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布のローブ Lv1〜 防 1 強化 0 レザーアーマー Lv5〜 防 3 強化 0 ハードレザー Lv10〜 防 8 強化 0
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バンダナ Lv1〜 防 1 強化 0 ヘッドギア Lv3〜 防 2 強化 0 ヘアバンド Lv9〜 防 3 強化 0
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若き盗賊の野心 ロードス島戦記RPG GAME NOVEL(Role Roll vol.171 アークライト) パラグラフ 誤 → 正 2-13 君のLPが1点以上で、君が先攻なら、2-11へ → 〜君が先攻なら、2-9へ 〃 君のLPが1点以上で、君が後攻なら、2-9へ → 〜君が後攻なら、2-10へ
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黒蠍-強力のゴーグ×1 黒蠍-棘のミーネ×2 黒蠍-逃げ足のチック×2 黒蠍-罠はずしのクリフ×2 黒蠍盗掘団×2 月風魔×1 速攻の黒い忍者×1 異次元の女戦士×1 ゴブリン突撃部隊×1 ダーク・ヒーロー ゾンパイア×2 首領・ザルーグ×2 忍者マスター SASUKE×1 切り込み隊長×2 不意打ち又佐×1 大嵐×1 黒蠍団召集×2 サイクロン×1 収縮×2 神剣-フェニックス・ブレード-×2 戦士の生還×2 増援×2 突進×1 早すぎた埋葬×1 ブラック・ホール×1 魔法効果の矢×1 王宮のお触れ×3
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キズナのキセキ 番外編「黒兎と盗賊姫」後編 ◆ おかしい。 尊は首をひねりつつ、考える。 蒼貴とティアの攻防はほぼ互角。お互い軽装の神姫であることが、勝負の決め手を欠いている。 一進一退の攻防である。 しかし、蒼貴の方が攻撃を喰らう率が高い。致命傷にはならないが、ライフポイントはじりじりと削られている。 蒼貴の調子が悪いわけではない。むしろ絶好調と言っていいほどだ。 そんな調子の時、蒼貴の攻めは厳しく、守りは堅い。 だが、ティアは絶妙のタイミングで、いとも容易く反撃してくる。 なぜだ? なぜそんなことが出来る? そのとき、尊の脳裏にひらめくものがあった。 この試合の序盤、尊は確かに思ったのだ。 対策されている、と。 そう、ティアのマスター・遠野貴樹は、『盗賊姫』に対する策を施している。 蒼貴の攻撃を無効にし、反撃するタイミングを掴んでいる。いや、意図的に作り出しているのではないか? そうだとすれば……。 今まさに、蒼貴が大鎌を振るい、ティアが手にしていたサブマシンガンを跳ね上げて奪い取ったところだった。 蒼貴がサブマシンガンを手にするべく、空いた左手を伸ばす。 その時。 『取るな、蒼貴!』 「えっ!?」 蒼貴はマスターの声に反応し、サブマシンガンへの意識を断ち切った。 持ち主を失った銃が、頭上を越えて飛んでゆく。 見れば、武器を取られたティアが、いままさに攻撃態勢に移ろうとしている。 このタイミング。 ティアが放った回し蹴りを、蒼貴は腕を十字に重ね、余裕を持って受ける。衝撃を受けると同時、自ら後ろに小さく跳ねた。 蹴りの衝撃は跳躍によって吸収され、蒼貴にダメージはない。 着地した蒼貴はすぐに体勢を整えられた。対峙するティアは、隙のない蒼貴の前に動くことが出来ない。 攻めあぐねたティアが、瞳を大きく見開いている。 蒼貴もまた、驚き、首を傾げながら問う。 「……どういうことですか、オーナー?」 『対策されたんだよ、俺たちは』 「対策……ですか?」 『ああ。簡単に言えば、ハズレの武器をわざと取らされていたんだ』 蒼貴は思わず頷いていた。そう言われれば思い当たることがある。 ティアから奪った銃はいずれもマガジンが入っていなかったり、エネルギー切れだったりしている。 ついには蒼貴もムキになって奪っていたが、その「奪う動作」そのものが隙だったのだ。 武器を奪われたところで、攻撃は来ないとわかっていれば、蒼貴より早く動き出せる。先ほどから攻撃を受け続けた原因がこれだった。 『そもそも、ティアは回避の達人だ。奪われないようにかわせばいいはずなのに、あっさりと武器を取らせていた。もうちょっと早く気付くべきだったな』 「いえ、それならば戦いようもあります。まだバトルは終わっていませんから」 蒼貴はやっと冷静になれた。 ムキになった自分の心の隙を突かれた。精神修行が足りないということなのだろう。 だが、自分の得意技を封じられて焦らない神姫がいるだろうか。 蒼貴は気持ちを切り替える。 試合はまだ中盤。むしろこの時点で相手方の策が分かっただけでも良しとしなくてはなるまい。 蒼貴は対峙する神姫を見る。 オリジナルのバニーガール型は、なんだか少し困ったような顔でこちらを見ている。 弱気な印象だが、攻防の最中は、驚くほどに大胆で、そして繊細だ。 ティアはハンドガンを手にしている。 蒼貴は迅る。 ティアがハンドガンを構える。 蒼貴はジグザグに走り、距離を詰める。 ティアの発砲。乾いた音が耳を突く。しかし蒼貴の速度は落ちる気配がない。 迫る蒼貴に、ティアは銃を構えながら身をそらす。 蒼貴の鎌が地表すれすれから振り上げられる。刃が美しい弧を描き、ティアの手元を狙う。 「きゃっ」 小さな叫びを残し、ティアが一歩後ろに引く。 それと同時、手にしたハンドガンが舞った。奪取成功。 が、しかし。 蒼貴は銃には目もくれず、さらにティアとの距離を詰め、返す鎌でティアを薙いだ。 「わわっ!?」 ティアは辛くもその一撃をかわす。鎌の先がティアの肩口をかすめた。 しかし、蒼貴が止まらない。 さっきのお返しとばかりに、中段の回し蹴りを送り込む。 「うぐっ……!」 無防備なティアのわき腹に、蹴りが吸い込まれるように決まった。 身体をくの字に折り曲げながら、蹴りの勢いを逃がすように後ずさる。 案の上だ。 武器を奪った時のティアは回避の準備ができていない。 数少ない攻撃のチャンスをものにするため、この瞬間だけは回避を捨てているのだ。 だからこそ、今の攻撃が決まった。 「もう好きにはさせませんよ」 思わず声に出してつぶやく蒼貴である。 □ 「見破られたか。少し早かったかな」 仕込んでおいた武器はまだ少しサイドボード上に残っている。もう少し引っ張れるかと思っていたが。 だが、これで武装を盗む技は封じた。弾の入っていない銃を取らされるとわかっていて盗みに来るはずはない。 ティアが少し困ったような声で問いかけてくる。 『どうしましょう?』 「ここからは小細工抜きだ。蒼貴の真価を見せてもらおう」 『はい』 「全開滑走だ。ファントム・ステップで踏み込め!」 『はい!』 気合いの入った声に変わって、ティアが蒼貴の間合いへと踏み込んでゆく。 俺は先ほどよりも細かい指示をティアに送り始める。 ◆ せっかくの策を見抜かれ、そこで意気消沈してしまう神姫プレイヤーは多い。 しかし、目の前のプレイヤーは自らの神姫を躊躇いもなく踏み込ませてきた。 自らの策が破られることは想定済みであったのか。事前に仕込んでおいた策を意図もたやすく捨て去るその切り替えの早さに、尊は唸る。 小刻みなステップを踏み、小さくジグザグに走りながら、ティアは距離を詰めてくる。 蒼貴もまた踏み込む。 大鎌と苦無の二刀流、閃くような斬撃をティアに送り込む。 しかし、ティアはS字を描くステップで、流れるようにかわした。 蒼貴がさらに踏み込む。ティアは距離を開けず、自分の間合いギリギリで踏みとどまるようにステップを続けている。 蒼貴は改めて瞠目した。 全力の斬撃だった。これでイリーガルの神姫を何体も倒してきた。かわすのはそう簡単ではないはずだ。 しかし、ティアは、刃の先端を回り込むように、ギリギリでかわしてのけた。並の技術ではない。 蒼貴とティアの距離に変化はない。それはティアの間合いでもあることを意味している。隙を見せれば反撃を食らう間合い。 その距離を保ち続けるための、そのための超絶技巧。 このステップを身につけるのに、目の前の神姫はどれほどの修練を積んだというのだろう。 限られた装備を駆使し、知恵と技と絆で挑む。ティアはそういう神姫だ。 そして、蒼貴は気がついた。 似ている。ティアはわたしとよく似ている。 彼女は以前、ひどい境遇にあって捨てられ、今のマスターに拾われたのだと聞いている。そして、マスターと二人、装備を工夫し技を磨いき、様々な困難を乗り越えて今に至るのだ、と。 蒼貴も、前のオーナーにひどい目に遭わされ、捨てられ、ひょんなことから今のオーナー・尊のところにやってきた。 それから尊と蒼貴は様々な事件を乗り越え、今、確かな絆を結んでいる。 蒼貴が前に出る。黒い兎型の神姫に挑みかかる。 蒼貴は身体から感情が迸るのを感じている。 いつもの、イリーガル神姫を相手にしているときには決して感じられない。なぜなら、イリーガルが相手の時には、哀しみや怒りが先走る。 ティアとのバトルだから。技と知恵と絆で、真っ正面から挑んでくる相手だからこそ感じられる。 それは、歓喜、だった。 ◆ 「……笑ってる」 戦う蒼貴の顔には確かに笑みが浮かんでいた。 生真面目な彼女がバトルの最中に笑うなんて、珍しいことだ。いや、初めてかもしれない。 蒼貴の攻撃は、いつにも増して鋭い。剣閃はどれ一つとして同じ軌跡を描いてはいない。 しかも、蒼貴は動き回り、三次元的な機動であらゆる方向から攻撃を仕掛けている。機動の密度が上がっているのは、オーナーの尊の指示が増えていることを意味している。 しかしそれでも、ティアには届かない。 それが紫貴には信じられない。 「あの攻撃が当たらないなんて……」 「怖いわよねぇ」 隣のミスティが軽い口調で応じた。バカにされたのかと思って、紫貴は隣を見たが、違っていたようだ。 ミスティは真剣な眼差しでバトルを見つめ続けている。 「あの連続の斬撃を、間合いの中でかわし続けるなんて、とてもじゃないけど真似できない」 「じゃあどうして、あの黒ウサギはそれができるのよ!?」 「ティア自身が回避に優れているってのはあるけど、それだけじゃない……たぶん、蒼貴と同じ」 「蒼貴と同じ?」 ミスティは頷いた。 「そう。あなたのマスターが蒼貴の指示を出し続けているように、タカキもティアに的確な指示を出してバトルを進めてる。人と神姫、二人がいて初めて可能な戦い方で戦っているのよ」 しかし同時に、ミスティは蒼貴にも戦慄を感じていた。 ファントム・ステップで蒼貴の間合いに居続けるティアは、かわすので精一杯だ。あのティアが反撃の糸口を掴めていないのである。 双姫主と盗賊姫。二人はどれほどのポテンシャルを秘めているというのか。 ■ なんだかすごくやりづらい。 蒼貴さんは積極的に攻めてきている。攻撃は厳しいけれど、わたしはなんとかかわせている。蒼貴さんに隙がないわけじゃない。 でも、反撃できない。 なぜかは分からないけれど、彼女の隙を見つけたときは、わたしが攻撃を出せない。 今もまた。 蒼貴さんの鎌の振り下ろし際。そこに蹴りを合わせようとした。 だけど、彼女の前にうまい具合に大きな瓦礫があって、蹴りを出しても当たりそうにない。 そしてまた。 蒼貴さんが投げた苦無をかわし、ハンドガンの一撃を仕掛けようと照準を定める。 だけど、彼女の半身はすでにビルの陰に隠れていて、わたしの射撃は壁に阻まれそうだ。 さっきからずっとこの調子で、わたしは全力の攻撃を出せないでいる。 どうして? 疑問がようやく頭に浮かぶ。わたしが全力攻撃できないのが、彼女の仕業なのだとしたら。 それは一体どういうこと? 何かをわたしに仕掛けているというの? 『なるほど……こっちの攻撃を事前に潰しているわけか』 疑問に答えてくれたのはマスターだった。 「どういうことですか?」 『位置取りだ。蒼貴は障害物や地形を盾にして、おまえの攻撃を防いでいる。いや、無効化していると言った方が正しいか』 「む、無効化……ですか?」 『そうだ。壁を遮蔽物にするだけじゃない。自分の隙を潰すために、お前がうまく攻撃できない位置を計算し、移動しながら戦っている。お前がやりづらいと感じるのはそのためだ』 「そんなことができるんですか!?」 『信じがたいが、できるんだろう。実際、蒼貴はやって見せている』 「……なんという……」 なんという神姫だろう。 その技術をどうやって身につけたというのか。 『おそらくは、俺たちと同じさ』 「え?」 『限られた装備を使って、技と知恵で勝負する。俺たちが滑走を極めることで他の神姫と渡り合えるようになったのと同様、彼らは武器を盗むことと、位置取りによる攻撃遮蔽を修練することで強くなったんだろう』 「それは……」 どれほどの修練、どれほどの努力だったのだろう? 噂で聞いたところでは、蒼貴さんも、もとから今のマスターの神姫ではなかったという。 それでも、これほどの技を編み上げた。 わたしはあの言葉を思い出す。『技は神姫とマスターの絆』だ。 蒼貴さんと、マスターの尊さんの間にある絆の強さを、わたしは実感している。 尋常ではないその技こそが、絆の証だから。 わたしは、蒼貴さんを見た。 蒼貴さんもわたしを見ていて……そして、にこりと笑ってくれた。 わたしも思わず顔が綻ぶ。 「……マスター」 『なんだ?』 「わたし、蒼貴さんととことん戦ってみたいです」 『俺もだ。とことんやろうじゃないか』 「でも……蒼貴さんの技があっては、攻撃できません」 『簡単だ。ファントム・ステップをやめる』 「はい?」 『ファントム・ステップにこだわらなくていい。間合いは広くても近くてもかまわない。壁も使って、自由な機動で蒼貴を翻弄しろ』 「……はい!」 わたしは走り出す。 彼女には見てもらいたい。わたしの技のすべて。マスターとの絆のすべてを。 そう思いながら、蒼貴さんの間合いに踏み込んだ。 ◆ ティアの回避機動は、尊の想像以上だった。 あの蒼貴の攻撃をしのぎながら、反撃のチャンスをうかがうほどの回避能力とは。 だが、裏を返せば、反撃のタイミングは読める。蒼貴の攻撃際の隙を狙っているのだから、その隙を潰せば反撃を無効にできる。蒼貴の地形防御は『ファントム・ステップ』対策にまさにうってつけだった。 しかし、ここへきてまた、ティアの動きが変わった。『ファントム・ステップ』にこだわらない、不規則な機動。 得意技を捨てるように指示を出したのだろう。 尊はそのマスターの指示にこそ舌を巻く。 武器強奪の対策だけでなく、超絶技巧である『ファントム・ステップ』さえ容易に捨て去ろうとは、なかなか出来ることではない。 そして、地形防御を越えて攻めようと模索を始めている。 このままでは、反撃されるのも時間の問題だ。 状況を変えなくては勝ち目はない。 尊は即座に決断した。 ここで切り札を切る。 「蒼貴! 行くぞ、神力解放だ!!」 「はい!!」 応えた瞬間、蒼貴の身体がうっすらと光に包まれる。 蒼貴は右手の鎌を大きく振り抜き、その勢いを利用してさらに半転しながら、ティアに向けて苦無を放つ。 きらきらと光る苦無三本。 ティアは難なく避けるが、それも予想のうちである。 彼女が回避動作をしている間に、蒼貴はさらなる武器を手にしていた。 光を放つ大鎌が、左手に出現していたのだ。 サイドボードから送り込まれた武器ではない。蒼貴自身が生み出した鎌だった。 そして、右手の大鎌もまた、きらきらとした光に包まれている。 それは、蒼貴の全身を包む光と同種のものだ。 蒼貴は両手の鎌を翼のように広げる。鳥のごとき構えで、蒼貴は跳ねた。飛ぶように被我の距離を縮める。 斬撃。左右二度。 ティアは回避する。だが。 「あぁっ……!?」 小さな叫びと、小さな手応え。 蒼貴の鎌は、ティアが手にしたコンバットナイフを見事に寸断していた。 驚きに目を見開いているティア。 蒼貴は、油断なく彼女を見つめながら、叫ぶ。 「三分です」 「え?」 「三分……わたしの攻撃をしのぎきれますか!?」 その言葉に、はっとしたように気持ちを取り戻すと、ティアもまた真剣な表情で蒼貴を見つめた。 ティアは手にしていたコンバットナイフの柄を捨てる。 乾いた音が路地に響く。 超硬質のコンバットナイフの刃をバターのように切り落とした攻撃だ。触れられただけでも致命傷になりかねない。 反撃など考えてはだめだ。 ティアはそう思いながら、応えた。 「しのぎます……しのいでみせます!」 ニヤリ、と笑って、蒼貴が再び跳躍した。 ティアは姿勢を低くして、右手を地面に触れそうなくらいに下げる。いつでも走り出せる構え。 ここから三分間は蒼貴のターン。 今一度覚悟を決めて、ティアは横滑りにダッシュした。 □ バトルが始まってからずっと、蒼貴には驚かされることばかりだ。 なんだこの技は。 手にした光る武器はおそらく、どんな装備でも触れるだけで斬れてしまう。 しかも、先ほどから惜しみなく苦無を投げている。その前はよほどのタイミングでない限り投げることはなかったというのに。 光る武器はどうやら無尽蔵に生み出せるらしい。 とんでもないスキルだ。 ただ一つ、救いがあるとすれば、この技には制限時間がある。 蒼貴自身が口走った三分間。 三分しのげば元に戻るはずだ。……蒼貴の言うとおりならば。 だが、俺はなぜか蒼貴の言葉が信じられた。この状況でうそをつく神姫だとはどうしても思えなかったのだ。 ◆ 「まったく……なんでバラすんだ」 尊は額に手を当てて、ひとりごちた。 蒼貴は『神力解放』の有効時間を自ら宣言してしまったのだ。 そうでなければ、『神力解放』発動の間、心理的なプレッシャーも与え続けることができたはずだった。 それがわからない蒼貴ではない。 『すみません』 蒼貴は素直に謝る。だが、自らの信念は曲げない。 『ですが、どうしても隠したくなかったんです。ティアとは正々堂々渡り合いたいんです』 「……その気持ちはわからんでもないがな」 尊も蒼貴の気持ちはとうに理解している。尊自身、心が浮き立つのを押さえられないでいる。 こんなに気持ちよく戦える相手はそういない。 ならばこころゆくまで楽しませてもらおう。 「だったら全力だ。勝負を決めるつもりで斬りかかれ!」 『はい!』 ◆ 「……まるで、ダンスしているみたい」 ミスティが呟く。 ティアのバトルで、相手と噛み合ったときは、そうなる。まるで決められたステップを二人で踏みながら、踊るように、戦う。 紫貴からの返事はない。 ミスティがちらりと隣を見ると、これ以上はない真剣な表情で、紫貴は二人の戦いを見つめている。一挙手一投足を見逃すまいと、目を見開き、固唾を呑んで見つめ続けていた。 ミスティも視線を戻す。 そう、紫貴が正しい。このバトルの一瞬でも見逃したくはない。 それほどの技術の応酬、それほどのハイスピードバトルだった。 ■ 綺麗。 きらきらと煌めく塵が、目の前を過ぎ去ってゆく。 超高速で。 蒼貴さんは光をまとい、光を振りまきながら、わたしを倒さんと狙い定めてくる。 彼女の斬撃が振るわれるたび、こぼれた塵が輝きを放って綺麗だった。 その塵の行方をゆっくり眺めている余裕は、もちろんない。 ただ目の前を過ぎていく、ただその刹那の煌めきは、儚く、美しい。 でもその美しさは、破壊の危うさをはらんでいる。 そのこともよくわかっている。だから。 わたしはかわす。 蒼貴さんの二刀流は、絶え間なく、縦横無尽に、連続攻撃を送り込んでくる。わたしはわたしの技のすべてを持ってかわし続ける。 □ ティアの判断は正解だ。 今の蒼貴を相手では、反撃の隙を伺うのさえ至難の業だ。 回避に徹し、パワーアップ中の三分間をやりすごす。それ以外の選択肢はない。 だからといって、背中を見せて逃げることはできない。 それこそ、蒼貴に絶好の攻撃チャンスを与えてしまう。 「次、壁走りに移行、その瞬間に間合いを少し広げろ。蒼貴の踏み込みが厳しくなってる」 ティアからの返事はないが、画面上ではすぐさま俺の指示が実行される。 俺は思考をフル回転させ、ティアに指示を送り続ける。 俺の意識は、VRマシンのディスプレイ画面に集中する。思考のすべてがティアのバトルに収束していく。 歓声が遠くなる。 まわりに誰がいるかも、何人いるのかも、今どこにいるのかさえ、気にならない。 俺の意識はバトルへと急速に落ち込んでいく。 ◆ 蒼貴が『神力解放』の制限時間をばらさなければ、あるいは早々に決着していたかもしれない。はじめは尊もそう思っていた。 ティアはしっぽを巻いて逃げ出すと思っていた。どこかに隠れて三分間やりすごすことを考えるだろう、そう思っていた。 だが、その予想は完全に外れていた。 蒼貴と対峙しながら、攻撃のすべてをかわす。もっとも困難な方法をためらいもなく選択した。 そして、蒼貴にとっては、それが一番倒すのが難しい方法だ。 今も蒼貴は全力で倒しにかかっているが、ティアはその攻撃を回避し続けている。 なんという神姫。なんというマスター。 尊は目の前の二人に尊敬の念を覚えずにはいられない。 尊はずっと、イリーガル神姫を退治し続けてきた。その結果、『首輪狩り』などというありがたくない二つ名で呼ばれていたりもする。強さを求め、安易にイリーガル技術に手を出した神姫マスターを何人も見てきた。 そんな連中に言ってやりたい。 イリーガル装備に手を出さなくても、特別な装備にたよらなくても、知恵と技と絆で、神姫はこんなにも強くなれるのだ、と。 尊は蒼貴に指示を送る。 もっと繊細に、もっと大胆に。 自らの頭脳をも駆使して、舞い踊るティアを捉えようとする。 このバトルは蒼貴とティアだけのものではない。俺と遠野との知のせめぎ合いでもあるのだ。遠野の思考を読み、先の先を推理し、蒼貴に指示する。 尊の意識もまた、バトルへと没入していく。 □ ……気がつくとそこは、何もない空間だった。 真っ白な背景に継ぎ目はなく、部屋とも無限の空間とも判断が付かない。距離感が全くつかめない場所だ。 静寂。 誰もいない。 周りの気配も、歓声も聞こえない。 ただ、俺一人が立ち尽くしている。 ……いや。 辺りを見回し、ふと視線を戻したその先に、眼鏡をかけた男が立っていた。 尊だ。 俺は驚かなかった。 ここに誰かいるならば、きっと彼だろうと心のどこかで感じていた。 尊も驚いた様子はない。まるで、ここに俺といることが当たり前のような、そんな感覚。 俺と彼はなにげなく視線を合わせた。 どちらからともなく、小さく苦笑しあう。 ここには二人しかいない。 だから、以前から訊きたいと思っていたことを、口にした。 「なあ……俺たちはどこか似てないか?」 その問いかけに、尊は微笑みながら応えた。 「……似てないな」 「そうか?」 「そうだろ? お互い、拾ってきた神姫をパートナーにしちゃいるが、戦い方が全然違う。俺たちの立場だって……今の俺はイリーガル狩り、あんたは『エトランゼ』のコーチだ」 「……確かにな」 「そうさ。似たような境遇の神姫を手に入れても、決して同じようにはならない」 「同じ機種の武装神姫を買っても、マスターごとに異なる個性の神姫に育つのと同じように?」 「ああ。だからこそ……」 「そうか、だからこそ……」 俺たち二人の声がぴたりと重なる。 「武装神姫はおもしろい」 ◆ 蒼貴を包んでいた塵の光は、空気に溶けるように消えていく。 制限時間だ。 左手に持った光の大鎌も消えた。 しかし、蒼貴は止まらない。 『塵の刃』が終わったことに気がついていないのか、そう思うほどに自然な動きで、右の大鎌を振るう。 空いた左手で再び苦無を抜いているのが、制限時間が終わったことに気づいている証拠だった。 ティアも動く。 斬り込んでくる蒼貴に対し、真っ正面で踊るように回避する。 その間合いは一歩踏み込んだ距離。 ティアの間合い。 ティアはホイールで加速した右足を叩きつけようとする。 それを蒼貴は辛くも回避。 さらに踏み込んで、蒼貴の苦無がティアを抉ろうとする。 それをティアが半円を描くステップで回避。 またティアが膝蹴りを送り込む。 しかし蒼貴は半身を壁に隠して回避。 攻撃、回避、攻撃、回避、攻撃、回避……。 聞こえるのは、二人の攻撃の風切り音のみ。打撃の音がしないバトルはどんどんと加速していく。 (蒼貴……機動限界を超えてるぞ……?) モニター画面に表示された蒼貴のデータを見ながら、尊は唸った。 蒼貴の攻撃速度も回避機動も、今までにとったデータの最大値を超えている。一機動ごとに値は上方へと更新されてゆく。 それでいて、バトル画面に映っている蒼貴の動きには、危うさがなかった。 加速する蒼貴の顔には喜びが満ちあふれている。 もっと速く、もっと遠くへ、もっと先へ! 自分の知らなかった領域へとどんどん踏み込んでいける。 相手が、目の前の彼女ならば。 「いったい、どこまで連れて行ってくれるというのですか……ティア!!」 ティアもまた笑っている。 彼女のステップもさらに加速し、とうに限界を超えていた。 「蒼貴さん……あなたとなら、どこまででも行けそうです!!」 二人の機動は縦横無尽。細い路地も廃墟の壁も、何もかもを利用して戦っている。 しかし、つかず離れず戦う二人の姿は、まるで息を合わせてダンスしているかのようだ。 それは人間では決して成し得ない、変幻自在の舞い。 戦いの輪舞……バトルロンド。 舞い踊る二人の姿から、もう誰も目が離せない。 尊と遠野の指示はさらに白熱している。超高速の攻防の合間に、知略を尽くした指示を差し挟む。 筐体のまわり囲むギャラリーは、大型テレビの映像に釘付けだ。人も神姫も見入っている。 菜々子や大城、真那は、筐体のモニターを見ながら息を呑む。 バトルフィールド上、ビルの上から見守るイーダ型の二人も微動だにしない。 神姫のバトルはこんなにも美しいものなのか。 こんなにも心惹かれるものなのか。 いつまでも続く舞闘。 だがしかし。 前触れもなく、耳障りなブザー音が轟いた。 「え?」 蒼貴とティアの声が重なる。 二人は戦いを止めた。いや、システムによって止められた。 バトルは突然の終了を余儀なくされたのだ。 「……なんで?」 蒼貴とティアは、共に空を仰いだ。 大きく開けたメインストリートの上に広がる空に、大きなポリゴンの文字列が浮かんでいる。 『TIME OVER! DRAW GAME』 確かに、タイムカウンターは残り時間ゼロを示していた。 □ タイムオーバー……ドローゲーム……? モニターに表示されたメッセージを、俺は一瞬理解できなかった。 バトルは強制終了していた。 超高速で回転していた思考がいきなり止められた。 考えてみて欲しい。高速道路をかっとばしていた自動車が、いきなりブレーキもなしに止められる様を。まさに交通事故だ。 身体は何ともなくても、思考がクラッシュしている。 呆然としながら、正面を見た。 そこには、やはり呆然とした、尊がいる。 俺と同じ状況なのだ。 目が合う。 徐々に意識が浮上してきて…… 「……ぷっ」 俺たちは同時に吹き出した。 「ふふふ……」 「くくくく……」 そして、二人同時に、 「あーっはっはっはっは!!」 爆笑した。 笑いが止まらない。 もう笑うしかない。 だってそうだろ? 死力を尽くしたバトルが、まさかの時間切れ引き分け! いい歳した大の男が二人、武装神姫のバトルにのめり込みすぎて、試合の制限時間にさえ気を配る余裕がなかった。そこまでバトルにのめり込んでいたなんて! 頭脳派のマスター? どうしてどうして、ゲームにのめり込むただのガキだ! 俺は腹を抱え、尊はばんばんとテーブルを叩きながら、とにかく大笑いし続けた。 ■ アクセスポッドから出てきて、初めに耳にしたのは、マスターの笑い声だった。 あのマスターが、お腹を抱えて大笑いしてる!? 夢でも見てるのかと思った。 頭がおかしくなったんじゃないかと、本気で心配した。 どうすればいいかわからず途方に暮れて、わたしはきょろきょろと周りを見回す。 すると、筐体の向こうにいる、蒼貴さんと目が合った。 彼女もわたしと同じく困っていたようだ。 肩をすくめ、苦笑を浮かべて、小さく首を振った。 わたしも苦笑する。 尊さんも、わたしのマスターと同じように笑い続けている。 しようのないマスターたち。 わたしは小さくため息をつく。そしてアクセスポッドから立ち上がった。 自分の考えに、自分自身驚いている。 笑い転げるマスターなんてほっといて、蒼貴さんに話しかけよう、なんて。 わたしが歩み寄るのを見て、蒼貴さんも近付いてきてくれた。 向かい合う。 半身がフブキ型で半身がミズキ型という彼女の姿は、一種異様だ。 でも、きっと、その姿をしているのには、何か大切な理由があるに違いなかった。わたしはそれがよくわかる。彼女と一戦交えた後のわたしには。その姿には想いが込められているはずだと思った。 蒼貴さんがにっこりと笑う。 きれい。 とっても。 「ありがとうございました、ティア」 「こちらこそ、ありがとうございました」 わたしもちょっと笑って応えた。 蒼貴さんと交わした言葉は少ない。でも、バトルを通していろいろなことを話したような気がする。 わたしは、思ったことをそのまま口にした。 「わたしたちは、どこか似ていませんか?」 「それはきっと……想いが同じなのでしょう。わたしはそう感じました」 「想い……そう、ですね」 そう、蒼貴さんとわたしは、きっと同じ想いを胸に戦っている。 マスターのために。 その一言に、わたしたちはすべてを捧げ、それを当然のことと思っている。 そう思うだけの道のりが、わたしにはあった。 蒼貴さんにも、マスターとのはかりしれない道のりがあったに違いない。 バトルを通して、わたしたちは理解し合っていた。言葉を使わなくてもわかりあえた。 それが嬉しくて。 わたしは自然と笑っていた。 蒼貴さんもにっこりと、魅力的な笑顔で応えてくれた。 ◆ 久住菜々子は、優しく微笑みながらそっと握手を交わす蒼貴とティアを眩しそうに見つめている。 やはり遠野貴樹は、理想を体現する神姫マスターだった。 それはかつて、菜々子が追い求める最愛の友にして宿敵・桐島あおいがかつて求めた理想。 今このバトルこそは、彼女が夢見た理想のバトルの姿だったに違いない。 菜々子は確信する。 お姉さまが求めた理想は、菜々子が共に目指した理想は、決して間違いではなかった。 遠野とティアはそれを証明して見せてくれたのだ。 ◆ 「あのバトルは……わたしの宝物です」 蒼貴は胸に手を当て、目を閉じてそう言った。 「イリーガルマインドなんて使わなくても、マスターとの絆で強くなっていける。それだけじゃない、対戦相手とも絆を結び、共に強くなっていける。それを実感しました」 瞼を閉じれば、今もすぐに思い浮かぶ、あの日の戦い。 ティアとのバトルで感じた想い。それがあるから信じられる。 イリーガルマインドなんて必要ない、自らの戦いは間違っていない、すべての神姫は絆によって強くなれるのだ、と。 胸を張って、そう言える。 「そうだな」 オーナーの尊が静かに頷いた。彼の思いも蒼貴と同じだ。尊はかの対戦相手に思いを馳せる。 遠野が関わった事件は、一つの決着を見た。 だが、彼はまた別の事件へと関わっていくのだろう。遠野ほどの神姫マスターならば、自ら望まなくとも、事件の方が彼を呼ぶに違いない。 俺と遠野は似ていない。 だから俺たちは別々の道を行く。 その先でまた道が交差することがあれば、再び会うこともあるだろう。 その時には、敵には回したくない。味方ならば、何とも心強い限りだ。 その時が少し楽しみでもある。 尊は口元だけで薄く笑った。 すると、真那が不意に言った。 「あの遠野くんとミコちゃんって、似てるわよね」 「はあ? 全然似てねぇだろ」 「似てるわよ」 「どこが」 「理屈っぽいところが」 尊はぐうの音もでなかった。 (黒兎と盗賊姫・おわり) Topに戻る>
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今更ながら気付いたが、まだ日中にも関わらず森の中は非常に気味が悪い。いやはや、よくぞハルヒは一人で追いかけてきたもんだ。 と、そんなことを思慮深く考えていたせいかは知らんが、俺は繋いでいた手に一層の力を込めた。 瞬間、白いシーツに赤ワインを垂らしたように、ハルヒの耳が朱の色に染まっていく。 そして彼女は、そんな乙女じみた反応に比例するように、とてもとても力強く俺の手を握り返してきた。 こんな初々しい様子を見せられて、愛しく思わないやつがいるだろうか? いるなら出てこい、俺が骨の髄まで叩き込んでやる。 ……なんてな。困ったもんだ、どうやら俺は本気でこいつに――。 俺がむやみやたらと感慨にふけっている間に、眼前にそこはかとない光が射し込んできた。 あまりの眩しさに目を瞑る。久しぶりに本物の光を見たような気分であるのは何故だろうかね。 いや、理由は分かってるか。俺の目の前にいる彼女。こいつが希望の光を与えてくれた。 森を抜け出た直後、完全に置き去りにされていた他の連中が、俺たちの姿を見つけるやいなや揃って駆け寄ってきた。 「キョンくん、あの、その、佐々木さんのことなんですけど……」 「もう大丈夫です、朝比奈さん。ご迷惑お掛けしました。早く佐々木を助けてやりましょう」 俺がなるだけ明るく、そう発すると、朝比奈さんはアスファルトに咲いたタンポポを見つけたように顔を明るくして、 「そうです、頑張りましょう。あたしも、あたしに出来ることなら何でもやりますから」 爽やかな風が通り抜けた。 美術館にも飾れるであろう容姿の女神様は、天候を操る能力まで兼ね備えているようだ。 ハルヒとは別種の救いを俺に与えてくれる。心の補完のためには確実に必要な存在だね。 「僕も尽力します。姫様たっての希望でもありますから」 「あ、あたしだって、佐々木さんのために頑張るのです!」 と、古泉と橘も続いた。 この二人にも感謝しなきゃな、とは思いつつも「ああ」と投げやりに返してしまう俺。本能のままに生きているということを証明した瞬間でもあった。 「じゃあみんな、張り切っていくわよ! 出発進行!!」 そのまま俺の腕をつかんで、再びハルヒは歩き出した。一国のお姫様とは思えぬ行動力。 しかし、ここは全力で抵抗をさせてもらう。 「待て、ハルヒ」 現在持ち得る力を全て足に集約させ、懸命にフルブレーキングを試みる。それでも引きずられるのはどういう了見であろうか。 そんな俺に対して、ハルヒは眉間にしわを寄せながら、 「あによ」 あによ、じゃない。無鉄砲に進みやがって。 そんなことやってたら佐々木を助けるのがいつになるかなんて検討もつかんぞ。ましてや、また犠牲者が増えるかも……。 「じゃあどうすんのよ! あたしに意見したんだから、何か考えの一つくらいあるんでしょうね!」 沈黙。 そこまでは全く考えていませんでした。 「いや、あの……えっと、じゃあ、朝比奈さん」 俺が苦し紛れに名を呼ぶと、朝比奈さんが肩をビクッと震わせた。 何にもしてないはずなのに、犯罪でも犯したような気分に苛まれる今日この頃。 「あー……うん、そうだ。一度アジトに戻って、喜緑さんのところを訪ねてもらえませんか。何とか協力をお願いしたいんですが」 たまには考えずに話し始めてみるもんである。俺の口から零れ出たその言葉は、今の状況に対して真に適切な案であったと我ながら思うね。 さて、当の朝比奈さんは、瞼で大きな目をパチクリと往復させて、 「ええっと……それ、あ、あたし一人でですかぁ?」 「いえ、もちろんもう一人付けますよ」 冗談じゃない、一人だなんて危険すぎる。 これ以上誰かを傷つけたくはないんです。朝比奈さんほどの可憐なお方は特に。 「僕がご同行いたしましょうか?」 「却下」 「冗談です」 冗談だかマイケルだかは知らんが、こいつにだけは任せられん。それこそ朝比奈さんが傷物になる可能性がある。 そんなことになったら、こいつを殴り倒すどころじゃすまんね。 「それに僕は姫様のお供をすることが至上命題でもありますから」 知るか、そんなもん。 「橘、頼めるか」 消去法っていったら橘に失礼だが、実質余るのはこいつしかいない。 女二人だけだが、橘だったらそこらへんの雑魚くらいは倒せるから大丈夫だろう。 「任せてください。あたしがついているからには、朝比奈さんに指一本触れさせません!」 頼もしい言葉だね。若干信用はしかねるが。 しかし、おい、あからさまに古泉を睨むのはやめなさい。 「大丈夫よ、橘さん。古泉くんには好きな人がいるから。みくるちゃんに手を出すようなマネはしないわ」 と、ハルヒ。 ちっとばかり肝を抜かれたが、まあ確かに、こいつなら普通の付き合いをしていても何ら不思議はないな。 しかし古泉は、何やら分かっていないといった表情で、 「僕に、想い人ですか? そんな方はお見受けしないように存じますが……」 「あれ、古泉くんって森さんのこと好きじゃないの?」 終始ニヤケ面だった顔が固まった。心なしか青白くなっている気もする。大丈夫かよ、こいつ。 数秒の後、古泉はやっとのことで有機活動を再開し、 「有り得ません、絶対!」 明確な拒絶を感じるね。 森さん、という俺にとって未知のワードは、そんなに古泉の琴線に触れるものがあるのか。 「ふーん、そうなんだ。あたしは結構お似合いだと思うけどなあ」 と、ハルヒが含みのある笑いをしながらのたまった。 古泉は未だにしどろもどろ。主従関係の常を見た。 うむ、しかしこれはいい弱みを握れた。さすがハルヒと言うべきか。 「ま、それでも健全な男女が二人きりだったら何が起きても不思議じゃないわね」 というわけで、なんだかんだで結局、喜緑さんのところには朝比奈さんと橘の二人で行ってもらうこととなった。 「ところでみくるちゃん!」 「は、はい」 「アジトって何、どこにあんのそれ?」 「えっとぉ、城下町の」「城下町! ああもう、それじゃあそんな格好してちゃダメじゃない。あたしが見繕ってあげるから、こっちに来なさい!」 朝比奈さんが全て話し終わる前に一気にまくし立てたハルヒは、その勢いを持続したまま、年下と間違えてしまいそうな彼女をテントへと引きずっていった。そんな彼女の手には巻き込まれた橘の姿が。 「ひょえええ」 荒野に虚しく響く二重の叫び声。 それをバックグラウンドとし、俺は近くの岩に腰掛けた。 「ふう」 今更になって体に痛みを感じる。それこそこれまで経験したことがない、焼けるような痛みだ。 アメージング。少しだけだが、みんなと触れ合えたことで安心したから再発したんだろうな。 などと、俺に似合わなずセンチメンタルな気分を味わっていると、 「お隣、失礼します」 失礼させません。 「冷たいですね。お姫様にはあんなに優しいあなたが」 俺は女には誰にでも優しいんだよ。紳士として当然のたしなみだ。 「いえいえ、しかしあれには驚かされましたよ。あなたの口からハルヒ、とはね」 お前は一度その減らず口を釘で打ち付けた方が良さそうだ。今なら俺が自ら承ってやる。 「ご遠慮願います。ところで、朝比奈さんたちはあなたのアジトとやらに行くとして、僕たちはどうするんですか?」 沈黙、再び。 「まさかとは思いますが、何も考えていないなんてことは……」 「悪いか?」 開き直るほかなかった。 「まあ悪い悪くないで言ったら、10 0の割合で悪いかと」 100%じゃねえか。だいたいさ、お前も何か考えろよ。 誰か知り合いに石になった人間を元に戻してくれるやつとかいないのか? 「残念ながら」 「……そうかい」 俺は少し残念そうに言った。端からこいつに期待なんてしてなかったがな。 その言葉を境に、それ以上古泉が話しかけてくることはなかった。俺は延々と続く荒野を見ながら思う。 今日はやけに沈黙が続く日だ。 「おっまったせー!」 一キロ先にも聞き取れるような声が沈黙を一突き。それは近くの山々にぶつかって、若干のエコーがかかっている。 俺は遠くからも聞こえてくる反響音にも耳を傾けつつも、目の前に降臨した三人の天使を眺める作業に躍起となった。 ……はずだったのだが、俺はハルヒ一人から目を離すことができなかった。そりゃ朝比奈さんも素晴らしいんだが……むう、こりゃどうしたもんかね。 それにしても人間塞翁が馬。辛いことがあったと思えばこれだ。これだから人生というやつは面白いのだろうけどな。 なんて俗物的な考えをしていると、ハルヒが多少訝しげにこちらを一瞥し、 「どしたの?」 分からないことは訊く、当然のこと。5歳児にだって簡単に行うリアクション。 しかし、それを答える側となると話は別だ。訊ねる側に比べ、飛躍的に上昇した言語レベルが必要とされる。ある所説によると、返答は限界への挑戦とも称されるそうだ。 まともに返す場合は少しでも相手に伝わりやすくするため、ごまかす場合は少しでも質問の主から遠ざけようとするために尽力する。 そして、今回の俺のケースは後者にカテゴライズされ、上手くそれを実行しようとした結果、もれなく辞書にも載ってしまいそうな悪い例を披露してしまった。 「えっと、だな……そう、空は青いな、と思って」 ポカーンとした表情のハルヒ。朝比奈さんと橘はその隙にとハルヒの腕から脱出し、おしゃべりモードに突入した。 二人の「綺麗ですねー」というレスポンスを耳の端で捉えながら言葉を反芻し、よくよく考える。 前述すら弾いてしまう、悪い例にすら分類されない超絶タームを自らが発したということに気付くのに、それからそう長くはかからなかった。 「……あんた、何言ってんの? バカじゃない」 ぐぅの音も出ないほどの的確さ。反論の弁も無いとはこのことを指すのだろう。 俺が言葉に詰まったところを見ると、ハルヒは古泉に森さんのこと言及したときと同種の顔をして、 「はっはーん、もしかしてあたしに見とれてたってわけね。ほら、素直に言っちゃいなさい、今なら許してあげないこともないから」 「ああ、めちゃくちゃ綺麗だ。三人の中で誰よりも」 恐ろしいほど滑らかに口から言葉が出た。これが若気の至りであろうか。いやはや、怖いもんだね。 虚を突かれ、呆気にとられていたハルヒは徐々に頬を赤く染め上げた。お話中だったはずのお二人も顔を真っ赤にしている。 ん、ああ、古泉は説明する気にもなれん。強いて言えば、殴りたくなるような顔をしていたよ。 「ふ、ふんっ! よく分かってんじゃないの! アホのあんたにしてはマシな答えね!」 「そりゃどうも」 褒められているのか貶されているのかイマイチよく分からん。 しかしまあ、ハルヒの照れた顔が見れたからよしとするか。 「照れてなんかなーい!!」 ……そんな軽口を挟んだ三時間後―― 「――おい古泉、てめえやっぱり道間違えたんじゃねえのか」 「そんな筈はないと思うのですが……」 またその返事か。だとしたら、どうしてこんな状況なのか説明してもらおうかね。認めたくないが、認めざるを得ない。 現在、俺たちは遭難している。 話は三時間前に遡る。つまりは、俺とハルヒのたわいもないやり取りが終わった辺りだ。 「そろそろわたしたちは行きますね」という朝比奈さんにしては珍しい、モデラートのリズムのお言葉が契機だった。 俺は「一段落したらこっちから連絡します」と残し、名残惜しくも二人と別れた。 ある程度の距離まで二人を見届けると、ハルヒはくるりと俺に向き直り、 「で、あたしたちはどうすんの? もちろん決めてあるんでしょうねえ?」 と、そのときの俺が最も追求されたくないゾーンに土足でずんずん踏み込んできた。 ハルヒの顔に浮かぶ悪の笑み。それによると、どうもこちらの様子が分かって訊いているらしい。ここはスキップを使ってもらいたかった。 それに俺は特にボロを出すようなマネはしなかったはず……ああ、あれか。シックスセンス恐るべし。 さて、悪魔の笑みの効能なのか、俺の手乗り文鳥並みメンタルに与えられたダメージは、存外大きいものとなっていた。 そして、そのように精神を病んでいたためであろう。古泉に助けを求め目配せなどしでかす始末。 しかし、そんな俺の大英断をダンゴムシのごとく丸め込み、あいつは我関せずとばかりに朝比奈さんたちが旅立った方角を細い目で眺めている。 ……後で覚えてやがれよ、くそっ。 わずかの時間、古泉をシバくという別ベクトルの感情に想いを馳せていると、いつのまにやら、ハルヒは笑顔を極悪から得意満面に変化させ、胸を張りながら物申す。 「あたしの知り合いに王女様がいてね、その人なら何でも協力してくれると思うの」 この言葉に反応したのは他ならぬ古泉。 「なるほど、鶴屋さんですか」 「そ、古泉くんも分かってるじゃない」 「確かに彼女なら快く協力してくれるでしょうからね」 完全に蚊帳の外にいる俺。 「そういうわけよ! あたしたちの目的地は鶴屋さんとこで決定ね!」 ふむ、別に反対する理由もない。よし、じゃあ俺たちも行くとするか。 佐々木、待ってろよ。 ――と意気込んどいてこの様だ。 情けない、ああ情けない、情けない。 一句読んでみたが気休めになるわけでもなく、余計にブルーになった。心の中も猛吹雪である。 「だいたい、この山は絶対通らなきゃならんのか? もっと安全なルートはねえのかよ」 「ごちゃごちゃうるさいわよ! これが一番近い道なの! ちょっとでも早く佐々木さんを助けたいんでしょ!」 「そりゃそうだが……」 「じゃあ文句は言わない! いいわね?」 「……了解しましたよ、お姫様」 だが、本格的にマズいんではなかろうか。先程から延々と同じ場所を歩いている気がする。あ、だから遭難か…………へっくしょん…………にしても、寒いな……。 「大丈夫?」 「ああ、大丈夫だよ」 「あんた、首寒そうね」 ん、そういやマフラーとかしてなかったな。 「しょうがないわね、はい、これ」 自分が巻いていたマフラーを外して、ずいっと突き出す。 「いいよ、お前が巻いてろ」 いくら寒いからと言って、女の子から防寒具を奪い取るほど落ちぶれちゃいないさ。 「うるさい! 大人しく言うこと聞きなさい」 ハルヒが「とりゃー」と嬌声を流しながら俺の首目掛けて飛びついてきた。 同時に、腕に柔らかいものを感じ、理性がフライングしかける。……生きててよかったなあ……。 「あなた方がいれば凍死する心配はなさそうですね」 遠い目で戯れ言を抜かすな、バカやろう。 「いや、しかしですね……あれ…………」 「おい、どうした?」 「……急に、眠気が……」 「あたしも……何だか……眠い……」 おいおい、冗談じゃねえぞ。 「お前ら、絶対寝るんじゃねえ! 本気で死んじまうぞ…………いっ!?」 二人の体がフェードアウトしていく。雪が溶けていくように。 「……んだよっ、これ……くそっ、ハルヒ! 古泉!」 俺の叫びも虚しく、やがて、二人の体は完全に消失した。 「…………嘘、だろ……」 情けなくも、泣きそうになったとき、ふと、そう、何の前触れもなく突然に、背中を冷たい汗が流れた。 二人が消えたからか……いや、違う。 「……お前、誰だ……?」 あまりの威圧感に意識を失いそうになったが、何とか紡ぐように言葉を吐き出す。 吹き荒れる吹雪の奥で、そこだけがぼやけている。夏の日の、蜻蛉みたいに。 「――涼宮……ハルヒ――」 対峙するだけで気絶しそうなほどのプレッシャーを受ける。 佐々木と共に戦った怪物より、遥かに強い。 ハルヒに借りたマフラーが顔にぶつかり、俺を現実に返した。 冷静になった俺は、そいつの言葉を省みる。確かに言った、涼宮ハルヒと。 「――――連れ戻す――――」 結論。 こいつは俺が倒さなければならない。あいつらが消えたのはこいつの仕業だ。 「……ハルヒは渡さねえ」 「――無謀――」 無謀、か。 確かにお前の言うとおりかもしれん。だがな、それでも……やるしかないんだよ。 「俺がみんなを守るんだ」
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俳優キム・サンジュンがMBCの新月火ドラマ「逆賊:百姓を盗んだ盗賊」(脚本:ファン・ジニョン、演出:キム・ジンマン) に出演する。 キム・サンジュンは劇中ホン・ギルドン(ユン・ギュンサン) の父アモゲ役を演じる。獄中花 DVD アモゲは低い身分だが、持って生まれた才能で財を蓄積し、商売の才能を発揮して後に、対明密輸貿易の実勢として成長する人物だ。 特に息子ホン・ギルドンが100年ぶりに現れた歴史的人物であることを知り、アモゲの人生は変わってしまうと知られ、早くも視聴者の興味をそそっている。太陽の末裔 DVD キム・サンジュンは、息子の秘密を隠すために闇の世界に足を踏み入れるアモゲの人生を表現しつつ、独創的なカリスマ性溢れる演技を披露する予定だステキな片想い DVD 。その過程で父性愛をアピールする予定だ。キム・サンジュンとユン・ギュンサンのケミ(ケミストリー、相手との相性) に期待が集まっている。 「逆賊」はホ・ギュンの小説の中の道人ホン・ギルドンではなく、燕山君(ヨンサングン) 時代に実在した歴史的人物のホン・ギルドンの人生を照らすドラマで、暴力の時代を生きた人間ホン・ギルドンの人生と愛、闘争の歴史を高い密度で描く作品だ。 現在放送中の「不夜城 DVD 」の後番組として、2017年初めに韓国で放送される予定だ。