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基本情報 攻略情報 その他 基本情報 Music by ryo Lyrics by Dixie Flatline Illustrated by 宇木敦哉 BPM 138 難易度 Total Notes ♪ 特殊歌詞 Max Score Easy ★★ 72 - - 34,900 Normal ★★★ 107 5 0 61,144 Hard ★★★★★ 176 10 25 121,349 Extreme ★★★★★★ 252 19 33 183,758 BTL - 395 19 - 291,558 攻略情報 判定タイミングは早め。 サビにリズムが変則的な部分があり、高得点を狙う際はこの部分がポイントとなるだろう。 テンポが早いわけではないが、歌詞が一定の間隔で流れてくるため一度ミスをすると連鎖してしまいやすい。 苦手な部分がある場合は練習しておくなどして、流れに乗って楽しみたい曲。 その他 公式twitterによる楽曲紹介(1・2・3・4) いや~、雪凄かったですね。今日は“積乱雲グラフィティ(ryo/Dixie Flatlineさん)”をご紹介! タイムラインでも大好評なこちらの楽曲!寒さも相まって夏が恋しくなりますね! 楽曲は勿論ですが、シャイニーモジュールミクさんに青い空…透明感のあるPVは必見ですよ! 譜面的なオススメはやはり、サビ部分の盛り上がりですね。サビに合わせてトンットンッ!とフリックする部分は気持ちよくフリックできると思います。 名前 コメント
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《雲魔物(クラウディアン)-積乱雲(サンダークラウド)/Cloudian - Thunder Cloud》 効果モンスター 星7/水属性/天使族/ATK2400/DEF 900 このカードは通常召喚できない。 「寒冷前線」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。 このカードは戦闘では破壊されない。このカードがフィールド上に 表側守備表示で存在する場合、このカードを破壊する。 このカードと戦闘を行ったモンスターをダメージステップ終了時に破壊する。 1ターンに1度、自分の墓地に存在する 「雲魔物」と名のついたモンスター1体をゲームから除外し フィールド上の雲魔物カウンターを1つ取り除く事で、 フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。 このカードがフィールドを離れた時、デッキから「雲魔物-積乱雲」以外の 「雲魔物」と名のついたモンスター1体を手札に加える事ができる。 通常召喚できないが、「雲魔物」共通の戦闘耐性を持ち、更に2種類の除去効果を備えている。 1つ目は戦闘したモンスターを破壊する効果。対象を取らないので、2つ目の効果で除去できない、対象を取る効果に耐性を持ったモンスターを破壊する事が出来る。 2つ目は「雲魔物」とカウンターをコストとした万能除去。1つ目と違い対象を取るが、魔法・罠も除去可能である。 更に、フィールドを離れた時にもリカバリーが可能なサーチ効果を持っており、かなり扱いやすいモンスターと言える。だが、特殊召喚モンスター故に手札事故要因な点に注意。 関連項目 ・《寒冷前線》 ・フリー投稿 ・雲魔物
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積乱雲の超人(ニンバス・ジャイアント) C 自然文明 (4) クリーチャー:ジャイアント 1000 ■このクリーチャーが出た時、自分の山札を見る。その中からジャイアントを1体選び、相手に見せてから自分の手札に加えてもよい。その後、山札をシャッフルする。 作者:wha +関連カード/1 《土隠雲の超人》 カードリスト:wha 評価 名前 コメント
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作詞:orange 作曲:TakeponG(ちょむP) 編曲:TakeponG(ちょむP) 歌:Φ串Φ 翻譯:スズカ 積亂雲 渡海而來的風 吹撫的草原 白化破碎的珊瑚 散灑的小路 沉入海底 石垣的空隙間 火紅盛開的花 呼喚鳳蝶 把耳朵 寄付風中 「想再看看這片碧海」 低聲私語著 聲音 微弱回響 發痛 曬黑的肌膚 魚兒相貼 簍籃之中 啊啊 輕喃著 私語著 說笑嬉鬧的 波浪般 垂首 回頭 俯瞰的 積亂雲 悄悄地 小船漂浮 等待起風 浪静時分 點頭 接吻 保持沉默 積亂雲 十六夜的滿月 銀白照耀的海灘 並肩的人影 描沙的手指 「都還沒寫完哪」 海浪沖刷 愛的話語 發燙 炙熱的砂 堆蓋 童夢城堡 啊啊 跌倒擦傷 哭了出來 高高抱起 孩子的眼睛 停手 窗外 想像 積亂雲 拍打岸邊 水波漣漪 月光皎潔 照耀的夜裡 海潮香 回顧 有你的日子 積亂雲 啊啊 輕喃著 私語著 說笑嬉鬧的 波浪般 垂首 回頭 吹颺的 積亂雲 註:收錄於合輯「10 SUMMERS」中。 ___________________________
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【検索用 せきらんうんくらふぃてぃ 登録タグ 2011年 Dixie Flatline VOCALOID ryo せ 初音ミク 初音ミク-ProjectDIVA extend- 宇木敦哉 曲 曲さ 殿堂入り】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:Dixie Flatline 作曲:ryo 編曲:ryo イラスト:宇木敦哉 唄:初音ミク 曲紹介 曲名:『積乱雲グラフィティ』(せきらんうんぐらふぃてぃ) 2011年11月10日に発売した「初音ミク -Project DIVA- extend」と、テレビ東京「ドリームクリエイター」とのダブルタイアップ曲。 歌詞 にわか雨が通り過ぎてく ずぶ濡れの僕らは 立ち尽くして 夏の匂いが少しした ねえ このまま旅に出かけようよ どこか遠く どれくらい時が過ぎたって この思いを胸にしまって 僕らは生きてゆくんだ 愛とmusicそれだけでいいんだ 欲しいものは全てあるから 僕の中に 海が近づく このまま泳げるかもね 窓は全部開けちゃってさ 風に乗って気の向くまま行こう 調子外れの鼻歌も くだらないその冗談もそうね悪くない この世界はいつか変わっても 夜を越えてここに戻って 僕らは確かめるんだ おどけたように君が笑って 少し気取って僕が返した 過ぎゆく日を 時計の針は回り続ける 君は何を信じていくの それはね どれくらい時が過ぎたって この思いを胸にしまって 僕らは生きてゆくんだ 愛とmusicそれだけでいいんだ 大事なものは全てあるのさ 最初から 君の中に コメント 作ってみました。間違いなどありましたら修正お願いします。 -- 鏡音咲夜★ (2011-11-21 14 55 02) まだ記事なかったんだ・・w -- 名無しさん (2011-11-21 19 09 38) 作成乙です。この曲大好き!聴いてると元気出ます^^/// -- 名無しさん (2011-11-27 10 36 55) 良い曲 -- 名無しさん (2011-12-14 09 26 14) 良曲!!一回聞いてハマりました(^^)歌詞とか音とかが凄くいい!大好きです(*^^*) -- 名無しさん (2011-12-15 12 54 14) 最高!! -- 名無しさん (2011-12-18 22 29 32) 何故でしょう?サビから後半泣けてきます -- 名無しさん (2011-12-19 00 36 34) ジェミニの人が作詞したのか!この曲がミクの中で一番好きかもしれん -- 名無しさん (2011-12-20 19 47 52) アニメPVが美しい。 -- ♪ミルク♪ (2011-12-22 14 45 25) PVも曲も最高!! このスカッとした感じが大好きです -- 名無しさん (2011-12-22 17 42 27) FULL追加しました。間違ってるとこあったら修正して頂けると嬉しいです。 -- 黒紫 (2011-12-22 18 54 01) 大事なものは全てあるのさ、最初から、君の中に… ここの歌詞好き‼ -- ミク好きッス (2011-12-23 10 06 03) ↑×2fullバージョン追加ありがとうございます! -- 名無しさん (2011-12-23 10 40 10) なんでジェミニの人のとこにあるの? -- 名無しさん (2011-12-23 20 05 15) ごめんなさい。後でみたら作詞がジェミニの人何ですね。 -- 名無しさん (2011-12-23 20 06 28) ↑5 動画で公開されているのはショート版だけだから、フル版歌詞を載せたらダメですよ。 -- 名無しさん (2011-12-23 23 02 18) PVがすごく良かった 聴くとなんか明日に希望が持てる←(自分だけ?) -- 15hikawa (2012-01-06 01 20 01) ↑×2 もうfull版のアニメPVが出てますけど...ダメですかね? -- 鴉 (2012-01-06 23 30 12) もっと評価されるべき -- 名無しさん (2012-01-08 15 41 52) これCMとかでありそう。ポカリとか -- 雪汰 (2012-01-20 20 17 20) 2番もほしいな~ -- 名無しさん (2012-01-25 21 02 04) ボカロの中で一番好きです★メチャ元気出る♪ -- もふ (2012-02-02 12 11 21) このページを作成した者です。 フルverの歌詞追加してくれた人ありがとう!!! -- 鏡音咲夜★ (2012-02-02 13 53 51) 歌詞の間違いと区切りを修正しました。 -- 名無しさん (2012-02-06 18 45 03) 良曲ですね! -- g8 (2012-02-12 16 29 06) この曲大っっっっっっ好き!!PV最高です!! -- こんにちは (2012-02-18 23 50 42) 大好きな一曲です(`・ω・) 後半のpvはチキン肌止まりませんo(^-^)o -- りべらりすと。 (2012-02-20 07 36 32) 曲もpvも神だわー(≧∇≦) 感動するね! -- はちゅねみくMk-2 (2012-02-20 21 02 36) 最後の歌詞が好き -- 名無しさん (2012-02-26 14 56 44) みりおんならないかな -- 名無しさん (2012-03-12 11 31 47) やっぱ神曲ですな(^o^)/~~ -- 名無しさん (2012-03-18 17 57 08) 最後ハンパねぇ! カッコよすぎ!! -- あたりくじ (2012-04-17 21 35 22) ちびミクかわいい♪ -- 名無しs (2012-05-03 22 47 59) 名無しsさんってもしや・・・宮崎? てかこの曲・・・神だ -- ・・・ (2012-05-04 11 35 24) ネ申です/// pv、かっけえ/// -- はにわ((ググれカス^p^ (2012-05-17 17 17 00) いい曲ですよね。 -- おぼ! (2012-05-17 22 22 56) 8月生まれのミクさんにピッタリな曲!もうすぐ夏だ!( ´Д`)y━・~~ -- 変態という名の淑女 (2012-05-24 21 47 01) 爽快な所が夏っぽい! -- まい (2012-06-17 18 31 13) ホント大好きです!聞くと元気になれる(* ω )b -- まこ (2012-06-27 09 01 26) PV神(*´∀`*)本当にいい曲だ♪ -- おはぎ (2012-07-13 18 10 49) ぬーん…やはり調教が…いかんなぁ。 -- 名無しさん (2012-07-17 22 53 17) この曲BGMに海までドライブ♪ -- MikuMikuDrive (2012-08-04 03 44 09) すごい涼しげ!! -- 夏秋 (2012-08-19 21 50 12) この曲すき\(^O^)/ -- 名無しさん (2012-08-27 08 16 38) この曲とPVを見てるとすごく頭がすっきりする -- 蓮 (2012-09-03 05 22 18) 二行目の『ずぶ濡れの僕らは』のとこ『は』いらない -- かなたさ (2012-09-05 07 32 49) ↑いや、いるよ。 -- 名無しさん (2012-09-16 09 45 34) 一回聞いただけで好きになりましたv(^o^) -- 名無しさん (2012-09-22 12 23 34) pspの体験版で初めて聞いてそれからはまった -- 名無しさん (2012-09-26 17 30 37) この曲最高です✧PVがすごいですよね✭ -- 紅葉 (2012-09-26 17 34 39) 最高です!はまりまくってま〜す♥ -- いぇーい (2012-09-28 06 02 55) PV観て凄く感動した〜〜‼ 歌詞も綺麗♪───O(≧∇≦)O────♪ -- 如月海月 (2012-10-01 17 26 59) DIVAをやっていて好きになりました(*´∀`*) -- もにゃ (2012-10-02 20 12 47) PVが最高です!最後のほうは鳥肌がとまんなかった!! -- あ… (2012-11-10 07 55 57) めっちゃいい!! この歌好きです!! -- 名無しさん (2012-11-12 19 15 02) CD買ったらこの曲あって一回聴いてハマりまくったww -- 京天命 (2012-11-25 23 40 23) ボカロを本格的に大好きにしてくれた曲。アップテンポのようで、ゆったりとしたような不思議な曲調が好き! -- まーごん (2013-01-01 18 19 18) IAのカバーもあるけどやっぱミクの方がしっくりくる。この曲超絶好き! -- ggrks (2013-01-02 09 25 02) この曲大好き♪ほんとポカリとかにぴったりな曲♪ -- まなにゃ (2013-01-03 01 09 39) この曲聞くと元気がでる -- リライトm9 (2013-01-10 01 10 07) このかしすきいいいいいいいい -- 名無しさん (2013-01-12 16 11 49) もう2月だよ♪ -- 名無しさん (2013-02-01 20 08 58) これ何かのDVDに収録されてて、初見で大号泣した -- 名無しさん (2013-02-01 20 10 38) 寒い日にも夏の爽やかさを思い出したくて新年早々1曲ループで聴きまくってた。寒いからこそ聴きたくなるのは俺だけじゃないハズだ! -- 名無しさん (2013-02-10 01 11 19) supercellさんの中で、一番最初に知って好きになった曲なんです(*´-`)だからお気に入り。 -- 名無しさん (2013-02-16 21 50 07) この曲ってやっぱり最高!!自分の中で1番好きだーーー!………夏もいいな!! -- 澱粉 (2013-02-21 22 32 03) 僕もこの曲大好きです。とりあえず、どっか行きたくなる -- ナナシ (2013-02-27 07 52 13) この曲を知らずしてボカロを語るなど俺が許さない(蹴殴殺 -- 名無しさん (2013-03-09 21 19 54) 鬱になったり何聞けばいいか迷ったらこれを聞く -- 名無しさん (2013-03-10 09 52 30) 悪くないとのこぱない -- かずぽん (2013-03-10 11 22 52) いい歌! 卒業式で流れたら号泣間違いなしですね!! -- ユー (2013-03-10 14 26 19) 個人的に一番の神曲 -- 鯣 (2013-03-10 16 01 10) 何でこれがミリオン行かないんや -- 名無しさん (2013-03-10 20 11 54) もっと評価されるべき -- 名無しさん (2013-03-11 19 01 30) ミクにしては聞きやすいな -- まっつぁん (2013-03-17 03 59 53) 爽やかな感じがたまらん -- 名無しのナッシング (2013-03-27 00 58 27) めちゃくちゃ好き~‼ -- 名無しさん (2013-03-27 17 51 01) なにげに初めて聞いたボカロ曲がこれだった。 今までもこれからも一番のネ申曲。 -- 名無しさん (2013-03-28 17 38 31) ミリオンいけー -- 名無しさん (2013-03-29 20 45 52) ↑無理があるかとw でも、この曲もっとたくさんの人に知ってほしい -- 名無しさん (2013-03-29 21 04 05) 私もこの曲が初めて聞いたボカロ曲でした。↑3の方と完全に同意見 最高の曲をありがとうございます!! -- 名無しさん (2013-04-02 22 32 44) 感動したそれだけです!心に響きますね! -- 名無しさん (2013-04-03 22 54 03) 感動した!(≧∇≦)/この曲、大好きで〜〜す! -- リン (2013-04-10 22 10 02) サビがかっこよすぎる -- RIKU (2013-04-18 11 52 52) もっと評価されるべき曲 -- 名無しさん (2013-05-14 18 49 19) なぜだ…なぜ再生回数が伸びない!! -- みなと (2013-05-15 14 43 23) 最初から~♪と所大好き!! -- ぐみ (2013-05-21 20 47 52) かっけぇぇぇ(゜д゜)。。。 -- ニート野郎 (2013-06-04 21 02 18) すごいいい曲で大好きです! -- 紫 (2013-06-17 20 29 09) ↑×10 同じ事思った。ミリオンいけ! -- 鈴 (2013-06-23 09 00 58) PSPで知った~ いい曲!!! -- トピ主 (2013-06-27 19 13 53) 絶対覚える! 覚えてやる! -- 武勝タク (2013-06-27 19 29 21) この曲聞くと本当に元気がでる -- 名無しさん (2013-06-30 15 17 26) 友達に紹介してもらって聴いてみたけど、良い曲だね(●´∀`●) 元気もらえる曲だと思います -- CHERRY@ボカロ最高! (2013-07-05 22 41 49) 聴いた瞬間惚れたww この曲大好きだぁぁぁぁぁぁぁ -- 薄茶 (2013-07-06 09 21 01) ミクはリンとレンを連れて旅に出掛けよ~よ~♪ -- リン (2013-07-16 18 46 03) ミクの歌い方いい!!神曲だぁぁ -- 紫杏 (2013-08-20 01 08 04) これ初めて聴いた曲だなぁ( ´▽`) -- ズマ (2013-08-21 09 41 10) この歌凄くいぃ~! 言葉で表せないくらいにすごい。殿堂入りは一応してるけどミリオンいっていいクオリティだ! ryoさんもそろそろ6曲ミリオン……ね? -- 名無しさん (2013-09-04 21 33 15) どういう解釈をしたらいいのかな いや、解釈なんて無粋だって承知してるけど -- 紅朱雀 (2013-09-20 05 13 05) 聞いた瞬間号泣しました!歌詞もとってもいいし、間違いなく神曲! -- スルメイカ (2013-09-21 20 35 27) 爽やかーー。秋になった今でも聴ける。 -- 爽気体 (2013-09-26 14 29 34) 素敵!歌もPVも大好きな曲です(≧∇≦) 最後のほう泣ける(ToT) -- 名無しさん (2013-10-29 01 15 11) すごいいい曲‼ #65038;この曲聴いてると元気になれる、本当大好き♡ pvも神っててジブリとコラボしたかと思た(笑) -- 名無しさん (2013-11-23 21 03 31) DEVA エクステンドでプレイしてからはまりました!! -- ロイドP (2013-11-26 18 55 34) 聴いてて、涙が出るくらい好きな曲。初音ミク最高 -- 名無しさん (2014-01-06 00 18 37) これはヤバい。泣く。MVも感動。 -- 名無しさん (2014-02-22 07 39 38) ホントにいい歌だっ!すんごく元気でるよ*・゜゚・* .。..。. *・'(*゚▽゚*)'・* .。. .。. *・゜゚・* -- ayu25 (2014-03-01 13 55 21) すごくいい曲ですね!感動しました! -- 名無しさん (2014-03-02 23 37 53) 初音ミクプロジェクトディーヴァに入っててやったら気に入りましたこの曲大好き!!! -- 九ノ瀬棗★ (2014-04-10 13 14 49) 何かと聞いてしまう! -- 里風 (2014-06-10 17 13 27) 今頃知ったけどこれいいね! -- music (2014-06-15 19 33 18) ところで歌詞、「ずぶ濡れの僕らは」なの? 「僕は」に聞こえてしまうが… -- 名無しさん (2014-07-26 09 03 28) 「僕ら」にも聞こえるが、「僕らは」には聞こえないんだよなあ -- 名無しさん (2014-07-26 09 13 16) これ最高。 -- こめこぱん (2014-07-27 11 29 36) FireFlowerと同じぐらい夏に聞きたい曲 -- 名無しさん (2014-07-31 02 58 08) 最高 -- 名無し (2014-08-02 14 27 23) かっけぇ........ -- 名無しさん (2014-08-09 18 27 01) この曲を世界へ届け★ -- 名無しさん (2014-08-16 22 19 04) この曲愛してるっw -- 名無しさん (2014-08-18 15 11 27) この曲は、いつ聞いてもいい!あとPSP でパーフェクト出しました! -- Diva のエキスパート (2014-10-28 19 31 01) すごい♪感動したよ★ -- 名無しさん (2014-12-15 11 03 07) ↑10、11 「ずぶ濡れの僕らは」で合ってるよ。「ら」の発音が弱くて聴き取りづらいのかもね。リズムの関係もあり得るかも…。改めてよーく聴いてみるとちゃんと「僕らは」って言ってるはずだよ。 -- THE・NEET (2014-12-15 14 26 47) センター終わってから聴いたらホッとした -- 廃人39号 (2015-01-18 20 11 49) めっちゃすーっとして気が楽になる -- 葱様 (2015-01-20 19 40 20) 爽やかで、それでいて強い思いがこもっている気がする…いい歌。これ聴いてたら夏のことを思いだした。そして泣きそうになった。 -- 響奈 (2015-03-31 15 31 43) 自分的には、愛とMusicじゃなくて愛と水が良かったwまあ、この曲が良い曲ってのは変わりないけどw -- Kurusu (2015-07-08 23 31 57) 疾走感がやばい -- kko (2015-08-03 09 28 51) かっこいい!! -- 名無しさん (2015-08-20 15 52 48) ↑愛と水。ww -- 名無しさん (2015-08-28 15 55 55) はまるわ〜!小学校を思い出す。 -- アリシア@三味線初心者 (2016-02-14 15 52 41) 爽やかー ryo大好き! この曲でボカロはまったーー! -- 匿名 (2016-03-31 00 05 36) ライブで聴いたらすごい破壊力だった -- 名無しさん (2016-04-19 09 08 10) 最高に素晴らしく、最高に可愛らしく、そして、最高に最高。 -- マスケッター (2016-05-13 00 57 45) 好きです。 -- 名無しさん (2016-06-19 00 52 56) 明るい曲なのにぶわって涙出た -- イルマ (2017-01-09 20 37 04) 歌詞とPVの相乗効果で、ノスタルジーが映えた素晴らしい曲だと思う。 -- 名無しさん (2017-02-04 20 33 00) 「くだらない」が「くだんない」に聞こえたw -- 名無しさん (2017-02-26 01 52 52) 作詞はryoさんではないのはわかるけど、ryoさんの曲で一人称が「僕」という歌詞は珍しい -- 名無しさん (2017-03-16 23 26 24) 音楽チャンネルでこの曲を聴いてから、ずっと探してたんです…しばらく名前が思い出せなかったんだけど、思い出せてよかった! -- 名無しさん (2017-04-26 14 09 44) 高揚感すごい -- 名無しさん (2018-09-16 20 04 51) 真夏の暑い日を思わせながらも爽やかさを感じさせますね。 -- 名無しさん (2020-02-26 02 05 57) 夏を感じさせる曲。モジュール・シャイニーのかわいさがエグい。 -- EXTREMEがクリアできない (2022-07-11 16 36 23) かっこいい!!!!! -- rin (2022-11-26 09 54 55) 名前 コメント
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せきらんうんぐらふぃてぃ【登録タグ CD CDせ Dixie FlatlineCD bakerCD ryoCD 全国発売】 ryo 前作 本作 次作 こっち向いて Baby / Yellow 積乱雲グラフィティ / Fallin' Fallin' Fallin' ODDS ENDS / Sky of Beginning Dixie Flatline 前作 本作 次作 Just Be Friends 積乱雲グラフィティ / Fallin' Fallin' Fallin' Decade ryo Dixie Flatline baker 流通:全国 発売:2011年8月31日 価格:¥1,260(税込) レーベル:ソニー・ミュージックダイレクト CD紹介 ryo(supercell)とDixie Flatlineによるスプリットシングル。 表題2曲はPSP用ソフト『初音ミク -Project DIVA- extend』のテーマソング&タイアップ楽曲。それに加えてbakerによる「積乱雲グラフィティ」のリミックスも収録される。 ジャケットイラストは前作のスプリットシングル同様、宇木敦也が担当。 曲目 積乱雲グラフィティ / ryo Fallin' Fallin' Fallin' / Dixie Flatline 積乱雲グラフィティ (Remixed by baker) 積乱雲グラフィティ (Inst.) Fallin' Fallin' Fallin' (Inst.) リンク supercell Member blog 叶和圓と歌うアンドロイド(Dixie Flatlineのブログ) Sony Music Shop Amazon コメント まさかのコラボ・・・買うしかない!! -- 1@ (2011-07-04 19 46 01) すごく欲しいな。 -- 名無しさん (2011-07-04 21 17 23) マジ欲しい!! -- 名無しさん (2011-07-13 17 28 30) えーすごい!ニコにあげないのかなぁ。 -- 名無しさん (2011-07-14 21 21 46) ↑今回もDIVAチャンネルがあげると思うよ -- 名無しさん (2011-07-22 14 19 09) ジャケかわいい。DIVAも発売日決まったし楽しみ -- 名無しさん (2011-07-23 21 30 55) DIVA Extend公式サイトにてshortversion公開 -- 名無しさん (2011-08-03 18 14 16) 最高だった! -- 名無しさん (2011-08-03 19 32 13) なんか調教変じゃね?曲はもちろんいいけどさ -- 名無しさん (2011-08-03 22 26 08) 歌詞以外は今までにない感じのryoさんミクだと思う。Appendかな? -- 名無しさん (2011-08-04 23 07 36) おそらくapennd使っていると思われ -- 名無しさん (2011-08-07 20 35 40) ヤバいな、久々のRYO節ミクじゃんか。 -- たーと (2011-08-08 01 42 08) ちょっと調教が。 -- 名無しさん (2011-08-09 00 43 39) やっぱryoさんは凄い、こうやってDIVAに楽曲提供してくれてほんと感謝です。 -- mizuki (2011-08-09 05 53 47) かわいすぎるww -- 名無しさん (2011-08-09 21 01 21) 歌詞はDixieさんとお互いに交換してるんだっけ?しかしいい -- 名無しさん (2011-08-15 10 08 27) DIVA最新作楽しみだ。 -- ケサン (2011-08-15 20 46 17) Fallin' Fallin' Fallin' ってDIVAに入らないの? -- 名無しさん (2011-08-15 21 10 38) ニコに「積乱雲グラフィティ」のショートきてた! -- 名無しさん (2011-08-16 03 30 56) Sony Music のサイトにFallin' Fallin' Fallin' の試聴がきてる。 http //www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S cd=MHCL000001957 -- 名無しさん (2011-08-16 17 10 26) ショ-ト版の歌詞わかる方いますか? -- 名無しさん (2011-08-16 20 23 14) 曲は楽しみだけど、今回はDVD付かないみたいでちょっと残念。 -- 名無しさん (2011-08-30 17 38 55) 2曲ともよかった。歌詞交換してても見事に合ってたし。でも積乱雲はPVフルで見たかったなぁ -- 名無しさん (2011-08-31 12 57 15) 公式プレイ動画で全部かな?調教が残念だった -- 名無しさん (2011-09-03 07 22 09) 今日特典番買ってきた!! -- 名無しさん (2011-09-18 23 10 43) やっぱりryoさんの曲とミクの歌声は聴いてて安心するなあ…。 -- 名無しさん (2011-11-10 15 26 27) ↑×6 作成しました! -- 鏡音咲夜★ (2011-11-21 14 56 06) やばすぎるだろ!神曲ばかり! -- 名無し (2011-11-28 15 28 26) Fallin'Fallin'Fallin'歌詞が可愛すぎる(*^_^*) -- ミク教信者 (2012-01-20 01 32 41) ドラマでレンタルスルッショ PSPに曲入れるショ -- ミクファン100倍 (2012-02-04 13 51 02) 名前 コメント
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作詞:Dixie Flatline 作曲:ryo 編曲:ryo 歌:初音ミク 翻譯:日向小郎 積雨雲塗鴉(積雨雲的塗鴉) 驟雨一掠而過 濕透了的我們仍佇立原地 感到有一絲夏意 嗯,就出發去旅行吧 前往遙遠的某地啊 不管多少光陰流逝了 我們都在胸懷裏擁着這思念 繼續走過這一生 只要有愛與音樂便足夠了 因為想得到的東西都已悉數擁有 就在我的心中 離海邊越來越近 或者就能夠游個泳啊 敞開所有窗戶吧 好趁心血來潮 乘風而去吧 哪怕是哼着走調兒的歌 還是開那個爛掉了的玩笑 感覺都不差 總有一天這世界會改變 但我們仍會穿過黑夜回到這兒 以確認彼此 你引人發笑般笑着 我稍為留意到了 便回贈你微笑 就這樣走過似水流年 時鐘的指針繼續轉動 你仍然相信着什麼? 那就是呢… 不管多少光陰流逝了 我們都在胸懷裏擁着這思念 繼續走過這一生 只要有愛與音樂便足夠了 因為最寶貴的東西都已悉數擁有 從一開始 就在你的心中 ↓回應下方的非ログインユーザ,在下認為我的譯文是正常的語體文。蓋文言者,非此面貌也。另外何謂排版錯呢?一行長長的都不斷句,不一定美觀或讓人看得舒服啊。最後,若非ログインユーザ君是轉貼人家的翻譯,宜先問准譯者的許可。若自己是譯者當然就不必吶^^。 我十分好奇↑這首有這麼文言嗎?還有歌詞排版全錯了吧。 翻譯:新橋かつら 驟雨飛越過我們而去 溼透全身的我們原地佇足著 微微散發著夏天的氣息 快點趁著現在往遙遠某處 出發旅行去吧 不論流逝多少時光歲月 我們都會緊緊懷抱著這份思念 繼續走過生命的旅程 只要有愛與MUSIC這樣就足夠了 因為渴望的一切早已全部都擁有 就在我的心中 離海邊越來越近 或許能去游個泳喔 將所有的窗扉敞開 趁著心血來潮隨風而去吧 不論走音搶拍的哼歌 還是那提不起勁的玩笑的確都還感覺不壞 總有一天這個世界將會改變 即使如此我們也會跨越黑夜 回到這裡來親眼確認 像在尋開心般你對著我展露笑靨 稍稍察覺到後我也報以微笑 就這樣穿越流逝而去的日子 時計的指針不停繞轉 你會依然相信著什麼 這個嘛 不論流逝多少時光歲月 我們都會緊緊懷抱著這份思念 繼續走過生命的旅程 只要有愛與MUSIC這樣就足夠了 最珍惜的一切早已全部都擁有 從一開始 就在你的心中 ↑(路過的人) 不論如何請保持尊重,有些人的翻譯本來就會比較簡短文言一點,這樣也比較有感覺,喜好就是不同才會出現那麼多版本的翻譯 另外,如果去日版WIKI看的話你的排版才是錯誤的...
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横シューティング譜面はいかに出てくるものかな -- (名無しさん) 2012-07-16 03 52 11 おいおいコメント俺だけかよ!?この曲空気扱い?? -- (↑) 2012-07-18 02 33 27 ↑トップにて芸能人水泳大会ネタで散々盛り上がってたじゃないかw勿論俺も楽しみだから少し△□×○△□×○w -- (名無しさん) 2012-07-18 07 36 46 神曲なのにな…どうでもいいがこの曲長いから連続プレイされるとイライラする -- (名無しさん) 2012-07-18 12 57 09 俺も密かに楽しみ組。 夏にピッタリだよなぁー 早くやりたい -- (名無しさん) 2012-07-18 13 03 56 ハードハ404ダヨー -- (名無しさん) 2012-07-19 12 06 28 ん~素直な譜面だな。 -- (名無しさん) 2012-07-19 12 56 30 ↑4だってフルバージョンで収録されてるもん。しかたないね。 俺のリアル持ち歌だから、歌いながらプレイできるぜ。 -- (名無しさん) 2012-07-19 13 00 17 Aメロ2番に出てくる×高速連打が最大の局所難。あと、サビの歌い方にクセがあるから、初聴きの人は聴き込み推奨。 -- (名無しさん) 2012-07-19 16 08 26 水着モジュ持ってる人は是非それでやってみませう。あと薄着系もおすすめ。譜面の方はサビと連打地帯、横に流れる×地帯に注意すればそこまで難しくはないかと。 -- (名無しさん) 2012-07-19 17 29 10 ↑と同じで連打」、横×さえ注意すればいける。自分は初見Pつきました -- (名無しさん) 2012-07-19 18 14 35 ↑確かに連打が苦手じゃなきゃパフェは取りやすいかと。自分も初見でパフェって三回目で片手プレイもパフェりました。○H中の×連打は一回多く叩く位の気持ちでやった方がコンボを切らずに済むと思います。時間的に次の□と△の3連打にも間に合いますし。 -- (名無しさん) 2012-07-19 21 05 29 あれ?もしかして縦同時ない?モジュールはシャイニーもいいんだけど,大好きなスピリチュアルでやったらすごく可愛くてよかった。同じく大好きなエールダンジュでもやってみようかな。合うモジュはPromiseに準じそう。 -- (名無しさん) 2012-07-19 21 08 01 横×地帯がコンボキラーながらも演出としてはなかなか美しい。その直前のミニ扇風機でやられる人もいるかもしれないw -- (名無しさん) 2012-07-19 21 41 43 なかなか楽しいけど、連打力と見切り力が試される譜面だね。△○Hして親指の高速連打が安定しなければ、HOLD捨てちゃっても構わない。他をきちんと取ればカンストします。 -- (名無しさん) 2012-07-19 21 55 37 シャイニーを未購入なので、代わりにスピリチュアルとミクアペンドでプレイしてみました。どちらもいい感じ!スピリチュアルは爽やかで、アペンドはサイバー感が良かったです。 -- (名無しさん) 2012-07-19 23 39 17 中盤の連打が最大の難所だが、それ以降も曲通りではあるが嫌らしい部分がちらほらあるので油断は禁物。PVは水着含む夏服系モジュールと非常に相性がいい。 -- (名無しさん) 2012-07-20 13 57 23 扇風機あったよね? -- (名無しさん) 2012-07-20 16 25 50 扇風機と違いたったの7連打で4分だから見切れば問題ないけどね。extendの譜面的に、ここの回転と次の×連打は海の渦や波を表現してるんだと思う(extendはもうちょっとノーツが回転して、その後交差に飛んでくる -- (名無しさん) 2012-07-20 22 04 18 レーシングミク2012モジュでないかなぁ -- (名無しさん) 2012-07-21 02 33 45 ↑2,3 あの扇風機っぽい部分は、「そいや」にもあるよね。 -- (名無しさん) 2012-07-22 00 29 03 ↑6自分はエンジェルさん使ってる。なんだか楽しそうに踊って見えるのです、個人的には。 -- (名無しさん) 2012-07-22 05 19 22 上のほうに片手プレイでパフェしました(笑)とか書いてあるけどさ、片「腕」プレイの間違いだろwwいい加減詐称やめたら?曲が嫌い、異様に曲が長い、叩いていて楽しくない とまさに地獄のようなパフェ埋めだったな…×の16分連打でよくSAFEるし。みく菌恋戦同様二度とやりたくないわ… -- (名無しさん) 2012-07-22 07 30 03 ↑俺は逆に叩いててめちゃめちゃ楽しくなるくらいだ。パフェ獲ったけど、またプレイしたい。みく菌と恋戦がやりたくないのは同意。 -- (名無しさん) 2012-07-22 11 29 55 ↑2 自分は肘は使わない片[手]プレイなのでオール片手ではないのでそれだけは謝罪します。 -- (肘禁片手プレイヤー) 2012-07-22 14 00 20 ↑3 自分は逆に今回の追加曲の中でこれが叩いてて一番楽しいがね。曲の好みは人それぞれだけど、嫌い云々は言うべきじゃないかと -- (名無しさん) 2012-07-22 15 04 42 サイバー感+水着となるとアぺミクか…フェアリーも雲の妖精が舞い踊っているようで捨てがたい。 -- (肘禁片手プレイヤー) 2012-07-22 22 52 54 連打地帯が綺麗につながるととても気持ちがいい。 -- (名無しさん) 2012-07-23 00 10 19 曲が長かったけど結構楽しかった。割と色んなモジュに合う曲かも。 -- (名無しさん) 2012-07-23 18 51 02 所要時間順リストを見たらスタゲと時間が同じみたい。スタゲはそんなに長く感じないのに何でこっちは長く思えるのかな?でも、長く感じても叩いていて楽しいのは確か。×連打が全COOLで繋がった時とか気分が凄くいい。 -- (名無しさん) 2012-07-24 12 26 21 ↑ミクさんの歌う早さの差じゃないですかね。積乱雲の方がゆっくり歌ってらっしゃる。 -- (肘禁片手プレイヤー) 2012-07-24 13 52 09 最後の手を振ってバイバイのポーズが、KAITOでさえも可愛く見えた。でも、ブーメランでやるのは相変わらず笑いを誘うよな。 -- (名無しさん) 2012-07-25 02 20 22 4分の扇風機もどき地帯は×□△○×□△でおk?スターストーリーみたいにまっすぐ配置されてないから絶対見切れないと思うんだが。 -- (名無しさん) 2012-07-26 07 57 35 ↑ PSPのボタン配置を思い出すんだ。愛言葉の扇風機と同様。てかどの曲もああいう扇風機状の回転押しはPSPボタン配置に準じている。「回転押し」という呼び方もそこからきてる。 -- (名無しさん) 2012-07-27 16 04 54 ↑5それが疾走感の差ってやつですね。なんか結構叩かれてるけど俺もこの曲大好きだぜー! -- (名無しさん) 2012-08-01 23 33 03 この曲はシャッターを切りたい場面が多すぎると思うのです。 -- (名無しさん) 2012-08-01 23 40 24 ↑自分も初撮影これ。全体的にキレイだし、アップ多いし、気になるパンチラ少ないので選び易かった。 -- (名無しさん) 2012-08-04 15 39 05 あのさ、「時計の針は」から「それはね」まで、キャラの後ろでふわふわしてる四角いのって、亜種を除いたボカロたちの色だよね? みんな集合!的な…… -- (名無しさん) 2012-09-30 15 30 32
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【積乱雲グラフィティ/ブランコをこいだ日】 「……ああ、あの日もこんな感じだった」 ヘルメット越しに、息を漏らす。 中央道で河口湖方面へ。そのままバイパスで須走。街中を走行の後、新東名へと上がる。 高低差があり、曲がりくねった中央道よりも、平坦な新東名の方が走りやすい。 横風が些か強いのが問題であるが、PAの綺麗さでチャラにして置こう。 そのまま適宜休憩を挟みつつ、京太郎は奈良へと二輪を回す。 例によっての、龍門渕が主催の麻雀プロを集めたボウリング大会。 何故、麻雀プロがボウリングなのか。意味が判らない。 麻雀プロなのだから麻雀をしたらどうだろう。麻雀プロなんだし。 まあ、そこは、例のお転婆御嬢様スポンサー様である。是非もあるまい。 やるといったら、やるのだ。 ボウリング大会後は、若手プロを集めて交流会を行う――らしい。なんと見上げた、お祭り根性だろう。 まあ、祭りが好きというのは自分も同じ。 精一杯、楽しませて貰うとしよう。 先輩である辻垣内智葉なら「火事と喧嘩は江戸の華」と嘯くだろうが、後輩である自分も大概それだ。 「奈良……か」 後続する追い越し車輌を確認すると、レーンを移す。 早く着くに越したことはないが、然りとてそこまで飛ばす必要なんてない。 歓喜を現すエグゾートノイズに愛おしさを覚え、更なる加速をしたくなるが――我慢。 この速度で転げでもしたら、流石に無傷とはいきはしまい。 ともすれば、死ぬかもしれないし重大な障害を負う危険性だってなきにしもあらず。 (ごめんな) マシンに語りかけ、通り過ぎる自動車が巻き起こす風のシアーを、身を低くして耐える。 京太郎は、そのボウリング大会に合わせて休暇を取っていた。 故に皆より一足早く、奈良に入る。 こういうとき、独り身の人間は身が軽くてよいと――改めて感じるのだ。 (ま、そろそろ……結婚も視野に入れた付き合いとかも考えねーとな) 年上、同学年。 その辺りと交際しようと思ったら、女性の適齢期を鑑みるに、 畢竟、京太郎の交際にも真剣さを求められる。男と女じゃ、旬が違うのだ。 鉄の駻馬が繰り出す風の戦慄きの中に、少女の言葉がリフレインする。 流石にヴィジョンは浮かばない。 目の前に浮かぼうものなら急停車して、その瞬間に玉突き事故の大発生だ。 ピンを倒しにいくのであって、倒されるピンになる趣味はない。 やるのはボウリングであって、ビリヤードではない。玉突きはお呼びじゃない。 浮かんだ“幻影(ヴィジョン)”のせいで、自分自身が“幽霊(ヴィジョン)”になるなんて御免だ。 なんて――心中で零して独り、自嘲する。 この場にあるいは、宮永咲がいたのなら。 小走やえがいたのなら。 大星淡がいたのなら。 新子憧がいたのなら。 今の自分の言葉について、一体どんな顔をしてくれただろうか。 そんな子供めいた悪戯心を胸に、笑いを漏らして手綱を握る。 車体が震え、微かに浮き上がる感覚。排気筒が吼えて、少女の言葉を掻き消した。 それでも、狭まる視界に記憶は加速していく。 目指す目的地と同じく、京太郎の記憶の中のある場所へと――視界が収束していく。 (……穏乃) 快活に笑う、一人の少女。 京太郎の初めての恋人であり、初めての少女。 後頭部で括った長い茶髪を翻して、彼女は疾風の如く表情を変え、喜怒哀楽を全身で現す女だった。 ――あの日の彼女は、ブランコを漕いでいた。 須賀京太郎と、恋人という関係を清算した――あの日は。 丁度、こんな天気の日であった。 「おう、おう。俺だ。奈良に、行くんだよ……これから」 給油がてら立ち寄ったSAで、煙管片手にスマートフォンへと語りかける。 煙管という仰々しいものに人々は、一瞬目を見開くものの、すぐに個人個人の時間に戻っていく。 悪目立ちするかと思いきや、道具ばかりに注意が向いて、持ち主に注目は集まらないらしい。 家族旅行に来たのであろう。近くで須賀京太郎の話題で盛り上がる少年たちを眺めながら、 なんとも気恥ずかしいような、微笑ましいような気分を覚え、一際大きく紫煙を漏らした。 『そりゃ判ったけど……どうして、また?』 「お前に会いたいからじゃ……駄目か?」 『……切るわよ』 「悪い、切らないでくれよ。あと……大丈夫か?」 電話越しに聞こえた物音は、積んであった書類が崩れたからだそうだ。 気を付けて欲しい。 新子憧という女は、しっかりしてそうでどこか抜けているところがあるから。 『で、なんでまた?』 「仕事でそっちの方に行くことになって……ついでに、合わせて前倒しで休み貰った」 『なるほど、暇だと』 「暇になるかは……お前次第ってとこだけどな。どうだ?」 暫しの沈黙の後に。 『……こっちには、どうやって?』 「愛車だよ」 『久しぶりに、二人乗りってのも悪くもないかもね』 「白馬でも、王子様でもなくて悪いけどな」 『そんなことないわよ。あんたは、あたしの王子様だから』 「へっ――」 『――って、言ってあげたらいいの? 見返り次第じゃ、考えてあげてもいいけど』 「勘弁してくれよ。こいつの餌代でかっつかつだ」 笑いながら、愛車を撫でる。 ガソリン代はともかく、本体の値段もさることながら、何よりも税金がやたらとかかる。 その辺りは不自由しない程度に稼いではいるものの、やはり、あまり嬉しいものではない。 大学時代の知人がバイト代を貯めて念願のバイクを買ったものの、税金に悩まされて結局手放した――。 なんて話を思い出す。 大学時代の京太郎は、そんな知人の話もあって排気量を絞っていた。 それでも不便はなかった。中型で十分だ。 友人と出掛けたり、先ほどの通り、新子憧に背中を貸して遠出をしたりと――。 『京太郎』 「……なんだ?」 思えば多分、あのとき自分は新子憧のことを憎からず想っていた。 高校一年生の頃からの付き合いであり、様々な悩みに、親身に付き合って貰った。 大学では何かと一緒にいることも多く、休日ともに出掛けたり、 また、動物好きだという彼女を実家に連れていったこともある(二人きりではない)。 距離が親かった。 だから、惹かれていた部分があるというのは事実だ――打ち明けはしなかったが。 だから、麻雀を諦めそうになったときに、彼女に甘えた。甘えそうになった。 彼女が話しかけてくれることを、世話を焼いてくれることを、心地好く思っていた。 同時に、卑怯だと思った。 彼女は何だかんだといっても、親しい人のことを見捨てられない。京太郎についても、そうだったのだろう。 そこに付け込むというのは、出来なかった。 決定的であったのは――彼女に牙を剥いてしまったことだ。 一瞬、ほんの一瞬であったが、彼女が自分に投げかけた言葉に自分は苛立った。 彼女にはそれを言う権利があった。それぐらい尽くしてくれた。 なのにあの瞬間の自分は、それを煩わしいと思った。 僅かな時間であったが――彼女の怯えたような視線が忘れられない。あんな目をさせてしまう顔を、自分はしていたのだ。 そして、申し訳なかった。 彼女を誰かの代わりにしてしまうようで。そのことが彼女を傷付けると判っていながら。 そこに踏み入ろうとしていた自分の存在が――。 まあ、なんというかこれも、青春のほろ苦い思い出という奴である。 今では自分の中で整理のついた、彼女の知らない物語だ。 『何かあった? 大丈夫? 声、沈んでるわよ』 「……いや、休み明けたらまた毎日忙しくなると思ってな」 『そう? なら、近くなったら連絡頂戴』 どうにも独りでこうしていると、時たま気持ちがふらついてしまうのは事実だ。 友人の国広一曰く、誰かが後ろにいるときとそうじゃないときの差が激しいそうだ。 そんな自覚はないが、誰かが隣にいないときもそうであるというのか。疑問である。 「じゃ、王子様は馬を走らせますかね」 『あんたの場合、戦車と剣闘士って感じだけどね』 「ハハ、違いないな」 『……じゃあ』 「応、また後でなー」 そこまで、しみったれた弱い男ではないと思うのだが――。 (……奈良か) 自動車の群れに囲まれながら、独りぼっちの気分を覚えて空を仰ぐ。 空が青い。積乱雲が遠巻きに、音を立てている。 あの日もこんな天気だったと、須賀京太郎は反芻しながら――奈良へと、再び愛車の鼻を向けた。 ◇ ◆ ◇ 「よ、お待たせ」 「……京太郎」 「どうした? 飛びついてくれても……悪い、今のは恥ずかしかった」 多分、こんな人前でやられても恥ずかしいだけだ――――と、おどけたように少女へと笑いかける。 久しぶりと言えば久しぶりであるし――。 大して時間が立っていないと言えば、そうであろう。 恋人にとっての一ヵ月という時間を、受け取り手がどう感じるかによるだろう。 「んじゃ、今日はどうする? 弁当作ってきたけどさ」 「山は……登るにしても、天気がね」 「市内まで出るか?」 「……そうだね」 逡巡するように、少女が目を伏せる。 どことなくその仕草に違和感を覚えたものの、具体的にどこかと言われると難しい。 なんとなく、少女――高鴨穏乃らしくはない気がしたが、恋人と言ってもまだ半年ほど。 一年に満たない関係であり、その辺りには自信がない。 「今日は、のんびりしようよ。ここで」 穏乃の言葉に、判ったと頷く。 正直なところ、今の体調で登山に耐えられるかと言えば難しいところだったので、その申し出は有り難かった。 悟られないようにしながら、少女へと手を差し出す。 「お手をどうぞ、お姫様」 「うぇへへ……流石にちょっと、恥ずかしいかも」 「言ってる俺も恥ずかしいっつーの……恥ずかしがられると、尚更な」 「……ご、ごめん」 「ま、それより……可愛い穏乃が見れるから、いいんだけどな」 「ふえっ!?」 耳まで朱に染める穏乃を眺めながら、自分も頬の火照りを感じる。 なんとなく格好をつけてみようかと思ったが、まさかここまで恥ずかしいとは……。 気障な台詞なんて、一生言えはしないだろう。 「……い、行くか」 「……う、うん」 彼女の地元だから、噂になりやしないかとか。 それとも案外、田舎だからそういう話は早いのだろうかとか。 穏乃を後ろに乗せて、自転車で坂を駆け上がりたいとか。 色々なことを考えて、手を繋いだり放したり、人目を窺いながら道を進む。 「京太郎、そっち一口頂戴?」 「おう。じゃあ、そっちとも交換でなー」 「うん」 咥えていたアイスを交換する。 自分はソーダ味で、彼女は梨味。何かと入り用な学生の財布には、やさしいお値段の氷菓子だ。 鼻歌を歌いながらステップを刻む少女の髪が、気分を刻む。 調子が外れた鼻歌が、妙に可愛らしい。 少女の身体の柔らかさを思い返す欲のある衝動より、彼女に対する愛おしさが勝る。 こうして、ずっと一緒にいたい――。 子供じみた想いかもしれないが、紛れもなく京太郎の本心だ。 少女のことを考えると、胸が締め付けられるように切なくなって。 それから、替えがたいほど熱くなるのだ。いつまでも、ただただ抱き締めていたくなる。 「どうしたの、京太郎?」 「いや、なんでもない」 「そう?」 彼女の笑顔を見ていると、心のどこかが波立って、同じほど静かになる。 息を漏らしながら、手のひらを傘に、空を見上げて息を漏らした。 一緒に飯を食べて、軽く身体を動かして、景色を楽しんだ。 それから――いつも通り、穏乃が先を歩く風景を眺める。 市内に出て映画を見るときも、買い物をするときも、山を歩くときも。 穏乃は京太郎の先を歩いた。 ぴょこぴょこと跳ね馬めいて躍る長髪と、ちょっと体温が低めの柔らかくて小さな肩。 全身で機嫌を現すそんな仕草が、堪らなく可愛らしい。 「そういえばさ……」 穏乃の背中に声をかけた。 しめやかにこちらを振り返りながら、穏乃が後ろ歩きを続ける。 「うん」 「次の部長、俺になるみたいだ」 大袈裟に喜んでくれるかと思って言ってみたが、それほどでもない。 一瞬、考えるような素振りを見せて、それから笑ったのだ。 「……そっか。おめでとう」 果たして、本当に笑ったのか。 夕暮れが逆光になって、彼女の表情を正確に掴めなかったのだ。 おかしいなと、かぶりを振る。その先に、ちょうど、公園があった。 そんな京太郎の視線に気が付いたのだろう。 穏乃も顎をそちらを向けた。後ろで纏められた髪が、尾の如く揺れる。 一度、髪を下ろさせて誉め殺しにしたっけ――。 「……寄ってかない?」 なんて、顔を羞恥で真っ赤に染める穏乃を思い返したときに、声がかかった。 勿論と、京太郎は頷いた。 こんな日々が、続いていくと思っていた――。 だからこそ。 「京太郎……」 だからこそ、信じられなかった。 「別れ、よっか」 彼女の――そんな言葉が。 ◇ ◆ ◇ 新東名から、伊勢湾岸道へ。 このあたりになると、マナーの悪い車が増えてきて、追い越し車線はその意味を為さない。 なんとも、気疲れがする。 不測の事態に備えた車間距離へと割り込んできた乗用車の上に飛び移って、 運転席の硝子を叩き割り、運転手を車外に放り出してやりたい衝動にすら駆られる。 勿論、やらないが。 そんなことで殺人者の汚名を被りたくはないし、主を失った鉄の馬はどうなるのだ。 乗り捨てられて平衡を失い、横倒しになって後続車に飲まれる愛車を想像し、 いや、そんなのことをしてはなるものかと首を振る。 (お前と俺は、一緒だ) 速度を出せないことに憤るような唸りをあげる愛車に語りかける。 勿論、答えなど返る筈がない。相手は、機械だ。 それでも良かった。動物と共にいるようなこの感覚。 一人で飯屋に入って、ものを食っているときの雰囲気めいた穏やかな孤独感。 京太郎は、それが好きだった。 こいつは、聞いているかもしれないし聞いていないかもしれない。 判ってくれているかもしれないし、そうでないかもしれない。 だけどこいつは、走る。京太郎を乗せて動く。 この瞬間は、確かに生きていた。京太郎が跨がっていれば、それに応えて起きている。 まさに、鉄の馬だった。 また、スマートフォンを操作する電話の相手は、この先世話になる旅館の主。 友人にして京太郎のファンで、同好の士にして多少なりとも期待する仲。 そして――。 京太郎の友人、新子憧の先輩で。 京太郎のかつての恋人――鷺森灼の友人にして、同じく元恋人――高鴨穏乃の先輩だ。 ……なんというか。 自分はやたらと、奈良に縁がある男だと思う。色んな意味で。 高鴨穏乃――元恋人。 鷺森灼――元恋人。 新子憧――男女の仲を意識していた。 松実玄――かなり付き合いたい。わりと結婚したい。 松実宥――正直付き合いたい。中々に結婚したい。 小走やえ――大好き。尊敬してるし、落ち着くし、頼りになるし、大好き。 なんなのだろうか、これは。 一応言っておくなら、穏乃と付き合っていたときに憧以外の存在は知らず、 灼と恋仲にあったときは、やえと大学でいくらか顔を合わせただけである。 好みのタイプは、おしとやかで家庭的なタイプか、 それとも頼りになる格好いい人か、明るくて楽しい女なのだが……。 ひょっとして、奈良在住って文言が付くのだろうか。初恋だった原村和もかつてそうであったあたり、尚更。 「もしもし、松実さんですか? 今、大丈夫ですか?」 『あ、須賀くん……じゃなかった。須賀プロ』 「別に、仕事中じゃないからプロ付けなくてもいーっすよ」 『そ、そうだったね……失敗しちゃった』 暖かな、日溜まりのような人だと思う。春の空気に似ていた。 名古屋県民――もとい、愛知県人の荒い運転でささくれだっていた心が癒される。 電話口の向こうで、笑っている彼女の顔が容易に思い浮かぶ。 彼女もまた、恩人だった。 熱中症で倒れたときに助けて貰えなければ、今頃愛車を残して旅立つところであったのだ。 ドン底に落ちたときに掬い上げてくれた赤土晴絵といい、本当に奈良には縁が深い。 『それで、どうしたの?』 「ああ、また番組とかでお世話になるってのがあるんですけど……」 『うん、おもてなしなら任せてね!』 「俺、番組に合わせて休暇も入れちゃったんで……部屋、先に入っちゃってもいいですか?」 我ながら、無茶を言っていると思う。 駄目なら駄目で野宿するか、奈良市内で宿泊するか、憧さえよければ彼女の家に泊めて貰おうと思っていたが――。 どうやら、 『一応、部屋は開けてあるけど……何かあったの?』 「まあ、前に温泉に入りに来てってお誘いがあったんで」 大丈夫らしい。 何かぶつかりでもしたのか、向こうで物音がしたが。 『え? えっと、ええぇ……!?』 「迷惑でしたか?」 『そ、そんなことないよ! 大丈夫! 大丈夫だよ!』 「は、はぁ……」 そこまで大丈夫を連呼されると、却って不安になる。 この人に限っては、まあ、安心していいだろうが……。 ……半分は、本当だ。 以前ほど気疲れはしてはいないがやはり、落ち着ける時間が欲しかった。 心の代わりに、身体が疲労していた。 それだけでは、ないが――。 『……須賀くん』 「なんですか?」 『もしかしたら、気のせいかもしれないんだけどね?』 「はい」 『なにか、あったの……?』 「――」 だから、憧といい。この人といい。 なぜこうも――鋭いのだろうか。 それともよほど自分は、わかりやすい人間なのだろうか。そうである自覚はないが。 ……或いは、憧も彼女も自分に気があって。 そんな恋する乙女の眼力で、こちらの精神状態を見抜かれているのかもしれない――と考えるけど、 そんな都合のいい話があるはずないと、即座に否定する。 憧は気になっている人がいたという話だし、 あれほど一緒にいても、彼女がそういう雰囲気を許したことがないあたりで否定(酒の席の戯れはともかく)。 玄はやはり、いい友人である。 それも、巨乳云々の話を振ってくるあたり、かなり異性として認識されてはおるまい。 ……要するに、きっと。 彼女たち二人は、優しい人間なのだ。知り合いのことを気にかけてくれる。 「……なんでもないですよ、玄さん」 『え、今――』 「――それじゃあ、また後で」 そう呟いて、電話を打ち切る。 高校生や大学生の時分ならともかく、今はもういい大人だ。 確かに不安になったり、ナーバスになったりするだろう。そういう日は、どこかにある。 だけど、誰かに頼るわけにはいかない。 これは――勝手な気負いや、独り善がりじゃあないのだ。 事実として以前とは異なり、自分の力で立ち直ることができるようになった。 最近になっては、特にそうである。 だから、一時の気の迷いで誰かに縋り付いてはいけないのだ。それは自分で解決できるのだから。 きっと相手は、こちら以上にそれを気に病むだろう。気にしてくれるだろう。 でも自分は、わりと直ぐに立ち直る。 そうなったら――ただただ、迷惑をかけてしまうだけとなる。 そういうのは、御免だ。 (それに……) ちっぽけだけど、自尊心があった。羞恥心があった。 世間体じみた安っぽい意地やプライドがあった。格好つけたかった。 (この時期になると、彼女たちにフラれたことを思い出すからとか……格好悪くて言えねーよ) 単純に、そこに尽きた。 高鴨穏乃と破局したのも、鷺森灼に拒絶されたのも――。 どちらも、こんな天気のときだった。 ◇ ◆ ◇ 「――嘘、だろ」 漸く口をついて出たのは、そんな言葉だった。 冗談だと笑い返そうとするも、頬が引くついて碌に動こうとはしない。 血の気が引くという言葉があるがむしろ、すべての血液が首元と唇に集中してしまったような錯覚を覚えた。 口が、脱脂綿でも詰め込まれたかのごとく渇く。 ひりついた癖に熱い呼吸で、ひゅうと喉が鳴る。 「だって俺たち、上手くやってたじゃねーか」 今日だって、彼女は楽しんでいた。隣で笑ってくれていた。 遠距離恋愛だけど、一ヶ月に一度ほどしか会えないけど、自分たちは良好な恋人関係だった。 連絡だって、ちゃんと取った。 しつこいすぎないか。逆に淡白すぎないかを考えるのには苦労をしたが、 少なくとも間違いはなかったと思う。メールにそんな様子だって、なかったのだから。 穏乃に限って、他に男ができたなどはあるまい。 そんな可能性を思い浮かべた自分の頭を叩き割りたいほど、ありえない。 なにが悪かったのか――。 なにをしたらいいのか――。 なにかの間違いではないのか――。 そんな言葉が頭の中で、乱流を巻き起こした。その渦に巻き込まれて、立っていられなくなるほどに。 「なあ、シズ……俺、なんか悪いことしたか」 駆け巡る思いが、口から零れ落ちて音になる。 「今からでもさ、そういうとこ……改めるからさ」 声というにはあまりにも弱々しすぎるそれは、頭とは切り離されて、口が勝手に形作る。 だから、音だ。 声と呼ぶには蒙昧すぎる。言葉としての体をまるで成してはいない。 「悪かったところ、言ってくれよ……シズには遅いかもしれないけど、俺、変えるから。変えるからさ」 だから、まるで響かない。 言っている自分自身の脳裡を上滑りしていくのだから、誰の胸にも届くはずがない。 ただひたすらに滑稽で、今の自分は、糸が縺れたことを知りながらも踊るしかない道化だった。 だけど、止められない。 このか細い言葉を途切れさせてしまったなら、すべてが終わりになってしまう。 そんな、不安めいた確信がある。 彼女に喋る暇を与えてしまったならば、何もかもが終わってしまう。 「だからさ、なあ……穏乃」 女々しいなんてのは判っていた。 それでもこうして陳情して、懇願して、彼女の心変わりを待つしかない。 見えない手で彼女に縋り付く自分は、気付いていないだけでとっくに膝を折っていたのかもしれない。 それでも、嫌だった。怖かった。 どんなに無様を曝そうと、彼女の同情を引こうと、愛想を尽かされようと――。 それでも、離れたくなかった。 彼女が――高鴨穏乃のことが、好きだったから。 ああ――――だけど。 「……ごめんね、京太郎」 もう――終わっていたのだ。 自分の中では、たった今始まったばかりの唐突な別れ話だったけど。 彼女の中では始まって、とうに“終わっていた”話だったのだ――。 そんなの、彼女の目を見れば判った。言われるまでもなく理解できた。 困ったような、寂しそうな、悲しそうな顔。 だけれども、決めてしまったものだという決意を湛えて静かに波打つ瞳。 そんなのは、判っていた。 そして言葉にされたことで、改めて拒絶の壁として、京太郎の頭を弾いた。 その勢いに、両肩が崩れそうになる。 「さ、寂しい思いさせちまったか? それとも、俺、調子に乗りすぎたか?」 でも、嫌だ――。 振り払うように、次々と言葉を生んだ。とにかく並べ立てた。 そうしていれば、掻き消せるかもしれないと狂信めいた祈りにも似た感情に苛まれて、舌を動かす。 「なら俺、もっと会えるようにするから……! お前が少しでも嫌がること、絶対にしないから……!」 だから――捨てないで下さい。 俺を、捨てないで下さい。 捨てないで、下さい。 「俺、お前に嫌われるようなこと、しちまったか?」 ただ、言う。 「俺のこと、嫌いになったか? 嫌になったのか?」 声をあげるしかできない。鳴くしかできない。 手を伸ばして下さいと、拾って下さいと鼻を鳴らすしかできない。 それほどまでに、唐突だったのだ。 何かしら、この状況を否定しないと――何もかもが信じられなくなってしまうくらいに。 だって、つい先ほどまで笑いあっていたのだ。語り合っていたのだ。 それすらも、嘘だと言うのか。何もかもが幻だと言うのか。 もし、そうだと言うのなら――。 これまでの何もかもが、嘘っぱちだという話になってしまう。 ああして笑っていた彼女が自分に見切りをつけているということは、 彼女が見切りをつけた人間にもあんな顔ができる人間だってことを意味していて、 そんなのも見抜けない自分は、とんだ馬鹿でしかなくて、 そうなると、今まで信じていたものすべてが信じられないような――足元が崩れ落ちていくような、錯覚を覚える。 「……違うよ。京太郎のこと、嫌いになってないよ」 「じゃあ、なんで……!」 「だから――――今の京太郎を、見たくない」 それは、どういう――。 「ここに来るために、部活が終わってからもバイトをしてるんでしょ」 「あ、ああ」 「部活も必死にやって、バイトもやって、勉強もがんばって……今度は京太郎、部長になる」 「それは……」 「忙しくなるのに、このままだと……」 ――京太郎はもたない。 ――京太郎の負担になりたくない。 ――京太郎を困らせたくない。 「だから、別れよう? 私たちは――子供過ぎたんだよ」 そうまで言われて、そんなものをすべて捨てられる――などと言えるほど、京太郎は無責任ではなかった。 子供というには大人の部分があり、大人と言うには未熟過ぎた。 あるいはこれは、彼女なりにこちらを納得させる為の――都合のいい、耳障りのいい、言い訳かもしれないけど。 それでもこう言われて、引き下がれないほど子供じゃなかった。 「……判った」 辛うじて声を振り絞ったつもりだったが、意外にすんなりと言葉は出た。 我ながら驚くほど、落ち着いた声だった。 気持ちの中でも、最早どうにもならないのだと得心していたのだ。 「ずるい言い方して、ごめんね」 「……いや。俺こそ、しつこくて悪かった」 声色とは裏腹に、未だ完全に落ち着きを取り戻した訳ではないが――。 改めて、己の曝した醜態を思い返して、 それがどれほどまでに彼女を困らせてしまったのか――そんな顔などさせたくなかった――を考え、黙る。 「……ごめんね、京太郎」 「いいよ。もう、謝んなって……」 彼女がそう言うなら――もう、そうでしか、なかった。 好きだった。ずっと一緒に居たかった。彼女の笑顔を見ていたかった。 ……でも、こんな自分は負担にしかならないと言うのなら、この話はこれで終わりなのだ。 「……最後に一つだけ、我が儘を言っていいかな」 「……なんだ?」 「麻雀、どんな形でもいいから……続けて?」 「……」 「麻雀を打ってるときの、麻雀の話をしているときの、京太郎の笑った顔が――好きなんだ」 心は静かに、形を取り戻していく。 抉れてしまった部分は置き去りに、一先ずは形を整えていく。 彼女は、どこか、泣きそうな顔をしていた――そんな顔などさせたくないのだ――。 だから、自分は、立ち直らなきゃならない。 フラれたことにショックを受けこそすれ、そこまで後には引かないのだと。 彼女が気に病んでしまうようには傷付いてはいないのだと。ちゃんと納得できたのだと。 「判った。約束するよ」 そんなことしかできないけど――。 それが彼女に対して自分ができる唯一のことなら。そうすれば少しでも、彼女の気が晴れると言うなら――。 たとえ嘘っぱちだったとしても、誓うしかない。 恋人として自分にできることは、もうこれしかなかった。 「じゃあな。今まで、ありがとうな」 「私も、ありがとう」 「……ああ。本当に今まで、楽しかったよ」 「……うん」 こうして、須賀京太郎と高鴨穏乃の物語は終わりを告げるのだ。 「元気でな」 「麻雀、頑張ってね」 「ああ」 離れていく彼を見ながら、高鴨穏乃はブランコに腰掛けた。 彼を――須賀京太郎を袖にした。穏乃の方から、彼に絶縁を突きつけたのだ。 愛想がつきた、 (……京太郎) という訳ではなかった。 むしろ、彼に対する愛おしさは未だこの胸に渦巻いている。目を閉じれば、思い浮かぶほど。 彼と過ごす日々はまた新鮮で、穏乃に様々な気持ちを教えてくれた。 友情を知っていても、穏乃は愛情を知らなかった。否、男女間の恋愛というものを知らなかった。 誰かを好きになるということが――。 こうも心を波立たせて、切なくさせて、熱くさせて、満たされるものだとは知らなかった。 いつも、彼を思っていた。 離れれば想いは募り、彼の笑顔を見れば胸が温かく安らぎ、 彼の腕に収まったときは、激しく彼に口付けしたい衝動と、そのまま穏やかに向かい合っていたい安堵を抱いた。 楽しかった。彼と一緒にいられることが。 「……うん、これでよかったんだ」 彼は、麻雀の話をするときは――本当に楽しそうに笑っていた。 一時は思い詰めていたようだけど、それも直り、実に――心底面白いと無邪気な笑いを浮かべるのだ。 ちょっぴり悪そうな笑みや、何もかも考えてないような笑顔や、恥ずかしがったはにかみはあったけど、 どれも好きだったけど、麻雀の話をして笑う彼の顔が――一番いい笑顔。 「あれだけ狡い言い方したら、私のことを忘れてくれるよね」 麻雀、本当に好きなんだと思う。 京太郎は優しいから、素直だから、きっとこうして別れてしまったことに傷付くだろうけど――。 あんなにいい顔をできる麻雀をしていたら、きっと忘れられる。 自分が付けてしまった傷だって、癒えるだろう。 彼の負担になりたくないから。彼の疲れた顔を見たくないから――。 そんな自分勝手な理由で別れ話を持ち出した女のことなんて、きっと忘れてくれる。 だから、口約束でもいいから麻雀をやって欲しかった。 「……京太郎」 ――よろしくな、高鴨さん! 「京太郎」 ――ありがとな、って……穏乃って呼んでいいか? ――おう、俺の方も気軽に呼んでくれよ。 「京、太郎」 ――ったく、お前……何だかんだ危なっかしいよな。 「京……太郎」 ――へっへーん! どうだ! 俺の勝ちだな! 「京……太、郎」 ――おう! 任せとけって! いい子にしてろよ? 「京、太郎ぉ……」 ――よ、また来たぜ! この休みもいっぱい遊ぼうな! 「京、太郎ぉ……!」 ――そこをなんとか、頼みますよ! 神様、女神様、穏乃様! 「きょうたろぉ……!」 ――ほれ、ちゃんと掴まれよ。 ――……お前軽いのな。ちんまくて可愛いけどさ。 「きょう、たろぉ……!」 ――大丈夫だ。俺が、何とかしてやるよ。 怒った顔も、笑った顔も、悲しそうな顔も、嬉しそうな顔も、楽しそうな顔も、苦しそうな顔も――。 全部、覚えている。 彼との思い出は、胸にある。 それが暴れて、どうにかなりそうだけど……耐える。耐えなきゃいけない。 (駄目だ。私から言い出したんだから、しっかりしないと……) 高鴨穏乃は嘘が嫌いだ。 というより、吐いてもすぐにバレる。だから、嘘とは呼べない。 幼馴染みの新子憧には、「しず、あんた嘘が下手すぎ……」と呆れ顔を向けられる。 それに元々、基本的に感情を表に出すタイプである。だから、必要ないと言うのもあるし……。 嘘を吐くなんて、なんか卑怯だし潔くないと思う。 勿論、他人が吐くのに対して、別にとやかくは言わないけど。 まあ、おおよそ自分と嘘は無縁であろうと思っていた。 でも――。 (京太郎、元気でね……) この日――高鴨穏乃は嘘を吐いた。 水滴に濡れて黒ずんだ土を、軋むブランコが追い散らす。 夕闇に紛れる蝙蝠めいた甲高い声をあげて、乗り捨てられた鉄の鎖は震えていた。 遠くで、雷の音が聞こえた――。 ◇ ◆ ◇ (……あいつとの約束ってのは、確かにあった) それがなければ、こうして今頃ここにはおるまい。それは確実だ。 俺はここにいる。今、ここにいる――。 それを一番知らせる方法というのは、連絡先を変えてしまった彼女に知らせるというのは、それが一番判りやすかった。 ただ、会おうと思えば会えた筈だ。 彼女の家は知っていた。奈良を訪れる機会というのも、多かった。 赤土晴絵に連れられて鷺森灼と出会ったとき。 プロになってから、思うように成績が振るわずに醜態を晒し、ふらりと奈良に出向いて――松実玄と知り合ったとき。 その後、龍門渕透華に連れられて取材に向かったとき。 そもそも、そんなものが無くとも、新幹線などを乗り継いで向かいさえすれば、彼女に出会うことは容易かったはず。 なのにどうして、自分はそうはしなかったのだろうか。 単純に、今更顔を合わせたところで仕様がないという意味合いも強い。 確かに彼女と約束はしたが、あれは、所詮は彼女が別れの際にただ口から転がしただけの言葉かもしれない。 考えたくはないが――そんなことを覚えているのは自分だけで、彼女はすっかりと忘れていることもあり得る。 そんな事実を知ってしまうなら、綺麗な形で、胸の中にある方がいい。 また、あれは、終わってしまった話だ。既に終わっていた話だったのだ。 それを今更掘り返して、得意気に晒して並べるというのは、どうにも収まりが悪い。 自分の中でも、整理を着けた話なのだ。折り合いをつけ始めた話なのだ。 でなければ、他の誰かを抱くことも、心を交わすことも、半ば冗談とはいえ交際を言い出すこともないだろう。 いや、もっと単純に――。 (俺は、怖いのかもしれない) 変わってしまった彼女を見るのが。 変わってしまった己を見せるのが。 そんなのが――実に単純ながら、酷く恐ろしいことに思えていた。 折り合いはつけたが、割り切れないのが男と言うもの。 流石にいつまでも“煮え切らない(ウフコック)”ような正確ではないが、ハードボイルドには片手落ちだ。 青臭いセンチメンタリズムを抱えている自分には、最後に抱えた口約束を破ることも憚られた。 もしも今の自分が、彼女の望んだそれとは違う形で――。 それが故に拒絶されることがあるとしたら、やはり、覚悟はしていながら多少なりとも衝撃を受ける。 (何を馬鹿なことを言っているんだ、俺は) 彼女との約束それだけで、ここに立っている訳ではないというのに――。 そもそもが、麻雀というものに魅せられたのが始まりだ。 初めは、皆が熱中しているのは知っていたが、特段食指が動くものではなかった。 どちらかと言えばアウトドアスポーツが好きで、子供時代は野山を駆け回りヒーローごっこに興じていた(らしい)。 小学生のときも、周囲が何故麻雀の話題で盛り上がっているかは知らない、風邪を引かない風の子。 中学時代は、ボール遊びが趣味。……の、帰宅部兼図書委員だった。 理由は判らないが――忘れているだけで何かあったのかもしれない――なんとなく、麻雀を避けていた。 その事を思い返そうとすると、鎖骨の辺りが痛み、赤い髪の少女の泣き顔が浮かぶ。 何があったんだろうか。今度、誰かにに聞いてみるのもいいかもしれない。 ……まあ、いい。 高校に上がって自分は――学生議会長にして清澄麻雀部部長の竹井久と出会い、麻雀部に入部する。 高嶺の花であった原村和とお近づきになれるというのもあり、竹井久の口車に乗せられたというのもあり、 悪戯っぽく笑いつつも、どことなく寂しさ感じる雰囲気を漂わせていた久の頼みを無下にできない/したくないというのもあり――。 結局自分は、入部した。 そして、入部してから自分は知ったのだ。 麻雀の持つ紙一重の悲喜を、百三十六の牌が作り出す奇跡的な確率を、十四の牌が成り立たせる奥深い押し引きを――。 麻雀自体が、好きになった。魅せられていた。 もっと知りたいと思った。もっと、こいつと楽しみたいと思った。 極め付けは――宮永咲の見せた/魅せた、あの嶺上開花だ。 あの瞬間、身体に雷が走った。 ただ呆然とし、驚愕しながらも――何故だか心は“これだ”と叫びを上げていた。 麻雀が成り立たせる、局や場は美しいが――。 あの日卓上に咲いた花に勝る美しいさには及ばなかった。あれはそれほど自然であり、厳かなるものであったのだ。 それに憧れた。 今にして思えばそれはただ、太陽を目指すイカロスめいた無謀だっただろう。 夜空に輝く星はどれも太陽が如く輝く恒星で、目に見えたとしても掴みとることなど出来やしない。 湖面に浮かぶ月を掬おうとしても、ただ波立たせて像を乱すばかりで、得ることなど不可能だ。 だけれども――。 京太郎は、星を追いたいと思った。 星の光を、見ていたいと思ったのだ。 星が、欲しい。 そのためには、まずはひとつでも勝ち星を手に入れる――。 それは切望ではなかった。 心にはあの日咲いた名前もない花への憧憬が根付きこそすれ、それが全てではなかった。 勝てば嬉しい。負ければ悔しい。 そんな、どこにでもある勝負事が絡む遊興の、延長線上である。 麻雀は勝ちもすれば負けもする、公平な遊戯である。 それが、結果がどうなるかなんていうのは事前には判らない。 しかし――手解きをできなかったことを申し訳なさそうにする彼女は――竹井久は、言った。 運はある。麻雀には、誰がなんと言おうが確率の偏りが存在する。 しかしながら、それは全てではない。 運などという不確かなものによらずに、勝利への道筋を整備し、敗北への断崖を埋めるものを――“技術”と呼ぶのだ、と。 悲しきかな。 自分には、仲間たちのごとき悪魔めいた運の強さはない。 だから、生きる道はそこにしかなかった。それこそが、自分にできる星へと近付く為の手段だった。 そうして、京太郎は技術を磨いた。 勝って、麻雀を楽しみたいから。負けたら悔しいからという、シンプルな理由である。 でもそれは――変わった。いつの間にか。 あれは、国民麻雀大会のときだったか。 誰かが呟いたのだ。顔も知れぬ、群衆の内の誰かが。 「こんな化け物に、勝てるわけがないだろ」――と。 その視線の先には、映し出されたモニターの先には、自分の憧れである少女たちがいた。 京太郎は憤った。京太郎は悔しかった。 友人を、仲間をよく知らない誰かに馬鹿にされたことよりも――心のどこかで、言い返せない自分がいることに。 拳を握り締めて、しかしそれは行き場を失った。 「……俺があいつらを一人にはしない。独りぼっちなんかにはしない。化け物なんて呼ばせない」 宮永咲。 天江衣。 大星淡。 宮永照。 夢乃マホ。 それ以上にもっと、もっと、もっと――不思議な偏りを産む少女たちを。 守りたかった。 好きになってしまった、憧れた彼女たちを守りたかった。 彼女たちは泣きもすれば笑いもする、麻雀が強いだけの人間だ。ごく普通の少女たちだ。 それを、何故悪し様に言われればならないのか。呼ばせねばならないのか。 そんな言葉は、彼女たちの心に瑕を作る。たとえ小さく目立たぬものだとしても、絶対に瑕を付けるのだ。 「俺が、傍に居てやる。運がない人間でも、傍に立つものになってやる――」 許せないのだ。 何よりも、言い返せなかったあの日の自分が。 心のどこかで、そんな言い訳を受け入れそうになっていた己が許せないのだ。 「俺が、俺自身が、勝てるって証明になってやる。絶対に証明してやる」 いつしか勝ちは目的であり、手段となっていた。 これがある種、須賀京太郎も彼女たちに並び始めた第一歩であろうか。 インターハイに様々な想いを乗せて戦った、彼女たちと――。 麻雀で、勝負で勝ちたいと思うことは自然であった。 その為に技術を磨くことは、習慣であった。 元々、努力をするのは好きだった。一歩一歩固めていくのは好きだった。 多分、何だかんだと自分は生真面目な人間なのであろう。 そうやって努力を重ねるのは、きっと自分の変えられない“習慣(いきかた)”なんだろうけど――。 今度はそこに、麻雀を通してできた素敵な友達たちを守りたいというのが加わった。 竹井久を頼った。 最低限度の負けを減らす遣り方というのは、彼女の薫陶を受けた。一通りを知り、初心者ではなくなった。 次には、眼を求めた。 友人たちのいる――遠い巓を、嶺を見通す眼が欲しかった。 そこで無理を言って、福路美穂子に頼み込んだ。頭を下げた。拝み倒した。 彼女のそれは異能ではないが、限りなくそこに近付き――凌駕する技術であったのだ。 彼女は始め、それを渋った。 後輩にも伝えていないそれを、いずれ己たちの前に立ちはだかるであろう者に伝える――。 それを忌避したというのもあるし、また、単純に、技術として修得するには恐ろしく難度が高いから。 それでも京太郎は諦めなかった。 貯金を切り崩して、美穂子の元に通った。男子禁制なので門前で追い返された。 毎日通った。金がなくなれば、終いには走った。 やがて、美穂子は言う――。 「強くなりたいのは判るけど、どうしてそこまでするの?」 雨が降っている中、ずぶ濡れになった京太郎に傘を差し出して問うたのだ。 京太郎の熱意が通ったのか、彼女の優しさが勝ったのか。どちらかは知らない。 ただ、門のところに毎日他校生の男子が待っているというのは、今にして思えば、色々と迷惑をかけただろう。 「人とは違うところがある奴らがいます。大切な友達が居ます。違っても、あいつらは一緒です」 静かに、京太郎は拳を形作った。 「だから、あいつらはどっか違うって言う奴らに、そんなことはないって言ってやりたい」 恥ずかしさなど忘れて、ただ叫んだ。 「俺が強くなって、守りたい。そんなおかしな絶対なんてないんだって、証明したいんです」 だから、どうかあなたの技術を教えて下さい――。 あなたの力を武器として俺に纏わせて下さい――。 そう、ひたすらに彼女へと懇願した。 「わかったわ。どこまで力になれるか判らないけど、あなたのその素敵な気持ちに……私も精一杯応えるわね」 そして、福路美穂子からの手解きが始まった。 しかし、ここで京太郎にとっての誤算があった。 彼女の技能は全てが論理ではなく、感覚によるところも存在しているということ。 一般的には――男女の脳には性差があると言われている。 男性は論理的な思考能力に優れ、女性は感覚的な思考能力に優れているとする説である。 福路美穂子のその特技は、論理だけでは成り立たず、感覚だけでも成り立たないものであったのだ。 宛ら左右で色が異なる彼女の瞳のように、どちらの特色も持った能力。 故に論理的能力が技能の水準には達しない女性――彼女の後輩――もそれを受け継ぐことや使いこなすことができず、 また、感覚的なものが不足している京太郎にも、それは会得できなかった。 ある程度の形になりはしたものの、完成には程遠いかった。 だけど、努力を重ねて思考速度を磨くことに京太郎は努めた。 そうしている間でも、京太郎には日常的な幸福はあった。青春を謳歌したいという気持ちがあった。 麻雀以外の全てを切り捨てたら、一体、自分は何のために彼女たちを独りにしないと誓ったのかわからなくから。 それは、国広一や萩原との交流であり――。 原村和への、淡い思いであったりした。 そして奇妙な縁があって、京太郎は高鴨穏乃、新子憧と出会ったのだ。 (三重から行くよりは、京都から奈良の方へ下っていく方がいいな) 交流を重ねる中、やがて京太郎は穏乃のことを思うようになった。 ころころと変わる表情に飽きないというのもあるし、彼女の意外な女性的一面が琴線に触れたというのもある。 でもきっと一番は、彼女の優しさだ。 遅々として進まない自らの成長、頭打ちを見せた発達で顰め面が増える京太郎に、彼女はこう言った。 ――麻雀を楽しまないのは、勿体ないよ。 なるほど確かにそうである。 最初はそのつもりであった筈なのに、いつしか心に灯った焔に急っつかれて、大事なことを忘れかけていた。 彼女は恩人だった。 麻雀にのめり込みすぎた京太郎を、人間にしてくれた。 また、そんな恩などはともかくとして――。 この美しい少女と、優しい少女と、いつまでも一緒に居たいと思い始めていた。 彼女のことが、大好きだった。 彼女と交際を続けた。 初めてできた、目的を共にする後輩への指導を行い、傍らで自分の技能を研く。 牌譜を調べて、己が目指す方向性を表す雀士を見付け、静かにその大学への勉強を進める。 月に一度は愛する彼女の元へ向かうために、その旅費を稼ぐ。 かつてないほど、気力に満たされている気がした。全て、上手く行っている気がした。 果たして――。 そして結果は、先に語ったばかりである。 そんな幻影はただ、消えてしまった。 朝霧が、照らし出す太陽に掻き消されるが如く。山の天気が種々に移ろうが如く。 代わりに京太郎は、彼女が最後に伝えた約束を頼りに歩き出した。 たったひとつの道標だった。京太郎の足元を照らす月明かりであり、大いなる星の瞬きだ。 痛みを直視して受け入れる強さを、あのときの京太郎は持ち合わせていなかったのである。 それからもう一人、可愛い後輩ができた。 てんで素人なのに麻雀が大好きだというその態度を、京太郎は好ましく思った。 大学に向けた勉強を本格的なものとしつつも、空いた時間を作っては彼女の面倒を看た。 彼女には、京太郎と違って素質があった。 それを何とか生かせはしないかと腐心して、同じだけ彼女に懐かれた。 可愛い後輩だった。力になって、やりたかった。 その後京太郎は、志望した大学に合格した。 ここに来たのも、麻雀の実力を更なるものにするためだったのだ。 そして、己の後を追う知己の新子憧と共に、大学の麻雀部の扉を叩いた。新たなる扉を。 皆が、尊敬できる強さを持った先輩たちであった。 自分なりに彼女たちの牌譜から研究を重ねて技能を模倣し、福路美穂子から受け継いだ技能と組み合わせて、 高校最後の年には――それなりの成績を記録したが。 それでもまるで、敵わない強さであった。 彼女たちに師事をした。その技術を、何とか“もの”にしたかった。 きっと、その武器の所有者でなくては――ひとつひとつではただの武器としてしか使えまい。 だけれども、己の受け継いだ技能――“特性(のうりょく)”と組み合わせることで、それは京太郎の専用武器となった。 京太郎が今まで教わった技術が、京太郎が今まで積み重ねてきた努力が、自身を更なる高みへと改造したのだ。 相手の動きを読み、素早く撃ち込まれるそれはただの直撃ではない。 相手の攻撃を掻い潜り受け流して行われるそれは、表面的な打点よりも、内部への衝撃を産み出す。 上手く当てはまったのなら、それで相手の気概を殺ぎ、行動や判断を鈍らせることができた。 「狙った他人からカウンターを受けるというのは、相当にショックだからな」――とは、弘世菫の言葉だ。 事実彼女はかつてのインターハイでそれを受けたことがあり、正に電撃が走るような衝撃だったと笑っていた。 なるほどなと、その言葉を胸に刻む。 あとは場数を踏む。とにかく打つ。 己の押し引き判断をより正確なものに変え、読み合いを制し、攻める力を確たるものにする。 自分の力が開けただけに、毎日が楽しかった。 それだけではなく、また、麻雀を通して繋がった人々との交流が――。 憧や和、部活の先輩たちとの毎日が新鮮で、かけがえなく、満たされていた。 そして大学の一年間も、あっと言う間に過ぎた。 何か話題や楽しみをということで、国広一たちとの交流を続けてはいたし、部活の仲間との日々を楽しんだ。 全てが上手く回り始めていると考えたが――問題が起こった。 ひとつは、眼球の酷使――眼精疲労による視力の低下。 元より京太郎の生活には、無理があった。特にここ数年間それを続けていたのは重大であった。 心が緊張感で張り詰め、精神が肉体の無理を許容している間はまだ良かった。 だが一旦緊張の糸が解れることで、ツケは一気に襲いかかって来たのだ。 もうひとつは――後輩、夢乃マホの豹変であった。 いつもの彼女はそこにはなく、ただ、麻雀で他者を蹴散らす為にいる。 そんな悲鳴を、京太郎は聞いた。かつて己のいた清澄麻雀部の後輩たちから、そんな助けを求められた。 話を整理するには、恐らく原因は京太郎で――京太郎のしてしまったことで間違いはなかった。 京太郎は焦った。 低下した視力に代わり、麻雀に使えそうな技術を片っ端から探して、試みた。 時期が時期であるがゆえに、大学の先輩は頼れず、また、プロとなってしまった宮永咲の手は借りられなかった。 己がやるしかない――。 そして、京太郎は夢乃マホを止めんと戦いを挑み――。 破れた。破れ果てた。 全ての立ち上がる気力を奪われ、何もかもを砕かれ尽くした。そこにいたのは後輩ではなく、ただの破壊者。 限度を超えて眼を使用し、誰もが顔を背けるほど諦め悪く立ち上がり、両目から血涙を流しても――。 京太郎は、大切な後輩一人すらも助けることができなかった。 苛まれる自責のメスは、京太郎の心を切り取り抉る。 ついには牌を握ることが叶わないほど、何もかもを破壊された。 京太郎の抱いていた希望も目標も矜持も約束も努力も――全ては切り捨てられたのだ。
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そして京太郎は、立つことも儘ならなくなった。 五年間。 その程度と人は断ずるかもしれないが、それは京太郎の青春と共にあった。 京太郎の短い人生でも極めて濃密な時間であり、彼の絆の殆どはそれが関わり、また、全ての情熱が向かう先であった。 それは、失われたのだ。 ――殺してくれ。 京太郎は毒を漏らした。心の中の傷痕は、火傷の如く疼いた。 積み重なった出来事の末に、己の人生をも否定された京太郎は、死を願った。虚無的な欲望を抱いたのだ。 麻雀を忘れて別の日常に戻ろうとする反面、何かをして、死のうと思った。死ぬために何かを始めようと思った。 何かをやって、麻雀以外をやって、ちっぽけな達成感と引き換えに死にたかった。 いずれ炸裂する爆弾が如く、火薬を内に溜め込み、段々と上空へと高度を上げていく。 ――殺してくれ。 途中で、死んでもいいと思った。 前のめりに努力して死ねるなら、そのときだけ麻雀のことを忘れて死ねるなら、欺瞞の果てでも良かった。 だから、到底正気の沙汰ではない行為を重ねた。 しかしすると、不思議なことに……死を願うほど打ち込むことで、却って京太郎は死にはしなかった。 それでいて技術を磨きながら、先がみえてしまったのだ。 このまま続けても、またしても自分は頂点へと辿り着けない。完全に極めることなど出来やしない――と。 そして、諦める。 死を願いこそすれ、徒労に身を投じることには耐えられなかったのだ。 ――殺してくれ。 どこかで自分はまだ、未練があったのかもしれない。 あれからも、握れずとも、毎日牌に触れる生活は続いていた。習慣を続けていた。 まだ自分は生きていたいのかも――と思いながら、何を今更都合がいいと断ずる。 ――殺してくれ。 大学の抗議も終わり、休みに入ったある日……新子憧に言われた言葉。 己の中の弱さを、未練を、生き汚なさを見抜かれてしまった気がした。尊大な羞恥心と臆病な自尊心が火を吹いた。 心の奥底で何かが疼き――それから目を背ける。 もう、終わった話だ。初めから終わっていた話なのだと言い聞かせる。 ――殺してくれ。 憧が居てくれる自宅を後にし、宛もなく街をさ迷った。何かが欲しくて、でも、それが何かを理解するのが怖かった。 代わりに、柄の悪い連中に絡まれている少女を見付けた。 ここで、死のうと思った。 あの日守れなかった少女の代わりに目の前の少女を守って死ぬ。 最期にしては、随分上等であるし、こうして街の片隅で死ぬなんてのは、自分にお似合いだった。 角材で撲られて、上衣に仕舞った携帯電話が壊れた。 だけども、京太郎は衝撃こそ負っても、負傷を受けはしなかったのだ。 なんたる皮肉か。 死を願いながら修めた体術は、死に敏感であった。死を紙一重で避け、死を遠ざけることに優れていた。 そして、死の気配に反応し、一撃を繰り出す。心がいくら死を願おうとも、身体がそれを許さない。 実に皮肉だが、焼け鉢で挑んでいた体術は、今まで希った全ての技能よりも身に付いていたのだ。 気が付いたときには、その場に立つのは京太郎ただ一人で――。 庇ったはずの少女はとうに逃げ去り、男たちも這う這うの体で壊走を始めていた。 何もかもが、どうでもよくなった。 死にたいと強く願うこともなくなり、同時に、生きる気力もやはりない。膨大な徒労感だけがある。 心臓が動いている間は生きるだろう。止まったら死ぬだろう。 無理に動かそうとも、無理に止めようとも思わなかった。なにをしても、儘ならないのだ。 主人を失った操り人形めいた動きで、地面に横たわった。 こうしていれば、いずれは心臓の鼓動も止まるかもしれない――なんて考えていたら、 「ちょっと、大丈夫!?」 赤い髪の女性に、拾い上げられた。 最早何がどうなろうと構わないので、されるがままに彼女に連れられ、心に浮かぶがままに彼女に問いかけた。 ややあって、沈痛そうな面持ちでいた彼女は―― 「代わりとか、無理に忘れるとか考えないで息抜き! そこらへんは、経験者に任しときなさい!」 なんて宣って、須賀京太郎を連れ立った。 そしてその、赤土晴絵と名乗る女性に連れ出された先で――須賀京太郎は、鷺森灼に出会ったのだ。 「ハルちゃん!? って、それ誰……?」 こけしが店番している。 どうやら自分は知らない間に、妖怪の世界に連れて来られてしまったらしい――なんて思った。 これが、鷺森灼に対する第一印象だ。 ◇ ◆ ◇ 「京、店番お願……」 「……うっす」 「返事は?」 「……痛いっす」 脇腹をどつかれて、身体がくの字に曲がる。しかしそれだけで、他には俄に皮膚が痛む程度。 衝撃に対して、無意識の内に身体が対処してしまうらしく、しなやかになった身体にダメージは通らない。 猫が高層階から飛び降りても平気だという話もあるが、そんなものなのだろうか。 下からこちらを見上げるこけしこと――鷺森灼は、やたらと厳しい。こちらに敵愾心を持っているのかもしれない。 だけど、どうでもよかった。 よしんば夕飯に毒を盛られようが、寝ている間にボウリングの球を落とされようが、どうでもいい。 そうしたら死ぬかもしれないが、別に今、自分から死ににいくつもりはなかった。 殺したいのなら、止めはしないけど。 「ちょっと、お夕飯買いに行ってくるから……」 「了解っす」 「……そこで、普通、何かメニューの希望とかしないの?」 「……別にどうでもいいんで」 ある程度メニューを指定された方が作りやすいというのはある。 自分自身がそうだったから、それは知っていた。 でもやはり、そうとは知りながらも積極的に手助けする気力はない。億劫なのだ。 「なら、食べさせな……」 「……どうぞ。飯とか別に、構わないっすから」 「この……! ……もういい」 やがて諦めたように、肩を落とした。我ながら実に他人事である。実際彼女は、他人だし。 ……ただ、まあ。 流石に少しは、申し訳なかった。飯を作って貰えるんだし。 「……灼さん」 「何?」 「ちくわ大明神」 「…………。……え?」 「……違う。ちくわ明太子。この間のあれ、お願いします」 こちらが発した余りに素っ頓狂な台詞に彼女は静止して、クスリと笑った。 「……判った」 鷺森灼の飯は上手い。子供の頃から、家事手伝いをやっていたそうだ。 彼女曰く――というか正確には――彼女の祖母曰く、『食べるという字は人を良くすると書く』らしい。 だから、料理に余念がないのだろう。 そんな彼女は、時々創作料理を行う。ちくわ明太子というのも、それだ。 ちくわの穴に、刻んだ生姜と明太子を詰めて焼いたもの。 出来上がったそれを輪切りにして、葱をのせて食べるのだ。 なんとなく京太郎は、気に入っていた。 セールで買ってきたという、小瀬川宅の冷蔵庫に多量に鎮座するちくわを使って、 何とか皆に飽きさせないようにおつまみを作っていた苦労を思い出すからかもしれない。 今では、遠すぎる思い出だった。 東京から物理的に距離が離れているというのもあるし、心理的に遠ざけているというのもあった。 「それじゃ、楽しみにし……」 「まあ、日本じゃ二番目っすけどね」 「……一番は?」 「俺。ダルいんで、作りはしませんけど」 そう茶化すと、僅かに喜色を帯びていた彼女の顔が強張った。 それから、小さな肩を揺らして不機嫌そうに立ち去っていく。 すれ違い様に、常連に挨拶しているようだった。 「よ、お兄ちゃん。喧嘩でもしたのか?」 「……生理じゃないっすか」 「わしらのアイドルなんだから、あんま苛めんでくれな」 あれは照れ隠しだなんだと、好き勝手に話ながら立ち去る壮年の男たち。 日本にまだボウリングブームが来ていたときに、慣らしたクチらしい。 カーブをかけた球がガターすれすれを擦りながら、見事に離れたピンを倒して、小気味良い音を鳴らせていた。 京太郎はというと、ボウリングはそれなり。カラオケのついで程度。 別に今更、上手になりたいなんて思えなかった。 (……申し訳ない、か) 馬鹿らしいと、腕の骨に顎を預ける。 またひとつ、小気味のよいピンを弾く音が、鳴っていた。 (変な奴) それに、腹が立つ奴だと鷺森灼は考える。 やたらと一言多くふてぶてしいあの――赤土晴絵の紹介でやってきた男――須賀京太郎。 無給で扱き使ってやってくれと、そんな言葉を受けはしたものの……やはり気に食わない。 恩師で憧れの女性である、他でもない赤土晴絵の頼みであるから放り出しはしないものの、それでもどうかと思う。 卒業したとはいっても、仮にも元教え子の家に男を連れてくるなんてのは、正直晴絵相手であっても眉を顰めざるを得ない。 頼みの祖母は、豆腐を買いにフランスまで出掛けている(彼女なりの諧謔だ)。 つまりはまあ、あの家によく知らんどこぞの男と二人っきり。 身の危険を覚えぬ筈がない。 そりゃあ、確かに成長期を過ぎたものの未だに起伏に乏しい体躯であり、男の劣情を刺激はしないだろうが、 それでも年頃の女の子であり――いやいや多少は成長してます、でも、同級生の松実玄と比べてしまうと悲しいよね、 だけど本来的にはまるで性的魅力に乏しくとも、二人っきりという状況でいざ相手に魔が差すとも限らない――なんて、 心配してしまうのは人情であり、刃傷沙汰になろうが貞操を守るのが優先であると、 鍵の付いた自室に念のための刃物を隠して幾星霜(冗談だが、最初の夜は正に朝までが無限に感じられた)。 ……尤も。 今では、刃物は台所に戻してある。 一々料理の度に部屋に取りに戻るのが億劫なのだ。 無論、それだけではない。 (京太郎、ちゃんと店番できてる……?) あの男は殆ど、世捨て人だ。 仕事上のミスは少ない。否、ないと言っても差し支えがないであろう。 だけどそこに丁寧さや情熱はなく、卒なくこなしているという印象しか受けない。 仕事は出来るが、気遣いという言葉とは無縁だ。 ……実際灼に度々無礼な言葉を投げ掛けてきやがりますし。 それに何より、あいつは笑わない。 これは客商売としては致命的であろう。 自分に構うのをするんじゃねえよ、なんて不機嫌そうな仏頂面や、 如何にも自分は不幸で辛いんです傷付いてるんです、なんて沈痛な面持ちは晒さないが、 どことなく冷めている目の、アンニュイそうな顔を並べていた。 何が楽しくて生きているのか判らない。 楽しさを感じるのだろうか。そもそもあいつ、本当に生きているのだろうか。 死んだ魚の目とはよく言ったもので、全体的に覇気がない。生気もない。 とりあえず、バイト兼用心棒として使ってやってくれ――。 赤土晴絵からは、そう言われた。 勿論、それだけではないとは思っている。 彼女がそう言い出すなら、きっと相応の理由がある筈だ――。 彼に何があったのか、気にならなくはない。 それは確かであった。 ……まあ、そんなことはともかく。 何があったとしても、夕飯の買い物ぐらい代わってくれてもいいんじゃないか。 吉野は坂も多い。 二人分の食材を抱えて歩くのは、矮小な体躯の灼には一苦労だった。 食べたいと注文をつけてきたときは、こいつにもそんな珍しいことがあるものだなんて思ったけど、 気を利かせて買い物を申し出ないあたり、やっぱり須賀京太郎は須賀京太郎だった。 「……あ、お疲れっす。じゃあ俺、戻りますんで」 灼の顔を見るなり、そう言ってカウンターから顔を上げる京太郎。 ちょっと待て。 それ以前に何か、あるだろう。帰ってきたんだから、言うことが。 そもそも、こちとら買い物袋を両手に持っているのだ。 だから――。 「あ、灼さん」 「何?」 「俺は別にいーっすけど、裏口からの方がいいんじゃないっすか」 変な風に生活感を匂わすのは、客商売としてどうなんですか――。 なんて意図を含めた言葉だったので、脇腹に一撃お見舞いした。 痛いなんて言いながらも、まるで堪えた様子はない。 本当に、腹立たしい男だ。 「喧嘩かい? 若いっていいねぇ……」 「まさか、灼ちゃんにあんなハイカラな恋人ができるなんてね」 「彼……甲斐性、あるのかい?」 「いや、違……」 一連のやり取りを見ていた、常連さんに絡まれた。 やめてほしい。 高校の部活仲間の耳に入ったら、なんて言われるか判ったものじゃない。 東京に出てしまった新子憧、プロになった松実宥には届くまい。 高鴨穏乃は、多分変に勘違いして、悪気なく盛り上がる。 一番面倒なのは、同級生の松実玄だ。 女性の豊満な乳房に執心していながらも、その実、男女の付き合いに憧れている。 悪い奴ではないが、何を言い出すか判らないし、何か変な騒動でも巻き起こしそう。 本当に、悪い奴ではないし、嫌いでもないんだけど……。 この手の話題を絡ませたら、話をややこしくしそうな印象を受けるのだ。 ……いや、本当に何故だか判らないが。 ただでさえ、須賀京太郎というある種の頭痛の種がいるのだ。 これ以上は御免だ。 「いやいや、お祖母さんなら『ボールは見ただけじゃ判らない、見かけに騙されるな』とでも言うんじゃないか?」 「『本当の名店は看板さえ出していない』とも言うしねぇ……」 「いや、でも……『仕事は納豆のように粘り強くするものだ』って言うから、彼はどうかね?」 「認められるといいねぇ」 「もう、勝手にし……」 やっぱり、本当に腹立たしい男だ。 そして、夕飯も終わって灼は部屋に戻った。 やっぱり、須賀京太郎の奴は好きになれそうにないのだ。 夕飯もただ黙々と食べて、それっきり。 一応ちゃんと、「いただきます」と「ご馳走さま」は言っている。 加えて、最近ようやく食卓に皿を並べたり、皿を洗うようになったが――違う。 確かに、灼もむやみやたらに話すのは好きではない。 祖母からは、『食事とは一期一会、毎回毎回を大切にしろ』と言われていた。 だから、ながら飯は好きではなかった。 やたらとお喋りばかりに興じたり、テレビに余所見をしながら食事をするものではない。 そう思っていた。 でも――今になって思うのだ。 これの言うところの食事とは、食卓ではないかと。 その日の夕飯は、その日しかない。 その日の食事は、その日しかない。 当たり前のことだが――その日囲んだ食卓は、別の日には再現できないのだ。 だから、その日起きたことを食卓で話さなければ、別の日にはできない。 団欒をする食卓は一期一会で、 毎日様々に起きる出来事も、その度に抱く感想も、常に移り変わって行くのである。 ……まあ、そんな大層なことはいい。 つまり、何が言いたいのか――と言えば。 (頑張って作ったのに……) せめて、旨いとか。気に入ったとか。どうだとか。 食事についての感想を言ったらどうなのだ、あの男。 いや、無理に求めるつもりはないし、押し付けるつもりもない。 気に入らないあの男に、料理をやたらめったら褒められても仕様がない。 だけれども。 珍しく注文なんてつけてくれるから、作ったというのに……。 「おいしい」の一言とか、「ありがとう」の一言ぐらいはあってもいいのでは。 いや、勝手だと思うし、別に、期待してもないけど。 せめて、お通夜みたいに黙々と食うのはやめろ。 やっぱり、多少イケメンでも無理だ。 生理的に、そこらへんが合わない。 と、そんな時だ。 何か、物音が聞こえた気がした。それも、ボウリング場の方から。 初めは、京太郎かと思った。 だけれども彼は、仕事のときを除いて向こうには行きやしない。 というかそもそも、食事と風呂とトイレ以外、部屋に籠りっぱなし。 わざわざ閉店後に、あちらへと向かいはしないだろう。 ――と、なると。 (まさか、強盗) 考えられる原因はそれぐらいしか、あり得ない。 いや、放火や空き巣なども思い浮かぶが……どれにしろ、同じこと。 対京太郎用のゴルフクラブを片手に握り、焦燥に後押しされて廊下に出る。 用心棒と、晴絵は言っていた。 見たところ、無気力な優男でしかないが……。 それでも、こういうときは男手が欲しかった。誰かに一緒にいて欲しかった。 少しでも、自分の不安は和らぐ。 それだけでも、須賀京太郎が居る意味はあった。 そこだけで感謝してもいいくらいだ。 「……夜這いにしちゃ物騒っすね。夜襲ですか?」 訂正。やっぱりこいつ、駄目だ。 一瞬たりとも、こんな男に感謝した自分が馬鹿だった。 ふてぶてしい皮肉に、思わず本気で頭部めがけてゴルフクラブを降り下ろしたくなった。 なんなんだろう。 この、斜視で皮肉屋の無気力男は。 本当に腹立たしい。 腹立たしいったら、ありゃしない野郎である。 「違……。あっちで、変な音がして……」 「ああ、空き巣か強盗かと思った――と」 その瞬間、灼は確かに見た。 僅かながら、須賀京太郎の瞳が強く輝くのを。 だけれども、それは――。 「判りました。見てきますから、灼さんはここに居て下さい」 「嫌。相手が複数いたら、一人っきりになるし……」 「ああ、それもそうか」 それじゃあ、と彼が立ち上がった。 普段見ていたあの姿はどこへいったのだろう。背筋は伸びて、その背中はいつも以上に広い。 やはり、男というのは背中が広いのだろうか。今の今まで、まるで気が付かなかったが……。 自分の手のひら、何個分だろう――。 なんて関係ないことを考えながら、短縮ダイヤルで即座に通報可能な電話を左手に。 というか、この男、こんなに大きかったっけ。 これまで気付かなかったが、ここで初めて、彼も男なのだと思った。 すると、無性に怖くなった。 今まで、こんな奴とひとつ屋根の下で、二人っきりで過ごしていたのだ。 そして、これからも。……晴絵がいつ引き取りに来るのか、訊きそびれた。 強盗よりも、そのことへの怯えが生まれる。 そんな自分に――。 「大丈夫ですよ、灼さん」 普段のあの、斜に構えた姿勢はどこへいったのだろう。 「何があっても、あなたを守りますんで」 それは、自然な笑みであった。 思わず、携帯を握った方の手で彼のシャツの裾を掴んだ。 困ったなと、京太郎が笑う。 「任せて下さいよ。何かあっても、絶対にあなたに手出しをさせませんから」 きっと彼は自分のことを、恐怖を覚えているとか、臆病であると思っているのだろう。 こちらを安心させようとする笑みを、須賀京太郎は浮かべ――。 それから、猫科の猛獣が如く、足音を殺しながら歩き出す。 (違う) だけれどもそれは、まるで見当外れである。 鷺森灼は、強盗に対して不安を感じたのではない。 須賀京太郎の目に灯った光に、恐怖したのだ。 そしてそれは、その後彼が発した言葉によって、確信に変わる。 (京太郎は、どこかで安堵してた。悦んでた) 自分が誰かの頼りにされることを、ではなく――。 危険に、己のひとつしかない身を投じられることに。 それは期待を抱きつつも、ともすれば直ぐ様に消えてしまいそうな笑みだったのだ。 蝋燭の最期めいた光。 だから反射的に、闇に紛れてしまわないように掴み止めた。 それだけだ。 (これが多分、ハルちゃんが預けた理由) ただ無気力で斜に構えたという奴は、それこそ世の中に掃いて捨てるほどいる。 何が楽しいのか、冷静を気取った他人の振りで、他人事じみた俯瞰姿勢ばかりを繰り返す。 そんな性分の冷めた人間は、少なからず存在しているだろう。 でも。 この男はきっと違う。 恐らくもっと、本質的には別人だ。性格だってまるで異なるものだろう。 それが、如何なる理由かこうなってしまったのだ。 きゅっ。 シャツを握り締める手に、自然と力が籠っていた。 彼の言葉は全て、灼の身についてしか言及されていない。 なるほど、確かにこれが物語に出てくるヒーローであれば、そんな台詞も頷ける。 だけれども、彼も私も夢物語のヒーローなんかじゃない。 或いは――。 普段から、須賀京太郎がそのような性格の人間ならば、素直に聞いた。 こちらを勇気付けようとしているものだと、肯んじられた。 だがしかし、普段の彼はあの死んだ魚だ。 まさか、昼行灯とは言うまいよ。 器用そうだが、不器用な男なのだ。 卒なくこなしはするものの、何かを取り繕うのが上手ではない。 それができているのなら、何かを器用に行っていると相手に気付かせまい。 必死にやっている振りさえしていれば、妙な軋轢とは無縁でいられるのだから。 何度も舌打ちをしながら、須賀京太郎が先行する。 彼の周囲だけ、空気が違った。 そこは京太郎の領域で、踏み込んだものから破壊すると言わんばかりの、静謐にして張りつめた気配。 当の本人が軽々と滑らかに動いている分、なおのこと恐ろしい。 猛獣と同じであった。構えを崩して脱力しつつも、己の牙の距離に近付くものを虎視眈々と狙っている。 緊張していない筈はないが、彼は己の筋肉にそれを悟らせない。 余計な身体の強張りが、運動を阻害すると知っているようだった。 改めて――と思う。 改めてこの男は、何者なんだろう。 普段の彼のイメージと噛み合わない。 とてもじゃないが、お世辞にも上等とは言えない店番で、置物になっている姿とはかけ離れている。 今浮かべた薄ら笑いは、未練の琴線に触れた亡霊じみている。 朽ちていくだけの炭の塊が、まだ燃えるだけの残りカスを見付けたようであった。 「こっちには、いないみたいですね」 「どうして……?」 「今の舌打ち何度かで、確かめました」 そんなことが、できるものなのか。 獰猛さにも見える酷薄な笑みを浮かべた男は、緊張感を伴いつつも愉快そうに、静かに喉を鳴らした。 普段の彼を老犬とするなら、今の彼は年若い灰狼であった。 一体、どちらが本当の京太郎なのだろうか――。 彼との付き合いの日は浅く、また、神ならぬ灼にそれを知るよしもない。 だけれども、不思議と思うのだ。 どちらもきっと、本当の須賀京太郎ではない――と。 普段のあの、空気の抜けた風船や糸の切れた凧めいた、意気や意気地を置いてきたという京太郎も、 今の、危険を感じつつも緊張は覚えず、どこか心待ちにしていたという様子の京太郎も、 その両方とも、恐らくは、ある意味では須賀京太郎ではありながら、本当の意味では須賀京太郎ではあるまい。 (馬鹿らし……) なんで、こんな男のことを真剣に考えているのだろう。 灼の生活に紛れ込んだ異物。 異物というにはそれは、あまりにも自己主張をしないものではあるが――。 それが却って、気に障るのだ。 部屋の物をそのままに、配置をズラされてしまったような違和感が残る。 とにかく何か、しっくりこないのだ。こいつがいると。 だから、忌々しいとは言えずとも、少なくとも歓迎すべきものではない。 そんな男に、こうも思考を割いてしまっている自分に、多少ならず驚きを隠せない。 彼の顔を、見上げてみる。 黙っていれば、悪くない顔だと思う。 むしろ、今まで見てきた男の仲でも、かなり整っている方に分類されるだろう。 だけれども、普段のあの、骨を失って打ち上げられた魚ような態度は戴けない。 どれだけ見目が麗しくても、あれは駄目だ。マイナスだ。 かといって、今の顔がよいと言えばそうでもない。 薄ら笑い。 普段の京太郎に比べたら、えらく気力が充実している。さながら、獲物を見付けた大型肉食獣だ。 獰猛な、生気の充実した笑み――好戦的な笑い。 先ほどのごとき落ち着いた物言いは、普段のそれとは違って、見るものを勇気づけるだろう。 でもやはり、 (違う) のである。 その笑いには、ある種の虚無的な愉快が含まれていた。 それこそ、どこか仮面めいている。 彼自身も気付いてはおらず、また、他方では紛れもなく本心なのであろうが……。 どことなく儚く、嘘っぽさを覚えた。 「大丈夫っすよ、俺が付いてるんで」 「いや……」 「こう見えても、鍛えてるんで。安心して下さい」 「違……、ちょっ……!」 子供をあやすように、頭に手を置かれた。 やっぱり、軽薄で無礼な男である。 女の身体に、命である髪にこうも容易く触れるとは何事だ。 きっと、こいつの本質は――こいつはどうなっていても、多分デリカシーがなく、無神経な男だろう。 こちらに笑いかけて、何度か、軽く叩いてきた。 気安く触るなと振り払おうしたが、それが原因で空き巣だか強盗だかの何者かに気付かれたら仕方がない。 そのまま、黙ってされるがままになる。 こちらの不満も知らず、いい気なものだ。彼は気をよくしたらしい。 ……別に。 不思議と安心感を覚えてなんか、いない。いないったらいない。 万が一にでも感じるとしたらそれは、きっと強盗などの某がいるせいだ。 そんな非日常で、悍ましい存在がいるから……。 だから相対的に、こんな駄目男に安心してしまうのだろう。 許すまじ。 件の強盗やら何やらを見かけたら、ゴルフクラブの一撃では済ますまい。 静かに灼は、グリップを握り締めた。 「……窓、空いてましたがそれだけっすね」 「でも、確かに音が……」 「灼さんのこと、疑ってなんていませんよ」 それは、事実だろう。 依然として彼の身体には気勢が充実し、静かに闇の中を睨み付けているのだから。 彼の身体は、鋼鉄の鞭だ。 鋼鉄で、ゴムがごとき弾力を持った鞭だ。野生の刀剣だ。 その瞬間となったなら、引き絞られた弦が如く勢いよく弾けて、しなやかな身体は獲物に躍りかかる。 そのさまが、容易く想像できた。 想像していたから、次に己の身に起きたことを、灼は暫し把握できなかった。 「えっ」 「静かに……今何か、動きました」 肩を掴まれて、彼の胸元に抱き寄せられていた。 反射的についてしまった手から、京太郎の鼓動が伝わってくる。 とくん、とくん。 緩やかに一定のリズムを刻むそれから、鼓動の度に熱が流れ込んでくる。 その筋肉はやはり力強さを秘めながらも、優しく灼の指先を受け入れて包み込んだ。 これが、彼にとっても自分を守りやすい姿勢なのだろうが……。 (ち、近……) 訳もなく赤面してしまう。 相手が京太郎だとしても、こうして異性の胸元に指先を埋めるというのは、 灼に羞恥を覚えさせるのには十分な行為で、何故だか自然と掌が丸まっていた。 「……こいつか」 「可愛……」 「……確かに武器を隠し持ってるから、強盗と言えば強盗だよな」 それから、彼の言う音のする方向にいたのは、猫。 どこから入ったのか判らないけど、親とはぐれたのだろう、年若い猫がいた。 或いは早々に一人立ちしたのか……。 なんにせよ、その猫は人に馴れているらしく、近寄っても毛を逆立てようとはしなかった。 「おいで?」 しゃがんで、チッチと誘き寄せてみる。 躊躇いがちに前肢を出して、鼻をひくつかせながら猫が近寄ってきた。 その瞬間を狙って、両脇を抱えて持ち上げる。間抜けな具合に、後ろ足と胴が伸びる。 抱き上げられるとは考えていなかったのだろう。その年若い猫は、軽く目をしぱたかせる。 「ふふっ、ごめんね。何も持ってなくて……」 不満そうに、にゃあと声が上がる。 やはり野良だから、抱き抱えられることに抵抗があるのか身を固くしていたが、逃げ出そうとはしない。 雨風で乱れたのだろう、若干パサつく毛並みの尻尾が、ぱたぱたと脇腹を打つ。 なんて、可愛らしい強盗なのだろう。 こうして空き巣まがいのことなどせずとも、十分に稼ぐことなどできよう。 ――いけない子め。 心中で呟きながら、だらりと前肢を垂らしたその身体に頬擦りをする。 なんともふてぶてしいような、それでいて胸が暖かくなる柔らかさだ。 新子憧が相当に動物好きであったが、それもわかるようだった。 「……他には誰もいないみたいっすね」 やや距離が離れたところに立つ京太郎が、辺りを見回しながら言った。 何が気に食わないのかは知らないが、先ほどから灼と猫を遠巻きにしていた。 或いは、望んでいた強盗が可愛らしい美猫であったことに、落胆したのだろうか。 なんとなく、居心地が悪そうにしている。 「アレルギー? それとも、猫は嫌いだった?」 「別に……。ただ、苦手なだけです……動物が」 「ふぅん……。こんなに可愛いのに、勿体な……」 ねー、と前肢を持ち上げてみる。 猫は、迷惑そうに欠伸をあげた。 嫌いではないのに、苦手だというのはどういうことなのだろうか。 しかも、アレルギーではないのだ。益々判らない。 動物全般が苦手ながら、猫は割りと好きな部類なのだろうか。本人は狼じみているというのに。 昔、動物に襲われたことがあるのかもしれない。 「うちの子になる?」 猫に問いかけてみた。にゃあと、鳴いた。 可愛らしい奴だ。こうしておとなしくしているのを見るに、向こうも満更ではないのだろう。 これも何かの巡り合わせだと思えた。 正直灼はこれまで、猫がこれほどまでに愛らしい動物だなどとは、思わなかった。 なんとなく、可愛いとは思っていた。 だけれども、新子憧があれほどまでに熱心に語り上げるほどの興味は抱いていなかったし、 そんな彼女の話も、なんとなく聞き流していた。 だがしかし、これはどうだ。 まさか、ここまで愛くるしいものだとは、思ってもみなかった。 今この腕に抱いていると、尚のこと思いが強まっていく。 「……灼さん」 「何?」 やっぱり、アレルギーなのか。 それならまあ、仕方ない。苦手という程度ならまだしも、生活に関わるなら譲歩も吝かではない。 京太郎の言葉の続きを促すが、待てども来ない。 何かを言いたげに顎を尖らせたものの、口を紡ぐと、伏し目がちに目線を反らした。 おかしな奴だ。 先ほどまでの、あの強気な態度はどこへやら。 今の京太郎は、吹けば飛ぶような力なさを湛えていた。 「……飼うんなら、大切にしてやって下さい」 「言われなくても……」 それきり京太郎は口を噤んだ。 いつものあの、無重力で無気力な彼とも違う、顔だった。 それが、嫌に引っ掛かる。 「……そうだ」 「何ですか?」 「名前……」 家族の一員になるなら、ちゃんとした名前が必要であろう。 これから長らく一緒に暮らしていくというのに、あれだのそれだのと呼ぶわけにはいかないし、 まさかなんの捻りもなく、猫だとか、タマなどと呼ぶわけにもいかない。強盗や空き巣は論外。 しかし、そうとなったらなったで、思い浮かばない。 ふむと、猫の頭に顎を乗せてみる。 お前はどんな名前がいい――? 言葉が通じない分、肌を合わせてみれば気持ちは伝わるかもしれない。 なんて思ってみたものの、「に゛ぇっ」っと、蝦蟇蛙を潰したような悲鳴が変えるのみ。 はてさて、「にえ」という名前がいいのか。 それとも、向こうからの返答も気持ちで伝わってきやしないかと考えるものの、 自らの額に乗った異物に対して、鬱陶しそうに耳ではたきを上げるだけである。 「カ……」 「なに?」 思案げな京太郎が小さく呟いたのを、灼は聞き逃さなかった。 というか、月の明かりと虫の音以外が呼吸していないこんな夜では、 いくら多少距離を取っているとは言っても、人の声を聞き逃す筈もない。 だからこそ、向こうに居ながらも店の物音が聞こえたのだ。 まさか、聞かれているとは思っていなかったのであろう。 京太郎が、ぎょっとしてこちらを見た。 「いや、今のは……」 「恥ずかしがらなくてもいいから、とりあえず言って……」 「本当に……」 「笑わないから、ほら」 そう促しても、京太郎は煮え切らない様子である。 猫と共に、彼を見やる。 「カ」と中途半端なところで区切られた猫も、早くしろと言いたげだった。 やがて、観念したのであろう。 京太郎が、訥々と口を開いてきた。 「カ……、カ……カブトとか。カザリとか」 「センスな……」 だがまあ……。 確かにこの猫の額の模様は、言われてみればどこか兜を被っている風ではある。 なんのかんのと離れながらも、よく見ているではないか。 可愛らしくもない名前だけれど、それが却って素っ頓狂で馬鹿馬鹿しく、猫の名前としては好い塩梅の気がした。 変に気取った名前よりも、野良猫だった彼(彼女?)には丁度よい。 名付け親を彼に渡してしまうのは、些か癪であるが……。 今日、その程度の働きはしたであろうし、 また何より、灼の中でその名前が実にしっくりと来てしまっていたので、仕様があるまい。 「カブト……お前の名前は、カブト」 「ちょっ、灼さん……!」 「文句があるなら、あっちのお兄ちゃんにどぞ……」 にゃあと、また猫が鳴いた。 灼は猫の言葉が判らないが、どうにもそのあとごろごろとあの不気味な音を立てるものだから、 猫としても、その名前に異存はないのだろう。 (まずはお風呂で、綺麗にしよ?) 野良猫だったのだから、蚤やら何やら沢山だろう。 暴れてくれなければいいが……そうなったら、男手の京太郎に手伝わせよう。 なんて思いながら――新しい家族を抱えて、ボウリング場を後にする。 今度はしっかりと、窓も閉めて。 こうして鷺森家に、新たな住人が誕生した。 三人――二人と一匹の、奇妙な同居生活が始まったのだ。 しかしその間も、殆ど京太郎はカブトに寄り付こうとしなかった。 渋々と、カブトの寝床やトイレ砂を整え、皿を丁寧に掃除はしているものの、 肝心のカブトに対しては――少なくとも灼の前では――つっけんどんに接していた。 ともすれば、灼よりもカブトに懐かれているというのに……。 足元に擦り寄ろうとするカブトを巧みに躱し、ドアの向こうに逃げてしまう。 これでは、どちらが一体猫だと言うのだろうか――。 ◇ ◆ ◇ (……何をうだうだやってんだろうな、俺は) 適度にSAに立ち寄って、息抜きをしている自分がいた。 余程、彼の地を踏みたくないというのか。躊躇っているというのか。 何を馬鹿な――と自嘲を溢す。 こういう重苦しいのは、自分には合っていないのだ。あくまでもいい意味でも悪い意味でも軽い男。 元来的に自分はそんな性質だろうし、 また、暗く淀んだ顔をして、近くにいる誰かの顔までも曇らせたくないのだ。見ていて胸が痛くなる。 最近はちゃんとそんな風に、周囲にまで目を配る余裕が出てきていた。 自分も、大学や高校とは違う環境へと順応できてきたのだろう。いい傾向だ。 「……と」 家族で旅行にでも来たのか、それとも遠出をするために遊びに来ていたのか。 果たしていかなる力学的作用かは知れないが、少女の帽子が吹き上がる風に舞い上がり、枝に囚われてしまった。 いや、ある意味では木が受け止めてくれたとも言うべきか。 そこに木がなければ、そのまま風に吹き晒されて遥か目視も叶わぬどこかに飛ばされていた。 ただ、どちらにしても、 「……ぁ」 係留ロープの向こうの、枝に掛かっているという状況は、少女の中では失ってしまったと同義だ。 手を伸ばしても、届く距離ではない。 みるみるうちに、少女の目に涙が湛えられていき―― 「ちょっとこれ、持っててくれるか?」 自分よりも遥かに上背のある闖入者の声に、はたと少女の震えが止んだ。 手渡したのは、スマートフォン。 待機画面いっぱいに、積乱雲を孕んだ午後の空を映すそれは、少女の手には些か大きい。 え、と呆気にとられた少女が、京太郎を見上げる。 「何者って言いたそうだから先に言っとくけど、俺は魔法使いさ」 「えっと……」 「ま、いい娘で待ってな。直ぐに魔法をかけてやるよ」 ぽかんと口を開ける少女を背に、軽く足を屈伸させる。 早く少女の涙を止めなければならないという使命感と、 単純に、ただ単純に、今時は声かけ事案が多いので、相手が呆然としている内に片を付けなくては、 その後に通報されて、全く喜ばしくないことになるからだ。 多少なりともイケメンなら、許してはくれないものだろうか。なんとも世知辛い世の中だ。 ……。 だから別に、自分は気障ではない。 これは、非日常的な言葉で相手を混乱させ、声かけ事案という冤罪から身を守るためである。 つまり、演技である。演技である。 自分はスカした気障野郎ではない。ないったらない。 そうやって伊達男を気取るからなんか冗談っぽくて女性に相手にされないとか、それが却って残念さを生んでいるとか。 そんな言葉は聞こえない。聞こえない。 「ふッ――」 両足に力を込めて、跳び上がる。 バッタは人間大で考えたら、ビル九階分のジャンプをするという言葉があるが――流石にそこまで、馬鹿らしい脚力はない。 ただ、この程度は十二分。 地を蹴り係留ロープを跳び越え、帽子を掴みとると同時に、 慣性で前方へと押し出された足で木の幹を蹴りつけ、帰還。着地の衝撃は身体を畳んで全身で散らす。 残すのは風と、ちょっと強めに揺れる枝葉のみ。 「ほらよ、笑顔になる魔法――ってな」 少女の頭に帽子を被せて、目線を合わせてスマートフォンを受けとる。 万が一でもポケットから零れ落ちたら困りものだから手渡したが、今の分では杞憂だっただろう。 泣き止まないようなら、何か手品のひとつでも見せねばなるまい。 なんて思っていたら、未だ驚きを隠せないといった様子で少女は、ありがとうと口を開きかけ―― 「まさか、オカルトスレイヤー……?」 「……あー。その、なんつーか……クラスの皆にはナイショだぜ?」 唇に指を当てて、ウィンクを飛ばしてみる。 すると何度か躊躇いがちに、おずおずと首を上下させる少女。 うん、素直でよろしい。 「ありがとう、オカルトスレイヤー!」 (ちょ、声! 声!) なんて大声でお礼を言ってくれるもんだから、流石にこれには京太郎も焦った。 すわ何事かとこちらを振り返る家族連れの視線から逃れるように、そそくさと立ち去る。 ……まあ、出発の口実ができただけ、よしとしよう。 「……っと、電話?」 着信元は――松実宥。 軽くガッツポーズをして、通話ボタンをタッチする。 さて、一体全体何の用だろうか。まさか、個人的なお願い事だろうか。デートのお誘いだろうか。 いやあ、でも今殆ど奈良だしな。 ああいや、そのままハネムーンもいいしともすれば二人連れ立って彼女の実家に結婚の報告でも――。 いやいや、でも憧と約束してるしな。流石にドタキャンは不味いよな。 だとしても、二人と同じ日にデートの約束なんて、モテる男は辛いよな。ハハハ。イケメンで辛いわ。 ……なんて、無理矢理に気分を盛り上げる。 付き合いが長い憧に露見してしまったのは判る。 だけれども、玄にまで察されてしまうとはどういうことだ。流石に予想外だ。 そこまで自分は、判りやすい男ではない筈だ。 多分。きっと。メイビー。 「はい、もしもし?」 『あ、須賀くん……?』 「そうです、あなたの須賀京太郎です」 相棒は小走やえってことは変えられないけど、まあ、貞操くらいなら。 誘ってくれたらいつでもほいほい付いていくけどね。 ……訂正。 流石に、そこまで軽くない。硬派なのだ。あっちと同じで硬いのである。 ……なに言っているんだろう。疲れているのかもしれない。 『ボウリング大会の場所なんだけどね……?』 「あ、スルーっすか」 『え?』 「……なんでもないっす」 『う、うん……』 まあ、間に受けられても困るものがある。 この手の冗談を口にしてしまうのは、いつからか習慣になっていた。 なんでも茶化して、おどけてお茶らけて、煙に巻こうとしている。 自分でも理由は判らないが、誰かと真面目な話をするのに耐えられない――怖い――のかもしれない。 あるいはただ単純に、その方がオチも作れてテレビ向きであるというのもあるのだろうか。 つくづく、ワーキングプアでもワーカーホリックでもなく、職業病かもしれない。 「それで、ボウリング大会がどうかしたんですか?」 確か、松実宥は参加しなかった筈である。 その後の、若手麻雀プロの集いには出席する(というより会場が彼女の実家だ)が。 どちらも龍門渕が主催であるものの、何故だかボウリング大会の参加人数は区切られていた。 理由を聞いてみたところ――。 ――あんまり人数が多すぎても、テレビ的に盛り上がらないからですわっ。 という回答が返ってきた。 が、実際のところをちゃんと京太郎は知っている。他のプロは、予定が合わなかったのだ。 なら素直にそう言えばいいのにと、内心苦笑を漏らす。 あの人も大概格好つけの見栄っ張りである。ただ、彼女なりの矜持や美徳があるので、余人のそれより嫌味ではない。 『うん……。その会場が知り合いの娘のところになるみたいなんだぁ……』 「鷺森、灼」 『知ってるの……?』 「ええ、憧から聞いてますよ」 やはり――。 奈良で、吉野で、ボウリングをすると言われた時点で判ってはいた。 あの場所の他にボウリングをできる所はない。多少、場所を移しでもしない限りは。 だけれども。 こうしていざ突き付けられてしまえば、また、判っていても思うところがあるというのが本音。 「どうか、したんですか?」 『えっと……最近会えてなかったから、よろしくって言ってくれたら嬉しいかなぁ……って』 ――マズった。 電話を耳に押し当てたまま、空を仰ぐ。 昔の知り合い。プロになってしまった自分――となれば答えはそれしかあるまい。 逆に一体、こんな状況で松実宥が何を言うのだろうか。他にあるはずもない。 いつもならば、容易く察せる事態であるというのに――。 「ああ、了解っす。ついでに松実プロからって、手土産でも持っていきますか?」 『それは、悪いよ……』 頭が上手く、回らなかった。 普段なら、ここで何か気の聞いた言い回しをひとつでもして、ちょっと会話を盛り上げられただろう。 でも、できない。 そこまで動揺するような事態であるのか。やはり、彼女が昔言ったように、自分は割り切れない男なのか。 ――どうなのだろう。 未だに自分は彼女への未練を抱えているのか。高鴨穏乃に抱くそれのように。 自分はこうも、センチメンタリズムを引きずった感傷的な男なのか。 「ま、判りましたよ。任せておいて下さい」 自分のせいで誰かを悲しませたくない――。そんな顔をさせたくない――。 かつての日に、静かに誓った想いが甦ってくるようだ。 多忙な毎日に、日々積み重なる思い出に押し潰されて、記憶の奥底に埋められたタイムカプセル。 こうしてオートバイで時間をかけて向かっていくことで、しめやかにカプセルは掘り返されていく。 この時期というのは、丁度埋めた時期と同じで――。 これから己が向かう先は、まさに埋めた場所そのものである――。 だからきっと、こうも自分は揺らいでいた。 ……別に、そのこと自体を己自身にとやかく言うつもりなどはない。強さもあれば弱さもあるのが人間だ。 ただそれを、他人に聞かれてしまった――悟られてしまうこの状況が良くない。 何ともそれは、寂しさを伴った恥ずかしさなのだ。 誰彼の前でもいい格好をしたいとは思わないが、然りとて皆に己の弱さを晒したいかといえばまた別だ。 そこに踏み込まれても、困り者ではある。 偶々、こうして気分が不安定になっているだけで、普段の自分はまるで違う。 まるで腫れ物を触るように扱われたら、色々と寂しいところであるのだ。 『須賀くん?』 「……なんすか」 『長くて疲れるかもしれないから、気を付けてね……?』 ああ、ほら。 余計な気を遣わせてしまったではないか――。 こういうのは、苦手なのだ。 他人に変に気を遣わせるのは、どうにも性に合わない。むずむずして、居心地が悪くなる。 これは気負いとかじゃなくて――。 単純に、自分自身の性癖であった。相手に余計なことを、させたくはないという。 「ありがとうございます、松実プロ」 『うん、また後でね……須賀くん』 電話を打ち切りながら、思う。 自分は、彼女たち二人をどう思っているのだろうか。 未だ、未練がましいものを抱いているのか。 すでに終わっていて、彼女たちは割り切ったというのに。 会って――、もし会ったら――、どうしたいんだ。 考えても、答えはついぞ浮かばない。 なんというか本当に今日は、我ながら弱っちい日である。誰かに見られてなくて本当によかっ 『BeHinD yOU』 ――ファッ!? 唐突なメールに含まれた添付ファイルに、思わず携帯電話を取り落としそうになった。 不気味に、画像が踊る。 いやいやまさかな……メリーさんでもあるまいしと、背後を振り返ってみる。 いたらマジで、全力の後ろ蹴りを以て完全に破壊する――。 「やっほ……って、うわ、危なっ!?」 「……俺の後ろに立たないで下さいよ。師匠」 「……いや、ゴルゴを弟子にした覚えはないんだけど」 そこには、頭部スレスレで止められた蹴りに苦笑する、赤土晴絵がいた。 相当に無礼なことをしてしまった。おまけに、一歩間違えれば殺人罪だ。 あまり考え込んでナーバスになるのも、どうにかしなければならないだろう。 今のはいくらなんでも、洒落にならない。 「いや、ちょっとした遊び心だったんだけどな……」 「……本当に、申し訳ないです。師匠にこんなこと、しちまうなんて」 「いやー、うん、好奇心猫を殺すって言うしね。いや……猫ってキャラでもないけどさ」 「そっすね」 両手に清涼飲料水の缶を持ったまま、硬直する晴絵。それでも、腰を抜かさないのは流石だと思った。 自分が逆の立場――つまり一般人の無防備な頭部に格闘家が蹴りを打ち込むのと同じ割合で、命の危険がある行為をされる――なら、 間違いなく動揺を隠せまい。 いや、先ずは防御を試みるだろうが。意識的にも、無意識の内にも。 ……。 自分の肉体で換算したら、どのようなものか。 マイク・タイソンが唐突に殴りかかってくるのが等しいだろうか。彼のパンチの破壊力は、拳銃弾に相当すると聞く。 ヘビィ級、マジにヤバい。グレートすぎる。 その腕力を持つ身体能力の相手が、蹴りを打ってくるようなものか。 足は腕の三倍の力。忍者なら更に三倍の脚力。 忍者はともかくとして、そんなものを頭部に受けたらまず死ぬ。 ある程度(京太郎基準)鍛え上げた格闘家の蹴りがどれほど危険かは、賢明な諸兄ならば既に周知であろう。 コンクリート以上の固さを持つ、木製バットよりも遥かに密度のある、重量は軽く十キロを越える、 鞭と棒のそれぞれの利点を合わせ持った武器を、思いきり頭部目掛けて振り抜くのである。 勿論、人間の身体は弱そうで頑丈である。 仮にそれを受けてしまったとしても、細かい怪我や障害(頚椎捻挫など)に目を瞑れば、殆どは手酷い傷を負わない場合が多い。 理由としては二つある。 受ける側の身体のしなやかさと、放つ側の攻撃の鋭さだ。 で、相手はズブの素人だ。それも運動不足気味の。 身体に、しなやかさが足りない。 しなやかさこそが衝撃を上手く分散し、身体を死の危険から守るものだ。 それがあるから野性動物は強い。 打撃などで致命傷を負いがたく、一撃で仕留める為には鋭さを持つ攻撃が必要になるのだ――。 そこに来て、頭部などというしなやかさが疎かな場所だ。 たとえ直撃で死なずとも、衝撃で倒れた先で頭を強かに打ち付け、 脳を支える血管が切れるか、頭蓋骨そのものが破損するか、頭部の骨に熱烈なキスを交わした脳味噌が変形するか――。 とにかく、なにが起きるか判らない。 であるから故に、 「危なかった……」 のである。お互いに。 「重ね重ね、本当にすみませんでした……危うく、殺すところだったなんて」 「えっ」 「えっ」 「な、なにそれ……?」 「えっ、いや……判ってますよね?」 「すごく嫌な予感かするけど……一応聞いていい?」 「好奇心猫を殺すって言ってたから、殺されるって判ってたのかと……」 「あ、あはは……あはは、はは」 あ、判ってなかったらしい。 ごめんなさい、師匠。あばよ昨日、よろしく勇気。 宇宙ならぬ小さな惑星――地球――の、小さな島の、一地方の警察のご厄介になってしまうところだった。 まあ、顔面が潰れることはあっても一撃では中々人は死なないから、大丈夫な筈だ。 人を殺すには、相手のしなやかさと柔らかさを貫く攻撃の鋭さと、タイミングと方向が重要だ。 力任せに肘をコンクリートブロックに叩き付けてもどうにもならないのに、 攻撃が上手く“嵌まれ”ば軽く粉砕――人間なら一撃死させる――ことが可能だが、中々行うのは難い。 つまり、何が言いたいのか。 今のでも人は死ななかったのだ。 死なない可能性もあったのだ。 ちゃんと、止めたのだ。 だから、ノーカンである。 テンカウントまでに立ち上がるのがボクサーで、奇しくも京太郎はムエタイボクサーであるが、 そもそもノーカンである。ノーカンったら、ノーカンなのだ。 「あー、そんな、気にやむなって……」 「本当に、なんて言ったらいいのか……申し訳ありません」 「北九州なら、日常茶飯事だからさ」 嘘か本当か判らないおどけかたをする、晴絵。 こういうとこ、好きだ。この師匠。 「で、どうしたの?」 「……何がですか」 「そんなに、神経質になってる理由」 ――やはり、判ってしまうか。 敵わないなと、天を仰ぐ。自分の師匠たちは、皆が皆凄い人だ。 年齢が上であるとか、経験が豊富だとか……そういう次元の問題ではない。 純粋に、一個人として優れているのだ。ただ単に、自分が劣っているだけかもしれないが……。 とにかくこのままでは、一生頭が上がらないだろう。 「……バレます?」 「そこまで長い付き合いじゃないっていっても、生徒みたいな相手のことなら……そりゃね」 「ちっとは成長してると思ったんだけど……やっぱ先生さんには敵わないな」 「成長はしてるだろうけど……ま、こっちも良いところを見せたいからね。生徒くん?」 お手上げだと、両手のひらを広げて笑う。 晴絵の差し出した缶を受け取り、プルタブを開く。 金属の産み出す軽快な声と共に、揮発した炭酸が缶の喉笛を鳴らす。 ちびりと啜ってみる。夏の匂いが、“聴こえた”気がする――。 「……灼のこと?」 「判りますかね……ま、それしか答えはないでしょうけど」 「そりゃね。私が引き合わせたからさ」 正確に言うのならば――高鴨穏乃の件も、あるが。 「そう言えば……」 「何?」 「どうして、あのときの俺を灼さんに会わせようと思ったんですか?」 自分で言うのもどうかと思うが、あのときの自分は色々と怪しすぎた。 いつ死んでもいいと思っていた。 むしろ、死にたいとさえも考えていたのだから手に終えないであろう。 ムエタイを始めたのだって、そこに尽きた。 危険性が高いから、殺傷能力が高いから、習得の過程で命を落とす機会もあるだろうと――考えていた。 フリーランについても、同じだ。 とにかく危険に身を浸し、逆説的に生の実感を得てから、死ぬ算段であったのだ。 ただ、自分の予想と違っていたのは――。 死地を望むほど、己自身の生の限界に近付くほど、却って業は冴え渡ったという点にある。 “死、必すれば則ち生く”などという言葉があるが、死人の方が生者より巧みになるのだから、始末に終えない。 ――如何にして死ぬか。 当時の自分にとってそれは、命題であったのだ。まさに命懸けの。 せめて自分の命を有用に使い潰して、最期に自己満足と欺瞞に満ち溢れた虚無的な幸福感を胸に死にたかった。 世の中には生きたくても生きられない人間がいると聞くが、 そんなものを“どうでもいい”と断じてしまえる程度には、自分は空虚な感覚に支配されていた。 「ああ……まあ、ひとつは諦めきった目をしてたから、おかしなことはしでかさないだろうってのかな」 「よくもまあ、そんな不確かな感覚を信じましたね」 「駄目だったら、許されることじゃないけど……首括るつもりはあったかな」 「……重いっすよ、師匠」 苦笑をしつつ、缶を傾ける。 ここだけ、あの雲の動きが如く、時間が緩やかに流れているような錯覚を受けた。 どこかの天気は崩れているかな、なんて考えてみるも答えは返らない。 「まあ、あんなに疲れきった奴に、何もできないだろう……とは思ったのよ」 「……それは、どうして」 「似たようなの、自分も味わったからね。経験則って言うのかな」 何もかもがどうでもよくなったのは、その後だ。 驚くほど短期間で、その両方は習熟に至った。細かい部分や精度や練度はともかくとしても、最低限以上に仕上がった。 あれほど、心を傾けた麻雀に比べて――何なのだ、これは。 そう、愕然とした。 同時に、それほどまでに自身の内で消化が早かったものですら、頂きには至れない。 そう感じてしまったときに、何もかもが徒労に思えた。 極めつけは、あれほどまでに世話になり、尽くしてくれた――そして憎からず思っていた――新子憧へ、 あのような感情を発露してしまったこと。 自分は価値がなく、そして残酷で、救いようのない人間だと確信した。己がまるで信じられなくなった。 であるが故に、益々、己は生きているべきではないと思ったのだ。 ――風が鳴り止まなかった。風が。 耳の奥から聴こえる風の囁きに誘われて、街を歩いた。 そして、実に自分に都合がよく――お世辞にも上品とは言えない連中に、執拗に纏われている少女を見たとき――。 ここだ、と思った。 これこそが自分が望んでいて、誰かの助けにもなり、有用性の証明を土産に死ねる場所。 きっと、このときの為に自分は居たのだと、静かな使命感と充足感を得た。 「あの子はしっかりしてるけど、気負い易いし、変に何かに憧れてしまうところがある」 「……」 「まあ、それでもいいんだろうけど……この先もそれだと、詰まらないだろうなって思ってさ」 「……俺は、同族嫌悪の相手として適当だった?」 「そんなつもりはないけど、まあ、お互いを反面教師にしてくれたらなー……って」 だけれども、違った。 どれほど死を願おうが、死ぬ為に触れた技術がそれを邪魔する。 止まろうとはせずに、動き続ける。 従おうとしない身体と、それに促されてしまう精神。 「後はまあ、いい子だからもうちょっと色んな楽しみを覚えて欲しい……ってね」 「……だからって、男遊びはぶっ飛ばしすぎじゃないっすか?」 「ハハ、教師が不純異性交遊を進めてどうするんだって――、……不純じゃないよね?」 「純粋でしたよ。それはもう」 それでとうとう何も信じられなくなり、何もかもがどうでもよくなった。 絶望。その一言に尽きた。 何をしても徒労に終わってしまうのが、自分の人生だと思った。 「灼は、どうだった?」 「やっぱり、大人でした。俺よりも……ずっと」 「でも、大人にしたのは京太郎でしょ?」 「おい、教師ィ!? 言わせねーぞ!」 風が止まなかった。 そのまま、胸にある道標たる灯火も、憧憬も、希望も願望も何もかもを――吹き飛ばして。 後は、蝗の群れに食い尽くされたような、脱け殻の須賀京太郎を残した。 雷があった。雹があった。巻き込まれた何もかもが、なくなった。 後はただ、心臓の鼓動に合わせて動くだけの、空蝉めいた人型でしかなかったのだ。 「ごめんごめん。つい、若さが憎くてね」 「……突っ込み入れにくいボケ、やめて下さいよ」 そのまま、促されるままに灼と暮らした。 自分は虚だらけの独活の大木で、ただ流される以上の価値はなかった。 彼女と出会わなければきっと、ここにはおるまい。 彼女は恋人であり、そして、恩人であった。 常に自分は誰かから受け継いでいる。ただひたすらに、貰ってばかりで、勝手に失ってばかりだ。 「……ま、その分じゃ、切れちゃったみたいだね」 「重すぎたのか、フラれちゃいましたね。わりとふつーに」 「あー……。ま、まあ、仕方ないの……か?」 「さあ……」 受け継いだものを伝えなくてはならない。 なんて大層な意思ではないが、多少なりとも誰かにそれを還元したいと思い至った。 元々、誰かの世話を焼くのは好きであった。 であるが故に教師になりたいと思っていたのである。後輩の指導を通じて、それが自分にあっていると思った。 そこに、少しでも、自分の経験を生かして欲しい――という思いが加わった。 間違えてしまった部分を、同じような悩みを抱える人生の後輩を、手助けしたくなったのだ。 「で、自分をフった元カノがいるとこに行くことになるから、そんな風に悶々と考えてるわけ?」 「そうって言やあ、そうっすね」 「ま、あんまり難しく考えなくても……再会して焼けぼっくいに火がつく――なんてのもあるんじゃないの?」 「まさか。……向こうはもう、俺のことはなんとも思っちゃいないでしょう」 「そう? 案外今も、応援してると思うけど」 「そう願っちゃいますけど、それはそれで……なんともこそばゆいような、情けないような気もします」 「どうして?」 それでもこうして麻雀プロになったのは――。 麻雀が好きだったから。 自分も幼馴染みの彼女のように強くなりたかったから。 大切な友人たちを、独りぼっちにしたくなかったから。 高鴨穏乃と約束をしたから。 次こそ、夢乃マホを自分の手で助けたかったから。 鷺森灼に送り出して貰ったから。 ――そんな様々な感動や感情や感傷めいた心の働きと、巡り合わせが絡み合っていたから。 「普段を知ってる相手に、テレビでのあれこれを見られる――てーのがひとつ」 「……ああ」 「もうひとつは、麻雀プロというには不甲斐ないことしかできていないから……っすかね」 そうしてプロになった。プロになれた。 それについては、小走やえの恩が強い。彼女には本当に世話になっている。 そういうのを抜きにしても、単純に彼女のことを尊敬していて、同じくらいにその人柄に好意を抱く。 ……ただ、そういう受け継いだものやお膳立てがあっても。 プロ一年目の彼是などで、自分は存分に叩きのめされた。一時は退職も考えた。 背負った期待も約束も、かなぐり捨ててしまいたくなるほど――そこは生易しい世界ではなかったのだ。 ……これもまた、色々な要因が絡むが。 「確かに、全国ネットであんな目に遭えばね……」 「申し訳なかったっすよ、色んな人に。ま……タレント雀士と化したのもありますけど」 「……今もじゃないの?」 「やめてください。それを言ったらおしまいっすよ」 やっぱり自分の力など、そんなものか――と思うところもあった。 どんな感情があろうが、事情があろうが、卓に立ったものには何の関係もない。 実にシンプルで、唯一絶対のルールが叫ばれる。 勝つことが、全てだ――と。 だけどそれは実に自然なことであり、極めて単純なことではあった。 最初につけられた、大きなマイナスポイントを――ゼロに戻す。その為に邁進した。 ――負けたままでは、終われない。 却って集中して麻雀に臨めたのだから、その点に関しては感謝している。 M.A.R.S.ランキング上位者になれたのも、きっとそのようなものがあったからだ。負けることが、己をより強固にした。 それでも覚悟なんてのは、いつまでも長くは続かない。 どうしたって長丁場では、モチベーションが低下する。 繰り返すルーチンワークに心は疲弊していく。 堅実に勝って、勝って、勝って、負けて、勝って、勝って、勝って、派手に負けて――。 スケジュールの忙しさも加わって、三度、心が乾き始めた。 しかも今度は、ある種気楽であった学生の頃とは違い、自分以外のものも背負わなければならなかった。 その中での不甲斐ない自分というのは、益々以て情けなさを加速させる。 ただ、死にたいとは思わなかった。殺してくれとも願わなかった。 そんな段階は過ぎていた。 一度やったことを、二度もやるつもりはなかった。 逃げ出すようなことを考えていては、胸を張ることはできない。 流石に、失敗を通じて以前よりは、前向きになっていたのだろう。 でも――どこかで倦んでいた。 自分一人の敗北が――どれほどまで多くに波及してしまうのか、とか。 汚名を漱ごうといくら勝利しても、一度ついたイメージは中々に拭えないのだとか。 ここまでが自分の限度で、これ以上の成長なぞは見込めやしないのだとか。 色々、あった。 なるたけは、前向きに考えた。前向きに考えられる程度には成長していた。 人と関わり、或いはオフを充実させて息抜きした。無意識的にも、ストレスを溜め込まないように努めた。 でも夜中ふと一人目覚めると、夜の闇に紛れて漠然とした不安感が自分を包み込む。 そいつが、かつて胸に開かれた傷へと流れ込み、音を鳴らそうとしているのだ。 ――ひゅう、ひゅう……と。 「でもまあ、なんでもできるタレント雀士だよね」 「やめてくださいよ。俺にだってできないことぐらい、ありますから」 「どんなこと?」 「そうっすね……。恋の病を……治すこと、とか」 「いやー、今日は少し涼しいねー」 「露骨に流した!?」 そうして迎えた、あのタイトル戦。 全ての進退を――雀士としての自分を懸けた闘い。 結果は、言うまでもないだろう。 「でも実際、選り取りみどりでしょ」 「いやいやまさか」 「気が利いて、麻雀も強くて、スポーツマンで、ルックスもイケメン……モテない訳がないよ」 「だったらいいんですけどねー」 だけれども、感謝している。 ――悔しい。 他の誰でもなく、宮永咲にあんなことをやられてしまったからこそ、自分は踏みとどまれた。 いつしか麻痺して薄れていた感覚が、より強く胸に灯ったのだ。 大星淡にも、感謝しなければなるまい。 再戦を誓う彼女のためにも、投げ出さずに続けなければ――と思ったのだから。 「憧と大学は一緒でしょ?」 「そっすね。世話になりましたよ、あいつには」 「で、宥とも番組で共演したり……同じ麻雀プロとして交遊もあるでしょ?」 「ま、多少は」 「玄の実家に泊まりに行って、連絡とってるんじゃないの?」 「そうっすけど……なんで知ってるんですか?」 「本人から」 「……何やってんだよ、あの人」 後はまあ、単純に――。 麻雀の持つ楽しみを思い出したのだ。慌ただしい日々に、激しい情動に流されてしまっていたそれを。 自分は、麻雀が好きだったのだ。麻雀に惹かれたのだ。麻雀に魅せられたのだ。 「これ全部フラグだとするでしょ?」 「あり得ないけど、仮にっすね」 「そこに元カノの灼を加えたとしたら……後は穏乃、憧の親友を入れたら初期阿知賀麻雀部フルコンプじゃない」 「……いやあ、ハハハ。ノーウェイ、ノーウェイ」 「今なら私もセットになってあげるから、お買い得よ」 「俺の愛は全人類規模なんで、ちょっと6人相手には無理ですね」 思考を打ち切る。 自分が阿知賀フルコンプなど、そんな馬鹿な話があるものかよ。 確かに元カノ二人は鷺森灼と高鴨穏乃。阿知賀である。恋人であった。 だけど残念ながら、袖にされてしまった。 次に、目下交流のある松実玄であるが、あれは駄目だ。男として見なされていない。 この時点で既に三人。京太郎と恋愛関係にならない。 既になってしまったもの――と見なすのなら、下衆な話では二人は消化しているが。 どのみち、やはり玄がボトルネックである。 「というかね、同じ部活全員姉妹とか……生理的に無理っす」 「そうなの?」 「ビバリーヒルズみたいなノリは勘弁っすよ。それよか俺は、ダイハードです」 「全然ジャンル違うじゃない」 「それぐらい、俺の中では考えにくいってことですよ……別れた後のことを考えると、気まずくてとても」 「あー、ついに別れた後を考える年齢になっちゃったかー」 「俺のせいで友人関係が駄目になるとかは、勘弁ですね。そういう人間関係にいる相手だから、好きになるんですし」 松実宥は、どんな感じだろうか。 多分、きっと、悪くは思われてない。抱きつかれたし。話をしてくれるし。 ただまあ、あの人は体質によるところが大きいであろう。 それにあの人の中でのライン――「だめ」「普通」「お気に入り」「好き」――というのはどうにも、 最後の二つの間が偉く離れているか、曖昧である風に思える。 だから多分、そういう関係になるまでが大変であるか……それとも、なった後が大変だろう。 故に、非常に残念ながら、須賀京太郎とフラグは立ってない。Q.E.D. 「じゃあ、その辺が後腐れないとしたら?」 「その手の話題で難儀したサークルの話を聞くから、絶対にないって言いたいっすけど……仮にですよね?」 「仮にだね」 「つーと、5股って形になるから……無理ですね。絶対に俺が耐えられない」 「可愛い女の子選り取りみどりだーモテモテだー、とは?」 「遊びならともかく、あの人たち相手にそんなことはしたくないですね」 新子憧――。 あの三人の中では恐らくは一番、そういう関係になり得るだろう存在。 正直、物凄くいい奴ではあるし、きっと結婚生活の方も順風満帆に行くだろう。 「つまり、その程度にはみんなには本気だってこと?」 「みんなって括りはやめて欲しいけど……遊びで済ませたくはなくなるのは確かです」 早々に子供を作って、二人の為に頑張って稼いでくる――という将来像のには、憧れる(憧だけに)。 ひょっとして、リアルが充実するから……麻雀も強くなるんじゃないかとも思える。2位くらいに。 酒の席でのあの絡まれ方を見るに、多分、嫌われてはおるまい。弄られてはいるのが非常に不安だが。 後は……。 「お互いが割りきった関係ってのは?」 「なったら、なるでしょうね。向こうがそれを望んで、状況がそうなったら判りませんよ」 「ほうほう」 「ただまあ、その後は……何かあったら、面倒でしょう」 スキャンダルとか、養育費とか、税金とか。 そりゃあ、大学生の時分はその辺りを気にせずに遊びもしたが、今や社会人である。 それもそれなりに知名度もある。 ただ、よくある話とは聞くが――どうしてもそれを自分に当て嵌めて考えられないのと、 また、自分を信じてくれた人間を裏切りたくはなかった。 ファンという実態の見えない相手ではなく、手の届く範囲にいる――仲間の期待を。どんな形でも。 「面倒って……草食系だねー」 「肉食ですよ? ただ、慎重なだけですけど」 「もっと恋って、シンプルに考えるもんじゃないの?」 「シンプルで失敗すりゃあ、慎重にもなりますよ」 そういうこの人自身はどうなのだろうか。 相手が、自分の師匠ということもあり――あまり下世話な想像をしたくない部類に入る。 ただ、この人もこの人で色々あっただろうし……よほどタイミングが悪くないかぎりは、いい歳した人間なら経験ぐらいあるだろう。 小鍛治プロ? ……聞こえないな。 「つーか、こんなしょうもないことを聞いてどうするんですか?」 「あー、まあね」 「俺にどんなことを求めてるのか、判りませんよ」 師匠に恋愛観を質問されるとか、一体どんな拷問なのか。 男同士で盛り上がるとか、合コンや酒の席はともかくとして――師匠相手である。 ただ異性ならともかく、師匠だ。 目上の人とする話題ではないのでは……と思わざるを得ない。プライベートな話なのだ。 「いや……上の空で、考え込んで悪い方に入ってそうだったからさ」 「……」 「ちょっとは気分転換になるかな――と思ったんだけど、駄目?」 ――。 「……駄目ですね。全然駄目です」 「そっかー、ごめんごめん! 変な話を聞いちゃって、悪かった」 「今、惚れ直しそうになるぐらいには駄目でしたね……師匠の癖に」 「え、ちょっと待って!? というか然り気無く私のこと馬鹿にしてない!?」 やっぱり、本当に敵わないんだよ。 この人たちの、こういうところに。 「……さあ、知りません」 「まあいいや……とりあえずもう一回言ってよ。瑞原プロと小鍛治プロに音声送り付けるから」 「命を大事にして下さい! 二重の意味で!」 なんて悶着があった末に、師弟ともども牌を握れなくなったらどうするのだという結論に至って、終了。 相手が気の毒というより、藪をつついて人間大のクロカタゾウムシに殺されるのは恐ろしかったのだ。 間違いなく、血涙を流しながら襲いかかって来るだろう。勘弁してくれ。 たったひとつの音声が原因で、再起不能者が四人――。 ちょっと洒落にならない大惨事である。 「それにしてもやっぱり、誰かと話す前と後じゃ大違いだね」 「人は一人じゃ、生きられないってことっすか?」 「というよりも京太郎が、舞台役者気質だってこと」 どういう意味だろうか。 軽く首を捻ってみる。 「自分一人じゃなくて、誰かの為だと……誰かに見られてると思うと、張り切っちゃって良くなるタイプ」 「格好つけで、目立ちたがりやってことですか」 「それもあるけど、ただ目立とうとするって言うよりは……自然と動きが良くなって結果目立つ、って方かな」 国広一にもそう言われたが……。 そんなもん、なのだろうか。 自分の中では――ある程度の浮き沈みや意図的に振る舞うときはあっても――それ以外では基本的に、 大して変わらないものだとは思っているが。 「まあ、それのせいで気負いすぎて悪く入ることもあるかと思ってたけど……大丈夫そうだね」 「師匠にそう言って貰えたら、安心です」 「私の方も、灼とのことがどうなってるか心配だったけど……安心できた」 それじゃあと、缶を付き合わせて互いに笑いあう。 なんというか確かに、気分が晴れたのは事実であり――そういう気っ風の良さは、流石赤土晴絵だった。 傾けて流し込んだ缶を、ゴミ箱に放る。 スリーポイント。気分がいい。 「それじゃあ師匠、お仕事頑張ってください」 「そっちも、仕事……仕事……ボウリング? 頑張ってね」