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よく分からない状況だが、とりあえずなんだか素晴らしくヤバイ気がした。 何故って人間が飛んだりする訳無いからだ。そりゃなんか飛びそうな奴らがイタリアにはいたけどさ! そこで私は行く宛もないが逃亡を試みた。が、やっぱり銀髪に捕まった。私を抱えると奴は先を行く小娘の後ろを歩き出した。 何処へ行くつもりだ。離せ!寄生してた分際で宿主に背くか! 私はもがいたが、所詮亀は亀だ。勝てる訳がなく、自分の力では奴から逃れられないのを悟った。 -何?役立たず独身銀髪眼帯男から逃げられない?逆に考えるんだ。『寝ちゃえ』と考えるんだ- …神の声に従い、抵抗するのを止め睡眠態勢に入りそのまま寝ることにした。よくよく考えてみれば、餌が食えればそれでよかろうなんだな……どうせ……今……やることも…………無い………しな………… 目を覚ますと何処かの部屋に連れて来られたようだった。ちょっと前、あのコロネやワキガ男達が暮らしていた部屋に似ている気もするが、やっぱり違う。 大体こんなベッドなんかなかったし。そのベッドの上に例の小娘が、椅子に奴が座っていた。 私が見るまでずっと話していたらしく、小娘は欠伸をした。どうやら眠くなったらしい。 …寝る?確かにベッドはある。しかし、この部屋には一つしかない。まさか恋人じゃないんだし一つのベッドに二人で、なんて事はないだろう。 かと言ってソファなんて物も無い。ということは…まさか… 私は奴を見た。奴はこっちを見ていた。こいつ、私の中で寝る気だ! -私にも拒否権があっても構わないはずだ。というか見返りをもらう資格があってもおかしく無いと思う。つーかよこせ。利用させてる私に感謝しろ。 しかしそのような声が届く訳無く、勝手に利用しやがった。この寄生虫が。 何か一悶着あった後、奴は私の中で熟睡しだしたが、小娘の方はベッドの中で震えていた。何かぶつぶつ言っているので近寄ってみる。 …詳しくは聞き取れなかったがどうやら何かあの役立たずに怒っているらしい。 しばらくすると小娘はそのまま寝てしまった。寝間着に着替えろよ、とつっこみつつ、私は床で寝る気になれないのでのそのそと動きだし、 小娘のベッドの上に載った。そこまで行くとまた睡魔が襲ってきたので、再度寝ることにした。 -別に私以外の誰かがどうなろうと知った事じゃあない。私は私の生活を営むだけだ。…ただ、感謝とかはされたいがな…。つかしろ。 うとうとしながら、そう考えた。 To Be Continued...
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「どうやら、追いついたみたいだぜ。」 アヌビスが立ち止まってしまったブチャラティを前にして言う。 (クソッ!こいつに会う前に桃色の髪の女が放った爆発で食らったダメージが残ってるな…。 コイツが人並みはずれた丈夫さを持っているとはいえかなりまずいかもな。) ブチャラティが待ち構えていた場所は何の変哲もない広場だった。 辺りに細い柱が数本立っているが、流石のブチャラティもこの柱には隠れられそうにない。 これと言って罠を仕掛けている気配もなく、デルフリンガーを左手に持ってアヌビスを睨み付ける。 「さっきの女に剣を持たせて二人がかりで戦ってくるというオチはないって判断していいのか? まあ、戦いやすい場所を選んでくれたことには感謝してやるがね。」 しかし、ブチャラティからの返事はない。 その代わりにブチャラティが再びジッパーの紐で繋がった剣の刃をアヌビスめがけて左斜め上の角度から放つ。 「おっと!」 しかしアヌビスが憶えた技を真正面から使って来ても通用するはずもない。すぐさま反応『しようとした』。 しようとしたが、失敗したのだ。 不意に左から柱が倒れ、繋げているジッパーの紐を押したからだ。 凛と張っている紐は柱に押されて刃の角度が急変化する。 「うおおッ!?ちょっとばかし切れたか?」 結果、角度の関係で撫で斬る様なパワーが少々殺されてしまったような攻撃になってしまったが、アヌビスに攻撃があたる。 胸の辺りを斬られたアヌビス。だが次に反応したのは即座に距離を詰めようとするブチャラティ。 ジッパーの紐を持って鎖鎌のようにデルフを叩きつける。 アヌビスも即座に対応するが鎖鎌は不規則な動きをするのでなかなか受け辛いのだ。 数百年前ほど前に戦った時もスタンド使いでもない相手にそういう風にほんのちょっぴり手こずった事を思い出しながら言う。 「あの時も鎖鎌の不規則な動きを受けるのは苦労したぜ。最も今はその時のデータを憶えているから 対処するのはたやすいモンだがな!」 ガキンッ!!と簡単にはじき返したが、ブチャラティはその後ろからすでにスティッキィ・フィンガースを 放ってたたみかけようとする。 しかしアヌビスは冷静に対処を図った。 「そろそろとどめと行こうか?ただしこのブチャラティ抜け目ない奴。安全策を取ってからとどめといくか。 さっき背中を斬ったおかげで…。用意は出来ているッ!」 アヌビスは一歩後ろに下がって横薙ぎに剣を振るう。 一歩下がったせいでスティッキィ・フィンガースにかすりもせず空を切った。完全に空振りだった。 振るった事でさっき背を斬った時に刃についたブチャラティの血が目元に飛ばなければ完璧に大ハズレだった。 「ぐうッ!?」 ブチャラティが思わず目をつぶってしまう。 先ほどの不意打ちをもう一度やる気か。自らの感覚は次の攻撃を予測した。 しかしもう遅かった。すでにアヌビスは背後に飛んでいた。 「どうだ!この血の目潰しはッ!勝ったッ!死ねィッ!!」 声で方向を把握する。右後ろだ。 ブチャラティは対処しようと手を背中に向けようとしてやめた。 代わりに薄目で見たのは前方の入り口。 「とうとうあきらめやがったか。動かなければ楽に死ねるぜ!」 「いや、あきらめるんじゃあない。やめたんだよ。どうやらいい具合でかけつけてくれたみたいだからな。」 「あ?」 ブチャラティは上の太陽を薄目で見て角度を確かめる。 「そろそろ30分だったか。べネ。おかげで思いのほか簡単に倒せそうだ。」 不意に、後ろで何かが大きな物に叩きつけられるような物音がする。 まるで後ろの奴が『エア・ハンマー』を叩きつけられたような音だった。 やがて入り口から広場に入って来た3人のうちの一人がブチャラティに話しかける。 「間に合った、のかな?少なくとも君のピンチギリギリには間に合った気はするけど。」 「いや、十分だ。来てくれてうれしいよ。」 ウェールズ、ギーシュ、マリコルヌの三人だった。ブチャラティがわざとノロノロ時間をかけて逃げ回り、 30分後に広場にたどり着くよう時間つぶしをしていたのだ。 一人で倒せない相手なら複数の力をぶつけて倒すしかないからである。 「重ね重ねすまないがウェールズ。奴がひるんでるうちに『トルネード』を奴を中心にして作って奴を閉じ込めてくれないか。 後ギーシュ、『ワルキューレ』を出せる数全部出してくれ。…ん?お前たち少し怪我してないか?」 特にウェールズの肩にある傷はおのハルケギニアではなかなかお目にかからなそうな傷。――――弾痕だ。 肩から後ろへ銃弾で貫通している。ルイズに聞いたこの国にあると言うマスケット銃より威力がありそうな傷。 ウェールズがそこで肩をおさえながら『トルネード』でアヌビスを閉じ込めてから説明する。 「いや、少々奇妙な奴にさっき会ってね。どうも彼は誰かから逃げているようだったが…。 かなり挙動が怪しいし、服装も珍しかったからどうやらこの騒動に一枚噛んでいたみたいだと判断して尋問しようとしたんだが、 肩を撃たれて逃げられてしまった。奇妙な奴だった。銃を持ち歩いてたようには見えなかったのにいつのまにか銃をもっていてね…。」 ウェールズが肩を抑えながら言うが、彼は気がついていなかった。広場に立つ木の一本に小さく折られた紙が枝にかかってたことに。 「アイツらオレをつけているのか!?しばらく隠れて身を隠そうとしてたのによ!」 「どうやらぼくらはそうとう運が悪かったらしいな……。しかしこうやって隠れているのはいいかもしれない。 あのブチャラティ、ぼくのカンではなにかこれから先目の前に立ちふさがりそうなヤバイ奴だと言うことはよくわかったからな…。」 ホル・ホースがニヤリと笑って喋る本に話しかける。 「オレたちのスカウトを断られる場合もあるしな。どうだ?『観察』の調子はよ?」 「あと少しだ…。奴の顔色は悪い。多少の恐怖はうかがえる。あともう少しで奴の恐怖のサインを見つける ことができそうだぜホル・ホース。ところで…。」 「どうした?」 「奴のあの左手なんだけど、なんか気になるんだよな…。スタンド使いという事は奴は地球から来た人間のはずだろう。それはほぼ間違いない。 だが、だからこそあの『ハルケギニアの文字が書かれた左手』は少し不自然だと思わないか…?」 ホル・ホースが自らの目でそれを確認し、その言葉に答える。 「少し、高みの見物と行こうかね…。あのルーン、オレには見覚えがあるッ!!こいつはひょっとしたら想像以上の土産になるかもしれねぇからな。フフフ…。」 『トルネード』で閉じ込めたはいいがアヌビスが脱出の用意をしている。トルネードくらい簡単に突破できると言う事だろうか。 「ぬぅんッ!真上に飛んでしまえばトルネードなんざ屁でもねーぜッ!」 飛びぬけたと同時に辺りを警戒。閉じ込められている間に体制を直し、一気に叩きにくると読んでいたアヌビスが身構える。 予想は的中ッ!5体の青銅の人形たちがアヌビスを襲う。 「芸がねーな。いくら数増やしたって一度憶えた手は絶対使わないといってるだろーがッ!」 アヌビスがワルキューレの攻撃をテンポ良く受け流しつつ、続いて来るであろうブチャラティたちの攻撃に備えて、 おもいっきり背中をスタンドで殴られてしまった。 「ゴガァッ!!な、えッ!?なんでゴーレムからスタンドが!?」 その答えは簡単に判明した。またブチャラティだ。ブチャラティはすでにアヌビスに近づいていた。 すでにワルキューレにジッパーで潜り込んでいたのだッ!警戒されている以上、一瞬でも目をだます必要があったためである。 しかし背中を気にした一瞬が良くなかった。すかさずウェールズの一撃。 「『ライトニング・クラウド』ッ!!」 虚をついた一撃はアヌビスに見事決まるッ! 「ヤ…ベェ…!こいつら無駄なく攻撃をかまして来やがる…!マズイッ!今のでまたブチャラティを見失ったッ! どのワルキューレに潜んでいるんだ!?」 目の前のワルキューレを斬ってもブチャラティの血は吹き出ない。 2体、3体と切り刻んでもハズレばかりだ。4体目を斬ったところでアヌビスが言う。 「ということはッ!そこかブチャラティッ!」 残るワルキューレからブチャラティが出てくる。完全に虚をつけた。 「アリアリアリアリ!!」 スティッキィ・フィンガースが拳でアヌビスを叩く。手ごたえあり。勝負あった。 かに思えた。 だがアヌビスにとどめを差したと錯覚したブチャラティが気づくッ! 「ブチャラティ!叩いたのはアヌビスじゃない!影武者だぁーーーーッ!『エア・ハンマー』ッ!!」 マリコルヌが叫ぶと同時に呪文を放つッ! ブチャラティの背後を取ったアヌビスは冷静に対処しようとハンマーを切り裂く。 「空蝉の術だっ!やはりおまえの上を行ったのは!このオレだったようだなァーーーーッ!!」 ブチャラティが気づくッ!スティッキィ・フィンガースを出しながら振り返り、すでに自分を一刀両断しようと 向かって来たアヌビスを把握する! ブチャラティが白刃取りのかまえを取る、白刃取りでもないかぎり受けられそうにない。 「白刃取りも緊急回避も無駄だぜッ!緊急回避した場合は腹の辺りで斜めに払って切り裂くッ! 言っただろうがマヌケッ!このオレに憶えた技は通用しないとッ!」 「わかっているとも。だから考えたッ!新しい『策』をッ!おまえを確実に掴み取りやぶる策をッ!!デルフッ!」 「おし!『大鋏』了解ッ!!」 その時だ。デルフの刃が縦に裂ける。ジッパーでハサミのように縦に開いたのだ。 そのままアヌビスの刃に向かって掴み取ろうとする。 「こいつ!掴むものが増えたからなんだと言うんだ!すり抜けておまえの頭を切り裂けば終わりだッ!」 アヌビスがさらに前に。もう引くことなど出来ない。こんどこそ決着がつく。 だがブチャラティは引こうとしない。一歩も引かない。冷静にアヌビスに告げた。 「よく見ろ。掴み取ると言ったのはお前の首の事だッ!!」 アヌビスがハッとした。スタンドは自分を掴もうとしているがデルフの鋏は首を取ろうとしている。 断面がジッパーだから首を切断しようとしてるわけではない。 首から掴んで横に投げつけてやりすごすつもりか。 「それにしては遅すぎるんじゃあないか!?スピードが足りてない何度言わせれば気が済むんだァーーー!?」 アヌビスが自分を信じて前に踏み込んだその時だ。 バチンッ!!とアヌビスの刀を持つ手が払われる。 「え…?」 ブチャラティ自身の二つの手はデルフを持っている。スティッキィ・フィンガースの手は白刃取りしようと 前に出てるはず。 この『5本目の手』による攻撃などありえないはずだった。 「おおおおッ!!」 そのままスティッキィ・フィンガースの手がアヌビスの肩に当たる。肩からジッパーが発現する。 そしてキャラバンの意識が目覚めようとした時に最後の攻撃の正体を知った! 「こいつ…!ジッパーの能力で…!」 (確かにシルフィ…イルククゥはおかっぱさんみたいにスタ…ンド…だったっけ?それが使えたりはしないのね。 でも相手はどんどん技を覚えていくんでしょう?だったら一人じゃ危険だわ!でも協力すればもしかしたら…!) (イルククゥ。お前に言われなくともオレは奴が一人で相手をするにはいささか危険な相手だということも リスクを背負いでもしないと勝てないことも最初からすでにわかってる。だから必ず勝つためにもう一度忠告しよう。『隠れてろ』イルククゥ。) うな垂れるイルククゥ。かみ殺したような声で言った。 (お願い…。お姉さまと同じくらい私はアナタに死んでほしくないのね…。心配で手を出さずには…!) (タバサを助けたい。オレも助けたい。両方やらなくちゃいけないのがお前の言い分か? お前の覚悟を感じ取った以上、言われなくともオレはお前を最大限まで使うつもりだ。 だから言ってるんだ。隠れろと。) 「オレのジッパーは…。人間につけてその中に入る事も可能だ。それも入られた本人も違和感ないまま 動くことができる。これが何を意味してるかわかるか? つまり逆に使えば、オレの体内に人間をしまうことだって出来るということだ。」 「コイツッ!さっきの女を体内に隠してやがったァーーーーーッ!!!!」 イルククゥがタバサの杖で両手を失ったアヌビスに狙いを定めて言う。 「この杖はッ!おおおこの杖はッ!!お前がお姉さまを操って使ってた杖だぁーーーーー!!!」 ガキンッ!と音を立てて頭部に思いっきり振りかぶるッ!! 「がああああああああああああッ!!!」 「お前がいかに憶えるのが速くても…。全く予測できない技を出されればそれまで…。 お前に本当に必要だったのは、相手がどんな攻撃をしえるか予測する発想力だったようだな。 そして、ルイズの仇を今こそ取ってやるぜ。」 「うっ、うっ、うっ、うっ…!」 「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!!」 「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!」 スティッキィ・フィンガースでキャラバンに機関銃のように高速の拳を叩きつける。 その目に慈悲の心などなかった。 「ガッ!ぼっ!ぐがっ!!あがっ!バカな…!ちくしょおおおおおおおッ!!!」 「アリーヴェデルチ!(さよならだ)」 キャラバンの五体がバラバラに砕け散る。 ブチャラティがアヌビスを触らないように鞘にしまう。 そしてブチャラティの手の中でアヌビスが6等分になって完全に行動不能になった。 イルククゥはキャラバンのほうを見る。 「死んじゃったの…?」 「生かしたところで、ルイズを付け狙うのをやめるとは思えなかったからな。 こいつもルイズを殺そうとした以上、逆に殺される覚悟も出来てるだろうさ…。」 ポカンとしているギーシュとマリコルヌ。 ウェールズも息を呑んでいた。こうもあっさりと冷徹に徹したブチャラティを前にし、 少しばかり驚いていた。 しかし、直後ブチャラティがそのまま倒れる。 「おかっぱさん!?」 「大丈夫、気を失っただけだ。手当てしてやればまだ目を覚ましてくれるはずだ。」 フードを被りなおしたウェールズがブチャラティを押さえた。 「彼には、まだ聞かなければならないこともあるしね…。」 しばらくして、二人を抱えるキュルケとウェールズの率いていた小隊が追いついたのだった。 夕暮れになってからブチャラティは目を覚ました。 傷は小隊の水のメイジの魔法で少しばかり癒えていた。 「何考えてるのよアンタッ!アイツから逃げていればこんな怪我しなかったのに!」 「足のアキレス腱を断ち切られたお前には言われたくないな。」 ウェールズはブチャラティの説明を聞き、今後の対処法を練っていた。 「ああ言う変則的なスタンドは対処法があっても倒せない場合がある。勝つことよりも 動きを徹底的に封じるほうがいいだろう。自分から姿を現したりするのは近距離パワー型の能力だと判断していいから 相手のパワーに気をつけるんだ。」 「ありがとう。これからはより良く敵と渡り合って行けそうだ。ん?ちょっと待ってくれ。」 部下からなにか話を聞いて言う。 「…すまない。突然なんだが緊急事態だ。これからこの場を離れなきゃいけない。 また会えることを楽しみにしているよ。『破壊の杖』を見つけたら教えてくれ。もしかしたらアレは…。」 「…破壊の杖?」 ルイズが耳をピクリとして聞き返す。 「いや、ではこの辺で!ありがとうブチャラティ!!」 ウェールズはそのまま去っていった。 ルイズはその後姿を見て、首をかしげる。 彼の姿がなにか引っかかっているのだ。 「あの人どこかで見たような…。ブチャラティ、あの人は何者なの?」 「そういえば最後まで何者なのかわからなかったな…。まあ、いずれ会えるかもしれない。 スタンド使いって言うのは厄介なことを引き続ける代物だからな。」 その時、後ろからキュルケが抱きついてきた。 豊満な胸を押し付ける。男としては心踊るシチュなのだが。 「あーん!ダーリン!!もう心配しちゃったわよ!背中大丈夫!?」 「たった今傷口が開きそうになった。」 「もー意地悪!」 後ろから見ていたタバサは大きな杖で体重を支え、親友をジト目で見る。 綺麗な唇が開いて静かに言う。 「どっちかというと意地悪はキュルケ。」 そしてタバサがイルククゥ、もとい人間姿のシルフィードを無表情なまま見る。 無表情だからどのくらい怒っているのかわからなくて怖い。 「後で、はしばみ部屋行き確定。」 「きゅい~!お姉さま~!もうしないからそれはかんべんしてほしいのね~!きゅいきゅい!」 だがタバサは怒りが急に収まった様子でブチャラティのほうを向く。 「あなたは先に行かなくちゃいけない。彼に別れを告げるなら今。」 「あ、そうね…。きゅい。」 彼女はブチャラティに近づいた。 「おかっぱさん!」 ブチャラティは青髪の女性を見た。イルククゥともシルフィードとも名乗るこの女の子を。 「イルククゥ。どうした?」 ルイズが「そういえば結局この女はアンタとどういう関係なの?」と聞いてくるが無視し、 イルククゥは、シルフィードに戻るために別れを告げる。 「あの、その、おかっぱさん…。」 「?」 イルククゥは少しどもって、顔を赤らめるが言う。 「その、イルククゥとお姉さまを助けてくれてありがとう!」 ぺこり、と頭を可愛らしく下げて言った。 ブチャラティも普通に返した。 「ああ、こっちこそグラッツェ。お前こそ助けてくれた。」 そしたらイルククゥはもっと近づいて言う。 「えっと、人間はお礼の挨拶がわというか、ごほうびにこんなことするんだったっけ?きゅい…。」 「?」 「何?言っとくけど人の使い魔にあまりべたべたしないでほしいんだけど…。」 というルイズの制止を無視し。 イルククゥの唇がブチャラティの頬に当てられた。 一番に驚いたのはルイズだった。 顔を真っ赤にして手をばたばたさせ、「な、あ、ああ、アンタ、使い魔だって言ってるのに…!」 とうろたえにうろたえる。 キュルケもこれには驚いた。 「あら、意外と大胆じゃない…。」 ブチャラティ自身もわずかだが動揺し頬に手を当てる。 イルククゥはブチャラティに背を向けて言った。 「ありがとう!また会おうねおかっぱさん!」 そう言って青い韻竜は夕焼けへと走っていった。 タバサがそれを見て一言。 「…惚れた?」 一方、ホル・ホースたちは仲間の女性シェフィールドと合流していた。 妖艶な空気を纏うシェフィールドは少しばかり落胆したように言う。 「で?結局失敗して逃げ帰ったという事ね。ずいぶんとあきらめよく帰ってきたようだけど。」 「無論、他の土産があるからだぜ、シェフィールド。」 「そうそう。僕らも手ぶらで帰るのも気が引けたからこうやって手土産を用意したんだ。」 シェフィールドはにらんだような目で見続ける。 「そこまで言うからには相当おおきな土産なのでしょうね。」 「アヌビス神よりも大きな土産だぜ。大ニュースだ。海老で鯛を釣ったようなモンだ。 シェフィールドがホル・ホースを見据えたままだ。 ホル・ホースの次の発言を聞くまでは。 「今回調べろといわれてたスタンド使いはあるメイジの使い魔になっていた。この意味がわかるか?」 目を見開くシェフィールドをみてホル・ホースはしめたと思った。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 「何を言ってるのか…わかっているのかしら?」 「テルがブローノ・ブチャラティの左手に奇妙なハルケギニア文字に気づいてな、調べていたんだ。 奴は、インテリジェンスソードを持った瞬間、急に身体能力とスタンドパワーが上がった。 この効果は…たしか、何だったけか?」 「神の左手…ガンダールヴ…!」 シェフィールドが冷静さを崩さないように言う。 「使い魔という事は…主人は?」 「桃色の髪のレディだったぜ。学生だったようだがな。」 「おそらく、疑惑を持っていた人物の一人だわ…。そいつはおそらくヴァリエールの三女ルイズ・フランソワーズ! 想像以上の収穫をしてくれた…。」 「立場が立場だから手ぶらでは悪いと思ってな。」 ニヤリと女は笑って言う。 「流石はホル・ホースといったところかしら?この私直属のスタンド使い遊撃隊『隊長』ホル・ホースと…。」 「おれとしては副隊長のほうがよかったんだけどな。」 「いいわ。お咎めはなし。あなたには正式に報酬を与えましょう。次の作戦まで待機しなさい。」 「へいへい。行こうぜ、テル。あと、お前が隊長かわらないか?」 「本が隊長になってはまずくないか?」 一人になったシェフィールドが武者奮いをしながら笑う。 「もうすぐ…。もうすぐ作戦は始まる…。ウフフフ…。」 風が彼女の髪を捲る。 その額にはブチャラティの左手のようなルーンが刻まれていた。 キャラバン・サライ―――――死亡 アヌビス神―――――――――捕獲、宝物庫送り。 時々、夜中に「イヤアアアアアア。ユルシテエエエエエエ。」という声が聞こえるらしい。 To Be Continued...
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キュルケは戸惑っていた。パーティーと言われたからには一応の着飾りはしたが、だからと言って酒を飲んではしゃぐような気分にはなれそうにない。周りを見渡して、彼女はひっそりと溜息をついた。 アルビオン王党派最後の牙城、ニューカッスル城。パーティーはそのホールで行われていた。上座に設置された簡易の玉座に腰掛けて、国王ジェームズ一世は老いた双眸を細めて集った臣下を見守っている。貴族達はまるで園遊会であるかのように豪奢に着飾り、テーブルの上にはこの日の為に取っておかれたと思しき様々な御馳走が並んでいた。キュルケでさえ滅多に御眼にかかれないほど華やかなこのパーティーに、燃え尽きる寸前の蝋燭の炎のような儚さを覚えて、キュルケはたまらなく虚しかった。 しかし、それにも増してキュルケを当惑させたのは、ルイズ達仲間の行動だった。ルイズは悲しげな顔一つ見せず、話し掛けてくる貴族達と微笑んで会話を交わしている。ギーシュは沈鬱な顔をしている女性の元へ駆けて行っては、彼女達を笑わせていた。タバサはいつも通りの無口だが、同好の士であるのか十数人の貴族達と共にはしばみ草のテーブルを囲んで会話に興じている。ワルドも また如才なく笑顔を浮かべて挨拶に回っていた。そしてあのギアッチョまでもが、貴族達に勧められたワインを嫌な顔一つせず飲んでいた。 ――どうしてそんな顔が出来るのよ……! キュルケにはさっぱり理解が出来なかった。貴族達にも、悲痛な顔をしている者は誰一人としていない。悲しんでいるのは自分だけだとでも言うのだろうか。まるで自分だけが仲間外れのようで、キュルケはいたたまれない気持ちになった。 キュルケはもう部屋に戻ってしまおうかと思い始めたが、その時彼女の後ろから声がかかった。 「何やってるのよ、キュルケ」 キュルケは反射的に身体を捻る。腰に手を当てて、困ったような顔でルイズが立っていた。 「一人でどうしたのよ キュルケらしくないじゃない」 「……らしくないって、そりゃこっちの台詞よ」 キュルケは疲れた眼をルイズに向ける。 「揃いも揃ってどうしたのよあなた達 何でそうやって笑っていられるわけ?さっぱり解らないわ!」 無理やりにワインを飲み干して、キュルケは首を振った。 「明日全員死ぬのよ?あなた達それが分かってるの?」 「分かってるわよ」 「だったら……!」 理解出来ないという感情が、キュルケに怒りを感じさせる。珍しく声を荒げるキュルケに、ルイズはどこか優しげな声を掛けた。 「キュルケ」 「……何よ」 「明日全滅するなんてこと皆分かってるわ だけど彼らには死して何かを為す『覚悟』がある だったらわたし達がするべきことは、嘆き悲しむより彼らと一緒に笑うことよ」 わたしはそう思うわ、と静かに言うルイズをキュルケはハッとした顔で見直す。 「――…………そう……よね」 何を勘違いしていたのだろう。彼らの為の涙など、もはや溺れてしまう程に流されているに決まっているではないか。今彼らが 欲しいものは涙か?同情か?答えはきっと違うはずだ。 キュルケはもう一度彼らを見渡す。明日死ぬ身とも思えぬ笑顔で、彼らは穏やかに談笑していた。その笑顔に一片の曇りもないことを、キュルケはようやく理解する。その葛藤も覚悟も理解して、ただ笑って彼らを見送ること。彼らアルビオン王家最後の戦士達が欲しいものは、きっとそれだけなのだ。キュルケは薄く笑って首を振る。 「……まさかあなたに諭されるなんてね」 「しっかりしなさいよ、キュルケ」 キュルケを悪戯っぽく見上げて、ルイズは彼女に応えた。 衣装を整えながら、キュルケは「それにしても」と呟く。 「ルイズ……あなた変わったわね」 「……そう?」 きょとんとした顔をするルイズを見遣って、キュルケは笑う。 「以前のあなただったら、早々にここを抜け出して一人で泣いてたでしょうからね」 「なっ……それはあんたでしょ!肖像画に描かせてやりたいぐらいの顔してたくせに!」 などと言い返しながらも、ルイズは何かを考え込むような仕草をした。 その格好のまま、ルイズはぽつりと口にする。 「…………そう、かも知れないわね」 片手に持ったワインに口をつけて、ルイズはホールに眼を向けた。 中央近くでウェールズと言葉を交わしている男を見つけて、ルイズは嬉しいような困ったようなよく分からない顔をする。 「……感化されたのかしらね あいつに」 「……ギアッチョ、ね……」 キュルケはルイズに習ってホールの中央に眼を向ける。 不思議な男だった。所構わずキレる暴れる、殺人に躊躇すらない無愛想な平民。なのにルイズは、そしてギーシュやタバサまでが彼に何らかの影響を受けているように思う。恋愛感情ではないが、 キュルケもまたギアッチョにどこか惹かれている自分を感じていた。 有体に言えば――友情、だろうか。それとも、 ――友愛……かしらね? キュルケは腕を組んで呟いた。 学院の教師達よりも遥かに頼りになる男。それが彼女達の共通した認識だった。しかしそれでいて、ギアッチョには何故だか危うげな所がある。頼れる仲間であると同時に、キュルケにとってギアッチョはどこか心配になる友人だった。もっとも、友人とはこっちが、というか殆どギーシュが一方的に名乗っているだけの話だったが。 ――やれやれ……こっちのラブコールが届く日は来るのかしらね ギアッチョが自分達に自身のことを話す日は、果たして来るのだろうか。ギアッチョと共にいればいるほど、彼の正体が知りたくなる。 もしもギアッチョが口を開く時が来るのならば、それはきっと自分達を友人として認めてくれた時なのだろうとキュルケは思った。 「……ところで……あの、キュルケ」 「え?あ……何?」 思考に没入していたキュルケは、その声で我に返った。ルイズに眼を遣ると、彼女は何だか不安そうな顔で自分を見ている。 「…………その ラ・ロシェールで…………どうして、助けてくれたの?」 「へ?……え、えーと、それは……」 あまりにストレートなルイズの質問に、キュルケは思わず焦った。 今までのルイズなら、「誰が助けてくれなんて言ったのよ!」で終わりだったはずだ。やっぱりルイズは変わったと、少々混乱気味の頭でキュルケは考えた。 「…………か、考えてみれば ギアッチョを召喚した時も、キュルケが真っ先に……た、助けてくれたじゃない……?フーケの時だって……」 不安げな眼で二十サント近く身長の違うキュルケを見上げて、ルイズはおずおずと問い掛ける。 「……どうして?」 「ど、どうしてって……当たり前でしょ?あなたはと……」 「と?」 友達、と言いかけてキュルケはハッと我に返った。 「う……と……と、当代きってのライバルなんだから!」 ――あ……危ない危ない ギーシュに影響されてたわ…… 初めて自分に向けられたルイズのしおらしい言動に混乱していたキュルケは、何とか自律を取り戻した。心でほっと溜息をついてルイズに向き直ると、彼女は少し俯いているように見える。 「……そうよね わたし達、宿敵だものね……」 ――う………… しん、と二人の間が静まり返る。今まで何度も言ってきた言葉のはずなのに、キュルケは何故だかどうしようもなく胸が痛んだ。 「宿敵」というたった二文字の言葉がこれほどまでに心を抉るものだとは、今まで思いもしなかった。 優しい言葉の一つも掛けてやりたかったが、プライドと家名に邪魔をされて、キュルケは何を言うことも出来なかった。 自分もルイズと同じだということに、キュルケはようやく気付く。 二人を嘲笑うかのように続く静寂が痛い。今すぐそれを打ち消したくて、キュルケは思わず言ってしまった。 「……そうよ、こんなところで死なれちゃあなたの恋人を奪う楽しみがなくなるもの …………さ、私はパーティーを盛り上げて来るとするわ 格の違いを教えてあげるからよく見てることね」 捨て台詞のようにそう言って、キュルケはルイズの返答も聞かずに歩き出した。背中に感じるルイズの視線を振りほどくように、キュルケは足早に去ってゆく。歩きながら、キュルケは思わず胸を抑えていた。いつもと同じ売り言葉のはずなのに、どうしてこんなに胸が痛いのだろうか。答えに気付かない振りをして、キュルケはパーティーの人ごみに姿を消した。 わたしは馬鹿だ、とルイズは思う。自分は一体キュルケに何を言って欲しかったのだろう。ヴァリエールとツェルプストーとして、同じ一人の人間として今まで散々いがみ合ってきたキュルケに、今更何を言って欲しかったのだろうか。 ――馬鹿よ、わたしは…… わたしとキュルケは永遠に宿敵同士……それ以外に、わたしを助けるどんな理由があるというの? ルイズは俯いて片手のワインに眼を落とす。「宿敵」という言葉の重みを、彼女もまた痛い程感じていた。 ポロン、と澄んだハープの音が響く。耳慣れないその音に、ルイズは思わず顔を上げた。 「……キュルケ」 ジェームズ一世の御前でハープを奏でているのは、他ならぬキュルケであった。己に集う幾百の視線を物ともせずに、キュルケは優雅にハープを弾いている。その旋律の美しさに、ルイズは眼を見張った。普段の彼女からは想像もつかない繊細な手つきで紡がれる音色に、この場の誰もが聞き惚れていた。 「これはなかなか、大したものだね」 隣から見知った声が聞こえて、ルイズはそっちに顔を向ける。 ワインを傾けながら、ワルドがそこに立っていた。 「ワルド」 「彼女にこんな特技があったとはね…… それに面白い弾き方をする静かな曲だというのに、どこか情熱的だ」 ルイズは改めてキュルケを見る。正しくワルドの言う通り、キュルケの演奏には繊細さと情熱が渾然一体となって現れていた。まるでキュルケ自身を表したかのようなその音色に、いつしかルイズも瞳を閉じて聞き惚れていた。 万雷の拍手に包まれて演奏を終えたキュルケを見届けてから、ワルドはルイズに向き直った。 「ルイズ 今、少し話せるかい?」 「ええ……どうしたの?」 ワルドは真剣な顔でルイズの瞳を覗き込む。 「ウェールズ殿下が式を挙げてくれる…… 明日、結婚しよう」 「え…………」 ワルドのプロポーズに、ルイズはワイングラスを取り落としそうになった。何だかんだで結論を先延ばしにしているうちに、ルイズは結婚の話などまだまだ先だといつの間にか思い込んでいたのである。ワルドは既に明日の挙式の媒酌をウェールズに頼んでいるらしい。つまり、これ以上話の先送りは出来ないということになる。 いきなり決断を迫られて、ルイズはしどろもどろで返事をした。 「え…………えっと、その……わ、わたし……」 「いきなりで驚かせてしまったかな しかしどうしてもあの勇敢な皇太子殿に、僕らの婚姻の媒酌をお願いしたくてね」 ワルドはそこで言葉を切って、ルイズの両肩に優しく手を置いた。 「愛しているよ、可愛いルイズ 君は僕を都合のいい男だと罵るかもしれない だけどルイズ、君を前にして自分の気持ちを偽ることなんて僕には出来ないんだ」 ルイズから一瞬たりとも眼を逸らさずに、ワルドは堂々として言う。 「……受けてくれるかい?僕のプロポーズを」 「……ワルド、わたし……」 ルイズは強制的に、思考の海に引き戻された。どうして快諾出来ないのか、どうしてギアッチョが心に引っかかるのか。蓋をしていた疑問が、再びルイズの中で回りだした。自分はワルドが好きではないのだろうか?いや、それは違う。ワルドのことは好きだ。好きなはずだ。 幼い頃からの憧れは、今だって消えてはいないのだから。 ワルドとの婚姻を拒否すれば、父や母は悲しむだろう。しかし結婚してしまえば、ギアッチョはどうなるのだろうか。同じ部屋に暮らすというわけには勿論いかないだろう。それどころか、気軽に会うことさえ出来なくなるかもしれない。未だウェールズと話し合っている彼に、ルイズはちらりと眼を向けた。 ――だけど………………きっと、そのほうがいいんだわ 少し悲しげに眼を伏せて、ルイズは独白する。 この旅で解ったことがある。ギアッチョの心は、未だに暗殺者のものなのだ。彼は常に敵を殺すつもりで戦っている。ワルドとの決闘でさえも、一度はワルドの首を薙ごうとしていた。恐らくそれは、半ば以上に無意識の行動なのだろう。ギアッチョにとっては、敵は殺すものであり、攻撃は命を絶つ為のものに他ならない。そして、ギアッチョはもはやそういうことを意識すらしていないのだ。刃を使うなら首を、臓腑を、腱を断つ。拳を使うなら眼を狙い喉を潰す。 急所以外の場所を狙うという選択肢は、そうする必要がある時初めて現れる。神経、細胞の一つに至るまで、彼の心身は未だ暗殺者のそれに他ならなかった。 しかし、彼はもう暗殺者ではないのだ。いずれイタリアへ送り返す日が来るとしても、その地でさえ彼は暗殺者「だった」男に過ぎない。 ルイズはこれ以上、彼に血に塗れた道を歩かせたくなどなかった。 もう十分じゃない、とルイズは呟く。ギアッチョ自身がそう思っていなくとも、殺人という行為は確実に彼の心を蝕んでいる。 出来ることなら、ギアッチョには平穏に暮らして欲しかった。 だが、自分と一緒にいればまた今回のような事態が起こるかもしれない。自分と――いや、メイジと関わり続ける限り、争いと無関係ではいられないのではないか。ならば、とルイズは思う。 ならば、自分とはもう一緒にいないほうがいいはずだ。ギアッチョにはマルトーやシエスタ達がいる。彼らと共に生きることこそが、ギアッチョにとっての幸福なのではないだろうか。 出来ることなら、ギアッチョにはずっと傍にいて欲しい。しかし、それがギアッチョを殺人へ向かわせるというのなら。 スッと顔を上げて、ルイズははっきりとワルドに答えた。 「……喜んで、受けさせてもらうわ」 パーティーは和やかなムードのまま幕を閉じた。宴の始末をしているメイド達の他には殆ど人のいなくなったホールで、ギアッチョ、キュルケ、タバサの三人は、眼を回して床に倒れているギーシュを呆れた顔で見下ろしていた。 「…………うっぷ……」 どうやら調子に乗って飲みすぎたらしい。ギーシュは真っ青な顔を気持ち悪そうに歪めている。 「あなた船の上から酔いっぱなしじゃない しっかりしなさいよ」 「ふぁい……調子に乗りすぎまひた……っぷぁ……」 キュルケは溜息をついて隣の二人を見遣る。 「……ねぇ、これどうするの?こんなの担いで行きたくないわよ私」 「しょうがねーな……凍らせて転がすか」 「ええっ!?二つ目の選択がそれ!?」 「せめてもっと人間らしい方法を」と言うギーシュと「今のてめーは家畜以下だ」と言うギアッチョ達の間で、結論はなかなか出なかった。 いい加減業を煮やしたギアッチョはもうここに放置していくかと言いかけたが、その時タバサが何かを考え付いたように顔を上げた。 「待ってて」 と短く口にしてどこかへ行ったタバサが持って帰ってきたものは、ご存知はしばみ草のサラダだった。小皿に山のように盛られたそれを、タバサは構えるように掲げ上げる。ギーシュは真っ青な顔から更に血の気を引かせてあとずさった。 「……あはははは……じょ、冗談がキツいねタバサは…… その量は明らかに致死量を超えウボァーーー!!」 タバサの右手に構えられた毒物はギーシュの口に裂帛の気合と共に叩き込まれ、ギーシュは見事な放物線を描いて再び頭から倒れ落ちた。 ウェルギリウスと名乗る男に連れられて辺獄から氷結地獄までたっぷり地獄観光をした後で、ギーシュの意識はようやくハルケギニアへ帰ってきた。 「ハッ!?ハァハァ……こ、ここは一体!?あの悪魔は!?」 冷や汗をダラダラと垂らしながら怯えた様子で周囲を見渡すギーシュに、キュルケはこめかみを押さえてタバサを見た。 「……タバサ」 「何」 「やりすぎ」 「……修行が足りない」 「ところで君達聞いたかい?」 はしばみ草のおかげで酔いと共に抜けてしまった抜けてはいけないものが何とか身体に戻ると、ギーシュは何事もなかったかのように平然と口を開いた。 「何のことよ?」 三人を代表して、ややうんざりした顔でキュルケが問う。 「結婚だよ!さっきそこで子爵がルイズにプロポーズしてたんだ」 「……それホント?」 「本当さ しっかり聞き耳……じゃない、聞こえてきたんだから」 胸を張るギーシュを無視して、キュルケは簡潔に問う。 「ルイズの返事は?」 「……OK、だそうだよ 明日ウェールズ殿下の媒酌で式を上げるらしい」 その言葉に、キュルケは顔を複雑にゆがめた。 「何よそれ…… バカじゃないの?学院やめることになるかも知れないのよ!」 「ぼ、僕に言われても困るよ 本人が決めたことならしょうがないだろう?ねぇギアッチョ」 ギーシュが助けを求めるようにギアッチョに眼を向ける。いつも通りの読めない顔で一言、彼は「まぁな」と呟いた。 「何か悩んでる風ではあったがよォォ~~ それに自分の意思で答えを出したってんならオレ達に文句を言う余地はねーだろ」 ギアッチョは顔色一つ変えずにそう言うと、キュルケが言葉を差し挟む前にパン!と手を鳴らす。 「ほれ、てめーらはとっとと部屋に戻って寝ろ 追って沙汰はあるだろーが、式に出るにしろ出ねーにしろ朝は早くなるからな」 確かに、非戦闘員を乗せる船の出港は早い。睡眠を取っておかなければ、最悪アルビオンに骨を埋めることになるだろう。 まだ不服そうな顔をしているキュルケを促して、ギーシュはホールの出口へ向けて歩き出す。タバサがその後をついていくが、 「タバサ、てめーは残れ」 ギアッチョの言葉で、彼女はぴたりと足を止めた。次いでギーシュとキュルケも彼を振り返る。 「ギ、ギアッチョ まさかとは思うが君、そんな趣味が」 全てを言い終える前に、ギーシュはウインド・ブレイクで扉の外へ消え去った。 「意外と荒っぽいことするわね」 「口は災いの元」 殊ギーシュに関しては正にその通りだと思いながら、キュルケはギアッチョに顔を戻す。 「で、私達がいるのはお邪魔なわけ?」 「そうだ」 即答されてキュルケは少し驚いた顔をしたが、ギアッチョがそう言うなら仕方ないと判断して、少し唇をとがらせながらも頷いた。 「……そう言うならしょうがないわね じゃ、私達は先に戻ってるわ」 片手をひらひらと振って、キュルケはあっさりと歩き去った。 彼女が扉の向こうへ消えたのを確認してから、タバサはギアッチョを見上げて口を開く。 「……何?」 廊下に大の字になって伸びているギーシュを見下ろして、キュルケは溜息をついた。 「なんなのよ、もう……」 「ギアッチョのことかい?」 言いながらギーシュはむくりと起き上がる。 「……ルイズのことよ どうしてこんなに慌てて結婚しなくちゃいけないわけ?退学することになるかもしれないしギアッチョとも疎遠になるじゃない!」 「全くだね 薔薇は多くの人を楽しませる為にあるというのに」 「……あなたが言ってももう何の説得力もないわよ」 造花の杖をキザに構えるギーシュをジト目で睨む。なんだかバカらしくなって、キュルケは更に一つ溜息をついた。そそくさと薔薇の杖をしまうと、ギーシュは急に真面目な顔でキュルケを見る。 「……学院に居たくないということも、あるのかも知れないね」 「……え?」 「だってそうだろう?学院内に自分の味方が誰一人いない状態で、僕はむしろよくルイズがここまで頑張ってこれたと思うよ」 「そ、それは違うわ!」 慌てたように言うキュルケに、ギーシュは困った顔で笑う。 「そう、違うよ。僕達はもういつだって彼女の味方だし、先生にもルイズをなんとかしてやりたいと思っている人だっているはずさ。 だけどルイズは、きっと言わなきゃそれに気付けないんだ」 「……私は――」 「……ねえキュルケ そろそろ素直になるべきじゃないのかい? 両家の確執は僕にも分かるよ だけどルイズはルイズで、君は君だ。そうだろう?」 答えないキュルケの瞳を覗き込んで、ギーシュは続けた。 「これが最後のチャンスかもしれない 彼女に会いにいこう、キュルケ」 キュルケは言葉もなく立ち尽くしている。ギーシュもまた、他に言うことはないという眼で、無言のままキュルケを見つめていた。 重い沈黙が場を支配する。ほんの数秒、しかしキュルケにとっては無限のように感じられた数秒の後、彼女は苦しげな顔を隠すようにギーシュに背を向けた。 「………………私は、あの子の友達なんかじゃないわ」 絞り出されたその言葉に、今度はギーシュが溜息をついた。 「……それが君の答えかい」 「事実を言っただけよ」 素直じゃないのは分かっている。意固地になっているのも理解している。だけど、認めるわけにはいかない。自分達の意思がどうあれ、自分はツェルプストーで彼女はヴァリエール。未来永劫、それだけは変わらないのだから。だから――そう、今自分がここにいるのは、ただの気まぐれなのだ。他に理由などありはしない。それが、キュルケの答えだった。 「……それじゃしょうがないな、この話はおしまいにしよう。僕一人頑張ったところでどうにもならないからね ……僕は寝るとするよ」 「え?ちょ、ちょっとギーシュ……!」 キュルケの声を掻き消すように「おやすみ」と言い放って、ギーシュはマントを翻して去っていった。 「……何よ 一人前に怒ったってわけ……?」 キュルケはその場から動けなかった。後を追うことも怒鳴ることも出来ずに、彼女はまるで叱られた子供のような顔で立ちすくむ。 綺麗な指先で赤い髪を弄って、キュルケは自分の心を誤魔化すように呟いた。 「……つまんない」 「……概ね理解した」 相変わらず小さな声でそう言うタバサを見下ろしてギアッチョは問う。 「頼めるか?」 こくりと頷いて、タバサは了承の意を表した。ついと眼鏡を押し上げて、ギアッチョは「悪ィな」と口にする。 「どうして?」 「見れねーだろ」 「……別にいい あなたが正しいなら、見る意味はない」 「ま……あくまで可能性の話だがな」 そう言うと、ギアッチョは次々に片付けられてゆくテーブルに眼を移す。 「……ここまで深く関わってんだ 任務の詳細ぐれーは教えてやってもいいとは思うんだがよォォ~~」 ままならねーもんだ、と呟くギアッチョを見事な碧眼で見つめて、タバサはふるふると首を振った。 「かまわない あなた達の立場は理解出来る」 その言葉に追従ではないリアルなものを感じて、ギアッチョはタバサに眼を戻す。どうにも不思議な少女だった。 燭台に照らされた廊下を並んで歩きながら、ギアッチョはここでも本を読むタバサを見て一つ知りたかったことを思い出した。 「……学院のよォォ~~ 図書館とやら、ありゃあ誰でも入れるのか?」 タバサは怪訝な顔でギアッチョを見上げる。ギアッチョが読書に勤しむタイプだとは、どう見ても思えなかったのだ。 「……平民は、入れない」 タバサは怒るかと思ったがどうやら予想の範囲内だったらしく、ギアッチョは一言「そうか」とだけ返事をした。 「……調べ物?」 と訊いてから、タバサはハッとした。自分はこんなことを訊く人間だっただろうか。他人に干渉しなければ、干渉されることもない。それが「タバサ」の生き方のはずだった。だというのに、自分は一体どうしてしまったのだろう。そんなタバサの胸中など知らず、ギアッチョは当たり障りのない言葉を返す。 「そんなところだ」 そこでタバサはふと思い出した。そういえば、ギアッチョが召喚されてから程なくして、ルイズが毎日図書館に通うようになったはずだ。 勤勉な彼女は今までも週に数回は勉強の為に足を運んでいたが、日参するようになってからはどうも別のことをしているようだった。 一度彼女に使い魔を送り返す方法を知らないかと訊かれたことがある。その時はギアッチョと喧嘩でもしたのだろうと思っていたが、ひょっとすると何かのっぴきならぬ事情で今もそれを探しているのではないだろうか。そう認識したタバサの理性がストップをかける前に、彼女の口は言葉を紡いでしまっていた。 「……帰りたい?」 言ってから、タバサはしまったと思った。ギアッチョは二重の意味で少し驚いたが、しかし特に追求もせず口を開く。 「――……どうなんだかな」 タバサははぐらかされたのかと思ったが、彼の表情を見るに、どうやら本当によく分からないらしい。自分の推測が当たったことよりも、今のタバサには何故かギアッチョの去就が気になって仕方がなかった。 「ルイズじゃあねーか どこに行ってたんだおめー」 ギアッチョの声で、タバサの思考は中断された。前に眼を遣ると、そこにはルイズがギアッチョに出くわしたことに驚いたような顔で立っている。 「……あ…………」 かと思うと、彼女の顔がみるみるうちに真っ赤に染まり――次の瞬間、ルイズは一言も発さぬままに俯いて駆け出していた。 「ああ?」 ギアッチョが何か問い掛けるより早く、自分達の横を一目散に駆け抜けて、ルイズはそのまま回廊の薄闇に走り去った。 肩越しに後ろを覗き込んで、ギアッチョはやれやれと言わんばかりに首を振った。 「……相変わらず行動の読めねーガキだな。まだ何か悩んでやがるのか?」 パタリと本を閉じて、タバサは呟くように答える。 「……恐らくそう」 自分に眼を落としたギアッチョを見返して、タバサは「でも」と言葉を繋ぐ。 「私の考えが正しいなら、これは彼女自身の問題」 「ほっとけっつーことか?」 「私達が何かを言っても、彼女は頑なになるだけ」 フンと鼻を鳴らして、ギアッチョは再び歩き始めた。 「全然解らんが……ま、てめーがそう言うならほっとくか」 オレにもまだやることがある、と呟くギアッチョをタバサは幾分歩調を速めて追いかけた。 どこをどう走ったのかは全く覚えていない。ギアッチョと眼が合うことだけが恐くて、ルイズはただただ闇雲に廊下を走り回り――気付けば彼女は、いつの間にか自室に辿りついていた。思い切って扉を開くと、ギアッチョはまだ戻ってはいないようだった。服も着替えずにベッドに飛び込み、頭から毛布を被る。煩く鳴り響く心臓を押さえて、ルイズはぎゅっと身体を縮こまらせた。 ――何なのよ………… ルイズは自分が解らなかった。ワルドのプロポーズを受けてから、彼女の脳裏にはずっとギアッチョの姿がちらついている。頭から追い出そうとすればするほど、それは鮮明な像を結んでルイズの心を責め立てた。理由なんて知らない、分からないとルイズは己に言い聞かせるように繰り返す。 しかし、この胸の苦しさだけはどうしても誤魔化せなかった。廊下で偶然ギアッチョと出くわした時、ルイズは思わず何かを叫んでしまいそうで――反射的に、逃げ出してしまった。 ――……最低…… ぽつりと呟いて、ルイズは深く眼を閉じた。 今は眠ろう。明日になれば、きっと忘れられる。だから、今はただ眠ろう。 しかし、意志に反して――彼女は一向に眠れなかった。 屋上の見張り台から、ギアッチョは一人地上を見下ろしていた。 「……流石に冷えるな」 雲の上の更に上を、風が容赦なく吹きすさぶ。チッと舌打ちして、ギアッチョは視線を前方に向けた。双つの月が、見渡す限りの雲海を煌々と照らしている。 「絶景かな、ってぇやつか」 身を投げたくなる程の美しさだった。チームの奴らにも見せてやりたいもんだと考えて、ギアッチョはフッと笑った。 ――あいつらにそんな情緒はありゃしねーか かく言う自分もそうだったが、とギアッチョは思い返す。 イタリアにいた時には、周囲のものを景色として見たことなど殆どなかった。この世界に召喚されて、ギアッチョは初めて物事をあるがままに見ることが出来たのだった。 ――……そこんところは感謝してやってもいいかもな そう考えて幾分自嘲気味に笑った時、背後からギィッと扉の開く音が聞こえた。 「……よーやくおいでなさったか」 雲の海を眺めたまま、ギアッチョは待ち人に声だけを投げかけた。 「待たせたね さて、こんな深夜に一体何の御用かな?二人仲良く月見酒と洒落込もうというわけでもなさそうだが」 風に長髪をなびかせて、背後の男は薄く笑う。フンと退屈そうに鼻を鳴らして、ギアッチョはそこでようやく彼に振り向いた。 「何、大した用件じゃあねーんだがよォォ~~ ちょっと腹割って話でもしようや、ええ?ワルド子爵サマよ」 帽子のつばを杖で押し上げて、ワルドは口の端をつり上げて嘯いた。 「いいだろう こんなに月の美しい晩は、誰かと話もしたくなる」 前へ 戻る 次へ
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不可思議な鏡に飲み込まれた時、ジョセフは死すら覚悟していた。 だが鏡が消えた瞬間、まばゆい光の中に存在していたのは自分のみ。 孫の承太郎もDIOの死骸も、自分の周りには存在しない。それだけでも自分のやるべきことを為せた、という安堵感が自分を包んでいた。せめて願わくば、自分が遺して来てしまった愛する者達が悲しまないでくれればいい……今のジョセフが願うのは、ただそれだけだった。 そして更に光が眩しくなって行く中、ジョセフは満ち足りた気持ちに包まれながら目を閉じ――た次の瞬間。 空中に投げ出された浮遊感が唐突に全身を包み、続いて地面に叩きつけられる衝撃がジョセフを襲う。 「ぐふぁっ!?」 衝撃はさほどではなかったが、まだ治し切っていない傷にはやや響く。 「アイチチチチ……な、なんじゃ、ここは?」 余りの状況の変化に、ジョセフは思わずキョロキョロと周囲を見渡す。 気が付いたら、鮮やかな青空と美しい草原が広がっていた。 そして自分を取り囲むように立っている、学生服の上に黒いマントを羽織った少年少女達。……と、見たことあるような動物達と、見たことないような動物……と言うか、明らかな怪物達。 数歩離れた場所には、真ッピンクのロングヘアのチンチクリンな少女(好みにうるさいジョセフの目からしても、十分に美少女と言える類の美少女だ。凹凸がないのもそれはそれでいい――ジョセフはそう思った)が憮然とした顔で自分を見つめ……いや。睨み付けていた。 ジョセフはかつて、ヒマを持て余してぶらりと入った映画館で、ポップコーン片手に見ていたファンタジー映画のワンシーンをふと思い出した。 鼻をくすぐる草の匂い、春を思わせる柔らかな風と日差し。 砂と猛暑のエジプトに慣れていた肉体には唐突過ぎる状況の変化。ジョセフは即座に片膝立ちとなり、左手に持っていた帽子を被る。視線は周囲を注意深く見渡し、どのような攻撃が来ても対処できる体勢を整えるのは、もはや条件反射とすら言っても良かった。 (これは……なんじゃ! スタンド攻撃か!? じゃが……これほどまでに大掛かりな効果を与えるとは考えづらいッ。だとすると、わしは『瞬間移動を食らった』と考えるのが一番無難じゃろうな……) だが瞬間移動だとすると、蘇生したばかりの自分一人ではあまりに分が悪すぎる。 手負いの状態で果たして何処までやれるのか。と、そこまで瞬間的に思考を走らせて、ふと気付いた。 目の前に立っているピンク少女も含めて、少年少女達には殺気が無い。 ピンク少女は怒りがヒートアップしているのが手に取るようにわかる。が、少年少女達は何やら笑いあっている雰囲気こそはあれど、襲い掛かってくる様子など微塵も無い。 聞こえてくるのは「おいおい、サモン・サーヴァントで人間呼び出したぜ?」「しかも平民の爺さんだ」「やったッ! さすが『ゼロ』、俺達には出来ない事をやってのけるッ! そこにシビれる憧れないッ」などとはやし立てる声と、笑い声。 だがジョセフは万が一の場合に備え、どうにでも動ける体勢を続けたまま目の前の少女を見やり。口を開こうとしたジョセフより僅かに早く、少女が口を開いた。 「あんた、名前は?」 「……わしか」コンマ数秒躊躇してから、ゆっくりと名を名乗った。「ジョセフ・ジョースターじゃ。あんたは?」 不本意、という言葉を顔全体でこれ以上ないほど表現しきった憮然とした面持ちで、少女は名乗られた名前を聞き。緩やかに腕組みをした。 「あんた、どこの平民?」 人に名前を聞かれても当然のようにスルー。質問を質問で返される無礼にカチンと来たが、その程度でキレないくらいには年齢を重ねてきたジョセフである。 それにしても『平民』とは。イギリスに住んでいた子供の頃に聞いて以来、やっと聞いたような死語ではないか。 「今はニューヨークに住んでおる」 「ニューヨーク? 聞いたことないわね。どこの田舎よ?」 ジョセフはそう答える少女の表情を見て、彼女は嫌味や皮肉でニューヨークを田舎だと称したのではない、と判じた。 彼女はニューヨークを“知らない”のだ。 「じゃあここはどこじゃ?」 「あんた、貴族に平民がそんな口叩いていいと思ってんの? そもそもあんたみたいな平民がこうやって貴族に口を利いてもらえるだけでも有り得ないことなのよ」 尊大な態度で、膝立ちのジョセフを見下ろす少女。どうやら自分に貴族の威厳とやらを見せ付けて威張っているつもり、らしい。 しかしジョセフは貴族の威厳とやらを非常に大胆にスルーし、現段階で判断できることを頭の中でまとめていた。 (……これは。DIOとは関係がない可能性があるかもしれん……ヤツの手の者なら、このようなまどろっこしい小芝居などする前にわしを殺しておる。手負いのワシなぞ幾らでも殺せるんじゃからな。 そもそも吸血鬼とか柱の男とかスタンドとかあるんじゃ。またわしの知らん『何か』があるとしたって今更驚きゃせんわいッ) そうとなれば、後は情報を収集し、現状を把握せねばなるまい。ジョセフは、しばらく様子を見ることに決めた。 ピンク少女はほんの少しの間、ジョセフを睨み付けていたが勢い良く背を向けると、U字ハゲの黒マントへと駆け寄っていった。 そこで何やら「もう一度召喚を」「春の使い魔召喚は神聖な儀式なので一度きり」などという会話が漏れ聞こえてくる。 (もしかしてアレか) ジョセフはイヤァな予感がした。 (わしは召喚されちまったということか。それも使い魔として! じゃあ誰の! 誰の使い魔じゃというんじゃ!) 答えはとっくの昔に出ている。 しかしそれは認めたくない。出来れば何かの間違いであってくれとすら思う。 1 ハンサムなジョセフは突如としてこの危機を脱するアイディアを思いつく 2 仲間が来て助けてくれる 3 現実は非情である。ピンク少女の使い魔になろう! (1! 1を思いつくんじゃジョセフ・ジョースター!!) ハゲ親父との会話が終わって、ピンク少女がジョセフを振り向く。だがジョセフ自慢の脳細胞は危機を脱するアイディアを思いついてはくれない! (じゃ……じゃったら2! 2でいいッ!) ピンク少女が渋々といった様子でこちらに歩いてくる。現実逃避気味に仲間が来ることを願うが、仲間が来る事がないのは誰ならぬジョセフが一番知っている。 (さ…3かッ! 3しかないというのかッ!) 呆然と跪いたままのジョセフの前に立った少女は、それでもしばらく躊躇ったり視線をそらして再び視線を戻したり、また躊躇ったり。 そして意を決したか、真っ赤になった顔と手に持った杖をジョセフに向け、早口で言い切った。 「……か、感謝しなさいよね! 平民が貴族にこんなことされるなんて、普通はありえないんだから! あんたをわたしの使い魔にしなきゃならないから、仕方なく……そう、仕方なくよ! 仕方ないんだからね!!」 へ? と頭にクエスチョンマークを浮かべたジョセフは、僅かな隙を突かれた。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 ピンク少女が杖を自分の額に当てたかと思うと―― 自分の唇は、少女の唇で塞がれていた。 驚きに見開いたジョセフの視界には、固く固く目を閉じた少女の顔。 その瞬間、ジョセフは (や……役得というやつかッ! これなら別に使い魔になってもいいかもしれんッ!) と、これまでの自問自答を捨てて「3 現実は非情である。ピンク少女の使い魔になろう!」を選んでいた。 だがその幸福感も、ほんの数秒だけだった。 少女が唇を離した瞬間ッ! 『左腕に感じる焼き鏝を押されたかのような痛み』ッッッッ!! 「うおおおおおおッッッッ!!!?」 理解不能理解不能理解不能ッッッ!! 五十年前に失ったはずの箇所から! 明らかに! 焼き鏝を押されたかのような痛みを感じている!! ついぞしばらくしたことのない『左腕を押さえて蹲る』ジョセフを見下ろした少女が、あきれたような声を投げかける。 「大袈裟ねー。大丈夫よ、『使い魔のルーン』が刻まれてるだけだから」 (そりゃお前さんは焼き鏝なんぞ押されたことはないじゃろうからなッ!) という言葉も、左腕から未だ感じてしまう痛みが飲み込ませる。 既に熱は引いたが、義手から感じる痛覚、という奇妙な感覚がジョセフに新たな疑問を生じさせる。本当に何が起こったのか、何か起こっているのか、詳細な情報収集が必要だ。 蹲るジョセフとそれを見下ろす少女をよそに、他の連中はそれぞれホウキやドラゴン空を飛んで去っていってしまった。少女に対して、「お前はレビテーションもフライトも使えないんだから歩いて来いよ!」「じゃあね『ゼロ』のルイズ!」と囃し立てながら。 ジョセフは唖然としてその光景を見上げながら、しみじみとこう思った。 (とんでもないところに来てしまったのォ~~~……) To Be Contined → 戻る
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このページは「お願い!召喚!!使い魔ン」の使い魔ン集めの攻略ページです。 ※以下の内容は18歳未満の方には有害な情報を含んでいます。 あなたは18歳以上ですか? はい 目次 使い魔ン一覧 使い魔ン一覧 名前 入手方法 備考 くまの三四郎 マンジュローザへの道 崖をくマトックで破壊した先の緑宝箱 ゴーレム お化け屋敷 隠されたドアを進んだ先にある緑宝箱 ドアは聖なるランタン入手で出現 ゴリラの戦士 マンコロ古城 地下牢にある緑宝箱 ジャイアントプリン ストーリー攻略で必ず入手 猫松監督 豚の湯 一番左ののれんの先の温泉にいる猫に金貨を渡す 金貨500枚 悪魔王子マクアくん⇒スーパーマクアくん ストーリー攻略で必ず入手⇒ストーリー進行で進化 オリエンタルドラゴン ストーリー攻略で必ず入手 グレーターデーモン 冥界ネザー 死神と戦闘する部屋の緑宝箱 殺人マシーン ブーヨーク 下水道の壁をくマトックで壊した先で戦闘 デビルシェフ 封魔の神殿への洞窟 脇道の階段を上ったところのレストランで戦闘 パーティに「ミノタウロス」が必要 古の勇者 万寿ヶ丘 洞窟内に刺さっている剣を抜く Lv.20以上の「勇者ユカちゃん」が必要 マザーCPU マリールゥの家の地下 壊れたロボットにメカナオール改造+を使う エンチャンとん お化け屋敷 地下牢のブタ だるまスワイン マンジュローザ 鬼豚組にいるブタからもらう 土偶スワイン マンコロ島 古城までの道中の崖でくマトック使用 ぶた宮とん次郎 マンジュローザへの道 商人テントにいるブタから買う 金貨100枚 弁慶スワイン ストーリー攻略で必ず入手 極道のぶた⇒仁義なきぶた ストーリー攻略で必ず入手⇒ストーリー進行で進化 イフリーとん 封魔の神殿へ続く洞窟 緑宝箱 海のとんトン マンコロ島 ビーチにいるブタから購入 金貨1000枚 カンフースワイン ブーヨーク BUTAYAから右に行った先のトイレにいるブタに金貨を渡す 金貨800枚 シノビスワイン 封魔の神殿 青い床を進んだ先の燭台の近くの緑宝箱 諸葛豚ぶぅめい マンジュローザへの道 商人テントから左に行ったところ黒帯ブルマーを撃破した先で3匹のブタが道を塞いでいるのでそれぞれアイテムを渡して進んだ先の民家 ゴールデン饅頭、百年団子、千年に一匹のたい焼き ピッグ・ジョー 封魔の湖 テント前にいるブタに金貨を渡す 金貨10000枚 黒帯ブルマー マンジュローザへの道 商人テントから左に行ったところの女の子と会話すると戦闘 パーティに「くまの三四郎」が必要 ハーピィ マンジュローザ BUTAYAにいるブタから買う 金貨300枚 ブルマ天狗 万寿ヶ岳 洞窟牢の中にいる天狗と会話 牢の鍵は敵の天狗がドロップ ミチトノソウグウ ブーヨーク 下水道を抜けた先の倉庫で木箱に入れられたブタと会話すると戦闘 ミノタウロス マンジュローザへの道 神社近くの滝つぼにいる牛娘と会話すると戦闘 かわいいユカちゃん⇒勇者ユカちゃん ストーリー攻略で必ず入手⇒「ユカちゃんの勇者セット」使用で進化 サイキックセーラー ブーヨーク BUTAYAにいる女の子と会話 コスプレショップでブルセラおパンツ購入後 サキュバス先生 ストーリー攻略で必ず入手 猫巫女のニャテスト マンジュローザへの道 神社にまたたびぃ~るをお供えする オリエンタルウィッチ 封魔の神殿への洞窟 脇道の階段を上った先にいる女の子と戦闘 パーティに「猫松監督」が必要 ぶるうりぼん 冥界ネザー 青ボタンを押すことで開くドアの先で戦闘 いいえ
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トリステイン王国とガリア王国にはさまれたラグドリアン高地。その高地に、国境 をはさむように、ハルケギニア随一の名称地『ラグドリアン湖』はあった。 国境線上に存在するこの湖は、交通の要衝でもあり、ガリアとトリステインを行き 来する商人たちは、ほとんどがこの近くを通過する。 ただ、ガリアとトリステインの、長年の確執にもかかわらず、この地域が戦のにお いを放った歴史はない。 なぜか? それは、この地が人間の土地ではないからだ。 人ならざる、水の精霊の土地。精霊の住まう場所。 それが、ラグドリアン湖畔であった。 水の精霊の時は長い。 人の時間にとって、水の精霊が出現する頻度はあまりにも長く、時間は短い。 だから、実質的に、水の精霊と会うことができるのは、トリステイン王国との盟約 の更新を行う以外、人間に出会うことはないといってよかった。 そして、その希少価値と、水の精霊の美しさの『うわさ』(なにしろ出会った人間 はほんの少ししかいないのだ)が重なり合い、 「この湖で誓った誓いは必ずかなえられる」という伝説が出来上がっていた。 アンリエッタとウェールズが出会ったのは、この、ラグドリアン湖の湖畔であった。 トリステイン王国は、三年前、このラグドリアン湖の前で、大規模な園遊会を施した。 名目は、大后マリアンヌの誕生日であった。 だが、それだけではない。 当時、騒ぎになり始めた、アルビオンの貴族派(当時は議会派と名乗っていたが) の不気味な台頭とともに、トリステインは、 「王党派と議会派、どちらに味方するか」という、判断材料を欲していた。 そのため、アルビオンの王党派と議会派、双方の有力者を招いて、彼らがどれほどの 余力を持っているかを判断しようとしたのだった。 無論、トリステイン側にはその意図を表に出すつもりはない。 ガリアやゲルマニア、ロマリアといった、他国の貴族たちにたいしても、同様の招待 を行っていた。 このような背景から、その年の宴会は、あまりにも規模が多すぎて、トリスタニアの 王宮では用が足りず、やむを得ずラグドリアン湖での野宴となったのだった。 だが、当時のアンリエッタにとってはそのような政治的背景などまったく意味はない。 彼女にとって、この宴会は、挨拶・追従・おべっかでしかなかった。 その瞬間までは。 大園遊会も一週間も過ぎたある夜、アンリエッタは共も連れず、ひとり、静かな湖 畔を歩いていた。 アンリエッタは孤独がほしかったのだ。 遠くにいまだ続く舞踏会の音を背にし、アンリエッタは湖上に浮かぶ二つの月夜を 眺めた。 「ふう」 アンリエッタは安堵のため息をつく。 今のアンリエッタは、一糸もまとわぬ姿で湖の中に浮かんでいた。 あまりの湖のきれいさに、思わず、ドレスを脱いで、湖の中に入ってしまったのだ。 漣が長い髪の毛をつたい、心地よい。 そのとき、 湖畔の、ドレスを置いておいたあたりに人の気配が合ったのをアンリエッタは感じた。 「誰?」 中途は省こう。その男こそ、ウェールズであった。 アンリエッタとウェールズは、この日を境に、宴の夜な夜な、二人だけで密会を図る ようになった。愛はどこにでもあり、どこにもない。 二人は会えば会うだけ、二人が二人だけ会える時間、残りの時間が少なくなるのを強 く感じ、ますます切なく、そして互いを愛するようになっていった。 そして大園遊会の最終日。すなわち二人が二人だけであえる最後の日。 アンリエッタとウェールズは、連れ添ってラグドリアン湖の湖畔を歩いていた。 二人とも、この日が最期の飛騨ということがわかっていた。 不意に、ウェールズが立ち止まる。 一歩遅れてアンリエッタも立ち止まる。 そして、何かと振り返ったアンリエッタの唇に。 やさしく、ウェールズの唇が重ねられたのだった。 驚くアンリエッタにウェールズはやさしく笑いかける。 「好きだ。アンリエッタ」 顔の近いままのウェールズに、アンリエッタは顔を真っ赤にした。 「そんな……私もです」 「さて、君とすごせる楽しみも今宵限りだ。まったく、お互い損な生き方をして いるね。できるものなら、もっと君とこうして二人きりでいたかったが」 ウェールズはそう笑ったが、それは作り笑いだった。 アンリエッタは泣きそうになりながら、いった。 「ならば、私と水の精霊に誓ってくださいまし」 「誓い?」 「ええ、このラグドリアン湖に住む水の精霊の別名は『誓約の精霊』。 その前でなされた誓約は必ず果たされるとか」 「それは迷信だろう?」 「ええ、迷信ですわ。ですが、迷信ですが私は信じます。 ウェールズ様が誓うのならば、私は絶対に信じます」 ウェールズはそう聞いて、困ったような、それでいてとても嬉しそうな笑顔をアン リエッタに向けたのだった。 「僕はきみが好きだ。そして君は僕が好きだ。それで十分じゃないか?」 アンリエッタは目を閉じて、湖の中に入っていった。 静かな湖面が波紋を描く。 「トリステイン王国王女、アンリエッタは水の精霊の御許で誓約いたします。 ウェールズ様を、永久に愛することを」 アンリエッタはそこまで一息で言うと、目を開けた。 「さあ、次はウェールズ様の番ですわ」 ウェールズは水の中に入っていった。 だが、それは水から望んでというよりも、かわいい人の懇願を聞き入れた様子であった。 ウェールズも目を閉じる。 「アルビオン王国、皇太子ウェールズは水の精霊の御許で誓う。 いつしかアンリエッタと、このラグドリアン湖畔で誰の目もはばかることなく、 手を撮り歩くことを」 そして、静かに目を開けた。 「誓ったよ」 アンリエッタはわずかに目を伏せた。 「愛を誓っては下さらないの?」 しばしの間のあと、ウェールズが囁く。 「同じことだよ、アンリエッタ」 そして再び唇が交わされた後、ウェールズが悲しそうに告げる。 「僕はアルビオンの民を背負ってたっている。 アンリエッタ、君は僕が、彼らを不幸にすることを望んでいると思うかい?」 「いいえ……」 「そうだね。アンリエッタ、よくお聞き。僕たちは王族だ。僕たちは、個人の意思 で他人の生き死をも左右できる権力を持っている。だがね、だからこそ、個人の 感情に振り回されてはいけないんだ。人形になるんだ、アンリエッタ。そのほう が、君にとっては幸せなのだよ……」 アンリエッタは、信じがたい気持ちになった。 なにか、とても冷たいモノがアンリエッタの心の中に入り込んでくる。 そのとき、遠くから、アンリエッタの従者、ラ・ポルトの声が遠くから響いてきた。 「アンリエッタ様ぁ。そこにおられましたかぁ。宴は終わりましたぞぉ」 夜が明ける。 このときを最後に、ウェールズとアンリエッタ。 二人だけの時間は終わったのだった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― タルブでの戦いの、一週間後のこと。 アンリエッタはその日で三度目になるため息をついた。 机越しに眺める自室の窓の向こうには、白い鳩が二羽、寄り添うように大空へと飛 び去っていく。外は晴れだ。 いくつかの雲が、流れ去るかのように、高い空を滑っている。 トリスタニアの王宮、飛竜の塔の一角にアンリエッタの私室はあった。 トリスタニア平原から流れ来る、冷たい風が、高さ3メイルはあろうかという窓の、 シルクのカーテンをはためかせていた。 アンリエッタは先ほどから同じ疑問を、己のうちの心に問い続けていた。 私の国は戦争になった。 戦争になってしまった。 よりにもよって、アルビオンと。 あの、ウェールズ様の国と。 なぜなの? 誰がこんなことを望んでいるの? この戦争は、私の意思じゃない。 でも、トリステインの民たちは、私の意思だと思っている。 私は、ただ。 タルブの村人を救いたかっただけなのに。 こんなはずじゃなかった。 わたしはただ…… アンリエッタが四度目のため息をついたそのとき、初老の男性がノックをして入っ てきた。 王女の従者がドアを開ける、その間ももどかしいらしく、その男は忙しくアンリエ ッタの元へと歩みよった。 そこで、アンリエッタは、国の王女としての声色を使う。 「マザリーニ、何用ですか?」落ち着き払った、それでいて高貴さを漂わせる声色。 アンリエッタに呼ばれた男は、僧帽をとり、剃髪をした頭をアンリエッタにむけ、 臣下の礼をとりながら報告を始めた。 「姫様。先日報告した、トリステイン艦隊再建の件ですが、ようやく再建の目処が 整いました」 アンリエッタはマザリーニが差し出した、羊皮紙の報告書の束を受け取り、ざっと 目を通した。 アンリエッタは今まで、このような国の重要書類に目を通したことはなかった。 だが、タルブの村の戦で、劇的な勝利を収めたころから、トリステイン貴族の間で、 「アンリエッタ姫君を女王に」 という声が、半ば公然とと囁かれるようになっていた。 その影響か、このところアンリエッタは皇后の仕事を委任されることが多い。 現在のトリステインには、君主がいない。 実質的に、皇后派と、マザリーニ枢機卿の一派の連合がこの国を治めていた。 平時であればそれでよい。 だが、現状はアルビオンと戦争中である。 トリステイン国民は、正統的かつ、強力な統治者を必要としていた。 書類を読んでいるアンリエッタの眉が、ピクリと顰められる。 「フネの大半をゲルマニアで作るのですね。どうしてでしょう? かつて、オール ド・オスマンが言っていましたわ。造船技術はアルビオンが第一、ガリアが第二。 三、四がトリステインとロマリアで、ゲルマニアは第五だと。どうして、格下の 国でわたくしたちの軍艦を作らなくてはならないの?」 王女らしからぬ態度にも、マザリーニは気にした様子を見せない。 「恐れながら、姫君殿下。トリステインの造船工房は、王立造船所も含め、軒並み アルビオン大陸に近くあります。そのため、彼らの『戦略砲撃』に逢う可能性が 非常に高いのでございます」 そうだったわ、とアンリエッタは顔を赤らめた。 自分のうかつさに恥ずかしくなったのだ。 タルブ郊外の戦いで、アルビオン帝国艦隊の主力は失われた。 だが、その前の、ラ・ロシェールでの事件で、トリステイン空軍の戦力はことごと く失われている。 敵は重症だが、味方は危篤だ。 だから、トリステインの、空の守りがないことを奇貨としたアルビオン空軍は、小 型の、快速を出せる軍艦で夜な夜なトリステインの海岸地帯に接近し、これといっ た施設に砲撃を行い続けていた。 これによって、当初こそはかなりの損害を受けたものの、トリステイン側としても 消極的な防衛対策をとることはできた。だが、船工房は、進水作業があるため、空 からの攻撃に対してどうしても脆弱になる。 「ですが、船工房以外の、わがトリステインの主要な軍事施設には、おおよその防 衛処置を施し終えることができました」 マザリーニは書面を見ながら続ける。 その措置は、応急的ではあったが、効果はあった。 施設の周りに壕を掘り、そのときにできた土を施設の上に乗せる。 その後、錬金魔法と固定化の魔法で、施設と盛り土の強度を増したのだ。 この処置によって、物理的な被害は皆無なレベルにまで落とすことに成功した。 だが、人心はそうも行かない。 人間誰しも、打たれっぱなしの攻撃されっぱなしでは、士気が上がろうはずもない。 この時期のトリステイン軍からは、雇い入れたはずの傭兵共が、それなりの人数が 脱走を始めていた。 しかも、この防護処置を施した施設は、今のところ軍事関連施設のみである。 港町の倉庫や、商業施設、村の穀物粉などはまったく手が回ってはいない。 メイジの絶対数が足りないのだ。 アルビオン空軍はそのような施設に大しても奇襲的な砲撃を行っていた。 少なくない数の平民に死者がでている。 「オーステンドの港町から、平民千人ほどが焼け出されたようですな」 みな、トリスタニアに向かっているようです。 マザリーニはそういって、新たな羊皮紙をアンリエッタにささげた。 そこには、オーステンドが、アルビオンの『戦略砲撃』によって蒙った被害がリス トアップされていた。 穀物倉庫、魚河岸、市議会場、共同浴場、水道橋。 ここまでやられたのであれば、普通の平民ならば、通常の都市生活は営めない。 「避難民のために、アルビオンの外交宮殿を接収して収容してもよろしいですか」 マザリーニの進言に、アンリエッタが問う。 「それでは、アルビオンとの交渉ができなくなりませんか?」 「かまわないでしょう。アルビオンの貴族派たちは、ガリア王国とは友好的と聞い ております。ガリアに、アルビオンの大使のために、ガリアの外交宮の一室を使 わせてもらうように頼もうと存じます。なに、断られようともかまいません。 要請さえすれば、トリステインの誠意は示すことになりましょうぞ」 「わかりました。念のため、ロマリアにも同様の要請を行っておいてください」 アンリエッタは自分の水晶の杖を振って、マザリーニの差し出した命令書に魔法で署名を始めた。 「了解いたしました。では本題に戻ります。艦隊再建の際の、船員不足の件ですが」 マザリーニは、最初に取り出して見せた羊皮紙を再度机の上に広げた。 このような状況であるからには、トリステインの空軍の再建が急務となっていた。 空軍が使えるのであれば、今の敵空軍からトリステインの制空権を奪還することも 検討できる。能動的に戦争ができるのだ。 また、トリステインの空を本来の持ち主の元に取り戻すこともできる。 アンリエッタは、憂慮の顔を隠さずに、だが、毅然として決断した。 「かつて、わが国にアルビオンから亡命してきた王党派から、志願者を募るのでし ょう? 許可いたします」 しかし、マザリーニはそれだけでは動かない。 「姫様、船員はそれだけでは足りませぬ。先日、タルブの決戦時に捕虜としたアル ビオン軍人からも志願者を募りたいと存じます」 「気がすすまないわ、わたくしとしては」 「さらに、トリステイン魔法学院から、学徒兵を招集したいと思います」 アンリエッタの脳裏に、突如ルイズの明るい笑顔が浮かび上がった。 彼女はつい、 「だめ! それだけは」 叫んでしまった。 マザリーニは少し困った顔をしたが、彼は、 「了解いたしました」 と、微笑んで答えるだけの度量は持ち合わせていた。 そのとき、マザリーニの元へ、近習のものが静かに進み出て、そっと耳打ちをした。 マザリーニはうなずいて、アンリエッタに向き直り、さりげない態度で、 「ミス・ヴァリエール一行がやってきたそうでございます」といった。 アンリエッタは、マザリーニの差し出された手をとり、王宮の中庭に向かってく。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ルイズとブチャラティ、それとシエスタは、王都トリスタニアの宮殿にいた。 宮殿の中庭、王室の中庭で、ルイズたちはマザリーニとアンリエッタに拝謁している のだ。中庭には、件に半壊したゼロ戦が運ばれていた。 「ふうむ? とすると、この『鉄の竜』は道具の一種となるのか?」 マザリーニは三人に問いかけた。 タルブの村での戦いで、アルビオン艦隊をやっつけた巨大な光と、鉄の竜。 マザリーニは、それが、ルイズたち三人によるものだと探り出せていた。 一時の処遇として、シエスタをシュバリエにしたものの、トリステインとしては、 この二つの『未知』は、貴重な戦力となりえる。 であるから、マザリーニはその力の真相を探り、こうして三人をトリスタニアの宮殿 まで呼び寄せ、詳細を聞いていたのだった。 マザリーニの問いかけには、シエスタが答えた。 「はい、私の、というのはタルブの村ですけど、その村にある御神体で。 私の曾御爺ちゃんのものなんです」 ふむ、とうなずくマザリーニ。 アンリエッタは信じられないような面持ちで聞いた。 「本当に魔法の力を使わないのですか?」 彼女の常識からすると、ゼロ戦のようなものがマジックアイテムではないことが信じ られないようであった。 「ああ、これは飛行機といって、ガソリン…… ええと、油で燃焼する動力機関で飛ぶものだ」ブチャラティがシエスタの言をサポートする。 だが、アンリエッタにはその説明もいまいちよくわからない。 マザリーニは、アンリエッタの混乱した様子にもかまわずに、 「して、このヒコウキは、羽の部分を修理すれば飛べるのかね」シエスタに聞いた。 シエスタは考え込みながら、露伴に、頭に仕込まれた知識を探し当てた。 「ええと、たぶんそれだけじゃ飛べないかも知れないです。 動力部の部品、動くところは特に、油で分解清掃したほうが動くと思います」 「そうか。して、このゼロセンとやら。本当にアカデミーに引き渡してよいのかね?」 マザリーニは丁寧に聞き返す。 シエスタには、シュバリエの階位を爵したときに提案したが、半壊した零戦を補修 することも兼ねて、その機材一般をアカデミーに所属させることをマザリーニは考 えたのだった。 「はい、コルベール先生はずいぶんと反対したようですが……」 シエスタが顔を曇らせる。 零戦が戦闘機であることに、つまり、戦いの道具であることが判明した時、コルベ ールはとても落ち込んだ。 別の、魔法のまったくない世界でも戦争が行われている事に衝撃を受けたのだった。 そのためか、 零戦をアカデミーに、というマザリーニのたくらみは、コルベールにとっては、 「シエスタを戦場に」 という言葉にしか聞こえない。 であるから、コルベールは、教職者として、『竜の血』の供出を拒んだのだった。 だが、マザリーニの半ば脅しめいた説得と、オールドオスマンの見解によって、彼 はアカデミーにたいして、いやいやながらもガソリンの量産技術を提供させられて いた。 オスマンの意見とは、 「この翼の金属、トリステインの魔法では錬金できぬのでは?」 という、しごく簡潔かつ全うなものであり、コルベールもその点に対しては同意見 であった。 コルベールが、技術の提供を了解したのは、アカデミーの連中に零戦を引き渡した とて簡単には復元できまい、と考えてのことである。 だが、苦渋の受諾には変わりない。 彼はシエスタに、 「あなたが戦争に加わる必要なんてないんですよ」と、くどいほど念を押していた。 それは、引渡しのばに立ち会ったマザリーニも聞き知っている。 「君は、今まで平民だったが、よき師を持ったようだの」 「はい、コルベール先生には、いつもよくしてもらっています」シエスタは微笑んだ。 一時の沈黙の中。 零戦を囲んで、マザリーニが口火を切る。 「それにしても、われらが国土からこのうなものが発見されるとは…… これはもしや、ミス・ヴァリエールの『虚無の系統』とあわせ、始祖ブリミルか らののご加護かもしれませんな」マザリーニはそういい、アンリエッタに微笑みかけた。 アンリエッタのそばには、彼女とほぼ同じ体つきの少女、ルイズがいる。 ルイズもアンリエッタも、どこかしらこわばった表情をしている。 だが、その挙動の意図はまったく違う。 アンリエッタが自分の憂鬱さを隠そうとしているのにたいし、ルイズは自分の能力 に対する嬉しさと自信を持ちながら、どこかアンリエッタに対して遠慮している風 であった。少なくとも、マザリーニはそう見て取った。 (ミス・ヴァリエールは、かつてアンリエッタ姫様の近習であったな。 ならば、姫君の心もちを、この私より知悉しているかも知れぬ。) だから、この幾分尊大な枢機卿は、使えるべき姫君に対し、あえて遠慮なく、 「アンリエッタ姫様。ミス・ヴァリエールに例の話を」と、静かに告げたのだった。 アンリエッタはわれに帰った風になった。 「ええ、ルイズ。大事なお願いがあるの」 ルイズは、幾分大げさに、だが、自信あふれたしぐさでアンリエッタの御前に進み いで、どこぞの騎士のように、片手をつき、頭をたれたのだった。 「はい、私めにできることでしたら何なりとお申し出ください」 その近くで、つぶやく声がひとつ、 「まったく、内容を聞かずに受け入れるなんぞ、感心できないんだがなあ……」 ブチャラティの独り言であった。 ルイズはかがみながら、一瞬だけその声の主ををにらめつけたが、思い直すことが あったのか、再びアンリエッタのほうに顔を向けた。 「それで、一体頼み事とは何でございましょうか」 アンリエッタはわずかに声を曇らせていった。 「わたくしが、トリステインの王女になるかも知れないことは知っているでしょう」 「え? それは決まったことではないのですか?」 頭に疑問符が沸いたルイズに、マザリーニがしかめっ面が答える。 「それがですな、トリステインの主だった貴族とは、調整が済んでいるのですが、 肝心の姫様がうんとうなずいていただけないのですよ」 マザリーニは、やれやれと困った風に顔を振る。迫真の演技だ。 「まあ、マザリーニったら、告げ口なんかして!」 アンリエッタはそういって、コロコロと笑った。笑いながら、ルイズに話しかける。 「あなたがタルブの村で使った魔法。 私たちの調査では、あれは『虚無』の魔法だとか」 アンリエッタがあまりにもさりげなく言ったので、ルイズは時に意識することなく、 はい、と答えた。 とたんにアンリエッタの顔が曇る。 「そうですか、やはり……」 「私の系統に何か問題があるのでしょうか?」 ルイズのその疑問には、マザリーニが答えた。 「率直に言わせていただく。わがトリステイン王国としては、君を戦力にしたい。 だが、姫君としては、あなたには今までの学生生活を送ってほしいと思っている のだ。きみを政治の汚い部分を見せたくないのだよ」 彼はそういって、アンリエッタを見やる。 「ええ、ルイズ、だから、あなたの気持ちを聞かせてほしいの」 ルイズはしばらくの間考え込んでいたが、静かに語り始めた。 「姫様、今まで私は魔法が使えないせいで、ゼロとあだ名され、バカにされ続けて きました。そのうち、自分でも本当に私は無能なのかも知れないと思ったことも 何度もあります。ですが、私は、召喚の儀式を成功させ、いま、伝説の系統であ る虚無に目覚めました。私は、今までのような、みなにバカにされる日々はもう 送りたくありません。それに、私はアンリエッタ姫様の親友です。親友の助けを 黙って見過ごす家風は、ヴァリエール家にはありませんわ」 「ありがとう、ルイズ」と、アンリエッタは笑いかけたが、 「ちょっと待て」と、ブチャラティが突然さえぎる。 「アンリエッタ。ルイズがこの状況で、断るなんていうと思うのか? それに、オレは、ルイズに汚い仕事を見せるのは反対だ」 だが、ルイズが、 「何言ってるのよ! 親友のためなら命を張るのがあんたの流儀でしょう」 こういうと、ブチャラティはうぐ、と黙ってしまった。 アンリエッタはブチャラティに向き直り、彼の目を直視した。 「その点については大丈夫です、ブチャラティさん。 私は、ルイズを利用する、というより、虚無の力を利用しようとする輩からルイ ズを守ろうとして呼んだのですから」 「そうか?ならば良いが……」 「では、ルイズ。あなたは私直属の女官ということにします。ですが、それは一応 の位。今までの通り、学院で学生生活を送ってください」 アンリエッタはそういって、ひとつの命令書に花押を施した。 「これは、トリステイン王国のあらゆる場所の出入りと、公共機関の利用を認めた 文書です。あなたに危機が迫ったら、いつでも使って頂戴」 アンリエッタはルイズにその羊皮紙を手渡しながら、さらりと重大なことを言って のけたのだった。ルイズは驚いた。 「そんな、重大な権限を私なんかが持っていてよいのでしょうか?」 「ええ、大丈夫です。代わりといっては何ですが、あなたでしか解決できないよう な問題があったときは、あなたに連絡します。そのときは、虚無の力を使ってわ たくしを助けたください。ただ、それ以外では、あまり虚無の魔法を使わないで ほしいの。これは、あなたの安全のためでもあるのよ」 それから、アンリエッタは愚痴をこぼしているブチャラティに向き直って、 「ごめんなさい、ブチャラティさん。本来はあなたにもシュバリエの称号を与えた いのだけれど、わたくしの今の権限では、シエスタにシュバリエを爵すのが精一 杯でしたの。変わりにこれをお受け取りください」 と、いつの間にか手に取った、大き目の麻袋を渡した。 受け取ったブチャラティが中を見ると、そこには多数の宝石、金銀の類がぎっしり と詰まっている。 「これは、これからくる困難の分も入っているのか?」 「いえ、これは私の気持ちです」 「なら、遠慮なく受け取っておこう」 ブチャラティは、まったく無頓着に、これを受け取ったのだった。
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「ソウルクレイドル~世界を喰らう者~」よりダネットを召喚 お前の使い魔 1話 お前の使い魔 2話 お前の使い魔 3話 お前の使い魔 4話 お前の使い魔 5話 お前の使い魔 6話 お前の使い魔 7話 お前の使い魔 8話 お前の使い魔 9話 お前の使い魔 10話 お前の使い魔 11話 お前の使い魔 12話 お前の使い魔 13話 お前の使い魔 14話 お前の使い魔 15話 お前の使い魔 16話 お前の使い魔 17話 お前の使い魔 18話 お前の使い魔 19話 お前の使い魔 20話 お前の使い魔 21話 お前の使い魔 22話 お前の使い魔 23話 お前の使い魔 24話 お前の使い魔 25話 お前の使い魔 26話 お前の使い魔 27話 お前の使い魔 28話
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[ 概説 ] [ 属性別 ][ 生息域別 ] [ 能力値解析 ][ 能力値一覧 ] [ 闇 ][ 光 ][ 火 ][ 冷 ][ 風 ][ 雷 ] フライニー/Flying Onion スコルピオ/Twin Scorpio ブラッディフライ/Bloody Flying Onion ブレミッシュ/Blemish Night Fang 徘徊するもの/Wondering Soldier フレアロック/Mistic Flame イグニス/Ignis Lizard 炎猫/Flame Cat レッドアイ/Red Eyes Hunter デス・アクス/Death Axe 機工兵/Golem Soldier アグニ/Agni Serpent ダイナソア/Dinosaur フェニックス/Secular Bird フライニー/Flying Onion コア・オブジェクト 玉葱の皮 初期パラメータ 性能 基礎能力 耐性 LV 1 Atk 27 Str 27 闇 2 死 2 HP 8 Mag 32 Int 32 火 3 毒 2 MP 20 Tec 50 Dex 55 雷 1 麻痺 2 Vital 32 Def 34 Vit 32 光 2 衝撃 1 Mental 32 Reg 34 Men 32 冷 2 沈黙 2 Speed 30 Eva 40 Agi 30 風 2 暗闇 3 Active Skill なし Passive Skill スキル名 LV 効果 SP 解説 獲得金額上昇 3 40 0 戦闘勝利時における、獲得金額が40%上昇する 経験値上昇 3 40 0 戦闘勝利時における、経験値が40%上昇する この使い魔を編集する スコルピオ/Twin Scorpio コア・オブジェクト 蠍の尾 初期パラメータ 性能 基礎能力 耐性 LV 6 Atk 54 Str 61 闇 2 死 2 HP 25 Mag 40 Int 41 火 3 毒 2 MP 16 Tec 43 Dex 45 雷 2 麻痺 3 Vital 33 Def 67 Vit 33 光 2 衝撃 2 Mental 35 Reg 40 Men 35 冷 1 沈黙 2 Speed 19 Eva 35 Agi 21 風 2 暗闇 1 Active Skill スキル名 LV MP 威力 精度 錬気 詠唱 倍率 属性 備考 止縫衝 - - 24 20 4 0 100 物 麻痺 Passive Skill なし この使い魔を編集する ブラッディフライ/Bloody Flying Onion コア・オブジェクト 黒い羽 初期パラメータ 性能 基礎能力 耐性 LV 6 Atk 34 Str 34 闇 2 死 1 HP 25 Mag 38 Int 38 火 2 毒 2 MP 22 Tec 45 Dex 47 雷 1 麻痺 2 Vital 35 Def 38 Vit 35 光 2 衝撃 2 Mental 40 Reg 56 Men 41 冷 2 沈黙 2 Speed 36 Eva 56 Agi 36 風 3 暗闇 3 Active Skill スキル名 LV MP 威力 精度 錬気 詠唱 倍率 属性 備考 吸血の牙 - - 24 30 4 0 100 物 HP吸収 Passive Skill スキル名 LV 効果 SP 解説 アクセラレータ 1 8 2 スキル攻撃を行った際、使用スキルが再チャージされる。 獲得金額上昇 3 40 0 戦闘勝利時における、獲得金額が40%上昇する この使い魔を編集する ブレミッシュ/Blemish Night Fang コア・オブジェクト 錆びた斧 初期パラメータ 性能 基礎能力 耐性 LV 16 Atk 62 Str 76 闇 2 死 2 HP 96 Mag 46 Int 49 火 1 毒 3 MP 21 Tec 50 Dex 55 雷 2 麻痺 2 Vital 63 Def 63 Vit 78 光 2 衝撃 2 Mental 46 Reg 46 Men 49 冷 3 沈黙 2 Speed 23 Eva 54 Agi 24 風 2 暗闇 1 Active Skill スキル名 LV MP 威力 精度 錬気 詠唱 倍率 属性 備考 ポイズンブロウ - - 42 36 8 0 100 物 毒 地裂斬 - - 28 32 6 0 100 物 中範囲、スタン Passive Skill スキル名 LV 効果 SP 解説 パーリング 2 8 3 敵の物理攻撃を、一定の確率で無効化をする。 この使い魔を編集する 徘徊するもの/Wondering Soldier コア・オブジェクト 黒蠍の鋏 初期パラメータ 性能 基礎能力 耐性 LV 16 Atk 74 Str 103 闇 2 死 2 HP 53 Mag 46 Int 49 火 3 毒 3 MP 21 Tec 63 Dex 78 雷 2 麻痺 2 Vital 35 Def 77 Vit 35 光 2 衝撃 2 Mental 46 Reg 63 Men 49 冷 1 沈黙 2 Speed 23 Eva 46 Agi 24 風 2 暗闇 1 Active Skill スキル名 LV MP 威力 精度 錬気 詠唱 倍率 属性 備考 瘴気の尾 - - 48 40 6 0 100 物 毒、麻痺 紅牙 - - 60 40 8 0 200 物、火 Passive Skill スキル名 LV 効果 SP 解説 アクセラレータ 2 11 3 スキル攻撃を行った際、使用スキルが再チャージされる。 この使い魔を編集する フレアロック/Mistic Flame コア・オブジェクト 炎の石 初期パラメータ 性能 基礎能力 耐性 LV 19 Atk 51 Str 56 闇 2 死 2 HP 69 Mag 64 Int 80 火 3 毒 3 MP 63 Tec 64 Dex 80 雷 2 麻痺 2 Vital 50 Def 69 Vit 55 光 2 衝撃 2 Mental 50 Reg 69 Men 55 冷 1 沈黙 1 Speed 47 Eva 59 Agi 50 風 2 暗闇 2 Active Skill スキル名 LV MP 威力 精度 錬気 詠唱 倍率 属性 備考 最後の炎 - - 72 40 0 0 100 物、火 自爆 炎の斧 3 11 34 40 0 65 100 火 中範囲 炎舞陣 2 13 38 38 2 70 100 火 大範囲 煉獄の炎 1 13 36 40 4 50 150 火 雷の槍 2 9 90 52 0 45 50 雷 雷鳴刃 1 10 60 54 2 45 75 雷 Passive Skill スキル名 LV 効果 SP 解説 ロイヤルクレスト 3 14 4 最高位魔術を詠唱した際、一定確率で大魔術が発動する。 余談 実際のゲーム画面では英語名が「Mistic Frame」となっている。 この使い魔を編集する イグニス/Ignis Lizard コア・オブジェクト 紅蓮の刃 初期パラメータ 性能 基礎能力 耐性 LV 20 Atk 53 Str 59 闇 2 死 2 HP 106 Mag 61 Int 74 火 3 毒 2 MP 24 Tec 66 Dex 84 雷 2 麻痺 3 Vital 72 Def 66 Vit 98 光 2 衝撃 2 Mental 61 Reg 56 Men 74 冷 1 沈黙 2 Speed 49 Eva 61 Agi 53 風 2 暗闇 1 Active Skill スキル名 LV MP 威力 精度 錬気 詠唱 倍率 属性 備考 紅蓮剣 - 4 30 40 8 0 100 物、火 大範囲 自己修復 - - 10 30 16 0 100 物 回復 Passive Skill スキル名 LV 効果 SP 解説 ミラージュ 3 16 4 物理攻撃を行った際、低確率で連続攻撃を行う。 この使い魔を編集する 炎猫/Flame Cat コア・オブジェクト 燃えゆる髭 初期パラメータ 性能 基礎能力 耐性 LV 21 Atk 50 Str 55 闇 2 死 2 HP 60 Mag 63 Int 78 火 3 毒 2 MP 33 Tec 91 Dex 154 雷 2 麻痺 1 Vital 47 Def 52 Vit 50 光 2 衝撃 2 Mental 47 Reg 58 Men 50 冷 1 沈黙 2 Speed 55 Eva 108 Agi 63 風 2 暗闇 3 Active Skill スキル名 LV MP 威力 精度 錬気 詠唱 倍率 属性 備考 死の爪 - - 0 80 8 0 0 物 死 炎の斧 3 11 34 40 0 65 100 火 中範囲 炎舞陣 2 13 38 38 2 70 100 火 大範囲 煉獄の炎 1 13 36 40 4 50 150 火 Passive Skill スキル名 LV 効果 SP 解説 ロイヤルクレスト 3 14 4 最高位魔術を詠唱した際、一定確率で大魔術が発動する。 この使い魔を編集する レッドアイ/Red Eyes Hunter コア・オブジェクト 赤い宝玉 初期パラメータ 性能 基礎能力 耐性 LV 23 Atk 63 Str 78 闇 2 死 2 HP 114 Mag 61 Int 74 火 3 毒 1 MP 17 Tec 79 Dex 116 雷 2 麻痺 2 Vital 79 Def 74 Vit 116 光 2 衝撃 3 Mental 61 Reg 97 Men 74 冷 1 沈黙 2 Speed 39 Eva 67 Agi 40 風 2 暗闇 2 Active Skill スキル名 LV MP 威力 精度 錬気 詠唱 倍率 属性 備考 ぶちかまし - - 48 40 6 0 100 物 スタン ブラストタックル - - 38 36 6 0 100 物、火 中範囲 Passive Skill スキル名 LV 効果 SP 解説 リジェネレーション 3 8 7 再生能力のスキル。戦闘時、自動で傷が癒える。 カウンター 3 14 3 敵の物理攻撃に対し、一定の確率で反撃を行う。 この使い魔を編集する デス・アクス/Death Axe コア・オブジェクト 嘆きの斧 初期パラメータ 性能 基礎能力 耐性 LV 24 Atk 80 Str 119 闇 2 死 2 HP 104 Mag 57 Int 66 火 3 毒 1 MP 18 Tec 63 Dex 78 雷 2 麻痺 3 Vital 100 Def 82 Vit 188 光 2 衝撃 2 Mental 57 Reg 63 Men 66 冷 2 沈黙 2 Speed 41 Eva 69 Agi 42 風 1 暗闇 2 Active Skill スキル名 LV MP 威力 精度 錬気 詠唱 倍率 属性 備考 ダークブロウ - - 60 40 8 0 100 物 暗闇 地裂斬 - - 48 44 8 0 100 物 中範囲、スタン ベアタックル - - 72 60 12 0 100 物 Passive Skill スキル名 LV 効果 SP 解説 パーリング 4 12 4 敵の物理攻撃を、一定の確率で無効化をする。 カウンター 4 17 4 敵の物理攻撃に対し、一定の確率で反撃を行う。 この使い魔を編集する 機工兵/Golem Soldier コア・オブジェクト 動力球 初期パラメータ 性能 基礎能力 耐性 LV 25 Atk 67 Str 86 闇 2 死 2 HP 93 Mag 71 Int 95 火 3 毒 3 MP 37 Tec 84 Dex 131 雷 2 麻痺 1 Vital 65 Def 84 Vit 82 光 1 衝撃 2 Mental 65 Reg 84 Men 82 冷 2 沈黙 2 Speed 65 Eva 78 Agi 76 風 2 暗闇 2 Active Skill スキル名 LV MP 威力 精度 錬気 詠唱 倍率 属性 備考 ブレイズショット - - 36 40 8 0 100 物、火 広範囲 ショックカノン - - 42 50 10 0 100 物 直線 フォトンレーザー - - 480 60 10 0 25 物、光 直線 ヴォルカニックB - - 36 50 12 0 160 物、火 広範囲にランダムダメージ Passive Skill スキル名 LV 効果 SP 解説 カウンター 4 17 4 敵の物理攻撃に対し、一定の確率で反撃を行う。 シャープネス 4 35 5 鋭い刃で致命打を繰り出す。クリティカル発生率が上昇する。 この使い魔を編集する アグニ/Agni Serpent コア・オブジェクト 炎の鱗 初期パラメータ 性能 基礎能力 耐性 LV 26 Atk 64 Str 80 闇 2 死 2 HP 95 Mag 80 Int 119 火 3 毒 2 MP 48 Tec 80 Dex 119 雷 2 麻痺 2 Vital 87 Def 80 Vit 140 光 2 衝撃 2 Mental 87 Reg 80 Men 140 冷 2 沈黙 2 Speed 64 Eva 80 Agi 80 風 1 暗闇 2 Active Skill スキル名 LV MP 威力 精度 錬気 詠唱 倍率 属性 備考 炎激波 - - 48 40 4 0 100 物、火 複数 毒の牙 - - 48 50 4 0 100 物 毒 Passive Skill スキル名 LV 効果 SP 解説 リジェネレーション 4 10 9 再生能力のスキル。戦闘時、自動で傷が癒える。 カウンター 4 17 4 敵の物理攻撃に対し、一定の確率で反撃を行う。 この使い魔を編集する ダイナソア/Dinosaur コア・オブジェクト 竜の顎 初期パラメータ 性能 基礎能力 耐性 LV 30 Atk 96 Str 172 闇 2 死 2 HP 150 Mag 59 Int 70 火 3 毒 2 MP 21 Tec 82 Dex 125 雷 3 麻痺 2 Vital 120 Def 98 Vit 286 光 2 衝撃 2 Mental 67 Reg 90 Men 86 冷 2 沈黙 2 Speed 47 Eva 75 Agi 50 風 1 暗闇 2 Active Skill スキル名 LV MP 威力 精度 錬気 詠唱 倍率 属性 備考 ぶちかまし - - 60 50 6 0 100 物 スタン ドラゴンブレス - - 72 40 12 0 100 物、火 ショックウェイヴ - - 120 10 10 0 25 物 Passive Skill スキル名 LV 効果 SP 解説 カウンター 4 17 4 敵の物理攻撃に対し、一定の確率で反撃を行う。 ミラージュ 4 18 5 物理攻撃を行った際、低確率で連続攻撃を行う。 この使い魔を編集する フェニックス/Secular Bird コア・オブジェクト 浄化の翼 初期パラメータ 性能 基礎能力 耐性 LV 28 Atk 62 Str 76 闇 1 死 2 HP 114 Mag 85 Int 134 火 3 毒 2 MP 81 Tec 92 Dex 157 雷 3 麻痺 2 Vital 71 Def 78 Vit 95 光 2 衝撃 2 Mental 85 Reg 85 Men 134 冷 1 沈黙 2 Speed 74 Eva 92 Agi 103 風 3 暗闇 2 Active Skill スキル名 LV MP 威力 精度 錬気 詠唱 倍率 属性 備考 フレイムブレス - 8 60 50 8 0 100 物、火 敵全体 炎の斧 4 12 42 48 0 70 100 火 中範囲 炎舞陣 4 15 52 52 2 80 100 火 大範囲 煉獄の炎 3 15 41 50 4 60 150 火 燎原の灯火 3 18 56 58 6 90 100 火 爆鎖の赤 4 27 90 85 50 190 200 火 風の鞭 3 10 23 44 0 15 150 風 小範囲 旋空刃 3 13 21 48 2 20 200 風 中範囲 風塵牙 2 13 32 48 4 15 200 風 疾空閃 2 17 32 56 6 20 200 風 雷の槍 3 10 105 64 0 50 50 雷 雷鳴刃 3 12 80 74 2 55 75 雷 剛雷雨 2 14 74 72 4 75 75 雷 大範囲 迅雷波動 2 15 260 92 6 65 40 雷 Passive Skill スキル名 LV 効果 SP 解説 メディテーション 4 5 7 大気に満ちるマナを取り込み、自動でMPを回復する。 デュアルキャスト 4 17 5 魔術発動時、一定確率で下位魔術が連続発動する。 この使い魔を編集する
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わたし達は、馬を何度も替え、飛ばしてきたので、その日の夜中に ラ・シェールの入り口についた。 「なんで港町なのに山なんだ?」 プロシュートそう言うと、ギーシュ不思議そうに言った 「兄貴は、アルビオンを知らないのですか?」 プロシュートとギーシュが普通に会話している! 「知るか」 「まさか!」 ギーシュが笑ったが、プロシュートは笑わない 「ここの常識を、俺の常識と思ってもらっちゃ困る」 しょうがないか、異世界からきたんですものね 何?松明が落ちてきたっ! 「な、なんだ!」ギーシュが怒鳴った いきなり飛んできた松明に訓練を受けていない馬が暴れ プロシュートとギーシュが馬から放り出された その場所に、何本もの矢が夜風を裂いて飛んでくる 「奇襲だ!」ギーシュが喚いた プロシュートは剣を構えていた 無数の矢がプロシュートめがけて殺到するが、その矢を全て剣で叩き落とした 動きが見えなかった・・・見えたのは矢を剣で落としたという結果だけ 「確かに、使えるなコレは」 プロシュートは誰かに話し掛けていた 「だろっ、なかなか筋がイイぜ相棒」 剣と喋っていたのね 矢が尽きることなくプロシュートに襲い掛かる、剣で防いでるが限が無い 突然プロシュートが剣を下げる、まだ矢が尽きないというのに 「何やってんだっ?相棒っ、次が来るぞ!」 デルフリンガーが叫ぶがプロシュートは剣を構えない グワッシーン プロシュートの中から太い腕が矢を薙ぎ払う 「だが・・・俺にはこっちの方が性に合ってるな」 「そりゃねーぜ相棒」 ゴクリッ・・・出た・・・まさかっ、殺る気なの? 『ザ・グイトフル・デッド』・・・・・んん?
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朝昼は授業、夕は図書館、夜は体を鍛えるために広場でデルフリンガーを 抱えながら走り込みをしていた。 「貴族の娘っ子、もう止めとけバテバテじゃねえか」 「何を言っているのデルフリンガー・・・ハアハァ・・・あなたが言ったんじゃない 体を鍛えることの基本は・・・走り込みだと・・・ハアハァ・・・」 虚無の手がかりはデルフリンガーの記憶の中にあるというのなら、わたしが 振って思い出してもらうしかない。 「やり過ぎだ、最初からそんなんじゃ鍛えるどころか体をブッ壊しちまう」 「まだよ・・・まだ全然足りないわ・・・」 「どうなってもしらねーよ俺ァよー」 さて、もう一頑張りしますか。顔を上げると月に照らされて人影があらわれた。 「誰?」 わたしが声をかけると、人影はびくっ!として持っていた何かを取り落とした。 がちゃーん!と月夜に陶器の何かが響き渡る。 「わわわ、やっちゃた・・・。また、怒られちゃう・・・、くすん」 「シエスタ!?」 月明かりに照らされて姿を見せたのはメイドのシエスタだった。 メイドの名前なんか覚えないわたしだけどプロシュートが結果的に助けたという 縁で言葉を交わすようになっていた。 「あのっ!とても珍しい品が手に入ったので、ミス・ヴァリエールにご馳走しよう と思いまして、お茶っていうんです。走られて喉が渇いているんじゃありません か、よければどうぞ」 「覗いてたの?」 「いえ、その、そういうわけじゃ!」 シエスタに見られても別に問題ないか・・・ 「まあいいわ、淹れてちょうだい」 「はい、お待ちください」 お茶に口をつける・・・独特の味ね・・・ 「シエスタ、ミルクは無いの?」 「いえ、これは何も入れずに飲むそうですよ」 「ふーん」 思っていたより喉が渇いていたのか、あっという間に飲み干した。 ぐー わたしのお腹が大きな音を立てる、シエスタにもしっかりと聞こえたようね。 走りまくったせいでお腹の中が空っぽになったようだ。 「あははは・・・はしたないわね」 「お気になさらず、こちらも宜しければいかがですか?」 シエスタが小皿を差し出してくる、そこにはクックベリーパイが! 「い、いいの?」 「ええ、どうぞ」 「ありがとう、頂くわ」 本当ならかぶりつきたいところを我慢してフォークで行儀良く食べていく。 「ンまーい!」 ああ・・・しあわせ・・・ 「お茶の御代りもどうぞ」 紅茶が欲しいけど、しょうがないか。新しく淹れられたお茶を飲む、これは・・・ 「甘さが口の中からスッと引く感じがする、悪くないわね・・・ それにクックベリーパイもディ・モールト(非常に)美味しいし・・・ マルトーさん、いい仕事してるわね」 「いえ、あの違うんです」 シエスタが声をあげる。 「あの、これは私が焼いたんです」 「本当なの?町で売っている物より美味しいわよ」 「はい練習しましたから」 「まさか、わたしの為に?」 「はい、ミス・ヴァリエール最近元気が無いように見えたものですから」 自分で気がつかなかったけど、シエスタにはそう見えたのか・・・ 「ありがとシエスタ、おかげで元気百倍よ!」 「喜んで頂いてなによりです」 「じゃあ行くわ、ご馳走様シエスタ」 「ミス・ヴァリエール今日のところはその辺りにしておいたほうが・・・ 明日に差し障りが出ますので・・・」 「大丈夫よ、これ位。じゃあねシエスタ」 わたしはデルフリンガーを抱え再び走りだした。 翌日シエスタの言った通り体が痛くてベッドから出る事が出来なかった。