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大元、八、二—四鎌倉、江ノ島 大元、八、一五—二〇鎌倉、韮山、修善寺、三島古墳、江川邸、長岡(歴史地理韮山夏期講演会) 大元、九、一八—一九熱田神宮参拝 大元、九、二一—二三南河内地方視察—津堂古墳、道明寺その他 大元、九、二四桃山御陵参拝(御宝壙御構造に関する技師の説明を承る) 大元、一〇、三—七阿波 大元、一〇、一三三井寺、梵釈寺址、大津宮址、崇福寺址 大元、一〇、一四—一九山陰地方踏査—湊村銅鐸発見地、中海反小船、松江、大社参拝、(両国造家訪問)、安国寺、竹矢、塩谷古墳、大念寺古墳、淀江古墳、石馬、大湊(橋井氏訪問) 大元、一一、二二楽荘(大谷光瑞氏将来品参観) 大元、一一、六奈良東大寺、新薬師寺その他、博物館 大元、一一、八奈良(正倉院拝観) 大元、一一、一六住吉、堺、久米田寺、附近古墳(京大国史科旅行) 大元、一一、二五東京拓殖博覧会 大元、一二、一九—二、一、三宮崎、鹿児島両県視察(西都原古墳発掘)—細島、都農、上江、宮崎、徴古館、蓮池横穴、三宅、西都原、青島、大隅国分、隼人城、鹿児島神宮、隼人塚、日当山温泉、磯島津邸、鹿児島、小倉、京都、興津、鎌倉 大二、三、二武蔵蓮沼惣持寺 大二、四、二一—二八江尻、興津、静岡、阿波 大二、六、二二吉見百穴 大二、七、二四—二五鎌倉 大二、七、三〇l八、五奈良(歴史地理夏期講演会) 大二、八、五—一三阿波讃岐行—小松島、徳島、高松、猫塚、石船塚その他、屋島(歴史地理夏期講演会)、多和文庫 大二、八、二二—二三鎌倉、田谷の穴 大二、一〇、一八—一九飛鳥、木殿、檜前、越、牽牛子塚、岩船その他(京大国史科学生指導) 大二、一〇、二二京都平安神宮時代祭行列 大二、一一、二東京帝大史料展覧会 大二、一一、八—九摂津多田院、満仲墓、箕尾、勝尾寺(京大読史会遠足) 大二、一一、一六高雄、神護寺、栂尾、高山寺、槇尾、梅ヶ畑 大二、一一、二二御所拝観 大二、一二、一一—一五阿波、芝生古墳その他 大二、一二、二九—三、一、六伊豆長岡温泉、石棺その他 大三、二、一洛北高野、小野毛人墓 大三、二、一〇京都史蹟会御所史料展覧会 大三、二、一五洛北八瀬、大原寂光院 大三、五、六—一〇阿波 大三、五、二二—二三河内瓢箪山、服部川千塚、生駒宝山寺、高安城址、信貴山、朝護孫子寺その他(今西・梅原両君同行) 大三、六、五—六信越廻り京都行—上田国分寺、富山、高岡、山代温泉 大三、八、三—一八京都、阿波(小松島講演) 大三、九、二四洛東白川窯址、勝軍地蔵その他 大三、一〇、八—二〇阿波行—(九日午前二時五分父死去) 大三、一〇、二七正倉院拝観、大阪明治紀念博覧会 大三、一二、一一—一四阿波行 大三、一二、三〇—四、一、一九宮崎、熊本、福岡三県視察—都城、小林、霧島東神社(天逆矛)、狭野神社、宮崎、高岡、本庄四十八塚、妻(波辺氏蔵品)、千畑、茶臼原、高鍋、延岡、俵野、大貫、南方(有馬氏)その他、高千穂、阿蘇、中通村その他古墳、武蔵温泉、福岡(中山氏訪問)、元寇紀念館、香椎、鹿毛馬神籠石 大四、三、四平安京大極殿址調査 大四、三、二二—二七阿波史蹟巡り—本庄、上八万、地蔵寺山、矢野、津田、論田、芝生その他古墳、国府、国分寺その他(田所君東道) 大四、三、二九近江和邇、上品寺、大塚山その他 大四、四、一銅駝坊考古館 大四、四、三東大史料展覧会 大四、五、一—二河内古墳視察—百済神社、禁野、太秦寺、石宝殿、国分、松岳山古墳その他、駒ヶ谷古墳群、観音塚、春日切石壙、山田村双子塚、お亀石その他(梅原君東道) 大四、五、九宇治、丸山塚、金色院その他 大四、五、一六木幡、宇治、岡屋二子陵、時平塚その他 大四、六、三美濃養老滝、大垣城 大四、六、一一—一六箱根 大四、七、二〇—三〇宮崎、鹿児島、福岡各地—宮崎(宮崎史料展覧会)、薩摩阿多、加世田、久留米日輪寺古墳 大四、八、九—二五奥羽、北海道視察—仙台国分寺、国分尼寺、平泉中尊寺(歴史地理夏期講演会)、衣川館、盛岡、厨川柵址、福岡、爾薩体、上斗米、青森、函館、附近遺蹟、余市、小樽、手宮、札幌、白老、室蘭、弘前、秋田、寺内秋田城址 大四、一〇、九—一一近江蒲生地方(蒲生史料展覧会)—石塔寺、鬼室集斯の墳その他 大四、一〇、一五日高アイヌ風俗視察(京都三条東山線) 大四、一〇、二四東京博物館(御即位に関する展覧、飛鳥発掘石人等) 大四、一一、一八大阪博物館(御大典紀念郷土史料展覧会)、堺(田中淳蔵氏訪問、発掘品を見る) 大四、一一、二一滋賀里、大津京址 大四、一一、二四—三〇徳島(史料展覧会)、川鳥(鋼鐸)、大阪、堺 大四、一二、三一—五、一、三箱根 大五、二、五—七河内八尾、和泉岸和田、摂津池田(大阪史蹟調査会) 大五、二、一二—一三近江穴太、辛崎、坂本 大五、三、一—二恭仁京址、信楽京址(本山彦一・岩井武俊両氏同行) 大五、三、七—二六鹿児島、宮崎両県視察—大阪(西村天囚氏訪問)、天満(天狗の爪石)、鹿児島、唐湊摩利子天塚、川内、新田八幡、石器時代遺蹟その他、了忍寺塔礎、吉野遺蹟等、上の原の穴(マンロー氏の土蜘蛛穴というもの)、山川(土器)、隼人塚四天王、垂水発掘土器、大隅国分寺、桜島、鹿屋(朝鮮人部落)、串良百塚(棒踊)、大崎村横瀬大塚、福島古墳群その他、本城、酒谷城、鵜戸神宮、宮崎徴古館(椎葉古銭)、本庄の土壙、繁根木塚、江田塚、宇土、豊田貝塚、熊本、千金甲古墳 大五、三、三〇—四、五阿波行—眉山、渋野、石井、板東、池谷(土御門天皇御火葬所)、堀江その他 大五、四、一六—一七豊橋(大林意備翁遺品)、豊川稲荷、菟足神社 大五、四、二三—二四四条畷(史料展覧会)、枚方(三松氏)、御殿山古墳、百済王神社、氷室池ノ坊、不動堂その他、王仁墓、禁野古墳その他 大五、五、二大阪、高津 大五、五、七近江石山、国分、保良、茶臼山、建部神社その他 大五、五、一四近江葦浦観音寺、守山、小篠原 大五、五、二二高槻、濃味天神、車塚、石川年足墓その他 大五、六、一—二近江息長、山津照神社、浜松、蜆塚、犀ヶ窪、有玉、欠下その他 大五、六、五南加瀬貝塚、品川(江見水蔭氏蔵品を見る) 大五、六、一〇—一二北陸廻り京都行—直江津城址、府中八幡、国分寺、小川温泉、福井、河和田(弥生式土器)、北庄城、足羽山、武生その他 大五、六、二四—二五和歌山—鳴神古墳、紀三井寺、和歌浦 大五、七、三一—八、六愛知県各地—豊橋(歴史地理夏期講演会)、小坂井、豊川、一ノ宮、(浜松)、名古屋、熱田高倉(貝塚調査) 大五、八、一八—二四山陰各地—城崎、香住(大乗寺)、東郷、淀江、大社参拝、大根島(風穴)、松江城、米子、大庭、四王寺、八重垣神社、神魂神社、大庭附近古墳、大草、玉造その他 大五、九、一六横浜(中学校蔵考古品視察)、岡野公園(発掘品視察) 大五、九、三〇神戸 大五、一〇、一—二河内富田林(大阪府史蹟調査会史料展覧会)、堺 大五、一〇、一七正倉院拝観 大五、一〇、一九—二一阿波小松島、徳島、鴨島、飯尾 大五、一〇、二二—二三神戸(福原潜次郎氏蔵品視察) 大五、一〇、二八横浜 大五、一〇、三一品川(江見水蔭氏蔵品を見る) 大五、一一、一〇—一三大阪、河内、国府、道明寺、安福寺、平尾山その他 大五、一一、一八西ノ宮(郷土史料展覧)、六甲苦楽園、打出親王寺、兵庫史蹟 大五、一一、一九—二〇神戸兵庫史蹟(福原氏東道) 大五、一二、二九—六、一、九興津(海岸にて川面凡児氏主宰禊行事視察) 大六、一、二〇堺(前田長三郎氏、鹿島円次郎氏蔵品を見る) 大六、一、二二岡山 大六、一、三一堺、妙国寺その他 大六、二、一八神戸 大六、三、三〇静岡、浅間神社、小鹿古墳、清水山公園古墳その他 大六、四、五堺 大六、四、一六大阪長柄地方踏査—中島総社、鶴満寺、国分寺、豊崎神社その他 大六、四、二一伊勢参宮(京大学友会遠足)、鳥羽、松坂(本居翁旧宅)、徴古館 大六、四、二六—五、五阿波、讃岐、備前、備中各地—(田所市太氏東道)池ノ谷(宮田氏)、大寺、石塚、金泉寺(長慶陵伝説地)、檜村その他、(讃岐)—高松、長尾、(福家惣衛・大西行礼両氏東道)高松市外稲荷山石塚、姫塚、石舟塚、猫塚その他、(岡山)—(永山卯三郎氏東道)備中吉備津神社、備前吉備津彦神社、成親塚、吉備津彦墓、加茂造山古墳(六嘉式石室塚)、蝙蝠塚、尼寺址、国分寺、三須作山、箭田大塚、吉備寺、大塚、呉妹村、穴門山神社、吉備公館址、吉備公夫人古冢址、後楽国その他 大六、五、一二山城向日町、長岡京址 大六、六、六河内国府石器時代遺蹟発掘、喜志 大六、六、八大阪(北区冷雲院) 大六、六、一〇興津、東京 大六、六、二一—七、一四福岡、宮崎、鹿児島各地—筑前福岡図書館蔵遺物(中山平次郎氏)、怡土城址、高祖城、主船司神社(木下讃太郎氏東道)、(日向)—宮崎徴古館、下北方古墳、柏田横穴、同貝塚、船塚、岩戸神社、綾、清武、小林地下式壙、その他(若山甲造氏東道)、(薩摩)—鹿児島史蹟、谷山村、その他(以上山崎五十麿氏東道)、志布志、大崎、岡崎地下式壙、石棺、石剣等、西串良、岡崎古墳(以上瀬之口伝九郎氏東道)、吉田 大六、八、一浜寺(本山氏蒐集品を見る) 大六、八、二—四神戸(歴史地理夏期講演会)、各地史蹟 大六、八、五—七伯耆米子(歴史地理夏期講演会)、淀江(養良校蔵品を見る) 大六、九、二—九鎌倉 大六、九、一七—一九興津、浜名湖、摩訶耶寺、本坂(橘逸勢の霊鏡と称する漢鏡) 大六、一〇、四—五河内国府発掘視察、道明寺天満宮、高井田横穴、国府(人骨、※[#「王+決のつくり」、第3水準1-87-87]状耳飾、国府銅鏃) 大六、一〇、一六—二七阿波、讃岐、備前、播磨各地、(阿波)—石井、国府(近藤辰郎氏石器)、撫養、(讃岐)—高松(鹿角製剣頭)、一の谷、本山(荻田元広氏蒐集品を見る)、金倉西教寺、(備前)—岡山(六高訪問)、(播磨)—石宝殿、垂水海神社(山崎氏蔵、石器・玉類を見る) 大六、一〇、二五奈良 大六、一一、三正倉院拝観、玉井骨董店、関依水園 大六、一一、八石清水八幡宮参拝 大六、一一、二二奈良、博物館(大黒めぐり) 大六、一一、二四—二五大阪、奈良(大黒めぐり) 大六、一一、二八—二九堺、大阪(小林林之助氏訪問、大黒調査)、今宮戎神社 大六、一二、三大阪 大六、一二、五大阪、奈良(美術院新納氏訪問) 大六、一二、二四—七、一、一四大分、宮崎、鹿児島三県各地—(豊後)—別府(日名子氏)、明治村貝殻天神(豊州新報社蔵品を見る)、大分附近石仏、同横穴、永興古墳、王野瀬古墳(広瀬宰資氏東道)、西国東地方鹿垣踏査、蓮城寺、(河野清実氏東道)、臼杵、シャア部落、深田満月寺址、石仏、古市、八幡村円山、佐伯、(日向)—延岡、大貫貝塚等(有馬氏)、都農神社、高鍋、宮崎、(大塚タコタン部落調査)、宮崎徴古館、佐土原(ビュー部落調査)、(薩摩)—鹿児島(太鼓踊、棒踊)、揖宿、摺ヶ浜、柴立温泉、宮ヶ浜、鹿児島図書館土器、山崎五十麿氏蔵品、大隅鹿屋、横山遺蹟、壺屋(朝鮮人部落) 大七、一、二三下総銚子 大七、一、二六興津 大七、二、九二楽荘、久原氏石器時代遺物(佐藤蔀翁蒐集品を見る)、住吉、奈良 大七、二、二四—三、四阿波(蜂須賀侯葬儀その他) 大七、三、二八興津 大七、四、一八—二〇河内国府遺蹟発掘状況視察 大七、四、二七奈良 大七、四、二八河内国府遺蹟視察 大七、五、五奈良、河内高井田横穴、河内国府 大七、五、一一奈良、郡山、洞泉寺湯船、南葛城吐田郷銅鐸銅鏡伴出地調査 大七、五、一五興津、長者山古墳 大七、五、一九考古学会総会展覧(松浦武四郎旧蔵鍬先その他) 大七、五、二五飛鳥地方史蹟(大阪クラブ連中案内) 大七、六、二九—七、七丹波柏原(沼貫百塚出土品、鍍金鏃その他)、神戸(福原氏)、阿波 大七、七、二四—二九出雲地方踏査—安来、十神山古墳その他、今市(講習)、大念寺その他古墳、大社参拝(千家・北島両国造家訪問)、知井宮横穴その他 大七、七、三〇—八、一〇下関、赤間宮参拝、福岡(中山氏)、阿蘇内牧 (歴史地理夏期講演会)、熊本明麗館、豊前香春、夏吉古墳、河内王墓、大阪、堺 大七、八、一三—二〇北陸、会津各地—金沢(歴史地理夏期講演会)、尾山城、兼六園、越中氷見、朝日貝塚、大境洞窟、越後長岡、新潟(山中樵氏蔵品を見る)、—会津若松(歴史地理夏期講演会)、(米騒動)、(斎藤惣三郎氏蔵品を見る)、会津図書館、東山温泉 大七、八、二五—九、一興津(古墳出土土器、銅釧等) 大七、九、一三—一五遠江中泉(太田孫十郎氏蔵品を見る)、貝塚、遠江国府、国分寺、三河刈谷、名古屋 大七、一〇、三—四大和三島(天理教本庁)、(二階堂石棒、三島石棒、萩原氏蔵異形大石刀その他遺物を見る)、石上神宮参拝(七枝刀その他宝物拝観)、山辺地方古墳 大七、一〇、一一浜寺(本山彦一氏蔵品を見る) 大七、一〇、一六大坂 大七、一〇、三一—一一、五阿波脇町(笠井新也氏訪問) 大七、一一、一六正倉院拝観、佐紀村(猫塚その他踏査) 大七、一一、二九伏見桃山 大七、一二、二六東京博物館(埴輪調査) 大七、一二、三一—八、一、六興津 大八、二、二神戸 大八、二、一六兵庫 大八、二、二三東京築地本願寺(同情融和会) 大八、三、六京都柳原部落視察(明石民蔵氏訪問) 大八、三、一一京都野口部落視察(南梅吉氏訪問) 大八、三、一六山崎天王山、宝寺 大八、三、二一—二四阿波中の島、立善寺、富岡 大八、四、一六—一八北陸廻り金沢経由京都行 大八、四、二〇—二一奈良西坂(松井氏訪問)、河内道明寺、国府遺蹟発掘、土師神社(金剛能を見る) 大八、四、二五京都田中部落視察(松浦慶之助・松下清三郎両氏訪問) 大八、四、二六京都田中干菜寺、柳原(唐滝庄三郎氏訪問)、七条裏 大八、五、二高岸部落視察(明照寺) 大八、五、七東三条寺裏(吉田卯平氏訪問) 大八、五、八—九大阪(国学院)、河内太田(柏原仁兵行氏訪問)、奈良 大八、六、一五京都東寺 大八、六、一六大阪、神戸 大八、七、二二—二四福山(歴史地理講演会)、福山城、鞆津、安国寺、松永 大八、八、三—八遠江川崎、相良平田寺、相良大久保部落 大八、九、六下総成田、銚子 大八、九、二七大阪 大八、九、二八近江五箇庄(藤井善助氏) 大八、一〇、三—五備中津雲(松枝惣十郎氏訪問)、備後福山、鞆津、田島 大八、一〇、九—一三阿波、三谷、飯尾(呉郷文庫)、小松島 大八、一〇、二〇大和高田 大八、一〇、二三信濃木曾、辰野、善光寺、上伊那(郡内史料展覧会) 大九、一、四—八箱根堂ヶ島 大九、二、二八—二九奈良、五条、栄山寺 大九、三、二九—四、三阿波論田、小松島、飯尾その他 大九、四、二五嵯峨(花の寺) 大九、五、六神戸行(条里調査)、来迎寺、駒ヶ林、夢野古墳その他 大九、五、二二—六、一〇朝鮮、満洲行(奉天図書館大会)—神戸(史料展覧会)、釜山、東莱温泉、釜山鎮、京城、奉天、金州、旅順(博物館)、大連、奉天(皇宮、北陵)、平壌、開城(文廟、妓生学校、箕子墓、牡丹台その他、満月台、顕陵、汗蒸その他)、京城(景徳宮、総督府博物館、李王職博物館その他)、釜山 大九、七、五(京都帝国大学教授任官) 大九、八、六—一三福井県各地—越前芦原温泉、金津、福井、三国港、東尋坊、若狭耳村、河原市その他 大九、九、一京都より東京行(興津泊) 大九、一〇、一七醍醐(山科)、大津 大九、一〇、二〇—二五因幡浜村温泉、青谷 大九、一一、四—八信濃国分寺、上田城、長野、越中泊温泉、入善町 大九、一一、一七正倉院拝観 大九、一二、七—一一阿波鴨嶋、神戸(須磨寺、現光寺) 大九、一二、一二大和五条 大一〇、三、一三近江長浜 大一〇、三、一四—一九鳥取、島根両県各地—鳥取、淀江、玉造、大社(千家・北島両男爵、千家管長訪問) 大一〇、三、二一浜寺 大一〇、四、一六—二一奈良、高野、和歌山(図書館大会)—奈良(鹿寄せ)、平城宮址、法隆寺、高野(谷の者)(宝寿院蔵書)、端場、和歌山、和歌浦、淡輪 大一〇、五、一〇—一六阿波丈六寺、論田、兵庫 大一〇、五、二一—二二淡路、福浦、鳴門、淳仁陵、沼島 大一〇、六、五飛鳥、安倍文珠(帰路宇治県祭を見る) 大一〇、七、二七—八、一周防三田尻地方視察、松崎神社、柔の山古墳、国分寺、惣社、国府址、琳聖太子古墳、車塚その他 大一〇、八、七—九千葉、飯野内裏塚、九条塚その他 大一〇、九、※[#判読不明]大和檜前地方、菖蒲池古墳、鬼の厠俎、大内陵、欽明陵、石人、越塚、牽牛子塚、岩船、五条野丸山 大一〇、一〇、二大和忍坂、倉梯 大一〇、一〇、一三三河刈谷 大一〇、一〇、二二—二四三河刈谷、挙母、上伊保簓部落調査 大一〇、一一、一一正倉院拝観 大一〇、一一、一八京都歌舞練場(熊野田楽を見る) 大一〇、一一、二〇大和南葛城各所 大一〇、一一、二三浜寺(本山氏蔵品展覧) 大一〇、一二、一七大阪、兵庫 大一一、一、二二六甲苦楽園 大一一、二、一八神戸 大一一、三、二〇—四、一五阿波 大一一、四、一九—二七阿波(四月二十一日母死去) 大一一、五、三一大和南葛城地方(西松本国造墓というもの、地光寺礎石その他、八木町森田氏蔵品を見る) 大一一、六、二六大阪、堺、神戸 大一一、七、一八京都より東京へ、興津泊 大一一、九、三—一三阿波池田、三庄村磐境、お花大明神その他 大一一、九、一七奈良(今西伊之吉氏葬儀) 大一一、一〇、一大阪(豊崎) 大一一、一〇、二三—二四宮津、天橋立(京大文科遠足) 大一一、一〇、二九伊勢津、愛宕山麓石棺、贄崎四天王寺 大一一、一一、四飛鳥(京大学生指導) 大一一、一一、一一大津 大一一、一一、一九—二八山形、宮城、両県視察—庄内地方(阿部正己氏東道)、藤島、酒田(夷浄福寺)、本楯、吹浦その他、陸前桃生地方(斎藤荘次郎氏東道)、中山柵、北村、前谷地(斎藤養次郎氏蔵品を見る)、日高見神社、飯野川町、高道墓その他 大一一、一二、二一—二五阿波穴吹、中田 大一二、一、二七—二八大和御所町 大一二、二、一三京都歌舞練場(宇和島鹿の子踊を見る) 大一二、二、一八明石、唐櫃 大一二、三、五近江瀬田蜆塚視察 大一二、三、一一大和高田(史料展覧会) 大一二、三、二七—三一仙北、山形踏査—初春の深雪、雪の金沢柵(深沢多市氏東道)、雪橇の初乗、飯詰(江畑新之助氏訪問)、—山形、山形城、泰安寺址 大一二、四、三—七阿波穴吹、中田古墳 大一二、四、七大阪(三越敷地発掘品調査) 大一二、四、二七京都神泉苑(狂言) 大一二、四、二九大和南葛城地方史蹟踏査 大一二、五、二〇松浦伯家宝拝見(考古学大会) 大一二、六、一〇明石 大一二、七、四—二四奥羽、北海道方面視察—(山形県)鶴岡、大山、清川、立谷沢、砂越、松嶺、本楯、(秋田県)大曲、秋田、土崎、寺内秋田城、古四王社、四王寺址、(青森県)弘前、青森、(北海道)函館(図書館)、小樽、札幌、佐瑠太、ビタルバ、静内、平取、白老、(青森県)八戸(泉山氏蔵品を見る)、(岩手県)福岡、一方井、中尊寺その他 大一二、七、二九—三〇相模厚木、国分寺址その他、妻田 大一二、八、五—九和歌山県—高野山、東谷調査、粉河寺、和歌山市、岡町 大一二、八、一〇—一三阿波徳島、飯尾、小松島その他 大一二、八、一六—一九伊勢津市 大一二、八、二八九段遊就館(田村麿鍬形その他調査) 大一二、九、一—四東京各地地震状況視察 大一二、九、一八鎌倉震災視察 大一二、九、一九横浜震災視察 大一二、九、二三堺(宝珠院その他) 大一二、一〇、二七—三〇淡路洲本(松帆村銅鐸その他)、市村、三条(人形芝居調査)、成相国分寺その他 大一二、一二、二—四広島泉邸、観古館その他 大一二、一二、七—一二佐賀、鹿島、誕生院その他 大一三、一、一六津市 大一三、一、二六—二七奈良十八間戸、地獄谷その他 大一三、二、二二信濃上田市、別所温泉、北向山安楽寺その他 大一三、三、一五大阪味原円珠庵、比売語曾神社、四天王寺等 大一三、三、一七—二三能登七尾、和倉温泉、輪島、海士町、金沢市、那谷寺、法皇山その他 大一三、三、二六—二七武蔵熊谷 大一三、四、二—五阿波脇町、徳島、飯尾 大一三、四、一九尼崎、大阪 大一三、五、一七東京松平子爵邸(大塚)家宝拝見 大一三、六、一五—一六奈良、木津、田辺 大一三、六、二八浜寺(山川氏訪問) 大一三、七、二—二二朝鮮(山陰経由)—淀江、米子、皆生温泉、下関、釜山、京城、景福宮、社稷壇、中枢院、総督府博物館、図書館、李王職博物館、奎章閣その他、驪州、江漢祠、神勒寺、南漢山城、寧陵その他、水原、公州、扶余、大唐平百済碑その他、慶州博物館、仏国寺石窟庵その他、大邱、釜山 大一三、七、二三—二五熊本、井寺その他 大一三、八、一—三茅ヶ崎、厚木、海老名、妻田 大一三、八、六—一二阿波平島、小松島その他 大一三、八、一三—一四讃岐観音寺、笠岡その他 大一三、八、一四—一七尾道、西国寺その他 大一三、九、五—九福知山、宮津、天橋立、籠神社、国分寺址その他 大一三、九、一〇—一五福山、広島、三次 大一三、九、二〇(東北帝国大学講師嘱託) 大一三、九、二三仙台 大一三、九、二七(京都帝国大学教授辞任) 大一三、一〇、七—一〇羽前庄内、藤島、仙北、飯詰山、金沢柵、祇園寺その他 大一三、一〇、一七—一九別府、春日浦(安部甚三郎氏)、旭町 大一三、一〇、二三伊予松山、石手寺、道後温泉その他 大一三、一一、一陸前閖上浜 大一三、一一、六—七岐阜、加納城その他 大一三、一一、九河内古墳視察 大一三、一一、一六宇都宮 大一三、一一、二九—三一長野善光寺、名古屋 大一三、一二、一三—一四岩代郡山、茶臼館、如宝寺その他 大一三、一二、二五熱田神宮参拝 大一四、一、一四—一五豊橋、小坂井(銅鐸調査)、国分寺、菟足神社その他 大一四、二、一五—一八豊橋鬼祭見物その他 大一四、二、二六—二八前橋、世良田、武蔵石塚 大一四、三、四—五播磨佐用 大一四、三、一七陸前前谷地 大一四、三、一八—一九庄内、盛岡 大一四、三、二〇—二一陸前岩出山、東陽寺その他 大一四、三、二七—三〇紀伊田辺、鉛山、白浜温泉、和歌山 大一四、四、一(再び京都帝国大学講師嘱託、東北大学兼勤) 大一四、四、三河内誉田その他 大一四、四、二二大阪市外岡町 大一四、四、二六奈良博物館(正倉院裂展観) 大一四、四、二六—二七紀伊高野口 大一四、五、一—四陸中平泉(清衡八百年祭紀念展覧会)、中尊寺、毛越寺、衣川柵その他、鵜木館、花巻その也 大一四、五、三一—六、一仙台史料展覧会、多賀城、国分寺、瑞鳳殿、大崎八幡、燕沢碑その他 大一四、六、二—五盛岡、千曳、青森、弘前、大鰐温泉、秋田、仙北その他 大一四、七、九—二〇岩手、青森、秋田三県視察—水沢(青木・鈴木両氏蔵品を見る)、江刺、根岸洞窟、七戸、貝塚、二ツ森、野辺地、青森、外ヶ浜、三厩、宇鉄、中師、秋田、鳥海柵、胆沢城址 大一四、八、四—五越中福野 大一四、八、八—一〇岩手県各地—花巻、江刺(岩谷堂)(江刺郡史料展覧会)、宮野目館その他 大一四、八、一一—二三青森、秋田、山形三県各地—八戸、是川村、小中野、鮫、青森、弘前、秋田、大曲、吹浦、遊佐、松嶺、酒田 大一四、八、二六—三〇紀伊御坊、南部、道成寺その他、和歌山、大阪 大一四、九、二七陸中一ノ関(沓沢氏訪問)、厳美渓、宅谷窟、平泉、中尊寺、毛越寺その他 大一四、九、二八—三〇陸前築館、城生野(伊治城址)、宮野、沢辺、岩ヶ崎、営岡その他 大一四、一〇、一八—一九岩代郡山、福島 大一四、一〇、一九—二一山形、寒河江 大一四、一〇、二四—二八青森(佐藤蔀氏訪問)、野辺地、有戸、田名部、下北半島北岸(大間まで)、恐山その他 大一四、一〇、二九—三一鷹巣、藤株、麻生、七座その他 大一四、一一、一—四郡山、会津、一箕山、旧流民収容処その他 大一四、一一、一五—一六会津袋原、郡山 大一四、一一、一七—一八新潟、図書館(高橋義彦氏訪問)、沼垂その他 大一四、一一、二一—二三鷹巣、藤株(山本・嵯峨両氏同行) 大一四、一一、二四—二六青森、八戸、是川、小中野 大一四、一一、二八福島 大一四、一二、一二—二一岩手、青森二県各地—盛岡、安倍館、天昌寺館その他、福岡(国香氏訪問)、爾薩体その他、青森、弘前、浪岡、黒石、鷹巣、秋田(真崎勇助氏遺品展覧)、青森(佐藤蔀氏蔵品写真撮影)、八戸(泉山氏訪問) 大一四、一二、三一—一五、一、三阿波下八万、徳島 大一五、一、四—六大阪、浜寺、二楽荘(本山彦一氏同行、蔵品写真撮影) 大一五、一、一二東大人類学教室蔵品写真撮影 大一五、一、一七前谷地、斎藤氏宝※[#小さいガ]峯(東北大学学生指導) 大一五、一、二八—二九浜松 大一五、一、三一六甲甲陽園 大一五、二、四—五富山(早川氏蔵品を見る) 大一五、二、六—九羽前藤島、羽後鷹巣、青森、八戸 大一五、二、一四長浜(下郷氏鐘秀館) 大一五、二、一六—二〇佐賀、甘南備山、都々城原古墳発掘品、実相院、佐賀城その他、長崎 大一五、二、二四—二五岡山、国清寺その他 大一五、二、二六—二七舞鶴城址その他 大一五、二、二八—三、一山口、湯田温泉その他 大一五、三、四—五宇都宮浄隆寺、二荒山神社 大一五、三、九—一一和歌山、野崎総持寺 大一五、三、二八—三〇広島、泉邸、観古館、比治山公園、呉 大一五、四、一—二阿波 大一五、四、六奈良、法隆寺(塔心柱礎調査)、法起寺、法輪寺その他 大一五、四、一八丹波和田山 大一五、四、一九大阪(水平社講演) 大一五、四、二五二楽荘(石器時代遺物を見る) 大一五、四、二六—二七淀江徴古館、松江、熊野神社その他 大一五、五、一八—二八青森(佐藤蔀氏蔵品を見る)、北海道函館(図書館蔵品写真撮影)、樽岸、札幌、旭川(近文コタン)、中央小学校蔵品、(十勝岳爆破)、下富良野、山津波現場視察、白老、室蘭 大一五、七、一〇—一六盛岡、一戸、金田一、舌崎遺蹟調査、青森、内潟、今泉、相内、十三(安東氏遺蹟調査)、亀岡、五所河原、森田、床舞(山本助手および次男新六同行) 大一五、七、一八—一九酒田、藤島(沓沢氏訪問、蝦夷年表紛失) 大一五、七、二〇越後高田、斐太、菅原古墳(村役場蔵品を見る) 大一五、七、二一—二二大阪、打出、神戸 大一五、八、二—七陸中花巻、徳田、藤島蝦夷森、日詰城山、志波城址、見前(宮崎文庫)その他、盛岡 大一五、八、八—二四八戸、根城、青森、函館、朝里、札幌(札幌博覧会歴史館)、札幌神社、厚別、白老、室蘭、青森、七戸、倉岡、八幡新館その他 大一五、八、二六—二七郡山、三春(秋田子爵家宝文書等閲覧) 大一五、九、四大阪、石清水八幡 大一五、九、一一—一二三春(秋田家史料調査)、真照寺、郡山、如宝寺、福島、飯坂温泉 大一五、九、二四—一〇、三盛岡、太田方八町、大宮社、大坊氏樺太土器撮影、米内館、青森、内潟、尾別、福島城址、相内、弘前、機織 大一五、一〇、三—八仙台 大一五、一〇、九—一二鳴子、岩谷堂(小田島氏蔵品を見る)、平泉、花巻 大一五、一〇、二二—一一、一秋田、青森二県各地—横手城址、大森、秋田、寺内、豊岩村(武藤一郎氏訪問)、浪岡城址、御廟館、弘前、青森 大一五、一一、九正倉院拝観 大一五、一一、二六—三〇庄内、酒田、光丘文庫、山形、郷土博物館 昭二、一、八—一二阿波、神戸、大阪 昭二、三、七多摩陵参拝、八王子(史談会蔵品展覧)、高尾山薬王院 昭二、三、二一石巻(遠藤・毛利両氏蔵品撮影、山本・嵯峨二氏同行) 昭二、三、二三福島 昭二、四、二三—二六陸中日詰、古館(住宅址調査)、台温泉、花巻、胡四王神社、水沢 昭二、五、一—三下野足利鑁阿寺、栃木、国分寺、薬師寺、宇都宮(栃木師範蔵品を見る) 昭二、五、六—九高田、春日山、斐太、浄興寺、糸魚川、長者原遺物調査その他、日出谷 昭二、五、一〇—一一富山、高岡、氷見 昭二、五、一三—一四大和榛原、初瀬、室生寺、三本松 昭二、五、二〇—二一羽後横手、秋田、鷹巣、藤株(山本氏発掘) 昭二、五、二二—二四酒田、新庄、戸沢氏城址、接引寺(台湾石器を見る)、(常葉氏訪問) 昭二、五、二七—三一陸中花巻城址、瀬川館、金矢館、内館、大畑館、日詰、二子 昭二、六、七陸前塩竈、松島 昭二、六、一八—二二花巻、小鳥崎館、盛岡(盛岡史料展覧会、嵯峨氏同行)、日詰、黒沢尻、二子 昭二、七、一三京都(貔子窩遺物閲覧) 昭二、七、二二—八、三北海道視察—青森、室蘭、登別、白老、札幌、旭川、上川、層雲峡 昭二、八、四陸中平泉、中尊寺 昭二、八、九—一七九州各地—肥後人吉横穴、鹿児島(山崎氏蔵品その他)、宮崎、妻研究所、延岡、天下、別府(日名子氏蔵品を見る) 昭二、八、二八—二九磐城新地、秋保温泉 昭二、九、一九—二〇陸中古館、花巻 昭二、一〇、一奈良(元興寺塔礎発掘品調査その他)、大阪、三島、富田その他 昭二、一〇、四岩代厚樫山、福島、その他 昭二、一〇、七—八山形(史料展覧会) 昭二、一〇、九—一一庄内、羽黒(手向)、藤島、福島 昭二、一〇、二二—二三陸前岩出山、東陽寺、丸山館、浄泉院、大崎城址 昭二、一〇、三〇—一一、一陸前桃生城址、石巻、湊、蛇田、沼津貝塚 昭二、一一、五—七新潟、長岡、高田、潟町、塔ヶ崎 昭二、一一、二三摂津三島、継体陵その他(京大学生指導) 昭二、一二、九奈良、大阪 昭二、一二、一〇摂津打出、奈良春日神社その他 昭二、一二、二五—二七陸前秋保温泉 昭三、一、二—一七陸前秋保温泉 昭三、二、二—一二宮崎、大分二県視察—宮崎、徴古館、本庄古墳、延岡、南方その他、別府 昭三、三、二一陸前亘理、鹿島 昭三、三、二九—三〇箱根温泉 昭三、四、一—五阿波、飯尾その他 昭三、四(仙台博覧会東北史料展覧会) 昭三、四、二五陸前塩竈 昭三、五、五—七羽後角館、生保内、田沢湖その他 昭三、五、一四—一五奈良、西大寺、佐紀(平城宮濠中発掘品調査) 昭三、五、一五—一六大和榛原、足立、篠楽、初瀬、小川、国樔、吉野宮滝その他 昭三、五、一七明石、垂水 昭三、七、二六—八、三佐渡、夷、新穂、真野、西三川、小木、畑野、加茂その他、新潟、長沢、五十嵐神社その他、高田、新井 昭三、八、七大阪、天王寺(石棺蓋)、神戸 昭三、八、一五岩代郡山 昭三、八、一八—二〇山形(郷土博物館)、鶴岡(庄内史料展覧会)、湯ノ浜、酒田、光丘文庫 昭三、八、二一—二七秋田、弘前、藤崎、黒石(佐藤雨山氏訪問)、大光寺、青森、小湊(古代住宅)、七戸、八戸、花巻 昭三、八、二九羽前五色温泉 昭三、九、一一—一二羽前五色温泉 昭三、九、二二—二六陸前秋保温泉 昭三、一〇、一熱田 昭三、一〇、二六奈良(正倉院拝観、平城宮濠中発掘品再調査) 昭三、一〇、二八二楽荘(山本氏同行) 昭三、一〇、二九—三〇越後高田(師範学校史料展覧) 昭三、一〇、三〇武蔵石塚 昭三、一一、一九—二〇陸前秋保温泉 昭三、一二、五—六神戸、大阪 昭四、三、三〇—四、一山口県各地—厚狭、山口、福川、田布施、平生 昭四、四、二—四阿波飯尾その他 昭四、四、一五—二一陸奥八戸、是川村(大山史前学会発掘) 昭四、四、二八陸前塩竈 昭四、八、八和泉牛滝 昭四、八、二三比叡山延暦寺 昭四、一〇、一五—二一青森、秋田、山形三県—八戸、是川村、鮫(以上杉山氏同行)、七戸、獣疫研究所敷地竪穴その他、青森、浪岡、弘前、大鰐、秋田、松嶺 昭四、一一、一正倉院拝観、東大寺南大門附近発掘品 昭四、一一、二—一二宮崎、富高、伊勢浜、国富、延岡、大峡、高千穂、岩戸、田原、河内、小河内石塚、熊本、福岡(中山氏訪問)、甕ノ尾(合せ甕墳墓)、太宰府 昭五、三、一五奈良、春日田植祭 昭五、三、二七—四、四京阪地方見学(東北大学学生指導)—西宮辰馬氏蔵品、浜寺本山氏蔵品、河内各所、大和、奈良、飛鳥その他、京都御所離宮拝観、藤井善助氏蔵品、西本願寺その他 昭五、四、五—七阿波 昭五、四、二四—二八岩手、秋田、山形三県—陸中時田館、蛭川館、蟹沢館、古館その他、羽後払田柵、横手、愛宕山館、大鳥居館、子吉山石櫃、石神その他、松嶺、大山石棺、尾浦城址木柵、善法寺その他 昭五、四、二八陸前古川、三本木八阪社穴、桑折館、蟻の袋蝦夷穴その他 昭五、五、五(仙台浴室にて顛倒、肋膜炎、肺炎を起し約四ヵ月就褥) 昭五、一〇、二—四京都、黒谷その他 昭五、一〇、五西宮(松原神社)、打出、魚崎 昭五、一二、三一—六、一、四伊勢参宮、朝熊登山その他 昭六、一、七浜寺 昭六、一、一一吉野宮滝 昭六、三、一七—一九鹿島、水戸、常盤村長者屋敷その他 昭六、四、七—一三青森、秋田二県—是川村、青森、弘前、秋田、八森、檜山、払田柵、藤木村、六郷、石名館、横手、金沢 昭六、五、二大津京址、三井寺 昭六、五、三大阪、天王寺その他 昭六、五、二三—六、二羽後本楯柵、横手、角館、土川、陸中一戸、宮古、陸前一迫、真坂 昭六、六、二一石巻 昭六、七、五鵠沼 昭六、七、一四—二九《(ママ)》北海道各地—函館、小樽(博覧会)、札幌(博覧会)、旭川、名寄、遠軽、網走、川湯、クッチャロ、釧路、厚岸、根室、帯広、佐瑠太、平取、白老、登別、室蘭 昭六、七、二六《(ママ)》—二九陸前秋保温泉 昭六、八、七—八大阪、神戸、浜寺、打出 昭六、九、一六—二八陸前秋保温泉 昭六、九、二九—一〇、四越後高田、信濃桑名川、若狭羽賀寺、京都 昭六、一〇、一五—一八中尊寺、北海道(江別古墳) 昭六、一〇、一九—二四阿波(十月十七日兄死去) 昭六、一一、六—一六青森、秋田、山形三県—津軽(黒石、山形)、矢島、本楯、渡前、鶴岡、大山、黒川(宝※[#小さいガ]谷)、湯田川 昭六、一一、二一—一二、一〇越前敦賀、若狭羽賀寺、丹波綾部、摂津有馬 昭六、一二、二三—七、一、一〇陸前秋保温泉 昭七、二、二八—三、八陸前秋保温泉 昭七、四、四—七阿波(櫛淵風呂ノ谷)、その他 昭七、四、一二京都(中外座談会) 昭七、四、一六京都(還暦記念会) 昭七、四、二〇奈良(正倉院御物裂展観) 昭七、七、三多摩陵参拝、高尾登山 昭七、七、一五—八、一青森県、北海道—是川村、野辺地、函館、札幌、旭川、帯広、白老、室蘭 昭七、八、四—五宇都宮、長岡百穴、宇都宮城その他 昭七、八、二八—九、六陸前秋保温泉 昭七、九、一五—一九陸前青根、峨々、遠刈田温泉 昭七、九、二三—二七秋保温泉 昭七、一〇、一二—一一、一琉球、九州—神戸、大島、沖縄、那覇、首里、浦添、南山城、中城、名護、運天その他、鹿児島、宮崎、人吉、日奈久、太宰府、福岡、岡山、神戸、阿波 昭七、一一、三京都、奈良(正倉院) 昭七、一一、一八—三〇奥羽、北越—陸前鳴子、新庄、羽後横手、六郷、 四十二館、陸中盛岡、陸奥八戸、是川、青森、弘前、羽後秋田、羽前鶴岡、温海、越後高田 昭七、一二、六名古屋、京都 合計五百五十四回、外に括弧内のものは計五百六十二項あり。 [#二段組ここまで] (つづく)
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<目次> 私はコレで、グリコをやめました 1-あらまし 2-流れ 3-犯人達構成 特徴 犯人たちの目的 4-警察の対応広域重要指定114号事件に指定 捜査方針 なんで公安の手法を用いたのか? 5-対マスメディア戦略メディアの「報じるという使命」を利用して全国に脅迫の事実を報じさせる 全部の事件に挑戦状出さず 6-大量の遺留品&分析膨大な遺留品=ブツ 女&子供の声分析 7-社長は自力で脱出したのか、犯人がわざと見逃したのか? 8-グリコ原点説1981年2月に倒産した××工業関係者の捜査(1989年ごろ) 黒いオーバーコート 53年テープ 9-B作戦k元組長 回収業者経営M 北朝鮮元工作員R=北陸の男 Rの娘=京都の女 大阪の食肉業者z 暴力団員О 京都の同和団体S=さる組織X? 10-キツネ目の男宮崎学説 新たに新説が浮上 まとめ 私はコレで、グリコをやめました 幼稚園の年中組の頃、お休みの日にテレビを見ました。朝、ワイドショーか何かがやっていました。2つのお菓子が番組のスタジオに持ち込まれていて、ドアップになったそのお菓子に、出演者達がかわるがわるコメントをしています。どうもグリコと森永のお菓子に毒を入れるけしからん奴がいて、それがこのお菓子(もしくはそれと同種類のものの再現?)のようです。お菓子に毒を入れられたら危険だから店、から森永のお菓子を消すというのです。そういうことがあったので、「ゆるしたろ」の後に、グリコと森永のお菓子を店頭で見ても怖くて、親に「買ってくれ」とは言えませんでした。 途中キツネ目の男やビデオの男の映像がテレビで流れていて解決するのだろうと思いましたが、「なんとなく終わったらしい」ので、もう大丈夫だろうと思い(おそらく昭和61年ごろ)グリコと森永のお菓子を食べてました。 キツネ目の男の絵は怖かったです。どうでもいいけど当時流行っていた、わたしはこれで会社を辞めたという「禁煙パイポの男」に似ているな―と思いました。 ほっ! いいキツネ目 1-あらまし 1984年(昭和59年)3月18日夜、江崎グリコ社長宅に犯人3人が忍び込み、江崎勝久社長を誘拐、「人質はあづかった 現金10億円 と 金塊100kg を よおい しろ」との脅迫をした。社長は自力で逃げ出し救出され、終わったかと思われたものの、これ以降「かい人21面相」を名乗る犯人グループの行動はエスカレートした。犯人グループは、森永など複数の企業を、グリコと同じ手口で脅迫し、さらに店の商品に毒物を混入させて食品・流通業界を1年余りに渡って混乱させた。警察は、コンビニの商品に毒物を混入したと見られる(断定していない)ビデオの男、現金受け取り現場での見張り役「キツネ目の男」を公開したが、事件発生以来1人の犯人も捕まえられずに時効を迎えた。 なお、この事件は人が死んでないとはいえ、毒物混入菓子を売る・ばらまく、スーパーなど流通機能をマヒさせるなど、「目的を達成するため、不特定多数に、不意打ちの形で、強制的に従わせる」という意味で、テロ行為と言える。 2-流れ 事件の経過 84年3月18日 a 江崎グリコ社長誘拐 江崎勝久氏(当時42歳)拉致される ↓ 3月19日 江崎グリコ取締役宅に「 現金10億円 と 金塊100kg を よおい しろ」とする脅迫状。報道協定 ↓ 3月20日 兵庫県警、社長宅に押し入った2人組の犯人像を発表 ↓ 3月21日 午後2時15分すぎ、大阪府摂津市新在家の国鉄大阪貨物ターミナル駅構内の線路で江崎勝久社長を保護。報道協定は解除 ↓ 3月22日 江崎社長「私には全く犯人に心当たりがない。みなさんの中で、もし心当たりがあるなら、私に不名誉なことであっても構わない。正直に警察に話してくれ」 ↓ 4月2日 b グリコ脅迫 江崎社長宅に6000万円を要求する脅迫状。その封筒には塩酸入り目薬容器と誘拐犯本人の証として、監禁時に録音された社長の声が入ったテープも ↓ 4月8日 受け取り場所の喫茶店「マミー」に犯人は現れず。報道機関(大阪の毎日・サンケイ)と兵庫県警甲子園署に「けいさつの あほども え」という始めての挑戦状 ↓ 4月10日 午後8時50分頃、大阪市西淀川区の江崎グリコ本社・工務部試作室から火が出る。その30分後、大阪市福島区のグリコ栄養食品でも出火 ↓ 4月11日 午前8時、江崎家に「思い知ったやろ。今後も気をつけろ」と男の声で脅迫電話。午後3時5分には京都市伏見区のグリコ栄養食品京都工場にも男の声で「燃やすから、覚悟しろ」という電話 ↓ 4月12日 警察庁、この一連の事件を「広域重要114号事件」に指定 ↓ 4月16日 午前11時頃、茨木市東野々宮町の曙橋左岸橋脚台で「えんさんきけん 大さか市西よど川区歌島4-6-5 江崎グリコ 江崎勝久」と書かれた脅迫文が添付された塩酸入りの赤いポリ容器を発見 ↓ 4月20日 午後5時ごろから3回、江崎社長宅に脅迫電話→逆探知によりこの電話は阪急西宮北口駅の今津線宝塚行きホームの公衆電話からと判明 ↓ 4月23日 大阪の毎日、サンケイの新聞社に脅迫状が届くここで初めて「かい人21面相」と名乗った。内容は「24日か27日夜、豊中市上津島3丁月のレストラン『ダンヒル』に、現金2千万の束を6つ、1億2千万円持って来い」 ↓ 4月24日 テープに録音された女性の声で「名神高速道路を85キロで吹田のサービスエリアへ走れ」と犯人側から現金受け渡しに関して電話から指示。この後も「国鉄高槻駅前の公衆電話ボックスへ行け。×印のついた電話の下を見ろ。電話帳に手紙がはさんである」と指示されるが手紙はなく犯人からの連絡もなし ↓ 5月9日 江崎グリコ大阪工場付近の路上にガソリンを入れた家庭用洗剤のプラスチック容器3個が置かれる ↓ 5月10日 報道機関(毎日・サンケイ・読売・朝日)に「グリコの せい品に せいさんソーダ いれた」「グリコを たべて はか場え いこう」なる挑戦状が届く。この前にグリコ本社にはグリコ製品に青酸を混入するという脅迫状が届く ↓ 5月11日 ダイエー、ジャスコ、ニチイ、イトーヨーカドーなどの大手スーパーはグリコ製品の撤去を開始 ↓ 5月13日 江崎グリコは全国紙5紙、地方紙などに事件に対する見解と、小売店などへのお願いを内容とする「謹告」広告を掲載 ↓ 5月14日 江崎社長が本社で記者会見「隠し事は一切しておりません」 ↓ 5月17日 報道機関に挑戦状。ダイエー社長を名指しする ↓ 5月18日 捜査本部、監禁中の江崎社長に着せられた黒いオーバーコートと、黄・緑・ピンクのラインの入ったスキー帽を公開手配 ↓ 5月20日 グリコと取引のあった大阪市東区の香料製造会社「長岡香料」に、グリコへの裏取引を迫る脅迫状「3億円出せ。出せば青酸ソーダ混入の脅しをやめる」 ↓ 5月23日 大阪証券取引所で江崎グリコの84年3月期決算案の発表。大久保会長はグリコ製品販売停止の影響を受ける翌年度の決算について、事件が早期に解決しても、50億円の減収となる」という見通し ↓ 5月26日 グリコが茨木市のロッテリア茨木店で裏取引に応じるも、犯人は姿を現さず(報じられたのは6月) ↓ 5月30日 長岡香料に2通目の脅迫状「6月2日午後8時から8時半の間に、摂津市内のレストラン・大同門の駐車場に、3億円を積んだ白色のカローラを置け」 ↓ 6月2日 c 寝屋川・アベック襲撃事件 ↓ 6月3日 男性のチェイサーが寝屋川市木屋町の神社の参道に乗り捨ててあるのを発見。車内の運転席には果物ナイフの鞘、助手席のマットには目隠し袋が残されていた ↓ 6月11日 捜査本部は管内80万世帯を1軒1軒洗うローラー作戦を実施 ↓ 6月22日 d 丸大脅迫 5000万脅迫※一般に知られるのは11月 ↓ 6月24日 グリコが新聞に「ともこちゃん、ありがとう。グリコはがんばります」という7段抜きの広告掲載。滋賀県に住む小学2年生の女の子からの激励の手紙が同時に掲載されていた。「わたしはグリコのおかしが大好きです。でもはんにんがどくをいれた というのでおかしがかえなくなってとってもさみしいです。だからはん人がつかまってはやく『グリコ』のおかしがたべたいです」 ↓ 6月26日 報道機関に挑戦状「グリコ ゆるしたる」と休戦宣言。これを受けて江崎グリコは生産の全面再開&販売再開を決定。丸大食品は犯人の指示通り新聞広告を出す ↓ 6月28日 丸大食品は裏取引に応じ、捜査員が指定場所へ行った際「キツネ目の男」を目撃 ↓ 7月3日 高槻市山手町の藤田政光・丸大食品取締役宅に「6日午後8時、茨木市内のレストランで待て」との脅迫状 ↓ 7月6日 丸大食品は吹田市新芦屋上の小森嘉之・取締役宅で犯人からの連絡を待っていたが、受け取り現場に犯人は姿を現さず ↓ 7月23日 ジャスコ社長、ニチイなど4社宛てに警告状 ↓ 9月12日 e 森永脅迫 「グリコと同じめにあいたくなければ、1億円出せ」と青酸入りの菓子が同封されている脅迫状→現金の受け渡しは18日、守口市のレストラン「USA」 ↓ 9月18日 森永脅迫事件で犯人から関西支社に連絡。電話は子どもの声を録音したもの「レストランから、1号線を、南へ、1500m行ったところにある。守口市民会館の、前の。京阪本通2丁目の、陸橋の、階段の下の、空き缶の中」捜査員が指示通りにしても、犯人は姿を現さず ↓ 9月25日報道機関に挑戦状。18日の事件は自分達によるものと主張 ↓ 10月7日 この1週間で兵庫、大阪、京都、愛知のスーパーなどで青酸入り森永製菓の菓子を13個発見。菓子には「どくいり きけん たべたら しぬで」 ↓ 10月8日 報道機関に「とくべつに あじ つけたった」と青酸入り菓子のばらまきを予告する挑戦状が届く。また阪急百貨店社長など27社宛てにも、森永製品撤去を求める警告状があった→後に京都・百万遍のコピーセンターでコピーしたものと判明 ↓ 10月10日 各店舗が撤去する中、販売する方針だった関西西友でも森永製品を撤去することを決定 ↓ 10月11日 捜査本部、4月24日の脅迫電話で流れた女の声の録音テープ&9月18日の脅迫電話で流れた子どもの声公開 ↓ 10月12日 森永製菓は製菓部門5工場で50%減産。臨時従業員、パートら450人が自宅待 ↓ 10月15日 捜査本部「不審な男=ビデオの男」の映像を公開。報道機関に挑戦状。NHK大阪放送局に30錠の青酸錠 ↓ 10月16日 大阪の西友系スーパー2店に脅迫状&青酸入り菓子「店長え おまえらの店の名前で 店のきゃくえ おくることもできるんやで かい人21面相」(消印・豊島郵便局10月13日午後)→西友グループは全国230店で森永製品を撤去。森永製菓は全国でTVコマーシャルを中止 ↓ 10月19日 東京・豊島区のファミリーマートの郵便受けに青酸入り菓子が投函される ↓ 10月22日 ファミリーマート埼玉城北地区本部(豊島区)の郵便受けに青酸入りのドロップとキャラメルが投函される。森永は自社製品を袋に詰めた「1000円パック」を直接街頭で販売開始(11月27日には100万袋販売) ↓ 10月23日 6月2日の現金奪取の際に使用された改造タクシーが大阪・生野区で発見 ↓ 10月25日 報道機関は7月後半に食品メーカーに脅迫状が届いていたことを初めて報道 ↓ 11月1日 報道機関に挑戦状。森永乳業副社長宅に森永製菓宛ての脅迫状 ↓ 11月6日 森永製菓、犯人の指示通り毎日新聞朝刊に要求に応じるサイン「二郎へ」という尋ね人広告を出す ↓ 11月7日 f ハウス脅迫 ↓ 11月9日 ハウス食品工業に裏取引に関する確認電話→ハウス側はこれに応じる返答 ↓ 11月12日 長岡京市の電設会社でライトバン盗難。鈴木邦芳・大阪府警刑事部長は報道協定を報道機関各社に要請 ↓ 11月13日 報道機関に挑戦状。マスコミは2回目の報道協定を締結 ↓ 11月14日 ハウス食品工業、現金1億円を積みファミリーレストラン「さと伏見店」に向かいその後犯人の指示で名神・大津サービスエリアへ→ここで再度キツネ目の男を目撃したが、捜査員が近づこうとすると逃げ去り、姿を消した。滋賀県警、栗東町川辺の県道川辺-御園線に停まっている白いライトバンを発見 →改造無線機で警察のやり取りが漏れていたと判明(概略6参照) ↓ 11月18日 森永製菓に2億円受け渡しのための広告掲載を要求する脅迫状 ↓ 11月19日 奈良市中山町のハウス食品工業管理課長宅に脅迫状。森永製菓の関連会社・わかなみ製菓・切石利昭社長宅に脅迫状 ↓ 11月21日 森永製菓は毎日新聞朝刊に裏取引に応じるサインの求人広告を出した ↓ 11月24日 報道機関に挑戦状。「週刊読売」誌上で『1億2000万出すからやめろ』と呼びかけた作家・川内康範氏宛てに断りの返事 ↓ 11月26日 兵庫県警・吉野穀本部長宅に挑戦状。14日の捜査失態を皮肉る。森永は「直販パック」が好調なので菓子生産を2工場で再開 ↓ 11月30日 大阪府警・四万修本部長宅に挑戦状。森永製菓・木下義盛総務部長宅に脅迫状。2億円を要求し、応じるなら新聞広告掲載を指示 ↓ 12月7日 森永製菓、脅迫状の指示通りに産経新聞朝刊に「かい人21面相へ」という広告を出し始める。「週刊読売」に犯人から手記が届く。g 不二家脅迫 「2000万ばら撒き」脅迫+テープと青酸ソーダが届く ↓ 12月10日 報道協定解除 ↓ 12月11日 不二家の田尻労務部長宅に裏取引に関する確認電話。不二家側はこれに応じる返事 ↓ 12月15日 不二家労務部長宅に脅迫状「24日に大阪・梅田の阪神百貨店の屋上から2000万円ばらまけ」 ↓ 12月17日 報道機関に挑戦状 ↓ 12月18日 報道機関に挑戦状 ↓ 12月14日 不二家は指示された阪神百貨店屋上からの現金ばらまきは行なわず ↓ 12月26日 東京のスーパー社長宅に脅迫状「1月5日に不二家が、池袋のビルの屋上から2000万円ばらまくように」と指示。報道機関に挑戦状「正月休戦宣言」 1985年 1月5日 不二家は指示された池袋のビル屋上からの現金ばらまきは行なわず ↓ 1月10日 6月と11月に目撃された「キツネ目の男」の似顔絵公開 ↓ 1月11日 不二家脅迫事件が初めて報道される ↓ 1月16日 読売新聞大阪本社の玄関前の柱のかげに青酸入り菓子が置かれる。報道機関に挑戦状 ↓ 1月26日 ハウス食品工業に再び脅迫状。報道機関に挑戦状 ↓ 2月2日 報道機関に挑戦状 ↓ 2月6日 江崎社長宛てに脅迫状 ↓ 2月12日 東京8ヶ所9個、名古屋4ヶ所4個で「どくいり きけん」(逆もあった)と書かれた青酸の入った菓子が相次いで発見 ↓ 2月13日 報道機関に挑戦状 ↓ 2月14日 自民党、「流通食品への毒物混入罪」を新設するなどの防止法案をまとめた(かい人21面相には不遡及の原則で適用することはできず) ↓ 2月15日 東京・兜町の証券界、「かい人21面相が捕まった」という謎の噂が流れて森永・グリコ株などが軒並み20円~55円高 ↓ 2月20日 報道機関に挑戦状 ↓ 2月27日 茨木市の派出所に「森永ゆるしたろ」という内容の挑戦状 ↓ 3月6日 和歌山県の老舗和菓子会社駿河屋に5000万円を要求する脅迫状が届く ↓ 3月8日 h 駿河屋脅迫 ↓ 3月17日 大阪城天守閣に挑戦状が貼りつけられる ↓ 4月4日 報道機関に挑戦状 ↓ 8月7日 滋賀県警本部長・山本昌二氏が辞任直後に公舎の庭で焼身自殺 ↓ 8月12日 報道機関に挑戦状「犯行終結宣言」。 あの日航機墜落事故が発生 3-犯人達 当の犯人である21面相いわく7人構成ならしい。捜査本部は社長誘拐犯=カップル襲撃犯と見ている 構成 社長誘拐犯A―身長160cm。35~6歳。中肉。俳優の川谷拓三似。鼻は低い。白の目出し帽、黒っぽい運動靴、白手袋、拳銃所持 B―身長170cm。40歳前後。押し殺した低い声。白の目出し帽、白手袋、黒っぽいジャンパー、黒い靴、空気銃所持 C―身長165cm。20歳ぐらい。赤ら顔にニキビ。黒い目出し帽。河内弁「け」をつける。運転手役 カップル襲撃犯A―30歳前後。身長168cmぐらい。黒い毛糸の帽子に黒っぽい布を顔に巻く B―25歳前後。やせ型。覆面をし、果物ナイフを所持 C―25~30歳。低い声 キツネ目の男 警察では「f」と呼ばれる。35~45歳くらい、身長175~178cm、縁なし眼鏡をかけ、グレーの背広を着ていた。6月28日及び11月14日に、犯人が指定した現金受け渡し場所に出現したため、犯人側の見張り役と見られる。特徴がどうみても朝鮮系だが、このような顔は日本に腐るほどいると思う。「3億円強奪犯のモンタージュは忘れろ」by平塚八兵衛 だったらどうするのか? ビデオの男 10月7日午前10時27分から11時23分の間ファミリマート甲子園口店で「棚から週刊誌をとりだす→青酸ソーダ入りドロップ 発見場所に近寄る→レジで会計」という動きをする不審な男、2、30代。身長170cm(もっと大きいとの説あり)でがっちりした体格、眼鏡に巨人の野球帽をかぶり、帽子からはパーマのかかった髪がはみ出ていた。服装はベージュのブレザー(ノーネクタイ)、白っぽいズボン、スニーカー。警察では「v」と呼ばれている。はっきりとした正面の映像もあったが、容疑者でなく、あくまで尋ね人扱いだったためにそちらは公開せず。かい人21面相によると増田生成・兵庫県警事部長ににているらしいが、本人は「コメントにも値しない!!」と憤慨 ・脅迫電話で流れた録音テープの女 4月24日「名神高速道路を、85キロで、吹田のサービスエリアへ、走れ。京阪レストランの、左側の、煙草の自動販売機の上に、手紙がある。手紙のとおりにしろ」 ・脅迫電話で流れた録音テープの男児 9月18日 「レストランから、1号線を、南へ、1500m行ったところに、ある守口市、市民会館の、ま、エッ?・・・・・・・前の京阪本通2丁目の陸橋の、階段の下の空き缶の中」 特徴 グリコの事情に詳しい 家族構成に詳しい、長女の名を知っており、一目で判別している 10億円を用意できることを知っていた 加藤運転手―何故知っているのか不明 コンチングマシン―ミルクとカカオを交ぜるものだが、一般人は知らない 長岡香料―限られた部署しか取引先であることを知らないが、犯人はなぜか知っている 社長がかけていたコート―戦前から戦中にかけてのグリコ青年学校のものだった 警察内部に詳しい(捜査情報が漏れている) 京都百万遍でコピーした―警察が突き止めたのを見透かすかのように、直後に挑戦状で暴露 カトリくんなど―警察が表立って公表していない警官の名前や部署、受け取り時に婦警を使ったなどを知っている 11月14日の失敗―滋賀がノーマークだったこと+滋賀県栗東町は警察無線が通じない盲点だと知っていた 社会の発想とは思いがたい手口 脅迫状を送り付け世間を震撼させるが、死者はでない 挑戦状の文面には「さらう」「~のう」などやくざ言葉が散見 by宮崎学 あちこちで脅迫するが捕まらない→企業と総会屋の関係に似ている 尾行をまいたキツネ目の男、警察すらかわしきったライトバン、元自衛官をしとめる能力→素人では無理 事件後誰も仲間割れしない、脅迫テープの女&子供も判明せず→疑似家族的団結力 この事件では、直接の死者は出ていない点に注目。酒鬼薔薇や宮崎勤は死者を出したから世間を震撼させたし、企業の脅迫についても、加減を知らない素人が脅迫すれば確実につかまるでしょう。そして、こんなことを素人がやれば、確実に仲間割れするでしょう。 犯人たちの目的 それがわかったら苦労しないわ! というわけで、この事件の目的は、食の安全を脅かしながら、企業を恐喝して金を手に入れる…と、一般的にみなされているようです。ですが、どこ企業も、そのような裏取引をしたと表向きには認めていないので、ようわからんのです。 特に、目的・動機としてグリコへの怨恨=グリコ原点説、株価操作で金儲け説、は有力視されているようです。しかし、関連書籍を読めばわかるように問題は犯人像の推定で、グリコに恨みのある人や仕手集団はまだしも、現役警官orOBら関与説、部落などの関与説、北朝鮮工作員や暴力団など、日本がタブー視している極めてヤハ゛イものばかりなので、平成生まれの人は注意が必要でしょう。 4-警察の対応 広域重要指定114号事件に指定 ・都道府県警察―基本的に都(=警視庁)道府県を単位とする ・警察庁―都道府県警察を指揮監督する国の機関 誘拐事件のみなら兵庫県警主導だったが、範囲が拡大し指定後は警察庁主導に ・刑事警察―犯罪捜査・予防を図る→逮捕優先 ・公安警察―反体制組織の殲滅→全体像解明を優先のため行動確認が多く、情報非共有=保秘 警察庁介入後は刑事警察に公安警察(警察庁は公安出身者が多い)が加わることに 捜査方針 ・刑事事件―情報を全捜査員で共有→不審者はとりあえず事情聴取して捕まえる ・公安事件―情報を全捜査員で共有せず、警察上部で統括する。不審者は尾行→犯行グループを一網打尽 警察側としては、刑事事件のやり方に乗っ取ってやっていたようですが、ところが寝屋川・アベック襲撃事件では、当初被害男性を犯人と見てしまったため、公安型に方針転換。そうしたら、今度はどう見ても不審なキツネ目の男を見かけても「ちょとコイ」ができなかったために、2度も捕まえ損ねる! なんで公安の手法を用いたのか? 何も犯人を思想犯だと考えていたからではない。警察の内部犯行説が根強くあったからだby大谷明宏 5-対マスメディア戦略 犯人グループは「かい人21面相」と称して、警察には挑戦状、企業と報道機関に、関西弁の脅迫状と挑戦状計144通を出している。 メディアの「報じるという使命」を利用して全国に脅迫の事実を報じさせる 挑戦状を送り付け、脅迫状の内容が公開される ↓ 一般人(パンピー)「毒が入っているんで買うのやめよう」&流通「犠牲者が出たらまずいから売らない」 ↓ 脅迫された会社の株が下がる・・・それでいて誘拐や毒物で犠牲者は出さなかった 全部の事件に挑戦状出さず ・メディアが報道協定―社長誘拐、ハウス脅迫事件 ・発生時点でメディアが知らなかったもの―丸大(11月判明)、森永(毎日がスクープして判明) 6-大量の遺留品&分析 膨大な遺留品=ブツ 一生懸命調べ上げたものの、犯人逮捕には至らず。「ブツからは絶対に足が付かない」by21面相 ・パンライター ・社長誘拐時のもの→日本パンライター社製PH45H型かM型 ・長岡香料へ出したもの→日本タイプライター製559365と特徴が一致 →千代田区神田の「ブラザー事務機」で83年1月22日に山下なる人物が購入したが、正体は判明せず。 ・ ミシンの音 9月18日の子供の声の背景音に皮靴製品専用ミシン音が確認されたことが判明+現金受け渡し場所や多くの遺留品の出所と、被差別部落の拠点が一致→被差別部落説に発展→部落団体から抗議をうけて捜査できず 女&子供の声分析 金田一春彦(国語学):女は「走れ」の「シ」を高く発音しており、東京~愛知、あるいは岡山~山口出身になるらしい。また子どもの方は「2丁目の」の「の」を平らに発音しているので、岡山~山口の可能性もあるが、東京~愛知で生まれ育ったのでは?推測すれば2人は母子で母が東京周辺出身、子供と名古屋あたりに住んでいるのでは? 鎌田良二(国語学):名古屋以東。とくに関東式のアクセントが強い。女は20代後半から30代前半、子供は10代の高い声 堀井令以知(言語学):完全に東京式の標準アクセント。「走れ」「上に」「ある」「中」などにそれが見られる。近畿の人が標準アクセントで読んだ場合、どこかに不自然な点が見られるがそれがない 佐藤亮一:長い連続音の後ろが跳ね上がる、東京にはない特徴も伺える。関西人が東京風に読んだ可能性有り 鈴木松美:基本周波数による声帯の動きや校長はの組み合わせなどを調べた結果、4月24日の江崎グリコへの電話の主は中学校2・3年の女子。9月18日の森永製菓への脅迫は小学校5・6年生の男子と分かった。当初、30代の女性と見られていたが、この女子は同年代の女性と比べ低い声に聞こえたため、間違ったのではないか。この2人の声の特徴は、同一人物ではないかと思えるほどよく似ており、姉弟の可能性がある。 電話をかけると発信地の電話局から相手の地域の電話局までいくつかの電話局の交換機を通過するため、犯人が電話を切った後に電話交換機が発するリセット・パルス音でどの局の管内からかけてきたか分かるんだ。脅迫テープの音で判断する限りでは、グリコの場合は、大阪市近郊の大阪府内、森永製菓の場合は名古屋近辺と見られる。ハウスの場合は320キロ離れた場所からかけてきたことがわかった。静岡以東、広島以西の地域で、犯人の痕跡がある場所と言えば、東京豊島区辺りが臭いということになるだろう。 7-社長は自力で脱出したのか、犯人がわざと見逃したのか? ・自力脱出説と問題点 社長が脱出したのは大誤算、北側のレール状鉄扉のナットの腐蝕を犯人が把握していなかった可能性が高い。社長保護後に藤江宅に脅迫するのはおかしい。 ・見逃し説と問題点 なぜ犯人がいなくなったのか不自然&その後放火されたり、「やくそく やぶった」などと犯人に言われている。 8-グリコ原点説 要するにグリコに対する怨恨だろうとする見かたで、なんだかんだで、やはりこれが最有力なのか?肉などを扱うグリコ栄養食品周辺では、産業廃棄物で地元住民らとトラブルがあり、これがきっかけとなったという考えられている。 1981年2月に倒産した××工業関係者の捜査(1989年ごろ) このA元社長は江崎家の縁戚者で、戦後創業者の利一氏に土地や建物を貸したりした。Aにとってまさに江崎社長は「勝久」であり「グリコはワシが育てた」であったという。倒産時は孫のB氏が自転車操業状態で、勝久社長らが10度以上融資する状態で、金は返さないでいいから潰してくれという形になった。このA氏は75年に排水の悪臭問題での修繕を受け持った(言わば仲裁)、その際周辺に右翼関係者暴力団系金融業者が多数出入りしていたという。そして84年6月28日、かねて金の返済を催促されていたC銀行に「1ヵ月後に江崎家から融資してもらうから・・・」と申し出、果たしてその通りになった。さらに勝久社長の親族が5400万を追加で融資していた。 警察はこのA氏、B氏を中心に、周辺の右翼関係者やキツネ目と思しきN、暴力団系金融業者の相関図を作成するも、Nの面割でキツネ目の男でないと判明。A氏は事情聴取で「倒産はBのせいで自分は関係ない。グリコからの融資は(倒産後)勝久君に呼ばれて知った。大久保会長とは深い付き合いだったが勝久君とは儀礼的付き合い。グリコ森永とは一切関わりない」と発言。結局社長誘拐の日のA氏、B氏のアリバイも崩せず頓挫した。 黒いオーバーコート 『闇に消えた怪人』によると、戦前の1936年(昭和11年)に、江崎グリコが働きながら工業技術や簿記をまなべるという「グリコ青年学校」を大阪、東京、奉天などに設立した。そのOB会「青雲会」には、グリコの幹部から「3年後には正社員にするから」など言われるも、それどころか会社を辞めざるをえなかった人や、戦後の直後ただ働き同然だったのに、経営が軌道に乗ったら首にされた人などが多数いるという。これがグリコ森永事件とどう関係するのかというと、捜査により江崎勝久社長が水防倉庫に監禁されたときに着せられた黒いオーバーコートが、1940年(昭和15年)に「グリコ青年学校」で支給された国防色のコートを黒く仕立て直したものの可能性が高まったからである。そして、警察は石川県金沢市の仕立て職人が縫製したと特定したが、本人は思いだせず、青雲会との関連も全く不明。 53年テープ 1978年(昭和53年)8月、初老の男性の声が54分ほど録音されたテープが、当時のグリコ常務・藤澤和己氏に郵送された。それは後のグリコ・森永事件を予告したような内容&手口だったが、グリコは無視。事件との関連が疑われている。 ・声の主 「昭和22年復員、部落解法同盟の会長、奈良の社会党議員の世話になった、ヤシマ乳業関係者」とみられる。が、誰もこの声が誰かはわからず、警察はヤシマ乳業&公安が「ここだ」と疑った左翼農場も調べたが、やはりわからず。 藤沢さん、ご多忙中のところ、また、お疲れのところ恐縮です。私は去る7月28日夜分に電話をさせていただいたものであります。その節は大変、失礼しました。私は高血圧、心臓病を患っておりまして、実は急ぐ用件なので、無理をして電話をさしてもらったのですが、緊張のために、急に胸が圧迫されてきまして、お電話できんようになってしまいました。(中略)今回、このようにテープを遅らせてもらうことにつきましては、内部でいろいろと意見があったのですが(中略)私がお伝えしたいのは、私の気持ちであります。真意であります。それには、時間をかけてでもテープをつくって、お送り申し上げたらと思いつきまして、このテープを作ったわけでございます。 ところで、話の中身と申しますのは、いろいろともっていいきようもあろうかと、あれこれ考えてました。が、私の性格です。また、相手はグリコさんであります。飾りも何にもなしに、先ず、結論を申し上げて、しかるのち、グリコさんにご判断にたたけるように、成り行きを申し上げていきたいと考えております。 昭和41年ごろ、グリコ共同乳業が「ヤシマ乳業を買収した時、奈良地区の酪農業者と取引を中止しております」 昭和22年に復員後、私は30年ほど部落解法同盟の会長をしているものでございます。1ヶ月ぐらい前から、過激派の連中と付き合うようになりまして、実は、さる過激派の連中がどうしても資金がいる。そこでグリコさんにカンパをしてもらいたい。もし、蹴られたり、警察に言ったりなさると、それなりの報復を計画している、という事を知ったのです。(中略)過激派の連中はグリコの製品に毒物を入れて12都道府県に撒く準備をし、連中はグリコに3億円を要求するつもりだったのですが、私が交渉して1億7500万まで引き下げさせた(中略)。もし、グリコさんが要求に応じていただけるのであれば、朝日、毎日新聞の尋ね人欄に「ヨシザワ 話しついた すぐ帰れ フジサワ」と掲載していただきたい。 9-B作戦 この作戦はグリコ・森永事件の合同捜査本部が総力を挙げて取り組んだ警察史上最大の作戦だった。そのターゲットはk元組長だったが、捜査線上に浮かんだ最初のきっかけは、90年に島田丑之助服役囚の調査が頓挫した直後の「食肉利権で利益を得ているk元組長が食肉関係の人物と組んでやった」なるタレこみ電話だという。その捜査資料にはk元組長を中心に、キツネ目の男やビデオの男、一味のリーダー、脅迫テープの女性&男児らの実名、出身地や経歴、職業などをズラリと記載。それらの相関関係を表すフローチャート図まで作成するという、壮大なものだった。 1992年3月13日、捜査本部では1ヶ月前から行動確認して、当日都内にいた元組長を「別件容疑」で大阪のホテルに任意同行させた。しかし「刑事さんもご苦労なこった。企業の顧問、金貸し業やら当時はいろいろやっていたから、そんなはしはした金(3億円)のことはいちいち覚えてない。証拠でもあるのか?」と一蹴されてしまい、フローチャート図の人物も「k元組長の名前すら知らない」と一蹴されてしまった。 k元組長 ・1979年にグリコから5億円を脅し取ろうとして拒否された過去があること ・元組長の銀行口座に被害にあった企業の関係者から3億円の入金があったこと、 ・犯行に使われたのと同種の和文タイプライターやタクシー払い下げ車輌を親族が所有していること ・グリコに恨みを持つ人物が周辺にいたこと ・53年テープに登場する人物と接点があること ・株価操作に関与した疑い 回収業者経営M 在日朝鮮人、事件当時50歳、ハウス事件の盗難車から当時NECでのみ使っていたEL(エレクトロルミネッセンス)が採取される。親族が勤務する食肉会社Dを通じてk元組長と繋がりあり 北朝鮮元工作員R=北陸の男 事件当時50代Mと交友あり、北朝鮮密入国で昭和40年代検挙、53年テープの声に似ている Rの娘=京都の女 事件当時20代、NEC社員から買った中古車を所持、女の声に似ている 大阪の食肉業者z k元組長と79年にグリコへ恐喝 暴力団員О k元組長の関係者で行方不明、82年に倒産した運送会社から日本タイプライター社製品を持ち帰る 京都の同和団体S=さる組織X? k元組長の舎弟的存在。かつてグリコ栄養食品を脅迫した右翼団体と関りあり 実は失敗する可能性が高いことはわかっていたという。この1年前にR親子の声紋鑑定をしたが「別人の可能性が高い」だったのだ。キツネ目の男、ビデオの男類似者はかすりもしなかったという。だったらやるな?とつっこみたくなる話だがしかし、この元組長への事情聴取をとっかかりにして裏社会に捜査のメスを入れたかったようだが・・・・・・。 それにしても、「B作戦」だなんて、警察のほうがショッカーみたいなじゃねーかよ。 10-キツネ目の男 現在に至るまで誰だか不明 宮崎学説 ・身長178cm、当時年齢39歳。顔が似ている ・地元に遺留品がやたら見つかる ・労使運動への介入疑惑→助力を申し入れた時には、もう解決していた ・ハウス事件の現場付近に会社があった→82年ぐらいまではあった ・親族(義兄)がタクシー払い下げ車両を所有していた ・親族の関係者(友人)が脅迫状に使われたパンライター所有 ・脅迫状に使われた便箋を販売した「園条」の顧客 ・企業恐喝の前歴があった→会社倒産で負債を抱える ・挑戦状の文面(84年5月10日)が、以前捕まった時の言いぐさに似ていた このキツネ目の男が宮崎学氏に似ていることは有名で、本人もネタにしている。上のような疑惑があったために「重要参考人」扱いになったが、警察は1984年6月28日(d丸大事件で、1度目にキツネ目の男に遭遇した日)都内の音楽大学の労組会議に出席していたアリバイを崩せず。 新たに新説が浮上 ところが、2006年、1994年に起きた5億4千万強奪事件において、犯人の2人であるサングラスの男(森本喜博、別の事件で捕まった)とミイラ男(金翼哲=鉄ちゃん、97年自殺)を引き合わせた前田浩二から、この事件を取材していた森下香枝氏に「鉄ちゃんから『あれは自分がやった』と言っていた」なる手紙が届いたことから、近年にわかに鉄ちゃん説が浮上している。 『真犯人・グリコ・森永事件「最終報告」』によると、1981年から82年に、和歌山のさる資産家の社長を誘拐し、それがある事情で公表できなかったために、これに味を占めたのだという。また、社長監禁時に頭へ袋を被せたが、脱出後社長からダライ粉(金属屑)が検出され、そのことを鉄ちゃんは気にしていたという。当時の肩書は金属屑回収業者だった。同書によると鉄ちゃんはグリコ・森永事件には実行犯として絡んでいた。ただし鉄ちゃん=キツネ目だと言うわけではなく、「なんか似てないか?怪しいぜ」という話であり、特殊捜査犯は「fとちゃう!」と言った。 むしろ前田は行方不明になった鉄ちゃんの親戚kに似ているという。鉄ちゃんの弟も似ていると言い「kも在日韓国人だが、北朝鮮でスパイ活動をしているグループと関っていた。十数年前、東京の日本橋で行方不明となり失踪したままになっている。親族間では「北朝鮮へ渡ったんではないかと見ていました」という。 結局また北朝鮮なのかよ!! ということで続報を期待しています まとめ 警察の失態は実にひどいものだった。公安型の「一網打尽」の方針なる理由で、犯人(らしきもの)やキツネ目の男を捕まえられなかったことに尽きる。大谷昭宏氏などは、だから公安は馬鹿だと言ってはばからないようだが、むしろ犯人が狙って公安が出てくるように仕向けたなら、これは捜査体制全体の問題ではないのだろうか? マスコミの問題もあろう。メディアが報じたことで、店に毒が並んだことをパンピーが知ったという意味では安全に貢献したが、事件解決や企業側の被害防止には何も貢献していなかったどころか、結果的に犯人に利用された。ではどうすれば良かったのか?後からなら何とでも言えるが、ただ脅迫された事実と、毒入り菓子が置かれたから注意しろで良かった。この場合でも報道すれば確かにグリコや森永の評価は下がるだろうが、世間の人間は長期化すれば犯人への反感しか生まれず、もっと早く事件が収束したと思えてならない。この事件でも、「21面相はいい奴だ」と同情的になっていた馬鹿なオヤジがいたというではないか?事件のさなかに、犯人への共感が生まれるような手紙の面白い文面まで不用意に報じてはいけなかった。 自衛隊や保守的な考え方が見直されている2002年以降と異なり、当時は反体制・反権力がまだ世間の支持を得られたからであり、犯人もそこに訴えかけて正当化・長期化をさせることで、何らかの目的を達成させるためであった。酒鬼薔薇にしろ、てるくはのるにしろ、犯人のパーソナリティー分析は事件終結後でたくさんやればいいじゃないか! 犯人に屈した食品・流通業界の対応も考えさせられる。さる流通企業の人は「犯人に屈しないで販売して被害者が出た場合、世論は犯人に屈しなかったと評価してくれるわけではなし、マスコミには酷評される。だから犯人に屈するしかない」と言うのだ!この発言はとても重い。 こう返されると、「人命は地球の命より重い」昭和時代に物心がついた者は何も返せませんね! いずれにせよ当時の社会システムの問題点の核心を良く突いた事件だったなと思いますね。
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【グモッ】人身事故スレ◆PartX【チュイーーン】 - ↑アクセスカウンタ 記号:△=踏切事故 ▲=触車 ◆=中の人(乗客乗員など)負傷 ?=不確定情報 ※=後に無傷と判明 ☆=人身事故ではない ×=誤りと判明 ◎=正しい情報 開始 714番の第850番レス 山田線 12月 日 時 分頃 話題発生 716番の第271番レス 当該列車 特徴 ☆ 不通区間の振替は盛岡~宮古の106急行バスとする。 線 藤沢 12月21日 時 分頃 話題発生 714番の第856番レス 当該列車 特徴 ☆ 踏切の安全確認。一本松踏切でボタン操作。 南武線 西国立 12月21日 8時40分頃 話題発生 714番の第890番レス 当該列車 立川行き普通(6両編成 乗客約1200人) 特徴 ☆ ホーム側のドア20か所を開けたまま発車し、約12m進んで緊急停車した。JRによると、この電車はこれより前の駅で6号車のドアが故障して、通常ドアが全部閉まったことを示す運転席のランプが使えなくなり、代わりに車掌がブザーを使ってドアがしまったことを知らせる臨時の対応をとっていたという。JRの調査に対して運転士は「別のブザーの音をドアが閉まった合図と勘違いして、発車してしまった」と話しているという。JRによると1人の乗客から緊急停車した際に足が痛くなったという連絡が入っているという。JR東日本は「ドアが故障した時の取り扱いについて、あらためて社員に対し、指導を徹底してまいります」とコメントしている。(NHK横浜放送局) 南武線運用情報によると、8時00分頃、753F(E233系 ナハN32)西府駅でドア点検。上下線とも運転見合わせ。8時35分頃運転再開。11時00分現在平常運転。53F運用はN32→N10(852Fから)→N34(当日が営業運転初日)と変更。 JR神戸線(山陽本線) 須磨海浜公園~須磨 12月21日 10時06分頃 話題発生 714番の第860番レス 当該列車 米原発西明石行き下り快速735T(221系 乗客約100人) 特徴 △ 現場は須磨駅手前500~700mの踏切。芦屋~西明石間運転見合わせ。10時25分から12時30分まで振替輸送を実施。10時27分(見込み11時00分)運転再開。特急はまかぜ1号は約40分遅れ。はまかぜ1号と4号の香住~浜坂間は運休。JR神戸線・山陽本線は14時30分、京都線は15時00分、琵琶湖線は15時30分現在平常運転。 神戸市須磨区行幸町の踏切で、男性が走行中の米原発西明石行き快速電車にはねられ死亡。乗客にけがはなかった。兵庫県警須磨署が男性の身元確認を急いでいる。JR西日本によると、男性が踏切から線路内に立ち入るのを運転士が発見し、非常ブレーキをかけたが間に合わなかったという。上下16本が一部運休、39本が最大44分遅れ、約1万5000人に影響。(産経WEST) JR神戸線(山陽本線) 舞子~朝霧 12月21日 時 分頃 話題発生 714番の第868番レス 当該列車 特徴 ☆ 踏切の非常ボタンが押されたため確認。 線 菊名付近 12月21日 14時30分頃 話題発生 714番の第871番レス 当該列車 特徴 ☆ 安全確認のみ。6分遅れ。どの路線かは菊名。 予讃線 箕浦~川之江 12月21日 時 分頃 話題発生 714番の第882番レス 当該列車 伊予西条初観音寺行き普通4546M ワンマン 特徴 観音寺~伊予三島間運転見合わせ。19時52分頃運転再開。特急しおかぜ28号の宇多津~岡山間、しおかぜ27号の岡山~多度津間は運休。予讃線での人身事故は今年8回目。箕浦~川之江間では2012年4月5日以来。 都営地下鉄線 馬込 12月21日 21時50分頃 話題発生 714番の第899番レス 当該列車 特徴 ☆ 「戸袋に手が引きこまれて取れない」と通報があり、目黒R出場。まもなく「手が抜けた」との通報。 東急田園都市線 青葉台 12月21日 22時 分頃 話題発生 714番の第905番レス 当該列車 特徴 宗谷本線 和寒~塩狩 12月21日 時 分頃 話題発生 714番の第915番レス 当該列車 特徴 ☆ 鹿と衝突。 高崎線 大宮 12月22日 6時26分頃 話題発生 714番の第931番レス 当該列車 特徴 ☆ 客転落。高崎線、宇都宮線運転見合わせ。防護受信で京浜東北線、湘南新宿ライン、上野東京ラインもストップ。東海道線にも影響。宇都宮線にエアセクション停車あり。 富良野線 西中~中富良野 12月22日 7時10分頃 話題発生 714番の第937番レス 当該列車 旭川5時47分発富良野行き下り普通721D(1両編成 乗客約40人) 特徴 △ 富良野6時48分発旭川行き上り普通722D:中富良野駅停車中。9時25分現在平常運転で運転再開。 北海道中富良野町西町の踏切(警報機、遮断機あり)で、普通列車と乗用車が衝突した。警察によると、この事故で乗用車を運転していた40代の女性が頭などを強く打ち病院に運ばれたが、約2時間半後に死亡。普通列車の乗客にけがはなかった。NHKのヘリコプターの映像では現場の踏切に雪が積もり、近くの線路脇には車体の左側が大きく壊れた乗用車が確認できる。警察は、女性の身元の確認を急ぐとともに、列車の運転士から話を聴くなどして当時の状況を調べている。(NHK) 東急田園都市線 12月22日 7時 分頃 話題発生 714番の第941番レス 当該列車 特徴 ☆ 駅間で縦列駐車。と言っても、日常の風景。 中央線 12月22日 時 分頃 話題発生 714番の第942番レス 当該列車 特徴 ☆ 埼京線 赤羽 12月22日 7時55分頃 話題発生 714番の第945番レス 当該列車 特徴 ☆ 駅進入時に床下から衝撃音。 札沼線 12月22日 時 分頃 話題発生 714番の第955番レス 当該列車 特徴 △ 武蔵野線 12月22日 時 分頃 話題発生 714番の第965番レス 当該列車 特徴 ☆ 過電流。 線 溝の口 12月22日 14時28分頃 話題発生 714番の第975番レス 当該列車 特徴 ☆ 土讃線 金蔵寺~善通寺 12月22日 15時56分頃 話題発生 714番の第985番レス 当該列車 岡山発高知行き下り特急45D 南風15号 特徴 △ 踏切で車と接触。17時00分運転再開。19時50分現在、平常運転。金蔵寺~善通寺間の過去事例はない。2014年に多度津~高知間で人身事故は起きていない。前回は2013年11月19日(火)08時59分、祖谷口~阿波川口間。 横浜線 相模原~矢部 12月22日 17時26分頃 話題発生 714番の第989番レス 715番の第21番レス 当該列車 八王子始発(矢部1727発)東神奈川行き1712K(13K運用 H026) モハE233-6026他 片倉 特徴 現場は矢部駅手前、相模原市中央区矢部1丁目の西門踏切。米軍基地の西門、さがみ仁和会病院前。相模原消防:17時30分頃、救助事故が発生し、消防隊が活動中。救助特命。横浜線全線運転見合わせ。18時08分の運行情報メールでは八王子~橋本・町田~東神奈川間で折り返し運転。橋本~八王子間は10分に1本程度。当該のみ再開し、矢部駅まで運転。橋本~町田間も18時38分(当初見込み18時40分→18時30分)運転再開。19時45分現在、平常運転。東急甲種輸送は八王子でヨ。横浜線内は明日昼。横浜線での人身事故は今年13回目(去年11回、おととし16回)。相模原~矢部間では2009年以降3回目。 常磐線 日暮里~三河島 12月22日 18時00分頃 話題発生 715番の第46番レス 当該列車 特徴 ☆ 踏切の直前横断。防護発報で山手線もストップ。 JR京都線(東海道本線) 摂津富田~茨木 12月22日 18時32分頃 話題発生 715番の第65番レス 当該列車 長浜発播州赤穂行き下り新快速3507M(J2+? 223系12両編成) サハ223-2025他 特徴 △※ 「いつもの」踏切。自転車と衝突。電車の運転士が運転者から事情を聴いている。京都~吹田間運転見合わせ。姫路・明石方面からの電車は普通は吹田、快速は新大阪、新快速は大阪で折り返し運転。米原・野洲方面~京都で折り返し運転。18時50分から阪急京都線、阪急神宝線、阪神、山陽、各地下鉄に振替輸送を実施。京阪は当初対象外(最近は阪急でさばききれなくなった時などに限られる)。19時05分から、振替先に京阪線、近鉄京都線(京都~近鉄丹波橋間)追加。19時15分(見込み19時35分)運転再開。サンダーバード36・38・39号、しなの16号、ひだ36号、はるか39・41・32・34号に遅延。こうのとり23・28号は新大阪~福知山間運休。振替輸送は22時00分で終了。上り寝台特急サンライズは15分遅れ。学研都市線・JR東西線・湖西線は21時45分現在、宝塚線は22時30分現在、赤穂線は0時20分現在、当該路線と山陽本線は0時45分現在、琵琶湖線と神戸線は1時30分現在平常運転。 大阪府高槻市赤大路町の赤大路踏切で、新快速電車の運転士が踏切内に自転車があるのを発見、非常ブレーキをかけたが間に合わずに衝突した。けが人はなかった。府警高槻署によると、60~70代とみられる女性が自転車で踏み切りを横断中、タイヤが溝にはまり動けなくなり、自転車を置きざりにして踏切外へ避難したという。この事故で、同線は京都~吹田間の上下線で、約45分間運転を見合わせた。(産経WEST) 東海道本線 島田~金谷 12月22日 時 分頃 話題発生 715番の第140番レス 当該列車 特徴 ☆ 線路内人立ち入り。 線 川越 12月22日 時 分頃 話題発生 715番の第151番レス 当該列車 特徴 ☆ 山陽本線 本郷 12月22日 時 分頃 話題発生 715番の第154番レス 当該列車 福岡タ発札幌タ行き高速貨物8058~8069レ 特徴 三原~白市間運転見合わせ。1時36分(当初見込み1時00分→1時30分)運転再開。JR貨物の情報では23時20分発生、1時34分運転再開。 山手線 新宿 12月22日 23時 分頃 話題発生 運行情報スレの第614番レス→715番の第321番レス 当該列車 特徴 ▲ 電車を降りた後、黄色い線の外側を歩いていたため、発車の際に接触。遅延。 京王井の頭線 永福町 12月23日 0時28分頃 話題発生 715番の第164番レス 当該列車 渋谷発吉祥寺行き急行045A列車 特徴 ☆ 列車に飛び込み。救助隊到着前に駅員が救助。単なる転落だった模様。下り線のみ(→上りも)運転見合わせ。京王線最終特急0089列車は接続確保のため、明大前抑止。桜上水行きは出発許可が出ず、発車できない。当該は24分遅れで運転再開。「運転再開報」は出ず、「遅れが出ている」のみ(見込み2時頃)。 小田急小田原線 東北沢 12月23日 0時50分頃 話題発生 715番の第179番レス 当該列車 特徴 ☆ 駅員に対する暴力行為。 京王井の頭線 永福町 12月23日 0時 分頃 話題発生 715番の第189番レス 当該列車 渋谷発吉祥寺行き急行045A列車 特徴 ☆ 所定停車位置まで移動し、ドアが開いた瞬間に、酔っ払いと若い男性グループの殴り合いが勃発。 線 船橋 12月23日 1時 分頃 話題発生 715番の第192番レス 当該列車 特徴 ☆ 駅進入時に異音感知。昇格はなし。 日豊本線 南日向~美々津 12月23日 6時25分頃 話題発生 715番の第207番レス 当該列車 延岡発宮崎行き下り特急5073M ひゅうが3号(787系4両編成) 普通車全車自由席 特徴 ☆ 鹿と衝突。6時40分運転再開。大分~宮崎間、特急ひゅうが、にちりんに遅れが発生。宮崎~鹿児島中央間は9時45分現在、大分~宮崎間は11時00分現在平常運転。 伊豆箱根鉄道大雄山線 相模沼田~岩原 12月23日 7時00分頃 話題発生 715番の第209番レス 当該列車 特徴 △ 黒色の軽自動車(?)が電車と衝突。白色の軽自動車が巻き添え。全線運転見合わせ。9時10分現在、平常運転。運転手を酒気帯びで逮捕。 南足柄市沼田の遮断機の下りた踏切に乗用車が進入し、走ってきた列車と衝突した。乗用車は踏切の外にはじき飛ばされ、停車していた軽自動車にぶつかって止まった。警察によると、乗用車を運転していた女(20)が唇を切る軽傷。女の呼気からアルコールが検出されたため、酒気帯び運転の現行犯で逮捕した。(テレビ朝日) 京浜東北線 御徒町 12月23日 7時 分頃 話題発生 715番の第211番レス 当該列車 特徴 ☆ 線路内人立ち入り。逃げ回り、社員が捕獲に向かう。常磐線電車が取手で抑止。JR宇都宮線、高崎線、上野東京ライン、湘南新宿ライン、埼京線、東海道線、横須賀線も遅延。上野東京ラインは9時00分現在、京浜東北線は9時15分現在、山手線と東海道線は10時00分現在、平常運転。 荒川 12月23日 9時 分頃 話題発生 715番の第220番レス 当該列車 特徴 ☆ 人が浮いていた。 埼京線 池袋 12月23日 時 分頃 話題発生 715番の第233番レス 当該列車 特徴 ☆ 公式情報は新宿駅。線路内人立ち入り。中央快速線にも影響。10時00分現在、平常運転。 高崎線 籠原~熊谷 12月23日 10時27分頃 話題発生 715番の第241番レス 当該列車 特徴 ☆ 動物(犬)と衝突。男性が運転士に怒鳴り散らす。11時10分の運行情報メールで平常運転。 西武池袋線 椎名町~東長崎 12月23日 13時14~15分頃 話題発生 715番の第246番レス 当該列車 池袋発飯能行き準急第4131電車(30000系2+8 10両編成) 30104 特徴 △ メトロの情報では13時12分頃。現場は椎名町4号踏切。下り線側から侵入、踏切到達直前しゃがみこみ。10代男性、電車(4両目下部)の下敷き。右上肢を車輪に挟まれている。意識レベル300。D-MATの必要(要請)なし。現場の852判断を警防本部が受けず?男性は死亡で確定。池袋~練馬間運転見合わせ。14時10分救助活動終了。当該のみ14時22分運転再開。練馬から4137電車に充当し、小手指3番から入庫。現場検証のため、後続は引き続き抑止。14時40分現場検証終了。14時44分(当初見込み14時00分→14時30分→15時00分)運転再開。西武池袋線は17時20分、西武豊島線は17時00分現在平常運転。 ツイッターに当該車両の写真あり。4137レ各停(準急の誤り)飯能行きから小手指行きに変更。30104に損傷なし。 飯能発池袋行き急行2140電車は練馬・桜台臨時停車客扱いで桜台抑止。再開後は急行扱いで、池袋までノンストップ。特急26電車 ちちぶ26号は石神井公園・練馬臨時停車客扱いで練馬4番線(3番ホーム)抑止中→抑止解除後池袋まで営業運転予定→池袋4番線所定到着。所沢行き各停5305電車(2000系)は椎名町抑止→練馬から西武球場前行き5359電車へ変更→練馬で小手指行き5359電車へ再変更。豊島園でも1本抑止→5480電車へ充当。一部の池袋行き準急は保谷打ち切り。池袋発の再開1番列車は豊島園行き各停5465電車。5477電車(豊島園1番)へ変更→豊島園から5482電車に折り返す。急行2133電車(抑止駅不明)は練馬3番線(2番ホーム)臨時停車で2141電車へ変更。特急は下り23電車 飯能発、25電車 池袋発、上り36電車 所沢発、38電車 飯能発、40電車 秩父発から運転再開。 警視庁は「30~40代くらいの男性が死亡した」と発表。 りんかい線 12月23日 16時 分頃 話題発生 715番の第323番レス 当該列車 特徴 ☆ 車両故障。 東京メトロ半蔵門線 三越前 12月23日 時 分頃 話題発生 715番の第329番レス 当該列車 特徴 ☆ エレベーター内に閉じ込められる。 磐越西線 郡山~喜久田 12月23日 19時 分頃 話題発生 715番の第354番レス 当該列車 特徴 ☆ 信号確認。19時40分から郡山~磐梯熱海間運転見合わせ。20時35分運転再開。郡山~会津若松間に遅れ。 埼京線 大宮 12月24日 6時 分頃 話題発生 715番の第390番レス 当該列車 特徴 ☆ 転落のみ。 JR京都線 茨木 12月24日 7時30分頃 話題発生 715番の第393番レス 当該列車 向日町操車場発新大阪行き回?M(289系) こうのとり1号の前回送 特徴 バラバラ。京都~吹田間運転見合わせ。上り(京都方面)と下り内側線(緩行線)は7時41分(公式は9時41分と誤る)再開。7時55分から振替輸送を実施。8時15分から京阪線・近鉄線も対象に。阪神線・六甲ライナー線・神戸高速線は対象外。8時39分(見込み8時30分)全線運転再開。こうのとり3号の福知山~城崎温泉間、はるか8・17号の全区間(京都~関西空港間)は運休。サンダバード2~5・6・7・9号、ひだ25号、しなの9号、はるか7・9・11・13・15号、くろしお3・7・8号、こうのとり1・4・6号、スーパーはくと2・3号に遅れ。福知山発城崎温泉行き臨時特急こうのとり91号運転。この列車はこうのとり1号から乗り換えできる。山陽本線は影響なし。JR東西線と学研都市線にも遅延。高槻駅ホームが満線になり、遅れ拡大。JR京都線でン人身事故は今年13回目。2003年以降最多。JR東西線と学研都市線は11時30分現在、JR宝塚線は11時30分現在、神戸線と琵琶湖線も14時30分現在平常運転。12時30分振替輸送終了。 茨木駅構内で、茨木市の無職男性(45)が回送電車にはねられ、搬送先の病院で死亡を確認。府警茨木署が事故原因を調べている。JR西日本によると、運転士が線路上にしゃがんでいる男性を発見し、非常ブレーキをかけたが間に合わなかったという。この事故で一時、吹田~京都駅間の上下線の運転を見合わせ、13本が運休。46本が最大約1時間10分遅れ、約4万5000人に影響。(産経WEST 他) 北陸本線 12月24日 時 分頃 話題発生 715番の第418番レス 当該列車 特徴 ☆ 車両故障。一部のしらさぎが区間運休。 山陰本線 山家~綾部 12月24日 8時50分頃 話題発生 715番の第497番レス 当該列車 豊岡発京都行きの特急電車(7両編成 乗客約150人) 特徴 ☆ 京都府綾部市野田町の野田踏切付近で、Uターンをしようとした10トントレーラーの荷台の一部が線路内に誤って進入。走行中の特急電車が50m手前で緊急停止した。JR西日本によると、特急電車の乗客にけがはなく、10時15分運転再開。このトラブルで、上下4本が運休、15本が最大約1時間20分遅れるなど、約1900人に影響。(産経WEST) きのさき5号、10号は京都~福知山間運休。はしだて5号・まいづる5号及びはしだて2号・まいづる6号も運休するとの案内が出ていたが、運転。 JR京都線(東海道本線) 向日町付近 12月24日 時 分頃 話題発生 715番の第426番レス 当該列車 特急サンダーバード4号 特徴 ☆ 踏切で自動車が立ち往生。クルクルパー動作。 西武新宿線 上石神井~武蔵関 12月24日 13時02分頃 話題発生 715番の第448番レス 当該列車 本川越発西武新宿行き上り特急120電車 小江戸20号(NRA) 先頭車=10108 特徴 △ 現場は武蔵関3号踏切。目標 武蔵関公園、富士見池。西武新宿~東村山間運転見合わせ。拝島行き急行2331電車は高田馬場抑止→鷺宮まで運転。一部上りは小平止まりに変更。「傷物語」は西武柳沢抑止。踏切の南側に救急車が来ていたが、撤収。遺体は踏切北側に来ていた警察車両に。(見込み13時50分)運転再開。現場の踏切は最徐行→注意運転。当該はATSに不具合発生。上石神井で運転打ち切り。拝島、国分寺線は15時30分現在、新宿線は16時20分現在平常運転。 警視庁は「50代とみられる女性が死亡した」と発表。 宗谷本線 12月24日 時 分頃 話題発生 なし 当該列車 稚内発札幌行き上り特急54D スーパー宗谷4号(キハ261系) 特徴 ☆ 鹿と接触。当該に遅れ。 飯田線 門島~天竜峡 12月24日 16時19分頃 話題発生 なし 当該列車 特徴 ☆ 落石を知らせる警報が動作したため、平岡~天竜峡間運転見合わせ。18時19分運転再開。 中央快速線 東京 12月24日 17時 分頃 話題発生 715番の第509番レス 当該列車 特徴 ☆ 防護無線発報。 総武快速線 津田沼 12月24日 17時 分頃 話題発生 715番の第515番レス 当該列車 特徴 ☆ 異音確認。防護発報。 西武新宿線 高田馬場 12月24日 18時 分頃 話題発生 715番の第514番レス 当該列車 特徴 ☆ 旅客線路内転落。 小田急小田原線 本厚木~愛甲石田 12月24日 18時 分頃 話題発生 715番の第515番レス 当該列車 新宿発箱根湯本行き特急0601レ ホームウェイ1号 特徴 ☆ 異音感知。昇格なし。車両点検後運転再開。 土讃線 坪尻~箸蔵 12月24日 17時 分頃 話題発生 公式ピヨ? 当該列車 特徴 ☆ 動物と衝突。特急南風26号は約20分遅れ。 西鉄天神大牟田線 都府楼~二日市 12月24日 20時53分頃 話題発生 715番の第523番レス 当該列車 小郡発福岡(天神)行き急行J200レ 特徴 △ 21時25分運転再開。 福岡県太宰府市の西鉄天神大牟田線の踏切で、通過中の電車に男性が接触したとの110番があった。西日本鉄道によると、都府楼前~二日市間の上下線で最大約50分間運転を見合わせた。(西日本新聞) 東海道本線 東京 12月24日 21時23分頃 話題発生 716番の第436番レス 当該列車 特徴 ☆ 10番ホームで、線路上へ転落。一般人が救出し、立ち去る。東京消防庁が協力者として探している。連絡先は丸の内署。 高山本線 各務ケ原~鵜沼 12月25日 8時32分頃 話題発生 715番の第577番レス 当該列車 岐阜発多治見行き普通707D(2両編成 乗客27人) 美濃太田から618C 特徴 8時50分から名鉄に振替輸送を実施。10時12分運転再開。16時15分現在、平常運転。 現場は各務ケ原付近。線路内に立ち入った人がはねられ即死。女性とみられる。蘇原―鵜沼間で1時間40分にわたって運転を見合わせ。特急ワイドビューひだを含む上下8本が運休・部分運休。3本が最大1時間40分遅れ、約550人に影響。(中日新聞夕刊) 総武快速線 新小岩 12月25日 11時42分頃 話題発生 715番の第523番レス 当該列車 池袋発成田空港行き特急2021M 成田エクスプレス21号 池袋~東京間2221M 特徴 若い男性が死亡。防護無線受信で、常磐線緩行がセクション内停車で抑止。山手線車内でも5分以内に「新小岩駅で人身事故が発生した」との案内。12時16分(見込み12時30分)運転再開。当該は先頭部分がへこむ。成田エクスプレス・しおさい8号に遅れ。総武緩行線は12時30分現在平常運転。 警視庁は「男性が死亡した」と発表。 鹿児島本線 広木 12月25日 16時03分 話題発生 715番の第693番レス 当該列車 川内15時19分発鹿児島中央行き下り普通2453M 特徴 ☆ 線路内人立ち入り。線路内で人が倒れているのを発見し、救護活動を行った。16時54分運転再開。 一畑電車北松江線 布崎~湖遊館新駅 12月25日 16時31分頃 話題発生 715番の第677番レス 当該列車 電鉄出雲市発松江しんじ湖温泉行き普通325レ(2103F) 楯縫号 D運用 特徴 △ 踏切で車と接触。再開見込みは20時10分だったが、17時49分配信のメールで再開済み。松江しんじ湖温泉方面は約15分、電鉄出雲市方面は約1時間の遅れ。 常磐線 牛久~佐貫 12月25日 17時 分頃 話題発生 715番の第684番レス 当該列車 特徴 ☆ 異音の確認。昇格なし。 線 久喜駅前 12月25日 20時前 話題発生 715番の第942レス 当該列車 特徴 ☆ 警察は久喜市の無職男(41)を威力業務妨害容疑で逮捕した。「久喜駅を血の海にしてやる。殺します」などと、久喜駅近くの公衆電話から110番通報し、警察の業務を妨害した疑い。男は駆けつけた警察官に身柄を確保され、刃物などは持っていなかったという。男は、「仕事を首になり、自暴自棄になりやってしまった」と供述しているという。 (yahooニュース/フジテレビ) 武蔵野線 新秋津 12月25日 20時37分頃 話題発生 715番の第710番レス 当該列車 東京発府中本町行き普通1944E(M64) 西船橋まで1945E 特徴 ▲ ホーム上で触車。列停動作。ただし、公式情報はホーム上の安全確認。22 30平常運転。JR貨物の情報は人身事故(20時51分運転再開)。 東急東横線 都立大学 12月25日 22時58分頃 話題発生 715番の第728番レス 当該列車 渋谷発元町・中華街行き急行006-221レ(メトロ車) 7009 特徴 下り1番線ホームから飛び込む。年齢不明の男性、挟まれなし。意識レベル300。徒手にてバックボードに救出。渋谷~自由が丘間運転見合わせ。東京メトロ副都心線との直通運転を中止。0時30分(0時35分とも。見込み0時15分→延期)運転再開。当該は車庫に回送。ムーンライトながらは小田原を53分に発車。高架の線路から石が落ちてきたというツイートあり。回答する記者団/佐藤裕一 氏(@kishadan_editor)のツイートによると「昨日深夜の東急東横線(都立大学駅)の人身事故は、40代くらいの女性が助からなかった。警視庁発表。」 長崎本線 肥前麓~中原 12月25日 時 分頃 話題発生 715番の第765番レス 当該列車 特徴 ☆ 動物と衝突。鳥栖~中原間の上り線に遅れ。 京浜東北線 鶯谷 12月26日 0時 分頃 話題発生 715番の第796番レス 当該列車 特徴 ☆ 2人が転落。自力でホームに上がれない。通行人が徒手にて救助。 西武多摩湖線 武蔵大和 12月26日 7時28分頃 話題発生 715番の第817番レス 当該列車 西武遊園地発国分寺行き上り各停第6014電車 特徴 ▲ ホームから転落。側面への接触らしく。自分でホームに戻った模様。意識清明。7時50分運転再開。8 30平常運転。 花咲線(根室本線) 上尾幌~別保 12月26日 8時 分頃 話題発生 715番の第832番レス 当該列車 根室発釧路行き上り普通5624D(1両編成 乗客乗員34人) キハ54 525 特徴 △ 釧路~厚岸間運転見合わせ。10時32分運転再開。5626Dは全区間運休、タクシー代行。他にも運休あり。14時320分現在、平常運転。 北海道釧路町の別保駅近くにある踏切(警報機、遮断機あり)で普通列車が軽自動車と衝突。この事故で、軽自動車を運転していた60代の女性が意識不明の重体になって病院で手当てを受けている。普通列車の乗客・乗員にけがはなかった。警察が事故の原因などを詳しく調べている。この事故の影響で、JR花咲線は周辺の一部の区間で運転を見合わせている。(NHK) 西武拝島線 玉川上水~武蔵砂川 12月26日 9時50分頃 話題発生 715番の第843番レス 当該列車 西武新宿発拝島行き下り急行第2309電車(20156F 20000系) いこいーなラッピング 特徴 △ 現場は武蔵砂川駅手前の玉川上水7号踏切。玉川上水~拝島間運転見合わせ。新宿線は、一部電車の行先が変更になる。10時18分(見込み10時30分頃)運転再開。JR・東京メトロ・多摩都市モノレールに振替輸送を実施。拝島線・新宿線とも11時00分現在平常運転。西武全線で今年42回目。 京王相模原線 京王よみうりランド 12月26日 時 分頃 話題発生 715番の第866番レス 当該列車 特徴 ☆ 「その他 駅構内で高くまで三脚を立てている客がおり危険。安全確認で電車が止まる可能性あり」。 阪急京都本線 玉十三~南方 12月26日 11時30分頃 話題発生 715番の第868番レス 当該列車 河原町発梅田行き下り準急10033レ(乗客約450人) 特徴 △ 現場は高槻街道第一踏切。女性と衝撃。当該はすぐ再開。救助活動(収容)に時間を要し、12時44分(当初見込み12時40分→13時10分)運転再開。千里線も遅延。15時00分まで振替輸送を実施。千里線は19時30分現在、京都線も19時40分現在、平常運転。 大阪市淀川区木川東の踏切内で、準急電車に女性がはねられ即死。乗客にけがはなかった。梅田~淡路間の上下線で一時運転を見合わせた。阪急電鉄によると、踏切内に女性が立ち入っているのを運転士が発見して急停止したが、間に合わずに衝突した。大阪府警淀川署が女性の身元や事故の詳しい状況を調べている。 (産経WEST) 老婆が犬を抱いて飛び込む。家族が36年前(=1979年)に近所の一文菓子屋の老婆を殺害。 北陸本線 湯尾(南条?)~今庄 12月26日 時 分頃 話題発生 715番の第909番レス 当該列車 特徴 ☆ 動物(猪)と衝突。17時44分運転再開。サンダーバード29・36号に遅れ。18時30分現在、平常運転。 東武東上本線 大山 12月26日 時 分頃 話題発生 715番の第967番レス 当該列車 特徴 ☆ 酔っ払いが転落。 東武東上本線 池袋 12月26日 23時20分頃 話題発生 715番の第948番レス 当該列車 (51001F) 特徴 2番線。駅進入時に発生。列車の下敷き。2両目下部、意識レベル300。池袋~成増間運転見合わせ。上り列車は各駅で運転見合わせ。下り列車は各駅で運転見合わせするも、地下鉄線からの直通列車は運転可能な所まで運転。上り池袋行きで志木抑止あり。振替輸送を実施。0時32分(当初見込み0時30分→0時45分)運転再開。東上線での今年26回目(接触を含めても28回)。昨年、一昨年は30回を越えている。51001Fは4,5回当該になっていると思われる。 南武線 登戸 12月27日 0時 分頃 話題発生 716番の第24番レス 当該列車 特徴 ☆ 酔客救護。0時15分発最終川崎行きは5分程度の遅れ。 宇都宮線 土呂〜宇都宮 12月27日 0時 分頃 話題発生 716番の第24番レス 当該列車 特徴 ☆ 1号車で車内トラブル。客同士。警察沙汰になる。抑止。 函館本線 伊納~近文 12月27日 5時 分頃 話題発生 716番の第65番レス 当該列車 回送 特徴 ☆ 公式情報は「設備点検」だったが、トンネル火災。深川~旭川間運転見合わせ。 旭川市にある嵐山トンネル(延長1.3km)の中で、架線から火花が出ているのを、回送列車の運転士が見つけた。警察や消防が現地を確認したところ、トンネル内の水漏れなどを防ぐために壁や天井につけられたウレタンが燃えているのがみつかり、現在、消防が消火活動を行っている。 これまでに札幌と、旭川や稚内などとを結ぶ特急スーパー宗谷、スーパーカムイ、オホーツク、旭山動物園号と、普通列車合わせて27本が運休、または運休が決まっている。(NHK札幌) 火災は12時40分頃鎮火。スーパーカムイ1~14号・16~18号・20~23号・26~30号・33~37号・40~42号・45号、オホーツク1・3・4号、スーパー宗谷1・2・4・8号、サロベツ(下り)、旭川動物園号は全区間運休。スーパーカムイ15・19・24・25・31・32・38・39・43・44・46号は深川~旭川間部分運休、バス代行輸送。オホーツク2号・5~7号・スーパー宗谷3号・サロベツ(上り)は札幌~旭川間運休。 27日は札幌~旭川・稚内・網走間の特急62本が運休。一部の特急は部分的に運転されたが、快速・普通も含む87本が運休。ダイヤは終日乱れ、約2万人に影響。 28日も深川~旭川間終日運転見合わせ。代行バス運転。ただし、代行バスに接続しない列車もある。また代行バスは特急の乗客のみが対象。 29日も復旧作業のため午前中は代行バスを運転。「終日運転見合わせ」となっているが、午後からの運転再開を目指す→12時13分運転再開。旭山動物園号は全区間運休。札幌~深川間に臨時特急1往復。計233本が運休し、約4万7000人に影響。火災の原因は調査中。 留萌線は深川~増毛間全線で終日運転見合わせ→11時頃まで運休。11時00分現在、運転再開。 山手線 西日暮里 12月27日 6時49分頃 話題発生 716番の第42番レス 当該列車 特徴 ☆ 線路内人立ち入り。山手線、京浜東北線両方向運転見合わせ。湘南新宿ラインも抑止。山手線は7時34分、京浜東北線・湘南新宿ラインは7時43分運転再開。湘南新宿ラインは9時45分、山手線は10時15分、京浜東北線は10時30分現在、平常運転。 線 田端~上中里 12月27日 7時 分頃 話題発生 716番の第48番レス 当該列車 特徴 ☆ 線路内人立ち入り。西日暮里で立ち入ったのと同一人物?逃走。結局見失い、「線路内に人はいない」として運転再開。 福塩線 福山~備後本庄 12月27日 11時 分頃 話題発生 716番の第83番レス 当該列車 特徴 ☆ 異音感知。福山~神辺間運転見合わせ。昇格はなく、12時09分(見込み13時00分)運転再開。 横須賀線 戸塚 12月27日 11時59分頃 話題発生 716番の第85番レス 当該列車 逗子発成田空港行き1172S エアポート成田(Y-1) 東京~1173F~千葉~4173F E217系トップナンバー 特徴 1番線で飛び込む。当該はホームに入りきっておらず、ドアが開かない。横須賀線、東海道線運転見合わせ。湘南新宿ラインも抑止。総武快速直通中止。貨物線EF66-36は大船抑止。東海道線は12時06分運転再開。横須賀線上りは東海道線の線路を使用して先に再開。横浜で横須賀線の線路へ戻る。横須賀線、湘南新宿ラインは12時52分(見込み12時50分)運転再開。当該は東京止まりに変更。リゾート踊り子は3分遅れで大船発車。横須賀線、総武快速線は15時30分、東海道線は14時00分、湘南新宿ラインは15時00分、宇都宮線は15時40分、高崎線と上野東京ラインは16時00分現在平常運転。 40代くらいの女性が死亡。(神奈川新聞) 飯田線 飯田~切石 12月27日 12時08分頃 話題発生 716番の第153番レス 当該列車 特徴 ☆ 公式情報は「踏切内で自動車が列車の運行を支障している」。掘割踏切(警報機、遮断機なし)で白い乗用車(スバルWRX S4?)が横転して線路を支障している。この踏切は歩行者・自転車専用で車は通れない。坂道(コンクリート舗装)も車は通れない。崖の上から落ちてきた?飯田~天竜峡間運転見合わせ。車を撤去し、14時21分運転再開。特急ワイドビュー伊那路1号などに遅れ。16時30分現在、平常運転。 飯田署の情報により、「崖の上から転落」は誤りと判明。「軌道敷内への車両単独転落事故」と題し、「27日午後0時ころ、飯田市白山通りの市道で軌道敷内への車両単独転落事故が発生した。市道を曙町方面から松川橋方面に進行した女性(65)運転の普通乗用車が、右に路外逸脱してJR飯田線の軌道敷内に転落横転した。女性は軽傷(要約)」とある。 京王線 百草園(もぐさ) 12月27日 12時39分頃 話題発生 716番の第113番レス 当該列車 高尾山口行き準特急3129列車(9705F 2+8の10両編成) 先頭車=クハ9755 特徴 ジョルダンでの第一報は12時45分。挟まれなし。府中~高幡不動間運転見合わせ。府中と高幡不動で折り返し運転。高尾線は線内の折り返し運転。全列車各停。特急新宿行きが桜上水止まりに変更。準特急が多磨霊園で臨時停車。振替輸送を実施。13時45分(見込み13時50分)運転再開済み。当該は左側ライトを破損。スカートに血痕。京王線・新線・相模原線・高尾線とも15時30分現在、平常運転。 百草園駅のホームで男性が進入してきた電車にはねられた。男性は病院に搬送されたが、死亡が確認された。警視庁日野署によると、男性は東京都日野市内の市立中3年の男子生徒(15)。12時20分頃、「塾に行く」と言って自宅を出たという。塾には徒歩で通っており、駅を利用する必要はなかった。電車は同駅を通過する途中の準特急列車で、運転士は「倒れ込むような感じで線路に下りてきた」と説明しているという。同署は男子生徒が自殺した可能性が高いとみて、詳しい経緯を調べている。(産経新聞) 総武快速線 千葉 12月27日 16時 分頃 話題発生 716番の第186番レス 当該列車 特徴 緊急停止。 JR宝塚線(福知山線) 川西池田~中山寺 12月27日 19時11分頃 話題発生 716番の第204番レス 当該列車 ×新大阪発福知山行き下り特急3021M こうのとり21号(289系) ◎新三田発高槻行き普通1206B(7両編成) 特徴 新三田~塚口間運転見合わせ。普通は大阪、快速は塚口で折り返し運転。大阪発着の快速は運休。JR京都線・JR東西線⇔JR神戸線の直通列車は運転。丹波路快速は新三田~篠山口方面の折り返し運転。19時30分から阪急電鉄・神戸高速線で振替輸送を実施。19時35分から神戸市営地下鉄線、北神急行線・神戸電鉄線を振替先に追加。19時50分(見込み20時15分)頃運転再開。こうのとり21・24号に遅れ。 兵庫県川西市南花屋敷4丁目のJR宝塚線中山寺~川西池田間で、普通電車の運転士が線路内の人影に気づき、緊急停止した。JR西日本によると、非常ブレーキをかけたが間に合わなかったという。(朝日新聞) 名鉄本線 富士松~豊明 12月27日 19時35分頃 話題発生 716番の第213番レス 当該列車 特徴 現場は境川橋梁上。愛知県刈谷市と豊明市の境。新安城~豊明間運転見合わせ。19時55分からJR(東海道本線 豊橋~岐阜間、飯田線 豊橋~豊川間)で振替輸送を実施。21時36分運転再開。 芸備線 塩町~下和知 12月27日 時 分頃 話題発生 716番の第222番レス 当該列車 特徴 ☆ 列車が動物と接触したため、車両と線路を確認した。このため一部の列車に30分の遅れ。 東海道新幹線 名古屋 12月27日 21時 分頃 話題発生 716番の第235番レス 当該列車 特徴 ☆ 緊急停止ボタン取扱い。 東急線 二子玉川 12月27日 21時 分頃 話題発生 716番の第244番レス 当該列車 特徴 ☆ 線路に人が降りたため遅れ。 名鉄各務原線 二十軒 12月27日 22時50分頃 話題発生 716番の第250番レス 当該列車 名鉄岐阜発犬山行き上り普通2262レ 特徴 ☆ 人が倒れていたが、事故性は認められず。 大阪市営地下鉄御堂筋線 大国町 12月28日 7時55分頃 話題発生 716番の第281番レス 当該列車 なかもず発千里中央行き第70電車(10両編成) 特徴 ☆ 公式情報は人身事故だったが、転落のみ。全線運転見合わせ。8時30分頃までに運転再開。10時00分まで振替輸送を実施。御堂筋線10時45分現在、影響先の北大阪急行線は12時00分現在、平常運転。 男性がホームから線路上に転落するのを、電車の運転士が見つけた。急ブレーキをかけたが間に合わず、転落場所から約40m先で停車。男性はレールとレールの間にうつぶせで倒れており、顔にけがを負って病院へ運ばれたが、命に別条はない。市交通局によると、地面と電車の底との間には20~25cmの空間があり、男性はレールの間で寝そべったため、助かったとみられる。男性は30代くらいで酒のにおいがしたという。男性の救出のため同線は一時運転を見合わせ、上下29本に最大24分の遅れが生じ約6万8000人に影響した。(産経WEST) 池袋駅前 12月28日 時 分頃 話題発生 716番の第479番レス 当該車 大型観光バス 11-29 特徴 ☆ 爆発・炎上。バスは全焼したが、乗客は乗っておらず、男性運転手の逃げており無事。 京王線 多磨霊園 12月28日 13時 分頃 話題発生 716番の第313番レス 当該列車 特徴 ▲ 頭から出血あり。 総武快速線 津田沼 12月28日 15時08分頃 話題発生 716番の第316番レス 当該列車 東京発上総一ノ宮行き下り快速1451F(←千葉 Y32+Y128 E217系15両編成 乗客約600人) 千葉から4451F 特徴 1番線。基本編成はホームにかかっており、ドアを開けたが付属編成はホームにかかっていないためドア開かず。快速線運転見合わせ。別線対応せず。NEXが市川抑止。緩行線は運転。15時30分過ぎ、上り快速運転再開。15時49分(当初見込み16時00分→15時50分)運転再開。当該は千葉止まりに変更。成田エクスプレス32号・34号・36号・41号・43号は全区間運休。他の成田エクスプレスにも遅れ。中央総武緩行は16時00分、横須賀線は16時45分現在、総武快速線は17時15分現在、総武本線・成田線も18時20分現在平常運転。今年起きた総武快速線の人身事故はすべて駅。駅間の事例はない。 千葉県警は「年齢不詳の男性が15時52分に死亡した」と発表。「千葉県津田沼市」というのはない。北口と南口では警察の管轄が違う。 習志野市津田沼1のJR津田沼駅構内で、線路上に進入した20~30代ぐらいの男性が快速電車にはねられた。男性は全身を強く打ち、搬送先の病院で死亡が確認された。電車の乗客にけがはなかった。習志野署は男性の身元確認を急ぐとともに状況や経緯などを調べている。JR千葉支社によると、当該は約35分後に運転を再開。特急を含む上下15本が運休、特急を含む上下11本が最大38分遅れ、乗客約1万2000人に影響。(ちばとぴ) 京成線 京成津田沼 12月28日 15時40分頃 話題発生 716番の第333番レス 当該列車 特徴 ☆ 5・6番線エスカレーター点検のため、使用中止。 播但線 砥堀~仁豊野 12月28日 18時25分頃 話題発生 第402番レス→グモスレ716番の第417番レス 当該列車 姫路発福崎行き下り普通5657M 特徴 ☆ 鳥と衝突。窓ガラスを破損したため、当該と折り返しの福崎発姫路行き上り普通5662Mは香呂~福崎間運休。 線 東中野 12月28日 19時10分頃 話題発生 716番の第363番レス 当該列車 特徴 ☆ 客トラブル。総武線電車が緊急停止。少なくとも3人が転倒。 埼京線 新宿 12月28日 20時35分頃 話題発生 716番の第377番レス 当該列車 川越発新宿行き通勤快速1952S 特徴 ☆ 新宿駅手前で緊急停車。緊急停止ボタン操作によるもので、数分で運転再開。 山手線 日暮里 12月28日 21時30分頃 話題発生 716番の第379番レス 当該列車 内回り 特徴 ▲ 西武池袋線 12月28日 時 分頃 話題発生 716番の第388番レス 当該列車 (30000系) 特徴 ☆ 車内(お客様)トラブル。 小浜線 敦賀~西敦賀 12月28日 22時08分頃 話題発生 716番の第388番レス 当該列車 敦賀発小浜行き上り普通950M 上り最終 特徴 敦賀~小浜間運転見合わせ。23時21分(当初見込み23時00分→23時30分)運転再開。当該と下り採集に影響。小浜線での人身事故は2012年の東舞鶴~松尾寺間以来。 敦賀署は「男性(74)が死亡した」と発表。 名鉄名古屋本線 名鉄名古屋~山王 12月28日 23時 分頃 話題発生 716番の第406番レス 当該列車 特徴 ☆ 軌道内公衆立ち入り。係員が対応し、運転再開。 函館市電線 千歳町電停付近 12月29日 10時30分頃 話題発生 716番の第444番レス 当該列車 2系統 湯の川発谷地頭行き42レ(710形 715号車) 1959年5月製 シゴトガイド広告電車 特徴 ◆ 函館市千歳町で車と衝突して脱線。路面が凍結していてスリップしたらしいが、車は逃走。脱線した電車が上下線の線路をふさぐ形になり、五稜郭公園前~函館駅前電停間運転見合わせ。バス代行を実施。当該は救援の2002に引かれて撤去。710形は都電8000形の影響を受けており、似ているが、新潟鉄工所で新製されたもの。都電を譲り受けて改造したものではない。 乗客2名が肩の痛みを訴えているが軽症。(NHK) 都電荒川線 飛鳥山電停付近 12月29日 10時44分頃 話題発生 716番の第442番レス 当該列車 特徴 トラックと接触。王子駅前~大塚駅前電停間運転見合わせ。11時09分現在、運転再開済み。12時22分の運行情報メールで平常運転。 東北本線 花巻~村崎野 12月29日 13時50分頃 話題発生 716番の第456番レス 当該列車 特徴 ☆ 異音の確認。花巻~北上間運転見合わせ。昇格はなく、14時過ぎに運転再開。 常磐線 藤代~佐貫 12月29日 16時28分 話題発生 716番の第461番レス 当該列車 特徴 ☆ 異音の確認。動物(または鳥)と衝突。 都電荒川線 面影橋停留場 12月29日 時 分頃 話題発生 716番の第464番レス 当該列車 特徴 ☆ お客様転落。荒川線のホームは高い。一般の路面電車と異なり、地面とあまり変わらない高さではない。 東京都中央区築地 12月29日 時 分頃 話題発生 716番の第469番レス 当該車 フェラーリ 特徴 ☆ 晴海通り勝鬨橋で炎上。 線 12月29日 時 分頃 話題発生 716番の第470番レス 当該列車 特徴 ☆ 車内急病人。 長崎県雲仙市 12月29日 時 分頃 話題発生 716番の第482番レス 当該車 特徴 ☆ 観光バス火災。 宗谷本線 12月29日 時 分頃 話題発生 716番の第491番レス 当該列車 稚内発札幌行き上り特急 スーパー宗谷4号 特徴 ☆ 鹿と接触。当該は約30分遅れ。 東海道本線 川崎~横浜 (京浜東北線 鶴見付近) 12月29日 23時24分頃 話題発生 716番の第495番レス 当該列車 上野発平塚行き普通1639E 特徴 ☆ 異音の点検。南武線なども緊急停止。23時52分、鶴見で車両点検→鶴見付近で停車していた、京浜東北線の電車から乗客がドアコックを使って降りる。23時56分には東海道線品川付近、0時05分には東海道線川崎~横浜間で同じく停車中の電車から降車。品川の山手線はまもなく再開。0時10分運転再開。当該の後ろに大垣行き臨時快速9391M ムーンライトながら。ながらは通常の小田原ではなく手前の横浜で日を跨いだため払戻可。ムーンライト信州は南武線緊急停止の遅延による客救済のため立川を0時50分(所定0時29分)に発車予定→28分遅れで発車。所定通りなら0時50分頃には高尾、1時頃には上野腹を通過している。 JR神戸線(東海道本線) 三ノ宮 12月29日 0時 分頃 話題発生 716番の第522番レス 当該列車 特徴 ☆ 線路内人立ち入り。数車両が機外停車。サンライズも抑止。 東海道本線 逢妻 12月30日 1時37分頃 話題発生 716番の第533番レス 当該列車 安治川口発東京貨物ターミナル行き上り特急貨物電車50レ(16両編成) スーパーレールカーゴ 特徴 下り寝台特急サンライズ瀬戸・出雲号に90分以上の遅れ。上り寝台特急 サンライズ瀬戸・出雲も遅れる。JR貨物の情報では刈谷~大府間。1時37分発生。当該自走不可につき桃太郎(EF210)が救援。 ホーム下の線路に男性が横たわっているのを走ってきた貨物列車の運転士が発見。運転士がブレーキをかけたが間に合わず、男性は列車にひかれて死亡。警察によると、逢妻駅は無人駅のため、夜間でも自由に出入りできる状況だったという。警察では男性が自殺したか、何らかの原因で線路に転落した事故の可能性があると見て調べている。(メーテレ) 救援機はEF210-103。次位がMc250-3、最後部がMc250-2。定時なら未明に通過する静岡県内を白昼に走行。2002年の「スーパーレールカーゴ」運転開始以来、EF210形が牽引して走行するのは初めてと思われる。 (鉄道ホビダス) 記事では車両不具合のため~となっているが、人身事故。 横須賀線 鎌倉~逗子 12月30日 8時14分頃 話題発生 716番の第549番レス 当該列車 特徴 ☆ 公式情報は踏切の安全確認から踏切支障に変更。白い乗用車(18系クラウン)が単独で踏切設備に衝突。車両との接触なし。車は前側を破損し自走不能。レッカーで撤去。大船~久里浜間運転見合わせ。東京~大船間に運休と遅れ。京急線への振替輸送を実施。8時55分運転再開。横須賀線、総武快速線とも12時30分現在平常運転。 相鉄線 横浜 12月30日 10時31分頃 話題発生 716番の第578番レス 当該列車 特徴 ☆ 停電。運行システム故障。全線運転見合わせ。JRなどに振替輸送を実施。代用手信号で12時00分にいったん再開したが、12時10分現在再び運転見合わせ。12時50分運転再開。17時00分現在、平常運転。 りんかい線 12月30日 時 分頃 話題発生 716番の第589番レス 当該列車 特徴 ☆ コミケ多客による遅れ。 中央本線 日野 12月30日 時 分頃 話題発生 716番の第602番レス 当該列車 特徴 ☆ 多摩川橋梁で、線路内乱入の未成年2人が通報されて検挙された。逃走しようとしたが、居合わせた鉄ちゃん(撮り鉄)連中が取り押さえた。 日豊本線 宇佐~西屋敷 12月30日 21時30分 話題発生 716番の第632番レス 当該列車 大分20時18分発小倉行き上り普通2594M 特徴 ☆ 鹿と衝突。特急にちりんシーガイア24号などに遅れ。 線 12月31日 昼前 時 分頃 話題発生 716番の第658番レス 当該列車 特徴 △※ 奈良県警天理署の情報。田原本町内の踏切で、普通乗用車が列車と衝突したが、けが人等はなかった。(要約) 高徳線 オレンジタウン 12月31日 12時00分頃 話題発生 716番の第658番レス 当該列車 徳島発高松行き上り普通4332D(1235 1200形1両編成 乗客乗員46人) 特徴 ☆ 駅構内で脱線。 所定停車位置を過ぎ、本線から側線(=安全側線)に入った後、脱線。けが人はなかったJR四国が詳しい事故原因を調べている。高徳線は特急が高松~三本松間、普通列車が高松~志度間で上下線とも運転を見合わせた。(共同通信) 安全側線の先に盛られている砂利に突っ込んで停まる。対向列車(オレンジタウン止まり4333D)が接近しており、信号は停止現示(赤)だった。 阪和線 東貝塚~和泉橋本 12月31日 15時10分頃 話題発生 717番の第576番レス 当該列車 日根野発天王寺行き上り区間快速354H(乗客約200人) 特徴 ☆ 大阪府貝塚市新井の踏切(巾約1.5m 歩行者・自転車専用)で、区間快速電車が、線路上に置かれていた複数の木片などと衝突。乗客にけがはなかった。大阪府警貝塚署によると、木片は3本前後で、いずれも長さ約120cm、厚さ約3cm。周りには砕かれた石の形跡が複数あったといい、同署は何者かが故意に置いた可能性もあるとみて、電汽車往来危険容疑も視野に捜査している。JR西日本によると、この事故で上下6本が運休、12本が最大約25分遅れ、約6200人に影響。(産経新聞) 中央・総武緩行線 亀戸 12月31日 16時00分頃 話題発生 716番の第685番レス 当該列車 特徴 ☆ 「総武快速線の亀戸駅」はないので修正。快速線電車が線路内人立ち入りで緊急停止。 西武新宿線 中井~新井薬師 12月31日 20時25分頃 話題発生 716番の第735番レス 当該列車 本川越発西武新宿行き各停第5642電車(8両編成) 特徴 △ 現場は新宿区中井1丁目の中井4号踏切。踏切の北側に床屋がある。南側は鉄道用の空き地。白いコートを着た人と接触。70代女性(→男性の間違い)、252ではなく955。意識レベル300。踏切を渡りきれなかったらしい。上石神井~西武新宿間運転見合わせ。上石神井~本川越間で折り返し運転。当該のみ21時05分、(見込み21時10分)運転再開。 各駅停車が踏切内にいた男性をはねた。運転手は「男性がしゃがみこんでいたので、非常ブレーキをかけたが間に合わなかった」と話しているという。(産経ニュース) 西武での人身事故は43件(2014年は33件だったので+10件)。池袋線 16件(-4件)、新宿線 16件(+7件)、拝島線 5件(+3件)、国分寺線 3件(+1件)、多摩湖線…2件(+2件)、多摩川線…1件(+1件)。 東武東上線は27件。30件を切ったが、路線別では4年連続で最多。小田急小田原線の26件、中央快速線の23件と続く。東急田園都市線は12回(ノングモの2件は除外)。駅別では新小岩の6件。2年連続で最多。次いで武蔵小金井駅とJR神戸線住吉駅の各5件。 大阪市営地下鉄谷町線 阿倍野 12月31日 20時54分頃 話題発生 721番の第589番レス 当該列車 八尾南発大日行き826レ 特徴 ☆ 線路内人立ち入り。入駅時、運転士が線路内に立ち入るお客さまを発見、直ちに非常ブレーキを投入した。列車はお客さまの位置から約30m手前で急停車した。谷町線で2列車に最大6分の遅延が発生し、約50人に影響。お客さまがホーム上から故意に線路内へ立ち入ったのが原因。(大阪市交通局) ほんにんdせはなく、保護者を厳重に注意したとあるので、「立ち入った人」は子供。 線 12月 日 時 分頃 話題発生 716番の第 番レス 当該列車 特徴 終了 716番の第818番レス
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ボルボX 202 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 35 28 ID 8Um2yxCF 夕日が山の端に最後の片鱗をのぞかせている。落日の瞬間だった。 早春の冷たい夜露がおりはじめた、アルビオンの緑豊かな森の中。数十メイル四方にわたってひらけた空き地。 銃口から立ちのぼった硝煙の臭いと、いまも絶叫とともにまき散らされている血の臭いが、森の清冽な空気にまじっていく。 空き地の中にそびえる白い塔の番人は、爪と歯をもって、みずからの守護地を侵そうとした人間の体を破壊していた。 空堀をわたり、塔へとつづく橋の上。そこで捕らえられて、腹を裂かれているメイジの断末魔の声。 それはおぞましいことにまだ続いている。 「アニエス……」 怯えからくるおののきを隠せないルイズの声に、アニエスは短く答えた。 「けっして他の者から離れるなよ。あいつは速いし、飛ぶぞ」 それはルイズとおなじく戦慄している、自分と他全員の近衛隊士にも向けた言葉だった。 ルイズを背にかばったまま、アニエスは後ずさりした。眼前で近衛兵の一人を引き裂いている怪物に剣を向けながら。 その魔法人形(ガーゴイル)の姿は、人の頭に双の乳房、ライオンの体にワシの羽。 「幻獣スフィンクスの人形か、人食いの魔獣を模した人形が番人とは悪趣味きわまる…… 何をしている、次弾装填!」 マンティコア隊などのメイジ近衛兵とともに、蒼白になって酸鼻な光景を見ているだけの銃士隊員にむけ、アニエスが怒声を飛ばした。 その腕をルイズがつかむ。 「一度もどって、態勢を立て直したほうがいいわよ! さっきの一斉射撃でもほとんど外れたし、当たっても効かなかったじゃない!」 魔法もかわされた。何発かは命中したはずだが、銃弾のときと同じで動きが鈍りもしなかった。 「わかっている、だがあれが夢中になっている今なら――」 唐突に悲鳴が絶えた。 絶息した犠牲者の腹から、血まみれの顔をそのスフィンクスが上げる。 アニエスはわれ知らず固唾を呑んだ。その獣の鋭い爪は、もともと古い血で茶色く染まっていたが、いまは新鮮な血で赤く塗されている。 髪がなくのっぺりとした頭部。血でよごれてわかりにくいが、おそらく女の顔。その目に瞳はなく、魚の腹のような白目があるだけ。 ちくしょうと呻き、アニエスはルイズに背中を向けたまま言った。 「……逃げてすぐに館に戻るぞ、陛下が危ないかもしれん」 その言葉に衝撃を受けたのか、ルイズの声が高くなる。 「どういうこと!?」 203 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 36 03 ID 8Um2yxCF 「あの森林監督官、『王の森』にこんな怪物がいることを黙っていた時点で、底意があるとしか思えない。 その意味にかぎり、サイトを館に残してきたのは正解だった。あいつの本領は護衛だからな」 背後でルイズがあいまいな表情でうなずく。 それを見てはいないが、アニエスは続けて激した言葉を吐いた。 「ウォルター・クリザリングを締めあげてやる! 隠していたことを今度こそすべて吐かせてやるぞ」 スフィンクスの四肢が動いた。 静かに悠然と、犠牲者をまたいで橋の上を歩いてくる。威嚇するようにその翼が大きく広げられた。 夕闇は青から藍にかわりつつある。それが黒に塗りつぶされても、おそらくこの魔法人形は人間たちとちがって意に介するまい、とアニエスは再度舌打ちした。 こいつは死なない。銃弾を命中させても魔法で焼いても平然と動きつづけた。ルイズの『ディスペル』を浴びれば倒れるはずだが、素早すぎて命中させられないのだ。 聞いた伝説のとおりなら、こいつを動かす『永久薬(エリクシル)』はまさに塔のなかにある。 その塔のなかに入れないのだ。扉は、何かの力でかたく閉ざされていた。ルイズのディスペルをかけたところ力は薄れるのだが、不思議と盛り返すのだ。 ……が、このとき異変が起きた。 ルイズがあっと声を上げ、歩み寄るスフィンクスのことも忘れたか、アニエスの隣にならんで怪物の後ろを指さした。アニエスももちろん見えている。 あれだけ押し引きしてもびくともしなかった塔の鉄の扉が、おそらくは落日の瞬間に合わせ、きしみながら開きはじめていた。ルイズが手をたたいた。 「あれなら入れ――」 その声が途中で止まったのは、開く扉の向こうで蠢くものたちを見たからだろう。アニエスの顔もひきつった。 ミノタウロス、首のない巨人、大サソリ、大きな毒牙のある蜘蛛、目のない大蛇、亜人や幻獣や神代の昔の奇怪な動物たち。おそらくすべて魔法人形ではあろうが。 塔の番人たちは、開いた扉の向こうから、なだれ落ちるようにこぼれ出でて、スフィンクスの後を追うように橋をわたってやってきた。 わずかでも食い止められるとは思えない。 「射撃用意やめ、総員退却。みんな走れ」 アニエスはどうにかそれだけつぶやき、身をひるがえすとルイズの手をつかみ、その小柄な体を引きずるようにして逃げはじめた。 \\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\ 204 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 36 45 ID 8Um2yxCF 話はさかのぼる。 その日の午前のうちに。 アンリエッタは船室の窓から、眼下の森を見おろした。 宝石をはめこんだ王冠。冬から春先用のラムズウールの白ドレスに、紫のマントを身につけている。いつもの女王の衣装だった。 早春の正午前、浮遊大陸アルビオンの澄んだ冷たい空気。 晴れた空の中、森の上をゆく中型のフネ、その最上級の船室。 背後のマザリーニの話を聞きながら、ガラスのはめられた窓に椅子を寄せて、物憂げなまなざしを下界にそそぐ。 下の広大な森にはシラカバ、ブナやオークの木々がうっそうとどこまでも茂っている。 ここはかつてのアルビオン王家の猟場であり、直轄領であった「王の森」の一つだった。 広大な森の一画に、ぽつんと小さな尖塔が立っている。アンリエッタはつい、それが何であるのか目をこらして見極めようとした。 が、緋毛氈の敷かれた船室の中央に立っているマザリーニが、女王の背後から言葉を続けたので、注意を引き戻されざるをえなかった。 「この規模のフネは商船には最適ですな。このようなフネを十数隻所有しているそうです、ウォルター・クリザリング卿は。 やはり彼の力を借りようというラ・トゥール卿の申し出は、吟味にたるものです。王家の財政にとっても良き話のようですし。 今回のアルビオン行の出費にせよ、ラ・トゥールの懐に負うものが大きいのですからな。話を真剣に聞くくらいの礼儀は必要でしょう」 「最近は、お金の話ばかりですわね」 アンリエッタに嫌味のつもりはなかったが、不用意につぶやいたのがまずかった。 黒衣の痩せた宰相は表情を変えもしなかったが、気分をいたく害したのがはっきり伝わってきた。 「陛下、王家の台所は、先年のレコン・キスタとの戦争のこともあってまだまだ火の車なのですぞ。 本来トリステインは小国なれど豊かな国です。が、国土の収入と王政府の収入は同じではありません。 ましてやこの冬、あなたが強引に着手した平民軍の創設は、多くの貴族どもの反感を買ったわりに金がひどくかかっているのですよ」 さすがに先ほどの発言は不注意だったので、くどくどと続くお説教を黙って聞くしかできない。 アンリエッタはこっそり円形の窓に向かってため息をついた。 言われることはいちいちもっともなのだった。 問題になっているのは、彼女が新設した志願兵による平民の常備軍である。 数ヶ月前の秋の事件では、敵も味方もメイジではなく平民が中心になって戦闘を行ったのだ。 そこで王都にもどったアンリエッタは、ながらくメイジ中心であった王軍の改革に着手したのだった。 財源が問題だったが、それは一つの策でどうにかなった。しかし、その策もまた責められるもとになっている。 マザリーニが咳払いした。 205 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 37 37 ID 8Um2yxCF 「それと陛下、貴族たちをこれ以上怒らせることは避けなければなりません。平民にあまり肩入れしすぎ、貴族に厳しすぎると、陛下は思われはじめているのです。 ……『武器税』は、さすがにやりすぎでしたな」 「枢機卿、あなたも巡幸の直後、言ったでしょうに。 いつか諸侯たちの力をそぐ必要があると。いまのトリステインは、諸侯の力が強まりすぎていると。 武器税によって王軍は、諸侯の力の一部を自分のものと出来たではありませんか」 女王は顔をあげて、枢機卿に強い視線を向ける。 そこには彼女なりの正義感と、政治的な思慮が介在している。 先の巡幸で、みずからの領民を虐げていた貴族を彼女は見たのである。一部の暴悪な貴族から、民を守る必要があると少女は思ったのだった。 王権を強化すること、諸侯の過ぎた力をそぐこと、平民の権利を拡大すること。 それは同一の線上にあるのではないか。そうアンリエッタは漠然と思いはじめていた。 「私が申しあげたのは、気づかれないようにじわじわと、ということでしたぞ。 あなたが発案し、強引な手続きをへてとつぜんに施行した武器税によって、武器を一定以上保持していた中規模以上の貴族は、王家に対しあらたな税を納めなければならなくなりました」 いまの枢機卿は政治家の顔をしていたが、内実は弟子にたいして辛抱づよく指導する教師なのだった。 「税を払いたくない貴族は、あせって武器を売る。すると世に流通する武器が多くなり、値段が大きく下がる。 それを王家が安く買いあげ、新設軍の軍備にまわす……はは、どちらに転んでも王家にはうまい手でしたな。 ――あなたはときに利口な手を思いつきますが、他者を出し抜く道はかならずしも賢明な道ではありませんよ」 諸侯から買った恨みは、この先どう不利に働くかわかりません。 マザリーニの陰気な表情は、アンリエッタをそう叱咤していた。 女王はごく薄くルージュをひいてある唇をかみしめた。 (大貴族たちは多くの免税特権を持っているわ。度をこした贅沢をしたり、投資に失敗さえしなければ平民よりはるかに豊かなのに、国庫にむくいる比率はより少ないのよ) もともと、潔癖なところのあるアンリエッタである【9巻】。 思いさだめた後は、行動が拙速といえるほど果敢になることがしばしばあった。 「マザリーニ。わたくしはトリステインの女王ではないの? 諸侯の主君ではないの? それなのにいちいち彼らの機嫌をうかがわねば、民のために何事もしてはならないのですか?」 「……あなたの祖父、偉大なるフィリップ三世が玉座にゆるぎなく君臨した古き良き時代には、王は名実ともに諸侯の『主』でした【2巻】。 ですがいまの世では、貴族たちの『長』の地位と思ったほうがよいでしょうな。このことをよく考えてください」 マザリーニは最後にそれをのみ言うと、口をつぐんだ。 206 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 38 10 ID 8Um2yxCF ………………………… ……………… …… ほどなくフネは『桟橋』の木【2巻】に停泊した。 まず部下たちが降り、アンリエッタとマザリーニは最後にタラップを降りた。 彼女を待つ数十名の中、並んだ桃色の髪と黒い髪が視界にはいった。 どきりとして、女王はルイズと才人から目をそらした。彼らとも久方ぶりに顔をあわせることになる。 降り立ったそこは、すぐ館の庭である。 煉瓦のように切石を積みあげてつくった外壁が立派な、館というより城というべきそれの前に、衆に取り巻かれてひときわ目をひく二人の貴族が立っていた。 その二人の男が片ひざをついて、女王の来臨を丁重にむかえた。 トリステインの河川都市トライェクトゥムの領主にして市の参事会員、アルマン・ド・ラ・トゥール伯爵は四十七歳。 尖った口ひげ、たくましい体にぴったりしたダブレットおよびズボン。マントは藍色。 野心家とのうわさに外見も合わせているかのようなこのトリステイン貴族が、今回の女王のアルビオン来訪を希求し、費用の多くを負担したのである。 その横。 この館の主、アルビオンの『王の森』の森林監督官、ウォルター・クリザリング卿のほうは、ゆるやかなあずき色の服と狐の毛皮のコートを身に着けている。 年齢は三十代前半とのこと。やや繊弱ながら美男といっていい顔立ちだが、どこか暗鬱な雰囲気をただよわせている。アルビオンの王立アカデミーに論文を寄稿し、学士号をとった秀才でもある。 二人とアンリエッタが形どおりの挨拶をかわした後、ラ・トゥール伯が発言の許しを得て言上した。 「陛下、このようなあわただしい日程になって申しわけありませぬ」 「まさか。マルシヤック公爵に引き止められるまま、ロンディニウムに予定より一日多く滞在してしまったのはこちらの都合です。わたくしが謝らなければなりません」 今回は、形としてはトリステイン出身の代王マルシヤック公爵【8巻】と会い、彼によるアルビオンの統治の詳細な現況について、直接の報告を受けるのが主目的ということになっていた。 クリザリングの館に寄るのは、そのついでということになる。しかし、ある意味ではこちらが旅の目的だったのだ。 「では陛下、昼食会をかねて本題に入ってもよろしゅうございますか。中庭に用意はととのっております。 旅の疲れも癒えぬうちに急な話、お許しください」 ラ・トゥールは礼儀正しくはあったが、まるで自分の館のように傲然として悪びれない態度。良くも悪くも、貴族的な尊大さがにおう男であった。 館の主、クリザリング卿はそれを気にするふうもなく、アンリエッタ一人を見ていた。 207 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 39 11 ID 8Um2yxCF ………………………… ……………… …… サクラソウの咲きほこる中庭には樫のテーブルがしつらえられ、料理の大皿が運び込まれていた。 アンリエッタはそれを一瞥した。 白ワインで蒸したらしきヒラメ。シャッドという魚を胡椒をつけて焼いたもの。ムール貝のバター焼き……鮭にマスにシタビラメ、カレイやボラや、珍しいものでは鯨まで。 (魚介類?) クリザリング卿が召使たちに指示を飛ばしている間、ラ・トゥール伯爵が少しのあいだ消えていたが、その姿がふたたび見えたとき彼はワイン瓶の大樽をひとつ、同行した秘書官に抱えさせていた。 あっけにとられているうちに、横向きにした樽の栓がぬかれ、グラスに注がれたワインが女王の一行それぞれに配られていく。 飲んでみるようにすすめられ、わけがわからないながらもアンリエッタは飲み干した。 フルーティーな味。甘いさわやかな、新物の白ワインだった。 「……なるほど」 ふいに横で、マザリーニがつぶやいた。理解の光がその目にある。 「空路の交易拡大、というわけか。 王家にもとめるのは、投資ですかな?」 ラ・トゥール伯爵が、満面の笑みを浮かべた。 「さすがに明晰でいらっしゃる。そのとおり。 ここにそろえた新鮮な海の魚介類、質がよい新しいワイン――いずれもトリステインではありふれたもの、しかしアルビオンでは安く手に入るものではありませぬ。 この空の国に海はなく、塩漬けのニシンやタラを下界と交易して手に入れるのが関の山ですからな。 またアルビオン人はワインを飲む習慣があまりなく【7巻】、市場開拓の余地はじゅうぶんすぎるほどにあると思われます。 これもまた、原産地であるガリアやロマリアと通じる大規模な流通経路が確保されていないため国内のワインの量が少なく、高価になって庶民が手をだしにくいためでしょう」 よって、とラ・トゥールは続けた。列席者の大半は、何を言わんとするかすでに理解していた。 「空路交易により、これらの新鮮な商品を安くアルビオンの民に提供するのです。ごらんください、この領地にはフネが停泊できる立派な港があります。また、商船に転用できる立派な船団がすでにあります。 この私、トライェクトゥムのアルマン・ド・ラ・トゥールは、河川都市連合商会の代表者として、空路開拓の道すじをつけるためにここに来ました。 クリザリング卿の船団と港を借り、株式会社という形で空路の交易事業を起こします。 その株主として王家も参画しませんか。数年で、元手の数倍に達する利益をあげてみせましょう」 王家に対し、対等の呼びかけという形。アンリエッタは媚びへつらわぬその態度にかえってすがすがしい印象をいだき、微笑未満の表情をうかべて質問した。 208 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 39 59 ID 8Um2yxCF 「王家が援助しない場合には?」 「やむをえませぬ。大貴族やほかの都市におもな株主となっていただくでしょう」 ここでマザリーニが受けた。 「資金のことだけではない。いまのアルビオンのような各国の利害がからみあう地において、そのうち一国の政府の後ろだてすらない民間事業がうまくいくと? 現アルビオン当局の認可が下りるかどうかさえ疑わしい」 「ええ、その場合は、トリステイン王家以外でどうにかしてくれるところを探すでしょうな」 援助してくれなければ他国にこの話を持ちこむ。そう言ったも同然で、危険なせりふだった。それを、ラ・トゥール卿はさらっと吐いた。あるいは平然をよそおっている。 アンリエッタはマザリーニと顔を見合わせてわずかに首をかしげ、考えこむそぶりを見せた。 実のところ、これは試してみる価値のある話に聞こえた。すでに王家が提案を受けることは七割がた決まり、互いの利権のラインをさだめる駆け引きに移っていることを双方が承知している。 ラ・トゥールが強気に出ているのも、最初から弱気に出ると王家に利益をむさぼられかねないと警戒しているのだろう。 クリザリング卿が、話がどうでもよいかのような表情を浮かべ、奇妙な沈黙を保っていることに気づき、アンリエッタは彼に水を向けてみた。 「クリザリング卿はどうなのでしょうか? この話において、船団と港を提供する彼の同意は得られているのですか。 たしか、わたくしたちがトリステインを出る前には、クリザリング卿のところにこの話は持ちこまれていなかったと聞きますが」 答えたのはラ・トゥールだった。 「むろんです。急な話ではありましたが、数日前に合意はすでに得ています。彼は彼ですでに空輸事業を手がけていたそうですが、革命騒ぎの間はそれもままならず、戦争が終わってからはなにかと…… ええと、アルビオン人ということで肩身が狭くてですな。彼は静けさを好む人間でして、アルビオン現当局とこれまでうまく人脈をつくれなかったようです。 われわれと組めば事業を拡大さえもできるというわけです。トリステインでの買い付けとなれば、河川都市がそれに協力できますからな、ほかより得な条件で」 クリザリング卿が不遇という話に、アンリエッタは気まずいものを覚えた。 女王はじめトリステイン政府がアルビオン人を差別し、抑圧しようとしたわけではない。だが、やはり占領は占領で、さらにガリアやゲルマニアの役人、兵士たちも代王政府にはいるのだ。 生粋のアルビオン人が階級を問わず、さまざまなところで忍従を強いられているのは想像に難くない。 結構です、とアンリエッタはうなずいた。 「では、王政府としてはこの話を真剣に考えさせていただき――」 「お待ちいただきたい、商談とは別に、手前には申しあぐるべきことがあります」 女王をさえぎったのは、クリザリング卿だった。本来はそれだけでも無礼であったが、くわえてその男は驚くべき行動に出た。 大きな眼球でアンリエッタに粘つくような視線を送っていたその男は、薄く笑うと、先ほどのように片ひざをついて女王の足元にひざまずき、次の言葉で場に雷電をはしらせた。 209 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 40 44 ID 8Um2yxCF 「天地も人も照覧あれかし。火と水と土と風と虚無にかけて、始祖ブリミルの御名にかけて。 手前ウォルター・クリザリングは、あなたに求婚します、トリステインの女王アンリエッタ陛下」 中庭の誰もが絶句した。 アンリエッタは呆然と、目の前にひざまずいたその『王の森』の森林監督官、かつてのアルビオン王の代官を見る。 ひざまずく彼の背後ではラ・トゥールが目をむき、殴りつけられたような表情をしていた。 この男にとっても明らかに、これは想定外だったようである。 ところ狭しと食卓に並べられた魚料理は、誰にも手をつけられないまま湯気を立ちのぼらせていた。 \\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\ 「ただいま戻りました、陛下」 波乱の昼食会の後、数刻ばかり。 石の鈍色の壁、館の一室。 集っているのはアンリエッタとアニエス、それにルイズと才人の主従。木の机をはさみ、アニエス以外はそろって机とおなじ桜材の椅子に腰を下ろしている。 アニエスは革の手袋を脱ぎ、アンリエッタの机の横に直立して、開口一番にそう言った。 彼女はアンリエッタの船が到着する一足先、早朝にこの領地にやって来て周辺を調べていたのだった。 アンリエッタは調査から帰ってきた部下に、ほっとした顔を見せたものの、すぐ謹厳な表情に戻ってうなずいた。 「ご苦労さまでした。やはり、なにか変わったことがありましたか?」 「はい。周辺地域でのうわさ話のとおり、ここはおかしなところのある土地です。 われわれ銃士隊は朝から数時間『王の森』を歩きました。地形や途中の小屋の位置は、クリザリング卿の説明とほぼ合致しました」 その名が出たとき、女王がやや動揺した様子を見せた。ルイズと才人も似たような表情で沈黙している。 アニエスが「陛下?」と不審そうに眉をよせる。 「いえ……気にしないで。報告を続けてください」 「では陛下、申し上げます。ラ・ヴァリエール殿の『虚無』の協力をあおぐ必要があるかと。 われわれは空の上から見た塔をさぐりました。 塔の扉は堅固に閉ざされていますが、錠らしきものが見当たらず、またどれだけゆすぶってもきしみさえしないのです。まるで一枚の壁です」 210 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 41 30 ID 8Um2yxCF あの塔だわ、とアンリエッタは一人ごちた。空の上から見た、森の中の奇妙な尖塔。 ルイズと才人も見ていたようで、のみこめた顔である。 その二人のうち主人のほうが、発言した。 「わたしの虚無で、その塔の扉をどうにかしようというわけ?」 「しかり。貴殿ならどうにかできるかもしれん」 「待って、アニエス。その前に、なぜそんなことをする必要があるのか、聞かせてもらえないかしら? 姫さ……陛下の思し召しであれば、むろん従うけれども」 アンリエッタとアニエスは顔を見合わせた。 「話していなかったの、アニエス?」 「……失念していました。忙しくて顔を合わせる機会がそうはなく、たまに会ったらアホなことばかりで……サイトが」 アニエスにぎろりとにらまれ、横からのルイズの視線もちょっと冷ややかなものになり、才人は居心地わるそうにそわそわした。 前回の事件の余波で、傭兵隊長相手に彼とギーシュの作った借金は王家が立てかえた。 大手柄を立てておきながら大ひんしゅくを買った彼らは、この数月フルに活動してどうにか借金を十分の一ほど返したところである。 その冒険譚については……思い出したくもない。 (数ヶ月であれを一割返せたって、かなり奇跡的な話だと思うんだけどな……自分のために使ってたら一生食える額だぞ) 才人の内心のぼやきをよそに、女性陣は目を見交わしあって何やらうなずいている。 「秋の事件にかかわる話なのです。あなたたちも当事者ですから、すべての情報を知る権利がありますわね。 アニエス、彼らにあらためて説明してください」 御意、と女王に頭を下げ、銃士隊長は二人に向きなおった。 「これまで事後経過を明かさなかったことは詫びよう。 先日、陛下を襲撃した者たちは死んでいるのだ。首謀格の八人。〈山羊〉と呼ばれていた首領および〈ねずみ〉ほか七人の、雇われたメイジ共が。 王都に護送する途中で、囚人用の竜車の中で奇怪な死をとげている」 淡々と語るアニエスに、わずかに息を呑んだルイズがまた質問した。 「奇怪な死、とは?」 211 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 41 59 ID 8Um2yxCF 「互いに首を絞めて殺しあった。または自死した。 最後に死んだらしき〈山羊〉だが、こいつは舌を噛み切り、それを半ば呑みこんでのどにつまらせ窒息死している。 ちなみに竜車には、頭も通らない明かり窓、それも鉄格子のはまったものしかなかった。自死に見せかけた他殺の線はない、と報告された」 この異様な話をはじめて聞かされた二人の表情はこわばった。 すでに報告は受けていたアンリエッタも、うそ寒い様子で机の上に置いていた手をにぎりこんでいる。 内輪の四人のみ集ったこの部屋の内部が、急に薄暗さを増したようでさえある。 「だが、私は納得できん。あの襲撃に関する多くの情報が、やつらと共に失われたのは間違いない。口封じだと思う、どのような手段かは知らないが。 あれから数ヶ月だが、銃士隊は今なお調査にかかっている。しかし少々行き詰まり気味でな。 武器の出所や敵兵の陳述内容、資金の流れを調べても、決定的な手がかりは見つけられなかった。ゲルマニア当局とも渡りをつけて調べてもらっているが、そちらも望み薄だ。 この際、関係がありそうなところを片端から探ることにした」 ルイズが話にうなずく。 上質の黒テン毛皮のマフを巻いた以外、いつもの魔法学院の制服であったが、今回のアルビオン行きでは、継承権を持つ王家の重要人物として同行している。 こちらもいつものパーカーの上に、防寒のため冬用の騎士のマントをしっかりはおってきた才人が手をあげた。 「怪しげなところって、ここアルビオンだけど。なにか目星がついたんですか」 「目星といえるほどはっきりしたものではない。正直に言うと勘だ。 各国の利害がからみあう地とはいえ、アルビオンはトリステイン政府の権力がおよぶ範囲なので、なにか怪しいことがあれば伝えるよう指示することができた。 いくつか明らかになったことがある。まずここ『王の森』の治安は、はなはだ悪い。マーク・レンデルという男に統率されたならず者集団が、王の森で跋扈しているという」 「アニエス、それが? 盗賊みたいなあぶれ者って、わりとどこにでもいるわよ」 「いや、話としてはここからが本命だ。 ――〈永久薬(エリクシール)〉があるという、この森には。荒唐無稽なうわさ話としか思えんのだがな。 その薬は『永遠』と『富』を生むという。周辺地域でまことしやかに語られていた伝説を、大体まとめた調書があるから読んでみろ」 耳慣れない〈永久薬〉という単語に、とまどう様子のルイズのひざにアニエスが一冊の冊子をぽんと投げた。 才人が横からのぞきこむ。読んであげるから顔をひっこめなさい、とルイズは手をふって朗読しはじめた。 「王の森の〈永久薬〉。千年前に、有能な錬金術師ゆえアルビオン王家の賓客となり、森に住むことを許されていた『塔のメイジ』が作り出した」 「〈永久薬〉の効果は、これを投与された物質を変質させ、効果や力をなかば永続させる」 「最後に〈永久薬〉をみずからに使った『塔のメイジ』は、今もなお魔の塔の頂上で生きているという」 ここまで読みあげて、ルイズはなにか言いたげに顔を上げた。が、アニエスに無言でその先をうながされ、朗読を続行する。 212 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 42 41 ID 8Um2yxCF 「〈永久薬〉の作り方は塔の秘奥であり、千年間、さまざまな者が塔に入ってそれを作ろうとした。数人は成功したが、始祖に呪われたこの術は、ついに幸福をもたらさなかった。 ある者は無限に金をうみだそうと考え、杖に錬金の魔法をかけて、それに完成した〈永久薬〉を使った。 その杖は触れるものを際限なく金に変え、持ち主をまず金塊にした。部屋一つが金になったところで、弟子たちが魔法を飛ばして杖を壊した…… ……アニエス。これらのヨタ話が、先の事件と関係あるの?」 「怪しいことは何でも調べておきたい。 とにかく、先年の事件では大量の資金が動いたのだ。武器をあつめ、傭兵をやとい、国境を越えさせ、証拠をもみ消しているのだぞ。 それにもかかわらず、トリステインやゲルマニア内部で資金の流れを大きくつかめないのは、金の直接の出所がさらに他国からだからではあるまいか。 潜在敵国であるガリアの陰謀と考えられなくもないが、もっとも怪しいのは占領下にあるアルビオンだ。さまざまな勢力や思惑が入り乱れ、いまは水面下での金の動きも大きい土地なのだ」 半眼になったルイズに、至極まじめに答えるアニエスだった。 「この領地に、ほかに妙なことがないではないのだ。 現アルビオン政府によると、この館の主は『王の森の警備』のために、政府に風石(フネの動力)を大量に要求しつづけている」 「それはさっき話に出たマーク・レンデルというならず者のためじゃないの? 船団をつかって盗賊を追いつめるなら、監督官としての公務ともいえなくはないもの」 「平民の盗賊団だ。それにフネまでを使い、長い期間をへても根絶できないというのは妙だな。よほど相手が巧妙か、本気で根絶する気がないかだと思うが。 ……クリザリング卿はフネの一部を交易に使っている。 政府から支給された風石を横領して動力費を浮かせているのではないか、とも思ったのだが、徴税請負人の調査によると、その分の風石はちゃんと買い入れているらしい。 それでも、どこか妙な気がする」 「……わかったわよ。とにかく一緒に行きましょう」 そうアニエスに告げたルイズは、ふとアンリエッタを見た。 ルイズとアニエスが話していた間、女王と才人はほとんど発言していない。 久しぶりに会った二人はたがいに軽く横を向き、卓をはさんで向かいあっていながら不自然に目をそらしあっている。 ルイズの目がすっと細まった。 そういえばこちらの問題もあったのである。再戦うんぬん。 まあこの二人なに意識しちゃってんのかしらふふふ、と全く表情を変えずにのどの奥で怖い笑いをもらし、すみやかに退室せねばと思いさだめる。 とりあえず気晴らしに卓の下で才人の足をぐりっと踏み、小さな悲鳴をあげさせてからアニエスに確認をもとめる。 「アニエス、それでいつ行くの?」 「今から」 「ちょ、ちょっと待って! 急すぎない!? 夜になっちゃうわよ!」 213 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 43 13 ID 8Um2yxCF 「陛下を筆頭に、王宮の者はだれもかれも忙しいんだ。時間を無駄にしたくない。日が暮れたら途中の小屋で寝泊りする。 銃士隊が同行するから安心しろ」 ここで、アンリエッタが反応した。 「メイジも付けましょう。近衛隊を割いて連れて行きなさい、森の盗賊たちが寄り付けないように。こちらにはラ・トゥール伯爵が同行した警備兵たちがいますから。 それと少し席をはずしてくれないかしら。ルイズと少し話したいの。……サイト殿、あなたもできれば」 メイジがあまり好きではないアニエスは嬉しそうではなかったが、淡々と「御意」と述べた。同じ近衛隊なら「陛下の命令」ということで一応は団結できる。 才人もこれまた軽くうなずいて席を立つ。 アンリエッタに二人だけの話をもちかけられ、淡々どころではないのはルイズだったが、緊張をおさえて彼女は腰をおちつけた。 ………………………… ……………… …… 「クリザリング卿の求婚をどう思いますか、ルイズ?」 二人が去った後、アンリエッタは開口一番、謹厳な声でそう問うた。 アホ使い魔の話が飛び出すかもしれない、とルイズは戦々恐々としていたが、存外に真剣な意見をもとめられて少々恥ずかしさを覚えた。 それを隠すように自分自身も姿勢をただし、誠実な臣下の顔にきりかわって主君に答える。 「問題外ですわ。たかが一代官の身分で、あのような場での求婚。無礼のきわみとさえいえましょう」 アンリエッタはうなずいた。こちらも政治家をこころがけようとする顔になっている。 二人は、なにもクリザリング卿が、女王にくらべて低い身分であるため蔑視しているわけではない。 ただ、求婚という時点で、ことは「公」に属するものに切り替わっているのである。 身分。公式的に相手を選ぶとすれば、アンリエッタの身分には釣りあう者などほとんどいない。 王族の結婚とは、相手の身分と家格が高いことを最低限の基準におき、なにより政略にそった熟慮の末になされるべきものであって、それは要するに究極の政治的結合なのだった。 「実はさきに枢機卿やラ・トゥール卿とも話したのよ。クリザリング卿の申し出は断る以外にないわ。 あの船団や港が手に入ること、さらにアカデミーの英才であったクリザリング卿本人の頭脳までを考慮に入れても、結婚という貴重なカードを切るには王家にとってあまりに利益が少なすぎます」 はっきりした声でアンリエッタはそう言った。 椅子から立ち上がり、窓辺によって山の稜線を見つめる。その後姿をルイズは注視した。 政治的な思考にほとほと疲れているのか、アンリエッタの背には愁いがただよっている。それでも、彼女は悩まざるをえないようだった。 「それがクリザリング卿にわかっていないはずはないのに…… なぜ彼は、あのような行動をとったのかしら」 214 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 44 01 ID 8Um2yxCF なにを目的とするか。どんな利益があるのか。 むろん彼女と結婚した場合、相手にはいくらでも利益がある。第一に、即座に国王とならずともトリステインの共同統治者となるのはほぼ間違いがない。 である以上、アンリエッタと結婚できるものならば、国内国外を問わずたいていの貴族は一も二もなく飛びつくだろう。 ……が、この場合はそこが焦点ではない。 ルイズに言ったとおり、即答せず返事を保留しているといっても、最初から断ることは決まっているし、クリザリング卿とてそれはわかっているはずなのだ。 この話がもれれば、彼は世人から常識知らずとして失笑を買わずにはすまないだろう。 「クリザリング卿が明言したわけではないけれど、求婚を断っておいて彼の船団や港の提供を受けるのは期待できないわね。 でもラ・トゥール伯爵は、船団と港を簡単にあきらめたくはないようです。見ているこちらが気の毒になるほど恐縮しているけれども。 クリザリング卿との提携が失敗しても、王家としてはラ・トゥール伯爵を援助する方針でいこうと思うのだけれど、一からフネをそろえるとなると投資も大規模にならざるを得ないわ。 マザリーニの言うとおり、今は王家もまだ苦しいですし……」 遠くを見ながらつぶやいているアンリエッタを、ルイズはどこか哀しそうな目で見ている。 どうしても、この人は政治的な呪縛から逃れられないだろう。大貴族に生まれた自分も、ある程度はそうだけれども。 「……あの、姫さま、わたしに話って、それだけなのですか?」 ルイズの気遣うような声に、アンリエッタは穏やかにふりむいた。 幼なじみを見る目に、どう切り出したらいいものか悩む色がある。 ルイズは身を硬くした。まさか。 「ルイズ、サイト殿のことだけれど」 来た。 ルイズの目に警戒が浮かぶのを見て、アンリエッタは落ち着きをやや失ったように手をふった。 「いえ、あの、誤解しないでね。 わたくし、あなたたちの間に今さら入ろうとは思っていないのよ」 「……え? でも、先の事件のときにおっしゃったことは」 「あれはあれで、本心だと思うの。たしかに……あの事件のときサイト殿を意識しました。 彼にあんなことまでしておいて今さらだけど、ごめんなさい。 けれど、その、『再戦』は、何といえばいいのか、わたくしは……」 アンリエッタはもじもじと、前で組み合わせた手の指先を動かしながら、言葉を必死で探している。 なぜかルイズには、説明されずとも彼女の心情がわかった。 不意にこみあげたのは、同情の念だった。臣下が王に示すのは許されない感情に、あわてて顔を伏せ、ルイズは言葉を発した。 215 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 44 47 ID 8Um2yxCF 「姫さま、わかりました。申し訳ありません。軽々しくあのようなことを言ったわたしが粗忽でした」 結婚さえ政治的に決めることを求められるアンリエッタが、恋愛において今さらまともな「勝負」など簡単にできるわけもないのだった。暇さえろくにない。 それでも才人が誰のものかはっきり定まっていなかったなら、情熱のおもむくまま行動できたかもしれないが、今ではルイズと才人は周囲も公認の恋人である。 土俵に上がることをしりごみしたアンリエッタと、これ以上この問題で自分が謝るのもなにかが違うと感じるため、言葉を続けられなくなったルイズ。 両者ともに悄然と肩を落として沈黙をつづけていた。 \\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\ 「塔の探索隊はこんなものか。これだけ見える人数がいれば、盗賊というのは最初から襲うのを遠慮するものだ。 陛下の護衛はラ・トゥールの同行した警備兵に任せることになるが、問題はなかろう。野心的な貴族だが陛下にとって危険となる兆候はないし、河川都市の自衛兵はよく訓練されている。 だが念のため、陛下のおそばには護衛としてサイトを置いていこうと思う。あいつには屋敷内の見取り図を覚えさせておいた」 アニエスに説明されながら、ルイズは館の廊下を歩く。 才人をアンリエッタの護衛に残すという点でやや眉をうごかしたものの、なにも言うことはなく押し黙った。 「出かける前に、クリザリング卿に念のため通告しておこう。森林監督官だからな」 館の主の部屋の前でたちどまり、アニエスはノックして返事をもらい入室した。 その青年は、昼時にみずからが起こした騒ぎなど忘れたように窓ぎわの肘掛け椅子に身をしずめ、さしこむ午後の物憂い陽光を浴びていた。 まぶたを閉じたまま、その唇のみが動いて言葉をつむぐ。 「用は」 「ああ、これから森中の塔に行く。あの塔を開くつもりだが、かまわないな?」 「好きにするがいいさ」 どうでもよさそうな声。アニエスは眉をひそめて問いかけた。 「あの塔のなかに何があるのか、訊いてよいか?」 「狂気と、歳月そのものが」 「……思わせぶりなことを聞きたいのではない。具体的にはなにがあるのだ?」 「〈永久薬〉を作るための施設だから、そのための設備があるに決まっている。あとはガラクタが」 216 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 45 27 ID 8Um2yxCF 恬淡とした態度でいきなり直球を投げられて、精神的にたたらを踏んだアニエスが言葉につまっている間に、クリザリング卿は投げやりな調子で先手を打った。 「言っておくが、〈永久薬〉のことを話してやる気にはまったくならん。自分で勝手に見ればよかろう」 「……ああ! そうさせてもらおう」 わけのわからない対応をされ、アニエスが険悪な声を出す。ルイズはその腕をなだめるようにたたき、かわって前に出る。 「クリザリング卿、わたしもいいかしら。なんで陛下に求婚したの? あなたは陛下に……その、本気で?」 彼女も直球を投げた。 森林監督官はかすかに目をあけてルイズを見、薄ぼんやりと口をあけて何かを思い出すような表情をした。 そのまま語りだす。 「ウォルター・クリザリングの父親が死に、アカデミーからこの館に戻り家督をついで間もないころ、まだ二十代の青年であった数年前。 アルビオン王家のプリンス・ウェールズに随従した多くの臣下の一人として、ラグドリアン湖畔でひらかれた大園遊会に出席した」 クリザリングの独白を聞いてルイズは、違和感と驚きを感じている。 違和感は、自分のことを第三者のように語ったこと。 驚きは、その園遊会は彼女らの主君にも深く関係があったからである。 トリステイン王家主催の大園遊会で、十四歳のアンリエッタはウェールズと出会ったのだった。 (姫さまはお綺麗だもの、ウェールズさまの他にもあの方に懸想した者が、いてもおかしくないとは思っていたけれど……) 「クリザリングはそこでトリステインの姫君を見た。 真昼の月かと思うほど、真珠のように白かった。歩みさえ踊るかと見える少女だった。 クリザリングはこの領地に戻ると、アカデミーに寄稿するつもりの論文を投げ捨て、筆をとって彼女の絵を描いた。彼女の美しさを称えようと下手な詩を作った」 内容はまぎれもなく愛を語っているはずだったが、それは異様なほど淡白な口ぶり。なぜかルイズたちは寒気を覚えた。部屋のどこかから、かすかに鼻をつく臭気がある。 それきり口をつぐんだクリザリングに、ややあってアニエスが咳払いして背を向けた。 「行くぞ」とルイズにうながしながら、最後に一つとばかりに背後に質問をなげる。 「マーク・レンデルなる無法者を、なぜ長くのさばらせておくのだ? フネまで森の警備に使っておきながら片づけられないとは信じがたいな」 「あれは以前はわが配下で、森番の筆頭だった。よく森を知っている、追いつめるのは容易ではない」 目をまたつぶったクリザリング卿は、今度はまぶたを持ち上げもせず答えた。それきり黙る。 もうしゃべる気はないと見て取った二人は、彼を静寂とともにのこして退室した。 217 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 46 20 ID 8Um2yxCF ………………………… ……………… …… 「おまえか」 ウォルター・クリザリングと周囲に呼ばれている青年は、目をあけて窓に視線を投げた。 一羽の緑色の小鳥が、窓辺でrot! rot! と鳴いている。 辟易したように彼はつぶやいた。 「遊びまわるのも大概にするがいい。正直、アルビオンに腰を落ち着けてほしくもないが……金はじゅうぶんにくれてやっただろう? おまえが下界で起こした、去年の愚かな騒ぎを許容する気はない」 小鳥が沈黙して首をひねる。青年はその黒い目の奥を見る。 小鳥の目をとおしてこちらを見ているはずの者の、悪意と嘲笑をそこに見て、青年は肩をすくめた。 「あの求婚を見ていたのか? あれこそ狂気と笑うのか? あれにはそれなりの理由がつく。クリザリングが望んだことだからな。『自分』の願い、命より優先した願いは重要だろう。 おまえの言うとおり、〈永久薬〉の名など幻想だ。どのみち地獄の季節は来て、汚穢と腐肉が満ち満ちる。いかにも、正直を言えばこの身がそうなろうと、たいした感興が湧くでもない。 人生とやらには倦じ果てた。ラ・トゥール、あの商人貴族の貪欲さがここを嗅ぎつけ、女王がここに来た以上、いずれは全てが暴かれて、この身のもろもろは終わるだろうさ」 息をついで、彼は言う。 「だから思い残しのないように、すべてのことを片づけようとしただけだ……クリザリング家がこれで絶えようと、あの塔は誰も入れぬまま、高く揺らがず存在する。 さきほど向かったあの女たちにしろ、無駄骨に終わるのみだ。おまえが心配するような問題はない。 知ってのとおりアルビオン王が消えた今、クリザリング家の血を引く者か、それに同行した者しか塔には絶対に入れないのだから……おい、やめろ」 その小鳥が、首をかしげていた。その目が小さなブドウほどに大きく見開かれている。 舌打ちをして、青年は目をあわせてやった。 吐き気をともなう感覚の衝撃が来る。ガラスの微細な破片が網膜につきささって、脳の奥でステンドガラスの絵になるかのような。 直接脳に投影される映像を、見る。 さきほども見た桃色の髪があった。 そのまま、相手の見せたいものを見せられ続ける。 218 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 48 10 ID 8Um2yxCF 青年は、いつのまにか椅子から立ち上がっていた。 血相が変わっている。 「……虚無の魔法だというのか? ああ、そんなものもこの世にあったな……かびの生えた文献にしか出ないと思っていたよ。 その映像、たしかに本物だろうな? おまえがよくやるように、つぎはぎの視認記憶を見せられたのではあるまいな。 本物だとしたら、たしかに不安だな。万が一にも塔が暴かれるのはごめんだな、アルビオン王家との盟約によって、クリザリング家は最後まで『塔のメイジ』を幽閉し続けるのだから。 では、狂いの境地を楽しむのも終わりにしよう。念に念を入れて、今生で最後の仕事を行おう」 飛び立つ小鳥に目もくれず、青年は部屋の隅に歩き、巨大な衣装だんすを開け放った。 なかからうなり声と腐った血の臭いとともに出てきたそれは、人面獅子身にワシの羽。 「ウォルター・クリザリング」は無造作に命令した。 「塔に行く者たちを襲え。館からじゅうぶんに離れてから仕留めていけ。 この部屋に先ほど来た少女、この部屋に満ちるにおいの持ち主は、かならず殺すのだぞ」 \\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\ 数刻後。冒頭のルイズたちの苦難と同時刻、館。 晩餐。 アンリエッタは食卓の上座で、ラ・トゥールの秘書官に注がれるワインを傾けた。甘ったるいが後をひかない味、確かに値のわりには逸品である。 料理には合っていないが。 クリザリング卿はテーブルの向かい側でつつましやかに、マッシュルームのピュレを添えた赤やまうずらの翼肉を切りわけている。 昼時の、彼の常識を超えた求婚によって、このアルビオン貴族は館の主人でありながら独特の孤立を得ていた。 つまり周囲は、この何を考えているかわからない男を、とりあえずそっとしておくことにしたのである。 アンリエッタにしてもラ・トゥールにしても、いずれ彼とはこみいった話をせねばならないだろうが。 ラ・トゥールはアンリエッタの右手側の席に座り、ワイングラスを手に一席ぶっていた。彼と相対している左手側のマザリーニが、ときおり相づちをうって意見を返している。 ワインの給仕役をつとめる秘書官は、アンリエッタが小さめのグラスを空けるとすぐに満たしてくる。 あまり食欲はなかった。 いささかワインのまわった頭で、アンリエッタは広間の隅で警護の任についている少年を見やる。 才人は赤茶けた煉瓦の壁の前で、手を後ろにくんで佇立していた。一応じっとしてはいるが、何かに思いをはせているのか、心なしか表情が落ちつきなく見える。 アンリエッタはグラスを手に、その姿をぼうっと見つめた。ルイズが彼を残してアニエスに同行し、館を出ていってから時が経過している。 (ルイズのことを心配しているのかしら) 219 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 48 45 ID 8Um2yxCF たぶんそうだろう。多くの近衛兵がついており問題はないはずだが、それでも彼は気になるようだった。 ワインをあおりながらなんとなく少年を見るアンリエッタの両横で、向かい合った枢機卿とラ・トゥールが熱心に話している。 「……いまとなっては河川都市のいずれも、私がみずからの裁量で事を決することを支持してくれています。 数月前、わが都市トライェクトゥムの参事会が、正当な都市領主でもある私に実権をゆだねることを決意したのは、私こそが新しい発展の道をしめせると認めたからなのです。 トライェクトゥムは河川都市の盟主のようなものですから、必然的に私は彼ら全体に暗に責任を負うわけです。彼らを富ませてやらねばなりません」 「ほう、トライェクトゥムにとっても河川都市全体にとっても、貴君のような聡明な方を上にいただいたのは幸運でしょうな。 しかし並々ならぬご苦労もされておいでと思いますが。交易を空路重視に転換するという斬新な案をすすめようとされるならとくに」 「ええ、もちろん中には、少数ですが不満な者がおります。かれらは旧来の特権にしがみつこうとしているのですよ。水路を利用した、川と海の貿易にこだわっているのです。 ですが、それを打破して新たな貿易路線を開拓することは、結果としてかれらをも潤すことになるはずです。 ……いや、失礼、熱が入ってしまいました。晩餐でなんとも野暮な話でしたな」 「いやいや、実に興味ぶかい。陛下にとっても多くを学べるいい機会……陛下?」 「ええ、はい、興味ぶかいお話でした」 うわの空で返事するアンリエッタを、マザリーニが呆れた目で見た。 それにも反応せず、少女はグラスをちびりとかたむけてから、卓の上に酒でやや濁った視線を落とす。 (心配ないわよ、ルイズ。 サイト殿は、あなたのことだけが大事なのだから。 少し離れても心配するほど、本当にあなたが大事なのだから) ………………………… ……………… …… 晩餐のあと。アンリエッタにあてがわれた寝室。 まだ日没からそう間もなく、早い時刻だったが、故国を離れた遠出でここ数日間仕事づくめだったため、疲労を覚えている。 彼女はすぐに休むつもりだった。 召使の女が入ってきて、寝室の暖炉の火をかき消した。 残った熾火のみが、暗い室内に赤い光をもたらしている。退出間際の侍女にドレスを脱ぐのを手伝ってもらう。 腰帯がついた、裾がレースになった薄絹の肌着のみの姿で、柔らかいベッドに横たわる。 アルコールの余韻にたゆたいながら、アンリエッタはもう一度考えた。 (クリザリング卿はどうして、わたくしに求婚したのかしら。 そもそも、あれは本気なのかしら) 220 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 49 17 ID 8Um2yxCF クリザリング卿が自分を見たときの顔を思い浮かべる。 わからない。ただ勘ながら、あれはまるきりの冗談ではないと思う。 かといって、身分違いも気にしないという真摯な想いを寄せられているのかというと、そこが微妙なのだった。 布のうえでしどけなく寝返りをうつ。 人目を考えず自由に恋愛する権利など、王族に生まれたときからない。それは、彼女も身にしみていた。 互いに想い、身分と家格がつりあってさえ結ばれなかった。 彼女がはじめて想いを寄せた相手は、このアルビオンの皇太子で、従姉妹の自分とおなじく王家の出だった。それでさえ、秘めた恋にするしかなかったのだ。 夜の影のなか、熾火がくすぶる暖炉。寝台のうえで、少女は体を丸めて想いに沈む。 指にはめた風のルビーは、今夜はいまだ外していない。 この空の上の白の国、彼女のかつての想い人がいたアルビオンで、寝台に横たわったアンリエッタは彼の形見のルビーをそっと撫でる。 (あなたはここの王になるはずでした、そしてわたくしはゲルマニアに嫁ぐはずだったわ) 運命は烈風となって、その未来は羽毛のように吹き散らされ、ウェールズ・テューダーは皇太子のまま死に、そして自分はトリステインの女王になった。 「国のために嫁ぐ」ことを当然と育てられ、実際にゲルマニアに嫁げと言われて諾々と従ったあとでも、アンリエッタは想いが叶うことをどこかで夢見ていた。 子供の盲目的な恋だったかもしれない。それでも子供なりに純粋に、三年間想いつづけたのだった。 自由を奪われていく姫としての暮らしの中、それだけを夢見て生きていたほどに。【四巻】 つくろっていた愚かさをさらけ出すほどに。 ウェールズの亡霊が現れたとき、彼が死者だとわかっていながら何もかも捨てかけたほどに。殺した彼の死体さえも利用した敵を、深く憎悪して戦火を燃えあがらせたほどに。 夢は砕けた。当たり前のように叶わず、無残な形で終わった。 アンリエッタはぼんやりと爪を噛む。 (焦がれて狂って、残ったものは……みじめさと悔恨と、罪だけだった) まもなく嫁ぐはずだったアンリエッタが、危険をおかして亡命をすすめてもウェールズは断った。 そして最後の瞬間に、彼は愛を誓ってくれなかった。彼女に、他の者を愛することを誓わせて死んでいった。 それらはたぶん、彼の優しさというべきなのだろうけれども。 それでも、アンリエッタの抱いた愁傷は、その瞬間を思い返すたびに虚しさをつのらせる。 せめて心が添えていたなら、夜毎に自分はこうも寂しさを覚えなかったのだろうか。 わからない。ただ、冷えて乾いた暗黒が胸にあるのは確かだった。 221 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 49 48 ID 8Um2yxCF 後になって、それを埋めてくれる相手がいるかもしれない、と思えたことがあった。 自分を叱咤して止めてくれた『使い魔さん』のことを考えて、少しだけ胸の暗黒を忘れることができた時に。 一度あきらめたはずだったけれど、先の秋にまた心を燃えたたせてしまったのだった。 (サイト殿のことはもう考えてはだめ、忘れなくては) どのみち、それも叶うことはないのだから。これが恋であるか完全な自信はないが、たぶんそうだとしても、幸福に終わることなど決してないだろう。 彼女なりに、この冬のあいだ考えていたことだった。 どうせ終わるのなら、傷が浅いうちに、いま自分の意思ではっきり終わらせるべきだと。 だから今日ルイズにちゃんと言ったのだった、張り合うつもりはないと。 ただ救いとしては、しばらく続いたルイズとの気まずさもこれで解決するはずだ。クリザリング卿の唐突な求婚は、自分の立場を思い出させてくれるという意味で役に立った。 それなのに、ゆっくり冷えていく部屋の夜気の中、少しずつ想いはつのるばかりだった。 彼は今夜、すぐ近くにいるのだ。 思い浮かべてしまう。黒い髪の毛、黒い瞳。 ぶっきらぼうな優しさ。 時折ルイズに向ける深い愛情のまなざし。 彼はいま、この部屋と廊下をはさんで反対側の部屋に寝ている。護衛の慣例として、何が起こっても即座に駆けつけられるように。 彼はどんな夢を見るのだろう。それともルイズのことを気にかけて、自分がこうしているようにまだ起きて、ひっそりと想いに沈んでいるのだろうか。 想像するぶんだけ、独り寝の寂しさがますますつのり、まどろんで半ば夢のなかにたゆたいながら、瞳がうるんで艶をおびていく。 (……なにか、おかしくないかしら?) 妙だった。アンリエッタはベッドから身を起こした。 どこかに違和感がある。あの少年のことが、頭からまったく離れなくなっている。それどころか、少しずつその存在がふくらんでいく。 首をふってまぶたを押さえようとしたとき、どくりと胸が強く脈打った。 気がつくとふらふらと立ち上がり、部屋を出て心の命じるところに行こうとドアノブに手をかけていた。 われに返り、女王ははっと顔色をかえてその手をはなす。 まさか、と思った瞬間に、胸の中で予兆のあったなにかがはっきりと首をもたげた。 呼吸が荒くせわしなくなり、体温が熱くなっていく。 よろめいて心臓をおさえるように胸元をつかんでから、アンリエッタは飛びつくように部屋の隅の手荷物をさぐった。 大して多くもなく、侍従が念のために携帯させるそれには、応急用のさまざまな医薬品、調合した薬類が入っていた。 222 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 50 23 ID 8Um2yxCF \\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\ 夢うつつに、起きてサイト殿、と呼びかけられたような気がした。 「……んにゃ?」 体をゆすぶられ、寝ぼけまなこで才人はベッドから上体を起こした。 暗い部屋の中。ベッドの上、起き上がった彼の目の前に、やや荒い息づかいをもらす何者かがいた。 おもわず声をあげようとして、才人は口を温かい手のひらでふさがれた。 どこか重苦しい声で、その人影はささやいた。 「わたくしです、静かに」 「ひ、姫さま?」 何だってまた。才人はそう問おうとして気づいた。アンリエッタの呼吸は苦しげなものだった。 彼女はベッドから離れ、ベランダに出るガラス窓のそばに立って、リンネルのカーテンを開けた。 月光の中で振り向きながら、肌着にガウンをまとったのみの格好で、声を震わせて才人に告げる。 「毒の類を盛られました。おそらく晩餐のときに」 一瞬で目が覚め、才人ははね起きた。血相を変えた彼の様子を見て、あわてたようにアンリエッタが補足する。 「だいじょうぶ、解毒薬は服用しました。さいわいにも即効性ではなかったのです。 いまはまだ正直、気分がすぐれませんが、じきに良くなるでしょう。のんだ万能解毒薬は、多くの毒に対応できる分、すこし効き目が遅いともいいますから。 それに、正確には毒というわけではなかったので……いえ、とにかく命に別状があるようなものではありません」 よくわからず、才人はとまどった声でたずねた。 「毒ではない?」 「ええ、ですが善意の産物とはとても言えません。 聞いてください、サイト殿。ルイズやアニエスたちを即刻呼び戻します。マザリーニと他の護衛たちもすぐこの部屋に集めて――」 アンリエッタの言葉が終わらぬうちに、突然の轟音が夜を裂いて響きわたり、露のおりた窓ガラスを震わせた。 息をのんだ二人が一呼吸置く間もなく、窓の外から銃声と、大勢がぶつかり合うときの吶喊がつづく。魔法の攻撃もさかんに発されているらしく、雷閃のような光がガラスから次々にさしこむ。 アンリエッタがよろめくように後じさって窓から離れた。 223 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 51 33 ID 8Um2yxCF 廊下のほうからも何者かの叫びが聞こえた。 才人はとっさにベッドから降り、靴をはくのもそこそこにドアに走り、ちょうつがいをかけた。 何故そうしたのか、自分でも明確な説明はできなかったが、ただわけもわからぬ不安に突き動かされたのだった。 才人がドアから離れないうちに、廊下を走ってくる音が聞こえた。 すぐに音をたててノブが回され、つづいてドアが外から激しく乱打された。 才人はドアから距離をとる。入ってこようとしている外の誰かに「だれだ? 何があった?」と呼びかけた。 返事はなく、唐突にドアが体当たりをされたように激しく揺れて軋んだ。 堅い樫のドアが内側にややゆがんだのを見て、(魔法をぶつけたな)と才人は判断した。 愕然と立ち尽くしているアンリエッタを振り向き、才人は「逃げましょう!」と意見を述べた。 アンリエッタが信じられないとばかりに首をふる。 「このような……こんな大胆な真似をするなんて。以前とは違う、軍はすぐ近くにいるのに」 領主は平民の共和主義者と違い、多くは領地から離れられないという点では、反乱を起こせば根絶するのはより容易だ。 「これがラ・トゥール伯爵、クリザリング卿のいずれが起こしたものにしろ、こんな軽々しく反乱のような真似をして、三日と無事ですむはずがないのに」 今この館では、アンリエッタ以外ではその二人しか、まともに動かせる兵力を持っていないはずなのだ。 女王の護衛の多くが出はらっている今、外の戦闘はおそらく、彼らが戦っているものだった。一方が女王に毒を盛り、こうして牙を剥いてもう一方に攻めかかっているのだろうか。 才人は深く考えることは避け、早口でせっついた。 「そこは俺にだってわかりませんよ。相手が誰でもいまはとにかく逃げなきゃ」 館を出て、速やかにアニエスたちのあとを追い、合流する。それしか今は思いつかない。 才人は身をひるがえしてベッド枕元のデルフリンガーをつかみ、それを抜く。 ガラス窓をあけベランダに出て、アンリエッタに「魔法で飛んで庭に下りて」とうながしかけた時だった。 ベランダの白木の桟、すこし離れた箇所に飛来した炎の玉がぶつかって、その箇所を瞬時に消し炭に変えた。 同時に背後で、くりかえし魔法をぶつけられていた部屋のドアがついに金具がこわれて吹っ飛んでいる。 やべえ猶予がねえ、と青くなった才人は、とっさにアンリエッタの腕をつかんで引き寄せ、抱きあげた。 ほっそりした柔らかい体が腕のなかで驚きにこわばるのも、考慮している暇はない。 ガンダールヴの身体能力を発揮して、さっさと下に飛び降りる。花壇のゼラニウムを踏みつぶし、少女を横抱きにしたまま走り出した。 224 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 52 53 ID 8Um2yxCF 昼のようにあかるい月光に照らされた館の庭では、どちらがどちらとも知れぬ二陣営の戦闘が行われている。 開始から数分もたたないというのに、炎と矢と叫喚が溢れはじめていた。 それをまわりこんで避け、ひたすら離れるように、才人は森めがけて走った。 ガンダールヴの力を出すため、アンリエッタを両腕でかかえながらも逆手持ちで器用に剣を持ったままではあるが、むろん戦えるはずもない。 館をとりまくブナの森に逃げこむことには成功した。 ほんの少しでも怒号ひびく戦場から遠ざかるべく、暗い森のなかを枯れ枝と落ち葉を踏みながら走り続ける。 「お、おろしてくださいまし」と腕の中から妙にかぼそい声が聞こえたが、才人は「もう少し離れてから!」と無我夢中のまま突っぱねた。 居心地悪そうに才人の胸でちぢまっているアンリエッタが、自らの異変に気づいたようなうろたえた表情になった。 それが少しずつ熱っぽく朦朧とした顔になっていくが、闇の森中で転ぶまいと注意をはらって走っている才人に気づく余裕はない。 ………………………… ……………… …… 長くガンダールヴの力を使うわけにもいかず、けっきょく才人は途中からアンリエッタの手をひいて走っていた。 うなだれたブナの枝がときおり顔に当たり、夜露でぬれる。 青寂びた月光が木の葉のあいだから洩れている。それが夜風とともに揺れている中を、二人は小走りで走りつづけた。 「サイト殿、待って、待って、わたくし……!」 アンリエッタがその声とともに、よろめくように極端に遅くなってきたのを感じ、才人はやむをえず足をゆるめた。 少々ばてるのが早いなと思うが、疲れるのは無理もない。とりあえずここまでくれば大丈夫か、と思いもした。 足を止めたのは、木々のひらけた森中の空き地だった。月と星の光が冷たくふりそそぐその場所で、才人ははじめてアンリエッタを振り向いた。 「姫さま、失礼しました。でも、やっぱり今は急がなきゃ。 それで、ルイズたちの向かった場所ですけど」 デルフリンガーをおさめ、葉の露と汗でぬれた額を服の袖でぬぐいつつ言おうとして、才人はその手をとめた。 アンリエッタの様子が妙である。 走っていたときからであろうが、寒さとは別の種類の震えが女王におとずれていた。 「……姫さま?」 大きく胸を上下させ、白い呼気が荒いのは走ったためとしても、それだけでは説明できないほど妙に足元からふらついている。 月明のなか、わずかに伏せられた少女の瞳がうるんでいるのも見てとれた。 そのあえぐように薄く開いている唇が震え、「もうだめ」と幽かな音をつむいだ。 「姫さま? どうし――」 225 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 54 04 ID 8Um2yxCF 才人の声は途中で封じられた。問いを発しかけた口ごとふさがれた。 倒れこむように少年の胸にすがりついたアンリエッタが、のびあがって首に手をまわし、歯がぶつかりそうな勢いで唇を重ねたのだった。 才人が目を白黒させている間に、唇が一度離される。 「ちょ、何、」 才人がテンパった声を出せたのはつかの間、すぐまた湿った唇を重ねられる。 アンリエッタの体、唇と吐息。すべてが熱く柔らかく激しい。 露にしめった栗色の髪からただよう良い匂い。 華奢な身体でもぐいぐいと押しつけられると、才人までよろめいて後ろに下がってしまう。 ななめにかしいだ大きな倒木にぶつかり、背をあずける。そのまま二人してその場にずるずるへたりこむ。 冷たい地面に尻をつけて座りこんだ才人に、抱きついたままのアンリエッタが降らせる口づけの雨が止まない。 「ちょっと――ちょっと待った! なんなんです一体……むぐ」 パニックになりかけたところでひときわ深く唇を重ねられる。 かえって閃くものがあった。唐突な錯乱、盛られたという毒に近い何か。以前にも、才人は似たような状況を見たことがある。 ま、まさか、とアンリエッタの肩をつかんで離しながら問いかける。 「盛られたのって……『惚れ薬』のたぐい?」 その問いに、アンリエッタはうるんだ目を伏せて荒い息をつきながら、こくりとうなずいた。 マジかよおい、と才人はうめいた。 たいがいろくでもない結果しか生まないあの薬の仲間に、またもお目にかかるとは思わなかった。しかも、こんな状況下で。 「待ってください、解毒薬をのんだのでは?」 「のみました! のんだ、のに……おかしいのです、どんどんぶりかえして」 ほとんど唇がふれあう距離で、ささやきを交わす。 苦しげな熱っぽい声。月光でさえわかるほど、アンリエッタの顔は赤らみ、目尻の下がったまなざしは甘く濡れていた。 原因がわかっても、対処法がわからない。 才人がアンリエッタの肩をつかんだまま固まっているうちに、彼女は「薬、薬……」とうめいて、せわしなく自分の肌着の胸元に手をかけ、前あわせの紐をほどきはじめた。 「ちょっ、待て姫さま待ったストップ、しっかり気を持って!」 「ち、違います、服の下に解毒薬が! ああもう、背中側にまわって……!」 226 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 54 52 ID 8Um2yxCF 万が一のために、とっさに万能解毒薬をアンリエッタは懐に入れてきたのだった。が、横抱きにされたり走ったりで、気がつくと自分では手を入れられない背中のほうに薬の瓶がある。 その肌着はサッシュベルトで腰のあたりを締める様式なので、下のほうから取り出すこともできないのだった。 どのみち胸元の紐か腰の帯かをほどかねばならないのである。 「サ、サイト殿、取り出してください」 至近距離でそう言われ、才人は絶句した。 つまりなにか。えり元から背中に手を突っこんで解毒薬を取りだせということか。 あ、う、とうめいて逡巡する才人に、とうとうアンリエッタがせっぱつまった声で叫んだ。 「はやくして、わたくしに意思があるうちに早くして!」 やむをえず、才人はアンリエッタの暗紫色の絹ガウンを取りのけ、背中側に手をまわして、うなじの方から肌着の中に手を差しいれた。 すがるように才人のマントの前をつかみ、かぼそく震えていたアンリエッタが、背中に手を入れられてかすれた声をもらした。 その声と、汗で蒸れた素肌の温かくすべやかな感触に、才人まで顔が赤くなる。 「え、えっと、あれ? あ、腰帯のあたりまで落ちてるのか……」 肌着に腕までを突っこむと、少女の身体がびくんとはねた。 「あっ、くっ、くすぐらないで!」 くすぐってねえよ妙な声を出すなよ、と才人はますます動揺した。 頭をうつむけて、もぞもぞと背中で動く才人の手に耐えているアンリエッタが、恥じらいと熱のこもった呼吸の歌をつむいでいる。 「……あ……ぁ…………」 227 :黄金溶液〈上〉(白い百合の下で・3):2007/11/28(水) 01 55 22 ID 8Um2yxCF 聞くな俺聞くな、と少年は腕を深くまで進めてまさぐりながら意志を総動員している。 「……やっぱり、……だめ……」 ふと、アンリエッタの顔が上げられた。 才人はぞくりとした。自分を見つめる少女の目の奥、異様な光がある。理性が先ほどよりあきらかに磨耗した様子。 何を言うひまもなく、また首に腕をまわされて唇を奪われる。今度は、熱い小さな舌が入ってきた。 待ておい何だこの状況、と才人はその舌を自分の舌で必死で拒みながら、思考をつなぎとめる。 湿った微風と木漏れる月光が混ざった森の中。冷たい泥の上にへたりこみ、自分は女王の肌着(背中側だが)の下に手をつっこんで、アンリエッタからは熱烈な口づけを受けている。 この状況下で混乱しかけていた才人が気づかなかったのは、無理もないかもしれない。 夜風を切って矢が飛んだ。それは二人の近くの木に突き立ち、矢羽を震わせた。 はっとして顔を起こした才人に、「動くなよ」と今度は上方の木のこずえから声がかかった。 「獣の待ち伏せに、妙なものがかかったな。数人がおまえたちに狙いをつけている、樹上と木々の間から。 といっても、どうやらおまえたちは我々の敵ではないと思えるがね」 「誰だよ、あんたら?」 才人は剣を抜きかけた手をそのままに、そうたずねた。 頭上から身をおどらせた人影が、地面に降り立った。 中肉中背の、小太りの農夫のような風貌をしたその男は、あっさりと名乗った。 「どうも。マーク・レンデルだ」
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近代バロン西の父親はロシアを探検した冒険家だったという話を聞きましたが,どんな人物だったのでしょうか? 徳川幕府海軍は英仏連合艦隊とマジで戦争したら勝てましたか? 脇差より小型の刺刀も携帯する武士と言うのも存在したのだろうか 日本の戦国から江戸時代にかけては欧州のように銃剣を装備しなかったのでせうか。 鳥羽伏見の戦いの後から江戸城無血開城直前までの徳川宗家の保有していた兵力、戦力を教えて下さい。 ペリー来航というのは、「戦わずして負けた戦争」というべきですか? 薩長軍と幕府軍の軍備にはどの程度の隔たりがあったのでしょうか? 西南の役田原坂での抜刀隊ってどうやって戦ったのですか? 幕末において薩長軍より幕軍のほうが装備の近代化が進んでいたって本当ですか? 浦賀に来たペリーの黒船艦隊は、開国を断られたら沖縄を占領するつもりだった、というのはホントなんですか? 江戸時代、幕末の翻訳本で「英国式歩兵練法」てのがあって 旭日旗は戊辰戦争で実際に使用されたのでしょうか? 日本はペリー来航によって不平等条約を結んだ上開国しましたが、ペリー艦隊と戦って勝ち目がなかったのでしょうか? 戊辰戦争で、幕軍も薩摩長州も軍艦を運用していましたが、当時の軍艦って、正直戦術的な意味ってあったんですか? 幕末の英国人商人グラバーが薩摩や長州に武器を売っていたのはよく知られていますが、薩摩や長州の新式武器輸入ルートは他にもあったんですか? 幕末(鳥羽伏見の戦いの前まで)で各藩や幕府軍が大軍を船で輸送したというのは事実なのでしょうか 西南戦争が起こった後、鹿児島からの徴兵に影響ってあったりしたんでしょうか? 白虎隊って、軍事的にはどうなんですか? 明治の初め、ハワイの王様が「ハワイを日本に組み込んでくれ」と言い寄って来たというのは事実? 西南戦争で敗れた薩軍の生き残りって、やっぱり全員反乱の罪で処刑されたの? 戦国時代には首切りツールだった日本刀が、西南戦争では両軍で使われ戦果をあげているのはなぜ? 幕末~西南戦争で国内の各勢力が使っていた銃ってどんなものがありますか? 銃が普及してたはずの戊辰戦争や西南戦争で日本刀が威力を発揮したって話が良く分からないんですよ。 戊辰戦争の戦死者数はどのくらいなのでしょうか? 黒船来航や薩英戦争の頃、日本の大砲は欧米のものとは比べものにならなかったらしいけど、どの程度の性能差があったのですか? 幕末になるまで江戸幕府と雄藩は関ヶ原の戦いのままの武器や部隊編成や戦法でいたんですか? 近代以前戦国時代の鉄砲って、武士が使う事もあったんですか?それとも足軽だけの武器だったんでしょうか? 文永の役(1274年)でフビライ軍は「てつはう」なる手榴弾みたいな火薬武器を用いたそうですが、その時、「てつはう」は日本側に捕獲されたのでしょうか? 源氏の血をひいていないと征夷大将軍になれないのはなぜですか? 昔の兵士は同じ様な鎧や格好をしているのにどうやって敵味方を識別してたんでしょうか? 元寇の際の蒙古軍のてつはうの運用と日本側の被害は如何程だったんでしょうか? 『蒙古襲来絵詞』に「てつはう」が描かれていますが、なぜ日本では種子島以降まで火器が広まらなかったのでしょうか? 元寇における元軍が使用したてつはうについての知識・製法を、日本は元軍の捕虜から吸収することができなかったんでしょうか? 日本の戦国時代……信長以降の1600年前後の頃、日本の保有していた軍備(鉄砲や戦闘兵員ですね)は当時のヨーロッパ全体のそれを上回っていたという話を聞いたことがあるのですが。 日本史上での軍事結果や作戦、人物等が世界の戦史に影響を与えたような事例は無いのでしょうか。 忍者と諜報機関の違い 朝鮮出兵は勝ったんですか?負けたんですか? 織田信長が武田勝頼相手に火縄銃部隊を3列にして発射して発射にかかる時間を短縮していたと学校で習いました 関が原の戦いでもし裏切りがなかったら 光成方が勝っていた可能性が高かったって本当でしょうか 文永の役では台風は来なかったのでしょうか? 元寇時に日本側は阿蘇小国の満願寺と云う場所に前線司令部を置いています。 長篠の戦の絵で騎兵が策と堀に向かって突進していますがたどり着いた後どうするつもりだったのでしょうか? 日本の戦国時代の騎馬武者は戦闘の際には下馬して戦っていたと聞いたことがありますが、それなら武田騎馬軍団や伊達の騎馬鉄砲隊は創作ですか? 日本には欧州や中東の様な破城槌は無かったんですよね? 戦国時代の弓は有効射程はどのくらいで、鉄砲に比較して有用なものだったんでしょうか? 戦国時代の農民兵は、刀とか槍とかは自分で持って行ったんですか? 明治以前の皇居や皇族の守護はどうなってたんですか? 壬辰倭乱で李舜臣将軍が何万人の倭人を殺したか教えてほしい 戦国時代の一般的な軍隊の階級制度って、どうなっていたんですか? アイヌ民族の人達は、侵略者の日本人に対して、地の利を生かしたゲリラ戦を展開しなかったのでしょうか? 日本刀は戦争で活躍したんですか?ってか剣の道を究めたと呼ばれるような武士は実際に役に立ったのでしょうか? 何故日本の武士は手持ち手盾を持たなかったのでしょう? 秀吉の時、海洋国家の癖に朝鮮ごときに負けたのは何で? 日本で大型の攻城兵器が発達しなかったのはなぜでしょうか? なぜ日本の城下町は城壁で守られていなかったのでしょうか? 忍者が実際に戦場に出て戦ったり、手柄を立てたりした例ってないのでしょうか? 近代 バロン西の父親はロシアを探検した冒険家だったという話を聞きましたが,どんな人物だったのでしょうか? 西竹一の父親は、西徳二郎と言います。 薩摩藩士の出で、外交官です。 1870年にロシアに留学したロシア通で、日清戦争時のロシア公使でした。 1880年に帰国時、中央アジアフェルガ-ナ、アライ山脈、新彊、蒙古等を経て帰国しています。 この時の旅は郵便馬車に乗るなど大変な苦労をしたようです。 その後、第二次松方内閣、第三次伊藤内閣で外務大臣に就任し、ロシアと 朝鮮の権益に関する協定を結び、1897年に特命全権大使として清に駐在しました。 この時に発生した義和団の乱に遭遇し、その沈着冷静な行動は世界の称賛を浴びています。 帰国後、枢密院顧問に就任し、1912年に死去しました。 (39 眠い人 ◆ikaJHtf2) 徳川幕府海軍は英仏連合艦隊とマジで戦争したら勝てましたか? まず間違いなく負けていたでしょう 緒戦で勝っても相手はいくらでも持ってこれます (58 670) 脇差より小型の刺刀も携帯する武士と言うのも存在したのだろうか 小柄ってのは、まあ、武器として投げることもあったでしょうが(時代劇では良く投げてるけど) 実際には何かと便利な日常小物として食事時やらハサミ代わりに使って重宝していたようです。 (61 852) 日本の戦国から江戸時代にかけては欧州のように銃剣を装備しなかったのでせうか。 戦国~江戸初期までは、銃剣が開発されていなかったので。 その後は、軍備の開発を統制する(禁止する)江戸幕府の施策のため。 (64 96) 鳥羽伏見の戦いの後から江戸城無血開城直前までの徳川宗家の保有していた兵力、戦力を教えて下さい。 徳川宗家の保有していた兵力ですが、幕府は安政元年(1854年)から近代的な軍の編成を はじめ、文久三年(1863年)にはその兵力はおよそ1万人程度になっていたようです。 しかし、慶応二年(1866年)の征長戦争に敗れた結果その戦力は低下し、フランスから 軍事教導団を受け入れ再編成を開始しています。 そしてさらに鳥羽伏見の戦いの後となりますと、数千人程度になっていたのではないかと思います。 ちなみに大鳥圭介が連れ出した幕府伝習隊は二個大隊(約1000名)だそうです。 (50 名無し軍曹) ペリー来航というのは、「戦わずして負けた戦争」というべきですか? 譲歩と敗戦は違う。無闇に喧嘩を売らずに収めた事を考えれば妥当と言えるんじゃないだろうか。 (57 81) 薩長軍と幕府軍の軍備にはどの程度の隔たりがあったのでしょうか? 海軍力では、幕府軍の方が遙かに上です。 陸軍力については、幕府も倒幕軍とほぼ同じ水準を保っています。 ただ、倒幕軍の主たる勢力である薩摩、長州は諸外国の先進的な兵器、戦術 に叩かれたために、いち早くその戦術を取り入れたのに対し、幕府軍は未だ、 山鹿流、甲州流のような古い戦術から離れられず、また人的資源に於いても、 農兵の採用などを行った倒幕軍に対し、幕府軍はそのような農民兵の徴集など を余り行いませんでした。 武力が倒幕軍>幕府軍という図式が出来るのは、後者が幕府軍ではなく、奥羽 列藩同盟軍であれば、成り立ちますがね。 (83 眠い人 ◆ikaJHtf2) 海軍力は、遥かに幕府軍が上でした。 陸軍の装備に関しては、薩長軍の方が新式の物の数を揃えられただけで、 幕府軍にもそれなりの物は有ったのですが、問題は軍の編成と指揮命令系統に有り、 新式の装備と部隊を、有効に生かしきれなかった事に有るでしょう。 (83 805) 海軍力においては,開陽というコルヴェットを幕府が持っているのに対し, 薩長海軍は最大で砲艦クラスしかありませんでしたから,やや幕府優勢. ただ,当時の開陽の整備状況と,艦隊運動ができるほどの陣容ではなかったため, 実質ほぼ互角. 陸軍力においては,西軍は性能のよいエンピール,ミニエー,スペンサー銃を 主力としていたのに対し, 東軍は幕府直轄部隊がシャスポー銃を装備していたのみで,火縄銃部隊も少なくなく, 歩兵火力では西軍が圧倒しています. 大砲火力では,アームストロング砲装備の長岡藩など,一部に新式砲を装備した 部隊もあったものの,東軍はライフルのない旧式砲が多く, 新式砲(4斤野砲,ライフル有)と臼砲を使い分けた西軍に圧倒されたようです (ようです,というのは,幕府軍の砲の数が,手持ちの資料では不明なので). なお,以上のデータは,別冊歴史読本「イラストでみる戊辰戦争」によるもので, 正確さには少し疑問も残ります. (83 消印所沢@FAQ者 ◆z3kTlzXTZk) その辺りの事情を知るのによい書籍などありましたら、お教え頂きたく存じます。 今、すぐに手に入るものであれば、中公新書に幕府歩兵隊という本と、 長州奇兵隊と言う本がありますよ。 あと、歴史読本とか歴史と旅のBackNumberには戊辰戦争絡みの増刊が結構出ています。 専門書は、書評スレを覗いてみるのは如何でしょう。 (83 眠い人 ◆ikaJHtf2) 西南の役田原坂での抜刀隊ってどうやって戦ったのですか? そもそも西南の役は殆んど銃撃戦、砲撃戦しか行われていない訳で。 政府軍の兵士が接近戦を嫌い、弾幕を張って応戦したので、弾薬の消費量は物凄かったらしいです。 まあ、それ以前の日本の合戦でも、剣はサイドアームで主兵器は弓槍、鉄砲であった訳でして。 (83 772) 西郷側も、1人1銃主義をとっていたため 火器装備率はほぼ100%だったらしいしね。 結局、弾薬不足に悩んだ西郷側苦肉の策が 錯綜地を利用しての抜刀襲撃だった。 (83 773) 西南戦争の抜刀隊は主として急遽警官より選抜された部隊で、主に旧士族(東北系)と 鹿児島出身の郷士により編成されました。 第一次は200名で、急遽編成されたためその装備の刀は地元から買い上げる形で装備しました。 これは想像ですがこのため刀は使い捨てに近かったのではと思います。 また西郷側は銃弾の不足と旧式銃なため火薬がしける事が多かったため、 戦場の多くが南西地方に多い森林だったため、鹿児島士族特有の文化、 などの理由により白兵戦を多用しました。抜刀隊の消耗率は大変たかいものでした。 (83 JY) 幕末において薩長軍より幕軍のほうが装備の近代化が進んでいたって本当ですか? 両軍とも諸藩諸勢力の連合体で近代軍のように装備の統一など されていません。 詳しくは日本史板で聞いてください。 (94 機甲自転車) 幕府歩兵隊ってのがあって フランス製の装備と戦術を教育されていた …が、弱かった。 その他の旗本八万騎は、弱兵で装備は旧式以前、やる気無し。 親藩普代もほとんど洞ヶ峠を決め込み、一部の藩のみやる気があった(会津など) 海上戦力及び一部のみ近代化されていて その他は旧式。 (94 405) 浦賀に来たペリーの黒船艦隊は、開国を断られたら沖縄を占領するつもりだった、というのはホントなんですか? たった4隻でどうやって占領するのかと…… (97 273) だんな、インカ帝国はたった40人のスペイン人によって占領されて滅亡し 全国民が奴隷化されましたぜ (97 283) 江戸時代、幕末の翻訳本で「英国式歩兵練法」てのがあって 教頭----アヂュデント 分隊長--インサイン 王旗----キレスコロウル 教導----コウィリンセルゼント 土工兵--ピヲニール 鼓手或いは尺八手--ドロム、オルビュゴル こんな表が載ってたのです。 カタカナ部分の英語、スペルが解る人居ませんか? アヂュデント adjutant インサイン ensign ピヲニール pioneer ドロム drum or drummer とりあえずこれはわかる。 発音でスペルのあたりをつけて辞書をひけばけっこうわかるかも。 (106 223,236) ほぼ同時代の米式歩兵操典"The 1863 U.S. infantry tactics"なら amazon.co.jpで注文できる。 が,この手の用語は国によって差が有るので英式と違う用語が 使われていてもおかしくない。 翻訳原文と上記の米式操典を照らし合わせてみたら面白いかも。 で,米式操典の巻末用語集を見る限りだとpioneerとdrum sergantぐらいしか 当てはまりそうにない。 教頭のアデュデントってのはもしかしたらadutant(副官,参謀)かもしれないが (106 550) 旭日旗は戊辰戦争で実際に使用されたのでしょうか? 函館戦を描いた錦絵「箱館大戦争之図」に旭日旗が描かれている あと、最初に軍旗として採用したのは仏式兵制を採用した幕府軍で 幕府と同じく仏式兵制を採用した創軍初期の新政府軍に継承された (107 845) 日本の国旗が「日章旗」であることは、皆様ご存知でしょう。 法的に明文化されたのは、安政元年、幕府が「大きな船を造る者は外国の船と間違えられないように、 日本の船である事を示すために白地日之丸幟を用いるましょう」という布告を出したのが初めてなのです。 これ以降、対外的には「日章旗」が日本の国旗となったのです。これは明治の太政官政府にも受け継がれ、 明治三年正月、五月に太政官布告として定められ紆余曲折はあったものの現在にいたっております。 函館戦争当時、官軍の旗は「錦の御旗」と呼ばれる西陣織に金刺繍の十六菊が使用されました。 また、それとは別に古来からの天皇家の紋章である日月紋も使用されました。 他にも戦闘集団の属する家の家紋、例えば島津、毛利の家紋である丸に十文字、三つ星一文字も使用されました。 一方、賊軍というか、幕軍の旗は徳川の家紋である三つ葵、そして日章旗だったのです。 函館戦争当時、徳川宗家は駿河に脱落謹慎しており、明治二年十五日に成立した蝦夷共和国の国旗は、 「日の丸」と定められたのです。明治二年三月、宮古湾に停泊する官軍の軍艦「STONE WALL」を奪取すべく 幕府脱走艦隊は接舷襲撃をしかけます。三月二十五日早朝「回天」がアメリカ国旗を掲げ、単独で宮古湾に侵入。 襲撃直前に旗を日の丸に変更し攻撃を開始。そして失敗。五月十八日に蝦夷共和国は降伏いたしました。 日章旗は幕軍の旗として使われた事が分かると思います。 そこで「箱館大戦争之図」と旭日旗の検証に移りたいと思います。 http //www.tamahito.com/hakodate.jpg 絵柄は函館湾をバックに函館軍が赤熊を着けた官軍歩兵に対して、騎馬襲撃を仕掛けている勇壮な構図です。 八条旭日旗も官軍の後方に描かれていますが、これは史実なのでしょうか? 旭日旗は明治三年五月に太政官布告で「陸軍御国旗」として定められました。 また、海軍においては明治二十二年に勅令で軍艦旗として正式に規定されました。 明治二年の函館戦争時、日章旗が函館軍に使用されている事から、 もしも旭日旗を使用するならば、同じく函館側の可能性が高いのではないでしょうか。 日清戦争を描いた錦絵は沢山ありますが、絵師は伝聞を元に想像を働かせて描いたそうです。 この「函館大戦争之図」も絵師永嶋孟斎が伝聞を元に後年描いたものです。 孟斎は官軍を描くのに、当時軍旗として定められていた旭日旗が函館戦争時の官軍にも当然存在したと思い、 描き込んだのではないでしょうか。 以上の理由で、函館戦争時、旭日旗があった可能性は低いと判断しております。 また、あったとしても函館側で採用されていたのではないかと思います。 よって、「函館大戦争之図」を検証もせずに資料として持ち出した 845はいかがなものかと思います。 おしまい (107 950-951) 日本はペリー来航によって不平等条約を結んだ上開国しましたが、ペリー艦隊と戦って勝ち目がなかったのでしょうか? まったく勝ち目は無かった サスケハナ号に搭載されていた150ポンドのパロット砲は最大射程7300mに及び、 日本の既存の大砲をアウトレンジしながら江戸城を砲撃することが可能だった。 だから慌てて台場を作りはじめたわけ (504 51) 戊辰戦争で、幕軍も薩摩長州も軍艦を運用していましたが、当時の軍艦って、正直戦術的な意味ってあったんですか? 1隻や2隻の軍艦で、戦争の大勢は変わりませんよね。敵陣に艦砲撃ち込んで、びびらすくらいですか? 当時の戦艦は基本的に戦略兵器。 場合によっては戦術兵器としても利用できるが、これはオマケ。 下手な砲兵隊より多数の砲を高速で戦略機動させ、港湾都市や沿岸を砲撃する。 ペリーの黒船が搭載していたパロット砲は、幕府側の火砲をアウトレンジしながら 江戸城を砲撃することが可能だった。 戊辰戦争で有名なエピソードとしては「箱根での挟撃作戦案」がある。 官軍が箱根に入ったところで、幕府艦隊の艦砲射撃で後続を足止めし、 箱根関で待ち受けた陸軍が殲滅戦を行うというもの。 結局実行されなかったが、この策を聞いた大村益次郎は「その策が実行 されていたら今頃我々の首はなかった」と述べている。 (516 700) 幕末の英国人商人グラバーが薩摩や長州に武器を売っていたのはよく知られていますが、薩摩や長州の新式武器輸入ルートは他にもあったんですか? また、薩摩はともかく長州は財政がそう豊かではないですよね。決済はうまくいったんですか? 初期は、グラバーなど一部の武器商人が接触した程度でしたが、開港以降は、 各国の武器商人が押し寄せ、各大名家も様々なルートで武器を購入しています。 その中で突出していたのが、倒幕軍ではグラバーであり、幕府・奥羽列藩同盟軍 ではスネル兄弟だった訳で。 例えば、土佐ではスイス人武器商人ハープルと大砲購入の為に接触していますし、 長州や紀州ではプロシア人武器商人のカール・レーマンと撃針銃の購入や、砲艦の 購入を行っています。 決済については、最初は農商民に対し、御用金や調達金として調達した金で支払っていました。 その後、その頃日本に進出し始めた外国銀行からの融資により決済が行われ、最終的にその返済は、 明治政府に任されました。 軍費の調達に関しては、大久保利通などは、各大名家からの醵金と徳川将軍家が所持する 領地800万石の内200万石を没収してそこから上がる収入で返済に充てるとしており、且つ、 短期的には鳩居堂とか三井、鴻池などの豪商や興福寺と言った山門、東西本願寺などの寺社 からの拠出金で賄う様になっています。 また、一般市民からも拠出金を仰ぐくらいにも貧しています。 この一般市民からの拠出金で62万両あったり。 この他、地租を担保とした国債である会計基立金300万両の徴募を商人達に課したり、不換紙幣 として太政官札を発行して凌いだりしています。 とは言え、太政官札の流通は困難を極め、正貨との交換比率は江戸・大坂でも当初から10対4程度の ものでした。 最終的には、版籍奉還により負債も国家が吸収する事となり、税金として国民に跳ね返った訳ですが。 因みに、東海道東征軍5,000名の1ヶ月の軍費は640両で、屡々町方での訴訟が起きていますし、江戸開城 から、上野戦争までの2ヶ月の間は軍資金の枯渇にありました。 (518 581 眠い人 ◆gQikaJHtf2) 幕末(鳥羽伏見の戦いの前まで)で各藩や幕府軍が大軍を船で輸送したというのは事実なのでしょうか いくつも例はあります。 あの鉄道網が未整備なあの時代は、海路の戦略機動が圧倒的に優位です。 1863年に、幕府の老中小笠原長行が、兵1600人とともに横浜から大阪へ上陸。 これは幕艦鯉魚門と外国傭船の併用です。京都の武力制圧を企てていたともいわれます。 会津藩が京都進駐するときも、幕艦による海上輸送が検討されてます。 第二次長州出兵の際には、幕府の歩兵4個大隊の輸送に艦船が使われました。 幕艦3隻と外国傭船2隻で紀州まで運び、そこから幕艦4隻に乗り換えて大阪へ上陸。 前線でも両軍が上陸作戦やってます。 鳥羽伏見のときは幕府側が大阪湾の制海権を押さえ、陸兵の集結に活用。 また敗戦後にも、徳川慶喜の移動だけでなく、残存部隊数千の江戸転進に海上輸送。 戊辰戦争中の事例は後方の部隊輸送、上陸作戦的な敵地機動とも数多く。 顕著な例として新政府軍が仙台進駐(600人)、 平潟上陸(諸藩洋式艦3隻・1500人)、新潟上陸(諸藩洋式艦6隻・1000人)あたりでしょうか。 旧幕府側も色々やって、例としては伊庭八郎の遊撃隊200人以上の真鶴行きで、 200~300石積みの和船3隻を幕艦大江丸で曳航して運び、途中から独立航行させてます。 新潟方面での輸送支援に派遣された幕艦順動丸は、新政府艦隊に捕捉撃沈されました。 訂正。編集ミス。 幕艦3隻と外国傭船2隻で紀州まで運び、そこから幕艦4隻に乗り換えて大阪へ上陸。 の一文は、1863年の率兵上洛の話のほうです。 鯉魚門のほかには蟠龍艦と朝陽艦を使っています。傭船は2隻。 紀州から加入した1隻については不知。 (545 ◆yoOjLET6cE) 西南戦争が起こった後、鹿児島からの徴兵に影響ってあったりしたんでしょうか? また、鹿児島で編成された部隊が不遇な扱いを受けたりしたんでしょうか? それを語るには、当時の民衆心理から説明した方がいいかも。 西郷の帰郷についていった士族は鹿児島で私学校生徒(私学党)となったが、彼らは手に職がないため血気を抑えることができず、 あちこちで乱暴狼藉を働いた。 また私学党の勢力が強くなるにつれて県政自体も立ち行かなくなり、やむなく私学党員を官吏や警察巡査として登用したため、 鹿児島県下の治安は極度に悪化する。 西南戦争の発端が、彼ら私学党の暴走によって引き起こされたことを見ても、彼らが如何なるものかが判るわな。 つまり市井の民衆から見れば、彼らは単に治安を悪化する邪魔者でしかなかったわけ。 また、薩摩という国が昔から厳しい身分制度の国だったこともある。 明治の世になりようやく士族階級と平等の立場になれたのに、野に下ってきた元・士族の連中がデカイ顔をしてのさばってたら、 そりゃ市井の気分は悪いだろ。 つーことで、西南戦争後は邪魔っけな私学党が一掃されたため、他の地域と較べても遜色なく徴兵を行うことができた。 むしろ、鹿児島出身兵は熊本兵と並んで強兵とされ、鹿児島で編成された部隊は各地の戦場でも歓迎されたという。 (349 53) 白虎隊って、軍事的にはどうなんですか? 会津のオナニーにすぎないんですか? 白虎隊の子ども達はともかく、白虎隊の指揮官(大人)はクソで、自分だけ逃げている。 まあ、指揮官がクソなのは、先の大戦まで続く日本の伝統。 ちなみに、同じく戊辰戦争で殲滅されたチャイルドソルジャーに、「二本松少年隊」てのがある。 この指揮官(大人)と副指揮官(大人)は、少年たちを守らんとばかりに奮戦し、なんと少年たちより先に戦死。 少年たちは指揮官を失いどうしていいかわからなくなり、結果薩摩軍の中でも最も野蛮な大隅出身の田舎ものの兵隊に、なぶり殺しにされました。 まあ、 「指揮官が逃げる(白虎隊)」 「指揮官が真っ先に戦死(二本松少年隊)」 どっちも軍事的には誉められたことではない。 (558 福島人ミク) 明治の初め、ハワイの王様が「ハワイを日本に組み込んでくれ」と言い寄って来たというのは事実? ハワイ国王が提案したのは、緩やかな連邦の形成であって、 日本の領土としてハワイを組み込む「併合」ではない。 この提案がなされたのは、1881年のことだが、対米従属的な立場はどうしようもなく、 また日本政府もアメリカを刺激することを恐れ、提案をあっさりと断っている。 もうこの時点において、連邦化という歴史上のIFは、検討の余地の極めて小さい命題。 例え連邦化したとしても、ハワイの対米従属を解消してやるための、有効な手段を取れたかははなはだ疑問だ。 1893年のクーデターでは、軍艦2隻を派遣して、アメリカ人移民が作った臨時政府を威嚇しているのだけど、 それ以上のことを、連邦化したからと言ってできたかどうか。 それでも仮に軍事的な援助を強化して、日本海軍の基地をおいたり、陸軍部隊を駐屯させたりした場合、 下手すると、この時点で、アメリカと抜き差しならない対立となり、戦争に発展した可能性だってある。 逆に、日英同盟が健在な時期なので、そこまでは行かなかった可能性ももちろんあるが、 潜在的対立がどこでどう爆発するか、見通すことは難し過ぎる。 アメリカ相手に、当時の日本に、そんなことをやれる可能性は皆無。 (609 362) 西南戦争で敗れた薩軍の生き残りって、やっぱり全員反乱の罪で処刑されたの? ごく一部の例外を除いて無罪放免。 「犯罪」ではなく「戦闘行為」と見なされています。 例えば、薩軍に参加した西郷隆盛の息子である西郷菊二郎氏は後に鹿児島市長 に就任しています。 処刑されたのは大山綱良など一部の者だけ、2700名ほどが懲役に付されているが後に赦免、 生き残りの大半40000名以上はそのまま放免されてます。 まあ、乱の首謀者はほとんど戦死したか自殺しちゃったし。 (309 603,606) 戦国時代には首切りツールだった日本刀が、西南戦争では両軍で使われ戦果をあげているのはなぜ? 個人的には警視庁抜刀隊などの存在が喧伝された結果では ないかと思います。歌が今に伝えられていますからね。ちなみに 警視庁の警察博物館にも西南戦争に関する展示が充実している。 西南戦争の田原坂の戦いでも砲兵が活躍したんじゃないでしょうか。 根本的に百姓兵が腰抜けばかりで役に立たなかったからねぇ。 田原坂の戦いなんか発射弾数一日四十万発!だそうで確か陸軍のレコードだったんじゃないかな。 ようするに怖いからただ闇雲に撃つだけなんだな。 だから薩摩隼人が切り込んでくると蜘蛛の子を散らすが如く逃げ出してしまう。 結局武士を集めて抜刀隊を結成するより他手立てが無かったんだな。 手を焼いた山縣が将校は逃亡兵をその場で処断してよいって布告を出したのもこの時。 (297 581-582) 幕末~西南戦争で国内の各勢力が使っていた銃ってどんなものがありますか? 最初に火縄銃に換るものとして導入されたのが、1830年頃のオランダのゲベール銃で、 これを国内で盛んに模造し、火縄銃は第二線級兵器になります。 (但し、1万石程度の弱小大名家では火縄銃と弓という家も多々ありました) 次いで、幕府が購入し歩兵隊の装備としたのが、フランス製ミニエー銃です。 これが戊辰戦争での主力銃の一つとなり、諸藩で使用されています。 この銃も、国内で盛んに製造されています。 幕府軍は慶応2年にフランス製シャスポー銃2000挺をナポレオン三世から送ら れましたが、それは江戸城に保管されたままで、後に押収され、大阪鎮台の 教導団で使用されました。 他に還納されたものも合わせて、6000挺がありました。 紀州徳川家は、ドイツ製のドレイゼ銃7,600挺を購入し、他の諸藩も合わせると、 13,343挺が明治政府に献納されています。 なお、このうち、8,492挺は大阪鎮台の第8、9、10連隊に支給され、その後西南 戦争で第1旅団、第4旅団、別動第1、第4旅団によって使用されました。 エンフィールド銃は英国製で、九州から東北諸藩に広く売りさばかれており、 前装式エンフィールド銃は12,000挺、後装式に改造されたものは1,500挺、後の 調査では更に増え、53,023挺が使用されていました。 なお、明治政府では西南戦争まで使用されています。 ちなみに、彰義隊の装備銃はこれが主力でした。 エンフィールド銃を後装式に改造したのがスナイドル銃で、各藩、特に西方諸家に て良く用いられていましたが数は少なく1500挺程度でした。 米国製の連射可能なスペンサー銃は504挺しかありませんでしたが、主に土佐山内 家が使用していました。 このほか、ツンナール(ドレイス)銃(一時大阪鎮台が使用)、アルビニー銃(近衛歩兵 第1連隊の全部、第2連隊の一部が使用)、マルチニー銃(ベルギー製)、レミントン銃、 ピイポジーマルチニー銃(海軍省に譲渡)など全部で39種類の形式が確認されています。 ちなみに調練方式は、 フランス式が幕府軍の他、土佐山内家、豊津毛利家、鳥取池田家、函館蠣崎家、館林秋本家、 彦根井伊家、米沢上杉家、大多喜大河内家など。 英国式が薩摩島津家、佐賀鍋島家、岡山池田家、尾張徳川家、関宿久世家、熊本細川家、 徳山毛利家、阿波蜂須賀家、高松松平家、高徳戸田家、明石松平家、古河土井家、長尾本多家、 岡崎本多家、三上遠藤家、舞鶴牧野家、田原三宅家など。 オランダ式が水戸徳川家、前橋松平家、高崎大河内家、川越松井家、高遠内藤家、下館石川家、 福岡黒田家、小田原大久保家、沼田土岐家、烏山大久保家など。 プロシア式が紀州徳川家となっています。 (108 眠い人 ◆gQikaJHtf2) 銃が普及してたはずの戊辰戦争や西南戦争で日本刀が威力を発揮したって話が良く分からないんですよ。 戊辰戦争や西南戦争の頃の日本で使われていた鉄砲は、前装式だったり 薬莢が紙製(当時としては珍しくはない)なので雨だと使えなかったり、 とかなり使用に制限のかかる代物。作動機構がより確実なだけで火縄銃と 大差ない。 射程距離も短く単発式のものがほとんでまだ「銃剣」というものが普及して ないため、訓練度の高い日本刀を持った人間と戦うと、一発目で相手を倒せ なければ刀の間合いに踏みこまれてあっさり斬り倒された。 このあたりはスコットランドのハイランダーに苦労したイギリス軍と似ている。 更に鎧をつける習慣が廃れてた(とはいっても和式の鎧は防御力低いけど)ので 例え江戸時代になって細くなった”打刀”でも対人威力は高かった。 (250 29) 戊辰戦争の戦死者数はどのくらいなのでしょうか? 刀や槍による死者は、ほとんどいなかったのでしょうか? 概算ですが、鳥羽伏見戦を除いた、東海道東上~第二次函館戦争までの 兵員参加者は164,456名(但し、奥羽列藩同盟の兵員は記録が散逸しており、 推定…以下同じ)、戦死者(戦病死、刑死含む)は8,717名、戦傷者は4,718名、 自刃163名、婦女子の自刃172名、その他93名、行方不明19名となっています。 戊辰戦争の戦死者に関しては地域によって異なります。 奥羽列藩同盟と戦闘を行なった弱小諸家(津軽とかその辺)は結構刀槍での 負傷が多かったようですし、水戸家中の内紛でも同じく刀槍による負傷が多かっ たみたいです。 対して、会津戦争や長岡戦争になり、西方諸家と対峙すると、今度は銃創による 死者が多くなっています。 (154 眠い人 ◆gQikaJHtf2) 黒船来航や薩英戦争の頃、日本の大砲は欧米のものとは比べものにならなかったらしいけど、どの程度の性能差があったのですか? 下関・鹿児島で用いられた80斤榴弾砲は、弾量25kgで射程1,400m 彰義隊戦争で用いられた20拇臼砲は、弾量18kgで射程1,300m。 一方、薩英戦争で用いられた英国艦隊の68ポンド前装滑腔砲は射程3,000mですが、 Armstrong砲は、110ポンド砲で弾量50kgで3,600m、40ポンド砲で弾量18kgで3,500mと なっています。 つまり、各大名家の大砲の射程外から発射できるわけです。 ちなみに、島津家の大砲は、6~80ポンド砲が合計62門、20~29cm臼砲が10門、その他 大筒が10門。 このほかに、18または24ポンド砲を1門搭載した10.9m程度の小さな船が12隻ありました。 これらは、全て前装滑腔砲であり、弾丸は球形中実弾が大部分で、炸裂弾を発射できた のは臼砲しかありませんでした。 当時、この戦争に参加した伊東祐亮は、「当時こちらから撃ち出す砲弾は、砲の先端から 込めてガタガタと回転させ、それから照尺を定めて漸く発射、その後砲身を綺麗に拭いて、 また先端から弾丸を込めると言う極めて時間の掛かる仕組みだったから、5~7分掛かって 漸く一弾を撃ちだしたものだ。こんな幼稚な時代だったから、この時英艦から発射された砲弾 を見てみんなびっくりした。 未だ見たことのない長さ一尺六寸(45~48cm)の弾丸を臍の緒切って以来初めて見たのだから、 魂消たのも無理はない」と、回顧談で述べています。 他にも英艦は鹿児島の街を焼き討ちするのに、ホールロケットというロケット弾を用いています。 下関砲台には、当初30門しか砲がありませんでしたが、後に整備に努め、18ポンド砲21門、24ポンド 砲27門、30ポンド砲2門、80ポンド砲2門、150ポンド砲1門で、これらは全て青銅製前装滑腔砲でした。 対して、四カ国連合艦隊の備砲は280門に上っています。 英国艦隊は、8インチ砲66門、32ポンド砲64門、68ポンド砲2門、110ポンドArmstrong砲7門、40ポンド Armstrong砲8門など、フランス艦隊は6.4インチ前装旋条砲20門程度。オランダ艦隊は、6.3インチ前装 旋条砲8門、30ポンド砲8門など、米国の民間船は、8インチ砲1門となっていました。 ついでに、砲台守備兵力は2,000名、対する四カ国連合艦隊は総兵力5,000名で、その兵力差で、殆ど 損害を受けることなく、兵力2,000名の上陸で砲台を占領し、60~100門の砲を破壊しています。 (207 眠い人 ◆gQikaJHtf2) 幕末になるまで江戸幕府と雄藩は関ヶ原の戦いのままの武器や部隊編成や戦法でいたんですか? 詳しくは歴史系の板で聞くべきだとは思うが、そんなことがあるはずがない みなもと太郎の「風雲児たち」がその辺り一番分かりやすいと思うが、長編 すぎて読むのに時間がかかる (俺初質スレ2050 296) 近代以前 戦国時代の鉄砲って、武士が使う事もあったんですか?それとも足軽だけの武器だったんでしょうか? 雑賀衆の鈴木孫一など武士も使ってる。 (俺初質スレ430 164) 武士が使う事も当然あるわけですが 鉄砲は弓のような熟練を必要とせず 少しの訓練で足軽や女でも使える「女の武器」ということで 武士が使うのは不名誉であると、嫌がられたといいます。 (俺初質スレ430 166) 文永の役(1274年)でフビライ軍は「てつはう」なる手榴弾みたいな火薬武器を用いたそうですが、その時、「てつはう」は日本側に捕獲されたのでしょうか? 確か対馬だか長崎だかに「てつはう」の実物は展示してあります。すごい昔に「GUN」誌に掲載されてました。 鉄砲伝来についてですが1543年よりおよそ100早く中国から琉球に鉄砲は伝来しております。 尚王が琉球統一をするとあらゆる武器が放棄されたので詳細はまだ不明です。 (6 古式銃ファン) 源氏の血をひいていないと征夷大将軍になれないのはなぜですか? 戦時中の将軍と征夷大将軍は別物ですか? 初代の征夷大将軍坂上田村麻呂は、源氏より前に登場したので、源氏の血を引いておりません。 また、源実朝死して後、源氏の嫡流は絶え、以降宮様を将軍とする場合もありましたし、 徳川家綱の後の将軍に松平伊豆守が、公家を推戴しようと画策したこともありました。 つまり、それは天皇の血統を神聖視する勢力と同じく、政治的な思惑から生じた幻想です。 単なる権威付に過ぎません。 後段に関しては、別物です。 別に、将軍だからと言って日本の国の願主になったわけではありませんから。 (16 眠い人 ◆ikaJHtf2) 昔の兵士は同じ様な鎧や格好をしているのにどうやって敵味方を識別してたんでしょうか? お貸し具足の場合、デザインは殆ど同じ量産品です。 従って、袖印とか鉢巻き、襷などで識別しています。 数日もの間、行軍などを行うことで顔見知りにはなりますし。 あと、夜襲などでは合い言葉を決めて、それを答えられない、 あるいは間違ったものを言った場合には槍を突き出すと言う方法も採られています。 (20 眠い人 ◆ikaJHtf2) 元寇の際の蒙古軍のてつはうの運用と日本側の被害は如何程だったんでしょうか? 毬状に描かれたてつはうは、実は後世の画家が根拠なしに想像して絵にしちゃったもんで 本当のてつはうがどんな兵器だったのかは、いまだに決着がついていない おれはカタパルト説を支持してるが、日本の歴史各学会では少数派のようだ (俺初質スレ435 654) 実際に海底で見つかったてつはうはトゲが付いてない球形だったな 投石機で擲弾を飛ばすのは大陸では実際に行われてるが、 投石機のようなでかいものを船で運んで揚陸して敵前で組み立てたりする余裕があるのかという 疑問もないことはないな (俺初質スレ435 655) 『蒙古襲来絵詞』に「てつはう」が描かれていますが、なぜ日本では種子島以降まで火器が広まらなかったのでしょうか? 同時期の支那大陸では火器はどの程度普及していたのですか。 技術が伝わらなかったというか、当の大陸でも普及し始めた程度。 また、友好的な国交があったわけでもなかったので、技術を伝えなかった。 日本国内では火薬の原料の一部、特に硝石がろくに取れないので、自作は無理。 仮に伝来しても自力では製造が出来ず、輸入に頼ることになる。 (483 893) ついでに、当時の中国で使われていた火薬兵器も精度も威力もあんまり無く、 威嚇兵器としての意味合いが大きかったので、主力兵器にはなってない。 (部分的には、工夫や改良を凝らして使われていた物があったようだが、 詳細が不明で実像が未だにわからず、予想や憶測、想像図を含んでいるものも多い) 実用的な火薬兵器の登場は、ヨーロッパに伝来してそちらで改良されて アジアに伝来する時代まで経たなくてはならなかった。 (483 894) 元寇における元軍が使用したてつはうについての知識・製法を、日本は元軍の捕虜から吸収することができなかったんでしょうか? 元寇の主力は元の命令で動員された高麗兵だったので、彼らは「兵器を与えられて使われている」立場でしかなく、 高度な技術を手(と脳)に持っている者は少なかった。 更に二度の元寇は日本、というか鎌倉幕府にもかなりの混乱をもたらしたため、その後のゴタゴタでそういった面に割けるリソースも少なかった。 兵器のコピーに関して言えば、弩(ど、おおゆみ)のコピーには着手したが肝心な鉄弓の部分がコピーできず、諦めたという経緯がある。 あと、何より元軍の遺棄兵器は奮戦したのに恩賞が貰えない御家人達が使い道もよくわからないまま「戦利品」「舶来のお宝」として 自己のものにしてしまい、幕府が提出を求めても恩賞が貰えないことを理由に拒否し、大半は御家人の倉に納われたまま忘れ去られた。 後に、先祖が文永弘安の役に参加したという武士の家には、当時の元の兵器(の残骸や成れの果て)が代々伝わっていたりしたとのこと。 中には室町戦国安土桃山そして江戸時代を経て明治まで伝わっている物品があったりする。 (532 381) 日本の戦国時代……信長以降の1600年前後の頃、日本の保有していた軍備(鉄砲や戦闘兵員ですね)は当時のヨーロッパ全体のそれを上回っていたという話を聞いたことがあるのですが。 これの真偽、そして本当であった場合はたして日本は世界に覇権を問うことができたかについてお聞きしたいのですが……。 無理だと思います 渡海しての作戦は補給が続きません 朝鮮出兵の顛末を考えても不可能だと思います (9 907) 日本史上での軍事結果や作戦、人物等が世界の戦史に影響を与えたような事例は無いのでしょうか。 戦国末期の織田信長~豊臣秀吉に至る時代の鉄炮の集団運用戦法は、 大砲と刀槍中心の中国に多大な影響を及ぼしました。 また、火縄銃に関しては日本が世界の最先端を行ってました。 時代は下って、日露戦争では二百三高地の作戦に於いて、Russiaの使った 機関銃が塹壕戦、要塞戦に威力を発揮することが判り、世界に機関銃が広まる 結果となりましたし、有名な日本海海戦の結果は、英国がDreadnought級戦艦を建造するきっかけとなりました。 また、金剛の建造は超弩級艦建造の口火になりましたし、長門の建造は、40センチ砲搭載の超超弩級艦建造の口火となっています。 日中戦争ではゲルニカとともに、日本の重慶爆撃が戦略無差別爆撃のお手本となっていますし、 第二次世界大戦では真珠湾攻撃で空母の運用に、 マレー沖海戦で対艦兵器としての戦艦の終焉という影響を引き起こしています。 (14 眠い人 ◆ikaJHtf2) 日清戦争の黄海海戦では、艦隊陣形の単縦陣vs.横陣論争に決着が付きました。 (単縦陣を採用した日本の勝利) (14 404) 忍者と諜報機関の違い (ちょっと,まだ忍者の実像についてはリサーチ不足の面もあるのですが……) 例えば,武田信玄家中の真田幸隆配下の忍者は,砥石城の部将,矢沢総重の子で, 葛尾城に人質になっていた重丸を誘拐することにより,村上国清からの離反を総重に促したり, 同じ武田家中の山形昌景配下の者は,三河,二俣城の城兵を買収して,天水桶に毒を入れさせたり, 他にも他国の情勢を探ったり,今川義元に関する情報を織田信長配下の梁田政綱に流したり (ただ,どこまでが風説で,どこまでが真実かは不明)等していたようです. これらの点は,今日の諜報機関の行う情報収集や秘密工作と大差ないように思えます. ただし,今日の諜報機関と,忍びとの決定的な違いは,前者が,収集した情報の 分析も担当するのに対し,忍者は自らは分析を行わず, その分析は戦国大名およびその家臣団に委ねられていた,という面にあるようです. 要するに,情報規模も今日に比べれば小さいが故に,その部分が未分化だったってことかと. (93 消印所沢@怪人FAQ男 ◆z3kTlzXTZk) 朝鮮出兵は勝ったんですか?負けたんですか? 目的:明を征服する 結果:寸土も得られず 目的をまったく果たせなかったので、敗北です (94 692) 織田信長が武田勝頼相手に火縄銃部隊を3列にして発射して発射にかかる時間を短縮していたと学校で習いました ヨーロッパでも 火縄銃を使っていた時代 このような作戦は採られたのですか 織田鉄砲隊の三千/三交代はデマ説が有力になりつつあります。 数が多いから弾幕は途切れなかっただけとか。 (98 339) 戦国当時の指揮系統からいって鉄砲の3段打ちをしこむのは難しかったのではないかという意見があります。 (98 341) 長篠合戦は、日本史板の方が詳しいでしょうが、 軍事的には織田武田の戦力比は2:1以上あり、平地の野戦でははじめから 勝負が決まっていたようなものです。 また、織田は馬防柵を大規模に展開しており、いわば十分に構築された 野戦陣地に銃剣突撃かけたようなもので、武田の無謀が批判されるべき戦闘でした。 それでも織田武田はほぼ同数の死傷者が出ており、武田は善戦したといえるでしょう。 鉄砲の三段射撃はかなり誇張のようですが、 何より歴戦の中堅指揮官を多数失った武田は、数字以上の損失でした。 (98 344) まず、信長の三千挺三段撃ちですが、行われていなかったと言うのが、ここ 15年ぐらいの定説に成りつつあります。 まず、最も史料価値の高いと言われる太田牛一の「信長公記」には、この戦術 に関する記述が全く無い事が有ります。 この戦術の初出は、小瀬甫庵の「信長記」ですが、この書は長篠の合戦の50年 も後に出版されており、多分に江戸幕府の思想的プロパガンダのバイアスが かかっており、資料的価値が低い事。 当時の織田、徳川軍の鉄砲隊は、各家臣団の諸兵、傭兵等の混成部隊であり、 複雑な統制の取れた行動が、訓練期間の足りなさも相まって困難であった事。 長篠の陣が、山の稜線に沿って複雑に出入りしており、一人(少数)の合図に 従って一斉射撃を加えるのが、無線の無い当時は不可能であった事が予測 される事が有ります。 では、何故に小瀬甫庵がその戦術を思い立ったかと言えば、中世の中国では、 ボウガンの三段撃ちを行っており、儒学者である小瀬甫庵が「信長記」にそれを 盛り込んだのでは、との説が有力です。 では何故、この三段撃ちが定説として流布されたかと言えば、旧陸軍参謀本部 が、「日本戦史」編さんのおり、ろくに精査もせずに採用した為でした。 長篠の戦いの真の革新的な所は、野戦築城を日本で始めて大規模に採用した 事(恐らく宣教師からの助言が有ったものと思われる)です。 (98 353) 長篠の戦いにおいては、戦術的に言えば、主力部隊が野戦築城している 間に、迂回部隊が長篠城の救出に成功し、武田本隊が挟み撃ちになる状態 になり、撤退するか、織田、徳川本隊を抜くしか手が無くなり、諸将、豪族の 手前、仕掛けるしか無くなった、と言うのが大きいかと思われます。 まあ、学校の歴史の授業では、そこまで深い考察は無理でしょうが (出来る人材も居ないでしょうけど)。 (98 357) 関が原の戦いでもし裏切りがなかったら 光成方が勝っていた可能性が高かったって本当でしょうか 裏切りがなかった、あるいは見込みが少なかったら そもそも家康はあの場所で野戦はしなかったと思われ (106 328) 西軍、高地に陣取り、V型の二重斜線防御陣地を構築。 東軍、そこに突っ込む。ですから東軍が極めて不利かと。 ただ、不利な戦況を覆す手段として、より戦略的上位の 裏切り工作を実施した家康はやはり相当の古狸かと存じます。 (これにより防御陣地はただの斜線陣へ、見方は半減、相対的に敵は倍増、 しかも後方交通路を早く確保しないとこれを遮断されます。) (106 330) 文永の役では台風は来なかったのでしょうか? 日本の弓矢は元軍のものより優れていたのでしょうか? 少なくとも二回目の時は日本側も防塁を築いており各個撃破しているはず。 (111 629) 文永の役で台風が来なかったのは本当。 元は、日本の反撃が予想以上に強力だったため、引き上げた。 弓矢に関しては、発射速度や威力(何せ毒が塗ってあったし)の点で、 元の方に分があったと思うが。 (111 630) 勝てるはずのない揚陸戦だと思うよ。対馬で止めておけば良いものを。 (111 631) 和弓って元の弓より射程短いんじゃなかったけ? 元側の指揮官にやる気が無かった、って~のも大きいわな。 (111 ベタ藤原 ◆RoMNjfnp0E) 弘安の役にしたって、最後に神風が吹いたのは本当だけど、 それまで3か月にわたって上陸部隊を撃退し続け、 船上に追いやった日本側の奮戦がなければ、壊滅には至らなかっただろうし。 (111 635) 元寇時に日本側は阿蘇小国の満願寺と云う場所に前線司令部を置いています。 これは、当時の元側の必勝パターンである騎馬戦術を解析した上で、 騎馬の運用が困難な山間部(佐賀平野から日田・杖立と狭隘な谷間が続く)を最終拠点としたのでしょうか 軍板的には、書評スレで話題になってた陸上自衛隊福岡修親会 『本土防衛戦史 元寇』あたりを入手してみては? (118 63) 長篠の戦の絵で騎兵が策と堀に向かって突進していますがたどり着いた後どうするつもりだったのでしょうか? 陣地攻撃 (118 93) 敵陣を混乱させ、兵士をデモラリゼーション状態に追い込んで潰走させる (118 94) 陣地攻撃って具体的にどんなことをするんですか? 槍で突く。必要あらば下馬して戦闘。 というより、下馬戦闘が基本。騎馬は移動用。 (118 99) 長篠の合戦時、武田方の騎馬は総数500騎ほど。 騎馬は敵陣突破ないし迂回及び戦果拡大が仕事であり、正面切って戦う主力は足軽。 (118 104) 日本の戦国時代の騎馬武者は戦闘の際には下馬して戦っていたと聞いたことがありますが、それなら武田騎馬軍団や伊達の騎馬鉄砲隊は創作ですか? 創作や講談のような意味での騎馬軍団なんてものは無いが、 しかし騎馬の集中運用というのが完全に無かったかと言うとそうでもなく フィクションのような数百~数千の騎兵が突撃するようなものより ずっと規模の小さい、数十騎くらい集めれば精一杯といったものだったそうだ。 百騎もいたら、凄い大規模な騎馬部隊という感覚。 でもって、そうした騎馬部隊というのは常設の物というのは少なく、 戦場で臨時に余剰騎兵を集めて突撃させるような物が大抵で、 その他に本陣控えの旗本、伝令役たちの十~数十騎ぐらいしか無い。 武田騎馬軍団については、今の山梨県が馬の産地ってことで、 移動や輸送に馬がふんだんに使えたこと、軍全体から見た馬の割合がかなり多いこと、 つまり馬や騎兵に余裕があった事から言われたもの。 伊達の騎馬鉄砲も、常設部隊では無いが、ちゃんと馬上で鉄砲を使う装備が記録に残っている。 ただし、これの実態がどんなものだったかは不明。 日本の馬は小さくて騎乗には向いていないときいたが? それはアマチュア研究者が勘違いで書いてしまって広めてしまった有名なデマ。 蛇足だがこのアマ研究者は打刀(短刀や小太刀ならまだしも…)で首を取るとかの間違いも広めてしまっている。 (502 852) 日本には欧州や中東の様な破城槌は無かったんですよね? 城攻めの時はどの様な方法で城門を破壊したんですか? 急峻な坂、階段、郭などを配した山城では、破城槌が威力を発揮できないため、 利用されることはありませんでした。 20~30度もある不揃いな階段を数十メートル登り、90度コーナーを2つ通り抜け、 後背を敵の櫓に晒す狭い空間が正門前、といった感じです。 破城槌が使えない理由が想像できるでしょうか。 城門を破壊するには、丸太・大砲を用いたほか、火矢・焼き玉(熱した砲弾)などで 火災を狙うなどされました。 ちなみに朝鮮出兵の際には、現地で「亀甲車」という破城槌が考案されています。 余談ながら、戦国時代期の日本型城塞は、古代~中世にかけて作られた西洋の 都市型城塞に比べて、数世代後のものに当たります。 よい縄張りと防御施設を備えた山城は、街や居館を石壁で囲っただけの城塞とは 比較にならないほど堅固です。 平城でも大阪城規模のものになると、この時代の大砲を用いても容易には落城さ せられませんでした。(家康が大砲の利用を控えさせたとはいえ) もちろんこの時期の欧州でも城塞は進歩を遂げていて、さらに17世紀中盤には 城塞設計の革新者ヴォーバンが登場し、要塞は飛躍的な進歩を遂げてゆきます。 (514 283) 城の造りが西洋や中東と異なるので一般的には破城槌は必要なかったのではないかと思う。 中東の特に十字軍王国の城などは岩山の尾根先を大きな溝をほって区切り 先端に極めて堅固な要塞を築いている例があります。 城壁は尾根の崖線上およびこうした人工崖線と一体化し、城壁真下に取り付いた 敵兵を側射できる塔も備わるなど、かなり発達した造りでした。 従って攻める側は巨大な投石機を幾つも作り城壁を崩して攻めます。 一方、日本の城、ことに山城は包囲されることもあるんですが、基本的には自然地形をうまく 改修して幾重にも防衛線をめぐらすもので石垣なども部分的に施されている場合はあるものの、 そもそも地山を削り柵を巡らし櫓を立てるといった形での防御です。 長槍、後には鉄砲で隊伍をなして攻めるのが良いでしょう。 どちらが優れているということはありませんが、西洋のやり方で攻めてはかえって 苦労すると思われます。 (514 285) http //en.wikipedia.org/wiki/Image Saone.jpg 上で述べた十字軍の城の一例です。大きな切り石を石灰かモルタルで 繋いで城壁と塔を作っています。城壁の構造は表面と裏面は切石で中には 小さい丸石が詰められているものです。 中央右の塔の高さ半ばに細長い黒い線がありますが、これが矢狭間です。 城壁下に取り付いた相手を横合いから撃つためこの位置に空けられています。 日本の城でいう、横矢掛かり です。 日本の山城の場合は地山を巧みに堀で削り、区切り、柵を巡らして守りますから 西洋流の城とは異なります。 (514 286) 戦国時代の弓は有効射程はどのくらいで、鉄砲に比較して有用なものだったんでしょうか? 戦国時代にも鉄砲は運用されていますが、飛び道具としては弓がメインですよね。 三十三間堂で弓を射る場合、標的は66間=119mですが、戦国時代の弓は100m以上飛ぶしろものですか? 強弓に分類される弓が必要になるが飛距離としては割と余裕。 ただ、たとえ強弓といえどわずかながら曲射的に射る必要があり、 屋根があるため飛ばしすぎや射角をとりすぎるほうが問題だった。 特に後半疲れてくると手元が狂ってくるので、 三十三間堂の梁には矢が刺さったあとがいっぱい残ってる。 飛距離については射流し大会という飛距離そのものを競う大会が全国各所であって、 昭和13年に曽我正康という人物が琵琶湖の大会で385mの記録を打ち立てている。 これが記録に残ってる確実な範囲内では最高記録。 また一般的に実力者級の成年男性は200m~250mほど、 女性の場合は150m~200mほど飛ばすという。 ただしこれらは18gという特製の軽い矢を使ったもので、 記録や遺物から推定される戦国時代に実際に使用された矢の 50g~70gと比べて非常に軽い。 これは軽い矢尻では甲冑に守られた人体に食い込ませる事が難しいため。 また弓の方も戦国時代の一般的な実戦用は約20kg~30kg程度と推測される。 これは現代弓道の男性用14kg~20kgと比べると重いが、 三十三間堂で記録を出すような強弓の30kg~40kgと比べると遥かに軽い。 これらの条件の元に当時の状況を再現すると、最大射程距離はおよそ100mから150mほど、 狙いを付けて狙撃する場合の有効射程距離はその1/5から1/4程度と推定される。 ただし戦場に強弓を持ち込む達人も存在しただろうからその様な場合はこの限りではない。 戦場における鉄砲に対する弓のメリットを、宮本武蔵は五輪書で次の用に述べている。 速射が可能で別の武器にすぐに持ち替えられる事(近距離戦にも対応) 撃った矢が目に見える事(着弾観測が容易) 戦場でのかけひきにつかえる事 以上の理由より野戦での使用に適した武器だとしている。 攻城戦においてはメリットが少なく、拠点防衛においては鉄砲の方が遥かに勝るとも。 なお、宮本武蔵は戦場における弓の有効射程距離を20間、およそ36mとしている。 (528 750) 戦国時代の農民兵は、刀とか槍とかは自分で持って行ったんですか? もしそうなら、高価な刀とか槍をどうやって調達していたんですか? 当時は兵農分離や刀狩りが行われる前ですから豊農はが武器・防具を備えていました。 戦の為だけでなく自衛や治安維持のためにも役に立つものです。アメリカの銃に近いかもしれません いまだと日本刀は高価な美術品ですが、当時は数打ちと言われるような 質が低い代わりに安価な量産品が供給されてました。 鎧も現代に残ってるような立派な物だけではなく、 もっと簡素で実用本位な物が広く使われていました 雑兵用の安物は胴の前半分しか無いようなものからあります。 もちろん武器も買えないような貧農、小作人が食べ物と略奪目当てに参戦する光景は ありふれたものです。 竹槍で戦うわけにも行きませんからその場合雇い主が武具を支給します(当然安物です)。 (559 モッティ ◆uSDglizB3o) 明治以前の皇居や皇族の守護はどうなってたんですか? 近世にも禁衛府みたいなのあったんですかね? 幕府から禁裏付と言う老中差配の役人が居て、その配下に御所の警備、 公家衆の監督をする人間がいました。 また、上皇の警備に関しては、仙洞付と言う役人が担っています。 維新直前は、十津川郷士が禁裏の警備を行っていたこともありましたっけ。 京都所司代は、警備と言うより行政のような気がするのですが。 (343 眠い人 ◆gQikaJHtf2) 壬辰倭乱で李舜臣将軍が何万人の倭人を殺したか教えてほしい 七年間の朝鮮役で李舜臣指揮を含めた朝鮮水軍と明水軍の攻撃による日本軍の戦闘死傷者総数は数百人から数千人の規模 (最大でも五千人前後)と考えられます。 また李舜臣の攻撃で日本軍の補給や連絡が恒常的に遮断されたことはなく、極短期間の攻撃時間以外で補給連絡線の 制海権を維持できたことはありません。 二次的な船舶不足に影響が無いとは言えませんが、海象による事故や寿命の自然減耗に比べるほど戦闘消耗は激しくありません。 また日本軍には廻船補給計画は元々存在せず、たとえ朝鮮水軍が存在していなくとも陸上作戦的な海岸支配と技術的な 海路開拓の問題によって漢城方面への海路補給が成立することは非常に困難です。 李舜臣に対する評価は戦争指導指揮を行なっていたのが明であり、朝鮮独自の勝利ソースの少なさと李舜臣の属した派閥の 評価から朝鮮内部で珍重されたこと、それの日本での江戸時代の受け売りと豊臣失政というレッテル貼りが罷り通った。 そして、明治以降のマハンの海上権力論を奉戴して海軍権益を拡充した帝国海軍の宣伝が原因となっています。 これが権威となり、詳細研究や先行研究批判が充実しないまま戦中に頂点を迎え、戦後の史観へ退凋します。 つまり李舜臣への幻想は朝鮮役という戦争全体の研究不足が原因となっています。 (337 96-98) 戦国時代の一般的な軍隊の階級制度って、どうなっていたんですか? 戦国時代での軍隊という組織を考えると大名の直臣及び被官の全てが構成成分と見なすべきだと思います。 荒っぽい喩えですが武士階級すなわち軍人と考えれば良いと思います。 その中で、大きな所領を持つのが家老等の重臣層です。合戦の時は大きな戦闘単位を率いる一手の侍大将になります。 小規模な所領を有する地侍や直臣層は、総大将すなわち大名の近辺の警固する馬廻りや寄騎として 各備えや家老等の部隊に出向く形で配置されます。 軍監や目付、使番としての役割を果たす事が有ります。 (601 不動産屋のオッチャン ◆UMCByHJxYk) アイヌ民族の人達は、侵略者の日本人に対して、地の利を生かしたゲリラ戦を展開しなかったのでしょうか? 結構抵抗はしている。 「シャクシャインの乱」で検索してみるべし。 ただ、いわゆる「アイヌ人」には統一された”民族意識”というものが 出来上がらなかった。 そもそも”アイヌ”というのも「人間」という意味で、 「アイヌ民族で団結して和人と戦おう!」というような民族自決意識が 定着せず、結局蜂起の指導者であるシャクシャインが暗殺されたらそれ以前の 「山を越えたら隣の村。隣の村の奴は一応人間だけど自分たちとは違う存在」 という世界に戻ってしまったので、統一勢力として抵抗することができす、 そのまま和人によって征服されて行った。 この辺はネイティヴアメリカン(インディアン)と似たところがある。 (326 274) 日本刀は戦争で活躍したんですか?ってか剣の道を究めたと呼ばれるような武士は実際に役に立ったのでしょうか? 首級を獲るのに役立ちました。刀 合戦では、主に槍を使っていました。刀を使うような局面は護身くらい(今の軍用拳銃と似たようなもの)。 刀主体の戦闘法(なんとか流という剣術の類)が確立したのは戦国末期と、ほとんど 合戦と関係ないです。ぶっちゃけ、仕官のためのセールスポイントになったくらいですね。 合戦ではないけど、船の上での接近戦では役に立ったようです。 短いので、構造物を傷つけないとか、刺さって抜けなくなるようなことがないとか。 明が日本刀を輸入したのは、和冦が使う威力を目の当たりにしたためだと言われています。 (325 566,567) 何故日本の武士は手持ち手盾を持たなかったのでしょう? 要らないから。 防御は鎧と設置タイプの盾の仕事。 手を塞ぐ盾もあったことはあったけど、使うのは矢弾を防ぎなら近付く時ぐらい。 鉄砲登場後は竹束ぐらい使わないと意味ないしね。 (610 モッティ ◆uSDglizB3o) 盾って言うのは、比較的起伏が少なく、草木が少ない地形でこそ役に立つもの。 そして同時に、盾を使いこなせるだけの練度がなければいけない。 どっちも、戦国時代後期までの日本にはなかったもの(前者は今もだけど)。 戦国時代の集団歩兵だと、長柄を使ったから、盾は必要なかった。 置き盾は、火縄銃の攻撃を防いだりするのに役に立ったけど。 で、練度の高い武装集団たる武士だけど、日本は昔から武人=弓手みたいな価値観が あって、矢を防ぐ機能は鎧が担った。モンゴル軍も、持盾は使用してないだろ? 剣や槍なら盾と一緒に持てるけど、弓は無理だから。 鎧が発達してたのでわざわざ手に持つタイプの盾は要らなかったとも言える。 (610 251) あ、手盾って言葉があるように限定的な防御用としてはあったよ。 欧州ほど普及しなかったけど 手盾なんてもってたら槍も弓も鉄砲も日本刀も使えない (632 モッティ ◆uSDglizB3o) でも地中海では盾持ったまま長い槍使ってなかったっけ? あの時代は、ほとんど鎧を身に着けていませんでしたがね。 一時期青銅製の鎧が使われたりもしていたみたいですが、重いということで、リネンキュラッサと いう麻の布を重ねた簡易の胴鎧にとって代わられています。 ようするに、実用的な金属鎧を作れなかったので、盾に防御を頼らざるを得なかったということで しょう。 (632 467) 秀吉の時、海洋国家の癖に朝鮮ごときに負けたのは何で? 朝鮮水軍や亀甲船が秀吉の唐入り失敗の主原因だってのはただの神話。 実際に海上ゲリラ戦仕掛けられて痛い目に遭ってはいるが、 船団護衛方式を採る事によって対抗しているので、 海上優勢を巡る争いで主導権を握ってたのは日本側。 一定の負担になってはいるけどね。 実際の主要因は遠隔地への補給の負担が重すぎた事と 秀吉の病状悪化により国内諸勢力を押さえきれなくなった事。 つーかそもそも朝鮮南部はともかく、 北部から明直轄地あたりを恒久的に支配する能力がなかったため、 最初から明を脅かし交渉で勝てる要素に乏しかった事。 日本の水軍は「水」軍と言われてるように内水向けの軍隊 海を越えるような遠征はほとんど考えてなかった 日本がというか、当時日本周辺で外洋海軍持ってた国はいない。 つか中国文化圏では船、特に大型船といえばジャンクに代表される 龍骨を持たない構造が主だったので、凌波性に限界があった。 そのために波の荒い外洋を長距離航海するのはまさに命がけで、 その状態で戦闘するとかありえない。 つまり水上戦といえば沿岸部での戦いだったのが当時の常識。 対して西洋では地中海という冬以外は波の穏やかな海があったため、 古代から海戦の概念が存在した。 (672 704) 日本で大型の攻城兵器が発達しなかったのはなぜでしょうか? 一般的にイメージされる日本の城が出現したのが戦国末期から安土桃山にかけて。 それ以前の山城の時代はどっちかっていうと地形を利用した砦や陣地に近く、 石垣があるだけでも戦国時代の一般的な水準なら本拠地にあるかどうかレベル。 だから地形を変えるレベルで土木工事してくる古代ローマ軍ぐらいの 技術と根性がなきゃ大規模な攻城兵器の使用は難しい。 平城が普及し始めた戦国末期から安土桃山にかけては 古来の大型攻城兵器より大砲の普及の方が早かったんでやっぱり出番はない。 弩については遊牧や牧畜の文化に乏しく材料になる動物の腱が貴重品だったから 竹を中心とする木材を用いて強弓を作る長弓の方向に進歩した。 弩と違い熟練に長期間の訓練が必要だが、 それが逆に武家のアイデンティティーにもマッチしたため (日本は早くから戦う人の特殊化が進んでいる) 戦国末期に手軽に育成できる飛び道具部隊の需要が発見されたとき、 既に火縄銃が出回る時代になってしまっていた。 (686 324) なぜ日本の城下町は城壁で守られていなかったのでしょうか? 外曲輪に城下町を収容したのが小田原城で、東西50町(約5.45km)、南北70町(約7.63km)、 周囲5里(約20km)の範囲に堀を巡らしています。 基本的に日本に於ける城は防御施設ではありません。 どちらかというと、人質と守備兵を入れておく為の施設となります。 城の管理規定である、「城掟」では、城番衆の行動規程、脱走の禁止など応戦に関する条項 はありません。 家臣が出陣する際の質(嫡男とか妻)、職人・商人も領国内で営業する為に質を置き、農民は 夫役の為に駆り出され、妻子は城内に収容されて質となり、夫役は惣構の城の外周に配置 されていました。 これらは全て、城からの逃亡防止の為の措置です。 また惣構とか宿城というもので、城下町や家臣団の住地をすっぽり覆うことも行なわれています。 これも、欠落者防止、人質確保の為に作られています。 ちなみに、平城になったのは、戦国末期であり、戦国盛期は山城が主流でした。 この山城が出来たのは、悪党が不法に入手した物資を隠匿する場所として作られた所から発生して おり、居住の為のものではありませんでした。 (136 眠い人 ◆gQikaJHtf2) 忍者が実際に戦場に出て戦ったり、手柄を立てたりした例ってないのでしょうか? 服部半蔵は戦場で活躍したから江戸城の半蔵門に名前がつけられたはず 服部半蔵は、本能寺の変のときに家康が伊賀越えで三河に帰った ときの地元工作などが評価されて名を残したはずです。 乱波(らっぱ)は読んで字の如く敵地の内情探るのが第一 次に民衆に恐怖感を吹聴する 等が任務 半蔵は甲斐、信州方面の偵察 有名な伊賀越えで無事帰国させた事で 家康の信任を勝ち取った 忍者は戦場では陽動の為の支援活動等が任務です 半蔵は家康の長男信康の介錯も務めたれっきとした武士ですので 武士として、または諜報活動等で功績があったかもしれませんが 忍者が戦場で敵を倒して手柄うんぬんはないでしょう 戦闘機や爆撃機ではなく偵察機や電子戦機のような支援的な存在です 任務中にやむを得ず戦うこともありますが 基本的には戦闘はしません 半蔵門は伊賀同心が警護していたことからその名がついたとも言われます 忍者を戦力として有効活用した例としては、天文10年(1541年)の川越の夜戦が挙げられます 北条家の川越城を上杉家が包囲しましたが、夜戦により撃退されたものです 長い間、夜間の攻撃を仕掛けたのが、北条家正規軍であったのか、忍者衆による不正規戦であったのか論争がありましたが、 正規戦であったとしては資料が極端に少なく、さらに川越城の発掘調査により、少なくとも上杉軍が忍者と見られる 不正規戦術により強襲を受けたことが分かっています。 北条家に仕えた風魔忍軍は諜報活動のほか、戦場でのかく乱、強襲を行うことが特徴で、スパイのみならずコマンド部隊と しての性格を併せ持っていたと考えられています。 (208 830-840)
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登録日:2011/11/27(日) 00 26 25 更新日:2024/03/25 Mon 02 26 25NEW! 所要時間:約 15 分で読めます ▽タグ一覧 どうしてこうなった 列車種別 各駅停車 東横線 蔑称 鉄道 隔駅停車 電車 鉄道において、やたらと停車駅の多い急行や快速を指す蔑称。 言わずもがな「各駅停車」と掛けている。 元々は東急東横線の急行を指す単語。 北海道・東北地方の路線宗谷本線【快速なよろ】 函館本線(小樽~岩見沢)【区間快速いしかりライナー】 函館本線(蘭越~札幌)【快速ニセコライナー】 函館本線・千歳線(札幌~新千歳空港)【区間快速エアポート】 根室本線(滝川~帯広)・富良野線【快速狩勝】【快速】 根室本線(花咲線:釧路~根室)【快速ノサップ】【快速はなさき】 釧網本線【快速しれとこ摩周】 奥羽本線・五能線【快速深浦】 青い森鉄道青い森鉄道線・大湊線【快速しもきた】【快速】 花輪線・IGRいわて銀河鉄道いわて銀河鉄道線【快速八幡平】 秋田内陸縦貫鉄道秋田内陸線【快速】 北上線【快速】 羽越本線・陸羽西線【快速最上川】 仙石東北ライン(東北本線・仙石線)【快速(緑)】 東北本線【快速仙台シティラビット】 磐越西線・只見線・会津鉄道・野岩鉄道・東武鉄道【快速AIZUマウントエクスプレス】 関東地方の路線東急東横線・みなとみらい線【急行】 東急新横浜線・東急目黒線【急行】 京王線・高尾線・相模原線【快速】 京成本線【急行】 小田急小田原線・多摩線【区間準急】 小田急小田原線【準急】 つくばエクスプレス【通快】【区快】 京葉線【快速】・武蔵野線【快速】 京浜東北線・根岸線【快速】 横浜線【快速】 京急本線・京急空港線・京急逗子線【急行】(変更前※【エアポート急行】) 東武日光線(閑散線区)・鬼怒川線【区間急行】 いすみ鉄道いすみ線【急行】 中部地方の路線えちごトキめき鉄道日本海ひすいライン【快速】 えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン【快速】 中央本線(JR東海)【快速】【区間快速】 関西本線(JR東海)【区間快速】 飯田線【快速】【快速みすず】 中央本線(JR東日本)・大糸線(JR東日本)・篠ノ井線【快速】【みすず】 しなの鉄道しなの鉄道線【快速】 名鉄岐阜市内線・揖斐線【急行】 明知鉄道明知線【急行大正ロマン】【快速】 富山地方鉄道本線【急行】 城端線【快速】 北鉄石川総線(石川線・金名線)【準急】 北鉄浅野川線【急行】 えちぜん鉄道三国芦原線【快速】 近畿地方の路線阪神本線【準急】 近鉄京都線【準急】 近鉄奈良線・難波線【区間準急】 近鉄吉野線【特急】 福知山線(JR宝塚線)・JR東西線・学研都市線【区間快速】 神鉄神戸高速線・有馬線・三田線・粟生線【急行】【準急】 阪急京都本線・千里線【準急】 阪急宝塚本線・箕面線【通勤急行】【通勤準急】【準急】 阪急神戸本線・今津線【急行】【通勤急行】【準急】 山陰本線(京都~福知山)・嵯峨野線【快速】 京都丹後鉄道宮福線【快速大江山】 紀勢本線(JR西日本きのくに線)【快速】 神戸新交通ポートアイランド線【快速】 中国・四国地方の路線山陰本線(鳥取~米子)【快速とっとりライナー】 山陰本線(米子~益田)【快速アクアライナー】 山陽本線(岡山~福山)【快速サンライナー】 瀬戸大橋線(宇野線・本四備讃線・予讃線)【快速マリンライナー】・宇野線【普通】 津山線【快速ことぶき】 伯備線【快速】 福塩線【快速】 徳島線【快速】 土佐くろしお鉄道阿佐線(ごめん・なはり線)【快速】 九州地方の路線福北ゆたか線(鹿児島本線・篠栗線・筑豊本線)【快速】 鹿児島本線【区間快速】 鹿児島本線【快速くまもとライナー】 日田彦山線【快速】 日豊本線【特急きりしま】 日南線【快速日南マリーン】 指宿枕崎線【快速なのはな】 長崎本線・大村線・佐世保線【快速シーサイドライナー】【区間快速シーサイドライナー】 松浦鉄道西九州線【快速】 西鉄天神大牟田線【急行】 隔駅停車が生じる原因と対策 北海道・東北地方の路線 宗谷本線【快速なよろ】 前身は1986年11月1日のダイヤ改正時に設定された愛称付きの快速(同改正前には図中のような無名快速列車が存在した)で、急行紋別から運転区間短縮・格下げされた名寄本線直通列車はえんれい/てしおがわ、音威子府~名寄間を普通として運行する列車にはピヤシリ/すずいしが付与されていた。 しかし、1990年9月1日のダイヤ改正でかつて札幌・旭川~名寄間で運転していた急行や臨時快速が冠していた現在の愛称に統一された経緯がある。 快速なよろの基本停車駅と一部停車駅は多寄や名寄高校を除いて前身から踏襲していて、特別停車の多い2号は隔駅停車に近くなっている。 ★:急行紋別で通過する列車を設定していた頃もあった ◎:快速なよろ2号の特別停車駅 ※:2021年3月13日のダイヤ改正で廃止 ※:2022年3月12日のダイヤ改正で移転・改称 旭川 旭川四条 新旭川 永山 北永山 南比布※ 比布 北比布※ 蘭留 塩狩 和寒 東六線※ 剣淵 北剣淵※ 士別 下士別※ 多寄 瑞穂 風連 東風連↓名寄高校※ 名寄 比較対象■ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ★ ━ ━ ━ ■ ━ ━ ━ ━ ━ ■ 急行なよろ/紋別● ━ ━ ● ━ ━ ━ ━ ━ ━ ● ━ ━ ━ ● ━ ━ ━ ━ ━ ● 快速● ● ━ ● ━ ━ ● ━ ━ ━ ● ━ ● ━ ● ━ ━ ━ ● ━ ● 快速えんれい● ━ ━ ● ━ ━ ● ━ ━ ━ ● ━ ━ ━ ● ━ ━ ━ ━ ━ ● 快速てしおがわ● ━ ━ ● ━ ━ ● ━ ● ━ ● ━ ━ ━ ● ━ ━ ━ ━ ━ ● 快速ピヤシリ● ━ ━ ● ━ ━ ● ━ ● ● ● ━ ● ━ ● ━ ━ ━ ● ━ ● 快速すずいし● ◎ ━ ● ━ ━ ● ━ ◎ ◎ ● ━ ● ━ ● ━ ━ ━ ● ● ● 快速なよろ2号 函館本線(小樽~岩見沢)【区間快速いしかりライナー】 1988年11月3日のダイヤ改正で札幌~江別方面を結ぶ快速として登場したが、2001年7月1日のダイヤ改正で区間快速に変更されている。 2000年3月11日のダイヤ改正で快速マリンライナーの一部が編入されて手稲~札幌間も快速運転する便が設定されたものの、2007年10月1日のダイヤ改正で手稲~札幌間快速運転のCと札幌~江別間快速運転のDに再編されてDは白石へ追加停車するようになった経緯がある。 通過駅の利用者増を理由に、2020年3月14日のダイヤ改正を以って廃止されることとなった。 小樽 南小樽 小樽築港 朝里 銭函 ほしみ 星置 稲穂 手稲 稲積公園 発寒 発寒中央 琴似 桑園 札幌 苗穂 白石 厚別 森林公園 大麻 野幌 高砂 江別 豊幌 幌向 上幌向 岩見沢 種別● ● ● ● ● ● ● ● ● ━ ━ ━ ● ━ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● C● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ━ ● ━ ━ ● ● ━ ● ● ● ● ● D 函館本線(蘭越~札幌)【快速ニセコライナー】 2000年3月11日のダイヤ改正で札幌都市圏の快速列車体系を見直すことになり、快速マリンライナーに代わって設定された。 2024年3月16日のダイヤ改正で、通勤時間帯の利便性向上と前後列車の混雑緩和を理由に、小樽~手稲の各駅停車化と桑園の追加停車が実施された結果、通過駅は3駅へ減少した。 蘭越 昆布 ニセコ 比羅夫 倶知安 小沢 銀山 然別 仁木 余市 蘭島 塩谷 小樽 南小樽 小樽築港 朝里 銭函 ほしみ 星置 稲穂 手稲 稲積公園 発寒 発寒中央 琴似 桑園 札幌 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ━ ━ ━ ● ● ● 函館本線・千歳線(札幌~新千歳空港)【区間快速エアポート】 2024年3月16日のダイヤ改正で空港連絡快速の輸送力を増強することになり、北広島~南千歳の地域輸送も担当する形で新設された。 ※:正式な駅名はH11サッポロビール庭園 函館本線 千歳線札幌 苗穂 白石 平和 新札幌 上野幌 北広島 島松 恵み野 恵庭 SB庭園※ 長都 千歳 南千歳 新千歳空港 ● ━ ━ ━ ● ━ ● ● ● ● ● ● ● ● ● 根室本線(滝川~帯広)・富良野線【快速狩勝】【快速】 快速狩勝は、1990年9月1日のダイヤ改正で急行狩勝から格下げされると同時に快速十勝を吸収合併して誕生している。 旭川発着の快速十勝も1986年11月1日のダイヤ改正で急行狩勝の減便が格下げされた列車であるため、元鞘に戻った形となる。 快速狩勝は滝川/旭川(※富良野線直通)~帯広/池田を結んでいたが、2016年の台風10号による被害の影響で東鹿越~新得はバスによる代走区間となっている。 また、快速狩勝の旭川発着便は2018年4月20日のダイヤ改正で廃止されて、2021年3月13日のダイヤ改正で新得~帯広の快速列車が全廃されている。 2024年3月16日のダイヤ改正で快速狩勝と快速は普通列車に置き換えられて、同年4月1日には富良野~新得が廃止される。 ◎:上りの一部列車が通過 ▼:下りのみ停車 ※:1991年10月22日に滝里ダム建設に伴うルート変更で廃止 ※:2017年3月4日に旅客営業を終了して島ノ下信号場へ変更 ※:2018年3月17日に廃止 滝川 東滝川 赤平 茂尻 平岸 芦別 上芦別 野花南 島ノ下※ 滝里※ 富良野 布部 山部 下金山 金山 東鹿越 幾寅 落合 新得 十勝清水 羽帯※ 御影 芽室 大成 西帯広 柏林台 帯広 備考 比較対象●= ━= ●= ━= ━= ●= ━= ━= ━= ━= ●┛ ━_ ●_ ━_ ━_ ━_ ●_ ━_ ●_ ●_ ━_ ━_ ●_ ━_ ━_ ━_ ●_ 帯広~釧路間は普通富良野線内普通 急行狩勝●= ━= ●= ●= ━= ●= ●= ●= == == ●● ●━ ●● ●━ ●● ●● ●● ●● ●● ●● == ━● ●● ━━ ━━ ━━ ●● 帯広~池田間は普通富良野線内普通 快速狩勝●_ ━_ ●_ ●_ ━_ ●_ ●_ ●_ =_ =_ ●_ ━_ ●_ ━_ ●_ ●_ ●_ ●_ ●● _● _= _● _● _━ _▼ _━ _● 快速 根室本線(花咲線:釧路~根室)【快速ノサップ】【快速はなさき】 1989年5月1日のダイヤ改正で急行ノサップから格下げされて快速ノサップが誕生。 1992年7月1日のダイヤ改正で2往復の内1往復が快速はなさきに改称される経緯を辿っている。 快速ノサップは2016年3月16日のダイヤ改正で停車駅の多い下りのみ残置されることになり、快速はなさきは2016年3月16日のダイヤ改正で下りが厚床~根室間で各駅停車化。 2017年3月4日のダイヤ改正で上りも同区間が各駅停車化して、上下ともに釧路/東釧路~厚岸を除いて2駅以上飛ばす区間が無くなった。 経営状況が悪化したJR北海道のコスト圧縮によって普通列車が減便された影響であり、やむを得ないと言える。 ▼:下りのみ停車 ※:2016年3月26日に廃止 ※:2019年3月16日に廃止 ※:2022年3月12日に廃止 釧路 東釧路 武佐 別保 上尾幌 尾幌 門静 厚岸 糸魚沢※ 茶内 浜中 姉別 厚床 初田牛※ 別当賀 落石 昆布盛 西和田 花咲※ 東根室 根室 比較対象● ━ ━ ━ ━ ━ ━ ● ━ ● ● ━ ● ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ● 急行ノサップ● ● ● ● ● → → ● = ● ● → ● = → ● → → = → ● 快速ノサップ● ▼ ━ ━ ━ ━ ━ ● = ● ● ━ ● = ● ● ● ● = ● ● 快速はなさき 釧網本線【快速しれとこ摩周】 前身は1989年5月1日のダイヤ改正で設定された快速しれとこで、沿線自治体の要望を受けて2018年3月17日のダイヤ改正で改称された。 2016年3月26日のダイヤ改正で桂台(※上り)と鱒浦(※上り)と美留和が停車駅に追加され、2017年3月4日のダイヤ改正で下りも桂台と鱒浦へ停まるようになった。 そのため、普通列車とは細岡の停通しか差がなく、通年の下り及び釧路湿原臨時停車の上りは釧路湿原通過の普通列車と通過駅数が同じである。 ○:一部停車 ★:5月1日~10月31日に臨時停車 ★:5月1日~11月30日に臨時停車 ※:1987年4月1日に仮乗降場から駅へ昇格 ※:1988年3月13日に川湯から改称 ※:1988年7月13日に臨時駅として開業し、1996年12月1日に駅へ昇格 ※:1990年11月20日に弟子屈から改称 ※:1998年4月11日に斜里から改称 ※:2017年3月4日に廃止 ※:2020年3月14日に廃止 ※:2021年3月13日に廃止 ※:2023年3月18日に季節営業化(4月15日~11月30日のみ) ※:根室本線 釧網本線 ※ 比較対象網走 桂台※ 鱒浦 藻琴 北浜 原生花園 浜小清水 止別 知床斜里※ 中斜里 南斜里※ 清里町 札弦 緑 川湯温泉※ 美留和 摩周※ 南弟子屈※ 磯分内 標茶 五十石※ 茅沼 塘路 細岡※ 釧路湿原※ 遠矢 東釧路 釧路 ● ━ ━ ━ ━ ━ ● ━ ● ━ ━ ● ━ ━ ● ━ ● ━ ○ ● ━ ━ ● ━ = ━ ━ ● 急行しれとこ● ● ● ● ● ★ ● ● ● ● = ● ● ● ● ● ● = ● ● = ● ● ━ ★ ● ● ● 快速しれとこ摩周 奥羽本線・五能線【快速深浦】 1982年11月15日のダイヤ改正で急行から降格されて、2002年12月1日のダイヤ改正で弘前・青森行きも五能線内各駅停車化。 2010年12月4日の東北新幹線全面開業で新青森が停車駅に追加、青森行きは鶴ヶ坂で運転停車するために実質的な通過駅は大釈迦のみとなってしまう。 降格当初から通過駅は少なくて速達性は限定的だったが、2014年3月15日のダイヤ改正で遂に廃止された。 五能線 奥羽本線 時期深浦 広戸 追良瀬 驫木 風合瀬 大戸瀬 千畳敷 北金ケ沢 陸奥柳田 陸奥赤石 鰺ケ沢 鳴沢 越水 陸奥森田 中田 木造 五所川原 陸奥鶴田 鶴泊 板柳 林崎 藤崎 川部 撫牛子 弘前 北常盤 浪岡 大釈迦 鶴ケ坂 津軽新城 新青森 青森 ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● →● ●● →● ●● ●● == == ●● ●● →← →← ●● →← ●● 1982年11月15日ダイヤ改正● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ━ ━ ● ● ● 廃止直前 青い森鉄道青い森鉄道線・大湊線【快速しもきた】【快速】 1993年12月1日のダイヤ改正で改称された快速うそりの後継列車。 2010年12月4日に東青森・上北町・下田、2017年3月4日に筒井・小柳・矢田前・野内が停車駅へ追加されて一部が隔駅停車と化している。 なお2018年3月17日のダイヤ改正まで設定されていた無名快速はしもきたよりも停車駅が多く、通過駅は2駅に留まる502M列車が存在していた。 2021年3月13日のダイヤ改正で、青森発着の列車が廃止されている。 ○:一部停車 大湊線 青い森鉄道線 備考大湊 下北 赤川 金谷沢 近川 有畑 陸奥横浜 吹越 有戸 北野辺地 野辺地 千曳 乙供 上北町 小川原 三沢 向山 下田 陸奥市川 八戸 狩場沢 清水川 小湊 西平内 浅虫温泉 野内 矢田前 小柳 東青森 筒井 青森 ●● ●● ━━ ━━ ○━ ━━ ●● ━━ ━━ ━━ ●● ━= ○= ●= ━= ●= ━= ●= ━= ●= ━ ━ ● ━ ● ● ● ● ● ● ● 快速しもきた基本停車駅●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ←= ●= ●= ←= ●= ←= ●= ←= ●= ← ← ● ← ● ● ● ● ● ● ● 快速しもきた最多停車便 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ← ● ● ← ● ● ● ● ● ● ● 快速(502M) 花輪線・IGRいわて銀河鉄道いわて銀河鉄道線【快速八幡平】 1985年3月14日のダイヤ改正によって急行よねしろから降格される形で登場した。 2001年12月1日に渋民と滝沢が停車駅に追加されて、2009年3月14日に下りが好摩~松尾八幡平で各駅停車化。 2010年12月4日には上下共に盛岡~滝沢でも各駅停車化されて、下りは隔駅停車の仲間入りを果たしている。 そして2015年3月14日のダイヤ改正で廃止に至った。 花輪線 いわて銀河鉄道線 備考大館 東大館 扇田 大滝温泉 十二所 沢尻 土深井 末広 十和田南 柴平 鹿角花輪 陸中大里 八幡平 湯瀬温泉 兄畑 田山 横間 荒屋新町 小屋の畑 赤坂田 安比高原 松尾八幡平 北森 平館 大更 東大更 好摩 渋民 滝沢 巣子 厨川 青山 盛岡 ● ● ● ● → → → → ● → ● → → ● → ● → ● → → ● ● → ● ● → ● ● ● ● ● ● ● 上り● ● ● ● ● ● ● ● ● ← ● ← ← ● ← ● ← ● ← ← ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 下り 秋田内陸縦貫鉄道秋田内陸線【快速】 2014年3月17日のダイヤ改正によって、普通から昇格する形で設定されている。 列車によって停車駅が異なり、一部は隔駅停車に該当する。 2023年7月22日のダイヤ改正で、上下各1本まで減少している。 ※:2020年3月14日に小ヶ田から改称 ※:2021年3月13日に阿仁前田から改称 列車番号 角館 羽後太田 西明寺 八津 羽後長戸呂 松葉 羽後中里 左通 上桧木内 戸沢 阿仁マタギ 奥阿仁 比立内 岩野目 笑内 萱草 荒瀬 阿仁合 小渕 前田南 阿仁前田温泉※ 桂瀬 米内沢 上杉 合川 大野台 縄文小ヶ田※ 西鷹巣 鷹巣201D ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ← ● ← ← ← ← ● 106D ● → ● ● → ● → → ● → ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 北上線【快速】 2017年3月4日のダイヤ改正時に、速達化の要望に応える形で無名快速が設定された。 設定当初の通過駅は3駅で、内2駅は冬季限定ながら普通も前年のダイヤ改正で停車しなくなった駅である。 2022年3月12日のダイヤ改正で矢美津と平石が廃止されたため、快速の通過駅は小松川のみとなった。 ※:2022年3月12日のダイヤ改正で廃止 ☆:12月~3月の冬季中は通過 横手 矢美津※ 相野々 平石※ 小松川 黒沢 ゆだ高原 ほっとゆだ ゆだ錦秋湖 和賀仙人 岩沢 横川目 立川目 藤根 江釣子 柳原 北上 ● ━ ● ━ ━ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 羽越本線・陸羽西線【快速最上川】 1999年12月4日のダイヤ改正で現在の愛称を付与されたが、同年3月11日までは急行時代と同じ月山を名乗っていた。 2019年3月15日のダイヤ改正で酒田行きが陸羽西線内各駅停車に変更されたため、下り列車の通過駅は僅か3駅となってしまった。 2022年3月12日のダイヤ改正で羽越本線との直通が中止された結果、陸羽西線内各駅停車だった下りは普通に置き換わっている。 羽越本線 陸羽西線 備考酒田 東酒田 砂越 北余目 余目 南野 狩川 清川 高屋 古口 津谷 羽前前波 升形 新庄 ● → → → ● → ● → → ● → → → ● 上り● ← ← ← ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 下り 仙石東北ライン(東北本線・仙石線)【快速(緑)】 東北本線普通と旧仙石線快速(緑)のハイブリッドだが、東矢本のみ停車駅から外された。 高城町~石巻で二駅以上通過する区間が高城町~野蒜に限られている点は、仙石東北ライン開業前と変わらない。 ○:一部停車 東北本線 仙石線仙台 東仙台 岩切 陸前山王 国府多賀城 塩釜 高城町 手樽 陸前富山 陸前大塚 東名 野蒜 陸前小野 鹿妻 矢本 東矢本 陸前赤井 石巻あゆみ野 蛇田 陸前山下 石巻● ● ● ● ● ● ● ━ ━ ━ ━ ● ● ━ ● ━ ● ○ ● ● ● 東北本線【快速仙台シティラビット】 元々は1989年に登場した無名快速で、2000年12月4日のダイヤ改正で高速バス対抗の一環として愛称が付与されている。 455系急行形電車で運用する便には指定席が設定されていたが、2007年3月18日のダイヤ改正で同形式が離脱したために全車自由席へ変更されている。 2003年6月1日から2012年3月16日まで運転されていた臨時列車には、70番台の号(最盛期:71号~76号)が充当されていた。 ダイヤ改正を経るたびに停車駅が増加していて、現在は隔駅停車扱いする利用者もいるという。 2021年3月13日のダイヤ改正で、輸送障害発生時の影響範囲を小さくする意図から日中時間帯に白石で運転系統の分離が実施されることになり、廃止に至った。 ※:上下各1本通過 福島 東福島 伊達 桑折 藤田 貝田 越河 白石 東白石 北白川 大河原 船岡 槻木 岩沼 館腰 名取 南仙台 太子堂 長町 仙台 運転時期 備考● ● ● ━ ━ ━ ━ ● ━ ━ ● ━ ━ ● ━ ━ ━ ━ ━ ● 2000.12.04~2002.11.30 定期列車● ● ● ※ ※ ━ ━ ● ━ ━ ● ━ ※ ● ━ ※ ━ ━ ━ ● 2002.12.01~2004.03.12 ● ● ● ● ● ━ ━ ● ━ ━ ● ● ● ● ━ ● ━ ━ ━ ● 2004.03.13~2016.03.25 ● ● ● ● ● ━ ━ ● ━ ━ ● ● ● ● ━ ● ● ━ ● ● 2016.03.26~2021.03.12 ● ━ ━ ━ ━ ━ ━ ● ━ ━ ━ ━ ━ ● ━ ━ ━ ━ ━ ● 2004.03.13~2005.12.09 臨時列車● ━ ━ ━ ━ ━ ━ ● ━ ━ ● ━ ━ ● ━ ━ ━ ━ ━ ● 2005.12.10~2008.03.14 ● ━ ━ ━ ━ ━ ━ ● ━ ━ ● ━ ━ ● ━ ● ━ ━ ━ ● 2008.03.15~2012.03.16 磐越西線・只見線・会津鉄道・野岩鉄道・東武鉄道【快速AIZUマウントエクスプレス】 2002年に登場した気動車快速で、会津方面と日光・鬼怒川方面を連絡する列車となっている。 高山~新名古屋(現:名鉄名古屋)を結ぶ特急の北アルプスで運用していたキハ8500系が投入されたので注目を浴びたが、現在はAT-600/650形(転換式クロスシート車)ないしAT-700/750形(回転式リクライニングシート車)に置き換わっている。 ダイヤ改正を経る度に各駅停車となる区間が伸びており、磐越西線内を除いて男鹿高原以外は通過しないという便も登場している。 速達列車は会津田島発着の特急リバティ会津と接続するリレー号の内、快速として設定された列車が担っている。 ○:一部停車 ※:正式駅名は東武ワールドスクウェアで、2017年7月22日に開業 ※:2006年3月18日に中三依から現駅名の中三依温泉へ改称 ※:2006年3月18日に上三依塩原から現駅名の上三依塩原温泉口へ改称 ※:2006年3月18日に会津高原から現駅名の会津高原尾瀬口へ改称 ※:2002年8月29日に開業 東武日光線・鬼怒川線 野岩鉄道会津鬼怒川線 会津鉄道会津線 只見線 磐越西線 ダイヤ改正東武日光 上今市 下今市 大谷向 大桑 新高徳 小佐越 東武WS※ 鬼怒川温泉 鬼怒川公園 新藤原 龍王峡 川治温泉 川治湯元 湯西川温泉 中三依温泉※ 上三依塩原温泉口※ 男鹿高原 会津高原尾瀬口※ 七ヶ岳登山口 会津山村道場 会津荒海 中荒井 会津田島 田島高校前 会津長野 養鱒公園 ふるさと公園※ 会津下郷 弥五島 塔のへつり 湯野上温泉 芦ノ牧温泉南 大川ダム公園 芦ノ牧温泉 あまや 門田 南若松 西若松 七日町 会津若松 堂島 笈川 塩川 姥堂 会津豊川 喜多方 ● ― ― ― ― ● ― 〇 ● ― ― ● ― ― ― ● ● ● 2002.03.23 ● ― ― ― ― ● ― 〇 ● ― ― ● ― ― ― ● ● ● ― ― ● ― ― ● 2003.10.14 ● ● ● ― ● ― ● ― ● ― ● ― ― ― ― ● 〇 〇 〇 〇 ● 〇 〇 ● 〇 〇 ● 〇 〇 〇 ● ● ● ― ― ● ― ― ● 2005.03.01 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ― ● ― ― ― ― ● 〇 〇 〇 〇 ● 〇 〇 ● 〇 〇 ● 〇 〇 〇 ● ● ● ― ― ● ― ― ● 2008.03.15● ● ● ● ● ● ● = ● ● ● ● ● ● ● ● ● ― ● ― ― ― ― ● 〇 〇 〇 〇 ● 〇 〇 ● 〇 〇 ● 〇 〇 〇 ● ● ● ― ― ● ― ― ● 2012.03.17● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ― ● 〇 〇 〇 〇 ● 〇 〇 〇 〇 ● 〇 〇 ● 〇 〇 ● 〇 〇 〇 ● ● ● ― ― ● ― ― ● 2017.04.21● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ― ● 〇 〇 〇 〇 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ― ― ● ― ― ● 2020.06.06 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ― ● 〇 〇 〇 〇 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● → → ● → → ● 2022.03.12 関東地方の路線 東急東横線・みなとみらい線【急行】 東横線の急行の停車駅変遷は、以下の通りであった。 ○:朝ラッシュ時のみ停車 ※:碑文谷(1927/08/28)→青山師範(1936/04/01)→第一師範(1943/02/01)→学芸大学(1952/07/01) ※:柿の木坂(1927/08/28)→府立高等前(1931/07/25)→府立高等(1932/3/31)→都立高校(1943/12/01)→都立大学(1952/07/01) ※:1944年10月20日に網島温泉から現駅名の網島へ改称 ※:1945年6月16日に開業し、1953年4月1日に工業都市(1939年12月11日開業)と統合 ※:1977年12月16日に多摩川園前から現駅名の多摩川へ改称 東急東横線 みなとみらい線 備考渋谷 代官山 中目黒 祐天寺 学芸大学※ 都立大学※ 自由ヶ丘 田園調布 多摩川※ 新丸子 武蔵小杉※ 元住吉 日吉 網島※ 大倉山 菊名 妙蓮寺 白楽 東白楽 反町 横浜 高島町 桜木町 新高島 みなとみらい 馬車道 日本大通り 元町・中華街 ● ― ― ― ● ― ● ● ― ● ― ― ● ● ― ― ● ― ― ● ● ― ● 1935.02.01~1941.08.031950.08.01~1952.03.31● ― ― ― ● ― ● ● ― ― ● ― ● ● ― ● ― ― ― ― ● ― ● 1955.04.01~1955.09.301956.10.01~1964.08.28● ― ― ― ● ― ● ● ― ― ● ― ● ● ― ● ○ ○ ○ ○ ● ― ● 1955.10.01~1956.09.30● ― ● ― ● ― ● ● ― ― ● ― ● ● ― ● ― ― ― ― ● ― ● 1964.08.29~2000.08.05● ― ● ― ● ― ● ● ● ― ● ― ● ● ― ● ― ― ― ― ● ― ● 2000.08.06~2004.01.31● ― ● ― ● ― ● ● ● ― ● ― ● ● ― ● ― ― ― ― ● = = ― ● ● ● ● 2004.02.01~ おわかりだろうか。 日比谷線が全線開業した1964年に中目黒、目蒲線の系統分割で多摩川線が登場した2000年には多摩川が停車駅へ追加。 そして2003年に横浜~桜木町の廃止及び横浜高速鉄道みなとみらい線との相互直通運転が実施された結果、後半の4駅通過区間を除き全ての区間が1駅通過のみなのである。 それどころか3駅連続停車や4駅連続停車(*1)まで存在する始末。 これでは急行の意味が殆ど無いではないか! そこで住民は猛反発、その時に生まれた言葉が「隔駅停車」。 因みに東横線は急行の上位種別、特急と通勤特急を出すことで解決した。 もっとも本命は湘南新宿ライン対策であり、あくまでも二義的なものである。 ちなみに各駅停車との退避接続はちゃんとあるし、各駅停車より15分くらい速く、特急とは5分ほど遅いくらいだったりと、所要時間自体は別にそこまで遅くはない。 【特急】 東急東横線 みなとみらい線 備考渋谷 代官山 中目黒 祐天寺 学芸大学 都立大学 自由ヶ丘 田園調布 多摩川 新丸子 武蔵小杉 元住吉 日吉 網島 大倉山 菊名 妙蓮寺 白楽 東白楽 反町 横浜 高島町 桜木町 新高島 みなとみらい 馬車道 日本大通り 元町・中華街 ● ― ― ― ― ― ● ― ― ― ● ― ― ― ― ● ― ― ― ― ● ― ● 2001.03.28~2003.03.18● ― ● ― ― ― ● ― ― ― ● ― ― ― ― ● ― ― ― ― ● ― ● 2003.03.19~2004.01.31● ― ● ― ― ― ● ― ― ― ● ― ― ― ― ● ― ― ― ― ● = = ― ● ― ― ● 2004.02.01~ かなりスッキリしている。 東急新横浜線・東急目黒線【急行】 2006年9月25日のダイヤ改正で登場。 直通先の相鉄新横浜線・都営三田線・東京メトロ南北線・埼玉高速鉄道線内は各駅停車。 東急新横浜線 目黒線新横浜 新網島 日吉 元住吉 武蔵小杉 新丸子 多摩川 田園調布 奥沢 大岡山 洗足 西小山 武蔵小山 不動前 目黒● ● ● ― ● ― ● ● ― ● ― ― ● ― ● 京王線・高尾線・相模原線【快速】 京王線の快速も隔駅停車と言われることがある。 つつじヶ丘~調布間こそ三駅通過だが、新宿~つつじヶ丘間は一駅通過が多い。 こうなった理由は2001年のダイヤ改正で各駅停車が減便した時にその救済措置で停車駅が増えたため、停車駅が多いのは必然と言える。 また京王は特急と準特急が多く走るが、各駅停車では退避駅に着く前に追いつかれるため、一部を快速にして逃げ切るという意図もある。 そのため速達運転よりもダイヤを上手く回すための意味合いが大きい。 なお、都営新宿線に直通する京王新線の列車は、新宿~笹塚間の途中駅である初台、幡ヶ谷にも停車するため、さらに停車駅が多くなる(*2)。 路線名 新宿 新線新宿 初台 幡ヶ谷 笹塚 代田橋 明大前 下高井戸 桜上水 上北沢 八幡山 芦花公園 千歳烏山 仙川 つつじヶ丘 柴崎 国領 布田 調布 備考京王線 ● = = = ● ― ● ● ● ― ● ― ● ● ● ― ― ― ● 調布以西各駅停車京王新線(都営新宿線直通) = ● ● ● ● ― ● ● ● ― ● ― ● ● ● ― ― ― ● 京成本線【急行】 2002年10月12日のダイヤ改正で、快速へ発展解消する形で廃止されている。 以下は廃止直前の停車駅で、京成津田沼以東は現在の快速と同様に各駅停車である。 ※:2010年7月17日のダイヤ改正以降に停車 京成上野 日暮里 新三河島 町屋 千住大橋 京成関屋 堀切菖蒲園 お花茶屋 青砥 京成高砂 京成小岩 江戸川 国府台 市川真間 菅野 京成八幡 鬼越 京成中山 東中山 京成西船 海神 京成船橋 大神宮下 船橋競馬場 谷津 京成津田沼 比較対象● ● ― ● ● ― ● ― ● ● ● ― ● ● ― ● ― ― ● ― ― ● ― ● ● ● 急行● ● ― ― ※ ― ― ― ● ● ● ― ― ― ― ● ― ― ● ― ― ● ― ● ― ● 快速 小田急小田原線・多摩線【区間準急】 複々線化工事の影響で東北沢の退避が中止されたため、2004年12月11日のダイヤ改正で暫定的に設定された各駅停車の補完種別。 当時は営業上の複線区間だった梅ヶ丘~新宿間のみ優等運転を行い、梅ヶ丘以西は各駅に停車していた。 2016年3月26日のダイヤ改正で、快速急行の増発と引き替えに廃止された。 複々線区間 工事区間 複線区間和泉多摩川 狛江 喜多見 成城学園前 祖師ヶ谷大蔵 千歳船橋 経堂 豪徳寺 梅ヶ丘 世田谷代田 下北沢 東北沢 代々木上原 代々木八幡 参宮橋 南新宿 新宿● ● ● ● ● ● ● ● ● ― ● ― ● ― ― ― ● 小田急小田原線【準急】 2018年3月17日のダイヤ改正で、平日上りラッシュ時は通過する経堂、終日通過していた千歳船橋、祖師ヶ谷大蔵、狛江が停車駅に追加されてほぼ隔駅停車化。 新設される通勤準急がダイヤ改正以前の停車駅を踏襲している(経堂は全便停車)。 停車駅の関係上各駅停車と同じ緩行線を走る事になり、原則各駅停車を追い抜かない・追いつかないダイヤを組まれているため、優等列車ではなく停車駅の減った各駅停車というべき存在となっている。 なお登戸以西は各駅停車。 登戸 和泉多摩川 狛江 喜多見 成城学園前 祖師ヶ谷大蔵 千歳船橋 経堂 豪徳寺 梅ヶ丘 世田谷代田 下北沢 東北沢 代々木上原 備考● ― ● ― ● ● ● ● ― ― ― ● ― ● 東京メトロ千代田線直通 つくばエクスプレス【通快】【区快】 通勤快速は守谷~研究学園間、区間快速は北千住~八潮間を除いて2駅以上通過しない。 それでも通勤快速は7駅通過するのでまだ面目は保たれているが、区間快速はなんと20駅中16駅に停車する。 2020年3月14日のダイヤ改正後、平日上り午前7~8時台の区間快速は六町も停車することになった。 ※:正式駅名は流山セントラルパーク ▲:平日上り午前7~8時台のみ停車 秋葉原 新御徒町 浅草 南千住 北千住 青井 六町 八潮 三郷中央 南流山 流山CP※ 流山おおたかの森 柏の葉キャンパス 柏たなか 守谷 みらい平 みどりの 万博記念公園 研究学園 つくば 種別● ● ● ● ● ― ● ● ― ● ― ● ● ― ● ― ― ― ● ● 通快● ● ● ● ● ― ▲ ● ● ● ― ● ● ― ● ● ● ● ● ● 区快 京葉線【快速】・武蔵野線【快速】 2002年12月1日のダイヤ改正で隔駅停車と呼ばれるようになり、武蔵野快速は2013年3月16日のダイヤ改正で廃止に至った。 直通先の外房線・内房線・東金線でも停車駅が徐々に増加し、現在ではラッシュ時の外房線内を除いて各駅停車となっている。 ○:9:00~18:00の時間帯に停車 ※:1992年3月13日までの駅名は千葉港 ※:2023年3月18日に開業 東京 八丁堀 越中島 潮見 新木場 葛西臨海公園 舞浜 新浦安 市川塩浜 西船橋 二俣新町 南船橋 新習志野 幕張豊砂※ 海浜幕張 検見川浜 稲毛海岸 千葉みなと※ 蘇我 種別 時期● ● ― ― ● ― ● ● ― = ― ― ― = ― ● ● ― ● 京葉線快速(京葉快速) 1990.03.10-2000.12.01● ● ― ― ● ― ● ● ― = ― ― ― = ● ● ● ○ ● 2000.12.02-2002.11.31● ● ― ― ● ― ● ● ― = ― ● ― ― ● ● ● ● ● 2002.12.01~● ― ― ― ― ● ● ● ― = ― ― ― = ― ● ● ― ● マリンドリーム(休日) 1990.03.10-2000.12.01● ― ― ― ● ○ ● ● ― = ― ― ― = ● ● ● ― ● 2000.12.02-2002.11.31● ● ― ― ● ― ● ● ● ● = = = = = = = = = 武蔵野線快速(武蔵野快速) 1990.03.10-2002.11.31● ● ― ― ● ○ ● ● ● ● = = = = = = = = = 2002.12.01-2013.03.15● ― ― ― ― ● ● ● ● ● = = = = = = = = = むさしのドリーム(休日) 1990.03.10-2000.12.01● ― ― ― ● ○ ● ● ● ● = = = = = = = = = 2000.12.02-2002.11.31 京浜東北線・根岸線【快速】 山手線との並走区間のみ優等運転を行うので、設定当初から通過駅は限られていた(45駅中8駅※JK46さいたま新都心&JK21高輪ゲートウェイ開業前)。 しかし乗り換え等に配慮して停車駅を追加した結果、隔駅停車扱いされるようになってしまった。 ○:土休日停車 ※:2020年3月14日開業で、正式な駅名は高輪ゲートウェイ 品川 高輪Gw※ 田町 浜松町 新橋 有楽町 東京 神田 秋葉原 御徒町 上野 鶯谷 日暮里 西日暮里 田端 時期● = ● ― ― ― ● ― ● ― ● ― ― ― ● 1988.03.13-2002.07.13● = ● ● ― ― ● ― ● ― ● ― ― ― ● 2002.07.14-2015.03.13● ● ● ● ━ ━ ● ● ● ○ ● ━ ━ ━ ● 2015.03.14~ 横浜線【快速】 快速運転が始まった当初は、東急線との接続駅である菊名や長津田を通過していたため、末端区間の橋本以西と直通先の京浜東北線・根岸線を除くと連続停車が鴨居と中山の2駅のみだった。 その後、3回のダイヤ改正を経て長津田、相模原、菊名が順に停車駅に追加された結果、連続通過する区間が町田~相模原間の3駅のみとなってしまった。 この他にも日産スタジアムや横浜アリーナでのイベント時には小机に臨時停車することもあり、5駅連続停車になってしまうこともある。 快速運転前の計画では東神奈川~橋本間で中山、町田のみの停車予定だったため、鴨居はおろか東海道新幹線接続駅である新横浜すら通過させる予定だったらしい。 しかし、これではあまりにも利便性が損なわれるということで以下のようになった。 計画段階ではここまで増えるとは思っていなかっただろうが、そもそも東急線接続駅が何故停車駅から外されていたのかは謎である。 ※:1997年4月1日開業 東神奈川 大口 菊名 新横浜 小机 鴨居 中山 十日市場 長津田 成瀬 町田 古淵 淵野辺 矢部 相模原 橋本 相原 八王子みなみ野※ 片倉 八王子 時期● ― ― ● ― ● ● ― ― ― ● ― ― ― ― ● ● = ● ● 1988.03.13-1994.12.02● ― ― ● ― ● ● ― ● ― ● ― ― ― ― ● ● ● ● ● 1994.12.03-1998.03.12● ― ― ● ― ● ● ― ● ― ● ― ― ― ● ● ● ● ● ● 1998.03.13-2006.03.17● ― ● ● ― ● ● ― ● ― ● ― ― ― ● ● ● ● ● ● 2006.03.18~ 京急本線・京急空港線・京急逗子線【急行】(変更前※【エアポート急行】) エアポート急行は2010年5月16日のダイヤ改正時に設定された種別で、快特特急普通の一部と急行を置き換えている。 京浜急行電鉄の担当者が「JR線などの乗り換えなども考慮している」と回答しており、以前に存在した逗子線直通の急行とはやや異なる停車駅を採用している。 羽田空港~都営地下鉄浅草線方面は改称前の停車駅を踏襲しているため、隔駅停車同然のままである。 2023年11月25日のダイヤ改正で、インバウンド需要で増加した訪日客の誤乗対策として停車駅は据え置きながら、エアポート急行が急行へ改称された。 屏風浦 上大岡 弘明寺 井土ヶ谷 南太田 黄金町 日ノ出町 戸部 横浜 神奈川 京急東神奈川※ 神奈川新町 子安 京急新子安 生麦 花月総持寺※ 京急鶴見 鶴見市場 八丁畷 京急川崎 六郷土手 雑色 京急蒲田 梅屋敷 大森町 平和島 大森海岸 立会川 鮫洲 青物横丁 新馬場 北品川 品川 泉岳寺 種別 直通方面 設定期間┏ ━ ━ ● ● ● ━ ━ ● ━ ● ━ ● ● ━ ━ ━ ━ ● ━ ━ ● ━ ━ ┳ ━ ━ ● エアポート急行 逗子線直通 2010/5/16~2023//11/24┃ ┏ ━ ● 〇 〇 ━ ● ● ━ ● ━ ━ ● ● ━ ● ☆ ● △ ━ ● ━ ━ ┃ ━ ━ ● ━ ━ ● ━ ● ━ ● ━ ━ ● ● 急行 逗子線直通 1990/4/2~2010/5/15● ┃ 杉田 【新規開業・駅名改称】※:稲荷橋→穴守稲荷(1956/04/20)※:羽田(1993/04/01)→天空橋(1998/11/18)※:羽田空港(1998/11/18)__→羽田空港国内線ターミナル(2010/10/21)__→羽田空港第1・第2ターミナル(2020/03/14)※:羽田空港国際線ターミナル(2010/10/21)__→羽田空港第3ターミナル(2020/03/14)※:花月園前→花月総持寺(2020/03/14)※:仲木戸→京急東神奈川(2020/03/14)※:新逗子→逗子・葉山(2020/03/14) ┃ ┏ ━ ● ━ ━ ● ━ ● ━ ● ━ ━ ● ● エアポート急行 浅草線方面 2010/5/16~2023//11/24┃ ● 京急富岡 ┃ ┃ ┏ ● ━ ━ ● ━ ● ━ ● ━ ━ ● ● 急行 空港線直通 1999/7/31~2010/5/15● △ 能見台 ● ● ● 糀谷 【停車駅備考】〇:平日朝夕下り及び土休日の朝上りと夕下りに停車__(井土ヶ谷、弘明寺)△:平日朝上りのみ停車__(鶴見市場、能見台)☆:花月園競輪場の開催日夕方に6両編成のみ停車__(花月園前のホーム有効長が6両)● ● 金沢文庫 ● ● ● 大鳥居 ● ● 金沢八景 ● ● ● 穴守稲荷※ ● ● 六浦 ● ● ● 天空橋※ ● ● 神武寺 ● ● ● 羽田空港第3ターミナル※ ● ● 逗子・葉山※ ● ● ● 羽田空港第1・第2ターミナル※ 東武日光線(閑散線区)・鬼怒川線【区間急行】 2017年4月21日のダイヤ改正で、快速や区間快速の後継として急行(閑散線区)とともに登場した。 運転区間の縮小(TS01浅草~TN03南栗橋が取り止め)、停車駅にTN03南栗橋とTN04栗橋(JR宇都宮線との連絡駅)が追加されたことで隔駅停車化した。 2022年3月12日のダイヤ改正で廃止される。 ※:正式駅名は東武ワールドスクウェアで、2017年7月22日に開業 日光線 鬼怒川線南栗橋 栗橋 新古河 柳生 板倉東洋大前 藤岡 静和 新大平下 栃木 新栃木 合戦場 家中 東武金崎 楡木 樅山 新鹿沼 北鹿沼 板荷 下小代 明神 下今市 上今市 東武日光 大谷向 大桑 新高徳 小佐越 東武WS※ 鬼怒川温泉 鬼怒川公園 新藤原●● ●● ━━ ━━ ●● ━━ ━━ ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●= ●= ● ● ● ● ● ● ● ● いすみ鉄道いすみ線【急行】 2011年4月29日に運行を開始したキハ52-125による観光列車で、2013年3月9日にはキハ28-2346も投入された。 設定当初から速達性は皆無だったが、2013年3月16日のダイヤ改正で城見ヶ丘が停車駅に追加されて隔駅停車となった。 上総中野~大多喜は普通列車として運行している。 2024年3月16日のダイヤ改正で廃止された。 上総中野 西畑 総元 久我原 東総元 小谷松 大多喜 城見ヶ丘 上総中川 国吉 新田野 上総東 西大原 大原● ● ● ● ● ● ● ● ━ ● ━ ● ━ ● 中部地方の路線 えちごトキめき鉄道日本海ひすいライン【快速】 2017年3月4日のダイヤ改正で梶屋敷が停車駅に追加されて、隔駅停車に近付いている。 2018年3月17日と2019年3月16日のダイヤ改正で、上下ともに廃止された。 ※:正式駅名・開業時期未定 ※:2021年3月13日開業 泊 越中宮崎 市振 親不知 青海 今村新田︵仮︶※ 糸魚川 えちご押上ひすい海岸※ 梶屋敷 浦本 能生 筒石 名立 有間川 谷浜 直江津● ● ● ● ● = ● = ● ━ ● ━ ● ━ ━ ● えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン【快速】 2021年3月13日のダイヤ改正で登場して同年7月に一部指定席化された臨時列車で、土休日に限って運転休止となった直江津~二本木の普通に代わって設定された。 413系・455系の間合い運用であるためか、クハ455-701の方向幕は急行表記かつヘッドマークも装着したままの状態で投入されている。 2022年3月12日のダイヤ改正で春日山が停車駅に追加されて、通過駅は北新井のみとなった。 2024年3月16日のダイヤ改正で廃止されて、普通に置き換えられた。 妙高高原 関山 二本木 新井 北新井 上越妙高 南高田 高田 春日山 直江津● ● ● ● ━ ● ● ● ● ● 中央本線(JR東海)【快速】【区間快速】 快速の通過駅は元々多くなかったが、国鉄民営化後に金山(1989年)と鶴舞(1997年)が停車駅に追加された事で隔駅停車と揶揄されるようになった。 2024年3月16日のダイヤ改正では、新守山と神領を停車駅に追加した区間快速が昼間時間帯に登場し、同時間帯の普通列車が削減されている。 名古屋 金山 鶴舞 千種 大曽根 新守山 勝川 春日井 神領 高蔵寺 定光寺 古虎渓 多治見 土岐市 瑞浪 釜戸 武並 恵那 美乃坂本 中津川 備考● ● ● ● ● ― ● ● ― ● ― ― ● ● ● ● ● ● ● ● 快速● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ― ― ● ● ● ● ● ● ● ● 区間快速 関西本線(JR東海)【区間快速】 2009年3月14日のダイヤ改正時に登場した種別で、停車駅は従来の快速を踏襲していた。 2022年3月12日のダイヤ改正で乗降客数の多い八田と春田が停車駅に追加されて、名古屋~蟹江も各駅停車区間になっている。 名古屋 八田 春田 蟹江 永和 弥富 長島 桑名 朝日 富田 富田浜 四日市 南四日市 河原田 河曲 加佐登 井田川 亀山● ● ● ● ━ ● ━ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 飯田線【快速】【快速みすず】 快速は駒ケ根発着で、天竜峡で普通から種別変更を行う豊橋行きと岡谷行きが設定されている。 快速みすずは岡谷で普通(岡谷~長野間各駅停車)へ種別変更する便が存在する。 線名 駅名 快速 みすず 豊橋ゆき 岡谷ゆき 飯田ゆき 長野ゆき飯田線 豊橋 ● 船町 ↑ 下地 ↑ 小坂井 ● 牛久保 ● 豊川 ● 三河一宮 ● 長山 ● 江島 ● 東上 ● 野田城 ● 新城 ● 東新町 ● 茶臼山 ● 三河東郷 ● 大海 ● 鳥居 ↑ 長篠城 ↑ 本長篠 ● 三河大野 ● 湯谷温泉 ● 三河槙原 ● 柿平 ↑ 三河川合 ● 池場 ↑ 東栄 ● 出馬 ↑ 上市場 ↑ 浦川 ● 早瀬 ↑ 下川合 ↑ 中部天竜 ● 佐久間 ● 相月 ↑ 城西 ● 向市場 ↑ 水窪 ● 大嵐 ↑ 小和田 ↑ 中井侍 ↑ 伊那小沢 ● 鶯巣 ↑ 平岡 ● 為栗 ● 温田 ● 田本 ● 門島 ● 唐笠 ● 金野 ● 千代 ● 天竜峡 ● 川路 ● 時又 ● 駄科 ● 毛賀 ● 伊那八幡 ● 下山村 ● 鼎 ● 切石 ● 飯田 ● ● ● 桜町 ● ● ↓ 伊那上郷 ● ● ↓ 元善光寺 ● ● ● 下市田 ● ↑ ↓ 市田 ● ● ● 下平 ● ↑ ↓ 山吹 ● ↑ ↓ 伊那大島 ● ● ● 上片桐 ● ● ● 伊那田島 ● ↑ ↓ 高遠原 ● ↑ ↓ 七久保 ● ● ● 伊那本郷 ● ● ↓ 飯島 ● ● ● 田切 ● ↑ ↓ 伊那福岡 ● ● ● 小町屋 ● ● ● 駒ケ根 ● ● ● ● 大田切 ↓ ↑ ● 宮田 ● ● ● 赤木 ↓ ↑ ● 沢渡 ● ● ● 下島 ↓ ↑ ● 伊那市 ● ● ● 伊那北 ● ● ● 田畑 ↓ ↑ ● 北殿 ● ● ● 木ノ下 ↓ ● ● 伊那松島 ● ● ● 沢 ● ● ● 羽場 ● ● ● 伊那新町 ● ↑ ● 宮木 ↓ ● ● 辰野 ● ● ●中央本線 川岸 ● ● ● 岡谷 ● ● ● 中央本線(JR東日本)・大糸線(JR東日本)・篠ノ井線【快速】【みすず】 松本地区の快速停車駅は数パターンが存在し、隔駅停車に近い列車も設定されている。 ※:上下各1本は通過 中央本線 篠ノ井線 信越本線 大糸線 備考上諏訪 下諏訪 岡谷 みどり湖 塩尻 広丘 村井 平田 南松本 松本 田沢 明科 西条 坂北 聖高原 冠着 姨捨 稲荷山 篠ノ井 今井 川中島 安茂里 長野 北松本 島内 島高松 梓橋 一日市場 中萱 南豊科 豊科 柏矢町 穂高 有明 安曇追分 細野 北細野 信濃松川 安曇沓掛 信濃常盤 南大町 信濃大町 ● ● ● ● ● ● ※ ※ ● ● ━ ● ━ ● 松本⇔長野 快速● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ━ ━ ● ━ ━ ● ● ━ ━ ━ ● 上諏訪→長野 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 〓 〓 〓 〓 〓 〓 〓 〓 〓 〓 〓 〓 〓 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ━ ━ ● ━ ● ━ ● 上諏訪←信濃大町 〓 〓 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 飯田⇔松本・長野 みすず しなの鉄道しなの鉄道線【快速】 快速系種別の内、乗車券のみで利用可能な無名快速は隔駅停車に近い。 ☆:一部通過 ※:1999年4月1日に開業 ※:2001年3月22日に開業 ※:2002年3月29日に開業 ※:2009年3月14日に開業 信越本線 しなの鉄道線長野 安茂里 川中島 今井 篠ノ井 屋代高校前※ 屋代 千曲※ 戸倉 坂城 テクノさかき※ 西上田 上田 信濃国分寺※ 大屋 田中 滋野 小諸 平原 御代田 信濃追分 中軽井沢 軽井沢● ━ ● ━ ● ━ ● ━ ● ☆ ━ ━ ● ━ ● ● ━ ● ━ ● ● ● ● 名鉄岐阜市内線・揖斐線【急行】 1967年に設定された当初の停車駅は多くなかったが、乗降客の減少に伴って優等運転区間が短縮されて隔駅停車に近くなってしまった。 岐阜市内線も揖斐線も2005年を以って廃止されており、現在は存在しない。 岐阜市内線 揖斐線 備考 本線 忠節支線 岐阜駅前 新岐阜駅前 金宝町 徹明町 金町 千手堂 本郷町 西野町 早田 忠節 近ノ島 旦ノ島 尻毛 又丸 北方東口 北方千歳町 美濃北方 真桑 政田 下方 相羽 黒野 中之元 清水 本揖斐 ● ● ━ ● ━ ● ━ ● ━ ● ━ ━ ● ━ ━ ● ● ━ ● ━ ━ ● ━ ━ ● 設定当初※1984年までは谷汲線直通便も設定 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ━ ━ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 廃止直前※忠節で種別変更(普通⇔急行) 明知鉄道明知線【急行大正ロマン】【快速】 急行大正ロマンは2011年3月12日、平日上り最終の快速26D列車は2012年3月17日のダイヤ改正に設定された。 その後のダイヤ改正で停車駅が加減されているものの、両方とも元から速達性は重視されていない。 2022年3月12日のダイヤ改正で、快速が廃止された。 ▼:下りのみ停車 明智 野志 山岡 花白温泉 岩村 極楽 飯羽間 阿木 飯沼 東野 恵那 備考● ━ ━ ━ ● ━ ━ ● ━ ━ ● 2011年3月12日ダイヤ改正 急行大正ロマン● ━ ━ ● ● ▼ ━ ● ━ ━ ● 2012年3月17日ダイヤ改正 ● ━ ● ● ● ▼ ━ ● ━ ━ ● 2014年3月15日ダイヤ改正 ● ━ ● ● ● ● ━ ● ━ ━ ● 2017年3月4日ダイヤ改正 ● → ● ● ● ● ● ● → ● ● 2012年3月17日ダイヤ改正 快速26D列車● → ● ● ● → ● ● → ● ● 2018年3月17日ダイヤ改正 富山地方鉄道本線【急行】 以前は電鉄富山(T01)~寺田(T08)で千鳥停車したり、東三日市(T28)~宇奈月温泉(T41)で通過運転を実施していた時期もあったが、現在はかつて設定されていた準急並みに停車するようになり、最多停車する便は隔駅停車同然と化している。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による乗降客数減少へ対応した2021年4月1日のダイヤ改正で、最多停車する便は姿を消している。 ○:一部停車 ※:1995年4月1日に魚津から改称 ※:1989年4月1日に電鉄桜井から改称 ※:2013年12月26日開業 ※:2015年2月26日開業 電鉄富山 稲荷町 新庄田中 東新庄 越中荏原 越中三郷 越中舟橋 寺田 越中泉 相ノ木 新相ノ木※ 上市 新宮川 中加積 西加積 西滑川 中滑川 滑川 浜加積 早月加積 越中中村 西魚津 電鉄魚津 新魚津※ 経田 電鉄石田 電鉄黒部※ 東三日市 荻生 長屋 新黒部※ 舌山 若栗 栃屋 浦山 下立口 下立 愛本 内山 音沢 宇奈月温泉 比較対象● ● ● ● ● ● ● ● ━ ━ = ● ━ ● ━ ━ ● ● ━ ━ ━ ● ● ● ● ● ● 準急● ● ● ● ● ● ● ● ━ ━ ━ ● ○ ● ━ ━ ● ● ━ ○ ━ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 急行 城端線【快速】 2001年3月3日のダイヤ改正で隔駅停車してる便の運転が取り止められて、通過駅が2駅多い下りの始発列車も2002年3月23日のダイヤ改正で廃止された。 ※:2015年3月14日開業 高岡 新高岡※ 二塚 林 戸出 油田 砺波 東野尻 高儀 福野 東石黒 福光 越中山田 城端 備考● = ● ━ ● ● ● ━ ● ● ━ ● ━ ● 基本停車駅● = ● → ● → ● → → ● → ● → ● 最少停車便 北鉄石川総線(石川線・金名線)【準急】 準急は金名線に直通する速達列車として設定されていたが、通勤時間帯の停車駅拡大や基本停車駅の変更を経て、モータリゼーションの発展に伴う経営合理化で通過運転を開始した日中時間帯の普通を取り込み、AとBの2種類によるダイヤに移行した経緯がある。 1995年3月30日のダイヤ改正で準急Bを廃して一本化した後、2006年12月1日のダイヤ改正を以って廃止している。 ○:一部停車 ※:1984年12月12日全線休止(1987年4日29日廃止) ※:2009年10月31日営業休止 石川線 金名線 備考野町 西泉 新西金沢 押野 野々市 野々市工大前 馬替 額住宅前 乙丸 四十万 曽谷 道法寺 井口 小柳 日御子 鶴来 中鶴来※ 加賀一の宮※ 手取中島※ 広瀬※ 瀬木野※ 服部※ 加賀河合※ 大日川※ 下野※ 手取温泉※ 釜清水※ 下吉谷※ 西佐良※ 三ツ屋野※ 白山下※ ● ● ● ━ ━ ● ━ ● ● ● ━ ● ● ━ ● ● ● ● ● ● ● ○ ● ● ● ● ● ● ● ● ● 準急A 1978年12月17日のダイヤ改正時● ● ● ━ ━ ● ● ● ● ● ● ● ● ━ ● ● ● ● ● ● ● ━ ● ● ● ● ● ● ● ● ● 準急B ● ● ● ━ ━ ● ● ● ● ● ━ ● ● ━ ● ● ● ● ● ● ● ○ ● ● ● ● ● ● ● ● ● 準急A 1982年11月15日のダイヤ改正時● ● ● ━ ━ ● ● ● ● ● ● ● ● ━ ● ● ● ● ● ● ● ━ ● ● ● ● ● ● ● ● ● 準急B ● ● ● ━ ━ ● ● ● ● ● ━ ● ● ━ ● ● ● ● 準急A 1990年7月24日のダイヤ改正時● ● ● ━ ━ ● ● ● ● ● ● ● ● ━ ● ● 準急B ● ● ● ━ ━ ● ━ ● ● ● ━ ● ● ━ ● ● 準急 1995年3月30日のダイヤ改正時 北鉄浅野川線【急行】 1974年11月26日のダイヤ改正で、停車駅にA03上諸江が追加されたことでA07三ッ屋~A10蚊爪を除いて二駅以上飛ばす区間が無くなっている。 2006年12月1日のダイヤ改正で、石川線準急とともに姿を消した。 北鉄金沢 七ッ屋 上諸江 磯部 割出 三口 三ッ屋 大河端 北間 蚊爪 粟ヶ崎 内灘● ━ ● ━ ● ━ ● ━ ━ ● ━ ● えちぜん鉄道三国芦原線【快速】 勝山永平寺線の同種別よりも通過駅が比較的少なく、25駅中20駅に停車する。 2019年10月1日のダイヤ改正で廃止された快速めざましトレインは、3駅多く通過していた。 ※:勝山永平寺線 ※:2003年7月20日に芦原湯町から駅名改称 ※:2003年7月20日に西福井から駅名改称 ※:2007年9月1日に開業 ※:2015年9月27日に開業 ※:2017年3月25日に下兵庫から駅名改称 ※:2017年3月25日に西長田から駅名改称 ※:正式駅名は西春江ハートピアで、2017年3月25日に西春江から改称 ※:正式駅名は太郎丸エンゼルランドで、2017年3月25日に太郎丸から改称 ※:正式駅名は仁愛グランド前で、仁愛学園関係者のみ利用可能な臨時駅 三国芦原線 ※ 備考三国港 三国 三国神社 水居 あわら湯のまち※ 番田 本荘 大関 下兵庫こうふく※ 西長田ゆりの里※ 西春江H※ 太郎丸A※ 鷲塚針原 仁愛G前※ 中角 新田塚 八ツ島※ 日華化学前※ 福大前西福井※ 田原町 西別院 まつもと町屋※ 福井口 新福井 福井 ● ● → → ● → → → → ● ● ● ● → → ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 快速めざましトレイン● ● → → ● → ● ● ● ● ● ● ● → → ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 快速 近畿地方の路線 阪神本線【準急】 ラッシュ時間帯の優等通過駅へ便宜を図るために普通の補完として設定された種別で速達性は重視しておらず、駅間が短い同線に対応したジェットカー(青胴車)のような高加減速度性能を持たない車両(赤胴車)でも各駅停車に近い運用が可能なよう工夫されている。 阪神なんば線開業に伴うダイヤ改正(2009年3月20日)以降は存在しないが、かつては以下の通りだった。 ちなみに御影以西は各駅停車。 ○:一部停車 ▲:上り列車のみ停車 △:上り列車のみ一部停車 ▼:下り列車のみ停車 ※:2001年3月2日までの駅名は香“枦”園 ※:正式駅名は尼崎センタープール前 御影 住吉 魚崎 青木 深江 芦屋 打出 香櫨園※ 西宮 今津 久寿川 甲子園 鳴尾 武庫川 尼崎CP前※ 出屋敷 尼崎 大物 杭瀬 千船 姫島 淀川 野田 福島 梅田 備考● ― ● ― ● ▲ ― ― ● ● ― ● ▼ ● ▲ ● ● ― ● ● △ ― ● ● ● 1995.06.36~1998.02.14● ― ● ― ● ▲ ― ― ● ● ― ● ▼ ● ▲ ● ● ― ● ● ○ ― ● ● ● 1998.02.15~2001.03.09● ― ● ― ● ▲ ― ▼ ● ● ― ● ● ● ▲ ● ● ― ● ● ● ― ● ● ● 2001.03.10~2002.03.03● ― ● ― ● ▲ ― ● ● ● ― ● ● ● ▲ ● ● ― ● ● ● ― ● ● ● 2002.03.04~2006.10.27● ― ● ― ● ● ● ― ● ● ― ● ● ● ▲ ● ● ― ● ● ● ― ● ● ● 2006.10.28~2009.03.19 近鉄京都線【準急】 普通の補完であり、1960年代から停車駅は多かった(以前は竹田や向島も通過していた)。 1994年3月15日のダイヤ改正で運転区間が短縮されており、新田辺以南に向かう列車は同駅で普通へ種別変更するようになった。 京都 東寺 十条 上鳥羽口 竹田 伏見 近鉄丹波橋 桃山御陵前 向島 小倉 伊勢田 大久保 久津川 寺田 富野荘 新田辺● ● ― ― ● ― ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 近鉄奈良線・難波線【区間準急】 2006年3月21日のダイヤ改正で登場。 準急の本数削減と普通の一部運転区間短縮に伴って設定された種別で、東花園~石切間の各駅停車でほぼ隔駅停車と化した準急である。 直通先の阪神なんば線(尼崎~大阪難波間)内は各駅停車。 難波線 奈良線大阪難波 近鉄日本橋 大阪上本町 鶴橋 今里 布施 河内永和 河内小阪 八戸ノ里 若江岩田 河内花園 東花園 瓢箪山 枚岡 額田 石切 生駒 東生駒 富雄 学園前 菖蒲池 大和西大寺 新大宮 近鉄奈良● ● ● ● ― ● ― ● ― ― ― ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 近鉄吉野線【特急】 橿原神宮前 岡寺 飛鳥 壺阪山 市尾 葛 吉野口 薬水 福神 大阿太 下市口 越部 六田 大和上市 吉野神宮 吉野 備考● ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ● ━ ━ ● ● ● 運転開始当初● ━ ● ● ━ ━ ● ━ ● ━ ● ━ ● ● ● ● 1999年ダイヤ改正~現在 狭軌線の華となる「吉野特急」。運転開始当初は観光輸送を目的としており、吉野線内においても橿原神宮(現 橿原神宮前)-下市口が無停車など(山岳区間のため運転速度自体は高くないが)速達性が高かった。 しかし、吉野への観光需要低下と吉野線沿線の宅地開発に伴い沿線住民の利便性向上を図るため、1989年に吉野口が停車駅として追加されたのを皮切りに1990年に飛鳥、壺阪山、1999年に福神、六田が停車駅として追加された結果、吉野線内では壺阪山-吉野口を除いて2駅以上連続して通過する区間がない状態となり、速達性も大きく低下することとなった。 ただしそれと引き換えに、南大阪線・吉野線内のみの利用であれば41km以上の特急料金が通常920円(2020年4月現在)のところ、40km以下と同額である520円とする特例が設けられている。 福知山線(JR宝塚線)・JR東西線・学研都市線【区間快速】 運航効率化に伴って設定された種別で、快速系と普通の一部を置き換える形で登場している。 JR東西線・学研都市線の区間快速には、JR神戸線内各駅停車の西明石(JR-A74)発着便も設定されている。 ※:塚口(JR-G50)発着便のみ停車 G福知山線︵JR宝塚線︶ 篠山口 ● 南矢代 ● 古市 ● 草野 ● 藍本 ● 相野 ● 広野 ● 新三田 ● ● 三田 ● ● 道場 ● ● 武田尾 ● ● 西宮名塩 ● ● 生瀬 ● ● 宝塚 ● ● 中山寺 ● ● 川西池田 ● ● 北伊丹 ┃ ┃ 伊丹 ● ● 猪名寺 ┃ ┃ 塚口 ┃ ※ 尼崎 ● ● 塚本 ┃ || 大阪 ● || HJR東西線 加島 ● 御幣島 ● 海老江 ● 新福島 ● 北新地 ● 大阪天満宮 ● 大阪城北詰 ● 京橋 ●H学研都市線 鴫野 ┃ 放出 ● 徳庵 ┃ 鴻池新田 ┃ 住道 ● 野崎 ┃ 四条畷 ● 忍ケ丘 ● 寝屋川公園 ● 星田 ● 河内磐船 ● 津田 ● 藤阪 ● 長尾 ● 松井山手 ● 大住 ● 京田辺 ● 同志社前 ● JR三山木 ● 下狛 ● 祝園 ● 西木津 ● 木津 ●Q大和路線 平城山 ● 奈良 ● 神鉄神戸高速線・有馬線・三田線・粟生線【急行】【準急】 準急は普通の補完種別で、急行はラッシュ時の優等列車として運行されている。 準急の通過駅は有馬線内のみで、急行も三田線(有馬口~三田)内は準急と同様に各駅へ停車する。 急行は1984年10月7日のダイヤ改正で統廃合する形で廃止された通勤急行の停車駅(旧急行停車駅+北鈴蘭台+山の街)を踏襲していたが、1988年4月2日のダイヤ改正で北神急行電鉄との連絡駅になった谷上、1991年3月31日のダイヤ改正で木幡と栄、2020年3月14日のダイヤ改正で花山も追加された影響によって隔駅停車化している。 利用客の減少に伴って、2022年3月12日のダイヤ改正で粟生線の急行が廃止されることになった。 ※:神戸高速線 ※ 有馬線 粟生線 備考 種別新開地 湊川 長田 丸山 鵯越 鈴蘭台 北鈴蘭台 山の街 箕谷 谷上 花山 大池 神鉄六甲 唐櫃台 有馬口 有馬温泉 鈴蘭台西口 西鈴蘭台 藍那 木津 木幡 栄 押部谷 緑が丘 広野ゴルフ場前 志染 恵比須 三木上の丸 三木 大村 樫山 市場 小野 葉多 粟生 ●● ●● ━━ ━━ ━━ ●● ●= ●= ━= ●= ●= ●= ━= ●= ●= == =● =● =━ =━ =● =● =● =● =● =● =● =● =● =● =● =● =● =● =● 三田線 方面粟生線 方面 急行●●● ●●● ●●● ━━━ ━━━ ●●● ●●= ●●= ●●= ●●= ●●= ●●= ●●= ●●= ●●= ●== =● =● =● =● =● =● =● =● =● =● =● =● =● =● =● =● =● =● =● 有馬温泉 方面三田線 方面粟生線 方面 準急 阪急京都本線・千里線【準急】 2007年3月17日のダイヤ改正で、急行や大阪市高速電気軌道堺筋線直通の快速急行に代わって設定された。 1982年11月27日から2001年3月23日にかけて運航されていた準急とは停車駅が異なっており、隔駅停車扱いされることもある。 千里線 京都本線 備考 種別天神橋筋六丁目 柴島 大阪梅田 十三 南方 崇禅寺 淡路 上新庄 相川 正雀 摂津市 南茨木 茨木市 総持寺 富田 高槻市 上牧 水無瀬 大山崎 西山天王山 長岡天神 西向日 東向日 洛西口 桂 西京極 西院 大宮 烏丸 京都河原町 ● ━ ●●= ●●= ●●= ●━= ●●● ━●● ━━━ ━━━ ━━━ ━●● ●●● ━━━ ━━━ ●●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● 1982.11.27 - 2001.03.232007.03.17 ~堺筋線内各駅停車 準急 阪急宝塚本線・箕面線【通勤急行】【通勤準急】【準急】 1997年11月16日のダイヤ改正で準急に代わって登場した通勤準急や通勤急行は、千鳥停車していた影響で通過駅は3駅に限られていた。 2000年6月4日のダイヤ改正では通勤準急が休止して準急が復活したものの、2003年8月30日のダイヤ改正で再び設定された通勤準急が準急の停車駅を踏襲し、準急は停車駅が追加されたため、通過駅が6駅から3駅に減少している。 箕面線 宝塚本線 方面 運転時期 種別箕面 牧落 桜井 宝塚 清荒神 売布神社 中山観音 山本 雲雀丘花屋敷 川西能勢口 池田 石橋阪大前 蛍池 豊中 岡町 曽根 服部天神 庄内 三国 十三 中津 大阪梅田 ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●━ ●● ●━ ●━ ●━ ━━ ━━ ●● ━━ ●● 宝塚 方面 1997.11.16 - 2000.06.032003.08.30 - 2015.03.20 通勤急行 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ━ ━ ━ ● ● ● ● ● 宝塚 方面 1997.11.16 - 2000.06.03 通勤準急●● ●● ●● == == == == == == == == ●● ●● ●● ━━ ━━ ━━ ●━ ●━ ●● ●━ ●● 箕面 方面 1997.11.16 - 2000.06.032003.08.30 - 2015.03.20 ●● ●● ●● ●● ●● ●●● ●●● ●●● ●●● ●●● ●●● ━━● ━━● ━━━ ━━━ ●━━ ●●● ━━● ●●● 宝塚 方面 ~ 1997.11.152000.06.04 - 2003.08.292003.08.30 ~ 準急●●● ●●● ●●● === === === === === === === === ●●● ●●● ●●● ━━● ━━● ━━━ ━━━ ●━━ ●●● ━━● ●●● 箕面 方面 ~ 1997.11.152000.06.04 - 2003.08.292015.03.21 - 2018.07.06 阪急神戸本線・今津線【急行】【通勤急行】【準急】 準急は今津線利用者用の常設優等種別で、急行は神戸線の中距離客向け優等種別として設定されている。 通勤急行は急行の派生種別で、同種別から一部が格下げされる形で登場している。 今津線 神戸高速線 神戸本線 種別宝塚 宝塚南口 逆瀬川 小林 仁川 甲東園 門戸厄神 新開地 高速神戸 花隈 神戸三宮 春日野道 王子公園 六甲 御影 岡本 芦屋川 夙川 西宮北口 武庫之荘 塚口 園田 神崎川 十三 中津 大阪梅田 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ━ ● ━ ━ ● ━ ● 急行 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ━ ━ ● ━ ● 通勤急行● ● ● ● ● ● ● = = = = = = = = = = = = ━ ● ━ ━ ● ━ ● 準急 山陰本線(京都~福知山)・嵯峨野線【快速】 2000年9月23日と2002年3月23日のダイヤ改正で停車駅が増加したことで、隔駅停車に近くなっている。 ○:一部停車 ※:1994年9月4日に嵯峨から駅名改称 ※:2000年9月23日に開業 ※:2019年3月16日に開業 福知山 石原 高津 綾部 山家 立木 安栖里 和知 下山 胡麻 鍼灸大学前 日吉 船岡 園部 吉富 八木 千代川 並河 亀岡 馬堀 保津峡 嵯峨嵐山※ 太秦 花園 円町※ 二条 丹波口 梅小路京都西※ 京都 備考 ● ━ ━ ━ ━ ● ━ ━ ● ━ ━ = ● ━ = ● 1990.03.10 - 1996.03.15 ● ━ ○ ━ ━ ● ━ ━ ● ━ ━ = ● ━ = ● 1996.03.16 - 2000.09.22● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ━ ━ ● ━ ━ ○ ● ━ = ● 2000.09.23 - 2002.03.22● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ━ ━ ● ━ ━ ● ● ━ = ● 2002.03.23 - 2019.03.15● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ━ ━ ● ━ ━ ● ● ━ ━ ● 2019.03.16 ~ 京都丹後鉄道宮福線【快速大江山】 快速大江山は数種類の停車駅が設定されていて、隔駅停車に近い便も存在する。 2024年3月16日のダイヤ改正で、号数表示が廃止されている。 福知山 福知山市民病院口 荒河かしの木台 牧 下天津 公庄 大江 大江高校前 二俣 大江山口内宮 辛皮 喜多 宮村 宮津 列車番号● ━ ● ● ━ ━ ● ━ ━ ● ━ ━ ● ● 800D・804D・806D・812D● ● ● ● → → ● ● → ● → → ● ● 801D● ● ● ● ● ● ● ━ ━ ● ━ ━ ● ● 802D・803D・805D・809D・810D・811D・813D・814D● ● ● ● ● ● ● ● ━ ● ━ ━ ● ● 807D・808M 紀勢本線(JR西日本きのくに線)【快速】 平日に1往復設定されている線内完結便である。 かつて同区間では天王寺・大阪方面へと直通する列車も多かったが、ワンマン化された現在はこの快速を除いて数本しか残されてない。 ※:正式駅名は広川ビーチで、1993年3月14日に開業 和歌山 宮前 紀三井寺 黒江 海南 冷水浦 加茂郷 下津 初島 箕島 紀伊宮原 藤並 湯浅 広川B※ 紀伊由良 紀伊内原 御坊 道成寺 和佐 稲原 印南 切目 岩代 南部 芳養 紀伊田辺● ━ ● ● ● ━ ● ━ ━ ● ━ ● ● ━ ● ━ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 神戸新交通ポートアイランド線【快速】 2006年2月2日のダイヤ改正で設定されたものの、時短効果が2分足らずと乏しく2016年3月28日のダイヤ改正で廃止された。 P01三宮 ● P02貿易センター ┃ P03ポートターミナル ┃ P04中公園 ● P05みなとじま(キャンパス前) ● 2011年7月1日に市民病院前から駅名改称P06市民広場(コンベンションセンター) ● P07医療センター(市民病院前) ● 2011年7月1日に先端医療センター前から駅名改称P08京コンピュータ前(神戸どうぶつ王国) ● 2011年7月1日にポートアイランド南から駅名改称P09神戸空港 ● 中国・四国地方の路線 山陰本線(鳥取~米子)【快速とっとりライナー】 1994年12月3日のダイヤ改正で当初は無名快速よりも速達性の高い定期列車として設定されたが、1997年3月22日のダイヤ改正で鳥取方面の定期快速列車の全てにとっとりライナーの愛称が付与されるようになり、その後は停車駅も増加している。 鳥取~米子の24駅中19駅停車という隔駅停車同然の便も一時期存在していたが、2022年3月12日のダイヤ改正で以下の通りに整理された。 比較対象 米子 東山公園 伯耆大山 淀江 大山口 名和 御来屋 下市 中山口 赤碕 八橋 浦安 由良 下北条 倉吉 松崎 泊 青谷 浜村 宝木 末恒 鳥取大学前 湖山 鳥取上り列車 全日1本 ● → ● ● ● → → → → ● → ● ● ● ● ● → ● ● → → ● → ●下り列車 平日のみ1本 ● ← ● ← ← ← ← ← ← ● ← ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●旧ダイヤ 最多停車便 ● ━ ● ● ● ━ ● ● ━ ● ━ ● ● ━ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 山陰本線(米子~益田)【快速アクアライナー】 2006年3月18日のダイヤ改正以降は停車駅が増加傾向にあり、隔駅停車に近い便が登場している。 以下は2020年3月14日のダイヤ改正時における設定で、4往復全て載せている。 2022年3月12日のダイヤ改正で、普通に格下げされて全廃された。 益田 石見津田 鎌手 岡見 三保三隅 折居 周布 西浜田 浜田 下府 久代 波子 敬川 都野津 江津 浅利 黒松 石見福光 温泉津 湯里 馬路 仁万 五十猛 静間 大田市 久手 波根 田儀 小田 江南 出雲神西 西出雲 出雲市 直江 荘原 宍道 来待 玉造温泉 乃木 松江 東松江 揖屋 荒島 安来 米子 備考●●●● ●━●● ●━●● ●●●● ●●●● ●●●● ●━●● ●●●● ●●●● ━●●● ━━●━ ●●●● ━━●━ ●●●● ●●●● ━━●━ ●━●● ━━●━ ●●●● ━━●━ ━━━━ ●●●● ━━●━ ━━●━ ●●●● ━━━━ ━━━━ ━━━━ ━━━━ ━━━━ ━━━━ ━━●━ ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● 上り●●●… ●●●… ●●●… ●●●… ●●●… ●●●… ●●●… ●●●… ●●●● ━━●━ ━━━━ ●●●● ━━━━ ●●●● ●●●● ━━━━ ●━●━ ━━━━ ●●●● ━━━━ ━━●━ ●●●● ━━━━ ━━━━ ●●●● ━━●● ●━●● ━━●● ━━●● ●━●● ━━━● ●━●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● 下り 山陽本線(岡山~福山)【快速サンライナー】 1989年3月11日のダイヤ改正時に設定されて、2022年3月12日のダイヤ改正で廃止に至っている。 1992年には専用塗装の117系が投入されたものの、早朝運転の2720M列車は113系や115系で運用されていた。 2018年3月17日のダイヤ改正で2720M列車は混雑緩和で6両編成化されると同時に中庄・庭瀬・北長瀬が停車駅へ追加されて隔駅停車となったが、2019年3月16日のダイヤ改正で乗車機会拡大のため5710M列車の普通に格下げされて姿を消した。 福山 東福山 大門 笠岡 里庄 鴨方 金光 新倉敷 西阿知 倉敷 中庄 庭瀬 北長瀬 岡山 備考● ● ━ ● ━ ━ ━ ● ━ ● ━ ━ ━ ● 基本停車駅● ━ ━ ● ━ ● ● ● ━ ● ● ● ● ● 2720M列車 瀬戸大橋線(宇野線・本四備讃線・予讃線)【快速マリンライナー】・宇野線【普通】 快速マリンライナーは1988年4月10日のダイヤ改正で、快速備讃ライナーと宇高連絡船に代わって設定されている。 瀬戸大橋線の速達列車として役割を果たし続けているが、1号・2号・10号・70号・72号・73号・75号・77号のように停車駅も多い便も存在した。 また宇高連絡船が運航されていた頃の普通列車には、各駅停車ではなく一部の駅を通過する便も設定されていた。 M 瀬戸大橋線 M 瀬戸大橋線 種別 備考 L 宇野線(宇野みなと線) 本四備讃線 Y 予讃線 岡山 大元 備前西市 妹尾 備中箕島 早島 久々原 茶屋町 彦崎 備前片岡 迫川 常山 八浜 備前田井 宇野 植松 木見 上の町 児島 宇多津 坂出 八十場 鴨川 讃岐府中 国分 端岡 鬼無 香西 高松 ● ● ━ ● ━ ● ━ ● ● ━ ● ━ ● ━ ● 普通 瀬戸大橋線開業前の通過駅設定便● ● → ● → ● → ● = = = = = = = ● ● ● ● → ● → → → → → → → ● 快速マリンライナー1号 ● ● ● ● ← ● ← ● = = = = = = = ● ● ● ● ← ● ← ● ← ● ● ● ← ● 快速マリンライナー2号 ● ● ● ● ← ● ← ● = = = = = = = ● ● ● ● ← ● ← ← ← ← ← ← ← ● 快速マリンライナー10号 ● ● ━ ● ━ ● ━ ● = = = = = = = ● ● ● ● ━ ● ━ ━ ━ ━ ● ━ ━ ● 快速マリンライナー70号・75号 ● ● ━ ● ━ ● ━ ● = = = = = = = ● ● ● ● ━ ● ━ ● ━ ● ● ● ━ ● 快速マリンライナー72号・73号・77号 72号と77号は2022年3月12日のダイヤ改正で廃止 津山線【快速ことぶき】 1997年11月29日のダイヤ改正で、特急いなばの設定に伴って廃止された急行砂丘の代替として登場した。 基本停車駅が17駅中7駅で多いとは言えないものの、特別停車が多い1本のみは隔駅停車に該当し得る。 岡山 法界院 備前原 玉柏 牧山 野々口 金川 建部 福渡 神目 弓削 誕生寺 小原 亀甲 佐良山 津山口 津山 備考● ● ━ ━ ━ ━ ● ━ ● ━ ● ━ ━ ● ━ ━ ● 基本停車駅● ● ━ ━ ━ ━ ● ━ ● ● ● ● ● ● ● ● ● 最多停車便 伯備線【快速】 新見・備中高梁~岡山間で、定期運転の快速を設定していた頃もあった。 しかし減便と停車駅の増加を経て隔駅停車化した末、廃止に至っている。 ※:2005年10月1日に開業 V 伯備線 W 山陽本線 備考新見 石蟹 井倉 方谷 備中川面 木野山 備中高梁 備中広瀬 美袋 日羽 豪渓 総社 清音 倉敷 中庄 庭瀬 北長瀬※ 岡山 ● ● ● ━ ━ ━ ● ━ ● ━ ━ ● ● ● ━ ━ = ● 伯備線電化前● ● ━ ━ ● ━ ● ━ ● ━ ━ ● ● ● ● ━ = ● 赤穂線直通● ● ● ● ● ● ● ━ ● ━ ━ ● ● ● ● ━ = ● 廃止直前 福塩線【快速】 かつて福山~府中・三次間で2往復設定されていたが、国鉄民営化の数年後に廃止されている。 福山~府中を最短30分で結んでいた頃もあったが、停車駅が追加されて隔駅停車に近くなった時期が存在している。 ※:八田原ダム建設に伴う経路変更で1989年4月20日を以って廃止 P 芸備線 Z 福塩線 備考三次 八次 神杉 塩町 三良坂 吉舎 備後安田 梶田 甲奴 上下 備後矢野 備後三川 八田原※ 河佐 中畑 下川辺 府中 鵜飼 高木 新市 上戸手 戸手 近田 駅家 万能倉 道上 湯田村 神辺 横尾 備後本庄 福山 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ━ ━ ● ━ ━ ━ ━ ● ━ ━ ● ● ━ ● 昭和末期● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● = ● ● ● ● ━ ━ ● ━ ● ━ ● ● ━ ● ● ● ━ ● 廃止直前 徳島線【快速】 旧国鉄の徳島本線時代に、急行よしの川の一部が格下げされる形で登場した。 徳島線の高速化事業によって特急剣山が設定された、1996年3月16日のダイヤ改正で姿を消している。 ※:土讃線 ※:高徳線 ※ 徳島線 ※阿波池田 佃 辻 阿波加茂 三加茂 江口 阿波半田 貞光 小島 穴吹 川田 阿波山川 山瀬 学 阿波川島 西麻植 鴨島 麻植塚 牛島 下浦 石井 府中 鮎喰 蔵本 佐古 徳島● ● ● ● ━ ● ● ● ● ● ━ ● ━ ● ● ━ ● ━ ━ ━ ● ● ━ ● ━ ● 土佐くろしお鉄道阿佐線(ごめん・なはり線)【快速】 GN28球場前~GN21奈半利は各駅停車で、GN31和食~GN28球場前を除いて2駅以上通過する区間は無い。 開業当初は一部停車駅が設定されていたものの、2005年3月10日と2008年3月15日のダイヤ改正で通過駅か終日停車駅に変更されている。 2021年3月13日のダイヤ改正でGN27-1あき総合病院前が基本停車駅に追加されて、高知07:46発の安芸行きはGN33夜須以東で各駅停車するようになった。 ○:一部停車 ◎:特別停車(高知07:46発の安芸行き) ※:2021年3月13日開業 土讃線 土佐くろしお鉄道阿佐線 備考高知 薊野 土佐一宮 布師田 土佐大津 御免 後免町 立田 のいち よしかわ あかおか 香我美 夜須 西分 和食 赤野 穴内 球場前 あき総合病院前※ 安芸 伊尾木 下山 唐浜 安田 田野 奈半利 ● ● ● ● ● ● ● ━ ● ○ ● ○ ● ━ ● ━ ━ ○ = ● ● ● ● ● ● ● 2002年7月1日開業● ● ● ● ● ● ● ━ ● ━ ● ━ ● ━ ● ━ ━ ○ = ● ● ● ● ● ● ● 2005年3月10日ダイヤ改正● ● ● ● ● ● ● ━ ● ━ ● ━ ● ━ ● ━ ━ ● = ● ● ● ● ● ● ● 2008年3月15日ダイヤ改正● ● ● ● ● ● ● ━ ● ━ ● ━ ● ◎ ● ◎ ◎ ● ● ● ● ● ● ● ● ● 2021年3月13日ダイヤ改正 九州地方の路線 福北ゆたか線(鹿児島本線・篠栗線・筑豊本線)【快速】 2001年10月26日の電化開業時に設定されていた快速は複数の停車パターンを持っていたが、複数のダイヤ改正を経て一旦は統一されている。 停車駅も増加し、2015年3月14日のダイヤ改正で2駅以上通過する区間は無くなった。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による乗降客数減少へ対応した2021年3月13日のダイヤ改正で、日中時間帯に設定された便は博多~篠栗が各駅停車(原町と門松も停車)に変更された。 ※:鹿児島本線 ※ JC 篠栗線 JC 筑豊本線 ※ 備考博多 吉塚 柚須 原町 長者原 門松 篠栗 筑前山手 城戸南蔵院前 九郎原 筑前大分 桂川 天道 飯塚 新飯塚 浦田 鯰田 小竹 勝野 直方 新入 筑前植木 鞍手 筑前垣生 中間 東水巻 折尾 陣原 黒崎 ● ● ● ● ● ● ● ― ● ― ● ● ● ● ● ● ● ● ― ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 日中時間帯● ● ● ― ● ― ● ― ● ― ● ● ● ● ● ● ● ● ― ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 上記以外の時間帯 鹿児島本線【区間快速】 2018年3月17日のダイヤ改正時に誕生した種別で、準快速や一部の快速を置き換える形で登場した。 通過駅が設定されている快速区間は列車によって異なり、同区間が短い便はほぼ隔駅停車同然となっている。 代表例としてデータイムの3例を挙げたが、2022年9月23日のダイヤ改正で廃止。 ※:正式駅名はスペースワールド 羽犬塚 西牟田 荒木 久留米 肥前旭 鳥栖 田代 弥生が丘 基山 けやき台 原田 天拝山 二日市 都府楼南 水城 大野城 春日 南福岡 笹原 竹下 博多 吉塚 箱崎 千早 香椎 九産大前 福工大前 新宮中央 ししぶ 古賀 千鳥 福間 東福間 東郷 赤間 教育大前 海老津 遠賀川 水巻 折尾 陣原 黒崎 八幡 SW※ 枝光 戸畑 九州工大前 西小倉 小倉 門司 小森江 門司港● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ― ― ● ― ● ― ― ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ― ● ● ― ● ― ― ● ― ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ― ● ● ― ● ― ― ● ― ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 鹿児島本線【快速くまもとライナー】 2011年3月12日のダイヤ改正で登場したが、2015年3月14日のダイヤ改正で廃止された。 福岡方面の快速との接続が考慮されていたので、九州新幹線の全線開業で整理された特急を代替する都市間連絡列車の設定が目的だったと思われるが、増発では無く普通からの置き換えで通過駅が減便されてしまったことや、速達性は限定的で追い抜きも実施しないため、存在意義が問われていた。 ※:2014年3月15日のダイヤ改正で、停車駅に追加 八代 新八代 千丁 有佐 小川 松橋 宇土 富合 川尻 熊本 上熊本 崇城大学前 西里 植木 田原坂 木葉 肥後伊倉 玉名 大野下 長洲 南荒尾 荒尾 大牟田 銀水 吉野 渡瀬 南瀬高 瀬高 筑後船小屋 羽犬塚 西牟田 荒木 久留米 肥後旭 鳥栖● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ※ ● ━ ● ━ ● ━ ● ━ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 日田彦山線【快速】 快速日田の廃止6年後に復活した無名快速なのだが、ダイヤ改正を経て各駅停車となる運転区間が増加し、とうとう通過駅は2駅のみとなってしまった。 JR九州有数の赤字路線(※輸送密度は299人と同社内では五番目に少なく、廃線対象として特定地方交通路線に指定される基準値の4000人を大幅に下回る)で、九州北部豪雨で生じた不通区間の鉄道としての復旧を断念しただけに普通と化すのは時間の問題なのかも知れない。 日田彦山線 日豊本線 設定時期添田 西添田 豊前川崎 池尻 田川後藤寺 田川伊田 一本松 香春 採銅所 呼野 石原町 志井 志井公園 石田 城野 南小倉 西小倉 小倉 ● - ● - ● ● - ● - - ● - - - ● - ● ● 2007.03.18 ~ 2017.03.03● - ● - ● ● - ● - - ● ● ● ● ● ● ● ● 2017.03.04 ~ 2018.07.13● ● ● ● ● ● ● ● - - ● ● ● ● ● ● ● ● 2018.07.14 ~ 日豊本線【特急きりしま】 鹿児島中央(旧:西鹿児島)~宮崎を結ぶ特急で、1995年4月10日のダイヤ改正に伴う同区間の系統再編で登場した。 隔駅停車に該当するのは、81号、82号、101号、102号、の4本で、さわやかライナーとホームライナーから昇格・編入された便である。 特に急がないと揶揄されている。 2021年3月13日のダイヤ改正で101号と102号が運転取り止めになり、102号利用客の救済措置で2号の停車駅に三股、山之口、田野が追加されている。 鹿児島中央 鹿児島 竜ヶ水 重富 姶良 帖佐 錦江 加治木 隼人 国分 霧島神宮 北永野田 大隅大川原 北俣 財部 五十市 西都城 都城 三股 餅原 山之口 青井岳 田野 日向沓掛 清武 加納 南宮崎 宮崎 備考■ ■ ― ■ ■ ■ ― ■ ■ ■ 81号・82号 ■ ■ ― ■ ― ■ ― ■ ― ■ ■ 101号 ■ ■ ■ ― ■ ― ■ ― ■ ― ■ ■ 102号 日南線【快速日南マリーン】 宮崎~南郷・志布志を結ぶ無料優等列車で、大隅線の鹿屋発着だった急行佐多や快速佐多の後継である。 下り列車の隔駅停車化が進行していたが、2021年3月13日のダイヤ改正で通過駅が増加して上り列車と同じ停車駅に変更された。 ※:日豊本線 ▼:2022年9月23日のダイヤ改正で、上り列車は南宮崎止まりに変更 日南線 ※ 備考志布志 大隅夏井 福島高松 福島今町 串間 日向北方 日向大束 榎原 谷之口 南郷 大堂津 油津 日南 飫肥 内之田 北郷 伊比井 小内海 内海 折生迫 青島 子供の国 曽山寺 運動公園 木花 南方 田吉 南宮崎 宮崎 ●● →← →● ●● ●● →← ●● ●● →← ●● ●● ●● ●● ●● →← ●● ●● →● →● →● ●● ●● →← ●● ●● →← ●● ●● ●● 2002年3月22日ダイヤ改正● ← ● ● ● ← ● ● ← ●● ●● ●● ●● ●● →← ●● ●● →● →● →● ●● ●● →← ●● ●● →← ●● ●● ●● 2008年3月15日ダイヤ改正● ● ● ● ● ● ● ● ● ●● ●● ●● ●● ●● →← ●● ●● →● →● →● ●● ●● →← ●● ●● →← ●● ●● ●● 2017年3月4日ダイヤ改正● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ━ ● ● ━ ━ ━ ● ● ━ ● ● ━ ● ● ▼ 2021年3月13日ダイヤ改正 指宿枕崎線【快速なのはな】 1992年7月15日のダイヤ改正でいぶすきから改称される形で登場した。 徐々に停車駅は拡大している。 ○:一部停車 ※:2004年3月13日に西鹿児島から改称 山川 指宿 二月田 宮ケ浜 薩摩今和泉 生見 前之浜 喜入 中名 瀬々串 平川 五位野 坂之上 慈眼寺 谷山 宇宿 南鹿児島 郡元 鹿児島中央※ 備考● ● ○ ━ ○ ━ ━ ● ○ ━ ○ ━ ● ● ● ● ● ● ● 2000年3月11日ダイヤ改正● ● ━ ━ ━ ━ ━ ● ━ ━ ━ ━ ● ● ● ● ● ● ● 2004年3月13日ダイヤ改正● ● ○ ━ ○ ━ ━ ● ━ ━ ━ ━ ● ● ● ● ● ● ● 2005年10月1日ダイヤ改正● ● ○ ━ ○ ━ ━ ● ━ ○ ○ ○ ● ● ● ● ● ● ● 2008年3月15日ダイヤ改正● ● ○ ○ ○ ━ ━ ● ━ ○ ○ ○ ● ● ● ● ● ● ● 2011年3月12日ダイヤ改正● ● ○ ○ ○ ━ ━ ● ━ ○ ○ ● ● ● ● ● ● ● ● 2014年3月15日ダイヤ改正● ● ● ━ ● ━ ━ ● ━ ━ ● ● ● ● ● ● ● ● ● 2016年3月26日ダイヤ改正 長崎本線・大村線・佐世保線【快速シーサイドライナー】【区間快速シーサイドライナー】 2018年3月17日のダイヤ改正における普通減便の影響で、日中の快速が竹松~佐世保間を各駅に停車する区間快速へ変更されている。 長崎本線内を除いて2駅以上通過する区間が無くなり、隔駅停車化している。 2022年9月23日のダイヤ改正で、通勤時間帯の快速も全便が長崎本線内各駅停車に統一されて隔駅停車に近付きつつある。 ※:2022年9月23日に開業 ◎:特別停車(佐世保09:11発の長崎行き) 種別 備考 長崎本線 大村線 佐世保線 長崎 浦上 現川 肥前古賀 市布 喜々津 西諌早 諫早 岩松 大村 諏訪 新大村※ 竹松 大村車両基地※ 松原 千綿 彼杵 川棚 小串郷 南風崎 ハウステンボス 早岐 大塔 日宇 佐世保快速 通勤時間帯 ● ● ● ● ● ● ● ● ━ ● ━ ● ● ◎ ━ ━ ● ● ━ ━ ● ● ● ● ●区間快速 日中時間帯 ● ● ━ ━ ━ ● ━ ● ━ ● ━ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 松浦鉄道西九州線【快速】 2007年3月18日のダイヤ改正で復活した。 以前に設定されていたJR直通の快速(急行平戸の後継)や平戸エクスプレス及び通勤快速よりも停車駅が多く、2019年3月16日のダイヤ改正で一部が中里にも停車するようになった。 ○:一部停車 ◎:たびら平戸口~佐々は普通列車として運行 ★:無名快速時代は通過 ※:1988年4月1日に改称(江迎⇒江迎鹿町/潜竜⇒潜竜ヶ滝/肥前吉井⇒吉井/肥前神田⇒神田/肥前中里⇒中里) ※:1989年3月11日に開業 ※:1989年3月11日に改称(平戸口⇒たびら平戸口) ※:1990年3月10日に開業 ※:1991年3月16日に開業 ※:1994年10月3日に開業 ※:1994年10月3日に改称(大学前⇒大学) ※:1999年3月13日に開業 ※:2007年3月18日に改称(上佐々⇒清峰高校前) たびら平戸口※ 西田平※ すえたちばな※ 江迎鹿※ 高岩※ いのつき※ 潜竜ヶ滝※ 吉井※ 神田※ 清峰高校前※ 佐々 小浦 真申 棚方※ 相浦 大学※※ 上相浦 本山※ 中里※ 皆瀬 野中※ 左石 泉福寺※ 山の田※ 北佐世保 中佐世保 佐世保中央※ 佐世保 比較対象■ = = ■ = = ━ ■ ━ ━ ■ ━ ━ = ━ = ━ = ━ ━ = ━ = = ━ ━ = ■ 急行平戸 ● ● ━ ● ━ ━ ● ━ ━ ━ ━ ● ━ ━ ━ ━ ● ● 通勤快速● ━ ━ ★ ━ ━ ━ ★ ━ ━ ● ● ━ ● ● ━ ● ● ━ ━ ━ ● ● ━ ● ━ ● ● 平戸エクスプレス◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ● ● ━ ● ● ● ● ● ○ ━ ━ ● ● ━ ● ━ ● ● 快速 西鉄天神大牟田線【急行】 急行停車駅はダイヤ改正で増加しつつあるが、特急に次ぐ主力種別であることから基本停車駅が多いという訳では無い。 しかし、T13西鉄二日市(T17筑紫発着)やT17筑紫(T28花畑・T29聖マリア病院前・T39西鉄柳川発着)で普通に種別変更する列車は隔駅停車扱いされることもある。 ○:同駅の始発列車は停車 ※:2024年3月16日に供用開始 ※:2024年3月16日に試験場前から改称 ▲:2024年3月16日のダイヤ改正で、平日朝ラッシュ時間帯の福岡(天神)行きのみ停車 西鉄福岡︵天神︶ 薬院 西鉄平尾 高宮 大橋 井尻 雑餉隈 桜並木※ 春日原 白木原 下大利 都府楼前 西鉄二日市 紫 朝倉街道 桜台 筑紫 津古 三国が丘 三沢 大保 西鉄小郡 端間 味坂 宮の陣 櫛原 西鉄久留米 花畑 聖マリア病院前※ 津福 安武 大善寺 三潴 犬塚 大溝 八丁牟田 蒲池 矢加部 西鉄柳川 急行⇔普通種別変更駅● ● ▲ ▲ ● ━ ━ ━ ● ━ ● ━ ● ━ ● ━ ● ━ ● ━ ━ ● ━ ━ ● ━ ● ● ○ ━ ━ ● ━ ━ ━ ━ ━ ━ ● 全区間急行● ● ━ ━ ● ━ ━ ━ ● ━ ● ━ ● ● ● ● ● 西鉄二日市● ● ━ ━ ● ━ ━ ━ ● ━ ● ━ ● ━ ● ━ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 筑紫 隔駅停車が生じる原因と対策 簡単に言うと「主要駅が多すぎる為」。 他社線との乗換駅はもちろん、住宅街、観光地、大学最寄り駅等は急行停車駅になりやすい。 よってそのような駅が多い路線は必然的に隔駅停車になりやすい。 あるいは沿線住民の要望を受けどんどん停車駅を増やしていった結果、二進も三進も行かなくなることも。 また、元々の本数が少ない路線の場合、限られた本数の中で通過列車を設定すると「主要駅にとっての速達性向上の便益 < 小駅にとっての本数が少ない中でさらに列車本数が減る不便」という構図が発生しやすく、「停車駅がどんどん増える and/or 本数がどんどん削られる→最終的に速達種別廃止」というパターンがありがちである。 中にはそもそも速達運転をするための種別ではないもの(京王線快速、小田急線区間準急、合理化のため極端に利用者数の少ない駅を通過する普通列車など)や乗り通しではなく近距離利用客向けの速達列車(近鉄線準急、阪急京都本線準急など)もあるため、隔駅停車だからといって遅いだとかどうこう言うのは若干筋違いなものも存在する。 逆に隔駅停車でも速達性が確保されている路線(つくばエクスプレス線区間快速、東横線/目黒線急行など)はあるが、停車駅が多いと体感し難いため槍玉に挙げられることも多い。 隔駅停車をなくすには停車駅を減らすのが一番手っ取り早いが、一度停車駅に加えたものをもう一度通過駅に戻すことは住民の大規模な反発などが予想されるのでほぼ不可能。 なので停車駅を減らした上位種別を出すのが一般的。 因みに小田急では「化け急(新宿から新百合ヶ丘か相模大野まで急行、その駅から先は各停に種別変更)」なるものが存在する。 京王でも「高幡不動まで急行、高幡不動から各停に種別変更」という列車がある。 名鉄も種別変更が多く、更に特別停車や特別通過を多用することから沿線民以外で停車駅を把握するのは非常に困難である。 新たな列車種別を制定せずに何故列車種別変更という紛らわしい手段を取っているのかは、隔駅停車を作らない為の布石と言われている(*3)。 東海道線の優等種別である快速アクティーは一見するとわずか4駅しか通過しない隔駅停車に見えるが、実際は東京~横浜間で京浜東北線に、横浜~大船間で横須賀線に対して快速運転を行っているため実際の通過駅は15駅と多く、隔駅停車には当てはまらないといえるだろう。 同じ理由で埼京線の快速も4駅通過とかなり少ないように見えるが、実際は湘南新宿ラインと共用している池袋-大崎間で山手線に対して快速運転を行っており、それらも合わせれば合計11駅通過していることになるため、隔駅停車には当てはまらない筈である。 しかし、両方とも利用者から隔駅停車扱いされる機会は多い。 また、地方路線では合理化の一環として、一部の普通列車が乗降客の少ない駅を通過運転したり、それらの列車に「快速」などの種別が付与されたりといったことがあるが、これも速達運転をするための優等種別とは設定目的が全く異なるため「隔駅停車」と糾弾されることはほとんどない。 追記・修正は東横線急行などに乗車しながらお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 路線自体が上位扱いの東海道線は何か違う気が -- 名無しさん (2013-11-14 00 09 30) 京都から米原方面先の新快速も似た感じになりますけど、何か? -- 名無しさん (2014-06-17 23 54 01) 横浜線快速は追抜線路のない橋本から先と横浜線じゃなくなる東神奈川以降は話が別。隔駅停車には当てはまらないだろ -- 名無しさん (2014-06-18 10 50 57) 東海道線自体が駅間隔広いんだからアクティー程度の通過でも問題ないだろうに -- 名無しさん (2015-01-18 05 04 37) アクティーに関してはコメント欄の方に同意。東京-小田原間で実質的に15駅通過している(普通列車は11駅通過、純然たる「各駅停車」は山手線(東京~品川)・京浜東北線(東京~横浜)と横須賀線・湘南新宿ライン(横浜~戸塚)のため。 -- 名無しさん (2016-05-10 20 47 01) ↑3の通り、主要駅がどうこうよりも設備の問題が大きいよな。待避線がなく緩急接続のみを行う学研都市線~福知山線の快速も、2駅通過と停車を繰り返して大阪市付近の各駅停車を経た後2駅通過に戻ってこれに近い -- 名無しさん (2017-08-19 11 18 34) TX、北千住 -- 名無しさん (2018-04-04 21 58 17) TX区快、北千住~八潮間ノンストップなら停車駅間隔は十分広いのは確かなんだよね。実際乗ってると遅い感じはしない。 -- 名無しさん (2018-04-04 22 00 11) 地方民からすると「ケッ」となる話 -- 名無しさん (2018-05-01 22 28 46) 東海道線快速も・・・ -- 名無しさん (2018-05-24 04 39 00) 図が見やすい、よく作ったなぁ -- 名無しさん (2018-08-23 10 10 05) 大和路線の奈良からやってきて東海道本線で普通になるせいで4駅しか飛ばさない区間準急西明石行きと大阪側の3駅4駅しか飛ばさない阪急神戸線通勤急行・急行はどうよ -- 名無しさん (2018-11-01 02 38 33) 日光線区間急行もここに仲間入りか -- 名無しさん (2020-08-10 06 03 25) 山陽新幹線ひかり 線内完結のひかりは夜間の594号を除き隔駅停車。これは品川開業のあたりから「ひかり」の停車駅が増加傾向だった上に、九州新幹線開業時に速達タイプだった「ひかりレールスター」の大半が「さくら」に置き換えられた残り物だけしか線内完結の「ひかり」として残存しないため。さらに東海道新幹線からの直通「ひかり」に関しても朝方の下り3本を除き「こだま」の代替を担っているため全て線内は各駅停車。 -- 名無しさん (2020-08-19 22 05 35) 東急田園都市線も3駅連続停車やらで急行感が薄い -- 名無しさん (2020-08-24 14 17 11) 高山線の始発/終車とか山陰地区の快速とかはそもそも目的からして速達じゃなくて地方路線の合理化だからここに挙げるのは違うだろ。それを言い出すと北海道の一部駅を通過する普通列車を全部列挙する羽目になる。 -- 名無しさん (2020-12-10 16 55 36) 東京メトロ東西線の快速(ただし途中から快速名義のまま各停)はこれには当てはまらんのかな -- 名無しさん (2021-06-01 08 37 46) エイティシックスの放送 -- 名無しさん (2021-12-14 04 12 28) これ、3分で読めます? -- 名無しさん (2022-05-08 13 09 52) 首都圏外から見ると、新幹線東京で止まるのにわざわざ品川で止まる意味ある?と思ってしまう・・・東京品川で分散しないと降りる人が集中しすぎるかもしれないが -- 名無しさん (2023-07-22 10 56 59) 名前 コメント
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2008年04月11日(金) 08時46分-R 第9章 蜃気楼の主 無音の森が地平線まで広がっていた。黄金の道が森の中に吸い込まれるように消えていた。森の前には番小屋がぽつんと建っている。森の中には、木とその影のほか、いかなるものも見ることができない。 ひきつった笑いを浮かべるプルの背中を、トリュフォーはバンと叩いた。 「怖ぇのか」 「う・・・少し」 トリュフォーは肩をすくめて笑う。 「まあ怖いのも道理でな、<フォレスト・シロシーブ>、通称<幻影の森>と言えば、西街道一の難所だ。この森で消息を絶つ人間は、年に百人を数える」 プルは答えない。代わりにルスラが言う。 「何やら、変な魔力が漂っておるのぉ」 「ああ、何でも<蜃気楼の魔王>スバエルギナスがこの森を根拠にしていると聞くぜ。森に入った人間は、蜃気楼の魔王の力にあてられて、半日のうちに幻影と化し、この世のあらゆるものと接触できなくなるとか」 シャンプが首をかしげる。 「まぼろし? って、奇天烈な術だべなあ」 「この森に住まう獣も鳥もみな幻影、あるいは森そのものが幻とも言われてんな。――なに、心配はいらんさ。この<封印の札>を持っていれば魔王の力にあてられるこたねぇし、街道は一本道で迷う心配もない。一日半もあれば通過できる」 「それじゃあ、まあ、大丈夫、かな・・・」 と、青ざめた顔のままプルが言う。対し、トリュフォーはにやりと笑った。 「甘く見んほうがいいぜ、プルよ。幻影の森はあらゆる手を使って旅人を中へ引き込もうとする。封印の札だって、効くのは三日がせいぜいだ。迷ったら・・・出られない(ここでまたプルがびくっと身体を震わせた)。絶対に脇を見るなよ、何も無いからな。森の中にいる奴らは、みんな幻だ」 プルがごくりと唾を飲む。 「さて、説明は終わったかや? そろそろ行こうではないか」 トリュフォーが先頭、ルスラがその次、シャンプが三番目になって、一行は歩き出した。プルは緊張の面持ちで、シャンプの後をついていく。森に入る前に、トリュフォーが番小屋の窓を叩いた。髭の生えた初老の男が窓から顔を出す。 「おう、トリュフォーさん、帰りかい」 「そうだ。連れができたんでな、<封印の札>、三枚頼む」 初老の男の顔が引っ込み、ややあって左手が出てきた。その手は三枚の札を掴んでいる。 「ほいさ」 投げられた札をキャッチすると、トリュフォーは三人に札を渡した。 「確かに受け取ったぜ」 「気をつけてな、まあ、あんたは慣れてるだろうが、お連れさんのほう。特に、そっちの子供」 プルは最初、ルスラのことを言っているのだと思ったが、初老の男やトリュフォーの視線が自分に向いているのに気づき、そうではないと悟った。 ◆ 朝だというのに森の中は暗く、うだるように蒸し暑かった。奇鳥の甲高い鳴き声だけが、沈黙を破っていた。見たこともない巨大な蛾がひらひらと舞い、ひょろながくて黒っぽい植物が道の両脇から顔を出していた。 たちまち一頭の巨獣が、唸り声を上げ牙を剥いて、森の右手から突進してきた。やや身構えるプルを、トリュフォーが制した。巨獣は一行をすり抜け、左側の闇の奥へと姿を消した。 「あいつも魔王にやられた、哀れな生贄ってわけだ」とトリュフォーは言った。 半日あまりは、こともなく過ぎた。 昼ごろ――といっても、それを知らせたのは太陽ではなく、腹の虫だ――、一行は旅人が休憩した跡を見つけた。テントを張っていたと思しき石や土の跡と、火を焚いた跡が残っている。 「まだ新しいみでえだな」とシャンプが言った。 「ふうん、行商人かな」とプル。 トリュフォーが首をかしげていた。 「オラたちも、ここいらでメシにしねぇかよ?」とシャンプ。 プルは一も二もなく賛成した。他の二人にも異論はない。そこで簡単な食事と二十分あまりの休憩をしてから、進発した。 それからさらに一時間ほど歩いた。 突然、左後方から悲鳴が響いた。見れば、商人の風体をした男が、大蛇に絞められていた。大蛇の顎はすでに男の腕を飲み込んでいる。男の生命は風前の灯と見えた。 トリュフォーが制止する間もなく、プルが駆け出した。シャンプも後を追おうとしたが、ルスラが止めた。 「止まれ、馬鹿野郎、幻だ!」 耳に飛び込んできたトリュフォーの声に、はっとしてプルは止まりかけた。がすでに遅かった。脚は坂道に気づかずに宙を踏み、バランスを崩して転げ落ちていった。男の顔に笑みが浮かび、それから消えた。 ◆ 街道を一歩離れれば、森の地形は複雑で、あちこちに急坂や穴、底なし沼がある。プルの姿は、あっという間に見えなくなってしまった。 トリュフォーが地団駄を踏む。 「あの馬鹿、人の話も聞いてなかったのか――だいたい本物だったとしても、あいつが助けに行ったところで、状況が悪くなるだけだってのに」 シャンプがトリュフォーを見る。トリュフォーは首を振る。 「やめとけやめとけ、共倒れだぞ」 「だども、見捨てるわけにや」 「あー、分かってる。私が探しに行ってみるさ、一応な」 トリュフォーはふう、とため息をつく。 「ルスラ、シャンプを連れて先に行って待ってな。私が残り二日半、ぎりぎりまで使って探してみるから」 ルスラの眼が険しくなる。 「見つかると思うておるのか」 「思わん、だがやってみないと分からん」 「二日半たってお主も来なければ・・・わらわとシャンプとだけで進ませてもらうぞ」 ルスラの冷酷な口調に、トリュフォーは黙って頷く。 「ああ、そん時は私も絶望だ。放っておいてくれればいい」 ルスラはトリュフォーを険しい表情で睨んだが、たちまちシャンプに合図すると、道を急いだ。シャンプはやや逡巡の体であったが、この森に不慣れな自分がいても足手まといと思い、ルスラに続いた。トリュフォーはもう一度嘆息してから、森の中に飛び込んだ。 ◆ 目を覚ました時、プルのまわりでは異獣が跳梁し奇鳥が叫び、変花が乱れ咲いて奇怪な香りを漂わせていた。大した怪我は負っていない。やや安堵しかけたプルだが、やがてあるべきものがないことに慄然とした。 ――封印の札。 まわりを見回したが、どこにも落ちていない。 右に一歩踏み出してみる。恐れのあまり、また戻る。左に二歩、そして戻る。前にも後ろにも進みかねた。プルは生まれてから一番の恐怖を感じた。 身体も頭もがくがくと震えた。大声を上げたい、走り出したいという欲求を辛うじて抑えた。 ――冷静になれ、冷静になれ、冷静になれ。 しきりに、それだけを自分に言い聞かせた。その効き目があったのか、なんとか気分が落ち着いてきた。この度胸は、冒険で幾度か危険をくぐってきたたまものかもしれない。 ――どうすれば、助かるのか。進むのか、戻るのか。 ――そうだ、戻れば助かるぞ。 トリュフォーは、半日で身体が幻影と化してしまうと言っていた。すると半日以内に森から出ればいい。森に入ってから半日ほど歩いたのだから、急いで戻れば、なんとか間に合うかもしれない。そしてあの森番のおじさんにもう一度札を貰って、みんなの後を追おう。 考えが定まると勇気も出てきた。 ――前のめりに倒れたから、脚があるほうが来た道だな。 坂道を転がる途中で身体の向きが変わった可能性については、考えないことにした。 ずんずんと歩いた。異獣も奇鳥も幻だ。恐れる必要はない。 歩いた。不安になってきた。 ――まだ一時間だって歩いてないぞ。大丈夫だ、きっと戻れる。 歩いた。 歩いた。 歩いた。 息が切れた。 ――まだか。 額の汗を拭う。拭った左手が、眼に飛び込んできた。 左手は、透けていた。 「あ」 心臓が跳ね上がる。 背中を汗が滝のように流れ落ちる。 目の前が真っ暗になる。暑いはずなのに、身体の底から悪寒が襲ってくる。 息づかいが激しくなる。 「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」 思わず、方角も見ずに駆け出していた。 全く錯乱していた。異獣の顔はプルをあざ笑う人間の顔に見え、奇鳥の声はケタケタと笑う残酷な子供の声に似ていた。おいで、おいでという声が森の奥から聞こえた気がした。涙が出た。笑った。怒った。その辺りの木を蹴飛ばそうとしたが、すり抜けた。恐怖が増した。 息を切らして駆けた。 「止まれ!」 駆けた。 「止まらなければ――」 声は耳に入っていたが、理解できなかった。 途端に左脚に鋭い痛みが走った。プルは思わずつんのめる。人が近寄ってきた。 「寄るなよ、どうせオレももうすぐ、お前と同じ幻になるんだ! 放っておいてくれ!」 「何を言っている、貴様、スバエルギナスのしもべではないのか?」 「そんな奴は知らない、もういいだろ、オレは・・・」 自暴自棄になるプルとは対照的に、相手は嫌に冷静だった。 「――もしや、人間か?」 「ああ人間様さ、聖も魔も関係ない、田舎の百姓だよ!」 相手の言葉に噛み付くように返す。ややあって、相手は口を開いた。 「僕を見ろ」 「幻なんか見たくない」 「見ろ、幻かどうか」 答えも待たず、その人はプルの首筋を掴んで無理矢理自分のほうへ顔を向けた。 プルの目に飛び込んできたのは、思いのほか柔らかな面立ちの少女の顔だった。一旦安堵の息。ところが改めて少女の顔を眺めると、またしても失神せんばかりに恐ろしくなった。 淡い、ほとんど銀に近い金髪に、白玉の肌。森の住民と言うよりは山岳の住民に相応しいいでたちで、長弓と箙を背負っている。だが異様なのは血のように紅い瞳と、耳があるべき位置からとび出た、羽毛におおわれた突起である。 「きっ・・・君は・・・ま、魔・・・」 少女は一息ついて、首を振る。 「ああ僕は魔の眷属だ・・・逃げなくてもいいよ、別に取って喰おうってわけじゃないから」 それでもプルは背中を向けて脚をばたつかせる。少女は言葉で逃げ足を断った。 「それとも、一人で森から出られるのか?」 プルの脚がぴたりと止まる。振り向いた顔は涙に濡れている。 「あー、泣かなくていいよ・・・泣くな、助けてやるから。ほら、傷口を見せてみろ。間違って射てしまって、すまなかったな」 少女はプルの答えを待たず、彼の左脚に突き刺さった矢を引き抜いた。プルはあう、と悲鳴を上げる。少女はハンカチを裂いて傷口に巻いた。痛みにプルが我に返ると、消えかかっていた左手と脚が、現実感を取り戻している。 「ん、封印の札を持ってないのか? 命知らずだな」 「持ってたけど、なくした」 「では、誤射とはいえ、君を救うことになったわけだ」 少女は傷口の応急処置を済ますと、矢を見せた。 「これは<封印の矢>。封印の札と同じ材質だが、研ぎ澄まされている分、威力は高い。これは射た者にかかっているほとんどの魔法を打ち消すことができる――まあ、あまり強力な呪いなどは無理だが」 少女は続ける。 「蜃気楼の魔王の影響くらいは問題にならない」 少女は矢を置くと、プルの右手を取った。 「そっちの手にも、怪我をしているようだが」 「これはたいしたことないよ、転んだときにすりむいただけだから」 「ちゃんと処置しておかないと、破傷風になるぞ」 聞いてプルは青くなった。少女はいきなりプルの手に口をつけて傷を吸い、血を吐き棄てた。 「気休めにしかならんから、森を出たら、まともな医者にかかっておけよ・・・まったく、青くなったり赤くなったり、忙しいことだな」 少女は膝の土を払って立ち上がると、真っ赤になっているプルに腕を貸して立ち上がらせた。 「肩を貸そう」 少女はもう一方の手で、プルに矢を渡した。 「持ってろ、札の代わりになる。行き先は王都のほうか?(プルがうなずく)なら、まあ、一日の行程だな。怪我をしてるから、もう少しかかるかもしれないが」 プルは少女に肩を預けた。二人の身体がぴたりとくっつく。 「――重いな」 「ご、ごめん」 「気にするな、もとはといえば、僕のせいだ」 少女はプルの目を見て、少し笑った。プルはどきりとした。 「名前を聞いてなかったな」 「ん、ああ――オレは、ランプテロミス村のプルアロータス」 「ミセナ・クロカータ、または<碧空の魔王>だ。プルアロータス、しばらくの間、よろしく頼む」 「や、こっちこそ」 プルはそう言って、ぎこちなく笑い返した。 ◆ 少し休もう、とプルは言った。ミセナの息が上がってきたのに気づいたからだ。 「気遣ってもらってすまないな、どうも僕は体力のほうには自信がなくて」 「いや、オレのせいだし」 プルはミセナの肩を離して、切り株に腰掛け――ようとして、見事に転倒した。 「まだ慣れないのか。ここから見えるもの、僕と君以外はみんな幻だ」 尻をさすりながら、プルは座りなおし、照れ笑いを浮かべた。それから鞄から水筒を取り出して、一口。 「飲む?」 「いただこうか」 ミセナは水筒を受け取ると、浴びるように飲み乾した。ややあって眼をぱちくりさせると、口から水筒を離し、耳元で振ってみる。 「――すまない」 「全部飲んじゃったの!?」 プルは驚いた。2リルトルは残っていたはずだが。 「いや、いいけどさ。ノドが渇いた原因はオレだろうし」 「ホントにすまん」 それからミセナは、プルに向かい合って、座った。しばらくの間、二人とも何も喋らない。次第に気まずくなってきた。そんな嫌な空気を破ろうと、プルが声を出した。 「あのさ」 「ん?」 「ミセナは何で、この森をうろついていたの?」 途端に、ミセナの顔が険しくなった。 「蜃気楼の魔王スバエルギナス」 プルが怪訝な表情を浮かべる。ミセナは言った。 「彼を――殺すためだ」 ◆ 幻影の森に入って、一日ほどの距離の場所。 蒼い衣をまとった長身の青年が道に立っていた。幻影の森の奥の、闇のまた闇を見据え、青年はつぶやいた。 「蜃気楼の魔王スバエルギナス・・・貴方との仲もこれまでだ。貴方は強くなりすぎた、全てを飲み込み、幻に変えてしまうほどに・・・私は、貴方を倒さねばならない」 「何をブツブツ言うておるのじゃ。伏竜洞で出番が無かった悔しさに、頭をやられたか」 青年はふり返った。あの幼女が、金髪の少年を連れて立っていた。 「おお、これはこれは・・・ふむ、今日は聖魔剣の勇者もご一緒ですか」 「セファラスとやら、お主ほどの者が幻にあてられたわけでもあるまい。森の奥に、何があるのじゃ?」 青年は微笑んだ。 「魔王の館があります、スバエルギナスがいます――ふふ、出番はいただきますよ。今回、貴方の出る幕はないでしょう」 そう言い残し、ぽかんとした勇者と、憮然とした魔術師を置き去りにして、青年は森の闇へと消えた。 ◆ 偶然という言葉がある。特に示し合わせたわけでもないのに、様々な事象が絡み合い予想もできないことが起きることを表す言葉である。その程度は世界の危機を救うようなたいそうなものから街で古い友人にばったり出くわすといったたいしたことのないものまで様々だ。しかし、程度に関わらず多くの場合はただの『偶然』として片付けられてしまうのがオチである。 だが、偶然と見せかけて実は必然だったり神の見えざる手が発動していたりとなかなか侮れないものでもある。 故に人はこう呟くのだ。 「・・・偶然とは怖いものだな」 「ん? 何か言った?」 「いや、なんでもない」 霧と森に囲まれた中に立つ館を前に、プルと<碧空の魔王>の二つ名を持つ少女は立っていた。木造の二階建てでそれほど大きくはない。街の中に立っているのなら特に気にもしないような建物だが、場所が場所なだけにとてつもなく怪しく見える。 プルはミセナの肩から腕を外し、数歩前に出て恐る恐るといった感じで館の扉へと手を伸ばす。そのまますり抜けるのではないかと覚悟はしていた、が、それに反して手には確かな感触が返ってきた。 「これ幻じゃない」 そう言って後ろへ振り向くと、ミセナが何か不思議なものを見るような目つきでプルを見ていた。 「? どうしたの。そんな顔して」 「君、もう歩けるのか・・・?」 「え? あっ、うん。オレってこう見えても結構丈夫なんだ。ははは」 「そうなのか? とてもそんな風には見えないが・・・」 信じられないといった様子のミセナだったが一応は納得してくれたらしかった。正直自分でも疑わしいと思うような言い訳だったが、とりあえず隠し通せたようだ。まあ、自分が聖魔剣の加護――呪いとも言えるが――を受けていると言っても誰も信じないだろうが。 「それはともかくさ、この屋敷が幻じゃないんなら入ってみようよ。休むにはちょうどよさそうだし」 「それは無理だな・・・プルアロータス、君はどうしてこんなところに屋敷なんかが立っていると思う?」 「そりゃあ、誰かがここに住んでるから――ってまさか・・・」 「そう。こんな危険な場所にわざわざ住む輩などいない。つまり、ここが僕の目的地、スバエルギナスの館だ」 隣で絶句しているプルを尻目にミセナは扉へと手をかける。 「えっ!? ちょっとミセナ!?」 「すまない、プルアロータス。先に君を森の外まで連れて行くつもりだったが、そうもいかなくなった。この霧のせいでここを見つけるのはとても困難なんだ。正直、今を逃したら次に見つけられるのはいつになるか分からないんだ。だからしばらく待っていてくれないか。そんなに時間はとらせないつもりだ」 「な、何言って――」 「ああ、そうだ。もし時間が経っても僕が帰らないときは――」 「そうじゃなくて! 正気なの!? 相手はこんな恐ろしい力を持ってるやつなんだよ。君一人じゃとても――」 「大丈夫だ。対策は立ててあるし、僕だって<魔王>なんだ。そう易々と引けは取らないさ。それに――これは僕がやらなければならないことなんだ。<碧空の魔王>の名を継ぐものとして」 そう告げたミセナの瞳には今までとは違った色があった。シャンプが故郷を旅立ったときに見せた瞳の色とよく似た色だった。 「・・・分かったよ」 「すまない。すぐに終わらせて――」 「その代わり! オレも、一緒に行くから」 「なっ! 君のほうこそ正気か!?」 本当に驚いたらしく、振り返ったミセナの目は大きく見開かれていた。 「君は僕と違って人間だ! それに君にはスバエルギナスと戦う理由が無い!」 「そうなんだけどさ。なんて言うか、危険なところへ女の子を一人で行かせるのはちょっと」 ――男として格好悪いんじゃないかな、という言葉は頭の中で付け足した。が、言った後でなんだか無性に恥ずかしくなってきて、プルは慌てて付け足した。 「や、ホントのこと言うとさ、ここで一人で待ってるってのも結構怖いかなって――」 「――ふ、ふふ。はは、ははははは」 プルの言葉を遮って、ミセナが唐突に笑い出した。しかも、一応声は押し殺してはいるもののその笑いは一向に収まる気配を見せない。 「(うぅ・・・何も笑うことないじゃないか。そりゃ、情けないこと言ったかもしれないけどさ)」 プルは止まらないミセナの笑いを恨みがましい気持ちで見守っていた。 しばらくした後、ようやく収まったミセナが口を開いた。 「すまないな、笑ってしまって――しかし君は面白いな」 「お、面白いって・・・」 さらにショックを受けてうなだれるプルとは反対にミセナは上機嫌だった。 そして、 「分かった。手伝ってくれるか、プルアロータス」 そう言ってプルに手を差し出した。 ◆ ギィという鈍い音を立てて扉が開かれる。ミセナから借りた短剣――これにも魔法を打ち消す力があるらしい――を手にプルは館の中へと足を踏み入れた。隣に立つミセナは弓を手に持ち、いつでも矢を放てるようにしている。 そこは開けた広間になっていた。照明はあるものの薄暗い。左右の壁にはいくつかの扉があり――正面にはこれ見よがしに大きな階段が設けられている。 「流石にここには霧も無いみたいだ」 「いや、むしろこれからが本番だ。霧が無いのは恐らく、スバエルギナスが能力を制御できる範囲に入ったからだろう。外の霧や幻は制御すらされずに垂れ流されている魔力の産物で――!? 伏せろ! プルアロータス!!」 直後、しゃがんだ二人の頭上を複数の何かが飛んでいった。恐らくは何らかの凶器だろう。ミセナはともかく、プルが反射的に伏せることが出来たのは旅での経験、あるいは養われた自己防衛本能の賜物だろう。少し前だったらトリュフォー辺りに無理やり地面に押し付けられていたに違いない。 ちょっとは成長したのかなオレ――などど考えつつミセナのほうを見ると、彼女は正面――ちょうど階段のある辺りを注視していた。プルもそちらに目をやる。 そこには彼らに攻撃を仕掛けた主――ある意味ではその通りだったが――ではなく、宙に浮いた無数の刃物が彼らのほうへとその切っ先を向けていた。多種多様な剣、ナイフ、なぜか包丁までもが混ざっている。 「なっ、なんだよこれ!?」 「来るぞ! 走れ!」 ミセナの声に呼応するように、刃物の群れが二人へと襲い掛かる。先に走り出したミセナを追うようにしてプルも走った。必死になって走った。一瞬前までプルがいた場所に何本もの刃物が突き刺さる。止まれば串刺しになることは間違いない。ミセナは走る速度を変えて刃物をかわしたりしているが、無論プルにそんな芸当が出来るはずがなく。プルに出来るのはただひたすら走り続けることだけであった。二人が逃げ、空飛ぶ刃物がそれを追いかけ、床に突き刺さる。 「わー!! わー!! わー!!」 「くっ。これでは埒が明かない・・・!」 暗い広間の中で二人と刃の群れの命を賭けた壮絶な鬼ごっこが展開されていた。走る、刺さる、走る、刺さる、走る、走る、刺さる、走る、走る、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ だがそれがいつまでも続くはずも無く。走り続けて息の上がってきたプルの速度が次第に落ち始める。プルほど消耗が激しくはないが、ミセナの速度もわずかに落ちてきている。だが二人の速度が落ちようとも刃物の速度に変化は無い。そして疲労は集中力をも奪っていく。 ほんの一瞬、プルが足をもつれさせた。だがしかし、プルはなけなしの集中力を用いて転倒だけは防ぐことには成功した。これは彼にしてはすばらしい成果だった。だが、それでも一瞬だけ隙が出来た。それは一瞬ではあったが明らかに致命的なものだった。動きを止めてしまったプルの目の前に一本の剣が迫る。すでによけるタイミングは逃してしまっている。最早どうしようも出来ない。次の瞬間訪れるであろう激痛を覚悟してプルは身を硬くした。 そのとき彼の前に飛び出した影があった。ミセナである。彼女は右手に矢を持つとそれをそのまま向かってく刃へと叩きつける。 と、不思議なことが起きた。ミセナによって叩き落されると思われた剣が、矢に触れたとたん跡形も無く消えてしまったのである。プルは何が起こったのか分からず困惑したのだが、プルのほうへと顔を向けたミセナは顔色一つ変えていなかった。彼女はそれよりもプルの状態のほうが気になるようである。 「大丈夫――」 「ミセナ!! 危ない!!」 そう言うが早いかプルは全力でダッシュし、ミセナを突き飛ばす。自分も走った勢いのまま体を投げ出してごろごろと床を転がる。先ほど二人が立っていた場所は十本以上もの剣が突き立っていた。集中力が落ちてきているのはプルだけではないようである。このままではまずい。そして何より、彼自身がもう限界だった。 息も絶え絶えながら、プルは起き上がり周囲を見渡す。見えたのはすでに起き上がっているミセナと相変わらずの刃物の群れ、そして開けっ放しの入り口。先ほど床に突き刺さった刃物も再び浮き上がりこちらに狙いを定めている。 「はぁ、はぁ。ミセナ、これ以上は――」 「分かってる・・・いったん退くぞ、プルアロータス」 その声を合図に、二人は入り口へと――プルは最後の力を振り絞って――駆け出した。 ◆ 外へ飛び出したプルとミセナは刃物が追ってこないことを確認するとその場に倒れこんだ。しばし無言で肺に空気を送り込む作業に専念する。しばらくの後、ようやく呼吸が落ち着いたプルが口を開いた。 「あ、危なかった・・・一歩間違ったらオレ達死んでたよ・・・」 「ああ・・・あれがスバエルギナスの本当の能力だろう。ここまで追ってこないところを見ると、やはり制御できる範囲はあの屋敷の中だけのようだな」 「あ、そういえばさ。ミセナが矢で剣を叩いた時、剣がいきなり消えたんだけど、あれはどういうことなのさ」 剣が消えた瞬間、ミセナはまったく驚いた様子を見せなかった。つまり、彼女はああなることが予想できていた。そう考えたプルは疑問を口にしたのだが、それに対するミセナの返答は簡単なものだった。 「ああ、それはあれが幻だからさ。封印の矢に触れれば幻は消える」 「ええー! あれ、幻だったの!? だったらあんなに逃げ回らなくても――っていうかそれじゃなんでミセナも逃げてたのさ?」 「あれは普通のとは違うからだ。ここ、見えるか」 そう言って肩の辺りを指差す。見ると、そこに着けられている彼女の肩当てがざっくりと切り裂かれていた。軽量でそれほど強度は高くない代物ではあるが――それを差し引いてもその切り口は異様なほどにきれいだった。 「君はこの森に入ったものがどうして幻に取り込まれるか知っているか?」 「確か魔王の力のせいだって話だったと思うけど」 「そう。その魔王の力というのがこの霧なんだ。この霧はスバエルギナスの魔力そのもので、この森に入ったあらゆるものはその体を霧に浸食されていく。そして、その浸食が一定以上進むと幻と同化されてしまう。魔力耐性が高いものなら数日程度は問題ないが、そうでないものは早ければ半日足らずで取り込まれる恐れもある」 そこで一拍おいた後、ミセナは続ける 「本来ならゆっくりと均一に侵食が進んでいく。だが、もし一部分だけ急激に侵食が進んだ場合どうなるとおもう?」 「えーと。・・・どうなるの?」 「その一部分だけが幻になる。幻は実体とは触れることができないから、僕達の視点から見れば、まるでその部分だけが千切られたように見える。この切られたように見える跡のように」 「・・・結局どういうこと?」 「あの刃物はおそらく異常なほどに濃縮された霧だ。それに刃物の幻影を投影しているんだろう。で、それに触った部分は幻となって消えてしまう。まあ要するに、あれは幻ではあるが本物並み、いや本物以上の切れ味を持っているということだ」 プルの顔色がさーっと青くなった。正直よくわからなかったのだがとりあえず見た目以上に危険だということだけは理解できたからだ。そんな危険なものが大量に飛び交う中を進むことなど絶対に無理だ。 だが、今更怖がるプルとは反対にミセナは冷静だった。 「そんなに怖がらなくてもいい。確かに危険なのは事実だが、あれが幻であるのもまた事実だ。対策の立てようはある。いいか――」 ◆ 扉を開いてプルはびくびくしながらも再び館の中へと入った。あの刃物の危険性を知ったというのもあるが、何よりも今度は一人だけというのが彼を怯えさせる最大の要因だった。 「(こっ、怖い・・・けっ、けどこれが作戦なんだし――うぅ。でもやっぱり怖い・・・)」 そして、やはりそれは現れた。宙に浮かぶ無数の刃物。その狙いはすべてプルへと定められている。何もかも投げ捨てて逃げ出したい衝動に駆られまくっているプルだったが、何とかその場に踏みとどまっていた。 刃物の群れが動き出した。プルめがけて一斉に殺到する。プルもわずかに遅れて後ろへ走り出す。が、刃物のほうが速い。あっという間に距離をつめ、今にも突き刺さらんとした時――プルが向かっていた入り口から数本の矢と、 「はじけろ!!」 という凛とした声が割り込んだ。 その声に従うように、プルを追う刃物の群れの中心付近に放たれた矢が粉々にはじけ飛んだ。と、それに巻き込まれるかのようにすべての刃物が突然消失した。 そして、それと同時に新たな人影が入り口から走りこんでくる。プルも即座にきびすを返し現れた少女とともに走り出す。目指すは正面階段、そしてその先に見える扉。周囲ではすでに刃物が新しく出現し始めている。 二人は一直線に走った。後ろが気にはなるが、振り向いてもどうしようもないことはプルにも分かった。扉まで残り30メルトル弱。後は運を天に任せるのみだ。 一秒、二秒――刃物はまだ来ない。 三秒、四秒――まだ来ない。 五秒、六秒、・・・・・・・・・・・・ ――そして。 やや先を走っていたミセナが体当たりをするように扉の中へと駆け込む。プルも一瞬の後続いて駆け込んだ。後ろで、何かが突き刺さるような音が聞こえた気がした。 ◆ 「あーもう、見つからねぇなぁ!」 邪魔な下草を剣で切り払って――それが幻であることに、トリュフォーは気付いた。 この森に入ってから暫く経つが、目に映るものが信用出来ないという不気味さにはまったく慣れることはない。 何も無いところにある見えない樹、幽霊のようにさまよう森に取り込まれた人や獣。そして、刻々と移り変わる周囲の景色。 そう。彼は、道に迷ってしまっていた。 「どうすっかな・・・このままじゃミイラ盗りがミイラになっちまう」 絶望的なため息をひとつ。勇猛なる稀代の戦士である彼も、いささか参った。 「あーもう・・・年中さまよってるんだったら道くらい教えやがれ!」 森に取り込まれたユウレイに毒づく。いや、意味がないことはわかっているのだが。 「どこに行かれるのですか?」 「は?」 気付けば彼の目の前には、蒼い衣を纏った長身の青年がいた。 ◆ 「ようこそ私の館へ。歓迎しますよ」 飛び込んだ部屋の中には、桃色の髪を優雅に整え、紺色の上着を粋に着こなした、いかにも紳士といった風情の青年が立っていた。 「蜃気楼の魔王スバエルギナスか」 「人の名を聞くときは、まず自分から名乗るべきですよお嬢さん。まあ、わたしの名はすでに知っているようですが」 凛とした声で、ミセナは応じた。 「僕の名は碧空の魔王ミセナ・クロカータ。我が眷属達を取り戻すために貴方を、殺しに来た」 それを聞いたミバエルギナスは顔を曇らせながら、少しうつむいた。その表情からは、寂しさと、虚しさと、悲しさと――ほんの少しの後悔の念しか読み取れない。 「ふむ――悲しいことですね。他人を傷つけたくないし、争いたくもないゆえに辺境の地に住まっているというのに。これもわが身に科せられた業というわけですか・・・・・・そちらのキミは?」 「え、ええと・・・オレは、ランプテロミス村のプルアロータスです。途中で道に迷ってしまって・・・」 急に話を振られ、もごもごとつぶやく。なんだか悪い人じゃなさそうだな――少なくとも、見た目や態度からはそう感じられた。 プルの思うとおりの柔らかな仕草で、スバエルギナスは頷く。 「そうですか、それは気の毒なことをしました。さぞかし怖い思いをしたでしょう。先ほどのトラップも最近活発化してきた魔衆に備えてのものだったのですが――ご存知とは思いますが、わたしはただそこに存在するだけで迷宮を創りだしてしまうので、彼らの仲間になるよう強要されているのですよ――大変申し訳ありませんでしたね。お詫びといってはなんですが、後ほど森の外まで送って差し上げますよ」 「あっあの、ミセナの仲間達のこと、自由にしてやれないんですか?」 どうやら本当に悪者ではなさそうだ。この分なら、戦わずに済むかもしれないと思ったのだが―― 「残念ながらそれは無理なのです。一度わたしの魔力に囚われたものは、わたし自身でさえどうにもすることができません」 心の底から申し訳なさそうにスバエルギナスが答える。 「――だから、こいつを殺すしかないんだ」 壮絶な決意をその瞳に顕して、ミセナが弓を構える。 「プルアロータス君、キミは下がっていなさい」 そう言ったスバエルギナスの手には、身長ほどもある巨大な黒い剣が握られていた。 ◆ 先手必勝。ミセナは相手が戦闘態勢をとると見るや否や、素早く攻勢に出た。 3本の矢を一息で放つ。あの黒い剣は凝縮された幻――しかし先ほどのものとは段違いの魔力を感じる。封印の矢で消滅させることは不可能だろう。直接、敵の急所を貫くしかない。 スバエルギナスの目前で矢に破裂を命じる。 「ぬう!」 巨大な剣で蜃気楼の魔王はそのほとんどを切り払う。 だが彼が視線を戻した時、すでにミセナはそこにいない。 碧空の魔王の証たる魔力で編んだ青い翼を広げたミセナは、スバエルギナスの後方中空に移動していたのだ。 「やあ!」 前の3矢は様子見と目くらまし。今度は全力で、20を越える矢を瞬時に放つ。 「照準が甘い」 スバエルギナスは黒い剣を振るって幻影破りの封印の矢を切り払い、逆に取り込んで消滅させる。 ――やはりまだ若い。瞬時にあれだけの矢を放つ技量には感心するが、そのほとんどが標的をはずしているようでは意味が無い。 だが、彼の判断はいささか早計だった。 スバエルギナスを外した矢はそのまま通り過ぎ、途中で、ぐるりとその方向を変えたのだ。 3次元的に部屋を飛び回る少女は、その間も次々に矢を放つ。 前後上下左右の全方位から魔法殺しの矢が迫り、そのまま全身を貫かれて、蜃気楼の魔王は消滅した。 ふわり、と彼のまとっていた上着が磨かれた床の上に落ちていく。 「なに?」 思わず間の抜けた声がミセナの口から漏れる。封印の矢は幻を消すが、アマニタの身体を消すという話は聞いたことがないのに。 だが、その理由を彼女は自分の身をもって知ることとなった。 「戦場で呆けるとは情けない・・・自殺行為ですよ」 宙を羽ばたくミセナは、背後から黒い剣で串刺しにされていた。 「ぐっ・・・」 床に叩き落されてミセナはうめき声をあげた。 血は一滴も流れていない。だが、内臓が丸ごと持っていかれた。 あっけないが――最早戦闘は不可能だ。 「まだ息がありますか。最後の慈悲です。せめて、苦しまないように・・・」 黒い剣を振り上げて、スバエルギナスが迫る。 その時、ミセナの前に影が立ちふさがった。 スバエルギナスは少し驚いたように息を漏らし、それからあきれたような声で呟いた。 「何のつもりですか? ・・・プルアロータス君」 考えなんてなかった。作戦なんてなかった。 ただ気がついたら、倒れたミセナに駆け寄って、両手を広げて彼女をかばっていた。 足はガクガク震えてやっとの思いで立っているだけだし、怖すぎて声すら出ない。 「無謀な・・・キミは戦力とはならず、わたしは敵を見逃すほど優しくはない。どきなさい。キミの行動は何の意味もないのですから」 「いいや。少なくとも私はお前を見直したぜ。プルーア」 振り返った先には、トリュフォーと蒼い衣の青年がいて――自分がポロポロ涙を流していることを、プルアロータスは自覚した。 ◆ 「久しぶりだねスバエルギナス」 「ああ、本当に久しぶりだよセファラス。いや、今はコプナリス師と呼ぶべきかな?」 「きみの好きに呼んでくれて構わないさ」 にこやかに対峙する二人は、旧友同士がするように親しみを込めてそう言葉を交わした。 プルは不気味に思うとともに、このまま昔を懐かしむ話が始まっても何ら不思議は無いような感じを受けた。 しかし、セファラスの次の言葉は、およそ旧友同士の会話に相応しくないものだった。 「それより――今日はきみを殺しに来た」 しん、と嫌な沈黙が流れる。二人の表情はあくまでもにこやかなままだ。ややあって、スバエルギナスが口を開いた。 「・・・あなたの大切なものまで、わたしは奪ってしまったのか」 スバエルギナスは悲しそうにつぶやいた。柔和だった笑顔は、まるで泣いているかのような寂しげな微笑みへと替わっていた。セファラスもまた彼と同じような表情で、力無く首を振った。 「いいや・・・しかしきみは危険になりすぎた。この世界を守るために――私はきみを殺す」 「そうか・・・では、わたしも、わが身を守るために貴方と戦おう」 決別の言葉はつらそうな笑顔で締められた。 スバエルギナスが手にした黒い剣を振りかざす。 「牙を剥きて喰らえ! デス・イーター 死を喰らう刃 !!」 うおおおおおおおおおん 闇の刃が吼える。黒い刀身には牙が生え、まるで獲物を求める肉食獣のようにマクロセファラスに襲い掛かる。 マクロセファラアスは、前に出て彼をかばおうとするトリュフォーを手で制し、 「影為る白き壁よ、我が身を守りたまえ・・・ホワイト・ウォール 白亜の防壁 !」 途端に、乳色に透き通った白い壁が彼らの前に出現した。 スバエルギナスが怪訝な顔つきになる――セファラスほどの男がこうも間抜けなことをするものだろうか。我が力によって生まれた幻は、すべてを取り込むことぐらい彼は百も承知のはず。 だがしかし、スバエルギナスの予想に反し、出現した白い壁は黒い刃を見事に防ぎきった。 驚いた、といった様子のスバエルギナスに、セファラスがこう返す。 「きみの幻はあらゆるものを取りこむ――しかし、他人の創った幻だけは取り込めない」 成る程、とスバエルギナスはため息をついた。しかし彼も戦火を潜り抜けた魔王、すぐさま次の手を打った。 「だからどうしたというのだ? まさか貴方自身が幻ということはあるまい・・・デス・バインド 死の拘束 !」 黒い獣はその身を幾筋にも分かれた蛇に変え、壁を避けて再度二人に襲い掛かる。が、セファラスはそれを防ごうともしない。そして幾多の頭もつ蛇はマクロセファラスとトリュフォーの身に襲い掛かり――はじかれて、傷ひとつ負わせられぬまま消滅した。 「なん、だって・・・!?」 「悪いがそのまさかだ。幻が物質を取り込めることを証明したのは、きみ自身だろう・・・きみの魔力は強力だが幻影という一点に特化しすぎている。もはや打つ手はなかろう」 セファラスは杖を掲げて、呪文をつむぐ。 『世界を構える精霊よ、赤にして紅蓮なる元素の王の一柱よ。我ここに汝の助力を乞い願う。願わくばただ一たびの火炎なす力を授けたまえ――イフリート!』 次元の扉を開いて炎の精霊王イフリートがその姿を顕現させる。 火炎の衣、赤い肌、燃え立つ髪に黄金色に輝く瞳。ぎりぎりと弓を引くように巨大な拳を振り上げ、蜃気楼の魔王めがけて叩き落した。 おそらく彼は、さけようともしなかったのだろう。 炎の中に消えゆくスバエルギナスの顔は、どこか安らいだ表情をしていて――その微笑みが、セファラスには悲しかった。 もっと他に道は無かったのか、スバエルギナス――セファラスは恨めしそうに己の手を見つめた。 握り締める。 ――また、私はあの時と同じ過ちを繰り返そうとしている。力があっても・・・誰も助ける事が出来ない手ならば、私にはそんなもの・・・必要無い・・・! 「おい! ったく、ぼさっとしてんじゃねぇぞ!」 バシン、と無遠慮に肩を叩かれ、マクロセファラスははっと我に返った。 見れば、フラフラと立ち上がるミセナを、プルが行かせまいと奮闘しているところだった。 「動いちゃダメだって! ミセナ!」 「だから・・・さっきから、言っている、だろう・・・大した傷では、無いと・・・」 腹を押さえながら、彼女は部屋の奥へと進もうとしていた。 「でも・・・そりゃ血は出てないけどさ、顔真っ青だよ!? 我慢しない方が絶対にいいって! ほら!! トリューも、その、セ、セ、セラなんとかさんもそんなトコでぼさっと突っ立ってないでさあ!!」 「セファラス、だね。セファーとでも気軽に呼んでくれ」 「あのなぁ、状況を把握してくれ。だからさっきから言ってるだろう、プルーア、私達は――」 「彼らは幻、なんだろう・・・? だったら・・・ここに、いない者に、助けを・・・求めても・・・無意味だ。違うか・・・?」 そらみたことか、とトリューが視線でマクロセファラスに非難を伝えた。そこでようやく、そういうことかと彼は遅くなりながらも理解した。 確かに、自分達は幻ではあるのだが――あの時の一言を良く覚えていてくれたものだ。 「いや、確かに半分は正しいよ。しかし、完全な幻というのとも、少し違うんだがな」 彼がパキッと指を鳴らすと、二人の輪郭が心なしかはっきりしたような気がした。 「正確に言うと、実態の上に幻を被せてちょうど、そうだな・・・鎧に仕立て上げた、と言うべきだろうね」 説明を聞いて、この男は侮れないという認識を下したミセナとは対照的に、プルは「そんな事より、早く早く!」と二人を手招きしていた。 「・・・言っとくが、私は治療騎士団員じゃねぇから、そんな傷は治せねぇぞ」 アンタの出番だろ?、とトリュフォーがセファラスを促す。 魔の眷属を癒しても良いものか、と彼はほんの一瞬だけ躊躇したが、構うものかと彼女の傍らに膝をついた。今の時点では、彼女は敵ではない。それが十分な理由だ。 「さて、それじゃあ傷を見せてもらおうか、ミセナさん」 「・・・人間の、手など・・・」 「借りない、という訳かい?」 ミセナは押し黙った。その隙に、セファラスは呪文を詠唱し、「はい、おしまい」とおどけて笑って見せた。 「ちょっと待て! 誰も頼んだ覚えはない!」 「あまり動くと傷に障るよ。腸(ハラワタ)を完全に復元できたわけじゃないから・・・私もその専門ではないものでね」 「話をはぐらかすな!」 ムッとしたように彼を見据えるミセナに、セファラスは笑いを崩さず、しかし真面目な顔で、こう言った。 「プル君に頼まれたから、では理由にならないかな? 彼は優しい人だよ」 真っ赤になって手や顔を振って否定するプルに、ミセナはふっと笑った。 ――まさか人間に助けられるとは、ね。 そんなこと、考えたことも無かった。それに、自分が人間を助けるだなんてことも。 「礼を言う、プル・・・ありがとう」 「いや、うん、それはねぇ、その・・・ともかく、ひとまず何事も無くて良かった良かったってことだよね?」 その時、まだ彼らは気付いてはいなかった。 彼らのすぐ傍に、異質なる者が存在していた事に。 第10章 勝利を奪う者 元・魔王スバエルギナスの館にて、一同はかつての主に敬意を表し、荒らすことなくそこを立ち去ることにした。そろそろ幻に取り込まれていたものも復活するだろうと、一行がそう考えて立ち上がった、まさにその時―― 「きみは危険になりすぎた――この世界を守るために、私はきみを殺す」 頭上から、そうセファラスの声が降って来た。驚く一行の上に、続いてスバエルギナスの声でそれに答える台詞。 「そうか・・・では、私も、わが身を守るために貴方と戦おう」 しばらく、不気味な沈黙が続いた。 誰かいるのか、それとも魔王の残留思念か。 思い切ってトリュフォーが口を開きかけたその瞬間、「アハハハハハハハ」という神経を逆撫でするような、無邪気を装った甲高い笑い声が響いた。 「ホーント、男のヒトってバッカだよねぇ~♪」 「――大人しく我らに従っておれば、死なずに、訂正:殺されずに済んだものを――自責の念などという不確定なものに振り回された結果と推測。愚の骨頂」 「誰だッ!?」 今度こそトリュフォーが叫び、辺りを素早く見回した。 「・・・誰だッ!?」 だが、振って来たのは全く同じトリュフォーの声。 「いるのはわかっている、姿を現せ」 「・・・いるのはわかっている、姿を現せ」 今度はセファラスの真似だ。うぅ、と呻きながらプルが頭を振った。 「さ、さっきから・・・真似してる!? 何で!?」 「・・・さ、さっきから・・・真似してる!? 何で!?」 「出て来い、卑怯者!」 最後のこれは、ミセナの言葉だった。 「・・・出て来い、卑怯者!」 同じように彼女と同じ声色、同じ台詞の言葉が返ってきた。が、続いてミセナの声ではない言葉が返ってくる。 「・・・ヒキョーモノぉ? どっちが」 ようやく木霊ではない言葉を発しながら、鼻につく愛らしさの声がバカにしたように笑う。それに続くように、感情のこもらないカラクリのような声。 「姿が見えない=卑怯者という図式は成立不能」 「だよねぇ~。っはは♪」 それらの対照的な声の主はそう言うと、取るに足りないやり取りを、そこにいる4人を完璧に無視して続けた。 「ってーかさ、前人未到の人に知られぬ奥深い地域がどうかしたの? ヴォルヴァ」 「――ルブロの言葉の意味:分析――『秘境』を意味する。よって不適切。この状況下で『ヒキョウ』と発せられる音の羅列=『卑怯』が該当。意味:心だてが卑しく汚い事」 「いや~ん、勘・違・いッ☆ もぉ、ルブロのおバカさん。ごめんねぇ♪」 「――敵対者に謝る必要:皆無」 姿を見せぬまま、彼らは喋っている。 一見するとただの魔衆の下っ端、頭の悪そうな輩とそれに付随する戦闘用の従者のようにも考えられる。その証拠とばかり、それらしき魔力もプレッシャーも微塵も感じられない。 しかし、セファラスは油断無く身構えると、「気を付けて」と注意を促した。 「みんなの言いたいことはわかる・・・しかし、思わぬ怪物が現れるかもしれないよ」 「か~いぶつですって~ん? やぁん、こんなにプリチーなのにぃ!」 「――姿が見えない場合、情報源は相手の想像力という非常に空虚かつ不確定なものに依存。よって正常な判断力を失う可能性あり」 「さ、さっきから何がなにやら・・・」 プルの言葉はあまりにもごもっともだった。 「テメェら、何者だッ!」 何度目かのトリュフォーの叫びと同時に、まるで最初からずっとそこにいたかのように、館の扉のところに2人の人物が現れた。 そこに現れたのは、一言でたとえるならば、赤と白。 毒々しいまでの紅蓮に身を包み、胸や足などといった部分には際どい半透明の衣装を揺らす少年らしき者。そしてその隣にいる、無垢なまでの純白をまとった、しかし動きやすそうな体に合った服を着ている少女らしき者。 その両方が、砂のような色あせた金髪に、橙色の瞳をしている。 「貴様に名乗る名は無い・・・」 渋い口調でそう赤が呟くと、白がそれに追随するように拳を胸の前に掲げた。 「――了解。敵勢力:排除」 すわ戦闘か、と誰もが思ったその瞬間。 「・・・なぁ~んて、今のどうよ? クールっしょ! カッコいくなかった!? 惚れた? ひょっとかして惚れちゃったりして? にゃは~ん♪ どぉ・し・よ・う☆」 いきなり赤が壊れた。いや、壊れるも何も、こちらが赤の通常なのかもしれない。白があきれ果てたように、感情の全くこもらない声で「――前言撤回」とだけ吐き捨てた。 「魔衆かッ!?」 トリュフォーの問いを嘲るように、二人は奇妙なポーズで立っていた。 「呼ばれて飛び出てぱんぱかぱーん!」 「――双方の行動:該当無し」 「・・・誰か彼かと聞かれたら!」 「――質問:該当無し」 「もぉー、こっからいいトコなんだから黙ってて、ヴォルヴァ! おほん、誰か彼かと聞かれたら! 答えてあげようホトトモゲ! コレの名前は、ルブロ・ヴォルヴァタ! 通称・ルブロ!」 「――そしてこれは、もう一人のルブロ・ヴォルヴァタ。通称:ヴォルヴァ」 「二人合わせて、呪われし魔衆の娘達! キメッ!」 「――相対者に配慮が必要と確認。ご容赦を」 ぽかーんと呆気にとられる全員の前で、ルブロと名乗った方(赤)がヴォルヴァと名乗った方(白)の腕を取り、無理やりポーズを変えて得意げに踏ん反り返った。 「ほら! 見て見て! あまりの素敵さに声も出ないって☆」 「――言動:不適切。自己中心的な考え。呆れられていると推測」 「解析した?」 「――不必要」 何が何やらさっぱりわからないプルの頭に、ようやく理性が戻ってくる。 「え・・・ってか、何・・・? え・・・女の子? 両方ともおんなじ名前?」 「付き合うな、プルーア。気力の無駄だ」 「これが、『思わぬ怪物』か? セファラスとやら」 「いえ・・・そういうわけでは・・・」 気まずい雰囲気をものともせず、ルブロとヴォルヴァは持ち前のペースを崩さずに「さあ!」と叫んだ。 「んーで、改めましてだケド、スッピーはどこかなぁ~ん? ソコ、知ってる?」 「――補足:スッピー=スバエルギナスの意」 視線をわざとらしく走らせ、ルブロは「ああッ!」と額に手をあて叫んだ。 「あっちゃ~・・・やっぱ死んじゃってるよぅ。アレ、そうだよね?」 指差した方を向いて、ヴォルヴァはしばらくじっとしていたが、おもむろに口を開き、 「――調査:完了。スバエルギナスの死亡を確認」 淡々と答えた。 その態度に、ミセナとセファラスの顔が引きつったのをプルは感じた。 ――あれじゃまるで、おもちゃの人形が壊れたとでも言いたげじゃないか。 しかしルブロとヴォルヴァの2人は目の前の4人を完全に無視したまま、自分勝手な行動を続けていた。 「んじゃ、今日の仕事はここまで♪ そいじゃ、さくっと魔力もらって帰りますかぁ☆」 「――了解。任務変更:行動開始」 「任せたなり~」 ルブロが大きく手を振り、ヴォルヴァがスバエルギナスの方へと歩み出す。 「待て!」 唐突に、ミセナがそう言葉を遮った。 ええ~何よ~?、という顔をして振り返ったのはルブロの方だ。ヴォルヴァはミセナの言葉など聞こえないといった風で、つかつかとスバエルギナスの元まで歩いていくと、右手を彼の死体の上にかざした。 「待てと言っているんだ! 今、魔力をもらう、と言ったな」 「あーうん、言ったよ。言いましたとも。それが何ですのん?」 「・・・どういう意味だ」 凄みのある声でそう迫るミセナに、ルブロは怯えたように目に涙を浮かべながら、あうあうと隣のヴォルヴァに助けを求めた。が、 「――任務中につき中断不可」 そっけなくそう返され、ルブロは観念したように頭を垂れた。 「・・・わかったよぅ。説明、苦手なんだケドにゃあ~・・・え~っとねーえ、魔力をもらうってゆーのはぁ、そのヒトが死んじゃった場合にぃ、その人が持っていた魔力が解放されるからぁ、それをこのよーに一箇所に集めてぇ、んーで、持って帰っちまおーと。そーゆ~コトですケド? わかんなかった?」 「そんなことはわかっている!」 じゃあ聞くなよぅ、と口を尖らせるルブロに、ミセナは腹を押さえたまま言い放った。 「魔力を奪われた後、この幻はどうなると聞いているんだ!」 そこにいた、ルブロとヴォルヴァを除く全員がはっとした。主を失った幻は現実に戻るとばかり思っていたが、この乱入者がそれを横取りするとすればどうなるというのだろうか。 ルブロは、ふーん、と考え込んでから、にっと笑った。 「なんだぁ・・・そゆコト♪」 ほぼ同時に、ヴォルヴァが腕を下げた。手のひらに何かキラキラした結晶が輝いている。 ――魔力の結晶!? セファラスがそれを確認する前に、ヴォルヴァは素早くそれを胸のペンダントの中に入れると、ルブロに向き直った。 「――任務:完了。魔力収納。すぐに撤退を」 「必要無ぁ~し!」 瞳の奥にどす黒い炎を燃え上がらせながら、ルブロはいたずらっぽく笑った。 「ね~ぇ、ヴォルヴァ。どうやらココにいる親切な方々が、コッチがスッピーを殺す手間を省いてくれたみたいなのよねぇん☆」 「――それはありがとうございます」 感情の入り混じった目で彼女らを睨み据える瞳の前で、カクン、とヴォルヴァが頭を下げた。 「で! とくればやっぱり・・・遊んでほしいじゃない? お礼もかねがね」 「――校正:お礼も兼ねて。その意見には同意」 ゆらゆらと姿勢を正すと、2人はそろって並ぶ。 ◆ あっという間の出来事だった――後に、セファラスはスバエルギナスの最後をそう語った。旧友の死を思うたび、彼は後悔せずにはいられなかった。幼さの残る外見や、掴み所の無い言動に惑わされ、敵の真意を見抜けなかったのだ。あの中で魔道について知っていたのは自分だけだったというのに――と。 相変わらず人をバカにしたような顔で、2人は立っていた。 魔力を奪えばそれで良かったのだから、ここから先はただの暇つぶし――ルブロは嬉しそうにあごに手を当て、ニヤリとした。 「4対2か。ん~♪ モテモテだねぇ☆ 女のコもいるケド~・・・つかあの女気に入らないにゃ~」 「――目視確認:4人。戦闘可能者:3人。うち1名は軽傷」 「・・・やっぱオレ、カウントされてない?」 「されるよかマシだろ。下がってな、プルーア」 プルはミセナも下がらせようとしたが、「僕はいい」と断られ、ひとまず一人で部屋の隅に下がった。 「・・・となるとぉ、数としては3対2かぁ~・・・ちょーっとだけ不利かも?」 「――計算結果:さしたる戦力差は無しと判断」 「ったくさっきからゴチャゴチャと! いい加減にしろ! 来るならさっさとかかって来やがれ!」 「トリュフォー君、油断は禁物だ。まだ相手の実力がわかっていない」 「測るまでも無いだろう。倒すだけだ」 各人が武器を構え、臨戦態勢に入る。 「今回は・・・女だろうと容赦しねぇぞ」 「いやぁん、怖~い☆ 女の子には優しくしてぇん」 「――不適切。性別区分:無し」 「男でも、女でもない・・・!? いや、疑問は倒してからじっくり答えてもらおうか」 「どっちでも構うものか。一撃で決める!」 かわいそうだけれど、本気になった皆と戦ったら――プルはまず相手に勝ち目は無いと踏んだ。 しかし、当の本人達は意に介さず、ルブロにいたってはうきうきした様子で屈伸したり腕を回したりしている。 「さぁお待ちかね! Let’s show time!」 とりゃ!、と両腕を天井に突き出し、それを下ろしながらまたもや妙なポーズを付ける。 「――時間制限:あり。注意されたし」 「はーい♪ じゃ、まずは軽~く、戦力増強といきますかっ☆」 言うが早いか、彼女の周りに翼の生えた人間が武器を手にずらりと立ち並んだ。その数ざっと10程度だ。 「チッ、確かに戦力増強だぜ・・・だがそんな程度――」 「ちっちっち。よぉく見てよん♪ 会心の出来なんだ・か・ら☆ ねぇ~、ミセナちゃ~ん♪」 ルブロの応答には気付かず、ミセナは驚愕の表情で、新たに現れた敵勢力を見ていた。呟く。 「な・・・ッ!? 何故・・・ヴィズ、コズ、他の皆も!」 ――え!? 声にならない叫び声をあげて、3人がミセナを見た。 「間違い無い、彼らは僕の同胞だ! 魔王スバエルギナスに囚われていた・・・そんな!」 「――ルブロ、魔力の拝借は厳禁。重罰、あるいは――死罪」 「ちち違うよぉう! コレはちゃーんと、ココから出しました! コ・コ!! From my heart! もぉ、疑う気~? だったらケチケチせずに魔力貸してよ!」 「――累積分:未返却」 「あは・・・忘れて?」 「――無理」 完全に二人の世界に入っているルブロとヴォルヴァに、セファラスが唸った。 「・・・なんて悪趣味なことを・・・」 本物ならば戦えないことは明白。たとえ幻だとしても、精神的な負担は相当なものだ。 「揺さぶりか・・・アマニタ野郎の考えそうなことだぜ! 下衆が!」 ふふーん、とルブロが笑う。 「戦術と言って、戦術と♪ もしくは・・・戦略? でいいの? ヴォルヴァ」 「――戦略:長期的・広範的・全体的展望に立った闘争の準備・計画・運用の方法。戦略の具体的遂行である戦術とは区別される。戦術:個々の具体的な戦闘における戦闘力の使用法。よって戦術が妥当」 「むつかしすぎて・ワカンナイ・ナリ」 しかし、頭を押さえて頭痛のふりをするルブロの瞳は真っ直ぐにミセナに向けられ、その反応をうかがっていた。 そんな程度の挑発に屈するものかと、ミセナは震える声でこう告げる。 「気に・・・するな。スバエルギナスが死に、魔力が奪われた今、彼らは本物じゃない」 それを聞いたルブロの笑顔が真骨頂に達する。 「そぉお? そぅおぉ? どっかなぁ~?」 彼女は軽く手を上げると、板を突くかのように、ちょうど目の前に立っていた一人の男の肉体を手刀で貫いた。 「ヴィズ!!」 一瞬のことだった。 男は力無く前のめりになる。その逞しい胸板を、たおやかな手が突き破っている。 鮮血が噴き出し、3人の上に余すところ無く、温かく降り注ぐ。 「にゃっはっはっはっはぁ~ん♪ これでも? これでもニセモノってゆっちゃう? ゆっちゃう~? 言ったでしょ? 『会心の出来』だ、ってぇ~☆」 手を引き抜き、倒れる男を蹴って3人の方へ飛ばすと、ルブロはその血の付いた手で髪の毛をかき上げ、己の髪の毛を服と同じ紅に染めた。 「う~ん、赤・だぁい好き♪ 特に血はだんだん黒くなるのがいいね☆」 「――賛同しかねる。理由:白が穢れる」 「んもぉ、塗っちゃうぞ?」 「――反撃準備:完了」 目の前の2人は、命など何と思っていない。 戯れで姿を蘇らせ、力を見せ付けるために消す。 生前その姿をしていた者が、どれほどの人物だったか考えることも無く―― 「貴様ら・・・!」 ぺろぺろと指に付いている血を舐めとりながら、ルブロはいっそう純粋な笑顔で笑った。 「怒った? やっぱ怒ってる? やぁん、怒った女のヒトって、こっわぁ~い♪」 しかし、今にも飛び掛りそうなミセナの目の前で、その男の体がぼんやりとにじみ、そして消えてしまった。 再び驚いて動きが止まった3人の前で、ルブロが手を顔の横に持っていき、おどけたポーズをとった。 「なぁ~んて、幻でしたぁ~! びっくり? びっくり? 驚いてる!?」 怒りに戦慄く彼らの前で、ルブロはわざとらしくぴょんぴょんと飛び回り、ヴォルヴァの手を取って喜びを体中で表現してみせた。 「いぇ~い!! ネタばらし、大・成・功ッ☆ あ、もしかして本物と思っちゃったクチ? やったね♪」 「――ドッキリ大成功、とでも?・・・平常心を保つ事を最優先。忠告:ルブロ、手の内を明かすのは得策ではない」 おもしろければい~じゃない、と言い放つルブロを、ミセナは憎悪と何か他の感情が入り混じった複雑な表情で睨み据えた。 「なるほど、所詮は幻、か・・・」 「そだよ~。幻に取り込まれて消滅しちったモノなんて、二度と帰ってくるワケ無いジャン! 期待してた~? ゴッメンねぇ~ん。けどさ~ぁ、コノ程度じゃあ全くもって無理無理無理無理無駄無駄無駄ァッ!」 「――警告:ルブロ、調子に乗り過ぎ」 「いやん♪」 ミセナは軽く瞳を閉じ、大きく息を吐いた。冷静にならなければならない。 一瞬――ほんの一瞬ではあるが、期待したのだ。本物であるのならば、どうにかして正気に戻す手もあるのではないだろうかと。 「・・・だが、おかげで吹っ切れた。これで遠慮無く・・・戦えるということだ」 キリッと矢を絞り、ミセナは狙いをルブロの額に定めた。 「動くなよ。狙いが外れる」 しかし、ルブロは狙われているというのに全く動じる事もなく――ただ、「きゃっ! 狙われちゃったよぅ、ヴォルヴァ、ど~しよ?」という予想通りの台詞を吐いてはいたのだが――不敵な笑みを浮かべた。 「あぁん、ケド射る前にちょっとダケ聞いてぇん、ミッセナちゃん♪」 「気安く名を呼ぶな!」 「二人の仲じゃな~い♪ ね~ぇ、ミセナちゃ~ん・・・会いたくないのぉ?」 怒気のこもったミセナの声に、ふふん、とルブロが勝ち誇ったように笑う。 「『蒼空の魔王』――お母サマに」 グッとミセナの表情が揺らいだ。 「ミセナさん、耳を貸してはいけない!」 「言われるまでも無い! そんなでたらめ信じるものか! 死者は・・・生き返らない・・・ッ」 気丈にも、ミセナは再び矢を引き絞った。だが、ルブロは怯まない。 「それがあるんだなぁ~、実は。死んだお母サマや消えちゃったお仲間の皆サマを蘇らせる方法がっ☆ どお? 知りたいでしょ、知りたいでしょお? その方法! フツーなら教えないけど、特別だよっ? 教えたげる。そ・れ・は・ね――」 ミセナが無視を決め込んでいるのを見て、ルブロは軽く息を吸うと、声を大きくして叫んだ。 「その方法ってゆ~のがねぇ、『あのお方』に頼む事、なの♪ 簡単でしょ? 心揺れ動いちゃう話でしょ♪」 「裏があるに決まっています」 「そぉなのよぅ! 取り引きはいつでもgive takeだからねっ! でも、『あのお方』に従うだけだし、そんな無茶は命令されないし、がんばればがんばっただけ願いも叶えてくれるのよん? やっさしぃ~でしょ? ちなみにぃ、その実証が、なぁんと今皆サマの目の前にいるコノ二人なワケ♪」 ハッとして、全員がルブロとヴォルヴァに一斉注目した。親指を立てて自慢げに自分を指しているルブロと、焦点の合わない目をしているヴォルヴァの異様さが、なお一層際立って見えた。 「・・・っはぁ~、大声で叫んだら疲れちった☆ 水~・・・」 「――不携帯」 「あっそぅ、じゃ仕方ないね・・・あ~あ~、ゴホン。んん・・・とまぁ、話を戻しまして。今なら無償で願いを叶えてくれるスペサルサアビスもやってるよン♪ まぁお得♪」 「――special service。悪い話ではないと保証」 「黙れぇッ!!」 ミセナの返事は痛烈な一撃だった。風を割き、一直線にルブロの額を目掛けて飛び、そして―― 落ちた。 まさに矢が突き刺さろうとしたその瞬間、空中でピタリと静止し、ぽとりとルブロの手に落ちたのだ。 「何!?」 ルブロはおもむろにその矢を手に取ると、しげしげと眺める。 「ほほぅ、all hand maidですか。長すぎず短すぎず、節は堅くしなやかなシュギュイ木造り。羽は一般的なシュヅメル鳥を使いながらも見事な線の引き方、その特長を生かした黒と白の対比の美しさ。さらに特筆すべきは鏃で、かの『蒼空の魔王』も愛用したと言われる風切石(かざきりいし)を丹念に削り上げ、さらに幻を打ち消す魔力を込めた一品。武器にしておくのは惜しい。いやぁ、まさに職人芸。いい仕事してますなぁ」 「え? そうなの?」 「ほほう、興味を惹かれますか? そこなる少年。語り合っちゃう?」 「本気になるな、プルーア! 出任せに決まってんだろ! あの女にそんな鑑定眼があるか!」 「・・・バレました~!」 指先で矢をくるくるとオモチャにしながら、ルブロは笑っている。その隣でヴォルヴァがひたすらブツブツと恨みがましく呟いていた。 「――チッ、完全防御壁がこんな程度の技で相殺されるとは・・・! これじゃ意味がねぇじゃねぇかよクソ野郎どもが!」 雰囲気がガラリと変わった彼女を、ルブロが子供や子猫にやるように頭をなでなでする。 「おぉう、落っち着いてぇ~、ヴォルヴァ♪ 怒りの矛先は政治に向けるのよん☆ 素顔を隠す仮面は、そう簡単に捨てちゃダ・メ♪」 「――だが・・・わかった。了承」 軽く目を閉じ、開く。 「――戦闘を開始する」 「よっしゃ! 敵さ~ん、お待たせぇい!! んじゃ、先制攻撃は譲ったげ――」 返事とばかりに飛んでくる矢を、幻影兵が身をもってかばい、消滅する。 「仲間の姿でも容赦無し! さすがは冷血アマニタ女! あは~、たぎってるねぇ。そいじゃコッチもそろそろ――」 「――タイムリミットまで:あと3分少々」 それを耳にしたルブロがブフッと吹き出した。 「マジですかい! ちょ、ちょっと喋りすぎたかなぁ~あは、あはははは・・・反省」 「――遊び:禁止」 もう一度、マジですか!、の顔をしてから、ルブロは長々と溜息の尾を引っ張った。 「あう~、しょ~がないガマンするよぅ・・・とゆ~ワケなんで、すまんケドちゃちゃっとやられて?」 「ふざけるなッ!!」 連射された矢の雨をヴォルヴァが全て素手で掴み、「――この程度」とミセナを見下して笑った。 「コッチは一応、真面目だよ? ケドさ~ぁ、コッチとしてはソコのアマニタ二人は邪魔なんだよねぇ~。話があるのはソコの黒い甲冑のヒト♪ あ・と・は・・・ソコの少年☆」 ビシィッと指を指され、プルが「えぇッ!?」と驚愕した。思ってもみなかった言葉だ。 「話が合いそうだしぃ、優しそうだしぃ、ちょっと非力なトコがまたかわういかなって♪」 瞬間、ヴォルヴァが般若の形相でプルを睨んだ。視線だけで殺されると思ったのはこの時が最初だろう。それほどまでに恐ろしい目付きだった。 「――貴様」 「ちちちち違いますというか何で何で何で!?」 「いい加減にしろ! 彼は関係無いだろう! 手を出すな!!」 「あはん、早速恋敵登場? 種族を超えた禁断の愛、ってヤツねぇん♪ それに、ああ、ヴォルヴァったらまさかして嫉妬してくれてるのかしらん? そんなヴォルヴァもかわゆいから安心してねっ♪」 「――殺す」 すすす、と足だけ動かしてプルは物陰に隠れた。あの二人、見た目は弱そうだが戦ったら負ける。何となく負けるというか、恋の威力で殺されるに決まっている。 そんなやり取りを苦笑いしながらセファラスは見ていたが、少し顔を引き締めて、こう告げた。 「トリュフォー君、ミセナさん・・・見た目に騙されないで。やはり、この少女達は強いですよ」 「・・・ああ、たった今理解した」 新しく矢をつがえながら、ミセナが短く詠唱する。ルブロとヴォルヴァをかばうように立っている幻影兵――仲間達の幻――もまた、同じように矢をこちらに向けている。 「・・・長期戦は不利です。トリュフォー君、我々が何とか道を開けますから、振り返らずに突っ込んでください」 「僕も矢で援護する」 「ああ・・・わぁった」 「相談終わり~?」 腕のストレッチをしながら、余裕綽々でルブロが相変わらず笑っていた。そして彼女が軽く腕を上げると、それに呼応して幻影兵がいつでも射出出来る体勢に入った。 「頼むから、最後まで立っててよね~☆ でわでわ! お待たせしましたん♪ そんじゃ、みんな・・・行っけぇ~☆」 ルブロが無造作に腕を振り下ろすと同時に、矢の洗礼が満遍無く彼らの上に降り注ぐ。 それを払いのけ、叩き落し、戦いの火蓋が切って落とされた。 ◆ 短期決着――スバエルギナスとの戦いで消耗した彼らの勝機はそこにしか無かった。 幻影の矢は幻の炎で焼き払った。 幻影兵は残らず矢で射、消し去った。 道が、開く。 「うおおおおおおおおッ!!」 トリュフォーが槍を持つ手に力を込め、一直線に突進した。 「――ふん、芸の無い攻撃――」 それと同時に、彼を援護するように矢が放たれ、火の魔術が炸裂する。しかもそれは、ヴォルヴァを狙ったものではなく―― 「きゃあ!」 狙いは防御姿勢をとっていないルブロだった。 まともに火球をくらったルブロがひるみ、身をよじった。しまった、という表情のヴォルヴァの前に、槍が突き出される。 ドゴン 低い打撃音が響いた。 『音を切り裂く疾風の羽よ、我が敵をその身で貫け! サイレント・フェザー 音無羽 !! 降り注げ刃の雨よ! フォーリング・アロー 細矢 !!』 『世界を構える精霊よ。赤にして紅蓮、青にして紺碧、緑にして翠然、黄にして金襴なる元素の王の四柱よ。我ここに汝らの助力を乞い願う。願わくばただ一たびの奇跡なす力を――我が友を避け、我に仇成す者を討つ力を――授けたまえ!! 出でよ! イフリート! クラーケン! ジン! ベヒーモス!』 隙を与えず、ミセナが魔術を乗せた矢で射、そしてその上に魔術をかける。さらに追い討ちをかけるように、セファラスが全ての精霊王を召喚する。 世界中が一斉に輝いたかのような輝きが辺りを包み、音を奪う。 間。 どれぐらいたったのだろうか、ようやく世界は元に戻った。 「みんな! 大丈夫!?」 「はぁ、はぁ、はぁ・・・さすがに・・・四大精霊王、全召喚は・・・老体に、堪えますね・・・」 「・・・貴方だけは、敵に回したくないな・・・」 膝をつき、肩で息をしているセファラスとミセナ。 「・・・あれでやられてなかったら・・・もう、どうしようも・・・」 セファラスにしても、これだけ全身全霊の力を持ってして相対した敵は久々だった。以前に比べ、平和に慣れ親しんだ体にはもう一発でも魔術を放つ気力は残っていなかった。 「大丈夫・・・あれを食らって生きてる方がどうかしているさ・・・」 まさか、生きているはずは無い――ミセナはそう確信していた。 たとえ屈指の魔王でも――母であったとしても――四大精霊王の攻撃を受けて、生きていられるはずは無いのだ。 そう、生きているはずは―― くすくす くすくすくすくす っはは あっははははははははっははははは!! 「え!?」 聞き覚えのある、耳に障る笑い声。 まさか―― 顔を上げ、確認したとたん、三人は頭から冷水をかけられたかのようにゾッとなった。 そこには。 「――なめた真似しやがって・・・! 殺す殺すぶち殺す潰し殺す殴り殺す撃ち殺す切り殺す絞め殺す叩き殺す打ち殺す斬り殺す捻り殺す千切り殺す刺し殺す沈め殺す焼き殺す刻み殺す――殺し方だけは選ばせてやる! 感謝しやがれクソどもがァッ!!」 トリュフォーの槍の渾身の一撃と、ミセナの数多の矢を、その右手で掴み。 四大精霊王の炎・氷・嵐・石、全てを左腕一本で受け止める。 美しい顔を悪魔のような形相に変えてわなわなと震えているヴォルヴァと。 「化け物だなんて酷いわ。それじゃまるでコッチが生命体ですらないみたい・・・当たりだけど。はぁい、皆様お揃いで。お元気ぃ?」 その後ろで、全くの無傷で軽やかに手を振っているルブロが。 いた。 「セファー!! プルーアと女を連れて逃げろ!!」 トリュフォーがそう叫ぶか叫ばないかのうちに、彼の体はまるで球のように軽々と宙を舞った。そのままプルのすぐ傍の壁に叩き付けられ、めり込む。 ふん、と憎悪と皮肉が入り混じった笑みをしてから、ヴォルヴァはふっと無表情に戻った。 それから急に顔を上げると、 「殺す! 殺してやる!! ふざけやがってなめやがってやりやがってこの下等生命体ども!! 許さねぇ絶対許しておけねぇぞ!! 覚悟しやがれ蛆虫野郎!! 生まれてきたことを後悔させてやるッ!!」 口汚く罵りをまくし立てた。 「ちょっと、ヴォルヴァ」 「あぁん!? 邪魔すんじゃねぇぞルブロ!! 気分がむしゃくしゃしやがる!! 平常心になんか戻れるかよ!!」 「別に今はいいけど、でも一つだけ・・・誰一人として殺したら駄目」 「けどよぉ!」 叫ぶヴォルヴァの口を、すっとルブロが指で押さえる。 「後々駒にならないと言い切れるの? 無理でしょ。ルブロにもヴォルヴァにも、それは出来ない。そんな決定権は無い。そもそも、台本に無いことはしない、そういう約束だったはず。違うの」 そうたしなめるルブロも、先ほどまでのおどけた様子は全く無い。 完全に雰囲気の変わった二人の前で、全員が凍りついたように動けなくなっていた。疲労のためだけではない、それだけは確かだった。 「――チッ、気は晴れねぇがあの方のため、そしてこの願いのためならばしょーがねぇ・・・話があるのはあの埋まってる男だけだったよな?」 「一般人の少年にも手を出さないで」 「はぁん? さっきも言ってたが、マジで惚れたのかよ!? はっ、趣味が悪いぜ!? ルブロよぉ」 「かもね」 ピクリ、と傍目から見てもわかるほどヴォルヴァの顔が引き攣った。それからルブロに聞こえないように、ボソリと「殺してぇ男No.1決定」と呟いた。 ルブロは何も聞こえていないようで、本気にしないでよといった感じで手を振って続けた。 「というか、それ以前の問題よ。アレは聖魔剣リシーサの関係者らしいから、絶対に殺すなって言われてたと思うわ。記憶が確かなら」 「そっちの話は興味がねぇな。ともかく、あの自意識過剰な魔術師と自称魔王は刻んでもいいんだろ?」 「まぁ・・・そうじゃないかしら。生きてれば、ね」 ニィイっと、ヴォルヴァの唇が吊り上った。 それから彼女はいきなりバシィンと矢と魔術の塊を地面に叩きつけると、長々と大きく息を吐いた。 「四大精霊王よ!」 残りの気力を振り絞り、セファラスは精霊王達を呼んだ。今まで彼の周りに控えていた王達が、もう一度攻撃を繰り出そうと構えた瞬間。 『――我と我が友、我が主の名に於いて命ず』 ヴォルヴァの口から、呪詛の文言が紡がれた。と同時に、王達の動きが止まる。 『彼の王の御霊を蹂躙せし呪いの体現者よ、解き放たれよ。その忌まわしき腕(かいな)をもって、聖なるものを我が前より失せさせるが良い。漆黒の楔よ、血塗られた鎖よ、今一たび名を呼ぶもおぞましきものへ刹那の自由を与えよ!』 言い終わるや否や、最後の頼みの綱だった精霊王達はいずこかへと消え去ってしまった――いや、連れ去られてしまった。 中空から伸びた無数の手が彼らを掴み、バラバラに千切りとって何処かへと消え去ってしまったのだ。 その様子を、クスクスと笑いながらルブロがじっと観察している。 「くくくくく・・・たかが精霊王ごときじゃあ、ねぇ?」 「――連れて来んなら、精霊神ぐらい出してみな。そうすりゃ、途中で返す手間が省ける」 「な・・・!」 セファラスはあまりの驚きに、文字通り声を失った。 精霊を召喚するものは多くいる。 だが、精霊は己の上位の精霊王の命があれば攻撃は出来ない。それと同様に、精霊王もまた、上位の精霊神の命とあらば立ち去るしかない。 当然ながら、ヴォルヴァという少女は精霊神の化身でなければ、精霊神を使役しているわけでもない。魔神であろうとも、その地位は対等でしかないのだから。そんなことが出来るのは、偉大なる太母――『彼女』しかいない。 だが、そうなれば今のことに説明は付かなかった。上位のものの命無くして、彼らが帰ることなどあり得ない。 それを面白そうに見ながら、ふふふ、とルブロが笑う。 「ご存知? 召喚されたものを返すためにそれほどの魔力はいらないってこと・・・あらん? その様子じゃ知らなかったみたいね、魔術師のクセして馬ッ鹿みたい」 「・・・それがどういう――まさか!」 ルブロは耐え切れないというように口を覆った。 「ふふふ、あはっ・・・そうよ、ようやく気付いた? 俗に禁忌とされている力――名を呼ぶことすら出来ぬものの忌まわしい力――それがあれば聖なるものなど砂塵に等しいの・・・おわかり?」 「まさか・・・それらは全て伝説の――神魔大戦が終結した時に、二度と蘇らぬよう封じられたはず!」 「そうよねぇ、どぉしてかしらね~ぇ? あっははははは!!」 それら悪の権化と、聖魔剣の勇者、そしてその仲間達との伝説は聞き及んでいた。それが実際に存在したとしても、驚きはしまい。 しかし、それらを操る術は完全に失われたはずだった。 そんなセファラスをいたぶるように、ヴォルヴァが重ねて笑う。 「要するに、王ごときは呼んでも無駄ってことだ。ま、そっちには死んでも真似出来ねぇだろうがな。っはは!」 それで話は終わりだとばかり、ヴォルヴァが両手に半月状の楔を出現させた。 そして怒りのこもった低い声で、淡々とこう告げる。 「なめられるのには慣れてるがよぉ・・・こっちが怒らねぇとでも思ってんのか? あ?」 カツ、カツ、カツ、と靴音を響かせながら、ゆっくりとミセナとセファラスに近付いていく。 そして、今まさに彼らの上に刃がつきたてられるかと思われた瞬間。 ガッツ 鈍い音がして、彼女の両手から放たれた楔が地面に突き刺さった。ミセナとセファラスは楔に首を押さえられて地面に縫い付けられる格好となったが、傷一つ負っていない。 先程まで殺すなどと物騒なことを連発していた彼女のその行為に、相方であるルブロが軽く首をかしげて口を開く。 「あらぁ? 珍しく動きを止めただけなのね。どういう心境の変化? たまには優しくしたいとか?」 「――そんな訳ねぇだろ・・・野郎、邪魔しやがって」 ギロリと睨まれた先には、プルの手助けもあってどうにか壁から脱出したトリュフォーの姿があった。 彼は盾を投げたままの姿勢で荒い息をついている。 そして、ヴォルヴァの足元には彼が咄嗟に魔力を込め、結界の要として投げた盾が突き刺さっていた。 「・・・ったく・・・盾は投げるモンじゃねぇっつーのに・・・」 チッとヴォルヴァが憎々しげに舌打ちをする。 結界は本人が解除したいと思うか、その人物を殺すかしか壊す方法が無い。 だが、ヴォルヴァはトリュフォーを殺せないし、手酷く傷付けることも許されていない。 つまり、結界は壊せないし、二人の代わりに彼で鬱憤を晴らすことも出来ないのだ。 腹いせとばかり、ヴォルヴァは結界を張っている盾を思い切り蹴飛ばした。 ルブロとヴォルヴァの魂胆を見抜いての博打だろう。そしてそれにうまうまとはまってしまった自分が腹立たしかった。 そうこうしているうちに、トリュフォーはまだ折れてはいなかった槍を手に、ざくざくと二人の前に歩み寄って来た。攻撃出来るかどうかギリギリの瀬戸際で、立ち止まる。 「さって・・・どうする? 私はまだ戦えるぜ?」 「あら~ん♪ 味方を守るために、傷だらけの体をおして戦おうだなんて・・・勇敢なお・か・た☆」 体をくねらせてから、ルブロは暗い目で呟いた。 「・・・まるで騎士(ナイト)みたい★」 ギョッとしたようにトリュフォーは槍を構えなおしたが、 「それがどうした」 と穂先をルブロに向けた。 「やぁん☆ 褒めたのに怒られちった♪ 好感度ダウンかもぉ~」 「――ルブロ、どうする」 くいっとアゴでトリュフォーを示し、ヴォルヴァは指をばきばきと鳴らせた。 「そうねぇ~・・・3割まで!」 「チッ――了解。戦闘モードから通常モードへ移行――平常心を保つことを最優先――完了」 再び感情の無い顔に戻ると、ヴォルヴァは、「うんうん、さすがはヴォルヴァ。やればスグできるのねん♪」としきりに頷いているルブロの前に立ちはだかった。 「私も言わせてもらうが、それこそ『なめられた』もんだな」 「あっはぁ♪ 怪我してるヒトに万一のコトがあったら、ソレこそコトですからぁ?」 ルブロがぴょいんと後ろに飛び跳ねて距離をとると、それに追従するようにヴォルヴァが同じようにバックステップで距離を開ける。 「さて。指先一つでダウン伝説を目指してもいい? メンドクサイしぃ、他にも仕事あるしぃ、時間も無いしぃ~」 「――質問:誰のせいか答えよ」 「・・・はい、ルブロのせいでふ。反省するから嫌味言わないでぇ~☆ マジメに武器も使っちゃうから♪」 グッグッと腕を伸ばすと、ルブロが構えをとる。力を抜いて、柔の攻めで来るということだろう。そしてその手には、スバエルギナスが持っていたのと同じ、黒い刀身の剣。 「じゃ、準備も滞りなく整いまして。早速だけど、ルブロと遊んで♪」 とん、と軽く地を蹴り飛び上がると、彼女は目にも止まらぬスピードで剣を振り回す。 ――確か、あれに触れると厄介なんだよな。 その恐ろしさは先程見た通り。 トリュフォーは迫り来る刃をひらりとかわしながら、一旦槍を背に収めた。武器は他には短刀の類しか持ち合わせておらず、槍が真っ二つになれば、間合いが狭くなった自分が一気に不利になる。 「――敵行動:回避」 「りょぉ~かい!」 着地をし、ゴキゴキと首を回してから、ルブロは急に次の動きに移行する。 今度はトリュフォーの懐に飛び込むと、フェイントも含め素早く蹴りを繰り出し、彼が足払いを仕掛けようとした瞬間に宙に浮いた。 そして空中で不自然なまでの滞空時間をもって、剣を持ち替えながら突きと払いを織り交ぜて攻撃してくる。 決して勝機が無かったわけではない。 トリュフォーは、ルブロがほんのわずか深く突き過ぎ、無防備となった右腕を掴んでみせた。刃とは異なり、触れても実害は無い。だがそのまま投げ飛ばそうとした刹那、ヴォルヴァが死角から鋭い手刀を繰り出し、その目論見は失敗に終わってしまう。 「今のは、惜しかったんだがな・・・」 再び間を取って、トリュフォーはそう毒づいた。集中すればかわせないことも無い、が、それももってあと三回程度だ。攻撃の勢いによっては次の攻撃も危うい。 早く勝敗を決しなければ、身がもたない。 一方のルブロは、とんとんとん、と軽やかにバック転で再び距離をとった。それから右腕を押さえる。 「い、ったぁ~・・・もぉう! 玉のお肌に傷が付いちゃったじゃないのぉ!!」 「――表現が不適切。『玉のお肌』は女性に対する形容」 「・・・ケチ。例外ってコトでいいでしょぉ?」 しかし、そう言って笑うルブロの右手には、黒い兜が引っ掛けられていた。見覚えのあるその形状に、トリュフォーははっと頭に手をやった。 はたして、兜が無い。あの一瞬で、盗られたのだ。 「お礼返し、ってヤツか」 「――『転んでもただでは起きない』が適切」 すっぽりとそれを頭に被り、ルブロが「ああッ! ま、前が見えないッ!! はわわわわ」と慌てふためいてよろける。一見隙だらけだが、その隣のヴォルヴァは全く隙が無い。 ヴォルヴァは少し溜息交じりで、ルブロの被っている兜を乱暴に外した。 「――いいかげんにしてもらいたい」 「いやぁ、自分のものは自分のもの、相手のものは自分のもの、みたいな」 それからおもむろにトリュフォーをしげしげと眺め、「やぁん♪」と素っ頓狂な叫び声を上げる。 「どぉ~んなゴツイ男が出てくるかと思いきや・・・んもぉ、フェイントしすぎよぅ☆」 「は? 何言って――」 「ああっ! 前言ぜ~んぶ撤回!! もぉ口が悪くても性格怖くても優しくなくてもいい!!」 両手を合わせ、潤んだ瞳でルブロが上目遣いに彼を見つめる。と、それと対になるようにヴォルヴァが冷たい眼差しで睨みつける。 「もぉ超・タイプ~☆ 切れ長の鋭い目、端正な凛々しい顔付き、そして北方民族特有の黒い髪と漆黒の瞳――! もはやコレって、いろんなイミで運命を感じちゃう♪」 「――否定したいが、否定はしない」 「ヴォルヴァもそう思う? 思っちゃう? 素敵だよねぇ♪」 「――意味が異なる。あの形状――あの男を思い出させる。よって不快」 「だからいいんじゃなぁ~い♪ 顔良し、血筋良し、人気良し、過去良し・・・もぉ全てにおいて、カ・ン・ペ・キ・よん☆」 「――駒には最適」 「そうはいくか」 顔をしかめるトリュフォーの前で、ルブロがせっせと乱れた髪の毛や衣装を整えていた。 「あ、でも顔見て急に態度を変えると帰って怪しまれる・・・かな?」 「安心しな。テメェらの印象は、最早覆らねぇよ」 頭の防御が疎かになるのは覚悟を決め、トリュフォーは素手のままもう一度構えた。 「――敵:攻撃態勢。警告:ルブロ、少しは防御面にも気を回せ」 「ん~、だってヴォルヴァが守ってくれてるしぃ・・・そだねぇ、確かに二対一、って・・・ちょっと卑怯カモ」 「かまわねぇよ。慣れてるからな」 「お仕事大変だぁ、お互いにね。でも、怪我人にも情け容赦はしませぇん!」 ルブロが手を振り上げると、再びそこに幻影兵が出現した。「また!」と、ミセナが悲痛な叫び声を上げる。 「テメェら・・・ッ!! いい加減にしやがれ!!」 「やぁん、また怒られた☆ だから戦いに卑怯もラッキョウも無いのにぃ~」 「――どうやら、逆鱗に触れた模様」 この人の嫌がることをわざと行い、それを楽しむ態度。そんなものはトリュフォーには許せなかった。 どくん、と力が湧き上がってくるのを感じる。怒りが、彼の力を増してくれている。 そう、怒りが――憎しみが。 「人様の痛み・・・ちったぁ身をもって感じるんだな!!」 トリュフォーがそう叫んだ瞬間、ルブロとヴォルヴァが笑ったような気がして――シャンプは目をこすった。今までのような仮面のような笑みではなく、確実に何か企みが成功した時に見せる、あの嫌な笑いだ。 ――でも、見間違い? トリューを怒らせても、あの二人に一体何の得が・・・? そして、それに気付いたのはどうやらプルたった一人のようだった。 「トリュー」 プルの口から思わず出た呼びかけは、「何だ!」というトリュフォーの怒りのこもった声の前でしぼんでしまった。 「・・・また何かするかも」 何!?、と三人がルブロとヴォルヴァに視線を向ける。 だがプルが本当に言いたかったのはそんなことではなかった。 理由はわからない。わからないが、こう言いたかったのだ――怒りに身を任せちゃダメだ、と。 しかし、咄嗟のプルの言葉は間違ってはいなかった。 「・・・あの少年、鋭いねぇ。勢力増大、カンパされちゃったよぅ」 「――イントネーションに違和感。漢字で『看破』と記すのが妥当。だが、見破ったところで何となる」 今度はヴォルヴァまでもが同じように、幻を出現させていたのだ。それはプルとミセナが散々苦労した、あの刃物の罠だった。 対処が遅れれば、刺されていたかもしれない。そう思った瞬間、プルの頭から先程の忠告は綺麗に吹き飛んでいた。 「トリュー、気を付けて! そいつら、見た目より切れるから!」 「おやん? 知ってる、てことはコレにやられかけたクチ?」 特に答えは返ってこない。ルブロは「冷たいなぁ」と一言呟くと、おもむろに腕を組んだ。 「ケドね、コレはなかなかスリリングで面白かったよね? ビューンて飛んで来るのを、いくつうまく掴めるか競争したよねぇ・・・柄の所を掴まないとそのままスパってなっちゃうから意外とドキドキしてさぁ・・・ま、切られたこと無いけど・・・そっか、もう遊べないんだねぇ・・・しみじみ」 「――このネズミ捕りがか? ・・・同意しないことも無い。最高記録:ルブロ13本・ヴォルヴァ44本」 「・・・ルブロが13本取った時は、ヴォルヴァは12本しか取れてなかったクセに」 ――そういえば、スバエルギナスは『魔衆撃退のため』の罠だと言っていた。それが彼女らに向けられたものだったとしたら。そしてその罠を軽く突破してしまう彼女達・・・彼をすぐに倒さなかったのは、いつでも殺せるという自信があったからなのだろう。 セファラスは改めて、身動きが出来ない自分を呪った。確実に、トリュフォー一人でどうにか出来るような相手ではない。 「くそッ・・・矢さえ射られれば・・・消してやれるのに・・・!」 「そんなにヤベェのかよ・・・」 「うん」 「ともかく、刃の部分に触ったら持って行かれると思ってくれて構わない。僕のようにね。避けるしかないんだ」 「ま、慰めの言葉はハナッから期待してねぇけどな」 当然ながら、トリュフォーの武器は幻を打ち消す能力など持ってはいない。相手の言葉を信じるならば殺されはしないだろうが、瀕死は覚悟しなければならないようだ。 己の意思に従って敵を攻撃する人ならぬ幻、剣、そして数多の刃。2人がかりとはいえ、それを造作無くやってのける能力は底が知れない。 「何という、魔力・・・」 「あらぁん♪ 元! とはいえ、宮廷魔導師団長にお褒めに預かり、光栄ですぅ☆」 そうだったのか!?、という眼差しがセファラスに向けられる。セファラスは咄嗟に出任せを口にした。 「・・・・・・名前が同じだけだ。落胆させて、すまないね」 「そぅお? がっかり」 呼びかけに対する否定も無意味なことだとでも言いたげに、ルブロが鼻で笑った。 ひゅんひゅんと軽く風を切りながら、剣が舞う。それに呼応するように、小刀やらナイフやら包丁やらフォークやらが、出番を待ちわびてトリュフォーの方に切っ先を向けている。 「チッ・・・どうあっても性根が腐ってんな、テメェら」 トリュフォーのその言葉を待っていたとばかりに、ルブロが若い男の声でこう格好をつけて答える。 「何とでも言ってくれたまえ。これぞ悪の華――咲き乱れるその美しさに人は心奪われ、そして・・・儚く散る」 「――声帯模写:魔剣士グラシリス。内輪ネタ」 完全に勢いをそがれる格好となったトリュフォーは、「やっかいだな」と呟いてルブロを睨み据えた。が、彼女はペースを崩さずコロコロと笑い転げている。 「あはははは~♪ こぉゆ~場面こそ、誰も知らない白けるネタに限りますなぁ☆ わかるヒトいませぇ~ん! にゃはは♪」 「・・・・・・オレ、知ってる」 一斉に、プルに視線が集まった。うお!?、っともう一度プルは身を引いてから呟く。 「いや・・・シャンプと一緒にいろいろありまして・・・その時に・・・うん・・・」 「マジでふか少年! こ、これは意外なトコにレアな人材でわ・・・?」 ルブロがうっとりと彼を見つめると同時に、刻むようなヴォルヴァの視線がプルに突き刺さった。 「ふん・・・だ、そうだ、ルブロとヴォルヴァ、とやら。思い通りにならなくて、残念だったな」 「いいえぇい! Good job! 少年!!」 ビシッとVサインで決めるルブロ。そして、「うざ・・・」と呟くヴォルヴァ。 「――ちょっと失敗したぞ、ルブロ」 「まぁ、あんま精神的ダメージの効果は期待してなかったし?」 「・・・成る程、相手の気を乱す技には非常に長けているようだね・・・トリュフォー君、心を平常に保つんだ」 わかってるさ、とトリュフォーが疲れたように笑った。 無意味なことを言ってしまったかと思ったが、トリュフォーの注意を促すには良かったのだろう、きっと。少なくとも、プルはそう思うことにした。 「さっ♪ 紆余曲折あったけど、結局、この超不利な状況、どぉするのん?」 「要するに、触れなきゃいいんだろ?」 「え? まぁ、そうらしいケド・・・だよね?」 「――返答の必要:皆無。行け」 合図と共に降り注ぐ刃物を、トリュフォーは手にした槍で思い切り薙いだ。一瞬、そしてそれだけ。 「あれぇ? 今、何やったのん?」 首を傾げるルブロの前で、幻影兵達が矢をつがえた格好のまま次々と消滅していった。驚きを隠せないルブロに、ヴォルヴァが告げた。 「――風圧による吹き飛ばし。偶然、あるいは故意によって矢と兵が衝突、双方のエネルギー拡散により消滅したと推測――詰め手が完全に裏目に出た」 「うっそぉ!!」 「見たか、これが本気だ!」 一か八かの賭けだったが、トリュフォーは見事に勝った。 同じ人物が生み出した幻では成功するはずも無く、なおかつ、幻が風圧で狙った方向に弾き返せるのかという問題もあったのだ。 しかし、いくら幻とはいえ、彼の全魔力という強力な魔力を込めて発生させた風には影響されるようだった。 「す、すごい・・・」 「成る程、風の力か・・・これならば覆せるか!?」 「――攻撃データ:該当無し」 「アレだねぇ、イザとゆ~時の切り札ってワケ?」 「ま、私もたまには魔術ぐらい使うさ」 軽く笑いながら、トリュフォーはもう一度槍を構えた。 「短期決戦はお互い様だ・・・一撃で・・・決する」 口ではそうは言ったが、ほぼ全ての魔力を使い切ってしまった今、もはや魔法による回復は期待出来ない。その上、相手は薬草などを使う暇を与えてくれそうにもない。 次の攻撃、そして次の次の攻撃を食らうことがあれば、それこそ一巻の終わりだった。 そうなる前に、何としてでも一撃――狙いは無論ルブロだ――カウンター気味に食らわせるしかない。そのためには、相手の攻撃の威力を加えるために、あえてその攻撃を受ける必要がある。 敵としても、その出方はわかりきっているはずだが、ルブロは意に介さず、その挑発に乗った。 「んーじゃコッチも、一撃で決めたげるよぅ!」 何度目かの跳躍。 彼女は彼の懐に飛び込んで、剣を切り上げた。それを避けた彼にぴたりと付き、今度は肩の辺りを思い切り貫こうと一撃を繰り出す。 気の緩みか、はたまた誘いか。 彼女のその伸び斬った腕は、先程以上に隙だらけだった。まるで反撃をしてくれと願っているかのように。 偶然でも罠でも、最早トリュフォーに選択の余地は無かった。 そして―― 捕らえた。 一瞬。そしてそれで十分だった。 受身も取らずに地面に叩きつけられたルブロに、トリュフォーは刃を突きつけた。彼女の手から離れた、あの凶悪な剣で、だ。 「おっと、動くなよ」 妙なマネをすれば、こいつで斬って捨てる――そう告げたのは何もルブロに対してだけではない。すぐさま反撃に出るであろう、ヴォルヴァに対してもだ。 憎々しげに舌打ちをしたヴォルヴァが、歯軋りをしながら彼を真っ赤な瞳で睨みつけている。 しかし、一瞬遅かった。 「――調子乗ってんな!? それはこっちのセリフでもあるんだぞ、クソ野郎が!」 彼女の腕には、いつの間にかプルが抱え込まれていた。魔道か何かによるものだろう、プルも驚きを隠せない様子だったが、 「え・・・あ、ゴ、ゴメン、トリュー!」 と気丈にもそう詫びた。しかし、その顔は白磁よりもさらに色が失せている。 「卑怯者! 彼は戦闘員じゃないんだぞ!!」 「黙ってやがれこの自称魔王のメス風情がッ! 薄っぺらな膜に包まれて勘違いしてんのかよ!? 偉そうに対等な口利いてんじゃねぇぞ!!」 「何・・・クッ、ならば僕と代われ! 彼を放すんだ!」 「大切な彼氏だから、かぁ~? まさに禁断の愛ってか? はん、獣の言葉は聞こえねぇな。耳障りで意味不明だ。バッカじゃねぇの?」 ヴォルヴァは有無を言わさず、プルにさっきトリュフォーから奪った兜を被せると、容赦無くその上から殴りつけた。ガァン、と金属音が響く。 「このまま、兜ごと首を捻じ切ってやってもいいんだぜ」 ミシミシ、と嫌な音を立てながら、プルの首に彼女の細い指が食い込んでいく。それを止めるように、トリュフォーの刃の切っ先が軽くルブロの首筋に付けられる。 「・・・お互い、切り札は上手に使うとしようぜ」 沈黙のまま、睨み合いが続いた。 「ルブロから離れな」 「プルーアを放したらな」 どちらも先に動くつもりは無い。人質を解放した瞬間、相手側に捕らえられている人が殺されかねないからだ。 と、 「別にいぃよん、ヴォルヴァ」 ルブロが呟いた。「だが――」と口を開くヴォルヴァを、目で軽く制する。それから、クスリと微笑んでみせる。 「ホントは、殺したいんでしょ~」 黄色い瞳でトリュフォーを見据え、彼女は笑った。ぴくり、と切っ先が揺れる。 「人の心を弄んで、苦しめて、それを喜んでる奴らなんて・・・死ねばいい、殺したい、殺してやる、って思って――」 「・・・違う」 「――思ってる」 クスクス笑いが大きくなる。ヴォルヴァは無理やり感情を押し込めた無表情で、じっと成り行きを見守っている。 「思ってるよ、思ってる! 殺したいんだ! 殺せばいいよ! 敵対者はみーんな殺せばいい!! 殺せ! 殺せ! 殺しちゃえ!」 「黙れ・・・黙れ、黙りやがれッ!!」 カッと頭に血が上る。ブルブルと痙攣したようにの腕が震える。思わず剣を取り落としそうになる手を、もう片方の手で押さえる。 はたと、プルは自分の痛みを消し飛ばすような不気味な気配を感じた。どこかで感じたことがあるような嫌な雰囲気だ。 「トリュー!!」 兜越しに叫ぶ。聞こえているのか、いないのか。 自分が助かりたいとかいうのではない――無論、そうして欲しかったが、何故かその瞬間は思わなかった――わからないが、ともかく止めなければと思ったのだ。 ふと、トリュフォーの脳裏に非情な言葉がよぎった。 ――殺したって構わない。非道な輩なのだから! 他のことが考えられなくなった。ルブロと名乗るこの魔物の、息の根を止めることだけを思う。 そしてまさに手にした剣を突き立てようとした瞬間。 心臓がドクンと飛び跳ねた。 「ぐ・・・ぅ・・・ッ」 胸を押さえ、うずくまる。ドクンドクンと鼓動が激しく脈打っている。治まらない。 ――殺せ! 殺した方がいい!! その思いが消えない。そうすべきだと、片隅でそう思っている自分を、弱い心が必死に押しとどめる。 ここで彼女を殺せば、プルーアもまた―― だが、とまた自分をけしかける声がする――たった一人の人間のために、この危険な魔物を野放しにする気か!? それでどれだけの人間が死ぬと思っている!? 一人を犠牲にすれば、そう、たった一人を犠牲にすれば、これから先に助かる命も、あるのだ。 それでも、出来ない。彼を――巻き込むわけにはいかない。 カッツン・・・カラカラカラ 甲高い音を立て、手からとりこぼれた剣が床を滑っていった。ぼんやりとその様を眺める。もうこれで、この魔物を殺せない。 ――一体、何が、どうなって・・・? 何かが、自分の奥底で疼いている。 暫く、その状態が続いた。ややあって、ルブロが呟く。 「あれ・・・? トドメ、刺さないんだ・・・」 ルブロはどこかしら落胆したような表情を垣間見せた。まるで殺されたかったとでも言うかのように。 しかし、無論それも一瞬のこと。 トリュフォーに動く気配が無いと知って、まず行動を起こしたのはヴォルヴァだった。彼女は人質のプルを無視し、一直線にルブロの元へと駆け寄った。 「ルブロ!!」 そんなヴォルヴァに無遠慮に放り投げられて、プルは頭から地面に落ちた。ガァンと兜が鳴る。二度目の大打撃だ。これのせいで前が見えないのは確かだが、もし無ければ大怪我をしていたところだ。しかし、その衝撃でさらに兜がすっぽりとプルの頭に嵌ってしまう。 「ルブロ、無事で・・・」 「ちょっと待てぇ! 勝手に人質にしといて何この仕打ち!!」 感動の再会を果たしているであろうルブロとヴォルヴァに、プルは思いっきり怒鳴った。兜のせいで聞こえているのかどうかもわからないが、この怒りは他にぶつけようが無い。 「――黙れ人間!」 「あーそうですよ! オレは人間ですよ無力な人間風情ですよ! でも文句は言いたいよ!! むしろ言わせてもらう!!」 ルブロはピョイっと体を起こすと、あらぬ方向を向いて怒鳴っているプルを見てあははははと思いっ切り笑った。 「あはは、兜人間、兜人間! 少年プル、グー!」 「誰のせいなのさ!?」 「いや~、面白いねぇプル! マイナーな魔衆のヒト知ってるし、きちんと突っ込んでくれるし、いいねそのキャラ! ぜひまた会いたいなん♪」 「だからもう二度と会いたくないってのッ!!」 「ヴォルヴァ、データ登録よろしこ♪」 「――チッ・・・了解。登録:完了」 ゲッ、名前まで覚えられた!?――と、妙な輩ばかりに目を付けられるプルはまたもや慌てふためいた。 それを笑って見ていたルブロは、駆け寄って来たヴォルヴァの肩にようやく寄りかかると、無理やりポーズをとって、また無邪気に笑ってみせた。 「でわでわ、みなサマぁ~! ルブロ・ヴォルヴァタの芸、お楽しみ頂けましたでしょおか?」 「――喜んでいただければこれ幸い。そうでなければ、精進あるのみ」 「次こそはもぉっと! 面白く激しく楽し~い出し物を、考えまぁす!!」 「次なんていらないから!!」 どうにか兜を外したプルが叫ぶ。正直、もう勘弁してほしい。いや、勘弁してください。 それでも、二人は全く意に介さずに、恭しく頭を下げると明るい声でこう告げた。 「またお会いできることを楽しみにぃ♪」 「――さようなら、ごきげんよう」 止める間があればこそ。 彼女らは現れた時と同じように、唐突に姿を消した。 ◆ 嵐と地鳴りと火事と落雷がいっぺんに襲い掛かり、去って行った後のようだった。 「ト、トリュー! 大丈夫!? 大丈夫なの!?」 兜を手にプルが慌ててトリュフォーのもとへと駆け寄ったが、彼は突然立ち上がると、 「心配すんな。何でもねぇよ」 と頭を振った。 「そっか・・・よかった」 「ふん、私も落ちたもんだな。戦闘中に一般人に心配されるとは」 「心配は勝手だよ。ホント、最後は冷や冷やしっ放しだったんだからさ・・・」 もう今度は何も出ないよな、とプルが辺りを見渡し、ミセナに笑われる。 「もういないと思うけど、それこそ君が警戒しても無意味じゃないかな?」 そりゃないでしょ、そう言って笑う二人を見やってから、楔から開放されたセファラスが彼のところへゆっくりと歩み寄った。手に彼の盾を持っている。 「・・・トリュフォー君、と言ったね。もし体調に異変を感じるようならば、王都で診てもらった方がいい。なんなら、私が腕利きの治療師を紹介してもいい」 「別にそこまで・・・胸の痛みももうねぇから――」 「いや、自己療法は避けるべきだよ。私は専門ではないから明言は避けるが・・・」 セファラスはあいまいな笑顔を浮かべて、トリュフォーにこう告げた。 「もしかすると、呪いにかかっている可能性がある」 「まさか。覚えがねぇぞ」 「いや、そうならいいんだ。ただ、少しばかり気になってね・・・一応、気には留めておいて欲しい。念には念を入れて、ということだが・・・診てもらうならば、なるべく早くがいいだろうね」 トリュフォーは「前にも同じこと言われたが」と前置きをしてから、 「どの道、王都へは行かなきゃならねぇんで・・・そん時にでも」 「そうだね、それがいい。それを聞いて安心したよ」 トリュフォーは軽く胸をさすってみたが、何ら異変は無さそうに感じた。しかし、今回のことといい、戦い方が荒くなっているのは事実だ。身体にも負担が大きいのかもしれない。 「ところで、トリュフォー君」 ふと、思い出したようにセファラスが口を開いた。 「君の名前は・・・本当に『トリュフォー』なんだね?」 「そうだが・・・最初にそう名乗ったし、アンタも今までもずっとそう呼んでただろ。第一、名前を偽る理由がねぇ」 「ああ、そういう意味では・・・」 あごに軽く手を添えてから、セファラスは頷いた。 「いや、そういう意味かもしれないか・・・」 どこかで聞いたような名前であると言うのも引っかかるが、それ以前にもっと気に掛かることがあった。ルブロも言っていたが、『似ている』のだ。思い切って、尋ねてみる。 「君、名字は何と」 「無い。私は・・・ただの、トリュフォーだ。そもそも、普通、名字なんて使わねぇだろ」 セファラスは暫く黙っていたが、 「テューバー・・・」 と呟いた。 「え」 「いや、君と似た人物を知っていてね。メラノスポルム・・・かつて北で繁栄を誇っていた国の勇士なんだが――彼の名字が、テューバーだった」 「・・・他人の空似だ。私は・・・」 と、トリュフォーは少し口ごもると、どこかしら寂しげに呟いた。 「・・・自分の生まれ故郷すら、知らねぇから」 「自分の、両親もか」 ふいに、ミセナがそう声をかけた。トリュフォーは参ったなというように頭をかいたが、「そんなんじゃねぇよ」と言い放った。 「そんなの私だけじゃねぇさ。20年前の戦争で・・・孤児なんていくらでもいる。今でも、だ」 しんみりしてしまった雰囲気を嫌がって、トリュフォーはもう一度、今度は少し怒ったように声を出した。 「だから! そーゆー話はいいだろ、なぁ!? それよりも私としては早く森の出口に行きてぇんだよ!!」 「え、出口・・・あッ!! もしかして!?」 「・・・もしかしなくても、だ。ようやく理解したか」 どうした?、と声をかけたミセナに、プルは慌てながらこう告げた。 「そう、大変なんだよ!! シャンプとルスラちゃん、森の出口で二人きりなんだよね!?」 深々と溜息をつきながら、トリュフォーが頷いた。それを見て、セファラスが首をかしげる。 「ひょっとして、髪の毛の赤い女の子と、大剣を背負った少年かい? あの二人・・・どこかマズいことでも?」 「・・・いいんじゃないか? ああ、ひょっとして男女が二人きりというのが――」 「そんな複雑な意味なんかじゃねぇんだ」 手を額に当てながら、トリュフォーはさっさと館の出口を目指した。慌てて残りの3人も後を追う。 扉を開け、外へ出る。 一度にありとあらゆることが起こったために心が落ち着かないまま歩いていたミセナは、突然立ち止まったセファラスの背中にぶつかった。 「ちょ・・・セファラスとやら、急に立ち止まるのは――」 彼は返事の代わりノ、すっと西南の方角を指差した。そのままミセナが視線をずらしていくと―― 「も、森が!? 西南の森が燃えているッ!?」 ――そんなバカな!! 絶句のあまり、口をただパクパクさせることしか出来ない。そうこうしている間にも、様々な色の閃光が暗くなりかけた空を突き破っていた。音こそ聞こえないが、もしここまでその響きが伝わるとすれば、耳を劈くような轟音に違いない。 皆の答えは一つだった。 彼らは、駆け出していた。 疲れきった体に鞭を打ち、ひたすら、出口方面である西南の森の元凶部へと。 スーパーカオスタイム:vs ルブロ&ヴォルヴァ
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ゲーム・マスター Game Mastering ゲーム・マスターとして、君はパスファインダーの各セッションを運営し、プレイヤーとゲーム世界との間の繋がりを与える。プレイヤー・キャラクターがモンスターと戦ったり、世界を探検したりする際の場面を提供するのは、君にかかっている。 ゲーム中の共同作業 Collaboration During Play ゲーム・マスターとして、君は世界やルールの機能、そしてノンプレイヤー・キャラクターがどのように行動するかについて、最終的な決定権を持っている。 このルールの目的は、ゲームをスムーズに進行させることであり、一人の案内手が一貫性を保つための指針を示すことだ。一人のプレイヤーをグループにおける独裁者にするためのものではない。ロールプレイング・ゲームに協力は欠かせないのだ! ゲームにどのような共同作業を導入するかは、プレイヤーが何に興味を持っているかによる。あるグループでは、プレイヤーは世界やノンプレイヤー・キャラクターに詳細な情報を加えることを楽しむ。また、世界は自分で制御できないもので、自分のキャラクターが決めたことしかできないように感じたい人もいる。どちらも楽しく、受け入れられる遊び方だ。 どのようなジャンルの物語を重視したいか、世界のどの地域で遊びたいか、どのような敵と戦いたいか、どの出版物の冒険を遊びたいかなど、始める前にプレイヤーから意見を収集することをお勧めする。良いキャンペーンは、プレイヤーがどんなキャラクターを演じたいか、君がどんな冒険を走らせるか、最初のうちは多少の行き違いがある。その結果、キャラクターに合わせて完全に冒険を作り上げることから、特定の出版された冒険を選び、プレイヤーにキャラクターを作ってもらい、その冒険の冒頭部分を脚色して、すべてのプレイヤー・キャラクターが関わる理由を持たせることまで、様々な方法が考えられる。 プレイしていると、共同作業の機会が何度も訪れる。プレイヤーがキャンペーン中の出来事について提案を投げかけたり、具体的な理論を持ち出したりするのは、彼らがゲームの中で何を見たいかを語っているのだ。彼らの提案を取り入れる方法を見つけよう。ただし、それぞれに予想外のものが含まれるよう、十分なひねりを加えよう。 「単発/one-shot」と呼ばれることもある一回限りのセッションは、君のグループがパスファインダーを試している場合や、特定の短い冒険をプレイしたい場合に最適だ。これはより少ない時間しか必要としないが、プレイヤーが物語や設定に没頭する機会が少ないため、GMはゲームの出来事をすぐに魅力的な形で提示することが要求される。 もしより長いキャンペーンをプレイしたいのであれば、冒険内の出来事だけではなく、ゲーム内のキャラクターに直接語りかけるような物語の要素を追加する必要があるだろう。つまり、キャラクターにはグループ全体の目標に加え、個々の目標が必要だ。 キャンペーンがどれくらいの期間かかるかは、実際にプレイする時間、あるいはキャラクターが進めるつもりのキャラクター・レベルの値を見て推測することができる。通常、グループのレベル・アップには3~4回のセッションが必要だ。セッションをキャンセルすることもあるだろうから、週1回のプレイを1年間続けた場合、およそ14レベルのキャンペーン、2週間に1回のプレイを1年間続けた場合、8レベルのキャンペーン、毎月プレイした場合、5レベルのキャンペーンが可能になる。月1回しかプレイしないのであれば、セッションを長くして、素早く進めることを検討してもよいだろう。 キャンペーンはいつまで続けても構わない。多くのグループは1つの冒険をプレイした後、別の冒険に挑戦することを決める。しかし、期限のないキャンペーンを行う場合、次の冒険でキャンペーンが終了した場合に満足に終了できないような進行中のプロットが起きないようにしよう。物語上重要でありながら、プレイヤー・キャラクターが15レベルになるまで止められないような圧倒的に強力な悪役を登場させた場合、8レベルでキャンペーンを終了すると拍子抜けしてしまうだろう。 キャンペーンの長さと範囲を見積もるときは、控えめにするのが得策だ。複雑なプロットを織り交ぜた20レベルの壮大なキャンペーンを実施したい気持ちは常にあるが、グループが月に1回しかプレイできず、プレイヤーに他にやらないといけないことがある場合、そのようなゲームはずっと前に破綻する可能性がある。 ゲーム・マスター Game Mastering ゲーム・マスターになると、仲間たちと楽しい時間を過ごすことができるやりがいのある仕事を受け持つことになる。主な仕事内容は…… グループの冒険の物語を、説得力のある一貫した方法で伝える。 ゲームの舞台となる世界を、ファンタジーの要素を含みつつ現実的な世界観に近づけていく。 斬新なコンセプトでプレイヤーや自分自身を楽しませ、創造的なアイデアには興味深い結果で報いる。 ゲーム・セッションの準備として、冒険を作ったり研究したり、キャラクターやプロットを作成したりする。 プレイヤーが予想外のことをしたとき、ノンプレイヤー・キャラクターや世界の他の勢力がどのような反応をするかを即興で考える。 公平性を確保し、ゲームを進行させるためのルールを決定する。 本章では、君がこれらの責任を果たすために必要な道具を提供する。以下の項では、キャンペーンの様々な構成要素を分解し、様々なプレイ・モードとPCが試みる作業に対するDCの設定方法、プレイヤー・キャラクターへの様々な報酬の与え方、そして冒険者パーティに影響を与えるであろう環境の側面について説明する。 キャンペーンの立案 Planning a Campaign ゲームは通常、キャンペーン――1つのパーティに焦点を当てた連続した物語――として構成されている。 キャンペーンは複数の冒険に細分化される。冒険は探索やノンプレイヤー・キャラクターとの交流を伴う小さな物語だ。冒険1つは物語1つを表し、キャンペーンの大きな連続下物語につながることもある。冒険のプレイは、1つ以上のゲーム・セッション――数時間かけてグループで冒険の一部をプレイする集まり――にまたがるものだ。 キャンペーンは、君のゲームの全体的な構造を提供する。キャンペーンの準備をしながら、その範囲と主題を設定し、その中で行われる冒険や場面でそれを補強していく。 キャンペーンの長さ Campaign Length キャンペーンの長さは、数回のセッションから何年にも及ぶものまで、さまざまなものがある。キャンペーンの長さを決める主な要因は2つある。1つは物語を完結させるためにどれだけの時間が必要かであり、もう1つはプレイヤーがどれだけの時間をゲームに費やしたいと思っているかだ。 期待される期間 Expected Duration すべてのキャンペーンが同じ地点で終わるわけではない。あるキャンペーンは20レベルまで成長してプレイヤー・キャラクターが力の頂点に到達し、人間が直面しうる最大の脅威に立ち向かった後に終了する。また、もっと低いレベルで、グループが大悪党を倒した後や、重要な問題を解決した後に終了するものもある。 キャンペーンを始めるときには、終点を決めておくといいだろう。しかし、他のプレイヤーと一緒に物語を語る以上、柔軟に対応する必要があるし、キャンペーンに対する最初の期待が間違っていることが明らかになるかもしれない。 満足のいく結末に向かっているのだろうかと考える際には、他のプレイヤーに確認するのがいいだろう。例えば「あと2回くらいのセッションで終わりそうだけど、みんなそれでいいのかな? やり残したことはない?」と言ってみる。こうすることで、自分の想定が他のグループと一致しているかどうかを判断し、必要な調整を行うことができる。 主題 Themes キャンペーンで選択する主題は、他のキャンペーンと区別するためのものだ。この主題には、物語の主要な劇的な問題や、特定の環境またはクリーチャーを繰り返し使用することが含まれ、伝統的なハイファンタジー以外のジャンルを取り入れることもできる。また、キャンペーンに選んだ主題によって、使用する物語の文脈における要素も自ずと決まってくる。 物語の主題は通常、プレイヤー・キャラクターや悪役の背景物語、動機、欠点に関係する。 例えば、復讐を主題の1つに選んだ場合、復讐のために人生を引き裂いて、周囲の人々に悲劇的な損害を与える悪役を登場させるかもしれない。プレイヤー・キャラクターの中に、自由と解放を信じる混沌にして善の人物がいる場合、そのキャラクターを奴隷商人と戦わせることもできる。 あるいは、愛を主題にして、ノンプレイヤー・キャラクターが運命的な恋愛に巻き込まれたり、失った恋人を取り戻そうとしたり、プレイヤー・キャラクターに言い寄られたりするかもしれません。 似たような場所や関連するクリーチャーを使うことで、ばらばらの冒険の間につながりを持たせることができる。プレイヤーは、自分のキャラクターが巨人との交渉、海路の航海、デヴィルとの戦い、平原の探検など、繰り返し登場する要素に対応する専門家になったような気分になる。例えば、序盤に凍てつくツンドラを探検させ、その後、より困難な課題を抱えた氷の平原に移動させ、それまでに培った知識を駆使して克服させることもできる。また、ホブゴブリンはレベルが低いうちは手強い敵だが、レベルが上がるにつれて別のクリーチャーの手下になり、プレイヤーは成長を実感することができる。 パスファインダーRPGはファンタジー要素を持つ冒険のゲームだが、他のジャンルの小説の要素を取り入れたキャンペーンへと組み替えることもできる。 ホラーを取り入れたり、魔法を減らして成長速度を緩やかにして剣と魔法の物語にしたり、魔法を技術に変えてスチームパンクの設定にしたりするのも良いだろう。 責任あるプレイのための道具 Tools For Responsible Play 同意と快適さはロールプレイング・ゲームにとって重要なテーマであり、多くのデザイナーが責任あるプレイを促進するための技術を作り出している。君が使える手法としては、Ron Edwardsが開発した「禁則事項と暗幕/Lines and Veils」、Johon Stavropoulosが開発した「Xカード/X Card」などがある。 禁則事項と暗幕 Lines and Veils 「禁則事項/Line」と「暗幕/Veil」という用語によって、本項で説明されている概念のための共通の語彙を卓上に与えることができる。ラインとは、「拷問を禁則事項とする」のように、プレイヤーが取りうる行動に対する厳しい制限のことである。グループは禁則事項を行わないことに同意し、その内容をゲームから取り除く。 暗幕とは、詳細な描写をしてはいけないものを指す。暗幕のためにシーンが暗転したり、グループが別の話題に移ったりするが、暗幕がかけられたものはそのまま発生する。例えば、「キャラクターが寝室に向かうシーンに暗幕をはる」というかもしれない。 事前にいくつかの禁則事項と暗幕を考えておくことになるだろうが、プレイ中にもっと多くのことを見つけることができるかもしれない。 Xカード The X-Card カードに「X」を書けばXカードの出来上がりだ。どのプレイヤーもXカードを横に向ける(タップする)ことで、気分を害したコンテンツを黙って拒否できる。その時話していた人が少し巻き戻して、不快なコンテンツを削除して続ける。キャンペーンの基本的な指針を設定するのと同様に、誰かがXカードを使用した場合、質問も判断も議論も行わない。しかし、「どこまで巻き戻せばいい?」というように、必要であれば説明を求めることができる。代わりに手でXを作ったり、「それをXにしましょう」といったり、他の方法を使うグループもある。いずれにせよ、ゲーム終了時、指針を修正する必要があるかどうか、個人的にプレイヤーから情報を集めてほしい。 詳細な情報はtinyurl.com/x-card-rpgに掲載されている。 迎え入れる環境 A Welcoming Environment ゲーム・マスターの役割には、君と他のプレイヤーがゲーム中にやりがいのある楽しい時間を過ごせるようにするという責任が伴う。ゲームでは難しい主題を扱ったり、ストレスを感じる瞬間もあるが、基本的にパスファインダーは余暇の活動である。プレイヤーたちが社会契約に従い、互いに尊重し合ってこそ、その状態を維持することができる。 身体的または精神的な障害を持つプレイヤーは、健常なプレイヤーよりも困難であると感じるかもしれない。彼らが必要なリソースや支援を得られるように、プレイヤーと協力してほしい。さらに、意図的であるか不注意であるかにかかわらず、不適切な行動に注意し、ゲーム中のプレイヤーの仕草に十分な注意を払うように。プレイヤーが不快になっているのに気づいたら、ゲームを一時停止する、新しい方向に持っていく、セッション中またはセッション後にプレイヤーに個人的に確認する、あるいは適切と思われるその他の行動を取る権限が与えられる。 もしプレイヤーが、君がGMとして提示した内容や他のプレイヤーやPCの行動など、ゲーム中の何かに対して不快感を示した場合、そのプレイヤーの声に注意深く耳を傾け、彼らが再びゲームを楽しめるようにするための措置を取るように。もし、君が事前に書いたものを準備していて、あるキャラクターや状況が不適切だと感じた場合、君にはその内容を適当に変更する権限が十分にある。また、プレイヤーの行動が容認できないものであったり、他の人を不快にさせるものであったりする場合は、その行動を改めるよう求める権限(と責任)がある。 不快に感じている人に問題解決の責任を負わせるのは、全く適切ではない。間違いがあってもいい。大切なのは、どう対処して前に進むかだ。 ゲームはみんなのものだ。不誠実な行為をする人が、君のゲームを弱体化させたり、他のプレイヤーを排除したりすることは決してあってはならない。君の努力は、ゲームとゲーム文化をすべての人に歓迎されるものにするための長期的なプロセスの一部なのだ。協力することで、あらゆる個性と経験を持つプレイヤーが安全だと感じられるコミュニティを構築することができる。 好ましくないコンテンツ Objectionable Content キャンペーンを始める前に、グループまたは個人でプレイヤーに確認し、どのような種類のコンテンツをゲーム内で許可したいのか、どのような話題を避けたいのかを確認する。物語はリアルタイムで展開されるため、ゲーム開始前にこれらの話題について話し合っておくことが重要だ。これらの話し合いはプレイヤーの安全を守るためのものなので、誰かがある種のコンテンツを禁止してほしい理由を聞くのはまずいことだ。誰かが禁止を望んだら、問答無用で禁止すること。 映画やビデオゲームに使われるようなレーティングから始めるとよいだろう。パスファインダーのゲームにはしばしば暴力や残酷な表現が含まれる。これらの概念をどの程度写実的に表現するべきか、その限界は? プレイヤーは卓上で悪態をついてもいいのか? 蜘蛛や身体損傷を含む恐怖描写など、ゲームに登場させたくない恐怖症を持っている人はいるだろうか? 不愉快な内容の制限を決めたら、君は重要な仕事が4つある。 この制限を他のプレイヤーに明確に伝えること。 君とプレイヤーに境界線を守らせる。 セッション中に誰かがコンテンツについて不快に感じたら、たとえそれが事前の話し合いで禁止されていなかったとしても、すぐに行動する。問題が解決されたら、次に進む。 誰かが故意にこれらの境界を押し広げ、抜け穴を見つけようとし、限界を再交渉しようとし、または不快なコンテンツに対する異なる耐性を持っている人々を軽蔑する場合、問題を解決する。 精神操作を行う魔法を非難される形での使用。悪役はそのような行為をするかもしれないが、場面上では起こりないし、詳しく描写されることもないだろう。多くのグループは、悪役にこうした行為を一切させないことで、こうした非難されるべき行為を全く意識させないようにしている。 パスファインダーにおける基準 The Pathfinder Baseline プレイヤーは不愉快なコンテンツについてあまり多くを語らず、一般的な社会的道徳規範によって最も不快な話題はゲームから排除されると思い込んでいるかもしれない。そのようなやり方は、必ずしも正確ではない共有の前提に依存しているため、必ずしも十分ではない。以下は、多くのグループにとって有効な基本的な前提条件であり、君の好みや他のプレイヤーの好みに合わせて変更することができる。 流血、負傷、四肢切断まで描写されるかもしれない。ただし、過度の血みどろ描写や残酷な描写は避けるべきだ。 恋愛や性的な関係はゲーム内で起こり得るが、過度に示唆的な描写は避けること。性行為は常に「場面外」で行われる。プレイヤー・キャラクター同士の関係を始めようとする試みは、あるプレイヤーが他のプレイヤーを口説くのに似ていて不快になることがあるため、一般的には避けるべきだ(見知らぬ人とプレイする場合は全く不適切だ)。 過度なグロテスク描写や汚物の描写は避けること。 以下の行為はプレイヤー・キャラクターは絶対に行わないように。 拷問 レイプ、同意のない性的接触、性的脅迫 性的虐待を含む、子供への危害 奴隷を所有すること、または奴隷貿易で利益を得ること 社会的な飛散ダメージ Social Splash Damage 自分自身やゲームに参加している他のプレイヤーを大切にすることと同様に、自分のグループが周囲の人々に与える影響にも気を配ること。自分以外が主催する場所でプレイしている場合は、主催者に敬意を払うように。公共の場でプレイする場合は、自分のグループの快適さだけでなく、周りの人の快適さも考えること。 ゲームでは、想像上の世界の小宇宙に吸い込まれるように夢中になりがちだが、周囲の現実世界を無視してはいけない。騒いだり、散らかしたり、生々しい暴力描写で通行人を驚かせたり、初めてRPGのプレイを目撃した好奇心旺盛な観客に冷たい態度を取ったりしていないか、気をつけよう。 障害を持つキャラクター Characters With Disabilities プレイヤーは、障害のあるキャラクターを作りたいと思うかもしれないし、プレイしているうちに、そのキャラクターが障害を持つことになるかもしれない。プレイヤーと共に、その障害を尊重した表現方法を見つけること。盲目状態や聴覚喪失状態といった状態は、長期に渡って障害と付き合ってきたキャラクターには適していない。ここでは、障害を持つPCのために使用する可能性のあるルールを提案する。 失明もしくは視覚障害 Blindness or Impaired Vision 失明したキャラクターは視覚を使って何かを感知することができず、視力を必要とする知覚判定は大失敗し、視覚効果に対する完全耐性を持ち、盲目状態や目が眩んだ状態にることはない。君はこのキャラクターに《無視界戦闘》を無償で与えてもよい。 視覚に障害のあるキャラクターは、視覚に基づく知覚判定に-2〜-4のペナルティを受けるかもしれない。眼鏡やその他の矯正器具を使用すれば、このペナルティを軽減または除去できるかもしれない。 聴覚障害もしくは難聴 Deafness or Being Hard of Hearing 聴覚障害のキャラクターは聴覚を使用して何かを感知することができず、聴覚を必要とする知覚判定は大失敗し、聴覚効果に対する完全耐性を持つ。“呪文発動”のための音声要素や、魔法のアイテムを起動するための合言葉要素を供給するための練習は十分にできるが、聴覚要素を含む慣れないアクションを行う場合、DC5の平目判定に成功しなければそのアクションは失われてしまう。《手話》特技を無料で与え、さらに《読唇術》を与えるのが最適だろう。グループ内の他のキャラクター1人以上にも、同様に無料で《手話》を与えることができる。 難聴のキャラクターは聴覚に基づく知覚判定に-2〜-4のペナルティを受けるかもしれない。聴覚の矯正器具は、典型的なパスファインダー世界では眼鏡ほど一般的ではない。 四肢欠損 Missing Limb 魔法のアイテムの中には、特定の手足や体の一部を必要とするものがある。例えば、足がないキャラクター用にブーツをブレーサーに変えるなど、そのアイテムの代用品を認めるのは問題ない。 手や腕がないキャラクターは、両手を必要とするアイテムを“扱う”ために2アクションを費やすか、その他の方法で補う必要があるかもしれない。両手で持つ武器は使えない。キャラクターはこれを補うために義手や義足を手に入れることができる。 足や脚を失ったものは移動速度に若干のペナルティを受けるかもしれないが、通常、義肢を獲得して補うことができる。足がない場合は、車椅子や頼れる乗騎、空中浮遊や飛行の魔法を使うことができる。 精神疾患と慢性疾患 Mental Illness and Chronic Illness 精神疾患や慢性疾患などの一部の障害は、プレイヤーのロールプレイに委ねるのが最善だろう。精神疾患は特に扱いにくい話題であり、無神経な描写がなされた歴史がある。プレイヤーの意図と、その表現が他のプレイヤーに与える影響に注意すること。 キャラクター作成 Character Creation 新しいキャンペーンが始まると、プレイヤーは新しいプレイヤー・キャラクターを作成することになる。そのプロセスの一部として、君はキャンペーンが何について行われるのか、どのような種類のキャラクターが最も適しているのかを紹介する。どのようなルールの選択肢が利用できるかを、プレイヤーと一緒に考える。もしプレイヤーが他の本から得た共通の選択肢や、アンコモンやレアの選択肢を使いたい場合は、プレイを通じてそれらの選択肢が君の考えているキャンペーンのスタイルと矛盾しないか、あるいは将来的に奇妙な驚きをもたらすかもしれないかを確認する。通常、新しい選択肢を認めるのがよいのだが、そうする義務はない。自分が納得できる範囲で開放的に取り扱うこと。 冒険の準備 Preparing an Adventure 冒険とは、君や他のプレイヤーが語る物語の基礎となる、物語の要素、キャラクター、設定などの自己完結型の集合体である。冒険は、君自身の物語の概要だと考えよう。君が盛り込みたい主要な展開、一貫したキャラクター、伝えたい主題があるだろうが、概要を完成した物語にする過程で様々なことが変化する可能性がある。 Paizoや他の会社から出版されている冒険を使うかもしれないし、ゲーム・セッションの準備をしながら独自の冒険を構築するかもしれない。 Paizoから出版された冒険 Paizo's Published Adventures 以下の種類の冒険は、paizo.com、お近くのゲーム・ショップ、または多くの書店で購入することができる。また、同じシリーズの冒険を全て購入したい場合は、paizo.comで定期購入することもできる。 パスファインダー・アドベンチャー・パス Pathfinder Adventure Paths パスファインダー・アドベンチャー・パスの各月刊誌は、複数巻に渡る大きな物語の一部として次の巻につながっていく。各アドベンチャー・パスの第1巻は通常1レベルから始まり、各巻は自己完結型の物語を持ち、最終巻の最後に大きなクライマックスを迎える。また、各巻には通常、新しいモンスターやルール、世界に関する詳細が含まれている。各アドベンチャー・パスにはそれぞれ異なる主題があり、その舞台は内海地方からそれ以外の地域まで多岐に渡る。 パスファインダー・アドベンチャー Pathfinder Adventures パスファインダー・アドベンチャーは、いくつかのレベルのプレイを包含する独立した冒険だ。それぞれは自己完結しており、通常、固有の構成や主題を持つ。パスファインダー・アドベンチャーは単独でプレイすることも、進行中のキャンペーンの一部としてプレイすることも可能で、中には似たような主題を持つアドベンチャー・パスの脇道用の冒険として理想的なものもある。 パスファインダー協会シナリオ Pathfinder Society Scenarios シナリオは、パスファインダー協会ロールプレイング・ギルドで使用される冒険であり、パスファインダー協会の一員として、あるいは単独でプレイすることができる。それぞれ4〜5時間程度で進行するため、短時間で1つの物語を語ることができる。しかしそれぞれはより大きな連続性の一部であり、組み合わせて長いキャンペーンの基礎とすることもできる。 出版された冒険 Published Adventures 作成済みの冒険には、物語に必要な背景情報やノンプレイヤー・キャラクター、探索や遭遇に必要な場所や地図、モンスター群などがすべて掲載されている。作成済みの冒険は、ゲーム前に該当箇所を読むだけで、全てを一から作る必要がないため、準備の高速化につながる。出版された冒険にはすでに想定された量の遭遇と財宝が含まれており、君のグループに合わせて、さまざまなキャラクター・レベル向けに作られた冒険を見つけることができる。出版されている冒険を読むか、最初のゲームとして冒険を運営することで、冒険がどのように構成されているかがわかり、後で自作することが容易になる。 出版されたアドベンチャーはあらかじめ書かれているが、決まったものではない。自分のグループに合わせて冒険の詳細を変更することは、許容されるだけでなく、むしろ好ましいことなのだ。プレイヤー・キャラクターの背景ストーリーや好みを参考に、冒険の内容を変更しよう。つまり、敵キャラクターをプレイヤー・キャラクターと関連付ける、プレイヤー・キャラクターの出身地に舞台を変更する、あるいはプレイヤーにとって魅力的でないと判断した場合は特定のシーンを削除する、といった変更を行える。 希少性と使用権の運用 Using Rarity and Access 希少性システムには目的が2つある。それは、特定の呪文、クリーチャー、アイテムがゲーム世界においてどれだけ一般的か、あるいは稀であるかを伝えることと、ゲームの複雑さを簡単に制御する道具を提供することだ。アンコモンやレアの選択肢はそのレベルの他の選択肢よりも強力というわけではないが、ある種の物語に複雑さをもたらしたり、世界においてあまり一般的でないものとなったりする。例えば、プレイヤーがディテクト・イーヴルのような珍しい呪文を発動できると、謎解きを行う冒険の運営はより困難になるかもしれない。 キャンペーンの開始時に、希少性に関する君の希望をプレイヤーに伝えること。君が特に決めない限り、プレイヤーは資格のあるコモンの選択肢と、キャラクターの選択(主に種族とクラス)によって与えられたアンコモンの選択肢から選ぶことができる。特別な調整を行わない場合、十分に努力したキャラクターは最終的にアンコモンの選択肢を見つけるかもしれないが、レアの選択肢は常に特別な報酬となる。 GMによっては、アンコモンとレアの選択肢をすべて開放するることもある。もし自信がなければ、アンコモンやレアの要素を報酬に含めたりプレイヤーに獲得させたりする前に、目を通しておこう。 報酬 Rewards キャラクターへの報酬として、アンコモンやレアのルール要素を使用することができる。これらは同じ価格の他の財宝と同じ価値とおおよそ同じ力を持つが、遠い国から来たものや、珍しい、あるいは驚くべき能力を持っているため、少しだけ特別なものになる。 アンコモンやレアの報酬としてはアイテムが最も有力なものだが、NPCがお礼にアンコモンやレアの呪文をPCに教えたり、パーティが特定の敵に対抗するための手助けをしてくれるかもしれない。また、アンコモンやレアのアイテムに基づいた追加特典を即興で作ることもできる。例えば、あるPCが伝承学に関する用途を持つ珍しい植物を手に入れた場合、その植物を使って新しい湿布薬を作ることができるため、〈知識:生薬〉を使って“収入を得る”と一時的に多くのお金が得られる、と決めることもできる。 異なる場所 Different Locations これらの希少性は、ほとんどの西洋の中世ファンタジー・ゲームにも適している。しかし、他の場所を舞台にしたキャンペーンや、人間以外の文化を強調するため、あるいは中国文化に基づく武侠ゲームのような異なるルーツを持つファンタジー設定でプレイするために、希少性を変更したいと思うかもしれない。これらの変更は基本的なアイテムに影響することがほとんどだ。例えば、ドワーフの拠点でキャンペーンを開始する場合、ドワーフの特徴を持つ武器をすべてコモンにするのもよいだろう。キャンペーンの主題に合わせて自由に希少性を調整してよいが、その場合は変更内容をグループ内で共有する必要がある。 冒険の作成 Creating Adventures 独自の冒険を構築することは、出版されているものを使用するよりもはるかに困難だが、自分自身を表現し、より創造的になり、プレイヤーとそのキャラクターに合わせて直接ゲームを調整することができる。本章の後の項では独自の冒険の構築に役立つように、遭遇の構築と実行、財宝の配置、適切な難易度の課題の設定などの指針を紹介している。 冒険の計画は、様々なところから始めることができる。 例えば、特定の敵役から始めて、その敵役の主題に合った冒険を構築し、グループをその敵役に導くこともできる。あるいは、探検に適した興味深い場所から始めて、その設定に適した敵や難題を登場させることもできる。 場所 Locations 神秘的で幻想的な場所を含む印象的な舞台は、プレイヤーの好奇心を引き出してくれる。 各場所の探索は、それ自体が楽しみであるべきで、単に戦闘から次の戦闘への移動のためにこなさなければならないものではない。その場所を作るとき、頭の中にその場所を思い浮かべ、ゲームを物語るときに盛り込めるような細かい部分を書き出しておきく。装飾品や名所、野生動物、独特のにおい、気温の変化などを書き込むと、より現実的に感じられる。 モンスターや戦利品だけでなく、吹雪などの環境条件やパズル、罠、その他の危険など、環境に基づいた課題を場所に含めることができる。 これらの試練は、植物が生い茂る城跡にある茨の壁、呪われた沼地にある酸溜まり、偏執的なウィザードの墓にある魔法の罠など、冒険の場所に合ったものであるだ。 遭遇 Encounters 頑丈な遭遇の組み合わせは、冒険の骨格を形成する。遭遇はしばしば他のクリーチャーとの戦闘に焦点を当てるが、障害を含むこともできるし、キャラクターが言葉だけで決闘する社交遭遇を作ることもできる。グループのレベルに合った遭遇を作るためのルールを以下に示す。 冒険の中には、特定の時間や順番に遭遇する、明確で直接的な進行のものもある。また、ダンジョン内の部屋はすべてつながっていて、どの順番で調査してもよいというような、非線形のものもある。ほとんどの冒険はその中間で、キャラクターが必ず遭遇することが分かっている重要な遭遇もあれば、任意で遭遇する遭遇もある。 財宝 Treasure 冒険では、キャラクターのレベルに見合った量の財宝を配る必要がある。財宝はあらゆる方法で与えることができる。財宝は様々で、敵が持っているアイテムであったり、使命を達成したことに対する支援者からの報酬であったり、モンスターが守っている木箱の中の効果やアイテムの山であったりする。財宝は一箇所にたくさん貯めておくのではなく、冒険のあちこちに散りばめておくとよいだろう。そうすることで、プレイヤーは少しずつ報酬を得ることができ、何時間もプレイして大きく飛躍するのではなく、頻繁に小さな段階を踏みながらキャラクターを成長させることができる。 遭遇の構築 Building Encounters 最も一般的な種別の遭遇は、PCが他のクリーチャーと対峙する戦闘的遭遇だ。戦闘遭遇は厳密にルールで管理されている。以下の指針は、君のグループに適切な試練をもたらす戦闘遭遇を構築するのに役立つ。危険な遭遇の構築も同じように行われる。《社会的》遭遇はより自由な形式で、GMである君のデザイン次第だ。 戦闘遭遇を作るには、まずその遭遇が冒険全体の中でどのように位置づけられるかを決める。次に、その遭遇がどれほどの脅威をもたらすかを、以下の5つの区分から推定する。 些細な脅威/Trivial-threatの遭遇とは、キャラクターが負ける可能性がないほど簡単なもので、特に浪費家でない限り、大きな資源を使う必要もない。これらの遭遇は、ウォーミング・アップや口直し、あるいはキャラクターがいかに素晴らしいかを思い出させるものとして、最も効果的である。些細な遭遇であってもプレイするのは楽しいので、脅威がないからといって無視しないようにしよう。 低い脅威/Low-threatの遭遇はいくらか難易度が高くなり、通常パーティの資源をいくらか使用する。しかし、パーティ全体が深刻な脅威にさらされることは稀であり、そうなった場合は非常に稚拙な戦術の結果である。 中程度の脅威/Moderate-threatの遭遇は、キャラクターを完全に圧倒することはないだろうが、キャラクターにとっては重大な試練となる。キャラクターは通常、適切な戦術を用い、資源を賢く管理することで、中程度の脅威の遭遇から抜け出し、休むことなく続けてより困難な挑戦に立ち向かえるようにする必要がある。 厳しい脅威/Severe-threatの遭遇は、ほとんどのキャラクターのグループが安定して倒すことができる最も困難な遭遇である。この遭遇は、最後のボスとの対決など、物語上の重要な場面で最も適している。運が悪かったり、戦術が悪かったり、あるいは事前の遭遇によって資源が不足していたりすると、厳しい脅威の遭遇は簡単にキャラクターにとって不利になってしまうので、賢いグループは「遭遇の開始を避ける」という選択肢を残しておく。 極限の脅威/Extreme-threatの遭遇は非常に危険なため、キャラクターにとって互角の勝負になる可能性が高く、特にキャラクターが資源不足である場合はなおさらだ。このため、ほとんどの用途では難易度が高すぎる。極限の脅威の遭遇は、完全に休息したキャラクターが全力で対処する場合、キャンペーン全体の最後に行われるクライマックスの遭遇、または高度な戦術とチームワークを駆使する玄人プレイヤーのグループに適しているかもしれない。 XP予算 XP Budget 脅威のレベルを選択したら、次は遭遇を構築していく。脅威の度合いに応じたXP予算があり、各クリーチャーはその予算の一部を消費する。まずはその遭遇にとって最も重要なモンスターやNPCから始め、残りのXP予算をどう使うかを決める。多くの遭遇はXP予算とぴったり一致しないが、それに近いものになるはずだ。XP予算は、4人のキャラクターで構成されたグループを基準にしている。もし君のグループがもっと大きかったり小さかったりする場合は、以下の「パーティ・サイズの違い」を参照すること。 表10-1 遭遇の予算 Encounter Budget 脅威XP 予算 キャラクター調整値 些細 40以下 10以下 低 60 15 中程度 80 20 厳しい 120 30 極限 160 40 キャラクターの選択 Choosing Creatures よほどのことがない限り、君は遭遇に、PCのレベルより4レベル低いものから4レベル高いものまでのクリーチャーを選択する(表10-2:クリーチャーXPと役割を参照)。各クリーチャーは、下っ端の下僕からパーティ全員を一人で倒せるほど強大なボスまで、君の遭遇において果たすべき役割を持っている。 各クリーチャーは、パーティのキャラクターのレベルと比較して、そのレベルに応じたその遭遇のXP予算からいくらかのXPを消費する。例えば、PCが5レベルであれば、2レベルのクリーチャーは「パーティ・レベル-3」のクリーチャーであり、低~中程度の脅威の遭遇に適した下僕であり、遭遇のXP予算のうち15XPを消費することになる。 表10-2:クリーチャーのXPと役割 Creature XP and Role クリーチャーのレベル XP 推奨される役割 パーティ・レベル-4 10 脅威の低い従者 パーティ・レベル-3 15 脅威の低いもしくは中程度の従者 パーティ・レベル-2 20 任意の従者もしくは標準的なクリーチャー パーティ・レベル-1 30 任意の標準的なクリーチャー パーティ・レベル 40 任意の標準的なクリーチャーもしくは脅威の低いボス パーティ・レベル+1 60 脅威の低いもしくは中程度のボス パーティ・レベル+2 80 中程度もしくは高い脅威となるボス パーティ・レベル+3 120 高いもしくは極端に高い驚異となるボス パーティ・レベル+4 160 極端に高い驚異となる単体のボス 異なるパーティ・サイズ Different Party Sizes パーティのキャラクターが4人より1人増えるごとに、表10-1「遭遇予算」の「キャラクター調整値」に示されている金額だけXP予算を増やす。キャラクターが4人に満たない場合、同じプロセスを逆に使用する。つまり、足りないキャラクター1人につき、その分のXPをXP予算から削除する。パーティの人数を考慮してXP予算を調整しても、遭遇のXP報酬は変更されないことに注意しよう。 キャラクターが増えることによるXPの増加は敵や障害の追加に、キャラクターが減ることによるXPの減少は敵や障害の減少に使うのが適切であり、1つの敵を強くしたり弱くしたりするのはおすすめできない。敵クリーチャーの数がプレイヤー・キャラクターの数にかなり近い方が、一般的に遭遇の満足度が高くなる。 責任の分配 Sharing Responsibility 君がGMで表向きの責任者だからといって、キャンペーンを進行させるための余分な仕事をすべてしなければならないわけではない。ゲームのスケジュール管理、メモ書き、報告などは、他のプレイヤーに任せることができる。また、誰かがPCの敵のイニシアチブとヒット・ポイントを追跡したり、大人数で自分のキャラクターを操作するよりも敵の操作をした方が良い場合は、そのような操作をさせることもできる。また、誰かがセッションを主催したり、グループにお菓子を提供したり、ゲームとは直接関係のない他の責任を担ってくれるのも素晴らしいことだ。 最初にゲームを準備するときに、担当のスケジュールを決めておくとよいだろう。プレイヤーに何を引き受けてくれるのか聞いてみよう。キャンペーンの途中で負担を感じ始めたら、快適な設定が見つかるまで、この話題を再検討し、新しい選択肢を試すことができる。 ゲーム・セッションの運営 Running a Game Session キャンペーンは複数のセッションで行われる。各セッションは通常数時間で、複数の遭遇、いくつかの探索、そして場合によっては余暇が含まれる。セッションはテレビ番組の各エピソードに例えることができる。それはいくつかのねじれ、展開、変化を含み、人々が次に何が来るのかに興奮したまま終わるべきだ。 セッションの計画 Planning A Session ゲームにおける最大の難関の1つは、全員が集まってプレイするための時間を予定することだ。多くの場合、セッションの間にゲームの準備をしなければならないのは君なので、この責任はGMにある。多くのゲームには、週に1回、2週間に1回、月に1回など、決まったスケジュールがある。開催頻度が低ければ低いほど、全員が同じ見解を持つためのメモや報告が必要になる。 全員が到着する時刻を計画し、ゲームを開始する時刻も設定するようにする。そうすることで、全員がおしゃべりや会話のキャッチボール、食事を適時に終え、ゲームを開始することができる。終了時刻を決めておくこともかなり重要だ。一般的なゲーム・セッションは4時間程度だが、2時間セッションや長時間に渡るゲームを行うグループもある。通常2時間未満というのは、ほとんどのパスファインダー・キャンペーンで多くのことを成し遂げるのに十分な時間ではない。セッションが2時間より長くなる場合、15分の休憩をいくつか計画すること(トイレや飲み物の休憩とは別にすること。これらはプレイヤーが必要に応じて取ることができる)。 セッションの開始 Starting A Session 全員の準備が整ったら、全員の注意を集め、以下の話題を取り上げる。これらは大まかな順序であり、グループの様式やセッションの必要性に応じて変更することができる。 前のセッションで何が起こったかを振り返る。 このセッションの始めに、キャラクターがどこにいるのかを定める。彼らは最後の挑戦以来休んでいたのだろうか? 廊下でダンジョンの次の部屋に突入する準備をしているのだろうか? 前回のセッション以降、キャラクターが休んだり回復したりする時間があったかどうかをプレイヤーに伝えること。 セッション開始時にヒーロー・ポイントを1ポイントずつ持っていることをプレイヤーに思い出させる。 目標を設定する。プレイヤーは次に何をしたいかという考えを持っているはずだ。すでに立てた目標があれば、それを再確認し、その目標がまだ当てはまるかどうか、また、このセッションで達成したいことがあるかどうか、プレイヤーに意見を求める。 冒険を始めよう どのモードでプレイを始めるかを決め、まずは行動開始を促すような言葉をかける。特定のキャラクターに関する質問をする、モンスターが襲ってきたら即座にイニシアチブ・ロールを行う、プレイヤー・キャラクターを取り巻く環境や感覚を簡単に説明し、反応させる、などだ。 セッション外のゲーム Off-Session Gaming グループ全員の揃ったセッションとしてのプレイだけがパスファインダーをプレイする方法ではない。通常のスケジュール以外でゲームを拡張する機会を見つけることで、セッションの合間にもグループを飽きさせないようにすることができる。 一人のプレイヤーと集まって、そのキャラクターのためのミニ・セッションを行い、彼らの物語にとって重要だがグループの他のメンバーには関係のない使命を取り上げることができる。君とプレイヤーは、電子メールやチャットのメッセージを通じて、余暇の間にキャラクターが何をするかについて検討することができる。また、冒険団の紋章をデザインしたり、本拠地の地図を作ったりと、ストーリーの細部にわたって協力し合う機会を設けることもできる。また、セッション外で発生したイベントに対して、次回のセッションでヒーロー・ポイントを付与することもできる。 セッション外での処理に適さないイベントもある。プレイヤーがその場にいないキャラクターに強い影響を与える出来事は、全員が参加できる卓で処理されるべきだ。また、セッションの外で起こった出来事をすべてのキャラクターで振り返ることは、誰も除外されたり失われたりしたと感じないようにするために有用である。 セッションの運営 Running A Session セッション中、君はゲームの進行を維持し、様々なプレイ・モードを管理し、質問を受け付け、ルールを決める役割を担っている。また、グループにとって最も都合の良い時間に終了できるよう、時間に気を配ることも必要だ。 君は、ルールと、君と他のプレイヤーが共有する想像の世界との接点だ。プレイヤーは君に質問し、自分自身の仮定に基づいて行動する。この世界で何が真実なのかを確立するのは君次第だが、一方的にそうするわけではない。君は、設定の背景、君の準備、他のプレイヤーが持ってくる提案や仮定から情報を得ている。君が何かを口にするまでは、君自身の計画は変更される可能性があることを心に留めておくように。例えば、酒場の主人を親切で善意ある人物にしようと思っていたのに、プレイヤーがその主人を見誤り、その意図について面白そうな陰謀論を口にした場合、結局その酒場の主人を悪の手先に変えてしまうかもしれない。 また、PCと敵がいつ判定を試みる必要があるか、そしてその結果がどうなるかを決定する。これは戦闘以外の遭遇で最もよく出てくることだ。戦闘遭遇では判定がいつ行われ、どのように解決されるかについて比較的きちんと定められているからだ。戦闘遭遇では、プレイヤーは通常自分のキャラクターのターンを決定することができ、君は攻撃が命中したかどうか、あるいは環境上の何かがキャラクターに判定を試みることを要求したかどうかだけを指示すれば良い。 スポットライト The Spotlight ゲームを運営する際、誰がスポットライトを浴びているかを把握すること。 最も積極的なプレイヤーやキャラクターに注目しがちだが、すべてのプレイヤーを確認する必要がある。しばらく参加していないプレイヤーがいたら、立ち止まって「今、君のキャラクターは何をしている?」と問いかけよう。もしプレイヤーがわからない場合は、そのプレイヤーが興味を持ちそうな細部やノンプレイヤー・キャラクターを場面に追加すること。 注意をそらすものと割り込み Distractions and Interruptions プレイヤーの注意を引き続けることでゲームは進行し、全員が同じ領域にいることで印象的な瞬間につながる。中断が多すぎると、流れが途切れてしまう。適度であれば問題ない。しかしあまりに頻繁だと、セッションがばらばらになり、物事を見落としたり、誤った判断を下したりする可能性がある。しかし、どんなゲームにも、時には意図的に、時にはそうでない休憩や余談が含まれている。君のグループにとって、適切な気晴らしのバランスを見つけることが重要だ。 ゲームは社交の場なので、ゲームに直接関係のない会話は絶対に必要だ。しかし、あまりに頻繁であったり、他の人と重なるような会話は問題だ。もし、君や他の人の話を何度も遮ったり、ゲームの重要な場面でいちいち冗談を言ったりする人がいたら、適切なタイミングで発言を制限するように話してみてほしい。多くの場合、手を上げるなどして、そのプレイヤーが話していることを示すだけで、君や他の話者が話し終えるまで、そのプレイヤーの発言を遅らせることができる。 携帯電話やその他のモバイル機器も、注意力散漫の主な原因だ。多くのプレイヤーは、ダイス・ロールやキャラクター・シートの管理のためにアプリを使用したり、パートナーからのメールに返信したり、仕事のプロジェクトに関わったり、自分を頼りにしている人たちと常につながっていたりする必要がある。しかし、ソーシャル・メディアの更新、ホッケーの試合のスコア確認、モバイル・ゲーム、緊急でないメールへの返信など、時間的制約やゲームに関係のないことに機器を使用しないよう、基本ルールを設定することができる。キャラクターが「場面外」にいるときは、これらのルールを緩和することができる。プレイヤーのキャラクターが登場しないときは、プレイヤーがモバイル機器を使用するのに良いタイミングかもしれない。 ルールの調整 Adjudicating The Rules GMとして、君はルール上の論争を解決する責任を負う。ゲームの進行は100%正しいことよりも重要であることを忘れないように。卓上でルールを調べるとゲームの進行が遅くなるので、多くの場合、正確なルールを本から探し出すよりも、最善の推測をする方がよいだろう(ただし、休憩時間やセッション終了後にルールを調べることは有益だ!)。 その場での判断は以下の指針を使用する。これらはゲーム・ルールが基づいているのと同じ原則だ。 この指針とDCの指針を印刷しておき、すぐに参照できるようにしておくとよいだろう。 迅速な作業にかかる時間がわからない場合、1アクションにする。キャラクターが1ラウンドに3回実行できないものは2アクションにする。 作業が使用するアクションがわからない場合、最も類似した基本アクションを探す。見つからない場合は、必要な特性(通常は攻撃、精神集中、操作、移動)を持つ未定義のアクションを作成する。 双方が対立する場合、一方が他方のDCに対してダイスをロールする。双方にロールをさせないこと(イニシアチブはこのルールの例外だ)。通常、行動を行ったキャラクターがロールする(セーヴィング・スローを除く)。 成功の確率を上げる、または下げる効果がある場合、+1の状況ボーナスまたは-1の状況ペナルティを与える。 重要な挑戦の難易度が不明な場合は、パーティのレベル基準DCを使用する。 もし君が効果を作り上げるのであれば、クリーチャーは大成功(セーヴィング・スローの場合は大失敗)のときにのみ無力化されるか殺されるべきである。 どの判定を使えばよいかわからない場合は、最も適切な技能を選ぶ。“知識の想起”の判定に他の技能が適用されない場合、適切な〈知識〉技能(通常は未修得の習熟度ランク)を使用する。 キャラクターの日毎の準備を、およそ1日続くものをリセットする時間として使用する。 キャラクターがXPのルールがない注目すべきことを達成した場合、その達成度にXPを与える(10~30XP)。 PCが作業で失敗した場合、失敗によって進行が完全に止まってしまうのではなく、不利な結果で物語が進むような方法を探す。 特殊な状況 Special Circumstances 例えば、「故郷の情報を集める」というような、ルールや冒険で想定されるよりも簡単または難しい課題に挑戦することがある。このような場合、状況ボーナスや状況ペナルティを適用すればよい。通常、軽微だが重要な状況には+1または-1、重要な状況には+2または-2のボーナスまたはペナルティを適用することができる。+4または-4は最大のボーナスないしペナルティであり、誰かが圧倒的に有利であるか、極端に可能性が低いが不可能とはいえないことをしようとしている場合にのみ適用されるべきものだ。 また、アクションに特性を追加することもできる。例えば、あるキャラクターが戦闘中に剣を火鉢の炭火にくぐらせてから、火に弱い敵に剣を振りかざしたとしよう。このとき、攻撃に火炎の特性を持たせてもよい。この方法で有利になったPCは1回の攻撃でのみその利益を得る。そのためもう一度やるには、もう一度剣を炭に埋める必要がある。 追加の選択肢の組み込み Incorporating Additional Options プレイヤーに追加のルールやキャラクターの選択肢の使用権を認めることもできる。もし君が、あるキャラクターが特定の選択肢を取れるようにすることが、君のゲームにとって良い追加要素になると確信しているのであれば、それを許可すること。もし、その要求が不確かであったり、心配であったりする場合は許可する必要はないし、それを決定するのは君自身だ。ただし、プレイヤーの要望を半分だけ取り入れたり、代替案を提案するようにしよう。もし、ある選択肢を試験的に許可したいが、後で問題になるかもしれないと心配するなら、事前にプレイヤーに話して、選択肢を暫定的に許可するが、後でその選択肢がプレイ中にどのように使われるかを見て、考えを変えるかもしれないと説明しておくように。 パスファインダー協会 Pathfinder Society 加盟プレイのキャンペーンでは、永続的なキャラクターで世界中のゲームに参加し、運営することができる。もし君がパスファインダーをこの方法でプレイしたいのであれば、パスファインダー協会ロールプレイング・ギルドを通じて行うことができる。オンラインでPathfinderSociety.clubにアクセスしてアカウントを作れば、友人と自分でゲームを企画したり、既存のイベントに参加したりすることができる。 パスファインダー協会では、主にシナリオと呼ばれる4時間から5時間の冒険を使用する。シナリオを実行するセッションの開始時に、プレイヤーの情報を集める。冒険の終わりには、キャラクターがシナリオを踏破することで得られる報酬を記録する。セッションの結果をオンラインで報告すれば、たとえ他のグループのゲームで遊んでも、報酬はそのキャラクターにとって永続的なものになる。このシナリオには重要な選択肢が含まれており、君のグループが何を選択したかを報告することができる――この決定は、キャンペーンの将来を示すことになるだろう! プレイ・モードの運用 Running Modes of Play パスファインダーのセッションは、遭遇、探検、余暇という3つの異なるプレイ・モードに分けられる。各モードは特定の報奨と時間の尺度を持つ異なる種類の状況を表し、キャラクターはそれぞれ異なる種類のアクションやリアクションを使用できる。 遭遇は、現実の時間またはそれより遅い速度で行われ、プレイヤーと敵、潜在的な味方、またはお互いに直接関与する。戦闘と直接的な社会的交流は、通常遭遇モードで行われる。 探索は冒険の連続した膜、キャラクターが見知らぬ街やダンジョンのような危険や不確実性がある場所を探索するときに使用される。探索モードでは、キャラクターはすぐに危険にさらされることはないが、それでも足元には気を配らなければならない。探索と遭遇をまとめて冒険と呼ぶ。 冒険をしていないとき、キャラクターは余暇に入る。このモードは日常的な仕事や長期的な目標に向けた努力など、普通の人の生活のほとんどを包含している。 遭遇 Encounters 遭遇モードは最も体系的なプレイ・モードであり、このモードを実行するには、ほとんど9章で示されるルールに従うことになる。通常、探索中にイニシアチブを決めてから遭遇に移行するため、イニシアチブの順番に関する指針は探索モードの議論に現れる。 報奨:中~高。遭遇には常に大きな危険があり、それを反映するように段階的な時間枠でプレイされる。 時間の尺度:遭遇モードは高度に構造化されており、戦闘遭遇では戦闘ラウンドで進行し、他の種類の遭遇では任意の長さのラウンドを持つことができる。戦闘では1分間に10ラウンド、1ラウンドは6秒だが、言葉での対決ではそれぞれの発言者がしっかりと主張できるよう、ラウンドあたり1分以上として進行させることもできる。 アクションとリアクション:戦闘遭遇では、各参加者のターンは個別のアクションに分割され、参加者はトリガーが生じた際にリアクションを使用できる。 リアクションは社交的な状況でも発生するが、そのトリガーは通常より説明的で戦術性は薄い。 グリッドマスを使用しない遊び方 Playing Without A Grid パスファインダーのルールは1インチ・グリッド上で戦闘遭遇をプレイするように作られているが、グリッドや地図がなくてもプレイすることができる。 これは伝統的に「心の劇場」と呼ばれるもので、君と他のプレイヤーは戦闘員の位置と環境を想像する。このプレイ様式では、頻繁に判断が必要になる。例えば、「今立っている場所からオーガが見えるか?」「“歩行”1回でオーガまで行けるか?」といった単純なものだ。例えば、「梁を渡ってオーガに近づき、攻撃したい」というように、プレイヤーが何をしたいのかを伝えてもらうのが最良だろう。そして、「1アクションを費やして〈軽業〉判定に成功し、“歩行”で十分に近づいてから、残り1アクションで“打撃”を行う必要がある」というように、そのアクションの内訳をプレイヤーに伝えるのだ。 遭遇を準備する際には、移動困難地形や遮蔽など、格子状にした方が効果的な戦場の課題を多用しないようにする。また、挟撃などの戦闘戦術はより甘く運用すること。挟撃を測定する方法はないが、ルールではローグのような近接戦闘キャラクターがしばしば挟撃を行うことを想定している――多くの場合、キャラクター2人が近接攻撃の間合いで連携していたら、挟撃と扱うのに十分だろう。 敵のアクションの選択 Choosing Adversaries’ Actions プレイヤーは可能な限り効率的に行動するよう調整し、計画を立てることが多いが、敵はそうではないかもしれない。GMである君はこれらの敵のロールプレイを行い、その戦術を決定する。 ほとんどのクリーチャーは、挟撃や単一の目標への集中といった単純な戦術を基本的に把握している。しかし、彼らもまた感情に基づいて反応し、――おそらくはプレイヤー・キャラクターよりも多く――間違いを犯すことを忘れてはならない。 目標を選ぶとき、あるいはどの能力を使うかを選ぶときは、自分の知識ではなく、敵の知識に頼ること。君はクレリックの意志セーヴ修正値が高いことを知っているかもしれないが、それでもモンスターは彼女に恐怖能力を使おうとするかもしれない。だからといって、敵対者を完全に愚か者として演じるべきだというわけではない。彼らは失敗から学び、適切な計画を立て、プレイヤー・キャラクターを事前に調査することさえできる。 敵は通常、気絶状態のキャラクターを攻撃しない。たとえ倒れたキャラクターが戦いに戻ってくるかもしれないと知っていたとしても、最も残忍なクリーチャーだけが、周囲のより直接的な脅威ではなく、無力な敵に注目するのだ。 敵対者を運用することは、そのクリーチャーに忠実であることであり、同時にゲームのドラマにとって最良のことを行うことでもある。映画や小説の戦闘シーンのように、遭遇を考えてみよう。ファイターがファイアー・ジャイアントをあざむいて、もろいウィザードから注意をそらすとした場合、戦術的に正しい判断はジャイアントがウィザードを殴り続けることだ。しかし、それはその場面で最良の選択だろうか? もしかしたら、ジャイアントの怒りの矛先がファイターに向いた方が、みんなが楽しめるかもしれない。 遭遇の迂回 Bypassed Encounters 戦闘や挑戦を計画したとき、PCがそれを完全に回避する方法を見つけた場合はどうなるだろう? この場合、XPが足りなかったり、重要な情報や財宝を逃す可能性がある。 XPの場合、指針は単純だ。もしプレイヤー・キャラクターが賢い戦術的プレイ、巧みな外交交渉、魔法の巧みな使用、あるいは創意工夫と計画を必要とする他のやり方によって試練を回避したならば、その遭遇における通常のXPを与えること。 秘密の通路を発見し、それを使って戦闘を回避したなど、中程度の努力や幸運を必要とすることを行った場合は、小または中程度の達成度としてXPを与える。複数の通路がある広大なダンジョンなど、より自由度の高い冒険では、遭遇の迂回は些細なことなので、報酬はないかもしれない。 プレイヤーが遭遇を迂回することによって情報やアイテムが飛ばされてしまう場合は、自分で考えなければならない。まず、その情報やアイテムを配置するために、冒険内の他の妥当な場所を探す。もしそれが理にかなっているならば、元の遭遇を冒険の別の場所に移し、そもそも遭遇を迂回することでPCに大きな優位を与える。 遭遇の終了 Ending Encounters 戦闘遭遇は通常、一方の側のクリーチャーがすべて殺されるか気絶させられると終了する。これが起これば、イニシアチブ順に行動を停止することができる。 生存している側は、倒された全員が倒れないようにするための十分な時間がある。しかし、プレイヤー・キャラクターが瀕死状態であったり、崖につかまっていたり、生存のために一刻を争うような状況であれば、戦闘ラウンドを使い続けなければならないかもしれない。 もう手ごたえがなく、プレイヤー・キャラクターが最後の弱い敵を片付けているような場合は、戦闘が終わったと判断しても構わない。しかし、プレイヤーの中にまだ試してみたい創意工夫や面白いこと、あるいは集中して取り組んでいる呪文がある場合は、この方法は避けること。敵が降伏する、敵がヒット・ポイントを使い果たす前に死ぬ、あるいは単に戦闘が終わったと言って、PCが残った敵を簡単に退治する、などだ。この場合、プレイヤーに「戦闘を終了してもいい?」と聞いて、プレイヤーに納得してもらうとよいだろう。 一方が降伏するのは、ほとんどすべてのメンバーが倒されたときか、呪文や技能で徹底的に戦意を喪失させられたときだ。降伏があったら、イニシアチブ順から外れ、短い交渉に入る。 これらの会話は、勝者が敗者に慈悲を与えるか、それともただ殺すか、さもなければ処分するかについてのものである。降伏した側は通常このような場合、あまり影響力を持たないので、長時間のやりとりは避けること。 逃亡する敵 Fleeing Enemies 逃亡する敵は問題になる。プレイヤー・キャラクターは、逃げた敵を追いかけたくなることが多いのだが、これは敵が後で脅威として戻ってくるかもしれないと考えるからだ。このような場合、一手一手進めることはゲームを停滞させやすいので避けること。すべての敵が逃げている場合、イニシアチブ順は無視し、各PCに逃げている敵1人を追撃する選択肢を与える。各PCは1アクション、呪文、その他の能力を宣言して、追いつくように努力することができる。そして、PCの移動速度と目標の移動速度とを比較し、追跡者の選んだ呪文や能力がどの程度役立つかを評価し、獲物が逃走を助けるような能力を持っていればそれを加味する。 追跡者が追いついたと判断した場合、元のイニシアチブ順で戦闘に戻る。追いつかなければ、その獲物はひとまず逃亡する。 PCが逃げることを決めた場合、通常は彼らにそうさせるのが最善である。特定の場所を選び、そこに全員が到着したら逃亡させるようにする。ただし、PCが足手まといになっていたり、敵の移動速度が高く、追撃する動機が強い場合は、逃走したPCにその結果を伝えることがある。 社交遭遇 Social Encounters ほとんどの会話は自由なロールプレイとして最適であり、社交的な技能が含まれる判定は1つか2つ程度である。 しかし時には、緊迫した状況や重要な駆け引きが、戦闘と同じようにイニシアチブを使用する社交遭遇を必要とする。他の遭遇と同様に、社交遭遇は高揚させるものでなければならない! 社交遭遇が失敗すると、キャラクターが投獄されたり死刑になったり、主要なライバルが政治的権力者になったり、重要な同盟者が恥をかいて追放されたりする可能性がある。 遭遇の構造を使用すると、自由形式のプレイよりもタイミングが明確になり、各キャラクターが貢献しているように感じられるため有益だ。社交遭遇を行う場合、前もって利害関係を定めておき、プレイヤーに成功または失敗した場合の結果と、遭遇を終わらせる条件を理解させておく。 社交遭遇の運営方法は、戦闘遭遇よりもはるかに柔軟性がある。ラウンドの長さを6秒より長くしたり、より即興的にしたり、特殊攻撃や呪文に重点を置かないなどによって、社交遭遇を戦闘遭遇と差別化することができる。ほとんどの場合、キャラクターの動きを気にする必要はないし、地図も必要ない。社交遭遇の例としては、以下のようなものがある。 裁判官の前で誰かの無実を証明する。 隣国の君主を説得し、侵略から守る手助けをする。 ライバルの吟遊詩人に知恵比べで勝つ。 高貴な宮廷の前で、悪人の偽りを暴く。 イニシアチブとアクション Initiative and Actions 社交遭遇におけるイニシアチブは、通常、キャラクターが〈社会〉、〈外交術〉、〈ペテン〉といったの【魅力】基準の技能をロールすることになる。他の遭遇と同様、キャラクターの紛争への取り組み方によって、どの技能をロールするかが決まる。キャラクターのターンでは、通常技能アクションを使用して1回だけロールを試みることができる。プレイヤーにキャラクターの発言をロールプレイさせ、次に何をロールするかを決定する。ただし、ほとんどの人は呪文を発動したという視覚的な兆候を見ると、誰かが魔法を使って自分に影響を与えたり危害を加えようとしていると思い、否定的な反応を示すことを覚えておくように。 良い社交遭遇には、対立者が含まれる。 これは、キャラクターの言い分に反論するライバルのような直接的なものでも、ラウンドが進むごとに自動的に手に負えなくなる暴徒のような受動的なものでもよい。対立者にはイニシアチブ順に位置を1つ以上与え、彼らが何をしているかを伝えられるようにする。特に個人の場合、敵のデータを作成することができるが、手に負えない暴徒のような状況では、次第に難しくなる一連のDCを設定することくらいしか必要ないかもしれない。 成功と進行度の計測 Measuring Success and Progress 目標となるACや削るHPがないため、社交遭遇におけるキャラクターの成功をどのように測定するかを決める必要がある。4章では社交技能アクションのDCを設定する指針があり、多くの場合目標の意志DCを用いる。群衆やNPCなど、データを持たない人々に対するDCが必要な場合、DCの設定に関する指針を使用する。簡易DCかレベル基準DCを選択して使用し、対象者のレベルや揺さぶりをかける難易度を推定する。 態度状態――敵対的状態、非友好的状態、中立的状態、友好的状態、協力的状態――は、社交遭遇の経過を追跡するのに便利な方法だ。権威者、群衆、陪審員などの態度を表現するためにこれらを使用する。 社交遭遇の典型的な目標は、ある人や集団の態度を親切に変えて君を助けてもらうこと、あるいは敵対する集団や人をなだめて状況を和らげることだ。 遭遇が進むにつれて、プレイヤーにどれだけ進歩したかが明確にわかるようにしよう。 また、成功や失敗の回数を記録することもよいだろう。例えば、衛兵4人を騙して持ち場を離れさせる必要がある場合、必要な成功回数を4回として、“騙す”や“陽動”の成功数を数えるというように。 この2つの方法を組み合わせることもできる。例えば、PCが重要な貴族の集団に投票する必要がある場合、その貴族の過半数がPCに対して対立者よりも良い態度を取るようにすることを、限られた時間の中で行うことが目標になるかもしれない。 結末 Consequences 社交遭遇の開始時に報奨を設定する場合、その結果についてのアイデアを与えよう。プレイヤー・キャラクターが得るかもしれない物語上の利益の他に、社交遭遇は通常XPの付与が含まれる。これは戦闘と同じ系統の遭遇なので、相応量のXPが付与される。通常は中程度の成果として、あるいはその遭遇が長期計画の集大成であったり、重要な敵が報いを受けた場合には大きな成果としてXPが付与される。 社交遭遇の結果は、ゲームの物語を方向付けるものであるべきだ。反響を見出そう。どのNPCがPCをより好意的に見るようになったか? どのNPCが恨みを抱き、あるいは新たな計画を練るだろうか? 社交遭遇はNPCの運命を決定づけ、彼らの物語を終わらせることができるが、それはプレイヤー・キャラクターには当てはまらない。例え彼らにとって本当に悲惨な状況、たとえば死刑判決が下ったとしても、社交遭遇は終わりではない――まだ、絶望的な英雄的行為や、物語の展開のための時間があるのだ。 探索 Exploration 探索モードは、意図的に遭遇よりも制限を少なくしている。そのため、探索中は起こることすべてに対して判断が必要となる。 基本的に、探索はPCが周囲の環境について学ぶことで報酬を得るためのものだ。これを促進するためには、グループの周囲の心象風景を明確に把握し、伝えることが特に重要となる。プレイヤー達がどこにいるのかを把握し、冒険の舞台となる場所の景色や音、その他の感覚を表現しやすくするためだ。プレイヤーにキャラクターが本当に探検しているかのように努め、その好奇心に報いるようにする。探索モードでは、プレイヤーが何に興味を持ち、何を重要視しているのかが分かる。 プレイしているうちに、特定のプレイヤーが興味をそそられる探索の側面をよく感じるようになり、アドベンチャーにそういったものを追加したり、出版された冒険でそういった点を強調したりすることができる。 報奨:低~中程度。探索モードは、ある程度の危険はあるが、差し迫った危険はない場合に使用すべきだ。PCはモンスターや危険に直面しそうな環境にいるかもしれないが、戦闘に入るか他の直接的なやりとりがあるまで、通常は探索モードのままだ。 時間尺度:PCが探索モードにあるとき、ゲーム世界の時間は卓上での現実世界の時間よりもはるかに速く過ぎていく。必要に応じて、物事の進行速度を速くしたり遅くしたりすることができる。正確に時間を把握したい場合は、探索モードの時間を10分単位で見積もることができる。 アクションとリアクション:探索はラウンド単位ではないが、探索連続行動はPCが“捜す”や“扱う”などのアクションを行うことを想定している。そのアクションが適用されるかどうか、またより詳細な情報を得るために遭遇モードに切り替えるかどうかは、君が決定する。PCは探索モード中に出てきた関連するリアクションを使用することができる。 探索連続行動 Exploration Activities 探索モードにおいて、ただ移動するのではなく何かを行いたいプレイヤーは、それぞれ自分のキャラクターに探索連続行動を選択する。最も一般的な連続行動は、“隠行”、“魔法探知”、“強行軍”、“捜索”だが、多くの選択肢が用意されている。プレイヤーは通常、これらの標準の連続行動に忠実に従うが、探索連続行動を暗記して正確に使用する必要はない。その代わり、各プレイヤーが自分のキャラクターが何をしているかを記述するようにする。そして、GMである君がどの連続行動を適用するかを決定する。すなわち、キャラクターの連続行動が一覧にあるものと異なる場合、その連続行動がどのように機能するかを決めるのも君ということだ。 以下の項では、君の判断が必要となる探索連続行動について説明する。 探索連続行動 Exploration Activities 以下の探索連続行動は完全に詳細を示している。また、技能の章に多くのものが掲載されている。 “隠行” “防護” “魔法探知” “専門家にならう” “強行軍” “調査” “呪文の継続” “索敵” “捜索” 即興の新しい連続行動 Improvising New Activities プレイヤーが他のルールにまとめられていないことをしたい場合に備え、いくつかの指針を示す。その連続行動が“隠行”のように遭遇時に使うアクションに近い場合、通常1分間におよそ10回繰り返す1つのアクション(“忍び歩き”アクションを10回使うなど)か、同じように機能するアクションを交互に使用する(例えば“捜索”は“歩行”と“捜す”を交互に繰り返す)で構成されている。1分間に20回という早い頻度で行う連続行動は、精神集中を必要とする連続行動と同様に、使い方が限定されたり、疲労の原因になったりする可能性がある。 プレイヤーは、戦闘と同じように6秒に3回行動することを望むかもしれません。戦闘が短時間で終わるからこそ、キャラクターは戦闘でこれだけの力を発揮できる――探検という長い時間枠の中では、このような力の発揮は長続きしないのだ。 “魔法探知” Detect Magic この連続行動によって、キャラクターが移動中に魔法のオーラや物体をすべて自動的に見つけることができるようになるわけではない。 最低限必要となる習熟ランクを持つ障害や、ディテクト・マジック以上のレベルを持つ幻術は“魔法探知”では発見できない。 キャラクターがこの連続行動で魔法を見つけたら、そのことを知らせ、立ち止まってさらに探索するか、そのまま進むかの選択肢を与える。止まっている間、プレイヤーはその場所を探検したり、様々なアイテムを評価したり、魔法の源とその効果を探ったりと、よりロールプレイに重きを置いたシーンに入ることができる。そのまま進むと、有益な魔法のアイテムを手に入れられなかったり、魔法の罠にかかったりする可能性がある。 “専門家にならう” Follow the Expert 技能を持つキャラクターは、“専門家にならう”を選択した習熟度の低い味方を助けることができる。これは、〈隠密〉修正値が低いキャラクターがこっそり移動するのを手伝ったり、〈運動〉が低いキャラクターを急な崖に登らせたりするのに良い方法だ。 通常、“専門家にならう”で選ばれたキャラクターは、他の探索活動を行うことも、一度に複数の人から“専門家にならう”で選ばれることはできない。 “調査” Investigate “捜索”や“魔法探知”同様、“調査”の最初の結果は通常、“調査”を行ったものがより徹底的な調べ物に入る手がかりを与えるのに十分であるが、可能な限りの情報を与えることはめったにない。例えば、あるキャラクターはダンジョンの壁が奈落語の文字で覆われていることに気づくかもしれないが、その文字を読んだり血で書かれていると判断したりするには立ち止まる必要がある。 “捜索” Search “捜索”中に知覚判定に成功すると、キャラクターはその場所に何か変わったものがあるかないかに気づくが、そこにあるすべてのものを網羅した目録を受け取るわけではない。その代わり、この情報はより詳細な調査や遭遇のための出発点となる。例えば、ある範囲にDC30の隠し扉とDC25の罠があり、“捜索”したキャラクターが知覚判定で28を出した場合、そのキャラクターがその範囲にある罠に気づいたことをプレイヤーに伝え、罠の位置と性質について大まかな情報を与えることになる。パーティは罠の詳細を知るためにその場所をもっと調べる必要があり、隠し扉を見つけるためには誰かがもう一度“捜索”する必要がある。 その場所に多くの物や探すのに時間がかかるもの(書類でいっぱいの本棚など)がある場合、“捜索”は本棚があること明らかにするが、PCは書類を確認するためにもっと徹底的に調べなければならない。このため、通常、パーティは完全に捜索するためには立ち止まる必要がある。 “探索”するキャラクターが通過する秘密のうち、目立つ場所(扉の近くや廊下の曲がり角など)にあるものは秘密裏に知覚判定を行うことで発見できるが、もっと目立たない場所(長い廊下の無作為な地点など)にあるものは、特にゆっくりと入念に探索するのでない限り発見できない。 パーティ配置の設定 Setting A Party Order 探索モードでは、パーティ編成の中でどのキャラクターが前か後ろかが問題になることがよくある。そこで、探索中に自分のキャラクターが集団のどの位置にいるのかを、プレイヤー同士で決められるようにしよう。この順番によって、さまざまな方向から敵や罠が迫ってきたときに、誰が先に攻撃されるかが決まる。状況に応じて、誰が狙われるかを具体的に決めるのは君次第だ。 探索モードが終わったとき、通常パーティは大まかな陣形を保ったままだ。グリッドに移動する場合(通常、戦闘遭遇の開始時に起こる)には、PCたちの意見を聞きながら正確な位置を決める。彼らが自分の判断で探索モードから出てきた場合は、好きなように動き回ることができる。 例えば、罠を発見してローグがそれを解除しようとし始めたら、他のキャラクターは安全だと思う場所に移動できる。 不利な地形と天候 Adverse Terrain and Weather 密林、深雪、砂嵐、酷暑など、困難な状況に直面すると、探索速度が低下する。これらの要素がキャラクターの進行にどの程度影響するかを決めるのは君自身だ。 濃い下草のような移動困難地形は、通常、進行を遅らせる。特定の時間内にどこまで進めるかが重要でない限り、つるを切り裂いたり沼地を踏破したりする描写で簡単にまとめることができる。もしキャラクターたちに時間制限があるなら、表9-2「移動速度」で進行度を調整し、通常、土地のほとんどすべてが移動困難地形の場合は半分に、上級移動困難地形の場合は3分の1にする。 活火山のカルデラのような障害地形は、プレイヤー・キャラクターに物理的な危害を加えるかもしれない。 パーティには、そのまま通過するか、時間をかけて迂回するかという選択肢が与えられることもある。キャラクターが障害地形を通過し、呪文や技能判定でダメージを軽減しようとする間、より詳細な場面に移行できる。障害地形に耐えた場合、探索の最後にPCに軽~中程度のXP報酬を与え、ダメージを受けないように賢い予防策を取った場合はXPを少し多くすることを検討しよう。 危険なクレバス、沼地、流砂、および同様の危険は環境障害である。 障害 Hazards 探索は罠やその他の障害によって中断されることがある。(障害を参照)。単純な障害は一度だけPCに脅威を与え、探索モードで対処することができる。複合障害は、解決するまで遭遇モードに移行する必要がある。罠の解除や障害の克服は、通常遭遇モードで行われる。PCは“捜索”連続行動(一部の魔法の罠の場合は“魔法探知”連続行動)を使用していれば、探索中に危険を発見できる可能性が高くなる。 イニシアチブのロール Rolling Initiative 探索から遭遇に移行する際に、通常イニシアチブ・ロールを行う。罠が発動したとき、対立する2つの集団が接触したとき、一方のクリーチャーが他方に対して行動を起こすと決定したときに、イニシアチブを要求する。例えば、以下のようなものがある。 PCのパーティが洞窟を探検している。彼らはコボルドの戦士の集団が巡回している狭い通路に入った。2つの集団が同じ区画にいるため、イニシアチブをロールする時が来た。 バーバリアンのPCとコボルドの英雄はレスリングの親善試合を行うことに合意した。彼らは土の上で対決し、君は〈運動〉を使用してイニシアチブを要求する。 2人のキャラクターがコボルドの王と交渉している。物事がうまくいっていないので、1人が奇襲をかけることにした。彼女がこれが自分の計画だと言ったら、すぐにイニシアチブを要求する。 2人のキャラクターが、孤立したコボルドの宝の山に到達するために、狭いはりを渡って“平衡感覚”をしている。彼らが半分ほど渡ったところで、山の陰に隠れていたレッド・ドラゴンが飛んできて攻撃を仕掛けてきた! ドラゴンが姿を現すと同時に、君はイニシアチブ・ロールを要求する。 呪文の持続時間の監視 Monitoring Spell Durations 呪文の持続時間は、魔法の不確かさと奇抜さを便利な数字に体系化した概算値だ。しかし、だからといって、持続時間が1時間の呪文にかっちりと時計を合わせられるわけではない。これが、遭遇以外の時間経過が君の手に委ねられ、遭遇ラウンドのように正確でない理由の1つである。 呪文の持続時間が過ぎたかどうかについて疑問が生じた場合、君が判断を下す。懲罰的であってはならないが、キャラクターが時計仕掛けの正確さと完璧な効率で遭遇間を渡り歩くように扱うのもよくない。 この持続時間が最も重要になるのは、プレイヤーが複数の戦闘を呪文の持続時間内に収めようとする場合と、戦闘前に呪文を使用し、戦闘中もその効果を維持しようとする場合の2つである。 複数の遭遇 Multiple Encounters 1分間持続する呪文は、複数の戦闘が非常に接近して起こり(通常は隣接する2つの部屋で)、PCが遭遇モードから離れることなく次の戦闘に直接移る場合にのみ、持続するはずだ。PCが立ち止まって治療したり、パーティが先へ進むかどうか議論したりすると、その過程で十分な時間がかかり、呪文が切れてしまう。 10分以上持続する呪文には、より寛大になるとよいだろう。10分持続する呪文は1回の遭遇内で問題なく持続し、場所が近ければ次の遭遇までもつ。1時間持続する呪文は通常、数回の戦闘に耐えることができる。 戦闘の前 Before a Fight 戦闘前に有利な呪文を発動すること(「事前バフ」と呼ばれることもある)は、準備行動ではなく攻撃行動に多くの戦闘ラウンドを費やせるので、キャラクターにとって大きな利点となる。プレイヤーが敵より優勢であれば、通常は各キャラクターに1つずつ呪文を発動させるか、同様の方法で準備をさせ、その後イニシアチブを取ることができる。 戦闘前に準備呪文を唱えることは、それが暗記されたように感じられ、プレイヤーがそれが常に機能すると仮定した場合に問題となる。多くの場合、“呪文発動”という行為はパーティの存在を知らしめることになる。PCの準備がばれる可能性がある場合は、全員が準備を完了する前にイニシアチブ・ロールを行うこともできる。 リアクション後のイニシアチブ Initiative after Reactions 場合によっては、罠や敵のリアクションによってイニシアチブ・ロールを指示されることがある。例えば、複合罠がトリガーされた場合、イニシアチブ順が始まる前にそのリアクションによって攻撃を行うかもしれない。このような場合、リアクションの結果をすべて解決してから、イニシアチブ・ロールを要求する。 ロール種別の選択 Choosing the Type of Roll イニシアチブに使用するロールの種類を選択する場合、最もわかりやすい選択肢を選ぶようにする。最も一般的なロールは知覚だ。次によく使われる技能は、〈隠密〉(忍び寄る場合)と〈ペテン〉(相手を欺くため)である。社交的なの対決では、〈威圧〉、〈交渉〉、〈社会〉知覚、〈ペテン〉からいずれかを使用するのが一般的だ。 どのロールを呼ぶか迷った場合は、知覚を使うこと。 別の種類のロールがキャラクターにとって意味をなす場合は、通常、そのロールか知覚のどちらかを、プレイヤーに選んで決定してもらうようにする。例えば、キャラクターが敵に忍び寄り、間違いなく〈隠密〉を使用すべき場合など、明らかに知覚よりも他の種類の判定の方が理にかなっている場合は、この方法は使用しないように。 プレイヤーは知覚と異なる技能を使用すべきであると主張してもよいが、それは事前に確立された何かに基づいている場合に限られる。例えば、攻撃の前段階において、メリシエルのプレイヤーが「シャンデリアからぶら下がって相手を落とす」と言った場合、イニシアチブ・ロールに〈軽業〉を使用させてもよいだろう。もし、「おい、こいつらを攻撃したいんだ」とだけ言ってきた場合、それを許可すべきではない。 キャラクターの配置 Character Placement 戦闘遭遇のイニシアチブを要求する場合、その遭遇の参加者が戦闘マップのどこに行くかを決める必要がある。パーティ配置を基本とするように。〈隠密〉を使用しているキャラクターを前進させて位置につき、発見される前に合理的に移動できた場所に配置することもできる。各プレイヤーと相談し、お互いの位置関係が理にかなったものであることを確認すること。 休息 Resting キャラクターは1日に8時間の睡眠を必要とする。休息は通常夜に行われるが、グループは日中に休んでも同じ効果を得ることができる。いずれにせよ、24時間に1度だけ休息による恩恵を受けることができる。8時間休息したキャラクターは以下のように回復する。 キャラクターは自分の【耐久力】修正値(最低1)×自分のレベルに等しい値のヒット・ポイントを回復する。避難所や快適な場所なしで休んだ場合、この回復量を半分に減らしてもよい(最低でも1HPまで)。 キャラクターから疲労状態を取り除く。 キャラクターの凶兆状態と吸精状態の状態値を1だけ減少させる。 ほとんどの術者は、その日の呪文を回復する前に休息をとる必要がある。 探検モードに入っているグループは休息を試みることができるが、完全に危険から逃れることができるわけではなく、休息が中断されるかもしれない。しかし、8時間の休息は連続したものである必要はなく、中断された後、キャラクターは再び眠りに戻ることができる。 鎧を着たまま眠ると、休息が浅くなり、疲労で目が覚めてしまう。疲労状態から回復するはずのキャラクターであっても、鎧を着て眠ると疲労状態かr回復しなくなる。 16時間以上眠らない場合、キャラクターは疲労状態になる。 より早い回復のための長期休息は余暇に含まれ、探索中には行えない。 見張りと不意討ち攻撃 Watches and Surprise Attacks 冒険者たちは、通常、数人を見張りとして配置し、他の人たちが休んでいる間に危険を察知しようとする。見張りの時間は睡眠の妨げになるので、夜のスケジュールは全員が見張りをする時間を考慮する必要がある。次ページの「表10-3:見張りと休息」は、全員が同じ長さの交代制飲み針を割り当てられたと仮定して、パーティが休憩のために確保する必要がある時間を示している。 休息中に奇襲が発生する場合、ダイスを振ってその時の見張りをランダムに決定することができる。すべてのキャラクターはイニシアチブをロールする。眠っているキャラクターは通常、気絶状態であるために-4の状態ペナルティを受けた上で知覚をロールする。眠っているキャラクターはイニシアチブをロールすることで自動的に目を覚ますことはないが、ターンの開始時に騒音によって目を覚ますために知覚判定をロールするかもしれない。精通した敵が、特に弱いキャラクターが見張りをするのを待ってから攻撃する場合、そのキャラクターの見張りの間に自動的に攻撃が行われることがある。しかし、待ち伏せしている者がその接近に気づいたかどうかを確認するために、すべてのキャラクターの知覚DCに対して〈隠密〉判定を試みるように決めてもよい。 表10-3:見張りと休息 Watches and Rest グループの人数 合計時間 各見張りの期間 2 16時間 8時間 3 12時間 4時間 4 10時間40分 2時間40分 5 10時間 2時間 6 9時間36分 1時間36分 日毎の準備 Daily Preparations 探索に出発する直前、あるいは一晩休んだ後、PCは冒険の準備のために時間を費やす。 これは通常、朝に30分から1時間かけて行われるが、丸8時間の休息を取った後でなければならない。 日毎の準備には以下のようなものがある。 呪文の準備をする術者は、その日に使用できる呪文を選択する。 日毎の準備で焦点化ポイントやその他の能力値は初期値に戻る。これには、1日に一定回数しか使用できない能力も含まれる。 各キャラクターは、装備品を着用する。すなわち、鎧を着たり、武器を身につけたりする。 キャラクターは身につけた魔法のアイテムを最大10個まで充填して、その日の利益を得る。 飢えと乾き Starvation and Thirst 通常、キャラクターは快適に生きていくのに十分な量を食べたり飲んだりしている。十分に水を摂取できないときは、接種するまで疲労状態になる。水を飲まずに1日経過すると、そのクリーチャーの【耐久力】修正値+1時間毎に1d4のダメージを受ける。このダメージは喉の渇きを潤すまで回復できない。同じ時間だけ食べ物を摂取しない場合、毎日1ダメージを受ける。このダメージは空腹を満たすまで回復できない。 余暇 Downtime 余暇では丸1日の重要な出来事をロール1回にまとめることができる。キャラクターが帰宅したときなど、冒険をしていないときにこのモードを使用する。 通常、余暇はセッション開始時の数分間か、冒険の主要な章の間の休憩時間である。探索と同様、余暇にもロールプレイや遭遇を自然に挟むとよいだろう。本項では、余暇の扱い方を説明し、生活費、物品の売買、長期休養、再訓練など、余暇に特有のいくつかの連続行動や考察を詳細に示す。それ以外のほとんどの余暇連続行動は技能アクションだ。いくつかのコモンの余暇連続行動と関連する技能は以下に一覧として示す。詳細は4章の対応する技能を参照。 “作成”(〈製作〉) “収入を得る”(〈芸能〉、〈製作〉、〈知識〉) “病気の手当て”(〈医術〉) “偽造”(〈社会〉) “自活”(〈社会〉、〈生存〉) 報奨:なしもしくは低。余暇は冒険の対極にあり、危険の少ない連続行動を執り行う。 時間尺度:余暇は実時間では数分だが、ゲーム世界では数日、数週間、数ヶ月、数年続くこともある。 アクションとリアクション:アクションとリアクションを使用する必要がある場合、探検モードや遭遇モードに切り替えること。行動できないクリーチャーは、ほとんどの余暇連続行動を行うことはできないが、長期休息を取ることはできる。 余暇の1日をプレイする Playing Out a Downtime Day ある日の余暇の開始時に、すべてのプレイヤーにその日に自分のキャラクターが何を達成しようとしているのかを宣言してもらう。その後、一度に1人のキャラクターの努力を解決することができる(1つのプロジェクトに協力している場合は、いくつかのキャラクターをまとめて解決することもできる)。“収入を得る”のような一部の活動は、簡単なロールと、君とプレイヤーによる多少の装飾が必要なだけだ。他の連続行動はより複雑で、遭遇や探検が組み込まれている。余暇の連続行動は、どのような順番でプレイヤーにあたっても問題ないが、簡単なものから行うのが良い場合が多い。 より複雑な連続行動に参加していないプレイヤーは、より複雑な連続行動が行われている間、卓内で休憩を取ることができるかもしれない。 キャラクターは、探索の1日と同じように、望むなら日々の準備を引き受けることができる。 プレイヤーに標準的な準備の組み合わせを決めるように依頼し、プレイヤーが特に言わない限り、キャラクターは毎日同じルーティーンワークを行っていると仮定してよい。 協力 Cooperation 複数のキャラクターが同じ余暇の作業に協力することができる。無人島で救助を待つパーティが“自活”する場合など、1回の判定で済む簡単な作業であれば、1人のキャラクターが必要な判定を行い、他の全員がそのキャラクターを“援護”する。複雑な作業の場合は、全員が一度に別々の担当を受け持つと仮定し、すべての作業を完了するためのものだとして扱う。 例えば、あるパーティが共同で劇場を建設する場合、1人のキャラクターが建築設計を行い、1人が肉体労働を行い、1人が地元の政治家やギルドに相談するといった具合だ。 判定 Checks 余暇連続行動にはロールを必要とするものがあり、これらは一般に技能判定である。これらのロールは長時間に渡る一連の作業の集大成なので、プレイヤーはダイス・ロールを操作する能力や呪文のほとんど(例えば魔法のアイテムを起動してボーナスを得たり、幸運呪文を発動して2回ロールするなど)を使用できない。しかし依然として、常に得られる利益は適用される。そのため、起動しなくてもボーナスが得られる魔法のアイテムを充填することはできる。このルールには特定の例外を設けることができる。常に提供されるもの、あるいは常に提供されるに等しいほど頻繁に使用されるものは、余暇判定に使用される可能性が高い。例えば、《技能の保証》は適用されるべきだ。 余暇の長期期間 Longer Periods of Downtime 数週間、数ヶ月、あるいは数年といった長い休養期間に余暇を実行するのは、より困難なことかもしれない。 しかし、キャラクターにとっては、日々の活動に煩わされることなく、長期的な計画に向けて前進できる機会でもある。多くの時間を費やすため、キャラクターは1日毎に判定を行わない。 その代わり、いくつかの特別な出来事に対応し、残りの余暇を平滑化し、生活費を支払う。 出来事 Events キャラクターが余暇に何を達成したいかを述べた後、それぞれのキャラクターに対していくつかの目立つ出来事を選ぶ。通常は1週間から1ヶ月の期間で出来事1つ、あるいは1年以上の期間で出来事4つを選ぶ。これらの出来事は、各キャラクターとその目標に合わせたものであるべきで、冒険や物語展開のフックとなるものだ。 以下に挙げる余暇における出来事の例は、すべて“収入を得る”ためのものだが、他の活動のアイデアを得るために使用することもできる。〈芸能〉で“収入を得る”を行うキャラクターは、来訪した貴族のために新作の演劇を堂々と上演することができる。〈製作〉を使うキャラクターは、特別なアイテムの製作を依頼されるかもしれない。〈知識〉を使うキャラクターは、迅速な対応が必要な難問を研究しなければならないかもしれない。 特定の余暇連続行動に該当しないことを行いたいPCも、余暇の出来事を経験できる。たとえば、あるキャラクターが自分の魔法書を収めるための書庫を作ろうとした場合、土台作りと完成後の書庫の整理を主要な出来事とするとよいだろう。この場合、最初の判定は〈製作〉、2番目は〈秘術〉または〈知識:書庫〉になる。 平均的な進捗 Average Progress 長期間の余暇には、毎週、あるいは毎月のロールは必要ないかもしれません。その代わりに、キャラクターが余暇を過ごす場所で確実に見つけられる最も低いレベルを用いて、作業1つのレベルを設定する(作業のレベルの設定については、難易度を参照)。この判定に失敗した場合、1週間後(余暇に何年も費やす場合は1ヶ月後)に再挑戦することを許可してもよいだろう。ただし、ゲームの物語上、再挑戦を許可するのが妥当と思われるようなことがない限り、再挑戦は許可しないように。 長時間の余暇に含まれる出来事は、通常、基準よりも高いレベルの作業が含まれるべきだ。例えば、〈知識:航海〉で“収入を得る”を行うキャラクターが4ヶ月間、港で1レベルの作業を、1週間は忙しいので3レベルの作業をこなす仕事を行う、というような場合だ。通常、プレイヤーは1レベルの仕事に費やした時間と、3レベルの仕事に費やした1週間の時間について、それぞれ1回ずつロールする。 生活費 Cost of Living 短時間の余暇では、キャラクターは通常、居住地を通過するか、そこで少し時間を過ごすだけだ。宿屋に泊まったり、食事をしたりする場合は、その価格を使用することができる。長期間の余暇では、本ページの表6-16「生活費」の値を使用する。これらの費用は、余暇の活動でお金を得た後、キャラクターの資金から差し引かれる。 表6-16:生活費 Cost of Living 生活水準 週 月 年 最低限* 4sp 2gp 24gp 快適 1gp 4gp 52gp 良好 30gp 130gp 1,600gp 富裕 100gp 430gp 5,200gp * 〈社会〉あるいは〈生存〉を用いて無料で“自活”を試みることができる。 キャラクターはその土地で生活することもできるが、その場合、通常、他の余暇連続行動を諦めて、“自活”連続行動を使用する。 売買 Buying and Selling 冒険の末に戦利品を得たキャラクターは、売りたいアイテムをたくさん持っているかもしれない。同様に、通貨が潤沢になったとき、装備を買いだめしたいと思うかもしれない。通常、数個の品物を売ったり、数個の品物を買うのに余暇が1日必要だ。大量の品物、高価な品物、需要の少ない品物を売り払うには、より長い時間がかかることもある。 これは、キャラクターが余暇にそれなりの規模の集落にいることを想定している。場合によっては、大きな街に行くために何日も移動することに時間を費やすかもしれない。 どのような店やアイテムが利用できるかは、いつも通り最終的には君が決定する。 アイテムは通常、定価で購入し、定価の半分の値段で売ることができる。需要と供給によってこの数字は調整されるが、そのようなことはめったに起きない。 長期休息 Long-Term Rest 余暇中に24時間休むと、8時間休んだときの2倍だけ回復できる。 この期間の間、快適で安全な場所(通常はベッド)で休息する必要がある。 余暇が数日から1週間とかなり長ければ、すべてのダメージとほとんどの永続的でない状態が回復する。 病気や長期間の毒、あるいはそれに類するものに冒されたキャラクターは、余暇中もセーヴを試み続ける必要があるかもしれない。呪いや後遺症など、取り除くのに魔法や特別な看護を必要とする状況は、長期休息中であっても自動的には終了しない。 再訓練 Retraining 再訓練のルールでは、プレイヤーがキャラクターの選択を変更することができるが、再訓練に教師が必要かどうか、どれくらいの時間がかかるか、関連するコストがあるかどうか、そして能力がまったく再訓練できないかどうかは、君の判断に依存することになる。キャラクターがほとんどの選択肢を再訓練することは合理的であり、君はそれを許可すべきだ。ソーサラーの血統のように、そのキャラクターにとって本当に本質的な選択だけは、特別な事情がない限り制限されるべきだ。 再訓練を物語にするようにしよう。キャラクターが既に知っているNPCを教師として使ったり、キャラクターを神秘的な古い図書館で熱心に研究させたり、前のセッションでキャラクターに起こった何かの結果として再訓練を行うことで、ゲームの物語に根付かせてみよう。 時間 Time 特技や技能増加の再訓練は、通常1週間かかる。選択を必要とするクラス特徴も再訓練できるが、最低でも1ヶ月、場合によってはそれ以上の時間がかかる。再訓練が特に肉体的に厳しい場合や、移動、長時間の実験、綿密な研究などを必要とする場合はさらに時間がかかるかもしれないが、通常は特技や技能で1ヶ月、クラス特徴で4ヶ月までとなるだろう。 キャラクターは一度に複数の選択肢を再訓練する必要があるかもしれない。例えば、技能増加を再訓練した結果、使えなくなる技能特技が発生するならば、それらも再訓練する必要がある。このような再訓練の時間をすべて合計し、その合計を少し減らすことで、再訓練のまとまりを表現することができる。 教師と費用 Instruction and Costs このルールは、レベル上昇に伴って新しいことを学んでいく過程を抽象化したものだ。しかし、再訓練はキャラクターが教師の元で働くか、そのために特定の練習を受けることを示唆している。もし望むなら、再訓練のこの側面を完全に無視することもできるが、NPCを紹介(または再紹介)し、ゲームの物語を進める機会を与えることもできる。特に技能の再訓練に関しては、あるプレイヤー・キャラクターが別のプレイヤー・キャラクターを指導することもできる。 再訓練にかかる費用は、PCが同じ期間に“収入を得る”のと同程度の、非常に小さなものであるべきだ。この費用は、その訓練が物語の中で適切であると感じられるようにするためのものであり、キャラクターの収入を大幅に消費するためのものではない。教師は、キャラクターが既に行ったことの報酬として無給で働くことを志願するかもしれないし、単に見返りとして頼みごとをするかもしれない。 再訓練できない選択肢 Disallowed Options キャラクターの選択肢の中には通常再訓練できないものもある。しかし君は、キャラクターが再訓練できる方法を考案しても良い。それは例えば、特別な儀式や驚異的な使命、完璧な教師などである。例えば、ゲームのバランスを崩す可能性があるため、能力値は再訓練できない。しかし、必ずしもすべてのプレイヤーがこのシステムを悪用したいわけではない。例えば、あるプレイヤーが単純に低い能力値2つの間で能力値増強を入れ替えたいだけかもしれない。このような場合、数ヶ月かけて訓練や勉強をして、能力値増強を再割り当てさせてもよいだろう。 難易度(DC) Difficulty Classes ゲーム・マスターとして、あらかじめ定義されたDCを使用しない判定のDCを設定するのは君の仕事だ。以下のセクションでは、適切なDCを設定し、必要に応じてそれを微調整することで、君の物語に自然さを感じさせる方法を助言している。簡易DCを選ぶことと、レベル基準DCを使うことは、それぞれ特定の状況でうまく機能する。君はDCの調整に関する助言を使って、両方のDCを調整できる。 簡易DC Simple DCs ときに素早くDCを設定する必要がある。最も簡単な方法は表10-4からどの習熟度ランクが作業に最も適当化を推定して、簡易DCを選択することだ(そのランクがその作業の成功に必要というわけではない)。 もし誰でもできることであれば、未修得DCを用いる。ある程度の訓練が必要な場合、その作業の複雑度に応じて、修得、熟練、達人、伝説の習熟度に記載されたDCを用いる。例えば、PCがある寓話の背後にある真の歴史を明らかにしようとしていたとする。そのためには“知識の想起”判定が必要だ。〈知識:民話〉の熟練だけがその情報を知っていると判断し、DCを30(つまり熟練の簡易DC)に設定する。 表10-4:簡易DC Simple DCs 習熟度ランク DC 未修得 10 修得 15 熟練 20 達人 30 伝説 40 レベル基準DC Level-Based DCs レベルを持つものを基準に技能DCを決定する場合、表10-5を参考にDCを設定する。対象のレベルを求め、それに対応するDCを割り出す。呪文は1~10で表されるため、呪文レベルの欄を使用する。 PCが“呪文の識別”やクリーチャーに関する“知識の想起”を必要とするとき、あるレベルの仕事をこなして”収入を得る”を試みるときなどにこれらのDCを使用する。また、簡易DCを割り当てる代わりに、レベル基準DCを障害に使用することもできる。例えば、高レベルのダンジョンにある壁が滑らかな金属でできており、登るのが困難であると判断したとしよう。単純に「達人の習熟度の者しか登れない」とし、簡易DCである30を使うこともできるし、ダンジョンを作った15レベルの敵が作った壁として、15レベルのDCである34を使うこともできる。どちらの対処も合理的だ。 尚、技能に投資したPCは、レベルが上がるにつれて自分のレベルのDCで成功する可能性が高くなるため、記載されたDCは最終的に非常に簡単になる。 表10-5:レベル基準DC DCs by Level レベル DC 0 14 1 15 2 16 3 18 4 19 5 20 6 22 7 23 8 24 9 26 10 27 11 28 12 30 13 31 14 32 15 34 16 35 17 36 18 38 19 39 20 40 21 42 22 44 23 46 24 48 25 50 呪文レベル* DC 1レベル 15 2レベル 18 3レベル 20 4レベル 23 5レベル 26 6レベル 28 7レベル 31 8レベル 34 9レベル 36 10レベル 39 * 呪文がアンコモンあるいはレアの場合、DCを適切に調整すべきだ。 難易度の調整 Adjusting Difficulty PCの専門分野を考慮したり、呪文やアイテムの希少性を表現するために、DCを基準値とは異なるものにしようと思うこともあるかもしれない。DCの調整は、ある作業の難易度における本質的な違いを表し、その作業の特定の判定を試みる者すべてに適用される。 調整は、レベル基準DCを用いる作業で最も多く発生する。調整は-10~+10で行われ、極めて容易から極めて困難まで、2、5、10刻みで行われる。 アンコモン、レア、ユニークな対象に対して適用されることが多いだろう。 表10-6 DCの調整 DC Adjustments 難易度 調整 稀少性 極めて容易 -10 ― とても容易 -5 ― 容易 -2 ― 困難 +2 アンコモン とても困難 +5 レア 極めて困難 +10 ユニーク 調整の名前はPCに取っての作業が実際にどれだけ難しいかを表すものではない。また、調整のPCのボーナスやペナルティのバランスをとるものでもない。技能に投資したPCは、レベルが上がるにつれてその技能がどんどん上手になる。例えば、最高の1レベルPCでさえも、極めて困難な1レベルのDCに対して成功するのは難しく、大失敗する可能性が非常に高い。しかし、20レベルになると、わずかな魔法や支援を受けた最適なキャラクターは、極めて困難な20レベルのDCを半分以上の確率で成功させ、1でなければ大失敗しない。高レベルでは、多くのグループがとても困難のDCを標準に近いと感じる。高レベルのグループに真の挑戦をもたらす判定が必要ならこのことを覚えておくこと。 ある作業の判定に使用する特定の技能やデータによって、異なるDCを使用することがある。例えば、PCが異形クリーチャーに関する魔法の書物に遭遇したとしよう。その書物は4レベルであり、伝承の特性を持つので、表10-5に基づき、魔法を見分けるための〈伝承学〉判定のDCを19に設定する。“魔法の識別”で述べたように、他の魔法関連技能は通常より高いDCで使用できるため、〈秘術〉を使用するキャラクターにとってこの判定は非常に困難であると判断し、その技能を使用するキャラクターのDCを24に設定することもできるだろう。もし君のグループのキャラクターが〈知識:異形〉を持っていたら、その技能を使うのは容易かとても容易だと判断し、DCを17や14に調整するかもしれない。これらの調整は、キャラクターのボーナス、修正値、ペナルティの代わりに行われるものではない。 集団での試み Group Attempts この章に示したDCは、個々のキャラクターがある程度の習熟度を持っていれば、成功する確率を強く、そして高くするものだ。しかし、時には、パーティの中で一人だけが成功する必要があるが、全員が挑戦することができる作業もある。ロールすればするほど、少なくとも一人が成功する可能性が非常に高くなるたぐいのものだ。たいていの場合、それはまったく問題ないが、時にはパーティが成功できるかどうかわからないような、挑戦的な課題にしたい場合もあるだろぷ。このような場合、判定は「とても困難」、特に難しくしたい場合や高いレベルに置いては「極めて困難」にする。 このようなDCでは、パーティのほとんどが失敗するだろうが、その技能に多大な投資をしているキャラクターは、それでもまだ成功する可能性がある。 最低習熟度 Minimum Proficiency 特定の作業を成功させるには、判定の成功に加え、特定の習熟度ランクが必要な場合がある。鍵や罠はしばしば、〈盗賊〉のアクションである“鍵開け”や“装置無力化”の成功に特定の習熟度ランクを要求する。記載されている習熟度よりも低い習熟度のキャラクターも判定を試みることができるが、成功することはできない。同様の最低習熟度を他の作業にも適用できる。たとえば、ある難解な定理を理解するためには〈秘術〉への修得が必要だと決めることができる。未修得のバーバリアンはその判定に成功できないが、望むなら挑戦することはできる――そう、大失敗して誤った情報を得る機会が必要だ! 最低習熟度を必要とする判定では、以下の指針を心に留めておくように。2レベル以下の作業では熟練の習熟度、6レベル以下の作業では達人の習熟度、14レベル以下の作業では伝説の習熟度を必要とすることはほとんどないはずだ。そのような場合、そのレベルのキャラクターは成功できない。 特別なアクション Specific Actions 本書のいくつかの箇所、特に4章「技能」では、特定の判定のDCを設定したり、その他のパラメータを決定するのはGMであると述べられている。ここで、最も一般的な作業の指針を示す。なお、これらはすべて指針であり、状況に応じて適宜調整して構わない。 “作成” Craft キャラクターがアイテムを“作成”する場合、そのアイテムのレベルを用いてDCを決定し、アイテムの稀少度がコモンでない場合は表10-6の調整を適用する。また、以前に作ったことのあるアイテムの場合は、簡易DCの調整を適用することもできる。アイテムの“修理”には通常そのアイテムのレベル基準DCを使用し、調整を行わない。 “収入を得る” Earn Income 誰かが“収入を得る”をしようとするとき、作業のレベルを設定する。 実行できる最高レベルの作業は、通常、そのキャラクターがいる集落のレベルと同じだ。集落のレベルがわからない場合、通常、村なら0〜1、町なら2〜4、都市なら5〜7となる。PCがレベル8〜10の仕事を見つけるには大都市や首都に、それ以上の仕事を見つけるには世界最大の都市や別の次元界に日常的に行く必要があるかもしれない。場所によっては、その集落の性質に応じて、通常より高いレベルの仕事が用意されていることもある。主要な港には〈知識:航海〉の通常より高いレベルの作業があり、芸術活動が盛んな都市には〈芸能〉の通常より高いレベルの作業がある、といった具合だ。特に曖昧な技能を使おうとしている場合、理想的なレベルの作業を見つけるのに苦労するかもしれないし、全く見つからないかもしれない。 PCが利用可能な作業の中から特定のレベルのものを選んだら、表10-5に掲載されたレベルのDCを使用する。屋外での作業で悪天候に見舞われたり、上演時に騒がしい観客がいたりする場合は、より難しくなるようにDCを調整してもよいだろう。 “情報収集” Gather Information “情報収集”のDCを設定する最、対象に関する情報の有無を表す簡易DCを使用する。情報を集めようとするPCがより深い情報を求めている場合は、DCを上方修正する。たとえば、あるキャラクターが商隊について情報を集めたい場合、一般人ならあまり知らないだろうが、商人や警備員なら知っているだろうと判断し、基本的な事実を学ぶには修得の熟練度における簡易DCを使用できる。商隊の隊長の名前は表向きのものなので、それを知るにはDC15(表10-4における修得の簡易DC)かもしれない。しかし、隊長の雇い主の身元を知ることは、雇い主がよりはっきりしない場合、DC20になるかもしれない。 “魔法の識別”あるいは“呪文の修得” Identify Magic or Learn A Spell “魔法の識別”や“呪文の修得”におけるDCは、通常、表10-5に記載されている呪文やアイテムのレベルを基準にしたDCを、その稀少度で調整したものだ。非常に奇妙なアイテムや現象は、通常より高いDCに調整される。呪われたアイテムやある種の幻のアイテムについては、誤認の可能性を高めるために非常に困難のDCを使用する。 “知識の想起” Recall Knowledge ほとんどの話題について、“知識の想起”の判定には簡易DCを用いればよい。特定のクリーチャーや罠など、レベルを持つ対象についての判定には、レベル基準DCを用いる(必要に応じて稀少度で調整する)。その対象が特に悪名高かったり有名だったりする場合は、難易度を大幅に下げることもできる。例えば、悪名高いドラゴンの功績に関する簡単な物語を知ることは、そのドラゴンのレベルでは信じられないほど簡単かもしれないし、修得の簡易DCでよいかもしれない。 〈知識〉の範囲の決定 Determining The Scope of Lore 〈知識〉はパスファインダーの最も専門的な要素の1つだが、特にキャラクターが選択してもよい〈知識〉の副分類を決めるにはGMの監視が必要となる。〈知識〉の副分類は狭い範囲に特化したものであり、したがって技能全体のすべて、あるいは大部分を代替するものであってはならず、また膨大な情報を伝えるものであってもならない。例えば、〈知識〉の副分類1つですべての宗教を包含できるわけではない(〈宗教〉技能では包含できる)。〈知識〉の副分類で国全体や歴史全体を包含することはできないが、ある都市や古代文明、近代国家の一面を包含することできる。〈知識〉の副分類1つで多元宇宙全体を包含することはできないが、物質界以外の次元界1つすべてを包含することはできる。 代替技能 Alternative Skills アクションの説明にあるように、キャラクターは通常用いる選択肢として記載されているものとは異なる技能を用いて“知識の想起”を試みることができる。その技能の適用性が高い場合、例えば薬としても使われるソーダ水を特定するために〈医術〉を使うのであれば、おそらくDCを調整する必要はないだろう。もし、その関連性に無理があるならば、難易度の調整で説明したようにDCを上方修正する。 追加の知識 Additional Knowledge キャラクターが“知識の想起”の判定を受けて、より多くの情報を発見するために別の判定を行いたい場合がある。成功した後、さらに“知識の想起”を使えばより多くの情報を得ることができるが、試行するたびに難易度を高くするように調整する必要がある。キャラクターが非常に困難の判定に挑戦したり、判定に失敗したりすると、それ以上の挑戦は実を結ばない――キャラクターはその主題について知っていることをすべて思い出したことになる。 クリーチャーの識別 Creature Identification クリーチャーの識別に成功したキャラクターは、トロルの再生能力(そして強酸や火炎で抑止できるという事実)やマンティコアの尾のトゲのような、そのクリーチャーの最もよく知られた特徴の1つを知ることができる。大成功すれば、キャラクターはデーモンの弱点やクリーチャーのリアクションのトリガーなど、より細かなものも知ることができる。 クリーチャーの識別ために使用する技能は、表10-7に示すように、通常そのクリーチャーの特性によって決まるが、どの技能を適用するかは自由である。たとえば、ハグは人形生物だが、伝承呪文と強い結びつきがあり、社会の外で生活している。〈伝承学〉技能もまた、その特定のクリーチャーを識別するのに用いることを認めても良い。その一方で、〈社会〉を用いるのはより難しくなる。適切な〈伝承〉の使用は、通常(稀少度での調整前で)簡単のDCもしくは非常に簡単のDCを持つ。 表10-7:クリーチャー識別に用いる技能 Creature Identification Skills クリーチャーの特性 技能 アストラル 〈伝承学〉 アンデッド 〈自然〉 異形 〈伝承学〉 エーテル 〈伝承学〉 エレメンタル 〈自然〉、〈秘術〉 監視者 〈宗教〉 菌類 〈自然〉 植物 〈自然〉 霊魂 〈伝承学〉 人造 〈秘術〉、〈製作〉 セレスチャル 〈宗教〉 動物 〈自然〉 粘体 〈伝承学〉 人形生物 〈社会〉 フィーンド 〈宗教〉 フェイ 〈自然〉 魔獣 〈自然〉、〈秘術〉 竜 〈秘術〉 “方向感覚” Sense Direction 〈生存〉で“方向感覚”を行う場合、最も適切な簡易DCを選ぶ。これは通常の荒野では修得、深い森や地下では熟練、特徴のない場所や特異な場所では達人、他の次元界の奇妙で超現実的な環境では伝説のDCとなる。 社交技能 Social Skills キャラクターが〈威圧〉、〈芸能〉、〈交渉〉、〈ペテン〉を使用してレベルや意志DCがわからない相手に影響を与えたり印象づけたりする場合、そのクリーチャーのレベルを推定し、レベル基準DCを使用する。一般人のレベルは通常0~1だ。正確かどうかを気にする必要はない。対象の態度に基づいて〈芸能〉、〈交渉〉、〈ペテン〉のDCを調整することはしばしば妥当であり、友好的状態のクリーチャーには簡単、協力的状態のクリーチャーにはとても簡単、非友好的状態のクリーチャーには困難、敵対的状態のクリーチャーには非常に困難にすることができる。DCをさらに調整したり、PCの目的に従う形で別の調整を行うこともできる。例えば、中立的状態のNPCが基本的に反対していることを要求するためのDCは極めて困難かそもそも不可能かもしれないが、非友好的状態のクリーチャーがすでに望んでいることをするように説得するのは簡単かもしれない。 “自活” Subsist 通常、“自活”アクションは簡易DCで十分で、典型的な状況であれば修得のDCが必要だ。環境や都市の性質を目安にすると良い。例えば、資源が乏しい環境や定住しないものに対する許容度が低い都市では、熟練以上のDCを必要とするかもしれない。 “追跡” Track PCが〈生存〉で“追跡”する場合、しばしば簡易DCを選んで状況に応じて調整することがある。例えば、軍隊は通常追跡し易いため、未修得のDCである10を使用するだろう。軍隊が泥濘を歩くなら、DCを5まで下げることもできる。一方、パーティが“足跡を隠す”を使用する賢い生存巧者を追いかける場合、“追跡”のためのDCに彼らの〈生存〉DC を用いてもよいだろう。 “動物の訓練” Train An Animal “動物の訓練”により、PCは動物に芸を仕込むことができる。動物のレベルを基準に用いること。その芸が特に難しい場合はDCを上げ、ドッグのように特に飼いならされた動物の場合はDCを下げてもよい。 報酬 Rewards プレイヤー・キャラクターは、英雄的な行為によって3種類の報酬を得られる。困難な状況から抜け出すために使うヒーロー・ポイント、レベル上昇に用いる経験点、強力な魔法のアイテムなどの財宝だ。 ヒーロー・ポイント Hero Points キャラクターの手元に残る経験点や財宝とは異なり、ヒーロー・ポイントはセッションごとに付与され、使用される。ゲーム・セッションの開始時に、各プレイヤー・キャラクターに対してヒーロー・ポイントを1ポイント付与する。また、ゲーム中の英雄的な瞬間や何かを達成した後(下記参照)に、さらにヒーロー・ポイントを与えることもできる。プレイヤーは1ヒーロー・ポイントを消費して再ロールでき、死に瀕したときにヒーロー・ポイントを全て消費して回復することもできる。 一般的なゲームでは、最初のプレイから1時間経過するごとにヒーロー・ポイントを1ポイント程度配布する。例えば、4時間のセッションで3ポイント追加される。より派手なゲームにしたい場合や、パーティが信じられないような困難に直面し、計り知れない勇気を示した場合は、30分ごとに1ポイント(4時間のセッションで6ポイント)のように、より速いペースで配布することもできる。各PCにヒーロー・ポイントを獲得する機会があるようにし、1人のキャラクターに全てのヒーロー・ポイントを付与しないように。 勇敢な最後の抵抗、罪のない人々を守ること、賢明な戦略や呪文を使用してその日を救うことなどは、すべてキャラクターがヒーロー・ポイントを獲得することになる。卓の全員がそのキャラクターの功績を称えたり、畏敬の念を抱いたりする瞬間があれば、それがそのキャラクターへのヒーロー・ポイント付与の合図だ。 また、パーティはゲーム中の成果によってもヒーロー・ポイントを得ることができる。中程度の成果や大きな成果に対して、ヒーロー・ポイントを付与することを検討しよう。このポイントは通常、その達成に貢献したPCに与えられる。 経験点 Experience Points 冒険をすると、キャラクターは経験点(XP)を獲得する。 この報酬は、目標の達成、社会遭遇の完了、新しい場所の探索、モンスターとの戦い、障害の克服、およびその他の種類の行為から得られる。キャラクターがいつXPを獲得するかは、大まかに君が制御できるが、以下の指針は標準的なキャンペーンで期待されるものだ。 通常、プレイヤー・キャラクターは1,000XP以上になるとレベル上昇してXPが1,000減少し、次のレベルへ向けて成長し始める。成長のその他の意味については、サイドバーの「成長速度」に記載されている。 成長速度 Advancement Speeds レベル上昇に必要なXPの量を変えることで、キャラクター強化の速度を変更できる。ゲーム・ルールは、標準的なレベル上昇を行うグループを想定している。早いレベル上昇は、あまり長いキャンペーンを行わないことがわかっていて、できるだけ早く多くのことを達成したい場合に最適だ。遅いレベル上昇は、すべての成長は苦労して勝ち取ったものであるという厳しいキャンペーンに特に向く。 また、冒険ごとにXPを変化させることで、異なる雰囲気を味わうことができる。例えば、殺人事件のミステリーと幽霊の出る荒野の旅では遅い成長速度、を使用する。PCがダンジョンに到達したら、標準または早い成長速度に切り替えるかもしれない以下の数値はあくまで一例だ。これより高い値や低い値を使用することもできる。 成長速度 レベル上昇までのXP 早い 800XP 通常 1,000XP 遅い 1,200XP 物語基準のレベル Story-Based Leveling もしXPの管理や配布をしたくない、あるいは物語上の出来事のみに基づいて成長させたい場合は、XP処理を完全に無視し、代わりにキャラクターがレベル上昇するタイミングを単純に決定できる。 一般的には、3〜4回のゲーム・セッションごとにレベルを上げる。その間に重要な悪役を倒したり、大きな目標を達成したりといった、最も適切な大事件が発生した直後に、キャラクターがレベル上昇するようにする。 XP報酬 XP Awards 経験点は、遭遇や探索、冒険の進行に応じて付与される。PCが戦闘や社会的対立などの直接的な敵に直面した場合、獲得できるXPはパーティが克服した課題のレベルに基づく。また、秘密の場所や隠れ家を見つけたり、危険な環境に耐えたり、ダンジョン全体を踏破するなど、探索によってもXPを獲得できる。 獲得したXPは、グループの全メンバーに与えられる。たとえば、100XP相当の戦闘に勝利した場合、パーティのローグが戦闘中に財宝を奪うために金庫に入ったとしても、それぞれが100XPを獲得する。また、ローグが立派で有名な宝石を集めた場合、君が30XPに値する中程度の成果だと判断した場合、パーティのメンバーもそれぞれ30XPを得ることができる。 表10-8 XP報酬 XP Awards 達成内容 XP報酬 小規模 10 XP 中程度* 30 XP 大規模* 80 XP * 通常、1ヒーロー・ポイントも獲得する。 敵のレベル XP報酬 パーティ・レベル-4 10 XP パーティ・レベル-3 15 XP パーティ・レベル-2 20 XP パーティ・レベル-1 30 XP パーティ・レベル 40 XP パーティ・レベル+1 60 XP パーティ・レベル+2 80 XP パーティ・レベル+3 120 XP パーティ・レベル+4 160 XP 障害のレベル XP報酬 単純な障害 複合障害 パーティ・レベル-4 2 XP 10 XP パーティ・レベル-3 3 XP 15 XP パーティ・レベル-2 4 XP 20 XP パーティ・レベル-1 6 XP 30 XP パーティ・レベル 8 XP 40 XP パーティ・レベル+1 12 XP 60 XP パーティ・レベル+2 16 XP 80 XP パーティ・レベル+3 24 XP 120 XP パーティ・レベル+4 32 XP 160 XP 敵と障害 Adversaries and Hazards 敵や障害との遭遇では、一定量のXPが付与される。グループがクリーチャーや障害との遭遇を克服した場合、各キャラクターはその遭遇におけるクリーチャーや障害のXPの合計に等しいXPを獲得する(これはパーティサイズの違いによるXP調整を除く。詳細はパーティの規模を参照のこと)。 些細な遭遇では通常XPは与えられないが、物語上重要な些細な遭遇や、一様でない冒険でPCが遭遇した順番の結果些細になった遭遇に対しては、小規模や中程度と同じXPを与えることにしてもよい。 達成 Accomplishments 大きな同盟を結んだり、組織を作ったり、NPCに心変わりをさせたりといった、物語を進行させるキャラクターの行動は、達成としてXPで報われるべきものだ。その重要度によって、XPの支給額が決まる。その功績が小規模、中程度、大規模のどれにあたるかを判断し、表10-8「XP報酬」を参照して適切なXPを与えること。些細な達成には、ゲーム中のあらゆる種類の重要な、記憶に残る、あるいは驚くべき瞬間が含まれる。中程度の達成は通常1セッションの大半を費やして完了する目標を表し、大規模の達成は通常多くのセッションにわたるキャラクターの努力の集大成である。中程度の達成と大規模の達成は、通常英雄的な努力の後にやってくるので、関係する1人以上のキャラクターにヒーロー・ポイントを与えるのに理想的なタイミングだ。 前述したように、功績に対してどれだけのXPを与えるかは君次第だ。一般的な指針として、1回のゲーム・セッションで、小規模をいくつか、中程度を1~2個、大規模はあるとしても1つの達成として報酬を与えるのが一般的だ。 パーティの規模 Party Size 成長ルールでは、PC4人のグループを想定している。 遭遇のルールには、それ以外の人数のグループに対応する方法が書かれているが、XPの付与は変わらない――常に、4人のキャラクターからなるグループに対して記載されているXPの量が付与される。通常、戦闘遭遇以外で異なる規模のグループに対して多くの調整を行う必要はない。ただし、大人数の場合、達成XPを得る方法を多く用意しすぎると、一度に複数の達成を追求することになり、PCのレベル上昇が早くなりすぎてしまうので注意が必要だ。 グループの同一性とパーティ・レベル Group Parity and Party Level すべてのプレイヤー・キャラクターのXPの合計を同じにしておくことを推奨する。そうすることで、どのような課題がプレイヤーに適しているのかが非常にわかりやすくなる。キャラクターのレベルがばらばらだと弱いキャラクターが簡単に死んでしまい、そのプレイヤーは価値が薄いと感じてしまい、結果としてそのプレイヤーにとってゲームが楽しくなくなる可能性がある。 もしグループ全員のキャラクターのレベルを同じにしないのであれば、パーティのレベルを決めて、遭遇時のXP予算を決める必要がある。パーティ全体の能力を最もよく表すと思われるレベルを選ぶこと。一人か二人だけが遅れている場合は最高レベルを、全員が異なるレベルである場合は平均レベルを使用する。レベル差のあるキャラクターが1人しかいない場合は、レベル差のあるキャラクターに合わせたパーティ・レベルを設定し、レベル差のあるキャラクターが2レベルごとにPCを1人追加したものとして遭遇を調整する。 パーティ・レベルより遅れているパーティ・メンバーは、パーティのレベルに達するまで、他のキャラクターの2倍のXPを得ることができる。個人で追跡する場合は、パーティ・メンバーがセッションを欠席した場合のXPを得るかどうかを決める必要がある。 財宝 Treasure GMである以上、プレイヤー・キャラクターに財宝を配るのは君の仕事だ。財宝は冒険の随所で登場し、PCは宝の山を回収し、貴重なアイテムや貨幣を持った敵を倒し、試練の成功報酬を得るというように、君が想像するあらゆる方法でそれを手に入れることができる。 本項では典型的なパスファインダー・キャンペーンにおける財宝の分配の指針を示すが、派手なゲームでは財宝を余分に、重厚なサバイバル・ホラーの冒険では財宝を少なく、あるいはその中間の量を割り当てる、という自由が君は常にある。 財宝の調整 Adjusting Treasure パーティに与える財宝は、プレイしながら観察し、調整する必要がある。特に、グループが冒険の一部を迂回した場合、当初予定していなかった宝を与える必要があるかもしれない。パーティの資産にも目を配るように。消耗品やお金が足りなくなってきたり、アイテムが足りずに戦闘がうまくいかなくなったりしたら、調整するのがよいだろう。 特に、余暇の少ない冒険や、文明から遠く離れた場所で行われる冒険では、このようなことが起こりがちだ。便利なアイテムの購入や“作成”ができない状態が長く続くと、PCは硬貨や貴重品には不自由しないが、便利な装備品には不自由することになる。このような場合、冒険の中にもっと有用な財宝を配置するか、交換に応じるNPCを紹介するのもよいだろう。 巨大ダンジョンとサンドボックス Megadungeons and Sandboxes 冒険には、プレイヤー・キャラクターが好きな場所を探検し、彼らの技能、運、工夫によって手に入るものだけを見つけることを期待するものがある。この種の冒険の代表的な例として、巨大ダンジョンと呼ばれる複数の異なる区画と経路を持つ広大なダンジョンと、サンドボックスと呼ばれる通常荒野で行われる自由形式の探検がある。 このような自由形式の冒険で、キャラクターが少なくとも財宝を取り逃す可能性がある場合は、配置する財宝の量を増やす。ただし、几帳面なグループは通常よりも多くの財宝を手に入れることができ、後の冒険で有利になることを認識しておくこと。 このような場合の簡単な目安としては、パーティにPCが1人増えたつもりで財宝を増やす。 特にサンドボックスの冒険などで構成が緩い場合は、さらに増やしてもよいだろう。 レベル毎の財宝 Treasure By Level 次ページの表10-9:レベルごとのパーティの財宝は、PC4人のグループに対して、各レベルの間にどれだけの財宝を配ればよいかを示している。合計価値の列には、予算のように使いたい場合に備えて、すべての財宝のおおよその総額が示されている。続くいくつかの列には、その総額を、PCが保管して長く使う「永続アイテム」、一度使ったら壊れる「消耗品」、アイテムやサービスを得るために主に使われる硬貨や宝石などの「パーティの総貨幣」に分けるための指針が書かれている。最後の列は、PCが4人より多い場合に、1人毎に追加する通貨の量を示している。例えば、3レベルになったPCが4レベルになるまでの間に、3レベルの表にある財宝、すなわち4レベルの永続アイテム2個、3レベルの永続アイテム2個、4レベルの消耗品2個、3レベルの消耗品2個、2レベルの消耗品2個、通貨120gp相当を与えればよいことになる。 1レベルの永続アイテムを割り当てる場合、10〜20gp相当の第6章の鎧や武器、その他の装備品がよいだろう。20レベルの行に記載されている財宝は、21レベルに到達する方法がないにもかかわらず、1レベル分の冒険を意味している。 クリーチャーの項目には、そのクリーチャーを倒すと得られる財宝が記載されているものがあるが、これも各レベルの財宝として数える。 出版された冒険には、全体を通して適切な量の財宝が掲載されている。ただし、冒険の進行に応じてパーティの能力を確認し、成長に財宝が遅れないようにする必要がある。 表10-9:レベルごとのパーティの財宝 Party Treasure By Level レベル 合計価値 永続アイテム(アイテム・レベル毎) 消耗品(アイテム・レベル毎) パーティの総貨幣 追加PC1人毎の追加貨幣 1 175gp 2レベル:2、1レベル:2* 2レベル:2、1レベル:3 40gp 10gp 2 300gp 3レベル:2、2レベル:2 3レベル:2、2レベル:2、1レベル:2 70gp 18gp 3 500gp 4レベル:2、3レベル:2 4レベル:2、3レベル:2、2レベル:2 120gp 30gp 4 850gp 5レベル:2、4レベル:2 5レベル:2、4レベル:2、3レベル:2 200gp 50gp 5 1,350gp 6レベル:2、5レベル:2 6レベル:2、5レベル:2、4レベル:2 320gp 80gp 6 2,000gp 7レベル:2、6レベル:2 7レベル:2、6レベル:2、5レベル:2 500gp 125gp 7 2,900gp 8レベル:2、7レベル:2 8レベル:2、7レベル:2、6レベル:2 720gp 180gp 8 4,000gp 9レベル:2、8レベル:2 9レベル:2、8レベル:2、7レベル:2 1,000gp 250gp 9 5,700gp 10レベル:2、9レベル:2 10レベル:2、9レベル:2、8レベル:2 1,400gp 350gp 10 8,000gp 11レベル:2、10レベル:2 11レベル:2、10レベル:2、9レベル:2 2,000gp 500gp 11 11,500gp 12レベル:2、11レベル:2 12レベル:2、11レベル:2、10レベル:2 2,800gp 700gp 12 16,500gp 13レベル:2、12レベル:2 13レベル:2、12レベル:2、11レベル:2 4,000gp 1,000gp 13 25,000gp 14レベル:2、13レベル:2 14レベル:2、13レベル:2、12レベル:2 6,000gp 1,500gp 14 36,500gp 15レベル:2、14レベル:2 15レベル:2、14レベル:2、13レベル:2 9,000gp 2,250gp 15 54,500gp 16レベル:2、15レベル:2 16レベル:2、15レベル:2、14レベル:2 13,000gp 3,250gp 16 82,500gp 17レベル:2、16レベル:2 17レベル:2、16レベル:2、15レベル:2 20,000gp 5,000gp 17 128,000gp 18レベル:2、17レベル:2 18レベル:2、17レベル:2、16レベル:2 30,000gp 7,500gp 18 208,000gp 19レベル:2、18レベル:2 19レベル:2、18レベル:2、17レベル:2 48,000gp 12,000gp 19 355,000gp 20レベル:2、19レベル:2 20th 2、19レベル:2、18レベル:2 80,000gp 20,000gp 20 490,000gp 20レベル:4 20レベル:4、19レベル:2 140,000gp 35,000gp * 多くの1レベル永続アイテムは魔法のアイテムではなく別のアイテムを代用とすべきだ。 貨幣 Currency パーティは、それだけでは役に立たないが、売却したり他の目的に使ったりできるお金やその他の財宝を見つけることになるだろう。パーティの通貨の欄のgp値は、硬貨だけを指しているわけではない。宝石、美術品、工芸品(貴重な素材を含む)、宝飾品、そしてパーティのレベルよりはるかに低いレベルのアイテムでさえ、すべて金の山より興味深いものになりえる。 貨幣報酬に低レベルの永続アイテムを含める場合、パーティがそのアイテムを売ったり工芸品の材料として使ったりすることを想定して、アイテムの価格の半分だけをgpの量に加算する。しかし、低レベルの消耗品、特に巻物などは依然として役に立つ可能性がある。 他の種別の財宝 Other Types of Treasure 財宝はすべてアイテムや貨幣でなければならないわけではない。職人は、硬貨でアイテムを買う代わりに、〈製作〉技能を使って原材料を直接アイテムに変えることができる。知識はキャラクターの能力を拡張でき、処方はアイテム作成をするキャラクターにとって良い財宝になる。術者は敵の呪文書や古代学者から新しい呪文を手に入れるかもしれないし、モンクは人里離れた山頂に住む師父から学んだ希少な技で技術を鍛え直すかもしれない。 財宝と稀少度 Treasure and Rarity アンコモンやレアのアイテムや処方を配ることで、プレイヤーはより財宝に興味を持つようになる。アンコモンのアイテムはそこそこ定期的に、レアのアイテムは稀に報酬に組み込むのがよいだろう。特に、冒険者の背景や主題に沿ったアイテムを所持する敵を倒したり出し抜いたりしてそのアイテムを手に入れることができれば、その報酬はより魅力的なものとなるだろう。 アンコモンやレアの処方は、アイテム作成をするキャラクターにとって最高の財宝になる。なお、アンコモンやレアの処方は広く普及すると、やがてコモンになっていく。これは数ヶ月から数年かかるかもしれないが、そのアイテムは世界中の店に出回るようになるかもしれない。 アイテム・レベルの変更 Different Item Levels 表10-9:レベルごとのパーティの財宝に記載されているアイテムのレベルは、固定されたものではない。配布するアイテムの価値を考慮しさえすれば、多少レベルが上下しても良い。たとえば、11レベルPCのパーティに12レベルのアイテムとしてフォーティフィケーション・ルーンのルーンストーン(市価2,000gp)を渡そうと思ったが、彼らが最近の冒険で鎧に困っていることに気づき、代わりに11レベルの+2リジリアント鎧(1,400gp)を渡すことにしたとする。この鎧の市価はフォーティフィケーション・ルーンより低いので、9レベルのシャドウ・ルーン(650gp)を追加して、その差額を補うこともできる。合計がまったく同じになるわけではないが、問題はない。 また、13レベルの永続アイテムを財宝庫に置きたい場合、11レベルの永続アイテムを2つ削除すれば、ほぼ同価値の交換となる。しかし、このように交換を上方修正する場合は注意が必要だ。パーティの現在のプレイ・レベルでは邪魔な効果を持つアイテムが登場するかもしれないだけでなく、特定のPCに優れたアイテムが与えられ、他のキャラクターは全く新しいアイテムを得ることができないかもしれないのだ。 長期的なキャンペーンでプレイしている場合は、財宝を渡す時期を分散できる。大きな節目となるレベルで財宝を増やし、次のレベルでは新しいアイテムが少なして、より厳しいダンジョンに挑ませることができる。各PCの財宝が、「新しいキャラクターの財宝」で説明する、現在のレベルで新しいキャラクターを作った場合に得られる量と同等かどうか、時々確認してみよう。本来は少し高いはずだが、もし大きな差があるようなら、それに応じて冒険の今後の財宝報酬を調整すること。 異なるパーティ規模 Different Party Sizes パーティのキャラクター人数が4人を超える場合、キャラクターが1人増える毎に以下の追加を行う。 レベルがパーティのレベルと同じか1だけ大きい永続アイテム1つ 消耗品2つ。通常、そのレベルはパーティのレベルと同じか1だけ大きい 表10-9の「追加PC1人毎の追加貨幣」に書かれた額に等しい貨幣 パーティのキャラクターが4人未満の場合、不足するキャラクター1人につき同額を差し引くことができるが、少人数ですべての役割を効率よくこなせない方が、本来はゲームが難しくなる。そのため、宝物の削減を少なくして、追加装備で少人数を補うことを考慮してもよいかもしれない。 新しいキャラクターの財宝 Treasure For New Characters 新しいキャンペーンがより高いレベルで始まるとき、新しいプレイヤーが既存のグループに加わるとき、あるいは現在のプレイヤーのキャラクターが死亡して新しいキャラクターが必要になったとき、君のキャンペーンに1レベルで始まらないPCが1人以上存在することになる。このような場合、次ページの表10-10「キャラクターの財産」を参照すること。ここには、通貨に加えて、さまざまなレベルのコモンの永続アイテムをPCがいくつ持っているべきかが示されている。この表にあるアイテムは、常に基本アイテムだ。もしプレイヤーが特質ルーンを持つ鎧や武器を望むなら特質ルーンを別途購入しなければならないし、貴重の素材で作られた鎧や武器がほしければ同様に貴重の素材の代金を別途支払わなければならない。 この値はそのレベルで始めたばかりのPC向けのものだ。すでに次のレベルへ成長しつつあるパーティに参加する場合は、新しいキャラクターに現在のレベルのアイテムを追加で与えることを検討しよう。死亡したPCや引退したPCの財宝を保管しておき、それを新しいキャラクターに渡しているパーティの場合、新しいキャラクターには表の値より少ないものを与えるか、次の数回の冒険で得られる財宝の報酬を減らす必要があるかもしれない。 表10-10:キャラクターの財産 Character Wealth レベル 永続アイテム 貨幣 単一アイテムの最大価格 1 - 15gp 15gp 2 1レベル:1 20gp 30gp 3 2レベル:1、1レベル:2 25gp 75gp 4 3レベル:1、2レベル:2、1レベル:1 30gp 140gp 5 4レベル:1、3レベル:2、2レベル:1、1レベル:2 50gp 270gp 6 5レベル:1、4レベル:2、3レベル:1、2レベル:2 80gp 450gp 7 6レベル:1、5レベル:2、4レベル:1、3レベル:2 125gp 720gp 8 7レベル:1、6レベル:2、5レベル:1、4レベル:2 180gp 1,100gp 9 8レベル:1、7レベル:2、6レベル:1、5レベル:2 250gp 1,600gp 10 9レベル:1、8レベル:2、7レベル:1、6レベル:2 350gp 2,300gp 11 10レベル:1、9レベル:2、8レベル:1、7レベル:2 500gp 3,200gp 12 11レベル:1、10レベル:2、9レベル:1、8レベル:2 700gp 4,500gp 13 12レベル:1、11レベル:2、10レベル:1、9レベル:2 1,000gp 6,400gp 14 13レベル:1、12レベル:2、11レベル:1、10レベル:2 1,500gp 9,300gp 15 14レベル:1、13レベル:2、12レベル:1、11レベル:2 2,250gp 13,500gp 16 15レベル:1、14レベル:2、13レベル:1、12レベル:2 3,250gp 20,000gp 17 16レベル:1、15レベル:2、14レベル:1、13レベル:2 5,000gp 30,000gp 18 17レベル:1、16レベル:2、15レベル:1、14レベル:2 7,500gp 45,000gp 19 18レベル:1、17レベル:2、16レベル:1、15レベル:2 12,000gp 69,000gp 20 19レベル:1、18レベル:2、17レベル:1、16レベル:2 20,000gp 112,000gp アイテムの選択 Item Selection 新しいキャラクターがどのようなアイテムを持つかは、そのキャラクターのプレイヤーと協力して決める必要がある。プレイヤーの提案を認め、彼らが自分のキャラクターに持たせたいアイテムがある場合は、その選択がゲームに悪影響を及ぼすと思われない限り、その選択を尊重する。 君が望むなら、プレイヤー・キャラクターの背景やコンセプトに合ったアンコモンやレアのアイテムを与えても良い。ただし、それらの希少なアイテムをどれだけゲームに導入しているかを考慮すること。また、プレイヤーは消耗品や低レベルの永続アイテムに通貨を使い、残りを硬貨として持つこともできる。キャラクターがどのようなアイテムを購入できるかは、通常通り君が決定する。 PCは、記載されたアイテムのいずれかまたは全てに、通常よりレベルの低いアイテムを自発的に選んでもよい。しかし、そうすることで通貨が増えるわけではない。 もし君が望むなら、代わりにプレイヤーは一括で通貨を与え、キャラクターのレベルより1だけ低いレベルのアイテムを上限に、好きなコモンのアイテムを購入させてもよい。この場合、高レベルのアイテムをより多く選択できるため、通常のアイテムや通貨の割り当てよりも総額は少なくなる。 アイテムの売買 Buying and Selling Items 通常、余暇中にのみアイテムの売買を行える。アイテムは一般に市価の半額で売却される。ただし、美術品、宝石、原材料はその価格の半分で売ることができる。 環境 Environment 主に探索時に使用される環境のルールは、君のパーティが旅する場所に生命を吹き込む。環境は常識的な判断で済むことが多いが、本当に突出した環境では特別なルールが必要だ。 本項で紹介する環境は、それぞれ異なる方法で地形ルールを使用する。そのため、本項を読む前にそれらのルールを一読すること。いくつかの環境は、気候や自然災害のルールを参照する。多くの場所は複数の環境の特徴を備えている。例えば、雪山は極地環境と山岳環境の両方の特徴を備えている。高度や深度に基づく効果を持つ環境の特徴は、その効果はクリーチャーのサイズによってさらに変化する。例えば、中型クリーチャーの浅い沼は小型クリーチャーにとっては深い沼かもしれないし、中型クリーチャーの深い沼は大型クリーチャーにとっては浅い沼でしかない(本当に巨大なクリーチャーにとっては移動困難地形ですらないほど些末なものである)かもしれない。 表10-12は、素早く参照できるように様々な環境の特徴を五十音順に並べたものだ。習熟度DCの項目は、その環境の特徴に適した単純DCの範囲を示すと同時に、その特徴の危険度や複雑さのおおよその推定値を示している。 表10-12:環境の特徴 Environmental Features 特徴 習熟DCの範囲 生け垣 未修得~修得 岩棚 未修得~達人 階段 未修得~修得 崖 修得~達人 火山の噴火 修得~伝説 風 未修得~伝説 壁 対応ページを参照 瓦礫 未修得~熟練 木 未修得~達人 気温 ― 霧 ― 群衆 修得~達人 下水道 ― 降水 ― 洪水 熟練~伝説 護衛 ― 氷 修得~達人 裂け目 ― 地震 修得~伝説 自然火災 熟練~伝説 下生え 未修得~熟練 下生えの視界 ― 斜面 未修得~修得 樹冠 修得~達人 水流 修得~達人 砂 未修得~熟練 砂嵐 修得~達人 石筍 修得~熟練 竜巻 達人~伝説 津波 達人~伝説 吊り扉 対応ページを参照 泥濘 未修得~修得 通り 未修得~修得 扉 対応ページを参照 雪崩 熟練~伝説 吹雪 ― 崩落 熟練~伝説 門 ― 屋根 修得~達人 床 未修得~熟練 雪 未修得~熟練 溶岩 熟練~伝説 地形のルール Terrain Rules 環境では、移動困難地形、上級移動困難地形、障害地形に関するルールが頻繁に使用される。そこで、ここでそれらのルールを要約して説明する。 移動困難地形とは移動を妨げる地形のことで、特に荒い地表や不安定な面、厚く茂った地表など、数え切れないほどの障害物がある。 移動困難地形のマスに移動する(グリッドを使っていない場合は移動困難地形の領域内またはその領域内に5フィート移動する)には、追加で5フィートの移動が必要だ。 上級移動困難地形のマスに移動する場合、追加で10フィートの追加移動コストが必要だ。斜めに移動しても、この追加コストは変化しない。クリーチャーは通常、移動困難地形に向かって“ステップ”できない。 クリーチャーが跳躍中に行う移動は、跳躍中に通過する地形を無視する。 クリーチャーが特定の移動困難地形による移動力の減少を回避できる能力(飛行や非実体になるなど)もある。また、クリーチャーが足で移動する際に移動困難地形を無視させる能力もある。そのような能力は、クリーチャーが上級移動困難地形を移動する際に移動困難地形に対する移動コストを用いることもできるようにする。しかしその能力で特に指定されていない限り、これらの能力を使ってもクリーチャーは上級移動困難地形を無視できない。 障害地形は、その中を移動するたびにクリーチャーにダメージを与える。例えば、酸の池、燃え盛る炎の穴、トゲだらけの通路はすべて障害地形にあたる。ダメージの量や種類は、その危険な地形によって異なる。 ダンジョン Dungeons ダンジョン環境は荒野に建設された遺跡や現代建築物を含み、冒険の場としてかなり一般的なものだ。扉や建物などの都市機能と地下環境、そして時には他の環境からの要素を組み合わせた環境だ。特に地下のダンジョンが一般的だが、巨木が壁面に根を張り巡らせた森に埋もれた遺跡や、沼地に隠された遺跡を冒険の舞台にしてみるのもよいだろう。 環境によるダメージ Environmental Damage 環境の要素や自然災害の中にはダメージを与えるものがある。被害の大きさはその状況によって異なるため、特定の環境と自然災害に関するルールでは、性格の数値ではなく、被害の区分を使用して被害を表現する。 以下の表10-11を使用して環境や自然災害によるダメージを決定すること。正確なダメージを決定する際、その危険性がどの程度厳しいものかによって、適切に裁定すること。 表10-11:環境によるダメージ Environmental Damage 区分 ダメージ 小規模 1d6~2d6 中規模 4d6~6d6 大規模 8d6~12d6 特大規模 18d6~24d6 水界 Aquatic 水界環境は、異世界や非日常的な次元界に赴かないPCにとって、最も困難な環境のひとつだ。水界環境にいるPCには呼吸する方法(通常はウォーター・ブリージングの呪文)が必要だ。また、通常は“水泳”しなければ移動できないが、底まで沈んだPCは上級移動困難地形のルールを使って、ぎこちなく歩くことができる。 水界環境にいるキャラクターは、水中戦闘や溺れ、窒息のルールを頻繁に使用する。 水流と流れる水 Currents and Flowing Water 海流、流れる川、および同種の動く水は、流れに逆らって“水泳”するクリーチャーにとって移動困難地形あるいは上級移動困難地形(水の速度で決まる)である。クリーチャーのターン終了時に、そのクリーチャーは流れの速度に応じて一定の距離を移動する。例えば、10フィートの水流は、ターン終了時にそのクリーチャーを水流の方向に10フィートだけ移動させる。 視界 Visibility 水中では陸上よりも遠くのものを見るのが難しい。特に水が濁っていたり、粒子が多い場合は難題となる。きれいな水の中では、小さなものを見るのに必要な視認距離はおよそ240フィートだが、濁った水中では視認距離はわずか10フィート以下にまで低下する。 極地 Arctic 極地環境では気温が低いことが大きな課題だが、氷や雪も存在する。極地で発生しやすい災害は、雪崩、吹雪、洪水などだ。 氷 Ice 凍った地面は摩擦が低く、キャラクターが滑ってしまう。そのためでこぼこの地面であると同時に移動困難地形でもある。 雪 Snow 雪の深さや成分によって、ほとんどの雪地は移動困難地形か上級移動困難地形のどちらかになる。雪が固まったところでは、キャラクターは雪面を踏み抜かずに歩くことができるが、中にはふわふわして柔らかく、でこぼこの地面になっているところもある。 砂漠 Desert 砂漠には、砂砂漠、礫砂漠、悪地が含まれている。ツンドラも厳密には砂漠だが、このような地域では気候が第一の課題であるため、極地に分類する。砂砂漠では、流砂や砂嵐の危険性がある。 瓦礫 Rubble 礫砂漠には瓦礫が多く、それらは移動困難地形だ。瓦礫が密集しているとその上を歩くことになるため、でこぼこした地面になる。 砂 Sand 通常、凝縮された砂はキャラクターの動きを大きく妨げることはない。しかし柔らかい砂は浅い場合は移動困難地形、深い場合はでこぼこした地面となる。 砂漠では風によって砂が移動し、砂丘と呼ばれる緩い砂の丘ができる。砂丘は風向きと逆向きにはでこぼこした地面、風向きと同じ向きには傾斜のある地面となることが多い。 森林 Forest これらはジャングルや雑木林などの多様な環境である。時には自然火災にも見舞われる。 樹冠 Canopies 熱帯雨林のような特に密集した森林には、地上より高い位置に樹冠がある。樹冠に到達しようとするクリーチャーや樹冠に沿って移動しようとするクリーチャーは“登攀”をする必要がある。つるや枝にぶら下がるには、通常、〈軽業〉または〈運動〉の判定が必要だ。樹冠は遮蔽を提供する。樹冠が厚いと樹冠の中にいるクリーチャーから地上のクリーチャーが見えなくなるし、逆も同様である。 木 Trees 森には木がたくさんある。しかし通常、キャラクターが“遮蔽をとる”アクションを使用しない限り木は遮蔽にはなりません。マップ上で5フィート・マス全体(あるいはそれ以上)を占める大きな木だけが、自動的に遮蔽を提供するのに十分な大きさを持っている。 下生え Undergrowth 薄い下生えは、キャラクターが“遮蔽をとる”を行える移動困難地形である。厚い下生えは、上級移動困難地形であり、自動的に遮蔽を提供する。茨のような下生えは障害地形であり、曲がりくねった根がたくさんある場所はでこぼこした地面になることもある。 山岳 Mountain 山岳環境には丘陵地も含まれる。丘陵地は山岳と多くの面を共有しているが、極端な特徴を持たない。これらにおける最も多い災害は雪崩である。 裂け目 Chasms 裂け目は自然の穴で、通常少なくとも20フィートの長さがあり、(一般的な努力、あるいは魔法の力で隠そうとしない限り)はっきりと視認できる。裂け目がもたらす主な危険は、キャラクターが“幅跳び”で渡らなければならないことだ。あるいは、裂け目の手前側を降りて、向こう側を登るという、より安全だが時間のかかる方法を取ることもできる。 崖 Cliffs 崖や岩壁をクリーチャーが登ったり降りたりするためには“登攀”が必要だ。安全対策をしっかりしないと、大失敗で大きな落下ダメージを受ける可能性がある。 瓦礫 Rubble 山には極端な岩場や、砂利が転がる砂利道があり、移動困難地形であることが多い。特に瓦礫が多かったり、あたりかまわず広がっているところはでこぼこした地面である。 斜面 Slopes 斜面は、緩やかに変化する通常の地形から急勾配の移動困難地形まで、高低差によって様々だ。通常、下り坂は通常の地形だが、キャラクターは特に急な斜面に対して“登攀”する必要があるかもしれない。 下生え Undergrowth 山では薄い下生えが一般的だ。これらは移動困難地形であり、キャラクターは“遮蔽をとる”を行える。 平地 Plains 平地環境には、サバンナなどの草原や農地が挙げられる。平地での災害は、竜巻や自然火災が多い。 生け垣 Hedges 生け垣とは、潅木や低木、樹木を植えた列のことだ。 冒険で現れる象徴的な生け垣は、迷路のように伸びた背の高いものだ。典型的な生け垣は高さ2~5フィートで、マスを1列占め、遮蔽を提供する。生け垣を突き破ろうとするキャラクターは上級移動困難地形に対処する必要がある。時には“登攀”したほうが早いこともある。 下生え Undergrowth 薄い下生えは、キャラクターが“遮蔽を取る”を行える移動困難地形である。厚い下生えは、上級移動困難地形で、自動的に遮蔽を提供する。 平野の下生えは通常薄い下生えで、厚い下生えがいくつか点在している。トウモロコシのような特定の作物の畑は全体が厚い下生えである。 沼地 Swamp 湿地が最も一般的だが、湿原のような乾燥した沼も含まれる。沼地には流砂の障害があることが多い。 沼地は水の多い場所である。しかし沼地は天然のスポンジのような働きをし、浸水する前に大量の水を吸収するため、洪水にはまずならない。 泥濘 Bogs 泥沼とも呼ばれる泥濘は泥炭が蓄積した水域で、低木や苔に覆われており、時には深い縁を覆う植物の浮島を特徴とする。 浅い泥濘は中型クリーチャーにとって移動困難地形であり、深い泥濘は上級移動困難地形である。沼が深くてクリーチャーが底に到達できない場合、そのクリーチャーは“水泳”しなければならない。沼地は酸性であるため、特に極端な沼地や魔法の沼地は障害地形になることもある。 下生え Undergrowth 薄い下生えは、キャラクターが“遮蔽を取る”を行える移動困難地形である。厚い下生えは、上級移動困難地形で、自動的に遮蔽を提供する。 茨などの下生えは障害地形でもあり、根がたくさん絡まっているところはでこぼこした地面でもある。 都市 Urban 都市環境には、建物だけでなく、開かれた都市空間も含まれる。本項に掲載される建物の情報は、遺跡や建設されたダンジョンにも適用される。都市は、その構造や立地条件によって、様々な災害、特に火災や洪水などの被害を受けやすいことがある。 扉、門、壁 Doors, Gates, and Walls 都市やダンジョンでキャラクターがよく直面する障害物に、扉、門、壁がある。 “登攀” Climbing 下の表には、構造物を“登攀”する際の一般的な〈運動〉判定のDCを示している。これらは通常簡易DCである。構造物や環境の性質に応じて難易度を調整してもよい。 破壊 Demolishing キャラクターが扉や窓、あるいは特定の壁を突き破りたいと思うかもしれない。下の表にある硬度、ヒット・ポイント、破損値は、その構造物が通常作られている材料に基づいて決まっている。従って、例えば鉄製の吊り扉は木製のものよりも硬度が高くなる。詳細は「物体へのダメージ」を参照。 よく手入れされた石や切石製の強固な壁は、集中した作業と適切な道具がなければ壊すことができない。このような壁を通り抜けるには余暇が必要だ。 扉の素材 “登攀”DC 硬度、HP(BT) 木 20 10、40(20) 石 30 14、56(28) 補強された木 15 15、60(30) 鉄 30 18、72(36) 壁の素材 “登攀”DC 硬度、HP(BT) 崩れやすい石積み 15 10、40(20) 細長い板材 15 10、40(20) レンガ 20 14、56(28) 切石 30 14、56(28) 鉄 40 18、72(36) 吊り扉の素材 “登攀”DC 硬度、HP(BT) 木 10 10、40(20) 鉄 10 18、72(36) “こじ開け” Forcing Open 扉や門、窓など、開けられる構造物は〈運動〉を用いて“こじ開け”をすることができる。これは通常鍵がかかっていたり固まっていたりするときにのみ必要となる。構造物の“こじ開け”DCはその鍵の〈盗賊〉DCを用いるが、とても困難に調整される(DCを5増やす)。 鍵がない場合には以下の表を使用する。吊り扉を持ち上げる場合、鍵のDCもしくはこの表のDCのいずれか高い方を用いる。 構造物 “こじ開け”DC 開かない扉あるいは窓 15 異常なほど固く開かない 20 木製の吊り扉 20 鉄製の吊り扉 30 金属棒の曲げ加工 30 群衆 Crowds 人通りの多い大通りなどは移動困難地形であり、特に人が密集している場合は上級移動困難地形となる。キャラクターは〈威圧〉、〈芸能〉、〈交渉〉を使って群衆を引き離すことができるかもしれない。 火事や暴れ回るモンスターのような明らかな危険にさらされた群衆は、できるだけ早くその危険から離れようとする。しかしその質量に押されてその動きは鈍くなる。逃げ惑う群衆は通常、平均的な人物の移動速度(通常25フィート)だけ毎ラウンド移動するが、動きの遅いメンバーを踏みつぶしたり、置き去りにしたりすることがある。 扉 Doors 鍵のかかっていない扉を開けるには、“扱う”アクションが1回(特に複雑な扉や大きな扉の場合は、2回以上)必要になる。動かない扉は“こじ開け”しなければならず、施錠された扉はキャラクターが“解錠”あるいは“こじ開け”する必要がある。 床 Floors 木製の床は歩きやすく、石をはめ込んだ敷石の床も同様だ。しかし、磨り減った敷石の床は、でこぼこした地面であることが多い。 門 Gates 城壁に囲まれた集落には、防御のために閉じ、移動を可能にするために開けることのできる門がよく存在する。典型的な門は、門番小屋の両端にある1つの吊り扉と、その間にある、殺人孔のような警備兵が敵を攻撃できる保護された場所から構成されている。 護衛 Guards ある程度の大きさを持つ居住地には、常に集落を守るために交代で警備員がいて、街路の巡回や様々な場所の警備を行っているところがほとんどだ。この部隊の規模は、住民1,000人につき1人の警備員からその10倍の部隊までさまざまだ。 吊り扉 Portcullises 吊り扉は門や通路を封鎖するために降下する木や鉄の格子である。縄や鎖で吊り上げられているものが多く、簡単に持ち上げられないように施錠機構が施されている。吊り扉の吊り上げや棒を曲げる際に用いるルールは、本ページのサイドバーに記載されている。もし吊り扉がクリーチャーの上に落ちてきた場合、叩きつける扉の罠を用いること。 屋根 Rooftops 屋根は、印象的な待ち伏せ、追跡シーン、潜入、走り回る戦いに適している。平らな屋根は移動しやすいが、雪が大量に積もると屋根が崩れてしまうので雪が大量に降る居住区にはめったにない。角のある屋根はでこぼこした地面で、特に急な場合には傾斜がある。角のある屋根のてっぺんは狭い足場である。 屋根から屋根への移動には、しばしば“幅跳び”が必要だが、建物によっては“跳躍”できるほど近いこともある。 高い屋根に登るには“高跳び”が必要な場合もあるし、“跳躍”の後に“しがみつき”をして、それから“登攀”で登る必要があることもある。 下水道 Sewers 下水道は通常、街路から10フィート以上の深さにあり、梯子などの昇降手段を備えている。壁に沿って高くなった通路は下水道作業員が通過でき、中央の水路は廃棄物そのものを運んでいる。下水道があまり整備されていない場合や普段作業員が立ち入らない場所では、病気が蔓延した廃棄物をかき分けなければならないこともある。下水道には下水道用の格子があり、これを開けるには通常“扱う”アクションが2回以上必要だ。 下水道の気体 Sewer Gas 下水道にはしばしば非常に燃えやすい気体溜まりがある。下水道の気体溜まりが火炎源にさらされると爆発し、範囲内のクリーチャーに中程度の環境[火災]ダメージを与える。 階段 Stairs 階段は登るキャラクターにとって移動困難地形であり、粗悪な階段はでこぼこした地面であることもある。寺院や巨人の建てた建造物には上りも下りも移動困難地形になっていたり、一歩一歩“登攀”する必要があったりする巨大な階段があることもある。 通り Streets ほとんどの居住地には、狭く曲がりくねった道があるが、これは集落の成長とともに有機的に作られたものだ。これらの道の幅は20フィートより大きいことはほとんどなく、路地は5フィートほどしかない。通りは一般に石畳で舗装されている。石畳の状態が悪いと、移動困難地形やでこぼこした地面であることもある。 特に秩序だったよく計画された都市には、荷馬車や商人が市場や町の重要な場所に到達するための主要な大通りがある。これらは、荷馬車が両方向に移動できるように少なくとも25フィートの幅が必要で、歩行者が荷馬車の通行を避けられるように狭い歩道が設けられていることが多い。 壁 Walls よくできた建造物の外壁はレンガ製あるいは石造りである。小規模、低品質、または仮設の建造物では、木製の壁が使用されることもある。内壁はあまり頑丈でないことが多く、木の板でできていたり、厚い不透明な紙を木の枠で囲んでいるだけだったりする。地下の構造物では、地面の重みで構造物が崩れないように、固い岩を削って厚い壁を作ることもある。壁の登攀と破壊のルールはサイドバーに掲載されている。 地下 Underground 地下環境は、洞窟や自然の地下で構成されている。人工的なダンジョンや遺跡は、地下の地形と階段や壁などの都市的な地形が組み合わされている。また、地下深くにある宝物庫には、裂け目や崖など、山と同じような地形的特徴がある。 地下で最も多い災害は崩落である。 床 Floors 自然の地下環境で床が平らであることは少なく、急激な高低差がある。その結果として、移動困難地形やでこぼこした地面、傾斜がある。 岩棚 Ledges 岩棚は、低い場所を見下ろすことができる狭い面であり、裂け目の端に沿って移動するための唯一の手段だ。狭い岩棚を移動するには、〈軽業〉で“平衡感覚”する必要がある。 瓦礫 Rubble 洞窟は瓦礫に覆われていて移動困難地形となることがある。また、分厚い瓦礫や散らばった瓦礫はでこぼこした地面である。 石筍と鍾乳石 Stalagmites and Stalactites 石筍は、洞窟の床から生えた先細りの柱だ。石筍で埋め尽くされた場所は上級移動困難地形であり、特に大きな石筍は迂回したり、“登攀”しなければなならない。石筍は鋭いため、状況によっては障害地形として使用できる。また、鍾乳石は洞窟の屋根から垂れ下がる氷柱状の物体で、天井や張り出しから叩き落とされた場合、障害地形として使用できる。 壁 Walls 自然の洞窟の壁は、でこぼこで、くぼみや棚もある。洞窟の多くは水によって形成されているため、洞窟の壁が湿っていることが多く、“登攀”するのは難しい。 気候 Climate 天候は、単に雰囲気を演出するための装飾用具というだけではない。より印象的な遭遇を作り出すために、環境要素と組み合わせることができるルール的な効果もある。天候は特定の判定に、-1〜-4の状況ペナルティを与えることができる。 霧 Fog 霧は、その濃さによって視覚の知覚判定に状況ペナルティを与える。また、霧は半マイル以下、場合によってはそれ以下の距離ですべての視界を遮断する。視界が1マイル程度に制限されるものは霧、3マイル程度に制限されるものはもやと呼ばれる。 降水 Precipitation 降水には、雨のほか、雪、みぞれ、あられなどがある。雨は炎を消し、氷を含む場合は地面に雪や氷の領域を作る。霧雨や小雪は、視界が狭くなる程度で、ルール的な影響はほとんどない。 視界 Visibility ほとんどの降水は、視覚に基づく知覚判定に状況ペナルティを与える。雹はまばらに降るが大きな音を出すため、代わりに聴覚の知覚判定にペナルティを与えることが多い。 豪雨や豪雪のような特に激しい降水は、クリーチャーが遠くにいる場合、視認困難状態を与えることもある。 疲労 Fatigue 降水は、不快感や疲労を引き起こす。霧雨や小雪より厳しいものは、地上の移動でキャラクターが疲労状態になるまでの時間を4時間だけ短縮する。厳しい降水は、キャラクターが防護なしで行く場合、寒い環境では危険になりうる。濡れたキャラクターは、気温が1段階低くなったものとして扱われます(酷寒から猛寒、猛寒から極寒い、というように。後述の気候を参照)。 雷雨 Thunderstorms 多くの雷雨は強風と降雨を伴う。また、ごくまれに雷に打たれることがある。落雷は通常なら中程度、激しい雷雨の場合は大規模の[雷撃]ダメージを与える。 気温 Temperature 多くの場合、気温は、キャラクターが快適に過ごすために必要な服装を記述する以上に、心配するほどの力学的な影響を与えない。 極端な暑さや寒さは陸路の移動中にクリーチャーをより早く疲労させ、表10-13に示すように、十分に過酷であればダメージを与えることもある。 適切な防寒具(防寒着など)は、酷寒によるダメージを無効化したり、猛寒によるダメージを酷寒のダメージに軽減したりすることができる。 表10-13 気温の効果 Temperature Effects 区分 気温 疲労 ダメージ 極寒 華氏-80度(摂氏-62.2度)未満 2時間 1分毎に中規模[氷雪] 猛寒 華氏-79度~-20度(摂氏-62.2度~-28.9度) 4時間 10分毎に小規模[氷雪] 酷寒 華氏-19度~12度(摂氏-28.9度~-11.1度) 4時間 1時間毎に小規模[氷雪] 寒い 華氏13度~32度(摂氏-11.1度~0度) 4時間 なし 通常 華氏33度~94度(摂氏0度~34.4度) 8時間 なし 暑い 華氏95度*~104度*(摂氏34.4度~40度) 4時間 なし 酷暑 華氏105度*~114度(摂氏40度~45.6度) 4時間 1時間毎に小規模[火炎] 猛暑 華氏115度~139度(摂氏45.6度~59.4度) 4時間 10分毎に小規模[火炎] 極暑 華氏140度(摂氏59.4度)以上 2時間 1分毎に中規模[火炎] * 湿度が高い地域では華氏15度(摂氏8.3度)気温を下げて調整すること。 風 Wind 風はその強さに応じて聴覚の知覚判定に状況ペナルティを与える。また、アローのような物理的な遠隔攻撃は妨害され、そのような武器による攻撃ロールに状況ペナルティを与え、強い風雨の中ではその武器による攻撃を不可能にすることさえある。風は手持ちの炎を消す。ランタンは風から炎を守るが、特に強力な風はこれらも消し去ることがある。 風の中の移動 Moving in Wind 飛行中、風は移動困難地形あるいは上級移動困難地形である。十分な強さの風の中を移動するには“飛行機動”アクションが必要で、大失敗するか、毎ラウンド最低1回はこの判定に成功しないと吹き飛ばされてしまう。 地上であっても、特に強い風の中では移動するために〈運動〉判定に成功する必要があり、大失敗するとクリーチャーは押し戻されて伏せ状態になる。このような判定では、小型のクリーチャーは通常-1、超小型のクリーチャーは通常-2の状況ペナルティを受ける。 自然災害 Natural Disasters 気候や環境の特徴は、妨げになったり、長期的な脅威になったりする。特に自然災害は、特にその猛威に直接さらされる人々にとって、すぐに対処が必要な危険である。 以下の項におけるダメージでは、表10-11:環境によるダメージに掲載された区分を使用する。 雪崩 Avalanches 雪崩は、山の斜面を流れ落ちる氷や雪の流れを指すが、地滑りや土砂崩れなど、同様の災害にも同じルールが適用される。湿った雪の雪崩は、通常、1ラウンド毎に200フィートまでの距離を移動するが、粉雪であれば最大で10倍までの速度で移動することもある。岩崩れや土石流はもっと遅く、時にはキャラクターが逃げ切れるほど遅くなることもある。 雪崩はその進路上にあるクリーチャーや物体に大規模~特大規模の[殴打]ダメージを与える。 加えて、これらの犠牲者はかなりの質量の下に生き埋めになる。 雪崩の進路に巻き込まれたクリーチャーは反応セーヴを試みることができ、成功すれば[殴打]ダメージを半分だけ受け、大成功すれば生き埋めにもならずにすむ。 生き埋め Burial 生き埋めになったクリーチャーは1分毎に小規模の[殴打]ダメージを受ける。特に雪崩の下に埋もれた場合、小規模の[氷雪]ダメージを受けることもあり得る。GMの判断により、十分な空気を含む空間のないクリーチャーは窒息する危険もある。生き埋めになったクリーチャーは拘束状態であり、通常は脱出できない。 その味方や影響を受けていないものは、生き埋めのクリーチャーを掘り出そうと試みることができる。穴を掘るそれぞれのクリーチャーは〈運動〉判定に成功することで、およそ5フィート×5フィートの空間を4分で掘り進めることができる(大成功すると2分)。 シャベルや他の適切な道具を使えば、掘削時間は半分になる。 吹雪 Blizzards 吹雪は、寒さと大雪、そして強風の組み合わせだ。他の災害のように直接的な脅威を1つだけ与えることはない。これらの要因が一度に重なることで、キャラクターにとって大きな障害となる。 崩落 Collapses 崩落や陥没は、洞窟や建物が落下して、その下や中にいる人たちに大量の岩やその他の物質が降り注ぐことで発生する。崩落の下にいるクリーチャーは、雪崩と同じように、大規模~特大規模の[殴打]ダメージを受け、生き埋めになる。幸いなことに、その地域全体の統合性を弱めてさらなる崩壊を引き起こさない限り、崩壊が広がることはない。 地震 Earthquakes 地震は、雪崩、崩壊、洪水、津波などの自然災害を引き起こすことが多いが、亀裂、地盤の液状化、振動など、地震特有の脅威もある。 亀裂 Fissures 亀裂やその他の地割れは建造物を不安定にすることがある。しかし、より直接的には、クリーチャーが亀裂に落ちて[殴打]ダメージを受けることにつながる。 地盤の液状化 Soil Liquefaction 液状化現象とは、粒状の小片が揺れ動くことで、一時的に固体でなくなり、液状になることだ。これが土壌に起こると、クリーチャーや建物全体が地面に沈んでしまうことさえある。より具体的なルールとしてアースクウェイク呪文と同様の処理を使えるが、この呪文はある特定の種類の局所的な地震を表しているに過ぎない。 振動 Tremors 震動はクリーチャーを伏せ状態にし、他の物体に衝突させ、震動の大きさに応じた[殴打]ダメージを与える。 洪水 Floods 緩やかな洪水は構造物にダメージを与え、クリーチャーを溺れさせる。鉄砲水は固体ではなく液体の塊であることを除いて、雪崩と似ている。クリーチャーが生き埋めになる代わりに、鉄砲水はクリーチャーや巨大な物体さえも運び去り、クリーチャーに衝撃を与え、溺れさせる可能性がある。洪水のルールは478ページを参照。 砂嵐 Sandstorms 軽い砂嵐や砂塵嵐は風の強い雨嵐ほど危険ではないが、クリーチャーの肺にダメージを与え、長距離に渡って病気を広げる可能性がある。激しい砂嵐は砂にさらされた者に毎ラウンド小規模の[斬撃]ダメージを与えるか、クリーチャーが窒息しないように息を止めることを強いるか、あるいはその両方を行う。 竜巻 Tornadoes 竜巻の通り道では風の状態によって厳しい状況ペナルティが与えられる。ただし、通常なら吹き飛ばされるクリーチャーは代わりに竜巻の渦に拾われ、最終的に排出されるまで渦の中を上昇しながら、飛び交う破片から特大規模の[殴打]ダメージを受ける(落下による[殴打]ダメージも受ける)。 竜巻は通常、1ラウンド300フィート(時速おおよそ30マイル)の速度で移動する。通常、竜巻は数マイル移動して消滅する。静止している竜巻や、もっと速く移動する竜巻もある。 津波 Tsunamis 津波は鉄砲水と同じような危険性を持つが、より大きく、より破壊的だ。津波は高さ100フィート以上にもなり、波そのものと、津波によって巻き上げられた瓦礫によって、その破壊経路にある建物やクリーチャーに特大規模の[殴打]ダメージを与える。 火山の噴火 Volcanic Eruptions 火山の噴火は、火山灰、溶岩弾、溶岩流、火砕流、噴気孔のあらゆる組み合わせを含むことがある。 火山灰 Ash 火山噴火から生じた灰は高温で、1分毎に小規模の[火炎]ダメージを与える。火山灰は濃霧のように視界を制限し、空気を吸えなくすることがあるため、キャラクターは窒息しないように息を止める必要がある。 火山灰の雲は火山雷を発生させ、通常中程度の[雷撃]ダメージを与えるが、個々のクリーチャーに命中する可能性は極めて低い。また、大気中の灰は数週間から数ヶ月にわたって太陽を遮り、気温の低下と長い冬をもたらす。 火山弾 Lava Bombs 圧力が溶岩を空へと発射し、それは火山弾として落ちてくる。溶岩の塊は飛ぶと固まり、衝撃で粉々になる。少なくとも中程度の[殴打]ダメージと中程度の[火炎]ダメージを与える。 溶岩流 Lava Flows 溶岩流は火山を象徴する脅威である。通常の地面では1ラウンド毎に5~60フィートしか移動しないため、キャラクターはしばしば逃げ切ることができる。しかし、急峻な火山管や水路では1ラウンド毎に300フィートまで移動できる。溶岩は熱を発し、クリーチャーに接触する前から小規模の[火炎]ダメージを与える。全身が溶岩に浸かると毎ラウンド特大規模の[火炎]ダメージを与える。 火砕流 Pyroclastic Flows 高温のガスと岩石の破片が混ざった火砕流は、溶岩よりはるかに速く広がり、時にその速度は1ラウンド4,000フィート以上にもなる。火砕流は最も熱い溶岩よりは低い温度だが、集落全体を覆い尽くすことができる。火砕流は雪崩と同様に扱うが、ダメージの半分は[火炎]ダメージだ。 噴気 Vents 地面からは蒸気が噴出する。これは広範囲に中程度以上の[火炎]ダメージを与える。地表から放出される酸性ガスや毒ガスは、小規模以上の[強酸]ダメージや[毒]ダメージを与える障害地形を広範囲に作り出すことがある。 自然火災 Wildfires 自然火災は、主に線状の炎が一方向に進んでいく。森林では、この線は1ラウンドに70フィート(時速7マイル)ほど進むことがある。平地では日陰がなく、湿度が比較的低いため、最大でその2倍の速度で移動する。火災の燃えさしは風と上昇する熱気によって運ばれ、起点となった自然火災から10マイルも離れた場所で狭い領域に火災を作ることがある。自然火災には、炎、熱、煙の3つの脅威がある。 火 Flames 炎は障害地形である。通常は中程度のダメージを与え、キャラクターを着火させる可能性がある。着火すると中程度の持続的[火炎]ダメージを与える。小さな火災から生じる炎は、大きな自然火災の前からやってくる熱よりも危険度が低いことが多い。 熱 Heat 自然火災は前に進む線の前方の気温を上昇させる。火が到達したときには華氏1,500度(摂氏816度)知覚に達し、溶岩と同程度に高温になる。線からある程度離れた場所では毎ラウンド小規模の[火炎]ダメージを与え、自然火災の中にいるものには特大規模の[火炎]ダメージにまで増加する。 煙 Smoke 風は煙を自然火事自体の前方遠くまで運んでしまう。煙はその濃さに応じて視覚に応じた知覚判定に状況ペナルティを与える。大量の煙を通して見るクリーチャーを視認困難状態にし、半マイル以下ではすべての視界を遮断する。自然火事の近くやその中では、煙と熱せられた空気の組み合わせで、キャラクターは窒息しないように息を止めなければならない。 障害 Hazards ダンジョンには、財宝を守るための巧妙な罠が数多く存在する。ダーツを発射したり重い瓦礫を落としたりする機械仕掛けのものから、爆発して炎を出す魔法のルーンまで、さまざまな罠が存在する。また、罠以外にも、自然災害や奇妙な霊障など、さまざまな危険に遭遇する可能性がある。 モンスターと障害 Monsters and Hazards NPCやモンスターのデータには、通常、習熟度ランクが記載されていない。ほとんどの場合、それらはPCのように危険の探知や無効化に対処する必要がないため、この情報は必要ない。しかし、PCがモンスターの通り道にある罠を再設置したり、モンスターを危険な場所に誘い込む計画を立てたりする場合は、この情報を即興で作成することができる。 知覚については、通常3〜4レベルで熟練、8〜9レベルで達人、16〜17レベルで伝説となる。もしそのモンスターの技能に〈盗賊〉が含まれていれば、そのレベルに応じた最高の習熟度(1レベルで修得、3レベルで熟練、7レベルで達人、15レベルで伝説)であり、そうでなければ未修得である。もちろん、個々のモンスターがこの指針から逸脱することもあるだろう。特に無意識だったりあまり知覚的でない場合は。 障害の探知 Detecting a Hazard あらゆる障害には、その危険を引き起こす何らかのトリガーがある。罠であれば足かけ紐や感圧板などの機構が、環境障害や霊障であれば単純に近づくことがトリガーとなる。キャラクターが障害に近づいたとき、障害が発動する前に、発動する場所や仕掛けを見つけられる可能性がある。障害が最低習熟度を必要とするものでない限り、キャラクターは自動的に障害を探知する判定を行える。 探索モードでは、PCが最初に障害の出現する一般区域に入ったときに、パーティが障害を検出するかどうかを判断する。障害に最低習熟度の記載がない場合、各PCについて、障害の〈隠密〉DCに対する非公開の知覚判定を行なう。最低習熟度ランクが設定されている障害については、誰かが自発的に捜索している(探索モードで“捜索”連続行動を使用するか、遭遇時に“捜す”アクションを使用するか)場合、かつ習熟度がそのランク以上である場合にのみロールする。成功した者はその危険を認識し、その者が気づいたことが説明される。 最低習熟度ランクを持たない魔法の障害はディテクト・マジックを使用することで発見できる。ただし、この呪文は障害を理解したり無効化したりするのに十分な情報を提供するものではなく、障害の存在を明らかにするだけだ。 魔法の障害の性質を完全に把握して無効にするには、より強力な魔法を使うか、“魔法の識別”あるいは“知識の想起”による技能判定に成功する必要がある。最低習熟度ランクを持つ魔法の障害はディテクト・マジックでは発見できない。 障害のトリガー Triggering a Hazard 一行が障害を検出できず、障害のトリガーが通常の移動(床板を踏む、歩きながら魔法センサーを通過するなど)であった場合、障害のリアクションが発生する。誰かが直接環境を操作したときにのみ発生する障害(例えば扉を開けるなど)は、PCが明示的にその行動を取った場合にのみリアクションが発生する。 リアクションあるいはフリー・アクション Reaction or Free Action ほとんどの障害には、トリガーされたときに起こるリアクションがある。単純な障害の場合、このリアクションがその障害の効果の全てとなる。複合障害の場合、そのリアクションで障害がイニシアチブをロールし、戦闘を開始するか、既に進行中の戦闘に参加して、障害は複数ラウンドに渡って脅威を与え続ける。障害の中にはリアクションの代わりにフリー・アクションを誘発させるものもある。例えば、流砂は1ラウンドに複数のクリーチャーを吸い込むことができる。 定期処理 Routine 複合障害は通常、定期処理と呼ばれる、あらかじめプログラムされた一連のアクションに従う。誘発されると、障害はまず最初のリアクションを行う。次に、PCがまだ遭遇モードになっていなければ、イニシアチブをロールする。この場合、障害はその〈隠密〉修正値を用いてイニシアチブをロールする。 この後、その障害は毎ラウンド、そのイニシアチブで定期処理を行う。障害が毎ラウンド行なえる行動の回数やその用途は、障害によって異なる。 障害の再設置 Resetting a Hazard 障害の中には、再設置することで再びトリガーを満たせるようになるものもある。これは、流砂のように24時間後に自動的に再設置されるものと、罠の扉を閉めなければ再び隠れることができない隠し穴のように、手動で行われるものがある。 障害の解除 Disabling a Hazard 罠を解除する最も汎用性の高い方法は、〈盗賊〉技能の“装置無力化”アクションだが、ほとんどの機械式の罠は単に壊すこともできるし、魔法の罠も大抵は打ち消すことができる。環境障害は〈自然〉や〈生存〉で、霊障は〈伝承学〉や〈宗教〉で克服できることが多い。障害を無効にするために必要な技能とDCは、障害のデータに記載されている。“装置無力化”を使用するのと同様、これらの技能を用いた罠の解除は2アクションの連続行動で同じ成功段階を用いるが、その連続行動はGMが決めた異なる特性を持つかもしれない。障害の探知と同様、障害の解除にはその技能の習熟ランクが必要となる場合がある。 障害の解除には、まず障害を検知する(あるいは指摘される)必要がある。障害の解除は、それがすでに作動しているかどうかにかかわらず試みることができる。しかし障害によっては、一旦リアクションが起きると(特にそれを再設置する方法がない場合は)もはや危険をもたらさないものもある。 ほとんどの障害では、データに記載されたDCに対する技能判定に成功すると、障害をトリガーすることなく無効化することができる。障害を解除する他の手段は障害のデータに記載されており、適切に無効化するために必要な追加の手順も併記されている。 障害を解除するためのロールに大失敗すると(魔法の障害を無力化するためのロールに大失敗した場合も含む)、その障害が発動する。 障害の中には解除するために複数回の判定を必要とするものがあるが、これは特に複雑な構成要素を持っていたり、いくつかの独立した部分を持っていたりするためである。 複雑な構成要素を持つ障害では、障害を無効にするための判定で大成功すると、1つの構成要素に対して成功2回と扱われる。 障害へのダメージ Damaging a Hazard キャラクターは障害を慎重に無効化しようとするのではなく、ただ叩き割るかもしれない。機械式の罠やその他の物理的な障害にダメージを与えることは、物体にダメージを与えるのと同じように機能する。ほとんどの場合、後述する「障害への攻撃」で説明するように、障害を攻撃すると障害はトリガーされる。障害のHPがBT以下になると、その障害は破損状他おいとなってトリガーされなくなるが、修理することはできる。HPが0になると破壊され、修理できなくなる(物体へのダメージについては第6章272ページを参照)。 障害のAC、適用可能なセーヴィング・スロー修正値、硬度、HP、BTはそのデータに記載されている。これらのデータが記載されていない障害は、そのデータを対象とした何かの影響を受けることはできない。例えば、HPはあるがBTはない障害は破損状態にすることはできないが、破壊はできる。特に断りのない限り、障害は物体が完全耐性を持つものに対して完全耐性を持ち、物体を対象としないもので障害を対象とすることはできない。障害の中には、抵抗や弱点だけでなく、追加の完全耐性を持っているものもある。 障害への攻撃 Attacking a Hazard 障害に攻撃を命中させると――特にそれが機械式の罠であれば――通常はトリガーを満たすが、そうでないと判断される場合もある。障害を破壊する攻撃は、状況によっては障害の発生を阻止することができる。障害が複数のパーツで構成されている場合、1つのパーツを破壊しただけで罠がトリガーされることもある。例えば、ある場所に仕掛け線があり、別の場所から攻撃を仕掛ける罠の場合、仕掛け線を切断すると攻撃がトリガーされる可能性がある。一回の攻撃で罠を破壊することはほとんどない。また、これらのルールは攻撃だけでなく、ダメージを与える呪文やその他の効果にも適用される。 障害の修理 Repairing a Hazard キャラクターが破損した障害を修理して機能を回復させることができることもある。これは罠によって異なるので、GMが詳細を決定すること。罠の修理に散乱した部品を集める必要がある場合など、“修理”アクションだけでは不十分な場合がある。「再設置」の項目がある場合は、ダメージの修理に加えて、そこに記載されていることを行う必要がある。 魔法の障害の無効化 Counteracting a Magical Hazard 魔法の障害の中には、ディスペル・マジックと無効化のルールを使って打ち消すことができるものがある。 これらの障害の呪文レベルと無効化DCは、そのデータに記載されている。障害の無効化は、技能判定で障害を解除する場合と同様に処理する。 障害の経験点 Hazard Experience キャラクターは、障害を解除したり、回避したり、単にその攻撃に耐えるなど、障害を克服することで経験点を得る。後で同じ障害が発生した場合、その障害に対するXPは再び得られない。複合障害のXPは同レベルのモンスターのXPと等しく、単純な障害のXPはその1/5である。パーティ・レベル-4より低いレベルの障害は些細なものであり、XPは与えられない。 表10-14:障害のXP Hazard XP レベル XP報酬 単純な障害 複合障害 パーティ・レベル-4 2 XP 10 XP パーティ・レベル-3 3 XP 15 XP パーティ・レベル-2 4 XP 20 XP パーティ・レベル-1 6 XP 30 XP パーティ・レベル 8 XP 40 XP パーティ・レベル+1 12 XP 60 XP パーティ・レベル+2 16 XP 80 XP パーティ・レベル+3 24 XP 120 XP パーティ・レベル+4 30 XP 150 XP 障害のデータ書式 Hazard Format 障害はモンスターと同じデータ書式で現される。データの例に続けて、書式に関するいくつかの補足が書かれている。 障害名 障害[レベル] Hazard Name 特性 〈隠密〉 この項目には、複合障害のイニシアチブに用いる〈隠密〉修正値、または単純な危険を検知するための〈隠密〉DCが記載されている。危険を検知するための最低習熟度があれば、括弧内に記載している。ディテクト・マジックで障害を探知できる場合は、その情報もここに記載する。 説明 ここは障害がどのようなものかを説明するもので、特別なルールが含まれている場合もある。 解除 障害を解除するのに必要な技能判定のDCがここに記載されている。障害が無効化できるなら、呪文レベルと無効化DCが括弧内に記載される。 AC 障害のAC。;セーヴィング・スロー 障害のセーヴ。通常、霊障のみが意志セーヴの対象になる。 硬度 障害の硬度。;HP 障害のHP、括弧内にBT。;完全耐性 障害の完全耐性。;弱点 あれば障害の弱点。;抵抗 あれば障害の抵抗 アクション種別 [reaction] あるいは [free-action] 障害が使用するリアクションもしくはフリー・アクション。;トリガー 障害を発生させるトリガーがここに示される。効果 単純な障害の場合、個々に記載された効果だけで終わることが多い。複合障害の場合、これによって障害がイニシアチブをロールすることもあるだろう。 定期処理 この項目では、複合障害が遭遇時の各ターンで何を行うかを説明している。「定期処理」の後の括弧内の数字は、その障害がターン毎に使用できるアクション数を示している。単純な障害にはこの項目はない。 アクション 障害が使用できるアクションが全て個々に示される。通常、近接攻撃もしくは遠隔攻撃がこれに当たる。 再設置 障害が再設置可能な場合、その情報が個々に示される。 レベル基準のDC Level-Based DCs 障害のレベルは、それがどのレベルのパーティに適しているかを示している。毒や呪いなど、呪文以外のものが含まれている場合、そのレベルが障害のレベルとなる。 特性 Traits 代表的な障害の特性には、罠(侵入者に危害を加える構造)、環境(自然の障害)、霊障(霊による現象)が挙げられる。罠には、魔法によるものか機械式かを示す特性がある。イニシアチブと定期処理を持つ障害には、複合の特性がある。 〈隠密〉もしくは〈隠密〉DC Stealth or Stealth DC 複合障害には〈隠密〉DCではなく、イニシアチブに使用する〈隠密〉修正値が書かれている。DCが必要な場合、DCはこの修正値+10に等しい。 名前順に並べた障害 Hazards By Name 障害は、レベルと複雑さによって並べられる。名前から障害を調べる必要がある場合は、次の表を使用すること。 障害名 レベル 複雑度 闇面鏡 14 複合 イエロー・モールド 8 単純 溺れ穴 3 複合 回転刃の柱 4 複合 火球のルーン 5 単純 隠した穴 0 単純 鎌の刃 4 単純 禁忌の槌 11 単純 幻覚粉の罠 6 単純 斬首執行機 19 単純 次元界の裂け目 13 単純 終末戦争のオーブ 23 単純 招来ルーン 1 複合 底なしの落とし穴 9 単純 帯電掛け金のルーン 3 単純 叩きつける扉 1 単純 血に飢えた衝動 10 単純 凍結の刹那 17 単純 毒ダーツの廊下 8 複合 毒の鍵 1 単純 念動力による群衆の罠 12 複合 バンシーの交響曲 18 複合 悲嘆の車輪 6 複合 ファラオの防護 7 単純 変身の罠 12 単純 やり直し 21 単純 槍の射出装置 2 単純 溶岩路 10 複合 流砂 3 複合 単純な障害 Simple Hazards 単純な障害は一度だけリアクションし、その後再設置されない限り脅威はなくなる。 隠した穴 障害0 Hidden Pit 機械式 罠 〈隠密〉 DC 18 (落とし戸が装置無力化されているか破壊されている場合は0) 説明 木製の落とし戸が一辺10フィート深さ20フィートの落とし穴を覆っている。 解除 〈盗賊〉DC 12[落とし戸の除去] AC 10;頑健+1、反応+1 落とし戸/Trapdoor 硬度3、落とし戸のHP 12(BT 6);完全耐性 クリティカル・ヒット、物体の完全耐性、[精密]ダメージ 落とし穴/Pitfall [reaction] トリガー クリーチャーが落とし穴の上を歩く。 効果 トリガーとなったクリーチャーは穴へと落下し、落下ダメージを受ける(通常は10の[殴打]ダメージ)。クリーチャーは落下を避けるために“しがみつき”リアクションを使用できる。 再設置 クリーチャーがこの罠へと落下することはあるが、この罠を再び隠しておくには落とし戸を手動で再設置しなければならない。 毒の鍵 障害1 Poisoned Lock 機械式 罠 〈隠密〉 DC 17(修得) 説明 錠前の鍵穴の近くに、バネ仕掛けの毒針が隠されている。罠を無効化または破壊しても、鍵は無効化または破壊されない。 解除 〈盗賊〉DC 17(修得)[バネ仕掛け] AC 15;頑健+8、反応+4 硬度 6、HP 24(BT12);完全耐性 クリティカル・ヒット、物体の完全耐性、[精密]ダメージ バネ/Spring [reaction] (攻撃);トリガー クリーチャーが鍵を開けるか“解錠”しようと試みる。 効果 トゲが伸び、トリガーとなったクリーチャーを攻撃する。 近接 トゲ+13、ダメージ 1の[刺突]ダメージ、加えてクラジス毒 クラジス毒/Cladis Poison(毒);セーヴィング・スローDC 19頑健;最大持続時間 4時間;第1段階 1d6の[毒]ダメージ、加えて吸精状態1(1時間);第2段階 2d6の[毒]ダメージ、加えて吸精状態2(1時間);第3段階 3d6の[毒]ダメージ、加えて吸精状態2(1時間) 叩きつける扉 障害1 Slamming Door 機械式 罠 〈隠密〉 DC 17(修得) 説明 床の感圧板と廊下の天井に隠された石板がつながっている。 解除 〈盗賊〉DC 15(修得)[石板が落下する前に床の板に対して行う] AC 16;頑健+10、反応+2 硬度 5、HP 20(BT10);完全耐性 クリティカル・ヒット、物体の完全耐性、[精密]ダメージ 叩きつける封鎖/Slam Shut [reaction] トリガー いずれかの床板に圧力がかかる。効果 扉は倒れ、廊下が封鎖される。石板は落下時、その下または隣接する者に3d8の[殴打]ダメージを与え、無作為な方向にそのマスからクリーチャーを押し出す。DC17の反応セーヴに成功したクリーチャーはダメージを受けず、無作為な方向へ転がり出る。大成功すると、自由に方向を選択できる。 倒れた床板を持ち上げるには、DC25の〈運動〉判定に成功する必要がある。床板に攻撃が命中すると罠が起動する。床板は罠と同じACとセーヴを使用するが、硬度12、HP48(BT24)である。 槍の射出装置 障害2 Spear Launcher 機械式 罠 〈隠密〉 DC 20(修得) 説明 槍を装填した穴が5フィート四方の床板1つとつながっている。 解除 〈盗賊〉DC 18(修得)[床板あるいは壁の穴に対して行う] AC 18;頑健+11、反応+3 硬度 8、HP 32(BT16);完全耐性 クリティカル・ヒット、物体の完全耐性、[精密]ダメージ 槍/Spear [reaction] (攻撃);トリガー 床板に圧力がかかる。効果 罠は槍を射出し、床板の上にあるクリーチャーあるいは物体に攻撃を1回行う。 遠隔 槍+14、ダメージ 2d6+6[刺突] 帯電掛け金のルーン 障害3 Electric Latch Rune 雷撃 力術 魔法 罠 〈隠密〉 DC 20(修得) 説明 扉の掛けがねに彫刻された不可視状態のルーンによって、強力な放電が発生する。 解除 〈盗賊〉DC 20(熟練)[電気を流さないようにルーンをかき消す]、もしくはディスペル・マジック(2レベル;無効化DC18)[ルーンの無力化] 感電/Electrocution [reaction](秘術、雷撃、力術);トリガー クリーチャーが直接、あるいは道具を使って扉の掛け金をつかむ。効果 罠はトリガーとなったクリーチャーに3d12の[雷撃]ダメージを与える(DC22の基本反応セーヴ)。 鎌の刃 障害4 Scythe Blades 機械式 罠 〈隠密〉 DC 23(修得) 説明 長さ15フィートの天井の溝に隠された2つの刃は、どちらも鉄線につながっている。 解除 〈盗賊〉DC 21(修得)[それぞれの刃の解除] AC 21;頑健+12、反応+8 硬度 11、HP 44(BT22);完全耐性 クリティカル・ヒット、物体の完全耐性、[精密]ダメージ 落下する鎌/Falling Scythes [reaction] (攻撃);トリガー 仕掛け鉄線が引かれたか切られたかした。効果 両方の刃が振り下ろされ、それぞれが天井の溝の下にいる全てのクリーチャーを1回ずつ攻撃する。 近接 鎌+17 (致命的:1d12)、ダメージ 2d12+4[斬撃];複数回攻撃ペナルティを受けない 再設置 この罠は15分後に再設置される。 火球のルーン 障害5 Fireball Rune 力術 火炎 魔法 罠 〈隠密〉 DC 24(熟練) 説明 不可視状態のルーンが、半径20フィートの球状の不可視状態の魔法の感覚器官を生み出す。 解除 〈盗賊〉DC 22(熟練)[感覚器官をトリガーすることなくルーンを消す]、もしくはディスペル・マジック(3レベル;無効化DC20)[ルーンの無力化] 火球/Fireball [reaction](秘術、力術、火炎);トリガー 生きているクリーチャーが感覚器官の範囲に侵入する。効果 ルーンはトリガーとなったクリーチャーのマスを中心に火球を炸裂させる。これは3レベルのファイアーボール呪文であり、6d6の[火炎]ダメージを与える(DC22の基本反応セーヴ)。 幻覚粉の罠 障害6 Hallucination Powder Trap 機械式 罠 〈隠密〉 DC 24(熟練) 説明 扉のノブなどの掛け金に、小型の爆薬をつけた幻覚製の粉が入った管をつなぐ。 解除 〈盗賊〉DC 26(熟練)[雷管を打つ槌を解除する] AC 24;頑健+0、反応+0 硬度 0、HP 1;完全耐性 クリティカル・ヒット、物体の完全耐性、[精密]ダメージ 粉の爆発/Powder Burst [reaction] (精神、毒);トリガー 掛け金が開くか管が破壊されるかする。効果 管は爆発し、30フィートの円錐形に幻覚剤の粉を撒き散らす。円錐内にいるすべてのクリーチャーはDC24の意志セーヴを行わねばならない。失敗すると1ラウンドの間混乱状態になり、1d4時間の間知覚判定と精神効果に対するセーヴに-2の状態ペナルティを受ける。大失敗の場合、ペナルティは代わりに-4になる。 ファラオの防護 障害7 Pharaoh’s Ward 魔法 罠 〈隠密〉 DC 25(熟練) 説明 入り口の境界に呪いが吹き込まれている。 解除 〈盗賊〉DC 27(達人)[魔法をトリガーすることなく楣石を丹念に取り除く]、もしくはディスペル・マジック(4レベル;無効化DC25)[ルーンの無力化] 侵入者への呪い/Curse the Intruders [reaction](呪い、信仰、死霊術);トリガー 墓所の封印が外から破られる。効果 60フィート以内にいる生きているクリーチャーはそれぞれDC23の意志セーヴを行わねばならず、失敗するとファラオの呪いの目標となる。呪われたクリーチャーは頑健セーヴに-2の状態ペナルティを受け、目標が受ける自然治癒および魔法による治癒の回復量は半分になる。この呪いはリムーヴ・カースあるいは同種の魔法によって除去されるまで持続する。 再設置 扉が閉ざされると罠は再設置される。 イエロー・モールド 障害8 Yellow Mold 環境 菌類 〈隠密〉 DC 28(修得) 説明 毒のあるかびの胞子が近くのクリーチャーを襲う。 解除 〈生存〉DC 26(熟練)[胞子をトリガーすることなくかびを取り除く] AC 27;頑健+17、反応+13 HP 70;完全耐性 クリティカル・ヒット、物体の完全耐性、[精密]ダメージ 胞子の爆発/Spore Explosion [reaction] トリガー クリーチャーがかびのマスに侵入したかかびにダメージを与える。直接日光にさらされていたり[火炎]ダメージを受けていたりすると、かびはこのリアクションを使用できない。効果 トリガーとなったクリーチャーとそこから10フィート以内にいる全てのクリーチャーは、イエロー・モールドの胞子にさらされる。 イエロー・モールドの胞子/Yellow Mold Spores(吸入型、毒)毒の持続時間が終了した後も奉仕による吸精状態は持続する。;セーヴィング・スローDC 26頑健;最大持続時間 6ラウンド;第1段階 1d8の[毒]ダメージ、加えて吸精状態1 (1ラウンド);第2段階 2d8の[毒]ダメージ、加えて吸精状態2 (1ラウンド);第3段階 3d8の[毒]ダメージ、加えて吸精状態3 (1ラウンド) 底なしの落とし穴 障害9 Bottomless Pit 魔法 機械式 罠 〈隠密〉 DC 30 (落とし戸が解除されているか破壊されている場合は0)、あるいはディテクト・マジック 説明 鉄製の落とし戸が10フィート四方の無限に続く穴を覆っている。 解除 〈盗賊〉DC 28(修得)[落とし戸の除去] AC 28;頑健+12、反応+12 落とし戸の硬度 9、落とし戸のHP 36(BT18);完全耐性 クリティカル・ヒット、物体の完全耐性、[精密]ダメージ 無限の落とし穴/Infinite Pitfall [reaction] トリガー クリーチャーが落とし戸の上を歩く。効果 トリガーとなったクリーチャーは落下し、永遠に落下し続ける可能性がある。そのクリーチャーは、落下を避けるために“しがみつき”を試みることができる。壁の“登攀”と“しがみつき”DCは26。 落とし穴には手を引っ掛けられる場所が多くあるので、落下するクリーチャーは6秒ごとに再度“しがみつき”を試みることができる。成功すれば、その地点から“登攀”を開始できる(ただし、クリーチャーの落下距離によっては“登攀”には非常に長い時間が必要になることもある)。クリーチャーは終わりなく落下するので、落下中に休息や呪文を準備することさえできる。通常、落下中に落としたアイテムは永遠に失われる。 再設置 罠に落ちるとクリーチャーが永遠に落下することに変わりはないが、罠を再び隠すには、罠の落とし戸を手動で再設置する必要がある。 血に飢えた衝動 障害10 Bloodthirsty Urge 霊障 〈隠密〉 DC 31(修得) 説明 凶悪な精神の残響に取り憑かれた物体が、近づく者を殺そうとしている。 解除 〈宗教〉DC 29(達人)[死霊を祓う]、もしくは〈交渉〉DC 31(熟練)[言い含める] 根絶/Quietus [reaction](即死、感情、恐怖、幻術、精神、伝承);トリガー 取り憑かれた物体の10フィート以内にクリーチャーが移動する。効果 霊障はトリガーとなったクリーチャーを操り、自分を攻撃させようと試みる。クリーチャーはDC29の意志セーヴを試みなければならない。 大成功 目標はなんの効果も受けない。 成功 目標は自分に対して“打撃”を1回行い、それは自動的に命中する。加えて、目標は恐れ状態1になる。 失敗 目標は自分に対して“打撃”を1回行い、それは自動的にクリティカル・ヒットする。加えて、目標は恐れ状態2になる。 大失敗 目標は頑健セーヴを試みる。目標が成功すると、代わりに目標は失敗と同じ効果を受ける。 失敗した場合、目標のヒット・ポイントが0に減少して死亡する。 禁忌の槌 障害11 Hammer of Forbiddance 魔法 機械式 罠 〈隠密〉 DC 30(熟練) 説明 建物の入り口にある巨大な槌が振り下ろされ、範囲内に侵入したクリーチャーにダメージを与え、押し戻し、それ以上進ませないようにする。 解除 〈盗賊〉DC 28(熟練)[槌が振り下ろされないようにするため槌本体に1回と接合部に1回ずつ] AC 32;頑健+24、反応+15 槌の硬度 22、槌のHP 88(BT44);接合部の硬度 16、接合部のHP 64(BT32);完全耐性 クリティカル・ヒット、物体の完全耐性、[精密]ダメージ 侵入能わず/Forbid Entry [reaction](防御術、攻撃、信仰);トリガー クリーチャーが入口を通って侵入を試みる。効果 槌が振り下ろされ、トリガーとなったクリーチャーに対して攻撃を1回試みる。 近接 槌+28、ダメージ 6d8+20[殴打]、加えて目標は10フィート後ろに押しやられ、DC30の意志セーヴを行わねばならず、失敗するとこの建造物に24時間侵入できない(クリティカル・ヒットの場合、目標は自動的に意志セーヴに失敗する);複数回攻撃ペナルティを受けない 再設置 この罠は1ラウンド経過後に再設置される。そのため、1ラウンド後には再び振り下ろせるようになる。 変身の罠 障害12 Polymorph Trap 魔法 罠 〈隠密〉 DC 34(修得) 説明 ドルイドの秘文は不審者を動物に変えようとする。 解除 〈盗賊〉DC 32(達人)[秘文の粉を害を受けることなく吸い取る]、もしくはディスペル・マジック(6レベル;無効化DC30)[秘文の無力化] 有害な変身/Baleful Polymorph [reaction](始原、変性術);トリガー クリーチャーがドルイド語の合言葉を口にすることなく碑文の30フィート以内を移動する。 効果 クリーチャーはベイルフル・ポリモーフ(DC32 の意志セーヴ)の目標になる。 次元界の裂け目 障害13 Planar Rift 魔法 罠 〈隠密〉 DC 35(修得) 説明 裂け目はクリーチャーらを他の次元界に引きずり込もうとする(GMが特定の次元界を選択する)。 解除 〈盗賊〉DC 33(達人)[次元界に強くつながっている物体を用いて裂け目の封印を構築する]、もしくはディスペル・マジック(7レベル;無効化DC31)[裂け目の無力化] 大いなる彼方へ/Into the Great Beyond [reaction](召喚術、始原、瞬間移動);トリガー クリーチャーが裂け目から10フィート以内に移動する。効果 トリガーとなったクリーチャーと、裂け目から30フィート以内にいる全てのクリーチャーは別の次元界へと引きずり込まれる。各クリーチャーはこの運命を避けるためにDC33の反応セーヴを試みることができる。 凍結の刹那 障害17 Frozen Moment 魔法 罠 〈隠密〉 DC 40(達人) 説明 結界魔法が侵入者や盗賊を乱れた時の流れに閉じ込めようとする。 解除 〈盗賊〉DC 38(伝説;呪文の無数の構成要素を瞬時に分解する)、もしくはディスペル・マジック(9レベル;無効化DC36;罠がトリガーされる前にその効果を無効化するか、罠が発動したあとにクリーチャー1体の効果を無効化する) 時流の漂流/Adrift in Time [reaction](伝承、変性術);トリガー クリーチャーが守護された物体もしくは範囲に触れる。効果 トリガーとなったクリーチャーとクリーチャーから30フィート以内にいるすべてのクリーチャーは、乱れた時間の流れの中に閉じ込められる(DC38の頑健セーヴにより無効化)。クリーチャーの精神の動きは非常に速く、1ラウンドが100年続いているように感じるが、彼らの身体と魔法のエネルギーの動きは非常に遅く、“知識の想起”以外のアクションを行えない。効果を受けたクリーチャーは直ちに、そして凍った刹那に囚われている間に現実時間が1分経過するたびに、ウォープ・マインド呪文に対するDC36の意志セーヴィング・スローを試みなければならない。この効果の持続時間は無制限だが、無効化できる。 斬首執行機 障害19 Vorpal Executioner 機械式 罠 〈隠密〉 DC 43(熟練) 説明 不気味で鋭利なのこぎり刃が降りてきて、部屋中に複雑に入り組んだ溝を伝って、中にいる者の首を切ろうとする。 解除 〈盗賊〉DC 41(熟練)[のこぎり刃が部屋を駆け抜けるのを防ぐために、異なる4つの接合部でのこぎり刃の通りうる経路を全て塞ぐ] AC 43;頑健+32、反応+32 硬度 30;HP 接合部毎に120(BT60);完全耐性 クリティカル・ヒット、物体の完全耐性、[精密]ダメージ 完全断首/Total Decapitation [reaction](攻撃、即死);トリガー クリーチャー1体がこの部屋から出ようとする。効果 のこぎり刃は決められた経路に沿って移動し、部屋の中にいる各クリーチャーに1回ずつ“打撃”を行う。その際、斬首できる可能性を最大化するため、ねじりながら高さを変化させる。 近接 のこぎり刃+40 (致命的:d12)、ダメージ 6d12+25[斬撃]加えて断首;複数回攻撃ペナルティを受けない 断首/Decapitation クリティカル・ヒットにおいて、目標はDC39の頑健セーヴを行わねばならない。首がなくても生存できない限り、失敗すると目標は即座に死亡する。 再設置 この罠は1ラウンドを掛けて再設置され、1ラウンド後には再度トリガーされることができる。 やり直し 障害21 Second Chance 魔法 罠 〈隠密〉 DC 44(伝説) 説明 物や場所に結びついた強力な結界魔法は、クリーチャーとその味方の年齢を逆行させようとする。 解除 〈盗賊〉DC 46(伝説)[目を閉じて、呪文を一つずつ分解しながら、鮮明な人生の記憶を、最も古い記憶から順番に思い出していく] 原初へ/In the Beginning [reaction](信仰、変性術);トリガー クリーチャーが物体を盗み、ないし場所に侵入しようとする。もし誰かが代理人や手先を使って盗みや侵入をした場合、罠はどんな遠距離にいたとしても、それが他の次元界であったとしても、真犯人ないし加害者をも正確に目標とする。効果 発動したクリーチャーと最大5人の共謀者は瞬時に幼児に戻り、生前に得た全ての記憶、クラス能力、その他獲得した技能を失う(DC44の頑健セーヴにより無効化)。 この効果を反転させることはほぼ不可能で、ウィッシュのような強力な魔法が必要となる。 終末戦争のオーブ 障害23 Armageddon Orb レア 魔法 罠 〈隠密〉 DC 10もしくはディテクト・マジック 説明 神ロヴァググの血一滴で鍛えられたこの赤く濁った球体は、特定の条件を満たすと点から火の雨を降らせる。 解除 〈盗賊〉DC 48(伝説)[盗賊道具にアスモデウスとサーレンレイを表す相を込め10分かけてオーブの力を抜き取る。この判定を行うキャラクターはオーブがなくなるまで毎ラウンド5ポイントの[火炎]ダメージを受ける] 燼滅/Burn It All [reaction](即死、信仰、力術、火炎);トリガー 罠の作成者が設定した特別な条件が発生する。一般には作成者の死だ。効果 半径100マイルの範囲に空から火の雨が降り注ぎ、その範囲にいるクリーチャーや物体に10d6の[火炎]ダメージを与える。各クリーチャーや物体はDC46の基本反応セーヴを試みることができる。このダメージによってヒット・ポイントが0になったクリーチャーは即座に死亡する。このダメージは森を完全に焼き払ったり、山や都市全体を平らにするほどではないが、通常、範囲内のほとんどのクリーチャーを殺せるほどのものだ。 複合障害 Complex Hazards 複合障害は遭遇モードでモンスターと同様に振る舞い、イニシアチブをロールしアクションを行う。しかし通常定期処理として自動化された振る舞いをする。 招来ルーン 障害1 Summoning Rune 複合 魔法 罠 〈隠密〉 +7(修得) 説明 半径10フィートの不可視の魔法の感覚器官の雲が、壁や床にある招来するクリーチャー大の不可視のルーンを取り囲む。 解除 〈軽業〉DC 15[罠をトリガーすることなく近づく]の後に〈盗賊〉DC 17(修得)[ルーンの消去]もしくはディスペル・マジック(1レベル;無効化DC15)[ルーンの無力化] モンスター招来/Summon Monster [reaction](秘術、召喚術、招来);トリガー クリーチャーが魔法の感覚器官の雲に侵入する。効果 この罠は特定のレベル1のクリーチャー(罠作成時に決定する)を1体招来する。クリーチャーはイニシアチブをロールして2d6ラウンドその場にとどまる。その後呪文は終了してクリーチャーは消滅する。持続時間が切れる前に誰かが罠を無効化した場合も、そのクリーチャーは消滅する。招来されたクリーチャーは毎ラウンド3アクションを使用でき、他の招来クリーチャーと異なりリアクションを使用できる。 再設置 罠は毎日夜明けに再設置される。 招来ルーンの改良 Upgraded Summoning Runes 君はほぼすべてのレベルの招来ルーンを作ることができる。このルーンは、罠のレベルに等しいレベルのクリーチャーを招来する。表10-5:レベル基準DCで罠のレベルを使用し、困難の調整(+2)を適用して、〈盗賊〉DCと呪文DCを決定する。罠の〈隠密〉修正値はこの数値-10に等しい。より強力な招来ルーンは通常、見つけるために熟練以上の知覚を必要とする。また、装置無力化にはより高い熟練度の〈盗賊〉を必要とすることもある。 溺れ穴 障害3 Drowning Pit 複合 機械式 罠 〈隠密〉 +10(修得);DC 22(熟練)[落とし穴が開いたときに水の噴出があることに気づく] 説明 底に5フィートの水深がある深さ30フィート10フィート四方の穴を落とし戸が覆っている。壁にある4つの水の噴出孔は、隠された水槽に繋がっている。噴出口はそれぞれ別の壁から伸びており、穴の上部から6インチ離れている。 解除 〈盗賊〉DC 18(修得)[噴出孔それぞれの封をする]、〈盗賊〉DC 22(修得)[落とし戸を開ける]、もしくは〈運動〉DC 22[落とし戸に“こじ開け”をする] AC 19;頑健+8、反応+5 落とし戸の硬度 15、落とし戸のHP 60(BT30);噴出孔の硬度 8、噴出孔のHP 32(BT16);完全耐性 クリティカル・ヒット、物体の完全耐性、[精密]ダメージ Pitfall [reaction] トリガー クリーチャーが落とし戸の上を歩く。効果 トリガーとなったクリーチャーは水に落ちる。落下ダメージを受けるが、水に落ちることで5フィート軽減される(通常12の[殴打]ダメージ)。クリーチャーは落下を回避するために“しがみつき”を行える。その後、落とし戸は閉まり、障害はイニシアチブ・ロールを行う。 定期処理(4アクション)罠は、無効化された噴出孔1つにつき、毎ターン1アクションを失う。罠のアクション1つ毎に噴出口から水が注がれ、水深が5フィート増える。 落とし穴が水で満たされると、落とし穴はアクションを使用しなくなり、落とし穴の中にいるクリーチャーは溺れはじめる。 再設置 罠は手動で扉を開き、水槽を再度水で満たせば再設置できる。落とし穴の水を抜かずに再設置することもできるが、効果は薄れてしまう。 流砂 障害3 Quicksand 複合 環境 〈隠密〉 +12(修得)(表面が乱れている場合、-10で最低習熟度なし) 説明 幅15フィートの水と砂の区画は、そこに足を踏み入れたクリーチャーを中に沈めようとする。 解除 〈生存〉DC 18(修得)[表面をかき乱す] 埋没/Submerge [free-action] トリガー 超大型かそれより小さいクリーチャーが流砂の中を歩く。効果 トリガーとなったクリーチャーは腰まで流砂に沈む。まだ行っていない場合、流砂はイニシアチブをロールする。 定期処理(1アクション)そのイニシアチブで、流砂はその中にいる各クリーチャーを引きずり込む。腰まで浸かっていたクリーチャーは首まで浸かり、首まで浸かっていたクリーチャーは砂の中に引き込まれ、窒息しないように息を止めなければならない。流砂の中にいるクリーチャーは、首かそれ以上に沈んでいる場合は1段階だけ身体を上昇させるため、腰までしか沈んでいない場合は5フィート移動するために、DC20の〈運動〉判定で“水泳”を試みることができる。大失敗をした場合、そのクリーチャーは1段階下に引きずりこまれる。流砂から“水泳”して出てきたクリーチャーは障害から逃れ、流砂の区画に隣接したマスで伏せ状態になる。他のクリーチャーはそのクリーチャーを“援護”でき、通常はロープや同様の補助具を使うか、自身のDC20の〈運動〉判定によりそのクリーチャーを引き出そうと試みる。判定の結果はクリーチャーの判定と同じ記述に従う。 再設置 障害は歩いている人を埋没させるが、24時間かけて落ち着くまで、その表面は隠蔽されない。 回転刃の柱 障害4 Spinning Blade Pillar 複合 機械式 罠 〈隠密〉 +11(修得)もしくはDC 26(熟練)[制御パネルに気づくため] 説明 カミソリのように鋭い3枚の回転刃が付いた金属製の柱が床に隠されており、最大8枚の床板にある制御板と30フィート以内にある隠れた制御盤に接続されている。---- 解除 〈盗賊〉DC 21(修得)[2回、柱に対して]、もしくは〈盗賊〉DC 19(熟練)[1回、制御盤で罠全てを停止する]。制御盤を破壊すると、誰でも制御盤を使用して罠を停止することができなくなり、罠が自動的に解除されるのを防ぐことができる(下記の再設置を参照)。 AC 21;頑健+10、反応+12 柱の硬度 12、柱のHP 48(BT24);制御盤の硬度5、制御盤のHP 20(BT10);完全耐性 クリティカル・ヒット、物体の完全耐性、[精密]ダメージ 柱の上昇/Rising Pillar [reaction] (攻撃);トリガー クリーチャーが罠の床タイルの1つを踏む。効果 罠はマスの交点に出現し、もしいれば隣接するクリーチャー1体に回転刃の攻撃を1回行い、その後イニシアチブをロールする。 定期処理(3アクション)この罠は最初のアクションで隣接する各クリーチャーに回転刃による“打撃”を1回ずつ行い、2回目のアクションで無作為な方向に直進し(1d4を振って方向を決定する)、3回目のアクションで隣接する各クリーチャーに対して回転する刃による“打撃”を1回ずつ行う。この罠は複数回攻撃ペナルティを受けない。 移動速度 10フィート 近接 ? 回転刃+12、ダメージ 2d10+5[斬撃] 再設置 この罠は1分後に停止して再設置される。 悲嘆の車輪 障害6 Wheel of Misery 複合 魔法 機械式 罠 〈隠密〉 +16(熟練)[魔法の感覚器官を検知];車輪に気づくDCは0 説明 壁にはめ込まれた華麗な車輪は、6区画に分けられ、それぞれに色のついたルーンが描かれている。 解除 〈盗賊〉DC 26(熟練)[車輪の回転を止める]、〈盗賊〉DC 22(達人)[ルーンそれぞれの消去]、もしくはディスペル・マジック(4レベル;無効化DC22)[ルーンそれぞれの無力化] AC 24;頑健+15、反応+13 硬度 14、HP 56(BT28);完全耐性 クリティカル・ヒット、物体の完全耐性、[精密]ダメージ 車輪の回転/Wheel Spin [reaction] トリガー クリーチャーが感覚器官の検出範囲に侵入する。効果 車輪は回転を始め、イニシアチブをロールする。 定期処理(2アクション)そのイニシアチブで、罠は最初のアクションで回転し、その後停止する。1d6を振って、車輪が回転を止めたときにどの区画が一番上になるかを決定する。輪は2回目のアクションで、その区画に示される呪文(3レベル、DC24、呪文攻撃ロール+14)を複製する。この呪文の目標は、範囲内にいる最も近いクリーチャーを中心とするか、そのクリーチャーを目標とする。必要であれば、この呪文の射程は100フィートまで延びる。この罠によって発動される呪文はすべて秘術である。 再設置 感覚器官の範囲内でクリーチャーが一切動くことなく1分が経過すると、罠は停止して再設置される。 毒ダーツの廊下 障害8 Poisoned Dart Gallery 複合 機械式 罠 〈隠密〉 +16(熟練) もしくはDC 31(達人)[制御盤に気づく] 説明 長い廊下には毒矢を放つ穴が無数に並び、その奥には操作盤が隠されている。 解除 〈盗賊〉DC 21(熟練)[制御盤で罠を停止する] AC 27;頑健+13、反応+17 硬度 14;HP 56(BT28) [制御盤を破壊して罠を解除する];完全耐性 クリティカル・ヒット、物体の完全耐性、[精密]ダメージ ダーツの斉射/Dart Volley [reaction] (攻撃);トリガー クリーチャーが廊下に侵入するか、ターンの終了時に廊下にいる。効果 罠はトリガーとなったクリーチャーに毒ダーツによる“打撃”を1回行い、その後イニシアチブをロールする。 定期処理(1アクション)罠は1アクションで、廊下にいるすべてのクリーチャーに対してダーツを発射する。ダーツは連続して発射されるため、罠はフリー・アクションの“継続弾幕”(下記参照)により、そのクリーチャーのターン中に各クリーチャーに対してダーツを発射することもできる。 遠隔 毒ダーツ+21、ダメージ 3d4[刺突]に加えてフレセット毒;複数回攻撃ペナルティを受けない “継続弾幕”/Continuous Barrage [free-action] トリガー クリーチャーが起動している廊下の中でアクションを終了する。効果 罠はトリガーとなったクリーチャーに対して毒ダーツによる“打撃”を1回行う。 フレセット毒/Flesset Poison(毒);セーヴィング・スローDC 22頑健;最大持続時間 6ラウンド;第1段階 1d6[毒]ダメージとよたつき状態1 (1ラウンド);第2段階 2d6[毒]ダメージとよたつき状態2 (1ラウンド);第3段階 3d6[毒]ダメージとよたつき状態3 (1ラウンド) 再設置 罠は1分後に停止して再設置される。 溶岩路 障害10 Lava Flume Tube 複合 機械式 罠 〈隠密〉 +19(修得) 説明 石に彫られた4つの門から、溶岩が高さ15フィートの部屋に流れ込む。床を引き下げると、固まった溶岩が下の部屋に落ちていく。 解除 〈盗賊〉DC 29(熟練)[流れをせき止める]、もしくは〈盗賊〉DC 31(達人)[床の仕掛けを外して下の部屋へ逃げる] AC 30;頑健+20、反応+16 溶岩路の硬度 12、溶岩路のHP 48(BT24)[溶岩ろの門の破壊(溶岩路が解除されることを防ぎ、再設置されなくなる)];床の硬度 18;床のHP 72(BT36);完全耐性 クリティカル・ヒット、物体の完全耐性、[精密]ダメージ 溶岩路の起動/Flume Activation [reaction] トリガー クリーチャーが部屋から出ようとする。効果 出口は即座に封鎖され、罠はイニシアチブをロールする。 定期処理(4アクション)罠は解除された溶岩路1つにつき毎ターン1アクションを失う。各アクションで異なる溶岩路1つが溶岩を噴出し、溶岩路から10フィート以内の各クリーチャーに4d6[火炎]ダメージを与え(DC27の基本反応セーヴ)、部屋の溶岩の深さを1フィート(全ての溶岩路が有効な場合、1ラウンドで4フィート)増加させる。 溶岩の中でターンを開始したクリーチャーは8d6の[火炎]ダメージを受け、固まった溶岩から“脱出”するまで動けない状態になる(DC27)。 溶岩に包まれたクリーチャーは窒息する可能性がある。前のラウンドの溶岩は罠のターン開始時に完全に固まり、部屋の床を効果的に上昇させる。部屋が溶岩で満たされると、罠はアクションを行うのを辞めるが、部屋の中のクリーチャーは床が開いて罠が再設置されるまで動けない状態のままである。 再設置 罠は1時間後に床を開き、固まった溶岩(と中に閉じ込められたクリーチャー)を部屋に投げ捨てることで停止し再設置される。クリーチャーは40フィート落下し、落下ダメージを受ける(通常17の[殴打]ダメージ)。 念動力による群衆の罠 障害12 Telekinetic Swarm Trap 複合 魔法 機械式 罠 〈隠密〉 +24(熟練) 説明 念動力の魔法がかけられた無害な装飾品3つが、部屋の物や破片を回転する瓦礫の雲に引き込み、部屋にいるすべてのクリーチャーを攻撃する。 解除 〈盗賊〉DC 27(熟練)[念動力の雲から引き離す]、〈盗賊〉DC 32(達人)[念動力の装飾品それぞれを解除する]、もしくはディスペル・マジック(6レベル;無効化DC30)[念動力の装飾品それぞれの無力化] AC 33;頑健+24、反応+19 硬度 22、HP 88(BT44) 念動力の雲それぞれ 騒乱/Agitate [reaction](秘術、力術);トリガー クリーチャーがこの部屋に6秒以上とどまる。効果 それぞれの念動力の装飾品は部屋の中に物体の雲を形作り(合計雲3つ)、罠はイニシアチブをロールする。罠が発動したときに部屋にいたクリーチャーは、その部屋を出ようが、後で他のクリーチャーが部屋に入ろうが、罠の目標となる。可能であれば、各装飾品はそれぞれ異なるクリーチャーを目標とする。罠から少なくとも1マイル移動したクリーチャーは目標ではなくなり、その時点でその装飾品は新たな目標を指定する。 定期処理(9アクション)各装飾品は毎ターン罠の3アクションを使用し、罠は装飾品が解除されるたびに毎ターン3アクションを失う。装飾は最初のアクションで物体の雲を200フィートまで移動させ、2回目のアクションで物体に“打撃”を行わせ、3回目のアクションで物体を雲に追加してダメージを1d12増加させる(最大4d12+10)ことができる。装飾品の雲のダメージが既に最大である場合、3回目のアクションでは何もしない。 装飾品の雲が破壊された場合、装飾品は代わりに1回目のアクションで部屋の中に新たな物体の雲を作り(開始時のダメージ値を使用する)、2回目と3回目のアクションでその雲を移動させたり攻撃させたりする。 近接 ? 物体+24、ダメージ 2d12+10[殴打] 再設置 クリーチャーが遠くに移動したか死亡したかして目標のクリーチャーがいなくなってから10分後、罠は停止して再設置される。 闇面鏡 障害14 Darkside Mirror 複合 魔法 機械式 罠 〈隠密〉 +24(達人)[通常の鏡でないことに気づく] 説明 魔法の鏡は、キャラクターを別次元の邪悪な鏡の複製に置き換える。 解除 〈盗賊〉DC 34(伝説)[入れ替わりから10分以内に異次元からクリーチャーを回収する(鏡の複製が死亡している場合のみ行える)]、〈盗賊〉DC 39(達人)[すべての複製が死亡したあとに鏡を永続的に無効化する]、もしくはディスペル・マジック(7レベル;無効化DC32)[1分間鏡を無効化し、その間追加の複製を防ぐ] AC 34;頑健+25、反応+20 硬度 1、HP 4(BT2)、鏡の複製が生きている限り、鏡にダメージを与えることはできない 悪の鏡像/Reflection of Evil [reaction](秘術、召喚術、瞬間移動);トリガー 悪でないクリーチャーが鏡に像を映す。効果 鏡はクリーチャーを吸収し、悪の鏡の複製と入れ替え(DC34反応に成功すれば鏡への吸収を避けられる)、イニシアチブをロールする。 定期処理(1アクション)鏡は映したクリーチャーを鏡の中に吸収し、鏡の複製に置き換える。鏡の複製は自らの意思で攻撃し、元のクリーチャーと同じデータを用いるが、属性は悪である(属性の変化で変化する能力のみを変化させる)。鏡の複製は鏡に接触している間に3アクションを費やして元の次元界に戻り、複製したクリーチャーを解放することができる。しかしほとんどの鏡の複製はそうしないことを望む。 再設置 鏡は常にクリーチャーを異次元に吸い込む準備ができている。クリーチャーが鏡に吸い込まれてから10分後、味方が〈盗賊〉でクリーチャーを救出しなければ、異次元に到達してしまい、そこで捕獲されるか殺される可能性がある。鏡の次元では鏡の複製として扱われるため、吸い込まれたクリーチャーがそこにいる間、異次元の住人は自分側の鏡を破壊することができない。 これらの次元は次元界ではなく別の現実なので、プレイン・シフトのような儀式でその中に入ることはできない。 バンシーの交響曲 障害18 Banshee’s Symphony 複合 魔法 罠 〈隠密〉 +30(伝説) 説明 魔法による伝染性のウェイル・オヴ・ザ・バンシーの呪文が、不可視状態のミイラ化したエルフの喉仏に仕掛けられている。 解除 〈盗賊〉DC 42(達人)[不可視状態の喉仏を正確に突き刺し、罠が起動する前に魔法を少しずつ解放する]、〈盗賊〉DC44(伝説)[3回、呪文を引き裂くようなために罠が作動している間に喉仏を解体する]、もしくは呪文DC 38(9レベル)[罠が起動する前にウェイル・オヴ・ザ・バンシーを無効化する] 絶叫/Scream [reaction] トリガー クリーチャー3体以上が6秒以上、罠の100フィート以内に留まる。効果 罠は半径40フィートではなく、半径100フィートのウェイル・オヴ・ザ・バンシー(DC40)を範囲内にいる全てのクリーチャーを目標に発動し、イニシアチブをロールする。 定期処理(1アクション)罠はそのアクションを使用して、前ターンにウェイル・オヴ・ザ・バンシーに対するセーヴに失敗した無作為なクリーチャー1体に、最初のものと同じデータのウェイル・オヴ・ザ・バンシーを発動するよう強制する。そのクリーチャーが死亡ないし会話できなかったとしても、罠からどれだけ離れていても発動する。呪文発動とは異なり、この罠のウェイル・オヴ・ザ・バンシー呪文による吸精状態は目標の吸精状態値を増加させる。いずれかのセーヴに大成功したクリーチャーは、以降のラウンドでもこの罠の影響を受けるものの、罠によるウェイル・オヴ・ザ・バンシーを強制されることはない。 再設置 罠はクリーチャーにウェイル・オヴ・ザ・バンシーを発動させることができなくなった時点で終了する(通常、前のターンにどのクリーチャーもセーヴに失敗しなかったか、それ以前にすべてのクリーチャーが大成功したかのいずれか)。その後24時間かけて、ミイラの喉仏に新たな絶叫が蓄積されると再設置される。
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2005年08月09日(火) 14時24分-月組 もっと他に道は無かったのか、スバエルギナス――マクロセファラスは恨めしそうに己の手を見つめた。 握り締める。 ――また、私はあの時と同じ過ちを繰り返そうとしている。力があっても・・・誰も助ける事が出来ない手ならば、私には・・・必要無い・・・! 「おい! ったく、ぼさっとしてんじゃねぇぞ!」 バシン、と無遠慮に肩を叩かれ、マクロセファラスははっと我に返った。 見れば、フラフラと立ち上がるミセナを、プルが行かせまいと奮闘しているところだった。 「動いちゃダメだって! ミセナ!」 「だから・・・さっきから、言っている、だろう・・・大した傷では、無いと・・・」 腹を押さえながら、彼女は部屋の奥へと進もうとしていた。 「でも・・・そりゃ血は出てないけどさ、顔真っ青だよ!? 我慢しない方が絶対にいいって! ほら!! トリューも、その、マ、マ、マクロなんとかさんもそんなトコでぼさっと突っ立ってないでさあ!!」 「『マクロ』はいいよ。本名はセファラスだ。セファーとでも気軽に呼んでくれ」 「あのなぁ、状況を把握してくれ。だからさっきから言ってるだろう、プルーア、私達は――」 「彼らは幻、なんだろう・・・? だったら・・・ここに、いない者に、助けを・・・求めても・・・無意味だ。違うか・・・?」 そらみたことか、とトリューが視線でマクロセファラスに非難を伝えた。そこでようやく、そういうことかと彼は遅くなりながらも理解した。 確かに、自分達は幻ではあるのだが――あの時の一言を良く覚えていてくれたものだ。 「いや、確かに半分は正しいよ。しかし、完全な幻というのとも、少し違うんだがな」 彼がパキッと指を鳴らすと、二人の輪郭が心なしかはっきりしたような気がした。 「正確に言うと、実態の上に幻を被せてちょうど、そうだな・・・鎧に仕立て上げた、と言うべきだろうね」 説明を聞いて、この男は侮れないという認識を下したミセナとは対照的に、プルは「そんな事より、早く早く!」と二人を手招きしていた。 「・・・言っとくが、私は治療騎士団員じゃねぇから、そんな傷は治せねぇぞ」 アンタの出番だろ?、とトリュフォーがセファラスを促す。 魔の眷属を癒しても良いものか、と彼はほんの一瞬だけ躊躇したが、構うものかと彼女の傍らに膝をついた。今の時点では、彼女は敵ではない。それが十分な理由だ。 「さて、それじゃあ傷を見せてもらおうか、ミセナさん」 「・・・人間の、手など・・・」 「借りない、という訳かい?」 ミセナは押し黙った。その隙に、セファラスは呪文を詠唱し、「はい、おしまい」とおどけて笑って見せた。 「ちょっと待て! 誰も頼んだ覚えはない!」 「あまり動くと傷に障るよ。腸(ハラワタ)を完全に復元できたわけじゃないから・・・私はその専門ではないものでね」 「話をはぐらかすな!」 ムッとしたように彼を見据えるミセナに、セファラスは笑いを崩さず、しかし真面目な顔で、こう言った。 「プル君に頼まれたから、では理由にならないかな? 彼は優しい人だよ」 真っ赤になって手や顔を振って否定するプルに、ミセナはふっと笑った。 ――まさか人間に助けられるとは、ね。 そんなこと、考えたことも無かった。それに、自分が人間を助けるだなんてことも。 「礼を言う、プル・・・ありがとう」 「いや、うん、それはねぇ、その・・・ともかく、ひとまず何事も無くて良かった良かったってことだよね?」 その時、まだ彼らは気付いてはいなかった。 彼らのすぐ傍に、異質なる者が存在していた事に。 それよりも数刻前、森の出口付近では。 「――という訳で、彼奴等が戻って来るまでの時間を有効活用せねばなるまい」 うん、とシャンプが頷く。 「んだなが、具体的には何をするとぉぜ?」 「特訓よ!」 ビシィッとシャンプを指差しながら、ルスラは吼えた。 「良いか! 聖魔剣の勇者たる者が、ドラゴンごときを封印した程度で気を失うとは言語道断! よって、その精神力を鍛えるためにも、今からここで聖魔剣を使った技の開発をする事に決めたのだ!」 おぉ、と何故か拍手をするシャンプ。 「けんどれ、んーな魔力? だっぺが? こんトコで開放しちまってんいーけんも?」 「構わん。所詮は全て幻じゃ。燃える事はあるまい」 言うが早いか、ルスラは火球をシャンプに放った。咄嗟にかわしたシャンプに、ルスラの注意が飛ぶ。 「莫迦者、かわすだけならば誰でも出来ようぞ。わらわは『聖魔剣を使え』と言った筈。避けようとせず、相手の魔力を吸収し、放て。まずはそこからじゃ」 「わーっと! んじぇめ、来いな!」 言うが早いか、壮絶なる魔力の応酬が始まったのはさておくとして。 再び舞台は魔王スバエルギナスの館。 そろそろ幻に取り込まれていたものも復活するだろう、ということで、一行が館を後にしようとしていたまさにその時だった。 「きみは危険になりすぎた。――この世界を守るために、私はきみを殺す」 頭上から、そうセファラスの声が降って来た。続いてスバエルギナスの声で、 「そうか・・・では、私も、わが身を守るために貴方と戦おう」 という台詞。 「――大人しく我らに従っておれば、死なずに、訂正:殺されずに済んだものを」 「ホーント、男のヒトってバッカだよねぇ~♪」 「――自責の念などという不確定なものに振り回された結果と推測。愚の骨頂」 「誰だッ!?」 トリュフォーが叫び、辺りを素早く見回した。 「・・・誰だッ!?」 だが、振って来たのは全く同じトリュフォーの声。 「いるのはわかっている、姿を現せ」 「・・・いるのはわかっている、姿を現せ」 「さ、さっきから・・・真似してる!? 何で!?」 「・・・さ、さっきから・・・真似してる!? 何で!?」 「出て来い、卑怯者!」 「・・・出て来い、卑怯者! ・・・ヒキョーモノぉ? どっちが」 ようやく木霊ではない言葉を発しながら、その声はバカにしたように笑った。それに続くように、感情のこもらないカラクリのような声がする。 「姿が見えない=卑怯者という図式は成立不能」 「だよねぇ~。っはは♪」 それらの対照的な声の主はそういうと、取るに足りないやり取りを、そこにいる4人を完璧に無視して続けた。 「ってーかさ、前人未到の人に知られぬ奥深い地域がどうかしたの? ヴォルヴァ」 「――ルブロの言葉の意味:分析――『秘境』を意味する。よって不適切。この状況下で『ヒキョウ』と発せられる音の羅列=『卑怯』が該当。意味:心だてが卑しく汚い事」 「いや~ん、勘・違・いッ☆ もぉ、ルブロのおバカさん。ごめんねぇ♪」 「――敵対者に謝る必要:皆無」 姿を見せぬまま、彼らは喋っている。 一見するとただの魔衆の下っ端、頭の悪そうな輩とそれに付随する生命体のようにも考えられる。その証拠とばかり、それらしき魔力もプレッシャーも微塵も感じられない。 しかし、セファラスは油断無く身構えると、「気を付けて」と注意を促した。 「みんなの言いたいことはわかる・・・しかし、思わぬ怪物が現れるかもしれないよ」 「か~いぶつですって~ん? やぁん、こんなにプリチーなのにぃ!」 「――姿が見えない場合、情報源は相手の想像力という非常に空虚かつ不確定なものに依存。よって正常な判断力を失う可能性あり」 「さ、さっきから何がなにやら・・・」 「テメェら、何者だッ!」 そうトリュフォーが叫ぶと同時に、まるで最初からずっとそこにいたかとでも言うかのように、館の扉のところに二人の人物が現れた。 「貴様に名乗る名は無い・・・」 「――了解。敵勢力:排除」 「・・・なぁ~んて、今のどうよ? クールっしょ! カッコいくなかった!? 惚れた? ひょっとかして惚れちゃったりして? にゃは~ん♪ どぉ・し・よ・う☆」 「――前言撤回」 そこに現れたのは、一言でたとえるならば、赤と白。 毒々しいまでの赤に身を包み、胸や足などといった部分には際どい半透明の衣装を揺らす少年らしき者。そしてその隣にいる、無垢なまでの純白をまとった、しかし動きやすそうな体に合った服を着ている少女らしき者。 その両方が、砂のような色あせた金髪に、橙色の瞳をしている。 「魔衆かッ!?」 トリュフォーの問いを嘲るように、二人は古代の堕落した美を表す女神の讃えるような格好のまま、それでいて一向に欲情を誘わない奇妙なポーズで立っていた。 「呼ばれて飛び出てぱんぱかぱーん!」 「――双方の行動:該当無し」 「・・・誰か彼かと聞かれたら!」 「――質問:該当無し」 「もぉー、こっからいいトコなんだから黙ってて、ヴォルヴァ! おほん、誰か彼かと聞かれたら! 答えてあげようホトトモゲ! コレの名前は、ルブロ・ヴォルヴァタ! 通称・ルブロ!」 「――そしてこれは、もう一人のルブロ・ヴォルヴァタ。通称:ヴォルヴァ」 「二人合わせて、呪われし魔衆の娘達! キメッ!」 「――相対者に配慮が必要と確認。ご容赦を」 ぽかーんと呆気にとられる顔の前で、ルブロと名乗った方がヴォルヴァと名乗った方の腕を取り、無理やりポーズを変えて得意げに踏ん反り返った。 「ほら! 見て見て! コノあまりの素敵さに声も出ないって☆」 「――言動:不適切。自己中心的な考え。呆れられていると推測」 「解析した?」 「――不必要」 何が何やらさっぱりわからない頭に、ようやく理性が戻ってくる。 「え・・・ってか、何・・・? え・・・女の子? 両方ともおんなじ名前?」 「付き合うな、プルーア。気力の無駄だ」 「これが、『思わぬ怪物』か? マクロセファラスとやら」 「いえ・・・そういうわけでは・・・」 気まずい雰囲気をものともせず、ルブロとヴォルヴァは持ち前のペースを崩さずに「さあ!」と叫んだ。 「んーで、改めましてだケド、スッピーはどこかなぁ~ん? ソコ、知ってる?」 「――補足:スッピー=スバエルギナスの意」 視線をわざとらしく走らせ、ルブロは「ああッ!」ともう一度叫んだ。 「あっちゃ~・・・やっぱ死んじゃってるよぅ。アレ、そうだよね?」 指差した方を向いて、ヴォルヴァはしばらくじっとしていたが、おもむろに口を開き、 「――調査:完了。スバエルギナスの死亡を確認」 淡々と言った。 「んじゃ、今日の仕事はここまで♪ そいじゃ、さくっと魔力もらって帰りますかぁ☆」 「――了解。任務変更:行動開始」 「任せたなり~」 「待て!」 唐突に、ミセナがそう言葉を遮った。 ええ~?、という顔をして振り返ったのはルブロの方だ。ヴォルヴァは右手を前に突き出したまま、動こうともしない。 「今、魔力をもらう、と言ったな」 「あーうん、言ったよ。言いましたとも。それが何ですのん?」 「・・・どういう意味だ」 凄みのある声でそう迫るミセナに、ルブロは怯えたように目に涙を浮かべながら、あうあうと隣のヴォルヴァに助けを求めた。が、 「――任務中につき中断不可」 そっけなくそう返され、彼女は観念したように頭を垂れた。 「・・・わかったよぅ。説明、苦手なんだケドにゃあ~・・・え~っとねーえ、魔力をもらうってゆーのはぁ、そのヒトが死んじゃった場合に、その人が持っていた魔力が解放されるから、それをこのよーに一箇所に集めて、んーで、持って帰っちまおーと。そーゆ~コトですケド? わかんなかった?」 「そんなことはわかっている!」 じゃあ聞くなよぅ、と口を尖らせるルブロに、ミセナは腹を押さえたまま言い放った。 「魔力を奪われた後、この幻はどうなると聞いているんだ!」 そこにいた、ルブロとヴォルヴァを除く全員がはっとした。主を失った幻は現実に戻るとばかり思っていたが、この乱入者がそれを横取りするとすればどうなるというのだろうか。 ルブロは、ふーん、と考え込んでから、にっと笑った。 「なんだぁ・・・そゆコト♪」 ほぼ同時に、ヴォルヴァが腕を下げた。手のひらに何かキラキラした結晶が輝いている。 ――魔力の結晶!? セファラスがそれを確認する前に、ヴォルヴァは素早くそれを胸のペンダントの中に入れると、ルブロに向き直った。 「――任務:完了。魔力収納。すぐに撤退を」 「必要無ぁ~し!」 瞳の奥にどす黒い炎を燃え上がらせながら、ルブロはいたずらっぽく笑った。 「ね~ぇ、ヴォルヴァ。どうやらココにいる親切な方々が、コッチがスッピーを殺す手間を省いてくれたみたいなのよねぇん☆」 「――それはありがとうございます」 感情の入り混じった目で彼女らを睨み据える瞳の前で、カクン、とヴォルヴァが頭を下げた。 「で! とくればやっぱり・・・遊んでほしいじゃない? お礼もかねがね」 「――校正:お礼も兼ねて。その意見には同意」 ゆらゆらと姿勢を正すと、二人そろって並ぶ。 相変わらず人をバカにしたような顔で、二人は立っていた。ルブロが嬉しそうにあごに手を当ててニヤリとする。 「4対2か。ん~♪ モテモテだねぇ☆ 女のコもいるケド、かわゆいから許す!」 「――目視確認:4人。戦闘可能者:3人。うち1名は軽傷」 「・・・やっぱ俺、カウントされてない?」 「されるよかマシだろ。下がってな、プルーア」 プルはミセナも下がらせようとしたが、「僕はいい」と断られ、ひとまず部屋の隅に下がった。 「えーと、各人のデイタアとか、あるわけ?」 「――確認中――終了」 「あ、ちょっと待ってね。お互いに戦闘前準備ってことで」 しばらく彼女らはぼそぼそ言っていたが、ややあって振り返った。 その前に、二人だけにしか聞こえていない以下の台詞を示そう。 (まずは一般人と思しき少年。これについては該当データは無し) (だろうね。期待してなかったし。戦力外でしょ。で、他は?) (術師マクロセファラス・コプナリス。かつての魔術師団長。危険度は中程度) (ふーん、前の勇者の時の奴?) (おそらくは。次に碧空の魔王ミセナ・クロカータ。あの様子からして、前代の娘かと。危険度は小) (ああ・・・一番遊べそうだね。いいこと考え付いた。で、残ったあの黒い鎧は?) (それが・・・) 飛び上がるようにして、ルブロが振り返った。トリュフォーの顔を、兜越しにまじまじと見る。 「あー・・・びっくりした。思わずさっくり殺っちゃうトコだったよぅ・・・危ない危ない」 「――確認の意味あり。データ:有効」 「何意味のわかんねぇこと言ってんだ?」 ジャキッと槍を構えるトリュフォーを手で制し、ルブロは懐をゴソゴソやって、何やら一枚の紙切れを取り出した。ぴらぴらと振って広げる。魔道が記されたものではないらしい。 「やぁ、まさか役に立つとは。渋ってるシスコンおねーサマからこっそりもらっといて良かったぁ!」 「――警告:『シスコンおねーサマ』は本人の前で言わないように。また、窃盗は誉められた事ではない:しかし、この場合は適切であったと判断。備えあれば憂い無し。ルブロ、読み上げを」 「まっかせて! えっとぉ~・・・」 マクロセファラスが一歩前に出る。 ただの紙切れと見せかけて、実は魔道を放ってくるかもしれないからだ。念には念を入れたほうがいい。 ところが、ルブロはまんじりと黙ったまま、タラタラと汗を流しながら固まってしまっていた。 「――ルブロ?」 「ヴォルヴァ~・・・っく、読めないよぉ・・・」 再び、すがる子犬のような目でルブロはヴォルヴァに助けを求めた。紙切れを受け取ったヴォルヴァはちらりと一瞥したが、「――解析不能」とポイと紙切れを投げ捨てた。 「――状況判断:最適な行動を模索中。終了。行動:過去の音声を検索・朗読」 「うん、それがいいね・・・じゃ、敵さん方ちょっと聞いてね~♪ 終わったら遊んだげるから☆」 「・・・チッ、誰が遊ぶか」 戦闘になかなか入ろうとしない二人だったが、3人としても程度のわからない敵に奇襲をかける気も無い。素直に話を聞く風になった。おもむろにヴォルヴァが口を開く。 「――トリュフォーという男に、もし会うことがあるようならば伝えよ。呪うならばその血を――以上」 「はれ? そんだけ? そ、そー言われれば、あの紙にもそんなよーなコトが書かれていたような・・・いなかったような」 「――残りは黙秘。情報の隠匿を優先」 「まぁ、イジワル♪ とまぁ、これだけのことだケド、ガッカリしないで?」 「・・・ち? それって、血筋のこと? それとも、場所のこと? トリュー、心当たりは?」 「ねぇよ。出任せ情報だろ、当てになるかよ・・・」 顔をしかめるトリュフォーに、クスクスとルブロの笑い声が降って来る。 「ま、そだねぇ、もし倒せるよ~なコトがあったら、続き、教えたげてもいいよん♪」 「――忠告:ルブロ、行動が軽率」 「ったくさっきからゴチャゴチャと! いい加減にしな! 来るならさっさとかかって来やがれ!」 「トリュフォー君、油断は禁物だ。まだ相手の実力がわかっていない」 「測るまでも無いだろう。倒すだけだ」 各人が武器を構え、臨戦態勢に入る。 「今回は・・・女だろうと容赦しねぇぞ」 「いやぁん、怖~い☆ 女の子には優しくしてぇん」 「――不適切。性別区分:無し」 「男でも、女でもない・・・!? いや、疑問は倒してからじっくり答えてもらおうか」 「どっちでも構うものか。一撃で決める!」 かわいそうだけれど、本気になった皆と戦ったら――プルはまず勝ち目は無いと踏んだ。 しかし、当の本人達は意に介さず、ルブロにいたってはうきうきした様子で屈伸したり腕を回したりしている。 「さぁお待ちかね! Let’s show time!」 とりゃ!、と両腕を天井に突き出し、それを下ろしながらまたもや妙なポーズを付ける。 「――時間制限:あり。注意されたし」 「はーい♪ じゃ、まずは軽~く、戦力増強といきますかっ☆」 言うが早いか、彼女の周りに翼の生えた人間が武器を手にずらりと立ち並んだ。その数ざっと10程度だ。 「チッ、確かに戦力増強だぜ・・・だがそんな程度――」 「ちっちっち。よぉく見てよん♪ 会心の出来なんだ・か・ら☆ ねぇ~、ミセナちゃ~ん♪」 ルブロの応答には気付かず、ミセナは驚愕の表情で、新たに現れた敵勢力を見ていた。呟く。 「な・・・ッ!? 何故・・・みんな!」 ――え!? 声にならない叫び声をあげて、3人がミセナを見た。 「間違い無い、彼らは僕の同胞だ! 魔王スバエルギナスに囚われていた・・・そんな!」 「――ルブロ、魔力の拝借は厳禁。重罰、あるいは死罪」 「ちち違うよぉう! コレはちゃーんと、ココから出しました! コ・コ!! From my heart! もぉ、疑う気~? だったらケチケチせずに魔力貸してよ!」 「――累積分:未返却」 「あは・・・忘れて?」 「――無理」 「・・・なんて悪趣味なことを・・・」 セファラスが唸った。 本物ならば戦えないことは明白。たとえ幻だとしても、精神的な負担は相当なものだ。 「揺さぶりか・・・アマニタ野郎の考えそうなことだぜ! 下衆が!」 ふふーん、とルブロが笑う。 「戦術と言って、戦術と♪ もしくは・・・戦略? でいいの? ヴォルヴァ」 「――戦略:長期的・広範的・全体的展望に立った闘争の準備・計画・運用の方法。戦略の具体的遂行である戦術とは区別される。戦術:個々の具体的な戦闘における戦闘力の使用法。よって戦術が妥当」 「むつかしすぎて・ワカンナイ・ナリ」 しかし、頭を押さえて頭痛のふりをするルブロの瞳は真っ直ぐにミセナに向けられ、その反応をうかがっていた。 そんな程度に屈するものかと、ミセナは震える声でこう告げる。 「気に・・・するな。スバエルギナスが死に、魔力が奪われた今、彼らは本物じゃない」 「そぉお? そぅおぉ? どっかなぁ~?」 それを聞いたルブロの笑顔が最骨頂に達する。彼女は軽く手を上げると、板を突くかのように、ちょうど目の前に立っていた一人の男の肉体を手刀で貫いた。 「!」 一瞬のことだった。 男は力無く前のめりになる。その逞しい胸板を、たおやかな手が突き破っている。 鮮血が噴き出し、3人の上に余すところ無く、温かく降り注ぐ。 「にゃっはっはっはっはぁ~ん♪ これでも? これでもニセモノってゆっちゃう~? 言ったでしょ? 『会心の出来』だ、ってぇ~☆」 手を引き抜き、倒れる男を蹴って3人の方へ飛ばすと、ルブロはその血の付いた手で髪の毛をかき上げ、己の髪の毛を服と同じ紅に染めた。 「う~ん、赤・だぁい好き♪ 特に血はだんだん黒くなるのがいいね☆」 「――賛同しかねる。理由:白が穢れる」 「んもぉ、塗っちゃうぞ?」 「――反撃準備:完了」 「貴様ら・・・!」 ぺろぺろと指に付いている血を舐めとりながら、ルブロはいっそう純粋な笑顔で笑った。 「怒った? やっぱ怒ってる? やぁん、こっわぁ~い♪」 しかし、今にも飛び掛りそうなトリュフォーの目の前で、その男の体がぼんやりとにじみ、そして消えてしまった。 再び驚いて動きが止まった3人の前で、ルブロが手を顔の横に持っていき、おどけたポーズをとった。 「なぁ~んて、幻でしたぁ~! びっくり? びっくり? 驚いてる!?」 怒りに戦慄く彼らの前で、ルブロはわざとらしくぴょんぴょんと飛び回り、ヴォルヴァの手を取って喜びを体中で表現してみせた。 「いぇ~い!! ネタばらし、大・成・功ッ☆ あ、もしかして本物と思っちゃったクチ? やったね♪」 「――ドッキリ大成功、とでも?・・・平常心を保つ事を最優先。忠告:ルブロ、手の内を明かすのは得策ではない」 おもしろければい~じゃない、と言い放つルブロを、ミセナは憎悪と何か他の感情が入り混じった複雑な表情で睨み据えた。 「なるほど、所詮は幻、か・・・」 一瞬ではあるが、期待したのだ。本物であるのならば、どうにかして正気に戻す手もあるのではないだろうかと。 「そだよ~。幻に取り込まれて消滅しちったモノなんて、二度と帰ってくるワケ無いジャン! 期待してた~? ゴッメンねぇ~ん。けどさ~ぁ、コノ程度じゃあ全くもって無理無理無理無理無駄無駄無駄ァッ!」 「――警告:ルブロ、調子に乗り過ぎ」 「いやん♪」 「・・・だが、おかげで吹っ切れた。これで遠慮無く・・・戦えるということだ」 「ミセナ・・・」 キリッと矢を絞り、ミセナは狙いをルブロの額に定めた。 「動くなよ。狙いが外れる」 しかし、ルブロは狙われているというのに全く動じる事もなく――ただ、「きゃっ! 狙われちゃったよぅ、ヴォルヴァ、ど~しよ?」という決まりきった台詞を吐いてはいたのだが――不敵な笑みを浮かべた。 「あぁん、ケド射る前にちょっとダケ聞いてぇん、ミッセナちゃん♪」 「気安く名を呼ぶな!」 「二人の仲じゃな~い♪ ね~ぇ、ミセナちゃ~ん・・・会いたくないのぉ?」 怒気のこもったミセナの声に、ふふん、とルブロが勝ち誇ったように笑う。 「『蒼空の魔王』――お母サマに」 グッとミセナの表情が揺らいだ。 「ミセナさん、耳を貸してはいけない!」 「言われるまでも無い! そんなでたらめ信じるものか! 死者は・・・生き返らない・・・ッ」 気丈にも、ミセナは再び矢を引き絞った。だが、ルブロは怯まない。 「それがあるんだなぁ~、実は。死んだお母サマや消えちゃったお仲間の皆サマを蘇らせる方法がっ☆ どお? 知りたいでしょ、知りたいでしょお? その方法! フツーなら教えないけど、特別だよっ? 教えたげる。そ・れ・は・ね――」 ミセナが無視を決め込んでいるのを見て、ルブロは軽く息を吸うと、声を大きくして叫んだ。 「その方法ってゆ~のがねぇ、『あのお方』に頼む事、なの♪ 簡単でしょ? 心揺れ動いちゃう話でしょ♪」 「裏があるに決まっています」 「そぉなのよぅ! 取り引きはいつでもgive takeだからねっ! でも、『あのお方』に従うだけだし、そんな無茶は命令されないし、がんばればがんばっただけ願いも叶えてくれるのよん? やっさしぃ~でしょ? ちなみにぃ、その実証が、なぁんと今皆サマの目の前にいるコノ二人なワケ♪」 ハッとして、全員がルブロとヴォルヴァに一斉注目した。親指を立てて自慢げに自分を指しているルブロと、焦点の合わない目をしているヴォルヴァの異様さが、なお一層際立って見えた。 「・・・っはぁ~、大声で叫んだら疲れちった☆ 水~・・・」 「――不携帯」 「あっそぅ、じゃ仕方ないね・・・あ~あ~、ゴホン。んん・・・とまぁ、話を戻しまして。今なら無償で願いを叶えてくれるスペサルサアビスもやってるよン♪ まぁお得♪」 「――special service。悪い話ではないと保証」 「黙れぇッ!!」 ミセナの返事は痛烈な一撃だった。風を割き、一直線にルブロの額を目掛けて飛び、そして―― 落ちた。 まさに矢が突き刺さろうとしたその瞬間、空中でピタリと静止し、ぽとりとルブロの手に落ちたのだ。 「何!?」 ルブロはおもむろにその矢を手に取ると、しげしげと眺める。 「ほほぅ、all hand maidですか。長すぎず短すぎず、節は堅くしなやかなシュギュイ木造り。羽は一般的なシュヅメル鳥を使いながらも見事な線の引き方、その特長を生かした白と赤の対比の美しさ。さらに特筆すべきは鏃で、かの『蒼空の魔王』も愛用したと言われる風切石(かざきりいし)を丹念に削り上げ、さらに幻を打ち消す魔力を込めた一品。武器にしておくのは惜しい。いやぁ、まさに職人芸。いい仕事してますなぁ」 「え? そうなの?」 「ほほう、興味を惹かれますか? そこなる少年。語り合っちゃう?」 「本気になるな、プルーア! 出任せに決まってんだろ! あの女にそんな鑑定眼があるか!」 「・・・バレました~!」 指先で矢をくるくるとオモチャにしながら、ルブロは笑っている。その隣でヴォルヴァがひたすらブツブツと恨みがましく呟いていた。 「――チッ、完全防御壁がこんな程度の技で相殺されるとは・・・! これじゃ意味がねぇじゃねぇかよクソ野郎どもが!」 雰囲気がガラリと変わった彼女を、ルブロが子供や子猫にやるように頭をなでなでする。 「おぉう、落っち着いてぇ~、ヴォルヴァ♪ 怒りの矛先は政治に向けるのよん☆ 素顔を隠す仮面は、そう簡単に捨てちゃダ・メ♪」 「――だが・・・わかった。了承」 軽く目を閉じ、開く。 「――戦闘を開始する」 「よっしゃ! 敵さ~ん、お待たせぇい!! んじゃ、先制攻撃は譲ったげ――」 返事とばかりに飛んでくる矢を、幻影兵が身をもってかばい、消滅する。 「仲間の姿でも容赦無し! さすがは冷血アマニタ女! あは~、たぎってるねぇ。そいじゃコッチもそろそろ――」 「――タイムリミットまで:あと3分少々」 それを耳にしたルブロがブフッと吹き出した。 「マジですかい! ちょ、ちょっと喋りすぎたかなぁ~あは、あはははは・・・反省」 「――遊び:禁止」 もう一度、マジですか!、の顔をしてから、ルブロは長々と溜息の尾を引っ張った。 「あう~、しょ~がないガマンするよぅ・・・とゆ~ワケなんで、すまんケドちゃちゃっとやられて?」 「ふざけるなッ!!」 連射された矢の雨をヴォルヴァが全て素手で掴み、「――この程度」とミセナを見下して笑った。 「コッチは一応、真面目だよ? ケドさ~ぁ、コッチとしてはソコの二人は邪魔なんだよねぇ~。話があるのはソコの黒い甲冑のヒト♪ あ・と・は・・・ソコの少年☆」 ビシィッと指を指され、プルが「えぇッ!?」と驚愕した。思ってもみなかった言葉だ。 「話が合いそうだしぃ、優しそうだしぃ、ちょっと非力なトコがまたかわゆいかなって♪」 瞬間、ヴォルヴァが般若の形相でプルを睨んだ。視線だけで殺されると思ったのはこの時が最初だろう。それほどまでに恐ろしい目付きだった。 「――貴様」 「ちちちち違いますというか何で何で何で!?」 「いい加減にしろ! 彼は関係無いだろう! 手を出すな!!」 「あはん、早速恋敵登場? 種族を超えた禁断の愛、ってヤツねぇん♪ それに、ああ、ヴォルヴァったらまさかして嫉妬してくれてるのかしらん? そんなヴォルヴァもかわゆいから安心してねっ♪」 「――殺す」 すすす、とプルは足だけ動かして物陰に隠れた。見た目は弱そうだが、戦ったら負ける。何となく負けるというか、恋の威力で殺されるに決まっている。 そんなやり取りを苦笑いしながらセファラスは見ていたが、少し顔を引き締めて、こう告げた。 「トリュフォー君、ミセナさん・・・見た目に騙されないで。やはり、この少女達は強いですよ」 「・・・ああ、たった今理解した」 新しく矢をつがえながら、ミセナが短く詠唱する。ルブロとヴォルヴァをかばうように立っている幻影兵――仲間達の幻――もまた、同じように矢をこちらに向けている。 「・・・長期戦は不利です。トリュフォー君、我々が何とか道を開けますから、振り返らずに突っ込んでください」 「僕も矢で援護する」 「ああ・・・わぁった」 「相談終わり~?」 腕のストレッチをしながら、余裕綽々でルブロが相変わらず笑っていた。そして彼女が軽く腕を上げると、それに呼応して幻影兵がいつでも射出出来る体勢に入った。 「頼むから、最後まで立っててよね~☆ あ、ちょっとだけヒント、いい?」 「――止めても無駄と判断」 「ごっめぇん、ヴォルヴァ」 敵の神経をすり減らそうとでも言うかのように、ルブロはのろのろと口を開いた。 「おほん、コチラの戦いはちょいと変わっておりまして。一心同体というか・・・そう、アレだ」 わざとらしく咳払いをしてから、ルブロは大見得を切って叫んだ。 「ルブロは『攻め』専門! ヴォルヴァは『受け』専門!! それで報酬はおんなじ! おめでたい!!」 再び、ぽかんと呆気にとられる顔、顔、顔、顔。 ――これも敵の戦術か!? どうなのだろう、計り知れない。というか、『攻め』と『受け』はわざとなのか偶然なのかどちらなのだろうか――という事を考えてしまったセファラスは、意外と物知りなのだということで終わり。 ちなみに他の3人は何を意味するのかはわからなかった。そして、わからなくていいことだ。 それからルブロは再び口を開くと、 「ルブロは『攻め』専門! ヴォルヴァは『受け』専門!!」 「――誤解を招く言い方は禁止」 ヴォルヴァの溜息交じりの声に、ルブロはあえてキョトンとした顔をしてみせた。 「何が何をどう誤解するの? わっかんない。え~と、まぁ、つまりね、そのぉ・・・ルブロが『攻撃』担当でヴォルヴァが『防御』担当なワケなのよ。とりあえず、今の状態だとね・・・それを考えれば戦術もどっせいどっせい・・・どっちもこっちも・・・どんまいどんまい・・・わっしょいわっしょいお祭りだ~」 「――校正:どっこいどっこい、を表すか。警告:もう時間があまり無い」 「あわわ、ヤバ。でわでわ! お待たせしましたん♪ そんじゃ、みんな・・・行っけぇ~☆」 ルブロが無造作に腕を振り下ろすと同時に、矢の洗礼が満遍無く無防備だった彼らの上に降り注ぐ。 それを払いのけ、叩き落し、戦いの火蓋が切って落とされた。 幻影の矢は幻の炎で焼き払った。 幻影兵は残らず矢で射、消し去った。 道が、開けた。 「うおおおおおおおおッ!!」 トリュフォーが槍を持つ手に力を込め、一直線に突進した。 「――ふん、芸の無い攻撃――」 それと同時に、彼を援護するように矢が放たれ、火の魔術が炸裂する。しかもそれは、ヴォルヴァを狙ったものではなく―― 「きゃあ」 狙いは防御姿勢をとっていないルブロだった。 まともに火球をくらったルブロがひるみ、身をよじった。しまった、という表情のヴォルヴァの前に、槍が突き出される。 ドゴン 低い打撃音が響いた。 『音を切り裂く疾風の羽よ、我が敵をその身で貫け! 音無羽(サイレント・フェザー)!! そして降り注げ刃の雨よ! 細矢(フォーリング・アロー)!!』 『世界を構える四大よ。赤にして紅蓮、青にして紺碧、緑にして翠然、黄にして金襴なる元素の王の四柱よ。我ここに汝らの助力を乞い願う。願わくばただ一たびの奇跡なす力を――我が友を避け、我に仇成す者を討つ力を――授けたまえ!! 出でよ! イフリート! クラーケン! ジン! ベヒーモス!』 隙を与えず、ミセナが魔術を乗せた矢で射、そしてその上に魔術をかける。さらに追い討ちをかけるように、セファラスが全ての精霊王を召喚する。 世界中が一斉に輝いたかのような輝きが辺りを包み、音を奪う。 間。 どれぐらいたったのだろうか、ようやく世界は元に戻った。 「みんな! 大丈夫!?」 「はぁ、はぁ、はぁ・・・さすがに・・・四大精霊王、全召喚は・・・老体に、堪えますね・・・」 「・・・貴方だけは、敵に回したくないな・・・」 膝をつき、肩で息をしているセファラスとミセナ。 「・・・あれでやられてなかったら・・・もう、どうしようも・・・」 セファラスにしても、これだけ全身全霊の力を持ってして相対した敵は久々だった。以前に比べ、平和に慣れ親しんだ体にはもう一発でも魔術を放つ気力は残っていなかった。 「大丈夫・・・あれを食らって生きてる方がどうかしているさ・・・」 まさか、生きているはずは無い――ミセナはそう確信していた。 たとえ屈指の魔王でも――母であったとしても――四大精霊王の攻撃を受けて、生きていられるはずは無いのだ。 だが。 くすくす くすくすくすくす っはは あっははははははははっははははは!! 「え!?」 聞き覚えのある、耳に障る笑い声。 まさか―― 顔を上げ、確認したとたん、三人は頭から冷水をかけられたかのようにゾッとなった。 そこには。 「――なめた真似しやがって・・・! 殺す殺すぶち殺す潰し殺す殴り殺す撃ち殺す切り殺す絞め殺す叩き殺す打ち殺す斬り殺す捻り殺す千切り殺す刺し殺す沈め殺す焼き殺す刻み殺す――殺し方だけは選ばせてやる! 感謝しやがれクソどもがァッ!!」 トリュフォーの槍の渾身の一撃と、ミセナの数多の矢を、その右手で掴み。 四大精霊王の炎・氷・嵐・石、全てを左腕一本で受け止める。 美しい顔を悪魔のような形相に変えてわなわなと震えているヴォルヴァと。 「化け物だなんて酷いわ。それじゃまるでコッチが生命体ですらないみたい・・・当たりだけど。はぁい、皆様お揃いで。お元気ぃ?」 その後ろで、全くの無傷で軽やかに手を振っているルブロが。 いた。 「セファー!! プルーアと女を連れて逃げろ!!」 トリュフォーがそう叫ぶか叫ばないかのうちに、彼の体はまるで球のように軽々と宙を舞った。そのままプルのすぐ傍の壁に叩き付けられ、めり込む。 ふん、と憎悪と皮肉が入り混じった笑みをしてから、ヴォルヴァはふっと無表情に戻った。 それから急に顔を上げると、 「殺す! 殺してやる!! ふざけやがってなめやがってやりやがってこの下等生命体ども!! 許さねぇ絶対許しておけねぇぞ!! 覚悟しやがれ蛆虫野郎!! 生まれてきたことを後悔させてやるッ!!」 口汚く罵りをまくし立てた。 「ちょっと、ヴォルヴァ」 「あぁん!? 邪魔すんじゃねぇぞルブロ!! 気分がむしゃくしゃしやがる!! 平常心になんか戻れるかよ!!」 「別に今はいいけど、でも一つだけ・・・誰一人として殺したら駄目」 「けどよぉ!」 叫ぶヴォルヴァの口を、すっとルブロが指で押さえる。 「後々駒にならないと言い切れるの? 無理でしょ。ルブロにもヴォルヴァにも、それは出来ない。そんな決定権は無い。そもそも、台本に無いことはしない、そういう約束だったはず。違うの」 そうたしなめるルブロも、先ほどまでのおどけた様子は全く無い。 完全に雰囲気の変わった二人の前で、全員が凍りついたように動けなくなっていた。疲労のためだけではない、それだけは確かだった。 「――チッ、気は晴れねぇがあの方のため、そしてこの願いのためならばしょーがねぇ・・・話があるのはあの埋まってる男だけだったよな?」 「一般人の少年にも手を出さないで」 「はぁん? さっきも言ってたが、マジで惚れたのかよ!? はっ、趣味が悪いぜ!? ルブロよぉ」 「かもね」 ピクリ、と傍目から見てもわかるほどヴォルヴァの顔が引き攣った。それからルブロに聞こえないように、ボソリと「殺してぇ男No.1決定」と呟いた。 ルブロは何も聞こえていないようで、本気にしないでよといった感じで手を振って続けた。 「というか、それ以前の問題よ。アレは聖魔剣リシーサの関係者らしいから、絶対に殺すなって言われてたと思うわ。記憶が確かなら」 「そっちの話は興味がねぇな。ともかく、あの自意識過剰な魔術師と自称魔王は刻んでもいいんだろ?」 「まぁ・・・そうよね。生きてれば、ね」 ニィイっと、ヴォルヴァの唇が吊り上った。 それから彼女はいきなりバシィンと矢と魔術の塊を地面に叩きつけると、長々と大きく息を吐いた。 「四大精霊王よ!」 残りの気力を振り絞り、セファラスは精霊王達を呼んだ。今まで彼の周りに控えていた王達が、もう一度攻撃を繰り出そうと構えた瞬間。 「――我と我が友、我が主の名に於いて命ず」 ヴォルヴァの口から、呪詛の文言が紡がれた。と同時に、王達の動きが止まる。 「彼の王の御霊を蹂躙せし呪いの体現者よ、解き放たれよ。その忌まわしき腕(かいな)をもって、聖なるものを我が前より失せさせるが良い。漆黒の楔よ、血塗られた鎖よ、今一たび名を呼ぶもおぞましきものへ刹那の自由を与えよ!」 言い終わるや否や、最後の頼みの綱だった精霊王達はいずこかへと消え去ってしまった――いや、連れ去られてしまった。 中空から伸びた無数の手が彼らを掴み、バラバラに千切りとって何処かへと消え去ってしまったのだ。 その様子を、クスクスと笑いながらルブロがじっと観察している。 「くくくくく・・・たかが精霊王ごときじゃあ、ねぇ?」 「――連れて来んなら、精霊神ぐらい出してみな。そうすりゃ、途中で返す手間が省ける」 「な・・・!」 セファラスはあまりの驚きに、文字通り声を失った。 精霊を召喚するものは多くいる。 だが、精霊は己の上位の精霊王の命があれば攻撃は出来ない。それと同様に、精霊王もまた、上位の精霊神の命とあらば立ち去るしかない。 当然ながら、ヴォルヴァという少女は精霊神の化身でなければ、精霊神を使役しているわけでもない。魔神であろうとも、その地位は対等でしかないのだから。そんなことが出来るのは、偉大なる太母――『彼女』しかいない。 だが、そうなれば今のことに説明は付かなかった。上位のものの命無くして、彼らが帰ることなどあり得ない。 それを面白そうに見ながら、ふふふ、とルブロが笑う。 「ご存知? 召喚されたものを返すためにそれほどの魔力はいらないってこと・・・あらん? その様子じゃ知らなかったみたいね、馬鹿みたい」 「・・・それがどういう――まさか!」 ルブロは耐え切れないというように口を覆った。 「ふふふ、あはっ・・・そうよ、ようやく気付いた? 俗に禁忌とされている名を呼ぶことすら出来ぬものの力があれば聖なるものなど砂塵に等しいの・・・おわかり?」 「まさか・・・それらは全て伝説の――神魔大戦が終結した時に、二度と蘇らぬよう封じられたはず!」 「そうよねぇ、どぉしてかしらね~ぇ? あっははははは!!」 それら悪の権化と、聖魔剣の勇者、そしてその仲間達との伝説は聞き及んでいた。それが実際に存在したとしても、驚きはしまい。 しかし、それらを操る術は完全に失われたはずだった。 そんなセファラスをいたぶるように、ヴォルヴァが重ねて笑う。 「要するに、王ごときは呼んでも無駄ってことだ。ま、そっちには死んでも真似出来ねぇだろうがな。っはは!」 それで話は終わりだとばかり、ヴォルヴァが両手に半月状の楔を出現させた。 そして怒りのこもった低い声で、淡々とこう告げる。 「なめられるのには慣れてるがよぉ・・・こっちが怒らねぇとでも思ってんのか? あ?」 カツ、カツ、カツ、と靴音を響かせながら、ゆっくりとミセナとセファラスに近付いていく。 そして、今まさに彼らの上に刃がつきたてられるかと思われた瞬間。 ガッツ 鈍い音がして、彼女の両手から放たれた楔が地面に突き刺さった。ミセナとセファラスは楔に首を押さえられて地面に縫い付けられる格好となったが、傷一つ負っていない。 先程まで殺すなどと物騒なことを連発していた彼女のその行為に、相方であるルブロが軽く首をかしげて口を開く。 「あらぁ? 珍しく動きを止めただけなのね。どういう心境の変化? たまには優しくしたいとか?」 「――そんな訳ねぇだろ・・・野郎、邪魔しやがって」 ギロリと睨まれた先には、プルの手助けもあってどうにか壁から脱出したトリュフォーの姿があった。 彼は盾を投げたままの姿勢で荒い息をついている。 そして、ヴォルヴァの足元には彼が咄嗟に魔力を込め、結界の要として投げた盾が突き刺さっていた。 「・・・ったく・・・盾は投げるモンじゃねぇっつーのに・・・」 チッとヴォルヴァが憎々しげに舌打ちをする。 結界は本人が解除したいと思うか、その人物を殺すかしか壊す方法が無い。 だが、ヴォルヴァはトリュフォーを殺せないし、手酷く傷付けることも許されていない。 つまり、結界は壊せないし、二人の代わりに彼で鬱憤を晴らすことも出来ないのだ。 腹いせとばかり、ヴォルヴァは結界を張っている盾を思い切り蹴飛ばした。 ルブロとヴォルヴァの魂胆を見抜いての博打だろう。そしてそれにうまうまとはまってしまった自分が腹立たしかった。 そうこうしているうちに、トリュフォーはまだ折れてはいなかった槍を手に、ざくざくと二人の前に歩み寄って来た。攻撃出来るかどうかギリギリの瀬戸際で、立ち止まる。 「さって・・・どうする? 私はまだ戦えるぜ?」 「あら~ん♪ 味方を守るために、傷だらけの体をおして戦おうだなんて・・・勇敢なお・か・た☆」 体をくねらせてから、ルブロは暗い目で呟いた。 「・・・まるで騎士(ナイト)みたい★」 ギョッとしたようにトリュフォーは槍を構えなおしたが、 「それがどうした」 と穂先をルブロに向けた。 「やぁん☆ 褒めたのに怒られちった♪ 好感度ダウンかもぉ~」 「――ルブロ、どうする」 くいっとアゴでトリュフォーを示し、ヴォルヴァは指をばきばきと鳴らせた。 「そうねぇ~・・・3割まで!」 「チッ――了解。戦闘モードから通常モードへ移行――平常心を保つことを最優先――完了」 再び感情の無い顔に戻ると、ヴォルヴァは、「うんうん、さすがはヴォルヴァ。やればスグできるのねん♪」としきりに頷いているルブロの前に立ちはだかった。 「私も言わせてもらうが、それこそ『なめられた』もんだな」 「あっはぁ♪ 怪我してるヒトに万一のコトがあったら、ソレこそコトですからぁ?」 ルブロがぴょいんと後ろに飛び跳ねて距離をとると、それに追従するようにヴォルヴァが同じようにバックステップで距離を開ける。 「さて。指先一つでダウン伝説を目指してもいい? メンドクサイしぃ、他にも仕事あるしぃ、時間も無いしぃ~」 「――誰のせい?」 「・・・はい、ルブロのせいでふ。反省するから嫌味言わないでぇ~☆ マジメに武器も使っちゃうから♪」 グッグッと腕を伸ばすと、ルブロが構えをとる。力を抜いて、柔の攻めで来るということだろう。そしてその手には、スバエルギナスが持っていたのと同じ、黒い刀身の剣。 「じゃ、準備も滞りなく整いまして。早速だけど、ルブロと遊んで♪」 とん、と軽く地を蹴り飛び上がると、彼女は目にも止まらぬスピードで剣を振り回す。 ――確か、あれに触れると厄介なんだよな。 その恐ろしさは先程見た通り。 トリュフォーは迫り来る刃をひらりとかわしながら、一旦槍を背に収めた。武器は他には短刀の類しか持ち合わせておらず、槍が真っ二つになれば、間合いが狭くなった自分が一気に不利になる。 「――敵行動:回避」 「りょぉ~かい!」 着地をし、ゴキゴキと首を回してから、ルブロは急に次の動きに移行する。 今度はトリュフォーの懐に飛び込むと、フェイントも含め素早く蹴りを繰り出し、彼が足払いを仕掛けようとした瞬間に宙に浮いた。 そして空中で不自然なまでの滞空時間をもって、剣を持ち替えながら突きと払いを織り交ぜて攻撃してくる。 決して勝機が無かったわけではない。 トリュフォーは、ルブロがほんのわずか深く突き過ぎ、無防備となった右腕を掴んでみせた。刃とは異なり、触れても実害は無い。だがそのまま投げ飛ばそうとした刹那、ヴォルヴァが死角から鋭い手刀を繰り出し、その目論見は失敗に終わってしまう。 「今のは、惜しかったんだがな・・・」 再び間を取って、トリュフォーはそう毒づいた。集中すればかわせないことも無い、が、それももってあと三回程度だ。攻撃の勢いによっては次の攻撃も危うい。 早く勝敗を決しなければ、身がもたない。 一方のルブロは、とんとんとん、と軽やかにバック転で再び距離をとった。それから右腕を押さえる。 「い、ったぁ~・・・もぉう! 玉のお肌に傷が付いちゃったじゃないのぉ!!」 「――表現が不適切。『玉のお肌』は女性に対する形容」 「・・・ケチ。例外ってコトでいいでしょぉ?」 しかし、そう言って笑うルブロの右手には、黒い兜が引っ掛けられていた。見覚えのあるその形状に、トリュフォーははっと頭に手をやった。 はたして、兜が無い。あの一瞬で、盗られたのだ。 「お礼返し、ってヤツか」 「――『転んでもただでは起きない』が適切」 すっぽりとそれを頭に被り、ルブロが「ああッ! ま、前が見えないッ!! はわわわわ」と慌てふためいてよろける。一見隙だらけだが、その隣のヴォルヴァは全く隙が無い。 ヴォルヴァは少し溜息交じりで、ルブロの被っている兜を乱暴に外した。 「――いいかげんにしてもらいたい」 「いやぁ、自分のものは自分のもの、相手のものは自分のもの、みたいな」 それからおもむろにトリュフォーをしげしげと眺め、「やぁん♪」と素っ頓狂な叫び声を上げる。 「どぉ~んなゴツイ男が出てくるかと思いきや・・・んもぉ、フェイントしすぎよぅ☆」 「は? 何言って――」 「ああっ! 前言ぜ~んぶ撤回!! もぉ口が悪くても性格怖くても優しくなくてもいい!!」 両手を合わせ、潤んだ瞳でルブロが上目遣いに彼を見つめる。と、それと対になるようにヴォルヴァが冷たい眼差しで睨みつける。 「もぉ超・タイプ~☆ 切れ長の鋭い目、端正な凛々しい顔付き、そして北方民族特有の黒い髪と漆黒の瞳――! もはやコレって、いろんなイミで運命を感じちゃう♪」 「――否定したいが、否定はしない」 「ヴォルヴァもそう思う? 思っちゃう? 素敵だよねぇ♪」 「――意味が異なる。あの形状――あの男を思い出させる。よって不快」 「だからいいんじゃなぁ~い♪ 顔良し、血筋良し、人気良し、過去良し・・・もぉ全てにおいて、カ・ン・ペ・キ・よん☆」 「――駒には最適」 「そうはいくか」 顔をしかめるトリュフォーの前で、ルブロがせっせと乱れた髪の毛や衣装を整えていた。 「あ、でも顔見て急に態度を変えると帰って怪しまれる・・・かな?」 「安心しな。テメェらの印象は、最早覆らねぇよ」 頭の防御が疎かになるのは覚悟を決め、トリュフォーは素手のままもう一度構えた。 「――敵:攻撃態勢。警告:ルブロ、少しは防御面にも気を回せ」 「ん~、だってヴォルヴァが守ってくれてるしぃ・・・そだねぇ、確かに二対一、って・・・ちょっと卑怯カモ」 「かまわねぇよ。慣れてるからな」 「お仕事大変だぁ、お互いにね。でも、怪我人にも情け容赦はしませぇん!」 ルブロが手を振り上げると、再びそこに幻影兵が出現した。「また!」と、ミセナが悲痛な叫び声を上げる。 「テメェら・・・ッ!! いい加減にしやがれ!!」 「やぁん、また怒られた☆ だから戦いに卑怯もラッキョウも無いのにぃ~」 「――どうやら、逆鱗に触れた模様」 この人の嫌がることをわざと行い、それを楽しむ態度。そんなものはトリュフォーには許せなかった。 どくん、と力が湧き上がってくるのを感じる。怒りが、彼の力を増してくれている。 そう、怒りが――憎しみが。 「人様の痛み・・・ちったぁ身をもって感じるんだな!!」 トリュフォーがそう叫んだ瞬間、ルブロとヴォルヴァが笑ったような気がして――シャンプは目をこすった。今までのような仮面のような笑みではなく、確実に何か企みが成功した時に見せる、あの嫌な笑いだ。 ――でも、見間違い? トリューを怒らせても、あの二人に一体何の得が・・・? そして、それに気付いたのはどうやらプルたった一人のようだった。 「トリュー」 プルの口から思わず出た呼びかけは、「何だ!」というトリュフォーの怒りのこもった声の前でしぼんでしまった。 「・・・また何かするかも」 何!?、と三人がルブロとヴォルヴァに視線を向ける。 だがプルが本当に言いたかったのはそんなことではなかった。 理由はわからない。わからないが、こう言いたかったのだ――怒りに身を任せちゃダメだ、と。 しかし、咄嗟のプルの言葉は間違ってはいなかった。 「・・・あの少年、鋭いねぇ。勢力増大、カンパされちゃったよぅ」 「――イントネーションに違和感。漢字で『看破』と記すのが妥当。だが、見破ったところで何となる」 今度はヴォルヴァまでもが同じように、幻を出現させていたのだ。それはプルとミセナが散々苦労した、あの刃物の罠だった。 対処が遅れれば、刺されていたかもしれない。そう思った瞬間、プルの頭から先程の忠告は綺麗に吹き飛んでいた。 「トリュー、気を付けて! そいつら、見た目より切れるから!」 「おやん? 知ってる、てことはコレにやられかけたクチ?」 特に答えは返ってこない。ルブロは「冷たいなぁ」と一言呟くと、おもむろに腕を組んだ。 「ケドね、コレはなかなかスリリングで面白かったよね? ビューンて飛んで来るのを、いくつうまく掴めるか競争したよねぇ・・・柄の所を掴まないとそのままスパってなっちゃうから意外とドキドキしてさぁ・・・ま、切られたこと無いけど・・・そっか、もう遊べないんだねぇ・・・しみじみ」 「――このネズミ捕りが? ・・・同意しないことも無い。記録:ルブロ13本・ヴォルヴァ44本」 「・・・13本取った時は、12本しか取れてなかったクセに」 ――そういえば、スバエルギナスは『魔衆撃退のため』の罠だと言っていた。それが彼女らに向けられたものだったとしたら。そしてその罠を軽く突破してしまう彼女達・・・彼をすぐに倒さなかったのは、いつでも殺せるという自信があったからなのだろう。 セファラスは改めて、身動きが出来ない自分を呪った。確実に、トリュフォー一人でどうにか出来るような相手ではない。 「くそッ・・・矢さえ射られれば・・・消してやれるのに・・・!」 「そんなにヤベェのかよ・・・」 「うん」 「ともかく、刃の部分に触ったら持って行かれると思ってくれて構わない。僕のようにね。避けるしかないんだ」 「ま、慰めの言葉はハナッから期待してねぇけどな」 当然ながら、トリュフォーの武器は幻を打ち消す能力など持ってはいない。相手の言葉を信じるならば殺されはしないだろうが、瀕死は覚悟しなければならないようだ。 「何という、魔力・・・」 己の意思に従って敵を攻撃する人ならぬ幻に剣、そして数多の刃。二人がかりとはいえ、それを造作無くやってのける能力は底が知れない。 「あらぁん♪ 元! とはいえ、宮廷魔道師団長にお褒めに預かり、光栄ですぅ☆」 そうだったのか!?、という眼差しがセファラスに向けられる。 「・・・・・・名前が同じだけだ。落胆させて、すまないね」 「そぅお、がっかり」 ひゅんひゅんと軽く風を切りながら、剣が舞う。それに呼応するように、小刀やらナイフやら包丁やらフォークやらが、出番を待ちわびてトリュフォーの方に切っ先を向けている。 「チッ・・・どうあっても性根が腐ってんな、テメェら」 トリュフォーのその言葉を待っていたとばかりに、ルブロが若い男の声でこう格好をつけて答える。 「何とでも言ってくれたまえ。これぞ悪の華――咲き乱れるその美しさに人は心奪われ、そして・・・儚く散る」 「――声帯模写:魔剣士グラシリス。内輪ネタ」 完全に勢いをそがれる格好となったトリュフォーは、「やっかいだな」と呟いてルブロを睨み据えた。が、彼女はペースを崩さずコロコロと笑い転げている。 「あはははは~♪ こぉゆ~場面こそ、誰も知らない白けるネタに限りますなぁ☆ わかるヒトいませぇ~ん! にゃはは♪」 「・・・・・・俺、知ってる」 一斉に、プルに視線が集まった。うお!?、っともう一度プルは身を引いてから呟く。 「いや・・・シャンプと一緒にいろいろありまして・・・その時に・・・うん・・・」 「マジでふか少年! こ、これは意外なトコにレアな人材でわ・・・?」 ルブロがうっとりと彼を見つめると同時に、刻むようなヴォルヴァの視線がプルに突き刺さった。 「ふん・・・だ、そうだ、ルブロとヴォルヴァ、とやら。思い通りにならなくて、残念だったな」 「いいえぇい! Good job! 少年!!」 ビシッとVサインで決めるルブロ。そして、「うざ・・・」と呟くヴォルヴァ。 「――ちょっと失敗したぞ、ルブロ」 「まぁ、あんま先進的ダメージの効果は期待してなかったし?」 「・・・成る程、相手の気を乱す技には非常に長けているようだね・・・トリュフォー君、心を平常に保つんだ」 わかってるさ、とトリュフォーが疲れたように笑った。 無意味なことを言ってしまったかと思ったが、トリュフォーの注意を促すには良かったのだろう、きっと。少なくとも、プルはそう思うことにした。 「さっ♪ 紆余曲折あったけど、結局、この超不利な状況、どぉするのん?」 「要するに、触れなきゃいいんだろ?」 「え? まぁ、そうらしいケド・・・だよね?」 「――返答の必要:皆無。行け」 合図と共に降り注ぐ刃物を、トリュフォーは手にした槍で思い切り薙いだ。一瞬、そしてそれだけ。 「あれぇ? 今、何やったのん?」 首を傾げるルブロの前で、幻影兵達が矢をつがえた格好のまま次々と消滅していった。驚きを隠せないルブロに、ヴォルヴァが告げた。 「――風圧による吹き飛ばし。偶然、あるいは故意によって矢と兵が衝突、双方のエネルギー拡散により消滅したと推測――詰め手が完全に裏目に出た」 「うっそぉ!!」 「見たか、これが本気だ!」 一か八かの賭けだったが、トリュフォーは見事に勝った。 同じ人物が生み出した幻では成功するはずも無く、なおかつ、幻が風圧で狙った方向に弾き返せるのかという問題もあったのだ。 しかし、いくら幻とはいえ、彼の全魔力という強力な魔力を込めて発生させた風には影響されるようだった。 「す、すごい・・・」 「成る程、風の力か・・・これならば覆せるか!?」 「――攻撃データ:該当無し」 「アレだねぇ、イザとゆ~時の切り札ってワケ?」 「ま、私もたまには魔術ぐらい使うさ」 軽く笑いながら、トリュフォーはもう一度槍を構えた。 「短期決戦はお互い様だ・・・一撃で・・・決する」 口ではそうは言ったが、ほぼ全ての魔力を使い切ってしまった今、もはや魔法による回復は期待出来ない。その上、相手は薬草などを使う暇を与えてくれそうにもない。 次の攻撃、そして次の次の攻撃を食らうことがあれば、それこそ一巻の終わりだった。 そうなる前に、何としてでも一撃――狙いは無論ルブロだ――カウンター気味に食らわせるしかない。そのためには、相手の攻撃の威力を加えるために、あえてその攻撃を受ける必要がある。 敵としても、その出方はわかりきっているはずだが、ルブロは意に介さず、その挑発に乗った。 「んーじゃコッチも、一撃で決めたげるよぅ!」 何度目かの跳躍。 彼女は彼の懐に飛び込んで、剣を切り上げた。それを避けた彼にぴたりと付き、今度は肩の辺りを思い切り貫こうと一撃を繰り出す。 気の緩みか、はたまた誘いか。 彼女のその伸び斬った腕は、先程以上に隙だらけだった。まるで反撃をしてくれと願っているかのように。 偶然でも罠でも、最早トリュフォーに選択の余地は無かった。 そして―― 捕らえた。 一瞬。そしてそれで十分だった。 受身も取らずに地面に叩きつけられたルブロに、トリュフォーは刃を突きつけた。彼女の手から離れた、あの凶悪な剣で、だ。 「おっと、動くなよ」 妙なマネをすれば、こいつで斬って捨てる――そう告げたのは何もルブロに対してだけではない。すぐさま反撃に出るであろう、ヴォルヴァに対してもだ。 憎々しげに舌打ちをしたヴォルヴァが、歯軋りをしながら彼を真っ赤な瞳で睨みつけている。 しかし、一瞬遅かった。 「――調子乗ってんな!? それはこっちのセリフでもあるんだぞ、クソ野郎が!」 彼女の腕には、いつの間にかプルが抱え込まれていた。魔道か何かによるものだろう、プルも驚きを隠せない様子だったが、 「え・・・あ、ゴ、ゴメン、トリュー!」 と気丈にもそう詫びた。しかし、その顔は白磁よりもさらに色が失せている。 「卑怯者! 彼は戦闘員じゃないんだぞ!!」 「黙ってやがれこの自称魔王のメス風情がッ! 薄っぺらな膜に包まれて勘違いしてんのかよ!? 偉そうに対等な口利いてんじゃねぇぞ!!」 「何・・・クッ、ならば僕と代われ! 彼を放すんだ!」 「大切な彼氏だから、かぁ~? まさに禁断の愛ってか? はん、獣の言葉は聞こえねぇな。耳障りで意味不明だ。バッカじゃねぇ?」 ヴォルヴァは有無を言わさず、プルにさっきトリュフォーから奪った兜を被せると、容赦無くその上から殴りつけた。ガァン、と金属音が響く。 「このまま、兜ごと首を捻じ切ってやってもいいんだぞ」 ミシミシ、と嫌な音を立てながら、プルの首に彼女の細い指が食い込んでいく。それを止めるように、トリュフォーの刃の切っ先が軽くルブロの首筋に付けられる。 「・・・お互い、切り札は上手に使うとしようぜ」 沈黙のまま、睨み合いが続いた。 「ルブロから離れな」 「プルーアを放したらな」 どちらも先に動くつもりは無い。人質を解放した瞬間、相手側に捕らえられている人が殺されかねないからだ。 と、 「別にいぃよ、ヴォルヴァ」 ルブロが呟いた。「だが――」と口を開くヴォルヴァを、目で軽く制する。それから、クスリと微笑んでみせる。 「ホントは、殺したいんでしょ」 黄色い瞳でトリュフォーを見据え、彼女は笑った。ぴくり、と切っ先が揺れる。 「人の心を弄んで、苦しめて、それを喜んでる奴らなんて・・・死ねばいい、殺したい、殺してやる、って思って――」 「・・・違う」 「――思ってる」 クスクス笑いが大きくなる。ヴォルヴァは無理やり感情を押し込めた無表情で、じっと成り行きを見守っている。 「思ってるよ、思ってる! 殺したいんだ! 殺せばいいよ! 敵対者はみーんな殺せばいい!! 殺せ! 殺せ! 殺しちゃえ!」 「黙れ・・・黙れ、黙れッ!!」 カッと頭に血が上る。ブルブルと痙攣したようにの腕が震える。思わず剣を取り落としそうになる手を、もう片方の手で押さえる。 はたと、プルは自分の痛みを消し飛ばすような不気味な気配を感じた。どこかで感じたことがあるような嫌な雰囲気だ。 「トリュー!!」 兜越しに叫ぶ。聞こえているのか、いないのか。 自分が助かりたいとかいうのではない――無論、そうして欲しかったが、何故かその瞬間は思わなかった――わからないが、ともかく止めなければと思ったのだ。 ふと、トリュフォーの脳裏に非情な言葉がよぎった。 ――殺したって構わない。非道な輩なのだから! 他のことが考えられなくなった。ルブロと名乗るこの魔物の、息の根を止めることだけを思う。 そしてまさに手にした剣を突き立てようとした瞬間。 心臓がドクンと飛び跳ねた。 「ぐ・・・ぅ・・・ッ」 胸を押さえ、うずくまる。ドクンドクンと鼓動が激しく脈打っている。治まらない。 ――殺せ! 殺した方がいい!! その思いが消えない。そうすべきだと、片隅でそう思っている自分を、弱い心が必死に押しとどめる。 ここで彼女を殺せば、プルもまた―― だが、とまた自分をけしかける声がする――たった一人の人間のために、この危険な魔物を野放しにする気か!? それでどれだけの人間が死ぬと思っている!? 一人を犠牲にすれば、そう、たった一人を犠牲にすれば、これから先に助かる命も、あるのだ。 それでも、出来ない。彼を――巻き込むわけにはいかない。 カッツン・・・カラカラカラ 甲高い音を立て、手からとりこぼれた剣が床を滑っていった。ぼんやりとその様を眺める。もうこれで、この魔物を殺せない。 ――一体、何が、どうなって・・・? 何かが、自分の奥底で疼いている。 暫く、その状態が続いた。ややあって、ルブロが呟く。 「あれ・・・? トドメ、刺さないんだ・・・」 ルブロはどこかしら落胆したような表情を垣間見せた。まるで殺されたかったとでも言うかのように。 しかし、無論それも一瞬のこと。 トリュフォーに動く気配が無いと知って、まず行動を起こしたのはヴォルヴァだった。彼女は人質のプルを無視し、一直線にルブロの元へと駆け寄った。 「ルブロ!!」 そんなヴォルヴァに無遠慮に放り投げられて、プルは頭から地面に落ちた。ガァンと兜が鳴る。二度目の大打撃だ。これのせいで前が見えないのは確かだが、もし無ければ大怪我をしていたところだ。しかし、その衝撃でさらに兜がすっぽりとプルの頭に嵌ってしまう。 「ルブロ、無事で・・・」 「ちょっと待てぇ! 勝手に人質にしといて何この仕打ち!!」 感動の再会を果たしているであろうルブロとヴォルヴァに、プルは思いっきり怒鳴った。兜のせいで聞こえているのかどうかもわからないが、この怒りは他にぶつけようが無い。 「――黙れ人間!」 「あーそうですよ! 俺は人間ですよ無力な人間風情ですよ! でも文句は言いたいよ!! むしろ言わせてもらう!!」 ルブロはピョイっと体を起こすと、あらぬ方向を向いて怒鳴っているプルを見てあははははと思いっ切り笑った。 「あはは、兜人間、兜人間! 少年プル、グー!」 「誰のせいなのさ!?」 「いや~、面白いねぇプル! マイナーな魔衆のヒト知ってるし、きちんと突っ込んでくれるし、いいねそのキャラ! ぜひまた会いたいなん♪」 「だからもう二度と会いたくないってのッ!!」 「ヴォルヴァ、データ登録よろしこ♪」 「――チッ・・・了解。登録:完了」 ゲッ、名前まで覚えられた!?――と、妙な輩ばかりに目を付けられるプルはまたもや慌てふためいた。 それを笑って見ていたルブロは、駆け寄って来たヴォルヴァの肩にようやく寄りかかると、無理やりポーズをとって、また無邪気に笑ってみせた。 「でわでわ、みなサマぁ~! ルブロ・ヴォルヴァタの芸、お楽しみ頂けましたでしょおか?」 「――喜んでいただければこれ幸い。そうでなければ、精進あるのみ」 「次こそはもぉっと! 面白く激しく楽し~い出し物を、考えまぁす!!」 「次なんていらないから!!」 どうにか兜を外したプルが叫ぶ。正直、もう勘弁してほしい。いや、勘弁してください。 それでも、二人は全く意に介さずに、恭しく頭を下げると明るい声でこう告げた。 「またお会いできることを楽しみにぃ♪」 「――さようなら、ごきげんよう」 止める間があればこそ。 彼女らは現れた時と同じように、唐突に姿を消した。 嵐と地鳴りと火事と落雷がいっぺんに襲い掛かり、去って行った後のようだった。 「ト、トリュー! 大丈夫!? 大丈夫なの!?」 兜を手にプルが慌ててトリュフォーのもとへと駆け寄ったが、彼は突然立ち上がると、 「心配すんな。何でもねぇよ」 と頭を振った。 「そっか・・・よかった」 「ふん、私も落ちたもんだな。戦闘中に一般人に心配されるとは」 「心配は勝手だよ。ホント、最後は冷や冷やしっ放しだったんだからさ・・・」 もう今度は何も出ないよな、とプルが辺りを見渡し、ミセナに笑われる。「もういないと思うし、それこそ君が警戒しても無意味じゃないかな?」 そりゃないでしょ、そう言って笑う二人を見やってから、楔から開放されたセファラスが彼のところへゆっくりと歩み寄った。手に彼の盾を持っている。 「・・・トリュフォー君、と言ったね。もし体調に異変を感じるようならば、王都で診てもらった方がいい。なんなら、私が腕利きの治療師を紹介してもいい」 「別にそこまで・・・胸の痛みももうねぇから――」 「いや、自己療法は避けるべきだよ。私は専門ではないから明言は避けるが・・・」 セファラスはあいまいな笑顔を浮かべて、トリュフォーにこう告げた。 「もしかすると、呪いにかかっている可能性がある」 「まさか。覚えがねぇぞ」 「いや、そうならいいんだ。ただ、少しばかり気になってね・・・一応、気には留めておいて欲しい。念には念を入れて、ということだが・・・診てもらうならば、なるべく早くがいいだろうね」 トリュフォーは「前にも同じこと言われたが」と前置きをしてから、 「どの道、王都へは行かなきゃならねぇんで・・・その時にでも」 「そうだね、それがいい。それを聞いて安心したよ」 トリュフォーは軽く胸をさすってみたが、何ら異変は無さそうに感じた。しかし、今回のことといい、戦い方が荒くなっているのは事実だ。身体にも負担が大きいのかもしれない。 「ところで、トリュフォー君」 ふと、思い出したようにセファラスが口を開いた。 「君の名前は・・・本当に『トリュフォー』なんだね?」 「そうだが・・・最初にそう名乗ったし、アンタも今までもずっとそう呼んでただろ。第一、名前を偽る理由がねぇ」 「ああ、そういう意味では・・・」 あごに軽く手を添えてから、セファラスは頷いた。 「いや、そういう意味かもしれないか・・・」 どこかで聞いたような名前であると言うのも引っかかるが、それ以前にもっと気に掛かることがあった。ルブロも言っていたが、『似ている』のだ。思い切って、尋ねてみる。 「君、名字は何と」 「無い。私は・・・ただの、トリュフォーだ。そもそも、普通、名字なんて使わねぇだろ」 セファラスは暫く黙っていたが、 「テューバー・・・」 と呟いた。 「え」 「いや、君と似た人物を知っていてね。メラノスポルム・・・かつて北で繁栄を誇っていた国の勇士なんだが――彼の名字が、テューバーだった」 「・・・他人の空似だ。私は・・・」 と、トリュフォーは少し口ごもると、どこかしら寂しげに呟いた。 「・・・自分の生まれ故郷すら、知らねぇから」 「自分の、両親もか」 ふいに、ミセナがそう声をかけた。トリュフォーは参ったなというように頭をかいたが、「そんなんじゃねぇよ」と言い放った。 「そんなの私だけじゃねぇさ。20年前の戦争で・・・孤児なんていくらでもいる。今でも、だ」 しんみりしてしまった雰囲気を嫌がって、トリュフォーはもう一度、今度は少し怒ったように声を出した。 「だから! そーゆー話はいいだろ、なぁ!? それよりも私としては早く森の出口に行きてぇんだよ!!」 「え、出口・・・あッ!! もしかして!?」 「・・・もしかしなくても、だ。ようやく理解したか」 どうした?、と声をかけたミセナに、プルは慌てながらこう告げた。 「そう、大変なんだよ!! シャンプとルスラちゃん、森の出口で二人きりなんだよね!?」 深々と溜息をつきながら、トリュフォーが頷いた。 「ひょっとして、髪の毛の赤い女の子と、大剣を背負った少年かい? あの二人・・・どこかマズいことでも?」 「・・・いいんじゃないか? ああ、ひょっとして男女が二人きりというのが――」 「そんな複雑な意味なんかじゃねぇんだ」 手を額に当てながら、トリュフォーはさっさと館の出口を目指した。慌てて残りの3人も後を追う。 扉を開け、外へ出る。 感慨深すぎて心が落ち着かないまま歩いていたミセナは、突然立ち止まったセファラスの背中にぶつかった。 「ちょ・・・セファラスとやら、急に立ち止まるのは――」 彼は返事の代わりに、すっと西南の方角を指差した。そのままミセナが視線をずらしていくと―― 「も、森が!? 西南の森が燃えているッ!?」 ――そんなバカな!! 絶句のあまり、口をただパクパクさせることしか出来ない。そうこうしている間にも、様々な色の閃光が暗くなりかけた空を突き破っていた。音こそ聞こえないが、もしここまでその響きが伝わるとすれば、耳を劈くような轟音に違いない。 皆の答えは一つだった。 彼らは、駆け出していた。 疲れきった体に鞭を打ち、ひたすら、出口方面である西南の森の元凶部へと。 火球が宙を舞い、風が吹き荒び、土が捲れ、水の刃が降り注ぐ。それだけならばまだしも、周囲の木々からは無数のツタが伸び、空からは時折雷鳴が轟いて彼、シャンプを完全に囲んでいた。 ルスラはふわふわと浮いた状態から大小様々な魔術を繰り出して来ていた。 火、水、土、風、そして木と雷。無作為に選び出され、攻撃となって襲い掛かる。 シャンプに課せられた修行とはこうだ。 相手の魔力を剣に封じ、吸収する特訓。そして、それらを己の魔力と合わせて放出し、反撃する方法を会得すること。 まだ必殺技を編み出しておらず、かつ、剣を媒介としての魔法や魔術を繰り出せないシャンプは、ただ力任せに剣を振り回し、消耗戦ともなれば滅法弱くなってしまう――あくまでも、ルスラの言い分だ。 よって今、ここで、「幻ならばいくら破壊しても問題あるまい」というルスラの提案により、常人ならば一瞬で墨となりそうな状況下で『手合わせ』をしているのである。 「せえ、やッ!!」 シャンプは剣をうまくずらし、吸収出来ないほど強大な魔力をもった鎌イタチを弾き飛ばした。一定容量を超えると、疲労が溜まり過ぎて動けなくなってしまう危険性があるということは先程教えられたばかりだ。 「ほれほれ、今のはもったいないぞ?」 言いながらルスラは今度は水の玉を放つ。だがシャンプは気合一線、相応の炎で相殺する。 「どぉじゃのめ!!」 「まだまだ! 息が上がっておるぞ?」 イカズチがシャンプを直撃し、彼は慌てて魔力を聖魔剣に吸い取らせる。そしてそっくりそのまま後ろから飛んで来た石礫に返して、粉々にする。 ・ ・ ・ 「よし、一旦休むか」 「んだなや」 ルスラの言葉にほっと剣を下げたシャンプに、特大の火球が襲い掛かる。 ズババシィシシィワワァババババ 咄嗟に魔力放出と共に振り払った剣から形容し難い轟音が轟き、炎がちぢに千切れ飛んだ。そのまま森のあらゆるところへ四散する。 「おわッ・・・ッぶねぃやさ!! ルスラぁ!! おめ、しめぇっつったらもぉせんでけんれや!! ま!!」 「甘い甘い。不意打ちを防げんでどうする? そもそも、魔衆らの戦法は主にこうした騙し討ちを旨とした――」 と、その時。 「んぁ? ルスラ、けっかしぞ?」 「可笑しいぞ、ということか? ならば笑え」 「ちゃうげぇ、つっとめ、キナ臭ぇぞ?」 はっ、とルスラが一蹴する。 「何を莫迦げたことを。ここは幻で出来ておるのだぞ? それが魔術を放ったぐらいで何となる?」 「言わりゃそんだけんどれもよぅ・・・」 シャンプは首をかしげながら、ゴウゴウと燃え盛る木々を眺めていた。やけに熱く感じる。 「じゃけぇ、こんはどう説明すっとよじぇ?」 剣に炎を絡めとって、燃え上がらせる。その質感は確実に幻ではない。 ルスラは暫く黙っていたが、一言。 「知らぬわ」 結局この後、大慌てで駆けつけた4人が「魔王スバエルギエナスを倒したからここに以前あった森が再現されるので、つまりはこの大火事は本物である」と必死に説得したり、しかし当の本人であるルスラは「もう魔力が尽きたゆえに消すのは面倒だのう」などと渋ったためにセファラスが残りの魔力を振り絞って鎮火させたり、シャンプが「まんだ必殺技ちーのも考えつけれんよって、未熟モンだべやなぁ」などと恐ろしいことをさらっと言ってプルがあっさりそれを信じてしまったり、ミセナが魔の眷属ではあるけれど敵ではないということを説明するのに散々時間を食ってしまったり、何だとどのつまりはプルが悪いんじゃねぇかということになってプルが『騒ぎの元凶』の称号を手に入れたりと、いろいろあったのだが、全てを統括する一言はプルのこの言葉に限るだろう。 「何がどうでもともかく・・・疲れたぁ・・・」 しかしいくら戦闘が続こうとも、裏で何が画策されていようとも、まずは王都まで辿り着かねばならないのだ。 勇者一行の旅は、目的地に到着するその時まで、まだまだ終わりはしないのだ。 つづく! ◆(穂永) なにはともあれ、全員無事で森を抜けることができ、プルアロータスは胸をなでおろしていた。森を出た途端、シャンプに力いっぱい抱きしめられ、身体中の骨が一本残らず折れてしまったのも、ついでに「よう無事で戻ったなや!」という叫びのおかげでずっと耳鳴りがやまないのも、ルスラにさんざん毒づかれたことも、シャンプの締め付けの上にトリュフォーにまで背中を叩かれてとどめを刺されたのも、抜け出た喜びに比べれば蚊に刺されたようなものである。 そうやってもみくちゃにされていると、ミセナがやって来て、言った。 「僕はそろそろ行くよ」 ああ、そうだ――とプルは思い出した。この娘はアマニタで、魔王だったのだと。なにやら不思議な気持ちがした。プルは気づいていなかったが、その気持ちは落胆と名づけるべきものであった。自分を助けてくれた彼女が、これからも助けてくれるのではないかと、心の底で期待していたから。 「ふむ、では私も去ることにしますよ。お若い方々の冒険についていくには、いささか歳をとりすぎていますから」 ミセナの言葉をセファラスが引き取る。 「道中、安全とは言い難いです。もしよろしければ、途中まで同行いたしますよ」 「ではお願いするよ、セファラスさん。スバエルギナスの屋敷に現れた魔衆の口ぶりから察するに、僕たちの立場はそう安閑としていられるものではないようだからね」 それからミセナは、プルの手を引いて、こう言った。 「ちょっと良いか?」 「え? あ、うん」 皆と少し離れたところまで、ミセナはプルを引っ張っていく。残されたシャンプ、トリュフォー、ルスラ、セファラスは、みなこういう事件が大好きである。こっそりと気配を絶って、二人のあとをつけていく。二人から十歩離れた木の影から、トーテムポール的に――一番下にルスラ、それからシャンプ、トリュフォー、セファラスの順で――顔を覗かせ、様子を窺った。 プルはもとより、ミセナも四人の気配には気づかないで、話し始めた。 「あちこち傷を負ったようだが、本当に大丈夫か?」 「や、だから頑丈なんだよね、俺って。ほら、もう怪我も治ってるし」 「なら良いけど、――いや、良くないな。僕の戦いに巻き込んでしまった上に――」 プルは首を横に振って笑った。 「巻き込まれたっていうか、首を突っ込んだだけだけどね。……あ、ごめん、笑って話すことじゃなかった。――仲間さんたちのこともある」 「君が気に病むことはないよ。そもそも、彼らを助けられるとは思ってなかったしね。スバエルギナスを倒そうとしたのは、後々の犠牲を減らすこと、それだけのためだよ。母さんが僕に託したことだから、力が及ばなくても、あたう限りに」 ――お前は、いや、私たちは弱い。かつて『蒼空の魔王』はこう言った。だから、弱者の苦しみを知りなさい。そして、自分の背後にいる、自分より弱い者だけは、何に代えても守り抜きなさい。 その言葉を胸に懐いて、ミセナは魔王となった。 「プルアロータス、君は何事にも首を突っ込みたがるね。でも命の危険があるような場所に足を踏み入れるのは、勇気じゃなくて馬鹿だよ」 少しむっとして、プルは言い返した。 「俺がいなきゃ――って、俺はともかく、トリューやセファラスさんがいなきゃ、君だって無事じゃすまなかったじゃないか」 「それはそうだが」 「馬鹿なのはお互い様でしょ」 正面から馬鹿などと言われて、ミセナはかえって可笑しくなった。 「その通りだな。僕たちは馬鹿だ。あっはは」 プルもつられて笑った。ミセナは少しだけ真面目な表情に戻って、言葉を継いだ。 「でもプルアロータス。僕の言ってることは間違ってはいないはずだ。その――君には、生きていて欲しいから」 少し顔を赤らめて、続けた。 「きっとこれから、魔衆の動きはますます盛んになると思う。魔衆だけじゃない、世が乱れれば、人も乱れる。白昼の市街さえ、安心して歩ける場所じゃなくなるかもしれない。だからプルアロータス、――気をつけて」 「うん、――ミセナも」 「ああ」 力強く応じて、ミセナは手を差し出した。プルはその手を握る。 「記念の品を渡しておこうか」 ミセナはふとそう言って、自らの背中に手をやった。その手を前へ出すと、いつどこから取り出したのやら、一枚の長い羽が握られていた。白くしなやかで、それでいて強硬である。 「羽ペンにでも加工して使ってくれ」 「ありがとう」 プルは羽を受け取ると、何かお返しの品がないかと思いを巡らせた。不意に、一つ思い浮かぶ。 「これは、お返しだから」 「花?」 ヴェルから貰った花。ほとんどシャンプに食べられてしまったけれど、二輪だけ残っていた。プルがミセナに渡したのは、そのうちの一輪である。 「ある友達から、貰ったものだけど」 ミセナは眼をしばたいた。花を受け取ったもののもてあましていた。 プルはまた一つ思いつく。ミセナの手から花を取ると、その髪に挿してやった。 「あ、やっぱり似合う」 「からかってるのか?」 「そうじゃないよ。本当だって」 「そ、そう?」 満更でもなさそうなミセナを見て、プルも嬉しかった。 「さて――では本当に、そろそろ行くよ」 「また会えるといいね」 「生きていれば、機会もあるさ」 二人はもう一度握手した。 それと同時だった。どさっ、という音が聞こえたのは。慌てて二人が周囲を見回すと、木陰にシャンプたちが折り重なって倒れていた。 「うあ、なんで聞いてるのさ!?」とプル。 「あまりにお約束すぎて、怒るに怒れないな」とミセナ。 まずセファラスが他の連中を押しのけて立ち上がり、声をかけた。 「ではミセナさん、もうよろしいですか」 ミセナはうなずく。 「花の次は鳥か。この艶福家め」 プルを待っていたのが容赦のない冷やかしだったことは、言うまでも無い。 (間章) 「西の山へ真っ直ぐお帰りになりますか?」 「いや、ある人のところへ寄る」 「ある人とは?」 「――『黄昏の空の魔王』」 「ふむ」 「スバエルギナスのところに現れた魔衆の口ぶりから察するに、連中は何らかの理由で魔力を集めているらしい。――魔王を仲間に引き入れるか……殺すかして」 「そのようですね」 「それにレイスどのは、とんでもない隠し玉を持っていたようだし」 「おそらく、まだ他にも切り札を伏せていると考えてよいでしょう」 「僕一人の力で、部下たちを守り抜くのは無理だ。だから中立の立場を堅持し、人望厚く、優れた魔法戦士でもある『黄昏の空の魔王』のもとに、一族ともども身を寄せようと思っている。彼は母の古い友人だし、同じ空のしもべでもある。きっと力を貸してくれるはずだ。まずは、そのための挨拶に」 「なるほど、それが賢明な判断でしょう。僕が貴女の立場でもそうしますよ。もちろん、吸血鬼にならないよう注意することが必要ですが。ただあなたには、もう一つ選択肢があるはずだ」 「言わんとしているのは、魔衆につくということか」 「そうです」 「連中のことは信用できない。それに連中に組すれば、一族にも少なからぬ犠牲が出よう」 「――どうやら、貴女を殺さずに済みそうですね」 「その心配は別の人間に向けるべきではないか? 気づかなかったわけではあるまい、あの戦士にかけられていた呪いは――」 「……私はこっちへ行きます」 「僕は向こうだ。ここでお別れだな」 「ご一緒できて光栄でした」 「こちらこそ、名声赫々たる占天官コプリナス師と同道できたこと、嬉しく思う」 「では、これで」 ミセナはセファラスの背中をしばらく見送った。プルと別れたときと違って、さしたる感慨は浮かんでこなかった。ややあって、彼女は自らの道を急いだ。 ◆ ヌメーガは一見、小さく鄙びた漁村に過ぎない。だがしかし、ムーランなど王国西部地区と王都マッタンゴーを水路で結ぶ交通の要衝でもあり、往来の人が絶えることはない。川はといえば、これぞ王国第一の川『オーランティア江』、俗に『黄金の水』。俗称の由来は、黄金街道に連なる水路であること、また魚介が多く棲み、漁獲が豊富であることという。 ところがこの日、プルたち一行がこの村に到着してみれば、いつもの喧騒はどこへやら、往来に出ている旅人はなく、物品の取引をする行商もなく、ただ家々の隅で、破れ網の補修をしている漁師の姿が目に映るだけだ。その漁師たちも、決して景気の良さそうな顔つきではない。 不審に思った一行は川べりまで行ってみた。 「な、なんだこりゃ!」 トリュフォーが思わず声をあげる。川に十数隻も浮かんでいる船、それは漁船ではなく、戦艦だった。しかも水賊征伐に使われるような小規模なものではない。至るところに鉄板が張り巡らされ、船べりには『スコーピオン』と呼ばれる大型の弩と、珍しいことに火炮まで備えていた。 「なんなの、トリュフォー?」 こんな船など見たこともないプルがそう尋ねると、 「戦争でもすんのか……?」 と答えにならない答えを返した。 事実、戦争の準備でもしているかのようであった。川べりには多数の兵士がたむろし、弓や鎧の手入れをしていた。中には騎士や魔術師の姿もちらほらと見える。これだけの戦力があれば、優に一地方の征圧が可能となるであろう。 ややあって、トリュフォーはその軍隊の中に知った顔を見つけ、呼びかけた。 「おーい、フラムル!」 フラムルと呼ばれた男は声に従って振り向いた。白い肌に濃灰色の髪、甲冑とマントは褐色だ。四六時中顰めている眉と、その下にある鋭い目、きらりと光る眼鏡から、付き合いにくそうな印象を与えていた。敢えて腰に剣は佩かず、代わりにメイスを背中にかけている。 「トリュフォー、戻ってきていたか」 フラムルは馬を下りると、つかつかと歩み寄ってきた。まずは握手。 「で――見つけたのか」 トリュフォーはうなずく。フラムルはシャンプの背中の剣に目をやってから、うなずく。 「それよりこの騒動はなんだ? フラムル、あんたは北方の叛乱を鎮圧しに行ってたんじゃないのか?」 フラムルは「一言では言い難いが」と枕を置いて、語り始めた。 「叛乱そのものは、すぐに片付いた。首謀者の捜索や治安の回復には少し時間がかかったがな。まあ、そういった後始末に忙殺されていると、王都から命令が届いたんだ。戦艦部隊を率いて、ヌメーガへ赴けとな。 聞けば、オーランティア江の、ヌメーガから王都までの水路に、魔物が出没するらしい。それも今までの、魚や蟹に毛が生えたような連中とは違っているらしくてな。で、そいつの探索と、可能なら退治を命じられたわけだ」 「なんで遠方にいたあんたがそんな司令を受けたんだ? 王都から討伐隊は出なかったのか?」 「出たとも。エオルスの率いる騎士団第二隊だ。でも負けた」 聞いてトリュフォーは跳び上がる。 「エオルスが負けた!? 本当か!?」 「ああ、戦艦七隻のうち五隻を沈められた。エオルス自身の船もだ……彼は水練の達人だし、あの悪運の持ち主だ。死んではいないだろうがね。ともかく、そんなわけで王都からここまで水路では来られないんだ。それで私が、北からはるばる舞い戻ってきた」 「……確かに、この川が使えないとなると、王都へはかなり大回りしなきゃならなくなるな」 「一緒に来てくれ、トリュフォー。そのことも併せて、相談するとしよう」 それから声を低めて、付け加えた。 「まだ勇者には、君の目的を知られたくないのだろう」 トリュフォーは小さくうなずいて、プルたちのほうを向いた。 「聞いた通りで、こっからは大人の話し合いだ。オメェらはどっかで遊んでな。プルーア」 いきなり名を呼ばれて、プルが硬直する。 「オメェがリーダーだ。泊まるとこを探しとけ。それと、面倒事は起こすんじゃねぇぞ」 「えっ、あ、ああ、うん」 唐突な命令を受けて、プルが曖昧な返事をする。それ以上会話を続けるトリュフォーではない。フラムルのあとに続いて、どこかへ行ってしまった。 シャンプとルスラの視線が自分に向けられているのを知って、プルは慌てて言った。 「それじゃ、宿屋を探そうか」 ところが、どこへ行っても空いている店はない。この村に足止めを食っている旅人や、王国から派遣された兵士たちで部屋は埋まっているのだ。 死にかけた村で右往左往していると、三人の側を何かがすれ違っていった。 それが何だか、一瞬、シャンプには分からなかった。プルに至っては、すれ違ったことにすら気づかなかった。 少女だった。面立ちからは十一か十二歳と察せられるが、身体つきは年齢不相応に小さく、ルスラと大差ないほどだ。顔と、袖口からのぞく小さな手を除くほかは、ひたすら黒かった。喪服に似た服も、髪も眼も。こと髪と眼は、この世のものとも思われぬほど深い黒だった。その黒はまるで、落下すれば二度と生きては戻れぬ谷のようで。 その少女の正体を理解したのは、ルスラ一人だった。 「哀れむべし。力及ばねば生まれずして死し、生まれれば母を喰らい父を殺し、幼時には側へ寄る者、触れる者全てに災いをもたらす。そして往々にして、力は反りて自らを傷つける刃となる。多くはその刃に刻まれて死す。それでもなお生き残ったとすれば、あとは永劫に続く時の鎖から逃れられぬ。戯れたのは神その人。しかし罪を負うのは己自身。哀れむべし、哀れむべし」 人が変わったように、意味のわからない言葉を続けるルスラに、プルはどうしたのかと聞いた。ルスラは不意にはっとした様子になって、こう言った。 「わらわは今、なんぞ言っておったかの?」 そこにいたのは二人の人物だった。一人は紅の甲冑に身を包んだ騎士で、トリュフォーやフラムルに比べれば小柄だが、しなやかな身体から放たれる剣術は王国無双であるという。この人物は、すでにお馴染みとなった、騎士団第四隊長ダーマである。 今一人は紫の道衣をまとった魔術師で、頭には水星の冠を擁き、胸には永久氷の勲章を飾っている。顔色は黄色く髪と鬚は赤い。フラムルよりかなり年上である。この人物は宮廷魔術師団の副団長を務める男で、名をラテリトという。 騎士団第四隊長ダーマと宮廷魔術師団副団長ラテリト。騎士団第三隊長フラムルにあのトリュフォーまで来ているとなれば、王都の人々の目にはそうそうたる顔ぶれと映るであろう。 「来たね、トリュフォー」 ダーマが声をかけた。トリュフォーが応じた。 「おめぇも来てたか」 「近くにいたから、来いと言われたわけだ。思いがけぬ早い再会となったね」 トリュフォーとフラムルが椅子につくと、おもむろにラテリトが話し出した。 「さてトリュフォーどの、話はフラムルどのから聞きましたかな」 トリュフォーがうなずく。 「だいたいのところは」 「情報を集めたところ、その魔物はどうやら、エビの化け物のようです。はさみで船を切断し、毒の泡を吹くという」 突拍子のない話にも、トリュフォーは笑わない。伏竜洞の出来事が思い出された。 「それを、どうやって討ち取る?」 「まずは兵士たちにクロスボウで矢を射掛けさせ、怪物の足止めします。その間に、わしが魔術を使い――川の水を凍らせて」 トリュフォーは目をしばたいた。 「ここは田舎の小川ではなく、オーランティア江だぞ」 ラテリトはにやりと笑う。 「確かにわしには、この川の水を凍らせて化け物を閉じ込めるほどの力はありません。だから……」 ちょうどそのとき扉が開いて、黒の少女が幽霊のように入ってきた。誰とも言葉を交わさぬまま、この建物の二階にある、自分の部屋へと影のように下がっていく。 「――『神の悪戯』を連れてきたのです」 「死神シークレアまで使うのか……!」 呆気に取られたトリュフォーに、ラテリトは言った。 「わしが彼女から魔力を借り、川を凍らせ、化け物を閉じ込めます。奴がくたばればそれでよし、なお死ななかったなら、そこからは君たちの出番というわけですな」 ダーマが言葉を継いだ。 「私は北方の出身だし、フラムルも北方での戦いの経験は豊富だ。氷の上でも土の上と同じように戦える」 フラムルが言った。 「で君は来るか、トリュフォー。そして、聖魔剣の勇者は」 少女が下りてきて、空いている椅子にちょこんと座った。両手には、およそ少女には相応しくない二つのもの――右手には背丈の倍も長さのある大鎌が、左手には大人のしゃれこうべが携えられていた。準備万端といったところである。だがその瞳にはなんの感情もない。 (おまけ) まさしく夕暮れ時になって、ミセナは『黄昏の空の魔王』の城にたどりついた。王国西部の人知れぬ渓谷にあるこの城は、千年の歴史を閲した名城で、二度にわたる勇者と大魔神の戦い、幾度もあった魔神とアマニタと人間との相克にも耐えてきていた。 門番に名を通すと、『黄昏の空の魔王』ファエル・ピオータ・オーレア辺境伯は快く迎え入れてくれた。この人物はひどく交際好きで、城の側を通りかかる旅人を――人間でもアマニタでも構わずに――招き入れ、豪奢な食事を振舞うことを趣味としている。人間と魔衆との争いには一貫して中立を保ち、命の危機にある者は誰一人例外なく――これも人間・魔衆に関わらず――迎えてかくまった。 「ようこそお出でくださいましたね、碧空の姫、いや、今は碧空の魔王でしたか」 「いえ、母やあなたのことを知れば、魔王などとは恥ずかしくてとても名乗れたものではありません」 ファエルはにっこりと笑って、 「そんなことはありません。私も魔王になりたてのころは、そこらの魔術師と変わらない力量でしたからね。それに比べ、あなたの力量は既に魔王たるに相応しいものです」 と言った。ミセナは無礼にならぬよう気をつけながら、彼の風体を窺った。 華やかな赤い服の上に、黒のマントを羽織っている。服にもマントにもあちこちに金の刺繍も散りばめられているが、悪趣味な感じはまったくしない。わずかにカールした鴉の濡れ羽色の髪が肩までかかっている。耳元から出ている突起は、アマニタの証――ミセナのそれと違って、蝙蝠の翼に似ていたが。面立ちは貴族然として整っている、人間にすれば二十七、八歳といったところだろうか。総じて言えば浮艶な雰囲気だが、一方でどこか重さを感じさせる。 「母上は亡くなられたそうですね。葬儀に行けず、申し訳ありませんでした」 「母の墓は私たちの山の山裾にあります。墓参りしていただければ、母も喜びましょう」 「いつか必ず参ります」 「母とは、長らくお付き合いだったのでしょうか」 「もちろんですとも。蒼空の魔王ミセナ・マトポーダは、我ら空のしもべの誇りでしたから。美しく、強く、そして誰よりも優しかった――百七十年前、魔神ロードポリウスが復活したとき、私はセファラスやスバエルギナスたちと肩を並べて戦ったものです。しかし、彼女ほど頼れる人はいなかった」 ありし日の母の背中を思い出して、ミセナは知らぬうちに、涙をこぼしていた。 「珠の涙は、別のときに取りおきください。今はそうしているべきときではないはずでしょう」 たしなめられて、ミセナは涙を拭いた。声音は全く違っていても、ファエルの台詞には母の言葉を思い出させるものがあった。 「では、用件をお伝えしたいのですが」 「聞きましょう」 ミセナがこれこれと説明すると、ファエルは二つ返事で承諾した。 「では部下を連れてこの城へ避難なさい。同じ空のしもべとして、お助けいたしましょう」 それからやや眉を顰めて、言いにくそうにしながら、もう一度口を開いた。 「これにつけこんで――といえば、言葉は悪いですが――あなたにお願いしたいことが」 ミセナが怪訝な顔をすると、ファエルは言った。 「ロードポリウスの封印の魔物……オーランティアの水蟲が、なぜか目を覚ましたそうなのです。私はこれから、友人とともにこれを再び封印しに行きますが、魔衆が妨害するかもしれません。ついては、あなたにも同行していただきたいのです」 ミセナは大きく頷いた。 「ロードポリウスのことは母から常々聞いています。彼の封印が解ければ、人間にも我らにも多大な犠牲が出ることになるでしょう。まして今、魔衆は陰謀を巡らし、王国は欺瞞と憎悪に満ちています。喜んで同道しましょう。ロードポリウスを復活させてはいけない」 26(バーネット) オーランティア江にまつわる伝説の一つにこのようなものがある。 はるかな昔、この大河が未だ名前すら持たなかったころ、そこには一匹の巨大な魔物が住んでいたという。この魔物は河を進む船を見つけるとそれを襲い、ことごとく沈めた。人々はこの魔物を恐れ、この河そのものも忌むべき場所となり、誰一人近づくものはいなかった。だが、あるときこの地に勇者とその仲間たちが訪れる。彼らはわずかに残っていた船で河へと出て、この魔物を退治したという。それ以降、この川では漁業と交通の両方が発展して言ったという。 要は御伽噺としてあらゆる子供に語られる比較的有名な勇者の伝説である。が、 (まさかその勇者の役をやることになるとは思ってもみなかったな……) 甲冑に身を包み、なかなか目にかかれない最新の戦艦の上で川の流れに揺られながら、トリュフォーは幼いころに聞いたその話を思い出していた。幼い少年が最も憧れるものといえばやはり勇者だ。まだ何も知らないまっすぐな彼らは、自分が大人になったら勇者のようになると口にする。トリュフォー自身もまた、そういう時期があった。そして今、実際にその立場になってみると自分がいかに無謀なことを口走っていたかがよくわかる。全くもって子供というのは恐ろしい。 「なににやにやしてるんだトリュフォー、気味の悪い」 「いや、すまない。ちょっとした思い出し笑いだ。気にするな」 「……余計に気味が悪い」 甲板の上で同じように出番を待っているダーマは口調こそいつものままだったが、その顔には緊張がはっきりと見て取れる。今頃船内でたらふく飯を食っているであろう自分の連れとは随分な違いである。まあ、そのうち一人は食事が満足に進められるか怪しい状態だったが。とはいえ、トリュフォーとて緊張しているのは同じだ。むしろこの状況で緊張しないというほうがおかしい。――あの二人はこの際除外しておこう。 しかし、とトリュフォーは思う。自分には数百人の仲間と13隻の戦艦がある。御伽噺の勇者たちと比べれば遥かにましな状況といえるだろう。ならば何とかできるかもしれない。いや、何とかなる。ただの気休めたが、無いよりは遥かにいい。そうトリュフォーは思ったのだった。 見回せば甲板には十人近くの兵士たちがそれぞれの持ち場についている。全員が何一つ逃すまいと水面に目を光らせている。ヌメーガを出てからもうだいぶたったような気がするが未だ目標は姿を見せない。予想はしていたもののこれはあまりありがたくない事態だった。時間が過ぎれば過ぎるほど精神的に疲労し、発見が遅れる可能性があるからだ。この戦いにおいては対応の遅れは致命的といえる。ただそれだけで何隻沈められるか分かったものではない。このままの状態が長く続くのは危険だとトリュフォーは感じていた。 だが幸いなことにトリュフォーの不安は杞憂で終わることとなる。 「前方の水面に大きな影を発見!」 見張りについていた兵士の一人が叫んだこの一言により空気が一変した。 「よし! 総員戦闘配置につけ! 目標が射程内に入り次第攻撃を開始、ヤツを水中からいぶりだす!」 指揮官のダーマが指示を飛ばし、部下の兵士たちが大きな足音を立てながら配置につく。表面上は穏やかであった――裏側ではそうでもなかったのは明白だが――甲板は一気に戦場へと変化していた。トリュフォーも近くに立てかけてあった槍を手にし、すくっと立ち上がり、前方の水面に目を向けた。確かに黒い影が小さく見えている。 (ん? 見えている?) その事実に対して何か不自然なものを感じとって、トリュフォーは心の中で首をかしげた。望遠鏡を使っている見張りが目標を確認したのはついさっきだ。それなのにもう肉眼で確認できる。それの意味するところは―― 「はっ、速い!?」 トリュフォーが導き出した答えと同じことを兵士の一人が悲鳴をあげるように叫んだ。 「くっ。攻撃可能な全兵装は攻撃を開始!」 船べりに装備されている六つの大型弩弓から矢が次々と放たれる。戦列の前面に立っている他の五隻の船からも同様に攻撃を開始している。だが、水中に潜む影は降り注ぐ矢の雨を無視するかのようにその速度を下げず、あっという間に距離を縮めてくる。そして目標との距離がゼロになる直前、トリュフォーが叫んだ。 「もういい! 全員衝撃に備えろ! 来るぞ!」 甲板にいる全員が近くにあるものにしがみつき、その瞬間に備えて身を固くする。 ――だが、何も起こらない。 自分たちの下には潜りこんだ目標がいるはずだ。それにもかかわらず、何も起こっていない。不審に思いつつトリュフォーが水面を覗き込もうとしたときだった。 後方から耳障りな音が聞こえた。金属が軋む音。甲板を移動し後ろを見ると、ちょうど目標が水上に姿を現すのが見えた。 「あれが怪物か……」 ハサミのついたエビ。一言で表すのならこれ以上の表現はないだろう。ただし、戦艦と同程度の大きさを持つ、という言葉も忘れてはならないが。 水中から姿を現したその怪物は陣形の中心に位置する船にその巨体をもってのしかかる。自らの重量で沈めるつもりなのだろう。 と、視界の中の怪物と船の位置がずれた。どうやら船を旋回させ火砲で迎え撃つつもりのようだ。しかし、砲撃が間に合うかどうかは厳しいとトリュフォーは判断した。もっとも判断したところで彼にできることはなかったが。それに、今撃てば―― そのときだった。何か得体の知れないものがトリュフォーの五感を刺激した。空気が振動するような、あるいは見えない何かが放出されるような。たとえるならば無音の声といったところだろうか。 直後、変化は起きた。怪物を、いや怪物に捕らえられた船を中心に瞬く間に川が凍りついたのだ。その範囲は十三隻の船団全体にまで及んでいる。 「ラテリトは間に合ったみたいだな」 いつの間にか後ろに立っていたダーマがそう呟いた。 「ああ。それにしても本当に凍らせるとはな……」 船団の中心に位置していた船にはラテリトとあの少女、シークレアが乗り込んでいる。今回の作戦では要となるあの二人を守るため、彼らの乗る船を中心におきそれを残りの船で円形に囲んで守る陣形を組んでいた――ちなみにこの船は最前列に位置している――のだが、裏をかかれる形となってしまっている。それでも、この現象が起きたということは自分たちにもまだ勝機があるということだ。 しかし、水に浸かっていた半身は動けなくなったようだが怪物はいまだ健在だ。そしてあの二人のうちどちらかがやられればこちらの負けは確定する。 視界の端に船室のほうから出てくる人影が見えた。 「おぁー。川さかっちかちになってるべ。ほんで、あっちさにめーるできゃーのが怪物だべか?」 「みたいじゃのう。ふむ、なかなかやるようじゃの。シークレアとかいうのは。ほれ、プル。おぬしも黙っとらんで何かいったらどうじゃ」 そういわれたプルはというと怪物を目にしたとたん青ざめて、がたがたと震えているだけである。 「おい、シャンプ、ルスラ、ちょっと来い」 呼ばれた二人がトリュフォーのほうへとやってくる。プルはいまだ震えている。まあしばらく放っておけばいいだろう、と薄情ながらそう判断してトリュフォーは二人に告げた。 「乗る前に言ったとおりだが、今から俺たちであのでかいのを倒しにいく。隣の船から一人助っ人が来るがそれ以上は望めない。勝負はこの川が凍っている間だ。それほど長くない。いいな」 「わぁーったべ」 「時間がないのじゃろう。ならばさっさと始めようではないか」 「そうだな。それじゃ行くぞ」 船べりから縄梯子が下ろされ、シャンプとルスラがそれを降りていく。そして次にトリュフォーが降りようとしたときだった。 「ちょっと待ってくれ、トリュフォー」 声をかけてきたのはダーマだった。 「船から砲撃を行えば十分に倒せるはずだ。わざわざ行く必要は無いんじゃないか?」 「そうもいかないだろう。もし今撃てば船に当たる確立は低くない。あの船の中にはまだ何人もの兵士が残っているはずだ。味方に被害を出すようなことはしないほうがいい。それに私たちが行くのは残された者たちを助けるためでもあるしな」 「分かった」 「それじゃ行くか」 そして二人も船を降りたのだった。 「これは……まずいな」 氷上に降りたトリュフォーだったが、思った以上に状況が悪いことに気づいて愕然とした。確かに足元の水は完全に凍っていてちょっとやそっとでは壊れないだろう。だが問題は、その凍った足場の上を水が流れているということだった。流れてくる川の水を逃がすために水面近くの部分だけ凍らせてあるはずなのだが、それでもいくらかは流れてきてしまうらしい。そのせいで氷の上はさらに滑りやすくなっていた。現にシャンピニオンはさっきから何度も何度も転倒を繰り返しているし、ルスラのほうも相当てこずっているようである。自分とてブーツにスパイクが無ければ同じようになっていたかもしれない。 とはいえ、やることはやらなければいけない。先に来ていたフラムルと合流し、彼らは怪物へと向かっていく。シャンピニオンはその間に十回以上転んでいた。そしてついにその眼前へと辿り着く。 「こんなのと白兵戦をやるのか、我々は」 「ああ、まったくだ。……嫌なものを思い出させてくれる」 「だが、立ち止まっている暇はなさそうじゃの」 怪物は動かせる上半身のみで捕まえた船に対して攻撃していた。戦艦とて外壁は強固でも内側は普通の船と変わらない。そう長くは持たないだろう。 「よし。私とフラムル、それにシャンピニオンで奴に攻撃を仕掛ける。その間にダーマとルスラで船に残っている連中の救助を行ってくれ」 「!? ちょっと待てトリュフォー。私も戦える」 「人命救助も立派な戦いだ。それにラテリトとシークレアがやられたら一巻の終わりだ。あの二人は絶対に守り通す必要がある」 「……分かった」 「他の皆もいいな」 全員がそれにうなずいた。 「そっちの指揮はダーマに任せる。ルスラ、今回はおとなしく言うことを聞いてくれ」 「ふん、それくらい分かっておる」 「よし。行くぞ!」 勢い良く飛び出した――シャンピニオンはすぐにこけたが――三人は氷に埋もれている怪物の体に近づくとそれぞれの武器を振るった。トリュフォーは槍で突き、フラムルは小型の斧――彼は本来もっと大型のものを使うが、今回は氷上での戦闘を考慮したようだ――を叩きつけ、少し遅れてシャンピニオンが聖魔剣で切りつける。怪物が痛みによってわずかにのけぞる。だが 「くそ、傷一つつかないか」 「ああ、なんて硬さだ。効いたのはあいつのだけか」 実のところ、エビもどきの怪物の外殻にトリュフォーとフラムルはまったく歯が立たなかったのである。しかも唯一ダメージを与えられたシャンピニオンはというと 「のわー!?」 ずべしゃっ、という音とともに顔面から氷の上に突っ伏した。聖魔剣を振ろうとして足を滑らせたらしい。 と、唐突に彼らの足元に巨大な影ができた。見上げるとそこには怪物の顔があった。日陰にあるせいで黒く見えるその巨大なエビ顔は恐怖をかきたてるのに十分であった。どうやら攻撃目標を彼らに変更したようである。 怪物は一度その頭をのけぞらせると、今度はそれを振り下ろすようにしながら口と思われる部分より大量の泡を吐き出した。その方向とは別の方向にいたトリュフォーが叫ぶ。 「二人とも避けろ! そいつには毒があるぞ!」 言われずとも分かっていたであろう二人は泡の放たれた場所から即座に離れる。そのあと、シャンピニオンはまた転んでいたが。 二人が回避したのを見て安心したトリュフォーだったが、直後に視線のようなものを感じて頭上を見上げた。そこにあったのは自分を見据えているであろう怪物の顔とその頭上に振りかぶられている巨大なハサミだった。 トリュフォーは跳躍した。何も考えずに跳んだため、体制を崩し肩から氷上へ着地する。そして ドガシャァァァァァァン!! 轟音を立ててハサミという名の鈍器が一瞬前までトリュフォーが立っていた辺りの氷を粉砕した。水しぶきまで見えるということは氷をすべて貫通し水面にまで達しているということだろう。 魔術が続いてるおかげで破壊された部分にはすぐに新しい氷が出来ていく。足場の心配はしなくてもよさそうである。が 「……さて、どうするか」 (というか、流石にどうにもならないな) トリュフォーの呟きなど気にするはずも無く、怪物の猛攻は止まらない。 一方、救助に向かったダーマとルスラのほうは、他の三人が怪物を引きつけていてくれるおかげで滞りなく作業を進めることが出来ていた。残っていた者たちはすべて他の船へと逃がし、今この船に残っているのは彼女たちとラテリト、それにシークレアだけだった。 「船内の者も全員逃がしました。あなたたちも早く脱出を」 「駄目です。今わしらがここを離れ魔術が途切れるしまえば、あの怪物をもう一度捕らえられるか分かりません。下手をすれば全滅すらありえます」 「しかし!」 「おい」 ダーマとラテリトの埒の明かない言い合いを静観していたルスラが口を開いた。 「要するに氷が溶けぬよう魔術を維持すればよいのじゃろう。だったらわらわがやってやろう」 「は?」 「だからわらわが代わりに維持してやるというのじゃ。分かったらさっさと制御を渡さんか」 「しかし、この魔術を維持するには莫大な魔力が――」 「ええい、うるさい。勝手に貰うぞ」 そう言ってルスラはラテリトに飛びつくと、彼が両手で抱えていた半透明の球体を奪い取った。突然のことに反応できなかったラトリテだったが、何が起こったかを理解するとさっと青ざめてそれを取り返そうとした。 「返してください! さもないと大変なことになります!」 だが、その大変なことは起こらなかった。水面に展開された氷はまったく揺らがず、そこに存在している。つまり魔術はまだ維持されている。 「ふむ、悪くない構成じゃ。おぬしなかなかの魔術師のようじゃのう。しかし、少々繊細すぎる。重要でないところはもっと大雑把にしたほうが効率はよくなるぞ。しかし確かにこれは力を食う」 呆然とするラテリトとダーマ、そして流石に驚きを隠せないシークレアの前でルスラは平然として言った。 「ほれ、さっさといくぞ。わらわは疲れるのは嫌いじゃ」 その言葉に我を取り戻したダーマが船べりから身を乗り出し、下で戦っている三人に向かって叫んだ。 「こっちは完了した!」 「分かった! 今からいったんそっちと合流する。二人とも聞いたな!」 トリュフォーの言葉を合図に三人は怪物から離れていく。船上ではまずルスラが一人で縄梯子を降りていった。 「あなた方も早く」 そうダーマに告げられラテリトとシークレアも降りていき、最後にダーマが降りる。 ダーマが梯子を降りきるのとほぼ同時に戦っていた三人が到着した。近くに来たトリュフォーにダーマは話しかけた。 「苦戦してるみたいだな」 「ああ。予想はしてたんだがありゃあ駄目だな。まともな攻撃は効かないし、頼みの綱は……あの通りだ」 そう言ったトリュフォーの目線の先にはさっきから何度目かも分からぬ転倒をしているシャンピニオンの姿があった。 「ついでに言っておくが、あれには恐らく魔術も効かんぞ。氷結の魔術の範囲にはあれも含まれておったが全く効果が無いからのう」 横からルスラがそう告げた。魔術師二人もそれを首肯する。 「厄介だな……」 「いや、まだ手はあるさ。最も簡単な手がな。ともかくいったん船に戻るぞ」 「だったら誰かわらわを背負ってくれぬか? これを維持しておるせいでどうも集中力が散漫になっていかん。あやつのように無様にこけるのは嫌じゃし、こけた拍子にこれが途切れてしまうかも知れぬしな」 「その必要はありません」 黒衣の少女が初めて口を開いた。そして口早に呪文を唱える。 「――気まぐれなる者、風の精。穏やかにして俊敏なる、汝が宿りし流れにて、我らをかの地に運びたまえ――」 呪文の完成と同時に全員の体が氷の上からわずかに浮かび上がった。そして次の瞬間、高速で移動を始めた。 「移動用の魔術ってわけか」 そ う呟く間にも一行はどんどん船に近づき、程なくして到着した。後方からは大きな破壊音が聞こえてくる。恐らく怪物が残された船を相手に暴れているのだろう。ラテリトと魔術師二人は彼の船へ、残りは先ほどの船へと戻る。プルがそれを出迎えた。 「よかった! みんな無事だったんだ」 「まあな。それよりも――ダーマ!」 「ああ、分かってる」 ダーマはすうっと息を吸い込むと甲板全体に聞こえるような声で一気に告げた。 「全艦に通達! これより一番艦は破棄! 全艦、可能な限りの兵装でもって目標に攻撃を開始せよ! なお、一番艦の乗組員は全員他艦への退避が完了している! 思う存分に撃ちこんでやれ!、と!!」 「了解です!」 「よし! 通達が済み次第攻撃を開始する! 弾数は気にするな! ヤツが倒れるまでありったけ叩き込んでやれ!!」 そして、その後行われた12隻の戦艦による火砲および弩弓の一斉掃射により、何隻もの船を沈めた巨大な怪物――オーランティアの水蟲は、ついに討たれたのだった。 27 皆既日食 戦いが終わって、一行はそのまま船に乗せてもらって王都まで行くことになった。 といってもまだオーランティアから離れたわけではない。怪我人の手当てに船の修理などで忙しくて出港どころではないのだ。 そしてそんな中、プルは甲板の隅に一人たそがれていた。 怪我人の手当ての手伝いぐらいはしようと申し出たのだが、軍のことは軍でするからと丁重に断られてしまった。置いてあった医療道具を思いっきりひっくり返してしまったのも原因のひとつだと思う。 トリュフォーたちがオーランティア江で魔獣と激戦を繰り広げている最中、プルアロータス当然ながら船の中に引っ込んでいた。 ルスラいわく「役立たずは引っ込んでおれこのグズ」 「なにもそこまで言わなくても・・・」 しかし事実ではある。自分には何も出来ないし、逆に期待しているとか言われても困る。 みんなとは違って自分は凡人なのだ。剣も魔法も使えない。度胸があるわけでもない。例外と言えば簡単に傷が治る身体だが、そもそも戦えないならあまり意味がない。 「何で俺、みんなと一緒に旅してるんだろ」 思わずため息が出る。いやまあそれは聖魔剣に勇者と間違えられたりしたからだが、それでもよく思う。正直俺っていらないだろ。いや、それさえも言い訳だ。 ―――帰りたい。 帰りたい。故郷に。帰りたい。あの平穏な生活に。自分は勇者と冒険なんてできる人間じゃないんだ。旅に出て失ってから、あの退屈ではあるけれど平和な時間がどんなに幸せなのか実感した。 甲板の上から、オーランティアの町並みを見下ろす。今までは陸路を歩いてきた。ここからは船に乗っていく。このオーランティア江が故郷へと続く道を完全に切り離してしまうようで、それが妙に不安な気持ちをかきたてた。 「はぁ・・・」 ため息をすると幸せが逃げてしまう。結婚した姉ちゃんがよく言ってたっけ。村のみんなは元気にしてるだろうか。 「ああもう、なんでこの船はこうも辛気臭いのかしら!せっかく魔獣を倒したというのに!」 いやだからみんな疲れてるんだって、戦勝ムードもちょっと冷えたし。心の中でツッコミを入れつつ、プルはぼけーっと突っ立っている。 「疲れましたわ。部屋に帰ります。ちょっとそこのあなた、荷物を持ちなさい」 それにしてもいい天気だなあ。どうせやることないし、日向ぼっこでもしようかな。 「ちょ――待ちなさい!わたくしを無視するとはどういうつもりですか!!」 あ、日陰見つけた。ちょうど誰もいないし。 そのとき、がしっと後ろの襟をつかまれた。 とっさに振り返ると、なぜか知らない少女に捕獲されている。 年は15、6といったところだろうか。服装から一目で良家のお嬢様ということがわかる。まあそれはわかるとして、何で自分は憤怒の表情をしたその少女に襟を掴まれているのか。 「ちょっとお待ちなさい何故さっきからこのわたくしがあなたごときに呼びかけているというのに無視するなんていい度胸じゃありませんこと今後を考えて少し罰でも与えたほうがいいのかもしれませんわねまあいいでしょう寛大なわたくしは多少のことには目をつぶって差し上げますわ感謝なさいそれよりまずはわたくしの荷物を持ちなさいあなた風情には身に余る光栄でしょうがこの際構いませんわだって疲れましたものさあ早くお持ちなさい」 すさまじい勢いで話しかけられたプルは驚いて頭が真っ白になった。それでもなんとか言葉を搾り出す。 「えっと・・誰ですか?」 「あなたごとき下賎の者に名乗る名などありません。黙ってわたくしの荷物を持てばいいのです」 「いやなんで」 「お黙りなさい!」 ぴしゃりと言い放たれて、ひるんだところに巨大なキャンバスや箱を押し付けられた。 「いやだからなんで俺が君の荷物を持たないといけないのさ!?」 「いいかげんに言うことを聞かないと・・・死にますわよ?」 プルに向けられた少女の掌には赤い光がうっすらと輝きだしている。 「はっ・・・はい!」 半ば悲鳴をあげながら承諾する。我ながらすごく情けないけど 「よろしいですわ。まあわたくしも鬼ではありません。しっかり働けば多少のお小遣いでもめぐんで差し上げます」 そう言って少女は何かをプルに投げた。それは一瞬でプルの首に巻き付き、少女の左手と鎖でつながった首輪になった。 「ちょっとなにするんですか!?」 「決まっているでしょう。荷物を持って逃げないように首輪をつけたのですわ」 「何考えてるんですか!?船に乗ってるんだから逃げられるわけないでしょう!ていうか首絞まってる首!」 「お黙りなさい」 「ぬわあああああああああああ!!!!」 いきなりプルの身体に電流が走る。 「逆らうとこうなりますわよ。度がひどいようならこのまま黒焦げにしますわ」 「は・・・はひ・・・」 こうしてプルは、見知らぬ少女に鎖で引きずられながらとぼとぼ歩き始めた。 「しかしやたらとあわただしいですわねこの船は。伝説の魔獣に勝ったのですからもうちょっとこう、喜んでいてもいいのではなくて?」 「いつまでも喜んでばかりもいられないよ・・・みんな疲れてるし、怪我人も戦死者もいるんだから」 「なるほど・・・でもこういうのも趣があっていいかもしれませんわね。あとで絵に描くのもいいかもしれません」 「正気かよ・・・」 「なにかおっしゃいまして?」 鎖を構えてにっこりと笑う少女。 「いやいやいやいやなんでもないですほんと」 「それは結構。――そういえば、あなたは軍の方でしたか?」 「いいや」 「でしょうね。そんな感じがしませんし。では、オーランティアの街の方かしら」 「違う。ずっと遠くの、田舎で暮らしてたよ」 故郷。思わず遠い目になる。 「そうですか・・・・そんなところに暮らすのもも、いいのかもしれませんわね」 「へ?」 「その故郷の方々は、暖かい人たちですか?」 「あ・・・ああ」 「そう・・・」 うらやましいですわ、と小声でつぶやいて、少女はまた歩き出す。 心なしか、少し寂しそうに見えた。 「あー!!!!!!」 甲板の上に、突然白い翼を背負った少女が舞い降りてきた。 「プル?どうしたのさ!?」 「ミ・・・ミセナ?どうしてこんなところに?」 「どうしてじゃないよ!なんで首輪なんて嵌められてるのさ!?」 「騒々しい方ですわね。どなたですの?」 「君!なんでプルに首輪をつけて引きずっているんだ」 「決まってますでしょう。荷物を運んでいただくためですわ」 「な―――なんで荷物運びで首輪を?その・・・プルがなにか悪いことしたからじゃなく?」 「持ち逃げされたら困りますでしょう。それにそもそも、罪人に荷物を任せるわけないでしょうに」 「荷物運びのため?そのためだけに人に首輪をつけて引きずってるっていうのかい?」 「もちろんですわ」 「ふざけるなあ!」 今度こそ、ミセナが吠えた。 エラーが出ました。きっと今なら空だって飛べる。あり得ないあり得ない。(R) 前半では、折角なのでヴェル-ミセナの間にもフラグを立ててみました。 後半では王都篇に向けて、王国の人たちを何人か出してみました。多すぎる? 次回、騎士たちとオーランティアの水蟲が大いに戦い、ミセナとファエルが、そして我らが三枚目、エントローマとグラシリスのコンビも再登場、かな(穂永) ザリガニ、あっさりと撃破されました。12対1でリンチされたらそりゃやられるでしょう。合掌(バーネット) 自分も出してみましたヒロイン候補。しかも戦いとかその辺の流れを完全に無視して。さらにいきなり修羅場。どうなることやら(皆既日食) ちょっと書き直しましたm(--)m (皆既日食)
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波動原理・ゼロ点効果の纏めサイト - 放射能除去法纏めサイト 無数の除去事例や超常的現象、量子の共鳴効果による意識・社会・環境の改善 万物における波動情報の原理・作用・効果・影響・意味合いと形成・発展・永続化 量子(電子・陽子・中性子・光子・ニュートリノ)=波動(気)・ゼロ点(Zero Point Field)・電磁波・プラズマ・幾何学的形態・物質(珪素・量子水・酵素)・微生物・コイル・波動器具・波動農法や意識・言葉・パワースポットなど、波動原理の各種効果(超科学・超能力・元素変換・健康・意識覚醒・自然環境の浄化・森羅万象の好転) *********************************** 項目6⑦:波動情報と共鳴の原理・作用・効果・影響・意味合い 森羅万象の形成・発展・永続化、意識・社会・環境の浄化・改善 【霊魂の所作と活性化、日本の基層と神事、精神性・芸術性の淵源】 ●アイヌと沖縄について アイヌ・ニブフ・ウィルタ民族の概略 アイヌ民族の文化と信仰 蝦夷の歴史 日本の体制がアイヌ民族に強いた不当な境遇 ソ連と国際的体制がアイヌ・ニブフ・ウィルタ民族に強いた理不尽な追放・放置 日本におけるアイヌ問題の認識状況 沖縄・琉球の歴史 琉球神道について 南西諸島の伝統歌謡に見える古層とヤマトとの交流 南洋産貝製品の古代社会における重要性 沖縄的事物と女性祭祀と海人族が示唆する、古代社会の在り方と平和の希求と大規模な変化 日本の辺縁部に残る古代の日本語と祭祀形態 沖縄・琉球の位置付けについて 辺野古と大浦湾の類稀な環境・霊場・遺跡と、日米による破壊の危機 沖縄に対する国内外からの歴史的な抑圧 沖縄問題への誤った対処 アイヌ・沖縄問題に見える国内外の自己優位思想と従属思考 ヤマト・アイヌ・沖縄などの和合 「アイヌ民族」は「北海道・千島列島・樺太の先住民族」、「琉球民族」は「沖縄県などの先住民族」です。民族や言語という概念に決まった定義はないですが、便宜上ここでは「琉球民族」を一民族とします。 「ヤマト民族(又は本土人)」「アイヌ民族」「琉球民族(沖縄人)」は、共に「縄文人」を祖としています。「日本の最も底部の基層」は「縄文文化」にあり、「アイヌ民族と琉球民族は、縄文人のDNA系統を色濃く残す民族集団」であり、即ち「原日本人の特色を濃く継承している」と言えます。「沖縄人」は、主に「縄文人」「10世紀から12世紀頃の南九州の農耕民の移住者」を祖とします。DNAは「本土日本人は朝鮮民族(韓民族)と近い、中国人全般とはそれよりも離れ、中国遼寧省(東北部・満州)・山東省(北京南方)の人とはやや近い」「アイヌ民族・ニブフ民族・ウィルタ民族は互いへの流入が見られる」「本土日本人の約2割は朝鮮民族固有の、2割は中国人固有の遺伝特性を持つ」「ニブフ・ウィルタ以外の日本人は、多くの民族の遺伝的要素があり、東アジアの人種の坩堝となっている」と示します。世界的にも珍しい「YハプロタイプD型」の保有者は「本土日本人:40%~50%」「アイヌ民族:90%」「沖縄本島:70%」、これは「縄文人のDNAの一つ」であり、非常に古いタイプのDNAです。他には「チベット民族」「ヤオ族(湖南省・雲南省・東南アジア北部)」に高頻度で見られ、「タイ人」は「D*(恐らくハプロDの別の単一系の分枝)」を10%の人が保有、ハプロDは「アラビア→南アジア→東南アジア→北方」と渡ったと見られます。 「日本人の起源・成立」としては、形質人類学の立場から「二重構造モデル」がよく言われます。「東南アジア起源の縄文人という基層集団の上に、弥生時代以降、北東アジア起源の渡来系集団が覆いかぶさるように分布して混血することにより現代日本人が形成された」としています。しかし「二重構造モデル」は大方の支持があるものの、「基層集団の起源は北東アジア」とする説は強いです。また縄文時代はある種鎖国的で、海外からあまり人・物が流入せず、これが日本の文化・風土の独自性を形成しました。 大まかに、次のように説明される ・北方のシベリア方面の「アルタイ諸語」を話す「新モンゴロイド」、 南方の東南アジア方面の「オーストロネシア語」を話す「古モンゴロイド」が合わさり、 「原日本人・縄文人」が形成された。 ・「縄文人」多数と、「渡来人」少数の混血により、「弥生人(≠倭人)」が形成されていった。 ・後に「渡来人」が少しずつ流入、日本国内でも渡来系の子孫が増えて、「縄文系と渡来系の混血」で「ヤマト民族」が形成された。 ・縄文系の系統を色濃く残す北方南方の集団が「アイヌ民族」「琉球民族」となった。 旧石器時代の原日本人の伝播ルート ・「シベリア」→「バイカル地方」→」中国東北部」→(朝鮮半島)→「日本列島(九州や日本海側)」 ・「バイカル湖」→「東進」→「樺太」→「北海道」 ・「長江中下流域」→「九州」 ・「東南アジア」「中国広東地方」→(「台湾」)→「琉球諸島」→「九州」 主な渡来人のルート(弥生時代又は縄文時代後期以降) ・「中国中南部の長江文明を築いた南方系民族(越・呉など/長江下流域)」→「東シナ海」→「日本」「朝鮮半島」 ・「中国中北部の黄河文明を築いた北方系民族(山東省など)」→「朝鮮半島」→「対馬海峡周辺」→「日本」 ・「中国北東部の満州の北方系民族」→「朝鮮半島」→「対馬海峡周辺」→「日本」 「日本語は孤立言語」であり、基本的には非常に古い言語と見られる ・「日本語の文法」は「北アジアおよび中央アジア」の「アルタイ諸語」との類似性が高いが、「母音の強い音韻体系」は「オーストロネシア語族」との類似性が高い (ただしオーストロネシア語族では元来あった語尾の子音が脱落して開音節化した言語が多いと考えられ、いっぽう北方でも満州語などのように母音の多い言語もある)。 ・「語を重ねる複数形の表現方法」や「一部の単語」に関して「オーストロネシア起源」も指摘されている。 「日本語の起源・成立」は未だ定説はなく、諸説がある ・オーストロネシア語とツングース諸語の混合言語説。 ・日本は北方で、満州~シベリア南部に分布する「ツングース諸語圏」、 南方で、東南アジアから太平洋諸島などに分布する「オーストロネシア語圏」と接し、両方が入った。 ・オーストロネシア語族説 ・話者は、元々は「中国中南部」の「長江文明」いたが、後に「中国南部山岳地帯(雲南省など)」「東南アジア」「太平洋諸島」に進出した。 ・アルタイ語族説 ・アルタイ語族には「ツングース諸語」「朝鮮語(古代朝鮮語)」「モンゴル語」「テュルク諸語」他がある。 ・日本語・朝鮮語同系説 ・高句麗語同系説 ・タミル語起源説(インド南部のドラヴィダ語族) ・アイヌ語との系統関係 ・中国語(古典中国語)との関係 「古事記や風土記のような口伝による伝承はアイヌ語で解釈可能」だと判明しています。これは「縄文語はアイヌ語である」と示唆します。しかし「日本語とアイヌ語は、非常に異なった言語」です。「縄文語」について、言語という物の特性から、東日本の東端と西日本の西端では、非常に語彙は異なっていただろうとも推測され、現代で言えば別の言語と看做されていたかもしれません。そして弥生時代(又は縄文時代後期)以降に「オーストロネシア語族」「ツングース語族」の話者集団が日本に渡来して、「上古日本語」が形成されたとみられ、これが直接的な「日本語の祖語」です。そして「日本語はオーストロネシア語とツングース諸語の混合言語」であり、故に「日本語の起源・成立の仮説の欄の言語群と共通性が見られる」と言えます。 「日本でシャーマンの活動(祭祀)が盛んな地域」は「北海道」「南西諸島」とされます。沖縄県の「沖縄諸島」「先島諸島」「大東諸島」、鹿児島県の「奄美諸島」「トカラ列島」「大隈諸島」を総称した「薩南諸島」、これらが「南西諸島」に属します。 アイヌ・ニブフ・ウィルタ民族の概略 歴史的にアイヌ民族は「北海道のアイヌ」の他に、「千島アイヌ」「樺太アイヌ」と、「東北地方・関東地方などのアイヌ」などが存在しました。 アイヌ民族は、元々は「アイヌ語」を言語としています。アイヌ語は「孤立言語」で、アイヌ民族とヤマト民族と近接して在住しながら、しかし語彙の借用を除き、言語的な共通点はあまり見られません。「古事記や風土記のような口伝による伝承がアイヌ語で解釈可能であることから、縄文時代の日本語がアイヌ語と同系統の言語であるとする」という説があります。人口は23782人(2006年・調査に応じた人口・北海道内のみ、推計200000人で、混血も含めると実際はもっと多いと言います。 「北海道」は「律令制時代の五畿七道の東海道・南海道・西海道の呼称に倣った名称」、歴史的に「蝦夷地(えぞち)」「蝦夷が島」「日の本(北海道の太平洋側と千島列島・14世紀頃)」「東蝦夷(北海道の太平洋側と千島列島・近世)」「唐子(北海道の日本海側と樺太・14世紀頃)」「西蝦夷(北海道の日本海側と樺太・近世)」「北州」「十州島」などと呼ばれてきました。北海道は世界の島で第21位の面積で、最高峰は「大雪山 旭岳(2291m)」、道内には湖沼が沢山あり、美しい風景を有しています。西岸海洋性気候や温暖湿潤気候が見られる「道南の一部沿岸地域」を除くと、ほぼ全域が亜寒帯湿潤気候で、寒暖差が大きく、豪雪地帯です。一般的に「道南地方:渡島・檜山の2振興局管内」「道央地方:石狩・後志・空知・胆振・日高の5振興局管内」「道北地方:上川・留萌・宗谷の3振興局管内」「道東地方:オホーツク・十勝・釧路・根室の4振興局管内」に区分されます。 「樺太」は北緯50度を境に「北樺太」「南樺太」に分かれ、南の北海道とは「宗谷海峡」、西の「ユーラシア大陸」とは「間宮海峡」で隔てられ、最北端は「鵞小門岬(ガオト岬)=エリザベス岬」ています。亜寒帯モンスーン気候に属し、夏季は湿度が高く、霧が多く発生、夏と冬の寒暖差が大きいです。「からふと」の名は、一説にアイヌ語の「カムイ・カラ・プト・ヤ・モシリ(神が河口に造った島)」に由来するとされ、「黒竜江(アムール川)」河口から見てその先に位置することからこのように呼ばれたとされます。樺太アイヌ語の西海岸方言では「カバフト」と呼ばれます。正保三年(1646)に成立した松前藩の歴史書「新羅之記録」に「唐渡之嶋」と見え、歴史的に「唐子(北海道の日本海側と樺太・14世紀頃)」「西蝦夷(北海道の日本海側と樺太・近世)」「唐渡之嶋(からとの嶋・からと嶋・からとのしま)」「からふと(からふとの島・からふと嶋・からふとふしま)」「唐ふとう嶋」「サカリイン」「北蝦夷地」と呼ばれてきました。ロシア名は「サハリン」です。 「千島列島」は、歴史的には「日の本(北海道の太平洋側と千島列島・14世紀頃)」「東蝦夷(北海道の太平洋側と千島列島・近世)」と呼ばれました。領域は「国後島(くなしり)」「択捉島(えとろふ)」で構成される「南千島」、「得撫島(うるっぷ)」「知理保以島(ちりほい)」「羅処和島(らしょわ)」「松輪島(まつわ)」「温禰古丹島(おんねこたん)」などからなる「中部千島」、「幌筵島(ぱらむしる)」「占守島(しゅむしゅ)」などからなる「北千島」で構成されます。「色丹島」「歯舞群島」は、千島列島に属さないとされます。最北端は「阿頼度島(あらいど)」、その北方は「カムチャツカ半島」です。気候は厳しく、風が強く非常に寒い冬が長く続き、短い夏には霧がしばしば発生、降雪量が多いです。ロシア名は「クリル諸島」です。 《北海道の年代・文化の区分》 旧石器時代 縄文時代 続縄文時代(ぞくじょうもんじだい) ・「恵山文化」「恵山時代」とも呼ぶ。 ・紀元前3世紀頃から紀元後7世紀(弥生時代から古墳時代)にあった文化。 ・本州では水田耕作がされたが、北海道では耕作できず、縄文文化が受け継がれた。 ・採集活動や若干の雑穀農耕も行っているが、多数の漁労具と解体用石器の出土と 砂丘上の集落が多いことから、漁労の割合が多くなったとされる。 擦文時代(さつもんじだい) ・7世紀ごろから13世紀(飛鳥時代から鎌倉時代後半)にあった文化。 ・本州の土師器の影響を受けた「擦文式土器」を特徴とする。 ・後に土器は衰退し、煮炊きにも鉄器を用いる「アイヌ文化」にとってかわられた。 オホーツク文化 ・3世紀から13世紀までオホーツク海沿岸を中心とする北海道北海岸、樺太、南千島の沿海部に栄えた古代文化。 ・この文化の遺跡が主としてオホーツク海の沿岸に分布していることから名付けられた。 ・このうち、北海道に分布している遺跡の年代は5世紀から9世紀までと推定されている。 ・今日の「ニヴフ」に連なる集団によって担われたと推定されている ・海獣狩猟や漁労を中心とする生活を送っていた。 ・ヒグマを特別視する世界観があった。 これが、今日のアイヌの重要な祭祀「イオマンテ(熊送り)」に繋がっているともいう。 ・骨や歯を素材として、動物像や、婦人像「オホーツクヴィーナス」を作った。 「常呂川河口遺跡(北海道常呂町)のラッコ像は、胸部で手を組み、腹のシワの表現がある。 ・オホーツク文化の代表的遺跡「モヨロ貝塚(北海道網走市)」は、縄文時代晩期・続縄文時代から継続された集落・貝塚の遺跡である。 多数の「骨角器・土器・石器」や「鉄刀・鉾」「大陸から持ち込まれた鈴」、土器・骨・牙で象られた「クジラ・イルカ・クマ」「婦人(オホーツクヴィーナス)」の像などが出土した。 トビニタイ文化 ・直接の源流はオホーツク文化である。 ・オホーツク文化に属する人々は以前から北海道に南下していたが、7世紀から8世紀にかけては道北・道東に広く進出していた。 ・その後、9世紀になって擦文文化に属する人々が道北に進出すると、道東地域のオホーツク文化圏は中心地である樺太から切り離されてしまった。 ・その後この地域のオホーツク文化は擦文文化の影響を強く受けるようになり、独自の文化様式に移行、トビニタイ文化が形成された。 ・その後、擦文文化に同化し、13世紀初め頃には姿を消した。 アイヌ文化 ・アイヌが、13世紀(鎌倉時代後半)ころから現在までに至る歴史の中で生み出してきた文化である。 ・擦文文化からアイヌ文化の生活体系に移るに伴い、「土器の製作や使用」が廃れ、 その代わりに本州から移入された「鉄器・漆器」が生活用具として定着した。 ・この点からは、アイヌ文化を生んだ契機に日本との交渉の増大があると考えられている。 ・住居がそれまでのかまどを備えた竪穴式住居から、 囲炉裏のみで、竈(かまど)が排除された掘立柱建物「チセ」へと変貌していった。 ・アイヌ文化には地域によって差異が存在していたことが知られている。 ・考古学的な意味でのアイヌ文化は、「鉄製鍋」「漆器の椀」「捧酒箸(ほうしゅばし)」 「骨角器の狩猟具」「鮭漁用の鉤銛」「伸展式の土葬」など物質文化面での特徴を目印としている。 ・農耕民族の和人と狩猟採集民族のアイヌは、 それぞれの生活様式によって確保した生産物を交易で交換した。 アイヌは「魚や毛皮」を輸出品目とし、 和人の生産する道具「鉄器や漆器」や嗜好品「米、茶、酒」と交換した。 ・続縄文時代や擦文時代の北海道では、粟、稗、黍などの雑穀が小規模ながら栽培されていた。 しかしアイヌ文化の成立とともに、農耕は縮小する傾向にあった。 これは寒冷な気候ゆえに耕作を諦めたというより、 本州との交易用の毛皮や干魚を確保するため、狩猟や漁労を重視した結果らしい。 ・「樺太アイヌ」は北方のツングース系などの諸民族とも交流があり、 それを介して大陸の中華王朝とも関係を持った。 ・1264年 には樺太に侵入した「アイヌ(元朝の文献では「骨嵬」と書かれている)」と 「ニヴフ(同じく「吉烈迷」)」との間に紛争が勃発した。 この戦いにはモンゴル帝国軍が介入し、アイヌからの朝貢を取り付けた。 ・その後もアイヌは大陸との交易を続けていて、この交易は「山丹交易」と呼ばれ、 江戸時代にはアイヌが交易によって清朝などから入手した絹織物や官服が、 「蝦夷錦」と呼ばれて日本国内にも流通していった。 千島アイヌ ・千島列島には先史時代から居住者がいたが、 文字記録が残されるようになるのはロシアが東シベリアまで勢力を拡大した18世紀からである。 ・千島アイヌは千島列島を南北に移動して交易していたが、 この頃、日本の北進と東シベリアを版図に入れたロシアの南進によって、 彼らは生産・交易活動を両国に依存することが多くなっていった。 ・1799年、「エトロフ(択捉島)」までを支配下に収めた江戸幕府は、 1803年、「エトロフ-ウルップ(得撫島)間のアイヌの移動を禁止」した。 これにより「ウルップ島」以北のアイヌは日本との交易が困難になり、 ロシアの影響を強く受けるようになった。 ・1854年の「日露和親条約」によって千島列島は日露両国が南北を分断して統治することになったが、 1875年には「樺太・千島交換条約」に基づき千島列島が全て日本の領土になった。 その際居住者は日本国籍を得て残るか、ロシア国籍を得て去るか選択させられ、 大部分は日本国籍を得た。 ・1884年には若干の千島アイヌが日本領北端の「シュムシュ(占守島)」に残っており、 北の国境に民間人を置いておくよりも南の地で撫育した方が良いと考えた日本政府は、 97名を半ば強制的に色丹島へ移住させ、牧畜・農業に従事させた。 しかし先祖代々続いた漁撈を離れ、新しい土地で暮らすことに馴染めず、健康を害するものも現れた。 望郷の念を募らせる千島アイヌに対し、日本政府は1898年以降、 軍艦に彼らを乗せ北千島に向かわせ、臨時に従来の漁撈に従事させる等の措置をとった。 ・1923年には人口は半減しており、更に第二次世界大戦における日本の敗戦に乗じた ソ連による千島・北方領土の占領に伴い、千島アイヌを含んだ日本側居住者は 全て強制的に本土に移住させられ、各地に離散した。 ・1970年代に最後の一人が死去した時点で千島アイヌの文化を継承する者は消滅したと思われている。 樺太アイヌ ・樺太アイヌたちの自称は「エンヂウ(エンチウ)」。 ・神々のうちには「善神」と「悪神」とがあり,善神でもとくに重視される神と、あまり重要視されない神とがある。 ・間宮林蔵の「北夷分界余話」によると、「樺太アイヌ」は「犬橇やスキー」を使用するなど、 オホーツク文化からの影響を伺わせる文化要素を取り入れていた他、 近世に入っても「土器の製作」「竪穴式住居の使用」という、 北海道では中世アイヌ文化に限られる文化要素を保持していた。 ・「鎧の形状」も北海道アイヌとは異なり、胸甲と腰部の装甲が一体となった独特のものであった。 ・樺太アイヌは「ミイラ製作」を行うという点でも注目を集めている。 ミイラ製作はオホーツク文化圏でも北海道のアイヌ文化でも行われない。 ・樺太のアイヌも国際情勢の変化の影響を強く受けた。 ・「樺太・千島交換条約」に伴って樺太がロシア領になることから、 同条約発効に先立つ1875年10月、もともと樺太南部の「亜庭湾周辺」に居住し 日本国籍を選択した108戸841名が「宗谷」に移住させられ、翌年6月には「対雁(現江別市)」に移された。 ・生活環境の変化に加え、運の悪いことに1886年のコレラ、 さらには天然痘の流行が追い討ちをかけ、300名以上が死去したという。 ・1905年の日露戦勝によって南樺太が日本領になると、 1906年、漸く樺太アイヌは再び故郷の地を踏むことができるようになった。 ・ところが第二次世界大戦後に樺太全域がまたもロシア(当時はソ連)の占領下となり、 同国政府によって樺太アイヌの殆どが北海道へ強制送還された。 ・しかしながらアイヌは現在も樺太に少数ながら住んでいる。 「ニヴフ」民族は「樺太中部以北及び対岸のアムール川下流域に住むモンゴロイド系少数民族」、古くは「ギリヤーク」と呼ばれました。「樺太アイヌ」「ウィルタ」と隣り合って居住、人口は約5300人ですが、この調査には未調査・未回答が多数あります。ウィルタ語やアイヌ語と系統を異にする固有の言語「ニヴフ語」を持ち、「古シベリア諸語(古アジア系)」に便宜上分類され、アムール川流域のニヴフ語と樺太のニヴフ語は大きく異なっています。宗教は「シャーマニズム」「ロシア正教」です。樺太の他の先住民と同じく、古くは「狩猟・漁猟」を行い、また近世には日本と清の貿易の仲介もしていました。「ニブフは5世紀から9世紀の北海道のオホーツク文化の担い手であった」とされ、ニブフ民族の祖先は北海道に居住していました。 日本書紀には「粛慎(みしはせ・あしはせ)」の記録が載り、大きく分けると「欽明天皇の時に佐渡島へ粛慎が来たこと」「斉明天皇の時の将軍・阿倍比羅夫(あべのひらふ)の粛慎討伐」「天武天皇・持統天皇の時の粛慎の来訪と官位を与えたこと」という内容です。この「粛慎」とは「樺太のニヴフ」だとする説があり、一般に「ツングース系民族」とされる、古代中国の文献の「粛慎(しゅくしん)」「挹婁(ゆうろう)」とは異なるとされます。アムール川下流域から樺太の「吉里迷(ギレミ・吉烈滅)」は、元王朝(モンゴル)建国の功臣「ムカリ(木華黎)」の子孫「シデ(碩徳)」の遠征により1263年に服従、1264年に吉里迷の民は、「骨嵬(クイ)」や「亦里于(イリウ)」が毎年のように侵入してくるとの訴えをクビライに対して報告しました。吉里迷は「ニヴフ」、骨嵬(苦夷・蝦夷)は「アイヌ」を指し、この訴えを受け、元朝は骨嵬を攻撃しました。これは、日本への元寇の(文永の役/至元十一年・1274年)の10年前です。「間宮林蔵」が樺太西岸のニヴフ集落を訪れたのは文化五年(1808)と文化六年(1809)、アムール川下流部に入ったの文化六年(1809)で、ニブフ・ウィルタほか少数民族の習俗を報告しています。 「ウィルタ」民族は「樺太中部・北部の、モンゴロイド系のツングース系の少数民族」、アイヌからは「オロッコ」と呼ばれました。本来の言語は「ツングース諸語」の「ウィルタ語」、人口は平成十四年(2002)調査で346人です。宗教は「シャーマニズム」「ロシア正教」です。生業は元来、「トナカイ牧畜」「狩猟」「漁労」でした。シベリアのツングース系諸族と交流をもったほか、樺太中部のニヴフ、南部のアイヌとも交易をしていたとされます。成14年)の国勢調査によると、346人がオホーツク海沿岸の樺太北部および南部のポロナイスク(旧敷香町)近郊に居住しています。南樺太の日本国籍を持っていたウィルタは、日本の敗戦後に北海道(網走市など)へ移住したりしました。昭和五十年(1975)、ウィルタ民族の人権や戦後補償の問題を解決する趣旨により「オロッコの人権と文化を守る会」が設立、翌年12月に「ウィルタ協会」が設立されました。 「千島列島」は古くからの「アイヌなどの少数民族の先住地域」でした。彼らは主に「南千島」、中部の「得撫島」「羅処和島」、北部の「幌筵島」「占守島」などに居住していました。江戸時代以前の「樺太」では、中北部に「ウィルタ」「ニヴフ」、南部に「アイヌ」の3民族が棲み分けていました。時に小さな争いはあっても、概ね平和的に交易を行っていました。間宮林蔵の住民への調査により「江戸時代のウィルタ・ニヴフはロシア民族と関わった事がない」「樺太はモンゴロイド系少数民族の先住地域である」ことが判明していて、ロシア民族は後から樺太に入植して来ました。千島列島・南樺太に居住していたアイヌ・ニブフ・ウィルタは、日本の第二次世界大戦敗戦後に北海道(網走市など)へ強制移送されたり、進んで移住しました。 アイヌ民族の文化と信仰 「アイヌ文化」という時、「現代のアイヌ文化」と「考古学的見地からの過去のアイヌ文化」の、何れかを指します。近現代の「アイヌ文化」の形成には、歴史的に「ヤマト文化」の影響を受けてきて、また道内北方の「オホーツク文化」の影響も大きく受けています。また「蝦夷」という言葉も、「北海道」「東北地方」「関東地方」というように、その対象は文によって異なります。 アイヌ文化は文字を持たない口承文化ゆえに、「同一の神話や文化」でも、地域・集団ごとに細部が大きく異なることが多く、一部のものは定説が無かったりもします。更に「千島アイヌ」「樺太アイヌ」では、大きく文化が異なります。アイヌ民族は、歴史的には生活手段は「漁労採取」を主として、「植物栽培」も行い、「和人や北方の地域との交易」を行っていました。アイヌには「自然と一体的な生活体系」があり、美しい大自然の中で暮らしてきました。 「アイヌ文学」は、「口承文芸」の中の「叙事文学」に属し、「うたわれるもの」「語られるもの」に大別できます。「アイヌ音楽」は「伝統的祭儀や土俗的信仰に直接結びつくもの」「日常の喜怒哀楽を歌う抒情歌」に大別され、前者には以下の二つがあります。 ウポポ(座り歌) ・祭りの中でや、儀式、労働の際に歌われる。 ・中央に置かれた「行器(ほかい)」の蓋を軽く叩いて拍子をとりながら歌う。 ・主に円座を組んで歌う、又は立って円陣をつくり手拍子をとりながら左回りして踊り歌う。 ・旋律を輪唱のように1拍ずつずらして歌い継いでゆく「ウコウク」という歌い方に特徴がある。 ・数が多い。 リムセ(踊り歌) ・悪魔払いの呪術的踏舞「ニウェン・ホリッパ」や「タプカル」に由来する。 ・数が多い。 ユーカラ(ユカラ) ・アイヌに口承されてきた叙事詩。 ・棒で拍子をとり、節をつけて、韻文・サケヘ(リフレイン)を用いて語られる。 ・用いる楽器は「パラライキ(バラライカ)」「トンコリ」「ウマトンコリ(馬頭琴)」「カチョー(太鼓)」「ムックリ(口琴)」など。 ・原意は「まねる」、託宣の言葉が巫謡「tusu‐sinotcha」となり、「体験を物語る」意味になり、「詞曲(アイヌの口承文芸のうちの"うたわれるもの")」」に転じた。 ・狭義には「少年ポイヤウンペの武勲・遍歴を物語る長編の英雄叙事詩」をいう。 ・広義には「自然神・人文神が来歴などを語る形式のカムイユーカラ」=「人間のユーカラ」「神々のユーカラ」を含む。 ・英雄詞曲を「ユーカラ・サコロペ・ヤイエラプ・ハウ・ハウキ」などと、「神謡」を「カムイ-ユーカラ・オイナ」などと呼んでいる。 「カムイ-ユーカラ・オイナ」は別ジャンルとも言う。 ・神の託宣が母体で、本来は「私は……私は……」というように,一人称で語られる。 ・日常語と少し違う「アトムテ・イタク(かざられた言葉)」を使い、すべて口伝えで伝承されるが、伝承者の人柄や巧拙などの影響で、筋立てと常套句以外の細かい部分は回を重ねるごとに変わっていく。 また「縄文時代・・・」の項にあるように、縄文時代の中心地は東日本の、特に「東北地方北部(青森県・秋田県・岩手県)」でした。「東北地方北部」「北海道南部」には、縄文時代の代表的な祭祀遺構「環状列石(ストーンサークル)」が多数存在します。最も高度な縄文文化「亀ヶ岡文化・亀ヶ岡式土器」は、「青森県・岩手県」で最も栄えた、際立った造形美を特徴とする文化です。これらはアイヌ民族の源流に当たる人々が築いた文化です。 アイヌ民像は「アイヌ神話」を中核とした「アイヌ信仰(アイヌ神道)」を、歴史的に信仰してきました。「神道」「アイヌ神道」「琉球神道」は共に「汎神論」で、「自然崇拝(アニミズム)」を基本としていて、原初の姿は同一の信仰形態であったと考えられます。 「神」は「カムイ」と呼ばれ、漢字で「神威・神居」とも記されます。カムイとは「自分達に恵みを与える物、害を与える物、畏怖の念を起こさせる物」、この全てを指します。カムイには「遠くにいる伝統的なカムイ」「身近で近づきやすく、頼りになるカムイ」「動物のカムイ」「補助的なカムイ」「疫病神的なカムイ」・・・など幾つかに分類されます。また、神聖とされる「東窓」の外の「幣場」に祀られるカムイも居ます。 「カムイと、日本語のカミは、共通の語源」だとする説もあり、そのニュアンスは類似していて、しかし「カムイ」は更に広い概念となっています。日本語では「カ・カム(神):万物の裏にある根源的な力」「ミ(実・身):具体的に現れる事。形になる事」「イ(居・位):そこにある事」と解釈できます。 「イナウ(木幣)」は、神道の「御幣(ごへい)」にあたる祭祀具、木を削りだして作り、「カムイへの捧げ物」「カムイの御神体」「言葉をカムイへ伝える代弁者」「守護神」「先祖と人間の間を取り持つもの」などの性質を持ちます。誰の物か分かるように印や記号が記され、カムイにより用いる木も異なります。 「アイヌ文様」は、一筆書きのように繋がった文様で、衣服に多用されています。「モレウ」は「渦巻き文様」で、そこから様々な文様が派生、「縄文」の名残ともいわれます。アイヌ文様の基本は、「モレウ」「アイウシ(棘のある文様)」「ラムラムノカ(鱗文・うろこもん)」です。また「角やモレウ中心部など、端から魔物が入らないように、必ずオホヤンケ(角突起)をする」という規則があります。アイヌ文様では「直線:心の正しさや正直さ・真心」「曲線:平和・円満・豊かさ」などの意味が含まれているとも言われています。 アイヌの信仰の特色(Wikipedia、アイヌ民族博物館HPほか) ・「動植物」「生活道具」「自然現象(津波や地震など)」「疫病」など、 人間を取り巻く全ての物が、それぞれ霊性を備えていると考えており、 これらの事物には「ラマッ(ラマット)」と呼ばれる霊が宿っていると考えた。 ・「ラマッは全てに行き渡り、死ぬ時や破壊された時に、どこかに去る。しかし決してなくならない。 このため、死者と共に葬られる武具や道具は、しばしな死者の伴をしていけるようにと壊される」という。 ・なかでも、とりわけ人間に多くの恵みをもたらしてくれるもの、 人間がかなわないような強大な力を持つもの、恐ろしいものなどを、「カムイ」として敬った。 ・世界を自らの住む現世「アイヌモシリ」と、ラマッの住む世界「カムイモシリ」に分けて理解し、 「ラマッは様々な事物に宿り、何らかの役割を持ってアイヌモシリにやって来ている」と解釈した。 ・ラマッはその役割を果たすと、再びカムイモシリに戻るとされた。 ・再びアイヌモシリに恵みを持ってきてもらう為に、 カムイを歓待して、丁重にカムイモシリへ送り返す。 ・アイヌの神々は絶対的な超越者ではなく、 カムイが不当な行いをした際にはアイヌ側から抗議を行うということもあった。 ・アイヌの神事は「カムイノミ」と呼ばれ、茅葺の伝統家屋「チセ」の中で、様々な神に対して行われる。 ・カムイノミを開始する際には必ず、火の神「アペチフカムイ(カムイフッチ)」への祈りを捧げることになっている。 アペチフカムイは最も重要で尊い神とされ、日常的に祈りが捧げられた。 ・家の守り神「チセコロカムイ」などに祈る。 ・食べ物による拝礼「ハルエオンカミ」や、酒かすを使った拝礼「シラリエオンカミ」などを行う。 ・先祖供養を意味する「シンヌラッパ」では、それぞれの先祖に果物やお菓子、飲み物などの供物をささげる。 ・カムイノミでは、白木を加工した「イナウ」と呼ばれる木幣が使用される。 ・動物神の中では、「クマ」「オオカミ」「シマフクロウ」 「シャチ」などが位の高い神として尊ばれた。 ・そのほか「水の神」「大陽の神」「月の神」「雷の神」「湖の神」などの自然神、 「鍋」「臼」「舟」などの物神など、多くの神々によって世界が構成されている。 ・カムイはカムイモシリでは、人間と同じ姿で同じような生活し、常に人間を見守っている。 アイヌモシリに下りてくる時には、それぞれの衣装を身にまとい、 クマの神はクマの姿に、キツネの神はキツネに、樹木の神は樹木に変身する。 ・神々の中には悪神や魔神も存在するとされ、それらを祓いの儀礼を行い、 穏やかに通り過ぎることを願って、祈りが捧げた。 ・このような世界観に基づき、家を新築する際の儀礼、 サケやシシャモの初漁に際しての儀礼など、数多くの儀礼が行われた。 ・日用道具が古くなったり破損したりすると、それらを捨てる前に、 感謝の言葉とともに道具の霊を神の国に送り返す儀式が行った。 これを「イワクテ」という。 ・動物を捕った場合にも、その霊を送り返す儀式を行う。 アイヌのシャーマン ・「巫術」「憑依現象」を「ツス・トゥス」と呼び、「ツスを行う人」「降霊能力者」を「トゥスクル・ツスクル・シスクル・」と呼ぶ。 男女ともにいて、「病気の治療」「精神的苦痛の癒し」「吉凶の占い」などを行う。 現存するシスクルは非常に少く、「日高地方」「樺太」に限られる。 ・樺太アイヌにおける「ツス」は、「カチョ(太鼓)」「ばち」「けずりかけ製の巫帽」「イナウ(払子や装身具として使用)」 「ヌフチャチャ(ツス中にシャマンが飲むイソツツジを入れた飲料)」「木偶(守護霊や病霊の依代)」「供犠用の犬」などが用いられる。 ツスの形式は、シスクルの「セアンス(心霊術の会)」として整っていて、「太鼓の連打による忘我状態への誘導」 「守護霊の招致」「激しい舞踏様の動きと様々な精霊のしぐさや音の模倣」「託宣」「守護霊の帰還」などの要素がある。 ・北海道のツスは、青森県の「イタコ」などの影響が見られる。 ・また、アイヌのシャーマンの治療行為は次のようにも分類される。 ウェインカラ(透視・千里眼) ・霊的障害(サイキック・アタックなど)、心的要因、具体的要因を透視して呪術を施したり、その障害の具体的な治療方法で対応するもの。 ・「空」の境地に入るといわれる。 ・ウェインカラの能力保持者を「ウェインカラクル」と呼ぶ。 トゥス ・治療師の「トレンカムイ(憑き神)」や患者の先祖などを降ろし、「トゥスクル」の肉体をそれらに支配させ、病因や治療の方法を託宣いただくもの。 ・いわゆる「トランス状態」に持っていくため、トゥスクルの神憑りの間の記憶はない。 ウェポタラ ・祈祷師による呪術に準すると考えられる。魔実的要素が濃い。 フッサラ ・悪霊の嫌う薬草や植物などをを用いて祈りと共に病人に憑く悪霊を追い払うもの、 「ウェンカムイ(悪霊)払い」とも呼ぶ。 ・薬物療法(単品・複数のアレンジの治療法) ・多くは、民間伝承によるが、霊的なアドバイスにより薬草は個別性に応じて配合する。 ・筋骨格系、神経系に働きかけ、歪みの矯正、身体のバランス保持やリラクセーションをはかる。 ・カイロ、整体、指圧、マッサージなどのボディワークの概念を含むとされる。 テクマウ(手当て療法) ・カムイへ祈り、行う手当て療法。外気功に対応する。 人々が住む地は「アイヌモシリ」、「人間の静かなる大地、を意味する言葉」「本来、特定の地域を指すものではないが、今日では北海道を指す場合や、樺太、千島列島など古くからのアイヌ居住地を指すことがある」を意味します。「カムイコタン」は「神の住む場所:カムイ(神)+コタン(村・居住地)」を意味、北海道および周辺島嶼で見られ、「神居古潭(古丹)・神威古潭」などと漢字表記されます。地形の面や神聖な場所であるとして、人が近寄りがたい場所にしばしばこの名が付けられます。また「カムイ・ミンタラ」という「カムイ達が遊ぶ場所」を意味する言葉があり、「神よりも自然を表すような表現(人間に穢されていない場所)」を指します。「ウタリ」は「親族・同胞・仲間」の意、「アイヌの自民族の呼称」としても用いられます。「長老」を「エカシ」と呼びます。 アイヌ神話「カムイ・ユーカラ」などから ・まだ地上に人間も植物も何一つ出来上がっていなかった大昔、天上界で神々が会議を続けていた。 ・重要な神様たちが毎日のように集まって、下界に有能な神々をおくって国土を造り、そこに動物や植物なども造って、平和な大地にしようという相談をしていた。 ・そして、国造りの神「モシリ・カラ・カムイ(山・平野・川の流れなどを造る)」、お供に犬の神「レエプ・カムイ」と、 シマフクロウの神「コタン・コロ・カムイ(集落を守る神)」別名「カムイ・チカプ(神の鳥)」、 ついで造化の女神「イカッ・カラ・カムイ(木・草・花を造る)」が下界に下った。 ・「アイヌラックル」「オイナカムイ」「オキクルミ」は、同一神と看做されたり、看做されなかったりもする。 またアイヌ神話の多くの例のように、地方ごとに内容が異なり、定説は無い。 ・(同一神として、類型を基に記述) 「オキクルミ」は「地上で誕生した初めての神」「地上と人間の平和を守る神」である。 新しい国土の主として人間界に降り立ち、「魔神」を撃退して、 天上から選ばれた許婚の「白鳥姫」を、「暗黒界の魔女」から奪い返して、人間たちを平和に暮らした。 そこで持参した「稗(ひえ)」で耕作を教え、「大船の造り方」「角鮫捕りの銛」「ヤスの用法」 「狩猟の際の毒矢や仕掛弓」や、「イナウを削って神を崇めること」など「神事」を教えた。 しかし、次第に人間たちは次第に堕落、遂にオキクルミはいずこかに去った。 それ以来、地上の悪事や災害は増す一方であり、人間たちはアイヌラックルを失ったことを激しく悔やんだ。 しかしアイヌラックルは去り際に、決して人間すべてを見捨てたわけではなく、時おり雷鳴と共に人間たちを見舞うと告げていた。 それゆえに人間たちは、雷鳴が轟くと、アイヌラックルの来訪といって拝むようになった。 アイヌ文化には土地の私有という概念は無く、その代わりに「コタン(集落)」が入会権を持つ「イオル(入会地」や「漁場」が存在、イオルは「伝統的生活空間」と訳され、コタンで必要な生物資源は基本的にそのコタンの入会地から調達されていました。和人文化における入会地とは異なり、イオルは「生物資源調達の場」であると同時に、「祭祀などアイヌの精神文化とも密接に関わっている場所」である点に特色があります。しかし明治時代以降、イオルを基盤としたアイヌの生活様式や文化は破壊されました。そこで近年、問題となっているのが「イオルの再生」です。 和人ともアイヌ系とも言う「渡党(わたりとう)」によって、中世には「神社」が創建されています。これらの神社の多くは「道南の漁業拠点」に集中し、神道や密教が混淆して「山岳信仰」や「岬信仰」が主体的でした。これらの神社は「松前神楽」などに象徴される独自の文化を擁し、後の北海道開拓時代に新たに創建された神社とは一線を画します。北海道に逃れたという伝説がある「源義経」の伝承地や、祀る神社も複数存在します。・江戸時代の儒学者「新井白石」は著書『蝦夷志』で、アイヌ民族が「オキクルミを源義経であるといい伝えている」と記しています。 北海道には、元々は「アイヌの神を祀っていた祭祀場」に建てられた神社が多いと言われ、アイヌの神と神道の神が混合して祀られている様相もあります。「意冨比神社(おおひ・おおい・北海道北斗氏)」には、平安時代の康平三歳(1060)銘が入る鰐口を有し、これが創建の年だとすると北海道最古の神社になります。「北海道神宮(北海道札幌市中央区)」は、明治二年(1869年)の創建、全国一の宮会より「蝦夷国新一の宮」に認定されています。 蝦夷の歴史 縄文時代の次の時代は、本州では弥生時代ですが、北海道では「続縄文時代」で、「恵山時代」との呼称もあります。縄文時代以来、東北地方北部と北海道南部は関係が密接でした。 「遠賀川式土器(おんが)」は、福岡県遠賀川流域を発祥として、西日本に広く分布する、弥生時代前期の土器の総称です。遠賀川式土器は早期に青森県まで伝播、東北地方の日本海側の遺跡には、この系統の土器が広く分布しています。「砂沢遺跡(青森県弘前市)」は、縄文晩期終末の「砂沢式土器」の標識遺跡で、続く時代には、弥生時代前期の東北地方最古の水田跡と、遠賀川式土器が発見されています。ここから弥生文化は、かなり早期に本州のほぼ北端まで到達した事が分かります。 北海道の続縄文時代では、「土器型式」「碧玉製管玉の墓への副葬」などに共通性があります。北海道の続縄文時代の遺跡で発掘された、本州以南から持ち込まれた物・文化としては、「新潟県佐渡島産の碧玉製管玉」「南洋産貝製品(イモガイ・マクラガイ・ホタルガイなど)」「鉄製品」「弥生式土器」「土製紡錘車」などがあります。しかしこの時代以降、「東北地方と北海道の縄文人(アイヌ)」は、異なった道を歩んでゆく事になります。 アイヌ民族は嘗ては「東日本の広域」に居住していました。「アイヌ語由来の地名」は「東北地方・関東地方」に多数存在、また「中部地方・西日本」にも散見されると言われます。「蝦夷(えみし・えぞ・えびす)」は、中央政権からみた異端視の呼称ですが、これ以外にも多くの名称がアイヌに関連します。「日高見国(ひたかみのくに)」は「古代日本で、大和または蝦夷の地を美化して用いた語」「特定の地域ではない」、蝦夷の地を指す場合、「常陸國(茨城県)」「陸奥國の岩手県付近」に充てられる事が多く、神世である「常世」と見做されたりもします。また、古くからの伝承が色濃い「遠野地方(岩手県)」の説話を集めた「遠野物語」に登場する「山人(ヤマヒト)」を、アイヌ民族とする説もあります。 アイヌが治める支配領域は、「ヤマト王権(中央政権)」の東進と共に北方へ徐々に移動、「和人(ヤマト民族)」との同化が進んでいきました。「4世紀末から5世紀初めの古墳時代中期」には、「おおよそ仙台市と山形市以南にあたる地域で前方後円墳が築造された」「宮城県と山形県が朝廷支配の北限」でした。最北端の古墳としては「角塚古墳(岩手県奥州市)」「鷺畑山古墳(山形県鶴岡市)」があります。 古墳時代から奈良時代、和人は「多賀城(宮城県多賀城市)」「秋田城(秋田県秋田市)」「出羽柵(山形県・秋田県)」など「城」「柵(さく)」を築き、多賀城には陸奥国に置かれた古代日本における軍政を司る役所「鎮守府(ちんじゅふ)」が置かれ、地域統治の要としたり、北への攻撃と防御としています。大和朝廷は飛鳥時代(7世紀)ごろ、蝦夷について南方から、毎年に朝貢する大人しい「熟蝦夷(にぎえびす)」、荒々しい「麁蝦夷 (あらえびす)」、その北方を「都加留(つがる)」と呼んでいました。 「阿倍比羅夫(あべのひらふ)」は、「越国(こしのくに・新潟県と富山県など)」「北陸道」に居住した「阿倍氏」一族で、7世紀中期・飛鳥時代の将軍です。日本書紀に「斉明天皇四年(658)に水軍一八〇隻を率いて蝦夷(北海道)を討ち、さらに粛慎(樺太)を平らげた」とあり、また「蝦夷や粛慎を饗応した(もてなした)」との記述が複数見られます。この「粛慎(しゅくしん)」は「中国の文献上の満州東部に住むツングース系民族」とは異なるとされ、「蝦夷以外のオホーツク文化人」「樺太中部以北に住むニヴフは粛慎の末裔」とも言われます。「新潟県・山形県・秋田県」を中心に「北陸地方・東北地方」の各地に「こしおう神社(胡四王・古四王・越王・巨四王・高志王・腰王・小四王・小姓等)」が多数分布、これは「越国を中心に北方に広がった阿倍氏の祖神と蝦夷の土着の神が同一視されたものとして、かなり古くから信仰された神」とされます。その本社「古四王神社(秋田県秋田市)」は、移転後の出羽柵近隣に鎮座、御祭神は、阿倍比羅夫の租神で、古墳時代初期の「四道将軍(よんどうしょうぐん)」として北陸道を抑えたとされる「大彦命(おおびこのみこと)」、東国鎮守の「鹿島神宮(茨城県鹿嶋市)」の神「武甕槌命(たけみかづちのみこと)」です。 平安時代に朝廷は征夷大将軍「坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)」の大軍を派遣、「坂上田村麻呂が創建した・参拝した・修復した」という伝承がある社寺は、東北地方~東関東の各地に見られます。田村麻呂は「胆沢城(岩手県奥州市)」が築造、後三年の役のあたりまで約150年間、「鎮守府」が置かれました。蝦夷の指導者「阿弖流為(アテルイ)」「母礼(モレ)」は、以前から朝廷の派遣軍にに対して奮戦していましたが、延暦二十一年(802)に遂に屈しました。その後、平安時代前期(9世紀)に、朝廷は蝦夷に対する直接の征服活動を諦め、岩手県と秋田県の中部付近が北限となりました。後に徐々にヤマト王権の北限が北方へ移動、平安末期に蝦夷との血縁的・系譜的関係を主張する「奥州藤原氏」が、東北地方北端までを領域として、鎌倉幕府以降に引き継がれました。 平安時代前期の延長五年(927)にまとめられた律令「延喜式」の巻九・十に、当時の「官社(毎年二月の祈年祭に神祇官から幣帛を受ける神社)」であった全国の神社一覧の記載があります。この神社を「式内社」と呼び、神社の格式の「社格」の一種で、「編纂当時の地域の古社や、崇敬の篤かった神社が選ばれた」という状況がありました。式内社の北端は、太平洋側が「志賀理和気神社(岩手県紫波郡紫波町)」、日本海側が「嶽六所神社(秋田県大仙市)」です。ここから中央政権の支配領域と、ヤマト文化の領域が伺われます。 末期古墳(まっきこふん) ・「蝦夷系墳墓」や、北海道のものは「北海道式古墳」とも呼ぶ。 ・円形を基本とし、土盛りが余り高くなく、周濠を伴う墳墓。 ・「青森県」「岩手県」「秋田県」「北海道道央の石狩低地帯」に分布する。 ・7世紀初頭~10世紀前半に造られた。 ・末期古墳が古墳であるかどうかについては確定していない。 ・蝦夷と呼ばれた人々によって造られたものと推定されている。 ・律令政府と関わりのあった人が被葬者と考えられている。 ・形は基本的に「円形」で、「楕円形」「方形に近いもの」も少数見られる。 ・墳丘の周囲には周溝があるのが基本である。 ・墳丘の規模は直径5m~10mが殆どで、最大でも17m程度である。 ・現在まで墳丘が残っている例は少ないが、墳丘が良好に残っている末期古墳の例から、 墳丘の高さは1m前後、高くても2m未満であったとされる。 ・末期古墳の「主体部」は大きく分けて「土壙に木棺をじかに葬る形式」と、 古墳の横穴式石室から派生したと考えられる「石室を備えた形式」とに分けられる。 ・末期古墳の造営が始まる前、東北地方北部~北海道では「続縄文文化」に伴う墳墓が造られていた。 墳形は楕円形で、周溝のような墳墓と周囲を隔てる区画はなく、墳丘もはっきりとは確認できなく、 墓壙の規模から遺体を折り曲げて葬る屈葬であったとされる。 ある程度の規模の墳丘・周溝を伴い、遺体を曲げずに葬った末期古墳とは明白に異なる。 ・7世紀前半、「北上川中・上流域」「馬淵川流域」で末期古墳の造営が始まった。 ・8世紀~9世紀、「東北地方北部」「北海道の石狩低地帯」へと分布範囲が広がった。 北海道の末期古墳は「江別古墳群(北海道江別市)」 「茂漁古墳群(柏木東遺跡/北海道恵庭市)」などが知られる。 ・北海道では石狩低地帯で末期古墳が造られている間も、 続縄文文化の時代と変わらぬ墳墓が造られ続けていた。 ・多くの墳墓が密集して造られる群集墳のような形で造られる。 「阿光坊古墳群(青森県)」のように、多い場合で100基以上で構成されることもある。 ・同じ地域で長い期間、末期古墳が造られ続けた例がある。 「丹後平古墳群(青森県)」では、7世紀後半~9世紀後半までの約200年間造り続けられた。 「阿光坊古墳群(青森県おいらせ町)」では110基余りの墳と剣・腕輪などが出土、 7世紀前半~9世紀末まで300年近くにわたり造られ続けた物で、蝦夷の有力者の陵とされる。 ・副葬品は「刀類(直刀・蕨手刀など武器」「鉄斧・鉄鎌・銙帯・金具・馬具・帯金具」 「玉・勾玉など装飾品」「須恵器・土師器」「和銅開珎」などが多い。 副葬品の質量とも、個人が使用したと見られる範囲に留まり、大量の豪華な品の副葬はなかった。 ・墳丘の規模に比較的差が少ない点などとともに、 末期古墳を造営した集団は均質性が高く、格差が少なかったことがわかる。 ・末期古墳の副葬品は8世紀前半を境に変化が見られ、それ以前は関東地方など 東国の影響が強いとされる馬具や須恵器などの副葬品が中心であったが、 8世紀前半以降は「蕨手刀」、律令制の位階を示す「帯金具」などに変わった。 ・「丹後平古墳群」「茂漁古墳群(柏木東遺跡)」などからは和同開珎も発見された。 これらは城柵の整備などに伴い発展した交流や朝貢等の結果、齎されたとの説がある。 ・古墳時代に広まった「竈付きの隅丸方形の竪穴式住居」が、 7世紀以降の北上川流域で見られるようになり、8世紀以降、北東北全体や北海道に広がっていった。 ここから蝦夷社会がヤマト王権・ヤマト国家との交流で、社会を変化させていったことがわかる。 ・副葬品の内容からも律令国家との交流が見られ、末期古墳は蝦夷社会の独自性の現れであると共に、 ヤマト王権や律令国家と蝦夷社会の交流を示すものでもある。 ・国指定史跡の「江別古墳群(北海道)」「阿光坊古墳群(青森県)」「丹後平古墳群(青森県)」 「江釣子古墳群(岩手県)」は、7世紀~10世紀の蝦夷社会の在り方を示す遺跡となっている。 室町時代に「北海道・渡島半島南部」で、「渡党」の「蠣崎氏」が領主となっています。康正三年・長禄元年(1457)の「コシャマインの戦い」では、アイヌが蜂起するも、最終的に蝦夷管領安東氏の代官「武田信広」に平定され、後の「松前藩」形成の元になりました。 農耕民族の和人と狩猟採集民族のアイヌは、それぞれの生活様式によって確保した生産物を交易で交換しました。アイヌは「魚・毛皮」を輸出品目とし、和人の生産する道具「鉄器や漆器」や嗜好品「米・茶・酒」と交換しました。アイヌは、和人地や本州まで出かけて交易する事が多かったとされます。 江戸時代、「松前藩(北海道松前町)」を基点に、江戸幕府の支配領域が北海道で拡大していきました。藩は交易独占権を持ち、その取り締まり強化で、アイヌは苦しくなっていきました。後に場所請負制により、本土の商人などが多数進出しています。アイヌは自治権を望むも、寛文九年(1669)の「シャクシャインの戦い」、寛政元年(1789)の「クナシリ・メナシの戦い」により、幕府体制に組み込まれていきました。 樺太には、元王朝滅亡後は他地域からの干渉は無くなりました。文明十七年(1485)、「樺太アイヌの首長」が「武田信広」に銅雀台を献じ。配下となりました。安土桃山山時代と江戸時代、樺太についての各種の記述が残されています。天正二十年・文禄元年(1593)、豊臣秀吉は「松前慶広」に先住民のアイヌ保護を行うとともに、諸国から集まる人々を取り締まり、従来どおりこれらから税を取り立てる権利を認めました。慶長八年(1603)、 松前藩が「宗谷(北海道北部)」に「利尻島・礼文島・樺太」を司さどる役宅が置きました。貞享二年(1685)、 樺太は松前藩家臣の知行地として開かれた「ソウヤ場所」に含まれ、宝暦二年(1752)にソウヤ場所から「樺太場所」が分立しました。 元禄十三年(1700)、松前藩は千島列島を含む蝦夷地の地名を記した松前島郷帳を作成して幕府に提出、北海道本島からカムチャツカ半島までが記載されています。正徳五年(1715)、幕府に対し、松前藩主は「十州島(北海道)、樺太、千島列島、勘察加(カムチャツカ半島)は松前藩領」と報告しています。享保十六年(1731)、「国後島・択捉島の首長」らが松前藩主のもとを訪れ献上品を贈りました。宝暦四年(1754)、松前藩は「国後・択捉・得撫」を版図とする国後場所を開きました。寛政十年(1798)、幕府による北方視察が大規模に実施され、「近藤重蔵」によって「択捉島」に「大日本恵登呂府」の標柱が建てられました。享和元年(1801)、「富山元十郎」「深山宇平太」を「得撫島」に派遣、日本領であることを示す「天長地久大日本属島」の標柱が建てられました。 「山丹交易(さんたんこうえき)」は、江戸時代に「山丹人(山旦・山靼)」と呼ばれた「主にウィルタ族の他、ニブヒ族、オロチョン族など沿海州の民族」と、「アイヌ」との間で、主として樺太を中継地として行われた交易です。広義には「清朝が黒竜江(アムール川)下流域に設けた役所との朝貢交易から、山丹人、さらにアイヌを介して蝦夷地の松前藩にもたらされた交易」を指します。文化五年(1808)、江戸幕府が「最上徳内」「松田伝十郎」「間宮林蔵」を相次いで派遣、松田伝十郎は樺太最西端「ラッカ岬(北緯52度)」に「大日本国国境」の国境標を建てました。文化六年(1809)、 間宮林蔵は樺太が島であることを確認、呼称を「北蝦夷地」と正式に定めました。松田伝十郎が樺太アイヌ住民の問題解決に貢献しました。山丹貿易を幕府公認とし、アイヌを事実上日本人として扱いました。 江戸時代にはロシアによる千島列島と樺太への進出が相次ぎ、これは明治維新へと影響しました。安政元年(1855)、「日露和親条約」が締結され、「択捉島以南」が日本領として画定しました。幕末頃、ロシアが樺太の領有権を主張し始めました。明治八年(1875)、「樺太・千島交換条約」によって樺太の一部と北千島が交換され、「千島列島全域」が日本領になりました。明治三十八年(1905)、日露戦争の講和条約「ポーツマス条約条約」で「南樺太」が日本領となりました。第二次世界大戦後の昭和二十六年(1951、「のサンフランシスコ平和条約」で日本は「千島列島」「南樺太」を放棄、しかし条約にソ連は調印せず、「千島列島」「南樺太」はどの国にも帰属していません。 明治時代、政府はそれまでの「蝦夷」から「北海道」に、「北蝦夷地」から「樺太」に改称し、「北海道開拓使」後の「北海道庁」が置かれました。「松浦武四郎」は、弘化元年(1844)以後に蝦夷地・択捉島・樺太を探査、明治二(1869)には開拓判官となり、蝦夷地に「北海道」の名を与えたほか、アイヌ語の地名をもとに国名・郡名を選定しました。 北海道・樺太・千島列島は「アイヌ民族(など)の共有地」でしたが、明治政府は「無主地」として国有地としました。土地は「屯田兵」など入植者に払い下げられ、開拓政策の大きな理由に北方への国防があります。日本政府は国策として、国防を理由に「千島アイヌ」を「色丹島」に強制移住させ、慣れない生活と風土のため、アイヌの人口は激減しました。また、樺太・千島交換条約の際には「樺太アイヌ」を北海道に移住させました。 明治三十二年(1899)に「北海道旧土人保護法」が施行され、アイヌへの日本語教育など、和人への同化政策が推進されました。学校ではアイヌ語やアイヌ文化は教えられることが無く、またアイヌ文化については否定的に表象されるなど、近世アイヌ文化の破壊は進みました。他にも幾つもの法律や、道内の慣行により、アイヌ民族は厳しい状況に晒され続けました。こういった経緯により「アイヌ民族の理不尽な境遇と、ヤマト民族・日本国の体制との間の、著しく不当な格差と」が生み出しました。 日本の体制がアイヌ民族に強いた不当な境遇 アイヌ民族は「日本の体制により、長年酷い環境に置かれ、土地を収奪され、その上で放置され続けた」という状況に置かれてきました。 「二風谷(ニブタニ・北海道平取町)」には「二風谷遺跡」があり、「中世から近世の北海道の最重要の遺跡の一つ」であり、この時代を「ニブタニ文化」と呼ぶ事も提唱されています。しかしアイヌ民族などの必死の抗議を無視して、「沙流川」に「二風谷ダム」を造成、この聖地を破壊しました。このダムは建設前から「治水効果が低い」「大量の土砂が溜まり使えなくなる」「土木利権の無駄な工事」と言われましたが、予想を超える速度で湖底に大量の土砂が溜まっています。上流の「額平川の峡谷」もアイヌの聖地ですが、ここにも「平取ダム(ビラトリ・平取町」を建設しようとしています。 アイヌ民族が伝統漁法や儀式の復活に取り組んでいる「モベツ川支流の水源地帯(北海道紋別市)」では、に、「産業廃棄物最終処分場建設」が計画されています。「モエレ沼公園(北海道札幌市)」は市民の憩いの場ですが、ここは嘗ては「市のゴミ捨て場」で、それ以前はアイヌの聖地でした。こういった件は多数あって、多くのアイヌの聖地が邪険に扱われて、破壊されてきました。 「日本本土」では「聖地たる場所」は「社寺保有・宮内庁所管・国有地など」となっていて、「無闇な開発は許されなく、重要な整地とされる多数の場所を開発しようとしてば、徹底的に弾劾・攻撃される」という状況です。「有名な○○神社・○○陵・著名な霊山・著名な遺跡」などの域内・境内・隣接地に、ダムなどの環境破壊を招く施設や、産廃処理場など汚染を招く、大規模施設が建設される事は、当然ながら決してありません。 翻って「アイヌの地」では、本来「アイヌモシリ(北海道)」は「イオル(入会地)」のような「アイヌ民族の共有地」であるにも拘らず、体制側により勝手に国有化されました。これにより「アイヌには民族の共有地・共有資産が、非常に僅かしかない」「アイヌ民族の資産保持者や、運営する大企業などが、ヤマト民族の物に比べて非常に少ない」という状況にあります。この前提上の事象として、長年にわたり「日本の体制側の施策によって、アイヌ民族は重要な聖地が多数破壊され、荒らされてきた」という、過酷な歴史に遭ってきました。これらは「アイヌ民族自身の能動的な選択の為」ではなくて、「日本政府・体制側の歴史的政策の為」であり、この点は「日本の体制側の歴史的責任の証左」以外の何物でもありません。 そもそも「どの民族の文化・重要遺産も、大切に保護しなくてはならない」「どの民族も、他民族の聖域・大事な事象を、非常に敬意を払わなくてはならない」はずですし、加えて「自己側の歴史的政策により、共有地・共有資産が僅かしかないという状況を招いたならば、その聖域や大事な事象の保護には、より重大な対処をしなくてはならない義務がある」はずです。しかしこんな当然な道義上の問題は、全く無視されてきたも同然です。 「大和民族の聖地(宮殿・陵墓・祭祀場)」ならば「絶対に有り得なく、不可能で、徹底的に弾劾される」のが、しかし「アイヌの聖地」の場合ならば「破壊され、汚され、そういう事が行われてしまい、しかも公的権力が主導、国家的に行う」のです。本来どの集団の物に対しても、特に外部(属していない)の人達は最大の敬意を払わなくてはいけないですが、然しながら「ヤマト民族の聖地だと犯罪」「アイヌの聖地だと犯罪でない」という事で、これが「日本の暗黙の掟」です。この著しい差別と不正義は何なのでしょうか。 そして「大学・研究機関等」「マスコミ」などを経由した物も含めて、、「ヤマト民族の各種文化は、公的・準公的な物により、にかなり保護されている」という状況があります。例えば「国語・歴史・伝統研究など、非常に多数の当然視される文化政策・活動」「メディア報道」も、これに含まれます。当然、多くの組織は歴史的に所在地の土地を所有しています。これは「祭祀施設(宗教団体)」「文化団体」なども含まれます。 しかしアイヌ民族は、歴史的経緯から「嘗ての接収により土地保有面積が狭い」「境遇により資本力が低い」「反対派の影響もあり各種公金支出も限定的で、公的保護は僅かしかない」という状況に置かれています。 このような経緯によって、「アイヌ語を流暢に話せる母語話者は10数人にまで減少している」「信仰や伝統文化が継承困難」という、危機的状況にあります。然しながら、今に至るまで「殆ど無視され、偏狭な民族主義・全体主義にも阻害され、権利擁護されずにいる」という状況です。アイヌの言語・伝統文化・信仰はまだどうにか廃絶は免れ、これから復興可能な状況ではありますが、現状は非常に深刻です。 「アイヌがアイヌだと公表するのには困難さが伴う」という状況があり、「自分の民族名を、しかも先住民族でありながらも、公表するのに障害がある」など、どのように考えても著しく異常です。更に「外国の○○国系の有名人は非常に多いが、アイヌ系の有名人はごく僅か」であり、これも日本の異常な社会状況を表しています。しかし、実際にこんな状況が、そして「そんな事は無い・題ない」などという強弁が罷り通るのが、現代の日本の実像です。 「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」、通称「アイヌ文化振興法」は「アイヌの民族としての誇りを尊重し、アイヌ語、その音楽・舞踊・文学・工芸などの振興を図り、かつそれらについての調査研究、知識の普及を目的とする法律」です。悪名高かった「北海道旧土人保護法」が廃止され、平成九年(1997)に成立しました。平成二十年(2008)、「アイヌを先住民族として認めるよう政府に促す国会決議」が衆参両院とも全会一致で可決されました。「民族共生の象徴となる空間(北海道白老町)」は、アイヌ文化振興のナショナルセンターとして政府が整備したもので、ポロト湖畔にあります。しかしこういった動きはあるにしても、「アイヌ民族の全体の事象・問題」に比べればごく僅かである事は言うまでも無く、全体状況の改善はありません。 ソ連と国際的体制がアイヌ・ニブフ・ウィルタ民族に強いた理不尽な追放・放置 旧ソ連は第二次世界大戦後に、究極的に理不尽にも「アイヌ・ニブフ・ウィルタ民族のモンゴロイド系少数民族を含めた、多くの日本人を、先住地域の千島列島・樺太から北海道へと強制送還(追放)した」という暴挙を行いました。 1945年8月8日、ソ連は日ソ中立条約を破棄し対日宣戦布告して「千島列島・南樺太」「満州・北朝鮮」で開戦、第二次大戦終戦(ポツダム宣言受諾)の8月15日以降もソ連の攻撃・占領は続き、この後「全域の占領」と、日本人に対しての「戦闘での戦死など」「正当事由のない民間人への虐殺・暴行など」「拉致・捕虜とシベリア開発での抑留」「日本への追放」が行われました。この戦闘では「占守島の戦い」を始め、多くの地域で日本軍が勝利するも、玉音放送と停戦交渉により戦闘停止や武装解除をしました。しかしこの間、ソ連側の「一方的攻撃」「停戦交渉の拒否」「停戦交渉成立と停戦・武装解除後の一方的攻撃」が行われ、9月2日の日本との降伏文書調印もも無視して攻撃継続、全域を支配下に置いた9月5日に、ソ連軍は一方的戦闘を終了しました。 当時、南樺太では日本人居留民41万人(少数民族も含む)のうち約10万人が脱出、千島列島にも多くの居留民・軍人がいました。この「日本人の日本への追放の過程」で、ソ連による「樺太・千島列島からの先住民族であるアイヌ・ニブフ・ウィルタ民族の日本への追放」も行われました。「樺太アイヌ」は日本国籍を持ってませんでしたが、アイヌは日本人とされ、追放されました。また残っていた樺太アイヌも、「カムチャツカ半島」に強制移住させられた人達がいます。現在、千島列島は「元々はモンゴロイドのアイヌ民族が住んでいたが、強制追放されて、元々ウラル山脈以西(ヨーロッパ)にいた、ソ連・ロシアの統治階層の白人が住人の大多数を占める」という状態です。 また一般論として、主張・論述に際しての前提として「主張という物は、自分達に有利だろうが不利だろうが、高い論理的一貫性が必要である」「自分達に有利だから不利だからという基準で、主張・持論の論拠を二転三転するのは誤りであり、その論拠の無意味さを示す」という点があります。「自分の属する国・民族・集団に有利不利に関わらず、事実は事実であり、事実に基づき出来得る限り妥当な認識を持ち、誤った状況は改善すべき」です。 「アイヌ・ニブフ・ウィルタ民族の追放」の理由には「敵国の日本に協力した民族への罰」がありました。しかし、そもそもからして「千島列島・樺太は少数民族は先住地であり、当然の権利の下に、日常生活をしていただけ」であり、彼らにはソ連・ロシアから非難される謂れは微塵もなく、他の何者も「彼らの根源的権利権利」を侵害する権利はありません。「日本人の追放」も「日ソ中立条約の破棄と戦争・占領・暴虐行為を行ったのはソ連」であって、非難されるべきはソ連であり、千島列島と樺太の少数民族と日本人を非難するこのような主張は、論理性が一切存在しません。 現在もロシアは「第二次世界大戦の戦勝国の権利として、千島列島と南樺太を領有している」「戦争の結果として合法的な領土権を保有する」と主張しています。更には国際的体制も、これを事実上追認しています。しかしこの主張は、それ自体の誤りだけでなく、その前提の認識も誤っています。そもそも「当時のソ連は、日本を断罪できるような資格のある国ではなかった」のであり、ロシア帝国・ソ連は歴史的に版図・勢力圏拡大の為に南下政策と西方への侵攻を行い、各地を戦争の脅威を晒してきました。特にスターリン政権は「覇権主義的な領土拡張政策」をとり、「カチンの森事件」などの数々の虐殺・迫害を起こし、多くの集団の強制移住とロシア人入植を行いました。ソ連時代にそういう秘密を話せば、強制収容所に送られました。「北海道の東半分」も占領するつもりで、占守島侵攻で時間を費やさなかったら北海道本島も侵略されていたとも言われます。ソ連による千島列島・南樺太の占領・領土主張と、アイヌ・ニブフ・ウィルタ民族の追放」は、第二次大戦中の「大西洋憲章」の「戦争による領土不拡大」「領土不変更」「民族自決」の原則、「カイロ宣言」の「戦争による領土不拡大」の原則、「ポツダム宣言」の「カイロ宣言の条項は、履行せらるべく」との条項に反する物であり、何らの正当事由も存在しません。そしてロシア・ソ連は、他国・他民族との紛争に際して「自国・自民族に都合の良い二重基準」を頻繁に用いています。 (然しそれら紛争においては、その多くは相手側にも問題がある。「片方の側は誤っていて、もう片方の側がより誤っている」という事例はあっても、「片方の側が正義」というのは先ず無い。 是非は簡単に区分けはできない事柄が多い。そして背後で操る勢力もいる) 一体「戦勝国の権利」とは何なのでしょうか?「第二次大戦は領土分捕り合戦をしてよい戦争だった」「少数民族の古来の先住権は否定し、近年に政策的に入植した民族に、千島列島・樺太の根源的権利・領土権がある」「自分達の利益になるならば、何をしても良い」「中立条約破棄しても、終戦間際に開戦しても、終戦後の一方的攻撃で占領しても、勝てば良い」とでも言うのでしょうか。「戦争の結果として権利がある、現状がこうだから権利がある」というならば、「現代の世界中のあらゆる構造は、それが如何に誤った物でも肯定される」ようになります。そしてそう主張するならば、何故「近年ロシアは第二次大戦後に決まった各国の国境・領土を無視して、自国の衛星国を広げる行為を取り続ける」のでしょうか。 北方領土交渉では、ソ連・ロシアは常に「第二次大戦の結果を認めよ」と日本に言ってきました。これは「これが千島列島・南樺太の領有の最大の根拠である」からそう主張しているのであり、この論法の背景には「ソ連が属した連合国は道義的優位性を持つ」→「だから連合国とソ連には第二次大戦の戦争責任と、それを受けた領土を規定する権限がある」→「だから従え」→「従わないなら第二次大戦の戦争責任を否定した事になる」という認識があります。では「戦争責任を規定する権限」もそうですが、況してや「連合国の第二次大戦後の領土を規定する権限」などという物が、どこに存在しているのでしょう。そもそもが「本来的に帝国主義のソ連に大戦後の領土を規定する権限も、戦争責任を規定する権限も無い」のであり、前提からして「道義的優位が齎す規定の権限」などという物は一切存在しません。では「ソ連の道義的優位が一切存在しない」ならば、「何を根拠に戦争責任や領土を規定する」というのでしょう。このように、主張の根源を遡っていくほど、そこには「主張の根源的根拠」という物が存在しなく、「循環論法(詭弁)をひたすら繰り返しているのみ」「力を以って正義とする」という状況が顕わになります。 ここに「第二次大戦の戦勝国の道義的優位と、それに基づく戦後処理を規定する権利」の、一体何が存在してるのでしょう。本より「第二次大戦の戦勝国の道義的優位」などという物は、全く存在しなく、最初から「勝てば官軍」なだけでありますが。「第二次大戦の結果の直接的な肯定的意味」とは、国際関係から見ると「(中国など)植民地支配された国が戦勝した事」だけです。「連合国の戦勝」は別に正義では無く、「枢軸国が勝つより良かった」という事です。そして「ソ連の第二次大戦と戦後処理における、対日本と対少数民族などの行為は、極端な独善性と苛烈な非人道的・非正義の行為その物」です。 仮定の歴史を考えたとして、若し「ソ連が北海道を占領していた」ならば、「北海道を占領し続ける歴史的正当性はない」にも拘らず、ソ連・ロシアは日本に返還しなかったでしょう。若し立場が逆で、「日本が連合国に属してソ連に勝利して、ソ連領土を日本領としたら、ソ連・ロシアは納得した」でしょうか。する筈がなく、徹底的に返還を要求し続けるでしょうし、ここに「論理的一貫性」は全くありません。これは「ソ連の領土占領は、全く道義・道理・妥当性に基づいた物でなく、単に戦争に勝利したから」という事を示します。更には「アジア・黄色人種の何れかの国が、ウラル山脈以西(又はそのロシア領土)のコーカソイド(白人)の先住地域を占領し、自国領と主張した」「先住していた白人層を追放した」として、これをロシアやヨーロッパや国際社会が許すでしょうか。それは絶対に有り得なく、「徹底的な弾劾」「国連軍などの武力で原状回復させる」「後代まで徹底して非難され続ける」のは間違いありません。これは「第二次大戦後のソ連の占領は、歴史的正当性や権利に基く物ではなく、強大な力と格差構造の下で、不当に行使された」という事と、「ソ連の強制移住政策は白人・黄色人種など各人種民族に行われたが、この問題には人種格差構造も大きく影響している」という事を示します。 元々「千島列島」「樺太」は「アイヌ・ニブフ・ウィルタ民族の先住地」であり、「先住民族の少数民族の下に、千島列島・樺太が国家として独立する」を選択するならば、その意向は尊重されます。しかしこれを除いて、「何れかの国の領有」という観点のみで考えた場合、以下の事が言えます。「千島列島」「樺太」を国として最初に領有したのは「室町時代~江戸時代の日本」です。当時、少数民族がロシア人と会った事があるという記録はなく、ロシアが進出したの後代です。各国間で「領土不変更」が何度も確認された第二次大戦の前、「千島列島」「南樺太」を領有していたのは日本です。拠って「千島列島・樺太は、ロシアの領有には正当な根拠はないが、日本にはある」と言えます。また、ロシアは沿海州の「ウラジオストク」が「東方を征服せよ」という意味であるように、元々「ウラル山脈以東に居住していたロシア民族(コーカソイド))」は、全くの異民族の「モンゴロイド系少数民族」の住む「シベリア」を支配して、帝国主義的に東方へ領域拡大、根本的にはここに問題があります。このように「千島列島・南樺太問題」は、その背景となる事象を様々に鑑みると、あまりに多くのことが、論拠に欠け、矛盾に満ちて、自己本位さばかりが目立ちます。 それ故に「ロシアが千島列島と樺太からアイヌ・ニブフ・ウィルタ民族などを強制追放した根拠は全くない」「現在も千島列島や樺太(南樺太)の土地の根源的権利は、アイヌ・ニブフ・ウィルタなどが有する」「千島列島と南樺太を占領する権利はロシアには存在しない」「ロシアは追放して多大な悲劇を与えた少数民族に謝罪すべき」「ロシアは第二次大戦前の状況に原状回復すべき」「ロシアは千島列島や南樺太を日本に返還すべき」です。 勿論、「日本政府が樺太・千島列島のアイヌ民族に歴史的に行ってきた行為(強制移住を含む)は、人道上の苛烈な犯罪」であり、この責任から微塵も逃れる事はできません。故に「日本政府は北海道・樺太・千島列島のアイヌ・ニブフ・ウィルタ民族に、歴史的行為の非人道性を認めて、正式に謝罪すべき」「千島列島・樺太を、少数民族の自治区とすべき」「少数民族の権利(聖地・入会地ほか)を高度に・広範に認めて、文化復興への多大な支援を行うべき」「千島列島・南樺太に居住している全人種の人々に、自由に日本とロシアのどちらの国籍も選択でき、両国の何れかに平和のうちに居住できるようにすべき」です。 しかし、このような歴史的状況がありながらも、「北方領土問題」の報道・議論においては「日本とロシアの政府間・政治体制間の問題だとされる」「アイヌ・ニブフ・ウィルタという先住民族に関する要素・観点・歴史は先ず出ない」「千島列島と樺太の話題・議題は少ない」「北方四島や、日本の戦争とソ連の対日攻撃ばかりに焦点が当たる」という状況にあり、非常に単一な視点に終始しています。然しながらこれは完全に間違っていて「千島列島・樺太の問題は根源的には、アイヌ・ニブフ・ウィルタほか少数民族の問題である」のです。 この状況の原因は「アイヌ問題軽視と蒸し返しになるので、日本の体制側が無視している」が理由です。北方領土問題は、国家という視点のみで語られますが、「大和民族伝来の土地でない事は、問題への認識レベルを大きく下げている」のが現実です。 「先住民族であるアイヌなどが、後に来た遥か遠方の民族により、先祖伝来の土地から追放された」「これは数十年前の事件である(遠い歴史的過去ではない)」「日本もロシアもこの事実を事実上無視している」、この過去から現在の行為は「人道上の甚大な大罪」です。 しかし、過去~現在の世界的構造の要因により、この問題は国際的に完全に無視されていて、そもそもが問題の認知度自体がほぼ皆無です。「アジア地域の問題である事」「欧米‐アジアの地位格差」という要因は、これは「黄色人種が白人の先住地域で同様の行為をして、長年是認・放置される事は決して有り得ない」というをいう事と対を成していて、「世界の統治構造の犯罪性」が如実に現れています。現代世界は、常にこの構造の統治下にあります。 「第二次世界大戦や戦後処理の認識論の見直しになる」という要因について、「第二次世界大戦の戦前~戦後の事実関係は、戦後の国際社会の一般的認識と異なる部分が多い」「都合主義の恣意的認識が多くの国で見られる」という点と密接に関係しています。要するに「戦後処理と、事実関係の妥当性や正義の間には、大きな隔たりがあるが、国・民族の利益と相反するので、その見直しは行わない」という事です。これは非正義以外の何物でもないですが、当事者達は正当化したり、口を噤むのみです。 「日本の問題である事」という点について、これは「第二次世界大戦における開戦・諸地域での戦争・諸々の問題は、日本に関わる物は、その原因の大多数が日本に帰せられている(実際は原因は、日本に問題も他国の問題も、同様に多い)」「そこから日本は何事でも封殺し易い国と見做されている」というのが原因です。「第二次世界大戦の開戦や諸地域での戦争の原因と、戦後処理問題」については、「その国際的通念は、事実関係に概ね沿った物と、異なった物がない交ぜとなっている」「多くの当事者国では、自国を有利にする為の恣意的解釈の論説が飛び交っている」という状況が続いてきました。 いずれにしても「アイヌ・ニブフ・ウィルタほか少数民族は、国際的関係による完全な被害者でしかない」のであって、彼らに非は全くないのですが、強者達は穢れたパワーゲームを繰り広げるのみで、正義などどうでも良いというのが現状です。 また「米大陸・オセアニアなど、過去に先住民弾圧があった地域」では、日本より非常に過酷で、完全な異民族・異文化との点はありながらも、しかし近年は公的・民間の権利擁護が高まり、報道・政官・教育等の取り上げ量や社会的関心度も日本より高いです。 日本におけるアイヌ問題の認識状況 翻って日本では、これらの国に比べて明示的な人種格差は低い物の、しかし未だに差別と格差の構造が厳然とあります。「日本の体制側が行った歴史的経緯の修復」による活動は、ごくごく僅かな程度です。先述の先進諸国の近年の事例は、何事も「臭い物に蓋」ばかりする日本の体制側と、更に体制側の力ばかりが強いという日本の社会状況と、対比される状況です。 そして一般の認識は「ヤマト民族と基は同じ、又は非常に近い民族であるにも拘らず、あまり語られる事もなく、僅かな知識しか持たれていなく、存在や問題が無いかのような、透明人間的な状況にされている」という境遇にあります。 当然これらは「政策・教育・報道その他、社会が過去~現状のレベルであったから、この程度の全体状況になっている」のであって、「日本社会が作り上げた状況」に他なりません。こういった諸々の事態は、これは、現代の日本では当然のようになっているのでしょうが、「客観的に考えれば、非常に異常であり、真理から極端に外れた事態」です。 「アイヌ民族についての、メディア報道や学校教育の量は、ごく僅かしかない」のが現状です。メディア報道の中で、アイヌについて触れられているのは、非常に限られた物しか存在していません。例えば「新聞サイトなどの記事の検索」をしても、アイヌという語句がある記事が、月に10~20記事しか存在せず、その殆どが北海道のメディア・地方版です。これが日本国内の様々な分野の記事であれば、又は各県の記事であれば、その記事数は多数に上ります。諸外国の事象についての記事も、政治から文化まで、毎日非常に多くの記事があがってきます。そして特に、エンターテイメント関連の番組・報道では、アイヌ文化を取り上げる事は、ほぼ皆無です。 学校の教育制度での「アイヌ民族の存在・歴史・文化の教育」は、そもそもが文部科学省など政界・官界は無視に等しいので、殆ど実質的な物が存在しません。「沖縄の民族・歴史・文化の教育」を教える時間も限られていますが、更にそれよりもずっと少ない時間数です。高校では世界史は必修ですが、日本史・地理は選択授業であり、「欧米の歴史体系・文化・事物は、小学校・中学校・高校の授業自体全体で、相当の時間数が教えられているが、アイヌについては殆ど教えられていない」という逆転した状況があります。 こういった状況により「子供達は、日本の事であるのに、アイヌ・ニブフ・ウィルタなどの民族や千島列島・樺太について、殆ど知る機会を持たない、殆ど何も知らない(或いは聞いた事もない)」「特定の幾らかの国についての知識量や、有象無象の物事の知識量の豊富さに比べて、全くと言っていいほど何も知らない」という、異常な状態が常態化しています。大人達についても同様であり、アンケート結果でもそういった状況が現れています。 最近、内閣府が行った「アイヌ政策に関する世論調査」では、「重要だと思うアイヌ関連の施策(複数回答)」について、「アイヌの歴史・文化の知識を深めるための学校教育:51.3%」「アイヌの人々への理解を深めるための啓発・広報活動:43.4%」「文化継承のための人材育成:31.1%」いう回答でした。しかしこういった政策は全く行われていないに等しく、過去の流れから言えば、アンケートも単に「対策を行ったというポーズ作りのルーティンワーク」に過ぎません。 更には「どのような事象でも、アイヌの歴史的被害と、その修復が語られると、それを徹底的に攻撃したり否定する狭量な人達」というのが、ネットを中心にかなり存在します。そのような主張では、歴史的事実を認めなく、アイヌ民族はもう殆ど居ないものとして、アイヌ民族側の声や擁護する論について「取り上げるな・認めるな」「捏造」「カネのたかり・利権」などと言っています。 これらは「近現代の日本の体制が行ってきた行為による結果その物」であり、更には「体制側が徹底した不作為を重ねながら、能動的な方向・行動は殆ど示さない」「アイヌなどの間での諦めと同化を待つ」「年代経過による民族消滅を待つような未必の故意」さえも感じられます。そして、日本にしてもロシアにしても、「歴史的責任を修復する行為」を行わないのであれば、究極的には「アイヌ民族自身に、北海道、千島列島、樺太(の一部)を返還すべき」です。 アイヌとは明確に「歴史的権利と被害度の総合的度合い」に対して「最も何の保障もされてなく、無視されている民族の一つ」です。こういった「アイヌ⇔日本・体制側・大和民族・欧米・白人・支配者」の格差は著しく卑怯で、その支配者・加害者側の論説は矛盾と非正義に満ち、現在の世界が如何なる物かを、象徴的に表して現しています。 沖縄・琉球・南西諸島の歴史 「沖縄県」は、地域区分として「沖縄諸島(北部)」「先島諸島(西部)」「大東諸島(東部)」に別れ、先島諸島は東から「宮古列島」「八重山列島」に別れます。「琉球諸島」は「沖縄諸島」「先島諸島」を含み、「奄美群島」を含めたり、「大東諸島」を含めない場合があります。また奄美群島の南方に沖縄諸島があります。 「鹿児島県」の南部島嶼部は「薩南諸島」と呼ばれ、北から「大隈諸島」「トカラ列島」「奄美群島」と別れています。これら日本の南西部の島嶼部を総称して「南西諸島」「南島(なんとう)」「琉球弧」と呼びます。 「沖縄県」は、嘗ては「琉球」と呼ばれ、「琉球王国」がありました。「沖縄県」「奄美諸島」では「琉球方言(琉球語)」が言語です。「琉球民族」の定義は「旧琉球王国の領域であった沖縄県の沖縄諸島と先島諸島、鹿児島県奄美群島に住む人々の言語、生活習慣、歴史的経緯から、独自の一民族であると定義した場合、それを指していう」となっています。 「琉球方言(琉球語)」は「日本語の一方言」「独立言語」とする二説があり、「日本語と沖縄方言の起源は同一」です。琉球方言を方言とする場合、「日本語族に日本語派と琉球語派が属する」「日本語族は孤立言語」となります。「琉球方言」は、弥生時代を上限とし古墳時代までに、本土の「日本語」と分岐しました。「上古日本語」を伝える言葉が多く残っていて、言葉の語源が琉球方言から判明する事もあります。琉球方言は、その地域ごとに大きく言葉が異なります。「日本語と琉球方言の相違」は「ヨーロッパ諸語のうちの、ドイツ語とノルウェー語、イタリア語とスペイン語の相違より大きい」などとも言われます。 琉球方言を分類すると、北から「奄美方言(奄美語)」「国頭方言(国頭語・沖縄本島北部)」「沖縄方言(中央沖縄語・沖縄本島南部)」「宮古方言(宮古語)」「八重山方言(八重山語)」「与那国方言(与那国語)」に分けられ、沖縄方言以北の「北琉球方言」と、宮古方言以南の「南琉球方言」の2グループに大別できます。 沖縄では「沖縄」を「ウチナー」と呼びます。古来よりの沖縄島住民による「沖縄島」の呼称は「うるま」、八重山方言では「ろーま」です。「沖縄本島周辺の方言」を「ウチナーグチ(沖縄口)」と呼び、沖縄の言葉を「シマクトゥバ(島言葉)」と呼ぶ事も多いです。近年は純粋な方言は衰退しつつあるので、本土の言葉を併せた「ウチナーヤマトグチ」が用いられています。「八重山」は八重山方言では「やいま」、沖縄方言では「えーま」と発音されます。鹿児島県の「薩隅方言(さつぐう)」のうち、島嶼部の方言は「甑島方言」「種子島方言」「屋久島方言」「トカラ方言」です。 「沖縄・琉球・南西諸島の地理的定義」は、概念ごとに、どの諸島が属しているかが異なります。「琉球方言(琉球語)と琉球民族の定義は、琉球王国の版図内の言語・集団である」と言えます。 南西諸島の先史時代は、「北部文化圏:薩南諸島」「中部文化圏:奄美諸島・沖縄諸島」「南部文化圏:宮古列島・八重山列島」の3つの文化圏が設定されています。北部文化圏は、本土文化の強い影響下にあります。「中部文化圏」では、九州の縄文文化が縄文時代前期ごろに定着、ここから独自の発展をしました。「南部文化圏」では、少なくとも3500年前より以前に、「台湾」「フィリピン」からの渡来人が定住し、その系統が強い文化を築いたとされます。以下は主に「中部文化圏」について記述、「北部文化圏」「南部文化圏」については、後段で記述します。 《沖縄地方の時代区分》 旧石器時代 貝塚時代 ・時期的には縄文時代から平安時代までの期間を指し、「早期(~中期)」「後期」に区分する。 ・早期から中期が縄文時代、後期が弥生時代から平安時代にあたる ・本州の縄文時代や弥生時代と比較して、狩猟・採取経済が生活が中心であったことや、水田が未だ見つかっていないことなどからこの呼称が用いられた。 古琉球 ・沖縄県における農耕の痕跡のうち最古のものは紀元前8世紀頃のものだが、本格的な農耕社会が成立したのは12世紀頃だとされている。 ・農耕社会が成立してから、島津氏の侵攻(1609)までを指す。 グスク時代 ・平安時代終末の12世紀から15・16世紀にかけて ・「グスク(城)」を築き始めるのは11世紀後葉。 ・貝塚時代の後続の時代の、沖縄では初めての農耕文化。 三山時代 ・沖縄本島に君臨した3カ国「北山」「中山」「南山」があった時代。 ・1322年ごろから1429年まで。 琉球王国 ・1429年頃、南山の初代琉球国王「尚巴志」王が沖縄本島と統一、「首里城」を王都とした。 {島津氏の侵攻 ・慶長十四年(1609)、第二尚氏第七代「尚寧」の時代、薩摩の島津氏が侵攻、首里城を接収した。 ・慶長十五年(1610)、尚寧は、薩摩藩主島津忠恒と共に江戸へ向かった。 途上の駿府にて大御所徳川家康に、8月28日に江戸城にて将軍徳川秀忠に謁見した。 忠恒は、家康から琉球の支配権を承認されたほか、奄美群島を割譲させ直轄地とした。 ・慶長十六年(1611)、尚寧と三司官は「琉球は古来島津氏の附庸国である」と述べた起請文を提出した。 また、琉球の貿易権管轄などを書いた「掟十五条」を認めさせられ、琉球の貿易は薩摩藩が監督することとなった。 こうして薩摩藩は第二尚氏を存続させながら、琉球を間接支配するようになる。 ・琉球王朝は、清にも朝貢を続けていた。 琉球処分 ・明治五年(1872)から明治十二年(1879)にかけての琉球処分で、琉球王国が廃止された。 日本国の統治下に入り、「琉球藩」から「沖縄県」となった。 縄文時代、「縄文文化」が「沖縄諸島」にも影響を与えていてました。「沖縄諸島の各地に縄文遺跡があり、縄文土器が出土する」「沖縄諸島・奄美諸島・トカラ列島・大隈諸島で産する、南方産貝製品が日本本土で交易に用いられ、北海道でも発掘された」「縄文時代後期は、海岸砂丘上に遺跡立地が移動し、主に漁撈を中心とした生業と考えられている」「沖縄諸島・奄美諸島・トカラ列島に共有の土器文化があった」といった状況があります。「この時代の沖縄諸島は狩猟採集経済で、縄文土器に類似する波状口縁の土器をもつ」「これらから"縄文時代"の名称を使用する場合もあるが、縄文時代・縄文文化とするかは意見が分かれる」とされます。 縄文時代前期、「轟式土器」は「九州島」を中心として、「種子島」「屋久島」「朝鮮半島南部」にも分布しています。続いて登場した「曽畑式土器」も九州島を中心に分布、「高又遺跡(鹿児島県奄美市)」「渡具知東原遺跡(沖縄島読谷村)」「朝鮮半島釜山市」などで発見されています。縄文人が黒潮本流を越えた例は、この曽畑式土器を持った集団による縄文前期の九州島・奄美大島間の航海が最も古く、関東における三宅島・八丈島間の航海よりおよそ800年早いものであるとされています。長崎産滑石を含んだ、縄文時代前期(5500-5000年前)の「曽畑式土器」が「伊礼原C遺跡(沖縄県北谷町)」から出土、この時代には長崎との交易があったことが判明しています。 「伊波式土器」は、3500年前(縄文後期)の在地の土器で、「山形の口縁部」という縄文土器の主要な特徴が見られます。「荻堂貝塚(沖縄県北中城村)」は沖縄本島東海岸にあり、沖縄県では最古級の琉球縄文土器時代前期(本土では繩文時代後期)の貝塚です。「各種の南島産貝類」「魚骨・獣骨」「石器」「土器」「貝製品」が出土しています。土器では「先が二又になったヘラで描く平行線文・山形文・爪形文などの文様」を描いた「伊波・荻堂式土器」が出土、これらの文様は「曽畑式土器」や「興津貝塚(千葉県栄町)」の土器と類似性があります。 貝塚時代後期前半~後期前半末(弥生時代~古墳時代の6世紀前半?)の沖縄諸島の遺跡には、南島の「尖底土器」、「弥生土器」、後述の「南方製貝瀬品のストックや半製品」という類型があります。また「弥生時代の遺物」が多数発掘されますが、同時に、沖縄諸島では文化の独自色が顕在化し始めました。この時代の遺跡では「銅鏡」「銅剣」などが、他県に遜色が無いほど発掘されていて、「鉄製品」は畿内の出土量を凌駕するものがあります。しかしこの時代の編年(土器形式などによる時代区分の細分化)は、まだ進んでいません。この時代は海浜砂丘地に立地した集落が増え、貝塚を形成、狩猟採集社会でした。古墳時代前期(4世紀)までは、巻貝の「ゴホウラ」「イモガイ」「スイジガイ」を採取・交易、これは本土日本で非常に珍重され、大きな影響を本土と沖縄で与えました。そして「勾玉など玉類」や、一部は「鉄器(斧用など)」などを受け取っていたと見られます。また大陸の影響を伺わせる出土物もあり、本土の弥生中期頃頃の遺跡と同様に、「中国の古銭」の出土例も複数あります。 貝塚時代後期後半(6世紀中盤?)から10世紀頃までは、南島の「くびれ平底土器群(11世紀終わり頃まで)」、交易用の「貝札(小型化し文様は略化した上層タイプ)」と中国の「開元通宝(621年~10世紀)」という類型が多いです。この時代は螺鈿細工用の「ヤコウガイ」などが交易され、奄美で特に多く見られます。奄美では「鉄器」が輸入されましたが、沖縄では「鉄器・金属器」は殆どなく(輸入されず)、「開元通宝(13世紀の遺跡まで)」がより多く発掘されています。また「本土産須恵器」などの出土例があります。この時代は台地上に集落が移り、一部は砂丘上にもあります。農耕が徐々に始まったと見られ、畑跡が幾つかの遺跡から見つかっています。この時代も前代に続き、漁労も主だった生業と見られます。 一説に「魏志倭人伝の邪馬台国は沖縄にあった」という説があります。「倭地温暖で冬夏常に野菜有り、皆裸足」とあり、南方系・海洋民の習俗が記載されていて、場所について「文の通りに読むと、九州の南方海上に至る」「会稽・東冶(中国浙江省・福建省の地名)の東方にある」「有無する所、朱崖・儋耳(中国・海南島の地名)と同じ」という記述との符合があります。 「弥生時代・古墳時代前期において、多くの文化・言語や祭祀の面で、沖縄(沖縄諸島)と日本本土の関係性は一体的であった」と考えられ、沖縄諸島の各地では「弥生時代・古墳時代の、本土との一体性や交流を示す遺跡・出土物」が出土しています。ヤマト王権の直接の支配領域になったのは、薩南諸島が古墳時代末期、沖縄には後も直接支配は及びませんでした。 古墳時代の何れかの時期(7世紀以前)、沖縄と日本の一体的な関係性が次第に薄れていきました。奈良時代、幾つかの正史・古典には、朝廷と沖縄の関係の記事が載っています。 日本で宝亀十年(779)に成立した「西暦唐大和上東征伝」には「阿児奈波島(沖縄島)」とあり、これが「沖縄」に類する名称の初出です。この記事には「鑑真など遣唐使一行が漂着した」とあります。享保四年(1719)、「新井白石」が「平家物語」に見える「おきなは」に「沖縄」の字を宛てしました。「阿児奈波島」の読みは「あこなは」「あじなは」の二説があり、「沖縄」の語源を「おき:沖」「なは(なわ):なば:魚場・漁場」で「沖合の漁場」とする説があります。 「琉球」という名称は、中国の正史「隋書」の607年・608年の「東夷傳 流求國」の記事が初出、その後「瑠求(元書)」などと様々に表記され、「琉球」に落ち着いたのは明時代以降です。しかし「琉球」とは「沖縄」「台湾」「フィリピン」に用いられた又は自称した名称で、これにより昔から混同がありました。またこれらの内容には、時期や背景により、ほぼ正確な物tと、又聞き・誤り・脚色も多い物とがあると考えられます。 古来よりの沖縄島住民による沖縄島の呼称は「うるま」で、これは雅称であり、漢字の当て字は「宇流麻」です。意味は「ウル:珊瑚、珊瑚の海石(花石・笠石)、海石の砕けた砂礫」「マ:しま(島)」で「珊瑚で出来た島」だと言われます。現在は「沖縄県うるま市」が遺称地です。 「八重山」の名称の由来には諸説があります。享保四年(1719)の『中山伝信録』には、「八重山、一名北木山、土名彜師加紀(いしかき)、又名爺馬(やま)」との記載があります。この記載では、現在の「石垣島」と「八重山列島」とが必ずしも区別されていません。 古代日本の辺縁部には、弥生時代の渡来人流入や、古墳時代のヤマト王権の成立・拡大以後も、縄文人の系統を色濃く残す集団が存在し続けました。「薩摩・大隅(鹿児島県)」に居住した「隼人(はやと)」は、「渦巻紋」「鋸歯紋(きょしもん・ギザギザの紋様)」である「隼人紋」など、独特な呪術・祭祀・葬制の文化を持ち、「隼人語」を話し、畿内集団とは通訳を介して会話しました。類似系統とも言われる「熊襲(くまそ)」は「肥後国南部(熊本県南部)・大隈国北部(鹿児島県北部)」にいた集団で、2世紀前半の第十二代「景行天皇(けいこう)」と皇子「日本武尊(やまとたけるのみこと)」による征討伝承が、記紀に載っています。隼人は6世紀末~7世紀末に朝廷に服従したとされます。 「日本書紀」には「推古天皇二十四年(616):掖久・夜勾・掖玖の人三十人がやってきて、日本に永住した」「舒明天皇元年(629):大和朝廷から掖玖に使が派遣された」「天武天皇六年(677):多禰島人を饗した」「天武天皇八年(679):朝廷から使を多禰島に遣わした」という記事などが見られます。7世紀末以前までは「ヤク」とは「九州以南の地域」を指す言葉として用いていたとされ、天武天皇六年の記事は「多禰島:種子島」の初見です。「天武天皇十一年(682):朝廷から多禰人・掖玖人・阿麻彌人(奄美)それぞれに禄を賜る」という記事があり、ここで「掖玖(やく)」を初めて、特定の「屋久島」を指す言葉として用いています。 「続日本紀」には、文武天皇二年(698)に朝廷の命により「務広弐文忌寸博士が南島(なんとう・南西諸島)に派遣された」とあり、任務は「屋久島・種子島・奄美大島の朝貢関係を確認すること」です。文武天皇三年(699)に「多褹(種子島)・掖玖(屋久島)・菴美・度感(トカラ列島)から朝廷に来貢があり位階を授けた」と記載があります。大宝二年条(702)には「薩摩と多褹が化を隔てて命に逆らう。是に於いて兵を発して征討し、戸を校して吏を置けり(薩摩と種子島・屋久島が服属しなったので征討した)」とあり、これは「隼人」の征討とも言われます。 「多禰国(たねのくに)」は令制国の一つで、領域は「種子島・屋久島・口永良部島」であり、種子島北部に「能満郡」、南部に「熊毛郡」、屋久島の広域と口永良部島に「馭謨郡」、屋久島の一部に「益救郡」が置かれました。大宝二年(702)から天長元年(824)まで122年間存続、「大隅国(鹿児島県東部)」に編入されました。続日本紀には「多褹国」との表記も見られ、「西海道」に位置しました。 続日本紀和銅七年(714)条に「太朝臣遠建治(おおのあそみおけじ)が奄美、信覚(しがき=いしがき)、球美(くみ=西表島か久米島?)の島人五十二人を率いて太宰府に入貢した」とあります。これが古書における「八重山列島」の初見で、後に朝廷は「久米島」「石垣島」に服属を求める使者を派遣しています。また、朝廷は「多褹国(種子島)」に国司を派遣しました。元明天皇和銅八年(715)には「南島の奄美・夜久・度感・信覚・球美の島民が来朝し貢上した」「蝦夷の人々とともに南島の人々に位階を授けた」とあり、養老四年(720)に「南島人二百三十二人に位を授けた」、神亀四年(727)に「南島人百三十二人に位階を授けた」などの記載があります。これらのことから、九州以南の島々をこう呼んでいたとともに、南西諸島の島々が朝廷に貢献していたことを示しています。 近年、大宰府(福岡県)で8紀前半の「掩美鴫(奄美)」「伊藍鴫(伊良部島?宮古諸島)」と墨書された土器が発見され、朝廷の南島経営を表す遺物とされます。 これらを見ると、この時代の前期は「奄美諸島」までが朝廷の版図内で、「沖縄諸島」との交流は無かったと考えられます。しかし和銅七年(714)以降、「沖縄諸島」「八重山諸島」とも多少の交流の証拠が見えます。ここから「本土と沖縄諸島の関係性の変遷」は「弥生時代・古墳時代前期までは濃厚」「古墳時代中期(4世紀初頭)に途絶」「和銅七年(714)ごろから多少の交流が起きる」「後に朝廷や幕府レベルでは交流が途絶えた」「しかし一般レベルでは、幾らかの交流が続いた」と考えられます。 沖縄ではグスク時代の12世紀、日本本土や中国大陸との交流が盛んになりました。これらで力をつけた有力者は地元の農民を束ねて豪族「按司(あじ)」となり、11世紀後葉から築かれ始めた石垣で囲まれた「城(グスク)」を拠点に、周辺の集落を傘下に入れ小国家へと発展しました。初代琉球王「舜天(しゅんてぃん)」や、実在した可能性が高い「英祖王統」の初代「英祖(えいそ・1259年? - 1299年?)」といった王朝初期の王も、この頃の有力な按司だとされます。「按司」は「主(あるじ)」が原義で、強力な按司は「世の主(よのぬし)」と呼ばれました。また豪族は、「奄美群島」では「大親(うふぬし・うふや)」、宮古諸島では豊見親(とぅゆみゃ)」と呼ばれました。 この辺りの時代には、日本本土から「平仮名」が導入され、また文永二年(1265)に日本僧禅鑑が伝えたとも言われます。平仮名は表音文字として文書全般に利用され、後に「漢字ひらがな交じり文」になりました。中国や東南アジアとの交流もあり、これらが融合してその後の琉球文化の基となりました。そして近年の研究結果では、10世紀前後に九州南部から多くの人が沖縄に渡ったとされています。「カムィヤキ古窯跡群(鹿児島県伊仙町・徳之島)」で生産された「カムィヤキ(類須恵器)」は、琉球弧全体で流通しています。集落はほぼ台地上になり、穀類を中心とした農耕に移行しました。 沖縄本島では14世紀に入ると、各地でグスクを構えていた按司を束ねる強力な王が現れました。南部の糸満(いとまん)を中心とした「南山(なんざん・山南)」、中部の那覇・浦添を中心とした「中山(ちゅうざん)」、北部の今帰仁(なきじん)を中心とした「北山(ほくざん・山北)」の三国に纏まり、これを「三山」と呼び、三王統が並立する「三山時代」が約100年続きました。三山の其々の領地は、1896年の郡制施行により「国頭郡」「中頭郡」「島尻郡」の三郡となりました。郡の範囲は現在ではかなり変わりましたが、地域区分「国頭」「中頭」「島尻」として残り、「北部」「中部」「南部」の広域市町村圏も、若干の違いはあるがこれらとほぼ一致しています。また「北山王国」の領域であった「沖縄島北部・伊江島・伊是名島・伊平屋島・古宇利島・屋我地島・瀬底島・水納島」「鹿児島県与論島・沖永良部島」では、「沖永良部与論沖縄北部諸方言」が話されてます。 中山国初代国王「察度(さっと)」の時代の文中元年(1372)、明王朝初代皇帝「朱元璋」が「楊載」を招諭使として琉球に送り、それに応じ、察度は弟の泰期を朝貢の使者として送り、表を奉り臣を称し、貢物を献上しています。二代目国王「武寧(ぶねい)」の時代の応永十一年(1404)、明の「永楽帝」が冊封使を派遣し、武寧を中山王に冊封しました。このいずれかが、琉球による歴代中国王朝との初の朝貢・冊封とされ、後に「北山国」「南山国」も朝貢、後代には「琉球王国」も朝貢を続けました。 「与那覇勢頭 豊見親(よなはせど とぅゆみゃ)」は、14世紀末から15世紀に「宮古島平良」を拠点としていた豪族です。元中七年(1390)、島内統一の際の後見を期待して、宮古島の首長として中山王「察度」に初めて朝貢、宮古島の首長として任ぜられ帰島しました。与那覇勢頭豊見親は元中五年(1388)に中山国に至るも、同国の言葉を解さなかったため、足掛け3年間言葉を学んだ後、朝貢したとされます。そして「八重山列島」にも琉球へ朝貢するよう促しました。 室町幕府四代将軍「足利義持」の時代、琉球王国から3~4年に一度の割合で使節が派遣されました。嘉吉元年(1441)、第六代将軍「足利義教」は、薩摩・大隅・日向守護(鹿児島県・宮崎県)の「島津忠国」に、恩賞として「琉球国」を与えています。文正元年(1466)、琉球使節が第八代将軍「足利義政」に謁見しました。「琉球国王と室町将軍」「王将軍(琉球の重臣)と管領(将軍に次ぐ役職)」は文書を交換、幕府側は上意下達文書、琉球側は上申書の形式とされます。これらを室町幕府ではこれを朝貢と理解していたとも言います。「応仁の乱」の後の15世紀末、室町幕府は島津氏に商人の往来の統制を命じ、琉球へは交易船の派遣を要請しました。天正十年(1582)、「豊臣秀吉」は、因幡国(鳥取県)の「亀井茲矩(これのり)」の「琉球国を賜りたい」との求めに応じて、「亀井琉球守殿」と書いた扇を授けました。これらの時期は、琉球王国は「日本と中国との中継貿易」を盛んに行っています。 琉球王国は、鎖国をしていた日本の江戸幕府と、海禁政策をとっていた中国の明・清との中継貿易で、大きな役割を果たしました。東南アジアとも交易も行っていて、マレー半島の「マラッカ王国」と密な関係にありました。この時代、ポルトガル人は「琉球:レキオ」「琉球人:レキオス」と呼び、16世紀初頭の東南アジア情勢を表した「東方諸国記」にも載っています。南蛮貿易時代に東南アジアで交易していた「ゴーレス人」は「琉球人」に比定する説が多いです。 「日本・沖縄・中国・朝鮮半島の漂流民が、母国へ帰った送り届けられた」という例は、古くから史書に見えます。「沖縄⇔朝鮮半島」は、古くは長元二年(1029)にあり、15世紀中盤以降は度々史書に見えます。特に第一尚氏第七代「尚泰久王(後述)」の時代の記述は、『朝鮮世祖実録 琉球見聞録』に詳しく載っていて、正確性が高いと考えられています。享徳二年(1453)と寛正三年(1462)の漂流民は、首里城内部の様相を伝えました。成化元年(1465)、宮古島に漂着した全羅道の漂流民三人を、沖縄島から李氏朝鮮時代の母国へ送り届け、「普須古(ふすこ・うふぐすくか)」「蔡ケイ(王へん+景/さいけい)」らの使節を遣わせました。使節は、第七代李氏朝鮮王「世祖(セジョ)」に「景福宮(韓国ソウル市)」で謁見しました。「普須古」は、朝鮮側の役人「李継孫」から、誤情報ばかりの1317年編纂の中国書物『文献通考』をもとにした質問を、中国語の通訳を介して受けました。文明九年~十一年(1477~1479)、済州島の10人ほどの漂流民が、「西表島・波照間島・新城島・黒島島・多良間島・伊良部島・宮古島・沖縄島・薩摩・長崎・対馬・ソウル」を経由して帰郷しました。以下はその一部です。 与那国島について(漂流民の体験記) ・酋長はいない。 ・高齢の女性が「村の親」。 ・苧麻(チョマ)で織った布の服を着ている。 ・婦人は耳に穴を開け、青い珠を5~6センチ下げ、首には同様の珠を30センチほど垂らし、みな裸足。 ・男は髪をひもで結び、女は短くても膝までの長髪。 ・稲の収穫前になると、人々はみな謹慎して大声を出さない ・米飯を主に食べ、握って拳大の丸い形にする。 ・女性に噛ませて濁り酒をつくる(口噛み酒)。 ・田で使う牛や鶏と猫を飼うが、牛も鶏も食べずに死んだら埋葬する。 ・部屋は区切りが無く、奥座敷や格子窓などがない。 ・死人は棺に座置して崖の下などに葬る ・島民は文字を解さない。 八重山列島について(漂流民の体験記) ・相手を罵倒したり、喧嘩したりすることがない。 ・子どもをたいへんかわいがり、泣いても叩いたりせず、ほっておく。 宮古島などについて(漂流民の体験記) ・婦人は鼻の両側に穴を開け、小さな黒木をさしている(西表島)。 ・飯を炊くのに鉄製の釜に似たものを用いる。 ・米麹を使って酒を作る。 沖縄本島などについて(普須古らとの問答) ・男性は色彩豊かできらびやかな服を着ている。 ・冠は竹笠のような物、当時の朝鮮の僧の被り物に似ている。 ・女性は上下のパーツに分かれた服、当時の中国の女性服に似ている。 色彩豊かで、(着物を?)頭にかぶって垂らし、男の笠よりも大きい物を被る。 ・『文献通考』に昔の人の言葉として、「琉球の男は鳥の羽を冠、宝貝を装飾具にして、赤毛で飾っている」 「女は薄絹の綾模様の白布を帽子にして、色んな鳥の羽で服を作る」とあるが、普須古は「昔の事は知らないが、今は違う」と答えた。 ・武器・武具の形は日本のものと同じ。 ・鉄は多い(輸入物)。 ・人民は酒桶を官に納め、牛馬皮を官に納め甲(鎧)を造る。 ・婦人をして(王の)命を伝えしむ。 およそ王の挙動するに、女官剣を杖して侍衛す。 ・国に神堂有り。人、之を畏れ、近づきてこれを視るを得ず(御嶽があるが、畏れて、近付いたり見る事はできない)。 ・若し婦人有らば、則ち巫に憑り、人、神に祝る(婦人は憑依されてノロとなり、人々は神を崇める)。 ・悪人がいたら、巫が神託を受けて、神歌を歌いだし、すると悪人の家が燃えだす。 隣の家には燃え移らないが、みんな畏れている。 ・夫が暴力を振るうと、妻は神堂に逃げ込む、そこに旦那は入れない。 女性が逃げ込むようなことがあったら、国家はその旦那を死刑にしないといけない、もしくは島流し。 そうしないと大きな台風で国が滅茶苦茶になる、だから普通の男は妻を怖がっている。 ・法律は中国の法律を参考にしてる。 ・泥棒はいない(琉球諸島全域?)。 泥棒は即刻死刑なので、だから落し物を誰も拾わない。 ・一般に死を軽んじている、 進むを知って退く事を知らない、戦えば勝てない事はない。 (後年のポルトガル人の書に、アラビア人・中国人から聞いた話として 「レキオ人は正義を貫き、不正に対しては剣を抜いて立ち向かう 商品代金を踏み倒したりしたら、刀を突き立てて返済を迫る」とある) ・酒の色は黄で、味は焼酎に似て、非常にきつい。数杯かたむけると大いに酔う(輸入物)。 沖縄本島について(漂流民の体験記) ・那覇には東洋各地の舶来物を商う市がたっている。 ・通りは中国人・日本人・南蛮人が闊歩し、それぞれ壮麗な規模の商館を開き、往来が絶えなかった。 ・王城(首里城)は凡そ三重にして、外城に倉庫及び厩(うまや)有り。 中城は侍衛の軍二百余、之に居る。 ・内城に二十三の層閣有り。…其の王、吉日を択んで往来して之に居す。 ・(層閣の)上層に珍宝を蔵し、下層に酒食を置く。 ・尚泰久王の葬儀に伴う、王后と、後の第八代「尚真王」らの葬列に遭遇した。 ・母后の乗り物は四面にすだれが垂れた漆塗りの駕籠で、これをかつぐのは二十人ほど。 その後ろを長剣や弓矢をもった百人あまりの兵士が護衛し、道々、楽器を鳴らし、大砲を放ちながらやってくる。 ・漂流民が母后に拝謁すると、彼女は行列をとめ、瓶を獲りだして酒をふるまった。 ・少し遅れて、容貌の美しい少年がついてきたが、当時十二歳の「尚真王」であった。 三山の中から「中山国」の「尚氏」が勢力を増しました。応永十三年(1406)、「尚巴志」は中山王「武寧」を滅ぼして、父「尚思紹」を中山王位に即け、「第一尚氏」が始まりました。応永二十三年(1416)に「北山」、「尚巴志」の中山王即位後の永享元年(1429)に「南山」を滅ぼして琉球を統一、これにより「琉球王国」が発足しました。当時は一般的に「琉球國(るーちゅーくく)」と呼ばれ、正式な国号は「中山王国」といいます。 成化六年(1469)、第一尚氏の「尚泰久王(しょうたいきゅうおう)」の重臣「金丸」は、尚泰久王の子「尚徳王」にかわって王位に就き、「尚円王(しょうえんおう)」と名乗りました。これが「第二尚氏」の興りで、第十九代「尚泰王(しょうたいおう)」の光緒五年(1879)の、四百十年間続きました。第三代「尚真王(しょうしんおう)」の時代、地方の按司らを首里に集居させ中央集権化を図りました。国中の武器が集められ、王府で厳重jに管理され、また後の薩摩藩の政策も併せて「禁武政策」とも呼ばれます。交易も増加、五十年続いた「尚真王」の治世に、王国は隆盛を迎えました。 奄美群島について、文永三年(1266)、奄美群島から中山王「英祖王」に入貢したと『中山世鑑』などの琉球正史に記されているが、当時の群雄割拠の状況から後に創作された伝承とも考えられています。応永二十三年(1216)、第一尚氏は北山王国を滅ぼし、その領土であった「与論島」「沖永良部島」「徳之島」が中山王国の領土に組み込まれました。15世紀中盤、琉球王国は奄美群島に相次いで派兵、全域を領土に組み込みました(奄美諸島の項で詳述)。 「先島諸島」は、琉球王国による海上交易の中継地として次第にその影響圏に置かれました。明応九年(1500)、石垣島の按司「オヤケアカハチ(オヤケ赤蜂)」が反旗を翻すと、「尚真王」は征討軍を編成するが、宮古島の豪族「仲宗根 豊見親(なかそね とぅゆみゃ)」が先鋒となって石垣島に上陸し、オヤケアカハチを討ちとりました。与那国島では、女首長「サンアイイソバ(サカイイソバ)」と、「鬼虎(うにとら)」による独立状態がしばらく続いたとも、オヤケアカハチの乱後に王府が侵攻して、撃退したとも滅ぼされたとも言われ、又は実在しないとも言われます。この時代の琉球王国の先島諸島の統治は、緩やかなものでした。慶長十六年(1611)、薩摩藩が与那国島で測量を行い検地帳を作製、これで尖閣諸島を除く先島諸島全域が琉球王国の支配下に入りました。島津氏(江戸幕府)は琉球王を徴税代理人として年貢を徴収、この為に、琉球王府は先島諸島に対して、重い「人頭税」を導入しました。 第五代「尚元王(しょうげんおう)」の元亀二年(1571)、王が自ら乗り込み進軍して、奄美群島北部の「奄美王島」まで勢力下におさめ、琉球王国の最大版図を築きました。こういった版図拡大の背景には、王府のの威光を背景に勢力拡大を図る、在地豪族の意向もありました。 慶長八年(1603))に江戸幕府が開府、幕府は中国の明と通航を考えるようになり、薩摩藩主「島津忠恒」に「琉球王国」に進出して明と通じることを許可しました。慶長十四年の旧三月四日(1609年4月8日)、島津軍三千名余りを乗せた軍船が薩摩の山川港を出帆、三月八日(4月12日)に「奄美大島」へ上陸して制圧、三月二十二日(4月26日)に「徳之島」、三月二十四日(4月28日)に「沖永良部島」を攻略、三月二十六日(4月30日)には「沖縄本島北部の運天港」に上陸、「今帰仁城」を落として「首里城」へ迫りました。第七代「尚寧王(しょうねいおう)」は止む無く和睦を申し入れ開城、島津軍は四月五日(5月8日)に首里城を接収し、五月半ばには薩摩に凱旋帰国しました。以後、琉球は日本(薩摩藩)と明の二ヶ国に両属することになりました。「尚寧王」は薩摩藩によって「江戸」に連行され、征夷大将軍「徳川秀忠」に謁見、後に琉球に戻りました。 慶長十八年(1613)、「奄美群島」は薩摩藩直轄地となり分離されましたが、表面上は琉球王国の領土とされ、中国や朝鮮からの難破船などに対応するため、引き続き王府の役人が派遣されました。琉球王国は薩摩藩への貢納を義務付けられ、「江戸上り」で江戸幕府に使節を派遣しました。琉球王国時代、沖縄と日本本土の関係性は深まっていきました。 琉球国王の王統は、神話時代を含めて「天孫氏王統」「舜天王統(1187~1259)」「英祖王統(1260~1349)」「察度王統(中山王国:1350~1405?)」「怕尼芝王統(北山王国:1322?~1416)」「大里王統(南山王国1337?~1413)」「第一尚氏王統(琉球王国:1406~1469)」「第二尚氏王統(琉球王国:1469~1872)」です。 琉球王国の身分制度は、「御主加那志前(ウシュガナシメー)」など複数の呼称があった「国王」を頂点に、「御殿(ウドゥン)」と呼ばれた「王子」、「按司」などの「王族」、「殿内(トゥンチ)」と呼ばれた「親方(地頭)」・・・などとなっていました。「御殿」は「王族の邸宅」、「殿内」は「親方の邸宅」も指し、「御嶽」などの聖地の名にもなっています。 琉球王国は、都を「首里城(しゅりじょう・すいぐすく)」に構えました。琉球王国の第二尚氏王統の歴代国王の多くは、「玉陵(たまうどぅん・玉御殿・霊御殿)」に眠っています。「浦添(うらそえ)」は琉球王朝発祥の地であり、意味は「津々浦々をおそう(諸国を支配する)」、それが「浦襲(うらおそい)」「うらしい」「浦添」と転じていったとされます。歴史は古く、13世紀ごろに登場する「英祖王統」の中心地として栄え、14世紀末に察度王統が尚巴志王に滅ぼされるまで中山王国の首都でした。琉球王国の陵墓「浦添ようどれ(英祖王陵と尚寧王陵)」や、王朝初期の重要拠点「浦添グスク」など、遺跡が多く残ります。これら遺跡は沖縄戦で大きな被害を受けました。 琉球王国の正史「中山世鑑」や、公選歌集「おもろさうし」と「鎮西琉球記」「椿説弓張月」では、平安時代末期に「源為朝(みなもとのためとも)」が琉球へ逃れ、その子が「舜天」になったとしています。源平合戦による「平家の落人」伝承として、「奄美群島」に「平資盛」「平行盛」「平有盛」、「沖縄本島今帰仁」に「平維盛」が落ち延びたと伝わり、「宮古島」「竹富島」「石垣島」にも伝承があります。 王朝は、琉球の神話や各地の伝承などを採録させ、「琉球国由来記」「球陽」などが表されました。これら古典には「記紀」「風土記」にあたる内容が含まれています。おもろさうしの著者「羽地朝秀」は「琉球の人々の祖先は、かつて日本から渡来してきたのであり、また有形無形の名詞はよく通じるが、話し言葉が日本と相違しているのは、遠国のため交通が長い間途絶えていたからである」としています。 明治維新後、「琉球処分」として知られる一連の政治過程で、沖縄は近代日本国家に組み込まれました。沖縄には、明治五年(1872)に「琉球藩」が設置されました。明治十二年(1879)には廃藩置県で「沖縄県」設置、これにより「琉球王国」が廃絶されました。これ以降は「沖縄に対する国内外からの歴史的な抑圧」の項で記述します。 沖縄諸島の東方の「大東諸島」は、古くは「ウフアガリの島(東の涯て)」と呼ばれ、はるか東にある無人島として古くから知られていました。明治時代に沖縄県や八丈島などの住人が、入植しています。また「ニライカナイ」伝承の一つとして、「南与那国島」「南波照間島」の伝承があります。 大東諸島を除いて、「南西諸島の全諸島・地域」にわたり、「文化・言語・祭祀の類似」が見られます。これは「地理な位置関係から、航海を通じた文化交流・交易が頻繁にあった」「日本本土からみて辺境の方に古代文化が残った」からで、「琉球王国の版図」にもよります。 琉球神道について 沖縄には「琉球神道」があり、「琉球神道と本土の神道と起源は同一」「往古の古神道の姿を色濃く残す形態」です。南西諸島においては、何れの地でも「信仰・神祀り・神事」が身近に存在しています。 琉球神道は「アニミズム」「祖霊信仰」「おなり神信仰」を基本とするものです。「ニライカナイ信仰」「御嶽信仰」とも呼ばれ、ニライカナイ信仰は「沖縄県や鹿児島県奄美群島の各地における、伝統的な民間信仰の主要な要素」です。 海の彼方の「ニライカナイ」と天空の「オボツカグラ」の他界概念を想定、これらの他界に「ティダ(太陽神)」をはじめとする、多数の神がいます。神々は、時を定めて現世を訪れて豊穣をもたらし、人々を災難から守護すると考えられています。「他界」とは「人が死亡した時、その魂が行くとされる場所」、一般的に日本本土の神道や民間信仰では「海の彼方・海の底」「山の上」「地の底」などにあるとされてきました。 「ニライ・カナイ(儀来河内)」は、「ニラーハラー」などとも呼ばれ、奄美諸島では「ネルヤカナヤ」と呼ばれます。また「ニライカナイはニライの文学的表現」であって、八重山では「ニロー」、各地域で「ニレー」「ニリヤ」「ニルヤ」「ニーラ」「ニッジャ」などと呼ばれます。 「遥か遠い東(辰巳の方角)の海の彼方、または海の底、地の底にあるとされる異界の理想郷」「東方信仰と混交した」「もともとは国頭地方の信仰と考えられる」とされ、一般的に「海の彼方」とする見方が多いです。「豊穣と命の根源となる異界」であり、「神界」でもあり、「年初にはニライカナイから神がやってきて豊穣をもたらし、年末にまた帰るとされる」とされます。「生者の魂も、死後にニライカナイに渡って肉親の守護神になる」とされ、このため祖霊を非常に敬い、死後の世界を「後生(グソー)」と称して、「非常に現世や生者と近しいもの」と捉えていて、ニライカナイとは「祖霊が守護神へと生まれ変わる場所」「祖霊神が生まれる場所」でもあります。このように複合的な観念です。 ニライカナイは、日本神話の「根の国」と同一だとも言われ、「二ライ:根の方」「カナイ:彼の方」という意味だとする説が有力です。根の国は「地下」又は「海の彼方・海の底」にあり、「黄泉の国(よみのくに)」と同一とされ、入り口は「黄泉平坂(よもつひらさか)」です。「根の国も元は葦原中国(とよあしはらのなかつくに・日本国土)と水平の位置にあったのが、高天原(たかあまはら)を天上に置いたため、根の国は地下にあるとされるようになった」とする説があります。柳田國男は根の国が「ニライカナイ」と同根で、「根の国は本来は生命や富の根源の地で、本来は明るいイメージの世界だった」としています。 (「根の国」の別名:「根之堅州國(ねのかたすくに)」「底根國(そこつねのくに)」「根国(ねのくに)」「根の国底の国(ねのくにそこのくに)」「底根の国(そこねのくに)」など} ニライカナイの類似概念に「常世(常夜・とこよ)」があり、「隠世・幽世(かくりよ)」とも呼びます。日本神話の他界観の代表的概念で、記紀・万葉集・風土記など多くの古典に見え、「永久に変わらない神域」「死後の世界」「黄泉(の国)がある場所」「海の彼方・または海中にあるとされる理想郷」「永久不変・不老不死・若返りなどと結び付けられた地」です。そして「常世を沖縄に比定する説」「琉球=龍宮とする説」があり、「常世」は「豊穣・穀物をもたらす存在」「海」と結びついています。 常世に関係する神「少彦名神(すくなびこなのかみ)」「御毛沼命(みけぬのみこと)」「田道間守(たぢまもり)」「浦嶋子(うらのしまこ・浦島太郎)」は何れも「穀物神・豊穣神」の属性があり、また海人族が奉じた海神「綿津見神(わたつみのかみ)」がいる「龍宮」も常世にあります。記紀には「垂仁天皇の命を受け常世の国に遣わされた田道間守が、不老長寿の霊薬の非時香菓(ときじくのかくのみ)の実と枝を持ち帰った(中略)非時香菓とは今の橘である」とあります。これは一般的に日本原産の柑橘類「橘(たちばな)」とされますが、沖縄と台湾が原産の「シークヮーサー」とも考えられ、「柑橘類に多いフラボノイド・ノビレチンが豊富で、老化防止・高血圧改善・美肌効果がある」「抗癌作用・新陳代謝活性化作用」などの健康効果があります。 「オボツカグラ」は「天空にある異界」です。「ニライカナイ:水平線上の庶民的な他界」「オボツカグラ:垂直にある権威的な他界」で、現在ではニライカナイへの信仰が一般的です。「東方信仰」は「日の昇る方向への信仰」であり、「東方を日本本土・ヤマトと関連付ける説」もあって、西方には「魔界がある」とされます。「太陽信仰」「東方信仰」「ニライカナイ信仰」は渾然一体としていて、ニライカナイは「常世信仰」「根の国」「黄泉の国」と共通する部分があります。 県最北端の伊平屋島の「クマヤ洞窟(籠屋洞窟・沖縄県伊平屋村)」は、入り口は狭いものの、中は広い神秘的な場所であり、全国に数多ある「天岩戸(あまのいわと)」伝承地の最南端地です。天岩戸は「天照大神が隠れた地」で、「岩戸開きとチャクラの開放」の項で詳述します。江戸時代の国学者藤井貞幹は「伊平屋島にアマミ獄という天孫降臨の洞窟がある」と聞いて現地を調査、「クマヤ洞窟は高天原である」「神武天皇は伊平屋島で生まれた」と唱えています。 沖縄では「御嶽(うたき)」「拝所(うがんじゅ・うがん)」「殿(とぅん)」「ビジュル」などの祭祀場、城を意味する「城(グスク)」、神聖視された「ガマ(洞窟)」「井(かー・がー)」などが、古来篤い信仰を受けてきました。「御嶽」は「集落祭祀の中心の場」「古代の集落の場」であり、多くは「森・杜(もり)」にあって、奥に神域の「イベ・イビ(威部)」」石があります。「城(グスク)」は丘陵上に存在しますが、「元々は御嶽であった」との説があり、「古いグスクには必ず御嶽がある」と言います。「御嶽は日本本土に見られる神社の原初的形態である、神籬(ひもろぎ)の形式を伝える」「イビは磐座(いわくら)信仰=巨岩信仰の聖域」「御嶽の嶽は山岳信仰を表す」「御嶽の森・杜は、神社の鎮守の杜と同じく、森林への信仰を表す」のであり、「御嶽とは古神道の神籬・磐座・山岳・森林の信仰を伝える聖地」です。 「拝所」は「神霊が依りつく聖域」、一般的に「森」にあって、元は「墓地」であった場所が多いです。「殿(とぅん)」は「祠」であり、「独立した祭祀場としての祠」と「御嶽の祠(社殿)」の両方の例があります。「ビジュル」は「霊石」の信仰、多くは「海に漂着した自然石」です。「井(かー・がー)」は「沖縄の伝統的な石造井泉」、聖地としての「かー」は「神泉」であり、小河川しかない沖縄では水は貴重です。隆起珊瑚礁の台地に空いた「ガマ(洞窟)」は、祭祀場となっている場が多数あります。 これら聖地を取り囲む森林域(御嶽の森)には、ヤシ科の常緑高木「クバ(日本名:ビロウ)」が、「神の依り代」として生えています。「クバの木(ビロウ)」は、古名は「阿遅摩佐・阿知末佐アヂマサ)」と言って、「古代日本で神聖視された植物」です。沖縄のこれらの聖地は「日本の祭祀場の往古の姿」を伝えます。 「斎場御嶽(せーふぁうたき・沖縄県南城市知念)」は、琉球神話の創生神「アマミキヨ」が造ったと言われ、琉球王朝時代に王国最高の御嶽とされました。古くは「おもろそうし(後述)」に「サイハノウタキ」「サハヤノウタキ」とあり、御祭神は「君ガ嶽、主ガ嶽ノイビ(君ガ嶽主ガ嶽御イベ六御前)」です。御嶽の中には六つの「イビ」があり、中でも「大庫理(うふぐーい)」「寄満(ゆいんち)」「三庫理(さんぐーい)」は、「首里城の建物・部屋」と同じ名前です。 三庫理の地下からは「金製勾玉(3点)」「碧玉(メノウ)製勾玉(6点)」「中国製の青磁の碗・皿・盤(10点)」「寛永通宝(534点)」「金製厭勝銭(9点)ようしょうせん・祭祀用の中国私銭)」など562点が出土、国指定重要文化財となっています。勾玉は、王国最高の神女「聞得大君(きこえのおおきみ)」の祭具だったとも言われ、古銭は円状に並べられていました。更にはその下層から、福岡県を中心に分布する弥生中期の赤い土器「須玖式土器(すぐしきどき=赤椀)」と「火を炊いて神祀りをしたらしい物証」が出土、これは「斎場御嶽は弥生時代(貝塚時代後期)には磐座信仰・太陽信仰などの神祀りの場であった」と物語ると考えられます。 敷地は一万五千坪、石灰岩の巨岩が露出する岩山であり、一帯は往古からの森林に囲まれています。周囲の森林は沖縄本島南部に於けるもっとも優れた森林の一つである。本島中南部は第二次世界大戦において被害を受け、それ以前の状態を残した場所がほとんどないが、この地域は戦災を免れた。シダ植物やラン科植物などに珍しいものが多い。2000年代以降御嶽周辺が整備され、森林に荒廃の様子が見られる。 斎場御嶽東方の「久高島(くだかじま・沖縄県南城市)」は、東方信仰・太陽信仰により「島全体が聖地」「ニライカナイにつながる聖地」であり、アマミキヨは「久高島に降りてきて国づくりを始めた」とされます。北東端の「伊敷浜(イシキ)」は「ニライカナイの対岸にある」とされ、「伊敷浜に五穀の入った壷が漂着、五穀が琉球全土に広まった」と伝わります。古くは「クバ島」と呼ばれ、島最高の聖地「クボー御嶽」もクバの木に由来、島には聖域が点在しています。島では「男は海人(うみんちゅ)、女は神人(かみんちゅ)」と言われ、古くからの「女性祭司と母性原理の伝統」が息づいています。「斎場御嶽」は「久高島に巡礼する国王が立ち寄った御嶽」「久高島からの霊力(セジ)を最も集める場所」であり、神事の際には「久高島の珊瑚の白砂」で清めます。 「首里城(しゅりじょう・スイグスク・沖縄県那覇市首里)」は、グスクその物が御嶽と看做される琉球有数の聖域であり、往古からの聖地だったと考えられ、以前は城内には十か所の御嶽がありました。首里城内郭南側の大きな範囲を聖域「京の内(けおのうち)」が占め、十か所の御嶽のうちの数か所と、鬱蒼とした大木の森や岩があるだけの場所だったが、この森こそが首里城発祥の地であり、首里城を国家の聖地とさせている重要な場所でした。「聞得大君」をはじめとする神女たちは、京の内で祭祀を行っていましたが、祭祀と京の内の詳細は不明です。正殿は「百浦添御殿(ももうらそえうどぅん)」と呼ばれ、琉球王朝発祥の地「浦添」に纏わる名称です。 グスクとしての首里城は、13世紀末から14世紀のグスク造営期に成立したものと考えられ、琉球王朝時代は王家の居城でした。琉球処分後は軍営や学校になりましたが、 昭和三年(1933)に正殿の改修工事が行われて国宝に指定され、県社「沖縄神社」の社殿となり、「源為朝」「歴代琉球国王」が祀られました。しかし第二次世界大戦の沖縄戦で、首里城・城下の町並みと、琉球王国の宝物・文書を含む、多くの文化財が破壊され、宝物庫は奇跡的に戦災を免れたが、中の財宝は全て米軍に略奪されました。戦後、首里城跡に琉球大学が置かれたことで、多くの遺構が撤去あるいは埋められたが、首里城の再建は戦後間もなくから多くの人々の悲願で、構内のあちこちの拝所には常に線香やウチカビ(紙銭)が供えられていました。近年、首里城の御嶽・拝所ほか各施設は徐々に再建されていて、「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の名称で世界遺産に登録されています。 琉球王国の時代から、神道形式の「神社」が幾つか建てられていき、琉球処分以後には各地域に建てられるようになりました。「第一尚氏の第四代「尚金福王」と第五代「尚泰久王」の時代、それまで島だった那覇と本島を結ぶ長虹堤の建設を国相の懐機に命じまたが、懐機はこの工事が人力の及ぶところでないところを知り、東方天照大神に向かい七日のあいだ潮が退くように祈ると、霊験があり潮が落ちて海底が見えたため工事を完成することができた」「この報恩のため、満叟和尚に請うて。宝徳三年(1451)に「天照大神」を日本本土から勧請した」とされ、これが沖縄県の最初の神社「長寿宮」の創建です。現在は「浮島神社(沖縄県那覇市)」と呼ばれ、昭和六十三年に「波上宮」境内の現在地に遷座しました。 琉球には「臨済宗」と「真言宗」の仏教が伝えられ、殊に「臨済宗」が厚遇されたが、真言宗寺院にも王府から寺禄を給された八公寺が存在しました。これら八公寺には神社が併置されていたが、これらの各社は俗に「琉球八社」と称されました。 「琉球八社」は「琉球八社(官社)の制により王府から特別の扱いを受けた神社八社」で、「波上宮(なみのうえぐう・沖縄県那覇市)」「沖宮(おきのぐう・沖縄県那覇市)」「識名宮(しきなぐう・沖縄県那覇市)」「普天満宮(ふてんまぐう・沖縄県宜野湾市)」「末吉宮(すえよしぐう・沖縄県那覇市)」「安里八幡宮(あさとはちまんぐう・沖縄県那覇市)」「天久宮(あめくぐう・沖縄県那覇市)」「金武宮(きんぐう・沖縄県国頭郡金武町)」があります。このうちの「沖宮」が沖縄最古の神社だとの説もあり、記録では薩摩の寺院・一乗院からの頼重法印の来航(正平二十二年・貞治六年・1367)が最古で、沖宮は明治期から遷座を繰り返し、現在は奥武山公園内に鎮座します。 琉球八社は安里八幡宮は「八幡神(八幡信仰)」を祀り、それ以外は「熊野神(熊野権現)」を祀っています。和歌山県南部の「熊野信仰」が、琉球では多かったと言えます。これは「熊=隅(くま・すみ)・端」という原義か、又は「少彦名命、行きて熊野の御碕に至りて、遂に常世郷に適(いでま)しぬ(日本書紀 神代巻上)」という記述から、「熊野‐常世‐沖縄」という連想が理由と思われます。琉球王朝時代はこれらの社寺は、貴族階級の信仰対象に留まっていました。「琉球八社」は明治維新後、国家の支援があった「波上宮」と、幾分民間の信仰があった「普天間宮」以外の六社は、荒廃していきました。 波上宮(なみのうえぐう・沖縄県那覇市) ・主祭神:「伊弉冊尊(いざなみのみこと)」「速玉男尊(はやたまをのみこと)」「事解男尊(ことさかをのみこと)」 相殿神:「竈神(火神)」「産土大神」「少彦名神(薬祖神)」 ・創建:不詳 ・嘗ての「琉球総鎮守」「官幣小社」、現在は「沖縄総鎮守」「琉球国新一の宮」「別表神社」。 ・那覇港を望む高台の景勝地に位置し、「なんみんさん」として親しまれてきた。 ・『波上宮 略記』には「遥か昔、人々が海の彼方の海神の国(ニライカナイ)の神々に豊穣や平穏を祈った聖地が、当社の鎮座する波の上の崖端で、拝所として日々の祈りを捧げたのに始まる」とある。 ・当地での遥拝に関して『海上の道』では、波の上の丘陵の高みにおいて、毎年、日を定めてこの付近の居留者が各々の故郷の方角に向けて香炉を置き、自身の本国に向かって遥拝する「ネグミ拝み」と言う祭りが近代まで行われていたことを紹介している。 ・『おもろさうし 第十』には「国王様よ、今日の良き輝かしい日に聞得大君を敬って、国中の人々の心を集め揃え、石鎚金槌を準備して石を積み上げ、波の上、端ぐすくを造り聖地へ参詣し給えば、神も権現も喜び給う。」と言う意味の「おもろ(歌謡)」がある。 「おもろさうし 上』はこの中に詠われる「波の上、端ぐすく」が当宮鎮座地であると解説し、『日本の神々 -神社と聖地- 13 南西諸島』では当宮創建を詠った「おもろ」ではないかと紹介している。 ・『神と村」では、グスクは古代祖先達の共同葬所(風葬所)であり、納骨洞穴が拝所になった場所は「テラ」と称される場合があると述べたうえで、上記「おもろ」に記された「なみのうへ は げらへて はなぐすく げらへて ものまいり しよわちへ てらまいり しよわちへ」の「てら」が、古代「鼻(はな)ぐすく」と呼ばれた当宮鎮座地にある「波上洞穴遺跡」を指しており、この地が祖先達の葬所を根源とする「神の居所」であることが覗われると述べている。 ・慶長十年(1605)に倭僧・袋中良定が著した『琉球神道記 巻第五』の「波上権現事」では当宮を琉球国第一大霊現と述べ、さらに以下のような当宮の創設伝承を記している。 「南風原の里主という者が釣りをしていると、ある日浜辺で「光り、ものを言う」霊石を見つけた。この石に祈るたびに豊漁となるので、諸神がこの霊石を奪おうとした。そこで里主が当地へ逃れると「吾は熊野権現也、この地に社を建て祀れ、然らば国家を鎮護すべし」との神託があった。里主は琉球王府にこれを奏上し、社殿が創建された。 上記の伝承は、琉球の固有信仰として古くからあった石体信仰と熊野信仰が結合したものであろうと『古代文学講座11 霊異記・氏文・縁起』では考察している。 上記と同様の伝承が正徳三年(1713)に国王へ上覧された琉球王府編纂の地誌『琉球国由来記 巻11』にも記されている。 琉球神道の最高神は太陽神「ティダ(ティーダ・テダ)」で、「天帝」「日の大神」「日神」とも記されます。またティダは、琉球方言で「太陽・天道・晴れ」も意味します。 「琉球の創生神」は、女神「アマミキヨ」と男神「シネリキヨ」です。「アマミキヨ(アマミキョ)」は「海神」「稲作を教えた神」でもあり、「アマミコ(阿麻弥姑・奄美姑・天孫)」「アマミク(阿摩美久)」「アマミチュウ(阿摩美津)」「アマンコ」とも呼ばれます。「アマミキヨ(アマミコ)」は、元々「沖縄・奄美の巫女」を意味した(であった)と言われます。「シネリキヨ(シネリキョ)」は「シレニク(志仁礼久)」「シルミチュー」とも呼ばれます。 琉球王国時代の史書「中山世鑑」「琉球神道記」に載る「琉球開闢神話(りゅうきゅうかいびゃく)」と、「日本神話の開闢神話」は酷似している ・最高神「ティダ(日の大神)」は、琉球を「神の住むべき霊所」であると認めた。 ・「ティダ」に命じられた、琉球の創生神「アマミキヨ(アマミク)」「シネリキヨ(シレニク)」の二柱の神が、琉球の島づくり国づくりを命じた。 ・「アマミキヨ」「シネリキヨ」は天より天下り、土地を造成して、島となり、九つの聖地(若しくは七つの森)を作った。 ・聖地のうち七箇所が「琉球開闢七御嶽」になり、最も崇敬される御嶽である。 ・また「二神は琉球開闢七御嶽を作った」とも言われる。 ・しかしまだそれらの島々には人間が住んでいなかったので、「アマミキヨ」は「ティダ」に「人の種子」を乞い、 「ティダ」はこの願いを聞き入れて自らの御子の男女を降臨させ、二人から三男二女の子が生まれた。 ・長男は「天孫氏(琉球最初の王統とされる氏族)」の始祖、次男は「諸侯」の始祖、三男は「百姓」の始祖、 長女は「君々(高級神女)」の始祖、次女は「ノロ(地方神女)」の始祖となったとされる。 ・「天孫氏」は25代続き、17802年間統治、25代目のときに、「利勇」という家臣に滅ぼされた。 ・その後、「利勇」を滅ぼして国を立て直したのが、初代琉球王「舜天」といわれている。 これは日本神話の「国生み」と対比される ・男神「伊弉諾尊(いざなぎのみこと)」と女神「伊弉冉尊(いざなみのみこと)」は、 天地開闢後に最初に現れた五柱の神「別天津神(ことあまつがみ)」たちに、漂っていた大地を完成させるよう命じられた。 ・「天沼矛(あめのぬまぼこ)を用いて、天から海をかき混ぜて、「大八島国(おおやしまのくに・日本)」の島々を形成した(島生み)。 ・二神は結婚して、御子神が生まれていった ・また太陽神「天照大神(あまてらすおおかみ)」は「高天原の最高神」である。 「アマミキヨ」は、海の彼方の理想国「ギライカナイ」から「稲」を持ち込んで、二つの泉である「受水走水(うきんじゅはいんじゅ・沖縄県南城市)」の前にある「御穂田(みーふだ)」「親田(うぇーだ)」のうちの「親田」に植えて、子孫の「アマミツ」が「御穂田」に植えました。ここは「琉球の稲作発祥地」、受水走水の神「ホリスマスカキ君ガ御水御イベ」に捧げる「神饌米(しんせんまい)」を作る「斎田(せいでん)」であり、毎年「親田御願(うぇーだうがん)」という田植え祭りを斎行、前にある「御祝毛(うゆえーもー)」と呼ばれる広場で神事を行い、神祀りの古謡「天親田のクェーナ」を四七番まで合唱します。 これは「豊受大神(とようけおおかみ)」の神格・伝承に類似します。豊受大神は「ウケ(食物)の女神・稲の霊」で、「伊勢神宮外宮(いせじんぐうげくう・三重県伊勢市)」や、「元伊勢」の一「比沼麻奈為神社(ひぬまない・京都府京丹後市峰山町)」ほか、各地で祀られています。「丹後国風土記」には「往昔豊受大神天降り、伊去奈子嶽(いさなごだけ)に真奈井を堀って水を注ぎ、田畑を作り種を植えて、五穀及び桑蚕等の種を伝えた」とあり、比沼麻奈為神社近隣の「清水戸」「月の輪田」は「豊受大神が苗代の清水戸に浸した籾を月の輪田に蒔き、とれた稲種を天照大神に奉った」という史跡で、神饌米を作る田植え式の神事が行われます。 「君手摺り(きみてずり)」は「通説では海と太陽を司る琉球王国の守護神とされており、琉球王国の存亡の機に降臨する」「ニライカナイに住まう」とという神で、また「君手摩を行事として記載する資料もあり儀式名である」とする説もあります。「新しい琉球国王の即位の儀式中、聞得大君に憑依する」とされ、国王就任に際しては、「君手摺り」か「君真物」が「琉球開闢七御嶽」を巡り、「安須森御嶽」に現れ、五つの御嶽を順に巡り、最後に首里城内に嘗てあった「首里真玉森御嶽(すいまだむいうたき)」に現れるとされます。 (「君手摺り」の他の呼び方「君手」「君てっ」「君って」) 「君真物(きんまもん・ちんまむん)」は「琉球の人民守護の女神」「王権守護の神」「琉球の国土人民を守護の為に現れる神」「最高の精霊という意味」であり、「ニライカナイからやって来る」「海底を宮とし、毎月現れて託宣する」と言われます。「琉球神道の最高神」とも言われ、別名が「君手摺り」という説もあります。琉球神道記は「弁財天と同神」、柳田國男は「君は巫女、真物は正式な代表者の意で、いつのまにか神の名になった」としています。この神には陰陽があり、天より現れるのは「キライカナイノキンマモン」、海より現れるのは「オホツカケラクノキンマモン」と呼びます。彼方より時を定めてやって来る「客人神((マレビト神)」だとも言われます。 「安須森御嶽(あすもり・あしむり・あすむい)」は「アマミキヨが始めて降り立った地」であり、御祭神は「カンナカノ御イベ」です。沖縄島最北端の「辺戸岬(沖縄県国頭村)」や、カルスト地形・急崖・奇岩群からなる景勝地「金剛石林山」に近く、「ヤンバルの森」が広がる一帯には御嶽が点在します。国頭村史には「1世紀頃にアマミキヨ族が南西諸島を南下してきて宇佐浜遺跡に居を構えた」とあります。「宇佐浜遺跡」は辺戸岬近隣の国史跡で、貝塚時代中期末か後期(繩文時代末か弥生時代)の「貝塚・住居・土器・石器」が出土しています。 (「安須森御嶽(あすもり・あしむり・あすむい)」の別名「辺戸御嶽(へど)」「あふり嶽」) 沖縄には「御嶽」など聖地ごとに、様々な神様が居ます。一般に、祀られる神としては「水の神」が多く、また「聖地の名を冠した神名」が多いです。末尾に「御イベ」と名の付く神が多く、御嶽の神域「イベ・イビ(威部)」に纏わります。神名・人名・仇名の末尾に付ける敬称に「加那志(がなし・がなし)」があり、語源は「愛し」とも「神の子」とも言います。「神の子」の場合、「みこ(神子・御子・皇子)」「ひこ(日子・霊子)」「ひめ(日女・霊女)」に対応する言葉と考えられます。同じく末尾として、南島全体に「かん(神)」「かんがなし(神加那志)」が多く、奄美地方では「かみさま(神様)」「かみさまがなし(神様加那志)」、八重山地方では「かんまぬい(神の前)」「かみさままぬい(神様の前)」が多いです。 南西諸島では、家庭においても信仰が篤く、「火の神」「床の神」「祖霊」などを祀り、「方角」には注意して、「霊石」があったりするなどしています。そして家族の健康や発展などを祈念します。よく知られる「シーサー」は、建物の門・屋根・村落の高台などに据え付けられ、家・人・村に災いをもたらす悪霊を追い払う魔除けの意味を持ち、屋根の上に設置されるケースが多いとされます。これは「獅子」とされ、琉球方言の「獅子」の名です。最古の元禄二年(1689)のシーサーが、八重瀬町に現存します。 「キジムナー(キジムン)」は、沖縄諸島周辺で伝承されてきた伝説上の生物です。「妖怪で、樹木(一般的にガジュマルの古木であることが多い)の精霊」「多くの妖怪伝承と異なり、極めて人間らしい生活スタイルを持ち、人間と共存するタイプの妖怪として伝えられることが多いのが特徴」「沖縄の大木に宿る精霊・キーヌシを擬人化したもの」などの特徴・説があります。沖縄本島でも地域によってこの類の精霊を全く別の呼称で呼ぶことも多く、八重山諸島では伝承は確認されていません。奄美群島では「ケンムン」という妖怪がいて、「キジムナー」や「河童」に共通する外観や性質が伝えられています。近年、「キジムナー」は「自然保護の象徴(神)」として扱われる事が多いと言います。沖縄や奄美群島では、「マジムン」という悪霊(の総称)が伝わります。 沖縄では、神道の「神職」に対応する存在は「神人(カミンチュ)」、「巫女」などに対応する存在は「ノロ(祝女)」「ユタ」と呼ばれます。「ノロ」は「祭司者」「神人の中の上位」、「ユタ」は「シャーマン」です。神人には他に「サス」「司(ツカサ)」「サスカサ」「アケシノ」がいて、「おもろそうし(後述)」では、ある種の神のような存在として登場します。このうち「ノロ」は「奄美諸島」にもいます。 「口寄せ巫女(霊と交感して意を伝える)」としての巫儀を展開している呪術宗教職能者として、古代の様相が残る東北地方北部の「青森県津軽地方・南部地方」「秋田県の一部」には、下北半島の霊山「恐山」などの「イタコ」がいて、「盲目の女性によるホトケ(死者)やカミの口寄せ」を行い、近年まで多数がいました。同地域の「ゴミソ」は「カミオロシ・祈祷・病気治療」などを行い、男性もいます。同様の職掌の人は、南西諸島では「ユタ・ホゾン・トキ(奄美群島・沖縄諸島)」「カンカカリャ・サス(宮古列島)」「ムヌチ・ニゲービー・カンピトゥ(八重山列島)」などと、「壱岐」では「イチジョウ」、他に「市子(イチコ)」「梓巫女(あずさみこ)」などと呼ばれています。「ノロ」「ユタ」「根神(ニーガン)」「おなり神信仰」などに見られるように、「琉球神道に女性による祭祀が多いのは、古代の神道の形態を色濃く残しているから」とされます。 日本の縄文時代の信仰は「縄文神道」とも言われ、この時代は「母系社会」でした。それを受け継ぎ「弥生時代・古墳時代の祭祀は、巫女が中心的立場」であり、「神託を基にした祭政一致体制」を行い、又は「"女性:祭祀者""男性:政治権力者"という二重体制」も多数存在していました。「邪馬台国」の「卑弥呼」「台与」も女性の巫女・シャーマンで、日本神話には多数の「女性神」「シャーマン的な女性」が登場します。 「勾玉(まがたま)」は「日本発祥の玉類」「縄文時代・弥生時代・古墳時代の、古神道の中心的な祭祀具・装飾具」で、沖縄諸島では「ガーラ」、宮古諸島では「マガーリャ(曲がっているもの)」と呼ばれます。本土においては古墳時代後期に製造が途絶、飛鳥時代はまだ用いられていたものの、奈良時代以降は、祭祀目的の使用も激減していきました。しかし沖縄では祭祀具として受け継がれていて、現在でもノロは「丁字型勾玉」を首から下げていて、これは「北部九州由来の、定形勾玉の頭部に数条の刻線をつけたもの」です。古墳時代、「前方後円墳」を頂点とした祭祀文化が一気に全国的に浸透、「勾玉など玉類・銅鏡・刀剣」ほか「多種多様の祭祀具の製造」が、「古墳の副葬品」「祭祀具」「装飾品(着装)」として非常に盛行しました。しかし奈良時代前後には「古墳文化の消滅」と共に衰退、これは「仏教」の興隆も一因ですが、沖縄では仏教は伝来の後も一般化しませんでした。 南西諸島は「巫女(シャーマン)による祭祀が多く残る地域」「母系社会の伝統が多く残る地域」「海洋信仰・東方信仰・太陽信仰が濃い地域」「海の彼方からの来訪神を祝う地域」という共通した特徴があり、これ以外にも「独自の祭祀形態」が多数存在します。「琉球神道・沖縄の祭祀形態」は「沖縄諸島」「先島諸島」だけでなく、特に「奄美諸島」を中心に、「トカラ列島」「大隈諸島」でも影響が見られ、「薩南諸島は本土文化と琉球文化の境界域」とも言えます。鹿児島県本土の西方の「甑島列島(こしきしま)」と、九州西北部の「対馬」「壱岐」「五島列島」、日本北方の「東北地方」なども同様に、「古代日本の辺縁部にあって、古代の祭祀形態・伝統・文化・言葉が多く残る地方」です。 琉球神道 ・琉球王国時代には事実上の国教として祭政一致体制に編入されていた。 ・民俗学者の折口信夫は著作「琉球の宗教」の冒頭で、 琉球の宗教を袋中以来の慣用によつて琉球神道の名で話を進めたいと断った後、 琉球神道は日本本土の神道の一つの分派、 あるいはむしろ巫女教時代のおもかげを今に保存していると見る方が適当な位であると述べた。 ・鳥越憲三郎は「琉球宗教史の研究」の中で、琉球宗教の二大潮流をなすものは 「御嶽信仰」と「火神信仰」であるとし、やがて「火神(ヒヌカン)」は「日神(テダ)と同一視され、 按司(アジ)や国王の実権の所在を表徴する役割を持つに至ったと述べている。 ・宮里朝光「琉球人の思想と宗教」によれば、琉球の固有宗教は、個人的な幸福を祈願するのではなく、 社会及びそれを支える生活や生産について祈願し祝福するもので、 社会が平和になれば個人は幸福になれると考えたのだと言う。 ・その固有信仰は、「祖霊神」「祖先崇拝」「火神」「ニライ・カナイ」「おなり神」 「水のセジ」「万物有霊」などがあるが、拝む対象の日月星辰を通して 現世に益をもたらす祖霊に報本反始するものであると述べている。 ・琉球神道など、沖縄地方の独自の祭祀場には 「御嶽(うたき)」「拝所(うがんじゅ・うがん)」「殿(とぅん)」「ビジュル」がある。 他にも「井(かー)」「ガマ(洞窟)」など、聖地の場所が多い。 ・沖縄一千年史 眞境名安興 初版大正十二年 昭和四十九年五版より 「琉球神道記」に「国の風として岳岳浦浦の大石大樹皆御神に崇め奉る。 然して拝貴即験(をがみあがめばしるし)あり」とあるが如く、琉球にては之を拝所と構へ、 概ね石垣を繞らし、香炉を備へ、内部には大樹怪岩ありて殊に蒲葵、榕榔、「ガジマル」等鬱蒼たり。 此の拝所は琉球全島に亘り、到る所に存在して夫々神名を有し、例へば「クバツカサ」(蒲葵司)……など称せり。 ・琉球神道は、琉球で自然発生的に生まれたと考えられている。 いつ頃発生したかは史料が皆無であるため明確ではないが、 7世紀にはすでに原型はあったと考えられている。 「ノロ、ユタが原始的な世襲型、召命型のシャマニズムであること」 「御嶽は古代集落が原型と考えられ、御嶽信仰は祖霊崇拝が変化したものと考えられること」 「おなり神信仰は、古代の母系社会や女性上位社会の変化と考えられること」 これらのことから、専門家の間では、琉球神道は古代信仰の形式をとどめていると考えられている。 ・琉球の民間社会において、民衆の宗教的機能を担う職能者は、 女性司祭者の「ノロ等の神人(カミンチュ)」と、シャーマンとしての「ユタ等」の類に別れる。 ・前者が主として「御嶽」「グスク等の聖地」「御願所」「拝所」において 部落や村落の公的祭祀や共同体の祈願行事の司祭をするのに対し、 後者は部落や村落の個々の家や家族に関する私的な呪術信仰的領域に関与している。 ・桜井徳太郎は、この両者とも沖縄民間信仰の底辺を貫流するシャマニズムの根の上に立ち、 沖縄の民間信仰を支える車の両輪と言えると述べている。 ・沖縄では、祭祀集団は地縁や血縁で組織される。 また「門中(むんちゅー)」あるいは「マキョ」といわれる親族集団が重要な位置を占める。 ・琉球王国では、その王統が「伊平屋島」「伊是名島」に由来することから、 「伊平屋・伊是名の神」を「王国の守護神」として王府首里に勧請した形跡が伺える。 ・一例として、国王巡礼の守護神となっていた有名な「園比屋武御嶽」の神が、 元々は伊平屋島の神であったことがあげられる。 ・「聞得大君」の神名である「しませんこ あけしの」は、 もともと国頭地方勢理客の御嶽の神名であることがわかっている。 ・・沖縄独特の他界観念として「グソー(後生)」観があリ、「あの世」と言える。 旧暦十二月二十四日にグソーへ帰って行った祖先が再び、旧暦一月十六日にこの世に戻ってくる。 この「後生の正月」に、家族・親戚一同が食事を持って、祖先を墓前で迎え、線香をあげるなどする。 ・本島とは別の生活圏として発達した各島では、それぞれ独自の宗教も存在した。 そのいくつかは、地域が琉球王国に併合された後も排斥されることなく現在も残っており、 地域の御嶽を中心に祭りを行っている。 ・琉球学研究者・伊波普猷は「琉球の神話」の中で、 「中山世鑑の起源神話と古事記の淤能碁呂島(おのごろしま)神話」 「宮古島旧記の神婚説話と三輪山神話」などの類似を指摘している。 ・大林太良は「記紀の神話と南西諸島の伝承」において、 日本の古典神話と奄美や沖縄の島々に伝承されている民間説話について、 「流れ島、天降る始祖、死体化生、海幸彦」に関する伝承神話を比較検討し、 次のことを結論として述べている。 ・「1:記紀に記された古典神話に親縁の諸モチーフは、 わが国における現存あるいは比較的近い過去の伝承としては、ことに南西諸島に残存している」 ・「2:これら南西諸島の伝承は、その基本的なモチーフ、構造においては 記紀の神話と大幅な一致を見せるが、神名その他の細部においては一致していない。 このことは古典神話、現存の記紀の形にまとめられてから、南西諸島に二次的に伝播した可能性よりも、 むしろ、記紀にまとめられる前の共通の母胎から分れて、 南西諸島において保存された可能性が大きいことを示唆している。 ・「3:もしもこの想定が正しければ、記紀の所伝と南西諸島の伝承の比較によって、 記紀以前の日本神話の古い形を再構成する可能性がある」 ・「4:その際注目すべきことは、南西諸島の伝承は、国土創成、人類創造、農耕の起源の 3つの主要問題を、一つづきのものとして取りあつかっていることで、 構成的にも、記紀の神話よりも一貫しているのみならず、 日本神話と深い親縁関係をもつと信ぜられるポリネシアなどの神話との比較から考えても、 南西諸島の伝承がより古い形を保存している可能性を考慮すべきである」 ・「5この一連の開闢神話に含まれない若干のエピソード、 たとえばオオゲツヒメ・モチーフや海幸彦・山幸彦モチーフも南西諸島に現存している」 ・「6:古典神話と後代あるいは現存の伝承との組織的比較はまだ極めて不十分な段階にある。 上記およびその他の諸問題をより明確に答えるためにも、一層組織的な材料の収集と比較が必要である」 セジ ・古くは「スヂ」「シヂ」とも呼んだ。 ・仲原善忠「おもろ新釈」によれば、「セジ」は霊力を意味し、セジが剣につけば霊剣に、 石につけば霊石となり、門・港・舟・社・城等にもつき、人についた場合は超人となると述べている。 ・仲松弥秀「神と村」では、「おもろ新釈」の説明を受けてさらに考察し、 セジすなわち霊力とは「人間としては不可能なことを成し得る能力」を 指しているであろうと述べている。 そうであるなら「人間としては不可能なことを成し得る能力」は 機能的に際限無く分類できるため、その能力を持つもの、 即ち「神」は琉球において八百万も居るということになるであろうと述べている。 ・琉球神道では、「魂」を「マブイ」と呼ぶ。 「マブイ込み(グミ)」は「魂振り(たまふり)」と類似の概念だと見られる。 ・神道では「フツ(経津主神に纏わる」「スヂ」「ケ(気)」「イツ(稜威・厳)」の概念にあたる。 ・これらは太平洋島嶼でみられる「マナ」の概念と同じである。 マナは「魔法や超能力といった、尋常ならざる特別な力の源・神秘的な力の源」である。 琉球の神 ・仲松弥秀「神と村」では、全知全能のセジの具備者なる存在を 古代琉球人が考えていたか否かについては研究不十分であるが、 種々の機能を各々分担したセジの保持者は想定していたと考えられると述べ、 人間は自己の欲するものを顕現してくれるセジを期待するのが至極当然であろうから、 琉球における神とは「人間に善をもたらすセジの顕現者」と言う観念に 傾斜していくことになるだろうと述べている。 ・琉球の神は主に「来訪神」と「守護神」に分類でき、 守護神や来訪神のいる異界・他界の「ニライカナイ」「オボツカグラ」に豊穣を祈り、 特に「ティダ(太陽神)」を最高神として崇める多神信仰である。 ・来訪神は異界の神であり、平時には人々の集落に存在しないか、御嶽にのみいると考えられる。 しかし祭りの時になると異界から集落や集落の御嶽に訪れると考えられており、 来訪神と人間の関係は極めて近しい。 ・特に著名な神は、「琉球の創造神」である「アマミキヨ(アマミク)」と「シネリキヨ」や、 「ニライカナイの最高神」である「東方大主(あがりかたうふぬし)」、 「国王就任の際に現れる」という「君手摩(キミテズリ)」などであるが、 この他にも多数の神がいると考えられている。 ・来訪する神は世界的に島嶼民族に共通して見られ、 一般に海を神聖視するが、これは琉球においても同様である。 これに関連して、折口信夫は「まれびと論」を展開した。 「まれびと(客人・稀人)」は「時を定めて他界から来訪する霊的もしくは神の本質的存在」。 ・一方、守護神はもともと地域集落の死者の魂=祖霊であり、 ニライカナイで神となって集落に戻ってくるとされ、 この神は平時に拝所や御嶽にいると考えられている。 ・過去の偉大な功績を残したノロが神とされ、墓地が御嶽となる例が確認される。 ヲナリ神(ヲナリガミ) ・「ウナイ神(ウナイガミ)」とも呼ぶ。 ・沖縄(宮古島以外)と奄美群島に存在する。 ・琉球の女性一般は全て「巫女的ないし神的素質を生得的・本有的に持つもの」と信じられているが、 その好例がヲナリ神信仰である。 ・「ヲナリ」とは琉球語で「姉妹」を意味し、 「姉妹(ヲナリ・オナリ・ウナイ)」は「兄弟(エケリ・又はイキガ・)」の守護神であると信じられている。 ・中でも特に、「妹」が「兄」を霊的に守護すると考え、妹の霊力を信仰する。 ・従って琉球の全女性は兄弟を持つ限りにおいてヲナリ神となるわけである。 ・おなり神信仰において、兄と妹の関係性は別格とされる。 既婚者の男性を霊的に守るのも伴侶である妻ではなく妹と考えられており、 近世までは既婚者に大事があった場合でも、その妹が呼び出されて祈念を行うことがよくあったという。 ・男が漁にいくときは、妹からもらったものをお守りとした習俗もあった。 ・伊波普猷はこのことから、この概念は男女間のすべての関係性を内包するものと指摘した。 つまり、「をなり」「えけり」には、肉親としての男女、恋人としての男女、夫婦としての男女の関係が多層的に想念され、 その世界において、兄=男が世界を支配し、妹=女は男を守護し、神に仕える神女と位置づけられるのである。 ・この観念は、俗世を支配する男性を、神に仕える女性が男と社会を霊的に守護するという観念に転化された。 政治を男が行い、その男を守護する女が神事を司り、神託を得て霊的に指導するという祭政一致体制の基盤となった。 ・この原則は集落レベルから国王にまで一貫されている。 集落のもっとも古い宗家の主人は「根人(ニーッチュ)」と呼ばれ、その妹は集落の祭事を司る「根神(ニーガン)」となる。 さらに領地を統治する「按司(アジ)」の妹は、その領地の祭事の司祭である「ノロ」となる。 そして「国王」とノロの最高位の「聞得大君」もまた、完結した宇宙であるえけりとをなりの強固な関係で結ばれていた。 これは、をなり神の持つ霊的守護力の概念が、王国において兄から家族、家族から集落、 集落から地域、地域から王国へと拡張し、拡大解釈されていったということでもある。 ・国王「尚宣威」が高級神女により罷免され、尚円王の子「尚真王」が王位を継承したという伝承もあり、 一時期は王のおなり神であるノロの方が国王より強大な権力を持っていたと考えられている。 しかし「尚真王」の時代に「聞得大君」職が設置され、この権力構造は国王優位に改められることとなった。 ・その後、薩摩の侵入を受けて以後、近代化を進める「羽地朝秀」「祭温」らの改革によって、 おなり神信仰を核とする古代的な神権政治の色彩は段階的に弱体化され、解体されていった。 ・ヲナリ神の信仰は琉球宗教の基本概念の1つとなっており、 「おもろさうし」の中にも「ヲナリ神」を詠ったおもろが数多く見られる。 ・琉球においては、政治的実権者とその姉妹から選ばれた巫女による 祭政一致の政教二重主権が見られるが、これは「ヲナリ神」の信仰に基礎付けられたものである。 ・ヲナリ神信仰は他の民族では既に見られなくなったが、 古くは何れの民族もかかる信仰を持っていたのではなかろうか、と鳥越憲三郎は述べている。 ユタ ・沖縄県と鹿児島県奄美群島の民間霊媒師(シャーマン)であり、 霊的問題のアドバイス、解決を生業とする。 ・殆どが女性で、男性も若干存在する。 ・「ノロ」「ニーガン」「神人」は、主として「御嶽」「グスク」等の聖地や 「御願所」「拝所」において「部落や村落の公的祭祀」や「共同体の祈願行事の司祭」をするのに対し、 「ユタ」などは「部落や村落の個々の家や家族に関する運勢(ウンチ)」 「吉凶の判断(ハンジ)」「禍厄の除災(ハレー)」「病気の平癒祈願(ウグヮン)」など 「私的な呪術信仰的領域」に関与しているという役割を持つ。 ・「神人」が聖地の司祭をするにあたり「死穢や婦人の血の忌み、出産の不浄を忌避する」のに対して、 「ユタ」は全く反対に「死者儀礼や死霊供養に密着」して、 その性格、生態、機能など多くの点で際立った対比を示しているが、 両者とも沖縄民間信仰の底辺を貫流するシャマニズムの根の上に立ち、 沖縄の民間信仰を支える車の両輪と言える、と桜井徳太郎は述べている。 ・ユタは弾圧の歴史により、その身分を隠して自身ではユタと言う称号を用いず、 また他人からそう呼ばれることに対し反感を抱く。 このため「神人(カミンチュ)」「御願者(ウグヮンサー)」「御願を捧げる人(ウグヮンウサギヤー)」 「判断(ハンジ)」など神に仕えることを表す名称を好み、 また「祭祀・巫儀・卜占」の区別が曖昧になってきている状況を受け、 侮蔑的語感を伴うユタと言う名称より易者を意味する「三人相(サンジンゾー)」や 風水を判断する「風水師(フンシー)」などの称号を用いる者もいる。 ・琉球史辞典では「ユタ」の語源を「おしゃべり(ユンタ)」あるいは 神がかりのときに体が「ユタめく(揺れる)」ことから名付けられたのではないかと述べている。 ・ユタと言う職業はどの様に成立したのか、諸説あり断定されていないが、 「神人(カミンチュ)から分化した」という考えが多いようである。 ・伊波普猷は、神託を宣伝するべき神人の中に、その様な力を持っていない名義ばかりの者がおり、 これらにかわって神託を宣伝する者が民間に出て、とうとう職業とするようになったのが 「トキ」または「ユタ」と称するものであると述べ、「ユタが神人から分化した」との考えを示した。 また、「ユタ」という語と「ユンタ(しゃべる)」という語との間には 内容上の関係があるかもしれないとも述べている。 ・桜井徳太郎は、部落共同体のシャーマンであった「祝女」や「根神」が 中央集権的琉球王府の官僚的祭司体制に編入される際に、 公共祭祀以外の宗教的機能を担った呪術的宗教者が現れたとし、 そうしたアウトローの呪術的宗教者は地域社会の民間信仰といっそう密着しながら、 在地性を発揮して民衆の要望に応えることになった。 そして終に官僚化した司祭者「祝女」と袂を分かったのだと述べている。 ・佐々木宏幹によると、沖縄本島においては、「シマ」あるいは「マキヨ」と呼ばれる村ごとに 総本家となる「根所(ニイドゥクル)」があり、その主人は「根人(ニンチュ・ニーッチュ)」、 姉妹は「根神(ニーガン)」と言われ、神がかりして村落の人々に生活指針を与えた。 やがて、8~9世紀になると「按司(アンジ)」が村々を併合し、 郡程度の領域を統治するようになったが、彼の姉妹や妻は「祝女(ノロ)」と呼ばれ、 やはり神がかりして領域内の人々に生活指針を与えた。 これらシャーマニックな女性の活動なくしては根人や按司の統治も完全足りえなかったが、 後代になると国家統一と中央集権化に伴って「根神」や「祝女」はシャーマン的性格を失って司祭化し、 シャーマン的機能は「ユタ」に移っていた、のだという。 ・ユタは、入巫や成巫の過程で創出した特殊な神を奉じ、 それが生涯にわたる守護神として信仰の対象となる。 ・ユタはこの神霊の名において精霊の世界の1分野に即応する巫儀の執行者となる。 言い換えればユタごとに、それぞれ管掌する専門領域が限定され、 先祖の系統を捜すのが得意なユタ、死んで間もない人についての判断(ハンジ)が得意なユタなど、 その専門分野が分かれている。 ・ユタは神の存在と力能を強調するが、その構成内容は神道の神であったり、 十二支の神であったり、祖霊、死霊、精霊であったりする。 ・ユタは自らに憑依する霊的存在が祖霊・死霊・精霊のいずれであるかは重視しないと言う 超自然観を持つが、神観念の曖昧性がその影響度を低下させることもないようである。 ・戒律はなく教義もないため、婚姻の有無や処女性なども問われない。 ユタは公的な祭事は行わないが神に仕えており、御嶽を巡って神と交信し、霊障や病気、 冠婚葬祭などの問題を中心に助言を行い、加えて公徳心や道徳心を説くことが多い。 ・本物のユタが能力を発揮するとき、右脳が通常では考えられない異常な状態になることがわかっている。 具体的には、論理的な言葉を話すときに活性化すると言われている左脳がほとんど活動を止め、 逆に右脳が活性化して論理的な言葉を発している状態になる。この原因は解明されていない。 ノロ(祝女) ・「ヌール」「ヌル」とも発音される。 ・沖縄県と鹿児島県奄美群島の琉球の信仰における女司祭、神官、巫(かんなぎ)、神女。 ・御嶽などにおいて部落や村落の公的祭祀や共同体の祈願行事の司祭を行い、 地域の祭祀をとりしきり、御嶽を管理する。 ・民間の巫女である「ユタ」とは異なる。 ・琉球王国の第二尚氏王朝の第三代国王尚真王時代に制定された神職。 ・宗教概念上、ノロは海の彼方の「ニライカナイ」と 天空の「オボツカグラ」に住む琉球の神々と、交信することのできる存在であある。 ・祭祀の間はその身に神を憑依し、神そのものになる存在とされている。 ・ノロは、しばしば「巫女」と訳されるが、現在の本土の神道の巫女の職掌と異なり、 「司祭」そのものである(本土の巫女も元々はノロと同様の存在であったと考えられている)。 ・民俗学では「祝女」の当て字がされるが、 これは男の巫を意味する「祝(はふり)」の女という表意になる。 ・これはノロの性格が本土でいう巫女よりも男性神職に近いためであろう。 ・神と交信し、神を憑依させることができるのは女性に限定されているため、 神官であるノロはすべて女性である。 ・現在、ノロのほとんどすべてが年配の女性もしくは老女であるが、 王国時代にはノロの婚礼といった記録もある。 ・ノロは原則として世襲制で、「ノロ殿地(どぅんち)」と呼ばれる家系から出る。 これらの多くは、琉球王国時代に王府より任命されたもので、 元々は各地域の有力「按司(あじ)」の肉親(姉、妹、妻など)と考えられている。 これは、琉球の信仰の背景にある「おなり神信仰」に由来すると考えられる。 ・新たなノロの就任に当たっては、それぞれの地域で認証儀礼が設けられているケースが確認できる。 「久高島」の「イザイホー」に代表され、12年に一度行われる就任儀礼である。 久高島で生まれ育った三十歳以上の既婚女性は神女となり、基本的にその要件を満たす全ての女性がこの儀礼を通過する。 「ニルヤカナヤ(ニライカナイ)」からの「来訪神」を迎え、新しい神女をその神々に認証してもらい、島から去る来訪神を送る。 史料に記録される限り八百年以上の歴史を持ち、「来訪神信仰の儀礼」として日本の祭祀の原型を留めているとされる。 ・ユタのように、「カンダーリィ(神垂れ)」と呼ばれる原因不明の体調不良といった 巫病、夢の啓示などにより、ノロに選ばれる例もみられる。 ・王国時代には、ノロの任命継承が不予などにより順当に行われなかった場合に、 そうした形で近親者から後継者が選ばれた例がある。 ・現在の「久高島」では、こうした霊感の強い人物「サーダカ・サーダカウマリ」を 断絶したノロの後継者として選ぶということが行われている。 ・ノロは原則として終生職であるが、現在の「久高島」では、 久高ノロと外間ノロ以外の神人には引退儀礼がある(08年現在、両ノロは存在しない)。 ・三代後(祖母から孫娘)に霊格である「霊威(セジ)」が引き継がれると考えられている。 ・ノロは豊穣を願い、災厄を払い、祖先を迎え、豊穣を祝うといった時期ごとにある 数多くの祭祀を行うことと、その祭祀において神を憑依させる依代となることが存在意義である。 これといった戒律や教典はなく、大衆に啓蒙すべき神の教えといったものもない。 ・偶像崇拝はしない。 ・ノロに決まった服装はないが、「琉装もしくは和装の着流しの白装束」であることが多い。 ・また「草の冠(神カムリ)などの草装」も見られ、 そうした異形の装束は神が憑依していることを意味している。 これは世界の各地のアニミズムで共通してみられる特徴である。 ・装身具として「勾玉」を身に着けることも多く、霊力を持つとされる。 ・特に処女性は問われないが、既婚か独身か、年齢要件などは現在も確認される。 ・王国最高位のノロである「聞得大君」の2代目までが生涯独身であったことや、 聞得大君以前からの由緒あるノロである阿応理屋恵職が生涯独身だったという記録もあり、 原始的には処女性が要求されたと考える説もある。 ・琉球では、村落は守護神となる氏祖が祀られた御嶽を中心に形成されたが、 その最も近き血縁者にして神の代弁者である家が「根所(ニードゥクル)」と呼ばれ、 村を支配指導する実権を掌握した。 ・根所は御嶽の神の代弁者として実権を代行する機関となったため、 神託を受ける者と、その神託によって村を治める者が必要になった。 ・この時、神託を受けたのは根所の女子から選ばれた「根神(ニーガン)」で、 神託をもとに政治的実権を行使したのは 根神の兄弟であり根所の戸主である「根人(ニーチュ)」であった。 ここに「妹・姉」の神託をもとに「兄・弟」が治める政教二重主権が生まれた。 この政教二重主権はヲナリ神信仰を基定として成立したと考えられる。 ・やがて村々を併合した「按司」と呼ばれる地方的実権者が現れるようになるが、 按司もまた彼の姉妹から宗教的実権者たる巫女を選出、これが「ノロ」である。 あるいは尊称を付して「ノロクモイ」と呼ばれた。 ・さらに時代が進むと地方実権者の1つである「中山国」により琉球統一がおこなわれ、 その中央集権化政策によって、ノロは「聞得大君」を頂点とした 官僚的神官組織に組み込まれることとなる。 ・琉球王国は、第一尚氏王統のときにすでに、首里の「佐司笠・差笠(さすかさ)」という祭司と、 国頭地方由来の「阿応理屋恵(煽りやへ・オーレー)」という祭司を最高位とする 祭政一致を行ってはいたが、当時はまだ各地域の神女体制は階層化されていなかったとされる。 ・第二尚氏王朝の尚真王の治世に、全国の神女体制を整理し、 琉球の信仰と統治機構を一体化した全国的な祭政一致体制を確立した。 ・「ノロ」という呼称はそのときに神職の正式名称として制定されたものだが、 祭祀制度そのものはそのとき初めて制定されたものではなく、 以前から各地域に女司祭がおり、各地域の祭祀を司っていたと考えられている。 ・尚真王はすでにあったこれらを整備し、中央集権的に階層化したのである。 ・ノロにあたる女司祭を、八重山では「ツカサ(司・神と同義)」と呼称する。 ・これら神職者は総称として便宜上「神女」と通称される。 ・「聞得大君(きこえおおぎみ・きこえのおおきみ・チフィジン)」は、琉球神道における最高神女(ノロ)である。 尚真王代に「高級神女三十三君」と「全国のノロ」の頂点として制定され、ノロへの命令権限を持った。 ・「聞得」は大君の美称辞で、「君」は「カミ」の意で、従って「大君」は「君の最高者」という意味であるという説がある。 琉球方言で「聞得大君加那志(チフィウフジンガナシ)」と称し、「とよむせだかこ(名高き霊力溢れる君)」の異名を持つ。 宗教上の固有名詞となる神名は「しませんこ あけしの」「てだしろ(太陽の依代)」である。 ・聞得大君は 主に「王家の女性(先代王の妻であることが多かった)」から選ばれ、原則として生涯職である。 琉球国王を守護する国王の「おなり神」であり、国王と王国全土を霊的に守護し、豊穣をもたらす神とされた。 初代の聞得大君は尚真王の妹である。 ・それまで、国王に仕える神女の権威は国王を上回るようになっており、尚真王の即位についても、 母オギヤカが高級神女と結託して謀略を巡らしただめだったという逸話も残っている。 ・国王と神官の権力関係は尚真王の時代に改められ、聞得大君職は権力として国王の下位に置かれている。 ・聞得大君は、王族の邸宅「御殿(うどぅん・おどん)」の神体である「御スジノ御前」「御火鉢ノ御前」 「金之美御スジノ御前」に仕え、「国家安泰」「海路安全」「五穀豊穣」などを祈願した。 ・首里には「聞得大君御殿(きこえおおきみうどぅん・沖縄県那覇市首里汀志良次町)」 「首里殿内(しゅりどぅんち)」「真壁殿内(まかべどぅんち)」「儀保殿内(ぎぼどぅんち)」の一本社三末社があった。 聞得大君御殿は、琉球各地にある「祝女殿内(ぬんどぅんち)」と呼ばれる末社を支配した。 ・聞得大君は 首里城内の十箇所の御嶽と斎場御嶽を掌管し、儀式を司った。 全国のノロたちを支配していたが、ノロへの任命辞令は国王から発せられていた。 これは制度的にはあくまで国王が神女組織を支配していたことを示すものと考えられている。 ・聞得大君の就任儀式は、斎場御嶽において「御新下り」が行われ、 この本質は「琉球の創造神との契りである聖婚(神婚)儀礼」と考えられている。 宗教観念上は、この聖婚により君手摩神の加護を得て、聞得大君としての霊力を身に宿すのである。 ・聞得大君の神名「しませんこ あけしの」は、国頭地方勢理客の御嶽の神名で、既存の祝女職と同じであることが判明している。 聞得大君職の元になった宗教概念が以前から存在したと考えられるが、その詳細については不明な点がある。 また「てだしろ」はそれまで「馬天祝女の神名」であったが、聞得大君職の制定とともに馬天祝女から剥奪された。 ・それまでの琉球王国における祝女の最高位は、「佐司笠(差笠・さすかさ)」職と、 国頭地方由来の「阿応理屋恵(あおりやへ/ 又は"煽りやへ・オーレー)」職であり、 これらは聞得大君職制定のあと、全祝女の中で聞得大君に継ぐ第二位の格付けと降格されている。 ・聞得大君の下には、「阿応理屋恵」「佐司笠」などの「君」や、 首里の「三間切(三平等・みふぃら)」をそれぞれ掌管する、三人の「大阿母志良礼(おおあもしられ)」がいた。 その下に各地方を統括する「大阿母」たち、 更にその下に各地域の祭祀を管轄する「祝女」を配するヒエラルキーを形成していた。 ・高級神女たちを総じて「三十三君」と呼んでいた (三十三君については、三十三人ではなく「三十三」は「百」のように「大勢」ほどの意味とする説が有力)。 そのほとんどは首里に在住し、王家となんらかの血縁関係にあったと考えられている。 ・当時のノロは領地を認められた一種の地方大名だった。 また、犯罪などの問題があった場合に、一種の神聖裁判を行った記録もあり、 信仰を背景に地域自治にも大きな権能を有していたことが推察される。 ・琉球王国は戦闘の際に神女を派遣して、呪詛を行わせた。 これには「航海安全」「必勝祈願」「戦闘前に呪詛で敵方の戦意をくじく」という目的があった。 沖縄には「女は戦いの先駆け(イナグヤ イクサヌ サチバイ)」という言葉がある。 明応九年(1500)の石垣島での「オヤケアカハチの乱」では、各島から神女を集め兵隊と共に派遣した。 オヤケアカハチ側にも神女は多数いて、王府の船団を前にして木の枝などを振り回して呪詛した。 ・この神女体制は17世紀中ごろ形骸化し、ほとんどの高級神女職は1600年間に廃職された ちなみに、この時期に残った三十三君は今帰仁の阿応理屋恵(一度廃職後18世紀に復活。現在廃職)、 伊平屋の大阿母(昭和6年廃職)、久米島の君南風の三職のみで、 いずれも首里に上がらない地方在住のノロである。 ・後も各地域のノロ職は存続を続け、多くが現在まで各地域に残っている。 ・聞得大君職は王国滅亡後も長く存続し、太平洋戦争中の1944年に就任した 第18代・思戸金翁主を最後に、大戦後に廃職となっている。 ・現在、三十三君にあたる高級神女では、久米島の「君南風(チンペー)」職が 久米島最高位の祝女として存続している。 ・嘗て日本本土に「呪師(ノロンジ)」と呼ばれる職能の人々がいて、 社寺に帰属、祀りや芸能に携わり、「猿楽」「田楽」の起源に関わっているという。 一説に、ノロとノロンジは類似の起源だという。 御嶽(うたき) ・琉球王国(第二尚氏王朝)が制定した琉球の信仰における聖域の総称で、 それ以前はさまざまな呼び名が各地方にあった。 ・「うたき」の呼称は、主に沖縄本島とその周辺の島々で発声される。 沖縄諸島では「御嶽(うたき・うがん)」「腰当森(くさてむい)」「拝み山」「城(ぐすく)」、 宮古地方では「御嶽(うたき・おたけ・すく)」、 八重山地方では「御嶽(おん・おたき)」「山(やま)」「嶽(たき)」「杜(むる)」、 奄美地方では「拝み山」と呼称するが、近年では「うたき」への傾倒がみられる。 ・御嶽は「琉球の神話の神が存在、あるいは来訪する場所」、また「祖先神を祀る場」でもある。 ・「地域の祭祀においては中心となる施設」であり、「聖林」となっていて、 琉球の村落に必ず存在、地域を守護する聖域として現在も多くの信仰を集めている。 ・琉球王国時代の古い集落については、おおむね集落ごとに1箇所以上の御嶽があると考えてよい。 当時から現在にわたって存在する集落の場合は、御嶽もまた残っていると考えられる。 ・「腰当森」の意は「腰当のように、孫を抱いている場」だという。 ・御嶽に祀られる御祭神は、「村落の祖霊神」「英雄神」「ニライカナイの神」「竜宮神」などであったりする。 ・御祭神が「村落の構成員と血縁関係を持つ氏祖」の場合、 村落構成員に対し絶対的守護の義務を負っている。 ・琉球の信仰では神に仕えるのは女性とされるため、琉球王国時代は完全に男子禁制だった。 現在でも、その多くが一定区域までしか男性の進入を認めていない。 氏子にあたる「山人数(やまにんじゅ)」という祭祀集団は中に入れるが、 「イベ・イビ(威部)」までには入れない。 ・多くの御嶽は、古代において「集団墓地」であったとする有力説がある。 御嶽には「葬所」がある場所が多く、祖霊を祀る場である事が多いことによる。 沖縄の葬法は、遺体を腐らせて骨にして、骨を納骨器に入れて墓に納める「二重葬」が一般的で、 「遺体を骨化させる風葬所」「骨を納める墓」の双方を「葬所」と呼ぶ。 ・御嶽の多くは「森の空間」や「泉」や「川」などで、「島そのもの」であることもある。 ・御嶽は「山(嶽・嶺)の頂上」「丘陵の頂上」にある事も多い。 ・本来、御嶽には「社(やしろ)」などの人工物はなく、「自然物(岩石・植物など」を礼拝していた。 ・御嶽の域内で枯れ木を採ったりするのはタブーの場所もあるという。 ・御嶽の構造は、次のようになっている。 ・神域は森に囲まれていて、「御嶽林」とも呼ぶ。 ・「神の依り代」である「クバ」や、 「天からの梯子」と言われるヤシ科の「マーニ・マニン(クロツグ)」などの木が生い茂っている。 ・入り口に「鳥居」がある御嶽と、無い御嶽がある。 ・その先に、神を迎え入れ祭祀を行う「殿(とぅん)」や、 奉納芸能を行う広場「神あしゃぎ」がある。 ・大きな御嶽では「神あしゃぎ(神あさぎ・神あしあげ・神軒)」や「神庭(みやあ)」と呼ばれる 「前庭や建物」といった空間が設けられていることがある。 ・これは「御嶽の神を歓待して歌ったり踊ったりするための空間」「神が一休みする場」である。 ・八重山では「バンク」と呼ばれる、神あしゃぎの一角にしつらえられた桟敷がある。 ・旧暦八月十日前後の「豊年祭」で、「村芝居」と「八月遊び」などを行う。 元は木造茅葺だったが、現在は殆どが木造鉄板葺やコンクリートブロック造りである。 ・その奥に「御嶽家(おんやー)」、又は「拝殿」と呼ばれる「拝殿」がある。 ここからは裏側へ抜けられるようになっている。 ・裏側には小さな庭があり、その奥に「威部の前(いびまぬい・いぶぬめー)」と呼ばれる門がある。 ・一番奥に、「石碑」「石祠」「石組みの構造物」などの形状の 「イベ・イビ・ウブ(威部)」石がある所があり、 又はその神域の空間を「イベ・イビ・ウブ(威部)」と呼ぶ。 ・周囲は「岩盤」「塚状の場所」となっている所もある。 ・神が降臨する「依代」であり、厳密な意味での「御神体」ではないが、 「御神体」として扱われている所も多い。 ・イベには「自然物」、大抵「自然石」「大木(クロツグやクバ)」が置かれていて、 「古墓」があったりして、根本か手前に「香炉」が置かれている。 ・ここは、特にイビの入り口の「いびぬまい」から先は、 祭祀を行う中心となる神人以外立ち入り禁止となっている。 ・「イベ」は、一般に「イベ(石)」「イビ(石)」と呼ばれる。 「琉球国由来記」などの表記では「イベ」、沖縄では「イビ」、八重山では「ウブ」と呼ぶ村が多い。 宮古では「イビ」が通例で、「イビシ」の例もある。 沖縄本島で「イビガナシ」と呼ばれる例もあり、「奄美群島」でも類似の物が「イビガナシ(イビガナス)」と呼ばれる。 ・「イビ」の語源について仲原善忠は「忌み避ける場所」の意と解釈している。 ・沖縄本島の「五月ウマチー(稲の初穂祭り)」には、「イビヌメーから御嶽の裾まわりに帯綱を張り巡らす」例がある。 ・宮古では「御嶽の一角に立てられた神石」や「屋敷神を祀る石」を、「イビ(イビシ)」という。 ・奄美群島の徳之島には、「寄り石」と伝えられている石を 「イビガナシ(イビガナス)」として祀っている例がある。 ・奄美群島の瀬戸内町(加計呂麻島・与路島・請島)には、 「イビガナシ」と呼ばれる「神石」を祀る例がある。 ・「神あしゃぎ(神あさぎ・神あしあげ」は、奄美諸島・トカラ列島では「あしゃげ」と呼ぶ。 ・沖縄本島南部では、民家に「アシャギ」があり、客人をもてなす所である。 ・語源は、「神あしあげ(神が足をあげる場=腰を下ろす場)」や、 折口信夫や伊波普猷は、古事記に見える 「足一騰宮(一柱騰宮・あしひとつあがりのみや)」としている。 ・「足一騰宮」は、初代「神武天皇(じんむ)」が天皇即位前の 「神倭伊波礼毘古命(かむやまといわれひこのみこと」という名のの時代に、 日向(宮崎県)の「高千穂」から東征へ向かう経路において、最初に寄った場所である。 ・舟軍を率いて筑紫(福岡県)へ向かい、 豊国の宇沙(うさ・大分県宇佐市)に着くと、 「菟狭国造(うさくにのみやつこ)」の祖 「宇沙都比古(うさつひこ)」「宇沙都比賣(うさつひめ)」が 「行宮(あんぐう・仮宮)」の「足一騰宮」を作って、 「大御饗(おおみあえ・大宴会)」でもてなした。 ・「宇佐」は「海人族の重要拠点」であり、 「宇佐神宮(大分県宇佐市)」は「八幡信仰の総本宮」として、 古代に朝廷から最も崇敬された神社の一社である。 ・宮古・八重山地方にも、宗家に「神あしゃげ」があったという。 類似した物に、「アサイ」という前の屋、 神祝い(カンヨイ)という神事に造られる「苫屋(トウマヤー)」がある。 ・宮古や八重山地方では「過去に実在したノロの墓」を御嶽とし、 そのノロ「を地域の守護神」として祭っていることが多く見られる。 ・御嶽は、日本本土に見られる「神社の原初的形態」である 「神籬(ひもろぎ)」の形式を伝えるものである。 ・折口信夫は「御嶽は元々、天の遥拝所であり、後に神の降誕地という姿をとるようになった」としている。 ・鳥居が設置されている御嶽が散見されるが、これは明治維新から 琉球処分以降の「皇民化政策」による神道施設化の結果であり、本来のものではない。 ・沖縄本島では戦後、鳥居が撤去された御嶽も多いが、 宮古や八重山地方の御嶽の多くには戦後もそのまま鳥居が残されている。 ・御嶽はもともと「古代社会において集落があった場所」 「御嶽を中心に集落が形成された」と考える説が有力である。 その証左として、御嶽の近くから遺骨が見つかる例が少なくない。 これは「祖先崇拝であること」に強く関係していると考えられる。 ・「多くの川や泉」が「御嶽もしくはそれと同格の扱い」をされているが、 これは保水力の乏しい琉球石灰岩からなる沖縄県周辺の土地性などから、 古代社会では水源が神聖視されたためと考えられる。 ・鳥越憲三郎は、琉球の村落成立の重要な因子として、 生活資料が確保できるかの経済的条件、気候や住環境の良し悪しの自然的条件、 御嶽を創立する場所が選定できるか否かの宗教的条件の3つをあげ、 村落成立にはこの3つが満たされる必要があったと述べている。 ・仲松弥秀は、御嶽の神と村人の関係は、祖霊神とその後裔の血縁関係であり、 御嶽の神が村人を守る形で村落が形成されているとする「オソイ(愛護)とクサティ(腰当)」の理論を展開した。 ・琉球では偶像崇拝はせず、集落ごとに祖霊神や来訪神が訪れる自然の聖域である 御嶽を拝所として設け、神の来訪を祝う神事としての祭りを行い、安全や豊作を祈願したり感謝する。 ・「城(しろ)」を意味する「城(グスク・グシク)」は、三山時代に築かれ、「王や按司の居城」となっていた。 ・グスクには「御嶽・拝所が存在するもの」も多く、「古いグスクには必ず御嶽がある」と言い、 「首里城」「玉城城」など、グスクそのものが御嶽とみなされていたグスクもある。 政治的な意味合いが強く、軍事目的に利用されなかったグスクもある。 ・このことから「グスクは、御嶽を中心にした集落であったものが発展し、城砦化した」というのが有力説である。 ・グスクは丘陵頂上に築かれたが、頂上の岩を「イベ・イビ(威部)」としていたり、 頂上部が聖域として、御嶽となっている物が多い。 ここから「御嶽は元々、山岳信仰・磐座祭祀・自然信仰の場であった」とする見方がある。 ・著名な「斎場御嶽」「園比屋武御嶽」のように観光資源化している御嶽もあるが、 それはどちらかといえば稀な例であり、多くの御嶽は、 現在も地域の人々(女性)や、そこを管理するノロによって管理されている。 ・御嶽はほぼ年間を通してたびたび行われる地域の様々な祭事の中心となるばかりでなく、 「東御廻り(あがりうまーい)」や「今帰仁上り(なきじんぬぶい)」などの巡礼地として崇められているものもある。 ・「東御廻り(あがりうまーい)」は、琉球民族の祖「アマミキヨ族が渡来し、住みついたと伝えられる 「知念・玉城の聖地を巡拝する神拝の行事」で、後に「琉球国王や聞得大君の聖地巡拝の行事」となり、これを今に伝える。 「首里城」を中心に、「大里・佐敷・知念・玉城の各間切」を「東四間切」または「東方(あがりか)」ということから、 「知念・玉城の拝所巡礼」を「〈東廻り」と称した ・戦争、米軍による土地接収、発掘調査や開発にともない、立入が禁止または制限されたり、破壊された御嶽もある。 ・一例として、首里城敷地内にあった十御嶽のいくつかは、 かつては現在の首里城再建以前には信仰者が来訪することができたが、 同城の再建などの整備にともない立入の制限または有料観覧区域となったり、埋め立てられるなどした地域がある。 拝所(うがんじゅ・うがん・をがん) ・「御願所(ウガンジュ・ウグヮンジョ)」ともいう。 ・「ウガミ(沖縄北部)」「ウガミヤマ(拝み山・奄美)」より転化した語。 ・八重山では「オガミ」が「オン(ワン・ワー)」ともなる。 ・民間では「ウガン」「森(ムイ)」「ヤマ」が普通使われる。 ・沖縄地方で「神霊が依りつく聖域」で、その前で人は拝む。 ・御嶽より小さく、拝む人の範囲も限られる。 ・拝む場所で種々の場合がある。 一般的には「森」などにあり、「高い樹木の下」の場合や 「石(サンゴなどの)」が置かれている場合も、「コンクリートの構造物」を作っている場合もある。 ・「神がたどり着いたとされる岬」なども指す。 ・元は「墓地」であった場所が多く、「ガマ(洞窟)や崖の古墓」が拝所である事例が多い。 ・神聖な場所で、神社も拝所にはいる。 ・共同で拝む場所として、色々な施設、小学校や中学校、高校にも拝所がある場合があるが、 文科省では、それを宗教施設とは考えていない。 ・宮古島では個人の神様即ち、個人の守護神の場合がある。 「まうがん」といい、拝所も一人一人異なる。 ビジュル信仰 ・ビジュルは「主に沖縄本島でみられる霊石・石神信仰」である。 ・「豊年祈願・五穀豊穣」「豊漁祈願」「雨乞い」「子宝祈願・子孫繁栄」「子供の成長」 「健康祈願」「航海安全」「天災回避」「夫婦円満・家内安全」「商売繁盛」「良縁成就」など、 各種の祈願がされる。 ・十六羅漢の一つの賓頭盧(びんずる)がなまった言い方。 「ビジュル」のほかに、古語としての「ビンジル」はじめ、 「ビンジリ」「ビジリ」「ビンジュル」「ビジュン」とも呼称されている。 ・多くは「人の形(ダルマ形)をした自然石」で、 大きさはさまざまで15センチほどのものから、1メートルくらいである。 ・「ティラ」と呼ばれる「洞穴・石祠・神殿」などで祀られている。 ・しかし近年は、集落はずれの林にポツンと残されたビジュルもある。 ・ビジュル信仰は各地にあって、確認されているだけでも120個体は下らないとされている。 ・ビジュルの由来憚は、場所により多少の差はあるが、大抵は漂着に由来する。 「海岸に漂着した石に神が乗り移っている」として祀られるようになったという伝説が多く、 ニライカナイ信仰とも結びついている。 土の上から出現したとする伝承もある。 ビロウ(沖縄名:クバ) ・漢字表記は「枇榔」「檳榔」、別名「蒲葵(ホキ)」、 沖縄名は「クバ」で、「コバ」「クボウ」「フボウ」「コボウ」などとも呼ぶ。 古名は「阿遅摩佐・阿知末佐(アヂマサ)」。 ・ビロウの名は「ビンロウ(檳榔)」と混同されたものと思われるが、ビンロウとは別種である。 ・ヤシ科の常緑高木。 ・幹は通常が高さ3~10m、高いもので15mほどに成長、「シュロ」よりも太く直立する。 ・葉は掌状に広がり、2mほどにもなり、丈夫である。 ワシントンヤシにも似るが、葉先が細かく裂けて垂れ下がるのが特徴である。 ・沖縄などでの用途 ・庭木・街路樹 ・葉や幹は工芸品や民具などに使用されることが多い。 葉は扇や笠、柄杓、屋根に葺くなど、嘗ては「サバニ(舟)」の帆に使われた。 幹は床材になる。 ・若芽を食用にする、クバ餅など。 ・沖縄市の市の木である。 ・東アジアの亜熱帯の「南西諸島」「九州と四国南部」「小笠原諸島」 「中国南部」「台湾」の海岸付近に自生し、北限は「沖ノ島(福岡県宗像市)」。 ・ビロウにちなむ地名として、「枇榔島(びろうじま・宮崎県門川町・鹿児島県志布志市・南大隅町)」 「蒲葵島(びろうじま・高知県大月町)」、「大築島(熊本県八代市)」の別名「檳榔島(ビロウジマ・ビンロウジマ)」などがある。 ・青島神社(宮崎県宮崎市) ・全島が境内地の「青島」を霊域と崇める、海洋信仰の神社。 ・青島には熱帯・亜熱帯植物や、北半球最北のヤシ科植物の群生地が広がり、ビロウの木が生い茂る。 島周囲の海岸に名勝「鬼の洗濯板」が広がる。 ・御祭神は「天津日高彦火火出見命(あまつひだかひこほほでみのみこと)」、 妃神「豊玉姫命(とよたまひめのみこと)」、「塩筒大神(しおづつのおおかみ)」。 ・社伝によれば、「山幸海幸」神話で、「彦火火出見命(山幸彦)」が「海神宮(わたつみのみや)」から 帰還した際に、青島に上陸して宮を営んだため、その宮跡に命と上記二柱の神を祀ったと伝わる。 ・近隣の「松添貝塚」は、縄文時代後期から晩期にかけての貝塚で。 「加工されたクジラの骨」「多種の魚骨・貝殻」などが出土、「装飾を施した骨針」は海の信仰を伺わせる。 ・日向国(宮崎県)は「山幸海幸」神話が濃厚に伝わる(後述)。 ・日本神話で、第十一代「垂仁天皇(すいにん)」の皇子「本牟智和気命(ほむちわけのみこと)」は、 唖を治す為に出雲に行き「檳榔長穂宮(出雲にゆき「檳榔長穂宮(あぢまさながほのみや)」に住んだ。 その地は、出雲国二宮「佐太神社(さだ・島根県松江市)」とも、「富能加神社(ほのか・島根県出雲市)」とも言う。 ・「淡島 自凝(おのごろ)島 檳榔(あぢまさ)の島も見ゆ 放(さき)つ島も見ゆ(古事記・仁徳天皇御製)」 ・古代天皇制においては松竹梅よりも、何よりも神聖視された植物で、 公卿(上級貴族)に許された「檳榔毛(びろうげ)の車(=牛車)」の屋根材にも用いられた。 「檳榔毛の車」は、平安時代では貴族の一般的な乗り物であった。 移動のための機能性よりも、使用者の権威を示すことが求められ、重厚な造りや華やかな装飾性が優先された。 金銀の装飾を施すなど華麗という以上に奢侈に流れる弊害のために、寛平六年(894に、一時乗車が禁止されたこともある。 ・天皇の代替わり式の性質を持つ「大嘗祭」においては、 現在でも天皇が行う「百子帳(ひゃくしちょう・禊祓の為に籠る仮屋)」の屋根材として用いられている。 「百子帳」は「ビロウの別名」とも言い、また「蒲葵の葉」が用いられも下。 ・「笠」にもビロウが使われ、また「弓・矢」に用いる事もあった。 ・平安時代の宮廷ではビロウの葉で作られた「扇」が珍重され、また、祭りの時にビロウの「扇」が用いられた。 ・後に、本土ではクバの木や葉の入手が困難なため、 模造として「桧扇」が作られ、「紙扇」となって、祭具などに用いた。 ・「修験道(神道と仏教が習合した山岳信仰)」の「修験者」が、峰入りの際に蛇や災厄よけとして腰にさし、 護摩焚きの際に用いる「簠簋扇(ほきせん)」も、原型は「蒲葵扇(ほきせん)」だったと考えられている。 ・民俗学の折口信夫はビロウに「扇の原型」を見ており、その文化的意味は大きい。 扇は風に関する「呪具」であったからである。 折口は、クバを念頭に置きながら、琉球諸島を巡っている。 ・九州に多い「コバ(古場・古庭・木場・木庭・木葉・小場)」という地名と関連付ける見方がある。 ・沖縄では「クバの木」は「神の依り代」であり、「御嶽などの聖地」を取り囲む森林域に生えている。 その理由は、クバの木は樹高が高いので、神が「あふり(天降り・降り立つ)」するのだと言う。 ・沖縄では「世の始まり」を「クバヌファユー(クバの葉世)」と言って、 そこでは男も女もクバの葉で作った衣を腰にまとっていたと伝わる。 ・御嶽・拝所の御祭神として、「クバツカサ(蒲葵司)」という神名があったりする。 ・「琉球開闢七御嶽」のうちの、久高島の最高の聖地「クボー御嶽(フボー御嶽・沖縄県南城市知念)」と 「クボウ御嶽(沖縄県今帰仁村今帰仁グスク内)」は、「クバの木に由来する名称」である。 ・「久高島」は、嘗ては「クバ島」と呼ばれ、「神がクバの木を伝って降りてくる」という伝承があった。 ・「浜比嘉島(はまひがじま・沖縄県うるま市)」には「クバ島」と呼ばれる属島の小島があり、クバの木が生い茂る。 クバ島には貝塚時代後期末の祭祀遺跡とも言われる「比嘉クバ島遺跡」があり、土器や石器が出土した。 浜比嘉島には次のような伝承が伝わる。 ・「久高島」に降り立った「アマミチュー(アマミキヨ)」は、洞穴がなかったので「津堅島(つけんじま・沖縄県うるま市)」に渡った。 ・津堅島には水がなかった。 ・両方を求めて探してたら「浜比嘉島」の「シルミチュー(シネリキヨ)」に水と洞穴のある場所見つけた。 ・そこに住んだ「シルミチュー」は、近くの「クバ島」で「ウミチルー」という女の子を生んだ。 ・「ウミチルー」は十歳の頃、クバ島から海に投げ捨てられた(日本神話の「蛭子神(ひるこのかみ)」の伝承に類似)。 ・浜比嘉島には「アマミチュー・シルミチューが居住した洞窟・墓」と伝わる聖域がある。 ・「久場島(くばじま・沖縄県座間味村)」は、古書に「こはしま」「古場島」とある。 無人島だが、島内最高峰の「久場島の岳」には、古来「航海を司る神を祀る御嶽」があり、 現在でも「阿嘉島(あかじま・沖縄県座間味村)」の住民は久場島に度々訪れる。 ・「宮古島」には「クバの葉がイキイキと育っていれば島は安泰」という伝承がある。 沖縄・奄美群島の墓葬制 ・沖縄・奄美群島の墓葬制として、嘗ては「風葬」の特徴があった。 嘗ての本土日本では、一般民衆は墓を設けずに遺体は遺棄されたが(はふる)、これと共通するとも言う。 ・「琉球地方の風葬」には大きく分けて二通りの方法があった。 「特定の洞窟・山林に遺体を安置してそのまま共同の墓所とする方法(グソーに通じる)」 「亀甲墓や破風墓の中に棺を一定期間安置し、風化して白骨化した後に親族が洗骨を行い、改めて厨子甕に納める方法」である。 ・沖縄県では埋葬がなく本土の墓制との議論は難しい。 現在でも沖縄県の一部では、墓はただの納骨所として、祭祀の対象としていないところも存在する。 ・沖縄では、古来天然の「ガマ(洞窟)」や「岩陰」に遺体を運んで「風葬」にする習慣があった。 ・「掘込墓(ほりこみばか)」や「フィンチャー」と呼ばれる墓が、後に現れた。 斜面や岩盤に人工的に横穴を掘り、その入口を石積みや漆喰で塞ぐ形式の墓である。 これを古代「隼人」の墓とも言われる、宮崎県・鹿児島県の「地下式横穴墓」に由来するとの説がある。 ・「地下式横穴墓(ちかしきよこあなぼ)」は、地面に竪穴を掘り、そこから更に横穴を掘って地中に墓壙(玄室)をつくり、その中に被葬者を葬る墳墓である。 地上には何らの標示物もなく、田畑耕作や農地改良の際の偶然の発見が多かったが、最近では地中レーダー探査で発見されることもある。 日本最大級の古墳群「西都原古墳群(さいとばる・宮崎県西都市)」の十二基を北限に、一ツ瀬川、大淀川、川内川の各流域地帯や、 宮崎県中央内陸部から霧島山麓の諸県盆地にかけて分布しており、「宮崎県」側に約六百基、「鹿児島県」側で約百基が確認されている。 特に、県最西端の市「宮崎県えびの市」地域において、三百基以上が確認されている。 副葬品として、武具類が主に出土するが、ここから「地下式横穴墓=隼人の墓」というイメージが形成されたと思われる。 しかし、「地下式横穴墓の築造時期(5世紀前半後葉 - 7世紀初頭)」と「隼人の出現時期(7世紀末)」は一致せず、 現在では地下式横穴墓と隼人とは関係ないとする考え方が一般的である。 ・「破風墓(はふばか)」は沖縄特有の墓の形式の一種で、家屋同様の屋根があるもののうち、屋根が破風形のもの。 16世紀に現れ、「掘込墓」の正面を切石で装飾していて、通常三角形の屋根を持つ。 沖縄で最初の破風墓は「玉陵」である。 琉球王国時代を通じて王室以外の造成は許されなかった墓の形式だが、明治十二年(1879)以降に解禁され、一般に普及した。 家屋状墓のうち、破風墓でないものは「屋形墓」という。 ・「亀甲墓(かめこうばか・きっこうばか・カーミナクーバカ)」は、墓室の屋根が亀甲形をした沖縄県に多く見られる墓様式。 「掘込墓」の正面屋根を亀甲型に装飾した墓のことで、破風墓と外観は異なるが構造的にはよく似ている。 亀甲墓はこの墓の前部に祭祀を行うための「墓庭」を設けてその周りを「石牆(石垣)」で囲み、 墓庭の正面奥には複数の「蔵骨器(厨子甕)」を収めることができる墓室を設ける。 琉球王国時代は破風墓とともに士族のみに許された墓であったが、廃藩置県以後は庶民の間でも急速に普及した。 起源は中国南部から伝わった「唐墓(とうばか)」であると言われ、福建省や台湾には、亀甲形をした、亀甲墓によく似た形式の墓がある。 中国のそれは個人墓が主流である。 亀の甲羅状の屋根が覆う部分は、一説には「母の胎内」、そこから人が生まれてきた出生以前の胎内を意味していると言われる。 中国の易経の世界観では、人の一生が、誕生以前の漆黒の闇を黒冬とし、青春(青年期)、朱夏(壮年期前期)、 白秋(壮年期後期)を経て、老い衰えて目も見えず、耳も聞こえなくなると、再び死の闇に戻る。 これで一生の円環が閉じるのだが、この四つの季節に方位の東西南北が当てられ、それぞれを四聖獣が守護するといわれ、 北の玄冬(老年期)に充てられているのが、伝説上の亀の一種、玄武であることから、母体の中の闇の世界を亀の甲羅で覆ったのではないか、と考えられる。 ・宮古島・石垣島には「崖下墓」があり、宮古島市島尻には3つの郭がある 石組み、グスクで囲った大きな墓(長墓)があり多数の骨があるが、祭祀が行われたかは不明である。 ・宮古島地方では、沖縄本島から伝わる以前から「巨石墓(ミャーカ)」があり、風葬の代表的な例とされている。 屋根のない石囲いの中に遺体を葬るものであったが、後世風葬を嫌う考えが起こって屋根をかぶせるようになった。 「仲宗根豊見親」の墓のように、本島の横穴墓形式との折衷も見られる。 沖縄本島島尻地区、大神島にも風葬があり、昭和時代には洞窟などから遺骨が多数発見されたことがある。 ・久高島の「グソー(後生)」観は、墓地の入口を「新後生(ミーグソー)」と称して、そこを「生界と死界との境界」とする。 嘗て行われていた風葬では、風葬の行われる場所を「ティラバンタ(葬所)」といい、 「ティラ」は「ティダ」と同義で「太陽」の事、「バンタ」は「断崖絶壁」という意味である。 7年後の洗骨が終わると、死者は真の後生へ赴いて神へ昇化すると久しく観念していた。 ・「新後生」においては、死者は生前と同じ生活様式をとると考えられているため、 新後生の墓廓は現世の家屋と同じ形態を備えている。 ・沖縄では伝統的に個人墓はまれで、「門中墓」「家族墓」が主流である。 ・戦後は火葬の普及とともに、より小型の「家形墓」に人気が移っている。 沖縄では、本土にあるような「塔式墓(四角柱形の石の墓)」はあまり見られない。 先島諸島の祭祀 ・先島諸島は「オーストロネシア文化圏の北端にある」という解釈もされる。 「土着文化」「沖縄文化(琉球文化)」「本土日本文化」「オーストロネシア文化」「中国文化」の混在が見られる。 ・少なくとも4200年前より以前に、「台湾」「フィリピン」からの渡来人が定住したとされる。 しかしこの年代以降は、両地域の人種的な移動の形跡は見られない。 ・先史時代の「先島諸島(南部文化圏)」では、「石斧」「貝器」「土器」など、 「台湾」「フィリピン」との共通点が指摘される遺物が多く見つかっている。 ・「縄文文化」「弥生文化」の影響は殆ど見られない。 「日本本土」や「中国」との交易による物が出土しているが、それらの文化圏の影響は基本的になかったとされる。 ・先島諸島の先史時代は、「前期(~BC800)」「後期(BC800~AC1000)」に分かれる。 この間の年代には数百年の空白があり、後に「ポリネシア系」の人々がわたってきたとの説もある。 ・集落は、前期後期を通して、殆どが海岸に近い台地か海浜砂丘地にある。 ・前期は「下田原式土器(しもたばる)」が少量出土し、「半磨製石斧」が盛んに用いられた。 ・後期は、「土器」を用いず、「半磨製石斧」がやや大型化する。 「シャコガイ製貝斧」が使われ、これは太平洋諸島で見られる。 ・前期・後期ともに、「スイジガイの突起部の加工品」「サメの歯の骨角器」が共通する。 ・料理には、同様に無土器文化を持つ「ポリネシア」と同じく、石焼を多く用いたと考えられている。 ・「後期文化は別の文化集団が新たに渡来して展開した」「同一系統の集団によるもの」という二説がある。 ・記録としては、「続日本紀 和銅七年条(714)」に「信覚」「球美」などの人々が来朝したと記されており、 「信覚:石垣島」「球美:西表島か久米島?」とされる。 ・12~13世紀から集落が大規模化、「農耕」「鉄器」を基盤として、沖縄本島さらには北方との関係がみられるようになる。 「カムイヤキ(類須恵器)」「鍋形土器」「外耳の付いた深鍋形や壺形の土器」 「鉄鍋」「中国陶磁器」が出土する「集落やグスク」が、台地や丘の上に展開された。 ・この時代は、基本的に平和だったと見られている。 ・14世紀から15世紀に沖縄本島に興った琉球王国による海上交易の中継地として、次第にその影響圏に置かれた。 ・明応九年(1500)、石垣島の按司「オヤケアカハチ(オヤケ赤蜂)」が反旗を翻すと、 「尚真王」は征討軍を編成するが、宮古島の豪族「仲宗根豊見親」が先鋒となって 石垣島に上陸し、オヤケアカハチを討ち取った。 ・これによって先島のほぼ全域が琉球王国の支配下に入ったが、 与那国島では女首長「サンアイイソバ(サカイイソバ)」による独立状態がしばらく続いた。 ・この時代の琉球王国の先島諸島の統治は、緩やかなものであった。 ・慶長十四年(1609)、徳川幕府の了解を得た薩摩藩の島津氏による琉球王国に侵攻し、 服属した琉球王を徴税代理人として年貢を徴収した。 この為に、琉球王府は先島諸島に対して、重い「人頭税」を導入した。 ・琉球王国は「先島諸島」を勢力下に収めるたびに、この信仰をその地に広め、 現地に「ノロ」や「司(つかさ・八重山のノロ職名)」を置いている。 しかし基本的に間接統治であったため、現地の信仰の多くもそのままに残され、 御嶽のような形式がその地域の信仰に取り込まれていくこととなった。 ・ただし、王国と敵対した「オヤケアカハチ」が信仰していた 八重山地方の「イリキヤアマリ神信仰」のように、滅ぼされた信仰も存在する。 ・18世紀初頭、宮古の伝説をまとめた「御嶽由来記」において、下記が記された。 これは本土の日本神話と共通する物がある。 「宮古島」が島の形もなしていない太古、「天帝(あめのてだ)」が「天岩戸柱」の端を折り、 「弥久美神(やぐみのかみ)」に授け、「下界の風よからんところに島を造りなせ」と命じ、 「天の夜虹橋(あめのゆのづはず)」から下界の大海原に岩柱を投げさせ、固まったのが今の宮古島となった。 天帝は次いで赤土を下し、「古意角(こいつの)」神に「下界に降りて人の世を建てて守護神となれ」と命じたが、 古意角が「我に足らざる片つからだを賜え」、天帝「汝六根五躰を備う、また何の不足かあらん」、 古意角「すべて陽あれば陰あり、陰あれば必ず陽あり」との問答を経て、天帝はようやく古意角の願いを入れ、 女神の「姑依玉(こいたま)」の共を認めた。 古意角・姑依玉の両神は、豪勇の「盛加神(もりかのかみ)」を始めとした「八十神百神(やそかむももかむ)を連れて 天の夜虹橋を渡り、彼らは「漲水天久崎(ぴゃるみずあめくざき)」に宮居を定め、 「宗達(むにだる)」「嘉玉(かだま)」の男女児が生まれた。 また、島は赤土ばかりであったので、天帝が再度黒土を下し、宮古島は五穀が実るようになった。 十幾年かが過ぎ、宗達・嘉玉が大きくなった頃、天帝は葉を身にまとった「木装神(きそうのかみ)」という男神、 青草を身にまとった「草装神(ふさそうのかみ)なる女神を下した(後略)。 (「漲水天久崎」は岬だが、埋め立てられている。 西側に、琉球王国以前から信仰を集める「漲水御嶽(ぴゃるみず・沖縄県宮古島市平良)」が鎮座する) ・先島諸島における主な祭りとしては、 「大神御嶽(宮古島大神島)」を中心に行われる「祖神祭(ウヤガン)」、 「宮古島平良島尻」の「「パーントゥ・プナハ」と「宮古島上野野原」の「パーントゥ」、 「八重山全域」でみられる「アカマタ・クロマタ」、 「八重山地方」の「アンガマ」「ミルク(弥勒)」「フサマラー」 「石垣島群星御嶽(沖縄県石垣市川平)」で行われる「マユンガナシ」などがあげられる。 ・いずれも秘祭として部外者禁制を敷いているものが多い。 ・特に「ウヤガン」をのぞく祭りは、いずれも「異形の来訪神を迎える祭り」であり、 祭事には「来訪神に扮した(あるいは来訪神そのものとして)仮装で、集落を徘徊する」というような儀式がみられる。 ・これら異形の神々も、「ニライカナイと同じ概念の異界」から訪れるものと考えられている。 ・類似した祭礼は、「南西諸島」「東北地方北部」に多い。 「ナマハゲ(秋田)」「アマメハギ(能登)」「ナモミ(三陸)」「ヒガタタクリ(三陸)」「トシドン(鹿児島県甑島)」「ボセ(トカラ列島悪石島)」 ・宮古島狩俣(かりまた)の「ウヤガン」では、神女の「ツカサ」が、集落の中庭で何時間も神歌を歌う。 木の葉で作った冠をかぶり、白い麻の着物を着て、足元は裸足、祭りの前に何度も山篭りをする。 歌われる内容は「狩俣の地がどう造られたか」という創世神話である。 ・「マユンガナシ」は「精霊」で、旧暦九月の「節祭(せちえ)」に登場する。 クバの蓑を着て、手ぬぐいでほうかむりし、笠を被り、大きな杖を持ち、夜中中、村の家を回っていく。 「ムトゥ(本神)」と「トウム(供神)」が、「カンフツ(神口)」という神の言葉・祝言を唱え、繁栄・健康を祝福、家人は接待をする。 「マユ:豊かな真の世」「ガナシ:敬称」で、「真世の神様」というような意になる。 石垣島ではマユンガナシの登場を境にして「節」が改まるとされ、これを「初正月」と呼び、本土の研究者は「南島正月」と呼ぶ。 これは「古代日本の一年の区切りに合致する」という。 ・「アカマタ・クロマタ」や「収穫祭」にして秘祭で、「厄落とし」であるという。 仮面を付け、草木で体を覆い、「ナマハゲ」「トシドン(鹿児島県甑島)の年神」に似た扮装をする。 これは「中国の広西の融水の苗族」の「マンガオ」に類似、「貴州省」の少数民族には「大歳神のような来訪神の祭礼」が見られる。 ・「パーントゥ(島尻と上野野原)」は、仮面をつけ、草をまとった異形の神が登場、漂着した仮面に由来するという。 「パーントゥ・サトゥプナハ」は「里願い」とも呼ばれ、「ンマリガー(産まれ泉)」の泥を全身に塗る。 5人の女性神役「ミズマイ」に「ウパッタヌシバラ(拝所)」で祈願をしてから、村落内を巡り歩いて災厄払いをする。 厄払いは誰彼かまわず人や新築家屋に泥を塗りつけて回るというもので、泥を塗ると悪霊を連れ去るとされている。 ・八重山諸島では雨乞いの儀式の時、水を入れた瓶を神人が取り囲んで、 「クロツグ(マーニ・マニン)」」の葉先に水を浸し、周囲に水を撒き謡いながら祈る。 奄美諸島の祭祀 ・鹿児島県の「奄美大島」「喜界島」「加計呂麻島」 「与路島」「請島」「徳之島」「沖永良部島」「与論島」などが含まれる。 ・奄美群島の文化・言語・祭祀は、鹿児島県の大隅諸島以北に比べると、沖縄県に近く、「琉球文化圏」にも属している。 「奄美大島」から「与論島」に、南下するに従って琉球文化の色彩が濃くなっていく。 ただし、奄美群島に伝わる風習の中には、沖縄県とも本土とも異なる奄美独自のものや 沖縄県より本土に近いものも少なからずあり、方言にも昔の大和言葉の発音などが残っている。 ・奄美群島での人の痕跡は、約3万年前のものと推定される徳之島の「アマングスク遺跡(鹿児島県伊仙町)」で、 南西諸島最古級の遺跡と言われている。 ・日本本土や沖縄諸島地方とは、縄文時代・弥生時代・古墳時代などを通じて活発な交流が行われていた。 北方と南方の文化が混在し、それらの影響を受けたもの、さらに独自に発展した。 ・「宇宿貝塚(鹿児島県笠利町・奄美大島)」は、縄文時代中期から中世の複合遺跡である。 縄文後期~弥生後期の在地系の「宇宿上層式土器」「宇宿下層式土器」「嘉徳式土器」 「面縄式土器」に加え、九州本土の縄文後期の「市来式土器」が一緒に発見された。 遺構としては集石遺構、縄文時代晩期の石組み住居跡、宇宿上層式土器時代の土坑などが確認され、 土坑の中には推定年齢20~25歳の女性骨1体と嬰児骨1体が検出され、母子合葬であったことがわかる。 土坑からは「礫(れき)」「小型磨製石器」「ガラス玉」「骨製管玉」が出土した。 ・「市来貝塚(鹿児島県いちき串木野市)」からは、地元の「市来式土器」と共に、 「奄美大島の嘉徳II式によく似た土器」と「オオツタノハガイ製貝輪」が出土しており、薩摩半島への伝播も確認されている。 ・「宇宿貝塚」「住吉貝塚(鹿児島県知名町・沖永良部島)」などの住居跡は方形状に並べたもので、九州とは形態が異なる。 ・4-5世紀には地元産の「スセン當式土器(沖永良部島)」が、6世紀には「兼久式土器が出現した。 同時に「金属製品」も出土しているため、この年代に「鉄器の製造」が開始されていた可能性が指摘されている。 ・「ヤコウガイ」などは「螺鈿」や「杯」の原料として、重要な交易品であった。 ・奄美大島の「マツノト遺跡(鹿児島県笠利町)」「小湊フワガネク遺跡(鹿児島県奄美市)」など螺鈿原料の加工跡が確認される。 「開元通宝」は奄美群島から八重山列島まで出土、商人の広範な活動の証拠とされている。 ・初めて文献上に現れた「日本書紀 斉明天皇三年条(657)」に、「海見嶋」とある。 ・682年に「阿麻弥人」、714年には『続日本紀』に「奄美」との表記がある。 ・天平五年(733)の第十回遣唐使は、奄美を経由して唐へ向かっている。 天平七年(735)に朝廷は、遣唐使の往来上の利便のため碑を南島に建てた。 『延喜式』雑式には規定が書かれており、島名のほか停泊所や給水所が書き込まれ、 奄美群島の各島々にこの牌が建てられたとしているが、未だ発見はされていない。 遣唐使の中に、奄美語の通訳を置くことも記されている。 ・長徳三年(997)、大宰府管内へ「奄美島」の者が武装して乱入、放火や掠奪をしたという(『小右記』)。 翌年、大宰府からの追捕命令が「貴駕島」に発せられている(『日本紀略』)。 貴駕島は「喜界島」とされ、「城久遺跡」が発見されたことにもより、これが大宰府の出先機関と推定されている。 ただし、同時期に「新羅の入寇」も起こっており、新羅と取違えたのではないかという指摘もある。 ・この時代までを「奄美世(あまんゆ)」とも呼ぶ。 ・この時代の奄美群島は遺跡や伝承、そして群島外の歴史書によって様子をうかがうことはできる。 『漂到琉球国記』や『元亨釈書』などにより、奄美は「貴海国」とされ域内であり、「琉球国」は異域とみなされていた。 『平家物語』によっても、奄美地域と沖縄地域は違うと捉えられていた。 ・奄美群島では、「按司」や「グスク」という名称自体が史料上確認されていないが、支配層を語る上で便宜上用いられる。 便宜上「グスク」と呼ばれる遺跡の多くが、「ヒラ」「ハラ」「モリ」などグスクとは違う地名が付いている。 ・11世紀頃、グスクの構築が始まる。 奄美群島のグスクは集落ごとに複数築かれたが、規模はそれほど広くなく住民の共有の施設でもあった。 浜を見下ろす立地も多いが、集落背後の山の中腹や山頂などにも築かれ、複数(3〜4個)のグスクで有機的な防衛網を構築していた。 交易の利便性と、海からの襲撃に対応するためである。 ・その後、「グスク」は「按司」により采配されるようになり、そこに拠って互いに抗争していた。 また海賊や島外勢力の襲撃に対して、住民を率い戦い、英雄と讃えられるものも出現した。 ・「カムィヤキ古窯跡群(鹿児島県伊仙町・徳之島)」で生産された「カムィヤキ(類須恵器)」は琉球弧全体に 流通の広がりを見せており、それを生産販売する勢力の存在が考えられるが、判明していない。 ・12世紀には中尊寺金色堂で奄美産の蝶細がみられるなど、本土との交易も盛んであった。 ・「倉木崎海底遺跡(鹿児島県宇検村・奄美大島)」などで12世紀後半 - 13世紀頃の 中国産陶磁器が大量に引き揚げられており、中国などとの交易を行ったことも確認されている。 ・鎌倉時代に入り「北条得宗領」とされ、得宗被官「千竈氏」の采配地となった。 『千竈時家処分状』(千竈文書)によって明らかにされており、また 『金沢文庫』中の日本地図に「雨見嶋、私領郡」と記載されている。 『六波羅御教書』では海上運輸と流通の権益を握り、在地勢力と主従関係を構築して支配していたものと考えられている。 北方の得宗被官「安東氏」の動向との比較検討が行われている。 ・琉球王国の成立した15世紀半ば以降、奄美地域をめぐって琉球勢と本土勢とが何回も合戦した。 奄美群島は両者の交易などの往来が盛んになる一方、利害がぶつかる土地となり、軍事衝突も多数発生したものと考えられる。 島津氏の記録には当時の様子が余り語られていないが、鎌倉幕府滅亡時、 薩摩に残留した千竈氏一族を家臣団に組み込んでおり、交易の利益と相まって興味は十分持っていたと考えられている。 ・按司が登場してからを「按司世(あじんゆ)」とも呼ぶこともあるが、この時代までを「奄美世(あまんゆ)」と呼ぶこともある。 ・文永三年(1266)、奄美群島から中山王「英祖王」に入貢したと『中山世鑑』などの琉球正史に記されているが、 当時の群雄割拠の状況から後に創作された伝承とも考えられる。 宗主国の明に倣った、琉球版冊封体制であったとも考えられている。 ・琉球王国成立前後の状況は、沖縄本島からの距離もあって各島々で異なっている。 ・応永二十三年(1216)、第一尚氏は北山王国を滅ぼし、その領土であった「与論島」と「沖永良部島」に服従を打診。 「沖永良部島」では「島之主一族」とその重臣が侵攻と誤認して自刃、応永二十三年(1429)、王国の領土に組み込まれた。 「徳之島」も服属し、「島之主西世之主恩太良金」が「徳之島大親」に任命されている。 ・奄美群島の地元領主階級は、琉球王国側の記録によれば「大親」と呼称されることが多い。 ・文安四年(1447)、「尚思達王」が「奄美大島」を従わせた。 ・宝徳二年(1450)から寛正三年(1462)まで、「喜界島」を攻略するためほぼ毎年攻撃を仕掛けていた(『李朝実録』)。 ・文正元年(1466)、「尚徳王」が三千の兵をもって「喜界島」を制圧した。 ・天文六年(1537)、「尚清王」が「奄美大島」の「与湾大親」に反抗の気配ありとの報告を受けこれを討つが、 後に讒言であると判明したためその子孫を採り立てている。 ・元亀二年(1571)、「尚元王」が再び反抗を始めた「奄美大島」の大親達を制圧している。 「与湾大親」の子孫は、1571年(宝徳2年)の戦いには琉球王国側として参加して武勲を挙げ、 のちに首里に移り、「琉球王国五大姓」の一つである「馬氏」となり繁栄した。 ・琉球王国の領土となった「奄美群島」では、文正元年(1466)に「泊地頭」が置かれ、 群島各地から年貢の納付が強要され、そのための蔵を「天久寺(那覇市)」に設け「大島御蔵」と呼んだ。 ・首里在勤として「奥渡より上の捌理」と言う役職も置かれた。 ・元亀三年(1572)には「蘇憲宜」を「大島奉行」に任じ、統治に努めさせている。 ・16世紀後半、本格的な琉球王国の地方行政制度が敷かれ、「間切」の名称が文書に見え始める。 間切ごとに「首里大屋子」が置かれ、その下に集落名を冠した大屋子を、さらに「与人」「目差」「掟」「里主」などを置いた。 ・祭政一致政策(琉球神道)の一環として「ノロ」も置かれた。 役人やノロの所領はそれまでの世襲を廃止して、一定期間ごとに転出するよう制度が改められ、在地住民との関係切り離しが行われている。 ・現在ノロ制度は、「与湾大親」の根拠地であった「奄美大島西部」に多く残っている。 ・室町幕府以降15世紀に入ると、本土の統治機関における奄美群島への関心は徐々に失われていった。 ・その中でも薩摩と大隅の守護「島津氏」だけが、交易などを通じて奄美への関心を持ち続けた。 16世紀半ば、島津氏は交易の利益独占のため本土から琉球へ渡る船を統制しようとし、「嘉吉付庸説」「為朝始祖説」を持出し琉球を従わせようとした。 ・天正十五年(1587)、「豊臣秀吉」に降った「島津氏」は、課された琉球軍役を肩代りすることで琉球への圧力を更に強めていった。 秀吉は当初、島津氏を滅ぼし琉球への侵攻も計画していた[要出典]。 ・琉球王国の統治時代を「那覇世(なはんゆ)」とも呼ぶ。 ・琉球王国への薩摩藩の支配後、奄美群島が薩摩藩の直轄地となった。 慶長十八年(1613)、多数の代官所や奉行所を設置された。 中国や朝鮮からの難破船などに対応するため、引き続き王府の役人も派遣させていた。 この頃の奄美群島は、薩摩からは「道之島」と呼ばれた。 ・13世紀頃に琉球に国が誕生するまでの古代~中世初期は、 南西諸島全体が「阿摩弥」と呼ばれていた。 ・名称の由来については、今なお不明な点が多い。 ・伝承では琉球王国の創世神話に登場する「アマミキヨ(アマミコ・阿麻弥姑)」神に由来するとされる。 アマミキヨは最初に奄美大島の「アマンデー(奄美嶽・海見嶽・鹿児島県笠利町)」に降り立ち、 奄美の島々を創造、後に沖縄諸島を造ったと古書に記されている。 アマンデーの山上には史跡があり、また「湯湾岳」にも降臨神話がある。 ・ただし琉球王国の神話や、「アマミキヨ」の起源は、文献上10世紀から13世紀の間までしか遡れず、 7世紀には日本列島の中央政権にその名称と存在が知られていたこととは時間的な開きが生じている。 ・また「アマミキヨ」の名称使用自体、 奄美群島では「テルクミ」の名称で伝わっている(沖縄本島に隣接する与論島では「アマミキヨ」)。 ・これらの事を含めて「アマミキヨ」とは奄美そのものを指し、 「琉球王国の成立には奄美勢力の南下、 又は奄美を経由した本土勢力が深く関わっていたのではないか」と指摘する研究者もいる[誰?]。 ・「テルコ・ナルコ」は、はるか海の彼方にあってこの世に豊じょうをもたらす理想郷のこと。 祭祀の来訪神はそこからやってくる。 沖縄の「ニライ・カナイ」信仰とほぼ一致する観念で、奄美の各地にその信仰を示す伝承がある。 ・地域により「ネリヤ・カナヤ」「テルコ・ナルコ」与路島では「ニッリャテルコ」と呼ぶ。 ・「テルクミ・ナルクミ」という名前の「奄美諸島の創生神」ともされる。 ・「おもろそうし」には、ニライ・カナイのことを「にるや・かなや」と記されている。 ・奄美大島では、毎年二月に「ナルコ」「テルコ」という神を迎えて、 四月に御送り申す厳粛なお祭りがある。 同地では、「集落の三方を山に囲まれ目の前に広がる海に対して、 海は豊かさをもたらすと信じられていた」というのが信仰の淵源だとも言う。 ・「奄美群島」では琉球王国時代に「ノロ」制度が導入され、現在でも「ノロ」「ユタ」が僅かに残る。 ノロを中心に、ニライカナイからの来訪神を迎える豊穣祈願などが行われている。 ・奄美大島では、ノロ祭祀組織は「神人衆(カミニンジュウ)」と呼ばれる。 「親ノロ」を頂点として、成員はそれぞれ神役として名を持っている。 必ずしも全てのシマ(集落)に共通しているわけではないが、「イガミ」「スドゥガミ」といった名となっている。 全て女性で構成され、唯一、男性で参加する役を「グジ(宮司か郡司が原義)」と呼ぶ。 ・有名な祭礼に、龍郷町秋名の「平瀬マンカイ」「ショチョガマ」がある。 「稲霊(いなだま)」を招いて五穀豊穣に感謝、来年の豊作を祈願する祭りで、 「ショチョガマ」は「夜明けと共に片屋根を揺り倒して豊作を祈る」、 「平瀬マンカイ」は「ノロ神様と呼ばれる祭司五人と宮司七人により、 神(カミ)ヒラセと女童(メラベ)ヒラセと呼ぶ二つの岩で、山の神と海の神に豊作を祈る」。 ・祖霊を迎える三八月(ミハチガツ)と呼ばれる旧暦八月中旬の三日間のお盆祭りでも、 ノロが祭祀を取り仕切る地域がいくつもみられる。 ・奄美大島では各集落ごとに複数の神社が見られる。 ただし神社のほとんどは、江戸時代(薩摩藩政時代)頃に土着の信仰から移行し設立された比較的新しいものである。 最も古い伝承を神社は、「平家の落人」伝承を持つ一群である。 ・奄美大島では、現在の多くの墓形式は本土と同じであり、沖縄県の亀甲墓は見られない。 ただし「城間トフル墓群」に代表される「トフルやムヤ」と呼ばれる 亀甲墓の前時代形式の墓所が存在し、「南西諸島の墓制の北限」と言われる。 これは隆起サンゴ礁が形成する崖に横穴を掘り、風葬したり厨子甕などに遺骨を入れて保管するものである。 隆起した砂丘に十数基の横穴墓があり、400年以上前に構築されて以来そのすべてがほぼ完全な形で残り、うち九基が現役の墓として使われている。 ・奄美諸島には「御嶽」は確認されない。 しかし「アマミキヨ」降臨の地とされる「アマンデー(奄美嶽・海見嶽)」も、 その立地条件や、奄美群島北部には希少な「御嶽的存在」であり、 それらが琉球王国の聖地とされる「斎場御嶽」と酷似しているため 琉球領時代に持ち込まれた伝承とも言われている。 ・奄美の「シマ(集落)」の多くは、山を背に海に面している。 シマの背後には、神聖な「カミヤマ(神山)」と呼ばれる山があり、 ここにシマを守る神「テルコの神(山幸の神)」「ナルコの神(海幸の神)」が降り立つ。 生活道路以外に、断片的にも「カミミチ(神道)」があったりする。 はるか彼方の海には、神が住む豊穣の国「ネリヤカナヤ」があり、 目の前の海には、このネリヤカナヤから神が渡ってくる小さな島「立神」がある。 ・奄美大島には、「シマ」の中心部に「ミャー(宮)」と呼ばれる、聖地性を持った空き地がある。 ミャーには「カミミチ(神道)」が続いていることが多く、「カミヤマ(神山)」と海とを結ぶ線上にある。 ・「ミャー」には、祭祀芸能を奉納する「あしゃげ」や、祠の「トネヤ」が建っていることがある。 そこには「ガジュマル」「アホギ(アコウ)」などの御神木が立っている。 「トネヤ」は「刀禰屋=村長・シマの宗家の屋敷」で、嘗てはノロが神事をしていた。 「ミャー」や「トネヤ」では、中世の青磁片・類須恵器片が見つかることが多い。 ・奄美諸島の他の聖地として、下記の物以外に、「立神」と呼ばれるものがある。 「森とも山ともつかぬ地方的な聖地聖地」として「拝み山(ウガミヤマ)」 「モリヤマ(森山)」「カミヤマ(神山)」「テラヤマ(ティラ山)」がある。 イビガナシ ・奄美大島で村の聖地に立てられた自然石。 ・一般には無名の場合が多い。 ・ミャーにあるアシャゲの傍らの御神木の根元に、数基の自然石「イビガナシ」が建っている。 ・常時集落にいて、集落を守ってくれる神様で、在住神と呼ぶ。 ・イビガナシは、村を開拓した遠祖の墓ともいう。 ・同種の聖地の別名に、「シマタテガナシ」「グジ墓」「ウジガミ」がある。 グンギン(権現)について ・奄美諸島にある祠である。 ・「グンギン」は「権現」の奄美方言である。 ・森の中腹など、高く険しい位置にある。 ・入り口に「鳥居」がある事が多く、「神社」のような役割を担っている。 ・奄美では、ほとんど「自然石」をご神体とする。 加計呂麻島では「ソテツ」をご神体としている例もある。 ・「イビガナシ」が集落の中の平地にあってシマを見守るのに対し、 グンギンは集落の外の高台にあって、航海安全や火伏せ(防火)などを祈願する場合が多い。 ・旧暦9月9日に祭りがある。 オボツヤマ(オボツ山)とカクラ山 ・奄美大島中南部や加計路麻島には「オボツ山」「カクラ山」という聖地がある。 オボツ山は山上にある物と、平野の森にある物に二分される。 ・山上に「オボツ」と呼ばれる石積みがあったりして、嘗てはノロが集まった。 ・琉球神道における「天空にある異界」である「オボツカグラ」に由来するとされる。 ・琉球王国の歌謡集「おもろそうし」の歌に、 「オボツの山に神が降りたまう」という一説がある。 トカラ列島(吐噶喇列島)の祭祀 ・鹿児島県の「中之島」「口之島」「小宝島」「諏訪之瀬島」「平島」「宝島」「悪石島」などから成る。 ・悪石島とその南西の小宝島の間には「渡瀬線」または「トカラ構造海峡」とよばれる、生物の分布境界がある。 悪石島は本州・四国・九州の動物相の南限となっている。 ・地名の由来については諸説あるものの、「沖の海原」を指す「トハラ」から転訛したという説が有力。 ・「続日本紀 文武天皇三年七月辛未条(699)」に、 「多褹(種子島)、夜久(屋久島)、菴美(奄美大島)、度感(トカラ列島)の人が物を貢いだ」とある。 同書によればこれが「度感」が日本と通じた始まりで、また「度感」は「徳之島」だとの説もある。 ・「宝島」では、多くの土器が出土しており、下層部からは縄文後期の頃のものとみられる「宇宿下層式土器」や「八重山式土器」、 上層部からは弥生中期の頃と見られる「須玖式土器」が出土している。 ・トカラ列島には、独特な風習や伝統文化が多く、ノロによる祭祀が残る。 ・トカラ列島には「ネーシ(内侍)」とよばれる、巫女による祭祀が残る。 宝島では「ヌーシ」と呼び、これは「内侍(ないし)」と関係があるとさる。 内侍は「古代~中世、天皇や特定神社の斎宮・斎王の近侍を勤めた女官」などの名称である。 ・トカラ列島周辺には、「異形の来訪神=客神(まれび)」を祀る伝統が多い。 悪石島の「ボゼ」や、甑島列島の下甑島の「トシドン」、 大隈諸島近辺の硫黄島の「メンドン」などが代表的である(先述)。 ・「ボゼ」は、「ヒチゲー」と呼ばれる冬の節替りの夜に登場する「異形な仮面を付けた来訪神」で、 トカラの各島に現れたとされており、その名残が悪石島にのみ残ったとされる。 現在は悪石島の伝統行事として旧暦7月16日のお盆最終日翌日に登場する。 ・「悪石島」には、いたるところに聖地があり、ボゼのみならず、 一年間を通じて、小さな祭祀や儀礼が非常に多い島である。 ・「悪石島」にある「鳥居の笠木に刻まれた三角の紋様」は、 タイやラオスの「アカ族」の習俗と重なる。 ・トカラ列島全体で以前使われていた「シタミ」と呼ばれる「背負い籠」は、 東南アジア大陸部のタイ族系の人々が使用するものと共通しているという。 ・「森とも山ともつかぬ地方的な聖地」として、「根神山」などの名称の山がある。 「根神山」の名称が多く、悪石島では「根神山(ネガミヤマ)」、宝島では「女神山」、 中之島では「エガミダケ」、小宝島では「ウネガミ」と呼ぶ。 「山」をそのように呼び、また「石碑」と「石積み」があり、森林に覆われた「神域」が存在する。 宝島では、女神がいるとされ、「女神権現跡」と記された石碑が建つ。 大隅諸島の祭祀 ・鹿児島県の「種子島」「屋久島」「口永良部島」「馬毛島」などから成る。 「黒島」「硫黄島」「竹島」の上三島については、 大隅諸島に含まれるとする説と含まれないとする説がある。 ・「種子島」で最古の遺跡は、「横峯遺跡(鹿児島県南種子町)」「立切遺跡(鹿児島県中種子町)」 「大津保畑遺跡(鹿児島県中種子町)」で、約3万5千年前の遺跡、鹿児島県最古の遺跡でもある。 ・「銭亀遺跡(鹿児島県南種子町)」は、旧石器時代の「細石器文化」が確認された日本列島最南端の遺跡である。 ・縄文時代の「種子島」では、九州島南部の縄文文化とほぼ同一の土器様式が確認されている。 ・弥生時代後期から7世紀にかけての「種子島」では、独自の貝文化が展開した。 代表遺跡として「広田遺跡(鹿児島県南種子町)」が著名、貝製品など出土品は、国の重要文化財に指定されている。 ・「隋書」 大業三年(607)煬帝の代の「夷邪久国」は「屋久島」と推定される、これが「屋久島」の初見とされる。 ・「日本書紀」には「推古天皇二十四年(616):掖久・夜勾・掖玖の人三十人がやってきて、日本に永住した」 「舒明天皇元年(629):大和朝廷から掖玖に使が派遣された」「天武天皇六年(677):多禰島人を饗した」 「天武天皇八年(679):朝廷から使を多禰島に遣わした」という記事などが見られる。 ・7世紀末以前までは「ヤク」とは「九州以南の地域」を指す言葉として用いていたとされ、 天武天皇六年の記事は「多禰島:種子島」の初見である。 ・「天武天皇十一年(682):朝廷から多禰人・掖玖人・阿麻彌人(奄美)それぞれに禄を賜る」という記事があり、 ここで「掖玖(やく)」を初めて、特定の「屋久島」を指す言葉として用いている。 ・「続日本紀」には、文武天皇二年(698)に朝廷の命により「務広弐文忌寸博士が南島(なんとう・南西諸島)に派遣された」とあり、 任務は「屋久島・種子島・奄美大島の朝貢関係を確認すること」である。 ・文武天皇三年(699)に「多褹(種子島)・掖玖(屋久島)・菴美・度感(トカラ列島)から朝廷に来貢があり位階を授けた」とある。 ・大宝二年条(702)には「薩摩と多褹が化を隔てて命に逆らう。是に於いて兵を発して征討し、戸を校して吏を置けり (薩摩と種子島・屋久島が服属しなったので征討した)」とあり、これは「隼人」の征討とも言われる。 ・「多禰国(たねのくに)」は、かつて日本の地方行政区分であった令制国の一つ。 大宝二年(702)から天長元年(824)まで122年間存続、続日本紀には「多褹国」との表記も見られる。 「西海道」に位置、領域は「種子島・屋久島・口永良部島」、種子島北部に「能満郡」、 南部に「熊毛郡」、屋久島の広域と口永良部島に「馭謨郡」、屋久島の一部に「益救郡」が置かれた。 ・『続日本紀』大宝二年(702)八月一日条に「薩摩と多褹が化を隔てて命に逆らう。是に於いて兵を発して征討し、 戸を校して吏を置けり」という記事があり、これが多禰の征服と多禰国建置を示すと考えられている。 実際に多禰国の公印が与えられたのは和銅七年(714)とされている。 ・多禰の場合、国のかわりに島(嶋)の字を用いて、多禰国を多禰島、その国司を島司と表すこともあった。 国を島とも呼ぶのは、対馬・壱岐と共通する。 ・国の格付けは、「南島(奄美・沖縄方面)」との交流や「遣唐使」の派遣、「隼人」対策などの点から重要視されて中国とされていた。 天平勝宝五年(753)、「鑑真」「大伴古麻呂」「吉備真備」らを乗せた遣唐使船第二船、第三船が「屋久島」に寄港している。 しかし実際には小国をはるかに下回る規模の税収しかなく、行政的な運営経費の不足分は「大宰府」が他の国から補填していた。 ・しかし隼人の対策が一段落し、遣唐使の派遣経路が変わると多禰島の重要性は薄れてきた。 大宰府管内の飢饉に対処するために、多禰島の運営経費に当てていた税収が減少することになったため、 財政の見直しの観点から天長元年(824)十月一日に多禰島司を廃止し、四郡を「熊毛郡」「馭謨郡」の二郡に再編して「大隅国」に編入した。 ・「種子島」は、鎌倉時代には「見和氏」「肥後氏」が支配した。 鎌倉時代の建仁三年(1203)年以降は「種子島氏」が支配、応永十五年(1408)以降は「屋久島」も支配した。 両島は16世紀末に「島津氏」の支配に移った。 ・多禰国一宮は「益救神社(やくじんじゃ・鹿児島県熊毛郡屋久島町)」である。 式内社の南端として鎮座している。 元々は屋久島中央部の屋久島三岳「宮之浦岳」「永田岳」「栗生岳」の神を祀ったものと考えられ、 かつては島内各地に三岳の遥拝所があった。 明治維新までは、旧村18ヶ所に村落名を冠した益救神社があったが、現在は二社のみである。 ・「宮之浦岳(1936m)」は九州地方最高峰、「永田岳」「栗生岳」ほか 屋久島中央部の標高1800m以上の高峰は「奥岳」と呼ばれ、「永田岳」を除き海岸部の人里から望むことはできない。 『三國名勝図會』の記す栗生嶽は位置的に現在の「黒味岳」に相当するとする説もある。 海岸部から間近に聳え、沿岸村落から見上げられる山々は「前岳」と呼ばれ、「本富岳」「国割岳」「愛子岳」などがある。 ・屋久島には「岳参り」という風習がある。 春秋の彼岸になると、村落ごとに若者を中心とした一団が御岳に登山し、 シャクナゲの枝を土産として里に持って帰る。 村落ごとに登る山は違うが、いずれにせよ「奥岳」へ行くには2~3日を要するため、代表者が山へ登った。 留守の者達は「前岳」まで登って代表者たちを出迎えるか、「詣所(もいしょ)」という「揺拝所(ようはいしょ)」に出迎え、 そこで神霊ののったシャクナゲの枝を貰い、各家の床の間に飾った。 しかし昭和も終わり頃になると、自然保護の観点からシャクナゲを持ち帰ることは廃れていった。 ・「森とも山ともつかぬ地方的な聖地」として、 種子島に「ガローヤマ(ガロー・ガロー山)」があり、「伽藍(がらん)山」の転訛だという。 これは「樹木が生い茂った森」で、みだりに入ると祟られるという。 「ガロー」は「水の神、山の神、田の神、池の神、荒神などの総称」である。 「ガロー田」という神田を持つ所もあり、不浄を避けて、神饌米が作られる。 全島内に百五十箇所はあり、東海岸に特に多く、西海岸には無く、南部の南種子町に多い。 当サイトの項目 項目1:波動原理と放射能除染の概略 (メニュー1) 項目2:波動器具・一部農法・一部機器等による除染法 (メニュー2) 項目3:量子水・還元水素水・水酸素ガスによる除染法 (メニュー3) 項目4:フルボ酸・微生物等による除染法 (メニュー4) 項目5:珪素・炭素同素体・ナノ物質・竹炭等による除染法 (メニュー5) 項目6:「波動情報と共鳴の原理・作用・効果・影響・意味合い」目次(メニュー6) 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