるだろうポジションにいたし、おしゃべりも苦手ではない。だけど、知っている子と知らない子が混じり合う、中学開始という変化において、「自分だけ」誰も知り合いがいないと言うディスアドバンテージは、予想以上に大きかった。 ふと、彼女は自分の頬が冷たく濡れていることに気がついた。慌てて自転車を止め、制服の袖でそれを拭う。カフスボタンが鼻に当たり、小さな痛みを感じる。 「カッコ悪いよ」 少女の小さな声が夜の空気に吸い込まれて行った。そして、それに応えるような、べチャリと言う音を、少女は背後の闇の中に聞いた。狭山純子は振り返る。しかし、そこにあるのはただの田圃と、そこに腰をおろしている深い暗闇だけだった。彼女は再び前を見て、ペダルに足をかける。 突然、彼女の真上を巨大な影が通り過ぎた。そして、それは彼女の目前に重たい音を立てて現れる。 「何? 誰?」 彼女は声にならない声でそう問うたが、しかしそれは答えなかった。それは代わりに咆哮する。狭山の口から小さな悲鳴が漏れた。そして、自転車が倒れる音。 地面に転がった彼女の目が捉えたそれは、少なくとも彼女の知らないものだった。 四足で歩き、体の大きさは牛ほどもある。首周りには獅子のようなタテガミをはやし、犬のような、あるいはワニのような口の裂けた顔をしている。 「なんなのよ……………!」 彼女の言葉に、やはりそれは答えない。唸り、そしてぬちゃり、ぬちゃりと足音を立てるばかりである。少女は本能的に悟る。死ぬ。裂かれる。殺される。食われる。逃げなきゃ。立たなきゃ。走らなきゃ。 嫌だ。私、こんなところで死ぬの、嫌だ。友達もいない、こんな時に死ぬの嫌だ。もっといろんなことしたかったのに。おしゃれして、遊んで、働きたかったのに。彼氏だってほしいのに。こんなところで死にたくないよ。 彼女は震える身体に渾身の力を込めて立ち上がり、よろめきながらも畦道を蹴る。だが、すぐに彼女はまた倒れる。けっして震えのせいではない。別の何かにぶつかったからだ。 「痛っ!」 彼女が顔を上げると、そこにはまた得体のしれない生命体がいた。人の形をしているが、人ではない何か。硬く、突起のついた殻に覆われた何かがそこにいた。 「グシャー!!」 それが叫ぶ。背後の獅子のようなワニのような化物も同時に吠える。殻に覆われたそれは、手から生えている長い爪で、彼女の頬をつうと撫でた。頬から流れた血が、涙と混じる。 「なんなのよ、ねえ、答えてよ」 返事はない。ただそれはまるで自分を誇示するように雄叫びを上げるだけだった。狭山は目を瞑る。怪物は長い爪の生えた腕を大きく振り上げる。 「もう、やだよ」 狭山の口から諦めの声が漏れたその瞬間、殻に覆われたそれのからだが宙に浮いた。風を切り飛んで行った怪物は田圃に落ちる。そして、爆発音。熱風を感じて、狭山は目を開く。殻に覆われた怪物の姿はどこにもなかった。 「何? 今度はなんなのよ……」 「安心しな、もう大丈夫だから」 力強い、中性的な声が闇を伝って周囲に響く。狭山は声の方を向く。そこに立っていたのは、ひどく大柄な影だった。1メートル90センチほどだろうか。暗くて顔は良く見えないが、おそらく男だろう。肩幅はがっしりと広く、逆に頭は小さい。 「あなたは……」 「アップル」 人影は狭山の問に、短くそう答える。 薄暗いなか、狭山が目を凝らしてよくよく観察してみると、その人影は、赤い多数のフリルの付いたドレスのような服を着ていることがわかった。女、なのだろうか。それとも女装した男なのか。狭山の頭はますます混乱する。 「とっとと仕留めるよ」 アップルと名乗った、筋肉質な人影は、獅子型の怪物に向かっていく。一歩毎に地面を震わせるその足取りに、恐れやためらいはない。獅子のような怪物は、上半身を起こし、前足でアップルに殴りかかる。アップルは片手でそれを軽くいなす。いなしたかと思うと、すぐさま怪物の懐に潜り込み、右腕で一撃をお見舞いする。流れるような動きだ。怪物は、うめき声を上げ、バランスを崩した。アップルはそれに容赦なく蹴りを連発して、田圃の泥中に怪物の頭をめり込ませる。そして、倒れた怪物の腹に休むことなく蹴りを与え続ける。怪物の悲痛な叫びが、狭山の耳を鋭くつく。あまりに一方的な攻勢に、彼女は思わず目を背けた。 「相変わらず爽快だね」 また、狭山の後ろで聞き覚えの無い声がした。歌うような、どこか弾んだ口調だ。狭山が振り返ると、そこに学生服を来た少年が立っていた。月灯りに照らされた彼の顔は、目鼻立ちがすっきりと整い、誰が見ても惚れ惚れとするように美しかった。 「あれね、クラヴマガって言うんだよ。知ってるかい」 少年の言葉に、狭山は首を振る。 「世界で一番"容赦"のない格闘技さ。人を殺し、自分が生き抜くための格闘技だよ」 そんなことを言っているうちに、怪物とアップルとの格闘は終了していた。怪物はもはやピクリとも動かず、アップルはその腹に足をかけて見下ろしていた。 「おまえらにはシナモンを振りかける価値すらないよ」 アップルはそう冷たく言い放つと、片腕を振り上げた。そして、ぶつぶつと何かを唱え始める。すると、振り上げた腕が炎を纏い、夜の闇を明るく照らし出した。その時、初めて狭山はアップルの顔を見た。日本人離れした、彫りの深い顔、眼光鋭く力強い目つきなど、厳しい部分も多いが、しかし、その顔は間違いなく美しく、どこか可憐な、女のものだった。 「ウルトラマジカルクリーミー・超戦闘魔法・火焔大剛拳!!」 彼女は拳を振り下ろす。火柱が天まで昇る。熱気が、あたりを包む。 そして、そして怪物の巨大な断末魔が、徐々に消え失せていった。 「君、良かったね。僕らが偶然通りかかって」 美しい顔をした少年が、まるで恩を着せるかのように狭山にそう話しかけた。呆然としていた少女は不意の言葉に何も返せない。 「いいよ、お礼なんかしなくても。こっちはこっちで事情があるからね」 少年はそう言ってニヤニヤ笑いながら首を振る。 「それよりさ――」 少年は黙らない。狭山の顔と体をなめますように見てから、こう言った。 「君、処女かい?」 Bパートに続く (作・恋人が南十字星)
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屋上へ続く階段。上から射す光に照らされた踊り場にアップルと安楽音は居た。 アップルが安楽音の手を握る。 安楽音が、屋上へアップルと二人きりで行かせてくれと申し出たとき、当然のごとく皆は猛反対した。笹岡に至っては、安楽音がパンツヌスムゼと内通している可能性を指摘さえした。携帯端末の画面を見せ、安楽音から闇エネルギー反応が検出された前例があること、パンツヌスムゼの出現地点にどういうわけか安楽音の姿があったことなどを矢継ぎ早にあげつらった。だが、安楽音は今日見たことを誰にも話さないかわりに、アップルにだけ自分の秘密を打ち明けたいと懇願した。その秘密さえ守ってくれるならば、超戦闘魔法少女に関する一切を忘れる、というのが安楽音の出した条件だった。訝しがる笹岡。しかし、レモンは消耗しきり、アップルの単独任務ではパンツヌスムゼを攻略できる希望はあまりにも薄い。そして、そんな状況で安楽音は「自分とアップルの二人ならばあいつを倒せるかもしれない」と言ったのだ。笹岡が何故だと訊いても安楽音は黙ったままで、あの決意に満ちた目で見つめるばかりである。そう——この子は、ノーパン通学を認めさせたときと同じく、いつもこうして覚悟を持った瞳で自分の意思を通してしまうのだな、とアップルは思った。 手を握ったまま、アップルは安楽音の袖口に目を凝らした。そこには、ドリアンヌに襲われて出来たのであろう、小さな破れ目がある。 「血、止まったみたいだね」 アップルは、扉の明かりを頼りに傷口の状態を確認して言った。 「うん! 平気だよ、このくらい。だから心配しないで!」 ことさら元気いっぱいに安楽音が声をはずませる。その後、安楽音は少し俯き加減にアップルの顔を見上げた。 「あのさ……林檎ちゃんって、呼んでもいい?」 「ふふ、いいけど、正体バレバレね」 「……だって、さっき先輩が大声で言ってたし」 「あの馬鹿……」 アップルの眉間に皺が寄る。 「それじゃさ、林檎ちゃんに……あたしの『秘密』見せるから、よっく見ててよ」 そう言って安楽音はアップルに向き直った。 「スカートの中」 安楽音の指先が、プリーツスカートの裾にかかる。そしてそのままスカートの両端を摘み、するすると一気に持ち上げた。 アップルの視線が自然、安楽音の股間に固定される。 「——どう? 何が見えた?」 心なしか安楽音の吐息が荒くなっていた。 「え……スカートを持ち上げて、安楽音さんはノーパンだから当然……なのに……」 「——何も——見えなかったでしょ?」 安楽音の言う通りだった。安楽音がスカートをめくり上げる、白い太腿が露になっていく、そして、臍まで見えるほどに安楽音の下肢を隠すものは何もない。それなのに——安楽音の股間を含んだ一帯だけが——五感から抜け落ちたように、認識できなかった。 「これが、あたしの使える中で一番ベーシックな『力』——能力名は“虚構検閲官仮説”」 安楽音は、上気させた顔に淡い笑みをたたえ、そっと両手の指先を開いた。ぱさり、とスカートが元に戻る。 「外からの認識を拒絶する境界、“事象の地平線”を構築し、特定の領域内に絶対的不可視、不可侵の空間を作り上げる。あ、あたしは別にパンツを穿くのが苦手なだけで、露出狂ってわけじゃないから、普段はずっとこの状態を維持してるの」 恥ずかしそうに鼻を掻きながら、安楽音が言った。 「じゃあ、次はこの能力の第二段階。“事象の地平線”を可視化できるところまで強化してみる」 安楽音は、両掌を体の前に出し集中する。すると、空中にピンポン玉ほどの小さな黒い球体が浮かび上がった。アップルは目を丸くして、その球体をまじまじと見つめる。 「この状態は、要するにミニブラックホールみたいなもの。可視化された“事象の地平線”は、認識だけでなく物理的にあらゆる物質、情報の進入を拒み、また、内側にある物も絶対に脱出させない。ここまでの説明、分かった?」 「う、うん。漠然とだけどね」 アップルの返事のあと、安楽音は両腕の力を抜き、ふう、と息をついて額の汗を拭う。緊張が解けると同時に、球体は散乱して消えた。 「で、ここからが本番。次に見せるのが、あいつを倒すための最終兵器! ……と言っても、あたしも正直、実際に使ったことはないから自信ないけど。実はさ——あたしのお婆ちゃん、巫女だったんだ。お婆ちゃんだけじゃない、ずっとずーっと、あたしの血筋は先祖代々、巫女の家系だって言ってた。なんでも何百年も前に、まるで怪物と呼ばれるくらい強力な力を持った女の人がいたらしくて——っと、ごめん、こんな話してる場合じゃないね。それで——これから使う能力だけど、お婆ちゃんに方法だけ教わったの。もしも、世の理を超えた、手も足も出ないような化物が現れたらこれを使え……って」 安楽音は静かに目を閉じ、自分の頬を張って気合を入れる。次に全身の力を抜き、呼吸を整えてからゆっくりと瞼を開いた。はっきりと、空気が変わるのを感じる。そこにいる安楽音は、とても希薄でありながら、手を触れたらどこまでも吸い込まれていきそうな、一切合切を超克した存在に見えた。 「よし、準備OK!」 その言葉に、アップルは我を取り戻す。 安楽音が自分の指を噛むと、滲み出た血を垂らして床に円を描いた。 「この中に入って。絶対に外に出ちゃ駄目」 一歩、二歩、前に進み、アップルと安楽音はほとんど密着した状態となった。 「じゃあ……始めるよ」 安楽音が、ぶつぶつと呪文のような言葉を呟く。時間が経つにつれ、明らかに身体にかかる重力が変化していくのが分かる。アップルの心に、不安感が沸々と募る。しかし、安楽音は薄く目を開けて、超然とした瞳を動かさない。そして—— 血で描かれた円から、“事象の地平線”が現れ、それはすぐに球体となって二人を飲み込んだ。 「……ちゃん。……林檎ちゃん」 遥か彼方から響くような、安楽音の声。アップルの意識はまだ定まらない。 球体が周囲を包み込むとき感じた、自分の身体と存在全てが無限に圧縮されていくような感覚のせいだろうか。 「林檎ちゃん、大丈夫?」 芒とした頭で、ようやく辺りの様子が視界に入りはじめた。安楽音に抱きつかれるようにして支えられている。 「……問題ないわ。ちょっとくらっと来ただけ」 アップルは、改めて自分の置かれている状態に目を凝らしてみた。 あの狭苦しい踊り場にいたはずなのに、この空間はやけに広い気がする。さらに言えば、密閉空間にも関わらず周囲は柔らかな明かりで満ちていた。 「この中、ブラックホールって言うわりに結構明るいのね」 アップルが言う。 「うん、そうなんだ。えっと……もう大丈夫みたいね。じゃあ、急ごう」 そう言って安楽音は僅かに距離を取る。 「さっきのが紛い物のミニブラックホールだとしたら、この空間は限りなく本物に近い擬似ブラックホール。その違いは——特異点の存在」 特異点? というアップルの声に耳を貸さず、安楽音は目を伏せた。 「見て」 安楽音が、ゆっくりとスカートに手をかけた。静かに、少しずつスカートをたくし上げる。その瞬間、眩い輝きが溢れた。 スカートの内側に“事象の地平線”はなく、膨大な光量で満たされている。 「ここが、特異点。無限の可能性を生み出す場所。さあ、あなたがこの場所から選び取るのは何?」 安楽音は、落ち着いた声を響かせると、アップルの右腕に手を添え、自らのスカートの中へ導いた。 「え? え?」 「あなたの『意思』と『解釈』する力があれば、あなたはここから何でも選び取ることができる。それが例え、多世界の怪物を倒す『力』や『武器』であったとしても——望みさえすれば、あなたは何もかもを掴み取れる……んっ……!」 ぐいっ、と突然強い力で引っ張られ、アップルは右手をスカートへ入れたまま体勢を崩した。 気が付けば、アップルが安楽音を押し倒したような形になっていた。 アップルの右腕は、肘まですっぽり飲み込まれている。 「ん……はぁっ……! は、早く……んんっ……あんっ……まり……時間ないか……らあっ……!」 安楽音が小刻みに身体を震わせ、息も絶え絶えに急かした。 どぎまぎしながら、アップルはありったけの平常心をかき集めて精神統一する。 私が望むもの……奴を……あの怪人を、多世界ごとぶった斬れる武器が欲しい! そう強く念じた瞬間、何かがアップルの指先に触れた。 「ひゃうんっ! しゅごいの来たあああああっ!!!! もっと、もっと……奥うううううっ……!!!!」 思いきり背中を仰け反らせて、安楽音が叫ぶ。小さな腰が前へ後ろへ跳ね回った。 アップルの爪が何度も硬い物に当たるのだが、なかなか掴めない。 「くっ、このっ。もう少し深く手を突っ込まないと駄目みたいね……えい」 「アアア、アアアアアアアア、凄い。来ます、来ます、トランザムが。だめ、死にます、死んでトランザムります、トランザムっちゃうよお、アア、アアアア、黄色いオポッサムと、紫色のオポッサムが、絡み合って、だめ、だめ、トランザムっちゃう、トランちゃん、トランちゃんなの? え、ザムさん? うそ、そんなの、だめ、死んじゃ……ん……んごほおおおおおおお!!!! は、ハバロフスクぅぅぅぅぅぅ!!!!」 安楽音が人として終わりかけている。 アップルは無造作に、ごりごりと丸太ほどはある二の腕までを突き刺し、棒状の何かを握りしめた。 「あった、これね。どうやら武器の柄のようだわ」 その大きな掌でやっと掴める太さの持ち手を、アップルは力任せに引き抜く。 ずる、と先端が安楽音の股間から現れた。しかし、どこかに突っかかって全体が出てこない。 「ヒッヒッフー、ヒッヒッフー」 安楽音がラマーズ法の構えに入った。 気合一閃。アップルが両手を使い、渾身の力で手繰り寄せた。めりめりと、何かが裂ける音が鳴りひびく。安楽音は白目を剥き、穴という穴から液体を噴き出し、狂ったように腰を痙攣させる。 「出た!」 ようやく、“多世界の生き物を一撃で葬り去ることのできる武器”の全容が現れた。 それは、超高密度のエネルギー体であり、巨大な戦斧の形をしていた。 武器の出現とともに、空間の壁に裂け目が生じた。擬似ブラックホール空間が崩壊を始める。 「の、の、能力解除ぉ!!」 腰を突き上げた格好で朦朧としていた安楽音が、急いで空間を打ち消す。二人を包み込んでいた球体が消えると、そこは元通りの階段の踊り場だった。 「行って! 外界で武器が形を保ってられるのは、そんなに長くないはずだから!」 安楽音が壁にもたれながら、アップルを促した。 「了解よ、大体どのくらいか分かる?」 「持って30秒」 「十分だわ!」 アップルは一足飛びに階段を駆け上がり、屋上へ飛び込んだ。だが、そこでアップルは立ち尽くす。 「……いない……! 奴が……どこにも……!」 やはり、神出鬼没のパンツヌスムゼを倒すことは不可能なのだろうか。全身に悔しさが溢れる。 「林檎ちゃん!」 安楽音が、ふらつく身体で扉の手前まで来ている。 「……あたしがさっき怪物達に襲われたの、偶然じゃないと思うんだ。あの場所——校舎の下であたし、能力を使いこなす練習してたの。だから、その、闇エネルギーってやつに反応してあいつらが現れたんじゃないかな。今残ってる力、全部あげるね。もしかしたらあたし、二度と力が使えなくなっちゃうかもしれないけどさ」 安楽音が右手を前に向けた。空中にミニブラックホールが作られる。ふわふわと宙を漂う球体は、屋上の真ん中まで行き、破裂した。そして、暗黒の光とでも言うような激しい放射を生み出した。 「あ、すんません」 放射に照らされ、ばつが悪い顔をしたパンツヌスムゼが現れた。 アップルは全身全霊を込めて戦斧を振り下ろした。 パンツヌスムゼの身体は見事に真っ二つになり、衝撃のあまり様々な部位に爆裂を生じた。その虐殺は、億兆個を遥かに上回るすべての多世界で同時に行われた。 アップルが距離を詰める。確実な止めを刺すために、量子の一粒すら残さず、この世界から消し去るために。 「ウルトラマジカルクリーミー・超戦闘魔法・火焔大剛拳!!」 途方もない大きさの爆炎が上がった。地上に居る笹岡達も、すぐにそれが勝鬨の狼煙だと気付くだろう。 アップルは振り返り、安楽音と視線を結ぶ。 安楽音は、少しだけ寂しそうな顔をしてから、いつものように柔らかく微笑んだ。 「ありがとう、安楽音さん。あなたがいなかったらきっと……」 アップルと安楽音が歩み寄る。すると、空が急に暗くなった。二人は驚いて空を見る。 ふわり。 ふわり。 アップルの、安楽音の身体に、たくさんの真っ白な布切れが舞い降りる。 「これ、狭山純子って書いてある」 安楽音が布切れの一枚を手に取って言った。 「奴の……いたちの最後っ屁ってところかしらね」 アップルが、また眉間に皺を寄せる。 ふわり。 ふわり。 ふわり。 舞い降りるパンツは、絶える様子がない。 「こりゃあ、後処理は公安に押し付けるしかないな……」 地上では、笹岡が空を見上げてぼやいた。 尚も空を舞うパンツは、牌ヶ原市を広範囲に埋め尽くし、地平線の彼方へ届くほどに降り注いでいた。 次回予告 秘密裏に発動していた「超戦闘魔法少女ドリルアーム化計画」。その実験体に選ばれたのは飛南瓜だった! こんな格好悪い装備はイヤだ!! 泣いて懇願する飛南瓜! 時を同じくして牌ヶ原市の地下では謎の地底怪人が胎動を始めていた! 牌ヶ原市の平和を守れるのは君だけだ! 今こそ立ち上がれ飛南瓜!! 次回、「天に星、地に乙女、人に愛」乞うご期待!! (作・見る目なし)
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たばこを吸うのはやめた方がいい たばこを吸うのはやめた方がいい。 とにかく、あれはなんで売っているのか理由がわからない。 あんまり、ああいう物を販売するべきでないと私は思う。 自分は日本たばこ産業が、堂々と売っているので、べつにそんなに気にしないでたばこを吸うようになったけど、禁煙した今思えば、部屋についたニコチンの掃除とか、血液の汚れや内臓の汚れとか、他の人に与える影響まで考えたらそんなにいいものでもないし、どちらかと言えば死に近づく悪い物のはずで、なぜ、あそこまで堂々と販売されるのか、全くわからない。 絶対に吸わない方がいい。 二年で肺がきれいになると言う人がいるけどあれは嘘だ。 歯茎の黒ずんだのだって、なかなか取れはしないし。 見たら全然だし。 始めから吸わないに限る。 http //www.computergamingheadsets.net/
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円く、紅いセロハンを景色に重ねたふうに見える、熱量の塊。 綺麗だ、と安楽音は思う。 その熱源の中央で、アップルは不敵に笑っていた。 間合いに踏み込んだものは灰と化し、怖気付いた敵が距離を取ろうとしても尚、攻撃から回避へ転じる瞬間に必殺の一撃を打ち込むことは容易である——アップルは、そう考えていた。 ふいに、アップルを悪寒が襲った。 それは、昨日の朝礼で味わったあの感覚。 それは、つい先ほど感じたもの。 その正体を、アップルはようやく理解した。 “視られている”ということ。それは、大蛇に見据えられて身が竦むような、“視線”という脅威だった。 視られている。視ている。どこから? アップルの脳裏から先刻の考えのすべてが吹き飛んだ。それらは、今となっては浅はかすぎる思惑。アップルはただ、視線を感じる方、邪視の根源へと鉾先を向けた。アップルを囲んでいた灼熱が右の拳へ集中し、恐ろしいほどの熱風を放つ。アップルは、その拳を無我夢中で打ち下ろした。 拳を振り抜くのと怪人が眼前に実体化を始めたのは、ほぼ同時であったとアップルは記憶している。だが、それを確かめる前に強烈な光がアップルを襲った。 閃光。そして僅かな空白のあと、アップルの視野に色が戻る。 「テメェェェ!! どんな鍛え方してやがんダァ! どてっ腹に大穴が空いちまったじゃねえかヨォ!!」 手負いの獣のような、駄々を捏ねる子供のような、下卑た声が轟いた。アップルの目の前で実体を取り戻した怪人。その腹部には、まるで空間ごと削り取ったように見える拳大の穴が穿たれ、ぽっかりと向こう側の風景を覗かせていた。だが、その空洞は見る見るうちに元通りの姿へと再生してしまう。 「お前の動き、『誰にも捉えることはできない』んじゃなかったのかい」 敢えて気丈に、アップルが言う。 「クヒャヒャヒャッ! そんな格好で強がっても無駄だゼェ!」 怪人が突き出した鉤爪の先。淡いベージュ色をした、数千度の熱にも耐えると言われる“超戦闘魔法少女アップル専用・超耐火ショーツ”がひらひらと揺れていた。 「なん……だと……?」 しばし、アップルは茫然としながら、様々な推論を駆け巡らせた。先程より、片時も地表から両足を離すことはなかった。なのに、下着が奴の手に渡っている。その事実から考えられるのは——。 物質転送。 催眠。 時空間歪曲。 因果律反転。 超次元的干渉。 笹岡が使うような、しち面倒臭い表現を当てはめるならこんな所だろう。アップルには、そのどれもが真に迫っているようにも思え、そのどれもが正鵠を射ていないようにも思えた。 思考の牢獄に陥ったアップルがふと横を見ると、少し離れた場所に、背後を凝視したきり複雑な表情で固まっている安楽音がいた。 後ろから、誰かの駆けてくる足音。 「林檎ちゃん、新しいパンツだよっ!!」 掛け声とともに、真新しい純白の下着が力一杯放り投げられた。 宙に投げ出された下着はやがて空気抵抗を受け、緩い放物線を描いて、ふわり、アップルの手元へ着地する。 「先輩……」「先輩……」 呆れ顔のアップルと安楽音、その視線の先にあるのは、購買部で余りまくっている校章入りパンツを両手に抱えた飛南瓜の姿だった。 「予備はいくらでもある、だから安心して戦ってくれたまえ!」 一点の曇りもない飛南瓜の声は、空に吸い込まれた。 その残響が消えぬ内、ほどよく弛緩していた空気と対照的な、凍えるほどの冷気が通り抜けていく。茶番に気を散らしていた怪人の足下が氷で覆い尽くされるのに時間はかからなかった。次いで、幾本もの円錐形をした氷柱が怪人の体躯目掛けて飛来し、大小の氷柱がその体を次々に切り裂き、貫く。背後には、北校舎の壁面を悠然と歩く人影。その肢体を躍らせて、翔んだ。 「あなたには後悔する時間も与えない」 空中へ踊り出たレモンは、狂おしいほどの怒りを潜めて、冷ややかにそう言った。 高く上げられた細い腕、その先に、北大西洋から氷山の一角を持ってきたような大きさの氷の塊が現れる。 「今すぐパンツを返して死ぬか、死んでからパンツを返すか、二つに一つよ」 レモンは躊躇なく、背中を思いきり反らして氷塊を怪人へ放った。 怪人は背後から迫りくる氷塊に一瞥もくれぬまま、翼をはためかせ身体を宙へ浮かせた。誰も認識できぬ速度で両足は氷の束縛から離れ、氷柱で貫かれた痕跡は跡形もなく消えていた。 氷塊との激突の間際、怪人の身体が、また二重三重の揺らぎを見せた、次の瞬間——その場に居た全員は、怪人が巨大な氷の塊を「すり抜けた」ようにしか思えなかった。氷塊が全身を押しつぶしたと思ったときには既に、怪人は氷の反対側から上空へ向かって飛び出していたのだ。 「トンネル効果ってやつダァ。よく覚えときな嬢ちゃん」 レモンの上を取った怪人が両腕を振り下ろす。不意を突かれ、防御が間に合わなかったレモンは、氷の砕け散る地面へ向かって叩き落とされた。 「危ない!」 すんでのところで飛南瓜がレモンを抱きかかえる。 体勢を戻しながらレモンが空を見上げると、怪人の姿は消失していた。何かが体を通り過ぎたような感覚だけを頼りに振り向くと、薄ぼんやりとした形で実体を成しつつある怪人の後ろ姿があった。 誰一人として息つく時間もない間に、アップルだけが敵を十全に捉えていた。 滑空した姿勢で地面すれすれを飛ぶ怪人の頭を、渾身の力でアップルは地面に叩き付けた。地表はえぐれ、赤土の焼ける匂いが立ち篭める。 アップルの一撃で怪人の肩口から上は微塵も残らず吹き飛んでいた。 「こいつが姿を消している間……厳密に言えばこいつの『気配』は存在していない。ただ粘り着くような『視線』だけが位置を知る手掛かりよ。そして実体化の瞬間、そこが最大の弱点。その瞬間に攻撃を合わせれば、こいつにも打撃を通すことが可能になる」 大きく息を切らせてアップルが説明する。今の攻撃で随分と消耗しているようだ。 「殺った……のか?」 飛南瓜が、信じられないという様子で訊く。 「バカ言わないで。頭を潰されて生きているなんてプラナリアかサナダムシくらいのものだわ」 人指し指をぴんと立て、たしなめるような口振りでレモンが言った。 その、上を向いて尖った端正な鼻先を何かが翳める。落下してきた物はそのまま、レモンの指にすとんと引っ掛かった。木綿の柔らかな布地の上にファンシーなクマの顔がプリントされたそれは、いかにも女子児童受けしそうな下着にしか見えない。 「なっ……なっ……なっ……何でっ」 絶句して、耳まで顔を紅く染めるレモン。 あたふたしている内にも連続して空中から落下物が現れ、レモンの頭や両肩には、ウサギ、パンダ、ヤンバルクイナなどの図柄も華やかな下着がたちまち降り積もってしまった。 逆上したレモンは、氷結させたそれらの下着をストンピングの連打で粉砕する。 「ふぅ、みっともねぇナ……たとえ証拠を隠滅したって『可能性』は常に重なり合い、存在し続けるんだゼ」 声がした。地に臥していたはずの屍体は、とうに影へ溶け込んでいた。 「この声……! なんてこった、奴は不死身なのかよ!」 飛南瓜が落胆を隠せずにかぶりを振った。 「不死身? いいや、さっきまでの俺はそこでちゃんと“死んでる”、もっとも——お前らにゃそれを認識する手段がないだろうがナ」 アップルは、一向に姿を見せない怪人の言葉に耳をそばだてながら思った。この声は果たして、今まで戦っていた怪人と同じものだろうか。確かに、傲岸不遜な喋り方や声色は一致している。しかし、以前の粗野で下品な口調は影を潜め、代わりに知性が加わったような、そんな印象だ。 「——例えば、この俺を殺したいならすぐにでも可能だゼ。そこのデカい女が言っていた方法でナ。だが、俺を殺すと同時に、世界には『殺された俺』と『殺されなかった俺』の存在が重なり合う。お前は、たまたま『俺を殺すことのできたお前』であるだけで、依然『俺を殺せなかったお前』という確率を消せはしない。そうして宇宙は、あらゆる可能性を孕み、無限に膨張していくのサ」 「へえ、その世界の重なり合いとやらが、あんたには視えるとでも言うのかい」 アップルが問う。 「クククッ、随分物分かりがいいネェ。勿論サ。おっと、自己紹介がまだだったナ——俺の名は、パンツヌスムゼ!! 多世界を認識し支配できる唯一にして無二の存在、それがこの俺様なのサァ!!」 目も眩む稲光が走った。強烈な光に照らされ生じた影から、パンツヌスムゼの黒々とした体が現出した、全身に電光を纏ったその姿は、これまでとは明らかに異なる、見るものを無条件に威圧する威容を備えていた。 「俺はさっき殺られちまった個体とは随分遠い可能性の存在なんでナァ、『パンツヌスムゼ′』とでも呼んでいいんだゼ」 「ダッシュ? じゃあその次は′TURBOか? スーパーか? それとも、レインボーかな?」 いつの間にか、笹岡が居た。眼鏡をくいくい上下させて稲光を漏らさず受け止めている。 「ひとつ言わせてくれ、我々にとって君と戦うメリットなど存在しない! というか、そもそも君みたいなのと戦っていたらキリがない! 多世界だと? 多世界解釈なら私も知っているがね。君が多世界を『認識』できると言ったのはなぜだ? 多世界解釈に則れば、分岐した世界を相互に観測することは不可能だ、なぜなら世界が枝分かれした時点で異なる状態ベクトル間の干渉性は喪失してしまうのだからね。ヒルベルト空間において直交する状態ベクトルの時間発展が記述される限り、我々は時間や、純粋状態から混合状態への遷移に対して常に不可逆的な存在でしかあり得ない。そこでもし可逆的な存在として振る舞えるとすれば、それはこの宇宙における、より高次な存在ということになるだろう。そもそも、人の『観測』によって波束の収縮が生じると定義したコペンハーゲン解釈に対し、観測者である人間もまた量子的存在であると主張したのが多世界解釈だ。無論、多世界解釈でも人が複数の可能性の内、どの世界を観測するかを任意に選ぶことなどできないし、全ての人間は自分が『たまたま』観測した世界を歩いているんだ、君が重なり合う多世界を認識できると言うのなら、君は量子的存在を超えた——高次の存在でない限りは辻褄が合わない、しかし君は私の『観測』からすると非常に量子的な存在に見えるね。どうなんだい、この辺? 腑に落ちないんで質問に答えちゃくれないかね?」 笹岡の長台詞を聞き流してアップルは、クロッカスとクロックスは似ている、なんてことを思っていた。 「クックック、お前の垂れた講釈こそ、この俺が高次元の存在である証明そのものだゼ。この俺は宇宙の頂点に立つ存在! あらゆる分岐点を認識し、分岐によって生まれたあらゆる多世界を認識し、あらゆる場所に偏く存在できる者! この世界での存在確率を限りなくゼロにして移動することも、量子状態を自在に操ってトンネル効果を起こすことも、ダメージを多世界の自分と置き換え自己再生することも、この眼で視た物質を自由な空間上に移動させることも、なんだってできる! こんな風にナァ!」 パンツヌスムゼが両手を広げると、爪の先にフラミンゴ柄の下着が現れた。 「あ゛あ゛っ」 レモンが目をひん剥く。 「さ、さ、笹岡先生! こいつの言ってることは本当ですよ! さっきだって私のパッ、パッ、パッ、パンツを」 なりふり構わずにレモンが喚き散らした。 「うーん、私にはまだ納得が行かないのだがね。まあ、闇エネルギーの未知の特性ということにでもしておこうか」 笹岡が、パンツをしげしげと眺めながら言う。 「くそっ! 貴様……これだけの能力を持ちながら、やってることはパンツを盗むだけだと!? 才能の無駄遣いにも程があるぞ!!」 朝からパンツ消失事件に腹を立てていた飛南瓜が食ってかかった。 「無駄遣いだト? 違うネ。これこそが俺の力を存分に活かした崇高な行為! 『パンツを盗むだけ』ではない、俺は全ての可能性を見通し、パンツを剥ぎ取ることでその人間の本質を露にするのサ。その女もそうだったろう? 少女趣味の下着を白日の下に曝されたときの動揺、醜態。まさに人間の本性ダ。仮面を被ったままのうのうと生きている人間どもは、自らの醜悪さに気付かない。そんな人類を目覚めさせ、世界全体をあるべき姿へ導く、それが俺の偉業であり覇業というわけダ! 全ての人類はパンツを脱げ! 俺がこの目で内側を覗いて覗いて覗いて! ねぶってねぶってねぶって! 睨め回し尽くして新たな楽園へ連れていってやるゼ!!!!」 飛南瓜は狼狽した顔で目を伏せた。だめだこいつ、早く何とかしないと。 「ふーん。あなたの言ってること、あたしは肯定できないな——」 口を挟んだのは、安楽音だった。 「なんだト? 黙ってナ、小娘!」 「——あのね、あなたの言う本質ってやつのこと」 安楽音は引き下がらない。 「だって、人の本質や可能性って言ってみればブラックボックスじゃない? そんなに簡単に分かるもんじゃないよ。あたしができるのはそんなブラックボックスに『こうだったらいいな』とか『こうかもしれない』っていう解釈を当てはめるだけ。逆に言えば、解釈の数だけ本質、可能性は存在するんだ。間違ってるかもしれない。正しくなくたっていい。でも、そうやって少しずつ、自分や他人を理解していくしかないんじゃないかって、あたしは思う」 目を逸らさずに放たれる安楽音の言葉。その瞳はパンツヌスムゼと並ぶか、あるいは凌駕するほどのどや感を携えている。拮抗するどや感とどや感の競演、その調べは誰も聴いたことのない交響曲を奏でていた。 「チッ。蒙昧な野郎どもに話しても無駄だったようだナ。おいメガネ! お前は俺と戦うメリットがないとか言ってたが、それはこっちの台詞ダ! この俺にとってお前らは無数にある多世界の中の塵芥なんだヨォ! いちいち相手してたら覇業の達成が遅れちまうゼ! アバヨ!」 パンツヌスムゼが大きく翼を開き、飛び上がった。 「あっ、奴が逃げるぞ」 飛南瓜が叫んだ。 アップル達が追いすがり、空を見上げた矢先、頭上から大量のレンガや石畳のブロックがばらばらと降り注いだ。アップルとレモンは落下するそれらを素早く打ち砕く。粉々になった破片が充満する中で、一同はパンツヌスムゼの姿を追った。 「ゲホッゲホッ。畜生、目眩ましだ。これじゃあ奴の姿が見えないじゃないか」 咳き込みながら飛南瓜が周囲を確認する。その時、ばちばちと何かがショートするような音と共に閃光が瞬いた。 「まさか……! おい……まずいぞ……!!」 飛南瓜の声と同時に電光が走った。 「チッ、こっちが本命だったってわけ!?」 太く束になったビーム砲の如き電流が迫っている。レモンは吐き捨てるように呟くと、電撃を目視するより早く、身の丈の倍ほどある大きさの氷の壁を展開した。 「長くはもたない……今の内に遠くへ!」 必死に電撃を食い止めるレモンを一人残し、アップル達は粉塵の外へ転げ出る。直後、氷の壁が消えた。そしてアップル達の真上に横倒しになった氷の壁が出現した。 「こんな物の位置まで動かせるってのかい!?」 アップルは両手を氷に当て、一気に蒸発させた。レモンが二個目の氷の壁を生成しようとする。が、迅雷となって迫る電撃の前に動作が追いつかない。 「ぐぅっ!!」 雷に匹敵する電流を受け、レモンの身体は強かに痙攣を繰り返し、地面にくずおれた。アップルが思わず駆け寄ろうとするが、笹岡が制止する。 「だ、大丈夫よ……超戦闘魔法少女はそんなに柔じゃないんだから」 レモンは膝をつきながらもサムズアップし、そう言って軽く笑ってみせた。笹岡も一瞬、表情を緩ませるが、すぐに周りの状況に気付いた。 「待て、奴の姿は?」 気配は、とうに消えていた。あの厭らしい視線も今は感じない。 「出たり消えたり、本当に面倒な相手だわ」 「こちらには一般生徒もいた、被害が最小限で済んだのはレモン君に感謝しなければな。しかし……奴の存在は既に何処かへと拡散してしまったようだ」 「拡散……? そうだ……先生! あの端末は!?」 飛南瓜が思い出したように言った。 「……なるほど、奴の波動関数が拡散したというのなら、再び闇エネルギー探知機で確率分布を捉えることができる。だが、ぬか喜びはするなよ。先程のように存在確率が分かったとしてもすぐに奴を目視できるとは限らんからな」 そう言いながら、笹岡は嬉しそうな手つきで懐から出した携帯端末を操作する。猛スピードのタッチを続けたあと、笹岡が顔を上げ、微笑を浮かべた。 「——出たぞ。ここから一番近い地点を示そう」 全員が固唾を飲んで耳を傾ける。 「場所は、北校舎の屋上だ」 Bパートに続く (作・見る目なし)
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分類:素材 大きなフルーツの木から稀に入手可能 画像 SPアップル2 銀のマカロン1 SPメガアップルヘッド SPアップル1 アップルソース2 SPアップルブーツ SPアップル1 アップルソース2 金のマカロン1 SPアップルドレス