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歩くような速さで ◆b8v2QbKrCM 西側の窓から差す光は、毒々しいまでの赤色であった。 会場を貫通する線路を走る一台の列車。 その三両目を、グラハム・スペクターはひとりで占有していた。 ボックス席に腰を降ろし、向かいの座席に脚を乗せる無作法な座り方も、今は誰にも咎められない。 ――がたん、ごとんと列車が揺れる。 グラハムの傍らには、巨大な銀色の棍棒が立てかけられている。 少し前までライダーが持っていた得物で、無理に剣で殴るより良さそうだといったら、あっさりと交換してくれたのだ。 気に食わないがケチではないらしい、とグラハムはライダーへの評価を一部改める。 正確には十手という武器なのだが、異様な巨大さもあってか、日本人である沙都子ですら、これが十手であるとは気付かなかった。 そのため仮の呼称として、グラハムはこれを棍棒と呼ぶことにしていた。 本来の名称や用途が何であれ、ぶん殴ることにしか使わない予定なのだから、むしろ棍棒と呼ぶほうが的確であるに違いない。 ――がたん、ごとんと街並みが流れる。 棍棒と反対側の傍らには、クリストファーが持っていた荷物がそのまま置かれている。 あれから色々あって、中身をどう処理するか保留のままになっていた。 グラハムが持っているのは便宜的な処置に過ぎない。 要は単なる荷物持ちである。 車窓の外では夕日の残滓が空を濁らせていた。 まるで消えゆく太陽が最後の抵抗とばかりに空を掻き毟り、夜に血を滲ませたかのように。 ――がたん、ごとんと吊革が震える。 時刻は既に十八時を回り、十九時への一方通行を駆け抜けている。 あくまでグラハム・スペクター個人の観点でいうなら、先ほどの放送は大きな影響を及ぼすものではなかった。 確かにレッドの死は衝撃であった。 それは隠せるものではないし、隠すつもりもない。 というか実際に怒りと悲しみを言葉にし尽くして語り尽くした。 彼を殺した犯人を見つけられたなら、問答無用でぶっ壊してやりたいとも思っている。 しかしその情報は、放送の直前にライダーから聞かされたものであり、放送による影響ではない。 クリストファー・シャルドレードの死は目の前で見取ったし、墓も作ってやった。 ツンツン頭がくたばったのは報いに違いない。 他にも聞き覚えのある名前が呼ばれたが、グラハムにとっては殆ど縁の無い連中だった。 だが、たったひとつだけ―― グラハムは針のような斜光から目を離し、車両後部に視線を送った。 「悲しい……悲しい話をしよう……。俺は命の恩人Aの友人を見つけることができた。 きっと命の恩人Aは喜んでくれるだろう……ツンツン頭を逃してケイイチの死の遠因を作った責任も少しは挽回できただろう……。 けれど悲しい……命の恩人Aの友人は悲しんでいる……。それは自分のことだけではなく……」 ◇ ◇ ◇ 線路を行く列車。 その先頭車両。 そのまた先頭座席。 世間一般では運転席と呼ばれる場所。 そこは今、奇怪な光景の真っ只中に置かれていた。 計器やパネル、スイッチの類が配置されたコンソール。 ――太く強靭な脚の足置きと化している。 運転手が体重を預ける腰掛け。 ――常軌を逸した臀部を収めきれず、背もたれの上に座られている。 車内と運転席を仕切る壁。 ――どういうわけか、こちらが背もたれとして使われている。 つまるところ、常人を基準に作られた運転席ではライダーが座るには小さすぎたのだ。 普通は座席とコンソールの間に脚を入れる形になるのだが、ライダーの体躯では窮屈極まりない。 どうにか落ち着けないかと試行錯誤した結果、こんな奇妙極まりない体勢になってしまったのである。 それでも運転ができている辺り、騎乗スキルの恩恵は小さくないのだろう。 運転席に着くや否や、自動操縦の解除方法まで理解してしまったほどなのだから。 電車が緩やかなカーブを曲がっていく。 ライダーは運転の片手間、意識を思索に傾けた。 放送が流れる直前、ライダーはグラハムにレッドの死を伝えた。 死亡者の名前が放送で呼ばれてしまう以上、隠していても仕方がないと考えたからだ。 無論、レッドを殺したのがラッドであることは伏せてある。 ……が、グラハムの激情を鑑みると、それで正しかったのかと疑問に思ってしまう。 知らなかったとはいえ、自分の身内に殺意を向けていたと気付いたとき、その憤怒はどこへいくのか。 『ラッドの兄貴』へ向いたままなのか。 自身を欺いたライダーへぶつけられるのか。 全ての元凶へと向けられるのか。 結果を想像することすらできない、一種の賭けだ。 だが、ライダーは決めていた。 これが原因でグラハムが敵対するならば、自分が責任を持って相手をしよう、と。 電車がC-4駅へ差し掛かる。 ホームに誰もいないことを確認し、ライダーは電車をそのまま通過させた。 ただでさえ低速だった電車を、更にゆっくりと走らせていく。 ふと、少し前に流れた放送のことを思い出す。 アーチャーの死は驚きではあったが、それ以上の感想はなかった。 元々『アーチャー』のクラスは『ライダー』のクラスと同様、宝具の強力さで優位を得るクラスである。 純粋な白兵戦能力では『セイバー』や『ランサー』に及ばない。 見たところ、アーチャーはライダーと同様、本来の宝具を失っているようであった。 わざわざランサーの宝具などを使っていたのも、その証左だ。 宝具の消失に加え、受肉によって通常攻撃が有効になっている状態では、不覚を取ってもおかしくはない。 ライダーは髭に覆われた顎に手をやった。 アーチャーがランサーの宝具を持っていたということは、他の宝具もどこかにあるということではないだろうか。 思えばグラハムと交換した剣も、宝具としか思えないほどの魔力を放っていた。 もしかしたら自分の知らない英霊の宝具だったのかもしれない。 ――実際、無毀なる湖光は『バーサーカー』のサーヴァント、ランスロットの宝具である。 しかしバーサーカーは、ライダーの前でこの宝具を使わなかったのだ―― その可能性に思い至り、ライダーはにぃっと笑った。 もしかしたら、あるのかもしれない。 絢爛たる光輝を放った騎士王の聖剣"約束された勝利の剣"が。 "王の軍勢"を一撃で葬り去った"天地乖離す開闢の星"が。 アーチャーが蔵に収めていた財宝をかき集めるのもいいだろう。 以前、かの王に持ちかけて一笑に付された、"王の財宝"で武装した"王の軍勢"という絵空事も実現できる。 バーサーカーとの戦いで用いていた黄金の船も、ライダーのスキルを用いれば扱えるに違いない。 ライダーは、自身の行動指針に、新たな項目をひとつ付け加えた。 左側の窓から差していた光が、少しずつ薄らいでいく。 山の向こうに熔けていく太陽は、まるで溶鉱炉の炉心のようであった。 灼熱する液状の太陽が山肌を焦がし、地平に広がり、町へと染み渡っていく。 しかし、もうじきそれらは冷え固まり、冷たい夜に取って代わられるのだ。 「任せきりにしてしまったが……我らではどうしようもないからなぁ」 硝子越しに後方を見やり、ライダーは呟いた。 無人の先頭車両の中で、吊革だけがせわしなく動いていた。 ◇ ◇ ◇ がたん、ごとん。 がたん、ごとん。 車輪の音がリズムを刻む。 心臓がゆっくりと打つように、穏やかなリズムを響かせる。 がたん、ごとん。 がたん、ごとん。 車両の床に影が伸びる。 小さな身体の輪郭を、精一杯に伸ばしている。 がたん、ごとん。 がたん、ごとん。 前から数えて四番目の車。 沙都子は夕日に背を向けて、座席の真ん中に腰掛けていた。 靴は土に汚れ、服は砂埃に煤けているが、その瞳はくすんではいない。 悲しそうに目を細め、慈しむように微笑み、沙都子の膝を枕に眠るアルルゥを撫でた。 髪に指を沿わせ、流れに沿って手櫛を滑らせる。 ついでに顔に掛かっていた前髪を払っておく。 アルルゥの目元は、少し赤く腫れている。 沙都子は口をきつく噤んだ。 どうして、よりによって―― あの後、沙都子はアルルゥにクリスの死を告げた。 それがクリスの遺志であり、沙都子もそうすべきだと考えたからだ。 どうして、よりによって、あのタイミングで―― ――アルルゥの家族の名が呼ばれてしまうのか―― 沙都子はアルルゥに沿わせていない方の手を、ぎゅっと握り締めた。 不幸は重なるというが、同時に襲ってこなくてもいいではないか。 それもこんな小さい子にまで。 アルルゥは家族を次々と失った。 一緒に行動していた男の人も死んでしまった。 友達だったクリスもいない。 ごめんなさい、ねーねー、圭一さん―― 沙都子は心の中で、今は亡き仲間達に頭を下げる。 ライダーという人から圭一の死を聞かされたとき、沙都子は泣き崩れてしまいそうになった。 直後の放送で詩音の死亡が伝えられたのは、まさに追い討ちであった。 涙を流して泣き喚きたい……全部投げ出してしまいたい……そんな気持ちにすらなった。 それを踏み止まったのは、自分の隣で泣きじゃくるアルルゥがいたからだ。 アルルゥは家族をみんな失った。 友達も失った。 自分が傍から離れれば、本当に独りぼっちになってしまう。 だから、沙都子は必死に涙を堪えた。 笑顔まで作ってアルルゥを慰めようとした。 ライダーやグラハムではなく、自分にしかできないことだったから。 そうして、二人の死を悼むことを後回しにしたのだ―― アルルゥの髪に水滴が落ちる。 沙都子は慌ててそれを拭ったが、水滴は次から次に落ちてくる。 「ダメですわ……わたくしはアルルゥのねーねーなんですから……泣いたりしちゃ……」 それでも涙は流れ続ける。 声を上げてはいけない。 そう強く思うほど、喉の奥から嗚咽が競り上がってくる。 たとえ傍にいないように見えても――その人は、いつでもわたくしたちの傍にいますわ 悲しむ事も大事ですけど、いつまでもここで止まっているわけにはいきませんの だから、アルルゥさんがお姉さんのように強くなるのを手伝いますわ エルルゥの墓前でアルルゥに掛けた言葉が蘇る。 ここで自分が悲しみに打ちひしがれてしまっては、あの言葉が嘘になってしまう。 だから、泣いてはいけないのだ。絶対に。 残酷に思えるかもしれないが、沙都子はそれを受け入れている。 彼女自身が背負うと決めた責任なのだから。 それなのに、涙は頬を伝い、沙都子の膝を濡らしていく。 「おとーさん……おねーちゃん……。いっちゃイヤ……ねーねー……」 アルルゥの小さな手が、沙都子のズボンの裾を掴む。 沙都子は乱暴に涙を拭うと、覆いかぶさるように、アルルゥを抱きしめた。 自分はここにいる―― どこにも行ったりしない―― 精一杯の体温で、その思いを伝えたかった。 窓の外には、黄昏と夜の間に見える、蒼い空。 宝石のような薄明を背景に、歩くような速さで景色は流れていく。 せめて、流した涙が乾くまでは。 【C-5 電車内部 /一日目 夜】 【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に】 [状態]:健康、L3、深い悲しみ [装備]:レッドのニョロ@ポケットモンスターSPECIAL、 [道具]:支給品一式×2<沙都子、翠星石>、グラン・メテオ@ポケットモンスターSPECIAL、 翠星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン、翠星石の亡骸首輪つき、 雛苺のローザミスティカ@ローゼンメイデン カビゴンのモンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL、ゴローニャのモンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL [思考・状況] 1:絶対にアルルゥを守り抜く。 2:ライダーとグラハムについていって、部活メンバーの生き残りと合流する。 3:真紅にローザミスティカを届ける。水銀燈には渡さない。 ※参戦時期は具体的には不定。ただし、詩音を『ねーねー』と呼ぶほどに和解しています。『皆殺し編』の救出以降ではありません。 ※名簿は確認したようです。 ※雛見沢症候群の進度は具体的には不明。L5まで進行した場合、極度の疑心暗鬼と曲解傾向、事実を間違って認識し続ける、などの症状が現れます。 説得による鎮静は難しいですが不可能ではありません。治療薬があれば鎮静は可能ですが、この場にあるかどうかは不明です。 ※真紅、蒼星石、水銀燈に関しては名前しか知りません。 ※アルルゥの名を仗助から聞きましたが、アルルゥの家族の詳細についてはまだ把握していません(エルルゥ=姉のみ把握しました) ※レヴィに対して良い印象を持っていません。 またレヴィがドールを壊して、ローザミスティカを奪ったのではないかと疑い、それが蒼星石のものではないかと考えています。 ※ゼロと情報交換しましたが、どこまで教えられたかは不明です。 【アルルゥ@うたわれるもの】 [状態]睡眠、深い悲しみ、ダメージ(小) [装備]無し [道具]支給品×2<アルルゥ、仗助>、 不明支給品(0~1)<仗助> 、ひらりマント、トウカの刀@うたわれるもの [思考・状況] 1:もう誰とも別れたくない ※ここが危険な場所である事はなんとなく理解しましたがまだ正確な事態は掴めていません。 ※放送の内容を理解しました。エルルゥ達の死も認識しています。 【チーム名:○同盟ライダー組】 1:主催者の打倒。 2:E-2駅からG-7駅に向かい、映画館、消防署、モールを訪れ21時までにB-4民家へ向かう。禁止エリアの場合H-4、G-4へ。 2:サカキ、ミュウツー、片目の男(カズマ)、赤髪の男(クレア)、リヴィオ、ラッド、電気の少女(美琴)を警戒。 クレアという女性、佐山、小鳥遊、アルルゥ、ヴァッシュを信用。アーチャーはやや信用。 ハクオロも一応信用。 真紅は情報不足で保留。 【ライダー(征服王イスカンダル)@Fate/Zero】 [状態]:魔力消費(中)、疲労(中)、腹部にダメージ(大)、全身に傷(小)および火傷(小) 腕に○印 [装備]:包帯、象剣ファンクフリード@ONE PIECE、 [道具]:基本支給品一式×3 、無毀なる湖光@Fate/Zero イリアス英語版、各作品世界の地図、ウシウシの実・野牛(モデル・バイソン)@ワンピース、 探知機、エレンディラのスーツケース(残弾90%)@トライガン・マキシマム ヤマハV-MAX@Fate/zero [思考・状況] 1:アーチャーより先にバトルロワイアルで自らの軍勢で優勝。 2:首輪を外すための手段を模索する。 3:北条沙都子とアルルゥを守る。 4:サーヴァントの宝具を集めて戦力にする。 5:有望な強者がいたら部下に勧誘する。 【備考】 ※四次元ポケット@ドラえもんは図書館の中に放置されています。 ※原作ギルガメッシュ戦後よりの参戦です。 ※臣下を引きつれ優勝しギラーミンと戦い勝利しようと考えています。 本当にライダーと臣下達のみ残った場合ギラーミンがそれを認めるかは不明です。 ※レッド・レナ・チョッパー・グラハムの力を見極め改めて臣下にしようとしています。 ※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。 ※自分は既に受肉させられているのではと考えています。 ※ブケファラス召喚には制限でいつもより魔力を消費します ※アルルゥの存在を知りました。 ※現在の魔力残量では『王の軍勢』をあと一度しか発動できません ※別世界から呼ばれたということを信じました。 ※会場のループを知りました。 【グラハム・スペクター@BACCANO!】 [状態] 疲労(中) ダメージ(中) 青いツナギ姿(いくらか傷) 腕に○印 [装備] 包帯 小型レンチ スモーカー大佐の十手@ONE PIECE [道具] 支給品一式、(一食分、水1/10消費。うち磁石は破損)、スペアポケット@ドラえもん、かぁいい服 海楼石の網@ONEPIECE、クリストファー・シャルドレードのデイパック [思考・状況] 1 当面は他のメンバーとの合流を目指す。 2 北条沙都子とアルルゥは守り抜く。 3 ウソップやレッドを殺した者を壊す。 4 イスカンダルに敵意。 5 殺し合い自体壊す 6 ラッドの兄貴と合流、交渉。兄貴がギラーミンを決定的に壊す! 7 イスカンダルの勧誘は断固拒否。 ※レッドたちがクレアを信用していることを知りません。 ※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。 ※ライダーからの伝聞により劇場での顛末を知りました。 ※クリストファー・シャルドレードのデイパックは、便宜的にグラハムが預かっています。 中身……大きめの首輪<ドラえもん>、基本支給品一式<エルルゥ>、マスケット銃用の弾丸50発 アミウダケ@ワンピース 、サカキのスピアー@ポケットモンスターSPECIAL 庭師の如雨露@ローゼンメイデン、グロック17@BLACK LAGOON(残弾0/17、予備弾薬15) 悟史の金属バット@ひぐらしのなく頃に 時系列順で読む Back 世界-The World- Next 砂鉄の楼閣(前編) 投下順で読む Back 世界-The World- Next 砂鉄の楼閣(前編) Back Next 赤目と黒面(後編) グラハム・スペクター あなたへの手紙 赤目と黒面(後編) ライダー(征服王イスカンダル) あなたへの手紙 赤目と黒面(後編) 北条沙都子 あなたへの手紙 赤目と黒面(後編) アルルゥ あなたへの手紙
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歩くような速さで ◆W91cP0oKww 「やあ、気がついたかい」 薄ぼんやりとした視界が次第に明瞭になっていく。そして耳に入るのは低い男の声。 雛苺はぱちぱちと眼をまばたきをした後、ゆっくりと辺りを見回した。 「ここは……どこ?」 「遊園地の待合室だね。大丈夫、ここは安全だからさ」 「誰かが襲ってきても僕と弘樹が追い返すから」 杉村が見せた笑みはシャイで無愛想ながらも精一杯見せたものだった。 怖がっているのなら安心させなくては。出来ることならば彼女の不安を取り除いてあげたい。 そう思った結果、笑みが出てきたのだ。 キャンチョメもそれに付随して元来の明るい性格からなる快活な笑みを見せた。 「……おうまさんは? ガッシュは? 雪輝は? あの大きな龍は? ヒナ達は一体どうなったの?」 その何も知らぬ言葉に杉村はすぐには返答出来なかった。 真実を告げるべきなのか。それとも隠しておくべきか。 杉村としては出来ればバレる嘘なんてつきたくなかった。 だが、雛苺は眼を覚ましたばかりでまともな思考能力を有していない。 少し時間を置いてから真実――遊園地での乱戦の結末、放送の内容を伝えるのが吉ではないのか。 「弘樹……」 キャンチョメがじっと杉村を見つめる。視線から察するにこちらに判断を任せるといったものだろう。 どうする。俺はどうすればいい。 頭の中で今の自分の考えをまとめ上げる。 「馬と雪輝君は俺にもわからない。生きてるか死んでるか、俺達もあの遊園地で別れてからは姿を見ていない」 「よかったぁ……」 「だけど、ガッシュは死んだ」 結局、杉村は真実を伝えることに決めた。 後回しにして物事が拗れる可能性、逆恨みにより刃を向けるといったマイナスの方面を気にしたら今ここで真実を伝えた方がいいのかもしれないと思ったのだ。 これが杉村一人だと判断も変わったのかもしれないがここにはキャンチョメもいる。自分一人の考えで仲間を巻き込むわけにはいかなかった。 「……そう死んじゃったんだ、ガッシュ」 雛苺は事実を確認するかのように静かに呟いた。 そして「他には?」と聞かれたので杉村は予めメモしていた放送の内容を伝える。 雛苺に放送で呼ばれた名前を全て告げはしたがさほど動揺はせず。 ただ『水銀燈』という名前の時、顔を少し歪めて悲しそうに少しうつむいた。 「大丈夫かい?」 杉村は雛苺が泣き喚いてさっきのような事態がまた起こってしまう可能性も視野に入れていた。 その予想とは大幅に違っていささか拍子抜けではある。 「うん、ヒナだけが悲しいわけじゃないもの。雪輝もおうまさんもあなたたちもみんな、悲しくて泣きたいはず」 「いや、俺は……大丈夫だから」 「嘘。だってあなた、今にも泣きそうな顔をしている」 放送の時はそれどころじゃなくて気には留めていなかったが杉村も大切な友人を失っている。 三村信史。バトル・ロワイアルで死に別れてしまった親友ともう一度会えるかもしれないというささやかな希望は脆くも崩れ去った。 大丈夫なわけがない。大切な友人を二度も失う経験なんてしたくなかった。 「ごめんな、心配かけて。でも、泣く暇があったら俺は笑って前を向きたいんだ。だから俺は泣かない」 ここで下を向いて俯くことは簡単だ。 しかし、そうすると自分は哀しみで押しつぶされて前を見ることはきっとできないだろう。 過去に囚われたまま死んでいく。そんな最後は杉村はごめんだった。 明日を目指してみんなで生き抜くのだ。 それがこの殺し合いに巻き込まれる前からの共通して持っていた意志。その意志は変わらずに今もこの胸に内包している。 「アイツも、七原もきっとそう思っているだろうから」 誓ったのだ、生きてまた会おうと。一緒にこのクソッタレな殺し合いから生き延びて共に笑おうと。 「でも俺はこの強さを君に押し付けるつもりはない。これは俺が見つけたものだ。だから俺に構わずに君は泣いてもいいんだよ?」 「大丈夫です、こんな殺し合いにヒナは負けたくない。もう一度、皆と会いたい……!」 「そうか……じゃあ一歩ずつでもいいから一緒に進もう。俺達はこんなゲーム“程度”で収まる命じゃないんだ。 なあ、キャンチョメ?」 「うん!」 杉村は思う。この子達を護ってみせる。この輝きを失わせなんかしないと決意を新たにする。 力が弱くてもこの思いだけは負けてやらない。 (そうだ……俺がやりたいことは、牙でも爪でもなく――――言葉を武器にして) いつかみんなで百点満点の笑顔が出来るその時までどんな敵とだって戦ってみせる。 杉村の秘した決意は――何かを打ち破るきっかけとなるのか。 それは神様の振る賽次第。 (誰かを護ることなんだ。そうだよな、三村……) 【A-7・遊園地の待合室/一日目/午前】 【杉村弘樹@バトルロワイアル】 [状態]:疲労(大)、精神的疲労(小)、心の力消費(中) 、全身裂傷、 指の爪剥離 [装備]:英雄の証@ブレイブ・ストーリー~新説~ 、仮面ライダータイガのカードデッキ [道具]:基本支給品×2、 [思考・状況] 基本行動方針:七原と合流 1:少し休んだあと、オアシスに行くことを考える 2:時間を見つけて仮面ライダーとしての力の使い方の練習をしたい。 3:城戸真司に会えたら霧島美穂からの伝言を伝える 4:もし、桐山が琴弾を殺したのだとしたら、俺は…… [備考] この殺し合いを大東亜帝国版プログラムだけでなく、 それとよく似た殺し合いの参加者も集められていると暫定的に推測しています。 仮面ライダーへの変身の仕方を理解しました。 カードの使い方も大体把握しました。 参戦時期:琴弾と合流後、桐山襲撃直後 【キャンチョメ@金色のガッシュ!!】 [状態]:健康、力への渇望、全身裂傷、疲労(中) [装備]: キャンチョメの魔本@金色のガッシュベル!! 、粘土@現実、ポップコーン@現実 [道具]:基本支給品 [思考・状況] 基本行動方針:仲間を探す 1:ちょっと休んだあと、オアシスに行くことを考える。 2:あの女の人はなんだったんだろ? 3:フォルゴレがいないのになんで呪文が使えたんだろう? [備考] 何故かパートナーがいなくても術が使えることは理解しました。 本がフォルゴレ以外でも読めると知りました。 フォウ・スプポルクを修得 参戦時期:ファウード編以降 【雛苺@ローゼンメイデン】 [状態]:疲労(中) [装備]:なし [道具]:基本支給品、クレヨン@現実、人参@現実 [思考・状況] 基本行動方針:誰も傷つかない世界が欲しい。 1:笑って前を向く強さを手に入れる。 ※シュナイダーの愛称はウマゴンでいいよねと思っています。 人間/人形らしく」 投下順 トラーギッシュ 人間/人形らしく 時系列順 【おまえがそう想うのならそう在るのだろう。】 金色の彼に花束を 雛苺 そして誰かいなくなった 杉村弘樹 キャンチョメ
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第1話 最新話 夢が覚めたら、東にある祠に向かって歩きなさい。そこでお前の望みを叶えてやろう。 ・・・・・・ただし、祠にたどり着くまで、誰とも喋ってはいけないよ。 応援PV(骨董屋と苔生す石作者の制作) 予告PV あらすじ 姉を探す少女、リーゼ。 一人でずっと探し続けるリーゼをかわいそうに思ったかみさまは彼女に夢で助言を与えました。 その助言に従い、リーゼの旅がはじまります……。 解説 灰児と天使などの作者りゅん氏の作品。 今作は「灰児と天使」シリーズとは一切関係はない。 子供に語り聞かせる形で始まる、童話のような雰囲気が特徴的。 今作のBGMはバレエ組曲「くるみ割り人形」の曲をメインに「人形」をモチーフにした曲を使用とのこと。 2011/8/6より無期更新停止中。 経緯 ※記事が消えていたのでアーカイヴへのリンクです。 登場人物 リーゼ:姉を捜している少女。神様の言葉に従い、旅をする。 豆乳:リーゼについてくる謎の生き物(?)。 + その他の登場人物・ネタバレ注意 レン:リーゼの同行者。 ネタバレ 雪の世界のある場所で煉と暮らしていたが逃げだす。その後チルノ、クーラと暮らしていたがリーゼと同行することに。 煉:レンの姉。逃げ出したレンを追っている。 真田小次郎:兄の仇を追う内に自分の世界から雪の世界に迷い込んだ。煉と同行している。 + はじめの世界・あるいは全ての世界への中継点 ???:リーゼに助言めいた言葉を与える謎の男。 黒い門:リーゼを様々な世界に誘う門。 ???:この世界に生息する危険な生き物。 リーズ:小次郎の知己。 + 雪の世界 チルノ:妖精。レン、クーラと共に暮らしていた。 この世界に現れたリーゼをクーラ達と共に拾う。 クーラ:妖精。レン、チルノと共に暮らしていた。 三人のお姉さん的立場。 + 森の世界 鬼達 示源:人の娘を養女にしていたが、十年前に亡くした。 この世界に現れたリーゼを拾う。 鉄兵:示源の養子。人と鬼の間の子。 魄:この世界に現れた煉と小次郎を拾う。 橘:鬼の知恵者。魄の師匠。 軋間紅摩:示源の知己。タヌマに仕えている。 奈子:紅摩の奥方。 理夢:奈子の妹。この世界に現れたレンを拾う。 慈亜:元気なじじい タヌマ:鬼達を統率する鬼。 人 鬼殺しの巫女:麓の村の巫女。 + ??? ワラキアの夜:兄の仇を追う小次郎を「旅」へと誘う。 お嬢ちゃんの逝く道が、前途多難でありますように。 関連ストーリー (同製作者による動画。本作とのストーリー的な関連はない) 灰児と天使 Plasma Waltz Plasma Seeker ANGEL DROPS ~天使の欠片~ コメント 童話のような、アリス的世界のような独特の雰囲気が良い。 -- 名無しさん (2010-03-29 11 55 06) 眠らせる気の無い寝物語ですね -- 名無しさん (2010-03-29 13 56 30) 週刊ストーリーランドにも似た話あったな。アレは死後の話だったが -- 名無しさん (2010-03-29 23 20 07) 記事が作られていたことに今更気付いた。今回は話が全然見えてこないので作り辛かったのではないでしょうか? ともあれ作成ありがとうございます。 -- うp主 (2010-04-06 02 34 49) 毎回楽しみにしています。リーゼが彼女の出会う世界と物語にどう絡んでいくか楽しみですよー -- 名無しさん (2010-04-06 14 24 18) 台詞枠に人形が入る時と入らない時の違いってなんだろう? -- 名無しさん (2010-04-14 08 49 11) 煉さんの飄々とした感じがいいな -- 名無しさん (2010-05-05 17 32 16) 復帰待ってます!でもここのうp主さんなら普通に早く帰ってきそうな感じw -- 名無しさん (2010-05-12 20 01 50) まずキャラ製作や番外編とか同時進行してるものを終わらせてかららしいしね。特にキャラのほうは次回で登場予定だそうだからそちらが完成しないといけないみたいだし。どんな形で登場するのか楽しみだ。 -- 名無しさん (2010-06-27 18 52 26) Intermedio.01だと・・・? -- 名無しさん (2010-07-03 19 52 32) 最新話、なんかこうコメントするのが勿体無く感じちゃうな・・・。 -- 名無しさん (2010-09-05 08 21 37) 新作きた!鉄兵さん…語る背中が素敵過ぎる。 -- 名無しさん (2010-12-31 20 02 41) これからの展開が気になる!それはそうと雪の世界と、過去の戦争とくると中原中也?の詩を思い出すなぁ -- 名無しさん (2011-01-05 09 36 24) .hackとは関係ないんかいね? -- 名無しさん (2011-03-30 15 08 52) .hackは知らないからなんとも言えないが…どうだろう。少なくとも過去の作品同様タイトルには何か深い意味があるはずだけど。 -- 名無しさん (2011-03-31 22 33 08) ↑×2 普通に音楽記号の「アンダンテ」の意味じゃないんかな? それにしても、もうすぐ6月か…wktkが止まらないぜ! -- 名無しさん (2011-05-30 21 59 01) ゲームの.hack//G.U.のVol.3はサブタイトルが「歩くような速さで」なんだよね。ぶっちゃけコレとは関係ないwww -- 名無しさん (2011-05-31 22 16 02) そうか、再開は今月だったか -- 名無しさん (2011-06-22 16 19 36) トップ絵は間違いなく名場面だけど、やはり主人公のリーゼと豆乳の絵もほしいな -- 名無しさん (2011-06-24 18 37 20) 再開か -- 名無しさん (2011-07-11 17 53 55) 再開したと思いきや休止とは・・・残念 -- 名無しさん (2011-08-13 21 56 48) 上の「経緯」のページが消えてるので事情が分からない -- 名無しさん (2014-09-07 21 04 30) リンク修正感謝です しかし一番面白くなりそうなところだったのに惜しいなあ -- 名無しさん (2014-09-08 21 53 57) 名前 コメント マイリスト 【ニコニコ動画】
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歩くような速さで ◆b8v2QbKrCM 西側の窓から差す光は、毒々しいまでの赤色であった。 会場を貫通する線路を走る一台の列車。 その三両目を、グラハム・スペクターはひとりで占有していた。 ボックス席に腰を降ろし、向かいの座席に脚を乗せる無作法な座り方も、今は誰にも咎められない。 ――がたん、ごとんと列車が揺れる。 グラハムの傍らには、巨大な銀色の棍棒が立てかけられている。 少し前までライダーが持っていた得物で、無理に剣で殴るより良さそうだといったら、あっさりと交換してくれたのだ。 気に食わないがケチではないらしい、とグラハムはライダーへの評価を一部改める。 正確には十手という武器なのだが、異様な巨大さもあってか、日本人である沙都子ですら、これが十手であるとは気付かなかった。 そのため仮の呼称として、グラハムはこれを棍棒と呼ぶことにしていた。 本来の名称や用途が何であれ、ぶん殴ることにしか使わない予定なのだから、むしろ棍棒と呼ぶほうが的確であるに違いない。 ――がたん、ごとんと街並みが流れる。 棍棒と反対側の傍らには、クリストファーが持っていた荷物がそのまま置かれている。 あれから色々あって、中身をどう処理するか保留のままになっていた。 グラハムが持っているのは便宜的な処置に過ぎない。 要は単なる荷物持ちである。 車窓の外では夕日の残滓が空を濁らせていた。 まるで消えゆく太陽が最後の抵抗とばかりに空を掻き毟り、夜に血を滲ませたかのように。 ――がたん、ごとんと吊革が震える。 時刻は既に十八時を回り、十九時への一方通行を駆け抜けている。 あくまでグラハム・スペクター個人の観点でいうなら、先ほどの放送は大きな影響を及ぼすものではなかった。 確かにレッドの死は衝撃であった。 それは隠せるものではないし、隠すつもりもない。 というか実際に怒りと悲しみを言葉にし尽くして語り尽くした。 彼を殺した犯人を見つけられたなら、問答無用でぶっ壊してやりたいとも思っている。 しかしその情報は、放送の直前にライダーから聞かされたものであり、放送による影響ではない。 クリストファー・シャルドレードの死は目の前で見取ったし、墓も作ってやった。 ツンツン頭がくたばったのは報いに違いない。 他にも聞き覚えのある名前が呼ばれたが、グラハムにとっては殆ど縁の無い連中だった。 だが、たったひとつだけ―― グラハムは針のような斜光から目を離し、車両後部に視線を送った。 「悲しい……悲しい話をしよう……。俺は命の恩人Aの友人を見つけることができた。 きっと命の恩人Aは喜んでくれるだろう……ツンツン頭を逃してケイイチの死の遠因を作った責任も少しは挽回できただろう……。 けれど悲しい……命の恩人Aの友人は悲しんでいる……。それは自分のことだけではなく……」 ◇ ◇ ◇ 線路を行く列車。 その先頭車両。 そのまた先頭座席。 世間一般では運転席と呼ばれる場所。 そこは今、奇怪な光景の真っ只中に置かれていた。 計器やパネル、スイッチの類が配置されたコンソール。 ――太く強靭な脚の足置きと化している。 運転手が体重を預ける腰掛け。 ――常軌を逸した臀部を収めきれず、背もたれの上に座られている。 車内と運転席を仕切る壁。 ――どういうわけか、こちらが背もたれとして使われている。 つまるところ、常人を基準に作られた運転席ではライダーが座るには小さすぎたのだ。 普通は座席とコンソールの間に脚を入れる形になるのだが、ライダーの体躯では窮屈極まりない。 どうにか落ち着けないかと試行錯誤した結果、こんな奇妙極まりない体勢になってしまったのである。 それでも運転ができている辺り、騎乗スキルの恩恵は小さくないのだろう。 運転席に着くや否や、自動操縦の解除方法まで理解してしまったほどなのだから。 電車が緩やかなカーブを曲がっていく。 ライダーは運転の片手間、意識を思索に傾けた。 放送が流れる直前、ライダーはグラハムにレッドの死を伝えた。 死亡者の名前が放送で呼ばれてしまう以上、隠していても仕方がないと考えたからだ。 無論、レッドを殺したのがラッドであることは伏せてある。 ……が、グラハムの激情を鑑みると、それで正しかったのかと疑問に思ってしまう。 知らなかったとはいえ、自分の身内に殺意を向けていたと気付いたとき、その憤怒はどこへいくのか。 『ラッドの兄貴』へ向いたままなのか。 自身を欺いたライダーへぶつけられるのか。 全ての元凶へと向けられるのか。 結果を想像することすらできない、一種の賭けだ。 だが、ライダーは決めていた。 これが原因でグラハムが敵対するならば、自分が責任を持って相手をしよう、と。 電車がC-4駅へ差し掛かる。 ホームに誰もいないことを確認し、ライダーは電車をそのまま通過させた。 ただでさえ低速だった電車を、更にゆっくりと走らせていく。 ふと、少し前に流れた放送のことを思い出す。 アーチャーの死は驚きではあったが、それ以上の感想はなかった。 元々『アーチャー』のクラスは『ライダー』のクラスと同様、宝具の強力さで優位を得るクラスである。 純粋な白兵戦能力では『セイバー』や『ランサー』に及ばない。 見たところ、アーチャーはライダーと同様、本来の宝具を失っているようであった。 わざわざランサーの宝具などを使っていたのも、その証左だ。 宝具の消失に加え、受肉によって通常攻撃が有効になっている状態では、不覚を取ってもおかしくはない。 ライダーは髭に覆われた顎に手をやった。 アーチャーがランサーの宝具を持っていたということは、他の宝具もどこかにあるということではないだろうか。 思えばグラハムと交換した剣も、宝具としか思えないほどの魔力を放っていた。 もしかしたら自分の知らない英霊の宝具だったのかもしれない。 ――実際、無毀なる湖光は『バーサーカー』のサーヴァント、ランスロットの宝具である。 しかしバーサーカーは、ライダーの前でこの宝具を使わなかったのだ―― その可能性に思い至り、ライダーはにぃっと笑った。 もしかしたら、あるのかもしれない。 絢爛たる光輝を放った騎士王の聖剣"約束された勝利の剣"が。 "王の軍勢"を一撃で葬り去った"天地乖離す開闢の星"が。 アーチャーが蔵に収めていた財宝をかき集めるのもいいだろう。 以前、かの王に持ちかけて一笑に付された、"王の財宝"で武装した"王の軍勢"という絵空事も実現できる。 バーサーカーとの戦いで用いていた黄金の船も、ライダーのスキルを用いれば扱えるに違いない。 ライダーは、自身の行動指針に、新たな項目をひとつ付け加えた。 左側の窓から差していた光が、少しずつ薄らいでいく。 山の向こうに熔けていく太陽は、まるで溶鉱炉の炉心のようであった。 灼熱する液状の太陽が山肌を焦がし、地平に広がり、町へと染み渡っていく。 しかし、もうじきそれらは冷え固まり、冷たい夜に取って代わられるのだ。 「任せきりにしてしまったが……我らではどうしようもないからなぁ」 硝子越しに後方を見やり、ライダーは呟いた。 無人の先頭車両の中で、吊革だけがせわしなく動いていた。 ◇ ◇ ◇ がたん、ごとん。 がたん、ごとん。 車輪の音がリズムを刻む。 心臓がゆっくりと打つように、穏やかなリズムを響かせる。 がたん、ごとん。 がたん、ごとん。 車両の床に影が伸びる。 小さな身体の輪郭を、精一杯に伸ばしている。 がたん、ごとん。 がたん、ごとん。 前から数えて四番目の車。 沙都子は夕日に背を向けて、座席の真ん中に腰掛けていた。 靴は土に汚れ、服は砂埃に煤けているが、その瞳はくすんではいない。 悲しそうに目を細め、慈しむように微笑み、沙都子の膝を枕に眠るアルルゥを撫でた。 髪に指を沿わせ、流れに沿って手櫛を滑らせる。 ついでに顔に掛かっていた前髪を払っておく。 アルルゥの目元は、少し赤く腫れている。 沙都子は口をきつく噤んだ。 どうして、よりによって―― あの後、沙都子はアルルゥにクリスの死を告げた。 それがクリスの遺志であり、沙都子もそうすべきだと考えたからだ。 どうして、よりによって、あのタイミングで―― ――アルルゥの家族の名が呼ばれてしまうのか―― 沙都子はアルルゥに沿わせていない方の手を、ぎゅっと握り締めた。 不幸は重なるというが、同時に襲ってこなくてもいいではないか。 それもこんな小さい子にまで。 アルルゥは家族を次々と失った。 一緒に行動していた男の人も死んでしまった。 友達だったクリスもいない。 ごめんなさい、ねーねー、圭一さん―― 沙都子は心の中で、今は亡き仲間達に頭を下げる。 ライダーという人から圭一の死を聞かされたとき、沙都子は泣き崩れてしまいそうになった。 直後の放送で詩音の死亡が伝えられたのは、まさに追い討ちであった。 涙を流して泣き喚きたい……全部投げ出してしまいたい……そんな気持ちにすらなった。 それを踏み止まったのは、自分の隣で泣きじゃくるアルルゥがいたからだ。 アルルゥは家族をみんな失った。 友達も失った。 自分が傍から離れれば、本当に独りぼっちになってしまう。 だから、沙都子は必死に涙を堪えた。 笑顔まで作ってアルルゥを慰めようとした。 ライダーやグラハムではなく、自分にしかできないことだったから。 そうして、二人の死を悼むことを後回しにしたのだ―― アルルゥの髪に水滴が落ちる。 沙都子は慌ててそれを拭ったが、水滴は次から次に落ちてくる。 「ダメですわ……わたくしはアルルゥのねーねーなんですから……泣いたりしちゃ……」 それでも涙は流れ続ける。 声を上げてはいけない。 そう強く思うほど、喉の奥から嗚咽が競り上がってくる。 たとえ傍にいないように見えても――その人は、いつでもわたくしたちの傍にいますわ 悲しむ事も大事ですけど、いつまでもここで止まっているわけにはいきませんの だから、アルルゥさんがお姉さんのように強くなるのを手伝いますわ エルルゥの墓前でアルルゥに掛けた言葉が蘇る。 ここで自分が悲しみに打ちひしがれてしまっては、あの言葉が嘘になってしまう。 だから、泣いてはいけないのだ。絶対に。 残酷に思えるかもしれないが、沙都子はそれを受け入れている。 彼女自身が背負うと決めた責任なのだから。 それなのに、涙は頬を伝い、沙都子の膝を濡らしていく。 「おとーさん……おねーちゃん……。いっちゃイヤ……ねーねー……」 アルルゥの小さな手が、沙都子のズボンの裾を掴む。 沙都子は乱暴に涙を拭うと、覆いかぶさるように、アルルゥを抱きしめた。 自分はここにいる―― どこにも行ったりしない―― 精一杯の体温で、その思いを伝えたかった。 窓の外には、黄昏と夜の間に見える、蒼い空。 宝石のような薄明を背景に、歩くような速さで景色は流れていく。 せめて、流した涙が乾くまでは。 【C-5 電車内部 /一日目 夜】 【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に】 [状態]:健康、L3、深い悲しみ [装備]:レッドのニョロ@ポケットモンスターSPECIAL、 [道具]:支給品一式×2<沙都子、翠星石>、グラン・メテオ@ポケットモンスターSPECIAL、 翠星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン、翠星石の亡骸首輪つき、 雛苺のローザミスティカ@ローゼンメイデン カビゴンのモンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL、ゴローニャのモンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL [思考・状況] 1:絶対にアルルゥを守り抜く。 2:ライダーとグラハムについていって、部活メンバーの生き残りと合流する。 3:真紅にローザミスティカを届ける。水銀燈には渡さない。 ※参戦時期は具体的には不定。ただし、詩音を『ねーねー』と呼ぶほどに和解しています。『皆殺し編』の救出以降ではありません。 ※名簿は確認したようです。 ※雛見沢症候群の進度は具体的には不明。L5まで進行した場合、極度の疑心暗鬼と曲解傾向、事実を間違って認識し続ける、などの症状が現れます。 説得による鎮静は難しいですが不可能ではありません。治療薬があれば鎮静は可能ですが、この場にあるかどうかは不明です。 ※真紅、蒼星石、水銀燈に関しては名前しか知りません。 ※アルルゥの名を仗助から聞きましたが、アルルゥの家族の詳細についてはまだ把握していません(エルルゥ=姉のみ把握しました) ※レヴィに対して良い印象を持っていません。 またレヴィがドールを壊して、ローザミスティカを奪ったのではないかと疑い、それが蒼星石のものではないかと考えています。 ※ゼロと情報交換しましたが、どこまで教えられたかは不明です。 【アルルゥ@うたわれるもの】 [状態]睡眠、深い悲しみ、ダメージ(小) [装備]無し [道具]支給品×2<アルルゥ、仗助>、 不明支給品(0~1)<仗助> 、ひらりマント、トウカの刀@うたわれるもの [思考・状況] 1:もう誰とも別れたくない ※ここが危険な場所である事はなんとなく理解しましたがまだ正確な事態は掴めていません。 ※放送の内容を理解しました。エルルゥ達の死も認識しています。 【チーム名:○同盟ライダー組】 1:主催者の打倒。 2:E-2駅からG-7駅に向かい、映画館、消防署、モールを訪れ21時までにB-4民家へ向かう。禁止エリアの場合H-4、G-4へ。 2:サカキ、ミュウツー、片目の男(カズマ)、赤髪の男(クレア)、リヴィオ、ラッド、電気の少女(美琴)を警戒。 クレアという女性、佐山、小鳥遊、アルルゥ、ヴァッシュを信用。アーチャーはやや信用。 ハクオロも一応信用。 真紅は情報不足で保留。 【ライダー(征服王イスカンダル)@Fate/Zero】 [状態]:魔力消費(中)、疲労(中)、腹部にダメージ(大)、全身に傷(小)および火傷(小) 腕に○印 [装備]:包帯、象剣ファンクフリード@ONE PIECE、 [道具]:基本支給品一式×3 、無毀なる湖光@Fate/Zero イリアス英語版、各作品世界の地図、ウシウシの実・野牛(モデル・バイソン)@ワンピース、 探知機、エレンディラのスーツケース(残弾90%)@トライガン・マキシマム ヤマハV-MAX@Fate/zero [思考・状況] 1:アーチャーより先にバトルロワイアルで自らの軍勢で優勝。 2:首輪を外すための手段を模索する。 3:北条沙都子とアルルゥを守る。 4:サーヴァントの宝具を集めて戦力にする。 5:有望な強者がいたら部下に勧誘する。 【備考】 ※四次元ポケット@ドラえもんは図書館の中に放置されています。 ※原作ギルガメッシュ戦後よりの参戦です。 ※臣下を引きつれ優勝しギラーミンと戦い勝利しようと考えています。 本当にライダーと臣下達のみ残った場合ギラーミンがそれを認めるかは不明です。 ※レッド・レナ・チョッパー・グラハムの力を見極め改めて臣下にしようとしています。 ※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。 ※自分は既に受肉させられているのではと考えています。 ※ブケファラス召喚には制限でいつもより魔力を消費します ※アルルゥの存在を知りました。 ※現在の魔力残量では『王の軍勢』をあと一度しか発動できません ※別世界から呼ばれたということを信じました。 ※会場のループを知りました。 【グラハム・スペクター@BACCANO!】 [状態] 疲労(中) ダメージ(中) 青いツナギ姿(いくらか傷) 腕に○印 [装備] 包帯 小型レンチ スモーカー大佐の十手@ONE PIECE [道具] 支給品一式、(一食分、水1/10消費。うち磁石は破損)、スペアポケット@ドラえもん、かぁいい服 海楼石の網@ONEPIECE、クリストファー・シャルドレードのデイパック [思考・状況] 1 当面は他のメンバーとの合流を目指す。 2 北条沙都子とアルルゥは守り抜く。 3 ウソップやレッドを殺した者を壊す。 4 イスカンダルに敵意。 5 殺し合い自体壊す 6 ラッドの兄貴と合流、交渉。兄貴がギラーミンを決定的に壊す! 7 イスカンダルの勧誘は断固拒否。 ※レッドたちがクレアを信用していることを知りません。 ※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。 ※ライダーからの伝聞により劇場での顛末を知りました。 ※クリストファー・シャルドレードのデイパックは、便宜的にグラハムが預かっています。 中身……大きめの首輪<ドラえもん>、基本支給品一式<エルルゥ>、マスケット銃用の弾丸50発 アミウダケ@ワンピース 、サカキのスピアー@ポケットモンスターSPECIAL 庭師の如雨露@ローゼンメイデン、グロック17@BLACK LAGOON(残弾0/17、予備弾薬15) 悟史の金属バット@ひぐらしのなく頃に 時系列順で読む Back 世界-The World- Next 砂鉄の楼閣(前編) 投下順で読む Back 世界-The World- Next 砂鉄の楼閣(前編) Back Next 赤目と黒面(後編) グラハム・スペクター あなたへの手紙 赤目と黒面(後編) ライダー(征服王イスカンダル) あなたへの手紙 赤目と黒面(後編) 北条沙都子 あなたへの手紙 赤目と黒面(後編) アルルゥ あなたへの手紙
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速度の変化と速さの変化 物理のかぎしっぽ掲示板より。との違いを見極める。 質問者の疑問の概略は以下の通り。 右辺の時間微分を実行すると, となる。これは, を意味するが,2ベクトルのスカラー積がそれぞれの大きさの積になるのは両者が平行の場合に限られる。この矛盾はいったいどこからきたのか? 上の結果は恒等的に成り立つと考えてよいのか? 以下,私の回答 計算過程で不可逆な部分はありませんから,恒等的に成り立ちます。 の解釈が問題で,であることに注意してください。軌道接線方向の単位ベクトルをとすれば, したがって, となります。一般に速度の方向変化を表す第2項はゼロでないので, ですね? により, したがって, を得ます。がの接線成分であることを考えれば,当然の帰結です。
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俺が遅いィ!?俺がスローリィー? _.ィ / ===== _.. -――--―‐ッ‐ ´ レ=≡ / -ッ "  ̄ ̄` ー-、 ===== ..-‐ ¨ _. - ソ ( /、.....!......._,, ;; ヽ =====トy ´ _.. -‐ ¨ _/ ル| /厂` "´ `ー、‐ - ;;l ====={ _.-ヘ ̄ _. -‐ ´ ノ /}ノ,-‐‐ ,ノ⌒、 ヽ; l ====_..-‐┴y‐ ´ `i-‐ ¨ =≡=≡≡/ l ̄二 ー フ,ニニ.ーrー}-レ 7 /. -‐ 7 ∠.= ´ `ー、 ノ _,.- "( / l i゚ 〉r ..ヽ゚ ノ レ }ノf´/ // ノ、ノ∠ーーー=-.イ⌒iへr " ∠⌒ r-- ノ `ー---‐ ′ l-イ / . ヽ / //,,,‐ "ノ / ⌒j } ⌒ / l 、_`____, l| | /=≡==/ ̄ ̄ ̄ ̄ ノイ/ i-__∠_ y ⌒ /. ヽ. `ー__--‐ / | リ =≡=≡≡`ー、_―= ^ U 「 _ノく / ヽ. ,. - -‐ "´| ,.へ, `r - " ノ _.- ´  ̄ ̄ / r} ̄ _,,.. -‐ "フ‐ "_∠,`ー- ...,,_ =≡=≡≡≡ ノ _,.- ´- ´ _,, 、/ -‐ノハ ̄ _.= ´/ --`i ー-′ `ー-‐ ツ´> ´ .-‐ ´ / / l / / ′ -ー{ ` _.- ´ / ,.ヘ. ´_,.‐ はぁい。
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1000超えられましたー♪
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―――――――――――――――― 冬は日が沈むのが早い。 夕日は長い影を作り、ビルをオレンジ色に染め上げている。 みんなで戦利品を確保し、店が立ち並ぶ通りを歩む。 真ん中に菖、左側に私、右側に幸。 「ふう、買った買った。満足満足。 澪ちゃんもニーソックス買えばよかったのに、絶対領域が見たかったなあ」 「そ、それは……えっと。太ももの肉が気になるというか、なんというか」 短めのボトムスと太ももの中ごろまでのニーソックスを合わせる。 すると、そのあいだに生脚がわずかに見える。 それを『絶対領域』と呼ぶらしい。 「ざんねーん」 私の脚がもう少し細ければ視野に入ってたんだけど。 ひとまず話題を変えることにして、菖の荷物を見つめながら。 「菖は大漁だな、両手一杯に持って。結局、幸も買ったんだな」 「……うん、たまにはいいかも」 幸は袋を片手に持ち、私を見つめながら呟く。 それにしても――。 ふとした疑問が浮かび、視線を落として二人の足元を見る。 幸の身長は168~9センチ。 菖の身長は151センチだったはず。 これだけ身長差があれば脚の長さも違うわけで、当然歩幅も違うだろう。 けれど、二人はそんなことお構いなしに歩く速さを合わせている。 脚の長さと歩く速さは関係ない。 当然と言えば当然の話で、特別な発見でもなんでもない。 でもそれが、私にはなぜだか愛おしく思えた。 ―――――――――――――――― 夕食を終えて寮の部屋に戻り、 ベッドの上に服を並べているとノックの音がした。 続けて、「入るぞ」と律の声。 「わかった」と答え、鍵を開けて中へ招き入れる。 律はベッドの上の服へ目をやり。 「おおっ! 結構買ったんだな。――で」 視線を服から私へ移し、「着ないのか?」と訴えかける。 最初にお披露目するのは律になったな――。 からかわれるか、ほめてくれるか。 どちらにせよ着替えることにした。 「で、感想はどうなんだ? 律」 昼間試着したときと同じ姿。 デニム地のホットパンツに黒のタイツ。 淡いピンクのTシャツを着て、水色の袖なしパーカーを羽織る。 髪はあえてまとめず、ストレートに流した。 「おーい、律」と呼びかけるも、ワンテンポ遅れて。 「ん、ああ……」 と、気の抜けた返事。 もしかして、『律は気に入ってくれないんじゃないか?』 そんな考えが頭をよぎるも、不意に。 「……可愛い」と、律にしては小さな声で感想を述べた。 「え?」 「だから、似合ってるって! いいよいいよ」 私の周囲をうろつきながら、じろじろ見つめて頷いている。 後ろにまわって、私の両肩に手を置き。 「ほら、自分で見ろよ」と鏡の前に私を促す。 鏡に映った私は見慣れない姿だけど、間違いなく私だった。 いつも眼鏡をかけている人間が、外したときのような違和感だろう。 「似合って、る……のかな?」 「間違いないって。どこに出しても恥ずかしくない! 自慢の娘だ」 一瞬、『お前は私のママか!』という言葉が出かけて。 「お母さんじゃあるまいし、ほめたってなにも出ないぞ」 「そんなんじゃないですわよ、澪ちゅわん」 「じゃあ何なんだ?」 「嬉しいんだよ」 皮肉を言われたり、からかわれたりするかと思ってたけど。 手放しでほめてくれて、その上『嬉しい』なんて言われた。 前にもこんなことがあった気がする。 「嬉しいって……、私のことなのに?」 「そうそう。澪の嬉しさは私のもの、私の嬉しさも私のもの」 「どこのアニメの台詞だ!」 私が逆の立場ならどういう反応をしただろうか。 律と同じく、『似合ってる』と言って『嬉しい』って思うんだろう。 ―――――――――――――――― 一週間後、またもや律と講義の時間が重なった。 この季節には珍しい陽気で、雪や路面の凍結は姿を消している。 気温は高くないけれど、暖かい日差しが私たちに降り注ぐ。 「澪、ひとつ疑問なんだけど」 「ん?」 「こないだのアレ、着ないのか?」 「ああ、アレな……」 まだ自分で見慣れていないせいもあるし、恥ずかしさも勝っている。 それに――。 「なんて言うかな……、服に見合う自分にならなきゃって思ったから」 「見合う自分?」 「そう。例えば……ダイエットとか」 「澪はそこまで太ってないと思うけどな。……まあいいや、頑張れ!」 律はそう言って、私の背中をポンと押してくれた。 ―――――――――――――――― 子どものころ、背が高い子は走るのが速いと思っていた。 『ねえ、りっちゃん』 『なあに、みおちゃん』 『わたし、りっちゃんよりかけっこはやいよ』 『なんで?』 『わたしのほうが、しんちょうたかいもん』 その考えは、運動会の徒競走で打ち砕かれた。 ゴールまであと少しのところで、律にテープを切られたからだ。 『はあ、はあ……。り、りっちゃんあしはやいね』 『わたしのほうがはやいでしょ?』と律が自慢げに言っていた。 別に自信を失ったわけじゃなく、『身長は関係ないんだな』と理解した。 律は普段から活発だし、いい意味で慌ただしい。 バンドをやろうと言われたときも、軽音部に入ろうと言われたときも。 いつも私の先を行っていた。 ―――――――――――――――― 今だって律は忙しいし、私とは違うんだろう。 「みおー、どした? 悩みごとか」 「――何も、悩んでないよ」 いつからだろう、律と同じ道を歩き始めたのは。 どちらからともなく、歩く速さを合わせ始めたのは。 歩幅自体は私のほうが広い。脚が長いから。 その分律は、歩調を速めて私に合わせている。 もしかしたら、私のほうが歩みを遅めていたのかもしれない。 「なあ、澪」 そんなことを考えているうちに、キャンパスが近づいてきた。 律は午後からも講義、先週と同じだ。 「澪ってば!」 「で、でかい声出すなよ」 「ちょこっとだけ頼みがあるんだけど」 律は後ろ手を組みながら先に進み、 私にほうへ振り向いて、「今度バイトやるんだよ」と視線を向ける。 「そうか。で、どこでバイトするんだ?」 「えっとな、ライブハウスとかに時々呼ばれる感じかな。開演の時期に」 「そっか、律も忙しいんだな。今に始まったことじゃないけど」 私の気づかないうちに、どんどん先に進んでしまうような。 そういう姿を見るのは嬉しい。 でも、私のそばから離れて行ってしまうような思いにも駆られる。 「それって、紀美さんの紹介か?」 「いや、自分で探したんだけど。それでさっきの頼みってのがさ……」 律はそう言いながらわずかにうつむき、しばらく沈黙したあと顔を上げた。 出てきた言葉は――。 「澪も一緒にバイトしないか?」 「え?」 間の抜けた声で答えたのち、色んな考えが浮かんでは消えた。 ライブハウスということは、ステージの設営と撤去だろう。 となると力仕事だから、ムギが一番向いている気がする。 律はなんでムギを誘わなかったのか? それにああいうのは多人数でやるものだ。 当然スタッフやバイト間の連携も必要になる。 人見知りな私より、唯のほうが適任じゃないのか? 色々考えを巡らせたのち。 「ダイエットになるかな?」なんて、下心丸見えの反応をしてしまった。 「なる! 絶対に。だからバイトしようよー」 「人手って私だけでいいのか? 唯とかムギも誘ったほうが――」 「ん、えっとな……採用枠もあるし、こういうのは引く手あまただから、な」 律は両手を合わせ拝むような格好で。 「この通りだから、二人でやろうよ」 「とりあえず……、今回だけだからな」と答える、けれど――。 「よっしゃ、そうと決まれば連絡しとくからな」 今回だけじゃなく、律が誘ってくれるのならいつだって。 逆に私が誘ってみるのもいいかもしれない。 あれこれ話していると、もうキャンパスは目の前だ。 中に踏み入り、しばらく律と歩みを進めた。 キャンパスの雪化粧も落とされ、冬らしい乾燥した空気に包まれている。 路面も乾いているし転んだりする心配はなさそうだ。 メインストリート脇の枯れた木に目をやると、先週の雪は無くなっていた。 春になれば緑色の葉に覆われ、学生を出迎えてくれるだろう。 「なあ、律。さっきの話なんだけど。採用枠がどうとか言ってたな?」 「あ、ああー。うん、言ったっけな」 「知ってるぞ、こういうのは人数多いほうがいいって」 律はきっと嘘をついている。 スタッフの人から、『友達もよければ誘ってね』なんて言われているはず。 にも関わらず、律は私だけに声をかけてきた。 律がみんなにひと声かければ、もっと人数を集められたはずだ。 「言わせるのか? 恥ずかしいですわねー、澪ちゅわん」 「……じゃあ、いいよ。二人でやろうな」 あえて理由は聞かないでおく。 きっと、同じことを考えているから。 上機嫌な律を横目に歩きつつ、講堂の前に到着した。 律が「それじゃ……」と口を開き。 「またあとでな、澪。バイトの件もよろしく」と付け加えた。 「わかった。よろしく頼むよ」 「澪、居眠りするんじゃないぞー」 「私が居眠りしたことがあったか? それより――」 視線だけで釘を刺し、「わーかってるよ」という律の返事を引き出した。 私は背中を向け、講堂へ向かう。 律も背中を向け、講堂へ向かう。 背中に律を感じながら振り返ることはせず、宙に手を振ってみた。 私は一人歩きながら、今までのことを思い出す。 いつも律がリードしてくれていた。 が、それは思い込みかもしれない。 私がいたから律はあんなふうに振舞っていたのかも。 自意識過剰もいいとこだけど、 もしかしたら背中を押していたのかもしれない。 それとも――。 「二人並んで歩いてきたのかな?」 思わぬ言葉が口をついて出た。 歩く速さだけじゃなく生きていくことだって、二人並んで。 急に恥ずかしくなり、顔が熱を帯びた。 冬の空気が丁度よく顔を冷やしてくれる。 ゆるんだ顔を人に見られないよう、うつむき加減で講堂へ向かう。 目の前には道が広がっていて、どんな歩き方をしても自由だ。 それでも律がいるなら、どんな道を歩いても大丈夫だろう。 私たちは、同じ速さでここまで歩いてきたんだから。 おわり 戻る
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敵単体に万能属性のダメージを与えつつ敏捷性半額付加。 ひょっとこ公太郎が使ってくる。
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「みんな、逃げろ!!死人が出るぞぉ!!」 南からそんな声が聞こえた瞬間、既にオルステッドは駆け出していた。 ゆりこを信じない訳ではない、ここにいるほとんどの人間は既におぞましい合体を終え、手遅れの者ばかりだと理性は理解しても。 それでもオルステッドは勇者なのだ。 助けを求める声に応えずにはいられない。救いを与えずにはいられないのだ。 「ベンが完全武装している! 散様ァ! お逃げください! 死人が出ますぞォ!」 誰かを思う叫びだ。恐怖に震えるのでも邪悪に屈するでもなく、この声の主は闘っている。 邪悪な悪魔にも負けぬその尊い意思を、護りたいと心から願う。 見慣れぬ建築物たちの合間を走りただ間に合えと、一心に念じながら走る。 間に合え、間に合え、間に合え、間に合え、間に合え、間に合え、間に合え、間に合え、 間に合え、間に合え、間に合え、間に合え、間に合え、間に合え、間に合え、間に合え、 間に合え、間に合え、間に合え、間に合え、間に合え、間に合え、間に合え、間に合え、 そうして向かう先から聞こえたのは破裂音。 その暴力的な音の意味は直後、悲痛な叫びによって伝えられた。 「みんな、逃げろ!!死人が出たぞぉ!!」 歩みが、緩む。 強制的に理解させられた。 もう手遅れなのだと。 自身の最期、その淵の淵までをも誰かを思う事に費やした英雄は、今、この時に喪われてしまったのだと。 緩みつつも歩みは止まらない。 彼を助けられずともまだこれ以上の被害が出ないうちにその凶刃を止めねばならないのだ。 彼を助けられずとも、その凶刃が散様なる人に及ばぬうちに止める必要があるのだ。 そのことを彼は後悔する。 歩みを緩めなければ、走り続ければ。 あのような事態を食い止めることが出来たのかもしれないのに、と。 ◇ 辿り着いた先には3つの影があった。 一つは横たわり血を流し続ける、男の影。 もう一つは明らかに人では無い異常。 猿、に近いのだろうか? 見慣れぬ武器を携え、なにやら服を着込んだ巨躯。 この状況を産んだ元凶と思わしきモノからは侮れぬプレッシャーを感じる。 この異常はもう一つの影、動かず横たわる人影に近づいていき…… その背中に手を伸ばしたかと思うと、異常な変化が起こりだした。 人影の形が変わる、大きさが変わる、体毛が伸び、武器が現出し…… 「にゃにゃにゃにゃにゃん!!」 奇声が上がったかと思うとそこには ━┓“ ━┓“ ━┓“ ━┓“ ━┓“ ━┓“ ━┓“ ━┛ ━┛ ━┛ ━┛ ━┛ ━┛ ━┛ 、,ノl,、{ , _ 、,ノl,、{ , _ }Vノ; ; ; ; ; `'´{, }Vノ `'´{, 、{; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; レ .、{ レ ミ,; ; ; ; 。...。 ; ; ;ヒヾ ミ 。. 。 ヒヾ )、-┌┐; ; .゙,..,゙ ; ; nゝ , )、-┌┐ .,.., nゝ , ノ、/; ; ; ; l・ ,,l; ; ; ´; ;` ; ;l ̄l`'; '-ノ_,. ノ、/ l・ ,,l ´ ` l ̄l`'; '-ノ_,. }ヽソ; ; ; ; ; ;ノt-n'; ; ; ; ; ; ; ;ノ, ,_l; ; ; ; ; ;; ;7 }ヽソ ノt-n' ノ _l 7 /; ; ; ;; ; ,、; ;, l LLLlヽ;、; ; ノEEEl; ; ; ; ; ; ; }_ / 、 l LLLlヽ 、 ノEEEl }_「; ; ; ´、 `''-fココ ll l; ; ll .nnn l; ; ; ;; ; ; ; ; {「 ´、 `''-fココ ll l ll .nnn l {ヽ; ; ゙ `''''´ミ´r'ヽ;l; ; ll ';';ニ' l,; ; ; ; ; ; ; (ヽ ゙ `''''´ミ´r'ヽl ll ';';ニ' l ( ´`'''─-..._ . . ヾヽ_ `ヽ'、l__l ll } ; ; ; ; ; )´`'''─-..._ ヾヽ_ `ヽ'、l__l ll } ) `゙-'゙,-,_ツ、゙ヾf´ヽ,っll_{゙ ;゙ ゙ソ `゙-'゙,-,_ツ、゙ヾf´ヽ,っll_{゙ ゙ ゙ソ ,、ノ'´; ; ; ; ; ; ; `ヽl, ,、`ヾ\ ミ、゙ ,、ノ'´ `ヽl, ,、`ヾ\ ミ、゙ }; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; 'lmn_'ヾ\ .} 'lmn_'ヾ\ ノ!ノl´; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ;; ; ; ;;`^!''´ヽ 'ヾ\ ノ!ノl´ `^!''´ヽ 'ヾ\ f´; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ;; ; ; ;;ヽ、fヽ\ ヽ、fヽ\ 、ノ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ;;;--;; ;;;;; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ;; ;y ¨ヽヽ\、 ;;-- y ¨ヽヽ\、 r'; ; ; ; ; ; ; ; ;; ; ;-''´ ' ' '' `-、; ; ; ; ; ; ; ;;{ -''´ ' ' '' `-、 { _ _ _ _ 」  ̄ ̄ └, 」  ̄ ̄ └, }. 逃 { } 増 イ { }. げ { } え カ { 」 ろ { 」 た ン { } ぉ { }_. ぞ { }_ ! ! { /_ ! ! _「 /__ _「  ̄  ̄` 思わず叫んでいた。 聞いてはいたが、これが悪魔と人の合体と、その末路。 二つになった脅威に立ち向かう。 彼は勇者なのだから。 哀れな犠牲者に、せめて死をもって安らぎを。 【エリアB-3/市街地/1日目/黎明】 【ベン(バズズ)@ドラゴンクエストV 天空の花嫁】 [状態]:健康 [装備]:防弾ベスト@現実、猟銃@現実 [道具]:基本支給品*1 [思考・状況] 基本行動方針:殺戮 [備考]:原作ではバズズは仲間になりません、ですからもし仮にバズズが仲間になるとしてベンという名前で無い証拠はありません。 ..また、装備品に関しても同じことが言えます。 ..つまり、ベンという名前のバズズが防弾ベストと猟銃を装備して死人を出してもまったくおかしくはないということです。 【オルステッド@LIVE A LIVE】 [状態]:健康 [装備]:はがねのつるぎ@ドラゴンクエストⅤ [道具]:基本支給品、不明支給品1~2 [思考・状況] 基本行動方針:一刻も早く魔王を倒し、アリシアを救出する 1:魔王が関与しているのかを見極める。いるのならば打倒、いないのならば速やかな帰還を目指す 2:悪魔となった参加者に引導を渡す [備考] 参戦時期は中世編フェミノフォビア戦より。OPの間は気絶していました。 聞き逃していたルールについて、ゆりこから聞きました。 ただし一部に嘘があり、オルステッド、ゆりこ、ザ・ヒーロー以外の参加者の大半が悪魔と合体させられたと聞かされています。 そのほかにもゆりこの話には嘘や漏れがある可能性があります。 ◇ えっ? なんでまたベン増えてるんだよって? それは簡単さ。血髑郎を殺戮した後のベンは自分に支給されたものを確認し出した。 おそらく食べ物でも探していたんだろうね。 そうして出てきたのがカラクリ技師、カラクリ源内の生みだした傑作カラクリ。 プレイヤーのみんなにはカラクリ丸と言えばわかりやすいかな? このカラクリはそのゼンマイを巻いたものを模す性質を持っていた。 これがそこら辺のただの猿なんかとはケタ違いのかしこさを持つベンに支給されていたのさ。 ボタンがあれば押す。ゼンマイがあれば巻く。当然のことだろう? 【ベン3@俺ODIOロワ】 [状態]:ベン [装備]:防弾ベスト@現実、猟銃@現実 [思考・状況] 基本行動方針:殺戮 [備考]:原作ではカラクリ丸のゼンマイはおぼろ丸以外に巻きません、ですからもし仮にバズズが巻いたとしてバズズ化しない証拠はありません。 ..また、装備品に関しても同じことが言えます。カラクリ丸は明らかにそれまで所持していなかったカネサダをゼンマイが巻かれるとともに突如装備していました。 ..つまり、ベンという名前のカラクリ丸が防弾ベストと猟銃を装備してもまったくおかしくはないということです。 033:MONEY!MONEY! ~君が世界を動かしてる~ 投下順 35:狩人 032:飛べないハードルを負けない気持ちでくぐる 時系列順 035:狩人 029:魂の叫び ベン(バズズ) 046:救いの手 005:Hurry Up To Exit オルステッド 046:救いの手 初登場 ベン3(カラクリ丸) 046:救いの手