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このページはこちらに移転しました ふぃぎあ買った 作詞/597スレ162 いつも毎日何もしない 努力しないから何も得ない 俺はいつも引きこもり 次郎は太郎を憎んでる 愛があれば何でも出きると 次郎はいつも言っている 生きてる間に借りた物は 死んだ後で返さねば ならば俺は何もいらない 何も借りないから何も得ない 俺はいつも引きこもり 次郎は太郎を疑っている 実家に帰る度に消えてしまう 次郎の財布の1万円
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2011年 1月、初の元日興行開催。 4月、タイ・バンコクで地下プロレス開催。日本から5選手が参戦。 バンコクにTHE KABUKI出現。 日龍が入道を破りWUW日本地下阿吽王座を獲得。日龍、梅沢菊次郎組が第4代王者となる。 6月、タイ・バンコクで地下プロレス開催。日本から4選手が参戦。 矢野啓太、竹嶋健史組が第4代王者組を破り第5代日本地下阿吽王者となる。 01/01 EXIT-59 CORE Special(新宿CORE STADIUM) 01/23 EXIT-60 EYES(高田馬場ALAISE) 02/13 EXIT-62 CORE T(新宿CORE STADIUM) 02/27 EXIT-63 MIDNIGHT(高田馬場ALAISE) 03/13 EXIT-64 CORE U(新宿CORE STADIUM) 03/27 EXIT-65 WANNABEE2(高田馬場ALAISE) 04/06 EXIT-66 SHOGUN(タイ) 04/06 EXIT-67 COBRA(タイ) 04/07 EXIT-68 GARUDA(タイ) 04/10 EXIT-71 CORE V(新宿CORE STADIUM) 04/24 EXIT-72 OVER (高田馬場ALAISE) 05/08 EXIT-73 CORE W(新宿CORE STADIUM) 05/22 EXIT-74 SERIOUS (高田馬場ALAISE) 06/02 EXIT-75 TOM(タイ) 06/03 EXIT-76 KAMIKAZE(タイ) 06/12EXIT-77 CORE X(新宿CORE STADIUM) 06/26EXIT-78 UNKNOWN(高田馬場ALAISE) 07/10EXIT-79 CORE Y(新宿CORE STADIUM) 07/24EXIT-80 CRESCENT(高田馬場ALAISE) 07/31EXIT-85 FUJIYAMA 2(富士山頂) 08/06EXIT-81 EXPO N(日比谷公園) 08/07EXIT-82 EXPO 0(日比谷公園) 08/14EXIT-83 CORE Z!!(新宿FACE) 08/28EXIT-84 KEY(高田馬場ALAISE) 09/11EXIT-86 CORE A2(新宿CORE STADIUM) 09/17EXIT-94 EXPO S(代々木公園) 09/18EXIT-88 EXPO P(代々木公園) 09/25EXIT-89 MAINSPRING(高田馬場ALAISE) 10/06EXIT-90 OSYO(タイ) 10/07EXIT-91 KABUKI2(タイ) 10/10EXIT-94 SHOKUNIN EXPO S(タイ) 10/10EXIT-92 CORE B2(新宿CORE STADIUM) 10/23EXIT-93 WANABEE3(高田馬場ALAISE)
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「老体に鞭打つか、されど先代を葬った怨敵が幽霊なる龍とはのう。しかも旧支配者とは、まるでクトゥルフか何かか?違う、じゃと?」 日本の京都にある「春花市」に住むある極道一家の頭目である。 かつて国の裏で暗躍していた忍および退魔師一族の末裔、天糸家の現当主で、今でも現役の退魔師及び忍者(本当に忍ぶ方)である。春花の近くにある街、というか主に春花北区を担当する監視者であり、実質支配している男ともいえる。刈谷自動車の取締役である宗次郎とは親戚関係にある。 昔ある戦いで幽霊(正確には幻霊龍)から攻撃を受け、幻聴に悩まされていたが徐々に向き合い、ハーネイトと出会ってから短期間で具現霊を身に着け運用できるようになった。 老練な戦術と精密な攻撃は、まさに暗殺者。しかしその力を、娘の恩人であるハーネイトのために使おうと考える。 性格はいたって落ち着いた、年相応の物だがひょうきんな一面も見せる。大人として、高校生たちをよく見守り、道しるべを示す老齢の男性。また、ハーネイトがあまり異能の力を使いたがらない理由を聞きそれでも使わなければならない時があると説く。 自身や先代を襲った龍の正体を知り、彼も年老いた体ながら戦場に再び舞い戻る。事実が真ならば、阻止せねば全てが無に帰すことになるからである。 セリフ + ... セリフ1 よかろう、では出陣するぞ セリフ2 ふうん、わし等とて現状を憂いているだけではないぞ。だが、あの人形使いがカギを握る以上はな セリフ3 面白いことが起きておるわ、ハーネイト、それにヴァンか。どこまでの力があるか見定めてもらおうぞ セリフ4 セリフ5 セリフ6 セリフ7 セリフ8 セリフ9 セリフ10 可愛い娘を誰にもやらん、なぞ思っておったがあの人形使いの青年、あ奴になら娘を任せてもよいか。儂も助けられたわけじゃし、何より彼の誠実かつ優しいその振る舞いと行いは認めるしかない セリフ11 セリフ12 好きなこと 嫌いなこと 目標 龍について イベント レベルアップ スキル解放 現霊:ハンゾウ/フウマ 青い忍装束を着た忍者型の具現霊(レヴェネイト)で、両腕につけた護手には様々な仕掛けや仕込みが内蔵されている。水遁や火遁も使用でき、属性を突いた弱点を与えやすい優秀な具現霊。 父の魂が宿っており、先代である父を止められなかった後悔を乗り越え共鳴を果たした。自身の経験の力もとても高く、多いため基礎能力が加入タイミングにしては高い。だが成長性と拡張性にやや乏しい。 クラス適正 アタッカー シューター シールダー サーチャー アサシン サポーター Aミッション 主にアサシンクラスとして、先行偵察や強襲、奇襲、攪乱などで敵集団をひっかき乱しながら味方の進軍を補佐し、ボス戦では不意打ちからの大ダメージを狙う役割を担う。娘である文香と役割は大体被るが、文次郎はより単体を確実に仕留め味方への脅威を減らすほうに能力が傾いている。 通常戦闘 物理の外に、火炎、氷結、疾風、電雷と4属性、それぞれ攻撃技を持つが消費CPは高いので要注意。また敵単体・単発攻撃は外すと痛いので能力上昇系の技を使ってから使えば、一撃で葬ることも可能。全体技の威力はやや低いことにも留意して戦闘を有利に進めよう。あくまで彼はアサシン、そして忍者であることを忘れずに。 ステータス Aミッション:目前マス1マス選択 通常攻撃:単体物理属性攻撃×2HIT Lv HP CP 力 霊 速 体 心 運 20 250 170 18 16 15 17 10 14 具現霊戦技一覧 名称 消費SP(%) 習得LV 効果 忍術・五月雨手裏剣 3 - 複数体に合計16HITする物理属性小ダメージ+回避・命中率20%ダウン(3) 忍術・霊分身 3 - 自身の回避率を3ターン80%上昇させる 忍術・宵闇宴 9 24 全体に1体当たり7HITする物理+暗黒属性大ダメージ 忍術・魔鬼菱 10 28 相手は防御以外の行動を行うとダメージを負う(3) 忍術・暗刃殺 8 31 単体に物理属性特大ダメージ+即死 忍術・封天大陣 14 35 全体に全能力を半減する陣を展開(3) 忍法・爆閃崩華 20 40 全体に火炎+陽光特大ダメージ+防御ダウン30%(3) 忍法・震天雷崩 35 44 全体に電雷属性特大ダメージ+回避率30%ダウン(3) 忍法・龍雹牙鬼 15 49 全体に氷結属性特大ダメージ+攻撃力25%ダウン(3) 忍法・嵐旋渦陣 20 50 全体に疾風属性特大ダメージ+回復量50%ダウン(3) (決)忍法・遮明影嵐 20 50 全体に暗黒属性壊滅級ダメージ+基礎確率50%で即死
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『おれ、いつかヒーローになる!』 春の穏やかな日差しが差し込む剣術道場にて。玩具の剣を天高く突き上げた堂々たる佇まいで宣言する少年。 子供向けの活劇――弟子の一人が言うには『特撮』というものらしい――に影響されたのであろう齢十にも満たぬ孫の決意に思わず頬が緩む。 屈んで目線を合わせる。穢れを知らない孫の瞳は朝日にも負けぬほどきらきらと美しく輝いていた。 『なれるぞ。哉太が誰かを守る、という強い志があればな』 『守りたいもの……?』 『そうだ。儂には婆さんやお前、お前の両親……山折村の人々がおる。哉太には誰かいないのか?』 『おれ?うーん……圭ちゃんはおれより喧嘩が強いし、光ちゃんと珠ちゃんは圭ちゃんが守ってくれるし。うーん、うーん』 『ははは、力の強さは関係ないぞ。力がなくとも誰かに寄り添い、力となる。それさえできれば哉太はヒーローになれる』 『……よく分かんない』 『今は分からずとも良い。そうさな、もう少し大きくなれば自ずと理解できるであろう』 顎に手を当てうーんと唸る幼き孫。その頭を撫でてやると複雑な表情を浮かべる。そして―――。 『一番乗りーーー!ってなあんだ、もう哉くんいるじゃん……』 肩まで伸びた濡羽色を靡かせ、登場する子供が一人。 哉太よりも数年ほど年上の少女。哉太は露骨に嫌そうな表情を浮かべる。 『茶子姉、朝からうっさい!』 『あ、先生おはよっす』 『無視すんな!』 先程の悩ましい姿はどこへやら。哉太は騒がしい来訪者――虎尾茶子へと文句をぶつける。 『だいたい茶子姉はいっつもおれをバカにして……あだっ!』 『一番早く来たならモップ掛けくらいしなくちゃデコピンの刑だ』 『してから言うなよ!』 『あーいえばこーいう。そんな生意気言ってたら女の子にモテないよ。そんじゃモップ掛けしますね。ほら、哉くんもちゃっちゃと歩く!』 『おれは別に女になんか……ああもう、自分で歩けるから引っ張るなよ!』 片手に玩具を持ったまま、ずるずると引き摺られる哉太を見送る。 八柳哉太と虎尾茶子。二人の戯れは己と嘗ての親友、木更津網太の在りし日のやり取りを思い出させた。 『二人なら大丈夫。大丈夫だ、きっと……』 山折の歪みを知らぬ純粋無垢な二人。 かつて道を違った愚かな老人と同じ轍を踏まぬよう、藤次郎は祈った。 ◆ 「なんか?!それって烏宿さん達が言ってたヒグマ?!それとも……」 「スーツを着こなして二足歩行でダッシュするお●ックベアーなんて知りませんわよ!耳に●●メン詰まってますの!?」 「勝子サンの見た目で言うとアウトな気がするんだけど!!」 「哉くん、誰が言ってもアウトだよ!」 亡者蔓延るゴーストタウンに響く駿馬の蹄音とそれに追従する追跡者の砂利を踏む疾走音。 そのコーラスをバックに麗しい見た目の男女が馬上で騒ぎ立てる。 金田一勝子、八柳哉太、虎尾茶子の三人は犬山うさぎの要請を受け、湯川邸にて特殊部隊と相対している彼女の友人を救助に行く最中である。 うさぎによると要救助者は女子高生の岩水鈴菜とプロレスラーの暁和之の二名。 彼女の異能により召喚した馬の出現時間は午前七時まで。馬が消える時間まで凡そ三十分前後。 湯川邸と袴田邸への往復を考えると急ぎ湯川邸へと向かわなければならない。 背後より迫る殺気。常人であれば身を竦ませ、思考を停止させるであろう禍々しい死神の気配。だがその気を受ける三人は只人では非ず。 金田一勝子は不死鳥の如く黄泉還りを続けた誇り高き金田一一族末裔の長姉。 八柳哉太と虎尾茶子はいずれも立場の違いはあれど現代の鉄火場にて命のやり取りを得た武芸者である。 故に三者とも異常事態の中の異常事態においても平時と変わらぬ思考が可能であった。 「だったらあの豚野郎みたいにトチ狂った感染者か!?」 そう叫びながら哉太は背後を振り返り、馬との距離を縮めつつある追跡者の正体を探る。 黒スーツ姿で短く切り揃えられた白髪に伸びた白髭。利き手に刀を手に持ち、疾走する長身痩躯の老人は―――。 「爺ちゃん!!」 安堵と歓喜の入り混じった声で哉太は己の師――八柳藤次郎を呼ぶ。 その言葉と同時に哉太の前で馬にしがみついていた茶子が一瞬、身を固くした。 「哉太さんの知り合いですの!?」 「ああ!俺と茶子姉に剣術を叩きこんでくれた俺の家族だ!」 「でしたら――」 「ああ!味か――」 「勝子ちゃん!!馬の速度を上げて!!」 「え?」 「早くッ!!!」 金切声と聞き間違えんばかりの声量にて虎尾茶子は叫んだ。 その迫力を前に勝子と哉太は目を丸くする。 「な……どうした茶子姉!?爺ちゃんは――」 「あたしらに殺気をぶつけてぶっ殺そうとしてくる爺が味方な訳ないだろ!!!」 普段の飄々とした姉弟子とは思えぬ切羽詰まったような彼女の声色に動揺を隠せない。 「何かの間違いだ」と否定するため、哉太は藤次郎に再び声をかけるべく背後を振り返り、言葉を失った。 爛々と燃え盛る獅子の如き鋭い眼光。 朝陽に照らされる鈍ら刀の赤黒い輝き。 スーツとスラックスを湿らせ、Yシャツと白髪を鮮やかな紅に染めあげた姿。 喜悦を表す禍々しい三日月を描く口角に、その隙間より覘く犬歯。 こちらを視認しても尚、未だ枯れ木のような痩躯より放たれる悍ましき剣気。 その姿はまさに悪鬼であった。 ふと、老人と手をつないだ幼い兄弟のゾンビがすれ違う。 その刹那に赤染の刃が振るわれる。それと同時に二人の首がころりと落ちる。 地に着く前に藤次郎は小さな方の首を掴んで下手投げをした。 「勝子サン!!」 「―――ッ!?ええ!!」 馬の股下を潜り抜けた首の行き先は馬の疾走先。異物にて転倒を目的とした投擲。 勝子は哉太の声にて瞬時に狙いを判断し、手綱を引いて障害物の少ない大通りから瓦礫やゾンビで溢れかえった小路へと行先を変更させる。 「これでッ!距離をッ!取れますわねッ!」 瓦礫を躱しつつ、確認するように背後の八柳流の武芸者二人に問う。 哉太は打刀の峰で打ち、茶子は木刀を振るって群がるゾンビを吹き飛ばしつつ、同時に答える。 「いや、まだだ!」「まだ速度を緩めないで!」 「え」 予想外の返答に勝子の頭に疑問符が沸き、思わず振り返った。 「な……な……なんですのォォォォォォォ!!?」 瓦礫などの障害物に足を取られることもなく、藤次郎は馬との距離を縮めつつあった。 剣鬼は地を這うのではなく、壁を蹴り、反対側の壁へと移る。その反復作業にて疾走していた。 途中、ゾンビとすれ違えば刃を振るい、その頸を落としていく。 技の名は『猿八艘』。狭所にて銃火器を持ったヤクザ者共と斬り結ぶために生み出された凶手の技である。 馬の速度が一瞬緩む。ふ、と藤次郎は嗤う。 剣聖の異能にて極限まで強化された脚力にて壁を蹴り、空高く飛ぶ。 構えは上段。振り下ろし先は左腕に包帯を巻いている最強の門下生ではなく、八柳流きっての麒麟児たる少年。 「哉くん!!」 「ああ!!」 茶子の言葉で哉太は馬上で振り返り、打刀を構える。 祖父と孫。互いに足は地に着かず、万全な体勢ではない。しかしてこの一合は才ある者以外にはできぬ立ち合いである。 藤次郎の技は上段からの振り下ろし『天雷』。哉太の技は受け流しの術『空蝉』。 どちらも平時においては体操の一環。しかし、武芸者にとっては形稽古の一部。 血濡れた妖刀と薄らと淡い光を放つ聖刀が火花を散らして十字に交差する。 打ち合った藤次郎の鈍が哉太の業物の切っ先へと滑り、受け流される。藤次郎の眼前に割れたコンクリートが映る。 体勢を立て直さんと藤次郎が宙で身体を捩ると目の前に現れたのは火のついた爆竹二本。 間を置かずに破裂し、藤次郎が仰け反る。視界を失った僅か四半秒。視界を取り戻した時に左目に映ったのはサバイバルナイフの切っ先。 「―――ッ!」 茶子の投擲したナイフが左目を潰し、藤次郎は僅かに苦悶の声を上げる。 剣聖の異能により若き天才達の術や物体の動作は予知できていた。しかし、対処不可能な状況を動かしたのは比翼の連携。 「―――くく。見事だ」 突き刺さったナイフを引き抜き、投げ捨てる。 狩られるだけの兎では非ず。よもすれば己が狩られるかもしれぬ。 左目から歓喜の血涙を流す隻眼の剣聖は獰猛に笑った。 「なんですのーー!!あのびっくり老人はーー!!」 「短距離ならあたしも哉くんもできるけどなーー!」 「ゑ」 「あんまり時間は稼げそうにない!哉くん、引き続き後ろの警戒お願い!」 「…………」 「哉くん!!」 「――ッ!ああ、茶子姉悪い!!」 茶子の叱咤により哉太は我を取り戻す。 殺人鬼へと変貌した尊敬する祖父。その事実は哉太に決して小さくないショックを与えた。 『お孫さん?それはお気の毒。あの人はあなたも迷いなく斬るわよ。 大人げない?そうかもね。けれど、事実は事実。受け入れられないなら、死を以って思い知ることになるでしょうね』 脳裏に過る小田巻真理の諫言。「何かの間違いだ」と否定したかった彼女の言葉は現実という刃に変わり哉太の逃避を断ち切った。 己が悪と定めた相手であれば躊躇わず斬れ。その言葉を守り、迅速な判断を下した茶子。 対して自分はどうだ?昔から変わらず姉弟子におんぶに抱っこではないか。 これでは茶子姉を―――。 「勝子サン!!速度を上げてくれ!!また爺ちゃんが迫ってきた!!」 「Geht klar(了解)!」 哉太の言葉で勝子は馬を急がせ、瓦礫を躱しつつ馬は更に速度を上げた。 「勝子ちゃん!!行き止まり!!」 「ええ、知ってますわ!!」 焦りを滲ませた声の茶子に対し、勝子は落ち着いた様子で返答する。 「茶子さん、爆竹はまだ残ってますの!?」 「残り四つ!」 「丁度ですわね!!」 その言葉に茶子は問を抱き、どういうことかと問う前に哉太が茶子だけに聞こえるような声量で答えた。 「勝子サンの異能だ」 手負いの老獣が獲物を今度こそ仕留めんと疾走する。 道中に瓦礫や罅割れはなく、速度は最高速度。 袋小路に追い詰められた獲物を前にしても剣聖に慢心はない。 走りながら若人達の様子を観察する。 火のついた爆竹が四つ茶子からハイカラな少女、哉太へとリレーされる。 先程と同じ手ではあるまい。茶子や哉太が木更津家の阿呆息子とは知性も胆力も違うことは藤次郎自身が一番良く理解している。 なれば、手を打つ前に足を奪う。 刀を下段に構え、腰を落とす。半呼吸置いた後に地滑りの如き疾走にて距離を詰める。 術の名は『這い狼』。対敵が得物を構える前に疾走し、速度を落とさずにすれ違い様に刃を振るい、足を奪う技である。 疾走する様はまさしく狼。哉太は振り返らずに四つの爆竹を遠方へと放り投げた。 一瞬、哉太の奇行に疑問を覚えるが既に技の水月。刃を振るおうとするも、第六感が告げるのは斬り飛ばされた馬の脚ではない。 直感の告げる通りに刀を構えなおすと突如、馬が蜃気楼の如く消え失せた。 代わりに現れたのは破裂寸前の爆竹四つ。藤次郎は二度刃を振るい、導火線を断ち切った。 (異能か……) またしてもしてやられた。だが老人に落胆はなく、あるのは歓喜。 「――やはり彼奴らこそ儂の最大の難敵よ」 きひひ。 切っ先より血を滴らせ、隻眼の悪鬼は歪んだ笑みを浮かべる。 ◆ 『あ。おーい、無事ですか?茶子先輩に……哉太先輩』 『おーっす、碧ちゃん。結構揺れたねー』 『おう……しばらくぶり、碧ちゃん』 夜十時半。古き木工建築物が建つ古民家群。街灯が赤・黒・金の髪の若者たちの姿を照らした。 赤髪の少女――浅葱碧。黒髪の少年――八柳哉太。金髪の女性――虎尾茶子。 それぞれ八柳道場にて剣術を学んだ天才達である。 『その……俺……』 『あ……いいえ!わたしは噂なんて信じてませんよ!哉太先輩が暴力沙汰を起こせるような人じゃないことは知ってますし!』 『そーそー。一年前のことを気にしてるのは古臭いジジババ共に哉くん含めた圭介軍団ぐらい……あ、媚び塚もいたか』 「ケッ」と吐き捨てる茶子と精一杯のフォローをする碧。二人の姿にほんの僅かだが哉太の中に巣食う罪悪感が薄れた気がした。 『で、だ。勢いのまま臨時避難所になった道場から飛び出してきたんだがどうする?俺は商店街で必要なものを買い集めようと思っている』 『まーあたしは役場直行だね。はすみやおハゲ様一号二号も多分何徹もするだろうからあたしも同じくらい仕事しなきゃね』 『わたしはその、哉太先輩と一緒に必要物資を商店街で集めようと……』 『碧ちゃんは山折達のいる高級住宅街に向かった方が……』 哉太がそう言うと、茶子はハァーと深いため息をついて彼の肩に手を置いた。 『哉くんさぁ……失恋した女の子の気持ちくらい考えなよ。圭介にフラれて旅に出ますって書き置きして一週間行方眩ます程繊細なんだよ、この娘』 『秘密にしてって言ったのにぃ……茶子先輩の裏切り者ぉ……』 『あー気まずいよな、それ。だったら俺と一緒に買い出しに――』 『いや、哉くんは圭介達のところに行きな』 茶子の思わぬ提案に哉太は言葉を詰まらせた。一年前の事件は茶子も碧も知っている筈だ。 「どうして」と理由を問う前に碧が口を開いた。 『圭介先輩達が困っていると思います!光先輩とみかげ先輩と珠ちゃんのストーカーもいるから危険だし……哉太先輩が助けに行ってください!』 『ヤクザの事務所もあるしね。圭介と諒吾じゃ手に余ると思うんだわ。こんな可愛い後輩を野獣の巣窟に放り込む訳にも行かないだろ? それに……圭介の奴、意地っ張りだから君が大人になって早く折れてやりなよ』 『―――そう、だな……。できる限り、努力する』 逡巡しながらも茶子の言葉に首肯で返答する。素直な弟分に茶子は優しい笑みを浮かべ、彼の背中を叩く。 『良し。話はまとまったことだし、行こう。その前に……碧ちゃん、ほい。これ買い出しの費用ね』 『あ、ありがとうございま……ええええ!ごごご五万円!?』 『お釣りがあったら好きなもん買いな。模造刀でも買って『ヒノカミ神楽ー』って道場で練習していいよ。あたしが許可する』 『許可するのかよ』 『な……なななななんでそんなことをををを……!』 『いやぁ、ほらさ。あたしもたまに早く来ることがあるんだよ。そしたらほら。碧ちゃんが踊ってた』 『―――――』 『碧ちゃんが死んでるだろ。止めて差し上げろ』 白目を剥いた碧を揺り起こす。そして改めて茶子が二人に向き直り、茶子が号令を出す。 『じゃあ、あたしは役場で仕事。二人はそれぞれ役目を果たしたら樹爺さんと先生のいる道場に集まってジジババ共の世話な』 『うっす』『はい』 『それじゃあ解散!』 『ところで……わたしもなんですけど、どうして皆木刀を、哉太先輩は何で刀と脇差持ち出しているんですか?』 『自衛用』『正当防衛用』 『わたしが言えたことじゃないですけど物騒ですよ。哉太先輩に至っては警官に見つかって職質受けたら一発アウトです』 ◆ 「これからどうしますの!?この距離ではあのお●ックモンスターにすぐに追いつかれますわよ!!」 異能によるトランスポートの先――遮蔽物の少ない大通りにて疾走を続ける美馬の馬上にて勝子は二人の剣士に問う。 彼女の言葉通り、異能により強化された藤次郎の身体能力及び索敵能力では彼らが補足されるのは時間の問題であろう。 決断をすべく茶子が口を開く前に、哉太が声を張り上げた。 「俺が爺ちゃんの相手をするから茶子姉と勝子サンは諒吾くんの家に向かってくれ!!茶子姉、諒吾くん家分かるよな!?」 「分かるけどッ!あれは多分特殊部隊員よりも強いよ!どうするのさッ!?」 「俺の異能は自己再生の異能だ!急所さえ守れば十分に勝ち筋はある筈だ!」 困惑した声を絞り出す茶子に向かって話す。そして一呼吸置いた後に再び哉太は声を上げた。 「爺ちゃんの手足を奪ってでも必ず止めて見せる!全て終わった後に法の裁きを受けさせるんだ!!」 ほんの一瞬だけの沈黙。勝子と茶子に浮かぶ感情は納得か、それとも呆れか。 「そうですわね!!残りの余生は豚箱で臭い飯を食わせましょう!!」 「……ま、哉くんならそういうと思ったよ」 一番に口を開いたのは勝子。納得したというような声で哉太の言葉に肯定の意思を見せる。 次いでため息と共に言葉を紡いだのは茶子。こちらは少しだけ呆れているような声色。しかし言外に了承の答えを返した。 「それじゃあ降りるから馬の速度を―――」 「ちょおおおお!!もうすぐウマミさんがご退去されますわ―――!!?」 驚愕の声を上げながら、勝子は馬の手綱を引いて、速度を減速させる。 しかし完全な静止に間に合わず、午前七時を迎えると同時に馬の姿は掻き消え、三人の身体が宙に投げ出される。 「きゃっ!」「くっ!」「うおっ!」 三人は地面へと転がる前に受け身を取り、肉体へのダメージを最小限に抑えた。 素早く体勢を整えて工法を確認するとこちらへと疾走してくる老人が一人。いうまでもなく藤次郎である。 もう一刻の猶予もない。 「――――ッ!茶子姉!勝子サン!後は頼んだ!!」 背後の二人に叫んで、哉太は悍ましき剣聖へと疾走する。 死へと向かっている自覚はある。最悪、相打ちになってでも止めなければならない。 背後の大切な人への未練を残しながら、打刀を構えて若き剣士は師へと立ち向かう。 ◆ 草木も眠る丑三つ時。山折総合診療所の地下空間にて懐中電灯を手に持った男が二人、足元に警戒しながら突き進んでいた。 一人は中年に差し掛かろうとする逞しい体つきの男。つい先日、山折村の村長になった男、山折厳一郎。 もう一人は中年を既に通り越して老人へ変貌する手前の長身痩躯の上品な顔立ちの面影を残す男、八柳藤次郎。 二人は山折村の歪みを探るべく、田宮院長へと交渉し、この日の深夜に限り診療所の地下施設を探索する許可を得たのである。 『なあ、藤次郎先生。こんな黴臭いところに山折村の歪みって奴が本当にあるのかよ』 『ああ。蛇茨の一族から聞いた話によればここに山折村の禁忌が眠っているらしい』 『胡散臭えな。総一郎辺りならば飛びつくかもしれんが、眉唾者だろ。遂にボケたか、爺さん』 『生意気抜かすな、厳一郎』 『誰のおかげで交渉が進んだと思ってやがるんだ』 『そこはお前に感謝している』 『だったらもっと敬ってもいいんじゃないか?』 『昔からお前は煽てると調子に乗る性分であろう。いつまで若造のままでいるつもりだ』 『へいへい。先達様のありがたいご忠告、しっかりと心に刻みましたよ』 『はぁ……まあ良い。探索を続けるぞ』 コツコツと草履と革靴の足音を響かせ、施設内を探索する。 鍵のかかった扉があれば、院長より借りたマスターキーを使って開錠していき、部屋内を調べる。 しかし、出てくるのは綿埃と錆びた実験機材、そして住み着いた溝鼠だけであった。 その度に藤次郎は大きなため息をつき、厳一郎は大あくびをする。 施設内の探索が粗方終わり、残りは一部屋のみ。 『むぅ……』 『何も無かったろ?山折村は昔からド田舎でしたで終了。めでたしめでたし』 『そう……かもな。すまんな、厳一郎。老人の戯言に付き合わせてしまって』 『いきなりしおらしくなるなよ爺さん。餓鬼の頃に戻ったみたいで割と楽しかったぞ』 『そうか……。ところで、明日の仕事はどうするつもりだ?』 『嫌なことを思い出させるなよ……。残りの仕事はせいぜい書類整理くらいだし、総一郎に頭を下げて代理を頼んどいたから問題ない』 『要領がいいことはお前の美点ではあるな』 『だろ?』 普段の村長としての威厳を投げ出し、昔のように軽口を叩く厳一郎に苦笑する。 そして、マスターキーを使用して最後の部屋の扉を開けた。 『ここは……書庫か……?』 『みたい……だな』 顔を見合わせ、二人は改めて部屋の中を懐中電灯で照らす。 そこには本棚にぎっしりと古書が敷き詰められており、黴の臭いがするものの、保存状態はそこまで悪くないように思える。 『確認するぞ』 『全部って訳じゃ、ねえよな』 『それらしい本を見るだけでいい。時間も時間だからな』 藤次郎は本棚からラベルのはがれた本を手に取り、中身を確認する。 厳一郎も藤次郎に倣い、適当な本を手に取り、ペラペラと頁を捲った。 だが、そこに記されていたのは山折村の原罪そのもの。 紙を捲る音がする度に脳に刻まれるのは人の悪徳。山折村の罪科そのもの。 額から汗が吹き出す。喉の奥から掠れた声が漏れる。 本を読み終え、次の本に手を伸ばす。そこに書かれていた事柄も山折村の悪意。 ちらりと厳一郎の様子を見る。気怠げな雰囲気は鳴りを潜め、目を見開いて山折村の歪みに目を通している。 気づけば腕時計は朝の七時を指していた。田宮院長と約束した時間は残り僅かだ。 藤次郎と厳一郎。どちらの顔色も青褪めている。沈黙が書庫を支配する。 『……ここにある本、持てるだけ持って行って焚書するぞ』 『……だな』 先に口を開いた藤次郎に厳一郎は機械的な相槌を打った。 山折村の歪み。それは単純なものではない。複雑怪奇に絡み合い、歪みが歪みを読んでいる。 村の存続を願うのならば目を逸らすこと。村民の幸せを願うのならば山折村を廃村へと追い込むべきもの。 『……先生、どうするつもりだ?』 『……分からん』 二人の重い足取りが地下施設の中に響く。 藤次郎にとっても厳一郎にとっても山折村は愛すべき故郷。 特に藤次郎にとっては「古き良き村」として深い愛着を持っていた。 『……俺は、山折村を存続させるべき……だと思う。総一郎も、剛一郎も一緒に育った村だ』 厳一郎の選択は歪みの封印。藤次郎も、愛する妻や息子夫婦たちのためにもそうすべきだと感情で考えている。 しかし、理性では公表し、廃村へと追い込むべきだと思考している。 だが、新しき村長である山折厳一郎の意思はどうなる?そう考えると、理性を追いやってしまう。 『厳一郎、今宵のことは他言無用だぞ……』 『……分かっている』 力なく頷き、厳一郎は藤次郎の後ろを追従する。 山折村の歪み。一つ一つならば都市伝説、昔話などと笑っていられるもの。 ともすれば新たなホラースポットとしてネタにできそうなものである。 しかし、その歪みを複雑に繋げ、絡ませた人物。確認した書物にて必ず記されていたとある人物。 彼の名は―――。 ◆ 「―――ふむ、来たのは貴様だけか。茶子はどうした?」 「………爺ちゃん、何でこんな馬鹿げたことをしてるんだ……」 亡者蔓延る地獄街。鉄錆の臭いを運ぶ微風が立つ生者二人の身体を撫でる。 片や格式張った帰り血塗れの洋装を纏う老紳士。片や平服を所々己の血で染めた老紳士の面影のある少年。 歓喜と苦渋。老人と若人。師と弟子。相反する命題を以って祖父と孫は対峙する。 「なに、疑問に思うことはあるまい。我が悦楽のためよ」 「訳……分かんねえよッ……!!」 「未熟な貴様には未来永劫分かるまい」 ぐにゃりと嘲りに歪んだ表情が哉太の眼に焼き付く。 その姿に一瞬、数時間前に相対した魔人気喪杉禿夫の粘ついた笑みを幻視した。 「喜べ、哉太。貴様に手土産をやろう」 悍ましき狂笑を浮かべたまま、藤次郎は後ろ手に隠していたある物体を突き出した。 短く刈り込んだ黒髪。太い眉に一重の瞼。下膨れした頬。見間違うはずもない、幼馴染の親友の顔。 「諒……吾……くん……!」 山折圭介の子分にして八柳哉太の弟分。 心の奥底では、また六人で笑い合いたいと願っていた。 その願いはもう叶うことはない。 目を見開く哉太を他所に悪鬼は嗤い、手に持った頸を前へと放り投げる。 そして先程とは打って変わって穏やかな笑みを浮かべて哉太の方へと一歩、一歩と足を進める。 ぴたり、と諒吾の頸の前で悪鬼は足を止める。振り上げられる足。鉄杭の如き震脚が地を震わす。 諒吾の頭蓋が砕け、脳や血が藤次郎の草履と黒い足袋を濡らす。 「儂はこの地獄にて斬った頸の数など数えておらぬ。逃がしたのは一つ。嵐山岳が逃した小娘一人だ。 この地にいる人間は殺す。来訪者も住民も特殊部隊の人間も、例外は誰一人認めぬ」 血濡れた切っ先を愛する家族へと突きつけ、鏖殺を宣言する。 分かり切っていたことだが交渉の余地はない。 奥歯が砕けるほどに口を噛み締め、握り締めた柄から血が滲み出る。 前を見据え、聖刀を構える。獰猛な笑みにて対敵も同様に妖刀を構える。 一条の風が吹く。それを合図に二人の武芸者は同時に駈け出した。 ◆ 「うぷ……げェ……!」 有磯邸より少し離れた小路。崩れたコンクリートブロックの陰で天宝寺アニカは嘔吐していた。 朝食として食べた菓子パンを全て吐き出し、荒い息を吐く。壁に手を付いて立ち上がろうとするも、立ち眩みを起こし、座り込んでしまう。 (さっきよりはだいぶ楽になったけど……まだ、きついわね……) 彼女の体を蝕むのは夾竹桃の毒。宇野和義の策と己の失態が重なった結果である。 その毒はアニカの顔全体に巻かれた包帯――犬山はすみの祝福を受けたもの――により回復しつつあった。 このまま安静にして時を待てば快復するであろう毒だが、アニカの頭にはその選択肢はない。 (はやく……リンを見つけなくちゃ……!) 殺人を犯した幼き少女。彼女は保護者である虎尾茶子を探してこの危険地帯を彷徨っている。 リンの無事も気になるが、それ以上に異能と彼女のパーソナリティが引き起こすかもしれぬ事象に猛烈な不安を感じる。 もしアニカがリンに異能を教えてなければ殺人の咎を負うことはなかった。 もしアニカが宇野和義を見誤らなければ二人ではすみ達のところへ戻ることができた。 しかし、そうはならなかった。 アニカはリンに異能を教えたせいで、幼い少女の選択に「殺人」という項目が追加された。 そして、その殺人がなければ宇野和義はアニカを殺し、リンを弄んでいた。 堂々巡りになる思考。その経路でガリガリと削れる探偵としてのプライド。否定される自分の正義。 その事実は未だ成長過程にある少女の精神を容赦なく抉った。 もうこれ以上、失態を犯せない。 弱った精神が焦りを生み、衝動に突き動かされるまま、少女は矮躯を動かす。 スケートボートの上にしゃがみ込み、手で地面を蹴ってゆっくりと走り出す。カラカラと音を立て光差す抜け道へと走り出す。 目指す先はアニカ自身にも分からない。 ◆ 血風が嵐の如く吹き荒れる。業物と鈍がぶつかり合い、火花を散らす。 嵐の中心にいるのは八柳哉太と八柳藤次郎。風を生み出すは八柳新陰流の剣。 破壊を生み出す輪舞の中には何人たりとも侵入を許さない。強引に割り込めば待つのは死。 「―――ッ!」 「―――ククク……」 少年は苦悶の表情で顔を歪め、老人は喜悦の表情で顔を歪める。 藤次郎の異能は『剣聖』。己が刀剣と認めたものを身に着けた時に限り、肉体的なギフトを授ける。 哉太の異能は『肉体再生』。己の治癒力を引き上げ、死を遠ざける。 この闘争において必須であるものは肉体的な強さと殺人の技術。 平時であれば技術や全盛期に近い肉体を持つ哉太が圧勝するが、異能によるブーストが若さを軽々と追い越す。 藤次郎の左目は潰れているが、魔人とも称すべき強さにおいては些事である。 嵐の如き藤次郎の剣に哉太は一方的な防戦を強いられていた。 瞬きでもしようものなら、その瞳は未来永劫開くことはないであろう剣舞。 悪鬼の狙いは哉太の異能を知ってか知らずか急所。時折牽制を入れつつ猛攻を続ける。 しかして、藤次郎は哉太との斬り合いにて違和感を感じる。 (此奴、既に儂の剣筋を見切り始めておる……!) 全身を膾切りにされながらも哉太は藤次郎の刃に追従しつつあった。 己の第六感をもすり抜けんとする恐るべき才能。最強の門下生たる虎尾茶子にも匹敵する。 刃を折ろうにも己の刀といくら斬り結んでも刃こぼれ一つしていない業物。 このまま持久戦を続ければ、何れ己の頸にも届くである。 しかし、哉太は藤次郎には決して届くことはあるまい。武芸者として不可欠なものが一つ、欠けている。 「貴様、未だ迷っているな」 「――――ッ!」 八柳流『登り鯉』にて哉太の剣は防がれ、肘鉄によって体制が崩される。しかし才能のなせる業か。返し刃は首に届かず逸らされる。 一瞬の空白。しかして振り下ろしを行えば、それは防がれるであろう。故に手は一つ。 「この期に及んでまだ儂を敵と認識しておらんのか!!青二才!!」 激昂と共に回し蹴りが哉太の脇腹へと吸い込まれていく。 カハッと哉太の口から血の混じった空気が吐き出され、後方に飛ばされた。 地を滑りつつも哉太は体制を整えようとするものの、既に遅し。 藤次郎の縮地術を以てすれば瞬く間に詰められるであろう距離。 「腑抜け」 言葉と共に地を蹴る。何とも詰まらぬ戦であった……独り言ち、刃を振るう直前。 哉太を守るように唐突に表れたのはコンクリート塀。 衝突する寸前に静止し、剛剣にて石を切り裂いた。 破壊された先には哉太はおらず。その場所にあったのは小さな石礫。 「全く……任せておけと言いながら、何ですの?この体たらくは」 呆れの混じった少女の声。そのすぐ傍では驚愕で目を見開いた哉太の姿。 「諒吾くんの家に言ったんじゃないのか……?」 「それは茶子さん一人で行くことになりましたわよ。陽動して負傷者と距離を離すのであれば自分だけでいいとおっしゃってましたわ」 「そうか……茶子姉ならできそうだな……」 豊満な胸を張り、不敵な笑みを浮かべる少女に安堵した様子で話しかける哉太。 藤次郎は察する。この少女が己の追跡を振り切った立役者であることを。 金属バットを藤次郎へと向けて少女は高らかに笑い、宣言する。 「私の名は金田一勝子!誇り高き金田一姉妹の頂点にていずれ日本を導く女!お●ックジジイには臭い飯を食わせてさしあげますわ!!」 ◆ 『―――えーと…これで現在、山折村に潜り込んでいるネズミ共の報告書は以上っす』 『ご苦労、Ms.Darjeeling……と言いたいところだが、何か隠しているのではあるまいな?』 『疑り深いですねーー。流石殺人鬼匿って店を経営してるだけのことはあるわ』 『軽口はいい。お前の口で確認させろ』 『はいはい。エージェント中学生は学校では陰キャムーブかましてボッチ。合法ロリ教師も自宅ではここ数日は写真眺めてるだけでした。 まあ、二人とも研究所については何も知らないみたいでしたよ。調べるつもりもなさそうだし。 それから来週村の祭りがあるみたいで、特別ゲストでジャック氏や著名な霊媒師の方々が来るみたいですわ』 『……まあいい。ふざけた態度はともかく、貴様の集めた情報だけは今まで正確だったからな。そこだけは信用しよう。』 『そいつはどーも。浅野さん、あたしが知らない間に八柳道場のお孫さんに責任をおっ被せたことを許すつもりはないからな』 『勝手に吠えていろ。蛇茨と関わりのある貴様と言えど所詮捨て駒だ。機密保持を遵守し、せいぜい我々に尽くせ』 『チッ……分かってますよ、浅野さん。ここ一年でアンタ以上に働いたんだ。ボランティアじゃないんだからしっかりと報酬は払えよ』 ◆ 先週の浅野雑貨店でのやり取りを思い出す 天原創は日野珠を始めとしたクラスメートと友好関係を築いている。。スヴィア・リーデンベルグは友人の手がかりを探り続けている。 上記の情報を隠して報告した。愛しい弟分の心に深い傷を負わせた当てつけだ。 天才二人は優秀であるが辿り着けまい。辿り着いたとしても「彼らは想像以上に優秀で裏をかかれた」とでも言い訳すれば納得はできないが理解はする。 機密保持の契約は一応完璧に遵守しており、徹底的な理性で動いている浅野雅は生存させるメリット考えてこちらを消しに来ることはない。 虎尾茶子は報酬を受け取るまでは、未来人類発展研究所山折村支部において必要不可欠な人材なのだから。 報酬を受け取った後に消されるということもない。信頼商売である以上、口を割らなければ最低限それは保障されている―――。 「―――筈なんだけど監視があるしVHが起こった以上、遵守も糞もないよなぁ……」 そうぼやきながら茶子は住宅街を走り抜けていた。 彼女の目指す先は特殊部隊員の待つ湯川邸――ではない。 VH発生前にて知り得ている情報。鳥獣慰霊祭に招かれた特別ゲスト。意図的に流した高級住宅街の危険人物の情報。 そして、役場にて観察した『彼』のパーソナリティ。 VHが起こらなければ危険人物から友人を守るために使っていたであろう人物。しかしVHが発生した以上、その役目は果たせずに終わった。 前提は崩れ、自身の復讐は前倒しになった。自分に必要なものは『彼』自身ではない。だが怨敵絶殺のためには『彼』が必須だ。 自身や友人の美貌を使って約束をこじつけていたものの、『彼』がいつまでもこの地に縛り付けられている保証はない。 だが―――。 「アあ”ああああ~………」 右手に銃を持って彷徨っている灰髪の男。想い人には及ばぬものの整った顔立ち。髪型があの子に似ているのが少し腹立たしい。 その姿を視認し、虎尾茶子は口角を釣り上げた。 ◆ 八柳血風録。その最中に現れたるは誇り高き淑女、金田一勝子。 彼女の出現により血風録は第二幕が始まる。 「哉太さん!」 「ああッ!!」 哉太と藤次郎の斬り合い最中で、勝子の声が響く。勝子の指から砂粒が弾かれ、哉太と藤次郎の間に挟まれる。 藤次郎は拡張された第六感、哉太は信頼を以て剣豪は互いに後ろへ下がる。 直後、現れたのは地震によりへし折られた街路樹。強化された藤次郎の膂力であるのならば背後の孫ごと断ち切るのは容易い。 ひらりと樹木から頭上に葉が落ちる。頭上数センチのところで葉が自家用車へと変化する。 いくら藤次郎の腕力と言えど、これを破壊するには力が足りず、当然これも読み切り後方へ跳躍する。 乗用車からガソリンが漏れる。目を細めて勝子の姿を確認すると、マッチに火をつけていていた。 だが、藤次郎はあえてガソリンの上へと立つ。砂粒を弾き、再び勝子の転送が実行される。 しかし、火の着いたマッチは出現しない。勝子は異能による転送を行わないことを読み切っていた。 勝子と藤次郎の間には遮蔽物はない。藤次郎の脚力を以てすれば一息で詰められる距離である。 読みが外れたことに動揺するが、すぐに砂粒を指に乗せ、弾こうとする。 藤次郎は勝子に肉薄せんと、後ろ足に力を入れる。縮地を使う寸前に背後から気配を感じ、振り向きざまに刀を振るう。 一瞬、目に映ったのは若き剣豪、八柳哉太。藤次郎がその首を断ち切る前に哉太の姿が消え、瓦礫が現れる。 藤次郎の刀で瓦礫が両断される。ほんの僅かな、一拍ほどの隙。 藤次郎の脇腹に鈍痛が走る。視線を下げると金属バットを振り被った勝子の姿。 未来予知にて次の手が予測される。しかし、体勢を崩した藤次郎にできることはない。 せめてもの足掻きとばかりに勝子の頭上に刀を振り下ろすが、彼女の背後には腰を落とした哉太の姿。 藤次郎の鈍が哉太の業物に受け止められる。勝子はすぐさまその場を離脱する。 受け止められた刃が滑り、受け流され、その勢いのまま剣がかち上がり、右腕に到達し、一気に降り抜かれた。 「ぐ……おおおお……!!」 呻き声と共に藤次郎は一歩下がる。そのすぐ傍に彼の右腕が落ちる。 哉太の使用した技は八柳流『登り鯉』のアレンジ。体勢の崩しは勝子が実行した。 しかし、藤次郎の左手には愛刀が健在。断ち切られる瞬間に持ち手を変えたのである。 第六感による未来予知への対策。その方法は退路を断ち、行動を限定させる。どうしようもない状況へと持っていくのだ。 「……これで終わりだ。爺ちゃん」 「……貴方のしでかしたことは決して許されませんわ。死を迎えるその時まで、悔い続けなさい」 中腰になり、荒い息を吐く藤次郎へと哉太は切っ先を向ける。勝子は腕を組んで悪鬼へと厳しい目線を投げていた。 何と甘いことか。たかが片腕を落とした程度で彼奴等は勝利宣言をしている。 「く……クククククク……!」 藤次郎は天を仰ぐ。希望にあふれた若者二人に嘲りの声が漏れた。 悪鬼の哄笑に二人の身体がびくりと動く。 「もう勝負はついたとでも戯言を吐いたとは……阿呆どもめ…!まだ立ち合いは終わってはおらぬ!」 全身から発せられる剣気が二人の肌に突き刺さる。 左目の右腕を失いつつも未だ魔人の闘争心は衰えを見せず。古き剣聖が求めるは屍山血河の死合のみ。 「―――哉太さん!」 「―――分かってる!」 再び刀を構え、縮地術にて藤次郎の眼前へと哉太は肉薄した。 聖刀と妖刀。再び火花を散らすが、片腕を断ち切られた影響か、今度は哉太に軍配が上がった。 しかし、その表情からは先程まで限界まで張り詰めていた気迫が僅かながらに薄れていた。 遠方にいる金田一勝子も同様。様子を観察しながらも余裕が見える。 二人の油断に藤次郎は密かにほくそ笑んだ。 再び斬り合いが始まる。刃が音を鳴らすたびに剣風が舞う。しかし、先程のような勢いは見られない。 藤次郎は哉太以上に弱っている。藤次郎と哉太の身体能力は未だ大きく差を開いているものの、技術にて対応はできる。 一瞬、勝子と哉太の視線が混じる。その隙を藤次郎は見逃さなかった。 哉太が押し切られ、後ろに半歩ほど下がる。同時に勝子の指に砂粒が乗る。 彼らは藤次郎の異能について九割ほど正しい考察をしていた。その上で最善手を尽くしていた。彼らは慢心せずに全力を尽くしていた。 しかし一割の考察の隙間。そこに人斬り鬼がぬるりと入り込んた。 「――――カッ!!」 藤次郎の全身から放たれる強烈な剣気。気迫に押されつつも彼らの行動に支障はない。 指から砂が弾かれる刹那の時間。その合間を縫うかのように藤次郎の鈍が凄まじい速さで振るわれた。 転送する寸前で勝子の見えざる手が砂粒を掴む。 その手が消える寸前、斬撃が奔る。 見えざる手が裂けていく。裂けていき、その手が真っ二つに裂けていく。 斬撃は止まらず、砂粒を発射した右腕を中指から裂き、肩まで到達した。 結果、勝子の右腕は文字通り「真っ二つ」になる。 剣聖の見えざるものの断絶。それは異能使用の第三の腕にも適用される。 一瞬の空白。そして―――。 「う……あああああああああああああああああああああああッ!!!」 「勝子サン!!」 痛みに絶叫する勝子。その声に藤次郎への注意が一瞬逸れる。 当然藤次郎はその隙を見逃すはずもなく。 「――――貴様は何も学ばぬな」 「―――くッ!!」 藤次郎の『天雷』を哉太が受ける。勢いを殺しきれず、哉太はたたらを踏んだ。 剣気の揺らぎを見逃さず、受け流しが失敗と見るや藤次郎は身を翻して足を回し、踵を哉太の脇腹へと叩きつけた。 「ガ……!」 ミシリと骨が悲鳴を上げ、衝撃が内臓に伝わり、吐血した。 哉太の長身が一瞬宙を浮き、凄まじい速さでコンクリート製の門塀を、ガラス窓を突き破り、とある民家内まで吹き飛ばされた。 「…………」 哉太が吹き飛ばされた方向とは真逆。チラリと異能を切り裂いた少女の方へと顔を向けた。 這いながらもこの場から離脱する勝子の後ろ姿。 あの傷では自分が手を下すまでもない。亡者に見つかればそのまま冥府へ旅立つであろう。 敗走者から視線をを外し、飛ばされた目下の最大の難敵へ向けて足を進めた。 「――――ガハッ!……ゲホ……ゲホ……!!」 とある民家の和室。 剣士は血を吐きつつも急いでガラス片の布団からすぐさま起き上がる。 全身の裂傷。折れた肋骨。蹴撃による内臓の損傷。受けた傷は決して浅くはないものの、行動に支障が出ることはない。 しかし、彼の精神はそうはいくまい。 「―――勝子サン……!」 脳裏に過るのは倒れ伏す仲間の姿。藤次郎の異能を見誤った己の失態に違いあるまい。 一刻も早く手当てをしなければ勝子の命が危うい。だが、藤次郎がその隙を見逃すはずもあるまい。 浮かぶ最悪の結末。それをすぐさま振り払い、彼女の元へと駈け出そうとするが―――。 「―――どこへ向かうつもりだ」 玄関から聞こえる厳かな老紳士の声。沈黙を破るかのようにミシリミシリと鳴るフローリング。 刀を握り締め、招かざる来客の来訪へと備えた。 「―――まだ、死合いは終わっておらぬぞ、哉太よ」 廊下よりぬっとと妖怪のように顔を出す血濡れの剣鬼。 緩やかに歩みを進め、哉太の前に立つ。互いの水月まで凡そ数歩で足りる距離。 「女の陰に隠れ、使い捨てて生き残った気分はさぞ心地よかろう」 藤次郎は哉太の無様をあざ笑う。その言葉に少年は僅かに視線を下げる。 見え透いた悪鬼の挑発。しかし、むざむざと生き延びてしまった少年にとっては堪えた。 「―――爺ちゃん、婆ちゃんを殺したのは……本当……なんだな……」 力ない言葉で尊敬していた師へと問いを投げかける。 今更そんな下らない問いを投げる孫の心情など露知らず、藤次郎は鼻で笑い、解を投げた。 「耳まで腐り落ちたか。何度でも言うぞ。あの愚かな老婆は既に黄泉へと旅立ったわ。 盆暗な貴様の父も、貴様と言う失敗作を孕んだ母も、剣の道より逃げ出した腑抜けの浅葱樹も、道場に逃げだ者共も全て斬り捨てたわ」 罪科を嬉々として語るたびに哉太の全身から気が抜けてくるのを感じる。 「見込み違いか」と一瞬過るが、藤次郎の独白は続く。 「そうさな、樹も一人で逝くのは心細かろう。孫の碧も直に送ってやる。 孤児を武の道へと誘った虎尾夫妻も待つ地獄へな。冥府への旅路も賑やかな方が良い」 消えかかっていた哉太の気が完全に消える。県の構えが解かれ、己へと向けられていた視線が下がる。 それでも構わず、老人は歪んだ笑みを見せながら語り続ける。 「それと茶子も殺そう」 ぴくり、と哉太の肩が反応する。 「お?どうした?彼女の命が惜しくなったか?安心せい、貴様の首級の横に彼奴の頸を並べてやるわ。 貴様が何も知らぬ頃、儂がヤクザ共に売り飛ばした穢れた娘御なれど、首二つを眺めながら飲む酒はさぞ美味かろう」 今の己は哉太にとっての絶対悪。彼が望む「ヒーロー」であるのならば、何らかの反応をしてほしいものだ。 しかし、返ってくるのは沈黙。落胆し、剣を構える。 「ではな、未熟者よ。無知蒙昧な己を呪い、地獄に落ちるがいい」 地を揺るがす震脚。僅か数歩ばかりの縮地と同時に袈裟懸けに鈍が振り下ろされる。 虚しき勝利を手にする刹那。少年の腕が動く。 振り下ろされた剣が円月を描いた動作にて巻き取られる。続く手を未来予知の異能が読み取り、退避が間に合わぬと判断させる。 時を待たずして鳴らされる地面。振りかぶられる剛剣『天雷』。 それを『空蝉』にて受ける。しかし、剣から伝わる衝撃を流しきれず藤次郎にたたらを踏ませた。 間を開けずに振るわれる下段からの斬撃。それを予測し、後方へと飛ぶことで回避した。 藤次郎は改めて哉太の瞳を覗き込む。 眼には忌まわしき悪鬼への殺意がにじみ出ており、気配そのものも先程の腑抜けた男とは思えぬほどに憎悪が噴き出している。 「虎尾茶子」という逆鱗が、八柳哉太の武芸者として不可欠なものを生み出した。 その事実に悪鬼は嗤い、己の絶殺を望む存在へと言葉を投げかける。 「かかってこい、ヒーロー」 「ぶち殺してやる、糞爺」 ◆ 「くっ……あ……!!」 縦に真っ二つに裂かれた右腕を抑え、金田一勝子は血の線を引きながら地面を這って進んでいく。 肉と骨は断たれ、上腕骨頭にてギリギリ繋がっている状態。直ぐに処置しなければ出血多量で死ぬ。 激痛を堪えながらも少しずつ扉の拉げた。民家へと距離を縮めていく。 あと僅かで玄関へと到着する。その時、脳に響くのは「■■をたすけて」という天啓じみた救援要請。 なぜか逆らうことができず、植え付けられた使命感の赴くままにその方向を見ると、じっとこちらに顔を向ける赤い服の童女。 その数メートル先にはゆったりとした動きで彼女に迫るゾンビ達。 「あの子を守らなければ」自身の重傷を無視し、手頃にあった石を掴んで自分と石をマーキングする。 童女の進行方向と反対側へと石を投げ、地に着いた瞬間に異能を発動させて場所を入れ替える。 しかし、ゾンビを集めることはできない。彼らを収集する方法はこの手の中にある。 スカートのポケットからスマートフォンを取り出し、アラームを鳴らす。 すると、ゾンビ達が童女への追跡をやめ、こちらへと向かってくる。 「良かった……あの子を守れましたわ……」 安堵の息を漏らし、迫り狂うゾンビ達をボヤけた瞳で見据える。 ゾンビ達の手が勝子へと迫る。その刹那に届く幼子の声。 「リンをまもってくれてありがとう、おねえちゃん」 ◆ 血風録の第三幕の規模は最小。しかしどの演武よりも苛烈を極めたもの。 血風と共に砕けた家具の破片が宙を舞う。閃光と鮮紅が幾度となく重なり合い、激しい二重奏が鳴り響く。 「オオオオオッ!!」 「―――――ッ!!」 憤怒に塗れた少年の雄叫びと共に振るわれる絶殺の刃。それを捌き続けるのは手負いの悪鬼。 先程とは打って変わり、命の狩人は八柳哉太。逃げる獲物は藤次郎へと変わっていた。 それでも藤次郎には焦燥はない。寧ろこの状況を愉しんですらいる。 ヒトの限界値に限りなく近づいた魔人共の乱舞が続く。 老紳士の全身が刻まれ、着用していたスーツが襤褸へと変貌し、至る所から血が垂れる。 しかし、老紳士もただ切り刻まれている訳ではない。 返す刃が少年の頭を叩き割らんと振り下ろされる。少年はそれを躱しきれず、右耳が付け根から吹き飛ばされる。 だが際限なく噴き出す憎悪は少年に痛みを感じさせず。絶対零度の殺意を持ったまま少年は老人に反撃する。 「ヅ……ああああッ!!!」 「ぐ……おおおおおッ!!!」 妖刀と聖刀。再び重なり合い、哉太と藤次郎の剣舞は鍔迫り合いに持ち込まれる。 「くぅぅぅぅッ!!」 「しぃぃぃぃ……!!」 片腕なれど未だ藤次郎の腕力は健在。異能による身体能力の爆発的上昇は若人の力を尚も凌駕する。 徐々に押し込まれる哉太の身体。前進する藤次郎の身体。 ふと、唐突に哉太の力が一瞬緩まる。押し切ったという訳ではない。それを第六感と己の経験が判断する。 見ると鍔迫り合いをするのは哉太の右腕。もう片方の手は脇差の柄に添えられている。 弾丸のように発射される脇差。狙いは藤次郎の右眼。 「―――クッ…!!」 咄嗟の判断で顔を動かし、刀刃は既に不要となった左目へと吸い込まれる。 突き刺さる脇差。だが脳には到達していない。 崩される藤次郎の体勢。痛みにより生まれた刹那。緩む藤次郎の腕力。 「う……おおおおおおおッ!!!」 雄叫びと共に哉太の業物が藤次郎の身体を鈍ごと吹き飛ばす。 勢いよく半壊した箪笥へと衝突する。藤次郎の口から酸素と共に鮮血が吐き出される。 哉太にとって絶殺の叶う機会。藤次郎にとっては絶命の危機。 だが、若き武芸者の追撃は訪れることはない。 「――――ッ……フゥゥゥゥゥ……フゥゥゥゥゥッ……!!」 少年は身体を崩し、刀を杖に震える身体を起こして片膝立ちする。 折れた肋骨。損傷した臓腑。尽き欠けているスタミナ。それらのマイナス要素を抱えた上で限界を通り越した肉体の酷使。 藤次郎と互角に渡り合える能力と引き換えにその振り戻しはそれなりの代償を哉太の肉体へと求めた。 限界を超えた肉体に鞭を打って立ち上がり、打刀を握る。そして忌むべき邪悪を見据える。 「ククククク……きひひひひひひ……」 藤次郎は嗤う。己を追い込んだ哉太を。己を仕留め損なった愛弟子を。 藤次郎は笑う。そして確信する。己の勝利を。 「あと一手……であったな」 言葉を返す気もないのか。はたまた返すことができぬほど活力を消耗してしまったのか。 額から汗を流し、荒い呼吸を繰り返す哉太を見据え、藤次郎は宣言する。 「認めよう。貴様は我が生涯において最大の敵であることを。 そして受けよ。我が生涯における最高最後の一刀を。地獄に持って行け、我が秘蔵の術を!」 ◆ 「く……うぅ……」 スケートボードを片手に持ち、額に脂汗を浮かべながらも忙しなく首を動かし続けるリンを探し続けるアニカ。 激しい運動を抑えたお陰か。吐き気や眩暈は落ち着き、小走り程度の速度であるならば可能になった。 「アラームの……音?」 耳に届く電子音のアラーム。この辺りのゾンビの数が少なくなっているとはいえ、救援信号として大きな音を鳴らすのは危険だ。 ゾンビから襲われぬために避雷針として正常感染者が流していると考えられた。 だが、もしリンが鳴らしているのだとしたら? 彼女は幼くも年齢にそぐわぬ知能を有していることが彼女とのやり取りで分かっている。 しかしリンは感情の制御ができぬ幼子。茶子を待ちきれず、探してもらうために拾ったスマートフォンを鳴らしているものだとしたら? 呼び寄せられるゾンビ。異能を行使しても通用せず血肉を貪られる幼子。 最悪の結末が頭を過ぎり、アニカは音の方へと駈け出した。 「アニカおねえちゃんもチャコおねえちゃんをさがしてくれるの?」 「Yeah……。危ないから一人で勝手にどこかへ行っちゃダメよ……貴女が危ない目に会ったらMs.チャコに合わせる顔がないわ……」 「……ごめんなさい……」 アニカの軽い叱責を受けて申し訳なさそうにリンは俯いた。 当然の結果というべきか、リンはアラーム音の近くでキョロキョロと辺りを見渡しながら歩いていた。 彼女の心情を読み取り、説得を試みると以外にもあっさりとアニカの同行を許してくれた。 「…………」 ちらりとアラームが鳴り響いている方向を見る。 投げ出されているスマートフォン。そのすぐ傍で何かに貪りついている三体のゾンビ。 ほんの僅か。ほんの僅かだがアニカの脳内に現れるエマージェンシー。 リンの肩を叩いて、アラーム音が鳴り響く方向へ指を差す。 「リン……あそこに誰がいるか分かる……?」 「わかんない」 あっさりとした返答。今は彼女を問い詰めるべきではない。感じる違和感を敢えて無視する。 ゾンビ達に気づかれぬよう、リンの手を引いてゆっくりと歩を進める。 距離を縮めるごとに頭の中で大きくなる危険信号。やかましい程鳴り響く心臓の鼓動。 最後の一歩を踏み出す。 地べたに投げ出されたブレザーの裾。ゾンビ達の隙間から覗く金色の髪。時折聞こえる呻き声。 彼女の名前は既に知っている。彼女は自分達一党のリーダー的な存在。 アニカの顔が一気に青褪める。喉が渇く。掠れた声でアニカは叫んだ。 「Ms.ショウコ……!!」 ◆ 色彩が薄れていく世界。混濁する意識。 虚ろな目で金田一勝子は空を見上げていた。 (どう……なっているのでしょうか……?) 身体が取り返しのつかないことになっていることは理解できている。 その証明として、つい数分前に感じていた激痛は既になくなり、腹部に感じるのは何かがいるという違和感だけ。 (おや……?) 感じていた違和感が消える。自分に集まっていた人間達が遠くにいく。 一呼吸のあと、現れたのは守りきれた黒髪の幼子と帽子を被った少女。 朝日に照らされ、そよ風に靡く美しい金髪。霞み出す記憶の中から該当者の名前を探し出し、その名を呼んだ。 「利……子……」 自分と同じ美しい黄金の髪を持つ妹。誇り高く美しい自分に憧れの目を向けていた気の弱い少女。 (そうか……わた……くしは……利子と一緒に家出をして……) 事実とは違うストーリー。勝子は妹にだけ行き先を告げて家出をしていた。 アニカも自分と同様に現状に不満を以て家出したと聞いた時、仲間意識を持っていたため淀んだ意識にて生み出した存在しない記憶。 それでも彼女にとっては地獄にて垂らされた、か細い蜘蛛の糸。もう一度家族に会いたいという願いの顕現。 「―――――!―――――!!」 少女が勝子に向かって何かを叫ぶ。双眸から流れる大粒の涙が勝子の頬を濡らす。 ふと、少女は顔に巻き付けていた包帯を解いて傷口を抑えようとする。 「この……傷では……もう……。ですから……無駄使いは……止めなさい……!」 「――――!」 何と言っているのか分からない。しかし、それでも少女は手を止めようとしない。 現実を受け入れきれないだ。子供だから……という甘えはこの地獄では通用しない。 何とか動く左腕を動かし、逃避を続ける少女の頬を張った。 ペチ、と軽い音が響く。目を丸くする少女。今度は張った彼女の頬に優しく手を当てる。 「聞き……なさい……。貴女は……いずれ……人を導く……淑女に……なりますわ……。 悲しむな……とは言いません……。ですが、それでも……歩みを……止めないで……」 勝子の手に重ねられる少女の小さな手。涙を流しつつも力強く少女は頷いた。 「わたくしは……最期は畳の上で……言ったの覚えているでしょう……?可能であるのならば……私を……運びなさい……。 それから……私の髪を……ツバサに……」 ◆ 原型を留めていない家具。割れたフローリング。一部が沈んだ畳。生々しい傷跡がつけられた壁。 破壊の数々が為された一室。その中に二人の男が佇む。 一条の風が吹く。 「―――ぐ……ぁ……!!」 少年が両膝をつく。時を待たずして刀を持った右腕がずり落ちる。型から噴き出した鮮血が落ちた右腕の上に落ちる。 その様子を老人―――八柳藤次郎は冷酷に見下ろす。 「…………」 本来ならば確実に絶命させる一刀。 しかし、左目の喪失により狭まった視界。右腕の喪失により不安定になった体幹。 幾重に重なった悪条件は異能によるにより極限まで強化された身体能力の恩恵をすり抜け、必殺には至らず。 悪戯に少年――八柳哉太を苦しめるだけの結果に終わった。 死の淵に立たされても尚、哉太の目から闘志は消えない。残った左手で必死に転がった右腕に手を伸ばす。 それを見逃さず、右腕を蹴飛ばして遠方に追いやる。 「詰み……だな……」 未だ憎しみの目を剥ける哉太に穏やかな声で宣告する。 「糞爺……地獄に落ちろ……」 発せられる負け犬の遠吠え。その言葉を噛み締め、剣を構える。 「さらばだ、哉太。じきに儂もそこへ逝く」 愛しき孫の頸を断つべく、振り上げて降ろす―――その直前。 崩れた瓦礫の隙間。そこから飛来する何か。 第六感が告げる危険信号。 対処しようにも尽き欠けていた体力では不可能。 破裂音を鳴らし、飛来するもの―――銀の弾丸は哉太の頭をすり抜け、振りかぶった藤次郎の左腕―――正確には剣を握った手へと吸い込まれた。 激痛と共に吹き飛ばされる鈍と己の左手。その肉が哉太と藤次郎、両者の顔にかかる。 倒れ伏す寸前、弾丸の跳んできた方へと顔を向ける。 艶やかな金色の髪――前髪が赤黒く染まっている。 人形のように美しく愛らしい顔―――その顔を悍ましい歓喜の色に染め上げている。 色白の綺麗な手―――その手には剣ではなく、大口径のリボルバーが握られている。 呆然とした表情で、藤次郎は襲撃者の名前を呟く。 「虎尾……茶子……!!」 ◆ ◆ 忘れもしない地獄。 頭を割られた父の傍らで、浅黒い肌の男が首にナイフを突き立てられた母に腰を振っている。 部屋の隅で六歳になったばかりの娘は身体を縮ませていた。 何の変哲もない中流家庭。両親と娘。三人家族はこの日まで幸せに過ごしていた。 その幸せはいとも容易く崩れ去った。 残った娘に向けて男は優しい声色で問いかける。 震える娘の頭を撫で、神を掴んで玄関へと引き摺る。 当然娘は泣き叫ぶが周りの大人たちは誰も反応しない。男も女も皆媚びた笑みを生陰ている。 連れていかれた先は山奥の屋敷。娘は『教育』を受けた。 繰り返される痛み。抉り続けられる幼い心。その中で娘は生きる術を身に着けた。 感情を殺し望まれるよう振る舞う。気配を殺し周りの景色と一体化する。 聡明な娘が身に着けた悪魔達から逃げおおせるための技術は、思いのほか早く役に立った。 八歳となった日のとある満月の日。ご褒美と称して夜の散歩に行かれた時。 調教師の目を盗んで必死に草原を駆け抜けた。 しばらく走った後、背後から怒号が聞こえる。 必死の形相で疾走する。フリルのついた服やパンプスのせいで走りにくいが気にする暇もない。 追手を巻くために森林へと入る。息を殺して森と一体化する。 やがて追手の気配が消える。それでも息を潜める。 そこからしばらく過酷な自然が少女を襲った。 空腹を紛らわせるために土を掘り、糞尿の臭いのする甲虫の幼虫を嚙み潰す。 渇きを癒すために、腐葉土の上にたまった水たまりの水を飲み干した。 しかし、森に捨てられて熊に拾われた少女のようにはいかず、娘は徐々に衰弱していった。 糞尿に塗れて倒れ伏す娘。もはや死を待つばかりであった。 浅く呼吸をし、虚ろな目で空を見上げる。 『―――い、虎尾さん!し……敷地に女の子が……!!』 ふと耳届いた男の声。その後に自分へと向かってくる足音。 追手が遂に自分を見つけたのかと諦観し、娘は運命を受け入れる。 ―――そして、娘は『虎尾茶子』となった。 ◆ 「良かったぁ……生きていてよかったぁ……!」 跪いて傷だらけの哉太を片腕で抱きしめる茶子。 胸から聞こえる茶子の鼓動。鼻孔を擽る香水の香り。同時に感じる己の生存。 「…………」 何も言わず、残った左腕を茶子の背中に回し、幼子のように顔を埋めた。 姉弟子と弟弟子。八柳流の比翼。言葉を発さずとも互いの心情は伝わる。 永遠に続くかと思われる暖かい抱擁。地獄の最中にいるとは思えぬほど穏やかな時間が流れる。 「――――これも、運命か……」 穏やかな時間の終焉を告げる弱々しい老人――八柳藤次郎の声。 哉太と茶子は抱擁を止め、己が師へと視線を向ける。 「……爺ちゃん……」 様々な感情が混じった哉太の声。一時は憎み、絶殺せんと刃を振るった相手。 闘争が終焉を迎えた今、彼の心中にあるのは虚しさだけであった。 もう自分には血を分けた家族はいない。目の前の老人によって斬殺された。 唯一残っているのは目の前の罪深き剣鬼。それも命の尽きる寸前。 沈黙が空間を支配する。哉太が何かを言おうとする前に藤次郎は穏やかな声で二人に語り掛ける。 「……儂は、山折村の歪みが許せなかった。歪みを正そうとしたが……すべて失敗に終わった……。 何が正しいのか分からなくなった……許せとは言わぬ……ただ謝らせてくれ……」 藤次郎は目を伏せる。先程と同一人物とは思えぬ弱々しい姿に哉太は言葉を詰まらせる。 「歪み…って……何だよ……!」 やっとのことで声を絞り出すも、その言葉は弱々しい。 「……お前は何も知らなくていい……儂の知る……清きお前であってくれ……。 生まれた時より、お前を知っている……。だから――――」 瞬間、藤次郎の顔にブーツの爪先が突き刺さり、痩躯が吹き飛ぶ。 壁に叩きつけられ、血の塊を吐き出す老人。 「な……に……を……!!」 縮地にて距離を詰め、強烈な前蹴りを喰らわせた下手人の名はかつての罪の証――虎尾茶子。 哉太と藤次郎。両者は驚愕に目を見開いた。 虎尾茶子は憎悪していた。 ヤクザ共に供物として捧げ、己の過去を思い出させた藤次郎を。 何食わぬ顔で八柳哉太に近づき、その穢れ切った思想を叩きこまんとする八柳藤次郎を。 そんな輩が八柳哉太の先達を名乗るなど。 たかだか血のつながった程度で最大の理解者などと騙るなど。 「―――烏滸がましいんだよ、老害が」 絶対零度の冷え切った声。 藤次郎の前に立ち、左目に突き刺さった脇差を回し、傷を抉る。 「ぐああああああああああああッ!!」 絶叫する老人。その様子など気にせず、茶子は言葉を続ける。 「てめぇの糞下らないロビー活動なんざ成功するわけねえだろうがクソジジイッ!! 山折の歪みだァ!!?てめェの独善が一番歪んでいるんだよ老害!!!」 「ぐおおおおお!!!ぎいいいいいいぃ!!!:」 何度も何度も脇差を回し、その度に藤次郎は絶叫する。 ヤクザ共に売り飛ばした。藤次郎との死合いの中で茶子が憎む理由を哉太は知った。 言葉を掛けようにも哉太は茶子を制止する言葉が見つからない。 「――――チッ!!!」 「――――あ”ッ!!」 勢いよく脇差を引き抜いて後方へと投げる。投げた刃は哉太の眼前の床に刺さった。 荒い息を繰り返す茶子。彼女の拷問に息も絶え絶えの死にかけの剣聖。 己が怨敵を見下ろし、茶子は口を開く。 「『マルタ』実験」 「な……なぜそれを……」 茶子の口から発せられる山折の禁忌の一つ。その言葉に藤次郎は残った右目を限界まで開いた。 「鳥獣慰霊祭の目的。未だ続く名を失った荒神の土着信仰。『巣食うもの』に生み出された怪談使い。集団疎開児童を使用した前頭葉摘出手術。 『マルタ』廃棄場に併設された第二実験棟、蛇茨の役割、地下研究施設―――でかい厄ネタはこれだろ?」 愛弟子より語られる山折の歪み。細分化された古き歪みの根本。己と山折厳一郎、木更津王仁以外は知り得なかった情報。 何故それを知っていると問う前に、茶子が再び口を開く。 「―――旧陸軍軍医中将、山折軍丞(やまおりぐんじょう)」 その名は、消えるべきであった歪みを表面化させた男の名。山折村を忌地と変えた絶対禁忌にして歪みの根源。 しかし、まだ茶子の断罪は続いた。 「そして、彼が残した『ヤマオリ・レポート』」 これこそ、藤次郎や厳一郎が知らぬ歪み。これを知るは今は亡き蛇茨の三代前の当主と虎尾茶子。そして―――。 「そのレポートは未来人類発展研究所に保管されている」 想い人が聞いていることにも関わらず、藤次郎を絶望へと突き落とすためだけに茶子は事実を口にした。 「―――なんで……茶子姉が……未来人類発展研究所を……」 哉太は声を震わせて茶子に問う。悲しげな表情を浮かべて。首を哉太の方へと向ける。 「……ごめん、哉くん。あたし、関係者なんだ……」 優しくも苦しげな茶子の声色。十年近く育んできた絆がそれを真実だと告げる。 「―――ところで、いつから聞いてたの?アニカちゃん」 かさりと庭の茂みが震え、天宝寺アニカと彼女と手をつないだリンが姿を現した。 「チャコおねえちゃん!やっとあえたーー!」 「ちょ……ちょっと……!!」 アニカの手を振り解いて全力で走り、哉太の脇をすり抜けて茶子の胸へと飛び込んだ。 「あのね、あのね!アニカおねえちゃんがしごとのおはなしをしているからかくれていてっていったからがまんしてリンはおとなしくしてたよ! それとね!リンはアニカおねえちゃんをたすけたんだよ!えらいでしょ!!」 「うんうん、偉い偉い。よく頑張ったねーリンちゃん」 「えへへへへ……♪」 茶子に頭を撫でられ蕩けた顔でリンは喜んだ。 一しきりリンを褒めた後、茶子は哉太の前まで歩き、彼の前で突き刺さっている脇差を手渡し。アニカの方へと視線を向ける。 「アニカちゃん、哉くんの腕を拾っておいて。繋いで最低限の処置をすれば再生は早くなると思う。 哉くん。辛いだろうけどすぐにここを出るよ」 「……That's right」「……分かった」 リンと手をつないだ茶子の指示に従い、出発の準備をする二人。 二人が和室を出たことを確認すると、未だ呆然としている藤次郎へと歩み寄る。 「チャコおねえちゃん、このおじいちゃんはだあれ?」 「このクソ爺はあたしをいじめた奴だよ。目が腐るから視界に入れちゃダメだよ」 「わかった!」 リンは藤次郎を人睨みした後すぐ、茶子の背後へと隠れた。 「クソ爺……アンタの鈍、貰っていくぞ」 虚ろな目の藤次郎の返答を待たず、彼の傍にあった刀を手に取った。 そしてリンの手を引いて、玄関へと足を運ぶ。部屋の出口まで来た辺りで茶子は一度、藤次郎の方を向いた。 「先生、アンタは棒振り遊びに熱中する無知蒙昧な猿であれば良かったんだ」 ◆ 「すぐにここから離れるよ」 開口一番。茶子は哉太達二人に告げた。 「……待ってくれ。爺ちゃんと戦闘している時、勝子サンが……」 言葉が終わる前にアニカの手が哉太のシャツを掴み、俯いてゆっくりと首を振った。 「――――そうか」 事実を噛み締め、沈痛な表情を浮かべて相棒と同じように俯いた。 「―――うさぎの友人達は既に死んでいて助けられなかった」 沈黙を破るかのように発せられる茶子の言葉。 哉太とアニカは同時に茶子の嘘に気づく。だが、哉太はそれを指摘することはできなかった。 茶子の報告は虚偽であるが、それは成果を出せずにおめおめと戻ってきた時の免罪符。大義名分なのだと。 仲間を失い、自身も重傷を負った。現状、戦闘可能な人間は同じく負傷した茶子一人。 非戦闘要員二人を抱えたこの状況で自殺行為に違いない。 「――――そんなの納得できるわけないでしょ!!」 それに異を唱えるのは相棒のアニカ。甲高い声を上げて茶子の嘘を見抜いて否定する。 哉太が諫めようにも徹底的に打ちのめされた彼にそんな気力は残されていない。 瞬間、アニカに向けられる強烈な殺気。 「――――ッ!!」 小田巻真理に向けられたものと同様のものにアニカの矮躯が硬直する。 間を置かずに振るわれる長ドスの居合の一閃。 アニカの頸に届くその瞬間、同じく抜かれた哉太の脇差によって防がれる。 「え……あ……」 「茶子姉……寸止めでも止してくれ……」 へたり込むアニカの前に哉太は覇気のない声で茶子を諫めた。 「―――哉くん。キミ、あたしのことは絶対に憎めないでしょ」 「…………」 「あたしも、同じだ。でも、剣を向けることはできる」 今にも泣きそうな声で茶子は語る。その言葉通り、哉太は茶子同様に決して憎むことはできない。 しかし、茶子とは違い、刃を向ける勇気はない。 長ドスを納刀し、二人へ背を向ける。彼女に付き従うリンは不安そうな表情をしていた。 「Ms.チャコ。貴女は私達の味方なの?」 茶子の背へと向けてアニカは問うた。茶子は背を向けたまま、答える。 「あたしは『まだ』哉くんの味方でいるつもりだよ」 ◆ ◆ 茶子を先頭に背後を振り返らずに一行は走る。 高級住宅街には特殊部隊員がいる。その情報は彼らを急かすのには十分であった。 走っている間は現実を忘れることができる。喪失感から目を逸らすことができる。 アニカも哉太も疲労を忘れ、必死にリンを背負おう茶子の後ろをついて行った 途中、湯川邸のある方向から破壊音が聞こえた。それでも速度を緩めずに走り続けた。 森林地帯まで走り続け、そこで一行は怪我の処置や情報交換することにした。 「……腕、固定しておいたよ。アニカちゃん。後は異能で哉くんの腕がくっつくまでお願いね」 「……Yeah」 「……悪い、助かる」 哉太は俯いたまま、手当てをしてくれた二人に礼を述べる。 添え木と茶子の医療道具の包帯により処置を施されたものの、綺麗に切断されていたため動かせそうにもない。 「……少し休んだら移動するよ」 「……分かった。それまでリンちゃんと一緒に見張りをするよ」 「……Yeah。リンの異能、一度受けて解除したから大丈夫だと思うけど、気を付けてね」 アニカの言葉に何の反応も示さず、怠慢な動きで双眼鏡を片手に少し離れたところまで哉太は歩く。 既に四人にそれぞれ情報は共有されており、リンの異能と彼女の危険性は三人とも理解している。 念を入れ、茶子はリンに『お願い』して、哉太がリンの魅了に溺れないため、アニカと同様の対策を取らせた。 当然、茶子にもリンの異能が使われたが、どういう訳か、茶子には魅了の異能が無効化された。 「………」 改めてアニカは茶子を見る。 怪我を負った肩にはアニカの顔全体に巻かれていた包帯が巻き付けてあった。 包帯の祝福は本物らしく、肩肉が徐々に再生しつつある。 当然、ただで包帯を渡したわけではない。茶子にそれ相当の見返り――自分達の護衛と聞き取り調査の許可を求め、それを彼女は了承した。 「―――そろそろ出発しよう」 茶子の号令で三人が集まり、それぞれの荷物を持って歩き出す。 咲き乱れる夾竹桃。 花の匂いに囲まれながら、傷を負いながらも彼らは行く。 【B-4/森林地帯/一日目・午前】 【虎尾 茶子】 [状態]:疲労(小)、精神疲労(中)、左肩損傷(再生中)、失血(中・再生中)、山折村への憎悪(極大)、朝景礼治への憎悪(絶大)、八柳哉太への罪悪感(大) [道具]:ナップザック、長ドス、木刀、マチェット、ジッポライター、医療道具、コンパス、缶詰各種、飲料水、腕時計、八柳藤次郎の刀、スタームルガーレッドホーク(5/6)、44マグナム弾(6/6)、包帯(異能による最大強化)、ガンホルスター [方針] 基本.協力者を集め、事態を収束させる。 1.有用な人材以外は殺処分前提の措置を取る。 2.天宝寺アニカ、八柳哉太を利用する。 3.リンを保護・監視する。彼女の異能を利用することも考える。 4.未来人類発展研究所の関係者(特に浅野雅)には警戒。 5.朝景礼治は必ず殺す。最低でも死を確認する。 6.さて、これからどこに向かおうか。 7.―――ごめん、哉くん。 [備考] ※自分の異能にはまだ気づいていません。 ※未来人類発展研究所関係者です。 ※リンの異能及びその対処法を把握しました。 ※異能による強化を受けた包帯により肉体が再生しつつあります。 【八柳 哉太】 [状態]:異能理解済、全身に裂傷(再生中)、左耳切断(処置済み・再生中)、失血(大・再生中)、右腕切断(処置済み・再生中)、肋骨骨折(再生中)、 疲労(極大)、精神疲労(極大)、精神的ショック(極大)、悲しみ(極大)、喪失感(大)、無力感(大)、自己嫌悪(大) [道具]:脇差(異能による強化&怪異/異形特攻・中)、打刀(異能による強化&怪異/異形特攻・中)、双眼鏡 [方針] 基本.生存者を助けつつ、事態解決に動く 1.アニカ達を守る。 2.ゾンビ化した住民はできる限り殺したくない。 3.茶子姉のことを信じたい、けど……。 4.ごめん、うさぎちゃん。 5.爺ちゃん……どうして……。 6.圭ちゃん……。 [備考] ※虎尾茶子が未来人類発展研究所関係者であると確信しました。 ※リンの異能及びその対処法を把握しました。 【天宝寺 アニカ】 [状態]:異能理解済、疲労(特大)、精神疲労(特大)、精神的ショック(極大)、夾竹桃による中毒症状(小)、悲しみ(大)、虎尾茶子への疑念(大)、決意 [道具]:殺虫スプレー、スタンガン、八柳哉太のスマートフォン、斜め掛けショルダーバッグ、スケートボード、ラリラリドリンク、ビニールロープ、金田一勝子の遺髪。 [方針] 基本.このZombie panicを解決してみせるわ! 1.Ms.ショウコ……。 2.Ms.チャコにHearingをして少しでも情報を引き出さなきゃ。 3.カナタの事が心配だわ。 4.リンとMs.チャコには警戒しないと。 5.私のスマホはどこ? [備考] ※他の感染者も異能が目覚めたのではないかと考えています。 ※虎尾茶子が未来人類発展研究所関係者であると確信しました。 ※リンの異能を理解したことにより、彼女の異能による影響を受けなくなりました。 ※浅野雑貨店、山折総合診療所、広場裏の森林地帯に違和感を感じました。 【リン】 [状態]:異能理解済、健康、虎尾茶子への依存(極大)、血塗れ [道具]:エコバッグ、化粧品多数、双眼鏡 [方針] 基本.チャコおねえちゃんのそばにいる。 1.ずっといっしょだよ、チャコおねえちゃん。 2.うそつきおおかみさんなんてだいっきらい。 3.あたらしいおようふくほしいなぁ。 4.リンのじゃまをしないでね、アニカおねえちゃん、カナタおにいちゃん。 [備考] ※VHが発生していることを理解しました。 ※天宝寺アニカの指導により異能を使えるようになりました。 ◆ 「ぐ……うおおお……」 呻き声を上げ、荷物から取り出したナイフを加え、藤次郎は這っていく。 発動する剣聖の異能。しかし、致命傷を負った藤次郎にとってそれは苦しみを先延ばしにする以上の意味を持たない。 だが、無様を晒してでも、残り僅かな命を燃やしてでも行かねばならぬ。 藤次郎を突き動かすのは使命感。 かつての親友のように道を誤った弟子――虎尾茶子。 既に老人二人と同じ轍を踏んだ八柳流の弟子二人。 せめて、彼女の危険性を知らしめるために、正常感染者と会うために。 赤子にも劣る速度に手這い続け、民家の門塀を過ぎる直前―――。 「―――――ッ!」 突如鳴り出すベルの音。音の出所はどこだ、と探る前に振動で落ちてきたのは目覚まし時計――茶子が仕掛けたものである。 「まずい……!!」 身を隠そうにも時すでに遅し。 目の前に現れたるは老婆と中年夫婦。どちらもどこか、己が真っ先に殺した妻と息子夫婦に似ていた。 (儂の……生涯は……何のために……) 己の肉を貪られる音を聞きながら、藤次郎は絶命した。 ◆ 夢を見ていた。 友人達とよく行くとあるファミリーレストランでの出来事。 調子に乗る背の低い童顔の少年――通称オタク君は、長身の少年と向き合ってカードゲームをしている。 別のテーブルでは金髪の探偵が自分の妹に勉強を教えている。 そのすぐ傍で背の高い少女と小柄な少女、巫女服が似合いそうな少女が楽しくお喋りをしている。 別の方へと視線を向けると、管を巻く黒髪の女性とそれを宥める金髪の小柄な女性。 その光景に少し苦笑しながら眺める誇り高き金田一勝子とその想い人の少年、ツバサ。 (もしかしたら―――そんな未来もあったかもしれませんわね) 徐々に途切れていく意識。もう終わりなのだと理解する。 何もかもが消える寸前、その目に映るのは想い人。 (ねえ……ツバサ……。私が生きてきた意味はあったのでしょうか……?) その問いにいつもの困った顔を浮かべる少年。 そして確かに聞こえた彼の声。 『おやすみなさい、勝子お嬢様』 「ええ。おやすみなさい、ツバサ」 【八柳 藤次郎 死亡】 【金田一 勝子 死亡】 ※八柳藤次郎の遺体はC-3にてゾンビに捕食されています。遺体の周りには藤次郎の所持品が散らばっています。 ※金田一勝子の遺体はC-3の民家内のベッドに寝かされています。遺体のすぐ傍にはスマートフォンが落ちています。 087.それぞれの成果 投下順で読む 089.対特殊部隊撃退作戦「CODE:Elsa(仮)」 時系列順で読む 愛しの■■へ リン ヤマオリ・レポート 天宝寺 アニカ 風雲急を告げる 八柳 哉太 虎尾 茶子 八柳 藤次郎 GAME OVER 金田一 勝子 GAME OVER
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0098:空条承太郎の見解 ◆OM4GtB6KG. 「ジョジョくん、一体なにを捜しているんだい? 早く仲間を捜しに行こうよ!」 「ああ……悪いが少し待っていてくれ」 あくまで快活な口調で問いかける背後の大空翼に対し、空条承太郎は視線だけを向けて答えた。 新潟県南部の山中。二人が出会った場所からさほど離れていない場所にある、旅館の厨房に二人はいた。 収納棚をひとつひとつ物色しながら、承太郎は内心ひとりごちた。 (やれやれ……建物の内装に至るまで完璧に『日本のミニチュア』を作っておきながら、武器になりそうなものはさっぱり置いていやがらねえ。 ちょっとは期待していたんだがな……まったくご丁寧なことだぜ) 清潔だが使い古された様子の食器類。「○○旅館」の文字がプリントされた手ぬぐい。 目に付くのは妙に生活臭を感じさせる、日用品の数々。棒や刃物の類は、この場からきれいに取り除かれているらしい。 スタンド使いである承太郎には、武器の有無はさして問題ではない。 しかし翼に支給された『禁鞭』は明らかに彼の手に余る代物だ。 なにか代わりの武器を調達できればと考えてこの旅館に立ち寄ってみたのだが、この調子ではどうやら空振りに終わりそうだ。 厨房を調べ終え、事務室に向かう。後ろから翼がついてくるのを確認しつつ、承太郎はこの『ゲーム』について考えを巡らせた。 己の首に巻き付いている、鈍い光沢を放つ金属の環。 このくだらない茶番を企画した連中の鼻を明かしてやるためには、まずコイツをどうにかすることが必須条件だ。 承太郎のスタンド『スタープラチナ』の精密動作をもってすれば、首輪の中に仕込まれているという爆破装置を解体することもそう難しいことではないだろう。 しかしそれは、爆破装置が『承太郎の知る世界の理』に沿って作られたモノならばの話だ。 承太郎はあの大広間で見た光景を思い出す。 わずかな運指のみで衝撃波を発し、口から光線を噴く禿頭の男―――確か『ナッパ』と呼ばれていたか。 『スタンド使い』とは異なる、承太郎の知る常識とは違った世界を生きる者が、このゲームにはたしかに存在している。 そしてナッパの攻撃を軽くいなしてみせた『フリーザ』という名の有角の怪人。 百人からの人間(中には人間かどうか怪しい輩もいたが)の首元に、瞬時にしてこの忌々しい金属の環を出現させてみせた『バーン』という老人。 首輪を介して『参加者』達の生殺与奪を握っているのも、得体の知れない力の持ち主達なのだ。 この首輪がいかなる法則のもとに成り立っているものか、それを見定めるまではヘタに手を出す訳にはいかない。 まずは『情報』を集めること。それが当面の目的となるだろう。 「待たせたな……じゃあ行くぜ」 承太郎が旅館内をあらかた調べ終えたのは一時間ほど後のことだった。収穫といえるのは何本かのボールペンのみ。 その半分を学ランのポケットに収めると、承太郎は残りを翼に差し出した。 「持っておけ。こんなものでも何かの役には立つ」 「ボールペン? なんだかよくわからないけどありがとう!」 屈託を感じさせない笑みを浮かべながら、翼はそれを受け取る。 「でも、行くってどこへ行くんだい?」 「東京だ。ちゃんとしたアテがあるわけじゃあないがな…… おれ達が最初に集められたあの大広間にいた、『竜の騎士』とか呼ばれていたガキを憶えているか?」 殺し合いを、してもらう―――あのバーンという老人にそう告げられたとき、誰よりも早くそれに反応し殴りかかった、名も知らぬ黒髪の少年。 承太郎も翼も、自分達をこの異常なゲームに招き入れた者達のことを何一つ知らない。 しかしあの『竜の騎士』という少年は明らかにバーンと面識がある様子だった。 彼からバーンに関する情報を得られれば、自分達を縛りつけているこの首輪を外すための突破口が開けるかもしれない。 それが承太郎の考えである。 「あのガキがどこにいるかは分からねえ。だが人が集まる可能性が高い場所といえば、都市だ。 あいつがおれ達と同じ世界の住人とは思えないが、人づてにでも『東京が日本で一番の都市だ』と聞けば、東京を目指すかも知れねえ。 あの状況、あのタイミングでバーンに殴りかかったってことは、あいつも『乗る気』は無いってことだからな……おそらく仲間を捜しているはずだ。」 そこでいったん話を止め、翼の反応を窺う承太郎。しかし返ってきた答は、どうにもズレたものだった。 「うん、あの男の子は凄い運動神経だったよね! 僕も彼が仲間になってくれたらと思っていたんだ! 彼ならきっと素晴らしい選手になれるよ!」 「……何だって?」 場違いなほど爽やかな笑みとともに発せられた、やはり場違いな翼の言葉に流石の承太郎も一瞬硬直してしまう。 「よし、これで目的地が決まったね! じゃあ一刻も早く東京に行こう!」 「いや、だから確証があるわけじゃあ……選手ってなんだ?」 承太郎の呆れた様子にも構わず、翼はすでに旅館の外へと駆け出していた。 「やれやれ……」 そう呟きながら承太郎は帽子を深く被り直す。 どうもこの青年の思考の中心には常にサッカーがあるらしい。 この状況下で少々イカレてしまったのか、それとも元からこういうヤツなのか。 どちらにしろ、彼が殺し合いに進んで加わるような人間でないことは確かだ。 少々危なっかしいが、それでもこの状況で共に行動できる仲間がいるということは僥倖に違いない。 「どうしたんだいジョジョくん? さあ、早く行こう!」 承太郎を振り返り、翼が呼び掛ける。 「やれやれだぜ」 もう一度小さく呟くと、承太郎は翼の後を足早に歩きだした。 【新潟県南部/深夜】 【大空翼@キャプテン翼】 [状態]:健康(精神的にやや壊れ気味?) [装備]:なし [道具]:荷物一式、ボールペン数本、禁鞭@封神演義 [思考]:1 東京へ向かう 2 仲間を11人集める 3 主催者を倒す 【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:荷物一式、ボールペン数本、らっきょ@とっても!ラッキーマン [思考]:1 バーンの情報を得るべくダイを捜す 2 東京へ向かう 3 主催者を倒す 時系列順で読む Back 妖狐のプライド Next 赤木晴子について 投下順で読む Back 逃亡、そして別れ Next 一時の別れと願う 014 クレイジー翼 大空翼 156 最強の厚着 014 クレイジー翼 空条承太郎 156 最強の厚着
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製作者:ちゃあしゅう SRCS_WatabeJirourokurou.png SRCS_WatabeJirourokurouU.png 名前:渡部次郎六郎(わたべじろろくろう) 性別:男 年齢:0(一年生) 所属:クルセイド学園 身長:354cm 体重:1274kg 血液型:A型 一人称:まちまち 二人称:まちまち 学級:クルセイド学園 高等部 1-4 所属:関東戦会 某企業作成の汎用カラクリ武士。 AIの対人成熟度を高める為、クルセイド学園へ入学……した筈なのだが、 皆が嘘ばかり吹き込む為、あらぬ方向へ成熟しつつある。 まず間違いなく卒業と同時に破棄される事だろう。 渡部次郎六郎 次郎六郎, じろうろくろう, -, 人間, AAAA, 150 特殊能力 底力, 1 154, 136, 153, 132, 152, 154, 強気 SP, 60, 狙撃, 1, 気合, 6, 努力, 11, 熱血, 15, 必中, 22, ひらめき, 30 SRCS_WatabeJirourokurou.bmp, -.mid 渡部次郎六郎 渡部次郎六郎, わたべじろうろくろう, (人間(渡部次郎六郎専用)), 1, 2 陸, 3, LL, 4000, 160 特殊能力 攻撃属性=夢 弱点=機式 5800, 140, 1400, 55 BACB, SRCS_WatabeJirourokurouU.bmp カワナガ, 1100, 1, 2, -10, -, -, -, AABA, +0, 実格P ナガドース, 1300, 1, 1, +10, -, -, -, AAAA, +10, 武 カンセーダンゴー, 1400, 1, 3, -10, 8, -, -, AABA, +0, 実 ヤクザクミチョー, 1500, 1, 1, +0, -, 10, -, AAAA, +10, 武 メイドモエーノミヤゲ, 1700, 1, 1, +20, -, 20,110, AAAA, +0, 武 辰寅ノイチゲキ, 2100, 1, 1, +0, -, 40,120, AAAA, +20, 武 渡部次郎六郎 回避, 動カザル事山野ゴト師 回避, 赤信号、ミンナデ渡レバ怖クナイ ダメージ小, せめんとニ一度見タ攻撃ハ通用シナイ ダメージ小, 傷ヒトツツキマセン! 今スグオ電話ヲ! ダメージ小, 考エルナ、幹事ルンバ ダメージ中, チョット待テ、車ハ急ニ止マレナイ ダメージ中, 武士ハ喰ワネド高用事! ダメージ中, マンセー! マンセー!! ダメージ中, 俺ヲ踏ミ台ニシタァ?! ダメージ中, 俺ヲ跳ビ箱ニシタァ?! ダメージ大, ダガ忘レルナ! イズレ第二第三ノ次郎六郎ガ!! ダメージ大, グェー!! 見事ナ攻撃ダたけちゃんまん! ダメージ大, ナンダッテー!!! 本当カきばやし!! 破壊, 機能、停止。 スリープモード起動します 射程外, 卑怯者メ! 武士ノ風上ニモ置ケヌ奴! 射程外, 首ヲ長クシテ待ッテイルガヨイ!! 攻撃, 死シテ屍疲労物無シ 攻撃, シャッチョサン、ヤスイヨー 攻撃, コノ揉ミ所ガ目ニ入ラヌカ! 攻撃, ハラキリカミカゼスシゲイシャ! 攻撃, ワッショイ! ワッショイ! 攻撃, 夜ノ顔ヲ見忘レタカ!!
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カチャカチャと暗闇の中で休みなく響くキーボードの音。 他に照明の無い、ボンヤリと光るモニターを見詰めて、少年はふぅと息をつく。 ふと視線を投げた場所にあるのは、解析に当てられた何かの塊。 殆どそのままの形で残されているそれは、暗がりでも一体のレプリロイドのボディだと判る。 少年は、そっと椅子から立ち上がり、レプリロイドのボディに掌を当てる。 一箇所を強烈な一撃で貫かれている跡が残っているが、それ以外の部位は殆ど無傷。 その為に、近くに寄るとますますその姿が浮き彫りにされ、全容が確認出来た。 人型ではない。足と呼べるパーツが何ヶ所にも搭載されていて、フェイスパーツもかなり特殊な形をしている。 前身よりも後身の部分が大きく形作られているそれは、人間の目で云うと『蜘蛛』と呼ぶに相応しいものだった。 少年は、再びレプリロイドの全身のあらゆる部分を模索し、ちっと一つ舌打ちをした。 「メインコンピューターが見当たらない」 誰に云うでもなく呟かれた少年の言葉がその場に木霊する。 少年の呟きを待っていたかのように、ようやく解析の終了したコンピュータが声を上げる。 そこに表示されるのは、エラーの文字と赤色の点滅。 コンピュータ解析による結果は、メインコンピューター無搭載。起動不能という文字に加えて、一つのアラートの呼びかけだった。 たんっと一つキーを押して、少年はアラートを表示する。 危険度と機密度が高い資料が該当した時のみに表示されるように設定しておいたアラートの出現に、少年は多少の戸惑いを見せた。 出来ればコンピュータの誤作動だと信じてしまいたいくらいだ。 アラートの内容が表示されるまでの時間が酷く長く感じる。実際はたかだか一秒もかからない動作なのだが。 「なに・・っ」 表示された資料の内容に、少年は思わずだんっとデスクを両手で叩く。 そこに表示されていたのは、数年前の大戦内で確認された技術の記録。 既に開発者はこの世にはいないし、それ自体も絶対に存在しうる筈のない―― 「・・リミートレプリロイド」 全ての出来事に合点がついた少年は、再び壊れたレプリロイドに視線を当て、呟く。 既に存在しない筈のレプリロイド。それなのに、何故―― 一気に吹き出してくる疑問符を片付けて、少年は優先するべき思考を開始する。 この一体が存在するとするなら、それはつまり―― キーを押し込んでコンピュータの電源を落とすと、部屋の中を完全に暗闇が覆い尽くす。 少年は、ぼすっと不器用にソファに腰掛けて、見えない天井を見上げた。 「やっぱり頼るしかなさそうだよ・・」 瞼の裏に浮かぶ人物の名を、少年は静かに呟く。まるで、その者がすぐ近くにいるかのように。 「アンタ達の弟にさ」 顔を上げ、レプリロイドの亡骸があった方へと視線を向ける。 既にピクリともしないそれに、少しの憎しみを込めた瞳で。 「ゼロ」 再びモニターの電源が入る。 かねてより入力しておいたデータ構成が出来上がったとの報せだった。 少年はモニターに表示される文字列に目線を少しだけ掠らせた。 データ内容は、一体のレプリロイドを対象とした強化アーマーのデータ配列と構成、構造。 その全てが緻密に計算され尽した代物。それ自体が『芸術』と名を冠するに充分なものだった。 「出来れば使わせたくはない・・」 また、誰に向けるでもない呟きが、部屋の中を静かに木霊するのだった。 * * * * キーンコーンカーンコーン。 午前八時二十五分。今日もいつも通り、フロンティア学園の始業のチャイムが校内に響く。 始業式が行われて間もない春の朝は、ぽかぽかと暖かくて、空もさらりと爽やかに晴れていく。 初等部、中等部、高等部の生徒はそれを合図におのおのの席へと腰を降ろし、教師を待つ。 間もなく担任の教師が教室まで歩いてきて、その日の出席簿がつけられ、今日もまた一日の授業が始まるのだろう。 生徒達は担任が来るまでの間、十分間の読書をしていたり、その日の予習をしていたり。 各自の教室はしんと静まりかえっていて、校内の治安の良さがよく伺える。 私立フロンティア学園。初の人間とレプリロイドの両方の生徒の受け入れを認めた学校で、 初等部から高等部までがある大型の学校だ。 成績は他の公立学校と大差無いが、治安はよく整っている方で、高等部に不良グループがいるものの、 彼等にも彼ら自身のポリシーというものがあるらしく、校内ではそれほど問題視されてはいない。 規律正しく、それでいてのびのびと。それがフロンティア学園の教育方針だった。 始業のチャイムが鳴り終わる頃、中等部2-Cの生徒は、廊下の方から聞こえてくる騒音に思わず振り返った。 どたどたと誰かが駆けているようなけたたましい音は、音のよく響く廊下ではより一掃煩く耳に届く。 担任の教師がまさか走ってくるわけもなかろうに。 しかし、2-Cの生徒はただ苦笑して席に座り直すだけで、それについて多くは気にしない様子だった。 駆け抜ける騒音が更にその規模を増し、2-Cの教室の前まで到達する。 その音の主は余程慌てて止まったのか、靴底と廊下とが擦れて、きゅきゅっという耳障りな音を立てた。 そして音の主は扉に手をかけ、それを思い切り開く。 がらっ!! はぁはぁと肩で息をしながら、 いっぱいいっぱいといった様子で自分の席に縋るように座り込んだのは、至極印象的な容姿をした少年だった。 肩辺りまである少し長めのさらっとした髪の色は、水色に近い蒼。瞳の色はエメラルドの様な翠色。 制服は少し大きめなのか、裾が余って少々ダボッとしている感がある。 一見人間と区別が付かない彼だが、彼もれっきとしたレプリロイドだ。 約二年前に生まれ、その身体構造には現在の持てる全ての先端技術が施されている。 時代が進むにつれ、レプリロイドはもはや人間と完全に区別がつかないまでに進歩していることを頷けてくれる。 「よっ、相変わらずだな徳川。おはようさん」 「お、おはよう」 そう声をかけたのは、彼の席の斜め前に座っている少年――フレッド・ミルドだ。 徳川健次郎は、そんな彼に少し疲れ気味の笑みで返す。 今朝はレポート提出の〆切が間に合わなくて、結局早朝に仕上げたものだから、学校にくるのが遅れてしまったのだ。 仲間達は学校は一日くらい休んでもいいと云ってくれたが、 健次郎は頑なにそれを拒んで、ライド・チェイサーを使用しての最短距離で通学し、 校則違反の廊下の疾走までしてなんとか辿り着いたのである。 周囲の学友も教師も、それに慣れてしまった為に、今更どうというつもりはないらしい。 三日前にも同じような真似をしてギリギリで通学してきたのだ。一週間前も確かそうだった。 「よーくそんなんで来る気になるなお前。尊敬しちまうよ」 「そ、そうかな」 ポリポリと頬を掻きながら、健次郎は少し慌てて鞄の中身を机の中に詰め込んでいく。 今日使う為の教科書に加えて、今日は日課に入っていない教科のノートまで混じっているが、お構いなしにぐいぐいと。 今朝は忙しくて鞄の中身を開く時間が無かったので、昨日の教科が混じってしまっているのだ。 そんな自分の机の中身に苦笑いを浮かべて、健次郎はようやく一段落をした。 それを待っていたかのように、教室の前の扉が静かに開かれる。 健次郎が顔を上げると、担任の教師が入ってくるのが見えた。どうやら本当にギリギリで間に合ったようだ。 時は21XX年。 人類とそれを模して造られた人工人類・レプリロイド――レプリカ・アンドロイド・ヒューマン――が共存を始めて、 既に数十年になろうとしている時代。 先のユーラシア墜落事件から立て続けに勃発したナイトメア事件。 それは人類とレプリロイドを存亡の危機に追い込むには充分すぎるほどだったが、 それらは今や誰もが知る英雄・ロックマン・エックスによって一応の終結を迎え、 地球自体も人類・レプリロイド達の努力により、ようやく元の姿に戻りつつあった。 そして現在。 今の地球にロックマン・エックスの姿は無い。 一年前の闘い、ハンターベース内では『宿命の決着』と名付けられた闘いの中、彼は散った。自らの弟に希望を託して。 ロックマン・セイヴァー。それが希望の名だった。 英雄、エックスとゼロの血を引く三人目の希望。 宿命の決着の最中、力尽きた兄に代わり、その首謀者であるDr.ワイリーを一閃のもとに斬り裂いた力を持つレプリロイド。 それがロックマン・セイヴァー。セイアとあだ名される者。 ユーラシア墜落事件時のゼロの行方不明の報告に続けて、一年前のエックスの殉職報告。 それを唐突に受け止めた市民は混乱し、絶望した。が、それに続く新しい報告に、彼等は安堵したのだった。 エックスとゼロを上回る力を持つ英雄・ロックマン・セイヴァーの出現の報告を聞いて―― あれから一年。 世界的に目立った闘いもなく、社会は安定期を迎えている。オマケにイレギュラー発先率もぐんと減少し始めていた。 張り詰めていた人々やイレギュラーハンターの心が、ようやく緊張から解かれ始めていたのだった。 しかし、当のロックマン・セイヴァーの心は未だに緊張から解放されてはいなかったのである。 徳川健次郎。いや、ロックマン・セイヴァーの脳裏に唐突に蘇ったのは、今から数ヶ月前の出来事だった。 少し大規模なイレギュラー事件が起こった時のこと。 場所の悪さとアーマーの点検不足が命取りになり、セイアは重傷を負った。 その際に通信機器を全て失って、彼は自分の足でベースへ帰ることを余儀なくされた。 大ダメージを負った身体に、そう無茶はきかなかったらしく、セイアは明確な位置さえ判らない場所で気を失った。 放っておけば、ダメージとエネルギー不足から、機能停止していてもおかしくはなかっただろう。 次に目が醒めたとき、そこは見慣れない研究所だった。 明らかにハンター・ベースではないそこに、彼はアーマーを取り外された状態で寝かされていた。 彼を救出したのは、彼と大差無い年齢の少年。 制作者のゲイトですら修復に手子摺るセイアのアーマーを、彼はたったの二日程度で修理してしまった。 セイアはそんな少年科学者の技術力に驚かされつつ、なんとか帰路につくことが可能となった。 しかし、それは唐突に起こった。 セイアにも少年にも予想だにしなかった展開だった。 唐突に一体のイレギュラーが二人の前に姿を現し、彼等を襲ったのである。 ウェブ・スパイダス。それがセイアのデータ上にあるイレギュラーの名だった。 そう、記録上ではかのレプリフォース大戦の最中に、彼の兄であるエックスによって撃破されたと明記されているレプリロイド。 同型機種だということも考えられたが、レプリフォースが存在しない今、当時の機種が残っているという可能性は薄かった。 なにより、既に完成している筈のモデルである筈のそれは、 セイアと対峙した際、レプリフォース対戦時のものとは比べ物にならないほどの出力を見せていた。 セイアやエックスの様に特殊装甲によって出力向上がはかられていたとは思えない。 なら可能性は一つしない。それは、それは第三者の介入よって復活されたイレギュラーというものだ。 一年前に全て終わったと思っていた闘いは、未だ続いているのか―― 健次郎はそんなことを頭の中でこね回しつつ、机に頬杖をついていた。 「――というわけだ。席は、そうだな・・」 さっきから担任が何か一生懸命話しているようだったが、生憎健次郎の耳には届いていないようだった。 ただ、考え込んでいる彼にも、何かいつもとは違う話をしているな程度の認識はあるのだが。 電子黒板の前で会話している声は、随分久しぶりに聴いた声だったにも関わらず、思考を巡らせる健次郎には届かない。 結局、健次郎が別の思考をしている内に、電子黒板前での会話は決着がついてしまったようだ。 「――じゃあ自分で決めます」 そうとだけ云って、その声は移動を始める。勿論健次郎はそれには気付いていない。 ボスッと机の上に鞄を置く音だけが、健次郎の耳に届く。 その声の正体を初めて意識させられたのは、それが健次郎に向かって声をかけてきたときだった。 「よっ」 間近で聞く聞き覚えのある声に、健次郎はそっと顔を上げる。 健次郎がその者の顔を確認するよりも前に、その声が紡いだ台詞が、健次郎の中でそれが誰であるかはっきりと認識させた。 「セイア」 この場で呼ばれる筈のない名を呼ばれると同時に、健次郎はその姿を直視した。 銀の照り返しを放つ黒髪に、静かに光るサファイアの瞳。 一見して女性と見間違うような長い髪は、後頭部で一つにまとめられている。 制服着用の学校だというのに、堂々と私服を着ている少年の顔を見て、 健次郎は思わず「えーっ!!?」と場所も弁えずに声を上げてしまった。 担任の教師の注意が間髪入れずに飛んでくるのと、クラスメイト達の視線が集中したのとで、 健次郎は慌てて机の上に出しておいた教科書で顔を隠す。 熱りが冷めた頃、目をぱちぱちさせていた少年は、そっと健次郎の隣の机に腰を降ろすと、 顔だけを覗き込むように、ぼそぼそと呟く。 「そんなに驚くことないだろ?」 「そんなこと云ったって、なんでいきなりいるのさ。ウィド」 ウィド・ラグナーク。それが少年の名だった。 そう、並大抵の技術では修復不能のアーマーを短時間で完璧に修理してみせた、あの少年天才科学者だ。 なぜその彼がこんな学校なんかに――健次郎は頭の中で新たな疑問符を浮かべつつ、明白に横目でウィドを見詰めた。 「学校って云うのに結構興味があったんだよな」 「それだけじゃないでしょう」 あれ程の頭脳を持つ者が、今更学校になんて来るはずがない。 健次郎の見立てでは、彼はここ一帯で最も学力の高い大学ですら、余裕でパスしてしまう筈だ。 即答で答えられた健次郎の言葉に、ウィドは瞳で「ご名答」と返す。 そして、こちらを睨んでいる担任に慌てて苦笑を返しつつ、少し手早く健次郎に耳打ちをした。 「どうしてもお前に逢わなきゃならない理由があったんだよ」 「えっ・・・」 一限目の授業が始まったのを知らせるチャイムが響く。 慌てて授業の準備をするクラスメイト達の波の中で、健次郎は思わず硬直した。 そう云ったウィドの瞳は、単に悪ふざけだとかそういう類ではなかった。 酷く危機感に晒された者の目、とでもいうべきか。 「ウィド・・」 健次郎の脳裏に、再び数ヶ月前のウェブ・スパイダスとの闘いが反芻された。 一限目の授業は数学だ。 フロンティア学園も私立である以上、他の学校より多少は高いカリキュラムを組んでいる。 その甲斐あってか、フロンティア学園の生徒の数学力は比較的高いと云われているのだが―― 授業が開始してから約三十分。授業時間も残り半分を切ったところだ。 数学の教師が、今回の単元のまとめ問題を電子黒板に表示させ、それを生徒たちに解かせている。 他の公立中学校よりも難解な問題だが、フロンティア学園内の生徒にとっては、それほど難易度の高いものではない。 問題は一次関数と証明問題が数種類。まとめなだけあって、その単元内で出た解き方のほとんど全てが出題されている。 生徒たちは額を指でとんとんと叩きながらも、電子ノートに数式を描いていく。 既に全て解き終えてしまった者、未だ中盤で悩む者と様々だ。 「・・・・」 そんな中、健次郎の手は一向に動いていなかった。 yをχの式で表す?△ABCと△CFBの合同を証明する? ペンを握ったまま、健次郎の瞳は泳いでいた。 この解き方はどうやったっけ。大体からしてこんな問題といた経験が今までにあったか。 いや、もしかしたら欠席している内に終えてしまったのかもしれない。 だがしかし、一次関数は確か一年生の時も噛ったような・・。 思考の袋小路に追い詰められた健次郎を見捨てて、時間は過ぎていく、 健次郎がようやく一問目にとりかかった矢先に、教師の止めの合図が入った。 「では、誰かにこの問題を解いてもらおうか」 その台詞にビクッと身体を震わせた健次郎は、教科書で身を隠すように縮こまった。 まだ一問も解けていないのに、当てられては溜まったものではない。 クラスメイト達がばりばり問題を解いている間、一問も解けずに遊んでいた等と思われては―― 必死に身を隠す健次郎の方に、教師の視線が当てられる。 「やばいっ!」と心の中で叫んだ瞬間、すっと指さしながら教師は指名した。 「では、転校早々だが、ラグナーク君。この問題が解けるかな?」 「はい」 短く答えて、ウィドは静かに席を立った。 自分が当てられなかったことに胸をなで下ろしつつ、健次郎はその背中を目で追う。 見た所、さっきまで寝ているようだったが、大丈夫だろうか。 まあ、彼のことだからあの程度の問題は必要最低限の情報で解いてしまうのだろうが。 淡々と電子黒板に数字が表示されていく。 ノートを書き写すだけでも数分はかかるだろうという内容の問題だったが、 それは一分もしない内に、黒板全域が埋まるほどの量になった。 その答えに、健次郎は思わず唖然とする。 全てのパターンを交えられたχの式。 健次郎には理解不能な式を使用しての答えに、小難しい条件から割り出された合同証明。 更には関係のない問題が例題として横に記されていて、その答えも緻密に書き出されている。 これには流石に教師を含む教室内の全員がポカンと口をあけた。 ウィドはそんな彼等を余所に、「楽勝」と小さくクスリと笑う。 そして、唖然としたままで採点しない教師に向かって云う。 「正解ですよね?」 そして続けて少し悪戯心を含んだような笑みで、 「それとも先生ともあろう方が理解出来ませんか?」 ハッとしたようにマルを入れる教師の背中に止めを刺すのだった。 「うっわー・・」 そんな彼が気が付いたように向けてきた笑みに、健次郎は思わず小さな声でそう漏らした。 結局、その日の授業は全てウィドの独壇場で幕を下ろした。 数学では見ての通り。 国語は誰も気付かないような心理状態を的確に割だし、理科でも誰も知らないような化学変化、元素記号を持ちだし、 専門書を読み漁ってもなかなか出てこないような歴史を語る社会。 もはや教師もクラスメイトも目が点になっていたが、ウィドは依然として口もとに笑みを浮かべるだけだった。 健次郎は、判っていたつもりだったが、やはり歴然の差に大きく項垂れた。 最低限授業に出ていれば判っている問題もあった筈なのに――最も、 健次郎は常時イレギュラー・ハンターとして出動しなければならない為、そんなことを云っても無意味なのだが。 下校のチャイムが鳴る。 いつもより時間がずっと早く進んだ様だった。それだけウィドが加わったことでの授業風景が変わったのだろう。 ウィドに興味を持ったクラスメイト達がわらわらと群がってくるのを、彼と健次郎はなんとか間を縫って潜り抜ける。 そういえば、自分が転校してきた時も同じようなことがあったなと、健次郎は今更ながらに思い出した。 質問の嵐に、「また明日な!」とだけ残して、ウィドは素早く教室を退散した。 無論、健次郎も彼に引っ張られて一緒だ。 足早に校門を出て、適当な建物の裏まで走ると、ウィドはようやく止まった。 「まっ、このままくれば平気だろう」 「あはは。やっぱりこうなるのか」 自分の時はいちいち質問に答えていたから揉まれたのか。こうすれば良かったんだな。 そう頭の中で納得するセイアに疑問符を浮かべつつ、ウィドは続けた。 「学校っていうのはいつもあんなか?」 「まぁ転校してくる人が来たときは特別なんだよ。きっと」 ウィドは、ふーんと興味なさげに答えた。 そして静寂。 ウィドが話を切り出してくれるのを待つ健次郎は、それを悟られない為に腰に粒子として納めておいたライド・チェイサーを取り出した。 特別チューンのそれは、一般隊員では到底乗り熟せないような出力を持つ。 最も、こんな街中でそんな出力を出してかっ飛ばせば、いかにハンター免許を持っていたとしても逮捕されてしまうのだが。 ウィドは、そんな特別仕様のライド・チェイサー・アディオンに興味を持ったようだったが、 話すべき話題を思い出し、慌てて自分を制した。 アディオンに股がった健次郎の後の座席にぼすんと座り、つんつんと後から彼を突きながら命ずる。 「さっ、行こうぜセイア」 「い、行くってどこへ?」 「勿論ハンターベースだろう?」 あくまでさらりと云うウィドに、健次郎は「えっ・・」と思わず言葉を詰めた。 相変わらずの笑みを口もとに浮かべ、ウィドは再度健次郎の背を押す。 言葉を発する一瞬だけ、その表情を別人の様に引き締めて―― 「詳しくはそっちで話す。余りにも重大だ」 その一言に、健次郎も忘れ掛けていた事の重大さを思い出し、素直にコクリと頷く。 「・・判った」 * * * 学校からベースまでの道中、健次郎は事の経緯をあらかた説明してもらった。 かねてよりその才能をかわれていたウィドは、何度かハンターベースに赴任しないかと誘われていたが、そのたびに断っていたという。 丁度その時研究していたものは、ハンターとは余りにもかけ離れていたもので、その研究を邪魔されたくはなかったそうだ。 その研究がようやく終わりを告げた頃、再びベースから誘いがきた。勧誘者の名は『ゲイト』だったという。 自らの生みの親の相変わらずの性格に、健次郎が少しだけクスリと笑った頃、 二人を乗せたアディオンはようやくハンターベースへ到着した。 結局、『余りにも重大な』話は、到着の影響で日の目を未だに見ていなかった。 「ふーん。まぁまぁなとこだな」 「中は結構綺麗で良い所だよ。全盛期よりは劣ってるって話だけど」 一度目のシグマの反乱。俗に言う第一次イレギュラー大戦の際、 世界中の都市という都市から施設まで、ほとんどが破壊された。 旧イレギュラー・ハンターベースも例外ではない。 その後も立て続けに起こる戦乱の中、ハンターベースは優先復興施設に選ばれていたものの、被害はあとを立たなかった。 結果的に、ベースに属する職員たちも半分以下になった今、なんとか落ち着きを取り戻したベースだったが、 そこに以前のような活気は残っていなかった。 健次郎に云わせれば、今のベースも充分に機能してくれるし、居心地が良いのだが。 以前、兄が云っていた言葉を思い出しながら、健次郎は自らのIDを通し、内部への扉を開けた。 ――お前にも俺が入隊したばかりの頃のベースを見せてやりたかったよ。 健次郎の部屋は二階だ。 一般的に一階は研究室や食堂――ベースにも僅かに人間の職員は存在する――、指令室等が設備されている。 なんとなく廊下を歩き出しつつ、健次郎は話題を振る。 ベースの廊下は意外に広い。話ながら歩いても、充分に話し込むだけの距離はあった。 「まず指令室に行くの?」 「いや、学校に行く前に挨拶は済ませてきた。シグナス総監だったけか? 現存するレプリロイドの中で最も精密なCPUを持つレプリロイド」 「う、うん、確か」 片手を口もとにあててぶつぶつと呟き始めたウィドを見て、やはり彼は根っから科学者なのだろうと思う。 イレギュラー・ハンター総監・シグナスが現存するレプリロイドの中で最も精密なCPUを持っているということは、 周囲の承知の事実だ。 彼が総監の任についてから、既にかなりの時間が経つというのに、それが依然として覆されないのは、 ここ数年、地球が復興に力を入れている所為か、それとも余程シグナスは完成されたレプリロイドなのか。 どっちにしろ、ウィドにとって、これ程の魅力を持つレプリロイドもそうはいない筈だ。 「機会があったら解析されてくれないかな」 「それはちょっと無理じゃないかなー・・」 一頻り呟いたあと、好奇心の光る瞳で見詰めてくるウィドに、健次郎は苦笑いと共に返す。 ちぇっと残念そうに舌打ちするウィド。健次郎は、突き当たりに当たったところで「二階に上がるね」と、 脇の階段に足をかけた。 「僕の部屋は二階にあるんだ」 「あ、そうか。寄ってっていいか?」 「うん。いいけど」 とんとんと静かに階段を登る。 その途中で擦れ違ったハンター達が、敬礼しながら挨拶してくるものだから、 健次郎も「こ、こんにちは。ご苦労様」とぎこちなく返した。 「有名だな。副隊長は」 「あんなに堅くならなくてもいいのになぁ」 「立場ってものがあるんだろう?ハンターにもさ」 「そういうものかな」と返しつつ、健次郎はふぅと溜息をついた。 確か彼等は第七空挺部隊の一般隊員だった筈だ。確かに彼等から見たら、 第十七精鋭部隊の副隊長――と云いつつ隊長は未だ不在の為、実質的には隊長――である健次郎は、高みの存在だろう。 しかし、と健次郎は思う。 彼がこの地位についているのは、ロックマン・エックスとゼロの弟という彼の立場の為だ。 本来なら、幾ら戦闘能力が高くとも、経験を積まなければ、唐突に隊長クラスの地位に就くことは許されないからだ。 結局、兄のオマケという存在でしか見られていないのか――健次郎は、たまにこんなことを思ってしまう自分が、 情けなくも怨めしかった。 「どっちにしろお前に勝てる奴なんてそうそういやしないんだ。胸張ってろって」 「僕だって別にそんなに強いわけじゃないよ」 「それでも今のハンターには重要戦力なんだろう?それでいいだろ」 初めて云われるパターンに、健次郎はパチパチと瞬きをしたあと、「うん」と頬笑んで頷いた。 ウィドも、その笑みを見て満足したのか、口もとに柔らかく微笑した。 そんな笑みを見ると、誰か、懐かしく、遠い人の笑みを見たような錯覚に陥って、健次郎はふるふると少しだけ頭を振った。 いつの間にか、彼等は十七部隊の私室エリアの『ロックマン・セイヴァー』の私室の前まで来ていた。 部屋に入り、鞄を二段ベッドの下に放り、健次郎はすぐに制服を脱いだ。 シワにならないようにしっかりハンガーにかけておけと兄によく云われていたのを思い出し、 ベッドのパイプに引っ掻けてあるハンターの制服と交換で、学生服をかけた。 ウィドと一言二言交わし、すぐに飲み物を入れるため、キッチンに向かった。 ウィドは微糖の珈琲が好きだと云っていたので、それも一応捜してみる。 最近オペレータのエイリアが買ってきてくれたインスタント珈琲がどこかにあった筈だ。 砂糖はまだ開けていない箱が幾つかあった筈だし、カップも何個か余っている。 インスタント珈琲は元々人間用の飲料だが、最新鋭のレプリロイドである健次郎は、人間と同じように飲むことが出来る。 それが内部機構でエネルギーに変換される――そのエネルギーは申し訳程度の微量――。 レプリロイドも人間と同じように、捕食による精神的な休息があってもよいだろうという配慮だ。 二つのカップに適量の珈琲豆を入れて、軽く珈琲を作った。 ウィドの云う微糖がどの程度なのか判らない健次郎は、砂糖の容器をそのまま持っていくことにした。 健次郎は珈琲はどうにも苦手だった。どちらかといえば甘党の彼には、珈琲の苦みはまだ早いのだろう。 「お待たせ」 「お、サンキュ」 健次郎からカップと砂糖の容器を渡されたウィドは、容器をぱかっと開くと、 中の砂糖を少しだけ抓んで、パラパラとカップの中に振った。 スプーンで軽くかき回したそれを一口喉に流し込んだあと、ミルクをたっぷり入れてきた健次郎のそれを見て、一言。 「お前、よくそんなに甘いの飲めるな」 「ウィドこそ、よくそんな苦いの飲めるね」 「ま、大人だから」 からかう様にそう云ったあと、ウィドはぐぃっとカップの中の珈琲を一気に飲み乾した。 コトンとカップを適当な場所に置いたウィドの目付きは、さっきまでのそれとは違う。 それに気が付いた健次郎は、ウィドの珈琲よりも圧倒的に甘くした自分のものを机の上に置いて、 身体ごとウィドの方へと向き直った。 「・・で、だ」 さっきよりも一段低く発せられるウィドの声に、健次郎はゴクリと喉を鳴らす。 自然と二人の間に緊張が走る。今までウィドも健次郎も務めて明るく振る舞っていたことは明白だ。 だが、もう逃れられない。知らずとも起こり得るであろう出来事に、健次郎は備えなければならないのだ。 「お前がこの間倒したウェブ・スパイダスを解析した」 「うん」 「云っておくが、これから先云うことは全て事実なんだ。信じてくれるな」 コクリ、と健次郎は頷く。 今更彼を疑う気にはなれなかった。 「俺が解析したスパイダス。メインコンピュータは搭載されていなかった。 されていたとしても、全く機能しない程に壊れていた筈だ」 一瞬、自分かウィドがメインコンピュータを破壊してしまったのではないかと仮説を立てた健次郎だったが、 スパイダスに止めを刺す際のウィドの射撃は、スパイダスの胴を撃ち抜いていたし、健次郎自身との戦闘で、 メインコンピュータが搭載されている頭部を損傷させた記憶はない。 「それって・・」 健次郎は、背筋がゾッとするような感覚を覚えた。 メインコンピュータが搭載されていないレプリロイドは、当然ながらに動かない。 動けたとしても、それはレプリロイドというよりもロボットで、あれ程複雑な戦闘パターンは組めない筈だ。 なら、何故―― 「あぁ。第三者の介入があったと考えられる」 「第三者――・・」 「しかもそいつはスパイダスをコントロールしていたわけじゃない。お前も判るだろうが、 遠隔操作であれ程の戦闘パターンを組むことは出来ないし、なによりあの闘い方はオリジナルのスパイダスそのものだった」 ウィドのその言葉に、健次郎は心で納得する。 ウェブ・スパイダス。彼の闘い方は兄から何度も聞かされている。彼だけじゃない。 第一次シグマ大戦。第二次シグマ大戦。ドップラーの反乱。レプリフォース大戦。ユーラシア墜落事件。そしてナイトメア事件。 それらで闘った敵との話は、全て聞かされ、記憶している。 エックスのアイカメラが捉えた映像を交えて、それらはダイレクトに健次郎の脳に焼きつけられている。 「・・駄目だ、僕には判らない」 軽く首を横に振って、健次郎は呟く。 遠隔操作での戦闘は困難を極める。同調しやすいそれ専用のメカニロイドならまだしも、 メインコンピュータすら搭載されていないレプリロイドの脱殻では。 何より、コントロールの指令を伝えていた機器が搭載されているとしたら、ウィドがそれを見逃すことはほぼ有り得ない。 ならば、何故スパイダスはあのような動き、闘いを挑んできたのか。 結局的に、健次郎の思考はふりだしに戻ってしまうのだ。 「不可能だ。メインコンピュータが搭載されていないレプリロイドは稼働しないし、遠隔操作をしていた可能性もない」 「でも現にスパイダスは・・」 「だが」 健次郎の反論を無視したウィドは、そこで一旦言葉を切る。 意味のある沈黙に、健次郎はきゅっと拳を握り締める。 ウィドの双眼をぐっと見詰めて、その唇が開くのを待った。その緊張感の為か、それはたかだか一秒もない時間だった筈なのに、 健次郎は粘っこく長く感じた。 「もし、メインコンピュータの搭載されていないレプリロイドを、修復し、更に強化させ、 遠隔操作とは違った方法で操ることが出来る技術があったとしたら?」 「えっ――」 驚愕と共に言葉を連ねようとした健次郎の行為は、半ば強引に阻止された。 健次郎が言葉を紡ごうとした瞬間、それを掻き消すかのように部屋の中にアナウンスが響いたからだ。 回線は部隊別通信。繋がれる際の独特の効果音が、それが指令室からのものであると教えてくれた。 ウィドは一旦口を閉じ、健次郎は弾かれた様にアナウンスに耳を傾ける。第十七精鋭部隊出撃要請の放送だった。 『第十七精鋭部隊はただちに出撃準備。目標はTX-33地点。詳細は追って報告――』 「僕、いかないと!」 第十七精鋭部隊。それはイレギュラー・ハンター内でも飛び抜けた能力を持つ者達で構成されるエキスパートチームだ。 内約は戦闘能力に長けた者、索敵能力に長けた者、作戦構成を得意とする者と様々だ。 かつては最強のイレギュラー・ハンターとして名を馳せていたシグマが部隊を指揮し、 彼がイレギュラー化した後は、彼を見事撃破してみせたロックマン・エックスがその任を継いでいる。 その出来事は、ハンター内部だけでは留まらず、一般人の間でも有名だ。 そして現在は、健次郎――セイア――が事実上隊長を務めている。 というのにも、健次郎はまだ隊長の座に就くための一定条件を満たしていないからだった。 入隊して一年と少しの健次郎では、どう足掻いたところで隊長の座には就けないのだ。 隊長であるエックスが殉職いた今、十七部隊の指揮をするのは副隊長である健次郎の仕事だ。 健次郎は少し温くなってしまった珈琲を一気に飲み乾して、タッと廊下に飛び出した。 「ウィド!ウィドは僕の部屋にいてくれ!」 「いや、俺もいくぞセイア」 「えっ!?」 短くすぱっと言い放ったウィドに、思わず健次郎は声を上げる。 ウィドは今までコートに隠れて見えなかった腰のホルダーから、 高出力のレーザー銃――以前、これでスパイダスを撃ち抜いた――を取り出し、健次郎にそれをちらつかせて見せた。 その目は「護られるばかりじゃない」と言いたげだ。 「でも・・」 「嫌な予感がするんだセイア。俺は」 コクリと頷く健次郎。 確かに感じるこの胸騒ぎは、ただごとではない。 そして、自分の嫌な予感が的中しやすいことは、健次郎自身よく理解しているつもりだ。 部隊を指揮する者として、部隊に配属されていない者を巻き込むことは出来ない。 しかし、弱体化したイレギュラー・ハンターは、例え精鋭部隊といえど、その人数は全盛期の半分もいない。 何より、特A級のランクを持つハンターは、今や健次郎しか存在していない。 彼の実力を知る上では、一緒に来てもらえればかなりの戦力になることは判っている。 彼の実力を知るセイアと、副隊長を務めるロックマン・セイヴァーの狭間で、健次郎はギリリと歯軋りをした。 「セイア!」 もう一度名を呼ばれて、健次郎は躊躇と共に首を縦に振った。 「判った。一緒にいこうウィド」 後で責任を追求されるようなら、自分一人で責任を負う覚悟はあった。
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autolinkTOP>【ふ】>風魔の小次郎 風魔の小次郎 (ふうまのこしろう) 分類5【題名】 ジャンル5【その他・作品・番組】 風魔の小次郎ホームページ http //www.fuuma-kojirou.com/ 週刊少年ジャンプに、リングにかけろの次に連載された車田正美の漫画。 見開きが多く、台詞も少なく、1ページに5コマ以上なんて殆んどない。 読むのが遅い自分でも、雑誌に連載されてる20ページは10秒で読めて、単行本も1冊10分もかからず読めてしまう。 だけど大好きだった車田漫画。 登録日 2005/03/03 【ふ】一覧 ファイズアクセル ファイブハンド ファミコンウォーズDS ファミリースタジアム V3 Vネックジャケット 風俗 夫婦 風魔鬼組 風魔の小次郎 風来坊 プール フェイドアウト 富嶽百景殺し旅 深田恭子 福原忍 袋とじ 富豪刑事 藤岡弘、 藤川球児 ふしぎなメルモ 藤崎奈々子は豚骨ラーメン 藤田平 藤田まこと 藤峰有希子 藤本敦士 豚マン 踏み切り ブラスターフォーム ブラチラ ブラックエンジェルズ ブラックジャック ブルースペイダー 古畑任三郎 フレームページ プレゼント 付録 PROJECT G4 プロパンガス プロ野球チップス ■ トップページへ移動 ▲ このページ上段に移動
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川崎 憲次郎