約 383,497 件
https://w.atwiki.jp/chaos-touhou/pages/23.html
知識と日陰の少女「パチュリー・ノーレッジ」 読み:ちしきとひかげのしょうじょ「ぱちゅりー・のーれっじ」 カテゴリー:Chara/女性 作品:東方混沌符 属性:無 ATK:1(+2) DEF:1(+3) [自動]メインフェイズ開始時、属性1つを宣言してもよい。そうした場合、このキャラはターン終了時まで、指定した属性を得る。 [自動]自分のキャラにバトル以外のダメージが与えられる場合、そのダメージを3減少する。 私はあなたみたいに鳥目じゃないわ illust:おーじ TP-009 C 収録:ブースターパック「OS:東方混沌符 1.00」 新たに属性を得る能力と効果ダメージを軽減する能力を持つキャラ。 1つ目の能力は火水木金土符 賢者の石の威力を底上げできる他、各属性を対象にした強化も受けられる。 それらを重視した構築であれば非常に強力なキャラとなるが、反面このカード単体では何の意味もない能力でもある。 2つ目の能力で効果ダメージを軽減できるが、同じ能力を持つ紅魔館のメイド「十六夜 咲夜」と比べると耐久力で僅かに劣る。 とは言え本当に僅かであるため、補正値で差別化は図れる。 両方の能力を生かす場合、安定性や自身のサイズを考えるとパートナーにするのが無難だろう。 1つ目の能力は『自分の』等の指定がないので、相手ターンのメインフェイズ開始時でも発動する。解決は任意なので、属性を宣言しなければ『宣言しなかった』ことになるので注意。 参考 ネームが「パチュリー・ノーレッジ」であるキャラ・エクストラ一覧 魔法(主に属性)を使う程度の能力「パチュリー・ノーレッジ」 紅魔館の頭脳「パチュリー・ノーレッジ」 紅魔館の陰と陽「パチュリー・ノーレッジ」 「紅 美鈴」 知識と日陰の少女「パチュリー・ノーレッジ」 属性を操る魔法使い「パチュリー・ノーレッジ」 少女密室「パチュリー・ノーレッジ」 動かない大図書館「パチュリー・ノーレッジ」 ヴワル魔法図書館「パチュリー・ノーレッジ」 ラクトガール「パチュリー・ノーレッジ」 ファイブシーズン「霧雨 魔理沙」 「パチュリー・ノーレッジ」 アグニシャイン「パチュリー・ノーレッジ」 Stage4 暗闇の館「小悪魔」 「パチュリー・ノーレッジ」 東方紅魔郷 魔法少女達の百年祭「パチュリー・ノーレッジ」 「フランドール・スカーレット」 東方紅魔郷 「パチュリー・ノーレッジ」
https://w.atwiki.jp/nwxss/pages/361.html
七村紫帆と名乗る少女との早朝の邂逅 ――― それは柊蓮司にとっては、少々血生臭いものにならざるを得なかった。 新しい任務という名目でアンゼロット宮殿から放り出され、右も左も分からない見知らぬ街で巻き込まれた、突然の戦闘。 エミュレイターとは明らかに異質の、怪物の群れによる襲撃。 なんの前触れもなく人外の化物どもとの戦いに突入する羽目となった柊は、突如として交戦の場に躍り出たこの少女と成り行きで共闘することとなり、ついには敵勢力を退けたのである。 柊が任地で通うこととなった、瀬戸川学園の制服を身につけた少女。 互いに名乗りを終えたすぐ後で、柊はこの正体不明の少女の姿を注意深く観察した。 任務早々、自らが巻き込まれた事件である。現状はどうしても把握しておきたい。 そのための情報は、なんとしてでも手に入れておこう。 だとすれば、この化物どもとの戦いに手馴れた様子の彼女は、当然のことながら有力な情報源足りえるはずだった。 それならば ――― と、紫帆から詳しい話を聞きだそうと、柊がその一歩を踏み出したところで。 ――― その目論みは、いまこのときは果たされることはなかったのである。 ※ 「学校まで十五分、か。うん。間に合う、間に合う」 不意に、紫帆がなにげなく漏らした一言を、柊は聞き逃さなかった。 制服が同じであれば目的とする学び舎も同じ。向かう方角は一緒である。 わずか十五分。されど十五分。しかし、たったそれだけでも。わずかそれだけでも会話の時間を取ることが出来れば、自分を取り巻くおおよその状況を、ある程度は説明してもらえるだろう。 いまの彼は ――― なによりも“情報”に飢えていた。 いつも傍若無人で、無茶な任務を自分に割り当てるアンゼロットだが、今回はいつにも増して、柊の任地への移送が急過ぎる。普段であれば、『だれそれを護れ』とか『あれこれを調査しろ』とか、少なくとも任務内容の概要程度は説明されるのだ。 それが、今回に限ってはそれすらもない。 任地で協力者と会え、瀬戸川学園という学校に通え、と言われただけではなにから手をつけたらいいのかも分からない。 あえて好意的に捉えるとするならば、その手間すら省かねばならないほど、事態が切迫していたということか。 しかし事情がどうであれ、紫帆から可能なかぎりの情報を得ることが、いまの自分にとっては最優先事項であろう。 せめて、彼女が何者で。 せめて、あの化物どもが一体なんであるのか。 そのくらいのことは確認しておきたかった。 「あー、ごめん。放課後。放課後にしよ? 私じゃ上手く説明できないかもしれないし、そういうのが得意な人、ちゃんといるから。それに、せっかくだから君に紹介しておきたい人たちもいるんだ」 しかし柊に返ってきた紫帆の答えは、なんとも拍子抜けするものであった。 手をぱたぱたと振りながら、紫帆はそう言って柊の質問を遮るのである。 「お、おい、なんの説明もなしかよっ!?」 慌てて柊が食い下がる。 突然、化物に襲われたというのに、このままなにもなかったかのように過ごすことなどできはしない。第一、いまの自分にはなによりも情報が必要なのである。 「ご、ゴメンね。でも、面倒くさいから説明しない、っていうんじゃないんだよ?」 本当に申し訳なさそうな顔をして紫帆が謝る。 「あのさ……いまの私たちって、お互いがお互いのことをなにも分かっていないと思うんだ」 ゆっくりと、言葉を選ぶように。とても真摯な表情を柊へと真っ直ぐ向けて、紫帆が言う。 「多分、私が私のことを君に理解してもらうのにも時間がかかると思うし、君が君のことを私に説明するのも大変なことだと思うんだ。だから」 だからじっくりと腰を据えて、誤解や情報の齟齬がないように説明がしたい、と。 紫帆は、そう言っているのだった。 ふと、改めて冷静に考える。 彼女の言う通りにしたほうがいいのかもしれない ――― そこで初めて柊も、そう思い直す心の余裕が出来た。 いまは、紫帆が何者なのかも分からない。彼女の“力”のことも分からない。自分を襲撃してきた化物たちのことも分からない。とにかく、分からないことだらけなのである。 情報は必要かもしれないが、その情報量は膨大なものになるのではないだろうか。 加えて、紫帆の言葉を信ずるならば、彼女はウィザードではないという。 少なくとも、ウィザードの存在を知らないという。 だとするならば、自分も紫帆に解説してやらなければならないことが山ほどあるはずだった。 世界結界。エミュレイター。月匣。プラーナ。月衣。そして、魔王たち。 ウィザードとしての基礎知識を思いつくままに挙げただけでも、これだけの項目について説明しなければならないのである。もしかしたら、自分の考えが及ばないだけで、もっと解説を要することだってあるかもしれないのだ。 そのことを考えるだけでも一瞬気が遠くなる。 普段、自分では当たり前のように考えていることが、言葉にして説明しようとすると、簡潔に分かりやすく、登校中という短い時間で紫帆にすべてを伝えきれる自信はない。 情報は確かに必要だ。 だが、紫帆を急かして中途半端な知識を得たとしても、それは意味を成さないし、誤った認識を自分が持ってしまうことは、任務にあたってむしろ有害でさえある、と言えるだろう。 「……確かに、お前の言う通りかもしれねえな」 ついには、柊もそのことについて同意せざるを得なかった。 お互いの立場や世界を理解し合うには、確かに十分な時間が必要かもしれない。 「うん。だから放課後、ね? いきつけの喫茶店があるから、そこに行こうよ。あ、君に会わせたい人たちもそこで紹介するから ――― ええと、柊クン、でいい?」 「ああ。七村、っていったか ――― 紫帆、でいいか?」 柊には、同年代の相手を姓で呼ぶ習慣があまりない。普段接する相手にしても、くれは、とかエリス、とか名前を呼び捨てにするのが常である。 初対面の相手ではあるけれど、身についた癖はなかなか抜けないものなのだ。 案の定、呼称について同意を求められ、少しだけ紫帆は目を丸くした。その気配を敏感に察したのか、 「……っと、悪りぃ。嫌なら七村、って呼ぶけどよ」 柊はそう言った。 「えっ、う、ううん、嫌じゃないよ。そうじゃなくって、ただ少し驚いただけ」 柊の妙な気遣いを柔らかく否定しながら、紫帆は両手をぶんぶんと振る。そして、わずかにはにかむような微笑を浮かべると、 「そうじゃなくって……ちょっと、思い出しちゃっただけ。そういうぶっきらぼうな言葉遣いが、私の知っていた人に少しだけ ――― 似てたから」 そう言って、紫帆は笑った。本当に、ほんの微かだけ、笑った。 紫帆が、彼女の言う“柊に似た人”のことを、『知っていた』と過去形で表現したことには、柊はあえて触れなかった。なんとなく、触れるべきではないような、そんな気がしたのである。 「そうか……ならいいんだけどな」 「ううん……なんだか、ゴメンね」 もう一度だけ謝ると、紫帆はすぐに快活な笑みを取り戻した。 どちらからともなく頷き合い、二人は連れ立って瀬戸川学園への道程を歩き始める。 歩みが進むにつれて、同じ色とデザインの制服姿が次第に目に付くようになり、新しい学び舎まではもう目と鼻の先なのだということを柊に教えた。 その間、二人が交わした会話はとても他愛もないことである。 学園周辺にはどういう飲食店があるのか、とか。 気軽に買い物の出来るスーパーはここだよ、とか。 紫帆が懇切丁寧に教えてくれる情報は、どこか所帯じみており。 柊は柊で、学校に購買部はあるのか、あるとすればヤキソバパンは売っているのか、などとどうでもいいようなことを紫帆に根掘り葉掘り尋ねている。 それがあるのとないのとでは、学園生活の潤いと彩りが段違いなのだ、と力説する柊の言葉を、紫帆は穏やかな笑顔で楽しそうに聞いていた。 校舎の正門前に到着するまでの会話は、終始この調子で進められた。 柊の『任務』に関わりそうな有益な情報が、まったく得られなかったのは、実はこういう経緯があってのことなのである。 「それじゃ、また放課後ね」 「おう」 正門前に到着すると、数時間後の再会を約束して二人は別れる。 紫帆に教えられた通りの道順で職員室へと向かい、自分の担任だという教師と二、三の会話をした後で、柊はそれこそ随分しばらくぶりに“朝のホームルーム”というやつへ出席した。 見知らぬ土地。見知らぬ高校。そして仮初めのクラスメートが、不思議と新鮮に目に映る。 いつかの任務ときのように、なぜか二年生、などという紹介をされなかっただけ、今回はいくらかマシだと言えた。 瀬戸川学園での柊は、誰にとっても『未知の転入生』なのである。 潜入にあたって、アンゼロットがおかしなちょっかいをかけてこなかったことだけが、ただひとつの救いであった。 (もっとも、アンゼロットもそんな暇がなかったのかもしれねえが、な) 事前の事情説明も一切なしに自分が派遣されたという現実が、柊の脳裏には引っかかっている。 アンゼロットが、柊をおちょくる暇も惜しむほどの切迫した状況であり任務なのだ、と考えると、それはそれで身が引き締まる想いであった。 (……まあ、放課後を待つしかねえんだけどな) 答えの出ないことをいま考えても仕方がない ――― 柊はそう頭を切り替える。開き直った、と言い換えてもいい。 すべては放課後。 後のことを考えるのは、じっくり時間をかけて、紫帆と詳しい話をしてからにしよう。 そうやって一度納得してしまえば、気持ちの整理もつく。担任に促され、与えられた窓際の席に着くと、しばらくして、ホームルームの終わりと、一時限目の開始を告げるベルが鳴り始めた。 瀬戸川学園における学生生活を、当面は満喫しよう ――― 真新しい教科書を鞄から引きずり出し、柊はそう思った。 ※ 肩を揺すられる感触。 自分の名前を呼ぶ声。 真っ暗な意識の淵でまどろんでいた柊は、うつぶせていた顔をゆっくりと持ち上げると、ようやく深い眠りから覚醒したようだった。 一瞬、ここがどこで、自分がなにをしていたのかも忘れて、 「んが……?」 間の抜けた声を上げてしまう。 「転入初日から居眠りなんて、大物だねー」 笑いを含んだ呼びかけに、声のするほうを向く。 ちょっと困ったような少女の笑顔とぶつかって、柊は慌てて身を起こした。 たったいままで自分が枕にしていた机の、隣の席に腰掛けた紫帆が、「やれやれ」と言いたげな表情で溜息を吐く。教壇の頭上に掲げられた丸時計の針は、とっくに夕方の五時を指していた。 「げっ、もうこんな時間か!? ちっくしょう、誰も起こしてくれなかったのかよ!?」 ガタン、と音を立てて席を立ち、柊が大声を張り上げた。すぐさま紫帆を振り返ると、 「悪りぃ、相当待たせちまったか?」 斜め四十五度の角度で腰を折り、見るも惚れ惚れするような姿勢で頭を垂れる。 あはは、と笑いながら立ち上がり、 「転入初日だもん。疲れてたんだねー。朝から、あんなこともあったし」 そう言うと、紫帆は机に投げ出してあった自分の鞄を取り上げた。 正門前で柊を待っていた彼女は、なかなか出てこない待ち合わせ相手を直接迎えに行こうと、わざわざ自分を探してくれたようだった。 今日、転入生の来たクラスはどこですか、と教師に聞いたので、さほど探すのに手間はかからなかったらしい。紫帆はぐるり、と二人以外には誰も居なくなった放課後の教室を見回し、 「三年だったんだね。あのさ……柊クン、って呼んでも本当に良かった?」 おずおずとそんなことを尋ねた。 柊よりも年下 ――― つまりは後輩に当たるのであろう。 「いいって。変なことに気ィ回すなよ。それより、本当に悪かったな」 柊も机の横にぶら下げてあった鞄を引っつかむと、それを無造作に肩へと担いだ。 「ううん、私は大丈夫だよ。だけど ――― 」 待ち合わせの時間に遅れちゃったら、委員長に叱られるなあ、と。 紫帆は、柊には意味不明の言葉を呟いたのであった。 ※ 夕暮れの薄暗い街並みを二人で歩く。 本当は、色々この街のことを紹介したり、案内してあげたいんだけど、それはまた今度にしようね ――― 紫帆は、心底残念そうにそう言った。 早朝、自分の名乗りもそこそこに「お役に立ちます」と宣言してみせた彼女の台詞を思い出し、柊の口元が自然とほころぶ。 「面白れえ……っていうか、変わりモンだな、お前」 率直に、そんな感想を柊が漏らすほどだった。 登校時と同じような、なんでもない会話がしばらく続く。学園のある鳴島市の、とある商店街に足を踏み入れ、しばらくぶらぶらと歩いたところで、紫帆が一軒の喫茶店の前で立ち止まった。 「着いたよ。ここがみんなとの待ち合わせの場所」 それはどことなくうらぶれた感じのする喫茶店であった。 入り口の扉はなんとなく薄汚れているし、扉の硝子窓から覗くことのできる店内も照明が控え目で、なんとなく仄暗い印象を与える。よく見れば、その硝子窓にしたところで、手入れがまるで行き届いておらず、あちらこちらが煤けているのだ。 ドアノブにかけられたプレートの消えかけた文字で、この喫茶店の名前が『ぺリゴール』であるということが辛うじて分かる。 「……大丈夫か、こんな店でコーヒーなんか飲んで」 率直な感想がこれである。 飲食店として、ここまで手入れが悪いと、なんだか衛生上の問題がありそうな気がする。 大雑把な性格の柊でさえも、これにはさすがに二の足を踏んだ。 「大丈夫、大丈夫。ここじゃ、コーヒーは飲めないから」 「それは大丈夫じゃねえってことだろうが」 間髪入れないツッコミの鋭さは、常日頃の反復の賜物か。つまるところ柊の日常は、ツッコむ相手には常に事欠かないのである。 「いや、本当に大丈夫。ここ、メニューにコーヒーがないから」 「そういう意味かよっ! ていうか、なんで喫茶店でメニューにコーヒーがないんだ?」 もっともな疑問を口にする。 紫帆曰く、「ここのマスターは自分の淹れたコーヒーは自分で飲むために淹れる」ので、客にコーヒーは出さないから、だそうだ。 「そんなんで商売になるのか……?」 「あはは、言われてみればそうだよね。でも、マスターは本業じゃないからいいんじゃないかな」 不可解なことを言いつつ、紫帆が入り口の扉に手をかける。 カランコロン、とこれだけは奇妙に清涼感のあるベルの鳴る音が響き、二人を迎え入れた。 やはり店内の照明は薄暗い。これは、ムードのために灯りを落としているのではなく、ただ単に蛍光灯が消えかかっているせいだ。ぐるりと店内を見回せば、紫帆が言うところの「待ち合わせの相手」、「柊に合わせたい人たち」の姿が視界に入る。 黒いズボンに包まれた長い脚を無造作にテーブルに投げ出し、深く椅子に腰掛けた顎鬚の男。 無気力そうな表情はどこか気だるげで、シニカルな微笑をたたえた口元に火がついたままの煙草をくわえている。歳の頃は三十前くらいであろうか。入店した二人をちらりと見ると、「おう、お疲れ」と紫帆に短く挨拶をして、軽く右手を上げた。 待ち合わせのもうひとりの相手は、外見からすると紫帆と同年代の少女である。 瀬戸川学園のブレザーを身につけた、長い髪の少女であった。大きな丸い眼鏡をかけ、なぜか腕組みをしたまま仁王立ちで二人を出迎えた彼女は、紫帆の姿を見止めると、 「紫帆、遅い」 あからさまに不機嫌な顔をして彼女に文句を言った。時刻は夕方の六時をとうに回っている。 放課後に待ち合わせる、と約束をしていたのだとしたら、確かにこの時間は少し遅いかもしれなかった。 「ごめんね、委員長」 紫帆が眼鏡の少女に謝る。なんだか少し悪い気がして、柊は紫帆を押し退けるようにして一歩を踏み出すと、 「こいつを責めないでやってくれよ。時間に遅れたのは、俺のせいだ」 そう言った。もともとは自分が放課後の待ち合わせ時刻を過ぎても、教室で寝こけていたせいなのだ。初対面の少女に向かって、紫帆をかばうようにそう口を挟むと、委員長と呼ばれた彼女が、そのとき初めてこちらを見る。 眼鏡越しにこちらを窺う視線がどことなく硬い。 それは、明らかに柊のことを警戒している内心の現れのようだった。 「紫帆の言っていた、オーヴァードじゃないのにジャームと戦える男、っていうのが彼?」 「うん。登校中、ジャームの群れに襲われていたところに私が駆けつけたっていうのは、委員長に昼間話したとおりだよ。ちょっと話を聞いたんだけど、彼、オーヴァードじゃないって」 紫帆の言葉に、腕組みをしたままの姿勢で『委員長』が沈思黙考する。 そのまま数分間、口の中でなにごとかをぶつぶつと呟きながら考え込む様子は、明らかに周囲のことなどお構いなしといった風情であった。 自分の思考に没頭し始めた彼女を、紫帆は涼しい顔で黙って見ていたし、顎鬚の男にいたってはそちらを見向きすることもなく、欠伸混じりのだらけきった姿勢で二本目の煙草に火を点けていた。 なんというか気まずい。他の二人は慣れているのだろうが、他所様のテリトリーに紛れ込んだままで放置されるというのは、これでなかなか気を使うものである。 さすがに柊がこの雰囲気に耐え切れなくなった頃、 「分かりました。まず、基本的なことから説明させた貰ったほうが良さそうですね」 ようやく顔を上げ、『委員長』が柊に向かってそう言った。 「まず、遅れましたけど自己紹介を。私は八重垣ミナリ。こちらは……」 そう言いつつ、カウンターの顎鬚男を振り返り、 「九条柳也さん。喫茶店ぺリゴールのマスター兼UGN鳴島支部の支部長です」 よろしく、の言葉の代わりに軽く手を上げ、こちらに向かって振ってみせる顎鬚の男 ――― 九条柳也。せめて起き上がって挨拶したらどうですか、と委員長 ――― 八重垣ミナリが彼を叱り付けると、 「いちいち細かすぎるんだよお前は」 柳也がぼやき、“三本目”の煙草に火を点けた。 それに反論しようとして口を開きかけ、ミナリは柊を放置していたことに気がついて自制する。 「すいません。話の途中で」 「いや。でも、なにぶん“そっち”の領域に関しちゃあ俺は素人なんだ。色々聞きなれない言葉もあるし、とにかく分からないことだらけなんだよ。その、ゆー、じー……とか、支部長とか、そういうところから、もうさっぱりなんだ。だから、教えてもらえると助かる」 苦笑しつつ、頭をかきながら柊は率直に述べる。 ミナリの視線がわずかに和らぎ、警戒を少し解いたようだった。 分からないことを分からないという素直さと、ミナリに教えて欲しいという謙虚な態度を、彼女は少し好もしく思ったようである。 「そうですね。元々、私も紫帆からそれを頼まれていましたから。さっそく、レクチャーを開始しましょうか? ええと ――― 」 「柊。柊蓮司だ。さっきコイツにも断ったんだが、悪いが下の名前で呼ばせてもらうぜ、ミナリ。習慣っていうか、癖なんだ」 「こだわりませんよ、柊さん。うん、私は柊さんって呼ばせていただきます。なんというか、このほうがしっくりきますから」 笑いながらミナリは承諾の意を示す。笑顔を作り、表情から険しいものが取れると、歳相応に可愛らしい少女の顔になる。どこか張り切った調子で学生鞄からノートと鉛筆を取り出すと、 「これから、この世界を取り巻く現状について出来る限り詳しく、お教えします」 ミナリは意気揚々と言うのであった。 ※ ミナリの語る、驚愕すべき世界の真実。 十九年前に世界中にばら撒かれたレネゲイドウィルスのこと。 感染者に超常的な力を与え、オーヴァードとして覚醒させるこのウィルスは、また『ジャーム』と呼ばれる怪物を生み出す危険性を秘めているということ。 秘匿された真実の裏で、通常人とオーヴァードの間の軋轢を防ぐため、また日常を護るために結成された組織があること。ミナリたちが、その組織に所属しているということ。 また、自分たちとは異質の、レネゲイド犯罪やテロリズムにその力を悪用するものたちもいるということ、そしてそんな連中とも戦っているのだ、ということ。 シンドローム、エフェクト、エトセトラ、エトセトラ。 かつて普通の人間だった紫帆が、オーヴァードとして覚醒したときと同じように、ミナリは柊に親切丁寧なレクチャーを施した。 なにも知らない素の状態の人間に、こういう非常識な現実を事実として受け止めさせるということは、実はひどく大変なものなのである。 だからこそ丁寧に。だからこそ、分かりやすく。 紫帆のときは、彼女が幸い素直な性格だったし、非現実的なことでもそれを受け入れられるある種の図太さがあったから、さほど苦労はしなかった。 それでは、柊蓮司の場合はどうであったか。 (紫帆の話だと、ジャームの群れにも物怖じせずに戦っていたというし、もともとレネゲイドとは異質の超常の力を持っていたみたいだから……) 存外、簡単に私の話を理解してもらえるであろう、と。ミナリはそう考えていた。 しかし。 柊蓮司は、ミナリも予想していなかったところで理解につまずき、ミナリの頭を抱えさせる羽目になったのである。 「 ――― 紫帆が戦ってる姿を見てるから、お前らの力を疑うわけじゃないんだけど……」 小難しい顔をしながら、柊が何度目かの唸り声を上げる。 「また、そこに話を戻すんですか? この力はそういうものだ、って理解してもらえればそれでいいですよ。原理とか、そういうものは私にだって詳しいことは分からないんですから」 ミナリが呆れ顔で言った。 ウィルスに感染して力を使えるようになる、ということが柊にはいまいちピンと来ないようなのである。 「それを言うなら、“魔法使い”なんて単語が出てくるほうが、私にとっては不可解です」 頬っぺたを膨らませながら、ちょっと拗ねたようにミナリがそっぽを向く。 持てる力の源や置かれた立場が違えば、なかなかお互いを理解することは難しいものだ。 初めに月衣やエミュレイターのことを簡単に柊が説明したときは、 『真面目に言ってるのか?』 『個人結界って、私たちのワーディングみたいなものナノカナ……?』 『テレビゲームのやりすぎじゃないんですか?』 などと、オーヴァード三人組は口々に疑問形の台詞を柊にぶつけてきたし、柊は柊で、ミナリによる“もうひとつの変貌した世界”についての説明を、理解不能、という顔で初めは聞いていたものである。 そして、レネゲイドと呼ばれるウィルスが、彼女たちの不可思議な力の源である、というくだりに関しては、 「なんでウィルスに感染してそうなるんだろう」 と、いかにも不思議そうな顔をして、柊はしばしばミナリの説明を中断させたのである。 『ウィルス』という常識的な概念が、『超常的パワーをもたらす』という非常識を内包しているというこの現実。 『世間一般の常識に照らし合わせれば非現実な存在(エミュレイター)が、世界結界のほころびを縫って現世に侵入する』という理屈に照らし合わせると、矛盾を孕んでいるような気さえするのである。 ウィザードの持つ感覚的な理性に反する、いわば咽喉につまった魚の小骨のような違和感を覚えるのであった。 それに反してミナリたちはといえば。 これは言うまでもなく、ウィザードでもオーヴァードでもない普通人が、『魔法使い』という単語に触れたときと同様の感想しか抱くことが出来なかったことも事実なのである。 まして魔王などといわれた日には、ミナリのように『ゲームのやりすぎ』という揶揄が飛び出してしまうのも仕方のないことであった。 「わーかってるって。これは、ただ俺の感覚的な問題ってだけのことだ。どっちも非常識で、だけどどっちも現実なんだろ? そんなことは、あのジャーム……とかいう化物を目の当たりにしたら、疑う余地はねえ」 ミナリをなだめるように柊は言う。それでもやっぱり、 「とは言うものの……やっぱりなあ ――― 」 しきりに首をひねる柊なのであった。そんな二人のやり取りをじっと聞いていた紫帆が、おっかなびっくり手を挙げて、 「あの……柊クンは、“シンドローム”って、わかってくれた……?」 そう柊に尋ねる。 「おう。紫帆のキュマイラとか、柳也さんのバロールとか、ミナリのサラマンダーとか……のことだろ?」 「わ、よく覚えたね。うん、その通りだよ。もし、柊クンが分かりにくいと思うなら、こう考えてみたらどうかな?」 少し自信なさげに、それでも精一杯彼女なりに考えた結果として、紫帆が噛み砕いて解説する。 「あのさ、レネゲイドっていうのは柊クンが考えてる以上にすごいウィルスなんだよ。普通の、私たちの常識で知っているウィルスよりも、人体に及ぼす影響が大きいの。たとえばインフルエンザにかかると、すっごく熱が出るでしょ?」 「おう」 「あれのグレードアップヴァージョンが、サラマンダー。すごい熱を通り越して、身体から火が出ちゃうの」 「ちょっと、紫帆!?」 「おお、なるほどな! それなら分かるぜ!」 完全に腑に落ちた顔をして、柊がポン、と手を叩いた。 ミナリにしてみればたまったものではない。自分のシンドロームをすごいインフルエンザと乱暴にくくられた挙句に、あれだけ一生懸命説明してもどこか納得していなかった柊が、紫帆の解説であっという間に理解してしまうのだから。 「私の、私の説明はなんだったんですか!?」 テーブルをバン、と叩いて激昂するミナリを、いつの間にか身を起こしてした柳也が笑いながらなだめる。 「はは。ミナリ、お前さんの説明はあまり初心者向きじゃねえんだよ。ちょっと話が長いし、それに一度に多くの情報を詰め込みすぎる」 少し一息入れたらどうだ、と柳也が三人に缶コーヒーを手渡した。 喫茶店のマスターなのに。 「なんですか、これ」 「商店街の福引で一年分当たった。さっさと処分しちまいたいんだが、あいにく俺にはこういうのは不味くて飲めやしない。金は取らねえから好きなだけ飲んでいいぜ。俺は ――― 」 ミナリの質問に答えつつ、柳也はコーヒーサイフォンの準備を始める。自分が飲む分だけはキチンと淹れる。そういう腹積もりのようだった。 「まったく……本当に、お客さん来なくなりますからね」 「昔もいまも閑古鳥だ。これからだってそれでいい」 呑気なことを言いながら、柳也はニヤリと口元だけで笑う。 「……それに、どうにもウチは、コーヒーを飲みに来る目的じゃない客が多くて、な」 柳也の視線の先は、ぺリゴールの入り口の扉を凝視していた。 ざわり、と一同に緊張が走る。 「千客万来、だな。今夜は」 柊たちも柳也に数瞬遅れて、戸外に何者かの気配を感じて立ち上がった。 微かに聞こえる車のエンジン音。そして停車する音は数台分。 車のドアの開閉音が立て続けに聞こえ、ぺリゴールを囲む空気が微かに揺れたようだった。 四対の視線が入り口を睨みつける。三人のオーヴァードがそれぞれ身構え、柊も自らの月衣に手を差し込み、握り慣れた魔剣の柄に手を伸ばした。 そして、膨れ上がる緊張感の中、開かれた入り口から意外な人物たちが姿を現す。 「その警戒心の強さと鋭敏さ。UGNの一員としての貴方たちを頼もしくは思いますが、とりあえずは殺気を抑えていただけませんか」 高価そうなスーツに身を包み、穏やかな笑みを浮かべたひとりの男が、そこには立っていた。 「あらあら。そんなに警戒しなくても、取って食べたりはいたしませんわ、柊さん?」 シックな黒のドレスも目に麗しい、小柄で華奢な銀髪の美少女が後に続く。 「霧谷さん!」 「なっ!? あ、アンゼロットっ!?」 三人のオーヴァードと柊蓮司が、違う名前を同時に呼ばわり硬直する。 ユニバーサル・ガーディアンズ・ネットワーク ――― UGNの日本支部長、霧谷雄吾と。 ウィザードであれば知らぬものなし、“真昼の月”の異名をとる世界の守護者、アンゼロット。 旧知の仲のごとく、二人連れ立ってぺリゴールに入店してきた二人の珍客を、紫帆たちと柊蓮司は、ただ口をあんぐりと開いて見つめたまま、しばらくの間言葉を失っていた ――― (続く) ← Prev Next →
https://w.atwiki.jp/miyabi733/pages/35.html
「…ねえ……お姉ちゃん…起きてよ…起きてってば…」 …………う………ここは…………? 「よかった……気づいたんだね、お姉ちゃん…」 貴女は……? 「あう……わたしは…クレアシオン、みんなからはクレンってよばれてます」 クレアシオン…?何処かで…… クレン「あう…お姉ちゃん…?どうしたの…?」 …いや…なんでもない…っ!? (痛い、腕と足が猛烈に痛い……) クレン「あう!?まだ動いちゃダメですよ!!」 クレン「もう……お姉ちゃんがいきなり襲ってくるから反射的に強く反撃しちゃったのです…あう」 私が…?……駄目だ、記憶がとんでいる… クレン「記憶が…ないんですか?」 無い、貴女と戦った以前の記憶が…とんでいる クレン「じゃあ……お姉ちゃんの…名前は…?」 私の名前…確か…… 「神無月………神無月 そら」 To be Continued…?
https://w.atwiki.jp/chaosdrama/pages/3001.html
「…ねえ……お姉ちゃん…起きてよ…起きてってば…」 …………う………ここは…………? 「よかった……気づいたんだね、お姉ちゃん…」 貴女は……? 「あう……わたしは…クレアシオン、みんなからはクレンってよばれてます」 クレアシオン…?何処かで…… クレン「あう…お姉ちゃん…?どうしたの…?」 …いや…なんでもない…っ!? (痛い、腕と足が猛烈に痛い……) クレン「あう!?まだ動いちゃダメですよ!!」 クレン「もう……お姉ちゃんがいきなり襲ってくるから反射的に強く反撃しちゃったのです…あう」 私が…?……駄目だ、記憶がとんでいる… クレン「記憶が…ないんですか?」 無い、貴女と戦った以前の記憶が…とんでいる クレン「じゃあ……お姉ちゃんの…名前は…?」 私の名前…確か…… 「神無月………神無月 そら」 To be Continued…?
https://w.atwiki.jp/bokuhaha/pages/25.html
「では、これで終了する。速やかに部活行けー。」 今日もいつものように全授業が終わり、生徒たちの気が抜ける。 この時間以降、生徒たちは部活や委員会などの時間を過ごす。 教室で談笑する者、早々に部活に行く者、委員会での集まりに向かう者、様々だ。 有栖川歌恋は、いわゆる帰宅部である。 いつもなら早々に帰宅し、課題などをするのだが、 今日に限っては教室でぼーっとしていた。 つまり、やる気が出ないのだ。 彼女は鞄を膝に抱えたまま椅子に座り、時折小さくため息をついては机を見つめていた。 そうして、ほとんどの者が部活動に向かい、教室内に人がいなくなっても、歌恋はまだ教室に残っていた。 歌恋は窓の外を見て、グラウンドで走る生徒たちを、興味なさげに見ていた。 と、そこへ、委員会を終えたムスカが 「くそ、委員会、会議クソ長いんだよ。滅ぼしてやる…!」 などと、不穏な悪態をつきつつ教室に帰ってきた。 「あれ?歌恋、帰んないの?」 「え?ええ……なんだか、帰りたくなくて…」 「ふーん?そうなんだ。」 短い言葉を交わしたあと、ムスカは教室を出て行こうとして、 体操服のまま走ってきたRとあやうくぶつかりそうになった。 「よかった!歌恋さんまだいた!」 Rは息を切らしながら(もちろんロボなので演技だが)、歌恋の方を見て笑った。 「?、どうされたんですか?」 「や、なんか、歌恋さんのことずっとまってる人いるんだよね。校門で」 「……。」 歌恋は眉をひそめて、黙った。 きっと帰るのが遅かったからお迎えが来たんだろうなー、と、ムスカは考えていた。 しかし、Rは興奮気味に 「それが、すごいイケメンなんだよね!なのにオンナのカッコしてんだよね!!」 と抜かした。どういうことだ?と残りの二人は思った。 「とにかく!一緒に来てよ!」 Rに急かされるまま、歌恋と、なぜかムスカも、ひとまず校門に向かった。 ---- 「歌恋!まってたんだぞ!!」 校門に着くなり、歌恋は件の彼?に抱きつかれた。 「ホントだ、イケメンなのになんで女装してんだろう。」 「だろ?スッゲー気になるよな…。」 突如現れた女装イケメンの存在に、部活をしていた他の連中も遠巻きに集まっていた。 「ちょ、ちょっと!離れてください!!」 歌恋は慌てて彼の腕を振りほどいた。 「え?歌恋、ボクのこと忘れちゃったの?」 彼は少し寂しそうに、歌恋から距離を取った。 「よく見てよ、歌恋。ボクたち小さい頃はずっと一緒にいたじゃないか……」 「えっ………ま、まさか、京…なの?」 「そうだよ!久しぶりだね、歌恋」 どうやら二人は知り合いだったらしい。 だが変だ、と取り巻きたちは思った。 なぜ天下のお嬢様である有栖川歌恋が女装イケメンなんかとずっと一緒にいたのだ?と。 「き…、京?なんで女の子のかっこしてるの…?」 「え?」 どうやら何かわからないことが起こっているみたいだ、と取り巻きたちは思った。 「や、ヤダな、歌恋?ボク…女の子だったんだよ?」 「え?」 「ほら、この制服見てよ。」 「それは…私が行く予定だった私立の…女子中の?」 「そうそう!今、そこに通ってるんだよ!」 ありえない、と彼?以外の全員が思ったことだろう。 彼?が着ているのは確かに有名な私立の女子中のものだったが、 雰囲気は優しい男の子そのものだったからだ。 「京…?」 「京子、だよ。歌恋」 「ちょ、ちょっとまって、……ありえないわ」 歌恋は、その場にいる誰よりも混乱していた。そして、動揺していた。 そこへ、 「ほら、こうしたら思い出すでしょ?」 そう言いながら、京子と名乗った人物はもう一度、歌恋を優しく抱きしめた。 「……うん、ほんとに、京なのね…?」 「そうだよ、といっても、ホントは京子なんだけど…」 どうやら本当に女の子だったらしい。 取り巻きたちはざわついたが、それにきづいた歌恋の 「ここにいたら皆さんに観察されてしまいますから、少しどこかへ寄って私の家に行きましょう」 という言葉で、それぞれの部活に帰っていった。 ---- 「それで?京。どうしてあなたは」 「待って、歌恋。確かに質問はたくさんあるだろう。わかるよ。ボクも歌恋に聞きたいことたくさんあるよ。だけど、それは家に帰ってから。今は再開できたことを喜ぼう、ね?」 「え?あ…うん、別にいいわよ…」 そうして、京子はそっと歌恋の手を握った。 沈黙。 しかし、二人の間に気まずい空気はなく、そこにはなつかしい空気が流れていた。 「さて…、どこに行こうか?」 「気が変わったわ。まっすぐ帰りましょう。」 「そっか、歌恋はせっかちだなぁ」 「そんなんじゃないわよ」 ---- 「それで?くわしく聞かせてもらうわよ?」 家に帰るなり、今日の予定を全てキャンセルした歌恋は、京子を部屋に連れ込み、 紅茶を出してからそう言った。 「うん、じゃあ歌恋と離れることになったきっかけから話すよ。」 「ボクは歌恋と離れるまで、ずっと男として生きてきた。それはわかるよね?」 「ええ。京…子のお父様のお仕事をずっと手伝ってきたんでしょう?」 「うん、……呼びにくいなら、京でもいいよ。ボクもそれがいいからさ」 「うん。ごめんなさい」 「いいよ」 京子は優しく歌恋に微笑みかけた。 「それで、父の仕事も一段落して、部下に任せても問題ないと判断したから、ボクは自分の人生を生きることになったんだよ。」 自分の人生。京子の数年間は、本当に父親のためだけの人生だった。 京子は、その数年の出来事を、歌恋にすこしずつ説明し始めた……。 ---- ボクは、いらない子だった。 出来ない子だった。 「あなたなんて、私がいなかったら誰からも見放されて死ぬだけの存在なのよ。」 お母さんはそういった。お母さんは決して自分を見放さないと言った。 「だから、私の言うことだけ聞いていればいいの。そうすればとっても可愛い子なの。」 お母さんだけは、認めてくれていた。かわいいって、言ってくれた。 だから、努力した。できない子になりきった。 …本当は、勉強はできた。特に学校の勉強は、簡単だった。100点を取ろうと思えば簡単に取れた。 学校の勉強以外にも、こっそりお父さんの書斎に潜り込んでいろんな論文を読むのが趣味だった。 それに、謎解きや推理小説が本当に好きだった。考えることが得意だった。 でも、できない子は、できない子でないといけなかった。 お母さんの強すぎる依存願望にも、付き合って生きていこうと決めた。 「お母さん…ありがとう」 「当然よ。私が、私だけが一生守ってあげるからね。京子」 それから1年がすぎ、お母さんは病院からでられなくなった。 でも、お父さんは全然悲しそうじゃなかった。 取引先のどこかにいい人がいたからだ。 お父さんは「仕事の都合」で家に帰ることが少なくなった。 できない子はそれから、できる子になりきらないといけなかった。 まず、長くて気に入っていた黒髪をバッサリと切って、男の子として父の秘書になった。 元々できない子じゃなかったから、できる子になりきるのは簡単だった。 むしろどちらかといえばできる子でいる方が楽だった。 父はできない子だと思い込んでいたので、かなり驚いていた。 「まいったなあ…どちらも大切な取引なのに…」 ある日、父は悩んでいた。取引先との商談が重なってしまったのだ。 「父さん。ボクがいくよ。」 迷わずそう口にした。自分でも不思議だったが、失敗はしないという自信はあった。 しかし、できる子を何年もできない子だと思い続けてきた父はたっぷり数十分は悩んで、 「しかたない。でも、粗相はするなよ。わからないことがあったら電話してくれればいいから」 と告げた。 結果として、商談は大成功。できる子は、本当にできる子だった。 取引を成立させるどころか、たくさんのオプションまでつけてもらえたのだ。 父は驚いたが、京子を見直し、それからというもの商談には必ず京子を連れて行くようになった。 そうして、京子は何回かの一人での交渉を経験した。 その内の一つが、有栖川家のグループの一つだった。 「今回はお前の従姉妹の家の会社だから、少しくらい気楽にやってくれてもいい。たしか、同年代の娘もいたはずだ。よかったら仲良くさせてもらえ。」 「わかった。父さん。」 ---- 「そうして、私と出会ったのね?」 「そういうこと。すごいでしょ?」 京子は、誇らしげに自分の経歴を語った。 「……待って、お母様は、どうなったの?」 歌恋がそのことを口にすると、京子の表情は曇った。 「いちお、生きてるよ。だけど、母さんの前ではボクはまだ出来ないボクのままだけどね」 「そう……」 「そんなことより!歌恋は元気だった?寮からずっと出られなかったから、毎日心配してたんだよ?公立の学校にいるんだね、びっくりしたよ。」 「え?元気よ…うん」 「本当に?……誰か、心を開ける人はいるの?」 「……それは…」 「いないの…?」 「……まあ、そうなるわね、少し試みた頃はあったけど……ダメだったから。」 歌恋が気まずそうに答えると、なぜか京子は少し顔をほころばせた。 「それじゃあ、歌恋の全部を知っているのは、ボクだけなんだね…?」 「え、…うん。」 「そっか、うん。それで、試みたって、なにしたの?」 「少し親しくなった子がいたから…、いろいろ相談しようとしたら怒られて、終わったわ」 「そう……参考までに聞いておくけど、それは男の子?」 「え、ええ、まあ」 「ふーん、そっか。ま、いいや。それは追々調べるとして。歌恋、大丈夫だった?」 「え?何が?」 「だって、そんな状態で、ずっと頑張って頑張って、辛かったんじゃないの?」 「まあ、辛いこともあったけど…、一応なんとかなってるから…」 「そうやって、また強がるんだから。」 ああ、だめだ、と歌恋は思った。結局、どれだけ虚勢を張っても京子には全部お見通しなのだ。 昔からそうだった。 「これからはそばにいるから、歌恋…」 といいつつ、京子は歌恋を抱きしめた。 つづくのかも
https://w.atwiki.jp/kokohaza/pages/221.html
【名前】レイ 【性別】女 【年齢】12歳 【職業】研究員助手 【性格】クール 【口調】どこか無機質(モデルはまどマギのキュゥべえ) 【体格】156くらい 【好き】楽なこと、甘い物、コーヒー 【嫌い】敵 【信念】自分に正直に 【服装】ワンピース&スパッツ(よく動くため) 【備考】 元アンブレラの生物兵器。 アンブレラの研究室では5000番目で成功したため5000番と呼ばれていた。 10歳ごろに精神が急成長し、今の性格になった。 兵器としての自分の現状に嫌気がさしアンブレラの研究施設から逃走。 今はある男(科学者(樋口翔))と手を組んでいるようだ。 ゾンビ、ハンター、タイラントなどアンブレラが生み出した化け物共の細胞は一通り所有しており、肉塊になっても生き返るなどの脅威的な再生力&石を音速で蹴り飛ばすなどの筋力&普通の人間が丸一日かかる問題をチラッと見ただけで解く頭脳など、まさに人類の進化の究極を極めた者だと言えるだろう。 本人は、今まで研究施設と戦場の間を行き来していたため少々普通の人間と言うものを理解していない。 今の目標は棒人間の謎を解く事と、人の心について理解することらしい。
https://w.atwiki.jp/shinsekaiju_maze/pages/26.html
新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女テンプレ スレを立てる時、スレタイは誤字らないようコピペ推奨。 情報がまとまり次第随時テンプレ文候補募集中(主にQ A) スレタイ 【3DS】新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女 Part** 本文 ・名称:新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女 ・種別:3DダンジョンRPG ・機種:ニンテンドー3DS ・発売:2013年6月27日 ・セーブデータ数:1個 (全モードで共通) ・価格:6,279円 / DL版 5,300円 前スレ 【3DS】新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女 Part** http //toro.2ch.net/test/read.cgi/handygrpg/**********/ 次スレは 900が立てること。立てられないなら次のレス番号を指定。 ◆公式サイト http //ssq.atlusnet.jp/ ◆新・世界樹の迷宮Wiki http //www51.atwiki.jp/shinsekaiju_maze/ ◆関連スレ 【DS】世界樹の迷宮I B223F http //toro.2ch.net/test/read.cgi/handygrpg/1369835638/ 【DS】世界樹の迷宮II 諸王の聖杯 148F http //toro.2ch.net/test/read.cgi/handygrpg/1364230820/ 【DS】世界樹の迷宮III 星海の来訪者 B268F http //toro.2ch.net/test/read.cgi/handygrpg/1367979605/ 【3DS】世界樹の迷宮IV 伝承の巨神 Part307 http //toro.2ch.net/test/read.cgi/handygrpg/1371302417/ 世界樹の迷宮のキャラは古代ヤドカリカワイイ 第56階層 http //kohada.2ch.net/test/read.cgi/pokechara/1362930885/ ※テンプレは新情報に伴い随時改訂して下さい。 Q. どんなゲームですか? A. 歯ごたえのある戦闘、セルフマッピングのシステムなどが好評を博す 3DダンジョンRPG、 「世界樹の迷宮」シリーズ。その1作目を3DSで再構築した、外伝的な新作。 5人の決められたキャラクターで独自の展開をみせる"ストーリーモード"と、 自由なキャラクターで1作目に準じた冒険をする"クラシックモード"の2つを搭載。 3DSを持っているなら、eショップで配信されている体験版をプレイしてみるといいだろう。 Q. 通信プレイ関係は? QRコードは? A. インターネットプレイやいつのまに通信は、おそらく無い。(公開パッケージにアイコンが見当たらない) ローカル通信プレイは無し。 すれ違い通信及びQRコードによるギルドカード交換は有り。IVのようにキャラではなく、グリモアを添付できる。 Q. 初代のクリア後パスワードや、IVで出力したプレイデータはこれに使えるの? A. 今のところ使えそうな気配は無い。 ■ストーリー/クラシック共通の新要素、追加要素など■ ・難易度はピクニック、スタンダード、エキスパートの3種類。街にいる時だけ変更可能。 ・音楽はFM音源/生演奏が選べる。いつでも変更可能。 ・その他、迷宮での移動速度やセミオートマップなど4ページに渡る多彩なOption。 ・装備すると様々なスキルが使える"グリモア"。グリモア管理を始めとしたサポートを担当する新施設"ギルドハウス"。 ・一度踏破したフロアの階段にいつでもワープできる"フロアジャンプ"機能。 ・転職システム。詳細は下記。 ・サブクラスは無し。 ・IIIの大航海やIVの大地のような、ダンジョン以外のマップは無し。 Q. 転職ってどんな仕様? A. Lv30以上で可能なクラスチェンジ。外見とパラメータは現在の職業のまま、新たな職業のスキルが使用できる。 Lv60以上だとLvが半分に、以下ならLv30になる模様。高レベルで転職するほど、スキルポイントや能力値にボーナス。 Q. グリモアって何? どんな仕様? A. スキルが入った魔導石のようなもの。装備すると中のスキルを使える。 武器防具とは別枠だが、ギルドハウスでしか付け外しが出来ないので注意。休養すると外れる。 新しくグリモアを入手するには、戦闘中に発生する「グリモアチャンス」を待つ必要がある。 詳細は 5を参照。 Q. ストーリーとクラシックのデータは、それぞれ別にセーブしておけるんだよね? A. 無理。ダウンロード版でバックアップ機能が使えればあるいは…。 ■ストーリーモードについて■ Q. 主人公は固定? パーティーメンバーはこの5人だけ? A. 男主人公で固定。メンバーも固定。ただしIVのように、一時的なゲスト加入はある模様。 Q. フルボイスですか? A. パートボイス。Iでは無言だったNPCも喋る。雰囲気としては「ノーラと刻の工房」に近い。 Q. どんな物語なの? 初代と同一世界、同一時間軸なの? A. 初代の裏であったかも知れない、特定キャラクターたちの物語がストーリーモード。 迷宮だけでなく遺跡(グラズヘイム)にも潜り、明かされなかった謎や秘密に迫っていく。 マルチエンドや物語の分岐は無いとの事。 Q. ダンジョン構造も同じ? 新しいモンスターはいるの? A. 1Fは同じ、2Fからは改築されてる。もちろん新モンスターも新FOEもいる。遺跡限定のボスなんかもいるらしい。 ■クラシックモードについて■ Q. そもそもクラシックモードって何? A. 初代のリメイク。従来のキャラメイク式パーティー編成で世界樹の迷宮に挑む。 Q. 単純移植ではない? A. ストーリーモードと同じく、新しい計算式・スキル調整・システム・施設などを搭載。 マップも改築され、クエストやミニイベントも増量しているため単純移植とは言い難い。 Q. ブシドー、カースメーカー、ハイランダー、ガンナーは使えるの? A. ブシとカスメは最初から解禁されてる。 ハイランダーとガンナーは、クラシックで使うならストーリーモードのクリアデータが必要。 立ち絵は主人公とフレドリカそのままだが、あくまで顔が似てるだけの一般人らしい。 Q. 「あの」ミッションで分岐はありますかね……? A. 無いと明言された。現実は非情である。 Q. ケフト施薬院どこいったん? A. キタザキ先生は超失踪しました。 Q. ダンジョン構造は変わってるの? A. 2Fから改築あり。2Fを見る限り、面影だけ残して相当いじってある様子。 ■キャスト■ 主人公:鳥海浩輔 フレドリカ・アーヴィング:伊瀬茉莉也 サイモン・ヨーク:小野大輔 アーサー・チャールズ:豊永利行 ラクーナ・シェルドン:伊藤静 アレイ(宿屋):宮田コウキ(宮田幸季) シリカ(武器屋):斎藤千和 ローザ(ギルドハウス):茅野愛衣 オースティン(ギルドハウス):鶴岡聡 サクヤ(酒場):大原さやか ガンリュウ(ギルド):黒田崇矢 ヴィズル(執政院):中田譲治 オレルス(執政院):川原慶久 レン(ブシドー):平田宏美 ツスクル(カースメーカー):阿澄佳奈 ■体験版■ 現在、eショップにて配信中。1174ブロック、起動回数は30回まで。 製品版とのおおまかな違いは以下。 ・ストーリーモードのみ ・探索は3F最初の部屋まで ・レベル上限は10 ・転職できない。休養は可。 ・一部アニメやBGM、機能がカットおよび劣化している。 ■グリモアについて(体験版の範囲内)■ Q. どうやって入手する? A. グリモアを装備したキャラには戦闘中ランダムで「グリモアチャンス」が起き、戦闘後ランダムで新グリモアを入手する。 入手確率だけならギルドハウスのGOODお茶で100%にすることが可能。 チャンスは希少種やFOE相手だと出やすくなり、オートバトルや防御をしていても出る。 Q. グリモアの中身はどうやって決まる? A. ・チャンスが発生したターンに敵が使ったスキル(強化スキルとかもおk) ・チャンスを発生させたキャラクターの所持スキル(パッシブやグリモアも含む) の中から抽選。 Q. グリモア合成の仕様がわからん。 A. 1番目と2番目に入ってるスキルを、1番目のスロット数だけぶち込める。最大スロット数は7らしい。 3番目は装備ボーナス(アイコンの武器が装備できるようになる)を決めるだけ。 Q. I、VS、FLってなんぞ? A. グリモアの種類。IならLv5以下、VSならLv6~9、FLならLv10(☆)のスキルが入ってる。 Q. メイドさんのお茶でGOODやBAD、狙った効果が出せないよドラえもん! A. GOODやBADが付くかどうかは、戦闘1回ごとに再抽選。 効果の中身は、迷宮に入るごとに再抽選。タイトルに戻るでもおk。 ■難易度について■ ピクニック:帰還アイテムが使っても無くならない。全滅してもゲームオーバーにならない。 スタンダード:敵がやや強くなる。全滅しても一度だけゲームオーバーにならない。 エキスパート:敵がすごい強くなる。全滅したら終わり。Ⅳのノーマルよりちょっと難しいくらい? 難易度は街でしか変更できないので注意。 序盤はどの難易度でも易しめだが、進むにつれて難しくなる。特にエキスパートでは顕著らしい。 慣れてきたら難しく、無理だと思ったら易しく。自分に合った難易度を見つけよう。 ■名前について■ 主人公とギルドハウスに6文字、ギルドに8文字までの名前が付けられる。今作からは漢字も使用可能。 様々な場面で呼ばれたり、ギルドハウスに至っては街の施設名として並んだりもするので、よく考えて付けよう。 あとから変更することは出来ない。
https://w.atwiki.jp/legends/pages/1623.html
バールの少女・番外編 02 ソレが『組織』「本部」へやって来たのは、午後のお八つの時間を回ってからだった。 黒服?「おいたわしや……」 頭部をガスマスクで覆った黒服は、少女化した先輩の黒服の近くまで歩み寄って来た。 黒服?「嗚呼こんな、こんな身体になってしまって。ああもう、可愛いアホ毛まで生やしちゃって」 黒服Y「だれだっけ?」 周囲の黒服達の視線を集めながら、 目の前のガスマスク黒服は、よござんす、とばかりにガスマスクに手を掛けた。 黒服?「ん、あれ? 外れない! あ、あれ、ここがこうなって……。 む、ぐ、ぐぐ」 黒服Y「……」 ガスマスクを外そうと躍起になる黒服、 その様子に突き刺す様な視線を送る周囲の黒服達、 そんな中、黒服Yはガスマスク黒服の様子を見ながら―― 黒服Y「あ、もしかして"I"?」 黒服I「くおあああ! 外れない! 首、首が、しまるー!!」 * * * 黒服I「や、やあどうも、お久しぶりですY先輩」 数分の格闘の後、ガスマスクを脱ぎ捨てた黒服Iは まさに窒息寸前といった体だった。 黒服Y「ホント久しぶりだね~。あ、そう言えば 「辺境」に連絡入れたんだけど、誰も出てくれなくてさ。 全員出払ってるの?」 黒服I「実は、その事込みでお話したいのですが……」 そう言って黒服Iはチラと周囲に視線を送った。 先程まで痛いほどの視線を送っていた周囲の黒服達は ガスマスク黒服の正体がIだと分かると、何事も無かったように各自の仕事を行っている。 黒服Y「色々とアレな内容なんだね」 彼――尤も、今は彼女だが――の尋ねに、Iは小さく頷く。 黒服Yは黙ってIの袖を手に取ると、室外へとグイグイ引いていった。 黒服達の居るオフィス然とした部屋から出て、 無機質な印象を与える廊下を歩き、 黒服Yはとあるドアの前で立ち止まる。 すばやく左右を見回して、人の居ない事を確かめると 黒服YはIをドアの向こうへ引っ張り込んだ。 部屋の中は、使われていない小会議室のようだ。 この部屋には窓が無く、照明も切ってあるために 唯一の光は、床近くに設置された使途不明の青色ランプのみだ。 Yは後ろ手でドアを閉めた。 黒服Y「ねえ、後輩」 黒服I「どうしました?」 黒服Y「ワタシとアナタしか居ないからって、襲ったりしないでね」ウルウル 黒服I「……」 グーを作った両手を胸元に持っていき、やたら眼をウルウルさせるY。 黒服Iは口を真一文字に結んで、数秒の間両の眼頭を押さえた。 すぅぅぅぅ、と息を吐き出す。 黒服I「申し訳ありません、Yさん。その、何て言うか…… 悪ノリしてる時間が、あまり無くて、ですね……」 黒服Y「ごめん」 先程の表情から一転、Yは真剣な目つきでIを眼差した。 黒服Y「また、危ない事に巻き込まれたの?」 * * * 黒服Iは『組織』の中でも「辺境」という部分に属している。 無論それは「本部」の認可を受けたモノという訳ではなく、 事情を知る一部の間で通称として用いられている呼称だ。 「辺境」は――極端な物言いをするならば――『組織』から村八分を受けている。 そもそもの発端は、Iの上司である黒服Vが30年ほど前に「ある事件」に与した廉で その制裁として村八分を受ける事になった、という話らしいが 黒服Iはその辺の事情に詳しい訳ではない。 そういった事情があって、「辺境」のオフィスは「本部」内には存在しない。 黒服達の中でも「辺境」という存在を知らない者は多く、 知っていたとしても無視するか厄介者扱いするかのいずれかだ。 まともな対応を行ってくれるのは、黒服Yか禿の黒服くらいなものだし、 実際、「辺境」が手を付けた事件に関わる事も多かったのは、これらの黒服だった。 時折、黒服Iが『組織』に"出向"しては定例報告をおこないに来るのだが 用が済めば早々に引き上げてしまう。 このようにして、他の黒服に接触を図る事自体、何かあるのだという事――。 * * * 黒服Yの真剣な眼差しに対し、Iは慌てた様に突き出した両手をブンブン振った。 黒服I「いやいや違うんですよ。いえ、確かに厄介事には現在進行形で巻き込まれてますけど。 今回は、Yさんに渡す物があって来たんです」 黒服Y「渡す物?」 Iは懐から小さなガラス瓶、バイアルを取り出した。 差し出されたそれを黒服Yは黙って受け取る。 バイアルのラベルには黒字で"Rev-00.3(A-MG)"、 赤字で"対「マッドガッサー効果」用 「都市伝説」のみに使用する事"と記されている。 黒服Y「何これ」 黒服I「『マッドガッサー』のガス作用を解毒する薬剤です」 黒服Y「誰がつくったの」 黒服I「"マック"さんですよ」 黒服Y「ああ、黒服Mだね。なるほど……。 気になったんだけど、この"Rev-00"ってアレの事だよね」 黒服I「はい、そうです。「侵食率抑制剤」の事ですよ」 アレ――つまり、"Rev-00"とは「辺境」の事情を知る黒服達の間で 他言無用とされている薬剤である。 都市伝説と「契約」をおこなった「能力者」の中に 「取り込まれる」といった状態になる者がある事はよく知られている話である。 この「"Rev-00 侵食率抑制剤"」は「都市伝説」に「取り込まれ」、 「末期症状」に陥った「能力者」への使用を想定して作成された薬剤だ。 その名称こそ「抑制剤」だが、実態は「末期症状」にある「能力者」の 「都市伝説からの侵食率」を強制的に低下させるといったものだ。 黒服Mによると、『投薬試験のバイト』『脳は10%しか使われていない』といった 都市伝説から捻り出した代物らしいのだが、「辺境」の方針で『組織』へ報告はおこなっていない。 それ故に、その存在を知る黒服達もまたこの事を秘密にしている。 加えて、"Rev-00"の使用に際しても様々な禁忌や副作用が付いてまわる。 運用が非常に厄介な薬剤なのである。 黒服Y「確か、これって都市伝説自体への投与は危ないんじゃ?」 黒服I「ええ、"Rev-00"そのものは都市伝説への投与は禁止されています。 ただ、この薬剤"00.3"は"Rev-00"を基に作成された解毒剤でして "Rev-00"とは組成が全く違うから大丈夫らしいんですよ」 黒服Y「へぇー」 因みに、この薬剤を作成した黒服Mもまた「辺境」の一人である。 更に言うと、「辺境」のスタッフは上司であるV、部下のM、Iの3名のみである。 黒服I「この解毒剤の使用に関してなんですけど、2つ注意点があります。 まず1つは、「都市伝説」に対してしか投与出来ません。 そして、あと1つは――」 そこまで言うと、唐突にIの顔面の陰影が濃くなっていく。 背後からは「ゴゴゴゴゴ」という効果音まで響き始めた。 黒服Y「何だよ、早く言ってよ」 そして、緊張感が極限まで達した、その時。 黒服I「――臨床試験を、一切、おこなっておりません」パンパカパーン 黒服Y「……すごく危ないね、それ」 黒服I「あ、でも安心して下さい。"マック"さんが言うには大丈夫だそうですよ」 黒服Y「何故だろ、Mの言葉がすごく信用できない」 黒服I「とにかく、イザという時の為に取っておいて下さい」 黒服Y「くれると言うならなら貰っておくよ、ありがとう」 黒服I「あ、あとコレを」 そう言って、Iは再び懐へ手をやった。 黒い正方形のボックスを渡してくる。 黒服I「精神感応金属【オリカルクム】を含有するゴム弾です。64発しか用意出来ませんでしたが」 黒服Y「わあ、これが」 黒服I「"マック"さんの能書きでは、対象を一撃で昏倒させられる様ですね」 黒服Y「頭部か頸部、背骨に命中させさえすればね」 黒服I「あと効果は未知数ですが、霊体系の都市伝説にも有効だとか」 黒服Y「【オリカルクム】って入手しづらいからねー。 Mにありがとうって伝えておいて」 黒服I「あ、あとそれから」 黒服Y「なになに? まだあるの?」 黒服I「こちらは8発しか作成出来なかったらしいのですが、硝酸銀内臓の特殊弾丸です。 『マリ・ヴェリテ』に効果があれば良いんですけど。 ゴム弾と同様、殺害する事には向きませんが、無能力化する事は可能なはずです」 黒服Y「ありがとう。使うかどうかは別としてだけど。 使わないままであれば一番なんだけどね……」 黒服I「そう言えば、先程「辺境」に連絡を入れたとか何とか」 黒服Y「ああ、うん。 今マッドガッサーとかコーク・ロアとかで忙しいから 「本部」と一緒に動けないかなって思ったんだよ」 黒服I「そういう事だったんですか。 いやあ、実は「辺境」一同、辺湖市にいまして」 黒服Y「えー、自分達だけ避難したのー? 一緒に仕事しようよ」 黒服I「いえそれがですね、実は、知らない内に都市伝説と契約してしまったという 一般人の方がいましてですね、何やらパニック起してるようなんで とりあえず私達で落ち着かせてるという……」 黒服Y「そっかー、僕達じゃ辺湖に入りづらいからねー。 『イルミナティ』の目もあるみたいだし」 黒服I「実は……、その方の契約した都市伝説、『災厄を招く彗星』なんですよ。 最悪、彗星が地球に突っ込んで来ます。 そうなったら――"マック"さんの計算では地球の半分が消し飛びます。 悪い事に、その契約者の方、精神状態がかなりよろしくなくてですね……。 現地のフリーの「能力者」の方と説得をおこなってるんですけど……」 黒服Y「あはは、頑張れ。地球の命運は君達の仕事にかかってるぞ」 ポムポム 黒服I「いや笑い事じゃないですから! それ言うならYさんもメンドくさいとか言わないで頑張って下さいよ! 私達は支援に行けるかどうか分かりませんからね!」 それでは失礼しますよ、と黒服Iは暗い部屋から立ち去ろうとして―― 黒服Y「 I 」 呼び止められた。 Yは親指と人差し指を立て拳銃の形を取ると、Iに向けた。 黒服Y「死ぬなよ、後輩。――誰も殺すなよ?」 Yの言葉にをIはきょとんとした様子だったが、 やがて、ふ、と笑い、その言葉は先輩にもお返ししますよ、と応えた。 今度こそ失礼します、と言って、彼は「本部」を去った。 Yは依然、Iと秘密の会話を交わした暗い部屋に居た。 背中を壁にあずけ腕を組んだまま、目を閉じている。 黒服Y「分かってるさ、後輩。僕はちゃんと、分かってる」 彼は、少女の声で、そう小さく呟いたのだった。 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
https://w.atwiki.jp/otomeroge/pages/93.html
11eyes -罪と罰と贖いの少女- 【Lass】 分類 群像劇純愛劇 対応機種 Win2000~vista シナリオ LEGIOん剣技マナ獅子雰麓 原画 キャラごとに異なるため多数 ボイス Hシーン除きフル DL版 あり 公式サイトはこちら/Resona Forma Xbox360版公式サイトはこちら 概要 同一の世界観でゲームを作り続けるLassが発売した『侵蝕世界学園伝綺AVG』。 厨二病の揶揄を受ける設定の深さが特徴。 グロ・凌辱 特記事項なし ゲーム性 特記事項なし 派生作品・購入ガイド 新キャラや新シナリオを追加したXbox360版およびPSP版『11eyes CrossOver』が発売されているためHシーンにこだわらないなら現在はこれらがお薦め。 またFD『11eyes -Resona Forma-』が発売されている 備考 スレでは話題になっていないが同メーカーの前作『3days』と設定を共有しているためこちらのプレイも推奨 メディアミックスとして漫画版およびTVアニメ版あり 報告レス(一部) 797 :いけない名無しさん:2008/04/27(日) 13 06 52 ID ??? 11eyesクリア(1√だけだけど)したが、良かったよ たかひさが良すぎて駆が霞みますw 798 :いけない名無しさん:2008/04/27(日) 13 23 22 ID ??? 日常、自分も面白いけど、蘊蓄3割・下ネタ3割・古っ!と叫びたくなるネタ(推測)1割だからかなり人を選ぶな 黒騎士も萌える 選択肢スキップもできるから繰り返すの楽だし、かなりいいわ 800 :いけない名無しさん:2008/04/30(水) 01 08 06 ID ??? 11eyes、個別ルートが短いんだよね 923 :いけない名無しさん:2008/05/28(水) 22 29 42 ID ??? 11eyesノーマルのみクリアしたんだけど、脇カプ陣に萌え尽きすぎて ヒロインルートはもういいやって気分になってしまった… 少なくともメ欄((雪子ルート))は当分挑戦できそうもないや エロゲで脇カプに萌えすぎるのは茨の道すぎる 925 :いけない名無しさん:2008/05/28(水) 22 35 58 ID ??? 923 別にメ欄に書かなくても大丈夫でしょう 自分は真ヒロイン目当てだったので、そっちまっしぐらに行ったから良かったよw そのキャラはヒロインとして用意しなかったほうが…って思ったな 二人の間に割って入るようなことは自分にはできんよw 927 :いけない名無しさん:2008/05/28(水) 22 57 20 ID ??? 923 私は何も考えず、雪子を最初にクリアしたから、わりと平気だった 1番最初じゃないとキツイかもね 栞のルートの方をつくる方がよかったんじゃないかなぁ、とは思う 私は美鈴が好きだなあ 942 :いけない名無しさん:2008/05/29(木) 20 35 46 ID ??? 923 雪子ルートだけの駆と雪子の会話とシーンを見ないなんてもったいない あとEDも 雪子株が急上昇で2番目に好きになった(だからこそ音泉もっと頑張れとも思ったが 不意打ちの駆、粘りのタカヒサ両方楽しめるぞ どのルートでも「おお…」は激萎えだけどなw 612 :いけない名無しさん:2008/10/21(火) 23 24 47 ID ??? この流れに便乗 脇カプ萌えできるのってあるかな? 最近やったインガノックと11eyesは脇カプのが萌えたんだ 454 :いけない名無しさん:2011/10/14(金) 18 12 52.51 ID ??? 11eyesFDの賢久ルート、雪子と両思いな所にしみじみ萌えた 本編で一喜一憂したから感無量だったよ まさかのエロシーンフルボイスでびっくりしたけどw 455 :いけない名無しさん:2011/10/15(土) 02 31 25.20 ID ??? エロシーンフルボイス…だと…? 460 :いけない名無しさん:2011/10/17(月) 18 44 44.56 ID ??? 455 賢久ルートだけだけどね 駆視点の他ルートでもちょくちょく脇カプに萌えたなー 関連作
https://w.atwiki.jp/tsubaki/pages/332.html
《知識と日陰の少女 パチュリー・ノーレッジ》 効果モンスター 星6/闇属性/魔法使い族/攻1900/守500 自分スタンバイフェイズ時にこのカードが表側表示で存在する場合、属性を2つ宣言する。 このカードの属性は、フィールド上に表側表示で存在する限り宣言した属性としても扱う。 このカードはその属性によって以下の効果を得る。 ●光属性:このカードが戦闘で破壊したリバース効果モンスターの効果は無効化される。 ●地属性:このカードの攻撃力と守備力を入れ替える。 ●水属性:このカードを対象とする魔法カードの効果を無効にし破壊する。 ●炎属性:このカードの攻撃力は300ポイントアップする。 ●風属性:自分のメインフェイズに1度だけ、相手フィールド上に表側表示で存在する モンスター1体の表示形式を変更する事ができる。