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新宿西口反戦意思表示・第一陣 ユーモラスな若者たちの行動、政治への諧謔を受け入れることなく、表現の自由という基本的な権利を侵してまで、不当逮捕を強行したのは、何故ですか。 そこには、政治的な意図を感じざるを得ません。 法を守るべき立場を捨てゝ、政治権力の走狗と化すことは、警察の自滅的行為です。即刻三人の若者の拘束を解き、陳謝して本来の公僕に立ち返りなさい。
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「外でドンパチ聞こえると思ったら……これは一体どういうこと?」 堂の入り口から、水蜜が顔を出し外を眺める。 朝の平穏な時間が響子の声で破られたかと思ったら、今では昨日人里へ、神社へと向かったドッピオが天狗と相手をしている。 あの人間が幻想郷の中の者だったとしたなら適当に観戦を決め込むつもりだったが、外の人間ではそうはいかない。 「私も成り行きはよくわからないけど……ドッピオが組み伏せられて、怪我してそうなところまでは見た」 同じく、一輪が割烹着を身に着け、箒を持ったまま現れる。だが、片方の手にはいつもの金輪を握って。 「ふーん。どっちにしろ、ここで騒ぐんならとっちめないとね」 水蜜が腰に下げてる柄杓を手に取り、余った左手を大きく前に振るう。振るわれた手には、本来は海で船を繋ぎとめる錨が現れた。 それを事もなげに掲げ、一輪の方に向かい、 「行きましょ、一輪。抜錨ッ」 飛び出そうとした水蜜を遮る一本の鉾。 見れば、外には先に出ていた星の姿。 「この勝負、私に判断を預けてもらえないでしょうか」 後ろに居る二人には顔を見せないまま、凛とした声だけを見せる。 星は生真面目であり、冗談の類は自分から話さない。ふざけているわけではなく、本気なのだろう。 「何言ってんの、あの子はただの子供でしょ!? 天狗相手にふざけたことを言ってられないのはあなたでもわかるでしょ!」 「いいえ」 水蜜が怒声を返すが、それに対しても同じように毅然とした態度で返す。 「……どういうこと? 妙な所はあるなと思うけど基本は小心者よ。とてもじゃないけど、変わった力を持っているとは思えない」 一輪も態度は違えど心持ちは同じなのだろう。臨戦態勢のまま星に問い返す。 「……それについては、今は話せません。もしかしたら、これからも話すことはできないかもしれません。私から言えることはここまでです」 遠回しにしか伝えられない。それが、彼女の付ける偽り。 星は白蓮から聞いている。彼の力を話さないでほしいと。特に、彼ではない姿の事を。 直接それとは関係ないかもしれない。が、星とナズーリンだけが知っている。妖怪の体を十分に傷つけることのできる威力を出せる攻撃力、妖力の篭もったペンデュラムに耐えうる防御力。 その二つを知っているナズーリンは大層彼を不審がり、今も信用していない。姿を見せてないから本当に信用していないかはわからないが、長い付き合いだからそういう思考は大体わかる。 もちろんそういう思考に至るのもわかる。多大な力を隠したがるのは、簡単に言ってしまえば素性を知られたくない者。 無償で命を救いだしてくれた相手にさえも話したがらないのは、それが知られることが致命的だから。……それは、知られることが死に繋がることだから。 それはすなわち悪。自己ではなく社会にて悪と呼ばれるもの。罪として認識され、可能であれば断罪されるほどのもの。 それを貫き通すべきと考えるものなら、逆にそれを高く掲げるであろう。誇示するように。周知に知らしめるように。 ……それをしない彼が今、せざるを得ない状況になっている。 「だからこそ、私は今ここで彼を見極めたいのです。もちろん、どんな結末でも手を出さないというわけではありません。寺に被害が出るようであるなら、私が出ます」 それを言われると、二人は構えを解き、武装を収める。寺の最高権力が出るのならば、自分たちは手出しは無用だろう。 そして、彼女からすれば『お願い』であるが、それは『命令』とほぼ変わらない。 「……もう。周りの評判もあるんだから、早いところ決めちゃってね」 「すみません、村紗、一輪。ご迷惑をかけます」 それでも、自分たちも気になるからか、戻ろうとはしない。入り口では変わらず星が外を見つめ、その陰から二人は窺う形となっていた。 「先ほども言ったけれども」 はたてが口を開き、余裕ぶってしゃべりだす。 「ここでは基本的には弾幕ごっこで事を収めることが多い。だけどあなたはどうやらそれができないように見える」 「……それで?」 「ゆえに、あなたの定めた規律に則ってあげましょう。あまり無茶なことを言うなら問答無用に行くけれど」 「なんだ? ずいぶんな気前じゃあないか。一体どういうつもりだ?」 「あたりまえじゃない。こっちがその気ならあなたの手の届かない空から適当に弾打ち込むだけで終わるのよ? そんなことをしたって、あなたの気が折れることはない。 あくまで同じ土俵に立ち、そのうえで叩き潰す。相手に敗北感を味わわせるにはそれが一番よ。『自分の得意な手ですらあいつには勝てない』そんなあなたの顔を観なければ気は済まないわ」 「……舐めているかと思うが、それは元々こちら側。でもよォー、もうさっきみたいにはならないってこと、すぐにわからせてやるよ」 特に構えはしない。だが今は彼にだけがわかるキングクリムゾンの腕。それは確かにドッピオの右腕に、まるでぶれて見える何かのように発現している。 彼自身はあくまで慎重に、はたてに歩み寄る。だが他からみれば特に策なく間合いを詰めているようにしか見えない。 「はん。特に気に掛ける様子なし、か。……その調子、すぐに砕いてあげるよ」 はたては再び肩を竦め呆れるようなポーズをとる。 そして、ゆっくりと近づいてくるドッピオに向かい、彼女にとって普通の速さで詰め寄る。 距離にして6、7歩あるその距離。 「!! くっ!」 ドッピオの右側から、拳が顔面に向かって飛んでくる。 緩い出だしからの、素早く間合いを詰めた一撃。緩急をつけた移動、その後の攻撃が眼前に迫っている。 ドッピオはその攻撃を右手で受け止め、その威力を利用し自分もわざと後ろに下がるように飛び、距離を開く。 「あーれ、今のは見えないと思ってたんだけどなぁ」 拳を振り切った後に、顔を上げへらへらした表情を見せつけるかのように言う。 「それに、よく止めれたねー。結構勢いつけてたから相当衝撃あったと思うんだけど」 ドッピオは右手に痺れる感覚を確かに感じていた。だが、それはまだまだ余裕のある感覚。 ……安堵と共に、先の見えぬ恐怖も感じた。 やはり、強い。 五割ほども出していないだろう敵の力。今ならまだ受けきれるだろうが、それがどんどんすばやくなっていったら。 他のスタンド使いと違い、自分にあるものは片腕だけ。生身の腕では今の一撃をまともに受けてしまえば即崩壊だろう。 「ほらほら、ぼおっとしてる暇ないんじゃない?」 はたてが止まらず攻勢をたたみかける。 その素早い手勢を、ひたすらに防御し続けていく。 「ぐぅっ!」 一撃、腹部に拳が刺さる。 それによって丸まる体をはたてが追撃しようとするが、ドッピオはそれを予知しており、素早く転がって回避する。 『予知』は絶対だ。 たとえその予知が攻撃を喰らうという『予知』なら、もうその結果は決定していること。 自分にできることは、痛みに耐える覚悟と、その次に取る最善の行動の準備。 予知を見たことによって、取るべき行動をとる。その通りに動いたから予知通りの結果となる。 予知には、それを見たことによってそれに逆らうような行動をとっても、その結果となるだろう。 『絶対的な予知』とは真実だ。それが好転を映すまでは、耐えるべきだ。 「……最初の威勢はどうしたのさ? 一向に仕掛けてこないねぇ。何か、機会でも窺ってるの?」 額を腕で拭き、汗をぬぐい取るジェスチャーを取るはたて。ただ動いているだけであり、余裕があることを十二分に表わしている。 事実、構えを解き相手を直視せずに行うそれは、戦闘であればわざわざ隙を見せているだけである。 「……ハァ、ハァ、……」 ドッピオは答えない。ただ、荒れた呼吸を整えるだけ。 もし予知がなかったら、まともに立ち合うことすらできないだろう。 相手が自動車であれば、自分は三輪車に乗っているような。まさしく子ども扱いされている。 それを埋める自分の能力、相手に知られていないからこその謎。それが、今対峙出来ている要因。 次の攻撃はどう出るか。再びなびく髪に視線をやる。 「……!! おい、やめろッ!!!」 まだ行動には出していない。だから、止めるように声を出せば止まるかもしれない。 否、止まるはずがない。『予知』はすでに結果を出している。 私は、自分に割り入ってくれた彼に少なからずの恩を感じていた。 その時はわからなかったけど、もしかしたらあれ以上に虐げられていた可能性があったから。 少し臆病な気もある自分だが、そこに入ってくれた人を助けるのは仁というか人道ではないか。妖怪だけど。 彼は今、とても苦戦している。反撃に出れず、ただただいたぶられているだけ。 めんどくさいとはいうこともあるけども、寺の教えはわかっている。今は彼を助けることはいいことのはずだ。 手に持った箒に力を入れる。 「……!! おい、やめろッ!!!」 彼が、ドッピオが声を荒げる。 私に言っているんだろう。今この場でそんな声をかけられる対象は私しかいないから。 どうしてそんなことをするんだろう。そんなことをすれば相手に気付かれてしまうのに。 けれど、それでもいい。2対1なら、この天狗にも勝てるかもしれない。なんだかんだ言ってるけど、酷いことやってるのはあっちなんだから! 「ん~~~~~!!」 「ん?」 振りかぶった箒を渾身の力を込めて相手の頭に目がけて振り下ろす。 黒白お得意の箒プレイだ。それに、後ろに目があるわけじゃあないんだし、避けられないに決まってる! 背後から箒を振り上げ、響子がはたてに襲いかかる。 その後の様を、ドッピオは分かっている。 だから、止めたのだ。ダメだとわかっていても、声は出てしまう。 「やあっ!!」 箒は寸分違わずはたての頭に振り下ろされる。 当のはたては、特にそちらに目もくれず素早くしゃがんでそれを躱す。事もなげに。 「邪魔」 そして、しゃがんだ状態から全身をバネとして使い、強烈な力の篭もった蹴りを後ろに見舞う。 「がぁっ……、けあ、はぁ……」 その蹴りは、履いた下駄の一本歯が響子のみぞおちに見舞われ、深々とめり込むほど。 離れていたドッピオにも、その衝撃で体中の空気が口から漏れ出てくる音が聞こえてくるかのようだった。 一瞬、時間が止まったのかもしれない。蹴りの瞬間の二人。それを見るだけしかできないドッピオ。 わかっていたのは彼ひとり。それが映し出された『予知』。 その一瞬を照らし合わせたのを確認したかのように、時が再び刻み始める。 響子は捨てられたボロ人形のように吹っ飛び、後方に落ちた。 「てめええええええええええぇぇぇ!!!!」 咆哮し、一気に駆け寄り拳を振りかざす。 それを確認すると、微笑を浮かべて手をくいくいと動かし挑発行動をとるはたて。 「仕掛けさせるなら最初からこうやってればよかったかもね。自分で言いだした手前あまりやろうとは思わなかったけど。 まさか、あっちから仕掛けてくれるだなんてね。最初に言った通り、私から仕掛けてないんだから正当だよ」 「何言ってやがる! あいつは関係なかっただろうがよォーッ!!」 激情に駆られたドッピオの、あまりに真っ直ぐな攻撃。 はたては上体を反らしてそれを避けると、そのまま後ろに倒れるかのように身体を倒し、その勢いで右足を振り上げ、拳を振るいガードの開いた右脇腹に蹴りを入れる。 しっかり予知を見ていれば躱せたかもしれないその一撃は、ドッピオの体にめりめりと悲鳴を上げさせるに十分な一撃。 その蹴りの勢いでドッピオは倒れる。はたてはそのまま後ろに手をついて後転し立ち上がる。余裕の表情を浮かべながら。 未だ、ドッピオははたてに一撃ほども喰らわせていないのだから。 「ぐぐ、てめぇ……」 「さっきからそれしか聞いてないんですけどー? 啖呵切った割にはその程度だなんてあんまりおもしろく……ん?」 瞬間、はたての周りに影が覆ったかと思うと、巨大な錨が降ってくる。 それが轟音を立てて参道の石畳を破壊すると、続けてその錨を投擲した者だろう。水蜜が同じく巨大な錨を携えてはたて目掛けて振り下ろす。 はたてはそれを回避するが、反撃に出ることはできない。 回避をしたその先を追うかのように、水蜜は錨の前方へ飛んでは回転、錨を振り上げはたてに目掛け叩きつける。 「ちょ、ちょっとちょっと! わ、ったった」 ドッピオのそれとは全く違う攻勢にはたてもたじろぐ。 水蜜の表情は先のドッピオと同じく怒りの一色に染まっている。 「村紗、もうやめなさい。ドッピオ、はたても」 本堂の方から声が聞こえる。威厳を備えた、澄んだ声。 右手に宝塔を携え、左手には自分の身長を超える鉾を構えるその姿。 「最初の経緯は詳しく見ていたわけではありません。ですが、これ以上ここで迷惑を起こすようならば寺のものとして、あなた達を罰さなければなりません もはやあなた達の行動はどちらが善かどちらが悪かでの範疇を越えている。それでも続けたいというのであれば、この寅丸星が相手を致しましょう」 それは通告。ドッピオだけで見ればもうやめろで済む。 しかしはたてにはそれだけじゃない。 はたては妖怪の山に住む天狗たちの組織の一員だ。そして、非常に排他的であり内にも外にもその目は厳しい。 新聞記者として外に飛び回り、様々な人妖に話を聞きまわるはたて。その者が命蓮寺に迷惑をかけ、さらに敵対行動をとったらはたてがどういう扱いを受けるか。山の天狗はどう動くか。 ……それを踏まえたうえで。はたてはやれやれといった感じで肩を竦める。 「何度も言うけど、私からは何もしていない。全ては受け身の対応。けれどやりすぎたことには変わりなし。 ここはその非を認めて引き下がることにしますわ」 「ッ、あんたねぇ、それだけで済むと思ってるの?」 口ではそう出るが、所作には謝罪の意が全く含まれていない。 それに反感を感じ、水蜜が口をはさむ。 「済むと思っているよ。済まないのはあんただけでしょー? 寺のトップがそう言ったんだし、あとはあの子がそれで納得すればいいのよ」 「ん~~!!」 「ここはそれで納まってくれ、村紗」 納得のいかない表情の水蜜に対して、ドッピオは冷静に返す。顔は伏せたままで、その表情はわからない。 攻撃の受けた脇腹にはまだ痛みが走っている。骨の一つや二つ、ヒビが入っている可能性がある。 戦いは続けられないだろう。それでも、続けるものは一つある。 「力比べでは僕の負けだ、完全に。そこは認めよう」 「おん?」 「だからここからは交渉だ。……僕とてその写真の男について知りたい。そして、君も写真について知りたいんだろう? それを、どこかここではない場所で話したい。誰からに聞かれてもつまらないだろうし、ここでは冷静には話し合えないだろうからな」 まだ顔は上げない。 そんな状態のドッピオを、呆けている者を見るような眼ではたては見つめる。 「……なんで、敗者の提案に乗らないといけないわけ? どう見ても私があんたに勝ってたでしょうが」 当然の返答。声色を一層低くし、不快だという態度をありありと示している。 そんなはたてに対して、 「なら勝負は続行だ。さっきの発言を撤回して戦いを続ける」 「なっ、ドッピオ、何を!」 「今はまだ、一輪や星たちが横槍に入っただけだ。まだ終わっていない」 顔を上げ、右手でまっすぐに相手を指す。 先ほどの一撃が腕を動かすことで刺激されるが、それをものともせずに。 二人の間に立とうとしていた星が、思わずドッピオの方を振り返り、そちらに寄る。 「今私が言ったでしょう!? これ以上の戦いは私が認めないと!」 「……だそうだ、天狗。僕が戦おうとすれば、その戦いを止める者がいる。僕の交渉に乗らないのならば、戦いを挑み、敗れる。お前は知りたいことを手に入れられない。 乗ってくれるのであれば、互いに利益が出る。今は、そういう状態だ」 制止する星を無視し、堂々とはたてに宣言する。 一歩、痛みが走る体で、ふらつく足取りで、前に進む。 その前を、星は手を広げて制止する。 「何を……何を言っているのですか!! 既に傷ついているあなたをこれ以上戦わせるわけにはいきません! 何より人間と妖怪が弾幕ごっこではなく生身で戦いあうだなんて、愚かしいにも程がある! 死ぬかもしれないのですよ!?」 「うるせえぞ!! だから何だってんだ!? お前らが勝手に割り込んできただけだろーがッ!! 善者ぶって邪魔すんじゃねーぜ! それに、あっちが素直に聞いてくれればお前らの思惑も通るだろうよ、黙って見ていることもできねーのかッ!」 突然の豹変。星にとっては再びの豹変。 一輪も水蜜も、はたてもそれには一様に驚きの表情を出す。 今回は急の一撃はないが、それでも彼が何をしでかすかわからない。わずかに体に緊張が走る。 ……ドッピオの荒い息だけが、間を吹く僅かな風だけがその場を支配する。 一拍おいて、最初に口を開いたのははたてだった。 「うんうん。いいねぇ、そういう啖呵。痺れるねぇ」 それは、称賛の言葉。 「口だけだと思っていたし、実力的には口だけだったけど……芯の強さは相当ってこと、よくわかった。気に入ったよ。 そういう鬼先輩の様な頑固なところは嫌いじゃあない。下に見るなら可愛いもんだからね」 そう言うと、腰に下げていた葉団扇を取り出し、それで口元を覆う。 葉団扇を取り出したその時から、不自然に彼女の周りに風が舞い始める。 「午後まで」 「……何?」 「我らの山の麓に今日の午後までは私の遣いの者を置く。もし被写体の話をしたいのなら午後までに山まで来なさい。今ここでゆっくり話せそうな雰囲気ではないしねー。 それを過ぎたら話はなし。いい、私はあなたを測っているのよ」 一方的に喋りつくすと、一瞬の屈伸後、突風が巻き起こる。 その突風と同時に、彼女は飛び出していった。 「見抜けッ!」 それを追おうと、ドッピオは叫ぶ。しかし、いつも通りに展開されるはずの雲が、この時は現れない。 顔を上げる。その先には金輪を掲げてそれを制する一輪と雲山、そして雲山に抱えられている響子の姿。 その顔は苦悶に歪んでいる。後に引く苦痛が顔を歪ませているようだ。 「……落ち着きなさい、ドッピオ。何があったかわからないって私たち何度も言っているでしょう? ……怪我人もいる。あなたも怪我をしている。少しはそれを治してからでいいんじゃない? 時間はまだあるんだから」 そういうと、雲山の腕が伸びてきてドッピオの体を包む。 移動に負担がかからないように持ち上げようとしているのだろう。体を上方に引っ張り上げる様な浮遊感が周りを包む。 「……」 「響子は無事よ。……けど、しばらくはお休みね」 蹴飛ばされた彼女は苦しげに「けぱっ、けぱっ……」と息を吐いている。顔色も青く、しばらくは動けないだろう。 作り出したのは自分だ。それに対する罪悪感はないというわけではない。 「……わかったよ。今は休む。だけど午後、山に着くくらいには解放させてくれ。……どうしても、知りたいんだ」 「それは、その、『あの人』のことですか?」 「……そう、だ。そういえば、星にはあの時に言っちまってるからな」 一輪と水蜜は疑問の表情を浮かべる。 それを確認すると、ドッピオは二人にも向かって話す。 「今知っているのは星だけだったし、僕も外ではあまり言わないようにしている。 僕には探し人がいて、そしてその人はきっと僕の事を探している。……それが誰か、周りには言えない。自然と話してしまった、星だけしか知らないようにして欲しい」 「……その秘密人の為に、仲間がやられちゃってるんだけど?」 「それについては悪いと思ってる。けれど……怒るかもしれないが、僕はそうまでしてもその人の情報を得たいんだ」 頼む、と最後に一言を添えて、ドッピオは頭を深々と下げる。 それを見ても、すぐには誰も、何も言い出せなかった。 前へ|次へ
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跨界自肥類作品屬於LM圖書分類法的第三類,這類型可細分為以下兩個子類: -第一類 原創角色占了作品整體的一半或大部分,但卻有少數非原創的角色出沒。 第二類 角色全屬原創,但劇本或諧謔梗來自其他作品。 跨界自肥類作品列表 短篇小說 女巫與荊棘叢 長篇小說 Blood² 瘋狂茶會 漫畫 City Lolita OOC四格特集 史賓瑟的寵物 史卡VER自悲哥 史卡VER真善美 直男史賓瑟 人魚王子與蒙面俠 卡兒的ㄋㄟㄋㄟ 路燈上的哥哥
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戻る その他短編SS 面白いことは面白いが 諧謔を利かせた文学部学生同士のやりとりに、作者自身が酔っている感じがして気持ち悪い 謎解きでさんざん読者を振り回しておいて、答えは明かされないまま置き去りにされた感じ 謎を盛り込めば良いって物じゃない -- (名無しさん) 2013-07-14 08 18 06 これも難しいなぁ 確かに回答は欲しいかも。 -- (名無しさん) 2015-12-29 21 44 53 個人的には長身の女性はかっこよくて好きですけどね。 澪と幸、二人が会話してる様は想像すると絵になりそうですね。 こんな言葉遊び的なのも面白い。 -- (名無しさん) 2016-05-17 22 27 54
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【検索用 かくうのからす 登録タグ KqI VOCALOID smile dog か レネ 初音ミク 曲 曲か】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:smile dog 作曲:smile dog 編曲:smile dog 絵・動画:レネ Mix:KqI 唄:初音ミク 曲紹介 曲名:『架空のカラス』(かくうのカラス) 歌詞 (動画内より書き起こし) 啼声(ていせい)も届かぬこの街で、排擠(はいせい)許(ばか)りを倣っている。 快哉(かいさい)を望むことさえ、ずっと前に叶わなくなって。 等閑な錆を呑み込んだ、徒花の咲く燕室(えんしつ)で。 もう如何やら手遅れみたいだった、遍(あまね)く黒い正体を。 厭世、諦観に溶けて消えゆく 敢えなく排斥される焦燥を 掠っている。 狡猾な 哨戒を献身を以って。 吝嗇(りんしょく)な韜晦(とうかい)を絶って。 鬱(ふさ)ぐ陋劣(ろうれつ)も 滲む空閑も 棄てきれない侭(まま)。 攻勢を定款(ていかん)を以って。 諧謔(かいぎゃく)で退嬰(たいえい)を保って。 眩む後悔も 叫ぶ夾雑(きょうざつ)も、 痼疾の様に歪んでゆく。 安寧を記す寂寞(せきばく)が、ずっと棄却せず灯っている。 閉口を繰り返す黎明(れいめい)を、悠然と纏い眺めている。 神明を閉ざす悪辣が贅沢そうに延命を乞う。 偶像に縋れる盲信が、明光を黒く塗り潰す。 狡猾な 哨戒を献身を以って。 吝嗇な韜晦を絶って。 鬱ぐ陋劣も 滲む空閑も 棄てきれない侭。 攻勢を定款を以って。 諧謔で退嬰を保って。 眩む後悔も 叫ぶ夾雑も、 自敬を賭(と)し翳ってゆく。 コメント 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
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ドッピオと響子の二人は雲山に抱えられ、命蓮寺の一室に連れてこられる。 部屋には先に向かった水蜜によって布団が敷かれてあり、その上へゆっくりと下ろされる。 「か、はぁ……か、はぁ……」 自分の傷跡に手を当てたまま、先ほどと変わらず苦しげな呼吸をするだけの響子。 その痛々しげな様子を、辛そうに一輪が見つめる。 「妖怪というものは総じて人間と比べ物にならないほどの身体能力を持ってる。遥かに強靭で、遥かに頑健で。 ……でも、いま彼女はすごく苦しんでいる。酷いダメージを受けているの。……何故だと思う?」 ドッピオの方を向かないまま、言葉をかける。それは要因を作った彼を責める様な声ではなく、理解を求める優しい口調。 「簡単な話。相手も妖怪で、響子より強い妖怪だったから。人間が妖怪を退治する場合、対妖怪に特化したようなものでもないと傷すら負わすことはできない。 どんなに切れ味の鋭い刃でも、ただの人間が妖怪を傷つけることはできないの。それが、人間と妖怪の本来の差。 妖怪と妖怪同士だったら、話は単純になる。より強い方が勝つ。鋭い刃を持っている方が勝つ。 あなたが戦っていた相手は……それほどの差があるの、天狗という種族は」 「…………」 「責めているわけじゃあ、ないの。けれど、あまりに無茶なことをしていて……もし、あの一撃を喰らっていたのがあなただったなら、胴体が吹き飛んでいたでしょうね。 蘇生のしようもないほどの損傷で、冥界行きだったと思うの」 「……ごめん」 怒りを通り越した心配に変わったのだろう。どれほどの無茶をしているのか。どれほどの理解があったのか。 また、それとは別の疑問も持っていることを感じさせる口調でもあった。 「分かってくれたのならいいんだけれど。……はたてがあなたを嬲るつもりもあったのかもしれないけれど、それでもあなたは無事だった。 そこも不思議なの。……上脱いで、触るわよ?」 一輪に促され、上着を脱ごうとする。 「……ッッ」 自力で動かそうとするが、体に痛みが走り思うように動かせない。 それを見た水蜜がドッピオの傍らに寄り添い、脱衣を手伝う。 「痛みはあるけど、自分で動かすよりかは痛くないはずよ。手を前に出して、そのままでいて。私がそのまま引っ張るから」 「……ありがと、つッ!」 水蜜に促されるまま、上衣を脱ぐ。 切れ目の入った服の下には網がかった肌着。それも共に脱いでいく。 はたてに加えられた一撃は、ドッピオの脇腹を青く染めていた。 「うわ、いたそ……でも、これだけなのよね。不思議」 「さっきからそういうけど、これだけなのがそんなに気になるの? これだけっていうには十分痛いんだけど……」 水蜜も一輪と同じく、外傷に対して意外そうな反応を見せる。 その傷痕を一輪は指一本で優しくなでるように触れる。 「……うん、うん。強打による肉の損傷。骨は……折れては、いないようね。姐さんなら何とかできる範囲」 「うーん、やっぱり。あの勢いでまともに入ったからえぐり取られててもおかしくない一撃だと思ったんだけど」 「え、そこまでだったの!?」 「そう。どれだけ頑健なのあなた。さっきも一輪が言ったようにはたてが遊んでただけかもしれないけどさ」 触診する一輪と、説明する水蜜。二人ともの疑問は最後の一言に集約されていた。 常人と比べての高い頑健さ。確かな一撃が入っていても不思議とそれに耐えうる身体。 上衣を脱いだその肉体からは、とてもではないが想像できぬほど。そう思えるほどには彼の身体は華奢であった。 「そう言われても……自分がそこまで強いとは思ってはいないよ。男としてこういうのはアレだけど」 「うん。今触ってみてもとても鍛えられた身体とは思えない。年相応、それよりか細い位で、特別筋肉がついているわけじゃない。尚更不思議よ、外傷が小さいことはいいことなんだけど」 「だよねだよね。渡ってくる人たちっていうのは変に力を持ってくるから渡ってくるのかな?」 「…………僕には、特に変わった力とかはないよ」 「? まあ、あちらから迷い込んでくるのは八雲の手引きか網に掛ることくらいだろうからね。そればっかりは検証を挟まないと断定できないわよ。それに、今考えることではない」 「そーだけどね。ありがと、また横になるよ。頭支えてあげるから力を入れないで体を倒しな」 ドッピオの肩を抱き、もう片手は頭に添える。水蜜の言葉通りに体の力を抜いて全てを委ねる。 丁寧に枕まで頭を下ろし、視界はまた水平へと戻った。 隣には響子が変わらぬ様子で苦しんでいる。 「ねぇ、響子は診ないのかい?」 「えぇ。診ない。私には診れないのよ」 「診れない……?」 一輪は何もできないことを歯がゆく思い、唇を噛む。 「妖怪の身体は人間とは違う。だから治し方も違う。そもそも、妖怪は身体を損傷しても自然治癒に任せることの方が多いから、他の治し方を知らないことの方が多いの。 響子も同じ。ヤマビコの身体の治し方はヤマビコくらいにしかわからない。私には……どうすることもできないの。彼女も、分かっていると思うわ」 「……そう、か」 「私は元々人間だったからあなたの身体がどうなっているかはわかる。けれど、妖怪になったからといって他の妖怪の身体まで詳しくわかるわけじゃないの」 「だから、妖怪のお医者さんみたいなのが重要がられてるんだよね。竹林の医者」 「なんだって、そういうのいるんじゃないか! なら早くその人に、てっ」 「あーもう、動かない興奮しない。大丈夫だって。一輪も不安にさせすぎ!」 思わぬ言葉に体が動き、痛む。 それを諌めた水蜜は一輪にも注意をする。 「そうね、ごめんなさい。とりあえずここでは大丈夫よ、響子も、ドッピオも。安静にしてそれを治す手段がある。命蓮寺にはね」 「直接的に治すわけじゃないけど、自分の回復力を高めるとかいう魔法。だから、さっきから聖を待ってるのさ」 二人を運ぶ際に、星は二人に指示しその場を離れた。 今彼女がいないのも、それが理由。 「ある程度経ったしそろそろ来るんじゃないかな。準備も終わっただろうし――」 「お待たせしました!」 騒々しく襖が開かれ、そこには星と、彼女に手を引かれた白蓮。 「ちょっと、星。そんなに荒々しく入っては二人に迷惑でしょう。あなたはそういうところがそそっかしいんだから」 「う、すいません聖……もう二人が心配で心配で。ああ、もっと早くに止めればよかった恰好つけずに変なこと言わないで、そうすればこんなことにぃ」 「寅、うるさい」 「はぅ」 慌てふためき、気もそぞろな彼女に突っ込む水蜜。 対照的に落ち着いた様子で、白蓮はまずは響子に寄って行った。 「はひゅー……は、ひゅー……」 「…………」 響子の身体に手をかざし、静かにその手を全身をなでるように動かしていく。 一通りすると、巻物を取り出して自らの眼前に掲げる。 この一連の所作は、傷ついて泣いている子供を優しくなで、あやす母のような、そんな様子に見えた。 そして、掲げた巻物から奇妙な文様が浮かび上がる。それが白蓮と響子の周りを包む。 その文様は緩やかな淡い光を放ち、ゆっくりと辺りを回ると響子の患部である腹部に吸い込まれていく。 「あれが、魔法?」 「その通り。聖は身体強化の魔法を得意としている大魔法使い。その力は普段は自らの強化に使用しているけど、その気になればああいう風に他人に応用することもできる。 黒白のただパワーだけを追求したものじゃあない、何よりも繊細で優しい力だよ」 集中して、ぶつぶつと小さく呪言を唱える。その横顔には一筋の汗が垂れる。 それを拭うこともせず、一心に治療の魔法に専念している。 やがて、巻物から浮かんでいた文様が全て腹部に入り込むと、白蓮は立ち上がり、袖で額を拭う。 「やりました!」 すっごいやり遂げた表情。 「終わりましたか!」 「さすが姐さん、私たちではできないことを平然と成し遂げる!」 「そこに痺れる! 尊敬する!!」 「え、何このノリ」 魔法が成功したのだろう、それは雰囲気でわかるが急な周りの持ち上げ具合にドッピオは追いつくことができない。 まだ治療対象が残っているのに、終わったかのようなその空気。 「ひゅー、ひゅー……」 「あと6時間ほどすれば自然と目が覚めるでしょう。その時はたっぷりの粥と汁を食べさせてあげてください。治癒の一環で熱が出るかもしれないので、村紗は響子について対応してあげてください。 次はドッピオ、あなたですね」 「あ、はい」 くるとこちらに振り向き、同じように傍らに寄り添う。 先ほどから脱いだままの上半身を、響子と同じように手をかざして全身をみる。 その手のひらからは、何かじんわりと暖かいものが体の中を通っていく感覚があった。 そして、全身を見おわると、自らの膝の上にドッピオの手を取り、その両の手で包む。 「……あの、何か? 別に手は痛んでないし、もっと酷いところはあるけれど……」 できればすぐにでも治療してもらいたい。 そう思っているが、してもらう手前そこまでは言えない。 白蓮はドッピオの手を包み、愛おしい物のようにさする。その表情は柔らかい笑みを浮かべている。 だが、どこか奥が知れない微笑み。自分の知らない何かを知っていて、それを嘲るような気味の悪い笑みにも感じられた。 「……ッッ」 反射的に手を引こうとするが、どこにそんな力があるのか全く動かすことができない。 白蓮は、ドッピオの手をとったまま、上半身を屈めて顔を近くまで寄せる。 「なんて、かわいそうなんでしょう。何も知らないまま、届かぬものに手を伸ばし続けることは」 「……離せ」 鼻と鼻がつきそうなほどに顔を近づける。表情は変わらぬまま、囁くような小さな声で、子をあやす様な優しい口調で語りかける。 「なんて、愚かなんでしょう。見えない目のまま、手探りで進む姿を見つめられるということは」 「……離してくれッ」 抜け出そうとするが、手を固められて動かない。無理に動こうにもその力を痛みで出しきれない。それでも。 「それでも、あなたは歩み続ける。強い意志を持ちながら。道は違えどその姿、まるで――」 「離せェッ!!」 渾身の力を持って引きはがそうとする。 それに合わせたか、白蓮が手を離しドッピオはあっさりと束縛から抜けだし、その勢いは止められず布団を転げる。 「え?」 「ちょ、何やってるの?」 その身体を一輪が受け止める。 相当力を込めたからか、勢いはそれなりについてぶつかった。 だが、特に体に走る痛みは感じられない。 「あ、あれ……?」 「どうやらあなたの方は思いのほか大きな怪我ではなかったようです。少しの休憩を挟めばすぐに完治するでしょう。 何か、怖いものでも見ましたか? 初めての魔力通過を体験して、体が驚いているのかもしれませんよ」 にこにことたおやかな笑みを浮かべながら白蓮は経過を話す。 表情こそ変わらないがそこには先の気味の悪さは感じられない。 「え、姐さんそんな効果なんてありましたっけ? 聞いたことないんですけど」 「私も能力の無い者にこういった力を使ったことが初めてです。大丈夫だとは思いますが」 ……違う、そうじゃない。 そう言ってやりたい気持ちを押さえ込む。 けれど、きっと周りはそれを理解しないだろうから。 現に、ドッピオに対して行った行為を誰も追求しようとせず、周りはまだ眠る響子に対しての準備を始めている。 自分の心音がまだ高く体を揺らしている。得体の知れない恐怖に、まだ体も心も落ち着かない。 「そう言うことだそうなので。ドッピオ、あなたも少し休んでなさい。朝食はもう食べた? 軽いの作ってくるから、もうしばらく寝てなさい」 「……わかった。そうさせてもらうよ」 脱いだ上衣を再び着込み、布団へ横になる。 「すぅー……すぅー……」 「でもホントよかった無事で、自らの私利で信徒にこれほどの傷を負わせてしまい、これで再起不能なほどであれば私は何で詫びればよかったのかと、ああいえ自分の保身を考えていたわけではなくて今も代償を」 「寅、うるさいって」 「はぅ」 隣の布団で響子を挟み、誰にともなく謝罪している星とそれを適当にあしらう水蜜。……最初の威厳などどこにもなく。 少し休むには騒がしすぎるが、体に疲労は残っている。少しの休眠を取ることにした。 「ねぇ、起きてる? ねぇ」 小さく聞こえる声。 浅い眠りだった意識を取り戻すにはそれで十分。 「もう大丈夫、なの?」 その声の方に振り向く。 隣の布団からは、体を起こしてこちらを見つめる響子の姿。 まだ少し体は痛むのか、顔色はいつもの様な明るい状態ではない。 手は腹を押さえており、違和感が残ることを表している。 「うん、いくらかは大丈夫。……迷惑かけちゃったね、ごめんなさい」 その顔は、自分が原因で相手を怪我させてしまったことを悔いる、本当に申し訳なさそうな顔。 「そんなことはないよ。それに、君の方が大きな怪我をしている」 「だっ、大丈夫だよこれくらい! ……てて」 声を張るが、それで力が入るからだろう。顔を歪めて強く腹を押さえてしまう。 「無茶しないで、僕だって大丈夫だから。横にならないでいいのかい?」 「うん、一言、ちゃんとお礼が言いたくって」 そういうと、少し布団を這い出し、しっかりとドッピオの方を向く。 「私が勝手に出てったんだけど、そのあと攻撃された後、私を心配してくれたよね。私の為に怒ってくれたよね」 「ありがとう」 にこやかにほほ笑む少女。自分への思いの精一杯の返却。 「……ッッ!」 ドッピオの頭に一瞬ノイズが走る。 目の前が歪んだかと思うと、脳裏に走る似た笑みを浮かべる少女。 薄い青の髪、同じ色をした右眼、赤い左眼。 そんな見たことの無いはずの情景。 金の髪、燃え尽き燻る炭にまだ宿るような火のような、暗い赤の両眼。 精一杯の感謝を伝えたがる、無垢な瞳たち。 「……? どうしたの?」 「いや、なんでもない。まあ、無事ならそれでよかったよ。僕には、あいつに結局何もできなかったから」 「え、そうなの? ……どうやって追いやったの?」 「あー、まあいろいろと」 なんだか説明もしづらいし、適当にはぐらかす。 その様子を不思議そうに眺めていたが、くすりと少し笑うと再び響子は横になった。 「私、自分がダメだなー、とかは元々あんまり思わないけど、他人を巻き込むとやっぱり心に来るもんなんだね」 「誰だって、そういうものじゃないかな。僕もできるのなら他人をそんなに巻き込んで何かやるのは嫌なものだし」 「そっかー。お寺の教えもよくわかんないけど、そういったものなのかな。みんなそうなのかな」 「教えも、っていう部分ではよくわからないけど。みんなそうなんじゃないかな。誰だって、自分の事に他人を大きく巻き込むのは嫌じゃないかと思うよ」 とりとめのない会話を続ける。 響子もそうかそうか、と一人納得したように相槌を打つと、ドッピオに軽く手を振ると布団を深く被った。 「……行くかな」 無事を見た。治療も済んだ。もはやここに留まる理由は自分にはない。 周りが留めるだろうが……それならば、静かに出ていくのが一番だろう。 起こさないよう、静かに布団からはい出る。 隣の布団を通るときに顔を見るが、僅かに見える隙間からは眠っているような表情は見れる。 だが歩くたびに軋む床から、その犬のような耳は聞き取っているのかもしれない。 それでも、彼を止めずに静かに寝息を立てていた。 「行かれるのですか」 外へ向かう襖を開けたその先に、星が佇んでいた。 先の様な情けない姿ではなく、怒っているような悩んでいるような難しい表情を浮かべている。 「元々止まる気はなかったからな」 無感情に言い放つ。無理に考えを挟ませれば、それを察知し余計な口を挟まれる。 それをするほど愚かではない。それくらいはわかっている。 「見抜け」 いつもの言葉を口に出すと、それを止める者はいないからか。いつも通りに雲が出る。 まだ数回しか使っていないが、彼はもはやこれを日常と化していた。 「もはや止めることはできないでしょう。……死に行くわけじゃあないですし、本気で止めるわけではありません。その顔を、見たかっただけです」 そういうと、横にずれて道を開ける。 「忘れないでください。あなたはもう一人で歩いているわけではないと。歩くために、誰かの手を借りていることを。あの時、聖と何を話していたかはわかりません。 けれどおおよその予想はつきます。そして、その予想だけで私は動いている。きっと、その予想は間違っていないのでしょう。あなたの今朝と今とで、私は確信しています」 確かに、自分の考えに納得が入っている、迷いの無い言葉だった。 「そうか……そうか。わかった」 一瞬振り返る。 その時、星は声をかけたことを後悔するほど、言い知れぬ感情を身に受ける。 「覚えておく」 そのような感情を向けられることは初めてではない。聖白蓮を悪とみなし、討ち取ろうとするものを撃退したこともある。 それ以前に、崇めている物こそが悪とみて、自らに襲いかかってきたこともある。 そういった者たちが相手に込める感情。 「あなたは……あなたは一体、何者なんですか? その少年と、あなたは、一体……」 星を半歩下がらせるのには十分な威圧。 言葉も、何も返さず、そのまま雲に乗り込む。 「妖怪の山を目指せ」 時間だけが、何の感情も抱かず動いていた。 ディアボロは思考する。 ドッピオの中で、表に出ていないときは直接見聞きできているわけではない。それと近い何かを感じているだけだ。 それでも、ドッピオが気づかない物でもディアボロなら気付けるものがある。最強の暗殺者にいち早く気付くことができたのもそのためだ。 ディアボロの意識が目覚めているのなら、ドッピオの時に感じた物を把握することができる。 逆に、ドッピオはディアボロの身体で起きたことは何も把握していない。 当然だ。ディアボロが表に出てきているときは、ドッピオは深い眠りについているようなもの。意識は無いに等しいのだから。 あの一瞬、ディアボロの記憶の中だけにあるものが、ドッピオにも蘇った。 確かにあの顔を見たとき、小傘の表情がディアボロにも思い浮かんだ。 だが、特に強く連想するものを見たときに、自分しか知らない物までドッピオが思い浮かぶことはなかった。 これが何を意味するか、それは今はわからない。が、忘れない方がいいことだろう。 ここで起きた初めては、すべて覚えておくに限る。 そしてもう一つ、見たことの無い記憶。自らの記憶にない金髪の少女。 死に行く全てを覚えているわけではない。……覚えていたら、発狂してしまうだろう。 しかし覚えているものももちろんあるわけで。その中にはないというだけの事。 それでも、金髪赤眼など、現実にはありえない。 先の天狗は1週間前に自分を撮影したと言っていた。自分が幻想郷に来たと理解したのは2日前。 本当はそれ以前から幻想郷に存在しており、そのまま死を繰り返していたのかもしれない。 真偽はわからぬ。それに繋がるものかもしれない。 ディアボロは試行する。 ドッピオは完全に行使していたキングクリムゾンの右腕と、エピタフ。 今は完全に表に出ているわけではないが、意識を表に出しているときはスタンドを使用できる、はず。 「……」 傍らに浮かぶ、薄くささくれたようなその姿。全てを制することのできる王の力は未だくすみが浮かんでいる。 『画面』に二人の妖精が、楽しそうに空を飛ぶ。 そちらに目をやると、確かに二人の妖精が、同じように空を飛んでいた。 問題なし。 あの時に見えた予知は、確かなものだった。精神が高ぶる危機的状況は人間を強くさせる。 それと関係ない平時でもそれが見えるのなら問題はない。 時を吹っ飛ばす力は、今誰かに気付かれてもつまらない。試すべきではないだろう。 姿をそのままに、表の人格を出していた状態を解除し、ドッピオの人格を表に出す。 「……?」 今ボスが傍らにいたような。 そう思って辺りを見回すが、特に何もない。 なだらかな草原は人里を超えるとまばらに木が生えて、人の通りが少なくなっていくのを嫌でも感じさせる。 その前には巨大な山が視認できる。 何百、何千年と人を寄せ付けず、自分の力だけで生きてきた。 そんな自然の力を感じさせる、天然の山。 「貴公か、ドッピオという外来人は」 その山を見る視線の先に、空を飛ぶ一人の少女。 かなりの距離があるが、それでも装備がはっきりと見て取れる。 右手には体と同じほどの大きさの大剣、半身を隠す紅葉の文様が描かれた盾。 「わが名は犬走椛。烏天狗、姫海棠はたての命により、貴公の山の案内と監視を務める者だ」 前へ|次へ
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俺得メモ。 五十音順。追加していっていいのよ。 主にウィキペディアにページがあり、定義がある程度あるものが対象。 【サ】 サイケデリック 座敷 ザディコ サルサ サンバ 【シ】 シカゴ・ブルース シティ・ポップス ジャグ・バンド ジャズ ジャパノイズ ジャム・バンド ジャングル (音楽) シャンソン ジャンプ・ブルース シュランツ ショーロ ショー・チューン シンセポップ シンフォニア(交響曲) シンフォニックメタル 【ス】 スカ スカコア スキッフル スケルツォ(諧謔曲) スピードコア スピリチュアル スプリッターコア スラッシュメタル 【セ】 セツナ系 ゼミーロート セレナーデ(小夜曲) センバ 【ソ】 ソウル ソカ ソナタ(奏鳴曲) ソン
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1 企画:澪「次のブーケは誰の手に」 澪と幸 無名 ◆4xyA15XiqQ その他短編SS 戻る 名前 コメント すべてのコメントを見る 個人的には長身の女性はかっこよくて好きですけどね。 澪と幸、二人が会話してる様は想像すると絵になりそうですね。 こんな言葉遊び的なのも面白い。 -- (名無しさん) 2016-05-17 22 27 54 これも難しいなぁ 確かに回答は欲しいかも。 -- (名無しさん) 2015-12-29 21 44 53 面白いことは面白いが 諧謔を利かせた文学部学生同士のやりとりに、作者自身が酔っている感じがして気持ち悪い 謎解きでさんざん読者を振り回しておいて、答えは明かされないまま置き去りにされた感じ 謎を盛り込めば良いって物じゃない -- (名無しさん) 2013-07-14 08 18 06
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原語 comical 和訳 その他の品詞 面白おかしい、面白い、おかしな、愉快、滑稽、 戯 (おど)けた、剽軽な、変な 漢字一字 愉、戯 やまとことば ざれをかし、おもしろし(面白)、をかし(可笑) 備考欄 辞書 説明 廣辭林新訂版 (無記載) 新訂大言海 (無記載) 角川国語辞典新版 (無記載) 大英和辭典 〔形〕[一]ヲカシイ,オドケノ,滑稽ナ,諧謔〔カイギヤク〕ノ,捧腹絕倒〔ホウフクゼツタウ〕ノ.[二]喜劇ノ,喜劇的.[三]〘俗・方〙奇妙ナ,變〔ヘン〕ナ,怪シイ.[四]†底ヌケ騷ギヲスル,ズボラノ,氣儘ナ,我儘ナ. 同義等式 原語単位 comical=面白い カタカナ語単位 コミカル=面白い 附箋:C コ 英語
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「ドッピオー、朝よ、起きなさーい」 まどろんだ頭に、少女の声が響く。 まだ重たい瞼を開きながら周りを見る。 昨日の眠りについた床と同じ場所。違う点は、隣の部屋を仕切る襖が開いており、そこから霊夢が声をかけているところ。 その霊夢は着替えを済ませ、いつもの脇巫女装束を着、部屋の布団も片付いている。 「んー、もう朝か」 「何寝ぼけてるの、もう朝よ」 「昨日あんなことがあったからか……寝足りない感じが……」 布団の上で寝ぼけた目を擦っていると、霊夢は手を叩いて急かしてくる。 「日が昇ったらちゃんと起きる。顔でも洗ってきて目ぇ覚ましてきなさいよ」 ドッピオにタオルを渡すと、掛布団を取り去りそれをたたみ始める。 結局急かされるままに起こされ、部屋を後にせざるを得なくなった。 「顔洗ったら朝ごはん、準備できてるから来てね」 「ふあー、うん、わかった」 襖をあけ、外の光がより強く差し込んでくる。 雲一つない青い空、小さく鳥の鳴き声が聞こえてくる。まるで変わらぬ朝が来たことを感謝するかのように。 幻想郷は、今日は快晴だった。 「ああ、ようやく来たわね。さ、食べましょ」 洗顔を終え、居間に来ると朝食の準備を終えて待っていたのだろう。頬杖をついた状態の霊夢がいた。 ご飯とみそ汁、そして漬物。簡素な朝食が霊夢の前に並んでいる。 その反対側には、握り飯が3つとみそ汁。 「こっちが、ぼくの分?」 「また大変そうにしてるの見てるのもやだから、おにぎりにしておいたわ。中身はたくあん」 「助かるよ、ありがとう」 さっそく席に着き、霊夢と対面する。 「「いただきます」」 一礼。 出来立ての温かい握り飯をほおばる。塩加減がよい塩梅となっており、口の中で咀嚼をするたびに米の甘みと塩の辛さが混ざり合い、絶妙なハーモニーを生み出す。 しばらく食べ勧めると、中から固めのたくあんが出てきた。しばらく柔らかい感触だったところに歯ごたえある感触を感じ、食事という行為に楽しみを感じさせる。 おいしい。 「そういえばさ、今日はどうするの?」 「へ? どうって?」 「昨日の話聞く限り、目的はアリスだったんでしょ? それが済んだんだから、ここにはもう用事がないんだし」 急に問いかけられ、素っ頓狂な声が出てしまう。 が、確かに言われた通り。昨日目的は達してしまい、ここに留まる理由はない。 「とはいえ、どこかに行くっていうのもないんだよなぁ……」 「あら、そうなの?」 自分から振っておいて特に気にする様子もなく、食事を続ける霊夢。 だが、ドッピオは改めて現在の状況を顧みて、少々困っていた。 「こういう時は大体指示をもらっていたんだけど、ここに来てからは電話がないんだもんなぁ……まずはそれを届けないと」 「そういえばそんなこと言ってたわね、昨日なんか繋がってたみたいだけど」 「うん。きっと渡したい相手はぼくの事を探してるだろうし、ぼくも探したいし、けど……」 幻想郷の地理はドッピオは詳しくない。おそらくボスも詳しくはないだろう。 無闇に動き回っても見つけだすことが難しくなるだけかもしれない。 「昨日人里で命蓮寺の人たちと一緒にいたってこと、すぐみんなに知れるかな? ここってそんなに人口多いわけじゃあないんだろう?」 「まあ多くないし、人里はあそこだけなんだし。広まるんじゃないの? 割とみんな退屈してるからね。刺激が欲しいのは多いよ、ここは」 知識としては知っているが興味はない。そうとも取れるような返し。 やや不親切ではあるが、おそらくそれが彼女の素なのだろう。昨日の会話からわかることだ。 「それなら、命蓮寺に一回戻ってみようかな。その話を聞いてくる人もいるかもしれないし、戻らずに黙ってどこかに行くのもあれだし」 「ふーん、それなら気を付けてね」 「……霊夢って、優しいんだか冷たいんだかわからないね」 「あら、私は人間の味方よ、いつだって」 そう言いながら、食後の茶を啜る。 ドッピオも少し遅れて食べ終わり、同じく茶を啜る。 「「ごちそうさまでした」」 一礼。 食後、外に出て命蓮寺に向かう準備をする。 といってもそれほど荷物が増えたわけではない。アリスからもらった人形二つ。それもそもそも人里で魔理沙からもらった物。 強いてあげるとするならば、ここで過ごした1日という記憶だけ。 「それじゃあ霊夢。行ってくるね、ありがとう」 「別にいいわよ。次はお賽銭持ってきてね」 箒を携え、参道を掃除しようという構えで霊夢はドッピオを見送る。 しかし、昨日も経緯は知らないが早苗に任せていた。本当にやるかは疑問である。 「『見抜け』」 合言葉と共に、ドッピオの足元に雲が展開される。 それに乗り込み、次の命令を下せば出発だ。 その直前に、思い出したかのように霊夢に向かって伝える。 「そうだ霊夢、もしここにぼくを訪ねてる人が来たらここに留まるように伝えてもらっていいかい? そして、ぼくにそれを伝えてもらいたいんだ」 「えー? あなたが会いたいとか言ってた人よね、それ。あなたの行先を伝えればそれでいいじゃない」 「それもそうと言えばそうなんだけど、ぼくはその人の部下なんだ。その人に足を運ばせることはできないよ、緊急とはいったって」 「はいはい。他の所でもそうするつもり?」 「うん、そのつもり。どこかに通信機の片割れを預けたいって気持ちもあるけど、偶然会ったときとかを考えるとどうしても手放せないんだよね」 「ふーん、まああなたがそれでいいならいいんだけど」 「?」 最後に妙な返しをされたが、とにかく伝えたいことは伝えた。約束を破ったり忘れたりされることはきっとないだろう。 それに、ボスはこれを伝えなくてもそれを行ってくれる。何となくだが、確証がある。 「命蓮寺へ向かえ」 「野良妖怪に襲われないよう気を付けんのよー」 適当な見送りの声と共に、再びドッピオは空の旅を始める。 もう浮かび上がる瞬間の浮遊感に戸惑うことはない。 人間、意外と気にしなくなるものだな。そうドッピオは感じられた。 雲は何を思うわけでもなく進む。それはあたかも現実であった車のように。 もっとも、車は乗員の意思によって精密に動かすことができるもの。 対してこの雲はあくまで他の者の一部であり、命令を聞いて運ぶだけの物。 そんな非情な薄っぺらい物に命を預けて飛んでいる。 もしこんなものが空にたくさん浮かんでいたらどうなのだろう。『障害物を避けて目的地へ向かえ』と命令すればぶつかることなく動くことはできるだろうか。 それとも乗員に関係なく動き、振り落されてしまうのか。あえなくぶつかり、自由落下の空の旅を迎えることになるだろうか。 「……こっちと違って、あっちは区画されてるし、防御力あるからなぁ」 何事も、大きすぎるものは統制せねばならない。 今のように自分一人で空を飛んでいるのであれば何も問題はないのだが、もしこれが現実の車と同じほどの量走っていれば、幻想郷の空は何ともつまらないものになってしまうだろう。 妖怪は基本的に浮遊できるらしいが、人間はそうではない。どうやら限られた人間たちだけが空を飛べる。 ……修練次第なのか、先天的な能力なのかは知らないが。これはここの統制者が定めたのだろうか。 「……どうでもいいといえばどうでもいいことなんだけど」 何故ここに来たかはわからないし、いつまでここに留まればよいかもわからない。 外に出るには博麗の巫女、霊夢に頼めばできるとのことだが……そんな所にいながらも肝心のボスからの連絡もない。 あちらが連絡できないのだから、しょうがない。どうにかしてボスに会うことが先決。 今すべきことは、各所に自分がいることを伝え、自分という痕跡をボスに気付いてもらうこと。 自分の最善は、ボスのために尽くすこと。それなのだ。 「…………?」 目視で命蓮寺が見える距離まで来た。 だが、その方向から、何か小さく悲鳴のような声が聞こえる。 近づくにつれ、その声はより鮮明に聞こえてくるようになる。 しっかり彼女と会話をしたことはないが、その声量で記憶には残りやすいその声。 「だーかーらー、私は難しいことを聞いてるわけじゃあないの。ここに外来人が来ているはずだから会わせてって言ってるだけ。オーケー?」 「わかってるよ、でもそんな人はいないんだってば!!」 「いないはずないでしょうよー。最近外来人が来たのってここなんでしょー? 人里であんな堂々とアピールしておいていないとは言わせないよ?」 「そうなんだけど、とにかくいないんだってばー!!」 「あーあ。ヤマビコに聞いても無駄かなー、こりゃ。いないんだってばの繰り返し」 「嘘も言ってないし無駄も言ってないよ! いないんだってば!」 命蓮寺の参道では、二人の少女が言い争っていた。 といっても、一方が大声を出しているだけであり、片一方は肩を竦めて呆れたような表情をしている。 長い髪をツインテールにまとめ、頭には頭巾を乗せている。薄いピンクのブラウスにチェックのミニスカート。 目を引くのは歯が通常より相当長く、一本だけの下駄。 確かに昨日まで命蓮寺にはいなかった人物である。 「つーか声ばっかりでかくて頭が痛くなりそうなんですけどー。もう少し小さく喋れないの?」 「あー、そうやってヤマビコを馬鹿にする! そんなに言うと私だって怒るよ!!」 「別に馬鹿にしてるつもりはないわよー、事実言ってるだけだし」 変わらず大きな声で話し続ける響子に対し、相手はそれをさもうっとおしがる様子。 遠目からでもわかるその状態、それを見ても自動操縦、引き返すことはできない。 「……嫌なタイミングだな」 できることならこっそり行きたいが、飛び降りたりしたら、雲山を回収できなくなるかもしれない。もしくはこちらに戻ってくるか。 まだそれを試していない以上、予想外の動きをして逆に怪しまれるのはごめんである。 そのままゆっくり、流れをみることにした。 「そうは言うけど声に篭もった感情は隠せないよ! それを返す私なんだからわかるんだからね! 今は朝だから大きな声で挨拶よ!! 『大声「チャージドクライ」』ッ!!」 「おー? なんだかわからないけどやり合うつもり? いいよ、全力でやってみなよ」 響子が少し下がり、両手を口に添えると大きく息を吸い込む。 相手は特に動くわけではなく、互いの親指と人差し指を組み合わせて長方形を作り、そこから響子を除いている。 「距離、被写体、んー、こんなところか」 「~~~~~~ッッ!! ヤッッホーーーー!!!」 限界まで吸い込んだ息を、自慢の声量と共に吐き出す。 それと共に響子自身から多数の弾幕と、薄い膜で覆われたような空間が展開される。 薄い膜の空間は響子自身から相手の少女を取り囲み、弾幕は無作為に飛んでいくがその中で反射を繰り返し、乱雑に相手を狙う。 「この中に入ったが最後、逃げられると思わないでね!」 「はー、逃げる気なんてさらさらありませんですしー」 少女は小さな動きでそれを避けつつ、腰にぶら下げていたポーチから何かを取り出す。 その何かを響子に向け、 「ハイ、一枚ー」 「わわっ!?」 そこからまばゆい光が放たれ、辺りの弾幕をかき消す。 それに戸惑い響子の集中が切れたからか、膜の結界が破れ、あたりに弾幕が飛び散る。 「……あれは、カメラ? にしては随分……」 遠目に見ていたドッピオが呟く。昼間だから必要ないと思うが、あの光り方はまさしく写真撮影のそれに近い。 手にしている物の形はカメラとは随分ほど遠いが。あれでは、どちらかというと電話に近い。 「ううー、何今の……」 「ん、記念に一枚ね。ところで、それで終わりなの?」 確かに響子に何かが起きた感じには見えないし、そもそも相手は弾を一つも出していない。 その割には、その一枚を撮られただけで、ずいぶんとへこんでいるように見える。 そうこうしている内に、雲が地面に着き、小さくなってゆく。 仕方なく、ドッピオはそこに降り立つことにした。 「あ、お、おかえり……」 「あ、うん、ただいま」 恥ずかしいところを見られたからか、それとも返す余裕がなくなっているのか弱々しい声で呟く響子。 できれば避けたかったが、あちらから話しかけられてしまったためにどうしようもできず、とりあえず返すドッピオ。 「あー、見ない顔ね。あ、もしかしてこれが外来人? ならヤマビコの言ってた意味が通るわ。ったく、主語くらいちゃんとつけろっつーに」 そうぼやきつつ、ドッピオの方に少女―姫海棠はたて―が振り返る。 先ほどのカメラと思わしき物を手に持ちながら、てくてくと歩いて近づいてくる。 「……君は?」 「先に言っておくけど、別に悪いことはしてないよ? あっちがいきなり仕掛けてきてんだから」 「まあ、それはそのくらいから見ていたからわかるよ。勝負に勝った負けた、それだけだろ?」 「そーいうこと。変に寺側じゃなくていいね。組織っていうのは大体身内をかばうものだから。 誰だって顔してるし、名前を聞く前に名乗っておこうか。私は姫海棠はたて。あなたからすれば見てわかりづらいだろうけど、天狗よ」 「天狗……? まあいいや。ドッピオ」 気さくに話しかけてくるが、それでも正当防衛を傘に相手を傷つけることをためらわないタイプだろう。 少し警戒した様子でドッピオは返す。 「私は花果子念報っていう新聞記事を書いているの。で、何かニュースになりそうなことないかと外を回ってたんだけどさ。なんか新しい外来人が来たっていうじゃない? 大体外の人っていうのはみんな興味があってね。いい記事になることが多いのさ。で、最近ここに来たっていうから尋ねてきた、ってところ」 「そうかい。けれど、ぼくは記事にされることに興味はないな。それに……」 断りに言葉を言いかけて、少し考える。 何か書かれるのは、あまりに目立つから断りたいが、新聞に捜索について書いてもらえるのならありがたいのではないか。 ……だが、まだその新聞とやらを見ていない。 「何?」 「あ、いや……」 「ん? 記事にされたくないっていうなら私はあいつと違ってそんなに押す気はないけどさ。だったら情報提供だけでももらえない?」 こっちの思惑を外に、はたてはドッピオの前まで来ると、馴れ馴れしく右肩を抱いて顔を近づける。 状況が状況なら悪い思いはしないのだが、先からの印象しかない今の彼にはうっとおしいことこの上ない。 「何するんだ、離してよ」 「まあまあ、これなんだけどさ」 余った左手ではたては手にした手帖から、三枚の写真を見せる。 「ここ最近で何枚か撮れた写真。少なくとも人里、もしくは幻想郷で人間風情が住めそうなところにいるところには見たことない人間。 だから外来人だと思うんだよねー。けれど特に見られた話なし。同じ外来人でしょ? 何か知らない?」 その写真には、全てに同じ人物が映っていた。 派手な髪色、隆々とした見栄えする肉体、それに似合わぬ、恐怖と絶望に彩られた表情。 見せられた写真の全てに、その男は写っていた。 「!!! ……こ、これ、は」 「ん、やっぱり見覚えある?」 ドッピオにはその男を見た覚えはない。記憶の片隅にもない。 けれど、何か『知ってはいけない』と思えるその姿。 急に頭が重たくなり、左手でそれを支える。 「どったの?」 「これ……いつ、撮ったんだ」 「最近、一週間以内かね。感覚はそんなに空いてることはなかったけど」 一週間。おかしい、幻想郷に来たのは二日前、だったはず。 それまで、誰も知らない、はずだ。あの命蓮寺の僧の言葉では。 「他に、何かないのか」 「何かって、さっきからどうしたの急に、気分悪いの?」 手帖を下ろし、気分悪そうにうつむいているドッピオの顔をはたてが覗き込む。 「うるせえッ!! 質問しているのはこっちだッ!! ごちゃごちゃ言ってんじゃねーぜ!!」 豹変。 突然に怒鳴り声をあげ、同時に迫るはたての顔にドッピオの右拳が飛んでくる。 覗き込まれた顔に合わせた、顔面の急所を狙った一撃。 「人が心配してるっていうのに。そういう返しはないんじゃない?」 その拳が空を切る。 当てるはずだった勢いに任せて、体が捻じれる。 その隙に揺らいだ左腕を掴まれ、背中まで捻じり上げる。 同時に立位の中心である足の膝を押され、さらに姿勢が崩れる。 「ぐおっ!?」 「いっちょあがり」 左腕を捻じられたまま、後頭部を強く押されて地面に倒れ伏す。頭はそのまま強く抑えられて顔を上げることすらままならない。 「(こいつ、あの一瞬で背後に……!)」 「ド、ドッピオ!」 「動くなよ、ヤマビコ」 先ほどまでの緩い声と違い、相手を射竦める様な低い声で話しかける。 それは、小動物ならば容易く狩り取れる猛禽、それ以上を思わせるような雰囲気。 「ひっ……」 「さっきもそうだけど、あくまであっちが先に仕掛けてきてるんだから、私に非はないよ。これから何が起きようと」 「何をッ、離せ、このメスが!」 残った右腕を動かそうとするが、左腕を固められていて大きく動かせない。 その動きを見て、はたての手が頭から離されて、右腕を押さえつけられる。 同時に、背中に一点の圧力がかけられる。一本歯の下駄による、踏み押さえ。 「弾幕ごっこはお嫌い? ならそちらに合わせてあげるよ。ルールは何か必要? とりあえず、戦闘不能と感じたら負けでいいかな」 ごきんっ 「っ、がああああああああっ!!!」 「ドッピオーッ!!」 言うと同時に、足の踏み付けを強くし左腕を強く上に引き上げる。 鈍い骨のずれる音と共に、ドッピオの左腕は「伸びてはいけないライン」以上に伸びきる。 そこまでを見届けるとその手を放して場を離れ、ドッピオを開放する。 腕は、糸の切れた操り人形のように力なく崩れ落ちた。 「とりあえず一本。大丈夫、外しただけだから戻そうと思えばすぐ戻せるよ」 「がっ、ぐ、おおおおおおおおおぉぉぉっっ!!!」 離れたところで、悠々と語るが、その眼にはまだ敵対意識は消えていない。口では言うが、まだ危害を加えようとしている眼だ。 それでも、自分から視線が外れたからか目の前に知り合いが『弾幕ごっこで敗北した時以上の危害』が加えられたことによる心配からか。 響子はドッピオに縋り付く。 「大丈夫、ねぇ!? ねぇ、わわ、どうしよう……」 「~~~!! うるせぇ、耳元でギャンギャン言ってんじゃねーぞ……!」 左肩を中心に、全身に痛みが走る。歯を食いしばらなければたまらず涙が、泣き声が出てきそうな、平時活動するうえで全く感じることのない激痛。 そんな状態だからと言って、今は無様に敵に背を見せてよい状況か? 否。 自分の知らない何かと、周りが知らない何かを知っている。それが何かは全く心当たりがないが、とにかく重要なことだ。 ボスならそう言うだろう。何故だか知らないが確信がある。 そんな思いが、心配から行動した響子を退ける。 「えっ……? で、でも」 「粋がってんじゃないよ、少年。力の差は圧倒的なんだから素直に謝った方がいいよー。今なら謝罪の言葉一つで許してあげる。私は根に持つタイプじゃないんだ」 手を唇に当て、それでも姿勢は変えずにドッピオを見つめ続けるはたて。 一瞬で力の差を理解してしまい、それでも勝てない相手に立ち向かおうとしている彼を、止めるかどうかと悩む響子。 ドッピオは、よろめきながらも、はたてを強く睨みつける。 「(……!! マジか、でも、『予知』は絶対だ……! それに、この『予知』は!!)」 右手で髪をかき上げ、一見視界を取り戻すようにも見えるその仕草。 だが、それこそが彼をただの少年との違いを見せつける所作。 力なくぶら下がるだけとなった左腕を掴む。先ほどの痛みが、刺激でより強い苦痛となって押し寄せる。 「イグゥアアアアアア!!!」 「!!」 「……、こいつ」 捻じられ外れた左肩を、無理やりに引き上げ、戻す。 痛みは最高潮を迎え、そしてまた骨の鳴る音共に薄れていく。 痛みは残る。だが耐えられないほどでもない。 「前には喉に入れられたハサミを取り出したこともあったか……チクショオ、つくづく痛みには慣れてくるぜ」 「ね、ねぇ、どうするの? 無茶だよ、無茶しすぎだよ!」 「もうお前は問題に入って無い、ここからはオレの問題なんだ。ここまでやられてるんだ、もう侮りはしない」 「……やれやれだわ、天狗も舐められたものね。それとも何も知らないからこそ? 記事にはならなそうだけど、そのまま売り物を捨てるのももったいないね」 カメラをポーチにしまい、腕を組んで相手を見据える。 未だ痛みの残る左腕で、前髪をもう一度かき上げる。 その髪の流れから、映し出される『エピタフ』。 それは、前向きに戦おうとする自分の姿とそれを受け入れる相手の姿。戦いは、『腕を痛みを耐えてでも戻す』予知を見た瞬間から決まっていた。 「て、寺では殺生は禁止だよー……?」 前へ|次へ