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とりましたね? 365 :名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/03(月) 23 52 50 ID PK12uB0K 覚えてるところだけ記憶で描いてみた。
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スレ2>>891-896 料理の鉄人 「りんごちゃん、卵ってどのタイミングで入れればいいの?」 「フライパン暖めたら一回濡れ布巾で冷やしてみて。それから入れるといいよ。」 「おいりんご!スパゲッティの鍋が吹きこぼれそうだ!」 「それは火を弱火にしてから…」 昼前の暖かさと寒さが入り混じる時間帯。 家庭科室では調理実習が行われ、大勢の生徒があわただしく動いていた。 人と炎と刃とが入り混じるその様は、フランス7月革命を思わせる。 その中でも迷える民衆を栄光の自由へと導くりんごのその姿は、マリアンヌさながらである。 ちなみに料理はミートソーススパゲティとオムレツである。 悠里と翔子がそれぞれ卵とひき肉を炒めながら話す。 「すごい人気ねぇ、りんごちゃん。やっぱり料理上手いのかしら。」 「ああ、りんごの家レストランやってるからな。小学生の頃料理コンテストで優勝したこともある。」 「マジで?じゃあこんどりんごの家行ってみよう。それより翔子、あんた卵が…」 「ああ、やっちまった!どうしてアタシが焼く卵はこうも黒く変貌するんだ!」 「それもある種一つの才能だわね」 翔子のフライパンから敗戦の狼煙のごとき黒煙がたちこめた。 それを横目で見ている塚本と来栖。 鎌田はというと鍋のそばでなんとか温まろうとしている。 「調理実習とか超だりぃよなー。料理なんて女がやるもんだろ。」 「最近はフェミニズム社会のおかげで男も料理、なんて時代になっているがな。」 「そんな女々しい男になってたまるか。とにかく俺はサボるぞ。おら、キャッチボールだ。」 と良いながら塚本は来栖にトマトを投げる。 放物線を描いて跳んだトマトを、蹄の手で器用に受け止める。 「お前はやることなすこと、いちいち子供染みてるよな。」 「ちょっと塚本、来栖!なに遊んでるのよ!」 「うるせぇ!男はカップ麺の作り方さえ知っていれば生きていけるんだ!」 塚本と来栖は女子生徒の注意を意に介す様子もない。 「まったく、いつの時代も男子はうるせぇモンだな」 「ねー」 と悠里とやり取りをする翔子だが、何かを忘れているような気がした。 何か思い出そうとした刹那、体を液体窒素に突っ込まれたかのような寒気を感じた。 「しまった!りんご…」 とりんごの方を振り向く。手遅れであった。 「オラ来栖、パス!」 と塚本がトマトを投げる。 回転しながら宙に舞うトマト。そのそばを何かが通過し、次の瞬間真っ二つに割れた。 血肉を思わせる果肉が中からこぼれ出し、果汁と共に塚本と来栖の獣毛を赤く染め上げる。 一刻後に部屋の壁に軽快な音色と共に何かがさくりと突き刺さる。包丁である。 二つに割れたトマトが両方とも来栖の手の中へ着地する。 「「…え?」」 不穏な空気を感じ取った二人が横を見ると、何事かを呟きながら近づくりんごの姿があった。 右手には刃渡り一尺はあろうかと思われる出刃包丁、左手には架空のファンタジーで見たことがないような巨大な肉叉。 ただならぬオーラを纏っているのが一目見て分かる。 「り、りんご…一体…」 「…馬肉は低カロリー・低脂肪でありながら高たんぱくでアレルギーも少ないので女性や高齢者の方にもお勧め…。 生で刺身やユッケとして食べても美味…。 鹿肉は馬肉と同じく栄養価が高く、さらにDHAも多く含まれている…。 臭みが少なく、ラムの変わりにジンギスカンに用いられることもある…。」 ぶつぶつと口遊びながら近付くその様子は迷宮内を彷徨うミノタウロスもかくや、という恐ろしさであった。 「まずい!料理の鉄人モードになってる!」と翔子が叫ぶ。 説明しよう。 星野りんごは洋食屋を営む両親の熱心な教育の賜物なのか、食への執念が尋常ではない。 そのため食物を粗末にしているものがいると理性の糸が切れ、通称料理の鉄人モードへと切り替わる。 料理の鉄人モードになったりんごの目に映るものは全て食材に変換される。 こうなった彼女の前にはいかなる獰猛な肉食獣も、一瞬で精肉と化す。 そうして作られた料理の数々は、食材の生前の面影をも残さぬ、美食家垂涎の出来であるという話である。 ちなみに鉄人の「鉄」は鉄のように強い、という意味ではない。 体中から鉄、つまり血の匂いを漂わせている、という意味である。 腰を抜かした塚本と来栖にりんごが詰め寄る。 慈眉善目のアプロディデは張眉怒目のタルタロスへと変貌した。 「塚本君はタルタルステーキにしましょう…。来栖君はブレゼで…!」 「やややややめろ、りんご。おお俺達不規則な生活してるから肉がカチカチでおいしくな」 「馬も鹿も暴れるから血抜きは手早くやらなくちゃ…!」 「ひぃぃぃぃ!」 兎人ならではの跳躍をし、空中で両手の武器を構える。 振り下ろした刃は倒れこんだ二人の首の一寸横に突き刺さる。 塚本と来栖はりんごの目を見てしまった。 いつもの穏やかな草食獣の瞳ではなく、己の衝動のみに食指を動かすジェイソンのそれである。 二人はこの世を儚む余裕もなく意識を投げ出した。 「あれ…なんでこのお肉ひとりでに動き出したんだろう…。ちゃんと屠畜しなきゃ駄目だわ…。」 もはやりんごには塚本も来栖も人ではなく、材料にしか見えていない。 凶器を引き抜いたりんごは再び両目を獲物に見据え、得物を振り上げる。 この段階でようやく翔子がりんごの両腕を押さえ込み落ち着かせようとする。 「おいりんご、よせ!そいつらは食いモンじゃない!食うなら老衰で死んでからにしろ!」 「だめよ翔子ちゃん、そうなったら肉質が固くなって口当たりが悪くなってしまうわ。」 「あんたたちそういう問題じゃないんじゃないの…」 りんごたちのやり取りに呆然としながら、悠里は呟いた。 おわり 関連:星野 りんご&礼野 翔子 チーム鹿馬ロ ジビエとは(ttp //ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%93%E3%82%A8)
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保健委員さん 425 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/30(火) 20 21 43 ID e5ckkljO スレ>>425 エアバックコマンドーすごいよ猪田さん エアバックコマンドーすごいよ猪田さん 保健委員さん。大人っぽくしすぎた(´・ω・`)
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心のままに~in my heart~ 写真つかいの続き【参照:cauchemar】 終礼のチャイムと同時に外へ跳ぶ。 秋の晴れ間にうさぎ跳ぶ。 凪に囲まれたウサギ島。緑の雑木が美しい。 「せんせー、さよならー!パン太郎!!プリントかじらない!」 ボブショートでメガネ、真面目ちゃんを絵に描いたような小さな小さなウサギの子が、真っ赤なランドセル背中に声を響かせていた。 誰よりも早く外に出るんだとクラスメイトをすり抜けて、秋の気配を感じ取る。 山は紅葉、海は凪。大分落ち着いてきてたけど、まだまだやる気の太陽がウサギの瞳を赤く染める。 「おーい、ハル子」 木造の校舎を背にして秘密の場所にまっしぐらに跳び込もうとしたとき。 クラスの男子の声が足元から、まるでハル子の細い脚を舐めるようにじっと見つめるかのごとく聞こえてきた。 ハル子が視線を落とすとグラウンドの片隅が穴だらけ。ちょうど、ハル子が入れるぐらいの大きさの穴から土がばっさばっさと泉のように溢れる。 「どうだ!おれが掘ったんだぞ!いちばん立派な穴が掘れるウサギが偉いんだぞ!」 ぴょこんと穴から顔を出した男子ウサギが、ハル子の短いスカートに向かって自慢するも、無邪気な視線がハル子を突き刺す。 「えっち!!!!」 # ハル子は小さなウサギの子。 きょうは頑張って島を渡った。島の大人の手を焼かずに、いつもの船長に感謝した。 誰もいない船着場。待ち時間はふんだんとある。潮風だけが話し相手、だと思いきや。 どこかで見たことある大人。カギ尻尾の靴下ネコ。半分垂れた前髪は、一度見ただけでは忘れられない。 その名は淺川・トランジット・シャルヒャー。旅する根無し草の写真家のネコ。 白と黒の毛並みと、カギ尾は会う者全てに印象付ける。 「淺川はどうしてココに来てた!」 「気まぐれ」 「気まぐれって?」 「気まぐれ」 「もう!」 淺川はいつもそうだ。子どもを、子どもだからってからかって!と、ハル子は小さく煮えたぎる。 きょうもおてんとさまが味方して、青いお空を見せてくれた。秋の昼間に珍しく、雲ひとつない日本晴れ。 それに負けじと海原も、青い波を立ててたが。「きょうは波が強いね」と小さなウサギに一蹴されるこの有様。 そう。ハル子は小さなウサギの島の住人である。ウサギばかりが住み着く『宇佐乃島』は、他の種族の進入を拒んできた。 一日数本の渡船に乗って、朝が早かったハル子は本土の船着場の小屋ですやすやと寝ていた。 そこにバイクのヘルメット片手に淺川、トタン屋根のお粗末な小屋を覗いてみると、いつか見たウサギの少女がだれていた。 きょうは日曜日。島のゆったりした時間から離れるのも良かろう。 ハル子は目をこすりながら、大人のネコの顔をはっきりと見た。こんなヤツ、一度会えば誰だって覚えているはずだ。 「淺川だ。どうして淺川なんだ!」 「悪いね、淺川で」 「わたしね、淺川がここにやって来るんじゃないのかなって、思ってたところだよ」 小さなポーチを庇いながらベンチから飛び跳ねるハル子の姿は、淺川にはまるでぬいぐるみのように見えていた。 そばに置いておいても飽きることのない、小さなウサギのぬいぐるみの話は留まることを知らない。 「そうだ。わたしの話聞いてくれるかな」 「100万円くれたら」 「ふざけてる!」 「おれはいつも真剣だよ」 「やっぱりふざけてる」 船着場の自販機でMAXコーヒーを淺川が買うと、飲んだことがないというのでハル子にぽんと手渡した。 目を丸くしたハル子は、お辞儀をして缶を開ける。いつもは見ているだけのコーヒーは想像以上に甘く、舌触りが滑らかでもあった。 キャラメルをコーヒーにしたような舌触り、未来の飲み物のような味はハル子にとっては新鮮でもある。 甘さの割には後味を引かないのは、分別をわきまえた大人の身振りにも似ている。ハル子にはまだ遠い。 「ごちそうさま」 「どーも」 缶を両手で握ってハル子は話を淺川に始めた。 「わたしの島って、ウサギ以外はいないんだよ」 「知ってるよ」 「でも、見たの。ネコの子がわたしの島に居るところ」 # ハル子は良く晴れた放課後には、秘密の場所に行くことがお決まりになっていた。 アスファルトで固められた道を走り、脇には涼しげな風薫る雑木林。枝と枝の間には波打ち際が見え隠れ。 ひと気のない丘を目指すと、とうの昔に役目を終えた発電所の建物が視界に入る。 真っ暗に、そして蔦が絡みついたコンクリートの建物は、島の歴史をよく知っているはずだ。 『立ち入り禁止』の看板が錆び付いていた。フェンス脇の切り株にハル子は腰を掛けて、ランドセルを下ろす。 無機質なコンクリート、物静かな雑木林、土地の色。そして真っ赤なランドセル。映画のパートカラーのように、 ぽつんとハル子のランドセルが、彩色を忘れた背景に一輪の花を咲かせる。飴玉のような、女の子の甘い香りが廃墟に漂う。 ハル子はその中から隠していたカメラを取り出した。小さなハル子には釣りあわない、機械と言ってよいがたいの良いカメラ。 見る人が見れば結構な値段のするカメラだ。それは、こっそりと兄の部屋から持ち出したもの。大体の使い方は分かると、ハル子は少し自慢げだった。 この風景を心のままに切り取りたい。 この風景を色あざやかなまま持ち帰りたい。 そして、大人になって、島を出ても、この島のことをずっと覚えていたい。 夢中でシャッターを切る。技術は二の次、感じたままにフイルムに焼き付ける。 カメラは不思議な機械だ。機械ってものは冷たいものや、頑固者だと思われがちだが、カメラだけは違う。 持ち主の言うことを聞くどころか、持ち主以上の感性を持っているのではないのだろうかという、人間じみた印象を植えつける。 そして秘密の場所で、ハル子は島で暮らしているだけでは分からないことを知る。 「あなた、だれ?」 カメラを下ろして、人影を見つめる。じっと相手もこちらを見る。 じょしこーせーみたいな制服着た女の子。年はハル子と同じぐらい。肩にかかった髪に憂い気な瞳。 しかし、この島には制服を着て通う小学校はない。それどころか、高校もないし、その子はネコの子だ。 「この島にどうやって来たの?」 「……」 静かな無音。 期待した答えは戻ってこない。 「ねえ、教えてよ」 またしても、返事はない。 むしろ、返事を否定するような。でも、血の通った生き物が側にいることは確か。言葉だけのコミュニケーションはいらない。 だから、ネコの子はつかつかとハル子の方へ歩み寄り、大きなカメラを興味深げに見つめていた。 そうしていると、カメラの持つ不思議がまたひとつ明かされる。それは、心を開かせること。 「あなたもカメラが好きなの?」 「は、はいっ」 ネコの少女の言葉に、思わずハル子も返事する。 ハル子を認めた彼女は、初めて言葉をつらつらと繋げる。 「わたしもカメラは大好き。だって、ウソがつけないから」 ざっざと土地を踏むネコの子の足元は都会的なローファー。胸元の赤いリボンが目に残る。 時間に取り残されたこの島に、彼女の格好は進んでいるように見えた。それは、島のせい。 ハル子は彼女の「あなたなら、もしかして知ってるかも」との言葉に首をひねっていた。 何?何を?それにどうやってこの島に?シャッターを切る手が動かない。 少し怖くなったハル子は急いでカメラをランドセルに仕舞いこみ、秘密の場所から逃げ去ろうと駆ける。 ネコの子も同じ方向へと脚を向けていた。発電所跡が元の時間を取り戻す。 ハル子の通い慣れた帰り道は、ネコの子がついて来るだけで不安なものになった。 大人に見つかったらどうしよう。この島できて以来ネコが立ち入ったことはない。 それを覆すと大人たちが騒ぎを起すことは分かっている。それを知ってか知らずか、彼女はハル子の後をついて来る。 誰も通らないのがいつもの道。いつも通りに誰も通らず、家まで着けばいいのにとハル子は背後を気にしていた。 「いない……」 どこにも見当たらない。さっきまでいたはずの子。この道は一本道だから、どこかで別れるはずはない。 気にしたくはないけれど、気にはなる。せっかく戻った道をハル子は戻ると、ネコの少女は寂しげに道端に立っていた。 「来ないの?」 「……」 アスファルトを濡らしそうな涙が一滴。 「折角、会えると思ったのに」 「……ねえ。だれにかなあ」 憂いた気持ちなのに空は青い。 お構いなしと言わんばかりの天気は、皮肉にも二人を締め付ける。 何もこんなときに晴れなくても、と。だんだんとハル子はネコの少女に心引かれる。 「あっ」 一本道を軽トラが登る。見慣れた車。見慣れた影。 エンジンの音で子ネコはたじろぎ、脚を振るわせる。 車窓がハル子の前で止まると、窓からハル子の両親が見えた。 「おとうさん!」 「ちょっくら出かけるからな。ハル」 「え?」 「夕方には戻る!なあ、母さん」 家のことなどどうでもよい。自分の背後に隠れた彼女が心配。 思いもよらないとはこのことか。ハル子の両親を乗せた軽トラは、なにごともないまま通り過ぎたのだ。 「気付かれなかったね」 「……うん」 「そういえば、自己紹介まだだったよね。わたしは『ハル』。学校に『はるお』がいるから『ハル子』って呼ばれてるの」 いつの間にかネコの少女は昔からの親友のように、ハル子の手首を掴んでいた。 # 「淺川、聞いてる?わたしの話し」 飲みかけのMAXコーヒーを手に、ハル子は隣の淺川を横目で覗き込んだ。 相変わらずの淺川は「ああ」と軽く返すだけ。 「もう!」 「聞いてるって。その証拠に、その女の子の名前を当ててやろうか」 「分からないくせに」 淺川は耳の後ろを掻きながら一言。 「『モモ』だろ」 # 丘の上に建つ日本家屋。歴史があるといえば通りが良いが、逆を言えばがたがきている。 両親は出かけているし、兄も当分戻らない。祖父は朝からお隣に、と言っても数百メートルは先の家。 「ここがわたしのうちよ」 「……」 「遠慮しないで。モモちゃん」 扉をチキンと閉めておけば、鍵なんか要らない。島ではよくあること。 がらりと土間に通じる引き戸を開けると、静かな空気だけが二人を包んでいた。 子供用のスニーカー脱いで、木目が美しい廊下を駆けると柔らかい音が響く。「こっちよ」とハル子が手招きするので、 モモはローファーを土間で揃えてお邪魔する。木と紙だけで出来た古い家に二輪の小さな花が咲く。 この家にネコの子がいる。 それを知ってるのは、ハル子とモモだけ。 二人だけの共有感。 すっと抜ける風。 少し破れた障子紙。 「迷路みたいでしょ。おじいちゃんのおじいちゃんが建て増ししたんだって」 「おもしろい」 「でしょ?」 モモが笑うと、ハル子も笑う。 ランドセルを揺らして廊下の突き当りまで行くと、薄い桜色のふすまが目に入る。 「ここがわたしの部屋」 自慢しようとふすまを開けると、六畳ほどの和室が広がる。 勉強机に、マンガが詰め込まれた本棚。さりげなくウサギのぬいぐるみが転がる。 そして、立て掛けられたコルクボードにはいっぱいの写真。モモが興味を引いたのはそれだった。 「モモちゃん、カメラ好きなんだもんね」 耳の後ろを掻きながら、モモは呟く。 「……すごい」 くいるように写真を見つめるモモに、ハル子は何故だか分からない影を見た。 写真がモモの心が締め付ける。はっきりと分からないものほど、苦しいものはない。 ハル子はランドセルの中のカメラをそっと取り出して、クッションの上に置いた。 「カメラマンになりたいな」 「えっ」 「うん。早くこの島を出てカメラマンになるんだ。だって、カッコいいんだよね」 ハル子は机の引き出しを開き、一冊の雑誌をモモに見せる。 両親の部屋から勝手に持ち出しであろう週刊誌。鶉の水彩絵が描かれた表紙をひとつ捲ると、海の色あざやかな写真のページが眩しかった。 ニ、三ページ風景画が続き、終わりのページの下段には文章が記載されていた。 「『世界中旅してると、やっぱり生まれた国が落ち着くんだよなあって思うじゃないですか?ある国では耳を齧られたりしたぼくですが、 落ち着くとまた旅に出て行きたくなる衝動にかられるんですよね。わかります?これ?そうだ、今度の日曜日ウサギの島への港町に 久しぶりに行ってみようかなぁ。まったくきれいなところでしたよ……と淺川氏はあっけらかんと語る』だって」 「……」 頭を垂れるモモ。パタンと週刊誌を閉じるハル子。雑誌の日付は最新号だった。 「わたし、この淺川って人好きだなー。写真もだけどね!」 「好き、なの?」 「うん。すんごくカッコイイよね」 メガネ越しに目を輝かせるハル子とは対称的に、モモの目は光るものを湛えていた。 「お兄ちゃんがまた遠くに行ってしまう」 聞こえるか聞こえないほどのモモの声。ウサギのハル子が聞き逃すことはなかった。 『淺川』と言う人は一度会ったことがあるだけだ。しかも殆どすれ違いのようなもの。 ハル子がこうして淺川についてつながりを保てるのは、今のところ雑誌やネットの媒体のみだけだある。 その淺川のことを「お兄ちゃん」と呼ぶものが居た。 モモだ。 「どうしたの?モモちゃん……。ほ、ほら!マンガでも読む?『ているずLOVE』一巻が出たんだよ!やっと島に届いた……」 「どうして、みんなお兄ちゃんのこと好きになるの」 小さな影が落ちる。 「港町に来たら、お兄ちゃんに会えると信じてた。お気に入りの港町があるからって。でも、そこには居ないからこの島に来たのに」 「知ってる?この島……ウサギ以外は……」 「知らなかったの」 # 「そのあとモモちゃんは部屋を飛び出したの。尻尾が廊下に着かないくらいの速さで」 「……」 「淺川っ」 「続けて」 「ふん。……それからモモちゃんの姿を見ることがなかったのね。二度とわたしの島に来ないのかなって。でも、どうしてモモちゃんは」 「『わたしの島に来ることが出来たんだろう』だろ」 淺川にセリフを盗られたハル子は頬を膨らます。理由は分かる。淺川にとってこの問題は易過ぎる。 あのとき、引き止めればよかった。自分が行くって言えばよかった。でも、モモが笑いながら淺川のもとに戻ることはない。 ほんのわずかな出来事だったと聞く。不慮の事故。しばらく交差点に花束が絶えることはなかった。 写真家になることを自分以上に望み、応援し、そして写真家としての姿を見せられなかったことを悔いて。 「お兄ちゃん、フイルム買って来てあげる」 淺川が耳にした妹の声は、これが最後。ハル子にモモがかぶさって見える。 そして 「用事思い出した。帰る」 「え?何しに来たのさ!淺川!」 すっくと淺川自慢の長い脚で立ち上がり、壊れそうな待合室を立ち去る。 飲みかけのMAXコーヒーを片手にハル子が追い駆けると、後ろ向きで淺川が置き土産。 「今度連休の日にでも、佳望町に連れてってやんよ。お前みたいなじょしこーせーのお姉さんに案内役をしてもらってさ」 「あーさーかーわーっ」 太陽はいつの間にか天高く昇っていた。 船着場の最寄り駅。一時間にわずかな私鉄沿線。公衆電話の側に淺川の愛車が休息をしていた。 鈍い光を反射して、革のシートが美しいリッター級のバイク。そして、傍らにはネコの少女。 「よお。久しぶりだな、モモ」 おしまい。
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寝床 439 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2009/10/06(火) 22 24 26 ID g86XtxjB ねこめ~わくの6巻って、もう出てましたっけ? 「ある日突然全ての人間が地球から旅立っていき、後に残されたのは直立歩行するように なった猫達。彼らは帰って来たときに人間の文明が絶えて荒廃してしまわないように、人 間たちの風俗習慣を正確にトレースし日々を暮している。何時帰るかも、帰ってくるかも 知れない人間たちを待ちながら…」 って、背景の設定だけだと泣きたくなるぐらい切ないのにねぇ(笑) と言う事で、ここのところ猫しか描いてないですが、更に。 シロ先生、遂にボーナス一括 で買ってしまいました。 こんなの買うとまた婚期遅れ(ry ※描いてるうちにちょっと胸増量になってしまったかも…
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ヒカルとバイク乗り 仕事をサボった杉本ミナは、愛車に跨り街並みと街並みを風切って走っていた。 「お父さん、お母さん。ちょっと悪い子に育ててくれてありがとう」 Tシャツが涼しかった頃が懐かしい。懐かしいとは大げさかもしれないが、季節の移り変わりだから仕方が無い。 「ミナはこれから、仕事を……忘れに行きます」 仕事はバイク屋、自宅もバイク屋。家に居ても仕事と離れられる環境ではないので、要は家からちょっと離れたかっただけだ。 気まぐれな性格なもので、空が青かったからと父親に言い残し小さな旅の支度をする。ネコだから、ふらっと出たって不思議ではない。 ネコの家だからお互いのことは干渉せず、父親もミナの気まぐれをさほど気にはしていなかった。 自分と同い年ぐらいの者たちは今頃仕事に汗流している時間だというのに、自分だけの時間を築いて風で吹き飛ばすのは快い。 大通りは昼間だから閑散として走りやすかった。通りの中央を走る市電も運転士と僅かな客を乗せているだけで、モーターの音が 街の隙間に響き渡る。嫉妬をしたのかミナはスロットルを廻し、意味もなくヒマそうな市電と競争をしてしまった。 市電の方がミナの跨るエストレヤより随分と年上なのに、胸を貸すようにミナを先へと譲る。 品性正し過ぎる大通りに飽きて、ちょっと捻くれた脇道に入ると望みどおりの手ごたえを感じる。左手に丘を見ながら曲がり道も多く、 未だコンクリートで固められた道を走り続けると、学生たちが下校している姿がちらほらと見えてきた。この辺は学校が近い。 制服ではなく、ジャージや体操着のまま下校している生徒がちらほらといた。紅白の鉢巻を通学カバンにくくりつけている女子もいる。 「そっかあ。もう、そんな季節なんだ」 彼らに気をつけながらスピードを緩めると、見飛ばしていたものが見えてきた。さらにブレーキを握り、クラッチを切る。 街中ながら曲がり道が多い丘陵地域、耳を突き抜けるエンジンの音がミナの気持ちを高ぶらせ、学生時代を思い起こさせていた。 自由との引き換えに財力を。でも、財力は新たなる自由を生み出すことも出来る。バイクのおかげで。 「あれ?ヒカルくん?」 顔見知りのイヌの少年が、自転車を脇に止めてしゃがみこんでいた。ペダルを乗ってくるくると廻すも、後輪は空回りをしている。 カチカチという刻むような音だけがヒカルをせせら笑うように鳴り続けていた。自転車のチェーンが外れるなんてよくあることだ。 だけど、思いもしないときに出会うのはちょっと勘弁して欲しい。 あまりいじくると自分の白い毛並みが汚れてしまう。お年頃の男子は過剰なぐらいに毛並みの汚れを気にする。 「外れちゃった?もしかして」 「あ。杉本……ミナさん?」 「いかにもー。杉本ミナでーす」 バイクに跨ったミナから話しかけられたヒカルはペダルを廻す手を止めて、イヌ耳を彼女のほうに向けた。 ヒカルはそんなに表情を表に出さない子だ。逆を言えば、気を許した相手にだけ表情を露にする。 ミナはヒカルの気持ちが分かっていた。 ミナはバイク屋の娘だ。 機械いじりなど、生まれたときから見続けていた。ヒカルを困らせる事態なんて、ミナにとっては見飽きたもの。 うずうずとライディンググローブからネコの爪が突き抜けそうであり、ミナはとてもじゃないが我慢出来ない。 「わたしに直させてくれるかな」 「……え?」 ヘルメットを脱ぐと金色の髪がふわりと襟首に広がる。バイクに跨って居たときとは違う表情だ。ミラーにヘルメットをかけて、 エンジンを止めるとヒカルと一緒に自転車の横にしゃがみこんだ。仕事に向かう顔は獲物を追う姿に似ていた。 「どのくらい乗ってる?」 「結構……」 「へえ」 変速つきのシティサイクル。チェーンはカバーで覆われている。とりあえず、ミナはバイクのシートを外して車載工具を取り出した。 シートが外れる光景にヒカルはちょっと意外そうな顔をして、ライディンググローブを外して本気になったミナの腕を見守ることにした。 このお年頃の男子には堪らないメカ。ヒカルも例外ではない。鋼がかみ合う曲線美、吸い込まれるのではないのかと錯覚する マフラーの光り具合、良い旅へと誘うシート。そして頼もしく唸るエンジン。ヒカルは自分の自転車とミナのバイクをちらと見比べた。 男性の野性味あふれるマシンのメーカーだというのに、ミナのバイクは女性らしい優しさと勇敢さがヒカルを揺すぶらせる。 ふと、ヒカルは考えた。 自分もバイクに乗ることが出来たなら、自分と想い人それぞれのバイクに乗って、いっしょにそれぞれの風を感じてたい、と。 二人いっしょに海岸沿いの道を走る。エンジンむき出しのネイキッドだが、粗暴さはない優等生の黒いバイクにヒカルは跨る。 教習所で初めて乗ったマシンと同じ型、四気筒のエンジンが揺れ動くのが体全体でひしひしと伝わってくる。 ヒカルは自分のバイクの音を確かめて、後から続く想い人が付いてくるのを耳で感じる。ヒカルの無垢な尻尾が潮風になびいて、 彼女も必死に追いかける。スロットルを緩めカーブミラーの側でバイクを止めて見上げると、ミナと同じ型のバイクで彼女が だんだんと近づくのがミラーに写っていた。ぎこちないブレーキ裁きで彼女は走り足りないバイクを落ち着かせ足を着く。 彼女のレトロ調のマシンは、隅々まで磨かれて主の几帳面さを体現していた。 「こらー。ヒカルくん、速いぞ」 「……」 「250と400じゃあ、しょうがないよね。でも、ヒカルくんの後姿を見ていたいから、先生ずっと付いていってあげるよ」 ヒカルが想うのは先生ではなく一人の女の子だ。確かに250ccのバイクに跨っているのは、教壇で現代文を教えている先生だ。 でも、今はそんなことを吹き飛ばしてもいいじゃないか。ヒカルは黒いヘルメットを脱ぐと、自分の顔が写りこむほど磨かれた グラマラスなボディ自慢な黒いタンクの上に置いて、肌寒くなった潮風の恩恵をイヌ耳で受ける。風の音を改めて聞きなおす。 一方、彼女はライディンググローブを外し、ヒカルと同じようにヘルメットを脱ぐと同じ潮風にショートの髪がなびく。 彼女はネコだ。ネコ故に不安になるとちょこっと爪を伸ばしてしまい、がりがりがりとタンクに爪立てる。その姿は子ネコ。 彼女が懸命になる姿を見ていると、先生を好きになってよかったのか悪かったのかがヒカルには判断が付かなかった。 バイクから降りて彼女の方へ近づいてと「だめっ?」と軽く胸にネコパンチをお見舞いされた。 「いつか、わたしもヒカルくんみたいに乗ってみせるんだ」と、バイクのミラーで崩れた髪形を整えて白い毛並みを自慢する。 冗談めいてヒカルは子供のようなオトナをからかうと「女の子なめんなよー」と照れながらお返しを頂いた。 お互い尻尾の付け根に結んだ色違いのバンダナ。ヒカルは水色、彼女は桃色。後姿でも分かるようにと、彼女が提案したものだ。 初めは「恥ずかしいですよ」と拒んだもの、彼女が無邪気に見せびらかすので付けてもらったものだ。だからお返しに付け返した。 誰も知った顔がいない田舎道。エンジンの音を止めると波の音しか聞こえてこないような田舎道。 「先生」 「先生じゃないよっ」 「ごめんなさい」 「えへへ。ヒカルくんは相変わらずだね」 バイクのタンクの上に折り重ねてあったライディンググローブがぽとりと落ちると、ヒカルはそっと拾い上げて我に返る。 ヒカルの目の前には、先生なんかいなかった。海岸沿いでもなかった。そして、自分が乗りこなしていたのはバイクでなく自転車。 「ヒカルくんは好きな子とかいるのかな」 「……えっと」 「好きな子とタンデムとかしちゃう?でも、ヒカルくんは一人で走るのが好きそうだからなあ」 ミナは着々と修理の準備に取り掛かりながら、器用にヒカルをおもちゃにした。 「『鉄の馬』って言いえて妙だよね。コイツと一心同体で海岸沿いを走ってるときなんて、ホントコイツったら嬉しそうだよ」 「……うん」 ヒカルがタンクに手を置くと、ミナは「撫でてもらってよかったな」というような顔をしてヒカルをからかった。 「そういえば、今度ぼくも……」と言いかけるとミナは再び真剣に自転車の修理へと取り掛かった。 ラジオペンチで器用にカバーが外されてゆく。さほど時間はかからない。露になった自転車のチェーン。左手で後輪の歯車に チェーンを掛け直し、右手でペダル側の歯車にチェーンを引っ掛ける。外れないように抑えながらペダルをゆっくり廻すと自転車が 息吹を吹き返してきた。ペダルを廻しても十分な手ごたえがあるのだ。全てを終えたのにはさほど時間はかからない。 「もしかしてチェーンが緩んでいるかもしれないから、今度はお店で見てもらったほうがいいよ」 「あ、ありがとうございます。あの……」 「御代はいらない!頂くならヒカルくんの出世払いでね!それか、ヒカルくんが騎馬戦でいいところを見せてくれる。か、だね」 ぱんぱんっと手を叩くミナの毛並みは油で汚れていた。 ヒカルもミナの一言でほっとしていた顔が驚きに変わった。 「びっくりした?カンが当たったね。『そういえば、今度ぼくも』ってヒカルくんが言うから、何かに乗るのかなあって。 ここに来る途中、体操着姿の子たちを見つけたから多分体育祭で乗るって言ったら、騎馬戦しかないよねーって。ね」 「……はい」 「ちゃんと、聞いてるよっ。女の子なめんなよー」 ヒカルはミナに年齢の差をさほど感じなくなってしまったことに驚いた。 「ヒカルくんのきれいな毛並みを汚しちゃいけないから」と、ミナは平気な顔をして言う。 「ヒカルくんが砂埃に塗れながら闘ってるのもいいな」とも、ミナは平気な顔をして言う。 ヒカルは近づく体育祭のことを考えながら、そしてミナの方を振り向きながら、尻尾をなびかせ自転車に乗って去っていった。 「ホントは仕事サボりに出かけてたのになあ。わたしのばかばか」 ミラーにかけたヘルメットを被ろうと手を伸ばしたが、自分の手のひらを見てそっと引っ込めた。 おしまい。
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某みのりん風に/ボールド 174 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2009/03/26(木) 21 10 15 ID HQGKkKD8 連続でごめん。上でふんわりシャンプーとかの話を読んでたらつい! (某TDNとは無関係)
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猫妻 ≫189 ※時期的にパジャマ着せるのが正解でしょうがほんのりパンツ有り、ご注意。 ≫199 春だねぇ。 そう言えばひかる君もミナにはほのかな感情が有る様な。 ≫198 構いませんよー、御自由にどぞー。 ツ有り、ご注意。
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昔のおもひで 417 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2009/02/07(土) 02 18 43 ID 90+8CYl5 413 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2009/02/06(金) 22 00 58 ID h+94tbzR あ、これ完全に別人だわ。 恐れ多くもケモ学の代表的人物サン先生を根本からいじってみた。 ≫211にいろいろ独自解釈を加えたらこんなことに。正直反省している しかし誰もいないように見えても誰かいるもんだな 支援感謝感謝 ちなみに≫379読んでやられた!出遅れたー!と思ったのはここだけの話。 ≫413 おおお、あれだけのプロットからここまでちゃんと書いて貰えるとは。 フリードリヒ・“サンスーシ”・ローゼンタールは、 割とそんな感じで二面性を持った感じかなーと思ってました。 こっちに来てから教員免許を取るために大学入り直してるんだろうなぁ。 そのころに杉本ミナとは出会ってるのかな。 英先生はたぶんこの後も結婚しません。彼女の想いびとは今も健在です。 ということで、美王、神楽13歳。隣の県に有る桜女学院中等部2年の頃。
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cauchemar あああ……耳萌えの素敵なSSが沢山の所、欝話投下になりそう。 浅川過去話(欝、文章多め注意) 浅川と妹の年齢差の計算が、過去の漫画と合わなくなってますが 気にしない方向で/(^o^)\ 木島は一応ホッキョクギツネ。