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「やあ」 「私は吉良吉影…バイツァダスト!」 【ベン 死亡確認】 ※GER発動による大量殺人の前に戻りました が、ディアボロが同時にキングクリムゾンを使用したため、世界がバグりました。 【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険(4部) 死亡】 【ディアボロ@ディアボロの大冒険 死亡】 しかしその時バグの影響で安価スレのディアボロが到来! 【ディアボロ@ジャイロ「最強のスタンド“キング・クリムゾン”を手に入れたぞ」】 【状態】健康、黄金の精神 【装備】 【道具】基本支給品、不明支給品3つ 【思考】基本:安価 ディアボロ「安価」 ↓+■
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Si on faisait un petit détour? ちょっと遠回りしませんか? Aujourd hui, il vaut mieux que je rentre. 今日は帰った方が良いです。 前のページ 次のページ 音声を「フラつく。」で聴く
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462 名前:P90 ◆zxHMwgV2XM 投稿日:2006/09/12(火) 23 18 19.35 xW9Sv99Q0 「吉田、明日どっか行かないか?」 「どっか、って…またアバウトな提案だな」 放課後でざわざわしてる教室の中、佐瀬がいつものように話しかけてきた。 「別に行ってもいいけど、どこに行くんだよ?」 「そこで行かないって言わないよっぴーったら、本当にカ~ワ~イ~イ~」 うん。うざいしキモいね。 というか、よっぴーって呼ぶな。俺は認めた覚えはない。 「ここにあるものは何か分かるか?」 俺の苦情には答えるつもりはないらしい佐瀬が取り出したのは、2枚の小さな紙。 よく見えないけど、水族園…のチケットか? 「そう、明日の創立記念日にここ行こうぜ」 「……わかった」 やれやれという感じを装いながら佐瀬の提案に頷くと、佐瀬は無邪気に笑って俺を見ていた。 会話だけ聞いてると男同士。だけど実際はそうじゃない。 佐瀬とは高校の入学式の、なぜか前日に出会った。……ああ、そうだよ。素で入学式の日を間違えたんだよ。 でもそんなバカしたのが俺だけじゃなくて、もう一人いたわけだ。 そんなことがあったおかげで、俺と佐瀬は入学当初から仲が良かった。 ちょっと変なところもあるけど基本的にいい奴の佐瀬といるのは楽しくて、学校ではほとんど佐瀬といっしょに過ごしてた。 だけど、そんな楽しい生活もすぐに崩れ去ってしまった。 464 名前:P90 ◆zxHMwgV2XM 投稿日:2006/09/12(火) 23 18 49.92 xW9Sv99Q0 『女体化』 まだ未経験だった俺は、なんの心の準備もなくその現象に襲われた。 あれは、驚く…ってもんじゃないな。鏡見て、腰抜かしたのなんて生まれて初めての経験だった。 それでもすぐに状況を認められたのは自分でも不思議だったけど、最初から俺はそういうのに疎かったんだろうってことにしといた。 何か、それ以上考えてはいけないような気がしたから……。 それはともかく、女体化者の例に漏れず、俺もけっこう可愛い方に入ると思う。でも自分だと思うとどうしても実感はない。 なのに、なんでそう認識してるかといえば、顔さえ良ければいいという腐れがこの世(学校)に多く生息してたせいだ。 『あーもーっ、あいつらうざい!!!』 自分の席に突っ伏して、女体化してからたった一週間で口癖になってしまったセリフを吐く。 はっきり言って、男はバカだと思う。俺だって元男だけど、マジでそう思う。 告白の理由の9割方が『顔が好みだから』っていうのは明らかにおかしいだろ!? しかもだ。こんな小さい女(俺のことだ)を待ち伏せするっていうのはどういう了見なんだ? その時は運良く股間蹴って倒れたところを、さらに集中的にメッタ蹴りして逃げることに成功したけど。 『じゃあ、俺と付き合ってるってことにしとくか?』 そんな俺を心配したのか、これは佐瀬が提案してきたことだった。 そうすれば言い寄られることも少なくなるだろ、という意味合いを含んだそれを俺は二つ返事で承諾して。 あの日から俺と佐瀬は公認カップルと見なされるようになった。そのおかげか、俺へのちょっかいも激減。 そして俺は学校にいる間中、佐瀬にくっついていられる権利も手に入れられた。 そんなことになぜか喜んでいる自分に疑問もあったけど、親友と変わらない付き合いができるって答えを持ってきたらしっくりはまった。 女子たちに、『女の子になったんだから、恋人でもない男とべたべたしちゃ駄目だよ』と言われたこともあったからな。 465 名前:P90 ◆zxHMwgV2XM 投稿日:2006/09/12(火) 23 19 26.75 xW9Sv99Q0 まあ、そんな感じの校内限定偽装恋人という関係になってる俺たちだけど、そういえば外で遊ぶのは久しぶりだ。 「つか、これ…デートってことになるのか……?」 明日に備えて早めに入ったベッドで急にその疑問に襲われた。 あれ? 学校では恋人ってことになってて…? でも実際は付き合ってないわけだし……遊びに…? でもそれじゃあ、恋人ってことになってる教室で誘ったのは何でだ? 深く考えれば考えるほど沼に沈んでいきそうなこの疑問を俺は早々に投げ出した。 答えを出すのが面倒だったのもあるし、何か嫌な予感がしたんだ。 俺の価値観が丸ごとひっくり返ってしまいそうな自覚が生まれてしまいそうな嫌な予感が……。 564 名前:P90 ◆zxHMwgV2XM 投稿日:2006/09/13(水) 16 01 32.00 fprL38Ud0 465の続き 結局ぐっすりと寝て起きて、俺は遅れないように待ち合わせ場所に向かった。 初めて行く場所にしては迷わずに行けた気がする。 なのに、現地集合って言い出した奴がまだ来てないっていうのはどういうことだ? 『悪い、いま電車降りたとこ』 着いたときに佐瀬はいなくてメールを送ったら、こんなのが返ってきた。 あと10分くらいか……。 そう思って、植え込みのところに腰を下ろした俺は、突然肩を叩かれて体を硬くした。 そうだ、学校で無くなったから油断してたけど……。 恐る恐る後ろを振り向くと、そこには。 「ごめんな、遅れた」 「…え? な、今、メール…?」 俺はまだ携帯をしまってすらいないのに、いきなりメールの相手が現れてかなり呆気に取られてしまった。 「ああ、ごめんごめん。送りそびれてたのを、さっきメールきた時に間違って送ってた」 「あ、そ…なのか…?」 まだ驚きから回復できずにいた俺は、佐瀬のよくわからない理由説明に気の抜けた返事をしてしまった。 だから危うく気づかないところだった。佐瀬の怪しい手の動きに。 「今日はスカートなのか」 「…ああ、ってナニやろうとしてんだっ!?」 下から忍び寄ってきてた手を本気で叩き落とす。 「ちっ」 そこ、聞こえてるぞ。 「ったく、なに小学生レベルのことしようとしてんだか…」 いや、今時の小学生もこんなことはしないだろうから、下手すると幼児レベルか? 俺が叩いた手をぷらぷらさせながら、佐瀬はニヤニヤ笑いで。 「制服以外でよっぴーのスカート姿見るのなんて初めてだからな~。あまりの可愛さについふらふらと…」 「―――――っ!!」 突っ込むところだらけの佐瀬の言葉なのに、俺は何も言えずに、そして佐瀬に手を掴まれた。 565 名前:P90 ◆zxHMwgV2XM 投稿日:2006/09/13(水) 16 02 07.59 fprL38Ud0 「じゃ、ちゃっちゃと移動しようか」 俺の返事を待つことなく、佐瀬はずんずんと進んでいって。その速さに俺が苦心していると、佐瀬は急に歩調を緩める。 「なに…?」 「速すぎたな、ごめん」 振り向きながら佐瀬は俺の頭を撫でて、でも手は放さずにまたゆっくり歩き出して。 俺たちは水族館の中へ入った。 水族館というものに行くのは、何年ぶりだっけ。たしか最後に行ったのは小学生の時だったかな? 平日という事もあって、館内にいるのは子供が大半だった。ちらほらとカップルの姿も見えて、俺たちもそう見えてるのかと思うと少しだけ恥ずかしい。 けど、すぐにそんなの履きにならなくなった。 「お~! こいつ全然動かないぞ」 「佐瀬っ、佐瀬っ! ほら、亀、亀いるぞっ!」 「あ、サメ来たっ! っはは、でっかー!」 「くそっ、撮りそこなったっ! もっかい、もっかいこっち向け!」 「あ、あっちクジラいるって!」 ……冷静になって考えれば明らかに自分のテンションがおかしいのがわかる。 でもこのときの俺は本気の本気ではしゃいでた。それこそあいつおかしいんじゃないかと思われても仕方ないほどに…。 ノンストップであっちこっち見て回った後、俺はクリオネの水槽に張り付いていた。 数センチくらいの半透明の生き物がふよふよ浮いたり沈んだりするのをずーっと見ていて、なんとなく思い出したことを佐瀬に話しかける。 「そういえば、こいつらの食事風景ってグロ……」 途切れた言葉は誰に受け止めてもらえることなく地面に落ちた。 566 名前:P90 ◆zxHMwgV2XM 投稿日:2006/09/13(水) 16 02 40.85 fprL38Ud0 「さ…せ……?」 いない。ずっと、横にいたはずなのに……。 「……え?」 どこ…行った? 普通に考えればトイレかなんかだと思う。でもそれだったらなんで何も言わないでいなくなったんだ…? まさか…。 「…置いて、かれた……?」 口に出してしまってから後悔した。さっきまで浮き立っていた心の中に一気に不安が広がっていく。 そんなはずないと思うのに、自分がどれだけ佐瀬をそっちのけにしていたか自覚があるだけに、最悪の可能性を否定できない。 探しに行くべきなのか、ここで待てばいいのか……。 「……携帯っ!」 慌てて携帯を取り出して、電話をかける。10回くらいコール音が鳴って、留守番電話の無機質な声が聞こえてきた。 「…なんで?」 電話に出るつもりもないくらい、怒ってるのか? 何も言わずに消えてしまうくらい……。 「悪い悪い、待たせたな」 一番聞きたい声が後ろからかけられた。 「トイレ行った後、飲み物買ってたら遅くなった」 そっちの方を見て、佐瀬の変わらない笑みを認めた瞬間、緊張の糸が切れた。 「ちょっ、おい!? どうしたよ?」 ぼろぼろと溢れてくる涙を見られたくなくて、佐瀬の胸に顔を押し付ける。 いきなり泣き出した奴の相手なんて、ただ面倒くさいだけなのに…、佐瀬は何も言わずに俺の頭を抱いてくれた。 両手に飲み物を持った状態だから、佐瀬は間抜けな体勢になっていたけど…。 それでも俺は嬉しかった。 689 名前:P90 ◆zxHMwgV2XM 投稿日:2006/09/14(木) 00 05 29.69 o0WAaycv0 566の続き 「……で? つまり吉田は、俺が愛想尽かして先に帰ったと思ったわけか?」 佐瀬に連れられて移動したベンチで俺は頷いた。 座って、佐瀬が持ってきてくれたジュースを飲んだら落ち着いてきて、何で泣いてしまったか話したんだけど…。 ――…情けない上に恥ずかしい…。 横に座る佐瀬の顔を見ることなんかできずに、俯いていると横の上のほうから溜息が降ってきた。 「つか、俺ってそんなに信用されてなかったんだな?」 加えて冷たい声も耳に届いて、俺は体を竦ませた。 「……違っ…」 「違わないだろ? ちょっとくらい放っとかれたくらいで怒って帰るような器の小さい男だって言われたのと同じだしな~」 そう言われて初めて気がついた。 自分が、どれだけ佐瀬に対して失礼な事を言ってしまったのか…。 「でも…っ、…でも……」 それは、ちがくて…、ただ、佐瀬がいなくなったと思ったら、すごく悲しくて…、どうしたらいいのか、わかんなくなって……。 自分でもぐちゃぐちゃで、よくわからないこの感情をうまく言葉にできない。 何かを言わなければと焦るのに、俺の口は力なく「でも」と呟くしかできなかった。 「………………なんてな。これくらいにしとくか」 え……? 突然に変わった声のトーンに戸惑う。 「せっかく来たんだから、楽しんでもらえてるみたいで俺も楽しかったし、別に怒ってないぞ?」 「だっ、て…今……」 あんなに冷たい声で、俺のことを責めてたじゃないか…っ。 「ああ、あれ? ちょっと拗ねてた」 拗ねてた? 690 名前:P90 ◆zxHMwgV2XM 投稿日:2006/09/14(木) 00 06 03.83 o0WAaycv0 佐瀬に似合わない単語が出てきて、俺は首をかしげた。 「あんな可愛い笑顔をさ~、俺じゃなくて、ましてや哺乳類ですらない魚類がさせてんのかと。というより、俺といるより魚見てた方が楽しいのか、とか色々考えてな」 意外だった。 佐瀬がそんなことを考えてるなんて、思ってもみなかった…。 「ま、見入ってる吉田にちゃんとトイレ行くって伝わってるか確認しなかった俺も悪かったしな」 「……がう、ちゃんと聞いてなかった俺が悪かったんだ…」 その挙句、勝手につまらない勘違いをして、その上佐瀬を不愉快な気分にさせてしまった。 あまりにも自分が情けなくて、どれだけ自分勝手なのかわかってしまって……。 今すぐここから消えてしまいたい。 そんな気持ちから、俺が悪いんだと繰り返していると、また溜息を吐かれて体が震える。 「じゃあ、そんなに気にしてんなら、吉田が俺の言うこと1個だけ何でも聞くっていうことで手を打たないか?」 俺がこのことをこれ以上引きずらないように、という佐瀬の提案に、俺は無言で頷いた。 「え? マジ……か?」 俺が怒るような反応を予想してたんだろう佐瀬は、ハトが豆鉄砲を食らったような顔で同じ事を訊いてきて。 そして俺はまた頷く。 「…いいのか?」 「しつこい」 何度も聞かれていい加減口から出てしまった。 「わかった」 691 名前:P90 ◆zxHMwgV2XM 投稿日:2006/09/14(木) 00 06 36.52 o0WAaycv0 短い佐瀬の言葉。 それ以上佐瀬は聞いてくることはせずに、もう少しだけ休んでから、今度は落ち着いて二人で色んな水槽を見て回ることにした。 一人で舞い上がってる時も楽しかったけど、佐瀬といっしょにゆっくり歩いているだけで、じんわりと何かが胸にしみこんでくるような、不思議なあったかさがあって。 幸せ度数で言ったらこっちの方が圧倒的だと、意味もなくそんな度数を決めていた俺だった。 俺があんな条件を飲んだ理由は一つ。 『こんなに俺のことを考えてくれる佐瀬に、何も返さずにいることなんかできない』 その一心から佐瀬の出した提案を受け入れた。 ………わけなんだけど、もしこの後俺がさせられることをわかっていたなら。 もし俺があの時一瞬だけ佐瀬が見せた意味深な視線の意味に気づいていたのなら。 それ以前に、もっとこの条件について深く考えていたなら…。 どんな手を使ってでも、それを回避しようとしていただろう事はここで言わせてもらう。 そうじゃなきゃ、俺がただの変態みたくなってしまうからな。 63 名前:P90 ◆zxHMwgV2XM 投稿日:2006/09/14(木) 21 30 24.55 o0WAaycv0 そうしてほとんどの場所を見て回って、俺たちは最後に水族館のおみやげ屋に来た。 正直言えば買うつもりなんかない冷やかしで色んな商品を突きまわして遊ぶ。 すると突然目の前に何かを突きつけられて俺は上半身を仰け反らせた。 「これやる」 ラッピングされた小さな袋を手渡されて少しだけ困惑する。 「なに、これ?」 「プレゼント」 首を傾げつつ袋を開けると、プラスチックでできた小さなラッコのストラップが出てきた。 「なんで…?」 なんで、プレゼント…? それに、どうして俺がラッコが好きだってばれてるんだ? 「よっぴーが一番熱心に見入ってたのがラッコだったからな」 その名前で呼ぶなと突っ込みながら、ああ、そうかと納得し……って、待てよ? ラッコの水槽に行ったのは、二人でゆっくり回ってる時。 つまり…俺がラッコを見てるとき、こいつは俺のことをずっと見てたってことで…。 しかも、しかもだ。俺の反応の違いがわかるくらいに他の所でも佐瀬は俺の様子を見てたってことになる。 その事に気がついて、顔が熱くなる。 色んなことを言いたいのに、佐瀬の顔を直視することすらできない。 「ぁ…りがと……」 だから、やっと発せた俺の、本当に小さくなってしまった声でのお礼は、佐瀬に届いたかどうかわからなかった。 76 名前:P90 ◆zxHMwgV2XM 投稿日:2006/09/14(木) 22 28 29.18 o0WAaycv0 水族館を出てから、佐瀬と二人で駅に向かうことになった。 佐瀬とは高校からのいっしょになったわりには地元が近いから、これからそっちに戻ってから遊ぶつもりなのかと思ったんだ、 だから何も言わずに歩いていく佐瀬の後ろを何の疑問もなくついて行って。 切符も買ってくれて、ラッキーと思いながら、駅の中もついて行って。 そしてようやく何かおかしいと気づいたのは、帰るはずの線路の逆のホームに着いてからだった。 「佐瀬、こっち逆側だぞ?」 俺の言葉に反応しない佐瀬。 電車は俺たちがホームに着く直前に行ってしまったから、全くと言っていいほど人はいない。 だから移動するならまだ時間はあるんだけど、なぜか佐瀬は動こうとせずにいた。 「…あのさ、俺がさっき出した条件って覚えてるか?」 もう一度、場所を指摘しようとしたところで、そんなことを訊かれた。 その言葉に頷くと、奇妙なほどに真剣な声でさらに問われる。 「本当に、いいのか?」 あ~も~…。 「あのさ、いい加減しつこいぞ。俺は何度もいいって言ってるだろ」 「そうか……」 少しだけの沈黙。 その間、佐瀬の中では色んな葛藤が渦巻いてたんだと思う。 「じゃあさ…、俺がしてもらいたいこと、言うぞ?」 「おう。あんまり金かかんないなら何でもいいぞ」 ……今思えば、この俺の言葉が最後のきっかけになってしまったんだろう。 「『ちかん』させてくれ」 「………………………………………………………………はあ?」 153 名前:P90 ◆zxHMwgV2XM 投稿日:2006/09/15(金) 01 59 41.25 mkRdmMDl0 …えっと、今、こいつ何言った? 「ちかん?」 「そうだ」 「誰が?」 「俺が」 「誰に?」 「吉田に」 「何で?」 「してみたいから」 簡潔にして明瞭な一問一答。 …だめだ、ぜんぜんわかんない。 「ちかんは犯罪だぞ?」 混乱しまくった頭で、とりあえずよく聞くフレーズを口に出すと、佐瀬はそれに頷いた。 「ああ、だから『ちかんごっこ』みたいな感じで…」 ごっこ? 「なんだそれ?」 「だからな……」 そう言って、佐瀬は俺に説明を始めた。 触るのは絶対に服の上からだけ、俺が本気で嫌だと思ったらそこですぐに終了、絶対に周りにバレないようにする………。こんな感じだそうだ。 俺も元男なわけだし、こう、女の子に触りたいってところまではわかるんだけど…。 どうして電車でやる必要があるのか、まったくわからないぞ。 しかもそんな手癖がついたらどうするんだ? それを佐瀬に伝えると……。 「こんなことおまえにしか頼めないし、おまえにしかしたくない」 …そんなこと言うのは、卑怯だろう。 「あ、電車来た」 何も言えずにいるうちに、ホームに滑り込んできた電車に乗せられる。 こんな時間なのに電車の中はかなり混んでいて、それでも佐瀬は俺を入り口脇の角に配置して、自分はその前に陣取る。 席の脇は高くて、そして佐瀬も俺よりずっと背が高いから、俺はすっぽりと埋まってしまう感じになってしまった。 154 名前:P90 ◆zxHMwgV2XM 投稿日:2006/09/15(金) 02 00 23.92 mkRdmMDl0 「ほ、ほんとにやるのか?」 バカみたいに心臓の音が大きく聞こえてくる。 もう何に緊張してるのかさえわからない。 「ああ。運よくうるさいのもいるし」 確かに。よく見えないけど、逆の扉の所に女の子たちが固まって大声で話してる。 「あんなにうるさけりゃ、よっぴーが少しくらい声出てもバレないだろ?」 「な――――っ!!!」 何を言うんだ、と続くはずだった声は途切れさせられた。 佐瀬の顔が俺の肩辺りに来て…。 (やっぱり、いい匂いするな) 耳元で俺だけに聞こえる声で囁かれて、そのかすかな息が首筋にかかるだけでぞくぞくとした感覚が這い上がってくる。 ――なに、これ…っ…? (吉田? どうしたんだ?) ――だから耳元でしゃべるな…! 心の中で叫んだ言葉が通じたのか、佐瀬は顔を離した。 それに内心ホッとして、でも次の瞬間、俺はさらに体をはねさせた。 佐瀬の手が、俺の、し、尻に……っ。 俺が口をパクパクさせていると、その手が動き始める。 最初はゆっくりと撫でるようにして…。 手のひらの熱がじんわりと服の中にまで伝わってきて、感触に合わさってあのぞくぞくがひどくなってくる。 155 名前:P90 ◆zxHMwgV2XM 投稿日:2006/09/15(金) 02 00 56.08 mkRdmMDl0 ――…ぁっ!? 加えて指まで動き出して、息が荒くなってしまうのを隠せない。 あの大きな手の長い指が俺の尻の形を確かめるように這い回っている。 そう想像しただけで、さらに興奮してきてしまって、どんどん体の制御がきかなくなってくる。 「…ゃ……ぁ…」 何度も何度もしつこく往復する手に、ついに殺しきれなくなった声が口の端から漏れてしまった。 けど女の子たちの笑い声のおかげで周りに聞こえることはなかったと思う。俺の真後ろにいる奴以外には…。 (今の声……もしかして?) また耳元で囁かれて、体がびくりと動いてしまう。 (ちがっ…、そんなこと…っ) (そんなこと、ってなんだ? 俺、何も言ってないぞ?) (―――――っ!!!!) はめられたっ! 今俺が言ってしまったことは、自分から、佐瀬に触られて、気持ちいいなんてことをばらしてしまったも同然で…。 (もう、やだっ) 恥ずかしくて、体の向きを反転させる。 佐瀬と向きあうような状況になって、佐瀬の手は外れた。 (もう、やめっ! おしまい!) 小声のまま佐瀬の顔を見ずに主張する。 自分でもわかるほど真っ赤になってしまってる顔を見せられない。 これ以上されたら、どこかおかしくなってしまう…。 (……人間ってな、心と体がそれはもう密接にくっついてるもんなんだよ) 突然の意味不明な言葉に俺は動きを止められてしまった。 156 名前:P90 ◆zxHMwgV2XM 投稿日:2006/09/15(金) 02 01 31.32 mkRdmMDl0 (だからな、吉田が気持ち良くなってくれてるって事は、本気で嫌がってないって事だよな?) (そ…んな…!) 確かに、佐瀬に触られるのは全然嫌じゃない。 ――けど…っ、だけど……っ 俺の葛藤をよそに、唆すようなセリフを吐いた後、佐瀬は同じように手を動かし始めた。 そう。『同じように』だ。 (――――っっっっっっ!!!!!) 体を反転させたんだから、触られる場所も前後逆になる。 ふにふに、と体の正面からあの場所を探る動きに、体温が2、3度上がった錯覚すらあった。 (やっ……、さ、せ…ぇ…) もうぞくぞくとか言っていられないほどの波が襲ってきた。 やめさせたいのに、力が入らなくて、佐瀬の腕に手を添えるだけになってしまう。 「……ぁ、ぁっ……」 声も抑えられなくなって、体を丸めるように佐瀬に縋り付いてしまう。 前を押し付けるように撫でられることが続いて、頭の中がどんどん使えなくなっていくのがわかった。 なのにどうしようもなくて、佐瀬の手がスカートの中に……。 『七広~、七広~です』 独特のアナウンスに俺はハッとさせられた。 電車が止まると同時に佐瀬の手も止まって…、横の開いた扉から外に逃げ出す。 突然逃げ出した俺に、一瞬佐瀬が呆気に取られて、でも扉が閉まるぎりぎり直前にホームに降りてきた。 俺たち以外誰も降りなかったホームで、俺は佐瀬を見つめていた。 この、ぐちゃぐちゃになってしまった感情の、出口を求めるように…。 286 名前:P90 ◆zxHMwgV2XM 投稿日:2006/09/15(金) 22 07 17.10 mkRdmMDl0 156の続き 数歩離れた場所にいる佐瀬を俺はただ見つめる…。少しも動かずに、ただただ佐瀬の顔を……。 佐瀬も俺を凝視していて、時間が少しだけ止まった気がした。 でもそれは佐瀬が気まずげに目を逸らしたことで崩れる。 「………ごめん、悪かった」 ぐらり、と視界が揺れた。錯覚なんかじゃなく…本気で。 ――……俺、謝られちゃったんだ…。 そうか……、謝られなきゃ、いけないようなことを…されてたんだ…。 「やだ…って言った…」 「それは…」 「俺は、やだって言った!」 相反する気持ちが渦巻いて、普通を装うことすらできない。 佐瀬にとって、これはただの気の迷い、ちょっとした暴走……。 だから『つい』やってしまったことなんだ、と…。 だから合意の上だったのに謝る必要があるんだと突きつけられて…。 「俺が嫌がったら、やめるって言ったくせに…っ」 だけどこれも俺の言葉だ。こんな場所で、あんなふうに触られるなんて、やっぱり嫌だった。 「吉田……」 佐瀬が一歩近づいてきて、俺は同じだけ後ろに下がる。 なんでそこでおまえが悲しそうな顔をするんだ…? 「そこまで、嫌だったんだな…?」 頷くことも、首を横に振ることもできなかった。 「……………」 お互いに目も合わせられないまま、次の通過電車が風を起こしていく。 「帰る…か?」 ポツリと佐瀬が漏らして、俺もそれに同意する。 このままここに居ても、何の解決にもならない。自分の感情が何も見えてこない。 けど、ここで帰ると、何かが手遅れになってしまうような焦りも感じていた。 288 名前:P90 ◆zxHMwgV2XM 投稿日:2006/09/15(金) 22 07 58.22 mkRdmMDl0 階段を上がって、そして逆側のホームに下りる。もうすぐ電車が来るというアナウンスが聞こえた。 ちゃんと佐瀬と話したいのに、俺は顔を上げられない…。 こんな寂れている駅に、止まらなくてもいいのに電車は止まって…そしてそれに乗り込む。 「………え?」 なんで佐瀬、乗ってこないんだ? 『ドアが閉まります。ご注意ください』 無意識に俺は閉まり始めたドアの間から飛び降りていた。 幸い、どこにも引っかからなかったから、電車はそのまま走り去っていく。 「なっ…にやってんだこの馬鹿っ!」 怒鳴られて、体が竦むのと同時に、ほんの少しだけ嬉しくなる。 「だって…佐瀬が乗ってこないから……」 「そんな理由で……」 呆れたような溜息を吐かれた。 「あのな、吉田、今俺となんか居たくないだろ? だからおまえだけ先に帰そうと思ったのに…」 なんで降りてくるんだ、と佐瀬はもう一度溜息を吐く。 「俺に触られるのなんて、もうごめんだろ?」 自虐的な言葉で、俺に問いかける佐瀬。 ずきずきと胸が痛む…。 「好意につけ込まれて、あんなことされるなんて、いやだったろ?」 「………や…だった…」 口を開くと、佐瀬が息を飲んだような気配が伝わってきた。 「ほら…やっぱ…」 290 名前:P90 ◆zxHMwgV2XM 投稿日:2006/09/15(金) 22 08 30.26 mkRdmMDl0 「こんな場所で……、あんな遊びみたいに、ふざけてる…延長みたくされて、すごくやだった…」 大した理由もなく、佐瀬にされるのはすごく哀しかった…。 あまりにも重さの違う想いを実感してしまって、すごくつらかった。 「吉田…? それ、って…」 「気づかないで…いたかったのに!」 この不安の、悲しさの……、それなのに、ずっと佐瀬とくっついていたいなんて気持ちの理由なんてっ…! こんなに惨めな気分になるってわかりきってたのに…! だからいつも途中で深く考えるのを止めてたのに…。 「佐瀬は、一回試してみたかっただけなんだろ!? だったら…だったら、何で…」 なんで、俺で試したんだ…! もしされてなかったら、まだごまかしていられたのに。 いっしょにいれて嬉しい理由も、置いていかれたと思ってあそこまで泣きたくなった理由も、全部適当なところで納得できてたのに。 けど、もうそんなことできない…。 もう、自覚が生まれてしまったから。 「気づかないでいたかった、って…何をだ?」 いつ佐瀬が俺の目の前にきたのか、わからない。 しゃがみこんでしまいたいのに、両手首を掴まれた。 「なぁ…お願いだから、言ってくれ」 今の俺には、どこまでも残酷な要求が突きつけられる。 力なく首を振っても、強く握られた手首を放してくれない。 「なんでなんだよ?」 「…だって、いまさらおかしいだろ?」 「あ…?」 あんなに学校で男を嫌がってて、なのに今更…なんて、どんだけムシが良い話だ。 「俺の方のが…佐瀬を裏切ってたんだ……」 292 名前:P90 ◆zxHMwgV2XM 投稿日:2006/09/15(金) 22 09 12.29 mkRdmMDl0 俺のことを心配してくれて、それで…付き合ってる『ふり』をしてくれてる佐瀬を、無自覚のうちに裏切っていた。 「佐瀬は、俺のこと…そんなふうに思ってないのに…、俺は…っ」 もう、まともに話せなかった。 ボロボロと水が頬を流れていくのを感じる。 「……好きに、なっちゃったんだもん…」 誰が…とは言えなかったけど、佐瀬には伝わってしまったみたいだった。 両方の手首から、佐瀬の手が離れていって、体を切りつけられたような痛みが走る。 「…ごめん」 「っっ!!!」 やっぱり、そうだよな…。いきなり、こんなこと言われて…。 「ごめん、俺、卑怯だったな」 …え……? 「先に言われないと動けない。…俺の悪い癖だ」 自嘲するように笑って、瞬間、真剣な顔になって言葉を続ける。 「吉田が困ってるのにつけこんで、学校では付き合ってることにして、ずっといっしょにいられるようにした。俺のせいで泣いてたのに、それをいいことに条件出した上、こんなことして……」 一旦言葉を区切って、ゆっくりと息を吐く。 何を意図してるのかわからないそれを、俺は黙って聞いていた。 「しかも…、しかもな、一番大事なことまで後手に回って、先に言われたんだから…。俺、かなり情けないな…」 まさか、という想いが湧き上がってくる。 けれど確かな言葉がなくて、信じられない。 「言っただろ? おまえにしか頼めないし、おまえにしかしたくないって」 「…教えて?」 293 名前:P90 ◆zxHMwgV2XM 投稿日:2006/09/15(金) 22 10 06.02 mkRdmMDl0 佐瀬の言葉を遮って、俺は訊いていた。 「佐瀬が…俺のこと、本当はどう思ってるのか、言って…」 そう言った俺に、佐瀬はたった三文字だけ返してくれた。 「好きだ」 絶対にもらえないと思っていた言葉。 俺と、同じだけの熱をもった言葉。 「ほんと…に?」 信じられなくて、嬉しくて…また涙が流れてくる。 「ああ。…それとも、こんな変態はやっぱ嫌か…?」 首を横に振って、自分から佐瀬に抱きついていった。 「佐瀬が…、佐瀬がいっしょにいないほうのが、やだ!」 顔を押し付けながら言うと、佐瀬の腕が背中に回される。 今日は、佐瀬に泣かされっぱなしな気がする。 「俺もだ。……ありがとう」 頬に手を添えられて、上を向かされる。 佐瀬の顔がゆっくり近づいてくるのが恥ずかしかったけど、俺はじっとそれを待っていた。 俺と佐瀬の付き合いは、今日のこの瞬間から新しいものに変わった。 そう、『親友』から『恋人』に。 P90小説 『遠回りの両想い』 完
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「吉田、明日どっか行かないか?」 「どっか、って…またアバウトな提案だな」 放課後でざわざわしてる教室の中、佐瀬がいつものように話しかけてきた。 「別に行ってもいいけど、どこに行くんだよ?」 「そこで行かないって言わないよっぴーったら、本当にカ~ワ~イ~イ~」 うん。うざいしキモいね。 というか、よっぴーって呼ぶな。俺は認めた覚えはない。 「ここにあるものは何か分かるか?」 俺の苦情には答えるつもりはないらしい佐瀬が取り出したのは、2枚の小さな紙。 よく見えないけど、水族園…のチケットか? 「そう、明日の創立記念日にここ行こうぜ」 「……わかった」 やれやれという感じを装いながら佐瀬の提案に頷くと、佐瀬は無邪気に笑って俺を見ていた。 会話だけ聞いてると男同士。だけど実際はそうじゃない。 佐瀬とは高校の入学式の、なぜか前日に出会った。……ああ、そうだよ。素で入学式の日を間違えたんだよ。 でもそんなバカしたのが俺だけじゃなくて、もう一人いたわけだ。 そんなことがあったおかげで、俺と佐瀬は入学当初から仲が良かった。 ちょっと変なところもあるけど基本的にいい奴の佐瀬といるのは楽しくて、学校ではほとんど佐瀬といっしょに過ごしてた。 だけど、そんな楽しい生活もすぐに崩れ去ってしまった。 『女体化』 まだ未経験だった俺は、なんの心の準備もなくその現象に襲われた。 あれは、驚く…ってもんじゃないな。鏡見て、腰抜かしたのなんて生まれて初めての経験だった。 それでもすぐに状況を認められたのは自分でも不思議だったけど、最初から俺はそういうのに疎かったんだろうってことにしといた。 何か、それ以上考えてはいけないような気がしたから……。 それはともかく、女体化者の例に漏れず、俺もけっこう可愛い方に入ると思う。でも自分だと思うとどうしても実感はない。 なのに、なんでそう認識してるかといえば、顔さえ良ければいいという腐れがこの世(学校)に多く生息してたせいだ。 『あーもーっ、あいつらうざい!!!』 自分の席に突っ伏して、女体化してからたった一週間で口癖になってしまったセリフを吐く。 はっきり言って、男はバカだと思う。俺だって元男だけど、マジでそう思う。 告白の理由の9割方が『顔が好みだから』っていうのは明らかにおかしいだろ!? しかもだ。こんな小さい女(俺のことだ)を待ち伏せするっていうのはどういう了見なんだ? その時は運良く股間蹴って倒れたところを、さらに集中的にメッタ蹴りして逃げることに成功したけど。 『じゃあ、俺と付き合ってるってことにしとくか?』 そんな俺を心配したのか、これは佐瀬が提案してきたことだった。 そうすれば言い寄られることも少なくなるだろ、という意味合いを含んだそれを俺は二つ返事で承諾して。 あの日から俺と佐瀬は公認カップルと見なされるようになった。そのおかげか、俺へのちょっかいも激減。 そして俺は学校にいる間中、佐瀬にくっついていられる権利も手に入れられた。 そんなことになぜか喜んでいる自分に疑問もあったけど、親友と変わらない付き合いができるって答えを持ってきたらしっくりはまった。 女子たちに、『女の子になったんだから、恋人でもない男とべたべたしちゃ駄目だよ』と言われたこともあったからな。 まあ、そんな感じの校内限定偽装恋人という関係になってる俺たちだけど、そういえば外で遊ぶのは久しぶりだ。 「つか、これ…デートってことになるのか……?」 明日に備えて早めに入ったベッドで急にその疑問に襲われた。 あれ? 学校では恋人ってことになってて…? でも実際は付き合ってないわけだし……遊びに…? でもそれじゃあ、恋人ってことになってる教室で誘ったのは何でだ? 深く考えれば考えるほど沼に沈んでいきそうなこの疑問を俺は早々に投げ出した。 答えを出すのが面倒だったのもあるし、何か嫌な予感がしたんだ。 俺の価値観が丸ごとひっくり返ってしまいそうな自覚が生まれてしまいそうな嫌な予感が……。 結局ぐっすりと寝て起きて、俺は遅れないように待ち合わせ場所に向かった。 初めて行く場所にしては迷わずに行けた気がする。 なのに、現地集合って言い出した奴がまだ来てないっていうのはどういうことだ? 『悪い、いま電車降りたとこ』 着いたときに佐瀬はいなくてメールを送ったら、こんなのが返ってきた。 あと10分くらいか……。 そう思って、植え込みのところに腰を下ろした俺は、突然肩を叩かれて体を硬くした。 そうだ、学校で無くなったから油断してたけど……。 恐る恐る後ろを振り向くと、そこには。 「ごめんな、遅れた」 「…え? な、今、メール…?」 俺はまだ携帯をしまってすらいないのに、いきなりメールの相手が現れてかなり呆気に取られてしまった。 「ああ、ごめんごめん。送りそびれてたのを、さっきメールきた時に間違って送ってた」 「あ、そ…なのか…?」 まだ驚きから回復できずにいた俺は、佐瀬のよくわからない理由説明に気の抜けた返事をしてしまった。 だから危うく気づかないところだった。佐瀬の怪しい手の動きに。 「今日はスカートなのか」 「…ああ、ってナニやろうとしてんだっ!?」 下から忍び寄ってきてた手を本気で叩き落とす。 「ちっ」 そこ、聞こえてるぞ。 「ったく、なに小学生レベルのことしようとしてんだか…」 いや、今時の小学生もこんなことはしないだろうから、下手すると幼児レベルか? 俺が叩いた手をぷらぷらさせながら、佐瀬はニヤニヤ笑いで。 「制服以外でよっぴーのスカート姿見るのなんて初めてだからな~。あまりの可愛さについふらふらと…」 「―――――っ!!」 突っ込むところだらけの佐瀬の言葉なのに、俺は何も言えずに、そして佐瀬に手を掴まれた。 「じゃ、ちゃっちゃと移動しようか」 俺の返事を待つことなく、佐瀬はずんずんと進んでいって。その速さに俺が苦心していると、佐瀬は急に歩調を緩める。 「なに…?」 「速すぎたな、ごめん」 振り向きながら佐瀬は俺の頭を撫でて、でも手は放さずにまたゆっくり歩き出して。 俺たちは水族館の中へ入った。 水族館というものに行くのは、何年ぶりだっけ。たしか最後に行ったのは小学生の時だったかな? 平日という事もあって、館内にいるのは子供が大半だった。ちらほらとカップルの姿も見えて、俺たちもそう見えてるのかと思うと少しだけ恥ずかしい。 けど、すぐにそんなのは気にならなくなった。 「お~! こいつ全然動かないぞ」 「佐瀬っ、佐瀬っ! ほら、亀、亀いるぞっ!」 「あ、サメ来たっ! っはは、でっかー!」 「くそっ、撮りそこなったっ! もっかい、もっかいこっち向け!」 「あ、あっちクジラいるって!」 ……冷静になって考えれば明らかに自分のテンションがおかしいのがわかる。 でもこのときの俺は本気の本気ではしゃいでた。それこそあいつおかしいんじゃないかと思われても仕方ないほどに…。 ノンストップであっちこっち見て回った後、俺はクリオネの水槽に張り付いていた。 数センチくらいの半透明の生き物がふよふよ浮いたり沈んだりするのをずーっと見ていて、なんとなく思い出したことを佐瀬に話しかける。 「そういえば、こいつらの食事風景ってグロ……」 途切れた言葉は誰に受け止めてもらえることなく地面に落ちた。 「さ…せ……?」 いない。ずっと、横にいたはずなのに……。 「……え?」 どこ…行った? 普通に考えればトイレかなんかだと思う。でもそれだったらなんで何も言わないでいなくなったんだ…? まさか…。 「…置いて、かれた……?」 口に出してしまってから後悔した。さっきまで浮き立っていた心の中に一気に不安が広がっていく。 そんなはずないと思うのに、自分がどれだけ佐瀬をそっちのけにしていたか自覚があるだけに、最悪の可能性を否定できない。 探しに行くべきなのか、ここで待てばいいのか……。 「……携帯っ!」 慌てて携帯を取り出して、電話をかける。10回くらいコール音が鳴って、留守番電話の無機質な声が聞こえてきた。 「…なんで?」 電話に出るつもりもないくらい、怒ってるのか? 何も言わずに消えてしまうくらい……。 「悪い悪い、待たせたな」 一番聞きたい声が後ろからかけられた。 「トイレ行った後、飲み物買ってたら遅くなった」 そっちの方を見て、佐瀬の変わらない笑みを認めた瞬間、緊張の糸が切れた。 「ちょっ、おい!? どうしたよ?」 ぼろぼろと溢れてくる涙を見られたくなくて、佐瀬の胸に顔を押し付ける。 いきなり泣き出した奴の相手なんて、ただ面倒くさいだけなのに…、佐瀬は何も言わずに俺の頭を抱いてくれた。 両手に飲み物を持った状態だから、佐瀬は間抜けな体勢になっていたけど…。 それでも、俺は嬉しかった。 「……で? つまり吉田は、俺が愛想尽かして先に帰ったと思ったわけか?」 佐瀬に連れられて移動したベンチで俺は頷いた。 座って、佐瀬が持ってきてくれたジュースを飲んだら落ち着いてきて、何で泣いてしまったか話したんだけど…。 ――…情けない上に恥ずかしい…。 横に座る佐瀬の顔を見ることなんかできずに、俯いていると横の上のほうから溜息が降ってきた。 「つか、俺ってそんなに信用されてなかったんだな?」 加えて冷たい声も耳に届いて、俺は体を竦ませた。 「……違っ…」 「違わないだろ? ちょっとくらい放っとかれたくらいで怒って帰るような器の小さい男だって言われたのと同じだしな~」 そう言われて初めて気がついた。 自分が、どれだけ佐瀬に対して失礼な事を言ってしまったのか…。 「でも…っ、…でも……」 それは、ちがくて…、ただ、佐瀬がいなくなったと思ったら、すごく悲しくて…、どうしたらいいのか、わかんなくなって……。 自分でもぐちゃぐちゃで、よくわからないこの感情をうまく言葉にできない。 何かを言わなければと焦るのに、俺の口は力なく「でも」と呟くしかできなかった。 「………………なんてな。これくらいにしとくか」 え……? 突然に変わった声のトーンに戸惑う。 「せっかく来たんだから、楽しんでもらえてるみたいで俺も楽しかったし、別に怒ってないぞ?」 「だっ、て…今……」 あんなに冷たい声で、俺のことを責めてたじゃないか…っ。 「ああ、あれ? ちょっと拗ねてた」 拗ねてた? 佐瀬に似合わない単語が出てきて、俺は首をかしげた。 「あんな可愛い笑顔をさ~、俺じゃなくて、ましてや哺乳類ですらない魚類がさせてんのかと。というより、俺といるより魚見てた方が楽しいのか、とか色々考えてな」 意外だった。 佐瀬がそんなことを考えてるなんて、思ってもみなかった…。 「ま、見入ってる吉田にちゃんとトイレ行くって伝わってるか確認しなかった俺も悪かったしな」 「……がう、ちゃんと聞いてなかった俺が悪かったんだ…」 その挙句、勝手につまらない勘違いをして、その上佐瀬を不愉快な気分にさせてしまった。 あまりにも自分が情けなくて、どれだけ自分勝手なのかわかってしまって……。 今すぐここから消えてしまいたい。 そんな気持ちから、俺が悪いんだと繰り返していると、また溜息を吐かれて体が震える。 「じゃあ、そんなに気にしてんなら、吉田が俺の言うこと1個だけ何でも聞くっていうことで手を打たないか?」 俺がこのことをこれ以上引きずらないように、という佐瀬の提案に、俺は無言で頷いた。 「え? マジ……か?」 俺が怒るような反応を予想してたんだろう佐瀬は、ハトが豆鉄砲を食らったような顔で同じ事を訊いてきて。 そして俺はまた頷く。 「…いいのか?」 「しつこい」 何度も聞かれていい加減口から出てしまった。 「わかった」 短い佐瀬の言葉。 それ以上佐瀬は聞いてくることはせずに、もう少しだけ休んでから、今度は落ち着いて二人で色んな水槽を見て回ることにした。 一人で舞い上がってる時も楽しかったけど、佐瀬といっしょにゆっくり歩いているだけで、じんわりと何かが胸にしみこんでくるような、不思議なあったかさがあって。 幸せ度数で言ったらこっちの方が圧倒的だと、意味もなくそんな度数を決めていた俺だった。 俺があんな条件を飲んだ理由は一つ。 『こんなに俺のことを考えてくれる佐瀬に、何も返さずにいることなんかできない』 その一心から佐瀬の出した提案を受け入れた。 ………わけなんだけど、もしこの後俺がさせられることをわかっていたなら。 もし俺があの時一瞬だけ佐瀬が見せた意味深な視線の意味に気づいていたのなら。 それ以前に、もっとこの条件について深く考えていたなら…。 どんな手を使ってでも、それを回避しようとしていただろう事はここで言わせてもらう。 そうじゃなきゃ、俺がただの変態みたくなってしまうからな。 そうしてほとんどの場所を見て回って、俺たちは最後に水族館のおみやげ屋に来た。 正直言えば買うつもりなんかない冷やかしで色んな商品を突きまわして遊ぶ。 すると突然目の前に何かを突きつけられて俺は上半身を仰け反らせた。 「これやる」 ラッピングされた小さな袋を手渡されて少しだけ困惑する。 「なに、これ?」 「プレゼント」 首を傾げつつ袋を開けると、プラスチックでできた小さなラッコのストラップが出てきた。 「なんで…?」 なんで、プレゼント…? それに、どうして俺がラッコが好きだってばれてるんだ? 「よっぴーが一番熱心に見入ってたのがラッコだったからな」 その名前で呼ぶなと突っ込みながら、ああ、そうかと納得し……って、待てよ? ラッコの水槽に行ったのは、二人でゆっくり回ってる時。 つまり…俺がラッコを見てるとき、こいつは俺のことをずっと見てたってことで…。 しかも、しかもだ。俺の反応の違いがわかるくらいに他の所でも佐瀬は俺の様子を見てたってことになる。 その事に気がついて、顔が熱くなる。 色んなことを言いたいのに、佐瀬の顔を直視することすらできない。 「ぁ…りがと……」 だから、やっと発せた俺の、本当に小さくなってしまった声でのお礼は、佐瀬に届いたかどうかわからなかった。 水族館を出てから、佐瀬と二人で駅に向かうことになった。 佐瀬とは高校からのいっしょになったわりには地元が近いから、これからそっちに戻ってから遊ぶつもりなのかと思ったんだ、 だから何も言わずに歩いていく佐瀬の後ろを何の疑問もなくついて行って。 切符も買ってくれて、ラッキーと思いながら、駅の中もついて行って。 そしてようやく何かおかしいと気づいたのは、帰るはずの線路の逆のホームに着いてからだった。 「佐瀬、こっち逆側だぞ?」 俺の言葉に反応しない佐瀬。 電車は俺たちがホームに着く直前に行ってしまったから、全くと言っていいほど人はいない。 だから移動するならまだ時間はあるんだけど、なぜか佐瀬は動こうとせずにいた。 「…あのさ、俺がさっき出した条件って覚えてるか?」 もう一度、場所を指摘しようとしたところで、そんなことを訊かれた。 その言葉に頷くと、奇妙なほどに真剣な声でさらに問われる。 「本当に、いいのか?」 あ~も~…。 「あのさ、いい加減しつこいぞ。俺は何度もいいって言ってるだろ」 「そうか……」 少しだけの沈黙。 その間、佐瀬の中では色んな葛藤が渦巻いてたんだと思う。 「じゃあさ…、俺がしてもらいたいこと、言うぞ?」 「おう。あんまり金かかんないなら何でもいいぞ」 ……今思えば、この俺の言葉が最後のきっかけになってしまったんだろう。 「『ちかん』させてくれ」 「………………………………………………………………はあ?」 …えっと、今、こいつ何言った? 「ちかん?」 「そうだ」 「誰が?」 「俺が」 「誰に?」 「吉田に」 「何で?」 「してみたいから」 簡潔にして明瞭な一問一答。 …だめだ、ぜんぜんわかんない。 「ちかんは犯罪だぞ?」 混乱しまくった頭で、とりあえずよく聞くフレーズを口に出すと、佐瀬はそれに頷いた。 「ああ、だから『ちかんごっこ』みたいな感じで…」 ごっこ? 「なんだそれ?」 「だからな……」 そう言って、佐瀬は俺に説明を始めた。 触るのは絶対に服の上からだけ、俺が本気で嫌だと思ったらそこですぐに終了、絶対に周りにバレないようにする………。こんな感じだそうだ。 俺も元男なわけだし、こう、女の子に触りたいってところまではわかるんだけど…。 どうして電車でやる必要があるのか、まったくわからないぞ。 しかもそんな手癖がついたらどうするんだ? それを佐瀬に伝えると……。 「こんなことおまえにしか頼めないし、おまえにしかしたくない」 …そんなこと言うのは、卑怯だろう。 「あ、電車来た」 何も言えずにいるうちに、ホームに滑り込んできた電車に乗せられる。 こんな時間なのに電車の中はかなり混んでいて、それでも佐瀬は俺を入り口脇の角に配置して、自分はその前に陣取る。 席の脇は高くて、そして佐瀬も俺よりずっと背が高いから、俺はすっぽりと埋まってしまう感じになってしまった。 「ほ、ほんとにやるのか?」 バカみたいに心臓の音が大きく聞こえてくる。 もう何に緊張してるのかさえわからない。 「ああ。運よくうるさいのもいるし」 確かに。よく見えないけど、逆の扉の所に女の子たちが固まって大声で話してる。 「あんなにうるさけりゃ、よっぴーが少しくらい声出てもバレないだろ?」 「な――――っ!!!」 何を言うんだ、と続くはずだった声は途切れさせられた。 佐瀬の顔が俺の肩辺りに来て…。 (やっぱり、いい匂いするな) 耳元で俺だけに聞こえる声で囁かれて、そのかすかな息が首筋にかかるだけでぞくぞくとした感覚が這い上がってくる。 ――なに、これ…っ…? (吉田? どうしたんだ?) ――だから耳元でしゃべるな…! 心の中で叫んだ言葉が通じたのか、佐瀬は顔を離した。 それに内心ホッとして、でも次の瞬間、俺はさらに体をはねさせた。 佐瀬の手が、俺の、し、尻に……っ。 俺が口をパクパクさせていると、その手が動き始める。 最初はゆっくりと撫でるようにして…。 手のひらの熱がじんわりと服の中にまで伝わってきて、感触に合わさってあのぞくぞくがひどくなってくる。 ――…ぁっ!? 加えて指まで動き出して、息が荒くなってしまうのを隠せない。 あの大きな手の長い指が俺の尻の形を確かめるように這い回っている。 そう想像しただけで、さらに興奮してきてしまって、どんどん体の制御がきかなくなってくる。 「…ゃ……ぁ…」 何度も何度もしつこく往復する手に、ついに殺しきれなくなった声が口の端から漏れてしまった。 けど女の子たちの笑い声のおかげで周りに聞こえることはなかったと思う。俺の真後ろにいる奴以外には…。 (今の声……もしかして?) また耳元で囁かれて、体がびくりと動いてしまう。 (ちがっ…、そんなこと…っ) (そんなこと、ってなんだ? 俺、何も言ってないぞ?) (―――――っ!!!!) はめられたっ! 今俺が言ってしまったことは、自分から、佐瀬に触られて、気持ちいいなんてことをばらしてしまったも同然で…。 (もう、やだっ) 恥ずかしくて、体の向きを反転させる。 佐瀬と向きあうような状況になって、佐瀬の手は外れた。 (もう、やめっ! おしまい!) 小声のまま佐瀬の顔を見ずに主張する。 自分でもわかるほど真っ赤になってしまってる顔を見せられない。 これ以上されたら、どこかおかしくなってしまう…。 (……人間ってな、心と体がそれはもう密接にくっついてるもんなんだよ) 突然の意味不明な言葉に俺は動きを止められてしまった。 (だからな、吉田が気持ち良くなってくれてるって事は、本気で嫌がってないって事だよな?) (そ…んな…!) 確かに、佐瀬に触られるのは全然嫌じゃない。 ――けど…っ、だけど……っ 俺の葛藤をよそに、唆すようなセリフを吐いた後、佐瀬は同じように手を動かし始めた。 そう。『同じように』だ。 (――――っっっっっっ!!!!!) 体を反転させたんだから、触られる場所も前後逆になる。 ふにふに、と体の正面からあの場所を探る動きに、体温が2、3度上がった錯覚すらあった。 (やっ……、さ、せ…ぇ…) もうぞくぞくとか言っていられないほどの波が襲ってきた。 やめさせたいのに、力が入らなくて、佐瀬の腕に手を添えるだけになってしまう。 「……ぁ、ぁっ……」 声も抑えられなくなって、体を丸めるように佐瀬に縋り付いてしまう。 前を押し付けるように撫でられることが続いて、頭の中がどんどん使えなくなっていくのがわかった。 なのにどうしようもなくて、佐瀬の手がスカートの中に……。 『七広~、七広~です』 独特のアナウンスに俺はハッとさせられた。 電車が止まると同時に佐瀬の手も止まって…、横の開いた扉から外に逃げ出す。 突然逃げ出した俺に、一瞬佐瀬が呆気に取られて、でも扉が閉まるぎりぎり直前にホームに降りてきた。 俺たち以外誰も降りなかったホームで、俺は佐瀬を見つめていた。 この、ぐちゃぐちゃになってしまった感情の、出口を求めるように…。 数歩離れた場所にいる佐瀬を俺はただ見つめる…。少しも動かずに、ただただ佐瀬の顔を……。 佐瀬も俺を凝視していて、時間が少しだけ止まった気がした。 でもそれは佐瀬が気まずげに目を逸らしたことで崩れる。 「………ごめん、悪かった」 ぐらり、と視界が揺れた。錯覚なんかじゃなく…本気で。 ――……俺、謝られちゃったんだ…。 そうか……、謝られなきゃ、いけないようなことを…されてたんだ…。 「やだ…って言った…」 「それは…」 「俺は、やだって言った!」 相反する気持ちが渦巻いて、普通を装うことすらできない。 佐瀬にとって、これはただの気の迷い、ちょっとした暴走……。 だから『つい』やってしまったことなんだ、と…。 だから合意の上だったのに謝る必要があるんだと突きつけられて…。 「俺が嫌がったら、やめるって言ったくせに…っ」 だけどこれも俺の言葉だ。こんな場所で、あんなふうに触られるなんて、やっぱり嫌だった。 「吉田……」 佐瀬が一歩近づいてきて、俺は同じだけ後ろに下がる。 なんでそこでおまえが悲しそうな顔をするんだ…? 「そこまで、嫌だったんだな…?」 頷くことも、首を横に振ることもできなかった。 「……………」 お互いに目も合わせられないまま、次の通過電車が風を起こしていく。 「帰る…か?」 ポツリと佐瀬が漏らして、俺もそれに同意する。 このままここに居ても、何の解決にもならない。自分の感情が何も見えてこない。 けど、ここで帰ると、何かが手遅れになってしまうような焦りも感じていた。 階段を上がって、そして逆側のホームに下りる。もうすぐ電車が来るというアナウンスが聞こえた。 ちゃんと佐瀬と話したいのに、俺は顔を上げられない…。 こんな寂れている駅に、止まらなくてもいいのに電車は止まって…そしてそれに乗り込む。 「………え?」 なんで佐瀬、乗ってこないんだ? 『ドアが閉まります。ご注意ください』 無意識に俺は閉まり始めたドアの間から飛び降りていた。 幸い、どこにも引っかからなかったから、電車はそのまま走り去っていく。 「なっ…にやってんだこの馬鹿っ!」 怒鳴られて、体が竦むのと同時に、ほんの少しだけ嬉しくなる。 「だって…佐瀬が乗ってこないから……」 「そんな理由で……」 呆れたような溜息を吐かれた。 「あのな、吉田、今俺となんか居たくないだろ? だからおまえだけ先に帰そうと思ったのに…」 なんで降りてくるんだ、と佐瀬はもう一度溜息を吐く。 「俺に触られるのなんて、もうごめんだろ?」 自虐的な言葉で、俺に問いかける佐瀬。 ずきずきと胸が痛む…。 「好意につけ込まれて、あんなことされるなんて、いやだったろ?」 「………や…だった…」 口を開くと、佐瀬が息を飲んだような気配が伝わってきた。 「ほら…やっぱ…」 「こんな場所で……、あんな遊びみたいに、ふざけてる…延長みたくされて、すごくやだった…」 大した理由もなく、佐瀬にされるのはすごく哀しかった…。 あまりにも重さの違う想いを実感してしまって、すごくつらかった。 「吉田…? それ、って…」 「気づかないで…いたかったのに!」 この不安の、悲しさの……、それなのに、ずっと佐瀬とくっついていたいなんて気持ちの理由なんてっ…! こんなに惨めな気分になるってわかりきってたのに…! だからいつも途中で深く考えるのを止めてたのに…。 「佐瀬は、一回試してみたかっただけなんだろ!? だったら…だったら、何で…」 なんで、俺で試したんだ…! もしされてなかったら、まだごまかしていられたのに。 いっしょにいれて嬉しい理由も、置いていかれたと思ってあそこまで泣きたくなった理由も、全部適当なところで納得できてたのに。 けど、もうそんなことできない…。 もう、自覚が生まれてしまったから。 「気づかないでいたかった、って…何をだ?」 いつ佐瀬が俺の目の前にきたのか、わからない。 しゃがみこんでしまいたいのに、両手首を掴まれた。 「なぁ…お願いだから、言ってくれ」 今の俺には、どこまでも残酷な要求が突きつけられる。 力なく首を振っても、強く握られた手首を放してくれない。 「なんでなんだよ?」 「…だって、いまさらおかしいだろ?」 「あ…?」 あんなに学校で男を嫌がってて、なのに今更…なんて、どんだけムシが良い話だ。 「俺の方のが…佐瀬を裏切ってたんだ……」 俺のことを心配してくれて、それで…付き合ってる『ふり』をしてくれてる佐瀬を、無自覚のうちに裏切っていた。 「佐瀬は、俺のこと…そんなふうに思ってないのに…、俺は…っ」 もう、まともに話せなかった。 ボロボロと水が頬を流れていくのを感じる。 「……好きに、なっちゃったんだもん…」 誰が…とは言えなかったけど、佐瀬には伝わってしまったみたいだった。 両方の手首から、佐瀬の手が離れていって、体を切りつけられたような痛みが走る。 「…ごめん」 「っっ!!!」 やっぱり、そうだよな…。いきなり、こんなこと言われて…。 「ごめん、俺、卑怯だったな」 …え……? 「先に言われないと動けない。…俺の悪い癖だ」 自嘲するように笑って、瞬間、真剣な顔になって言葉を続ける。 「吉田が困ってるのにつけこんで、学校では付き合ってることにして、ずっといっしょにいられるようにした。俺のせいで泣いてたのに、それをいいことに条件出した上、こんなことして……」 一旦言葉を区切って、ゆっくりと息を吐く。 何を意図してるのかわからないそれを、俺は黙って聞いていた。 「しかも…、しかもな、一番大事なことまで後手に回って、先に言われたんだから…。俺、かなり情けないな…」 まさか、という想いが湧き上がってくる。 けれど確かな言葉がなくて、信じられない。 「言っただろ? おまえにしか頼めないし、おまえにしかしたくないって」 「…教えて?」 佐瀬の言葉を遮って、俺は訊いていた。 「佐瀬が…俺のこと、本当はどう思ってるのか、言って…」 そう言った俺に、佐瀬はたった三文字だけ返してくれた。 「好きだ」 絶対にもらえないと思っていた言葉。 俺と、同じだけの熱をもった言葉。 「ほんと…に?」 信じられなくて、嬉しくて…また涙が流れてくる。 「ああ。…それとも、こんな変態はやっぱ嫌か…?」 首を横に振って、自分から佐瀬に抱きついていった。 「佐瀬が…、佐瀬がいっしょにいないほうのが、やだ!」 顔を押し付けながら言うと、佐瀬の腕が背中に回される。 今日は、佐瀬に泣かされっぱなしな気がする。 「俺もだ。……ありがとう」 頬に手を添えられて、上を向かされる。 佐瀬の顔がゆっくり近づいてくるのが恥ずかしかったけど、俺はじっとそれを待っていた。 俺と佐瀬の付き合いは、今日のこの瞬間から新しいものに変わった。 そう、『親友』から『恋人』に。
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中学生日記 ~遠回りする雛~ ◆j1I31zelYA 青春は、やさしいだけじゃない。 痛い、だけでもない。 【再会】 四人の少年少女が白日の下で座り、影を長くのばしていた。 「病院、行かなくていいの?」 綾波レイが、秋瀬或へと問いかける。 その手は救急箱の中身を探っているけれど、視線は彼の右手首へ。 右手のあった場所がすっぱりと割断され、切断面と止血点の位置とが包帯で縛られていた。 「確かに……」 秋瀬から話を切り出されかけた越前リョーマも、そちらへの注目を優先する。 秋瀬があまりにも平然としているので釣られかけたけれど、腕がなくなるなんて、普通は命の心配をする事態だ。 テニスの試合でも、体が欠如するほどの怪我を負うことは(今のところはまだ)有り得ない。 秋瀬は「そうだね…」と携帯電話を左手で取り出した。 「問題は我妻さんが先回りしていないかどうかだけれど、こればっかりは近づいてレーダーで索敵するしかないな。 ……もっとも、そう長く電池が持ちそうにないけれどね」 警戒すべき我妻由乃が雪輝日記を持っている以上は、待ち伏せされるリスクが常にある。 しかし我妻は『次に会ったら殺す』ということを言い残して退いた。 最大の障害である秋瀬或には重傷を負わせたことだし、『ここにいるユッキーには執着していない』と言い張る今の彼女ならば、こちらから出向かない限りはそこまで執拗さを発揮しないだろう。 電池の持ちを気にした秋瀬に対して、綾波は小首をかしげてみせた。 「私たちの電話には、まだ電池の持ちがあるけれど……」 「ところが、浦飯君は携帯電話を使ったことが無かったんだ。 バッテリーの持続時間をよく知らずに、電池を消耗させてしまったらしい」 秋瀬がそのことに気づいたのは、レーダーを借りうけた時だった。 浦飯は主催者から携帯電話の使い方をインプットされただけで、携帯電話の扱いそのものには不慣れでしかない。 常に画面を開きっぱなしにしてGPS機能をオンにしていたり、好奇心がてら暇があればいじくり回したり……そんな扱いを半日以上も続けていれば、『充電してください』という警告表示も出るだろう。 「デパートに寄って、充電器を探す?」 合流したい人物や避けたい人物を抱えていて、探知機能が使えなくなったのは痛い。 休息後の安全を確保するためにもと、綾波が代案を出した。 「いや、それがデパートに行くのもリスクが大きい。 ちょうど浦飯君が、その近辺で危険人物を見かけていてね」 御手洗清志という、“水”の化け物を操るらしい危険人物のことがあった。 浦飯は必ず仕留められると息巻いていたようだったが、遠隔操作で化け物を操れるということは、御手洗本人が捕まっていても化け物が野放しになったままということも有り得る。 人質になりやすい一般人を含んだ集団でどかどかと踏み込んだとしても、浦飯の邪魔になるだろう。 「……それ、近くを通ってる菊地さんも危ないっすよね」 そこまで聞き終えた越前が立ち上がり、すぐさま来た道を走り出そうとして、 「ダメ」 素早くシャツの裾をつかんで引き止める手があった。 綾波だった。 「その怪我で、戦うのは無謀だから。 右腕もそうだけど、その両脚ではさっきみたいに走れないはず」 指摘されて、越前は足元を見下ろす。 綾波が応急処置をした結果として、膝まわりが冷却スプレーと湿布でがっちりとおおわれていた。 処置の下では、両足が青紫色のペンキでも塗ったような、痛々しい炎症を起こしている。 バロウ・エシャロットとの激戦で乱発された光速移動の“雷”は、本来の使い手である真田弦一郎でさえ負担が大きすぎて滅多に使わないような諸刃の剣だった。 バロウの放つ鉄球から菊地たちを守るために濫用し、さらにその足で我妻由乃の急襲する現場に駆け付けたとあっては、足が根をあげてもおかしくない。 「それに、拳銃が通用しない相手なら、私たちも戦力になれそうにない。 そもそも、大けがしたこの人を病院に連れていく話だったはず。 この人たちを戦場に連れていくのも、ここに放置するのも良くないわ」 「でも……」 思い出した痛みで脚を震わせながら、それでも越前は意固地そうに立った。 駄々をこねる子どものような声で、反発する。 「高坂さんが、もういないのに……また誰か死ぬのは、やだ」 死んでしまった少年の名前が出たことに、綾波もまた肩を震わせた。 それでも、静かに言った。 「高坂君は……もういないから。 あなたまで喪いたくないし、あなたがいなくなったら、きっと色々なことが終わってしまう」 ちらりと座りこんだ秋瀬たちに視線をうつして、続ける。 「……それに、高坂君は、この人たちが死ぬのも、この人たちを放っておくのも望まないと思う。 戦線復帰したいなら、今のうちに休むべき」 淡々とした、しかし刻み込むようにゆっくりとした言葉を聞いて、 越前は叱責された子どものように唇を噛んだ。 焦りをすっと引かせて、素直に頷きを返していた。 「……はい」 「それに菊地くんの近くにいる植木くんは、さっきの人も倒せるぐらい強いらしいから。 合流できていればきっと大丈夫」 「うぃっす」 頷いて、ぺたんと腰をおろす。 足を崩して座りなおすのを待って、秋瀬が尋ねた。 「菊地くんというのは、別行動中の仲間のことだね。合流する当ては?」 これまでの話からすると、菊地という少年は植木という増援を連れて戻る予定だったらしい。 しかし、場所を特定する手段もないのに別行動をとったとすれば引っかかった。 越前たちが我妻由乃から逃れるために、この場を移動していた可能性もあったのだから。 「最初は、学校で合流する予定だったんスけど……」 「菊地くんの仲間も、『未来日記』を持っているらしいから。 地図で言う周囲1エリア以内なら、予知が届くって言ってた」 菊地と別れた時のことを、綾波は補足説明していく。 バロウを相手に共闘までしたからには、今の菊地が『友情日記』と契約すれば綾波たちは『友達』として申し分なく予知ができる。 菊地自身はムルムルから契約禁止の叱責を受けているが、そこから既に6時間近くも経過しているし、いざとなったら植木の声真似でも何でもして契約すると、別れる直前に言い切っていた。 「それなら、多少は移動しても差支えないようだね。 見たところ学校からの火の手は鎮火に向かっているようだけれど、危険なことに変わりはないし……」 思案するように、秋瀬は北の方角に目を走らせる。 雪輝たちの走って来た方向から炎上した火災は、学校のある一帯とその南方の雑木林を焦がしただけにとどまっていた。 周囲にある建造物が、公営体育館とその駐車場などなど、耐火造の建物だったり延焼物の無い土地だったりしたことが幸いしたらしい。 「火災から避難するのも兼ねて、ここは素直に病院に移動しようか。雪輝君もそれでいいね?」 「うん……」 雪輝としても、いてもたってもいられない心境ではあるにせよ、腰を落ち着けて方針練り直しをする時間は欲しい。 貴重な味方である秋瀬が重傷を負ったともなれば、休息に反対しない理由はなかった。 話がまとまったのを見て、越前が再び立ちあがる。 「じゃ、出発しようか。秋瀬さんだっけ。歩ける?」 「止血はしたし体力的にも支障はないけれど……むしろ君の方が大丈夫かい?」 「あ、だったら僕が、背負っていこうか?」 遠慮がちに、雪輝が声をかける。 越前が首をかしげ、雪輝の肩あたりを見下ろした。 「いや、そこまではいいって言うか、肩を貸してもらえたら充分なんスけど……」 注視するのは、雪輝の衣服。 肩から背中の部分を湿らせている、まだ乾いていない血の染みだった。 「その血、大丈夫っスか?」 その血が誰のものかを知らずに、聞いた。 ◆ 彼とは、十二時間余りもの時を共に過ごした。 それだけの時間があれば、それだけの会話は交わすことになる。 とはいえ、一万年間も何もせずぼーっとしていた天野雪輝に、話題のバリエーションなどあるはずもなく。 自然と話題は、その少年――遠山金太郎に関することが多くなった。 そうすると、その少年が熱中している『テニス』のことが頻出するのは、必然であって。 その中で、『彼』の名前は、よく登場した。 越前(コシマエ)、と呼ばれていた少年。 とにかく強いのだとか。 何度も勝負を挑んでいるのに、よくつれない態度を取られて逃げられてしまうとか。 しかし、とても楽しそうにテニスをするのだとか。 指から毒素を放ち帽子の下に第三の眼をうんたらかんたらとか。 はっきり真偽の怪しい話も交じっていたし、遠山は『そいつと合流できれば何とかなる』という楽観よりの思想だったから、かなり話半分として聞いていたけれど。 後になって、奇縁だと知った。 同行者である、遠山金太郎の友人だったそいつ。 友人である、高坂王子の同行者だったそいつ。 今の天野雪輝とは、出会わない方が良かったのかもしれない。 元恋人との殺し合いに巻き込んで遠山を死なせたあげくに、 瀕死の遠山を見捨てて、囮として戦わせることで自分だけ逃げ出し、 仇であるところの元恋人は、跡部という他の仲間も殺していて、 二人の戦友を殺した仇であるその我妻由乃と、よりを戻してふたり幸せに星を見に行こうとしている。 誰から非難されても、それが誰かの犠牲の上に成り立つことでも、そうする。 それが、今の雪輝だった。 秋瀬或は、『移動時間を短縮するアテがある』とか言って、重傷人とも思えない軽快さで先行した。 病院へと向けて、進路を西寄りにして。 残った三人で、越前に肩などを貸しながら追っていて。 間もなく、一行はその『彼ら』と再会した。 倒れている人影が離れた場所に小さく見えて、越前が目を見開いた。 一歩を近づくごとに、人影の小柄な輪郭だとか、微風にパタパタと揺れるヒョウ柄のタンクトップだとかが鮮明に見えてくる。 傷ついた両脚に鞭を打つようにして、越前は雪輝たちの手を振り払い、早足で近づいていった。 どんどん近づき、その人影の『切断』があらわになった距離で。 我慢できなくなったように、走り出した。 綾波レイが、そんな彼のそばへと駆け寄ろうと急ぎ足になり、雪輝もそれにつられる。 立ち止まり、じっと見下ろす。 そこにいた。 彼らと言ったのは、ようするに、つい複数形で表現してしまうような状態だったということで。 遠山金太郎が、上半身と下半身とで真っ二つに斬殺されて仰向けに転がっていた。 (分かってた、ことだったけどね……) 日本刀を持った我妻由乃の手で絶命させられた。 ならば、その死に様など分かり切っている。 赤く染まりはじめた陽の下に、ふたつ血だまりが広がっていた。 ひとつは、一メートルくらい離れた地面に転がっている下半身から噴き出したもので、 もうひとつは越前の真下に転がる、上半身の腹部より下から流れたものだった。 そちら側の血液は、地面と接する背面からもじわじわと染み出した跡があり、 それは天野雪輝を手榴弾からかばった際に受けた傷口が、開いたものだと分かる。 雪輝は中学校で流れた血の量を知っていただけに、まだこれだけの血が残っていたのかと驚いた。 それだけの血を流した証明として、遺体は凄まじい色合いになっていた。 土気色というよりは、青っぽい粘土で作り上げた人体のような、生前の面影をなくしたそれ。 小柄なりにがっしりとしていた体つきが、血を吐きだしつくした分だけ『しぼんでいる』ことがはっきりと認識できる。 体のそこかしこが、手榴弾の熱風を浴びた火傷で煤けていて。 右手には、テニスラケットを強く握りしめたままで。 左手は、やや不自然な内向きの角度で、腹部にもたれかかるように乗っている。 それは不幸なことに『斬られて』からもしばらく命があって、動いていた証左だろう。 霞んでいく最後の意識で、『何か』に向かって手をのばそうとして、持ち上げて。 そこで命が喪われて、ぱたり。 何を見つめていて何に向かって手をのばそうとしたのか、見開かれたまま絶命した両の瞳からは語られなかった。 そんな変り果てた姿を、越前リョーマが眼球に映していた。 目をそむけることさえできないまま、呼吸すら止める。 足をがくがくと震わせて、無言で。 ただ、己の時間を止めることしかできないでいる。 (きつい、かな……うん) これは、無理だろう。駄目だろう。 心ある人間ならば、あっちゃいけないと否定したがる。 綾波が、そんな越前に対して、かける言葉を決めかねたように手をのばそうとして。 かくんと、越前の背たけが地面へと低くなる。 足から立っている力がぬけて、膝をついた。 ぴちゃんと、遠山の血液だったものが跳ねる。両膝の湿布が、赤黒い血だまりで汚れる。 綾波が名前を呼んでも、返事を返さない。 膝をついているところなんて想像もできない唯我独尊野郎だと聞いていた少年が、そうなっている。 (意外……でもないよね。こんな友達を、見たら) 雪輝は、そう思う。 だから、こうも思う。 ――やっぱり、違う。僕は、“こう”はならない。 越前は、見るからに悲しんでいる。 涙こそ見せていないけれど、それはただ現実に打ちのめされるばかりで、悲しみが追いついていないだけなのは明らかだ。 対して、天野雪輝はどうか。 こうなってしまったことを、悔しいと思う。こうするしかできなかったことを、悲しく思う。 ――犠牲とか、殺された人とかそんなのを度外視してでも――僕は由乃に手を伸ばす。 じゃあ、こうなった遠山を度外視して、我妻由乃を迎えに行きたい天野雪輝とは、何者だ? 悲しいはずなのに、泣けない。冷静に死体を観察して、見捨てたことを自嘲している。 (昔のことを思い出してきて……僕も学習したってことなのか?) 由乃のように、他の人間を駒だと割り切ることなんてできない。 けれど、三週目世界の由乃も、異世界の両親も、手の届く皆を救おうとした結果が、あの結末だった。 三週目の世界はそれなりに救済されたらしいけれど、いちばんに助けたかった我妻由乃は喪われた。 (だったら、割り切るしかないのか? これも、由乃と星を見に行くための犠牲だって) 神崎麗美と対峙する前から、分かっていたはずだった。 天野雪輝は神さまのくせに弱くてちっぽけで、遠山金太郎のような理想論者ははいずれ遠からず死んでしまうこと。 無力感が、黒い感情へと反転していく。 泣けなかった罪悪感が、由乃を迎えに行きたいという欲望が、悪魔のささやきを運んでくる。 後ろめたく思うことなんか、何もない。 会いに行きたい由乃は『雪輝日記』を持っている。 迎えに行こうとしても、確実に先手を取られて殺される。 だったら、これからも遠山の代わりに『盾』が必要だ。 ここに、二人いる。 こいつらも、利用すればいい。 皆を救うことなんてどうでもいい。 遠山金太郎に励まされ、神崎麗美と対峙して、気がついてしまったはずだ。 神さまなんだからみんながハッピーになれるように願いを叶える? そんな願いよりも大切なモノ。 我妻由乃との幸せを掴むことこそが、一番の願いごとであったことに。 遠山も、それを応援してくれた。 『やりたいことも貫けんよっぽどマシやと思うけどな』と、笑って背中を押してくれた。 一万年ぶりにできた大切な友達が、命を捧げてまで願ってくれた。 高坂は、『泣きそうな顔をしろ』と言っただけで、それ以上のことは要求しなかった。 やりたいこと。分かり切っている。 我妻由乃と、星を見に行く。 もっと彼女の声を聞いていたい、彼女の笑顔を見ていたい、彼女の華奢な体を抱きしめたい。 それが、天野雪輝だったはず。 『恋人』のためならば、『友達』だって踏み躙れ。 お前はしょせん、お姫様の為だけの、王子様だ。 そこで膝をついている、弱い雪輝を助けてくれた、やさしい王子様とは違うんだ。 形容しがたい感情から歯を食いしばり、越前リョーマの背中を観察する。 この少年が、早く泣き叫んでくれればいいのに。 まっすぐに悲しんで、その正しさを、王道を、普通の青春を、見せつけてくれたら。 泣きたくても泣けない雪輝は、羨ましいと逆恨みできるのに。 どうしてこんなに差があるんだろうと妬んで、夢を叶えるための犠牲として利用することが―― 「――馬鹿じゃないの?」 押し殺したような声が、耳朶をうった。 己のことを指摘されたような錯覚で、雪輝はどきりとする。 越前は怒りに満ちた声で、見下ろす少年に向かって話す。 ひと言ひと言を、喋るたびに歯を食いしばるように。 「べつに、誰か庇ったりするのは、そっちの勝手だから。 自己犠牲とか、……うちの先輩も、よく、やるし。 オレも、死にかけたり、無茶したから、命賭けるなとか、人のこと、言えないし。 でも……」 越前リョーマは、まだ殺害者である我妻由乃のことを知らない。 『雪輝を逃がすために囮になった』という略された説明でしか理解していない。 だから、怒りを向けられるとしたら、雪輝が見捨てて逃げたことについてだろうと、そう予想したのだが―― 「何が、『もう手遅れ』だよ。なんで、そこで諦めてんだよ」 びしゃん、と地団太を踏むように、立ち上がって血だまりを踏みつける。 震える足で、強く。 絞り出すような声で、その声を出すためにありったけの意思で涙をこらえて。 「生きること、諦めるなよ。 いつも、あんなに負けず嫌いだったくせに。 もうすぐ死ぬからって、生きるの止めるなよ。 囮になるのは勝手だけど、『手遅れ』とか『優先順位』とか言うなんて、そんなの。 本気で、やってないっ。そんなんだから、死んだんじゃないの?」 見苦しいまでに、必死に煽っていた。 見ようによってはスポーツマンらしかぬ、鬼か畜生かの振る舞いだ。 絶対に助からない怪我を負って、精いっぱい痛みに耐えて戦った少年に対して、 『そんな無様な戦いをするもんじゃない』と罵っている。 しかも、罵倒していることは理不尽な言いがかり。 仮に遠山金太郎が諦めなかったとして、手榴弾による致命傷はどうにもならない。 さながら、どうしようもなく強い対戦相手に追い詰められても精いっぱいに頑張っている仲間に、『本気でやれ』と冷たく鞭を打つようなものだ。 「そんなの、最後の一球がまだ決まってないのに、諦めるのと同じじゃん。 まだまだだよ。……ぜんっぜん、まだまだだね」 『あの』遠山の友人だったほどの人物なら、 雪輝にも、わだかまりなく手を差し伸べるのではないかと思っていた。 遠山が救おうとした人間だから守ってみせるとか、友達のことを誇りに思うとか、そんな理由をつけて。 それができないならば、怒りにつき動かされて、見捨てた自分を責めるはずだと思っていた。 なんでアイツは死んで、お前が生きているんだと、そんな主張をして。 どちらの立場を取ったとしても、越前の言い分は正しい。 でも、違った。そんな二元論では解決できない。 「一球勝負……引き分けだったのに……」 誰かを責めても解決できないと分かっている。しかし笑って許せるほど立派にもなれない。 それでも、心を殺さないために叫んでいる。 よりによっていちばん悪くないはずの遠山を、怒りをぶつける対象に選んだ。 でも、それが死者の冒涜には見えなかった。 なぜなら。 「……オレに引き分けといて、負けんなっ!」 この二人は本当に友達で、好敵手(ライバル)だったから。 だから、こいつは遠山に怒ってもいいんだ。 そんな納得が生まれ落ちた。 のどではなく魂から絞り出すように、越前の呼びかけは続く。 「死にたくなんて、なかったくせに」 綾波が、遠慮したように雪輝の方を振り向く。 その言葉は、ともすれば死ぬ原因を作った雪輝への非難ともなる。 しかし雪輝は首を横に振り、「言わせてあげて」と小さくつぶやく。 不思議と、今はその言葉を聞きたいという心境になっていた。 「生きたかった、くせに!」 心臓がはねる。 ――ワイは死にたくないけど、人を殺すのもイヤや。 橋の上で。神様なら手伝ってほしいと懇願された時。 死にたくないと言っていた。 雪輝も、彼のことを死なせたくはなかった。 ほとんど喚くように、乱れた声がなじった。 「『日本一のテニスプレイヤーになる』って、夢があったくせに!」 知らなかった。 冷えていた胸のうちが、熱を注がれたように熱く痛んだ。 ◆ 【推測】 秋瀬或がディパックに納めて持ち帰ってきたのは、なんと自家用車だった。 トヨタ・クレスタの後期モデル。X100系。 例の浦飯という男から、車を放置してきたというようなことを聞いていたらしい。 片手の秋瀬或に運転をさせるわけにもいかないので、天野雪輝が車のハンドルを握った。 無免許運転にあたるはずだけれど、運転するのは初めてでもないと天野は言った。 秋瀬或が助手席へ。 綾波レイ自身と、越前は後部座席へ。 あれほど体も口も動かしていた越前は、座席につくや否や、糸が切れたように眠りはじめてしまった。 疲れたとか言っていたのは、確かにその通りだったらしい。 その両腕には、遠山少年の持っていたラケットを抱きかかえるように持ちこんでいる。その遺品を持っていくことと、遺体の目を閉じてやること。 それだけしかできなかったことは、越前にとっても辛かったらしい。 車に乗りこむ寸前まで後ろを振り向き、置きざりにするしかない遺体を気にしていた。 そんな姿を見た綾波レイは、胸がチクチクと刺さるような痛覚を覚えた。 だから、というわけではないのだが。 一連の出来事に関わった、運転席の天野雪輝に向かって問いかけてみる。 「さっきの『由乃』って、我妻由乃のこと?」 天野が驚いたように身をすくめて、アクセルをベタ踏みしかけた。 「……知ってたんだ」 「高坂君が、言ってた。『私が守る』って連呼したり、好きなひとを閉じ込めたりする怖いひとのこと」 バックミラーから見える雪輝の目つきが、形容しがたい風になった。 「間違ってないのが……」とかなんとか、ぼやく。 「そんな人と、どうして敵対しているの?」 尋ねると、見るからに天野の口が重たそうになった。 しかし、答えを渋っているというよりは、答えを練っているという風な沈黙だ。 ややあって、淡々とした説明が聞こえてくる。 「ざっくり言うと、前の殺し合いの最後の最後で、どちらが優勝するかで喧嘩になったんだよ。 彼女は僕を生き残らせたいと言って、僕は、由乃を殺すぐらいなら死ぬって言った。 そしたら彼女は、僕を捨ててパラレルワールドの僕と結ばれるって言い出した。 その為には優勝しなきゃいけないから、僕のことも殺すんだって」 「…………」 予想以上に、難解かつぶっそうな内容だった。 考える時間がほしいからちょっと待ってと言うべきか、綾波は悩む。 すると、助手席の少年が口を開いた。 「正確に言えば、彼女の“願い”は、優勝した報酬によって雪輝君を手に入れることだね。 全てを0(チャラ)にすることも視野に入れると、さっきそう言っていたよ」 「そんなこと、できるの?」 「させてもらえると思えないから、僕らは彼女を止めようとしているんだ。 優勝者が褒美をもらえるかどうかについて、ある『予知』を得ていてね」 ちらりと運転席へ、変に熱っぽい視線を送る。 「それに、たとえ生き返るのだとしても『友人』に死んで欲しくないのは当然のことだ。 雪輝君が我妻さんを殺せないように、僕も雪輝君が殺されるのは見過ごせない」 「秋瀬くん……」 ずいぶんと友人おもいの人物であるようだが……実はこちらの少年は、少し苦手だ。 どこがどう、とは言えないのだが、声とか、印象とかに奇妙な既視感がある。 まるで少年にそっくりな人から大事なものをかっさらわれたことがあるみたいな、そんな『気に食わない』みたいな感じだった。 そんな秋瀬或に、雪輝が問いかける。 「でも、それなら由乃が僕のことを捨てる必要は無いはずだよ? 三週目に行く必要が無くなったんだからさ。 なのに、由乃は僕のことを『愛してなんかいない』って言ってた……」 助手席から、微苦笑を含んだため息が聞こえた。 「雪輝君。我妻さんからすれば、君をつい一日前まで殺そうとしていたんだよ? 別れたばかりの恋人に『振ったけど、生き返ると聞いたから愛します』なんて、言えると思うかい?」 「う……」 人間として男性として気づかないようでは駄目なことを指摘されたように、運転席の少年は肩を落とした。 どんどん、綾波には難しい話になってくる。 けれど、遅れて理解が追いついたこともあった。 「それは、喧嘩になっても仕方がないと思う」 それは、天野と我妻由乃が、殺し合いの中で、お互いを生かそうと動いたらしいこと。 「どうして、そう思うんだよ」 いきなり断定されて、雪輝はやや不機嫌そうになった。 「私は、“好き”が私にもあるのか、自信がない。 でも、私の守ろうとした人が、生きてほしいから止めてって言ったら、きっと困るわ」 菊地善人から聞いた、碇シンジの最後の言葉。 綾波レイも含めた二人の人間を、守ってほしいと言ったこと。 困る。 最初は殺し合いに乗ってまで守ろうとしたのに。 そんなことを言ってもらえるなんて、ぜんぜん思ってもみなかったから。 受け止め方が分からない。 「それは……僕も同じだよ。 僕も、由乃に生きてほしかった。由乃の居場所をつくりたかった。 それがあれば、由乃は僕を追いかけなくても、生きていけると思った」 居場所。 その言葉を、綾波は自分の場合と照らし合わせる。 それは、綾波の言葉で言うところの“絆”のある場所ということかもしれない。 だとすれば。 「そう言ってくれる人がいるだけで、もう居場所はあったと思う」 それは、誰かと繋がったまま終われるということだから。 そんな人を、殺すことなんて綾波にはできそうにない。 「だから、私ならそう言われただけで満足するかもしれない。 好きな人を殺さずに済んで、居場所をもらったまま終われるなら」 今度は、急ブレーキがきた。 反動で四人が前に投げだされかけ、越前が眠ったまま倒れかかってくる。 その頭が綾波の肩にいったん引っかかり、そのままずるずると膝の上にシフト。 つまり、膝を枕にした格好に。 起きないかどうか目を配っていると、運転席の主が「ごめん」と謝った。 「君の言ったことが、昔の由乃と重なったんだ。 あの時は、どうしてそんなことを言ったのか分からなかったから、びっくりして」 曖昧な言葉を使ってぼかしている風な雪輝は、あまり良い思い出でないことを匂わせていた。 無遠慮に知ったようなことを言って踏みこみすぎたと、反省する。 いや、そもそも詳しい話を聞くための会話だったのに、『人を好きになる』という話題が出たせいで脱線した。 脱線ついでだと、話題をもどす前にひとつだけ聞いてみたくなる。 「聞いてもいい? 天野くんは、どうしてその人を好きになったの?」 好きになる条件を満たすものは何か、誰かを好きだと言える少年から知りたい。 ハンドルを握る少年は、長くも短くもないだけの間をおいて、答えた。 いつくしみのこもった声で、しっかりと。 「ずっとそばにいてくれたから、かな」 「そう……」 答えを聞いて、思い出す。 学校の教室で、話しかけてくれた少年のこと。 この場所に来てから、ずっと一緒にいた少年のこと。 人を支えようとしたことと、人から支えてもらったこと。 「私と、同じね」 少年の重みを膝に感じながら、言葉はそんな感想になった。 天野がルームミラーごしに、形容しがたい感情のこもった目でこっちを見ていた。 その目には、見覚えがあった。 時おり碇ゲンドウが自分を見て、誰かを重ねるような目をする時と、似ていた。 だから天野も、自分たちの姿から過去の誰かと誰かを重ねているのかもしれない。 「そこの彼とは、ずっと一緒にいるのかい?」 秋瀬或が問い返してきた。 越前を見下ろして物思いにふけるのを見て、綾波にとっての『そばにいた』を、その少年だと解釈したらしい。 「うん。今までずっと」 「良ければ、君たちのことも聞かせてほしいな。今まで見てきたことを」 「……構わないわ」 話題の転換と、情報提供を求める会話の導入。 逆らう理由もなく、避けられることでもないので頷いた。 ぽつりぽつりと、順番通りにたどたどしく話を始める。 時をおかずして、白亜の大きな病院が見えてきた。 ◆ 手塚部長が、死んだ。 跡部景吾が、死んだ。 ペンペンが、死んだ。 碇シンジが、死んだ。 真田弦一郎が、死んだ。 神崎麗美が、死んだ。 高坂王子が、死んだ。 そして遠山金太郎が、死んでいた。 嫌だった。 一人前になりたくても、一人になりたかったはずがない。 『死んだ』と言われるたびに胸が穿たれて、うんざりだと叫びたくなる。 だって、『死んだ』ってことは、もう終わったってことで。 ぶつかって勝ち負けを競ったり、遊んだり、新しいことを知ったりすることが二度となくなったってことで。 神崎麗美が、跡部景吾を殺したと言った。 神崎麗美が、ペンペンを殺した。 バロウと呼ばれていた少年が、神崎麗美を殺した。 バロウが、手塚部長を殺したと言った。 バロウが、高坂王子を殺した。 ごちゃごちゃだ。 泣いたり、怒ったり、悩んだり、疲れたり。 背負うべきものがあって、手が届かなかったものもある。 青学の柱だって、べつに聖人じゃない。 仲間を傷つけた相手には痛い目を見せてやりたいし、 部長や副部長のように誰が相手でも公平にするような自制心にはまだまだ及ばないし、 たまには疲れたと根をあげたくなることだってある。 だから、困る。 天野雪輝の大事な人である我妻由乃が、遠山金太郎を殺した。 「何か僕に言いたいことはある? コシ……じゃない、越前くん」 高坂王子の言っていた『救われてもいい天野雪輝』の。 「いや……っていうか」 外科病棟の待合室で。 自嘲じみた笑みをうっすら浮かべて、対面に座る天野雪輝。 一万歳の神様は、自分に起こったことを全て打ち明けて、そして感想を求めた。 だから、答える。 「世界が二週したとか三週したとか、そんなややこしい話をよく遠山が理解できたなぁと思って」 「最初の感想が、それ?」 綾波に横から突っ込まれた。 リョーマは綾波が見つけてきた車椅子の上に座らされ、綾波はその隣にある座席に座っているので、目線はほぼ同じ高さにある。 休めばちゃんと動けるようになる怪我だからとリョーマ自身は車椅子に反対したのだが、 (根拠として同じ症状を出した真田は数時間かからずに動けるようになっていたので) 綾波は少しでも動かさないようにすべきだと譲らなかった。 ちなみに、骨折した右腕も綾波の手によってがっちりと固定されている。 綾波自身、この手の怪我を見慣れているというか、主に手当される側であり、やり方には心得があったらしい。 呆れとも困惑ともつかない風に顔をひきつらせて、天野は答える。 「知ってる漫画の内容とかに当てはめて考えたみたいだったよ」 「……あ、納得」 それなら分かると、疑問が解決した。 話のスケールはとんでもない。 すべてを0(チャラ)にするために神様になろうとしたとか。好きな女を追いかけて時空を超えたとか。 それなのに、天野雪輝は頼りない笑みを口の端に浮かべて目の前にいる。 だがしかし、遠山金太郎があっさり受け入れたという話を、自分が飲みこめないというのは癪だった。 だから、理解がおよぶ部分から言葉にしていく。 「高坂さんが、アンタのこと色々言ってたよ」 「どうせ弱虫とかヘタレだとか、そんなことだよね?」 「うん、あと、バカだとか甘ったれだとか」 「あ、そう……」 「うん、そのイメージ通りの人だった」 「君……その話し方でよく高坂と喧嘩にならなかったね」 「でも、最後に言ってた。『別にアイツを救いたいとか思わないけど、救われてもいいぐらいには思ってた』って」 「高坂、が?」 淡々と話を続けていた顔が、そこではじめて揺れた。 その動揺を見て、ほっとしていることに気づく。 高坂が天野と張り合おうとしていたように、天野も高坂に対して思うところはあると分かったからか。 「じゃあ、君はどうなんだ? 遠山を見殺しにして涙ひとつ見せない神様を、どう思う」 ぜんぜん『神様』っぽくは見えない、と揚げ足を取る。 少なくとも、『神様に勝ちたい』と公言していたリョーマの前に、『僕がラスボスです』と言って現れたのがこいつだったら…………なんか、嫌だ。 「泣きたくても泣けないことがあるのは知ってるし、別にそれはいい」 隣にいる綾波が、右手を自身の胸にあてた。 どう考えたらいいんだろうねと、内心で呼びかける。 遠山が死んだのに、天野が生きていると恨めたら簡単なのかもしれない。 神崎麗美に指摘されたように、そう考えたいことだってある。 でもそれは簡単なだけで、ぜんぜん楽にはなれそうになかった。 だいいち、天野雪輝に向かって責任追及する権利があるのかどうか。 そこを槍玉にあげるなら、あの神崎麗美が中学校でやらかしたという話には、リョーマ自身の責任も絡んでくるだろうし。 ただでさえ色々とすごく痛いのに、無駄に傷つけあうことになるだけだ。 「高坂さんが殴ったのもあるし。アンタが昔に色々やって、さっきまでグダグダだったってことは別にいいよ。 お年寄りはいたわるものだし」 「お、お年寄り……」 天野雪輝をどうこうしてやりたいというのは無い。 文句を言うべきはそういう選択をした遠山自身であって、それは死体の前で洗いざらいぶちまけた。 「ただ、話を聞いてて気になったんだけど」 でも。 あの死体は、我慢できない。 あの血だまりは。二つに切り裂かれてしまった体は。空っぽになってしまった瞳は。 因縁浅からぬ知り合いをあんな死体に変えたヤツは、許せそうにない。 「もし、その我妻って人が皆を殺したことを悪いと思ってなくても、気にしないの? 一緒に星が見れたら、それでいいの?」 「ああ、それでいいよ」 自信ありげに、うっすらと笑みを口の端にのせて。 即答だった。 「――っ!」 今だけは、足を怪我していることに感謝した。 すぐに立ち上がることができたら、たぶん天野の胸ぐらをつかんでいた。 その代わり、本気なのかと抉るように眼力をこめて天野を睨み据える。 天野は動じない。 仮面をかぶったように冷たく、揺るぐものがないように堂々としている。 高坂王子に殴られて、泣きそうな顔をしていた頼りない少年とは別人のようだった。 「遠山は、僕にとっても友達だった。友達だって言ってくれた。 だから僕は、遠山を殺したことについては、由乃に怒ってる。 でも、だからって由乃を諦める選択肢は無い。 皆と一緒に脱出することも考えるし、助けられた借りだって返したい。 協力できることがあれば何でもする。 ただし、由乃のことだけは譲れない」 でも、そんな僕と相容れないならここでお別れだと、天野は言った。 試されるような視線を、向けられる。 勝手だ。 勝手なことを言ったくせに。 見捨てたらこっちの器が小さいかのような態度を取るなんて、勝手だ。 しかも。 きっと、ここで怒りに任せて突き放しても天野は恨まない。そういうものだから仕方ないと、割り切って別れを選ぶ。 でも、きっと誰も助けてくれないだろうと独りになる。 味方は秋瀬或ぐらいだと、勝手に諦めるのだろう。 それはきっと、遠山も高坂も望んでいない。 誰だって、自分だって、後味の悪い思いをするために、戦ってきたんじゃないはずだから。 じゃあ、どんな言葉をかけたらいい。 気に入らないこともあるけど我慢して一緒にいよう、では足りないと思う。 これから似たような想いをする人と会っても、『俺だって我慢してる。だからお前も我慢しろ』とでも言うのか。 そういう『柱』を、人は信用するのか。きっと信用しない。 考える。難しい。難しい。難しい。 「――大丈夫」 ぽつりと。 リョーマの顔をのぞきこむようにして、綾波が言った。 「越前君が無理なら、私が間に立つから」 念を押すようにひとつ頷くと、雪輝に向かい合って、話す。 「本当に好きな人のこと以外どうでもいいなら、ありのままを話したりしない。 私たちを利用するためにごまかして印象操作をするはず。でもあなたはそうしなかった」 「分かったように話すんだね」 「私のいた場所にも、そういう仕事を専門にした人たちがいたから」 リョーマが感情として我慢できないなら、その間は綾波が代わりに話すということなのか。 さっき寝ている間も、天野たちにこれまでのことを説明していたようだった。 その詳細までは知らないけれど、しっかり天野と言葉を交わして、その上で『言葉が通じないわけじゃない』と判断した。 だったらと、気持ちが少しだけ甘くなる。 綾波を信頼している分ぐらいは、彼女に免じたい。 それに、天野の背中は、遠山金太郎の血で汚れていた。 つまり彼は、ギリギリまで遠山を見捨てずに背負って走ったのだろう。 だから、友達だったというのは本当だ。 生前の記憶からヒョウ柄シャツの少年を呼び出し、その屈託のない笑顔に向かって、ややこしくなったのはお前のせいだと毒づく。 遠山は、跡部景吾が殺されたことも気にしないと言ったらしい。 一発ぶっとばさなければ気が済まないけれど、それで終わり。 そうするのも、分からないわけじゃない。 自分だってバロウが許せないけれど、だから殺そうとはならなかった。 でも、好きなだけ殴れば気が済むかと言われたら違う。 殴ったぐらいでおさまるのか。 あの血だまりを、乗り越えていけるのか。 だいいち、殴るのはすでに高坂が天野にやっている。 我妻に同じことをしても、きっと天野に対しての『あれ』以上の効果は出せない。 じゃあ、部長だったら? 厳しいあの人あったら、こういう時どうす―― ……………………あ。 閃く。 冷めた声で、問いかけていた。 「悪いとは思ってるんだよね? だったら、代わりに責任取ってって言ったら、取ってくれるの?」 そんな風に切り出すと、天野たちの表情が険しくなった。 天野のたつての願いで口を挟まないと診察室に待機していた秋瀬或が、警戒して顔をのぞかせる。 「アイツは一発ぶっ飛ばせば終わりって言ったみたいだけど。 オレ、その時まで我慢できそうにないから。 だから、好きな人のけじめぐらい、ちゃんと自分でつけてよ」 そこまで大事な人のためなら、逃げないよねと。 念を押すように、視線でがっちりと捕える。 覚悟したような顔で、雪輝が頷く。 「いいよ。それで由乃が、少しでも安全になるなら。 もっとも、迎えに行けなくなると困るから、動くには問題ない程度にしてほしい」 場の規律を乱すような者は、どうなるのか。 悪いことをしたら、どんな罰を受けるのか。 最初に会った時から、身をもって体験させられてきた。 絶対に、間違いなく、『100パーセント(CV青学テニス部3年乾貞治)』で、こう言う。 子どもじみた意趣返しもあり、たーっぷりと間を置いてから言った。 「じゃあ、グラウンド100周走ろう」 「「「は?」」」 まず反応を示したのは、綾波だった。 「グラウンドが、どこに?」 「こんだけ広い病院なら、運動用の部屋ぐらいあるでしょ。 リハビリに使うようなの。そこの中を100周で」 「越前君? いくらなんでもそれは、雪輝君は足を撃たれているし――」 秋瀬或も、冷静さをやや崩した声で反対する。 「カスリ傷だって言ってたし、さっきまで歩きまわってたじゃないっスか。 それに室内なら学校のグラウンドより距離短いし、筋肉痛とかも心配ないっスよ、たぶん」 「な、なんで急にそんな体育会系の発想が出るの?」 天野雪輝が、見るからにうろたえた。 「これから彼女さんと一万年間の距離を縮めに行くんでしょ? それに比べたら100周くらい準備運動みたいなもんじゃないっスか」 「上手いこと言ってるつもりっぽいけど、それ全然関係ないよね」 「これが一番すっきりするから」 たぶん口を笑みの形にしながら、リョーマは言った。 「絶対に諦めたくないって、初めて本気になったんでしょ? その本気、見せてよ」 中学生日記 ~未完成ストライド~
https://w.atwiki.jp/english_anime/pages/633.html
462 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 16 09 55 海外ドラマとかアニメで勉強することってさ、 検定試験対策に有効なのかな?遠回りじゃないの? 検定試験って普通もっと硬い文章が出るじゃん 日常会話みたいなフリーダムすぎるのってどうなのよ 464 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 16 28 51 462 検定試験で点数とりたかったら検定試験の勉強するのが一番いいと思う。 英語が上手になりたかったら英語を勉強するのが一番いいのと同じだよ。 465 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 17 02 58 462 TOEICでハイスコアをマークするのが当初の目的だったが、 北米版プラネテスをみたら俺もこれくらいしゃべりたいと思った。 目的がかわった。 466 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 17 30 52 俺なんか、これくらいしゃべりたいと思ったのは YMOを聴いた時だったな。 467 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 17 33 21 目的としては「英語でアニメを楽しめるようになる」が一番しっくりくるような気がする。 試験に受かりたいとか会話が出来るようになりたいとかの目的だと有効性に対しての 疑問が絶えないと思う。 468 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 17 36 59 ちょうど試験勉強じゃ学べない英語が趣味を通して習えるってのが理由の人も そこそこいるんじゃないかな。 469 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 17 37 55 何にしてもモチベーションは大事だよ。 470 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 18 36 55 俺は受験勉強とは別で音読したり、通学中に聞いたりしてます リスニング用教材のがいいのはわかるけどやっぱりこっちのが続く メインの教材にはならないけど 471 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 18 39 35 ここに仲間がいることが分かるのもいいね。モチベーションを保てる。 検定試験?そんなもん知りません。おまけで点をとれればラッキーかなと思っているけど、 もうずっと受けたことありません。 472 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 18 46 41 検定試験とは別モノで試験用に勉強する必要があるというのは同意するが 英語を学びたいってんならアニメで勉強も十分選択肢の一つに入ると思う ところでリスニング教材との違いって具体的にどんなんかね? 473 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 18 51 37 まあアニメ好きのその言い訳なんだが、 文法、リーディング、リスニングがある程度のレベルに達したら、 あとはいろんな種類のものにいっぱい触れる事が大事だと思う。 いろんな表現も覚えられるし、自然な会話の受け答えのサンプルってなかなか教材ないよ。 周りにネイティブがいない場合はアニメやドラマはいいソースだと思う。 474 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 18 53 25 スレの成り立ちが試験勉強用では無いしなw ちゃんとした(というと語弊があるが)教材なんて使うな!アニメだけで勉強しろ!! とか言うわけが無いんだしw 475 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 18 54 04 リスニング教材だとスラングはほぼ皆無で、 口語英語もそれほど突飛なやつなかったり、 なんといっても、感情的な台詞とかすごくすくないのではないかな? 適当に言ってみたんだけど。 476 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 19 01 14 473 俺も30代半ばにしてSEにすらなれない底辺プログラマーですよ。w 基本的に日本語音声+英語字幕でちまちま止めて意味や文法を調べながらやってます。 あとは英語音声をMP3プレイヤーに入れて音楽代わりに聞いてる。 これだけでも聞き取れる範囲が広がってくるから不思議だ。 477 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 19 04 43 結局、「継続できる教材」ってことが大事だよな。 聞いてて楽しくないと、やっぱ俺にはダメだ。極端言うと100回繰り返し聞いてもなんとか耐えれる 市販の教材なんて俺の中では存在しない。 478 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 19 14 01 基礎的なところが出来て、アニメも好きだ!という人なら C mon! 好きな物で勉強すると、濃さと定着率が違うと思う(いや、勉強していると感じたら負けかも)。 キャラクタの感情を感じながら聴いているのが、定着率の良い理由かな? 479 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 19 28 02 前スレでご迷惑をかけてしまったオヤジですが、また仲間に入れていただけます? 前書いたように質問はこのスレには流さないつもりなんで。 (というか教材が別の作品に変わってたりもしますんで) とりあえず、前スレの847-849辺りの方、心優しいレスありがとうございました。 480 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 19 45 40 俺ここの平均年齢をかなり押し上げてると勝手に想像してたんだけど、意外に30前後も多い予感。 481 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 19 48 00 476 俺は最近SEをやめた無職30才だよw 486 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 20 55 17 479 Welcome back! これは興味深いなあという質問やネタの時は、ぜひ流して欲しいな。 487 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 20 56 03 462 逆に硬い文章ばかりで、普通の会話みたいに音がむちゃくちゃ 早くなるようなところがなく、音が曖昧になったり消えたりすることもない 検定用に不自然に作られた会話のためな対策だけしていると、 実際の会話は聞き取れない。つまり実際には役に立たない。 462は何のために検定試験を受けるのか? 検定試験に受かったというハクか、それとも英語の実力か どちらなのか? 488 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 21 08 05 留学・進学用にTOEFL/SAT/GREの点数が必要だとか、資格あると翻訳バイトの時給が あがるとかそんな人が迷い込んだだけじゃないかね。それでもなんで他人も検定やら なんやらを受験すると思ってるのか不思議だけど。 490 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 22 52 00 487 検定試験でも、音が曖昧になったり消えたりはするんだが? その辺の参考書に付属しているCDでも音の脱落はあるが、全くリスニングの勉強をしたことがないんだろうか。 ただ、会話の内容などはアニメと検定試験では全く違う。 ドラマやアニメの会話なんかはスラングもスラング。 日本語でハルヒやローゼン、らきすた見ていて、こんな日本語を勉強している外国人をどう思う? 実際に、アメリカに留学したりするなら、若者同士の会話ではアニメの英語は役立つだろうね。 でも日本で生活するのが前提の英語学習者なら、 わざわざアニメやドラマを英語で見るとか、それくらいにしかアニメやドラマ特有の英語知識を生かす機会はないだろう。 勿論、全く無意味ということではないが、効率が明らかに悪いって話。 494 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 23 27 45 490 必ずまじめキャラがいるので、あらたまったところでは、そいつらのちょっと鼻に付く話し方を 真似れば良いのだ。ハルヒなら古泉、ローゼンなら真紅、らき☆すたならみゆきさん。 でも日本で生活するのが前提の英語学習者なら、 何か、志が低くないか? 495 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 23 49 47 海外在住の人がここにはいないとか、日本で生活するのが前提だとか、 検定試験なんかじゃ計れないぐらいに英語力がある人はここにいないとか、 わざわざアニメやドラマを映画でみることを趣味にする人がいないとか、 そういうことを暗に仮定してるようにとられかねない書き込みがあるな。 とくに 490とか、 490とか、 490とか。 496 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/18(土) 23 55 11 同じ20分なら、ラジオ英会話を聴いた方が英語学習のために 効率的なのは確か。 でもつまらないから大半の人は数ヶ月で挫折するし、 数年続けられる人はきわめてレア。 だから自分の好きな方法で長く続ける方が良い。 497 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 00 07 27 NHKの語学講座も4月になって1から始まると、 今度こそは、とテキストを買う人が増えるけどそれ以降は右肩下がりらしいよ 0か1で俺は0.5を選んだらまぁ続けられてると 498 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 00 13 48 ヤフオクにはいつ見ても新品同様の英語教材が山ほど出品されている。 どれほど多くの人が挫折してるかがよくわかる。 確かにアニメは英語教材としては、それが目的で作られた訳じゃないから いろいろ欠点はあるだろうけど、 好きな人が取り組めば長続きする。 それだけでもいいんじゃないかな。 所詮、英語の実力ののびは、どれだけインプットできるかによると思う。 欠点のある教材でも大量にインプットできればそれはそれでよい。 後、気になるならちゃんとした教材で補えばよい。 499 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 00 23 10 「続けらやすいか否か」という点にアドバンテージが集約しとるな 500 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 00 38 06 杉田敏先生にはず〜っとお世話になってるよ。 まじめにやれば力つく。 501 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 00 39 35 きっかけは日本文化かぶれの上司に同人誌とかの翻訳たのまれるからそれ系の英語を 勉強しはじめたことだったな。徐々にこっちの世界に嵌りつつあるんだけど… 学校や市販の教材じゃ教えてくれないこと覚えられるってのも結構な アドバンテージになるんじゃないかな。 503 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 00 44 26 いつか外国人とオタ会話するのが夢だが そんな機会はまあないだろうなあ らきすたとかそういう風に説明するのかっていろいろ勉強になった 504 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 00 47 32 447 海外のコミケとか行けばいいじゃない。 505 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 00 48 54 あれ、なんで変なとこにアンカしちゃったんだろ。一個上へのレスのつもりだったのに… 510 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 01 16 06 今まで色んなやり方で英語をやってきた。効果のあるものもあったが結局長続きしなかった。 なぜって効果があって効率よく覚えられたとしてもそれを日常生活で使うことがないからモチが続かんのだ。 言葉ってやっぱ目的達成の手段でしかないからね。目的がないのに追求しても暇人が資格をとりまくるのに 似てむなしい。 どこかで大病を患って日本の書籍では情報が足りなかったので辞書片手に必死に海外の文献を読み漁って るうちに語彙や読解力が跳ね上がったって話しを聞いたことがあるけどそれぐらい鬼気迫るものがないとダメ なんだろうね。(まあ医学文献だから会話力はさほどつかなかったんだろーが) 「アニメを英語で楽しむ」って目的は↑の目的に比べたら目的というよりほとんど趣味レベルの話だろう。 「楽しいからやる」のだから。もちろん楽しいのは悪いことじゃないけど、それは裏を返せば楽しくなくなったり 飽きたり、他にもっと楽しそうなものを見つけたらやめてしまうということだ。 そうやってその時その時で一番楽しそうだと思われるものに次々と飛びついて貪る。 それこそまさに俺が今までやってきたことだ。w 511 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 01 20 16 難しいこと考えんなって。死ぬまでの暇つぶしぐらい気楽にいこうぜ。 512 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 01 24 15 英語がわかるようになれば、外国のアニメも普通に観られるようになるくらいの認識でいいと思うけどな。 世界中どこのアニメでも大抵英語吹き替えや英語字幕はついてるが、日本語吹き替えや日本語字幕はなかなかないからね。 このスレにいる人はアニメが好きなんだろうから、世界中のアニメが全部見られるようになるっていうのは魅力的なんじゃないかい。 515 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 01 52 01 512 日本のアニメ以外で面白いって思ったこと無いな 516 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 02 03 25 515 ディズニーは? 517 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 02 07 08 あんなもん女子供の見るもんだ 血が飛んでロボがブッピガン!で騙し騙されじゃないとアニメじゃない 518 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 02 10 54 514と 517が釣りに見える俺は病んでるんだろうか… 519 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 02 11 39 アニメのスターウォーズは結構おもしろかった。 キャラクターデザインはさておき、戦闘演出がものすごかった。 あれは日本のアニメにはないメリットだ。 520 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 02 13 51 510 趣味であることに何の問題もないよ ただ本気で身に付けたいと思ってないのに そんな愚痴をこぼされても困る 521 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 02 15 33 いっそのこと中高の教材を全部アニメにしたらいいのに 教科書からリスニング教材まで全部ガンダムとプリキュアでいいよ 522 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 02 16 38 520 パソコンの電源きってみるといいよ。あら不思議。愚痴が聞こえない! 523 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 02 18 44 521 アニメ嫌いな人からしたらそいつは苦痛だろうな。 524 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 02 22 22 アニメ嫌いな人なんて滅多にいないぞ 好きじゃない人は多いだろうけど 525 :名無しさん@英語勉強中:2008/10/19(日) 02 22 52 英語嫌いの方が遥かに多いだろうな
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リファレンス 対応する PHP マニュアル PHP リファレンスの説明 - Manual リファレンス (参照) はある意味で非常に面倒な機能です。 正しく使えば便利ですし、正しい使い方を学ぶのもそこまで難しくはありません。 ただ一点、正しくない使い方を見つけるのが非常に面倒なのです。 リファレンスを使うことがない、または使う必要のない場合、そのままでいたほうが幸せです。 無理してリファレンスを使うことはありません。 もし、もしも、運悪くリファレンスと遭遇してしまったら…… ……入社先のコードで既に使われていたら。 ……どうしてか PHP4 時代の PEAR を使う羽目になってしまったら。 スクリプトを書き始める前に、リファレンスの仕様を確認しましょう。 リファレンスとは エイリアス (別名) とも呼ばれるように、リファレンスがすることは "ある名前 (の変数) が指す値に、別の名前 (の変数) を与える" というものです。 $keitai = ドコモ ; // $keitai (名前) は ドコモ (値)$cellPhone = $keitai; // $cellPhone (名前) と $keitai は同じ値を指し示す名前。$keitai = ソフトバンク ; // ドコモからソフトバンクに買い替えたので、 $keitai の値を変更する。echo $cellPhone; // ソフトバンク // $keitai と $cellPhone は同じ値を指し示している! unset($keitai); // $keitai という名前を破棄してもecho $cellPhone; // ソフトバンク // $cellPhone という名前は残る。 リファレンス渡し 非推奨な方法のリファレンス渡し リファレンスを返す リファレンスを使うべきポイント こういった理由なら、リファレンスを使うのは一旦考えたほうがいいよ コピーのコストを削減する
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エラー処理 対応する PHP マニュアル PHP エラーのレポート - Manual PHP 例外(exceptions) - Manual PHP エラー処理 - Manual PHP におけるエラーの種類 エラーと例外の違い エラーは全て潰す エラーは表示してはならない
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