約 4,417,785 件
https://w.atwiki.jp/divine_revelation/pages/126.html
目次 1.悪霊とはなにか 2.あなたの心も狙われている 3.憑依(ひょうい)現象 4.地獄行き特急 5.人間の最期 1.悪霊とはなにか 高橋信次です。今日は連続でやっています。みなさん、わたしの好きなところになってきました。また、悪霊の話になりました。「また悪霊か、高橋さん、もういい加減にしてくれよう」なんて言う人もいらっしゃるでしょうが、どうしてもくリ返して言う必要があるのです。なぜならば、そう言っているあなた自身が、悪霊となる可能性が非常に強いからなのです。 何度も何度もくリ返して言っとかないと、人間というのは、「自分だけはまったく別だ」と思っている人が多いのです。人はともかく「オレだけはそんなことはねえや」と思っているんですね。まあ、大学受験の時でもあったでしょう。「人は落ちることがあっても、オレは落ちるわけはない」卒業の時もあったでしょう。「人は留年することはあっても、オレがするはずはない」入社試験もありましたね。「人が落ちることはあっても、オレが不合格になることはない」ねえ、その結果すべて落ちてきましたねえ、そうじゃないですか、みなさん。ご経験あるでしょう。ねえ、結婚のときもそうでしょう。「オレが断られるはずはない」って思ってたら断られた。ねえ。ですから、あの世も、「オレが地獄へ行くことだけは絶対ない」と思ったら、それが行くんですねえ。こわいですが、そういうことがあるんですよ。 そこでねえ、まあ僕もいっぱい本出しているけど、基本的にねえ、まあこういうふうに考えて頂いていいと思うんですよ。高橋信次のこの霊示集ですか、これさえ読んでおれば、必ず天国へ行けるんです。これは保証します。安いです。一冊千円です。天国行けるんです。 そして、この千円を惜しんだ人はどうなるかっていうと、地獄に何百年もいるんです。みなさん、この違いは大きいと思いませんか。どうでしょうか。私は保証できるんです。この『高橋信次の心の革命』、この一冊を、もしあなたが何度も読み、真読(しんとく)し、理解しえたならば、あなたは絶対に地獄へは行かないんです。行くということは何冊読んだって一緒です。ダメなんですね。だから、この一冊、本当に私が言いたいこと、言っていることを学んでほしいんです。これがねえ、あなたが悪霊にならないための方法なんです。地獄で苦しまないための方法なんです。 地獄なんていうのは、あなたはウソだと思っているでしょう。それがどっこいあるんです。それはねえ、「本来地獄なし」って言ってるところもあるけど、でも、本来はなくとも現実にはあるんです。「本来地獄なし、現実地獄あり」なんですね。これはしようがないんです。あるんですから。あるものはあるんですから、しようがないでしょう。 そらあねえ、たとえば本来刑務所なしですよ、本来ね。本来そんなものは必要ない。人間は神の子だからいらないけど、現実にはあるわねえ。だから、罪を犯したらブチこまれちゃいますね、こういうことはあります。まあ、刑務所とは言わないけれども、それはねえ、ゴルフだってそうですよ。ゴルフやっていてねえ、たとえばウッドで打って、バシューンとファーストショットを打って、OBするね。山の向こうに飛んじゃった。谷のなか落ちこんじゃったってね。本来OBなし。その通りです。だけど実際は球がなくなっちゃうことがあるわけですね。 こういうふうに、もともとはそうなるはすではないんだけども、ちょうどゴルフのコースのようなもんでね、人生、山あり谷ありなんですよ。あるいは、なかには川が流れていたりね、池があったり、バンカーがあったり、いろんな障害物が人生あるんですよ。だから、本来はポンポンポンとショット打ってね、もうワンオン、ツーオンでグリーンにあげて、そしてパターでバンと入れてね、ホールインしたいんだけど、なかなかそうはいかないのですよ。池ポチャとかねえ、山越えねえ、それからバンカー、OBね、こんなのいっぱいあるんですよ。 だから、悪霊とはなにかと言っても、あなたがたは「悪霊なんてあるもんか。オレがなるはずない」と言っているけど、ゴルフしてOBがないと思いますか。「本来OBなし」か、ありか、これ答えてくれ。プロのゴルファーでもやっぱりやることはあるわね。プロになるとやっぱりそういうOBとか、山越え、谷のなか打ちこんだり、球なくしたりすることは、それは少ないでしょう。少ないと思います。でも、あるね。これは結局、たとえば、光の天使と言われるような方であっても、地上に出てたまには失敗していることもある、これと一緒だね。まあ、こういうことです。 したがって、こういうことなんだよ。本来の基本通りにやっておればそういうことはないけども、実地訓練、実戦にはいったら、やっぱり失敗はあります。失敗したときにどうフォローするかが大事なんですね。だから、バンカーショットの練習がいるんじゃないですか。だからねえ、あの木の枝の下で球打って、木に球ぶつけないようにする必要があるんじゃないでしょうか。そういうことなんですよ。だから、あなたも他人事(ひとごと)だと思わないで、自分の心が軌道をはずれたときに、あなたも悪霊になる可能性があるということを私は言っているんです。 2.あなたの心も狙われている さて、恐ろしい標題をつけてみました。あなたの心も狙われている、なにに狙われているのか。もちろん、美女に狙われたりしているわけではありません。なにに狙われているかっていうと、悪霊に狙われていると言っているんですね。これはまことに不思議な現象です。 みなさんは、よく地獄霊が出てきてとりつくとか、崇(たた)るとか言って、まさかという気がしますねえ。「この文明の世の中に、こんなにネオンがキラキラと輝いている、こんな世の中に悪霊が出てきてとりつくなんて、そんな馬鹿なことがあるもんか。ウソもいいかげんにしろ。こんなインチキな本だしやがって。著者はペテン師だろう。だれだ、著者出せ。インチキだ。オレがぶん殴ってやる」なあんて思う人もいるかもしれませんね。そういう人は完全に狙われていますよ。間違いなく狙われています。 「高橋信次なんて、そんなの迷って出ているに違いない」なあんて言う人も危ないかもしれませんが、結局こういうことなんですよ。あなた方は、教わったことがないから無理もないところもあると思うんですよ。だれも教えてくれないからね、ほんとのことをね。 でも、私はあなたに言う。百パーセント保証する。絶対にあの世はあるんです。もう百ニ十パーセント、百五十パーセント、二百パーセント保証する。あるんです。あるからあると言っているんです。私は霊です。霊だから霊だと言っているんです。霊に対して礼儀を尽くしなさい。まあそういうことを言いたいわけです。ほんとにあるんですよ。そして天国も地獄も本当にあるんです。 また、天国の霊って言うのは、こちらの世界でまあそれぞれの生活をもって、一応楽しく暮らしています。それゆえに地上への執着は少ないんです。だから、迷い出て、地上に行って何かをするっていうことはほとんどありません。 ところが、あなたの懐かしいこの悪霊というものはどうかというと、こういう人は、生前あなたと同じく「霊なんかあるものか。あの世なんかあるものか」って言ってた人ばっかりです。こういう人が死んだらどうなりますか。 あなたも「あの世なんかない。霊なんかない。地獄なんかない」って言ってるけど、そのあなたがもし死んだとして、きれいに灰と二酸化炭素になると思ってたところが、死んでも、目があり、鼻があり、口があり、頭があって、手足があったら、もちろん足が地についてないこともありますよ、そういうことはありますが、手足もあったとしたらあなたはどうしますか。いったいどうされます。絶対に死んだら終わりだと思っていた、しかし見てみたらさあ自分がいるんです。そのときあなたはどう考えますか。 さて、どう考える。たいてい死ぬときは病院かなんかにいました。たいていの霊がそうです。自分は、奇跡的に生き返ったと思っているんです。そして、どうやら病院の特別室かなんかに入れられたに違いないと、このように思うんですね。そして、家族が嘆き悲しんでいたりすると、「おいっ、オレだ、オレだ。どうしたんだ。オレがわからないのか」と一生懸命言っているんですね。わからないんです。それで、家族たちは頭がおかしくなったんじゃないかと思うんですね。そして、自分の葬式なんかやリ始めたら、みんな少し気が狂ったんじゃないかと思うんですね。「おい、オレだよ、オレだよ、帰ってきたんだよ。帰ってきたんだよ。春雄だよ、春雄、春雄がわからんか。六月ニ十五日が命日だよ。この前、命日過ぎたとこじゃねえか。オレだよ」って言ってるんだけど、わかんない。わからないのですね。 そうすると、みんなどうしますか。どうする。何かやっぱりあなたがいるということを教えたくなりませんか。ところが地上の人間はあなたの姿は見えないのです。見えないとどうしますか。そうしたときにねえ、霊ができることというのは、たとえば、生きている人間に虫の知らせみたいなもので、もちろん教えることもあります。あとは夢枕に立つっていうのありますねえ。幽霊で出てきて、これは生々(なまなま)しいですね、出てきて、ゾッとするようなことやってみるということはある。ま、それ以外でありうることは何かって言うとね、やっぱり家族のなかに病気を起こしてみたり、あるいは事故を起こしてみたりすることがあるんですね。 なんでそういうことをするかって言うと、別に子孫が憎いわけではありません。そうではないんだけど、そうした病気や病人が出たり、事故が出たりすることによって、これは何かあるなと思いますね。人間は幸福には敏感ではありませんが、不幸にものすごく敏感です。だから病気や事故が続くと、これは何かあると思う。そしたら、自分は信じてないけど、「もしかしたら先代が崇(たた)っているんじゃないか。もしかしたらウチの兄さんじゃねえか。あの死に方がよくなかったんじゃねえか」ねえ、四十八歳と何か月で死んで、四十九になる前に死んじやった。「やっぱりあの死に方がまずかったんじゃねえか」まあ、こういうことを色々考えますねえ。そして、「こら大変だ。命日には、みんな集まって供養しなきゃいかん」とこうなりますね。 すなわち、どうにかしてほしいんですね。とにかく自分が辛くてしょうがない。悲しくてしょうがない。どうにかして生きている人に気づいてほしい。とりあえずまあそこまでくるんですね。 それで、「なんとかちゃん、成仏して下さい」なんて知りあいの人たちは思うこともあります。それで、死んだ人のほうは自分の願いはわかってもらえないけど、向こうになんとか気づかすところまではいくんですね。こういうことがあるということです。 したがって、必ずしも完全に悪意とはいえませんが、彼らにとっての、知りあいは、地上に生きてたときの知人しかいないんですね。家族とか身内、そうしたところにやっぱり障(さわ)りというものを起こすようになってくるんですね。したがって、あなたの心も狙われているというのは、そのことを言っているわけです。 3.憑依(ひょうい)現象 さて、難しい字ですが、憑依(ひょうい)ということはみなさん聞いたことがあるでしょう。そうした悪霊がとりついてくるっていうことですね。この現象のことを憑依と言います。 「まっさかそんなことあるもんか。そーんなとりつくなんて、そんな馬鹿な話があるか」と言っていますが、あなたは朝起きて体がだるくありませんか。だるいでしょう。それは昨日夜ふかしで飲んだからですか。本当にそう思いますか。 ネオンサインの下くぐってねえ、エレベーターで十階まで上がって、外の夜景を見ながら、酒を飲んで夜中の二時三時まで横にはピンクの服を着た女の子が座ってて、おしりなぜながらチビチビ飲んでたでしょう。そして、「君にはこの酒が似合うよ」なんてピンクレディーなんていうカクテル飲ましたりしてたでしょう。 ところが、あなたはそのべっぴんさんでおしりがまるまるしてると思って可愛いと思ってたギャルなでてるけど、そんなところは霊的な目で見ると、ねえ、動物霊たちがウッヨウッヨ、ウッヨウッヨいるんですね。ウヨウヨウヨウヨしています。 それで、酒飲むとどうなるかっていうとね、酒を飲むと人間ひとがコロッと変わりますね。人格が変わるといいますが、簡単にいわゆる霊媒体質になるんですね。勿論、人間はもともとみんな霊媒体質です。霊媒体質であるから、肉体のなかに魂が宿れるんですね。自分自身が宿っているということ自体、人間が霊媒体質であることの証明です。そういうことで、霊的な体質はみんなもっています。ところが、普段はなぜ霊媒体質にならないかというと、表面意識が起きているときには理性と知性というものがはたらいているんですが、この理性と知性というのが、実はこの霊体質の霊現象を起こすことを止めているんですね。これを止めているんです。 ところが酒を飲むとどうなるかっていうと、この理性と知性が両方麻痺してきます。そして、本当は家のかあちゃんの方がよっぽど美人なんですけど、ネオンかなんかが、あるいは室内灯か何か知りませんが、キラキラキラキラ映って音楽がかかってくると、もうみんな美人に見えちゃってねえ、そして、まあ髪の毛の長いのを一生懸命なでているつもりでいたら、じつはキツネの憑依霊のシッポを一生懸命なでたりしているんですね。ヒョコヒョコヒョコヒョコなでてる。 そして、もう一時になりました。二時になりました。終電なくなりました。「じゃあタクシー乗って帰るかあ」と言ってフーラフーラフーラフーラ出てきますねえ。そんなとき、実は背中にピョコチンッとお孤さんがついたりしてるんですねえ。 ところが不思議なことにこの酔っ払い、家に帰ってこれるんですね。迷いもしないで、不思議ですねえ。これはついているものが道を教えてるんですね。なぜかっていうと、次の晩また飲まなきゃいけないんでね。毎晩お酒飲みたいもんだから、毎晩赤提灯(ちょうちん)くぐるためには、家にちゃんと送りとどける必要がある。家にとどけないとまた酒飲みに行けませんからね。 つまり、まあこれは動物霊のこともあるし、人間霊のこともありますが、やっぱり憂さ晴らししたいんですねえ、地獄霊たちもね。そして酒場とか、そういう色町とか、そうしたところに出没します。 そして、生きてる人間についているとどうなるかっていうとね、人間のときとおんなじような感覚が味わえるんです。わかりますか。つまり、飲んべえさんの霊が死ぬとどうなるかというと、その人にとりつかれると急に酒が飲めるようになるんですね。そして、カッポカッポカッポカッポ飲んじゃいます。いくらでも底なしですね。で、「自分は急に酒が強くなった。酒量が多くなった。これで営業マンとして一流だ」なんて言ってるけど、現実は酒飲みの霊にとりつかれたりしてるんですね。酒場なんかへ行ってとりつかれていますね。 このように悪霊たちは何かと言うと、あの世の世界が理解できなくて行く場がないんですね。だから、生きてるときによく行ったところね、家族のところがむさければ、そういう歓楽街に出るんですね。そして赤提灯の下くぐります。霊になってまで仕事したいなんて、そんな殊勝な人あまりいませんから、たいてい五時に会社ひけてからしていたそんなことばっかり覚えてるんですね。赤提灯に行きたい。そうすると、同僚かなんかのところにピョッとつくんですね。この世に帰ってきて、同僚の肩なんかにピョコッとついちゃって、フッラフッラフッラフッラ酒場まで行きます。こうして毎晩酒を飲むわけなんですね。 私も生前、酒はほとんど飲めなかったんですが、酒の飲める霊を体に入れるとほんとに酒が飲めるようになるんですね。恐ろしいことですが、ほんとに飲めるんです。それだけ、体質まで変わっちゃうんですね。だから、唯物論者が不思議に思うかもしれないけど、この霊がはいることによって、コロッと変わってしまうんですね。 だから、みなさん、おそらく野球のへたな人なんかは野球のじょうすな霊なんかを入れたらボンボンヒット打てますよ。きっとそうなると思いますね。まあこれは酒だけじゃなく、もちろんいいこともあるでしょう。霊道開いて、ピアニスト入れたら、ピアノが弾けるようになったりね。私だって、霊道開いて音楽家を入れたら、三味線ひけたりしますね。こんなことは本当にあるんですね。そういうことがあります。このようないい意味での憑依現象もあります。ただ悪い方が普通多いようですね。 結局、憑依の理由は何かって言うと、生きている人間とおんなじ感覚を味わえるってことなんですね。だから、あと生きてる人間にとりついて、色町で女性をあさるっていうのもありますね。これでやっているとまったくおんなじ感覚を味わえるんですね。これは色情霊たちです。こうして人間と同じ感覚を味わえるんです。自分に肉体が無いのでこれが悔しいんですね。肉体がないから、したいことがあってもできないですね。わかるでしょ、肉体なきゃできませんね。ところが、生きてる人間についてると、生前とおんなじような感覚を味わえるんですね。それでこうした憑依ということが起きるんです。 だから、これをなんとか阻止(そし)したいと思うんだけど、なかなかできない面があるんだね。なぜなら、これが阻止できるのなら、人間は魂が肉体に宿ることができなくなるんですね。まったく霊を寄せつけないというような、そういう絶縁体みたいになってくると、宿れないんですね、困るんです。 つまりね、まあ、コンクリートの柱に宿りたいっていう人はいないでしょう。ねえ、コンクリートの柱に宿ったり、鉄の玉のなかへ宿ったりはしたくはないでしょう。やっぱり、肉体のようなもんだから霊も宿ることができて、それで魂として修行ができるんですね。そのような霊体質になっているから憑依もできるんですが、これをなくしてしまうと今度は生まれ変わりができなくなるんですね。人間の生まれ変わりということができなくなるんです。だから、憑依現象というのは、この生まれ変わりというシステムがあるというこの原理につけこんだ、この裏側の部分なんですね。プラスの面もあるけど、マイナスの面もあるわけなんです。 またこういう憑依現象があるから、逆にプラスの面もあるんですね。つまり守護霊たちが指導でき易いという、そうしたことがあります。いろんなことを思いつかせたりします。また、発明や発見などのインスピレーションといったものも霊たちが来てささやいていることが非常に多いです。また、いざというときに高級霊がはいって助けたりするようなこともあります。 このように、人間は霊的現象というものから自由ではありえないということなんですね。したがって、いわゆる悪霊体質ではなくて、高級霊体質にしていく以外に方法がないと言ってもよいと思います。 4.地獄行き特急 さて、また恐ろしい題をつけてみました。地獄行きの特急ということですね。特急便と言ってもいい。これもあなたかもしれない。 普通ね、天国・地獄というのはどのようにして分かれるかっていうことですが、私も過去出した霊言集のなかでも話はしましたが、地上を去ったあと、自分の一生というものをもう一度スクリーンに映して見せられます。そしてその一生を裁かれます。確実に裁かれますよ。 ほんとにね、あなたが恥ずかしい、これだけは知られたくないと思うことが出てきます。隠せば隠すほど出てくるんですね。もう洗いざらい出てきます。大会社の社長なんてやっていて、もう人を裏切り、ねえ、ウソをつき、編(だま)し、やってきたなんてこと全部出てきます。もうまったく隠せないです。もう一円でさえネコババできません。ほんとに全部出ちゃうんですね。 だから、あの世に還ったとき一番得する人は何かっていうと、結局ガラス張りの心で生きてた人ですね。自分の心に正直に、自分の良心に正直に生きてた人、そして、内と外の隔(へだ)てがなくウソのない人ね。こういう生き方をした人はなんの恥ずかしいこともないですねえ。「私の人生、みんな知ってますし、私が善人だと言われてますけど、別に心のなかで思っていることと外で言ってることは、全然違いませんし、思った通りの生き方してきました。どの部分とられても、別に隠すほどのこともないし、恥ずかしいこともありません」こんな人なんかはスクリーンに映写したっておもしろくないですね。だれも見てくれませんね。 ところが、隠しごとがいっぱいある人はおもしろいですね。だから、そういう人があの世に還って一生というものをスクリーンに映し出されるときには、観客がいっぱいくるんですね。おもしろいんですねえ。いっぱい寄ってきて、「おっ、どれどれ」ってね、何がおもしろいかっていうと、そのスクリーンに映される自分の人生映画を見ているその人の表情が変わっていくのがおもしろいんですね。これを見ているのが、またなんとも言えない爽快(そうかい)な感じがするんですね。 最初は「そんなはずはない。オレは清純に生きた。公明正大に生きた。なにひとつ曲がったことはした覚えはない」なんて言ってるんですが、映画を見ているうちにガクガクガクガクふるえてくるんですね。足がふるえてくる。わなないてくるんですね。で、顔がひきつっていきますね。テープ張ったようになっていきます。そして、最後になって「もう止めてくれ、もう見たくない、助けてくれ」って言いますね。「では、お前は天国か地獄か」って言ったら、「はあ、地獄行きのようですね。どうやら」なあんて自分で言って、「うん、わかったらよろしい。ハイッ、出口は左ですよー。左行ったら、下のほうに階段がトントントントントンてありますから、その階段を十段ぐらい降りて下さい。階段を十段降りると、そこから滑り台がありますから、その滑り台に秉って下さいね。滑り台だと思ったら、そこをダスト・シューター見たいにストーンと落ちて、アレーッで言っているうちに、あなたの行くべきところにストーンと落ちますから、あとはゆっくり反省して下さい」と、まあこういう世界が展開してくるわけですね。これがふつうの人の場合です。 ところが、特別な人がいるんですねえ。特別な人がいて、「もう自分の過去なんか見るほどのこともねえ。語るほどのあっしでもございません。私がいくとこはもう最初から決まっております」なんて言って一直線にストーーーンといくのがいるんですね。これはなぜかと言うと、魂の比重がものすごく重くなってるんですね。悪の波動にそまって、非常に荒い波動を出している人、そういう心、心がまっ黒けになってる人ですね。こういう人は、ストーンと落ちていきます。地獄行きの特急使ですね。まさしく特急です。 これは何かと言うと、たいていこのストーンと落ちる人というのは、完全憑依されているんですね。まず、悪霊の五、六体がついています。四人や五人、ついています。だいたい五体以上ついていたら、まあ一直線と思って間違いないです。五体以上というのは、これはもう一直線ですね。 では、五体ついている人っちゅうのはどのくらいいるのかということですが、まあ地上にいる人、百人に聞きましたというアンケートでもして、百人の人に会って、固定の憑依霊持っている人が何人くらいいるかっていうと、そうだねえ、百人のうちでやっぱり、今七、八割いるねえ。七十人か八十人は固定したお客さんがいるんですね、お得意さんがいます。 だけども、七、八十入いると言っても、常時ついてばっかりいる人ではないようですね。たまに心がいらいらしたりキーキーしているときには来て、いつものお馴染みさんがついているけど、あとはいないという人がいますね。 ところが、いっつも常時いるって人もいますね。常時くっついているタイプの人というのは、だいたい半分ぐらいはいるでしょう。一人以上いるのは半分ぐらいですね。 そして、百人のうちで五体以上くっついているような入、これはだいたいどのくらいかと言うと、まあ、だいたい十五人ぐらいいるんですね。十五人ぐらいだと思います。十五パーセントぐらいだと思いますね。このへんは、もうだいたいまっさかさまにストーンと行くんですね。五体ぐらいつかれていたら、死ぬやいなや死神に連れ去られるというのはこのことを言うのですね。守護霊や指導霊が来て説得しようと思う間もないんですね。死ぬやいなやストーンと地獄に落ちて行くんです。もうこれどうしようもないです。 さっきの霊界映画の場合だったら、まだ本人に反省の機会を与えて悟らしめることもできるけど、この憑依されてストーンと行く特急便の場合はもう阻止のしようがないんですね。つかれたままでストーンと落ちていくんです。もう守護霊も指尊霊もどうしようもありませんね。これが大体十五パーセントぐらいいるんですね。 なぜこうなるのかというと、もうつねづね考えていることが人を害することばっかりなんですね。エゴイストもこれに極まれりという感じです。人を害してばっかりいる人ですね。まあ、あなたもこうした人のなかに入っていないかどうか、よくよく考えてほしいと思います。 5.人間の最期 このようにして、地獄に行く可能性のある人も半分以上いるわけですが、まあ地獄もよいとこ一度は行かれてもいいと思いますが、たいていの人は、そうだねえ、地獄の平均滞在期間がいくらぐらいか私もよくわからんが、まあ二、三百年かねえ、二百年ぐらいでしょうかね。二百年ぐらいしたら出てくるのが普通だと思いますね。ある程度反省期間を経て、そのあと出てくるんですね。そして天国に百年ぐらいいて、また生まれ変わってくる。まあこれが大抵のパターンですね。 ところが、一部の人はもう二度と出てこれない人がいるんですね。落ちたままで出てこれない。先程の特急便もそうですが、まっさかさまに落ちてどうなるかというと、たとえばプロレスの技かなんかで脳天逆落(のうてんさかお)としみたいなのがありますが、ああいうふうに脳天逆落としで、まっさかさまであなた一万メートルまでも落ちて頭打ったらもう最期ですね。もうちょっと出てこれないです。そんな底のほうまで行くんです。 地獄と言っても、もちろん空間のなかにあるわけですが、たとえばこれを視覚的に言うとすると、地獄の深さというのはいったいどのくらいあるかっていうことですね。みなさんどのくらいあると思われますでしょうか。まあ私が見ていて地獄の深さっていうのは、だいたいマリアナ海溝ぐらいの深さはありますよ。一万メートルぐらいあります。この程度の深さまではあると思っていいよ。 この一万メートルの深海魚の世界まで行ったら、もう上がってこれないですね。ここはたいへんな水圧がかかってます。水圧と言いますかね、霊的世界の圧力ですね。深海魚の世界です。だから、一万メートルの深さがあるとして、これが七千メートル、八千メートルあたりから下になってくると、もうこれはものすごい水圧で出てこれないです。 だから、光の天使たちも救いに行こうとしても、これは潜水艦と一緒でね、あまり深くなるともう潜水艦のほうが破裂しちゃいますから、行けなくなりますね。この潜水艦が破裂するっていうのは何かと言うと、いわゆる波動ですね、この荒々しい波動にもう耐えていけなくなるんですね。いられない、とてもいられない、そうしたすっごい波動です。ものすごい圧力ですね。ここに行ったら、もうだいたい出てこれなくなってくるんです。 そして、この世界で長い間住んでいるとどうなるかっていうと、ちょうど海底の力二とか、深海魚と一緒で、浅いところに出てこれないんですね。出てきたら内臓破裂しちゃいます。もうそういう水圧に慣れてきているんですね。何トンっていうような水圧に慣れてきているんで、もう出てこれないんですね。浅いところに住めないんです。こういうあわれな人たちもいます。これを「人間の最期」と言ってもよいでしょう。こうした者たちのなかに、サタンと言われている者たちも数多くいます。まああわれと言ってもいいです。 なんとかね、ここまでいかないように僕はしたいなあと思いますね。この深海まで落ちてしまったら、もうダメですね。海の底の底まで行ったらもう上がってこれなくなってくるんで、できればね、私は先程のスクリーン見て、自分の過去を見たときにね、すぐ反省が始められるようなみなさんをつくりたいね。どこが違っていたのかすぐわかる、そして、悔い改めができるみなさんをつくりたいね。ま、そういうこともあって、一冊でも多くの本を出したいと思っているんですよ。 だからみなさんね、冗談じゃないよ、僕は自己顕示欲でこんな本を出しているんではないですよ。なんの意味があって出してるのかをよーくわかってほしい。何十冊出してもいいんだ。そのうちの一冊でも、もしみなさんの目に触れ、手に触れることができたら、僕はそれでいいんだよ。それで役割果たせるんだ。もう一冊でも多く出したいんだよ。 だからね、この本読んでよかったと思ったら、友達にでも、親戚にでもあげてくれ。頼むよ。ひとりでも多くの人に真実知ってほしいんだよ。そうしないと深海魚のようになっちゃうからね。なんとか反省の機会を与えてあげたいと、そのように思っています。
https://w.atwiki.jp/chaina_battle/pages/778.html
太皇太后(たいこうたいごう)は先々代の帝王の正妻(皇后)もしくは、当代の帝王の祖母に対して用いる尊称である。転じて日本では、以前皇后だったものに対して用いる尊称ないし位とされたことがある。後段においても触れるが、現在の敬称は「太皇太后陛下」であるが、古くは太皇太后宮という様に「宮」(ぐう)の字をつけて敬称した。 日本では律令制の導入以降この称号が使われるようになった。令では中宮職を担当の役所となし、『令義解』では「太皇太后……の宮また自ずから中宮なり」とし、中宮職をもって太皇太后に仕える根拠とするが、実際には中宮職と別個に太皇太后職をおいて奉仕させた。天皇の在位期間が短くなる、平安時代後期には、以前に皇后(中宮)だったものが、のちに新たに皇后が立てられると皇太后と称せられ、さらにまた新たな皇后が立てられると、繰り上がって太皇太后の位を贈られるようになった。 明治になり、律令は廃止されたが、太皇太后の称は残り、皇室典範で太皇太后は皇族とされた。太皇太后への敬称は陛下を用いる。また皇室喪儀令(大正15年皇室令第11号)では、太皇太后の死に際しては宮内大臣が公示し、追号を定め、天皇が喪主となると定める。 第二次世界大戦後、日本国憲法とともに旧皇室典範にかえ、新たに皇室典範が施行される。太皇太后は皇族とされ(第2条)、また摂政に就任しうるものとされる(第17条)。また敬称は陛下を用い(第23条)、太皇太后を葬るところは陵と称する(第27条)。 平安末期に近衛天皇の皇后であった藤原多子(後に二条天皇の皇后となる)を最後に、現在に至るまで太皇太后は登場していない。 出典 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』_2008年4月11日 (金) 16 47。
https://w.atwiki.jp/kisuitosuuki/pages/134.html
ここはどこだろう。 とても暖かい。 けれど、私の目には何も映ってはいない。 いや映せない。 【ふむ、上手くいったな。どうやら前世の記憶を持っておる】 だれだ? 【誰とは失敬な。いや、突然すぎて解らぬであろう?】 理解が追い付いていません。 えーっと、どちら様でしょう? 私は確か、自殺したと思うんですが…… 【そう、お前は周りの人間に絶望して自ら死した】 うーん………… 確かにそうだったんだよなぁ。 束縛しまくられたし、不誠実沢山あったし、逃げる場所が二次元のみだったし。 【辛くなっているかも知れぬが、お前はこのまま無には成れぬ】 自殺ってのが重いから? 【それもあるが、少しやってもらいたいことが増えた】 やってもらいたいこと? といか、自殺が重いってキリスト教の話じゃない? 【世間一般的に重いのだ。で、やってもらいたいというのは、だな】 わお、スルースキルだね。 【人ごときが吾(われ)に意見するとは】 ……えーっと、もしかして結構偉い人であったりしますか? 何かの神様とか。 【当たりだ。吾は六合(りくごう)】 へ? まさか十二天将の一人の?! いや、ここは吉将の貴方ではなくて、地獄の業火を操る騰蛇(とうだ)か、閻魔様か、四凶とか、四罪でしょ! 【詳しいな。さすが、吾が選んだだけある】 自我自賛! 神だから仕方ないけどさ。 【他の将も忙しいのだ。騰蛇はとある世界の平定に行っている】 ? えっと、その言い方って私にどこかに跳べって事ですか? 【毎日本を十冊は読んでいただけあるな。そうだ。幸いなことに、お前のいた世界は人が溢れすぎておってな。知識も十分にある者が活かせずにおる】 つまり、ちょうどいい人材の宝庫だったと。 【本当に察しが良い。まぁ、その世界を主軸とした人口の多い世界も、比較的に知識を持つ者が増えておるがな】 ……それで、私にどこに跳んで欲しいと? どうせ私に選択権はないのでしょうし。 【ふ、その通りだ。では、跳んでもらおうか】 ちなみにどんな世界に? 今までの話から考えると、人口の少ない知識人の少ない世界? 【……ふむ。なんと言えばよいだろうか。そうだな、お前のいた世界の者が創造していた世界の一つだ】 ?? 創造…… あ!小説とか?! 【そういう世界だな。ちなみに金髪碧眼のいじめられ少年とその対の黒髪少年の物語といえばわかるか?】 金髪碧眼でいじめられっ子と黒髪少年……。 おい、まさか某世界的有名漫画の主人公たちじゃ…… 【やはり期待できそうだな】 マジですか! うわー。 死亡フラグ乱立の、皆少年心持ってる忍び世界じゃないですか。 生きていける気が全くしません。 というか、一人で変えるなんて無理っす。 【吾は平和と調和を司るもの。そういう世界は優先的に平定せねばならないのだよ】 そーいえば、原作終了しても火種いっぱい残ってましたねぇ。 突っ込み処ありすぎでしたし。 でも、マジで一人無理。 【そこは大丈夫だ。吾とあと二人の天将が行くからな。必然的に他の世界からもイレギュラー二人ほど追加だ】 あー、戦いが多い世界は投入が多いんだね。 投資しておいた方がいいんだね。 少し安心したよ。 【ただし、他の者たちとはスタート地点が異なる。覚悟して行け】 了解。 ま、罪犯した身だし、六合さま?もついていくのなら何とかなる気がする。 【吾呼び名は、さま付けしなくともよい。真名はやばいのでな】 ああ、あっちには名前で囚われてしまう壺とかありましたね。 んじゃ、適当にニックネーム付けますか。 【そうしてくれ】 では、アルトゥでどうでしょう? 【ほぅ、珍しい。日本人であったはずなのに、違う言語からそう取ってくるか。確かトルコ語の”6”だな?】 名は体を表すって言いますし、その国やそれに関連した能力も増えるかと。 トルコですから、インドにも通じていて演算などの計算能力。 あと、ヨーロッパとアジアの架け橋の国でもありますから、”平和と調和”にはちょうどいいかと。 【……本当にいい拾い物をした。では、今すぐ跳ぶ】 はい! 【苗字も適当に考えておけ。それと自分の分もな】 その言葉の直後私はまぶしい場所へと放り出された。 次ページ:混乱へ
https://w.atwiki.jp/tlom_magi/pages/296.html
れん ぎょくえん /CV.伊藤美紀 煌帝国の皇后。練紅徳の妃であり、白瑛、白龍姉弟の生母。48歳。 もともとは初代皇帝である練白徳の妃であり、初代皇帝との間に4人の子を成したが、白徳の死後は二代目皇帝の練紅徳に嫁いだ。 全身魔装した金属器の渾身の一撃を受けても砕けぬほどの防壁魔法を操る、強大な実力を持った魔導士。 実年齢にそぐわぬ、若々しい姿を保ち続けている。 なお、容姿は実子である練白瑛と瓜二つ。 技能 防壁魔法八ツ首防壁(ボルグ・アルサーム) 滅葬(メドウン・アルサーム) +ネタバレ 二代続けて煌帝国の皇后となるが、正体はアル・サーメンの魔導士で有り、組織の首領と思われる人物。 病がちで愚鈍と称される紅徳の方が御しやすいとして夫であった白徳およびその後継者であった白雄、白蓮を謀殺した。 影で帝国の実権を握り続けていたが、紅徳の死後自らが第三代目の皇帝として即位し、表舞台へと躍り出た。 父と兄の死の真相を知る白龍からは「アル・サーメンの魔女」と呼ばれており、実の親子で有りながら殺意と憎悪を向けられている。 193夜にて、かつてアルマ・トランでソロモンに仕えていたマギの一人であったことが判明。 その正体はジュダル曰くアルバだとされ、紅炎も同様の推察をしていた様子。 240夜にて、練白龍により謀殺されたという報がもたらされている。
https://w.atwiki.jp/kyogokurowa/pages/21.html
───考えろ。 この場で最善の選択を。 「なるほど。つまり第三位のクローンが頓挫したから次は俺らでやろうってか?」 スーツを身に纏った茶髪の少年は、誰に言うでもなくそう呟いた。 百八十の身長。整った顔。そして決して安価ではないだろう、気品を醸し出すスーツ。銀座の稼ぎ頭だと紹介されてしまえば疑問もなく信じてしまいそうな、そんな雰囲気を纏う少年…垣根提督は、石の一つに腰掛けふむと頷いた。 辺りは闇。光源は月明かり程度しか無く、その僅かな光で垣根提督は辺りの情報を把握した。 等間隔に並べられた石。材質は辺りに散らばる程度のものではなく、おそらく墓石───つまり、墓場か。 陰気な場所だ。土の香りが強く、等間隔で並べられた墓石がくだらないお涙頂戴を演出している。 死んで墓が作られるだけ幸運だったな、と垣根は吐き捨てる。彼らの住む世界では、死ねば機械に繋がれ無理矢理生かされるか、利用価値が無ければ綺麗さっぱり灰になってゴミと混ぜられそのままポイである。 垣根は腰掛けているのが墓石と判明してもなお退く気は無く、思案する。 線香の香りは無く。かと言って湿った空気すらも感じられない。墓参りには習慣があり、その一つに『墓石に水を掛ける』というものがある。仏教における六つの世界の一つ、餓鬼道には水がなく、それ故にもし先祖が餓鬼道に行ってしまった可能性を考慮して水を捧げる───という意味を持つ行いだ。オカルトに疎い垣根は理由は知らないが、墓石に水を掛ける程度の行いは知っている。 線香も無く。水の湿った空気も無く。誰かが墓参りに訪れた形跡は無く、つまりは人が訪れなくなって随分経つ。 (それにしては墓石が真新しい。欠けも無けりゃ苔の一つも生えてねえ。学園都市の技術なら、適当な地下に会場一つ作るくらい造作もねえだろうが…) 月や星、空程度なら天を覆ったドームにプロジェクションマッピングで描けば何の問題もない。熱や光量、風なら更に簡単だ。少し探して樹木の皮を剥げば、一つや二つがヒーター染みた、自然風をお届けする馬鹿げたものが出てくるであろう。 常人なら『あり得ない』と笑うだろう。陰謀論だと笑うだろう。 しかし。その『あり得ない』を現実に起こすのが、学園都市なのだ。 (『ピンセット』も取られてやがる。アレイスターのことだ、これも見てんだろ。これだけの規模に学園都市が関わってねえはずもねえ…あの会場の売女は統括理事共のパシリか?) 水風船のように綺麗に弾けた光景を見るに、能力は念動力か、または。 どうでもいいか、と思考を打ち切る。見たところ、レベルは4程度。正面からならば文字通り垣根提督の敵ではない。 現段階の問題は。この首にがっちりと嵌っている首輪だ。 下手に触ればボン、だ。感動的に首と身体の泣き別れ。そいつは御免だ、と垣根は舌打ちを隠そうともしない。 (俺の能力で弄るのも手だが…学園都市側がそれを考慮してねえとは思えねえ。干渉を感知した瞬間起爆するか、それとも俺の能力でも解除できねえと高を括ってんのか。 …ムカついた。が、確証もねえ内に手を出すほど俺も馬鹿じゃない) 軽率に手を出してボン、では洒落にならない。 例え首と胴体が泣き別れしたとしても、学園都市側からすれば大した問題にはならないだろう。適当な大きい装置に繋げられ生き延びる道か、脳をローストビーフのようにスライスされて研究素材行きだ。 垣根とて、それを警戒しないほど馬鹿ではない。 学園都市第二位の能力者。七人のレベル5。つまりは、学園都市の中でも指折りの実力者であり天才だ。 「生き残りにはどんな願いも、ねえ」 眉唾物だ、と垣根は思う。努力だの希望だの信じている馬鹿より低俗な愚者だ。 素直に勝ち残ったからと言って、学園都市がはいそうですかと願いを叶えてくれるとは思えない。大抵のものは学園都市ならば作れるが、そのような問題ではない。 前提条件として。この場に捕らえられ、首輪を嵌められている時点で狗と変わらないのだ。 つまり。勝ち残った瞬間にそのまま全身刻みコースホルマリン仕立て直行、なんてことも普通にあり得るのだ。 (…だったら。この殺し合いの勝利条件は) まずこの首輪を外し、狗から人間へと対等になること。 そして。学園都市かその更に裏の連中の手出しを封じるような『何か』───弱みを握り、対等から上へと立場を変えること。 その、二つ。 (アレイスターとの直接交渉権を願うのも手だが…それで何になる? 否を叩きつけられて、また問答無用で実験開始じゃ話にならねえ) メインプランに第一位が据えられている以上、直接交渉に意味はない。 無論、首輪を付けられ狗のように尻尾を振りながら殺し合いに参加するつもりなど毛頭無いが。 ペラリ、と垣根は『支給品』とやらであるらしい、名簿を捲る。この実験にブチ込まれたであろうモルモット達の名前。学園都市の第四位に暗部のメンバーの名。第一位の名が見えないのは、やはりメインプランということか。 直接交渉権を手に入れるだけでは意味がなくなった。学園都市の闇の深さ、やり口の悪どさが想像を超えていた時点で、これまでのやり方は意味を成さない。 (『上を取る』。勿論文字通りの上。第一候補…メインプランの第一位、そのプランにすら口を出せる程に。この殺し合いを『利用する』) 垣根が出した結論は、それだった。殺し合いをしなさいと命じられてはいはいと従うほど、垣根は従順ではない。 ならば、学園都市の第二位はそれすら利用する。これほどの会場を作るのだ、『ピンセット』を超える技術も山程使われていることだろう。 会場での動きは『滞空回線』───五千万の数を超えるアレイスターの七十ナノメートルの超小型直通情報網───で察知されているだろうが、それはそれで問題はない。力をつけ、垣根の存在を危惧して刺客を送ってこようモノなら逆に好都合だ。 シンプルに、学園都市第二位としての暴力性が役に立つのだから。 「…荷物の確認は後でいいか」 ふう、と息を吐く。垣根がこの殺し合いについて出した結論に至るまでの思考時間は一分もない。第二位の頭脳はそれ程までの思考速度を持ち。 「───なあ、オッサン」 故に、これだけの思考をしても尚、周囲を探る余裕があった。 垣根の背後。大男が、そこに在った。 白を基調とした、上質な白の騎士服を身に纏い、しかし上半身はほぼ裸に近い。逆立つようなバックに纏められた頭髪は、意志の強さか、一房だけ反抗し前に飛び出している。 「なんだ坊主。その歳にしちゃ…肝が座ってんな。殺意全開か」 「それだけ隠す気も無え威圧振り撒いてりゃ、餓鬼でも気づく」 「おお…そうか、そうだったな。ムルジムがいねえんだ、力ァ抑えてくれるヤツがいねえんだったわ」 目の前の男はガシガシと頭を掻き、一言。 「まあ…アレだ。こちとらつまんねえ演出見せられてシラけてたんだ。一応特等対魔師だからな。一般人は守らなきゃな。 そこに殺意全開の坊主がいたときた」 「前置きが長い。要件だけ話せ」 「だよなァ。俺もこういうのは性に合わねえ」 男は、背に背負った日本刀…否、只の日本刀と呼ぶにはあまりにも長すぎるソレを、抜き放つ。 垣根はその男を眺めながら、思う。 能力者ではないだろう。どう見ても大人だ。それとも大人びただけの学生か。 学園都市は正真正銘の化物なのだ、身体だけ大人の子供がいてもおかしくはない。 「ま、一般人だろうとどっちでもいい。好き勝手やってる俺が言えた義理じゃねえからな。 じゃあ本題から入るが───乗ってんのなら、斬っても構わねえな?」 「出来るモンならやってみろ」 男が抜いた剣は、太刀というには長すぎた。 日本刀に似た形状。日本には昔、佐々木小次郎という『物干し竿』の名を冠した長刀を持った剣豪がいたとされているが───それを現実に蘇らせるとこんな感じだろうか、と垣根は思う。 しかしあれでは満足にも振るえまい。物体を軽くしているのか…否、それでは斬撃自体の威力が下がる。そも、重さとは力だ。それを無くしては、長刀なんぞ使うより半分に折った方が使いやすい。 ならば、肉体強化か、それとも指定した材質を操る念動系能力者か。 そこまで考えて、垣根は深く溜息を吐く。 「どうでもいいか、メンドくせえ」 「おうよ。四の五の考えてる暇がありゃかかってこい」 「そりゃそうだ。良かったなあ、テメェ。此処が墓場で」 瞬間。白き翼が、展開される。 垣根の背から生えた白の翼。六枚のその翼は、天使のソレにも似ていた。 「───葬式はいらねえな。土の下で肥やしになってろ」 「そりゃ良い。お前の墓石、用意する必要も無さそうでなァ───!」 六枚の翼と長刀が交差する。 およそ、人には見えないほどの神速で。 ───考えろ。 この宵闇に包まれた死地を、生き抜く策を。 「…ったくよ。せっかく面白い大一番を目の前にお預けかよ」 男───シグレ・ランゲツの行動は単純だった。 元が豪快かつ単純な修羅の男。剣に生きる者故、やるべきことを定めるのにそう時間はかからなかった。 一つ。斬っていい強いヤツならば、斬る。 二つ。特等対魔師としての仕事は一応果たさねばならない。 と言っても。別にシグレは仕事熱心な男というわけでもなければ、律儀に規則を守る男でもない。 武器を持たない、戦意のない者ならば斬らない。武器を持ち、殺意を携え向かってくるならば敵。 面白そうな敵ならトドメを刺さないこともある。要するに、自由なのだ。 剣に生き、剣で立ち、剣に死ぬ。それだけの簡単な理由。元より人斬りの男なのだ。最初から立派な信念など持ち合わせてはいない。 それでも彼が聖寮に二人しか存在しない『特等対魔師』に選ばれたのは、その類稀なる実力にある。 人に仇なす業魔。それらを斬って捨てる実力は、自由奔放好き勝手を体現するその姿を加味しても、特別なものだった。 …そんな男でも。今現在、墓石に背を預け、胡座をかいたままがっくりと首を落としている。 それもその筈。悪趣味な会場に呼ばれる直前、シグレはキララウス火山にてある決戦を控えていた。 災禍の顕主御一行との決闘。弟であるロクロウ・ランゲツとの長い長い決闘。それを待つ、戦いの前の静かな時間。 その瞬間に、彼はこの地へ呼び出された。見たことも無い力、弾け飛ぶ人体、破裂した少女。 シグレ・ランゲツは善人ではない。社会的立場で言えば圧倒的に善なるものであるが、その性質は剣士、人斬りであり悪なる者だ。 だが。いや、であるからこそ、か。 シグレ・ランゲツは、この悪趣味な催しを許さない。 斬れれば嬉しい。斬れなきゃ悔しい。───斬られたら死ぬ。 剣は単純で、だからこそ面白い。 だと言うのに。不粋な枷に小難しい脅しまで用意している。 これほどまでに、剣の勝負に余計なモノを注がれて、頭に来ない筈がない。 「こちとら飼い犬暮らしは辞めたとこなんだ。悪いが、動きたいように動かせてもらうぜ」 そうして。シグレ・ランゲツが出会ったのは、茶の髪をした少年。垣根提督。 人間であることは確かだろうが───尋常ならざる殺気と、この場に一切の物怖じをしないその姿。 強者が揃ったのだ。始まりには、そう時間はかからなかった。 六枚の翼と長刀が交差する。 およそ、人には見えないほどの神速で。 「…馬鹿みてえに長い太刀でよくやる。ガキのコミックかよ。デカくねえと収まりがつかないタイプの人間か?」 「お前こそよく止めたな。その翼、サーカスのトリでも飾りゃあ女子供は大喜びするぜ」 「残念だが、コイツぁそんな楽しいモンじゃねえよ」 「そりゃ残念だ」 六枚の翼が縦横無尽に駆け巡る。垣根の周囲に展開された六枚の翼が圧倒的な速度を持ち、別々の方角から目の前の男を切り刻まんと駆け巡る。 それを防ぐはシグレの長刀。あろうことか、ただの人間の身で翼の全てを受け流している。 「はっはァ、コイツは良い。號嵐が手持ちにねえと知ったときは萎えたモンだが、コレは中々の業物じゃねえか!」 シグレの長刀。───名を『七天七刀』。 ある世界に、二十といない神の力の一端を振るう者がいた。生まれたその時から神の子に似た記号を持ち、世界に愛される者。名を聖人。 シグレが持つその刀は、東洋の聖人が持ち、その鯉口には鋼糸が仕込まれた日本刀。長さ二メートルを超える大太刀である。 「それで本来のエモノじゃねえってのか。十分バケモンだな」 「まだ慣れてねえしな。ここで驚いてたら後で腰ィ抜かすぞ」 嵐の如く交差する長刀と六枚の翼。 號嵐・真打を背負い。聖寮のトップに立つ、世界を導く者───導師アルトリウス・コールブランドにすら匹敵するその剣技。 圧倒的な霊能力を持ちつつも聖隷術を使わず、生身で天変地異を起こすその姿。刀の一振りで大地を割るその剛剣。 聖隷と一体化する『神依』、業魔を喰らう『喰魔』。様々な者が異様な姿や力を持って災禍の顕主たちへ挑んだ中で、唯一『ただの人間として』敵対した者。 いくら相手が学園都市に七人しかいない能力者の頂点、レベル5の第二位と言えど。 容易に倒せる相手では、ない。 (…能力者じゃねえな。なら学園都市の闇の底で作ったモンスターか何かか?) 斬撃を翼で防ぎながら、垣根は思考を巡らせる。 垣根の『未元物質』はこの世に存在しない新物質を生み出し操作するもの。翼の形状を模しているのは垣根の趣味ではないが、垣根自身『効果を持つ新たな物質を生み出し・引き出している』ため垣根自身が自由に『未元物質』が齎す効果を選べているわけではない。未だ不明点があり、そして成長段階にある能力。 しかし、それを補って余り得るほどの応用力。故に学園都市第二位なのだ。 六枚の翼は垣根が対応できていない攻撃すら、勝手に動き垣根を守る。垣根が今も生き長らえているのは、その能力によるものが大きかった。 シグレの斬撃はもはや垣根の視認できる速度ではない。肉体的スペックが違い過ぎる。 「腰ィ抜かすのはそっちの方だ。速さだの強さだの技術だの、そんなものは通用しねえんだよ」 逸らした斬撃が墓石をバターのように切断する。受け流された翼が地面をプリンのように抉り取る。 夜闇の中行われるその応酬の中で。一撃でも貰えば砕けかねない中で、垣根は笑った。 「俺の『未元物質』にはな」 大きく展開された翼。渦巻く風。 その瞬間。シグレは本能的な何かを察知し、大きく身を引いた。 それが、正解だった。 一万のベクトルを含めて放たれた烈風。その大きくうねる風が、先ほどまでシグレが存在していた場所を抉り取る。 ほんの一瞬。シグレの察知が遅ければ、一万のベクトルを込められた烈風がシグレの全身を掻き千切り、人の形状すら保てていない『何か』が出来上がるところだった。 …しかし。それで怯むほど、シグレも並みの者ではなかった。 「『震天』」 「ッ!?」 その長い太刀を利用した、鋭い突き。 身体が消し飛びかねない一撃に怯むことなく、攻勢に出た。 「『斬光』」 太刀の軌跡が残るほど疾く、横に振るわれる一閃。 繰り出される連撃。その技。垣根は翼を前面に展開し、身を守る。それでも重い。ビリビリと翼が震えているのが垣根にも理解できた。 二人の差を分けたものは、戦闘経験の差。 シグレ・ランゲツには身体能力に優れた業魔や能力を使う業魔。剣術を使う者や聖隷術といった異能を使う相手との戦闘経験がある。 しかし、垣根提督にはそれがない。対能力者相手との戦闘経験はあったとしても、生身の精鋭部隊と戦ったことがあったとしても『レベル5に生身で匹敵するほどの人間』と戦ったことがない。 学園都市第三位のように、聖人を見たようなことがあれば別だったかもしれないが───それはたらればの話であり。 「悪いな、生きてたらまた会おうぜ」 それが、このピンチを呼んでいた。 「嵐月流」 瞬間。垣根は覚えた。雨に打たれるような、錯覚を。 宙に舞う傘を。在りもしない、非現実を。 「───『宵時雨』」 雨の宵闇。一振りの刀が通り抜ける。 斬った者は斬られたことに気付かず。 振り抜かれた後の刃を見、己を見る。 その傷は刀傷。雨音に消え逝く一閃。 流派を嵐月。名を宵時雨。 ───大太刀にて振るわれる、剣の極地の一つ也。 「…………」 静寂。刻まれ抉られた墓場に、静寂が取り戻される。 その中で、口を開いたのは。 「やっぱ駄目か。號嵐じゃなきゃ違和感がある」 「…これで本気じゃねえってのか。バケモンだな」 「防ぎきった坊主に言われたきゃねえよ」 「こっちの台詞だ。『未元物質』を斬るバケモンがいるとは思わなかったぜ」 両者、共に顕在。 シグレの放った斬撃を、『未元物質』は見事防いで見せた。しかし、六枚の翼の殆どを斬られてしまったが。 しかし『未元物質』は垣根が生み出し、引き出した新物質であり、神経が通った肉体ではない。これくらい、再構築すれば問題はないのだ。 「さて、どうする? 続きでもするなら大歓迎だが」 「はッ。刀のやり口はわかった。次は俺の舞台で戦わせて貰うぜ」 そう言って、六枚の翼を再構築し、空へと飛ぼうとした垣根と。 刀を再び構えたシグレ。 再決戦の構えが整った二人を止めたのは─── 「待ってください! ぼくからお二人に…『提案』があります」 紫のアレンジスーツを身に纏い、くるりと巻いた金の頭髪を持つ、第三の参加者であった。 ───考えろ。 この暗闇の荒野に、進むべき道を切り開く希望を。 「…何だお前」 「提案だぁ?」 「ええ。提案です。ぼくの名はジョルノ・ジョバァーナ…歳は十五。好きな音楽はジェフ・ベックで血液型はABです」 両手を挙げながら、降参のポーズを取る。ジョルノは二人の前に出た瞬間に、交戦の意思はないことを表していた。 「そしてこちらはマギルゥ。ぼくがこの場で出会った最初の協力者です」 「と言っても、儂は巻き込まれただけじゃがの〜。楽〜して帰れればそれで問題なし。のう、特等対魔師殿?」 「マギルゥ、余計な口を開かないように」 「わかったわかった、生真面目なやつじゃ」 マギルゥ、と呼ばれた少女はまるでピエロのような、道化師のような姿にスカートの如く腰に並べられた本、ブロンドの髪。あどけない少女のような顔。二人並べばサーカスの兄弟にも見える、奇妙な姿だった。 「───マギルゥ? ああ、ロクロウの仲間か!」 「覚えておったかー…覚えておるよなー…当たり前じゃよなー…」 「…知り合いなんですか、マギルゥ」 「此処に来る前の…敵対者? みたいな」 「何でソレを早く言わないんですか…!」 ジョルノがこの場所に呼ばれて最初に出会ったのが、このマギルゥだった。奇想天外な名乗りをされた挙句、のらりくらりと質問を交わすので(薬でもやってるんじゃあないのかと思ったが)ジョルノは辛抱強く会話を試みた。 そして聞き出したのは身分のこと。マギルゥと名乗っており、大魔法使いということ。本名マジギギカ・ミルディン・ド・ディン・ノルルン・ドゥということ。この辺りでジョルノは、この女性は組織が流した薬をやっているんじゃあないかと本気で思い腕を調べたが、特にそのような形式はなかった。 『スタンド使い』を『魔法使い』と勘違いしているのかと、ゴールド・エクスペリエンスを見せても『これが聖隷か? また…変わったやつじゃの…』と逆に引かれてしまった。スタンドが見える一般人なのか、それともスタンド使いなのか判断がつかない。 納得がいかないまま、一応は真に悪い人間ではなさそうだとの決断を下し、同行を許した直後に───轟音。 シグレと垣根の決戦を、目撃したのである。 「漫才がしたいなら他所でやれ」 「いえ…ぼくたちは『あなたたち』に用があるんです」 垣根の言葉を、ジョルノが返す。 「率直に言えば…手を組みたい。この殺し合いの場を抜け出し、催しを開いた本人に迫り、元の場所に帰るまで」 「二人じゃ不安だから仲間になれ、ってか?」 「いいえ、違います。これは『契約』です」 スイッチが切れたのか、つまらなそうに欠伸をするシグレに、冷たい視線で言葉を投げかける垣根。 ジョルノは理解している。ただでさて二人の戦いに割って入ったのだ。不興を買えばその場で殺される。 二人がジョルノを殺しにかかれば、ジョルノは確実に殺される。脳でなく、本能で理解していた。 「ぼくたちはこの殺し合いを出て己の場所に帰るまで、あなたたちを襲わない。その代わり、あなたたちもぼくたちを襲わない。 情報を共有し、戦力を共有する。ぼくにはこの戦いで重要な『傷を治す力』がある。 この殺し合いを脱するための期間限定の…『組織』を作るんです」 「要するに! 仲良しこよしじゃなくてもよいから、程のいい仕事仲間って感じかの? この場合殺し合い仲間じゃが。 …そっちも本来のエモノが無いようじゃし? エモノ探しをちょこーっと手伝いしてもいい…」 「断る」 「速いのー。こうも分かり合えんとは。人間、度し難いのう…」 あなたも人間でしょう、とジョルノの突っ込みは帰ってこない。ジョルノの提案を断ったシグレが、此方へと視線を向けたからだ。 無論、ただでやられる気はないが。シグレが本気で殺しにかかってきたら、ジョルノは無傷では済まない。 心の中でゴールド・エクスペリエンスを構えつつ。シグレの返答を、静かに待つ。 しかし、シグレの言葉に反応したのは、マギルゥであり───ジョルノは、対応を彼女に任せた。 「災禍の顕主の魔法使いと一緒に行動したとあっちゃあメルキオルに何言われるかわからねえ。面倒なのは御免だ」 「ほほう? 仮初めとはいえ汚れと手を組む関係は嫌じゃと? 清潔なままでも棺桶に入ってしまえば意味も無かろうに。シグレ・ランゲツよ」 「そんなんじゃねえよ。わかってんだろ? 俺は特等対魔師、お前は災禍の顕主の仲間。 単純な話だ。俺とお前は敵同士だ」 「好き勝手やっとるお主が律儀なことを。虫ですら命の危機とあらば毒々しく色を変えるぞ?」 「まあな。言う通り、好き勝手やってる俺が今更律儀に敵味方つけるのもおかしいわな。 ってことでこれは建前だ。本音は───お前らと組めばロクロウとも期間限定で仲間ってことになっちまう。そいつぁ御免だ。 剣は単純だからいい。ただでさえ面倒なことになってんのに、これ以上理屈をつけるつもりはねえ」 マギルゥの挑発するような物言いに、シグレは笑みを携えて返す。 交渉決裂か。ジョルノがそう思い、身構える。夜風が一段と緊張感を煽り、瓦礫と化した墓石が己の未来図を予想させる。 冷や汗が頬を流れる。肉弾戦になれば、ゴールド・エクスペリエンスにおそらく勝ち目はない。正面切っての戦闘は不利なのだ。 「───なら、妥協案はどうじゃ?」 そして。そんなジョルノを無視して口を開いたのは、マギルゥだった。 「どうやらお主、號嵐を持っておらんのじゃろう? ならばこうじゃ。 儂らは號嵐を見つければお主に渡そう。お主の聖隷を見つければそやつも渡そう。 その代わり───儂ら災禍の顕主御一行とブローノ・ブチャラティには『自分から』手を出さんと約束せえ。勿論、接触したら先にこの契約を交わしたことを相手に明かすという条件付きでな」 「…はは。特等対魔師相手に交渉か? いい度胸してんな」 「いい顔もしとるじゃろ?」 「ああ───『いい悪い顔』だ」 にやり、と互いに口元を歪ませる。 一触即発の空気を漂わせた後。十秒ほど間を開けて、シグレが笑う。 「いいな、気に入った! いいだろう、號嵐とムルジムを手に入れるまでの休戦だ。『自分から』災禍の顕主らと…ブチャラティだっけか? そいつらは襲わねえ。 俺が號嵐とムルジムを見つけたら休戦は終わりだ。真正面からかかってきやがれ」 「話がわかるやつで結構じゃ。まあ…ロクロウのやつはこんな協定無しでも襲いかかるじゃろうが、そこは愛嬌よ」 「はっ、あいつも號嵐無しの俺に勝っても嬉しくはないだろうよ。勿論、負けはしねえけどな」 長刀を鞘に仕舞い。背負ったまま、シグレが何処かに去っていく。共に行動できなかったのは残念だったが、それでもジョルノは休戦を結べたのは大きな進歩だと思い。 残るもう一人の強敵に、目を向ける。 「で、俺はいつまで空気読んで黙ってりゃいいんだ?」 「…できればあなたにも『契約』を結んでほしい。戦力は多ければ多いほどいい」 「ああ、そりゃいいだろうよ。テメェらからすりゃいい契約だ。 だがな───それを結ぶメリットが俺には無い」 垣根は、ゆっくりと六枚の翼を伸ばす。 「俺だって一般人殺して喜ぶイカれた脳ミソしてねえモンでな。カスでも良い気分だったら逃がしてやることもある。 だが…テメェらが役に立たねえなら話は別だ。雑魚守ってやって見返りのねえ契約結ぶ馬鹿になるつもりはねえからな」 「…そうか、あなたは」 ジョルノが身構える。シグレがいなくなった今、ジョルノの戦力はマギルゥとゴールド・エクスペリエンスしか存在しない。 ジョルノはマギルゥと出会ってすぐここに訪れたため、支給品とやらを確認できていないのだ。 「『力を示せ』。垣根提督…学園都市第二位の俺に一発でも入れて見せたら、手を組んでやらねえこともねえ」 六枚の翼が大きく展開する。 あれもスタンドなのか。どういう能力なのか。様々な思考が脳を疾るが───ジョルノが口に出したのは、逃避の一言だった。 「隠れてください。アレは…『何か』ヤバイッ! このままではやられる『何か』があるッ!」 「何かとはなんじゃ何かとは! アバウトな言葉で意味が通じるのは仲間内だけじゃと…っとぉ!?」 ジョルノとマギルゥが一番近い墓石へそれぞれ身を隠す。 ジョルノは密かに、息を飲んだ。 「どうした。隠れてるだけなら墓石ごとテメェの墓にすんぞ」 垣根の言葉が響く。ジョルノはどうするか頭を巡らせながら、ふと、己の右手を見る。 焼けている。奇妙に、ジリジリと、焼けている。 「これは…これはッ! 『焼けている』ッ!? 太陽の光も火もない場所で、火傷のように! これがあの『翼のスタンド』の能力なのか!?」 「おお、気づいたか。なら教えてやる。 この世界は全て素粒子で構成されている───だが俺の『未元物質』にその常識は通用しねえ。この世に存在するはずだとか、そういう常識に囚われねえモンだ。 未だ世界に存在しない新しい物質。それが俺の『未元物質』だ」 ダークマター。名前だけはジョルノにも聞き覚えがあった。昔、本で読んだことがあった。フリッツ・ツビッキーという天文学者が『質量や重力を及ぼす目に見えない物質がある』という推測を立てた話を。 研究は広がり、数十年の時を経て『質量のみを持つ道の物質』を『暗黒物質』…ダークマターと呼称するようになったことを。 しかし、このダークマターは違う。最初から『存在しない』物質なのだ。 つまり『存在しない物質』ということは。 (まずい! これはまずいぞッ! 『存在しない物質』ということは『この世の物理法則に当て嵌まらない』ということッ! ゴールド・エクスペリエンスの反射能力も正常に作動するか分からない!) 「で。どうしてわざわざ俺がテメェらに教えてやったかというと…テメェらの出方を見るためだ。 さっきの戦いを見てただろうにさっさと手ェ出して来ねえってことは…手の打ちようがねえってことだ。 ヤル気がねえのは構わねえけどな。殺すぞコラ」 烈風。一対の翼がはためくと同時に巻き起こる風。 ジョルノは先ほどの戦いを見ていた。故に、その威力を認識している。 人体を跡形も残さず消し去りかねないその威力。その、化物じみた火力を。 「『ゴールド・エクスペリエンス』ッ!」 叫ぶはその名。現れるは黄金体験。 テントウムシのような、はたまた翼を彷彿とさせるような金の人間。スタンド。幽波紋とも呼ばれるその存在は力強く地面を叩く。 先ほど既に烈風の威力は確認している。ゴールド・エクスペリエンスのパワーでは防御できない。 「産まれろ…新たなる生命よ…!」 「のわあ!?」 ゴールド・エクスペリエンスが地面を叩くと同時に、地面から樹木が生える。太く立派な樹木。 幸いなことに、この場は墓場。足元は土であり、樹木が成長する為の資源は豊富にある。 樹木は恐るべきスピードで成長し───マギルゥとジョルノの体を大きく左右へと跳ね飛ばした。 烈風はジョルノたちには当たらず。樹木へと直撃し。 ビシリ、と『未元物質』の翼に衝撃が奔った。 「…あ? 『反射』?」 (…あの翼のスタンドにダメージが帰っても本体に影響がない…やはり、まさかッ!) 『反射』された攻撃に何か思うところがあったのか、垣根の動きが止まった瞬間に、ジョルノは伸びる樹木で移動しながら観察する。 シグレ・ランゲツに斬られた翼も再構築されるだけで、垣根提督がダメージを受けた様子はなかった。 そして今。己の攻撃のダメージを返された瞬間も、驚きこそすれど痛みは感じてないように見える。 ならば。 「マギルゥ! あの翼の月光はまずいッ! 『パターンB』ですッ!」 「乙女使いの荒いやつじゃのう、本当に! …いや、大魔法使い使いか?」 「…? 何をするのか知らねえが…大道芸がしてえなら他所でやれ」 ゴールド・エクスペリエンスが再び地面を叩く。生まれるのは二匹の毒蛇。 鎌首を擡げ、垣根へと飛び掛かっていく。 (おそらく! あの『翼』が物理法則を変えているか、物理法則に関係しない能力を持っている。 その力で『陽の光すらない場所で火傷のようなダメージを与える』効果を持っているのなら…!) そして。垣根自身も、ジョルノの能力を解明し始めていた。 (…おそらく。あの金の人形で作ったモノが攻撃を反射する。植物か生物の姿を模しているのかそれらを呼んでるのかは知らねえが…『アレに攻撃すると反射される』。本体に反射する能力があるのなら、ムカつく第一位みたいに本体を曝け出しゃあいい。 パターンBだろうとAだろうと、何考えてようが『未元物質』には叩き潰せるだけのスピードと力がある) 垣根の翼が振り上げられる。垣根は学習したのだろう。ジョルノが作り出したモノに攻撃すると、何らかの力で『反射』されると。 だからこそ、垣根は空へと飛んだ。小賢しい作戦など無駄だと、回避を選んだ。 ジョルノは知る由もないが───『誰よりも反射の脅威を知っている学園都市第二位』の垣根だからこそ、上空への回避を選んだのだ。 上空十メートル。垣根は高く飛んだ。コツンと足で地面を叩き、翼で巻き起こした烈風で身体を浮かばせる。実際には、跳ねた、が正しいか。 反射の能力持ちに、無闇に攻撃をするべきではない。まずは観察をすべきだ、と。 故に。本来学園都市第二位の能力者に生まれるはずのない隙が、生まれた。 「───『足元危ういのか?』」 問いかけのようで、命じるような。その言葉の発信源に、垣根は視線を向けた。自分を上回るレベル5、学園都市第一位を思わせる反射を視認してしまったことで、垣根のジョルノとマギルゥに対する警戒レベルは無意識に引き上げられていた。 くるくると指先の上で回る、折り紙で作られた鶴。それが何を意味するのか、科学の範囲外であるオカルトを知らぬ垣根は理解できない。 「フラッドウォール!」 現われたのは水壁。十メートル下から、間欠泉のように壁となって対象の動きを制限する。 ただ、狙われた場所は一つ。垣根の真下から、噴き上がるように。 「チィッ!」 『未元物質』の翼を四枚を防御に使い。二枚の推進力で移動する。 (兎に角距離を取る。そうすれば奴等に有効打は無い。学園都市第二位をナメんじゃねえぞ) 兎に角距離を取る。水の壁は未だに視界を遮っている。 問題はジョルノ・ジョバァーナ。あの男が作戦の、攻撃の鍵だろうと垣根は考える。水壁を翼で斬り裂き、風に『未元物質』でベクトルを与えマギルゥを狙う。 「飛び出せ三分身っ!」 霊脈動。地面から飛び出す三体の折り鶴が、烈風を防ぐ。が、その程度で第二位の攻撃は止まらない。 盾ごと粉砕し、土埃が舞う。死んではいないだろうが、それでいいと垣根は笑う。邪魔者さえ手を出さなければ、ジョルノの対処は楽になる。 能力で現れたものではなく、本体を狙えばいい。そうすれば反射も意味を成さない。 反射を持つ男だからこそ。垣根はジョルノ・ジョバァーナを一番に警戒する。 そう。 『反射のみを警戒した』からこそ、垣根は学園都市第二位らしからぬミスを起こすこととなった。 「そうだ…『そこ』がいい。『そこ』に来てくれるのを待っていたんだ…そのために『パターンB』なんて意味ありげなウソを吐いたんだからな」 言葉は、垣根の背後から。呟くように、囁くように。ジョルノ・ジョバァーナの声がする。 垣根は見落としていた。反射に意識を割き過ぎた。見えない第一位の影が、反射という第一位を思わせる能力が垣根の警戒心の殆どを持って行った。 ジョルノ・ジョバァーナに飛行能力はない。回避に樹木を使ったことから、それも把握していた。把握していた、はずなのに。 上空十メートル。垣根は、ジョルノ・ジョバァーナに背後を取られている。 ジョルノの足元には樹木。成長を続けた樹木が伸び続け、垣根と同じ高さになるまで、ジョルノの足場となるほどに育っている。 「テメェ、何し」 「───『何れ皆して一緒くたになるじゃろ?』」 そして。垣根の鼓膜を叩くのは。 特徴的な言葉と共に、垣根の真下で口角を上げて笑みを作る、マギルゥの姿。 その指先には当然、折り鶴が廻っている。現在こそ災禍の顕主の仲間とはいえ、欠番の特等対魔師に選ばれるほどの実力者である。シグレと同じ階級の人間が、牽制程度の攻撃で遅れを取るなど有り得まい。 道化師のような姿から、その経歴を予測しろという方が無理な話だが。 オカルトは専門外。 もし、垣根にツンツン頭の少年のように魔術に詳しい少女が隣にいた経験があれば。 もし、垣根に第一位のように魔術師と交戦した経験があれば。 折り鶴に何かの意味を見出せたのかもしれないが───垣根には、それが折り鶴以上のモノには見えなかった。 故に。理解不能な攻撃を前に防御の体制を取らざるを得なかったのだ。 垣根は、この時。防御ではなく、回避を選ぶべきだった。 「ディヒューズマイン!」 それは、地雷であった。 自ら動くことのない、漆黒の球体。それを設置したあと、とてとてとマギルゥは逃げる。 そして。その地雷が、破裂した。 「ッ!?」 超重力。引力。ダメージを目的としたものではなく、動きを封じ離れた敵の場所を一纏めにするもの。 破裂したそれの威力自体は弱い。垣根が翼を展開すれば、風と共に吹き飛ぶ程度の罠に過ぎない。一秒ほど足止めできるか否か、その程度だった。垣根を倒すには、更に高位の術が必要になる。 しかし。ほんの一秒。ほんの一秒だけ足止めするには、充分な術だった。 「『ゴールド・エクスペリエンス』ッ!」 現れるは黄金体験。金の姿が、ジョルノの声と共に浮かび上がる。 垣根は未だ重力に足止めをされ回避は出来ず。これまた、防御の体勢を取るしか手はない。 「無駄ァッ!」 ズドン、と。『未元物質』に、『黄金体験』の拳が直撃する。 だが、それだけ。それだけ、だった。 既に重力の拘束は、切れている。 「認めるよ。テメェらの小賢しい作戦は充分理解した。手品染みたやり方も理解した。 惜しかったのも認めてやる。お前らが使える人間だってのも理解した」 『黄金体験』のパワーでは『未元物質』を貫けない。 『黄金体験』のスピードでは『未元物質』を超えられない。 翼の羽を散らして威力を分散させる必要すらない。 「───で? これで終わりか?」 樹木に支えられ、黄金体験を携えたジョルノと翼を携えた垣根が向かい合う。 文字通りの、詰み。 マギルゥがスペルアブゾーバーを使用し、本気を出せば事態を好転させること可能性もある。 ジョルノがその頭脳を最大限に働かせれば、この窮地を脱する方法も見つかるかもしれない。 だが、それもたらればの話。 今。現在。垣根を倒す方法は、ない。 「…ええ。これで、終わりです」 ジョルノが呟く。 そう、垣根を倒す方法は、ないのだ。 今現在。垣根を倒す方法は、『必要ない』。 ジョルノに必要なのは、この死地を、荒野を切り開き生き抜くことなのだから。 「あなたが説明してくれて助かった。ぼくたちを格下と侮ってくれたから助かった。同等の敵と見られていたら、ぼくたちは初撃でやられていたかもしれない。 侮ってくれたから、ぼくたちはこうして生きている」 「…何?」 「『未元物質』はこの世に存在しない『物質』だと。あなたが教えてくれた。それを知らなければ、この力は成功しなかった。 『物質』なら───命のない『物質』ならッ!」 パチン、とジョルノが指を鳴らす。 それは。生命が産まれる、合図。 「『ゴールド・エクスペリエンス』は今! 発現する!」 ずぞ、と音がした。 垣根自体、信じられないことだった。完全なる意識の外だった。 誰だって予想なんてできない。予想をしろというのが無理な話。 ずぞ、と音がした。 …まさか。まさか。 拳を防いだ、翼の一つ。拳ほどの羽が、蠢いている。 誰が信じられようか。 …まさか、『自分の能力で生み出したものから、新たな生命が産まれようとしている』などと。 生命エネルギーを与えられた『未元物質』の羽は、拳ほどの大きさから変化する。 高らかなに角を掲げる、自重の二十倍のものすら引いてみせるという力を象徴する虫。 立派な兜を被ったような、虫の王。 「ご存知、虫の王! 『カブトムシ』にだ…」 『未元物質』の特徴を残した、拳ほどの白いカブトムシ。 ガードできる範囲内。防ぐための翼から生まれたカブトムシは。 垣根が視認するより前に。白いカブトムシは垣根のこめかみへ、虫を超えた力で、その角を叩きつけた。 「理解した。そしてムカついた…が、約束は約束だ。 どうせ俺もこの場には同じ組織の者もいねえ。脱出して、ここの元締めを捕えて元の場所に帰るまでは協力してやるよ」 「助かります。あなたが最初から本気だったら…ぼくたちも危なかった」 「世辞はいい。テメェの頭脳も能力も使えることはわかった」 「こぉーんなかわいい女子(おなご)をも使うとは非道じゃて。もしかして人の血とか通ってない系の男か?」 「…コイツは何なんだ」 「さあ…大魔法使いとか何とか」 「薬でもヤッてんじゃねえのか」 「ちょおーっと待ったぁ! それが戦いの鍵、または縁の下の力持ち、今回大活躍のこの大魔法使いマギルゥに対する言葉か!?」 「縁の下の力持ちが大活躍したら意味ねえだろ」 「ですね」 「くぅ…! 何とも口の減らぬ男どもよ…! この恨み晴らさでおくべきかぁ! いつか助けてくださいマギルゥ姐さんと傅く日が来るぞ、このクルクル頭と白カブトムシ!」 結果。垣根は、約束を守ることとなった。 この殺し合いを脱出し、元の場所へ帰るまでの同盟。組織。 情報を共有し、戦力を共有する仲。 垣根にとってはシグレ戦と唐突に現れた者へのムカつきを晴らす為の暴力だったが、結局は垣根の思う方角へ進んだ。 ジョルノから聞いたスタンド。そしてマギルゥから聞いた聖隷術。どれも学園都市とは異なるものだ。 しかし、ジョルノもマギルゥも学園都市の名前すら聞いたことがないという。それどころか、マギルゥに至っては文明レベルがファンタジー時空だ。 学園都市なら記憶を弄って学園都市製の能力者ではないように見せかけることも可能だろうが、学園都市側にメリットがない。 (違う世界から呼び寄せられた…んな訳ないか。似合わねぇな、メルヘンが過ぎる) コンコンと己の頭を叩く垣根。しかし、本当に別世界の者だとすれば───学園都市を、統括理事を、アレイスターを欺ける素材が転がっている可能性は大いにある。 さて、どうするべきか、と垣根は思う。 そして、一つの結論を下す。 この調子で学園都市外の能力の情報を集める。 そうすれば、窓のないビルやアレイスターへの直接交渉権など関係ない。向こうから交渉せざるを得ない状況を作ることができる。 まず、そのためには。 「同盟を、組織を組むなら名前が必要だ。その方がわかりやすい上に全体の行動もスムーズになる」 「賛成ですね。個々の情報共有と連携が取りやすくなるのはいいことだ」 「ならぁ、マギルゥ一座とかどう」 「却下」 「まだ最後まで言ってないわ!」 「俺たちは…そうだな。『スクール』と名乗る」 垣根の提案に賛成と、ジョルノが手を上げる。 マギルゥはいつまでも不服そうにしていたが、とりあえず無視しておいた。味方においてはそれなりにフレンドリーな垣根であった。 その端で、ジョルノが思案する。 ジョルノがこの場所に呼ばれる前は、コロッセオに向かう途中だった。 ボスの手掛かりがあると。アバッキオの残した最後の真実へと向かう道が照らしてくれた、新たなボスへの手掛かり。 その途中。ミスタと共にカビを扱うスタンド使いを始末した後に、この場に呼ばれたのだ。 ジョルノの第一目標としては、一刻も早くローマへと戻らねばならない。 そして。この異能の力が集まる場所ならば───ブチャラティの身体も元に戻せるかもしれない。 (どうにかして、この二つを完遂する。どっちもやってみせる。 そのためには…『仲間』が必要だ。更に、多くの) 深く決心する心に、黄金の光が芽生える。 前に進む意思を。託された願いを。 ジョルノは、前に進めなければならないのだから。 そして。ふと、垣根が口を開く。 「…一つ気になったんだが。おまえのその折り紙でどうやったらアレが出るんだ」 「ん〜、教えてやってもいいが、利子は高くつくぞ?」 「あーわかった、テメェの探し物を手伝ってやるよ」 「ご利用は計画的にの〜☆」 マギルゥは己のデイパックを手に取り、ガサゴソと中身を漁る。 「ん〜、本当は契約なぞ結ぶつもりはなかったが、いつの間にか結ばされておってのう。しかし儂の意思で切り離し自由の…仮契約ってやつじゃ…くっ…ぐう! やはりデイパックに入れておくのは無理があったか…!」 デイパックに詰まった何かを相手に四苦八苦しているマギルゥを見ながら、不審者を見る目で眺めている垣根とジョルノ。 そうして。すぽんっ、と軽い音と共に、何かがデイパックの中から現れる。 ───銀色の髪をした、齢十一になるかならないかほどの、男児が。 脇に手を通して掲げられる状態で、現れた。 「おー、出てきた出てきた。名は…シルバ、じゃったかのう。自我を解放してやってはおるんじゃが、イマイチ反応が薄くてのう…攻撃もできんようにされておるらしい。 あ、儂の聖隷術はこの式神を使ってじゃな、いやどうも儂本来の式神じゃないからか普段通りとはいかんがそれなりに使え───って何じゃ。その不審者を見る目は」 垣根の同行者に、ショタコンが増えた可能性が高い。 垣根は別の意味で、深く頭を抱えた。 「あ〜あ、災禍の顕主の仲間と取引したとあっちゃあメルキオルになんて言われるかねえ」 とりあえず北へ。当てもなく歩き出すシグレ。 特に意味もなく。大した手掛かりもないのだから、適当になるのは必然と言えた。 「ま、いいか。どうせここから抜け出さねえことには何にも始まらねえし…適当に進んでりゃ何とかなるだろ」 七天七刀を背負いながら、男は歩く。 誰よりも強く、誰よりも剣に生きた、善悪すら超越した剣の男。 さながら抜き身の剣の如き、その男。 次なる強者と己の剣。そしてついでに猫も探しながら。 人間でありながら易々と異能を超える男が、歩いていく。 「見たこともねえ剣に見たこともねえ力。…これで心水でもありゃ完璧なんだがなあ」 …ついでに酒も、探しながら。 【D-5/墓地(北)/深夜/一日目】 [備考] 墓地の墓石が戦いの余波で砕かれ、地面が抉れています。 全壊はしていませんが、どの程度かは任せます。 【シグレ・ランゲツ@テイルズ オブ ベルセリア】 [状態]:健康 [服装]:普段着 [装備]:七天七刀@とある魔術の禁書目録 [道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2 [思考] 基本方針: 帰る。號嵐・真打を探す。 0:敵なら斬る。強い剣士なら更に良い。敵意がないなら斬らない。 1:災禍の顕主一行(ベルベット、ライフィセット、ロクロウ、マギルゥ、エレノア)とブチャラティは襲わず先にマギルゥとの契約を話す。ただしそれでも襲ってきた場合は別。 3:ついでに心水(酒)もほしい。 [備考] キララウス火山での決戦前からの参戦です。 とりあえず南に進む。 それが、垣根たち『スクール』の出した答えだった。 最初はノルミン島へと進むつもりだったが、マギルゥの探し人───ビエンフーが名簿に無いことから、おそらくシルバのように支給品として配られているかそもそもこの場にいない可能性のどちらかだと結論を出し。 そうなるとジョルノの仲間が集まる可能性の高いコロッセオに向かい、その後コロッセオに近いバンエルティア号に向かう、という道筋が決まった。 マギルゥの仲間が集まる可能性の高いバンエルティア号へ行くにはコロッセオを経由するルートも悪くはない。そういう判断だった。 多く人が集まれば、それだけの異能が集まる。それらをモノにすれば、アレイスターのメインプランすら揺れ動かし、第一位から鞍替えさせることも可能であると垣根は踏んだ。 そうすれば、ピンセットなぞゴミ同然だ。必要ですらない。 「何を考えておるかは知らんが。相手を見返したところで、見放した者たちがこちらの評価を改めるなぞ、無いに等しいぞ」 「…何が言いたい?」 「いんやぁ、経験者としてのお節介じゃよ。人間は所詮、花瓶で咲く花じゃ。 興味が無くなれば水すら貰えず枯れるか、容赦なく切り落とされるかじゃ。見返したところで向こうが再び此方を見ることはない」 マギルゥはこんこんと語る。垣根の過去や事情についてなど、マギルゥは知るはずもない。 故に垣根も興味なさげに、意味もわからない言葉を、しかし何故か心に残るような。そんな言葉を、聞いていた。 「地を這う虫とて、いつかは羽で飛びたい場所へ飛んでいく。日陰で咲いた花も、風に種を乗せて更に遠くで咲き誇る。 儂らは造花じゃない。生きられる内に、生きたいところで生きるだけじゃよ。」 マギルゥは適当に垣根に喋ると、てってこてってこと先を歩き出す。 相変わらず、シルバと名のついた子供はデイパックの中だが。 意味がわからないと捨て去るのも一つの手だが。 どうも、垣根の心の何処かに、その言葉が居座っていた。 一人で、ぽつりと言葉を零す。 マギルゥは空を見る。星は見えず。空は暗い。 「…ほんと。感情は厄介じゃのう。見る必要も背負う必要もないものまで見せつけて主張してきおる。 あ奴らの自分勝手なお節介が移ってしもうたわ」 マギルゥは空を見る。折り鶴をふわり、と飛ばせて見せた。 「のう、お師さん。生き方を選ぶだけでもここまで苦労する…人間は本当に、難儀な存在じゃよ」 『己の大切な人を殺させる』。 かつて自分が与えられた、師に見捨てられる原因となった地獄の試練と現状に、何か思いを馳せながら。 純粋な暴力を持つ垣根に、自らに似た何かを思いながら。 心の壊れた大魔法使い。復讐すら敵わなくなった半壊の心で、今日も彼女は世界を語る。 【D-5/墓地(南)/深夜/一日目】 [備考] 互いの世界観情報を共有しました。 能力をどこまで明かしているかは後続にお任せします。 【垣根帝督@とある魔術の禁書目録】 [状態]:健康。こめかみに浅い傷。 [服装]:普段着 [装備]:なし [道具]:基本支給品、ランダム支給品0~3 [思考] 基本方針: 主催を潰して帰る。アレイスターのプランを変えるぐらいの異能が集まるこの場所なら…? 0:異能を知るために同行者を集める。強者ならなお良い。 1:災禍の顕主一行(ベルベット、ライフィセット、ロクロウ、マギルゥ、エレノア)とブチャラティを探す。ビエンフーとやらも。 [備考] VS一方通行の前、一方通行を標的に決めたときより参戦です。 三人でスクールを結成しました。 【ジョルノ・ジョバァーナ@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風】 [状態]:健康、疲労(極小) [服装]:普段着 [装備]:なし [道具]:基本支給品、ランダム支給品0~3 [思考] 基本方針: 一刻も早く帰る。ブチャラティを治す方法がここなら…? 0:仲間を集める。殺し合いに乗っていないものはよく観察し考える。襲われたのなら問答無用。 1:災禍の顕主一行(ベルベット、ライフィセット、ロクロウ、マギルゥ、エレノア)とブチャラティを探す。ビエンフー、という者も。 2:號嵐・真打を探す。 [備考] アバッキオの情報で手に入れた手掛かりからコロッセオに向かう途中の参戦です。チョコラータ戦を経験しているかいないかは任せます。 【マギルゥ@テイルズ オブ ベルセリア】 [状態]:健康、疲労(極小) [服装]:普段着 [装備]:シルバ@テイルズ オブ ベルセリア、土御門の式神(数個。詳しい数は不明)@とある魔術の禁書目録 [道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1 [思考] 基本方針: 帰る。ビエンフーや仲間を探す 0:災禍の顕主一行(ベルベット、ライフィセット、ロクロウ、マギルゥ、エレノア)とブチャラティとビエンフーを探す。 1:號嵐・真打を探す。 [備考] キララウス火山での決戦前からの参戦です。 シルバと契約を結ばされているが、マギルゥの意思で解除可能です。 シルバは意思持ち支給品枠ですが、自我が薄く自分からの攻撃などができません。これが制限によるものなのか、自我が薄くされているのかは不明です。マギルゥの中にしまうこともできますが、基本デイパックの中に潜んでいます。 前話 次話 インフィニア 投下順 博麗霊夢は巫女である 前話 キャラクター 次話 GAME START ジョルノ・ジョバァーナ 病院へ行こう GAME START マギルゥ 病院へ行こう GAME START 垣根帝督 病院へ行こう GAME START シグレ・ランゲツ Strange Interlude
https://w.atwiki.jp/jewelry_maiden/pages/928.html
こうも暑いと、水分補給をこまめにしないといけない。むしろしたくなる。 僕も、今日6回目の水分補給だ。 さっきまでは麦茶だったので、今度は好物のマンゴージュースを飲むことにする。 いつもよりちょっと大きめのコップに氷を入れて、さらにそこへマンゴージュースを。 音を立ててひびが入る氷。しばらくしたら、コップの表面に水滴が付く。実に涼しげな光景だと思う。 さてと……後は部屋に持って行って本でも読みながらのんびりしようかな。 コップを持ち、台所を出る。そのまま居間を抜けて自分の部屋へ…… 「うわっ!」 足下に、何かが引っかかる。本のような感触だ。 これでバランスを崩した僕は、重力に逆らうことも出来ずに床へ倒れる。 手に持っていたコップも例外じゃない。僕の手を離れ、重力に従って下へ下へ……。 「あ……」 その下は床ではなかった。 長い黒髪と特徴的な狐耳。そして綺麗な着物が、見事にマンゴージュースと氷で濡れている。 ……殺生石の体から、ほのかなマンゴーの香り。 「本当にごめん!」 わざとじゃないとしても、謝るしかない。 何せ、ちょっとしたことなら謝ればすぐ許してくれる殺生石が、先ほどからずっと僕を睨んでいる。着替えもせずに。 「足下不注意、ですね」 そして一言、痛い言葉を投げかけてくる。 いや、それで終わるとは思えない。ここからが厳しいんだろうなぁ。 「お気に入りの召し物でしたのに」 「せ、洗濯するから……」 「先ほど水浴びをしてきたばかりでしたのに」 「お風呂、洗ってくるから……」 「髪と尻尾がべたつきますね」 「手入れ……手伝うから」 「床も汚れてます」 「後で拭いておくよ……」 なんかすごく惨めだ……殺生石の視線も痛い。 「まさかだんな様に汚されるとは、思ってもいませんでした……」 「え、何その悲しそうな言い方はっ。というかニュアンス変だよ!?」 怒りの表情から一転、目を潤ませてこちらを避けるような態度の殺生石。 これでは僕が別の意味で汚したようにしか見えない。二人だけだからまぁいいけど……。 「あんな強引に……だんな様を信じていましたのに……」 「不可抗力だよぉ……」 「これからわたくし、どうしたら……しくしく」 えー、何んだろう、この空気。 というか、僕はどうすれば許してもらえるんだろうか。なんだかこのままだと責任を取れとか言われそうで。 「わたくしをこんなにしてしまった責任、もちろん取ってくれますよね?」 思った通りの事が……。 「え、えぇと……洗濯とか?」 「何を言っているんですか、もちろん責任を取ると言えば」 と、その言葉を遮るように居間のドアが開けられる。 「ただいまご主人様ー……あれぇ? 何ですかこの匂い。マンゴー?」 居間に入ってくるや、あちこちの匂いを嗅ぐ蛋白石。 やがて殺生石の尻尾に鼻を近づける……あ、くしゃみした。 「んぅ……マンゴーの香水?」 「違います。主様に汚されてしまったのです」 いや、その誤解される言い方はちょっと……。 「えーっ! ごご、ご、ご主人様ぁ! よご、汚され……えぇーっ!!」 「いやいやいやっ、何考えてるのさ! 汚されたっていうのは僕が転んで」 「こ、転んだ振りして押し倒したんですかっ!?」 「違うよっ!!」 大体いつも夜這いとかしているのは……いや、別に嫌じゃないから……いやいやいや! この状況で僕は何をっ。 それよりも蛋白石の誤解を解かないと。このままでは僕がナントカ罪とかで逮捕されてしまう。 というか、どうして僕がこんな弁明を……。 「殺生石、あんなにご主人様のこと大好きだったのに……乱暴するなんて酷いですよーっ」 「だからそんなことしないよぉーっ」 誤解を解くのは、相当骨が折れそうだ……はぁ。 「たまには意地悪も、悪くないですね」 何かを小声でつぶやいた殺生石。 その顔はやたらといい笑顔で、困っている僕を見るのが楽しそうで。 「責任を取ってくれなければ、妾も考えがありますからね」 トドメといわんばかりの一言を告げ、泣き真似をしながら風呂場へ向かう殺生石。 ……あぁ、無事にこの状況沈静化出来るかな。 「せ、責任……ご主人様、ちゃんと養ってあげないと駄目ですからね!」 「いやだからそうじゃなくて……あぁーっ、殺生石! 反省してるからナントカしてよぉ!!」
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/5399.html
autolink P4/SE12-02 カード名:“切り札”となる力 悠 カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:1 コスト:0 トリガー:0 パワー:5000 ソウル:1 特徴:《メガネ》?・《魔法》? 【永】あなたのターン中、あなたのストックが4枚以下なら、このカードのパワーを+2000。 【永】舞台にこのカードがいるなら、このカードのカード名は「“切り札”となる力 主人公」としても扱う。 ノーマル:マーガレット「それは、正しく心を育めば、 どんな試練とも戦い得る“切り札”となる力」 パラレル:マーガレット「数字のゼロのように、 無限の可能性を秘めています……」 レアリティ:R illust. 12/03/06 今日のカード。 各種「悠」同様に、舞台にいる限り「主人公」シナジーを受けられる。 パンプについては自ターンのみとはいえ+2000と大幅に上昇し、1/0/7000と使い勝手のいいアタッカーになれる。 Lv1段階ではストックが4枚以下の条件を満たすことは難しくなく、コストをかけずパワーを出すのには適している。 残念ながら相手ターンはパンプされないが、それを逆手にとり、このカードがアタックする時にだけストック4枚以下になるようにプレイすることもできる。 (例:アタックフェイズ開始時のストックが3の場合、このカードのアタックを最初にして、その後他のキャラでアタックする) こういったプレイは相手ターンもパンプが続く面倒見のいいムードメーカー 陽介や悠&イザナギでは積極的には行いづらい。 このカードこその芸当と言えるだろう。 パラレル版はイラスト・フレーバー共に別。
https://w.atwiki.jp/sailorsousaku/pages/98.html
熱に浮かされて その人は不思議な人だった。深みの青の制服に半端丈のパンツ。背が高く、運動神経抜群で、チーム競技で同じチームになった暁には勝利が約束されている。 その時だけは、輝かしいまでに顔が生き生きとするのに、普段はいつも眠そうで、目は死にかけで、しかも勉強もろくにできない。 事情はよく知らないが二度目の一年生を送っているというのに、焦りも何も見えなかった。いっそ悠々自適に過ごしている。 「彩霞」 相手の名を呼び、身体を揺り動かす。この高校の下校時刻は季節によって変わるが、冬は午後六時だ。それ以降に残りたい場合は担任の先生もしくは部活動であれば生徒会を通じて先生方への申請が必要となる。 会長となった人に憧れて、生徒会役員になった間宮紫歩の仕事として、決められた曜日に見回りをして早く帰れと催促する仕事がある。それを通じて顔見知りは増え、学年問わず顔の広い存在になれた。 そして、どれだけ揺り動かしても起きる気配のない目の前ののっぽとも。 「葉梨彩霞、起きて。じゃないと……何したら嫌がるかしら、この鉄仮面。そうね、キスするわよ」 カーディガンを上から羽織っても寒い時期である。いつから寝ているかは知らないが、このままでは風邪を引くだけだ。 これが、居眠り常習犯かつ彩霞のクラスメートである雑賀瑞生なら足蹴にしても何とかなるだけの親しさがある。だが、彩霞とは瑞生伝いに知り合いなだけだ。ついでに城村優雨花という紫歩のクラスメートで、かつ、紫歩よりもえらく顔の広い少女繋がりもあって、たびたび昼ご飯を共にしているが、勉強ができないことしか知らない。できないのか、やらないのかは定かではないが、頭を使うことは嫌いと宣言している瑞生と並ぶ赤点祭り女である。 「本当に起きないのね」 朝早くに起きて新聞配達のバイトをしているらしいのは聞いていた。親との縁は薄いが金銭面で一度も困ったことのない紫歩からすれば、苦労しているのだろうなと心の中で同情する。 瑞生なら起こし方を知っているかもしれないが、あいにく彼女は今日、所属している美術部の部長、桑城素子と都会の美術館に足を運んでいる。優雨花とて演劇部の活動中か、帰宅しているかだろう。 「あーもう、面倒臭いわね」 紫歩は生来、好奇心旺盛である。何事にも、体力のなさゆえに倒れようがお構いなしに首を突っ込み、周りを巻き込んで、自分のやりたいことをやる。その強引さから冷たい目で見られたり、指を指されたり、ろくでもない噂を流されることもあるが、つまらないことは楽しくないのだ。仕方ない。付いてこれないというのなら、関わり合いにならなくていい。 鼻っ柱の強さで、入学からここまで、おかげさまで楽しいことだらけで過ごしてきた。 気の迷い、だった。 顔を覆う彩霞の黒艶のある髪の毛を払い、その白い頬にキスをする。 ほんの一瞬。 そばの校舎はすべての窓が真っ暗で、人の気配はなくて。手分けして点検している甲埜美南はまだもう一つ向こうの、部室だらけの棟にいるだろうと予測して。 ぬっと背後から伸びてきた、がっしりとした手に頭を掴まれる。キスをしたまま、逃げられない。目をパチパチとさせ、その手を払いのけようとするが、力の差は歴然だった。あれだけ体育ができるということは相応の筋力があってのことだ。柔軟性だけが取り柄の、一時は拒食に陥り今もまだ体重が戻りきっていない紫歩の腕力なぞ、たかが知れている。 少しの間をおいて、拘束が解かれる。立ち上がって、後ずさる。彩霞はなんの表情の変化もないままに、目を開けて、そして、立ち上がった。 「……何のつもりよ、あんた」 「それは私が訊きたい」 「たまたま、なんとなく」 「理由になってないじゃないか。私のことが好きなのか?」 淡々と告げられ、紫歩は頬が熱くなる。誰にもしたことがなかった、頬に口づけなんて。興味本位とはいえ、何てことをしてしまったのだろうか。胸がばくばく鳴り出したのが嫌でも伝わってくる。 彩霞の目が、だいぶ頭上から紫歩を射抜く。単に気になるだけなのだろう。紫歩だって逆なら問いただす。まず野外で居眠りなんてしないものの。 「わからないわ。理由なんてないのよ」 「紫歩らしくない答えだな。いつもはあれだけ、うるさいのに」 「は? 誰がうるさいですって?」 「……口が滑った」 「あーもう、とにかく。ごめんなさい。あと、下校時刻なので帰ってください」 「嫌だ」 「え?」 「私は、今までさっきみたいなことはされたことがない。瑞生にもシロにも、誰にも。だから、理由が知りたい。紫歩にだってわからないみたいだけど、あるはずだから」 「なんであんたいきなり頭が回りだすのよ」 「よく寝たから、かな」 紫歩は、たまらず舌打ちしそうになる。理由を問いただされるのは幼少期から苦手だった。親の、どうして? に答えられなかった。理由なんてない。相手を納得させられないなら、何にも言わずに、ただ相手の興味が潰えるのを待ったほうが早い。やがて親は、紫歩に何を訊いても無駄だと諦めるようになった。 紫歩も最低限しか親に話さないようになり、親子の亀裂は走って深まってゆくばかりだった。 「君はよく表情がころころ変わるんだね。前から知ってたけど。隠してるつもりで、隠せてないよ、それ。そこが紫歩の魅力なんだろうけどさ。私が、もういい、って言うと思ってる?」 「そういうわけじゃ」 「じゃあ、誰にでもさっきのことするの? 瑞生にも? シロにも?」 「しないわよ!」 「ふぅん。じゃあ、そういうことで」 「は?」 彩霞は一歩ずつ、その大きなコンパスを活かして、あっという間に紫歩の目の前に立った。ぐっと見上げないと目が合わない。 先ほど紫歩の頭を押さえた腕が伸びてくる。 「何すんのよ……」 「お返し」 軽く、ではあったが抱き着かれた。 もう時間がない。 このままでは美南が合流地点に約束した一階の渡り廊下までやってきてしまう。そこに紫歩がいなければ心配して、こちらに探しにやってくるだろう。 「ほら、生徒会の見回り中だよね? 早く行きなよ」 「言われなくても」 何食わぬ顔でヒラヒラと手を振られた。その顔は見たことがないまでに、にやにやしている。 「何よ、あんたそんな顔できるんじゃない」 「うん」 「最低」 「何が? 寝ている人間のほっぺたにキスしちゃう子が言うの?」 「うるさいうるさい! 早く帰れ!」 言い捨てて、渡り廊下へと向かう。肩をいからせ、顔はまだまだ真っ赤なままで。人の機微に目敏い美南に察されないように、深呼吸を何度もして気分を落ち着かせた。 「あれ? なんか困ったことあった?」 今度は紫歩よりも低い位置で、お団子頭が揺れ、心配げにまあるい柔らかなタレ目が紫歩を見遣る。 「ううん……大丈夫です、美南さん。変な虫に追いかけられただけだから」 「変な虫? それって紫歩がちょっかい出したんじゃないの」 「ち、違うもん……」 美南は穏やかに笑って、じゃあこれで見回り終わりだよね、お疲れ様、紫歩。と声をかけ、私は実花と帰るから、と去っていった。 遠くに消えてゆくお団子頭をぼーっと見つめて、さっきの場所に戻ったら彩霞はまだ居るのか考える。 「おっ!」 「きゃっ……!」 背後から何者かに大声を出され、すわ幽霊かと紫歩は全身飛び跳ねるくらい、びっくりした。固まって動けず、振り返って血塗れの女がいたりでもしたら嫌で、何もできないでいると、声の主がわかった。 「お返し、その2」 「殺してやるから……いい性格してるわね、あんた。死ぬかと思った……」 「君って、猫みたいだな。よく手入れされてるけど野良猫みたいな黒猫」 「どういうこと」 「そのままだよ」 声だけの存在だった彩霞が、紫歩の眼前に再びやってきた。その手には、紫歩が忘れて置いていたカバンが持たれている。 −−瑞生の時と同じじゃない。 中学の時、瑞生の絵に感動して、そして現れた鹿屋佳菜子に驚いて、走って逃げて、瑞生に追いかけさせたのが瑞生との出会いだった。今では無二の親友で、憎まれ口を叩き合う仲である。 「カバン、ありがとう」 「そのまま渡すと思った? 質問に答えてないよ」 「……え」 「さっきのちゅーはどういうこと?」 「しつこいわね」 「あれ、じゃあこのカバン持って帰っちゃうけど。なんかいい香りするね、紫歩も紫歩の持ち物も」 口をあんぐり開けて、彩霞を見つめるしかなかった。相変わらず、意地の悪い笑顔が浮かんでいる。 紫歩の苛立ちは募るばかりだった。相手に主導権を握られるなんて、紫歩のプライドが許さない。今まで散々、テスト前には世話になってきておいて。こんなに弄ばれる筋合いはない。 彩霞の胸元のリボンを引っ張って、ゴムが伸びるだろ、と腰をかがめ、顔が近づいた彩霞の頬を両手で覆って、その唇に紫歩の唇を合わせた。 無理やり割り開いて、逃げる彩霞の舌を捕まえる。息苦しくなってきて、手を離した。 お互い顔が赤くなっている。何事か、と彩霞がしどろもどろになっていた。 「ざまあみろ」 彩霞からカバンを強奪し、その長身の横を走り抜ける。 ひひっ、と笑いながら、校門まで。今日はどの部からも残ると聞いていないので、施錠されてしまうのだ。守衛に頼めば鍵を開けてもらえるが、迷惑である。彩霞がどうなろうが知ったことではないが、紫歩はもう、とっとと誰もいない家に帰りたかった。 無事、夜の闇の中で黒光りする校門を抜け、駅に向かおうと歩き出す。追ってきてないだろう。勝った勝った、とにこにこする。さっきの彩霞なみに悪どい笑顔を浮かべているに違いない。 「紫歩」 揺れるスカートのサイドについたリボンが、引っ張られる。 「……そっか、あんた、運動神経抜群だったわね」 「私のことが好きなのか?」 「好き、なのかも」 振り返った先の彩霞は、唖然としていた。しかも、さっきよりも顔が真っ赤。熱出てない? 大丈夫? と場違いにも訊きたくなるまでに。 「紫歩が、私を……? まじか……」 「どうする?」 「へ」 「なんなら、付き合う? もう、あんなキスまでしちゃったし」 あくまでも軽いノリで訊く。彩霞の反応がとにかく面白いのだ。今日だけでたくさんの顔を知れた。 思ったより人間臭いどころが、あるじゃないか。 「わかった。付き合おう」 「ひひっ、やったやったやった!」 よくわからないテンションのまま、最寄り駅まで手を繋いで帰った。 二人とも家に帰って、思い返して、叫びそうになるのを抑えて枕に顔を押し付けて、眠れない夜を過ごした。 若気の至り、なのだろうか。 答えは、また、日が昇ってから。 二人で、出すしかない。 「ところで、あんたキス慣れてるの?」 「初めてに決まってるさ」 「は?」 「ファーストキスをあげたんだ。責任は取ってもらうよ」 「私だって……」 「……そうなのか。良いものもらった」 「ばか!」
https://w.atwiki.jp/rekidaishikeishu/pages/20.html
刑法 第77条 内乱罪(国の統治機構を破壊、もしくはそれを目的として暴動した者の首謀者) 第81条 外患誘致罪(外国と通じて日本国を武力攻撃させた) 第82条 外患援助罪(外国が日本国に対し武力攻撃したときに、侵略国に軍事上の援助を与えた) 第108条 現住建造物等放火罪(現在人がいる建造物・列車・船・鉱坑を放火して燃やした) 第117条 激発物破裂罪(爆発しうる物を爆発させて建造物・列車・船・鉱坑を壊した) 第119条 現住建造物等浸害罪(現在人がいる建造物・列車・船・鉱坑を水で損なった) 第126条 汽車転覆等致死罪(現在人が乗っている列車・船を転覆や沈没させて破壊し、それによって人が死亡した) 第127条 往来危険による汽車転覆等致死罪(何らかの方法で列車や船の安全な運行を妨げて船車覆没致死の結果を招いた) 第146条 水道毒物等混入致死罪(水道や水源に、身体に悪い物を入れて人を死亡させた) 第199条 殺人罪(殺意を持って人を死亡させた) 第240条 強盗致死罪(強盗が人を死亡させた) 第241条 強盗強姦致死罪(強盗が強姦の際に人を死亡させた) 航空機の強取等の処罰に関する法律 第2条 航空機強取致死罪(何らかの方法で航空機を抵抗不能の状態にして航空機を乗っ取った結果、人を死亡させた) 航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律 第2条 航行中の航空機を墜落させる等の罪(航空機を墜落・転覆等させたり破壊したりして、その結果人を死亡させた) 人質による強要行為等の処罰に関する法律 第4条 人質殺害罪(二人以上が共同して凶器で脅して人を捕らえた者、又は航空機を乗っ取ってその乗員・乗客を人質に取った者が、第三者にやる義務の無いことをやるよう要求した上、人質を死亡させた) 爆発物取締罰則 第1条 爆発物使用(治安を乱したり、人の身体や財産を傷つける目的で爆発物を使ったもしくは人を使ってやらせた) 決闘罪ニ関スル件 第3条 決闘による殺人(決闘で人を殺した) 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律 第3条 組織的殺人罪(団体の意思決定による殺意をもって、組織により殺害がなされた)
https://w.atwiki.jp/bokuserve/pages/2683.html
後漢の光武帝の天下統一を助けた28人の功臣。 永平年間に明帝が前代の功臣たちに感じて洛陽南宮の雲台に二十八将の肖像画を描かせたことから称される。 王常・李通・竇融・卓茂も加えられて三十二将とすることもある。 なお、この序列には皇族が加えられないため、娘が明帝の皇后となっていた馬援は含まれない。 鄧禹 呉漢 賈復 耿弇 寇恂 岑彭 馮異 朱祜 祭遵 景丹 蓋延 銚期 耿純 臧宮 馬武 劉隆 馬成 王梁 陳俊 杜茂 傅俊 堅鐔 王覇 任光 李忠 萬脩 邳彤 劉植