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晋太郎の恋人2(あゆみ版) アイドレスWiKiの該当ページ L:晋太郎の恋人2(あゆみ版) = { t:名称 = 晋太郎の恋人(あゆみ版)(職業4) t:要点 = 晋太郎の上,元気そう,笑顔 t:周辺環境 = 竜太郎 t:評価 = 体格2,筋力3,耐久力3,外見1,敏捷1,器用0,感覚0,知識3,幸運4 t:特殊 = { *晋太郎の恋人2の職業4カテゴリ = 派生職業4アイドレスとして扱う。 *晋太郎の恋人2は晋太郎を追跡することが出来、このとき必ず成功する。 *晋太郎の恋人2は重度の晋太郎好きと宰相府が認定したプレイヤーのみが着用できる。 *晋太郎の恋人2は晋太郎と歩く場合、晋太郎が手を差し出してくれる。 *晋太郎の恋人2は自己と晋太郎の魔法、詠唱、絶技行為に+3の修正を与える。 } t:→次のアイドレス = ひさしぶりのデート(イベント),竜太郎枕(イベント),散歩(イベント),凝視(絶技) } プロモーション →晋太郎の奥さん(あゆみ版) 派生前(というかプロモ前) 晋太郎の恋人(あゆみ版)→手を繋いで話さない(久珂あゆみ版)
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松井@FEGさんからのご依頼品 /*ずいぶん後のその後で*/ ある日、久珂家にて。 晋太郎はまだ小さい竜太郎をバスケットに毛布しいたベッドに寝かせた後、ふと思いだしたように、こんな事を言った。 「そういえば。この間松井さんと会ったよ」 「え?」 あれ、晋太郎さんって松井さんと知り合いだったっけ。一瞬きょとんとするあゆみ。 「結構前の事だったからすっかり忘れてたけど、向こうが覚えてて呼び止められたんだよ。ずいぶん前に、ほら、一緒に来たことがあっただろう?」 「あー」 久珂あゆみは思いだしてそう頷いた後、うーと言ってうなだれた。思いだした。あのときは晋太郎さんに謝りに行こうとしたのだった。ぐるぐるして逆に怒らせたり……危ういところだったりしたけれど……。 そのとき、フォローしてくれたのが、松井いつかと総一郎である。 「そのとき暇だったから、ちょっとお茶してね。あ、竜太郎もクッキーもらったんだよ?」 「へー。あ、もしかして喫茶店ですか?」 「そうそう。あ、知ってた? 喫茶店の名前、奥さんの名前なんだって」 「あはは。聞きましたー」 「すごいよねー」 「ですねー」 「実は旦那さんだとか」 「……え?」 首をかしげるあゆみ。晋太郎もよくわかっていない表情。 「いや。同席したスイトピーが、総一郎さんの事を見て……」 /*/ 「あら、奥さん。旦那さんのご様子はどう?」 「………………」 びしっと額に青筋を立てるヤガミ、無言でコーヒーを出した。 眉を顰めるスイトピー。 「ヤガミ。注文と違うわよ? 私はコーヒーじゃなくて……」 「ちょうどきらしているんだ。悪かったな」 「でも、結構美味しいよ? 竜太郎、はい、クッキー」 晋太郎は席に着いたまま自分のカップを持ち上げた。それから肩に止まっていた竜太郎に、テーブルに置かれたバスケットとクッキーのセットを示した。竜太郎はいいの? という風に晋太郎を見た。頷く晋太郎。すとんとテーブルに下りて、晋太郎がつまんだクッキーをはぐはぐと食べ始めた。 あ日の午後。眠気を誘う心地良い陽気の溢れる昼下がりに、一同は喫茶店いつかに集まっていた。 別に、示し合わせたわけでは無い。たまたまである。晋太郎は、竜太郎がおなか空いたようにしていたから。スイトピーは旅行。総一郎ははじめからこの店にいる。単に運が重なっただけである。 少しすると、どこか間延びした声の娘がやってきた。犬妖精のメイドである。その足下には柴犬が。今日はどこかおすましモード。 「ご注文のモンブランと、ショートケーキと、レアチーズケーキですー。わぁ、その子可愛い」 竜太郎が面を上げてメイドを見た。メイドはきゃーいいながらよーしよしと頭を撫でた。竜太郎、小さく声を上げる。その間にトレイを受け取ってケーキを配る店主総一郎。そして少し休憩だ、と言った。 「え、でも営業時間ですよ?」 「昼休みだ」 つい数時間前にも昼休みはとった気がしたけれど。 「はーい」 が、別にそれがもう一度来ても悪い事は何も無い。メードの娘は嬉しそうに笑うと、竜太郎と遊び始めた。 「しかし。面白い組み合わせだな」総一郎が言った。 「この店もなかなかのものだと思うけれど」スイトピーが言う。それからコーヒーを一口含む。悔しそうな顔。それから何も言わずに犬妖精の娘を見て、総一郎を睨みつけた。「どういう事?」 「前からの従業員だ」 「ふぅん」 「本当だ」 「でしょうね。あなたが旦那さんをないがしろにできるはずがないし」 「………………」 総一郎はいろいろ言いたそうにしたが、黙った。晋太郎は不思議な顔。 「実は女性なんですか?」晋太郎が聞いた。 「面白い事言うわね」スイトピーはくすくす笑った。 「気にするな。ただの嫌味だ」総一郎はきっぱりと言った。「まったく。なんで俺箆回りにはこう嫌味な女ばかり……」 「どういう意味かしら?」 「…………」 「仲がいいですね」 晋太郎はそう言ってモンブランを口に運んだ。なかなか。竜太郎にも……と思ったら、いつの間にかメードの娘がケーキを持ってきて食べさせてあげていた。竜太郎は翼をぱたぱたさせている。ずいぶんなついてるなぁ。 「しかし。そういえば、うまくいっているらしいな」総一郎は晋太郎を見た。「あのときはずいぶんあれだったのに」 「あー。ええ、そうですね」晋太郎は苦笑した。「あの頃はまだ、お互いに理解が足りなかったので」 「お互い」少し目を丸くするスイトピー。「そっか。そう思うようになったのね」 「うまくいってるなら、何よりだ」 「私としては、初対面があれだったあなたたちがそうして普通にしている方がよほど以外ですけどね」 スイトピーがしてきたのは、晋太郎と総一郎の事だ。あの頃はまだ高渡という名前の久珂あゆみが、さる事情で晋太郎に距離を置かれていた頃。その仲介に出た総一郎が晋太郎と出会い、 晋太郎:「はじめまして」(目は笑ってない。呪符を持っている) 総一郎:「はじめまして」(懐に手をいれている) という状況になっている。 ちなみに、すぐ横では松井があわあわしていた。高渡は超長距離で状況を見守る、というより、フリーズしていた。 まあ。その後、事なき……をなんとか得て、今に至るのだが。 「そうだ。そういえば。前々から一度聞いてみたかったんだ。いや、差し障りがない限りでいいんだが」総一郎が晋太郎を見た。 「なんですか?」 「自分が結婚したなんて、不思議だと思わないか?」 「あー……なるほど。ええ、まあ。時々そう思います」 「やっぱりそう思うものなのか」 「不思議な感じはしますね」 うんうんと頷き会う男達。スイトピーが怪訝な顔をした。 「何言ってるのあなたたちは」 「女にはわからない感覚だろうな」 「なんですって?」 むっとするスイトピー。総一郎は苦笑して肩をすくめた。晋太郎も微妙な笑みを浮かべている。 「何どうでもいいこと考えているかは知らないけれど、いいじゃない。奥さんいて幸せなんでしょう」 何故か不機嫌になったのか、スイトピーはもう一つケーキを注文した。ついでに、コーヒーも。総一郎は笑ってキッチンに向かった。晋太郎は微笑んでクッキーを食べた。 /*/ 「ああそうだ。今日は珍しい客が来たぞ。竜と魔法使いだ」 「え。ファンタジィですね」 「そうだな。まあ久珂さんなんだが」 「ああ。奥さんの方ですか?」 「いや、旦那の方だな」 その日。夕食の途中、ふと思いだしたように総一郎は言った。自分が作ったより美味しい事に、わぁ、らっきー、と思いながら食事を取っていたいつかは、その手を止めた。味噌汁の椀を置く。 「珍しいですね。何かあったんですか?」 「いや。心配しているようなことは何も無い。……本当だ。単に店に来て、菓子を食べて、帰って行っただけだ」 「そうですか。何か約束したとかは?」 「本当にない」総一郎は小さく頷いた。「安心してくれ」 「わかりました。安心します。でも隠してないですよね? 危ないこととか」 総一郎は一瞬難しい顔をした。心配そうな表情をするいつか。いやそういう意味じゃない。どう言ったら信じてもらえるかと……。 いや、考える前に言おう。 「大丈夫だ」 「……はい」 「まあ、それはいいんだが。あそこの一家もどうやらうまくいっているらしいな。前に少し関わっただけで、すっかり忘れていたが。何よりだ」 「そうですね。幸せそうですよ」 いつか、そこで少し言葉を切った。それから小声で付け加える。 「私も幸せですよ」 「ああ。俺も幸せだ」 頷く総一郎。 沈黙。 同時に、照れた。 作品への一言コメント 感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です) さわやかでかつみんな幸せそうな話で読んでいてすごく楽しかったです。細かい周辺キャラまでオールスターで豪華ですね!ありがとうございました。最後のほどよい甘さが私は好きです。 -- 松井@FEG (2008-12-18 23 14 19) 名前 コメント ご発注元:松井@FEG様 http //cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/cbbs_om/cbbs.cgi?mode=one namber=1519 type=1464 space=45 no=0 製作:黒霧@涼州藩国 http //cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=1734;id=UP_ita 引渡し日:2008/12/18 counter: - yesterday: -
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溜息の部屋 山本周五郎 ------------------------------------------------------- 【テキスト中に現れる記号について】 《》:ルビ (例)埒《らち》 |:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号 (例)綿|天鵞絨《ビロード》 [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定 (例)とり[#「とり」に傍点] ------------------------------------------------------- 今でもその室の壁には『溜息の部屋』と彫りつけた文字が遺っている。 山手の並木街に添った古風な映面館、ブラフ・シネマの楽屋には、そのころ実にさまざまな人間が集まっていた、同時に奇妙なことは、それらの者たちがみな、それぞれに人生の埒《らち》の外へはみ出た、一言にして云えば落魄《らくはく》した者ばかりであったことだ。 主任弁士の沢木七郎《さわきしちろう》は朝から酒びたりで、オセロオの説明に浪花節を入れたり、ファスト・ヴァイオリンを弾いていた安土竜太郎《あづちりゅうたろう》は向う鉢巻でユウモレスクの曲弾をやったりして、気の良い山手の客の度胆をぬいていた。見習弁士の早見俊平《はやみしゅんぺい》は七郎の弟子であったが、彼はしばしば泥酔する師匠のために、沢木七郎そっくりの声色でとり[#「とり」に傍点]の説明をしなければならなかった、しかしこれらのでたらめな悪戯は、彼らが不真面目であったからではなくて、あまりに多く真面目であろうという欲求をもった結果というべきだった。コントラバスの米山八左衛門《よねやまやざえもん》にしろ、ピアノの粕壁大五郎《かすかべだいごろう》にしろ、技師の久良三吉《くらさんきち》にしろ、また見習の早見俊平にしろ、みんな生活に一つの強い信念をもっている人間で、それゆえにこそ、だんだんと下積みへ落ちていくそれぞれの境涯を、どうしようもないほどはっきりと見なければならぬ苦痛に堪えられなくて、浪花節をうなり曲弾をやらずにはいられないのだ。 その楽屋は横に長い四坪ばかりの陰気な室だった。ながいこと塗替えをしない壁は、すでに所々に剥落《はくらく》していたし、それを隠すために貼付《はりつ》けた外国映画のポスタアは、いつも端の糊《のり》が乾き割れるので、ただ一つ並木街へ面して展《ひら》いている小さな窓から、吹きこんでくる風に煽《あお》られては、ぱさぱさと人知れず音をたてていた。真中に炉を切って、冬になるとこれへ炭火を盛上げ、すっかり綿|天鵞絨《ビロード》の磨切れている椅子をまわりへ置いて、みんな無遠慮に炉の上へ足を差出しながら煖をとった。 見習の早見俊平や、ピアノの粕壁大五郎や、コントラバスの米山八左衛門――彼はでぶ[#「でぶ」に傍点]の米八と略称されていた――や、さらによりしばしばファスト・ヴァイオリンの安土竜太郎などは、酒に夜を更して下宿へ帰れなくなると椅子をこの炉辺へ並べ、その上に外套《がいとう》を引掛けて朝までごろ寝をしたものである。でぶの米八とひと口に呼ばれている彼八左衛門が、ときによると終夜その椅子の上で眠らず、みじめに溢《あふ》れ出る涙を抑えかねていたことなどはおそらく椅子の磨切れた綿天鵞絨のクッションの外には知る者もなかろう。 この灰色の壁に取囲まれた穴倉のような部屋の片隅に、爺さんと呼ばれて、その頃すでに七十に近い老人が、いつも溜息《ためいき》をつきながらしょんぼりと生きていた。長いあいだ芝居の中売や寄席の下足番などをしてきた男で、人の世の隅という隅を見て歩いたはてに、辛うじてみつけ出した最後の片隅がそこだったのだ。爺さんは泥靴で汚れた床を掃き、炭を砕き、湯を沸し、そして隅へ引込んでは居睡をするか、でなければ溜息を吐いていた。 この灰色の室に『溜息の部屋』という文字が書付けられたのは、しかし爺さんがいつも溜息を吐いていたからではない、これまで描いてきた冗長な説明は、私がこれから語ろうとしているきわめてありふれた喜劇の書割にすぎないのだ。 その年の十一月に入った第一週から、ブラフ・シネマではインタアバルに、奏楽へ女声独唱を加えることになった。 提案を通させたのは沢木七郎だが、コントラバスの米山八左衛門が友だちに頼まれて、これも中央地区からだんだんと場末へ落ちつつあった歌手、根来八千代というのを持ちこんだのである。館主は初め不賛成だったが、二番|煎《せん》じのバアサル物ばかりでは、せめて女声の甘い小唄でも挾《はさ》まぬかぎり、人をとることはできないと熱心に沢木が口説いた結果、向う五週間という契約で話が定《きま》ったのだ。 契約が定って、根来八千代が初めて楽屋へ挨拶に来た――その明る日、この灰色の陰気な室には驚くべき変化が起った。 朝、いつものように出勤して、楽屋へ入って来た爺さんは、脚の欠けた喫煙卓子の上に、赤い花を※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28]した一輪差の花瓶《かびん》をみつけてまず驚かされた。壁には新しく――とくに図案的な柄の――映画ポスタアが何枚も貼られ、入口には厳しい文字で『土足厳禁※[#感嘆符二つ、1-8-75]』と書いた紙が、綺麗《きれい》に掃清められた床を見下していた。炉の中にはもはや一本の煙草の吸殻もなく、さらに笑うべきは、三升も入ろうという大きな湯沸しが、何年もの錆《さび》を磨き落されていかにも気羞《きはず》かしげに、真鍮色《しんちゅういろ》の光を放っていたことである。 この現象については誰も一言も触れようとしなかったが、ともあれ昨日までのよどみきった退屈なこの部屋の面貌はまるで一変して、そこには不規則ながら整頓《せいとん》ができ、微《かす》かながらテンポと調和とが現れはじめた。しかしさらに驚くべきことは午後になってから、その夜うたう歌をオーケストラと打合せるために、根来八千代が舞台へ立ったときのできごとである。 客の入っていないがらんとした小屋の中に、根来八千代のうたうソルベイジの唄の第一節が終って、第二節にかかろうとしたとき、ファスト・ヴァイオリンを弾いていた安土竜太郎はふいに指揮台へ上った。そしてその上で唄の最後の一節が終るまで異常な熱心さで伴奏をつけ終ると、弓を措くなり、 「すてきだ、すてきだ」 と云いながら拍手を送った。米八をはじめ粕壁大五郎も、外のみんなも、それに倣《なら》って熱心な拍手を続けた。 みんなついに活々と肱《ひじ》を張った、そして尊敬の眼をあげて根来八千代を見上げながら、おのおのの楽器を執直した。かくて第二の歌ミニヨンが始まったとき、その貧しいオーケストラ・ボックスからは、かつてその建物の中で響いたことの無い、素晴しく立派な、美しいメロディが流れでてきたのである。 さらに二種のバルカロールを合せ終ると、一斉に立上った楽手たちが歌手へ、舞台の上の歌手が楽手たちへ、感謝をこめた拍手を送りあったとき、両者の眼に涙があったと云っては、嘘に聞えるであろうか。 打合せが済むと、安土竜太郎は米山八左衛門を誘って外へ出た、そしてひどく亢奮《こうふん》したようすで、大股《おおまた》に歩きながら云った。 「おい、ありゃ本物だぞ」 それからこう付け加えた。 「声も荒れてるし、テクニックも随分と安手なもんだが、素晴しい感情だ、あれだけおれのヴァイオリンへ透ってくるなあ[#「なあ」に傍点]ねえぞ」 二人は開幕楽の始まるまで帰って来なかった。そして帰って来たとき、安土竜太郎も米山八左衛門も、深い奇妙な光を両の眸子《ひとみ》に湛えていた。 根来八千代は年の頃二十三四で、やや肥りじしの眼の細い、頬の紅い小柄な女だった。無雑作に女性を二つの型に分類したがる人たちの言葉を藉りて云えば、正しく彼女は母型に属すべきタイプであろう、際立って美しくない代り、ひと眼で誰にも好感をもたれる人柄だ。そして彼女にはいつも良人《おっと》が付いていた。 彼女に良人のあることなどは、無論このブラフ・シネマの者たちには何の影響でもなかった。そればかりでなく、彼根来勇助が描かぬ貧乏画家で、ひどく進んだ肺病患者であることを知ると、八千代に対するみんなの好感が、一種の尊敬にさえ変っていったくらいである。勇助自身は自分の病気を肋膜《ろくまく》の痼疾《こしつ》だと云っていたが、そんなことを彼が自分でも信じていないくらいは、誰にも理解することができた。 根来勇助はいつも八千代と一緒に楽屋へ現れるか、でなければ一足先に来て、炉端の古椅子にかけては陽気な雑談を楽しんでいた。そして八千代がその日の歌を終ると、気の良いオールボアルを叫んで帰ってゆくのだ。 さもあらばあれ、この灰色の室はめざましく変化を続けた。壁の映画ポスタアは絶えず新しく貼替えられ、喫煙卓子の上の花瓶には欠かさず、赤か青か、でなければ紫色などの花が※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28]された。吸殻はかならず灰落しの中へ捨てられるし、誰も彼も靴の泥は叮嚀《ていねい》に拭ってからあがった。そして爺さんは、より部屋の隅に引退って、もはやその溜息はみんなの耳に届かなくなってしまった。 誰かが米八などが、洋服の月賦屋に厳重な催促を喰ってくさっているときなど、根来八千代は相手の腕を軽く叩きながら云う。 「ばかねえ。あんたはバスを弾くのが商売だし、月賦屋は月賦の催促をするのが商売じゃないの、とすればあんたのバスを聴いてくさる人のないように、あんただって月賦の催促でくさるわけはないはずよ――さ、元気になんなさい、あたし今夜アンクオルのとき、あんたのためにスィート・アドレインをうたってあげるわ」 そして米八がバスを弾きながら眼にいっぱい涙をためるまでに美しく、あまく、マイ・スィト・アドレインをうたうのだ。 もはや沢木七郎は浪花節をうならなかった、安土竜太郎は鉢巻を捨てた。 何という変りようだ。今まで大きな声ひとつ響いたことのないこの部屋に、活気のある笑いが絶えずわいた。出たり入ったりするみんなの足取は軽く、そして楽しげだ、偏屈な沢木七郎まで柄になく冗談をとばした。映画がかぶって[#「かぶって」に傍点]から、待っていた根来八千代夫妻を取巻いて、みんなが近くの喫茶店に集まるときなど、そこには若々しく力強い芸術の雰囲気《ふんいき》が醸《かも》しだされる。一言にして云えば小さなラ・ボエームの一場面だ。安土竜太郎がふいに立って外へ出て行ったかと思うと、間もなく赤葡萄酒の――途中で日本製のあくどいレッテルを剥取《はぎと》って――壜《びん》を二三本抱えて戻って来る。それぞれのタンブラアへ酒が注ぎ回される、ブラボーの三唱だ。見習の早見俊平は立上って、うろ覚えのアンニイ・ロオリイをうたい始めた、しかしひどく亢奮しているので歌を続けることができず、すぐにやめて腰を下す、みんながそれに好意ある拍手を送る、やがて根来勇助が椅子の上に立って、タンブラアを高く捧《ささ》げながら叫ぶ。 「諸君、これこそ正に我らの人生だ、今や世の芸術は黄白の密室で取引され、卑俗の冠を頭に、汚穢《おわい》の沓《くつ》を穿《は》いて太陽の下を往くが、ここには一杯の佳き葡萄酒と、高邁《こうまい》なる感情の昂揚《こうよう》がある、見えずといえども桂冠は我らの額高く輝き、象《かたち》なけれど綾羅《りょうら》の衣我らを飾る、我らに掣肘《せいちゅう》なく、我らに阿諛《あゆ》なし、猥雑《わいざつ》の世を遙《はるか》に見下して、飢と貧困の楼高く我らは調《うた》う。見よ、これこそ正に我らの人生だ」 みんなのタンブラアが高くあげられた。安土竜太郎は筺《はこ》からヴァイオリンを取出し、みんなは根来八千代を、擬大理石の卓の上へ押上た。 「チゴイネルワイゼンリ※[#感嘆符二つ、1-8-75]」 根来八千代はうたいだした。みんなは軽く軽く卓を叩いていたが、やがてそれが混声合唱になった。 この奇妙な宴の果てた後、安土竜太郎と沢木七郎は、腕を組みながら深夜の街へ歩きに出て行った。二人の眼は輝き、呼吸は深くなり、足は力強く、凍てついた道を踏緊めて行った。 「そうだ、これこそ人生だ、貧乏と、屈辱と、嘲笑《ちょうしょう》と、そして明日の望みのなくなったときこそ、はじめて我々は人生に触れるのだ」 「落魄とは何だ、もっとも高く己を持する者のみに与えられた美酒ではないか」 そんな事を取止めもなく語りながら、暗い裏街をそれからそれへと、あてどもなく歩き廻った。そして夜明けがたブラフ・シネマの楽屋へ戻って来た彼らは、並木街に面した窓から部屋の中へもぐりこんで寝た。 しかし、こういう亢奮は、べつに安土竜太郎や沢木七郎だけが味わったのではない、一例をあげて云えば、見習の早見俊平が英語学校へ入ろうと決心したのも――これはついに実現されなかったが――その影響であるし、ピアノの粕壁大五郎が、共同で大きなシムホニイを作曲しないかと、竜太郎に向って真面目に相談をもちかけたのも、同じ亢奮に根ざしていた。 この不思議な現象を何と説明したらよかろうか。話の表情だけに敏感な人は、おそらく根来八千代が、その偉大な音楽的才能をもって、この楽屋に現れた結果、一瞬にして光明が展開したというふうに思われるであろう、けれど事実はひどく違うのだ、根来八千代はべつに偉大な才能をもってはいない、彼女はその才能が自ら導く経路を辿って、次第に下へ下へと落ちていく、あらゆる人々と同じ人間だ。安土竜太郎は初めに、 「素晴しい、こいつは本物だ」 と叫んだが、それは微塵《みじん》も偽のない言葉とは云えなかった。音楽学校の初年級にも、もう少し良い素質の歌手のいることは、彼といえども知っていた。 ではこのブラフ・シネマの人たちを捕えたふしぎな亢奮は何の故だろう。 契約の最後の週に入ったある夜。 いつもよりばかに早く、しかも大分酔って、根来勇助が楽屋へ現れた。彼は炉端の椅子の背に凭れかかって、くどくどと泣言をならべ始めた。 「僕は可哀想な人喰鬼だ、僕は八千代を啖《く》って生きている。八千代には良いパトロンがあったんだ、それを僕が横から奪い取った。僕たちは愛を金で売りたくないと思ったからだ。はっは、諸君、ところがこんな始末だ、愛を売らなかった僕は、今や八千代の芸術を売って生きなければならない――見たまえ、ここに可哀想な人喰鬼がいるのを!」 勇助がくどくどとしゃべっているとき、不幸にも向うの隅の卓子で、安土竜太郎がせっせと作曲の鉛筆を走らせていた。彼は今粕壁大五郎との共同作品である、例の大きなシムホニイのテエマ・メロディを苦案しているところなのだ。 そのとき舞台では『思出の小径』という甘いアメリカ映画が進行中であった、おそらくその伴奏楽の感傷的な曲が、勇助の饒舌《じょうぜつ》に油を注いだに違いない、彼の口調はわけもなく涙の色彩を濃くした。突然、安土竜太郎は鉛筆を卓子の上に叩きつけて喚いた。 「そうだ、君は可哀想な、憐《あわ》れむべき人喰鬼だ、八千代さんの血を吸う蛭《ひる》だ、君がいなければあの人は芸術を取戻せる、なぜ君は自分の首へ繩を巻付けないんだ、そうすれば何もかも解決するのに、え?」 根来勇助は蒼白《そうはく》になった、初めは竜太郎の言葉の意味がのみこめぬらしく、白痴のように唇をもぐもぐさせていたが、やがて立上って、吃りながら、 「君は、君は――」 と叫んだ。 「君は、何の権利があって、そんなに僕を侮辱するんだ、僕が何をしたというんだ、僕は君から、一銭だって借りてやしない」 「は、は、は」 安土竜太郎は、調子のはずれたからっぽな声で笑うと、卓子の上へ頭を抱えて俯伏《うつぶ》した。勇助はそれを見ると、ふいに刺すような口調で、 「分った」 と云った。 「分ったよ、君。君は八千代に惚《ほ》れているんだ、僕の女房にさ」 竜太郎はびくっと身を顫《ふる》わせて顔をあげた。根来勇助は歪《ゆが》んだ、意地の悪い冷笑を、竜太郎の眼へ射込みながら続ける。 「誰でもそうだ、みんなが八千代に惚れる、そして僕に自殺をしろと云う、だが僕だってまんざら馬鹿じゃない、知っているんだ、君がなぜそんなことを云うか――ねえ」 安土竜太郎は拳を握って立上った。するとおりよくそこへ八千代が入って来たのである。それからあとの安芝居をここに書く必要はあるまい、竜太郎と勇助とは握手をした。 十二月三日、土曜日の夜の舞台で、ファウストの宝石の歌をうたいながら、根来八千代は突然に※[#「口+各」、U+54AF、38-上-13]血《かっけつ》して倒れた。 安土竜太郎とでぶの米八に楽屋へ担ぎこまれた彼女は、炉端に急造された綿天鵞絨の椅子のベッドに横たわって、きょとんとした眼つきで四辺を見廻しながら、 「どうしたの、ぜんたいどうしたのよ、私は」 と云い続けていた。舞台ではとり[#「とり」に傍点]の画が写され始めたが、沢木七郎は説明を早見俊平に任せて、八千代の傍から離れなかった。でぶの米八や安土竜太郎はもちろん、手の明けられるかぎりみんなが、八千代の廻りに集まった。医者の来る五分ばかり前に、八千代は二回めの大※[#「口+各」、U+54AF、38-上-22]血を起し、失神した。 駈つけて来た医者はすぐにゲラチンを注射し氷嚢《ひょうのう》を肺部に当るよう、応急の処置をしてから、意識を回復した八千代に濃食塩水を飲ませつつきわめて愛相の良い表情で、慰安を与えた。 「かえってこう、最初に※[#「口+各」、U+54AF、38-下-4]血のくるほうが、病状としては良好なのです。なに、半年も転地をして養生なされば、じきに恢復《かいふく》しますよ」 半年の養生。紫外線のじゅうぶんに含まれた日光と、清らかな空気と、豊富な滋養物と、安逸と。――八千代自身がうたえなくなった今、誰がそれらのものを与えようというのだ。 みんな暗然と声をのんだ。一瞬、冷凍室のように酷烈な沈黙がこの部屋を蔽《おお》ったとき、片隅で爺さんの吐く溜息の声がみんなの耳に聞えてきた、長いことこの部屋から忘れられていた爺さんの溜息が――。 医者が入院をすすめて去ると間もなく、ほとんど入違いにやって来た根来勇助は、集まっているみんなの顔を見ると、高く右手をあげながら、何ごとも知らぬ陽気な声で叫んだ。 「諸君、検察官が来ましたぜ」 私の語りたかった喜劇というのはこれで終いだ。その後ブラフ・シネマではふたたび女声独唱を加えようとはしなかった。 安土竜太郎はほどもなく、ふたたび以前のように鉢巻をして曲弾を始めたし、沢木七郎は酔って『ニイベルンゲン』の説明に浪花節を入れた。喫煙卓子の上の花瓶には、ながいこと一輪の赤いカネエションが、汚く萎《しお》れたままうちやられてあったが、いつかそれもどこかへ見えなくなってしまった。 壁にはもはや新しいポスタアは貼られなかった、単に貼られぬばかりでなく、糊が乾き割れて落ちるものさえ、あえて元のように貼直す者もないのだ。かくして壁さえも以前のように、その灰色の面をだんだんとひろげていった。 すべてがもとの姿にかえった。炉の中はいつも煙草の吸殻で狼藉《ろうぜき》をきわめ、掃いても掃いても床の上は泥靴で汚された。そして爺さんは、すこしも変らぬテンポで炭を割り、湯を沸し、それから部屋の隅へ引籠《ひきこも》って溜息を吐いている。すべてが旧のままになったのだ。 『これは人生の溜息の部屋である』 そういう文字が、火箸《ひばし》か何かで灰色の壁へ荒あらしく書きつけられてあるのを爺さんが発見したのは、安土竜太郎が、新しく下町にできるダンス・ホオルの楽手に身を売って、ブラフ・シネマから去って行ったよほど後のことである。 壁に彫つけられた文字は前と後がいつか薄れて、うまく火箸が塗料を傷つけた部分だけ、いつまでもそこに遺っていた。『溜息の部屋』という部分だけが――。 底本:「山本周五郎全集第十八巻 須磨寺附近・城中の霜」新潮社 1983(昭和58)年6月25日 発行 底本の親本:「アサヒグラフ」 1933(昭和8)年4月12日号 初出:「アサヒグラフ」 1933(昭和8)年4月12日号 ※以下3個の外字は底本では同じ文字です。※[#「口+各」、U+54AF、38-上-13]、※[#「口+各」、U+54AF、38-上-22]、※[#「口+各」、U+54AF、38-下-4] 入力:特定非営利活動法人はるかぜ
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海馬話前編 15スレ目、605-608 ID 215YsglN(bEcg2pcl) 氏 日常へ戻って早三ヶ月。 人の腹の中で日に日に育つ赤の他人のガキが最近やたら目立ち始めた。 畜生、目立たないはずじゃなかったのかクソババアと俺は口の中で悪態をつきながら妙に出ている腹 を見下ろした。 再三堕ろすか堕ろすまいか悩んだ結果、子どもに罪は無いかと病院へは行かなかったが、結局俺は男 のプライドを取ったのだ。その結果が、コレだったりする。 悲しいかな、順調に育っているのが手に取るように解るのである。手を当てるとここん、と蹴られた り動いたりするから、卵からは孵ったっぽい。……三ヶ月も一緒に居ればちょっと愛着も沸いたりな。 海に住んでる本家は知らんがタツノオトシゴ族の卵は全部が孵化するわけではない。ほとんどが無精 卵で、一つか二つの有精卵が孵化して、無精卵を食べながら育つ。しかも男から生まれるのを想定して いるのか小さな姿で生まれるため、普通外からはほとんど目立たないのだが……。 「竜太郎、便秘なの?」 彼女にこっそりそう聞かれたとき飲んでた茶を噴出しそうになった。 「なんで?」 しどろもどろで問い返したら、彼女、白猫の獣人のタミに「だって」と言われて下腹部をじろじろ見られた。 うん、まぁ確かに他が太いわけでもなく腹だけやたら張ってるのは便秘だと思われてもしょうがない。 嫌だけど。しかし、だからといって正直に他人の子ども孕んでますとは言えないよなぁ。 適当に「うん、まぁ」と答えたら、子どもっぽい顔立ちの頬を赤らめたタミが白い猫の耳を伏せ、ふわ ふわの尻尾を揺らしてから「今度あたしの使ってる便秘薬あげるから」と耳打ちしてきた。 うん。俺にはもったいないくらい良い子だ。 ちょっと生意気だが不器用で、少ないながら経験したセックスも全部俺が初めてだと言っていた。優しくて かわいくて本当に愛しく思っているわけで、だからこそ言えないのだ。 ありがとうと答えながら、俺の固い鱗の尻尾と彼女の柔らかい獣の尻尾を絡ませて頬に口付けた。 さて、そんなこんなで今の今まで周りを欺き隠し通してきた俺なワケだが、ある日の真夜中に突然ハラ ワタを引っ掻き回されるような激痛に目を覚ました。 実は三日前からやたら腹が張りまくり、下痢と食欲不振で水しか飲んでいないせいで、ふらふらする のだが、病院に行くと妊娠がバレそうなので、風邪薬とワシ娘マークの元気ドリンクでやり過ごしてい た。学校も休んでいたから、心配したタミがお粥を作ってくれたりしたけれど、彼女が帰った直ぐ後に 耐え切れずに全部吐いて戻してしまった。 布団の中で、妙に突っ張る腹を押さえて悶えつつ、とある嫌な予感が脳裏を掠めた。 じっとり流れ落ちる脂汗がやたら粘ついて気持ちが悪いが、無理矢理立ち上がりトイレに向かった。 出たのは大便でも小便でも無く多量の水であり、磯のような生臭さが鼻を突いた。確信した。 急いで壁伝いにトイレを出て、壁にかけてあるカレンダーを確認、指折り抱卵日数を数えて青ざめた。 あまりに早すぎる。抱卵失敗。確実に流産だ。 「痛っ…、いてぇ……マジかよ」 半分泣きそうになりながら携帯電話を引っつかみ、居間を汚さないため慌てて風呂場へ直行して、母 親の電話番号に電話をかけた。 「やばいやばいやばいやばい早く出ろよクソっ、マジ生まれるって。痛ぇっ、チクショウ」 とぅるるる、とぅるるるという呼び出し音が聞こえ、ぶつりとした音が聞こえた瞬間、俺は絶望した。 おかけになった電話番号は存在しませんというやたら明るい声が憎たらしい。 一瞬怒りで痛みすら忘れて電話を風呂場の床に投げつけかけたがそんな元気も無いわけで、仕方なく 寝巻きのズボンとパンツを脱いで、壁にもたれて足を開けば、排泄孔から出る気満々の胎児が前立腺を 押してるせいか息子が元気に勃ちあがっていた。 突き上げるような激痛に、少しは気持ちよくなるんじゃないかと息子を擦ってみるが空しくなってや めた。 痛いやら苦しいやら腹立たしいやらでチクショウチクショウと悪態をついていたのがそのうち、誰か 助けてに変わる頃、唸るようにいきむとようやく一匹目が生臭い透明な塩水と共に出てきたが、それを 直視した俺は思わず悲鳴を上げてしまった。 異形だ。二十センチくらいの頭が馬で、体が魚の異形が出てきた。 異形は苦しげに体をうねらせると、すぐに息絶えたが、そんな生き物は、多分まだ沢山腹の中にいる んだ。 そう思った瞬間、プライドとかそんなものは頭の中から全部吹きとんだ。 「助け、誰か、助けて……」 深夜とかそんなのは気にする余裕もなく、不意に手に当たった携帯電話を開いた俺は愛しいタミに電 話をかけていた。 「竜太郎どうしたの!?」 タミはすぐに駆けつけてくれた。肩で息をしているのは走ってここまで来てくれたからだろうか。タ ミの家はそう遠くは無いが、近くも無い。 風呂場に俺を見つけたタミは、俺を見て目を見開いた。尻尾の毛まで逆立てて驚いてる。 虫の息になっていた俺は、タミが来てくれたことに安心したが、同時にこんな姿を見られるたんだと 絶望した。もう、今すぐ帰られても仕方が無い。 浴室は磯のような生臭い匂いが充満し、足元には一分と持たずに死んだ異形が三匹も転がっている。 「竜太郎、どうしたの?」 恐る恐る、近づいてきたタミが俺を撫でてくれるが、説明するような元気すら無かった。タミの手を ぎゅっと握り締めてうわ言のように助けてと彼女に縋ると、彼女は俺を抱き返してくれる。 もう大丈夫だ、となんとなく安心したのもつかの間で、彼女の目がおかしいのに俺は気づいた。 磯と異形魚の生臭さのせいで、彼女の猫獣人としての野生に火がついたのかもしれない。 「これ、なに?」 不意に俺から体を離す。足元に転がっていた異形を拾ったタミは、未成熟でやわらかなそれの匂いを ふんふんと嗅ぐと、ぺろりと一飲みに食らった。俺は驚きすぎて声も出ない。 唇についた血を舌でぬぐった彼女は、俺の頬をべろんと舐めて、うっとりとこう言った。 「竜太郎、おいしい。このオサカナさん、竜太郎の? まだ出るの?」 「タミ、どうしたんだ? 何か解らんけど、やめよう? な?」 タミは俺に口付けてくる。危険を感じて身を引くが、壁が邪魔して動けない。 タミの手が俺の下腹部に当てられ、そしてぎゅうっと体重をかけてまだ胎児が残る腹を押して中に残 っている胎児を搾り出そうとした。 「ぎゃあぁぁぁ!!!」 押された衝撃にずる、ずるりとまた異形が生れ落ち、血と磯の香りが新たに広がると、興奮した彼女 が尻尾をゆらゆらと揺らしながら獲物を見る目つきで俺を見ていた。 「痛い? 竜太郎、ごめんね。ごめん。でも我慢できない。ごめんね」 生命の危機と前立腺を押される物理的な刺激で勃起したそれを見たタミは、はぁはぁと熱い息をつき ながら、それまで着ていた洋服を一枚一枚脱ぎながら俺の肉棒を口に含み、猫特有のざらざらした舌で 俺のモノを舐め上げる。 痛みの中に不意に訪れた気持ちよさに縋るように、俺はタミの白い猫耳の生えた頭に手を添えてねだ ると、タミは今まで見たことも無いような艶っぽい笑みを浮かべた。 「竜太郎、可愛いね」 タミは四つんばいで俺の肉棒を舐めながら、片手を自分の後ろに回してぐちゅぐちゅとそこに指を出 し入れしていた。そして肉棒が十分な硬度になったところで、俺を跨いだタミが、一気に腰を下ろして きた。 「なぁぁぁっぁぁ!!! 気持ちいいっ! 竜太郎、いい!!」 「うわぁぁぁ!!」 ずぶずぶと自身を飲み込んだ彼女は、すぐに強烈な腰使いを見せ始めた。 「竜太郎、きもちい、あっ、最高よおいしそう!!」 「あっ、タミ! タミぃ!!」 腰をがんがんと振りながら、タミは俺の頬をベロベロ舐めてから思い切り肩に噛み付いてきて、俺は 俺で苦痛の中でタミの体内のうねりが生み出す快楽にしがみついて、彼女が腰を揺らすたび生まれる異 形の与える酷い痛みを必死で散らしていた。 腹の中の、おそらく最後の異形が出て行くのを感じながら、多分俺はタミの中に射精していたんだと 思う。 目を覚ませばそこは柔らかな布団の上だった。 見ればタミが心配そうに俺を覗き込んでいる。俺が意識を失ってから、タミがここまで運んできてく れたんだろう。女の子に運ばせて、悪いことをした。 時間はわからないが窓の外は明るくて、もう昼を回っているようだ。 「竜太郎、大丈夫?」 タミに尋ねられるが、俺は大丈夫だよと笑う気力さえ残っていない。腹を撫でればもうぺったんこに なっていて、三ヶ月もの間一緒に暮らした生き物は居なくなっていて、清々しさとともに妙な寂寥感を 感じるのは俺が抱卵する生き物だからだろうか。 しばし沈黙した後、先に口を開いたのはタミだった。 「あの、あのね、あの竜太郎から出てきた生き物なんだけど」 いきなり核心から入られてドキリとした。誰の子? とか何なのアレ。とか聞かれても、今は説明で きる気がしない。しかし、彼女が言ったことは違うことだった。 「あぁ、私はアレが何なのかなんてどうでもいいのよ。えぇとね、十五、出てきたよ」 俺は首を傾げざるを得ないが、彼女は一生懸命に言ってくれる。 「うん、匹なのか人なのか解んないけど、十五、出てきたの、でも、全部死んじゃってたから私が食べ た。おいしかった。だから、竜太郎が頑張ったのは無駄じゃないからね」 それから最後に、がんばったね。と言って撫でてくれたのが妙に嬉しくて、ちょっと泣けた。 あれから結局母から連絡が来ることは無く、しばらくして結婚した俺らの間には、三人の子どもが生 まれた。生んだのは、もちろんタミだ。 俺はまた異形が生まれるんじゃないかと気が気ではなかったが、生まれた子どもは娘二人がタミ譲り の真っ白い耳と尻尾をもった猫の獣人で、一人だけ生まれた男の子は俺と同じタツノコだった。 活発なタミは家庭になどは入らずに、キャリアウーマンとしてバリバリ働いている。 そのかわりと言っては何だが、俺が主夫として働いている。朝に弱いタミをたたき起こしたり毎日メ シを作ったり、自分で栄養バランスがいい食事を考えたり、洗濯して買い物して言うことを聞かない子 どもをどやしつけたりと毎日忙しい。主婦が暇なんて嘘っぱちだから。 毎日が充実していてとても楽しい。 けれど、少し困ったこともある。 子ども達が寝静まった後、俺は風呂場でタミに押し倒されていた。すっかり洗腸されて綺麗になった 直腸には多量の塩水が注入され、スーパーで買った小さなニシンも埋め込まれている。 「竜太郎、生まれそう?」 あの時以来、すっかり『出産プレイ』をお気に召したタミは、栓の変わりに差し込まれたプラグを弄 りながら、タミが俺に尋ねてくる。俺はぽろぽろ涙を流して首を縦に振ってタミに懇願するが、タミは 許してくれない。そう簡単には許してもらえない。 苦しげに震える肉棒をぺろぺろ舐めながら、タミは俺の腹を押してきて、我慢できなくなったところ でタミが俺を跨いで肉壷の中にソコを収めるのだ。タミが満足して、俺はようやく『出産』できる。 「んあぁぁぁ!! はぁっ!! 竜太郎! いいわ!」 「あぁぅぅぅっ!!」 タミの嬌声が上がる中、俺もまた苦しさと気持ちよさに声を上げるのだ。 ぐじゅっ、ぐちゅっと結合部が淫らな音を立てて抜き差しされて居るのが見える。 「いいわ、いいわいいわ!! 竜太郎、良いわよ! 生みなさい! うなぁぁぁっ!!」 「あっ、あっ! タミ、どうしよう、生まれちゃうっ、生まれちゃうよ!!」 タミの許しが出た瞬間、俺は自分でプラグを引き抜き、出産する。その刺激で快楽は脳髄を駆け抜け ありったけの精液をタミの中に放出するのだ。 「なんだか、やっぱりどっちがお嫁さんなのかわからないね」 コトを終えた後、俺の頬を舐めながら、タミがそう言ったが、それは皮肉でもなんでもない。 男も女も関係なく「生物」だというのが俺達なんだといつだかタミは言ってくれた。 だから俺はタミの猫耳を撫で、互いの尻尾を絡ませる。 「そうだな」 そういうと、タミは嬉しそうに笑い、俺もまた、何かとてもくすぐったい気持ちに笑みがこぼれた。
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異世界 幻想大地など、不思議な場所がたくさんある。 東方地帯アナゾン 東方忍びの里東方にある忍びが多くいる隠れ里 暴走森林ナタル森林の奥地に来た人は、森林が暴れだして食われる 無限鏡地名前のとおり、鏡が無限にあり、厳格で惑わす。 南西地帯リーディル サイト南西リーディル支部組織サイトのリーディル支部 本部と極秘に連絡をとっている 魔女の里アリス魔女アリスが里長の魔女の里 柴グループ本部柴 幸作が三代目の柴グループ。様々な分野で活躍している 初代は柴 幸之助で設立者である。 柴 幸源は幸作の子供であり柴魔道具研究所の市長である。 柴家の人間はかなりたくさんいる。くわしくは柴家 中央発展地域ガルザック 発展都市ヌーガたくさんの種族が入り混じっている大都市 32区4町で成り立っている都市 これは移民エリアのことで上級エリアでは人間のみしか入れない 上級エリアに行くには600,000gc(60万ギルツ)必要であるギルツはkt(カター)とは<1 2>で大体取引される 100ギルツが大体一食分 自分の家を建てるのに1万ギルツ必要 60万ギルツは60個の家分、豪邸12個分ぐらいである。 上級エリアにすむには、貴族や王族など上級階級で180,000gc(180万ギルツ)必要 柴銀行本店柴家の銀行。 発展都市ヌーガ高級住宅街ヌーガの超大女優で年収10万gcのリリアンが住んでいる 柴グループで年収32万gcで三日寝ずに働いている柴幸之助が住んでいる 柴飛空挺飛行場柴グループの飛空挺の飛行場 001便から400便まである。 この管理者は柴 竜太郎。柴 幸之助のすこし遠い親戚 柴商業取引所柴グループの商業の取引所 柴 竜太郎の娘の柴 龍姫が管理者 柴防衛センター柴グループの民家の防御や兵隊の派遣などをしているとこ 柴 竜太郎の息子の柴 柴 龍雄がセンター長
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ドラゴンプリン アイドレスWiKiの該当ページ L:ドラゴンプリン = { t:名称 = ドラゴンプリン(アイテム) t:要点 = かわいい,プリン,ドラゴンの大好物 t:周辺環境 = キッチン t:評価 = なし t:特殊 = { *ドラゴンプリンのカテゴリ = アイテム、消費型アイテムとして扱う。 *ドラゴンプリンは竜を呼び寄せる効果がある。幼い頃食べさせていると、いっそう効果は強くなる。 } t:→次のアイドレス = 竜の卵のプリン(×アイテム),はむはむ食べる竜太郎(強制イベント),ドラゴンと交渉(イベント),ドラゴンランチ(アイテム) } 派生前 久珂竜太郎(ハレキ)→竜の飛ぶ空
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ACEその他 (☆肖像画、文章どちらかのみ ★肖像画、文章共にあり) 五十音順(作成中) あ行 蒼の翡翠☆ 悪魔☆ アリエス★ 岩崎仲寿☆ 英吏・M・シバムラ★ 奥羽恭兵☆ オンサ・エルケ☆ か行 管理委員長なおみ☆ クイーンオブハート★ 黒野ふみこ☆ キューティ善行☆ クーリンガン(神聖巫連盟) 玖珂光太郎☆ 久珂こよみ★ 久珂竜太郎☆ 久珂竜太郎2☆ 工藤百佳☆ グランパ☆ 来須・A・銀河☆ 玄霧火焔☆ 月華陽子☆ 吾平☆ 吾平さんのお嫁さん☆ さ行 鷺宮龍燈☆ 里樹妹人★ 階川 敦子☆ 瀬戸口高之★ 瀬戸口ののみ☆ た行 父なる忠孝☆ 高原翠蓮☆ な行 鋸星信児☆ は行 パルフェ★ 比野火焔☆ 日向玄ノ丈☆ 船橋空歌☆ プリンセス・ぽち★ ホワイトスノー☆ ベルカインY★ ま行 マーヤ・メルクーア☆ や行 矢上爽一郎☆ 優羽玄乃丈☆ 雪白☆ ら行 ラッシー☆ ロイ・ケイリン☆
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麻雀番外地 作画 北山茂樹 掲載誌 ギャンブル劇画?など 話数 全7話 あらすじ イカサマ麻雀に敗れて死を選んだ兄の仇をうつために、竜太郎は職を捨てた。顔を整形し、名前もかえてプロ雀士の修行を積み、亡き兄のたった一つの遺品、パイパンを握って仇をさがし歩いたのである。ところが、めざす仇とは、稀代の雀豪と噂される男だった。竜太郎の秘技「磁石返し」はこの男に通用するのか――雀豪との対決の日は来た。(表2より) 単行本 レーベル名 出版社 版型 巻数 奥付 TOEN COMICS 桃園書房 B6 全1巻 1977年10月1日初版 備考 表2にあらすじが書かれている「磁石返し鬼面竜」(『ギャンブル劇画』77年5月号掲載、原作・高原弘吉?)をはじめ、「紅い四喜牌」「海底にいた女」「雀鬼裏街道」「ヒモ勝負」「万札仁義」「金満処女」を収録した短編集。 70年代 TOEN COMICS ギャンブル劇画 北山茂樹 高原弘吉
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久珂あゆみ@FEGさんからのご依頼品 卵かき混ぜながらボエーな所ですっ 竜太郎君をもっとかわいく描きたいー! ご指名ありがとうございましたーっ! 作品への一言コメント 感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です) 素敵なイラストありがとうございます!!!歌ってる竜太郎がすごくかわいいです!!!リクエストどおりほのぼのありがとうございますー! -- 久珂あゆみ@FEG (2010-04-08 16 02 14) 名前 コメント ご発注元:久珂あゆみ@FEG様 http //cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/cbbs_om/cbbs.cgi?mode=one namber=2596 type=2516 space=15 no= 製作:琴月雷那@羅幻王国 http //cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=2390;id=UP_ita 引渡し日: counter: - yesterday: -
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晋太郎の奥さん(あゆみ版) アイドレスWiKiの該当ページ L:晋太郎の奥さん(あゆみ版) = { t:名称 = 晋太郎の奥さん(あゆみ版)(職業4) t:要点 = 晋太郎の上,元気そう,笑顔 t:周辺環境 = 竜太郎、こよみ t:評価 = 体格2,筋力3,耐久力3,外見1,敏捷1,器用0,感覚0,知識3,幸運5 t:特殊 = { *晋太郎の奥さんの職業4カテゴリ = 派生職業4アイドレスとして扱う。 *晋太郎の奥さんは晋太郎の奥さんである。 *晋太郎の奥さんは自己と晋太郎の魔法、詠唱、絶技行為に+4の修正を与える。 } t:→次のアイドレス = オーマやめます(イベント) } 派生前(というかプロモ前) 晋太郎の恋人(あゆみ版)2→晋太郎の恋人(あゆみ版)(プロモ前)→手を繋いで話さない(久珂あゆみ版)